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1960-06-09 第34回国会 参議院 農林水産委員会 第34号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年六月九日(木曜日)    午前十時四十七分開会   —————————————   委員異動 五月三十日委員梶原茂嘉君、笹森順造 君、後藤義隆君、増原恵吉君、小柳牧 衞君及び鍋島直紹君辞任につき、そ の補欠として仲原善一君、青田源太郎 君、秋山俊一郎君、田中茂穂君、高橋 衛君及び藤野繁雄君を議長において指 名した。 本日委員櫻井志郎辞任につき、その 補欠として松村秀逸君を議長において 指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     堀本 宜実君    理事      仲原 善一君    委員            青田源太郎君            秋山俊一郎君            石谷 憲男君            植垣弥一郎君            岡村文四郎君            重政 庸徳君            高橋  衛君            田中 啓一君            田中 茂穂君            藤野 繁雄君            松村 秀逸君   政府委員    水産庁次長   高橋 泰彦君   事務局側    常任委員会専門    員       安楽城敏男君   説明員    自治庁財政局理    財課長    佐々木喜久治君    農林省農地局建    設部災害復旧課    長       中村 武夫君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠互選の件 ○農林水産政策に関する調査  (派遣委員報告)   —————————————
  2. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告をいたします。  五月三十日梶原茂嘉君、笹森順造浩君、後藤義隆君、増原恵吉君、小柳牧衞君、鍋島直紹君がそれぞれ辞任され、その補欠として仲原善一君、青田源太郎君、秋山俊一郎君、田中茂穂君、高橋衛君、藤野繁雄君がそれぞれ選任されました。また、本日櫻井志郎君が辞任され、その補欠として松村秀逸君が選任されました。   —————————————
  3. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) この際、理事辞任についてお諮りをいたします。  田中啓一君から都合により理事辞任したい旨の申し出がありましたが、これを許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) 御異議ないと認め、さよう決定いたしました。  つきましては、直ちにその補欠互選を行ないたいと存じますが、その互選の方法は、成規の手続を省略し、便宜、その指名委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) 異議ないと認めます。それでは私より仲原善一君を理事指名をいたします。   —————————————
  6. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) 委員派遣報告の件を議題にいたします。  去る五月二十八日の本委員会の決定に基づき、チリ地震津波による災害状況調査のため、第一班北海道、第二班三重県及び和歌山県に委員派遣が行なわれ、岡村及び植垣委員におかせられましては、遠路お出向きをいただきありがとうございました。これから順次御報告を伺うことにいたします。
  7. 岡村文四郎

    岡村文四郎君 それでは御報告を申し上げます。去る五月二十四日未明に襲われましたチリ地震津波災害状況視察のため、五月三十一日から六月五日まで北海道被害地に派遣せられましたので、その結果を御報告申し上げます。  今回の派遣せられました委員は、当委員会から私、その他社会労働委員会から派遣せられました井川伊平委員大谷藤之助委員の三人が同行いたしましたのでございます。  まず、北海道道庁に御見舞を申し述べ、被害状況及びこれが対策等につきまして説明を聞き、それから現地におもむき、釧路地方浜中村、厚岸町、釧路市、白糠町、十勝地方浦幌十勝太豊頃村の大津広尾町、日高地方の幌泉町庶野、様似町、浦洞町、渡島地方函館市、上磯町等を歴訪し、見舞を申し述べるとともに、現地調査を行ない、いずれの市町村におきましても、衷心より感謝の意を表し、旺盛なる復興再建の決意を示されましたことは、深く感銘いたしました。  今回のチリ地震津波襲来の模様を釧路地方についてみますると、五月二十四日の午前三時ごろ浜中村で、早朝出漁する漁民が海の異常なことを察知し、村民に連絡し、浜中村長は四時三十分釧路気象台津波襲来について問い合わせましたところ、異常を感じていないという回答に接したそうであります。しかし、村長は警鐘を鳴らして避難を命じたのでございます。津波は二時四十分、〇・九メートル、その後喜・五メートル、一・六二メートル、二・三メートルとなり、四時四十五分、釧路防波堤においては三・五メートルを記録し、十一時三十三分までに少なくも十二波が間断なく襲来したそうでございます。これを昭和二十七年三月四日の十勝沖地震津波と比較してみますと、その際は四波まで襲来しておりまするが、今回は十二波まで襲来し、また最大波高は、前回は三・二メートルでありましたが、今回は三・八一メートルでございます。道庁説明によりますと、六月一日現在で北海道における人的被害は、死者九名、行方不明六名、負傷者十五名、計三十名、家屋被害は、住宅全壊五十七戸、流失百五十二戸、半壊百二十四戸、浸水、床上千三百五十八戸、床下千六百四十五戸、非住宅千九十八戸、計四千四百三十四戸になっております。金額が二億八千万円。農業被害は、田畑冠水十八町、農業協同組合事務所浸水一棟、北連倉庫浸水二棟、その損害は約一千四百万円。林業被害は、素材の流失二万八千石、製材の流失六百二十石、海岸砂地造林地被害は六・三八ヘクタール、非共同施設浸水五棟でその額は約七千万円。水産被害は、動力船舶滅失五十一隻、破損百八十一隻、計二百三十二隻、約五千八十万円であり、無動力漁船は、滅失九十七隻、破損百八隻、計二百五隻、約六百万円。漁具滅失大型定置二十カ統小型定置百九統、その他刺し網延べわ等で六千八百万円余。水産施設被害は、共同施設四十六棟、非共同施設二百八十三棟、約二千九百万円。生産物被害は、スルメ、汐虫魚かす等浸水または流失二千六百万円余、その他ほし場、ほしむしろ等五千二百万円余、計二億三千万円余。土木被害は、漁港九港で約二億円、港湾三港で約三億八千万円、海岸堤防七カ所で約十二億円、その他約二億円、計約十九億六千万円。その他の被害は、約五億五千万円で総計三十一億余万円になっております。このうち、その約三分の二の二十億八千万円余が実に浜中村、特に霧多布を中心とする地帯被害であります。浜中村は東に大きく開いた霧多布港をかかえて、これが西側の太い短い腕に当たっており、人口三千百三十九人、戸数六百五十戸のうち、罹災者は二千七百五十二人、戸数四百六十二戸に達し、しかも、漁業従事者が千二百七十二人、戸数二百十七戸を占めております。浜中村の海岸道路に沿った家は土台ばかりを残して流され、道路より約八百メートルくらいの海岸の二メートル半以上の高さの電線に海草がひっかかっておる始末でございます。道路の山側へ二キロばかりの泥炭地のまん中には屋根のみが点点と散在し、また漁船も七、八隻打ち上げられて、津波の激しかった状況を示しております。  霧多布町並みに入るところの上膊部に当たる陸地続きの一部は、前後数回にわたる津波の往復により切断され、幅八十メートルから百二十メートルの水路となり、水深は六メートルから八メートルの所もありますが、霧多布町並みは孤立し、この地一帯漁具倉庫海草ほし場、家等流失しております。この水路を船で渡りますと、下膊部に当たる家の立て込んだ町通りでありますが、自衛隊が七日間、延べ千四百余名が出動整理したあとだということでございましたが、しかし、被害の跡は歴然として、まことに悲惨をきわめたものでありまして、罹災漁民生活基礎である漁業生産手段たる漁船漁具、漁網、綱等を奪い去られ、昭和二十七年三月、十勝沖地震災害復旧資金借入額元金残額と、これが延滞利息の合計約三千四百万円が未解決であって、その上、今回は前回を上回る被害を受け絶望に嘆く漁民の悲惨な姿はまことに言葉に表わし得ないものがございます。金を借りようにも借りられず、また借りた金も返すことができない真に窮迫した実情にかんがみ、思い切った対策がとられなければならぬと痛感された次第でございます。かかる惨状のうちにあって、道庁釧路支庁自衛隊等においては緊急の措置が講ぜられ、救済の手が差し伸べられておりますことは深く感銘いたした次第でございます。  しかして、当面切断個所水路にかける橋梁の架設、避難所のたき出し実施期間延長住宅の建設、半壊家屋補修費の増額、失業救済工事の施行、海産ほし場の復旧漁船漁具確保等、幾多の事項について強い要望があり、全く同感にたえないところでございます。  次に、厚岸町は、天然良港である厚岸湾と、それに続く厚岸港をかかえ、湾口は東南に開いておりますが、津波湾内の西岸に打ちつけ、奥に続く厚岸湖の湖底の泥や砂の大掃除をして厚岸湾に堆積しております。従って、被害総額約二億円のうち、カキ、アサリ・ホッキ、帆立・オゴノリの損害が実に一億六千三百万円余に達しているとのことでございますが、詳細に調査すれば今後さらに増大するであろうと予想されております。かくして、天然の宝庫と呼ばれております厚岸湖の水産資源は一朝にして一切が失われ、天然記念物にも指定されようとしております観光名所カキ礁も完全に姿を消したのでございます。これが対策として、カキ礁基礎を作るため約二千八百万円をかけて、干潮時を利用し、カキ貝がら、砂などを投入し、来春は大量に稚貝を購入し、これが復旧に努力することとしておりますが、ホッキ、帆立の漁場は、詳細な調査をしなければ、復旧のめどがつかぬようであります。  釧路市におきましては、市消防署望楼勤務者釧路川の流木の流れを見て、異常な引き潮に、十勝沖地震経験から見て津波によるものと判断し、四時四十分ころ、サイレンを吹き鳴らし、そうして四時五十分の第三波による最高三メートル七十の押し波で、漁船約三千七百万円、はしけその他約二千百万円、船舶荷役設備四百七十万円、木材流失一億一千百万円余、その他約一億二千万円の被害を引き起こし、釧路港は釧路川の泥砂が流入し、航路が埋まり、これが復旧には相当の経費を要するものと見込まれております。目下詳細調査中であります。また当市においては、浜中村の被害が激甚である現状を聞き、これが救済のため、カン詰、乾めんを送り、また水道施設等復旧のために専門職員を派遣する等、全力をあげ協力いたされております現状を聞き、感服したのでございます。  白糠町の被害総計一千六百万円のうち、河川損害は一千万円と大半を占め、水産損害約四百七十万円で、道庁昭和三十三年度から継続実施中の白糠海岸侵食対策工事による護岸工事のうち、約二百メートルができ上がっており、このため家屋浸水相当防止できたのでございます。これが早期に完成できますことを心から祈っておるものでございます。  次は十勝支庁管内でございますが、これが浦幌町、厚内及び十勝太豊頃大津砂丘のあった所は非常に被害が軽少にとどまっておりますが、今度の津波砂丘流失しましたので今後の災害が気づかわれますので、特に厚内漁港早期完成十勝川下流の治水工事促進大津港の修築促進及び砂防堤増設等急務とされておりました。また漁船復旧については、どこでも異口同音に、伊勢湾台風のときとられたように、三人で一隻の共同利用では復旧にならぬので、いかんともいたしかたなく、一人一隻を要望されておったのであります。  広尾町は、広尾港と音調津港の二漁港を持ち、特に広尾港は襟裳岬に近く十勝管内唯一良港としてその背後地発展に果たすべき役割が大きく、商港としての発展をも期し、漁船に対しても避難港としても重要であり、年間水揚げ七億円といわれる所でございます。これが整備拡張促進と、音調津港の改修が特に要望されておりました。しかして、広尾港においては、海岸護岸堤があるために被害最小限度にとどまっておりますことは明らかでありますが、しかし、この護岸堤も今度の経験により延長、整備しなければならないと思われます。また美幌川河口近く、海産ほし場を強く要望し、その設置に対しても努力中であるとのことでございます。  次は日高支庁管内でありますが、この管内被害は、直接間接を合わせて約六千万円であり、大部分水産被害であります。この中で最も大きな打撃を受けましたのは庶野でありまして、庶野港が拡張工事のため、現在の漁港東側防波堤を利用して新漁港の掘さくを行なっておりましたところ、津波のため旧漁港が満水となり、その勢いによってこの防波堤五十メートルが欠壊し、旧漁港に繋留中の動力漁船二十隻が一瞬の間に掘さく中の七メートル半下の岩盤上に折り重なって落下し、非常な損害を受けております。しかして、これらの被害に対しましては、漁港復旧海産ほし場の造成等のため、長期低利融資と、被害漁船乗組員に対する労賃収入の道を与えることが急務といわれております。  また渡島支庁管内で、函館市は、函館港に沿う市街地の浸水による損害が多く、中でも倉庫関係二億七千万円余、うち政府物資の玄米、澱粉、大麦、小麦等三千四百万円があります。水産関係被害は、約五百九十万円で、これに対する措置としては、特に低利長期融資を希望されております。上磯町の被害のうち、函館市内浸水したため、油脂その他が流れてきて、潮引きの際海底に付着し、貝類の死滅もはなはだしく、これら資源の回復には四、五年を要するということでございます。  以上が今回の調査概要でありますが、その結果から見て被害地要望等を総合して考えますと、津波災害を受けるところはいつも大体定まっており、零細な漁民から生活手段を奪っているようなことになりまするので、沿岸零細漁民は、金がないため、津波被害を受ける場所から動けるものも動けないことに相なっております。  また北海道襟裳岬から室蘭市に至る海岸は、東からの海流が沿岸で非常に強く、海岸侵食が目立ち、数カ所で国道、鉄道の退避を行ない、また考えられておるのでありまして、十勝支庁沿岸砂丘広尾海岸防波塀効果を与えますと、被害を防ぎ国土の保全をはかるため、被災地には、緊急に、岩手県田老町のように堤防防波堤を築くことが最も大事だといわれております。ぜひこの上も遺憾なく処置されることの希望がございました。  以上、調査概要を御報告申し上げますが、幸いに各委員各位の御配慮と御協力を賜わりまして現地視察して参りましたが、被害者要望をいれ、政府に対しても、被害復旧被害者の救助に遺憾なきことを措置されますようにお願い申し上げまして、御報告にかえます。
  8. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) 御苦労でございました。  第二班の植垣委員の御報告をお願いいたします。
  9. 植垣弥一郎

    植垣弥一郎君 御報告申し上げます。  つきましては、今回和歌山三重県下被害の多いところと見られているそれぞれの都市、港湾数カ所視察して参りましたのですが、その十数カ所の個々の災害実情につきましては、別に報告書を作りまして、自然これを速記録で御承知願うと、今日のところは、私といたしましては、その大要と申しますか、津波特異性、両県下被害総額、特に真珠について、また、その対策について等、簡単に御報告を申し上げたいと思いまするが、報告書速記録に御記載願うという事柄はそれでよろしゅうございましょうか。
  10. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) 植垣要望報告書会議録に掲載することについては、その通りに扱うことに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  11. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) 御異議ないと認めます。そのように取り扱います。
  12. 植垣弥一郎

    植垣弥一郎君 それでは御報告申し上げます。  この津波特異性と申しますか、その一つ被害の種類と申していい事柄が、今度の被害前回伊勢湾台風被害に比べまして、今度は公共物の、公共施設被害で格別のものはありませんでした。ほとんど全部が民有の資産と申していいもののみでございました。実情を見、かつ聴取いたしまして、まことにお気の毒の次第に感じたものでございます。それから被害の地域の関係なんですが、前回は、全体に普遍的に被害があったようでございまするが、今度のはきわめて部分的であって、その部分被害がまたはなはだしく深刻なものでありました。  次に、今度の天災の形と前回の形を比べてみますと、前回のはいわゆる台風一過というそのときに大きな被害があり、その前後の余波でまた被害を重ねておったということのようであります。今度のはそうでなくて、夜明けごろから一、二時間置きに数回の津波が繰り返されたと、最後の夕方の津波は、徹底的な襲来効果を上げたといったような形で逃げ去ったということでありました。その潮高は三メートルないし五メートルというのが皆さんの一致した説明でございました。その数回の襲来状況を聞きましたのですか、まあ非常な勢いで押し寄せてくると、さらに強い反撃の力を加えて引き上げると、それを数回繰り返したわけなんですが、ほとんど激流が鳴門海峡の渦巻を見ているような実情であった。海底までもえぐり去った次第で、当時の湾内の水はあるいは黄色く、あるいは黒く、台風、暴風雨時の河川のはんらんを見ておるがごときありさまであったということでありました。前回台風被害との比較がいろいろになされておりました。そういう状態でございましたが、この両県下被害の全体を承って参りましたですが、三重県の被害総額は百四億四千万円、このうちで農林関係のものが二億六千七百万円、それから水産関係のものが五十九億五千万円でありまして、この金額のかれこれ九五%に相当いたします五十七億円が真珠関係被害となっておりました。この被害現有いかだの勢力八万台の六割弱に当たる数でございます。御承知通りに、三重県ではいかだ登録制を実行いたしておりまして、三十五年度におきましては、真珠用いかだが六万台、母貝用いかだが二万台ということでございました。いかに真珠養殖事業損害が大きかったかがうかがえまして驚いた次第でございます。  和歌山県の全体被害関係でございますが、十四億三千万円でございます。千万円以下の端数は一応除いて申し上げます。そのうちで農林水産関係の全額が八億七千万円でございまして、これの大部分の、そのうちの水産関係が七億、そのうちの九割五分に当たる六億七千万円が真珠損害であります。和歌山県ではいかだの台数が四千五百前後であったようでございますので、八割に相当するいかだ流失大破となるわけでございます。また、この総損害額を事故のありましたいかだの数で割ってみますと、三重県の一台当たりが十三万円になり、和歌山県の一台当たりが十八万七千円になります。こういう状態でございます。  特に真珠被害の事情でございますが、どうしてこんなに大きな損害を生ずるに至ったかという理由の一、二を御報告申し上げます。その一つは、流失大破伊勢湾台風のときの比でない損害でありまして、先ほど申し上げましたような損害比率になっております。そのほかに脱落回収率が非常に違うのでございます。前回いかだからつるしてあるかご、その他の真珠貝の海底脱落、沈下した割合と、今度のその割合とは著しく違うのでございます。また回収率の方は、前回とは、非常に捜査が困難なために、伊勢湾台風のときには、脱落した海底のものは五メートルないし二十メートルの所で収拾をした。今度のは先ほど申し上げましたような激流状態でありましたために、十五メートルから三十五メートルくらいの深さの所に落ちておるということであります。そしてかご並びにいかりその他いろいろのロープ等激流の影響でからみ合ってまるくなって、いかだの二台分、三台分というものが一かたまりになって沈下しておって、どうしても起重機をもって上げなければ引き上げができないという状態でありまして、現場も見て参りました。  それから死滅率相違がよほど違うようであります。前回は、いかだの常にある養殖場の付近で沈んだわけですが、今度は湾内湾外にかけて沈んでおりまして、いまだに起重機による引き上げもできないものですから、引き上げても長く海底に沈んでおったということと、海底を攪拌されて泥をかぶっておるということ等であらかた死んでおる。死んでいないまでも非常に疲労しておるので活動ができるかどうかは期待しがたいということで、死滅率相違について悲観論相当にありました。  それから損害見積もり方が適当であるかどうかということなのですが、これは視察に出発する前に、当委員会におきまして真珠年産額損害見積もりとのつり合いがどうかということで御質問があったことを記憶いたしておりましたので、その点もできるだけ調べてみようという気持でそれぞれ聴取に耳を動かしたわけでございまするが、ずっと津波の来る前のいかだ並びに母貝取引値段などを調べてみました。この調査には、県庁と業者の信用のある代表者との合同調査につき協議されたとのことでありまして、それぞれの経営者帳簿を持っておりますので、帳簿による見込みも立てたということでございました。総額で見まして、被害直前の総資産真珠養殖事業に従事しておる業者の海上及び関連資産が、大体帳簿で百二十三億だということでございました。今度の被害は、先ほど申し上げました五十七億円でございますから、四割六分に相当する損害に当たっておるわけでございます。御承知通り真珠の貝を完成するまでには、稚貝から始まり母貝を経て作業貝となり、最後の回収するまでには五年ないし六年かかるということは、これはもう事実でありまするので、そういう点から考えまして、一般産業のごとき仕掛品の程度ではおさまらぬわけでございます。それほどの長い期間養殖を要する事業でありまするので、仕掛品年産額に比べまして相当の量に上るべきはやむを得ないことだと存じました。それでこの五十七億の損害の中には、今後の生産減、それから休業中の損害等は見積もっていませんので、今の見積額は低く見過ぎたということがあっても高く見過ぎておるということはないのじゃないかと考えて帰りましたけれども、なお調査した上でなければ自信を持って御報告することはできません。出発前当委員会におけるそのようなお話もありましたので、入念に聞き取って参ったわけでございます。  それから両県の流失大破いかだの一台当たり損害を比較してみますると、三重県では十三万円、和歌山県では十八万円となっております。だんだん調べましたところが、三重県は古くから事業が発達しておるので相当償却をしておる。帳簿価格にいたしましても、和歌山県の一台四万円前後に対しまして、三重県が二万円前後であるといったようなことも違いの一つであります。その他の施設にいたしましても、三重県の方には余裕があって償却をし、帳簿価格が低くなっておるようでございました。特に違いますのは、和歌山県は真珠養殖事業としては新しい事業地帯でありまするために、どの港も、どの入江も非常に栄養が豊富であり、海水の衛生状態がいいのだそうでございます。それで良質の大たまを作るということに専念しておる人が多かったようであります。従って、仕掛品となっておる作業中の真珠も自然一台当たりにいたしましても三万円や四万円は高くなっておるということは間違いはないであろうと思いまして、この三重の十三万円、和歌山の十八万円は、いずれも掛値の見積もりではあるまいというようなことを感じておる次第でございます。  それから現地でいろいろ要望がありましたが、これは高率の補助、融資償還期間、利率等、伊勢湾台風のときと同様に取り扱ってもらいたいということでございました。これにつきましては、中金にしろ農林漁業金融公庫にしろ、現金をつかむまでの手続がとても長くなっていて事業そのものには間に合わない。意味をなさぬことがある。貸し出し事務の促進方について、農水委員会等も御心配を願いたいということでございました。それ一からもう一つは、伊勢湾台風のときの補助金の対象になりましたものは、いかり十台以下を所有して経営しておるきわめて小規模な業者だけが補助の対象になった。昨年はそれでしんぼうできたけれども、ことしはそうは参りませんので、五十台、百台の規模のものにまでも範囲を拡張してくれることに配慮を願うという、それぞれ切なる希望、悲壮なる要望がありました。  それから真珠養殖事業というものは、私はなはだうかつでよく存じなかったのでありますが、御承知通りに、何にしても世界で日本だけと言ってもいい特産物である。それの消費は大部分が輸出であるということ、輸出高につきましては、確とした統計はございませんが、意見はまちまちでございます。けれども、真珠加工品を加えて七、八十万円、かれこれ百万円という説明が多かったのであります。三重県の役所の調べの水揚高を見ますと、その通りにはなっておりませんが、いずれにしても相当金額に上る輸出品である。そのコストは全部国内の資材、国内の労力で間に合っておるという点も、特異性のある重要品だと考えております。それにもかかわらず、こういったような災害があった場合に、その災害が短時間に復旧し得る用意が、業界におきましても、国におきましてもできていない。どういうものであろうかということを考えるのであります。  それから生産を調節し、価格を支持する、これらも申すまでもない必要なことでございまするが、それらに対する方策が立っていない。また業者の力が不十分である。これを他の資金の面におきましても、国の方におきましても、この災害時には必ずある程度の値上がりがあるのは、これは一般商品と同じであります。その場合に、手持ちの真珠で、その差益で損害の幾部分でもカバーするといったような用意のある対策が行なわれていない。それから第三国人と申しますか、いろいろにあるのでしょうが、真珠の暴利を防ぐというような方策が立っていない。現地の人が申しておりましたのは、伊勢の真珠の価格とニューヨークの価格は、いつも四倍だ、いや、三倍を下ることはないが、まあ三倍だろうといったようなことで、いずれにしても日本の生産者が手取りになる価格と、バイヤーがアメリカで換金するときの価格とはあまりにも違いがありまするので、これを日本人以外の人の暴利獲得の、やるままにまかしてはおけないじゃないかといったようなことを考えておった次第であります。  この真珠対策につきましては、当委員会におきましても十分に御研究に相なりまして、政府当局を督励することも必要ではあるまいか。対策についての思いついた考えがそのような次第でございます。  はなはだ簡単でございましたが、私の報告を終わりといたします。ありがとうございました。
  13. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) 御苦労でございました。  ただいまの御報告に関して御質疑の向きは御質疑を願います。  なお、政府からの出席は高橋水産庁次長、佐々木自治庁理財課長、中村農地局災害復旧課長でございます。
  14. 仲原善一

    仲原善一君 水産庁にお伺いいたしますが、実は私も党の方で派遣されまして、北海道を見て参ったわけでございますが、特に激甚地である浜中村の霧多布の問題でございますが、そこで感じましたことは、小型漁船、結局三トン未満の漁船被害相当多いわけでございますが、この対策について、先般の伊勢湾台風の場合には、協同組合で三隻に一隻については相当高率の補助もやったり、それから起債の問題も考えてやったりいろいろ手厚い保護をやっておるわけでございますが、この制度が、北海道霧多布を見たときの感じでは、どうも共同組織という形で小型の漁船を救うということが非常にめんどうでございますという実地の直見でございます。そこで、三トン未満の小型漁船について、伊勢湾台風のようなやり方以外に、何か直接漁民の方に、特にこれは零細漁民でございますが、そういうものについての施策というものが必要ではなかろうか。たとえば補助金交付にしても、個人であればなかなか法制上むずかしいわけでありましょうけれども、何か組合を通じて、組合の船にしておいて、それを補助して貸せるというような形でも考えてもらうと、直接零細な漁民が恩典を受ける。そうでないと、どうも非常に激甚地の小型の漁船にはなかなか救済策がめんどうであろうというふうに感じましたので、その点どういうお考えになっておりますか、この点が一点。あわせて、時間がありませんから一緒にお話し申し上げますが、これもやはり霧多布の問題でございますけれども、コンブのほし場——ほす場所でございますが、これがやはり普通であれば、共同経営の形で、共同の利用施設ということになるのが普通でありますけれども、現地を見てきますと、個人の所有地で、相当零細な漁民は高い借り賃を払ってそこを借りてやっているというような状態であります。これもやはり今度の災害を非常に受けておりますけれども、救済の方法がないわけでございまして、そういう場合に水産庁としても、将来は、そういうほし場のようなものは、共同施設という形で指導するなり、いざ災害というような場合には、それで高率補助ができるという仕組みに指導した方がいいじゃないかという気持ちを持って参りましたので、それが第二点。それからその次は、先ほど岡村先生の御報告にもありましたが、漁業協同組合の借金が現在三千四百万円ばかり延滞になっておるというようなことでございますが、政府の財政投融資でこういう場合の救済をするときに、そういう現在ある借金をどういうふうに考えてもらえるのか。延納、滞納があるからもうできぬということであれば、これは非常に絶望的なことになるわけですが、これはほかのいろいろな地域の組合についても共通の問題であろうかと考えますが、これは現在の借金の滞納、延納が相当額あっても、それは別ワクにして、新しく災害関係融資ができることに、法制上できるようにしてもらえればいいと思うのですけれども、その辺のお考え方が一つ。それからその次には、先ほどお話のあった厚岸の問題でございますが、これはカキ養殖がほとんどやられております。そこで浅海養殖の立場で、これは共同施設になろうと思いますけれども、全部カキの礁といいますか、カキ礁と言っておったようですが、それが波でさらわれちゃって、カキの来るところがなくなるというようなことでございます。それの具体的な対策等について、普通のやり方ではいかぬと思います。何か至急にその点を御研究を願って、養殖のやり方、アサリも同様でございましたが、そういう点若干気がついてきましたので、それらの点についての御意見なり聞かしていただきたいと思います。
  15. 高橋泰彦

    政府委員高橋泰彦君) まず第一点の御質問は、伊勢湾の場合には、小型漁船復旧につきましては、三そうに対して一隻の割合共同利用ということで、一隻の建造費の八割を補助してやったけれども、今回はそのような三そう一隻というようなことでは実情に沿わないので、その対策はどうかと、こういう御質問だと思いますが、御指摘の通りに私ども考えております。と申しますのは、伊勢湾台風の場合には、相当広範囲な被害がありましたために、漁業者の個人々々の船をそのままの格好で復旧することが資材の面からできなかったわけでございますけれども、今度の災害は、幸いにして、漁船につきましては、伊勢湾よりも少ないような関係で、御指摘のように、若干の施策よろしきを得るならば、小型漁船の全部について急速に建造できるのではないかというふうに考えておる次第でございます。従いまして、伊勢湾経験から申しましても、三そうに対して一そうで、従来の三そう分の共同利用をするというのも特徴はありましたが、実施面でなかなか困難な点もございましたことは事実でございます。従いまして、その経験に徴しまして、また、ただいまお話ししたような資材面の状態から申しましても、今回は、できれば御要望のように、一隻々々に対しましても何らかの助成をするような方法をやりたいというふうに考えて立案し、それぞれの関係当局と打ち合わせ中でございます。  それから第二の御指摘の点は、コンブその他の海草類のほし場と申しますか、ほす場所の問題でございますが、北海道におきましては、このほす場所が非常に、海草類の生産に対しまして、本質的と申しますか、非常に重要な影響のあることは御指摘の通りでございます。で、従来の漁業制度改革をやりましたときの方針といたしましては、このような土地が個人の所有になっておって、しかも、現物で小作料類似のものが取られるということは困りまするので、なるべくこれを関係漁業協同組合と個人所有者との間に円満な賃借契約を結ぶということ、それからその問題につきましては、海区漁業調整委員会が中に入りまして、最終的には裁定で契約関係を改善していくというような方式でやって参りまして、大部分の問題につきましては、戦前とは比較にならないほど改善されたと思っております。ただ幸か不幸か、今回の災害地は非常にその改善がおくれておる地帯でございまして、御指摘のように、いまだに海岸には個人の所有地がありまして、漁業者相当高い現物を納めませんと、コンブをほすことができないというような状況になっております。今回はそのほし場が相当被害を受けた模様でございます。この対策をどうするかという御質問でございますが、ただいままで私どものやってきた方法は、御案内の通りに、組合の共同利用施設につきましては、相当思い切った補助もできるのでございますけれども、個人の所有するほし場の復旧につきましては、実は今までやったことがございませんし、この問題はなかなかむずかしい問題ではあるまいかというふうに考えている次第でございます。ただその後、現地漁民の意向を受けまして、北海道庁がただいま水産庁の方に打ち合わせに参っておりますが、その考え方は、単なる個人所有地の復旧だけではなくて、別に漁業協同組合が、共同利用施設としてほし場を新しく造成いたしたい、その場合に何らかの助成の方法がないか、こういうような話で、ただいま参っておりますが、これはまことにごもっともな御要求で、できますればこういう要求に応じ得るような何らかの措置を講じたい。単なる災害復旧だけではなくて、それを機会に、新しく共同利用施設をやるような場合には、何とか予算措置をもってしても、これの御要望におこたえしたいということでただいま検討もし、折衝も開始いたしておる段階でございます。  それから第三の御指摘は、これは非常に重要な問題だと思いますが、今度の災害地におきましては、やはりたび重なる災害のために、前の災害の借金が重なっておる地帯も少なくはないように見ているわけでございます。従いまして、この地帯には、やはり伊勢湾と同様、金融その他の特別措置法その他をもっておこたえいたしたいというふうに考えておりますが、ただ実際問題としては、御指摘のように、借金が山ほどあるところに金融のワクを設けても、一体金が流れていくのだろうかという私どもも非常な不安を持っております。従いまして、これにつきましては、延納その他の措置などただいま検討しておりますが、ただ根本的には、この制度だけでは、おそらくなかなか実際問題としては解決が至難ではあるまいか。従いまして、できればこういう地帯につきましては、やはり金融の道を開くことも当然でございますが、しかし、それだけで満足するのではいけませんので、何かそういう際には、やはり新しく補助金制度を設けるとか、補助金のワクを拡大するとかという措置が伴いませんと、単なる延納その他の措置だけでは、おそらく十分ではないのじゃないだろうかということを、私どもただいま心配いたしておる次第でございます。対策の案といたしましては、やはり延納その他の措置を考究すると同時に、何らかの補助金の方法も考えていきたい。しかし、その補助金は、ただいまのほし場の問題にも関連するわけですが、たび重なる部落の被害につきましては、何か部落的な施策を講じてみたい。その施策につきましては、やはり補助金をもって裏打ちして参りたいというようなふうに考えまして、検討いたしている次第でございます。  それから第四点の厚岸カキの問題でございますが、これは真珠の問題にも関連いたしますが、このいかだ被害につきましては、伊勢湾と同様、ないしは御要望のように、実際問題としては、それ以上の何らかの補助をして再建するような方法を考えて参りたいというふうに思っているのでございますが、ただいまの厚岸カキ養殖は、いかだだけの問題ではなくて、もうちょっと別の被害の問題と、将来の増殖の問題があろうかと思いますので、この点はなお現地の様子をよく聞き取りまして、その上で何らかの可能な方法を考えて参りたいと考えております。従いまして、この点はしばらく実態の検討をさせていただきたいというように考えます。
  16. 仲原善一

    仲原善一君 ただいまの御答弁の中のほし場の問題でございますが、これは現地村長なり組合長の意見もこの災害を機会に共同施設に切りかえたい、新しく新設したいという希望でありましたので、その点はただいまお話の通りに何かそういう意味の助成策もあるいは災害と切り離してもいいのですからお考えを願いたい、これは要望として申し上げます。
  17. 藤野繁雄

    藤野繁雄君 いろいろ問題がありますけれども、さっき真珠の話があったから真珠の話を少し資料としてもらい、また答弁できたらば答弁していただきたいと思っております。  御承知通り真珠は日本におけるところの重要輸出の特産品であります。それでどのくらいの程度まで真珠養殖するかということを政府は計画を立てておられると考えておるのであります。その計画に対して、伊勢湾台風のためにどのくらいの損害を受けて生産率が減ったのか、また今回の災害によってどのくらいの生産が減る見通しであるか。生産が減じてきたならば真珠の価格に影響を及ぼしてくる。であるから、従来の真珠の値段と伊勢湾台風の影響を受けた真珠の値段と今回の災害を受けた真珠の値段がいかに変動しつつあるか、また変動する見込みであるか。今回の災害いかだその他のものの復旧はある程度できると思っておるのであります。しかしながら、その土台になる稚貝であるとか母貝であるとかいうようなものになったらば速急に手配ができるとも考えられないのであります。自然がこれを支配するのであります。そういうふうなことだったらば、稚貝をどこからどういうふうな方法で生産して、そうして政府が理想としておられる真珠の生産額にまで達せられる見込みであるか、こういうふうな点について資料として御提出を願いたいと思うのであります。またそれについて今わかっていることであったらば、わかっているだけ御説明をお願いしたいと思うのであります。
  18. 高橋泰彦

    政府委員高橋泰彦君) ただいまの御要望でございますが、これは委員長からの御要望もございますれば資料として提出いたさせていただきたいと思います。ただ、ただいまわかっていることだけでお話し申し上げますと、真珠は御指摘のようにかなり重要な輸出品でございます。で、今までの真珠はやや生産が過剰ぎみでございましたのでございますが、これに対しましては、御承知のように真珠養殖事業法がございまして、この真珠養殖事業法のもとに、非常に厳格ではありませんが、一応の生産目標を各県に出させまして、その計画を基準にしながら抑制し計画化しておるような状態でございます。しかしながら、これの規制は必ずしも十分ではございませんので、何とかこれをもう少し厳重な規制をしたらどうかという要望もないわけではございませんが、まだ漁業者の意思が必ずしも一致いたしませず、やはり自由にしてもらいたいという御要望の方も、特に後進県と申しますか、これから新しくやりたいという漁業者についてはその要望もありますようで、なかなか割り切れない問題だと思いますが、ただいま水産庁といたしましては、そういう要求もあるけれども、全般としてはやはり程度の問題はあるにしても、何とか計画的な方向に持って参りたいということで、真珠養殖事業法を中心に運用いたしておる次第でございます。で、このたびの被害は、先ほど御報告がありましたように、相当被害でございました。従いまして、おそらく見通しといたしましては、この両三年は生産は減るであろうというふうに考えております。なお一番心配する点は、ことに経営がこのように被害を受けて苦しくなりますと、どうしても粗悪なものが市場に出てくるのではないだろうかという点をかなり心配いたしておるわけでございます。全般としては真珠のたまが上がる傾向にあることは、これはもう当然かと思いますが、ただこの価格の変動によりまして受ける受益者が、必ずしも被害者とは一致しておりませんので、そのような問題についても私どもは検討いたさなければならないのではないだろうかというふうに考えております。  それから稚貝、母貝の見通しの問題でございますが、これはやはり若干不自由になろうかと思っております。実はこの母貝につきましてはやや生産が過剰ぎみだという見通しでおったわけでございますが、しかし、このたびの被害はそれをこえて相当被害のある模様でございますので、これが天然の調節ということを越えて、おそらく被害が大きいので、母貝の供給が不足になるのではないかという見通しを持っておりますが、ただいまその数字については調査中でございまするが、ただいまわかった段階で後に資料としてもしお許しがあれば出させていただきたいと思います。
  19. 石谷憲男

    ○石谷憲男君 このたびの災害が発生してから相当な時間を経過したわけでございますから、従って調査も次第に十分なものになってきておると思うわけでございます。それとともに必要な行政的な措置というものは遅滞なくやっておるというふうに考えるわけでございますが、しかしながら、単にそれだけではどうしても十分でないということが、おそらく次第に明らかになってきておるんじゃなかろうか、そこで立法等を行なった上でやらなければならないいわゆる特別措置というようなことにつきましても、かれこれ、どういうことをやらなければならぬかということが見当がついてきておる段階じゃないかと思うんですが、この機会にその辺のところを一つ説明をいただきたいと思います。
  20. 高橋泰彦

    政府委員高橋泰彦君) ただいま対策についての御質問でございますが、まだ決定にはなっておらぬものもありますが、こういうことを当庁といたしましてやりたいし、またただいま折衝中であるという段階の問題としてお聞き取り願いたいと思います。  第一番は、まず先ほど御要望のありました漁船の建造についての問題でございますが、これはやはり伊勢湾のときに準じまして、この小型漁船の建造についての特別措置法を出しまして、それによってただいまの、先生から御指摘になりました実態もあわせ考えまして、改善した法律の格好で実施して参りたい、こう思っておるわけでございます。  それからもう一つは、このたびの被害真珠カキ等の養殖施設相当な、伊勢湾以上の被害がありましたわけでございますので、この点は施設の暫定法の特別措置法を、伊勢湾に準じて特別措置法を出して参りたい。その内容は先ほど御指摘のように、十分な点がありませんでしたので、その対象となるいかだ台数などについても、所要の改善と予算的な措置も講じた上で、この特別措置法を御検討願いたいというふうに考えておる次第でございます。  それから金融に関連する問題でございますが、これは天災法の改正をやりたい、このように考えております。この内容は、たとえば伊勢湾と同様、経営資金の上の限度の十五万円というのを二十万円にするとか、それからカキ真珠の貸付限度の引き上げの問題等に関連いたしまする一部の改正をして参りたいというふうに考える次第でございます。  それから先ほど御指摘がありました真珠いかだ、その他漁船、その他のじゃまなものが海の底の方にたまっておりまして、これが漁業復旧を阻止いたしておるのでございますが、この問題につきましては、ただいまのところ予算措置で、この障害物の除去をやってはどうかというふうに考えておる次第でございます。  それから公共土木関係でございますが、これにつきましては、公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法の特例、これにつきましては、これを出したいということで、ただいま関係省と折衝中でございます。なお伊勢湾につきましては、御承知伊勢湾高潮対策事業法その他を制定したわけでございまするが、今回はこれと同様、津波対策に関する特別法が要るか要らないかという問題があるわけでありますが、私どもとしては、やはり所要の法律を作ってやって参りたいということで、関係省と折衝中でございます。それから先ほども触れましたが、被害の激甚地の部落につきましては、何らかの対策を講じたいということでございます。これは狩野川台風の例、それから過般の伊勢湾台風の例もあったわけでございまするが、どうも今回の災害は、単なる養殖施設漁船復旧だけでは十分でない。いろいろな特殊な部落の問題があるように見ております。たとえば北海道におきましては、ほし場の問題等がございますので、何か部落に適した事業をやることによりまして、それに対する若干の助成の道を開きたいと考えておるわけでございますが、これにつきましてはやはり立法した方がよくはないかという御意見もあるわけでありますが、一応伊勢湾、狩野川等の例によりますと、立法を必ずしも要せずにやったいきさつもございますので、ただいまこの点につきましてはそれぞれ研究中でございます。
  21. 仲原善一

    仲原善一君 実はこの機会に今の問題とは多少離れるわけでございますが、伊勢湾台風復旧の進行状況を中心に質問してみたいと思うのでありますが、これは特に農地局とそれから自治庁になりますが、問題は、国会の答弁においては、政府はいろいろ公約をしておりますけれども、最近地方庁の方なり、あるいは市町村の方でいろいろ進行状況について不満の声が出ているわけでありまして、その点二、三の問題を取り上げてお伺いしてみたいと思うわけでありますが、その第一は災害復旧、特に農地とそれから農業用施設だけについてお伺いしたいと思うのでありますが、この予算の編成の場合には、まだほんとうの災害が幾らあったか、査定が済んでおらなかったので、一種の推定を加えて予算を編成されておったと思います。その後災害の査定を十分におやりになって、正確な災害の額がわかったわけでございまして、その事業もはっきり出たわけでございます。そこで最初推定されておりました予算というものと、実際の査定額というものとの間に、相当の開きができてきているのではなかろうかと考えます。国会ではやはり災害復旧は査定額を中心にしてやるので、もし予算が足りない場合には、予備金を使うなり、あるいは補正予算をもってこたえるということをたびたび繰り返して言明されておりますが、実際その通りになっているかどうか、まずその査定額と、それから予算に計上した金額との間に、どのくらいの開きがあるのかどうか、その点を特に農地と農業用施設についてお伺いしたいと思います。
  22. 中村武夫

    説明員(中村武夫君) お答え申し上げます。三十四年の災害は非常に異常災害でありましたために、災害の査定に相当期間かかりましたことと、それから激甚地域が相当拡大しました関係等によりまして、予算積算時におきましては、総経費は二百五十億三千百万円余でありましたが、査定を終了いたしました現在におきましては、二百七十一億一千百余万円となりまして、約二十億円の増額を来たすようになったわけであります。これにつきましては事業費が増大いたしましたことと、なお高率の適用をいたしましたために、高率差額金が非常にふえてきましたために、このような事態が生じてきたわけであります。従いまして、当初予定いたしました復旧進度にいたしましてだいぶ下回るような結果に相なった次第であります。そのほか過去七カ年間におきまして実績をとりまして、入札廃工差率というものを、二四・五%という入札廃工差率というものを掛けまして、予算の総額を詰めております。その二つの理由によりまして、今申し上げたような結果が出まして、だいぶ御迷惑をかけているわけでございますが、この点につきましては大蔵省とも折衝を重ねまして、六月の二十日から大蔵省と私の方と両者立ち会いのもとに、残事業調査を約一カ月にわたって行ないまして、その実態を明らかにいたしまして、その上で何らかの処置を講じて、その間のひずみを直したいというふうに農地局といたしましては考えております。
  23. 仲原善一

    仲原善一君 国会で、伊勢湾台風の場合の答弁では、災害復旧は初年度が三、二年度が五、三年度が二と、三・五・二の比率で完全に復旧するというお話であったわけでございますが、実際都道府県……ある県の例を申し上げますと、初年度が二割、三十五年度、二年目が二割五分の配当しか受けていないという実態が実は出てきております。おそらくこれは関係県を調べてみれば大体そういうことになろうかと思いますが、これはやはり予算の額が少ないので、しわ寄せがその辺にきているのじゃないか。政府の公約通りであれば、もう少し三・五・二の比率に合うように努力されるべきものではなかろうかという気持がいたします。都道府県においても、大体そういう構想で関係省と折衝の上で事業を始めておるわけですが、その事業が完成しても補助金がこないというので非常に弱っている面があるわけですが、この辺はどういうふうにお考えになっておりますか。
  24. 中村武夫

    説明員(中村武夫君) ただいま申し上げましたことと関連するわけでありますが、三・五・二と申しますのは、厳密に言いますと、激甚地七〇%について三・五・二、その他三〇%の地域につきましては二・二・三・三という率になっております。従いまして、厳密に計算いたしますと、初年度二七%程度になるのでありますが、大蔵省とわれわれとの一応ルールといたしましては、初年度二五%、次年度六五%という進度になるわけであります。しかしながら、先ほど申し上げましたように、入札廃工差率によりまして二四・五%の減額という問題が入ってきましたことと、事業費の増額ということによりまして、ただいまお話のありましたように、次年度の進度六五%が相当下回っておるということは事実でございます。
  25. 仲原善一

    仲原善一君 この点はだいぶん国会での御答弁と食い違っておりますので、いろいろこの予算的な措置については大蔵省等ともよく御相談になって、六月二十日ころから残事業高についての査定があるそうでございますので、その点でよく調節をお願いいたしたいと思います。  それから、この補助金の出し方についてでございますが、伺いますと、この高率補助の措置について、実は九〇%の補助金が出るわけでございますが、実は実態をよく聞いてみますと、普通の災害の補助率でございますから、大体六五%くらいになると思いますが、その分はその年に出して、九〇%の差額、かりに普通の災害の、被害激甚地でない、普通の災害の六五%の補助率であるとすれば、その九〇%の差額の二五%というものは、その該当年度には出さずに、翌年度に出す、ずれて出すということになっているようでございますが、この点は事実そうなっておるのか。そうだとすれば、非常におかしいのじゃないか。年度がずれて高率補助の適用を受けても、年度が一年ずつずれて出るという形になりますので、非常に現地では困ると思いますが、その点はどういうふうなことになっておるのですか、お伺いいたします。
  26. 中村武夫

    説明員(中村武夫君) 高率差額金につきましては、当該年度に差し上げるような原則になっておりまして、私たちといたしましても、当該年度に出すというふうに極力努力をしておるわけでありますが、高率差額金の計算は農家一戸当たりの負担額から算定されます関係上、相当時日を要します関係から、三十四年度におきましては、高率差額金が少しおくれまして、三十五年度になりまして三十四年度分の差額を調整いたしたようなことに相なっております。しかしながら、三十五年度におきましては、すでに高率の額も決定いたしておりますので、そのような当該年度に差し上げるというような処置をいたしたい。またいたすようにしたいのでありますが、今申し上げましたような予算の事情もありまして、とりあえず普通率で少し進度を早めまして、その残額をもちまして、高率の差額金を差し上げておるというような形になりまして、現在におきましては、お話のように、高率差額金が少しおくれていっているということは事実でありますが、これも予算措置が講じられますれば、本年度内にも直したいと、こういうふうに考えておるわけなんでございます。
  27. 仲原善一

    仲原善一君 ただいまの問題についても、現地の方では田植えに間に合うように復旧するというので、急いで、工事は完了しておるわけなんです。ところが、今のお話の通りに、補助金は来ないという実態で、非常に困っておるわけでございまして、この点も国会答弁とだいぶん実施の面と食い違っておりますので、その点はよく上局とも御相談になってすみやかに是正の策を講じていただきたいと思います。  それからその次に起債の問題でありますが、特に二つに分けて考えますと、農地と農業用施設の高率補助の場合、九割までは補助が出ますけれども、残りの一割については起債によって元利補給をやるという形で法律が通っております。三十四年度の分については一〇%についての起債が認められておるそうでございますけれども、三十五年度については、最近自治庁関係から通牒が出て、これは、いつでございましたか、三月の十五日の日付だそうでございますが、昭和三十五年度地方債計画運用の基本方針という次官通牒のように考えますが、これによりますと、三十五年度の起債については、農地、農業用施設については半分、建設省関係の公共事業については七割だというふうに、約束しておられた起債額の半分なり、あるいは七割という意味の通牒が出ているやに聞いておりますが、具体的に申しますと、残りの一〇%、高率補助九割の残りの一〇%、その一〇%の半分の五%だけを農地、農業用施設については認める、公共土木については七%だけ認めるというので通牒が出ておるように思います。こうなりますと、市町村なり、その事業をやっておるところでは、せっかく期待しておった起債が予定通りに来ない。これもやはり農民にしわ寄せが来るというので、非常に心配して、それぞれ会合を持って対策を陳情していると思いますが、この点自治庁の方では、国会答弁とだいぶこれも違いますので、どういうお考えでありますか、お伺いいたしたいと思います。
  28. 佐々木喜久治

    説明員佐々木喜久治君) ただいま御質問のございました災害復旧関係の補助事業分の事業費の起債でございますが、土木関係について、その地方負担額の七〇%、農林関係につきましては五〇%の起債の配分を行なうということは、従来からの災害復旧の補助事業分についての起債の取り扱いの方針でございまして、以前からこのような取り扱いでやってきておったわけでございます。ただこの通達にも掲げてございますが、昭和三十四年度の災害の激甚地におきまして、いわゆる激甚地指定のあった地方団体におきましては、その財政状況を勘案いたしまして、おおむねその率を引き上げて配分を行なうという予定にいたしております。その率は、その団体の財政状況というものが中心になって考慮されるわけでありますが、その率は、最高は昭和三十四年度の場合と同様に土木関係におきましてはおおむね九〇%程度まででありますから、実質的にはほとんど一〇〇%に近いと思いますが、おおむね九〇%程度まで、それから農林関係につきましては大体七〇%ないし八〇%くらいまでの起債の配分を行なうという予定にいたしております。
  29. 仲原善一

    仲原善一君 ただいまの御答弁は、この立法措置をやった場合の自治庁当局の答弁とだいぶ違うと思います。その当時は補助残については、全部これは起債でやっていくんだ、たびたびこれは質問を通じてその点は明確にしておりますが、まあその点を、速記録等をよくお調べになって、年度が先に行くに従って起債のワクをだんだん縮めていくというようなことでないように、これは特に要望いたしておきます。速記録をよく読んでいただければ、これは明確に出ております。必ず一〇〇%これは起債で見ていくんだと、年度はずれてもすべて一〇〇%になるように起債は見るんだという話であったように考えておりますので、その点特に要望しておきます。  それから次は、小災害の起債の問題でありますが、調べによりますと、小災害が三十四億あったように聞いております。ところが、その三十四億の約二割減の二十八億くらいに押えて、その分の起債しか認めていないというのが実態のようでございますが、この点二割減に押えて、実際被害が三十四億もあるのを二十八億に押えたというような経緯ですね、いきさつ、そういうものについて、あれば一つ説明願いたいと思います。
  30. 佐々木喜久治

    説明員佐々木喜久治君) 農林小災害復旧事業に対しまする特例債の問題でございますが、御指摘のようにこの小災害の特例債の申請額は合計いたしましておおむね三十五億円になったわけでございます。それで、この基礎数値は農林省で集計されました数値とほぼ同様な数値となっておるのでございますが、この数値は公共事業の場合と異なりまして、農林省で集計されました数値も現実に現地において農林省で査定をされた数字ではございませんのでありまして、そういうことも勘案いたしまして、現在補助事業等で申請に対しましてどの程度の査定が行なわれておるか、あるいはその廃工差率といったようなものを勘案いたしまして、資料によって算出されました額の八〇%をもって起債の対象ワクにするというような措置をとったわけでございます。その結果その起債対象の数字といたしましては、御指摘のようにおおむね二十八億程度の数値となったわけでございまして、当初予定いたしておりました十七億の起債予定額に対しまして約十一億円上回るというような結果になったわけでございます。
  31. 仲原善一

    仲原善一君 まあ大体の経緯はわかりましたが、総括的に考えまして、伊勢湾台風の立法をやる場合にいろいろお考えになった制度、このことについては被害の各県とも、あるいは被害者とも非常に感謝しておるわけでございますが、いざ実施してみますと、非常な険路が出てきて、しかも政府が約束しておられる通りに実施になっていない点が多々あるように考えますので、この点は立法の趣旨あるいはその予算の編成等を通じて議場で御約束になった通り一つ復旧を進めていただきたいと、これだけをお願い申し上げまして私の質問を打ち切ります。
  32. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) チリ地震津波災害復旧被害者救済政府の遺憾なき処置を強く要望いたしまして、本件は、本日はこの程度にいたします。  本日はこれをもって散会をいたします。    午後零時三十七分散会