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1960-02-24 第34回国会 参議院 商工委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年二月二十四日(水曜日)    午後一時二十三分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     山本 利壽君    理事            川上 為治君            古池 信三君            栗山 良夫君            牛田  寛君    委員            赤間 文三君            井川 伊平君            小林 英三君            鈴木 万平君            近藤 信一君            吉田 法晴君            大竹平八郎君   政府委員    通商産業政務次    官       内田 常雄君    通商産業省通商    局長      松尾泰一郎君   事務局側    常任委員会専門    員       小田橋貞寿君   参考人    経済団体連合会    常任理事事務局    長       堀越 禎三君    東京商工会議所    理事貿易部長  手塚 晩三君    日本機械工業連    合会専務理事  橘  弘作君    東京銀行常務取    締役      伊原  隆君    野村証券株式会    社副社長    北裏喜一郎君    日本貿易会専務    理事      谷林 正敏君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○経済自立発展に関する調査  (貿易及び為替自由化問題に関する  件)   —————————————
  2. 山本利壽

    委員長山本利壽君) これより商工委員会を開会いたします。  経済自立発展に関する調査を議題といたします。本日は、貿易及び為替自由化問題に関しまして、お手元に配付してありますプリントの通り、六名の参考人の方々から御意見を伺いたいと存じます。  この際、参考人皆様に一言ごあいさつ申し上げます。本日は、御多用のところ、当委員会のために御出席を賜わり、まことにありがとうございました。委員一同にかわりまして、厚く御礼申し上げます。  これから御意見を拝聴いたします貿易為替自由化問題につきましては、すでにその是非の問題を越え、その実施の速度、実施にあたっての準備態勢の問題に議論が進められ、日本経済の進むべき道として、実態に即した自由化のあり方、またそれに伴う必要な対策について、具体的にかつ最善の道を求むべく努力がなされているわけでございまして、当委員会といたしましては、過般来、政府当局との間に質疑を重ねて参ったのでございますが、この際、自由化によって、貿易に、産業に、また関税政策にいかなる影響を生ずるか、あるいは資本取引によっていかなる影響が現われるか等の諸問題につきまして、深い御関係と御造詣をお持ちの皆様方から、忌憚のない御意見を伺い、私どもの今後の審議に資したいと存ずる次第でございます。  なお、議事の進め方に当たりまして、最初にお一人大体十五分程度で御意見をお述べ願い、御意見開陳が全部終わった後に、各委員から御質疑を行ないたいと存じますので、その点お含みをお願いいたします。ただし、堀越参考人は、よんどころない御用事で、早目に退席いたしたい旨申し出がございましたので、堀越参考人に対する質疑は先に行ないたいと存じますので、各位の御了承をお願いいたします。  それでは、まず経済団体連合会常任理事事務局長堀越禎三君にお願いいたします。
  3. 堀越禎三

    参考人堀越禎三君) 堀越でございます。経団連といたしまして、まだ、委員会の発足を今週の金曜日にいたします次第でございまして、なかなか委員長をきめますのに、少し時間がかかりましたのと、私、岸さんのお供をしてアメリカへ行ったりしておりましたので、少しおくれたのでございますが、大体副会長の三井銀行頭取佐藤喜一郎氏が委員長ということで発足いたすつもりでおります。  大体の考え方は、先ほどお話しのございましたように、今日として、自由化是非を論ずるときではございませんので、自由化になった場合にはどうなるかということを、各業界別に検討していきたいと考えておる次第でございます。私の方には、各業界別団体がほとんど全部会員として入っておられますので、業界によって非常な相違があるように思われますので、業界別にどういうふうな結果、またはどういうふうな体制を必要とするかということを議論する予定でございますので、経団連といたしまして、この問題についてまとまった意見を申し上げることは差し控えさしていただきたいのでございますが、個人的なことを申し上げますと、私も、先般、日米経済協力という問題で、アメリカへ参りまして、調印のあとでいろいろ、いろんな人に当たって参りましたが、とにかくまあ非常に日本経済力というものの現状を買っているというよりも、その成長の仕方に非常な驚きを示し、またそしてその成長力を非常に買っておるということが現状でございます。  まあ世界銀行総裁に会いますと、直ちに、お前の国は非常な金持ちになったから、世界銀行からは金は貸せぬ、こういうふうなことを言っておるというような状況でございます。で、私たちは、まだ三十六億の年間物資の輸入の量に対して、十三億ドルの資金では非常にまだ心もとないということを申すのでございますけれども、考えてみますと、もっとも金持ちでありますアメリカが、まあ百九十億の金を持っておりますけれども、百六十何億はもうすでに債務であって、欧州の各国が金にかえようと思えば直ちにかえられるものであり、残りはIMFから預かっておるものが大部分でございまして、そういう点から、むしろ日本の方が金持ちだと言われてもいいように、非常に情勢が変化している。従いまして、自由化への要請は非常に強いものだとわれわれは考えなくてはならないと思うのでございます。  そこで、対策でございますが、これは各業種別、あるいは中小企業農業に分かれまして、いろいろと問題が多いと思います。たとえて申しますと、綿紡績のごときは、現在より一〇%のコスト切り下げは、固定費関係で二〇%の増産を要するわけであります。そういたしますと、そのためには糸価が四五%ないし五〇%も低下するというような問題もあるわけでございまして、その辺のところは非常にむずかしい、また今後研究を要する点でございますが、ただ経団連としてぜひお願いいたしたいことは、この前もずっとたびたび意見書を差し上げております通り国内体制においてもっとも大事なことは独禁法考え方でありまして、やはり国内におけるカルテルの問題は非常にこれは大きな問題でありますけれども、事、輸出に関しては相当大幅に考えていただきたいということであります。特に今度の議会ではその独禁法改正が不可能のように承っておりまするが、少くともただいま通産省で計画されております取引法改正につきましては、ぜひ認めていただきたい。私たちはあれでもまだ不満でございまして、輸出カルテルがあれから落ちておるという点がわれわれとしてはまだ不満なわけでございます。特に欧州共同市場という非常な強敵が現われております今日、輸出に関してはよほどの腹がまえでもって対処いたしませんと、国際市場において敗北するという問題がございます。一部からだいぶ強い御反対があるように承っておりますけれども、この点につきましては十分お考え下さいまして、事の重大性を十分御認識願いたいと思います。  次は、関税制度でございますが、これもアメリカのタリフ・コミティのようなものでもお作り下すって——これは行政委員会であるべきだと思いますが、弾力性のある関税制度を設けていただきたいというようなことでございます。  あとは大体皆さんと同じような意見でございますので、大体経団連として申し上げることはその程度で、なお、御質問にお答えいたしたいと思います。
  4. 山本利壽

    委員長山本利壽君) 最初に御了承願いましたように、堀越参考人はよんどころない御用事のため退席を急いでおられますので、堀越参考人に対する御質疑がございましたら、各委員からお願いいたします。
  5. 栗山良夫

    栗山良夫君 ただいま経団連の御意見を伺ったわけでありますが、主として貿易に関する点について言及をされましたが、為替自由化でありますとか、あるいは資本取引等につきまして、もし御意見を伺うことができますれば、しあわせと思いますが、いかがでございますか。
  6. 堀越禎三

    参考人堀越禎三君) 私たちの一番——今後まあ検討もございますので、ここで私が個人意見をあまり述べるのもどうかと思うのでございますが、一番業界として心配いたしておりますのが、物の面と金の面とが伴って自由化していく、つまり歩調を合わせて自由化していくという点でございまして、最近はなんだか非常に物の方面自由化のみが走り過ぎるのじゃないかという心配がございます。これはいずれ銀行の方からのお話があると思うのでございますが、まだ日本金融が十分正常化していないという面から見まして、いろいろそこにむずかしい問題があると思いまするが、先般認められました為替商社持高制のごときでも、実際は採算面からいきますと、表面の二十日ということはとうてい望めない、四、五日しか持てないというような問題もあります。これなんかは非常に根の深い問題でございますので、なかなか容易に……、むずかしいのじゃないかと思います。さらに円為替導入、あるいはいわゆる交換可能円を作るというような問題、いろいろございますが、ただここでこの間私アメリカに参りましたときにもよく申しておきましたのは、何分百品本はもう二十五年為替の面におきましては統制下に入っておりましたので、この問題を論じますときに一番因りますのは、昔のいわゆる自由時代を知っている人が非常に少ないということであります。しかもまあ当時とは世界的に経済情勢も変わっておりまするし、昔の自由化を知っている人でも、今日の世界情勢においてはどうなるのかという問題になりますと、これはまた非常にわからなくなって参ります。これは日本の非常に今のところで因った問題だということを、実は向うの人に申したのであります。従いましてよほど慎重に徐々にやっていただきませんと、思わず不測の何と申しますか、不測の禍害を及ぼすこともありますが、また不必要に心配してもいけないのじゃないかという点でございまして、ある程度は断、勇断が必要だという感じもいたす次第であります。大へん抽象的なことを申し上げましたが……。
  7. 栗山良夫

    栗山良夫君 先ほどのお言葉の中にあなたが米国におきましていろいろ要談された中に、日本経済の著しい成長を認めて、もはや日本世界銀行等からの融資を必要としないのじゃないか、こういう意味の発言があったというお話でありますが、現実にわれわれが今自由化の問題をとり上げておりますときには、アメリカ資本が、形はいろいろありましょうが、日本へ非常に進出を強く要望しておる、そういうことをわれわれは聞き及んでおるわけであります。その間少し考え方としてつなぎがつかないものですから、お尋ねをいたしたいと思いますが、どういうことですか。
  8. 堀越禎三

    参考人堀越禎三君) これは私のちょっと言葉が足りませんでしたが、世界銀行というのは、これは世界銀行総裁がそう申しましたので、世界銀行はつまり金持の国に貸すところでなく、貧乏人の国に貸すところだと、従って世界銀行としてはもう日本に貸さずに、日本民間外資をとれるだけの金持になっているのだから、民間外資をやれ、そのときに転換社債ということを言っております。この間参りましたジロン・リードも転換社債ということを申しております。この転換社債というのは、御承知通り将来株を買えるという社債でございます。これを裏返してみますと、日本現状はまだそれほど魅力はないけれども、将来の成長にあやかるようなものならば、今買っておいてもよろしい、こういうことだと私は理解したわけであります。で、非常に今金持だといっておりますのは、世界銀行総裁でございます。
  9. 栗山良夫

    栗山良夫君 そういたしますと、堀越さんのお考えは、日本経済成長したので、アメリカ一般金融市場から日本資本取引要請があり、そしてまた日本側としてもその取引要請にこたえていくべきであるという御意見でございましょう。その点きょうはたくさん参考人をおいで願っておりますが、経団連としては、やはり日本経済を守っていく主として経営の方の立場中心にいろいろお考えをいただいておる団体承知をいたしておりますので、従ってただいま転換社債のことが問題になりましたが、わが国には、大中小を問わず、やはり自国経済自国で守っていきたいという気持が強く出てくると思いますが、それと外資を入れていくその入れ方における調整はどういう工合にすべきか、こういうような点が、重要な問題ではなかろうかと思いますので、この点をお聞きいたしたいと思います。
  10. 堀越禎三

    参考人堀越禎三君) これは個人意見でございますけれども、大体外資導入という問題については、やはりこれは個々に、ケース・バイ・ケースに判断する以外にないのじゃないか、と申しますのは、あるケースにおきましては、自分がイギリス及びドイツで支店を、会社を作った、そこでドイツ技術を入れ、またアメリカ技術を持っていって双方でやって作っておる。で、日本にも一つ作りたい。しかしながら、自分としては投資をしたものを持って帰る気はない。また、もうけを持って帰る気はない。日本に置いておいていいんだと。ただ、日本技術とわれわれの技術とで、そこで新しいものを作りたいという考え方というようなものもございます。そしてまた、あるいは日本賃金の安い点を利用して、日本部分品を作って、その安い部品を向こうで組み立てて自分の商標で出そうとしているところもある。いろいろのケースがございますので、一がい経営権が取られるとか、あるいは外資を入れるということが、ある意味において国辱だとかいうような問題、あるいは他の業者に対して非常な影響を及ぼすというような問題も、個々考えてみないと、一がいに私は定義づけることはできないと思う。ただ問題は、私は今のところ、アメリカが非常に欧州共同市場の中に入り込んで合弁でやっております。中には合弁でないものもあり、みずから会社を作ってやっているのもあるようでありますが、そういう点で、非常に世界技術が進歩していくことを目の前において、いたずらに外資をおそれておるということは、日本国内技術進歩に非常なギャップが出るのじゃないかということを心配している。これは技術振興の上から見ましては、かなり勇敢にアメリカとの合弁ということを考えていいんじゃないか。アメリカの方も、この間、当たりまして聞きますと、やはり大へん今のところは、日本の株を持つとか、あるいは日本会社社債を持つとかというよりも、むしろ日本会社合弁で仕事をしたい、つまり、合弁でやっていくという気持の方が、現在としては非常に強いというように感じております。
  11. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 時間におくれまして、堀越さんの御意見を拝聴する機会を逸したのでありますが、あなたが最近岸全権と一緒にアメリカに行って来られましたのでーー御承知通り、この自由化の問題とともに、日本貿易として一番大きなウエートを持つところはアメリカであるのでありましてその点からお尋ねをいたしたいのでありますが、まあ最近アメリカは、御承知通り余剰物資の問題と赤字問題と、それから財政問題、こういうものに非常に悩んでおる。従って、アメリカの当面の対策というものは、国際収支改善をどうするかということに集中されておるようでありますが、これは必ずしも貿易によって赤字が出ておるとは、われわれは考えられないわけでありまして、まあ八十五億ドルの海外軍事費とか、あるいは海外援助費とか、あるいは海外融投資とか、そういうようなものが、勢いこの国際収支改善アメリカ当局が全力を集中しなければならぬと、こういう状態になっておるのでありますが、しかし、最近日本自由化をやらなければならないような情勢になったという一つの問題も、アメリカのこういったまあいわば赤字的な財政にあると思うのであります。そういうことで、そうでなくとも、今までの日本アメリカヘの輸出というものは、御承知通り、非常に制限問題が始終やかましくなっていたわけであります。幸い、昨年は珍しく日本アメリカに対して出超を見たというような景気でありますけれども、しかし、必ずしもこれが、今後いろいろ海外援助というものは、多くなればといって実際問題は少なくなるわけはない。そういう意味において、今後の自由化がフルに施行せられた場合における日本アメリカとの貿易、こういう問題につきまして、あなたが現地においてお感じになられたこと、それから、あなたが始終考えておられること、そういうことを一つ意見を拝聴したいと思います。
  12. 堀越禎三

    参考人堀越禎三君) 御質問の御趣旨は、自由化した場合においては、アメリカとの貿易がどうなるかということでございますか。
  13. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 そうです。
  14. 堀越禎三

    参考人堀越禎三君) なかなかこれはむずかしいのでございますが、私がかねて申しておりますのは、やはり日本アメリカとの間には有利な立場にあるのじゃないか。というのは、いろいろな面における日本生活内容というものは、相当賃金を上げましたところで、やはり日本人の生活内容アメリカ人生活内容とは非常に違いますから、おそらくアメリカ人のような高い賃金には日本はなかなかならぬ。そういう面における一つ日本としての有利な面があります。そうして今度もトランジスタではっきり出ておりますように、アメリカ人の手でできないようなものがずいぶんたくさんあります。私は、そういう面にいくならば、アメリカとの貿易はどんどん日本は伸びていく。一業種のいろいろなチュナ・フィッシュでありますとか、体温計でありますとかという問題がございますが、これは向こうで見ますると、結局、一業種の問題であって、その一業種の、これは言葉が過ぎて失礼かもしれませんが、一業種に乗っかった政治家の問題であって、一般の民衆、一般業界では何ら関心を持っていないと言ってもいいと思うのであります。向こう経済協力の話をいたしまするにつきましても、商工会議所とかいろいろな経済団体を私、回って参りましたが、そのいずれの団体におきましても、こういうテクスタイルだとかチュナ・フィッシュだとかというような具体的な問題を出されたのでは、われわれとしては扱いようがない。特に向こう独禁法が非常にやかましゅうございますので、そういう一業種の問題を論議すれば、たちまち公正取引委員会からにらまれるということで、これをもって会議の場には出せないので、ブロード・ポリシー、つまり、タリフの問題をどうするとか、お互い租税関係をどうするとか、あるいは未開発国援助をどういうふうにしてお互いにやるかというような点を話し合うならば、話し合いの場もできぬことはないという感じを受けた次第であります。
  15. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 参考人の方が大ぜいおられますが、いま一点だけ堀越さんにお尋ねいたしたい。これは全然方面の変わった質問なんでありますが、今度の自由化の問題によって、むろんこの産業関係に大きな衝動を与えていることは、これはまあ御承知通りでありますが、それと同時に、自由化の問題に関連して、これは大きな政治問題にもなるわけでありますが、農業関係の問題なんであります。農業生産費といった方がいいのでありますが、自由化影響に伴うこの方面の混乱というものは、いろいろな意味において想像ができるわけであります。ことに日本農業生産というものは、大体七〇%ぐらいまで、どっちかというと、政府管理と申しますか、もう少しこれを平たく言うならば、相当政府庇護を受けておる米の問題一つを見ましても、必ずしも今の米の価格が消費者の面から見れば安いわけではないわけであります。これは大きな一つ政策というものが軸心になっておるから、こういうような状況になっておるわけであります。そこでお尋ねいたしたいのは、そういう立場においてこれが自由化されて——東南アジア状況一つ見ますというと、東南アジアは四〇%日本輸出しておる。しかし、日本東南アジア輸出というものは、東南アジアから絶対、物を買わなければならない、その物を買う中心は何になるかというと、御承知通り食糧品、特に米が多いわけであります。そういうような、これは一つの例でありますが、米だけでなく、あるいは大豆だとか雑豆とか、いろいろなものがあるわけであります。そういうわけで、東南アジアとの自由化を、これをフルにやるということになれば、できるだけ向こうの売りたい安い米を買わなければならぬ。そうすることが、日本農業にも非常に大きな影響を与えてくる。そこで一部の学者などは、この際、日本は米などはある程度生産制限をしたらいいじゃないかというような革命的意見までまあ出ておるわけであります。それで、この間も御承知通り大豆問題一つを見ましても、大豆年間百万トンを日本は買っておるわけであります。ところが日本でできるものは三十五万トンか四十万トンにすぎないわけです。その百万トンのほとんどは、御承知通り油脂工業に使われておる。ところがこの日本の半分に足らない生産品を擁護するために例の瞬間タッチというような問題が出てくる。三、四十億ここに浮く。そうするとその三、四十億をそのまま農業の方へ、これをまあ生産者の方に還元をするというようなことが一つの例としてあるわけであります。こういうことは一つの例であって、米の問題にしても、大豆の問題にしても、農業生産品に関する限りはそういう問題が非常に多いわけですね。  そこで、私がお尋ねをいたしたいのは、まあ御承知通り消費者というものがあくまでも優先的にならなければならぬわけでありますが、そういう意味においてわれわれ理想的——この自由化の理想的なことから言うならば、米までも制限をして私は買うべきでなくして、フルにこれを入れて、そうしていわゆる需給のバランスによって自然的なそこに値段というものはできるわけなんです。そういうわけで、この日本の今までとってきておる農業的ないろいろな一つの補助とか庇護とかというような問題につきましては、この際は私は大いに政治力を発揮して大改革をすべきときじゃないか、そうでないというと、自由化というものは私は非常な片手落ちになるのではないかと、こう考えておるのでありますが、一つこの際あなたのこの問題に対する御意見を拝聴したい。
  16. 堀越禎三

    参考人堀越禎三君) 農業問題は非常にむずかしい問題であります。私はもっと割り切ってお考えになってもいいのではないかと思いますのは、アメリカにいたしましても、もちろん非常な農民保護政策をとっております。今の大豆のような問題も、瞬間タッチというようなことをされるので非常に問題がある。安い大豆が入ってきたものは安く工業原料として使われて、四十万——私は二十万トンと聞いておりますが、四十万トンという今お話しがありましたが、その四十万トンの大豆を作っておる農家に対する保護は、また別途お考え下さることでできないものかというふうにわれわれは考えておる。せっかく安い原料が使えるということは、結局国民全部が安い油が使えるということでもありますので、そういう面はやはりほかの立場でお考えいただいて、農民保護というものはもっとほかの道があるのではないか。非常に米の問題を思い切ったお話しがございましたが、まあ米となりますと、非常に問題がむずかしい。私は、台湾とも非常に——この間も台湾からやかましく言われたのでありますが、米を何らか他に使う道はないか、工業原料にできれば一番いいのでありますが、非常に高い原料になるという面もございますので、その面は日本は科学的に検討する必要があるとともに、やはり今後日本が米食からだんだん離れていく情勢にあるという点から考えましても、台湾あたりにはもっと米を作るかわりに、まあほかのものを作るようにだんだん勧めていくべきだというふうに考えております。
  17. 山本利壽

    委員長山本利壽君) それでは堀越参考人もお急ぎのようでありますから、よろしゅうございましょうか——ーそれでは堀越さんありがとうございました。   —————————————
  18. 山本利壽

    委員長山本利壽君) 次に、東京商工会議所理事貿易部長の手塚晩三君にお願いいたします。
  19. 手塚晩三

    参考人(手塚晩三君) 私東京商工会議所貿易部長の手塚でございます。為替貿易自由化に関連して何か特に中小企業に関連する面について発言するようにというお申し出をあらかじめ承ったのでございますけれども、御承知のように、この商工会議所は、中小企業だけの団体でもございませんので、ほかのここにお見えになっている方々が代表しておられる団体と違いまして、あらゆる業種がメンバーになっておりますし、また同じ業種でも、大あり、中あり、小あり、零細ありといった非常に大きな総合団体でございますので、特にどうも中小企業に対する為賛・貿易自由化影響ということについては、むろん何も会議所としてまだ意見をまとめる段階にはなっていないわけでございます。従ってどうも私がここでとやかく申しますことも、とかく私個人の発言のようになって恐縮でございますが、ちょっと簡単に申させていただくことにいたします。  御承知のように、わが国の中小企業は欧米の先進国の場合に比べまして、非常にそれが国民経済の中に大きな比重を占めているということは言うまでもございません。それからその業種別の種類も非常に多い、また企業の数も圧倒的に多いというような特徴もございます。そうしてまた同じ中小企業といいましても、いろいろ種類がございまして、特殊な技能を保持しておって相当高い水準を持ったものもありますし、浮かんでは沈み沈んでは浮かぶといったような、きわめて零細なその日暮らしのものもございます。また原料に近いようなものを、原材料を生産するものもございますし、大企業のための部品を製造するもの、あるいはまた完成品だけを作っているというようなものもたくさんございますので、非常にほかの国に比べて複雑な様相を呈しているということは言えると思うのでございます。  こういったような実情でございまするから、はたして自由化がどんな影響を与えるかということをあらかじめ知るということは、なかなかこれはむずかしい問題じゃないかと思っております。まあ現在政府関係部局におきましても、民間の諸団体も、鋭意これを研究中でございまして、その研究の結果を待った上でないと、あまりはっきりしたことは言いにくいのじゃないかと思うわけでございます。  ただまあ一言で申し上げられることは、その自由化が進行した場合、わが国の中小企業は外国品の競争にさらされるばかりでなく、国内のまあ大企業との関係も相当これは大きな問題である、こういうことは一応言えるのでございます。こういう中小企業の問題というのは、これは日本に限ったことでもなく、ヨーロッパ諸国におきましても、日本ほどではないにしても、やはりこの中小企業というものは相当重要な地位を占めております。しかし何といってもヨーロッパの工業国におきましては、長い歴史の過程を経まして、大企業と中小企業の調和のとれた共存関係といいますか、そういうものが成り立っているということでございまして、またヨーロッパそれ自体が非常に広く豊かな国際市場でありますので、中小企業自体の製品も国際的な交流が従来から盛んに行なわれておったわけでございます。従いまして、この自由化をかなり急速にいたすといたしましても、ヨーロッパならばあまりにショックはない。むしろこれは逆にいいますと、既成事実に何ほどかのアルファを足してそれを法制化した自由化であるというようなことが、ヨーロッパの自由化については言えると思います。しかし日本の場合はだいぶ事情が違いまして、あまり急速に自由化をいたしますと、プラス・アルファの部分が非常に大きくなって、制度そのものがまま実情からかけ離れるというようなことも考えられる。つまりヨーロッパの場合とはちょっと逆のようなことになる場合もあるのじゃないかと思うのであります。従って、日本の場合は、自由化を進めるにあたりましては、非常に多くある各業種にわたって、きわめて綿密な調査が当然必要となってくると思うのでありまして、またその対策にいたしましても、非常に用心深く、そうしてまたきめのこまかいものが結局必要となるわけでございます。今申し上げたことは、これは特に中小企業ばかりでなく、まあ大企業にとっても言えることではないかと思うのであります。  それからこれは特に中小企業のみを対象にしたというわけではございませんけれども、現在、会議所でも為替貿易自由化影響を非常に重要視しておりますので、東京商工会議所といたしましては、大阪の商工会議所と協力いたしまして、先ほどそこにお配り申し上げましたような自由化影響に関するアンケート調査というものをやっておるわけでございます。調査の対象として六百前後の主要団体を対象としてアンケートを出しました。それをまたあとからごらんになっていただければおわかりでございましょうが、そこにありますように、影響の種類と程度、また輸入の自由化によって問題となる製品及び原材料、業界としての意見の取りまとめの有無、また各業界の会員に対して照会調査実施しているかどうかといったような点について調査を行なって、中間的な報告が集まっておるわけでございます。それでその調査の結果によりますと、回答件数が今のところ、まだ、これは一月末現在でございまするから、二百六十五くらい集まっておりますが、大いに影響あると答えておるものが百八、多少あるというものが百十、すなわち合計して二百十八件、約八二・三%になっておるのであります。そうしてその大いに影響あるというものは四〇・八%になっております。その中で、悪い影響があるというものが百一件で四六・三%。それから好悪双方というのが三五%、それからよい影響があるというのが四十件ばかり出まして、一八・三%ということになっておるわけでございます。それでこの結果にも現われておりますように、これは中小企業だけではございませんけれども、まあ中小企業がその中に圧倒的に多くなっておりますが、その結果によりましても、悪いというものばかりではなく、よい影響と答えている業種もかなりあるわけなんでございます。どういう業種でございまするかというと、食料品、紡績、繊維製品、紙、印刷、金属及び金属製品などにそういう業種が割合に多いのでございまして特にゴム製品、ガラス及び土石製品といったような原料輸入依存度の高い、製品面で海外の競合品の輸入のおそれの少ない消費財関係では、別表のようによい影響と答えておる産業が非常に多いわけであります。その別表はあとにつけてありますからごらん下さればいいと思います。このよい影響という中には鋳物工業、メッキ工業といったようなものも入っておるわけであります。  そこでまあ対策ということになりまするが、ほかのお集まりの参考人の方方からもこれから指摘されることだろうと思いますが、やはり対外的には輸入関税制度の適切な改善ということと、それから対内的には企業体質の改善ということがやはり二つの大きな柱になると思われるのでありまして、特に資力に乏しく、また金融においても不利な立場にありまする中小企業にとっては、税制の改革による負担の軽減などということは、きわめて緊急の問題であると思うのであります。関税対策の面におきましては、これはもうすでに方々で皆さん主張されておることでもございまするが、中小企業からみる場合は、原料の問題よりも、要するに外国から入ってくる完成品の輸入による影響がより重大であるというふうな印象を受けるのでございまして、従いまして新しい関税制度を設ける場合にも、個々の完成品に対する関税について弾力的でかつまた非常に精密な考慮が必要となってくると、こういうふうに考えられるのであります。同じ関税問題に関連いたしまして、先ほども堀越さんから御指摘がございましたように、まあアメリカの関税委員会のようなものが日本としてそのままできるかどうかは問題でございましょうが、少なくとも現在の関税審議会の構成やその運営にあたっては、広く民間の有識者をもまじえて、広く国民経済や国民生活と結びつくようなものにして一つやってもらいたいということはいっていいじゃないかと思います。  それからこのいろいろ複雑な面を持っておりまする中小企業のためには、現在政府でもって準備中と聞いておりまするところの業種別振興法案というようなものも、これは適切に一つりっぱなものを作って、中小企業のための振興を大いにやってもらいたいということは申し上げたいと思います。それから中小企業団体法というようなものも現在改正されるというふうに聞いておりまするが、これはこの輸出取引法にも関連しまするし、また先ほどの独禁法にも関連して参りまするが、中小企業にももっと自主的な協定を促進できるような仕組みに一つやってもらいたいということを申したいと思います。  それからまあこれは中小企業については特に申し上げなければならぬと思いまするが、要するに、中小企業の水準を高めるためには、その技術経営面の水準の向上ということが必要になって参りまするので、中小企業技術の教育センターというようなものを大いに金を使ってやってもらいたいということを申し上げたいと思います。会議所が現在中小企業に対しては、全国にわたりまして、企業診断などを通じて経営面の指導に非常に大きな努力を払っておることをここにつけ加えて申し上げたいと思います。  それからもう一つ輸入する場合に、いろいろな雑貨、日用品が入ってくると思いまするが、これは言葉は少し語弊があるかと思いますが、まあある種の国民運動、国産愛用運動、そういう言葉を使いますと、これは対外的にもちょっといろいろ差しさわりがありますし、何か昔の古い考えのようにも聞こえまするけれども、愛用運動というのではなくて、何も自由化したからといって、日本のもので間に合うもの、また日本の品物がけっこう安くて品質も外国のものに劣らないものまで外国から買う必要がないということを、子供のうちでもよろしいし、おとなに対してもよろしいですけれども、何かの形でこういう思想を少し国民の間に養成するような方法がやっぱりある程度は効果があるんじゃないかとも考えておるのでございます。  それから、この自由化をする緩急の度合いといいますか、スケジュールといいますか、それについても、まあ五要原料——対米差別待遇を除く十種類とかいったような、ああいう重要な原料については、皆さん割合によく知っておられますし、そうしてPRも行き届いておりまするけれども、非常にこまかい、何百何千という商品についての自由化というものは、よほどこれはその自由化をどの程度やるか、またいつやるかというようなことについて、いち早くこれは業者の方にもPRしていただく。そうすれば業者の方でもお互いにそれに対して対策を進められるという意味で、一つこの自由化のスケジュールをなるべく盛んに、あらかじめ時局をおくらせないように、国民の方にPRしていただきたいというようなことも申し上げられるんじゃないかと思っております。  何かこう大へん取りとめのないことを申し上げましたが、まあ要するに、自由化ということは既定のコースでもあり、またそれをしなければ国民経済全体の体質改善もはかどらない。また世界の大勢にもおくれるというのでございまするから、原則的には自由化はまあ強力に進めるべきでありますけれども、基本政策の決定などにおいては果断にこれをやっていただきたいのですけれども、実施面においてはごく細心の注意を払って、そうしてその緩急の度を誤らないというふうに申し上げるよりほかは、まあ仕方がないと私は考えるわけでございます。  私こういうことを申し上げても、これは何も会議所の意見というわけではございませんで、私が適当に自分考えを申し上げたようなことで申しわけございませんけれども、一応一般論はその程度でごかんべん願いたいと思います。
  20. 山本利壽

    委員長山本利壽君) 次に、日本機械工業連合会専務理事弘作君にお願いいたします。
  21. 橘弘作

    参考人(橘弘作君) 初めに機械の産業規模をちょっと御紹介しておきます。  機械の産業構造で申し上げますと、二百人以下の企業が九五%でございます。三百人以上の企業が五%。これが産業構造から見ました姿でございます。それから生産の額から見ますと、この九五%に属する中小製造業者の額が五〇%、三百人以上の五%に相当する企業者の生産額が五〇%、ほぼこういうふうになっております。ただいま機械は、事業所の数で二万六、七千になっております。それから生産活動指数で見ますと、機械は、一九三四年から六年を一〇〇といたしまして一九五九年におきましては、およそ六〇〇をこえておるというような状況でございます。全体の生産額を申し上げますと、三十三年度におきましては、二兆一千六一二十一億になっております。三十四年店はまだ詳しい計数が出て参りません。まあ私どもの想像では二兆四千億の生産ということに大体推定をしておる状況でございます。以上機械産業の姿でございます。  これから自由化に対する機械産業でどのような基本方針、それから自由化に対処する方策を検討しておるかを御紹介申し上げたいと思います。  機械工業は特質といたしまして製品の種類がきわめて多いのでございます。船舶、鉄道車両、あるいは装置産業の用に供する資本財から軽機械、電球等に至るまでの種類でございます。きわめて広範でございまして、この中を輸出、輸入の面につきまして分類いたしますと、輸出が非常に大きくて、同時に比較的に国際競争力の非常に強い機械類もございます。また輸入が非常に多い機械類もございます。また輸入制限が行なわれておりますために、その実勢がなかなかつかみにくいような機械の種類もございます。でありますが、機械業界では、各機種ごとに自由化に対する問題点及び対策について目下多くの機関を通じて、また連合の機関を通じまして鋭意検討中でございまして、本日は機械工業全般に共通いたしまする自由化中心としての問題を総括的に申し述べたいと存じます。  自由化に対する機械産業の基本の考え方でございますが、わが国の機械工業は、その生産規模におきましても、技術の推進におきましても、近来著しい発展を見ておりますのでございますが、工業の先進国に比較いたしますと、多くの弱点を包蔵しておるのが現状でございます。すなわちわが国の機械輸出世界の機械輸出の総額中に占める今日の姿はどうかと申し上げますと、これは年々上昇しつつありますが、わずか世界の機械の総輸出額の三・三%という数字でございます。現在のところ米国が三三%、西独及び英国がそれぞれ二〇%の率を占めておるのでございます。その次に位するものはフランスでございまして、これが約七%を占めておるというような状況でございます。もちろんわが国から輸出される機械は非常に強いものがございます。御承知とも思いますが、船舶、鉄道車両、繊維機械等でございまして、軽機械におきましては、ミシン、カメラ、双眼鏡の類の光学機械類、それから最近トランジスタ・ラジオ等の種類がございますが、工作機械、あるいは産業機械、電気機械、自動車等の本格的な輸出が行なわれておりませんことは、わが国機械工業の弱点を示しておるものと見なければならないのでございます。さらに、機械輸入の面におきましては、工作機械、製鉄機械及びプレス等の金属加工機械、原動機、土木建設機械、合成繊維用の繊維機械、化学機械、事務用機械等の輸入依存度は非常に高いのでございまして、このほか高級または大型の機械類の輸入依存度が高いことは、わが国機械工業が、発展途上にありますが、まだ脆弱性が解消されていないということの証拠でございます。また、わが国の機械工業が先進工業国に比べまして劣勢にありますことの重要な要因の一つといたしましては、資本の蓄積の低い点を指摘しなければならないのでございます。経済企画庁の白書によって見てみましても、米国や西独と肩を並べ得る資本蓄積率のものは電気機械部門のみでございまして、自動車、一般機械部門等では、その蓄積事は先進諸国の七割程度となっておるのでございます。このことは、わが国機械工業の設備更新が非常におくれておる、同時にまた、技術装備にも大幅の開きがあることを物語っておるのでございます。  貿易為替自由化世界のもちろん大勢でありまして、機械業界におきましてもその方向に進むべきものと考えておりますが、自由化にあたりましては、機械工業の持つ今後の役割を考慮いたしまして、早急に機械工業の強化をはかることが非常に大きな問題となって浮かんでくるのでございます。  先般来、所得倍増計画等が検討されておりますが、わが国経済の安定的発展をはかりますためには、輸出の伸長、雇用の増大が必要とされますことは申すまでもございません。このためには機械工業の画期的な発展をはからなければならぬのでございまして、それは、今まで開発のおくれておりました諸国におきまして、最近は工業化が非常に盛んになりまして、日用品、雑貨等の軽工業製品を自国生産するようになって参りましたので、今後のわが国の輸出は必然的に機械類を中心にいたしました重工業製品に重点が置かれなければならぬ、と私ども考えております。また、雇用の吸収面から見ましても、化学工業のごとき装置産業では雇用の吸収力は小さいのでございまして、この観点からいたしましても、近代的雇用の増加は、雇用吸収力の高い産業である機械工業の発展に待つところが、きわめて大きいものではないかと考えます。  繰り返して申し上げますが、自由化実施にあたりまして、急速に機械工業の強化をはかることを必要といたしまして、われわれは特にこれから述べます諸政策のすみやかな実施の検討に入っておるわけでございます。  諸対策について申し述べます前に、まず自由化に対する機械産業としての一般的の観念を、どのように置いたらいいかということを、お話し申し上げたいと思うのでございます。  その一は、貿易自由化は、もう外から強制されて、やむを得ず輸入の制限の緩和を行なうのではございません。自由化がわが国の経済にもたらす利害を自主的に判断いたしまして、政策を確立しなければならんことでございます。  その二は、自由化を行なうことが、その産業に、ないし、あるいは関連産業に相当の混乱を引き起こすおそれのある場合には、これを過渡的に保護し、国内産業政策面におきまして必要な施策を講じながら、漸進的に自由化をはかるべきであることでございます。  その三は、貿易自由化が西欧諸国に進行いたしました条件と、わが国の場合とを比較いたしますと、雇用の問題、あるいは中小企業の問題、農業の問題等を初めといたしまして、産業発展段階の相違など、内外の事情が相当異なっておることに注意する必要があるのでございます。  次に、自由化に対する諸対策について申し述べたいと存じます。お手元にも参考資料を提出をしておきましたが、私はただいま口述いたしますのは、そのほんとうに概説だけを申し述べたいと思っておるのでございます。  機械工業の強化策といたしましては、機械工業の振興に対しましての一つの構想がございます。お手元に機械工業振興公団の設置と、こうなっておりますが、これは決して決定的なものではございません。このような考えを強く打ち立てる必要があるということでございます。  それから、金利水準の是正、所要設備資金の確保及び税制の改正面について相当な問題点がございますのであります。  で、さきほど申しました通り、わが国は資本の蓄積率が、機械産業においては、電気機械以外には劣っておるのでございまして、要するに設備の近代化ということを急速に行なわねばならないという点でございます。これには旧式の機械のスクラップ・ダウン、くず化ももちろん必要でございます。それから国産化の促進、これも必要でございます。また技術の向上に関する事項の推進等が必要なのでございまして、ただいま現行の機械工業振興臨時措置法は来年の期限が付されてございます。もちろんかくのごとき措置法は、これを延長し、それから指定美種の拡大及びこれに要する資金源の拡充もはかる必要がございます。特に業種の指定につきましては、自由化に対処するため従来の観点を離れまして、基礎機械あるいは部品部門に限ることなく、必要な完成機械をも対象にしなければなりません。しかしながら情勢によりましては、私ども一つの方法でございますが、全額政府出資の機械工業振興公団でも作りまして、そして設備の近代化のための機械の貸付、旧機械のあっせん、くず化、機械の国産化の促進及び技術の向上に関する事業を、総合的に行ない得るようなものがなければならんと考えるのでございます。  わが国の貸出金利の高率であることは今さら申し上げるまでもございません。これが製品のコストに及ぼす影響はまことに等しいものでございまして、自由化を期待して国際水準に近づけるよう、政府当局及び関係者の徹底的な措置を期待してやまないのでございます。  税制の問題もございます。特に耐用年数の短縮、特別償却制度等の拡大、このような償却制度の改善を急ぐ必要がありまして、また現行の物品税を検討いたしまして、輸出産業のコスト・ダウンのために、国内のある程度生産並びにこれの需要というものの関係も必要と思うのでございます。特に大きいのは、機械産業におきましては鉄鋼と銅の原材料の問題でございまして、これに対しては、国際水準並みの価格に長期に安定させることが一番大事な問題でございます。この場合、われわれが国際価格と申しますのは、機械の輸出競争国である西独とか英国とかの機械製造業者が、入手している国内価格を目標としておるのでございまして、これより以下ならばなおますます歓迎するところでございます。かような問題につきましては、これらの業界と機械の業界とが特別の協力をただいま払っておるのでございます。一部、やはり機械業界におきましては、鉄鋼類のAA制への移行ということも当然考えるべきじゃないかというような意見がありますような状況でございます。   次は技術の向上対策でありますが、今後の激烈な国際競争に耐え得るため、たゆまざる技術の向上が必要であります。技術の向上をはかるためには、企業における試験研究活動を積極的に育成しなければならぬのでございます。これがためには試験研究準備金制度の創設、試験研究用の設備の任意償却制の採用、あるいは新技術の開発に基づく製品の製造によって得た利益の免税、工業所有権の譲渡することによる収入に対する免税等も、私どもは要望しておるのでございます。さらに外国技術導入に関しましては、譲与技術につきまして、その手続きの簡素化とタイミングを失わないような行政の認可措置を希望しておる次第でございます。また、国産化に対する補助制度の拡充と、新たに国産された第一号機等の国内ユーザーに対しましては、保証を与えるような制度も必要になって参りますのでございます。それから、新産業の育成、電子機器等のごとく開発の途中にありまして、国際競争力が十分でない、新しい機種に対しましては強力な育成措置が必要と思うのでございます。   関税対策はもちろんでございます。自由化された後におきましては、国際的に公認される保護政策関税政策でありますので、本年度のガット会議等においては最も適切な関税率を主張することが必要であろうと、特に機械工業では考えております。これら関税措置の問題は工作機械あるいは各種産業機械、自動車を初めとする完成機械品あるいは電気機械関係等、その他の耐久消費財に至るまで特別に考慮する必要があることを考えております。  輸出振興あるいは経済協力対策はもちろん申すまでもございません。その他自主調整体制の強化が必要となって参りますので、これらに関係する法律制度の改正というようなものも必要と存ずるのでございます。  以上が大体ただいま各機関において検討しております自由化に対する与えでございます。  ただ、最後に私は機関を離れまして個人意見として、これだけで自由化にほんとうに対処できるかというと私はできないと思っております。これは当座の問題でございます。しょせん自由化に対してほんとうにわれわれが力強くいくには、やはり将来各国がやっております構造のごとく、企業集中の形を十分に考慮をすべきじゃないか。これは金融資本系につながる基盤でなしに、産業基盤をバックとして、そうして、集団企業体の政策考える必要があるのじゃないかという点。  もう一つは機械産業ほど国から予算面その他に恵まれなかったものは今日までなかったのでございます。この問題を検討しておりますときにおいて農林・水産に国がてこ入れをやるようなあの大きさと、あの積極性を今度機械産業にやはりもたらすべきではないかという点がございます。  以上簡単でございますが、一般的な意見を終ります。   —————————————
  22. 山本利壽

    委員長山本利壽君) 次に東京銀行常務取締役伊原隆君にお願いいたします。
  23. 伊原隆

    参考人(伊原隆君) 参考人としましてお呼び出しにあずかりました東京銀行の伊原でございます。  私に課せられました問題は、おそらくは銀行の方が為替貿易自由化に対しましてどういう考えを持ち、またどういうことをお願い申し上げるかということであろうと思うのでございますが、銀行全体といたしましては、ただいま全国銀行協会を中心にいたしまして、この為替貿易自由化の問題を研究中でございます。従いまして、この方でまとまりました意見ということでなくお聞き取りを願えれば非常に幸いでございます。  為替貿易自由化の問題につきましては非常に広い問題でございますので、これは私個人の頭をまとめるために作りましたものでございますが、為替貿易自由化金融界の問題という、問題だけを拾いましたものをお手元に御配布申し上げてございます。なお、それに伴います参考資料を、これは政府側の資料は省略をいたしまして外国の関係とか、金利の問題とかについて御参考までにお手元に差し上げてございます。  ごく手短かに金融界としてどういうふうな問題があるかということは、この問題点の方の、二枚あります第四の所に為替貿易自由化金融界というふうな所に項目だけを並べてございますが、金融界の問題といたしましては、結局は貿易為替自由化という問題は、産業界貿易界、それからまたこの就業問題、労働問題、企業の経営の問題というふうに非常に幅の広い、また奥行きの深い影響を与える問題でございますので、従いまして金融は事の性質上これらのことをみんなかぶって参ります。従って非常に広い問題を包蔵いたしておると思います。しかしごく手短かに申し上げますと、金融の問題として考えなければならない点を三、四点申し上げたいと思います。  第一の問題は、西欧諸国等の例でもございますように、為替貿易自由化せられまして国際収支の安定的な発展ということを、金融政策と財政政策というものに分けてやっていかなければならないということに相なりまするので、従いましてその金融の部面を受け持ちます金融機関というものが、非常に国際収支の安定的な発展ということに対する重要な責任を持つということに相なると思います。その点からいろいろな問題が出て参りますが、ことに、いわゆる、言葉が悪いのですが、過当競争というふうなことによりまして、今後万一思惑輸入というふうなことが起きましたような場合に、金融の側からこれを何といいますか国際収支の安定をまた害する、というふうなことが万々ないようにしなければならないということは、金融界みんなが戒心をいたしておるところでございます。  それから第二の問題といたしましては、産業貿易自由化に対応いたして参るのでございますので、従いまして金融の方もこれに対応していく。ことに中小企業の問題につきましてはいろいろな考えがあると思いますけれども、金融界としても十分に考えていかなければならないというふうに考えておりまするが、同時に政府中小金融機関でございます各種の機関の、十分な御活躍を望みたいというふうに考えております。  なおこの産業界貿易界が非常な影響を受けると、のちほど私申し上げたいと思いますが、というふうな場合には金融上、融資の対象がいろいろな影響を受けるのでございますので、その融資の態度というようなものは注意をしなければならないということは、これは当然でございます。  それから第三点でございますが、金利水準をどうするかということがある。本日御一緒の参考人のお方からも金利が要するに高いじゃないかというお話がございました。まあ目の子でございますけれども、国民総生産の中において占める金利負担の位置というのか九%ないし、まあ一〇%、一割近いのじゃないかと思うのであります。個々業種によりますとこれはいろんな種類によって違いますけれども、よく言われておるのが三%ないし三%半というふうな金利負担を個々の企業が貝っておるわけでございます。従って産業が国際競争力をつけるという意味から申しましても、また外国のお金がいろいろな関係で、今後外資導入とかそれから円為替自由化とかユーザンスの拡大というような、いろんな面を通して外国の安い金が入って参りますことから考えましても、金融界としては長い目で見て、金利水準というものの基調を国際水準に近づけていくということが必要なことは、皆さんが認めておるところなんであります ただ金利はどうも商品と違いまして、自由化になればなるほどむしろ金利の自動調節作用というものを重要視しなければならないということが確かでございますので、人為的にこれを下げるということはいかがかと思うのでありますが、さっき申しましたように長い目で預金の方の金利、それから銀行利子の合理化、それから貸出の金利の低下ということをどうしても考えていかなければならんということは、みんな痛感をいたしておる次第であります。  ただそれにつけましても、なぜ金利が高いかということは、資金の需要供給でございまして、ただいまのところ需要の方がどうしても多くて供給が少ないから日本の金利が高いのでありまして、供給面をふやしていく、それには一体どうすればいいかということになりますと、政府で門の価値の安定をはかっていただくというふうなことがまあ第一でございますが、同時に税制というふうな面でも広い意味の貯蓄といいますか、資金の供給面をふやす処置につきまして、御高配願えれば一番幸いだと思っております。  それからここに金利水準のことの表を掲げておきましたが、第七表、第八表がございます。一がい日本の金利が高いということを言われるのでありますが、公定歩合だけを比べますとなかなか高い。(「七表八表というのはない」と呼ぶ者あり)ついてございませんですか、それは恐縮です。それでは何かの間違いで落ちましたが、貸出金利の国際比較をでは後ほどお届けいたします。ただ申し上げたいのは公定歩合を比べますと、ご存じのようにイギリスが最近一分上げて五分にいたしました。他の国はだいたい四分でございます。で日本が七分三厘というようなことになりますと、ずいぶん高いようでございますが、各国の実行金利というものをごらんになりますと、まあ日本は高いことは事実でありますが、それほど高くはなっておりません。それから欧米の金利もご存じのように最近どんどん上っております、ということもございます。  それからなおもう一つは、貿易界に対してだけでも国際的な低金利を適用すべきじゃないかというお話がありますけれども、最近この土曜日に、政務次官お見えになっておりますが、ユーザンスの品目を全面的に拡大をいたしましたんで、まあ簡単に申しますと日本への輸入物資につきましては、原則としてユーザンスの金利を利用し得る、ということは国際水準のお金を輸入金融に使える。まあ非常に簡単な言い方でございますが、ということに相なります。  それから輸出につきましては、もともと国際水準の金利をやっておるのでありますから、貿易に関しまして輸出入につきましては、ある程度もう国際水準に近づけたということも言い得るんじゃないかというふうに考えております。  それからあと為替貿易金融に関連するこまかい問題でございますが、これはお手元にございます表の、表といいますか題目の第二というところの「為替貿易自由化の現段階と今後のプログラム」というものの2の所に、「為替自由化」ということを掲げておきました。項目だけでも十二項目ほどございますが、このうち(7)のところまではすでに実行済みでございます。あと(8)、(9)、(10)、(11)、(12)というふうなことが、これから「円為替導入」であるとか、この「非居住者自由円勘定の創設」だとか、そういうふうなことが今後の問題点として残っておるわけでございます。  要するに銀行のあり方といたしまして、為替貿易自由化ということに関連して、国際収支の、安定的発展に寄与し、またその自由化がうまくいくように金融をつけ、また金利を長い目で見て国際水準にだんだん近づけていく。それについては資金の供給の方にいろいろ御援助をお願い申し上げたいという考えでございますが、関係方面への御要望いたします事項としてもたくさんございますけれども、ここの第二ページ目の「為替貿易自由化金融界」という所の二ページ目のまん中に、「要望事項、」とございますが、いろいろたくさんございますけれども省略させていただきます。要するに大きな点は財政金融政策、それから為替相場の堅持というふうなことをお願い申し上げ、また個々の税制の問題、関税の問題についても御配慮を願いたいという点でございます。  ただ、あとちょっとつけ加えさせていただきたいと思いますのは、為替貿易自由化ということが、ただいまの参考人の方々からのお話もございましたけれども、私は個人考えではございますけれども、全体としては何か不利な影響の方が非常に多いように出ておる印象がありますけれども、実際問題としては私は、金解禁のときとは違いまして、三百六十円という為替相場というものは、十年間日本経済の基軸になっておったものでございまして、これを切り上げようとか切り下げようとかいう問題ではない。で、三百六十円というものは、たとえばドイツのエアハルト経済相なんかは、もっと切り上げるべきじゃないかというふうなことも言いますし、それから外国へ行ってみますと、日本の円は現在三百六十円よりもっと強いじゃないか、というふうなことを言う人が非常に多いということから見ますと、この十年間経済中心になりました三百六十円というものを中心にして輸入が自由化され、為替自由化されるということでございますから、私は、国全体としては決して悪い影響がくるべきものじゃない、むしろ三百六十円が、ある意味日本経済にとっては弱過ぎる。実質もっと強いというならば、もっといい影響といいますか、それを元にして為替貿易自由化をすれば、いい影響がくるということであるべきはずだと思うのであります。もともと個々産業といたしましては、いろいろな影響があると思いますけれども、私は、その意味で二ページの一番左の上に、「自由化の限界」という項目を一応考えてみたわけでございます。どこの国でも突然に完全な自由化をやるという国はございません。欧州にいたしましてもだんだんにやったものでもあり、それからもう一つは、アメリカでさえ石油だとか綿花が割当であるとか、カナダで農産物が入らないというふうに、どこの国でも限界を持っております。で、ことに私は、日本特有の限界といたしまして、(1)の雇用の問題というふうなことは、日本の問題としては私大きくそう影響されるべきものでもなし、また大きく影響されると思わないのでございますが、農村の問題と中小企業の問題で、いやしくも雇用が全体としてまた長い目で見て減るというふうなことはあり得ないし、またあるようならここに限界があるんだというふうに考えておる。  それからもう一つは、(4)の後進国との双務協定、欧州諸国では取り巻いている国がみんな先進国でありますので、多角的な貿易自由化、それから為替自由化をいたしますけれども、日本輸出入の三割を占めておりますのは後進国でありますので、これは双務協定の国で、日本が買わなければ向こうも買わないというふうな国でございますので、その多角貿易自由化というふうなものは、そこに限界があるんじゃないか。もう一点は外貨準備でございまして、最近の外貨準備が十三億ドルということに相なっておりますけれども、この表の三枚目でございますが、各国の輸入額と外貨準備の比率などを出しておいたわけでございますが、ドイツとかイタリアのごときは八割とか七〇%に相なっておりまして、常識上、現在の輸入額の半分ぐらい外貨を持っておるのが適当言われております。しかるに日本は十三億と申しましても、まあ一年の三カ月分か四カ月分の外貨しかないのでありますから、自由化にいたしましてもそこにおのずから限界があるんじゃないか。それからまた育成産業をたくさん持っておる。これから育成しなければならない農産物があるというわけでございますので、そういう限界を持ちながら、しかも現在だって五年前に輸入の自由化が一六%行なわれて、現在約三二%、来年四月になって七割ということでありますから、これもだんだんにピッチを早めておりますけれども、だんだんにいっておるので、突如として全部自由になってしまうというふうなことではないということについて、やはり考えてみないと何か考え方の混乱が起こるんじゃないかというふうな気がいたします。ことにさっき申し上げましたように、三百六十円を中軸にして貿易自由化するのでございますから、輸出産業というものに非常に影響を及ぼす直接の問題と一般の問題とございますけれども、日本輸出市場確保のためには、日本貿易は輸入自由化をしなければならぬということを外国はしきりに言うのでございますから、輸入を自由化すれば彼らの輸入制限の口実はなくなります。それからまた個々産業として原材料が安く入るのですから、輸出には大いにいい影響がある。国全体としてはプラスに非常になるということであると私は思っております。そうでなければ、金融というふうな、産業に貸出をしております企業というものは、万一非常に悪い影響ばかり及ぶようなことだと危険にさらされるわけでございますけれども、決して金融界としてそういう心配な事態が起こるというふうには考えられませんし、また考えていけないんじゃないかというふうに思っております。  いろいろと陳述いたしたいこともございますが、時間の関係で私の一応の陳述をこれで終わらしていただきます。   —————————————
  24. 山本利壽

    委員長山本利壽君) 次に、野村証券株式会社副社長北裏喜一郎君にお願いいたします。
  25. 北裏喜一郎

    参考人北裏喜一郎君) お手元に「資本取引自由化と問題点」というメモを差し上げておりますが、これはわれわれ業界が今までに議論しました経過的な結論でございます。従って今後さらにいろいろ検討しなければならない点がたくさんございますが、一応業界全体としての資本取引自由化ということに対する経過的な結論とお考えいただきまして、私そういう意味合いにおいて皆さんに御説明申し上げます。  この為替貿易自由化につきましては、先ほど来、基本的な考え方につきましては、当委員会委員長も冒頭に申されました通り、問題の是非はすでにこえておるというようなお話がございましたが、先ほど来の参考人の方方も同様の御意見のように思いました。われわれの業界におきましても、この基本的な考え方につきましては、全く同じでございます。これは申すまでもなく、今日の第二次世界大戦後に生まれました世界的な経済構造の柱と申してもいいと思うのでありまして、われわれといたしましても、当然他の国々と同様に協力していくのが、世界経済の構成員としての立場からいいまして、そういう責任があると考えるわけでございます。特に日本のような非常に国際貿易に依存する国におきましては、これは特にわが国の大局的な見方からいいましても、今、伊原参考人の方が申された通り、非常に重大なことだと思います。従って、各国とも、自国成長度とテンポを合わせまして自由化を推進していかなければならぬのでありますが、この自由化の度合いが、自国成長度とアンバランスの状態になるということでありますと、貿易の拡充も、あるいは経済発展もそこにとどまらないのでありますから、世界経済の構成員としての資格に欠ける。むしろみずから封殺するものであると考えるのであります。今日の日本経済につきましては、皆さん御承知通り非常な成長でございますし、今年、来年につきましても、大体順調な成長を続けるものだと予想されておりますが、こういう基本的な考えに立ちます限り、私どもの自由化に対する受け取り方は、単に受動的な、ないしは消極的なものではなくて、積極的に、この自由化を機会に、わが国の経済をどうして質的に改善し、貿易を拡大し、そして世界経済発展に寄与したらいいか、こういう点に置かるべきは当然であろうと思うのであります。ただ個々の企業あるいは個々の方針によりましては、非常に当面少なからぬ摩擦がございますので、この摩擦を、どういう工合に積極的に調整していくかということが、議論の中心であろうかと思います。  私のこれからの皆様に申し上げる分野といたしましては、資本取引自由化でございます。資本取引自由化というのも、これも先ほど来の言のように、自由化すべきではないという論よりも、資本取引自由化後のいろいろな影響を検討いたしまして、その程度なり、あるいは期間の面で、ないしは諸施策によりまして、影響を最小限度にとどめるという現実的な研究が一番大事ではないかと、こう考えております。  ここで羅列的に、資本取引自由化がわが国にどういう利益があり、どういう影響があるかと申しますと、利益面から申しますと、まず第一に、資本不足を補い、貿易自由化に備える企業の体質改善に役立つ。第二は、資本提携の形で、世界市場に新しい販路が獲得できる。第三番目は、国際金利とのさや寄せによる金利低下をもたらし、企業の資金コストを低減せしめ、国際競争力を強める。第四は、わが国の企業が国際資本場裏に進出いたしまして、海外の注目を浴びることを通じて、国際的に見て非常にアブノーマルになっておりますわが国の企業の体質を改善する。第五には、これは書いてありませんが、直接的なことでありますけれども、株式などの流通による日本の事業会社の名前を通じまして、その個々の商品の売れ行きに影響するというようなことも考えておりますが、この中で、日本の今日の一番大事なのは、資本不足でございます。われわれの絶えず申すのは、資本充実ということを申しておるわけでありますが、これは日本の貯蓄率というものは、世界的に見ましても非常に高いのでありまして、現在この三カ年を平均しましても、日本の国民所得に対する貯蓄率は一三・六%、アメリカなどの六・四%などに比べますと、非常に高いのです。その日本の貯蓄率をもってすら、これがこのままいくといたしましても、今日の日本資本不足、企業から見ますとオーバー・ボローイングは解消されないのでありまして、現在日銀の貸し出しを見ましても、減ったといいながら依然として三千三百数十億がある。なおこれ、おそらく一時的な事情で解消することがありましても、長期的にはやはり日本のオーバー・ボローイングは解消しないのです。それほど国民経済成長率があり、同時にしかも貯蓄率が一割三分六厘という高い国でありながら、なおかつ日本のオーバー・ボローイングが解消しない。資本不足が解消しない。この現実を、どういう形で解決するかといいますと、当面の問題といたしましては、資本取引自由化して、そういうルートを通じて外資が入る、ないしはそういうルートがあれば、おのずから国内的に資本充実の一つのパイプができる、こう考えるのであります。  そういう意味におきまして、日本の金利のことに、先ほど伊原参考人なども触れましたが、実質的には九分ないし一割だと申されましたが、全くその通りでありまして、現在銀行の資金コストといいますのは、市中銀行におきましては一銭八厘、地方銀行におきましては約一銭九厘というところであります。これは、年利に直しますと、地方銀行では六分九厘どころかと思います。市中銀行では、六分五厘そこそこだと私は……。これは、三百六十五日をかけていただきますとわかりますが、そういうところであります。それが今の金融市場の資金コストであります。従ってそれを中心日本の金利の水準、貸出金利が生まれ出るという現実は、何かの形で訂正しなければ、今日の企業の体質改善にも国際競争にも耐え得られないのでありまして、そういう意味合いにおきましては、私は貿易為替自由化と相併行いたしまして、資本取引自由化の方向に進む必要がある。昨今の議論の中に、為替貿易自由化ということが前面に打ち出されまして、資本取引自由化については、ややもすれば、やや大きな面が打ち出されていないということは、私ははなはだ遺憾でありまして、そういう意味合いにおきまして、外国資本が入ってくるという道をつけること、ないしは現実的に入るということが、日本の金利水準を下げるということになりまして、これはすべての企業にとりましても、当然一番大きな問題であります。  ただ、ここで申し上げておかなければいけないと思うのは、銀行にいたしましても、証券にいたしましても、およそ金融業と申しますのは、信用業務でございますから、国際的な競争力に耐え得ないということであっては困るのでありまして、信用業務であるという点は、皆様の今後の御施策の場合にお考えいただきまして、やはり一つの前進的な配慮が必要かと私は思いますが、と申して信用業務だから、保護的にいつまでも独占金利を供与するという形では、私は、企業の体質改善はできない、こう考えるのであります。  次に、マイナスの面ということでありますが、悪影響はむろんあるのでありましてこれはよくいわれますが、第一にはホット・マネーの流出入によりまして、日本金融市場が動揺する可能性が非常にある。第二は、今後育成すべき産業が、国際競争に耐え得なくて、非常に混乱を来たすというような場合がございます。第三番目には、これには、「既存産業の支配を許す」と書いてございますが、株式取得によりまして、外人の経営権が問題になるというような点も考えられるわけでありますが、現在までのところ、外国為替管理法にいたしましても、外資法にいたしましても、こういう悪影響を防ぐというところに重点を置いておりますので、これらの諸点につきましては、現在全く必要ないとはいえないのでありますが、それぞれしかるべき方途の研究によりまして、対策よろしきを得れば、悪影響を非常に大きく見ずに、必ずしもそう神経質にお考えにならなくてもいいのじゃないか、こう考えるのであります。  その中で、皆様の端的にお考えになりますのは、たとえば株式取得によりまして、外国人が日本の企業を支配する経営権の問題でございます。  国内におきましても、近来やや、買い占めというようなことがあり、それですら問題になっておりますが、まして外人投資によりまして、日本の企業の経営が多少でも左右されるというおそれはないかということが、非常に資本導入、特に株式を通ずる資本導入の場合に、当面の経営者の非常に心配する点でございます。現にアメリカにおきましても、ファイト・ホア・コントロールという木が出るくらい、盛んにそういう問題がアメリカ国内でもございます。これにつきましては、私はやはりいろいろな法制上の面の研究、あるいは具体的な施策の研究が要ります。われわれの国内的な個々の企業を見ますと、現在の過小資本をできるだけ、できる範囲で拡大しておくことが必要であります。それから法的には、議決権の制度運用をどうするかという問題もございましょうし、ないしは外人株主に対する議決権の問題をどうするかというような法律改正を要する問題もございましょうし、そういう予防策を講じておく必要はあると思います。具体的な方策、あるいはそういうものにつきましては、われわれ業界が、現在関係当局といろいろ折衝し研究している段階でございます。いずれにしましても、そういう予防策を作りまして、そこで、そういう外資を入れるルートを作るということが、一番日本資本充実に役立ち、同時に日本の金利水準の低下を避け、ひいては企業の国際競争力をつけるということになるだろうと思うのであります。  今申しましたように、こういう外資法の細部の改正あるいは予防措置などにつきましては、関係当局と現在具体的に研究もし、折衝もいたしている段階でございます。特に大きな筋の皆様の頭にとどめていただきたいところの要点は、予防措置の要点の一つは、現在外資法と申しますのは、御承知通り株式などを外人が買いますと、二年も据え置きまして、あと五年で二割ずつ償還する、こういう形になっております。ですから外人が株式投資をいたしますと、七年の期限でないと全部償還ができないということになっております。配当金は、そのまま各期によりまして送金はできますが、元本につきましては七年かかるのであります。のみならず途中で外人が——少し具体的な例になりますが、日立製作所に投資した方が、途中で売られまして、東電を買ったというような場合には、またそこから七年であります。売り買いするそのたびに七年であります。この点は、ある意味では七年を全然売り買いせずに持った方に限って七年でありまして、日本に入れた資本を他の証券、他の株式にかえた場合には、そこを起点といたしましてまた七年でありますから、これは無期限に等しいのでありまして今日におきましては、実質的に外人投資は、ほとんど行なわれておらない実情でございます。計数を申し上げますと、現在株式の形によるアメリカ——特にアメリカが多いのでありますけれども、株式あるい投資信託の受益証券、社債というものを含めまして、大体九千二百万ドルであります、十二月三十日現在。九千二百万ドルの株式のうち、二千五百万ドル強が証券市場を通じた株であります。時価で証券市場から買ったアメリカ人投資であります。あとは大体、企業提携によりまする会社設備であるとか、あるいは日本軽金属のような形の、初めからそういう経営的な意味で持ち合ったもの、あるいは向こう投資したものでありまして、今純粋の、私先ほど来、申し上げまする株式市場を通じて資本導入するという形のものは、現在のところ二千五百万ドルという形であります。御承知通り現在の日本の、金の入っている量というのは、約七億七千万ドルということに承っておりますか、その半分の約三億三千万ドルは世銀によるものでありまして、株式の形というのはわずか九千二百万ドル、しかも市場を通ずるところの、これが金利にも影響し、日本資本充実にも直接影響するというものは、わずか二千五百万ドルであるということをお考え願えば、いかにこの外資法による制限が、資本導入を阻害しているかということは申すまでもないのであります。  それから、そういう意味合いにおきまして、改正の要点といたしますのは、現在外人投資につきましては、厳重な許可制になっておりますが、これは残すといたしまして、現在の据え置き、分割送金の七年というのも、漸進的にまずこれは三年程度にまで圧縮していただいて、三年すれば、大体元本の、向こうが回収したければ回収できるような方法が必要だ。いかにも七年では長過ぎる、こう考えるのであります。それから同時に、振りかえ可能なる非居住者の資本円勘定を新設して、ここで一つのホット・マネーになる場合の一つの予防策を講ずる必要があると思います。  それから第二番目は、現在の資本導入する一社当たりの許可基準を一割五分まで引き上げていただく、ただいまは株式で公益事業のようなものは五%、一般事業は八%までは、今の外資法でも、外人が投資してよろしいということになっておりますが、この基準を、公益事業ならば一割ぐらい、一般事業ならば当面一割五分ぐらいの水準にしないことにはいかないのじゃないかと思いまして、一般事業につきましては、外人資本金の一割五分程度まで、外人投資を一社当たり許していただく、こういうことをお願いしようと思っております。  まあ、以上のようなメモを申し上げましたが、大事なことは、資本導入につきましては、借りる方の問題ではなくて、貸す方、あるいは投資する方に問題があるわけでございまして、ここ二、三年前までは、外人が日本の株に投資するというようなことは、ほとんどなかったわけであります。世界銀行であるとか、先ほどのような経営参加のような場合は別といたしまして、市場を通じて株式を買うというようなことはなかったのでありますが、ここで、この一年来の顕著な傾向は、外人の日本に対する投資——投資意欲であります。日本の方は、いかに外資法を改正しましても、資本導入の道をはかりましても、貸す方、投資する方の側に、この意欲がなければ、これはなかなかむずかしいのでありますけれども、幸い日本経済の今日の安定化とともに、非常に外人投資というものが意欲的になっている事実を御認識いただきましてここで一番障害になっているのは、ただいまの外資法の年限でございまして、これが当面の外人投資を非常に阻害しているのだと、外人は投資意欲はあるが、投資できない事情にしていると、この現実を十分御認識いただきたいと私は思います。  国内的な問題につきましては、実は、先ほど来申し上げましたように、そういう安い金が入ってくる場合に、日本の今の銀行、証券を含めて、金融市場として、特に信用業務をやっているところの企業といたしまして、どの程度まで耐え得るかという問題であります。一般産業につきましては、すでに国際的な競争にさらされているために、これは実は合理化にいたしましても、技術革新にいたしましても、相当の動きをいたしておりますが、金融業務につきましては、なお国内の何といいますか、国内だけの産業になっておりますのでありまして、この点が、一番資本投下の百由化の場合には、その風に最もさらされる部面でございます。しかも先ほど申し上げましたように、日本金融機関の資金コストが非常に高いのであります。おのずからこの金融機関の資金コストを、どう下げるかということにつきましては、これは銀行経営者が考えると同時に、皆様の方で御検討いただきたい問題であります。  たとえば現在の定期預金というものは六分がいいかどうか、あるいは金融正常化という面におきましても、日本金融、証券の組み合わせ、われわれ業界から言いますと、証券市場の力が、なお不足であるというふうなことで、その辺などにつきましてわれわれ自身の問題といたしまして、いろいろの施策を講じなければならぬと思っております。  それから、小さい問題で、これはここには触れておりませんけれども、これに伴いまして、特にここ数年の著しい傾向でございますのは、西独、オランダ、イタリア、フランスあたりの上場が、株式取引が、非常にアメリカにおいて盛んになっているという事実であります。現在そういう国々の株式の上場、取引が、大体百三十種ぐらいございます。最近の大きな例をみますと、イタリアのモンテカティニイというような会社が、アメリカに非常に上場いたしました。KLMなども同様であります。フランスの不動産銀行の株式も出ております。これは株式だけの形でなくて、利益参加の社債の形であるとか、あるいは転換社債の形であるとか、諸種の形態はございますが、いずれにいたしましても、これがニューヨークの市場あるいはアメリカ取引所、あるいは店頭売買というような形におきまして、百三十種類の株式がアメリカにおいて取引されておるという現状でございます。おそらく将来そういう形に置きますと、日本の株式につきましても、アメリカにおいて上場されるという形が生まれるかと思います。この辺につきましても、実はこまかい、問題でありますけれども、大衆には影響があることでございますが、市場価格がどう動くか、外人投資によりましてニューヨーク市場の株、あるいは日本の株式市場の価格が非常に高騰し、また非常に暴落するというようなことのないような諸施策が、われわれ業界にあるかないかということも大事な点であります。これは価格面のことでございますから、なかなかむずかしのでありますけれども、具体的にわれわれの日常、非常に一般投資家と接触する場合、一番大事な点でありまして、資本取引自由化において、株式価格市場におきまして、非常な波乱があるような動きがありましては、これは、かりにそれが上に行くのでありましても、値段が上がるという形におきましても、はなはだ好ましからざる面もございますので、その辺も、なお現在われわれ、いろいろ議論しておる最中でございます。  はなはだ簡単でございますが、ちょっと参考意見を申し述べさせていただきました。   —————————————
  26. 山本利壽

    委員長山本利壽君) 次に、日本貿易会専務理事谷林正敏君にお願いいたします。
  27. 谷林正敏

    参考人谷林正敏君) 谷林でございます。各参考人から、いろいろ為替貿易自由化につきましてお話がございましたが、私どもも、大体同様と考えておる次第でございます。  で、貿易業界といたしましては、最も多くこれの影響を受けるわけでありまして、ことに私ども多年、世界の流れというもの——貿易自由化に、日本も早く移るべきだというような関心を非常に持っておりましたので、本件については、特に関心を持っております。で、業界といたしましても、業界自身として、いろいろ施策その他に御要望申し上げたいこと、あるいは日本の全体としての貿易、あるいは為替自由化に、どう対処すべきかというようなことも寄り寄り話し合ってはおりますが、まだ今日の段階では、正式に申し上げる段階に至っておりません。そこで本日は、私個人考えといたしまして、本件について若干のお話を申し上げまして、御参考に供したいと思うのであります。  私は、この貿易為替自由化というのを、最近日本で非常に論ぜられております。昨年の秋以来、ことに強く論ぜられておりますが、これについてもちろん特殊の方々はよく御承知でありますが、一般業界なり、一般の国民については、一つのポイントといいますか、非常に重要なポイントで見のがされておるのじゃないか、あるいはその点について、政府なりその他の方で、もう少し御努力を願いたいというように考えておるものがございますが、それはやはり貿易為替自由化というのは、日本の体質を改善する上に必要である。これは日本の体質改善の上には、どうしてもなければならないということをおっしゃっておりますが、これは当然でありますか、それと同時に、これが国際的の流れである、その流れというものがあるから、ここに時期の問題があるというようなことを、やはり同時に、皆さんにわかっていただく必要があるのであります。たとえばもしも体質改善の上に必要であるというならば、これはあとで、いろいろ申し上げますが、日本では、若干といいますか、相当程度準備がおくれておりましてそこで、もし体質改善のみをいうならば、ある産業は、もう少し時日をかせ、あるいはこの産業自由化をしてから、われわれはやりたいというような、そこにいろいろな論議が出てくるわけであります。そこで、そこに時期というものが、そうゆっくりできないというのが、私の申し上げた国際的の流、れといいますか、ある論者はときどき、日本自由化に進むのに、アメリカとか、あるいはIMF、ガットのプレッシャーによって、そういうことをする必要はないじゃないか、わが道を行く、独立の考えでいけばいいというようなこと、これはまあ強い言い方、弱い言い方、いろいろございますが、しかし私は、やはりこの貿易為替自由化というものは、世界貿易というものにつながっておる日本から考えれば、輸出をし輸入を上、両方とも拡大していく上に、非常に必要でありますから、やはり買う方は、あるいは外貨が十分であれば買えるかもしれない。売る方は、やはり国際的の一つの流れというものに合わせつつ進まなければならないと、こう考えております。  そこで昨年以来のIMF、ガット、あるいはアメリカ自身、あるいは西欧諸国の要請というものがございまして、これを期間は、三年あるいは四年ということは言われませんが、大体、そういうような期間に、ある程度自由化をしなければいけないということがありまして、この日本自身の自分からの要請、外の流れに合わせるという、この二つのことがある。現在自由化に、われわれとして進まなければならないということと思うのであります。  外からの流れといいますか、その方を多少申し上げますと、たとえば西独がIMF、あるいはガットから自由化に移れと、もう制限措置はいかぬと言われましたのは、一九五七年の三月にIMF、六月にガットから言われておりますが、そのときの西独の外貨保有高は五十六億ドル、当時の輸入額は七十五億ドルでございました。それから昨年の第十四回のガットの総会の前に、オランダが、これは自分から制限を廃止すると言い出したときに、たしか外貨保有高が十四億ドル、輸入額が年間三十四、五億ドルと思います。昨年の十月にイタリアが、これはIMF、ガットから言われましたときには、これは大体三十一億ドル以上の外貨を持ち、年間輸入三十二億ドルということでございますから、これは輸入額と同じぐらいの金額を持っておる。それからイギリスは、まだそういうことを言われておりませんが、御承知のように、昨年の十一月の四日でしたか、五日でしたか、大々的に貿易自由化、対ドル自由化をやっておりますし、今年に入りましても、また三、三項目付け加えて、ほとんどの物資について自由化をいたしておりますが、この輸入額が、大体百十億ドル、外貨の保有高が三十二、三億ドルだと記憶いたしております。  こういうわけでございますから、日本自身の自分考える必要度ということとともに、国際的機関、あるいは国際的他国の感触において、日本というものが自由化をしろというような要請といいますか、そういうことはだんだん強くなる。そこで、そういうことに日本も従って努力をしなければならない。これはもちろんやってみまして、内容的にできないものは、これは断わればいいのでございます。できないということをはっきり言えばいいのでございますが、努力をしなければ、私は来年の春ぐらいのガットのとき、総会あたりには、もう日本自由化に進めというようなことを言われるのじゃないか。こういうようなことが、私の申し上げます外からの流れに日本も協力し、一緒になるということでございましてこの二つが、今あるということをまず各業界も、はっきり頭に置いて、事を進めなければいけないと思うのであります。  非常に一例でございますが、私フィナンシャル・タイムスを昨年の十月ごろからつい最近まで、ずっと見てみましたが、その中で貿易自由化に関する記事は一つもございません。たった一つ、イギリスの中の貿易自由化のことをうたっております。それはイギリスが最後に、いろいろな物資自由化をいたしました。もちろん些少、現在でも残っておりますし、ソ連あるいは日本に対しては、特別に残っておりますが、大半は解除いたしました。その最後の段階に、非常に大きな問題になっておるのが、時計工業である。時計産業である。ところが時計産業というのは、スイスから腕時計が非常に来る。オーストリアその他から掛時計、置時計が来る。そこで、これを自由化すると、国内産業が非常に困るから、何とかいろいろ対策をしなければならないというような記事が載っておりましたが、それ以外に、イギリスの中で、国内産業自由化について、これこれしかじかという記事は載っておらないのでございます。これは、考え方によりますと、従来非常に長い間の努力によりまして、今自由化に進むのは、それほど論議しなくてもいいということもございましょう。しかし私は、各産業におのおの自由化というものは必要であるという考えのもとに、従来準備しておる、たとえばそこに出ている産業の中で、いろいろ考えているのが、こういう現象じゃないかと思っておるのであります。  そこで、そういう工合に、情勢をはっきり日本においても意識して、さあこれから自由化対策がどうだといいますと、私はそこに、いろいろな問題があると思います。先ほど準備が非常に不備であると申し上げるのは、たとえば欧州の諸国が、非常に自由化率が進んできた。昨年の末においてOEEC諸国は、その間の自由化、平均いたしまして九割程度になっておる。これはトルコがおくれておりますので、トルコは、ほとんどやっておりませんので、アベレージが低くなりますが、約九割、対ドル物資に対しては七割くらい自由化が進んでおります。ところが、英国とか、フランスとか、西ドイツ、イタリアというような国の自由化率をとってみますと、今年の一月あたり約九五、六%以上、九九%くらいOEECの自由化は進み、あるいは対ドルの方も九五%くらい進んでおります。ところが、こういうふうに進んできたその自由化というのは、御承知のように、一九五〇年にコード・リベラルゼーション、つまり自由化規約というものを彼らの間に作り、一九四八年を基準として、毎年どれかずつ自由化をするという努力を重ねてきた。あるいはドルにつきましても、一九五三年を目途といたしまして、毎年自由化の努力をしてきたのであります。ですから、その間、あるいは企業の合理化もいたしましょうし、あるいは税制措置のこれに対するいろいろな改善もいたしましょうし、関税の方の改正も、おそらくされたのだと思うのであります。ところが、わが国の方は、これはいろいろ国内情勢上、途中で役所の方で、これをこう進もうといっても、時期が、そういうことでなかなかいかぬ。あるいは国際的な要請というものがないと、なかなか踏み切れない。これは十分わかるのでありますが、実際問題といたしましては、やはりその準備というものはおくれておるのじゃないか。  たとえば先ほど関税の問題もございますが、関税の種目が九百七、八十、そのくらいの少ない関税品目を持っておる国は、ほかの先進国に比較してございません。そういたしますと、そのままで自由化に対処して、関税だけは、これに合致できて、何か、これによって外国品が入るのを上げて、国内産業を擁護できるといいましても、こういうような大きざみの関税では、なかなかむずかしい。そこにもってきて、今年の九月からは、共同市場を中心といたします世界関税会議があり、来年の一月からは、アメリカを対象といたします世界関税会議がある。そういうことになりますと、現在の関税率をそのままもっていく、いろいろここに、関税条項の会議をいたしました結果というものは、もう一ぺん訂正を要するのじゃないかという気がするのであります。  そこで、何とかこの会議の前に、この関税というものも、そういう情勢に合い得るように変えるというようなことも、これはどういう方法で、できるか、あるいはできないか、私はわかりませんが、そういう努力も、どうしてもしていただきたい。あるいは関税の定率法の中には、御承知のエスケープ・クローズあるいはダンピング関係のクローズも入っておりますが、こういうものも、アメリカなり、その他の諸国に機に応じて使い得るというような政策も、この中に織り込む必要があるのではないかと思います。  それから、関税、これはいろいろな自由化に対する影響のところと、若干混同いたしますが、たとえばある物資を外から入れる。国内の製品なり、あるいはその他と比較して、これは割安である。そこで、国内産業保護のために関税が必要だ。こうして、たとえば関税を上げるにいたしましても、その時期というものが私はあると思う。現在、たとえばそういう時勢、つまり国内には為替その他で保護がある時勢で、国内三品が千円である。外のものが五百円であって外のものが入っておらない。ところが、五百円のものが自由になって入ってきたときに、もしも関税というものが三百円、三百円で、これで擁護するということにすれば、これは一般大衆、消費者には八百円という安いものになる。ところが、一たんその時期を過ぎてしまって、そうして国内において海外品と争えば、その産業として、いろいろお困りになる。そうして、お困りになって、ある程度値段が下がる方にいったときに、関税というもので、これを抑えるということになると、関税政策一般の消費層に対するいろいろな問題にぶつかる。そういうようなむずかしい問題はあまり入れないようにしないと、なかなか関税政策というのは、うまくいかないのであります。つまり国内一般に対しては、下げるように努力するのがいいし、あるいはガットにおいて、いろいろ他国と交渉する場合ならば、これはやっぱり世界並みのところに持っていっておかなければ、お互いの交渉もできない。あるいは今後の自由化に対処するにも、ある程度関税も、これに合うようにしておかなければいけない、こういう問題もございます。  それから、先ほど来問題になっております金利の問題、これも私といたしましては、金利を下げろということのみはいっておりません。もちろん現在におきましても、日本の公定金利約七%何がし、世界の主要国は四%ぐらいでございますから、相当差がある。しかし私は世界金利が上れば、日本の金利も上がるのは当然ではないか。世界金利が高いときに、日本金利のみ下げる、これはそうであればいいのでありますが、特にそういうことを要請しない、要するに、世界金利と一緒に同じように国際水準並みに動く態勢に、私は自由化というものが相当進む前に、こういう態勢に持っていく必要があろう、こう考えるのであります。  それから自由化考えます場合に、先ほど国内自分のことを考える、あるいは国際的に自由化要請ということを考えるということを申し上げましたが、私は、そのほか現在の日本におけるいろいろ対策その他で考えなければならないことがあると思う。  それは、最近の世界情勢であります。欧州の共同市場なり、欧州の自由貿易連合というのが、いろいろな批評はございまするが、とにかくああいう程度で進んでおる。最近は、これを何とかして一本化したいというので、カナダあるいはアメリカも相談の対象に入れて、例の大西洋経済会議がある。三月ごろ開くのでありますが、その前に、つい最近のフィナンシャル・タイムスあたりの情報では、イギリスでは欧州諸国にだけ、この関税を下げることによって、何とかおのおのの間の経済の強化をはかりたいというようなことがあるのであります。こういうような情勢は、当然日本品のいろいろなことに、単なる自由化以外にも、いろいろ及んでくるわけであります。先ほど来、参考人お話の中に、経済基盤を強化する、あるいは資本関係なり金利関係なり、あるいは税制の問題、あるいは施設の問題において、そういうものも顧慮しつつ合理化というものに進んでいかなければーー自由化というものに進んでいかなければならないと私は思うのであります。  そこで私は、貿易自由化というものが、こういうようになりましたときに、これは、簡単に結論に参りますが、日本で、いろいろなものを、この対策としてお考えになるときに、やはりどうしても必要なのは、総合的対策である。現在よく新聞その他に見られますが、非常にたとえば、綿なり羊毛なり、これを自由化にすれば、必要以上に入ってくるのじゃないか、設備がちょうどいいなら、入ってくるのも、普通にあんまり心配なく入ってくる。過剰設備のところに入ってくれば、やはりここに過剰生産になる。当然それは販売の上の過剰競争になるというような御心配、そうすると、それを予防するためには、何かお互いの間のカルテル、あるいはお互いの問の協定によって、この場合に一応オーダリー・マーケティングというような秩序を保とう、それも私は、その産業においては過渡的には必要だと思うのであります。しかし、私が心配いたしますのは、それはその産業あるいはそれに類する産業であります。ほかの産業に持ってくれば、またその理由は違うのであります。たとえば機械には、そういう心配よりもやはり海外の三品と競争し得るような、製品を生産し得るような設備なり、その他、先ほど来御説明のあったようなことが、ここに必要であると思う。そこで私はその過渡的なそういうカルテル、あるいは協定的なものが必要な産業には、おやりになった方がいい。しかしそれを一般的な法律に今ここで変えて、そういう必要性のないものまで、そういうことをやるようになりますと、貿易自由化というものをやった、せっかくの効果が出てこないのじゃないか、貿易自由化をやったが、ほかの方でまた協定、カルテルというもので抑えて、そうしてまた何日かたったあげくに、世界におけるいろいろな貿易競争なり、あるいは輸出をしない三品まで外国品が中に入ってくるから、やはりそこに競争がある。そういうものに耐え得ないようなことになれば、そこで、そういうものをあらゆる方面から、この際考えられるあるいは個々産業に対しては、個々産業と御相談なすって、そうして今後自由化するのも、大体グルーブといいますか、商品グループ的なものを作って、これこれの品は、たとえば来年中には自由化しよう、これこれのものは再来年にしよう、これこれは今のところ、どうもむずかしいというようなものがあっても私はいい。そういうふうにして、やはり貿易自由化の方に進んでいただきたい、こういうように考えております。  それから私は、今、これが貿易自由化のみじゃない、いろいろなことを考えなければいかぬと申し上げましたのは、御承知のように、今年、世界貿易というものは、輸出一千億、輸入一千億というのを完全にこえたのであります。これは一昨年の貿易のときに、すでにこえておりますが、昨年若干後退をいたしておりました。今年こそ一千億ドル時代というものが出てきたのであります。そこで一昨年の交換性回復、あるいは共同市場及び欧州自由貿易連合の創設、こういうことで、欧州が非常に力を出してきたというようなことからいいまして、貿易輸出競争というようなものが、今後非常に強くなってくる。そういう時代に処して、日本としてはどう考えるかといいますと、ずいぶんいろいろな問題がありますが、二、三の例を申し上げますと、たとえば日本輸出というものを今後伸ばしていく。三十五億ドルぐらいまでは、今まで通りでいいかもしれないが、これが、たとえば現在ございます長期計画においては、昭和三十七年に四十四、五億ドルまで伸ばす。これは伸びるかもしれないが、しかしいわゆる所得倍増計画、これは、内容はきまっておりませんが、今後十年間に七十億ないし八十億ぐらいの輸出をしよう、こういうようなことをいって、自分の方の国だけで計算しても、輸出というものはできないのであります。どうしても相手国が買ってくれなければできないというようなことを考えますと、一体考え得る施策において、どういうことが必要か。幾らドルをやっても、買わない場合は、これはいたし方がない。景気が変わったら、これはいたし方がないが、やり得る施策としてはどうだと申しますと、いろいろなことがありますが、例がいろいろある中で、簡単な例を申し上げますと、日本が、ある国に対しましては輸出超過で、毎年幾らやっても輸出超過だ、輸入するものがないという国、それから、地域によっては、毎年輸入超過であって輸出するものがなかなかない。向うが買ってくれないというようなものもある。そういうようなものを今のうちに何とかここでうまく調整していかないと、そういう国への輸出を伸ばしていくための市場調節をすることは、なかなかむずかしいというような問題もある。  あれやこれやいろいろございますので、やはりこの貿易自由化につきましては、各業界において、そういうような、通商航海条約の問題もございましょうし、為替貿易管理法の問題などもございましょう。いろいろなものをあわせて、この際、総合的に御研究になり、私どもも、もちろんできるだけのことはいたす。そうして、そういう調査をしつつ、対策を練っていくということが、私は必要じゃないか、こう考える次第でございます。
  28. 山本利壽

    委員長山本利壽君) 各参考人の御意見の開陳が終りましたので、これより質疑を行ないたいと存じます。質疑のある方は、順次御発言を願います。
  29. 栗山良夫

    栗山良夫君 いろいろと貴重な御意見を拝聴いたしましたが、数点にわたってお尋ねをいたしたいと思います。もう時間がだいぶ迫って参りましたから、項目だけ、お尋ねをいたしたい方々の名前を申し上げましてお尋ねをいたしますので、よろしくお願いをいたします。  まず第一に、手塚さんが、貿易自由化は、ヨーロッパも進めている、しかしその進め方というものは、既成事実を尊重して、それにプラス・アルフアをつけてやっておるのである、こういうことをおっしゃいましたが、このことは、率直に申しまするならば、自由化のために、わざわざ今から準備をして、そうして自由化に乗り出していく日本立場とは相当違うわけであります。  で、私は、どこの国でも、貿易自由化をしまする場合に、その国の利害を無視をして、そうして自由化に踏み切るというようなことをやる国は一国もないと思います。あくまでもやはり、国際的な連帯の経済責任を負担するという大義名分はもちろんでありまするが、その反面、自国経済の利害ということにつきましては、それ以上に微妙な関心をもって進めております。  で、そういう見方からしまするというと、ただいま日本の行なおうとしておるこの自由化の動きというものは、きわめて準備不足ではなかったか、私ども当商工委員会におきましても、政府関係大臣にも所信を質しておりますが、とにもかくにも、池田通商産業大臣も、自由化に対する考え方というものは数年前から持っておる、こう言うのでありますが、それはあくまでも考え方でありまして、自由化促進閣僚会議を開いて踏み切られたのは、ごく最近の話でありますから、政府部内におきましても、その決意をしてからあと、おっ取り刀でいろいろな勉強をしておられる、業界におきましても、まだ、委員会をこれから作って勉強をしようというようなところも、多少はあられるようでありまするから、従って準備というものができていない。そこへこれを押し進めていくときに、日本に無理がきやしないか、こういうことを私は考えるのであります。従って来年四月までに自由化率を七〇%に上げる、こういうコースのようでありますが、そういうコースに、はたして無理がありはしないか、この点をまず伺いたいと思うのであります。これは手塚さん、伊原さんにお願いいたしたいと思います。  それから第二の問題は、今度の自由化の動きが、カットとかIMFとか、いろいろ言われておりますが、要するにアメリカ国際収支が逆調になりまして、金準備が逓減をしてきた、そこで、これをなんとか取り返さなくちやいかぬというので、ドル圏を中心にして輸出市場の獲得に乗り出してきたというのが、私は一つの大きな理由であろうと思います。幸いにしてガットなりIMFを指導する立場にあるアメリカ考え方というものが、今度の運動を通じて効を奏して、そうしてアメリカ自身が満足するような格好になった場合はよろしゅうございまするけれども、ヨーロッパの方の激しい動き等を見て参りますときに、必ずしもそういう工合に計画通りにいくかどうかということには、われわれも自信がない、そういたしまするというと、この際、日本にも相当に強い要請をして、貿易為替等の自由化を慫慂して、資金の導入考えていく。ところが、実際やってみたところが、効果が上がらないというので、アメリカの方が、今度は自由化政策をやめて、そうして保護政策に入るというようなことは、現実に考えられないかどうか、もっと率直に申しまするならば、今度の自由化のこの動き、世界的な動きというものは、割合に短期間に、ブームとしての自由化ブームというものは終りを告げて、そうして、再びまた異なった世界貿易の姿というものが出てこようとするのじゃないか、こういう動きについての若干の疑問を持っているのであります。この点につきましては、やはり伊原さん、手塚さん等からお聞きをいたしたいと思います。  それから北裏さんにお尋ねをいたしたいのは、あなたの資本取引お話の中には、非常に傾聴すべき点もございましたし、また、重要な点も御指摘になりましたが、そこで、一つだけ私心配をいたしますのは、あなたのお話の中にもありましたように、数年前には、外人で日本の株式を取得したいというような人は、一人もいなかった、それが、ここ数年の間に、にわかに成長をして、今後ますます旺盛になりつつある、こういうことをおっしゃったのであります。このことを、さらに将来に延ばして考えますならば、日本経済が非常な成長を示し、そうして低賃金の上に組み立てられておりまする日本の企業化というものは、大いに資本利潤の上において有効である、こういう認識がアメリカ等の国内にどんどんと広まって参りました。この場合には、日本経済に向かっての資本輸出というものが、いろいろな形で非常に旺盛になってくると考えなければなりません。そういうときに、アメリカとは、けたはずれに小さい日本経済界というものは、もし真剣になって、しかも旺盛にそういうブームになって、アメリカ資本日本に入ってくるということになりますれば、あなたは、先ほどこのメモの中にも、「既存産業の支配」ということを指摘せられましたが、これが文字通り現実の姿となって現われてこないか、日本のような小さい経済力のところへ、けたはずれに大きなアメリカ資本というものが、もし目標を定めて入ってくるということになりますれば、席巻されてしまうではないか、そういうことについての疑念はないのかどうか、また、法律的な若干の調整措置をすれば、それで防ぎ得るものであるかどうか、そういう点についての御意見をお伺いしたいと思います。  それから手塚さんでありますが、先ほども、準備をよくやって、そうして国際競争力のとれるようにいたしまして、日本国内に対するいろいろな悪い影響というものを除くことが必要であるとおっしゃった。  ところが、現実に国内のいろいろの産業を調べてみまするというと、どんなに努力をいたしましても、体質改善を行なって、そうして自由化に踏み切っていくことのでき得ない、まあ劣勢産業といいましょうか、農水産業を初めといたしまして、そういうものが日本には相当ございます。そういうものを将来どうするかということが一つの問題でなければならぬと思うのであります。大豆等がまさに最も代表的なものとして、国会でも問題になっている。ところがそれはやはり瞬間タッチ方式をもってやられようとされておりますが、これと同じようなことが、たくさんありますので、そういうものについて、どうしていくか、これが今後非常に田代の中に不安をもっておいでになる人々に対する、国会を通じてのわれわれが打ち出す答えでなければならぬと考えておるのであります。その点につきまして御意見を伺いたいとこう考えておるのであります。
  30. 山本利壽

    委員長山本利壽君) では、まず手塚参考人
  31. 手塚晩三

    参考人(手塚晩三君) 第一の質問でございまするが、なるほどヨーロッパの方と日本の場合と事情は違いますけれども、私が申し上げたのは、要するに、これは概念的な比較論でございまして、日本の方がヨーロッパの場合よりも、ことに中小企業に関しましては、自由化をするのに骨が折れるということは、これは言えることだと思いますけれども、それだから、それでは来年の四月に七〇%にするということが無理かどうかということは、私としては個人的には、まだ検討を別にしておったわけでございませんから、これは専門の方の方々に聞かなければわかりませんですけれども、まあ日本の方が困難である、より以上の努力をしなければならぬということは事実じゃないかと思います。  ただ、逆の、また反面考えますと、先ほど伊原さんの方からも申されましたように、なるべく早く自由化した場合の利益ということも与えなければなりませんので、それとこれとのかね合いということになるかと思います。確かに利益ということも、これも、実際それでは数字にして、どのくらいの利益が上がるかということを申し上げるのは大へん困難でございますけれども、そういう面も考えて見なければなりませんので、一がいに、これはどうしても日本自由化が、それほど絶対にできないということにはならないと考えております。  それから第二点でございまするが、アメリカ保護主義の問題でございます。これは私先ごろ安保条約の調印の際に、足立全権について随員として参りましたけれども、方々でいろいろのお話を聞いてみたところでは、それは全然違うので、アメリカは決して根本的には、業界の指導者も政府の方々も、保護主義にかえるということは毛頭考えていない、ただ、国際収支が多少悪くなっておりますので、あらゆる手段をとって、保護主義にかえる必要がないためにあらゆる手段をとって、対外輸出を促進させる、こういうふうな考えに聞いて参りました。従って、後進国に対する援助でも、従来はアメリカが巨額の支出をして、圧倒的にリードして参りましたけれども、アメリカにばかり負担をかけるのでなくて、経済の復興の著しい欧州諸国や日本も、後進国の援助に対して、もっと積極的になれ、そうすれば、多少なりともアメリカの負担が軽減されるということで、日本に対しても、自由化要請して、アメリカの物を買うように、それからまた、先ほど、ほかの方々からお話しになりましたように、太平洋経済会議というようなものを作って、ほかの国も、後進国に対して援助をもっとするようにしむけている、こういうふうに理解して参ったわけでございます。  それから第三の点、これはどうしても自由化ができないという業種も、もちろん最後には出て参りましょうけれども、御指摘にありましたような農産物という点になりますと、これはアメリカばかりでなくて、アメリカはもちろん、西欧諸国でも、みな部分的には、日本よりもはるかに強いような保護政策をとっておりますので、農産物に関する限り、これは全般論でございますけれども、必ずしもそう自由化ということを急がなくても、外国方面から非難を受けるようなことはないのじゃないかと、まあ私は思っております。ただし、これはすべて私の個人的な考え方でございまするから、その点は、御了承願いたいと思います。
  32. 伊原隆

    参考人(伊原隆君) 栗山先生の御質問で私のお答え申し上げますのは二つでございますが、第一の点は、今手塚参考人からのお話があった点と、私も同じでございますが、西欧諸国は、なるほど数年間かかって準備をいたしておりますが、日本といたしましても、私は全体から申し上げて、為替貿易自由化する基本的な要件は備えた。すなわち、財政政策は、数年来健全財政を持ち続け、また、金融政策も非常に健全であって、また、外貨もだんだんと蓄積をして、十三億ドルに上っているというようなことの基本的な要件を備え、また、いざというときには、国際収支を安泰ならしめるだけのギアも十分きくということは外国も認め、日本もできるようになっておりまするし、それから三百六十円という為替相場が、先ほど申し上げましたように、十年来続けております為替相場で、これに経済がなれているというふうな点から考えまして、大局的に貿易為替自由化する基本的の要件は、全部整えているということがいえると思います。ただ、先生の御心配のように、個々産業等につきましていろいろな問題が起こると思います。この点につきましては、政府においても十分御配意になっていることと思いますが、私は、全般としては準備が、基本的の要件ができているし、それからまた、速度の問題も、さっき谷林さんが言われましたように、非常に急ぎませんと、日本全体の貿易が伸びない、戦前の輸出貿易日本の比率は、世界において四%近くあったと思うのですが、まだその水準に達しておりませんので、日本全体として、この辺で踏み切る、注意をしながらやるということが必要ではないかと思います。  それから第二の点でございますが、アメリカは、再び保護主義にかえらないかというお話でございますが、これも手塚さんのおっしゃったように、私どもも、ことしのアメリカの予算とか、いろいろな政策を注意をしておったのですが、アメリカとしては、たとえば輸入を削るとか海外援助を削るとか、対外への投資を削るというような縮小均衡をやるようなことがあると影響が大きいと思いましたが、そうでなくて、対外援助費もむしろふやす、そういうただ国の予算を黒字予算を組んで、金融を引き締めていくというような、きわめて正当的な方法で、むしろ世界経済を大きくしていこうという政策をとっていると思いますので、この点も再び保護貿易主義に戻るというような心配はないのじゃないかと思います。ことに、私どもよく聞かされますのは、アメリカの国民総生産はたぶん五千億を超えると思いますが、国際収支の赤字というような問題は、アメリカの国民総生産から申しまして、いわゆる国際収支、輸入と対外援助などを含めまして五%ないしわずか六%でございます。ドルを供給する、輸入と対外援助等によって供給する部分は、国民総生産の王、六%、しかもその赤字はその五分の一ぐらいでございますので、国際収支だけの観点からアメリカ政策全体が大きく動くということは、これはよく例に引かれますが、犬がしっぽを振るのでなくて、しっぽが犬を振り回すというようなことにもなるので、そういうことはおそらく国民全体が聞かないだろうというふうなことがよく書いてございまするが、国際収支の問題から再び保護貿易に戻ってしまうというふうなことは万々ないというふうに考えております。
  33. 北裏喜一郎

    参考人北裏喜一郎君) 栗山さんの私に対する御意見は、第一番は、数年前には、ほとんど外人投資の意欲はなかったが、ここ一、二年で非常にふえた。この傾向からいくと、さらに大資本アメリカから入って日本産業をじゅうりんしはせぬかということ。第二番目は、それについての意見ということでございますが、全くその点に対しては同感でございますが、外人投資が近年非常にふえてきたということは、要するに日本経済安定に寄与するということでありまして、今のところ、経営という面からはきておりません。むしろ経営参加の面できておるものは、戦前、戦後を通じてすでに御承知通り三菱電機のウエスチイングハウスとか日本板硝子のリビー・オウェンスとか、東芝のIGEとか、あるいは三菱、石油のどこであるというように、大体初めから株式をこれだけ持つ、重役をこうしようというような、非常にそういう契約に基づいてきておるものが多くて、市場を通じてくるという面は現在のところございませんが、今後それではないかというと、必ずしも私はないとは言えないと思います。御懸念と同様でありますから、そこで大体持株制限についても、最高今のところ一割五分を考えております。これは一割五分でも二割でもいいと思いますが、一つの企業を単位にしまして、持株は資本金の一割五分ないし二割ぐらいがいいと思います。私どもとしましては、当面一割五分というものが限度だと思います。  現状を申しますと、現在の外人の投資といいますと、全部経営のものも含めまして、先ほど言いました経営のものも含めまして、日本資本の一分六厘、〇・一六%であります。経営参加の分も含めてその状態でありましてほとんどまあ実際上はないといってもいいくらいであります。それから一面、かりに最高一割を全資本金を取られたらどうかという御議論があろうと思いますが、日本の現在の資本の合計は、ちょっとこまかな数字はわかりませんが、おそらく一兆工手五百億ぐらいになると思います。このうちの一割五分というものをかりに全部認めた場合に、全部取られた場合、対抗できはしない。かりに現在日本の株主構成は、個人が、大衆投資家が五一%、投資信託五・六%であります。ですからこの投資信託というのも背景は大衆投資家でありますから、これで見ますと、五一%と五・六%でありますから、五・六%というものは日本人の個人に入っております。あと四七%が金融、保険、その他法人ということで、いわゆる安定株主といいますか、安定している面でございます。そういう意味合いにおきまして、この日本の大きな部面を占めまする金融、保険、法人並びに投資信託のごとき機関投資家とわれわれ申しておりますが、こういうもののウエートが非常に大きくて、これがもし何らかの形で動けば別としまして、一割五分によって日本の企業を左右することは、かりに株主権に制限を加えなくても大丈夫だろうと思います。なお、先ほど言いましたように、外人投資の株主権につきましては、法的に無議決権の株主ができるかどうか、あるいは一般社債はどうか、利益参加の社債はどうかということで、株主権利にある程度予防措置を講ずる必要があると思います。そういう面で私は実は、予防措置がなくてもやってもいいという意見はございますけれども、私はやはりそういう研究を目下しております。  それから最後につけ加えておきますのは、主として外人投資といいますと、アメリカ人のことをお考えでございますけれども、一番最近、皆さん御承知通り日本で国債を向こうで発行いたしました三千万ドルのうち千五百万ドルが長期国債でございます。千五百万ドルは御承知通り短期国債。残りの千五百万ドルが実は戦後初めて日本が外国で出しました長期債でございます。その千五百万ドルのうち、実はこれは推算でございますけれども、大体九百五、六十万ドルは西欧に行っている、アメリカじゃなしに。アメリカをクッションにいたしまして、オランダであるとかベルギーであるとか、ドイツであるとかいうことで、日本の国債が、ドル表示の国債がドルを通じて西欧に行っているということでありまして、株式などにつきましてもそういう形のもので、自由圏の全体の一つ投資というものを誘導するとお考え願っていいと思います。現実には今申しましたように、昨年発行しました国債が、すでにそのうちの何割というものは、むしろ七割近くになると思いますが、千五百万ドルのうち九百五、六十万ドルは西欧に行っているという事実をお考え願いたいと思います。
  34. 谷林正敏

    参考人谷林正敏君) 先ほどの御質問でございますが、いろいろな日本が準備は必要であるけれども、いわゆる劣勢産業、どうしてもいろいろ準備してもなかなか国際的に競争するのに困るという産業はどうかというような御質問がありましたが、確かにその点は日本のみならず、西欧諸国でもこれは問題になっているのであります。たとえば農産物のような一番その例でございますが、西欧各国ともいろいろ自由化をいたしておりますが、農産物というものはどうしてもいろいろな理由があって自由化の中に入りにくい。これはたとえばほかの産業であれば、設備の合理化をはかるとか、あるいは技術を入れるとか、いろいろございますが、土地ということと関係する、その他、日本ではこれは主食に関連するとか、いろいろな関係がございまして、これは非常にむずかしい問題です。そこで私は先ほど、いろいろ日本として総合的の準備をし、同時に国際的の情勢も察知し参照する必要があるということを申し上げましたが、時間もありませんので、あまり詳しいことを申し上げませんでした。たとえばOEECが一九五〇年以後だんだん自由化をはかってきた場合の、食糧というようなものと工業原料というようなもの、これに対するいろいろな自由化率というものは違いまして毎年やっている。そうするとその場合に一体どういう進み方を彼らがしたのだろうか、あるいはOEECとガットの中で、農産物に対してはどういう各国の説明があり、どういう工合に現在自由化したものであろうかというようなこと、これを日本としてもよく知る必要があると思うのであります。御承知のガットの中の委員会ができまして、この農産物というものは非常に世界貿易の上で大きな問題である。そこで農産物の問題と後進国との関係ということを特に研究するために、御承知のハーバラー報告というものができましたが、それ以来農産物というものをもう少し考えないと、これは世界貿易の上で一つの大きな問題であるというので、各国ともガットを場として、いろいろこれに対する討議をいたしております。日本からもその代表が出て、つい最近帰ってこられたようでありますが、そういう場を通してこれはいろいろ検討しておるということは、ほかの製品なり、ほかの原材料と同じようにはなかなか扱えないものもあるかと思うのであります。ただ私は当然そういうことは考えなくちゃならないのですが、これはそういう検討を通して何がなしに、もう少し各国とも進歩した産業としての態勢に進んでいくんじゃないかということでありますから、やはりそういう方面の検討、つまり内容改善といいますか、いろいろの施策というものは私は必要であろう、こう考えるのであります。  それから、中小企業の産品の中にやはりそれに類したものがある。そういうものはどうか。これもいろいろ対策を検討した上、どうしてもこれを自由化の波にさらせばすぐ倒れてしまうというようなものがあれば、これは当然なかなかできない部類の中に入れなければならない。ただこれにつきましても、一体どういうことがその原因をなしているのか。たとえば、つい最近まではおもちゃとか、いろいろ雑貨品がアメリカあるいはイギリスに出せば、安かろう悪かろうで困るといわれていたのが、最近になりますと非常によくなった。つまりよかろう安かろうというようなことになる。これは低価格問題もありましたが、とにかくそういうことの改善もできた。だから政府のいろいろ施策なり、あるいはその他によってこの改善をはかることはもちろん必要でございますが、その際どう今考えてもなかなかむずかしいであろうというものは、やはり自由化の中には入れ得ないのじゃないか、こう考えております。
  35. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 各参考人の方から非常な貨車の御意見を拝聴しまして私ども今後本問題に対して裨益するところ非常に多かったのですが、簡単に二、三の点をお尋ねいたしたいのですが、まず一番に伊原さんにお尋ねをいたしたいのであります。  私御質問しようと思っていたのでありますが、伊原さんの力からちょっとお話の中に触れたようでございますか、円の価値の問題なんでありますか、これはアメリカ国際収支の今の問題等もからんでくるのでありましょうが、何といってもいろいろの要素を含んで、日本の円というものは非常に強含みであるということは、これは間違いないと思うのであります。それである論者等にいわせますと、今二百二十円くらいでもいいんじゃないかというような議論があるわけなんでありますが、そこで、先ほどもこの問題についていろいろお話がございましたが、貿易自由化が全面的に施行せられたときにおいて円が上がるということになりますれば、勢い輸入には非常に有利になってくる。しかし輸出には非常に不利になる。これは常識的なんでありますが、こういう点におきまして、円をかりに今の三百六十円から二割なりあるいは二割五分なり上げた場合において、自由化が全面的に施行せられたときに、どういう金融影響をされるか。これは仮定の事実で、はなはだ何でありますが、これについて一つ意見を承りたい。  それからいま一つは、これもちょっとあなたからお触れになったようでございますが、中小企業等の金融問題なんであります。御承知通り日本中小企業というものは、業種も非常に多いし、それから数も非常に多いことは御承知通りでありますが、たとえば日本の繊維、ことに綿関係のいわゆる新々紡績というようなものは非常に数多いのであります。これなんかは原綿の割り当てによってどっちかというと、とにかく操業を続けることができた。従って原綿の割り当てがあるということは、とりもなおさず、金融機関はこれを率直に信用して融資をしておる、こういうことになっている。ところがいよいよ来年から原綿も自由に入る。従って原綿のプレミアムというものはなくなってくるということになると、全く十大紡とか、あるいは十大紡に次ぐ大きな紡績会社等は、金融等につきましては従来の信用度によって困らないのでありますが、野放しにされた形になると、こういった新紡とか新々紡とかいうようなものは、非常に金融面でまず総倒れになるのじゃないかということを業界も今から心配いたしておるのであります。これは一つの例なんであります。そういう意味におきまして、これはあなたのお触れになりました政府機関の金融機関というものが、この問題については大いに関心を持たなければならぬけれども、私はただそれだけでなく、やはり市中金融というものが、これらの問題については特に大きな関心を持って、両々相待ってやってもらわなければならぬと思うのであります。それについていま少しく具体的なお話を承ることができれば仕合わせだと思いますが、この二点についてお伺いいたします。
  36. 伊原隆

    参考人(伊原隆君) 大竹先生にお答え申し上げますが、第一点でございますが、円の価値は一ドル三百六十円というのが非常にむしろ強いのじゃないか、おっしゃる通りドイツのエアハルトなんか来てもそんなことを申しますし、それから外国へ行ってみましても、何だかアメリカあたりでは日用品が一ドル百円くらいのような気がいたしますことは事実でございます。しかし、全体として輸入の自由化が悪影響を及ぼすようなものがあるということ自体は、円の価値が三百六十円でも、何といいますか、弱過ぎるといいますか、もっと、三百六十円よりかもっと弱くしなければ悪影響を受ける産業があるというふうなことにも相なるわけでございまして、私はやっぱりこの十数年来持ち来たした三百六十円というものを堅持していく必要があるのじゃないかと思うのであります。ただこれをかりに二百二十円に切り上げたらどうかというお示しでございますが、前の金解禁のときが、数字をちょっと覚えておりませんが、たぶん百円が四十ドルぐらいまで下がったのを四十九ドル何がしで解禁をしたのじゃないかと思います。つまり、一割ぐらい切り上げたということで、その前に国産奨励だとか官吏の減俸とか、物価引き下げ運動だとか、非常にデフレ的なことをやりまして、また世界情勢も悪くなったので、非常な不景気をもたらしたことは御承知通りでございまして、今私は、先生のおっしゃるような、かりの例として、これを三百六十円二割切り上げ、二百三十円になりますともっと切り上げでございますが、切り上げて、貿易自由化為替自由化をいたしました場合には、非常な不景気といいますか、産業がとても成り立たないことに相なるのではないかと思います。従って、結論としまして、やっぱり三百六十円堅持ということがいいように思います。  それから、第二の中小企業の問題でございますが、これはおっしゃる通り、全銀協としても、今よりより協議中の問題でございまして、金融機関は公共性の使命を持っておりまするので、何とかして大事な問題に十分に対処したいとは思うのでありますが、同時に、何といいますか、貸し出しの安全性というふうなことも、金融機関として重大な要件でございまするので、政府金融機関、それからまたは金融面でない、中小企業保護する他の諸施策というものを十分に御推進をいただきたいというふうなのが金融機関の考え方でございます。ただこの考え方によりましては、ただいまのおっしゃった、割り当てがなくなるというふうな企業以外の企業、たとえば、私どもの取引先にもございますが、おもちゃとか雑貨を輸出している産業というふうな中小企業は、従来むしろ政府の恩恵を受けないで、非常に力強くやってきた産業でございますので、三百六十円で自由になるということになりますと、輸出なんかに従事している部面はもっと今までより伸びるのではないかというふうな気がいたします。
  37. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 北裏さんお急ぎのようですから一点お伺いしたいのですが、資本取引自由化の問題についてうんちくを傾けられたのでありますが、そこでお尋ねいたしたいのは、むろん資本取引といっても、その前提になることは、その規制、調整という問題が前提になることはもとよりと思うのでありますが、しかし、今、米国が不景気とか何とかいっても百九十億ドルも金を持っております。それから今のソ連のこの雪解けというものがかりに多少影響アメリカにいたすとするならば、一発三十億ドルもするロケットを一発やめても大へんなことになります。従って、先ほどあなたが栗山委員質問にお答えになったようでありますが、アメリカだけでなく、外資はむしろ他に多いというような意味におっしゃったのですけれども、何といっても日本アメリカとの政治的な関係等からいいましても、アメリカ導入というものは多いと見なければならぬわけです。  そこで、日本の証券界は、御承知通りいろいろ業種も多いのでありますが、まあ借金もあるけれども、含み資産の上からいって、これは一株一体五十円や六十円でどうしておるのかと思うような証券が御承知通りたくさんあるわけですね。そこでこういうような米国を中心にする膨大なこの資本が入ってくる、そうすると勢い値上げという問題になってくる。同時にそれがインフレを私は呼び起こす危険というものが出てくるのではないか、こう思うのでありますが、これについてお考えはどうなんですか、その一点だけでけっこうです。
  38. 北裏喜一郎

    参考人北裏喜一郎君) 株価の高騰ないしはそういうことがインフレと関係があるかということになりますけれども、大体インフレのときには株価は上がらないのでありまして、物は高くなりますけれども、株価はむしろ上がらないという傾向になっております。今後もやっぱり貨幣減価は株価に影響することは当然でございますけれども、物価面に非常に影響が大きいということになりまして、私はインフレは株価からくるという面につきましては、インフレ傾向ということは株を買うということはありますけれども、外資導入によって日本にインフレ傾向が起こるということは、株価の面ではないと判断いたしております。ただ、これは少し具体的な例でおかしいのでありますけれども、こういう株価の国際比価という感覚が世間であるわけでありまして、この点も先ほど一般的に触れましたが、たとえば、今、アメリカでUSスティールが大体九十ドル、フォードの株が大体六十ドルとなっています。これは円に直しますと幾らになりますか、かりに三万二千四百円ぐらい、フォードが六十ドルといたしますと三百六十円掛けますと、万一千六百円、USスティールが一株が三万円以上、フォードが二万一千円以上、こういうふうに一応出るわけでありまして、それが日本のたとえば八幡製鉄であるとか、あるいはトヨタ自動車とか比較しますと、これは実は比較するのは無理でありますけれども、御承知通り非常に安いという感覚が出て、常識的に考えると株価が国際比価から下がるのではなしに、むしろつき上げられていくのじゃないかという懸念を持っているのです。多少そういう面が出るわけでありますが、これは国内にインフレを誘導するかというものとは実は別に考えているわけであります。外資が非常によく入って、そのために設備投資が非常に多くなって、従って国内にもインフレを起こすということは考えられないことはありませんけれども、これはむしろ国内の設備投資——もとになる設備投資その他の問題でありまして、外資によるものではない、こう考えます。ただ、外資によるものが非常に容易になるということが、あるいは設備投資その他を容易にするという面から、またインフレの要因も含まれてくるのではないかという点もないことはありませんが、いずれにしても、今日の段階では、たびたび申し上げますように、資本不足という面を解決しようというのでありまして、資本があり余るのじゃなしに、資本不足をどういう形で解決するか、その一つのルートといいますか、方便といいますか、そういう面から資本不足を解決しなければならない、こう思います。ただ、株価が現状のところ比較すると安いので、日本の資産をふやすという点については、私も皆さんと同様の意見を持っております。そのためには、今までやっておりまする政府の御施策として、資本充実法によって資本をふやすというような感覚につきましては、ここ二十四、五年来ずっとやっておるわけでありまして、第一次資本の充実までやっておる現状でございまして、これでもなおわれわれとしましては不足だろうと思います。御承知通り日本でいわゆる成長産業といわれるものの財務比率は、現在自己資本が三割、あと七割が借入金でありまして、これをある程度国内的に漸次解決していく必要があると思います。せめて戦前のように、六割対四割じゃなしに、五割くらいまでは自己資本をふやしていくということは必要だと思います。これは並行してやっていかなければいかぬと思います。株価が安過ぎるという面につきましては、少しわれわれといたしましても、国内的な各企業の整備、具体的にいいますと資本額を多くするというような形でふやしていきたいと思っております。
  39. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 最後に、時間もございませんから簡単に谷林さんにお尋ねいたしたいのでありますが、まずこれは、自由化になる前に、すでにいろいろな意味においての影響があると思うのでありますが、御承知通り、これから自由化になっていくというと、どうしても日本貿易というものは、技術それから賃金、こういう問題、特に技術の問題が中心になるわけですが、そういう意味において、アメリカに去年珍らしく貿易輸出超過をしたということは非常に喜ばしいことなんでありますが、それと今度は目をヨーロッパに向けますると、先ほどお触れになったヨーロッパ共同市場の問題とか、あるいはそれに対抗して、さらにイギリスを中心とする貿易連合体というようなものができてきておる。しかも共同体一つ見ても、これは全体の人口を見るというと約一億六千万くらい、ちょうどアメリカ一つヨーロッパにできたというような形になるわけでありまして、それは従来のいろいろな歴史的な関係からいって、必ずしも日本に好意を持っておらぬというようなこと、しかしながら、今申し上げた通り日本貿易というものは、できるだけ技術中心とした高度のものをアメリカなり、そういったヨーロッパ各地に出すのが私は筋道ではないかと思う。それがなかなかやりにくくなっていくということになると、対抗というと何ですが、対抗上、日本もこういう問題については、むろんカナダとかアメリカのお世話にはなるかもしれませんが、さらに日本中心としたものを考えなければならぬということになると、たとえば東南アジアのいわゆる経済ブロックというようなものを立てることが、はたして今後のそういったアメリカなりあるいは欧州諸国との関係においてどうかということをまずお伺いしたい。  いま一つ、これは自由化の何といいますかな、小手調べとでもいうのでしょうか、御承知通り、今度のあれは、四半期に雑貨か何か五百万ドルの外貨の発表があったわけですね。そうすると五百万ドルについて申し込みは一体どのくらいあったかというと、六千九百万ドルもあるのですね。しかもその内容は一体どういうものかというと、みんな日本にあるようなかみそりありバターあり、チーズというようなものが殺到しているわけですね。これについては、通産当局の方もおられるから、これはどう処置をせられるのか、これは別の問題といたしまして、こういう傾向になっておるわけなんでありますが、こういうことがかりにまた第二四半期にも続く、それから第三四半期にもこういうようなことが続いていきますというと、これは国内の競争品というものが、もうほとんどこれは総倒れになってくる。こういうようなことを考えまして、これがはたして第一回の特殊現象であるか、将来というものはだんだん漸次本道に入って、そうして平常化していくのかどうかと、まあこういうような見通しです。  それからいま一つ、この特定物資の問題があるわけです。御承知通り特定物資というものはあくまでも特定物資であって、特別利益を生むものについて、まあバナナとかパイカンとか、それから時計とか、スズコとかいうものに、御承知通りいわゆる差益金と称するものがかかっておるわけであります。しかし、まあ金額にしてみれば三十億かなんかだろうと思うのでありますが、この問題などはさしあたって影響があるわけで、すでに時計業者のごときは三割関税問題を陳情するとか、何かそういったような動きがあるんですが、こういった特定物資というようなものについては、あくまでも何か特定的に考えていくべきものであるかどうかと、この三点を一つ簡単でけっこうですからお尋ねいたしたい。
  40. 谷林正敏

    参考人谷林正敏君) では御質問にお答えいたします。  非常にどれもむずかしい問題でありますが、第一の、アメリカに従来の予想をこえて非常に出ておる。これは日本技術なり、あるいは賃金というものがその中に割り込まれてその物資が買われたものだろうということであります。それから共同市場なり、あるいはイギリスを中心としていわゆるアウター・セブンの動き、こういうようなものを考えた場合に、日本東南アジアにやはりこれに対抗上何か作る必要はないかというお話でありますが、こういうものにいろいろ対抗する必要——私は対抗といいますか、これについてのいるいろ対策考える必要は確かにあると思うのです。それで、共同市場あるいは経済統合というのができますと、中の企業の基盤、強さというものが非常に増してくる。そこで最近の趨勢を見ましても、この地域の外との貿易よりも域内の貿易の方がふえておる、こういうことであります。そこで、この地域が、いかに排他的にはやらないといいましても、力の相違が出て参りますと、やはりそれは排他的にどうしてもなる。これはカナダなりアメリカなりが、自分たちとしても非常に因っておる問題なのであります。日本としましては、やはりこういう情勢に対抗して、ほかにブロックを作るということ、これはまあ結果論的にはある程度そういうことも必要かもしれませんが、その場合にいたしましても、共同市場とか、あるいは欧州自由貿易連合的の強さのあるタイアップというものは非常に困難じゃないか。御承知のようにいろいろな民度も違いますし、経済力も違いますので、アジアにいきなりそういうものを作るということは非常に困難だと。ただ、従来たびたびいわれておりますように、アジアの各国の非常に問題になるのはいわゆる一次生産品であって、これが彼らの、約八種類ございますが、これの輸出がどの程度になるのか、この価格がどうかということが、アジアと申しましても、私はエカフェ地域を申しておりますが、そういう地域の経済の象徴をなしておるというようなことで、どうしてもこういうような物資について、これをどういう工合に将来世界のフラクチュエーションにそれほどあわないようにするかということを考える必要は、これは出てくると思うのです。そこで、アジアの地域が欧州その他から経済的に援助を受ける、あるいはアメリカから援助を受ける。それが最近の話では、アメリカ、カナダが主唱いたしまして、西欧並びに日本も入れて、何か共通の場においてそういうことをしようというようなことを言っておりますが、そういうことをされても、やはりアジアというものは何かそういう点で、ゆるい程度の、いわゆるアソシエーション的なものは必要かとも思われるのですが、その点はすぐその最後の資金繰りをどうするかというような問題がありまして、非常にむずかしい問題。ただ私はその前に、欧州なら欧州というものに対する日本の努力が、従来はアメリカに非常に強く——これはまあ当然であり、今後もアメリカとの貿易輸出入を増すことは必要でございますが、欧州についてもう少し日本も努力をして、この中に入り得る素地を重ねたらどうだろうか。まあそれには御承知の三十五条の問題、それからもう一つは低価格の問題——ことしは日本にとっては自由化の問題も非常に大きいのでありますが、低価格の問題、ガットで問題になった低価格の問題を一体どう日本は対処していくか。これは低賃金問題を離れて低価格になりますれば、価格の上で国際水準を乱さないような競争の仕方をすればいいのでありますから、まあ結論的には非常にむずかしい問題でも、努力してし得る問題であります。そういうようなことによって三十五条問題をはずし、低価格問題をはずして、そうしてほかの国と同じように日本にも自由化の恩典を、あるいは自由化措置を与えてもらうという努力がその前に必要じゃないかと私は考えます。  それから第二の、五百万ドルに対して六千何がしの申し込みがあった。これは私も新聞を見まして驚いておりましたのですが、本件については、実は通産の当局に内容をお聞きしたいのであります。というのは、この措置が、これだけで新聞に出、これは大したことだ、たかが五百万ドルといっても、六千万ドル以上の、十二、三好の申し込みがあった、これは大へんだ、自由化すれば国際収支上非常に困るというようなことを抱かせやすいのであります。そこで一体どういうふうにしてこういうものが出たかというような御説明を実は通産当局に伺いたいのでありますが、私が、これの内容を全然存じません。私が想像するのに、これがもしも自由化ということになったらこうはこない。非常に逆説的でありますが、もしもはずしてあるのならこないが、五百万ドルだというリミットがあるために非常にきたのじゃないかということが一つと、それからこれは最初でありまして、彼らがお互いに横の、何と申しますか、需要度というものを知らなかったのですね。ですから、もしも何かの方法で、この途中でも五百万ドルに対して二千万ドルもあるのだというようなことがあれば、その物資が入り過ぎる、当然これはこういう人が考えて、もうけにもならないし、オーバー・ストックになるという調整の仕方もあるのじゃないか。ですから五百万ドルという限度があるから逆にこえたのだという考えもありますし、あるいは最初お互い情勢がわからないからこういうようなことになったというような気もするのであります。そこで、こういうことに関係いたしまして、私はAA制度がいいのか、全然イギリス流にはずしてしまうのがいいか、よく今までも問題になっておりますが、AA制という一応のリミットがあって、そうしてそれからこえるときには、それをそのまま需要に応じて許す方がいいという一つの理由に、私は、ある情勢になって、同じような物が、業界おのおのが知らないままに輸入しておる、そうするとあるときに、これだけお互いに入れているのだ、これ以上は不要だというようなことになれば、それから先の需要度は少なくなるという意味で、AA制の方が横にわかっていいと思いますが、本件もまさにその一例になるのじゃないかと思っております。ただ内容は私わかりませんから、これ以上申し上げられません。  それから特定物資、たとえばバナナとか。パイナップルのカン詰を入れる。ところがそれが安いので、そこで特別に高く売れる。途中で調整金をとっておりますが、もうかるというようなものを今後どうするか。これは原則論といたしまして、今後そういうことはおそらくやらないと思うのです。ただ通商協定その他を結んでおります場合に、その協定を履行する上に、ある程度必要な場合にはこれに似たこともあるいはとっていくかとも思いますが、やはりこれは邪道でありまして、こういう方法でやって安く入るのを高く国民に売る。そこにどこかに利益をとるということはおかしなことであります。私自身の考えとしては、こういうものは原則としては今後続けていかないのじゃないかというように考えております。  非常に簡単でございますが……。
  41. 山本利壽

    委員長山本利壽君) 速記をやめて。    〔速記中止〕
  42. 山本利壽

    委員長山本利壽君) 速記を始めて。  参考人の方々に一言お礼を申し上げます。  本日は長時間にわたり貴重な御意見を聴取させていただきましてありがとうございました。当委員会といたしましては、本日の御意見を十分参考といたしまして、今後の審議を進める所存でございます。どうもありがとうございました。  これにて散会いたします。    午後四時三十八分散会