運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1960-05-10 第34回国会 参議院 農林水産委員会 第30号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年五月十日(火曜日)    午前十時四十四分開会   —————————————   委員の異動 本日委員亀田得治君辞任につき、その 補欠として江田三郎君を議長において 指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     堀本 宜実君    理事            櫻井 志郎君            東   隆君            森 八三一君    委員            青田源太郎君            植垣弥一郎君            岡村文四郎君            重政 庸徳君            田中 啓一君            藤野 繁雄君           小笠原二三男君            北村  暢君            戸叶  武君            藤田  進君            棚橋 小虎君            千田  正君            北條 雋八君   政府委員    農林政務次官  大野 市郎君    農林省農林経済    局長      坂村 吉正君    水産庁長官   西村健次郎君   事務局側    常任委員会専門    員       安楽城敏男君   説明員    農林省農地局参    事官      庄野五一郎君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○農林水産政策に関する調査  (生鮮食料品卸売市場に関する件)  (北洋漁業に関する件) ○開拓営農振興臨時措置法の一部を改  正する法律案内閣送付予備審  査) ○開拓者資金融通法の一部を改正する  法律案内閣送付予備審査) ○開拓者資金融通法による政府の貸付  金の償還条件緩和等に関する特別  措置法案内閣送付予備審査)   —————————————
  2. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  生鮮食料品卸売市場に関する件を議題にいたします。  過ぐる第三十一国会において成立いたしました臨時生鮮食料品卸売市場対策調査会法によって農林省に設置されました調査会は、さきに調査の結果を答申いたしましたので、かねて農林省からの連絡もあり、本日この問題を議題として調査経過及び答申並びに答申取り扱い等について、農林省当局から説明を求めることにいたします。
  3. 坂村吉正

    政府委員坂村吉正君) 先般三十一国会で成立いたしました臨時生鮮食料品卸売市場対策調査会法に基づきましてその後この法律は三月の六日に公布施行になりましたのでございまするが、引き続きまして、農林省におきましては、お配りいたしてございまするような委員と、それから専門委員とを任命をいたしまして調査会を設置をいたしましたわけでございます。委員は三十名、専門委員は二十五名でございまして、非常に大人数委員でございまするが、これらの委員任命をいたしまして、三十四年の三月の二十八日に第一回の会議を開きまして、その後、総会は三回開催をいたしております。また、この審議内容がきわめて複雑な問題でございますし、青果物水産物畜産物にわたりました問題でもございまするので、おのおのその特殊性もございまするので、青果部会水産部会畜産部会三つ部会を設けまして、その部会におきまして審議を続けて参りましたわけでございます。青果部会水産部会おのおの三回の会議開催をいたしておりまして、畜産部会におきましては四回の部会開催いたしておりますわけでございます。審議の進むに従いまして、青果水産につきましては、大体共通する面が非常に多い、こういう点からいたしまして、青果水産合同部会開催いたしまして、その合同部会を三回開催いたしております。そのほか、畜産におきましては、食肉小委員会、それから鶏卵及び食鳥小委員会といいまするものを作りまして、おのおの一回ずつ小委員会開催いたしております。  こういうような審議経過をとりまして去る三月の五日に最終の総会開催いたしまして、お手元にお配りいたしてありますような、生鮮食料品卸売市場についての対策に関する諮問に対する答申というものを得たのでございます。この答申内容につきましては、非常に、あらゆる部門にわたりまして、きわめて詳細に書かれておるのでございまして全部朗読をいたしまするのは相当時間が要ると思いまするので、要点を御説明を申し上げたいと思います。  卸売市場の問題は、御承知のように非常に大量に集中いたしましてそうして取引をいたしまして、生産者消費者の仲立ちといたしまして、ここで生産者にも消費者にも公正な価格取引がされる、そうして流通の円滑をはかる、こういう趣意で卸売市場というものがあるのでございまして、そういう大体青果物及び水産物、その他の生鮮食料品のそういう特殊性にかんがみまして、一定地域におきまするところの大量集中取引の推進というようなものが大体この対策基本方針一つになっておるわけでございます。それと同時に、そういう機構におきまして取引をされますものでございまするので、取引が適正に行なわれまして、そうして生産者に対しても消費者に対しても安全に公正に行なわれるということが非常に大事なことでございまするので、そういう点が第二の基本的な問題だろうというふうに考えられておるのでございます。従いまして、そういう取引が適正安全に行なわれまして、公正な価格が形成せられる、こういうものが次の大事な問題でございます。そういうようなことを大体基本にいたしまして、そのためにはどういう卸売市場のあり方がいいのか、こういう点が大体中心になって議論をされましたわけでございます。そこで、具体的な問題点といたしまして、お配りいたしてありまするところの答申の二ページから具体的な対策が書かれておるのでございます。  第一に中央卸売市場の問題でございまするが、これにつきましては、大体今申し上げましたような集中取引というものを通じまして適正公正な価格の形成が行なわれると、こういう点を中心にいたしまして市場整備と、市場施設整備といいますることが非常に大事な問題になるのでございまして、第一番目にそういう問題を取り上げておるのでございます。ここにおきましては、大体全国流通上非常に大切な消費地集散地においては、そういうところでは、農林大臣中央卸売市場整備計画を作りまして、これに基づいて中央卸売市場開設および施設整備を進めるべきである。整備計画実施については、必要により積極的に中央卸売市場開設または施設整備を勧告するとともに、補助金の交付、長期低利資金融通等措置を講ずべきである。今までは自然発生的に各消費地集散地で起こってきたものを、中央におきましてもこれを取り上げますとかいうようなことをやってきたのでございますが、むしろ上から積極的に計画的にその市場整備市場施設整備を進める必要があるというふうに考えられておるのでございます。地方的に重要な消費地及び集散地については、中央卸売市場に準じまして、地方都道府県知事が、農林大臣と同じような立場におきまして、施設整備市場整備をやっていく、こういう考え方がとられておるのでございます。  それから次に区域指定でございまするが、これは現在も行なわれておるのでございまするが、そういう大事な消費地集散地につきましては、中央卸売市場としての区域指定を行なう。そういたしまして、開設者は、各指定区域地方公共団体に限ると、こういう考え方で一応考えられております。また取り扱い品目につきましては、これは生鮮食料品主体でございまするけれども、その実情によりまして、その他の生鮮食料品加工品もこれも取り扱うことができると、こういう工合に市場内容を直していくべきじゃないか。まあそれにつきましては、おのおの、いろいろ取引方法等についても、その品目の差によりまするところの違いがございまするので、そういう点も十分一つ考慮すべきである、こういう内容でございます。  それから取引機構の問題でございまするが、これは卸売人及び仲買人名称についていろいろ議論がございましてこれにつきましては、今の実態から申しますると、仲買人というのは、名称としてはおかしいじゃないか、こういう議論がだいぶございましてこの点につきましては、結論として具体的にどうするかという問題は出ておりませんが、答申としては出ておりませんけれども、その機能実態に即するように検討すべきである、こういう答申になっておるのでございます。  それから卸売人の問題でございますが、これは今の大体中央卸売市場におきましても中心の問題でございまするけれども、この場合に、卸売人といいますのは、出荷者委託を受けて販売を行なうものでありまして、その信用の維持はきわめて重要であるので、資格要件および業務方法について必要な制限を設け、適正かつ健全な業務運営確保するよう措置すべきである。卸売人組織については、市場における取引の公正と安全の確保の目的からして、指導方針として公共的な性格主体または厳格な公共的監督のもとに置かれた単一の主体とすることが望ましい。この場合における卸売人公共性確保のためには、少なくとも定款、業務方法利益金処分、役員の選任等に対する公的な監督並びに出資の構成に対する制限措置を講ずる必要がある。こういうことでございまして、いろいろ卸売人単数複数議論が一番この問題としては非常に大きな問題でございます。これでこの答申におきましては、単数である、複数であるということについて具体的に割り切ったわけではございませんが、今後の方針として、指導方針として単数が望ましいと、こういう方向を打ち虚しておるのでございまして、これは現実問題といたしまして現にありまする市場等につきまして、急にこういうことを実行するというわけには参らぬと思いまするけれども、方向といたしましては、そういう方向に沿うように一つ今後のいろいろの施策を講じていくべきである、こういう考え方を打ち出しておるのでございます。  それから次は、四ページでございまするが、仲買人の問題でございまするが、これは取扱商品売買に関し重要な機能を営むべきものとして、その機能が十分に発揮されるよう、その経営規模及び経営形態について各市場及び各取扱品目実情に応じた改善措置を講ずる必要がある。また市場における売買取引が適正円滑に行なわれるよう、仲買人間における公正かつ自由な競争取引の安全、迅速確実な代金決済確保するよう措置すべきである。当然のことでございまするが、仲買人内容につきましても十分一つ、何といいますか、信用の保持ができますようなものにしていく、こういう考え方答申がされておるのでございます。  それから小売人、それから仲買人および小売人以外の売買参加者、これは省略をいたします。  それから取引方法でございまするが、受託販売原則および出荷者との取引関係、こういう項目におきまして卸売人販売方法については、出荷者委託を受けて販売することを原則とし、販売委託の引受を正当な理由がなく拒み得ないものとする。それから手数料については、これはできるだけ下げるように根本的に検討する必要があるということでございます。  それから卸売人出荷者との取引関係については、双方において公明な基準による契約関係に従い業務を処理するとともに、いやしくも卸売人出荷者に対する不当な差別的取り扱い及び出荷者卸売人に対する不当な要請等が行なわれることのないよう対策を講ずべきである。こういうところが非常にむしろ、また、ひいて手数料問題等にも関連をして参るのでございまして、こういう点を、手数料をできるだけ下げると、こういう意味からいいましても、こういう不当な取引関係が、契約関係が生じないように十分監督をする、要するに必要がある、こういう点が強調されておるわけでございます。  それから競売原則、これは原則として競売によって公正な価格確保をやっていこうといいますることと、競売につきましては、いろいろ競売せり人に関しまする資格要件とか、あるいはせり技術合理化とか、それから共同的なせりをやっていくとか、いろいろそういうことで今後せり技術につきましてもっと合理的なものを研究してこれを採用していくと、こういう方法をとるべきであるというようなことでございます。  それから、指導監督の面は、これは農林省において常例的な検査を行ない、こういいますることと同時に、一面その開設者におきましても、現在のところでは指導監督の明確な権限の規定がございませんので、そういう点を開設者におきまするところの指導監督責任というものもはっきりとさしたらどうか、こういう考え方でございます。  それから、これらの市場対策を今後いろいろやっていきます場合、中央卸売市場審議会というものを農林省に設けまして、これはきわめて小人数のもので、審議会において、いろいろな問題につきましての、農林大臣諮問機関というもので運用するようにしていったらどうか、こういうことが答申をされておるのでございます。  それから水産物産地市場の問題でございますが、これはいわゆる消費地卸売市場立地条件、あるいはその他取引実態が違うのでございまして、これらにつきましても卸売市場と同じような考え方のもとに整備をはかる。特にこの問題は多くの漁業者の問題にも関連しますので、そういう点を十分考慮におきまして、そうして整備をすべきである。で、特別に強調されました点は、施設整備漁港整備の一環として、かつ市場の周辺の加工、保蔵、輸送施設との関連のもとに総合的に行なうことが適当である。市場機構における漁業協同組合系統組織の地位については、その機能が十分に発揮されるよう、各市場実態に応じ、市場開設とか、あるいは運営等について特別なる配慮を与えることと、漁業協同組合市場に、いろいろ市場におきまして働く場合、それについては特別の扱いをすべきである、こういう考え方でございます。  それから三番目には、産地仲買人の業態の特殊性に即応いたしまして、適正かつ健全に業務が行なわれるように指導監督を行なうこと。それから、その他の市場の問題は、これはいわゆる地方市場の問題でございますが、これは先ほど申し上げましたように、中央卸売市場と同じような考え方地方的な消費地集散地におきまして都道府県知事責任を持ってこれを整備し、監督し、改善をしていく、こういう考え方整備をすべきである、こういうことでございます。これにつきましていわゆる答申とは別に付帯事項として要望が出されております。  以上は大体青果水産物の問題でございますが、畜産物につきましては、これは非常に問題がむずかしいのでございまして、今までの畜産物のいわゆる取引実態市場実態といいまするものが青果水産物に比べますと非常に発展段階がおくれておるわけでございまして、と同時に、畜産物につきましては、家畜取引といいまするものとまた一体に考えなければならないような問題がございまして、この点につきましては、きわめてむずかしい問題でもございますので、畜産物については、中央卸売市場として、青果水産物におきまして考えられたいろいろな問題点を、特に例外的な扱いといいますか、例外的な取り扱いをしなければ畜産実態に、現状に合わない、こういう点がありますので、そういう点を大体に中心にいたしまして畜産物についての答申が出されておるのでございます。畜産物については、青果物水産物とともに生鮮食料品としての共通の性質を有する一方、他面において、大衆食料品としての成長がきわめて最近のことに属し、ために近代市場を通ずる取引の慣行が確立していないこと、特に食肉食鳥については、生産から消費に至る道程において屠殺、解体という商品性格に変化を加える特殊の過程を必要とすること、屠殺の大部分が消費地卸売市場に付帯する屠畜施設において行なわれ、両者がきわめて密接な関係に置かれていること、生産者共同販売体制整備が他の生鮮食料品に比しておくれており、消費地卸売市場への出荷のうち、商人出荷に依存する度合いが高いこと等、いろいろな問題を包蔵している点にかんがみまして、ここに、次のようなことで実情に即しました総合対策を講ずる必要がある、こういう内容でございます。  市場開設につきましては、畜産物商品としての性格、特に食肉卸売市場立地条件等による特殊性を考慮し、市場の適切な管理及び取引の円滑な運営をはかるため、他の生鮮食料品と区分して中央卸売市場開設することについても実情に応じて考慮すべきであるという点。それから卸売人につきましては、卸売人組織については、各地域ごと取引実情及び将来の発展方向等を十分に考慮して定めるべきであるが、その際、特に市場取引の公正と安全を確保するために、卸売人の数が単数であると複数であるとを問わず、独占または過当競争による弊害を生じないよう指導監督を行なうとともに、あわせて卸売人企業活動健全化を期するため、事業資金のあっせん等必要な措置を講ずべきである。この場合におきましては、単複論については、現状からは非常に単複論についての方向を示すこともむずかしい問題でございまするので、いずれの立場についても方向づけをしていないわけでございます。それからは取引方法は、畜産物のうち市場における取引実情等から、卸売人買い取り販売を行なう場合には、市場取引公共的機能をそこなわない範囲内においてその具体的方法を明確に定めて実施すべきである。それから市場取引において、せりまたは入札以外の売買方法をとる場合にあっても、前の場合と同様、取引の公正を確保するため必要な方法を講じて行なうこととすべきである。市場における売買は、現物取引原則であるが、鶏卵等特殊の品目については、一定条件のもとに例外的措置を講ずることができるよう検討するものとする。それから中央卸売市場に対する上場確保中央卸売市場に併設されている屠畜施設においては、そこで処理された枝肉市場への円滑な上場確保されるよう、適当な措置を講ずることを検討すべきである。競合市場についての調整措置につきまして、中央卸売市場指定地域内における枝肉取引施設及び家畜市場機能中央卸売市場機能と競合する場合には、適切な調整措置を講ずべきである。といいますることが大体内容でございまするが、先ほど申し上げましたように、まあ畜産物は非常に発展段階がおくれているのでございまするので、いわゆる青果水産物につきまして申し上げましたような、大体相当整備されました市場というものはまだ非常に少ないのでございまするので、こういうような内容に相なっているのでございます。  これらの答申を三月五日にいただいたのでございまするが、これによりまして農林省といたしましては、この内容がお聞きのようにきわめて具体性を欠いているものもございます。あるいは具体的にきめられているものもございまするけれども、今後いろいろ農林省検討にゆだねられている問題があるのでございまして、これらの点を、内容を現在いろいろ検討をいたしておる次第でございまして、この内容によりましては、あるいは法律改正をしなきゃならないもの、あるいは実際の指導方針といたしまして、行政指導方針といたしまして農林省市場対策をやっていく、こういう問題もございまするので、そういう点を十分検討いたしまして、できるだけ早い機会一つ必要なものは法律改正措置を講ずる、こういうようなことで、今からでも実施ができまするものにつきましては、農林省行政方針として市場指導に当たっていく、こういう考え方準備をいたしておりますわけでございます。ただ畜産物につきましては、先ほど申し上げましたように、家畜取引それから家畜商、こういうふうな問題ともきわめて密接な関係があるのでございまして、そういう畜産物特殊性にかんがみまして、これらの家畜取引家畜商等に関する措置とあわせまして総合的に対策を講じよう、こういうことで、現在の中央卸売市場青果水産物中央卸売市場に比べまして、こういう点については特別な扱いをしなければいかぬというようなもので、現在からでも実行できるというようなものにつきましては、これらを一緒家畜取引とそれから家畜商、そういう問題と一緒にあわせて一つ法律改正しよう、こういうようなことで家畜商法とそれから家畜取引法改正とそれから食肉取引に関する特別の立法措置、こういう点を現在法律といたしまして国会に提出しようということで準備をいたしております次第であります。  青果水産物につきましては、先ほど申し上げましたように、なお今後いろいろ内容検討いたしまして、そして次の機会にでも必要なものについては法律改正を行なう、こういう考え方でいきたいというふうに考えておる次男であります。  大体きわめて簡単でございまするが、以上生鮮食料品中央卸売市場対策調査会答申経過につきまして、御報告を申し上げました。
  4. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) ただいまの説明に対しまして御質疑のおありの方は御発言を願います。——御発言もなければ、本件についてはこの程度にいたします。   —————————————
  5. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) 北洋漁業に関する件を議題といたします。  北洋サケマス漁業出漁期に当面し、日ソ漁業交渉はいまだ妥結に至らず、きわめて重大な段階にあるようでありまして、非常に憂慮されておるところでありますので、本日はこの問題を議題にして、水産庁当局より、交渉経過及び今後の見通し等について説明を聞くことにいたします。
  6. 西村健次郎

    政府委員西村健次郎君) ただいまモスクワで開かれております第四回の日ソ漁業委員会交渉のこれまでの経過につきまして、簡単に御報告を申し上げたいと思います。  日ソ漁業交渉は去る二月二日に開始されまして、自来本日で九十九日でありますか、九十九日、あしたで百日と、百日交渉を迎えたわけであります。いよいよ最後の大詰めということになったわけでございます。御承知と思いますけれども、この日ソ漁業交渉において取り上げられます議題はいろいろございますが、魚についていえば、サケマスカニ及びニシン、この三つでございます。まあニシンにつきましては、すでに決定を見ましたし、またカニにつきましても、これはソ連側が六船団日本側が四船団出ておりますが、これが各一船団漁獲量は同じで、一船団当たり六万五千箱ということで妥結をいたしました。ほぼ昨年通りの線で、漁獲量が五千箱ずつ減ったというところで妥結し、もう現にカニの四船団は操業に従事しております。残るのはサケマスの問題でございます。サケマスにつきましては、まずサケマス資源状態、それからその次にサケマス禁止区域あるいは漁区それから網目の問題、あるいは魚種別規制、あるいは未成熟の魚の問題、あるいは害敵の問題というような、いろいろ問題がございます。そのほかに一番大きな問題としまして、総漁獲量というものが条約上きめられなければならないことになっております。さらにこれに関連しまして、本年ソ側が新しく提案をしてきましたものとして規制区域の境界についてという議題がございます。これは現在北海道の秋勇留島と、それから北緯四十五度を結ぶ線、それから北が規制区域になっております。その規制区域内において漁獲量がきめられ、諸般の規制措置が定められることになっておりますのを、その区域を南に延ばそうという議題でございます。  今度の日ソ漁業交渉におきまして、私どもがこの交渉に入る前から予想しておりましたことは、ことしは不漁年である。不漁年ということは、これは偶数年不漁年奇数年豊漁年ということでございますが、この不漁年ということは、サケマス主体をなしますマスについていわれることでございまして、そのマスが特にこれは二年ごとに、たとえば、ことしとられますマスは、一昨年の親からかえった子でございますが、すなわち一昨年の一九五八年のカムチャッカにおけるマスの漁獲は非常に悪い。一九五六年、その前の偶数年の年に比べまして十分の一程度であるということをソ側はその後言っておりますし、そういった観点から、ことしはマス不漁年であるということ、しかも、そのカムチャッカのマスが悪いために、これについてソ側が非常に強い態度をもって出てくるであろうということ、それからもう一つは、ソ側が昨年のわが方の母船式なり、以南の流し網漁業等の漁獲につきまして、いろいろ疑惑の目を持っていたろうということ、これらの点が予想されます。私どもとしまして、政府といたしましては、こういう事態に対処し、わが方の立場をはっきりさせるという意味合いにおきまして母船式の船団の再編成、あるいはその後においてとられました中部以南の流し網なり、あるいは太平洋のサケマスはえなわ漁業についての日本国としての自主的な規制、非常に強い規制措置という一連の措置を打ち出し、この交渉に対処し、今年の漁業に臨む確固たる態度をきめたわけでございます。二月二日からの交渉に入りまして、最初にサケマス資源状態につきましてわが方の予想したごとく、ソ側の態度は非常に強いものでありまして、先ほど申し上げましたように、サケマス主体をなすマスは、ことしはまさに破波的な危機に陥っている年である、従って、マスは全面禁止の必要がある、こういうようなことを例によって例のごとく強く申してきたわけでございます。ただ、ここで一つお断わりしておかなければいけませんのは、マス偶数年不漁年であるということでございまするけれども、これはカムチャッカのマス——これが主体でございますが——についてはそのことがいわれますけれども、アムールとか、オホーツク、サガレンの方のマスは、偶数年奇数年、豊漁、不漁の年が逆転いたしまして、むしろ偶数年豊漁年である。奇数年の方が悪い。そのことは、昨年は豊漁年であるにかかわらず、ソ側は、ことしは豊漁年であるけれども、マスはそれほどよくない、それはアムールなり、その方面のマスは実は逆転して奇数年不漁年であるということを言っているわけでございます。従いまして、ソ側不漁年であることを非常に強く出して参りましたけれども、わが方の観察によりますと、やはり今申し上げた去年のソ側の主張にもありますように、それは全体としては、なるほどマス不漁年であるかもしれないけれども、その一部のマスについては、むしろことしはいいということも考えられます。従って、マスについては、大体不漁年であるけれども、それほど悪い不漁年ではない。それから白サケ、あるいは銀サケにつきましては、大体平年通りの漁獲が予想される。それから紅につきましては、過去二、三年の漁獲の状況等から見て、ことしは過去数年来の一番高い水準にあるというふうにわが方は観察し、こういう主張をいたしたわけでございます。ところが、ソ側は、そのすべてにつきまして、ことしはマスは大不漁年である。紅も白もよくないという、資源の状態の魚種別の評価について大きく両国の主張が分かれたわけであります。従いまして、その後に討議されました諸般の規制措置というものにつきましても、この資源状態の評価というものの大きな分かれというものから、すべてが大きく分かれてきておる。日本側は、先ほど申し上げましたように、全体としてはことしは決して悪くない。一九五六年程度の漁獲は見込み得るという主張をしておったわけでございます。ところが、ソ連側は、どうしてもことしはマス不漁年である、しかも、カムチャッカのマスが決定的な年である、これについてはっきりした措置をとらなければ壊滅的な状態に陥る、ということを軸としまして、それを実現するためにあらゆる規制措置の提案をしてきたわけでございます。  規制措置のうちで非常に大きな問題、これは、一つ禁止区域の問題、それから漁期の問題、あるいは網目の問題、ことしはその網目の問題につきまして、ソ側は非常に強く主張して参っております。そのほかいろいろございますが、禁止区域につきましては、ソ側は三月の末に最初の提案をしてきたわけでございます。その区域は、すでに新聞等で御承知のように、非常に広い区域でございます。全く日本の沖取りを否定するというにひとしいものでありまして、かりにあの禁止区域を認めてやったとしますと、日本側の漁獲は例年の七割減にもなるだろうというような状態でございます。従いまして、わが方としましては、このような禁止区域というものは絶対に認められない、大体審議の対象にならないということで強く反対しておる。その後それをだんだん譲ってきておりますけれども、まだしぼられてきまして、後ほど御説明しますが、三つの大きな地域に問題がしぼられてきております。  ところが、話が前後いたしますが、ソ側はすべての論点を沖取りの不合理性というところに持ってきつつあるようでございます。これはことしに始まったことではございませんが、要するに、沖取りは非常に不合理だ、たとえば沖で流し網なり、はえなわでとっている。そうすると流し網の網で脱落する魚がある。それは本来河川に向かうものが脱落したために、その大部分のものが死亡してしまうというようなこと、あるいははえなわの針が糸が切れて針をくわえたままそれが河川に行くと繁殖力を失うというようなこと、それからさらに沖取りというものが資源の利用に非常に不合理だということを強調します一つの点としまして、かりに沿岸でとった場合と沖でとった場合と比較すると、たとえば日本の去年の漁獲は十七万三千トンであります、全体の総漁獲量。これを沿岸で、河川の入口でとると、もっと十万トンもふえる、こういうことも言うわけです。そういうことで、これは一つの未成熟魚をとることになり、まだ大きくなるものを沖でとってしまう、こういう言い方をしているわけです。それはどういうことかと申しますと、なるべく河川の近く、入口でとれ、こういう議論であります。ところが、一面、先ほど申し上げましたように、禁止区域が非常に膨大なもので、まるで公海何百海里の沖合いでしかとれない。それでわが方から、お前の方の言うことはおかしいじゃないか、そういうことを言うなら、むしろ沿岸でとらせろということになり、この膨大な禁止区域はそれと矛盾することになるじゃないかというようなこともございます。これについては、ただ黙って答えないというような調子でございます。いずれにしましても、日本の沖取りというものを大きくその不合理であることをクローズ・アップするというようなところに一つの大きなねらいが置かれておる。  それからもう一つは、マス関連しまして、ことに日本の昨年の漁獲が、区域内が八万五千トンである、区域外が八万八千トンであるということで、区域内における漁獲の非常な増大ということが一つの大きな問題としてソ側は取り上げておる。それが先ほど申し上げましたような規制区域の拡大というような提案となって現われたわけでございます。これに対しましては、わが方から、国内自主措置として、先ほど申し上げました中部以南の流し、あるいははえなわにつきまして自主的な相当きびしい規制措置を本年から実施することになっております。従いまして、その規制区域の拡大につきましては、ソ側はもはやこれはあきらめておる。わが方ももちろんこれを許すわけにいかないということで現在に至っております。  結局、いろいろな問題、網目の問題等につきましても、これはすでに落着いたしましたけれども、昨年の委員会におきまして現在まで母船式の漁業で使っております網は六〇・五ミリ、結節から結節までの間隔が六〇・五ミリという網でございます。この網目が小さ過ぎる。従って、未成熟魚をとる、あるいは脱落が多いというようなことをソ側が主張いたしますので、昨年の委員会におきまして、それでは日本側一つことしから試験的に四分の一、二五%は六十五ミリメートルの網を使おう、こういうことを言いまして、それで話がきまっておったわけです。ただ、その六十五ミリの網をどういうふうに使うかということにつきまして、委員会でいろいろ議論をいたしておりました際におきまして、ある日、大体ことしは全体としてどこの区域でも母船式の区域では六十五ミリの網をどの船にも四分の一ずつつけさせよう、来年はまたそれを、たとえば四〇%ずつつけさすというようなことを提案いたしましたところ、一たんはソ側はそれはけっこうだという同意を表したのでございますが、翌日になりまして、ソ側からともかく六十八ミリを使えという、突如として途方もない提案がなされた。だから、日本側としましては、六十八ミリという話は今まで話にもない。そんな網を使ったこともなくて、全然試験のデータもない。六十五ミリは去年試験してみましたから、データは多少ある。六十五ミリのデータすら足りないところへ、六十八ミリの網を使えということはとんでもない話だ。ところが、ソ側はそれについてだいぶこだわりましてことしは六十五ミリでしょうがないけれども、来年は六十八ミリを使うということを約束しろということを迫ってきたわけでございます。これに対しまして、わが方としては、それは六十八ミリがどういうものか、まだデータも全然ないので、おそらく六十八ミリではマスはほとんどとれないということであろうと思います。そういうことはできない。結局、最終的には、ソ側も、これは例によってソ側は非常に譲歩したということだろうと思いますけれども、六十八ミリというのは、使うかどうか、ことしから一つ別に調査船でそれは試験してみようということで話がつきました。  そのほかの規制措置、たとえば漁期の問題、これは七月十五日というソ側の当初の提案は、その後ソ側は撤回しまして、従来通り八月十日ということで片づきました。そこで、残る大きな問題は禁止区域、それから総漁獲量、この二つでございます。これにつきまして福田大臣が何べんもイシコフ漁業大臣と会われて、これは高碕代表も同席されて折衝をしておるわけでございます。現在までのところ、禁止区域につきまして、先ほど申し上げましたようにソ側が少しずつ譲歩をしてきておりますけれども、まだ妥結には至っておらない。それから総漁獲量につきましても、ソ側は五万トンという、非常にわが方としては、本年のわが方の自主的規制策なり、国内措置を整えていったこの態度について、はなはだ意外とする五万トンを提案したきりその後出しておりません。これにつきましては、イシコフは日本側がいろいろな規制措置をのめ、いわば自分たちの出しておる規制措置について、これが話し合いがついたら漁獲量を出そうという態度に出ております。従って、最近十日間、あるいは二週間と申しますか、福田大臣とイシコフと会談におきまして最終的に総漁獲量禁止区域の問題をめぐりまして非常に難航を続けておる。この禁止区域につきましては、先ほどから申しましたことをちょっと図面で簡単に御説明しますと、当初、昨年の妥結しました禁止区域がこういう線でございます。ここが三角の大きな地帯、ここは非常にいい母船式の漁場でございますけれども、昨年もソ側の強硬なあれでついにこれは譲歩してこういう禁止区域になりました。ところが、ことしの当初ソ側禁止区域の提案は、こういう膨大なものでありまして、しかも、これが四十五度規制区域の南に五度たれ下がっておる、こういう提案をしてきたわけであります。御承知のようにこっちにもあるようでございますけれども、現実には遠距離でありましてあまり操業もできない、こういうことでこの辺が最もいい漁場でございます。そこを全く閉鎖しておる。しかも、区域外においても禁止区域の提案をしておる。これはいい流し網、はえなわの漁場で、中部以南は流し網の漁場であります。そこでわが方としては、こういうあれについては、審議の対象にならないというので、全く沖取りの否定である、しかも、さっき申し上げたように、沖でとる魚は小さな魚をとるので非常に不合理だ、それをこんな沖でとるのはおかしいじゃないか。ところが、その後における会談におきまして、こういうふうに向こうは非常に譲歩を示したわけでございます。ところが、次に第三次に、ここを最初切って、結局今残っておるのはこういうあれでございます。簡単に申し上げますと、これは昨年通りでございますが、この部分とこの部分と、この三つが現在残っておる大きな三つ区域、三角と四角とこの東の張り出し、これは新聞で御承知通りであります。そこで私の方としては、カムチャッカの漁場のマスの保護を向こうは初めから言っておる。こっちはそんなに悪くないのです。むしろここはよかったのです、去年は。ところが、ここはカムチャッカに行くマスの魚道じゃない。これは魚道じゃない。これはおかしい。ここをあけられてもあまりいい漁場じゃないらしいです。そこでここをあけた、あけた、大譲歩をしたと言っておりますが、これはカムチャッカに関係がない。こういうことはおかしいじゃないか。しかも、北海道漁民の流し網の、小型の流し網漁場を全面的に規制区域内として閉鎖する、これは譲らない。ここにつきましても、これはマスの漁場じゃない。紅や白ならここは非常にいいわけですから問題はない。だから、ここについては問題はない。ところが、ソ側としても、この辺はまだわれわれとしては絶対にのめないということを強く主張しておるわけであります。まん中につきましては、ある程度日本側としても考えるが、しかし、こういうことを言いますと、そこはやはり流し網の漁場である。これを全面的に閉鎖する、大型の船を閉鎖するということは困る、こういうことで、この辺が現在のところ禁漁区域についての最大の難関になっているわけであります。そこで、ソ側としましては、この問題と漁獲量、これはもちろん当初から予想したわけでございますが、この両者関連しつつ、日本側がこの程度のむならこうだということでくるのじゃないか。この点はおそらくきのうの福田・イシコフ会談、これは最終的ではありませんでしょうが、ここ一両日中に最終的な結論が出る方向にある、こういうふうに思っております。  大体ごく大ざっぱに言って今申し上げた通りでございますが、私どもとしましては、これは例年でありますが、ことし、ことにわが方として向こうに、従来からやっておるバナナのたたき売りみたいなことはよそうじゃないか、もっときちっとしたものでやろうじゃないか、これは本来そういう性質のものじゃないのです。たとえば資源論について、これは共通の場を持たないから資源論が並行である。これはどんどんお互いに科学者が長期駐在するというような方向で、お互いに資料を同じ場に立って調べるというような提案を日本側もしたわけであります。従って、科学者が場合によっては母船に乗ってもよろしいという提案、さっきの網目の問題につきましては、これは合意に達しまして、日本の調査船にソ連の学者が若干名乗る。ソ連の調査船に日本の科学者が乗ることが望ましい。これは現実に実現するかどうか、日本側としては乗って行くつもりであります。そういうふうに日本側としましては、今年は国内態勢も整備して参る。漁獲量の提示につきましても、現実的な数字として八万五千トンという相当ぎりぎりにしぼったところを出したのも、要するに日本側としてあまりかけ引きと申しますか、バナナのたたき売りみたいなことをしたくない。これは本来そういうものじゃないということで説明を言ったつもりでありますが、ソ側は今の禁止区域の提案について、御承知のようにとんでもない大きな提案をして、それをちびりちびり削っては譲歩したと、きょうの朝刊にも出ておりますように、ソ側譲歩、また譲歩と、いつもソ側が譲歩ということに出るということ、これははなはだわれわれとしては好ましくないことであります。こういうことは今後、きょうで九十九日、こういった長期の交渉というものも今後やり方を変えるべきじゃないかということも別途いろいろ話は出しておるわけでございます。  大へんまとまりが悪いのでございますけれども、大体の経過を述べまして、また御質問によりお答え申し上げます。
  7. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) ただいまの説明に対し御質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  8. 千田正

    ○千田正君 今、長官の御説明によって大体わかりますが、いつも最終的な問題になりますと、禁止区域をある程度容認するか、あるいは漁獲量をある程度向こうの言いなりになるか、どっちかという問題に追い詰められてくる。本年もそういう状況に立ち至ってきているのですが、ただいま御説明のあったようないわゆる四十五度から南の方へたれ下がったところを一応切る、切って今のじぐざぐ行進のような箱型になった点ですね、これも全然日本側が主張するように認めないという場合を想像した場合において、漁獲量に対してある程度こっちの要望の通り、向こうが折れて出るかどうかということはわれわれは非常に疑問に思うのです。この点をどういうふうに考えますか。全然日本側の主張をあくまでも通す。昨年の禁止区域までのことは了承するけれども、それ以上の禁止区域日本側としては承服できないのだ、これは前から主張しているのですね。同時に、もう一つは、魚道を向こうでは盛んに言っているのですね。魚道をあけることは、ある程度妥協しようじゃないかということをある程度言っているのじゃないですか。そうした場合においての、これは想像であって今からどうだということは言えないとしましても、心がまえを一応伺っておきたいと思う。
  9. 西村健次郎

    政府委員西村健次郎君) 今、最終段階になりまして非常に重大な段階でございますので、福田大臣が向こうでいろいろ御苦心なすっていると思いますが、基本的に申し上げれば、わが方としては、禁止区域あるいはその他の規制措置というものをどんどんかけられるということは好ましくない。従いましてさっき申し上げたように、非常に国内の自主的な措置というものをとることによりまして、たとえば区域の拡大ですね、区域外の問題、区域の拡大の問題、これははねのけて向こう側も折れたわけであります。ただ問題は、これはやはり二国間の、この条約の建前そのものが、話し合いができるという前提のもとに条約が作られておりますので、その辺との関連、かね合いというものが非常に微妙なものがある。それから、ソ連側としても、これは単に他の目的、あるいはまあ極端にいえば、そういう邪推もできないことはありませんけれども、やはり一応はソ側としても、カムチャッカなりの漁民の感情という、ソ側ソ側なりの一つのものに立脚して、われわれとしては納得しにくい、非常に納得しづらい点もありますけれども、その辺のところとのかね合いにおいて、やはり話し合いをつけるという必要もある場合もあろう、これはいろいろ批判も出てくると思いますけれども、やはり去年の三角地帯の問題というものもそういうものであろう。従いまして、それと、漁獲量もどういうふうに出てくるかということを私は今ここで必ずしもはっきり申し上げるわけには参りませんけれども、まあ基本的にいえば、やはりわが方として、これだけことしの母船の再編成なり、以南の流しなり、それから漁獲管理の強化ということをやる以上、相当な漁獲量はなくては非常に工合が悪い。それから規制措置についても、禁止区域等についても、今後に差しさわりのあるようなものは困る。ただ先ほど申し上げましたように、まん中の点につきましては、魚道的なものはやはり二国間で話し合いをつけるというどうしてもそういう問題もありますし、そこで、福田大臣から、もし漁獲量についても変にこれをソ側が改訂する用意があるならば、魚道的なもの——ソ側の言うのは非常に広いものじゃありませんから——というものは考慮してもいい。この点は二国間で話し合いをつけるという以上、やはりある程度何か考えなくちゃいかぬのじゃないか、こういう情勢でございます。
  10. 千田正

    ○千田正君 私二つの点で特に伺いたいのですが、それは先般高碕代表がお立ちになるときに、東京空港において、高碕代表との間に私一応話し合いをしたのですが、今度行く場合において、特に日本側として主張していきたいというのは、沿岸の安全操業という問題、これはどうしても打開していかなくちゃならない。この点と、日本の代表諸君が考えておるのは、全然この安保条約に関連した政治的な背景はないのだ、あくまで純粋な日ソ間の漁業問題に限定してお互いにその協議をし審議をするのだ、こういう観点に立って行かれたようでありますが、この審議経過をわれわれはいろいろ振り返って考えたり、あるいは研究してみますると、必ずしも私は政治的な背景がないとはいえないと思う。そこで、特に私が考えておるのは、この漁民の、北海道沿岸の漁民の安全操業、これはもう完全にシャット・アウトされている。今度のも強く主張しているのだが、それがどうにもならない。これはどうにもならないとするならば、当然その流し網、はえなわ等におけるところの禁止区域以外における短距離における操業を主張してくるだろうと思うのです、日本の漁民としましては。そういう点の調整を水産庁としてはやはり考えてあげなければならぬ。この点どういうふうに安全操業はやっていくか、どういう点まで折衝ができるか。政治折衝ができなかった場合に、沿岸漁民の行き先はどうなるのか。流し網あるいははえなわにおけるところの漁業はどういうふうに今後転換していくか、こういう点について長官のお考えと、それから、今の安保条約と関連しました国際政治関係の問題が影響しておらないかどうかという、そういう点においても、長官のお考えを伺っておきたいと思うのです。
  11. 西村健次郎

    政府委員西村健次郎君) いわゆる安全操業、あるいは近海操業と申しますのは、まあ根室あるいは花咲、あのあたりを根拠とします漁民が、歯舞、色丹、国後、択捉において、一番近くに接岸してコンブを採取すると、あるいは帆立貝とか、その他のカニとかというものをとる漁業であります。この問題につきましては、実は一昨々年以来、門脇大使がソ側交渉してそれがデッド・ロックに乗り上げているという事情は御承知通りであります。ただこの問題は、はえなわなり、流しのこととはちょっと別途の問題でございます。はえなわ、流しにつきましては、ことに流しにつきましては、大小いろいろございます、五トン以上からございますから。これにつきましては、安全操業とは別でございますけれども、われわれとしてはその条約締結のいきさつから見ましても、小型の流しの漁船の漁場というものはこれは確保しなければならないということで、先ほど申し上げましたように、西側に三角形に突き出した区域禁止区域にすることにつきましては、これは強く反対しておるわけでございます。あの点を禁止区域として認められる場合におきましては、小型の流しの連中、あるいははえなわもそうですけれども、これははえなわじゃございませんで、流しの連中は、規制区域内ではできないということになる。区域外でしかできないということになりますので、この点は強くがんばって、もちろんこの点は福田大臣以下代表団も十分心得られて、この点は、会議経過等を見ましても、強く主張しておるようでございます。  それから今度の交渉は安保問題その他の国内情勢というものに関連ありやなしやということは、私からお答えする限りでもありませんし、私はお答えする能力も持っておりませんけれども、ただ向こう側において現在までとられておる向こうの態度としましては、私として観測しますところ、あるいは誤っておるかもしれませんけれども、少なくともそういう安保と関連してこの問題を提示してきている、こういうふうには見られないわけでございまして、これの一つの参考としましてこれはもうだいぶ前のことでございます。この書簡の出た一月の二十七日ごろに、塩見顧問がパーティの席上イシコフと話して、お前の方はああいう態度で日ソ交渉もやるのかといってちょっとからかったところが、日ソ交渉はこれはもう全然別のやつだ、漁業交渉、条約に基づくものであるということを強くイシコフが言ったそうでございます。私は、ソ側も安保の問題とこの問題とからむということはしていないし、そういう性質のものではない、こういうふうに考えます。
  12. 千田正

    ○千田正君 もう一ぺん最後に私は一点お伺いしたいのは、最近の首脳会議の目標として、いろいろ平和的な問題の解決への足がかりが出てくるわけでございますが、その直前に、今度の飛行機のいわゆるスパイ事件というような問題が起きてきた。そうしてこれが国際的な政治に非常な影響を及ぼすことは、これはもう何人もいなめないものでありまして、特にこの北洋における、北太平洋における将来の問題として、この外交の影響が相当受けてくると思うのですが、こういうことに対しては、日本としても慎重に考えなければならないのじゃないかと思うのですが、たとえば日米加の漁業の問題、あるいは、ただいま議題となっておる、また先ほどから御説明承っておりますところの日ソ漁業の問題等の平和的な産業に対しましても、この問題は相当影響を及ぼすものとわれわれは観測するのですが、長官としてはこの問題は何ら関係がなさそうに思われますか、どうですか。この点も念のために承っておきたいと思います。
  13. 西村健次郎

    政府委員西村健次郎君) 私はU2号事件というのは新聞の知識以外に全然知識がございませんので何とも申し上げられませんが、いろいろソ連というもの、これが日米加と、アメリカ、カナダ、ソ連と日本というようなものが、北洋における漁業についていろいろな面で今後微妙な関係が生じてくるであろうという、こういうことは十分予想されます。それに対するために、わが方としてもいろいろ考えて参らなければならぬ。いろいろソ連は漁業について非常に積極的に今進出しております。現にその点が問題になりつつあることもわれわれは関知しております。それはそれとして、もちろんそういうことでございますが、ただ一方、日ソ漁業委員会につきましては、そういうふうにソ側の主張は、先ほど申し上げたように、非常に一つの目的にすべてを集中して理論づけをしていくということではございますけれども、たとえば資源状態の評価というような問題につきまして、一つ方法論というものは、大体今年は合意を得たと、これは一つの進歩だろうと思います。その線に沿ってお互いに科学的な調査を同じ線に沿ってやっていこうじゃないかということ、これは本来条約上あるべき姿で、当然とはいいますけれども、従来なかった一つの進歩である。それからさらに、先ほど申し上げましたように、漁業の調査のために科学者をお互いに交換しよう、ここ一、二年やっております科学者の交換、これも合意を見たようで、これらの点をお互いに対立するという問題ではなしに、やはり共同してやっていくということに基盤を置いてやっていく問題だと思いますが、この点につきましては、相当私は今年の委員会でいろいろ漁獲量、あるいは今のような規制措置については、日本側としては、ソ連はソ連なりに非常に大きい不満がありますけれども、そういった問題については、今後における一つの大きな進歩をこの委員会では見ておる、こういうふうに考えます。
  14. 藤田進

    ○藤田進君 先ほどの経過、見通しの結論の長官の所見が若干奇異に私感じますのは、禁止区域と総漁獲量の二つが問題になってかなりの懸隔があるわけですね。ところが、ここ一両日で何とか解決を見るものだろうという所見ですが、それには何らか根拠がなければならぬと思う。その根拠を示されたい。
  15. 西村健次郎

    政府委員西村健次郎君) 私がここ一両日で解決するだろうと、これはそう申し上げたとしますれば、それは非常に言葉が少し早まったと思いまして取り消さしていただきたいと思います。ただ問題は、むしろ客観情勢が、すでに昨日独航船四百十隻は函館、釧路に集結が終わっているし、本船も全部十一日には集結するという国内情勢というもの、これは漁期というものと関連いたしますので、これらからむしろ私は何らか妥結をここ二、三日中というふうに目鼻をつけるということはどうしても必要になってくるんじゃないか。ただ、そこで、ここ二週間来のソ側の態度、ことにイシコフは非常に強いものがありましたけれども、まあそれは依然としてここ数日、今後絶対変わらないものであるかどうか、その辺は私もまだわかりかねるのであります。今せっかく福田大臣が最終段階——私、いずれにしても最終段階と申して差しつかえないと思いますが、折衝しておられるわけであります。その辺につきましては、私はかれこれこれ以上申し上げるのはいかがかと思います。
  16. 藤田進

    ○藤田進君 フルシチョフ首相に執拗に会見を求めておられる。これがまだ昨日の段階では明確になっていない。好意的に取り次ごうという程度と私は聞いておこう。この目的は純然たる資源論に立脚してお互いにやろうということに、双方の全体の外交といったことでなくして、あなたの今、千田委員の質疑に対する御答弁でも、日本の国内の諸般の外交、この連鎖反応というものはないという立脚があるとするならば、フルシチョフ首相に会って、代表団がいろいろ踏み込んで行かれるのかどうかわからぬが、その主眼とするところはどういうふうに見ておられるのか。フルシチョフ首相に会わんとするその目的なり効果をどう見ているとあなたは思われているのか、ただしたい。
  17. 西村健次郎

    政府委員西村健次郎君) 私、実はフルシチョフに会う手続をしたと、新聞にはそういうあれが出ておりますけれども、公電は全然入っておりませんし、また福田大臣がどういう観点、あるいはどういう話題を持ってフルシチョフにお会いになるか、私今全然承知しておりませんので、今私がそれに対して申し上げることはちょっと差し控えたいと思います。
  18. 藤田進

    ○藤田進君 それはあれですか、いわゆる公電ではなくても、現地の報道機関の電報なりということでもごらんになっていないのでしょうか。私はまあその限りにおいて知るわけで、これが全然根拠のないものとは思わない。同時に、フルシチョフ首相に会うというのは、せっかくモスクワに来たんだから宣伝効果をねらって個人的に顔を見ていこうとか、そんなことではなかろうと思うのですね。一応いろいろな問題が終わってあいさつして帰るというならいざ知らず、この最終的段階に、ここに執拗に求めていると解される報道が出ておるわけです。このことは、イシコフ漁業相を代表とする折衝を終えてさらに高度な、政治的なトップクラスでの解決を求めようという熱意ではなかろうかと、われわれは素朴に、好意的にとるわけです。とするならば、単なる資源論ということだけでなくて、現地代表におかれては、わが国内の諸般の政治情勢というものがこの交渉の中に反映していると、こうつかんでいるに違いない。よってああいう国柄でもあるし、フルシチョフ首相にも会って何とか折衝打開を試みてみようということでなければならぬと思う。全然御存じないのですか、そういう申し入れをしたことについて。
  19. 西村健次郎

    政府委員西村健次郎君) 私は先ほど申し上げましたように、新聞で承知しただけでございます。その動議あるいは目的というものは、私の承知しました、見ました新聞については書いてありませんので、これは全く私がお答えのできないことを遺憾とします。
  20. 藤田進

    ○藤田進君 それでは国内と出先との関係、ことにフルシチョフ首相に会おうなどということは代表団としてもかなり思い切った決意だろうと思う。また、そのためにはどういうものを持ち込むかということであろうがと思う。なるほど所管大臣が行っているのであるから、本国と何ら関係なしにすべてを現地で決し得るかといえば、私は必ずしもそうではなかろうと思う。やはり本国との緊密な連繋のもとに折衝が行なわれていかなければならぬ。とするならば、水産庁長官にはお伺いがなかったとしても、他の国内の折衝等に従来関係を持ってきたどこかに、そういう連絡のもとに、少なくとも岸総理であるとか、外交に関連しては外務大臣であるとかということも想像し得るので、水産庁長官でその間の事情がわからなければ、わかる人に一つ来てもらって、われわれも十分その間の事情を知っておきたいと思うので、それらの日本国内の現地との連絡関係機構なり、従来やってこられた事情を一つ説明していただきたい。
  21. 西村健次郎

    政府委員西村健次郎君) 私が現在知っていることは、さっき申し上げた通りでございますけれども、御承知通り、フルシチョフは国の元首として非常に忙しい。従いまして、たとえばスチーブンソンですかが行きましたときには、フルシチョフに会うために一月モスクワにいたという事例もあったようです。従いまして、これがどういう時点において実現するかということもありましょう、かりに実現するとしても。従って、それと交渉との関係ということが、そう今にわかにフルシチョフと会わなければ交渉妥結しないのだというふうにとるべきものかどうか、それは非常に疑問がある、こういうふうに思っております。遺憾ながら私はその動機とか、どういうふうに——これはまだ全然向こうから具体的な反応はないわけです。だから、これについては、私はそれ以上の観測はおそらく無理であろう、こういうふうに考えております。
  22. 藤田進

    ○藤田進君 私のお聞きしているのは、あなたはそういう連絡がないしわからないとおっしゃるわけです。国内のこの問題に関して従来出先との密接な関係を持ちつつ最高方針を、本国の訓令なりいろいろ出している、そういう手続、方法があろうと思うのです。その実情をお尋ねしているのです。どういうものがどうなっているか。私実際のことは知らないのですが、勝手に出先できめたことではなかろうと思うのです。今言われるように、そう簡単に会えるものではない、四囲の事情が遷延を許さないということであるにかかわらず、現地のみの裁量で帰りのあいさつではなかろうと思うのです、おとといあたりの事情から見ると。そうすれば、外務大臣なり岸総理との関係においてこれがきめられたものかどうか。従来の本件に関する国内と現地との関係においてどういうところと連携があっただろうというようなことについてのいきさつをお聞きしたい、現地の実情というより。
  23. 西村健次郎

    政府委員西村健次郎君) これは私現地の実情と申しますか、これはまあ福田農林大臣が全権を持ってこの問題について所管大臣として行かれた。従いまして、それにつきまして、どういうふうに態度をとられるか、あるいはどういう人に会われるかという問題、あるいは、これは農林大臣として代表権限以外においても、あるいは農業の技術向上というような問題もかたわら、これは正式のものじゃございません、そういう問題もあろうと思います。従いまして、これをどういうふうかということ等を、今私としては、先ほど申し上げた以上には申し上げるあれもないのであります。その点一つ御了承……。
  24. 藤田進

    ○藤田進君 かりに最終的にこれで妥結するかどうかという点になれば、本国とのやはり連絡の上でなさるのだろうと思うのです。それは水産庁長官のイエス、ノーのあれではなくして内閣としてのあれをとられるわけです。だから、そこに行く過程の問題も、重要な問題は連絡がとられていなければならないと思う。とられているに違いない。それは一体どこととっているのですか。日本の場合、国内の場合。
  25. 西村健次郎

    政府委員西村健次郎君) この漁業交渉につきまして、最終的な妥結を、われわれにおきまして、今、藤田委員のおっしゃるようなこと、これはチャンネルとしましては、もちろん外務省を通じ最高首脳部にまで行って国内的にとられているのです。これは当然でございます。ただ、今申し上げましたように、時期も迫っております。また論点は漁獲量禁止区域にしぼられているわけです。昨日の会議、福田・イシコフ会談、午後の分については新聞に報道がない。また公電もわれわれの方に入っていない。それらの点とここ二、三日の動きというものは微妙であり、そこで大きく判断がされると思っております。そこで、それらの経過を今二、三日の動きによってはここで解決するという場合もあろうかと思います。その辺につきまして今こうだというふうに予断をもってといいますか、その一つのフィックスされたところで、私の想像で、これはフルシチョフとの会見というものはそういうふうに考えるわけにはいかないのじゃないかと、こういうふうに思うわけです。御了承願います。
  26. 藤田進

    ○藤田進君 そうするとあれですか、言葉をかえて言うならば、フルシチョフ首相に本件に関して打開する意味をもってやったかやらないかわからないということなんだが、われわれの見るところでは、そうでなければならぬと思う。だとすれば、申し入れるとすればここにやはり有力なものを持ってやるわけです。それは外務大臣との連絡の結果やっておると見るべきであるか、出先が単にそういう手段を考えて実行したにすぎないものか、どうなんですか。
  27. 西村健次郎

    政府委員西村健次郎君) これは私そういう非常に機微な点について、あるいは承知しない点もあるかもしれません。いやしくも所管大臣として、国務大臣として福田大臣が全権を持って行かれる以上、いろいろなあるべき場面も想定されます。その場合に想定される大きな点につきましては、これはもちろん総理なり御相談があったことと私は想像しております。当然そうだったと思っております。そういうワク内において、任務のワク内において福田大臣がやるということは当然だろうと思います。
  28. 藤田進

    ○藤田進君 外務大臣を呼んでいただけませんか。
  29. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止〕
  30. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) 速記をつけて。
  31. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 さっきからのお話を伺って御苦労のほどはよくわかるのですが、長官もおっしゃる通り時期が切迫しておる。そうして煮詰まったところは操業禁止区域漁獲量の問題、うらはらの関係で何らかの形をとるという段階にあると思う。どういうのですか、今根拠地に集結してスタートを待っておる漁船規模は、何万トンの漁獲を予定して許可を受けて待機しておるのですか。
  32. 西村健次郎

    政府委員西村健次郎君) これは待機してまだ出漁しておりませんから、許可証はまだ発給しておりません。これは漁獲量委員会できまった暁におきまして、それに基づいて母船式については漁獲量を割り当てる、こういうことになっております。
  33. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 それが八万五千トンが最低のぎりぎりの線で採算に乗ると申しますか、ベースに乗るという程度の規模ですか、今準備されておる漁船は。
  34. 西村健次郎

    政府委員西村健次郎君) これは根本的な一つの漁業許可とか、許可漁業に対する考え方とも関連するわけです。私どもとしまして、何万トンであれば、何トンであれば一隻当たりいいか、これは生産費を償えないから補償する、あるいは償うからよろしいという立場にはなっておらないわけでございます。ただ実際問題としまして、何トンであればいいかということは非常にむずかしい問題でございまして、たとえば独航船四百十隻、これはいろいろでございます。トン数は何トンでふればいいということは容易に結論が出ないむずかしい問題であります。われわれの方としましては、八万五千トンはぜひ確保したい。しかし、これはニ国間の話し合いでもございますし、その辺の点は話し合いを最終的に詰める必要もあろうと思います。いずれにしましても十二船団、四百十隻の独航船であれば、これは従来よりはよほど規模も小さいわけでございますので、その辺のところは何トンとればどうというふうにはっきりは申し上げられませんけれども、その辺も見合って八万五千トンは要求したわけでございますけれども、まだ十分話し合いの結果というものと関連しつつ一つその辺は考えたいと、こういうふうに思っております。
  35. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 これは非常に奇怪な話を聞くのですね。その程度のことなら、八万五千トンほしいという強硬な要求の背景としては非常に薄弱ではないか。八万五千トン程度がなけりゃ、本年度の操業準備をしても、それらにも甚大な被害もあろうという点も相当大きな理由になってもいいじゃないですか。それから過去のあの大騒ぎをした補償の問題等で騒がれた例等もあるのですから、今のようなお話を聞くと、やはり禁止区域というものをソ連側に譲歩せしむる場合には、八万五千トンよりも漁獲量は下がる。あるいは八万五千トンの漁獲量を一応認めるとあれば、禁止区域の方を日本側として認め、そして実態としては禁止区域が拡大したので、八万五千トンの許容量はあっても、その漁獲は不可能になる、そういうようなことも想定される。いずれにせよ、妥結するということは、今日において八万五千トンは確保されるのだ、そういう見通しというものはあなたの今の話からいっても感じとられない。何かうらはらの関係にある二つの条件のどちらかが譲り合うという形でしか妥結がないものと思われる。どうなんですか、その見通しは。
  36. 西村健次郎

    政府委員西村健次郎君) 今の御質問にお答えする前に、逆を申し上げれば、われわれとしてここできまることは、たとえば生産費を償うという程度であれば、それ以上はとらないのだということじゃないわけです。これは資源量というようなものから見て、日本としてはこれだけとっていい、だから八万五千トンより十万トンでもそれは多いほどいいわけです。ただ、日本としては、ぎりぎりのところ八万五千ですから、そこで、小笠原委員はそれはおかしいじゃないか、こういうことでございます。われわれとしては、八万五千トンを絶対に確保するということで強い態度でずっといっております。それだからこそ、今まで話が相当ここでもんでおるわけでございます。しかし、最終的な場合におきまして、私はもちろん二国間で、これは先ほど申し上げましたように、漁業条約という、話し合いがつくという建前でやっておりますので、そういう建前のもとにこの条約が作られておるのです。従って、話し合いがつかない場合はどうするというような処置もきめられておらないわけでございますので、その辺との関連におきまして、しからば、その八万五千トンぎりぎりの線を一トンでも割ったらこれはけ飛ばして帰るのだ、こういうことでいくのかどうかという点、これらの点が私は福田大臣は非常に御苦心のところだろうと思っております。ただ、私は現実の問題として、そういう問題も関連しつつその問題は考えなければならない。ただ、そのことが何トンでもいいのだ、八万五千トン幾ら引いてもいいのだという、そういうことを申しておる趣旨では毛頭ございません。われわれは八万五千トンは確保したいということで、この八万五千トンを切り出しておるわけでございます。
  37. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 ではその八万五千トンを漁獲量の方を確保するということになって、禁止区域の一部でも、先ほどお話しになった三カ所のうち、これも譲歩し合うということでどこかが拡大されるということになれば、八万五千トンの漁獲がそれでなおかつ見込まれる、そういう見解なのですか。
  38. 西村健次郎

    政府委員西村健次郎君) 私は、今禁止区域の最終的なものはどういうところにきまるか、これはわかりませんし、この程度ならどう見込まれる、そういうような数字は相関的にすぐ答えが出る性質のものじゃないと思います。しかし、はっきり申し上げられることは、ソ側の当初の提案のごとき広大なる禁止区域であれば、これはもう先ほど申し上げたように、五万トンも確保できないということは言えます。それ以上現在禁止区域はどの程度だというようなことは、これはきわめて最終的な、微妙な段階でございます。しかも、それについてこれならこうだ、こういう相関関係はここに出てこない性質のものでございます。見込まれる、見込まれないというふうに申し上げろわけにいかない、こう思っております。
  39. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 事は外交交渉ですから、妥結の前にわれわれの立場としてはかれこれということは申し上げたくない。しかしですね、国内業者の立場から考えれば、漁期は交渉が延びればそれだけ短縮される。それにかてて加えて、かりに禁止区域が拡大する場合があり、あるいは漁獲量が減るというような場合がある、こうなれば、予定された漁獲が確保されないという点からいろいろの問題も起こるのではないかという心配を持つ。それに対して、水産庁当局としていろいろな考慮を払っておられると思う。今それを聞こうとは思わぬが、そういうことまで考えた上でないと、この外交交渉は必ず妥結して帰らなくちゃならぬのですから、あなたがおっしゃる通り、決裂なんというようなことはあり得ないのです。その際に、この外交交渉は失敗であったのか、失敗でなかったのかという議論になってくると、言を左右にしてその態度を明らかにしない。そういうことでは、内閣の責任なんというものは明確にならぬと思う。過去においてもそうなんです。いつでものんべんだらりなんです。ですから、そういう、現在あなたが何と言おうと、二つの条件がうらはらになっているこの問題において、最悪の場合においては、漁獲量というものが日本としては最大の要件である、そうなのか、あるいはその他の条件の方が将来にわたって重要であるのか、ポイントの置きどころというものは私たちもはっきり聞いておきたい。また、期待している業者においても、政府がどこに力点を置いているかということを明確にしてもらいたいと思っているのだと思う。そういう意味で、私は八万五千トン以下でも生産費を償うという場合はあり得るかもしらぬが、八万五千トンを出した根拠は、資源の上からもそうであるが、四百十ぱいの独航船のそれぞれの諸経費、生産費をいろいろ考慮した上で、八万五千トンは何としても確保してやりたいという理由も大きな理由だったと思うのです。だから、それが欠けるにおいては影響があるのですよ。その点はどう措置されるのか。内容については聞かぬが、十分配意することについて政府側の言明があればいいと思う。力点はどこなのか、万一のことがあったらどうしようとするのか、この点をお聞かせ願いたい。
  40. 西村健次郎

    政府委員西村健次郎君) 八万五千トンあるいは禁止区域の問題、これらに関連して、これを両者相関関係においてどうもっていくか、その結果どうなるかという問題、これについてはあらゆる場面を想定してわれわれの方ではいろいろ考えております。ただし、ここでどう考えるかと言うことは、これこそ現在における交渉の最も機微の点で、わが方の手のうちを見せることになりますので、私は、現在の段階においては、これについて私がかれこれ申し上げますことはお許しを願いたい、こう思います。
  41. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 確かにそういう意味もあるでしょうから、私はしいてこれ以上お尋ねしませんが、八万五千トン実際欠けたら失敗だ、われわれは責任を感ずる、こういうことになりますか。一番最初のあなたの答弁では、それらしいことではなかった。八万五千トンはわれわれの要求ではあるが、業者が八万五千トンなければやっていけないという問題でもない、今の段階でそういう要求をしているのだというふうに聞き取れるような御発言もあったから、私しつこくこれを聞いてきたのです。八万五千トンは絶対譲れない、これが日本政府側の根本的な態度だ、基本的な態度だ、そういうことならそういうふうに御答弁願えばいい。これは機微に触れるも何もないことだ。
  42. 西村健次郎

    政府委員西村健次郎君) 私の答弁の首尾あるいは一貫しないところに、これこそ微妙な点がございます点を一つ御了承願いたいと、こう思います。
  43. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 御了承願っておくと言うが、私は了承しませんよ。ただ、言えないということについては了承しておいてもいい、今の段階で言えないということは。しかし、そういう態度は了承しません。事がどうきまるか、きまったあとにまたいろいろな方面から批判すれば、それについてはまたそれなりの答弁をする、それなりの態度を政府が出す、こういうことでは業界はどこにたよったらいいかわからぬでしょう。また国民の立場に立っても、重要な北洋資源について、そういういいかげんなことといえばあれですけれども、いいかげんなことになつちまったということになったら、やはり重大な問題となるでしょう。そういうときの責任問題と申しますか、外交上の一つ責任というような点を明確にさせるという点になると、またあいまいになってくる。だから、前もって聞いておきたいと思っておるのです。  で、最後にもう一つお尋ねしますが、どんなことがあっても、何日までには日本側としては取りきめをしなければ操業に差しつかえるということで決意しておるのですか。
  44. 西村健次郎

    政府委員西村健次郎君) 昨年が十三日に妥結いたしました。十三日と申しますと今週の金曜日であります。おそらく昨年と同じくらいに妥結を見なくちゃいけないということで代表団もやっていくと、こう思っております。
  45. 千田正

    ○千田正君 最後に一点、今、小笠原委員もその点を聞いておるのだが、私も一応聞きたいのは、外交折衝であると同時に、国内においては、国内行政における処置が当然表裏一体となってこの問題の解決に当たらなくちゃならないという点においては、何ら疑問を差しはさむことはないのでありますが、小笠原君の質問した通り、ややもすれば、最後にめんどうな問題になると、これはやむを得なかったと、これはどうにもならなかったということで、実際の業者が泣き寝入りする場合が相当ある。あるいは泣き寝入りしなくても、その実際のマイナスの責任の転嫁というものは、政府がやるのじゃなくして、業者間でお互いの損傷を埋め合わしたりなんかしなくちゃならないところまで追い詰められていくということが過去においてたびたびあったわけであります。でありますから、今度のような場合には、明確に、よい結果が生まれるにしましても、悪い結果が生まれたとしましても、政府責任をもって今後の処置等に対してはやるんだと、こういう心がまえにおいては、やはり明言して差しつかえないのじゃないかと、私はそう思うのですが、長官はこの点のことははっきりしていただかなければならないと思うのです。その点をお答え願いたいと思うのです。
  46. 西村健次郎

    政府委員西村健次郎君) この問題は、われわれとして、いろいろな状態、発生すべき事態について対処すべきことは検討いたしております。問題は、交渉の機微に触れるということを申し上げたわけで、これだけははっきり申し上げられると思います。ただ八万五千トンというものが一トンも切れても、それは補償する、生産費ぎりぎりだということにはおそらくならないだろう、これは先ほど申し上げたように、コストの問題というものはなかなか把握しがたい問題でありますけれども、従って、八万五千トンというものも、これが一トン欠けても、これはもうコストを割るのだ、その逆にいえば、日本ではコストぎりぎりのものだという要求をいつもするのだということは、むしろ私はおかしいと思う。日ソ漁業交渉において、資源上とれる量は日本はとっていいと思う。従って、それはその意味でぎりぎり八万五千トン要求したわけであります。従って、これを割ったらすぐそれが補償問題になるということにはなかなか——しかし政府は、それじゃもうどんなことがあっても知らぬ、そういうことでは毛頭ございません。これは具体的な問題に従いまして、政府としてやるべき措置はやるというふうに考えております。
  47. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 それが私はおかしいと思うのです。それが過去において八万五千トンになった場合に、独航船と母船を減らさなければやっていけない、そういうことで四百十ぱいなら四百十ぱいというものを操業させる、その範囲ならある適正な利潤も得られ、業界も助かるだろう、そういう根拠もあるわけでしょう。もしもかりに、資源上から十万とれるとなったら、四百五十ぱいだとか、あるいは五百ぱい必ず許可して操業させていいわけなんです。また、そうすべきものなんです。独航船なり母船なりを極度に制限して、一部の者にだけ独占的に利潤を与えるというようなことは、今日の漁業政策としては成り立たぬことなんです。十万とれる、十五万とれるとなったら、それだけやはり隻数もふやして、そうしてそれぞれの業界が成り立っていくような方途も、行政としては考えられることだと思うのですね。ですから、あなたのおっしゃるおっしゃり方もあるでしょうけれども、われわれから見れば、八万五千トンの現状において予定されているもので、それはぎりぎりのものではないかという感じを持つのです。長官はぎりぎりのものではないのだ、そこには余裕があるのだというようなものであるならば、私はこの交渉妥結においては、それが七万五千トンになり、あるいは七万トンになっても、それはいいと思う、あなたがおっしゃるような線なら。われわれはそうは思わぬのです。で、長官のおっしゃる事情も、事情としてはわかるけれども、そういうことが堂々と国内で責任ある長官から言われて工合がいいことだというふうに私は思わぬのですが、どうなんですか。
  48. 西村健次郎

    政府委員西村健次郎君) 昨年の秋からことしにかけて船団の再編成、こういうことで五十ぱいの独航船、母船を四はい減らしたわけなんであります。そこで、現在の四百十ぱいあるいは十二船団という制度、これがどういう姿のものであるかということにつきまして、私はこの再編成は、建前として、しかも実質的な、あくまで自主的なものとして再編成する、これは小笠原委員がおっしゃるように、漁獲量が常に安定してきまっていけば、これについては、それをできるだけ多くの漁民に就業の機会を与えることは、これは当然であると思います。その問題に対してはっきりした答えは、遺憾ながらここ当分は出ない。現在も出ておりません。自主的に再編成によって五十ぱいの独航船、母船は別としましてこれが四百十ぱい、これは八万五千トンぎりぎり一ぱいだということが、数字的にはっきりひっついたものとして自主的に再編成されたというふうには聞いておりません。これはそういうふうな答えが出てこない性質のものであります。ただ、最近における、ことに去年豊漁年であったのにかかわらず、八万五千トンという数字がきまったということで、ことしは不漁年である、今後においてもそうこれが大きくふえるということはあまり望み得ないということになりますると、四百十ぱい程度にすれば相当な適応性がある、これは四百六十ぱいより適応性があるということで自主減少ということが相当に行なわれたわけであります。かりに今後漁獲量が数年にわたってきまるということになれば、それに対応した適正なる規模、隻数等は当然あって、それはまた別途おのずからそういう対策、それこそ政府としても、そこについてはっきり船数を打ち出していくというものであろうと思います。
  49. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 だんだんよくわかってきました、私も。もう少し私にわからせるために四百十ぱいの、八万五千トン以下の適応性の限界を示してもらいたい。どこまでが適応性があるのですか。あなたは適応性と言いましたから、それはその年々の漁価もあるでしょうが、資材器具、労賃、それらは去年と今年とで安くなったというようなものではない。ですから、そういうようなことから考えて、適応性の限界はどの辺にあるのですか、四百十ぱい……。それを聞けば私しっかりほんとうによくわかる、具体的に。
  50. 西村健次郎

    政府委員西村健次郎君) 四百十ぱいの適応性の限界というものは、これは私はっきりしたところはなかなか出にくいと思っております。と申しますのは、先ほど申し上げましたように、昨年でございますか、八万五千トン、四百六十ぱいの一隻当たり百五十六トンという数字で、このときは全船赤字出漁ということがいわれたわけでございますけれども、実はそのときにわれわれの調査では、ある独航船は百三十トンでも十分いける、ある独航船は百六十トンでもいけないというようなこともございます。私は適応性ということについて、はっきりこの線からここが限界だというふうな数字は、これは申し上げにくいと思います。ただ私の申し上げたことは、四百五十ぱいより四百十ぱいの方が、その適応性の範囲が広くなると、こういう意味で民間の自主的な減船として、五十ぱいの減船に踏み切った、こういうふうに考えております。
  51. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 まあもっと尋ねたいけれども、妥結してからあらためてまたお尋ねしたいと思う。どうも長官のおっしゃることを聞いていると、なかなか適応性があり、幅があるような感じで、長官、内地におられてもう一押しがんばれといって、これは声援したってどうにもならぬことですから、これ以上申し上げませんが、しかし、いろいろな場合において政務次官等も活発な活動を示されて、一つ所期の目的が達成するように一段とがんばっていただきたいと存じます。
  52. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  53. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) 速記をつけて下さい。  なお、藤田君の御要望については、あとで理事会で御相談をいたして決定をいたしたいと存じます。  ここでしばらく休憩をして、午後は二時から再開をいたします。    午後零時三十五分休憩    —————・—————    午後二時二十三分開会
  54. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) ただいまから農林水産委員会を再開いたします。  午前に引き続いて北洋漁業に関する件を議題といたします。  なお、藤田委員御要求による外務大臣の出席については、衆議院における日米安全保障条約等特別委員会の都合によって出席が困難とのことでありまするから御了承を願います。  御質疑のおありの方は御発言を願います。
  55. 千田正

    ○千田正君 午前中の質疑に対しまして長官からいろいろ御答弁がありましたが、特に私はこの際、はっきりと長官からお答えをいただきたいのは、この日ソ漁業の問題は、年々開かれておりながら、しかも、日本はだんだん、だんだん後退しておる、こういう現実であります。第一回におきましては、日本側の要求は十六万五千トンに対してソ連側は八万トン、妥結しましたのが十二万トン。第二回は、十四万五千トンの日本側の要求に対しましてソ連側が八万トン、妥結したのが十一万トン。第三回の昨年は、日本側が十六万五千トンを要求してソ連側が五万トン、妥結したのが八万五千トン、このように日ソ漁業条約が締結されて毎年日ソ間の協議が行われるたびに日本側が後退してきておるという現実を見ましたときに、本年の状況は、先般長官から御答弁がありました通り日本側の要求が八万五千トン、ソ連側が五万トン、いずれも一歩も譲らないという段階に来ておるのであります。いろいろな御答弁がありましたけれども、われわれはこの際、日本の立場をはっきりしておく必要があるのじゃないか、一昨年は漁獲量を標準とした結論としては、オホーツク海におけるところの日本側のいわゆる公海の操業の自由というものを放棄して漁獲量確保したのでありますけれども、沿岸の漁民がそのために非常に犠牲になったということを顧みますときに、本年のこの問題については、一歩も譲らないという不退転の決意を示さなければならないと私は思うのであります。先般来、北海道あるいはその他におきまして、今度の問題に対して日本国民の要望としてあらゆる点を考えても八万五千トンよりは絶対譲れない、この線を確保してもらいたいというきびしい要求がなされております。この際さらにあらためて日本側としての決意のほどを示していただきたいと思いますので、水産庁長官から、この問題に対する長官としての御決意のほどをもう一回はっきり明確にお答え願いたいと思います。
  56. 西村健次郎

    政府委員西村健次郎君) 午前中のいろいろの御質問に対する答弁におきまして、あるいは言葉が意を尽くさざる点もあったかと思いますので、あらためてまた御答弁申し上げたいと思います。ただいま千田委員からの御質問の点につきまして、これは日ソ漁業条約に基づきまして、資源状態にかんがみて漁獲量をきめることでありまして、その点からわが方としましては八万五千トンというものは十分これはとり得るということで主張しておりますし、打ち出したものでありまして、従いまして、この点は過去のいきさつはともかくとしまして、これはあくまで堅持するという基本方針をもって今回の交渉に対処しておるわけでございます。  なお、これとからみまして禁止区域の問題が今残っておるわけでございますが、禁止区域につきましても、これが将来に大きな禍根を残すというようなことのないようにということ、公海における日本の漁船の操業が不当な圧迫をこうむらないということの基本方針はあくまで変えず、強い態度でこれも臨んでおる、この点は今後も変わらないところである、こういうふうに考えております。
  57. 千田正

    ○千田正君 もう一点、網目の問題があるのでありますが、今回突如としてさらにこまかい規制を向こう側から要求してきております。この問題はいずれにしましても実験をしてみて、はたしてそれは可能であるかどうか。ソ連側が提示しておるところの網目くらいでやったならば、日本のマス漁業というものはおそらくできないのじゃないか、不可能にひとしいような提案を面こうが出しておる以上は、われわれは納得できませんので、この点におきましてもことしあたり両者立ち会いの院に、あるいは実験の段階にすぎないかもしれません。しかしながら、次から次へとソ連側は新手の問題を提示するのでありますから、こういう問題につきましても、この網目の問題などは絶対に日本側は受けることはできない、私はさように思いますので、この点も強く主張していただきたい、この点も要望しておきます。
  58. 西村健次郎

    政府委員西村健次郎君) 網目の問題は、午前中に御説明しましたように、六十五ミリにつきましては、本年四分の一やろう、これはもう昨年からの話でございます。これはやっております。しかし、本年ソ側が提案してきました六十八ミリにつきましては、従来全くこれは使っておらない。従って、われわれとしてはそのデータがない。おそらく考えられるところ、私はこれはマスはとれないだろう。しかし、ただそういうことでなしに、お互いに調査して、おそらく私はとれないという結果が出ると思います。これは堂々とお互いに科学者を交換してやる、こういう方針ではっきりした態度でこれに臨んでいこう、こう思っております。
  59. 東隆

    ○東隆君 私は、農林大臣がモスクワへ行く場合に、実は二つのことを申し上げて、そうしてがんばってもらうようにお願いを申し上げておきました。一つは、魚資源の確保をするために、どうしても孵化事業を大きく力を入れてやるべきである、こういう問題、それからもう一つは、天敵を退治をする、こういうことによって魚資源の確保をやらなければならぬ、向こうの方が言っておるのはその点でもって押してきておるのですから、これに対して答えるだけの用意をしなければならぬのだ、こういうことで話を進めていったわけでありますが、私はそのときにもう一つつけ加えるつもりでありましたけれども、しかし、これは交渉をする場合にすぐ問題になるのでその点は触れませんでした。それは何かといいますと、例の違反船の問題であります。違反船を、実は日本で非常に違反船の問題に対して適正に罰を加えておらない、こういうようなことのために私は非常に大きな誤解を生んでおるのじゃないか、こう考えたわけでありますけれども、これはこの前、東京の会談においてもその問題が出ておりました。しかし、そのときにもわれわれのこの委員会ではその問題をわざわざ持ち出さずに実はおいたわけであります。そういうような経過もありましたので、あのときにはその問題を持ち出さなかったのでありますが、農林大臣がモスクワに着くと同時に、向こうの方で言い出したのは違反船の問題であります。それで、この問題は今後仕事を進めるのにあたって、日本では相当強い態度で臨まなければ、やはり漁業問題を解決する場合における条件にはならぬと思うのです。そこで、その点についてはどういうようなお考えか、この点を一つお答えを願いたいと思います。
  60. 西村健次郎

    政府委員西村健次郎君) 本年、まあ従来もそうでありますが、本年特に私どもとして一つの大きな決心をしましたことは、今、東委員の御指摘の違反の問題でございます。これは条約に基づく国際漁業である以上は、きめられたことをきちんと守らない限り、これは国際信義上も許せない。結局、自分で自分の首を絞める結果になるということにかんがみまして、本年は、従来もやっておりましたけれども、実効が上がらない面もありました。それをより実効を上がらしめる、そのためには、違反が発生しないように予防的な措置もしっかりする、それから違反した後における処分を厳正にやる、この二つであります。母船式の漁業につきましては、本年から漁獲管理の強化ということで、まず各母船に監督官を、従来は一人でありましたのを二人乗せる、そうしてまた独航船が出漁するに際しましては、現在釧路に集結しておりますが、これらの監督官が出港前にすべての独航船を検査しまして、網なら網を封印をする。ちゃんと余分なものを持たせない。それから塩も、従来はしけ等の場合に塩蔵する必要があるというので、各船に二十俵持たしておりましたけれども、本年からそれをやめまして食料としての一俵のみを持たせる、こういうことにいたしました。なお母船の方の作業につきまして、監督官二人が常時監督に当たるほか、各母船に重量計をつけさせまして、それによってきちんとした重量を常に客観的にわかるように、疑惑を生じないようにさせる。さらに母船でカン詰なり製品ができる場合、これが中積み船で日本の横浜なり、いろいろな港に入ってくる場合におきましては、これは検数人の方に委託しまして政府でこの数字を調べる。製品についてもチェックする、こういうような措置をとっておる。なお違反がかりに不幸にして起きたような場合におきましては、これは去年も違反船が二隻ございました、独航船で。これは停船命令を発しております。しかし、ことしにつきましては、違反が起きた場合には、違反船を直ちに帰港せしめる、そういう措置をとると同時に、母船側に対しましても、これは各船団長は責任を持ってそういう違反のないように処置してもらいたいということも強く要望しておきました。また中部以南の流し網漁業、あるいははえなわ漁業につきましても、同様にいわゆる漁獲管理を強化するという措置をやって、まず第一に、陸揚げ根拠地を縮減しまして、非常に数を少なくするということをいたしまして、それから船体の塗り分け、これは去年からやっておりますが、これにつきまして、さらに流し網漁船が区域内に入る場合には、その船体の色を、またさらに、その前に塗り分けさせるという措置もとる。まあはえなわにつきましては、区域内に入るということはございませんから……。これはライト・ブルーに船体を塗らせるということで、これは無許可船が発生することを防ぐ、これは去年からやりまして、効果があるようです。なお、はえなわにつましては、とにかく糸が細いために切れて、針をくわえて魚がいく、損傷魚になるということがございますので、ことしから、そういういわゆる一分糸と申しますか、一定の直径以上の糸を使わせるということを制限としてきめております。こういった一連の漁獲管理の強化措置をことしからやって参りたい。さらに違反船のないように、厳正にやっていく。さらにこれは日本国側の問題ではございませんが、昨年までソ連側が違反を摘発した場合の措置、すぐ違反船をソ連側の根拠地に連れていってしまうということ、条約上に基づく違反の場合の通報の仕方、通信の仕方とか、引き渡しの方法はうまく合意ができていなかった、この点につきまして、今別途ソ連側と折衝をモスクワにおいてやっております。まだ最終的には至っておりませんが、だいぶその点は進歩をするのではないか、従来より格段の進歩をするのではないか、こういうふうに考えております。
  61. 東隆

    ○東隆君 私は、この交渉か問題になっておりますのは、しかし、いずれにしても出港いたしますようになりますと、例の魚価の問題が一番大切なことになろうと思うのですが、この魚価の問題はどうお見通しですか。
  62. 西村健次郎

    政府委員西村健次郎君) 例年、魚価、これは母船と独航船との間の問題であります。この魚価が非常にもめるわけでございます。母船側は安く買おうとし、独航船側は高く売ろうとする。まあことしどういう見通しになりますか、これは本質的には両者の間の経営の問題でありますので、両者の間で話し合いをつけるべき問題であります。本年は再編成というものも自主的にやったといういきさつもありまするし、魚価につきまして、母船側もこれは相当考慮しなくちゃいけないという気分になっておりまするし、なおまた、両者間で、従来みたいにえんえんと、出漁して漁期が終わりになっても話がつかないという態勢はおもしろくないので、出漁前に話をつけたいという気分になっておりますので、案外近い機会において両者の間でこの問題についての話し合い、これが行なわれる、そうしてそれは従来より案外話がスムーズにいく場合もあるのじゃないかと、こういうふうに考えております。まだ具体的な問題として数字までは出ておりませんので、これ以上のことを申し上げるわけには参りません。
  63. 東隆

    ○東隆君 私は、それは魚価の問題でこれだけ国をあげてこの問題を心配をし、また政府も非常に力を入れてやっておるのですから、私は相当この問題については、政府が中に入って、そうして調節をとるべきでないかと、こういう考え方を持つのですが、これは根拠その他のものはこれはよくわかりませんけれども、しかし、それをやり得るだけの仕事を政府はやっておるのじゃないかと、こう思うのですが、その点どうですか。
  64. 西村健次郎

    政府委員西村健次郎君) 非常にこれは微妙な点についての御質問でございますが、先ほど申し上げたように、魚価そのものは本質的にはあくまで独航船と母船との間で話し合いできめるべき問題であろうと、これは本質的にはです、つまりそこに制度的に今行政庁が介入するというふうにはなっておらないわけでございます。従いまして、水産庁はこの魚価の問題に表から介入するというわけには参らないと思います。しかし、われわれとしまして、北洋漁業、これだけ国をあげてやって、しかも、いろいろ自主的な再編成をやったというようなこと、これについてやはり行政当局も無関心でいるわけでは……、それはもう独航船なり、あるいは母船のことだということでほうりっぱなしで無関心でいるというわけにも参らないこともあるいはあるかというふうには考えておりますが、それが具体的にどういう格好をとるか、あるいはまた、どういうふうに進展するかということは今後の問題でございますので、その問題の進展に伴いまして適切に対処して参りたい、こう思っております。
  65. 東隆

    ○東隆君 もう一つは、私はオホーツク海におけるサケマスのシャット・アウトされたのは、これはもう非常に大きな痛恨事だと、こう考えておるわけです。今回の場合におけるソビエトのやり方は、やはりそれに類したような戦法できておるように思うのです。そこで私は、千島海域に近いところの新しい禁止区域の設定、そういうようなものを条件にまた取引など行なわれると、これは大へんなことになろうと思うのであります。そこで、先ほど長官は安保条約には関連がないと、こういうようにお話しになっておりますけれども、私どもは、そういう考え方でなくて、実に大きな私は安保条約その他に関連があると思うのです。国防上の問題から考えてみましても、千島のあの海域というものは、アメリカにとっても非常に問題になるところですし、それからソビエトは、あすこを中心にすればこれは相当なところにもなると、こういうようなことを考えて参りますると、オホーツク海をシャット・アウトしたのは、やはりちょうどサケマスの漁期にあたって、いろいろな防衛資材その他各般のものをオホーツク海を通って送り込むというようなことも考えなければならぬ。しかも、そいつが鮭鱒のときというようなことになりますると、外部に十分に漏れていく、こんなようなこともあったろうと思う。その当時の一部の考え方の中には、そういう点が非常に多かった。そういう説も十分にあったわけです。だから、今回の場合においても、私は、ソビエトが千島の海域を守るためにあの設定区域を拡大をするというのは、これは非常に大きな希望があると思う。その大きな希望を、単なるその漁獲量の一万トンやそこらでもってまた取引をされるというような、そんなようなことになりますると、私は、根室近海における安全操業の問題から始まって、各方面に非常に大きな問題にこれはなってくると思う。ますます首を絞められるような話が出てくると思いますので、この点は一つ断固として引かないように一つがんばっていただきたいと、こう思うわけであります。この点は一つ決意のほどを長官はっきりおっしゃっていただきたいと、こう思うわけであります。
  66. 西村健次郎

    政府委員西村健次郎君) 今の御質問のうちで、たとえばオホーツク海、あるいは先ほど申し上げました三角の西南のところに出た区域、軍事的な問題というお話でございましたが、私どもはそうは感じていないのでございます。と申しますのは、オホーツク海もサケマスについては禁漁になりましたが、カニは四船団出ておりまするし、そのほかに底びき等は相当出ておる。それから千島の南の方につきましても、冬場はタラはえなわ、あるいは底びき等、これでよく十二海里の線のあたりまでは近接できるわけであります。そこに入ったというので拿捕されたりするわけであります。サケマスについては、従来から、去年設定された禁止区域は二十海里、四十海里、こういうことでございますので、まあそういうことはないと思っておるのでございますが、先ほども申し上げましたように、いわゆる規制区域の一番西南の三角の地帯というのは入らない。主として北海道根拠の、どちらかというと小型の流し網漁船の唯一の区域内における漁場でございまして、これはもう絶対に確保する必要があると、そういうことで従来からずっとこの十日間もがんばっております。これと引きかえにやるということは、おそらくそういうことはあり得ないとわれわれは信じております。
  67. 千田正

    ○千田正君 もう一点、途中でこれは種切れになったようでありますが、実は今の問題に関連しまして、避難港とそれからいわゆる給水の問題があるのですね。で、正式に国交回復という政治問題の解決はないにしましても、漁船が風浪のために避難するとか、あるいは水がないので給水のために寄港すると、こういうような問題は人道的な立場で、国際的にいわゆる人道主義の立場においても、各国において相互いに開放している現状にあるわけであります。たとえば中共との間に、先般三港に限りましてお互いにその避難港を開放して、そうして避難漁船のために便宜を与えておる。給水のために便宜を与えておる。この問題などは、むしろ当然進んでこの問題の解決に当たる官庁としてやるべきである、私はさように思うのでありますが、どうも今度の問題にも——途中で消えたような感がある。この問題は将来に残されるにしましても、強くこういう点も要求していいんじゃないか。こういう点についてどういうようにお考えになりますか、この点お答え願いたいと思います。
  68. 西村健次郎

    政府委員西村健次郎君) 今の問題は直接日ソ漁業交渉とは別の問題でございます。むしろ安全操業と関連して従来から問題になっていたことでございます。避難港につきましては、やはり中共等とやり方が少し違っておりますので、これに入れない。港が中共みたいにきまっておらない。それからこの問題につきましては、やはり、私は今普通の、あの協定の条文忘れましたけれども、多少条件が違う。そういうところで、これはいずれにしましても人道的な問題でありますので、なお実情に即するように今後機会を見て話し合いをしていくべきであろう、こう思っております。その線に沿って進みたい。ただ問題は、ソ連側があそこは、先ほど東委員の御指摘のように、国防上の問題があるので、非常に日本の漁船がひんぴんと入るということはこれ非常にいやがるというようなことがあるやに看取されるわけであります。それはそうとしましても、人道的な問題として、この問題はもっと実情に沿った方向にいくようになお検討して、機会を見て交渉して参りたい、こう思っております。
  69. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) 他に御発言もなければ、本件については本日はこの程度にいたし、なお、交渉が国内関係各方面から期待されておりますような成果を達成することができますよう、政府当局の一そうの努力を強く要望いたします。   —————————————
  70. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) 開拓営農振興臨時措置法の一部を改正する法律家(閣法第七三号)、開拓者資金融通法の一部を改正する法律案(閣法第一〇五号)及び開拓者資金融通法による政府の貸付金の償還条件緩和等に関する特別措置法案(閣法第一〇六号)(以上いずれも予備審査)の三案を一括議題といたします。  まず、去る四月二十八日の委員会において東委員から指摘されました問題点に対し、当局の答弁を求めます。
  71. 庄野五一郎

    説明員(庄野五一郎君) 先般、東先生から開拓法につきまして御質問がありまして、この次に答弁することになっておりました。御質問の点は七点ほどあったわけでございますが、順次御説明申し上げたいと、こう思っております。  御質問の第一点でございますが、基本営農類型による配分耕地面積を見ると、たとえば北海道の場合、一番規模の小さい第三類型でさえ九町歩で、従来の入植者の七町歩よりもこれは大きい、第一類型においては十四町歩ということにさえなっているが、政府は開拓農家の適正規模というものをどういうふうに考えておるか、あるいはまた適正規模によって営農類型を法定して、政府責任を持ってその実現をはかるべきだと思うが、どうか、こういった御趣旨の御質問だと存じますが、それにつきまして御答弁いたしたいと思います。御承知のように、基本営農類型は昭和三十三年度に設定されましたものでございまして、従来の営農類型が米麦といった穀菽、あるいはイモ等の増産に偏重するきらいがありました。また従来の人畜力開墾を主体といたしますものにあたりましては、開墾進度が非常におくれる、そのために営農の不振を招いていたような経験にかんがみまして、この基本営農類型におきましては、立地条件に応じまして牛乳とか、あるいは食肉あるいは果樹、蔬菜といった、こういったものの生産に重点を置くようにいたしますし、また開墾も機械開墾によって一挙に開墾を進めていく、こういうことにいたしまして、従来のものよりは収益性とか、あるいは安定性をさらに高めていこう、こういうようなねらいから再検討したものでございます。現在これをモデル的に北海道三類型、内地四類型で実施いたしておる次第でございます。しかしながら、過去に入植いたした開拓者につきましては、これを一律に標準的な経営規模にしてその振興をはかるということは、すでに入植いたしております関係で非常に困難な面があるわけでございます。従いまして、既入植者につきましては、一応安定していると見られるものはこれはいいのでございますが、不安定なものが御承知のように七割程度ございます。そういうものにつきましては、三十二年に開拓営農振興臨時措置法というものを作りまして、これの安定をはかっていく、営農振興をはかって安定をねらう、こういうことで振興計画を立てて、それによってその営農振興をはかっておるわけでございますが、それにつきましては、その開拓者それぞれの農家の具体的な実情に応じまして、可能な範囲で最も合理的な営農振興の方策を立てるということにいたしておるわけでございまして、政府といたしましても、その改善計画を承認いたしまして、県知事が承認いたしましたものにつきまして、政府といたしましても必要な予算的あるいは財政的措置その他指導等を講じまして、早急にその振興計画の達成による営農の安定というものに努めている次第でございます。それで、過去に入植しましたその中でも特に過剰入植で経営規模が客観的に非常に小さい、こういったふうに認められるものについては、三十五年度から、たびたびここでも御説明申し上げましたように、いわゆる間引きといったようなことを考えまして、あるいはまた、その付近に国有の未開地がございますれば、それをさらに増地配分していく、こういうような措置も講じまして、経営規模の拡大を一方においてはばかって営農の振興をはかりたい、こういうような考えでおるわけでございまして、ただいまのところ、基本営農類型を新しいものについては適用し、過去のものについては振興計画に盛られました内容を早急に実現して、拡大再生産の転機まで政府としてはできるだけの最大の努力をしてめんどうを見ていこうと、こういうような考えでおるわけでございまして、まずこの過去のものの振興の達成というものに再重点を置いて今やっている次第でございまして、今直ちにこれについて標準的な営農規模を定めるということはなかなか困難な問題であろうかと思いまして、自主的に作られました振興計画の達成というものに最大の努力を置いている次第でございます。  大体以上が第一点の御質問についての御説明でございます。  それから第二点の御質問につきましては……。
  72. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  73. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) 速記をつけて。
  74. 東隆

    ○東隆君 今お答えがあったのですが、私は、面積を類型のようにふやしていくことは非常に困難だ、だから、振興計画によってその間をぼかすのだと、まあこれは言葉は悪いのですけれども、そういうふうな考え方はどうも少し責任がないと思うのです。やはりこの営農の類型を法定することによって、農林省の方はやはりある程度農地というものについて責任を持ち、そしてそれに到達するように努力をする、こういうことは約束をしてもいいのじゃないか。それをやらないで、間引きをするというのは、これはもうおそらく耕地面積が足りなくて、そして営農を続けていかれないものが間引きをされるのです。それから約九割、残った優秀なものはこれは何らかの形でもっておそらく土地を増地をしています。土地を多く持っております。それはもう早く離農したものを引き受けてそして二倍くらいの農地を持っておる者があるのです。そういうふうな形でもっていっているのが残っておる、こう言っても差しつかえないと思います。それで、根室のような所においても、もうすでに戦前に七町五反以上なんというので一時変えたことがあるのですが、それが今度のは七町になったのです。そんなような形でもって、もうすでに戦争前に根釧原野の開発の場合に、耕地面積については非常に足りない、あの方面は十五町歩ぐらい持たせなければだめなんです。こういうようなことはもう既定の事実なんです。それを十四町というところでもって押えておりますけれども、私どもは、そういうはっきりしたことがあるのをそれを逃げておるところに私は問題があろうと思うのです。だから、私は、今残っておる問題は、これから入っていく者はこれは問題がないと思うのです。そこで、パイロット・フアームだのなんだの、そういうようなものに関連をして、戦後に緊急開拓その他でもって入ってきた者は非常に不当な条件のもとに入れられておる、そういうようなものを適正規模の農家に直していくんだ、こういうことは、これはもう当然の話なんです。日本の全体の農家さえ適正規模に直さなければならぬなどと言っておるときに、開拓農家の適正規模ができないというのだったら、これはもう問題にならぬと思うのです。だから、適正規模の経営をやらせるために、せめて開拓農家だけでも農林省責任をお持ちになる、こういう考え方に立つと、私はこの全部の開拓農家にはならぬと思います。ある程度のものはもう十分にそういう問題が解決している者もあるのですから、先ほど言ったその何割かの上農、いい農家は、振興計画を立てなくてもいい農家は、これはごらんなさい、耕地面積は確かに初めにもらったときの倍くらいになっております。そして動物もたくさんいてやっているのです。だから、あの与えられた耕地面積七町歩なら七町歩守って、そして上農になっている開拓農家なんかおりませんよ。だから、その事実、そういうようなことをお考えになれば、これは私の言っていることは無理じゃない。だから、せっかくこういうふうに類型を定められたのですから、その類型に到達しているものはいいのですよ。到達しないものについては、できるだけ適正な形でもって耕地の交換分合もある場合には起きましょう。そういうようなことをやっても適正規模にさせるんだと、こういうことをやはりさせるために類型を法定する、こういうことをやるべきではないか。これをやらないで困難だからというのは、おそらく金がかかるし、それからなかなか容易でないということなんでしょうけれども、それでもって腰折れになってしまったら、これはやはり国が開拓農家に対して責任を持っておらぬと、こういうふうに言えると思うのです。だから、この点は一つ日本の農業の適正規模を問題にしておるときに、開拓農家だけでもやれないなんという、そういう腰の弱い考え方ではなくて、開拓農家を一番先に一つ適正規模にするのだ。それを特に開拓の途上にある北海道でできなかったら、ほかのところでできるはずはないのですから、これを一つおやりになる意味からも、一つ定めて、法定してそうしてやるのだ、こういうことを一つお考えを願いたいと思う。これは農林大臣がおられませんけれども、政務次官おいでになっておられますから、どうですか、私の話は無理ですか。
  75. 庄野五一郎

    説明員(庄野五一郎君) 御趣旨まことにごもっともと存ずるわけでございますが、この経営規模の拡大ということは、過去に入植いたしました者につきましては、すでに入植をして農業を営んでおるわけでございまして、この経営規模の拡大ということについては、土地の配分すべきものがあるかないかといったような問題が非常に重要な問題でございます。これから新しく入れる者につきましては、先ほど御説明申し上げましたように、基本営農類型といったようなもので、できるだけそれを基準にいたしまして、その地帯地帯の実情に応じた規模で入れていくようにわれわれは進めておるわけでございますが、過去に入りました者は、もうすでに定着しておる関係もありまして、その付近に配分すべき土地があるかないか、あるいは新しく取得して開拓者に配分すべき土地があるかどうか、そういった点で非常なむずかしい問題があるわけでございます。われわれといたしましては、御質問の点はまことにごもっともとは存じますが、ただ今現在のところで、これを一律に経営規模を上げるといったような標準を作ってそれに進むということは、実際実情としては非常に困難な面に直面するわけでございまして、そういう点はさらによく検討しなければならぬかと、こう存ずるわけでございます。過去入植いたしました開拓者につきましても、開墾進度は、配分いたしました面積に対する開墾進度は北海道で六割をちょっと越すくらい、内地で八割をちょっと切れるくらいでございまして、全国平均約七割くらいしか開墾進度が進んでおらない、こういうような状態でございまして、われわれといたしましては、過去入植しました者について今一律にそういう規模を上げるといったような、実現ができるかどうかといったような目標を掲げるよりは、その開拓者が立てました改善計画を基準にいたしまして、それに中で要望されておる開墾建設工事を早急に完遂する、あるいは配分面積の開墾進度を早急に完了していく、そういった面からして営農の振興をまず第一段階としては進めていくべきではないか、そう思っておる次第でございます。  なお、特別に不振な過剰入植といったような、客観的に見ても非常に開墾面積が小さくて特にそれはもうやっていけないといったようなところは、これは先ほど申しましたように間引きをやって、そのあとを残留入植者に配分し直すとともに、出ていった人は再入植扱いをいたしまして適正な規模に持っていく、そういうようなことをやりたいと、こう思っておりますし、また付近に国有地とか、あるいは開墾適地があって未配分になっておるところは、今後取得できるものはそういうものを取得し、あるいは配分し直して経営を拡大していこう、そういうように考えておるわけでございまして、今直ちにここで経営規模の拡大を標準化してそれを法定するということは困難ではないかと思いまして、今の振興計画に盛られたものは早急にやっていきたい。振興計画の中には土地の配分をさらにほしいという希望も多々あるわけでございまして、そういうような問題につきまして、今申し上げました間引きなり再配分なりをして実現していきたい、こういうような考え方でございます。
  76. 東隆

    ○東隆君 私はこの際大てい酪農、あるいは動物を飼うというような、そういう農業経営形態になるのですが、そこで飼料を得られるところですが、これは採草地ですね、そういうようなものも私は一定の、今度は農業法人なんかもできますけれども、その形でもって、団体でもってある程度のものを与える、そういうような方途を講じてもいいんじゃないかと、こう思うのですが、それは別途にくっつけるわけですね。形にはならぬけれども、共同の採草地、そういうようなものを私は開拓地の周辺には国有地をある程度考えれば、対象におけば、ある程度のものは私は得られると思うのです。また、そういうところが得られないようなところに入り込んでいる人は、これはもう根釧原野のようなところだったら大へんなところです。だから、私はただ表面困難だ、困難だといわれておるけれども、国が態度をはっきりすれば、そういうような形でもって採草地、そういうようなものを十分に与えて、所有地にはならぬけれども、共同の所有の形でもって十分経営に効果のあるような形ができるのじゃないかと、こういう考え方を持つわけですが、これは第二段ですけれども、そういうような方途を講ずる意思はございましょうか。
  77. 庄野五一郎

    説明員(庄野五一郎君) 採草放牧地あるいは耕地防風林の下草の利用、そういったところにつきましては、現在においても個人配分をいたしますとともに、開拓農協に共同でこれを売り渡すといったような措置も講じておるわけでございますが、今、東先生の御質問の趣旨は、新たに今後そういう土地があったらそういう方向にやったらどうか、こういうようなお話でございますが、今後国有林についての利用権の設定、あるいは付近におきまして国有の開拓財産がありますれば、そういった共同利用が可能なように措置して参りたい、こういうような考えは持っております。  先般の御質問の第二点でございますが、これは小笠原先生の御質問もあったかと思いますが、開拓営農振興審議会では何を審議するのか議題を示されたい。それから開拓営農審議会は、政府案のような考え方ではその場を糊塗するようなことで終わるおそれがあるから、委員も十人では少なく、これをもっとふやし国会議員等を入れて強力なものにすべきではないかといったような御趣旨の御質問だと存じますが、これにつきましては、まず第一に、開拓営農審議会においては、次のような事項の審議をお願いしたい、こういうふうに考えております。それは第一点といたしましては、振興計画の達成に必要な事項でございますが、先ほどから御質問ありましたように、振興計画によりました過去の既入植者の営農規模をどういうふうに適正化するか、そういった点も営農振興審議会で十分審議して、何とか妥当な措置答申してもらいたい、こういうような考え方を持っております。  それから第二点としましては、開拓政策の今後のあり方でございますが、既入植者振興対策あるいは新規入植者の政策あるいは増反開墾の取り扱い、そういったような問題あるいは今やっておりますような未墾地を政府が、国が取得いたしまして開墾建設工事をつけてこれを開拓者に配分する、こういったような考え方からさらに建設工事あるいは開墾あるいは住宅といったようなものまでも政府がめんどうを見るような方式に、いわゆる土地改良方式といいますか、そういったような方式に切りかえたらどうか、そういうような問題も論議されておるわけでございますが、そういった開拓政策の今後のあり方を検討してもらいたい、こう思っております。  それから第三点としては、東先生からも御質問がありましたが、開拓農協の今後のあり方、これをどういうふうに育成強化していくか、そういった開拓農協の取り扱いをどうしたらよいか、そういった問題もここで十分審議してもらいたい、こう思っております。そのほか、開拓営農の振興に関しまして、いろいろ必要なものがあれば審議していただく、今そういったものを考えている次第でございます。  それから審議会委員でございますが、ただいま法律では十名、こういうことに相なっておりますが、現在考えておりますのは、開拓関係団体、これは中金とか、公庫とか、あるいは開拓者連盟とか、あるいは保証協会、あるいは農協等の、開拓農協の今後のあり方等も審議していただくことになりますので、農協中央会、そういった団体関係と、それからやはり地元において最も開拓者あるいは開拓農協とも関係のございます市町村関係の方、それから都道府県の関係の人に入ってもらう、そういうふうに考えているわけでございます。また、純然たる学識経験者といったような人も入っていただく、こういうふうに考えているわけでございまして、現在のところでは、国会議員の先生方については、いろいろ御意見なりを伺う機会もございますので、この審議会委員に入っていただくということは考えていない次第でございます。  以上が開拓振興審議会の御説明でございます。
  78. 東隆

    ○東隆君 私は、今あげられた四つの開拓審議会のいろいろな仕事、これは小さいとは申しませんが、開拓政策のあり方一つ取り上げてみても非常に大きいのであります。しかも、このやり方が、単に今申し上げたような、お話しになったような人たちだけでもって審議をしても、私は実際のことを言うと、もう少しこの仕事には予算であるとか、その他各方面のものがそれに追随をしていかなければならぬわけです。それで、もっと大きく論議の場を広げていかなければ開拓審議会は非常に弱い。ただ、農林大臣責任をこれにおっかぶせるくらいな程度のものになるんじゃないか。おっかぶせられるならもっとでっかく、力の強いものにして、そうしてそこにおっかぶせた方がいいと、こういう考え方になるわけです。だから国会議員を入れないという理由は、私はどうもはっきりしないのですがね。私の方は入れるべしというのだし、庄野さんの方の説明は入れないのだ、こういうことで、これはどうも意見の相違になりますけれども、しかし、開拓審議会というものを力の強いものにするということを考えると、今申し上げたような程度のものだけでもって、言葉が悪いかもしれませんけれども、御用機関みたいな、御用審議会というようなものを作り上げたのじゃ非常に弱いものになると思う。国会議員が入るとうるさいというような、そういうようなことでなくて、もっと開拓の問題を真剣に取り上げてやると、私は先ほどの法定の問題だのなんだの、私は当然審議会でもって、それは法定すべきものである、こういうふうななにが出てくると思うのですが、今の形ですと、この営農類型なんかは法定しないことにした方がいいだろうくらいなことになろうと思うのです。だから私は考え方が少し初めから弱腰じゃないかと、こう思うのです。これはこの際、国会議員などを入れて、もっと強力なものを作り上げていく、そして農地局の関係審議会のうちには……、これは一番土地問題に関係をする問題でありまして、基本になるものでありますから、これを一つもっと強力なものに作り上げると、ほんとうの農政が打ち立てられると、こうも考えておるわけです。そういう意味で、もう一回考え直す必要があるのじゃないかと、こう思うのです。はなはだ理由が薄弱のようですけれども、しかし、意味はおわかりだろうと思うので、これは政務次官のお考えを一つお聞かせいただきたいと思います。
  79. 大野市郎

    政府委員(大野市郎君) 国会議員を委員にお入れするかどうかという問題については、ただいまの当局の立案としては、別途に審議方法があるので、そちらの方で考えていただいたらというふうに考えておりますが、また法制化の問題、先ほども御質問がございましたが、私答えませんで、参事官から答えましたが、理想の形としてわれわれの目標としては、そういう類型をやはり義務づけて、その線に持っていくべきものと思っておるのであります。先ほど言いましたように、現状に困難な部分があるために先ほどの答弁になっておるのでございまして、御趣旨はわれわれも同感なんであります。国会議員の参加いたしますかどうかにつきましては、法文そのものには別にそれらの制限があるわけじゃございませんので、学識経験者が参加もいたす仕組みになっておりますので、この点につきましては、御趣旨を十二分に尊重いたしまして、さらに検討さしていただきます。
  80. 東隆

    ○東隆君 検討されるそうですけれども、私は議員提案の特別法——例の湿地、特殊土壌の開発だの、それから積雪寒冷単作地帯とか、いろいろ法律が出ておるわけでありますが、これらのものは全部国会議員が入っておるわけで、私はこの中には国会議員は入らなくてもいいようなふうにも考える。それでそういうようなものの中からは、かえって国会議員を除いてやった方がいいんじゃないかと思われるような節があるのにかかわらず、政府が提案をされる法律の場合には、実は国会議員はなかなか入れようとされない傾向がある、今までの傾向を見ますとね。これは国会議員が入るとうるさいというような、そういうあれもあるのじゃないかと、こう邪推をいたしておりますが、お考えになるそうですから、一つそういうような意味でもって、要らないようなところにさえ入っておるのだから、この際、こういうような大きな問題には入れて、そして少しく考え方を変えるべきときでないかと、こういうふうに考えるのです。特殊法案は、これはおみやげ法案と、こういわれたような時代もあります。それだけに大へん無理なものがあるのです。だから私は、こういうふうなものと一律にこの問題を取り扱うべきじゃない、こういうふうにさえ考えておるのですから、もっと強腰にお考えを願いたいと、こう思います。
  81. 庄野五一郎

    説明員(庄野五一郎君) 第三点の御質問につきましてお答え申したいと思いますが、第三点の御質問は農協の問題でございますが、開拓農協の現状を見ると、国の下請的な業務だけに終わっているものが多く、信用事業を行なっている組合は、四千百八十四組合のうち、わずかに二百二十二組合という状況で、しかもその大部分が北海道であるという状態であると、従ってこの際、開拓農協のあり方について再検討すべきだと思うが、政府としてはいかなる方針を持っているのか、たとえば負債整理組合のような無限責任の組合にして負債の整理をはかっていくという方法もあると思うがどうか、こういう御質問だったと存じます。  御答弁申し上げます。開拓農協につきましては、お説の通り、非常に弱小なものが多くて、組合組織としての機能を十分果たしていないものが相当ある実情でございます。たとえば組合総数、さきに申しました四千百八十四組合のうち、組合員が三十戸未満の組合か、全国で七〇%以上もございます。また専任職員を設置している組合というのは、全体の二割程度にすぎません。こういったような実情でございます。政府といたしましても、開拓農協の整備強化については、かねてから十分現状を分析し、またその育成強化に努力している次第でございます。たとえば三十五年度でございますが、弱小組合が一町村内にたくさんあるといったような場合には、合同事務所を作りまして、事務処理の合理化をはかっていくといったような方法も考えておりますし、また弱小組合につきましては、これを互いに統合して大きなものにするとか、経済的に成り立つようにするとか、あるいはまた既存の農協に統合していく、そういったようなことも考えて指導して参っている次第でございます。何を申しましても、現在におきましては非常に組合の財務の状況が負債が多い、こういったような状況でございまして、その負債もなかなか未整理のものがあるわけでございまして、補導員を設けまして、経理の指導をやるとともに、組合の財務内容について、十分これを整理していくということが、統合する場合におきましても、また既存農協と一緒になるといったような場合におきましても、まず先決問題でございまして、補導員等も一昨年からこれを設けて、この組合経理の整備ということに努力した次第でありまして、今後もそういう方向でやっていきたい、こういう考えでございます。で、規模の小さい組合におきましては、購買、販売、そういうような経済事業を行なうことは、経済単位から申しましても非常に無理がありますので、こういう組合については、経済事業は今後の方向といたしましては、一般農協に統合できるものは移していく、また一般農協に個人加入するとか、あるいは団体加入するとか、そういうことも進めていく方向で、一般農協のいわゆる事務の中にとけ込んでいく、こういう方向でいくべきではないかと、こう考えております。一面規模の大きい、特に北海道あたりはわりかた大きいのがあるわけでありますが、規模の大きいものにつきましては、経済事業とか信用事業を十分行ない得るような単位になっているものにつきましては、十分な事業活動ができるように、経済指導その他で指導育成していく、こういう考え方を持っております。まあ、そういったような考え方でおりますが、開拓農協を今後どういう方向に持っていくかということにつきましては、開拓農協は経済事業ばかりじゃなしに、先ほど御質問にありましたように、国の補助なり融資なり、あるいは開拓者の申請の取次なりそういった仕事も一面引き受ける、こういう面があるわけでございまして、そういう行政事務的なものと、純粋な組合の経済事業といったようなものを十分よく吟味いたしまして、場合によりましてはそういう行政事務的なものは今まで市町村があまりめんどう見てないわけでございますが、市町村等ともよく密接に連絡をとって、市町村で受け持てるものは受け持ってもらって、経済事業だけについて先ほど申し上げましたような経済単位に達するものは独立し、経済単位以下の小さいものといったようなものについては統合するか、あるいは既存農協に統合、一緒になっていく、そういうような方向で進まなくちゃならぬと思っております。昨今は市町村も非常に開拓について熱心なところが出てきまして、開拓のめんどうを見てくれるようになっております。今後市町村等ともよく連絡を密にして、開農協の育成、今後のあり方というものを十分検討していきたい、こう思っておるわけでありますが、先ほど御質問にありました開拓営農振興審議会においてもこの問題は取り上げていきたい、こういうふうに考えております。なお、開拓農協を負債整理組合のような形にすべきではないかというような御意見でございますが、現在の段階では開拓者の営農振興をはかるということがまず第一に重要な問題であると思いますので、開拓農協の問題もこのような観点から検討して参りたいと考えております。開拓者の負債につきましては、制度的な政府の貸付金については今御審議願っている条件の緩和等に関しまする措置法によりまして、これを法人貸ししてきたものは個人の開拓者の負債に切りかえて、さらにそれを開拓者の営農状況によって五年据え置き、十五年、あるいは据え置きなしの十五年、そういったものに整理していく、そういうことによりまして、開拓者個人の営農の振興というものをはかりますとともに、一面法人貸しで、開拓農協がいろいろな政府からの法人貸ししましたものの事務的な処理を今までやっておった、そういう面の事務の簡素化を一面はかっていく、こういった考えでおるわけでございまして、まず開農協よりは開拓者自体の負債を整理してその振興をはかるということが先決ではないか、そうしてあわせて個人貸しに、直接貸しにするということによりまして、組合が持っていた、いろいろな側面からする事務的なものは簡素化して、経済事業に専念できるようにしていったらどうか、そういうような考え方で条件緩和の法律をお願いしておる次第でございます。
  82. 東隆

    ○東隆君 開拓農協の今後の方向、そういうようなものについてお話がござましたが、農林省、開拓農協を指導するのにどれくらいな陣容をもっておやりになっているのですか、開拓農協そのものをですね。普通の場合には、普通の一般の農協の関係とは離れてやっておるようです。従って農地局関係、北海道としては農地開拓部で農地の開拓員をやっておるようですけれども、どの程度の陣容でもって開拓農協を御指導なさっているんですか、私はその点があまり劣弱なものだったら、セクトを分けないで、小さなものは開拓農協に団体で加入させる、そうして大きいものについては、これは一般の農協の指導と、これはやはり一緒にやってもやり得るわけです、大きい方になると。小さいのはこれはやれない。そこでそういうものは既設の農協の中に加入してもらう、団体で加入してもらう、そういう形で、そうして全体としての意思機関を作り上げる。これで今の開拓連盟のようなものを作れないか、その組織になっていけばいいんですから、意思を十分に活用することができると思う、これが一つ考えられる。それから私は、振興計画を作った組合は、振興組合というふうにいわれておるかと思うのですが、その振興組合の仕事というのは、先ほど言ったように負債整理の仕事が中心になる、経済更生と負債整理の問題が中心になる組合ですよ。そこで私は負債整理組合のような仕事を、特命というと語弊があるけれども、そういうふうに考えるべきじゃないか、そういうふうに考えたらいいじゃないか、こういうように申し上げるわけです。だからそれはどういうことかというと、経済事業だの、そういうようなものは、私は既設の農業協同組合等の関連においてやって、しかし、営農だのその他各般の問題をその振興組合でやるんだということは、どういうことかというと、その農家の経済更生計画と、それから負債償還計画を確立して、そうして営農を続けていく、こういうことをやるんですから、だからそういう意味の仕事に限定をして、そうして農協に関係をした仕事は既設の農協に入れてしまう、こういう形をとったらいいんじゃないかと、こういう意味で申し上げたわけです。それで私は一つ方向を、そういうような方向にしたらどうかと、こういうことなんですから、負債整理組合のようなものを作るというよりか、もうすでに振興組合という形でもって述べておられるんですから、その仕事を限定されたらいいんじゃないか、仕事をですね。そして開拓農協のような仕事は既設の農協に移していく、こういうふうにして、開拓方面における意思機関としては開拓連盟のようなものの下部の組織、そういうような形でもってやれば、開拓者の意思というものは十分に外へ出るんじゃないか、こういうことを申し上げて、開拓農協に対する一つ考え方を質問をしたわけです。だからそういう意味で私の意見はどういうふうにお考えでしょうか。
  83. 庄野五一郎

    説明員(庄野五一郎君) 御意見の通りに、開拓農協のうちに振興計画、改善計画を立てております開拓者があります開拓農協は振興組合と申しております。それでただいま組合の指導なり育成の指導に当たっておりまする職員は、都道府県の農地開拓課の職員と、それから先ほど申しました三十三年から始めております開拓農協の経理補導員、そういった陣容でただいまやっております。で、経理補導員は、これは振興計画を立てた農家、開拓組合をまずやるということで、ただいま大体相当部分経理補導をやっておりますが、さらにこの財務整理まで持っていって、組合の債権債務というものを明確にしていったらどうか、そういうことによりまして組合の統合なり、さっき申しましたように開農、一般農協の統合といったものができるんじゃないか、こういうふうに考えて、経理補導、財務整理、そういった面の予算を三十五年度も計上いたしまして、来年、再来年程度で一つその指導を大体開農振興組合については終了したい。こういうような考え方で進めております。  それで、そういった団体加入の問題でございますが、団体加入をやっているもの、それからあるいは開拓者が個々に二重加入をしているもの、いろいろございますが、これにつきましては、やはり現地の組合の実情等から考えて、自主性にまかせていくのがいいのじゃないかと思っておりますが、東先生の御意見もありまして、今後こういうものについては団体加入の方向にすべきかどうか、これは早急に検討を進めていきたいと思います。大部分が団体加入かまたは個人加入、二重加入、こういうような形になっておりますが、団体加入で開農協との関係がますます密接になるということになりますれば、既存の農協のいろいろな事業の利用ができるということになりますれば、そちらの方向に進めるべきじゃないか、こういうふうに考えております。  負債整理の問題でございますが、負債整理の問題につきましては、これは個人負債については、御承知のように自作農資金で、これは組合と関係なしに切りかえていく、こういうことでありますが、政府資金あるいは公庫の資金等は現在までは法人貸し、こういうことで組合を通じて転貸ししているものの関係でございまして、今度の緩和法ではこれを直接貸しに切りかえていくということになりまして、組合の債務は、国との関係においては離脱するわけでございますが、なおその個人の債務の償還についてのめんどうといったようなものは、やはり開農協等を通じてやらなければならぬと思いますが、現在において事務局から直接切りかえました政府資金については開拓者に督促をする、そういったような格好になっております。めんどうは開農協を通じていろいろ今までのものはやっている、こういうようなことになっております。そういう面においては、先生の御意見のような負債整理組合というような仕事は担当するかと思いますけれども、負債整理組合というふうな名前は別といたしまして、直接貸しに相なりました場合においての政府と開拓者の間に、取りまとめなり、あるいはその条件の問題等について政府との中間に立つ、こういうことはある。それについては十分開農協等の利用はしていきたい、こう思っております。
  84. 東隆

    ○東隆君 今の、貸付を今度は国が直接おやりになるという考え方ですが、開拓の当初、農林省がとられたのは、直接国が貸す形をとられたはすです。そしてそれがやり切れなくなって、法律改正して、開協を通して資金の融通をする、こういうふうに変えてきておるわけです。それがうまくいかないから、今度この分に限っては国で直接やるのだ、こういうふうに今度変えようということです。私はここに問題があると思うのです。農林省が今の陣容をもってして、直接開拓農民に対して資金を融通して条件の緩和なり何なりやるような、そういうような仕事をやるのには、私は非常に陣容が弱いと思う。やはり開拓農協というか、振興組合ですけれども、これを十分に活用して、そうしてやらなければ問題にならぬと思う。政府の資金ばかり条件緩和をやったら、これはどういうことになるかというと、今度はほかの個人なり、その他別の機関から金を借りておる分は、これは本来ならばもう死んでしまっておるようなものが、政府の資金を借りかえしたり、条件緩和することによって生きてくるわけです。これは少し農村の中に入り込んだらすぐそういう点はおわかりになろうと思いますけれども、従って、そういうようなものもあわせてやるのには、ますますもって農林省の陣容ではできないことになる。だから、この際やはり開拓農協というものを既設の農協に団体加入のような形でもとって、そしてその中で共同の力でやはり整理をする。単に国のものだけ条件緩和するのじゃなくてそれ以外のものについても条件緩和をする、場合によっては、それに対する頭金でも国が世話をして出して、そうして個人債務の条件緩和をする、こういうような形をとらなければ、これは開拓農家を救うことができない。だから私は、そういう点を考えたときに、今度の国が直接やるんだというやり方は、それは開拓農協に対する不信から来ておると思う。これは、個々の開拓農家が開拓農協に金を払うと、開拓農協でよそに使ってしまって、そして政府に払っていない、こういうような問題になって、そういうようなことをお考えになったから、そこで今度は国がやるというふうにやられたのですけれども、国がやったのはもうすでに前で、これではやり切れないというので開拓農協を通してやるように改正をして、そうしてその結果ここへきておるのですから、もう一回繰り返す必要はないと思う。だから、開拓農協は、これは協同組合としての人員その他の形からいえばはなはだ弱いものだけれども、しかし、振興組合という形において、先ほど言ったように、負債整理あるいは営農の方面の計画、そういうようなものを確立させるための一つの固まりに作り上げていく必要があろうと思う。これを作り上げないで、個々の開拓農家を相手にして国が条件緩和をやる、こういってみても、これは本物にならない。この点は、私は開拓農協に対する指導誘掖のやり方が非常に弱かったと思うのですが、その結果出てきたところのボロを、これを今度は手をかえてやろう、こういうふうにも解釈されるので、これは一考を要する問題だろうと思います。どうですか、この問題は。
  85. 庄野五一郎

    説明員(庄野五一郎君) 開拓農協につきまして、政府資金の出し方も、当初は直接貸し、それから今は開農協を通じて貸し付けるという段階でありまして、また三転いたしまして直接貸しにする、こういう形になっております。御趣旨の通りでございますが、今御質問の中にもありましたように、債権債務関係が開農協を通じまして貸し付けて、現在において非常に又貸しの関係で弁済の関係が非常に複雑化して、個人は元金を払ったつもりにしていたら、全体としては元金に繰り入れられないで、組合から利子の分だけが払われている、そういった面もございますし、また、組合の中には経理能力が非常に悪くて、だれそれに幾ら貸したかといったような債権債務が明確でないものも多々あるわけでございまして、そのために、開拓者といたしましても弁済をいたす意欲を欠く、こういったような現実の問題もあるわけでございます。まあそういった面から、過去に貸しました分については、これを明確に整理いたしまして、直貸方式に改めると、これについては事務局、県農が主体になりまして、この整理は三十五年、三十六年においてやっていきたいと、こう思っております。これについては人員等の問題もございますが、事務費あるいは計算機あるいは会計機といったようなものを三十五年度に新しく計上いたしまして、そういう面からする人員の不足というものは補なって、過去の分については整理は二カ年で一つやっていきたい、こういうような考え方でおります。で、新しいものにつきましては、新規の貸付につきましては、そういう基盤ができますれば直接貸しということに相なるわけでございますが、これはどこまでも権利義務の関係が直接に国と開拓者の間にできるのでございますが、組合は当然その中にありまして、事務のあっせんなり取次なり、あるいはまとめ、あるいはそれの達成がどういうふうに目的通り使われているかどうか、そういったようなめんどうは、組合を通じてやはりこれはわれわれも報告なり、あるいは指導なりはしなくちゃならぬ、こういうふうに考えておるわけでございます。権利義務の関係を、直接国と開拓者にいたしますと、振興組合はその間にあって経済事業をやるとともに、やはりそういった国の償還なり、あるいは新しい貸付の資金が正当に使われるかどうか、そういった指導なり世話なりはやっていただくと、こういうふうな考え方でおります。
  86. 東隆

    ○東隆君 今の場合に、私は組合を通してやった場合に、うまくいかなかった理由の中に、やはり組合が経費を捻出する方法がなかったことにあると思うのです。組合員に資金を融通する場合に、組合は何か手数料でもとっておるのですか。多少組合は何かなければお世話もできないし、何もできない。そいつを一つもやらないで、あるいはまた補助金を組合に出さないで、経費に対するそういうようなものをやらないで仕事をやれと、むずかしい仕事をやれといっても、これはなかなかできないから、それで窮余の一策で支払いをしたものを使い込んでしまう、こんなような形になるんじゃないかと思うのですが、この点どれくらい、年間組合に対して、これは農林中金だとか、それから何か系統金融機関は、けっこう利幅でもって合うのですよ。けれども、末端の方はきわめて金額が少ないし、従って扱う手数料も、これは私は考えられていないんじゃないかと思うのですよ。こういう点、どういうふうになっておりますか。
  87. 庄野五一郎

    説明員(庄野五一郎君) これは今までは組合に直接貸しておりますから、借受人は組合ということになっておりますから、組合はそれを組合員たる開拓者に転貸しする、こういう形になっておりまして、手数料は出しておりません。償還については償還手数料というものを開農協に今出しておるわけでございますが、それは開農協が単位開拓農家から取り立てるための手数料、これは大体二%ということが出ております。今後は直接貸しになりますと、振興組合あるいは単位開拓農協を通じて償還等もやるということになれば開農協並びに振興組合である末端の組合などにも償還手数料を出し得るように相なっております。貸付の方についてはそういった関係でございます。今までは出していないのでありますが、今度は、しかし、直接貸しということになれば県が認定をして県の認定によって事務局から貸し付ける、こういうことになっております。貸付の場合の手数料というものはございません。なお、補助金とかそういうものについては事務費の範囲で三%とかあるいは五%、償還手数料なら二%、開墾作業なら三%、そういったようなものであります。そういうようなものは組合に貸しておるわけでありますが、政府の資金についての貸付手数料というものは出ておりません。
  88. 東隆

    ○東隆君 償還の場合に二%の手数料が入るようなお話ですが、これは私はいいと思います。しかし、貸付の場合には、これは相当な仕事をしなければならぬ。ことに振興計画まる写しみたいなものができるならまだ楽な方です。そうじゃなくて、もう少上砕いてそうしてやらなければ政府の金をなかなか貸さないのじゃないか、そうするとその準備は借りる農家そのものがやるのじゃなくて、やはり組合がやるのだろうと思います。この経費は、開農協としてはこれは相当要するのだろうと思う。この分について普通の銀行から金を借りたり何かするときにはそれは問題じゃありませんけれども、開拓農協のような場合には、これはもっと考えてもらわぬけりゃいかぬのじゃないかと思います。貸付をするその事務ですね、それは個人に行くのじゃなくて組合がやる仕事ですね。これを何とか考えておやりにならなかったら、私は国がお出しになるのは差しつかえないのです、だけれども、組合がまんべんなく使われて、そうして自分たちの組合なんだからやるのがあたりまえだと、こう言われればそれまでの話なんだけれども、しかし、出てこないのですな、経費が。だからその経費をやはり考えてそうしておやりにならぬと、今まで開拓農協がうまくいかなかったのはそういう点じゃないかと思う。少なくとも資金の融通の面において相当な仕事を組合がやらぬければなかなか金融機関だって金を貸しません。そういう仕事をやらなければならぬ。場合によっては基本的な調査をやらなければならぬ、そういうような仕事ですね、やはり形式だの様式だの何だのは示されるかもしれませんけれども、しかし、みんなやってやらなければならぬわけです。そういう仕事がみんな負担になってくると思うのですが、これはお考えにならなければ開拓農協が振興組合になってもうまくいかない、こういうふうに考えますので、これは一つお考えを願いたいと思います。
  89. 庄野五一郎

    説明員(庄野五一郎君) 今後直貸方式に切りかえました場合に、単位農協にどういうふうにこれに協力させるか、そういうことによりましてそういう点はまた考えなくちゃならぬと、こう思っております。今のところでは、自作農資金と同じように、これは直貸しでやっておりますが、県が認定してそうしてその認定によって金融機関から借りる、こういうことに相なっております。県に認定費を出しているわけでございます。そういう場合に単位農協がどういうふうにそれに協力するか、あるいは下請をやるか、そういうやり方によっては先生のおっしゃるように考えなくちゃならぬかと考えます。今までのところは、いわゆる法人貸しで直接組合に貸すということになっております。今後の問題としては検討したいと思います。  御質問の第四点でございますが、先般お配りいたしました資料の開拓関係法案参考資料追加という分の三枚目の資料に基づいて先生の御質問があったと存じます。三枚目の資料は、今お手元に配付いたしましたガリ刷りでございますが、多少計数の計算ミスと記載ミスがございまして、今お配りしましたように一つ御訂正願いたいと思います。訂正いたします個所は、上層農家と下層農家とございますが、上層農家のところの災害資金、こういうところの四万一千二百十九円というのがミスでございまして、九千六百円に御訂正願いたい、従いまして計画に対する実績費のB分のAというところは一六・九が間違いでございまして、七三・ ○、こういうふうに御訂正願いたいと思います。それから政府資金の一番初めの欄でございますが、政府資金の長期と短期とございますが、短期はこれは間違いでございまして、中期でございますので御訂正願いたいと思います。それから上層農家の一番下の欄でございますが、災害資金のところが違って参りましたので、計画のB欄のところでございますが、一番最後の計三十五万八千二十一円というのが間違いで、三十二万六千四百二円、こういうふうに御訂正願いたいと思います。それから計画に対する実績比の一番最後でございますが、六八・四が七五・〇、こういうふうに相なります。それから下層農家の欄でございますが、一番上の政府資金の長期のところの計画のBの欄でございますが、九万五千二百四十円となっておるのが間違いでございまして、五万八千百八十円、従いまして計画に対する実績比のB分のAが六一・〇が間違いで、九八・〇——九八%、こういうことに相なります。それから下層農家の下から二行目の一般農協資金というところの四六・四というのが間違いで、四六四%でございます。下層農家の一番下の計画B欄のところが、政府の長期資金が違って参りますので二十七万一千百四十六円が間違いで、二十三万四千八十六円、こういうことに相なります。従いまして、計画に対する実績比のB分のAというのは七二・三が間違いで、八四%になります。まことに恐縮でございますが、以上御訂正願いたい、こう思っております。  それで、この欄について東先生から借入金の対比表を見ると、上層農家が有利な資金を、下層農家が不利な資金を借りておるようで、貸付の適正を欠くのではないか、こういう御指摘があったわけでございますが、この表が非常にできが悪くてちょっと御説明申し上げたい、こう存じております。まずこの資料でございますが、これは振興計画を立てましたいわゆる改善農家の中の資料でございまして、上層、下層といっておりますが、いずれも改善計画を立てました不安定農家のものでございまして、その中で経営規模、あるいは農業粗収入、そういう面から見て大体中間から上にあるものを一応上層農家、それからまん中から下にあるのを下層農家、こういうふうに大体分けたわけでございますが、その分け方も営農指導員に命じまして資料を出さした関係で、指導員の大体その指導地区内におきまする概念的な上層、下層といったような、主観的な要素が多分に入っておるわけでございます。それからこれも急いで取りました関係がございまして、上層農家については四十戸程度しか集まっておりませんし、下層農家については二十七、しかもこれは北海道と九州は報告が出ておりませんので、それを除く内地分の上層農家四十戸、下層農家二十七戸といった事例調査になっておりまして、これをもって全体を推測するものということはいえないかと思いますが、まあ大体こういった傾向があるのじゃないかということはいえると、こう思っております。(「上層は幾ら」と呼ぶ者あり)上層は四十戸でございます、下層は二十七戸の集計を、これは一戸当たり算術平均した数字でございます。算術平均すること自体にも問題があるかと思いますが、一応の指標として考えられるのじゃないかと、こう考えております。  それで計画の欄、いわゆるB欄でございますが、計画欄の数字は営農改善計画書に記入されました内容でございまして、それから実績欄のAの欄は昭和三十四年の二月一日現在で記入しましたわが家の農業計画というものをこれは営農指導員が作られておりますが、わが家の農業計画というものの記入内容でございます。計画欄のBは三十三年度末でございますので、営農振興計画は三十二年、三十三年に承認されたものがここに上がってきておるわけでございます。それから実績欄は三十四年の二月一日に営農指導員の指導で作りましたわが家の農業計画というものに資料をとったわけでございます。両方を対比しまして振興計画では三十三年度末の借入金残高の予定がこうだと、こう考えておったやつが、三十四年の二月一日現在では実績はこういうふうになりましたという数字でございます。それでこれは先ほど申しましたように戸当たりというのは、単純に算術平均して戸数で割ってございます。  それから資金種類ごとに意味する内容、これは政府資金とか、災害資金、改善資金でございますが、この資金種類ごとに意味する内容がわかっておりますから、数字の比較、それから計画に対する実績比、B分のAでございますが、この読み方も非常に注意を要するわけでございまして以下御説明をしたいと、こう思っております。  それで、政府資金の長期でございますが、これは御承知のように、五年、十五年の基本営農資金でございます。で、この基本資金は既入植者につきましては新しい貸付は考えられないので、過去に貸し付けたものでございます。計画と実績の比較は、たとえば上層農家で申しますと七万二千八百四十四円が計画でございまして、三十三年度末に七万二千八百四十四円の借入残高にしよう、こういう計画でやったやつが実績では六万八千四百三十九円、こういうことになっておるわけでございますので、新しい貸付がございませんので、これは償還が計画より進んだ、こういうふうにいわれる、こう思います。それで、上層農家では九四%程度、まあその償還が計画よりもうまくいった、こういうことになるわけでございますし、これは計画では七万二千八百四十四円の計画残が残る予定で振興計画を立てたところが、三十四年の二月一日の実績では借入残高が六万八千四百二十九円になったわけでございます。その差額の約六千円というものは、これは計画より減っているわけでございますので、それだけ償還が予定したよりは進んだ、こういうふうに意味するわけでございます。B分のAの指数が低いほど多く償還がいった、こういうことでございましてこれが百になれば償還が進んでいない、これが少ないほど、この第一欄の指数は少ないほどいい、こういうことになるわけでございます。上層と下層を比較いたしますと、下層よりも上層の方がいい、こういうことになります。下層は九八%、上層は九四%でございますので、下層よりも上層の方が償還はよかった、こういうことに相なります。
  90. 東隆

    ○東隆君 償還ですか。これは借り入れの額ではないのですか。残高と書いてありますね。
  91. 庄野五一郎

    説明員(庄野五一郎君) 過去に借り受けたものの残高が三十三年度末において振興計画では、上層農家では七万二千八百四十四円になるように計画を立てたわけでございますが、実績では三十四年の二月一日現在ですでに六万八千四百二十九円まで減りました、こういうわけでございます。というのは、基本資金は新しくもう貸しておりません。これは入植当初三年間に貸し付ける金でございますから、この振興計画を立てている農家については、基本資金というものは新しく貸し出しはないわけでございます。こういうふうに相なるわけでございます。それから政府資金の中期のものでございますが、これは過去の家畜資金、これは二十七年から三十三年まで、それから営農資金、これは三十一年から三十三年までに貸付、いずれも十二年の償還になっておりますが、の貸付残高と、それから振興対策資金、これは三十三年度から実施して今貸付中のものでございます、の新しい貸付額の両方がこの中に入っておるものでございます。農家でいえば五万六千六百八円、こういうことになっておるわけでありますが、それは過去に借り受けたものの残高と、これから借りたいという希望の金額が入っておるわけでございます。で、先ほど東先生が言われました借り入れ計画の新しいやつはこの中期の中に入ってくるわけでございます。過去の貸付金の年賦償還金はまあ非常に少額でございます。これは実績上そういうことになっております。少額でありますから、計画欄の数字の内容は新規貸付を期待した金額の内容が多いと、こう考えられます。これに対しまして実績欄の数字が少ないのは、期待した貸付が十分でなかったことを示している、計画通りに貸付が進んでいなかったということがいわれるのじゃないか、こう思います。実績比のB分のAの指数は高いほど期待が充足されたことを意味するわけでございまして、下層の方にこれはむしろ高いので、下層の方に貸付が多く進んでいる、こういうふうに考えられるわけでございます。上層では三六・二、下層では六一、こういうことになっております。新しい貸付に対する計画は下層の方に進んでいる、こういうふうにいわれるわけでございます。  次の災害資金でございますが、計画欄の数字は、新しい貸付は考えられず、次年度以降に改善資金に切りかえるか、または償還を考えているものがこの中に期待されている、こういうふうに考えられる。九千六百円というものは、新しい新規貸付じゃなしに、今まで過去に借りました災害資金を償還するか、あるいは改善資金に借りかえていく、こういう数字でございます。実績欄の数字は、その年に災害を受け貸付を受ければ含まれるが、きわめて少ないと思われますので、計画に対する実績比のB分のAの指数は低いほど予期以上に借りかえが進んだか、あるいは償還がなされたことを示しております。それで上層は借りかえ、あるいは償還が順調でございますが、下層の方は、手続等で借りかえがおくれたじゃないか、こういうふうに考えられます。  次の改善資金でございますが、これは災害資金から振興法によって借りかえた改善資金でございます。実績比のB分のAは、借りかえの進度率を意味し、三分五厘資金は、上下層とも計画以上に借りかえが進んでおるわけでございますが、五分五厘資金は、下層の方が上層よりやや進んでいることになっております。下層に五分五厘資金が多いという点については、災害の種類、発生年度、あるいはこれに抽出しました抽出農家の地域の差によるものと思われます。一方、結果論になりますが、被災の度の高いものが営農が伸びず下層になるということ、それから力のないものは同一の災害でも打撃が大きいということも、これによって考えられるところでございます。しかし、まあことさらに上層に三分五厘を多く貸し、下層に五分五厘を貸し付けるということは考えられないと思います。まあそういった数字でございます。  農林漁業資金でございますが、公庫資金につきましては、過去の資金の貸付残高と新しい貸付を期待した額の両方がこの計画欄に含まれていると考えられます。おもに施設等の設備資金の貸付期待が、非常に上層等では多いのじゃないか、こういうふうに考えられます。それで実績比のB分のAは計画に対する貸付の充足度と考えられるわけでございまして上層の方が高いことは貸付が多かったことを意味しているわけでございますが、それは上層の方が信用度からもやむを得ないと考えられるわけでございます。上下層両層の金額の開いているのは、政府資金の中期の資金でも同じように見られるわけでございますが、経営規模の差、あるいは経営進度等から生ずる投資面の差異ではなかろうか、こういうふうに考えられます。  自創資金でございますが、自創資金はほとんど新しい貸付金でございまして、計画で残のBに記載してあるのは、今度三十三年度末に貸付を期待している額でございますが、実績欄は、非常にこれは三十三年度末では少ない、特にまあ三十三年度の実績は三十四年の二月一日現在でございますので、まだ年度末まで二カ月あるわけでございますが、三十二年度には自創資金は五億二千五百万円、三十三年度は十二億三千八百万円出しておるわけでございますが、まだ手続中のものが多かったんではないかと思われます。で、この自創資金の方のこの三十三年度の実績を見ますと、貸付率は上層の方がやや高く考えられます。三十三年度末では開拓ワクができて二年目でございます。三十三年度は二年目でございまして、手続等でまだ円滑を欠いて貸付がおくれたので、年度末までには、十二億三千八百万円は貸したわけでありますが、実績だけのワクはそれはまだ済んでいなかったということになるわけでございますが、三十四年度で大体七〇%程度貸し付けた。三十五年度ではこれは満度にいたしたい、こういうような計画で進んでおります。三十三年度はまだ十分その効果が現われていない、こういうことに相なります。  それかA農林中金の資金でございますが、これは大半が公庫資金に対する協調融資と考えられるわけでございまして、先ほど公庫資金で申しましたと同じような考え方で、期待したところまで入っている、こういうことでございますが、それが上層の方よりは中金資金の方は下層の方が高くなっております。  それから次の開拓農協、それから一般農協、親戚、商人その他、こういう欄でございますが、計画欄に記入されました数字は過去に貸付を受けた残高で、農協の場合は経営資金、短期のものでございますが、一部入っているだろうと考えられますし、また親戚等の場合は早急に返す必要のないものもあろうと考えられます。これに対し、実績の数字は、新しく貸付を受けたものが多分に含まれると考えられております。これは制度資金に期待した貸付が計画通りに受けられないので、つなぎ的に貸付を受けたり、あるいは営農不振による生計費等の貸付を受けたりした貸付面の増大であるとともに、他方、償還を予定いたしておるものが営農資金のためにできなかった面も若干あるかと、こういうふうに考えるわけでございます。この開農協なり一般農協なり、親戚、商人の方は、実績率のB分のAの指数は高いほど計画のそごを意味しておるわけでございます。もし高利の資金があれば早く制度資金を貸し付けるべきで、措置しなくちゃならぬ、こういうふうに考える数字でございます。  以上全体的に考察しますと、政府の中期資金、それから公庫資金等の生産手段や設備に必要な資金の貸付は、計画通りに十分でなく、反面自作農資金の負債整理的資金も貸付がおくれているので、予定した償還も思うにまかせず、逆に組合、親戚等の資金の貸付でつなぐという形になっているのじゃないかと、こういうふうにまあ考察されるわけでございます。この点につきましては、三十四年度以降積極的に振興対策資金等投資に必要な貸付を実施し、今後もそういうふうに努力いたしていきたい次第でございます。まあそういったことで、設備投資、生産資金というものは、今後三十四年、三十五年と逐次ふやしておるわけでございまして、その計画に対して実績はよくなっていくのじゃないかと、こう思います。また上下層により貸付の適正を欠くというようなことは、われわれとしては考えられないところでございますが、一般的にいって下層の方が上層より経営規模も小さく、資本、装備等も少ない場合があり、従って計画自体が小さいこともあるかと考えられますので、下層農家の方が計画の数字等も小さくなっているのじゃないか、こういうふうに考えられます。しかし、上層の力のある者が有利な資金の貸付を受けているようなことがあってはまことに計画達成上遺憾でございます。今後十分注意をいたしたいと考えておるわけでございまして今後とも下層上層ということで区別することのないよう、生産資金その他自作農資金の貸し出しについては適正な運営をやっていきたい、こういうふうに考えております。
  92. 東隆

    ○東隆君 今、説明をお聞きすると、私が考えておったのと実は逆の考え方で、逆のようになるわけですが、しかし、どうなんですか。この計画というところですね。このB欄を上層農と下層農の比較をしますと、この実数はこれはもう絶対的に上農の方が多いのですね、この計画というところを比べますと。たとえば政府資金の長期を見ますと、上層農の方では七万二千八百四十四円、下層農の方は五万八千百八十円、これは絶対数から見ますと、非常に大きな隔たりがある。それで、今御説明になったところでいくと、この計画に対するパーセントですね、B分のAというのは、これは私の考えておるのと全然違う意味ですから、私がここで申し上げなきゃならないのは、この計画数字において大きな隔たりがある、実数でですね。実数において大きな隔たりがある。それから実際に残高がある。現実にこれだけ金が要っておるのですから、自作農創設資金を考えてみればすぐわかるのですが、たとえば上農の方では計画が六万四四二百五十七円、そうして出ておるのは一万六千七百三十九円、こうなっておるのですね。それから下層農の方は、計画数字がもうすでに五万六千八百七十九円、そうしてそれに出ているのは、約一割の六千五百七十九円、こういうふうに見ますと、この点だけははっきりするわけですね。自作農創設資金のような場合には、私の考えたと同じことがいえるわけですけれども、初めの方の何は、相当長い期間借りているのだから返済をしておるのだ、だから一〇〇%に近いものだ。これは成績が悪いのだ、こういうお考えですけれども、しかし、この中に二種類あると思うのですよ。だから、必ずしもここに出てきたものでもって一〇〇%以上のものがどうだとかこうだとかということはいえないと思うのですね。だから、私の考え違いであるかもしれないけれども、その中には私の考えておる通りに考えてもいいような部面もあるわけですよ。だから、絶対数字をこう見まして、計画数字と、それから実績の数字を上層農と下層農と比較してくると、この形は私が言ったような形がはっきり出てくると思うのです。で、先ほど御説明になったときに、下層農は資力がないのだし、そこにたくさん金を借りておるのは間違いのような、そういうようなことを言われたけれども、しかし、私は、一定の規模で、そうして営農を始める場合に、政府が出す金というのは、これは同じ形のものが出てこなきゃならないと思う。だから、借りる条件が備わっておらないから金を貸さなかったのだと、こういうのだったらこれは問題になるわけなんです、政府資金ですから。従って、政府資金の場合にはそういうような条件でなくって、やはり一定の規模のものであるとするならば同じようにいかなければならぬ、政府資金の場合には。だからそういうような点。それから問題なのは、今度は、今、御説明になったやつからいくと、一般農協資金の場合、上農の方は二四四・五、それから下層の方のものは四六四、こういう数字が出てくるのですから、これはもう私は、先ほど私が言ったように、政府資金について条件緩和をするよりも、この一般農協資金であるとか、あるいは親戚、商人、その他の場合におけるこの率の高いやつ、これが問題だと、そしてしかも、これは非常に開拓農家を痛めつける問題だと、そしてこいつは、この前に私が申し上げたのは、環境が整備されておらないために系統金融を借りることができないで、そうして無理をして借りた金だとか、そういうようなものが残っているのだから、かえってこっちの方に重点を置いて、そっちの方を切って、そうしてできるだけ金利が安くて、そうして償還期間の長い金に切りかえていく、こういうことが総体の借金の条件緩和になる、こういう意味の質問をしたはずです。
  93. 庄野五一郎

    説明員(庄野五一郎君) 今、御指摘になりました政府資金の中期の分について上層の計画と下層の計画が非常に違うじゃないか、こういう御指摘でございますが、その点については、私の方の見方といたしましては、この金額の差の開いているという点は、下層の方の振興計画の樹立がおくれているのじゃないか、それで大体上層の方が振興計画を立てて金を借りる面が進んでおりますので、むしろ下層農家は三十四年度以降にこの政府の、いわゆる振興対策資金の需要が出てくるんじゃないか、そういうふうに見ておるわけで、必ずしもこれによって上層の農家の資金需要が多く、下層農家の、いわゆる対策資金の資金需要が少ない、こう見るべきではないので、下層農家については、三十三年度というところは、上層の方で振興計画は非常に承認が進みましたのですが、三十四年度以降で下層農家の資金需要が出てくるんじゃないか、こういうふうに考えております。また一般農協の点が非常に下層に多いのでございますが、これは二十七戸でございまして、全面的にこういうような傾向を持っているかどうかということは直ちに判断はいたしかねると思いますけれども、こういう面の分はいわゆる経営資金等の借り掛けで残ったのじゃないか、こう思われるわけでございますが、一面、また自作農資金等の個人負債の借りかえが済まなかった、そういう面があって、一般農協とか、親戚、商人とか、そういう面の指数が大きくなっているのじゃないかと思うのですが、三十四年度になれば、多少ここら辺は自作農の資金が非常に進んでおりますし、また融資保証協会の方の需要もだいぶ進展いたしておりますので違ってくるのじゃないかと思うのですが、そういう面からくる増加との差が相当あるのじゃないか、こう思われます。今後の問題としては、先ほど申しましたように、上層、下層ということによりまして、資金需要の点で規模による多少の相違はあるといたしましても、上層にいいのがいき、下層に条件の悪いのがいく、あるいは希望に対しては上層の方が充足され、下層の方は充足しにくいと、こういったことのないように十分注意して是正していきたいと考えております。
  94. 東隆

    ○東隆君 今の御説明少しおかしいと思うのですよ。上層の方は四十戸、下層の方は二十七戸でしょう。それでこれは振興計画ができたやつを取り上げて、そして算術平均されたものなんですから、だから振興計画がおくれたとか進んだとか、そんなことは問題でなくて、傾向は出てくると思うのですがね、この傾向が出ているのじゃないかと思うのですがね。
  95. 庄野五一郎

    説明員(庄野五一郎君) それが四十戸と二十七戸が地域的にもぴったり合っていないのです。これは非常に急いで取りましたので、大体まあ関東地方中心になって報告がきたわけでございますが、そのほか九州と北海道といった大きいところが落ちておるわけであります。それで上層農家も、大体四十戸というのは関東が中心になっておりまして、下層の方は二十七戸で非常に少ないわけでありまして、ぴったりこれが合うかどうかということも問題があるわけでございまして、この資料は、われわれといたしましては三十四年度の分をもう少しよく取りまして判断の資料に供したいと思いますが、これですぐ全体の傾向だというのは非常にむずかしいのじゃないかと、こう思っております。  質問の第五点でございます農林漁業金融公庫の主務大臣指定施設資金については、法律上は据え置き期間三年、償還期間十五年、計十八年となっているのに対し、業務方法書では据え置き期間二年、償還期間十年、計十二年に押えられているが、業務方法書でも法律一ぱいまで認むべきではないか。また、実際の貸付にあたっては、業務方法書の条件をさらに押えている例が多いが、法律で許されている条件で貸し付けるべきじゃないか、こういうような御質問であったと思います。公庫の主務大臣指定施設資金の償還期間は、御指摘のように、法律上は据え置き期間…年、償還期間が、据え置き期間を除いた期間でございますが十五年の範囲内で公庫が定めることになっておりまして、公庫の業務方法書においては、据え置き期間二年以内、償還期間は据え置き期間を除くとございますが十年以内とされておりますが、これは業務方法書で規定されておりまする施設の種類、その耐用年数等を勘案しまして、また土地改良資金その他との均衡も考慮して妥当な貸付条件を考えられている次第でございます。しかし、災害その他の事由により償還が困難なものに対しましては、特に必要があると認められるときは、業務方法書の範囲を越えて法律上の限度まで償還を延期することができることになっております。で、二年、十年で貸しておりましても、災害を受けて償還が困難になってくるということになりますれば、法律上の限度の据え置きをもう一年延ばして三年にするとか。あるいは償還期間を三年延ばして十五年にするとか、そういうことは災害等の場合にはできることになっております。なお、主務大臣指定施設資金の貸付条件につきましては、公庫、その他関係公庫と協議の上条件緩和をはかるよう努力して参りたい、こういうふうに考えております。
  96. 東隆

    ○東隆君 今のお話ですと、公庫がやっているのは当然のような表現をされておるのですが、私はそうじゃなくて、法律できめた範囲ですね、それを勝手に狭めて、そうしてそれを農林大臣が認可をするというのはこれはおかしいと思うのです。それから業務方法書の中にそれをはっきり書いて、そして初めからそれ以上は貸さないのですと言われれば、金貸しのことですから強いのですよ、その通りになってしまうのですから。だから、せっかく法律できめたものがだめになってしまうのです。だから、業務方法書でもって農林大臣が認可した方が強いのか、法律の方が強いのか、これは問題だろうと思うのです。だから、これは当然公庫に直させるべきが当然であって、公庫が勝手にそれをやられたらこれは間違いだろうと思います。つけ加えて言いますけれども、自作農創設資金の場合でも私は農地を担保にすることは間違いだろうと思います。実際のことは。しかしまあ実際農地を担保にして今自作農創設資金を出しています。それは農林大臣が認可をしているから、こういうのです。業務方法書で認可しているのです。だから、農地法の建前からいったら私は農地を担保に取るのは間違いだと思う。そういうような点を、農林漁業金融公庫が金融機関として勝手な考え方でもって業務方法書をこしらえて農林大臣に認可を与えられておる。その場合に、私は農地局関係は十分にこれにタッチされると思うのです、その認可をされるというときには。それで、農林大臣にめくら判を押させないように私はやる必要があろうと思います。この問題に関する限りにおいて。せっかく前に喜ばせて、そして実際に今度はやる場合には変えてしまうということでは、これはもう絵にかいたぼたもちみたいになってしまうのです。そうじゃないですか。だから私は、これは法律できめたように、はっきりと農林漁業金融公庫は業務方法書にそれをきめるのがこれが私は常識だろうと思うのです。これがほんとうの考え方で、今農林漁業金融公庫がやっておるようなやり方は、これは非常に高利貸しのようなやり方です。こんなやり方を農林漁業金融公庫がやるべきでないと思うのです。だから、この点だけでも一つ、まず開拓三法案に関連をした資金からでも一つ直して下さいよ。
  97. 庄野五一郎

    説明員(庄野五一郎君) 先ほど申しましたように、法律は、十五年の範囲内で公庫が定めると、こういうことになっておるわけでございますので、法律違反ではないわけでございます。で、御指摘の通り、やはり開拓者の営農状況等から考えて、これは据え置きの長い方がよりいいし、償還期間も長い方がいいとわれわれも考えるのでございますが、指定施設につきましては耐用年数等もございまして、耐用年数を越えて長く貸すということは金融の常識から問題があろうかと思いますが、われわれといたしましては、先生の御指摘のようにできるだけそういう方向で努力いたしたい、こう考えております。
  98. 東隆

    ○東隆君 法律違反でないと、こう言われるけれども、業務方法書の書き方も法律に書いてある通り一つ書いてもらいたいわけです。それを、数字というものは絶対的なものですから、数字を変えるというのは、これは間違いです。だから、範囲あるいは以内というようなことで、一応ある程度の考え方ができるのですから、それでも私はもう金融機関の立場が強いのですから、だから範囲だからというのでいじめられるのだろうと思う。だからこれは十分に一つ認可をする場合に考えてもらわないと、これは先ほど言ったように、せっかくのことがだめになってしまう。ことにこれは条件緩和だのなんだのに使う金なんだから、なおさらのことなんです。これは一つ政務次官も腹の中へ入れておいて下さい。
  99. 庄野五一郎

    説明員(庄野五一郎君) 御質問の第六点でございますが、政府資金については償還期間は少なくとも五十年程度にして無利子にすべきだと思うがどうか、すなわち親子三代にわたって償還するということにすべきではないか、こういうような御質問だったと思います。政府資金につきましては過去の既入植者で営農の基礎がまだ不安定であるため償還ができない者につきましては、今回御審議願っておる条件緩和法の償還期間を延長して償還を容易ならしめるよう措置いたしたいと、こう考えておりますが、今後の新規入植者につきましては、入植地の建設工事を促進するほか、開墾もできる限り機械開墾によって早期に完了するようにして、また政府資金の貸付ワクにつきましても、三十三年度から、従来十七万七千八百円だったのを四十五万程度に増額いたしまして、早期に営農の振興ができるよう措置して参りたいと、こう考えておりますので、現行の二十年の償還期間で償還ができるものと、こういうふうに考えております。五十年という御指摘でございますが、なかなか五十年というわけに参りませんので、まあ二十年ということで資金ワクをふやして、営農が安定して参れば償還も可能になる、こういうふうに考えておる次第でございます。
  100. 東隆

    ○東隆君 住宅金融公庫の資金はブロックその他永久的な建物の場合には二十五年ですか、これは。それで開拓農家の場合はもちろん住宅だのなんだのもありますけれども、農地というものは、これは水害だのなんだのを考えれば問題ですけれども、営農をやることができるというところに政府がちゃんと選択をしてそうして農家を入れておるのですから、農地というものは、これは不動産として普通の木造建築だのなんだの、そんなものよりも相当長いものを対象にして貸しても一向差しつかえないものである。だから農業の場合における資金は、住宅金融公庫の資金よりもずっと長いやつを出すのがこれが私は金融の常道だろうと思うのですが、それを木造建築程度の、住宅金融公庫が貸す場合の木造建築程度のものをもってやろうというのですから、これはやはり少し問題があろうと思うのです。だからもう少し長期の資金を出すという考え方をやらないと条件緩和にならぬと思う。
  101. 庄野五一郎

    説明員(庄野五一郎君) 今御指摘の点は、これは政府資金は開拓者資金融通特別会計から貸す金のことを申し上げておるわけでございまして、開拓者に売り渡しました農地の代金は自作農創設特別措置特別会計からの売り渡し金の回収になるわけでございます。そちらの方は従来通り二十四年だったと思いますが、二十四年で今農地並み、こちらの方はいわゆる営農資金だとかあるいは農機具、家畜とか、そういったものの資金でございますので、農地よりは短くていいのじゃないか。長いにこしたことはないのでございますが、バランスからいって開拓者資金融通特別会計からの方は、耐用年数その他から考えて最長二十年、こういうことになっています。いわゆる農地売り渡しの方の回収は二十四年、こういうことでございます。
  102. 東隆

    ○東隆君 くどいようですけれども、その条件緩和をする借金は、これはもう農機具も、それからその他災害関係も何もみんなごちゃごちゃになっておるのですね。そして、これは、問題は、生産に役に立たないマイナスの資本ですから、いわば農業経営の中のマイナスの資本なんです。これに対する償還の負担ということは、これはできるだけ少なくしなければならない。だから、そういう意味でこのものの条件緩和をするための資金だというのだったら、私はもう少し長くしなければいかぬのじゃないか。こういう意味で言っておるので、もちろん十カ年間かそこらでいいのです、農具そのものだったら……。ところが、それじゃないのですから、そういう性質のものじゃないのです。今条件緩和をするというものはマイナスの資本になっておるのですから、そういうものを償還するときには、経営に関係なしに考えなければならぬ。だから経営の余剰でもって償還をしなければならぬのですから、余剰でもって償還できるようなものを持っていかなければならない。だから経営のコストの中でもって出すというんじゃないのですから、経営の余剰のうちから払っていく、そういうものですから、非常に長期のものでなければやれないわけです、計算からいっても。それで初めて条件緩和になるので、政府考え方では元金だけではなくて利息延滞金利まで加えて、それを元金にしてそれに対して借りかえをやるというような形になるのですから、いよいよもって長期のものにしなければなかなか容易でない、こういう考え方が出るわけです。普通の農業経営でもって経費の中に入って償還をするという形のものならば、問題がないのですね。だけれども、そうじゃなくて農業経営をやって、そして余剰が出た、その余剰でもって支払っていくというのですから、これはもう非常に微々たる金ですよ。それが財源になるのですから、それでもって払えるような見当でもって考えなければ払っていけないということですよ。だからこれは相当長期のものでなければいけないということになるわけです。だから資金の性格からいって長期にしなければならぬ。その場合に、農地の場合には、自作農創設は二十四年だけれども、これよりも、これはまだ土地がそのまま残ってやっていけるのですから、これはまだいいんですよ。だけれども、この場合はもっと長期のものでやっていかなければならぬ、こういう意味で言っておるのです。考え方が少し、ちょっと違うのです、その意味において。
  103. 庄野五一郎

    説明員(庄野五一郎君) 御指摘の点よくわかっておるわけでございますが、この政府資金は、大体が消費金融じゃなしに、生産金融だったことはもう御承知通りだと思いますが、過去におきまして入植当初、特に緊急開墾時代の相次ぐ災害等で消費金融的な面が出たのじゃないかということは御指摘の通りだと思います。われわれといたしましても、これをそのまま延ばしただけで返せるかどうかということは、御指摘のように非常に問題があると存じますが、われわれといたしましては、この営農不振の原因になっておりまする建設工事の遅延とか、あるいは不足、あるいは開墾進度がおくれている、そういった点をできるだけ早急に、これは三十五年以降五年間くらいで建設工事も完了し、それから開墾進度等も早急にこれは完了する。そういった予算措置、財政措置を講じまして、積極的に営農が安定する、そうしてさらに営農転換に必要な振興対策資金といったものも積極的に貸し出していきまして、そういう面からする営農の伸びというものを考えながら、必要経費を引いて、それで償還余裕が出たところから、その償還余裕で——経済余剰でございますが、経済余剰で十五年延ばせば返せる、そういうような考え方をいたしているわけであります。ただ、積極面をしないで、ほおっておいて経済余剰で返していく、こういうわけじゃなしに、経済余剰が出るような積極的な財政投融資等をやりながら、そうして出たところで十五年延ばせば返せる、こういうような考え方をいたしているのであります。大体二十年で返せる、こういう目算を立てている次第でございます。  最後第七の御質問でございますが、政府資金以外の資金、特に個人負債は高度のものが多いが、こういうものはなるべくなくして、公正な金融機関から資金の借りられるよう措置すべきではないか、こういう御質問だったと存じますが、過去の個人負債につきましては、振興計画を基礎に自作農維持創設資金の貸付を行なって参りまして、その肩がわりということにしておりますが、三十五年度末貸付計画の大体百パーセント完了の予定にいたしております。なお、開拓者の所要資金につきましては、政府資金の貸付ワクを広げるというほか、開拓者が激甚な被害をこうむった場合には、天災法によります災害経営資金と並びまして、新たに開拓者資金融通特別会計から災害資金を貸し付ける道を、今御審議願っている法律によって開いていく、また開拓者の経営資金については、昭和三十五年度に中央保証協会に対する政府出資を一億円を増額しまして保証制度による長期経営資金融通の円滑化をはかる、そういったような積極面から生産資金を融通する、こういうふうにいたしまして、できるだけ個人的な、あるいは高利貸的な負債をなくしていきたい、こういうふうに努力いたしております。なお、政府資金なり、制度資金で消費金融的なものをやるかどうか、これは大きな問題でございまして、今後とも検討して参りたい、こういうふうに考えております。
  104. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) ちょっと伺いますがね。今のところで、今度の法の改正で天災資金というものの開拓者の災害資金というものと、それから従来ある天災法によるものと、これはどういう区別をして貸し出しをするのか、単一の個人に対しては両方がいくのか、ただしはどういう配分でいくのか、どういう程度でどういうふうな行き方をするのか。
  105. 庄野五一郎

    説明員(庄野五一郎君) 従来の天災法によりまする経営資金というものに対しまして、今度振興法を改正いたしまして災害資金を出すという制度を開き、その制度は天災資金法に対する補完的な機能をいたしたい、こういう考え方でございます。たとえば天災法では経営資金でございまして、施設資金は今のところ貸しておりません。それで激甚な被害を受けました場合には、往々にして作物だけじゃなしに、農舎、畜舎、サイロあるいは農機具といったような施設的なものの災害を受けて、施設資金の需要があるわけでございますが、これに対しましては、従来は大災害の場合は補助が出るわけでございますが、公庫の災害資金が多少あるということでございますが、公庫の金融ベースになかなか乗らない、こういう面がありまして、営農振興臨時措置法に災害資金という制度を認めて、そういった場合の施設資金を貸し出す道を開くということに相なっております。それで経営資金に対しまして、災害資金は施設資金を貸すということで補完的になりますとともに、従来激甚な被害を受けた場合には、なかなか営農の回復というのがむずかしいというようなことで、天災融資法では金融ベースに乗らないということで、中金からなかなか貸し出しが進まない、こういう面もございますので、激甚な被害を受けました施設も、それから農作物も合わせて被害を受けたというような開拓者の場合には、これは基本営農資金に類する経営資金と施設資金と合わせたものを貸していこう、こういうような考え方になりますので、作物災害、施設災害合わせて被害を受けたような激甚な開拓者には、災害資金一本の貸付ということになりましようし、ただ施設だけをやられたといったような場合には、これは程度の差もございますが、新しい今度の施設資金と合わせて経営資金は天災法により貸し出していくというような場合もあると思います。そういったような点で区別していきたいと、こう存じております。
  106. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) 他に御発言もなければ、三案については、本日はこの程度にいたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時二分散会