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1960-06-12 第34回国会 参議院 日米安全保障条約等特別委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年六月十二日(日曜日)    午前十一時五十三分開会   —————————————   委員異動 六月十一日委員青柳秀夫辞任につ き、その補欠として松村秀逸君を議長 において指名した。 本日委員青木一男辞任につき、その 補欠として山本杉君を議長において指 名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     草葉 隆圓君    理事            井上 清一君            西田 信一君            増原 恵吉君            吉武 恵市君    委員            青木 一男君            木内 四郎君            木村篤太郎君            後藤 義隆君            笹森 順造君            下村  定君            杉原 荒太君            鈴木 恭一君            苫米地英俊君            永野  護君            鍋島 直紹君            野村吉三郎君            堀木 鎌三君            松村 秀逸君            山本  杉君   国務大臣    内閣総理大臣  岸  信介君    法 務 大 臣 井野 碩哉君    外 務 大 臣 藤山愛一郎君    運 輸 大 臣 楢橋  渡君    郵 政 大 臣 植竹 春彦君    労 働 大 臣 松野 頼三君    建 設 大 臣 村上  勇君    国 務 大 臣 赤城 宗徳君    国 務 大 臣 石原幹市郎君    国 務 大 臣 中曽根康弘君    国 務 大 臣 益谷 秀次君   政府委員    内閣官房長官  椎名悦三郎君    内閣官房長官 松本 俊一君    法制局長官   林  修三君    法制局次長   高辻 正巳君    法制局長官総務    室主幹     関  道雄君    法制局第一部長 山内 一夫君    法制局第二部長 野木 新一君    法制局第三部長 吉国 一郎君    警察庁刑事局長 中川 董治君    自治庁税務局長 後藤田正晴君    防衛庁長官官房    長       門叶 宗雄君    防衛庁防衛局長 加藤 陽三君    調達庁長官   丸山  佶君    調達庁次長   真子 伝次君    調達庁総務部長 大石 孝章君    調達庁不動産部    長       柏原益太郎君    調達庁労務部長 小里  玲君    法務省民事局長 平賀 健太君    外務政務次官  小林 絹治君    外務省アメリカ    局長      森  治樹君    外務省条約局長 高橋 通敏君    外務省条約局外    務参事官    藤崎 万里君    外務省国際連合    局長      鶴岡 千仭君    大蔵省主税局税    関部長     木村 秀弘君    文部政務次官  宮澤 喜一君    厚生大臣官房長 森本  潔君    水産庁次長   高橋 泰彦君    運輸省航空局長 辻  章男君    気象庁長官   和達 清夫君    郵政大臣官房長 荒巻伊勢雄君    郵政省電気通信    監理官     岩元  巌君    郵政省郵務局長 板野  学君    郵政省電波監理    局長      甘利 省吾君    労働省労政局長 亀井  光君   事務局側    常任委員会専門    員       渡辺 信雄君   説明員    大蔵省為替局企    画課長     村井 七郎君    日本電信電話公    社総裁     大橋 八郎君   —————————————   本日の会議に付した案件日本国アメリカ合衆国との間の相  互協力及び安全保障条約締結につ  いて承認を求めるの件(内閣提出、  衆議院送付) ○日本国アメリカ合衆国との間の相  互協力及び安全保障条約第六条に基  づく施設及び区域並びに日本国にお  ける合衆国軍隊地位に関する協定  の締結について承認を求めるの件  (内閣提出衆議院送付) ○日本国アメリカ合衆国との間の相  互協力及び安全保障条約等締結に  伴う関係法令整理に関する法律案  (内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 草葉隆圓

    委員長草葉隆圓君) ただいまから日米安全保障条約等特別委員会開会いたします。  まず委員の移動について報告いたします。  昨日、青柳秀夫君が辞任され、その補欠として松村秀逸君が選任されました。   —————————————
  3. 草葉隆圓

    委員長草葉隆圓君) 日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約締結について承認を求めるの件、日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊地位に関する協定締結について承認を求めるの件、日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約等締結に伴う関係法令整理に関する法律案、以上衆議院送付の三案件を一括して議題といたします。  前回に引き続き質疑を続行いたします。これより通告順により質疑を許します。苫米地英俊君。
  4. 苫米地英俊

    苫米地英俊君 私は、各逐条についていろいろ伺いたいのでありますが、諸般の情勢にかんがみまして、きわめて少数の点だけお伺いいたしたいと思います。  まず第一にお伺いいたしたいのは、国際情勢の見通しにつきまして、私は総理の御見解が的中しておったと、かように感ずるのでございます。しかし、この日本武力攻撃を行なわれる危険があるということにつきましては、野党は、何も日本を侵略しようとするような国が周辺にないではないか、それであるのに安保条約を強化して基地提供しておる、この安保条約締結ということと基地提供ということが、日本武力攻撃を加えられる原因になっているのではないかということを申しておる次第であります。私は、第二次大戦以後の世界を見渡しますと、世界のいずれかの場所において砲声のとどろかなかった、戦争のなかった日は一日もない、これが現実であると思うのであります。従って、日本国際連合範囲において、また憲法の許す範囲において自衛の方策を立てるということは適当なことだと思うのでありますが、日本武力攻撃を受ける危険がない、もし、ありとするならば、条約締結基地提供ということにあると申しておるのでありますが、この点について総理の御見解を伺いたいと思うのであります。
  5. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 国際情勢現状は、私は、東西両陣営の対立のもとにおけるこの関係は、緊張緩和の必要があるということをひとしく認めておりながら、なかなか実現の困難な情勢でございます。また、緊張緩和を進めういう場合に中共を入れるということをみんな考えておるようでございます。で、そういう考え方は、すなわち国連のワク内において十カ国委員会を作るという場合に、国連のメンバーでない中共をも入れ得るという考え方に立っておるわけでありまして、十カ国委員会ができますまでの——まあ国連と十カ国委員会設立のいきさつはいろいろございますけれども、現在はそういう意味において、各国とも十カ国委員会の成果によって、十カ国以外の他のすべての国を入れる、その中にはむろん中共を含めておるという考え方でございます。
  6. 苫米地英俊

    苫米地英俊君 次に事前協議の点についてお伺いいたしたいと思います。新安保条約は、条約の第一条で平和的の性格が明瞭に打ち出されており、第五条で、条約は純粋に防衛的のものであり、自衛行動については、その発動から終止までについて明らかに規定されております。で、現行条約の不平等性、片務性の諸点の改善をしてあるもので、新条約が特に危険性を持っておるとは私は考えないのであります。条約六条に基づく施設及び区域並びに日本における合衆国軍隊地位に関する協定ども著しく日本に有利に改善されております。この点には何ら疑いがないのであります。しかるにもかかわらず、院の内外において、この事前協議事前同意とすべきであるという議論が相当あります。私は、同意ということは、これはアメリカ軍隊日本同意がなければ動かれないという形になりますので、受け入れることは非常に困難だと思うのであります。外交折衝は、各国民の平和、安全に対する理想と現実との両国妥協点を見出すにあるのでありますから、現在の条約アメリカにとっても理想的なものではなく、日本にとっても理想的なものではない。それが条約の当然の本質だと私は存ずるのであります。ところが、この事前協議ということについて、それでは日本戦争に巻き込まれるという主張が根強く存在しており、国民の中にもこれに同調する者があるように思われるのであります。政府は、事前協議において日本同意できない、日本関係のないような場合には、これを拒否することができる、日本基地から米軍が出動することを拒否することができる、従って、日本が不本意な戦争に巻き込まれることはないと反復して答弁しておられます。ところが、政府がその答弁を繰り返し強調されればされるほど、世間や反対論者は疑義を深めているようなありさまであります。その理由は、二つあると考えるのであります。その一つは、今日は東風が西風を圧する、ソ連の軍事力アメリカ軍事力よりもはるかに強いものであると、こういう考え方が、反対論者の間のみならず一般国民に普及されておるようであります。であるからして、こういう状況においては、安保条約があっても戦争抑制力にはならないのだ、こういうことを盲信しておるのであります。いま一つは、極東に重大なる紛争が発生したときに、日本は平然として無関心でこれを眺めていられない。結局、事前協議で、日本米軍基地からの発進に同意しなければならないような事情が起こることもあるだろう、また、日本が危険を感ずるときには、進んで同意しなければならないだろう、こういうときには戦争に関与せざるを得ない。ところが、いたずらにこの事前協議がある、極東範囲はきまっておる、日本の欲しないものは拒否することができるというようなことを繰り返しておったのでは、国民は容易に納得しないのであります。極東重大事件が起こったときに、戦争に巻き込まれまいという身勝手な非現実的な立場をとりますならば、有事の際における作戦遂行上の機動性を阻害し、日本の安全が保障せられない結果になることもあり得ると考えております。私は、今度の事前協議その他の点における改定の効果は、戦争を未然に押える運用日本が若干の発言権を享有し得たというだけであって、これが六条によって、日本戦争に巻き込まれるということが絶対ないと、こういうことにはならないのじゃないか、そういうことを主張することによって政府はごまかしているんじゃないかというような疑いを深めさせておるのが現状であります。この点について国民が明確に納得するように、総理なり外務大臣なり、どちらでもよろしゅうございますから、御説明を願いたいと思うのでございます。
  7. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 事前協議の場合に、この従来の交渉の経緯から申しましても、拒否できることは当然でございまして、私どもはいささかも日本同意なくしてアメリカがそれを強行しようとは考えておりませんし、また、そうあるべきものであって、拒否することはできるわけでございます。ただ御指摘のように、日本の平和と安全を守りますことがこの条約基本でございます。従って、日本の平和と安全に重大な影響を及ぼすような事態が起きましたときに、それは当然その見地からこの事前協議を眺めて、また運用して参るわけでありまして、日本関係のない場合には拒否することができることは当然でございます。また極東の場合におきましても、その混乱の起きたことが日本の平和と安全に影響するかしないかということが判断の基礎であります。でありますから、日本の平和と安全が脅かされるというような事態、及びそうでないような地域的な混乱というものが当然考えられるわけでありまして、そういう場合における事前協議運用というものは、その見地に立ってこれを行なうのでありまして、従って事前協議自体につきましては、拒否し得る条項でございます。
  8. 苫米地英俊

    苫米地英俊君 ただいまの外務大臣の御説明によりまして、事前協議は、日本安保条約平和維持の、また、戦争に巻き込まれないための日本発言権を確かめておるのであって、現実日本が脅威された場合には、戦争に入ることもあるいはあるでしょう、日本が直接攻撃された場合にはあるでしょうし、また、米国が出撃する場合にもこれを承認することもある、こういうことが、これは当然のことでありますけれども国民に従来理解されないで、反対をされておったと思うのであります。  次に移りまして、修正権という出題についてお伺い申し上げます。政府調印を済まして条約承認国会に求めた場合に、国会にこれを修正する権利があるかどうかという論争衆議院段階においてありました。そして衆議院の議運で検討することになっておりますが、今日なお未解決のままになっております。この状態で参議院安保条約承認して批准の運びをつけることがいいことか悪いことか、一応反省してみる必要があると思うのであります。衆議院段階論争につきましては、私個人としては政府の御答弁を了承いたしております。ここで一つ明らかにしたいのは、この締結権の一部であるところの政府代表調印ということの効果は何であるかということを、まず外務大臣にお伺いいたしたいのであります。
  9. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 法制局長官から御答弁いたします。
  10. 林修三

    政府委員林修三君) これは両政府代表協議をいたしまして、条約内容を確定する行為だと、かように考えております。
  11. 苫米地英俊

    苫米地英俊君 私もさように考えるのであります。条約内容及びその条文まで確定するものである。従って調印というものは、条約をアザ・ホールして、総括一体として確定するものであると存ずるのであります。従って、その一部の修正は全部の不承認になる。おかしな例でありますが、見合い結婚の場合に、見合いをして、どうもあの目は工合が悪い、目がよくなったら結婚してもいいと言ったら、これは結婚全部を否認することであって、目だけを否認することにならない。私は、かように考えるというと、一部の修正は全部の不承認になると考えますが、この点はいかがでございましょうか。
  12. 林修三

    国務大臣林修三君) この条的の承認に関する国会の権能と申しますか、これに関しまして衆議院でいろいろと御議論がございました。また衆議院議院運営委員会において御検討中でございますが、もっぱらこれは国会の権限の問題でございますから、そういう意味ではっきりしたことを申し上げるのもいかがかと思いますが、従来政府として考えておりますところは、今、苫米地委員がおっしゃった通りでございまして、やはり条約承認というものは、まあ締結権を持つ政府がそれについてのイエス・オア・ノーを国会に諮る、国会においては結局全体としての承認、あるいは全体としての不承認と、こういうことではなかろうかと考えておるわけでございます。まあ修正という問題について、いわゆる法律案修正というような意味修正というものはないということは、おそらく衆議院段階においても皆さん大体議論が一致されておるところだと思います。いわゆる現在言われております修正という意味は、多少違った意味修正の問題が言われておるようでございまして、今おっしゃった点、いわゆる一つの確定した内容条約承認を求める以上、その一部の不承認ということは、やはりまあ全体に対する不承認であり、今後もう一ぺん内容を出し直してこいと、こういうことじゃなかろうかとわれわれ考えております。
  13. 苫米地英俊

    苫米地英俊君 私は参議院でこの修正権の問題についてどういう結論に達するか存じませんが、今法制局長官の言われた言葉に従って条約を取り扱っていくのが正当じゃないかと考える次第であります。これに関連いたしまして、条約の第十条に、条約有効期間がきめられております。条約有効期間十年は長過ぎる、こんな危険な条約で十年も縛られるのは国民としてたえられない、こういう議論が今でもあります。一年の予告で解消し得るように修正すべきだ、そのくらいの修正は重大な問題じゃないから当然できることだというような議論があります。そしてこれに同調する人々保守系人々の間にも相当あるように考えるものであります。で、一年の予告を正当化するために、これまですでに野党によって引用せられたのは、米比米緯米華アンザス等の諸条約であります。これらはすべて一年の予告で解消することができるようになっておる、こういうふうに申しておりますが、私は、これらの条約と新安保条約との間には非常な差異がある、根本的に違っておる、このことがまだ明確に打ち出されて国民に徹底されておらないように感ずるのであります。その根本的の相違というのはどこにあるかと申しますと、先ほど申しましたような条約は、すべて永久条約である。無期限である。永久条約であって無期限であるがゆえに、一年の予告ということが、一つ条約を終了させる上において必要になってくるのである。日本のは十年と切ってあるのであるから、そういう必要はまずないと私は考えるのが一つであります。もう一つは、米国日本との間には会計年度ズレがあります。従って、お互いに協力し、運営していくために、このズレのためにより多くの時間がかかる、次の年度にかかるというようなことがありますので、また、この安保条約が翌年どうなるかというようような危惧を持っておりましては、民間人がいろいろの企業的な計画を立てる上にも非常な困難を生ずるだろうと思うのであります。国と国との間においても、民間人の間においても、一年予告ということでは非常な不便がある。さらにまた、安保改正絶対反対を唱えております共産党員と名乗らない共産党員のすこぶる多い日本におきましては、一年の予告ということになっておれば、年がら年じゅう、毎年々々安保条約反対闘争を繰り返して、政局の混乱は絶え間ないと考えられるのであります。私はこの意味から申しまして、十年は適当だと思うのでありますが、外務大臣から、このアメリカ極東における諸外国との締結条約日本条約との間に相違があることを、私の考えが間違っておるかどうか、その点をはっきりしていただきたいと思うのであります。
  14. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 条約期限の問題につきましては、私どもこの条約本質から申しまして、日本の平和と安全が維持されることを念願するものでありますから、従って、われわれの最も信頼する機関である国際連合が、日本区域において平和を維持する手段をとれば、これは当然こういう条約がなくていいということになりますので、第一段としてはそれを目標にして掲げたわけでございます。しかしながら、そういう措置がいつとれるかということは、なかなかわからないことでございます。従って、日米両国相互信頼関係に立ちます以上は、一定期限を付しますことが適当であると考えるのでありまして、年々、御指摘のようにこれを続けるか続けないかというような不安があっては相ならぬわけであります。これは信頼関係の上に立ちますれば、当然一定期限を付して、お互いに信頼し合いながら、その期限の中で運用していく。そこで、その期限をつけます場合に、何年が適当であるかということが問題になってくると思います。御承知のようにこの種条約には、三十年というものもございますし、二十年というのもございます。従って、われわれとしていろいろ考えてみました結果、やはり今日の国際情勢その他からも考えまして、そうして信頼関係の上に安全に条約を運営していく、しかも、それが日本地域における平和と安全を維持するということを考えてみますと、まず十年が適当であろうということで、この十年というものをきめたわけでありまして、われわれも、この条約期限の問題につきまして、ここに至りますまでの間に、今までのわれわれの考えを申し上げましたことは、苫米地委員のおっしゃったことと食い違っておらぬと私は確信いたしております。
  15. 苫米地英俊

    苫米地英俊君 私がぜひ外務大臣に認めていただきたいのは、米比米韓米華アンザス等の諸条約は無期限であるから一年の予告というものが必要であるのだ、この点が日本安全保障条約とは違っておるのだ、日本のは十年という最も適当の期間をきめて、その後は一年の予告で解消できるのであるから、この一年の予告説で、この無期限であるということを反対論が述べないで、一年予告になっておる、ほかの条約は一年予告になっておるのに、日本だけは一年予告はなぜいけないのかという議論について、はっきりしたお答えをいただいて、国民に納得させたいと、かように考える次第でございます。
  16. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 御説のように、他のアンザスでありますとか、米韓米華米比等につきましては、今のお話にもございましたように、十年とか、二十年とかいう期限がついておりません。そして単に一年の予告ということでありますから、その意味において無期限━━期限なしであって、そして一年の予告でもっていつでも解消できる、こういうことになっております。われわれは、この信頼関係の上に立ってやります以上は、一定期間を限ってやることが必要であるのでありまして、御指摘のありましたように、毎年々々、もう一年の予告でやれば、いつでもこれはやめようとか、やめまいとかいうことが、両者の間に議論が出ると思います。そのことは、こういう条約を安定的に運営するゆえんではございません。そして、その結果というものは、日本におきましてもアメリカにおきましても、政治上の問題となろうと思います。でありますから、やはりこういう問題につきましては、一定期限をつけまして、そして運営することがいいということなのでございまして、今、苫米地委員お話と、私ども考え方、その通りだと思っております。
  17. 苫米地英俊

    苫米地英俊君 これで私は終わります。
  18. 草葉隆圓

    委員長草葉隆圓君) 午前中はこの程度とし、午後一時三十分から開会いたします。    午後零時三十九分休憩    ——————————    午後一時三十七分開会
  19. 草葉隆圓

    委員長草葉隆圓君) ただいまから委員会を再開いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  本日、青木一男君が委員辞任され、その補欠として山本杉君が選任されました。   —————————————
  20. 草葉隆圓

    委員長草葉隆圓君) 次に、去る八日の委員会において、公聴会公述人の数及び選定その他の手続につきましては、これを委員長に御一任いただいておりましたが、公示の結果、応募者が二十五名ございました。その内訳を申しますと、賛成十六、反対七、賛否不明が二でございます。右の中から賛否おのおの三名の方を公述人に選定いたしましたので、御報告申し上げます。大谷定男君、鈴木駒雄君、金井和男君、谷口次生君、田口寅雄君及び今村良幸君。以上でございます。   —————————————
  21. 草葉隆圓

    委員長草葉隆圓君) 休憩前に引き続き、質疑を行ないます。下村定君。
  22. 下村定

    下村定君 私が本委員会のために一般事項として質問考えておりましたことは、今朝までの間に大部分出尽くしたと思いますので、ただいまから私は、主として本条約内容付属協定並びに交換公文内容につきまして御質問をいたそうと存じます。また、本委員会には自民党以外の委員諸君が欠席せられておりますので、従来、衆議院等におきまして野党側から質問のありました事項に触れて、政府側の御意見を確かめたいと存じます。  まず、新安保条約国防基本方針並びに国防会議との関連について、総理大臣の御意見を承りたいと存じます。  去る三月十五日、衆議院における委員質問に対しまして、総理大臣は、新しい安保条約によって国防基本方針を変える必要はないから、条約案国防会議にかけなかったというお答えがあったと記憶しております。私は、この御見解同意を表するものであります。と申しますのは、現在の国防方針の第四に、将来国連が有効に侵略を阻止する機能を果たすに至るまでは、日本アメリカとの安全保障体制を基調として対処するということが明記されておるからであります。  それはそれといたしまして、現在の国防方針を見ますると、これは策定以来すでに三年を経過しておりまして、この間における国際情勢の動き、科学兵器の進歩等は注目すべきものがあると存じます。ことに、いわゆる世界戦略は、一昨日、鹿島委員が言及されました通り、従来の軍事を主体とする様式から軍事にあらざる手段に移る傾向がありまして、軍事のほかに、心理戦、経済戦、科学戦等の分野に大いに拡大されたように感じます。この点から見ますると、現在の国防方針は、従来よりも広い視野に立って再検討を要すると考えるのであります。ことに、承るところによりますと、近く第二次防衛五カ年計画が策定せられるということでありますから、なおさらもってこの再検討は必要であろうと考えます。なお、同じ意味におきまして、国防会議の構成につきましても、同じ考慮が必要でないかと存ずるのであります。この点につきまして、総理大臣の御意見を拝聴いたしたいと存じます。
  23. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 国防の基本方針につきましては、国際の情勢に対応して、われわれとしても常に考えていかなければならない問題であることは言うを待ちません。現在われわれは、国防会議において日本の国防の根本方針を決定いたしておるのでありますが、これを決定するにあたりましても、もとより、ただ単に軍事面だけの見地からこれを検討したのではございませんで、広く国の施策全体、国際情勢等も頭に置いて、これを広い見地から策定をいたしておりますことは、国防方針に明示されておる通りでございます。しかし、さらに最近の軍事科学の非常なる発進、国際間においても、この軍備の問題が大きく取り上げられておる。また、一般に科学技術の発達や、あるいは経済事情の進展、また東西両陣営の間におけるところの関係というものは、いろいろな面において現われてきておる際でありますから、日本の国防の万全を期する上から申しますというと、さらにこれが検討を加える必要は、私ども考えていかなければならぬと思います。今日のところ、直ちに国防会議の構成、組織等の問題について検討を加えて、すぐこれが、今、下村委員お話のような意味において再検討するということに関しましては、なお政府としては、慎重に各国の事情も検討の上、最後の考え方をきめたい、かように思っております。
  24. 下村定

    下村定君 次に、新条約の第三条に関連しまして、外務省当局にお伺い申し上げます。  かねて承っておるところによりますと、本条約締結されますると、日本の支出する防衛分担金に廃止されると承っております。しかるに、一昨日の新聞報道によりますと、アメリカ国防総省のオドンネル氏が、将来における日本に対するMSA援助は、防衛分担金を相続して、これと引きかえに行なうというようなことが出ております。この情報の確度並びにその意義につきまして外務省からの御答弁を願います。これは大臣をわずらわす必要はないと思いますから、どなたでもお答えを願います。
  25. 森治樹

    政府委員(森治樹君) 先般来、外務大臣から御説明のございましたように、新条約、新協定が発効いたしますると、防衛分担金はなくなる次第でございます。ただいま御指摘になりました最近におきまするアメリカの議会におきます関係者の言明は、おそらく日本に対する援助方式に関する言明だと私どもは承知いたしております。すなわち、援助方式といたしまして、無償援助ではなくして、日本側も特定の兵器の生産につきまして費用を分担する、アメリカ側も分担するというような、過去においても二、三の事例がございましたようなことを申しておるわけでございまして、防衛分担金のことを申しておる次第ではないと、かように承知いたしております。
  26. 下村定

    下村定君 了解いたしました。  次は、条約の第四条並びにこれに関連する条項について、総理大臣外務大臣及び防衛庁長官にお伺い申し上げます。  第四条には、緊急の場合における事前協議並びに両国間において条約の実施に関して随時協議すべきことが規定されております。私は、この随時協議なるものを常続的に、かつ、最も効果的に行なうことを特に重要視するものであります。一昨日、永野委員は、経済協力の見地から常設的な協議機関を設けることを強く要望されましたし、また鹿島委員もこの点に言及されました。私は、新条約一つの特色は両国の経済協力を約束しておる点にあることを思いまして、永野委員の御説に全面的の賛意を表しますとともに、軍事上の見地からは、一そうこの随時協議の必要を痛感ずるものであります。  次に、その理由の大要を申し述べます。  第一の理由は、条約の第五条に基づきまして、日本の領域内において日米両軍が共同して防衛作戦に任ずる場合のため必要であるということであります。本条約の目的は、もとより戦うためのものではなく、戦争を防止するための有効なブレーキを形成するにあることは申すまでもありません。しかして、このブレーキを最も確実なものにするためには、単に両国が防衛上必要な兵力を保有するだけでは不十分でありまして、両軍の当事者が平素からお互いによく話し合って、有事の場合に、両軍が、たとえばどれだけの兵力を出すか、共同作戦はいかなる要領でやるか、補給はどうする、また両軍間の連携をいかにするかというようなことを、具体的に約束しておくことが必要で、これをいざ鎌倉という場合にあわててやったんでは目的を達することはできないと思います。もしこのことがなくしては、日本自衛隊自身も作戦計画を立てることも困難であろうと存じます。  随時協議を必要とする第二の理由は、事前協議との関係であります。事前協議につきましては、本条約において第四条にもあります。また本年一月十九日の交換公文に基づきまして、重要な配置もしくは装備の変更並びに日本基地からする米軍の戦闘作戦行動に関する事前協議ということが述べられてあります。事前協議につきましては、これまでもいろいろな議論が行なわれましたが、私は、拒否権があるとかないとか、協議と合意がどう違うとかいうことは、そもそも末節の議論であって、要は、今朝外務大臣が御説明になりました通り、また、いやしくもアメリカの大統領が米軍日本の意思に反して行動することはないと言明しております以上、常識的に見れば、これ以上信頼する約束はないと存ずるのであります。しかしながら、事前協議をやりましても、長いものに巻かれる心配があるとか、火急の場合に間に合うまいという素朴な不安は、これはある程度うなずけると存ずるのであります。かくのごとき不安を除くためにも、平時から日米合同の軍事委員会を作りまして、互いによく腹を合わせることが最も必要であろうと思うのであります。すなわち、この随時協議によりまして、お互いの国の立場を理解し、情報を交換し、意思の統一ができておりますれば、配備とか装備の変更ぐらいでは、わざわざそれについて事前協議を開く必要がないかとも思われます。そういう場合も生ずるだろうと思います。また、ことに米軍日本基地から出発する場合の事前協議でも、この随時協議を平時から厳密に励行しておりますれば、万が一にも両軍の意見が一致しないようなことは生じないであろうと思われるのであります。  以上二つの理由からいたしまして、この種の協議は、単に政府の高官、日本におけるアメリカ代表者、また太平洋軍司令官及びその代理者等おえら方が、ときどき会って話し合いをせられるとか、あるいは正常の外交ルートを通じてやられるといったくらいのことでは、満足に行なわれるかどうかは私は疑問を持ちます。どうしても、前に申しました経済問題に対すると同様に、この頂上機構のもとに専門の下部組織を常設する必要があると思うのであります。なお、このことは単に理屈の上から申すのではありません。私はこれに類する幾多の資料を調査しました。また、私自身も、短期間ではありますが、かつて第一次大戦後ヴェルサイユ条約の実施に関して、ドイツ国の違反を監督するために、フランスのフォッシュ元帥を主宰者として、アメリカ、イギリス、イタリア、ベルギー、それと日本から、それぞれ専門委員が出まして、この随時協議に類するものを二カ年間続けてやった経験を持っております。申すまでもなく、これらの諸国はドイツを共通の敵として戦ったのでありますが、その立場はそれぞれであります。みな違います。問題の起こることに意見が反しましたが、この随時協議によりまして、先ほど私の申しましたような意思の疎通が常にできておりましたために、私の見るところでは、その結果として、ドイツに要求されたことはおおむね妥当であったと存じております。浅薄な私の経験まで申し上げまして、はなはだ失礼でありますが、これに対しまする政府のはっきりした御意見を承知いたしたいと思います。
  27. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今回の条約は、日米双方が対等の立場に立って、そうして運営していくという趣旨から申しましても、条約の実施にあたってすべてを協議——両国の間の協議で円滑に進行させていこうということは申すまでもないわけでございます。従って、条約第四条に掲げておりますように随時に協議し、また必要な場合には要諸によりまして会議を開くということを規定しておるわけで、その規定は条約全体に関係いたしておるわけでありまして、この協議をいたします機関として、付属の交換公文で日米安全保障協議会というものを設けることにいたしました。そうして日本側から外務大臣と防衛庁長官アメリカ側から太平洋軍司令官とアメリカの大使ということで、一応基本になります形を作ったわけでございます。そうしてこの機関を活用していく。しかし、今、下村委員お話のございましたように、特に自衛隊とアメリカ軍との間のいろいろな協議もございます。その他諸般の問題を条約実施の上で扱って参らなければならぬのでありますから、これらをただいま交換公文にきめました委員会の中に——中にと申しますか、下部あるいはそれに付設したいろいろな委員会ができまして、そうして運営されることは必要なことだと思っております。そういうことにつきましても、今後この委員会等で話し合いをして十分適切な方法をとっていきたいと考えておりますので、一応交換公文等には、ただいま申したような最高の機関を定めただけにいたしておるのでございます。今後そういう点につきまして十分両者で話し合いの上で、実際に適応するように運営して参りたい、こう考えております。
  28. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 全く私どもといたしましてもお説の通り考えております。第四条によって、平常時におきましても、常に作戦その他につきまして緊密なる随時協議をしていくことが大事だと思います。そういう随時協議をしていくことによって、御指摘のような事前協議の配置の重要なる変更につきましても、あるいは装備の重要なる変更につきましても、特に事前協議という切迫した形をとらないでも、随時協議において解決できる問題が相当あると思います。戦闘作戦行動に日本基地を使う場合等につきましても、随時協議をしておけば、非常にこれは事前協議にもためになると考えます。そういうことから考えまして、安全保障協議委員会ができることになっておりますけれども、その下部といいますか、その中にやはり専門的な防衛の立場からそういう場を作って、常々検討をし、連絡を緊密にしておくということは、私は必要であるというふうに考えます。  ただ、その機構、構成等につきましては、まだできておりませんで、検討いたしておりますが、発効いたしましたならば、そういう方向でいくのが適当であろう、こういうふうに考えております。
  29. 下村定

    下村定君 了承いたしました。  まだ少し割当の時間がありますので、防衛庁長官に一言お伺い申し上げたいと存じます。それは、戦後におきますわが国民感情の憂うべき面の一つといたしまして、戦争の惨害にこりました余り、大衆の中に、また一部知識階級の中に、国の安全保障に必要な方策あるいは防衛上必要とする安全措置等につきまして、あたかもそれが戦争を誘致するかのような錯覚のもとに、ことごとに絶対反対を唱え、あるいは協力を拓否するものが少なくありません。また、核兵器の残虐性をおそるる結果でありましょうが、新しい兵器といえば、危険性のないものまでも一律にこれを排撃する例が乏しくありません。かくのごときことは、現在世界各国のいずれにも見られない変態的な状態であると私は思います。このような状態が続きます限り、自衛隊そのものにいかなる新鋭な兵器を与えましても、その効力を発揮することはおぼつかないと思うのであります。これにつきまして、国民の国防意識を涵養するという必要を痛感するのでありますが、これは政府の全般のお仕事と存じますけれども、防衛の主務官庁であります長官の御意見、並びにこれに関して何か御腹案がありましたらば、拝聴をいたしたいと存じます。
  30. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 何といたしましても、国を守るという気持を国民全体が持つようなことになりませんければ、自衛隊のみによってこれを全うするというわけには参らぬことは申し上げるまでもありません。そういう立場から私ども考えておりますが、今のお話のように、第二次大戦の結果、あるいは核による惨害等から考えまして、何か自衛隊あるいは日本の国防というものが、戦争をあえてしていくような、第二次大戦以前に一部にあった考えのよらな考えでやっておるんじゃないかという誤解といいますか、あるいはまた純真にそういうふうに考えている人もあるかもしれませんけれども、そういう情勢があることは、私どももまことに残念でございます。私どもは、何といたしましても、みずからがみずからを守るという体制ができなくて、それがなくて、国際的な連係とか、国際的な信用というものはあり得ないと思います。そういう点から考えまして、私どもも極力、日本の国は日本で守るんだという自主的な、独立的な気分を持ってもらいたいと、せっかく努力いたしておるわけであります。そういう点につきまして、私どもといたしましても、この防衛庁に勤務しておった者でやめた人の組織とか、あるいは父兄の組織とか、あるいは一般の教育関係等を通じまして、そういうしっかりした気持を持つような努力をいたしておる次第であります。
  31. 下村定

    下村定君 これをもって私の質問を終わります。   —————————————
  32. 草葉隆圓

  33. 松村秀逸

    松村秀逸君 衆議院における百数十時間の審議並びに本院における数回の質疑で、およそ審議事項は尽きておると思いますので、私は、今まで審議されました事項につきまして、視角を変えまして、二、三御質問してみたいと思います。  去る三十日に、ソ連のマリノフスキー国防相は、外国の基地から飛び立った飛行機が領空を侵犯しました場合には、その外国の基地を攻撃するように、すでにロケット部隊の司令官に命令をしたと発表をいたしました。日本におきましても、神奈川県会では去る八日にロッキードU2型機が昨年藤沢付近の飛行場に不時着いたしまして以来多くの疑惑を生じておりますが、最近他国の基地から進発しました同機種の飛行機が情報活動等に従事していることが明らかにされました。県民は同機が厚木飛行場を基地として活動することに不安を禁じ得ない、政府は県民のために不安除去についてすみやかに善処されたいという要望決議をいたしております。右につきまして、U2型機の問題についてただいまどうなっておりますか。外務大臣の御説明をお願いいたします。
  34. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 日本におきまます在日のU2機につきましては、御承知の通り、五月十日の国務長官声明及び十一日の在京米国大使の私あての書簡によりまして明らかな通り、その任務は高層気象観測だけであって、そうして非合法的な活動は今日までもしていないし、また今後もしないということをはっきり申しております。なお、五月十六日に、アイゼンハワー大統領はパリにおきまして、一切の牒報飛行を中止する旨の声明をしているのであります。従いまして、ソ連が国連の安保理事会にこの問題につきまして提訴をいたしましたが、しかし、その安保理事会の決議というものは、御承知の通り、チュニジア、エクアドル、アルゼンチン、セイロンの四カ国共同提案によりますもので、関連国が緊張増大をもたらすいかなる行動をも慎むことを要請し、総会の勧告に従い関係国が奇襲防止措置についての交渉を継続するよう要請するというこの決議を、賛成九票、棄権二票、反対なしで、安保理事会は決定いたしたのでありまして、この決議の趣旨は、要するに牒報活動等をするということは奇襲防止に対する措置であるのであって、従って奇襲防止措置を関係国でもって十分に今後とも協議をしていく、そういうことであれば、緊張増大をもたらすようなそういう牒報的な飛行は各国が慎むべきであるという国連の決議でございましてこれを各国が尊重して参りますことは当然でございます。国連の重要なメンバーとしてのアメリカが、この決議を尊重して参ることもまた当然でございます。従いまして、現在日本におきますU2機が、現在及び将来にわたってそうした行動をするということは、われわれ考えられませんし、また国連決議の趣旨から申しましても、アメリカはそれを順守して参ると思うのであります。その点を明らかにいたしまして、特に、U2機の撤退等のことにつきましては、ただいま申し入れることはいたしておりません。
  35. 松村秀逸

    松村秀逸君 マリノフスキーの演説は、さいぜん下村委員並びに鹿島委員からもお話がありましたように、心理戦であると申しますか、おどかしの分量が非常に多いようであります。イギリスの新聞は、かりに飛行機がちょっと迷い込んだぐらいで、押しボタンをもされて、ロケットを打ち込まれるということになれば、これは大へんなことになってしまう。まあ歴史的に見まして、クレムリンは粛軍々々をやってきておりまして、軍人に行動の自由を与え過ぎたような例は今までにないから、こんな警告は文字通り受け取る必要はなかろうと言っております。フランスの新聞も、ロケット兵器を使用して報復というような重大な責任が、出先の軍司令官の手にゆだねられて、自動的に行なわれるということになれば、これはゆゆしい大事である。出先の軍司令官の行き過ぎた措置から、第三次大戦に世界が巻き込まれるというようなおそれがあると指摘しております。マリノフスキー元帥の発言は、米国に軍事基地を貸しているところの諸国の国民を不安に陥れるところの効果は十分にあるであろうが、しかし、ソ連が全面戦争を欲しているとは考えられないし、実行に移されるものと信ずるわけにはいかない。ソ連も、ロケットで報復したならば、アメリカも声明いたしておりますように、直ちにロケットで反撃を加えられることをよく承知しておるからだ、というようなことを書いておるのでございます。マリノフスキー発言に対しまして、外務大臣の御所見をお伺いいたします。
  36. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 領空侵犯に対する対抗措置として、その発進基地をロケット等で撃ちますということは、いわゆる領空侵犯に対する措置としては行き過ぎの措置でございまして、そういう措置をとることは新たなる侵略を意味することになるわけで、ソ連といえどもそういうことはいたさないと信じております。
  37. 松村秀逸

    松村秀逸君 西独の新聞はこのことにつきまして、マリノフスキー元帥の演説のあとで日本のデモはますます盛んになってきておる、ソ連の威嚇外交に乗せられた格好である、威嚇外交が成功した日本は最初の国である、事は重大だ、と書いておるわけであります。ハガチー秘書の先日の来日に際しましても、羽田事件は組織的、計画的であったと言われております。社会党代議士もそのデモの中にまじっておったということであります。まことに重大なことと言わなければなりません。また、本日の新聞によりますとこれを外国では、アイクの訪日は東西力関係の試練に立たされておるとさえ申しておるのでございます。総理の本件に対する御所見をお伺いいたします。
  38. 岸信介

    国務大臣岸信介君) U2機の問題からソ連のマリノフスキー元帥の言明等は、まさに今日の国連憲章の精神を無視した一つの威嚇と見るべきであると思いますが、パリ会議決裂以後、そうした心理戦というものが特に私は活発に行なわれ、これに対して日本としては十分に慎重に考えて対処しなきゃならぬと思います。アイゼンハワー大統領の訪日に対して、これを阻止しようという日本国内におけるところの動きを見ますというと、今日多分に国際情勢を反映して、そうして日米の離間を策しておるというふうに考えなければならぬと思います。過日のハガチー氏に対するああした集団暴力の事態は、私、国としてまことに遺憾のきわみであり、かつ、これに責任のある政党の党員が参画しておるというような印象を与えておるということは、これまたゆゆしいことであると思います。私どもはやはりこういう国際情勢を十分認識して、これに対して日本があくまでも自由主義の立場を竪持し、日米協力が日本の平和と安全、繁栄の基礎であるという認識をはっきりと国民に理解徹底せしめるように努めなきゃならぬと、かように考える次第であります。
  39. 松村秀逸

    松村秀逸君 私は広島の原爆受難者でございます。爆心地から九百メートルのところで家の下敷きになり、四十数カ所負傷いたしました。廃墟の中をさまよいましたときに直感いたしましたことは、こんな化けものみたような武器ができたら、将来原水爆を使う大戦というものはなかなかできるものではないという感じを受けました。フルシチョフ・ソ連首相は、昨秋アメリカを訪問いたしましたときにも、訪米第一声は、アメリカもソ連もべらぼうに強くなり過ぎた、あまり強くなり過ぎたから、この二つの間にはもう戦争をしたら大へんなことになる、いくさはできない、というのが第一声であったと記憶しておるのであります。数多いソ連の宣伝、謀略、脅迫といったような言辞の中で、おそらくこれは真実の一つでございましょう。  終戦後、朝鮮動乱、インドシナ、スエズ、近くはラオス、インドと中共の国境など、大小合わせて十八回もの戦争がございましたか、ただの一回も米軍基地のあったところにはまだ起こっていないのであります。朝鮮動乱も、ソ連がまず北鮮から引き揚げ、米軍が南鮮から引き揚げるように慫慂しました。引き揚げますや、北鮮の共産軍が重戦車を先頭として釜山近くまで攻め寄ってきて、まさに朝鮮海峡に韓国軍がたたき落とされんとしたことは御承知の通りでございまして、国連軍の反撃によってこれを食いとめましたが、自来三年間、おそらく終戦後最大の悲劇となったのであります。もし、あのとき三十八度線に星条旗が一本ひらめいておりましたならば、ウエデマイヤー将軍ではございませんが、ああいう事態は起こらなかったでございましょう。韓国に米国基地がなかったということが、あの終戦後最大の悲劇を生んだのでございます。私はこういう歴史の事実から——歴史の事実と申しましても、終戦後のここ十数年の歴史の事実から見ますと、今よく基地があるから戦争に巻き込まれるということを申しておる人がおるのでございますが、私はその反対でありまして、基地があるから戦争に巻き込まれないと確信いたしておるものでございます。国会の周辺をときどき取り巻きますところのデモの合言葉は、戦争反対、安保反対でございます。しかしながら、戦争反対であれば、その結論は私は安保賛成になるべきだと信ずるものであります。防衛庁長官のこれに対する御所見をお伺いいたします。
  40. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 私も今のお話のように考えております。戦前におきましは、基地といいますか、外国の軍隊の駐留を許し、駐留があるという事態は、租借地によるものとか、あるいは戦争の占領とか、いろいろそういうことであったと思います。しかし、第二次大戦後におきましては、東西両陣営に分かれておりますが、お互いに全面戦争に入ることは危険だということで、全面戦争の危険というものは薄らいでおるのが実情だと思います。しかし、局地においていろいろ紛争がある。紛争ができる基礎というものがまだ解消しておりません。そういう事態からいいますならば、やはり局地的な紛争というものを事前に防ぎ、あるいはそういう紛争が起きかけたときにはそれを消しとめていくと、こういうことが戦争へ突入しない、すなわち平和への道だと思います。その方法といたしまして、東西両陣営に分かれておる現在におきまして、基地を貸与するということは、戦前の考え方とまるっきり違って、やはり戦争を抑制する一つの手段としてのものだと考えております。現に今お話のように、世界においてもアメリカを中心として安全保障条約を結んだ国が四十数カ国あると思います。そういうところにおきまして紛争が全然起きておりません。また、日本におきましても、八年間このアメリカ軍の駐留がありましたけれども、このことは、大きな目から見ますれば、やはり紛争に巻き込まれなかったという事実だと思います。朝鮮のお話通りだと思います。戦争をいかにして抑制するかということにつきまして、兵力の引き離し、兵力を引き離そうという考え方が、ヨーロッパにおきまましても、またその他におきましても、一時議論がありました。朝鮮におきましても、その兵力引き離しの態度といいますか、アメリカの駐留軍が引いた。これは兵力引き離しの一つの方法だったと思います。ところが、その直後におきましてああいう動乱が起きた。私はまことに残念であり、危険なことだと思っております。  でありまするから、日本におきましても、侵略とか、あるいは植民地的とか、こういう態度でこの駐留を許しておるのではありません。やはり日本の安全と平和のため、ひいては世界の平和と安全のための目的でおるのでありまするから、私は、このことは戦争を誘発するものではなく、戦争抑制力になっておる、こういうふうに考えております。
  41. 松村秀逸

    松村秀逸君 私は昨秋欧米二十数カ国を回りまして、五十数名の政治家、軍人、学者、技術者の方々と会談の機会を得ました。ちょうど日本では雪解け論議が盛んなときでございましたが、会いました方々からは一度も、そんな雪解けなどという言葉を聞いたことはございませんでした。会談から得ました印象は、現段階におきましては、国際情勢の現況におきましては、残念ながら東西力の均衡が戦争を抑制しておるということでございます。このことにつきましては、さっき総理からも御所信の表明がありましたので、もう御質問は差し控えます。しかしながら、この力の均衡と一口に申しましても、これを維持していくためにはなかなかむずかしいのでございまして、各国が一生懸命でございます。ソ連はさきに、百二十万の兵員を二年間に縮小するといって縮小しつつありますが、かえって火力においては数倍し、新式の装備を採用し、戦力は縮小するどころか増加しておることは皆さん御承知の通りでございます。米国へ参りまして、ケープ・カナベラルやバンデンバーグの基地を見た人は、ミサイル・ギャップを埋めるためにいかに息詰まるような努力をしておるかということを、だれしも感得しないものはいないのであります。そういう米ソの間にはミサイル・ギャップは多少ございますけれども基地関係やポラリス潜水艦の発達のため、総合した戦力、いわゆる防衛ギャップはないものと私は確信いたします。アメリカの方が戦力が劣っておるどころか、私はすぐれておるものと信ずるのでございます。日本では、力の均衡、力の政策と申しますと、すぐ戦争につながるように、何か悪いことでも言うように言う人がございますが、これが戦争を抑制し、平和維持の原動力となっているものと私は確信いたします。本条約の第三条に「武力攻撃に抵抗するそれぞれの能力を、憲法上の規定に従うことを条件として、維持し発展させる。」と書いてあります。日本の場合は、国防会議の決定に従いまして、国力国情に応じた防衛力の漸増が約束されておるのでありますが、今年は、伊勢湾台風などの関係もありまして、総予算の一割足らず、比率におきましては今まで最低の防衛費でございます。国力国情に応じての防衛努力は継続的かつ効果的にこれから続けていかなければならぬと思うのでありますが、総理の御所信を承ります。
  42. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 松村委員の御所信と同様にわれわれも考えております。われわれとしても、その方向に向かって国をあげて努力をしていかなければならぬ、かように考える次第でございます。
  43. 松村秀逸

    松村秀逸君 防衛努力の成果を効率的に上げるためには、ぜひ計画的に実施されなければなりませんが、第一次防衛三カ年計画は本年をもって終了いたすわけでございます。昨夏北海道において、防衛庁長官が試案といったような意味で発表されました第二次防衛計画は、目下どのへんのところを進展しておるのでございましょうか。また、この第二次防衛計画と本条約第三条との関係はどんなものでございましょうか。防衛庁長官に御説明をお願いいたします。
  44. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 三十五年度をもって第一次防衛三カ年計画は終了いたしますので、第二次計画を目下策定中であります。昨夏北海道におきまして、その大略といいますか、考え方を発表いたしました。その考え方基本においては変わっておりません。装備の近代化、効率化、あるいはまた空に対する関係、あるいは船に対する関係、こういうものにおいては変わりはないのであります。ただ、いろいろ日本の、先ほど申されましたように、国力国情に応ずるという点で、財政的の方面の計画等につきまして、なお検討を要する面もあります。そういう点で、結論に大体近づいてはおりますけれども、防衛庁において目下検討中であります。財政的な面から申し上げまするならば、今のお話のように、三十五年度の防衛費は国民所得に対しまして一・四六%になるわけであります。そういうような関係でありますけれども、やはり近代化あるいは効率化という面から考えまするならば、漸次ふえていくという形になります。しかしながら、これはやはり国民所得とのにらみ合いにおいて、あるいはまた、ほかの厚生民生安定関係、そういうものとの関係をもにらみ合わせていかなければならない。こういうふうに考えて、四十年度におきまして国民所得の二%程度はぜひ必要ではないかという考え方のもとに、目下検討をいたしております。  この安保条約第三条との関係につきましては、私どもは、国力国情に応じてしっかりした、効率的な、そうしてみずからがみずからを守るという基本考え方を持っていかなければ、やはり日米の信頼友好というものも成り立たないと思いますので、みずからが守っていく、こういう考え方のもとに、目下検討いたしておる次第であります。
  45. 松村秀逸

    松村秀逸君 ナポレオンは、一名の凡将が指揮する軍隊は二名の名将が指揮する軍隊よりも強いと申しました。本条約は、進んで海外に出かけていって攻撃するなどということは一切やらない、毛頭考えておりません。純然たる防衛的性格のものでありましょう。戦争を抑制することがその本旨でございます。しかしながら、万一不幸にして外から武力攻撃を受け、日米共同作戦をやるような場合には、指揮権の関係はいかになるのでございましょうか。防衛庁長官にお伺いいたします。
  46. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 指揮関係につきましては、米軍米軍日本日本と、こうなっております。しかし、その指揮あるいは作戦等につきまして、そごするような点がありましては、その効果を発揮することができません。そういう意味におきましては、今度の第四条におきましては、先ほど下村さんからもお話がありましたが、随時協議いたしておって、そういうことに際会した場合に、そごがないようなことに体制を持っていく、こういうふうに考えております。
  47. 松村秀逸

    松村秀逸君 中立論につきましては、本委員会の冒頭におきまして総理の所信表明がありまして、全く感を同じゃうするものでございます。サンフランシスコの、平和会議のときに、ソ連は日本の中立を主張しました。宗谷、津軽、対馬海峡など日本側は無防備にして、日本海に面する諸国の軍艦だけに通過を許すという提案をいたしました。つまり、ソ連の軍艦には通過を許すが、アメリカの軍艦には許さないという提案でございます。これは私は馬脚を暴露したものであると思うのでございまして、中立と申しましても、その意図するところは、決してほんとうの完全な中立などというものとはおよそ縁遠いものであると考える次第でございます。また、もし米国が全面的に太平洋のかなたに撤退するようなことがあったといたしましたならば、日本に対するところのソ連の圧力は耐えがたいまでに強くなって参りまして、国内の分裂はますます今にも増して起こるでございましょう。極東におけるところの現在の力のバランスはくずれまして、これがやがて新しい争乱を招くことになるのではないかと、寒心にたえないものがございます。総理の御所見をお願いいたします。
  48. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 御意見のように、われわれはあくまでも自由主義の立場を堅持して、そうして日本アメリカとの協力のもとに平和と安全を守り、また、繁栄を期していくという基本方針をはっきりと確立して進んでいくことが必要でありまして、中立のごときことが、日本の置かれておる客観的情勢から不可能であるばかりでなく、ソ連、中共等より日本の中立化が強く働きかけられておるということは、要するに、日本の今までの自由主義の立場、日米協力の立場を弱化し、あるいはこれを離間して、そうして自分たちの陣営にこれを持ってこようという目標のもとに行なわれておるものでありまして、この関係を十分に認識して、あくまでも自由主義の立場を堅持し、日米協力の線を確立するということが、私は日本のためには絶対に必要である、かように考えております。
  49. 松村秀逸

    松村秀逸君 これをもって質問を終わります。   —————————————
  50. 草葉隆圓

    委員長草葉隆圓君) 山本杉君。
  51. 山本杉

    山本杉君 総理は、現実の政治のあり方として、国及び国民の安全確保こそ政治家の課題であるとお述べになっておられます。そして理想としては、安保体制の要らない世界の状態を望むということをはっきり言っていらっしゃるのでございますが、今の政治の面で恒久の平和をかちとるためには、現実の実相の把握こそ望ましい。そこに自由と民主主義を守る道があるのだとおっしゃいました。これは世界現実を直視し、九千万国民を乗せた船のかじをとる責任者の言葉として、切々と胸に響くものがございます。このように、高度の理想を持ちながら、複雑な国際情勢に処して政治が行なわれているこの国の現実の中で、それとほど遠い観念の世界で、日本の婦人の大多数は、新安保条約と再軍備という課題で苦悩しているようなわけでございます。一家の主人が、安保改定は必至であると、こう考えているにもかかわらず、高等学校や大学に行っておりますむすこたちは、まっこからこれに反対をする。そうすると、そう母親の立場から、また、盲目的な愛情と申しましょうか、何か子供たちについていかなければいけないような気持にもなるのだと思いますが、この改定という問題に対しても、半信半疑になってくる。こういった母親の実態の中で、新安保条約というものは軍事同盟だから、この改定をすれば必ず戦争になるんだ、こういう声がかかりますと、これをすなおに信じてしまう日本の婦人でございます。このような婦人というものを一つ私は頭の中に置きまして、婦人の立場から、また、これに賛成をしたいと考えながら、よくわからないと言っている人たちに対して、わかりやすく、率直に御説明を願いたいということを前提にいたしまして、私はいささか質問をさせていただきたいと思います。  そこで、この新安保をめぐります国際情勢の問題について伺いたいのでございますけれども、時間の関係でこれは省きたいと思います。  そこで、私は一点だけ、なぜ日米安保条約のこの体制をめぐって、共産諸国家が、このようないろいろな形で積極的に反対の態度をとらなければならないかということでございます。ソ連は、三度にわたって警告的声明を行ない、新安保条約が危険なものであるということを言っております。また、中共では、北京で百五十万、上海で百二十万というような国民動員を行ないまして、日米安保条約反対の抗議デモをやっております。そうして指導者たちは、口をきわめてこれを非難していると聞いておりますが、共産主義国家はなぜこうした動きをしなければならないか。まあ私のしろうと考えでございますけれども、先ほどもお話が出ました、ソ連がU2型機の撃墜問題を持ち出して、パリの首脳会談をとうとう延期させてしまった。そうしてこれは、アメリカの大統領選挙に対しての干渉作戦とも見られるのでございますけれども、とにかくアイクをたたきのめして、アメリカが持っている世界外交の主導権を何とかして取り上げていきたいというような挑戦のような気がいたすのでございます。で、たとえば今度のソ連の軍縮案というものは、フランスのドゴールの軍縮案を相当取り入れていると聞いておるのでございます。そうして、一部では仏ソ同盟というものが締結されるのではないかということまで言う人があるわけでございますが、これなどもとにかくアメリカを何とかしなけりゃならぬという意図があるように私どもに受け取れるのです。それで、このような諸情勢から、国際不安というものはますますつのっている。それで、この安保改定というものを、私ども賛成する者の立場から見るばかりでなく、反対者の立場から考えても、日本という立場においては、ますますこれが強化されなければならない。それなのに廃棄の方向にこれを持っていこうとするのは、どう考えても理屈に合わないと思うのでございますけれども、この点をはっきりと伺わせていただいて、そうして国民にわからせていただきたいと思います。
  52. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 安保条約の改定問題について、中共、ソ連で抗議あるいは覚書などのことがやられ、また、いろいろな声明がなされておるということは、根本的に申しますというと、一国がどういう防衛の方針をとるか、あるいは外交方針をとるかということは、その国の国民がきめるべきものであって、他から干渉すべきものでないことは言うを待ちません。日ソ共同宣言におきましても、そういう内政については一切干渉しないということを明らかに両国が合意しておりながら、こういうことが行なわれている。これは一見、私どもも非常に不可解に考えるところであります。また、日ソ共同宣言が作られたときにおきまして、現行の安保条約というものがあったことも、ソ連は十分に承知しております。日本アメリカと協力して、日本の安全を保障する、また、日本基地米軍のために与えられておるという現実も、よく承知しておるわけであります。また、安保条約の改定に反対したからというて、現行安保条約そのものを廃棄することはできないわけでありますから、安保条約は依然として残っていくわけであります。安保体制というものは……。従って、安保条約の改定に反対するという真意もまた、こういう安保条約があることから考えましても、きわめて了解に苦しむと言わなければならぬ。また、今度の改定というものは、日本が独立国にふさわしいような自主性を持った日米の間において、日本が従来アメリカ一方的であったのを、日本の自主的な意思をこの上にも取り入れて、対等なものにするという改定でございます。それでは、その改定が、ソ連や中共に脅威を与えるものであるかといえば、現行の規定よりは脅威を与えることはより少なくなることこそあれ、脅威を加えるものは全然ないのでございます。こういうことを考えてみるというと、ソ連が改定に反対する、中共等が改定に反対するということは、別に意図があるとしか考えられないのであります。私は、こういう問題について、日本の立場を従来もソ連、中共に十分申しておりますし、これがよく理解されず、誤解に基づくものとはとうてい考えられないのであります。他に意図ありとするならば、要するに、日本の自由主義の立場を堅持し、自由主義陣営の一員としてのこの立場から、自由主義陣営から離脱させよう、また、日米が協力しておる関係を離間しようという目的を持って、これが行なわれておるという以外には、解釈の仕方がないというのが私の考えでありまして、決して今度の安保条約が改定された結果として、現行の安保条約よりも、よりさらに戦争の危険がふえるとか、戦争に巻き込まれるおそれが大きくなるというようなことは絶対ないのであります。また、現行の条約そのものが八年間現実に行なわれておりまして、これが日本戦争に巻き込む危険を加えてきたかというと、少しもそういうことはない。むしろ極東のこのいろいろな事件のある間において、日本が平和と安全が確保されてきておった。理屈だけでなくて現実がそうだ。それと同じ趣旨で、しかも、日本アメリカとの間の関係において、日本の立場をよくしただけの改定がかくのごとき反対を受けるということは、とうていこれは正常な考え方に基づいておるとはどうしても見ることはできない、かように思っております。
  53. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 安保条約が軍事同盟か軍事同盟でないかということにつきまして、私の考えをちょっと申し述べさせていただきます。  数日前に、世界労連の大会で、中共の有力者が、戦争には正しい戦争と、正しくない戦争とこういうふうに、共産主義国家におきましては、戦争を正しい戦争と正しくない戦争に分けておる。レーニンの「社会主義と戦争」という本がありますが、それにおきましても、戦争というものは正しい戦争と正しくない戦争がある。解放のための戦争と共産主義では言っておりますが、これは正しい。こういうふうに言っております。そうして共産主義から言いますというと、自由主義国家は帝国主義的だ、ことにアメリカは帝国主義だ、しかし、ソ連の考え方、共産主義の考え方から言いましても、帝国主義というのは資本主義が行き詰まって、世界に市場がなくなって、その市場を武力によって獲得するということが資本主義最後の段階としての帝国主義だと、こういうことだと思います。しかし、自由主義国家群で、自由国家において、帝国主義という制度というか、考えをとっているところはないと思う。そこで、軍事同盟かどうかということの基本は、私は戦争をすることを国是としておるかどうかということになると思う。私ども戦争をすることを国是としておるものじゃない。こういう点から考えますならば、安保条約戦争をするための条約であるとかいうことは、どこから見ても考えられない根本の考え方だと思います。特に軍事同盟というのは、私は俗に言えば攻守同盟だと思います。攻めるのにも守るのにも同盟をする、日本の立場から見ましても、攻める、あるいは海外派兵をして、アメリカまで行って攻める、あるいはよそへ行って攻める、こういうことは、日本の国是でもなければ、考え方でも全然ありません。そういう点から考えまして、私は決してこれが軍事同盟だというこの規定は当てはまらない。むしろ先ほどから再々御質疑その他にもありますように、私はこれは戦争を抑制する防衛的なものだ、こういうふうに考えております。
  54. 山本杉

    山本杉君 次に、国連による安全保障体制との関係について伺いたいのでございますが、これも時間の関係で、一点だけ伺わせていただきたいと思います。  それは、ハンガリー事件やスエズの出兵などのときに痛感したのでございますが、拒否権を使えば国連の安保というものが踏みにじられてしまうというような状態の中で、安保体制というものを集団的にあるいは相互的に持つということが当然であるというふうに私ども考えるわけでございます。そして、しかも私たちは、いつあるかもしれない侵略の危険に対して、このように国連の機構が完全なものになり、そしてちゃんと私どもを守ってくれるようになっておらないという中で、世界の至るところで、地域的にあるいはまた、二国間の安全保障条約が結ばれて、共同防衛体制の状態ができているにもかかわらず、日本アメリカの間だけがこういうことをするのが悪いのだというような理論をつけようとするところに無理があると思うのでございますが、今日このように世界の常識になっておりますこの安全体制というものに対して、私は一言だけでけっこうでございますから、はっきりとお教えいただきたいと思うのでございます。
  55. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 国連ができまして、平和を達成する理想を掲げて動き出しましたのでございますけれども、まだ、安全を保障する十分な措置が現在の国連ではなかなかとりにくいのでございまして、お話のように、拒否権等の問題によりまして、必ずしも各国が見て有効な方法がとり得ない場合が起こっているわけでございます。国連の憲章から申しますれば、一切の紛争を平和的に解決するというのが目的であることは申すまでもないわけでありますけれども、しかし、それが達成されない場合におきまする特別の例として、憲章五十一条は、武力攻撃がございましたときに、自衛のために個別的なあるいは集団的な自衛権を発動していくことを認めているのでございます。日米安保条約も、その国連憲章五十一条にのっとって作られているわけでございまして、今日の事態におきましては、また、国連の発達の今日の段階におきましては、当然これによって世界の平和と安全を保持していかなければならぬと考えております。
  56. 山本杉

    山本杉君 次に、日米安保条約というものが、反対論者は口を開けばアメリカから押しつけられたものだ、こういうふうに言っております。また、婦人たちもそのように受け取ってそうしていろいろと反対をするわけでございますが、日本が独立と同時にアメリカからこれを押しつけられたものであるかどうか、その当時の事情でございますが、占領国と被占領国との関係からそれがどのように進められてきたか、その辺について私は伺いたいと思うのでございます。日本のみずからの判断でこれを選びとったその道であるということ、しかも、当時の日本の実情というものは、今日とはよほどかけ離れていたと思っております。経済力も弱く、自衛力などは皆無に近かった日本アメリカとの関係でございます。その日本がその当時の実情において、一から十までアメリカにおぶさらなければならなかったということ、これはやむを得なかったと思いますが、それだから安保条約というものが押しつけられたものであったということにはならないと思います。それで、どうかその辺がそうでなかったのだということをはっきりと御説明願いたいと思います。
  57. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 平和条約締結されましたとき、日本におります米軍が、撤退するというその時期に、日本が自分自身の安全保障をいたします方法としては、まだ警察予備隊等の段階でございまして、自分自身が完全に日本の平和と安全を守るだけの能力を持っておりませんことは、当時の現状から見て明らかな点でございます。従って、日本といたしまして安全を守る、しかも朝鮮事変等の状況から見ましても、それが必要であることは当然であったわけであります。そういう事情から日本がこれを欲して、そうしてアメリカにこういうようなアメリカの協力を得て日本の平和と安全を守る体制を作っていきたいということであったことは申すまでもないことであります。アメリカもまた、アメリカ見地から日本の立場を十分に了承されたと思うのでありまして、そういう意味においてこれができたわけでございます。ただ、当時の事情から申して、今申し上げたように、すべてをアメリカに託したわけでありますから、現行安保条約というものが、相当一方的にアメリカに有利になっておるということは、こちらから頼んでぜひともやってもらいたいという結果であろうかと思うのであります。
  58. 山本杉

    山本杉君 八年間にわたりますその辺の経韓が、今日安保条約を改定しなければならぬという、そういう事情を日本にもアメリカにももたらしたと思うのでございますが、この安保条約に対して、現行安保条約が不平等条約であるという批判、それからこれを改定しなければならぬという世論は、一体どこから出てきたか。国会で安保改定を早くやれと言って藤山外相を督励したのはだれであったか。このような安保改定への世論の盛り上がりの経過というものを私は率直に承りたいと思うのでございます。
  59. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 御承知の通り、この条約は、日本アメリカにぜひとも日本の安全を保障してもらいたいというような状況のもとに頼んだ条約である限りにおいて、相当アメリカに一方的であり、また当時の事情から見てやむを得ないところがあったということでありましょうけれども現実に現行の条約というものは、必ずしも世界のこの種の条約と比較いたしまして対等の立場でできておるものとは言いがたいものでございます。従って、これはこの現行条約ができまして以来、日本が漸次経済的にも発達し、政治的にも安定をし、あるいは自衛力、現行の自衛隊等もできて、逐次自分の防衛能力も高まって参りますときには、国民的にそういう要望が起こることは当然のことと思います。でありますから、過去におきましても、重光外務大臣以来この改定問題を取り上げて、そうしてアメリカ側に要求いたしておったのであります。ごく狭い範囲内で申し上げましても、私が外務大臣に就任して以後、衆参両院の外務委員会における野党質問というものは、ほとんどこの不平等条約を改正しろ、そうして今日改正されましたような点につきまして特に質疑を受けたことは、私が国会生活における初めの記憶でございますので、よく承知いたしておるのでございます。
  60. 山本杉

    山本杉君 ただいまの御説明で、安保改定に最も熱心であったのが社会党であるという点がはっきりわかるのでございますが、今その社会党が改定にまっこうから反対をしておるような状態でございます。この事態について、改定を肯定するものの側で、政府のPR不足ということを盛んに言うのでございますが、これはただ単に政府のPRが足りなかったということだけでは片づけられない問題があると思います。これらについては先ほど総理からも御所見を承っておるので、ここではお答えを願わないのでございますが、今、社会党ばかりでなく、国民各層にも、この新安保条約反対の声が出てきております。これは一つには、今度の安保条約改定の意義が国民に深く理解されていないということが言えると思いますけれども、それにも増してもっと重大なことは、中共あるいはソ連から、いわゆる共産主義思想というもの、また、その潜在勢力というものが国民の各層に予想以上に浸透していたということを認めなければならないのじゃないかと思われるのでございます。あのデモに出て参りますようなああいう先端的な様相とは別に、もっと深刻なものがあるのじゃなかろうかということを痛感するわけでございますが、これに対して政府の要路の方の御意見を伺いたいと思います。
  61. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 安保条約におきます今日の反対の主たる基本的な原因は、やはり御指摘のように、国際共産主義のいわゆる活発な宣伝活動と申すものが、いわゆる冷戦に伴って激しく行なわれたということに一つはあろうと思います。同時に、ソ連等の外交政策を見ておりますと、やはりこの均衡の上に立ちました力のバランスをどこかで破らなければならぬ。それにはやはり強力な自由主義陣営の団結というものに、くさびを打つ。でありますから、たとえばヨーロッパに対するソ連の政策を見ておりましても、戦後、独仏というものがいわゆるヨーロッパ連合の基礎になります上に、シューマン・プランというような例を見ましてもそうでありますが、独仏というものは相当に接近をしております。これに対してくさびを打つという、フランスに対してかなり強引な立場をとっておる。そういう点は、たとえばアルジェリア問題のソ連の扱い方を見てみましても、われわれは感ずるのであります。そういう意味におきまして、やはり日米の間に一つのくさびを入れようということは、やはり外交方面の一つの方法論ではないかと思います。でありますから、そういう意味において、ソ連の外交政策、あるいはお話のように、その基礎になる国際共産主義の浸透というような問題が大きな原因になっておると考えておるわけであります。
  62. 山本杉

    山本杉君 一昨日のお昼のテレビで見たのでございますが、ハーター国務長官の証言及びそのあとの一問一答の中で、新安保条約よりも旧条約現行条約の方がアメリカにとっては有利であるということをはっきり長官が答えているのでございます。その今度の新条約交渉にあたって外務省は新条約方式でいくのか、あるいは基地貸与協定でいくのか、あるいは交換公文によって不備な点の解釈の統一を行なうか、この三つの案を用意されたということを聞いております。そうして最終的に新条約方式でいくことになったと、まあ、こういうふうに聞いたのでございますが、この新条約方式をとられた理由はどこにあったのでございましょうか、これを一つ総理から伺いたいと思います。
  63. 岸信介

    政府委員岸信介君) 新しい条約の形でいくかあるいは改正すべきものを現行の条約の間に当てはめていくかということは、むしろ技術的な問題に私はなると思うのであります。問題は、現行の安保条約も、今度の保安条約もその精神において、いわゆる防衛的なものであり、あくまでも戦争をないように、戦争を未然に防ぐという趣旨に出ておることは全然同一の精神に基づいておるわけであります。従って、この形式として一部改正の形によってこれを改正していくかということにつきましては、今度の新しい条約をごらん下さいますというと、むしろ形の上からいって、こういう形の改正を行なう、既存の現行の条約を存続して一部改正をするということは、これは技術的にいってほとんど実現しにくいことである、いわんや今度の改正の要点をごらん下さればわかるように、これはただ交換公文等の形において、現行の条約を置いておいて、それでもってつぐなっていくということは適当でない、こういうことから、この技術的な面から考えられる点が多分にあると思います。私どもは、現行の条約というものが、先ほど来お話がありましたような事情のもとにできたものであり、基本の精神は変わらないといたしましても、日米が対等の立場において日本の平和と安全を保障していく、そうして協力関係を明確にしていく、対等な形における真の理解と信頼の上に立った協力関係を明確にするというような意味から言えば、新しい条約の形式をとって、そうして名実ともにその考え方を明瞭にすることがいいという考えのもとに、こうした新しい条約の形式をとったわけでございます。しかしながら、これが従来一部で反対する人が言っているように、こうなったから、現行の安保条約はまだしも、今度の条約は軍事同盟であるというふうな議論がございますが、そういうことは、これは絶対にないのでありまして、あくまでも私どもは、現行の条約とその基本においては変わっておらない。しかも、その上に、日米が対等の立場においての協力関係ということを明確ならしめることがこの新しい条約の形式をとったゆえんでございます。
  64. 山本杉

    山本杉君 現行条約の必要は認めるけれども、新安保条約には、反対である、こういうふうに言っておる人たちは、新条約方式という大げさの方法をとったから、ソ連や中共を刺激したのであると、こういうふうにも言っているわけでございます。けれども、今日のソ連や中共の日米安保体制に対する攻勢というものは、新条約方式をとらないでも、基地貸与協定とか、あるいは交換公文というような部分的の改定であったとしても、まあ今よりも弱いものであったというふうにはどうも考えられないことであります。それはサンフランシスコ条約のときでさえ、あれほど反対したソ連の態度を思い出して、部分的改定の方が刺激が少なかっただろうというふうには考えられないのでございます。  そこで、お伺いいたしたいのでございますが、この新安保条約が成立して、批准が終わったら、ソ連や中共はどんな態度に出てくるかということでございます。極端な議論をする人は、日ソ共同宣言の破棄をするだろうとか、あるいは大使を召還するだろうなどと考えている人もあるようでございますが、この点いかがのものでございましょう。
  65. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) お話のように、現行の安保条約を改定しようという論者は、最近になりますと、いわゆる現行安保条約を、信義を破っても破棄した方がいい。また中立論というものに前進をしていると申しますか、移行しておるように思います。その意味から申しましていわゆるソ連あるいは共産圏が、これに対して相当の積極的の手を打っておるということも明瞭にわかるわけでございます。ただ、しかし、総理もただいま述べられましたように、この条約というものは、現行の安保条約と同じ基盤の上に立っておるものでございまして、日ソ共同宣言においても、この点については認めた上で、そうして日ソ共同宣言が成立しておるわけであります。もし誤解なくこれを読みますならば、現行の安保条約よりも日本の自主性をもって改善したということを理解するならば、それ以上の反対をなし得ないのではないかと思う。でありますから、私どもといたしましては、ソ連がもしそういうことを契機にして、何か共同宣言を破棄する、あるいはお話のような大使を引き揚げるというような行動をとる理由は、その点だけにおいては私どもないと思うのでありまして、もしそういうことで共同宣言を破棄するということであれば、国際信用上におけるソ連の大きなマイナスでなければならぬのでありまして、そういうことをあえて侵すということを、今日ソ連に対して私ども考えること自体が、むしろソ連に対する非礼だと思っております。
  66. 山本杉

    山本杉君 今度の改定の意義の中で最も大きな特色は、事前協議によって日本の自主性が確認されたということだと考えられるのでございます。交換公文にございます「事前協議の主題とする。」ということ、これはどういう御趣旨なんでございますか。
  67. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) この「事前協議の主題とする。」ということは、今回の条約において、いろいろな条約運営全般について協議をしていくこと、そうして、その運営を円滑にしていくことが当然条約全体にかかっておることは申すまでもございません。しかし、最も重要な点につきましては、特に事前協議をするということをうたうのでありまして、重要な問題について、その点を明らかにしていくということでございます。
  68. 山本杉

    山本杉君 今度の安保改定反対の立場から、単に「主題とする。」とあるだけで、同意とか合意とかいう言葉になっていないのは抜け穴ではないか、こう批判をする向きもありますけれども、一体、条約文というものはこまかい字句まで書き添えなければならないものなのかどうか、その点を教えていただきたいと思います。
  69. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 御承知の通り、国際間の条約と国内法とは差異がございまして、国内法においてはいろいろな点をかなりこまかく規定しているのでございますけれども、国際間の問題としては、相互に信頼をした国と国とで条約を結ぶことでございます。従って、国内法等の見地から見ますと、条約そのものはかなり、何と申しますか、こまかい点を規定していないという点があることは、これは条約作成の上での、今日までの国際間の大体原則でありまして、信頼し得る国家とこうした条約を結んでいくのだということが基本的な原則になっておりますから、そういう関係になっておるのでございます。
  70. 山本杉

    山本杉君 この事前協議日本に拒否権があるのかどうかという点が衆議院でもだいぶ論議されておりますけれども、米議会での審議会での審議では、ハーター国務長官ははっきりと日本に拒否権があると答弁したと新聞に報道されております。事前協議は抜け穴だらけだ、こういう一部の誤解を解くためにも、この際はっきりした外務大臣の御所見を承りたいと思います。
  71. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 事前協議ということは、原則として、協議というものは、やはりお互い意見の一致を見るということを目的にして協議をするわけでございます。でありますから、協議そのものがやはり意見の一致を見ることを最終目的とすることは申すまでもないのでありますが、しかし、特に今回、事前協議をするということは、協議がととのわなければそういうことは行なわないという趣旨からして、事前協議という言葉を使ったわけでございます。この条約作成の経緯から見まして、明らかに、協議がととのわないときには、一方的にそれを実行しないということ、つまり、いわゆる拒否する立場がとれるわけでございます。そうして、それは、アイゼンハワー・岸共同コミュニケによっても、その経緯は確認いたしております。御指摘通りアメリカ側はそういうふうに了承をしておりますことも、議会等の答弁を通じて明らかなことだと思っておるのでございます。そういう意味におきまして、事前協議は確実に日本の意思を表わし得る道を開いておる。そうして、その意思に反して行なわないということの道を開いておるわけでございます。事前協議は抜け穴だらけだという説がよくございますが、実は、私どもから考えますと、現行の安保条約には戸が立っていない、全部の戸が立っていないのだ。今度は事前協議という雨戸を数カ所に立てたのだというのでありまして、今の安保条約に対して、ある重要な点では雨戸をちゃんと入れたのだというのでありまして、決して雨戸を入れなかったところ以外は抜け穴ではございません。現行の安保条約通りなのでございます。
  72. 山本杉

    山本杉君 次に、新条約が、一部の人が申しますように、はたして再軍備体制を強制するものであるかどうか、この点についてお伺いしたいのでございますが、第三条は、「締約国は、個別的に及び相互に協力して、継続的かつ効果的な自助及び相互援助により、武力攻撃に抵抗するそれぞれの能力を、憲法上の規定に従うことを条件として、維持し発展させる。」となっておりますけれども武力攻撃に抵抗する日本の能力というのは、どんな能力なんでございましょうか。いわゆる戦力といわれるものであるのかどうか。まずその点をはっきりさせていただきたいと思います。
  73. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 条約局長から御説明いたさせます。
  74. 高橋通敏

    政府委員高橋通敏君) お答え申し上げます。武力攻撃に抵抗するそれぞれの能力でございます。すなわち、武力攻撃に抵抗する能力でございますから、これは武力を主体とした能力であろうと考えております。ただ武力のみではありませんが、武力を主体とした能力であると考えます。
  75. 山本杉

    山本杉君 次に、この能力はバンデンバーグ決議の趣旨に基づいた能力であるのかどうか、この点の関係はいかがでございましょうか。
  76. 高橋通敏

    政府委員高橋通敏君) バンデンバーグ決議の趣旨に従いまして大体第三条も作られた規定でございます。そこで、バンデバーグ決議におきましても、この継続的かつ効果的な自助及び相互援助によりまして、武力攻撃に抵抗するそれぞれの能力を維持し発展させる、大体このような趣旨のことを言われている次第でございます。ただ、これは具体的に、この武力攻撃に抵抗する能力とはどういうものであるかとか、どうでなければならないとか、そういうことを目的とするものではございません。一般的にそういうふうな基本原則をバンデンバーグ決議はうたっているものである、このように了解いたします。
  77. 山本杉

    山本杉君 バンデバーグ決議についてでございますが、たとえばNATO条約のように、当初は米国も強い適用を望んでおったようでございますけれども、その後これを厳格に適用すべきでないという空気になってきております。今度の新安保条約の第三条の話し合いの過程でも、バ決議をそのまま適用する意思はないということが確認されたと聞いておりますが、その点はいかがでございますか。
  78. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 御承知の通り、バンデンバーグ決議の由来から申せば、バンデンバーグ決議は、いわゆるモンロー主義を捨てて、第二次世界大戦後、アメリカも国際平和に対してアメリカ以外の世界と協力していくべきであるということに転向いたしたときの上院における決議の表明とでも申して差しつかえないと思います。バンデンベーグ決議の中には、従って国連憲章等を強化していくというような条章も入っております。この第三条に用いられておりますような点が、このバンデンバーグ決議の中に一つあるわけであります。今日までアメリカがこの種の条約を結びました場合に、多くそのバンデンバーグ決議の趣旨を体してやってきております。むろんそういう趣旨でございますが、アメリカとしてこれを今回の条約によっても書き表わすことになりましたのは、われわれもまたその趣旨が適当であろうと思いましたのは、要するにこうした防衛の関係を樹立する二カ国間におきましては、お互いに自分は自分の国を守るという決意をまず表明し、その守るだけの努力をするということをお互いにしていく相手国でなければならぬのであります。日本から見ましても、アメリカが自分で自分の国を守るというだけの決意はしてもらわなければ困りますが同時にアメリカ自身も、日本の国は日本で守るということをまず考えてくれる国でなければ、自分の国は何にも守る防衛の努力をしないが、あなただけに一つ自分の国を守ってくれという国とは、こういう条約は結べないというのは、これは当然のことだと思います。その精神をうたうことによって、バンデンバーグ決議の趣旨がうたわれるのでありまして、運用の面におきまして、お話のようにバンデンバーグ決議の当初からの経緯とは、若干の違いはございますけれども本質的にはそう違っておるとはわれわれ考えておりません。
  79. 山本杉

    山本杉君 ただいまの御説明によってよくわからせていただいたのでございますが、この第三条によって日本は防衛力発展の義務を負ったことになるということ、ここをもう一度はっきりとおっしゃっていただきたいと思います。義務を負ったことになるのかどうかという点でございます。
  80. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 御承知のように、この第三条におきまして「締約国は、個別的に及び相互に協力して、継続的かつ効果的な自助及び相互援助により、武力攻撃に抵抗するそれぞれの能力」というのでありまして、「それぞれの能力」というのは、つまりアメリカアメリカの能力、日本日本の能力、それを憲法上の規定に従うことを条件として推し進めていくということでありまして、それぞれの能力を、日本日本の能力ということ、その能力というものは、日本の社会的な条件、あるいは経済上の条件、財政上の条件、それぞれ日本がそれらのものを勘案して、日本自身の諸般の条件の上に立って判断をしていく問題でございまして、それについて特段の義務を負ったものではございません。
  81. 山本杉

    山本杉君 現行条約では、アメリカ合衆国は、日本が「直接及び間接の侵略に対する自国の防衛のため漸増的に自ら責任を負うことを期待する。」とあって、「期待する。」ということは義務づけではなかったのです。ところが、新条約は「維持し発展させる」と明記されているから、これは義務づけである、こういうのが社会党を初め反対する人たちの意見でございます。ところが、現行条約のどこにも憲法の範囲内という規定がございません。むしろ現行条約の方が憲法違反ということでは危険な要素を含むものと考えられるのでございますが、そこはいかがでございましょうか。
  82. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 自分が自分の防衛力を進めていくということは、自分自身のことでございまして、自分自身のことを自分がやるという限りにおいて、それは義務ではございません。従って、それを憲法上の範囲内で行なうという、日本の憲法の事情等もありましてやることでありますから、決して新たなる何らの義務をこれによって負ったものではないのであります。現行の条約の「期待する。」というのは、一方的ないい方でございますけれども内容においては変わらないのでございます。
  83. 山本杉

    山本杉君 反対論では、第三条でいうところの武力攻撃に抵抗する能力を維持し発展するというのは、明らかにバンデンバーグ決議に基づいたものであるから違憲である、こういう主張をしておりますけれども条約では、すぐそのあとに「憲法上の規定に従うことを条件として、」と、くぎをさしておるのでございます。ここで問題になりますのは、憲法と条約との関係でございますが、どちらがすぐれた効力を持つのか、その点を明らかにしていただきたいと思います。
  84. 林修三

    政府委員林修三君) 憲法と国際条約との優劣関係については、これは学説上いろいろの説があるわけでございまして、憲法優位説、あるいは条約優位説、両方が学説としては実は対立しておるわけでございます。これは憲法だけの解釈から申せば、憲法第九十八条の第一項におきまして、いわゆる憲法があらゆる法律等に優位することを書いておりますと同時に、第二項では、憲法条約、国際法規は忠実に順守しなくてはいけないということを書いております。こういうところから、やはり日本としては、結んだ条約は十分に尊重していくというのが憲法の趣旨であるという考え方が相当強いわけであります。この場合に、国際条約の中で、特に何と申しますか、国際自然法と申しましょうか、一種の確立された国際法規、こういうものを具体化しているような条約、これはやはり憲法に優位すると申しますか、あるいは憲法秩序がそういう確立された国際法規は受け入れている、憲法の秩序の中に受け入れている、こう考えるのが妥当じゃないかと私ども考えております。しかし、政治的な二国間条約が直ちに憲法の規定に優位する効力を持つかどうか、これについては相当疑問があるのじゃなかろうか、かように憲法解釈としては考えております。しかし、いずれにいたしましても、この新しい条約の第三条の場合におきましては、日本武力攻撃に抵抗する能力を維持し、発展させる限界は、憲法の規定に従うことを条件としているわけでございますから、憲法が認める以上のものをこの条約が云々している点は全然ないわけでございまして、そういう意味におきまして、この条約の規定が憲法違反、あるいは憲法とこの条約の規定のどちらが優位するかという議論の起こる余地は実はないと私は思っております。  それから、今バンデンバーグ条項を取り入れたものだから憲法違反となるという一部の説でございますが、これはバンデンバーグ条項の誤解からも来ていると思いますが、たとえば他の類似の北大西洋条約等では、いわゆるバンデンバーグ条項といわれますところに、いわゆる集団的能力、つまりNATOでいえばNATO諸国を打って一丸とした一つの集団的能力、武力、そういうものを維持し発展させるという趣旨の規定があるわけであります。そういうものになりますと、日本の憲法からいっていろいろ問題点があると思いますが、この新しい第三条は、さっき外務大臣からお答えがございました通りに、維持し発展させる対象はそれぞれの能力でございます。日本日本の能力であり、アメリカアメリカの能力、いわゆる両方打って一丸とした一つの共同的と申しますか、超国家的と申しますか、そういう能力を作るというようなことは全然書いてないわけでございます。そういう意味から申しましても、全然憲法の関係は起こらない、かように考えておるわけでございます。
  85. 山本杉

    山本杉君 ただいまの御説明でよくわからせていただきました。  そこで第三条では、憲法上の規定の範囲内と、こうしぼり、さらに第五条の相互防衛を、日本国の施政のもとにある領域とはっきり限定したことから、海外派兵の疑いは全くないもので、憲法論議の起こる余地はないと考えるわけでございますが、この点、今の御説明で大ていわかったと思いますから、お答えをいただかないで、次に、第五条の共同防衛の義務は、日本米国が共同の軍事行動をするということを約束したものでありまするかどうか。現行条約は単に基地提供するだけの義務であるのに、新条約は単に基地提供するだけでなく、共通の危険に対処して共同の軍事行動をするのであり、積極的義務に変わったのであるとしきりに言われておるのでございますが、この点いかがでございましょうか。先ほどもお話が出たと思いますので、簡単にお答えを願いたいと思います。
  86. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 武力攻撃が、第五条においては施政下にあるわけでございます。この施政下にあるということは、日本の領土、領空、領海を侵されることであります。従いまして、日本日本の個別的自衛権を発動するわけでありますし、アメリカは個別的な自衛権、もしくはアメリカの持っております集団的自衛権を発動するわけでありますけれども日本日本で、今申しましたような領土、領空、領海を侵されなければ、そういう武力攻撃の事実は起こらないのでありますから、従って日本としては、何か新たにそういうような義務をしょったわけではございません。従いまして、われわれは、憲法に違反するような見解は、この条文からは出てこないと思っております。
  87. 山本杉

    山本杉君 現行の行政協定第二十四条にも「日本区域において敵対行為又は敵対行為の急迫した脅威が生じた場合には、日本国政府及び合衆国政府は、日本区域の防衛のため必要な共同措置を執り、且つ、安全保障条約第一条の目的」云々と、こうなっております。この場合の「日本区域」に比べると、新条約第五条の「日本国の施政の下にある領域」というのは、ずっと限定されたものと理解いたします。また敵対行為または敵対行為の急迫した脅威が生じた場合は必要な措置をとるという義務は、きわめてあいまいな規定でございます。これに比べますと、今度の第五条の前段の義務規定は、きわめてはっきりとした規定であり、限定されたものでございます。しかも「憲法上の規定及び手続に従って」という制約もついておると思うのですが、これをしも憲法違反といえるのかどうか。この点御説明を願いたいところでございますが、時間の関係もございますので、一言だけおっしゃっていただきたいと思います。
  88. 高橋通敏

    政府委員高橋通敏君) ただいまの点、御指摘通り考えております。なわち新安保条約の第五条におきましては、「日本国の施政の下にある領域」ということにはっきり限っております。行政協定におきましては「日本区域」という言葉を使っておりますが、これは非常に、日本のみならず日本の周辺を含むという限定になりますので、第五条におきます「日本国の施政の下におる領域」という方が最もはっきりいたしておると考えております。また、「いずれか一方に対する武力攻撃」ということは、国連憲章第五十一条の用語をそのまま使っておる次第でございまして、これは行政協定の第二十四条におきます「敵対行為」といいますより、もっとはっきりした概念が表現されておると思います。
  89. 山本杉

    山本杉君 どうもありがとうございました。  新安保条約反対する人たちが青年婦人層に訴えておりますのは、この安保条約が批准されれば、日本は再軍備を余儀なくさせられるということでございます。そうなれば、当然徴兵制が施行されて、再び夫や子供を戦場に持っていかれるために、安保条約改定には反対しなければならない。そうして多くの人たちは新条約が何であるかを理解しないで、ただその宣伝におびえているのが今日の状態だと思います。私が今御質問申し上げた点だけを取り上げてみても、今度の条約が再軍備に通ずるような懸念は一つもございません。むしろ、いかにして自国の安全を守りながら戦争を避けるかという、国を愛し、国民を思う真情に貫かれているのが、この新条約の精神であると理解させていただきました。政府はこの際さらに信念をもって新安保条約批准への決意を固められ、日本民族の進むべき道をお示し下さいますことを心からお願い申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。   —————————————
  90. 草葉隆圓

    委員長草葉隆圓君) 木内四郎君。
  91. 木内四郎

    ○木内四郎君 私は、長い間の衆議院及び参議院におきますところの予算委員会あるいは安保特別委員会、また八日の岸総理の所信表明、これに引き続くところの同僚委員各位の質疑応答によりまして、新条約の目的、精神、性格、また条文の意義、解釈、あるいはまた、国際情勢、わが国の現在及び将来にわたるところの外交路線、あるいはわが国の経済の実態しこうしてまた、その国際経済におけるところの地位等、各般にわたりまして、政府から政府考えておられるところを大体伺ったのであります。  本日は、総理その他各大臣に対する一般質問は、今日のところ私は一応差し控えまして、この際、事務当局に対して、行政協定につきまして逐条的に一、二の点について伺いたいと思います。地位協定です。私は現行安保条約の審議にあたりましても、特別委員会委員としてその審議に参与いたしたわけでありますが、その当時、行政協定承認を求めるために国会に提出されなかったということに対して、非常な非難、批判がありました。ところが、今回はこの地位協定——これを改定したところのいわゆる地位協定国会承認を求めるためにわれわれのところに提出された。これは非常な進歩であり、改善であり、私はけっこうなことだと思うのでございます。  ところで、私の伺おうといたしまするのは、まずさしあたり、地位協定の第十一条と十三条に関してであります。この条文は、一部におきまして、関税の面におきましてはある程度の改定を加えられましたけれども、第十三条の方におきましては、ほとんど修正されておりません。一、二の字句の修正だけでございます。これは、駐留する軍隊及びその構成員等に対する免税の規定等を含んでおるのであります。この点につきまして、私は参考のために、まず、外国軍隊が駐留する場合の免税の基準とか、あるいは範囲とかいうものにつきまして、国際法規上何かきまったものがあるか、法規上きまったものがないにしましても、国際の慣行上大体どんなふうになっておるか、まとまっているものがあれば、参考のためにまで伺わしていただきたいと思います。
  92. 高橋通敏

    政府委員高橋通敏君) ただいまの御指摘の点でございますが、一般に非常に具体的なこまかな点まで、国際慣行上あるいは一般国際法上きまっているというようなことは、これはないかと思います。ただ、一国の軍隊が他国に、他国の承諾を得てそこにあるという場合において、国際法上、一般的に軍隊としての種々の特権、免除、これを享有しているということになっていると思います。従いまして、たとえば関税というような問題においても、原則的に軍隊というものに対する関税の問題については、これは一般的、原則的に特権及び免除を享有している、このように考えております。
  93. 木内四郎

    ○木内四郎君 重ねて伺いますが、それでは、今回修正されないで、現行のままの第十三条、多少修正された十一条、この規定の内容というものは、大体国際慣行の範囲内のものでありますか、それとも非常に不利なものであるか、有利なものであるか、何か違ったところがありましたら、一応伺わしていただきたい。
  94. 森治樹

    政府委員(森治樹君) まず、第十一条の関税の面でございまするが、NATOの条約は、御承知の通りに一般的な各国に通有する規定がございますと同時に、それぞれ関係二国間におきまして一般的な協定を補足するための規定がございます。この二国間の協定を見ますると、その間多少の出入りがございます。従いまして、一般的に申し上げれば、今度改正いたしましたことによりまして、日本の関税に関する規定に関する限りは、このヨーロッパにおける二カ国問の協定を見ますると、大体ヨーロッパ諸国並みになっておると考えております。  十三条の国内課税の面でございますが、これも、NATO協定は、これは一般的な協定がそうでございまして、大体、軍関係における勤務、雇用から生ずる所得の免除、あるいは受け入れ国の源泉から発生する所得についての規定、あるいは構成員の滞在期間が税法上居住期間と認められるかどうか、あるいは財産に関する租税の免除、いわゆる有体財産についての租税の免除規定でございますが、これらの規定は、大体NATOの規定と基準を一にいたしておりますので、この際これ以上の待遇と申しますか、これ以上の規定にすることは困難だと考えられましたので、NATOの規定とさしあたり比較的に劣っておりました関税の部面に手を加えて、国内課税の分は大体現状にとどめた次第でございます。
  95. 木内四郎

    ○木内四郎君 それでは、第十三条の点は了承いたしますが、十一条の点におきまして、関税の面において改正を加えられておるようでありますが、その改正の内容の大体を御説明願いたいと思います。
  96. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) 第十一条の関税の面で改正を加えられました点を簡単に御説明いたしますと、第一点は、従来合衆国軍隊の部隊のみならず、部隊の構成員すなわち軍人並びに軍属等につきましても、税関の検査が免除されておったわけでございます。これを今回改めまして、部隊の構成員については、税関の検査を実施するということに相なっております。  それからもう一点は、合衆国軍事郵便路線上にある郵便物につきましては、現在までのところ、全部検査の免除をしておったわけでございますが、今回これを改めまして、公用の軍事郵便物についてのみ検査を免除する。従って、私用のものについては検査を実施する。こういうことに相なっております。  なお、合意議事録におきまして、第三点といたしまして、P・X等の輸入する物品、これは、主として軍人、軍属の用に供するために輸入する物品につきまして、従来は無制限に関税免除の特権を与えておったわけでございますが、今回これを改めて、これらの物品については、合理的妥当な範囲に限るということで、この輸入の数量について規制を加えております。  大体以上の点が改正のおもな点でございます。
  97. 木内四郎

    ○木内四郎君 今の御説明によりますというと、従来あまり制限をしないで、無制限に入れたために、横流しなどが行なわれたというような非難もあったのでありますが、今の御説明によりますと、P・X等が軍人、軍属用に供するために免税で輸入することのできる物品の数量を合理的な限度に制限するというようなお話でありますが、その制限方法等の内容はどんなふうにするつもりでおられますか。
  98. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) あらゆる物品について一定の数量を規定するということは、これはできませんので、わが国に駐留いたしております軍人、軍属及びその家族等の人数に比較いたしまして、入れられておる特定の物品が異常に多いというようなもの、あるいは現にそれらの品物で横流れをしておるというような実績のあるもの、そういうようなものにつきましては、軍側に輸入する数量の規制あるいは横流れの防止等について必要な措置を申し入れるというつもりでございます。さらに、これらの物品以外の物品でございましても、わが国の関税法規に違反する物品、あるいはこの免税の特権の乱用になるような事実、そういうことについては、米軍側で必要な措置を講ずる約束になっております。さらに、米軍側といたしましては、関税法規に違反する物品が輸入された場合には、すみやかに日本の税関に通知をする。また、こちらでそういう違反の事実を発見しました場合には、軍側に対して問題を提起して、必要な措置を求めるという約束になっております。
  99. 木内四郎

    ○木内四郎君 そこで、次に伺いたいのですが、税関検査を免除しておる範囲がいろいろあるようでありますが、やや広きに失しやしないかというようなことを従来言っておられたのですが、今度はどういうふうにこれを改正されましたか。
  100. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) 先ほど外務省から概括的な御説明がございましたように、ヨーロッパにおきますNATOの線あるいはアメリカとヨーロッパ諸国との二国間の防衛条約、そういうものの先例を研究いたしまして、大体その線の限度で新協定範囲をきめておりますので、広きに失するという点は、われわれとしてはないと信じております。
  101. 木内四郎

    ○木内四郎君 ちょっと答弁が抽象的過ぎるのですが、今度改正される場合に、税関検査免除の範囲から除外したものが一、二あるのじゃないですか。それを述べていただきたいと思います。
  102. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) 従来免除をしておりましたもので、今回免除をやめるというものは、先ほど申し上げましたように、合衆国軍の部隊の構成員に対する検査と、それから軍事郵便物のうちで私用の郵便物、こういうものの検査を実施することにいたした点でございます。
  103. 木内四郎

    ○木内四郎君 それでは、今お話になりましたその二点に対して、検査の実施方法はどういうふうにしますか。今まで免除して検査しなかったのだが、今後検査するとなれば、どういう形でやられるか。ことに米軍が使用しているところの施設あるいは区域を通じて入るような場合の検査はどういうふうにされますか。
  104. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) これは、米軍が再用しております基地を通過して輸出入するものと、それから、それ以外の場所から出入するものと、若干取り扱い方法が変わると思いますが、このあとの場合、すなわち軍側の使用しておる基地以外の場所から出入する場合におきましては、これは通常の税関検査、すなわち羽田でありますとか、あるいは横浜とか、神戸とかいうような所でやっております通常の検査方法で実行ができると思います。それから、基地を通じて出入しますものにつきましては、まだ新協定が成立いたしておりませんので、具体的な取りきめはいたしておりませんが、この検査を実施いたしますのに必要ないわゆる立ち入りであるとか、あるいは立ち会いであるとか、そういう点につきましては、今後合同委員会で具体的な点を相談をいたしたいと思っております。
  105. 木内四郎

    ○木内四郎君 そこで、ただいまの御説明によりまして、大体十一条の改正は、相当改善されておると思うのでありますが、次に、二十条の軍票の問題についてお伺いいたしたいと思いますが、今日もなお、今回の地位協定によりましても、相変わらず米軍に軍票を使用させるということに相なっております。この点は、従来のものについて改正がないのであります。なぜ円を使用させては工合が悪いか、あるいはドルを使用させては工合が悪いか、なぜ軍票を使用しなければならないか、その必要と、この軍票を使用させることによって何か利点があるかどうかということを説明願いたいと思います。
  106. 村井七郎

    説明員(村井七郎君) お答えいたします。  軍隊が行なっております経済圏は、いわば特殊な、あるいは部分的なものでございまして、その中に円を普通の取引のように導入する、使わせるということは、一見普通のようでございますが、為替管理の取り締まり上いろいろな弊害が出て参る場合がございます。たとえますれば、日本人が軍人軍属等に依頼してPX等から特殊な免税物品を購入してもらうとか、あるいは軍人軍属等が非合法に取得いたしました円を、軍用銀行施設というものを通じまして海外送金をすることがあり得るというような、これはおそれでございますが、そういうものを防止するために、特殊な、一般流通手段ではない、軍票を使わす方がむしろ弊害が起こらない。これは各国、たとえばイギリス、ドイツ、オランダ等でも、そのように軍票を使用させて、為替管理体制に協力をはかっておるという実情でございます。
  107. 木内四郎

    ○木内四郎君 今の円の問題はそれでわかりましたが、それではドルを使わしたらどうです。大体同じことだろうと思うのですが、あなた方のごらんになるところを伺っておきたいと思います。
  108. 村井七郎

    説明員(村井七郎君) ドルも、実は為替管理上から同様な立場でございまして、逆に軍人軍属等が使用いたしますドルが普通のわれわれ日本人の方に流れてくるということは、為替管理上好ましくないという観点がございますので、われわれ日本人には、円を完全に流通させたいという気持から、そういう弊害の起こるのを防止しておるということでございます。
  109. 木内四郎

    ○木内四郎君 そこで、先ほどあなたはちょっと触れられましたが、イギリスその他でもやっておる、すなわちNATOその他の諸国においても、外国の軍隊が駐留するという場合には、大体軍票を使わせておると了解して差しつかえありませんか。
  110. 村井七郎

    説明員(村井七郎君) そのように了解しております。   —————————————
  111. 草葉隆圓

    委員長草葉隆圓君) 井上清一君。
  112. 井上清一

    ○井上清一君 私は、いわゆる地位協定に関しましてお伺いをいたしたいと思います。外務大臣、防衛庁長官または関係政府委員から御答弁を願いたいと思います。  現行安保条約に基づきます行政協定にかわる新協定、すなわち地位協定は、現行行政協定と同じく、施設及び区域提供や、日本にあります米国軍隊地位を律するものでございますが、この種協定は、国民の生活と非常に密接な関係また利害があるのであります。諸外国の同種の協定、たとえばNATO協定でございまするとか、あるいはまたボン協定を参考といたしまして、今度の新協定は相当改善されておるといわれておりますが、旧協定を改めまして新協定締結いたしました理由及びその改正の基本的な考え方をまず承りたいと存ずるのであります。
  113. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今回の条約改定にあたりまして、その運営に当たります行政協定を改定しなければならぬわけでございます。条約におきます改定の方針とほぼ同じような、戦後早々の、平和条約締結当時早々に締結されまして、当時の国情においてはやむを得なかった点もございますが、今日の情勢ではこれを改善する必要があるという立場、それと同時に、過去八年の間現行の行政協定運用して参りました経験、そういうものにかんがみまして改定の方針をきめたわけでありますが、改定にあたりましては、ただいま御指摘にありましたように、NATOの協定及び先ほど申し上げましたいわゆるNATO協定に付属しておると申しますか、その補足をいたしております二国間の協定、並びに新たに改定に取りかかっおりますボン協定を、ドイツ政府の好意によりまして発効前に参考にさせていただいたわけであります。これらのものを参考として、原則としてNATO協定と比して遜色のないものを作るということでございます。それらのものを勘案しましてできましたものは、NATO協定の長所を取り入れると同時に、さらに日本の実情に即しましたように改善されている点があろうと思っております。
  114. 井上清一

    ○井上清一君 しからば、おもな実質的な改正点を承りたいと思いますし、同時に、従来の規定と比較いたしましてわが国といたしまして非常に利益であるという点を列挙して一つ説明を願いたいと思います。
  115. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 改正に当たりましたアメリカ局長から御説明いたさせます。
  116. 森治樹

    政府委員(森治樹君) 先般補足説明で御説明申し上げました通りに、今般の改正のおもな点だけを申し上げます。  第一には、施設及び区域外における米軍の権限についてでございます。従来は必要のある場合には米軍日本側と協議の上措置する権限を持っておりましたのを改めまして、今度は第一次的に日本側において措置をする。そうして、アメリカ側にも従来の通りにその権限を認めるけれどもアメリカ側の権限を行使する場合には常に日本側と協議を行なう建前といたした次第でございます。  第二には、ただいまも御説明がありましたように、税関検査の部面でございます。税関検査の部面におきましては、従来軍用郵便局を通じまする公用、私用の郵便物について検査が免除されておりましたのを、公用の場合に限り免除を認める。なお、軍隊の構成員についての税関検査の免除は今後は認めないことにする。それから、これも先ほどお話がございましたが、PX等の輸入する物資の範囲は合理的な限度に限ることにいたしまして、しかもこれらの米軍による税関特権の乱用につきましては、その防止のために日米で協力してこれが防止をなし得る態勢を強化いたしたことでございます。  第三には、労務の関係でございます。従来、労務の関係につきましては、いろいろな事件が起きておりましたけれども、進駐軍関係の労務は第一の日米接触点でございますので、従来、軍の歳出外資金機関、いわゆるPX等でございますが、ここで働いておる人々の訴権が保障されておらないということもございましたし、なお、日本の裁判所あるいは労働委員会の決定も日米間でその順守について十分意思の疎通ができなかったというような面もありましたので、これらの点を改めますと同時に、保安解雇の問題が従来非常な難点となっておりましたので、これについての一つの解決方法を決定いたしたことでございます。  第四には、米軍アメリカで契約をしてその必要に基づいて日本に軍のための工事等を行なう契約者を連れて参りますが、この契約者を従来米軍は自由に指定できておりましたのを、今後は日本側と協議の上に指定すべきことといたし、そうしてまた、この指定し得る場合の一定の基準を設けまして、さらにこれらの業者の違反行為がありました場合には、これを解任し得る規定を置いたことでございます。  次に改正しました点は、民事請求権に関する点でございます。これは従来、政府関係財生及び職員の身体ないし財産に対する損害の請求権の相互放棄の範囲が日米間に不均衡がございましたので、これを改めまして、均衡をとりますと同時に、公務外及び公務上の損害補償の手続はそれぞれ違うのでありますが、この公務外か公務上かの決定につきまして、従来合同委員会が決めることにしておりましたのを、日本人から選ばれる仲裁人が決定することに改めた点でございます。  次に、防衛分担金を削除した点でございます。
  117. 井上清一

    ○井上清一君 ただいまおもな実質的な改正点について御説明がございましたが、細部に入ることは、のちほどまた他の委員からも御質問もあろうかと思いますし、また、私も、海事請求権の問題について細かく伺いたいと思いますから、次に伺いたいのは現行の行政協定は、さきほども木内委員からもお話がございましたが、国会承認対象ではなかったのであります。また、今度の新しい地位協定アメリカにおきましては行政府限りで処理されることになっておると聞いております。ところが、今度わが国ではこの新しい協定国会に御提出になりまして承認を求めておいでになりますが、この間の事情につきまして御説明を願いたいと思います。
  118. 高橋通敏

    政府委員高橋通敏君) ただいまの件でございますが、現行の行政協定、これは国会の御承認の対象とならなかったわけでございます。これは、現行の安保条約の第三条に、米国軍隊日本国内及びその附近における配備を規律する条件は、両政府間の行政協定で決定する。すなわち、現行の安保条約におきまして「両政府間の行政協定で決定する。」ということをはっきり規定されておりまして、これに基づいて行政協定ができ上がったわけでございますので、この間、国会承認云々という問題は起こらない次第でございます。ただ、新安保条約におきましてはこのような文言はございませんし、また国民の権利義務に関係する内容を持つものでございますので、当然これは国会の御承認の対象とした次第でございます。また米国におきましては、これは米国におきます立法権と行政権の関係の問題であろうと考えますが、この種の協定については国会承認は必要としないというのが、米国の慣行、米国のやり方であるというふうに了解いたしております。しかし、いずれにしましても国と国との約束でございますので、その効力については何ら関係はないと考えます。
  119. 井上清一

    ○井上清一君 次に、地位協定第三条に関連をいたしまして政府の所見を伺いたいと思うのでございますが、協定の中に、施設及び区域の観念につきまして、従来協定第三条の条文の表現を援用いたしまして、駐留米軍施設及び区域に関しては絶対的な管理権を持っておる、従って施設及び区域は租借地的なものであった、また治外法権的な地域が日本国内に設定されておるというふうに言っておる者があるのでありますが、私どもはさようには考えない。どうかこの施設及び区域の性格、概念というものをこの際明確にお示しを願いたいと思うのであります。また一般に基地また軍事基地というような言葉が使われておるのであります。どうも施設及び区域と一緒に考えられておるようでもございますし、また日本の施政権が何かもう少し強度に、属地的に排除されるような意味にも使われているように私ども考えるのでございますが、この概念、性格についてもはっきりさしていただきたい。  なお、条約第六条の実施に関する交換公文の中にこういう言葉が使ってあるのであります。「戦闘作戦行動のための基地としての日本国内の施設及び区域の使用」という言葉を使ってあるのであります。この場合の「基地」という意味はどういうふうに解釈していいのか、これらの点について明確にお示しを願いたいと思います。
  120. 高橋通敏

    政府委員高橋通敏君) ただいま御指摘の点でございますが、新条約の第六条に、アメリカ合衆国は「日本国において施設及び区域を使用することを許される。」、すなわちわれわれといたしましては施設区域というのを米国に使用を許しておるわけでございます。すなわち施設区域というのは、日本米国にその軍隊の使用に供することを許可した施設並びに区域であるというふうに考えております。従いまして、これは一般に考えられますような租借地だとか、また治外法権的な地域であるというふうには考えておりません。すなわち、われわれが施設区域を使用に供するわけでございますが、その使用に供された施設及び区域はあくまで、当然のことでありますが、わが日本の主権のもとに立つ地域でございます。従いまして、原則として日本の法令がここに施行されるわけでありますので、これは日本の法令から、全く適用から除外された租借地であるとか、また治外法権的な地域であるというふうには考えていない次第でございます。従いまして、ただここに施設区域を使用に供しました次第でございますので、その施設区域を運営するに必要な措置、これはとることを許しておる、こういうふうな状況にあるわけであります。  また第六条の場合においては、「基地」という言葉を使っておりますが、これは施設区域が戦闘作戦行動のための基地として使用されている、すなわち施設区域が戦闘作戦行動のために使用される場合、このような使用の形態というものはまさしく基地としての使用であろうと考えております。従いまして戦闘作戦行動というようなもののためにこれが使用される場合においては、特に基地としての使用ということを入れたわけでございます。
  121. 井上清一

    ○井上清一君 新協定の第三条を見まするというと、相当の改正が行なわれているのでございます。この第三条の中におきまする「施設及び区域」という概念は、新協定と旧協定との間において、何か差異があるのでございましょうか、いかがでございましょうか。
  122. 森治樹

    政府委員(森治樹君) 新協定と旧協定との間におきまして、施設における米軍の管理権の実体的な内容については相違はないわけでございます。これは第三条の合意議事録にも、米軍のとり得る措置につきましては列挙をいたしておりまして、この合意議事録につきましては、旧協定と新協定との間に差異はないわけでございます。ただ旧協定ではあたかも米軍が治外法権的な権能を有しているかの誤まった印象を与えるおそれがあるのでありまして、アメリカ軍における管理権と申しますのは無制限に認められるものではなくて、その米軍の使命達成上必要な限度において認められているのでございます。従いまして新協定ではそのニュアンスを出すために、アメリカ軍は「必要なすべての措置を執ることができる。」という実態に即するような表現といたした次第でございます。
  123. 井上清一

    ○井上清一君 ただいまの御説明によりまして、施設区域内外における管理等に関しましての権限と申しますか、変わりがないのだという御説明でございましたが、旧協定によりますると「権利、権力及び権能を有する。」となっておりまして、今度の新しい協定では「必要なすべての措置」と、こうなっているわけでございます。ただいまの説明では実質的な差異がないというお話でございましたが、法的及び経過的な差異がないのでございましょうか、どうでしょうか。
  124. 森治樹

    政府委員(森治樹君) ただいま申し上げましたように、米軍施設内における権利については法的な実際的な差異はない。ただし施設外におきましては、先ほども申し上げましたように、従来の協定では米軍は必要のある場合に限って日本側と協議をして、第一次的にアメリカ軍が措置するという書き方になっているわけでございますが、今度の協定におきましては、日本側がまず必要な措置を法令の範囲内においてとる、そうしてアメリカも権能を有しているけれども、その権能の行使にあたっては、必要に応じてでなく、常に日本側と協議の上とらなくちゃいけないことになっております。従いまして、施設外におきましては、大いに従来と実体的な相違があるわけでございます。
  125. 井上清一

    ○井上清一君 さきに御説明もございましたが、施設区域は租借地などと違って、地域的に日本法令の適用が除外されている地域ではないのであります。施設区域は従来条約に定められました一定の目的のため米軍によって使用を許した地域である、協定に基づいて。個々の法令の適用が排除される場合を除いては、一般的に日本法令が適用されるわけでございます。従って施設及び区域内にあります日本人に対しましては、全面的に日本法令が適用されるばかりでなく、たとえばアメリカの軍人につきましても、刑事裁判権について、公務外の犯罪を犯した場合には、施設区域内においても、日本の裁判権に服するということになるわけであると存じますが、そこで私が伺いたいのは、合衆国軍隊の公の行動とわが国法令との関係、そしてまた施設及び区域内においては、地位協定第三条において、「合衆国は、施設及び区域内において、それらの設定、運営、警護及び管理のため必要なすべての措置を執ることができる。」という規定があるのであります。これに対しまして、米軍が措置をとります場合、わが国の法令との関係はどういうことになりますか、伺いたいと思います。
  126. 林修三

    政府委員林修三君) 一般的に申し上げますが、合衆国軍隊——いわゆる軍隊に対しては、これは当然にこの軍隊日本にある間において、日本の法令を尊重すべきものであるということは、これは当然でございます。しかし、軍隊というものの特性から申しまして、その軍隊の行動に必要な範囲のことは、これはやはり合衆国軍隊の駐留を認めました以上は、ある間において、日本の法令の適用が排除される、かようにこれは国際法的に見ましても考えられると思うのでございます。ただ、その合衆国軍隊を構成しております軍人軍属あるいはその家族等につきまして、どの範囲において日本の法令の適用が排除されるか、あるいは特例が認められるかということは、これは従来の行政協定、新しい地位協定におきまして詳しく書いてありまして、ここに書いてある範囲において特権的なものが認められる、あるいは日本の法令の規定の適用が排除される。まあ書いてないものについては、日本の法令が大体適用される、かように考えられるわけであります。しかし軍隊そのものにつきましては、先ほど申し上げましたように、特別な規定はございませんけれども軍隊の特性上、その軍隊の特性と反するような法令の適用というものは、これはやはりないと考えざるを得ません。しかし同時に、軍隊というものは、他国にある以上は、その国の法令を尊重する義務は当然持つ、かように考えるべきものだと思います。
  127. 井上清一

    ○井上清一君 安保条約の改定及び地位協定締結に伴いまして、わが国の関係法令を改正すべき必要があるわけであります。それらの点から、日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約等締結に伴う関係法令整理に関する法律案がここに提出されているわけでございますが、これを見ますると、大部分が条約協定の名称変更等によります形式的な改正でございますが、中には若干実質的な改正があります。これらの点について御説明を願います。
  128. 森治樹

    政府委員(森治樹君) 整理法案のうち実体的な改正と申し上げますと、大体四点ではないかと考えます。  第一には、先ほどから問題になっております地位協定十一条の、税関検査に関する規定の改正がございますので、これに関連します整理法案第二十条の関税法等特例法の一部改正でございます。  第二は、地位協定十二条四項の規定によりまする、労務の間接雇用への切りかえに伴いまして生じました整理法第一条の調達庁設置法、第四条の国家公務員法等一部改正法、十六条の駐留軍労務者支払特例法及び十七条の特別調達資金設置令の一部改正等でございます。  第三の改正点は、地位協定十四条の特殊契約者に関する規定の改正に伴います、整理法案第十九条の所得税法等特例法の一部改正でございます。  第四は、地位協定第十八条の民事上の請求権の処理に関する規定が改められたことに伴う、整理法案第一条の調達庁設置法及び十二条の民事特別法の一部改正、この四点が実質的な改正と目されまして、他は名称の変更でございます。
  129. 井上清一

    ○井上清一君 条約は、御承知のように、衆議院承認をされまして参議院に送られますと、三十日を経過いたしますと自然成立をいたすのでございますが、法律には自然成立というものはございません。それで、今度この整理法令の成立の日時が、条約承認の日時と食い違います場合があり得るかもしれないということも考えられるわけであります。そうした場合に、条約及び協定運用に差しつかえが生じはせぬかというようなことも一応考えてみなくちゃならぬと思うのでありますが、それらの点について御意見を伺いたい。
  130. 林修三

    政府委員林修三君) これはお説の通りに、条約国会承認の手続、それから法律案についての国会における手続が憲法上違うわけでございまして、従いまして、その関係から成立時期等に食い違いが生ずる場合があり得るかとも思うわけでございますが、御承知の通りに、この法律案条約の成立、効果発効ということを実は前提として、そのときからこの新しい法律案を施行することを前提としてできておるわけでございます。従いまして、国会における御承認、あるいは国会における法律案の成立の時期が食い違いましても、それ自身で別に直ちにどうこうということはまあないわけで、御承知の通りに、条約の発効は日米両国の批准書交換というときから効力が発効するわけでございまして、旧条約はなくなりまして、新しい条約に移り変わるわけでございますから、法律案は、まあ厳密に申せばそのときまでに成立しておれば、実は必要にして十分だと、かように考えるわけでございまして、必ずしも国会における条約の御承認法律案の成立が同日に、——まあ同日に行われることが望ましいことは、これは間違いございませんが、同日に行なわれなくても、その点は必ず条約の発効までに間に合えば、その点は差しつかえないものと、かように考えております。
  131. 井上清一

    ○井上清一君 次に米軍提供されておりますところの土地、建物の数量についてお伺いをいたしたいと思うのであります。  新協定の第二条第三項は、現行行政協定第二条第三項と同様に、「合衆国軍隊が使用する施設及び区域は、この協定の目的のため必要でなくなったときは、いつでも、日本国に返還しなければならない。合衆国は、施設及び区域の必要性を前記の返還を目的としてたえず検討することに同意する。」というふうに書いておるのであります。従来米軍提供されております土地、建物の数量についてはいろいろな説が行なわれておる。先般も衆議院において、たしか社会党の淺沼委員長だったと思いますが、その質問の中で、米軍提供されている土地は四国の大きさがあるというような質問があった。私どもはちょっと解せなかったのでありますが、講和発効時において米軍が使用しておりました施設及び区域は一体どのくらいあったのか。また講和発効後、現在までに返還を受けました施設及び区域がどの程度なのか。また現在、米軍が使用中の施設及び区域がどのような状態になっているか、数字をあげて御説明を願いたいと思いますし、わかりやすいために、たとえば東京都の面積と比べるとか、大阪の面積と比べるとかというようなことで、わかりやすく一つ説明を願いたいと思います。
  132. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) 講和発効時におきまして米軍が使用しておりました施設及び区域の件数は約二千八百件でございまして、その土地の総面積は約四億九百余万坪でございます。また建物も約四百十万坪でございまして、その後、今日に至りますまでに逐次返還をみまして、本年の一月現在の統計では、件数といたしまして二百五十、土地の面積が約一億百万坪、建物が約百六十四万坪となっております。  なお、お話通り、この土地の面積も建物も、すべて四分の一以下に減っているのでございますが、この一億坪と申しますのをわかりやすく申しますと、全国の都道府県の中で最も小さい面積のものは大阪府と称しておりますが、この大阪府の面積の一割八分くらいに相当するものでございます。従いまして、平和条約発効当時におきましても、大阪府の面積に比較いたしましてその約八割程度でございました。現在、またその一割八分程度ということになっているもので、決して四国のようなもの、あるいはその他の府県のような大きなものではございません。  なお、この内訳を具体的に申しますと、東、北と呼ばれております富士山の山ろくの演習場等が大部分の面積の相当部分を占めているのでございますし、また先ほど二百五十件と申しましたのも、この数字は米軍との取りきめの件数でございまして、その二百五十地域あるいは地区があるという意味ではございません。一地区、たとえば横須賀の軍港のようなものの地区におきましては、港湾設備あるいは司令部の設備、倉庫の設備、その他の設備、いろいろのものがそれぞれの理由や歴史に基づいて、別個の取りきめ件数をいたしておりますので、あそこの一つの地域におきましても十数の取りきめ件数があるわけでございます。また大部分の種類を占めますのは通信施設でございますが、これは各施設区域の連絡あるいは中継のための設備で最も数が多くて九十ほどになっておりますが、これらはいずれも山の上、あるいはへんぴな海浜付近、こういう所にわずかの土地あるいは建物を使用しておるのでございまして、具体的に申し上げますと、最も重要なものと考えられますのは、軍港施設としまして横須賀及び佐世保の二カ所、飛行場のものといたしまして東京付近の立川、横田、それから埼玉県の入間川というような所、東北におきます三沢の飛行場、それから神奈川県の厚木の飛行場、中国地方へ行きまして岩国、それから九州の板付が重要な飛行場でございます。なお軍司令部といたしましては、横須賀の海軍の司令部、神奈川の同じく座間にあります陸軍の司令部、東京都下の府中におります空軍の司令部兼これが在日統合軍の司令部となっておるのでございますが、そのようなものが重要なる軍の施設でございます。  以上の所が現在における軍の使用しおります施設及び区域の概況でございます。
  133. 井上清一

    ○井上清一君 新協定の第二条1(b)項に「行政協定の終了の時に使用している施設及び区域は、両政府が(a)の規定に従って合意した施設及び区域とみなす。」と、こうありますが、このような規定を今度新たに設けました理由はどういうことでございましょうか。
  134. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) 現在米軍が使用しておりまする施設区域は、ただいま御説明申し上げた通りでございますが、これに関しましてその実際の使用状況及びその必要性から見まして、それをあらためて一つ一つについて新たに取りきめを行なうという煩を省きまして、この必要性を認めてそのままこれを新しい協定施設及び区域にする、こういう趣旨がその行政協定の二条に書かれておるのでございます。ただここに問題となりますのは、実は御承知だと思いますが、平和条約発効のとき、すなわち、ただいまの現行行政協定ができましたときに取りきめました施設及び区域のうちに、当時軍の使用実態と日本側のそれに関する要望、必要、その土地の実情あるいは関係方面の経済的事情、日本政府としてこれは返還してもらいたい、あるいは少なくも使用条件あるいは面積等を縮小してもらいたい、こういうような希望のものがございまして、これに関しましては意見の一致を見ておりませんでございました。従って、これの使用は、いわゆる岡崎・ラスク交換公文の規定に基づいて米軍側の使用を認めております。通常われわれがこれをそのような意味合いから保留施設と申しておりますが、その保留施設というものが当時五十ほどありました。この五十のものに関しましても、今回の行政協定が発効すれば、そのまま正式な提供区域となるのかどうかという問題になるのざいますが、この五十の保留施設に関しましても、ただいままで向うとの折衝におきまして約三十はすでに返還を見ておりますし、数件は条件の変更等によりまして正式な提供ということにいたしておりまして、十三だけがただいま残っております。これに関しましても昨年来鋭意折衝を重ねておりますので、この十三のものにつきましても、半数ぐらいは返還、あるいは一部返還、縮小という趣旨で解決し、そのまた半数のものに関しましても条件等の取りきめを行ないまして、近く解決する見込みでございます。
  135. 井上清一

    ○井上清一君 ただいま保留施設に関しまして御説明を承ったのでございますが、この保留施設の問題につきましては、地元関係が非常に熱望しておるものもございますし、また日本として、そのままではどうも承認しかねるというような問題もあろうかと思いますが、できるだけ早く政府としましてはこれが解決を見るように一段と御努力をお願いをいたしたいと思うのでございます。今後、将来地位協定というものを改正する必要がもし起こった場合には、どういうふうにして改正を行なうことができるかどうか、改正をするのかということを伺いたい。
  136. 森治樹

    政府委員(森治樹君) 地位協定は、その性格上、非常に技術的な事項を多く含んでおりますので、安全保障条約そのものと異なりまして、第二十七条に「いずれの政府も、この協定のいずれの条についてもその改正をいつでも要請することができる。その場合には、両政府は、適当な経路を通じて交渉するものとする。」という規定がございますので、もし改正の必要が生じました場合には、この条項を援用いたしまして改正交渉に入ることになる次第であります。
  137. 井上清一

    ○井上清一君 一般的な問題はこの程度にいたしまして、次に私は、地位協定第十八条第五項(g)項に関しましてお伺いをいたしたいと思うのであります。  現在、公務執行中の合衆国軍隊の行為によります海事請求権は、他の請求権と同様に、行政協定第十八条第三項の規定を受けてきめられております民事特別法の規定によりまして、日本国が被害者に補償金を支払い、補償につきまして係争が生じました場合には、日本国裁判所の確定裁判が両当事国及び請求権者を拘束するということに相なっております。ところが、第十八条五項(g)の規定によりまして、現在の協定のような処理方法ができなくなるのであります。そういたしますと、今後これらの海軍請求権の処理方法が問題になってくるわけでございます。これらの経緯について御説明を願いたいと思います。
  138. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) お話通り、現行の行政協定十八条におきましては、海上の事故の損害請求に関しましても格別の規定がなく、一般のものと同様な措置でございます。この十八条に関しましては、先ほどアメリカ局長説明いたしました通り、全般的にNATOの諸国並みになりまして、国有財産に関する相互放棄の問題等も、範囲を縮めてわが国の非常に有利なように改定され、また、公務上外の判定につきましても、日本人たる仲裁人がこの最終決定権を持つと、このようなふうに改正を見たわけでございます。同様に、海事の問題につきましても、一般の国際通則に従いまして、この海上事故の損害という特殊事例に関しまして、NATO諸国並みの国際通念に沿ったところの措置になったわけでございます。これに対しまして、被害者の方がおそらく当惑されると考えまするのは、その申請の書類なり、あるいはその損害に関する交渉、折衝なりに直接米軍を相手にしなければいけない。従いまして、言語の関係あるいは関係の法令規則の関係について不利不便を感ぜられる、このような状況になるおそれがあるというふうに考えておりますので、これに関しましては、従来と同様に、調達庁が実質的にこの措置に当たりまして、その不利不便を除く。そのために、先ほどの整理法案の中にも、調達庁の長官がこの請求の処理のあっせんに当たり、紛争の処理に当たるという規定が設けられてあるわけでございます。なお、それ以上に裁判問題になるということでありますと、アメリカの裁判所への提訴ということになりますので、格別な政府の援助も必要かと存じますので、これに対しては特別の必要な法律措置も考えておる次第でございます。
  139. 井上清一

    ○井上清一君 ただいま調達庁長官の御説明は大体わかりましたが、この(g)項を改正いたしましたことは、まずNATO協定並みにした、こういう理由でございます。しかしながら、この海事請求権者のうち、大企業者とか、あるいはまた、大きな船の持主などは、合衆国と交渉する能力があると考えられますけれども、中小企業者とか、あるいはまた個人、ことにNATOの沿岸諸国とは違いまして、漁業——漁船関係の業者の非常に多いわが国といたしましては、この損害をこうむったこれらの業者が、ただいまお話になりましたような請求権の行使というのはなかなか事実上むずかしいのじゃないかというふうに考えるのでございます。それで、もう少し零細な漁業者とか、あるいはまた漁船、漁業施設等に対する被害に関する損害の請求権というものに対して、国が力添えをしてやって、そうして、その損害の回復をさせるためにいろいろ御苦心をされておる点はよくわかりますが、もっと具体的にどういうふうにするかということを、十分一般の方が納得することができるように、詳しく御説明を願いたいと思います。
  140. 森治樹

    政府委員(森治樹君) 調達庁長官から御説明いたしましたように、この十八条の五項の規定は、NATOの規定によるものでございまして、その趣旨としましては、海上の船舶等の衝突事件につきましては、相当複雑な要素を包含いたしますし、陸上の損害事件とはおのずからその処理方法を異にする必要があるという趣旨から設けられた規定でございます。しかしながら、わが国におきましては、あるいは浅いところで養殖をされております動植物の関係ですとか、あるいは漁網に対する損害等が、NATO諸国に比べまして、非常に発生する場合が多いのじゃないか。しかも、これらの事柄につきましては、必ずしも、海上の船舶の衝突事件というようなものと性質を異にいたしておりまして、陸上の損害事件とこれが処理方法を異にする理由もございませんので、米国側とも話しまして、第一には浅い海におけるノリ等の動植物の増、養殖、二は漁網、三は二十トン未満の小船舶の事故で一件の請求額が二千五百ドル以下のものは、これは従来と同様の処理手続によって解決していくという日米間に合意を見ておる次第でございます。従いまして、今申し上げました諸点につきましては、これは従来と同じ手続によるわけでございます。  なお、今後これらと同種の事件で、従来のような手続によってやることが必要なものは、合同委員会でこれを決定し得るということになっておる次第でございます。これらは、従いまして、従来の手続によるわけでございますが、これらに該当しません事項は、おのずから請求の処理手続が異なるわけでございまして、これらの案件につきましては、調達庁長官から御説明いたしましたように、調達庁があっせんをするということになっております。調達庁があっせんはいたしまして、海軍関係の事件でございますと横須賀の司令部の法務官、空軍と陸軍の関係でございますと横浜の補償担当官、これらとの間に調達庁で折衝されまして、そうしてアメリカの国内法の手続としまして、処理方法としまして、行政手続と司法上の手続とが法律で確立されております。で、海軍につきましては、百万ドルまでの案件は海軍長官が議会に諮問することなく支出し得ることとなっております。陸軍と空軍につきましては、五十万ドルまでの案件は行政手続として処理し得るということになっておりますので、この法律に基づいてアメリカ側は調達庁との間に行政上の処理手続を進めるわけでございます。
  141. 井上清一

    ○井上清一君 先ほどこの(g)項に該当する請求権について、国内措置によって事実上被害者に不利にならないような立法措置を考えておるというようなお話でございましたが、まだ提案にはなっておりません。これらの立法措置の進展状況を承りたいことと、それらの法案の要綱等は、この際資料として配付を願いたいと思うのでございますが、この立法措置の経過等について御説明を願いたいと思います。
  142. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) この関係の法案につきましては、すでに内閣において決定いたしておりますので、その要綱等は御参考に提出いたします。近くなお法案を提案されるものと考えております。   —————————————
  143. 草葉隆圓

    委員長草葉隆圓君) 鈴木恭一君。
  144. 鈴木恭一

    鈴木恭一君 私は地位に関する協定につきまして、主として運輸、通信に関しまして二、三所管大臣並びに政府委員に御質問申し上げたいと存じます。  言うまでもなく、今回の地位に関する協定、すなわち新安保条約が対等の立場で締結されたということは、協定の面におきましても非常に面目を一新いたしておるのでございます。その点、国民の一人として喜ぶものでありますが、特に通信、交通、航空といったようなものは、いわゆる行政権の面におきまして問題を起こしやすいのでございます。国民の意思の伝達機関である通信というものが他国によってコントロールされるようなことがあってはならないということは申し上げるまでもないのであります。さればといって、軍が進駐いたしまする際に、電波、放送、これを含めまして必要不可欠な要件であるということもよくわかるのでございまして、その調節をどうするかというのが、すなわち地位に関する協定に相なっていると思います。  いろいろ政府の御苦心によりまして、協定内容も変わって参っておりますが、内容に入りまする前に一言私お伺いいたしたいのでありますが、今度、前には行政協定であったものが今度は地位に関する協定、私ども法律用語といたしまして、何かこの地位に関する協定というような言葉が、先ほど井上委員からもそのお話がございましたが、この協定が対等の立場に立ち、いろいろわが方の立場を考えての協定ではありますけれども、何か進駐軍に別な治外法権的な地位を与えるんだというふうな印象をどうも私は持ちやすいのであります。これはこの言葉がまだ熟していないということからかもしれませんが、前の行政協定と言った方が、ある制限的な協定のように思えるし、また条件に関する協定というふうな表現をなぜ用いられなかったのであろうかというふうに考えるのでありますが、その辺の事情はいかがでございましょうか。
  145. 高橋通敏

    政府委員高橋通敏君) 御指摘の点でございますが、従来までの協定につきましては、これは単なる、何と申しますか、日米間の行政協定——日本国アメリカ合衆国との間の安保条約第三条に基づく行政協定というふうな読み回しをしているのでございます。しかしこの実体を見ますと、この施設及び区域についての問題及び在日米軍地位——ステータスといっておりますが、地位に関することが協定内容の主体をなすものでございますから、具体的にその内容の主体をなす点を取り上げまして、これはまあNATO協定なんかでも同じような文言を使っておりますが、それがより適当ではなかろうか、すなわち、むしろ治外法権的な地位がないからこそ、治外法権的なステータスと申しますか、権限というものがないからこそ、特にステータス——地位ということにいたして、はっきりとそれを定めるのだというふうな趣旨をここで表わしたつもりでございます。
  146. 鈴木恭一

    鈴木恭一君 それは言葉の上でございますので、むしろ私は逆に考えるような気持でおったのでございます。よくわかりました。  そこで通信の問題に入りますが、ただいま進駐軍はFENという形で放送をいたしております。これは軍人、軍属、あるいは娯楽放送を国内でいたしているのでありますが、またその他軍事上の通信に中波、短波も使っていると思います。またいわゆるインフォーメーション・サービスという名においてNHKから放送をいたしておりますが、これらのことは、結局三条の二項によって行なわれておるのでありましょうか、またその態様によって異にいたしておるのでありましょうか。
  147. 植竹春彦

    国務大臣(植竹春彦君) お答えいたします。お説の通り第三条三項によって協定に基づいてやっておりますが、ことにただいまのインフォメーション・サービスにつきましては、三条二項の末段にあります暫定措置によりましてNHKが放送いたしております。
  148. 鈴木恭一

    鈴木恭一君 一時的措置という、暫定措置でやっておると言われるのでありますが、解釈のしようによっては、この二項の第二段目にあります、「合衆国が使用する電波放射の装置が用いる周波歌、電力及びこれらに類する事項に関するすべての問題」は、両政府の当局間の取りきめにより解決しなければならない。これは別に法令の範囲内とも書いておりませんし、この取りきめは相当広く取りきめられ得るのではないかというような解釈もできるかと思うのであります。もちろん今般、先にありました一時的措置によって留保しておった。権利をこの際取り除かれました。これではっきりはいたすようでありますが、その点に多少の疑義があるやと思いますが、その点はいかがでございましょう。
  149. 植竹春彦

    国務大臣(植竹春彦君) その点は取りきめによってきまるのでありますから、わが国の不利益になるような取りきめはいたさないわけで、また行政協定にかわります、今度は新しい協定に基づきまして、その目的、その精神に違反したような取りきめはいたさないわけであります。従ってその御懸念はないことと御理解いただきます。
  150. 鈴木恭一

    鈴木恭一君 大臣少し私の意味をおとり違いになっております。私は、この安保の条約は、日本を防衛するために相互の信頼と理解の上に立って仕事をいたしておるわけでございます。われわれとしてはできるだけ法の許す範囲内においてアメリカの行動を自由ならしめるというような考えも政治的にあるわけでございます。私がお尋ねいたしておるのは、不利であるから、不利でないからという意味じゃございませんので、この条文のどれでおやりになるのかということをお尋ねいたしておるのであります。
  151. 植竹春彦

    国務大臣(植竹春彦君) 周波数その他の、ただいま御指摘のことに関しまする協定でございまするから、その範囲内でアメリカ軍はその基地内で電波を発射することはできますけれども、これをNHKに、ただいままで三条二項の末段に基づいてやっておりましたような、あのようなNHKを通してやりますやり方は今後はできないことになります。
  152. 鈴木恭一

    鈴木恭一君 そうしますと、まあ事の善悪は別といたしまして、あの一時的の権利が留保せられておった、それがなくなったからやることができなくなったというのが、御解釈のようでございます。私も実はそういう意味考えておるのでありまするが、衆議院等におきましてその点がいろいろ問題になっておりましたので、それで私ははっきりいたしておきたいと思ったから御質問申し上げたのであります。  そうしてさらに御質問申し上げたいのは、まあその条項が取り除かれた理由、これはもうアメリカの方で、もうやりたくないのだというので取り除かれたのか、日本の方で困るというので取り除かれたのか、日本の方で、いや、別に方法があるからあの条項は要らないのだということで取り除かれたのか、いろいろ理由はあるのでございましょうが、しかし、やはりわが方といたしましては、現にそういうふうな放送をいたしておったのでありまするから、別にかわるべき——すなわち私はそこで第三条の二項の第二段目に入って、両者の取りきめによらなければならないということが生きて参りまして、所管省といたしましては、それに対する、何と申しまするか、その取りきめをいたさなければならない義務か責任というようなものがあるのではないか、さように考えますが、大臣はいかにお考えになりますか。
  153. 植竹春彦

    国務大臣(植竹春彦君) ただいまのところ、政府といたしましては、第三条二項の末段の暫定的以下の条項が削除いたされておりますので、新協定が発効いたしますると、この種のNHKによるような放送はしないというだけの考えを持っておるにとどまっておりますけれども、また、近き将来あるいは遠い将来におきましても、その取りきめの必要が起こりましたときには、あらためてよく日米協議をいたしまして事をきめていきたい、さように考えております。
  154. 鈴木恭一

    鈴木恭一君 いまだきまっておらないというお話でございますので、ぜひそういうふうにしていただきたいと、私、国民の一人として思うのでございますが、大臣は衆議院におきまして民放を使えるのだと言われたこともありますが、また、民放は放送法の適用等もありまして困難であるというようなことも言われましたが、私は、放送法はここに特例がないのでございまするから、当然民放でおやりになります場合には放送法の適用があると私は思うのでございます。また進駐軍が某地内でこの種放送をいたしましても、これはFENその他も同様だと思うのでございますが、現在も放送法の適用を受けておると思いますが、その点もあわせてこの際お尋ねしておきたいと思います。
  155. 植竹春彦

    国務大臣(植竹春彦君) ただいまの御質問の民放で放送できると申しましたのは、民放におきましては、放送法に規定してございまする通り、スポンサーをつけることができますので、アメリカの当局がスポンサーという立場におきましては民放でできるということを申しましたのでありまして、現在NHKが三条二項の末段に基づきまして行なっておるような形の放送は、それは新協定のもとではできません。さように解釈いたしております。
  156. 鈴木恭一

    鈴木恭一君 よく了解いたしました。しかしこの問題は、軍としても私は必要な放送の一つであると考えております。そういうふうなわけで、従来の一時的な措置の権利を留保することをやめたからといって、この種の放送に対しましては、政府はできるだけの範囲内において協力するようにお願いいたしたい、かように存じます。  そこで、さらに私、根本の問題でございまするが、この周波数の割当は現在どういうふうになっておりまするか、その点お伺いいたします。
  157. 甘利省吾

    政府委員(甘利省吾君) 米軍が使います電波の割当につきましては、日米合同委員会において、米軍が防衛上必要とする電波、そういうものにつきまして同意をしまして割当をするわけであります。
  158. 鈴木恭一

    鈴木恭一君 国際法上、電波の性格でございますが、これはいろいろ議論があると思いますが、もちろん日本で使う電波は、日本の主管庁を通して登録をして電波の運用をいたすというのがもう国際間の通念になっておることはよく承知いたしております。しかしそれはただそういう取りきめをしておるだけでございまして、かりに進駐軍が自分の電波を——アメリカの登録した電波を日本国内で使うというふうなことは、これは自由じゃないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  159. 甘利省吾

    政府委員(甘利省吾君) 国際条約におきまして、軍が使う周波数というのは自由になっております、一応原則としましては。しかし、日本における米軍が使用いたします場合には、この安保条約の精神に合う使用目的、それを行政協定の条項に基づいて日米相互間で取りきめたものだけを米軍が使う、こういうふうになっております。従って、電波を割り当てる主権と申しますか、権能と申しますか、そういうものは日本政府にございまして、一波といえども米軍が使います電波は、すべて日本政府同意を得たものでございます。
  160. 鈴木恭一

    鈴木恭一君 それでは、一時的な措置として留保されたあの条項が消えますことによって、そういうふうな問題はないと心得てよろしゅうございますか。残っているものはもうない、かように心得てよろしゅうございますか。
  161. 甘利省吾

    政府委員(甘利省吾君) 一時的措置で相当多数の電波が使用されておりましたが、それらはすべて合意その他によって整理されまして、現在におきましては、このNHKの施設を使うというこの点だけが一時的措置にかかって行なわれております。ほかの問題はございません。
  162. 鈴木恭一

    鈴木恭一君 了解いたしました。  そこで次に、電電公社の電話料金の問題でございます。これも衆議院でいろいろ問題になったようでございまするが、米軍との間に電電公社の電話料金に未納金が非常に多い、今日新協定ができますにもかかわらず、まだこの問題が解決されていない。これはどういうことでございましょうか、お尋ねいたします。
  163. 植竹春彦

    国務大臣(植竹春彦君) これは米軍が専用に使用いたしております通信回線の一部であります終戦処理費またはその後日本が独立いたしましてから後には安保諸費に関しまする電話の使用料の問題であるわけでありますが、このことにつきましては、米日間に意見相違がございまして、わが国におきましては、これは行政協定の第七条に基づく公共の役務または公益事業であるという立場から、当然これは料金をもらうべきものである。しかるにアメリカの方では、行政協定の第二条に基づくものであって、これは施設及び地域におきまする設備とか、あるいは備品とか、そういったような定着物に関しまする問題であるから、これは当然無料であるべきものだという説を向こうで主張いたしまして、しばしば日米の合同委員会で折衝いたしましたのですが、まだ食い違っておりまして、結論に到達いたしておりませんので、わが方の主張でありますところで計算いたしますと、大体諸官庁並みの料金の算定からいたしますと、四十億に上るお金がまだ日本に入っていない、電電公社に入っていない。そこでこの問題がまだ未収金として計上することすらできないままであるわけでございますが、過日マッカーサー大使にお会いしましたおりにも、この問題はできるだけすみやかにお互いに話し合おうということになっておりますが、きょうは電電公社の総裁も出席いたしておりますので、説明員として詳細をまた公社の方から御説明をいたさせたいと存じます。
  164. 大橋八郎

    説明員(大橋八郎君) お等え申し上げます。ただいま四十億の未収金があるという問題が郵政大臣から詳細お答えがありましたので、それ以上に私からさらにつけ加えて申し上げることはないのでありますが、今後さらに十分郵政当局にもお力添えを願いまして、できるだけ早くこれを解決したいと思っております。
  165. 鈴木恭一

    鈴木恭一君 お聞きいたしますると、まあ従来電話料金としてもらっておった額は四百億その一割が問題になっておるのだということは、私も実は事務当局からお聞きいたしました。従ってこの問題は、まあ事務上と申しまするか、営業の面にはよくある問題であります。私はこれがいろいろ大きく取り上げられておるようでございまするが、さようなものではないと思っております。が、しかし、ただいまも大臣からマッカーサー大使の方にその解決について交渉中というふうなお話もございましたが、これはやはり専用線というものが比較的日本では高いというふうなことに起因しているやに考えられます。そういうふうに問題を大きく取り上げますと、結局自分の方に電波をよこせ、自分の方でやるというようなことにまで及ばないとも限らない。そういうふうな点について大臣はいかようにお考えでございましょうか。
  166. 植竹春彦

    国務大臣(植竹春彦君) この点につきましてはまだ今後、向こうと交渉してございませんので、アメリカがどういうふうな気持でおりますか、その辺のこともとくと交渉の上で考えていきたいと、さように考えております。
  167. 鈴木恭一

    鈴木恭一君 次に、いろいろ労働組合等の関係で問題になっておりまする日韓ケーブルの問題でございます。公社はどういう根拠に基づいて日韓ケーブルを米側に使わせているのか。また、障害修理に韓国まで出かけていく根拠はどこにあるのか。もともとこれは日本のケーブルでありましたものが、例の平和条約によりまして、半分が日本側であり、半分は相手の韓国側になっておるようでございまするが、この辺の事情をお聞かせ願いたいと思います。
  168. 高橋通敏

    政府委員高橋通敏君) ただいまの御指摘の点でございますが、御指摘のように、平和条約の第四条の(c)項でございます。この条項におきまして、「日本国とこの条約に従って日本国の支配から除かれる領域とを結ぶ日本所有の海底電線は、二等分され、日本国は、日本の終点施設及びこれに連なる電線の半分を保有し、分離される領域は、残りの電線及びその終点施設を保有する。」と、このような規定になっております。また、これに加えまして平和条約の第二十一条には、この条約につきまして、「朝鮮は、この条約の第二条、第四条、第九条及び第十二条の利益を受ける権利を有する。」、従いまして、この第四条の規定の利益を朝鮮側も、これによって享受する、こういうふうになっておる次第でございます。従いまして、原則的な問題といたしましては、このような二等分するということにおいて、平和条約において原則的にはきまっておると、このように考えております。
  169. 鈴木恭一

    鈴木恭一君 どういう根拠で修理に出かけていっておるか。
  170. 大橋八郎

    説明員(大橋八郎君) お答え申し上げます。  先ほど御説明のありましたように、条約に基づきまして、半分は日本の権利に属するもの、あとの半分は韓国側に属することに条約面はきまっておるのであります。ただ、現在の状態におきましては、まだ韓国側においても、平和条約調印していないという状態にありますので、従って、韓国側に将来帰属すべきときまりておるこの部分についての法律上の見解というものについて、いろいろ学説があるようであります。まだ韓国側に属する権利というのは、まあいわば希望的といいますか、潜在権といいますか、その程度のものであって、韓国側の権利が確定するまでは、依然として日本側で、これを、管理権といいますか、所有権もあるかもしらないと、こういう意見もあるようであります。しかし、とにかく条約面で、すでにきまっておるのでありますから、そこまで日本の権利は主張できないといたしましても、少なくとも現在の状態においては、日本側としての所有権はないけれども、まだ韓国側のものとはっきりきまった状態でもない。従って、現在の状態は、アメリカ軍においてこれを管理しておるという状態である、こういうことで、そのアメリカ軍の管理権に基づきまして、アメリカ軍から日本に対して、日本の所有の分と合わせて全体を一つ正常な状態に維持し、そしてこれをアメリカ軍に占用せしめてもらいたい、こういうアメリカ軍との契約に基づいて、現在電電公社においては、これをサービス提供している次第でございます。
  171. 鈴木恭一

    鈴木恭一君 そうしますと、従来電電公社が、いろいろ問題になっております、あるいはベトナムに調査に行ったとか、あるいは台湾の海溝の調査に行ったとかいうふうな、電電公社の契約、公社の公社法に基づいた契約というわけでなしに、この行政協定の第七条の役務の提供であって、そしてそれは、第十二条の調査の契約である、かように解釈して差しつかえないのでございますか。
  172. 大橋八郎

    説明員(大橋八郎君) ただいまお説の通り考えております。同時に、お話のありました、ベトナムなり台湾の無線の施設を調査するという契約は、これは公社法第三条第二項の規定に基づきまして、委託契約によって公社がその調査を引き受けたのであります。いわばコマーシャル・ベースによって公社が契約をしたものであります。ところが、日韓間のケーブルの問題は、これは、ただいま御指摘通り、行政協定の第七条及び第十二条の規定に基づきまして、日本がサービスを提供している、かように考えております。
  173. 鈴木恭一

    鈴木恭一君 そこで、先般労働組合が、その就労を拒否した、しないというような問題で、組合の幹部が馘首されまして、それが裁判になっておりまして、第一審では当局が敗訴になったように聞いておるのであります。これは、いわゆる条約上——その勝訴、敗訴は別といたしまして、これはあの砂川事件のように、条約上義務がないのだというような問題ではなく、これは単に公労法上の問題であると、かように解釈してよろしゅうございますか。
  174. 大橋八郎

    説明員(大橋八郎君) ただいま御指摘通り、これは行政協定上、その他条約上の問題じゃなくて、全く公労法上の労働問題の関係と心得ております。
  175. 鈴木恭一

    鈴木恭一君 了解いたしました。  次に、気象業務のことについてお尋ねいたします。協定の第八条によりますると、日本国政府は、両政府の当局間の取りきめに従い、気象業務資料を米軍側に提供することになっております。が、米軍日本国政府への提供義務というものを規定しておりません。これはいかにも片務的のように考えられまするが、その理由はいかがなものでございましょうか、お尋ねいたします。
  176. 楢橋渡

    国務大臣(楢橋渡君) お尋ねの第八条でありますが、第八条は、一見片務的な表現になっておりますが、実際におきましては、台風に関する諸情報、飛行機観測資料、北米大陸の資料、その他の気象資料が、米国側から日本側に提供されておりまして、必ずしも片務的ではないのであります。また、日本側から提供する資料も、通常の国内業務資料というものを分送するものでありまして、米側のために特別な追加作業をやっておるのではありません。そういう事態になっております。
  177. 鈴木恭一

    鈴木恭一君 なぜ私がそれを強く申しまするかと申しますると、同条の(d)項を見ますると、「地震観測の資料(地震から生ずる津波の予想される程度及びその津波の影響を受ける区域の予報を含む。)」のだというようにございます。先般のチリ地震のあの津波、全く私どもは寝耳に水であったのであります。一瞬にして数百億もの財を失なった。楢橋大臣は、ぜひ自分たちとしては国際的な協力体制を作る、あるいは内部の機構を改正する、研究機構をもっと拡充したい、いろいろの御配慮もあるようでございます、しかし非常に手近に、手近というと少し語弊がございますが、この条項が、もし双務的に向うからでも聞き得るのだというようなことでありまするならば、こういうものを救われたんではないか、かように私ども考えるのでありますが、そういう点に対する御処置等かございますれば、御説明をお願いいたしたい。
  178. 楢橋渡

    国務大臣(楢橋渡君) 御指摘の点、ごもっともでありまして、第八条の(d)項に、「地震観測の資料」というところで、「(地震から生ずる津波の予想される程度及びその津波の影響を受ける区域の予報を含む。)」ということがあるのであります。行政協定第八条の(d)項で、こういう地震の情報は、日本側から米国側へ通報することになっております。しかし現実には、これらに対しまして、米国側の情報は、日本側には入ってくることの慣例になっておるのでありまして、従って今回のチリ地震津波につきましても、米国側からの情報は受領しておったのでありますが、その内容は、非常に有益なものであったにかかわらず、気象庁が、これまでの知識や経験、まあ地球上の向う側に起こった地震というようなことで、この点は、やや軽視した感がありまして、そこで警戒警報の確信を得るに至らずして、不十分な点から、今回のような防ぎ得る予防をなし得なかったという点は、まことに遺憾でありまして、従いまして、こういうような点につきまして、気象庁といたしまして、行政協定とは別個に、津波に関する情報の国際的な相互交換を確実に行なうような計画をいたしておりまして、今鈴木委員の御指摘になりましたような諸点につきまして、ことに気象庁の内部機構、あるいは津波に対するもっと科学的な分析、今申し上げました国際的な情報の交換、あるいは協定等に十分に力を入れて、再びこういうことのないように努力いたしたいと思う次第であります。
  179. 鈴木恭一

    鈴木恭一君 了解いたしました。  次に、航空についてお尋ねいたします。日本の防衛のために飛行場を使用することを許した以上は、航空の点について、ある自由というものは、これは、もう当然でございます。合意書を拝見いたしますと、飛行場に入る、あるいは基地から飛行場へ来る、これは飛べるのだというふうになっておりますが、これを拡大解釈いたしますると、米軍の飛行機というのは、日本全土すべてにわたって飛べるのだというようなことになるのでございます。そのよしあしは別といたしまして、そういうことに相なっておるのでございましょうか。お尋ねいたします。
  180. 楢橋渡

    国務大臣(楢橋渡君) お答えいたします。  合衆国の軍隊に対して日本の駐留を認めておる趣旨に基づきまして、米国の航空機が機動性を確保する、また駐留の目的のために出入国の自由及び国内の行動の自由を認めることを、行政協定の第五条において取りきめておる次第であります。なお米国機も、一般航空機と同様にわが国の航空管制に服することになっておりまして、この航空管制は、運輸大臣の管轄になっておるのであります。演習行動につきましても、あらかじめ日米間で具体的に合意された範囲で行なうようにしておるのでありますから、この点から申しますれば、領空主権の侵害されておるということにはならないと実は思う次第であります。
  181. 鈴木恭一

    鈴木恭一君 ただいまの御説明で、ある点まではわかったのでございますが、協定の第六条で「すべての非軍用及び軍用の航空交通管理及び通信の体系は、緊密に協調して発達を図るものとし、かつ、集団安全保障の利益を達成するため必要な程度に整合する。」のだ。このために両者間の取りきめによって定めるのだ。これは通信においてもそうでございまするが、この取りきめによりまして、自分の飛行機はもちろんでありまするが、三沢とか板付は、民間機が、それは外国のものであろうと、あるいは日本のものであろうと、米軍のコントロールに服すのでありまして、常識としては、何だか米軍がやっておるような気がいたします。特に一旦緩急あるような場合には、どういうことになりまするか。これはちょっと違っているかとも思うのでありまするが、全空域に対して日本の航空管制はあるのだと運輸大臣は申されましたが、その点そうでもないように思えるのでありますが、いかがでしょうか。
  182. 楢橋渡

    国務大臣(楢橋渡君) 今一般の米国の飛行機は、日本領空を飛ぶ場合における問題は、今お答えを申し上げましたが、今鈴木委員のおっしゃいます緊急の場合、たとえば敵機が襲来したというような場合における処置はどうなるか。これは保安管制と交通管制との問題でありますが、航空交通管制に関しまする日米間の合意におきましては、緊急の必要がある場合には防空責任担当機関、これは、在日米軍及び防衛庁がなにしますが、これに保安管制を行なうことを実は認めておるのであります。保安管制とは緊急事態におきまする防空活動の必要性から防空責任担当機関が行なう措置でありまして、それに対して、一定の民間航空の、たとえば航行を禁止するとか、そういうこともやる、防空に関することをその責任担当機関が行なうことでありまして、一定区域の航空交通の制限、またその内容の一部をも含まれておることが予想されるものであります。緊急事態におきましては防空責任担当機関におきましては、保安管制を行ないまして、運輸大臣に要請があれば、運輸大臣におきましても、航空交通管制上必要な措置をとることになっておる次第であります。
  183. 鈴木恭一

    鈴木恭一君 次に、これはほんの一例かもしれません、全般にそういうことに相なっておるとは存じませんが、あのジョンソン基地米軍の防空センターがある。日本の運輸省の航空センターもそこにあるようでありまするが、何か軍の仕事を日本の役人がいたしておる、アメリカ人に使われているのだというような印象を与えておるのであります。これは常識上どうかと私どもも思うのでありまするが、これはほんの一例と思うのでありますが、また真相はどうなんでございましょうか。
  184. 辻章男

    政府委員(辻章男君) お答え申し上げます。  今御指摘がございましたように航空交通管制本部がジョンソン基地内の庁舎を借りましてやっておるのは事実でございます。これは、従来の米軍が航空交通管制センターの仕事をしておりました施設をそのまま引き継いだ関係で、そういう体制をとっておるのでございまして、仕事の内容といたしましては、航空交通管制は、米軍の防空的な仕事とは全然別個の仕事でございまして、完全に独立してやっておる次第でございます。
  185. 鈴木恭一

    鈴木恭一君 わかりました。  最後に一点お尋ねいたしますが、協定の第二条には、たとえ米軍の使用しておる施設区域でも、必要がなくなったときには再検討して日本へ返還するというような規定もございます。これは当然の措置だと存じまするが、わが飛行場などは、平和条約締結いたしますまでは現実に飛行機もなかったのでありますし、飛行場も必要はなかったのでありまするが、これは米軍が管理してもしかるべきものでありましょう。そういう点、これは語弊があるかもしれませんが、米軍はその権限の上に眠っておる、またこちらは御無理ごもっともである、言い出しもしないというようなことがあっては、これは相済まんと思うのでございます。これはほんの、間違っておるかもしれません、間違っておるかもしれませんが、現在調布の飛行場、これなどは、わが方でいろいろ民間の人が拝借いたしておるようであります。あるいは遊覧飛行に使っておるとかあるいは離着陸の練習に使っておる。また陸軍の飛行クラブもあるようであります。そういうふうなものにつきましては、羽田の空港等も相当混んでおることもわれわれは承知いたしております。ぜひこういうふうな返還というようなことに対して、やはり常に配慮をするべきではないか。また向うとしましても、正当な要求というものは必ず私は通り得るのだ。お互いが信頼と理解の上に立っておるのでありまするから、そういうことも、私、感ぜられます。  そういう点はいかがでございましょうか。
  186. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) お話通りこの条項に基づきまして、現在米軍が使用しております施設及び区域でございましても、その使用度合いのいかんにより、すでに使用度合いが非常に減じておるのではないか。あるいは当分の間使用を休んでおる状況がある。それが全般でなくても一部でも、そういう事情がある。これらのものに関しましては、絶えず合同委員会の中にあります施設の特別委員会に持ち出しまして、それらの返還あるいは日本側との共同使用という問題を検討し、またこちらから要求すべきものは要求する。このような措置をとっております。米軍側でも、常にこの条項に従って、自分の施設及び区域の使用度合いを調べて、その都度それに応ずる返事をいたして参っておりますが、それに従いまして、鋭意努力をいたしております。
  187. 鈴木恭一

    鈴木恭一君 了解いたしました。私はこれで……。   —————————————
  188. 草葉隆圓

    委員長草葉隆圓君) 吉武恵市君。
  189. 吉武恵市

    ○吉武恵市君 私は、新しい協定の第十二条に関係いたしまする労務問題についてお尋ねいたしたいと思います。  大体労務問題は、国内の一般問題としても相当問題がやかましいときでありまするので、特に駐留軍労務になりますると特別な事情もありまするので、いろいろやっかいな問題があると思うのであります。今度の新協定におかれましては、当局は相当の努力をされ、改善された余地も見受けるのでありますが、これらの問題に入りまする前に、まず駐留軍労務について、どういう問題が問題になっておるかという点を労働大臣より承りたいと思います。
  190. 松野頼三

    国務大臣(松野頼三君) 今回の大きな改正点は、概略して三つでございます。第一が間接雇用、直接雇用の問題。第二番目が労働法及びその他に関する日本の国内法と現実米軍の執行の問題。第三番目がいわゆる保安解雇の問題。この三つが今回の大きな改正点でございまして、ただいまの事案として一番多いのは、第一の直接雇用、間接雇用、第三番目の保安解雇の裁判問題、これが一番大きな問題でございます。
  191. 吉武恵市

    ○吉武恵市君 ただいまのお話によりますと、直接雇用の問題と間接雇用の問題が一つの問題であるように言われておりますが、私、今度の新協定の労務に関する条項を見ますると、十二条の四項にただ簡単に、「現地の労務に対する合衆国軍隊及び第十五条に定める諸機関の需要は、日本国の当局の援助を得て充足される。」というこの一点だけに根拠があるように思うのであります。で、従来軍の使われておる要員については、いわゆる間接雇用——日本政府が間に入って雇用して、そうしてそれを駐留軍に使用せしめておるという方法を使われておる。そのほかに、ここにもありましたいわゆる歳出外資金の機関に雇用される問題があって、これを真接雇用と言っておられるように思うのでありますが、法文の上には、直接に雇用するとか間接に雇用するとかいう文字が出てこないのでありますが、その根拠はどこにあるのでありますか。
  192. 松野頼三

    国務大臣(松野頼三君) 御指摘のように、今回の新協定の第十二条第四項がそれに当たります。と同時に、旧協定の十五条第四項を削除する。従って、歳出外の方は削除になりまして、そこが、いわゆる直接雇用という問題が削除になる。そうして十二条に、ただいま御指摘のようなものが、今回含まれる。従って直接雇用というのが今回は間接雇用というものに切りかわる。この二つの条項に、該当いたします。
  193. 吉武恵市

    ○吉武恵市君 そうしますると、この条文による日本国政府の援助により充足するという、援助ということは、つまり、日本国政府が直接の雇用の対象者になって、そうして駐留軍に提供すると、こういうふうに解釈するものと了解をいたします。そこで、そうしますると間接雇用、いわゆる駐留軍労務との契約は、日本国がやるのでありますかどうか。もしそうだとすると、その契約の基本的な条項というものはどういうふうになっておるかを聞きたいのであります。
  194. 松野頼三

    国務大臣(松野頼三君) 日本国アメリカとは労務基本契約というものが結ばれております。日本国と個人の労務者とは、一般の労務約契であります。この二つによって、今日契約実施をされておりまして、米軍は使用者という立場というものを堅持するわけであります。従って、ここに今までの直接雇用は、その基本契約と日本政府と労務者との契約を抜きにして、米軍が直接雇用をいたしておりましたために、ややともすれば、これが法律議論、裁判問題のときにおきましては、非常に紛争がございましたが、その紛争を処理するために、便宜上、日米調停委員会というものが、この紛争処理に当たっておったわけであります。そういう現実の紛争を法文上に明確にしたということが、今回、行政協定が新協定になりまして非常に大きな前進であると私は考えております。
  195. 吉武恵市

    ○吉武恵市君 ただいまのお話によりますと、駐留軍の労務は主として間接雇用であり、そうして、それは日本国政府との間の契約によって、使用は駐留軍が行なう。その根拠は、基本的な労務契約に基づいてなされておるということであります。  そこで、私の聞いておるところによりますと、この駐留軍労務につきまして、いろいろ裁判の判決あるいはまた労働委員会の決定等について争いがある。もっと具体的に言うならば、それらの法律の履行が行なわれないというような問題を聞いておりますが、一体それは、間接雇用の労務についてあるのか、それとも直接雇用の問題についてあるのか。そして、それはどうしてそういう問題が履行されないで今日まできておるのか。そして、それは今回の新しい協定においては、どう解決をされようとしたのか。この点をお聞きしたいのであります。
  196. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) いわゆる間接雇用、すなわち、日本政府が雇用いたしまして米軍の使用に供する形態の労務者の雇用主は、政府代表しまして調達庁長官がなっておりますので、その関係について私からお答えを申し上ます。  労務者のただいまのような状況におきまして、雇用の継続中に、いろいろな原因、その最も重要なものは、後に御質問があると思いますが、保安の問題でございますが、それ以外にも、たとえば制裁とか、あるいはまた軍の仕事がなくなる、減少したということで整理という問題、その整理のやり方等に関連しまして、これが不当の労働行為であるということのために裁判問題が起きる。この裁判問題が起きますときに、この間接雇用の場合でありますというと、日本政府が雇用主でありますので、日本政府自体が裁判に応じて裁判所に出る。これらの件数は、やはり保安、制裁あるいは整理という問題に関しまして、過去において数百件あると存じます。一方、また直接の場合には、先ほど労働大臣がお話通り、その場合には、法律上の雇用主も軍の歳出外の機関となっております。これに関しましても、そのような関係からの訴訟問題、これは数件と私は聞いておりますが、そういう場合におきましても、この歳出外の機関に関連しまして、まず第一に裁判管轄権の問題で、これは軍の公認の機関であるので、日本政府の裁判管轄権の外にあるということで、裁判所の方には出て来ない。従いまして、これの裁判所における審理、判決ということに至らないという問題が、まず第一にございます。間接の場合にはそのようなことがなく、日本政府が裁判所に出て参りますので、問題がございません。いずれにしましても、直接、間接を問わず、そのような問題があるわけでございます。間接の場合に、そのような裁判の結果、あるいは労働委員会の結果、これは政府が勝つ場合も、それから政府が敗訴する場合もございます。勝訴の場合、すなわち解雇措置等がそのまま裁判所で認められる場合、これはまあ問題がないわけでございますが、敗訴の場合、敗訴をいたしまして、原職復帰を命ずる、あるいは今までの賃金相当額を払い、今後も使用を継続せよという判決の場合に、米軍側に、その交渉をいたすわけでございます。その場合に、米軍の原則的な態度といたしましては、これは実は、基本労務契約の問題といたしましても、占領時代の末期に当初の基本労務契約ができまして、これを平和条約発効後改定をいたす努力をいたしまして、これがようやく三十二年の十月に改定になった問題でございますが、この特に古い契約の時代におけるそれらの問題に関しまして、その中に、米軍の担当官が最終的と意思表示をした場合には、その解雇は最終的となる、このような条文がございます。従いまして、米側の態度といたしましては、日本政府と米側の関係においては、米軍側が決定したものが最終的なものである。従ってそれが裁判所において反対の結論が出されても、日本政府との関係であって、米側の直接のあれではない。米軍としては、とにかく基地施設及び区域の中において、この人の就労を必要とするかどうか。これはその施設区域に関する必要な観点に基づいて軍側の判断に待つべきものである。そのような理由のもとに、大部分のものに関しましては、その判決通りの履行ができない。現実的にできない。軍の承認、合意がないというと、区域の中に入れて就労を継続させることができませんので、現実的にできない。のみならず、その経費、つまり労務者に支払わるべき賃金相当額、これらに関しまする経費というものは、御承知の通り、労務基本契約に基づいては、全部米側から償還を得ることになっております。この償還問題に関しましても応じないという実情が継続しておりまして、労務問題としてはもっとも困難な問題の一つでございます。数年の間、合同委員会の席上におきまして、これらの措置について、いろいろ議論して、その解決策をはかって参りましたが、なかなか適切な双方の合意をみるところの事態に至りませんでした。そこで今回の行政協定の改定にあたりましては、どうしても協定から改定し、その解釈を双方はっきりさせておかなければいけない。ために外務省では、鋭意努力をされまして、今日のような条文に改めましたわけでございます。従いまして今日の条文に改まりますと、その裁判所あるいは労働委員会の決定というものは、すべて原則的に、軍側の方も、日本政府からの通告があればそれをその通り履行する。しかしながら唯一の例外としては、保安解雇に関する条項だけは、軍という事態の性質上、承認するわけにいかない。この点は、日本側も、軍という特殊の性格において、その主張ももっともと認めて、それは例外的に扱ってよろしい。しかしながら一般の問題に関しまして、裁判あるいは労働委員会の判決というものがあるならば、これはその通り履行される。このようなふうに全般的な改善策を講じたのが、今回の改定でございます。
  197. 吉武恵市

    ○吉武恵市君 そうしますと、今まで労働委員会の決定あるいは判決等が出た不当労働行為の問題について、履行されなかった問題があるが、そのうちで保安解雇についてだけ、今回特例といいますか、特別の処置を講じ、その他の問題はすべて履行をすることに切りかわったと、こういうふうに了解してよろしゅうございますか。
  198. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) その通りでございます。
  199. 吉武恵市

    ○吉武恵市君 それでは次にお尋ねをいたしますが、新しく改正されました協定を見ますると、今の保安解雇につきましては特例を設けまして、いろいろ手続や折衝をした最後の場合において、どうしても就労がさせられないというときには拒否ができる、ただし、一年間は米軍の方で負担しなければならない、そしてその後は日本政府が負担をする、こういうふうになっておりますが、労働委員会の決定で、不当労働行為であるからやはり就労しなきゃいかないぞというふうな決定が出されても、それを就労しないでいいという根拠はどこにありますか。その点を御説明を願いたいと思います。
  200. 松野頼三

    国務大臣(松野頼三君) 今回は基本的に、間接雇用であっても、その本人の身分というものが保障されるという道が開けたことが、非常に新しい点であります。ある一部はNATO協定よりも日本の今回の協定の方が労務者にとっては非常に大きな前進であります。その一番問題点は、それでは就労請求権というものがあるか。裁判所及び労働委員会で決定がありましたら、その者の雇用契約はいつまでも保護される。ただ、米軍がその就労を拒否したときには、その雇用契約は継続いたします。ただ、就労を拒否するだけなんです。従って、本人は俸給及び賃金というものは、十分保護されるということが、今回の非常に新しく生まれた例であります。ただ、それじゃ、そこにおれはどうしても行きたいのだ、俸給をもらっただけではだめなんだ、どうしてもそこに行きたいという場合、これはまあ就労請求権という言葉になるかもしれません。しかし、これは各種の判例を見ましても、就労請求権というものがあるという判例、学説はほとんどございません。私は絶無とは申しません、学説ですから。しかし、ほとんどいわゆる権威ある学説においても、就労する権利というものは、雇用契約が限度であって、おれはどうしてもボイラー・マンとして、あの職場のあの工場に働かなけりゃ、賃金もらったってだめなんだ。こういう権利というものは裁判所の判例でもこれはほとんどございませんし、学説でもございません。従って、就労請求権というものは、おそらくこれは一般的に通用しない。従って、雇用契約、賃金を受け取る権利というものは、今回裁判所及び労働委員会の判決は完全に実施されるというところが、今回の非常に大きな改正でございます。
  201. 吉武恵市

    ○吉武恵市君 そうしますると、今度の改正で、判決があり、または、労働委員会の決定があれば、実質上はすべて労務者側にとってみれば履行されることになると、かように了解をいたします。そこで、そうしますと、今回の規定で、保安解雇については、就労は拒否できるが、一年間駐留軍の方で費用は負担する。その一年後は、日本政府が負担しなければならない。これは労務者の方からみれば非常にけっこうでありますが、しかし、そういう事態を、一々日本があとを引き受けて、いつまでも費用を負担せにやならぬということも、これはちょっとどうかと思うのですが、その点はどういうふうになりますか。
  202. 松野頼三

    国務大臣(松野頼三君) 大体今回は、日本政府米軍との協定の基準内における期限の俸給すべてを支払うということであります。それが最高限一年、この一年をきめましたのは、大体今までいろいろな事案が出ましたけれども、先ほどの統計をもう一度つけ加えますと、間接雇用の保安問題が五十七件、百二十八名、昭和二十六年から三十四年の十二月までであります。この中で判例確定が三十一件、六十四名、この中で労働者側の勝ったものが五件、十二名、そのうちに大体においてこれら十二名がいまだに未整理かというと、ほかの事例でみな大体整理が済んでおります。たとえばそこの基地が全部閉鎖になったというときには、保安解雇者であろうと、あるいは一般の者であろうと、いわゆる一般の整理で解決がつくわけでありますから、永遠というのは実はなかろう。従って、一年というのは大体半年から十カ月くらいで解決されたものが多いのですから、まあ日米間においては、一年あれば大体問題が済むであろうという一つの基準を一年ととったわけであります。NATO協定でも大体一年という年限をきめておりますので、これは国際通念からいってもこの一年は短くはない。その後においてもし続いたときには、当然これは日本政府において負担するという事案が出るかもしれませんが、しかし、本人にとっては完全に保護されるので、今回の改正は私は非常にいい前進だと考えております。
  203. 吉武恵市

    ○吉武恵市君 今のお話に関連することでありますが、まあその後は日本政府が引き受けるけれども、大体いろいろな事情で整理はなくなったということで解消しているということでありますが、NATO協定あたりで今お話の、やはり一年の期間は見るということになっているということでありますが、つまり駐留軍と今のNATO協定を結んでおる国との間は——日本も一年でありますけれども、その後の労務者に関する限りは一年に限定されない。そのあとそういう特別の整理の事情が出ない限りは、日本政府は負担していかなければならないのですが、その関係はNATO協定を結んでおる国国の例はどういうふうになっておるかを御説明願いたいのであります。
  204. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) 労働大臣が御説明のように、NATOのうちの特に西ドイツのボン協定がこの一つのよりどころになっておりますが、ボンの協定によりますと、ただいま先ほどから申し上げたような事件に関しましては、駐留米軍がその選択によって一年以内の経費を払えば、単に就労拒否のみならず雇用関係も解消し得る、まあこういうことになっております。一般的に私の承知しておるところでは、ドイツの労働関係法規にはその種のものの関係法令があるために、そのような措置ができたわけでございます。ところが、日本におきまする関係法令と、それから従来までの労務者と政府との関係におきまして、判決がありまするならば、日本政府は当然その判決通りに履行しなければいけない。従って、それが一年で切ることも、何年で切るということも、一本の法令上からいけば正当な行為ではない。かようなところから、米軍にはNATOのボン協定に範をとり、一年の負担をさせる。しかしながら、従来の労務者と政府との関係、及び日本関係法令関係におきましては、その日本政府と労務者との間の雇用契約は裁判所の判決通り履行していく。従って、理論的に申しますならば、全然仕事をしなくて、いつまでもいつまでも政府から賃金をもらったことになるじゃないかということになるわけでございますが、それの実情も、先ほど労働大臣がおっしゃられた通り現実的には、ほかの基地閉鎖その他の理由、あるいはその該当者が他にりっぱに就職されるというようなことで、別の理由をもって現実にはいつまでもいつまでも政府との雇用関係が継続されることがない、ただいまでもごく数名の者がそのような該当者があるというのが実情でございます。
  205. 吉武恵市

    ○吉武恵市君 今の御説明で、西ドイツにおいては西ドイツの国内法で、そういう場合、一年間の給与を支払えばそれによって雇用が切れていくという国内法があるためにそういう事情になっている。日本の国内法はそういう規定はございませんから、もちろん日本の法令に従って処置する以上は、その後のめんどうも見なければならぬ、こういうことになったのだろうと思います。そこで次に、合同の改正でもう一つの点は、従来歳出外資金関係のPXとかあるいはクラブ等に雇用されていった直用を間接雇用に切りかえられておる。そうすると、これらに従出しておった労務者の問題も同じに取り扱われてくると思います。その際に、一般の駐留軍に関係する方は、従来とも日本政府から米軍の方に請求をして、その費用はとれる。今回の改正によっても一年間の分はとれる。あとは日本政府が負担しなければならぬ。ところが、PX等の歳出外の機関に雇われている労務者も一様に取り扱われる、そうすると、一年間の費用は向こうに請求してとるのですけれども、予算外の機関でありますが、その責任は一体どこがとるか、アメリカ軍がその責任を負うのか、まあ払わないということはないでありましょうけれども、そういう関係はどういうふうに保障されるかをお聞きしたい。
  206. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) 歳出外諸機関に関しまする責任、これは現在も駐留米軍当局自身の指揮・監督・責任のもとにあります。従って実際上の取り扱い等もすべて軍当局は責任を負うことになると考えます。
  207. 吉武恵市

    ○吉武恵市君 時間もございませんから、最後にもう一点お伺いをいたしますが、駐留軍労務についていつも問題になるのは、離職者の問題であります。そこで今度の改定によって、駐留軍労務、つまり直用を間接に切りかえたり、その他今度の改正に伴って離職者がどれくらい出る見込みであるか、あるいは同じであるか。それからもう一つは、これらの改定のいかんを問わず近き将来において多くの離職者を出す見込みがあるかどうか、これは大へん労務者の諸君が心配をせられております。私ども社労の委員会においてもこの点を問題にしておられるのでありまするので、その点を伺いたい。そうしてそれらについてはどういう処置をされようとしておるかを伺いたいのであります。
  208. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) 雇用形態の切りかえになりまする労務者の数は、一万五千名ほどを推定いたしております。これが切りかえによって整理、減少が行なわれるということは私どもは予想もいたしませんし、そのようなことがあってはならぬと思っておりますが、全般的に申しまして、駐留米軍は縮小傾向にございます。従いまして、現在間接雇用となっておるものに関しましても今後やはり一年間には数千名に近いところの減少が生じていくものと予想されております。従いまして歳出外諸機関の方の関係もふえることはなく、やはり縮小の傾向にある。具体的には、御承知かと思いますが、この六月の半ばから十二月にかけまして九州の芦屋という大きな飛行基地が閉鎖になります、そこに約二千名ほどの労務者があります、それらの者が減る。こういうような状況でありますので、ただいま申し上げたようなことに進むと思いますが、私どもといたしましては、できる限り労務者の整理の多くならないという方法、あるいはその場合にも、その措置において、労務者の困らないような措置を軍との折衝において努めて参りたいと思います。
  209. 吉武恵市

    ○吉武恵市君 最後に、政府当局に希望を申し上げておきますが、御承知のように、労務の問題は、一般の国内問題といたしましても、非常にむずかしいのであります。特にこうした駐留軍との関係になりますと、よほど注意をしていきませんというと、つまらない摩擦が起こると思うのであります。そこで、今のように、だんだんと基地が縮小をしていって、労務が少なくなっていくということは、これはやむを得ぬことでありますけれども、そういうふうな駐留軍労務に従事した人が、ただ基地がなくなった、すぐ離職して行き場がないということになりますると、そこにいろいろな問題が起こると思いますから、特別に一つこれらの離職者についての就職のあっせん等に御努力を願いたい。  それからなお、今回の改正によって、今までの直用が間接雇用に切りかわり、そうしてこれらの問題になっておった判決もしくは労働委員会の決定で履行されないような問題が、今度は全部履行ができる。ただ、保安解雇についてだかは、特別に一年間の費用を向こうが持ち、あとは日本政府が持つということで、労務者に関する限りはちっともさしつかえのないように改正されたことは、非常にけっこうでありますが、元来この十二条につきましては、旧協定にもありまするように、「別段の合意をする場合を除くほか、賃金及び諸手当に関する条件その他の雇用及び労働の条件、労働者の保護のための条件並びに労働関係に関する労働者の権利は、日本国の法令で定めるところによらなければならない。」これは従来とも同じでございます。で、私どもは、労務関係は正しいものは正しいとしてこれを履行していく、そうして正しからざるものは、これはやはりやむを得ない。で、その点をはっきりして、従って先ほど申しました労働委員会等の決定が出ました場合は、やはりこれは履行をしていく、万やむを得ない場合以外は履行をしていく。また、労働者にとっては、費用負担についても一向変わりませんから、同じようなものでありまするけれども、履行するというふうに善処されんことを切望いたしまして、私の質問を終わります。   —————————————
  210. 草葉隆圓

    委員長草葉隆圓君) 後藤義隆君。
  211. 後藤義隆

    ○後藤義隆君 私は、条約条文並びに地位協定の条文について簡単にお伺いいたしますので、御答弁も簡単にお願い申し上げたいと思っております。なお、私の質問に対しましては、必ずしも大臣の御答弁は要求いたしません。政府委員からでけっこうでありますが、本条約の条文を見ますと、アメリカ軍が日本において施設及び区域を使用することのできる条文は、ただ六条に記載されておるのみでありまして、その他の条文には、さようなことは全然ないのでありまして、そうして六条には、「アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される。」、こういう工合に記載されておりまして、これはまさにアメリカの権利であります。そこで私は、日本国においてアメリカ軍が、日本施設並びに区域を使用することはアメリカの権利であって、アメリカの義務ではないのだ、こういうふうに私は考えておりますが、さように考えてお差しつかえありませんかどうですか、その点についてお伺いいたします。
  212. 高橋通敏

    政府委員高橋通敏君) 御指摘通りでございます。
  213. 後藤義隆

    ○後藤義隆君 条約第四条の協議並びに第五条の武力攻撃を受けたときに危険に対処するように行動することは、これはアメリカ軍が現実日本に駐留するといなとにかかわらず、私はこれはアメリカの義務だと、こういうふうに考えておるのでございまするが、その点について御意見を伺いたいと思います。
  214. 高橋通敏

    政府委員高橋通敏君) その通りでございます。
  215. 後藤義隆

    ○後藤義隆君 従って、私はアメリカの駐留軍が日本に駐留するといなとにかかわらず、アメリカは、もし日本武力攻撃を受けるようなことがあったならば、アメリカは全能力をあげて、いわゆる五条の規定によって、危険に対処する義務があるのだ、かように解釈しておるのですが、その通り差しつかえありませんか。
  216. 高橋通敏

    政府委員高橋通敏君) その通りでございます。
  217. 後藤義隆

    ○後藤義隆君 それから次にお伺いいたしますが、日本の領土、領海、領空に対し武力攻撃を受けた場合には、その場所がアメリカ基地であっても、また基地外であっても、日本自衛権の発動に基づいて対処するのであって、これは当然日本の権利だと、かように考えているのであります。今度の条約第五条ができたからといって、いわゆる自衛権が今度は義務に変わるというようなふうなことはないものである、従って、第五条は新たな義務を負担したものではない、かように考えますが、その点についていかがでしょうか。
  218. 高橋通敏

    政府委員高橋通敏君) 御指摘通り、新たな実質的な義務を負担したものではないと考えます。
  219. 後藤義隆

    ○後藤義隆君 次に地位協定についてお伺いいたしますが、地位協定の第十七条の九項であります。十七条の九項のgにこういうことが書いてあるのでありますが、「合衆国の軍隊の構成員若しくは軍属又はそれらの家族」が、日本の刑事裁判に付せられるような場合には、合衆国の政府代表者と連絡する権利及び自己の裁判にその代表者を立ち会わせる権利」があるということが明記せられておりますが、日本の刑事訴訟法の関係はどうなっておりましょうか。外国人をこれに立ち会わせるということは、現在の日本の刑事訴訟法でどんな工合に取り扱っておりますか。その点についてお伺いいたします。
  220. 井野碩哉

    国務大臣(井野碩哉君) 代表者を立ち会いせしめる権利を認めておりますが、代表者は単に立ち会いでありまして、裁判の審判と公判に立ち会うというだけで、弁護人やもしくは補佐人の資格を持っておりませんし、単なる傍聴者というふうに御理解いただきたいのであります。
  221. 後藤義隆

    ○後藤義隆君 次に十八条の民事に関する条文でありますが、これはこういうことになっているようでありまするが、現行の十八条は「各当事者は、日本国において所有する財産に対する損害については、その損害が公務執行中の他方の当事者の軍隊の構成員又は文民たる政府職員によるものであるときは、他方の当事者に対するすべての請求権を放棄する。」、こういうことになっておりまして、一方の国の所有の財産であれば、それは非常に広範囲に、国の所有であれば、それは一切放棄するということになっておるのでありますが、今度の改正されまするところの十八条によりますと、「各当事国は、自国が所有し、かつ、自国の陸上、海上又は航空の防衛隊が使用する財産に対する損害については、」と書いてありまして、今度範囲は非常に狭くなっておるのでありますが、どういうわけでこんな工合に狭くしているか。その理由をお伺いしたいのと同時に、この損害発生の原因が故意または過失の場合でも、やはりこれに含まれるのか含まれないのか。故意、過失の場合には、別途の取り扱いをするのかどうか、この点についてお伺いをいたします。
  222. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) 従来の協定におきましては、ただいま仰せの通り、請求権の相互放棄の範囲が非常に広かったのでございます。ことに日本側にとり申しては、それが非常に不利でございましたので、この不利益を是正するために、新協定におきましては、ただいま仰せの通り、各防衛隊の所管の財産、それから防衛隊の要員のみが損害と受けた場合に対して、相互に放棄するというにとどめたのであります。それから加害行為に故意、過失があった場合でも放棄するのかという仰せでございますが、この協定の、条約の当事国の一方が他方に対して請求権を負いますのは、いわゆる国際法上の不法行為になる場合でありまして、当然故意、過失がある場合でございます。従いまして、故意、過失がある場合でも放棄するというよりも、故意、過失がある場合に放棄されるのでございます。故意、過失がない場合には、そもそも損害賠償の請求権というものが発生しないのでございます。
  223. 後藤義隆

    ○後藤義隆君 十八条の二項の(a)でありまするが、これは一項に該当しないものについては、今度は仲裁人制度を設けまして、その仲裁人が損害の責任の所在並びに数額を調査して決定することになっておりますが、この仲裁人の身分並びに任期、待遇、そういうふうなものは一体どんな工合に扱われるわけでありますか。
  224. 井野碩哉

    国務大臣(井野碩哉君) 今回の新しい協定におきまして、非常に民事関係で従来の規定よりよくなりました点は仲裁人制度の問題であります。従来は合同委員会にかけ、合同委員会で話し合い、きまらぬときには外交交渉によっておったのでありますが、今度は仲裁人を設けまして、その仲裁人の裁定というものが両国を拘束することになりましたので、非常に強くわが国にとっては有利な立場になりました。従って、その身分も司法官の高級にある人、もしくはあった人を選ぶことになりますし、その報酬も両国間で分担するということになっております。身分等は、まだ未定で、国内法でそういうことをきめることになっております。この点はまだ協定しておりません。
  225. 後藤義隆

    ○後藤義隆君 十八条の第四項についてお伺いいたしますが、十八条の今度の四項は、従来は一項になったわけでありまするが、それによりますと、今度の四項について申し上げますと、「各当事国は、自国の防衛隊の構成員がその公務の執行に従事している間に被った負傷又は死亡については、他方の当事国に対するすべての請求権を放棄する。」、こういう工合に今度なっておりまして、自国の防衛隊の構成員がその公務の執行中ということだけを限定してあります。ところが、改正前のものは加害者もさらに公務の執行中ということが要件になっておったのでありまするが、今度改正されたものは、被害者だけが公務の執行中ということを記載して、加害者の公務の執行中という要件をのけてあるようでありますが、これはどういう関係になりますか。
  226. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) これは、当事国の一方が他方に対しまして損害賠償請求権を持っておって、それを放棄するということでございますので、加害者の側におきましても、当然これは公務上の行為であることを要件といたしておるわけでございます。もしこれが公務外の行為でありますと、国が責任を負うということは起こらぬからでございます。
  227. 後藤義隆

    ○後藤義隆君 ただいまの四項に関連してお伺いいたしますが、損等賠償の請求権は、負傷した人あるいは死亡した人の家族が請求権は持っておるものだと思います。この場合には、負傷した人並びにその家族、死亡した人の家族でなしに、第三者の立場にある国がこの賠償請求権を放棄するということが適法であるかどうかという点が一つ問題になるわけであります。その場合に、国は、とにかく適法だということになれば、国がその人に対して、さらにどういう方法でもって賠償するか、そういう点をお伺いいたしたいと考えます。
  228. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) この一国の国民が他の国の公の行為によりまして損害をこうむりました場合には、その被害者の属する国が、加害国に対する損害賠償請求権を持つというふうに国際法上されておるわけでございますが、この四項で言っております請求権の放棄というのは、その国が——被害者の属する国が加害国に対して持っておりますところの請求権、それを放棄するという意味でございまして、当の被害者個人あるいはその家族、こういう人たちの持っておりますところの請求権とは直接かかわりないのであります。わが国の例について申しますと、たとえば自衛隊の構成員が被害君であるという場合でありますれば、国内的に十分救済を受けるわけでございまして、そのためには国家公務員災害補償法というのによって補償がされますし、さらにそれで足りません場合には、国家賠償法あるいは民法の一般原則に基づきますところの不法行為によります。損害賠償請求権が発生するわけでございます。現に安全保障条約に伴いますところの民事特別法におきましても、被害者は日本の国に損害賠償請求ができるという規定を置いておるわけでございますが、その被害者が自衛隊の構成員である場合も除いてはいないのでございます。その自衛隊の構成員あるいはその家族は、国を相手に損害賠償を請求し、訴えを提起できるということになるわけでございます。
  229. 後藤義隆

    ○後藤義隆君 ただいまの御答弁に関連してお伺いいたしますが、そうすると被害者損害賠償はアメリカに対して請求するのでなしに、日本の国家に対して損害賠償を請求するという答弁でしょうか。
  230. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) 国家公務員災害補償法によって損害補償の請求をし、あるいは国家賠償法あるいは民法によりまして、不法行為による損害賠償の請求を日本政府に対して行なうということに相なっているわけであります。
  231. 後藤義隆

    ○後藤義隆君 もう一点、十八条の五項の(f)に関してお伺いいたします。これによりますると、「合衆国軍隊の構成員又は被用者は、その公務の執行から生ずる事項については、日本国においてその者に対して与えられた判決の執行手続に服さない。」、こういうようなふうにも記載がありますが、そうすると、強制執行のできない判決というのはちょっと想像ができない。現在の判例の取り扱い等からも、こういうようなふうに記載しておくと、ちょっと原告勝訴の判決ができないのではないかと思うのでありますが、その点どうでありましょうか。これは国家がかわって賠償するという意味でしょうか。とにかくどういう意味でしょうか。
  232. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) 合衆国軍隊の構成員または被用者が、公務上の行為によりまして他人に損害を与えました場合は、新協定の第五項によりまして、日本国がかわって損害賠償の責任を負うことになるわけであります。従いまして、加害者の個人——合衆国軍隊の構成員または被用者を相手に請求をし、さらに訴えを提起するという実益がないわけでございます。そういう関係でこの五項の(f)の規定は合理的だと思うのでありますが、なお旧協定におきましては、そもそも裁判権に服さないということになっておりまして、訴えの提起もできない建前になっておったのでございます。ところが、新協定におきましては、訴えの提起はできる、判決まではもらえる、しかし、判決の執行はできないということになるわけでございます。しかし、日本政府がかわって損害賠償責任を負うわけでございますので、訴えを提起する実益も実はないわけで、強制執行ができなくても被害者の救済に事欠けるというおそれは全然ないと考えます。
  233. 後藤義隆

    ○後藤義隆君 了解いたしました。   —————————————
  234. 草葉隆圓

    委員長草葉隆圓君) 鍋島直紹君。
  235. 鍋島直紹

    ○鍋島直紹君 すでに先輩議員各位から、条文その他につきまして、それぞれ御質問もありましたし、本日は、時間も迫っておりますので、行政協定及び関係条文に関しまして、非常にこまかい問題でありますが一点、及び全般的問題に対しまして、総理大臣または外務大臣に一点、簡単に御質問を申し上げたいと考えております。  行政協定及びそれに伴います法律の問題でございますが、今回の改正によりまして、地方税法の関係でありますが、この改正の要点がいかになっておるかということであります。特に各地におきまして、地方税というものは財政が非常に不自由であるのに対しまして、駐留軍の関係が特権的な待遇を受けておったという点もあるのでございますが、いわゆる課税免除の問題、そこで不動産の取得税というものがどうなっておるか、固定資産税関係がどう改正されたか、または遊興飲食税、すなわち一般の国民は三百円の飲食あるいは八百円の宿泊以上は税金を納めておるわけでありますが、こういった点、駐留アメリカ軍の方々はどういう関係に今後改正されていくのか、または私有の地方税であるところの自動車税等の改正点、そういった点がどうなっておるかということを承りたいということと、さらに駐留基地のある各都道府県あるいは市町村におきましては、現実の問題として、財政的な負担というものが、ほかの府県に比べまして、トラブルがなくても相当の財政負担をしなければならぬ実情にあるのであります。この点について今後どういうふうな御方針であるか。以上協定及び法律につきまして、自治庁長官にお答えを願います。
  236. 石原幹市郎

    国務大臣石原幹市郎君) お答えいたします。  今回の行政協定に関連する部分で、地方税に関する部分の改定されましたところは、大体十二条から十五条までの部分であります。いずれも従来の協定に比しまして改善されておる部分が多いのでございます。たとえば地方住民税につきましても、PX等におきまして源泉徴収義務を課するというようなことをきめております。その他契約者についての指定制度としましても、従来一方的に指定しておったのを、日本政府協議して指定する、しかもその用が済めばそれを取り消す、こういうふうに改善されておる部分が多いのであります。その他のものにつきましては大体従来通りでございまして、従来からも原則といたしまして、駐留軍の軍隊的行動に基づくものについては、もちろん課税免除をするものでありますが、個人として行動する部分につきましては、これは保税の対象になっておるのでございます。先ほど来述べられました遊興飲食税等につきましても、PX等でなにするものは別でございますが、個人としてのものについては課税をいたしております。不動産取得税についても、その通りでございますし、自動車につきましても、軍人軍属が個人として持っておるものについてはやはり自動車税を課しておるわけでありまして、その課税方法につきましては、若干日本と違いがございまするが、それらの面については、条例でそれぞれ規定して課税しておる。こういうことに相なっております。  それから基地における市町村との関係でございます。これは国有財産を使用しておるというような場合には、国有財産使用について交付金を出しておりまするが、その例によりまして交付金を出す。その他渉外事務であるとか、あるいは環境衛生施設等に対する負担等につきまして、相当の支出がある場合にはこれは、特別交付税等で処置する、こういうやり方をいたしております。
  237. 鍋島直紹

    ○鍋島直紹君 もう一点伺いたいと思います。それは条約全般の問題についてでございますが、今回の改定安全保障条約の持つその最終的な目的というものは、総理大臣以下のお述べになりましたように、日米間の不平等的な、あるいは片務的な条約というものを改正いたしまして、そうして対等の立場に立つ、しかもその背後に、あるいはそれが根本的な目的であろうと思いますが、日米間の深い相互の信頼と友好親善というものをさらに深め、増進をしていこうということがあると存ずるのであります。そのことを基調にいたしまして、経済協力関係をさらに深める、あるいは条約に基づく新しい地位協定のいろいろな運営が行なわれていくということが根本なのでございますけれども、こういった経済協力にいたしましても、あるいは新しい地位協定の運営の問題にいたしましても、基本的には、日本国民の心からなる納得と、心からなる協力というものがなければ、簡単に手続上あるいは法律上この条約というものが承認せられまたは批准せられまして発効いたしましても、その背後のそうした国民の協力、日米間の相互の信頼というものがなければ、私は今後における運営にいたしましても、経済協力にいたしましても、なかなかうまくいかない。基地一つの問題にいたしましても、砂川事件のような大きな紛争が起きる。あるいは経済協力等にいたしましては、やはり国民全体の協力というもの、あたたかい気持がなければ、この条約なり地位協定なりを盛り上げていこうというような気持がないと、なかなかうまくいかないのじゃないかということを痛感し、かつ心配いたすのであります。そこで、静かに今日の様相を見ますときに、今日の実態から見て私と同じような考えというものをやはり抱かざるを得ないのではないか。大切な国の運命を決するこの安全保障条約参議院の審議におきましても、まことに残念でありますけれども野党派の不参加という状態になっておるというような状態からしまして、今後の運営、経済の協力につきましては、やはり同様の考えを持つ方が——この安保条約には全面的に賛成しておる人であっても、やはりそういう気持を持って、深い不安と言いましょうか、憂慮の気持を持っておられる点があるのじゃなかろうかと思うのであります。  そこでお伺いしたいことは、第一に、対外外交におきまして、先ほど山本先生が触れられましたように、これに反対をしておる共産圏のいろいろな威嚇と申しましょうか、あるいは覚書の通告、そのほかいろいろな声明等があっておって、まことに容易ならざることでございますけれども、新しい局面が外交の面においてこの安全保障条約批准後において出るものかどうか、しかも、それに対処するところの外交方針、あるいは御決意というものがいかなるものであるかということを伺いたいことが一つ。  第二は、今申し上げましたような状態におけるこの国内を静かにながめて見ますときに、日本の九千万、あるいは一億といわれる国民に対しまして、いかなる決意と御覚悟を持ってその後に処せられていくおつもりでありますか。いわゆる国内対策であります。PRの問題もありましょう、いろいろな問題もありましょうけれども総理といたされまして、あるいは外務大臣といたされて、いかなる御決意とお気持を持って処していかれますか。あるいはこの点は国会の不正常下の現況にあるいは触れるかもわかりません、ちょっと微妙な問題になっておりますので、この点は伺うことは無理かと思いますけれども、それもひっくるめて御所信を伺うことができればまことに幸いだと思います。
  238. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 新しい安保条約が成立した後におきましての運営にあたっては、言うまでもなく、国民の正しい理解と、その心からなる協力がなければならぬことは言うを待ちません。この安保条約そのものの根底は、鍋島委員の御指摘のあったように、日米両国が真にお互いお互いの立場を十分に理解し、また深く信頼し合って、そうして対等の立場であらゆる面において協力するということがその根底でなければならないのでありまして、この種条約が、われわれの歴史から見ましても、世界の各国の間に結ばれた状況から見ましても、いかに精密な条項が設けられておったとしましても、国と国との間、また国民国民との間において信頼関係がこわれるというような場合においては、何らの効果を発揮し得ないものであることは言うを待たないのであります。こういう意味において、この安保条約の改定の今日までの経過を見まするに、国内においてこれに対する強い一つ反対勢力がございます。これは私どもいろいろ長い間の衆議院の審議を通じても、あるいはその他の反対のこの動きを見ましても、ある程度において立場が違い、考え方が違っておるのであります。すなわち、日米が真に理解と信頼の上に正しい対等の協力をしていくという事柄に対して、この根本に対して納得をしないし、ただ反対の立場をとっておるというものであります。しかし国民の大多数の者は、その根本については私は異存ないと思います。しかしながら、これら反対勢力のいろいろな動きその他のことから一種の不安と、ほんとうの納付のいかない部分も少なくないと思います。これらに対しましては、この成立後においても、政府国民に、この新しい条約の趣旨、またこの運営に対する心がまえ、国民の協力を求めるようなあらゆる手段を講ずべきことは当然であります。と同時に、やはり今日の反対勢力のこの行き過ぎた運動やあるいはその考え方に対しましては、これを是正することにいろいろな面からわれわれは考えていかなければならぬ。今日のような状況に放置しておきまするならば、あるいは国内治安の問題にも関係を持つというようなおそれもあるのでありまして、こういうものに対しては法制その他のことも考えなければならぬ、これは当然考えていかなければならぬと思います。  それから外交方針の問題でございますが、これら反対人々は、この新安保条約戦争の危険を招来するものであり、また国民に対して、あるいは防衛費の激増によって国民生活を圧迫するとか、あるいは軍備拡張によって徴兵制度がしかれるおそれがあるとか、いろいろのことを国民の間に流布宣伝している傾きがございます。これらの点を考えますというと、われわれはあくまでも平和を願っておるものであります。また平和を追求することが日本外交の中心であります。この条約が、われわれが繰り返し言っているように、防衛的であり、平和を確保するためのこの趣旨に出ずるものであるということを、外交政策の現実においてもこれをわかるように実践していく必要があるだろう。私ども自由主義の立場を堅持し、日米の協力関係を強化することが、日本の平和と安全並びに経済の発展、国民生活の向上に欠くべからざるものであることを確信するものでありますが、同時に、そういう考え方は決して共産主義の国々を敵視するものではない。これらの国々との間にもお互いの立場を理解し尊重し合って、そうして相侵さずという原則のもとに友好親善の関係を深めていかなければならぬ。あるいは貿易の面において、あるいは文化の交流の面において、あるいはその他のあらゆる交通の面において、この関係現実に増進していかなければならぬ。またいくのが本来われわれの外交の基本でございます。こういう安保条約の改定が実現されたということは、それらの外交方針に何か矛盾するような宣伝もあり、あるいはそういうふうに特に曲解したり、あるいは邪推したりする向きもございますから、そういうことをただ言動だけでなしに、事実の上にこれを実現していって、そしてこの条約が真に日本の平和と安全に資し、また、経済の関係がよくなっていくということを国民に如実に示すとともに、また、世界に対しても、これがあくまでも防衛的であり、平和を確保する手段であるというこのことを実践するように、国の建て方の違っておる共産国との間においても、友好親善を一そう積極的に進めるような方向に進んでいくべきものである、かように考えております。
  239. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 日本の外交を進めて参りますために、ことに平和条約ができ、国際社会に日本が復帰いたしまして、そして、ただいま総理も言われましたように、国際連合のメンバーとして各国と友好親善の関係を維持していく、また国際平和に寄与していく、そしてお互いに国内の問題に関与しない限りにおいては友好な状態を堅持していくということは、これは望ましいこと当然でございまして、日本の外交が、共産圏といえども積極的にお互いに国内問題に対して介入しない限り、貿易、経済その他について深い親善を維持していかなければならないことは当然であります。ただ、その前提として、私は日本が自由主義の立場をとり、また日本の置かれている地位から申しまして、アメリカと緊密な関係を打ち立てる、日本外交の基盤が日米親善の提携の上に立たなければならぬということを確信いたしておるのであります。今回の条約の改定にあたりましても、私は、日本外交の将来のために日米の緊密な提携の一つの線をこの安保条約の形で打ち出していく。しかも、現行の安保条約というものは、日本みずから見ましても一方的であり、また、国際社会から見ましても必ずしも日米が対等の立場で作られた条約でないということでありますから、これを国内的に見ても、自主独立の国民としての立場と日米提携の上にはっきり築き上げ、しかも国際的に見ても、日米対等の立場でお互いに提携協力をしていくという立場を確立いたしたい。これが今回の安保条約の私どものやりました一つの信念でありまして、この上に立ってのみ初めて日本の外交が国際社会に出まして、そうして共産圏に対してもこの基盤があればこそ友好親善の道を進められていくのでありまして、そういう基盤なしにふらふらと共産圏その他と友好親善関係を結ぶことは、私は危険だと思っております。でありますから、その外交の基底がこの日米安全保障条約締結によってはっきり確立をして、その上に立って、今後の世界情勢に対処し、また、平和を作り上げる国際社会に対する、貢献の道について、日本の外交は積極的に展開し得ることだし、また、せなければならないと、こう考えております。
  240. 草葉隆圓

    委員長草葉隆圓君) それでは、この程度とし、明日一三日午前十時から委員会開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後六時四十八分散会