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鈴木強君 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題となりました
電信電話設備の
拡充のための
暫定措置に関する
法律案の原案と、ただいま自民党の
鈴木委員から
提案のございました修正部分に対し、絶対反対の立場を明らかにして、討論を行なわんとするものであります。
まず私は、具体的な反対理由を申し述べる前に、公共企業体経営の問題点について
指摘し、
政府に対し、厳重なる警告と反省を求めておきたいと思います。
御
承知の
通り、わが国の電通事業は、明治二年に国有国営の形態をもって発足し、
昭和二十七年八月に日公共企業体経営に移行されたのであります。しかしながら、今静かに過去八年間の歩みを振り返ってみるときに、公共企業体とは何かの疑問が大きく残されているのであります。すなわち、公共企業体経営の基本方針は、国営の長所と民営の長所を織り混ぜたものであり、この思想に立って、経営の独自性と自主性を経営者に与え、一方、職員に対しては、一般公務員と異なり、職務の
内容と責任に応じ、かつ、発揮した能率を考慮して、適切な待遇が与えられることになっておるのであります。しかるに、今日これらの諸点が、ほとんどぼかされているのみか、逆に、事業に対する不当な干渉と介入が強くなされて、経営の自主性は失われ、国有国営形態に戻りつつあることは、まことに重大といわなければなりません。これは
政府の公共企業体に対する認識の欠如とともに、現行公社制度上の不備欠陥に根本的な原因があると思うのであります。極言すれば、公共企業体経営は、アメリカの直輸入であって、わが国においては、これを受け入れるだけの準備態勢がなかったともいえるのであります。しかるがゆえに、今日まで二回にわたり、公企体のあり方について
審議会から答申がなされ、その都度抜本的な改革が強く要求されているのであります。
ところが、
政府は、これらの答申に対しても、われわれのたび重なる追及があるにもかかわらず、検討をして実施に移すという
答弁をしつつ、何ら具体的な検討を行なわず、放置していることは、無責任もはなはだしいものであって、絶対に容認することはできないのであります。
かくのごとき
情勢に立たされつつも、これらの悪条件を克服して、すでに
電電公社は第一次五カ年
計画を完遂し、サービスの面においても、能率の面においても、また事業収入の面においても、戦前の水準を大きく上回る成果をおさめておるのでありますが、これは設備の近代化、オートメ化、合理化等、職員の労働条件を圧迫する諸問題が、次々に発生する中にありながらも、全職員の事業を思う一念と、言語に絶する涙ぐましい
努力がなされたによるものと信じます。従いまして、公社が第二次五カ年
計画の拡大修正に踏み切るにあたり、
政府が、何よりも先に実施しなければならないのは、事業の生々発展をはばみつつある現行公社制度の不備欠陥の是正にあると存じます。
しかるに、この不可欠の必須条件については、何ら手をつけず、事業の持つ公共性を無視して、加入者
負担金を増大することによって、無理な建設資金の調達を考え、職員の労働条件についても、その特殊性は何ら認められず、職場のすみずみに至るまでみなぎりわたっておる不満をそのままにして、事業の
拡充発展を推し進めようとする公社と
政府の態度は、本末転倒もはなはだしく、これでは、今後
長期にわたる
計画が画餅に帰することは必定であり、われわれの絶対に
自信と責任の持てるものではありません。
法案審議の中で、植竹郵政大臣は、私の
質問に答えて明らかに制度上の不備を認めておられるのでありますから、今からでもおそくはありません、すみやかに
審議会の答申に検討を加え、
一つ、拘束予算制度を撤廃して、決算主義を採用すること。二つ、公社の取扱いにかかる現金の国庫預託制度を廃止すること。三つ、公社の自主性を強度に確保すること。四つ、職員の退職手当制度は、現行の国家公務退職手当
暫定措置法の適用を除外して、団体交渉によってきめること等々の法改正を行ない、以上の改正が行なわれた後に、拡大のための
長期計画を樹立されるよう、要求するものであります。
反対理由の第一は、
国会の
審議権を尊重せず、加入者
負担の増大を行なったことについてであります。
国民の
電話に対する熾烈な要望にこたえようとして、
電話設備に要する資金の不足を補うため、新たに
電話を申し込もうとする者から三万円以内の
負担金を取り
立てようとする
内容を持った現行
電話設備費
負担臨時措置法が
昭和二十六年六月九日、五カ年間の期限をもって制定されたのでありますが、その後、
昭和二十七年十二月二十七日同法の一部が改正されて、六万円以内の
電話債券の引き受けを加重、義務づけられることになり、また、
昭和三十一年三月九日、施行期限が五カ年間延長されて今日に至っておるのであります。この間、二度の改正にあたって、衆参両院は慎重
審議を行なった結果、激増する
需要に応ずるために、やむを得ざる
臨時措置として、これを認めたのでありますが、特に附帯決議において、
電話事業の公共性にかんがみ、
政府は建設資金の調達については、積極的な協力を行ない、でき得る限り加入者
負担の軽減をはかるよう、
法律施行期間中においても最善を尽くすよう、強く
政府に要望しておったのであります。
しかるに、
政府は、庫の決議の
趣旨を十分尊重せず、第一次五カ年
計画から第二次五カ年外画へと、電電事業に対する財政援助は微々たるもので、現に
昭和三十五年度の予算を見ても明らかでありますように、当初公社は、簡保資金運用部より五十億円、公募割引債券三十億円、公募債百三十一億円、合計二百十二億円を要求したのでありますが、簡保運用部資金二十五億円、公募割引債券ゼロ、公募債五十五億円、合計八十億円で、しかも簡保運用部資金の二十五億円は、借入金でなく、公募債の引き受けによることとなり、従来より悪くなっているのであります。
昭和三十五年度公社建設資金の総額は、七十二億円の外債は別として千二百八十五億円となっており、見かけは大きいようでありますが、その
内容を見ると、
政府資金の援助は、前述の
通りわずかに八十億円で、残り一千二百五億円のうち約四百億円が、今回
提案された措置法によって加入者から取り上げられ、八百億円は自己資金より調達されておりまして、いかに
政府の事業に対する熱意と
努力が欠けているかをはっきり物語っているのであります。この比率は、大体過去八カ年間の比率を見ても、大差はありません。これでは、附帯決議が尊重されているとは考えられません。ここにわれわれの大きな不満があり、
政府の無責任を追及する大きな原因があるのであります。郵政大臣は、
国会の
審議権をいかに考えておられるか、多分に疑問を持たざるを得ないのであります。
しかも、当初の第二次五カ年
計画を拡大修正するにあたり、これまでの経過を無視して、現行
臨時措置法の
有効期間中に、これを廃止して、本
法案を提出された意図は、全く了解に苦しむところであります。
政府は、債券が市場で売却されることを前提として、
負担を軽減したと言っておりますが、これは
国民をごまかすにもほどがあるもので、今後、
経済界の変動がどうなるか、確たる
見通しも立たず、特に最高、市場に債券がダブつく額が四千億円をこえることも考え合わせるとき、現在の市価の維持は、何人も保証できない。結局弱い者いじめの結果となり、何といっても現実には加入者の
負担増となり、
国民一般への
電話架設はほど遠く、相変らず金持ちのための
電話という非難とそしりを免かれることはできないでしょう。
電信電話の大衆性と公共性はいずこにあるのか、これでは、
国民の期待に沿うことは不可能であり、われわれの断じて納得できるものではありません。
政府は、よろしく自己の無為、無策、無能を反省して、
電信電話が真に
国民のものとして、わが国の産業、
経済、文化等万般の先駆たるの使命を果たし、わが国の発展のため寄与できるよう、積極的に
電信電話事業に国庫財政からの建設資金の増額を行ない、加入者
負担の軽減をはかるよう、強く強く要求する次第であります。
反対理由の第二は、電信事業に対する基本的方針が出されていないことについてであります。公社の第二次五カ年
計画拡大修正の
内容を検討するに、その施策のすべてが
電話事業に置かれ、電信事業が軽視されていることは、すこぶる不満とするところであります。現在電信は、年額百二十億円近い赤字経営になっております。これに対して電報の中継機械化等、かなりの合理化を行なっているにもかかわらず、赤字解消はおろか、赤字の漸減すら期待されないのが現状であります。これが克服策は、本
委員会においても幾たびか取り上げられ、重要課題となっているのでありますが、この基本政策には何ら見るべき具体策が示されておらないことは、きわめて遺憾に思います。
昭和四十七年を終期とする
長期計画の中で、加入電信、専用電信等の
拡充発屋を期待しているようでありますが、その時点において、具体的に一般電報との関係はどうなるのか、また、加入、専用の電信
計画は、どうなるのか、さらに、採算性はどうなるのか、はっきりと
説明がなされておりません。これでは、赤字に、苦しむわが国の電信事業の
長期安定政策としては、すこぶる不満足のもので、職員はもちろんのこと、
国民が安心して事業をまかせることはできないのであります。電報の赤字を
電話の黒字によってまかなうことの基本理念を否定するものではありませんが、年々増大する赤字を、このまま放置することは断じて許されませんので、公社と
政府は、これが克服策をすみやかに樹立されるよう、万全の対策を考究すべきであると信じ、猛省を促すものであります。
反対理由の第三は、拡大する事業量に対して、その対応策がないことについてであります。最近における公社の工事施行の進捗率を見るに、かなり好転はしているものの、年間約百億円近い繰り越し工事のあることの現況を思うにつけ、拡大修正によって年間一千三百億円に上る建設資金をもって事業が
拡充されていくので、はたして
計画通り諸工事が実施されるかどうかは、大きな疑問となってくるのであります。
審議の中で、公社は今日までの経験に徴し、隘路の打開のために積極的な対策を行なう旨
答弁がなされておりますが、その具体策には、要員の配置、組織機構の整備強化等見るべきものがなく、われわれの危惧を解消させるものではありません。公社は、請負工事の拡大を企図している模様でありますが、これも本来の公社の使命から考えるときには、時期を得た措置とは言えません。われわれは拡大する工事量に対応して、本社から現場機関に至るまでの組織機構を整備、強化し、要員の配置についても万全を期し、あわせて総合的、かつ適切な
計画を樹立し、もって増大する工事量の完全消化を期すべきであると思うのでありまして、
公社当局に対し、この点に対する態勢確立を強く期待するものであります。
反対理由の第四は、料金体系の合理化が行われないままで本
法案が提出されたことについてであります。御
承知の
通り現行料金制度の料金体系の不備欠陥については、本
委員会においても、幾たびか
論議がされたところであります。片や
経済圏の発展等によって、特に大都市周辺の
電話の加入区域をどうするかということは、焦眉の急務でございます。この問題については、電電
公社当局が、一応本
委員会において、今通常
国会において
提案をする
趣旨の御
説明があったのでありますが、その後、あらゆる角度から検討を加えておられるようでありますが、準備その他の都合で、本
国会に
提案されなかったことは非常に残念に思います。特に現在
電話利用者からみますと、年間約三百六十億の純然たる黒字経営になっておる。しかも、これは債務償還二百億を差し引いてのことでありますから、債務償還二百億を差し引かなかった場合には、約六百億近い
電話の純収入があるといっても過言ではないと思うのであります。従って、
電話の利用者から見ると、もう少しく
電話料が安くならないかという意見も出ておると思います。従って、これから四十七年までの十三年間の
長期にわたるこの
法案でありますから、現行の料金体系を整備して、
国民の納得できるような態勢の中で、しからばこの
法案によって、幾らの設備資金を
負担していただくか、こういう姿になりませんと、問題は解消できないと思います。従って、この料金体系の合理化については、遺憾ながら本
委員会に
提案ができなかったのでありますが、できるだけ
一つの作業を進めていただいて、すみやかなる機会に、
国会の
審議を仰ぐようにしていただきたいことをお願いしておきます。
反対理由の第五は、設備の近代化に伴う職員の訓練
計画が十分なされておらないことについてであります。御
承知の
通り、電気通信事業は、急速な発展をいたしておりますが、それには設備の近代化、オートメ化が急速に進められております。従って、合理化の進捗によって職員の配置がえ、職種がえ等は、かなり多くなって参ると、私は思うのであります。現行訓練制度は、戦前の逓信講習所普通科、高等科、官吏練習所というこの訓練形態から見まして、かなりひっこんでおります。従って、私はこの際、
委員会でも申し上げましたように、今後事業の拡大に伴ない、設備の近代化に伴なう職員の再訓練を含めた公社の訓練
計画というものは、もう少し抜本的の検討を加えていただき、そうしてこの近代化に即応するような態勢を作っていただくことを、この機会に強くお願いをしておきたいと思います。
最後の反対理由は、職員の労働条件の向上について、積極的な施策がなされておらないことについててあります。ただいま
鈴木委員からも
お話がありましたように、およそ、事業経営のかなめは、そこに働く労働者の協力を得ることが必須条件であることは言うまでもありません。
電通事業が、公企体経営に移行する際に、職員に約束をした労働条件、待遇のあり方は、最初に述べましたようでありますが、公社移行によって、定員法が適用を除外され、そのかわり職員は、給与総額によって縛られることになったのでありますが、給与総額内における基準内外の移流用は当時認められておりましたので、多少ではありましたが、公社の自由裁量が行なわれたのであります。ところが、
昭和三十三年四月より、不当にも給与総額内での移流用が禁止されたため、その妙味は失われ、公社の自主性がなくなったのであります。これがため、公社法第三十条の職員給与のあり方は、一般公務員並みに格下げされ、職員の失望これに過ぐるものはありません。全職員の労働意欲は失われ、最初に申しましたように、職場の隅々にまで不満が充満しているのが実情であります。設備の近代化、合理化の推進に伴い、労働条件の悪化が急ピッチに出現する事業の特殊性がある中で、戦後荒廃に帰した
電信電話事業を再建し、発展し、サービスの向上と能率の向上と事業収入の増大のために、第一次五カ年
計画から第二次五カ年
計画へと、異常な
努力と協力を惜しまなかった職員の心情を思うとき、今日の公社職員の待遇をもってしては、あまりにも冷酷であり、血も涙もないと言わなければなりません。本
拡充計画は、今後十三年の
長期にわたり、しかも、かつ広範な
内容を有するものであります。特に、急激なる企業の合理化、オートメーション化は、他の企業に、その例を見ない特殊なものでありまして、事実に従事する労働者に与える影響もまたきわめて大きいと言わなければなりません。従って、
政府並びに
公社当局は、今後常に労働条件、特に要員の確保、賃金、諸給与、労働時間、作業環境、福利厚生施設等の向上のため、積極的な対策を樹立され、もって全職長が一致協力して、この事業に邁進できるような措置をぜひとも講じていただくように、強く強く私は要求する次第であります。
その他、いろいろ問題点はございますが、以上、重要な点だけを申し上げまして、反対討論を終わります。