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1960-03-25 第34回国会 参議院 社会労働委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年三月二十五日(金曜日)    午前十時四十八分開会   —————————————   委員の異動 本日委員片岡文重君及び小柳勇君辞任 につき、その補欠として江田三郎君及 び安田敏雄君を議長において指名し た。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     加藤 武徳君    理事            高野 一夫君            吉武 恵市君            坂本  昭君            藤田藤太郎君    委員            鹿島 俊雄君            紅露 みつ君            徳永 正利君            山本  杉君            小柳  勇君            藤原 道子君            安田 敏雄君            田畑 金光君            竹中 恒夫君   衆議院議員            田中 正巳君   国務大臣    厚 生 大 臣 渡邊 良夫君   政府委員    厚生省保険局長 太宰 博邦君    労働政務次官  赤澤 正道君    労働省職業安定    局長      堀  秀夫君   事務局側    常任委員会専門    員       増本 甲吉君   説明員    厚生省保険局健    康保険課長   加藤信太郎君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○失業保険法及び職業安定法の一部を  改正する法律案衆議院提出) ○厚生年金保険法の一部を改正する法  律案衆議院提出) ○日雇労働者健康保険法の一部を改正  する法律案衆議院提出) ○船員保険法の一部を改正する法律案  (衆議院提出)   —————————————
  2. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) それではただいまから委員会を開きます。  前回に引き続きまして、失業保険法及び職業安定法の一部を改正する法律案厚生年令保険法の一部を改正する法律案日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案船員保険法の一部を改正する法律案、以上四案を一括して議題といたしまして質疑を行ないます。  ただいま発議者を代表して田中衆議院議員出席をいたしております。政府からは、労働省赤澤政務次官堀職業安定局長鈴木失業保険課長住企画課長出席をいたしております。厚生省からは、やがて渡邊厚生大臣出席をいたしまするし、太平保険局長山本保険局次長加藤健康保険課長加藤厚生年金保険課長戸沢船員保険課長藤数理課長たち出席をしています。  それでは質疑のおありの方は逐次御発言を願います。
  3. 田畑金光

    田畑金光君 時間の関係もあるようでございますので、主として条文に即して質問を行ないたいと思いますが、初めに政務次官お尋ねしたいのは、昨年の三十一国会船員保険法等の一部を改正する法律案として四つの法案一緒にまとめて国会に出されたわけでありますが、それが昨年の十二月にこれをばらばらにして与党提出する形式をとったというこの間のお答えがあったわけです。こういうような取り扱いというものは、私たち今日まで国会におりましてあまり知らないわけでございますが、このような取り扱い先例があったのかどうか、これをまずお伺いしたいと思います。
  4. 赤澤正道

    政府委員赤澤正道君) 先例のことは実はよくそこまで研究しておりません。しかし、政府と党といろいろ話し合った結果、結局政府側といたしましては、私たち考えておりますことが全面的に取り入れられておりますし、さらに一歩前進した形でありますので、私自身も最初提案の形からちょっとはずれておると思いましたけれども、政府としても別に異議はなかったわけでございます。
  5. 田畑金光

    田畑金光君 政党内閣の建前から申しましても、法案を出す前に当然政府与党との話し合いは意見の一致を見て出されるはずでございまして、こういうような異例の取り扱いというのは、いろいろ問題を残すわけで、むしろ提案の仕方としては、政府みずからが撤回して再提出の形をとるか、あるいは修正の形をとるか等々、政府の責任において処理されるのがしかるべき順序方法である、こう考えるわけですが、この点一つ政府側においては、今後もこういうようなことがあり得るかどうかは別にいたしましてこのような提出の仕方が望ましい姿であるかどうか、これを承りたいと思うのであります。
  6. 赤澤正道

    政府委員赤澤正道君) 先ほども申し上げました通り最初提案の形と違いましたし、こういうやり方は、やはり私どもおもしろくないと思います。しかし、内容的にはわれわれが考えておりましたことが全部包含されてありますので、了承しておる次第であります。
  7. 田畑金光

    田畑金光君 予算を伴う法律案については努めて議員提出というのは差し控えていこう、これが議員の中における申し合わせというか、そういうような慣行というか、一応そのようなことが今日まで尊重されてきた、こういうのが事実だと思います。この議員提案法律は、ことに後ほど質問いたします失業保険法職業安定法の一部を改正する法律案等については、政府原案に対してある程度のプラスを加えたということはそれは事実でございましょうが、いずれにいたしましても、それだけ予算を増額する議員立法というものがなされたわけで、この点は先ほど申し上げた従来の慣行からいうと逸脱しておると考えておるわけで、この点、田中衆議院議員はどのように提案者としてその辺の事情を考察しながら出されたのか承りたいと思います。
  8. 田中正巳

    衆議院議員田中正巳君) まあ私は議員でありますから、ざっくばらんに一つ答弁申し上げたいと思います。で、この四法案が当初政府から一本で提出をされて参ったことは御案内通りであります。その当時、御案内通り法案提出の仕方といたしましては、政府与党と緊密な連絡をとって提出をすることになっておりまするので、やはりごたぶんに漏れず、この法案についてもさような形式をとったわけでありますが、当時与党内部にも非常にこの提出の仕方については実は異論等がございまして、必ずしもかような行き方というものは正しいものではないという意見が非常に強かったようであります。しかし、まあいろいろな関係からさような与党内部の一部の意見というものも通りませんで、非常に問題のある形でもって、実はこの法案は四法案一緒に一本で出るというような形になって参ったわけであります。で、そういうようないきさつもあり、また、内容等のいろいろな考察もありまして、とんと審議衆議院で進まなかったわけでありまして、その間に寄っていろいろわれわれも再考慮をいたしました。また、衆議院社労委員会内部におけるいろいろな空気等も勘案をいたしましてやはりこの法律案はそれぞれ別に出すのが至当であろうという考えに実は与党内部は変わって参ったわけであります。当初からあった意見でありまするが、だんだんとそれが支配的になってきたのでありまして、その理由というのは、やはりこの法案背景をなしているものは、これらの制度並びに保険調整財源調整という一面のあることは否定できませんが、これはやはり本質的に見て、これらの社会保険制度というものが一つ一つ正しい姿に向かっていくというのが本来あるべき姿であろう。従って財政的制約というのが先になった形の法案提出の形というのは、その面でもおもしろくない。同時に、法律案提出の仕方としても根本的に疑義がある、かような考え方に立ちまして、これは一つ別々の法律案に実はばらそうではないか、こういう意見が支配的になり、その後いろいろと検討をいたしました結果、さようなふうに、実は四法案に分けて出すことに結果を見たわけでありまして、その間において、それでは一体このような内容を持った政府提出法律案をいかように取り扱うかということについてもいろいろ考えたわけですが、お説のように、政府提出法律案をこの際撤回をいたし、別途出さしめる方法等もないわけではございませんが、何分にも予算関係法案でありまするので、予算関係法案について政府撤回をするといったようなことについての政治的な配慮も考えなければならないであろうというようなこともあったようでありまして、そういうわけで、それでは一つ与党提出にかかるところの同じような内容を持った法案を分けて、ばらして出すことにする。また、そのうちに失業保険法等におきましては、やはり当面の政治情勢も勘案いたしまして若干の上向きの修正をすべきものであろう、この機会にさようなこともいたすべきものであろうというような実は情勢考えられたわけでありまするから、失業保険法においては、そのような追加の修正もいたしました。実は別々に出したわけであります。そこで、予算関係法律案について議員提出法律案を出すことについてのお話がございましたが、これらについても与党の態度といたしましては、なるべくかような予算を伴うところの議員提出法律案というものは、これを避けるようにという党内方針はございまするが、しかし、これは絶対的な方針ではないのでありまして、なるべくやめてもらいたい、万やむを得ないものはこの限りではないというような線もありましたので、まあこの法案の出し方、本来の出し方等にも疑義がこれあったというような背景を受けまして、そのような例外的措置党内で了承させられ、また、政府側においても、必ずしも最初からこれについて全面的に賛成ではございませんでしたが、やはり党内の強い要請もありまして、さような方向に向かうことが良識的であろうというようなことで与党が強力に働きかけて、さようなふうに分かれた次第であります。私も本来田畑先生と同じように、こういったような法案提出の仕方というものは決してオーソドックスなものではない、なるべく避けるべきものである、決して感心した方法ではないと思いますけれども、法案自体最初提出の仕方が与党内部においてすら問題になるような形でありましたので、その節に与党意見を押し通して、本来現在あるような格好にしてしまえばよかったというような意見も今日では考えられますけれども、その節はその節として、そのような事情一つ御了承願いたい。その後そういうふうに良識が働いてこのような形になりましたが、終始これらの経緯を見ますと、決して感心した方法ではないというふうに考えられますが、現実ここまで持っていった方がしかしベターであったと思われますので、その点御了承を賜わりたい。かように御答弁申し上げる次第であります。
  9. 田畑金光

    田畑金光君 次にお尋ねいたしたいのは、その法律が一年間実施の延びたことにより各関係予算に相当の支障があったと考えるわけですが、三十四年度予算の中にもすでに法律改正を前提として予算が組まれておるはずで、この法律実施が延びたことによってどのような具体的な影響というものが各特別会計等にあるのか、これを一つ説明願いたいと思うのです。
  10. 太宰博邦

    政府委員太宰博邦君) 便宜私からお答え申し上げます。  お尋ねの当初の法案提案されましてから結局今日まで延びたために、実際上三十四年度予算に組みました計数が今日においては約一年間変わってきたということにつきましての変動について申し上げます。  日雇労働者健康保険につきましては、当初の政府提案国庫負担の率を引き上げるということでございまして、これは御審議に御協力いただきまして年度内に成立するとすれば変動は一応ないかと思いますが、予算には当初三十四年度分としては約一億五千万ほどの国庫負担の増になるような見込みで組んでおります。  それから厚生年金保険につきましては、料率引き上げ、あるいは標準報酬の区分のワクを引き上げるということによりまして歳入の方を見込んでおりましたのが、これがだめになったということで百三十八億四百万ほどの歳入減がございます。同時に、納付の方の改善見送りになりましたので、歳出の方でちょうど二億ほどの減になります。それに見合いましてまた国庫負担の方でそれにからんで三千万ほどの、これは歳入減の方に入るわけでございます。差引百三十六億三千五百万ほどが歳入差引減ということに相なります。  それから失業保険でございますが、便宜私からお答えしますと、これは料率を引き下げるということが延びましたために、歳入としては四十億二千百万ほど収入が増に相なります。  それから船員保険でございますが、疾病部門におきましては、料率を千分の一を引き下げることを予定しておりましたが、これがやはりだめになりますので、歳入としては二千九百万ほどの増になります。それから船員保険年金部門におきましては、先ほど厚生年金で申しあげましたように、料率引き上げが不可能に相なりますために歳入減、これが二億八百万円でございます。同伴に、歳出の面で給付改善がやはり足踏みいたしましたために、これが約四百万、これはわずかでございます。同じくそれに伴う国庫負担の繰り入れによりますのが、これは百万足らずであります。七十二万ほどであります。差引いたしまして年金部品では減が一億五百万であります。それから船員保険失業部門でございますが、これはやはり料率の引き下げが見送りになります関係歳入として六千百万円ほどが入ってくる、大体かようなことに相なります。
  11. 田畑金光

    田畑金光君 厚生年金等の問題は午後に譲りまして、労働政務次官お尋ねいたしますが、今回の失業保険法あるいは職業安定法の一部を改正する法律案の底に流れる考え方でございますが、政府所得倍増論を唱えているわけです。あるいはまた、長期経済計画を通じ、十年後には所得倍増する、そういうこと等を言われているわけで、この長期経済計画裏づけとして当然雇用の問題、あるいは賃金問題等について一つの構想のもとに進めておられるものと考えておりまするが、政府も今考えておられる長期経済計画のもとにおける雇用政策等についてはどういうお考えでおられるのか。今回の法改正はそのような考え方一環として出しておられるのかどうか。これを伺いたいと思います。
  12. 赤澤正道

    政府委員赤澤正道君) 私は、この失業保険法の今回の改正が、信用政策自体に大きな関係があるとは考えておりません。ただ、この間も私は正直に申し上げましたように、例の三分の一を四分の一にしたということで、この面で、やはり失業保険に関する面で労働行政後退したのじゃないかということを盛んに衆議院におきましても出、また、この間藤田さんもその意図で御質問があったと思いますが、私はそれだけの点では、はっきり後退でありますと私個人としてはそういう意味に判断しておりますということを申し上げました。なお、それにつけ加えて積極的な面も加えたこと、これは御承知通りでございます。この問題について、失業保険の問題についてこの前の藤田委員質問ですが、単にこれを生活面相互扶助考えているのか、それとも富の再分配ということも考慮してあるのか云々といったような御質問がございました。これについてはちょっとただいまのお尋ねと、はずれるかもしれませんけれども、私どもといたしましては、富の再分配とまでは考えませんが、やはり雇用の場というものをもっと広げ、また、賃金を上げるということについては、これは単に労働省仕事ではありませんけれども、党全体としては御承知通りに、所得倍増にからみまして一生懸命検討しているわけでございましてこれに対して私が申し上げるのは少し行き過ぎかと思いますので差し控えますが、ただいまの御質問の範囲では、私は雇用計画自体にはこれは大きな関係を持たぬものと判断しております。
  13. 田畑金光

    田畑金光君 おそらく政府のやられている施策というものは、一定の計画のもとに実行されるわけでございますから、当然長期経済計画というと、少なくとも保守党の政治のもとにあっても雇用の充実あるいは完全雇用を目標として経済政策等も進められていることは言うまでもないことだとこう考えるわけです。従いまして、今回の法律改正もこれは私は政府の側に立って、あるいは与党の立場に立って善意に解釈するということになるかもしれませんが、やはりそういう長期経済計画、その裏づけとしての雇用政策、これがやはり一貫して今度の法律改正の基礎になっているものだと考えているわけで、それが今のようなお話でありますと、これはまことにどうも計画性のない、そのときだけの継ぎはぎ的な政策にほかならぬ、こういうことになるわけで、これは今の政務次官の御答弁としてはどうだろうかと、こう考えるわけです。ことに先日、藤田委員質問に対して堀局長からいろいろ御答弁がございましたが、すでに積立金失業保険に関する限り六百六億あるわけで、さらに本年度は百二十億前後剰余金が出るだろう、こういうようなお話もあったわけです。そういうことを見ますと、黒字経済の基調というものが保険財政にもそういうような面で現われてきていると、こう言えると思うのですね。でありまするから、先ほどの私の質問したことは、やはり今回のこの法律改正も、政府考えておられる長期計画雇用政策一環としてこれは理解していいのかどうか、あらためて伺いたいと思うのです。
  14. 赤澤正道

    政府委員赤澤正道君) これは、政府の大きい意味雇用政策と全然関係がないとはもちろん申し上げません。それは一環に人ってくるわけですが、たとえば例の失業保険給付延長をはかったとか、あるいは就職支度金等の問題も、広い意味でやはりこの失業者保険給付をするだけがこれは目的ではないので、結局、その失業した人をさらに再就職機会を与えて、そうして全体の雇用千画の中に織り込んでいくという積極面も私は当然考えなければならぬのであって、そういう面で私は大いにこの行き方について期待をもっていいんじゃないか、この程度のことでとお考えになるかもしれませんけれども、少なくとも労働行政積極面として、単に労働者の福祉といったようなことだけでなくして、職業の確保という面では、私はこれは一段推進されるものというふうに考えております。ただ、全般の雇用計画にどれだけのこれが比重を持ち得るかという御質問かもしれませんけれども、このことについて、先ほど私はそうこれに大きな比重を持っているわけではないということを申し上げたわけであります。ただ、全然無関係ではないので、そういう意味でわれわれは一歩踏み出したつもりであるわけであります。
  15. 田畑金光

    田畑金光君 堀さん、何か御答弁ありませんか。
  16. 堀秀夫

    政府委員堀秀夫君) ただいまの政務次官の御答弁に補足して、なおややこまかいことを申し上げますというと、結局、今回の改正によりまして失業保険だけの見地からいたしますと、三分の一を四分の一に引き下げたことは確かに後退のような感じもするわけでありますが、まあ大局的に考えまするときは、本年度におきましては国民年金制度創設、あるいは国民保険の拡充というような社会保障全体としての整備を行なうということが行なわれたわけでございます。そのため、失業保険がやむを得ざるしわよせと申しますか、国庫負担の減少によって国庫財源を捻出する、こういうようなことであったので、まことにこれはやむを得ないことでなかったかと思うのでございます。なお、それにつけ加えまして、ただいま政務次官から御答弁がありましたように、今回の、これは議員提案による分が多うございますが、改正によりまして、たとえば失業情勢の悪い地域における給付日数延長であるとか、あるいは就職支度金制度創設というようなことがありまするし、あるいはまた、日雇いにつきましても、これは原案にもあったのでありますが、待期の一日減というようなことがあるわけでございます。このようなことによりましてただいま御答弁がありましたように、積極的な雇用機会の創出という面についての一歩が踏み出されておるということもあると思いまするし、また、全体的に見まして、まあ非常に不満足ではございまするけれども、その社会保障整備ということによりまして今後の長期経済計画あるいは所得倍増計画裏づけになる社会保障あるいは国民所得倍増というような面に一歩を踏み出したものじゃないか。ただし、これはもとよりまだまだこれをもって足るというふうにわれわれ考えておりません。これにつきましては先般も申し上げたわけでありますが、第二段の問題として、保険給付改善問題につきましては、われわれといたしましては、長期経済計画あるいは所得倍増計画考え方とあわせまして雇用の質の改善というような面からいたしまして、またあるいは、社会保障制度整備というような面からいたしまして、その改善検討に着手したい考えでございます。これにつきまして関係者方面の御意見を十分伺いまして、われわれとして、第二段の問題として真剣に取り組んで参りたい考えでございます。
  17. 田畑金光

    田畑金光君 答弁質問に対して焦点が合ってこないのですが、経済が伸びていく、あるいは生産が上昇する、一般論からいうと、雇用もよくなっていくと、こう思うのです。当然そうなってきますと保険経済というものも安定し、あるいは余裕が出てくる、こういうことも言えようと思うのです。でありますから、今回ここに国庫負担三分の一を四分の一に引き下げたというのもそのような一つ考え方に立っておるのじゃなかろうか、こう私は言いたかったわけですが、ただ問題は、そのように経済が伸びていく、あるいは雇用もだんだんよくなってきた、しかし、質的にいいか悪いかということは議論の外です、保険経済もだんだん余裕ができ、あるいは安定してきた、こうなってきた場合、今回のこの法律改正案というものが先日藤田委員から指摘されたように、もっと料率を下げる、あるいは国の負担を下げるという前に、失業保険法の精神から見ても優先的に改善を加えることがもっと大切なことではないであろうか。この点について先般来答弁を見ますと、社会保障制度審議会等に諮問をしてその答申を待ってやるのだと、こういうお話でございますが、もし答申を待ってやるならば、この改正法案全体も一緒にやるということが合理的だし、理屈に合うわけだし、なぜこれだけを先に取り上げてやらねばならなかったか。こういうことになってきますと、むしろ国庫負担を軽減するという点に重点が置かれたとわれわれは見ざるを得ないのです。零細企業失業保険強制適用問題等もあろうし、あるいは今御答弁の中の給付内容改善の問題もありましょうし、こういう点こそもっと先んじてやるべき仕事ではないだろうか、こう見るわけで、この点について労働省としては、あるいは政府としてはどんな考え方を持っておられるのか、承りたいと思うのです。
  18. 堀秀夫

    政府委員堀秀夫君) ただいまの田畑委員のお説まことにごもっともな点が多いわけであります。われわれもそのような機運を十分考えなければならないと思っておるわけですが、今回のこの措置は、本年におきまして国民年金制度創設され、国民保険実施されるということに合わせまして、まずこの保険四法の面について費用負担の調節をはかる、このような考え方から国会提出いたしたものでございます。そこで給付の面につきましては、さしあたり日雇労働者から非常に要望があります待期の一日減ということを実施するのにとどめたわけでございますが、その第二段の問題といたしましては、これは引き続き社会保障制度調査会等の御意見も十分伺いまして、保険給付内容改善検討に着手いたしたい考えでございます。これにつきましては、先ほど田畑委員も御指摘になりました中小零細企業を入れた場合に、その間の保険経済関係はどうなるか、あるいは保険給付内容の全面的な改善を行ないました場合に、その関係がどうなるかということもにらみ合わせまして、総合的に検討を要する問題でございまして、なお、この間の検討には慎重な考慮を必要とするのではないかという考えがいたしまするので、今回の提案には間に合わなかったわけでございまするので、われわれといたしましては、全体の社会保障調整見地から、給付内容改善につきましても、これは田畑委員指摘のように、われわれとしては早急に検討に着手いたしまして結論を得たいというふうに考えておるような次第でございます。
  19. 田畑金光

    田畑金光君 他の社会保険との費用負担調整によって国庫負担を切り下げたというお話ですが、悪い方に調整をするのじゃなくて、今の政府のやっておる社会保障というものは、まことに先進国家のそれに比べますと低い水準にあるわけで、悪い方にそろえていくということでは、いつまでたっても社会保障の前進ということは考えられないと、こう思うわけです。  そこで具体的にお尋ねいたしますが、今、堀局長の御答弁の中に、社会保障制度審議会の答申によって労働省としても考えておるのだと、こういうお話ですが、いつの場合でも答弁答弁で終わってしまうので、実際そのように給付改善等がやられるのかどうか、あるいは零細企業における失業保険強制適用等がなされるのかどうか、このことがやはり政府全般の今後の社会保険に対するはっきりとした見通しの上に立って、あるいは決意の上に立ってなされなければ、われわれとしては信頼することができないのですが、この点は、政務次官から一つ政府方針がどの程度まじめなのかどうか、承っておきたいと思う。
  20. 赤澤正道

    政府委員赤澤正道君) われわれの方としても、社会保障の面で後退しているとは考えておりません。あくまで皆さんの御期待なさるほど進行度は早くないかもしれませんが、とにかく一歩々々福祉国家を建設しようという意欲に燃えている点だけは一つ御了解願いたいと思うのです。ただ、それが今回間に合いませんで、それはただいまおっしゃったように、ほかの保険等のいろいろな関連もありますし、間に合わなくてこういうことになってしまったということを現段階では私後退したということを正直に申し上げたわけでございます。これは政府の意思統一をしたわけではありませんが、やはりその意味では、私どもは、だんだん経済の基盤がしっかりしてくるにつれまして、どうしても保険財政にゆとりが出てくることは当然のことであって、一方うんと保険料率をこの際減らしたらどうかという考え方があるかもしれませんが、私はこれをとりたくない。そういうことよりはこの給付内容をよくして、そうしてまあ労働者の福祉を進めていきたい、こういうふうに考えますが、さらに一歩先んじて先ほど申しましたように、積極面でさらに再就職、再雇用ができ得る道があれば一番いいのじゃないか、こういう面にゆとりのある保険財政というものを、基金を圧迫しない程度で十分使っていくということが一番望ましいと考えて、その第一着手をしたわけでございまするので、決してこの社会保障面で皆さんの御心配になるような後退があるのじゃないかということは決してございませんので、その点は一つ御了承をお願いいたします。
  21. 田畑金光

    田畑金光君 社会保障制度審議会の答申というのはいつごろ出てくるのか、それに基づいて政府としてはいつごろその答申に基づいて先ほど来御答弁内容改善をやっていく御準備なのか、これを伺っておきたいと思います。
  22. 堀秀夫

    政府委員堀秀夫君) 社会保障制度調査会に対しましては、昨年の秋、総理大臣から正式に諮問を申し上げまして、それに基づきまして社会保障制度調査会におきまして検討に着手されたわけでございます。これは社会保障制度調査会の御審議のまあ経過を見ながら考えていくより仕方がないわけでありまするが、その内容につきましては、おそらく早急にその改正に着手した方がいいというように審議会がお認めになりましたものにつきましては、早急に実施するというような御方針が出るだろうと思います。また、われわれといたしましても、社会保障制度調査会に対しまして、緊急にこういう点について問題があるというような点につきましては、資料を差しあげて今後の審議の促進に資して参りたい考えでございます。要するにわれわれといたしましては、社会保障制度調査会が審議をされまして、それに基づいて答申が出ましたならば、さっそくに一つ実施に着手いたしたい、このように考えております。
  23. 坂本昭

    ○坂本昭君 ちょっと関連して。社会保障制度調査会ですか、もう一ぺん念を押しておきますが、政府がそんなにいいかげんなことを言っては困ります。現にそれについては社会保障制度審議会会長が、この改正が慎重な検討を加えることなく唐突として、しかも単に財政的見地からのみとり上げられていることは、当審議会を軽視するきらいなしとしない、ちゃんと怒られているのですよ、怒られたその審議会を調査会と言ったら、なお怒られます。
  24. 堀秀夫

    政府委員堀秀夫君) まことに失礼をいたしまして申しわけございませんが、つい言い間違えました。社会保障制度審議会でございます。調査会ではございません。正式の名前は社会保障制度審議会であります。  なお、坂本委員がただいまおっしゃいましたのは、費用負担調整に関する措置についての御答申でございます。これはすでに昨年ありました。この点は御承知通りでございますが、昨年の秋に給付の面につきまして総合的に検討を願うように総理大臣から正式に諮問を申し上げております。この答申をわれわれは待ちまして、なお早く適当なる措置を講じて参りたい考えでございます。
  25. 田畑金光

    田畑金光君 その答申を待って善処するというのですが、答申はそう長くないと思うのですけれどもね、大体いつごろのお見通しですか。というのは、この法律改正を見ますと、保険料率国庫負担の割合については三十四年度から三十六年度までの間の保険収支の実績に照らし検討が加えられて、その結果に基づいておそくとも昭和二十八年三月三十一日までに所要の改正の手続がとられる、やはり保険料率では国庫負担問題等と当然関連して答申に基づく給付内容改善するにいたしましても、国庫負担の問題あるいは保険料率問題等が関連として出てきょうと思うんですが、今お話しの社会保障制度審議会の答申というものは、いつごろ予定されておるのか。もしそれが出てきた場合には、この法改正の中にある考え方とは別個に、早急に政府としては処理されるという方針であるのかどうか。これを承りたいと思うんです。
  26. 堀秀夫

    政府委員堀秀夫君) この点につきましては、社会保障制度審議会の審議のスケジュールの問題でございます。私の方から、いつまでに出るであろうということをまだ申し上げる段階にはないわけでございますが、われわれといたしましては、この審議が促進されまするように、資料の提供その他必要な御協力をいたしまして審議がすみやかに進みまするようにはかって参りたい考えでございます。なお、社会保障制度審議会から答申が出ますれば、われわれとしてはそれを尊重いたしまして至急所要の措置を講じたい考えであります。
  27. 田畑金光

    田畑金光君 そうしますと、先ほど私が読み上げました、この法律の中の、昭和三十八年三月三十一日までに所要の改正の手続を加えるというのは、これは何を言われておるわけですか。
  28. 堀秀夫

    政府委員堀秀夫君) この法案の中で言っておりまするのは、要するに、昭和三十四年から三十六年までの保険経済の収支状況を見まして、たとえば、国庫負担の問題がどの程度が最終的に適当であるか、あるいは、保険料率がどの程度が最終的に適当であるかという結論を得ました上で、その点につきまして、少なくとも最小限、所要の改正措置を講じなければならないという意味でございます。もとより、これにつきましては、先生先ほど御指摘のように、費用の問題、保険料率の問題と、保険給付内容問題等はからんで参る点が出てくるだろうと思います。そういう点につきまして、ですから、非常に根本的な——将来ずっと永続してさらに非常に大きな影響のありますような根本的な問題、しかし、それほど大きな影響はないが、給付改善見地からはこれは早急にやらなければならないというような問題とに、性質がまた分かれてくる場合も予想されるのでございまするが、そのあとのような問題につきましては、社会保障制度審議会のこれは御審議を待たなければなりませんが、おそらく、この点などについては、早急に改善を要するんじゃないかというような結論も出るんじゃないかというふうに思いまするので、そういう問題がありましたときは、それに基づいて、その答申によってわれわれは至急所要の措置を講ずる。しかし、最終的には、この三年間の収支状況を見まして、少なくとも、この国庫負担あるいは保険料率等の費用の面につきましては、最終的な結論を出しまして、三十八年の三月までには改正を行なう、このような考え方をこの法案では述べておるわけでございます。これを設けましたのは、この国庫負担の問題、保険料事の問題等について、とりあえずの措置として今度のような改正をいたしたのでありますが、これは非常に重大なことでございまするから、やはり三年間の実績を見て、さらにもう一ぺん検討するという安全弁を作るというような意味において設けられた規定でございまするので、われわれとしては、今後この収支状況をよく見まして、最小限、三十八年の三月までには、この保険経済の面から、国庫負担保険料等の費用の面につきましては、最終的な結論を出しまして、国会提案いたしたい考えでございます。
  29. 田畑金光

    田畑金光君 三十八年の三月に所要の改正手続がとられるというわけですが、もし、答申内容によっては、当然、また保険料率国庫負担の割合等についての変更も出てきょうと、こう思うんですが、そういう場合には、たとえば国庫負担の、今日の三分の一に戻す場合もあり得ると思うのだが、そういう考え方であるのか。あるは保険料率も、今回は千分の二引き下げたようでございますが、保険料率等につきましても、また引き上げるということもあり得るのかどうか、この点はどうです。
  30. 堀秀夫

    政府委員堀秀夫君) この点につきましては、われわれはこの保険給付を固定させて、保険給付はもう絶対変えない、その上に立って収支だけを見て結論を出す、こういう考え方ではございません。給付内容について御検討をいただきまして、そして給付内容については、こういうことが適正である、適当である、こういう結論を得て、それに対して、料率はどうであるか、それから国庫負担はどうであるか、これも出て参ります。相互からみ合って御検討を願わなければならない問題でございまするので、給付内容につきまして、社会保障制度審議会で、適当なる内容についての結論が出ました上は、それを前提として、保険経済の面についても考え直す、こういう考えでございます。
  31. 田畑金光

    田畑金光君 そういうように、いろいろ答申のいかんによっては考え直される場合があるといたしますなら、今回の改正を見ますと、一般失業保険において、六カ月ごとに保険収支の計算をやり、不足の場合は保険料率引き上げることもできるわけですが、これは弾力的な条項で、いろいろまた経済変動等にも応じられるような規定になっているわけで、これを今回削除したというのは、どういう考え方に立っておるのかです。今のお話のように、答申内容によっては、また保険料率国庫負担の割合等につきましても、動かすことが前提としてあるならば、この弾力的な条項等について、ここで明確に削除されたという趣旨は、どういう建前に立っておるのか、承りたいと思うのです。
  32. 堀秀夫

    政府委員堀秀夫君) ただいままでの失業保険法の第三十条の二項でございますか——の条文には、そのような規定があるわけでございます。ただ、われわれの考え方といたしましては、このただいまの失業保険経済状況を見てみますると、ここ二、三年の間には、このような条文に該当するような事態は起こらないであろうというように考えております。そういう考え方と、それからとにかくこの三年目には総合的に検討いたしまして、最終的な結論を得て、最終的な改正を行なう、こういう考え方でございまするから、その間保険料率をまた引き上げたりするというようなことをいたしますると、被保険者にも、何と申しまするか、不安定な感じを与えることになりまするので、とにかくこの三年の収支状況を見て、必ず最終的な改正をするということになっておりまするので、この第三十条の等二項は削ったわけでございます。  なお、第三項以下につきましての規定はございますので、この面によりまして、もし万一の場合が起きました場合には、調節ができるという考え方でございます。
  33. 田畑金光

    田畑金光君 次に、この職業訓練施設入所者に対する給付延長制度の新設ですが、それは一体どれくらいの人員で、予算はどの程度を予定しておられるわけですか。
  34. 堀秀夫

    政府委員堀秀夫君) この改正につきましては、公共職業訓練につきまして、一年間のコースによりまする職業訓練につきましては、それを受けておる間には、失業保険の現在までの期間が切れましても、給付を差し上げよう。それによりまして、訓練を受ける方が後顧の憂いなしに職業訓練を受けることができる。これによって新しい職場を開拓する、あるいは新しい職場に入るというような機会を多くしよう、こういうねらいでございます。そこで、やってみませんとわかりませんが、大体われわれの方で予想しておりますものは、これによる措置を受けまする失業保険受給者は約五千人、その給付に要する経費は約三億五千万円程度ふえるのではないか、このように見込んでおります。
  35. 田畑金光

    田畑金光君 後顧の憂いなく訓練に励めるように考えておるというわけですが、これ一年以内という限られた期間で労働市場の需要に応ずるような技術の訓練というものが可能であるのかどうか、あるいはまた、お話のように、後顧の憂いなくめんどうを見るというならば、この期間の問題等についてもこれはもっと考慮されるべき点だと、こう思うのですが、その点はどういうようにお考えなんですか。
  36. 堀秀夫

    政府委員堀秀夫君) 再就職に必要な職業訓練につきましては、ただいまの職業訓練の実施状況等を見てみますると、大体基礎的訓練が一年間、こういうことになっております。この一年間の基礎訓練を受けました方につきましての就職状況を見ますると、これはもう大体ほとんど間違いなしに就職しておられる状況でございます。そのようなことから考えまして、一年間のコースを終了すれば再就職につきましてはまず遺憾がない、このような考え方に立ちまして一年間ということに規定したわけでございます。なお、やり方といたしましては、ただいまのような基礎訓練一年間というようなことと併用いたしまして、われわれの方でも職業訓練の内容について今後さらに検討していきたいと思いますが、あるいは相当程度の技能のあるような方については途中から入っていただきまして、さらに積み重ねて一年間のコースをやるというようなこともテスト・ケース的に考えてみたい。要するに、職業訓練のやり方を今後またただいまのような基本的考え方に加えまして検討を十分行ないつつ、この一年間の訓練を受けました後において確実に就職できるようにわれわれとしては配慮して参りたい考え方でございます。
  37. 田畑金光

    田畑金光君 炭鉱離職者臨時措置法の中にも、特に炭鉱の離職者について、職業訓練を実施する、また、その期間訓練手当を支給する等と、こうあるわけですが、この炭鉱離職者臨時措置法によって、もうすでに各地域に援護会等も発足しておるようで、どの程度、現在この職業訓練等に入っておるのか、あるいは訓練が現に進んでおるのか、承りたいと思います。
  38. 堀秀夫

    政府委員堀秀夫君) 炭鉱離職者臨時措置法によります職業訓練につきましては、現在各地域におきまして、飯塚、大牟田等を初めといたしまして、従来のまず職業訓練所の増設拡充をはかるというような措置をいたしまして、それから三十五年度におきましては、引き続きまして増設、新設を行ないたい考えでございまするが、今年度におきましては大体九百人程度を予定しております。来年度におきましては、六千人程度の離職者について職業訓練を実施して参りたい考えでございます。
  39. 田畑金光

    田畑金光君 まあ今年度は九百名、来年度は六千名予定しているというわけで、現実に一体職業訓練というものは、炭鉱離職者について全国的に仕事を始めているのかどうか。始めておるとすれば、どの程度入所されているのか。それを承っているのです。
  40. 堀秀夫

    政府委員堀秀夫君) 本年度におきましてすでに十二月とそれから二月と、それぞれの段階がございまするけれども、北九州地区を中心にいたしまして増設を行なっております。それに入所しておられます方は大体九百人程度でございます。現在すでに入所されまして訓練を受けておられるわけでございます。
  41. 田畑金光

    田畑金光君 この法律を読みますと、広域職業紹介活動というのが出ておりますが、炭鉱離職者臨時措置法の中にも同じ内容の規定があるわけで、両方は同じ考え方に基づいておるものと、こう思うのですが、具体的に、しからば今後ある地域に集団的に失業者が発生する、それに対する特別の措置を講じなければならない、こういう趣旨でございますが、今政府として考えておるのは、どういう地域にどのような将来失業者が多発するか。炭鉱は別にいたしまして、政府の今考えておられる裏づけというものはどういう地域等を、あるいはどういうような業種等を予定されておるのか、承りたいと思います。
  42. 堀秀夫

    政府委員堀秀夫君) 広域職業紹介につきましては、ただいま御指摘になりましたように、炭鉱離職者臨時措置法に基づきまして、このような考え方を取り入れたわけでございまするが、この考え方は、要するに、職業紹介というものは、大体今までの職業安定法考え方では、通勤区域内において職業の紹介あっせんをする、このような考え方が原則になっておるわけです。しかし、非常に失業情勢が悪くて、その地域に多数の離職者があったというようなところにおきましては、従来のように、その地域内だけで職業紹介のあっせんをするということでは、とうていこれはさばき切れないというようなことになりまするので、この際考え方をもう少し発展させまして、そのような失業情勢の悪い地域につきましては、広域職業紹介の面を出しまして、通勤区域内だけでなしに、広い範囲にわたって職業紹介による配置転換を行なって参りたい、このような考え方でございます。そこで、これによりましてまず具体的に問題になりまするのは、どのような地域であるかということでございまするが、われわれといたしましては、失業情勢が非常に悪い、新たに多数の離職者が発生しつつある、今後とも多数の離職者の発生が見込まれる、それから当該地域における求職者の就職状況が著しく悪いというような地域につきまして指定をして参りたい考えでございまするが、結局その具体的な内容につきましては、さらにこの法案にありまするように、職業安定審議会に諮りまして、それによって基準をきめて実施して参りたい考えでございますが、まずさしあたりは具体的に申しますと、北九州等の炭鉱離職者が非常に発生しておる地域というようなところはこの対象になるのではないか、このように考えております。また、その場合におきましては、炭鉱離職者のみでなしに、その地域におられます——これはどの産業でもいいわけでございまするが、どの業種からの離職者につきましても、広域職業紹介の線に乗って移動をされるような方につきましては、この措置を適用して参りたい。大体われわれの方の見込みといたしまして、これもやってみなければ確定はしないのでございまするが、大体見込み人員を三十五年度におきまして約二万五千人、それに要する経費の増を七億円程度という工合に見込んでおります。
  43. 田畑金光

    田畑金光君 今お話を聞いておりますと、北九州の炭鉱離職者等を考えておるというお話ですが、まあ炭鉱離者については、先ほど申し上げた離職者臨時措置法によって処理されているわけで、内容を比べてみますと、臨時措置法の場合はもっと離職者について保護措置考えられているわけで、この法律は炭鉱離職者だけでなくして、もっと広く考えておる法律改正だと思うのですが、たとえば駐留軍労務者の失業者がある地域においてたくさん発生した、あるいはまた、ある産業が景気の変動によってある会社において、企業において、たくさんの失業者が一時的に多発した、こういうような場合等においてこの法律は適用されるものと考えておるわけですが、今政府で、労働省で把握されておるこのようなまず心配のある適用事業というのはどういうものを予測されておるのか、それを承っておるわけです。
  44. 堀秀夫

    政府委員堀秀夫君) この点につきましては、炭鉱離職者に限る考えでは毛頭ござません。ただいまお話のように、産業、職種等によりまして、その地域に一時に多数の離職者が発生して、その地域の求職、求人状況が非常に切迫してきたというような場合には適用する可能性が出て参ります。職業安定審議会の御意見によりまして、その具体的な発動の基準をきめて参るつもりでおりますが、ただいまわれわれといたしましては、たとえばただいま御指摘の駐留軍関係等につきましては、たとえば芦屋地区等におきまして離職者が一時発生するというような場合におきましては、このような措置の対象になり得るという工合に考えております。なお詳細は、具体的には職業安定審議会、これは労働者代表の方も入っておりますが、その御意見を十分聞きまして、われわれとしては具体的な措置を講じて参りたい考えでございます。
  45. 赤澤正道

    政府委員赤澤正道君) この動機は、やはり北九州の石炭の状況からまあ生まれたことでございます。この法には特に石炭労務者というものは特別に考えまして、援護会というものを作って別途援護することにいたしましたが、やはり同じ考え方を広くこの法律にも盛り込んでおるわけでございます。さっき田畑委員から、一体その他どういう産業が将来その対象になると考えておるかということでございましたが、駐留軍労務者の場合もこれはずいぶん私どもといたしましては検討もいたしました。三年ばかり前でしたか、失業多発地区というものを指定いたしまして、ここへ特に特別失対事業を投入するというような方法でやりましたけれども、これだけではいたずらに日雇労務者を増加するような形になってしまうので解決にならぬ、それよりはっきりした職場にそれぞれお世話をするということが大切と考えて、こういう今までずっと狭い地域で職業紹介活動をやっておりましたけれども、これを全国に広めるというまず第一歩を作ったわけでございます。それで石炭の場合は、私ども経営者団体、単に石炭関係だけでなくして全産業の経営者母体に呼びかけまして、とにかく失業問題は、保険金をわずかな期間わずかやるというだけで解決するものではありませんので、やはり雇用の場を作って、そして石炭労務者であれ何であれ、あたたかく、とにかく力があり意思のある者は受け入れる態勢を作ってやらなければならぬ、それが先決であるということで共鳴を得まして、今回まず石炭を手始めに三万数千の吸収計画を使用者側では、石炭だけではありませんが、全産業で吸収しましょうという計画を実は立てたわけでございます。これはやはり対象として駐留軍労務者だけでなくして、次の産業は造船ではなかろうかとか、いろいろ部内では話が出ておりますが、的確にどれどれというふうに、次に不況に見舞われるという産業をわれわれ描いておるわけではありませんけれども、しかし、これはそういった場合にやはり最終的に手がかりとなる第一歩であると実は考えておる次第でございます。
  46. 田畑金光

    田畑金光君 今言ったような、給付日数延長を新設したこういう特別措置にかかる費用だけは従前通り三分一国庫負担だと言うのですが、これはどういう考え方ですか。
  47. 堀秀夫

    政府委員堀秀夫君) この点につきましては、結局その地域における失業情勢が非常に悪い、その地域内においても職業紹介はもとよりいたすわけですが、それでは間に合わない、やはり広範囲にわたってこういう職業紹介の線に乗せて動いてもらうというような措置が必要になってくる方が出るわけでございます。そういたしますると、その地域内における就職のあっせんと違いまして、やはり他の県等にも連絡をいたし、お互いの間の職業安定機関の間で連絡をとりましてそのお世話をするわけですから、勢いやはりそのあっせんの期間が多少長引くわけでございます。そういうような考え方から、やはりこれは、職業安定機関の活動がやはり時間が多少かかる、そういう方について給付口数の延長という措置考えていこう、こういう考え方でございまするから、やはりこのような場合には、そのような特殊事情がございまするので、四分の一というよりもさらに国庫負担というものは多くする必要があるのではないかという考え方に立ちまして、国庫負担はこの場合には三分の一、このようなことになったものであるとわれわれは考えております。
  48. 田畑金光

    田畑金光君 これはあなたの方の直接所管であるか、あるいは調達庁かもしれませんが、今駐留軍労務者というものはどれくらいいて、今後の異動といいますか、雇用関係変動というものはどのような見通しを持っておられるのか、これちょっと承りたいと思うのですが。
  49. 堀秀夫

    政府委員堀秀夫君) 駐留軍労務者は現在約六万人程度である、正確な数はちょっと持ち合わせませんが、大体全国で六万人程度であると考えております。  なお、今後におきましてどの程度の離職者が生ずるか、これは調達庁関係とよく連絡して参りたい考えでございますが、ただいまいろいろな情報等によりましてわれわれの方として把握いたしております数を申し上げますると、三十五年度中に大体一万二千人ないし一万四千人程度の離職者が、もし計画がこのまま進めば生ずるのではなかろうかという工合に考えております。  そこで、これに対しまては、駐留軍関係の中央対策協議会、それから各地域に都道府県の対策協議会、これを置きまして、そこで、労働省、調達庁、通産省、その他関係の機関が集まりまして、具体的な計画を立てまして、その離職をされました方の配置転換、就職等に遺憾なきを期して参りたい考えでございまするが、大体、今までの実績からいたしますと、職業安定機関として紹介いたしまして就職をお世話した数が、一月、平均いたしますと約一千人程度でございます。今後におきましてもこのような職業紹介活動をさらに活発に行なうということとあわせまして、就業のあっせんで参るとか、あるいはそのほかの措置によりまするところの各官庁連絡をとりましての措置を積極的に行ないまして、離職者が多数生じましたときにおける配置転換等の措置に遺憾なきを期して参りたい考えでございます。
  50. 田畑金光

    田畑金光君 今いろいろお話を承りましたが、どうもこの間来御答弁を聞いておりますと、この法律案について、積極的なもっと現在の制度のもとにおける欠陥等の改善等についてわれわれの期待する熱意を汲み取ることができないわけで、まことに残念と思うのですが、当初私の伺いました政府の産業計画等に基づく雇用計画というものは、労働省自体としても当然所管省として準備されておると考えるわけで、経済企画庁等の計画ではなくて、もっと労働省自体としても計画をお持ちであるはずですが、それを一つ説明願えませんか。
  51. 堀秀夫

    政府委員堀秀夫君) 長期経済計画の樹立に際しましては、労働省としても積極的に参画いたしまして、この中にわれわれも希望なり、計画を十分に織り入れてもらうように努力しておるわけでございます。われわれの基本的考え方としましては、やはり雇用の拡大をはかるためには、特に第二次産業を中心とする産業経済規模の拡大をはかる。これによって雇用の規模を拡大するということがまず第一の前提でございます。これとあわせまして産業構造等の変革等に伴う摩擦的な離職者に対しましては広域職業紹介活動その他積極的な配置転換のための職業紹介行政を積極的に樹立いたしまして、その間の摩擦を最小限に防いでいく。必要があれば炭鉱離職者臨時措置法等の考え方で対処して参りたい。  それから第二番目の問題といたしましては、やはり雇用の規模の問題と並びまして雇用の質の問題があると思います。雇用の質の向上につきましては、まず第一に、われわれといたしましては、現在各産業、企業の部門において技術者が非常に不足しておるという状況でございます。この職業訓練というものを飛躍的に拡充して参らなければならない。その意味におきまして、昨年度におきましては五万一千人程度の公共職業訓練を予定しておりましたが、三十五年度におきましては、これをさらに六千人増加いたしまして、五万七下人程度に拡充したい。これをさらに年次計画的に漸次拡大して参りまして、この公共職業訓練と事業内の職業訓練とあわせまして、職業訓練に遺憾なきを期して参りたい考えでございます。  それからそれと並びまして雇用の質の問題といたしましては、やはり最低賃金制の拡充発展によりまするところの雇用者の所得の増加それからさらに、日蔭のもとに放置されております家内労働者等に対するところの制度の準備調査、このようなものをやはり労働省としては積極的に取り入れていかなければならないのではないか。長期経済計画の中にもそのような方向を書いて掲げてございますけれども、これをさらに具体的に発展させていくということが労働者として負わされた責務であると考えます。
  52. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止〕
  53. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) 速記を始めて。
  54. 田畑金光

    田畑金光君 問題点だけお尋ねしますが、日雇労務者の問題について若干お尋ねいたしますが、今回二十八円の賃金を日額引き上げた。そしてこれが三百六円になった。九・一%の引き上げをやっているわけです。この二十八円の引き上げの根拠というものは、これはどういう積算で出てきた数字であるのか、これを御説明願いたいと思うのです。
  55. 堀秀夫

    政府委員堀秀夫君) 失対就労者の賃金は御承知のように、緊急失業対策法第十条の規定によりまして、労働大臣が同一職権に従事する労働者に通常支払われる賃金の額より低く定めることになっております。それに基づいて従来決定しておるわけでございますが、従来まで省の失対労務者の賃金予算単価は三百六円でございまするが、これは三十二年の四月にPWの改訂を行ないましたことに伴って改訂を行なったわけでございます。そこで労働省といたしましては、昨年八月に実施いたしました屋外労働者職種別賃金調査のうち、失対就労者の賃金関係のある部分について取り急ぎ集計いたしました。その結果を現行のPW方式によりしまして試算いたしてみますると、大体九・一%程度の上昇になっておるわけでございます。そこでこれに並びまして、この結果によりましてPWの改訂を行なうこととあわせまして失対労務者の賃金についても四月から改訂をいたしたい。そこで現行の三百六円をさらに二十八円アップいたしまして三百三十四円ということにして、地域的に決定して参りたい考えでございまする
  56. 田畑金光

    田畑金光君 現行の三百六円というのは、いつから三百六円をずっと継続していたか、その間いろいろ民間給与も動いておるし、比較対象になるPWも動いておるとこう思うのですが、三百六円が今日まで何年間続いておるわけですか。
  57. 堀秀夫

    政府委員堀秀夫君) 三十二年の四月に三百二円、それから三十二年の十月の米価改訂に伴って三百六円ということになりまして今日まで続いております。そこでPWにつきましては、この三十二年の四月に改訂を行ないました以後改定をしておりません。と申しまするのは、屋外労務者の賃金調査の結果を見ますると、従来の調査に比べまして著しい変動がなかったということで、PWは今日まで改訂になっておらないわけでございます。そこで、この失対労務者の賃金につきましても今日まで改訂になっておりませんでした。昨年の八月に実施いたしました屋外労務者の職種別賃金調査の結果を見ますると、先ほど申し上げましたように九・一%くらいの増加になるわけでございます。これにあわせましてPWの改訂作業を、これは基準局の方で目下急いでおりまして、四月から実行をすることになっておりますが、これとあわせましてPWの改訂が行なわれまするので、それとあわせまして失対労務者の賃金についても改訂を行ないたい考えであります。
  58. 田畑金光

    田畑金光君 三十二年の十月にお米が上がったので三百六円にして、さらにその間三十三年、三十四年、三十五年と三年目に日雇労務者の賃金引き上げるということになったわけで、当然その間民間給与も動いておるし、また、公務員の給与も動いておるわけで、日雇労務者の賃金も当然物価の動き、生計の動きあるいは民間給与とか、公務員給与の動きとか、もっと弾力的にこれは検討さるべき筋のものだとこう思うわけですが、どうしてこれだけこんなに据え置かれたのか。公務員給与の問題あるいは民間給与の問題等は、全然これは日雇労務者賃金の決定の場合には参考にしないのか、あるいはするのか、その辺を一つ明確にしてもらいたいと思うのです。
  59. 堀秀夫

    政府委員堀秀夫君) 一般の賃金変動いたしますれば当然その結果はPWに反映されるべきものでございます。そこで、失対労務者の賃金につきましては、PWの改訂がありましたならばそれにあわせて引き上げを行なう、こういう考え方でございます。先ほど申し上げましたように、調査の結果は三十二年の四月以来PW関係について大きな変動はなかったのでございます。そこでPWも改訂しなかった。しかし、昨年の八月の賃金調査によりますると、九%程度の上昇になっておる。そこでPWも改訂する。それにあわせまして失対労務者の賃金も改訂するという考え方でございます。ただいままで労働省といたしましては、以上のような考え方で失対労務者の賃金を扱っておるわけでございます。
  60. 田畑金光

    田畑金光君 その間PWで行なったから今日まで手をつけなかった、こういうお話ですけれども、やはり労働省としてはこういうようなところはうるさいから、あるいはまた、かまいたくないから、こういうような考え方でいる、あるいは二年あるいは三年据え置きになると思うのです。今の人事院制度がやはり公務員の信用を失墜したというのも、人事院の勧告の資料等がとにかく権威のない資料に基づいてやっているというところに、あるいは昭和二十九年以来何ら給与のべース・アップ等についての勧告がなされぬままに政治的な配慮というものが先に立っておる。これが今日の人事院に対する信頼の失墜になっておると思うのです。同じようなことがやはり私はこのPWの調査の取り方等についても言えると思うので、こういうような点は、もっと労働省としては真剣に取り組む必要があろうと思うのです。ことに当初予算においては四十九円をあなた方は要求されているわけです。四十九円というのはやはり根拠があって大蔵省と折衝されたものとこう思うのですが、この四十九円の基準というものはどこから割り出されて折衝に当たられたのか、明らかにしてもらいたいと思います。
  61. 堀秀夫

    政府委員堀秀夫君) PWにつきましてはいろいろな問題がございます。御趣旨のような考え方もありまするが、われわれといたしましては、PWにつきましても今後検討を十分いたしたい考えでございまするが、大蔵省に出しました原案は、昨年の八月に行なわれました屋外労務者の賃金調査の結果がもう少し上昇するであろうという考え方で、それを基礎にして一応推定いたしまして要求をしたわけでございます。折衝の過程におきましてPWの結果というものも集計されまして、それに関係部門を集計してみますると九・一%の増加ということになります。これをPW方式で算定してみますると、失対労務者については二十八円の上昇ということになるわけでございます。そこで、この大蔵省との折衝の過程において最終的なPWの引き上げに要すべき額も出て参りましたので、それにあわせまして二十八円ということにいたしました。まあざっくばらんに申し上げまして大蔵省に要求いたしまするときは、労働省当局といたしましては、なるべくそのPWの結果を有利になるであろうということに、有利な点だけを取りまして推定して四十九円という要求をいたしたわけでございまするが、PWの結果が出て参りまして、それを客観的に見てみますると九・一%増ということに相なる。そこで最終的にそれを算定して二十八円ということにしたわけでございます。その間の事情は今のようなことでございまするので、御了承を願いたいと思います。
  62. 田畑金光

    田畑金光君 大蔵省に要求するときは、労働省で水増しをして要求する。そしてかりに三十六円に落ちついたとするとPWもちょうど三十六円、二十八円になったところがちょうどPWも二十八円になった。おそらく二十円で落ちつけばまたPWも二十円になったと、やはりそのあたりは数字に基づいて仕事をやられる政府機関というものが権威を持って当たるべきだと思うのです。過去三年間据え置かれたというのも、大よそそのような取り方をしておりますと、結局PWで動かなかったという回答になるわけで、私はやはり堀局長政務次官や労働大臣に考えてもらいたいのは、もっと一つ、先ほど来から質問しておりますと、答弁はそつなくやっておられるようだが、しかし、それだけに終わっていいわけではないので、今言ったような点にはっきりと皆さん方のこれは何というか、精神状態が現われているわけです。その点は一つ真剣に考えてもらいたいとこう思うのです。  それからもう一つだけお尋ねしますが、日雇労務者の失業保険というものは定額制になっているわけですね。一級と二級とに分かれている。その場合、今度二十八円、これが上がりましたら、日雇労務者の失業保険についてはどのような影響があるのか、当然賃金も上がったわけだから日雇失業保険についてもそれだけよくなったと、こう私たち考えているわけですが、どのようになってくるのか、御説明願いたいと思うのです。
  63. 堀秀夫

    政府委員堀秀夫君) 日雇労務者の失業保険につきましては、定額制をとっているわけでございます。その立て方は、日給二百八十円以上の方につきましては一級として二百円、それからそれ未満の方につきましては二級として百四十円、このような額になっておりまして、これは日雇労務者の失業保険実施する事務的な見地から定額制をとらないと仕事がうまくいかないという考え方に立っているわけであります。そこで、結局定額制になっております関係上、二百八十円という線を切っておりますけれども、その金額によりまして有利になる方もあり、不利になる方もあるわけでございます。結局三百三十円——三百三十一、二円ですが、それ以上の方につきましては二百円というものは六割を下回る、それから二百八十円から三百三十円ぐらいまでの方が六割を上回るというようなことになるわけでございます。人によりまして有利、不利が出てきますが、これは定額制をとっている関係でやむを得ないことではないか。そこで今度二十八円アップをいたしますことに伴いまして日雇いの定額表の問題についても検討を要する面が出てくるのじゃないかという御質問でございますが、われわれもそのような影響は出てくると考えております。しかし、これをやるにつきましては、結局今の二百八十円という線がどうである、それから二百円、百四十円という線がどうであるという点を十分検討いたしまして、また、それと同時に、われわれは別にそのように考えているわけではないけれども、議論をなす人の中にはその保険金額を上げれば保険料も上げるべきである、こういうような議論が出ていることもこれは考えられることでございます。しかし、そうなりますと、せっかく日雇いの諸君に有利になろうと考え実施した場合に、また不利になる面も出てくるということではいろいろ問題もあろうと思いますので、そういう点をからみ合わせて、これは先ほど申し上げました根本的検討とは別に、なるべく早くわれわれとしては結論を得るように速急に一つ検討に着手いたしたいと考えておりますが、それによりまして日雇保険の定額表の検討につきましては、なるべくすみやかに結論をいたしまして、それによりまして善処して参りたいと考えるのであります。
  64. 田畑金光

    田畑金光君 今の局長答弁で、この点は努力されるというわけですから、了承いたしますが、やはりその気になって矛盾を調整し、賃金の上がったこの機会によりよくやっていこうと、こう努力なさるならこれはできると思うのです、頭のいい人ばかりそろっておるのですから。問題はそういう気持に皆さん方がなるかならぬかということで、その点は今局長が、なるべくすみやかに検討して善処するというわけですから、一つ答弁で終わらないようにお願いしたいと、こう思うのです。こういうこともやはり私は、与党がせっかくこの失業保険法等の一部改正法案に二、三のプラスしたものを加えたということで、田中衆議院議員から先ほど御高説を拝聴いたしましたが、やはりこういうようなことも同時にこれは考えてしかるべきだったと、こう思うのですけれども、この辺は御検討にならなかったわけですか。
  65. 田中正巳

    衆議院議員田中正巳君) 失業保険の問題については、齋藤衆議院議員が御担当でありますので、後ほど齋藤委員から詳しく聞いていただきたいと思いますが、これについては、われわれもこの法案が出る節には、まだ実は賃金の上昇については決定を見ておらなかったわけでありまして、その節の実は法案でございますので、原案には実はなかったというような点はこれは御案内通りであります。その後そういったような賃金アップというような事象が起こって参りましたので、一体いかがすべきであろうかということについてわれわれも実は配慮いたしましたが、これらについては相当綿密な実は計算も必要なようでありまするので、従って、ここで軽々にこれらのものをいじり上げるということも場合によっては後日に誤りを残すような結果にも相なるかという党議もありましたので、これは一つ政府にも強く与党から要請いたしましてすみやかに合理的な姿に改訂をしていくようにという要請をいたしましたが、何分にもそういうわけでございますので、政府側の準備と計算等もいまだ十分でないようでありますので、与党からも田畑先生と同じような要請を政府にして、後日に問題を譲っているわけでございまして、詳しくは齋藤委員からお聞きを願います。
  66. 田畑金光

    田畑金光君 齋藤委員から聞かなくても、今の田中さんの説明で十分了解いたしましたから、一つ片手落ちのないように与党としても推進されるように希望申し上げておきます。
  67. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) 暫時休憩いたします。    午後零時二十三分休憩    —————・—————    午後一時五十九分開会
  68. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) それでは午前に引き続き会議を開きます。  まず、委員の異動を報告いたします。三月二十五日付をもって片岡文重君及び小柳勇君が辞任いたしまして、その補欠として江田三郎君及び安田敏雄君か選任されました。  右御報告いたします。   —————————————
  69. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) 午前に引き続き保険関係法案に対する質疑を行ないます。質疑のおありの方は順次御発言をお願いいたします。
  70. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 私は、ただいま議題になっております法案にきわめて関係が深いかつ基本的な問題でありまするので、あえて貴重な時間でございまするか、少しくその根本問題についての考え方をまず最初厚生大臣にお尋ね申し上げたいと思います。それはILOの百二号批准の問題でございます。先般予算委員会で、佐藤委員が御質問なさって、大臣の答弁を速記録で私承知いたしておるわけでございまするが、このILO百二号批准の問題は、当局としては、従来ある場所では批准を満たし得るところまでいっておるのだというようなお言葉があられ、またある場合には、じゃ批准しろと言われるとそうでないというようなことを言われたように、実はわれわれ聞いておるわけなんであります。従来のそういう態度は別といたしまして、この際あらためて確認いたしたいと思うわけですが、ILO批准の意思が、もし条件を満たしておれば批准をなさる意思があるのかないのかということについて、まず最初厚生大臣にお伺いしたい。
  71. 渡邊良夫

    ○国務大臣(渡邊良夫君) ILO百二号につきましては、もとより私は批准することについては賛成でございます。しかし、その条件が九種目のうち現在七種類が問題になっており、その七種類のうちの三項目がこれが該当いたさなければならないと、こういうことになっておりまして、この七種目のうちの疾病給付と、それから失業給付というものが合致しておるわけでございます。他の一つがこれが該当すれば、ILO百二号に該当でき得る、こういうことになっておりまして、ILO八十七号とは性格が違っておりまして、これは社会保障の条件を満たす、国際水準の条件を満たすという性質のものでございまするので、できるだけわれわれ社会保障国家といたしましては、この方向に近づけたい、こういうふうに私も考えておりますし、政府考えておるのでございまして、その間におきましては食い違いはないのでございます。
  72. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 では条件が満たされておれば積極的に批准すべきである。少なくとも社会保障確立を叫んでおる岸内閣としては、条件を満たしておれば当然批准すべきであるという積極的な御意向をお持ちでしょうか。あるいは全部が整うまではというようなお気持でしょうか。その点はどうです。
  73. 渡邊良夫

    ○国務大臣(渡邊良夫君) 全部が整えば一等けっこうでございますけれども、条件的に満たされる三種類というものが該当すれば喜んで該当いたしたいと、かように存じておる次第でございます。
  74. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 その三種目の条件なんですが、これは厚生当局としては満たしておらぬという御解釈のようですが、ILOの東京支局の方々の御意見なり、あるいは社会保障関係の学者の御意見等を見まして、専門的な著書を見ましても、これは当然満たしておるのだということであるわけなんです。ILOの支局がそれを認めておるわけですから、この際少しく積極的にその方面の下交渉と申しまするか、打診と申しまするか、そういうような配慮はなさるつもりはないでしょうか。
  75. 渡邊良夫

    ○国務大臣(渡邊良夫君) その点につきましては始終聞いておりますけれども、現在まだ私どもの方におきましてもなお検討いたして努力をいたしておる次第でございます。
  76. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 ただいまの御答弁の中に、ILO百二号は社会保障の世界的水準だからとおっしゃったんですが、水準という意味が私としては解釈がいろいろあると思うんですが、最低水準と申しまするか、社会保障の後進国に対しては順奉的な厳守的な水準である、もっと高いところの水準のものが各国にあるわけですね。従いまして、ILO百二号のいわゆる水準というものは、水準というよりは最低のものであるということをはっきり言われておるわけなんですが、そうしますと、社会保障というのが、もちろん日本も後進国ではありまするが、最低水準に三つかりに満たさないんだということは非常に残念に思う。これは厚生省所管だけの問題ではありません、労働省関係もございまするが、こうした関連法規をすみやかに満たすという熱意をまず示さなければならないと思うんです。そういうことは本日俎上に上っておりまする議案に非常に関係があるわけです。そういう意味合いで社会保障後退ということのないように積極的な推進をはかるんだと、それによって百二号の批准もするんだという積極的な御意思を私は大臣から承りたい。
  77. 渡邊良夫

    ○国務大臣(渡邊良夫君) 各委員会でも申しておる通り、私はできるだけすみやかにこれを批准をしたい、かように考えております。
  78. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 ではその三つの中で、ただいま仰せになりました疾病給付それから失業給付は満たしておる、他に一つ何かがあればいいんだということなんですが、健康保険の問題を取り上げてみましても、いま少しく工夫さえすればこれを満たし得ると思う。予防的な処置をするということと、すでに出産、分べんに対しては健康保険でもある程度の財源をその方に向けておられるわけですから、ごくわずか出席に伴う必要のある場合の医療、正常な分べんには医療というものは要らないわけです、正常でない分べんに対して医療が要るわけですから、ごくわずかなもので済むわけで、今のような正常分べんであろうが、何でも出すという建前の上に、異常出産する場合の入院と、ごくわずかこれに加味すれば健康保険そのものが批准に合格するわけですね、そういう点を私は思いをいたされまして、次の法律改正なり、あるいは予算措置等においては格段の私は御工夫を賜わりたい、かように思うわけでございます。  そこでその次に、具体的にただいま議案になっておりまする法案についてお伺いするわけですが、これは失業保険提案理由の中にあるわけなんで、同様厚生省も同じことを言うておられるんですが、提案理由の冒頭に、「社会保障制度全体としての均衡ある発展をはかるため、既存の社会保険制度を通じて費用負担調整を行なおう」、こういうようにうたっておられるわけです。社会保障全体として均衡のある発展をはかるんだと、そのためには既存の社会保険制度を通じて費用の調整をはかるんだというんですが、現実に社会保険の費用を調整して、それが社会保障制度の方のどこへ振り向けられて、どうなったんだろうかという疑問を持つわけなんです。これはただ観念的な文句なんでしょうか、現実に予算の面においてそういう説明がつくんでしょうか。これは大臣でなくてもけっこうですが、一応お示しを願いたいと思います。
  79. 太宰博邦

    政府委員太宰博邦君) ちょっと御質問の趣旨をあるいは私取り違えているかもしれませんが、そのときはまたあれしますが、御承知通り、いわゆる皆保険になりまた国民年金制度実施して皆年金の柱を立てたということになりまして、今後私どもは、その皆保険、皆年金の内容を充実していく。同時に、各種の制度の均衡をはかりまして、全体として均衡のとれた姿で伸びていくように今後工夫をこらさなければならぬ立場にあると思うのでございます。その場合におきまして、まあ国民健康保険にいたしましても、政府の立てました四カ年計画を予定通り実施いたしますためには相当の国庫支出というものがあるわけでございまして、また、国民年金にいたしましても昨年来実施でこれまた相当の国庫負担があるわけでございまして、それ自体はもう当然のことと申しましても、やはり額からいたしますると二百億をこえるという大きな額に相なるわけであります。従いまして、そういう方面に国庫負担をいたしましてテコ入れをするという場合におきまして、まあ政府全体の予算余裕がありまするならばこれはいいわけでございますけれども、遺憾ながら十分でないということのためにまあやむを得ず失業保険関係国庫負担というようなものに多少余裕があるというようなことで、まあそちらの方へ振り向けると、それも、法律上暫定的に三年間の経緯を見てそして再検討する、その三年間の間におきましても事態が悪化するような場合においては必ずテコ入れしますと、こういう条件のもとに、まあ失業保険及び船員保険失業部門というものに対する国のテコ入れを若干セーブしていき、これを若干そちらの方へ振り向けたわけでございます。それ自体は、どこへいったかということ自体はなかなかお答え申し上げることができませんけれども、本来ならば、そういうことをしなくても、片一方で注ぎ込むだけの十分なる余裕があるならば、私はその方がもちろんベターだと思うのでございますけれども、遺憾ながら政府方針としてそれだけの全部をまかなうだけには苦しいということで、やむを得ずとった措置であろうと存ずるのでございます。
  80. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 多少私の質問をお取り違えになっているところがあるのですが、ただいまの御答弁は、社会保険のいわゆる保険制度の中の均衡を保つということに重点を置かれた御答弁であられるように思うわけですが、私は、社会保障全体として社会福祉あるいは国家扶助その他公衆衛生等、各般にわたって見た場合に、社会保障全体の均衡ある発展をはかるために既存の社会保険制度の中の資金を調整してやるのだということになると、何か社会保険という一つのワクの中から、金を、一般の社会保障制度全般へ金を持っていくための調整だというふうにこの文章ではとれるわけです。もちろん広い意味では、社会保険社会保障制度の一部ではあるに違いありません。あるいはウエートが一番重たいかもわかりません。しかし、この点は非常に私は矛盾があると思いますことは、次の理由なんですが、その点を一つ大臣からお答え願いたいのです。これは大きな問題ですから、私申し上げますることは、社会保険保険経済というものは、御承知通り国民が直接保険料を支払って自分の金でもって国民相互扶助保険的な方法が社会保険ですね。一般の社会保障制度というものは国の福祉施設だとかあるいは公的な扶助だとか、その中には恩給も入るでしょう、生活保護その他各般入りまするが、そういう国の責任で行なう社会保障の、大きな社会保障の均衡ある発展のために国民が直接かけて保険的な方法でやっておるささやかな保険的な方法調整してそうしてやるのだというのでは、非常にそこに混乱と申しますか、矛盾があるように思うのですが、そこは割り切った考え方を持てないものであろうか。いや、社会保険にも相当、直接の国からの金は出すのは、少なくとも、お役人とかあるいは施設とか多分の金か行っておるんだから、決して無理はないのだというお考えでしょうか。その点はっきりと、社会保障制度の中の保険経済というものは、別個のものだという考え方を持っておるんでしょうか。
  81. 渡邊良夫

    ○国務大臣(渡邊良夫君) 社会福祉施策といたしまして、なかなか広い問題でございまして保険並びに社会福祉あるいは環境衛生あるいは公的扶助、こういう問題につきましては、国から半分支出する場合もありまするし、それから国でこれが補助率によりまして相当大きくこれを見なければならないものもございまするし、そういう意味におきましてやはり国の繁栄というものは、その繁栄の一部というものは、やはり福祉国家建設の上においては、社会福祉国家というものはそうした面に日の当たらないところに、そういう金を使うことによりまして、そうして社会一般が明るい社会を目ざす。こういうことを私どもは考えておりまするので、私どもといたしましては、年次的に社会福祉予算というものがだんだんこれは増額させなければならないと、かように考えておる次第でございます。
  82. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 どうも私の質問に的がはずれておるんですが、私必ずしも社会保険社会保障の中心であっていかぬというのではないのです。ドイツのようにですね、社会保険というものが社会保障制度の一番大きなウエートを占めておる国もあるわけですから、必ずしもそのことを非難しておるんじゃないのです。ただ、この提案理由の書き出しが、この法律案の趣旨は、社会保障全体として均衡のある発展をはかるという、社会保障全体としての均衡ある発展をはかるとうたっておいて、そのために既存の社会保険制度を通じて費用負担調整をするといいますと、受ける感じが国民保険料でまかなう保険経済調整をはかって、そうして余裕ができた金を、保険以外の社会保障に回すようにもとれるわけですね。そういうようにもこの感じはとれるのですが、あるいは皮肉なとりようだとおっしゃるかもわかりませんが、こういう点が少し考えの混乱があるんじゃないか、どうしても。ということは、次の具体的な例によっておわかりになると思うのですが、では話を進めて参りまするが、なぜこういうことを申すかと申しますると、ただいまの局長の御答弁にもありましたように、国民年金の問題、あるいは国民保険問題等がございます。ございますが、予算を見て考えますというと、三十五年度の社会保険予算は、ざっと五十億円ばかり増額になっておるんですね。五十億円ばかり概算で。そこでしさいに国保なり年金なりの政府の支出額をずっと私拾ってみたんです。国保二百七十六億円何がし、国保ではそういうようなものを国が持つ。年金で十八億円で前年に比べて二億五千万円ばかり増額しておられる。失業保険ではただいまの議論がありましたように八十七億で、一億二千万円ばかり減額しておられる。その他健保の組合に三千万円ふえたとか、船員で一億円、日雇いで四億円ふえたとなっておりますが、問題は健康保険なんですね、問題は。健康保険が一昨年までは国の負担が三十億円なさっておられた、それが十億円になり、今年は五億円になってしまったわけなんですが、この問題なんです。先ほどILOで健保は批准ができる資格を満たすのは容易であるということを申し上げたのは、三十億円という金の出し惜しみがなければ当然大いばりでILOの批准ができるわけなんですが、それが社会保険の中の調整のために総合調整の方にとったという一応説明があったのですが、失業保険提案理由によると、社会保険調整というよりは、調整した財源社会保障全体として均衡のある考え方をするのだというようにとれると、ますますわれわれとしてはさびしい感じを持つわけなんです。そこで私は、今のような御質問を申し上げたわけなんですが、一体健康保険保険料率をお下げになって、そうして国の負担の三十億を十億に、次いで五億になさるということは、国民——被保険者が喜んでおるかどうかということをまずわれわれは考えなければならぬと思うのです。で、少なくとも当局の答弁によれば、黒字になったのだからそうしたんだということをおっしゃろうと思うのですが、政府所管の健康保険の黒字には非常に不自然な形で黒字になったということを、まあ今の大臣はあるいは御存じないかもわかりませんが、あるわけなんですね。で、一部負担の問題だとか、あるいはまた、被扶養者の範囲の狭まった問題だとか、継続給付の資格の短縮された点だとか、あるいはまた、診療の制限が加えられてそのまま残っておる等、いろいろな、自然の姿の健康保険でなしに、当時の赤字のための対策として立てられたことがいまだに残っておっての黒字であるというところに御留意を私は願いたいと思うのです。そういたしますというと、そう簡単に総合調整だからというて、健康保険から国の援助する力をさくということは、私は非常に困難であろうと思う。で、私非常に遺憾に思いますることは、政府はほとんど政府所管の健康保険に対して援助しておらぬと、こう言うてもいいと思うのです。で、これは大臣なり局長は、そんなことはない、多数の全国に保険課を設けていろいろな国が費用を使っておるのだとおっしゃるでしょうが、私から言わしめましたならば、健康保険の収入八百七、八十億円という保険料が入るわけなんですね。で、保険給付、ざっと九百億円ですが、政府所管だけで九百億円の大きな給付をしておりながら、これに対して政府が五億円だけ出して、そうしてわしは保険者だというようなことは言えるでしょうか。むしろ私は、これは政府政府健康保険に対しては何も救援の手を差し伸べておらないのだと言われても私は仕方がないのだと思いますが、その点はどういう御解釈でしょうか。
  83. 渡邊良夫

    ○国務大臣(渡邊良夫君) 健康保険に対しまして五億に減らしたということは、私どもといたしまして、これは健康保険が最近黒字になったと、黒字になった結果が、その面を他の一部負担に回したらどうかといういろいろな声もございまするが、私どもは、他の保険とのにらみ合わせもございまするので、一応五億には減らしましたけれども、将来は他の保険との均衡調整とも合わせましていろいろ検討いたしたいと、かように考えております。また、法律政府が出すべきであるという、こういう考え方につきまして、かりに赤字になったといたしまするならば、われわれは、これは直ちに黒字にすると、こういうことはやぶさかではないと、かように考えております。
  84. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 ただいまのお言葉の、他の保険との均衡と言いますが、では医療保険が他にあるのでしょうか。日雇健康なりに比べてのお言葉であろうとも思いまするが、失業保険だとかあるいは労災保険というような、そういうような保険との均衡をどうして保てるのでしょうか。性格の違う保険制度ですからね。均衡を保つという意味は、医療保険の中の均衡なんでしょうか。その点をお聞きしたい。
  85. 太宰博邦

    政府委員太宰博邦君) 便宜私からお答えいたします。  率直に申しまして、私どもといたしましては、健康保険政府管掌分に対する国庫補助が三十億が十億になり、五億になったということは非常に残念だと思います。これは私どもの立場からいたしますれば、まあせめて三十億というものは、これは将来とも健康保険政府管掌の健全なる発達のために継続していただきたいと、私ども思っておるところでございますが、しかし、この医療保険自体をとってみましても、先ほどちょっと申し上げましたように、国民健康保険を全国に普及するというためには、国としても相当莫大なる国庫負担を伴っておるわけでございまして、それをまかなうためにも相当財源が要ると、それから医療保険以外にも、国民年金ということになりますると、二百億近い金というものが要ると、こういうふうに相なって参りまして、そういうものを全体からながめてみまして、健康保険の方につきましては、一応財政も若干立て直ったときでもあるから、この際まあしんぼうしてくれと、こういうようなお話であったと思うのです。それにつきましては、実は大臣にもお願いいたしまして最後までいろいろ折衝はしていただいたわけですけれども、全体の最高方針と申しますか、最終的には本年度は五億ということに相なったわけであります。これ自体は率直に私どもとしても遺憾に思い、他日機会があれば、これを増額していただきたいと思っておるわけでございます。先ほど大臣からも、そういうようなふうに努力するというお話があったわけでございまするが、これ自体をとらえて考えてみますると、これは私はまことに遺憾なことだと率直に言わなければならぬと思います。しかし、片方においてそういうような面もございまするが、社会保障、特に社会保険の分野全体として考えていただきますれば、国民健康保険なり、それから国民年金なりというようなものにも相当大幅な国庫のテコ入れがあるわけでございまして当然のこととはいいましても、やはり現実に財政の問題となりますると、やはりこれだけ入れるということは相当な努力でもあろうかと思うのでございましてそういうようなものとの全体の立場において、わが国の社会保障制度が伸びていくということでありまするならば、私どもとしてもこの際はいたし方ないと、こういうような実は心境でございまして、将来はできるだけこれを、三十億必ずしも十分と思いませんけれども、そこに戻すように私どもとしては今後努力いたしたいと、かように考えておる次第でございます。
  86. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 厚生大臣としても、あるいは厚生省局長初め、皆さん方は当然そういうお考えをお持ちになるのが正しいのですし、われわれ社会労働委員としてもこれは政党を問わず、皆さん方同様にはなはだ今回は遺憾だと思うわけです。厚生大臣は非常にこの五億円の問題についても、予算折衝で御奮闘になっているということは私は聞いておって、陰ながら感謝しておるわけですが、結果こうなった場合を考えますというと、むしろこういう論議をするのは、大蔵大臣なり財務当局にそこに並んでもらって、私は実際は議論をしたいわけなんですが、きょうはそういう意味合いでなしに、関係法案審議一つの重大な考え方として私は申し上げたのです。いずれ他日機会があれば、こういう議論はもっと詳細にしたいと思いますが、ただ遺憾なことは、社会保険で五十億円の金が国の負担がふえたのだといいますが、それは主として国民保険に四十五億円何がしの自然増支出があったわけですね。六百万人から被保険者がふえるのですから、これは範囲が広まった、適用対象が広まっただけでありまして、社会保険なり社会保障制度が充実したとか向上したとかいうことではないのです。われわれは、社会保険なり社会保障の発展を期しておるのであって、まあ広い意味では、そういうふうに範囲が広がることも発展には違いありませんが、そのために、結果的に見ると、健康保険から二十五億円浮かして、それを国民保険の四十五億円に持っていったと、そろばんの上からはそういうことも考えられるわけです。大きな国の財政ですから、必ずしもそういうことはないと思いまするが、社会保険だけをながめてみますというと、国民保険が四十五億円国が余分に持つのだと、そうなってきて、健康保険が二十五億円減ったのだと、差引から見まするとそういう感じを持つのであります。そういうことはないと思いまするが、しかし、総合調整という名によって健康保険後退するということは、とりもなおさず社会保険後退することであり、ILOの批准もできないことになってくるわけでありますから、来年度予算考えあわせた場合に、その点を特にお互いに努力を誓い合いたいという気持でこの点を申し上げたのです。決して大臣なり与党議員の方々が、予算折衝にお骨折りにならなかったというのではないのですから、その点十二分に御了解の上で、他日を期していただきたいと、かように思うわけでございます。  そこで、いよいよ関係議案に入るわけなんですが、第一に、失業保険のことを聞きたいのですが、保険料率を千分の十六を千分の十四にお下げになって、それによる減収はどれくらいになるのでしょうか、ごく概算でけっこうですが。
  87. 堀秀夫

    政府委員堀秀夫君) 昭和三十四年度におきまして約四十億円でございます。昭和三十五年度におきましては、約五十二億円というふうに見込んでおります。
  88. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 そういたしまするというと、国の方の負担は三分の一を四分の一になさることによってどうなるかという問題なんですが、これは被保険者の数も関係があるので、正確な数字ではございませんが、予算の上では一億二千三百万円くらい減になるのですか、どうなるのですか。
  89. 堀秀夫

    政府委員堀秀夫君) 国庫負担につきましては、三分の一が四分の一になることによりまして、昭和三十五年度におきましては、大体二十九億円の減になるわけでございます。
  90. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 そういたしますると、被保険者には五十二億円負担が軽くなる、国の方は二十九億円——ざっと三十億円軽くなると、こういうことですね。わかりました。  そこでお聞きしたいことは、今度の失業保険が、ずいぶんあなた方の方のお考えとしては、進歩的と申しまするか、改善された跡が見えるわけですが、その中で私ちょっと得心がいきませんのは、就職した場合の支度金制度の問題なんですが、この原案考え方は、あくまでも経済的な立場に立って考えておられるように思うのです。失業して給付される期間のうちの三分の二を残したら五十日分を支度金としてやるのだと、それから二分の一ならば三十日分だと、こういうことは、あくまで経済的なそろばんの上の考え方なんですね。ということは、六カ月のうちの二カ月で就職すれば、四カ月当然やらなければならないのを、四カ月やらぬでいいなら、五十日分やろうと、片一方の場合は、だんだん支給されて残る金が少ないから三十日分やろうというような計算になるわけですね。そういうそろばん的な考え方でなくして、ほんとうに長い間失業した人ほど就職の支度金が要るわけなんですね。くつの修繕もしなければならぬでしょう。あるいは、定期も買わなければならぬでしょう。一番困るのは、もうぎりぎり一ぱいの期間たってやっと就職した人は、百パーセント支度金をやってやりたいというのが私の考えなのでありますが、しかし、それは一つの企業として成り立たないのだということになれば、やむを得ないのですが、そうした場合に予算上の差額はそう大きくないと思うのですが、どんなものでしょう。
  91. 堀秀夫

    政府委員堀秀夫君) この問題につきましては、この提案のねらいといたしましたものは、早期就職の促進をはかると、こういう考え方でございます。現在の状況を見てみますると、就職するにあたりましていろいろな雑費が要る。職場を変えるにつきましては、その活動のための費用も要りまするし、あるいは新しい職場に入るにあたりましては、身辺のものを若干整える、こういうような雑費も要るわけであります。ところが、そういうような金がなかなか出ませんために、早期就職がおくれると、こういう現状であると思います。そこで、この提案の趣旨といたしまするところは、そういうような現状にかんがみまして、なるべく早期に就職するように仕向けていくという考え方で、そのためにはやはり、早期に就職されまする方につきまして、雑費といたしまして三十日分もしくは五十日分というような支度金が出れば 早期に就職しやすくなるであろう。要するに、失業保険に相当いたしまするところは、とにかく必要な期間は保険給付を支給することは当然でございまするが、なるべくこの失業の期間というものを短くいたしまして、離職後なるべくすみやかな機会就職するということにすることは本人のためにもよいのではなかろうかという考え方でございます。そこで、その早期に就職することを勧奨すると申しますか、勧め励ますような意味におきまして、早期就職する方については一定の支度金を差し上げれば、早期に就職することがやりやすくなるだろう。その場合に、ただ、先生の御指摘のように、相当長く失業しておれば、雑費もかさむ、だからそういう者にはよけいやる方がむしろよいのではないか、こういうお考え方も成り立つとは思うのでございますが、まあそれよりも、われわれといたしましては、とにかく、失業しておる期間が長くなればなるほど、いろいろなことが積み重なりまして、就職がしにくくなる。その一面、これはもう全体がそうだというわけではございませんけれども、失業保険の期間がまだ相当あるというようなことになりますと、人情といたしましても、まだ時間があるのだからということで、就職活動がついゆっくりになるというような向きも見えるわけでございます。これは別に全部がそうだということではございませんが、人情といたしましては、そういうような点も見受ける。まあかれこれ勘案いたしまして、早期に就職していただくということを勧め励ますような意味で、五十日、三十日というふうな区切りをしたのがこの提案のねらいではないかと私は思っております。ただ、先生の御指摘のような、そういう問題がございますので、これは今後の問題といたしまして、いろいろもう少し実施の実情を見た上で、われわれとしては、今後さらにこれを合理的な制度にするにはどういうふうにすればよいかということを検討していきたいと思っております。
  92. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 提案者の方がおられぬようですが、今の御答弁は、非常に苦しいと言いますか、そういう一面も大勢の失業者の中にはあるかもわかりませんが、例外でもって一般論をなされては困るので、私は雇用というものはわずかのそういう就職支度金の持っていきょうによって雇用が促進されたり、あるいは就職の意欲が左右されるものじゃないと思うのです。失業者というのは一日も早く就職したいのであって、三十日と五十日の差によって、ことさらに自分の就職の期間を延ばすとかいうことでなくて、もう飛びつくと思うのです、就職は。どうも今のお話は、それは、一面の、理屈でと言いますか、説明ではありますけれども、私のような、労働問題しろうとの私としても、どうももう一つ得心がいかない。特に失業保険は七百五十億円から今度は金が余るのだというような豊かな保険経済であれば、ことさらに私そういう点は、やはり困る人に救援の手を差し延べるという考え方でなければ、真の失業保険意味を私はなさぬと思うのです。そういう点がどうもこの法律案の一番不純と申しまするか、納得のいかないところがある。もう少し積極的に言いまするならば、給付率の上昇ですね、八割給付するとか、七割給付するとか、そういう積極的なところまで議論を私は進めていきたいのですが、それは、そういう金が十二分にあって、国の負担も減るのだ、被保険者も四十七億円減るのだというのであれば、少なくとも国の負担を減す前に、六割給付を七割にしたらいいじゃないか、八割にしたらいいじゃないか。いや、それは、ILOは六〇%でない、四五%だからけっこうだという議論も成り立つと思いますが、しかし、社会保険社会保障を前進していくという考え方からいくならば、まずそういうところは、今回いろいろと失業者に対する配慮が加えられているのですから、同じ加えるのであれば、そこまでの配慮を加えるべきであろうと、かように考えるのですが、これはあなたに申し上げても……まあ当局としてのお考えだけ聞いておきましょうか。
  93. 堀秀夫

    政府委員堀秀夫君) 御指摘の点はごもっともでございます。私どもといたしましては、長期的な問題といたしまして、どのような制度が適当であろうかということにつきまして、今後第二段の問題として早急に検討に着手したい考えでございます。実は当初の政府原案は、御承知のように、とりあえず費用負担調整をはかるという点が主眼になっておりまして、給付面については日雇いの待期一日減という規定だけであったのでございます。しかし、その後一年を経過いたしまして、その間の雇用失業情勢を見まするときに、まあ関係者からいろいろな要望が出ておる。それについてとりあえずこの三つの点の改善をさらにつけ加えて、よいことは一日も早く実行したらいいじゃないかというような考えで、議員提案による修正がなされまして衆議院で可決されたわけでございます。そこでさらに根本的に、一般的に、基本的にこの失業保険給付問題について検討を加えるべき面がいろいろあると思います。この点につきまして、われわれは今回の改正で、これで事終われりという考え方ではありませんで、御指摘のような線によりまして、今後各方面の御意見も十分伺いつつ、現在の状況とにらみ合わせながら、給付改善について再検討を加えたい考えでございますので、御了承を得たいと思います。
  94. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 それからやはり失業保険に関連するわけなんですが、日雇いの失業問題については、これはなかなかむずかしいと思うのです。ある意味においては失業した人が日雇いになっておるということになるわけです、裏から言えば。だから、日雇者全部が一般の労働者と同じような失業保険の条件を満たすというようなことは、これはあるいは暴論とおっしゃると思うのですがね。やはり日雇労働者に対しまする今回の考え方は、あくまでも低いものを標準に一割増しにするのだ、お互いの月給と同じように、一万円の月給を取る人と十万円の月給を取る人と同じように一割というのでは困るのであって、生活が困る度合いということを考えた場合には、もう少し飛躍的なといいますか、考え方を持たなければ、日雇労働者に対する失業ということの解決にはならぬと思うのですね。これは一般の日雇健康保険のことについても同様だと思うのですが、とりあえず失業問題に対する日雇労働者に対して、どういうようなお考えを当局としてお持ちなのか。せめてこういう程度までは持っていきたいのだというお考えがあられるでしょうから、もしあられればお聞かせ願いたいと思います。
  95. 堀秀夫

    政府委員堀秀夫君) 根本的な考え方といたしましては、生業しておられる方々は、正常なと申しまするか、継続的な職場に入るように努力をする、こういうことが政府政策の基本でなければならないと考えます。しかし、そこに入るまでの期間におきまして、どうしても救済を要するというような方々については、失対事業等によりましてこれを暫定的に救済していく、こういう考え方でなければならないと思います。現に、一、二の例を申し上げますると、炭鉱の不況によりまして離職される方が多数出てこられたのでありますが、この点につきましても、われわれといたしましては、まずその関連の産業、企業内におけるところの配置転換ということについて、使用者及び関係者に努力していただくように仕向けていく。  第二に、それでも、内部の配置転換で、あるいは関係企業内の配置転換でいかないものについては、広域職業紹介というような積極的な配置転換政策考えて、継続的な職場に配置転換をしてもらう、こういう考え方でいきたいと考えまして、御承知のような措置を講じておるわけでございます。それでどうにもならないようなものにつきましては、緊急就労対策事業、さらに緊急就労対策事業にも入れないような方については失対事業、こういうような順序で救済をはかっていくことが筋ではないか。ただ、現行の失対事実につきましてはいろいろ問題がございまして、特に高年令の者、あるいは女の人などが多くなっておるような関係もあり、これが停滞するというような現象も見られておるわけでございます。そこで失対事業の問題につきましては、労働省といたしましては、これは根本的に雇用審議会その他適当な機関にその基本的なあり方について御検討を願い、それを聞きながら一つ基本的な検討を加えていきたいと、こう考えておるわけでございます。  そこで、失対関係その他の日雇いの関係について、その場合に職がなかった者についてどうするか。これもまた日雇いの失業保険制度が補なっておるわけでございますが、日雇いという性格上、一般の失業保険と別な考え方をとりまして印紙制度、手帳制度によりまして現在運営をしておることは御承知通りでございます。このようなあり方がよいかどうかという点についての今の失対事業の根本的検討とからみまして、われわれとしては、検討をしてみたいと思いますが、とりあえず現在その職がなかった場合におきまする待期の規定が現行の通算六日、継続四日という線ではどうも出過ぎる。これをともかく訂正してもらいたいということが関係者の要望でございますので、今回の改正においては、とりあえず一日減ということをいたしたわけでございます。将来の問題といたしましては、今のような基本的な考え方に立ちまして十分検討をいたしたいと考えるのでございます。
  96. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 続いて日雇いの健保と今の失業保険と関連して、厚生省にお聞きするわけなんですが、日雇健康保険は、申すまでもなく、その被保険者というものが病気になった場合に一番痛手を受ける階層だろうと思う。一般の健康保険の被保険者に比べまして一番深刻な痛手を受けると思うのですが、従って、十二分な、よほど国としての援助の手を差し伸べなければ日雇健保の向上は期し得ないと思う。で、三十五年度予算を拝見いたしますというと二十三億五千九百万円国でお出しになられるようで、前年に比べて四億一千三百万円という増支出をなさることに大体なっているようですが、私はここでお考え願いたいことは、日雇健康保険の収入というものは、申すまでもなく、やはり保険料というものの基本の収入源が非常に低いものですから、従って、これによって得るところの保険料というものは、これは一般健康保険、特に組合などから比べれば問題にならぬようなことになってくるわけであります。従って、日雇健康保健も相互扶助保険制度とは違わないのですが、これは保険制度というよりは、いわゆる社会保障的な立場を当局はお持ち願いたい。私は、日雇健康保険の被保険者の方々は、独立自尊という精神的な面において、おれは国の恩恵に浴するんじゃないのだ、お互いの相互扶助でやるんだと言われるかもわかりませんけれども、実質が伴わないのですから、やはりそういう点は保険方法によらずして、形はよってもけっこうなんですが、国の援助の仕方がこの程度であったのではとうてい日雇健康保険というものは発達しないと私は思う。特に憂えることは、社会保険の総合調整をやるんだということのために日雇いを基準にものを考えられて、国民健康保険なりあるいは一般健康保険の足並みが後退して、そうして総合調整をするという結果になるということを考えた場合には全く寒心にたえない。やはり同じ社会保険の中の日雇健康保険というものをレベル・アップして総合調整するということでなければならぬと思うのですが、日雇いに対しては前年のいろいろな苦しい赤字の問題から、相当前年もお金を出しておられたわけなんですが、この程度でもって足りるというお考えでしょうか。特に、具体的に申しますというと、傷病手当金の待期期日なども一日短縮されている、あるいは出産手当金についても二十日延びたというようなことであるようですが、私はやはり理想的に言えば、健保並みには持っていきたいということを考えているのですが、一体日雇いに対してどういうようなお考えをお持ちになっておられるのか。当然一般健保とは性質も違い、収入源も違うのだからやむを得ないんだということなんでしょうか、その点をお聞きしたい。
  97. 太宰博邦

    政府委員太宰博邦君) 日雇健康保険制度は、お話のように、保険と申しましても他の保険と異なりまして、その収入源と申しますか、保険料の入ります収入源が全般的に低い、従って、相互扶助という観念だけではこれはやっていけないということは私どもも全くその通りだと存じております。従いまして、国のこの方面に対するテコ入れも他の保険よりも相当高い率の国庫負担をいたすことにいたしまして、今回の改正におきましても、従来の療養給付二割五分を三割にするというようなことで、額にいたしまして相当の——三十五年度では三億何がしかになるようなテコ入れをいたしているわけでありますが、それでもなおかつ、ごらんのように、保険の収支は相償わないわけです。やはり借入金でつじつまを合わせるというような状況でございます。これは一般の保険におきましても、最近の医療というものが相当日進月歩でございますので、それをなかなかまかなっていくということ自体もどの保険でも私は決して楽ではないと思います。特にこういうふうに日雇健康保険ではお話のような点からいたしまして、これは特に一そう楽ではない。従って、国庫負担はかりに今度御審議願いました三割国市負担制度通りましても、私はこれをもって決して十分とは思いません。さらになお機会を見てこれは引き上げる必要があろうかと存じます。しかし、とりあえずのところは、それにいたしましても、あとはまあ次回において検討して参る。これは必ずしも総合調整一環として低い地点に今するというようなことは毛頭考えておらないのでありまして、この日雇健康保険なりあるいは国民健康保険の現状の線で日本の社会保険、医療保険なりの調整をはかっていくことでありますればこれは御指摘のように、とんでもないことに私はなると思う。それぞれ、段階的であれ何であれ、引き上げて参らなければならぬことは当然のことでございます。特に日雇健康保険制度におきましても、当然これは引き上げてしかるべきものと私どもも考えております。ただし、これにつきましては、日雇健康保険制度自体創設されましてからこれでかれこれ六、七年になるわけでございますが、これを今日皆保険という立場から全体の一環として考えて参りますると、いろいろな面で私ども検討し直さねばならない点があるように思います。そういう点は御指摘待期の問題、あるいは出産手当金の日数を延長したということだけでこれは済む問題ではございません。この点については実は昨年来私どもも検討をいたしております。また、厚生大臣の諮問機関でございまする社会保険審議会におきましても、日雇いの問題については一つ検討をしようじゃないか、私の方もぜひお願いしよう、こういうことで、相待って検討しようということでいたしておるわけでございます。従って、この点は同じ総合調整一環にかりになるといたしましても、私は最も早く取り上げて、この日雇制度、これを生かしてこれを伸ばしていくためにはどういうふうにすべきかということについては、関係者が語り合ってやろう、国庫負担も私はふやさなければいけないと思います。また、保険料につきましても、もし払う余裕のある方があればそれは払っていただくということも私はお願いせざるを得ないことになろうかと思います。また、給付内容につきましても扶助料、また、技術的な問題になりますけれども、二カ月間という資格期間のところに盲点がございます。これはこの間、当委員会でも御指摘がございまして、これをどういうふうにするかという技術的な問題で非常にむずかしい問題であろうと思います。これもやはり何とかしなければならぬというようなことにつきましては、私ども今後早急にこれは考えて参りたいと、かような心がまえでございまして、決して今回の改正あるいは今回予算に盛りました程度をもって足れりとは考えておりません。この点は御指摘通り、私どもは今後さらに検討していかなければならぬ心がまえでございます。
  98. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 大へん局長の力強い御答弁で満足したのですが、私がレベル・ダウンした総合調整を憂うるのは、実は先年やはり財務当局が、一万田さんが大蔵大臣のときにもそういう答弁をしておりますし、それから昨年もそういうニュアンスの答弁があったわけなんですね。同じ社会保険の中であまり健康保険だけが独走しては困るから、これを足踏みさしたりあるいはそういうことをすることによって総合調整するのだという御答弁が財務側としてあったわけです。厚生省としてはそういう考えはないと思うのですが、そういうことを過去において私どもは討議の中にしておりまするので、非常に憂うるわけなんです。そういう考え方からすれば、どうしても日雇いをうんと上げなければ片一方後退するのだという線が出てくるわけですね。ですから、どうか、今の局長答弁で私は満足するわけなんで、日雇いに対しましては保険方法だけでは無理なんだということを十二分にお考えあわせ願って善処をお願い申し上げたいと思うのです。特にこの法律審議の経過の間でぜひ考えなきゃならぬのは、今御答弁のありました一般健保、国保等、日雇健保にかわったときの二カ月間の盲点の問題ですね。これなどは何とか気がつけば、早く合理的なものにしてあげなければ、非常な私は不幸な現象ができると思うので、その点も十分にこの機会にお互いに考えたいと思っている。  次に、厚生年金の問題についてちょっとお聞き申し上げたいと思うのですが、今度の標準報酬の等級改正によって財政的な影響は、ゆとりはどのくらいできるでしょうか。
  99. 太宰博邦

    政府委員太宰博邦君) 等級の改訂だけの分についてでございますか。
  100. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 ええ。
  101. 太宰博邦

    政府委員太宰博邦君) 今回は、料率引き上げと、それから標準報酬の等級の改訂と両方ございますが、等級改訂の分だけを取り出して申し上げますと、三十五年度を平年度化した計算でございますが、現状の場合に比べまして百三十億ほど収入増に相なります。
  102. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 この百三十億という余裕金ができるわけなのですが、そこで、例の三十四条にございまする基本年金額二万四千円ですね。これの増額ということは、この百三十億円の引き当てにして考えられないものだろうかということが一点と、それからもう一つは、俸給比例による場合に、その人の平均標準報酬によって計算いたしますね。これを最終といいますか、最高の報酬金に直して計算してやるということが、とてもこの程度の財源でできないという見通しなのでしょうか。まあ財源的な面からどうでしょうか、お聞きするわけです。
  103. 太宰博邦

    政府委員太宰博邦君) 第一点の、今回収入増になりますものをもちまして給付改善をはかります場合において、これを定額分の増に回したらどうだろうか、それは考えられないか、こういうお話でございますが、この定額分を引き上げるということ、それから、あるいは比例分を引き上げるということについては、やはりいろいろ御意見は私は成り立つと思うのでございまするが、この被用者年金でございまして、いわば保険料の方を賃金に比例してとっておる制度でございます。そこで、あるいは人によりまして、その立場から言いますれば、全部報酬比例、つまり賃金に比例したような給付をはかっていいと、こういう御意見もありますが、今日私どもがその両方をとっておりますのは、最低保障、低賃金の人たちにも、まずまずある程度年金を差し上げるというために、二万四千円という定額分というものを取っておるわけでございます。従いまして、そういう定額分を上げるということは、この低賃金の人たちには私は有利になると思いますが、しかし、全般として考えてみますと、これはほどほどのところでやつぱり落ちつけなければならない。そこで、大体四万一千円ほどが減少の給付年額であります。その中で、二万四千円というのが定額分ということでありまして、それから報酬比例分が一万四千円ぐらいになる。そういうようなことから考えてみまして、今回は私どもはやはり報酬比例分を上げる、ことに今回の財源としてこの一万八千円の頭打ちになっております分が三万六千円まで引き上げると、こういうことでございます。従いまして、この結果まずよけいに拠出をせにゃならぬ人は大体頭打ち及びそれに近い人たちが三万六千円の、引き上げることによって保険料を余分に負担する、そういうことの点も考えてみまして、大体今回は報酬比例分を二割がた引き上げる、こういうことにいたした次第であります。  それから次に、その報酬比例分につきましても、これを平均の標準報酬月額をとらないで、最終時あるいは最終時何年とかいうような、それに近いところのものでやることはどうであろうかと、こういう御質問の趣旨かと存じますが、これはやはり筋肉労働者の人たちの中には必ずしも最終時をとることが有利であるかどうか、肉体の力が五十過ぎてくると衰えたという場合に賃金が減るというような場合においては、その人にとってはおそらくこれは不利な取り扱いになるだろうというようなこともございますし、また、制度として考えてみます場合に、保険料の数理計算では大体従来のあれを全部レコードをとっておりまして、それに基づいて給付するという建前で数理計算をやる、これを最終時の何年ということでいたしますと、かりにそれがこの終わりにいくほど多くなるというような、サラリーマンとかいうような人は大体終わりの方でこれは多いと思います。そういうような人たちの点などもございまして、相当これは保険計算が違って参る、まあ端的に申しますると、おそらくもっと保険料率をとらなければならない。こういうことに私は相なると思うのです。その点のことにつきましては、当初からいろいろ検討いたしまして、この現在の建前でとっておるわけであります。今日直ちに最終何年かの標準報酬月額を基礎にして給付をしていくということは、これは大きな変更に相なると、直ちにそれはできかねるというふうに申し上げざるを得ないと、そういうことで長期保険でございまして、数理計算というものが、やはり非常に重要視せねばならぬ。この保険におきましては、今直ちにそういう基本的なものを変更するということは私は容易じゃないと、しかも、今日の事態においてはそういうことよりも、今の建前を一応二十九年にとったわけでございますから、これを伸ばしていって、そうしてその過程において給付内容を充実するということに力を注いでいきたいと、かように存じております。
  104. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 それからこれは厚生年金だけに限るわけじゃないのだが、五人未満の事業所の問題ですね、健保にいたしましても同様ですが、厚生年金などでも特にこれのこぼし残があるというように聞いておるのですが、五人未満の事業所を健保に入れるか入れないかということが国保に関係がありまするし、また、厚生年金においても同様財的な面でもいろんな影響があると思うのですが、今のところ、状況はどういうことになっているのでしょうか、五人未満の事業所に対しての扱い方は。
  105. 太宰博邦

    政府委員太宰博邦君) 五人未満の事業所に働いている人たち厚生年金保険に取り入れるということにつきましては、これは健康保険の場合と同様に、まあ何とか同じ被用者でございますから取り入れるように努力いたしたいということで、従来も検討しておりますし、また、今でもやっておりますが、これはあえて一々申し上げるまでもなく、技術的にむずかしい点がございまして、なかなか思うようにいっておりません。現在のところでは、健康保険も同様に任意適用ということでやっておるわけでございまして、大体昨年の十月現在の調べでございますが、十万人ほどの人が厚生年金の任意包括として五人未満の人が入ってきておるわけでございます。今後とも私どもは技術的のそういう面をさらに検討いたしまして、できるだけそういう人たちも取り入れられる限り取り入れていくように努力する。同時にまた、そういういわゆる労働者の従業員の人たちも、最近ちょいちょい聞くのでございますが、非常に最近意識が向上して参りまして、雇われます場合に、そこの事業所で健康保険なり何なりの適用をやっているか、やっていないところへは、なかなかいろいろと就職をがえんじないというようなことで、漸次そういう健保の適用を事業所の方が多少の不純な考えもあってサボっておるような場合においては、従業員の方から突き上げて、社会保険に入るようにという動きのあることもちょくちょく聞きますが、これははなはだけっこうなことでありまして、それが私どもの方の保険の技術の線に乗ります限りはできるだけ取り入れていきたい。また、そういう気運はできるだけ御協力もいただきまして起こして参りたい。そういった両方から突っついていかないとなかなか解決しない問題もあろうかと思って、せっかくそういう点を考えておる次第であります。
  106. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 最後に、一点、局長お尋ねいたします。今、大臣がILO批准問題でお答えになりましたが、私その早道としてあなたの所管の健康保険を少し考え方を変えればいけるような気がします。予防的なまたは治療的な性質の給付をすればいいということになると思いますが、すでにある程度の予防的な意味のはっきりした予防措置はしておらないわけですが、予防的な措置というものもある程度病気によってはしておることもあります。予防という意味は、広範囲に考えて公衆衛生的な予防という意味なら困りますが、一つの病気が発生した場合に併発するような予防的な措置は当然今までもやっております。予防的な給付ということの解釈いかんと、先ほどもちょっと触れましたような出産に対する考え方、これの財政的影響だけをお考えになったら案外大いばりで健康保険そのものが適用範囲だとか、給付その他を考えあわした場合入れられるのじゃないかと思いますが、そういう点で、いや、とてもまだまだ日本の健保じゃ無理だというお考えなのでしょうか。あるいは無理だから、より一そう早くやりたいというお気持でしょうか。私はそう大きな財政的な影響はないのじゃないか。今ずいぶん政府所管の健康保険も金が余っておりますから、このくらいのことはできると思います。最後にその点。
  107. 太宰博邦

    政府委員太宰博邦君) まあ、日本の社会保障制度、これはまだまだ十分とは思いませんけれども、まあ、世界の国の中でそうみじめなほど低いものだとは私は思っておらないのです。これはまあほどほどのところにはいっている。ILO条約のこれを批准できないということは、日本全体の水準が非常にそれよりもはるかに低いために批准できないということよりは、私はたまたまある向こうの条文というものが日本においてそれがひっかかるようになっているというようなために批准ができないという方が実は私は多いと思うのです。ただいま御指摘になりました第二部の医療の点でございまするけれども、これは御指摘のように、予防的な医療というものを含ませなかった、こういうことでございますが、この点は実は私どもは今日の日本では、まあ、各種の予防というやつもされておりますし、まあ、必ずしも健康保険制度の中に予防給付というれっきとした給付制度を設けなければこれはひっかかるのだという解釈もそう取らなければならぬとも思っておりません。むしろ、私ども今日医療の面について心配、隘路として考えておりますのが出産のところでございます。これは現行の健康保険制度では現金給付でやっております。これもいろいろ現物給付にでもするということになれば、それはそれでいいかもしれませんが、ただ、配偶者の分べんについてはまあ今日千円ということでありますが、大体これをもし医療につきましても家族医療費というものが大体五割というような点からいたしまして、配偶者の分べんというものがどうしても十割給付にならないと、この点でひっかかるというふうに考えております。それは向こうの条約の十条二項というところにございまして、それの半面解釈として私の方がひっかかる、その半面のことについて、これは配偶者についてこれを十割給付するということは、これはちょっと制度としてやはり検討の余地があるのじゃなかろうかというようなことで、まあ、そういうふうな点についても、もしそういうことをするとすれば、療養の方も医療の方も、家族療養費というものについても今の五割というものでは均衡がとれないというものも出てくる、その辺の関連がやはりあるのじゃないかというようなことで今日検討しているようなところでございます。先ほど大臣から答弁申し上げましたように、私ども決してこれを批准ずることにやぶさかではございません。できればこういう世界の仲間入りをしてまた、それが刺激となって日本の社会保障制度が伸びていくことは、これは国民の福祉でございますから、そういう方面には早くかかりますように検討して参りたい、かように考えておるわけでございます。
  108. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  109. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) 速記を始めて下さい。
  110. 坂本昭

    ○坂本昭君 私は、日雇労働者健康保険法の一部改正の問題につきまして、主としてお尋ねを申し上げていきたいと思います。  御承知通り日雇労働者健康保険法の目的の中には、日雇労働者の業務外の事由による疾病等に関して、保険給付を行なうことによって、「その生活の安定に寄与することを目的とする。」というふうに明確に書かれてあります。この点は健康保険法の目的、そういうものと比べて生活の安定に寄与する、そういう点が明確になっておるので、今後私は、今度の一部改正がはたして生活の安定に寄与しているか、生活の安定に寄与するためにはどういうふうにすればしかるべきであるか、そういうことをまずお尋ねしていきたいと思うのであります。  その前に、日雇労働者とは一体何かということが実は私にあまりよくのみ込めないのです。なるほどこの日雇労働者健康保険法の第三条には、「「日雇労働者」とは」といって幾つもその定義が書かれてあります。これは厚生省健康保険法の中で、日雇労働者の定義が行なわれているのでありますけれども、そもそも労働者を扱うのはこれは労働省の任務だと思いますので、まずその労働大臣にかわって、一体労働行政において日雇労働者というものを立法的にどう取り扱っておられるか、そして種類、この厚生省はこういうふうな種類を幾つも分けておられるのだけれども、労働省は一体どういうふうに種類別をしておられるか、まず労働行政の面において一つ日雇労働者とは何かということをお尋ねしたい。これは非常に大事なことですから、大臣にじきじきお伺いをしなければならない点でありますから、一つ懇切丁寧に御説明いただきたい。
  111. 堀秀夫

    政府委員堀秀夫君) 日雇労働者につきましては、これはまあ一言にして言えば、日々雇用される者でございます。従いまして、まず第一に、雇用関係があるということが前提になります。それから第二番目に、契約が日々雇用という形式をとっておるということが第二の条件になるわけでございます。今のは一般的な概念でございまするが、それから先の問題になりますると、日雇労働者とは何を、どこまでを入れるかということになりますと、個個の法律等に規定を設けまして、それぞれ多少のズレは法律の性質上あるわけでございますが、労働省関係で一応問題になります失業保険法におきましては、三十八条の二におきまして、日雇労働者とは次の各号の一に該当する者をいうということで、第一に「日日雇用される者」第二に「一月において三十日以内の期間を定めて雇用される者」これをいっているわけでございます。しかし、そのただし書きによりまして「前二月の各月において十八日以上又は前六月において通算して六十日以上上同一事業主に雇用された者は、この限りでない。」ということにいたしまして、これは一般の失業者失業保険の方でやる、こういうふうになっておるわけでございます。  その他労働関係の法規によりまして、たとえば労働基準法第二十条及び二十一条におきまして日雇いの概念が出てくるわけでございますが、二十一条は御承知のように、解雇の予告に対する除外規定でございますが、これにつきましては、「日日雇い入れられる者」を除くというふうにしておりますが、この日々雇い入れられる者は「一箇月を超えて引き続き使用されるに至った場合、」は、これは常用労働者と同様にみなして解雇の予告の規定を適用すると、こういうようになっております。大体おもな法規は以上のようなことでございます。
  112. 坂本昭

    ○坂本昭君 そうしますと、今失業保険法に規定する定義と、それから日雇労働者健康保険法ではまだ、「季節的業務」「臨時的事業の事業所に使用される者。」こうした者もあげてありますが、これとの関係はどうなりますか。
  113. 堀秀夫

    政府委員堀秀夫君) 厚生省関係の方は保険局長から御答弁申し上げると思いますが、失業保険関係につきましては、要するに、この日日雇用される者、それから一カ月において三十日以内の期間を定めて雇用される者、これはこの前二カ月の各月において一定の条件を満たせばこれを日雇保険として失業保険の適用を受けさしているということになります。ただいま申し上げました者以外に、「季節的業務に使用される者。」これはやはり第十条の規定によりまして、一定の条件があれば一般の被保険者として一般の保険の方で扱いますが、「季節的業務に四箇月以内の期間を定めて雇用される者又は季節的に四箇月以内の期間を定めて雇用される者」は被保険者にしないということにしておるわけでございます。ただしこの場合において「所定の期間を超えて引き続き同一事業主に雇用されるに至った場合」においてはこの限りでないということになっておりまして、この場合には、一般被保険者として失業保険の対象になる、このような扱いをしております。
  114. 太宰博邦

    政府委員太宰博邦君) 私の方の関係では、これは健康保険法とはうらはらになっておりまして、健康保険法の被保険者と、十三条ノ二に「左ノ各号ノ一二該当スル者ハ健康保険ノ被保険者トセズ」という中に、季節的な業務に使用される者で、四カ月をこえない者、あるいは臨時的事業の事業所に云々ということでございまして、結局健康保険法で適用を受けない人たちを、日雇労働者健康保険法の被保険者とする、こういう建前をとっておるのでございます。
  115. 坂本昭

    ○坂本昭君 そうしますと、厚生省の規定してある日雇労働者と、労働省の規定してある日雇労働者について、たとえば、非常に条文がややこしいので私よくわかりかねたのですが、季節的業務に使用される者で四カ月以内の場合、これは日雇労働者健康保険法では日雇労働者になりますが、失業保険法の場合には日雇労働者という定義の中に入りますか。
  116. 堀秀夫

    政府委員堀秀夫君) 三十八条の二の第二号によりまして「一月において三十日以内の期間を定めて雇用される者」このような者は日雇いの被保険者とするわけでございます。季節的業務と申しまするのは、要するに、短期的に、おおむね一定の時期を限りまして雇用される者でございますから、これがその四カ月以上こえまするような場合におきましては、一般の被保険者として扱いまするが、そうでないような場合におきましては、この日雇保険の対象になることが多い、このように考えております。
  117. 坂本昭

    ○坂本昭君 そうしますと、たとえば刈り入れの忙しい期間に四十日間、鎌ボウというのが私の方の土地では言いますが、刈り入れの手伝いに行くような場合、これはかなり季節的な業務になります。そうして三十日以上になります。こういうような場合は、これは日雇いとしてどう扱いますか。
  118. 堀秀夫

    政府委員堀秀夫君) 要するに、考え方は、期間を定めまして、短期の期間を定めまして、その期間が終われば、もう自動的に契約が終了するという条件をもって雇用される者でございまするから、そういうような方には、失業保険の被保険者としないという考え方でございます。これが失業保険法の十条の二号で、季節労務者を除いた趣旨でございます。ただ、その場合におきましても、日雇い的な形態で雇用される、あるいはこれが一カ月において三十日未満の期間というようなものでも、同じような実態であると思います。そのような場合は、事実上日雇い的な形態であるということに着目いたしまして、その場合には手帳をもちまして、それにその前二カ月の雇用した実績を印紙で証明するわけでございますが、その実績が一定条件以上でございますれば、これを日雇保険として日雇保険の適用をしていく、そうでなく、この三十日以上をこえ、四カ月未満であるというような方につきましては、これは雇用される際におきまして、一定の期間というものを雇用の条件としましてその期間が終われば自動的に雇用が消滅する、こういう条件で雇用されておる者でございますから、これは、失業保険の適用の対象とするのは妥当でない、こういう考え方で、この十条の第二号によりまして除いているわけでございます。    〔委員長退席、理事高野一夫君着席〕
  119. 坂本昭

    ○坂本昭君 労働省では、そうすると、いつも日雇労働者というものは、失業保険の対象として見られる。また、場合によれば、失対事業の対象として、いつも見ているというわけなんですね。それでは、いわゆる一人親方の大工さんがいる、そういう大工さんが、あちらこちらの事業所に行って働くような場合、こういう大工さんは、これは日雇労働者の中に入れることができますか。
  120. 堀秀夫

    政府委員堀秀夫君) この点につきましては、実態に即して適用をはかりたいと思っております。一人親方の方で、大工さんでありましても、純然たる請負契約に基づくような場合は、これは雇用関係がないわけでございますから、そのような形が非常にはっきりしております場合には、労働関係法の適用がないわけでございます。ただ、そういたしますると、実際問題として、一人親方というような形式をとっておりましても、実際上その雇用に近いような形をとって、実態が雇用者と同じであるというような方もございます。こういう方につきましては、やはり、労働法の保護を与えることが必要と思いますので、われわれといたしましては、現実を認定いたしまして、一人親方というような形式は、請負契約のような形でありましても、実態がまあ雇用関係にあるというふうに考えられる者につきましては、便法的に労働関係法規の適用を受けさせるような便宜も講じている、こういうふうな扱いをいたしております。
  121. 坂本昭

    ○坂本昭君 非常にこの日雇労働者の概念はむずかしいものだと思うのです。特に今のように大工さんとか、左官だとか、石突きだとか、そういう建設関係の労務者の場合は非常に取り扱いにくい問題が起こってくると思う。まず伺いたいのは、一体こういう人が何人くらいおるかという問題ですね。何かそういう点、労働省として調査されたことありますか、その数と並びにもし分類があれば、どういう種類のものはどうである、大工さんから、左官さんから一々分けるのがむずかしいかもしれませんが、皆さんの方で調べられた数的な根拠に、何か内容があればあわせて説明していただきたい。
  122. 堀秀夫

    政府委員堀秀夫君) ただいまそういう調査をいたしておりませんので、おそらくないと思います。しかし、なお確かめまして、ございましたならば後刻御報告いたします。
  123. 坂本昭

    ○坂本昭君 それじゃ厚生省に伺いますが、日雇労働者健康保険法に入っている労働者の数は幾人でありますか。
  124. 太宰博邦

    政府委員太宰博邦君) 私の方は結局日雇健康保険の手帳を渡した数でございますが、それは大体八十九万ほどでございます。
  125. 坂本昭

    ○坂本昭君 厚生省ではその日雇健康保険の手帳を渡した八十九万人、その内訳は、たとえばこの保険法に規定されている各号による分類、あるいは職種による分類、そういうものはありませんか。
  126. 太宰博邦

    政府委員太宰博邦君) 残念ながらただいまのところございません。
  127. 坂本昭

    ○坂本昭君 それでは厚生省厚生省の定義による日雇労働者というものの数だけは知っておるけれども、その実体は知らぬということですね。  さらに労働省はこういう零細な労働者の数さえも知らぬということでございますか。次官に伺います、これはもう労働省の怠慢です。
  128. 堀秀夫

    政府委員堀秀夫君) ただいま御質問が一人親方の大工さん、左官さんが何人全国的にいるか、こういう御質問でございましたので、それはございませんと申し上げたわけですが、ただいま御質問をさらにあとから伺いますると、日雇労働者の数などをお伺いかと、こういうふうに思いますので……。
  129. 坂本昭

    ○坂本昭君 日雇労働者です。
  130. 堀秀夫

    政府委員堀秀夫君) 日雇労働者でございますか。いろいろございますが、日雇いの失業保険の被保険者は大体これは月によりまして変動はございまするが、昭和三十四年度平均いたしまして六十二万二千人でございます。
  131. 坂本昭

    ○坂本昭君 その内容、実体はどういうことになっておりますか。もう少し説明していただけませんか。これも手帳かなんかだけしかわからないのですか。
  132. 堀秀夫

    政府委員堀秀夫君) 手帳制度で運用しております。
  133. 坂本昭

    ○坂本昭君 これは厚生大臣と労働次官に伺いますけれども、厚生省の手帳は八十九万で、労働省の手帳は六十二万、これはどういうことでこんな違いが出てきているのでしょうか。それから対象になっている人は、重なっておるものもあろうと思います。また、全然別のものもあろうと思う。一体どういうふうにそれぞれの省においては把握しておられるか、一つ御説明を願いたい。
  134. 赤澤正道

    政府委員赤澤正道君) 最初の日雇いの実態についての御質問でございますけれども、この日雇いというのは日々雇われるものですから、このしぼり方が、私は今隣の局長から日雇健保のしぼり方をちょっと見せてもらったのですが、日雇健保のしぼり方とそれから労働省失業保険関係のしぼり方とは、今局長が示しました通りに、内容が違っております。ですから、それぞれ独自の立場で日雇いというものを計算しておりますので、当然食い違っているのではないかと私は思っております。
  135. 坂本昭

    ○坂本昭君 しかし、これは労働者としては一番零細な、つまり社会保障の最も対象としなければならない、ほどほどにほうっておいてはいけない人たちだと思うのですね。だから、これをはっきりつかんでおかないと、あとの立法をする場合にもいろいろな問題が起こってくると思う。そういう点で、労働省の方のつかみ方もきわめて不明確だと思うのです。これは、労働省では、職業安定所においてこの日雇労働者というものを毎日見ておられると思う。その統計資料はありませんか。
  136. 堀秀夫

    政府委員堀秀夫君) 厚生省労働省の把握しております数の食い違いは、要するに、先ほどから御説申し上げましたように、定義が違うということでございます。その内容によりまして、重複する面もありまするし、また、抜ける面もありまするので、この点に食い違いがあるのではないかと考えております。なお、日雇いの労働者職業安定所に求職に来ておりまするが、この間の状況は、職業安定所として調査しておるところでございます。
  137. 坂本昭

    ○坂本昭君 その数。
  138. 堀秀夫

    政府委員堀秀夫君) 日雇労働者が職安の窓口に求職に来ておりますその数を申し上げますると、これは月によって変動がございますが、試みに三十四年について申し上げますと、一月が五十六万、二月は五十五万六千、三月が五十三万九千、四月が五十二万一千、五月が五十一万五千、六月が五十一万五千、七月が五十二万九千、八月が五十二万八千、九月が五十一万六千、十月が五十一万七千、十一月が五十二万三千、十二月が五十六万五千、このような推移を見せております。
  139. 坂本昭

    ○坂本昭君 今の日雇労働者が職安の窓口に求職に来ているこの数は、いわゆる失対として登録されている数とどういう差異がありますか。
  140. 堀秀夫

    政府委員堀秀夫君) この職安の窓口に求職に来ております日雇労務者、このうち、いわゆる失対事業の適格者の数は、大体現在三十四、五万というところでございます。
  141. 坂本昭

    ○坂本昭君 そうすると、こういうこの職安の窓口に少なくとも顔を出した求職の日雇労働者雇用の責任は、もちろん労働省にあると思います。で、その雇用を促進し、雇用安定の面で、具体的にどうしておられますか。
  142. 堀秀夫

    政府委員堀秀夫君) 職安の窓口に来られました日雇いの方々につきましては、これは民間の日雇求人につきまして民間に就労を願う人もございます。それから公共事業等に紹介する方もございます。それからそれと並びまして失対事業、これは一般失対事業もございまするし、それから特別失対、臨時就労等もございまするが、そういうところに紹介を申し上げる場合もございます。これらを合わせまして職を求めて職業安定所に来られました日雇労務者に対して職をあっせんしておる、こういう状態でございます。
  143. 坂本昭

    ○坂本昭君 今の数は、概括的に言いますと、失対の登録されている人が三十数万、それから求職の人が五十数万ですから、約二十万人という差が出てきますですね。この二十万人というのは、中にはその今の緊急就労だとかそういうところに吸収される人もあるでしょうが、あなたの力の労働力調査の中ではどういう名前でその数は現われて参りますか。総理府統計局の調査ですね、その調査との関係です。どういうふうな関係で定義されてきていますか。
  144. 堀秀夫

    政府委員堀秀夫君) 総理府統計局労働力調査の中で、就労者の中の雇用者として現われてくるわけでございます。
  145. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 ちょっと関連して。今の坂本君の聞いているのは、職安に求職してくる人の数、それから適格をパスした数、失業しているからそこへ現われてくるのだけれども、総理府統計局の完全失業者という格好で五十五万、六万と出ているのと内容はどうかと、こういうことを聞いているんですよ。
  146. 堀秀夫

    政府委員堀秀夫君) これは御承知と思いまするが、総理府統計局の労働力調査は地区別に抽出方式によりまして世帯を調べるわけでございます。で、その世帯を調べましてそうして実際の国民につきまして調べまして、要するに、その調査時に、これは毎月末でございまするが、一週間を通じまして一時間未満の就業者、これを完全失業者ということで現わしておるわけでございます。それからこの職安の窓口に出て参ります先ほど申し上げた数字は、実数でございます。従いまして、労働力調査における完全失業者の数とそれからこの職安の窓口業務として把握いたしました日雇求職者との数とは、これはおのずから別な調査報告によって把握したものでございまして関連はないわけでございます。
  147. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 調査と実績との基礎が違うのだから関連がない、それはその通りだと思うんです。しかし、労働力の配置ですね、失業をいかにしてなくしていくかという労働行政の面から見て、職安の窓口に出てくるものと労働力調査で現われてくるものの問題の関係内容というものを分析して、日本の失業という関係をなぜ労働省というものは検討されないかですね。  それからもう一つつけ加えて言わなきゃならぬことは、失業保険をもらっている人がいますね、それがどういう格好で就職していくかという問いに対して、五〇%ですね、九カ月において、五〇%は未就職だという——四八・六%、これが未就職だというお話であります。そうすると、失業者という中においても、職安に来ない人もあるし、だから、そういう格好で失業者という概念をつかむときには、非常にむずかしい問題になってくるけれども、そういう関係こそ、労働省がしっかり把握して、分析をして、そして、日本の失業者は、単に、労働力調査からくる五十五万でございますということであっては、国民、われわれはわからぬから、これとの関係をなぜもう少しく詳しく——実態というものをですね、日本の失業者といわれるものの実態を、なぜ、詳しく検討されて、ここの委員会、また、皆さん方の行政に使われないか。われわれにも知らしてもらいたい。ここがまあ根本的の、今のお話の続きだと私は思います。だから、そこにおいて初めて、その上に日雇労働者の概念というものがあるんだから、日雇労働者の概念というものを、労働力調査なら労働力調査、もっと、実態調査なら実態調査の上に立って調べて把握するという、労働省はそういう義務があるんじゃないですか、どうですか。
  148. 堀秀夫

    政府委員堀秀夫君) ただいまの藤田委員の御質問は、その通りだと思います。そこで、問題は、完全失業者、これは三十四年の四月から十一月、平均しまして五十二万と、こういう数字になっておりますことは、御承知通りでございます。これは、先ほど私が申し上げた定義に該当する人々の数でございます。そこで、これだけをもって、これが日本の雇用政策上処理すべき対象になる人たちである、このように考えることは、これは誤りであるとわれわれも思っておるのでございまして、結局、わが国の産業構造、就業構造の特殊性を反映いたしまして、不完全失業的な形態、あるいは潜在失業的な形態、こういう人がどのくらいいるか、これを把握しなければならない。そこで、これにつきましては、労働省、あるいは内閣の雇用審議会等におきまして、いろいろ推計した数字があるわけでございます。試みに、その転職あるいは追加就業希望というようなものを中心にして数えてみますと、三百六、七十万人に達する。それから雇用審議会等で、一定の所得未満の者——就業はしておるが、一定の所得未満の者は幾らであるかということを推計いたしますると、これは五百九十万ぐらいになる。このような数字がいろいろあるわけでございます。まあこれらの人が、ただいまの分類にもいろいろ問題がありまするが、それぞれの性格に応じまして、雇用政策上、あるいは賃金政策上、対象として研究を要する人たちの数ではないかと、このように考えておるわけでございます。
  149. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私は関連だからこれでやめますけれども、今のような、ちょうど探り足で歩いているようなつかみ方を、あっちからもこっちからもしている。こういう形ではいかないから、今の労働力調査というようなあいまいな調査でなしに、実態を把握する調査をしたらどうですかと私は言っているんだけれども、きょうの御質問を聞いていると、何か、これはこれです、これはこれですというようなことになるわけですね。私は、そういう点が、今の日雇労働者の把握の問題にしても、今のような公式ばりの返事をされるということは、非常に残念に思うんで、そういう点は、もっと親切に、初めから私は、こういう実態ですということをやっぱしお答えにならなけりゃ、それはいかぬ。私の質問じゃないですからこれでやめますけれども。
  150. 赤澤正道

    政府委員赤澤正道君) 何か、労働省がはなはだサボっているような結論に終わりそうですが、まあとっさの質問でございますので、安定局長も十分な数字を提供することができなかったことは遺憾に思います。まあ統計調査部長あたりは手ぐすね引いて待っておる数字だと思いますが、今ちょうどここにおりませんで大へん残念ですが、私は労働省に入りまして、去年の秋、労働白書の説明を聞いたわけです。私は私なりに、なかなかこまかく分類もできているし、よく調べてあるものだなと、調べ方の内容がどうだ、こうだというところまでとてもやれませんから、聞いたわけですが、ただ、その中で、いかにもふに落ちかねたのは、この間からも藤田委員からも逐次突っ込んでこられましたが、日本に特有な不完全就労の実態でございます。これは私も、聞けば聞くだけあやふやなことであって、とうとう労働省の担当の役人も、これにはシャッポを脱いで、ついには白状したのですが、実態がつかめておらぬわけです。だから、日本の場合は、景気がうんとよくなったときは失業者がうんと統計上現われたり、非常に景気が悪くなったときにはかえってそれが減ったり、変な現象が出てくることが考えられるわけです。これを何とか突き詰めて、もっと明らかにしなきゃいかぬのじゃないかというので、頭をひねったのですが、次の国勢調査のときでも利用して、何とかやるかというくらいの結論しか出なかったわけでございまして、実は数字についてはずいぶん検討はして、たくさん持っておりますけれども、たまたまきょうは安定局長が、とっさでありましたので、詳しく説明ができないで、大へん誤解を招いたと思いますが、また、別の日にでも、せっかくの御質問でございますから、数字を提供いたしたいと思っております。
  151. 坂本昭

    ○坂本昭君 私も、今雇用問題だけを議論しているのでありませんので、一番問題は、この日雇健康保険の問題ですから、これ以上は追及いたしませんが、今次官がお約束されましたから、次の機会に、今の点、十分な資料がおありのような御自信がおありでしたから、御説明を一ついただこうと思います。  で、私どもが今取り上げているのは、これらの人々のつまり健康保険制度の問題なんです。で、今あげられた——厚生省は手帳として八十九万、それから失対に登録されている三十四、五万——この登録されている三十四、五万の人は、これはもうみな私は手帳を持って、日雇労働者健康保険に入っていると思います。この点ちょっと確かめておきたいと思いますが、厚生省の方では——入っていると思いますが、いかがですか。
  152. 太宰博邦

    政府委員太宰博邦君) 入っております。
  153. 坂本昭

    ○坂本昭君 これは当然入っているのです。ところが、一方は四十万に足らない数、一方は九十万に近い数、非常に差があるのですよ。この差がどうして起きてきているかという点が私は非常な問題点だと思うのです。それには二つどうもあるのじゃないかと思うのですね。一つは、この労働者がつかんでいない日雇いの人たち、特にその中に私は一番多いと思うのは、建設関係労働者ではないかと思うのです。先ほど大工さんとか、左官さんをあげましたが、この数が手帳の中に入ってきているのではないか。そういう点で、今厚生省では八十九万と言われましたが、その中に、いわゆる建設労働組合といった組織を持った、明確な数がある程度あると思うのです。その数はどの程度でございますか。
  154. 太宰博邦

    政府委員太宰博邦君) ちょっとお話が——この八十九万という数字は手帳を交付した数でございまして、まあ中には、手帳をなくしたとか、あるいはそれから、その日雇いからよそへ、たとえば国保なら国保に移ったような場合に、これは健康保険でございますと、継続して雇用されておりますので、これは相当把握されるわけでございます。日雇いの方は、その点が非常に私ども先ほどからおしかりを受けるような立場にならざるを得ないのは、なかなかそこら辺がつかめない、まあこういうことのために、八十九万の手帳は出しておりますが、しかし、まあはたしてそれだけ全部おるかどうかということになりますと、どうもこれは自信がない、こういうことに相なるわけでございますが、この点はただいまのところは遺憾ながら私どもとしてもそれだけの資料はございません。
  155. 坂本昭

    ○坂本昭君 これは非常に本質の大事な点を、厚生省はつかんでおられないと思うのですが、実は手帳を交付されて今、局長の説明の中にもう日雇いじゃないけれども、病気の継続で給付を受けておるという数もあろうと思うのです。ところが、一番私の心配するのは、手帳の交付を受けているけれども、保険給付を受ける資格がないのがかなりあると思うのです。たとえば二カ月の待期期間は手帳の交付を受けているけれども、日雇健康保険の対象になることができない、この数は私はある程度つかむことができると思う。大体何万程度おありと判断しておられますか。
  156. 加藤信太郎

    説明員加藤信太郎君) ちょっと今、資料を見つけるのに暇がかかりますので、後ほど答弁さしていただきます。
  157. 坂本昭

    ○坂本昭君 これはどこかであなたの方から発表しておられて、私は六、七万ぐらいじゃないかというふうに思っておったのですが、その程度の数があると思うのですが。
  158. 加藤信太郎

    説明員加藤信太郎君) 概数は大体それぐらいの数でございます。今、坂本委員がおっしゃった程度でございますが、今ちょっと手元のこまかいところを見つけてから、あとでお答えいたします。
  159. 坂本昭

    ○坂本昭君 ところが、今の場合は二カ月の待期の場合なんですが、なお問題点は、手帳の交付は受けた——今度は労働省にも関係ありますから一つ  労働省聞いておって下さい。手帳の交付は受けて職安の窓口に来て求職をしている。そして適格検査にも通っている。ところが、失対の事業のワクがある。そしてそのワクの中になかなか入ることができない。入る可能性もある。しかし、なかなかその可能性が満たされない。それで手帳をもらっただけで二カ月の間に印紙を一十八枚押すこともできない。しかし、次の月には印紙を張ることができるかもしれないということで、手帳をかかえたままで二カ月の待期の期間保険給付を受けないことはもちろんのこと、さらに一年間ずっと受けないで皆保険の対象からはずれてしまう数がかなりある。この数は県主省並びに労働者両方の所管だと思うのですね。厚生省はこういう実態を知っておられるか。その二カ月の待期の期間の問題は十分御承知ですね。が、せっかくあなたの方で手帳を交付しておきながら一年間国保に入ることもできない。それから日雇いの健保に入ることもできない、そういう数があるのです。実際にあることはお認めになると思う。それを、厚生省はどういうふうに見ておられるか。それからまた、今の問題は、今度は労働省にも関係あるのですね。失対のワクを広げていって吸収すればいいし、あるいは適用事業所を広げて印紙を張ってもらえば、日雇労働者健康保険に入ることができるんだけれども、そのワクがないためにいつまでも入れない、こういうことは職業安定所はとっくによく知っておられる。一つ厚生省労働省両方から説明をいただきたい。
  160. 太宰博邦

    政府委員太宰博邦君) 御指摘通り、せっかく手帳をもらったけれども、なかなか就労の機会がないために印紙も張れない。従って医療を受ける資格が満たされない、こういうことも私は数多くの被保険者の中にあろうと思います。その人たちはそういうままで手帳を持続しておりますると、一年間全く何らの恩恵がないということになる。制度といたしましては、その場合には自分はどうも二カ月間二十八枚あるいけ六カ月間七十八枚、そのいずれも就労するだけの見込みがないというような判断がございまする場合においては、これは適用除外の申請をいたしまして、国保の方にこのときに入りますということでございますが、しかし、また中には御指摘のように、そうあっさり見込みはつけられぬ、きょうも行った、あすも行ったという格好で、あぶれたということになりますと、ほんとうにそういう人もあろうかと存じますが、この点は日雇いという制度からくるところの非常にむずかしい点じゃないかと考えております。
  161. 堀秀夫

    政府委員堀秀夫君) ただいま失対事業、これは全国平均いたしまして二一・五日のわけでございます。なお、最近の民間の就労状況を見ますと、昨年の四月から十一月という最近の数字を前期と比べてみますと、民間の就労が非常に伸びております。一カ月平均しまして延べ四十五万八千人の増加になっております。公共事業につきましても、一カ月平均五万九千人の増加になっているわけでございます。そのような失対事業と民間就労、それから公共事業等への就労をあわせて考えまして、各職業安定所では非常に就業情勢が悪いような所では、民間紹介というような方式もとっております。けれども、結局現在の状況を見てみますると、大体二カ月通じまして二十八日のスタンプを張るという人がほとんどすべてだ。中には病気その他特殊な事情のためにそこまでいかない者もあります。最近の一般失対それから民間就労の伸び、公共事業への伸び等も考えてみますと、大体それに該当する人が大部分ではないか、このように考えております。
  162. 坂本昭

    ○坂本昭君 これは職安局長がそんなことを一言われたらちょっと困るのですけれども、ほとんどみんな民間なり、どこかで勤めている、そういう場合もあるでしょう。しかし問題は、そういう人たちが生活の安定を得ること、言いかえれば、病気の場合、失業した場合に生活が安定ができる、従って、彼らは日雇いの労働者健康保険がほしいのです、入りたい。ところが、仕事はあっても適用事業所でないというと、印紙を張ってもらえないために健康保険に加入できない、こういう数がたくさんある、これは一体労働省の責任ですか、厚生省の責任ですか、これは一つ責任の所在を明らかにしていただきたい。    〔理事高野一夫君退席、委員長着席〕
  163. 堀秀夫

    政府委員堀秀夫君) ただいま私の申し上げましたのは、失業保険を対象にして申し上げたのでございます。従いまして、若干誤解があったと思いますが、その点は訂正いたしたいと思います。要するに、五人未満のというようなことで、その事業主が適用されておらないという関係でスタンプが張られないというような方は、これはあると考えております。
  164. 坂本昭

    ○坂本昭君 だれの責任ですか。
  165. 堀秀夫

    政府員(堀秀夫君) 問題は、ですから健康保険国民健康保険等におきますところの事業所の規模の問題で、今後検討を要する問題であります。
  166. 太宰博邦

    政府委員太宰博邦君) 五人未満の話にどうもなってきたようですが、私の方はともかくその被保険者の人が就労していただかないと、その印紙が張れないという今日建前をとっております限りにおいては、これはやはり就労の機会を得るということが先決の問題でございまして、そこでその機会を二カ月に何枚張るというようなことで、それによってその際に保険料を払ってもらってやる、こういうふうになるわけであります。ただ、働きました場合におきましても、五人未満の零細事業所、これは私のこちらの制度として健康保険の適用事業所あるいはこの失対事業、公共事業所という所に働いたというものを被保険者とするというふうに、法律の建前が相なっております。従いまして、その他に働いたということになりますと、私の方の健康保険の方の適用としてははずれるわけでございます。この辺は、やはりこの制度の運営の技術面等からいたしまして、かようなふうに規定がされておる。これは将来はどういうふうにするかということは、一つの問題でございますが、ただいまのところは、これをどうこうするわけに参らない。五人未満というふうなものが任意適用とか包括適用というようなことで健保に入って参りますれば、同時にこちらの方にも人って参りますが、その辺はやはりそういう程度の制約はあろうかと思います。
  167. 坂本昭

    ○坂本昭君 今の日雇いの人は手帳をもらって、そして職安の窓口で口を求めて働いている。労働省の説明によると、民間事業所や公共事業所で十分職はあるはずだ、まれにはない人もあるかもしれぬが、十分あるはずだ。実際はある場合もある。しかし、それが適用事業所でないために、印紙を張ってもらえないから、日雇労働者健康保険に加入できない数もたくさんある。この責任はだれかと聞けば、労働省の方ではちょっとそれはもう就労しておって私の方は知らぬ。厚生省の力では働いておっても、その印紙を張るにふさわしい適用事業所でないためにそれはどうも保険に入れない。これでは日雇労働者は浮かぶ瀬が全くない。私はこういう人こそ、手帳を持っているのだから、もっと具体的に日雇労働者健康保険に人って、そうしてこの健康保険制度の恩典にあずかることのできるようにすみやかに法律を変えるべきだ、一つの問題だからといってのんきにしておってもらっては、はなはだ困るのです。実際は、私もそういう人たちが組合を作っている組合を知っています。大体、それが小さい地方ですけれども、約四百名です。その四百名の人たちは手帳を持っている。持っているから国民健康保険にも入れない。先ほど申し上げた通りなんですが、入れなくてそして就労日数は十五、六日ということもある。あるけれども、印紙は十二、三一枚しか張ってもらえない場合がある。そうしていつまでも入れない場合がある。そういう場合に、これを救う具体的の方法がないかということが一つなんです。これは問題であるということじゃなくて、一つすみやかに、私はこの法律改正やって、何十万もおるのじゃありません、私は全国に数万じゃないかと思います。数万の人を救う道があると思うのですね。そういう事実をあなたの方でよく知っておられないとするならば、これは問題なんですね。場合によれば、私はその県の保険課長にそれを報告させてもよろしいのです。どうしていただけるかということですね。
  168. 太宰博邦

    政府委員太宰博邦君) 現在の法律におきましては、先ほどお答えしましたように、健康保険の適用事業所あるいは公共の事業所あるいは失対事業というような所に働いた場合において、手帳をもらうということに相なります。しかし、そういう所に最初働いて手帳をもらったけれども、あとそういう所で働かないで、適用外の事業所に働いておったというような人については、今日の法律のもとにおきましては、これは適用はないわけでございます。そういう人たちも確かに何万かはおられると思います。ごとに大工さんとか左官さんとかいうような人たちは、まあむしろそういう所に働くというよりも、個人の家庭なり何なりで働く場合があると思います。そういう人たちについて、これをただいまの御意見は、何か救ってやるようなことを考えてみたらどうか、法律改正をやったらどうかというような御意見でもございましたが、これは、私どもけさほどから答弁いたしておりますように、日雇制度について、いろいろ皆保険になって参りました場合において、考えねばならない問題がございます。で、そういうものを早急にひっくるめて検討いたしたい。その際に、まあできるだけ考えることは考えたいと思います。ただし、この健康保険におきましても、五人未満の零細企業の人については、やはり健康保険の適用がございませんので、任意包括の制度は残してございますが、強制適用はございません。そういう人たちは、結局、国民健康保険の方へ参っておるわけでありまするから、今回の人たちも全然医療保障の道が閉ざされておるわけではございません。この国民健康保険法でもってほどほどの、不十分でありましょうが、とにかく大都市なんぞ割にいいのがたくさんできておると思いますが、その社会保険の恩典には浴しておる。しかし、同時に被用者でございまするから、なるべく被用者保険の系列において何とかしてもらいたいという希望は私はあると思います。これは五人未満の零細企業に働いている人たちと同じように、私どもとしても考えていかなければならない問題だと、かように存ずる次第であります。
  169. 坂本昭

    ○坂本昭君 まあ、その問題は今か始まりでして、まだこれからもう少しお尋ねしておきたいのですが、その前に、一体厚生省は日雇健康保険制度を推進するつもりがあるのかないのか、これは一つ厚生大臣に伺います。日雇健康保険制度を、これを一体推進するつもりがあるのか、こんな制度をぶっつぶしてしまおうというお考えなのか。これは大臣の御方針だと思いますから、その点をお伺いします。
  170. 渡邊良夫

    ○国務大臣(渡邊良夫君) これはなかなかいろいろな角度から見まして、重大な問題だと思いますが、現在の段階においては、もっと内容と充実したものにして推進したいと、かように考えております。
  171. 坂本昭

    ○坂本昭君 それから大臣は、日雇健康保険制度を支持し、これを推進される固い決意を持っておるということをここで確認をいたしまして、これは非常に大事なことだと思います。日雇健康保険制度の発展の歴史の中で、特に保険局の山本次長の苦心されたところで、非常に長い歴史があって、その中で築き上げてきたものであって、私は厚生省がこうしたものをつぶすことは、国民社会保障に対する熱意を私は抑圧する結果になると思いますので、せっかくこうして進展してきた制度を伸ばしていただきたいということを、特にお願いしておきます。これは、たとえば、国民健康保険についても、例の特別国民健康保険制度があります。東京都についてもたしか、十一くらい特別組合がある。これらは東京都の国保が、昨年十二月の一日に発足する前に、もう昭和二十八、九年ごろからそれぞれの職種の人が同業組合として、組合の力を合わせて相互扶助していくという考えのもとに、非常な努力をして国保を築いてきておるわけです。ところが、そうして築いてきて特別国民健康保険も作った。その半面において、新しい国民健康保険法によって来年の四月からは強制実施になる。東京都も昨年十二月一日から実施することになった。ところが、今度は七割の給付になる。従来の特別国保は五割の給付です。最初非常な苦労をした人たちの方が今、おくれているということです。このおくれた人を、お前たちはおくれているんだからとほっとくような政治をすると、これは国民のほんとうの気持を理解しないものであって、新しい制度ができてどんどん進んでいけば、最初苦労をして築き上げてきた人たちをやはり救い上げていくという私は施策をとらなくちゃいかぬと思うのです。そういう点で、今の日雇健康保険制度については、まだこれからいろいろお尋ねしますが、非常な欠陥があるんです、問題点が。しかし、これを私はつぶしたらいかぬと思うのです。ちょうど今、国保について、特別国民健康保険を今いささか冷淡に扱っているふうがある。たとえば療養の給付の二割の国庫負担はしますが、五分の調整交付金は特別国保にはやってないのです。その理由をこの前、保険局長に聞くと、特別国保はみな金持ちだから、調整交付金やらぬでもいいんだというふうな説明をしておられました。が、なるほど徳川夢声のような有名な芸能人の入っている特別国保もあります。これなどは月に三百円とかいうようなのは非常に安いのです。しかし、特別国保はそういうものだけじゃありません。一人か二人の従業員しかない、うどん屋だとか、そば屋だとか、喫茶店だとか、そういうのも特別国保に入っている。東京都では料理飲食店の国民健康保険の組合があるし、あるいは食品販売の組合もある。その人たちは相当苦しい経営をしているのです。これは、この前、局長は、それは命があるんだから調整交付金やらない、もう二割だけでけっこうだというようなことを言われましたが、この際、厚生大臣は、日雇健康保険についてもこれを推進するという御熱意があられるならば、特別国保についても、零細な特別国保についてこれを十分財政的に支援するお考えがあるかどうかを、この際、あわせて伺っておきたいと思います。
  172. 太宰博邦

    政府委員太宰博邦君) 便宜私から……。特別国保は、現在の法律の規定によりまして、調整交付金は市町村の行なう国保についてだけになっております。そういうふうに法律を作りました趣旨は、まあどうも、金持、金持と、私が言ったよう言われてちょっと工合が悪いのでございますけれども、まあ、大体、市町村の国保は御承知通り法律上でもってその実施を義務づけておりまして、そこに入ります人は、中には裕福な人もおられると思いますが、同時に、ボーダー・ライン層の人もその中により好みせずに、被用者保険にいかない人は大体ここに入れるという建前でやっておるわけでありまして、実態において相当これは、市町村は運営にあっぷあっぷ言っておるというようなところでございましてそれの中で、二割の国庫負担のほかに、特にそういうひどい市町村に対してはもう少し何とかしてやらなければいかぬじゃないかということで、その調整交付金をやる。あの調整交付金は、決して全部の市町村にやるわけでございません。さような点は申し上げるまでもなく御存じのところでございますが、特別国体の方は、これはまあ大体都市の方が多うございまして、それも同業の方が集まってやっている。その場合において、当然、役所の方で認可をいたします場合においてもその点気をつけて、いい給付ができるようなものでないとなかなか認可はしないのでございますが、当然組合の方からいいましても、やはり相当の保険料が取れてそうして相当の給付ができるというところで一つ特別国保をやろうじゃないかといって、それに賛成者の同調を求めてやっておるということでございますから、どちらかと申しますと、また実態を見てみましても、これは金持というと語弊がございますが、それは一般の市町村の場合と異なりまして、そちらの方は二割の国庫負担というものでいいじゃないか。もしそれによって、それがどうにもうまくいかないという場合におきましては、その特別国保を解散すれば地域国保、市町村の国保に入っていける。何もそういうむごったらしいことを言いたくないのでございますけれども、制度といたしましてはそういうふうなちゃんと余地を作っておく。従いまして、おそらく特別国保を作られる方は市町村に入るよりもそちらの方がいい。いいという意味はいろいろな意味がおそらくあろうかと存じますが、そういうことでまあ多少苦しくともお互いにやっていくというところに、自分たちとしても、何といいますか、ほんとうに相互扶助の観念が、あるいは社会連帯の観念が上がっていくからやってみようじゃないかということもあろうと思いますので、大体においてそういうような趣旨からいたしまして、法律といたしましては、大体そういう組合に対しては二割の国庫負担ということだけで今日終わっておるわけでございます。そういうわけで、国保の方につきましてはそういう趣旨のもとに法律上の規定をいたしたいと考えております。
  173. 坂本昭

    ○坂本昭君 今の局長の発言は、先ほど日雇労働者健康保険に対して厚生大臣が明確に言われたその精神と大へん反しておると思うのです。日雇労働者健康保険の成立の過程においては、あとでまただんだん問題を取り上げていきますけれども、非常に困難の問題がある。そうしてそれらの中から非常に制度的にゆがめられたといいますか、曲がりなりにできてきた制度であって今日、皆保険という段階に至ると、場合によれば、お前たち、苦労してきたけれども、もうそんな古めかしい馬車に乗っているのはやめてしまえ、その馬車をこわしてしまえ、そういう言い方もでき得るのですが、しかし、私はそれは非常に酷な言い方だと思います。で、厚生大臣が、そうでないと、この日雇健康保険というものを推進していきたいということを言われたことは、今の特別国保についても全く同じように当てはまると私は信ずる。厚生大臣はときどきうどん屋などに行って、うどんをお食べになりますか。食べられるでしょう、うどんとかそばを。
  174. 渡邊良夫

    ○国務大臣(渡邊良夫君) しょっちゅう食べています。
  175. 坂本昭

    ○坂本昭君  一ぱい飲みに行ったり……。赤坂の料理屋でなくて……赤坂の料理屋、あれも特別国保に入っているのです。今度よく聞いて下さい。あの方は局長の言う金のある方の特別国保で、いいのですけれども、ときどき一つ私ともつき合って、その辺のうどん屋やそば屋で一ぱいやるような、そういう二、三人の特別国保もあるのです。従って、その点を私は申し上げているのであって、これらについても、財政的に豊かであるならばいいんだが、豊かでない場合には同じように調整交付金をやって、その国保の事業を運営していただきたい。で、将来、皆保険のレベルが上がって、世帯主も、あるいは家族も、全額——百パーセント給付を受けると、まあそういう、ふうないい制度が国の力によってできる場合には、それはもうみなやめなさいと言ってもいいでしょう。しかし、そうでないときに、鋭意努力をしてきた人たちを、お前はもうだめだ、つぶしてしまえ、解散してしまえと言ってしまうのは、政治としては私はまずいと思って縛り派して申し上げるわけです。特別国保の実態について、小さいうどん屋、そば屋があるということから、これについて、今の調整交付金とここでは私も明確に、じゃあ申し上げることははばかりますが、財政的に十分な援助をしていただきたい、また、場合によれば法律を変えて、調整交付金もつける、そういうことについて、理解ある御方針を持っておられるかどうか、一つ大臣の御答弁をいただきたい。
  176. 渡邊良夫

    ○国務大臣(渡邊良夫君) 先ほどもちょっと戸惑いまして、事務当局から御答弁してもらったんですが、特別国保はなるべく自主的な立場からいい制度だろうと思います。しかし、他の保険制度と比べまして無限にこれを許すというわけにもいかぬものでございまするから、いろいろとこの運用等の面におきまして各方面からいろいろと申し入れがあるのでございましてそれがどういう目的のもとで、きているかということも察知されるわけでございます。それでございまするから、この特別国保制度がある限りにおきましては、これは考えることは考えますけれども、ただ、これを国保を許し、この制度を国家補助を出すというようなことは、今ここに直ちに言明いたしかねます。
  177. 坂本昭

    ○坂本昭君 おそらく大臣は、まだ東京都の特別国保の実態を十分知っておられないからだと思います。一つこれはあとでよく御検討いただいて、そして同じ都民であり同じ国民であります。従って、もし特別国保の運営というものが皆保険のもとで不適当なものであるというふうな判断がおありならば、これは明確にしていただきたい。そうしないと、今まではそのつもりで鋭意この特別国保の結成と運営に努力をしてきた人たちを途中でほっぽり捨ててしまうということは、これは私は許されないと思うのです。従って、特別国保については国民保険下においては、将来こうするという方途を明かにしていただきたい。そうしないと、その辺が不明確なままに、大臣が不明確な方針を御提示されたことは、当該組合の人たちは非常な迷惑を受けると思うのであります。でありますから、この点いささか専門的になりますから、局長に特別国保の扱いについてはこの際十分な検討をして、関係者が迷惑を受けないように方針を明らかにしていただきたい。そのことについて一つ答弁をいただきたい。
  178. 太宰博邦

    政府委員太宰博邦君) 特別国保のことにつきましては、私どもとしては、一応方針を持っております。これはやはり国民健康保険については市町村でもってやるということが、これは法律で義務づけておりまする限り、やはりこれが原則であります。それで市町村に、その中において特別に同業の人たちが集まって、そして国保を作りたいということでありますれば、それはやはり何らかその市町村でやっている給付以上のものを自分たちでもってやると、それはその方がプラス面が出るとか何とかいう特別な何かの利益があるからそういうことに相なるので、その場合におきましては、これもただ無条件に許しておきますると、ところによりましては市町村の国保自体が、これが非常に苦しくなっていくのが私はあると思います。そこで法律上はこの市町村長の意見を聞いて、都道府県知事がこれを認可する、こういうふうになっておるわけであります。そういうような点で一応義務づけられた市町村の国保自体が破壊されないという範囲内において、もしそういう希望があれば、これは私どもは伸ばしていって差しつかえなかろうと存じておるわけであります。それに対しまして私どもとしてもそれはできるだけ指導もし、それから応援もしてやりたいと思います。ただ、その場合において、市町村と国のテコ入れなり何なりが必ず平等でなければならぬということになりますと、これはやはりその辺は多少のそこの差はこれはお許しいただかねばならない。そこは国全体としてながめてみまして、それで両方の均衡のある姿においてやはり発展をはかっていく、そういうようなことにどうしてもならざるを得ないのでございまして、私ども今日特別国保の人たち、これをいつも目のかたきにしてつぶすということは毛頭考えておりません。その人たちにもできるだけ相談に乗ってやろうと思っておる。しかし、今日の実態からいたしまして、市町村に対すると同じだけの国の負担なり補助というものをやらねばならないかということにつきましては、その辺については、若干の差はあっても、これはお許しいただけるものだと、かように私は思います。
  179. 坂本昭

    ○坂本昭君 私は、国保の話をいつまでも続けるつもりはありません。ただ、国保の中における特別国保の、成立過程において十分御検討いただきたい。それと同じことが、日雇労働者健康保険の中では、同じと言うと語弊があるかもしれませんが、擬制適用事業所の問題でございます。この擬制適用事業所の問題は、特別国保と同じというと、確かに語弊がありますが、この日雇労働者健康保険を成立し、推進する上において柏当大事な役割を果たしてきたと私は思う。今日擬制適用事業所がどの程度の数があるか。それから主としてその内容はどういうものであるか、それからこれを将来どういうふうに扱っていく方針であるか。その三つの点を局長から御答弁いただきたい。
  180. 太宰博邦

    政府委員太宰博邦君) お尋ねの擬制適用のお話でございますが、今日どれくらいおるかということにつきましては、あとで数字で申し上げます。おそらく数万であろうと思います。その人たちは、お話のように、私が聞いておるところでは、こういう日雇労働者健康保険制度を作ります場合に、当時、非常に熱心に働いた人たちであります。ところが、いざ実施してみますると、制度の運営の技術的な問題から健康保険の適用事業所あるいは実体事業所というふうにしぼられてきた。で、その人たちは案外そういうところに働くよりもそれ以外のところで働く方が実は有利だというようなことで、その大部分の人が制度をせっかく作ったけれども、恩恵に浴しないというようなことが出てくることが予想されるということで、これは私どもとしては、その当時非常なこれは問題であったろうと思うのですが、この法律にはないものを一応行政面でこれをやった。これは非常に異例の措置であった。それで今日まで擬制適用ということでやってきた、当核組合それ自身を事業所だと擬制して、そこで就労しておることにしてやって参った。これは非常に法律と違った異例の措置でありましたのですが、今日すでに何年かそれでやってきておるので、私ども今日それをどうこうということは毛頭考えておりません。しかし、これをさらに同じような人たちに拡張して持っていくということについては、私ども毛頭考えておらない。むしろ法律改正なり何なりの際に、その人たちをどうにかして合法的な線に乗せるということを考えて参りたい。それにつきましては、私ども政府としても、それを軌道に乗せるための努力をいたしますが、また、私たちの足りませんところは関係の方面の御協力を得なければなりませんし、また、その人たちの協力も私は得たいと思います。そういうふうにしてみなの協力によりまして、その線を、いつまでもその法律に基づかない行政的な措置だということは、これはいろんな面で私はよくないと思いますので、早く軌道に乗せたい、かように思っておるわけでございます。そういう点も今度の日雇健康保険制度検討いたします際に私はあわせて検討いたしたい、かように考えております。事業所は現在調べておるところは百四十三カ所で、被保険者が十万八千人でございます。
  181. 坂本昭

    ○坂本昭君 私はもっと多いと思うのですが、この日雇労働者健康保険の実質的に一割近くがこの適用を受けておるのではないかと思う。そして主として建設関係労働者、先ほど労働省の方もあげておられましたいわゆる一人親方の人たちを包括したこれはきわめて私は重要な労働者であると思う。だから、あくまでも私は労働者としてなるほど日雇的な雇用関係にあるかもしれないが、自立してそうして働いておる勤勉なる労働者であることには間違いない。特に能力もある人たちであります。従って、当然今の局長の言葉のように、どうも間違いだからというようなことでこれを無視するということは許されないと思う。むしろ大事な労働者として、腕のある、技術のある労働者として労働保険の対象としてこの人たちを積極的に守ってやる、そういう法律改正を積極的にやる義務があると思う。私がなぜこういうことを申し上げておるかというと、今度のような、このような区々たる法改正で甘んずることなしに、こうしたみな善意の、しかも有能なる労働者を守るためにどうも積極的な意図をお持ちになっておられないので、それでこういう点を私は鞭撻をしてぜひ労働者保険として正々常々と彼らの権利と義務を遂行できるようにしていただきたい。たとえばこの人たちは、保険料の納入については労使折半の原則に従っていない。みんな自分で二重に支払っている。こういうこともまことに私はおかしなことだと思う。それからまた、保険料についても地域々々によってかなりな差異があるように私は見るのであります。この人たちがしょっちゅう失業している人とか、そういう人ならばいざ知らず、ちゃんと腕を持って働いておる人たち、こういう人たちを守る法律がないということは、これは大体根本的におかしいと思うのです。だから、今のように局長がどうもこの擬制適用というのはおかしい、おかしいと言って片づけることではなくて、おかしいのはその労働者かおかしいのじゃないのですよ。制度がおかしいのですよ。その制度がおかしいのはあなたたちの責任だと思う。だから、当然これは厚生省が責任を持って、この人たちを今ある立場よりももっと向上させるような法律改正をすることは義務があると思う。その点、厚生当局から明確な御答弁をいただきたい。なお、労働省は何か顧みてまるで赤の他人のように思ってもらったら困るのです。これも日雇労働者の中に入っておってそして今のように健康保険、そういった面で守られていない。だから、こういう人を具体的にどうするか。あなたの方ではその数さえも的確につかんでおられないのではないかと思うので、この際、労働省としても、こういう人たちの問題をどうするか。特に要望したいのは、こういう関係の特に大工さん、左官さんのような建設労働者雇用の安定と促進のために何か具体的なことを考えておられるか。どういうふうにこの人たち雇用の安定をはかっていくか、そういう点で厚生省労働省からお答えいただきたい。
  182. 太宰博邦

    政府委員太宰博邦君) 私は何もこの人たちをおかしい、おかしいと言って片づけるつもりは毛頭ないことは先ほどお答えした通りです。この人たちもやはりりっぱな労働者であります。ですから、この人たちも医療保険の系列に乗せて上げたい。それにつきましては、これはなぜ乗らないかというと、これはまさにこの法律を作りました方に責任があるわけでございます。これは私の方としても、この日雇労働者健康保険という非常にむずかしい特異性を持っているものをうまく運営していく責任上、技術的に一つむずかしいということで当時は除外せざるを得なかったわけでございます。この辺の点については今格別めどを持っているわけでございませんけれども、皆保険になって参りました場合において、こういう人たち、その他にもある。私が先ほど申し上げました五人未満の人たちもそうであります。こういうような人たちについても、これを何とかして医療扶助の恩典に浴するようにできるだけ考えて参りたい、かように考えております。この一人親方みたいな人それ自体は雇用労働者でないわけでございますが、しかし、雇用労働者であっても、そのときどきに個人の家庭に行くとか、何とかということになりますと、実質的にこういう恩典に浴しないわけでございますから、こういう点については、私どもはさらに検討工夫をこらしまして、できるだけ軌道に乗せて参りたい。同時に、先ほどもちょっと申したことでございますけれども、私どもだけの努力ではなしに、やはりいろいろな方々のお知恵も拝借しましょうが、その人たちにも同時にこの制度が軌道に乗るように御協力をお願いしなければならない。自分たちでできることは、これは一つ率直にお願いしたいと思う。というのは、擬制の人の中には、何といいますか、約束通りにやらない者も間々あるように聞いております。そんなことを一々申すつもりはございませんが、できることはできるだけ協力を願い、できないところは頼まれれば政府でございますから、できるだけのことはいたします。その辺お互いに協力のもとにいい制度を作るように努力したいと考えております。
  183. 赤澤正道

    政府委員赤澤正道君) 先ほど失業者の頭数だけをつかんでおっても、内容を把握しておらないじゃないかというような御指摘があったわけでございます。ここでこまかいことは一々わかりませんけれども、もちろん失対適格者三十二万につきましては、これは軽作業、重作業、技能適格者とそれぞれ区別して、明確に出てくるわけでありますが、労働力調査の大きな百二十万とかというものにつきましては、これはおそらく男女別、年令別くらいにまでしかできておらぬのではないかと想像されるわけでございますが、大体日雇いという職業ができてしまっておるような姿になっているものですから、これはおっしゃるように、こまかく技能別、職種別に分けるということは、おそらくできておらないと思う。しかし、もっと詳しいことがわかりましたら、また御説明したいと思います。  先ほどから聞いておりますと、何か日雇いの定義から入ってだいぶ結論がわかってきたような気がするのであります。一体国民健康保険とか、私らの日雇労働者の扱い方のしぼり方が違うものですから、なるほど両方聞いておりますと妙なことが出てきそうな気が、実は私も勉強しておりませんけれどもするわけであります。その扱い方の面で医療保障のことについてここに谷間ができるようなことになったら、これはもってのほかでございます。なるほど今、坂本委員指摘通りのことが私はあろうかと思われるわけであります。そこでまた、積極的にわれわれの見方というものも厚生省を通じましてそういう割れ目といいますか、切れがないように善処いたしたいと思っております。
  184. 坂本昭

    ○坂本昭君 局長の方から今の建設労働者雇用安定についての抱負を。
  185. 堀秀夫

    政府委員堀秀夫君) この問題につきましては、私は一般の職業紹介と並びましてやはり技術の向上というものをはかることがやはり問題のかなめであると思っております。その点におきまして公共職業訓練、これと並びまして事業内の職業訓練、この制度を活用して参りたいと思います。公正職業訓練につきましては、三十五年度は三十四年度に比べまして予算も六億円以上増加いたしまして、種目及び対象人員を増加させておるわけでございます。そのうちの大きな重点の項目といたしまして、建設関係の問題を考えて参りたい所存でございます。これと並びまして事業内職業訓練に対するところの補助制度がございますので、今後活用いたしまして、まずその点の発展をはかることにいたしまして雇用の安定に努めたい。これと並びまして職業紹介行政の面にも重点を置いて、今後十分厚生省とも相談いたしまして善処する考えでございます。
  186. 坂本昭

    ○坂本昭君 今、赤澤次官から私の言っている趣旨が理解できてきたと言われましたが、実は私もこの問題はごく最近に知ったのです。そうして労働行政と厚生行政の谷間のところに実はほったらかされているのです。で、たまたま私は知って、それから調べてみると、まことに妙な立場にある人がたくさんあるわけです。それで私、自身もよくわからないものですから、いろいろと皆さんの御意見も聞きながらこの谷間の人たち雇用行政の面でどうしたらいいかということと、それからもう一つは、社会保障の面でどうしたらいいかということで調べていると、今の擬制適用というようなおそらく言葉は聞いたことがないと思うのですが、非常に変わった、この法律には正しく合っていないような形の制度がこの日雇労働者健康保険の中にあるということを初めて知ってきたわけです。そうしてさらに、問題は来年から国民保険ということになってきたにもかかわらず、この二カ月間の待期期間——保険料を実は払いながら保険給付を受けることができない、そういうような非常に致命的な欠陥のあることもわかってきたのです。そうしますと、皆さん方が来年から国民皆年金だ、皆保険だと言っていることが全くのうそだということを、これは厚生大臣も自白せざるを得ないのですね。だから、あまり演説会などで皆年金、皆保険などということはお言いにならない方がいいだろうと思うのですね。ただ、具体的に非常に困っているのでこれをどうするかということで、実はこの日雇健康保険の本論にこれから入りたいと思います。  先ほど来、竹中委員から、社会保障全体としての均衡ある発展の問題にだいぶ議論が出まして、私は竹中委員のお考えに全く同感の気持を持つものであります。要は一体均衡あるという、バランスがあるというのは何がバランスがあるかということが不明確だと思うのですね。どうも保険局長などはバランスのあるのは財政的なバランス、経費的な均衡、それだけを考えているのじゃないかと私は思うのですわ。しかし、この均衡ある発展というのは何がバランスをとっているかというと、社会保障内容国民生活に十分なバランスを与えるような、私はそういうバランスだと思う。言いかえれば、局長はほどほどと言うでしょう。あの言葉は私は失言だと思う。ほどほどと言うと大体身分ほどほどとう言って、坂本なら坂本ほどほどの娘さんと恋愛をしなさいということでしょうね、ほどほどと。それぞれ貧乏人は貧乏人にほどほどそうやっていればいいと、それが何かバランスがとれていると、私がちょっと若い娘さんと歩いたところでバランスがとれておらぬと思わぬのですけれども、局長はそういうふうに貧乏人は貧乏人ほどほど、たとえば日雇労働者の人たちは彼らほどほどに生活が安定されたらそれでいい、実はそうではないんですよ、この貧乏人ほど豊かな社会保障をやってやらなければ国民としてバランスのとれた生活ができない。定定した生活ができない。だから、そういう点を局長のほどほど論に対して私は反発をする、何か説明があったら言って下さい。
  187. 太宰博邦

    政府委員太宰博邦君) ほどほどというのは、どこで使ったか知りませんが、決してほどほどがいいという意味で私は使っているつもりはございません。  それから私が、社会保障の均衡ある発展というのは、費用だけ考えているのじゃないかというのはこれは誤解でございますので、ちょっとお解き願います。お話のように、皆年金、皆保険で申しますれば、皆保険国民全体に何らかの医療保障を及ぼす柱だけは一応めどがついたということは言える。しかし、その中身の問題につきましては、これはあえて申し上げるまでもなく、多数の方が指摘されているように、まだまだ十分だと私ども思っておりません。この内容をよくして参ります——その内容をよくして参ります場合において、各もろもろの制度が同じ医療保険についてもあるわけでございますが、それがてんでんばらばらに従来は発展してきたという少しきらいがなしとしない。それはそれとして、従来は沿革的な事由があって許されたかもしらぬが、これからあとはその制度の発展を考える場合におきましても常に総合的視野において、そうして均衡がとれた形でその均衡というものを考えながら進めていかなければならないぞということを申し上げておるつもりでございます。もちろん均衡といってもこの被用者保険、それから一般国民保険というものはおのずから若干の私は違いというものが制度としてあると思います。同じ被用者保険ならば、将来私は被用者保険はなるべく一本にしたいという念願を持っておりますが、現実の問題としては、やはり被用者保険の中におきましても、健康保険の組合管掌の問題、あるいは政府管掌の問題、あるいはその他の共済組合といったようなもの、あるいは国保に対する日雇健保みたいなもの、いろいろあるわけでございます。現実にはそういうものを今直ちにこれを一ぺんに一本のものにしてしまうということも、これはなかなかのことでございまして、私どもとしては、そういうことを将来の目標に置きながら現実問題としては、一歩一歩その内容の充実をはかっていく、その場合に、この組合管掌というものは、これは日本においては相当進んだ医療の内容を持っていると一応思いますが、しかし、それとても決して十分とは言えませんが、しかし、その場合においても十分でないからといって、それだけをしゃにむに進めるということではなしに、やはりおくれた方にはおくれた方に政府としてもより多くの指導の面なり、あるいは国のテコ入れの面ということに工夫をこらしていくというふうにして、全体がだんだんその差が縮まってそうして最後には一本の形になるというふうな方向へ持っていくような心がまえでこれを運営して参るべきではなかろうかと、私はさように考えておるのであります。
  188. 坂本昭

    ○坂本昭君 保険の問題についてはさらに申し述べますが、その前に、先般失業保険法の一部改正のときに、職安の局長の説明の中に、今のようなほどほど論が若干あったのです。それは社会保険全体の費用負担の平衡、バランスというような言葉を同じようにやっぱりお使いになられた。私はそのときに、これは局長の失言だったと思うのですが、失言というものは二十年も三十年もあとにあるようなお考えのもとに保険財政のバランスを考えておるというふうな私は印象を受けた、これはおかしいですよ。人間が二十年、三十年もすれば年をとることは必然的です。だから、これは必然的であるけれども、病気の方はそれに比べるともっと必然性は少ない。さらに失業の方は、これはさらに減らさなければならない、そして少なくとも労働省の行政は、二十年、三十年あとじゃありません、できたら来年失業をなくすということ、ところが局長のお考えは、二十年、三十年のあとにも失業があって、そのために失業保険積立金を積み立てていかなければならぬようなお考えを持っておるように私は考えた。これは重大なあやまちだと思う。少なくとも社会保障とい五泉をお使いになるときに、失業も老齢も病気も全く同一視されたらこれは根本的に間違っています。その点もう一度あらためて局長の御説明をお開きしたい。
  189. 堀秀夫

    政府委員堀秀夫君) 先日の私の言葉の中に、あるいはそういうことがあったかもしれませんが、この問題につきましては、私は坂本委員と同じ考えでございます。失業というものはやはり罪悪でございますから、一日も早くなくそうということが理想であります。失業保険行政の目標もまたそこにあるわけであります。われわれとしては、積極的に雇用を開拓いたし、と同時に、このための職安行政というものを強力に展開しまして、労働の質と量とを向上させまして、そうしてこれを雇用に結びつけていく、それが失業保険行政としての理想である、このように考えております。あるいはやや長期という意味で二、三十年ということを申し上げたかもしれませんが、その点は、私の気持は城本委員の申されたことと同じでございますから、誤解がありましたらその点は取り消したいと思います。
  190. 坂本昭

    ○坂本昭君 実は、ほんとうに局長が私と同じ考えならば、今度のような改正には甘んじないはずだと思うのです。それは失業という問題は二十年、三十年あとにいくものじゃありませんから、結局、失業保険積立金七百数十億、こうしたものをほかの厚生年金積立金と同じようにお考えになるとすれば、これはゆゆしきあやまちだと思うのです。ところが、これは財務当局の財政投融資に関する専門的な書物を見ますというと、資金運用部資金の状況について、たとえば三十四年三月の例をあげますと、御承知通り、郵便貯金及び郵便振替貯金の預託金、これは一番多く八千三百三十八億、それから簡易生命保険及び郵便年金の預託金、これは一千四百三十三億、それからこれは保険局長先般来たびたび議論した厚生年金保険の預託金二千九百六十六億、こう並んで、実はいろいろな予算のあれを見ましても、次に出てくるのはその他預託金というのが出てくるのです。その他預託金というのが二千二百六十九億、非常に多いのです。そうしてその他というのは、一体何かということです。いつも財務当局は表に出さない、隠してある、だからだれも知らない、知らないけれども、その他というものをよく見ると、これは財務当局の説明の中でその他預託金については、途中省略しますが、この内訳を見ると、比較的順調な増加を示したものは、一番最初失業保険特別会計と書いてあります。それから国有林野事業特別会計、補助貨幣回収準備益金、外国為替資金特別会計、それから船員保険特別会計、船員保険などの場合には積み立てしなければいけません。この中には失業保険も入っていますが、年金の要素なども入っていますから、これはいささか積み立ててもいいけれども、失業保険特別会計が膨大に余って、先般、藤田委員の追及に上っても七百億をこえている。これは、どうも、労働省自体が、失業は永遠にあるのだ、老齢と同じように永遠にあるものとお考えになって、そうしていつまでもたくわえて喜んでおられる、そう思う。根本的にこれは間違っているのじゃないか。だから、せめてこの失業保険特別会計が、その他預託金の一番最後になるくらいにやっていただきたい。そうすることによって初めて、失業保険の方の二部改正を私はできると思う。ですから、さっき局長は、私と同じ意見だと言われたけれども、もし、それをお考えになるならば、財務当局から、その他預託金の筆頭にあげられないような措置を具体的に講じていただきたい。その点一ついかがでしょう。
  191. 堀秀夫

    政府委員堀秀夫君) この保険経済を見ましてそれとのからみ合わせで保険給付改善をはかるという見地に立ちましては、何も積立金をよけいとっておくことだけが能ではありませんから、その点につきましては、十分一つからみ合わせて検討したいと考えております。なお、この問題につきましては、いろいろなことがあるわけでございます。たとえば、零細な中小の事業に雇用される労働者の方々、これはやはり失業危険に最も多くさらされるわけでありますから、これの加入の促進をはかっていきたい。これは、坂本委員のお立場からは、微温的であるという御批判を受けるかもしれませんが、われわれといたしましては、事務組合の活用等によりまして、とりあえず加入促進をはかって参りたい。このようなことになりますると、やはり加入して……離職率というものも大企業に比べて二倍、三倍となっております。これが入ることによりまして、やはりその面からマイナスが出て参る、そういうことも考え、また、給付引き上げも全般的に考え合わせる。それをこの失業保険の経理状況とにらみ合わせまして、からみ合わせて検討を続けるということは、今回の改正に引き続き、第二次の作業といたしまして、だいぶ関係方面の御意見を伺いつつ、取り組んで参りたい考えでございます。
  192. 坂本昭

    ○坂本昭君 第一段の問題じゃなくて、一番最初が私は問題だと思うのです。そういう点で今回のこういう改正については、われわれとしては納得できない。これでは、とうてい、いかに日本の経済の成長率が世界で冠たるものといえども、こういう労働行政はわれわれは認めることができない。それはILO条約の批准だけの問題じゃない。行政のすみずみに至るまで、あまりにほどほど過ぎてしまって、適切な目標を失っている、私はそう言わざるを得ない。このあと、失業保険のこまかいことについては、またほかの人が触れるでしょうから、次に、日雇労働者健康保険の本論に入っていきたいと思います。  局長お尋ねしますけれども、健康保険の中で日雇健康保険よりももっと悪い保険制度がございますか。ちょっと、そういう点で御意見を聞かして下さい。
  193. 太宰博邦

    政府委員太宰博邦君) 保険料のかけ方とかそういうことを抜きにして、給付内容だけで比べてみますれば、これは、国民健康保険よりはこちらの方がよろしかろうと存じますが、ほかの被用者に対する健康保険制度に比べますれば、こちらの方は給付内容はまだ十分とは思っておりません。
  194. 坂本昭

    ○坂本昭君 国民健康保険よりもまさっていると言えるでしょうか。大体前は、日雇労働者健康保険に救い上げられるまでの人たちは、ある時期には生活保護の適用を受けておった人たちもかなりある。むしろそのときの方がよかったと思うような人たちがおるのじゃないかと思われる点もある。それから療養期間は一カ年打ち切りです。国民健康保険では転帰まで療養期間の続くものもかなりあります。日雇いのときには一カ年で打ち切りである。なるほど傷病手当金は国民健康保険にはありませんが、この方はあったってたった十四日間両で打ち切り。さらにいろいろと内容を見てきますと、私は非常に悪い健康保険だと言わざるを得ない。先ほどのバランスのとれた社会保障の面からいうと、この日雇労働者の約八十九万の人たちを、もっと手厚く見てやるべきだと思う。その中でも一番問題になるのは、先ほどから局長も根本的に改革をしたいと言っておられますが、皆保険に入れない待期二カ月の問題です。私はこれについて、先ほどから具体的のことを申し上げてきましたが、もう少しこの点について御相談をしてみたいのであります。それは手帳を持っておるにかかわらず、医者にかかることができないというこの現実です。これについて先ほど局長は適用除外の申請をすればよろしいというようなことを言っておられました。しかし、せっかく手帳をもらって、そして労働省の説明にあった通り、場合によれば働く機会がある、そういう人たちが二カ月間保険給付にかかれないということは、まことに私は法律として不可解であります。でむしろ端的に手帳を交付したならば、それと同時に保険給付を受けられる、そういうふうに制度を変えたらどうか。それによって二カ月間待期で、今までは保険給付を受けられなかった人たち、これが一体何人くらいおるか。それによって医療費かどのくらいかかるか。もしその費用を国が持ったとすれば、一体どのくらいかかるか。これは十分計算のできることだろうと思うのです。今のような手帳を渡したら全部そのまま医療が受けれるという方途をとったらいかがか、もしそのときにそうすると費用がこのくらい損するといいますか、かかるというならば、一体どのくらいかかるか。その数字を一つあげていただきたい。
  195. 太宰博邦

    政府委員太宰博邦君) この資格期間二カ月というものを撤廃して最初にもらえばすぐ医療を受けれるということは、これはただ財政的な面じゃなしに、制度の根本として問題があるわけでございまして、そこが実はむずかしいところであります。普通の場合でございますれば、まずその職場に何年働くという一応のめどでもって雇用契約が結ばれておるということでございまするが、この日雇いの場合は、その日その日働く、翌日ははたしてそこへ来るかどうか保証がないというようなことでございます。そこで一日働いたということで、まあその手帳をもらいましても、そこではたして働くかどうか、場合によっては健康保険、こういう法律の適用事業所に働かない場合もございますし、また、極端の場合にいきますと、被保険者でないというふうなことになる場合もございます。ところが、そういうことは一切わからない。結局手帳というものだけがめどでございまして、従いまして、その手帳というものによって直ちにやると、手帳の有効期間の間はその人が医療にかかった場合は全部これはそれでよろしいということにせざるを得ないわけです。そういうようなことは、やはりこの制度として私は根本的に疑問がある。そこがこの日雇健康保険制度に、まあ手帳の交付だけじゃなしに、これを被保険者証ということに使えないで、やはり二カ月に二十八日貼付したかどうかというようなことを加味せざるを得ないという問題点があろうかと、かように考えるわけであります。この点は、ただ財政的の問題じゃなしに、やはり制度の基本的の問題で、そこが技術的にむずかしい点であろうかと存ずるわけであります。どれくらいそれによってかかるかということは推算もちょっとできかねるんでございますが、大体一カ月に平均五万人ほどの新しい手帳の交付があるわけであります。従いまして、その数からいってこれがそのまま医療給付に響くかどうか、これは一がいに言えません。もし響くとすれば、大体医療給付費が約六、七千円でございまするから、まあこれは相当な額にはなって参ります。年間に約六、七千円でありますが、これから見ましても一カ月の五万人の新しい交付、その中には新陳代謝の分もあろうかと思いますから、すぐそれをかけるということはできませんが、相当な額になるということだけは一応想像がつくんですが、こまかい計算は実はなかなかしかねるんであります。
  196. 坂本昭

    ○坂本昭君 私はそんなに額にならないと思うんです。あなたの方の資料で新しい加入、たとえば三十四年度と三十五年度は新加入は大体これはどこかで私が見たところでは、六万九千人くらいの数をあげておられる、これは新加入ですからね。だから、今までの人は全部保険に入って、今度新しく手帳をもらう人は三十五年度では六万九千人、そうすると、今言っておられた一人の医療給付費は年に六千七百円、そうすると年間四億六千万円になります。そうすると、二カ月とすると八千万円弱になります。つまり新しく加入した人が三十五年度の四月一日から平均の病気をしたとすると、二カ月の医療費というのは八千万円だということですね。これは全部が全部病気するとは限りません。だからかりに八千万円だとしても、一カ月には四千万円の費用がかかる、それも私はずっとその実際の金額というものは少ないだろうと思う。だからもしこれにたとえば国民健康保険から入ってきた人については何らかの処置をしてあげるとかいうことにしてやれば、月四千万円という数はずっと減っていくと思う。この減っていったこれによって、日雇健康保険に加入している人たちはそれだけ健康が守られているという安心感の上に立って働くことができるのですね。私はこのことが非常に大事だと思うのです。何億という非常に膨大なものならともかく、ことによれば数千万円をもっと下るだろうと思われる金額であるから、これは金額のことをおそれるよりも、むしろ日雇労働者に後顧の憂いなく働いてもらう、そういう点で思い切ってやっていただいても十分できるのじゃないか。一つの手帳を渡したらそのまま保険給付が受けられるような、こういう仕方はどうですか。そういう点で御相談を申し上げるところです。
  197. 太宰博邦

    政府委員太宰博邦君) 先ほどちょっとお話になりました六万九千人くらいというのはこれは年間における帳じりの左でございまして、従いまして、その中で新しく新陳代謝されるのは別個になりますから、その分は従って相当の数が出ます。今のお話の、最初に一両日働いて手帳をもらうと、それだけであとのことは、病気になったらすぐお医者さんのところに行っていいのだということになりますと、私は、制度としてこういうことをやります場合にはよほど考えなければならぬのは、やはり逆選択のこともある。最初に二、三日もらってしまえばあとはもうそれですぐお医者のところに行けば本人は一年間ただでもって見てもらえる、家族は五割負担というようなことになりますと、これはそういうふうな制度なんだということになりまして、これはまあ中には、世の中には、そういうことならばということで、間違ったことを考えるような事故が起きるようなこともある。制度といたしましては、やはり日々雇い入れる、その日その日でもって縁が切れるというところにそういう人たちの……、しかもそういうむずかしい技術的な隘路を克服して、一つの日雇健康保険制度として正常に伸びていくということのためには相当やはりむずかしい点でございまして、これを簡単に二十八枚というものをやめてしまってやっても大したことはないのじゃないかとおっしゃられるかもしれませんけれども、私は制度として見ると、これはやはり根本の問題があるので、さような方向において考えていくのは、ちょっと私としても今日はにわかに賛意を表しかねる、こういうところでございます。この点についてどうしたらいいかということについては、先ほど申し上げましたように、まだしかとしためどがあるわけじゃございませんけれども、大きく考えて、皆保険の谷間になるようなことを極力避けてこれは何とかしたい、しかも国民健康保険の方にいかないで、日雇健康保険の被保険者として何とかしたいという大きな立場からの要請というものを私ども考え、十分感じておるわけでございますが、さてどうしたらいいかということになると、確かに技術的な点で隘路があって、この制度を作ります際に、やむを得ず二カ月二十八枚ということをとらざるを得なかったのであります。その辺のことは私どももじっくりとやっぱり考えて参らなければならない、かように考えております。
  198. 坂本昭

    ○坂本昭君 局長はその逆選択のことをしきりに取り上げられますが、そう国民を疑いの目を持って見られるのは、それはなるほどそういう必要な場合もあるでしょうが、しかし、皆保険を打ち出しているこの状況のもとにおいて、正当に印紙を張った場合でさえも一カ月以上受けることができないという事実を、逆選択のゆえをもって、そういう事実のゆえをもって拒むということは、私は正しい医療保障を推進する道であるとは思いません。ことに来年から国民健康保険が全部に実施されてきた場合に、国民健康保険から移行する場合あるいは健康保険から移行する場合、そういう具体的な問題がこれから幾らでも私は出てくると思う。かりにそういう逆選択のような場合は、これこそ監査でもやって手きびしくとっちめたらいいのであって、これは厚生省のお下のものであって十分それはおやりになったらいいが、それよりも問題は、二カ月に印紙二十八枚張ることができないという雇用条件についてどうするか、これが私はもっと深刻な問題だと思います。そのときに一体これはだれが悪いのだ。せっかく手帳をもらって二十八枚張れば三カ月目からは保険給付を受けることができる、ところが、二十八枚に足らなかったような場合、私はこの責任は職業安定所にあると思う、労働省にあると思うのです。従って、この責任までも本人の日雇労働者に押しつけて、お前は足りない、印紙が足りぬのだからだめだということは、政治としては許すことができないと思う。むしろそういう場合に対しては国が、そうとにかく何億というものでないので、そういう日雇労働者の生活を安定させるという意味において、責任をとるべき者にとってもらったらこれは済むのじゃないかと思うのですが、局長はいかようにお考えですか。
  199. 太宰博邦

    政府委員太宰博邦君) まあ先ほどお答えしたことで、私どもの気持は、御賛成かどうかは別として、御了解をいただけるかと思うのであります。やはり国は確かに国民にできるだけ雇用機会を与えるようにすべき義務はあると思います。そのために政府としてはできるだけしなければならぬこの努力は、従来、また、今後とも続けて参らねばならぬと考えております。私どもの方の分野におきましても、できるだけ数多くの国民に医療保障の恩典を、しかもできるだけそれを医療保障の名に値するだけのいいものをしてあげるように努力する義務は私はあると思います。ただ、何もこの日雇健康保険制度を作りました当初におきましても格別努力が足りなかったのじゃなしに、やはりこの制度自体に内在いたします非常に技術的なむずかしい点でございまして、これをどういうふうにしてさばくかということにつきましてなかなか妙案がないということのために、やむを得ずこういうふうに二カ月二十八枚とかいうふうな制度を作って、それをせいぜい六カ月に七十八枚とかいうふうにして、何とかして拾えるように努力しているわけでございます。それはそれとして今日また皆保険になって参りますと、まあそれでできない人はこれはすぐ国保に行ってくれということもこれはいかがであろうか、何かもう一ぺん工夫をこらしてみてそうしてその人たちを日雇健康保険という制度の系列の中で、できるだけその制度を活用できるようにしてみたいということを申し上げたわけでございます。今日ただいまそれを取っ払うという——資格を取っ払うということは、先ほど申し上げた、私の方から申しますると、この制度の健全な運営という立場からいたしましても、非常にやはり基本的な疑問の点がある。その点については今直ちに賛成申し上げるというお答えを申しかねる、これは十分に検討し——もちろん、十分といっても、何年もかけるつもりはございません、これは相当差し迫った問題だと認識しておりまするので、これは考えて参りたいと、かように申し上げた次第でございます。
  200. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) ちょっと速記をとめて。    午後五時三十一分速記中止    —————・—————    午後六時五分速記開始
  201. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) 速記を起こして下さい。  暫時休憩いたします。  七時から再開いたします。    午後六時六分休憩    —————・—————    午後七時十四分開会
  202. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) ただいまから再開いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後七時十五分散会