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1960-05-12 第34回国会 参議院 内閣委員会 第25号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年五月十二日(木曜日)    午前十時四十九分開会   ―――――――――――――   委員異動 五月十一日委員下村定君及び横川正市 君辞任につき、その補欠として伊能繁 次郎君及び千葉信君を議長において指 名した。 本日委員千葉信辞任につき、その補 欠として横川正市君を議長において指 名した。   ―――――――――――――  出席者は左の通り。    委員長     中野 文門君    理事            増原 恵吉君            村山 道雄君            伊藤 顕道君            山本伊三郎君    委員            伊能繁次郎君            大谷 瑩潤君            大谷 贇雄君            木村篤太郎君            小柳 牧衞君            下條 康麿君            一松 定吉君            松村 秀逸君            鶴園 哲夫君            松本治一郎君            辻  政信君            高瀬荘太郎君   国務大臣    国 務 大 臣 益谷 秀次君   政府委員    内閣官房内閣審    議室長内閣総    理大臣官房審議    室長      大島 寛一君    人事院事務総局    給与局長    滝本 忠男君    総理府総務長官 福田 篤泰君    総理府総務副長    官       佐藤 朝生君    内閣総理大臣官    房公務員制度調    査室長     増子 正宏君    防衛政務次官  小幡 治和君    防衛庁人事局長 山本 幸雄君    大蔵政務次官  前田佳都男君    大蔵省主計局給    与課長     船後 正道君    運輸政務次官  前田  郁君    運輸大臣官房長 細田 吉藏君    運輸省鉄道監督    局長      山内 公猷君    運輸省鉄道監督   局国有鉄道部長  広瀬 真一君    運輸省自動車局    長       国友 弘康君   事務局側    常任委員会専門    員       杉田正三郎君   説明員    農林省農地局参    事官      庄野五一郎君    防衛庁人事局調    査官      山本  明君   ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○理事補欠互選の件 ○運輸省設置法の一部を改正する法律  案(内閣提出衆議院送付) ○農地買収者問題調査会設置法案内閣提出衆議院送付) ○特別職職員給与に関する法律の  一部を改正する法律案内閣提出、  衆議院送付) ○一般職職員給与に関する法律の  一部を改正する法律案内閣提出、  衆議院送付) ○防衛庁職員給与法の一部を改正する  法律案内閣提出衆議院送付)   ―――――――――――――
  2. 中野文門

    委員長中野文門君) これより内閣委員会を開会いたします。  最初委員異動について御報告をいたします。昨日下村定着及び横川正市君が辞任され、伊能繁次郎君及び千葉信君が選任され、本日千葉信君が辞任され、横川正市君か選任されました。  次に、ただいまの委員異動に伴い理事が一名欠員になっておりますので、その補欠互選を行ないます。互選の方法は、成規の手続を省略して便宜その指名を委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 中野文門

    委員長中野文門君) 御異議ないと認めます。  それでは理事山本伊三郎君を指名いたします。   ―――――――――――――
  4. 中野文門

    委員長中野文門君) 次に、運輸省設置法の一部を改正する法律案議題といたします。前回に続いて質疑を行ないます。政府側出席方々は、現在、前田運輸政務次官細田運輸大臣官房長山内運輸省鉄道監督局長国友運輸省自動車局長広瀬運輸省鉄道監督局国有鉄道部長方々でございます。御質疑のおありの方は、順次御発言願います。
  5. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 運輸省関係審議会とが自動車審議会、それと輸送力の面、こういうような各項について若干お伺いしたいと思いますが、まず最初運輸省関係審議会について一、二お伺いします。御承知のように行政審議会が昨年一月、行管長官に対して答申しておりますが、まあいろいろ要綱がございますが、要点機構簡素化とかあるいは権限責任明確化、それと極力新設を排して既設の分の改組活用、こういうような要旨答申いたしておるわけです。これに対して運輸省としては、この答申趣旨をどういうふうに受けとめておるか、この点まず政務次官にお伺いします。
  6. 細田吉藏

    政府委員細田吉藏君) 政務次官にかわりましてお答え申し上げます。現在運輸省に所属いたしております審議会は、運輸審議会を初めといたしまして十二のものがあります。もっとも、このうちの運輸審議会というものと他のものとは性格が違っておりまして、運輸審議会以外のものは、本省付属機関として置かれておるものでございます。昨年の行政管理庁あるいは行政審議会からの勧告では、このうち船員教育審議会海上航行安全審議会、こういうようなものについてむしろ統合して一つでいいのではないかという御意見がございまして、これにつきましては準備を進めておりまして、できるだけ早い機会に一本にしたいと考えております。このほかにどういうものがあるかということにつきまして御披露申し上げておきますと……ただいまの、失礼いたしました。海上航行安全審議会ではなくて、中央船員職業安定審議会であります。船員教育審議会中央船員職業安定審議会、これは二つ必要がないので、合わせて一つでいいのではないかということで、これは準備をいたしておるのであります。ただいま申し上げました二つのほかに、海運造船合理化審議会海上航行安全審議会造船技術審議会、木船再保険審査会港湾審議会鉄道建設審議会自動車損害賠償責任保険審査会都市交通審議会航空審議会、大体こういったものが運輸審議会以外にあるのでございます。で、それぞれの目的、これは法律に基づいておりますものとしからざるものとがございますが、いろいろ行政管理庁でも内容につきまして検討されまして、これを統合するとか今直ちに廃止するといったものはないという、さきに申し上げました二つ統合のほかにはないという御意見でございまして、私どもといたしましては、この審議会をできるだけ活用いたすということに努めて参っておる次第でございます。審議会につきましては、数が多過ぎる、あるいはもっとふやしちやいかんという点がございまして、今回自動車審議会設置につきましては、いろいろな角度から私ども検討いたしたのでありますが、何といたしましても自動車行政につきまして審議会を開く要があると考えましたので、やむを得ず時限を切りまして、一年という期限を切ってできるだけ早い時間で自動車行政に対する根本的な問題を御審議願う、こういうことにいたしまして、今回自動車審議会設置法改正に入れて提出いたした次第であります。
  7. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 私が政務次官にお伺いしたのはそういうことじゃないんです。先ほど言ったように、行政審議会が昨年一月行管長官答申しておる。いろいありますけれども要旨行政簡素化とかあるいは権限責任明確化あるいは極力新設を排して既設の分の改組活用、こういうような点を行管長官答申しておる。そこで、同じ政府の一機関である運輸省としては、こういう答申趣旨をどういうふうに受けとめておられるか、なお端的に言えば、この答申趣旨を尊重せられるのか、それともあまり問題にしていないのか、そういう点を明確に聞きたかったんです。そういうこまかいことを聞くわけじゃなかったんです。
  8. 前田郁

    政府委員前田郁君) ただいまのお話しの件でございますが、答申趣旨に従いまして、運輸省としても、その方針にのっとって今後いろいろな方策を当てる、こういうことでやっておるわけでございます。
  9. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 そうしますと、答申趣旨は十分尊重するというふうに解釈してよろしいわけですか。
  10. 前田郁

    政府委員前田郁君) さようでございます。
  11. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 そうだとしますと、今詳しい説明のありました中に、中央船員職業安定審議会と、船員教育審議会、この二つ一つ審議会統合すべきである、そういう趣旨の答案なされておるわけです。これは言うまでもなく、昨年一月ですから、現在で一年四カ月経過しておるわけですね。そうすると、いまだにこれがまだ統合されていないということであれば、これはこれに限ったことではございませんが、一例として申し上げておるわけです。この行政審議会答申趣旨運輸省は尊重するのだと、そういう前提に立てば、これは一年四カ月もたっておるのだから、当然統合されてしかるべきだ。いまだに統合されていないとすると、これは運輸省、口ではこの答申趣旨は尊重すると言われておるけれども、実際には問題にしていないんじゃないか、そういう点をお伺いしたいわけです。どういうわけで、いかなる根拠によってこれを統合しないのか、こういう意味なんです。
  12. 細田吉藏

    政府委員細田吉藏君) この二つ審議会統合するという点につきましては、私どもとしましては、即刻にも実施いたしたいということで、主管がこれは船員局の方になっておりまして、船員局の方を督促いたしておるのでございますが、いろいろ今までのいきさつその他がございまして、統合いたすというのに手間取っておりますが、ただいま先生の御指摘の通り、私どもといたしましても、これは答申勧告趣旨に合わない、非常におくれておりますことは、申しわけないと存じておる次第でございまして、これもごく最近にこれはやることに実はなっておるわけでございますが、いろいろ準備がおくれておる点は、非常に申しわけないと思っておる次第でございます。
  13. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この今の統合の問題は、第三十一国会の当内閣委員会で、私はこのことについてお伺いしておるわけです。そのときもすみやかにこの趣旨に沿うよう善処するという意味の御答弁があったわけです。それから一年四カ月と、そこであえてお伺いしたわけです。  そこで、次にお伺いいたします自動車関係審議会で、自動車損害賠償責任保険審査会というのが現在あるわけですね。ところが、今度はこの法案にありますように、自動車審議会を設けようとしおる。そこでお伺いいたしますが、これは、新たに自動車審議会を設けることに私は反対しているのじゃないわけです。自動車審議会けっこうだろうと思いますが、もう既設自動車損害賠償云々審査会も現在あるわけですね。こういうものを一本化して、自動車行政に関する限り一木で運営できないのか、一本でやることが、いわゆる行政審議会趣旨にもかなうのではないか、事自動車に関する限り、これから設立されるであろうところの自動車審議会一本でやれないものか、そういう点いかがですか。
  14. 国友弘康

    政府委員国友弘康君) 運輸省設置法自動車損害賠償責任保険審査会があがっておりますが、この自動車損害賠償責任保険審査会と申しますのは、自動車損害賠償保障法に基づきまして、現在自動再保険に関しまして強制保険を実施いたしておりますが、この自動車損害賠償保障法運用に関しまして、その中の自動車損害賠償責任保険審査関係だけを担当する目的をもちまして自動車損害賠償保障法の五十一条に規定がございまして、この自動車損害賠償責任保険審査会は、ここに規定してございますように、審査関係だけを担当し、自動車損害賠償保障法運用に関しましてのみ権限を持っておりますので、今回設置いたそうといたしております自動車審議会は、現在非常に自動車の問題が山積いたしておりまして、たとえば自動車運送事業近代化とか、自家用自動車営業自動車輸送分野の確立とか、あるいは車両保安確保事故防止というような問題、また自動車運用効率の向上というような問題等々に関しまして、抜本的な、根本的な対策を樹立しようとして設けますものでございまして、自動車審議会のねらいますところは、今も非常に問題点の山積しております自動車行政に関しましての根本問題を討議していただくために設けまして、この際自動車行政の問題に関しまして、何とか一年の期間で根本的な方針を樹立いたしたいと思っておりますが、今お話のございました自動車損害賠償責任保険審査会統合いたしますことは、目的が全く違っておりますので、いたしかねまして、やはり自動車審議会として短期間に効果を上げたい、こう考えておる次第でございます。
  15. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 細田官房長にお伺いしますが、あなたは審議会等幹事を十四ばかり兼ねておられると思うのですが、それぞれの幹事会に一体どの程度御出席になっておるのか、その大綱を承知したいと思うのです。
  16. 細田吉藏

    政府委員細田吉藏君) 政府にございます各種の審議会官庁が入ります場合に、人数の制限等がございます関係で、運輸省から、たとえば関係のある局長幹事に出すということができないような場合には、官房長幹事をやっておりますのが、多少異同がございますが、十幾つあるかと承知いたしております。これに全部出席いたすということは、とうていできません。半分も実は出席いたしておりません。ただ、問題がございまして、幹事会の前にいろいろ打ち合わせがそれぞれの主管の省からあるのでありまして、特に運輸省関係に非常に重大な関係のありますような際には、私、幹事会出席を、たとえば電源開発調整審議会幹事会でございますとか、あるいは原子力委員会の参与でありますとか……。
  17. 中野文門

    委員長中野文門君) もっと大きな声で。
  18. 細田吉藏

    政府委員細田吉藏君) オリンピック組織委員会幹事会、そういう特に重要なといいましょうか、私どもの省に関連のあるような議題の際には努めて出るようにいたしておる次第でございます。ただ、毎回これに出るというようなことは、実際問題として不可能でございまして、また、特に私どもの方の一局だけが関係があるというようなときには、その局の方からかわって出ていただく、こういうようなのが実情でございまして、何回、どういうふうにということは、今私ちょっと記憶をいたしておりませんが、そういう問題によりまして、私直接出ますとか、あるいは関係の特に深い局から出ますとか、また私どもの方の企画課長あるいは文書課長委員会によりましては人事課長、そういったようなものを代理出席いたさしておる次第であります。
  19. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 私は、そういうこまかいことをお聞きしているのでなくして、運輸省の、官房長ともあろう方は、相当御多忙であろうと思うのですね。にもかかわらず、十四の幹事会出席ということは、お伺いする前から相当困難ということは明確だと思う。で、あなたのお言葉の、半分以上も出られぬ、当然そうであろうと思う。そうだとすると、初めから出席できないことがわかっておるのに、それを引き受けるということは、まことに無責任ではないですか。そういう点をお伺いしたいわけなんです。これは、今御答弁にもあったように、なかなかもって半分も出られぬ、ただ名前だけ連ねておって実際には出られぬ。官房長は相当多忙だろうと思う。そういう大事な職にあるあなたが、十幾つかの幹事会には、なかなか出られぬということは、われわれにもよくわかる。それを責めておるわけじゃなくして、最初から出席不可能であるという情勢がわかっておるなら、これは引き受くべきではない。そういうふうに私は思う。引き受けた以上は出席しなければならぬと思う。この点いかがですか。
  20. 細田吉藏

    政府委員細田吉藏君) 私の見解があるいは誤りであれば、御指摘願いたいと思うのでございますが、官庁から出ております委員でございますとか、幹事でございますとか、私の場合は大てい委員ではなくて幹事でございますが、幹事官庁から出ております場合は、一般学識経験者の場合と私は性格がやや違うのではなかろうかと考えておる次第でございます。と申しますことは、私属人的に幹事に入るということではないので、一つのポストといたしまして運輸省一つの代表といたしましての運輸大臣官房長、これが、たとえば一局しか関係のないときには、鉄道監督局長なら鉄道監督局長航空局長なら航空局長が入っておったと思いますが、その場合でも官職としまして入っておるかと思うのでございます。こういう全然出席ができないようなものに一々承知をしておるのはいけないのではないかというお話でございますが、実は、この種の委員会につきまして、私どもの方の委員会につきましても、他の関係各省に入っていただいておるものもございますが、他の省の御意見を、その委員会に、委員あるいは幹事として反映していただく。よその省でございますと、運輸省意見を反映するという必要があるために、私は、委員なり幹事なりに各省の役人が入っておるということではないかと思うのでございまして、その場合に、もちろん全部の幹事会に私どもが出るということは、初めから不可能でございまするが、さりといいまして、全然一人も私どもの方から委員が出ておらないということになりますと、たとえば他の省の何とか審議会とか、何とか委員会といったようなもので、運輸省には、そのつどそれではだれか出てくれ、また発言が許されるか許されないかといったような問題があるのでございます。私どもの方の主宰のものにつきましても同様でございます。私はこういうしきたりがいいかどうかということは、別途いろいろ高い見地から御意見があろうかと思いますが、現在の政府の方のいろいろな各省機関でやっておりますのは、そういう慣習と申しますか、各省が、たとえば官房長個人が行かなくとも、あるいは事務次官個人が行かなくとも、そういう幹事なり、委員なりという形式を通して代理所管局長が出ましたり、あるいは所管課長が出まして発言する機会を与えていただくという意味でこれは意味があるのではないか、かように考えておるのでございまして、このやり方自体全体を変えろということにつきましては、これはまた別の角度であろうかと思いますが、ただいままではそういったやり方でやっておりますので、たとえば私が個人的に断わるという性格のものではなかろう、私がお引き受けしておりまして、その私という官房長という職が幹事であるということを通して、その機会運輸省関係のところの意見が、その審議会なり委員会なりに持ち出せるという点が、私は非常に重要なポイントじゃなかろうか。現在のやり方はそういうやり方をしておりますので、率直に申し上げますと、そういうことでございます。
  21. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次に、自動車審議会に関連してお伺いしますが、最近御承知のように国内の自動車の数は激増の一途をたどっておる、特に東京都内の場合は相当ものすごい勢いで増加しておるのであります。それで試みに数字を拾ってみますと、昭和二十九年、当時の普及率については四十四名に対して一台の割であったが、昨年末、三十四年末ではもうすでに十九名に一台、こういう数字が出ておるわけです。ということは、このわずか五カ年の間に二倍以上も普及しておる、そういうことが言えると思うわけです。こういう調子で自動車激増していくと、なかなかもって抜本的な自動車行政を打ち出さないと善処できないと思う。そういうふうな関係もあって、特に今度自動車審議会を設けようとするその趣旨はまことに適切であろうと思うのですが、そこで政務次官にお伺いしたいのですが、一言に言ってこの自動車行政に対して一番眼目とするところは、どういう点か、簡単にその要点だけをお伺いしたいと思います。
  22. 前田郁

    政府委員前田郁君) ただいまお話通り自動車が最近非常な激増ぶりでありまして、これをどうするかということは、これは単に運輸省だけではなしに、日本のこれは重大な問題になっておるのじゃないかと私ども考えておるわけでございます。それですから、どうしてもこの際根本的な抜本的な行政方針を立てなくてはいかぬ。こういうことで、実は自動車審議会設置していただいて、なるべく早い機会にこの結論を出して、その方針にのっとって今後自動車の重大問題を片っ端しから解決していこう、こういうわけで実はやっておるわけでございます。
  23. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 それはできるだけ早く解決したい、そういうことはわかるのですが、そういうこともあって自動車審議会を設けたい、その趣旨は私も了解しておるわけです。ただ、運輸省として自動車行政に対して一番の問題は、これとこれだという、そういう重点的な問題はどういうことかということをお伺いしておるわけです。もちろん、自動車審議会の結果を尊重して、それに基づいて善処するでありましょうけれども運輸省としては自動車行政について何も考えていないということではなかろうと思う。そういう点をごく簡単に重点をお伺いしたい。
  24. 国友弘康

    政府委員国友弘康君) 先ほどもちょっと触れましたのでございますが、自動車運送事業近代化ということが、これがまず根本問題であろうと思います。これらに関しまする根本方策を立てたい。それから自家用自動車事業用自動車というようなものが道路運送法で規定してございますが、これらの輸送分野が現在画然としていない部分がある。これらについてそういう自動車というものがどういう目的で使われ、どういう輸送分野を持つかというようなことを確立すべきであるということを考えます。また、車両保安確保、これは道路運送車両法で規定しておりますが、これらの問題、それから一体このふえております自動車を、どういうふうに利用させるかというようなその利用の効率化の問題というように、われわれが自動車行政を措置していきます場合に、根本的な法規といたしましては、道路運送法道路運送車両法でございますが、これらの法規運用なり、法規内容なりに関しまして根本的な問題点を解決していきたい、こう考えておるわけであります。
  25. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 東京都内自動車が一カ月に二万台以上も現在ふえておる、こういう実情から見て問題なのは、これに道路拡張とか整備舗装ということが相伴っていけば、さまで交通も混乱しないわけですね。ところが、なかなかもって道路拡張とか、整備舗装ということが手が届かない、こういうことが一つの大きなガンになっておるのではなかろうかと思う、まあしろうと目から見ても。こういう点について運輸省としては、どういうふうに考えておるわけですか。
  26. 国友弘康

    政府委員国友弘康君) この道路の容量と自動車のふえ方とがマッチしておらない問題、この問題に関しましてすべての交通問題が起こっておるのでございますが、この問題に関しましては、現在われわれとして痛感いたしておりますのは、たとえば道路交通の取り締りの問題は警察であり、事業用自動車その他自動車輸送面の担当は運輸省であり、道路建設省でありというふうに権限各省に分かれておりましてこの道路交通行政というようなものが非常にやりにくい状態になっておることは、現在われわれとしても痛感いたしているのであります。これらの面で何とか根本的な解決策を講じなければならないのですが、現在のわれわれが与えられました権限の範囲内におきましては、各関係官庁が十分な連絡をとりまして、今混雑しております道路交通行政に対処しなければならないと考えますので、これらの面に関しましては、道路の問題は建設省と打ち合わせ、さらに道路交通取り締りの問題については警察庁と打ち合わせ、運輸省自体でできますものについては運輸省で措置するというような方向で処理をいたしておりますが、その面の機関といたしましては、総理府に現在交通事故防止対策本部というのがございますが、むしろ、この機構改組いたしまして、関係各省庁が集まりまして積極的に具体策を打ち合わせるような機構を作っていきたいということで、よりより総理府を中心にして現在その改組を考えております状況でございます。それらによって連絡を密にし、十分な成果を上げていきたいと考えております。
  27. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 道路の面積一平方キロメートルについて現在都内では自動車が七千五百台ぐらいあるというふうな数字を承っておりますが、そこでまあ、これは全部この割合で道路を走っているわけじゃない。倉庫に納まっているのもありましょうし、道路上の駐車もありましょうし、しかし、その大部分が道路を走っておる。そういう関係で、ゴー・ストップの標識のあるところなどは定全ですが、なかなかもって、場所によっては横切ることがなかなか困難である。場所によっては命がけという場面も出てくる。特に特定の地域の特定な時間にいくと、ほとんど進まない。ストップしている時間の方が多い。おりて歩いた方が早いという場面も出ている。現在すでにそうなんです。ところが、先ほど申し上げましたように、一カ月一万台の割合でどんどんこれが加速度的にふえていったら一体どうなるか。これはよほど抜本的な対策を講じない限り、ただこそくな手段方法ではこの問題は解決しないと思うのです。また、数年後にオリンピックを控えているというようなことからも、世界の各国から客のあった場合に、日本国内のこういう恥をさらさなければならぬ。そういうことは第二としても、現在のこの難問を何とか解決するためには、よほど抜本的な方策が必要であろう、こういうふうに思うのです。こういう点については運輸省としては、大筋はどういうことを考えておられるか。
  28. 国友弘康

    政府委員国友弘康君) 運輸省といたしましては、運輸省の付属機関といたしまして、都市交通審議会がございますが、この都市交通審議会におきまして、現在通勤、通学を主体として検討を願っておりますが、東京等のごとき大都市におきまする路面交通に関しまする問題等も、その審議会で御審議を願っておるのでございますが、根本的な考え方といたしましては、道路を通過する需要をどこかよそへ転換する。すなわち、現在の既存道路に対します需要でありますが、地下鉄の建設等をして、大量輸送をその方面に持ち込んで、道路の混雑緩和をはかる、これが第一の根本問題でございます。それからさらに、道路といたしましては、首都交通道路公団が設置されておりますが、これらで交差点で交通の支障をされないような、高速で走れる道路を都内にも建設する、こういうことを考えておるのでありまして、これらは建設省とわれわれと打ち合わせて運んでおりますが、そのほかに、バス・ターミナルとか、あるいは駐車場とかというようなものを、都心及び副都心に作る。さらに駐車場は各必要な個所に作って、できるだけ道路上の、路上の自動車の放置とかというようなことを防止いたしまして、道路容量を広くして、現在このままでいきましたら、飽和状態で、先生のおっしゃるように、何とも処置ができなくなると思いますので、これらの建設をできるだけ促進してやると同時に、さらにバス等に関しましては、むしろわれわれの考えといたしましては、大量の交通機関に優先させる必要があるのではないかと考えますので、むしろ乗合バス等のごときものに路上では優先的な通行権を与えて乗用車はその次にしてもらうというようなことも考えなければならないと思っておりますが、まあそれらの方策によりまして、道路上を通行する車両をできるだけスムーズに動きますように、大型輸送機関の優先通行とか、あるいは一方通行とか、そういうような問題、あるいはある種の自動車の通行制限、ある道路によっては通行制限とかというようなことも、警察当局の方とも打ち合わせて、積極的にこの混雑緩和をはかっていこうと考えておる次第であります。
  29. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 お言葉のように、いろいろとまあ支障があるわけで、自動車激増になかなか道路拡張とか舗装整備は伴わない。また、今御指摘のように、駐車場の整備もおくれておる。さらに、道路拡張整備のための工事そのものも、一つの障害になっていると思う。都内あちこちへいってどこかで必ず道路工事をやっている。しかも、それが早急にどんどん大じかけの機械力で、短時間にやってしまうという方式でなくして、東京のどまん中でなかなかゆつたりとした工事が進められておる、そういう場面をわれわれよく見受けるわけです。そこで問題なのは、道路工事は多く失対でやっておると思うのですが、私はその失対に反対しているわけじゃない。むしろ、国内に一人の失業者もなきょう、こういうことは切々と願っておるわけです。従って、失業者を道路工事に充てるということは非常にけっこうなことなんですが、ただ交通ひんぱんな都のどまん中で道路工事をやるような際は、大きな規模を持った機械力で短時間で直ちにやるというような、そういう近代の機械力にたよるという点がまだまだ、予算の関係もあるでしょうけれども、十分ではない。外国のそれに比較して作業が非常におそい。従って、いつまでも大体狭い道路を掘り返すから、ますます狭くなる。これが交通の支障の大きな原因にもなっていると思う。こういう点から、失対事業として道路工事、これは大へんけっこうなことですが、ただ交通きわめてひんぱんなそういう悪条件下の個所においては、大きな機械力で短時日にと、そういう点を抜本的に考える必要があろうと思う。現在ではなかなかそういう点があちらこちらにも散見されるように、非常に道路工事がおくれておる、こういう声が高いと思うのですね、こういう点については基本的にどういうふうに考えておられるか。
  30. 国友弘康

    政府委員国友弘康君) この道路工事に関しましては、全く先生のおっしゃいますように、私ども交通に支障を来たしている場合が非常に多いということを痛感しておるのでございますが、ことに、ガスで掘り返して直したと思ったらまた今度水道で掘り返すというように統一がとれない場合もございますので、これらの件に関しましては、私ども交通を円滑化するという目的から工事の迅速化とか、あるいは極力夜間に工事をしてもらいたいとか、あるいはガスとか水道とかの工事の年度計画を立てて、集中的に実施するとか、あるいは道路工事のための迂回の指示を事前かつ適切にして、あまり交通の混雑をしないようにするとかいうような希望を、関係の省庁にも述べておりますが、根本的に申しますと、やはりこれは関係官庁が非常に多いもんですから、先ほど申し上げました総理府交通事故防止対策本部でこの道路工事の促進の問題についても取り上げておりまして、根本的にはそこで円滑な、迅速な工事の進め方、やり方というものを打ち合わせておるのでありますが、具体的にはこれはやはり工事の個々を担当する現場になりますと、これらの点に関しましては、各官庁の地方機関が、たとえば東京で申しますと、東京陸運局とか建設局とか、あるいは警視庁とかが集まりまして、または通産局も入りまして、具体的な道路々々における交通状況についての打ち合わせということも実施しておるわけでありまして、その先生のおっしゃる方向に進めつつあるのでありますが、今申しましたように、根本的には交通事故防止対策本部で今後も積極的に進めるように打ち合わせを進めているところでございます。
  31. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 一つ対策として、駐車場が次々にわずかずつでも増設されているようです。大へんけっこうですが、ただここで問題は、有料駐車場は非常に高いし、パーキング・メーターなどで十五分間十円ぐらいだと承知しておるが、そこで十五分十円だから、どれでも活用しそうなものですが、なかなかそういうところは繁昌しないで、無料駐車場に押すな押すなと押しかけておる。そこで大事な点は、やはり無料駐車場を各所に増設する以外にはないと思うのですが、そうお伺いすると、それはわかるが予算がないからできなのだと、そうお答えになると思うのです。しかし、これを解決をせずして自動車行政の難問を解決をすることは、なかなか至難だと思うのです。やはりある程度予算化して無料駐車場をどんどん作る、増設していく、そういうところにこの難問を解決する一つのきっかけができようと思うのです。せっかく大金をかけて有料駐車場を設けたり、パーキング・メーターなどを作っても、われわれ実際に目撃することによると、そういうところは閑散でほとんど明いておる。そういう実情なんです。やはりわずか十五分間十円であっても、なかなかこれを利用しないのが人情だと思うのですが、そういう点で、やはり相当これはまあ当面の難問を解決する一つのきっかけですから、相当大幅に予算化して、早急に大規模に無料駐車場を作るべきである。こういう点についてどのようにお考えになっておりますか。
  32. 国友弘康

    政府委員国友弘康君) ただいま作っておりますのは、先生のおっしゃいますように有料駐車場でございまして、これはやはり相当な設備を要しますので、有料で、料金を取らなければ運営がやっていけないのでありますが、この無料駐車場等につきましては、これは設置できますれば非常にけっこうなことだと思いますが、駐車場の設置に関しましては、建設省がこれらの予算化については主管でありますので、私は交通運送行政を担当しております者として、駐車場等の設置についても建設省の方に希望は述べておりますが、予算化等の点につきましては建設省でありますので、これらの点は建設省とも十分打ち合わせたいと思っております。
  33. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 今、主として都内の自動車関係で申し上げたのですが、それとは反対に、鉄道が通っていない山間僻地では、交通機関は主としてバスとかトラックになっております。そういう関係で、こういう都内のような特殊事情の所もありますが、やはりその反面、ほとんどバス、トラック以外には乗物がないというような面についても、相当運輸省としても考えておられと思うのです。ただ問題は、どこへ行ってもバス、トラックを通すのには無理な道路です。問題は道路です。こういう自動車道路が非常に多くなっておる。まあ外国の例を申し上げるまでもなく、多くの先進国では、ほとんど自動車輸送力が鉄道輸送力をしのいでおる、そういうような実情にあるわけです。日本の場合は、まあ鉄道網の拡充に重点を置いておりますから、鉄道輸送が主体であろうと思うのです。それはそれとして、やはりバス、トラック、しかもこれは乗用車と違って、相当道路もいたむ。悪い道路にそういう重いものが通るからよけいいたみが早い。なかなかこそくな修理ぐらいでは追いつかない。どこを旅行してもそういう感を深くするわけです。結局これはやはり自動車道路の整備という以外にないと思うのですね。そういう点については、もちろん運輸省としては考えておられるでありましょうけれども、数年これを見つめておっても、なかなか、都市に近いところは着々整備されておりますけれども、そういう山間僻地にまではなかなか手が届かないのが実情であろうと思うのです。こういう点について、運輸省としてはやはり年次計画でも立てて、これを何年後には整備すると、そういうような計画があるのかないのか。もしあるとすれば、どういう点なのか、それを簡単にお伺いしたい。
  34. 国友弘康

    政府委員国友弘康君) 道路の整備に関しましては、私どもも非常に痛感しておりまして、何とか日本の悪い道路をよくしてもらいたいと思っておるのでありますが、建設省道路整備五カ年計画を制定いたしまして、現在その整備に邁進いたしておりまするので、さらにまた現在あるいはもっと大きな改訂をすべきだというような意見も出ておりますが、現在一兆円で道路整備五カ年計画を実行いたしておりまするが、これでもまだ私どもは実は足りないと思っております。もっと国費を出してもらって道路の建設を促進してもらいたいと思っておりますが、現在は道路整備五カ年計画で建設省が進めておる状況でございます。
  35. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 以上お伺いしたような問題点については、これから設けられるであろうところの自動車審議会一つ多角的に審議されるであろう、そういうことでありましょうが、ここでお伺いしたいのは、この自動車審議会は大体一年だと思いますが、なお年間十回くらいの会合をしたいということなんでございますが、ここをまずお伺いしてもし年に十回ほどの審議会であれば、以上の御説明ではっきりしたのですが、非常に多角的な自動車行政の面を解決しようとおっしゃっておる、これをわずか十回くらいの会合でそういう難問を、しかも多角的な面にわたる難問を十分完全に解決し得るようなお見込みがあるのかないのか、その程度で十分足りるのかどうか、そういう点をお伺いしたいと思います。
  36. 国友弘康

    政府委員国友弘康君) 自動車審議会の予算といたしましては非常に僅少でございますが、私どもとしましては、むしろ先生のおっしゃいましたよりももっともっと多く開催いたしまして審議を進めたいと思っておりまするが、ただ先生の今まで御質問のございました中で、関係官庁の非常に多いものもございましてその中には運輸省といたしましても都市交通審議会等で審議すべきものもございますわけで、さらに関係官庁と打ち合わせなければ実現いたさないものもあるわけでありますが、この自動車審議会の最も当面の問題といたしますところは、現在運輸省の担当しております自動車行政に関しまして、先ほど申し上げましたような根本方策を打ち立てたいということでございまして、いろいろな論議といたしましては、先生から今御質問のございましたようなことも取り上げられると存じますが、当面の問題といたしまして自動車審議会が差しあたり審議されたいと思っておりますことは、道路交通事業の近代化、合理化の問題、それから自動車の運賃制度の問題、それから自動車高速化対策の問題、事故防止の問題、自動車行政機構のあり方の問題というような点に、まず最初に御審議を願いたいと思っておりますので、これらの点を一年間で結論を出したい。そのためにできるだけの努力を傾注して結論を得るようにいたしたい、こう考えておるのでございます。
  37. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次に、方面をかえて、輸送力関係でお伺いしたいと思いますが、日本の経済発展の大きな障害として輸送力の不足ということがあげられているわけです。先ほども指摘があったように、大体日本の輸送力は鉄道輸送力に依存しておる、それが大部分であろうと思うのです。そこで、念のためにお聞きしておきたいと思うのですが、鉄道といえば国鉄、しかし私鉄も若干あるわけです。そこで輸送力について、国鉄と私鉄の割合は一体どんなものか、大ざっぱでけっこうです。こまかい数字はいりません。八とか、二とか、そういうごく大ざっぱなものでけっこうです。
  38. 山内公猷

    政府委員山内公猷君) 輸送力につきましては、旅客の面と、貨物の面と両方あるわけでございますが、私鉄につきましては、御承知のように、ほとんど貨物を取り扱っておりません。旅客の面が多いわけでございますので、旅客についてまず申し上げますと、これはちょっと資料が古いのでございますが、三十三年の輸送機関別輸送割合というものからとって御説明申し上げますと、総人員におきましては、私鉄は三六%、国鉄が二五%、人間の数からいきますと、都市交通が多いので、非常に多くなっておりますが、人キロで申しますと、一人の人間が何キロくらい乗ったかというキロを加えました計算におきますと、私鉄は二六%、国鉄が五二%、国鉄の方が多くなっております。貨物はほとんど問題にならないのでありますが、私鉄におきましては、総トン数におきまして三%、トンキロにつきましては一%、国鉄につきましては一四%、トンキロが四六%という数字になっております。そのほか内航海運、バスというようなものがございますので、私鉄と国鉄と合わせましても百パーセントにならないのはそのためでございます。
  39. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次にお伺いしますが、運輸省としては、動力源の近代化ということについて非常に力を入れておるように思われるのですが、蒸気機関車とか、電気機関車、ディーゼル機関車、現在この三通りが大ざっぱに分けてあるわけです。これもごく大ざっぱでけっこうなんですが、現在ただいまのところ、おおよそどんな比率になっておりますか、それを簡単に……。
  40. 山内公猷

    政府委員山内公猷君) 機関車の数量で申し上げますと、これも三十三年の資料について申し上げますと、蒸気機関車の現在国鉄の持っております数量が四千五百十四両でございます。電気機関車の数字が七百四十七両、ディーゼル機関車の数字が七十三両、合計五千三百三十四両ということになっております。
  41. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 いろいろ輸送力の増強とか、あるいはまた事故防止、こういう観点から、鉄道の特に複線ということが非常に重要な要素になってくると思います。ところが、現在私の承知するところによると、全線複線になっておるのは、東海道線と山陽線だけだと思うのですがね。全線複線というのはほかにはないように思うのですが、これはやはり輸送力増強、事故防止という観点から非常に重要になってくるのじゃないか。しかも、複線にすることによって客貨車は相当輸送が増強できる。しかしその割合に、それに比例して建設費はかからぬと思うのです。基礎は一つの基礎でいい、ただ幅を広げることだけで。建設費は割合に安くつく、複線の方が、単線を二つ設けるよりは。そういうことで、今後複線については、大きな眼目として当然運輸省としても努力しておられると思うのですが、こういう計画について、ごく大ざっぱに、どういう程度に複線を考えておるか、お伺いしておきたい。
  42. 山内公猷

    政府委員山内公猷君) 御指摘の通り、現在国鉄におきます複線以上の区間というものは、全体から見まして一二%程度のものでございます。それで輸送力をふやします場合に、新しく線を敷くよりも、現在ある線を複線にするという方が経済的であり、非常に輸送力がふえるということは御指摘の通りでございますが、場所によりましては非常に、都市内のようなところでは買収ということの費用の問題、可能、不能の問題があるのですが、その特殊の場合を除きまして御指摘の通りでございます。それで鉄道に輸送力をふやしますために、現在国鉄で行なっておりますのは、幹線を電車化するという問題もその一つでございますが、幹線輸送の面からいいまして複線化しようということも相当力を入れてやっております。現在国鉄で行なっております五カ年計画におきましても、相当の費用をそれに見込んでおるわけでございますが、実は国鉄の財政が十分でございませんので、この五カ年計画が計画通りいっておりませんが、その面におきまして、計画といたしましては大きな分野を占めておることは事実でございます。
  43. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 それでは最後に、東海道の新幹線について二、三お伺いしておきたいと思うんですが、これは先般の発表によると、国鉄では、四年後にスタートするであろう東海道の新幹線の運転計画についての構想を発表になっておる。それを拝見したわけですが、これによりますと、大体あの構想通りに実現できるのか、その公算はあるのかないのか。これは鉄道技術研究所で目下車体とか軌道についての基礎研究が大体終わって、試作試験の段階に入っておる、そういうふうに承知しておるわけなんですが、これによると、抜本的に輸送力が増強されるわけですね。おもな点を一つだけお伺いしたいわけですが、この計画によりますと、新幹線を走る貨客列車は全部電車になるということ、そういうことであるのかないのか。それから一日に東京―大阪間を特急、急行が約六十往復とか、それから貨物列車が約二十往復、それから熱海とか静岡、そういう近距離のいわゆる準急行程度のものが二十往復、計これを合わせますと、百往復、東京駅を中心に百往復往来する、こういうことで、もしこれが実現すれば一時間に特急、急行が三本ないし四本も走るようになるので、客の方はだいぶ助かるわけですね。一週間も前から並んで特急券、寝台券を買わなくていいし、また、重い荷物をかかえて列車で立っていなくても済む、こういう点で非常に潤おうわけですが、はたして以上お伺いしたような程度のことが、これはただ単なる計画、試作試験の程度なのか、それとも十分確信がある計画なのかということをお伺いしたいと思います。
  44. 山内公猷

    政府委員山内公猷君) 東海道新幹線計画につきましては、いわゆる名前まではっきりいたしませんが、特急と称するものが東京―大阪間を三時間、普通急行と申しますか、普通急行といいましても現在の特急よりも早いわけですが、それは三時間半というスピードで走るべく計画をいたしております。そのためには、現在の既設線の三フィート六インチというゲージではなくて、四フィート八インチのゲージをもってやる。電化形式につきましては、交流電化形式をもってやるということになっております。それで、現在、御指摘のように、鉄道の研究所におきまして、そういった車両並びに勾配、線路、信号というようなものを、各般につきまして検討いたしております。私どもの聞いております範囲におきましては、この程度のスピードの車を走らせるということは、十分確信があるというふうに聞いておりますので、技術面におきます心配はそうないのではないかというふうにわれわれは考えております。
  45. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 東京―大阪間を三時間で行くということになりますと、現在のが、大体一番速いのは「第一こだま」ですか、これが六時間四十分くらいかかっておるわけですね。これを二分の一以上短縮するということ、そういうふうになると、時速最高二百五十キロぐらい走らないと、なかなかもってそういう時間には届かぬと思うのですがね。そういうことになると、速いのはけっこうですが、それに伴う安全性ということが、しろうと考えであやぶまれるわけです。そういう点ももちろん、鉄道技術研究所の権威者の方々が検討されるので問題ないと思うのですが、そういう点にも確信があるのかないのか、そういう点はまだ未解決なのか。私どもは国へ帰って、スクーターなんかでよく走るけれども、もう五、六十キロも出すと、目が回るほど早く感ずるわけです。それが、二百五十キロということになると、これは超スピードで、目にも見えない速さということになるのですがね。そういうのがこの全線を突っ走る。そして、現在の「第一こだま」の二分の一以上短縮する。大へん構想としてはけっこうなんですが、そういう安全性ということを無視はできないのですね。しろうとでございますので、しろうとがやはり十分それなら大丈夫だというふうな、そういう御説明をいただきたいと思います。
  46. 山内公猷

    政府委員山内公猷君) 私も技術者でないので、十分御満足のいくお答えができるかどうかはあれでございますが、私の聞いております範囲におきましては、十分国鉄の技術当局におきましては確信がある。それは、現在の東海道線は五百五十キロでございますが、今度できます新幹線は五十キロ短縮いたしまして五百キロになります。これを三時間で走りますために、平均時速は百六十七キロ、停車時間も考えておりますが百六十七キロと考えております。電車の最高スピードは二百キロぐらいであるということでございますが、技術者といたしましては、最高二百五十出し得る程度の設計をいたしまして五十キロの幅を持って走らせるということの安全性を十分見ておるようであります。それから、現在線におきましては、御承知のように、各道路等々と平面交差をいたしておりますが、今回の道路との交差は全部立体交差でございまして、踏み切りの一つもない鉄道を走らせるという予定になっておりますので、その面から、走行中におけるスピードの減速という問題はなくなって参るわけでございます。それから、スピードを出しますためには、信号というものが非常に大きな役割をするわけでございますが、この信号におきましても、新しい信号のやり方を考えまして、車内信号と自動列車制御装置というものを併用いたしまして、列車が速度制限区間に進入すれば、ブレーキが自動的に動くという方式をとりまして、追突という危険をなくなすという、そのほか、いろいろ技術上の点を改良いたしまして、現在国鉄におきましては、すでに電車におきまして一部電車試験というものを行なっておることもあるわけなんでございますが、技術上は十分確信があって、その目的を完遂できるというふうに聞いておるわけでございます。
  47. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 それでは、最後に一問だけお伺いしますが、この計画は四年後に実現の暁は、東海道線に関する限り、現在の客貨車の輸送力の三倍くらいになる、そういうふうに発表によって承知しておるわけですが、そういうことも含めて、以上お話のあったあの計画について、私どもは四年後には大体あの構想で実現するのだと、確信ある今の御説明でございましたので、私どもは、四年後にはその要領で実現する、そういうふうに御期待申し上げておっていいわけですね。それと、そのことと、現在の東海道線は一体どういうふうになるのか、そういう点を合わせてお答えいただきたいと思います。これで、きょうの段階の質問を終わりたいと思います。
  48. 山内公猷

    政府委員山内公猷君) 東海道線の輸送力は御指摘の通りでございまして、現在の東海道線の輸送力は、列車回数にいたしまして、片道約百二十回が限度でございます。これが限度をこえておる所、限度に近い所がほとんど全線にわたって起こっておりますので、それで、現在の東海道線の車が非常にひどくなっておるのでございますが、新しい幹線が造成されますと、国鉄の輸送計画といたしましては、新幹線と現在の東海道線というものをプールいたしまして総合運営をするということを考えております。また、それが可能であるというわけでございまして、そうなりますと、列車の輸送力といいますのは、一つの線の上にいろいろな速さの車が走っておるということが、非常に輸送力を阻害するわけでございます。そうしますと、新しい幹線ができますと、現東海道線におきましても、そのスピードを平均化することができる。結局、平行ダイヤとわれわれの方では言っておりますが、平行ダイヤをとることができることになりまして、新しい幹線ができたことによりまして、現東海道線の輸送力もふえてくるという結果になるわけでございまして、現在百二十往復あります現在の東海道線の輸送力が、技術的に百八十回まで可能になるというふうに計算をいたしております。それから、一方、新造成線の方は、片道が、列準回数といたしまして約百五十回で、これはスピードが速いのでございますので、現在の東海道線よりも列車回数は多くなるわけでございますが、百五十回ぐらい輸送力がふえるということになります。もっとも、新東海道線の方は、先ほど申し上げましたように、四フィート八インチの車になります。現在の東海道線は三フィート六インチでございますから、その意味からいいまして、この列車の何といいますか、引っ張る単位、列車単位が大きくなるわけでございまして、同じ列車回数でも、現在線の三割増しぐらいの輸送力がありますので、百五十回の列車回数を直しますと、現在線の大体二百回ぐらいの輸送力になる。そうしますと、現在あります百二十回の列車回数が、片一方におきまして百八十回となり、片一方が二百回になりますから、現在線の輸送力に直しますと三百八十回となる。御指摘の通り三倍近い数字になるわけでございます。  それで、問題は、どうしてこの資金を捻出するかということが、四年後に完成をする大きな目標になるわけでございます。ただいま言いましたように、われわれの方は、技術面におきましては大体解決できるわけでございまして、この資金の面の調達ということに現在努力をいたしております。最近におきましても、世界銀行の借款の技術者が来て、現在調査をいたしております。それから、国有鉄道自体における自己資金、これはあまり期待ができないわけでございますが、国家資金を相当つぎ込んでいただきたい。われわれの計算では、これはもう十分採算に合う線でございます。御承知のように、日本の経済の中心になっております東京、名古屋、大阪を結ぶ線でございますので、その面におきましては、十分採算の合う線であり、投資効果もあるので、財政資金の面におきます、運輸省はもちろん努力いたさなければなりませんのでございますが、各方面の御協力によりまして、その資金の調達をいたしたいということでございます。  もう一つは、土地を獲得できるかということが、この種新線建設におきまして非常に大きな問題でございますが、これは各地方におきましても、いろいろ御連絡を申し上げて、市当局あるいは村当局というものの御協力を得まして現在ある程度順調にいっております。もちろんこういう問題でございますので、御反対の向きもありますが、十分御説明もいたしてやっておりますので、現在の状況におきましては、この土地の獲得というところに主力を置いてやっておるわけでございます。
  49. 中野文門

    委員長中野文門君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止〕
  50. 中野文門

    委員長中野文門君) 速記を起こして。  本案に対する質疑は、本日はこの程度にとどめます。  暫時休憩をいたします。午後一時再開いたします。    午後零時二分休憩    ―――――・―――――    午後一時十八分開会
  51. 中野文門

    委員長中野文門君) これより内閣委員会を再開いたします。  農地買収者問題調査会設置法案議題といたします。本案につきましては、すでに提案理由の説明を聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。政府側の出席方々は、益谷国務大臣、福田総理府総務長官、大島内閣総理大臣官房審議室長、庄野農林省農地局参事官等の方々であります。御質疑のおありの方は、順次御発言願います。
  52. 小柳牧衞

    ○小柳牧衞君 私はこの問題、すなわち農地被買収者問題、その性格についてお伺いをいたしたいと思います。まず第一にお伺いいたしたいことは、この調査会が内閣総理府設置されるということになっておりまするが、私はこの総理府に調査会を設置するということ自体が、ある程度この問題の性格を表明しているのじゃないかと自分で考えております。従って自分の所見を申し述べまして、政府の所信をお伺いいたしたいと思うのであります。まず第一に、この問題は農地という問題から起こっているのであるからしてむしろこういうような問題は、農林省に設置する方がよろしいのじゃないかと、こういうような議論もあるように思います。なるほどこの問題は、農地を買収したということにその原因を発しておりますけれども農地そのものの問題ではないと私は考えております。御承知のように、戦後の農政の大変革に際会いたしまして農村の安定を期するために、また一方におきましては増産を奨励して、そうして健全なる農業を作るというような立場からしてこの政策を断行されたのであります。従ってその後の状況は、まあ批評はいろいろありましょうけれども、大体適当な効果をおさめておると思いますし、また、その当時の状況から考えますと、あの政策をとるということのやむを得ないということを考えまするので、われわれは、この問題はあくまでも被買収者の社会的の立場についての調査問題であって、農地その問題をどうしようという問題ではない、言いかえれば、農地法を今改正するとか、あるいはまた極端に言って農地を取り上げる問題だ、こういうように曲解されておることは、これははなはだしい誤解に基づくものだと思うのであります。従って、あくまでもこの問題というのは、買収された地主の現在の状況なり、よって来たる原因等を考えまして、その処遇を調査研究する会であって、農地そのものではないのでありまするからして、農林省にこの調査会を設置するということは、問題の本質を誤っておるのじゃないかと思います。もちろん、そのよって来たるところが農地でありまするから、農林省においては、いろいろの資料も持っておりましょう。また、いろいろの経過もよく御存じとは思いますが、それは調査会において十分資料として利用することが当然ではありましょうけれども、問題の本質が農地取り上げ問題ではない。従って、地主制度の復活というような、そういう性質の問題でないということを私どもは考えておるのであって、従って、これを農林省に置かなかったということは、そういう点にもあるのじゃないかと思います。まず第一、この点についてお伺いをいたしたいと思います。
  53. 福田篤泰

    政府委員(福田篤泰君) この調査会の本来の目的は、ただいま小柳委員の御指摘の通りでございましてもちろん、よって来たる原因については、農地改革というような問題が原因になっておりますけれども農地改革自体が国民経済に大きな貢献をし、また、いろいろな意味で農業生産力増大その他につきましても大きな効果を上げたという見解を政府は持っております。ただ、あまりにも激しい変革でありましたために、それから副次的にいろいろの問題が発生いたしまして、被買収地主の中には、生活の問題、あるいはその他各般の問題があることも御指摘の通りであります。これを幅広く、広い立場から取り上げて調査するという見解から総理府に置くことにきめたわけであります。従って、農地問題の立場からだけもし問題を取り上げるならば、農林省でございますが、今申し上げた事情でありますので、総理府設置するということが適当だと考えておる次第でございます。
  54. 小柳牧衞

    ○小柳牧衞君 この問題が農地問題には関係あるけれども、調査会は農地問題そのものを対象とするのじゃないという御見解は、全然われわれも賛意を表するところでありまするが、しかし、往々にしてこの問題は関連性がありまするから、とかく農地取り上げ問題であるというように宣伝されるおそれがないではないと思いまするから、調査会の運営等につきましては、相当政府においても御考慮あらんことをお願いする次第であります。  第二に、これはいろいろの社会的問題であるからしてこれを設けるというように理由書に載っておりますが、世間では、これは困っているということは事実である、困っておるというのは、一つの社会問題である、社会問題であれば、生活保護法の適用もあるだろうし、そのほかいろいろのこともあるだろうから、むしろこれは厚生省に設置すべきものではないか、こういうような議論もあるように承っております。しかし、私どもの考えるところによりますと、現在地主が非常に困っておるということは事実でありまするが、そのよって来たるところは、国策によるところの農地の買収ということに起因するのであって、社会一般の、いわゆる貧困に陥ったというものとは、おのずからそのよって来たるところが違うのじゃないか。また、社会問題ということはきわめて広い意味を持っておるのであって、社会問題といえば何もかにも社会問題になるといわれるくらいの広い幅を持っておりますが、しかし、そのうちでも特に生活に直接関係あるものとか、あるいはまた社会的な厚生施設によることを必要とするというような問題等については、これは厚生省にやるのが適当でありましょうし、あるいはまた、関係の人々が失職するとか、あるいは新しい職業を得ようとするようなことについては、また別な行政官庁でこれを処理すべきものであって、社会問題であるというような立場から、これを厚生省にやらなければならぬという理由にはならないと思います。いわんや、この問題は単に生活保護法の適用というような立場からのみ見るべきではなく、もちろん、地主の中におきましては、困窮のあまり、生活保護法の適用を受けなければならぬ人もあるかもしらぬが、しかし一般的の問題としては、そう狭いものではないと思います。よって来たる原因が今申し上げました通りでありまするし、また困っておるということの標準等につきましても、いわゆる主観的の立場から見る見解もありましょうし、あるいはまた、客観的の立場から見ることもありましょう。それでありまするから、この理由書におきましても、いろいろの社会問題を起こしておる、こういうふうにうたっておりますることは、すなわち社会問題とはきわめて広い意味の社会問題であるということがうかがわれるのであって、単に厚生省であるとか、あるいは労働省であるというようなところでこれを調査研究すべきものではなく、もっと広い視野においてやるべきのが問題の正しい見方であると私どもは思うのでありまして、そういうような趣旨において、総括的の行政をやっておられるところの総理府にこれを設置したのではないかと私は考えるのであります。要は、単にその狭い意味における社会問題、すなわち厚生施設というような意味においてのみこの問題を調査するのではない、従って、これを厚生省に置かなかったと、こういうように解釈してよろしいのでありますか。その点について、政府総理府にこれを設けた所見を承りたいと存じます。
  55. 福田篤泰

    政府委員(福田篤泰君) 国民生活の福祉政策あるいは社会保障制度につきましては、主として厚生省が中心で、国民年金であるとか、あるいは今御指摘の生活保護法の適用と、いろいろな道を通じまして努力いたしておるわけでございます。ただ、この被買収者の地主の方々の生活の問題になりますと、これは非常に特殊な原因、いわば農地改革という特殊な社会現象から生じたと見るべきであろうと思うのであります。そういう意味合いで、一般の国民の社会福祉政策というような立場からではなくて、もっと広い視野に立ったもろもろの変化、あるいは生活上の問題、そういうものの実態をとらえなければならぬ。そういう立場から、厚生省では窓口が狭過ぎる、総理府として設置してこれを調査する立場の方が適当であると考えたのでありまして、お説の通り、私どもは広い立場からこの問題の調査に当たりたいという考えであります。
  56. 小柳牧衞

    ○小柳牧衞君 この調査会を厚生省に置かなかったということについては、ただいま御所見を承りまして、まことにその通りだと思うのであります。しかし、これは非常に関連性が多いのであって、ともすると、困ったものだということに非常に熱心に力を入れますると、自然今のような狭い見解に立って、困っている人をさしあたり救うのだ、こういうようなことになりますると、問題の本質を誤るおそれがないでもないと思いまするから、広い意味の社会的の問題であるという解釈のもとに調査会を運営するようにされることを切に希望いたす次第であります。  次に伺いたいことは、この農地の問題は、農地そのものを必要とするという見地が主であって、その対価というものは第二次的の問題である。第二次ということは、あるいは語弊があるかもしれませんが、土地そのものを国策上必要とする、それを旧地主から取り上げて働く者、あるいは適当な人にこれを交付したということに重点があるのであって、従って価格というものは第二次的のものであることは当然でありまするが、これは非常にしかし関連性があるのであって、その価格の適不適につきましては、ずいぶん議論がありまするし、また、支払い方法の適不適についても、ずいぶん議論があるようであります。この問題を論究する上におきましては、自然そういう問題にも論及することはやむを得ないことと私は思うのでありまするが、世間往々にしてこの問題の価格については、最高裁の判決があるからしてもうこの問題はそれでわかってるんじゃないかと別に調査する必要もないんじゃないか、こういうように非常に大ざっぱに考えておる説もあるようであります。私どもの考えるところによりますると、なるほど最高裁の判決は、申すまでもなく判決は当該当事者に、その拘束力を及ぼすものであります。もちろん、これが最高裁の判決でありまするから、重要なる裁判の際の研究資料としては役立つでしょうけれども、それ自体が拘束力を持っておるものではないことは当然でございます。しかし、応そういうような判決がありまするというと、これを尊重すべきことは当然でございます。いわんや三権分立の立場から申しますというと、これはもちろん尊重すべきものではありまするが、それと同時に、三権の独立ということもまた考えなければならぬと思います。われわれは判決はもちろん尊重するが、しかしながらまた、自由な立場において、また国民としてあるいは学者的にこれを批判し、あるいは研究するということは少しも差しつかえないと思います。行政府はまた行政府の立場があるのでありまするから、その立場においてこれを研究するということは、少しも差しつかえないと思うのであります。世間往々にして判例があるんだから、もうこの問題は終止符を打っておるんだと、こういうように軽く考える方もないではないように思いまするが、われわれはそうではなく、あくまでも三権分立を尊重し、三権かお互いに尊重し合って、国政の円満な運営を希望するのであるけれども、それにはそれぞれの見解がある。いわんや自由な立場においていろいろの研究をすることは少しも差しつかえない、かように考えるのであります。この調査会というものは、そういう立場において最高裁の判決があるからしてもうその必要ないというような議論には耳をかすべきものでないと、私は考えておりまするが、調査会のこれらの判例に対する立場より、政府の御所見を承りたいと思います。
  57. 福田篤泰

    政府委員(福田篤泰君) 調査会が設置された後におきまして、調査会がどういう問題をどういう角度から取り上げるか、これは今から私どもいろいろと具体的には申し上げかねるわけであります。ただ政府としましては、対価の正当性については、最高裁の判決を尊重し、これに従うのは適当であると考えておるわけであります。なお先般御要望がありました旧地主制度の復活であるとか、あるいは土地取り上げというような誤解を招かないように御要望がございましたが、全く同感でございます。私どもはそういう時代錯誤的な考えを一切持ってはならぬということもっけ加えてお答えいたしたいと思います。
  58. 小柳牧衞

    ○小柳牧衞君 この問題は、先ほど来申し上げましたように、非常に広い視野に立って十分調査会は論議を重ね、研究すべきものと思うのであります。従って最高裁の判例のごときは、もちろん尊重すべきものであるけれども、また新しい立場においてこれを研究するということも、あるいは運営の途上においてあるかもしれませんが、そういうようなことについては、あくまでも調査会の立場、性格を尊重していただきたいと思うのであります。  最後に、私はもう一点お尋ねいたしたいことは、この調査会の結論というものは、なるべく早く出して、一日も早く非常に困っておる地主に対しまして適当な措置をとっていただきたいのでありまするが、従ってその結論を出す場合に、調査は十分急いでいただきたいとは思いまするけれども、しかし、あくまでも調査会の答申を尊重するということにしていただかなければならぬと思うのであります。政府におきましても、すでにこの調査会を設置し、しかるべき法制をもって権威あるものとして開始せられまする以上は、その答申をあくまでも尊重すべきものであるということは申すまでもありませんけれども、きわめてこれは重大なることでありまするからお伺いをします。また、結論は相当の研究、各方面の調査によって出すのでありますから、相当時間もかかるかと思いますけれども、先ほど申しましたように、一日も早く結論を出していただきたいが、またものによっては、全般的の研究調査を待たなくともこれだけは切り離して、まあ何とか至急処置をしなければならぬというような問題も出て来るかもしれません。しかし、これはまあ調査会の運営の問題でありまして、今さらそれを想像して政府にどういうふうにしてくれということを言うのは無理かもしれませんが、要するに調査会の答中を尊重するという立場に立ってそうしてまた、もしも調査会がある一部分については急施を要するというような答申があった場合には、それも尊重していただきたい、全部の調査を一日も早く結了することは念願はいたしまするけれども、非常に各方面にわたって広い研究もしなければなりませんから、そう簡単でないというようなことも予想されまするので、要はこの調査会の答申政府はあくまでも尊重していただきたいということを念願すると同時に、政府の確固たる御所信をここに承りたいと思うのでございます。
  59. 福田篤泰

    政府委員(福田篤泰君) 調査会が設置せられまして審議の結果、どういう答申が出るかは、もちろんわかりませんが、ある一定の答申をいただいた上は、これは国会の御承認を得まして法律に基づいた調査会でありますので、政府は当然この答申は尊重し実行すべき義務があるとそう考えております。
  60. 大谷贇雄

    大谷贇雄君 この農地被買収者問題調査会法案につきまして三、四の点をお尋ね申し上げたいと思います。ただいま小柳委員からの質問に対しまして、福田長官からちょっとお答えがあった問題でありますが、この法案提出されましたについて、非常に世間の一部の誤解をも生んでおり、また衆議院の本会議、委員会等の論議に現われて疑問とせられておりますことの一つは、この法案の提出がわが国の農政の基本理念であるところの自作農維持に関する法制を廃止をして自作農中心主義の理念を変更するのだ、あるいはただいまお答の中にもありましたように、旧地主制度の復活をはかるのではないかというようないわれもない実は疑点であります。この法案農地改革の成果を否定するのじゃないかとかいうような論議が現われておるのでありますが、この点は一つはっきりと政府のお考えをこの際鮮明にしていただきたい、かように思うのでございます。申すまでもなく、日本の国が民主主義の国家として出発することになりまして、あらゆる方面に民主化の方向をたどってきたのであります。その最大の一つ農地改革でありました。すなわち、戦後の日本再建が、農業制度の基本をなすところの農地制度を根本的に改めなければならないということが、この旧来の農地の所有あるいは分配、利用の関係を合理化する、そうして耕作する農民の手に余剰の蓄積の余地を与え、その蓄積された余剰を農業経営に再び投資をするのだ、そうして農業の近代化と生産力の発展の道を開いて農村の民主化をはかろう、こういうことであったのであります。そこで、自作農創設特別措置法、いわゆる農地改革が昭和三十一年の終わりから実施をせられました。自来、今日までわが国の農業の発展に非常に寄与をいたしてきております。従ってこの改革は、日本の農政の上におきましても画期的なものである。従ってこの影響を受けました旧地主というものが全国で三百万人にも上ろう、その総面積が百九十四万町歩にも及んでおると、こういうようなことであります。こういう自作農創設特別措置法によりましていわゆるこの地主の不労所得をなくし、不在地主であるとか、不適性耕作者の農地を強制買収して一大土地改革が断行せられたのでございます。以来農地法が自作農主義を根本に、農地に関する権利義務のあり方を規制する法規として運営せられて参ったのであります。そこで、こういうふうな未曾有の大革新をいたしました日本の農政が、しかも着々としてその成果を上げておりますときに、この自作農主義の根本理念が再び逆行をするのだというような疑念を抱かせたり、また、そういう論議があるというようなことは、これはもう私どもから言わせれば、全くナンセンスだと思うのでありますが、しかし、この法案の提出の意図というものが自作農土地所有制度の維持を阻害する、あるいは弱体化されるのじゃないか、旧地主の復活をもくろむものである、あるいはまた、農地改革の成果を否定するのだというようなことは、当たらざることはなはだしいものだと思うのでありますけれども、しかし、もしこういう誤解があるとしますならば、これはススキの穂におびえておるのか、あるいは何らかのためにする意味においての曲解に基づいておる、誤解に基づいておるのではないか、こういうふうに感ずるのでございます。従いましてこの際政府といたされましては、そういうことでないのだということにつきましてはっきりと御真意のほどを御披瀝を願うことが誤解、曲解を一掃するゆえんである、かように思いますがお答えを願います。
  61. 福田篤泰

    政府委員(福田篤泰君) 御指摘の通り、適法に行なわれた農地改革というものが、農村経済の向上、またひいては国民経済全般から見ましても、戦後非常に大きな寄与をしたということを、政府は卒直に認めておるわけでありまして、このような大きな効果を上げた農地改革について何か逆戻りするようなことを、政府が考えておるということは毛頭ございません。御指摘の通り、あくまで適法の農地改革の効果はこれを認めて、さらに基本的に自作農創設その他につきましても、その方針は堅持すべきであるというような考えを持っておるわけでございます。
  62. 大谷贇雄

    大谷贇雄君 次にお伺いをしたい問題は、この未曾有の農地改革に非常な重大な役割を持って参りました旧地主の人々に対しまして、政府としてはどういうような考え方を持っておいでになるかということであります。こういう画期的な改革ができましたのでありますが、これは全く世界に見ることのできないような平和なうちに無血の革命が、改革ができて、そうして成功をおさめたのであります。申すまでもなく、ソ連邦等におきましては、ロシア帝政の農奴制度があの革命の悲惨な原動力となったのでありまして、地主と小作の争議というものは、世界のいろいろなところで血みどろの跡を歴史に残しているのであります。わが国の場合におきましては、敗戦という非常な痛手を受けながら、しかもそれを乗り越えて民主的な国家を建設するという大義名分のもとに、平和のうちにこの改革が行なわれたということを、私どもは銘記をしなければならぬと思うのでございます。民主化という大旆のもとにこの理想に向かって国民は黙々として協力をしたのであります。たゆまざる勤勉、倹約、忍耐によってたっとい汗と油の結晶であり、きのうの野党の方の御質問の中にもありましたように、命から一番目に大切に持っていたものを、農地の解放に捧げて参ったのであります。こういう大きな協力の陰に、限りない苦しみ悩みがこもっておるということを、私ども見のがしてはならぬと、かように思うわけであります。粒々辛苦の田地田畑をもぎ取られるというような形においてなされた人々もその苦しい、つらい中から協力をいたして参ったのであります。こういう協力のもとにこそなされたのでございまして、ともしまするとそうした無言の、しかもそのうちには深い苦悩を蔵しておる、その苦しみの中からの協力を抹殺をするかのごとき論議が往々にして行なわれる、まるで旧地主は搾取の権化であるごとき言動すらも表われておるということは、これは国民としてもはなはだ実は遺憾なことだと思うのであります。この一大改革について、旧地主の諸君が深い協力と貢献をしてきた、こういうことについて、何か政府としても遠慮をしておられるような気持を感ずるのでありますが、そういう点について、政府としてはどういうような一体お考えをお持ちか、伺いたいと思います。
  63. 福田篤泰

    政府委員(福田篤泰君) 大きな効果を上げました農地改革の陰には、旧地主の方々の非常な犠牲、あるいは協力というものがあったことは、御指摘の通りでございます。一部の行き過ぎた昔の地主の方々の極端な例から見て、ただ地主の方々を、いわばその犠牲なり、あるいはその協力を否定するような言辞は、これは当然慎まなければならぬと思うのであります。この大きな効果を上げた大改革に対する地主の方々のお立場に対しましては、政府としましては十分尊敬し、また、御同情すべき点が多々あるだろうと考えておる次第であります。
  64. 大谷贇雄

    大谷贇雄君 そこで、先ほどもお尋ねがあったのでありますが、また提案理由の中にも、この問題が非常な大きな社会的改革であったために、従来の社会的、経済的基盤が大幅に変更された。従って農地被買収者につきましていろいろな社会問題が起こっておる、こういうことが御提案の中にしるされておるのでございますが、このきわめて広範な、また深刻な問題が私どもにも実は報告をされておるのであります。一朝にして経済的なよりどころを失ってしまって社会的な転落に陥っておる、あるいは一家離散をしたり、あるいは突然の改革の衝撃によってあるいは自殺をしたり、憤死をしたり、発狂をしたり、一家心中というような、目をおおうような悲惨事が続出をいたしましたことも、世間周知の事実でございます。先般北海道に参ってみまするというと、北海道は御承知のごとく、全国の人々が非常な苦心惨たんをしてその開発に当たり、開拓に当たったのであります。その開拓をしました過程におきまして、むすこさんが応召を受けて出征をしてしまう、従ってこの農地の守ができなかった、抑留されておっていつ帰ってこれるかわからぬという際にこの農地改革が起こった。従って不在地主であるというようなことで農地が取られてしまうというようなことで、非常な深い悩みを訴えられたこともございますが、こういうような多数の人々がこの犠牲となって貧困と逆境に沈淪をしておられる。そういう点について、広く社会問題として調査をされるということは、これは社会正義の上からもまことに喜びとするものであるのでございまして、願わくはこの社会問題として、広範に一つ御調査が調査会において願いたいのであります。先月の毎日新聞によりまするというと、滋賀県の草津の観音寺というお寺がございまして、そこには重要文化財であるところの寺宝がある、ところが農地改革によって寺田がなくなってしまった。従って寺門の経営が困難であるため、重要文化財である寺宝も手放さざるを得ないというようなことで、手放してブローカーの手に渡さざるを得ないということになったのでありますが、やはり相次いで奈良等におきましても、次から次へそういう重要文化財がブローカーの手に渡る、こういうようなことでございまして、これは単に重要文化財の問題ばかりではなく、信仰の対象でありますところの全国の神社仏閣等におきましては、神様にささげられた、いわゆる神饌田、あるいは仏様にお供えをいたしました仏供田も失っておる。従って、そのためにそれが全部とは申しませんけれども、今日全国の神社、仏閣というものが、この力が非常に弱まっておる。その機能を十分果たすことができないということは、これはどこに行っても聞かされることでございます。道義頽廃の一つの原因としても、これは見のがすことのできない農地改革によるところの社会的大きな影響だ、広くそういうような点につきましても、社会問題として、今度できます調査会においては御検討になるような御意図あるかどうか、伺っておきたいと思います。
  65. 福田篤泰

    政府委員(福田篤泰君) ただいま御指摘の、いろいろな旧地主の方々の困難、あるいは御犠牲に対する問題を私ども拝聴いたしております。先ほど来お答えしています通り、こういう問題は、あらゆる角度からとらえて実態を確かめたいというのが、調査会の考え方でございまして御指摘の制度として調査会ができた以上は、十分な広い立場からこの問題を調査して参りたいと考えております。
  66. 大谷贇雄

    大谷贇雄君 そこで、調査会が発足するにつきましてのこの調査会の費用でありますが、この予算措置がわずかに一千万円、こういうことでございますが、これは一体いかなる規模でどの範囲の御調査が行なわれるのであるか、百七十万ここに上っておると言われておりまする被買収者、農林省におきまして、先年一部は調査されたということでありまするけれども、そのほとんどの大部分が、それらの点については未調査だ、わずか一千万円の予算をもって、はたしてでき得るのかどうか。また万一その費用が足らぬような場合には、どういうような考えをもって対処しようとされているのか、伺っておきたいと思います。
  67. 福田篤泰

    政府委員(福田篤泰君) 大体一千万の予算を計上したわけでございますが、これは一万五千戸を対象として第一年度を調査して参りたいと考えておるわけでございます。今のところ、これを二年続けまして、一つの調査を終えるめどに考えておるわけでございます。
  68. 大谷贇雄

    大谷贇雄君 そういたしますると、一万五千戸を調査されるということは、それは抽出調査によってなされる、こういうことでございますか。
  69. 福田篤泰

    政府委員(福田篤泰君) その通りでございます。
  70. 大谷贇雄

    大谷贇雄君 なお、その調査はどういうところに御委託になる御方針でございますか。その点も。
  71. 福田篤泰

    政府委員(福田篤泰君) 現在のところ、中央調査社という、内閣が常に世論調査その他を依頼しておる機関がございましてそれに一括して調査を依頼する考えでございます。
  72. 大谷贇雄

    大谷贇雄君 そこで、この法案は時限立法でありまして、二カ年ということになっておるわけでありますが、これは、二カ年たって答申を求められるのか。あるいは、これらの問題は、せっかく政府が乗り出される以上は、なるべく徹底的な御調査と、しかもまあ三年というようなゆうちょうなことでなしに、なるべく早い機会に、早くその調査の完了を要請をしていただくということが妥当ではないかというように思いますが、その点はどうお考えでありますか。
  73. 福田篤泰

    政府委員(福田篤泰君) 現在のところ、おおむね二カ年継続して調査するのが適当ではないかと考えておるわけであります。
  74. 大谷贇雄

    大谷贇雄君 次にお尋ねしたい問題は、農地の転用の問題でございます。農地法の精神から申しましても、わが国の狭いこの農耕地において効果のある農業生産をする、こういうことであることは当然でありまするが、最近のわが国経済の伸展に伴いまして、また人口膨張の点から考えましても、土地の需要度が非常に旺盛である、こういうようなことから、せっかくこの改革によって取得をいたしました農地を転売をするというような傾向が激化をいたしておるように思うのでございます。すなわち、この農地自体として売るというのは比較的少ないのでありまするけれども農地外の用途に供しまするところの転用が非常に多い。これはある程度の規制を加える必要があるのではないか、かように考えられるのであります。特に、大都市の周辺は、農地が食いつぶされる傾向がまあ日ごとに多くなって参っておりまして、こういうような、耕作外の目的に転用される農地が年々約一万五千町歩にも達するというような現状であるのでございますが、そういう点について政府としてはどうお考えになり、またどう対処をなさるつもりでありますか。その点を伺っておきたいと思います。
  75. 庄野五一郎

    説明員(庄野五一郎君) 農地の転用の件につきましては、農林省からお答えいたしたいと思います。農地農地外の用途に転用されていく、こういう場合は、現行農地法におきましては四条と五条でこれを許可制にいたしております。で、四条は、地主さんが自分の用途に、農業外に使う、こういう場合が四条の許可でございますし、五条の方は、第三者が農地を取得いたしまして、宅地にするとか、あるいは工場敷地にするとか、そういった場合の農地の転用の場合でございましていずれも五千坪未満は県知事、それから五千坪をこす面積につきましては、農林大臣がその転用の許可不許可を決定する、こういうことに相なっております。それで、農業の面から見ますと、農地が他用途に転用されていくということにつきましては、ひいては農業生産が弱体化する、あるいは個々の農家におきましても、経営規模が減少してくる、そういったことで、好ましくない状態でないかとわれわれは考える次第でございますが、国民経済の伸展に伴いまして、工業あるいは人口増に伴う宅地あるいは工業の敷地ということに土地が使われていく、こういうのはやむを得ない現象じゃないかと、こう考えております。で、それにつきまして、この転用につきましても、われわれは国土の総合的な、あるいは合理的な利用、そういう見地からこれを考えなくちゃならぬ、こういうような考え方を持っておるわけでございまして、昨年も農地の転用許可につきましての許可不許可を決定する基準というものを、従来不明確な点もございましたので、そういう点を明確化しまして、新しい基準でそうして許可基準を決定して、それによってまあ許可不許可を決する次第でございます。農地を大体分けまして、都市周辺の農地で、都市の自然的膨張その他から、将来まあ農地の他用途への転用のやむを得ないような地帯、それから純農村地帯で、ここはやはり農地として生産力も高いし、あるいは農家経営の面からも農地として保全すべきような有用な生産力の高い団地を持った地帯の農地、そういったものはできるだけ保全したい。しかも国土の総合的な利用の面から、やはり農地をつぶす場合におきましても、いろいろな国民経済の面から見て、これが計画的に転用されていくというのが好ましいのじゃないか。たとえば都市計画によりまして、都市が住宅地域あるいは工場地域あるいは商工業地域と、こういったような地域区分をいたします場合におきましても、農林省と建設省その他がよく事前に打ち合わせましてこの地帯は農村地帯として、あるいは農耕地帯として保存するか、都市周辺に近接したあるいは生産力の低い分散した農地、そういったところは、これは将来宅地化を予定してそこからつぶしていく、こういったような考え方で、無計画的に農地がつぶれる、そういった点は重々押えなきゃならぬ。それからもう一つは、やはりその転用される目的の面から、やはり農業も産業の重要な一環でございますので、転用される場合における転用目的が、国民経済上重要なものであるものからできるだけ転用を許可していく。不急不要のような産業用途というものはできるだけ押える、こういったような考え方をして、ただいま転用いたしております。御承知のように、転用面積も逐年ふえておりまして、現在、三十四年度はまだ集計いたしておりませんが、許可によって転用いたしましたもの等は、三十三年度でも一万三千町歩で、まあその他災害等を含めますと一万五千町歩程度になりますが、農地法による許可の対象になりましたものは約二万三千町歩、その程度になっております。
  76. 大谷贇雄

    大谷贇雄君 今農林省から御説明がございましたが、せっかく農地改革をいたしまして、そうしてその陰には全国幾百万もそのために犠牲となった人がおる。このことによって農業生産力を高める。こういうことで一大改革が行なわれたのでございまするので、今お話しのように、不急不要の転用ということについては、これは政府全体として十分一つ総合的な対策をお立てを願わなければならぬ。と申しましても、今あなたからお話がありましたように、国土の総合開発という、土地の合理化の点からはこれまた高度に利用しなければならない。それからまた、政府といたされましては、それらの点を総合的な一つ立場に立って、むちゃくちゃな転用をなされぬように一つ十分の御監視をいただきたいと思うのであります。そこで、そういうように転用をされて、土地、農地等非常に高く売られている。解放当時は農地は申すまでもなく反当たり最低三百八円、最高が九百九十四円で買収をされておるのでありますけれども、一昨年、これは自民党の農地調査会が七十三カ町村の全国抽出調査をいたしてみましたところ、これはむろん不十分の調査でありますけれども、反当たり平均七十五万円、最高三百万円というようなこの調査の結果も実は出ておるのであります。こういうことが旧地主諸君の心理的に釈然たらざるものがあるような気がいたします。また、これは社会秩序の上から申しましても非常な不公平な感を持たれるのであります。耕作権を持っておらなかったために、平均反当たり六百四円ということで強制買収された被買収者がいる一方、強制買収で得た農地が数千倍にもなって転売されておるというふうなことは、これは農地法の精神ではないと思うのでありますが、従って、まあこういうような点について、一つこの転売等については目的税をかけたらどうかというような議論も一部にはあるわけであります。そういう点についてどうお考えになりましょうか。
  77. 福田篤泰

    政府委員(福田篤泰君) 元農地であるものが農地ならいいが、宅地で転売される、あるいは手離すときにも、その後の地価の暴騰で非常に高い値段で売られる、いろいろ御指摘のような多くの問題が出ていることは事実であろうと思います。ただ、それによって特別の目的税を設ける考えがあるかどうかという点につきましては、現在政府の方では、こういう転売につきましては不動産の譲渡取得税、あるいは固定資産再評価税で今の地主に税金をかけております。特にこのことによって目的税を新たに設けることは適当ではないのじゃないかという意見が現在のところ有力でございます。
  78. 大谷贇雄

    大谷贇雄君 最後に。先ほど小柳委員からも対価の問題につきましてちょっと御質問があったのでありますが、土地の強制買収価格は、実際に買収したときの時価とするということが定説であるにもかかわりませず、農地の買収は実際の買収時期よりも一年間も前にさかのぼった昭和二十年の十一月現在の価格をもって一方的に交付された。これは法律不遡及の原則に反するのじゃないか、あるいはまた、買収価格の算出にあたって、正しい計数の上に立っていなかったのじゃないかというような疑問を持っておりまする者も実は相当あって不信感が広がっておる、この問題につきましても、一つはっきりした政府の御所信をこの際伺っておきたいと思います。
  79. 庄野五一郎

    説明員(庄野五一郎君) 農地改革当時の農地の買収対価につきましては、御承知のように自作収益価格、こういう計算方法で算定いたしております。で、自作収益価格と申しますのは、耕作農民が耕作して、それによって引き合う価格、こういうことに相なるわけでございます。なおそれに地主採算価格として多少の加算をいたして買収した、こういう次第でございますが、その自作収益価格の算定につきましては、当時の米価、昭和二十年の十一月二十三日現在で大体買収価格の米価を算定いたしておりますが、なお、二十年の米価につきましては、その後インフレの増進とともに米価の改訂が行なわれておりますので、二十年の産米の十一月決定の米価ということで計算いたしております。その後インフレ等の高進によりまして米価は引き上げられておりますけれども、これは自作収益価格という建前から、米価で生産費かまかなえるということを前提に米価がきめられておるわけでありまして、結局生産費が上がったので米価が改訂された、こういうことに相なるわけであります。その後インフレの増進によりまして、米価は引き上げられておりますけれども、地主から買いました農地価格というものは、二十年の米価で算定してありまして、その後のインフレというものは、これは米価は上がりましたけれども、生産費が上がったというために米価が上げられておるわけでありまして、当時生産に直結いたしておりません地主さんの価格というものとは関係がない、こういうふうにわれわれは見ておるわけであります。
  80. 大谷贇雄

    大谷贇雄君 この法案は非常に不幸な法案でございまして三十一国会に衆議院を通過をいたして参ったのでありますが、参議院では審議をすることができなかったのですが、ようやく参議院におきましても審議をする機会となったのでございますが、この調査会が発足をいたしました場合におきまして、政府といたされましては、この調査会の答申が出ました場合には、極力その結論につきましては、尊重をいたしてこれを実行をする用意があるかどうかということを最後に承って私の質問を終わりたいと思います。
  81. 福田篤泰

    政府委員(福田篤泰君) その点につきましては、先ほど小柳委員にもお答え申し上げましたように、当然答申につきましては尊重すべきものであると考えております。
  82. 中野文門

    委員長中野文門君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止〕
  83. 中野文門

    委員長中野文門君) 速記を起こして。
  84. 下條康麿

    ○下條康麿君 私、ただいま問題になっております農地被買収問題調査会設置法案につきまして、二、三お尋ね申し上げて、設置目的、実施の計画等について趣旨を明らかにしておきたいと思います。  農地改革が一大社会変革でありまして、これが日本の農業生産の上に貢献のあったことは認めるのでありまするが、同時に、社会的な大きな変動をもたらしたということは、事実としていなめないところであると思います。もちろん、この農地改革は終戦前から計画せられておったいわゆる自作農創設政策の延長であると私は思うのであります。ただ、その実施が、農地改革の実施が、占領治下において、占領政策の力によって実現が可能になったということも、これまた否定できない事実であると思うのであります。従いまして、占領下において政治、経済、社会各面の非常な激動のさなかにおいて、土地所有権の問題等も考慮が十分に払われなかった形跡があるように思うのであります。従って、権力指導によって有無を言わさず強制買収された者にとりましては、かなり大きな衝撃があったのであります。すなわち、その農地関係法規の中にかなり無理があったように思うのでありまするが、またそれを実施する際にまた行き過ぎがあったようにも思うのでありまして、二、三の例をあげてみますると、たとえば佐賀市におきましては、市の中に小さいみぞが流れております。ほとんどどぶみたいなみぞです。今日は水道が引かれておりますが、古くそれが水道のかわりに飲用水に用いられておるような細いみぞがありまするが、それがたまたま同一市町村内における農業委員会の境界線であった。邸内にその川が流れておる。こちらにおもやがあってその川の向かい側に農地がある。それが同一農業委員会の区域外であるために不在地主ととられた、こういうことも、これは現実にあるのであります。また、たとえばこれは秋田県の例でありまするが、秋田県では邸内にリンゴ畑がある。出征をして留守中作男にその耕作を依頼しておりましたところが、それが契約による委託である、こういうことでありまして邸内の農地、リンゴ畑が全部取られてしまった。ちょうどおもやからリンゴ畑を通って隠居屋に母親がいる。その母親に会うための途中のリンゴ畑が取られてしまった。母親に毎日会えないというような状況、これは現実に私見て参ったのであります。またずいぶんひどい話では、農地だけでなく、農地の付帯施設として宅地及び住居も取られまして、そうしてその宅地の中によく地方ではありまするが、墓場がある。その墓場も農地として取られて、しかもその所有者の面前でそれが発掘されて、先祖の墓が露呈されたというような、これは福井県であります。その方は小学校の校長でございまして非常に先祖に対して申しわけがないというのでついに自殺をされまして、遺書が書いてありまして、私遺書を現に見たのでありますが、まことに涙なくしては読めないようなことが書いてございました。もちろん、地主のうちには、旧来の祖先の土地を持っておった方もありまするけれども、またその個人の努力によって土地を作った人もある。これは岐阜県の人でありまするが、自分も老後の計をなすために農地をほしいと思って常々勤勉力行してようやく三町歩まで取ったところが、農地解放でとたんに全部取られてしまいました。老後の計を失なってとほうにくれておる。これは岐阜県の例であります。まあずいぶん北海道においても先ほどお話があったように、実際政府方針によって北海道に移住して営々苦心して、ようやく経済が成り立つ時期に全部取られてしまって、年令も相当に達して、もはや再び働く力がないというような人もありまして、まことにお気の毒の状態が所々に存在しているんであります。今申し述べたように、法自体にもずいぶん無理があったり、また、法を執行する適用の面におきましても、いろいろ行き過ぎがあったからして、そこにいろいろの社会問題が起こってきたように私は思います。  まず、第一に、精神的面から申しますると、所有権がほとんど無視された関係から、これは一大衝撃を受けたことはいなめない事実であります。また、旧地主の大部分というものは中小地主、いや実は大体小地主であります。全国平均がわずかに九反であります程度で、実はこれはアメリカの方の話でありまするが、日本の地主というものを財閥と考えて、大財閥を整理するような考えでやったというような話も伝わっておりまするが、とにかくそれは間違いでありまして、実は非常に中小地主で、経済力は非常に希薄であります。そういうものがその経済の基盤であるところの農地を一挙にして失いまして、そこに生活の基盤がなくなってしまつた。そこに起こってくるものは、生業は失なった失業であります。ほかの場合ならば、失業手当もあるし、また転職の世話もしてくれまするが、旧地主に限ってはそこに何ら、ただ農地証券紙のようなほんとうに価値のないような農地証券をもらった、まだずいぶん農地証券をもらわない方があります。そういうような、実に気の毒な失業状態が発生して、次いで貧困になり、貧困になるいろいろの問題がまたそこに起こってくる。中には自分の子女の生活にも、教育にも困るというようなものも起こって参っております。もちろん、旧地主のうちには、生活保護法によって生活扶助を受けているものもありますけれども、中には生活保護法によることをいさぎよしとしないものも多々ある。これらはまた悲惨な生活、中には餓死したものもあるようであります。そういう問題が起こってきた。それからまた、先ほど来問題に出ておりました農地買収対価の問題でありますが、もちろん農地については戦前戦後を通じまして農地の移動とか、価格等につきまして統制があった、相当所有権が制限せられているわけ護ります。それらを十分考慮しましても、一般的、経済的な評価から申しまして確かに安かったのは、何人も感じているのであります。しかし、これは国全体の大きな政策のためであるとがまんをしておったのでありまするが、それが一定年限の間農地として利用すべき義務があったのが、それが解除せられまして無制限に、先ほど来問題になっておるような転用転売されておる。そして思わぬ商い価格でこれが売られまして、農地改革という偶然の機会から、全く明らかな不労所得が発生したということは否定できない事実であると思います。農地改革にわれわれ賛成するゆえんは、耕す者が農耕地を所有するという原則、これはけっこうだと思うのであります。ところが、現実においては、先ほど御説明がありましたが、許可がありましても、相当たやすく実は転売転用されておりまして、そして農地を売却した者はその日にも困る生活をしておるにもかかわらず、それを買い取った者がそれを売りまして、利子生活をしておるというようなことは、非常な矛盾があります。ついこの間、これは日本経済新聞を見まして思わず感じを深くしたのでありまするが、これは日本経済新聞の今月の初めの新聞でありますが、そこにありました「日経柳壇」という川柳が載っておるのでありますが、「職をかえ農地を売って利で稼ぎ」、この通りの状態が実は現われておるのであります。まことにこの農地改革の精神を没却した事実が現われてきておるそうでありまして、かようなこと、では、いわゆる旧地主は納得できない。終戦後間もなく行なわれた農地改革に対して今なお十幾年もいろいろ主張を続けておる。そこに私は相当な理由があると思う。  これらは一つ十分に調査会でお調べいただきたいと思うのでありますが、私たまたま昭和三十一年から二年にかけまして、こういう問題を自分で調査してみたのですが、これは全国を東北、関東、北陸、東海、四国、中国、九州と分けまして、大体各地区にティピカルなサンプリングを二県ないし数県とりまして、全国で四万二千三百五十四戸調べたのであります。その結果出た数字が、餓死した者が四十七名、変死またはこのために病死した者が二千二十三名、発狂または病気にかかって入院中の者が千七百七十一名、一家離散した者が八百五十名、通計四千六百九十名、これは実数でございます。ちょうど調査戸数に対して約一割強のこういうひどい状態が現われて参りました。これを、北海道を除きまして全国の推定戸数約三十万といたしまして、拡大推計いたしますと、全国で十四万四千八百十八人というような餓死等の不幸にあった者があるはずでございます。もちろん、これはサンプリンク調査でありまするから正確ではないのでありまするが、大体の傾向がわかるのじゃないかと思います。かような総戸数に対して一割強のいろいろの悲惨な事実が出たという政治は、これは私大いに考えなければならないというふうに考えます。明らかにそこに社会問題が発生しておると見なきゃならぬと思うのです。社会は社会構成員のために存在する。しかるに、社会の政治がある手段をとられた結果としてその社会の一割以上が非常に悲惨な状態になるという政治は、それ自身よほど反省しなければならない、かように思うのであります。そういうことを私は今度お調べになるのじゃないかと思います。農地改革自体ではなくして農地改革から流れ出たいわゆる社会的ないろいろな実態をお調べになって要すれば、これに対して適当な施策を講ずる、こういうことが、いわゆる第二条の「社会的な問題を調査審議する。」とこういう事項であると思いますが、政府の御所見を伺います。
  85. 福田篤泰

    政府委員(福田篤泰君) 調査会の調査の対象は、御指摘の通り農地改革自体ではなくして、農地改革を行なった結果、副次的にまた派生的に生じましたいろいろな現象をとらえて、いわば農地改革自体は大きな効果は上げたにしましても、今御質問の通り、非常に激しい変化がありまして多くの問題を発生した、この問題を調査いたしたいと考えているわけであります。
  86. 下條康麿

    ○下條康麿君 そういたしますと、今私あげましたのはきわめて少ない例でございます。お調べになれば、相当いろいろな問題が出てくると思いますから、十分に御調査を願いたいと思います。  そこで、この調査研究の中心は、何と申しましても実態調査にあると考えます。実態調査が正確に出ませんでは、正確な施策ができないわけであります。そこで伺っておりますというと、昭和三十年に臨時農業基本調査を農林省で御計画になりまして、全国の農業に従事している旧地主七十万戸についてお調べになった、今度は残りの百万戸についてお調べになるということでありまするが、そのお調べになる戸数がわずかに一万五千戸では、実はあまりにも少ないのじゃないかというふうに考えるのであります。と申しまするのは、今の農業基本調査の場合には、七十万戸で調査対象は九万三千戸になっております。約八分の一の抽出になっておりますが、今度のは百万戸といたしますとわずかに一パーセント半、非常に少ない戸数であって、これでは十分に調査の目的が達せられないのじゃないかという心配があるのでございます。それで御承知のように、もちろんたとえば八分の一ぐらいの調査の対象を探すということはけっこうでありまするが、そういたしますると一三パーセントを掛け合わせれば十三万戸ぐらいになる、これは非常に多い数であります。もちろん統計調査の場合において、母集団、もとの数字が小さい場合には、必ずしも調査対象は比例的に多くしなくてもいい、むしろ反比例的に少しでもいいという原則がありますから、それによって見ますと、百万戸に対しまして、あるいは相当な、一万五千でない何倍かを出すのが適当ではないかというような感じは持ちますが、この点についてお尋ねしておきたいと思います。
  87. 福田篤泰

    政府委員(福田篤泰君) もちろん、調査の対象をなるべく広くし、また予算もなるべく多額に豊富な資金をもってやるべきことは理想でございますが、目下のところ与えられた一千万という予算の範囲で、できるだけの効果を上げたいと考えております。
  88. 下條康麿

    ○下條康麿君 予算がきまっておりまするから、その範囲で御実行になるということもやむを得ないかと思います。ただし調査会をいよいよ開始されまして、調査の結果実態調査についていろいろ御研究になると思いますが、そういう場合に、もし一万五千では適当でない、もう少しふやす必要があるということであれば、これはまたお考えをいただきたいと思います。この点をお願いしておきます。  それから調査の方法でありますが、調査の方法は中央調査社、今お話がありました世論調査をするところでありまするが、その中央調査社を通じまして、地方の調査網を利用して御調査になるというように考えるのです。私これについて、別に非常な異議があるわけじゃないのでありますが、しかし私考えますのに、総理府には統計局がある。それで、統計局は国の行政機関または地方公共団体の委託を受けて調査ができるという規定があります。中央調査社もけっこうだろうと思いますが、統計局という国の調査機関がありますから、これを通じてお調べになる、そうして地方の地方調査網でありますが、調査網がだいぶんこの世論調査とは、調査の内容形態も違いますので、やはり何と申しましても、私は市町村の農業委員会の手を通じなければこれはうまくいかないのではないかというように考えます。それでこの調査会法案の第七条にはそういう関係規定がございまして、第七条「調査会は、その所掌事務を遂行するため必要があると認めるときは、関係行政機関の長に対し、資料の提出、意見の開陳、説明その他必要な協力を求めることができる。」ということがありまするから、私は総理府から農林省に協力を求められて農業委員会を活用するということが適当ではないか、こういうように考えます。これに対する政府の御所見を伺います。
  89. 大島寛一

    政府委員(大島寛一君) お答えいたします。調査の方法としましては、先ほど総務長官からお答えになりましたような考え方で現在のところおるわけでございまするが、ただいまお尋ねの総理府の統計局等、その他の機関を使ってはどうかという御趣旨の御質問と拝察いたします。その点につきましては、政府のいろいろ調査統計等の機関もございますが、それぞれ通常の調査あるいは統計をする任務を持っておる次第でもございまするので、私どもとしましては、この調査会のために必要な調査につきましては、先ほど総務長官からお答え申し上げたような方法で考えますことが、この調査の性質が臨時的なものであるという点から見ましても、最も適当であろうかと存じておる次第でございます。しかしながら、その他の国の機関等の調査等におきまして、調査会の目的を達しますために活用し得るものがありますならば、これは調査会がいかなる方法でやるかお考えになることではございまするけれども、それらのものも活用される余地があろうか、このように考えておる次第であります。  なおまた法案の第七条につきましてこれに関連してのお尋ねでございまするが、所掌事務を遂行するため必要があると認めますときは、関係行政機関の長に対しまして、資料の提出、意見の開陳、説明その他必要な協力を求めることができるということに相なっておりますので、調査会が発足いたしまして、調査会として必要があるとお考えになりますときには、この条文によりまして関係行政機関の長に対しまして、そういう今述べましたような協力を求める道も開かれておる次第でございます。
  90. 下條康麿

    ○下條康麿君 固執するわけじゃございませんけれども、私は政府の調査は、政府部内に適当な委託を受ける機関があります限りにおきましては、できるだけ政府機関を動かして、しかも農業関係の問題であるために、農業委員会等の専門の関係方面を利用するということが妥当であると思いまして、この点はなお御研究を願っておきたいと思います。  それから最後に、実は農地改革が実施されましてから十一年がたっておりまして、今ごろ調査会、まことにおそきに失するように考えます。実は三十一年に、春でございましたか私地方に旅行しておりましたところが、アメリカ大使館から電話がありまして、至急会ってもらいたい人があるから帰ってくれというので私が会った人が、これはペンシルバニア州のスワオースモア大学の経済学部の教授のウエザー・フォードという方でございますが、皇太子殿下の英語の先生、ミス・ロースという方のお宅で約二時間会いまして、日本の農地改革について話し合った。世界の農地改革を調べた方であります。そうして特に日本に、フォード・フアウンデーション、フォード財団から派遣されて、日本の農地改革について調べに来た方でありますが、もちろん農林省については調査したが、しかし民間の声も聞きたいというので、私が面会を求められて話しましたら、実に驚かれまして、それでモースト・シビア、実に驚異であるということを言われたのであります。その翌年世界銀行でも日本の農地改革と、その後の影響というテーマが調査の問題になりまして私のところへ世界銀行から問い合わせがありまして、私資料を送ったことがあります。アメリカでもかなりこれが問題になっておるのに、今ごろようやく問題になるということは、実におそきに失していると考えますが、しかし、今からでもおそくない、先ほど来お答えがありましたが、二年の期間は十分にこれを御利用になりまして、これ以上延ばさない、よく委員会の調査は延びる例があります。絶対に二年は延びない。この配意でぜひやっていただきたい、かように考えます。そうしてなおこの調査の結果が具現するのを考えてみますと、かりに今月この法案が成立いたしまして、二年だと三十七年の五月でないと調査の結果が出てこない。それから予算措置あるいは法律というような手続になりますというと、それが三十八年度になる。これではいかにも長過ぎるので、先ほども意見がありましたが、調査はでき次第これを具体化するということをぜひやっていただきたい。そうしませんと、あまりに長くなりまして、実はずいぶんこの関係者が老齢であるために逐次なくなっております。ついこの間も富山県の根尾長次郎君は、この問題は非常に心配しておった方でございますが、病床から私に手紙をよこしまして、一つぜひ骨を折ってもらいたいということがありまして、死の直前に遺言的に書いてくれました手紙がありますが、間もなく八十幾つでなくなりました。そういう方が非常に多い。早くこれを一つ具体的に実施するということが絶対に必要だと思うのであります。  それで、いろいろ調査の結果につきましてお考えになる点がありまするが、とにかく百七十万戸、これをかりに五人世帯とすれば、一千万人近い大きな社会階層の問題であります。こういう問題をそのまま放置はできないことは、これはもはや疑いないところでありますから、どうぞ政治的見解に立まして、ぜひとも適切な施策を講ぜられることをお願いして、一応この点に対する政府の御所見を伺って私の質問を終わります。
  91. 福田篤泰

    政府委員(福田篤泰君) 国民生活の安定という観点からも、御指摘の点は重大なことでありますので、御答申をいただいた場合には、先ほど来申し上げます通り政府はこれを尊重いたしましてこれに対して御趣旨に沿っていろいろな処置を講ずる決意でございます。
  92. 中野文門

    委員長中野文門君) 他に御発言もなければ、本案に対する質疑は、本日はこの程度にとどめます。   ―――――――――――――
  93. 中野文門

    委員長中野文門君) 次に、特別職職員給与に関する法律の一部を改正する法律案一般職職員給与に関する法律の一部を改正する法律案防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案、以上三案を一括して議題といたします。  三案につきましては、いずれも提案理由の説明を聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。政府側出席方々は、益谷国務大臣、福田総理府総務長官、増子内閣総理大臣官房公務員制度調室長、佐藤総理府総務副長官、小幡防衛政務次官山本防衛庁人事局長、ただいまのところ以上の方々であります。  御質疑のおありの方は、順次御発言を願います。
  94. 辻政信

    ○辻政信君 人事院の給与局長来ておりますか。
  95. 中野文門

    委員長中野文門君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  96. 中野文門

    委員長中野文門君) 速記を起こして。
  97. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 五月十日に御存じのように、二公社五現業の十三の組合の労使に対しまして仲裁裁定が提示された、このことにつきまして二つほど伺いたいわけでありますが、一つは仲裁裁定の必要な財源は百五十億ほどである、こういうふうに存じておりますが、これの実施にあたっては、予算の移流用あるいは節約、こういうものでやりたいということが、大蔵省の方から新聞に出ておりますし、また大蔵大臣もそういうような談話を出しておりますが、この実施にあたっては、そういったような方向で実施されるものだというふうに考えてよろしゅうございますか、その点について伺いたいわけです。
  98. 益谷秀次

    ○国務大臣(益谷秀次君) 五現業三公社のことは私の所管じゃございませんから、国務大臣として知っている範囲内でお答えいたします。実は私は昨日見たのです。それでおそらくは明日の閣議にかかると存じます。聞くところによりますると、経費の移流用その他でまかないのつくものはするという精神をきのう聞いたのであります。詳細は存じません。明日の閣議で決定することと考えております。
  99. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 もう一つは、この中労委の藤林会長が新聞で発表いたしておるわけでありますが、四%の原資を加えたものは、この春の春闘の相場を考慮して加えたものだ、こういうことを発表いたしております。このことについて御承知でありますか伺いたいと思います。
  100. 益谷秀次

    ○国務大臣(益谷秀次君) その点は承知いたしておりません。
  101. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 今の二点を確かめておきまして、国家公務員の給与につきまして伺いたいわけでありますが、今回政府が実施しようといたしておりますところの給与の政策は、御承知のように、人事院が昨年の七月の十六日に勧告をいたしましたものに基づいて実施をいたそう、こういうふうになったわけであります。この点について三つほど伺いたいと思います。  一つは、この勧告は昨年の三月末の調査に基づいて勧告をいたしたのであります。すなわち昨年の三月末に民間と比べまして、国家公務員は五・七%低いというところから勧告をいたしたのであります。人事院はこの点について、この勧告は調査をいたしました昨年の四月一日から実施すべきものである、こういうふうにこの内閣委員会におきましても、また参議院の本会議におきましても、明確にその意思の表明をいたしておるわけであります。にもかかわらず、一年たったこの四月一日から実施しよう、この点について給与担当大臣が、公務員の給与についてできるだけの努力をしたいという御意思もたびたび伺っておるわけでありますが、あるいはまた人事院の勧告を受けて立つ、そういう建前に立っておるという点も承っておるわけでありますが、人事院が昨年の四月から実施すべきであるというふうに、この国会で明確に意思を表明している。この点について一年後おくれて実施するということについて、どういうふうに考えておられるか、この点を伺いたい。
  102. 益谷秀次

    ○国務大臣(益谷秀次君) 人事院の勧告は、なるべくすみやかにという勧告だと思っております。昨年の三月終わりのデータによって勧告があったのでありまするから、でき得れば四月一日から実施するのが、すなおに受けて立つという建前から当然であります。でありまするが、御承知通り、昨年は全国にわたる大災害がありまして、その他資金の調達が困難だというので、本年四月一日から実施していくことに相なっているので、あります。私はこの点については非常に遺憾だと思っております。人事院の総裁もさように答弁をいたして、私も同様に遺憾だと思っおります。現在の政府給与の問題については、人事院の勧告を待って処置するという建前になっております。従って閣議その他の決定によって、政府は資金のやりくりがつけば、明日からでもむろん給与の改訂はできるのでありますから、いたさなければならぬと思います。しかしまだ閣議等にその話はいたしておりません。従って私は資金の上から、財政の上から非常に困難だとは思いまするが、五現業等の仲裁裁定等もあったのでありまするから、大いに努力をいたしたいと存じております。
  103. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 昨年の四月一日から実施すべきである。これは人事院がはっきり答弁をいたしているところでありますし、また理屈上から申しましても、昨年の四月一日にそういうふうに五・七%低かった。ただ、財源上昨年は伊勢湾台風の問題等があったというような御答弁でございまするが、これはその前の年もそうなんであります。その前の年もそうなんであります。これは御承知通りに、昭和二十八年以降全部です。そういうふうに一年ずつおくれてきているわけでありまして、特に昨年の伊勢湾台風ということで御答弁いただきましても、過去の何回かの政府給与政策の現われでありますので、私といたしましては、この点については納得がいかないというように思うのであります。なお、今大臣の御答弁の中に、二公社五現業にも仲裁が出ている。従って自分としてもこれに関連をして、できるだけの努力をいたしたいというような御答弁でございましたが、これは明日の閣議においてそういうような努力をいたしたい、こういう意味でございますか。
  104. 益谷秀次

    ○国務大臣(益谷秀次君) 私の推定でありますが、おそらくは藤林仲裁案が明日閣議にかかるものと思っております。従ってそれに関連して私は努力いたしたいと思うのでありますが、明日閣議にかからねば、延びるものと御承知を願います。
  105. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 明日かかるといたしますれば、国務大臣として御努力をいただくということでありますが、それはこの仲裁裁定の実施と並行して努力をしたい、給与改訂に努力したい、こういう意味でございますか。
  106. 益谷秀次

    ○国務大臣(益谷秀次君) 仲裁裁定があるのでありますから、それを機会として、関連して努力いたしたいと思っております。
  107. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 ちょっとくどいようでございますが、国務大臣も御承知のように、公務員の給与が、三公社五現業なり、あるいは民間等から比べて非常に低いということについては、お認めの通りであります。今回二公社五現業が仲裁裁定を実施するその際に、担当大臣が御努力いただくということは、今政府が出しておる給与法案にプラスして御努力をなさる、こういう意味でございますか。
  108. 益谷秀次

    ○国務大臣(益谷秀次君) その通りでございます。
  109. 中野文門

    委員長中野文門君) 申し上げますが、ただいま滝本人事院給与局長前田大蔵政務次官、船後大蔵省主計局給課長出席いたしました。
  110. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 そうしますと、何らかの原資が加わるという意味でございますか、この四月一日から。
  111. 益谷秀次

    ○国務大臣(益谷秀次君) ただいま御審議を願っておる一般職給与、これで満足するならば、明日閣議に私は発言することがないのです。給与担当の責任者として率直に、従来とても民間給与との格差は認め、また同じ公務員のうちでも格差があることを認めておるのであります。その建前からただいま御答弁申し上げておる次第であります。
  112. 辻政信

    ○辻政信君 人事院の給与問題につきまして今滝本給与局長がお見えになりましたから、私の質問は事前に連絡をしておきましたから、ごく簡単に一点だけお伺いいたします。実は浅井人事院総裁に聞きたいところでございましたが、きょうは御不在でありますから、局長からかわって答弁をされ、局長で答えられないときは、浅井総裁にすみやかに報告されてその結論をお出しになるように。  まず、開いていただきたい別表があります。それは人事院細則の「初任給・昇格・昇給等の実施細則」、別表第十六、経験年数の換算表というのがあります。御承知通り。その表の中に、公務員で戦争中兵隊にとられて長い間戦地にあって、帰ってきて復職した者、それに対する経歴の年数を換算をするという事務的な表であります。これは簡単な表でありますが、該当者にとりましては非常に重要な表であります。そのうち私がまことに不思議に思いますことは、国家の公務員、地方公務員、公共企業体職員政府関係機関職員、ほか外国政府職員として在職した期間に対しましては、職務の種類が類似しておるものに対しては十割以下の換算率をもっておる。その他のものは八割以下になっておる。今度は、民間団体に途中勤務した者が再び公務員になった場合の換算率は、直接の関係がありと認められる職務については十割以下、ほとんどそのまま認めておる。関係の少ないものでも八割以下を換算して、その昇給の資格に繰り入れております。しかるに、兵隊だけは、兵役期間、引き続き海外に抑留された期間を含めて直接関係があると認められるものは十割以下、その他のものは二割五分以下となっておる。自分の意思で地方の企業体に入っていった者の換算率を八割、最悪の場合に八割を認めておきながら、自分の意思によらずして、国家の命令で数年間戦地で苦労して帰った、病気をして帰った、そうして就職がおくれた者を二割五分以下というように差別待遇して給与が実施されておることは、一体いかなる理由によるのか。多数の公務員の中で、泣いておる者が数万人おるはずであります。それについて給与局長お答え願いたい。
  113. 滝本忠男

    政府委員(滝本忠男君) ただいまお話がございましたように、事前にこのお話を先ほど承ったのでございます。別表第十六に、「経験年数換算表」というものが出ておりまして、ただいま御指摘になった通りでございます。この経験年数換算表というものがどういう観点からできておるかと申しますと、その従来の経験が、今後つくであろう公務にどれだけ役に立つかという観点から原則的にはできておるわけでございまして、そのことはわれわれよく承知いたしております。ただ、兵役関係につきましては、これは御承知のように、現在は兵役というものがございませんで、終戦時まであったわけでございまするが、従いまして兵役のところにつきましては、これは終戦後おおむね二、三年ないしは四、五年間の問題であったろうというように私は解釈いたしておるのであります。この点は、人事院が給与を担当いたします以前に、政府におきまして新給与実施本部時代におやりになっておりましたことをそのまま継承してここに書いておる。従いまして、この表は、端的には現在あまり直ちに役に立つという表ではないのではなかろうかというように思います。しかし、御指摘のように、過去においてこの表の適用を受けた者がおるではないかというお話は、これは十分わかるのであります。その経験年数換算表の二割五分以下というところに備考がついておりまして「部内の他の職員との均衡を著しく失する場合はこの限りでない」という備考がついておるのでございまして必要がありまする場合には、この備考を援用いたしましてこの二割五分以上にきめるということは、もちろんあり得たわけでございます。一番問題になろうと思いまするのは、在職途上におきまして、入営あるいは応召というようなことがあった場合に、九十日以内の復職につきましては、所属長がやむを得ない事情があると認められる場合には通算してよろしいということが、かつて新給与実施本部時代にあったのでございまするが、この九十日ということも、これはあまりに画一的でございまするので、われわれの方といたしましては、個々の事情に即しましてこの九十日というのに必ずしもこだわらずにこれは考えたい。従いましてただいま御指摘になりました問題は、主として今後起きる問題ではないので、すでに従来起きておる問題であろうかというように思うのであります。われわれといたしましては、過去におきまするそういう問題につきましては、個々の事実に即してこれを考慮するように今後考えたい、このように考えておる次第であります。
  114. 辻政信

    ○辻政信君 今までの経緯がはっきりいたしました。あなたのおっしゃる通り、これは人事院ができる前に、アメリカの占領政策の一環としてとにかく兵役に関係あったやつは、戦犯的な目で見た。その現われであります。ほかのものは八割、最悪の場合にも。そうしておきながら、兵隊で引っぱられた人には二割五分という苛烈な条件をつけておる。しかも、戦争が終わってから九十日以内に復職しないと適用されない、こうなっております。九十日ということはできることではない。あの終戦後の混乱時に病気をして、職場の人も顔を知らなければ、役所も知らない。半年たって復職できればいい方です。あるいは一年、二年たって復職できればいい方です。あなたは今、二割五分と書いておるが、場合によって適用で手かげんするとおっしゃったが、私の調査した資料には、手かげんされた者はほとんどない。陳情書が来ております。ごらん願いたい。黙って泣きながらがまんをしておる状態である。しかも、こういう不幸な人が、兵隊にとられたがために、数多い公務員の中で数万を数えておる。明らかに不合理であります。なぜ今までこの不合理に気がつかなかったか。これを責めるものじゃございません。責めるものじゃないが、不合理だとわかったならば、至急これを改めて、平等に取り扱ってもらいたい。あなたは局長ですから、今ここで即答は求めません。益谷給与担当の副総理もおられますから、この不合理は一日も早く是正なさるように、私の希望を述べてその結論は、この次の委員会に人事院総裁が出られるときにお求めいたしたいと思います。
  115. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 先ほど給与担当大臣が御答弁いただきました点について、後ほどもう一ぺん念を入れて御質問申し上げたいと思っております。  その前に御質問いたしますことは冒頭に私担当大臣に御確認をいただきましたように、二公社五現業については、この四月の春闘相場を考慮いたしまして、仲裁裁定が出ておるわけであります。それに対しまして、今政府が実施しようといたしております給与法案は、御承知のように昨年の三月末の調査であります。従いまして昨年四月の春闘の相場は入っていないわけであります。昨年の三月の調査でありますから入りようがない。入っておるとすれば、それは一昨年の、三十三年の四月の春闘の相場が入っておるわけです。すなわち二年前の春闘の相場がこの四月に実行される、こういうことであります。建前もいろいろありましょうけれども、むちゃくちゃな給与政策だと思うのです。こういうものを担当大臣、非常な不合理をお感じにならないのかどうか伺いたいと思います。公務員が低いとかいう問題以上に、私は深刻な問題だと、こういうように思っておりますので、お考えを伺いたいと存じます。
  116. 益谷秀次

    ○国務大臣(益谷秀次君) 実施の時期につきましては、先ほど申しました通り私も遺憾だと思っております。本年の四月一日から実行するよりは、むしろさかのぼって実行すべきが建前だと思うと申し上げておるのであります。この点は人事院の総裁も、今回あらゆる委員会等に言われておるので、私直接聞いて承知いたしております。本年は人事院はどこを基準として勧告せられるか承知いたしませんが、私は今後この二月ですか、三月ですか、ようやく給与担当の大臣を引き受けたので、給与担当の責任者として、今後の人事院の勧告には、すなおにそれを尊重して参ろうということは、だいぶ申し上げておる通りであります。従来はあまりそうした給与のことよく承知しておらなかった。最近はおかげさまで幾らか勉強さしてもらったので人事院の勧告はすなおに実行いたしたいと思っております。
  117. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 若干前後いたしますけれども、今担当大臣がおっしゃいました、人事院の勧告をすなおに実施をしたい、さらにまた、新聞等の報道によりますというと、人事院の勧告は早期に実施したい、こういうふうに担当大臣お話しになっておられるようでありますが、これは今後の、これから出る勧告についてそういうお気持だろうと思います。そこで伺いたいのでありますが、人事院といたしましては、この八月に勧告を出すに違いないというふうに思っております。御承知通りにことしの春闘は千五百円から二千円という相場であります。またことしの春闘の一番大きな特色は、中小企業のところが大企業に伍して上がっておるという点が特色でありますので、どうしても勧告するに違いないというふうに思っておりますが、その勧告が出た場合に早期に実施するということは、臨時国会が開かれるならば、その場合に取り上げて実施をしたい、こういうようなお考えでありますか、伺いたいと思います。
  118. 益谷秀次

    ○国務大臣(益谷秀次君) 言い逃れではございませんが、その年の財源等もにらみ合せていかなければならぬと思います。私は人事院の勧告をすなおに、もう一度繰り返して申し上げます。すなわち人事院が四月から実施しろと言って参りますか、八月に実施しろということに勧告がありますか、従来の慣例ではなるべくすみやかにという言葉を使っておりますし、私もなるべくすみやかに実施いたしたいと思っております。
  119. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 今のすみやかにという問題につきましては、この内閣委員会におきましても十分質問をいたしましたし、理論的に言っても、また実際上の問題からいっても、人事院としては実施を調査いたしたその月からという見解を明かにいたしました。従って私どもとしては、今年の勧告は実施の時期を明かにするに違いない、こういうように確信をいたしております。すみやかにということで政府に対しても誤解を及ぼし、国会に対しても誤解を及ぼしておる。人事院の真意は四月一日だと、こういうことでありますから、今回の勧告においては四月一日実施という期日を明らかにするに違いないというふうに確信をいたしておりますが、その場合に、すなおに四月一日から実施をなさる、こういう決意だろうと思っておりますが、間違いありませんでしょうか。
  120. 益谷秀次

    ○国務大臣(益谷秀次君) 間違いございません。
  121. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 今御承知のように二公社五現業の仲裁裁定を実施しようという段階にあるわけでありますが、この中の約三十一万というのが国家公務員であります。この国家公務員に対しては、ことしの四月の春闘争相場が考えられておる。それ以外の国家公務員約六十二万であります。特別職が二十六万一般職が三十六万人事院の勧告はこの三十六万であります。合わせまして六十二万の国家公務員については二年前の春闘相場をこの四月に実行される。同じ国家公務員がこういうような非常に違った非常に断層のある給与政策というものを受けていいものかどうか、この点については心から残念に思っておるわけです。くどいようでありますが、再度この点について大臣の見解を承りたい。
  122. 益谷秀次

    ○国務大臣(益谷秀次君) たびたび申し上げます通り、私も残念に思っております。なるべくすみやかに較差をだんだん少なくし、また公務員で較差があるというようなことも好ましからぬことであります。ただ、三公社五現業は御承知通りに、民間の事業とやや類似いたしておりますから、幾らかの軽差があることは当然だろうと思いまするが、なるべくその軽差をなくするように努力すべきだと私は思っております。また、今後とも努力することを御約束申し上げます。
  123. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 非常に担当大臣が公務員の給与について努力をしたいという決意をたびたび承るわけですが、ただ、その場合に国務大臣が出されまする問題は、人事院の勧告を受けていくという建前になっておる。この問題をお出しになるわけです。従ってこの建前の問題について御質問申し上げたわけであります。この建前は確かに人事院の勧告を受けて立つということでありますけれども、過去において人事院の勧告を修正なさって政府は国会に法案を提出されたことはたびたびであります。最近で一番大きなのは三十二年に出されました給与法案、これは人事院勧告を大幅に修正をされて出されておるわけであります。従いまして、今政府は出しておりますけれども、先ほど来大臣がおっしゃいますように、明日の閣議において二公社五現業の問題が取り上げられ、その際にできるだけの努力をしたいというお話しでありますが、そういう勧告を修正をしてお出しになったこともあるわけでありますので、やろうと思えば私はできないことはない、担当大臣がおっしゃっておられる建前論というのは建前になり得ない、こういうふうに思っておるわけです。過去に人事院の勧告を修正されたことが、政府自身が修正されたことはたびたびありますから、従って今回大臣がその決意さえあれば人事院の勧告を修正をして出し得る、修正し得る、こういうふうに思うのでありますが、この点について伺いたいと思います。
  124. 益谷秀次

    ○国務大臣(益谷秀次君) 率直に、すなおに実行することは、おっしゃる通りであります。今後は率直に、すなおに実行するように努力したいということはたびたび申し上げておる次第でありまして、また今回五現業等のあっせん案、仲裁案と申しますか、これは尊重すべきが建前であります。尊重するといたしますと、同じ公務員でもそこに較差がまた出て参ります。これを是正するのには、やはり昨年の人事院の勧告をさらに検討して幾らかでも較差を少なくするのが、私の責任であろうと思っております。明日にもこの案が閣議にかかれば、私は主張すべきは主張したいと思っております。
  125. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 明日の閣議において御主張なさるという大臣のお考えは、四月二百から何らかの原資を国家公務員の給与に加える、そういう意思を表明されるというお考えでございますか。
  126. 益谷秀次

    ○国務大臣(益谷秀次君) 時期その他は今度のいろいろな調査に待たなければなりません。四月一日から幾ら増すかということはここで申し上げられません。大体閣議でどうかしようじゃないかということになりますれば、それぞれ調査の期間も要る。いつからどのくらい上げるということも決定せられなければならない、これはなかなか問題であります。これはこのままでは較差が多いから困る。一般職に対しての給与が低いから、この際較差を少なくするように考え直したらどうかということの提案をいたすつもりであります。それがきまりまして初めて何月何日からどれだけの額を上げるということになるので、これは専門家の調査等も要しますので、ここでいつからどれだけの額ということは申し上げられません。
  127. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 その点について専門家の調査が要るというお話しでございますが、先ほど来私申し上げておりますように、また担当大臣も御理解いただいておりますように、昨年の四月一日から実施すべきものである、それをこの四月一日から実施するといたしますから、一年ほどおくれておるわけであります。その点についてははなはだ遺憾だというふうに御答弁なさっておるわけでありますが、この差額を考えるということも、これは私はきわめて合理的な考え方じゃなかろうかと思っておる。昨年の四月一日からことしの四月一日までの差額を考えるということも、りっぱな理屈が成り立つであろうし、また専門家が主張をいたしておるところであります。四月一日から実施すべきだということを主張いたしております。なお、予算の問題が出て参ると思いますが、二公社五現業については予算の移流用、節約、これによってやりたいというふうに政府は考えておる。その点については冒頭にお尋ねをいたしたところであります。従いましてそういう措置をとられるならば、移流用なり、節約なり等の措置をおとりになるならば、昨年の四月一日から今年の四月一日の差額を考えるということもりっぱになり立ち得るのじゃないか、こういうふうに思っております。この点について大臣に伺いたい。
  128. 益谷秀次

    ○国務大臣(益谷秀次君) 私専門家の意見ということを申しましたが、経理上の関係の専門家の話も聞かなければなりません。また、財政担当の閣僚の意見も聞かなければなりません。ただ私の努力すべきところは、ただいまの御質問の通り昨年の三月末のデータですから、四月一日から給料を引き上げるのはこれは応当然なものの考え方でありますが、なかなか困難な事情です。すでに財政その他の関係で四月一日からでなければ給与の引き上げができないという閣議決定になっているのですから、ここに幾らか較差を少なくするということは、非常に困難な努力を要することだと思います。それがきまって、初めてしからば何月からどれだけの値上げをするかということがきまるので、最初から四月一日から人事院勧告通り実施しなければならないというふうなことじゃなかなか困難であります。幾らかでも望みのあるようなやり方をして参らなければならぬと思っておりますので、ただいまのような考え方を申し上げておる次第であります。
  129. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 今の大臣のお答えは、今度の人事院の勧告を待たないでそういうようなことを実施をしたいというお考えでございますか、伺います。
  130. 益谷秀次

    ○国務大臣(益谷秀次君) 昨年の勧告はなるべくすみやかにということでありますが、人事院の総裁も言われる通り四月一日からでなく、昨年の四月一日からと解釈するのが当然であろうと思うのです。従って現在較差があります。また十日の日の仲裁裁定によって現業と一般職の考え方はおのずから相違がありますが、較差はありまするので、この較差をなるべくちぢめて参らなければならない、少なくしていかなければならぬというので、今回の御審議を願っておる給与の引き上げ案でありますが、それにプラスのものを主張してみたいと思うのです。幾日になりますか、幾日から、どれだけの率になるかということは、一応原則がきまらなければ何とも申し上げることができません。原則をきめること自体が非常に困難だと存じております。
  131. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 今の大臣のお考えで、どうかあすの閣議におかれましてもできるだけの御努力をいただきますように要望を申し上げておきたいと思うのです。  次に、人事院に伺いたいわけでありますが、昨年の臨時国会、さらに今年の二月、三月にかけまして、三回ほどにわたりまして人事院の民間給与の調査のやり方について詳細にわたって検討をいたし、その結論に基づきまして要望を申し上げにおきました。この点については、人事院といたしましては慎重に検討いたしたいという答弁であったわけであります。その後承りますと、民間の給与実態調査にすでに入っておられるようであります。従いまして調査、要項、昨年のものからことし実施しておるもので、非常に変わった点がありましたら伺いたい。と思います。
  132. 滝本忠男

    政府委員(滝本忠男君) ただいまの御質問の点でございまするが、本年は去年に比べまして、次に申し述べまするような点におきまして去年の調査と変えております。その第一点のおもなるものは、まず調査時期でございます。従来三月分の給与締め切り期間である三月という時期を調査の対象にいたしておったのでございまするが、ことしはこれを四月分に切りかえた次第でございます。従いまして調査が一カ月ずれるという結果に相なるわけであります。  次に、とかくの問題を起こしたのはこの臨時職員が入っていないであろうかという問題であります。これも従来われわれの表現に多少のあいまいさがあった点はぬぐえないのでありますが、今年はこの点をはっきりいたしまして、臨時職員は含めない、のみならずこの点を非常にはっきりいたしまするために、四月分の給与計算期間を正常に勤務いたしました月給者のみを調べるということにいたした次第でございます。それから、従来事務関係職種といたしましては、総務、経理、資材、これが代表的なものであるわけでございまするが、この三つ、なお技術関係につきましては、機械、土木、建築、化学、こういうような、それぞれ代表的であると一応考えられるものを対象にいたしておったのでありまするが、今回は新たに企画、調査、営業業務、また技術関係につきましては、電気、冶金、原子力、電子工学、応用理学というように範囲を広げまして、この点も特に職種を限定しましたために、あるいは誤差が出てくるのではなかろうかという御心配があるわけでございまするが、その点に応ずるようにいたした次第でございます。ただいま申し上げました点が昨年の調査と比べまして改正をいたしましたるおもな点でございます。
  133. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 次に自衛官、それから防衛庁の参事官、この点について伺いたいのでありますが、参事官は一等、二等、三等と分かれております。一等というのは部局長、二等というのは課長、三等というのは課長補佐、係長、そういうものに該当するというように出ております。一般の国家公務員がこの参事官になりました場合に本俸はどのように計算をされるのか、この点を伺いたいと思います。
  134. 山本明

    説明員山本明君) ただいまの御質問にお答えいたします。参事官につきましては、お説の通りに、一等級、二等級、三等級という等級になっております。これは行政職、行一の俸給表の二等級、これは一等級に相当する、それから三等級が二等級に相当する、それから四等級ないし五等級が三等級に該当する、それぞれの該当いたします等級の俸給を基準にいたしまして、それに一三・八をかけまして、それだけプラスいたしまして計算いたしましたものをこの参事官等の俸給表の一等給、二等級、三等級のそれぞれの号俸に応じます俸給という格好に計上いたしております。
  135. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 行一の者が参事官になります場合は、今御説明のありましたように、その俸給表に百分の一三・八をかける、その理由は、超勤を本俸の中に入れる建前に防衛庁はなっておるので、超勤分としてこの百分の一三・八をかけるのだ、こういうふうになっておりますそうですね。そこで、この参事官について特別調整額は出ておりますですね、その特別調整額を承りたい。行一の場合におきましては、甲、乙、丙、丁と分かれておりまして、二五%、一八%、一二%、七%、それぞれ職務に応じて四段階に分けまして本俸にかけて特別調整額を出している、参事官の場合におきますところの特別調整額は、どういう率をおかけになっているのか伺いたいと思います。
  136. 山本明

    説明員山本明君) 参事官等の特別調整額につきましては、御質問の要点は、いわゆる管理職手当というものの率だろうと思いますが、これにつきましては一律に八%を計上いたしておるわけであります。
  137. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 今度は自衛官について承りたいのでありますが、自衛官の管理職に該当する者、あるいは監督の地位にある者に対しても、管理職手当、正式には特別調整額を出しております。その特別調整額は本俸にどれだけの率をおかけになっておられるか、これを承りたい。
  138. 山本明

    説明員山本明君) 自衛官の管理職手当につきましての割合につきましては、六%と二%と一%、この三段階に分けまして、それぞれの管理職に応じまして、管理職手当を支給しているというのが実情でございます。
  139. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 参事官については、特別調整額は本法に対して八%をかける、それから自衛官の管理職手当については一箱から六%のものをかける、こういう御説明であります。何がゆえに行政一般の者よりも低い管理職手当を出しておるのか、その点を伺いたいと思います。先ほど申し上げましたように、一般行政職の場合においては、二五%、一八%、一二%、七%という四段階に分かれております。
  140. 山本明

    説明員山本明君) まず参事官等の管理職手当の支給割合の八%につきまして、どのような考え方からこれを一般職におきまする二五%よりも低くしておるかという考え方でございますが、先ほど申しましたように、参事官等の俸給月額を算定いたします場合に、一三・八%相当分が本俸の中に計算をしてございますから、これを大体、これらの方々一般省庁の局長課長級に相当する立場にあるといたしますと、これが一般職におきましては二五%の支給を受けております。従って、ただいま申しますような算定の方式によりまして計算をしてみたわけであります。それは一般職におきます俸給と、それから暫定手当と、それに対しましてさらに管理職手当、それらのものを総合してもらいます分に相応するものを、参事官等につきましても、先ほど申しました一三・八%相当部分がプラスになったものを、本俸にそういうものが入っておりますから、それらのものと合わせましてどれだけの管理職当が当たれば大体均衡がとれるかという考え方から計算をいたしますと、今申しましたように、八%という数字が出て参りましたものでございますから、これによりまして計算をしておるわけでございます。同様に、自衛官につきましても、一三・八%相当分が含んでございますから、それらのものを、一応本俸の中に入っておりますから、均衡をとるという建前から、これらのものを含めた場合の一般職の管理職手当との均衡をとる計算をいたしますと、大体六%さらには二%、こういう格好で出て参りますから、それらの率を用いまして管理職手当の支給率とした、こういう格好であります。
  141. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 参事官について百分の八をかけているのは超勤分に相当する二二・八%というのが本俸の中に加わっているから、一般行政職よりも低い率をかけて、そして一般の公務員と均衡をとっていると、こういうことだろうと思うのです。それから自衛官については、参事官よりもさらに低い率をかけている、百分の一、百分の二、百分の六というですね、参事官よりもさらに低い率をかけているのは、自衛官の本俸が、普通でいう本俸、それに暫定手当が加わって、それに超過勤務手当の二十時間分が加わって本俸になっているからして、それに対して低い率をかけざるを得ない、公務員との均衡をとるために低い率をかけざるを得ない、こういう建前だろうと思います。間違いございませんですね。
  142. 山本明

    説明員山本明君) ただいまのような御趣旨でけっこうだと思います。
  143. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 そこで伺いたいのでありますが、自衛官と参事官の年末手当、夏季手当、これは本俸に、年末手当の場合は二・一カ月分をかけ夏季手当の分については、本俸に〇・九をかけていらっしゃいますかどうか。
  144. 山本明

    説明員山本明君) 俸給表に書いてございます俸給月額にそれぞれの率をかけてございます。
  145. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 そこで伺いたいのでありますが、管理職手当については、一般行政職の管理職手当よりも低い率をかけて、そうして一般公務員と自衛官、参事官との均衡をとっておられる。ところが、年末手当、夏季手当については、そういう考慮が払われていない。これは大きな片手落ちじゃないか。再度申し上げますが、管理職手当については低い率をかけている。そして公務員との均衡をとっておられる。ところが年末手当、夏季手当については公務員と同じ率をおかけになりますから、公務員との均衡は、完全にここで破れる。大へんな差が出てくる。これは片手落ちじゃないか、こういうふうに思いますが、その点について伺いたいと思います。
  146. 山本明

    説明員山本明君) 先ほど申しましたその本俸のお考え方の中に、防衛庁といたしましては一三・八を、まあ自衛官の場合を考えました場合に一三・八を加算しておりますのは、これはいわゆる超過勤務的な概念ではなくして、自衛官が勤務いたしますその勤務それ自体の中に、非常に、時間をもって表わせない勤務の態様がございますから、それを計算いたしまして修給を作ったわけでございます。同様に、参事官につきましても、これは百五、六十名の参事官につきましては、自衛官と一体的な運営をするという考え方から、俸給の算定方法を、まあ同一にしたわけであります。従って、本来ならば俸給月額に一定の率をかけまして、期末勤勉当、あるいは管理職手当等もきめるべきが筋合いだろうと思うのであります。ただ、管理職につきましては、全般的な問題ではなく特定な人だけの対象になって参ります問題もございますから、これはできるだけ一般職の管理職にある者との均衡をとってもらいたい、こういう考え方から計算したものでございまして、本来ならば俸給月額それ自体に一定の率をかけるというのが、われわれの考えとしては筋である、こういうふうに考えておりまして、一三・八が御質問のように超勤相当分だというふうに必ずしも断定できない問題があるのではないかと、われわれといたしましては俸給算定の一つの基準としてそういうものを用い、そうして管理職の場合におきましては特にそういう問題の考慮を管理職という立場から検討してみる、こういう格好で体系それ自体を作った、このように御了解願えればけっこうだと思うのです。
  147. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 私先ほど御説明がありましたときに、それは超勤相当分に相当するものかと、百分の十三・八というものは超勤額に相当するものかというふうに伺いましたら、そうだというお話し、それは昨年の臨時国会におきましてこの問題が取り上げられましたときにも、やはり超勤としては支給できないので、超勤分に相当するものとして本俸の中に入れてあるのだ、こういうお話しだった。御承知通り、管理職手当というのは本俸に対して率をかける。期末手当夏季手当も本俸に対して率をかける。ところが、特別職のこの管理職手当の場合については、一般職公務員との均衡を考えて、低い率をかけてある。自衛官同じ。にかかわらず年末手当だけについてその率を変えないというのは、これは公務員との均衡を大いに失するのじゃないか。片一方においては均衡をとっておられる。片一方においては均衡を大いに破っておられる。これは説明の理由つかないのじゃないかと思います。
  148. 山本明

    説明員山本明君) それはたとえば教育職を考えましても、やはり俸給それ自体の中に、水準差という考え方から、ある程度の一般職に対するプラス・アルフア分が入っておって、それだけに、やはり管理職の面におきましては、必ずしも一般職と同じ率で管理職手当を支給するという考え方はとっておらないのじゃないかと思います。そういう考え方というものを、やはりこの自衛官の場合におきましても、防衛庁の職員につきましても、勤務の態様の中からいわゆる水準差といいますか、格差といいますか、そういうものを求める場合の一つの根拠としてそういう数字が出てきた。これはこの間の国会におきましても、この委員会におきましても、大蔵省の主計局長からお答えしたと思いますが、そういう過去の実績の中から一三・八というものがかかって参っておるのでありまして、われわれといたしましては、そういうものがイクオール超過勤務手当だという考え方は毛頭持っておらないということは、先般のこの委員会でもお答えした通りでございます。そういう考え方から当方の費用につきましても、教育職というようなそういう例もございますように、特殊な勤務態様の中から給与制度を考えたというふうに御了解願えればけっこうだと思います。
  149. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 これはどう抗弁、弁解をなさいましても、管理職手当の場合については、一般公務員との均衡を考えて率を低めてある。自衛官については、さらに一そう率を低めて、一般職公務員の管理職手当との均衡をはかってある。しかし年末手当、夏季手当についてその均衡をおはかりにならないでおられるということ、これは何と言っても片手落ちだと思うのです。是正されるお考えはありませんですか。私はもしこういう考え方で進められるなら、一般職の公務員についても同じような措置をとつていただきたいと思う。大蔵省に、あるいは給与担当大臣に要望いたしたいと思っております。自衛官については御承知通り一般にいう本俸プラス暫定手当プラス二十時間の超勤分、これが本俸になりまして、それに率をかけている。一般行政職の場合は、本俸だけに率をかけて出てくるのです。ぜひそういう面についての是正をお考えいただきたい、これでは答弁にならないですよ、幾らおっしゃっても。検討願います。
  150. 山本明

    説明員山本明君) 私の方の考え方としては、そう均衡といいますか、均衡をとっておらないとか、とれないというお考えが私にはわからないのでありまして、たとえばここに国立大学の学長の管理職を見ますと、これが乙になっております。で、普通ならば、考えられるところは大体本省の局長課長級でございますなら甲でございますから、これが甲だという考え方が出てくるのですけれども、これが乙になっておりますし、それぞれまあ程度の差はございますが、一般職の管理職手当に相当しますものを考えるときに、ある程度下がっておるというような実態の中から考えますと、やはり給与というものの中にそういう格差が、本法の中に格差があるから、その格差というものは期末手当、勤勉手当ではあるいは取っておらないかもしれませんけれども、管理職手当では取っておるという考え方は、私は防衛庁の職員につきましてとりましても、その妥当を欠いておるというようなおしかりを受けることはないのではないだろうか、このように考えておるのでございますけれども……。
  151. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 だから管理職手当についての格差があるとか何とか、それはいいのですよ、その場合は認めます。認めますけれども、管理職手当については一般との均衡をはかり、年末手当については均衡をはかれない、それがおかしくないのだというお話は私は通用しないのじゃないか、おかしいですよ。そういうことおわかりにならないのですか。管理職手当について均衡をはかる、年末手当についても均衡をはかるというようにおとりになるのが建前じゃないですか。
  152. 山本明

    説明員山本明君) それは本俸それ自体に一定の率をかけるべきでありますけれども、水準差のある教員の俸給表なんかにつきましては、一定の格差がある、その本俸の格差に応じた管理職手当を考えておりますから、私どもの方におきましては、そういう格差を考えていいのじゃないか、その場合の基準は何によりますかといいますと、でたらめな支給の率を考えるわけにはいきませんから、その場合には管理職という立場から、均衡をとった管理職手当の率を考えたということでありまして、まあ私の方はそういう考え方で、これの支給率を検討し、決定したというふうな考え方でございます。
  153. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 だから管理職手当については私は認めているのですよ。そういう賢明な措置をとられたことについては承知いたしておるのですが、特別手当や年末手当についてそういうことをお考えにならなかったというのは、おかしいのじゃないかと言うのです。
  154. 山本明

    説明員山本明君) それは私の方は逆でございまして、本俸、俸給月額を基礎にして、それぞれ期末、勤勉手当の率なり何なりを計算するのが建前であって、たまたまその中の一部分だけについて、ほかの水準差のある給与においてもそういう取り扱いをしておるから、われわれの方におきましてもそういう取り扱いをしようという考え方になってきたのでありまして、お考えは逆ではないだろうかと私は思うのでございます。
  155. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 とんでもない。どうしてそういうおかしな論議を展開されるのですか、特別手当は本俸にかけるものでしょう。本俸にかけておられる、それはうんと率の低いものをかけておられる。年末手当は本俸にかけるものです。だからうんと低い率をかけたらどうですかと言っているのですが、公務員との均衡をとる建前から、これはぜひ一つ大蔵省の方でも御検討をいただきたいと思います。再度この問題については、あらためて御質問いたしたいと思います。私としては、そういうような政策をとられるなら、当然公務員についても同じような趣旨のものをとられてしかるべきじゃないかというふうに希望を申し上げておきます。終わります。
  156. 中野文門

    委員長中野文門君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  157. 中野文門

    委員長中野文門君) 速記を起こして。
  158. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 実は先ほどから防衛庁関係給与について鶴園委員からだいぶやられましたが、私は実はもう少し基本的な問題で、防衛庁職員に関する給与の立て方について実は聞きたかったのですが、きょうの顔ぶれを見ると、政務次官は見えておられるのですね、しかし政務次官はあまり給与には詳しくないやに見ております。大蔵省の政務次官は見えておりますね、大蔵省の政務次官もあまり給与については詳しくないように聞いておりますので、従って、もし、はなはだ失礼な言い方でございますが、詳しく答弁ができなければ次に回しますが、基本的にちょっと一つ問題だけ提議する意味において質問しておきます。先ほどからも防衛庁の関係でいろいろ山本調査官でございますか、お答え願っておるのですが、この防衛庁職員給与の立て方、それから一般職職員給与の均衡の問題、これから見まして相当問題があるのです。この防衛庁の職員給与が立案された当初の考え方、それを一ぺん聞いておかなければ、現在あるやつを論議したってなかなか今のように管理職の問題は甲論乙駁でなかなか解決しないと思うのですが、この防衛庁の職員給与が立てられたときの事情があると思うのですが、本俸に対して超過勤務手当の方に入れておるとか、その他先ほど超過勤務の問題でも自衛官としての態様自体に問題があるのだというふうに言われたのですが、一体自衛官は、昔の陸海軍軍人としての考え方でおるのかどうか、それとも、いわゆる新憲法における公務員の一翼であるという考え方で給与を立てられておるのか、こういう問題について私は聞きたいのですが、もしそれが高度な政治性のある問題であるので、政府委員で答えられなければ次に譲ってもよろしいが、政務次官として答弁ができたら一つお聞かせ願いたいと、かように思います。
  159. 小幡治和

    政府委員(小幡治和君) 自衛官の給与のそもそもの根源につきましては、実を言いますと警察予備隊のときからのずっと継続してきた問題でありまして、警察予備隊のときには、まあ警察の予備隊ですから、警察官の俸給給与の態様というものを基準にいたしまして、そして警察予備隊の給与体系というものを計算して出してきたわけなのでございます。その警察予備隊が保安隊となり、そして自衛隊になってきたわけですから、大体その考え方を踏襲して今日給与体系というものはでき上がってきておるというふうにお考えになってよかろうと思います。
  160. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 ところが、実は警察予備隊から保安隊、それから自衛隊に変わった経緯から給与の改正の変革を見ると著しく変わっておる。自衛隊になってから非常に一般職給与とはかけ離れた体系が出てきておる。従ってこれは相当、今言われた警察予備隊のときには警察官に準じたような俸給表が出ておったと思うが、今日相当変わっておるのです、その変わった考え方ですね、その点について少し聞きたいと思いますがどうですか。
  161. 小幡治和

    政府委員(小幡治和君) 今変わっておるというお話でございましたけれども、変わっておりません。大体警察予備隊のときの体系というものを踏襲して今日まできております。むしろ、国家公務員のいろいろな状況に照らして歩調を合わせてきておるというふうなことで、本質的にはそう非常に変わっておるというふうなことはないと思っております。
  162. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それで具体的に申しまして、自衛隊になってから給料表が相当複雑になっておるのです。額にいたしましても、非常にこの一般職と本俸においても非常に格差があります。従って、例をとってみますると、まず具体的に聞きますけれども一般職の場合の大学を出た場合に、そしてこの初任給の基準をきめておる場合、自衛官の場合には、一体大学を出てたとえばこれはおそらく三尉か、陸尉ですかあるいは海尉、こういうところに相当するものだと思うのですが、そういう基準はどこにおいて作られておるのかどうか。警察予備隊のときはどうであったか、この点説明願ったら、これがはっきりすると思うのです。
  163. 山本明

    説明員山本明君) ただいまも政務次官からお話がございましたが、防衛庁の職員給与表につきましては、警察予備隊以来基本的な考え方につきましては、算定方法その他につきましては、これは変わっておらないのでございます。そして大体現在の階級の初号を、これに相当いたします警察の公安(一)ないし(二)の俸給表のそれぞれの該当しますところの俸給を基準にいたしまして、算定の方法につきましては、これは自衛官の異動が非常にひんぱんに行なわれるということから、暫定手当を平均いたしましてこれに加えたり、それから先ほどございました一三・八相当分をこれに加える。さらに営内曹士の階級におきましては、営内で居住をいたしますから、その私的生活に伴います経費の分は控除するというような方法をとって参ったのであります。ただ、三十四年までは、実は日額制をもちまして表示し、かつその際に恩給納金をあらかじめ控除してございます。これは本人に渡して、本人から恩給納金を取るという事務の煩瑣を避ける意味もございましてこれを控除してございましたが、三十四年度の給与改訂の際におきましては、この日額を月額にし、それから共済組合制度の発足を想定いたしまして恩給分も控除しないという方法で計算をして参りましたのでございまして、特にその限りにおきまして、特定な階級のところだけを特に引き上げるというような方法はいたしておらないわけでございます。
  164. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 私の質問したのは、そうじゃないのです。具体的に説明したらわかるのですが、三等陸尉の階級において、これは一般職に比較するとどういうとり方をされたか。具体的に申しますと、一般職の大学を卒業して入った場合に初任給は一万一千円くらいだと思うのです。その場合に、自衛隊の場合は現在で一万六千三百二十円になっておる、表において。五千幾らもどういうことによって自衛隊の態容によってつけられたのか、その考え方を聞いておるのです。
  165. 山本明

    説明員山本明君) 御質問の三尉のところの資料を御説明申し上げますと、まず大学を出まして直ちにこれは三尉になるのではなくして、大学を出まして採用いたしました場合におきましては、三尉の初号の俸給をとるのではなくして、現行法の一万一千四百五十円、二曹一号相当の俸給を支給をするという格好にいたしております。そうしてそれから幹部学校に行きまして訓練を受けましたあとに三尉として、先ほど御質問のございました金額を支給するという格好にいたしております。
  166. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 幹部学校は何年を経ますか。
  167. 山本明

    説明員山本明君) 一年でございます。
  168. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 一年間幹部学校に行って、訓練を受けてそうして三尉になって俸給を出すということですか。その点もう一ぺん確認しておきます。
  169. 山本明

    説明員山本明君) その通りでございます。
  170. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 そうすると、一般職の場合、大学を出て一年して一号上がって、いわゆる二万二千四百円、新しい表によってそうなるんです。陸尉の自衛官の場合には五千円以上も一ぺんに上がって、初任給はそうなるということについての考え方、私は数字だけを言っているのじゃない。そういう一つの考え方はどこからきているかということを聞いてみたい。
  171. 山本明

    説明員山本明君) 自衛官の場合におきましては、この対応いたしますものは警察官の公安(一)の五の一に該当するのを比較していただきますればおわかりになると思うのであります。自衛官の方は、先ほど申しましたように、俸給月額は暫定手当あるいは一三・八相当分等を引っくるめまして、これが現在は一万一千六百円ですか、こういう金額が出て参っていると思います。おわかりになりますね。公安職の方は、それに対しまして俸給月額に暫定手当をプラスし、さらに超過勤務手当がプラスされて参りましてこれとの比較をするという格好になって参りますと、私のところで、一応暫定手当が三級地といたしまして、そうして超過勤務が大体これは予算に計上されております程度の金額で、月十二時間というような考え方で計算をして参りますと、むしろ初任給におきましては、私の方で計算をいたしましたところによりますと、警察官におきましては一万四千まず九百円程度の金額になり、自衛官のいわゆる幹部候補生が一万一千六百円程度になって参るわけであります。それが一年たちますと、三尉の一号になりまして、これが上がるわけでございます。その場合におきまして、この警察との比較をいたしてみますと、大体千五百円ほどの差しか出て参りません。五千円というのは、俸給ずらだけの比較だろうと思いますけれども、そういう自衛官の俸給の建前からいきました要素を足して計算をいたしますと、大体今申しました千五百円程度の差しか出てこないわけであります。この場合に三尉の一号といいますものは、大体小隊長としての資格をもちまして、多くて百五、六十人、少なくて五十人以上の長として仕事をするという考え方、公安(一)の方におきまして、一年たちました場合の見習いとしてそれぞれの官署におります場合の態様を考えますと、私の方といたしましては、必ずしも五十人なり、多くて百五十人ぐらいの長になります小隊長としての三尉の初号は、あながち高過ぎる、過ぎるというほどまでは言えないのじゃなかろうか、このように私どもとして考えておる次第でございます。
  172. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 いろいろと言われますが、それはただ事務的にそういう公安職の表からこちらの方に比較したと言われますけれども、実際の政府給与の立て方が、管理職に相当するんだと、尉官は二百人ほど使っておるから、やはりそういう公安職の四等級に相当するんだと、こういうことを説明されておると思いますが、私の質問しておるのは、すらっと考えて、大学を出て一年したら、一般の公務員はこれしか給与にならない。ところが自衛官の場合には、兵と申しますか何と申しますか、そういう人を二百人も指揮しておるから、それでこれだけのものになるという説明に聞き取れるのですが、その点はっきりしておいてもらいたい。
  173. 山本明

    説明員山本明君) 給与の立て方といたしまして、われわれは三尉の初号というものを、今申しました公安(一)の一定の年限、一年ですね、一年たちましたところを基にしまして、暫定手当とか、そういうものを計算した最終的な結果として一万七千七百円という結果が出てきた。そこでこれを公安職の方と比較しますと、若干の差はありますけれども、これは逆に言いますと、そういう実態から高過ぎるという意見は出てこないのじゃないかということでございます。計算をした結果そういう格好になってくるということでございます。
  174. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 私は公安職と比較をして出したとかいうことを今聞こうとしておらない。鶴園君も先ほど言われましたが、基本的な問題について聞きたいと思っておるのですよ。先ほど聞いておりますと、公共職の問題じゃなくして、私の例を出したのは、人間として大学を出て、それから公務員になる、その場合には、先ほど例をとった一般職の場合は、一万一千幾らしか入らない。これは御存じの通り。一年間幹部の学校に行くから、その一年を学校でどういう仕事をされるか、これは大体想像はつきますけれども、学校にやらしていただいて、出てきたら一万七千なんぼになるという、そうなった場合に、その人の生活がそれほど変わってくるか、一般職の場合と自衛官の場合と、それだけ出さなければ生活ができないのかという、そういう給与の立て方について、どうなっておるのかお聞きしたい。わからなければあなたから答えてもらう必要はない、政務次官がおるから。
  175. 小幡治和

    政府委員(小幡治和君) 先ほど申し上げましたように、要するに一番初めの基準というものは、警察官との対比において、警察予備隊のときに一応の基準の俸給の立て方というものを作ったわけなんです。そういうわけですから、一般の大学を出た人と給与の立て方が少し違う。すなわち少し高いと、要するに警察官から基準を持ってきたのですから、少し高いということは、まず大前提において高いと思うのです。それからもう一つは、大学を出てすぐじゃないので、今言ったように、一年間の幹部候補生学校をやりまして、それからですから、やはり一年間分というものは高くなる。これは当然なんで、これが第二の問題。第三の問題としては、先ほどいろいろと御説明申し上げましたように、いわゆる超過勤務手当の問題とか、あるいは暫定手当とか、そういうものを自衛隊の給与にはぶつ込んで俸給としておるということですから、そういうものが加わってまた高くなるということ、この三つの要素で、普通大学を出た人が一般官庁に勤めるよりも高くなっておると、三尉の俸給が高くなっておるということは、そういう計算から出てくるわけなんです。ですから、生活云々の問題じゃなくて、俸給の立て方からそういうふうに計算されて出てくるということなんであります。
  176. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それでは僕の質問から当然はずれていると思うのです。実際問題として私が聞こうとしていることは、もう少し大きい面から言っているのですが、警察予備隊においてそういう考え方を出されたということについては、前のことだからあなたの言うことに一応耳をかしましょう。しかしそれにいたしましても、そういう給与の立て方を考えたところに、基本的なものがあると思う。たとえば警察予備隊としては、そういうのをやらなくてはならないそういう特異性といいますか、考え方について私は納得できない。大体日本の場合には、給与の立て方については、きわめて考え方がまちまちなんです。あとでちょっと特別職についても質問したいと思っているのですが、給与というものをどういう考え方でいるかということが、われわれにわからない。それが今度の一般職給与の問題でもいろいろと論議されている。たとえば本俸については、一般公務員と同じにしましても、自衛官に対しては、自衛官の特殊な職務として出し得る給与というものは、他にも出しておられる、たくさんあるのです。あとで一応日を改めて質問いたしますけれども、特殊な手当がたくさんある。営外生活をしている人については、特殊な手当をたくさん出されている。しかも職員としてまた別にもっているというような態様もそこにあるのです。こまかくなるから尋ねませんけれども、本俸から非常に開いて出されるというところに、それほど優遇しなければならないという考え方というものがあるのじゃないか、そういう角度で立てられた経過の問題を尋ねておらない、やはり優遇していることは間違いないのです。優遇でないと言えるかどうか、優遇しているということはわかる、優遇しなければならない自衛隊であるから、優遇しなければならないという、その思想の出たところを、一つはっきりしてもらいたい。これを私は追及している。
  177. 山本幸雄

    政府委員山本幸雄君) 給与は生活給とか、職務能率給、職務給という考え方もあるのですが、戦後は非常に生活給的な要素が強かった、しかしだんだん事務の内容の複雑化に応じた給与にならなければならないということは当然だと思います。そこでまず、できましたときの経緯というものはいろいろあるわけですが、第一の問題としては、先ほども説明がありましたように、警察官の給与と均衡をとる、警察の職務内容というものは、これはいろいろありましょうが、いわゆるデスク・ワークをしている者とやや考え方が違うという観点もあって、そもそも警察官の給与というものと、一般職給与というものが若干開いている。そこで警察と自衛隊というものとの職務内容は、どういうことであるかということに相なるかと思いますが、発足当時からの名前が示しますように、警察予備隊で、警察と非常に職務内容が似ているという観点から、警察の基準号俸というものを土台にして、自衛官の給与を作って参る、こういう考え方が一つあったわけです。それにさらに自衛官の勤務上のいろいろ態様が、警察とやや違う点がありますので、それらの点を加味してさらに自衛官独特の給与体系というものを作り上げる。そこでどういうような内容があるかというと、これはいろいろ考えようはあるかと思いますが、自衛官と一般公務員との勤務態様の相違というものがあるわけなんです。これはまあ、自衛官はやはり非常に体力を消耗するということがある、部隊指揮に当たりましては、幹部といえども率先してやらなければならぬ。その限度は、デスク・ワークに比べてはやや違うという観点、さらにその危険という問題がある。たとえば服務、編制につきましても、事に臨んでは危険を顧みず、身をもって責務の完遂をはからなければならない、あるいはまたその職責から、当然に常時勤務態勢というものをしいていなければならない、あるいはまた、居住制限で営内に居住しなければならないという居住制限というような勤務条件、いろいろその他もあると思いますけれども、そういったようないろいろ自衛官特有の勤務態様というものを考えまして先ほどからいろいろお話が出ましたような、いろいろのものを給与号俸につけ加えてみたりあるいは引いてみたりということをいたして、一応われわれとしましては自衛官の勤務内容に合うような給与体系を作ってきた、そこが根本的な考え方の発足点であると考えております。
  178. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 今言われた例はことごとくに当たらない。体力消耗といわれても、一般職の場合で、ことに現業関係で比較すると、なるほど自衛官、私、自衛官をいじめてどうこうという意味で言うのではないのですよ。演習のときには、まあ昔と違う、あれほどではないのですが、相当えらい仕事といいますかあるいは生産に従事しないのですから仕事とは言えないけれども、労働が非常にきついと思うのです。しかし実際私も、友人に自衛官がおるのです。休みに帰ってくるのです。それはもうえらいえらいとあなた言われるけれども、いわゆるこういうことをここで言うとどうか知らんが、戦争というような前提がなければ、今の自衛官というのは、こういったら悪いけれども一般職ほど責任はないし、仕事はきわめて楽です。事実はそうです。しかし、そういう一つの大きいと考えているかどうか知りませんが、危険があるという前提になればそれは別に考えられる。私はそう思う。これは皆さん方おそらく与党の皆さん方も、実際に見ておられる。増子さんはおそらく専門家だから十分御存じたと思いますが、しかし、実際私が言うのは、今の自衛官の待遇はこれでいいとかよすぎる、そういうことを言っておらない、立て方自体に問題があるから、一般職との間に問題が起こってくるのです。それを私追及したいので基本的に聞いた。しかしこれ以上どう続けても、そういうことでおそらくきょうは追及しても責任者がおられないのだから、人事局長が言われたことについて反駁しても私はどうかと思いますが、ときを改めたいと思うのです。今言われた危険手当も航空関係では手当はちゃんと出ておる。本俸からそれだけ上げなくちゃならぬというが、警察、現在警察官から比較すると非常にいいのですよ。警察官、悪いのです。今の警察官は相当私は問題があると思うのです。悪いとは言いませんけれども一般職から言うと若干いいかしりませんが、相当警察官の問題はあると思う。そういうことから見ると、防衛庁の給与は従来長い間の経過できておるから、皆さん方気がついておられないかもしれませんが、われわれから見ると相当問題のある点がたくさんある。たとえば営外手当というものもありますがね、営外手当というのは、これは一般のいわゆる公務員は全部営外から通っておる、外から通ったがために手当をつけなくちゃならぬという、金額とか内容は別として、理念からしてもわれわれちょっと考えられない。しかしこれもこの自衛官の特殊性というところから出されてくれば、これは説明がつくと思うのです。こういう点でわれわれも問題はたくさんありますけれども、この点については相当問題をたくさん持っておりますので、いずれ防衛庁関係の問題が出るときに大臣が見えると思いますし、そういう点を一つ、また大蔵省からも主計局長が見えられたときに、この点国の給与の均衡と申しましょうか、そういう点を一つ追及したいと思います。なお私の言うたことについて不満があれば、あとで説明してもらってけっこうであります。  それからもう一つ大蔵政務次官にちょっとこの機会に聞いておきたいと思うのですが、実は特別職給与の問題でございます。これにつきましては、まだ十分検討しておりませんが、特別職としての一つ総理大臣の給与が今十五万円、これは私の口から言って、どうか知りませんが、一国の首相が十五万円で、私これは間違っておると思う。これも私は給与の当て方が混乱しておると思う。昔の憲法からいくと、今の総理大臣は天皇の大権まで背負って大きい責任のある仕事をされておる。アメリカの大統領とかあるいはイギリスの首相なんかの今の給与から見たらこれは問題にならぬ。そういう給与で一体その職務がやれるかどうか。給与というものは、総理大臣、岸さんの個人の生活だけ、あの人が私邸におるときだけの生活費に考えておるのか、一般職の場合はそうでない場合がたくさんある。一般職の場合の給与となるとそうでない。それで、特別職の場合にはどういう考え方で特別職給与というものを出されておるかということを、大蔵当局に一ぺん聞いておきたいんです。給与の立て方の理念としてちょっと聞いておきたい。
  179. 前田佳都男

    政府委員前田佳都男君) お答えいたします。ただいま山本委員の御指摘の総理大臣の重責に即応するためには、はたして十五万の給与で妥当であるかどうかというふうな御指摘でございますが、ちょっと私たちもこの特別職給与法をずっと一覧いたしまして、現在のこれらの特別職の持っておる責任並びに職務の重要性等から考えまして、はたしてこれが妥当であるかどうかというふうに、これは私深く研究いたしておりませんけれども、そういうふうに直感をいたします。これらの点については職務の態様と責任というものに応じて少し検討すべきじゃないかと私は考えております。具体的にこれは妥当であるかどうかというふうなことは、特に研究しておりませんので、申し上げかねます。
  180. 山本幸雄

    政府委員山本幸雄君) 先ほど実は給与の立て方のお話がございましたが、その中で営外手当のことがちょっと出ましたが、これは名前は手当でございますけれども、ただいまの立て方では、曹士は本来営内居住の建前でおる。そこで曹士の俸給表の中には、営内居住に伴うところのいろいろな食費とか光熱費とかいうものが差し引いてあるわけです。二千五百八十五円というものを差し引いておる。それが今度曹士が営外居住を許されたときには、外へ出たときにはそれをもらうということだけであるから、これは手当でも何でもない、俸給に当たるべきものなんで、そういう点を申し上げておきます。
  181. 中野文門

    委員長中野文門君) 他に御発言もなければ、三案に対する質疑は、本日はこの程度にとどめます。  本日はこれをもって散会いたします。    午後四時二十八分散会