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1960-03-17 第34回国会 参議院 大蔵委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年三月十七日(木曜日)    午前十時五十四分開会   —————————————   委員の異動 三月十二日委員高橋衛君辞任につき、 その補欠として大谷贇雄君を議長にお いて指名した   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     杉山 昌作君    理事            上林 忠次君            山本 米治君            大矢  正君            永末 英一君            天坊 裕彦君    委員            大谷 贇雄君            木暮武太夫君            塩見 俊二君            西川甚五郎君            堀  末治君            前田 久吉君            木村禧八郎君            成瀬 幡治君            野溝  勝君            平林  剛君   政府委員    大蔵政務次官  前田佳都男君    大蔵省主税局長 原  純夫君    国税庁長官   北島 武雄君   事務局側    常任委員会専門    員       木村常次郎君   説明員    大蔵省主税局税    制第二課長   志場喜徳郎君    国税庁間税部長 泉 美之松君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○厚生保険特別会計法等の一部を改正  する法律案内閣送付予備審査) ○酒税法の一部を改正する法律案(内  閣提出、衆議院送付)   —————————————
  2. 杉山昌作

    委員長杉山昌作君) ただいまから委員会開きます。  厚生保険特別会計法等の一部を改正する法律案議題とし、提案理由説明を聴取することにいたします。
  3. 前田佳都男

    政府委員前田佳都男君) ただいま議題となりました厚生保険特別会計法等の一部を改正する法律案につきまして、提案理由を御説明申し上げます。  まず、厚生保険特別会計法の一部改正について御説明申上げます。  政府は、第二十二回国会において、政府管掌健康保険給付費の異常な増高等に伴う文仏財源の不足を埋めるため、昭和三十年度以後七ヵ年度間、毎年度一般会計から十億円を限度として、厚生保険特別会計健康暫定繰り入れることができる措置を講じたのであります。その後、諸般情勢にかんがみ、昭和三十一年度以降昭和三十三年度まで毎年度法的措置を講じ、この一般会計からの繰り入れ昭和三十四年度以後に繰り延へたのでありますが、昭和三十四年度以後の一般会計からの繰り入れ昭和三十五年度以後に繰り延べることといたしたいと存じまして、第三十一回国会厚生保険特別会計法等の一部を改正する法律案を提出し、以後引き続き御審議を願つているところであります。今回、昭和三十五年度におきましても、別に借入金等によりこれを処理することといたしましたことに伴い、一般会計からの繰り入れを、さらに昭和三十六年度以後に繰り延べることしょようとするものであります。  次に、船員保険特別会計法の一部改正について御説明申し上げます。  船員保険におきましても、第二十二回国会において、療養給付等の部門における給付費の異常な増高等に伴い、その財源の一部に充てるため、昭和三十年度以後六カ年度間、毎年度一般会計から二千五百万円を限度として船員保険特別会計繰り入れることができる措置を講じたのであります。その後、諸般情勢にかんがみ、昭和三十一年度以降昭和三十三年度まで毎年度法的措置を講じ、健康保険と同様に、一般会計からの繰り入れ昭和三十四年度以後に繰り延べたのでありますが、昭和三十四年度以後の一般会計からの繰り入れも、健康保険と同様に、昭和三十五年度以後に繰り延べることといたしたいと存じまして、第三十一回国会厚生保険特別会計法等の一部を改正する法律案を提出し、以後引き続き御審議を願つているところであります。今回、昭和三十五年度におきましても、健康保険におけると同様、一般会計からの繰り入れ昭和三十六年度以後に繰り延べることとしようとするものであります。  以上がこの法律案を提出いたしました理由であります。何とぞ御審議の上、すみやかに御賛成下さいますようお願い申し上げます。
  4. 杉山昌作

    委員長杉山昌作君) 本案に対する補充説明並びに質疑は、後日に譲ることにいたします。   —————————————
  5. 杉山昌作

    委員長杉山昌作君) 酒税法の一部を改正する法律案議題に供します。  前回に引き続いて質疑を行なうことといたしますので、質疑のある方は、順次、御発言を願います。
  6. 大矢正

    大矢正君 酒団法改正されてから、その後大蔵省としても、酒団法改正措置にのつとつて具体的に作業を進められておると思うのでありますが、改正後今日までの経過と、それから、これからの見通し等について説明をいただきたいと、こう思うのであります。
  7. 泉美之松

    説明員泉美之松君) お答えいたします。酒類業組合法改正法律は、昨年の十二月十六百に通過いたしまして、十二月二十八日に公布され、本年一月七百に施行されておるのでございます。そのうち価格制度に関する問題が一盤重要でございますので、価格制度に関する部分を主として御説明申し上げます。  御承知のように、酒類業組合法改正によりまして、従来の物価統制法に基づきまするマル公という制度を廃止いたしまして、基準販売価格を中心とした新しい価格制度に乗り移るわけでございますが、私どもはその作業を鋭意いたして、てきるだけ早い機会に新しい価格制度に乗り移りたいと思って準備をいたしておるわけでございますが、従来の物価統制令に基づきまする統制価格基準販売価格とは価格の立て方がだいぶ変わつておりまして、御承知のように、標準的な原価基準にして適正利潤を加算するという建前になっております。今までの物価統制令におきましては、適正利潤という観念がございませんでした。そういう点がございますのて、原価調査を従来と違つた観点のもとにやり直さなければならないわけでございます。それに基づきまして、まず本年三月中に基本調査を行ないまして、製造販売のそれぞれの業態があるわけでございますので、その全部について調査することは困難でありますので、そのうち適当な数量のものにつきまして原価調査をしなければなりません。どういうメーカーなり販売業者について原価調査をしたらいいかという標本設定のために基準調査を行なって、現在ほぼ基本調査の方はでき上がつております。これに基づきまして早急に調査対象を決定いたしまして、四月及び五月の両月にわたりまして、原価調査を行なうつもりでおります。その原価調査に基づきまして、六月中に集計作業を行ないまして、七月に酒類行政懇談会など価格の点につきまして審議していただくために、業界生産者層方々及び消費者の代表の方々にお集まりを願って、御意見を拝聴したいと思っております。その諮問が終わりましたあと、できるだけ早い機会に新しい基準販売価桁制度に乗り移りたい、かようなっもりで現在作業を進めておる次第でございます。
  8. 大矢正

    大矢正君 そうすると、ただいまの現状とこれからの見通しから考えると、夏ごろには大体新しい基準販売価格にのっとって価格制度というものをきめて踏み出していくという結論が出るように思われるのですが、そういうように解釈してよろしいですか。
  9. 泉美之松

    説明員泉美之松君) 私ども作業は一応そういう予定でやっておりますが、審議会なり懇談会の方でどういうふうなお話し合いになりますか、その辺のことがまだ何とも見通しがつきませんのでありますが、私どもといたしましては、少なくとも秋までにはそういうふうな方向に持っていきたいと思って、私ども作業をできるだけ詰めて、あと審議会なり懇談会の方で十分余裕を持って御審議いただく、こういうつもりでおります。
  10. 大矢正

    大矢正君 この酒団法改正とは別に、今度は法律関係したことで一、二お伺いしたいのですか、今度新しく一級と二級との間に準一級というものを設けて、大蔵省説明によると、価格開きが一、二級の間に非常に大きくなっているので、その中間をねらって、消費者要望にこたえたいという趣旨の説明があった。これはまあ、私は酒のことについては詳しいことはよくわかりませんけれども清酒は、今言ったように、価格がその理由であるかどうかは別問題としても、銘柄をふやすという結果になるわけですね。価格の伸び、一級、二級の間の価格の差が大きいというのであれば、特級一級というものとの差もかなりあると私は思うのです。そこに新しい銘柄を作って消費者要望にこたえよう、こういうのでありますが、ところが、翻って合成の方を見ると、一級、二級という差をなくして、合成合成一本でいく。そうすると、清酒合成というものの歩み方というか、進んでいく方向というものが、何か本質的に違うような方向をたどるように思われるのですが、こういった私の疑問について何かお考えがあったら、お聞かせいただきたい、こう思うのです。
  11. 原純夫

    政府委員原純夫君) 御疑問は非常にごもっともな御疑問だと思います。私ども、今回の清酒合成酒級別改正案は、方向として同じ方向にあると思いますけれども財政全般、特に減税ができるできないという問題をはずして、フリーに考えます場合には、これが一番いい案かどうかということは、これについていろいろ議論があるということは、私は率直に認めております。ということは、清酒においても、お話通り特級酒が非常に高いというのをほうっておくかどうかという問題が実はあります。今までの売れ行きの実績を見ましても、二級が一番よく伸びておって、一級はちょっと横はいである。ということは、全体の量が伸びておりますから、相対的には一級は落ちておる、特級の方は絶対量自体がだんだん落ちてきておるというわけであります。売れなければ、それでは税は高いのかということには、すぐはいかないと思いますけれども、やはり戦中戦後の非常に酒の少なかった時代におけるこういう大きな税の幅というものは、だんだん供給が豊富になり、自由な競争時代になりますれば、無理が出てくるということは、私ども常々考えておりますので、その点は将来なお問題として残るところでございます。  そういう思想で参りますれば、合成酒は、だんだんそういうような方向が局限に来て、そうしてわずか〇・六%という比率しか占めません一級を、いよいよ最後に尾てい骨がなくなるというような形で整理するということで、同じ方向にあるものと御理解いただきたいと思います。  特級一級につきましては、将来、全般の酒の税率、酒数間、また級別間税率のことを考えます場合に、ただいまのような問題が潜在しておるといいますか、あるということを私どもも考えておりますので、今後検討の際に十分善処したいと思っております。
  12. 大矢正

    大矢正君 清酒というものと、それから合成酒というものとの相違というものは、いろいろあると思うのですが、私はあまり詳しく知りませんから、今ごろになって——これは私も国会の方で酒の法律をずいぶん今まで四年間も検討してきて、今ごろになってこういう質問をするのは、確かに愚問に違いないと思うが、清酒合成酒というものとの違い、これはもちろん、度数の違いもあることでありましょうし、米の使用量の違いもあるでしょうけれども、そういうものを集約して、どういうように違うか、一ぺん聞かせていただきたい。
  13. 志場喜徳郎

    説明員志場喜徳郎君) 清酒合成酒の違いでございますが、御承知通り酒税法の第三条に各酒類の用語の定義がございます。その第三号に「清酒」とは、左に掲げる酒類をいう。」と規定いたしておりますし、第四号に「「合成清酒」とは、」云々と、こういうふうに書いておるわけでございまして、結局、合成清酒というのは、「アルコール、しょうちゅう又は清酒ぶどう糖その他政令で定める物品原料として製造した酒類で、その香味色沢その他の性状清酒に類似するものをいう。」ということになっておるわけでございまして、政令ではどう書いているかと申しますと、酒税法施行令の第三条に書いてあるわけでございます。その第三条の、ことに第二項をあわせてごらん願います。清酒は、御承知通り、先ほど申しました酒税法第三条第三号に書いてございますように、原則的には「米、米こうじ及び水を原料とし発酵させて、こしたもの」でございまして、米が主原料であるということは言うまでもございませんが、合成清酒におきましても、「アルコール、しょうちゅう又は清酒ぶどう糖その他政令で定める物品原料として」と、その原料の中に施行令第三条第一号で米なども書いてあるわけでございます。従いまして、合成清酒におきましても、米が原料の一部となるという点におきましては清酒と似通っているわけでございまするけれども施行令の第二条第二項に書いてございますように、米につきましてはその原料として使用することの許される量につきまして制限がございまして、つまり「米の重量の合計がアルコール分二十度に換算した場合の合成清酒重量の百分の五をこえることとなってはならない。」というわけでございまして、現実の姿といたしましては、現在の合成清酒は米がこのような重量換算で五%くらい入っておりますのですが、清酒の方におきましては、しからばその米がどの程度入っているかと申しますると、現在、清酒は、普通醸造、それから三倍増醸と申しますか、アルコール添加をした量が多いものがございますけれども、これらを突っ込んで計算してみますると、大体この施行令第三条第二項で規定してございますような重量換算方法によって計算いたしますと、大体合成清酒の五%程度に対しまして、現実の姿は三二、三%程度の米が入っておるということが、米の点におきましては違っております。また、その他合成清酒におきましては、先ほど申しました酒税法定義にありますように、「その香味色沢その他の性状清酒に類似する」ということのために、ブドウ糖その他の清色材料とかいうものを使っておりまするが、そういうものは清酒の場合にはございません。こういうわけでございます。
  14. 大矢正

    大矢正君 これは使用する米の量の相違というものをあげられたのだが、私のもらっている資料の範囲では、大蔵省の言うような違いにはならないのです。もっと、清液というものと合成酒というものの米の使用量というものは、実際問題としては接近しているような資料をいただいておりますが、きょうはこういうことの調べたものがどの程度違うかということを議論する気持もありませんから、その点は別としても、一般的には、合成酒清酒というのはそう極端な開きがあるようには私は思われないと思うのですね。製造工程の多少の変化や、あるいは最終的にでき上がった酒の販売する場合の度数の問題とか、そういうものはもちろんあると思うけれども清酒というものと合成酒というものが本質的に区分けができるのだというような規定というものは私ないと思うんですが、まあそれはそれとしても、特に最近合成酒関係では使用する米の量を、大幅にかあるいは小幅にか、引く上げてもらいたいという強い要望が出ているように私は聞いているわけです。もちろん、清酒の方からもそういう意見が出ていることは、これは当然でありますけれども、これから大蔵省として、米の使用量というものを、酒をよけい作るための量ではなくて、品質を保持するための原料米をどういうようにされるというように考えておられるのか、この点、お答えいただきたい。
  15. 原純夫

    政府委員原純夫君) 清酒合成酒で米をどんなふうに使うか、また、ひいて今お話し清酒合成酒が本質的にどう違うかというような問題、これは、両業界にとりましても、また酒の行政全般にとりましても、非常に大きな問題の焦点の一つであります。で、考えようによっては、いろいろな案も出てきまするし、いろいろな方向も考えられるわけであります。事実、過去十年、二十年の間、特にその間原料が足らないというような時代からだんだん自由になってきます間にかけて、この両者の間の関係を将来どう持って参るかということについて、いろいろ議論もされ、また具体的に清酒合成酒を混和していったらどうかとか、あるいは清酒に第三級を設けて両者の融合をはかったらどうかというような議論も出たわけであります。いろいろな立場で、透徹してある方向をとるということはもちろんでき得るのでありますが、実際には、ある方向に参るという場合に、清酒には四千軒の酒屋さんがある。その中に、相当大きな業態のものもありますけれども、御案内通り、かなり小さい中小酒屋さんというものがあるわけであります。これらがそういう方向に対してどう順応するかということも考えながらやっていかなければならないというような意味で、ある方向を立ててそれにまっすぐ進むというようなことがなかなかできにくいので、今申しましたような案の出ました場合にも、そこまで突っ込んだ腹固めというようなことまでできておりません。従いまして、これは今後に残された大きな問題であります。現に、今お話の出ました米の使用率問題その他をめぐりまして、昨年の秋暮以来いろいろ議論をいたしております。が、まだ今申しましたように、結論が出ておりません。  ただ、何分、今後もますますこういうことを検討せんならぬ事情が強化されていくと思いますので、われわれとしても十分検討して参りたいというふうに思っております。その際、一番困難であり、同時にやはりわれわれとしての意を用いなければなりませんのが、ただいま申しましたような中小企業をどういうふうにそういうような方向に順応さすかということについて、やはり納得をさせながら、そうしてこれがよりよいのだという方向を立てて持っていかなければならぬというので、せっかく苦心をしておるような次第でございます。
  16. 大矢正

    大矢正君 貿易自由化されたといっても、清酒というものと外国から輸入されるいわゆる洋酒というものとの本質的な違いがあるから、自由化によって酒の消費量が伸びたり縮んだりなどということは、まあそう極端には考えられないと思うんですけれども、しかし、政府が考えているのは、貿易自由化を行なうということは、同時に国内の経済が自由に競争がてきるということを、最終的には根本的な理念としておられると思うのですがね。そこで、清酒合成酒の内容の相違というものももちろんあると思うけれども、かりに現状売れ行きの状況を見れば、合成酒というものは必ずしも伸びていない。むしろ停滞もしくは減少しているという合成酒現状だから、合成酒は、何といっても、品質を高めて売れ行きを増大させるという方向を必ず合成酒はとるだろうと私は思う。その際に、品質を引き上げるのには、何といっても、米の使用量をもっと大幅に上げなければいかぬという結論が出てきておる。政府が考えているように、一級と二級を一本にして、これからは合成酒という名前にするのだ、これでもって売れ行きが伸びるなんということは、これはもう考えられないことです。そうすると、自由競争という原則からいけば、勢い零細な——何万石という酒屋もありましょうけれども、零細な清酒業者の方へ食い込んでいってお互いに食い込み競争をやるという方向が必ず激化されると、私はそう思うわけですね。そうなってくると、これは酒類業界にとっては、ビールとか雑酒なんかは別として、清酒合成酒の競合なんというものは、なかなかこれは放任することのできないような事態に発展する可能性がある。いつそういう可能性が実現するかという、そういう危険性があるのだが、そういう点について大蔵省としてはまとまった考え方があるのか。この際、今のこととも非常に関連がありますけれども、お聞かせをいただきたいと思うのです。
  17. 原純夫

    政府委員原純夫君) 何をやりますにも、御案内通り蒸留酒業態清酒業態とは、企業の規模、資本力というようなもので、かなり違いがあると思っております。また、製造方法自体も、昔からの方式が残っております清酒と、それから新しい蒸留方式から出発しました合成酒とでは、そういう新旧の違いがあるわけでございます。やはり今末段にお話しの、自由にすれはかなり深刻な競争、それによって脱落者も出るというようなことになって参りますので、この問題を処理します場合には、やはりその点を十分頭に置いて、自由化と申しまするか、自由競争によるよい結果というものをわれわれが持つということは、これは捨ててはならぬのだが、その結果業界が乱れてきて、特に中小酒屋さんか非常にみじめな形で落ちていくというようなことは避けなければならないというふうに思っております。  翻ってこの自由競争のために、合成酒品質向上するというのはこれは自由であるべきではないかというのは、一つの立論として出るわけでありますが、その際、ただいま言われておりますように、品質向上を、米の使用量をふやすことによって品質向上をはかるということは、実は極限においては清酒と同じことをやらせろということになりますので、今申しました四千件の清酒業界にとっては、非常に重大な問題になるわけてあります。従いまして、品質向上がよろしいということから、それは何でもよろしい、特に米の使用量を増すことも自由であるべきだというところに参りますと、私はそれはなかなかそうは参らないというふうに思っております。その一線はやはり、清酒業界の安定と申しますか、あまりに動揺がきませんような角度で考えてやらなければならない。まあそうかといって、米を全然合成酒の方に使用量の増加を認めないというのではありませんけれども、やはりそこらは本来自由であるべきだということではなくて、昔から米の使用量というものについては、やはり法律的にぴしっと押えたのは実は戦後のことでありますけれども、やはり沿革的に常識的に、清酒は米の酒、合成酒は米を使わないでお酒ができるということで始まったわけでありますので、あまりにそこを壁を作って考えるのはどうかというふうに考えております。まあ、反面、合成酒業界の、お話通り売れ行きが伸びないで横ばい程度になるのは困るというような話がありまして、やはりその辺もわれわれとして意を用いなければならないと思うわけで、昨年の秋以来いろいろと検討を続けておりますが、まだ米の増量という形で結論を出すまでになっておりません。  合成酒業界を考えます場合には、しょうちゅうその他雑酒あたりも兼業している向きが多いので、それらの酒類兼業状態もあわせ考えて、経営全般についての見当を見るというようなことで、なかなかむずかしい問題になりまするが、せっかくただいま検討を重ねておるという状態でございます。
  18. 大矢正

    大矢正君 これは、国民の所得水準が高まっていけば高まっていくほど、やはり嗜好品としての酒のクラスも当然上がっていくと思うのですね。今まで合成酒でおったけれども水準が高まれば漸次、幾らか高いけれども清酒へという方向に変わっていく、こういうことは考えられるので、そういうことになれば、合成酒は漸次追い詰められる格好になってくる。しかし、合成酒は、原さんちょっと触れられたようだけれども資力があるわけですね、合成酒というのは。ですから、資力にものを言わせて、政治的に物事を解決するという方向も、私は出ないとも限らないと思う。それを許したのでは、実際問題として、法酒業界の零細な、特に零細な立場のものには相当打撃を与える結果になります。清酒業界といってもやはり、何ですか、おけで売ったり、造石のワクだけをもらっておいて、これを他に転売したりという、非常に悪い現象も出ておりますが、これはこれて、いずれにしても、やはり私はチェックをしなければいかぬと思うが、何としても、両方が成り立つような方向酒類業界過当競争が未然に防止されるような方向に、大蔵省としては私は努力をしなければいかぬのではないか。特にこれはもう直接関係がないかもしれぬけれどもマル公が廃止されて、基準販売価格かどうかわかりませんが、そういうものを作るよりどころとして酒類業界が動き出すということは、酒類業界一つの再編成だと思いますし、そういう意味では、政治的に、また経済的に与える影響は大きいと思いますから、十分この点は考えてやっていただきたい、こう思うわけでございます。  それから、原さんの答弁によると、準一級酒を作っても税収の上においては変化がないというお説が、この間の大蔵委員会で発表されておりますが、私はそれはちょっと言い過ぎじゃないかと思うのですが、むしろ、私ら考えてみて、一級酒を下へ落として準一級を飲むという傾向が逆に強まってくるのじゃないかということを実は考えておるわけですね。二級が一級に上がる、すなわち二級を愛用していたものが準一級に上がるというよりは、むしろ一級が下へ降りて準一級という方向に来るのではないかという傾向が非常に強い。これはまあ造石数にもよりますが、いずれにしても、そういう傾向が必ず私は強まってくる。その場合に、税収の上において影響がないということは言えないのじゃないかと思うことが一つと、それからもう一つは、二級と一級との間に準一級というものを作った。そういうことになると、勢い一級特級の同にもまた新たな銘柄を作らなければいかぬのではないかという方向が出てきやしないかという問題。もちろん、これは私どもは常に酒税は減税をせいということを主張しておりますが、これはこれとしても、現状の税制の中においてはそういう方向がとられるのではないかということを実は考えるわけですが、私のこういうような判断の仕方というものはどんなものでしょうかね。
  19. 原純夫

    政府委員原純夫君) 率直な感じが、御判断の角度というものは私はどうも、正しいのではないかと思います。ということを申すのは、非常に今回増減収なしと申しているのと矛盾しているようでありますが、やはり根本的な大きな流れは私どもそういう流れだと実は覚悟しております。  先程申しましたように、先年来調べてみますと、特級一級あたりがまことにふるわざる状況になってきているということは、やはり今の大きな格差というものに無理があるということだと思っております。しからば、準一級を設けた場合にもその無理が出て、上から下がってくる方が多いのではないかという御疑問、これまたごもっともな御疑問だと思います。実は、まあ私どもも、立案の経過といいますか、話が昨年の春ごろでしたか、もっと前でしたかありました時分に、業界から、これをやってくれれば下から上がるものは相当多いから、増収が出るという話があったのです。とてもそんなことはできまいと、減収の心配がありやせぬかと思った時期もございました。しかし、ちょうど今お話しのような大きな方向を考えますと、やはりその方向に順応する手は、なるべくできるときに打っておかなければならぬということを、根本的に考えているわけです。  ところで、少し率直にぶちまけて申しますと、一級を下げるというのを酒税法改正の第一段にやるということの政治的な響きと申しますか、こういうことも私どもは実は考えました。しかるに、この準一級というのは、間の非常にあいているところに一本入れるのですから、落ちつきはずっとよろしいと思いました。そして業界からも、下から上がる方をよけい出しましょうという話があったから、それじゃ一つ業界と話をして、下から上がるので増収を出せとまでは言わないが、しかし減収のないという程度にできるか。できるならば、今大矢さんも言われましたような大きな方向を税法の上でもだんだん解決するということに忠実にやるという意味で、踏み切ろうという覚悟をしたわけです。それで、この案を私どもは具体的に提案しようと決心いたします前に、業界の代表の方ともお話し合いをして、それができるかできぬかということを聞き、できるようにやつていただくということを実はお話をしたわけです。そういうわけで、私どもとしては今回のこの増減収なしは実現できると思っております。  ただ、まあそういう経緯を貫いて、しかし、大勢はまた減収の方向にあるじゃないかという見方、これはあると思います。私どもも、とりあえず三十五年度はそれでもちろんできると思っておりますが、あとだんだんそういう方向にあるかどうか、その辺は、そういう方向といいますのは、減収が出るような方向にあるのではないかということはまあやはり残ると思います。この辺はやっぱり、そうなりました場合に、先ほど最初にお話のありました特級一級と二級との格差をどうするかというような問題に根本的にからまってくるわけで、やはり私どもとしては、経済の大きな流れに合わないような制度はだんだん直していかなければならぬということも考えて、善処していく。とりあえずは、今あまりに差が大きいために、やはり一級にはとてもできないという酒屋さんがあることも事実のようですから、その辺の落ち穂を拾うことによって、そしてそれを業界としても協力をしてもらうということによってできるのではないか、増減収なしができるのじゃないかという、若干穴をよってというようなことになりますが、落ち穂を拾ってというようなことになりますが、そういうようなことでできるのじゃないかと思っております。
  20. 大矢正

    大矢正君 これは原さんがどういうふうに言おうが、私は、この準一級酒の設定と、それから合成酒の一、二級の区分をなくするということは、これは減税につながると思うのですね。これは何だかだいっても、そういう結果に私はなると思う。なぜそういうことになるかといえば、合成の場合だって、一級と二級をなくして二級の価格で当然売るのでしょうから、量がかりに伸びて、税収の上において変わりはないとしても、個々の人間にしてみれば減税になるわけですから、国全体として見れば、国全体の売れ行きがふえるから変化がないということは言えるかもしれないけれども、それを飲む個々の人間にしてみれば、低いところで押えるから、結局税金も安くなるという、一つの減税だと、私はこう思うわけです。これはいろいろ見解もあることですから、別にどうということはありませんけれども、ただ、準一級を設けて、一、二級の間の、何といいますか、差を縮める。あるいは将来、来年あたりになってから、どうも特級一級との間は三百幾らだと思うが、これも値開きがあるから、一級特級の間に準特級を作ろうじゃないかというようなことも出てこぬとは限らぬと思うのです。これは別に私反対するのではなくて、準一級や準特級が作られたりすることは、国民の嗜好に合うことですから、そういう国民の期待があればけっこうなことだと思うのです。  ただ、そこで考えなければならぬことは、そういうように非常に酒の級別が多くなってきた場合に、税金のあり方というものが今のままでいいかどうかという議論が必ず出てくると思うのです。これは税制調査会で酒の税金の話をしているかどうかは存じませんけれども、今、税制調査会——税制審議会ですか、それでいろいろ検討している面はたくさんありましょうけれども一つには、やはり税金というものを簡素化をするということも一つ方向だと思うのです。その段階において酒だけは級別がたくさんふえて、しかも級ごとに税金が設定されるということは、必ずしも当を得たことではないのですから、酒の税金は、全部が一升当たり幾ら、一斗当たり幾らと、こういうようにきめるか、あるいはこれを上の部分と下の部分と区切ってある一つのランクをつけて段階的にやるか、そういう一つの集約的な方向、税金の集約的な方向というものが必ずとられなければならぬというような考え方を私は持っておるのですが、いろいろ来年、再来年には、税制の問題で根本的な検討を加えられる矢先でもありますし、酒税についても当然級別が多くなるという見通しの上に立つならば、そういう簡素化する——級別に、銘柄別に税金を設定するのではなくて、ある程度集約した税金を作るという方向が好ましいのではないかというような考え方もあるのですが、この点はどうでしょうか。
  21. 原純夫

    政府委員原純夫君) 今度は準一級が入って、四つ級ができる。先ほどお話しのような工合で、それではまた準特級というようなものができるというようなことも観念的には考えられます。しかし、実際に五級、六級、七級というような数の多い級別で税法ができるか、それで執行ができるかということになれば、それはやはり私は限界があると思います。現に、この準一級を入れます場合でも、執行面の問題でいろいろ部内では苦心をした問題でありますので、あまりよけいの級別はできないというふうに思います。従いまして、お話のように、やはり落ちつくところは、一度——こういう四級制ということもかなり級としては多い次第です。これは決して、さらに今後これよりも多い級別、級数ができるという方向への第一歩だというのでなくて、やはり何らか自由化しつつある時代にふさわしい新しい制度ができる間の過渡期の現象だというふうに、実は私は思っております。  反面、今回の酒税法改正によりまして、基準価格制度ができるということになりますと、今までの一級ならば幾らというのが最高価格であると同時に最低価格にしろというような努力が加わって一本価格というものであったのが、基準価格ということになりますと、あまりにそれを上下することは私どもは好みませんけれども、やはりだんだんその基準価格の回りにある程度の上下が出るだろうと思います。その方向が今おっしゃっております級別がたくさんできる要求をある程度満たしてくるということに私はなってくると思います。また、先ほど申しましたように、特級と二級との格差が大き過ぎるということが正しければ、ちょうど今合成酒一級を尾てい骨として整理していこうとするように、だんだん特級は量が将来とも減ってくるのではなかろうか、極限はどうなるか、そういうようなことをずっと考えていきますと、やはり今過渡期であって、将来はそう多くない級別でまとまる。また、もっと徹底的に自由な裕福な時代が続くならば、あるいはまた一本の税率構成になるということもないとは言えないと思いまするが、そこまでに行くには相当時間がかかろうし、また究極の状態としてそれがよろしいかどうか、その辺はなお十分私どもも考えてみたいと思っております。
  22. 平林剛

    ○平林剛君 今度の法律は、合成清酒一級、二級の級別を廃止して合成清酒と称する、これも入っているわけですね。販売価格は三百八十円ということですけれども、今までの合成清酒一級、二級、これはそれぞれ一キロリットル当たり幾らでしたか。
  23. 原純夫

    政府委員原純夫君) 三百八十円、これが今までの二級の小売価格でありました。それから、一級の分が五百十五円ということになっております。
  24. 平林剛

    ○平林剛君 合成清酒一本に今度はなりますと、その販売価格は幾らになるのですか。
  25. 原純夫

    政府委員原純夫君) 三百八十円でございます。ちょっとここで、先ほど大矢委員からのお話がありましたこととからみますので、ちょっと補足して申しておきますと、それはどういうことかといいますと、一級の方が二級よりも格がよろしい、中身がよろしい。その中身がよろしい分を、わずかであっても一緒にして、そして過重平均した中身のものを作るのかというと、そうではないのです。一級の方はやめてしまって、もう従来の二級の規格のもの一本でいこう。ですから、それを飲まれるならば、三百八十円という意味では、これは減税でも何でもない。ただ、一級がなくなるから、その分は減ると思えば減る。しかし、一方で二級といいますか、新しい合成酒の消費はある程度伸びるだろうというような期待を持ってやっているということでございます。
  26. 平林剛

    ○平林剛君 これで大体、清酒特級販売価格一千七十五円で、一級が八百三十五円、準一級が六百五十円、二級が四百九十円、合成清酒が三百八十円ですね。大体、酒の価格の面においてもバランスがとれているというわけなんですね。しかし、私は別な角度でちょっとお尋ねしておきたいのですけれども、それぞれの販売価格は先ほど申し上げましたようにわかっておるのですけれども原価ですね、原価はどういうふうになっているかということですね。私は、今回準一級を六百五十円にしたという基礎などにも関連して、まず前提として原価は幾らになってこの価格がきめられているか、それを聞きたいと思います。
  27. 原純夫

    政府委員原純夫君) お尋ねの点は、実は先般こちらの委員会の御要求に対しまして、三月十四日付で「酒類の種類別価格構成表」というのを提出してございます。それに製造価格という欄を設けてございます。それをざっと申し上げますと、特級九百三十三円四十銭、第一級は七百二十一円十銭、第二級は四百六円六十銭、合成清酒一級四百三十二円八十銭、第二級三百十円五十銭となっております。
  28. 平林剛

    ○平林剛君 ただいまお話しになったところで、今四百六円六十銭というのは、これは二級ですか。
  29. 原純夫

    政府委員原純夫君) 清酒の二級でございます。準一級の分は今申し上げておりません。これは結局、何と申しますか、法律を成立させていただきましたあとで、マル公といいますか、マル公の告示をするときに、おっしゃるように出すということで、ただいま部内でいろいろ練っているという段階でございます。
  30. 平林剛

    ○平林剛君 そうすると、あれですね、今度準一級六百五十円に算定したものの原価は大体どのくらいになるという見積もりなどは、ないわけですか。何かやはり試算はあるんでしょうか。
  31. 原純夫

    政府委員原純夫君) もちろん、試算はございます。大体やり方はこういうふうにしたいと思っております。酒の特級一級、二級というものが従来あって、その製造価格、卸、小売マージンというものの構成には、おのずから共通した条件といいますか、原則的なものがあるわけです。その一級と二級との間にはさまるわけでありますから、その条件になだらかに入るような形で入れて参るというつもりでおります。それでちょうど、今回お願いしております税率でちょうどおさまるようにというようなことで、実はねらってやっておるわけであります。
  32. 平林剛

    ○平林剛君 私は、製造原価、あるいは卸マージンとか、小売マージンとか、製造業者の利益だとか、こまかいことはわかりません。そうしてまた、今度、今までの販売価格が妥当であるか、今度の準一級の六百五十円というのが適当な価格であるかどうかということは、わからぬのですよ。だから、あるいは六百三十円ぐらいかもしれぬ、あるいは六百四十円くらいかもしれぬ、こういう疑問が素朴に出てくるわけです。あなたの方でいろいろ考えてみて、それぞれの製造者の利益率などから見て、これはおおむね妥当と判断をしてこの価格を出したのですか。大体どのくらいの利益率になっているか、参考のために聞かしていただきたい。
  33. 原純夫

    政府委員原純夫君) おっしゃる通りの考え方で見当をつけております。利益率の問題でありますが、製造者の方は、実は利益を幾ら盛り込むかということではなくて、御案内通り、四千軒の酒屋さんの中には条件のいいのと悪いのがある。ちょうどお米の値段をきめますときに、バルク・ラインというようなことを言われますが、この辺ということをめどをつけまして、そこに基準を置いて原価を算定する。ですから、そのバルク・ラインでは、苦しいというところの業者も相当あるんです。そういうところでは、よほどがんばってやっていただかなければならぬということで、しておりますので、結局それでできている一級と二級との中間をねらうその中間のねらい方——もう一つ先に申し上げましょう。この卸小売も、第一級の御差益率は四・八%、これは仕入れ価格に対してであります。二級は七・八%、それから小売はそれぞれ一〇・五%、一一・七%となっておりますが、この開きを、それぞれの開きを、ちょうどこの八百三十五円と四百九十円との間が三百四十五円でありまして、その三百四十五円を内輪に下から六百五十円のところへ持っていきますと、百六十円ですね。ですから、三百四十五分の百六十というものを二級からの距離にして、間において按分していくということをしますと、大体それにバランスをとったというような何が出てくるわけです。ですから、製造価格は今申しましたような形で間に来る。それから卸差益は四・八と七・八の間、それから小売差益は一〇・五と一一・七の問になるということでございます。
  34. 平林剛

    ○平林剛君 この準一級という新しい酒を販売すること、あるいは合成清酒を一本にするということ、これは今回は、酒類業界の中では特別に紛争とか、トラブルとか、意見の違いとかいうものはあまりなかったように聞いているのですが、それでよろしいですか。それから、私は前に、いろいろな問題をきめるときには、酒類関係懇談会、あるいはそういう会議でよく相談をして、結論を得るようにということを希望しておいたのですが、今回もそういうことはおやりになったのですか。
  35. 原純夫

    政府委員原純夫君) 今回のこの御提案申しております案については、もう業界も全然異存は持っておられない実情であります。それぞれ、清酒にしましても、合成清酒にしましても、何といいますか、やりよくなることでありますので、まあしいて言いますれば、それぞれの業界が、バランス的に相手の業界にこれが認められるということをどう思うかというようなことはありますが、まあ方向としていい方向だと思っておりますし、業界もそういうことで、別段反対というような声は一つも聞いておりません。  従いまして、今回のこれを酒類行政懇談会に諮るということは、特にそういう形式は踏まないでもというように思って、別段いたしておりませんが、もちろん、この立案いたします経過では、業界のことともについては十分意見も聞きながらやっている次第であります。
  36. 永末英一

    ○永末英一君 この機会に、国税庁長官にちょっとお聞きしておきたいのですが、昨年酒団法審議をいたしましたときに、大体あの法律の目ざすところが、酒造業界にいささかでも自由競争の余地を導入して、そしてよい酒を安く提供するのがねらいであるという主税局長の説明を受けた。そういうことがねらいであるとするならば、今までの長い酒造業界の歴史の中で、言うなれば、いろいろな矛盾がある、その矛盾の一番大きなところは、権利の上に眠っているといいますか、あぐらをかいて権利のしでもうけているというような状態が続いたのでは、なかなかにそういう当初のねらいが実現できないのではないか。その一番大きなところは、いわゆるそれぞれの業者の割り当てられる酒造米の石数について、今申しましたような歴史の古さのゆえに、何か固定してしまっているということが原因であろうかということを、これはあなたの方の関税部長さんも来られて御承認になっておられるわけです。従って、ちょうどその審議のときは、今度の酒造米の割当のまっ最中でございましたので、そういうものを織り込みながら、だんだんと矛盾は是正していくという所感の表明がございまして、大体その割当が終わりました。ところで、その結果を見ますと、必ずしもそういうお見込みのほどが実現していない。一例を申し上げますと、いわゆる委託する業者、受託する業者、そうしてその委託する業者が多い府県においても、結局割り当てた結果を見ると、そういうところに多くの割当がされておるということになると、委託を奨励しているという結果になっておるのか、そういう実情がございます。  従って、国税庁長官は、最高の責任者でございますから、ことしのそういう割当をされる場合に、昨年の委員会で、あなたの方の方針として、だんだん矛盾をなくするというように意見の御表明がございましたけれども、そういうことについて、どういう御努力をなされたかをこの際お伺いをしておきたい。
  37. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) ただいま御質問ございましたように、清酒に対する酒造用の米の割当の問題につきましては、この数年、特に矛盾が出てきたのは御承知通りであります。これは申すまでもないことでございますが、昭和十一酒造年度の生産石数をもととしまして、昭和十三酒造年度から清酒業界の内部において自主的に生産統制を始めまして、それがずっと実績がもとになりまして、最近まで米が割り当てられているというようなことから関係するものでございます。で、現存——これはまあ数年前、酒を作ればどんどん売れたという時代におきましては、昔の生産実績がもとになりまして米が割り当てられても、それによって製造された清酒はどんどんさばけておったわけてありますが、ちょうど昭和三十酒造年度ごろから、清酒を相当増産いたしましたに伴いまして、市場が若干軟化をして、作ったものが必ずしもそのまま楽に売れるというような状況ではなくなったわけであります。これは二十数年間の昔の生産実績を積み上げてそれぞれきたものでございますから、ことに終戦後、昔の朝鮮、台湾などという領土もなくなりまして、地域的にも昔の生産実績をそのまま積み上げて酒造米を配給するということが不合理になって、その矛盾がちょうど昭和三十酒造年度から出て参りました。  この際の一応の矛盾の解決方法としましては、この米の割当の基準となるところの指数を、まあ一年度限り譲渡する。まあ実質においてはそうでございます。それを委託醸造という格好でならしまして、これは単純に販売能力の再委託の問題ではございません。あるいは業者の中心となる人が死亡されたとか、あるいは病気になったとかいうようなことで、その年はどうも自分で醸造できないということもございましょうし、あるいは災害によってその年は醸造できないということもございましょうが、まあ多くの原因といたしましては、自分の基準指数に応じて増産分を刷り当てられたのでは、なかなか販売できないというような業者の方が、一方どんどん伸びてくる業者で、今までの基準によって割り当てられてはまだ足りないという業者に対しまして、まあ一年度限り基準指数の譲渡ということが行なわれて参ったわけてあります。これはもちろん、決して望ましいことではございません。本来そういう基準がちゃんとした、それぞれ地域的にも、また個人的にもバランスがとれており、実勢を反映しておればよろしいわけてありますが、必ずしもそういうことでないので、こういう矛盾が出たわけでございます。  国税庁といたしましては、昭和三十二、三十三酒造年度から、この委託醸造によるところの滞貸の増人を防ぐという措置をとって、三十四年度もその趣旨を継続しております。それからまた、いわゆる権利の上に眠る業者というのは、やはり社会的にもよろしくございませんので、委託醸造する人に対しましては、三十三酒造年度から実施いたしました中央保有米の割当の対象としないとか、あるいはまた委託醸造しました場合においてはその委託した基準指数の一〇%に相当する基準指数を翌年度において減少させる、こういうような措置を講じて参りまして、その結果、委託醸造の全体に占める割合はこの三年間漸次減少して参りました。ちょうど昭和三十二酒造年度におきましては全体の基準指数に対して一・七%でございましたが、三十三酒造年度から対策を講じました結果、三十三酒造年度においては一・四%、それから三十四酒造年度には一%というふうに減少いたしております。  なお、根本の問題は、やはり従来の基準指数をもととして、そしてそのまま、たとえば前年に対して酒の生産を一割増加すれば全部に対して一割を増配するというようなやり方をいたしておりました。これがいかぬのでありまして、昭和三十三酒造年度から、先ほどもちょっと触れました中央保有制度というものを作りまして、ある程度までは従来の基準によって米の配給をしますか、それ以上はこれは従来の基準とは離れた別な方法でもって配給をする。従いまして、委託醸造する者には中火保有米をやらない、あるいはまた基準指数を譲渡した者には保有米をやらない、まあこういった制限を加えて実施いたしております。ただし、昭和三十三酒造年度におきましては、業界におきまして非常に強い反対がありまして、まあ一種の従来の無体財産的な価値を持っておりますから、これを政府が一挙にしてくつがえすのは非常にショックを与えたわけでございましょうか、非常に強い反対が出ましたので、三十三酒造年度においては、中央保有制度は実施はいたしましたが、醸造業者の実際の力、実勢というものを必ずしも反映いたしておりません。三十四酒造年度におきましては、業界におきましても中央保有制度の実施につきまして相当協力せられまして、その結果、三十三酒造年度に対しまして相当実勢を反映した中央保有制度を実施できたと思っております。  ただし、しさいに資料検討いたしますと、やはり必ずしもほんとうに伸びる力があり、また伸びたいという方々に、思い通りの酒造米の配給が行なわれておらない。一方また、ほかが要求するなら自分もまた保有米を買おうという人がもらっておりまして、これは必ずしも実勢が完全に反映されていないと思います。こういう点については、来たる三十五酒造年度までに十分内評を検討いたしまして、こういう中央保有制度の改善をはかりたいと思っております。
  38. 永末英一

    ○永末英一君 この中央保有制度を運用していくと、この四千軒の中で大体四分の一以上というものがその恩沢にあずかるということであれば、実際問題として、ほしい者がこの制度の恩沢に浴しているのではなくて、もう軒並みにバー打ちになっているというような現象にも思われるし、しかし、そういうようなことでいろいろ行政指導が行なわれると思いますが、大体、長官はどの程度まで委託、受託というようなあやしげな制度で抱きかかえている酒造米の量を減少せしめていけば合理的とお考えですか。そして、それはまた何年くらいの期間で詰めていけばいいとお考えですか。
  39. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) 先ほど申し上げましたように、委託にもいろいろ種類がございます。ほんとうに工場が災害に会ってその年は酒が作れない、あるいは業者の人の中心となる人物の死亡とか疾病とかいうことでもってできない場合がある。こういう場合は、私はやはりこれを認めていかなきゃ工合が悪いんじゃないか。ただ、実勢を反映しない基準指数になっているために、委託醸造が行なわれているということにつきましては、これはやはりできるだけ早い機会にそういう方法を解消する、そういう事態を解消していかなければならないと思っております。  ただ、これにつきましては、なかなかむずかしい問題もございます。たとえば、一挙に廃止いたしました場合に、それでは今まで受託によりまして清酒を増産しておった人に対して、その増産分を一体どうするか。急に取り払いますと、卒然として取り払いますと、今まで人から受託しておって、そして増産しておった分が認められぬということになっては困るもんですから、そういう方に対しては、その実態に応じた米の配給を考えていかなければならないだろう。こういうことをいろいろ考えていきますと、技術的には非常にむずかしいのでありますが、できるだけ早期に、でき得べくんば昭和三十五酒造年度において大体の大きな解決をいたしたい、こう考えておるわけでございます。
  40. 永末英一

    ○永末英一君 この委託、受託のことについてお考えになる場合に、一年度限りの現象として扱っておるということでございますが、暦年委託をやっておる者については、今おっしゃったように、昭和三十五年度においては特に御配慮をいただくというようなことはございますか。そういう御方針はございますか。
  41. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) 立地調整につきましては、ただいまお話ございましたように、昔、戦争中、他府県にこれを基準を譲渡した県に対しては、戦後五〇%返すことになったわけでありますが、ただ、この後の調整方法については、これはいろいろ問題があります。企業整備によって戦前やめられた方が、戦後復活された。その方に対する酒造米の取り扱いの問題もございまして、ちょっとデリケートな問題がございまするが、なかなかこの立地調整の分を解決するという方向は、むずかしいんであります。ただし、来年度において、どういったらこの今までの立地調整によりまして不満足であった部分を合理的に是正できるかという点は、私どもも、他の情勢も考えながら、十分考慮しなければならぬ点かと思うのであります。なお一つ、十分研究したいと思います。
  42. 永末英一

    ○永末英一君 まあ十分研究するということでございますが、大体この委託受託については、一応昭和三十五年度には相当一つ整理をしていきたいという御意向でございましたが、その時間はありませんか。
  43. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) 立地調整の分につきましては、業界においても非常に大きな問題でありまして、簡単にいじれない。委託譲渡の方はこれはどうにか——と申しましても、廃止するのが筋だということは業界も一応は納得した格好になっております。少なくとも、気持の上では反対かもしれませんけれども、道理の上からどうも仕方がないと考えております。立地調整につきましても、これをいじりますと、ほかの他府県にも非常な影響を及ぼす、酒造界全体について非常な影響がありますので、これは十分慎重に研究する必要があると、こういうふうに考えております。
  44. 杉山昌作

    委員長杉山昌作君) ちょっと速記を止めて。    〔速記中止〕
  45. 杉山昌作

    委員長杉山昌作君) 速記をつけて下さい。  ほかに御発言もなければ、これにて質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  46. 杉山昌作

    委員長杉山昌作君) 御異議ないものと認めます。  これより討論に入ります。御意見のある方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。——別に御意見もなければ、これにて討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  47. 杉山昌作

    委員長杉山昌作君) 御異議ないものと認めます。  これより採決をいたします。酒税法の一部を改正する法律案全部を問題に供します。本案を原案通り可決することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  48. 杉山昌作

    委員長杉山昌作君) 全員挙手でございます。よって本案は、全会一致をもって原案通り可決すべきものと決定いたしました。  なお、諸般の手続等につきましては、先例により、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  49. 杉山昌作

    委員長杉山昌作君) 御異議ないものと認め、さよう決定いたしました。  本日はこの程度で散会いたします。    午後零時十七分散会