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1960-04-07 第34回国会 参議院 内閣委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年四月七日(木曜日)    午前十時四十七分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     中野 文門君    理事            増原 恵吉君            伊藤 顕道君            横川 正市君    委員            伊能繁次郎君            大谷 瑩潤君            木村篤太郎君            小柳 牧衞君            下條 康麿君            下村  定君            一松 定吉君            松村 秀逸君            鶴園 哲夫君            松本治一郎君            山本伊三郎君            辻  政信君   国務大臣    農 林 大 臣 福田 赳夫君    国 務 大 臣 中曽根康弘君   政府委員    総理府総務長官 福田 篤泰君    総理府総務副長    官       佐藤 朝生君    科学技術政務次    官       横山 フク君    科学技術庁長官    官房長     原田  久君    科学技術庁計画    局長      久田 太郎君    科学技術庁振興    局長      鈴江 康平君    農林政務次官  小枝 一雄君    農林大臣官房長 斎藤  誠君   事務局側    常任委員会専門    員       杉田正三郎君   説明員    農林省農地局参    事官      正井 保之君    農林省農林水産    技術会議事務局    研究調整官   河原  清君    林野庁林政部林    政課長     丸山 文雄君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○科学技術庁設置法の一部を改正する  法律案内閣提出衆議院送付) ○総理府設置法の一部を改正する法律  案(内閣提出衆議院送付) ○農林省設置法の一部を改正する法律  案(内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 中野文門

    委員長中野文門君) これより内閣委員会を開会いたします。  科学技術庁設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  前回に続いて質疑を行ないます。政府側出席方々は、中曽根科学技術庁長官原田科学技術庁長官官房長、以上の方々であります。質疑のおありの方は、順次御発言願います。
  3. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 科学技術振興に関連して長官前回に引き続いて一、二お伺いしたいと思います。三十五年度の例の科学技術会議答申を見ますと、その一節に、科学技術における落伍者は、世界における落伍者の運命を甘受しなければならない、そういう意味答申がなされております。それはまことにその通りだと思います。重要なことだと思いますが、これに対しては、長官はこれをどのように受けとめ、どのように決意なさっておるか、その点を明確にお答え願いたいと思います。
  4. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 最近の、特に第二次世界大戦後のアメリカソ連の急速な発達を見ますと、やはり科学技術というもの、技術革新というものが中軸になって大いに推進されておるように思います。イギリスとかフランスとかその他の国々を見ましても、そのドミニオンの力とか、あるいはサハラの力とか、そういうものを総合しますと、必ずしもアメリカソ連に劣るものではないと思いますが、それがああいうふうに引き離されておる根本は、やはり科学技術というものを重点的に取り上げたか取り上げないかということによってきまっておるように思います。日本国内情勢を見ましても、仲びた会社伸びない会社を見ておりますというと、技術革新を最初にやった会社はみな伸びております。そういう観点からいたしましても、国としてその態勢におくれないような諸般政策を講ずることは緊急の課題のように思います。そういう意味科学技術会議におきまして十カ年計画を作りまして、人材養成、あるいは研究充実、あるいは官民の共同体制の確立、あるいは民間に対する啓蒙、普及の徹底等につきまして、いろいろ計画をめぐらし、来年度以降それをさらに推進するつもりでおります。
  5. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 また、答申一節にこういう意味のことがあるのですが、科学技術調査団を欧州に派遣して総合的な調査をせしめた結果、抜本的な検討を要するものが相当ある。特に緊急に政策を立つべき重要課題が相当ある、こういう意味答申がなされておるのです。そこで、これを受けとめた科学技術庁として、今後緊急に実施すべき具体的方策というのは、一体どのようなものか、そういう点を簡単に……。
  6. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 答申の内容は大体四つの点にわたりまして、第一は基礎科学技術振興、第二番目は人材養成、第三番目が民間研究促進、第四番目が特別指定研究推進、こういうことになっております。それで今年度予算におきましても、基礎的科学技術振興という面におきましては、大学教官研究費を十億ほどふやしたり、あるいはいわゆる科学研究費というのが各大学教授や、研究者間に配られるのでありますが、これを約三億円ばかりふやしましたり、それから一部の大学では新しい講座を相当作りまして原子力工学等々の面を強化いたしましたり、それから大学院に対する手当やあるいは奨学資金というものも若干上げたりいたしまして、それから理化学研究所国立研究所充実ということも考えまして、理化学研究所の移転による大拡張あるいは名古屋の工業技術院試験所放射線関係高分子科学のセンターを作ろうと思いまして、そういう意味からそこに開放研究室を作りまして、民間会社や何かもあそこへ部屋を持っていって研究できるようにして、あの辺を放射線科学中心にするように今年から着手いたしました。こういうようなことごとで基礎科学技術研究促進するということを中心としまして、第二番目に人材養成の点では、三カ年に八千人を増員するという計画推進いたしまして、今年は最終年次に当たっております。その計画を完遂するということを予算上実施をいたしまして、それから第三番目に、民間研究促進は大体税制の面でめんどうを見よう。今年は法律改正はやらないということでありましたが、行政上できることは最大限やつてもらおうということで、政令等改正を行ないまして、まず第一に研究等に対する寄付金免税。それから第二に、研究等施設機械に対する減価償却の特例。それから第三番目に科学技術上の発明等にかかる賞金の免税。第四番目に各会社研究所等共同研究組合を起こして共同研究所を作る場合の諸般免税措置等政令改正等でやってもらうことにいたしました。  次に、最後特別指定研究という面におきましては、アメリカにおいても、イギリスにおいても、フランスにおいても、最近は研究というものが、個人のアイデアだけではとてもやれない情勢になりまして、国が中心になって産学共同と申しますか、産業も学界も一体となってあらゆる力を統合しながら、しかもかなり資金を投入してやるということになりましたので、各国とも特に重要な研究項目を設けて推進をしておるのであります。そういうものとして、日本におきましても、ガン、それから台風防災科学、あるいは宇宙開発、あるいは核融合、あるいは海洋あるいは基礎電子工学この六つを区別して特別指定研究に指定いたしましてこの面を充実させるようにいたしております。このために現在の研究というものは年度の過程に新しいものがどんどん、どんどん出て参ります。従って、予算措置しただけではとても足りない要素も出て参りまして、年度の途中で補強したり、あるいは新しくこれを補佐するという仕事も出て参りましたので、特別指定研究についての調整費というものを一億円ほどもらいまして、これは科学技術会議の決定によりまして調整費を重点的に使う、こういうこともいたしました。大体以上でございます。
  7. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 また、答申一節を見ますと、国立大学教官研究費をすみやかに戦前水準に戻すべきである。そのために五つほどの項目をあげているようです。これを見ますと、まず、教官研究費それ自体の増額を考慮するというようなこと、それからまた、科学研究費増加をはかるということ、それから教育及び研究施設設備近代化、こういうようなことがある。それと四項には、教育研究要員充足をはかること、それから私立大学についても同様な施設を作るとか、研究費増加、こういうふうに分けて大体五項目ほどあげられているわけです。このそれぞれについて科学技術庁としてはどのように考えられ、すでに実施した面もありましょうけれども上そういうものを含めて今後の具体的な考え方について、それぞれについてお伺いしたいと思います。
  8. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) まず、大学教官研究費でございますが、戦前平均単価は大体四百万円くらい一校いっておったのであります。それが戦後は百万程度に落ちまして、これを四百万程度に回復するために、昨年ごろからかなり力を入れまして、昨年も十億ばかりふやしまして、今年もまた十億ばかりふやしました。大体これで戦前の二分の一から三分の二程度のところまで回復したと思います。しかし、まだ戦前までいっておりません。これはやはり的確に増額いたしまして戦前水準まで引き上げたいと思います。  それから科学研究費は、先ほど申し上げましたように、約三億六千万円増額いたしました。これは十五、六億の中の三億六千万円でございますから、かなり潤ってくるだろうと思います。それから施設設備は、これは講座増設、新しい学科の増設をしたい。新しく、一部の老朽しているものや、あるいは新しく施設しなければならぬという新しい学問等につきまして、若干の大学におきまして施設の更新を行ないまして、東京大学等でも一部行なっております。たとえば、今まで火薬というのがありましたが、今度は燃料工学というふうにいたしまして、この面の強化をいたしております。それから研究要員充足は、これはかなり努力をいたしましたが、残念ながら、これはまだ十分とは申しません。そこで、やはり大学教授研究するにいたしましても、助手とか、準備をする人間がどうして、も必要なんです。大学教授自分で道具まで作ったり、準備するというのではとても時間をロスいたします。それをわれわれも大いに強調いたしましたが、残念でございましたけれども、まだ十分要員充足するというところまで参りません。これは今後の大きな課題として努力いたしたいと思います。
  9. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 なお、答申一節に、科学技術者養成と処遇の改善ということについて強調しているようです。そこで、科学技術庁としては、この養成計画はどのように決定なさっているか、具体的に要点だけを伺いたい。
  10. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 一番の問題は、理科系学生が不足しているということでございますので、先ほど申し上げましたように、三年で八千人を増員するという三年計画というものを立てまして、今それを推進中で、今年が最終年度に当たりまして、それはほぼ充足すると思います。  それから、待遇改善につきましては、昨年人事院勧告を出してもらう際に、科学技術者の優遇を非常にお願いいたしまして、一般公務員が四%アップでありましたが、技術者については七%アップにしてもらいました。しかし、それでも民間会社から比べたら非常にはるかに隔絶しておりまして、できたら今年の夏でももう一回人事院勧告を出してもらおうと思いまして、このことを人事院総裁に申し入れいたしまして、努力して参るつもりであります。
  11. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 これはこの前もちょっとお伺いしたわけですが、大学院博士課程への進学者は定員の半数にも満たない、こういう現状のようですが、これは実際的には生活研究費に追われるという、そういう経済的な理由が相当大きな壁になっておると思うのです。それでこれを打開するためには、どうしても緊急に、進学希望者に対しては、月額にして一万円とか一万五千円ぐらいは最低必要であろうと思います。こういうことを緊急に実施することが、科学技術会議答申にも沿うゆえんであろう、そういうふうに思うのですが、この点の何かお考えがあるかどうか。
  12. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 大学院学生が不足しておるということは、御指摘の通りでございまして、これがために、ことしから一万円程度育英資金を差し上げる、こういうふうに改正をいたしまして実施いたします。大学院に残る人が、実はこれからの教授やあるいは優秀な技術者の中枢を占める人でありますので、できるだけ優秀な人を残さなくちゃならぬと思いますが、現在、何しろ民間研究所会社の給与が非常にいいものですから、大学におきましても、特に電気とか機械とか化学、この一番大事な面におきましては、ほとんど優秀な者が民間に行ってしまうという状況でありまして、これは非常に大きな問題になると思います。われわれが、さらに理科系学生を増員しようと思いましても、教授が足りないという現実が出てくるわけです。それで教授をふやすというためには、どうしても大学院学生をふやしておきませんと、補給源がなくなるわけです。そういう点からも非常にここに大問題もあるわけであります。この程度のことではまだまだだめでありますから、来年度以降は、さらに抜本的な措置を講じなければならぬと思っております。
  13. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 これもこの前お伺いしたのですが、大学の新卒の者の優秀な者は、各官庁には行かないで、民間の大企業の方へ走ってしまう、こういうことをお伺いしたわけですが、さらに面を変えて、科学者についても、生活が苦しいからアルバイトをやる、その上に、研究施設設備が悪い、さらに研究費も少ない、こういう悪条件下研究意のごとくならない、ついに国内での研究を断念して近年アメリカなどへわが国から渡る者が跡を断たない、こういう傾向があろうと思います。これは日本科学技術振興の立場から重大問題であろうと思うのですが、何か具体的に対策をお考えかどうか、この点をお伺いします。
  14. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 最近の傾向をよく調べてみますと、アメリカあたりでは、大学教授に対する研究費というのは、一つ研究項目について約二万ドルから二万ドル来るようです。そうすると、日本の金になおして、三百六十万から、七、八百万ぐらいまでくるわけです。アメリカ教授あたりは、そのために研究助手を雇わなければならぬのですが、アメリカ研究助手単価が非常に高い、そういう関係から日本の優秀な若い人を目指して、招聘という形で招聘していく、そして自分研究助手に雇う、そういう傾向が非常にふえておりまして、日本とかイタリアから行く人がかなりふえておる。しかも、そのアイテムは、割合日本就職口が狭いと思われている数学とか物理とか、あるいは頭脳的労働をやる面等にふえつつあるようであります。この現状を放って置きますと、日本の得意であった数学とか、理論物理とかが非常におくれていくわけであります。何とかこの対策を講じなければならぬと思っておりますが、正直に申し上げて、全部予算の問題にひっかかってくるわけであります。そこでことしは、それに対する有効適切な措置は、遺憾ながら十分とは参らないと思います。来年度以降十年計画ともからみまして、そういう問題に関する対策を講じて参りたいと思っております。
  15. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 これはこの前もちょっとお伺いして長官のお考えがはっきりしたわけですが、人工衛星とかI・C・B・Mとかオートメーション、こういう中で、真に日本防衛するためには、自衛隊の強化でなくして科学技術振興でなければならぬ、こういう意味のことをお伺いしたわけですが、長官はそれは全く同感だとおっしゃった。そうだとすると、年々増加の一途をたどっている防衛費を大幅に削って、科学技術振興費に充てるのが至当ではなかろうか、こういうふうに国民としては考えるわけです。この点をどうお考えになるか、明確にお答え願いたい。
  16. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 防衛という方法を、マン・パワーを借りてやるというやり方から、科学的な新鋭装置によってやるということが最も効率的であると思いまして、私もそういうふうなお答えをしたわけであります。人間の増員ということはある程度頭打ちにさして、そうしてそれよりももっと科学的な新鋭装備をするという方向に向かしていくべきものだと思います。しかし、防衛に関する考え方は、これは私の所管外のことで、個人的な考え方でございますが、単に防衛に関することのみならず、国力の発展の基礎というものは、もうほとんど決定的と言っていいほど科学技術の力にたよられている状態だと思いまして、政府の総予算の中における科学技術振興費の比重をさらに高めていかなければならぬと思っている次第でございます。
  17. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 日本の資源の乏しいことは言うまでもないわけであります。こういう経済状態で、これを拡大強化し、さらに民生の安定をはかり、その上、国を防衛する基本的な問題である、こういう科学技術振興に、どのくらい予算が向けられているかということについて、この前も私お伺いしたのですが、これは三十三年度が二百九億、三十四年度が二百二十五億、三十五年度が二百五十二億ですか、もし間違ったら御訂正いただきたい。ところが一方、国の防衛関係予算を見ますと、三十三年が千四百六十一億、三十四年が千五百三十六億、三十五年が千五百四十五億というふうにけた違いです。こういうことは、国民がみな不思議に思っている点であろうと思うのです、どう考えても。先ほどから、経済の基盤が弱くてこれを拡大強化しなければならぬ、民生を安定しなければならぬ、しかも、根本的な日本防衛するゆえんである科学技術振興が、そんなに基本的に大事な科学技術振興費が一割、十と一の割合にしか使われていないということは、ここに日本科学技術振興がおくれている根本原因があるのではなかろうか、国民はどなたもそういうふうに考えると思う。その点をはっきりと納得できるように御説明いただきたいと思う。
  18. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 防衛庁のことは、私よくわかりませんが、科学的な装備の方に最近は重点が向いているようでありまして、たとえば昔の歩兵のような人間をふやすかわりに、施設関係とを、通信関係とかあるいは飛行機関係とか、あるいは海の関係等に、科学的な装備中心強化されているように私は聞いております。この傾向は、私は傾向としてはいいのではないかと思います。そうなりますと、費用もある程度ふえると思いますが、これはやむを得ないことではないかと思います。しかしまあ、国の予算全体の中における割合というものは、これは総合的に考えなければならぬと思いますが、国務大臣として考えてみますと、全体の予算の中における防衛費のパーセンテージは、必ずしも外国と比べてみて、多いとは私は申せないと思います。従いまして防衛関係費用は多少ふえてきておるといっても、必ずしも当を得たことではないと私は思いません。それに比べて社会保障関係費用は、かなり著しく伸びておりまして、この比率から見ても、私は必ずしも当を得たとは考えません。ただ、科学技術関係費用伸びが、社会保障や、あるいは防衛費伸びに比べて足りないのが非常に遺憾でありまして、この部面の伸びをさらに強化するということで、われわれは力を尽くさなければならぬと思っております。
  19. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 最後に一点お伺いしますが、これはどなたでもいいのですが、三十五年度科学技術振興費は大体二百五十二億とおっしゃった。この中には、文部省研究費は含まれていないと思うのですが、そこで、文部省予算はどの程度になるか。それからこの二百五十二億以外に、文部省予算その他も含まれないものがあれば、念のために伺っておきたいと思うのです。
  20. 鈴江康平

    政府委員鈴江康平君) 科学技術振興費の中には、お話しのように、大学研究関係は含まれておらないのでございますが、ただ文部省といたしましても、直轄の研究所数所ございます。たとえば遺伝研究所とか、あるいは統計数理研究所とか、そういったものが含まれておるわけでございます。  それからなお補助金といたしましては、大学教官に参りまする科学研究費、あるいは科学試験研究費、それから私立大学理科教育施設補助金、そういうようなものが含まれております。それで、三十五年度といたしましては、文部省総体におきまして三十三億七千七百万円が計上されておるわけでございますが、前年度に比較いたしまして七億二千万円ふえておるわけでございます。その他大学関係につきましては、教育関係大学関係とが明確に区分されておりませんので、これは文教費の中に含まれておりますので、研究費がどれだけあるかということをはっきり分けることは、文部当局もちょっと困難を感じておるような次第でございます。  それからなお、科学振興費の外にありまする研究関係予算といたしましては、防衛庁研究所も入っております。それからその他大蔵省の現業の研究所、すなわち醸造試験所並びに造幣局の研究所、そういったものが振興費以外の研究費として含まれておるわけでございますが、これは振興費に入っておりません。
  21. 横川正市

    横川正市君 私は、今の伊藤委員の質問に関連をして、まず第一点は行政機構の問題から。科学技術庁としては、現在の考え方をさらに発展させるために、機構上の問題として改正すべき点を持っておるのかどうかという問題なんです。これはもちろん、今の四点にわたっての答申に基づいて逐次実現方努力をされているという、そういう答弁については、私ども専門家でありませんから、うなずく程度には了解できるわけですが、たとえば人材養成するという場合にも、これを科学技術庁が独力で小学校から中学校、それから高校、大学大学院と、そういうような国民の中から英知をしぼり出す方法を相当長期にわたって計画をして、そうして人材養成する。そういうようなことは、今望むべくして望めないような状態なんで、人材を得るということになれば、私は、これは文部省が相当やはりこれについては意見を持ち、それから方法その他についても独自な行き方というものをやっているように思うわけです。  それからもう一つは、宇宙科学の問題一つとってみても、今度は技術庁総理府とに同じような格好のものを設置して、しろうとから考えますと、たとえば伊勢湾台風なんかのときに、農林省開拓業務でやった干拓の仕事、それから建設省でやった波防の、その建設された結果というものは、これは両方とも非常にりっぱですけれども、継ぎ目が悪くて、それで伊勢湾台風のような被災を招いたのだと一部では報道されておるわけなんです。技術振興の面から言えば、今行政上の機構の問題から、総理府技術庁文部省と、こういった点で、何らかの、いわばセクトを排した、一つの目的に向かって協力のできる態勢があっていいのではないか。私どもは、一つのものを見せられますと、総理府意見を聞いてなるほどと思い、それから科学技術庁意見に触れることがなければ、おそらく宇宙開発なんかの問題については総理府でやっているのだろうという誤解を持つようなことにもなりかねない。多岐にわたって進められておる。こういった点を私はもう少し的確に行政上の面からも解決しておいたらどうだろうかというふうに思うわけですが、この点はどういうふうにお考えになっておりますか。
  22. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 科学技術振興ということは、各省全部が協力して総合的にやらなければならぬという考え方から、総理府諮問機関として科学技術会議というのができまして、総理大臣を議長として、大蔵大臣文部大臣科学技術庁長官経済企画庁長官、それに日本学術会議の会長、それから専任の委員二名をもって構成しておりまして、その下に幹事会がありまして、また運営委員会というのがございます。運営会議は隔週に金曜日に開いておりまして、その運営会議諸般政策を討議しておるわけであります。私は運営会議には必ず出ておりまして、文部省の方からも、大学学術局長が出てきて、いろいろ具体的な問題を討議しております。今のところは、一応こういう形で総合性を保ちながら、各省が分担すべき事項をきめて推進しておるわけであります。しかし、私の個人的な考えを申し述べますと、やはりいろいろ改革案を、私の役所でも勇敢なものを作れといって今作らしておりますが、われわれの方にも改革すべき点があると思いますけれども文部省の系統の機構かなり改革を要するものがあるように私は感じております。文部省の今までの系統は、教育ということが中心になっておりまして研究開発という面は第二になっておったように思うのです。文部省仕事としては、一面においては日教組の問題とか、あるいはすし詰め教育の解消とか、教育という問題もございますが、一面においては、大学その他を中心にする研究開発という部面も非常に大きな部面があるわけであります。その部面のウエートが非常に軽いように思うわけであります。そういう点からいたしまして、事によれば、私の個人の考えでは、文部省の外局あたりにそういう研究開発を専門にするものを作って、科学技術庁と協力してやるということも一案ではないかと思います。こういう点は、運営会議及び科学技術会議の長期計画において検討して、次の改革に備えたいと思っておるわけであります。それから宇宙開発につきまして総理府にできますのは、これはただいまと同じ理由で、各省が全部協力しなければいけない。郵政省の電波研究所は宇宙通信を受け持つ。東大生産研究所ではロケットを受け持つ、というようなわけで、各省が協力しなければいけませんので、そのためには総理府という所が各省を総合するものでありますから、総理府に置くのが妥当なんであります。その審議会で大体きめたことを総理大臣答申して、総理大臣の方から、各省に、お前はこれをやれ、お前はこれをやれと、そういうふうに下げ渡してくるというのが、今の行政の順序になっております。ですから、各省にわたるものは全部総理府に置いておるわけであります。放射線審議会というようなもの、航空審議会というようなもの、これは、科学技術庁、運輸省あるいは厚生省、各省にわたるものでありますから、総理府に置いておるわけであります。今回の宇宙開発審議会は、その意味において、従って総理府に置いたものであります。ただ、その庶務といいますか、事務局的な仕事科学技術庁が引き受ける、こういうことになっております。
  23. 横川正市

    横川正市君 しろうとの論理だから、間違ったらその点は指摘してもらいたいと思いますが、私は、宇宙開発という非常に大きな仕事をするのに、二つの限定した形だけにとらわれないで、もっといろいろな形があるだろうと思いますけれども、代表してソ連科学技術振興機構上の問題、それからアメリカのように航空、それから陸海、それからそれぞれ学術会議と分かれて開発していく場合と二つあるわけです。言いのがれではないでしょうけれども、たとえばソ連の新聞のあれで見ますと、開発の状況というのは、大体一つのものについては六年から七年ソ連の進行状況と比べておくれておるのだ、こういうふうに一般では言われておるのですが、そのおくれの原因が機構にあるのだ、大体頭脳というのはあまり開きがないから、ある時間をかければ、大体一つ水準というものまでには到達するのだ、これはもう最初の原爆を作ったときの状況から言ってみても、アメリカが独占するということは、これはあり得ないのだ、こう言われておるように、頭脳についてはあまり各国それぞれ開きがないようだが、頭脳を動員をする、つまり機構の面からこういうふうにおくれを来たしておるのだと、こういうふうに言われておるわけでありまして、私は日本科学技術振興状況から言ってみて、今長官の言っておるように、非常に多岐にわたってのそれぞれの持ち場の機構の動員をするのだ、なるほどそれは理屈の上では動員されたことになるわけですが、日本の官庁のようにセクト性の最も強いところで、はたして総理大臣がてっぺんにいるから、あとはそのタコの足のごとく八本よく動きますよ、こういう説明だけでいいかどうか。これはわれわれとしては科学技術振興の面から見てその点であなたは満足しておるのかどうかという質問を先ほど出したわけなんです。いやこうやって動くからと言うが、なるほど動くように思いますけれども、私はなかなかこれは意のごとくならない問題が随所に出てきて、相当支障を来たす結果というものが予想されて動いてくるのじゃないか、こう予測するわけで、その点の質問をしたわけですが、そういう点からお答え願いたいと思います。
  24. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 日本の宇宙関係技術はまだ萌芽期にありまして、それの実績はそう進んでおるわけではありません。技術が相当進んで参りますと、ある程度一元的にいたしまして、たとえば原子力の問題は原子力局というものが各省の予算を一手に持っておりまして各省に分けてやるということにいたしております。原子力委員会が原子力政策の基本を各省にわたるものも決定してやるというふうに、責任を明確にして一元的に政策推進してきておるわけであります。そのために、日本の原子力政策かなり前進したと思うわけです。宇宙関係につきましても、萌芽期を脱して実際に活動をするという時代になりますと、そういう構想が必要ではないかと思いますが、今のところは諸般態勢を整備して軌道を敷設するという段階でございまして、実行部門というものはまだそうございません。そういう面から現状程度でいいのではないかと思っております。  それからソ連米国等の関係は全部これは軍部が開発しております。ソ連はおそらくまだ軍が握っているのではないか。アメリカでは最近航空宇宙局ができまして、これが平和利用の部門を受け持って、外国との交渉等もしているわけであります。それで情報によりますと、やはりアメリカでは三軍の間の争いや何かがありまして、機構上の欠陥があったためにおくれたといっております。しかし、学術上の面から見ますると、アメリカが打ち上げている人工衛星の数は、ソ連をはるかに超越しておりまして、相当たくさんのものを打ち上げている。ソ連人工衛星はたぶん今二つぐらいしか回っていないと思います。アメリカのは九つぐらい回っております。その中にはヴアン・バレン帯を発見したエクスプローラー何号というものもあります。あるいは風車衛星、最近の天候衛星、気象衛星のように気象上の雲を撮映してくるというものもありまして、学術上のデータというものは、アメリカの方がはるかに精密なものが多いのです。これは宮地天文台長とか畑中東大教授等も言っているところでありまして、そういう面からいえば、必ずしもアメリカがおくれているということは言えない、学術上の面から見まして。ただ、ロケットの推進力においては、やはりソ連の方がすぐれているように思います。それから誘導装置についても、ソ連かなり発達しているように思います。ですから割合に目につきやすいはでなところは、ソ連かなりの進み方をしているようでありますが、学術上の精密な面がアメリカよりすぐれているところはないと思います。われわれといたしましては、やはり学術上の面を重要視したいと思うのでありまして、日本があんなはでな人工衛星を上げるということは、われわれは今のところは考えておりません。むしろ学術上の成果を上げるためにいろいろな道具や装備を発展させようと思っているのでございまして、そういう面から申しましても、一般に言われているようにアメリカソ連との間隔がはなはだしく離れていると一がいに断定するということはできないと思います。しかし、アメリカの欠陥が三軍のけんかにあったということは事実のようでありまして、これはわれわれ大いに戒心しなければならぬところだと思います。
  25. 中野文門

    委員長中野文門君) 速記をとめて。    〔速記中正〕
  26. 中野文門

    委員長中野文門君) 速記を起こし  て。  他に御発言もなければ、本案に対する質疑は本日はこの程度にとどめます。   —————————————
  27. 中野文門

    委員長中野文門君) 次に、総理府設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案につきましては、すでに提案理由の説明を聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。政府側出席の方は、福田総理府総務長官。佐藤総理府総務副長官であります。なお中曽根科学技術庁長官原田科学技術庁官房長等、科学技術庁関係の方も御列席でございます。さらに、柿坪通商産業省通商局振興部長、後藤通商産業省振興経済協力第一課長もおみえであります。以上の方々であります。御質疑のおありの方は、順次御発言願います。
  28. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 総務長官にお伺いすることになるのだろうと思うのですが、行政委員会ですね、おそらく十をこえる行政委員会があると思うのですが、さらにまた審査会とか、それから審議会とか、調査会あるいは諮問委員会とか、さらに懇談会とか、相当たくさんのこういう諮問委員会が作られておるわけですね。それでおそらく各省に十やそこらのものはあるのじゃないかと思うのです。大臣の諮問機関もありますし、場合によりますと局長の、これはまあ法制上できていないのだろうと思いますが、局長の諮問委員会みたようなものもある、こういうたくさんの行政委員会並びに審査会というものは膨大な組織になっておるように思うのでございますがね。このことは、一体どういう影響を行政組織なり、あるいは公務員制度なり、そういうものに与えるのかという点を伺いたいわけなんです。もし、この行政委員会の数あるいはこの審議会等の数ですね、それがおわかりになりますならば、これも一つ伺いたい。今度の内閣委員会にもおそらく八つぐらいの審議会なり委員会等の新設が出ているように思うのでありますが、膨大なものじゃないですか。
  29. 福田篤泰

    政府委員福田篤泰君) 御指摘のように相当な数に上っております。大体各懇談会、調査会入れまして約三十六になっております。総理府関係の分は相当な数に上っておりまして、私ども事務的に非常にまあ多忙をきわめておるわけでございます。御存じの通り、行管からはなるべく簡素化してそういう数も整理しろというような趣旨のものも出ておりまして、私どももその線に沿って参りたいと思うのでありますが、事柄の性質上一つの省だけで専管が許されない、各省にわたりますので、結局は総理府に設置をしてもらいたいというような形になりまして、現在のところ、この国会にも審議をお願いしておるものがあるくらいでございます。
  30. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 今のやつは総理府に三十六あるというお話しですね。で、あと各省にこれは十くらいのものはあるだろうと思うのですね。そういたしますと、おそらく百をこすこの委員会なりあるいは行政委員会というようなものが存在している。一委員会二十名の委員といたしましても、約二千名をこす人たちがこの委員会に参加しておる。で行政機関を見ますと、行政職俸給表の一に、要するに次官とかあるいは外局の長官、これは四十六名です。それに局長ですね。いわゆる高級公務員といわれる人たちが政府全体に七百四十六名ぐらいおります。それに対してこの二千をこすこういう委員というものが維持されておる。従って今日の次官なりあるいは、次官はともかくとして、局長なり部長なりという高級公務員は、この委員会の幹事で手一ぱいだ、今おっしゃったように三十六もあって忙しくてしょうがない、こういうお話なんだ。これは私は今の行政上で非常に大きな問題じゃないだろうかとこう思っておるのです。そういう点についてどういうふうにお考えになっておられるのか。今日の高級公務員というのは、そういう意味では、この委員会の幹事役になっておるのじゃないか、こういうように思っているのですがね。
  31. 福田篤泰

    政府委員福田篤泰君) 局長級がいわば幹事役をやっておるわけでありまして、その通りでございます。先ほど申した通り総理府としては、なるべくこれは最小限新しい調査会あるいは審議会というものは食いとめていきたい。新しくはなるべく制限していくという行管の趣旨を守りたいと思います。ただ、どうしても一つの省だけではまかない切れない事柄については総理府にということで、その点確かに大きな問題といいますか、事務上にもいろいろな考慮する点があろうと思います。行管ともいろいろ打ち合わせましてこの点について十分検討いたしたいと思っております。
  32. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 この委員会のメンバーでありますが、私なんかが承知しておるだけでも、大学教授でこの委員会の委員を二つなり三つなり兼ねているというのが普通になってきている。中には五つも六つも兼務しておられる方々がいらっしゃる。今の国立大学教授で、あるいはそれに関連する大学教授で、この委員会に入っていない人という方が少ないぐらい、非常なこの委員会のメンバーに出しておられる。おそらく政府の御要望のようなレディメードで間に合うような教授というのは少ないのじゃないかと思います。専門は専門でありますけれども、それなりにやはりレディメードでは用をなさない。そこで大学研究室にいろいろ手数をかける、こういうことにも相なりますし、さらに教授そのものがどうも三つか四つか兼ねますと、大学教授そのものがスポイルされる。だからこういう委員会に出ている教授の講義というのは十年一日、こういうふうに言われるわけなんですね。科学技術の発達とか、あるいはいろいろなことはおっしゃいますけれども、実はそういう形で大学教授そのものをスポイルする。さらに研究そのものに対していろいろなスポイルする面があるのじゃないか、こういうふうに思っておるのですが、そういう点はどういうふうにお考えになっておられるのか伺いたいと思います。
  33. 佐藤朝生

    政府委員(佐藤朝生君) 私からお答えいたしますが、お話しの通り大学の先生等が政府関係の審議会に関係していられる方がだいぶあることも承知しております。総理府といたしましては、総理府の審議会の委員になっていただきましても、その研究の方がおろそかにならないような格好でやることに十分留意してやっておりますし、これからもやっていくつもりでおります。(辻政信君「それなら意味なさぬじゃないか。やっている仕事のじゃまにならぬような審議会なら要らぬじゃないか」と述ぶ)
  34. 中野文門

    委員長中野文門君) 辻君。関連してやって下さい。
  35. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 この委員会がきわめて安易に、しかもはなやかに設置されるわけですね。それが行政を非常におかしなものにしているのじゃないだろうか、こう思っているわけです。それで、先ほどおっしゃいましたように、局長とかあるいは部長という人たちは、これに追われているのですね。政府としてはこれは必要なことで、いろいろ必要があってそういうようなものをお作りになるのだろうと思いますけれども大学に対して非常に大きな影響を与える。四十五、六になった大学教授がどんどんこの委員会に出る。三つも四つも、中には五つも六つも兼ねられるということでは、これはせっかく四十五くらい、四十こしたような優秀な教授というのが、学問的にはほんとうにスポイルされてしまう、こういうことになると思います。また行政官にしましても、これは安易にそういうものにたよってしまう。従って行政官自身が研究をし、あるいは励んでいかなきゃならぬ面を、これをまたスポイルしちまう。どっちにも妙な形になっておるように思うのですね。もっと整備されてやられたらどうかと思うのですけれどもね。で、その点で一つ公務員制度との関連で申し上げたいわけです。御承知の通り、今日の公務員制度は、専門家法律なら法律経済あるいは科学なり技術なり、そういう専門家を優遇するような公務員制度になっていないのですね。今日の給与というのは、御承知のように管理運営という面で一元的に統一されている。従って、課を運営する、局を運営する、そういう者が月給が高くなる。だから月給が高くなるには、そういうような管理運営面を、広く浅く管理運営面を扱うような人でなければ月給は上がっていかない。こういう一本で今日の公務員制度は貫かれている。そうしますと、課長にはなりたくない、あるいは局長にはならぬでもいい、あるいは法律として、あるいは特殊の、経済なりあるいは科学なり技術として専門家でいこうという人は、存在し得ないわけですよ、今日の公務員制度では。従って、こういうものを雨後のタケノコのように至るところに作らなければならない。それが行政官の上におおっている。これは一面ではいい面もありますけれども、こういう点で非常に大きな問題じゃないだろうかというように思うのですがね。これはどういうふうにお考えになっておられますか。公務員制度の関係で……。
  36. 福田篤泰

    政府委員福田篤泰君) 公務員制度の関係につきましては、実は直接のあれにはILO条約にいろいろ法的な検討もございましたが、各省の次官会議その他の連絡会におきましても、ちょうど御指摘のような議論が各省から出ております。何とかして今のようなばらばらなものではなくて、しかも、総理府には公務員制度調査室がございますけれども、十数名しか擁していないというスタッフでございます。本格的にいろいろな意味の問題を含んでいる公務員制度を、この際組織的に再検討しなければならないのじゃないかという議論が強く出ておりますが、まだ成案は出ておりませんが、この点につきましては、何とかもっと有機的にも、組織的にもこういう重大な問題を解決できる体制にしたいというのが、ほとんど各省の意向でございます。まだ成案を申し上げる時期ではございません。そういう有力な意見がこの前の閣議におきましてもこの問題が議題になりました。各関係閣僚も、担当せられております益谷副総理もそれに触れた発言につきましても、原則的に同意を表したというのが今日の状況でございます。
  37. 辻政信

    ○辻政信君 委員長が発言せよということですが、関連して一言言いますが、これは岸総理に話を聞きたかったのですが、どうも福田さんじゃ少しピントがはずれるかもしれません。しかし、岸総理なかなか引っぱり出すわけにいかぬから、その意味でお聞き取り願いたい。当委員会というのは、衆議院、参議院を通じまして一番大きな仕事がある。これは行政機構の簡素化、能率化という点です。しかるに、最近のこの両院の内閣委員の審議を見ておりますと、小さな問題を必ず出してくる。三人ふやすとか五人ふやすとか、そうしてできるだけ委員の注意が向かぬようなやつを、各省の官僚たちが頭がいいものですから、あまり注意を引かぬようにして、これは一人だから反対するなといって次々と人間増加していく。私はこの種々雑多な雨後のタケノコのように出ておる調査会とか、審議会というのは、非常に不同意なんです。ある意味におきまして、行政府の責任転嫁だと思うのです。民間人を一人加えたから責任はないのだというふうにみな逃げてしまう、農地問題にしても、あるいはこの間の訴訟法の審議会にしましても。そうして一年でやれるところを月に一回くらいでお茶を濁して、そうして二年に延ばしてくれという、このくらい非能率的な責任を逃れようとする悪い制度はないと思う。そこで、次の委員会の審議の資料として、長官に資料の提出をお願いします。現在総理府にある審議会あるいは行政府全体が持っておる各省ごとの研究機関とか、審議機関、その名前を全部網羅してもらって、そうして、各省の局長以上でそのメンバーになっておる者を一覧表にして、どの局長はどの委員会のどの部門に出ておるか、そういうことを一つわれわれ審議の資料としてこの委員会に、次の機会までに御提出をお願いします。それに基づいてわれわれ要らないものをチェックしていく。この委員会で一つも要らないものをチェックした例はないのです。毎回ふやしておる、人員多少にかかわらず。そういうことが、私は国民が非常な不満を持つ一つの原因になっておると思います。そのくせ先ほど申しましたように、この技術者というものの優遇ができておらない。大学教授が三万や四万の月給を取っておるから、この委員会に顔を出して車代でもかせごう、だから中身のない顔合わせだけで、できるだけその中に割り込もうとするから、一人の教授が五つも、六つもの審議会に顔を出す、気の毒にたえない。中曽根さんが幾ら馬力をかけて科学技術振興と言おうが、技術者生活を安定できなくて、どこに一体科学技術振興があるのか。私ソ連に行ってきましたが、ソ連において進歩した理由は、あの最高の科学者はフルシチョフと同じ月給をもらっている。総理大臣と同じ月給を。かすみを食って生きるわけにいかぬから、ほんとうにあなたが科学技術振興をやろうと思えば、あなたの部下並びに大学教授の給与を改善してやりなさい。三倍にも五倍にもしてやっていいです。科学者生活を安定しない限り、日本の科学の進歩はあり得ない。今の若い大臣が情熱を傾けて、あなたの在任中に、現在の技術者の給与というものは、事務官の給与より下がっている、大学の卒業した年次は同じであっても。口に科学とか、宇宙研究とか、とんでもない。宇宙研究をやる前に足元のでこぼこを直す、そういうことに全力を尽くされることを希望しておきます。
  38. 中野文門

    委員長中野文門君) 答弁要りませんか。
  39. 辻政信

    ○辻政信君 要りません。資料だけあとでお願いします。
  40. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それでは、ちょっとこれは先に聞いておきますが、総理府設置法の対外経済協会、これも含んでおるんですか。
  41. 中野文門

    委員長中野文門君) 含んでおるんです。同じ法案ですから……。ちょっと速記をとめて。    〔速記中止〕
  42. 中野文門

    委員長中野文門君) 速記を始めて。
  43. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 今辻委員の方からお話がありましたが、総理府関係だけでなくて、政府全体の行政委員会さらに審議会とか、調査会とかあるいは審査会とか、あるいは懇談会、協議会というようなものがありますが、そういった一覧表並びにその構成ですね。それをぜひ一ついただきたい。従来からこの調査会なり、こういう審議会なり、こういうものについては、もう定説があるわけでありまして辻委員のおっしゃる通りの定説がある。さらにこのことが今の公務員制度に与える影響も非常に大きいわけでありまするし、今日の公務員制度を続ける限りにおいては、こういうような審議会というものを設けざるを得ないというふうに思いますから、その意味で公務員制度というものをどういうふうに変えていかれようと考えられるか、その点も一つ御検討の上御回答をいただきたい、こう思っております。
  44. 福田篤泰

    政府委員福田篤泰君) 今の資料提出の問題は、次の委員会までに各省の分を含めまして提出いたします。  なお、公務員制度の問題は、御担当の益谷副総理からお答えをするのが筋道三考えておりますが、まあ補佐の立場で申し上げますならば、先ほど申した通り、確かにこれは抜本的に再検討しなければならぬ。むしろ機が熟したのじゃないかという気がいたしますので、益谷副総理を中心にいたしまして、組織的にも何らかの検討をいたしたい、また実現をいたしたいということを申し上げておきたいと思います。
  45. 中野文門

    委員長中野文門君) 他に御発言もなければ、本案に対する質疑は、本日はこの程度にとどめます。  瞬時休憩いたします。    午前十一時四十九分休憩    —————・—————     午後一時五十六分開会
  46. 中野文門

    委員長中野文門君) これより内閣委員会を再開いたします。   農林省設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。   前回に続いて質疑を行ないます。政府側出席方々は、小枝農林政務次官、斎藤農林大臣官房長、筒井農林省蚕糸局糸政課長、丸山林野庁林政部林政課長、河原農林省農林水産技術会議研究調整官、以上の方々であります。御質疑のおありの方は、順次御発言を願います。
  47. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 まず青果物行政に関連して、一、二お伺いしたいと思いますが、申し上げるまでもなく、蔬菜とか果物については、都会の周辺で農家のおかみさんが小づかい銭かせぎに手車引いて売って歩く、こういう程度なら何も問題はないわけですが、和歌山、静岡のミカンとか、岡山の桃、鳥取のナシ、こういうものになりますと、農業の総生産高のおそらく五%以上になっていると思う。こういうことになると、そう簡単にはいかないので、やはり販売の仕方などが相当重要な課題になってきていると思うわけです。その点について、農林省としてどのような手を打っておられるか、まずお伺いしたいと思います。
  48. 斎藤誠

    政府委員(斎藤誠君) ただいま御質問になりました青果物の問題についてでございますが、御指摘の通り青果物行政につきましては、なかなかむずかしい面がございます。今日農家の流通経済に対応する行政部門につきましては、年々重要度を増してきたのでございます。そういう意味で現在までやっておりまするところの青果物行政の主要な施策といたしましては、第一には、中央卸売市場の整備を中心として行なっていることは御承知の通りであります。今回の設置法の改正案の中において臨時生鮮食料品卸売市場対策調査会の廃止がございます。この青果物中央卸売市場につきましては、現在まで一年間にわたりまして調査をいたし、答申を得た次第でございます。農林省といたしましては、これ以外の行政といたしましてやはり何といいましても的確な市況を農家に流しまして、そしてその市況に応じまして産地における計画出荷をする。また計画出荷をするにあたりましては、共同販売態勢推進していく、こういうような考え方に基づきまして、市況の的確な把握並びにその情報の伝達、あるいは計画出荷の協議会こういった方面におき場まする予算も計上して指導いたしているという次第でございます。
  49. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 特に生産がふえると、青果物は値下がりが来る。特に豊年の際には安く買いたたかれてしまう。そこで一つの話が伝わっているわけですが、たとえばリンゴが売れた場合、いろいろの手数料とか、あるいは運賃を差っ引かれるとかえってマイナスになる。そこで、リンゴ売れた、旅費送れ、と、こういうような電報を農家は自宅に打ったというような話が伝わっている。ことほどさように、豊年の際などには安く買いたたかれて、かえってマイナスになる。そういう事態か往々にしてあるわけですね。これはこのままではいかぬと思うのです。やはり適切な指導も必要であろうし、いろいろと手を打つ必要があろうと思うのです。こういう点はどのように考え、どのように手を打っておられるかお伺いしたいと思います。
  50. 斎藤誠

    政府委員(斎藤誠君) お話しの通り、青果物につきましては、非常に価格の変動が著しい農作物の一つでございます。従いまして、あるときに豊作であるということになると、値が急速に下がるというような関係が顕著であることも事実でございます。ただ、われわれといたしましても、青果物、果実であるとか、あるいは野菜であるとかいったものの性質上、価格の安定ということにつきましては、なかなか現実問題として困難な面が非常に多いのであります。たとえば、米麦であるとか、あるいは大豆であるとか、こういった、つまり貯蔵性のあるようなものにつきましては、価格の支持制度というようなことも考えられるわけでありますけれども、しかし、青果物ということになりますと、勢い、価格の安定をはかるというようなことにつきまして直接的な方法がとりにくい。そこで、勢い公正な価格の実現をはかっていくような手段に求めていく以外に方法がないということに相なるわけであります。  その手段といたしましては、先ほど申しましたように、何といたしまし、も短期間に消費されるといったような性質のものでもありますので、生産地からのできるだけ集中的な供給ということを中央卸売市場を通じて実現する。そこで公正な取引と価格の実現をはかっていく。同時にまた、その価格が産地に的確に反映して、そこで需給の調節なり、計画出荷なりの手段にいたしていく、こういうふうな考え方によりまして、今申しました、できるだけ価格のブレを少なくするということに、勢い主力を注がざるを得ない。それに関連しまして、先ほど申しましたように、情報を流す、あるいは出荷の協議会を作る、こういう行政を従来はやっておったわけであります。  なお、青果物もだんだん需要度も増してきたということで、需要の増進という面から、あるいは市場の開拓という面から、輸出の振興面に一そう力をいたすとか、あるいは果実につきまして、今回特別に果樹振興法を作りまして、そして経営の合理化をはかっていく、あるいは今後の長期にわたる安定した果樹政策をやっていくというためのいろいろな措置を今後検討していくといったようなことを考えておるわけでございます。  御指摘の点はわれわれとして非常に苦慮している、率直に申し上げれば、非常に困難な行政の部分でございますが、考え方といたしましては、今言ったような考え方に基づいて努力いたしておる次第でございます。
  51. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 今申し上げたように、豊年の年などは生産者が買いたたかれるわけですが、さてこれが消費者の手に渡るときには、少しも値段が下がらない。そこでむしろ売れ行きを押えている、こういう矛盾が現実にあるわけですね。品物が多いのだから、どんどん安く売ったらよさそうなものですが、かえって売れ行きを押えている。そして消費者の手には決して安くは入らない。これが現実の姿だと、こういう矛盾が毎年繰り返されているわけです。これも何とか責任官庁である農林省あたりで適正な手を打たないと、これは国民消費生活の面からいっても、生産者の立場からいっても、はなはだまづい問題だと思いますが、その点どうですか。
  52. 斎藤誠

    政府委員(斎藤誠君) 全く御指摘の通りでございまして、生産者の価格はそれほどに高くないにかかわらず、消費者のところでは非常に高い。逆に言えば、消費者価格に比べれば生産者の手取りが三分の一であるとか、あるいは二分の二であるとかいったような、非常な低いことによって不利益を受けているというような事実も指摘されたわけでございます。  これはやはりこういったものの性格上、中央卸売市場の機能というものを中心として考えていかなければならないのではなかろうか。そこで、先ほど申し上げました生鮮食料品の市場対策調査会の答申を、一年間にわたりまして検討された結果得たのでありますけれども、やはりこの中における取引の合理化をはかるということをまずはかっていきたい、それには現在、中央卸売市場の地域的な条件、立地的な条件からいって、もっと的確に消費地に中央卸売市場を作っていく必要があるのではないか。これに対して政府は積極的な整備計画を立てる必要があるのではなかろうかというふうな問題、それからさらに市場の中における各種の取引業者、卸売人、あるいは仲買人、これらについての資格なりあるいは許可の条件なり、あるいは取引の改善方法なりについてもっと改善すべきものがあるのではないかといったようなことにつきまして答申が得られておるわけでありますが、考え方といたしましては、やはりそこを中心にいたしましてできるだけ生産者、消費者、生産と消費の需給の統合を中央卸売市場において公正に実現する。そこから消費者にはできるだけ安く、生産者にはできるだけ高くなるような方法を実現するように努力して参りたいと思います。  それから前の段階における生産、出荷の段階、これは先ほど申し上げたような計画出荷、あるいは販売といったようなことにできるだけ乗せていくという指導をやっておるわけであります。
  53. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 これは野菜でもくだものでもそうですが、生産者側から言うと、なるべく費用をかけないで、少ない労力で生産高を上げなければならない。そのために品種の改良とか、あるいは栽培方法改善、あるいはまた経営の合理化、こういうようなことが積み重ねられて初めて適法な生産ができると思うのですけれども、そういう問題がありますけれども、今、官房長もおっしゃったようですが、一番大きな問題は市場の仕組、それと販売の機構、そういう点が一番問題点だと思うのですが、そういう立場からやはり市場の仕組とか販売機構、こういう点は非常にわれわれ関心があるわけですが、こういう点については、農林省としてはどのようにお考えになっておりますか。
  54. 斎藤誠

    政府委員(斎藤誠君) 御承知のように、中央卸売市場問題につきましては、一昨年でございましたか、神田のマル東市場におきまして値引競争の結果から、生産者に対する支払いの円滑を欠いたといったような問題が起こったのでございますが、その後中央卸売市場法の改正もいたしまして、監督の強化をはかるという措置も講じたのでございます。なおしかし、中央卸売市場における取引の合理化を一そう高めていく。さらにまた、全体の流通市場の一環としての中央卸売市場の位置を、どういうふうに考えていくかといったような観点から、どうしてもこれはもっと基本的に調査をする必要があるじゃないかということで、先ほど申しました臨時生鮮食料品卸売市場対策調査会というものを作れという決議になりまして、これは法律的にこの調査会を設けることにいたしたわけであります。その内容と調査会の設置の趣旨は、今申しましたようなことでございますけれども、三月の上旬に大体調査会におきましては答申が出たわけでございます。答申の主要な内容は、今先生のお話しになりましたようなことがやはり中心になりまして、答申の内容に盛られておるところでございますが、先ほど私も申しましたように、中央卸売市場として、もっと立地条件を考えれば、全国的に整備する必要があるのじゃないかという点が第一点。それから取引の機構として卸売人あるいは仲買人におきましてはもっと資格について厳正であるべきじゃないか。特に卸売人の単複問題等につきましてどうしたらいいかといったような問題、それから取引の方法につきまして、せりだとか、入札とかいうことが基本であるべきでありますが、現状必ずしもそうでない部面もある。こういった点についての取引の規制をはかっていくべきじゃないかといったようなことを中心といたしたものでありまして、それを整備する上におきまして、仲買人とか、あるいは小売人等に関しましても、いろいろ資格及び監督についてうたっておる。農林省といたしましては、この答申を得ましたので、これに基づきまして十分研究をいたしまして、あるいは立法措置をする、あるいは行政措置をする、あるいは予算措置、実行できやすい面から実現して参りたい、こういうことで今、関係局間におきまして、この答申中心に鋭意検討いたしておる、こういう段階に相なっております。
  55. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 生産者にとって一番弱い点は、自分たちの販売機構を持たない。そういう点が、何といっても生産者にとっての大きな弱点だと思うのです。大体市場というのは、こういう生産者のための市場であったと思うのです。ところが、いつの間にか小売商とか、今の仲買人に実際の連隊権をとられて、小売商、仲買人の資本で動いておる。そういうような実情が出てきておるわけです。そこで品物がだぶつくと安く買いたたかれる。しかも一番問題なのは、市場で取引きされるその値段の二倍、三倍の高値で初めて消費者の手に渡る。これはくだものなどは非常に現在消費生活で欠くべからざる食料であろうと思うのです。その点からいって、青果物を増産することはまことに望ましいことなんですが、せっかく大量にできても、いわゆる中間搾取といいますか、小売商とか、仲買人に買いたたかれる。しかも消費者には二倍、三倍の値段でしか渡らない、ここに大きな問題があろうと思うのです。何とかここのところは改善できないものでしょうか。非常にむずかしい点ではあろうと思いますが、これは国民の食糧生活にも重大関心がある問題だと思うのです。この点いかがですか。
  56. 小枝一雄

    政府委員(小枝一雄君) ただいま官房長がお答えいたしたところでございますが、いずれにいたしましても、今日の果実の立場というものは、大体わが国の生産高から申しますと、ほとんど養蚕に匹敵するような収入が得られておるわけでございます。そういうときにあたりまして、お説のように生産と消費の合理化をはかりまして、生産者にはより有利に、また消費者には安く提供することが理想でありますが、そのためには先ほどお話しにもありましたように、生産者の出荷の機構でありますとか、あるいはこれに対する適正なる検査、いろいろな組織を作りまして、生産者の態勢を整備することが一つでございます。それと同時に最も必要な問題は、流通機構でございまして、従いまして市場に対するところの果実の適正なる流れ方、そういうものを配慮いたしまして、今後果実の流通部門に対しましても十分の意を用いてゆく、そういうことによりまして、現在よりこれを改善するという可能性はあると思いますので、全力をあげてやりたいと考えております。
  57. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 今、小売商とか、あるいは仲買人が中間搾取的な利益を得て云々と申し上げたわけですけれども、この小売商自体を検討いたしますと、この小売商といえども、生産者と同様非常に零細資本でやっておる、毎日毎日の売り上げも大したことはない、いたみやすい、しかも税金とか家賃とかあるいは広告、こういうもののいわゆる経営費等に取られる。まあ、結局生活費とか、こういう経費を青果物の販売利益から割り出しておる。そういう実態なので、市場でせっかく安く仕入れたけれども、売るのには二倍、三倍にせぬとやっていけない、これも実情だと思うんですね。ここにも問題があろうと思うんです。こういう点をむつかしいからといってこのままではほうっておけない問題だと思うんです。小売商は特に過当な不当な利益を占めておることでもない、ただ形からいうと、市場で仕入れたものを二倍三倍で売るんだから相当もうけているはずなんですが、もうけはあるが、生活費、経営費で結局あとに残るものはそう大したことはないというわけですね。そこに問題がある。ここのところを何とか合理化しなければ、なかなかもって消費者の手元には安いくだものは入らぬ、こういう結果になろうと思う。この点について何かお考えですか。
  58. 小枝一雄

    政府委員(小枝一雄君) この問題はなかなかむつかしい問題でございまして、これは一つは、中小企業対策というものとの関連も非常にあると思うのでございます。これは中小企業者が最も合理的な経営方針によって、そして自分に相当程度の正当なる利益を占めながら、安価でこれを供給するような措置を講ずることが適切でありますが、しかし一々小売商に至るまでこれを直接どうということはなかなかむつかしいと思いまするけれども、要するに規格の統一、あるいは種類によりましては、輸出品等につきましては、今日検査することになっておるのでありますが、いいものを作らせて、これを規格を統一いたしまして、そうして大体の品物に対して価格の標準がつくということになりまするならば、小売商といえども大体においてその小売の価格も統一されるような方向に向かうと思うのであります。そういう意味におきまして、私どもは出荷の方法あるいは流通対策といたしましての市場の対策等に対して、重点的に今後施策を進めるべきではないかと考えておるのであります。
  59. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 ここで問題なのは、青果物がそのままではとにかくいたみやすいという点、それと資本主義の持つ無統制ないわゆる生産からどうしても品が残る、古くなると商品価値がなくなって、ということで、二倍三倍に値段を設けないとやっていけない、こういう結果になろうと思うんですね。従って一番不利益を受けておるのは生産者。生産者はいつでも買いたたかれる、消費者の手元には市場の二倍、三倍の値段でなければ入らない、こういう結果になろうと思うんですね。そういうことで、これについても何らかこう具体的に指導していく必要があろうと思うんですがね、こういう点はいかがですか。
  60. 小枝一雄

    政府委員(小枝一雄君) ただいまのところ、この小売の問題に対してどうするということを、私どもそこまで実は手が回りかねておるところでございます。しかしながら、御説のように、せっかく生産者が安くこれを卸市場に出しましても、この小売段階において品物が腐敗する、あるいはその品質を損傷するというようなことがあり、従ってその小売の価格に増高を来たしまして、消費者が不利益を得るという非常に悪循環が起こりまするので、今後そういう問題についても十分検討をいたしまして、できる限り軌道に乗せるように努力をいたしたいという考えを持っております。
  61. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 特に生産者側から見て、お互いに競争をやるというような事態が見られるんですが、まあ一部地区では農協などの仲介もあって共同出荷しておる、こういう点はうまくいっておるようなんですが、やはり生産者の正当な利益を守るという、そういう立場からすると、共同出荷という仕組みが生産者側には利益であろうと思うんですがね、共同戦線を張ることによって、べらぼうな安い値段で買いたたかれることも防ぐことができようと思うんです。こういう点は、どの程度に実施されており、またこれに対する農林省としてのお考えはどうなんですか。
  62. 斎藤誠

    政府委員(斎藤誠君) 青果物につきまする共同出荷の必要性につきましては、先生のお話しの通りであります。先ほど私が申し上げましたように、農林省といたしましても、青果物については、やはりこういう方法による以外に的確な価格の調整、安定、あるいは流通の合理化ということを考えていく以外になかろうというような考え方で特に指導をいたしておるわけであります。現在までのところ、果実につきまして主として共同出荷の指導を進めておりますが、青果物、それ以外の生鮮食料品につきましても、そういう考え方で指導して参りたい、その意味におきまして農林省におきまするこういう意味予算はもちろん計上いたしておりますが、さらに先ほど政務次官から御答弁いたしましたように、やはり今後におきましては大量取引による価格の安定化ということのほかに、小売の段階における価格の規制、あるいは生産者の手取りの増加という意味から、規格のやはり統一をはかるということが必要じゃないかという意味におきまして、青果物につきまして、たとえばリンゴならリンゴにつきましても、規格を設けて、これによって規格取引を励行させるというようなことが必要じゃないか、そういう意味で規格取引についての調査予算も三十五年度から計上して、実施に移すというような考え方を持っておるわけであります。
  63. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 とにもかくにも、現在のこの販売機構は非常に複雑で、なかなか意にまかせない。結局、繰り返し申し上げるように、生産者は置いたたかれる。消費者の手元には二倍、三倍というような高値でしか入らない。そこで将来の問題として、やはり生産者から直接都市の協同組合とか、あるいは労働組合の共済部などへ取り次ぐというようなことになると、非常に安いものが、しかも新鮮なものが思うように手に入る。生産者も買いたたかれる心配もない。消費者も非常に安い値段で入るし、しかも新鮮だ。こういうことは、牛乳だとか、あるいは卵では一部労働組合などで消費組合にこういうルートができているところも実際にはあるわけですが、こういう点についてはどういうふうにお考えですか。
  64. 小枝一雄

    政府委員(小枝一雄君) 私どもといたしましても、これを奨励いたしたいと考えておるわけであります。なるほど、それぞれ中間の機関もございますが、御説のように、中にはそれぞれ生産者から職場の組合に直接まとめてこれを送っておるところもだんだんあるように承知いたしております。今後そういうふうにいたしまして低賃金でしかも過当な労働をやっておるというようなところに対して、こういう果物は一つの栄養の上からいいましても、あるいは食糧、食生活という本質から考えましても、これは必要であると思いますので、これを廉価で提供することは最も必要なことであると考えまして、われわれといたしましても、指導の措置といたしまして、今後は一つこういう取引は大いに励行すべきものである、かように考えております。
  65. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この青果物は、先ほど申し上げたように非常にいたみやすい、こういう欠点があるので、青果物は青果物としてだけ販売するのではなくて、ときに加工し、ときに貯蔵を十分に検討して販売に弾力性を持たせる、こういうことが近時特に必要じゃないかと思うのですが、こういう点農林省としてはどういうふうに考え、どのように手を打っておられるのか、その大綱を承りたい。
  66. 小枝一雄

    政府委員(小枝一雄君) 今日わが国の農政の上におきまして、なるべく生産した農産物、特に果実等についてはしかりでありますが、こういうものを加工いたしましてこれを市場に出すということは、これは農林省といたしましても奨励の方途を講じて参っているところであります。その方法といたしましては、組合においていろいろな加工の施設等をいたしまするときに、あるいは農林漁業金融公庫等から低利の融資を提供いたしまして、これによって工場を作らす、そうしてこれを加工する。たとえばミカンのカン詰のごときも、あるいはナシのカン詰のごときも、いろいろカン詰もございますが、そのほかいろいろな加工施設を奨励いたしまして今日まで参っておるところでありまして、今後もこれらの方法につきましては一そう努力をいたしまして、この果物が非常に腐りやすい性格のものであるだけに、一つ特にそういう点については意を用いたいと考えておるところであります。
  67. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 特に最近日本の家庭でもパン食が非常にふえてきておる、肉食も多い、そういうようなことで果物のジュースなどの需要も相当ふえておると思うのです。そこでジュースを作ったり、あるいは今一部指摘になったレモン、ミカン、リンゴ、ブドウ、こういうようなものから洋酒を作る、そういう方法考えられましょうし、さらにブランデーなどもこれからできると思うのです。こういうような面でカン詰なども主要な一つ方法でありましょう。こういうようなことによって多角的に経営することによって、生産者もある程度の利潤をおさめることができるというふうになるし、またこうすることによって消費者にも比較的安く手に入る、こういうことになろうと思うのですがね。結局何といっても販売に弾力性を持たせるということが重点施策でなければならぬと思うのですが、そこでお伺いするわけですが、今盛んにカン詰とか、あるいはジュース、あるいはまたブランデーとか、こういうような面はどの程度に進んでおるのか、また、将来性はどうなのか、そういう点について大綱を承りたいと思います。
  68. 小枝一雄

    政府委員(小枝一雄君) 今日、果実の方で加工いたしておりますのは、主として先生ただいま御指摘のようなものだろうと考えております。今日、大体ミカンのカン詰は、なお一そう今後輸出にも増進することができるという考え方を持っております。なお、ナシあるいは桃等のカン詰も、相当海外の市場に開拓がされておりますので、今後一そう需要が増大いたすものと考えております。果実の洋酒でございますが、これはまだわが国といたしましては、普及いたしましてから日も浅く、なおこれを利用されておるところも一部でありまするが、これが国民の嗜好に適しておりますという関係から、その品質を十分改善いたしまして、一そう国民の嗜好に適する方向にこれを進めまするならば、今後この方面におきましても、十分伸びる可能性があると考えておるところでございます。今、私、具体的な数字をここに持ってはおりませんので、一々具体的にお答えすることができませんのははなはだ遺憾でございまするが、御了承願いたいと思います。
  69. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 時間の関係もございますので、青果物についてはこれくらいにして、次に繭糸価格安定についてごく要点だけを一、二お伺いしたいと思いますが、私が申し上げるまでもなく、生糸の値段については、最高は二十三万、最低が十九万と、こういう制度のもとで、繭の値段が一貫目最低千四百円と、こういう規制があったわけですね。これは、この通りに実施されておれば問題はないのですが、ところが、一昨年だと思いますが、これはこういう高率の補償があったにもかかわらず、御承知のように、非常に繭が暴落また暴落、ほとんど一千円台を割るような始末で、私の国は群馬県で、全国でも養蚕県としていつも筆頭にあげられておるので、事ほどさように養蚕業は関心が深い県ですが、私の近くの農家でも、桑を引き抜いてしまってそして一つ他の方法考えにやという点で、一部そうゆう面が打ち出されておるわけです。これは何といっても、根本的にはいわゆる農林省の農政の誤りでなかろうか、こういうふうに思いますが、これは結局、大臣にお伺いしたいところですが、大臣、見えませんので、一つ政務次官から責任あるお答えをいただ、きたいと思います。
  70. 小枝一雄

    政府委員(小枝一雄君) ただいま御指摘のように、一昨年来一時繭糸価格が非常に暴落をいたしまして、生産者の農民諸君に非常に迷惑をかけたことは、はなはだ残念に考えております。従いまして、その当時、政府といたしましても、臨時立法を作りまして、この糸の安売りを防止せざるを得ないというような状態になりまして、それに伴って需要供給のバランスと申しますか、一つの糸価維持のために繭をある程度の生産制限をすべきではないかという立場に立って、桑園の整理を一部やったのでございます。そのことがいいか悪いかということは、私ども今となって、はっきりこれが失敗であったということは、いまだ考えておらないのでございます。自来、糸価もだんだんと回復をいたしまして、現在の段階におきましては、大体十八万円前後の糸価を堅持いたしておるところでございまして、私どもの糸価に対する考え方といたしましては、糸価が暴騰いたしまするというよりも、安定していくということが、養蚕農家といたしまして、最も希望しておるところではないかと考えているところでございます。この養蚕地に特に御関係の深い先生の御指摘のように、私どもも、将来といたしまして、桑園をさらにこれを整理をいたしまして、桑を植えてあるものを引き抜いていくというようなことは考えておらないのでありまして、ただ、糸価を安定さしまして、一方においては養蚕農民に安心をして繭を作っていただく、さらに、海外の市場の開拓をいたしまして、安定した糸価のもとに、海外と信用ある取引を行なっていく、そういう立場において糸価を一日も早く安定させまして、そうして世界の需要は、生糸の上におきましても、織物の上におきましても、あるのでありまして、決して減退しておるという趨勢ではないのでありますから、そういう意味におきまして、外国の市場において、日本の糸価の信用を高める、そうして販路を開拓していくということに、将来全力を上げまして、養蚕業の発達を促進していくようにいたしたいと考えておるところであります。
  71. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 政務次官は、安定ということを最重要な目標にしておりますけれども、もちろん、安定ということは大事です。ただ、生産費を償う価格の上に立った安定でないと、これはやっていけないわけですね。農林省自体の統計によっても、繭一貫目の生産価格は千六百二十三円ということで、これは農林省から発表しておるのだから間違いないと思う。ところが、一昨年の繭の最低価格は一貫目千円でしょう。それは、千六百二十三円といういわゆる生産価格というものが出ておるわけですから、それよりはるかに下回った値段で、安定だ安定だといってそれを固定して押しつけるということは、これは非常に無謀だと思うのです。やはり生産費を償う価格の、しかも安定、こういうふうにならぬと、これは結局、生産者はお手上げになるわけですね。それと、生糸についても、昨年の一月には最低十四万円に押えてしまった。これなども非常に無謀きわまることだと思うのです。先ほど一部御指摘があったように、生糸を安くするから海外にどんどん出るのでなくてやはり価格を安定させるということと、品質を改善するということ、あるいは、政府民間にのみ依存しないで、どんどん外国へのプロパガンダをやる、こういう三つがそろえば、生糸はまだ幾らでも出るのであって、値段を下げるから結局売れるのだということじゃないと思うのです。やはり買手の外国の商社も、安定していないと、今は安いと思ってもまだ下がるかもしらぬから、うっかり買えない、そういう事象もあろうと思う。そこで、一番大事な点は、生産費を償う価格、しかも、これを安定させる、そういうことによって、いわゆる養蚕農家も立っていくし、製糸家も立っていくし、そうして外国商社の思惑買いなんという点も除かれて、ここにいわゆる繭糸は安定されるのではなかろうか、こういうふうに思うのですが、こういう点はいかがですか。
  72. 小枝一雄

    政府委員(小枝一雄君) これは、ただいま先生御指摘の通りだと私も考えます。ただいまお話しになりましたように、私も先ほど申し述べたのでございますが、いい品質を安定した価格において外国に売り出すということが、一番将来日本の絹の販路を開拓するゆえんだろうと考えております。私が先ほど言葉が足らなかったかと考えますが、ちょうど一昨年十四万円という、そういうようなところまで糸価が暴落をいたしまして、大体において十八万円前後まで糸価が安定いたしました。この程度で一応落ちつきをいたしますが、しかし、われわれは、これをもって繭なり生糸の価格が十分であるとは考えておらないところでございますから、十分今日の日本における繭、生糸の生産の状況にかんがみまして、一方においては繭の生産費もでき得る限りこれを合理化いたしましてコストを切り下げる。同時に先生御承知のように、今日まあいろいろとやりまして製糸の方も機構を変え、あるいは機械設備を改良いたしましてそのコストの切り下げに努力を今日までやってきたところでございますが、こういういろいろな面から総合いたしまして、一方においてはこのコストの切り下げを行ない、一方においてはまた販路の拡張をいたしまして、でき得る限り早く生産費を償うところの繭糸の価格を維持しながら安定するという方向に進めていくべきであると考えてやっておるところでございます。
  73. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 政務次官のおっしゃることを聞いておると、御指摘の通りですと言っておられるけれども、結局繭一貫目について千六百二十三円ばかしのこれは生産費がかかるということは農林省認めておるのでしょう。そういう立場に立って考えたとき、昨年の一月繭の最低を千円にしてしまった。生糸については十四万円、こういう数字が出てこないはずなんですがね。農民の強力な反対にもかかわらずこういう政策は強行されて、養蚕農民は非常に苦しいどん底に追い込まれておる。私などは養蚕県におるのでそういう関心が非常に深いわけなんです。そういうことで農民のほんとうの苦しさをこの目で確認しておるわけです。ずいぶん農民は農林省にすわり込みまでやって、あの際はいろいろ陳情に来たので、よく身にこたえておると思うのですが、そういう責任は農林省の責任ではないかという点をお伺いしておるわけです。
  74. 小枝一雄

    政府委員(小枝一雄君) これは養蚕農家の安定をはかり、またこの繭の価格を維持するということは、全くこれは農林省の責任であると考えます。今日繭糸価安定法があり、いろいろな繭及び生糸に対する一連の立法をいたしまして、そうして繭価なり糸価の安定をはかるということをやっておりまする以上、これは政府としてどこまでも努力をし、責任を負ってやっていくべき仕事であると考えるのであります。まあ、本年も実はそういうわけで千円という繭の最低価格ではこれはいけないというふうに考えまして、いろいろまあ御承知のように先般繭糸価格の安定審議会も開きまして、大体三十五年度は一千百円余のまあ価格でいこうというふうに、まあ漸次いろいろ客観的な諸情勢とにらみ合わせながら、繭価の維持に努めていくという方針をとって参っておるわけでございます。
  75. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 それではまあ方向を変えて農政一般についてほんの一、二だけお伺いして終わりたいと思いますが、農林省としてはいわゆる食糧増産政策を一時とっておった。これがやっと適地適作へと移行してきた。ところが、価格安定の政策が伴わないので、先ほど来申し上げておる繭糸の暴落、あるいはまた適地適作で酪農を奨励して、農民が粒々辛苦してようやく牛の乳が出るようになつたら、生産過剰でこれは安く買いたたかれるという、こういう事態になって価格安定ということがこれに伴わない、こういう事態を引き起こしておる。これははなはだまずい農政の一つの例だと思うのですが、この点いかがですか。
  76. 小枝一雄

    政府委員(小枝一雄君) 今日わが国のまあ農業諸般情勢考えますというと、今日問題になっておりますのは、御承知のように価格の問題だろうかと思うのであります。今日まあ農家の所得が他の産業に比べまして非常に低いので、これを他の産業と所得の均衡をはかるような方向に日本の農業を向かわしていかなければならぬというので、鋭意調査を進めまた努力もいたしております。ことに御承知のように、政府が昨年以来農林漁業政策調査会を設けまして、これを調査いたしておるのもそういう趣旨からでございまして、この価格の安定ということは最も大事なことでございますが、しかし、ただいま御指摘のような繭糸の価格の暴落もかつてありました。また牛乳が非常に安くなりまして、生産費を償わないというような状態のときもございまして、私ども非常にこの点については憂慮をいたしまして、今日酪農にいたしましても、将来わが国の国民の体質の改善あるいは健康の保持、いろいろそういう点から考えまするときに、食生活の上でどうしても将来伸ばさぬばならぬものは牛乳だろうかと私ども考えておるのでございますが、そういう意味において酪農を奨励いたしますというと牛乳が下がる、こういうことがありまして、非常に心配をいたしまして、自来いろいろとあるいはこれを学校給食に回し、あるいは集乳設備改善をはかり、あるいは流通部門のいろいろの改善をはかるというようなことも努力をいたして参ったところでございます。なお行政措置を講じまして、牛乳等におきましては、ただひとり農林省がやるばかりでなしに、地方の都道府県の協力を得まして、いろいろな協議会のごときものを作りまして、市価の維持に努力をして参ったところであります。牛乳のごときにいたりましても、今日ではやや安定した感はありますけれども、将来なお決して楽観を許さない情勢にあるのでございます。御指摘のように、わが国の農政の上におきまして、農産物の価格の安定をはかりこれを維持していくということは、最も重要なる問題の一つであろうと考えておるのであります。従いまして、われわれといたしましても、この問題には全力をあげてやるべきであると考えておるところであります。
  77. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 農林省としては生産性の向上ということを非常に強調してきておる。ところが、さっそく農民がその政策にこたえて乳もたくさん出るようになった、繭もたくさんできるようになった、そうなると結局買いたたかれる。政府としてはあわてて生産を制限する。これは繭についても、農林省は現に繭の生産を押えておるということ、これは現実の問題だと思うのです。そういうふうに生産性の向上を強調しておきながら、でき過ぎると、たくさんできると生産制限をやる。矛盾した政策がここに見られるわけであるが、そういうことでこのしわ寄せはみな農民にいっておるわけであります。ここにも大きな矛盾があるし、これは農政の後退ともいうべきもので、非常に重大な問題だと思うのです。こういう点はどういうふうに考えられるのですか。やはり生産性の向上で、生産高が上がれば販路を考えなければいかぬわけですね。そういう点に政府も責任をもって、作ったものについては十分これは見通しがつくように計画のもとに生産性の向上ということは考えられなければならぬわけですね。こういう点はいかがですか。
  78. 小枝一雄

    政府委員(小枝一雄君) これは全く先生御指摘の通りであると私も考えます。生産性の向上をはかることは必要でありまするけれども、生産をいたしまして物資の生産が増大するにつれて価格が下がるということでは、これは何らの効果も農政の上から考え、農家の安定の上から考えますとないわけでございますから、そういう点はあくまで生産性を向上する上におきましては、どこまでも需要供給のバランスの上に十分配慮を加えまして行なうべきであるということを、私も全く同感でございます。
  79. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 いま一つお伺いいたしますが、農林関係予算の国の全体の予算に対する比率を見ますと、戦後の面では昭和二十八年がたしか一六・五%、これはまあ最高であったわけですね、一六・五%。そして昨年は七・七、本年が七・四。そこでお伺いするわけですが、本年の面については少し率が上がったようですが、これは食管赤字の補てんのための大体百何がしか億は考えられておるし、災害対策。で、特に食管赤字などの面は農民に直接響く予算じゃないですね。そういうふうに昭和二十八年の一六・五%を最高として年々農林関係予算が国全体の予算に対する比率は年々低下しておるわけです。ここにも農林省のいわゆる農民に対するいわゆる農業政策がだんだん退歩しておる、結果から言うとそういうことが言えるわけです。こういう点はきわめて遺憾な点なんですが、そこで農民の全国民に対する人口の割合もだんだんだんだん漸減しておる。現在四〇%を割っておるのではないか、大体四〇%としてもそれに対するいわゆる農業国民所得は、今、間違ったら御訂正いただきますが、大体国民所得の一五%ぐらいしかないのではないか。大体四〇%の人口の農民が働いて、その農家の、いわゆる農民のふところへ入る農業国民所得が一五%。これはちょっと納得できませんし、農民がいかに苦しい生活をしておるか、この一点だけでもよくわかるのですね。四〇%の人口があるのだから、四〇%前後の国民所得があれば、農民も一般国民なみの生活ができる。ところが、人口では四〇%、収入では一五%、ここに、このことだけでも農民の生活の苦しい点が数字からうかがわれると思うのです。これはよほど抜本的な対策を講じない限り、農民は救われないと思うのですね。これは冷厳なる現実なんです。こういう予算が漸減しておるということは、こういうこと等も関係してしかも、農家にとって欠くことのできない肥料とか、農薬、農機具、こういうものは相当高く売りつけられておる。そして売るものは米でも麦でも、野菜でもくだものでも牛乳でも、先ほど言った繭でも、少し多くとれると安く買いたたかれる、こういうことを総合して現在の農民は非常に苦しい生活に追いつめられている、こういうことが言えると思うのですね。これはこのままでは相ならんと思う。しかも、このままでは相ならんならんで毎年農林関係予算は漸減しておる、こういう状態です。やはり何といっても予算は必要だと思うのですね。ところが、この大事な予算は年々漸減しておる。こういう事態を、農林省としてはこのまま放っては相ならんと思うのです。何とか抜本的な方策を考えておるのか、それとも福田農政になってもこういうことを相変わらず繰り返されようとしておるのか、大臣にお伺いしたいのですが、大臣お見えにならんから、政務次官責任をもってお答え願いたいと思う。
  80. 小枝一雄

    政府委員(小枝一雄君) ただいま御指摘になりました農林予算が漸減しておるではないかという御指摘でございまして、これはただいまお示しのように、昭和二十七年を最高潮といたしまして昭和三十三年ごろまで漸減をいたして参りましたことは事案でございます。本年は国民の総所得につきましては先生御指摘の、お示しの通りに、大体総所得の一五%程度を前後いたしておると考えます。予算は大体昨年総予算に対する七・四%程度が今年は八・の幾らか、わずかでありますが上回っておる状態だと考えておりまするが、いずれにいたしましても、この農林予算は今日のわが国のほとんど人口の半数を占めておる農村の状態から申しまして私どもも全くこれは少ないものと考えておるのでありまして、何とかこれをふやしたいという考え方のもとに、実は予算の編成当時におきましても、いろいろ政府部内におきましても、努力をいたして参ったのでございますが、御指摘のように今日の予算現状にありますことは、私どもも将来大いに努力をしなければならん問題と考えておるところでございます。ただいまのところ政府考え方といたしましては、この農林漁業が他の産業に比べまして、非常に低位にあるということは、いなみがたい事実でございましてちょうど昭和三十二年の当時であったと考えますが、他の産業が二〇%前後伸びておりましても、農業はわずかに七%程度しか伸びてない。本年の経済の見通しから申しましても、他の産業が六%以上伸びましても、農業は三%程度しか伸びないという実情にあるのでございます。そういう点を考えまして、日本の農政は決して貧困であってはならない。どうしてもこの予算の上におきましても、増額をいたしまして、またこれを予算を用いる上におきましても、十分これを生かして使うことに努力をしなければならんと考えますから、今私ども考えといたしましては、そういう所得の較差を均衡いたしまして、農村の生活の向上、農民の経済の上昇をはかるために、いろいろな根本的な施策をこれは行なうべきである。かような考えをもちまして、御承知のように政府におきましては、農林漁業問題の基本調査会を今設置いたしまして、本年度の末をもってその調査が結了いたす運びに相なっております。従いましてこの調査の結果を見ましたならば、政府といたしましても、当然この抜本的な農業政策に対する施策を考えなければならん段階に相なっておるところでございます。そういう点がありまするが、しかしながら私どもといたしましては、このただ農林漁業調査会の結了を待ってというわけに参りませんので、その間において結論の出ておりまする問題につきましては、先ほど先生御指摘になりましてあるいは畜産方面におきましても、来たるべき事態に対処いたしまするために新しい施策をいたし、果樹の方面におきましてもただいまいろいろと御指摘をいただきましたような問題につきましても、いろいろな予算の上におきましても配慮を加えて参っておるのであります。しかし、何と申しましても、この基本問題調査会を設立いたしまして、根本的なこの施策をいたしておりまする関係上、その結論を待って抜本的な対策を講ずることが合理的でもあり、また間違いのない施策を講ずるゆえんであるかと考えまして、私どもはこの大きく調査会の結論というものに期待をいたしておるところでございます。十分急ぎまして調査を完了いたしまして、わが国のこの農政の上に一新紀元を来たすことのできますように意を用いて今日より進んで参りたいと考えておるところでございます。
  81. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 最後に一点だけお伺いしますが、先ほど三つあったんですが、三十五年度の農林関係予算の全額に対する比率ですね、八・何ですか、あとでいいのです。それと食管赤字に対する対策費ですね、予算を組んであるでしょう、これは何億かということとそれと災害対策費、これは何億か、この三点、これは後ほどでもいいですから。今わかれば……わかっておりますか。わかれば今お知らせいただきたい。
  82. 斎藤誠

    政府委員(斎藤誠君) 総予算に対しまする農林関係予算の比率がどうであるかという点でございますが、三十四年度は七・五%に対しまして、三十五年度は八・四%でございます。それから災害関係対策といたしましては、三十五年度百三十億四千万、それから御承知のように昨年は伊勢湾高潮対策というものが取り上げられまして、それを申し上げますと、二十五億九千三百万、これが災害関係の三十五年度予算でございます。それから第三点の食管会計の繰り入れでございますが、これは三十五年度百十二億繰り入れということになっております。
  83. 辻政信

    ○辻政信君 大臣に聞くつもりでおりましたが、小枝さんの御答弁聞いておりますと、大臣以上に農政の通のように思います。そのつもりで御答弁を願いたい。きょう私が質問するのは、決して皆さんのあげ足を取る質問ではない。実は二、三日前宮崎県の山奥に開墾するために入植した人が、十数年間苦しみ抜いて、その心からの叫びを私に資料として送って参りました。先ほどあなたの方の農地局の総務課長に資料をお渡ししておきましたから、それをお読みになって、ただいまからの質問に対してお答えを願いたいのであります。それはただいま伊藤委員からも、現在の農林行政の貧困であることをつかれましたが、私は貧困な農政の中でさらに貧困なものは何かといえば、山地農村と開拓民に対する農政であります。終戦後政府が開墾を奨励して、復員軍人やら引揚者を未墾地に入植させたが、今まで全国でどのくらいの入植者があり、また、現在それがどのくらい歩どまりとして残っておるか、その生活状態が大体どうなっておるかということを、まず最初にお伺いします。
  84. 正井保之

    説明員(正井保之君) 終戦後入植いたしました戸数は、二十万六千戸でございます。そのうち離職いたしましたものが五万七千戸、現在残っております開拓者十四万九千戸でございまして、これは三十四年度の末の数でございます。
  85. 辻政信

    ○辻政信君 二十万六千入れて、五万七千が食えなくなって離脱をし、十五万が歩どまりとして残っておる。しかも、これは辛うじて残っておるのであります。満足して残っておるものではない。そこで、国が最初開発営団を通じ、それが廃止後は国が直接これらの開拓事業に予算を投入しておりますが、今日までどのくらい入れられておるか、世襲資金はどのくらいになっておるか、それをお伺いしたい。
  86. 正井保之

    説明員(正井保之君) 国といたしまして開拓事業に対しましては、基礎条件の整備といたしまして、道路ですとか、あるいは用水のための事業、これをいたしております。また、いろいろ開墾いたしますにつきましては、新たに土地を貸しまして、未墾地を畑にし、あるいは住宅を建てる、あるいは多くの場合、非常に酸性が強うございますが、これを除去するために酸土改良、こういったようなことで、これに対してまた事業を実施いたしております。そういったものを合わせまして、終戦後三十四年度までに約七百九十億円の政府の財政投資をいたしております。資金といたしましては、たびたび制度は変わりましたが、緊急開拓以来、開拓営農の実態によりまして、適用の基準なり方法も変わって参りましたが、三十五年度計画を含めまして約三百八十六億の金額でございます。
  87. 辻政信

    ○辻政信君 今承りますと、合わせて大体一千二百億程度になる。これはばかにならぬ予算であります。しかも、その成果というものはほとんど現われておらない。残った十五万戸が食うや食わずであえいでおるという状態になっておる。そこに農政の上において大きな反省を必要としないか、こういうことを私実は感ずるのであります。特にあの最初の時期におきましては、営団が最初の指導を誤っております。そうして全く営利主義になって開墾面積を実力以上に広げて、帳簿の上で利ざやをかせぐ、こういうことが行なわれております。そのために廃止になったのでありますが、開墾能力をオーバーして、あるいは肥料を施す力のない者に帳簿の上だけで耕作面積を増加させて、それに相当する補助金、そういうものをこの営団が取っておる。これは幾多の例がございますが、その結果があの廃止になっておるわけでありますが、営農資金は現在農民が返済する自信がない、また希望もない者に貸し付けておる、営団が。農民はごめんこうむる、返せないからといって断ったものまでも、これは将来補助金になるから今のうちに借りておけ、こういう指導がなされております。その結果、国から出されたものが三百八十六億円という巨額に達しております。それがはたして活用されておるかどうか。私の調べた資料によりますと、開拓組合では一戸平均現在でも三十万円の借金を背負っておるのです。イモを作り、麦を作っても、ほとんど売れない、農機具もだめだ、営農条件もきわめて悪い所に苦労をしながら、三十万円の借金をかついで生活にあえいでいる、こういう実態が出ている。そこでその年賦償還に四苦八苦している実情でありますが、政府はこれに対してどういう対策をとられようとするのか、それを承りたい。
  88. 正井保之

    説明員(正井保之君) 終戦後、緊急開拓といたしまして農地開発営団等が中心になって、いろいろ開拓のために入植された方々のめんどうを見て参ったわけでありますが、二十二年には制度を切りかえまして直接国が事業をやる、それから資金につきましても特別会計を設けまして融資をするというふうな態勢を整えて参ったわけであります。何と申しましても、開拓地はいろいろと条件が整わない原野やらで、残されたところを開拓したわけでありまして、相当の操業的な投資を必要とするわけであります。これにつきましては、いろいろ予算措置をいたして参ったわけでありますが、必ずしも十分でなく、開拓者の現状は決して楽ではない、相当数の者が振興のために特別の対策を必要とするというふうな状態にございます。それで私どもといたしましては、その後営農資金につきまして融資の保証制度を設けましたり、あるいはなお十分でないものにつきましては、三十二年に開拓者の振興のために臨時措置法というものを作りまして、現在その振興計画に基づきまして、あるいは建設投資をいたしたり、資金の貸し出しというものをいたしております。特に償還が非常に困難な状態でありまして、やはりだんだんと生産の条件は整備して参っておりますわけですが、その償還のために順調にこれを返し、あるいは生産を拡大していくということが困難でございますので、三十五年度にはこれの条件緩和、負債につきまして償還条件の緩和、これをいたすために特別の立法措置等もいたしまして、御審議をお願いする段取りにいたしております。
  89. 辻政信

    ○辻政信君 海外移民もけっこうなんです。けっこうなんですが、国が今までのように、千二百億円の金をつぎ込んで、そうして入植させておる国内開拓民、それを救うために積極的な方法が講ぜられなければならぬ、こう思うのであります。山間僻地に、昔からくわの入れたことのないところ、非常な悪条件と知りながら、言語に絶する苦労を耐え忍んで開拓に従事した人が、十数年たった今日なおろうそく、ランプの下で苦しい生活をしているということについては、これは何としても国家が本気でやっておらない、こう言われてもやむを得ない。ただいまのお話しで、償還条件の緩和といわれるが、五年で返すものを十年に延ばしても、あの貧乏な農家が三十万円の償還金を十年で返せる道理がない。子供の学用品を買うのに困り抜いておるのが現状です、大部分。それを見ると、むしろ棒引きをするとか、営農資金として貸し付けたものを補助金に切りかえるとか、根本的な対策を、政務次官どうですか、まだ決定しておらぬようですから、法案を出される前にもう一回大臣と相談されて、こんなに苦労しておる者からしぼるという手はないでしょう。余っておるところから金は取ればよろしい。もう少し根本的に考え直す意思はないか、政務次官からお答え願いたい。
  90. 小枝一雄

    政府委員(小枝一雄君) わが国の開拓行政の今日まで参りました実情につきましては、ただいま辻先生お話しの通りだと私も考える。私ども特に憂慮いたしておる農政上の一大問題でございます。戦後、御承知のように、わが国が食糧増産第一主義をもちまして、いかなるところでもまず食糧を作って国民に食糧を供給すべきであるという建前から、いろいろ何と申しますか、その当時の情勢といたしまして、いろいろ一方においては開墾し得るところはいかなるところもこれを開墾していく。また、土地改良等におきましても、農民の利害得失あるいは山間僻地の貧農というよりも、むしろ経済状態において優位に置かれておるところの広いいい土地に持っていって、経済効果第一主義をもってわが国の食糧増産対策が行なわれて参りましたことは、先生御承知の通りであるのであります。開拓の問題におきましても、その範囲を脱することができないで、一日も早く失業者をそこへ集めていこう、開拓によって一つのよりどころを作ろうということでやりました結果が、こういう営農上の問題が起こりまして、非常に困窮な入植者がたくさんおるわけであります。中にはこれは成功しておる者もあるのでございますけれども、御指摘のように、終戦当時二十三、四年ごろまでにやりました入植者が特に困難な状態になっております。そこで、政府といたしましても、今日までいろいろな手を打ちまして、あるいは貸し付けたお金の元利の償還期限の延期をいたしますとか、さらにこれに水増しをいたしまして貸し付けをいたしますとか、いろいろな方法を講じてやって参ったのでございます。そこで、昨年の秋以来農林省といたしまして考えましたのは、いろいろ財政当局とも相談をいたしました結果、ようやく結論を得て、開拓融資保証法あるいは振興法等の一部をこの国会で御審議を願うことにいたしてある程度の緩和をいたすつもりでおるのであります。しかし、ただいま先生御指摘のように、ほんとうに気の毒な人々が多数おるわけでございますので、これに対しては、何とか抜本的な改正を加えなければ、このままで放任いたしていきましても、いつまでたってもこれは浮かぶ瀬がないわけでございます。そういう意味でいろいろ検討いたしました結果、直ちに農林省といたしまして、実はこれを棒引きをいたすということも考えられませず、さればといってこれをいつまでも放任しておくわけにいきませんから、一つ衆知を集めてこの善処方を今後すみやかに解決する方向に持っていこうではないかというので、今回この営農振興協議会というものを設置いたしまして、特に開拓者の善後処置の問題、これらのいかに救おうといたしましても救うことのできない人を、いよいよ最後の処置としてどういうふうに持っていくかということを、最も抜本的な問題を協議するために協議会を作ることにいたしまして、それによって結論を得て、すみやかに処置を講じたい、かように今考えていろいろ努力をいたしておるところでございます。
  91. 辻政信

    ○辻政信君 棒引きしてもいいと思うのですが、それができないならば九十九年くらいの年賦、長年にわたる、実質的に棒引き同様に考えたらどうです。実際十五万戸のうちの八〇%は苦しみ抜いています。私も入植者で大金持ちになった二、三の例を知っております。これは終戦後大都市の近くにあった陸軍の演習場を払い下げ受けた連中が住宅地に売りましたから、坪一万円で飛ぶように売れておる。そうすると一町もらった連中が数百万、あるいは千万円をこえる金持ちになったり、これはごくわずかな特例なんであります。ほとんど大部分は大都市から離れた遠い山地僻村に入れられて、それこそ昔から全然だめなところへ国が奨励して連れていったのですから、個人の責任じゃない、希望でもない。国がやらした。そうして結果はこの通りになったから、国が責任を持って貸し付けたやつは棒引きにできないなら、九十九年間の延べ払い、実質的にこれを棒引きしたと同じだけの扱いをおやりになるように、おそらくこのことについては、社会党も共産党も自民党も御異存がなかろうと思う。超党派でこの気の毒な者を救え、遠慮をなさらずに実質的に棒引きできるような措置をぜひ一つ責任を持ってお考え願いたいものです。大臣にかわって次官の御答弁を。
  92. 小枝一雄

    政府委員(小枝一雄君) 先生御指摘のように、このほんとうに困っておるところの、持ちもさげも一口にならない、と申しますかこういう開拓者の方も一部に相当の数があるということを私も承知いたしておるのであります。従いまして、ただいま申し上げましたように、振興協議会を設置いたしまして、これによって結論を出しましてただいまのところといたしましては、考えておりますのは、この予算措置の開拓に対する七割はこの振興対策に向ける、新しく開拓をするというよりも、今日開拓に従事しておるところの人たちの方向にこれを使うということを考えております。それから据え置き期間は五カ年といたしまして、償還期間は十五年くらいにさらに引き延ばしていこうという一応の考えを持っております。しかし、こういう対策をもって私たちもこの問題が根本的に解決がつくものと実は思っておりません。ただ、どうも私一政務次官といたしまして答弁をするのでございますので、責任を持ってどうこうということは申し上げかねるのでありますが、はなはだ相済まぬと思いますけれども、しかしまあ、われわれの党内におきましても、先生のおっしゃるような意見を持っておる人もたくさんある。それからなお今日もこの開拓の窮状を見ておるところの人々は、これを思い切った一つの抜本的な対策を講ずべきであるという考え方の人が大部分であると考えます。従いまして、私たちはこの営農振興協議会に深く期待をいたしまして、その結論を得て一つ先生のおっしゃるような御期待に沿い得る方向に一つ努力をいたしていきたい、かように考える次第であります。
  93. 辻政信

    ○辻政信君 開拓民はこういう苦しい生活をしているのに、各県の県庁の開拓課ではどうです。多いところでは百何十人かの役人がこの開拓業務に関連して月給をもらっておる。そうしてほんとうの行政の対象になっておる士五万戸というものは食うや食わずになっておる。それを育てようとして一つの県に百七十何名かの役人が、その開拓民の指導のために月給をもらっておる。役人を養うための開拓者なのか、開拓民を育てるための役人なのか、逆になっておるような感じがするがどうですか。
  94. 正井保之

    説明員(正井保之君) ただいまの御質問でございますが、一つの県で県庁に正名以上、の開拓の関係の人が勤務しておるという状態は、実はないと思うのでありまして、おそらく何かの間違いじゃないかと思います。現在開拓者につきましては、その営農指導のために、一般の農家のための改良普及員とは別に、約八百名あまりの営農指導員を置きまして、この人たちは専心開拓者の広範にわたる営農なり、生活なりあらゆる面につきまして相談に応じております。またこの営農指導員の勤務につきましては、できるだけたとえば地方事務所、こういったところに腰を据えることなく、一線に活躍させるというような指導をいたしております。従いまして、なおそういった点について不十分な点もあろうかと思いますが、今後ともそういった面で第一線の現地の農家の相談相手になるというふうな方向に、さらに指導していきたいと思います。
  95. 辻政信

    ○辻政信君 なぜ山地農村とか、開拓民が政治的に見捨てられておるか。私は農村を見ておりまして常識的に目にうつりますのは、米作地帯は割合恵まれております、補助金にしてもすべてが。そうして米作がちょっとよくなり、豊年になりますというと、農村にテレビ、洗たく機、そういうものを盛んに買い込んで、タイル張りのふろまで作っておる。それでも都会生活から見れば決して上じゃない。しかし一方山地農村、畑作農村に行ったり、開墾地をのぞいてみるというと、今でもろうそくとランプのもとでボロをつくろっておるという状態です。そこに恵まれない人たちが、政治家から見捨てられておる人たちがいる。こういう人たちは政治運動もやらないし、数は少ない。代議士は皆平地農民の組織されたものを地盤にして選挙をやるから、彼らは平地には橋をかける、学校を建てる、補助金を取るが、山地とか開拓地で苦しみながら生活しているものを救おうという政治家は少ない。そこを農林省ではよくお考えになっていただきたい。よくお考えになってこれを救わないというと、農村はもちろんほかの都会よりでこぼこがあると言いながら、そういう農村自体でも山と平地で非常にでこぼこがある。これをやるかやらぬかが政務次官が大臣になれるかなれぬかの試金石ですから、あなたは農村に非常に詳しい方ですから、これを一つほんとうに真劍に救うように考えていただきたい。これで私の質問を終わりますが、最後に大臣にかわって政務次官一つ御答弁を願いたいと思います。
  96. 小枝一雄

    政府委員(小枝一雄君) 恵まれない山間僻地の農業を振興させるということは、今日最も必要なことでございまして、辻先生御指摘の通りでございます。従いまして農林省といたしましては、今日、一昨年以来畑地改良ということに全力をあげまして、土地改良の補助あるいは国営の対象に畑地を取り上げましてこれを推進して参っておるところでございますが、これもその現われの一環だと考えております。今後とも十分御意見のあるところを尊重いたしまして、私ども恵まれない農山村の開発のために全力をあげていかなければならぬ、かように考えておる次第でございます。
  97. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 青果物に関する行政についてでありますが、先ほどいろいろこの青果物に対する流通面についての抱負を、あるいは政策等を承ったのでありますが、今回振興局に生産と流通を一本にした園芸課というものができる。そこでそういった問題についての所管をされるわけでありますが、ところが、この園芸課というのは従来ありました園芸特産課の園芸をやっている面と、農林経済局にありました市場課から流通関係をやっておった者五名、青果物の仕事をやっておった五名が入りまして、先ほどおっしゃったような非常に内容豊富な青果物行政をおやりになるのでありますが、これは一体そういうことでできるものかどうか、これは従来御承知であろうと思うのでありますけれども、流通面に対する行政は、一番大きな盲点になっておることは御承知の通りであります。しかも、青果物と酪農、これは日本農業におきますところの大きなともしびであるわけであります。その酪農はここで問題にいたしませんが、この青果に対して流通関係をやる者は五名だ、こういうことで先ほどのようなことが一体できるものかどうかという点を非常に不安に感ずるものであります。なおまた、この流通対策は御承知の通りに非常に大きな問題であって各方面の努力がなければできない、酪農においてもそうであります。五名で簡単にできるものかどうかという点を伺いたいと思います。
  98. 斎藤誠

    政府委員(斎藤誠君) 御指摘の通り 最近におきまする果樹行政の重要性にかんがみまして、これらを所管するところの機構につきまして、これを強化して参る必要があろう、こういう見地に立ちまして今回取りあえずの第一の措置といたしまして設置法の改正を提案し御審議を願っておる次第であります。従来これに関する行政が、生産部面におきましては振興局、流通部面におきましては経済局、さらに加工品の段階におきまする行政につきましては食糧庁で行なうといったような分け方で、いわば段階的な機能に基づいてそれぞれ食糧なら食糧という面で担当し、あるいは流通なら流通という面で担当する、生産なら生産という面で担当するといったような機能に対応いたした分け方をいたしておりましたが、これはどうしてもやはり一元的に生産から流通、消費にわたりまして統一的な方針で処理する方がより強力な行政ができる、こういう見地に立ちまして、今回経済局にある所掌事務を振興局に移す、食糧庁における行政につきましては、これは振興局と食糧庁の共管でやって参る、こういう措置をとることにいたしたのであります。御質問の点はかような担当の課を設けて振興局で所掌する場合に、わずか五名ではとうてい処理できないではないか、こういう御質問のようでございますが、現在これを担当しておりまするところの職員が十七名、それから御指摘のように経済局から移します者が五名、それから官房の定員を振りかえて振興局に回わすものが一名、合計いたしまして差しあたり二十三名でこれらの行政に当たって参ろう、こういう考え方を持っております。これに伴いまして設置法が通りますと、御承認得ました後におきましては、振興局の中に園芸課を設けて独立の一課を設ける、こういう考え方でおりまして、今申し上げました二十三名もそれらの課を構成するものとして考えておるわけでございます。行政自身におきまして人数が多いか少ないかという点につきましては今後の行政推進、実行の仕方等とも関連いたしまして、われわれもこれで十分であるとは必ずしも考えておりませんけれども、さしあたりの発足の態勢といたしましては、一応の形を整えまして、対処して参りたい、こういうことで発足いたしたわけでございます。
  99. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 食糧庁の食品課で扱っておりましたジュース、カン詰、これについてはほとんどやっていなかったわけでありますが、先ほどカン詰やジュースの問題が出ましたけれども、ほとんどやっていないというふうに思っておりますが、それはおきまして、次の大臣の説明の第二に出ておりますところの放射線育種場、これについて伺いたいのでありますが、これは相当危険な職場になるわけでありまして、従来身体障害の問題だけを扱っておられたようでありますが、最近になりましてから、遺伝学上の問題も取り上げておるようでございますけれども、ここに従事する公務員について、危険手当等の問題について考えておられるのかどうか。さらにまた、茨城県の大宮町に置かれるわけですが、危険であるために、宿舎等はこの放射線育種場には置かないで、そこから三キロ半ほどへだたったところに置かれるようですが、隔僻地手当とか、あるいは地域給とか、そういう問題について考えておられるのかどうか、この二点を伺いたいと思います。
  100. 斎藤誠

    政府委員(斎藤誠君) 第一点の放射線育種場の設置に伴いまして、それらの仕事に従事する職員の危険手当を特別に考えておるかどうか、こういう点でございます。放射線育種場の設置につきまして、技術的な障害防除の点につきましては、担当の専門家もおりますので、もし御質問がありますならば、さらに詳しくお答えいたすことにいたしまして、御質問の要点だけにつきまして、私から簡単に申し上げますが、お話しのように放射線育種場を設置することに伴いまして、これらから出ますところの放射線につきまする十全なる措置をとって参らなければならぬということは当然でございます。放射線におきまして第一の放射線に対する危険防除の措置につきましては、その育種場の設計等におきましては十分配慮しておりますと同時に、さらにまた、それらから出てきます各種の散乱線等につきましても、人体に害を及ぼさないようにというふうな措置について、施設自身につきましても十分検討いたし、危険の障害のないような措置を講じておるわけでございますが、そういうことにいたしまして、危険手当を、従事する者に対して、危険があるというふうな状態にまずないような措置を、まず万全のかまえをとるということを第一に考えておるわけでございます。さらにまた、内容的な面におきまして、これらの従事する場合におきますいろいろな放射線障害の防除に関する国際的な基準等もございまして、現在のところ農林省がこれらの育種場設置につきまして考えておりまする構想は、今申しましたようなそういう基準に従って設置いたすことにいたしておりますので、さしあたりこれらに対する危険手当を出すという必要はないのではなかろうかというふうに考えております。現在の放射線に対する危険手当は、御承知のようにエキス線の、人体に対するエキス線照射の場合のみ危険手当が出ておるわけでありますが、それ以外のいわゆる放射線に対しましては、これらに従事する職員に対する危険手当は現在においては出しておらないわけであります。従いましてただいまのところは、農林省といたしましてこれに対する危険手当を出すということは考えておりません。  それから第二の、育種場設置個所が御承知のように茨城県の水戸市から約三キロ離れた大宮町に設置するということで、現在のところ考えておるわけでございますが、この土地につきましては、現在いわゆる勤務地手当といたしましては零級地でございます。これらの地域に従事する職員に対しまして、勤務地手当として今後出していくか、あるいは遠隔地としての条件に該当するかどうかという点につきましても検討しておりますけれども、今のままにおきましては、従来の遠隔地手当の基準に必ずしも合致しないといった面もございますので、私の方といたしましては、勤務地手当、あるいは遠隔地手当等との関係も十分考え合わせまして、今後どうすべきかということについて、もう少し検討さしていただきたい、かような考え方で、現在のところ、おるわけでございます。
  101. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 危険手当につきましてはエキス線だけというお話でありますが、今度の政府の出しました給与法案の中にも出ておりますように、特勤手当について今回考慮することになっておるわけであります。そういうことでありますから、こういう危険であるというふうにいわれているものについては、そういう措置をとられるように要望いたしておきたいと思います。  それから、これは三・五キロほど離れておるわけでありますが、山に入っておる。そこで、いろいろ交通が不便だ、現在のところ乗用車も通りにくいというようなところのようですが、住宅もそこには置けないので、大宮町に置くということですね。さらにこの育種場は、県なり、大学なり、民間にも開放するということであります。従ってそういう方面からの利用もふえる。さらに、農林省の各試験場にありますところの育種関係との関連も非常にふえてくるだろうと思うのです。こういう点からいって、交通関係は非常に不便じゃないかというふうに思っておりますが、その点についての配意があるのかどうかということ。それからもう一つは、これは民有地の側にしわが寄るようでありますが、この民有地の問題について、問題はないのかどうかという点について、お伺いいたします。
  102. 河原清

    説明員(河原清君) ただいま御質問の第一点の、交通関係でございますが、現在茨城県で単県の林道が、三・六メートル幅員の林道によって、ここへ行くことができるようになっておりますが、私ども施設をすることにつきまして茨城県当局が非常に御協力下さいまして、この林道を六メートル幅員に拡張して下さるということで、大体この六月ごろから、この方面の仕事を、道路の拡張工事をしていただく予定になっております。それからなお、交通関係につきまして、とりあえず私どもの方では、事業にも使えますように、事業用を兼ねまして、三十五年度で、ジープを一台買っていただきまして、とりあえず交通並びに事業の足しにいたしたいと思っております。  それから第二点の、民有地買収について、民間にしわ寄せがいくというお話がございましたが、これにつきましては、確かにその懸念を私ども当初から持ちまして、当初、なるたけこういう民有地にしわ寄せのいくようなところを避けたのでございますが、万やむを得ずこの大宮町に設定するようになったわけでございます。つきましては、ちょうど大宮町の同じ大字のところに那珂川の大場河原というところですが、ここに昭和二十二年以来開田計画が進んでおりまして一時これを中止しておりましたのを、さらに話が昨年の十月進みまして、三十五年度、三十六年度、この二年間の計画でもって総計約六十四町歩の開田並びに開畑計画が完了する予定になっております。それで民有地を買収対象になる方のためには、町並びに県としてもこの新規開墾地に優先的に入れるということで大体のお話し合いがつきまして、現在私どもの予定しておりますところの地主のうち、その新規開墾は困る、ぜひ既開墾地をほしいという希望されている方の面積が約一町九反くらいございますが、これは別途町の有志その他の方から約二町歩の既開墾地を開放されることになっておりますので、大体放射線育種場を開設するにつきまして、失われる民有地の方々は、全部新たに土地が取得できる予定になっております。
  103. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 次に、林野庁の機構の問題について伺いたいのですが、林野庁は五つの営林署を新設するということで、さらにまた、各営林署、三百三十八ありますところの営林署に署長の下に次長を置くということで、約五百七十名ほどの定員を要求しておられるようでありますが、これが全部アウトになって、アウトになりましたけれども三つの営林署は新設をする。それから全党林署三百三十八の営林署に次長を置く、こういうことのようでありますが、定員が取れないのに新しく三百三十八というポストをふやす必要があるのであるか。こういう点についてさらに新しい営林署が三つできるのですけれども、定員は全部取れないわけですね。にもかかわらず三百三十八という営林署に次長を置く必要があるのかどうかという点について伺いたいと思います。
  104. 丸山文雄

    説明員(丸山文雄君) 定員は取れなかったということは、御質問の通りでありますけれども、何分にも最近いろいろまあ事務その他の関係で営林署の署長の仕事の範囲が非常にふえておりますので、それをまあ補佐する意味でいわばまあ次長と申しますか、管理官という言葉を使いたいと思っておりますが、そういう意味で置きたいと思っております。
  105. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 仕事がふえたとおっしゃいますけれども、過去六、七年にわたって署長、課長という関係でやってこられたわけですね。で、今回全営林署に置く、営林署によってはそれは今おっしゃったような実情のあるところもあろうと思います。しかし、画一的に全営林署に置かねばならないということは納得しがたいと思うのです。どういう仕事がふえてそうなるのかどうか。定員が取れないのに、特にポストをふやす必要ないじゃないかとこう思うのですがね。
  106. 丸山文雄

    説明員(丸山文雄君) 具体的にどういうものがどうなったというふうなことを一律に申し上げるようなわけには参らないわけでありますけれども、実はこの問題は数年前からその必要性についていろいろ検討してみたのですが、そういう関係で、まあそろそろ実現をしたらどうかということで置くことになったわけでありますが、定員につきましては御存じの通り約全体で二万五、六千人おるわけであります。その中から三百何人ということになりますと、理論的には定員がないのに置くのはおかしいということが成り立つと思いますが、今申しましたように二万いくらの中の三百何人ということになりますと、実際問題としてその程度のものは内部で活用できるのじゃないかというふうな考え方で置くことにきめてあるわけであります。
  107. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 どういうわけでということは、なかなか申し上げにくいというような話しで、そういう重要なポストを、営林署長の下に次長という重要なポストを一律に全営林署に、三百三十八置くというふうなことは、やはりこれは重要な問題だと思いますので、はっきり理由のないのに、ここではっきりできないような、そういう次長制というものをしく必要はないのじゃないか。特に特殊な営林署等がありますればそれはいいでしょう。しかし、一律に全部の営林署にみな次長を難く、こういう考え方はいたずらにポストを作るということになりはしませんか。さらにまた、今度林野庁としては、名古屋営林局と大阪営林局、さらに熊本営林局、この三つに係長を一律に全部置かれるようでありますが、そういうポストをむちゃくちゃに作るようなことは困るのじゃないかと思う。三営林局に対します係長の問題ですね。そういうポストをふやすことは困ると思うのですが。
  108. 斎藤誠

    政府委員(斎藤誠君) 今回営林署に署長のほかに次長格のものを設けるということにいたしたのでありますが、これは農林省令に基づきまする内部的な規定といたしましてそういうポストを設ける。従来も農林省の中におきまして省令で設けている特殊の官、たとえば考査官、小作官とか、そういったようなものも省令で便宜設けることにいたしておりますが、御承知のように最近の営林署の所掌事務につきまして全般としてなかなか事務分量がふえて参りました。特にまた、その一つとして労働行政というような面におきましても、従来の営林署の業務に比べまして、特段と重要性を増してきたといったような面もございまして、なかなか営林署長一人で全体の業務を切り回すというわけにも参らないような事態が多々あるわけでございます。そういうことで営林署の所掌事務を総括整理するというふうな意味におきまして署長を補佐して、その指揮命令によって、命を受けて総括整理するという意味のポストを設けることにいたしたわけであります。これは従来の組織の中におきまする人をそういう形において使うわけでございますから、結局特別にほかの仕事がそれによって非常に制約を受けるとか、あるいは下の方が労働過重になるということではなくて、むしろ営林署自身における署長の業務分量が非常に多くなっている。それを次長を設けて、次長格のものを設けまして、総括整理し、補佐させる、こういうことにいたしたわけでございます。御趣旨は御了解願えると思うのでございます。
  109. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 官房長、営林署の実情はよく御存じないだろうと思うのですけれども、今御承知のような御答弁でありますから。営林署長の下には課長が大体五名おります。従来それでやって参ったので、内部の問題だといっても、多いところは六名の課長がおります。それに次長というのを全営林署に置かなければならないという理由は、どうも納得できがたいのですが、さらに先ほど申し上げましたように、大阪、名古屋、熊本の営林局に全部係長を置く、新しいポストを作ることなんです。役所でいえばポストを作ることなんです。内部の問題であっても、新しくポストを作ることなんです。どうもそういうポストを設けることに非常に御熱心のような気がするのですが、食糧庁は、今度は御承知の通り全部の食糧事務所に総務部長を置こうというようなことをやっておる、ポストを次から次に作られたのではどうなんですか。
  110. 斎藤誠

    政府委員(斎藤誠君) 今御質問になりました、営林署に次長を設けるという点につきまして、何かポストを設けるための手段として、ポストのためのポストという意味で次長格の者を置いたというふうに御理解でありますならば、われわれの意図と全然違うのみならず、あるいは私の説明の不十分な点でございまして、先ほどから申し上げますように、営林署におきます最近の業務、特に労働行政の面におきましてずいぶんと重要性が増してきたわけであります。のみならず、それによりまして、営林署長自身が全体の業務に事欠くというような面も出てきたのでございます。そういう態勢に対応いたしまして、新しく次長格を設けて総括整理職を置いたということでございまして、これによりまして新しく定員をふやして、そしてそれによってほかの労務が圧迫されるとか、あるいは過重になるとかということでありますならば、御指摘の点の懸念も生ずると思いますが、そうじゃないのでありまして、今の中におきます機構強化の手段といたしまして、こういう措置をとることを部内限りで確立いたしたのでありまして、決してそういうふうな形で作ったということじゃないという点を一つ御了承願いたいと思っております。
  111. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 先ほどから質問をいたしております大阪営林局、名古屋営林局、それから熊本営林局に全部係長のポストを作るということについては、どうですか、相当な数ですよ。御存じありませんか。御存じなければ……ポスト、ポストじゃまずいですよ、これは。さらに、今の次長というのは、労働対策のために置くのですか。そうでありますれば、これはもう少し論議をいたしたいと思います。労働対策のために置くというなら。
  112. 斎藤誠

    政府委員(斎藤誠君) 第一点の各営林署における係長の問題でございますが、これは多少鶴園委員の御指摘の点とあるいは私の答えます点が食い違うかもわかりませんが、従来農林省といたしまして、現在本省におきましてはもちろんのこと、各地方、出先機関におきましても、責任の明確化をはかりたい、執行の態勢強化したい、こういう観点から、いわゆる慣習的に置きました係長、あるいは班という点をもっと明確化したい、ただ何々係という係を呼称するというようなことじゃなくて、規則上何の係を幾つ置くとかということを明確にしたい、本質におきましては、これは二、三年前から、ほとんどそういう形でもって農林大臣の承認を受けて各局、課の班、係を全部明確化する措置を講じました。それにならいまして、各地方出先機関におきましても、この係を明確化していく、こういうことで、中央にならって職制を明確化するという意味で、各営林局、それから各食糧事務所において鞭撻督励さしてそういう措置を今とらせつつある。私は今の御指摘の営林局の点も、その職制をほかの局にならってその局においてもやらせるという意味の係の新設ではないかと、こう思うのでありますが、御質問の点と違いますればあらためてまたお答えしたいと思います。  それから第二の御質問のこの次長格は労働行政だけを担当するのかという御質問でございますが、そうではありません。営林署長の命を受けまして署内の事務を総括整理するということでございまして、特にそれだけをやるというものではございません。
  113. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 営林署は定員は三十五名前後です。それに対して署長がおって、今度新しく次長を作られると、そのほかに課長が五名おる、そのほかに今度は労務担当主任、こういう人たちがいる、それに係長をまた新しく五つ六つ置くと、これでは埋まっちゃいますよ。これは私はほんとうに無理なことだと思うのです。さらに、担当区主任、事業所主任というのがおります。これは担当区主任、事業所主任というのをさらに今度管理職にするというようなお話しのようでございますが、そういう計画を進めておられるのかどうか。ポストばかり作っても、これは林野行政、ほんとうに困った問題じゃないかと思います。こういうことになったんじゃ。伺いたいと思います。
  114. 斎藤誠

    政府委員(斎藤誠君) 今御指摘になりました点によりまして、非常な調度品がふえるとか、あるいはそれによって非常な格づけが行なわれるとかいうことによりまして、いろいろの弊害が出るということでありますれば、これはわれわれとしても厳に戒めるべき点であろうと思いますけれども、私が先ほど申し上げましたように、つまり綱紀の粛正ということにも関連しますし、また能率の増進ということにも関連いたしまして、やはりポスト、ポストの責任を明らかにする意味においては明確化する必要があると、こういう観点でまあ係等の整備をいたしておるということでございまして、それ以上の他意があるわけではございません。
  115. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 だからこれは官房長、私が申し上げているように、三十五、六人おるところに署長がおって、次長がおって、課長がおると、そのほかに係長が二人おるのです。一人の課長が三名程度掌握できないのですか。そのほかに係長を置くといったら埋まっちゃうじゃないですか。ポストでこういう林野行政やられたんではたまったもんじゃないと思いますよ。御検討を願いたいと思います。  林野庁が定員法は撤廃するという方針になっておりますか、庁としては。その場合に、撤廃した場合に、どの線から切って特別職にされるのか、あるいは公務員でないというふうにされるのか、そこら辺のところを伺いたいと思います。
  116. 斎藤誠

    政府委員(斎藤誠君) 林野につきましては、御承知のように五現業として一般公務員とは労働関係を異にしておるわけでございます。従って給与関係におきましても、予算上は給与総額できまっておるというような仕組みになっておりまして、一般公務員の給与の扱い方と違っておるわけでございます。現在におきましてそういう予算上の取り扱いのほかに、予算定数、定員というものが別にあるわけでございますけれども、この定員化の問題につきましては、一般の五現業ばかりでなしに、一般公務員の定員の問題につきましても、いわゆる常勤的非常勤職員の定員化の問題として現在いろいろ検討されておる点につきましては、当委員会におきましても先般私から申し上げた通りであります。その中でも一番定員問題といたしまして、五現業等の職員につきましては、今申し上げましたように、給与総額がきまっており、業務がそれに応じて運営されるということであれば、一般公務員ほど定員化ということを明確にする意義に乏しいではないかという意見が一部にあるわけでございます。農林省といたしましてこれに対して定員を廃止すべきであるかどうかということについては、まだ結論に至っておりません。全体のこれらの定員化の問題の取り扱いにつきまして関係省におきまして今いろいろと検討されておりますので、その方向を待ってわれわれも検討をいたしていきたい、こういうつもりでおります。  御質問の特別職をどうするかという点につきましては、御質問の意味が必ずしも明確によくつかみ得ないのでありますが、定員化の問題がそういったことでまだどうするかという結論を出しておりませんので、それに応じてどういうものをそれからはずし、どういうものを残すかということにつきましても、同様にまだ何ら結論らしいものを出しておりません。
  117. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 各営林署に事業所主任というのが五、六人おります。さらに担当区主任というのが五、六人おります。これを新しい地位につけよう、約七、八千人になると思います。新しい地位につけようというような構想があるというふうに聞いておりますけれども、この点は先ほど質問申し上げましたが、漏れております。そういうのがあるのかどうか。  それからもう一点は、名古屋の営林局の所管になりますが、岐阜県に土岐治山事業所というのがございます。この事業所ここだけが一般会計に入っておる。ほかは全部特別会計に入っておりますけれども、ここだけが一般会計に入っておる。これはどういう理由なのですか。こまかい点ですが、非常に問題になっております。ここだけが一般会計になっておる。
  118. 丸山文雄

    説明員(丸山文雄君) 御質問の第二点についてお答えいたしたいと思いますが、おそらくこれは従来いわゆる民有林の治山をやっておるという営林署ではないかという気がいたします。従って従来御存じのように、民有林の施設につきましては、国有林特別会計が代行する格好になっておりましたので、そういう関係で一般会計に入っておったかと思いますが、これも今度国有林特別会計に入るわけでありますから、今度は解決されるのではないか、こういうふうに考えております。  第一点の事業所主任でありますとか、あるいは担当区主任を新しい地位につけるという御質問でありますけれども、別にこちらといたしましては、新しい地位をどうする、こうするということは、目下のところ考えておりません。
  119. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 次に第三番にお尋ねしますが、飼料検査所ですが、この飼料検査所は従来畜産局の飼料課の分室としてあったものであります。今度これを独立させるということになるわけであります。独立いたしますが、人数は分室時代と全く変わらないという現状でございます。しかし、飼料需給というのは、非常に大きな問題になっているわけであります。今回検査所として独立いたしましたけれども、定員は分室当時と同じだという点、さらに、この飼料の製造、販売は決して東京だけでやるのではなくて、これは主要な、東京、札幌あるいは神戸、門司こういう出入港には大きな製造工場がある。東京だけに置いてこれは用が足りるのかどうか、非常に不十分ではないかと思います。その辺について伺いたい。
  120. 斎藤誠

    政府委員(斎藤誠君) 飼料検査所の独立につきまして、不十分な機構ではなかろうか、こういう御質問のようでございます。御指摘のように最近になって畜産の振興上、飼料に関する行政が非常に重要度を増して参りましたが、従来分室として飼料検査所というものを設けてやっておったのでありますが、今申しましたような最近の情勢に合ったことをやって参りますためには、やはり独立の機構にいたして参る必要がある。かような見地から今回機構といたしまして独立いたしたわけであります。ただ人員といたしましては、現在これに従事する二十名をもってそのままの定員といたしたのでありまして、われわれといたしましては、必ずしも十分だとは思っておりません。しかし、まず独立してその施設等におきます内容を充実するということに、まず第一の着目を置きまして、予算といたしましては千四百万円程度予算を計上して施設の整備をはかった次第でございます。今後のこれらの運営につきましては、御指摘のようにひとり東京ばかりでなしに、関西あるいは九州方面における検査業務というものももちろん必要になってくると思うのであります。現在の機構といたしましては、農林大臣は各府県の知事にもこれらの検査業務に関連いたします業務の一部を委任されているのでありますが、必ずしも十分ではないのであります。われわれといたしましては、検査機構の人員の充実ということを第二の措置として考え、さらにまた将来におきましては、関西方面に対する支所の設置ということを第二段の措置として考えて参りたい。かようなことで、本年度は第一段階の措置として飼料検査所の独立をはかって施設の整備充実ということに重点を置いた次第でございます。
  121. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 最後に蚕糸試験場、さらにここにありますところの生糸検査所が生糸の安定のために生糸の売買を、生糸検査所にこの権限を移すという点について伺いたいのであります。新しく生糸検査所にこの業務が加わるわけでありますが、生糸検査所の定員は逆に五名ほど減っている、そういう点について一つ伺いたい。  もう一つは、前回の本委員会で御質問をいたしました蚕糸試験場の問題でありますが、武豊と四国の徳島にあります三つの研究所が今年の八月ないし十月に廃止になるわけであります。長年そこに従事した公務員が二十七、八名おると思っておりますが、今後の処理の問題について十分、長年働いた人たちでありますので、本人の意向を尊重をして、首切りがないように御配慮いただくように要望いたしたいと思っております。  次に、蚕糸試験場が過去大きな機構改革をやり、さらに一年たたないうちにまたこの三つの研究室がなくなる。武豊、今申しました四国、鹿児島にあります山川、この三つが廃止になるという点等から、今後もさらに蚕糸試験場の機構というものを集中化するのじゃないか、廃止が起こるのじゃないか、こういう懸念が試験場に従事している公務員の中に満ちているわけでありますが、今後こういうようなことがないのかどうか。この三点について伺いたいと思います。
  122. 斎藤誠

    政府委員(斎藤誠君) 第一点の、生糸検査所の定員減につきましてお答えいたしたいと思います。生糸検査所におきます人員につきましては、現在八百六十一名おるわけであります。最近における生糸の検査の取り扱い量の面から見てあるいはまた、施設の合理化をはかっていくという面におきまして、五名程度の削減によって何らの支障を来たさないという観点から五名を削減いたしたのであります。大体現在定員削減を行ないましても、十名程度が欠員になっておりますので、これによって、こと人員異動ということは影響はございません。なおまた、今回の改正法によりまして、生糸を買ったり、売ったりする実務につきましては、生糸検査所におきまして行なわせるという措置をとりたいと考えております。これに伴いまして四名でございますが、増員することにいたしておりますので、そういう面からも特にこの削減ということによって特別の影響はないと考えております。  それから第二点の、今回廃止します蚕糸試験場の試験地の人員の問題でございますが、これは先般の本委員会におきましても、いろいろと蚕糸局から御説明いたしましたように、廃止しました試験場におきましても、それぞれ本場あるいは支場等におきまして引き継ぐわけでございます。具体的に言いますれば、四国の試験地の研究室は関西支場で引き受ける、あるいは武豊の試験地の研究室は日野の木場に引き受ける、こういうことにいたしておりますので、そこに従事する人につきましては、本省の、その引き上げる、統合集中するところに引き続き勤務するという希望のものにつきましては、もちろんそういう措置を第一段にはとりたい。なお都合の関係でそういうところに移り得ないというものにつきましては、現地におきまする本人の希望によりまして適切な措置をとって参りたい。大体は政府関係機関におきまして就職の道は可能であろう、かように現在のところ考えておる次第でございます。  第三点についてお答えいたしますが、蚕糸試験場関係機構改正につきましては、一応今回の措置をもってわれわれ一段落と考えておりまして今後におきまする具体的な計画は目下のところ持ち合わせておりません。
  123. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 本法律案は、本日、本委員会であげるということでございますので、幸いに農林大臣も見えましたので、鶴園委員から詳細にわたり本設置法の一部改正法律案に対する質疑がありましたので、大まかな点を二、三点だけ大臣並びに官房長にお尋ねをいたしまして私も終わりたいと思います。  昨年の台風によりまして、山梨県のブドウ、長野県のリンゴですか、その他、相当果樹に被害があったということを聞いておるんですが、その後の復興の状態、その被害を受けた農家の実態、そういうものがおわかりだったらちょっとお聞かせ願いたい。
  124. 斎藤誠

    政府委員(斎藤誠君) 山梨、長野におきまする台風十三号による被害によりまして、果樹等の被害が相当出ておりますことも、御承知の通りであります。われわれといたしましては、その災害対策といたしまして、まず第一には、これらに必要な復旧資金をすみやかに出したいということで、一つには営農天災資金につきましては、先般の臨時国会で法の改正をいたしまして、果樹につきましては、従来二戸当たり十五万円でありましたのを三十万円に、さらにまた、償還期限を通常の場合は三、四年でありますのを七年にする。さらにまた、従来据置期間がなかったのでありますが、据置期間を設けるというような措置をとりました。また、果樹だなの施設資金につきましては、農林漁業金融公庫から融資するということにいたしまして、これにつきましても従来一施設当たり二十万という限度がありましたが、これを五十万まで引き上げるというような措置をとることにいたしたのであります。それ以外に、非公共関係の事業といたしまして防除器具等の施設購入資金について助成するというふうな措置もとっておるのでございます。現在までそれぞれの予算補助につきまして手配をいたし、融資の措置も各府県に通達いたしておりますので、大体順調に復旧いたしておるというふうに聞いておりまして、特別のその後における各県からの要望というものも特にわれわれ聞いておらない状況にございます。
  125. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 これについていろいろ質問があるのですが、時間の関係で一応その程度で了解いたします。それからもう一つ、台風関係ですが、名古屋農地事務所の問題、高潮対策事業部を設置する問題に関連して、名古屋地方では相当農地並びに干拓地帯についても被害を受けたことは、もうすでに周知の事実でございまするが、これについての復興状態、それからまた、稲作地においては、すでに本年度の作付けをしなければならぬ時期に来ておるのですが、はたしてその復興状態がどうであるか、この夏、作付けができ得る面積はどれほど復興しておるか、その点一つ明らかにしていただきたい。
  126. 斎藤誠

    政府委員(斎藤誠君) 名古屋の伊勢湾地帯におきまする干拓関係の復旧につきましては、各省におきまして統一的な工法に基づきまして実施するということで、本年度予算といたしましては、台風期までに一応原形復旧をする、こういう考え方予算が組まれております。われわれといたしましては、たびたび大臣が言明されておりますように、本年度の植え付けまでには復旧ができるようにということで、農地の復旧を急いでおりまして、鍋田干拓におきまする六十町歩を除きましては、まだ浸水するというふうな状況にもなっておりますので、それ以外の地帯におきましては、大体田植え期までに復旧ができるということになって今進行いたしておる次第でございます。鍋田干拓につきましても六十町歩につきましては、大体植え付け期までには復旧ができる、こういうような状況でございます。
  127. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 今、官房長はそういう自信のある言葉でございますが、私はいつも月に三回ほど往復するのですが、まだまだそうは見られない土地がたくさんあるのですけれども、そういうことであれば非常にけっこうですが、非常にわれわれ見るたびに心配しておるのですが、日本の農作物の宝庫といわれる愛知県があの状態でどうかと心配しているのですが、この点につきましては、なお正そう農林省関係努力をしていただきたいと思います。  それから実はもうこれで終わりたいと思いますが、農林大臣がせっかく見えましたので、これには関係がございませんが、おそらく農水の委員会でもいろいろ問題が出ただろうと思いますが、あなたが十三日にモスクワに漁業交渉のために行かれるということを新聞で拝見しておるのですが、国民の一人として、実はもう毎年これが問題になる。で、私も実は山陸地方から北海道へ去年もおととしも旅行いたしましたが、漁民はこれに一年間も頭を使い切りなんです。そこで農林大臣は非常に手腕のある方でございますが、あなたが行かれて、いわゆるきょうの新聞を見ても、相当ソ連側とわが国の主張に非常に隔たりがあると思うのですが、農林大臣が行かれて日本の主張を通し得る自信があるか、この点をはっきり伺いたいと思います。
  128. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私、いよいよ日ソ漁業交渉が月中から最終段階にかかりますので、十三日に出発いたしましてモスクワに参りたい、こういうふうに考えておるわけであります。で、この漁業交渉は性質上漁業委員会で毎年の漁獲量とそれから漁獲の条件をきめていきたい、こういう建前になっておるわけでございまして、その主たるねらいは、資源をどういうふうに見ていくかということなんです。私も日本民族の長い将来を考えてサケ、マスその他の北洋漁業資源が枯渇するということでは困りますので、そのことは十分配意しなければならぬが、同時に資源をそこなわない程度におきまして、日本の漁業というものが成り立つこともあわせ考えるということで、その限界につきまして、また科学的資料をソ連の方へ提出をいたし、ソ連からも資料が出ておる、それを中心にして議論が行なわれておる、こういうことなんです。そこで、ソ連の方は川で魚を取りますもんですから、川の方の資料は相当整った資料を持っておるわけです。日本の方は公海における漁業でございますので、公海における、またすなわち大洋のまん中におきまする資料につきましては、権威ある資料を持っておるわけです。また同時に、日本は領土を失います以前におきましては、川に関する知識も相当持っており、また資料も持っておったわけでございます。さようなことで両者を突き合わせまするが、どうしてもソ連側におきましては、事公海における漁獲量の問題が中心になりますので、なるべく制限をいたしたい。すなわち、それは日本側のみ影響のある問題でございますから、そういう態度をとっております。それから日本側はなるべく竹本の漁業という立場を守っていこうという立場をとりますもんですから、同じ資源を見るのでありまするが、たての両面から見ているというようなこともありまして、資源論が一致しないところが多々あるわけであります。そこで、どうしてもそれを政治的に解決をしなければならぬということになりまするが、私どもは私どもの提出した資料につきましては、十分確信を持っておるわけでありますから、どこまでも私どもの議論を堅持いたしまして、国民の御期待に沿っていきたい、かように考えておる次第でございます。
  129. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 そこで、現在新聞紙上なんかで見るのですが、日本側は純経済問題である、また科学的にこれは一つ解決すべきであるという主張であるのですが、どうも新聞紙上で見ると、政治問題がからんでおるのではないかという印象を受けているのです。従って政治問題がからまっているとなると、なかなかこれは解決が非常にむずかしい。腹の中では一応そういうものを持って、口の表現は美しいことを両方で言っているけれども、腹の中にそういうものがあるとなかなか大臣が直接行かれても、この問題は相当解決がむずかしいのじゃないかと思います。従ってその点について率直に、ただ単に科学的ないろいろな魚類の問題、そういう繁殖状態とか科学的な問題以外に政治的に問題が伏在しているのじゃないかという印象を受けるのですが、その点どうなんですか。
  130. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 今までの経過を塩見漁業交渉顧問によりまして聞いておりますが、いわゆる高度の政治問題をこの問題にひっからめてきているという様子はありませんし、また、そういうことも今後はなかろうというふうに話を聞いているわけです。ソ連も大国でございますから、あまり私はけちくさい考え方はいたすまい。ともかく安全保障条約というようなことにつきましてグロムイコ氏からああいう声明も出ておりますが、そのさなかにおきまして貿易問題は三カ年にわたる長期協定ということまでできておるのでして、漁業交渉におきましても、大筋としてはそういうふうな足どりをたどるのではあるまいかというふうに考えております。ただ、ソ連の方ではなるべく公海におきましては日本側の漁獲を押えたいとこういうあれがありますから、やはり資源論争の中に、押えたいというそういう意味の政治的な考え方というものは、相当出てきているように見受けられますが、広い、高度の政治的問題とひっからまってくるということは、私はただいまのところそういうことはあり得ないこととかように考えている次第であります。
  131. 中野文門

    委員長中野文門君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  132. 中野文門

    委員長中野文門君) 速記を起こして。  他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  133. 中野文門

    委員長中野文門君) 御異議ないと認めます。  それではこれより討論に入ります。  御意見のおありの方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。  なお修正案が委員長の手元に提出されております。修正意見は討論中にお述べを願います。
  134. 増原恵吉

    ○増原恵吉君 私はこの際本法律案に対する修正の動議を提出いたします。修正案を申し上げます。   農林省設置法の一部を改正する法律案の一部を次のように修正する。   附則第一項中、昭和三十五年四月一日を公布の日に改める。  以上であります。修正の理由については、特に申し上げる必要はないかと存じます。右修正の上、本法律案に賛成をいたします。
  135. 中野文門

    委員長中野文門君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  136. 中野文門

    委員長中野文門君) 御異議ないと認めます。  それではこれより農林省設置法の一部を改正する法律案について採決に入ります。  まず、討論中にありました増原君提出の修正案を問題に供します。  増原君提出の修正案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  137. 中野文門

    委員長中野文門君) 全会一致でございます。よって増原君提出の修正案は可決されました。  次に、ただいま可決されました修正部分を除いた原案全部を問題に供します。修正部分を除いた原案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  138. 中野文門

    委員長中野文門君) 全会一致でございます。よって本案は、全会一致をもって、修正すべきものと議決せられました。  なお、本院規則第七十二条により、議長に提出すべき報告書の作成につきましては、慣例により、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  139. 中野文門

    委員長中野文門君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれをもって散会いたします。    午後四時三十一分散会