○山田節男君 私は、
カラーテレビジョンの本放送を近く
政府が免許したいというような意向があるやに伺いますので、実は本月の三日、当
委員会で
参考人を呼んで、
カラーテレビジョンの本放送の
態勢に関する
調査研究として、いろいろと
質問、
意見の交換が行なわれたことも知っております。それから、これは私自身、過
日本会議で緊急
質問をいたしました。予算
委員会においてもまた、この問題が議題となったことも
承知しておるのでありますが、過日、私の本会議における緊急
質問に対して、
郵政大臣からいただいた答弁も不十分であるというようなこともございましたので、本日重ねて本件に関して、当
委員会に
郵政大臣、
電波監理
局長あるいは丹羽博士その他通産省の
政府委員に御
出席願って
質問をいたすわけであります。
まず、私この
質問に入る前に申し上げたいことは、テレビジョン、すなわち白黒テレビジョンが開始したのは
昭和二十七年であります。その当時、
電波監理
委員会が
電波に関する行政の最高機関として存在しておった。ところが、この白黒のテレビジョン標準方式につきましても、たまたま、
昭和二十六年の衆参両院の電気通信
委員が、テレビジョンの標準方式の研究
調査かたがた
向こうに参りまして、十月の末に帰ってきましたところ、この白黒のテレビジョン方式をアメリカ式に、しかも二十四時間内にこれを決定しろ、当時
電波監理
委員会の
委員長をしておられた富安さんに対してそういう命令が出たということを私はこの
委員会で聞きました。それはいかん。少なくともテレビ標準方式は、鉄道で申せば広軌か狭軌かという、非常に重要な問題に対して、いかに占領軍放下にあるとはいえ、この重大な問題を何とか、標準方式をアメリカ式に二十四時間内に決定しろという、これは軍の命令かもしれません。これは
国会議員として実にわれわれは遺憾であるというので、当時私はGHQのシグナル・セクション、通信部におりましたファイスナー氏に会いまして、じゅんじゅんとして、私アメリカにおける現況から、
日本にテレビジョンを実施するならば、標準方式にはもう十分慎重に
一つ討議をし、のみならず、公聴会を開かして、慎重な
審議をしてもらいたいということを私は切にお願いいたしまして、軍もこの二十四時間以内に標準方式決定ということを撤回いたしました。従って、二十七年の一月から青山三丁目にある
電波監理
委員会におきまして、いまだかつてない、きわめて慎重な、大じかけな公聴会を開いたのであります。その結果、
昭和二十七年の七月のことでありますが、当時
国会は大体七月の二十日ごろに終わる予定であった。ところが、この標準方式に関して例の周波数の、ハンドの六メガか七メガか、これに対して非常な論争が行なわれまして、少なくとも公聴会における空気は、もうアメリカ式の六メガ、走査線五百二十五、これはむしろ将来のカラーテレビに移行することを
考えれば、七メガの周波数バンドにすべきである。これはアメリカで今フィリップス会社の重役をしておりますけれども、
世界におけるテレビジョン標準方式の権威者であるドナルド・フィンク氏に私はそういう助言をもらい、同時に高柳博士にこのことを話しましたところが、高柳博士も、
一つの証拠品として得たいというので、直接私の紹介でフィンク氏から証言を得られました。
カラーテレビジョンに移行することを
考えれば、アメリカは六メガでやっておるけれども、七メガに行くべきである。その方が望ましいということがあった。にもかかわらず、これをむちゃくちゃにアメリカ方式にきめてしまった。このことは実に不愉快な記憶がある。そういたしまして、三十二年の十二月、当時田中君が
郵政大臣をしておられたときに、このNHKに対してはいわゆるUHFのカラーテレビの実験、そしてNTV、
日本テレビに対しては
カラーテレビジョンの実験放送を、VHFのカラーテレビを許可したのであります。自来NHKもあるいはNTVも
カラーテレビジョンの実験放送をやっていたのであります。
ところが、昨年であります。寺尾豊君が一昨年六月に
郵政大臣に就任されまして、この四月に入りまして、あたかも参議院の定期の選挙があり、改選が行なわれた。寺尾君自身が今度は改選に臨まなくちゃならぬ。従って当時の通常
国会も、実は予算を過ぎますというと、まことに
国会もさびれてしまって、当
委員会というものも開かれなかったような状態であります。そういうようなときに、私最も遺憾なことは、寺尾君の
郵政大臣としての末期におきまして、四月の四日であります、昨年の。このカラー実験放送に広告放送を入れろ、もちろん、これは
電波監理
審議会に寺尾君は諮問されております。
電波監理
審議会の答申によりますると、実験放送は非常に金がかかる。NHKはこれは公共放送であるから、いろいろ財源を持っておるかもしらぬけれども、
民間放送であるNTVは、カラーの実験放送には非常に金がかかる、それを唯一の理由として、実験放送に広告放送を織り込むということを、これを許しおるのであります。このことも、これはあとの
質問に関連しますけれども、
一体、今日の放送法の精神から見て、実験放送に対してスポンサーをつけて広告放送をやらせるということが、
一体放送法の精神から言って許されるかどうか。とにかく、あなたの前大臣はさようなことをいたしておる。そうしてその次に来たるべき問題は、ちょうど昨年の四月でありましたけれども、ロスアンゼルスにおいて無線通信の諮問
委員会、CCIRと申しておりますが、これは一昨年のモスコーにおける
カラーテレビジョンの国際標準方式の結論が出ないので、昨年さらにこの会議が持たれ、それに当時の
電波監理
局長の浜田成徳君が
出席して帰ってくるやいなや、これを強制的にやめろ、これは明らかに当時の新聞にも出ておりますし、本人も新聞に
自分の談話を載っけているところを見ますと、六月の四日でありますが、当時の自民党の幹事長の福田君が浜田君を呼んで、四谷の福田屋の料亭に呼んで、とにかくお前やめてくれ、ところがそれでもなおやめなかったのかどうか知りませんが、その六月四日の午後七時に渋谷の南平台の岸
総理の公邸にこの浜田君を呼んで、そして因果を含めている。こういう事態は当時新聞にも載っておるし、浜田君も二回も新聞記者にそういうことを発表しているのであります。こういう一連の
カラーテレビジョンに対する推移を見ますと、何と申しても、これは私は公平に見て、冷静に
考えれば
考えるほど、
カラーテレビジョンに対しては非常に政治的な、悪く言えばテレビジョンの、何と申しますか、利権化したような情勢を、これは私はどうしても否定することはできないと思う。
と申しますのは、先ほど申しましたように、
昭和二十七年に
カラーテレビジョンの標準方式をアメリカ式にやる。しかもNTVが最初これを入れた事態から、しかも当時予算
委員会で
吉田総理に対して私は、テレビジョンというものをあなたは欲するかと申し上げたら、私はテレビジョンは時期尚早である、そういうことは反対でありますということを言うておるにかかわらず、遂にアメリカ方式のテレビジョンの標準方式を決定したという、このいきさつから見まして、
カラーテレビジョンにおきましてはさらに輪をかけたような、まことに憂うべき政治的な圧力と申しますか、こういうようなことは、私は否定し得ないと思うのです。昨年の六月にそういうあとを受けて植竹氏が参議院から
郵政大臣として御就任になった。私はその後における植竹
郵政大臣のいろいろなこの問題に対する御態度、ことに就任早々の記者会見においての
郵政大臣の所信等を見まして、これは、とにかく植竹
郵政大臣としては慎重にやる、こういう御所信であると存じて、これまた、私は非常に実は敬服しておったのです。続いて、浜田君に次いで甘利君が
電波監理
局長になった。
電波監理
局長になった甘利君が、六月の十日でありますかの新聞記者会見においてこういうことを言うておるのです。この
カラーテレビジョンの問題は、私としては興味もないし、問題にもしてない。もちろん、世論がカラーテレビョンを開始せよとの声もないので、政治問題になるほど伝えられるのがおかしい。とにかく、早急に本放送を行なうべきでないという
意見に変わりはないと思うのですが、今後も実験については積極的にやるつもりだ、こういう
電波監理
局長も、何と申しますか、慎重論者です。しかるに、昨年の年末に、これはITU会議に御
出席になり、ヨーロッパの
カラーテレビジョンの研究状態を見られ、さらにアメリカの
カラーテレビジョンの実際を見てお帰りになった後に、カラーテレビョンはいわゆるアメリカ方式のNTSCにするのだ、こういうことを声明されたということを私どもは聞いたのであります。
私はきわめてかいつまんで政治情勢、この問題に対する推移を申し上げた。これは決して主観的なものではないだろうと思う。そこで、こういうような点から
考えまして、きわめて高潔な、しかも識見の高い植竹
郵政大臣が、昨年六月寺尾君の後任者に御就任になって以来、しかも、ことしに入ってから後における
郵政大臣の
カラーテレビジョンに対する御所信等を伺ってみるというと、私は先日の本会議でも申し上げました
通り、非常にどうも解せない点が多いのであります。
話が少しさかのぼりますけれども、昨年の四月に寺尾
郵政大臣がカラーの実験放送に広告放送を許可したということになりまして以来、これはごらんになったでしょう。これは
一つの行過ぎでありますけれども、朝日新聞にこういったような広告を出しております。こういうのです。これは私は記念すべき記事だと思う。これを有力な商業新聞にこういうことをやって、
カラーテレビジョン来たる。しかも当時の読売新聞、切り抜きを持ってきておりますけれども、これを見ますと、寺尾
郵政大臣が
カラーテレビジョンの実験放送に広告放送を許したということは、これは
カラーテレビジョンの時代が来たのだということで、NTVの幹部
諸君が祝盃をあげた、その写真まで出している。
政府が
カラーテレビジョンに広告放送を許した、こういうことから、直ちに
カラーテレビジョンの時代来たる、こういうことがマスコミによって天下に示された、そうして祝盃をあげる、こういうようなまことに不謹慎きわまる態度を見まして、私は
国民の一人として、これはまことに残念だと思う。これはすでに植竹
郵政大臣が大臣に御就任になってからのことである。私はこういうことを見、なお、具体的にいえば、NTVが数億の金をかけて
カラーテレビジョンのスタジオを作るとか、こういうような状況でありますのを見ますというと、とにかくある特定のマスコミを利用して、とにかく既成事実を作ってしまう。それに
政府は押し切られているというような工合に、私はそう見ざるを得ない。これは
ほんとうに残念なことであり、その渦中に植竹
郵政大臣が入られた。あなたのその御苦慮のほどはわかりまするけれども、先ほど来たびたび申しました
通り、どうしても
一つの政治的に無理にこれを既成の事実というものを作ろうとする、寄ってたかって
郵政大臣を引っぱり回してしまうというように私には見えるのです。しかも、これは
日本の経済、文化にとってまことに重大な岐路に立っておると思う。
郵政大臣の本問題に対する裁決は、重大な問題になるだろうと思う。
一つの通信国策から見て、また、テレビジョンという放送
事業の将来から見まして、これは今重大なキー・ポイントを
郵政大臣が握っておられるということです。これは私が申し上げるまでもなく、あなたが十分御自覚になっていることと思いますけれども、私は十数年当
委員会の
委員として、私の頭は悪いけれども、本件に関しては相当に研究しておる。そのために外国に数度も参りまして、私は私なりにつぶさに、技術はわかりませんけれども、政策として、ポリシーとしての研究はいたしておるつもりであります。そういう意味で、単に私は野党の一員とか、一
国会議員というような
立場でなくて、私は
国民の良識を代表するという、はなはだ口幅ったいが、こういうことを言うのは、そういうような
気持で私はこれから大臣に御
質問を申し上げるのだということを、
一つ十分御意識願って御答弁願いたいと思います。
前置きが少し長くなりましたが、まず君一に、今まで申し上げたように、植竹
郵政大臣は政治的圧力に引き口されているのじゃないか、また直接のこの最高責任者である甘利
電波監理
局長が、これまた所信を翻さなくちゃならぬほど政治的圧力があったのであろうか、そうかどうかという、私はそういうやぼな
質問はここでいたしません。私は私なりに、また、ここにおられる良識のある
諸君は、十分これについては御判断願っておることと思います。これは私はここであえて当事者から直接イエスかノーか、御答弁をいただこうとは思いません。
そこで
質問の第一点ですが、
カラーテレビジョンの国際標準方式につきましては、先ほど申し上げましたように、すでに過去三回、昨年の、私ちょうどジュネーブにいるときにこのITUの無線主管庁会議におきましても、たしか第十一コミッティーだと思いますが、この問題が討議されておるということを私は
承知いたしております。結論は知っておりません。しかし、これももちろん大臣として十分下僚からその間の事情をお聞きになっておるだろうと思いますが、私の
考えによれば、数年前と今日ではテレビジョンの国際標準方式ということは、これは、これまではたとえば甘利
局長が専門にスキャッターの大権威者であり、スキャッターを利用すればできるかということをアメリカがいろいろ研究しておりますけれども、しかし人工衛星というものが現実の問題となった以上は、これは国際標準化ということが単に夢じゃなくて、技術的にも可能じゃないか。そういうことからいくと、これから作ろうという
カラーテレビジョンにつきましては、標準方式については、国際標準方式というものをもう少し私はこれを真剣にお
考えになって、なるほど、昨年のITUの第十一部会では
一つの結論は出ておりませんけれども、大体ヨーロッパ式とNTSC式のいわゆる両立制を入れたヨーロッパ方式、それからアメリカの現在の方式二つくらいになるんじゃないだろうかという見通し、しかし昨年の四身のロスアンゼルスのCCIRの当時の議事録を見ますというと、これはむしろヨーロッパ方式に統一されるんじゃないか、こういうようなことになっておることも私知っておるのでありますが、
郵政大臣として、本問題についての国際標準方式というものを早くあきらめてしまわれたのじゃないか。ということは、NTSC式にあなたはやるということを言明なされたやに聞くのでありますが、国際標準方式に対して、どうしてこういうことを早くあきらめられたのか、あるいはあなたの国際標準方式に対する見通しと申しますか、もうある期間は少なくとも改変できない標準方式をきめるということについて、どうして国際標準方式を軽く評価されておるか、その理由をまず
一つ伺いたい。