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1960-04-21 第34回国会 参議院 文教委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年四月二十一日(木曜日)    午前十一時八分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     清澤 俊英君    理事            安部 清美君            北畠 教真君            吉江 勝保君            加瀬  完君    委員            剱木 亨弘君            杉浦 武雄君            野本 品吉君            岡  三郎君            千葉千代世君            豊瀬 禎一君            相馬 助治君            岩間 正男君   政府委員    文部大臣官房長 天城  勲君    文部省初等中等    教育局長    内藤譽三郎君    文部省大学学術    局長      小林 行雄君    文部省調査局長 田中  彰君    文部省管理局長 福田  繁君   事務局側    常任委員会専門    員       工楽 英司君   説明員    外務省アジア局    賠償部長    小田部謙一君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○教育、文化及び学術に関する調査  (留学生問題に関する件)  (幼稚園に関する件)   —————————————
  2. 清澤俊英

    委員長清澤俊英君) ただいまから委員会を開会いたします。まず、委員長及び理事打合会経過につき御報告いたします。本日は芸術会員の選考につき調査をいたすことを委員会で決定しておりましたが、文部大臣が出席できませんので、本件に関する調査は来週に持ち越すこととし、本日はまず留学生に関する件につきまして調査を進め、次いで市町村立幼稚園教員の給与の改善に関する問題を調査いたすことに決定いたしました。以上、理事会決定通り審議を進めて参りたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 清澤俊英

    委員長清澤俊英君) 御異議ないものと認めます。   —————————————
  4. 清澤俊英

    委員長清澤俊英君) まず、留学生に関する件を議題といたします。なお、本日の政府委員は、文部省調査局長田中彰小林大学学術局長春山大学課長外務省から小田部賠償部長高杉調整課長が見えております。質疑の通告がございますので、この際発言を許します。ちょっと速記をとめて下さい。    〔速記中止
  5. 清澤俊英

    委員長清澤俊英君) 速記を始めて下さい。
  6. 吉江勝保

    吉江勝保君 文教委員会の方で、留学生受け入れについて、本年度から新しく予算を計上して実施を見るようになっておるのでありますが、そういう留学生日本におきまする勉学するための施設についても新しく予算を計上して、留学生日本に来まして十二分に勉学が達成できるように講じておるのでありますが、これに関連しましてインドネシア賠償による留学生国費留学生以外にインドネシア賠償留学生についての問題を少しお尋ねしてみたいと思うのでありまして、まず第一に、このインドネシアとの間の賠償による留学生扱いというものと、その賠償留学生の第一年度から今日までに至りまするまでの間どういうような扱いがなされてきたかという、今までの経過について一応御説明をいただきたいと思います。
  7. 小田部謙一

    説明員小田部謙一君) インドネシア賠償留学生に関しましては、実は当初インドネシア側から申し込んで参りましたのは多分去年の夏前でございましたしところが、日本政府の方といたしましても、インドネシアから賠償でもって留学生が来るということは非常にいいことだと思いましで、大体日本側としては異議ないが、ところで、しかし日本側施設におきましても、ことに官立大学などにおきましても、施設上むやみに——むやみにと申しますのは、たとえば理学部面ですと、ある部は何名、ある部は何名と、それ以上の施設の利用はなかなかむずかしいというようなことを文部省等話し合いがございまして、それで先方にこれを申しましたのでございますが、先方で当初留学生をよこすという最初申し出は相当前からあったのでございますが、それがなかなかきまりませんで、やつと何名がどういうふうなものに来るということがきまりましたのが、ことしに入りまして約二月の初めぐらいでございます。そこでき、まりましたものは、国立大学が六十二名ですか、それから私立大学が…十七名、合計百名入れるという話が、大体向こうからどういう内訳かという内訳がきましたのが、ことしの二月初めぐらいです。ですから、当初インドネシア側から申し込みがずいぶん前からありましたにもかかわらず、そういうふうな具体的のことがはっきりしたのは、ことしの二月でございまして、二月の十二日に閣議了解をいたしまして、向こら九年間にわたりますが、留学生、そのうちの五年間留学生が毎年来るのでございますが、それをやって、最初日本語教育をするというのがきまりましたのが二月の十二日でございます。そしてこれは賠償でございますから、実施計画に入れましたのが三月八日でございまして、それから現実生徒が参りましたのが、第一群から第四群まで参りまして、現在九十名になっておりますが、三月十一日二十名、三月十八日二十名、四月五日が十五名、四月十三日二十五名、合計九十名が来るということになったわけでございます。ですから一年度と申しますが、まだ最後の留学生が来ましてから約二週間足らずというような調子でございます。
  8. 吉江勝保

    吉江勝保君 文部省というか、大学の方との講座受け入れの方については、どういうふうになっておりますか。まずそれの方から伺います。
  9. 小田部謙一

    説明員小田部謙一君) この件は、あるいは賠償部よりも文部省の方でお答えになるのがよいかと思いますが、こちらでお打ち合わせしたのを申しますと、まず第一年度におきましては、日本語教育をやるということでございます。この間は大学の方の受け入れを別にしなくていいわけでございますが、その日本語教育国際学友会の方でやっております。そうしてその次に文部省、つまり国立大学に入るというものが、たとえば造船三名、電気工学が五名、電気通信五名、鉱山工学が採鉱四名、石炭三名、石油三名、冶金五名、漁業が三名、航海が二名、農業が二十名、繊維四名、銀行商業が六名、こういうことに国立大学の方ではなっておりまして、そうしてもちろんこれは国立大学といたしましても、学生が来まして余分の施設、つまり実験材料等が要るということになりますれば、おそらく来年度からの予算の方に賠償から移して入れる、こういうふうになるのじゃないかと思います。そのほかは文部省の方がよく御存じじゃないかと思います。
  10. 吉江勝保

    吉江勝保君 この賠償留学生インドネシア側における希望、つまり日本に行ってどういう講座を勉強したいという希望と、それから日本の方でそれに応じることがどの程度可能であったか、インドネシア側希望に対して日本側の応じた講座状況はどういう状況であったかというような点について、あるいは文部省の方からでもけっこうですが、説明をしていただきたいと思います。
  11. 小林行雄

    政府委員小林行雄君) 先ほど外務省の方からお答え申し上げましたが、まずインドネシア賠償使節団の方からは、実は数を相当大量に入れてもらいたいという御要望がございましたが、その後私どもの方の受け入れ関係等をにらみ合わせていろいろ折衝いたしました結果、先ほどお答えしましたように毎年留学生としては百名、その他技術研修生受け入れるということになっております。なお専門分野につきましては、理工系について十分野というような御要望があったわけでございますが、その点は大体私どもの方も了承いたしておりまして、先方希望分野に適当な国、公、私立大学を通じて配分していくという形をとっているわけでございまして、大体私立大学は、これは東京近在大学希望するというのが賠償使節団の強い要望でございまして、また留学生受け入れの経験のある大学教育をしてもらいたいというのが要請でございますので、早稲田大学、慶応大学日本大学武蔵工大、東京電機大学、慈恵大学といったような大学を選んで、それぞれ学科の種類に応じて希望者受け入れてもらうという予定にいたしております。なお国立大学につきましては、造船電気工学その他相当の科目があるわけでございますが、これは必ずしも東京近在に限りませんで、広く各地の大学受け入れてもらう。現在、大体大学の数としては三十一の国立大学を予定しておる状況でございます。
  12. 吉江勝保

    吉江勝保君 まず第一にお尋ねしたいと思っておりますのは、インドネシアの側の日本に留学したいという希望者のほとんどが受け入れられたのかどうか、こういう点が第一点なのであります。だから、外務省の方でインドネシア政府の方から日本に留学させたいという申し出がどのくらいあったのか。あるいは、それが現実に今のように百名に制限をしてくるまでの間に、どれだけの人を受け入れられなかったかというような点について、資料で説明をしてもらいたいと思います。
  13. 小田部謙一

    説明員小田部謙一君) お答えいたします。当初先方要求は、賠償留学生を二百名入れたいということでございました。もちろん、このほかに研修生がございますが、ところが、これは文部省の方といろいろ話をしました結果、現在の施設でもってあまり教室とか何とかをふやさない、それから、しかもただ実験材料とか何とかをふやすだけではなかなか二百名という人数官立大学には入れることはできない。これは文部省当局といたしましては、日本学生でもなかなか大学に入り切れないというようないろいろの情勢がある事態だからと思うのであります。その上、先方要求文科関係でなくて、おもに理科関係あとになりまして銀行商業六名ということになりましたが、当初はおもに理科系統ということになると、とても国立大学だけで収容能力がないという結論を文部省からいただいた次第でございます。そこで、これは去年の夏過ぎでありますが、インドネシアから文部大臣が参りまして、そのときに外務省文部省といたしましても、先方国立大学のわが方の施設が非常に制限されておるという事情を話しましたところ、それならば私立大学でも入れられるところは入れてほしいということを言ったのであります。先方に対しましては、私立大学の方は日本としても授業料が高い、その他の事情があるということを申したのでありますが、先方も了承いたしまして、結局二百名というのが百名という数になった次第でございます。そのかわりと申しましては、必ずしもかわりにならないのでありますが、当初訓練生、いわゆる技術研修生でございます、この方は、おもに技術を研修する生徒を二百名日本によこすということでございましたが、その方は二百五十名、五十名ふやす、片方学生の方は当初の要求を半分にした。こういう事情でございまして、この間インドネシア側としても、日本側施設の制限されているということ、ことに理科系統においては制限されておるということも十分了承いたしまして、こういう結果になったのであります。
  14. 吉江勝保

    吉江勝保君 まず第一の点については、希望者が二百名あったのに結果的に半分の百名に落ちついた、こういう説明でございますね。
  15. 小田部謙一

    説明員小田部謙一君) そうでございます。
  16. 吉江勝保

    吉江勝保君 それについてインドネシア側は大体了承したというようなお話がありましたが、これもインドネシア政府の方においても、日本大学実情というものを十分に理解して納得をしておる、こういう説明ですね。
  17. 小田部謙一

    説明員小田部謙一君) それは、今ちょっと説明を間違えました。インドネシア文部大臣と申しましたが、文部次官が参りまして、そのとき日本大学状況も見ましたし、十分説明し て、この点は十分納得いたしております。
  18. 吉江勝保

    吉江勝保君 その点につきまして私どもの聞いておる点では、幾らインドネシア側に十分な納得が得られておらぬというようにも聞いておるのでありまするが、これはまあそのときに当たられた文教当局の人が了承されたわけで、日本に行って勉強したいという学生一般連中からいいますと、これは希望が満たされておらないわけだ。だから、連中は決して納得しているわけじゃない。いま少し日本に行って留学したいという留学生希望を満たし得るように将来考えられる気持があるかどうか、これは文部省の方が適当じゃないかと思いますが、その点はいかがでしょうか。
  19. 小林行雄

    政府委員小林行雄君) 実は御承知のように、留学生受け入れます場合に、最初一年間は日本語並びに専攻科目基礎になる科目の、基礎科目教育をするわけでございますが、これについては文部省としては東京外国語大学とか、あるいは大阪外国語大学に集めて教育をするのがよいし、また必要であるというふうに考えたわけでございます。これについては、まあ、必要な施設が要るわけでございますが、この施設をやはり賠償費の中から割って建ててもらいたいという気持を持っておつたわけでございますが、賠償使節団の方は、それはできない、学生にもそれはあまり好ましくないということで、必要な施設を整備するということは認められなかったわけでございます。そういった事情がありましたために、まあ現在拾い得る範囲内でとにかく受け入れをやっていくという形になったわけでございます。しかし、そういった事例があり、また専攻課程におきましても十分教育ができるような教員組織等も整いますれば、さらに受け入れることもできないことはないと思います。
  20. 吉江勝保

    吉江勝保君 文部省の方では施設の点で今日この程度しか受け入れができないが、将来施設が相当余裕を持つようになれば、もっと受け入れることも可能である、受け入れたい、こういう御意思なんですね。
  21. 小林行雄

    政府委員小林行雄君) 必要な施設が十分整い、また、これに必要な教員組織等も十分整備されれば、やはり、この留学生受け入れということはわが国の将来にとりまして非常に大事なことでございますので、できる限り数多く受け入れていきたいと思います。
  22. 吉江勝保

    吉江勝保君 今、留学したい希望者全体について質問いたしまして大体わかりました。今度は、この留学生希望する科目の内容についてもう少し伺ってみたいと思いますが、このインドネシア側希望している留学生が百名にしぼられたときに、その百名は日本受け入れられる講座といいますか、それによって向こうを制限する、こういうように受け入れ側の方から向こう希望者を制限していったのでありますか。その点はどういうようなしぼり方をやったのでしよう。
  23. 小田部謙一

    説明員小田部謙一君) これは向こうも必ずしも大体部門は理科系統造船とか電気工学とか、そういうようなことは言っておりましたが、そのあれに一体どのくらいの人間を入れたいというような強い希望を申し入れたことはなかったわけでございます。そこで当方から、むしろわが方の受け入れ施設としてはこういう方が便利なんだというような折衝をいたしましたところが、向こうの方でこれをのんできたと  いうのが実情でございまして、これをこう変えてくれとか、ああ変えてくれというような希望は、正式にわが方に言って参りません。
  24. 吉江勝保

    吉江勝保君 そうしますと、留学生講座といいますか、学科別の方については、インドネシア側に別に不満とか不平とかいうものはないわけですね。
  25. 小田部謙一

    説明員小田部謙一君) それは、当初の先方希望から参りますと、二倍の数でございますので、必ずしも全体について向こう希望通りにはいっておりませんが、百名にしぼられた後は、この数で不満は聞いておりません。
  26. 吉江勝保

    吉江勝保君 この大学の方の受け入れにつきましては、不十分でありまするが、一応了解できるのでありますが、今度は、その留学生日本勉学するために宿泊をやる、こういう面に広げてお尋ねをしてみたいと思うのですが、こういう賠償留学生生活をしていく世話というものは、今度はどちらがなさるのですか。
  27. 小田部謙一

    説明員小田部謙一君) わが方の当初の考え方は、たとえば学生の場合におきましては国際学友会、それから訓練生の場合はたとえばアジア協会というようなものが全部の世話もする、宿舎世話までするという考え方でもって向こうと交渉してきたのでございます。ところが、その後向こうでは、これはインドネシア政府意見だとして言ってきましたものは、国際学友会には日本語教育だけをやらせる、つまり、日本語教育だけに必要な費用を持つ、その他の世話は一切大使館においてする。そのために、マルトーノーという文部省関係の役人が一人来ておりまして、それで全部やるという話で、実はそのために必要な経費マルトーノーの事務所によこせという話で、これは先方がそう望むなら仕方がないということになったわけであります。ところが、やはりそういうふうな関係になりますと、どうしてもちょうど油が—ないような関係になる。それからマルトーノーも、日本に来てみると、日本を前から知っておるわけでもないし、非常に最初考え方とは違い、なかなかうまくいかないということは、おそらく痛感しておることだと思います。
  28. 吉江勝保

    吉江勝保君 その点につきまして、いま少しく経過をお尋ねしたいのですが、賠償留学生費用の最終的な支出をするものは、これはもちろんインドネシア側が責任を持つのでありますね。
  29. 小田部謙一

    説明員小田部謙一君) この点は、賠償でございますから、日本政府とそれからインドネシア側とが、一体どのくらいの額が要るかということを話し合うのでございますが、しかし、これも、インドネシア側がこれくらいにとどめてほしいということになりますれば、日本側としてはそれ以上は強くは言えないということでございます。
  30. 吉江勝保

    吉江勝保君 そこで、賠償留学生を、両政府間で、向こう五ヵ年間に五百名の留学生を毎年百名ずつ受け入れると、そういう話し合いのときに、そ  の留学生の、大学における講座を受ける、そういう勉学する方の費用と、今度は在日中の生活費用と、こういうものについて、外務省では、当初将来を見通した先方との協定といいますか、話し合いというものはついておるのですか。
  31. 小田部謙一

    説明員小田部謙一君) これは、大体のところの予算は、先方日本事情を知らないので、当方からこのくらいはかかるだろうというようなことを言ってやったわけでございます。ですから、大体のところは、たとえば生徒  一人について、食事用として幾ら下宿用として幾ら、被服用として幾ら、単なる小づかい用として幾らというようなことは、大体の話し合いは済んでおるわけでございますが、これは実はまだ学生が来て間もないので、向こうとしても大体のところでやってみたいと、こういう話でありまして、これは幾らがほんとうに正確だというようなはっきりした計算はまだ向こうの方も必ずしもついていないわけでございます。
  32. 吉江勝保

    吉江勝保君 そういたしますと、勉学の受講する方の賠償費で払うものについては、これは文部省で大体もう話し合いできまっておるのですか。
  33. 小林行雄

    政府委員小林行雄君) ただいま外務省の方からお答えになりましたように、一応の見積もりはしておりますけれども、いろいろな関係から、いわゆる予算案のような詳細な確定的なものはできておりません。一応年々五ヵ年間に受け入れてくる留学生関係経費としては大体このくらいであろうという見通しは持っております。
  34. 吉江勝保

    吉江勝保君 たとえば、国立大学であるとか、あるいは私立にしましても、そこに留学生受け入れたときに、賠償費学校当局に払うものはどういうものが対象になっているのですか。
  35. 小田部謙一

    説明員小田部謙一君) それは詳しいことは文部省の方が御存じと思いますが、国立大学並びに私立大学で必要な経費、たとえば、そのために先生が—よけい要るというのであればその先生費用、あるいはそのために実験材料が必要だということであれば実験材料、あるいは授業料、そういうようなものを全部込めまして、これはごく概算でございますが、今百名の生徒が来ておりますが、それが五年間そういうふうなところに行くと、日本語教育は別として、二億七千六百幾らというような数字が計上されてあるわけでございます。これは単なる概算でありますけれども、そういうような点につきましては、先方了解をとっておるわけでございます。ただ、これを現実にやってみたら減るかもしらぬし、また現実にやってみたらふえるかもしらぬというようなことはございますが、賠償でございますから、先方話し合いをして、正当な支出であって、先方がこれを承諾すれば、これは実施計画をし、また修正するというようなことは自由でございます。
  36. 吉江勝保

    吉江勝保君 一番すぐに考えられるのは、大学授業を受ける授業料といいますか、こういうものですが、これは賠償留学生については免除しておるのですか。
  37. 小林行雄

    政府委員小林行雄君) これは、明年から大学へ入るわけでありますので、その点実はまだはっきりしておりませんが、私どもとしては、一応普通の日本人が受ける程度授業料はいただくべきものではないかと思っております。
  38. 吉江勝保

    吉江勝保君 一応意見あとにしまして、お聞きをして参ります。そうしますと、先ほどに戻りまして、生活費についてはインドネシア側の方で全面的に世話をする、こういうようなお話で、国際学友会には日本語教育だけを委託して、国際学友会としては生活世話というところまではなさらないということになっているのですか。
  39. 小田部謙一

    説明員小田部謙一君) 当初のこちらの計画は、国際学友会宿舎世話その他学生世話もさせたいと考えたのでございますが、先方がそういうことは全部自分の方でするから、国際学友会はただ日本語教育だけをしてくれればいいのだという話でございまして、現在のところにおきましては、国際学友会日本語教育だけ、従って、日本語教育に必要な費用だけということになっております。
  40. 吉江勝保

    吉江勝保君 ちょうど、昨日でありましたか、朝日新聞に、インドネシア留学生記事が相当大きく取り扱われておりましたが、一応あの記事を読みましたときに、日本側の方の受け入れ態勢といいますか、この留学生宿泊等についての準備というものが全然できていないという記事のように受け取ったのでありますが、それは今の話で、最初国際学友会が引き受けるということになっておったのが、インドネシア側の方の話で、インドネシア側の方で世話をするというように変わった、だから国際学友会というのは現在では関係がなくなったのだというようにとれるのですが、これはインドネシア側にとってみますと、すでに留学生を送つておって、そうして今日になって、その受け入れ宿泊が整っていないというようなことでは、何としてもそれは当惑といいますか、困却するのだという、その点のいきさつがいま少し了解しにくいのでありますが、留学生がすでに三月ごろから来ているのに、その宿泊関係、その生活関係世話国際学友会インドネシア側との間に、どういうふうに話し合いをしながら今日に至っているのか、その辺をいま少し了解できるように御説明願いたいと思います。
  41. 小田部謙一

    説明員小田部謙一君) これは一番最初考え方は、インドネシア側から当初育つてきた考え方ですと、実はインドネシア学生を、宿舎をも込めたクラブ・ハウス的なものをこしらえようという考え方を持っていたのでございますが、現状におきましても今度の賠償年度実施計画の中には、その宿舎費用として五億何千万円かの金が計上されているわけでございます。そこで、もしこれができますれば、当初——去年の何月ですか、去年の夏初めに向こうが申し込んできたときに、それが具体的にどんどん進んでいきますれば、おそらく宿舎の問題も、現状においては解決していただろうと思うのです。しかし、その中にどこに何名入るとか、何名の人数だとかというようなことで、いろいろ先方も決定しかねるというような関係もありますし、交渉が長引いていくうちに、いざ三月も終わりになってきた、三月の終わりになってきて、インドネシア側が何名乗るかわからないけれども、とにかく何名ずつ区切ってくるということがきまって通報されたときに、インドネシア賠償使節団の方とも話をいたしまして、宿舎関係をどうしようかということになったのでございますが、これはそう突然来られれば、実際上宿舎の手当もしかねる、十分にはいきかねる、むしろもう少し十分な宿舎を見つけるまで、留学生のこちらに来るのを一ヵ月なり、二ヵ月なりおくらしたらいいではないかという話し合いをしたのでございますが、先方はすでにジャカルタにもう人間が来ていて、ジャカルタに来た以上、どうして生活していくか、その金の支出のしようもない、とりあえず宿舎の方は不満足かもしれないけれども日本側に連れてくるのだというようなことを、ミッションの方で申しまして、しかも、その宿舎世話はミッションの方というか、大使館の方で引き受けるということで、現在の日本青年館というようなところに、とりあえず落ちついたわけでございます。もちろん日本青年館の方も、急に三月の十一日に最初のが来たのでございますが、この話が向こうから正式に何月に何人来るというようなことを言ってきましたのも三月の初めでございますから、その間に、一、二ヵ月の間に相当の人数全部に宿舎を与えることはできないけれども、とりあえずは非常に設備も悪いけれども入れる。それからこの二十二日からは少し設備が、部屋があきますので、大体あすこの五階なら五階を全部インドネシア側に提供するということで始めておるわけでございます。しかし、もちろん現在の日本青年館が最もいい宿舎とも必ずしも考えておりませんので、ほかにもいいところがないかということで探しておるのが現状でございます。
  42. 吉江勝保

    吉江勝保君 日本青年館のその交渉とか、向こうとの世話は現在ミッションの方が直接やっておられるのですか、外務省の方でやっておられるのですか、それとも国際学友会がやっておるのですか。
  43. 小田部謙一

    説明員小田部謙一君) これは国際学友会の方には、前に申しました通り日本語教育だけということをミッションが限定しておりますので、国際学友会はやっておりません。それから外務省の方といたしましても、これはもともとこういうふうな賠償でやるものは、これは人間の問題でございますから、外務省がほかのことよりはよけいいろいろなことを考えておりますが、直接世話はしておりません。それで実際のところ、ミッションのマルトーノーという文部省インドネシア側から派遣した人が中心になりましてやっておる次第でございます。
  44. 吉江勝保

    吉江勝保君 今の日本青年館の世話というものは、そうすると向こうのミッションのマルトーノー氏と日本青年館の間で現在も話が進められておる、こういうわけなんですね。そうしてその交渉というものに対して外務省の方では別に直接タッチはしていない、まあいわば責任といいますか、やっているのはマルトーノー氏と日本青年館の間の話の成り行きを見守っているといいますか、外務省としてはそういう立場で見ておられるのですか。
  45. 小田部謙一

    説明員小田部謙一君) これは賠償という全体の問題でございますが、賠償全体の仕組みが普通の問題ですと、普通の物でございますと、——これは学生の問題でございますから幾分調子は違いますが、物でございますと、当初業者と、それからインドネシア・、ッションとが交渉しまして、大体きまったところを日本側政府に出しましてそうして日本政府がこれを認証する、これが商慣行に従っているかどうかを考えた上で認証するという立場をとつておるわけでございます。そこで本件に関しましても、これは人の問題でございますから、必ずしもいわゆる直接方式というものが適用されないのでございますが、原則としまして大ワクについては外務省向こうと交渉するけれども、その実施に当たった場合においては大体は直接ミッションと先方とが話し合いをする。そこで、もしそれに日本政府のあっせんを求められたり——またあっせんを適当とする場合においてあっせんをする、こういう態度をとつておる次第でございます。
  46. 吉江勝保

    吉江勝保君 今の話は、一応は賠償のやり方としては了承できると思うのですが、こういう留学生世話の場合に、向こうのミッションと、たとえば相手が日本青年館との間の世話だけにまかしておいて、そうして、留学生に十分な施設のあっせんなり、そういうものが期待できるかどうか、こういう点になってくると、外務省の方においては、何らかそこに今までの賠償扱い方でよろしいと考えておられるか、何らかそこに、将来数年にわたる留学生受け入れの点でございますので、何らかそこに将来考慮の余地があると考えられるのですが、その点いかがですか。
  47. 小田部謙一

    説明員小田部謙一君) これは現在のところは、まだ賠償留学生を、とりあえず金の支払いとかその他のことをするということで実は忙殺されていたわけでございますが、とにかく物の問題ですと、実は業者とミッションにまかしておいて、日本政府はなるたけ介在しないというのが賠償協定の建前でございまして、これも、賠償の人間も一環でございますが、しかし、人の問題は物の問題と異なりまして、ことに日本学生が来まして研修をする以上、日本に対していい印象を持って、あるいは日本においてほんとうの日本の姿を勉強してもらいたいと思うのでございます。その影響力は普通の電気器具とか何とかに比して非常に大きいと私どもとしては考えておるわけであります。ですから、これが百名が今度は全部で五百名になりますれば、その五百名の人間がインドネシアに帰りますれば、その影響力というものは相当大きいと思います。ですから、理論上は、前に申し上げました通り賠償協定でございまして、今のところ手が間に合いませんでしたけれども、これは、外務省の方としても、あるいは民間の諸種のこういうことに関心を持っておられる団体なり何なりと協議をいたしまして、そこでインドネシアの方のミッションでは自分の方でやるとは言っておりますが、また向こうの力でもだんだんやってみると、日本の方に相談相手もほしいというようなこともございまして、これは宿舎の問題だけでなく、勉学の問題もございまして、将来いろいろな学生に関しての問題も発生するというようなことも起こるのでございます。これを一々役所で全部やるというほどの人数も実は役所にいないのでございます。これは、そういう民間団体の方とお話をして、何らかのこれは賠償費用から取るのじゃないので、そういうふうなものを何とかしていかなければならないというのが今の外務省考え方で、その方向に向かって進みつつある次第でございます。
  48. 吉江勝保

    吉江勝保君 今の賠償部長の考えは了承できるのでありますが、そういう場合には、たとえば、民間団体としてインドネシア協会とか、アジア協会というようなものがあるのでありますが、まあ、たとえばインドネシア協会というものが、こういう留学生に対してどれだけ協力しておるのでありますか。外務省の方ではどういうようにこれを見ておられるのですか、そういう点はいかがですか。
  49. 小田部謙一

    説明員小田部謙一君) この点は、まあ、いろいろな協会がございまして、インドネシア協会などもその一つでございまして、実はインドネシア協会からもインドネシア賠償留学生受け入れるに関して、将来これは非常な問題になるということで、小委員会か何かで検討されているというような書類も受けました。私らの方といたしましては、インドネシア協会の方ともいろいろ話をし、その他いろいろな方とも話をして、だれか中心になってもらって、こういうふうな共同的な、協力的なものを作つていただくときには、だれかが非常に一生懸命になって、中心になってもらう方がいて、その場合に、若い、やはり学生の中にときには入り、その学生のいろいろな意見も聞くというような人も必要だと思うのでございますから、そういうふうな有力な人と、かつ、若い人とを入れたような、そういうふうな何かでやっていきたいと思うのでございまして、まだ、外務省の方といたしましては、インドネシア協会も今非常に一生懸命にこの点をやりたいという関心を持っているということはわかりますが、どういう団体に委嘱していいかどうかということは、目下のところ検討中でございます。
  50. 吉江勝保

    吉江勝保君 話がだいぶ先の方に進んで、現在の留学生の毎日の生活、現在来て、多分まだ学校、大学講座には出ていない。最初の一年は日本語の勉強で過ごすのです。これは国際学友会の方が日本語教育を担当するものであろうと思いますが、その方にはまだ就学はしておらないのでございますか。
  51. 小田部謙一

    説明員小田部謙一君) 実は、これは、二つ考え方がございまして、一つは、来た学生から順次に日本語教育をやろうかということを先方に話しまし一たが、ところが先方は、やはり全部集まってからということで、現在、四月十三日に二十五名来まして、九十名集まっておりますが、国際学友会の方は二十三日から授業を開始しようという計画を持っている。そうして、そのためには、四月から始めなかったのでございますから、土曜日も、たとえば夕方おそくまでも勉強しようという計画を持っておるようでございます。そうして、現在の段階におきましては、それでは何をやってきたかといいますと、国際学友会の方で、インドネシアのミッションの方と話をしまして、たとえば日本語教育ということにいかないとしても、日本の風俗習慣とか、それから造船とか、電気とか、日本の経済とか、日本教育制度とか、日本の農業制度、日本の医学、そういうようなものを全般的に、いわゆる一種のオリエンテーションの講座というものを始めております。これは多分、きのうあたりかで済んだと思いますが、それを国際学友会の方でやっている。そうしてほんとうの授業は二十三日からやる、こういうことでやっております。
  52. 吉江勝保

    吉江勝保君 そうすると、大体、この二十三日から国際学友会の正式の日本語教育が始まって、来年の大学の開議期までに日本語教育を一応終了する、そして、来年の新学期からそれぞれの割り当てられた大学の方に今度は移る、こういうような計画が進んでおるわけですね。こういうようにいくのですか。
  53. 小田部謙一

    説明員小田部謙一君) そうでございます。それで、実は、一年の期間というものは、この前の最初の話でございますと、約半年間ジャカルタにおいて日本語教育幾らかやってくる、その上ここで一年やる、だから、大学に入るにしても、大体、日本教育は大丈夫であろうという考え方でございますが、今度の学生に関しましては、半年間の日本語教育を実はやってこないのです。そこで、今度は、国際学友会としても、ことし一年に限りましては、土曜日もおそくまでやって、夏季も特別講習して、休みをあまりしないというような方針で詰め込んでいこうということでございます。この間、日本語教育がどの程度進捗するかということは、これは、文部当局と始終密接な連絡をして、来年の四月から国立大学なり、私立大学なりに入って授業が 一応聞けるというだけの教育をしていこう、こういうふうなつもりでございます。
  54. 吉江勝保

    吉江勝保君 大体、計画といいますか、進め方はわかったのでありますが、将来、この賠償学生が五年続き、九年続く、しかも、その間の日本に留学する数というものは相当多数に上るのであります。それの、留学生日本における勉学と、また、日本に対する認識というようなものを十分に持ってもらいますことの重大性を考えますものですから、あえて質問をいたしておるのですが、こういう点について、今までの話では、何と申しますか、幾らか双方の間に十分な打ち合わせが遂げられていなかったので、現在、混乱といいますか、少しそういうようにとれるような状態を見受けるのでありますが、早くそういう状態から脱しまして、正常な状態で落ちついて、引き続いて勉強し、所期の目的が達成されるように外務省文部省も一体になって、一つお考えいただきたい私は、最後に、その留学生のこの宿舎関係については、なおインドネシア側インドネシアの方で建物を建ててそこに収容するという考えをずっと固持されるのか、あるいは日本側の適当な施設があればそれに収容といいますか、宿泊してもいいというように考えを改めておられるのか、あるいはまだ留学生の中には日本人の家庭に宿泊を許して、日本人の家庭からでも通学が許されるようになるのか、そういう生活基礎的なものについての方針と円いうものは、現在はまだ日本側インドネシア側の間では最終的な結論にまではいっておらないのですか。
  55. 小田部謙一

    説明員小田部謙一君) その点に関しましては、まず答えやすいのから答えて参りますと、一般の下宿に行くという考え方は、インドネシア側では少なくとも一年間は団体的に住んでもらいたいというような意向を持っておるようであります。それは、この際日本語教育というものを同じに受ける以上、少なくとも一年間はどこかに集団的に生活させたいということを思っておるようであります。しかし、その後は文部当局の御説明にもありました通り、各地に学生が散るということになりますれば、これは当然集団生活はできないので、普通の日本人と同じようなしろうと下宿なりに行くということになるかと思います。  それからクラブ・ハウスの点に関しましては、インドネシア側は、もちろん賠償年度実施計画の中に金としては入っておるわけでございますから、ですからそういうような適当なものが見つかれば、あるいは建てるといいましてもなかなかあれがあるわけで大へんなことでございますから、適当なものが適正な価格であれば、あるいはこれは思い切って買うのではないかというように思われる次第でございます。 それから日本青年館の方は、その朝日新聞に載っておりました新聞社の行ったころまでは相当たくさん詰め込んでいたということは事実でございます。しかし、この二十二日から日本青年館も五階が全部提供されるということになりますれば、これでも理想的というほどにはいきませんけれども、まあ前よりは非常に改善されるということになると思います。
  56. 吉江勝保

    吉江勝保君 大体私の留学生に関する質問をこれで終わりたいと思います。昨日の朝日新聞の中で今言われておりますマルトーノーインドネシア大使館の一等書記官の話というのが出ておりますが、このマルトーノー書記官が日本に来まして、そうして二月に着任しておるようでありますが、「二月東京に着任してみて何の準備もできていないのには驚いた。」という記事が出ておるのであります。これは読んでみますというと、「何の準備もできていないのには驚いた。」というのは、受け入れる方の日本側が相当責任を持ってなすべきことがなされていなかったのに驚いた、こういうように私は読んだのでありまするが、今話を聞いておりますうちに幾らかそうでもないような説明があったのでありますが、この新聞によって受けた感じは、賠償留学生がかように多数来るのに、それを受け入れ外務省かあるいは国際学友会か、いずれにいたしましてもそれが何の準備もしていなかったというのでマルトーノーインドネシア大使館の書記官が驚いたと、こういうように受け取れるのでありますが、最後にもう一度この点について外務当局のしっかりした一つ御答弁をいただきたいと思います。
  57. 小田部謙一

    説明員小田部謙一君) 実はマルトーノー一等書記官がはたしてこういうことを言ったか言わないのかということで、これは新聞を信用しないというわけじゃございませんが、これは問い合わせております。しかし、まだこれに対する返事は来ておりません。国費の留学生日本側に呼びますときは、これは日本側が全部予算においてやる以上、ここで計画性というものが立つわけでございます。ところが、賠償留学生のような非常にいいことでございますが、賠償である以上、先方といろいろな話をしなければならないというような問題に関しまして、費用予算ではなくして賠償、つまり先方の合意がなければ支出できない金の場合においては、準備しようと思いましてもある程度以上は準備のしようがないのがあれでございます。そこで最初向こうから来ると言いましたのが、三月の末になって、これが来ると言いましても、これはもうミッション側もそうでしょうし、日本側としてもミッションから相談を受けまして、どこかいいところはないかと言われまして、実はそのときいろいろな旅館にも電話をかけたり、いろいろあれもしてみましたが、旅館の費用がどうしても学生が入るには高過ぎるというのでうまくいかない、この賠償のやり方ということを、ある程度その点で、もしマルトーノーさんがそう言ったとするならば、あるいは知っていなかったのじゃないかと思われるのでございまして、もちろん外務省のやったことが全部が十分であるというようなことは言いませんけれども、これは国費留学生のように予算をもって自分でやれれば計画を立ててやっていけますが、相手が何名、どうするこうする、いつよこすというようなことはわからない、ことに九十名が来ましたけれども、当初の百名と違いまして、あとの十名はいつ来るかわからない、こういうような情報があるということでありますと、実際上なかなかやりにくいというようなこともあるということを御了承を願いたいと思います。
  58. 吉江勝保

    吉江勝保君 これは最後に希望でありますが、今の賠償部長の答弁で大体了承はいたします。しかし、何といってもまあインドネシア大使館の陣容といいますか、あるいは日本におきますその事情をどこまで掌握されているかわからないという人たちの初めての賠償留学生の問題でありますので、むずかしい点は多々あろうと思いますが、向こうさんの気のつかないような点もあろうと思う。そういうような点は一つ親切に外務省の方からできるだけ呼びかけて、そうして相談に乗ってもらって、そうして事態が混乱しないようなあんばいに進めていってもらうようにこの上とも御努力を希望いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  59. 相馬助治

    ○相馬助治君 関連。吉江委員の質問に関連して一つお尋ねしたいのですが、ただいまの答弁を聞いておりますと、特殊な留学生受け入れの形ですから、向こうさまの意思次第で、ないしは向こうの意思が非常に優先するので、こちらとしては対策を十分立てられないのだというような意味の答弁に聞いたのですが、私が聞いているところによりますれば、このインドネシア賠償留学生受け入れに対して、当初外務省文部省との意見が人員の点、それから受け入れの点、そういう点について何か一致しなかった段階があるやに聞いておりますが、その辺の経過が当委員会を通じて話されているならば後に速記録で調べて承知しますが、話されていないとするならば概略でけっこうですから、そういう事実があったかなかったか、あったとしたらどういう状況でこういうことになったのか、そのことだけを簡単に私は外務省側に聞いてみたいと思います。
  60. 小田部謙一

    説明員小田部謙一君) これは文部省外務省と、おもに見解といいますか、外務省の立場といたしますれば、どうしても外国の立場を支持する、それから国内官庁の立場といたしますれば、外国から幾ら申し込みがあっても、それを受け入れられるかどうかというような問題があるというのは、これはこの問題に限らずその他一般の問題でございまして、しいて文部省と話をしていたということをいいますれば、当初二百名というようなインドネシア側要望があって、外務省といたしますれば、これは国内の情勢にはある程度暗いのでございますが、できれば、いい計画だから二百名を入れてもらいたいというような話をしていたのでございますが、文部当局といたしましては、これは施設関係もあってそうはできないというような話をしておりまして、これは普通の問題に関する……(「それはきょうの委員会で答弁済みでしょう」と呼ぶ者あり)
  61. 相馬助治

    ○相馬助治君 答弁済みなら答弁済みでいいです。速記録で……。
  62. 小田部謙一

    説明員小田部謙一君) まあ普通の行政官庁同士の話し合いというようなことで、それを百名にする。当初、国立大学は六十何名だというような話になって、それでは少な過ぎるじゃないか、じゃ私立大学も入れたらどうだという話し合いはしたことはございますが、それ以上基本的な対立があったというようなことはございません。
  63. 相馬助治

    ○相馬助治君 そうすると、今になってみると、当時文部省としては、その受け入れる学校の学科目関係から、にわかに二百名は受け入れがたいということを主張したんだと思うが、こういうふうなとんでもない、国際的な問題にまでなりそうな事態になるということになれば、むしろ文部省の方が先見の明があった。逆に言えば、態勢を十分整えずしては、にわかに先方の意思を入れてはならないということになる、という結果になると思うんです。ですから、私、これは中途から出たので、その点については不明ですから、これ以上深く突っ込んで参りませんけれども、これは明らかに、その先方の意思を十分に日本側が認識する努力が足らなかったか、あるいはまた、こちらとの打ち合わせを先方自身が独断的に違反して勝手にやったと、こういう問題になってくると思うんです。しかし、いずれにしても、スカルノ大統領が来日を予定されているこの段階で、こういうことはきわめて不祥事であり、かつまた、国際——単なる国際的ということよりも、同じアジア人種の中において、新興国家であるこういう国から留学生受け入れるということは、将来の展望から見て非常にいいことなのだから、早急に、文部省並びに外務省は、これらの問題をよく本筋に戻して討議して、早急に万全を期してもらいたいと思います。
  64. 野本品吉

    ○野本品吉君 関連して一、二お伺いいたします。私が申し上げるまでもなく、従来東南アジア各国から、国費留学生あるいは研究留学生ということで、多くの国から日本へ来ておったわけです。そこで私がお伺いしたいのは、賠償留学生の問題が大きく取り上げられて、そして、年々百名、将来五百名ということになってくるのでありますが、ここで、賠償留学生と従来の国費留学生、あるいは研究留学生との関係というものにつきましてはよほどはっきりした考え方を持って臨まないというと、混乱を起こして、将来どちらも困るというような事態が起こるのではないかということを私は心配しているわけなんです。そこで、これは文部省の方にお伺いしたいんですが、調べたものもありますが、手元に持ってきておりませんですから、現在国費留学生としてインドネシアから何名来ておりますか。
  65. 田中彰

    政府委員田中彰君) ただいま、今年度インドネシアから参ります予定の者を入れまして、十二名になる予定でございます。
  66. 野本品吉

    ○野本品吉君 そこで、現在十二名来ておるその国費留学生は、将来とも継続して当然実施されることだろうと思うのですが、この点はどうですか。
  67. 田中彰

    政府委員田中彰君) 御指摘の通りでございます。
  68. 野本品吉

    ○野本品吉君 そこで、まあインドネシアの青年学徒が、日本で勉強したいという意欲が非常に強いということになってきますというと、将来やはり続けていく国費留学生インドネシアヘの割当の数などということも、そういう深い熱意を持っておる学生に対して、拡大する意思があるかどうか。これは文部省に……。
  69. 田中彰

    政府委員田中彰君) お答え申し上げます。賠償留学生と、従来の国費留学生との関係のお尋ねと思いますが、実は従来インドネシア側は、国費留学生としての希望が割合に少ないのでございます。今度は賠償留学生で多数参ることになったのであります。国費留学生との関係が今後いかようになりまするか、十分インドネシア側とも相談をいたしまして、万全をはかりたいと思います。
  70. 野本品吉

    ○野本品吉君 私は、そこで、国費の留学生は、現在東南アジアのうちでは、タイが多分一番多いと思っております。そこで、タイからも来ておる、ビルマからも来ておる、インドからも来ておる、香港からも来ておる、フィリピンからも来ておる。そこで、そういう国費留学生の問題が、この賠償留学生が多量に入ってくることによって、国費留学生のワクを広げるとか、教育の内容を充実させていくとか、そういう点で相当関係を持ってくるのじゃないか、こう思うのですが、それは文部省、どうですか。
  71. 田中彰

    政府委員田中彰君) われわれといたしましては、この賠償留学生の問題と離れまして、国費留学生のワクを広げたい、また給与その他につきましても、改善すべきものは改善をしたいと、こういうことで努力を続けておるわけでありますが、まだ十分なところに参っておりません。ただいま御指摘のように、賠償留学生との関係も今後ございますので、国費留学生につきましても、それらとの関係をにらみ合わせつつ、拡充整備をいたしたいと考えております。
  72. 野本品吉

    ○野本品吉君 私が聞きたいのはね、さっき賠償留学生の問題で、インドネシアから二百名の希望があったところ、日本の学校の施設、あるいは教師陣営等、いろいろ考慮されて、百名になったということなんですね。すると、この調子で賠償留学生がどんどん入ってくると、国費留学生の問題に、今言った設備あるいは教師、その他いろいろな点から言って、競合するというかな、困る事態が起こるのじゃないか。これをまあ心配するわけです。これは絶対にインドネシア賠償留学生を排斥するとか、拒むとかという意味でなしに、そういう点の考慮は、当然留学生全体の問題として文部省は考えべきだと思う。この点についてどうお考えですか。
  73. 小林行雄

    政府委員小林行雄君) まあ国費留学生につきましては、御承知のように、まあ文科系の留学生、理科系の留学生、合わせて、やはりこれはまあ百人近くのものを受け入れていきたいという考えも持っておるわけでございますが、インドネシア賠償留学生は、これは専攻科目から申しますと、主として理科系の者が多いわけでございます。確かに国費留学生の理科系の者と合わせますと、相当数になるわけでございます。従って大学科目によっては、多少競合するような場面も出てくるかとも思いますが、ただ現状程度のものでありますれば、そのために国費の留学生賠償留学生にけ落とされるとか、あるいは締め出されるというような形にはならぬのじゃなかろうかと思います。しかし、将来これが非常にふえて参ります場合には、やはりそれに必要な施設設備なり、あるいは教授陣というようなものも相当整えて、まあ締め出されるといったようなことの絶対に起こらないように整備をしていかなければならぬと思います。
  74. 野本品吉

    ○野本品吉君 今、賠償留学生希望科目というものが理科系が多いという。国費留学生の全体を私は調べてみたんですが、やはり国費留学生もこちらへ来て勉強したいという希望、また現実に勉強しております数を見ますというと、理科系が一番多い。その次に医科系が多い。その次に農科が多い、こういうことになっておる。そうすると、国費の留学生も理科系の者が一番希望が多い。インドネシア賠償留学生も、理科系の者が一番希望が多い。そうすれば、当然よほど文部省がしつかりして考えないと、これは将来において留学生の、国費留学生賠償留学生との間に、当然問題が起こってくる。受け入れ態勢その他からいってですね、そこなんです。私はそういうことによって国費留学生の問題も中途半端になる、賠償留学生の問題も中途半端になる。その中途半端な教育をしたということが、長い将来の日本にどういう影響を持ってくるかということを考えると、これはよほど大きな立場でまじめに将来を見通して、しっかりした方針を立てないというと、私は留学生のために、せっかく骨を折ろうとしておるこの努力が、将来において好ましくないような結果を起こすんじゃないかと、そのことを非常に憂えているわけです。これはまあ大臣がおりませんからですが、私はその点については外務省の方も、文部省の方も、当面の賠償留学生の問題に眼を奪われて、留学生全体の将来の対策ということについてもう少し広い、高い立場から根本的な御検討を願いたいということを特に要望したいと思います。  それからもう一つの問題は、学力の問題なんです。賠償留学生日本へ来る、けっこうなことなんです。そこで賠償留学生日本に来て、はたして日本における大学教育の学習、大学教育を受けるのに十分な素質を持って来ているかどうかと、これは何もインドネシアの青年が頭が悪いとか、教育程度が低いとかということじゃない。これも大学教育のほんとうの目的を達して、留学生の有終の美をおさめさせるためには、希望が多いからといって無条件に受け入れるというようなことについては一応警戒を要すると、今度入ってくる者について、こういう点についてはどういう扱いで入ってきておるんですか、学習能力の問題。
  75. 小田部謙一

    説明員小田部謙一君) これは実は今度入ってくる生徒は、みんな若い生徒でございまして、大体日本で言えば、新制高校を卒業したというインドネシア政府からの保証付でございます。そういうようなことを日本側に言って参りましてその人たちだけを入れるというシステムになっているのでございます。ただしかし、インドネシアの高校生の能力がどうかという、そういうような問題になりますれば、これは具体的な問題でありまして、日本の高校生に比べて低いとか高いとかいう問題がございますが、一応資格としては有資格者だという、このインドネシア政府からのつまり一種の保証がついているわけでございます。
  76. 野本品吉

    ○野本品吉君 国費の留学生については、あらかじめ日本の在外公館で、それぞれの希望者を集めて、まあこちらで言えば、入学試験といいますか、資格試験といいますか、試験をするわけですね。試験をして、その試験にハスした者を、国費留学生として受け入れる。今度の場合は全然そういうことでなしに、日本の高等学校卒業程度のものを、全部連れてくるということになると、そこにも私は教育という観点から見るというと、よほど考えていくべき問題があって、一方は国費留学生は一応の資格検定というか、学力の程度を考査して、大体日本における大学教育を受ける能力ありと、こう判定されたものが来るわけであります。一方はある学校を出ればということで、それだけで来るわけであります。来る方から見れば、どちらも同じ大学教育を受ける、どちらも同じ大学教育を受けるのだから、その教育の成果もまた同一に期待される、こういうことになってくると思う。その辺については扱い方をどうするかについて、いろいろ研究の余地があろうと思いますし、この点については、やはり外務省文部省等においても、インドネシア側と十分それらの点についての理解、了解を求めておくことが、留学生問題の将来に累を残さない、こういうことになろうと思うのですが、この点についてのお考えはどうですか。
  77. 小田部謙一

    説明員小田部謙一君) 実は国費留学生の方は私もよく存じませんが、ある程度、はたしてどれだけの学力があるかというようなことに関しましても、こちらも相当関心があったのでございますが、先方の言い分は、今度来た留学生は、一応インドネシア政府が責任を持って各地の生徒からこれを選抜したものである。しかも旅券は普通の旅券で参っておりますが、これらの生徒は全部一応インドネシアにおいて、国内的には官吏の資格を持っている。それに対して日本政府がこれを、これは資格があるかとかないかとかいうふうなことを言うことは、非常に困るというようなことを、強く向こう要望いたしまして、その点あるいは国費留学生の入学資格と幾分の取り扱いの相違があったかと思いますが、これはインドネシア側では、インドネシア側が責任を持っていて、しかも官吏にまでした学生である、こういうふうな主張をしているわけであります。
  78. 野本品吉

    ○野本品吉君 最後に一つだけ、念のために申しておきます。これはインドネシアから一方は国費留学生が来ているのですね。将来も来る。今度新しく賠償留学生がやって来る。インドネシアの立場から見れば、どちらも同じく日本大学教育を受けたものとして見るわけですね。そういう場合に、もし賠償留学生の素質、能力等の関係上、賠償留学生というものが、多少でも国費留学生との違いがあるということになりますと、今度はインドネシアの立場から見れば、賠償留学生だから、日本の国はこの賠償留学生教育に対する熱意と努力が足らないのだというように考えやすくなるのですね。これは私はそう思う。そう点につきましては、今どうこうということじゃありませんけれども、一応そういうような点について、相当深い配慮を必要とするということを申し上げて、私の質問を終わります。
  79. 吉江勝保

    吉江勝保君 今の野本委員のに関連して、国費留学生はこれはインドネシアばかりじゃないのでありますが、インドネシアにとってみると、将来インドネシアから来る国費留学生と、賠償留学生関係はどういうふうに切りかわっていくか、どういうふうになっていくか。その点一つもう一度お尋ねいたします。
  80. 田中彰

    政府委員田中彰君) 今の御質問の御趣旨がよくわかりませんので、おそれ入りますが、もう一度……。
  81. 吉江勝保

    吉江勝保君 国費留学生の話が今の野本先生の質問からも出たでしょう。インドネシア賠償国の賠償留学生というのは、今度新しくこういうのができてきた。従来のインドネシアにも国費留学生がある。賠償留学生ができてくると、国費留学生の方は、たとえば賠償留学生の方に全部切りかわっていってしまうのか。国費留学生として、インドネシアの国費で国費留学生国費留学生として存置していくのか、そういう移りかわりをお尋ねいたしたのです。
  82. 小田部謙一

    説明員小田部謙一君) その点は現在のところはっきりしたインドネシア側に問い合わせをしているわけじゃございませんので、はたして国費留学生を全部賠償に切りかえるのかどうかということははっきりお答えはできませんが、ただ向こうの言っていることを推察いたしますと、この賠償留学生国費留学生に比してできるだけ同一の待遇にしていきたいというようなことを申している点から見ますと、賠償留学生賠償留学生、それから国費留学生国費留学生、こういうふうに扱っていく、両立てでいくのではあるまいか、こう申したわけであります。
  83. 北畠教真

    ○北畠教真君 議事進行についてですが、午後幼稚園の問題が審議されるという話ですが、公立幼稚園に関連して私立の問題を審議さしてもらいたい。こう思うのですが、つきましては私立学校の係の説明員と申しますか、係官を一つ来ていただくように御要請願いたいと思います。
  84. 清澤俊英

    委員長清澤俊英君) 差しつかえないと思います。  それでは本件に関する質疑はこの程度にし、午後は一時半から再開いたすことにいたします。それでは休憩いたします。    午後零時三十二分休憩   —————————————    午後一時五十一分開会
  85. 清澤俊英

    委員長清澤俊英君) ただいまより文教委員会を再開いたします。  幼稚園に関する件を議題といたします。質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  86. 岡三郎

    ○岡三郎君 私はただいま議題になりました幼稚園教育全般について質問をしたいと思うわけですが、まず冒頭に、三十三国会すなわち昭和三十四年の十二月十日の参議院文教委員会において市町村立幼稚園教員の給与改善について決議がなされておりまするが、この決議の内容に即応して文部省がいろいろと御苦労されていると思うのですが、その経過、あるいはこの決議の内容にあるように、実情調査がどの程度進められているか、待遇の適正を期するようにどういうふうなお考えを持っているのか、またそういうふうな点をどういうふうに実行に移してこられたか、まだ決議されて以来日が浅いので文部省当局に対して決議の実行を迫るというよりも、相互に文教委員会全体として幼児教育の振興をはかりたいという意思でお尋ね申し上げたいと思います。
  87. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) 市町村立の幼稚園の教職員の給与については、衆参両院の決議に基づきまして文部省といたしましてもこの改善方について都道府県の教育長の会議、あるいは給与主管課長等を通じて適切な措置を行なうように指導して参ったわけでございます。実態といたしまして都道府県立及び五大市その他の市町村につきまして調べて参つたわけでございます。総括的に申しますと、都道府県と五大市のものについては、大体教職員の給与に準じた待遇が行なわれているように見受けられるのでございます。遺憾ながら小規模の市町村立のものは必ずしも国の基準通りになっていない。この点は特に市町村の職員との均衡の問題がございまして、小中学校の先生よりは低いということが実態でございます。そこで文部省といたしましては、できるだけ小中学校の給与と同じような待遇が保障されますように努力をいたしているわけですが、今日のところ財源措置といたしましては、交付税の中でその他の教育費の中に入っております。その他の教育費では人口十万の都市を予定しておりますので、人口十万の都市については一幼稚園当たり四人で四つの幼稚園を積算の単位にしておりますので、人口十万のところで十六人の教員の算定をいたしておりまして、給与費としては四百万円程度を見ておるのでございます。従って、人口十万以下の町村につきましては、これはこの額が少なくなるのでございますが、まあ二、三万程度のものといたしまして、百万円ぐらいは一応交付税の方で補償しておる、こういう計算でございます。
  88. 岡三郎

    ○岡三郎君 義務教育でないので財政的にも制度的にも非常な苦労が多いと思うのですが、まあ最近においていろいろと全国からの陳情を受けたのを読みまするというと、今、初中局長が言われたように、市町村の財政の関係で非常にアンバランスが多い、こういうふうな点で、本来国の小中の俸給に準じて給与の相当額が払われていかなければならぬと思うのですが、今言ったように地方財政の問題でなかなかそのようにいってない、そういうふうな中から非常に幼児教育の振興に当たっている人々の苦労に報いるという点が足りないというふうな考え方を強くしたわけですが、今伺ったところでは、その他の教育費で、まあ四百万なり百万なりという数字が出たわけですが、この陳情文その他で見ますというと、相当長期に職務についていながら一万円程度、あるいは場所によれば教育経験年数五年の資格のある先生方が五千円程度とか、まあ具体的にいろいろな例が陳情の中に見えておるわけですが、そういうふうな点を考えてみたときに、もう少しわれわれも義務教育ではないといっても、最近においては戦前と異なって、特権階級というか、特別の人々だけの子弟を教育するという機関ではないという、こういう立場に立って考えなくちゃならぬ。もっと言うと、この設置のアンバランスをもう少し平均化していって、広く幼児が教育を受けるということになるためには、やはり現在衝に当たっている先生方がやはり意欲を持って振興してもらう、その中にさらに発展の基礎が求められるのではないかというふうに考えるわけであります。そういうふうな点から考えて、私としては財政的な裏づけをどういうふうに考えるかが、やはり一番ポイントではないかというふうに考えるわけですが、幸いといいますか、量は少ないのですが、昭和三十五年度公立幼稚園施設補助費が一千万円出たわけですね。私は幼児教育振興費というふうな一つの大ワクの中で何らか給与の補助あるいは施設の補助とか、これは公立学校の施設の補助費になっておりますが、そういうふうな総合的な見地の中で、もう少し市町村の財政をカバーできるような方法というものがほしいと思うのですが、その点について、何らか文部省の方でも御検討しておる点がおありでしょうか。
  89. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) 幼稚園の実態を調べてみますと、都道府県と五大市は、これは相当待遇がいいのでございまして、小中学校とそう大差がないように見受けられるのであります。問題は市町村にあるわけでございます。この場合に、先ほど申し上げましたように、人口十万のところで四百万円程度のものは補償しておるわけです。ですから、一応財政的には見ておるのですが、町村に参りますと、他の職員との均衡の問題がいつも問題になるわけでございます。そこで、他の公務員が非常に町村の場合は低いのでございまして、これは幼稚園の職員だけじゃなくて、他の公務員との均衡の問題で低いというのが実情のようでございます。そこで、これを解決するためにどういう方法があるかと申しますと、小中学校は都道府県の負担になって、都道府県で小中学校の教員の先生の俸給を払う。こういたしますれば、五大市とか、あるいは市町村との財政の関係はなくなるわけであります。一つの解決策であろうかと思います。ただ幼稚園が義務制をしいておりませんので、都道府県に全部給与費を持たせるということは、これはやはり問題だろうと思います。特に現在のところ、小中学校の給与費と、高等学校の給与費を都道府県が負担し、また定時制の教員の給与費も負担しているという現状を見ますと、都道府県にあまり財政上重圧がかかっておりますので、これもはたして適当かどうかという点で、私どもは実は必ずしも賛成をいたしかねておるのでございます。それからいま一つの方法といたしましては、現在のところ、その他の教育費という中で、幼稚園経費を見ておる。これは交付税の場合であります。交付税の単位費用の中で、小学校、中学校、高等学校、「その他の教育費」、こうなっておるのですが、「その他の教育費」の中で、盲学校、ろう学校だけは特別に抜き出しておるのでございます。幼稚園の場合にもこういう措置が考えられないかという問題が一つあるわけであります。ところが、これに対しても、自治庁とずいぶん交渉しましたが、自治庁の見解では、盲ろう学校並みに幼稚園を義務制にするという方向ならばこれは一つの考えであるけれども幼稚園は義務制ではないから、そこまでいくのは問題がある、こういうふうに指摘をされておるのでございます。一つは今申しましたような財政の問題、一つは給与体系の問題、給与体系としては、現在のところ、教育公務員特例法によって、小中学校、国の幼稚園と同じになっております、同じと申しますか、それを基準として条例できめることになっております。ですから、その条例のきめ方が小中学校並みになっておるはずなんです。ところが、問題が起きてきますのは、他の市町村の職員との均衡論で上げられない、こういう点が問題の焦点のように見受けられるのでございます。
  90. 岡三郎

    ○岡三郎君 大体実態はよくわかったわけですが、都道府県で費用を負担することは賛成しかねると言われた、財政的に府県負担が非常に多いので。それも一応了解できるわけですが、しかし、そういうふうに言ってみるというと、なかなか幼児教育の振興自体が非常に困難であることのみで、やはり大きな希望は持っておるけれども、そうはいっても一ぺんにはいかぬが、具体的に何らか決議の趣旨を生かす方法というものを考えてみたときに、都道府県の方で財政が大きく負担するということではなくて、これも漸次状況に応じて増額していくということにして、当初はこの「その他の教育費」に見合って、今のところは国で二分の一とか、いろいろと小中の方は負担しております、県費の方に対して中央がある程度幼児教育の振興で補償して、その県費の中で一つの教育費の建前に立って三分の一とか——二分の一といったら大幅になるかもわからぬが、三分の一とか四分の一とか、当初そういう負担を少額でもして出発して、そうして全体に設置の範囲が広がっていけば、それも相当大幅な財政負担になると思いますが、まあそういうふうな点については財政を十分考慮しつつ何らか県というものに給与の関係を持たして、そうしてその中で一つの最低の給与の保障とか、そういうものができないものかどうか、まあここへくると、市町村職員との関連をすぐ出してこなければならぬと思いますけれども、そういう点では何らか県でこれを少しでも見ていく、こういう考え方にはならぬもんですか、大幅な負担ではこれはなかなかむずかしい、その点はどうですか。
  91. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) 県で市町村の幼稚園経費の一部を見る、あるいは国の方で幼稚園経費の一部を見る、これも一つのお考えであろうと思うんですが、問題は幼稚園が現在のところ府県によって非常に違うし、また市町村によっても非常に設置状況が違うので、非常なアンバランスがあるということがこれまた一つの障害になっておるわけなんです。どういう形でこれを改善したらいいのか、私どももいろいろと苦慮いたしておるわけですが、一つの方法として確かに補助金のことも大へんけっこうな考え方だと私思うんですが、もう一つはやはり交付税の方でどういうふうな幼稚園の位置づけをするかということも、これも考えてみなければならぬ問題ではなかろうかと思います。
  92. 岡三郎

    ○岡三郎君 今度は本質的なものになるわけですが、結局世界の科学とか文化の進展度合いから見て、六才就学という現行の義務教育の出発点ですね、こういったものがイギリス等においては五才からというふうになっておって、全体的に見ると、体位とかその他経済的にも就学時期というものを早目に行なっていくという考え方が最近においては相当強く出てきておるように見受けられるわけです。私は特に印象深いのは、イギリスにおける場合の幼児教育、特に家庭のしつけとタイ・アップして、一般の公教育、道徳教育、しつけといいますか、こういうふうなものについての強い関心、それからもう一点は、日本の人がアメリカに移住をしておって他国のいろいろな人人と同じ教育を受けて、その感想として、嵯峨根遼吉氏だと思いましたが、日本民族の大体方向はまあ南方系に属して、非常に早熟民族じゃないか。そういうふうな点で、日本民族の一つの新しい教育の体系を樹立する中において義務就学ですね、これを早目にするということが相当具体的に考えられる段階にきているのじゃないかという話をあるとき聞いたことがあるのですが、まあ現在の日本状況においては財政的な面だけでなくて、抜本的に幼児教育の振興、いわゆる三つ子の魂百までもというようにして、しつけをよくして、そうして社会生活基礎を作る。そこで作られたものはにせものではなくて、なかなかこれが将来ともに非常に多くのよい習慣を作っていくというふうなことも聞いておるのであって、全体的に文部省として就学年令を一年下へ延ばす、こういうふうな抜本的な考え方がないものかどうか。
  93. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) 幼児教育の大切なことは、今、岡委員のお述べになった通りでございまして、私どもももっともっと幼児教育について努力しなければならぬと思います。お話通り、三つ子の魂百までも、これは医学的にも証明されておりますし、また心理学的にも証明されておるわけです。そこで、できるだけ幼児教育を発達させる。イギリスあたりが満五才になって義務制をしいておりますので、これも確かにそういう傾向の一つの現われであると、こう思うのでございまして、就学義務年令を下げることも一つの方法かとも思いますけれども、現在のところ、六三制の九カ年の義務教育実施している段階でございまして、まだその時期ではなかろうと思うのでございます。  もう一つ問題は、高等学校の程度教育をどうするかという問題も差し迫った問題でございまして、西ドイツやイギリスあたりでは、パートタイムの義務制をしいておるというような状況がございますので、これともあわせて検討しなければならぬ問題ではなかろうかと思うのでございます。
  94. 岡三郎

    ○岡三郎君 なかなか質問をすれば数限りない多くの問題があると思うのですが、要はこの決議に即応して、苦しい中にも幼児教育の重要性にかんがみて文部当局の一段の御検討と推進をお願いしたいわけですが、私の方としては、さらに実情というものを文部省調査されて、そして大体現在でもおわかりのことだと思うのですが、その他の教育費等の内容として、四人かける四倍の十六人、四百万円という単価が、これは自治庁の関係になると思うのですが、文部省としても幼児教育の振興、これをここで公立の幼稚園施設設備の一千万円というものを取ったのだから、何らか文部省自体として自治庁のそういったような、その他の教育費の総額とかね合わせて、もう少しこれを充実する方法を考えてもらいたいと思うのですが。
  95. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) 幼稚園の給与の実態、また市町村の一般公務員との比較等についても、ただいま資料で検討いたしております。大体資料も用意されておりますが、こういう点で、今お話の交付税における単位費用の算定の仕方その他について不合理な点があればこれを改善し、ますます幼稚園教育の振興に資するように一そうの努力をしたいと考えております。
  96. 岡三郎

    ○岡三郎君 これは自治庁が来ないと困るのですが、文部省の方では知っておりますか、積算の基礎について。人口十万の都市で一園四人、こういうことで十六人。これはどういう根拠に立ってるのですか。
  97. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) 標準規模が人口十万でございますので、その他教育費は人口十万を単位にとっております。この場合、幼稚園経費として今申しましたように、人口十万のところで四つの幼稚園があるという想定をいたしまして、一幼稚園に四人の教員を配当すると、そして単価が月額一万三千五十円という単価をとっておるのでございます。
  98. 岡三郎

    ○岡三郎君 この単価は安過ぎると思うが、内藤さん、どうですか。
  99. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) これはその実態を見てみますと、必ずしも安いというわけには参らぬと思うのです。一般の市の平均単価が一万二千百七十四円、町村が八千百五十二円、五大市が一万八千百六十円、こうなっておりまして、学歴にもよると思うのです。市町村の場合はほとんどが高等学校卒です。町村に至っては九五%が高等学校卒です。ですから都道府県立のもの、五大市立のものは比較的大学卒、短大卒が多いのでございますけれども、町村に参りますと、今言ったように学歴が違うと、こういう点でして、今の状況を見ましても一般の市の幼稚園以外の職員の平均が一万三千円でございますので、そう現状から見て不当に低いというふうには考えられないのでございます。
  100. 加瀬完

    ○加瀬完君 関連。それは内藤さん、今交付税の単価の問題ですがね、非常に低いのですよ。非常に低いと考えられないというのは、現在の五大市を除く一般の市、あるいは町村の給与実態と幼稚園の給与実態を比べれば、これは相対的には低いといえないけれども、一般の市、それから町村は、国家公務員なり、都道府県の職員なりに比べてはるかに低い。あまりに低いので、この間この国会の会期の中のことですけれども、地方行政委員会では小委員会——給与実態調査の小委員会が決議をいたしまして、その線に沿って自治庁が特に一般の市町村に給与が非常に低いので、これの改善方の措置というのを通牒を出しておるはずです。ですから、この前の政府の給与実態調査でわかったんですが、非常に低い現状にこの幼稚園も合わせられている。しかし、一般の市町村の職員であっても、義務学校の職員はこれとは別の系統で給与がきめられますから、小中学校の具体的には先生の給与と今度は幼稚園先生の給与というものは非常に違いが出てきている。このアンバランスをアンバランスでないような形に釘づけておりますものが一方非常に低い市町村の給与なんです。これは自治庁でも改善方を通牒を出しているのですから、文部省文部省として非常に低いものと合わせられておっては、今度は一方の文部省関係の法律に準ずる、義務学校の職員に準ずる幼稚園が不当な待遇を受けることになるのだから、この改善を何とかしてもらわなくちゃ困るのだと、幼稚園はむしろ一般市町村の給与ではなくて、小中学校の給与の方へ右へならえをさせてもらわなくては困るという行政指導をもっとしてもらわなくちゃ困ると思うのですよ。この点は文部省としてもお認めになっていらっしゃいますか。
  101. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) まことにその通りでございます。ですから、幼稚園の職員は小中学校並みに給与の保障をしていただきたいということはしばしば申し上げておるのですけれども、遺憾ながら今お話のように他の市町村の公務員とのバランスの関係がございまして、市町村ではなかなかやりにくいという点もあろうかと思うのでございます。
  102. 加瀬完

    ○加瀬完君 それで岡委員の指摘されたように、やっぱり義務学校の職員に準じて呼び水を少し文部省でやらないと、幼稚園の給与引き上げができないじゃないか。教育長の給与がやっぱり低いというので、これがまあ幾ら教育長の給与を上げるという呼び水のために、文部省教育長給与に対しては今度の予算でもやっぱり三億八千万か幾らか補助金みたいなものを出していますね。幼稚園は数も多いし人数も多いから金額はかさむかもしれませんが、性格は、市町村の教育長に給与を安定させるために一応の実質的な補助金も出すなら、やっぱり幼稚園の職員の給与に対しても文部省が出したって、私は予算的措置として困難だということはわかりますよ、しかし、形式的な筋道から言えば、何もこれは的はずれだということにはならないのじゃないかと思うのですがね。この点が一つと、それから交付税の算定基礎一に、いわゆる単位費用というものを、幼稚園の単位費用というものをどこに置くかということになったら、これは  一般の小中学校は定員実額で府県によってでこぼこはありますけれども、とにかく実態の給与について二分の一というはっきりしたものがありますがね。で、これは実態で押えては幼稚園の低さはいつまでたっても変わらないと思う。ですから何ですか、非常に三十三年度でしたか、何か文部省は一応何か標準の仮定俸給みたいなものを考えたことがありましたね。ああいうも  ので、一応のこれぐらいが水準だという仮定のものをきめて、それについてやっぱり交付税を算定してもらうという、この問題を解決する適宜の方法をとらなくちゃ、やっぱり一般の交付税の地方職員の給与に対する算定と同じような方法をとっておってはこれはだめだと思うのです。それは自治庁と話し合いになりませんか。仮定俸給か何か作って、それに合わせて単位費用を計算するという方法は。
  103. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) そういう方法をとつておるわけでございまして、実額は、市で一万二千百七十四円、町村は八千百五十二円、ところが交付税の単位費用はそれよりはるかに上回って、一万三千五十円、こうなっておるのですから、この算出の基礎は大体職員の資格構成を考慮して適正な額に一応いたしたわけでございます。しかし、まだ不十分な点があろうと思いますので、これは改善して参りたいと思います。
  104. 吉江勝保

    吉江勝保君 だいぶ検討されているようですが、この幼稚園のその後の調査をされた資料の中で、きょう何か配付になるのですか、資料を。
  105. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) 資料要求がございませんものでしたので——私自分では持っておりますから何かこの次。
  106. 吉江勝保

    吉江勝保君 それでは少しお尋ねしてみますが、幼稚園の、公立の幼稚園が現在日本でどのくらい、たとえば私立、町立、村立に分けてどの程度にあるものか、あるいは市町村立以上の国立幼稚園ですね、そういう設立別の幼稚園の資料がございますか。
  107. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) 町村別のはちょっと手元にございませんが、国立が三十五です。それから公立が二千二百八十七、私立が四千三百七十、こういう数字でございます。
  108. 吉江勝保

    吉江勝保君 そうすると、幼稚園の適齢の子供の数というものと幼稚園に収容しておる収容率は何%ぐらいになっておりますか。これは公立と私立と合わせて。
  109. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) 大体三分の一ぐらいでなかろうか、と申しますのは、公立の方がたしか二十二、三万になっておるはずでございます。それから、私立が四十七万程度、合わせて七十万ぐらいと私記憶しておるのですが、そのほかに若干ございますが。それから、この場合に二年保育、三年保育がございますから正確には申しかねますけれども、まず四分の一から三分の一ぐらいが就学している、こういうふうに考えていただいていいと思います。
  110. 吉江勝保

    吉江勝保君 非常によく覚えておられるので感心するのですが、それはある年令層をとったときのその幼稚園児といいますか、それに対するその年次の就学しておる率が三分の一ぐらい入っておるというのですね。
  111. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) さようでございます。三分の一から四分の一と申しますのは、幼稚園は三年の保育もありますし、二年保育もありますし、一年保育もある。一番多いのが一年保育ですから、で、その場合に私が申しましたのは総数でございますので、四分の一から三分の一程度が、小学校に上がるべき子供の四分の一ないし三分の一が幼稚園に行っておる。こういうふうに見ていただければいいと思います。
  112. 吉江勝保

    吉江勝保君 これはもう少し資料をもらった方が確実らしいので一つ資料を要求します。  それから、今のその公立の幼稚園の配置状況ですね、全国の都道府県に、これはある程度普遍的に公立学校はできておりますか、その点はどうです。
  113. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) これは非常にばらばらでございまして、都会地に非常に圧倒的に私立学校が多いのでございまして、公立が非常に多いと言われているのは徳島県でございまして、公立の場合でも各市町村にあるのもありますし、ほとんど市町村がやっていないところもありますし、まあ県によって非常に違うという状況でございます。
  114. 吉江勝保

    吉江勝保君 それで一つその私立と公立の各都道府県別あるいは市町村別というか、そういう地域別の表もあわせて提供してもらいたいと思います。
  115. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) 承知しました。
  116. 岡三郎

    ○岡三郎君 私がここで内藤さんにお願いするというか、文部省に、この決議の趣旨にのっとってやれることは何かと考えてみるというと、実効はどういうふうになるかは別としても、小中の教職員の待遇のそれに準ずるような形の通達というか、要するに実情が非常に低下しておるので、そういうふうな状況を改善するために国としてこういうふうな給与表が出てきておる。こういうような状態の中で、準ずる措置というものが望ましい。そういうふうな形の通達のようなものを一つ暫定的に出してもらって、そうして、なお後刻いろいろとお話があると思うのですが、もう少し全体的に幼稚園教育、幼児教育の問題について委員会として、今、吉江委員からも資料の提出の要請があったわけです。そういったものを総合的に検討して、さらに論を進めるとして、そういうふうな通達を出して改善をできるだけするように、こういうふうなことだろうと思うのですが、その点どうですか。
  117. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) できるだけ御趣旨に沿うように指導して参りたいと思います。今日までもそういう意味の通達は出ておると思いますが、さらに一そう趣旨の徹底をはかる意味からあらためてそういう指導をして参りたいと思います。
  118. 岡三郎

    ○岡三郎君 それ一つお願いしたいと思う。やっぱりそういう中から、各県々において特に熱心な県もあるわけです。いろいろと財政的な面は当然考慮されるが、ある意味では、それをきっかけに少しでも改善していこうということになるだろうと思うし、先ほど言ったように、呼び水的な措置を文部省としてお考えになってもらうようにお願いしたいと思います。それにあわせて、先般公立幼稚園園長会というのがあったらしいのですが、その人々の話の中で、管理職手当がほとんど支給されておらないというふうな点が言われておったんですが、管理職手当と、こういうふうな義務制ではない全国公立幼稚園園長さん、こういう関係はどうなっておるのですか。これは払うべきことになるわけですか。その点。
  119. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) 管理職手当というのは、ある程度の数がないと困るわけで、小学校の場合ですと、大体六学級以上をまあ標準にしているわけでして、中学校の場合でも、三学級以上を原則にいたしております。こういう点で、管理、監督の地位にあるのですから、何人か部下がいないと管理者というわけには参らぬと思います。そこで、もちろん一人でも管理者でございますけれども、監督される者がやはり何人かいるということが一つの要件ではございます。そこで、実は小、中、高の校長さんに管理職手当を出したときに、幼稚園の規模があまりにも小さい。特に国立の場合には小さかったので、幼稚園は除外いたしましたけれども、今回幼稚園も、園長さんは対象にいたしたと思いますので、公立の場合にも当然適用されると思うのでございます。
  120. 岡三郎

    ○岡三郎君 適用されるという力強いまあ言明があったわけですが、実情はなかなかそこまでいっておらぬ。そういうふうな現状に対して、良薬はどうしたらいいか、どうしたらそれが出されるようになるか、それをお教え願いたい。
  121. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) 国立の方がきまりますれば、公立は右へならうということになっておりますので、園長につきましては、たしか今年の国立学校の予算で計上したように記憶しておりますので、国立幼稚園長に管理職手当を支給することができるというふうに人事院規則が改正になりますれば、それを受けて、公立の幼稚園長にも支給になるはずでございます。これは各市町村が条例をきめなければならぬわけでございますが、国の基準に従って条例を作つていただく。その条例を作る指導は、これは文部省がしなければならぬと思うんですが、まだたしか国立幼稚園長に管理職手当を支給するという人事院規則が出ていないと思うのでございます。出ますれば、それを受けて、地方の公立幼稚園にも準ずるように指導して参りたいと思います。
  122. 岡三郎

    ○岡三郎君 国立の場合は、それがいつごろ実現するのですか。
  123. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) これはまだ人事院といろいろ話しておりますが、人事院の方でも、今、管理職手当を全部検討いたしております。特に教頭の管理職手当もございますので、こういう点をあわせて検討していらっしゃると思いますのでなるべく早くきまるように人事院にも督促いたしたいと考えております。
  124. 岡三郎

    ○岡三郎君 今、まあ市町村条例を作らなければだめだということになって、これまた幼稚園先生の待遇のあれとまた似てきたわけですが、まあその指導を文部省が当然されるということですが、具体的にその指導と実行というものは、どういう関係になりますか。
  125. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) 文部省は指導、助言の立場で、実行をさせるのが務めでございます。しかし、まあ指導してもどうしても聞かない場合は、これは今のところ措置要求をするという方法もございますけれども、措置要求にいたしましても、適正を欠いているというようなことで、管理職手当を支給しないから措置要求をするというわけにはちょっと参らぬかとも思うのでございます。要は、できるだけ出していただくように指導して参りたい。特に公立の小中高等学校の校長さんの管理職手当につきましては、全国ようやく全部出していただくことになったわけですが、この間におきましても、早いもの、おそいもの、いろいろその間に事情はございましたけれども、なるべく財政の都合のつく限り出していただくように指導して参りたいと思います。
  126. 岡三郎

    ○岡三郎君 今、措置要求という言葉が出たんだが、著しく不当な給与の場合は、してくれますか。今度これは管理職でないから。
  127. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) 著しく不当な場合は私はできると思いますけれども、現在の幼稚園がそれじゃそれに該当するかどうかということになりますと、市町村の職員との均衡もございまして、著しいかどうかということは、私は非常に疑問だと思います。
  128. 岡三郎

    ○岡三郎君 それはそれとして、私はやはり文部省が、今言った管理職手当にしても、給与の改善にしても、一歩を進めるためには指導助言も当然けっこうですが、そこに中央として、やはり呼び水というか、文部省もこういうふうな立場で、非常に予算としての規模は小さいが、こういうふうな措置をしたということになれば、下の方もこれに応ずるということになると思うので、やはり何らかそういう面で施設設備の一千万円と抱き合わせるとかいうわけではないけれども、幼児教育の振興費というような形で、文部省自体が一本そこへ作つてくれれば、私は非常に勇気づけられると思うんです。だから、そういう点でそれは御検討を一つ十分わずらわしたいと思うんですが、どうですか。今すぐやれといっても無理かもしれませんけれども
  129. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) 確かに一つの案だと私どもも思っております。ただ、これは地方財政の問題でもございますので、よく検討さしていただきたいと思います。
  130. 吉江勝保

    吉江勝保君 先ほど質問しておって、また質問がそちらの方に移ったようですが、先ほど公立の二千二百八十七というのは、全国的に設立せずに、偏在しているというような話を聞いているんですが、もしそういう表が資料の上で出た場合には、その偏在をしている理由というようなものをあわせて、ある程度検討してもらいたいと思います。多分財政関係ではないかと思うんですが、まだほかに何か理由があるかどうか。そういう点をあわせて調べていただきたい。  それからいま一つは、厚生省関係の保育所というものが幼稚園にかわるような機能を出して、幼稚園の設立のできないところに保育所が行き渡っているんじゃないか、こういうことも考えられるので、これは厚生省の方へ要求する資料かもしれませんが、文部省の方でわかりましたら、全国的に公立の保育所、こういうものの設立状況の資料もあわせて調べていただいたら参考になりはしないかと思いますので、要求いたしておきます。
  131. 加瀬完

    ○加瀬完君 今、吉江委員から保育所の問題が出ましたが、この幼稚園給与の問題で自治庁で一番頭を悩ましているんですが、問題は、保育所の給与と幼稚園と、もう一つは小中学校あるいは高等学校の職員で、厚生省関係の特殊養護施設の教官とか、特殊訓練所の教官とか、あるいは都道府県でやっている工業技術養成所といったような教官とか、こういうものが、資格からいっても仕事の内容からいっても、小中学校あるいは高等学校の先生と同じようなことをやっている。しかし、給与は一般職の給与で、小中学校や高等学校のいわゆる教育公務員ですか、そういう給与とは、やはり階段がつけてある。これらをやはり調節しないで幼稚園だけ取り出されても困る。幼稚園給与をわれわれが自治庁なんかにいろいろ話をするときにも一つの向こうの逃げ口上です。そこでやはり今、吉江委員の御指摘の保育所、それからその他の養護施設等を管轄している厚生省と文部省と自治庁で、似たような仕事で、同じような経歴の、しかも実質的には一般教員とあまり違わないことをやっている人たちの給与のアンバランスを、どのように三省会議の上で解決するかという相談を進めてもらわないと、なかなか自治庁も乗り気にならないというのが実情だろうと思うのです。幼稚園をやると厚生省どうなるとか、三すくみみたいな格好になっておりますから、そういう点で話し合いを進めてもらいたいというのが一つ。  もう一つ伺いたいのは、管理職手当の問題が出ましたが、給与条例もないところに管理職手当の条例を出せといっても無理ですよ。管理職手当が出せるくらいなら一般給与の低いものを上げるようにこれは措置要求でも何でもなさつていただかなければ、私バランスがとれないと思う。そこで、幼稚園に限っては、あるいは市町村の職員給与に限っては、管理職手当をどうしようかということよりも、一般給与の引き上げ、特に文部省関係幼稚園職員給与の引き上げを、強力に文部省としては行政指導してもらわなければならないのじゃないか、この点はどうなんでしょうか。あまり管理職手当にこだわらないで、一般給与の引き上げというものをもう少しやってくれることの方がよいことだと思うのですよ。
  132. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) 別に管理職手当にこだわっているわけではございません。幼稚園の方々から幼稚園長の管理職手当を出せという強い要望があったことは事実でございますけれども、それに幼稚園先生の待遇が悪いということもこれも事実だ。これを引き上げるべく今日まで非常に微力ではありますけれども、努力をして参った。ところが、先ほど来申しますように、市町村の他の公務員との均衡問題で実は非常に頭を悩ましておる、こういう実情でございます。今お話のように、保育所の職員との均衡問題もまた出てくるわけです。保育所の職員は教育公務員ではございません。従ってこの範疇には入らないのだけれども、仕事は似たような仕事をしている、こういう点でこれも他の公務員との均衡問題でやはり問題になってくるわけです。こういう点でいろいろむずかしい問題のあることを一つ御理解いただきたいと思います。
  133. 加瀬完

    ○加瀬完君 むずかしい問題はよくわかる。そこで幼稚園の職員の給与の解決に自治庁とやっぱり折衝をして、一般市町村の職員の給与の問題と切り離して、小中学校の教員の給与と結びつけたような形で解決してくれなければ困るのだという文部省意見、強い線というのが十分に理解されないと、なかなか自治庁は腰を上げませんよ。幼稚園の一般給与の引き上げということで、助役より高い幼稚園であったらおかしいと、自治庁みずからそういう認識でおりましてはこの問題の解決はできない。小中学校の教員なら助役より高い教員がいるのじゃないか、幼稚園先生だって、小中学校の先生だって同じように考えてくれなければ困るのだという主張を強くしていただいて、その主張の裏づけとして単位費用の引き上げといいますか、こういうものをやはり自治庁の手でやらせる、これは大蔵省にも単位費用の問題ですから、文部省として十分てこ入れをしてもらわなければいけませんが、どうも文部省の考えているような認識を自治庁がいたしておりませんというのが、現状でしよう。幼稚園の職務、あるいは何ですか仕事の立場というものを、やっぱり一般職員とばかり結びつけて考えておりますから、そうでなくて小中学校の職員並みに扱ってくれなければ困るのだという認識を十分持たして下さるように、一つ御説得をお願いいたします。
  134. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) 承知いたしました。御趣旨に沿うように今日までも努力をしておりますし、自治庁もこれは教員並みということは知っているわけです。ただ、小中学校の先生の場合には、今おっしやったように任命権が府県にあるし、県費で負担しておるから直接の問題にならぬけれども幼稚園の場合には、市町村の職員ですから非常に身近になりまして、今申しましたように助役との均衡という問題も出てくるかと思いますし、文部省の立場としては、今、御指摘になった通りでございますので、自治庁にはこの点は十分説得するように努力いたします。
  135. 加瀬完

    ○加瀬完君 私は、都道府県負担だから小中学校の教員の給与は割合にいいと、市町村負担だから幼稚園にいけないということは言われないと思う。なぜならば、市町村負担であったときのその当時の小学校、あるいはこれに準ずる、今の中学校に準ずるような一律単価の中等学校の職員の給与というものは、これは一般の市役所や役場の職員の給与とはやっぱり階段があったはずです。非常に上げるのに骨を折ったかもしれぬけれども、ちゃんと基準というものはあったわけです。ですから、幼稚園の給与ももう少し文部省の方で、市町村負担であっても格づけというものをこれを守らなければならないという行政指導を徹底すれば、もう少し引き上げることは私はできると思う。その点を一つ考えて下さい。もうこれで質問終わります。
  136. 北畠教真

    ○北畠教真君 ただいま公立幼稚園の問題について論議がかわされましたが、これに関連しまして私立幼稚園の面に対する二、三の質問をいたしたいと思います。御案内のように、私立幼稚園の幼児保育事業に対するウエートというものは非常に大きいのでありますが、文部省の白書によれば幼稚園の七〇%は私立幼稚園であるというふうに書かれております。こういう際において、いよいよ幼稚園事業を伸展せしめるということになれば、公的な幼稚園の伸展も非常にけっこうでありますが、それとともども私立幼稚園の伸展に寄与するということが国策としてもまた十分考慮の中に入れておかなければならないことだと存じております。ところが、私立幼稚園の方面において、ざっくばらんに申しますと、非常にいい幼稚園もありますし、やはり非常に弱小な幼稚園もあるようでございますけれども、有力な幼稚園が学校法人になりたい、学校法人になって国家の補助も受ける、または融資の都合もしてもらいたいというようなことを考えてみましても、学校法人になりにくいというような条件がありますために、私立幼稚園の中で学校法人格を持っておる幼稚園が現在のところ非常に少ないようでございますが、この点については、文部省といたしましてもなるべく学校法人に昇格せしめるということがおもなお考えと私確信いたしますが、その点、文部当局はいかようにお考えになっておるか、御答弁を願いたいと思います。
  137. 福田繁

    政府委員(福田繁君) ただいまのお話にございましたように、幼稚園教育の中で私立幼稚園の占める地位、あるいは割合というようなものは非常にまあ大きいのでございますが、従って私どもといたしましては、幼稚園の保育が十分所期の目的を達するような、やはり一定の基準というものを理想に掲げまして、その基準にある程度漸次近づいていくような方策をとつておるのでございます。御承知でございましょうが、昭和三十一年に幼稚園設置基準というものを設けまして一応この基準に従って今後の幼稚園の設置というものをはかっていきたい、こういうように考えておるわけでございます。ただ、その設置いたしました幼稚園の基準なるものが、現在の幼稚園実情と特に私立幼稚園実情の合わない点がございますので、そういった点については無理のないように暫定的に基準を下げまして、そして今後は学校法人として設置される場合におきましても、あるいは転換する場合におきましても、十分無理のないように考慮していきたいというような趣旨で暫定基準を設けておりますけれども、終局にはやはりこの幼稚園教育というものを学校法人によって経営されることが望ましいと、こういうような趣旨で奨励をいたしておるわけでございます。
  138. 北畠教真

    ○北畠教真君 ただいま御当局の御答弁の通り、学校法人に昇格せしめると申しますか、学校法人を好ましく思っておるという御答弁でありますが、しかし、設置基準が出まして、種々設置基準に合わせたような動きを各幼稚園とも全国的にとっておるようでございますけれども、たとえば学校法人の設立の際の譲与税の問題であるとか、または解散の場合の残余財産の処分というようなものに関連しまして、学校法人ヘの転換と申しますか、昇格と申しますか、そういうことに非常なためらいがあると、こういうふうに見受けられるところが多いのでございます。学校法人の設立の際の譲与税、これは非課税になっておると、こういうふうに思いますけれども、どういうふうになっておるのでございますか、一つお答えを願います。
  139. 福田繁

    政府委員(福田繁君) ただいまのは幼稚園を設置する際におきまする学校法人に財産を寄付した場合の譲渡所得税の取り扱いの問題の御質問だと思いますが、これにつきましてはいろいろいきさつがございますが、大蔵省といたしましては、この譲渡所得税の問題については、大体、学校教育法の第一条の学校に対してはこれを非課税にするという根本的な方針は持っておるようでございます。ところで、今おっしゃいましたように、幼稚園につきましては、学校法人立以外にいわゆる個人立等の幼稚園もございますので、そういった際に税法の趣旨を没却するようなことが行なわれますと困る、こういうような建前から、幼稚園についてはある一定の基準を設けまして、その基準に合格したものについては大蔵大臣の承認によってこれを非課税にしたい、こういうようなことを考えております。ところで、私どもといたしましては、幼稚園の設置主体はなるほどいろいろございますけれども、やはり学校教育法第一条の学校には間違いないのであります。従って、この設置の際におきましては、相当厳重な審査を経まして、各都道府県に置かれております私立学校審議会の審議を経ました上でこれを認可するという建前になっておりますので、従ってそういった幼稚園に対していろいろ区分をいたしまして、差別をするということはおもしろくない、こういうような建前からいたしまして、大蔵省に対しては基準を設けるのもけっこうであろうけれども、要するに幼稚園が学校法人に切りかわる際におきましては、文部省としても相なるべくは学校法人に切りかわることを希望いたしておる関係もございまして、全部非課税にしてもらいたい、こういうふうな申し入れをいたしております。これは昨年以来、大蔵省といろいろ交渉いたしておりますが、その趣旨も大体大蔵省と話し合って進めて参ったのでありますが、最後の結論には到達いたしておりません、現状は。しかしながら、大体私どもの主張も相当現在のところでは認めてもらえそうなところまできておるのであります。従ってそういうことになれば、現在幼稚園の学校法人に切りかえるという問題も税法の問題からは一応困難は少なくなるのではないか、こういうふうに考えております。
  140. 北畠教真

    ○北畠教真君 ただいま譲与税の問題について文部当局の非常な好意による大蔵省ヘの働きかけの御答弁がありましたが、全国に数千の私立幼稚園があるのでありまして、一日も早くこれが非課税の対象になるということになりますると、幼稚園伸展の上にも非常な大きなプラスになるのじゃないかと思っております。一日も早く大蔵省の了解を取りつけて、何らかの正式な法律の上に明記していただきたい、こういうふうに念願をいたしておるわけなのであります。ところがまた、学校法人にならずに財団法人になるという場合はどういうふうになりますか、この点参考にお伺いしたいと思います。
  141. 福田繁

    政府委員(福田繁君) 個人立から財団法人立になる場合におきましても、やはりその行ないます事業が幼稚園教育ということであれば同様に考えて差しつかえないのじゃないか、こう考えております。
  142. 北畠教真

    ○北畠教真君 これはちょっと筋が幾分違うようでございますが、各種学校が学校法人、財団法人に切りかわる場合も同じようなことになりますか。
  143. 福田繁

    政府委員(福田繁君) これは、各種学校が切りかわる場合も形式としては同じだと思いますが、ただ御承知のように、幼稚園の経営ということではなく、各種学校の経営につきましては、いろいろ種類、あるいは形態その他いろいろ千差万別でございます。従って、この経営上の問題その他いろいろ税法上の問題もありますので、大蔵省としては、幼稚園はかりにそういうことになりましても、各種学校についてはやはりある程度の基準を設けてその基準に合格するものについてだけこれを非課税にしたい、こういうような主張をいたしております。私どもとしても、各種学校といえども教育の事業でございますので、できるだけ範囲を広げたいという考えで大蔵省と折衝いたしております。
  144. 北畠教真

    ○北畠教真君 その点よく了解がいきましたが、個人的な幼稚園におきまして、個人の中でもただ単なる個人と、また宗教法人というような特殊法人格を持っておる、設立者が幼稚園を経営するというようなことがあるのでありますが、一つ学校法人に切りかえるという場合の難点になっているのは、解散時の残余財産の処分問題ということにあるようでございます。もちろん学校法人を立てて直ちに二年か三年、五年して解散するというようなことは考えられませんけれども幼稚園というものが盛んになればなるほど、公立の学校がふえて私立の学校がそれに比較して反対の方向に向かっていき非常に少なくなってくるというようなことがあるかもしれないが、さしあたり公立の幼稚園ができる、片一方では私立幼稚園もできるという状態が考えられる時期ではないか。そういう場合に、現在は国家の委託を受けると申しますか、国家のやれない面を宗教法人なり何なりが国家のためにやっておる、そういう場合に、法律ができて私立学校は必要がないという場合に、解散しなければならぬという事態が起こってきた場合、ただ単なる個人の財産ということではなくして、法人格を持っておるものの財産を幼稚園に寄付するということで幼稚園が解散する場合、これが他に帰属するということになりますると、宗教法人なんかの学校法人への切りかえが非常に難渋になってくるのじゃないか。ついては私自身といたしましては、私立幼稚園、宗教法人的な幼稚園の相違が、そういう場合、設立をしてくれた宗教法人に返るというような格好に持っていってくれれば、非常に学校法人への切りかえも便利になる、何とかこういうふうにやっていただけないだろうか、こういうふうなお話があっちこっちから参っておる次第でございます。この点についての御当局のお気持はいかなるお気持でありますが、一つ質問をいたしたいと思います。
  145. 福田繁

    政府委員(福田繁君) ただいまの御質問の点でございますが、趣旨は非常によくわかるのでございますが、しかし、現在の私立学校法の建前が必ずしもそのようにできてないのでございまして、私立学校を設置します際に寄付された財産は、この解散の際にその残余財産の処分につきましては、寄付行為にその処分の方法をきめまして、そして所轄庁の認可を得て行なうというのが建前になっております。従って、その際に寄付行為に残余財産の処分の方法として書きます事柄は、一定の制約を受けておるのでございまして、私立学校法の第三十条の第三項でございますが、この寄付行為に掲げる残余財産の帰属すべき者に関する規定を設ける際には、学校法人その他教育の事業を行なう者のうちから選定されるようにしなければならない、要するに学校法人その他教育の事業を行なう者に、解散された場合にその残余財産が帰属するように指定をしなければならない、こういうふうな法制の建前になっております。この趣旨は、もちろん教育事業に一たん寄付された財産は、そういった教育事業に使うというりっぱな目的をもって寄付されたものでございますから、それが解散されても、あくまで他の教育事業にそれが使われるようにといういわゆる私立学校の公共性を非常に高める意味の規定だと考えております。従って、まあ個々の場合を検討して考えませんと申し上げられませんけれども、一般的に申しますならば、寺院、教会等の宗教法人の場合におきましては、この三十条の三項に掲げる「教育の事業を行なう者」という解釈には入りかねるかと考えております。従ってこの法文のまっ正面の解釈といたしましては、これは寺院、教会等の宗教法人は含まれないと、こういうように一般に解釈されております。従って、そういうことでございますので、今おっしゃる意味は非常によくわかりますけれども、現行法制の建前から申しますと、少し無理ではないかと、かように考えております。
  146. 北畠教真

    ○北畠教真君 今私立学校法第三十条の三項の規定によって、正面からいけば幾分解釈に無理はあるけれども、学校法人その他教育の事業を行なう者から選定されるようにしなければならないという面を考えてみると、宗教団体であるとかそういうものに対する考え方は幾分これとは正面通りに、額面通りに受け取った解釈とは違った解釈ができるんじゃないかというような御答弁でありましたが、そうでありますか。
  147. 福田繁

    政府委員(福田繁君) 私が申し上げましたのは、決してこれと違った、今申し上げたのと違った解釈ができるという意味じゃございませんので、個々のケースを考えませんと具体的に申し上げられませんが、具体的な実施方法としては何か方法がありそうに思う、ただ宗教法人だからまっ正面からいけないということでなく、宗教法人にもいろいろ学校事業をやっているものがございますので、実際のやり方として個々のものを検討した場合には、方法があるかもしれないということを申し上げたのであります。
  148. 北畠教真

    ○北畠教真君 非常にうるさいようでございますが、第三十条の三項の、「第一項第九号と掲げる事項中に残余財産の帰属すべき者に関する規定を設ける場合には、その者は、学校法人その他教育の事業」と、こういうふうになっておりますが、その他の教育事業、またはその他と教育というのと幾分意味において広狭があるのじゃないか、広い狭いがあるのじゃないかと思いますが、宗教法人法の第二条でございますか、「この法律において「宗教団体」とは、宗教の教義をひろめ、儀式行事を行い、及び信者を教化育成することを主たる目的とする左に掲げる団体をいう。」というふうな書き方がしてあるのでございますが、やはり一つの教育の事業というふうに宗教法人法の第二条が解釈できるかどうか。私たちは広い意味におけるやはり教育の一つの事業じゃないかというふうに考えておりますが、この点のお考えを一つ。
  149. 福田繁

    政府委員(福田繁君) 宗教法人法の第二条の問題でございますが、私どもの一般の解釈といたしましては、やはり宗教団体というからには、ここに書いておりますように、一定の教義にのっとった儀式の執行ということを、あるいは行事の実施ということを目的とした宗教団体でございますので、それがやはり主体となり、信者の教化育成ということもございますけれども、これはまた学校教育と違った意味の広い何と申しますか、教化という面があろうかと存じます。従って、直ちに宗教法人法の第二条の、この宗教法人というものが私立学校法の第三十条の三項の「学校法人その他教育の事業を行う者」、これに入るかということでございますが、今までの解釈ではこれは入らないという解釈をとつておるのでございます。
  150. 北畠教真

    ○北畠教真君 先ほど来局長お話しになりましたが、学校法人に、宗教団体が主宰する学校法人ができ上がつて、このものについて十分検討することによって第三十条の第三項のかね合いがいく場合もあるようなことをおっしゃっておりましたが、もし「学校法人の寄附行為認可申請書」という、何かつづりがありますが、その第二十七条に、「解散した場合における残余財産は、他の学校法人その他教育の事業を行う者のうちから理事三分の二以上の同意によって選定されたものに帰属する。」こういうことが書いてありますが、もしも申請の場合に、解散の場合は宗教法人に、設立者の宗教法人に返すというような文言及び申請書を出した場合、どういうお取り扱いをやって下さるか、仮定の問題でございますが、出す可能性も非常にあるんじゃないかと思いますが……。
  151. 福田繁

    政府委員(福田繁君) これは具体的な問題になりますので、また仮定の問題でもございますので、私がここで申し上げるのは適当でないかも存じませんが、私の解釈といたしましては、一般の宗教法人にそれが、残余財産が返るというような申請をなされた場合には、おそらくそれはやはり法律の規定の趣旨にたがうということで御訂正を願うのじゃなかろうか、ただし、先ほどの問題に関連いたしますけれども、宗教団体はそういった儀式の執行あるいは宗教行事の実施といいあるいは信徒の教化育成という、そういう本来の目的以外に公益事業を営む場合がございます。多く公益事業を行なっておるわけでございますが、特に有力な宗教団体はそういう場合が多うございます。従って、公益事業の中には病院とかあるいは学校とかいうものの経営が相当あるのじゃないかと考えております。従って私は宗教法人に返すということはこれは困るけれども、そういう学校をとらえて考える場合には、これは先ほど申しましたように、具体的にこの法律の趣旨にももとらないような実施方法が見つかるのではないかというように考えております。これはまあ私だけの解釈でございますが、一応御参考までに申し上げたわけでございます。
  152. 北畠教真

    ○北畠教真君 ただいま御答弁の趣旨は、ある大きな宗教団体であるとか、そういうことが含まれておることと思います。もちろん大宗団であるとか、大寺院とかいうようなものは、そういう公的な事業をやっておりますが、それとは違って、個人の寺院、個人の寺院というと語弊がありますけれども、一つの宗教法人、寺であるとか、教会であるとか、こういうものが他にいろいろな公益事業をやっておるというふうにも考えられませんので、何とかこういう面を十分おくみ取りの上、法的には現在のところうまくいかないけれども、何かの方法によって、もしも解散の場合にはその宗教法人、教会、そういうものに返してやるというような、幼稚園奨励のおぼしめしをもって何かの考慮をしてもらいたい、こういうふうに私思うのでありますが、これまた急には参らぬだろうと思いまするけれども、一つ宗教団体が設立いたしております幼稚園、これを学校法人に切りかえていくというような場合に、特別な一つ考慮を払っていただきたい、こういうふうに念願いたしておりますが局長のお気持を一つ重ねてお聞かせ願いたいと思います。
  153. 福田繁

    政府委員(福田繁君) もちろんおっしゃるように、いろいろの場合もございますので、私どもとしても十分検討して参りたいと考えておりますが、ただ一般的に申しまして、宗教法人が幼稚園を経営しておる場合に、それが学校法人に切りかえること自体が、今おっしゃるような問題もございますし、また宗教団体自体のいろいろな都合もありますので、そういった意味から、必ずしも、学校法人が設置主体になるにかかわらず、宗教法人でも民法の財団法人でもよろしいのだというふうに、そういうふうに設置主体を当分学校法人に限定しておらないのも、そこらにやはり理由があるのでございまして、私立学校法を制定しました際にも、そういう点を十分勘案いたしましてやはり実情からして無理のないような経営が行なわれるということが望ましいのでありますので、そういった方法をとつているわけでございます。しかし、おっしゃるような点は、今後十分研究して参りたいと考えております。
  154. 北畠教真

    ○北畠教真君 もう一つ最後に。もちろん宗教法人でありますので、学校法人と趣を異にする面も非常に多うございます。と言いながら、公的な事業、公益事業を行なうということが一つの法人の大きな生命であるということになって参りますと、くどいようですが宗教団体それ自身が幼稚園を経営して、これが学校法人におけると同様な国家の扱い、補助金を出すとかあるいは融資の便とかが同様に受けられるとかいうことになれば、もし学校法人がむずかしいというような場合に、それは学校法人と同様な取り扱いを受けられるというようなことに相なっていけば、これまた宗教法人としての望みが達し得られる、こういうふうに思うのですが、その点についてのお考えはどうでございますか。
  155. 福田繁

    政府委員(福田繁君) そういった個々の助成の問題につきましては、これは今後の問題にもいろいろなりますので、十分個々の場合を研究して、できるだけそういう御趣旨に沿うような方向に、これは幼稚園教育の振興のためにも必要だろうと思います。研究して参りたいと思います。
  156. 清澤俊英

    委員長清澤俊英君) ちょっと速記とめて。    〔速記中止
  157. 清澤俊英

    委員長清澤俊英君) 速記をつけて。  本日はこれをもって散会といたします。    午後三時二十四分散会