○
参考人(
谷林正敏君)
谷林でございます。各
参考人から、いろいろ
為替・
貿易の
自由化につきまして
お話がございましたが、私どもも、大体同様と
考えておる次第でございます。
で、
貿易業界といたしましては、最も多くこれの
影響を受けるわけでありまして、ことに私ども多年、
世界の流れというもの
——貿易自由化に、
日本も早く移るべきだというような関心を非常に持っておりましたので、本件については、特に関心を持っております。で、
業界といたしましても、
業界自身として、いろいろ施策その他に御要望申し上げたいこと、あるいは
日本の全体としての
貿易、あるいは
為替の
自由化に、どう対処すべきかというようなことも寄り寄り話し合ってはおりますが、まだ今日の段階では、正式に申し上げる段階に至っておりません。そこで本日は、私
個人の
考えといたしまして、本件について若干の
お話を申し上げまして、御参考に供したいと思うのであります。
私は、この
貿易・
為替の
自由化というのを、最近
日本で非常に論ぜられております。昨年の秋以来、ことに強く論ぜられておりますが、これについてもちろん特殊の方々はよく御
承知でありますが、
一般の
業界なり、
一般の国民については、
一つのポイントといいますか、非常に重要なポイントで見のがされておるのじゃないか、あるいはその点について、
政府なりその他の方で、もう少し御努力を願いたいというように
考えておるものがございますが、それはやはり
貿易・
為替の
自由化というのは、
日本の体質を
改善する上に必要である。これは
日本の体質
改善の上には、どうしてもなければならないということをおっしゃっておりますが、これは当然でありますか、それと同時に、これが国際的の流れである、その流れというものがあるから、ここに時期の問題があるというようなことを、やはり同時に、皆さんにわかっていただく必要があるのであります。たとえばもしも体質
改善の上に必要であるというならば、これは
あとで、いろいろ申し上げますが、
日本では、若干といいますか、相当
程度準備がおくれておりましてそこで、もし体質
改善のみをいうならば、ある
産業は、もう少し時日をかせ、あるいはこの
産業が
自由化をしてから、われわれはやりたいというような、そこにいろいろな論議が出てくるわけであります。そこで、そこに時期というものが、そうゆっくりできないというのが、私の申し上げた国際的の流、れといいますか、ある論者はときどき、
日本が
自由化に進むのに、
アメリカとか、あるいはIMF、ガットのプレッシャーによって、そういうことをする必要はないじゃないか、わが道を行く、独立の
考えでいけばいいというようなこと、これはまあ強い言い方、弱い言い方、いろいろございますが、しかし私は、やはりこの
貿易・
為替の
自由化というものは、
世界貿易というものにつながっておる
日本から
考えれば、
輸出をし輸入を上、両方とも拡大していく上に、非常に必要でありますから、やはり買う方は、あるいは外貨が十分であれば買えるかもしれない。売る方は、やはり国際的の
一つの流れというものに合わせつつ進まなければならないと、こう
考えております。
そこで昨年以来のIMF、ガット、あるいは
アメリカ自身、あるいは西欧諸国の
要請というものがございまして、これを期間は、三年あるいは四年ということは言われませんが、大体、そういうような期間に、ある
程度の
自由化をしなければいけないということがありまして、この
日本自身の
自分からの
要請、外の流れに合わせるという、この二つのことがある。現在
自由化に、われわれとして進まなければならないということと思うのであります。
外からの流れといいますか、その方を多少申し上げますと、たとえば西独がIMF、あるいはガットから
自由化に移れと、もう
制限措置はいかぬと言われましたのは、一九五七年の三月にIMF、六月にガットから言われておりますが、そのときの西独の外貨保有高は五十六億ドル、当時の輸入額は七十五億ドルでございました。それから昨年の第十四回のガットの総会の前に、オランダが、これは
自分から
制限を廃止すると言い出したときに、たしか外貨保有高が十四億ドル、輸入額が
年間三十四、五億ドルと思います。昨年の十月にイタリアが、これはIMF、ガットから言われましたときには、これは大体三十一億ドル以上の外貨を持ち、
年間輸入三十二億ドルということでございますから、これは輸入額と同じぐらいの金額を持っておる。それからイギリスは、まだそういうことを言われておりませんが、御
承知のように、昨年の十一月の四日でしたか、五日でしたか、大々的に
貿易自由化、対ドル
自由化をやっておりますし、今年に入りましても、また三、三項目付け加えて、ほとんどの
物資について
自由化をいたしておりますが、この輸入額が、大体百十億ドル、外貨の保有高が三十二、三億ドルだと記憶いたしております。
こういうわけでございますから、
日本自身の
自分で
考える必要度ということとともに、国際的機関、あるいは国際的他国の感触において、
日本というものが
自由化をしろというような
要請といいますか、そういうことはだんだん強くなる。そこで、そういうことに
日本も従って努力をしなければならない。これはもちろんやってみまして、
内容的にできないものは、これは断わればいいのでございます。できないということをはっきり言えばいいのでございますが、努力をしなければ、私は来年の春ぐらいのガットのとき、総会あたりには、もう
日本は
自由化に進めというようなことを言われるのじゃないか。こういうようなことが、私の申し上げます外からの流れに
日本も協力し、一緒になるということでございましてこの二つが、今あるということをまず各
業界も、はっきり頭に置いて、事を進めなければいけないと思うのであります。
非常に一例でございますが、私フィナンシャル・タイムスを昨年の十月ごろからつい最近まで、ずっと見てみましたが、その中で
貿易の
自由化に関する記事は
一つもございません。たった
一つ、イギリスの中の
貿易自由化のことをうたっております。それはイギリスが最後に、いろいろな
物資の
自由化をいたしました。もちろん些少、現在でも残っておりますし、ソ連あるいは
日本に対しては、特別に残っておりますが、大半は解除いたしました。その最後の段階に、非常に大きな問題になっておるのが、時計工業である。時計
産業である。ところが時計
産業というのは、スイスから腕時計が非常に来る。オーストリアその他から掛時計、置時計が来る。そこで、これを
自由化すると、
国内産業が非常に困るから、何とかいろいろ
対策をしなければならないというような記事が載っておりましたが、それ以外に、イギリスの中で、
国内の
産業の
自由化について、これこれしかじかという記事は載っておらないのでございます。これは、
考え方によりますと、従来非常に長い間の努力によりまして、今
自由化に進むのは、それほど論議しなくてもいいということもございましょう。しかし私は、各
産業におのおの
自由化というものは必要であるという
考えのもとに、従来準備しておる、たとえばそこに出ている
産業の中で、いろいろ
考えているのが、こういう現象じゃないかと思っておるのであります。
そこで、そういう工合に、
情勢をはっきり
日本においても意識して、さあこれから
自由化対策がどうだといいますと、私はそこに、いろいろな問題があると思います。先ほど準備が非常に不備であると申し上げるのは、たとえば
欧州の諸国が、非常に
自由化率が進んできた。昨年の末においてOEEC諸国は、その間の
自由化、平均いたしまして九割
程度になっておる。これはトルコがおくれておりますので、トルコは、ほとんどやっておりませんので、アベレージが低くなりますが、約九割、対ドル
物資に対しては七割くらい
自由化が進んでおります。ところが、英国とか、フランスとか、西
ドイツ、イタリアというような国の
自由化率をとってみますと、今年の一月あたり約九五、六%以上、九九%くらいOEECの
自由化は進み、あるいは対ドルの方も九五%くらい進んでおります。ところが、こういうふうに進んできたその
自由化というのは、御
承知のように、一九五〇年にコード・リベラルゼーション、つまり
自由化規約というものを彼らの間に作り、一九四八年を基準として、毎年どれかずつ
自由化をするという努力を重ねてきた。あるいはドルにつきましても、一九五三年を目途といたしまして、毎年
自由化の努力をしてきたのであります。ですから、その間、あるいは企業の合理化もいたしましょうし、あるいは税制措置のこれに対するいろいろな
改善もいたしましょうし、関税の方の
改正も、おそらくされたのだと思うのであります。ところが、わが国の方は、これはいろいろ
国内の
情勢上、途中で役所の方で、これをこう進もうといっても、時期が、そういうことでなかなかいかぬ。あるいは国際的な
要請というものがないと、なかなか踏み切れない。これは十分わかるのでありますが、実際問題といたしましては、やはりその準備というものはおくれておるのじゃないか。
たとえば先ほど関税の問題もございますが、関税の種目が九百七、八十、そのくらいの少ない関税品目を持っておる国は、ほかの先進国に比較してございません。そういたしますと、そのままで
自由化に対処して、関税だけは、これに合致できて、何か、これによって外国品が入るのを上げて、
国内産業を擁護できるといいましても、こういうような大きざみの関税では、なかなかむずかしい。そこにもってきて、今年の九月からは、共同市場を
中心といたします
世界関税
会議があり、来年の一月からは、
アメリカを対象といたします
世界関税
会議がある。そういうことになりますと、現在の関税率をそのままもっていく、いろいろここに、関税条項の
会議をいたしました結果というものは、もう一ぺん訂正を要するのじゃないかという気がするのであります。
そこで、何とかこの
会議の前に、この関税というものも、そういう
情勢に合い得るように変えるというようなことも、これはどういう方法で、できるか、あるいはできないか、私はわかりませんが、そういう努力も、どうしてもしていただきたい。あるいは関税の定率法の中には、御
承知のエスケープ・クローズあるいはダンピング
関係のクローズも入っておりますが、こういうものも、
アメリカなり、その他の諸国に機に応じて使い得るというような
政策も、この中に織り込む必要があるのではないかと思います。
それから、関税、これはいろいろな
自由化に対する
影響のところと、若干混同いたしますが、たとえばある
物資を外から入れる。
国内の製品なり、あるいはその他と比較して、これは割安である。そこで、
国内産業の
保護のために関税が必要だ。こうして、たとえば関税を上げるにいたしましても、その時期というものが私はあると思う。現在、たとえばそういう時勢、つまり
国内には
為替その他で
保護がある時勢で、
国内三品が千円である。外のものが五百円であって外のものが入っておらない。ところが、五百円のものが自由になって入ってきたときに、もしも関税というものが三百円、三百円で、これで擁護するということにすれば、これは
一般大衆、
消費者には八百円という安いものになる。ところが、一たんその時期を過ぎてしまって、そうして
国内において
海外品と争えば、その
産業として、いろいろお困りになる。そうして、お困りになって、ある
程度値段が下がる方にいったときに、関税というもので、これを抑えるということになると、
関税政策が
一般の消費層に対するいろいろな問題にぶつかる。そういうようなむずかしい問題はあまり入れないようにしないと、なかなか
関税政策というのは、うまくいかないのであります。つまり
国内の
一般に対しては、下げるように努力するの
がいいし、あるいはガットにおいて、いろいろ他国と交渉する場合ならば、これはやっぱり
世界並みのところに持っていっておかなければ、
お互いの交渉もできない。あるいは今後の
自由化に対処するにも、ある
程度関税も、これに合うようにしておかなければいけない、こういう問題もございます。
それから、先ほど来問題になっております金利の問題、これも私といたしましては、金利を下げろということのみはいっておりません。もちろん現在におきましても、
日本の公定金利約七%何がし、
世界の主要国は四%ぐらいでございますから、相当差がある。しかし私は
世界金利が上れば、
日本の金利も上がるのは当然ではないか。
世界金利が高いときに、
日本金利のみ下げる、これはそうであればいいのでありますが、特にそういうことを
要請しない、要するに、
世界金利と一緒に同じように国際水準並みに動く態勢に、私は
自由化というものが相当進む前に、こういう態勢に持っていく必要があろう、こう
考えるのであります。
それから
自由化を
考えます場合に、先ほど
国内、
自分のことを
考える、あるいは国際的に
自由化の
要請ということを
考えるということを申し上げましたが、私は、そのほか現在の
日本におけるいろいろ
対策その他で
考えなければならないことがあると思う。
それは、最近の
世界情勢であります。
欧州の共同市場なり、
欧州の自由
貿易連合というのが、いろいろな批評はございまするが、とにかくああいう
程度で進んでおる。最近は、これを何とかして一本化したいというので、カナダあるいは
アメリカも相談の対象に入れて、例の大西洋
経済会議がある。三月ごろ開くのでありますが、その前に、つい最近のフィナンシャル・タイムスあたりの情報では、イギリスでは
欧州諸国にだけ、この関税を下げることによって、何とかおのおのの間の
経済の強化をはかりたいというようなことがあるのであります。こういうような
情勢は、当然
日本品のいろいろなことに、単なる
自由化以外にも、いろいろ及んでくるわけであります。先ほど来、
参考人の
お話の中に、
経済基盤を強化する、あるいは
資本関係なり金利
関係なり、あるいは税制の問題、あるいは施設の問題において、そういうものも顧慮しつつ合理化というものに進んでいかなければーー
自由化というものに進んでいかなければならないと私は思うのであります。
そこで私は、
貿易自由化というものが、こういうようになりましたときに、これは、簡単に結論に参りますが、
日本で、いろいろなものを、この
対策としてお
考えになるときに、やはりどうしても必要なのは、総合的
対策である。現在よく新聞その他に見られますが、非常にたとえば、綿なり羊毛なり、これを
自由化にすれば、必要以上に入ってくるのじゃないか、設備がちょうどいいなら、入ってくるのも、普通にあんまり心配なく入ってくる。過剰設備のところに入ってくれば、やはりここに過剰
生産になる。当然それは販売の上の過剰競争になるというような御心配、そうすると、それを予防するためには、何か
お互いの間の
カルテル、あるいは
お互いの問の協定によって、この場合に一応オーダリー・マーケティングというような秩序を保とう、それも私は、その
産業においては過渡的には必要だと思うのであります。しかし、私が心配いたしますのは、それはその
産業あるいはそれに類する
産業であります。ほかの
産業に持ってくれば、またその理由は違うのであります。たとえば機械には、そういう心配よりもやはり
海外の三品と競争し得るような、製品を
生産し得るような設備なり、その他、先ほど来御説明のあったようなことが、ここに必要であると思う。そこで私はその過渡的なそういう
カルテル、あるいは協定的なものが必要な
産業には、おやりになった方
がいい。しかしそれを
一般的な法律に今ここで変えて、そういう必要性のないものまで、そういうことをやるようになりますと、
貿易の
自由化というものをやった、せっかくの効果が出てこないのじゃないか、
貿易の
自由化をやったが、ほかの方でまた協定、
カルテルというもので抑えて、そうしてまた何日かたったあげくに、
世界におけるいろいろな
貿易競争なり、あるいは
輸出をしない三品まで外国品が中に入ってくるから、やはりそこに競争がある。そういうものに耐え得ないようなことになれば、そこで、そういうものをあらゆる
方面から、この際
考えられるあるいは
個々の
産業に対しては、
個々の
産業と御相談なすって、そうして今後
自由化するのも、大体グルーブといいますか、商品グループ的なものを作って、これこれの品は、たとえば来年中には
自由化しよう、これこれのものは再来年にしよう、これこれは今のところ、どうもむずかしいというようなものがあっても私はいい。そういうふうにして、やはり
貿易の
自由化の方に進んでいただきたい、こういうように
考えております。
それから私は、今、これが
貿易自由化のみじゃない、いろいろなことを
考えなければいかぬと申し上げましたのは、御
承知のように、今年、
世界貿易というものは、
輸出一千億、輸入一千億というのを完全にこえたのであります。これは一昨年の
貿易のときに、すでにこえておりますが、昨年若干後退をいたしておりました。今年こそ一千億ドル時代というものが出てきたのであります。そこで一昨年の交換性回復、あるいは共同市場及び
欧州自由
貿易連合の創設、こういうことで、
欧州が非常に力を出してきたというようなことからいいまして、
貿易輸出競争というようなものが、今後非常に強くなってくる。そういう時代に処して、
日本としてはどう
考えるかといいますと、ずいぶんいろいろな問題がありますが、二、三の例を申し上げますと、たとえば
日本の
輸出というものを今後伸ばしていく。三十五億ドルぐらいまでは、今まで
通りでいいかもしれないが、これが、たとえば現在ございます長期計画においては、昭和三十七年に四十四、五億ドルまで伸ばす。これは伸びるかもしれないが、しかしいわゆる所得倍増計画、これは、
内容はきまっておりませんが、今後十
年間に七十億ないし八十億ぐらいの
輸出をしよう、こういうようなことをいって、
自分の方の国だけで計算しても、
輸出というものはできないのであります。どうしても相手国が買ってくれなければできないというようなことを
考えますと、一体
考え得る施策において、どういうことが必要か。幾らドルをやっても、買わない場合は、これはいたし方がない。景気が変わったら、これはいたし方がないが、やり得る施策としてはどうだと申しますと、いろいろなことがありますが、例
がいろいろある中で、簡単な例を申し上げますと、
日本が、ある国に対しましては
輸出超過で、毎年幾らやっても
輸出超過だ、輸入するものがないという国、それから、地域によっては、毎年輸入超過であって
輸出するものがなかなかない。向うが買ってくれないというようなものもある。そういうようなものを今のうちに何とかここでうまく調整していかないと、そういう国への
輸出を伸ばしていくための市場調節をすることは、なかなかむずかしいというような問題もある。
あれやこれやいろいろございますので、やはりこの
貿易自由化につきましては、各
業界において、そういうような、通商航海条約の問題もございましょうし、
為替貿易管理法の問題などもございましょう。いろいろなものをあわせて、この際、総合的に御研究になり、私どもも、もちろんできるだけのことはいたす。そうして、そういう
調査をしつつ、
対策を練っていくということが、私は必要じゃないか、こう
考える次第でございます。