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1960-06-08 第34回国会 参議院 日米安全保障条約等特別委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年六月八日(水曜日)    午後二時六分開会   —————————————   委員異動 五月十九日委員羽生三七君辞任につ き、その補欠として小笠原二三男君を 議長において指名した。 五月二十三日委員剱木亨弘辞任につ き、その補欠として西田信一君を議長 において指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     草葉 隆圓君    理事            井上 清一君            西田 信一君            増原 恵吉君            吉武 恵市君    委員            青木 一男君            青柳 秀夫君            鹿島守之助君            木内 四郎君            木村篤太郎君            後藤 義隆君            笹森 順造君            杉原 荒太君            鈴木 恭一君            苫米地英俊君            永野  護君            鍋島 直紹君            野村吉三郎君            堀木 鎌三君   国務大臣    内閣総理大臣  岸  信介君    法 務 大 臣 井野 碩哉君    外 務 大 臣 藤山愛一郎君    大 蔵 大 臣 佐藤 榮作君    文 部 大 臣 松田竹千代君    厚 生 大 臣 渡邊 良夫君    通商産業大臣  池田 勇人君    運 輸 大 臣 楢橋  渡君    郵 政 大 臣 植竹 春彦君    国 務 大 臣 赤城 宗徳君    国 務 大 臣 石原幹市郎君    国 務 大 臣 中曽根康弘君   政府委員    法制局長官   林  修三君    法制局次長   高辻 正巳君    防衛庁長官官房    長       門叶 宗雄君    外務大臣官房審    議官      下田 武三君    外務省アメリカ    局長      森  治樹君    外務省欧亜局長 金山 政英君    外務省経済局長 牛場 信彦君    外務省条約局長 高橋 通敏君    外務省条約局外    務参事官    藤崎 萬里君    通商産業省通商    局長      松尾泰一郎君    郵政大臣官房長 荒巻伊勢雄君   事務局側    常任委員会専門    員       渡辺 信雄君   —————————————   本日の会議に付した案件理事補欠互選の件 ○公聴会開会に関する件 ○日本国アメリカ合衆国との間の相  互協力及び安全保障条約締結につ  いて承認を求めるの件(内閣提出、  衆議院送付) ○日本国アメリカ合衆国との間の相  互協力及び安全保障条約第六条に基  づく施設及び区域並びに日本国にお  ける合衆国軍隊地位に関する協定  の締結について承認を求めるの件  (内閣提出衆議院送付) ○日本国アメリカ合衆国との間の相  互協力及び安全保障条約等締結に  伴う関係法令整理に関する法律案  (内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 草葉隆圓

    委員長草葉隆圓君) ただいまから日米安全保障条約等特別委員会開会いたします。  まず委員異動について御報告いたします。  去る五月十九日に羽生三七君が委員辞任され、その補欠として小笠原二三男君が選任されました。また、五月二十三日に剱木亨弘君が委員辞任され、その補欠として西田信一君が選任されました。   —————————————
  3. 草葉隆圓

    委員長草葉隆圓君) 次に理事補欠互選についてお諮りいたします。  理事剱木亨弘君が五月二十三日に委員辞任されましたため、理事に一名欠員を生じておりますので、理事補欠互選を行ないたいと存じます。  互選は投票によることなく、便宜その指名を委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議はございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 草葉隆圓

    委員長草葉隆圓君) 御異議ないと認めます。それでは、理事西田信一君を指名いたします。   —————————————
  5. 草葉隆圓

    委員長草葉隆圓君) 議事に入ります前に、一言申し上げたいと存じます。御承知通り改正安保条約並びに同条約に基く地位協定及び関係法令整備に関する法律案の三件は、共に去る五月二十日衆議院を通過し、同日午前零時三十四分参議院に送付され、同時に本特別委員会に付託されました。本委員会におきましては、すでに予備審査の段階におきまして政府から提案理由の説明を聴取し、また埼玉県下にある在日米軍施設を見学する等の活動を続けて参ったのであります。五月二十日からはいよいよ本格的な審議を開始いたすべく、直ちに理事会を開き、翌二十一日からは本特別委員会並びに委員長及び理事打合会開会を連日公報をもって御通知申し上げた次第であります。しかるところ、一部の理事諸君は、委員会運営を御相談、お打ち合わせ申し上げる委員長及び理事打合会出席を拒んでこられました。委員長といたしましては、本委員会における議事の円満なる運営のためにはぜひとも各会派全部の委員の御出席を得て審議を行なうことを熱望し、従って委員長及び理事打合会におきましても、各会派理事諸君全員おそろいの上で議事運営について御協議を申し上げることが最も望ましいと考えて参ったのであります。そこで、一部の理事諸君の御欠席に対しましてははなはだ遺憾に存じまして、公報、放送あるいは事務局員による口頭伝達、また委員長みずからおたずねいたしまして、さらには書簡を送る等、委員長といたしましてはでき得る限りの努力を尽くして御出席を勧奨して参ったつもりであります。この間、委員長及び理事打合会を開きますること十回、懇談会の開催十三回に及んで今日に至った次第であります。しかしながら、憲法第六十一条により定められております通り条約につきましては、参議院審議期間衆議院通過後三十日以内でございます。従いまして、本件につきまして参議院に残された審議期間は余すところ旬日にすぎないこととなりました。また各会派全員の御出席の上開会の運びに至りますることが最も望ましいことでありますることはさきに申し上げた通りでございまするが、一部の委員の御出席勧奨のためこれ以上委員会開会を遷延いたしますことは、本委員会として本件に関する審議に支障を来たすこととなると存じます。憲法によって定められた二院制度としての参議院の使命、並びにわが参議院において特に本特別委員会が設けられておりまする趣旨にかんがみまするとき、私といたしましては、参議議院の本旨に反し、国権の最高機関として、審議放棄をすることは断じてとり得ざるところであり、国民の負託にこたうるゆえんではないと存ずるのであります。委員長といたしまして、委員会議事の円満なる運営を念願するあまり、すでに二十日近く委員会開会に至らず、本日に及びましたことは、はなはだ遺憾にたえないところでありますると同時に、本日なお御出席されない一部の委員諸君のあることは心より遺憾とするところでございます。私は、今後におきましても、委員の御出席されることを心より御期待申し上げている次第であります。  本日は、すでに御出席委員の数は開会定足数に達しておりまするので、本日より審議に入りたいと存じます。各位におかせられましては、本院に残された審議期間並びにこの重要案件審議についての当委員会の重大な職責にかんがみられまして、あとう限り十分な審議をされんことを衷心より希望いたす次第でございます。   —————————————
  6. 草葉隆圓

    委員長草葉隆圓君) 日本国アメリカ合衆国との問の相互協力及び安全保障条約締結について承認を求めるの件、日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊地位に関する協定締結について承認を求めるの件、日本国アメリカ合衆国との問の相互協力及び安全保障条約等締結に伴う関係法令整理に関する法律案、以上衆議院送付の三案件を一括して議題といたします。  三案件は去る五月二十日衆議院から送付され、本付託になりましたので、念のため申し上げておきます。  この際、岸内閣総理大臣から発言を求められておりますので、これを許可いたします。岸内閣総理大臣
  7. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 日米安保条約並びにこれに関する協定法律案等の御審議が、当委員会においてただいま委員長の御報告がありましたような経緯のもとに開かれることになりました。私は御審議最初にあたりまして、この安保条約改定問題に関して、従来の経緯考えつつ、また日本の現在及び将来の進路ということを十分に考えて、御審議最初に、政府の所信を明らかにいたしておきたいと存じます。  安保条約改定の問題は、私から申し上げるまでもなく、現行安保条約締結された当初からの問題でございます。現行安保条約は、平和条約締結と同時に、日本占領下にあった、それから解放されて政治的の独立を回復したのでありますけれども、国際情勢の間において日本の平和と安全を確保して、そうして日本繁栄の道を開いていくためには、全然無防備な状態に置くことはできない。日米安保体制のもとに日本の平和と安全を守り、その繁栄を作り上げようと、当時の政府におきましても、日米両国の間の話し合いにおいてこの条約ができたことは御承知通りであります。しかしながら、当時の日本状況は、日本自体の自衛の体制も全然なく、また国際的地位もきわめて低いのでありまして、もちろん国際連合に加盟を認められておりません。また日本経済力そのものも国力もきわめて低いのでありまして、戦時中及び戦後の被害の回復ということが十分にいっておらない状況でございます。従いまして、日本の安全を保障するために、日本の平和と安全を守り、日本繁栄を期する上におきまして、一にアメリカに依存して、アメリカの力によって日本の平和と安全を守っていくということのほかはなかったのであります。  従って、その条約の内容を見まするというと、日米の問の関係はきわめて不平等で、日本の自主的な意思というものがこの条約の上に反映されておる点はほとんどない。もっぱらアメリカにたよる。こういうことでありますから、独立国としてその国の平和と安全を守るために、安全保障体制というものが至るところにありますけれども、しかしながら現行日米安保条約のごとく不平等な、アメリカに全部依存するような形において、自主的な意思が認められていない体制というものはない。従って、この条約が成立した国会においても、その点は当時ずいぶん論議されたのであります。また、その後におきましても国会においてこの点はずいぶん論議され、政府は一日も早くこれを平等の立場において改定すべきであるということが国会においてもしばしば論議されたのであります。いわば現行安保条約がある時期にこれを改定しなければならんということは、成立の当初からの宿命的な関係にあったと私は思うのであります。  今日安保条約改定反対をしておる人々の間におきましても、この改定をしなければいけない、こういう点について改定をすべきだということを堂堂と国会において論議されたことは、また政府に対して質問をし、政府にこれを要望したところの事柄は、会議録にそのまま残っておりますから、私は今日安保反対しておるというような人々が、どういう理由でこういうふうに変説改論されたかということは、ほとんど理解するに苦しむのであります。  こうした国民的要望に基いて、政府といたしましては、この改定について、これらの論議を通じて改定しなければならない論点については、従来とも深く研究されておったところであります。そうして先年当時の重光外相アメリカを訪問した際に、この改定問題をアメリカ政府に申し出たことがございます。ところがその当時におきましては、アメリカとしてはまだその時期ではない、その時期に達したならば考える余地もあるけれども、現在のところにおいてはまだその時期でないということであったのであります。  その翌年私がアメリカを訪問してアイゼンハワー大統領会談した際に、今後の日米関係というものは対等な立場において両国の真の理解と信頼の上に協力関係を結び上げようという点で、両者の意見が一致いたしまして、そのことが当時共同声明に明らかにされた。従って、そういう立場に立って考えるというと、不平等である安保条約改定はぜひこれを具体的に取り上げなければならない問題として、私は当時アイゼンハワし大統領にその点を強く要望したのであります。そこで、当時はまず運営の上において日米の不平等な点、両国国民感情に合わない点、両国の利益に合致しないような点は、運営の点においてこれを是正していこう。そこで、日米安全保障に関する両国最高委員会が設けられて、この安保委員会においてこれらの問題を十分一つ運営の面において是正していこう。しかしながら運営の点においての限度を越えた場合においては、改定の問題もさらに検討しようという意味において、日米安保委員会ができたことも御承知通りであります。以来一年余の時日を経過いたしまして、藤山外相がワシントンをたずね、ダレス国務長官と会いました際に、われわれの多年要望であったところの、また国民的要望であったこの改定問題を、ようやくアメリカとしても取り上げる。それでは東京において駐日米大使外務大臣との間に交渉しようという基本的な話ができまして、自来一年有半、両国の間の折衝を経てこの条約改定の案ができたわけでございます。この間国会におきましても幾たびかこの点が論議され、そうして政府としてはもちろん与党の意見を統一し、要綱を発表し、またこれについての国会におけるところの論議もしばしば行なわれたのであります。また昨年行われた参議院選挙におきましては、この点を明らかに掲げて、国民の批判のもとに選挙が行なわれたことも皆様承知通りであります。その結果が、国民の多年の念願であるところの改定が行なわれるということでありますから、これに対して国民的支持を得たことは、これはまた当然の結論であったと思うのであります。  こうした経緯をとって、この国会に本条約あるいはまたこれに関する関係協定法律が提出され、そうして衆議院における百余日、百数十時間にわたるところの慎重審議の結果は、これまたすでに皆様会議録等において御承知通りであります。われわれは、さらにこれが慎重審議のために会期を延長して、そうして慎重審議は言うまでもなく、二院制度のもとにおいては、衆参両院を通じて慎重審議さるべきことは当然であります。衆議院において審議を尽くされたけれども、なお不明確なところがあるならば、参議院審議においてこれを明確にする。あるいは足らざるところのものがあるならばこれを補い、さらに一層これを再確認する必要のある問題については再確認する。そうして参議院の良識によってこれに対する意思が表示されるというのが、二院制度の本来の姿であり、私は本件のごとき重要案件がそういう経路をたどることは当然である。しかして、私はこういう経過をみまして、この衆議院審議を通じまして思うことは、反対する人々考えは、表面安保条約改定反対するという議論でありますけれども、その実は安保体制そのものを破棄すべきであるということであり、さらに、日本の従来とってきておる日米提携のもとにこの自由主義国立場を堅持して、日米提携のもとに日本の平和と安全と繁栄をはかっていくというわれわれの考えに対して、根本的に違った考えを持っておるのであります。このことが衆議院のこの長い審議を通して私はきわめて明瞭になったと思います。そこで、参議院の御審議にあたりましては、一体われわれ日本の進むべき道として、いかなる道をとることが正しいのかという根本を明確に国民の間に示して、そうして国民安保条約改定に対する正しい認識を与えられるように御審議を進められんことを切に願うものでございます。  今日世界がいわゆる雪解け国際情勢と判断して、雪解けの方向に進んでおるということがよく言われます。昨年のキャンプ・デービッドの米ソ首脳会談以来、そういうことが非常に強く言われております。東西陣営に分かれて意見を異にし、国際的に解決しなければならない問題について結論を得ておらない。そうして世界はややもするとその解決に武力が用いられるのではないかという不安を持っている。この世界に対して、これらの問題を話し合いで解決しようという根本の理念において、両巨頭が一致したということが、世界雪解けということを言われる私は大きな一つ理由になっておると思うのであります。もちろん、今日のこの原子科学発達、おそるべき原水爆その他、核兵器発達考えますというと、どんなことがあっても世界に平和を確立して、これらの兵器が、おそるべき兵器が実際に使われて、そうして人類の破滅を来たすようなことは、これは今日のどの国の政治家も、また国民も、ひとしくあらゆる努力を傾け尽くして、そういう事態の起こらないようにしなければならぬことは、これは当然であります。いかなる意味にあっても、そういう意味において戦争を防止し、戦争が起こるような事態を未然に防がなければならぬことは、これは言うを待ちません。そうして、そのためには、これらの問題について両陣営の間において解決されておらないドイツ問題、あるいは分裂しておる民族の問題、あるいは軍縮の問題、その他の問題に関して、話し合いによってこれを解決しなければならぬということはこれは当然であります。過般行なわれましたパリにおける巨頭会談がああした事情によって決裂したということは、この意味において非常に遺憾と私は考えております。しかしながら、世界東西陣営の対立ということは、なかなか一回や二回の巨頭会談でこれが解決されるというような、なまやさしい関係ではございません。しかしながら、いかに困難であろうとも、われわれは話し合いによっていかなる意味においても戦争を防止して、そうして解決していくという努力は、今後においても続けなければならぬ。パリ会議が決裂したという一事に悲観してはならぬと思います。あくまでも努力を続ける。しかしながら、両方の考え方の基礎というものは、これは容易に融和されたり、あるいは雪解けという言葉によって考えられるように、簡単に解決される問題ではないのであります。私は国際共産主義考え方が、マルクス以来、一貫して世界共産化していくという考えのもとに、あらゆる歴史的な経緯をとってきていることは、ここにくどくどしく申し上げるまでもないと思います。あるときは武力によって、あるときは微笑外交と称せられる冷戦の形において、いろいろな変化のもとに国際情勢に対応しつつ、一貫してこの国際共産化の運動というものは執拗に行なわれておるということは、これは見のがすことはできないのであります。従って、これに対してわれわれは、人間の自由を守り、人間尊厳を確保するところのこのことが、人類における最高のわれわれの目標である、こう信じており、確信しておるところのわれわれとしては、あくまでも自由主義立場において、また真の民主政治民主主義のもとにおいて、人類の幸福と平和を求める道ということを考えるのは当然であります。また日本憲法もその精神において貫かれておることはここに申し上げるまでもないのであります。従って、日本立場としてあくまでも自由主義立場を堅持し、共産主義考え方に対して、人間の自由と尊厳を守り抜くという強い決意で進まなければならぬことは、これは私は言うまでもないことであると考えております。  こういう立場を堅持しておる日本の進むべき道はどこにあるかと言えば、私は自由主義の国々と提携して、そうして日本の平和と安全と繁栄を期していくという道を確固として守り抜いていくことが、日本国民の真の道である、こう信じております。で、こういう立場から見まするというと、今日安保条約改定反対する人々は、アメリカ日本との関係を離間し、日本の国が今申し上げましたようなこの立場を変えていくという考え方であります。その考え方については、はっきりと共産主義立場をとる人々もございます。また口に共産主義を排撃しておるけれども、中立政策中立主義という名のもとに、この日米を離間し、日本自由主義立場を弱めて、そうして共産化の方へ一歩近つこうとするところの考え方がございます。現に共産国から、日本に対して中・ソ等から日本中立化を強く呼びかけておることは、皆様も御承知通りであります。これは中立化中立主義というものが、一部の理想主義者考えているような真の中立、どちらにもつかないような第三の道を行くんだということを許さない国際間の非常なきびしい状況を、私は如実に示しておると思います。われわれが一たびこの安保体制というようなものから離れて、中立主義というような立場に立つならば、日本共産化への、これは一歩ではない、数十歩も前進することに私は結果としてなるということを強く思うのであります。従って、こういう意味において、今日安保条約のこの改定に賛成するか反対するかということは、日本進路としてあくまでも自由主義立場を貫いて、そうして日米協力のもとに日本の平和と安全と繁栄をはかっていくべきであるか、そうではなくして共産国と手を握って、そうして日本の平和と安全と繁栄をはかっていくかという、根本考えの相違が、すべての論議の中心に、根底になっておると、私は衆議院の長い審議を通じて切に感じたところでございます。  私は、今日あるいは日本の一部におきましては、この安全をはかるために日米中ソ不可侵条約をもって安保条約にかえたらいいじゃないかというような議論審議の間に聞いたところであります。しかしながら、こうした四ヵ国の不可侵条約というものが、一体実現可能なのかどうかという根本の問題について考えてみまするというと、あるいは軍縮の問題、その他の問題におけるところの国際情勢、また東西陣営が対立しており、この間におけるところの先ほど申したような国際情勢のもとにおいて、こういうことが可能であると考えること自体が、私は現実を離れておると思います。また、この不可侵条約あるいはロカルノ方式というようなことを言つっておりますが、かつてロカルノ条約が列強の間の意見の不統一によってこれが無効に帰した実例から考えまして、また不可侵条約自体が、日ソの間にあったところの不可侵条約というものがどういう結果になったかということについては、われわれ国民の記憶に新たなところであります。こういうものをもって日本の平和と安全を守り、日本のほんとうの繁栄を期していこうということを真に考えておるとするならば、私は、その事態認識、またそういう条約の性質というものに対して全然理解のない結果であると言わざるを得ないと思います。今日、東西関係において、集団安全保障体制というものは、御承知通り日米の間だけではございません。いろいろな関係があって、そうして自由主義国団結共産主義国との団結のもとに話し合いで今後解決していこうという状況、これを進めていくのが、私はこの国際現実に即して、真に平和を作り上げ、日本国民繁栄を作り上げるゆえんであると思います。  今度の改定条約は、内容的にはいずれ御審議でいろいろ詳しく申し述べる機会があると思いますが、いずれも従来論議されておる点を改善するものであり、これが現行安保条約よりも改善されるということについては、私は国民の何人も疑いを持つものはないと思います。ただ、安保条約そのものをなくしようという反対論は、先ほど来申すように、日本の将来にとってきわめて危険であり、また、われわれのとうていとることのできないことであるということを十分に御了解いただきたい。また、わたわれの平和と安全の見地から見まして、過去八年間あった不備なる現行安保条約ですら、日本の平和と安全にどれたけ寄与したか、日本の経済の復興にどれだけ寄与したかということを、事実においてわれわれが考えるならば、こういう条約ができれば戦争に巻き込まれるとか、戦争の危険があるとか、というような反対論が一体どこから出るか、私の理解に苦しむところであります。私は、今度の条約あるいは現行の条約も同様に防衛的なものであるということについては、これは言うを待たないことであります。安保条約改定によってそういう危険があるというようなことは全然曲解であるか、あるいは、ためにする議論と言わざるを得ないと私は思います。また経済の面につきましても、日米協力することが、いかに日本経済の発展の上に必要であるかということは、日本アメリカとの間の貿易の問題であるとか、あるいは技術の交流の問題であるとか、あるいは資本交流の問題であるとか、外資の導入の問題であるとか、いろいろなことを一々あげる必要はございません。私はもちろん、主義主張は違っており、国柄は違っておっても、共産圏との間の貿易も日本としてはできるだけこれを拡大することに努めますが、しかし、そのウエートにおいて、自由主義国に依存する度合い、さらにアメリカとの関係においてわれわれが持っておる重要度と共産国とのそれとは、これはとうてい比較にならない数字でございますから、私は共産主義国との貿易というものももちろん無視はいたしませんけれども、何といっても、日米の経済協力こそは今日の国力回復のもとであり、またそれが将来における日本国民生活の向上の上には欠くべからざるものである、こういう点に関しても今回の条約改定におきましては、特に意を用いておるのでございます。  いずれにいたしましても、今後日本の進むべき基礎の方針として、私は安保条約改定を成立せしめることは、日本の従来の自由主義的な、また憲法の精神にのっとったものででありますし、また日本の平和と安全と繁栄の上に欠くべからざるものであって、これを一日も早く成立せしめることが必要である、こういう考えのもとに衆議院審議にも臨んでおりますし、また参議院審議にも今後当たる決意でございます。  先ほど委員長からもお話がありましたように、野党の諸君、他の会派諸君が今日の審議に参加されておらないことは、私どもも非常に遺憾と存じます。しかしながら、今後におきまして、一日も早くこの重大な審議にこれらの会派の人や野党の方々も意をひるがえして参加されて、そうして参議院の使命を十分に果たされることを心からお祈りいたしまして、私の所信の表明を終わります。(拍手)   —————————————
  8. 草葉隆圓

    委員長草葉隆圓君) 次に、ただいま議題といたしております日米安全保障条約等案件について、来たる十四日午前十時から公聴会を開催いたしたいと存じまするが、御異議はございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 草葉隆圓

    委員長草葉隆圓君) 御異議ないと認めます。公述人の数及び選定その他手続等は、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議はございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 草葉隆圓

    委員長草葉隆圓君) 御異議ないと認めます。日米安全保障条約関係案件について公聴会開催承認要求書を議長に提出することにいたします。   —————————————
  11. 草葉隆圓

    委員長草葉隆圓君) 次に藤山外務大臣から経過等についての説明を承りたいと存じます。
  12. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 本案件につきましては、さきに提案趣旨の御説明をいたしたのでございますが、その後時日も経過しておりますので、若干補足を加えつつ、あらためて御説明を申し上げたいと存じます。  安全保障条約の改正は、わが国多年の重要懸案であったことは御承知通りでございます。また日米安全保障体制は、現在までわが国の平和を守るため重要な寄与をなしてきたのでありますが、他面、現行条約は、平和条約発効当時のわが国の異常な事態に基因する変則的な性格のものであるとして、これが改正は各方面より要望されていた次第であったことは、ただいま総理が述べられた通りでございます。この次第に高まり行く国民的願望を背景といたしまして、昭和三十二年、岸総理とアイゼンハワー大統領との会談により、これが改正の端緒が開かれ、次いで昭和三十三年九月、私がワシントンにおきまして、故ダレス国務長官に対して交渉の開始を申し入れ、自来交渉を進めました結果、本年初めこれが妥結を見ることになり、一月十九日調印の運びとなった次第でございます。  条約改正に臨みます政府の基本的な方針は、現行条約に所要の調整を加えることにより、国連憲章の原則のもとに、わが国の守りを全うするとともに、他国を脅威せざる体制を確立し、さらにこの体制運営に関するわが国の自主的な立場を確立することにあることは、政府がしばしば明らかにしたところでございます。また同時に、新条約におきまして、わが国の負うべき義務は厳に憲法の許容する範囲内にとどめらるべきものであることは、政府の特にこの交渉の過程において留意したところでございます。この基本方針は、広く各方面の識者及び国民多数の支持するところであると確信いたしておるものでございます。  交渉は一年以上にわたって行なわれましたが、この間、米国は努めて日本側の意向を尊重し、新条約の妥結に協力的態度をもって終始されたのでありますが、この問、米国の日本防衛援助義務を規定することに関連して生ずる条約地域に、沖縄を含めるかいなかの問題に当面いたしました。この問題につきましては政府は世論の帰趨を見定めて、その最終的態度を決することにしたのでありますが、十分に論議が尽くされた後、現下のわが国の置かれた諸条件よりみて、条約地域は日本の施政下の領域に限定すべきであるということに大勢が決定し、新条約の輪郭が次第に固まるに至ったことは御記憶の通りだと思います。  新条約のおもなる改正点は、さきに提案趣旨説明の際申し述べました通り、第一に日米安全保障体制国際連合との関係を明確化したのでありまして、今度の条約は国連憲障に全く準拠して取り行なわれたものでございます。第二に米国の日本防衛の援助義務を明定し、また第三に、条約実施全般を日米間の協議にかからしめるとともに、特に重要事項を事前協議の対象といたしまして、また第四に、日米安全保障体制を広範な政治経済上の協力関係の基礎の上に置きますとともに、第五に、これらの内容を持つ条約に期限の定めをなしたことでございます。  これらの諸点は、条約改正に関連する国民多数の要望を具現したものと考えておる次第でございますが、以下新条約国会に提案されてより、その審議の過程において、特に関心の対象となった諸問題につき、若干御説明をいたしたいと存じます。  第一は、新条約における極東の平和及び安全の概念についてでございます。日米安全保障体制は、もとより日本の平和を守ることを第一義的目的とするものでございますが、同時に、平和は不可分であり、日本を取り巻いております地域の平和と安全に対し、日米両国が関心を有すべきことは申すまでもないことでございます。この意味におきまして、極東の平和及び安全の概念は、新旧いずれの条約にも共通のものであります。地理的概念といたしましての極東の範囲については、定説のないことは御承知通りでありますが、本条約における極東とは、日本の安全に密接な関係ある周辺地域を意味するものであり、特定地域またはその地域における事態は、それが国際的影響を持ち、かつ日本の周辺地域の静講を乱すものでない限り、それ自体としては日米両国の関心事でないことは申すまでもございません。新条約は現行条約同様、米軍の日本駐屯を認めておりますが、米国は日本周辺の地域において、安全保障上の責任を負う立場にあります。この意味におきまして、日本に駐屯する米軍は、第一義的には日本の平和維持に寄与することを目的といたしておりますが、なおこれら周辺地域における武力攻撃の発生を阻止する使命を有するものであることは当然でございます。同時に、米国がこの地域の平和及び安全のため、何らかの軍事行動をとる場合、その行動が国連憲章のワク内のものであることはむろんでございます。また日本施設及び区域を使用する限りにおきましては、事前協議条項の適用を受けなければならぬことは、申すまでもないのでございます。  第二は、新条約第三条についてでございます。この条項はいわゆるバンデンバーグ条項と称せられ、米国を相手とする安全保障条約には、類似の条項が掲げられていることは御承知通りでございます。米国の防衛援助を求める国々は、その国自身応分の努力をなすべきであるとの趣旨を表明いたした条項であります。さらに本条項は、締約国がみずからの努力により、また相互に協力してその安全を守るための能力を涵養するとの基本原則を述べたものであり、狭義の防衛力を今後機械的に増強することを意味するものではないのでございます。すなわち、防衛計画の規模、態様などは、各締約国がみずからの判断に基づき、自主的に決定すべきものであることは申すまでもございません。  第三は、第五条、米国の日本防衛援助義務でございます。通常の安全保障条約は、条約地域を定め、この地域へ武力攻撃が発生した場合における相互援助の方式をとっておりますが、本条約条約地域を日本の施政下にある領域に限定している点におきまして、他の諸条約と本質的に性格を異にしているのでございます。すなわち、形式的には、米国の他国に対する防衛援助義務を規定する形式として、上院において歴史的背景を有するいわゆるモンロー・ドクトリン・フォーミュラを採用しておりますけれども、日本としては、その国土に対して武力攻撃が行なわれた場合にのみ、憲法上の規定及び手続に従い、所要の行動をとるものであることを明らかにいたしている次第でございまして、日本は当然みずからなすべきことをなすという点において、実質的には新たな義務を負うことにはならないのでございます。  なお、この際、日米安全保障体制の実情及びその推移と本条約との関係について一言いたしますれば、昭和三十二年の岸総理及びアイゼンハワー大統領との会談に基づき、米軍地上戦闘部隊は全面的に撤収し、その他部隊も漸減し、今後情勢の変化なき限り、この傾向は継続することとなっております。しこうして、この間、自衛隊は、漸次整備されまして、日本防衛のため、次第に重要な役割を担当するに至っているのでございます。在日米軍の規模の縮小は一面国民感情に沿うものでありますが、同時に、日本の平和を守るためには一朝有事の際における備えをなす必要のあることは申すまでもないことでございます。この意味におきまして、本条約第五条による米国の日本防衛援助義務は、戦争を未然に防止するため重要な意味を有するものであることを強調いたしたいと存ずるのであります。  第四は、事前協議条項についてでございます。現行条約においては米軍の行動を規制する何らの規定もないことは御承知通りであります。本条約一は、付属交換公文により、米軍の行動中、特に重要事項を事前協議の対象といたしたのでございます。その事前協議をいたしますことに了解をいたしておりますものは、米軍の日本国への配置における重要な変更並びに同軍隊の装備における重要な変更及び日本国から行なわれます戦闘作戦行動のための基地としての日本国内の施設及び区域の使用ということが事前協議の対象となっているわけでございます。この条項は、政治的信条を同じうする日米両国の相互信頼の基礎に立つものであり、これら事項につき事前協議を行なう以上は、米国は日米間に協議がととのわない限り、また日本政府の意向に反してこれらの行動に出ることはないということを、ここに確言いたすものでございます。  第五に、条約の期限の問題でございます。本条約は、国連が日本の平和及び安全の維持のため有効な措置を講ずる場合及び十年後において一年の予告をもって終了させることができる旨を定めておるのでございます。申すまでもなく本条約の目的とするところは、日本の平和を守る上に後顧の憂いなき備えをなし、わが国の発展をはかることにあるわけであります。これがためには、安全保障体制に一定の安定期間を必要とするものと信ずるものでございます。国内の一部には、安全保障条約に関する他国の事例を引用し、一年の予告をもって廃棄し得る方式を可とするとの議論もございますが、私は本条約の基本的性格より見て、また広く歴史的諸事実を参照いたしまして、日米安全保障体制日本民主主義を基調とする基本的進路にとり桎梏と化することはあり得ないと信ずるものでございます。むしろ安定期間の欠如こそ日本の安全保障にとり好ましからざる要因をはらむことになると言わざるを得ないのでございます。  次に、行政協定の改正について御説明を申し上げます。行政協定は申すまでもなく米軍駐屯に関する諸事項を規律するものでありますが、条約改正に関連して現行協定を全面的に再検討をいたし、協定実施の経験、諸外国の事例などを考慮いたしまして新協定締結いたした次第でございます。特に重要な改正点は、施設外の米軍の権利、出入国、通関、労務、特殊契約者、民事請求権などの改正及び防衛分担金の条項の削除でございますが、今後協定実施面についても改善をはかり、国民と米軍との関係の円滑化に一そうの努力をなしたいと考える次第でございます。  さらに協定改正に伴いまして、これが実施のための諸法律の改正を整理法案として提案いたしておりますが、協定改正に伴う一部実質的改正のほかは、現行法に対する技術的修正を行なったものでございます。  本案件に関する私の説明は以上の通りでございますが、条約改正の交渉開始以来、特に国会審議に入ってより、本条約に対し、国の内外より悪意の中傷と攻撃が加えられつつあることは御承知通りでございます。しかしながら、すでに申し述べました通り、今回の条約改正は、日米安全保障体制堅持の基本方針のもとに、現行条約の不備を是正し、現状に沿うよう調整を加えたものであり、基本的には現行条約の延長でございます。また、純軍事的負度より見れば、条約改正の主要点は、米国の日本防衛援助義務の明定と、事前協議事項に要約されると思うのであります、米国の日本防衛援助義務の明定は、それ自体としていかなる国をも脅威するものではなく、また事前協議事項は、現行条約においては、米軍の行動に対して何らの規制が存しないのに対して、新条約においては、日本意思により米軍の行動に対する制約が加わることを意味するものでございます。すなわち、新条約の内容には、極東に軍事緊張を強める要因は何ら存在しないことはきわめて明白でございます。極東の平和維持こそ全日本国民の何よりも希望するところであると考えるのでございます。  私はこの機会において、本条約の防衛的性格を明らかにするとともに、異なる政治体制の平和的共存及び善隣関係の確立こそ、わが国の基本的性格であることを強調する次第でございます。  国会審議に関連し、国内に重大なる局面が生じていることは否定し得ないところでございます。しかしながら、日本が、国民の自由な選択により、民主主義国として再生し、民主主義国家群の一員として現在の姿まで復興し、今後この進路を守るため有効な安全保障の体制、すなわち日本の置かれている客観的諸条件より日米安全保障体制を堅持すべきであるとの基本方針については、国民多数の支持するところであると確信するものでございます。  私はここに、本委員会がこの案件にっき慎重御審議の上、すみやかに御承認あらんことを希望いたす次第でございます。
  13. 草葉隆圓

    委員長草葉隆圓君) 次に政府委員から三案件についての補足説明を聴取いたします。
  14. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) 条約につきまして補足説明を申し上げます。  条約は、日米間の相互協力及び安全保障条約自体と、これに付属します五つの文書から成っております。五つの文書と申しますのは、事前協議に関する交換公文、吉田・アチソン交換公文の存続に関する交換公文、相互防衛援助協定に関する交換公文、沖繩に関する合意議事録、日米安全保障協議委員会の往復書簡、この五つでございます。このうちの初めの三点、すなわち事前協議、吉田・アチソン交換公文、相互防衛援助協定に関するもの、この三点は本条約とともに国会の御承認の対象として提出いたしておる次第でございます。他の二件、すなわち沖繩と日米安全保障協議委員会設置に関する件は、行政権の範囲内の事項について規定したものでございます関係上、国会の御承認の対象とはせず、参考文書として御提出申し上げている次第でございます。  本条約でございますが、本条約は、前文と十カ条から成っている次第でございます。前文は五項目から成っております。第一項は政治関係、第二項は経済関係、第三項は国連憲章の尊重と平和主義、第四項は自衛権について第五項は極東の平和安全に関する規定をいたしておる次第でございます。  第一項及び第二項につきましては、これは日米両国が政治上及び経済上の広範にしてかつ恒久的な友好協力関係の基礎の上に立つものであることを明らかにしている次第でございます。  第三項は、国連憲章の目的及び原則に対する信念がまず再確認されている次第でございます。国連憲章の目的と申しますのは、憲章第一条に規定されているところでございまして、次の四点でございます。すなわち、国際の平和及び安全を維持すること。人民の同権及び自決の原則の尊重に基づく諸国問の友好関係を発展させること。第三点といたしまして、経済、社会、文化、人道の諸方面における国際協力を達成すること。第四点は、これらの目的の達成にあたって諸国の行動を調和するための中心となること。これが国連憲章の目的でございますが、この目的を再確認いたしますとともに、原則、すなわち国連憲章の第二条には、この原則についての規定がございます。すなわち第二条は、第一条のただいま申し上げました国連憲章の目的を達成するにあたって、国連及びその加盟国は、次の原則に従って行動しなければならない。その七項目の第一項は主権の平等。第二項といたしまして、憲章上の義務の誠実な履行。第三項として国際紛争の平和的解決。第四項として武力の使用の禁止。第五項として侵略者に対する援助の禁止。第六項として非加盟国もこれらの原則に従って行動することを確保すること。第七項といたしまして、国内事項に干渉しないこと。このような国連憲章の目的及び原則に対して、それらをここで再確認いたすとともに、さらに両国が、すべての国民及びすべての政府とともに平和のうちに生きようとする願望についてここに再確認いたしている次第でございます。  第四項は、当然のことでございますが、日米両国国際法上個別的または集団的自衛権を持つものであることを確認いたしておる次第でございます。  最後に第五項は、両国が極東における国際の平和及び安全の維持に共通の関心を持っていることを規定いたしてございます。  条約第一条でございますが、第一条の第一項の方は、紛争の平和的解決と、武力の使用の禁止を規定いたしております。これは、先に掲げました国連憲章第二条に定められている七つの原則のうちの最も重要な原則でございます第三及び第四の原則を、ここに文面を変えることなくそのまま引きうつしました重要な原則でございますので、再確認いたした次第でございます。第二項は、平和維持機構としての国際連合が強化されるよう努力する趣旨をさらに確定している次第でございます。  第二条前段は、自由な諸制度を強化することによりまして、平和的かつ友好的な国際関係の一そうの発展に貢献する旨の規定をいたしております。後段は、ただいまの前段が主として政治関係のことを言っておりますのに対しまして、後段は経済関係、すなわち締約国は、その国際経済政策におけるくい違いを除くことに努め、また、両国の問の経済的協力を促進することをうたっている次第でございます。  次に第三条は、バンデンバーグ決議の趣旨にのっとったものでございますし、この同種の条約にこれと似たような規定がございますが、本条は、これら一般的な型のものとははっきりと違った点が幾つかある次第でございます。その第一点は、「憲法上の規定に従うことを条件として」という明確な留保がつけてある次第でございます。これはわが憲法の第九条の規定を念頭に置いて入れられた文句でございます。また「締約国は、個別的に及び相互に協力して、」——通常ここは「単独に及び共同して」となっておりますが、この場合、「個別的に及び相互に協力して、」という文句に変えた次第でございます。また、「武力攻撃に抵抗するそれぞれの能力」、これにつきましては、通常は「個別的の及び集団的の能力」というふうな書き方になっておりますが、これを「それぞれの能力」というふうに改めた次第でございます。これは共同とか集団的とかいう言葉になりますと、いかにも日米両国が一体となって防衛能力を維持発展させるものであるというような印象を与えるというところから、はっきりとこのような文句にした次第でございます。  第四条は、協議条項でございます。本条約の実施に関する協議と、日本の安全または極東における国際の平和及び安全に対する脅威が生じたときは、いずれか一方の締約国の要請に従って協議が行なわれる次第でございます。この条約の実施につきましての協議は、随時行なわれるわけでございます。これはそれぞれの事項に応じて、適当なレベルで、適当な経路を通じて行なわれる。しかも条約の実施について、一切の事項について協議をしなければならないというものではなく、必要があればその必要に応じて協議が随時行なわれる次第でございます。それで、日本の安全または極東の平和及び安全に対する脅威が生じたときは、いずれか一方の要請において協議が行なわれます。日本の安全が脅威されると申しますのは、申すまでもなく、日本に対して直接の武力の攻撃が行なわれる場合のみならず、いわゆる間接の侵略によって脅威を受けた場合、たび重なる領空侵犯が行なわれた場合、または空中における武力攻撃の発生によって、間接に日本の安全が脅やかされるというようないろいろな場合が考えられます。極東における平和及び安全に対する脅威と申しますのも、申すまでもなく、そこに敵対行為が行なわれたりするその危険がある場合でございます。この協議条項に関連いたしまして、別に往復書簡によりまして、日米安全保障協議委員会の設置に関する書簡を往復した次第でございます。この書簡は、ただいま申し上げましたように、協議はそれぞれ適当な経路を通じて常時行なわれるわけでございます。両国関係首脳者が随時一堂に会しまして、重要な問題について意見を交換することは、両国意思の疎通をはかる上においてもきわめて有益なことであるという理由から、ここに協議委員会を設けた次第でございます。この委員会は、おもに安全保障に関する事項を取り扱うものでございますが、日本側からは外務大臣と防衛庁長官、米国側からは、駐日米国大使と、顧問といたして太平洋軍司令官またはその代理者たる在日米軍司令官が出席する次第でございます。  次は、第五条の武力攻撃でございますが、「日本国の施政の下にある領域」と申しますのは、法律上の観念でございまして、そのとき現在日本の施政のもとにある領域でございます。従って北方領土及び南方諸島は現在はこれに入らない、ただし、これらの領土が日本に返還される場合、当然日本の施政のもとにある領域となり、第五条の適用があるわけでございます。「いずれか一方に対する武力攻撃」と申しますのは、一国が他国に対する組織的、計画的な武力の行使でございまして、憲章上明らかに違法とせられるところのものでございます。このような武力攻撃のありました場合に、日米両国が共通の危険に対処するように行動する次第でございます。武力攻撃に対処する行動でございますから、武力が主体となることは言うまでもないことと考えます。この場合、自国の憲法上の規定及び手続に従って対処されます。米国におきましては、憲法上の規定及び手続と申しますのは、そのおもなるものは、米国憲法第一条に、宣戦を行なう権限は連邦議会にありまするので、宣戦を行なうというような場合は、連邦議っ会がそれを行なうことになる次第でございます。しかし、大統領は平時においても国の最高指揮官でございます。これは米国憲法第二条の規定でございますが、従いまして、この資格において、攻撃に対して兵を動かしてこれを排除することもできる次第でございます。わが国におきましては、申し上げるまでもなく憲法第九条の規定を考慮に入れて規定した次第でございます。  で、本件に関しましては、個別的または集団的自衛権の問題がございます。これにつきましては、法律的な問題といたしまして、武力の行使は憲章上禁止されている次第でございます。しかしながら武力攻撃があった場合に、これに対処して武力を行使するということは、やはり武力の行使であり、それが憲章上禁止されているかどうかという問題になりまして、それが憲章上は禁止されていない、禁止されていないとすれば、どのような条文から禁止されていないか、その武力の行使が適法であるかという問題として、自衛権——個別的または集団的自衛権というものが発生する次第でございます。憲章第五十一条の個別的または集団的自衛権に基づいてこの行動が適法化される、いわゆる違法性が阻却される次第でございます。日本に対して武力攻撃が行なわれました場合に、米国が対処する行動、これは集団的自衛権において合法化される次第でございます。それから在日米軍に対する武力攻撃が行なわれました場合は、それは当然日本の主権に対する武力攻撃でございますので、これに対処する日本側の行動は、個別的自衛権によって合法化される、あえて集団的自衛権を援用してこれを合法化する必要はない、こういう次第でございます。第五条の後段は、国連憲章第五十一条の規定にのっとった次第ございまして、前記の武力攻撃及びその結果としてとった措置は、安保理事会に報告いたします。またその措置は、安保理事会国際の平和及び安全を回復し及び維持するために必要な措置をとったときは、停止しなければならないのであります。  第六条は、日本の安全に寄与すること、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するためという二つの目的に従いまして、米国に対しまして、日本における施設及び区域の使用をこの目的に従って許可した次第でございます。  第六条の第二項は、このような施設及び区域の使用及び合衆国軍隊地位につきましては、現在までは行政協定がございますが、現在これにかわる別個の協定、すなわち現在御承認の対象となっております地位協定及び合意される他の取りきめ、この合意される他の取りきめと申しますのは事前協議に関する交換公文でございますが、これらの取りきめによって規律さる。もちろんこの二つだけではございません。今後いろいろもし約定が行なわれるとすれば、それも当然含まれる次第でございます。  第七条は、国連憲章が引き続き優先するという規定でございます。  第八条は、批准が東京で行なわれること。  第九条は、従来の安保条約は、新安保条約の発効とともに効力を失う。これは当然の規定でございます。  第十条は期限、期限は十年で、十年たった後は一年の予告をもって廃棄できる。しかし、十年経過前といえども、国際の平和及び安全の維持のための十分な定めをする国連の措置が効力を生じたと両国考えたときには、効力を喪失する次第でございます。   —————————————  次は、条約第六条の実施に関する交換公文でございますが、これは三つの重要な事項が事前協議の対象となっておる次第でございます。  その第一は、米軍の日本国内の配置における重要な変更でございます。これはたとえば陸軍でございますれば、一個師団程度の兵力を新たに日本に配置することでございます。次は同軍隊の装備における重要な変更、これは核兵器、詳しく申しますれば、核弾頭、核専用の運搬手段、ミサイル基地の建設、この三点を意味しております。それから戦闘作戦行動につきましては、その代表的なものといたしましては、戦闘任務を与えられました航空部隊、空艇部隊、上陸作戦部隊の発進基地として使用される場合を、これを事前協議の議題といたしておる次第でございます。   —————————————  次は、吉田・アチソン交換公文でございますが、この吉田・アチソン交換公文は、現行安保条約の付属交換公文として取りかわされたものでございます。そうして朝鮮動乱に対する国際連合の行動に対しまして、日本協力すべきことを定めておる次第でございます。この交換公文は安保条約の付属文書でございます関係上、形式的には安保条約と運命を共にすべきものでございます。すなわち、現在の安保条約が効力を喪失すれば、当然吉田・アチソン交換公文も効力を喪失する次第でございますが、朝鮮動乱に対する国連の行動はまだ継続中でございますので、これを失効させるわけにはいかない次第でございます。そこで、第一項におきまして、この吉田・アチソン交換公文は、日本国における国連の軍隊の地位に関する協定が効力を有する間、引き続き効力を有するということにした次第でございます。  第二点は、この国連軍は、現在の安保条約及びそれのもとにおける行政協定に従いまして、米国に供与された施設及び区域を使っていいということになっておりますが、この安保条約と行政協定は、新安保条約地位協定に変わるわけでございますから、その手当をいたしている次第でございます。  それから第三点は、日本における米軍は、国連の指揮のもとにありましても、その実体は米軍でございますので、当然日米相互協力及び安全保障条約によって行なわれる取りきめによって規律されるということでございますが、この点を念のためにここではっきりさせた次第でございます。で、相互協力及び安保条約に従って行なわれる取りきめといわれるものは、事前協議に関する交換公文も含まれることは申すまでもないことでございます。   —————————————  第四は、相互防衛援助協定に関する了解に関する交換公文でございます。この相互防衛援助協定におきましては、現在の安保条約及び行政協定を引用した部分がございます。従いまして、この引用した部分で新安保条約及び地位協定に該当する部分があれば、それを引用したものとして言及しているものとみなされるという了解を政府は取りつけたわけでございます。これも当然の取りきめでございまして、いわば国内法における法律の読みかえ規定と想定される次第でございます。   —————————————  それから第五は、南方諸島に関する合意議事録でございますが、万一南方諸島が攻撃を受けたような場合、日本政府といたしましては、島民の福祉のために米軍と協力して最善を尽くすという決意を明らかにしておる次第でございます。これに対しまして米国は、日本と直ちに協議すること、及び施政権者たる責任におきまして、米国が防衛及び島民の福祉のために最善を尽くすという決意を述べた次第でございます。  以上、補足説明を終わります。
  15. 森治樹

    政府委員(森治樹君) 地位協定及び整理法案のごく概略を補足的に御説明申し上げます。  地位協定関係の文書は、協定そのものと、それから十二条六項の(d)項に関する交換公文、いわゆる労務に関する交換公文と、それから協定に関する合意議事録の三つでございます。  協定につきましては、先ほど外務大臣から御説明のありました改正点について重点を置きつつ、概略を御説明申し上げます。  第一条は、合衆国軍隊の構成員、軍属及び家族の定義に関する規定でございまして、現行法と変わりございません。  第二条は、米軍の使用に供する個々の施設及び区域の提供、及びこの米軍に提供された施設区域の使用は、必要最小限度にとどめるべきであるという趣旨から、アメリカ側は必要でないものをいつまでも使っているようなことがないように、いつでも検討をするという現行の行政協定の建前を継承いたしております。  第三条は、施設区域内及びその近傍においてアメリカ側のとり得る措置及び電波に関する規定でございます。新旧の協定を比較いたしますると、現在の行政協定では、合衆国は施設区域内において、それらの設定、使用及び運営、防衛または管理のため必要なまたは適当な権利、権力及び権能を有する。また合衆国は、前記の施設及び区域に隣接する土地、領水及び空間または前記の施設及び区域の近傍において、それらの支持、防衛及び管理のために、前記の施設及び区域の近傍の便をはかるために必要な権利、権力、権能を有する。こういうふうな規定になっておりまして、アメリカ軍が施設及びその近傍において、あたかも治外法権的権力を有しているような印象を与える書き方になっております。しかしながら、米軍の権限は決して無制限かつ無条件的なものではなく、あくまで施設区域の使用の目的のために認められるものでありまして、またこのような目的のために必要な範囲内に限られておる次第でございます。従いまして、こういう米軍の権能の実体に合わせるため、新協定の第三条の第一項におきまして、必要なすべての措置をとることができると規定いたしまして、施設外の権利につきましては、施設区域への出入の便をはかる主体を第一義的には日本政府に改めますと同時に、アメリカ軍隊が措置をとる例外的な場合には、常に日本側と協議して初めて行ない得るという趣旨を明らかにいたした次第でございます。  第四条は、施設区域の返還の際の補償及び米軍の加えました改良工事の残存価値の補償に関する規定でございまして、現行協定と変わりございません。  第五条は、米国が公の目的で運航します船舶及び航空機の日本の港及び飛行場に対する出入と、これら船舶、航空機、公有車両、軍隊の構成員及び軍属並びに家族の施設区域への出入及びその間の移動に対する規定でございまして、現行協定と実体的な相違はございません。第六条は、航空交通管制の体系と通信の体系の整備につきまして、集団安全保障の関点からの必要性に基づきまして、日本当局と米当局が緊密に協調していくべきことを定めております。これも現行協定と変わりございません。  第七条は、合衆国の軍隊が公益事業及び公共の役務、たとえば鉄道、郵便、電信、電話、電気、ガス、水道等の利用に関する規定でございます。これも現行協定と変わりございません。  第八条は、気象業務に関する規定でございまして、気象業務に関する日本合衆国軍隊に対する協力を規定しております。これも現行協定と実体的な相違はございません。  第九条は、合衆国軍隊の構成員及び軍属並びに家族の出入国に関する規定でございます。今回の改正で、合意議事録におきまして、その出入国数を定期的に日本側に通知すべきことにいたしました。同時に、日本政府が何らか特別の理由によりまして個々の米国軍隊の構成員や軍属に対して送り出しを要請し、またはそれらのものの家族等に退去命令を出しましたときは、合衆国当局はこれを自国に送り返す責任を負うことといたしました。  第十条は、運転免許証及び自動車に関する規定でありまして、現行法と変わりございません。  第十一条は、輸出入に関する規定でございまして、一定の場合における関税その他の課徴金の免除と、税関検査の免除が規定のおもな趣旨でございます。この規定に関しましては、三つの点において改正を行ないました。まず第一には、税関検査につきましては、米軍の構成員であっても、部隊として行動しない場合には税関検査に服することといたしました。また旧協定では、軍事郵便局を通ずる郵便物はすべて税関検査を免除されておりましたのを、この協定では検査免除は公用のものに限るとし、私用のものは検査を行なうことといたしました。第二に、PX等の輸入物品につきましては、今回は合意議事録で、輸入数量を軍人軍属等の私用のために必要とされる合理的な数量に限ることといたしました。第三点は、免除特権の乱用、または違反があった場合には、日本側が米国側に対して適当な措置をとるよう申し出ることができることといたしまして、また米国側においても関税法令違反の物品輸入の生じないよう、実行可能なすべての措置をとることといたしました。  第十二条は、調達及び労務関係に関する規定でございます。今回の改正によりまして、第一に、両国政府は合意した場合には、日本国政府を通じてアメリカ側は調達することができるという趣旨を念のために明らかにいたしました。また特需関係では、その調達計画が突然変更を受けるような場合には思わざる損失をこうむるということもございますので、合意議事録におきましては、調達計画の主要な変更につきましては、前もって日本側に情報を提供すべきことといたしました。  次に労務に関する規定でございます。現在駐留軍労務者は、調達庁が雇用いたしております間接雇用労務者と、米軍のPXやクラブ等が直接雇用する労務者とがありまして、これら労務者の賃金その他の労働条件、労働者保護のための条件等は、日本の法令によることとなっておるのでありますが、これら法令に基づく裁判所や労働委員会の決定の履行という点に問題がありまして、特にPXやクラブ等の歳出外資金機関に対する裁判所の管轄権について、両者間の意見の不一致があり、合同委員会で解決に努力してきましたが、満足すべき解決に至らなかったのでございます。今回の改正にあたっては、以上の点についての解決をはかるため、直用労務者を間接雇用に切りかえるという原則、及び裁判所の判決及び労働委員会の命令を履行するという趣旨を合意議事録に明らかにすることといたしました。ただ保安上の理由による解雇の場合には、事案の性質上、労務者の原職復帰がきわめて困難な事情にかんがみまして、判決命令が出されました場合におきまして、米国側が労働者の就労を拒否したときは、問題解決のため日米双方が協議することとし、一定期間内に解決に達しない場合には、当該労務者は就労できないこととなるが、雇用関係から生ずる給与の支払いはこれを受けるものとし、同時に先ほど申し上げました協定第十二条六項(d)に関する交換公文によりまして、米国側は、最高一年の給与の範囲内で、一定の基準に従って定めらるべき期間について、当該労務者の雇用の費用に等しい額を負担することといたした次第でございます。  第十三条は、内国税の免除に関する規定でございまして、現行協定と変わりございません。  第十四条は、特殊の契約者に関する規定でございます。アメリカ合衆国軍隊のための合衆国との契約の履行のみを目的としてアメリカから日本に来ますものに対して、この協定の特定の条項の利益を亨有させる趣旨の規定でございます。元来外国に駐屯します米軍は、原則としてその需要をできるだけ現地限りで充足する方針であり、きわめて高度の専門技術を要する場合等、あるいは軍機保護の関係から、特殊のものに限定される仕事の場合にだけ、本国から呼び寄せるのが普通でございますが、従来の規定によりますと、アメリカ側が、日本政府関係なく一方的にこの種業者を指定し得るような形になっておりましたので、今回の改正によりまして、わが国の技術水準の向上等も考慮しまして、この種業者の指定は、米国が日本と協議の上行なうべきものといたしました。また技術上等特別の理由で、日本業者も入れた競争入札ができない場合に限るべきこととして、明文上もその幅をしぼることといたしました。また指定後も、契約履行が終わったときや、契約者が米軍関係以外の事業に従事し、または違法な活動を行なったときは、指定が取り消される旨を明らかに明文をもって規定いたした次第でございます。  第十五条は、米軍関係者の用に供するためのPX等のいわゆる歳出外資金による諸機関に関する規定でございまして、現行協定と変わりございません。  第十六条は、合衆国軍隊の構成員、軍属、及びそれらの家族等の日本国の法令尊重に関する規定でございます。現行協定と変わりございません。  第十七条は、刑事裁判権規定でございまして、実体上現行協定と変わりございません。  第十八条は、民事裁判ないし民事請求権に関する規定でございます。この規定につきましては、従来相互に請求権を放棄することになっておりました政府関係職員及び財産の相互放棄の範囲に関して均衡をとるために、今回の改正では、日本の自衛隊と米軍との間の人及び財産に関する損害につきましては、請求権を相互に放棄する趣旨に改めた次第でございます。なお船舶の運営等から生じまする海上の損害につきましては、NATO等の協定におきましても、普通の陸上の損害と異なりました別個の補償の手続が規定されておりますので、この規定を踏襲いたしますと同時に、ただ、わが国の特殊な事態でございます漁網の被害、あるいは海産物の浅海増養殖に対する被害、小型の船舶等に対する被害につきましては、陸上の損害と同種の手続によって補償を行なうべき旨日米間で合意をいたしておる次第でございます。なお、この点につきましては、従来、公務遂行中であったかどうかによって補償の手続が異なっておりましたが、今回は、この公務遂行中であるかどうかということに関する判定は従来合同委員会で行なうことになっておりましたのを改めまして、日本人の中から選ばれる仲裁人がこれを行なうことにいたした次第でございます。  第十九条は、外国為替管理に関する規定でございまして、従来の規定と変更ございません。  第二十条は、わが国が為替管理の立場から米軍が軍票を使うことを認めておりますので、これに関する規定でございます。従来と変わりございません。  第二十一条は、米軍の設置運営いたします郵便施設に関する規定でございまして、従来と変わりございません。  第二十二条は、予備役団体に関する規定でございまして、従来の協定と実体的な変わりはございません。  第二十三条は、アメリカ軍及びその財産の安全の確保に関する規定でございまして、従来と変わりございません。  第二十四条は、経費に関する規定でございます。すなわち、日米間における経費の分担は、協定に別段の規定がある場合のほか、施設提供に関する経費以外は米国が負担することになっております。なお、この点につきまして、従来、防衛分担金に関する規定があったのでありますが、これは削除いたした次第でございます。  第二十五条は、合同委員会に関する規定でございまして、この協定運営に関する協議機関たる合同委員会に関する規定でございますが、従来と変わりございません。  第二十六条は効力の発生。二十七条は改正。二十八条は効力の終了に関する規定でございます。   —————————————  次に、整理法に関しましては、各省の所管事項にわたっておりまするけれども、便宜上、私から概略御説明申し上げます。  整理法は、法律三十一件及びポツダム政令一件の改正に関するものでございます。その大部分は名称の変更に伴う改正でございまして、きわめて技術的な改正でございます。ただ、現行行政協定の規定が実質的に改められましたことに伴う関係国内法令の改正のおもな点は次の通りでございます。  第一は、新しい地位協定第十一条の先ほど御説明申し上げました税関検査に関する規定の改正に伴う整理法案第二十条の関税法等特例法の一部改正でございます。  第三は、地位協定第十二条の四項の規定によりまして、PX等、米軍の歳出外資金諾機関の労務者が原則としていわゆる間接雇用になることに伴う整理法案第一条の調達庁設置法、同第四条の国家公務員法等の一部改正法、同第十六条の駐留軍労務者の支払い特例法及び同第十七条の特別調達資金設置令の一部改正でございます。  第三は、地位協定第十四条にいう米軍のための特殊契約者について新たに指定要件が加えられましたことに伴う整理法案第十九条の所得税法等特例法の一部改正でございます。  第四は、地位協定第十八条の民事上の請求権の処理に関する規定が改められましたことに伴う整理法案第一条の調達庁設置法及び同第十二条の民事特別法の一部改正でございます。  以上でございます。
  16. 草葉隆圓

    委員長草葉隆圓君) 以上をもちまして三案件の補足説明は終わりました。  これより直ちに質疑に入りたいと思います。通告順によって質疑を許します。杉原荒太君。   —————————————
  17. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 今国会の冒頭、本会議におきまして、私は岸総理に対し、新安保条約に関する防衛条項等、基本的問題の若干について質問いたしました。本日はその際触れなかった数個の点について質問いたします。  第一点は、本件条約のみならず、一般に国政指導と国際情勢との関係についてであります。今日の世界情勢が米ソを両極とする東西陣営の対立を中心として大きく動いておることは申すまでもありません。この東西陣営の対立はおそらく人類史上未曽有の事態と申さねばなりません。しこうしてその特質は、第一に、両陣営の指導的地位にある国がそれぞれ世界歴史上いまだかつて見なかった人類の自滅の危険すらあるような驚くべき新兵器をすでに持ち、かつ、今後さらにこれが計画的開発に非常の力を傾けつつある点にあると思う。第二の特質は、一方の指導国たるソ連が、いわゆるマルクス・レーニン主義の信仰のもとに一貫した社会革命の目標を持って国策を指導しつつあることであると思う。しこうしてソ連が究極において世界革命の目標を放棄したる証拠は見出されません。第三の特質は、両陣営の対立が、おおむね平和でもない、戦争でもない、いわゆる冷戦の様相を帯び、ことに共産陣営共産主義に特有の冷戦戦術と、戦略として強大なる軍事力を背景としつつ、対外面においても軍事力以外の各種各様の闘争方式を巧みに展開してその政略目標を達成せんと努めつつある点にあると思う。第四の特質は、アジア、アフリカにわたる旧植民地の民族解放運動の介在が東西陣営間の冷戦関係を一そう複雑危険のものたらしめておることであると思う。第五の特質は、いわゆる平和共存等のスローガンが叫ばれておるにかかわらず、実際においては二つのドイツ、二つの中国、二つの朝鮮のごとき、両陣営の力による対立関係を端的に表現する大きな政治的問題が、依然未解決のままであるばかりでなく、軍縮問題のごときも冷戦戦略に利用されている面があって、何ら解決の曙光を見出しがたく、事実において米ソ双方ともかえって軍備の質的強化をはかりつつある点にあると思う。  われわれの見るところでは、東西陣営の対立は、今日までの経過や、以上触れたようなその特質等の点から見ただけでも、世界史の相当長いページを飾る運命にあるものと思う。時に緊張または緩和の度合いの変遷はあろうけれども、その対立の解消は、われわれの今予見し得るような期間内にこれを期しがたいと認めざるを得ないと思う。しかるにわが国内には、国際情勢の見方についてこれと異なる傾向の見解が相当あります。国際情勢は決定的にいわゆる雪解けの方向に向かっているというような見方さえある。そしてそういう見方を根拠として、新安保条約締結は時勢に逆行するものと論ずる者がある。一般国民の間にもそれを受け入れる傾向がある程度見られるのであります。これを西欧諸国の国民等と比べてみますとき、東西対立の問題を中心とする世界情勢の見方について、一般国民認識の程度及び浸透度が違うということのほか、私の特に感ずることは、単に国際情勢認識の面だけではなくして、それが国政指導の実施面において、西欧の場合のように大きく実際上具体化しておるのに反して、わが国では、歴代政府の為政者がいハろいろ申されるけれども、国政指導の基本が、世界情勢の洞察に対する関係において徹底を欠いている。その結果はこのままに放置すれば、わが国の前途は憂うべき事態に立ち至るのではないかということであります。しこうして、この点は安保条約問題についてのみならず、一般国政の指導上根本的に大事なことであります。そこで、この国際情勢の動向に対する大局判断と、これに対応する国政指導の基本方針について総理の御所信を明らかにしていただきたかったのでありまするが、先ほど総理の所信表明中にこの点に触れられました。大体了承をいたすのでありますが、その総理の言われる基本線と国政の実施面、ことに内政面における現状とを照らし合わしてみるときに、その実行の点においての不徹底の点があると思うが、今後におけるこの総理の言われる基本方針の具現に対して、総理の決心を率直に披瀝していただきたいのであります。
  18. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 国際情勢を正確に把握して、これに基づいて日本の進むべき道、施政の基本を明確にして、内政、外交あらゆる面にこれを実施していくべき必要のあることは、ただいま杉原委員の御指摘の通りであります。私は先ほど所信の一端を述べましたときにおきましても、これに対する基本的な考え方は申し述べたつもりであります。日本は、従来ややともすれば、この国政の基本的指導につきまして、国際情勢を正確に分析、把握して、これに基づいて国の進路を定め、内外の施政においてこれを具現化するという点において十分でなかったことは、遺憾ながら杉原委員の御指摘になったように、私も認めざるを得ないと思います。日本がその地理的の立場からいい、また歴史的の環境からいって、国際情勢に対する国民一般の認識が十分でなかった点も、これは率直に認めなければならぬ、しかし今日のこの国際関係からいい、また科学の発達からいって、日本におけるいろいろな事象というものは、直ちに国際的に影響を持ち、また国際的のこの動きは、直ちに日本のわれわれの国民生活にも密接な関係を持っている今日におきまして、国民国際情勢に対する認識もよほど改まってきておりますが、さらにこれを一そう徹底することに政府が努むべきことは当然であります。何といっても国民に正しい国際認識を深めるように、あらゆる点において努力すべきことは当然のことだと思います。さらに今日の国際情勢の問題は、今御指摘のありましたように、要するに、共産陣営と自由陣営との対立からきておって、その関係は、いろいろな国際情勢に応じてその戦術も変更されておるような、また複雑な様相をとっておるということも、これも十分に認めなければならないと思います。従って、ただ単に国際的にわれわれが外交の方針としてこういうものをとるんだということを明瞭にするばかりでなくして、これを内政面にも現わしてこなければならぬ。今日国会の政治の状態を見まするというと、いわゆるわれわれの念願しておる民主政治、議会政治が、一つの危機に面しているとさえ考えなければならぬような事態が起こってきておる、しこうしてその背後において、根底において、国際情勢認識の違い、あるいは東西陣営の対立からくるところの冷戦、これに基づく複雑なる戦術というふうなものがからまっておることは、これは明らかに認識しなければならぬ事態であると思います。従って、私は安保条約のこの改定にあたりまして、先ほども申し上げましたように、日本があくまでも自由主義立場を堅持して、自由主義の国々との提携の上に日本の平和と安全と福祉を増進して、そしてこれが世界平和に貢献するゆえんであると信じておるわけでありまして、これができますれば、日本立場なり日本の進むべき進路というものがきわめて明瞭になり、さらにこれを国内のいろいろな内政上の問題に結びつけて実現しなければならない方策も少なくない、私はかように思っでおります。私は、かつて、この安保条約改定ということは一つのスタートであって決してゴールではないということを申したことがあります。私は、この安保条約改定によってすべての問題が解決するというふうな考えは持っておりません。従って、国政の指導、内政上の諸問題につきましても、この日本立場を明確にした上において、必要なる措置を実現していくということに、今後とも心がけていかなければならぬ、努力していかなければならぬ、かように考えております。
  19. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 ただいま総理の認められたように、世界情勢の動向に対応してとるべきわが国としてのいわば国是の大目標を明確にして、ほんとうに腹を据えて国政指導が実行されていかなければなりません。今ここに一々指摘しませんが、内外施策の広範な面にわたって、大所高所から熟慮断行すべきものが少なくないと思う。世界の大勢とわが国の実情をよく把握して、遠大の気宇のもとに、ほんとうに土性骨のすわった国政指導の実をあげていかれることを要望いたしまして、先に進みます。  次にお尋ねいたしたい点は、新条約の経済条項を活用するための外交運営のあり方についてであります。世界の大勢や、わが国の置かれた地位等からいたしまして、わが国としては、対外政策の面においては、米国との提携を根幹とするいわゆる自由国家群との協調を基調とする外交方針をとることが、外交基調のきめ方として現実的であり、また健全であると思う。このことは、わが国経済の対外依存の地域的分布の関係だけから見ても、むしろ自明のことであると思う。ただ、そのような外交路線をとる場合、特にわが国としては、いわゆる自由陣営内の国際経済の基本的あり方いかんということが、死活的の関心事となってくる。もしそれが、第一次大戦後第二次大戦に至るまでの間におけるような経済的ナショナリズムの行き過ぎや、排他的ブロッの方向に向かうようなことでもあれば、わが国の経済は破綻し、わが国の運命は惨たんたるものになることは必至であります。また、それほどに至らないとしても、自由陣営内の経済上の国際協力が阻害せられるならば、とうていわが国の発展や国民生活の向上は望まれません。また、日米安保体制のごときも、実質的に弱いものになって上まうほかありません。自由陣営の経済上の国際協力が順調にいくことこそ、国土狭く国内資源に乏しいわが国民に残された唯一の生きる道であります。また、安保体制の基礎条件でもあります。この意味において、われわれは新条約の経済条項の実質的活用を重視するものであります。  そこで、経済条項の活用について、外交運営の角度からお尋ねいたしたい。およそ同盟など連合関係にある国の間の外交運営の方法は、そういう関係のない普通の国の間の外交運営と異なる面があることは、あえて指摘するまでもありません。もちろん、連合関係にある国との相互の間においても、通常の外交手段によって処理されなければならぬ面があることは事実であります。しかし、連合外交特有の面は、すでに作られた協定のワク内で共同して共通の政策を打ち出すということが重点である。従って、連合外交においては、普通の外交の場合のごとく、政策が、それぞれの当事国間ですでにきまってしまっておって、それに基づいての交渉というのではなくして、政策の立案の段階から協議による共同作業が活用されなければなりません。それが実際上うまくいくかということこそが連合関係の実質価値を決定する。しかるに、今日までのいろいろな場合の実例を見まするというと、共同の政策を打ち出すための連合外交の運営の実績を上げるということは、よほどの用意と決心とをもって当たらなければ容易ではない。新安保条約締結によりまして、日米両国はもちろん一種の連合関係に入る。新安保条約がほんとうに意味のある価値を持つためには、連合外交の働きいかんにかかることが大であることは申すまでもありませんから、これがためには格段の工夫を要すると思う。そこで、政府は、新条約の経済条項に関し、連合外交の特有な働きを発揮するため、いかなる構想と用意とをもって当たらんとしておられるのであるか。また、国際的規模において日本経済をよくするためにとるべき経済政策の立案にあたって、米国との間の連合外交の妙味を生かすべき面が少なくないと思うが、その点に関する政府の心がまえはどうであるか。  さらに、具体的な問題についてお尋ねいたしますが、現に問題となっております欧州経済協力機構を改組拡大して、加盟各国の経済政策を調整するとともに、低開発国援助の促進を主目的とする新たな国際的な経済協力開発機構を作る動きの成り行きいかんということは、今後の自由陣営内の国際経済に重大な関係を持つだけに、われわれとしては強い関心を持たざるを得ません。政府はこの問題に対しいかなる態度をもって臨まんとしておられるのであるか。新国際機構の成立までにはまだ相当の期間があるのであるから、今日までの経緯いかんにかかわらず、わが国としては、今から投げてしまわないで、新国際機構の発足にあたっては、オリジナル・メンバーとして参加し得るように、最大の努力をなすべきではないか。わが国の参加について、他の関係諸国のわが国に対する冷たい態度、苦情の点があれば、率直にこれに耳を傾けて、その障害を取り除くよう、万難を排して所要の措置を講ずるよう努むべきではないか。それとともに、新安保条約批准の暁は、この条約を実のあるものたらしめるための有力なる基礎条件としても、新国際機構参加の実現を見るように、米国との間に連合外交を強く進めて、米国の強力なる支持あっせんのもとに、目的の貫徹をはかるべきではないか。その結果が得られれば新条約の経済条項の精神も大きく生きてきて、わが国民一般も新条約の具体的利益を、いやおうなしに認めさせ、これを支持する実質的根拠ができてくることになる。この点について政府の方針と決意をお伺いいたします。  さらに、今後のわが国の経済力を伸ばしていく上からいたしましても、科学技術の進歩をはかることの必要であることは申すまでもありません。そういった角度からして新条約の経済条項活用の一つの態様として、日米間に科学技術の協力に関する協定を結んで、実行に移していく考えはないかお尋ねいたします。
  20. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今回の安保条約に経済条項がございますことは、われわれが両国のこの種条約を作ります基礎的条件として、最も尊重して参らなければならぬことでございます。同時に、この協力関係を単に条約上書き現わすのみでなく、実質的に有効に働かしていくことは、われわれ、ただいま杉原委員の言われましたように、努力して参らなければならぬことでございますし、また、今後のわが国経済外交の中枢をなす問題として考えて参らなければならぬと存じております。もちろんわれわれ日米両国は、自由主義経済をもって立っておりますので、その基本的な考え方において相違があろうとは考えておりません。しかしながら、同時に御指摘のありましたように、日本は国土が狭く、また資源にも乏しい一方、アメリカにおきましては、国土が広く、あるいは資源も豊富であるというような諸般の実際的条件が異なっておりますので、その間に、同じ自由主義の政策をとるにいたしましても、おのずからその具体的部回の方向につきましては、若干の相違かできる場合があろうと思いますが、とれらにつきまして、ただいまお話のありましたように、基本的の立場に立ちまして両国のこれらに対する諸般の障害を除去して参りますことが最も必要であり、また、その基礎の上に立ちまして国際経済の上に対処して参らなければなりませんことも、これまた当然のことでございます。従って、日米経済外交が今日まででもそうあったとわれわれ信じておりますし、また、そう努力してきたと思っておりますけれども、今後、やはり基本的な政策の立案にあたりましては、十分協調をし、相互に遺憾なき連絡と意思の疎通をはかって、そうしてお互いの進むべき経済政策について早くから調整を考えて参りますことが必要だと存じます。それらの点につきまして、われわれとしては今後十分な決意をもって進んで参るつもりでございます。ことに今後の国際外交の主要な面というものは、私は経済外交にあると思うのでありまして、低開発国の開発問題というものが、世界の平和につながり、またそれを通じて国際社会の平和というものを作り上げる一つの大きな基礎となりますれば、政治外交のみならず、経済外交というものは世界の平和をもたらします上において必要な大きな要素をなしておると思うのでございます。そこで、経済外交の推進にあたりまして、今申し上げましたような基底の上に立ちましてわれわれ考えて参るわけでございますが、むろん自由主義国家間におきまして大きな基本的な立場における相違はないといたしましても、先ほど日米間の経済事情の問題について申し上げましたように、国際経済の中におきましても、やはりそれぞれの占めております国々の立場が違っており、その現実的な条件が違っておりますので、種々の問題が起こってくることは申すまでもないのでありまして、ただいま御指摘のございましたような、ヨーロッパにおける共同市場の問題にいたしましても、政治的背景によってこれができておりますことは申すまでもないことでございますが、同時に、経済的な要素によってヨーロッパ各国が、お互いの経済を強化していこうという立場が、ともすればそれがブロック化の傾向に進んでいく、また、ブロック化の弊を生み出すような原因になりはしないかという危惧は、ヨーロッパばかりでなく、各国が持っておるところでございまして、ことにアメリカなり日本なりには、それらに対する危惧の念が深いのであります。そういう意味から申しまして、今後のヨーロッパ共同市場の問題あるいは共同市場に対するアフターセービングの問題等につきましての問題は、日米お互いに、いわゆる基礎的な立場に立って、この問題に取り組んで参らなければなりません。また、現にアメリカも共同市場とアフター・セービングの桎梏の解決にすでに乗り出しておるのでございまして、われわれとしても、アメリカ、あるいは同じ考えを持っておりますカナダ等と手を結んで、それらの変質的なブロック化の傾向に参らないように努力して参らなければならず、それらについて基礎的な話し合いをわれわれとしてもアメリカといたしておるわけでございます。その解決の一つの方法として、御承知のように、先般アメリカも発言をして参ったのでございますが、その問題に関連いたしまして、同時に低開発国の援助計画というものが持ち上がって参りまして、先般ワシントンにおいて会議も開かれたわれでございます。この問題については、終始アメリカ日本も同じ考えのもとに、緊密に連絡をとっておりますので、ワシントンにおきます会議においても、低開発国の問題等につきましては、初めから日本が参加することになったわけでございます。ただ、ヨーロッパ全体のヨーロッパ経済機構等の問題につきましては、御承知のように今日必ずしもヨーロッパの各国が、それらの新機構を生み出しますにあたって、日本の参加を初めから好んでおらないような国もございます。これらにつきましては、アメリカも基本的な立場に立ちまして話し合いをしながら、現にアメリカとしてはそうした御指摘のようなオリジナル・メンバーとしてこれに日本が参加する道を開くように努力を続けてきてくれておるのでありまして、われわれもまた、その努力を側面からあるいは正面からそれに対して協力をいたしまして、そうしてわが方もこういうような方向に持って参らなければならないと考えておるのでございます。  なお、低開発国の問題につきましては、今日アメリカ日本も基本的な考え方は同じでございます。ただ、実施の面において若干方法論において食い違うところもございますけれども、これらについてはお互いに隔意なく意見を交換いたしまして、そうして協力態勢を打ち立てていくということが必要であろうかと考えておりますので、そういう面において今後格段の努力をわれわれもして参らなければならず、御指摘のような点について十分に努力して参りたい、こう考えております。日米間におきましても、先ほど申し上げましたように、おのずから資源の関係あるいは国土の関係、人口の関係等によりまして、その同じ基調の上に立ちます自由経済を推進して参ります上におきましても、若干のそれらの具体的な問題になりますと、いろいろ意見の相違のあることは申すまでもないのでありまして、今日でも日本品の対米輸出等に対して、あるいは国内におきまして諸般の論議が行なわれておりますことも、われわれ注意して参らなければならないのであります。それらについては、ただいまお話のような連合体としての協力態勢としての上において十分な相互理解を深めて参るのでありまして、今日まででもワシントン政府としては、アメリカにおける民間の諸般のそれらの運動に対して相当日本立場理解しつつ善処してもらっておるのでございまして、その意味におきまして、必ずしも日本品の輸出に対するいろいろな制限等に対する声は、アメリカの議会等におきまして相当あがっておりますけれども、実施の面にあたっては、政府自身が相当配意してくれておるわけでございます。なお国際協力の場面におきまして、ガット等におきまするアメリカとの基本的な協力関係、いわゆる三十五条援用撤回の問題でありますとか、あるいは低価格品の輸出国としての立場というようなものにつきまして、ガット等の総会等におきましても、十分な連絡協調の基本的な立場に立って進めて参らなければならぬのでありまして、それらについての十分な協力態勢を固めて参りたいと存じております。  最後に科学技術の振興をはかりますことは、日本に必要なこと申すまでもございません。従って、ただいま科学技術協力に関する何か協定等を結んだらどうかというお話がございまして、現に部分的には若干の科学技術的な協定がとり行なわれております。しかし、さらに進みまして、これらの面に関して総合的な立場考えてみることも必要であるのではないかということは、御指摘の通りでありまして、われわれといたしましても、今後それらについて十分な研究をして、また十分な相互の話し合いをいたしまして、それらの面についての十分協力態勢ができますように、そうしてそれが日米協力関係の基礎になりますような方向に向かって努力をして参りたいと存じております。
  21. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 次に新条約の政治条項と冷戦戦略との関係についてお尋ねいたします。  新条約には、民主主義体制の擁護を主眼とする政治条項が規定されております。さきに触れましたように、共産側は強大なる軍事力を背景として、軍事的手段以外の心理戦その他多種多様の闘争方式を組み合わせて、その政略目標を達成するため、活発なる工作を展開しております。しかも、軍事的手段の直接の使用が軽々にできない情勢になってきておるだけに、軍事的手段以外の手段による冷戦戦略が、今後ますます熾烈化していく趨勢にあるものと思う。しかもわが国の実情は、政治目的を異にする国内政治勢力の対立抗争が激しくなり、二つの日本に分かれているとすら言われておるような状態になってきておる。まさに外部からの冷戦戦略目標としての条件を備えていると申さなければなりません。しかるに、わが国の現状は、このような情勢に対し、あまりにも無防備の状態にあるのではないか。このままに放置すれば、憂うべき事態に立ち至るおそれはないか。これに対し政府は、今後いかなる方針をもって望まんとするのであるか。また米国との関係においても政治条項を生かすため、米国側の深甚なる考慮を求める必要のある部面もあるのではないか、これらの点に関し、政府はどう考えておられるか、お尋ねいたします。
  22. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 御指摘のように、今日、東西陣営の対立、特に共産陣営が強力なる軍事力を持って、本来の無防備である世界共産化そうという一貫した方針のもとに、あらゆる施策がとられておる際におきまして、日本の国内に対して、これらの国々からいろいろな働きかけが起こるということは、当然の予期しなければならぬことであります。そうして日本自体がそういうことに対して十分なそういうことを阻止するような国内の体制ができておるかと考えてみまするというと、まことに遺憾の点が少なくないと思います。先ほども御質問にお答え申し上げましたように、第一は、やはり国際情勢、ことに東西陣営の対立の現状、その世界政策としてとっておるところの手段、いろんな戦略なりというものに対して、十分な認識国民に与えることがまず基本として考えられなければならぬと考えます。さらに今御指摘のありましたように、今回のこの新しい安保条約におきましては、経済条項とともに政治条項もございまして、われわれは、あくまでも人間の自由と尊厳を基調としておる自由民主主義立場を堅持して、これは日米両国ともそうでありますが、そういう意味において、さらに両国の福祉を増進していくために協力するということを明らかにいたしております。この点において、いろいろなお互いが情報を交換し、またこれに対する措置等に関しまして時々話し合いをして、この冷戦下における国内撹乱的な事態に対処して参るということが必要であろうと思います。従来も御承知のように、日米の間におきましてはそういう点に関するある程度の協力も行なわれてきております。しかし、さらにこの問題は国際的な規模においてそういういろいろな働きかけがあり、東西の間の冷戦関係におけるいろいろな戦術が行なわれるわけでありますから、国際的な規模において日米協力すべきことも少なくないと思います。これらについては一そう協力関係を深めていくと同時に、他面におきましては、やはり国政の指導の基本方針というものをはっきりと政府としても樹立して、これに基づいて内政上その他諸般の施策を行なって、今まで指摘されたような事態を未然に防いでいき、また国民自身が十分な認識を持って対処するように諸施策を進めていく必要があると、かように考えております。
  23. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 ただいま総理の言われるように、対外施策の面はしばらく別にしても、国内施策の面だけでも、たとえば情報及び啓発、すなわち広報関係対策、治安対策、防衛に関する間接侵略防止対策、文教政策、公務員制度その他占領下諸制度の問題、むろん民生の安定、社会不安の防止のための各施策、その他国政の各般にわたって深刻に考えていかなければならぬ面が少なくないと思う。政府の深甚な考慮を要望して先に進みます。次に新条約締結と対ソ外交との関係についてお尋ねいたします。全般外交の上から見まして、日米条約締結に伴う最も大きな外交課題の一つは、対ソ関係を今後どう持っていくかということであると思う。  それにつけても、まず第一にただしておきたい点は、新条約日ソ共同宣言との関係であります。日ソ共同宣言においては、両国関係を規律する指導原則として、国際紛争を平和的手段によって解決すること、武力の使用及び武力による威嚇を慎しむことを掲げておる。また両国はそれぞれ個別的及び集団的自衛権の権利を有することを確認し合っておる。もともと日ソ共同宣言は、日米間に安保条約が存在することを前提として、ソ連側も明らかにこれを認めた上ででき上がったものである。しかも新条約は旧条約の不合理の点を改めて、独立国としてのわが国にふさわしいものに引き直すということを主眼としておるものである。ソ連側が旧条約の存在はこれを認めず、新条約締結には反対するというが、その特別の理由は一体どこにあると政府は見ておられるのであるか。また、日米条約の内容のうちで、日ソ共同宣言に掲げられた諸原則と両立しないようなものがあるのであるか。また、新条約運営について、日ソ共同宣言に定められた原則に違反するようなものがないということをはっきり言い切れないのか。さらに、およそ対ソ関係を危うくしてわが国の対外的安全はあり得ないと思う。さらにまた、共産主義的破壊工作に対する国内政策とソ連に対する外交政策とを混同して、大局の破綻を来たすようなことがあってはならぬと思う。日露戦争後において、わが国の安全を維持するために、われわれの大先輩たちは、一方において日英同盟を根幹としながら、他方においてロシアとの関係を破綻に導かないために、周密なる外交施策について苦心惨たんいたしました。国の大事を思う者の当然なすべきところであります。日米安保条約締結にあたって、政府は、今後対ソ外交についていかなる方針をもって当たらんとせられるのか。その点をはっきりとお示し願いたいと思う。
  24. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 日本の平和と安全を守る上におきまして、ソ連というものに対して国民が非常な関心を持っていることは、歴史的に申しても御指摘の通りであります。われわれは、国柄、国の立っておる基礎的な考え方においては異にいたしておりますけれども、お互いに内政に干渉しない、お互いの立場を尊重し合うというこの理解と信頼の上に立って友好関係を進めて、平和的雰囲気を作っていくことが絶対に必要であると思う。この点において、日ソ共同宣言に示されておる原則と今度の安保条約に示されておるところの原則は、全く同一の基礎に立っておりまして、ともに国連憲章の精神を体して、この上に成り立っております。すなわち、今おあげになりましたように、両国武力でもって威嚇し合うようなことはしない。あくまでも平和的手段においてすべての問題を解決する、あるいは両国独立国として基礎であるところの個別的または集団的の自衛権は、これを持っておるということを確認し、お互いにお互いの立場を尊重して、内政に対しては干渉しない、そうしてお互いの友好関係を進めるということでございまして、何らこれに矛盾することはないのであります。従って、本来現行の安保条約もまた同じ趣旨においてできておるわけでありまして、現行の安保条約のもとに出されたところの日ソ共同宣言、現行の安保条約の存在ということを両国が確認し合って出しておるこの日ソ共同宣言が、今回の新しい安保条約と何ら矛盾抵触するところのものではございませんし、また将来、新安保条約運営にあたりましても、ソ連に対して脅威を与えるとか、あるいは日ソ共同宣言の趣旨に反するような運営が行なわれるというようなことは、これは絶対にないのであります。私どもは、この意味において、ソ連が何ゆえに現行の安保条約はこれを認め、われわれのこれを合理化し、日本の自主的立場をいれて日本にふさわしいものにするという、その内容的に申しましては、先ほど外務大臣も説明しておるように、何ら近隣の国々に脅威を与えるような意味において改正されておる点は一つもないのであります。これをしも、数回の覚書やその他によりまして、新安保条約にソ連が反対意思を表明し、非難を加えておるということは、私どもは全く了解に苦しむところであります。いずれにいたしましても、このソ連との間において、日ソ共同宣言の精神に基づいて両国間の理解と友好を進めていくことは、当然われわれとしてはやらなければならぬと思います。御承知通り、共同宣言において解決できなかったところの問題——領土問題の両国間におけるところの懸案がございます。これがゆえに、ついにいまだ平和条約を結び得るに至っておりません。この点に関しては、まだソ連は依然としてソ連の主張を曲げておりません。日本としては、日本の主張はあくまでも正しい、歴史的に言っても、また理論的に言っても正しい主張を、ソ連をして理解せしめ、この国民的一致した信念を認めて、そうして領土問題が解決される日を作り上げるように努力をしていかなければならぬと思います。これがためには、やはり貿易、経済の関係であるとか、あるいは文化的な交流の問題であるとか、その他両国理解を深める手段を積み重ねていって、この領土に対する日本国民の動かすことのできない考え方を十分に理解せしめて、そうして平和条約締結する日を作り上げ、両国関係をさらに一そう進めていくようにしなければならぬ。それには、決してわれわれは共産主義をとるものではありません、共産主義にはあくまで反対するものでありますけれども、共産主義を理念として立てておるところの国と、これを混同してはならぬという杉原委員のお考えは、私どももそう思っております。従ってそういう違っている国との問においても、お互いの立場、お互いの国柄というものに対して十分に理解して、それを尊重して侵し合わない、この基礎の上に友好親善を進めていくということが必要であり、また日本にとって歴史的に見ましても、また国民全体が非常な関心を持っておるソ連の関位を、今日のようなソ連側の誤解かあるいは他に意図あっての考えか、われわれの真意に反しているような行動なり、考え方をなくするように努力をして参らなければならぬ。こう思っております。
  25. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 わが国は、今やまさしく国運の進路を決する歴史的段階に突入いたしているのであります。政府の国政指導の責務は、まことに重大と申さなければなりません。他の同僚委員諸氏から、それぞれ憂国の至情を傾けて各般にわたる質問が展開されるはずでありますから、私の質問は、ひとまず以上で終わることにいたします。
  26. 草葉隆圓

    委員長草葉隆圓君) それでは本日はこの程度とし、明九日午前十時から日米安全保障条約関係案件についての質疑を続行いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時三十三分散会