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1960-04-26 第34回国会 参議院 文教委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年四月二十六日(火曜日)    午前十時三十一分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     清澤 俊英君    理事            北畠 教真君            吉江 勝保君            加瀬  完君    委員            近藤 鶴代君            横山 フク君            岡  三郎君            千葉千代世君            豊瀬 禎一君            相馬 助治君            柏原 ヤス君   国務大臣    文 部 大 臣 松田竹千代君   政府委員    文部政務次官  宮澤 喜一君    文部大臣官房長 天城  勲君    文部省社会教育    局長      斎藤  正君   事務局側    常任委員会専門    員       工楽 英司君   説明員    日本芸術院長  高橋誠一郎君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○教育文化及び学術に関する調査  (日本芸術院運営等に関する件)   —————————————
  2. 清澤俊英

    委員長清澤俊英君) ただいまより文教委員会を開会いたします。  まず、委員長及び理事打合会経過につき御報告いたします。本日は、先週来持ち越しとなっております芸術院運営に関する諸問題につき調査をいたします。なお、次回は五月十日開会いたすことにいたします。  以上、理事会の決定の通り取り計らいたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 清澤俊英

    委員長清澤俊英君) それでは芸術院運営に関する件を議題といたします。  質疑の通告がございますので、この際発言を許します。ただいま出席になっております政府委員は、宮澤文部政務次官社会教育局長斎藤正説明員芸術課長福原国彦芸術院長高橋誠一郎の諸氏が見えております。
  4. 相馬助治

    相馬助治君 どうか発言者もすわつて御答弁下さるように、私もすわつて質問したいと思いますから、委員長お許し願いたい。  戦後、わが国文化国家建設ということを強力に唱えて、一時、文化国家ということが一種流行語となって国内を風廃した時代があったことは御承知通りですが、今日いろいろな複雑な世相の陰に隠れて、文化国家建設ということが言葉の上では若干なおざりにされておりますが、また最近いろいろな面から文化国家建設というその趣旨がほうはいとして起きつつあることは御承知通りであつて、戦争中においても、アメリカ自身わが国文化財に対して、戦略上の目的を抜きにした措置をなされたというようなこと、また、敗戦後、日本が特に歴史的な意味日本伝統文化を重んじようという意味から、文化財保護委員会というものが設けられて今日に至つたというこれら一連の動きを今日われわれが顧みるときに、いよいよ文化財というものをわれわれは十分に保護すると同時に、今後、日本に芽ばえる文化財を十分に保護育成していかなければならないということは理の当然でありまして、こういう見地からすると、現在の文部省芸術に関する行政というものも、一課が置かれておるにとどまつておるような状態で、行政上からもはなはだこれは不満があるところでございます。最近、自民党では、この問題に着目して、将来は文化省というようなものを設けることを企図し、その過程として、芸術の問題を、現在の社会教育局から離して一局を作ろうというような動きもあるやに承わつておりますが、これは時代の趨勢からしてきわめて私はけつこうなことだと思うのです。こういうふうな立場と、今の政治情勢のもとにおいて、日本芸術院存在というものは非常に大きな意味があつて、かつまた、別な面からいうと重大使命を持っていると、こういうふうに考えるものでございます。長い間、芸術院院長の重責に任ぜられております高橋院長におかれても、そういう点は同感であろうと存ずるのでございまするが、総合的に芸術院使命について、この際、高橋院長はどのようにお考えになっているか、まず、そのお気持ちを冒頭に承わつておきたいと思います。
  5. 高橋誠一郎

    説明員高橋誠一郎君) 御承知通り芸術院は、まず第一に栄誉機関として存在するものでございまして、芸術上の功績顕著なるものを芸術院会員といたしておりまするので、実際におきましては、日本芸術行政方面におきまして、これまで活躍いたしておりましたのは日展との関係でございまして、日展運営委員会芸術院とが日展を共同主催して参つたのでございまするが、御承知のように、先年、日展芸術院から切り離しまして、今日におきましてはこれぞという活動をいたしておりません。芸術院かくのごとくあつていいものかどうか問題とせられるところと存じまするが、今日のところでは、文部大臣から諮問がございまするならば、それに対して答申を行なう、あるいはまた芸術の向上をはかりまするがために、適当なことがありまするならば、これを行なうということに相なっておりまするが、芸術院に対しまして、大臣からの諮問もございませず、かくのごとき仕事芸術院仕事としてやるべきものであるというような意見がぼつぼつ出たこともございまするが、それに対しまして、いろいろ実行困難な点そのほかがありまするので、今日におきましては、ほとんど全くこれぞという活動もいたしておりません。これは、ちようど兄弟のような関係に立っておりまする日本学士院も同様であると存じます。ただいま行なっておりますおもな仕事といたしましては、両者とも芸術上の功績をあげましたものを表彰するということ、すなわち芸術院賞あるいは恩賜賞を授与するということが一番おもな仕事になっております。これも重要なことと思いまするが、他に何か芸術院のやるべき仕事がないかというようなことが、よりより問題になっておるのでございまするが、今のところこれぞという活動もいたしておりません。大いに考究する余地のあることとは存じておりまするが、ただいまのところでは、かような状態にありまするのであります。
  6. 相馬助治

    相馬助治君 現代の時代から申しても、また、その発生してきた歴史的な役割から申しましても、芸術院というものが非常に重大な使命を持っておるという点については、ただいまの院長お話でも、よく院長自身がお考え通りであつて、その点については私も同感です。ただ、芸術院がどれだけの仕事をどういうふうにやつているかということについては、種々予算上の問題もありましようし、制度上の問題もありまするので、私はこの際、院長に高きを、また無理を望むつもりはございません。ただ問題は、芸術院あり方というものが、現在のような状態ではたしてよいのかどうかと、こういうことです。現在のような状態で、はたして真の日本芸術院の創設された趣旨に合致しておるかどうかという問題です。かりに今そういう禍根があるとすれば、その禍根を一掃して、抜本的な改革を加えなければならないということに帰着いたしまするので、それら気ついた点について、二、三具体的にお尋ねして参りたいと思いますが、芸術院は、もともとただいま院長説明されたように、一種栄誉機関としてこれが考えられているのに対しまして、芸術院の行動についての実質的な問題というものは、常に美術部門から起きております。これは会員数が多いという点からばかりでなくて、他の会員たちの間では、この機関芸術家一種栄誉機関であると考えられているのに対しまして、美術部門会員たちは、日展との関連もあつて、もっと実際的な美術界活動と密接に結びついており、そういう展覧会を開く活動関連のないものは芸術院美術部門会員にもなり得ないというような現在の段階でありまして、その美術界が単に一部少数のボスというか、グループによって牛耳られているということが世上うわさされておりまするが、それに対して、院長はどのように問題を捕捉されておりまするか、承わりたいと思います。
  7. 高橋誠一郎

    説明員高橋誠一郎君) ただいまお話の一部のボスに牛耳られておるのではないかというお尋ねでございまするが、御承知のように、芸術院は三部に分かれておりまするので、芸術院に関しましては、ずいぶんいろいろな非難攻撃あるいはまた流言飛語のようなものがとんでおりまするが、私どもの知る限りにおきましては、二部あるいは三部におきましては、ただいま仰せのようなボス的な存在があるというような非難をほとんど耳にいたしませんのであります。それらの人たちによって牛耳られているというようなことは聞きません。正直に申しまして、一部すなわち美術部門に関しましてはボス的存在がある、はなはだ遺憾であるという世間の批判を聞いておるのでございまするが、しかしながら、これがどこまで事実でありまするか、私もそういううわさを耳にいたしまするごとに常に苦慮いたしておるのでありまするが、ほんとうにこれがボス的存在であり、全くこういう人たちによってひつかき回わされておるという事実を、どうも私どもはなはだ不明でございまするためか、発見し得ないのであります。ずいぶんいろいろな派閥などに分かれておりまする世界でありまするので、いろいろなうわさは伝えられるのでありまするが、実際にそういう存在があるかどうか、それらの人たちによって思うままに動かされておるなどということは、どうも私には信ぜられないのであります。ことに日展と切り離しました以上は、なおさらそういう心配はないのではないか考えておるのでございます。
  8. 相馬助治

    相馬助治君 制度上は御承知のように日展と切り離したのでございまするが、特に美術部門会員について、院長が御判断になればわかるように、現在の日展は、理事長事務局長芸術院会員であつて、それからまた受賞や会員選挙の今までの経過を見ても、日展作家というものが中心になってきておりまする関係上、これは切つても切れない深い縁にあることだけは、院長も御承知だと思うのです。それらの問題について具体的なことを知らないとおっしゃるようでありまするが、それは具体的な実例を示して、このあとで一つ問題に供して御判断を願うことにして、その前に、院長は、現在の芸術院会員の数、これが現在でもって妥当だとお考えですか。
  9. 高橋誠一郎

    説明員高橋誠一郎君) 会員数、つまり定員百人ということが妥当であるかどうかということでございます。この点も弘前から考えておりますのでありまするが、百人が妥当であるかどうかということになりまするというと、芸術院成立歴史などにさかのぼりまして今日のようなことになっておるとは存じまするが、何しろ美術部門の五十人に対しまして、文学部門三十人、芸能部門二十人というのはいかにも少ないと考えております。他日、機会が熟しましたならば、これらの部門において増員をはかる必要があると存じまするし、それからまた第一部の美術部門におきましても、だんだん新しい美術、第五、第六の美術と称するようなものが現われて参りますような世の中でありますので、こういう点におきましても増員の必要が生じてくるのではないか、こう考えておるのでございまするが、まだ今日のところにおきましては、第一部におきましては増員の気分が十分に盛り上がつておらないのでありまして、この問題を第一部の諸君とお会いしますごとにいろいろ論じておるのでありまするが、非常に熱心に増員を主張する人たちもあるかと思いまするというと、はなはだまたこれに対しまして消極的な人たちのあることも認めなければならぬところであります。私といたしましては、二部、三部においてまず増員を行なうべきものというふうに考えておるのでありまして、二部、三部におきましても賛成者は多いのでございまするが、まだこれも、そうその増員の要求が強く叫ばれるという程度までは至っておりませんのであります。
  10. 相馬助治

    相馬助治君 これは今の高橋さんの御答弁は、現在の百人については若干足らないような気もする、しかし、足らないという声が会員の中から起きた場合に、これは補充すべきであるというふうな御意見に承つたのですが、一番近い例が日本学士院会員であつて日本のように貧しい国では、せめてこういうふうな、芸術院栄誉機関であるとするならばなおのこと、人口の激増その他からも考えて、芸術家優遇という点から、院長は積極的に増員に踏み切るべきではないかというふうに私は考えるのです。と同時に、一部、二部、三部の会員の分配がはたして現在で妥当であるかどうか、特に美術部門が五十人の会員定員を擁しておるから、そしてあとで触れますが、いろいろな選挙ということになるというと、ほとんど個々の美術部門意思のうちで、しかもまた西洋画日本画というような、圧倒的に数を持っている人たちのすべての意思によって、芸術院性格そのものまで決定されるというふうなことを考えるときに、私はこの際、増員問題については院長はもうちょっと積極的な意思を持たれてもよいのではないか考えるのですが、いかがですか。
  11. 高橋誠一郎

    説明員高橋誠一郎君) 学士院が百人から百五十人に増員せられましたことは、ただいまお話し通りでございまするが、これは事実正直なところを申しまするというと、占領下であり、そして主として司令部の指令に基づきまして、日本学士院日本学術会議の一部分とされておりまして、学士院会員選挙等におきまして全く自主性を失なっておつたと申していい時代、これは事実、学術会議の方では学士院自主性をある点まで好意的に尊重するという態度をとつてはおりましたけれども、明らかに法文の上から見まするというと、自主性を失なっておりました時代であります。そういうときでありましたから増員が簡単にできたのでございまするが、これがもし会員総意によりまして増員を行なうというようなことになりまするというと、事ははなはだめんどうではなかったかと考えております。芸術院はむろん学術会議のようなものの一部にはされておりませんでしたし、今日におきましては占領時代を脱しまして、その自主性が尊重されておるのでありまするからして、芸術院みずからが増員に向かつて乗り出していくということがむろんでき得るわけでありましょうが、しかし、これもただいま申しましたように、あくまでも会員総意によってやるべきものであつて、あるいは文部大臣、あるいは芸術院長自分意思に基づきまして増員を押しつけていくというようなことは望ましくないと考えております。まことに、芸術院長自分意思に基づきまして多数を指導していくというようなことをしまするよりも、全体の総意を尊重いたしまして、これに基づいて動くべきものと私は考えておるのでありまして、こちらから特にこの部門をこれだけ増員すべきものだというようなことは、話にはいたしまするけれども、特にこの点を強調いたしまして、あるいは国会の力により、あるいは文部省の力によってこれを行なおうとはいたしませんのでありまして、まず第一に、芸術院諸君自分意見を訴えるという態度をとつておるのであります。  それからなお、百人の会員各部の割り振りでございまするが、これは先ほども申しておりますように、二部、三部ははなはだ少ないのでありまして、一部五十人ということが他に比べて多いということは、しばしば言われておるところでありまするが、これは主として芸術院成立歴史に基づいてかくあるものと存じております。第一部の中におきましても、ただいまお話のように、ある科ははなはだ少ない、ある科は比較的多いということは事実でありまするが、今日におきましては、また私ども考えでは、あくまでも政令に基づきまして、この会員選挙補充の際などには部本位でいくべきものである、科本位であるべきではないという考えを持っております。これにつきましてもいろいろ異論がありまして、はなはだ思うにまかせないところがあるのでありまするが、部本位でいこうではないかという意見に対しましては、正面切つて反対せられる方はきわめて少ないようでありまして、ことに最近におきましては、選考委員を特に選挙するということをいたしませんので、全会員がことごとくみんな選考委員となって選考いたしますのでありまして、二部、三部におきましては、もうすでに科本位が全く破れておると言ってもいいくらいであります。一部におきましては、なおこれが多く残つておるのでございまするが、私の見通しと申しまするか、次第にそういうところが少なくなっていくのではないかというふうに考えておりまするが、これは何分長い伝統によるものでありまするので、なかなかこれを消してしまいますることは容易なことでないことは私は認めておるのでありますが、歩一歩これに近づきつつあるということは申し上げられると存じます。
  12. 相馬助治

    相馬助治君 院長の話によると、二部、三部には増員を希望しておる者があるかもしれぬが、一部にはほとんどないというような意味に聞き取れる御発言があったのでありますが、事実はこれに反していて、御承知のように、昨年、豊道春海氏が増員問題に対して国会請願をし、これに対して衆議院並びに参議院の文教委員会は満場一致をもってその増員請願を採択し、これを政府に回付しておる事実があるのでございます。このことは院長自身はどのように御承知であるかどうか、また、院長自身はそのことに対してどういうふうな見解をお持ちであるか、承つておきたいと思います。
  13. 高橋誠一郎

    説明員高橋誠一郎君) ただいまの御質問でございまするが、私、先ほど申し上げましたのが多少言葉が足りなかったかと存じまするが、一部には全然増員の必要を認めない人たちばかりであるとは申し上げなかったと存じまするので、一部においても相当強く増員を主張している諸君もありまするが、多数の意見は、これに対して少なくも冷やかであるとか、消極的であるとかということを申し上げたと存じます。そうしてただいまお話しのように、豊道春海会員から増員請願国会に出され、国会がこれを採択せられましたこと、むろん私よく承知いたしております。この問題に対しましていかがいたすべきであるかということは、部長初めかなり多くの会員諸君と話し合つて参りました。で、増員の必要は、先ほど申しました点におきましてこれを認めないわけではないのでありまするが、しかしながら、この問題は先ほど来申しておりまするように、会員意思によってまず増員すべきものであるかどうか。あるいはまた増員するとするならば何人の増員を要求すべきであるか。またさらに、増員せられたといたしまするならば、これをどういう数によりまして各部に割り当てるべきものであるかというようなことは、すべて芸術院が決定すべきもの、芸術院会員が決定すべきものというふうに考えているのでありまするが、豊道会員がもし御自分意見会員に向かつてまず訴えて、そうしてその賛成を得て、全体の意見がこうであるということで国会請願せられまするならば、芸術院多数の会員はこれに賛成の意を表したろうと思うのでございまするが、豊道氏はこの問題について国会請願するというようなことは、他の会員はいざ知らず——他会員にもおそらく話をされなかったのではないだろうか、少なくも朝倉文夫氏だけには話されたかと存ずるのでありまするが、私——芸術院長に対しましてもこのことは一言も相談せられませんで国会請願せられることになり、さらにまた文部大臣お話しになるということになりましたのでありまして、その点まことに遺憾に存じておりまするのであります。豊道氏はしばしば私のところに参られまして、いろいろ書道の問題、芸術的の問題について意見を交換し合つている仲でありまするが、この請願国会とか、大臣に要求するとかいうような点におきましては何も相談を受けなかったのであります。しかし、請願せられた後におきましては、もういかんともすることができないのでありまするからして、ただ事後であつてもいいからして、部長その他の諸君とよくこの点お話しになつたらいいだろうということを申したのであります。豊道氏は、もちろんさよういたすということは申しておられるのでありまするが、一向話をせられないのであります。そうしてその後におきまして芸術院総会が開かれました際に、豊道氏は増員の問題を芸術院総会に提出して賛成を求めるということをなさることかと私は考えておつたのでございまするが、ついにそのこともなくして終わつたのであります。私はこれに対しまして、文部省がどういう態度をおとりになるのであるか、文部省がこの豊道氏の請願並びに国会の採択を尊重いたしまして、増員予算を組むというような態度をとりまするならば、芸術院はこれに対していかがいたしたらいいものであるかと考えなければならぬと考えておつたのでありまするが、その後、ちようど昨年夏のころでございましたか、文部省局長と話をいたしました際に、文部省はいろいろ予算がかさんでおりまするので、今回はこれは予算には組まない、こういうことでありまするので、今回は特に芸術院総会を臨時に招集してこの問題を議するほど差し迫つてはおらないものと、こう考えておつたのでございます。ところがその後になりまして、秋に開かれました総会には、御承知のように豊道氏がこの案を総会に出されましたのであります。そういたしまするというと、反対多数でございまして、ほとんど、豊道氏お一人を除きまして、いずれも今回の増員は見合わせたらいいだろう、他日、増員の必要を認めたときには、またしかるべき態度をとるというような意向が強かったのであります。で、豊道氏が私に話されましたところでは、どうも芸術院会員全体を増員するということよりも、書道会員をふやしてもらいたいということでありまして、全体の増員ということは実際聞きませんのでありまして、二人だけの書道部会員を四人にふやしてもらいたい、後にはもっとさらにふやしておられましたのでありまするが、最初にはまず四人に、二人増員してもらいたい、こういうお話であったのであります。これは内部の問題でありまするので、部長を初め第一部諸君内部においてお話し合いがつかないものであろうか、よく一つ書道にも明るい方が第一部には多数おられることでありまするからして、そういう方々とお話し合いになり、賛成をお求めになつたいかがでございますかということをたびたび私は申しましたのであります。豊道氏は、むろんさよういたしましょうというようなことで別れたのであります。  で、ただいま申し上げましたように、昨年秋の総会におきまして豊道氏の提案が否決せられました後におきましても、この問題はやはり常に私どもの頭にあるところでありまするので、部長会議が開かれまするごとに、部長会議はかなりひんぱんに開いているのでありまするが、そのつどこの問題が出ないことはないと申していいほどでございます。そうして、やがてまた芸術院あり方定員の問題、その定員の割り振り、内部の構成というようなことにつきましては、小委員をあげて検討をする必要があるのではないかというようなことを部長会議で申しまして、やがて近く開かれまする、五月に開かれまする総会におきまして会員諸君と相談いたしまして、おそらくこういう小委員ができまして、そしてその小委員会において十分検討をいたし、その委員会案に基づきまして、さらにまた総会検討を加えて参りたいと考えております。豊道氏の請願に対しましては、私ども、決してさほどまで冷淡に取り扱つているわけではないのでありまして、ややその方法は誤つてつたかもしれないのでありまするが、まあ芸術院存在のこれは根本に触れている問題でありまするので、十分に検討して参りたいと私も考え部長諸君におきましても反対はないのでありまして、やがてこういうような運びに至りはしないかと、ただいまのところ考えておる次第でございます。
  14. 相馬助治

    相馬助治君 今、るる御説明になりましたが、だいぶ事実と違つているところもあると思うのです。その前に、豊道氏が国会請願したことがけしからんというような意思が、院長でなくて、芸術院会員の中にあるということですが、日本国民として国会請願することは当然の権利でありまするし、この増員の問題は国家予算を必要とするので、国会がこれを取り上げることは、またきわめて当然なのであるし、当時、衆議院も参議院も満場一致でこのことを採択をいたし、特にこの紹介者は、前に文部次官をやつた経験のある劔木君であつて、非常に熱心な趣旨説明があつてこれは当委員会において採択になっておるという事実を、院長も一つ頭に入れていていただきたいと思うんです。  それから第二に、事実の相違していることは、豊道氏が勝手にやつたということですが、豊道氏の請願の際に、実は、当委員会としても慎重を期すために豊道氏の意見を直接求めたのです。そうしますと、先年来、院長に対して文書をもって増員の件をたびたび陳情しておるけれども、ほとんどこれが握りつぶしになっておる、で、やむを得ざる手段としてこの際国会にこれを請願するということでございました。私はこの言葉には疑問を差しはさみません。というのは、高橋院長に出した陳情書の写しを私に見せておるのであります。それから次に、豊道会員書道のことのみを考えておると言うておりまするが、これも事実に反しております。書道会員を増せというような請願を当委員会が採択したとするならば、当委員会の見識にもかかわることであつて、何部の何科に何人行くかということは芸術院内部の問題であつて、この請願書の説明にも、また昨年十一月十六日の総会の席上での豊道会員説明書を見ても、書道のみを増員しろというようなことは一言も言っていないのであります。その必要性は、書道会員が当時たつた一名であったということの必要から生まれたかもしれないが、請願並びに総会の席上における公的な豊道会員説明書には、書道のみのことを言っていないはずであります。そういう立場に立って、当委員会も当時満場一致をもって採択していると、私はこういうふうに考えるのです。それから、この問題について高橋さんに承つておきたいことは、その請願を通した当時に、私は局長に対して、この請願を回付したので文部省としての意思はどうかと、こういうことを聞きましたところが、これは非常にむずかしい問題で、芸術院自身が会員増員ということに踏み切らなければ、文部省の方としては、費用を先に盛つて増員したらどうだなどと言う筋ではないというお話であつて、これはしごく私もごもっともだと思ったのです。それで私は当時責任上、高橋さんに交誼社でお会いをいたしました。ちようど稲田先の文部次官もいたので、そこで私は、当委員会がその請願を採択した理由を説明して、増員の問題について御意見を承つたときに、あなたは明瞭にこういうことをおっしゃっている。増員したい、そういう意思もある、しかし何しろ国家予算を伴うことなのであつて文部省もにわかには踏み切れないのではないかと思う、それだから、相馬さんがそれだけのお気持があるとするならば、また委員会として責任があるとするならば、それは文部省の方によくやはりお話しを願わなければならぬという趣旨お話があったわけであります。そこで私は、文部省に聞けば芸術院自身がきめるのだと言うし、芸術院に聞けば文部省が熱意がないからだめだみたいな話では話にならぬので、私はやむを得ず、松田文部大臣にその意味のことを申して、あなた自身大臣室にいらつしやつていただいて、当時、福田局長と私と、それから高橋院長とで、松田文部大臣にお会いをしたわけです。そのときのことはあなたはよく覚えておられると思うのです。松田文部大臣のおっしゃったことは、それは芸術院自身の問題としていろいろデリケートなこともあろうけれども日本のような貧しい国で、栄誉機関としての芸術院の性格を考えるならば、それは増員の必要がある場合には、それは増員すべきであるというふうに自分は思うが、しかし何せ芸術院自身がそういう意思をきめなければ、この問題は解決しないのであるから、院長自身どう思うかということをあなたに聞かれたはずです。そうしましたら、あなたの答弁は、何しろ会員がきめるのだから、私はようわからぬというような、まことに頼りのない、無責任な発言があった。そのときに、松田大臣はかなり言葉を強めて、いや、あなた自身の意思はどうなんだということであった。あなた自身の意思がどうなんだということを、指導的にそのことを言わないのかということをおっしゃったのです。そういういきさつがあったにもかかわらず、その総会のときには、政治工作があつて国会請願をした案件だから、これは増員などすべきでないという空気をびまんさせて否決されたやに聞いておるのでありまするが、これは実に私は問題だと思う。しかも私が問題にするのは、当時、一業界新聞を買い切つて、そうして、その国会請願されたような案件を、芸術院が今増員問題に踏み切るならば、芸術院自主性を乱すものであるというような意味の記事を数回にわたって書かせ、その経費は大体六十万と言われる。しかも、その六十万の出どころを私は具体的に調査をしてやつと尋ね当てた。こういうふうなこと自体をあなたは御承知でございますか。
  15. 高橋誠一郎

    説明員高橋誠一郎君) ただいま事実問題についての御質問でございましたが、豊道氏は、先ほど来申しておりまするように、私に向かいまして、たびたび書道増員は申しておられたのでありまするが、会員全体をふやすということにつきましては一回も御相談を受けたことがないのであります。これはおそらく豊道氏も私の申すところを否定せられないと存じます。それからまた、この請願を行なわれる際に、まず私の賛成を得たその上で請願したのだ、こういうことを昨年来の総会の席で豊道氏は述べられたのでありますが、これは私としては、はなはだ心外でございましたので、その際、さつそくこれに対しまして、さような事実は全然ないということを申したのであります。ところが、豊道氏みずからが私の賛成を求めたのではなくして、まず三宅氏という農林省嘱託の方に話をし、その三宅氏から元文部次官の有光次郎氏を介して、そうして私の賛成を求めた。こういうことであったのでありまするが、これは事実はなはだ妙な話でございまして、私と豊道氏とは、しばしばこの問題について話し合う機会がありますのに、そうして私の近くに豊道氏は住んでおられまするので、もうずいぶんちよくちよく私の私宅にも参られるのであります。それなのに、何を苦しんで三宅さんというように、全然私のそれまでは知らなかった人物を介して、さらにまた有光次郎氏を介してこのことを私にお話になつたのであるか。私は、私の言葉が足りなかったがために、あるいは有光氏が何か誤解して、私が増員請願に対しまして賛成の意を表したかのごとくに有光氏がとつて、さらにこれを三宅氏に話し、豊道氏に述べられた言葉と実は思っておつたのでありまするが、その後、有光氏から会見を求められまして、いろいろ話をいたしました際に、そのときの会見のお話の内容はことごとく自分は筆記しておる、ノートをとつておるのであるから、一つそれを申し上げようというので、こういう話の段取りになつたということを申されたのでありまするが、これはもう全然その有光氏のノートに誤りはないのであります。
  16. 相馬助治

    相馬助治君 その辺のことは簡単でけつこうです。
  17. 高橋誠一郎

    説明員高橋誠一郎君) 私の申しました通りであるということを承認されたのであります。でありまするからして、どうも有光氏も、私が請願に対して賛成したというようなことは少しも考えておらず、三宅氏にもさよう伝えた覚えはないと、こういうふうに申しておられるのであります。ところが、総会においては豊道氏はそれを述べておられます。どうもこの点はなはだ遺憾でありましたのでありまするが、その次に、ただいま御質問の交詢社の会見の際、これは私は先ほども申しておりまするように、決して増員の必要を認めないわけではない。やがて増員の要求が起こるときがあるであろう。まあそういう際には、むろん文部省の力も借りなければなりませず、国会の助けも借りなければならぬということは申したのであります。文部省がどこまでこの請願趣旨に沿いまして行動するか、まあ先ほども申しましたように、予算をさつそく組むというような態度をとるのかどうかと、こう考えまして、社会教育局長にも聞きましたのでありまするが、今回は文部省はそれまで突き進んでやるつもりはない。少なくも今度の予算には組み入れないつもりである、こういうことでありましたので、先ほど申しましたように、臨時総会を開いてこの問題を議するというようなことを私はいたしませんでした。文部大臣室におきまして、相馬さん、社会教育局長と私が一緒に大臣にお目にかかりました際、大臣の言われましたことはただいまお話通りでありまするが、私の態度ははなはだ煮えきらないとか、私の言葉が不明朗であったとかいうことでございまするが、これはまあ私の不弁のいたすところと存ずるのでありまするが、私のその当時考えておりましたことは、これはやはり芸術院総意によって行なうべきものであつて芸術院会員でない私が、上から押つつけるということはすべきものではない、こういう考えによりましてお答えをいたしたのであります。それがはなはだ不徹底である、芸術院長自分意思によって芸術院を動かすべきものだ、こういうふうにあるいはお考えになつたかとも存じまするが、私はあくまでも芸術院総意に基づいて事を運ぶべきものであつて芸術院長の職権と申しますか、さような職権があるかどうかもはなはだ疑問でございまするが、これがもしあるとするならば、それを発動して、そうして会員全体の意思にそむいてまでやるというようなつもりはないのでありまして、まず会員の間において、増員の要求が盛り上がつたときに、初めて芸術院として、全体として行動すべきもの、その芸術院を代表して芸術院長が行動すべきもの、こういうようなふうに考えてお答えいたしたつもりでおるのであります。
  18. 相馬助治

    相馬助治君 芸術院長が勝手に上から押しつけるべき筋のものでない、これは高橋さんのおっしゃっている通りで、私も同感なんです。ただあの経過から見て、当時、文部大臣が、芸術院意思がきまれば、これが前提です。芸術院総会意思がきまれば、この際、いろいろ問題はあろうけれども、三十名くらいの増員に踏み切つて努力してみよう、こういうふうに予算措置をすべきことを明示されて、このチャンスに芸術家でないあなたが院長の重責を占めているという、こういう立場からも、こういう政治的なチャンスをつかんで何らか積極的な手を打つべきではなかったかということを私は言っているのであつて、上から押しつけるべきだなんということは考えてもいないし、私は言ってもいないのです。問題は、総会でそういうふうに決定してしまつたのですから、そのことをとやかく言うのではないけれども、何かというと、芸術界のボスと業界新聞とが連係をして、はなはだ忌わしい行動をやるという、そのことについて私は警告を発するにこのことはとどまるのです。  私は、次に問題にしたいのは、会員選挙並びに院賞受賞候補等に対する選挙の問題、高橋院長は、芸術院会員は国家公務員とお考えですか、そうでないとお考えですか。
  19. 高橋誠一郎

    説明員高橋誠一郎君) 芸術院会員は公務員と考えております。
  20. 相馬助治

    相馬助治君 斎藤局長にお尋ねするんですが、芸術院会員は、国家公務員の特別職に該当しますか、一般職ですか。
  21. 斎藤正

    政府委員斎藤正君) 芸術院会員は、非常勤の一般職の国家公務員でございます。
  22. 相馬助治

    相馬助治君 非常に明快な御答弁で、国家公務員の非常勤の一般職ですね、特別職ではないですね。従いまして、そういうことになりますれば、相当、国家公務員としての義務をも持っているわけなのです。そのことをまず高橋院長はよく頭に一つ置いて、次に私が指摘することに対してお答えを願いたいと思います。  芸術院会員選挙の方法について、私はこの間、芸術院事務局長から話を伺いました。私は当初、その選挙の方法がきわめて不思議であるというふうに考えていたから伺つたのです。というのは、選挙は、投票するときには、その人の意思というものが絶対秘密でなければならない。そのことがいわゆる選挙の自由である。ボスに上からのぞかれていて、だれはだれに書いたということではいけない。これは原則論です。公表する場合には、これは明瞭に天下の人の見ているところで開票されなければならない。芸術院会員選挙は全くこれとは逆のようです。それで、記名でもって文書でもって投票して、それを部長立ち会いの上で開票するそうですが、結果、だれが何票取つたかということも明瞭にされていない。私は事務局長に、どうしてそういう選挙になるのかということを尋ねましたところが、その答弁はきわめてもっともです。老齢の方もあり、一堂に集めて投票するという点が事実上困難に思いまするので、文書上かくのごとく投票しておりますということでございます。従って、私はその選挙のやり方については相当問題があるけれども、それに対して代案を示さない限り、私はその選挙のやり方というものはけしからぬということをここで申し上げるつもりはないのです。私は当時けしからぬと思ったが、事務局長説明を聞いてみると、これはやむを得ないなというふうに一応考えました。そこで問題なのは、この会員の候補者に対して、選挙が行なわれる際に、相当多くの金品がその候補者によって会員に贈られているという事実があると聞いておりまするが、院長はそういうことをお知りですか、知っていないのですか。
  23. 高橋誠一郎

    説明員高橋誠一郎君) 会員補充の選挙につきましては、絶えずこれは私のみならず部長そのほかの方々が苦慮せられておるところでありまして、実に朝令暮改といってもいいくらい、その点についてははなはだ感心しないほど、絶えず選挙法を改めまして、なるべく公平な原則に従って選挙を行ないたいと皆考えておるのであります。最近におきまして記名投票を行なうことになつたのでありまするが、これはむしろ記名投票の方が公平にいきは上ないかという考えに基づきましたのであります。どうもこの点などにやはり疑問がありまするので、次の総会におきましてはやはり無記名の方がいいのではないか。この点を十分に検討してもらいたいということを申し出るつもりでおります。それからまた、選挙がはなはだ不明瞭である、多額の金品を贈る者などがあるというようなお話でございまして、これは世上にもしばしば伝えられるところでありまするのでありまして、その際、よく私こういう話が出ましたときに申すのでありまするが、私十年以上も芸術院長を勤めておるのであるが、私のところへ金品を持って運動に来たような人はこれまで一人もいないのである、こういうことを申しまするというと、それは、あなたは芸術院会員でないので、一票を投ずる資格がないからあなたのところへはいかないのだろう、会員のところへはどんどん運動に行っておるといううわさだがという話を聞くのであります。それで、これははなはだ遺憾な事実だと思いまするので、私は総会の開かれる際に、会員諸君に不愉快な感じを与えはしないかと心配しながらも、絶えずこの点は強く主張しておるのでありまして、どうもこういう悪いうわさが立って困るから、どうか運動などに動かされないように公正に投票してもらいたいということを申しておるのであります。はたしてどの点までこれが行なわれるか、ずいぶんいろいろなうわさは聞くのでありまするが、具体的なものはほとんど何も得ておらぬのであります。これはまあ私の不明のいたす点であるかどうかは存じませんのでありまするが、よく会員の中にはどうも運動をだいぶやつておるというような話を聞いたが、しかし、その人たちが今度は皆落つこちてしまつた、実にこの点は愉快だというような話を聞いたことがあるのでありまして、会員諸君はどうもこういう運動がたとえあるにいたしましても、これによって動かされる人が多いとは私今のところでは考えられないのでありまして、運動がましいことが行なわれるということについては皆憤慨いたしておるのであります。あるいはただあいさつに来るぐらいなことはあるかと存じまするのでありまするが、やや運動がましいというのは、私先ほど言葉が足りなかったのでありまするが、先年、書道会員を補充いたしまする際に二、三の方が議員諸君の紹介などで見えた方がございましたのであります。これは何も私はちようだいはむろんいたさなかったように覚えておるのであります。この程度のことはある。これなら私そう悪いとは言えないと思うのであります。書道のことなどで私どもまだほんとうに通じていないようなところが、その国会議員の方、あるいは私のところに見えました方を通じてだいぶ明らかになつたところなどがありまするので、こういうことに耳を傾けるのもある程度いいことじゃないかというふうに考えたくらいであります。そのほかには、ただ会員になられた方のお祝いがお弟子さんなどによって行なわれるということがありまして、私ども出席を求められるというようなことがあります。場合によりまするというと、これは会費を払おうといたしましても受け取つてくれないというようなところもないではないのでありまするが、最近におきまして二、三の会合などに出席いたしました際に、むろん私どもの出します会費を快く受け取つてくれておるのでありまして、こういうようなものは何も供応したとか何とかいうようなことではないと存じます。これはむろん事後のことであります。当選後のことであります。私の知る限りにおいては、そのくらいでありまして、ただどうも選挙の際に思うにまかせなかったものが業界新聞などにいろいろな話をされる、それがさらにまた新聞記者の筆によりまして尾ひれをつけて吹聴されるのではないか考えておるのでありまするが、この点なおあまり判定がましいことはいたしたくないのでありまするが、でき得る限り真相をとらえたいと考えております。
  24. 相馬助治

    相馬助治君 国家公務員法から見ても、それから日本芸術院令から見ても、芸術院会員はそれぞれの部会に属して会員を推薦する、ということが三条一項の規定で職務権限として明記されています。そこで当然、この職務権限に伴う金品の贈与があった場合には、それが若干であつても明瞭なこれは国家公務員法違反であり、汚職の種になるということについては、院長も御承知だと思うのです。私はかかる重大なことを申すからには、単に人のうわさを聞いてそういう事実があったというようなことを申しておるのではありません。必要があれば、私はやむを得ずその人の姓名をここで発表することもいといません。ただ、その人の名誉を重んじて、その姓名の発表は、ここでは差し控えたいと思いまするが、はっきりここで実例としてあげ得られることは、会員選挙にあたつて、もう相当多額の金を使わなければとうてい会員にはなり得ないというのが常識のようでございます。従って、もしそういう事実が判明したならば、院長はどういうふうに考えられるか。私は院長がそういう金品の授受を受けたというようなことを申しているわけではない。高橋院長は、そういう点はきわめて淡白でいらつしやるし、あなた自身は、会員に対する選挙権をお持ちになっていないのですから、有権者でないところへ選挙の買収が行なわれないのは、これは天下の通説ですから、これはあなたのところへはいかない。しかし私のところには、今度会員に推薦されたある方は、五万六千円程度の品物をあるところから大量に買つて、それを相当広範囲に贈つているという事実もあります。また会員の問題、会員選挙ではないのですけれども、院賞授賞候補者の問題について、その候補者はある部長に京都まで同行してこれを運動しており、金品を贈つたという事実も私は聞いております。私が悲しむことは、本来高い位置にあるところの芸術院、そうして国家の栄誉機関会員、そういう方々の選挙というものがあくまで公平に、公正に行なわれるべきであつて、その選挙の方法が悪いがゆえに、この現在のような形で業界においては公然たる買収行為が行なわれておる、その間に画商がはさまつておる、業界新聞がはさまつておる。私は芸術院会員と言っておりますが、第一部の美術界のことに局限をして今申しておるのであります。どうしてもこういうことを考えてくるというと、それが事実であるとするならば、院長の責任は実に重大であると思うのですが、この点についてはどういうふうにお考えですか。
  25. 高橋誠一郎

    説明員高橋誠一郎君) かくのごとき事実が明らかであるということでありまするならば、これはむろん院長に任命権があるわけではないのでございますが、これは文部大臣お話を申し上げまして、文部大臣がどういう態度に出られるのでございまするか、このことを文部大臣に申し上げて、しかるべき措置を講ぜられることと存じます。なおまたこういうようなことが行なわれると、これは選挙法の不備にもよるのでございましょうが、選挙法の不備によるものでありまするならば、これを修正しなければならぬ。また常に不備を悟つて修正しつつあるのでありまして、それにもかかわらず、なおかくのごとき醜行が公然行なわれておるとか、あるいはまた非常に多く行なわれておるとかいうようなことであつて、これが院長の不明または無能からきているものであるといたしまするならば、私といたしましては、むろん考えてみなければならぬところと存じます。あるいは院長を辞することもいたさなければならぬと考えております。
  26. 相馬助治

    相馬助治君 院長自身お知りにならなくても、会員の多くが国家公務員法に違反しているというような行為が判明した場合に、そうしてそれが明確になつた場合に、院長は責任を負う用意があるということをお聞きいたしまして、私はその点をよく了解をいたします。その人の名誉にも関することでございますから、ここで姓名をあげて具体的なことを申しませんけれども、私はこれは明瞭に責任者であるあなたに、後日事実をお話し申し上げます。  問題は、私がここで問題にしたいのは、日展関連なんです。このことを簡単に触れて申しますと、日展の問題は、かつて社会党の高津正道氏が、当時の美術界の腐敗ぶりを痛撃されて、そうして日展が現在のような制度になつたのでございます。ところが現在では、また再び日展の首脳部が芸術院会員によって占められて、その理事長事務局長、これが会員が当たつているわけです。そうしてそこに依然としてボス的な空気、そうしてまた党派的なものによらなければ入賞もできない、また、その作品が認められることもない。そうしてまた日展に合格するということが、そうしてその次に院賞をもらうということが、会員の前提である、美術界においては。こういうことになると、官制上は日展芸術院は別でありますけれども、これは非常に問題として近く相なっているわけでございます。従って、この芸術院の院賞授賞等についても、会員選挙のときと同じような不祥事が数あるやに私も承つているのです。そういうふうな意味から、この問題については、これは高橋院長にお尋ねいたす筋のものではございませんが、日展運営をどうするかというようなことは、私はこれは文部省にお尋ねしたいと思うのでありますが、しかし、事実上は芸術院ときわめて密接不離の関係に今あるのでありますから、これらの問題についても高橋院長は思いをひそめて、今後進んでもらいたいと思うのです。  この際、松田文部大臣にお尋ねをいたしますが、松田文部大臣は、現在の日本状態から推して、日本芸術に関する行政をどのように基本的にお考えであるか、そうしてまた、ただいま問題になつた芸術院の問題については、監督者の立場としてどのような御見解をお持ちであるか、承つておきたいと思います。
  27. 松田竹千代

    ○国務大臣松田竹千代君) 私は、一国の芸術、その芸術の最高の地位にある人々によって、芸術院という栄誉機関ができているのでありまするから、その非常な栄誉をになつた団体の運営にあたり、また、その会員みずからがそうした栄誉機関会員関係者として、当然その機関が公平にりつぱに運営されていかなければならぬと思っておりまするが、もしそれ先刻来お話しになつたような忌まわしい事実があるといたしますならば、まことにこれは悲しむべきことであり、もとより公務員であればそれぞれ法の違反の場合には制裁もあることであり、そういうことがきわめて明白な事実として現われて参りました場合には、私としても適当なる措置をとるべきであると考える次第であります。
  28. 相馬助治

    相馬助治君 どうか松田文部大臣も、そういう趣旨で具体的な問題を一つ十分に把握されて、これが改革について熱意をお持ちになっていただきたいと思うのです。要するに、今日この美術界の問題というのは非常に腐敗をしておるということがここに出ているのです。  私は、最後に、今泉篤男という人が「芸術院に望む」という三十四年二月十三日の朝日に載せている記事を読み上げて私の質問を終わりたいと思うのですが、そこに今泉さんは、「会員選挙や授賞に情実をなくせ」と題してこういうふうに言っておるのでございます。いろいろ申しておるけれども、言っておることは「美術界では、官展系の延長である「日展系」の系統からでないと、どんなに実力があつて芸術院会員に選ばれにくいというのが実情である。その理由は簡単であり、会員の投票によって新会員が選ばれるのだが、既存の会員の大多数が日展系であるという理由に基づく。」、「従来の会員が、美術界の党派的意識をすて、作家の功績と識見とを考え合わせ、ひろく美術界から候補を求めて選考するのが当然の常識だと信じられるのであるが、」その常識が行なわれていないことは非常に遺憾である、その会員選挙について、授賞について、今日腐敗しているという事実は天下周知のことであつて、「今にして正しい判断を怠るなら、芸術院美術部門の情実は情実を重ね、みずから崩壊に至る墓穴を掘るであろうことは断言してはばからない。」こういうふうに断定しております。どうか一つ、こういう意見もあるということを考えられ、同時に、私は、質問をしたものの責任上、私の知り得る範囲について不祥な具体例を後日文部大臣説明するつもりであります。どうか高橋院長も、先ほど速記録に残されたように、その責めの重大性を考え、もし、国家公務員たる芸術院会員にして不祥なことがある際は、その進退を考慮するとまでおっしゃったことを銘記されて、今後、芸術院使命達成のために、美術界粛正のためにがんばることを希望して、質問を終わります。
  29. 清澤俊英

    委員長清澤俊英君) 本日はこれをもって散会いたします。    午前十一時五十三分散会