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1960-03-17 第34回国会 参議院 社会労働委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年三月十七日(木曜日)    午前十時二十三分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     加藤 武徳君    理事            高野 一夫君            吉武 恵市君            坂本  昭君            藤田藤太郎君    委員            鹿島 俊雄君            勝俣  稔君            谷口弥三郎君            徳永 正利君            山本  杉君            片岡 文重君            村尾 重雄君            竹中 恒夫君   政府委員    厚生政務次官  内藤  隆君    厚生大臣官房長 森本  潔君    厚生省公衆衛生    局長      尾村 偉久君    厚生省医務局長 川上 六馬君    厚生省医務局次    長       黒木 利克君    厚生省社会局長 高田 正巳君   事務局側    常任委員会専門    員       増本 甲吉君   説明員    大蔵省銀行局特    別金融課長   磯江 重泰君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○社会保障制度に関する調査  (狂犬病予防対策に関する件) ○医療金融公庫法案内閣送付、予備  審査) ○精神薄弱者福祉法案内閣送付、予  備審査)   —————————————
  2. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) ただいまから委員会を開きます。  まず、社会保障制度に関する調査の一環として、一般厚生行政に附する件を議題といたします。坂本委員から、狂犬病問題等についての質疑の通告がございますので、質問をお願いいたします。
  3. 坂本昭

    坂本昭君 緊急な点につきましてお尋ねいたしたいと思います。たとえばペスト菌を注射したネズミが研究所の手からのがれて、東京の町の中へ飛び込んでしまったとしたときには、一体こういう事態が起こるか。こういうことは、実は東京都内大学研究室の中には十分に起こり得ることであります。ただ、われわれが知らないでおることであって、起こった場合には、水爆には及ばないとしても、いわば二十世紀の戦慄的な事件を起こすだろうと思う。先日来、都下新聞をにぎわしている、都の衛生研究所実験ためし狂犬を作っている、特に狂犬を作っている、その狂犬おりを破って逃げて、子供三人にかみついたという、まことに前代未聞の事件が起こりました。私はこれについて緊急に、最初専門的なことを局長に伺い、さらにまた、厚生省責任者からも全般的なお答えをいただきたいと思う。  まず、専門的なことにつきまして簡明に御返答をいただきたいと思います。第一は、昭和三十年七月から狂犬病というものは都下には完全に消滅をしております。そういうような状態の中で、いかなる目的のために、いつから、何回こういう実験をしておったのか、まずその点伺います。
  4. 尾村偉久

    政府委員(尾村偉久君) これは三十年に狂犬病都下からなくなりました事由につきまして、非常に犬に対する予防注射を励行したためであろうということでございましたが、しからば、そうなると病毒狂犬病としては現われないけれども、どこかの犬に非常に弱毒化して残り得る経路をたどっておるのではないかという点につきまして、疑いを抱きまして、万一、またもし数年以上この予防注射を励行したために、予防注射は要らぬのじゃないかというような声も東京ではぼつぼつ出ておりますので、その点に対しまして学問的にも、確実に犬に病毒が弱毒化しても存在しないということを立証する必要を感じまして、すでに約五十頭でございますが、次々とこの病毒を植えつけまして、この病毒の変化の状況を探求する、こういうことのためにやっております。しかも、その過程におきまして、二年前に今回の直接取り扱った島田君が、その間に、今まで長時間を要したこの狂犬病の犬の病毒発見方法を、わずか十分以内でやるという、非常に優秀な研究もその副産物として出た、そのために、まだ継続中であった、こういうことでございます。
  5. 坂本昭

    坂本昭君 非常に貴重な実験継続で、その中から世界的にも優秀な補体結合反応による診断とか、こういう技術が生まれたことはまことに喜ばしいことだと思います。しかし、今回の事件は、研究者としては最大の恥辱だと思います。少なくとも、研究者としての失格である。科学者としてはゼロだと思います。私も現場に行って見ましたけれども、おりは非常にがんじょうである。ところが、そのおりの中にいる、刻々狂犬の症状を呈していくであろうところの犬、それにえさをやる人はずぶのしろうとがやっている。戸をあけて、そうしてそのま手を突っ込んでやっている。もしその間に発病しておったら、がっといきなりかみつかれて、えさをやる人が狂犬病になってしまう。そういうおそれがあるような、非常に何といいますか、ずさんな実験をやっているということ、それから、なるほど狂犬をわざわざ作るために脳の中に直接接種している、脳へ接種するとビールスが神経に伝わっていって、唾液に出にくい、だからかまれてもなかなか狂犬病にはなりにくい、そういう理屈はあるようです。あるにしても、わざわざ狂犬を作っている実験の中で、まことに普通の犬を飼うようなやり方をしているということは、私はもう科学的な実験としてはゼロである。たとえりっぱな業績を過去に上げてきたとしても、この研究所研究機関として失格である。私はそう思わざるを得ないのであります。私自身長い間研究をしてきたものだし、また、今後もする機会があるかもしれないので、しろうとの方からこんなことを批判されては全く情ないので、この点もう徹底的に今度の責任一つ私は追及しておきたいと思う。従って、この事件責任者はだれか、つまり研究責任者はだれか、また、この犬の管理責任者はだれか、その点一つ明らかにしていただきたい。
  6. 尾村偉久

    政府委員(尾村偉久君) 御意見通りに、この非常におそろしい病毒を、植えつけた犬の管理ということは、これはもう厳重過ぎるほど厳重にしないといかぬわけです。今まで研究機関でこういう病毒を扱う場合に、特別な取り締まり法規がないというようなことでございますが、この点は、もう研究者というものが、必要以上に、おそろしさがあり、また、それがどういうふうにして繁殖し、また、ほかに動いていくということは知り過ぎるくらい知っておるという良識にたよりまして、当然こういう研究室等取り扱いは学問的に十分だと、こういう信頼感で行なわれておるわけでありますが、その点につきまして、今回の研究責任体制というものについては、私も現場にさっそく翌日行きましたが、そこで聞いた範囲では、確かに疎漏があるということが認められる、ように思います。たとえば、動物小屋管理者というものはだれかはっきりしておらない。もちろん、所長が所全体の施設なりあるいは運営管理しておるということでございますが、これは所長としての限度でございますので、この研究危険度のものの保守、管理という点にはそうは手が届かぬ、従って、そのランクを下げたそれぞれの管理責任者がいるべきなんでありますが、この点は置いてなかったということが明白でございます。従いまして、こういうような組織を置かなかったという点について、一つのこれは責任があろうかと思います。それからいま一つは、それにいたしましても、この危険な動物自体研究に使っておる間には、一番扱っている研究者専門家であり、また、危険度なりその始末についてのやり方を一番心得えておるわけであります。この方が責任者であるのでありますが、不幸にいたしまして、十二月末に、それまでここのちょうどその責任者であった獣医衛生科長から、四谷保健所衛生課長に実は転勤になりました。しかし、これは非常に長年やっておりました研究内容でございますので、他に譲れないということで、本庁の特例の許可を得まして、この犬の研究部面についてのみ仕事をここでやる、こういうような許可のもとに、実は土曜、日曜通ってきておったというわけで、毎日ここに常座しておらない。もしおれば、これは獣医衛生科動物小屋を一応中では管理しておりますので、そこの科長でありますから、常時すぐ前の室にいるわけでありますが、これがいなくて、土曜、日曜に来て研究を続けておる。その間にえさだけをやる。もちろん、その間には、病毒による発病がいつ起こるかということで、この発病視察には適時来ておったわけでございますが、一方の仕事も持っておりますもので、常時ここにはおることができない。こういうような欠陥が今度は起こりまして、この点で、今の研究管理並びに犬小屋管理、両面について欠陥がありまして、責任者がだれかということは不明確で現にあったと、こういうことになっております。
  7. 坂本昭

    坂本昭君 責任者が不明確であるというそれ自体が、私は責任問題だと思うのです。従って、そういう点で、公衆衛生監督の立場にある行政当局としては、この際は、私は、こういう問題をゆるがせにするということは、これはもう厚生行政のしめしがつかないと思います。ちょうど伝染病——赤痢とか、そういったものの予防行政措置を担当している人たちが、ことさらに——もちろん誤ってでしょうが、赤痢菌をばらまいたとするならば、その責任は普通の場合よりもさらに倍加されなければならないと同じように、私はあくまでこの点は、研究体制あるいは責任体制欠陥があるとするならば、その欠陥そのもの責任をこの際追及していただきたいと思うのです。特に公衆衛生の見地からいいますと、こういう危険な実験、あるいは危険な研究有害物関係のある研究所、こういったものの取り締まり法規がどうなっておるか、これはひとしく全国民が私は懸念する問題であろうと思います。これは、たとえば、例をあげれば無数にありますが、当面するものとしては、放射性原子力研究所関係のウエースト・ディスポーズでございます。それから、ペスト菌コレラ菌腸チフス菌を扱った場合の、こういう場合の事故に対して、どういうふうな取り締まり研究機関に対して行なわれておるか。これはきわめて専門的なことを申し上げますので、委員の各位御迷惑かもしれませんが、イギリスには有名な小説があります。ある自殺をしようとする青年が、研究所からコレラ菌を盗んで、それをポケットに入れて町を徘回していくという、こういうおもしろい小説があります。こういうことは、日常もう起こり得るのです。今度はたまたま狂犬という犬の形で出たので、新聞も取り上げましたが、目に見えない格好で、ビールス、あるいはペスト菌、こういったようなものが同じような形で取り扱われておる。従って、この際、どういうふうな取り締まり法規によって守られておるか、その御説明をいただきたい。同時にまた、今後こういうことがあるとすればどういうふうにしていくかというお考えを伺っておきたい。
  8. 尾村偉久

    政府委員(尾村偉久君) 現在この病毒等有害物に対する共通的な取り締まり法規は実はないのであります。たとえば、そのうちの伝染病予防法に列記されておるものは、患者を発生し、それから患者を中心にいたしましていろいろ病毒一般に散布されるということに対しては、伝染病予防法なりあるいは検疫法なりにおきまして厳重な規制が行なわれておりますが、それらの研究試験に積極的に病毒増殖等をしておるということに対しては、この法規自身はかからないというような——もちろん部分的には、態様によりましてはかかりますが、一般的にはかからないというようなことになっております。従いまして、こういう危険物を扱っておりまする研究機関に対する取り締まり監督といたしましては、官公庁に対しましては、これはそれぞれの管理規定、これに基づきまして、それぞれが細則的に何々研究所運営細則というようなものを、設置庁の長の認可を受けまして、それに服従する。従って、これに違反した場合には、公務員としてそれぞれ服務の違反として処断するということになっております。それから民間の場合、あるいは一般私立大学等、こうい場合には、現実には、行政的にこういう取り締まり監督処罰等をもってする規制はないわけであります。結局それは、大学でありますれば、大学法規に基づきまして、大学でやっております学校運営規則とか、あるいは学校設置人員に対する規定範囲内でやられまして、実際にそこでだれを責任者とし、また取り扱い、あるいは携帯、保存というような細部については、行政的な取り締まりとの結びつきはないので、これは研究者専門知識良識に待って、そういうことはないという建前でやっておるわけでございます。しかし、これはこういう社会から見ますと非常な危険物でございまして、やはり、専門研究者のみならず、そこには補助者もたくさん使っておることでございますので、この取り扱いについては、管理運営一定の基準になるものはぜひ必要ではないか。今度のことにかんがみまして一そうそういうことを痛感いたしましたので、これは十分研究いたしまして、何か規制の形を、これは法律になりますか、あるいはその他の方法でできますか、検討して、この世の中が安心するような方途を講じたいと、こう存じております。なお、とりあえずは、ちょうど今朝九時から地方衛生研究所——今回事件を起こしました東京都立衛生研究所等地方衛生研究所長会議を招集いたしまして、ただいまここに参りますまでに、この点について非常な厳重な警告とやり方等についての討議をしておりまして、十分注意を喚起しておりいす。なお、そのほかに、研究所としてはもちろん人員の問題、あるいは施設問題等でそうやりたくてもというような意見もございますので、この点については監督責任である地方長官について、ただいま緊急のための通牒を今作成いたしまして、今明日中に出して注意をうながす。なおこの点は、直接の監督権はないにいたしましても、直轄の衛生機関のみならず、それぞれの管内にあります類似の衛生研究機関にも指導する。こういうようなことを盛り込みまして現在作ったわけでございますから、さしあたりはそういうことによりまして、二度と繰り返さないように現在できる限りのことをやっております。一方では基本的な監督規制のことを考慮する。かようにいたしたいと存じます。
  9. 勝俣稔

    勝俣稔君 昔はペスト取締規則というのがありましたけれども、現在はそれはなくなっているわけですか。
  10. 尾村偉久

    政府委員(尾村偉久君) これはなくなっております。
  11. 勝俣稔

    勝俣稔君 いつなくなっているのですか。
  12. 尾村偉久

    政府委員(尾村偉久君) この点はなくなっておるときはよく存じませんが、よく調べまして御返事いたします。
  13. 勝俣稔

    勝俣稔君 ペスト菌取締規則というものは非常に厳重なもので、警視庁なんかでもこれを取り扱うことはできませんで、伝研では取り扱うことができるようになっております。いろいろな規則がございまして、その設備がなければできない。われわれも菌を見ることは警視庁細菌検査所ではなくて、伝研の力からプレパラートをもらって見せてもらうというようなことをやっておったのですが、僕はまだその規制が生きているものだと、実はそういうように思ったので、それならばそういうものに準じて考える必要があるのじゃないかと、こういうふうに今思ったものですから、ちょっと質問した次第でございます。
  14. 坂本昭

    坂本昭君 私は、研究所の科学的な研究の自由を束縛しようとは思わないけれども、今の勝俣委員の言葉の通りペスト菌取締規則がいつからなくなったかわからないというような状態の中で、もし科学者研究者が少し慎重さを欠くような場合、特にそのだれか補助者のような人間が故意に扱うような場合の危険は十分考慮していただきたいと思う。今度の狂犬病事件は改悪だとは思いませんが、非常にこれは科学的な研究に対して大きな示唆を含んでいる。従って、研究の自由を束縛する意味じゃなくて、危険をいかにして予防することができるか。そのための立法というようなことについては慎重に考慮してわれわれとしても審議をし、将来の危険を未然に防いでいきたい。そう思います。  ところで、都の衛生研究所、これは狂犬病については非常にいい業績をあげているとは思いますが、こうした困難なテーマを扱うのに、それにふさわしい能力組織設備とを持っているというふうにお考えになりますか。
  15. 尾村偉久

    政府委員(尾村偉久君) これは比較の問題でございますけれども、全国の今各府県には一カ所ずつは全部衛生研究所がございます。この中では一番能力も高く、比較的設備も最右翼の方に近い、要するにトップクラスのものでございまして、従って、地研として全般的に高くするという点から行きますと、最近のように地方庁における科学衛生検査の量が増大して参りまして、質的にも量もふえて参りましたので、全般的に高める必要があると存じますが、地研として従来きました中では一番トップクラスでございます。
  16. 坂本昭

    坂本昭君 そのトップクラスの都の衛生研究所、ここで職員の数が三百三十七名おります。医師が七、薬剤師三十九、獣医師十九、その他の技術者百人、確かにトップクラス研究機関だと思う。ところが、ここで特に獣医師が十九名もおって、一番大事な研究であるこの狂犬について、その犬にえさをやる、これはもう実験一つなんです。ところが、それをやる人がこれを臨時の全くのしろうと、こういうことではこれはどうもトップクラスという名に私はふさわしくないと思う。都の衛研がこういうことなんです。地方研究所実態というものは、もう推して知るべしであって、これは国民皆保険とか何とか言ったって、とても始まらない。公衆衛生というものは国民医療を推進していく大事な要素でありますし、従って、こういう点で地方衛生研究灰をどういうふうにして強化していくか。都の衛生研究所でさえすでにしかり、地方衛生研究所をその任務にふさわしいように高めていく具体的な方針、どういうお考えをもっておられるか承りたい。
  17. 尾村偉久

    政府委員(尾村偉久君) 地研強化が非常に必要なのでございますが、それにはやはり地方で今国からの補助金も出ておらない。地方庁責任において経費も県でやっているわけでありますが、これが県によりましてやはり重要性認識というものに相当の高低がございまして、最近の地研衛生行政の中で非常に大事な科学的な基礎を与えて行政の裏づけを与えるというものの必要性を増しているのにかかわらず、必ずしもそのように遇されておらないという点がございますので、私どもとしてはむろん指導でできる点もございますが、これも限度があるかと思いまして、先般から関係者すなわち地研管理者ないしは衛生部長等意見も、ぜひ保健所のごとく地方衛生研究所法というようなものをぜひ用意して、この地研任務と、まあ権限も相当持っておりますし、それから他の一般研究機関ないしは保健所研究室等との分担の業務を明確にして、と同時に、そこに備えるべき能力、すなわち施設とか、人員とか、あるいは機械とかというようなものも一定最低水準というものを国でむしろ示してもらって、それによって安心してこの任務を果たしていきたい、こういう声も非常に強まっておりますので、私の方でも一昨年来、これの法案化をいろいろ研究中でございまして、それには地研実態を綿密に明らかにするということで、二度にわたりまして実態調査をやりました。現在第三回目のさらに詳細な業務内容と、定員をどうするかという関係実態調査を今続行中でございますが、さような形でまず法による一つ強化策、これはすでにいろいろなこういう幾関についてそれぞれ法によって強化策考えられているものが多いものでございますので、今までされておらなかった地研に対して、これも一つぜひ考えたいというので、今研究中でございます。  いま一つの問題は、やはりこれとも関連がございますが、地研予算につきまして、これも地方庁によりましてまちまちでございまして、ほとんど地研のかせぎによってその経営費を出そうというところも相当ございます。あるいはさようなことでなくて、これはもう相当重要な行政事務であるとして、十分なる一般予算を組んでやっているところもあり、まちまちでございますので、そのために地研職員もいろいろ苦労するわけでございますが、そのためにはやはり保健所のごとく、まず基本的になる部面は国である程度の補助予算を出して、それに率をきめておけば必ずそれだけは最低限府県庁一般予算を組むと思いますので、これが非常に必要ではないかというふうに思いまして、実は三十四年度予算で企図したのでありますが、いろいろな都合でこれが査定削減を受けまして成功しなかったのであります。これも法案とあわせましてぜひこれも制度化したい、かように存じておるわけでございます。これによりまして、まず基本ができ、さらに、そうは言いましても、管理者管理運営についていかにいい設備の中でも、かぎをあけておいては何にもならぬ。あるいはポケットの中にうっかりキイを持って帰るというようなことがあっては、これは何にもならぬのでございますから、この点の管理運営については、とかく研究者の方が多いわけなんで、こういうような一般的な行政のふだんの扱いについて、これは十分指導監督しなければならぬ。実は今明日も、その点の方に重点を置いた相談をしようということをけさ申したわけでございます。かように考えおります。
  18. 坂本昭

    坂本昭君 大臣のかわりに内藤次官にこの際伺いますが、ただいま地方衛生研究所法というようなものを立法化して、予算も確保していきたい、そういう局長の答弁を、いただきましたが、すでに保健所法みたいな法律が施行せられて多年になりますにもかかわらず、保健所運営というものは、きわめて今危殆に瀕しております。そういうのが日本衛生行政、特に公衆衛生行政実態であります。先般も当委員会では国立予防衛生研究所視察に参りまして、特に今回も問題になった動物舎動物舎というのは、実は実験の上から参りますと、一番大事なものであります。この予研の動物舎あたりも、たとえば小児マヒワクチンのいろいろな検定をやるために、冬暖房装置動物舎に要る、これはサル生活環境をよく維持して、そうして実験がうまくいくようにするための冷暖房装置、ところが財政当局は、サルにはもったいないというわけで、それを削ってしまう。そういったことが、この東京都の衛生研究所動物舎の実情を見ても、三重の囲みを破って出ている。一番最初に鉄のおり——かぎを私はしていなかったと思うのですね、しかし、それにしてもあと二重の、破れるようなちゃちな板囲いであるというようなこと、こういったようなことでは、ほんとうの実験はできないと思う。国立予防衛生研究所に行きますと、あそこで一番使っているのは小児マヒワクチンで、ソーク・ワクチンというやつです。ところが、今日小児マヒワクチンソ連などではセービング・ワクチンの生菌を使っている。去年もソ連の何といいますか、お世話になって、八戸の近郊の流行状態予防したという、まことに科学日本としては恥ずべきことが起こりました。ところが、もしソ連から今度ソーク・ワクチンでなくて、セービング・ワクチンを送られたらどうするか、検定設備がないんですよ。日本は何もソ連まねをして、水爆を作る必要がありません。しかし、小児麻痺ワクチン検定くらいのまねはできなくちゃいかぬ、ところが、実際予算を見ても生菌ワクチン検定する場合の予算というものを持っておりません。そうしてまた、それだけのサル等を十分生かしていく冷暖房装置もできていない。これはまことに私はお粗末過ぎる実態だと思う。これは大臣にかわって、一体この公衆衛生基礎というものは、科学的な研究ということ、この点を一体十分御認識になっておられるかどうか、内藤次官一つ考えをいただきたい。
  19. 内藤隆

    政府委員内藤隆君) 今回の日本における狂犬の被害があったという問題は、私実は新聞見て驚いておったわけです。ただいま坂本委員局長との質疑を承っておりますと、仰せごもっともでございます。かような点等につきまして、予算的措置が講ぜられていないというようなことも、厚生行政の上から遺憾なことであると率直に認めざるを得ない。ただいま仰せになりましたごとく、将来の公衆衛生というものはあくまでも科学的な立場に立って、そうして研究を続けていかなければならぬということは仰せの通りでありまして、お趣旨に沿うような立場でもって進みたいと、かように考えておるわけであります。
  20. 坂本昭

    坂本昭君 最後に一点、きわめて具体的な問題として、都民は今度の事件について非常な関心を持っております。従って、その後、狂犬実験された犬がどういう犬であったか、そうしてその後この正体がいつわかるか、さらにかまれた犠牲の子供三人のうち、ワクチンの注射を受けている子供は二人のようですが、その子供の経過はどういう見通しであるか、それら一般都民の知りたい緊急の問題について、当局の御説明をいただきたい。
  21. 尾村偉久

    政府委員(尾村偉久君) 第一に、犬はかみました当日、直ちに殺しまして、犬の唾液を初め、脳体その他の実験に、試験に供しております。最終的に一番これで絶対に、安全だという確率の立ちますのが、要するに唾液を今動物に植えまして、病毒が唾液にあったかどうかを植えておりますが、これの結果が、陽性、陰性の確定いたしますのに、あと十日ほどでございますけれども、きょうから全体で二週間かかりますので、約十日目にこれがなかったとなれば、現実にはかまれても病毒は人体には絶対に入らなかったという確証が上がるわけであります。これが最終の一番の一〇〇%確実な、安全だという日でございます。それから三人かまれまして、十五才の一番年上の子はズボンの上からかまれましたが、詳細に臨床家が皮膚その他を検査いたしましたが、これには傷の口も、唾液も達しておらないということが判明いたしまして、これは全然可能性がないということで予防注射も始めなかった、これは確実に大丈夫だった。あとの十才と三才の二名でございますが、これはそれぞれ皮膚に傷がありまして、入ったという見込みで予防注射を続行中でございまして、現在のところ傷口も、これは非常に軽微でございまして、よく狂犬病毒の入る可能性のあった過去の経験のようでございますが、そういう場合の傷の経過とは全然違って、非常に軽微であるということで、たぶんもう一、二日の観測によっては、臨床的にはこれは入らなかったという確証が言えるであろうかということで権威者の方がやっておられますが、もう予防注射もやめてもいいんじゃないかというようなことに現在なりつつあります。さような意味で多分今のところでは一〇〇%とは言えませんが、咬傷を受けました人間の方の被害は、これは傷だけで、狂犬病としては発生しないで済むという確率がほとんど一〇〇%近く高いという状況になっております。この点はまずまず安心、ただ心配なのは犬が毒殺されるまでの七、八時間の間と推定されますが、五百メートル歩行中に他の犬をどうかんでおるかということで、すでに野犬を、あの約一里平方の間で百五頭つかまえて抑留いたしまして、ふだんの野犬の見込み数から見ますと、むしろよそから入ってきたものまで全部やってしまったらしい数になるそうでございます。そのほかにもちろん定期注射は、あそこにある保健所管内だけで四千頭の拘留犬があるわけでございます。これに対しては十月以降に全部第二期の注射を終わったわけでございます。さらに心配そうなところを無料による臨時の予防接種を今続行中であります。すでにあの近辺の二百八十六頭には予防注射を終わっておりますので、まずまず大丈夫であろうということでございまして、これは逐次都庁の方から、できるだけ都民に安心のいくように適切な発表を続ける、こういうことにいたしております。
  22. 坂本昭

    坂本昭君 最後に一言申し述べておきたいと思います。諸般の事実を総合すると、この実験狂犬を作るためであったことは間違いないが、まだ臨床的に狂犬と診断するところまでいっていないらしく、そういう点が研究者に懈怠の念を起こさせて、こういう実験の犬が逃亡するという事件を起こしたとも考えられる点があります。しかし、いずれにしても研究者としては私は重大な失態であり、研究者としての資格を私は失うに足る事実だと思う。で、まことに研究者に対して私は気の毒だとは思いますが、涙をふるって馬謖を切るということをして、日本の科学研究の前進のために、この際努力をしていただきたい。それが一点。それからまた、幸いにして地方衛生研究所人たちを呼び集めておられるということでありますが、この研究に対しては研究者はきわめて良心的なものであります。法律によって締るということ以上に、研究者の良心は法以上にもっと強いものだということをわれわれは信じている。従って、この際、研究者の助成に対し、さらに全国にあるこういう危険有害な実験関係のある人たちに対して、適切な一つ指導を実施していただきたい。ただ、最後に申し上げたいことは、責任はあくまで追及すると申しましても、私はこの研究にやめよということをわれわれは言っておるのでは決してありません。幸いにして狂犬病はなくなってきておる。なくなってきていますが、この病毒ビールスの種子を保存して、そしてこれを研究していくという任務は、ごく少数の狂犬病の特殊な研究者にとっては大事な任務である。やはりそういうことをする人がおらないと、いざというときの公衆衛生の実際が行なわれない。政治家というものは、これは幾らでもあとがまはおるんですけれども、こういう科学的な研究者というものはなかなかあとがまがおらぬ、一朝一夕にしてできるものではない。従って、私はそういう点で、あくまで責任を追及していただきたいが、研究者を大事にするという点、その特殊な技術を保存し、これを守るという点について万遺憾のないように私は特にお願いして、今後とも研究者の環境を守ると同時に、研究者自身の慎重さを要望して私の質問を終わりたいと思います。
  23. 高野一夫

    ○高野一夫君 尾村局長に伺いたいんですが、今度の今、坂本委員の御質疑になった問題について、責任の所在がはっきりしないとか、責任者がいるような、いないようなお話なんですが、いなければ別として、はっきりとした責任者が出た場合、これに対して処罰する方法が、はっきりした刑事罰みたような処罰する方法がないようなお話なんだけれども、刑法その他何かありませんか。  それからもう一つは自分の飼い犬が狂犬病になって、そうして近所の犬をかんだ、あるいは子供をかんだ、そういうような場合に、その飼い犬の飼い主には何も責任がないのか、また、それを処罰する法律的のよりどころはないのかどうか、こういうことは狂犬病予防法のほかに適用するはっきりした法律がないのか、特に刑法関係なんかでそういうのを適用できるような条文がないのかどうか、それを一つ伺っておきたい。
  24. 尾村偉久

    政府委員(尾村偉久君) 今回の件につきまして、その失態に対する責任者がきまりますと、今回の場合都庁でございますので、都の公務員としての行政罰というものは加えられる、そのほかに今新聞にも出ておりますように、直接の特定の病毒をやったための法律に基づく罰等はございませんが、一般の傷害ないしは死ねば致死、それも業務上ならば業務上というように、これは一般の問題としてございます。それによりまして、今いろいろと捜査が進行中でございます。  それから一般の家庭で飼っております犬が、万一狂犬病になった場合の処置につきましては、これは狂犬予防法の方にも罰則もついておりまして、これの拘留命令、それに対する違反、あるいは犬がかんだ場合は、その傷害に対しましては罰というよりも、損害賠償等の民事上の問題も起こる。それから今の義務を怠っておれば予防法に基づくもの、それから過失傷害であれば一般の刑法罰、こういうのはもちろんございます。
  25. 山本杉

    ○山本杉君 坂本先生がいろいろ御質問になったので、あとは蛇足でございますが、さっき都民の関心というような点からの御質問がございましたが、それでもう一点だけさせていただきたいんですが、それは狂犬病予防注射をしますと、コルサコフ病ですかということを非常に心配する向きがございますが、はたして狂犬病でなかったなら、注射しなかった方がいいんじゃないか、さっそくにお手当があったと思いますけれども、これに対してどういうふうにお考えでございますか。
  26. 尾村偉久

    政府委員(尾村偉久君) これは狂犬病の人間用の予防注射は、大体かまれてからやるものでございます。過去は約十九回、現在十一回の精製物ができて参りましてよくなっております。過去にはこれによります副作用として、あるパーセンテージで中枢神経の麻痺を起こす、ひどい場合には一生廃人になるというような副作用を起こしたものも相当事例がございまして、おそれられておるわけでございます。従いまして、もちろん疑いがない者に、一般的な予防注射として軽々にやるべきではない、しかし、過去よりは最近の予防ワクチンの精製、あるいはその性能から見まして、非常に副作用は少なくなっている、こういうことになっておりますので、前のような危険はないと思いますが、従いまして、今の臨床の専門家、それから今の検査結果それをにらみ合わせまして、大体いいとなれば、早くそいつは中断するにはしくはない、かように存じております。
  27. 山本杉

    ○山本杉君 こういうふうな事故が起こるということは、これは今度のことばかりじゃございませんけれども、日本では科学の研究が非常に進歩しているのでございますけれども、これに対して国民の生活の中にあるレベルが低いとか、あるいは公衆衛生、今御指摘になりましたいろいろな面で、公衆衛生の面でもまだ行き届かないところがたくさんあると思いますけれども、それについて三十五年度の予算をおとりになるときに、動物の実験予算、これが削られてしまう。さっき坂本さんもおっしゃったように、国立予研へ参りましたときに、中村所長に、私が大へん動物舎が貧弱だということを申し上げたら、予算がとれないので悩んでいるということでございます。国立でさえそういうわけでございますから、ほかは推して知るべし。厚生省としては、この動物などの面で、大幅に予算をおふやしになるお考えがありますかどうか、一つお聞かせ願いたい。
  28. 尾村偉久

    政府委員(尾村偉久君) 予研のは確かに新しく新築すべき動物舎でございます。これは当初は二年計画で一挙にということでございまして、その初年度予算要求をしたわけでございます。これが大部分削減されまして、減額を受けました。このままの額が毎年入るとすると三年かかってしまう。それではとても伝研の方から新しい方に動物舎だけ残して、いつまでも引っ越してこられないということでございまして、今度はかような結果になってわれわれも遺憾に思っております。残りをやはり二年間で済ますように、第二次である三十六年度予算は、当初の総額がこの年次で終わるように、十分取るようにぜひ努力したい、こう思います。  それから地方に対しましては国の直轄予算でないので、とるとすれば、やはり先ほど申し上げましたように、地研法等の法の整備をいたしまして、補助規定等を設けるということをやる必要がぜひ要るのではないか、かように思っております。さように努力したいと思います。
  29. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 都会の中では野犬というのは割に少ないのですね。それがいなかへ行きますと、野犬というものがよく歩くわけです。それがどうも最近数が多くなったか、めんどうを見る人が少なくなったというか、それは人が管理をしないと、すぐそういう狂暴性というものが生まれてきて、そういう中から不衛生というか、そういうところから狂犬の問題が出てくる。だから野犬を徹底的に撲滅するとしても、嗜好で犬を飼うわけですから、どの程度嗜好を制限するかということはむずかしい問題であると思うけれども、こういう点は保健所が人を雇ってそしてやらせていると思うがその点うまくいかないようですが、どういう措置をとっておられるか、この際お聞きしておきたい。
  30. 尾村偉久

    政府委員(尾村偉久君) この野犬の増加につきましては、これは捕獲して全部抑留し、さらにみんな殺してしまって有用に使っておるのでございますが、これを励行することと、それから野犬の発生の原因をよほど指導しなければいかぬのですが、これはむずかしいのでございます。実は自分の畜犬については厳重に県ごとに条例も作っておりまして、必ず人がついて鎖でつながなければ歩いていかぬというふうに厳重にしておりますが、妊娠いたしましてたくさん子供を産んでしまいますと、子供のうちに知らぬ所に適当に捨てられてしまう、これがみんな野犬になってしまう。これが年々次々と跡を断たずに、大体今全国で推定畜犬二百五十万頭に対しまして、いろいろサンプル調査で百万野良犬がいる。毎年十万頭は一年懸命努力いたしまして捕獲してこれを殺しておるわけであります。また、翌年には戻ってしまう。すなわち大体推定から見ますと、二百五十万頭の犬がおりますと、夫婦の成犬から出るものの数から見ますと、六十万頭殺したのでは、またそれが捨てられることを想定いたしますとまた埋まってしまう。ですから、もう次々と年じゅう捨てられたものをどんどん発見して抑留、撲殺、薬殺、これの励行以外に手はないのであります。一般にはまた畜犬家の良識をPRして、捨てるならば、届け出て、最初から野犬にしないで、抑留所に持ってきてもらう、そこで始末してしまう。この習慣がつきますと非常にいい。そういう、ふうにぜひ励行してもらうように指導したいと思います。
  31. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) それでは、狂犬病の問題に関する本日の質疑はこの程度にしたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  32. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) 御異議ないと認めます。   —————————————
  33. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) それでは次に、医療金融公庫法案を議題といたします。  前々回の当委員会で資料の要求があったわけでありますが、ただいまお手元に、貸付対象の範囲、貸付条件、病院、診療所、薬局及び助産所の標準建設費、それから分厚い資料といたしまして、病院の要整備ベット数の調査、その他の資料が出ておりますが、まだ若干残っておるものもあるようでありますから、残っておるものにつきましては、早急に整備提出願うように厚生省に申し入れをいたしております。  それでは本法案の審議に入りたいと思いますが、竹中委員から質疑の通告がございます。御質疑をお願いいたします。
  34. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 医療金融公庫法案に関連いたしまして、実は基本的に医療機関の整備対策ということについて、本来なれば厚生大臣に所見を承りたいと思うわけなんですが、衆議院の方に行っておられるそうですから、次官にかわってお答えを願いたいと思います。  いよいよ国民皆保険が、実施されることに相なって参りますと、当然医療機関の整備分布状況というようなことは国の責任においてなさなければならぬと私は思う。国民から保険料を取っておる限りは、医療の利用ということに対しましてはきわめて効率的なものでなければ保険料を取るということ自体おかしいと思う。そこでそれを前提としてお尋ねするわけなんですが、医療機関に対しましては、従来公的な医療機関には国の責任で相当高額の金をお出しになり、あるいは貸し付けるというような方法でもって助成されて参られたわけであります。これは当然けっこうなことであるわけなんですが、その結果を見ますというと、都会集中といいますか、あるいは採算ということを考えあわせまして、あるいは人口の少ない所では利用も少なかろうというような意味もあったのじゃなかろうか。とにかく採算に乗るところの条件下においてやっておられるわけであります。一方、私的医療機関に対しましては何らの助成なり援助の方法はなかった、今度金融公庫というささやかなものができようとしておりますが、国民皆保険を実施する場合において、私的医療機関に対する援助、助成策というものはこの程度のものではたしていいかどうかという点についての御説明を伺いたい、かように思うわけであります。
  35. 内藤隆

    政府委員内藤隆君) この程度では、とうてい国民皆保険の医療機関という点からして満足であるとは決して思わない。これは年々充足いたしまして、そうしてその要求にこたえるだけの資金量を持ちたい、かように考えているわけでございます。
  36. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 もちろんこの金融公庫の法案の内容くらいで皆保険に対する機関整備上の対策としては満足じゃないというお答えは当然だろうと思います。  そこでそれを前提にしてお聞きするのですが、無医村地区対策ということにつきまして、ただいま配付された資料によりましても、貸付対象の中にもあるわけでございますが、やはり貸付対象としては過剰でないところに新設を認めるという建前で、大体これは当然そうあるわけだと思うのでありますが、ただ無医村地区対策として、重点的にそういう考えのもとにこれを発足されたのじゃ医療金融公庫法の目的そのものに沿わないと思います。無医村対策というのは政府がもっと別個に考えなければならない、もっと本腰を入れて、十億、二十億の出資金ではなしに、もっと別個に無医村対策は考えなければならない。その理由は、無医村地区というのは採算に合わないのだから、わずかな資金を貸し付けるということによって解決するのじゃない、結局、永久に赤字というものを覚悟してやらなければならないと思います。そうすると、公的なもので無医村の解消をするということでなければ私はいけないと思う。しかし、それがまだそういう制度がないとすれば、あるいはたまたまそういう地区に篤志家があって開業するという希望があれば、その人に金を貸すということは当然いいことなんですが、そういう点について無医村対策ということについては一体基本的にはどういうように考えておられるのかお聞きしたい。
  37. 内藤隆

    政府委員内藤隆君) 詳細なことは事務からお答えいたしますが、要するに、医療金融公庫は採算のとれぬ——というと少し語弊があるかもしれませんが、採算のとれないような無医村、僻地の所へは貸付の対象としては、少し困難じゃないかと、かように考えるわけであります。
  38. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 ああ、そうですか。局長さんの答弁も……。今の次官の御答弁によりますと、やはり私が憂えておるように採算のとれないようなところに貸しても償還不可能なんですね。そういうこともあるからそういう僻地に機関が必要だということはわかるが、この医療金融公庫から貸すということは適当でないと、こう解釈していいんですね、それでいいんですね。
  39. 内藤隆

    政府委員内藤隆君) はあ。
  40. 川上六馬

    政府委員(川上六馬君) 今、次官がおっしゃいましたように、むろん採算のとれないところにはおそらく金融の申し出がないと思いますが、ただ御参考までにちょっと述べておきたいのは、二十七ページに、今差し上げました「医療金融公庫法案参考資料」として、一番分の厚い資料でございますが、その二十七ページに無医地区、無歯科医地区の数の調べが出ておりますが、その中に無医地区の第三種、それから無歯科医地区の第三種という項がございまして、それに無医地区の方は百十二、それから無歯科医地区の方が四百十八という数を出しておりますが、この第三種のこの分は、この下の(注)に書いておりますように、まあ作れば経営が可能ではないかというように認められるところがあるわけです。こういうところは、あるいは資金を特に融資をすれば申し込みがあるかとも思うわけです。考えればその程度のことだろうというふうな今考えを持っております。
  41. 坂本昭

    坂本昭君 無医村、無歯科医地区、説明は違っているのじゃないですか。プリントはこれでいいのですか。
  42. 川上六馬

    政府委員(川上六馬君) そうですか……。
  43. 坂本昭

    坂本昭君 この前の村長の説明と違うわけです。これでいいのですか。
  44. 川上六馬

    政府委員(川上六馬君) この前申しましたのは、この前第二種の中の二百三十七を国がやっておるというように申し上げたように思いますが。
  45. 坂本昭

    坂本昭君 二百三十七……。
  46. 川上六馬

    政府委員(川上六馬君) 二百三十七ですが、国庫補助をやっております分がこの六百五十六の中で……。
  47. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 国庫補助によるのがこれは第二種ですか、二百三十七……。
  48. 川上六馬

    政府委員(川上六馬君) 二百三十七が六百五十六という第二種の中に含まれているわけです。
  49. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 ただいまの御答弁で概要は、貸付対象に対する考え方はわかったわけなんですが、私が特に最初に取り上げましたことは、無医村対策、無歯科医地区対策を根本的に一つ至急に立案をしてやっていただきたい。国民皆保険で保険料をとった限りはどうしてもそこまで踏み切ってやっていただきませんというと、皆保険の名も実も整わないという点が一つと、それから無医村対策は融資のみでは解決しないのである。ましてこの資金量の上からいうことは困難であるということと、それからそういう地区に篤志家があって開業する場合には当然出されることはけっこうなんですが、優先的に無医村地区に貸すというような考え方であっては私は困ると思うので、そういう意味合い等を、三点を含めて実は御質問申し上げたのですから、将来これを運営するにあたって中央で審議会等ができる、あるいは中央において取り扱うときにはそういう方法が反映するような政令なり何なりの態様を私どもも努力していきたいと、こういう気持を持っているわけなんです。  そこでその次にお尋ねいたしまするが、これは法文上の解釈なのであるいは局長さんないし次長さんでもけっこうなんですが、第一条の目的の末項に「一般の金融機関が融通することを困難とするものを融通することを目的とする。」となっておりますね、これは他の金融公庫法にもうたってある例もあるわけなんですが、一応この機会に明確にこの解釈をつけておきたいと思う。一般の金融機関が融資することが困難な場合というわけなんですが、医療機関のような長期低金利というような意味合いを意味しておるのか、何かほかにも解釈が成り立つのか、一応お伺いしたい。
  50. 黒木利克

    政府委員(黒木利克君) 第一条の「一般の金融機関が融通することを困難とするものを融通する」というのは、補足的と申しますか、一般の金融機関も医療機関に対して融資の道は開けておるわけですけれども、それでは長期かつ低利の資金を必要とする場合に応ぜられないというような事態が予想されますので、それを補足的に対象にする、こういう意味でございます。
  51. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 そうしますと、一般というのは通常の銀行等のことをいうのでしょうか、この附則の三十五か六に中小企業金融公庫との関係がうたってありまするが、中小企業金融公庫等に対しましてもそれ以上の条件を考えるという意味があるのでしょうか、やはり中小企業と同じような条件でという意味なんでしょうか。
  52. 黒木利克

    政府委員(黒木利克君) 一般というのは、一般の市中銀行という意味に解しております。
  53. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 そういたしますというと、一般の金融機関で融資困難な場合で、あるわけなんですが、中小企業金融の方は将来は貸出を中止するような考え方がありまするが、一般の通常銀行に対しましてはそういうことは考えておらないわけですか、その点はどうなんですか。この医療金融公庫法ができた限りは、一般の銀行からも借りないように持っていきたいという御意向なんでしょうか、貸付状況もちろん違いますから、借りる方は有利にこちらは借りると思いますが、個人としてはこちらで一ぱいである場合は、通常銀行からも借りたいという事態が私は将来出てくると思うのですが、中小企業金融公庫ではこの法律に見るように借りられなくなっても、一般の銀行の方は借りられるということでなければ私は困ると言いますが、そういう点はどうお考えですか。
  54. 黒木利克

    政府委員(黒木利克君) 御意見通りでございます。
  55. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 次は第四条の資本金の問題なんですが、これは当然国会で法律としてうたう限りは、わわわれが足らなければ変えるという建前ではあるわけなんですが、当局の提案者の考え方として、取りあえずこの程度ということでもちろんあろうと思うのですが、大体医療金融公庫でもって一つの私設の機関を助成するという場合にどの程度のことを考えておられるのか、さしあたり明年は一体どうなるのか、発足して一年間の実績を見なければわからぬことでありますけれども、およその計画なり、予測というものがあられると思うのです。前回は何か大蔵省関係の力に御遠慮なさってお考えをお漏らしにならなかった、われわれとしては大蔵省の方とあなたの方と同じように政府の方として質問するわけなんですが、前回のような態度では困るわけです。大体の構想、予想というものをお聞かせ願いたいと思う。
  56. 黒木利克

    政府委員(黒木利克君) これはお手元に差し上げてあります一番当初の資料でございますが、私設医療機関の整備資金に対する現有の融資の状況というので中小企業金融公庫と国民金融公庫の件数と金額が出してございますが、当初の要求ではこの程度のものは少なくとも確保したいということで、国旗金融公庫で一元的に金融をやりたいということで要求したのでございますが、いろいろな関係で、政府出費量を預金部資金の二十億を三十億で当初はスタートするということになったのでございます。なお、将来の計画については、大蔵省に差し出した計画はございますが、ついに将来の計画についてまでの話し合いができませんで、将来のことは今後需要等を見てみまして、再検討するということになっております。
  57. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 ただいまの御答弁、あなたとしてはあるいはそういうような態度に出なきゃならないのかもわかりませんが、当委員会としては、それではこれの審議ができないのです。やはり明年はどうなるんだ、長期的に十年先はどうだという一応見通しをつけて審議しなければ、ただ大蔵省と厚生省との共管であるからとか、あるいはいろんな予算、今後の折衝上の問題があるとかというような、あなた方だけの立場で、ベールをかぶせて審議しろと言われるんでは困る。どうしてもあなたの方で御迷惑であれば、あらためて委員長にお願い申し上げて、共管であるんだから、両方の係、担当官がおいでになった席上で審議をしていかないというと、私は審議ができないと思うのです。で、どうしても差しつかえがあれば、これ以上私はきょうは聞きませんが、しかし、あくまでもその点は承知した上でないと、私は審議が困りますから、どうかその点委員長の方でよくお諮りをいただきまして、厚生省としては、これ以上の将来の計画と申しますか、見通し、予想というようなことは、大蔵省の関係で言いにくいとおっしゃるのですから、これ以上は私は追及しませんが、お取り計らいを願って、適当な機会に、共管であれば両方の役所の方が出てこられて、資金面等についての質問をさせていただきたいと思うわけでございます。  それから今のとりあえずの問題としては、あなたの方では、中小企業及び国民金融公庫合計のざっと七十億円ですね、現在貸付残が。七十億円を目標にして折衝なさったということですが、これがそもそも間違いだと思うのです。ということは、中小企業金融公庫の貸付条件というものは、今回の医療金融公庫のような長期低金利、あるいは据置期間というものを考えあわせたものではございません。特に国民金融公庫などは金額も少のうございまするし、借りたときからすぐ分割払いで返していくというような方法で、結局非常に不利な貸付条件であっても、七十億円ぐらいの金は今利用しているわけなんです。しかもこれはあなた方、考えておられる新設、過剰地区でないところの、無医村に近いところの、新設でない、すでに今ある医療機関が非常に不利益な金、条件下でも、七十億円借りているんですから、こういう医療金融公庫というような、非常に私設医療機関助成の考え方で融資するとなりますれば、最初から百億、二百億というもっと上回った資金をもって計画しなきゃいかぬと思うのですが、そういうことを要求なさることによって、あるいは十億が二十億になったんじゃないかと思いますが、要求技術の拙劣といっては失礼ですが、そういう点ははなはだ遺憾に思うのですが、そういう点はどうなんでしょうか。
  58. 黒木利克

    政府委員(黒木利克君) 一応医療機関の需要の資金量の推定はいたしたのでありますが、それに基づいて大蔵省に予算を要求したのでございますけれども、国民金融公庫なり中小企業金融公庫との関係がはっきりいたしませんので、従来、厚生省で大蔵省に差し出しました計画を再検討するにしても、この問題の方向がきまりませんと、医療金融公庫だけで一元的にやるということがきまりますと、一応大蔵省に出しました案で御参考になると思いますけれども、しかし、そのうちで国民金融公庫、医療金融公庫の負担してもらう割合というようなものが、あるいはそれがいつ一体どういう格好で方針がきまるかわかりませんので、全体の金融公庫の資金の計画が実はできかねているという状況でございます。
  59. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 その次は十八条、業務範囲の中でお聞きしたいのですが、前回、民法第三十四条の御説明をいただいたわけでございます。「民法第三十四条の規定により設立した法人」というものは、明確にわかったわけなんですが、その法人は、おおむね一般の私設医療機関のような貧弱なと申しますか、弱いものじゃないと思うのですが、中身はそんなものもあるかもわかりませんが、少なくとも宗教法人にいたしましても、その他の学界方面の法人でございますが、これに該当する法人というものは、私は相当私設医療機関よりも強いものがあろうと思うのです。中には例外もありまするから、その例外的なものをとやかく言うわけじゃございませんが、こういうようにお書きになるというと、一般私設医療機関と同列な権利なり借り入れができる立場を与えることになる、これが運用の面では相当に配慮しなければ、現在の資金量からいいますというと、こういう法人にまで手を差し伸べるほどの私は資金量でないと思う。そういう点についての運用上のお考えを私はお聞きしたいのです。
  60. 黒木利克

    政府委員(黒木利克君) 実は医師会等で共同検査私設と申しますか、診療所の形の共同検査施設を作りたいという御意見もありまして、医師会はたまたま民法上の社団法人になっておりますから、実はこの規定を置いたような次第でございます。
  61. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 そういたしまするというと、なんですか、医師会立の共同施設にも、金を貸すというのですか。
  62. 黒木利克

    政府委員(黒木利克君) この規定の「民法第三十四条の規定により設立した法人」がもし希望するならば、貸付の対象になることが可能でございますから、医師会という社団法人が対象にこれではなるわけであります。
  63. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 私どもはそうは解釈しておらないのですが、これはあくまでも民法三十四条の団体というものの解釈が、もちろんそういう該当した法人には違いありませんが、共同施設というものは、町のお医者さんが共同で施設を作るということである、あくまでも。社団法人の医師会が作るという意味の共同施設とは、私は違うと思う。そういう医師会の共同施設を作ろうとすれば、決して財的に貧弱な団体ではございませんので、医療金融公庫の目的を私は逸脱すると思う。別途の意味で考えるということならばわかりますが、三十四条に医師会、歯科医師会を対象に入れるために、そううたったのだというようなただいまの御説明であれば、これは全然私は削除すべきだろうと思います。これは他の委員の方々の御意見もあられましょうが、十二分に再考をお願いしたいと思います。決してそういう意味の三十四条に、私は解釈しておりません。いかがですか。
  64. 黒木利克

    政府委員(黒木利克君) 私は国民金融公庫法なりあるいは中小企業金融公庫法で対象にしているこういう法人があるのでございますが、中小企業金融公庫法で貸付の対象にしている法人がこの附則の規定によりまして、将来落ちることになりますと、こういうものは中小企業金融公庫法の対象から除外されるわけでありますから、それをやはりこれが引き継がざるを得ないという事情もあるのでございます。そこで中小企業金融公庫法の第三条に掲げられました「医業を主たる事業とする法人」というものを、どの程度この医療金融公庫法で引き継ぐかという問題があるのでありますが、とりあえず法律では「民法第三十四条の規定により設立した法人」までを対象にいたしたわけでございます。
  65. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 最初の御答弁と、少しくぼやけてきたわけなんですけれども、私はあくまでもこの法案というものは、無医村対策ならいいが、無医村対策でもなければ、あるいはまた、そういう相当財的にゆとりのある民法三十四条によるところの法人に貸し付ける資金でもない。ただあくまでも過剰なところには新設は認めないということであって、今のそういう過剰な都市における私的医療機関の助成として、増改築あるいは機械器具の改造あるいは薬局等の整備、改築等に使うのであって——無医村の方に重点的にあるいは優先的に持っていくとか、あるいはこの三十四条によって両医師会あたりが、医師会の責任において金を借りてするということに対しては、それは本法の目的とは全然逸脱しているのです。ですから、そういう点は厳に私はお考え願いたい、かように思うわけです。
  66. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 続いて、今出ました共同の臨床上の検査場あるいは試験場等を作るという問題、その問題について私は疑義を持っておるのです。それは資金量の面からの疑義なんです。先ほど申しました三十四条適用は本法の目的からいって違うからいかぬというのです。今度の町のお医者さんが共同で、個人では資金が足りないから、高度な、いろいろな重要な検査試験器具を使って、個人ではできないが、十人なら十人、かりに二十人なら二十人でできるというものを、そのグループのまん中にセンターを置いて作るということが私は非常にいいことだと思うのです。それには十億の出資金の今の資金量ではとても困難である、すでに七十億円からの私的医療機関が金を使っている今日、いきなり飛躍的にやるということは考え方としてはいいのだが、現実的な行き方としては当然私は見合わすべきである、かように考えておるわけなんです。その点は先日予算委員会で大蔵大臣に直接私は質問したのですが、大蔵省の方としてはもっともだ、今のわずか合計三十億くらいの金では、そこまでは実は考えて自分らはおらないのだ、しかし、法の建前とししは、そういうように、将来はできるというような考え方が妥当だろうという意味で私ら賛成したのだ、従って、政令等においては、そういう面は厳に運用を誤らないように自分の力も考えるし、あなた方の方でも、つまりこの当委員会としてもよく考えてしていただきたいというお話を、私は答弁を得ておるのですが、どうでしょう、今のあなたの御答弁では、もう三十四条の法人さえも貸すということであれば、文句なしにこれを貸すのだと言われたのでは、とても私は運営ができないのです。
  67. 川上六馬

    政府委員(川上六馬君) 共同施設も今お話のように、趣旨としては竹中委員もけっこうだというお話でございます。ただ、資金量の面でもそういうものにあまりたくさん貸し付けることはどうかという御意図のようでございました。その点は一つ融資の面で、資金量等の面であまりアンバランスにならないようにやっていきたいということを考えおります。
  68. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 どうかそういうようにお考え願いたいと思います。ただし、大体見ますると、今の低単価でもって、そういう進んだ高度な検査機関を、個人の責任でもって、共同であろうがさすということが、私は医療行政の上からいって間違っていると思う。もう少しお医者さんに余裕があればできますが、今日の状態であれば、むしろそういうものは、どうしても医療上必要とあれば、東京の各区なら各区に、国なり、とにかく公共団体の力によって、ヘルス・センターを私は作るというくらいの意欲がなければ皆保険の実が上がらぬ、これは直接金融公庫さんに関係ございませんが、共同施設に対する私の見解を述べると同時に、このこともちょっと申し上げておくわけです。  次に、十九条の金融委託機関の問題なんですが、前回、この委員会で配付になりました、受託金融機関の基準、これはプリントされておりますが、今申しましたこういうようなことを考えておられるわけなんですか。
  69. 黒木利克

    政府委員(黒木利克君) これは厚生省だけの今のところ考えでございますが、大蔵省なり、あるいは公庫の理事長がきまりまして具体化するわけでございますけれども、一応厚生省の希望といたしましては、需要者の便宜というものをやはり第一に考える、しかし、資金量がわずかでございますから、効率的な運営をしなければならぬ、そのためにはたくさんの金融機関に配分をしますと、能率的でございませんので、できるだけ数はしぼりたい。そこで需要者の便宜と能率的な運営ということで、この程度のことで少なくとも基準をきめたいというような考えおります。
  70. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 そうしますと、その基準の中の第二の「県内の各地域に代理店」と書いてありますが、代理店というのはどういうことなんですか.
  71. 黒木利克

    政府委員(黒木利克君) これは受託金融機関には系統金融機関と申しますか、中央に本店がありまして、その支店なり、あるいは県単位に地方銀行がございましたり、いろいろいたしますが、大体県単位の、実際の窓口の機関という意味でございます。
  72. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 そうすると、何か代埋店といいますと、また県の中にたくさんあっちこっちに普通の生命保険の代理店や火災保険の代理店のようにたくさんあってそれは便利がいいような感じを受けたのですが、そうでなくして、県内の各地域という意味は、今の御説明ですと窓口が県に一つ一つにとれるのですが、もちろん中央で一つの委託機関ができますね。そこから地方に対しては、地域というものは県内の各地域ですから、一つの兵庫県なら兵庫県の中の各地域にその委託した神戸銀行なら神戸銀行の支店という意味ですか、この代埋店という意味は。あるいは中央の委託機関の、ほんとうのそれだけの代埋をするものは代理店としてできるという意味なんですか。この代理店いう字句がどうもはっきりしないのですが。
  73. 黒木利克

    政府委員(黒木利克君) 実は県内に一つということでは需用者のために不便である。しかし、各、何と申しますか、市町村ごとにということでも、効率的な面から不十分である。そこで数個の銀行をあるいは金融機関を、各たとえば県の規模によりますけれども、二ヵ所以上大体まあ中都市以上に所在する金融機関というものが代理店として窓口として指定をされるということを予想しておるのでございます。
  74. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 結局代理機関なんですね。  そこでその次に、四番目に、「医療機関に対する従来の貸付実績をもある程度考慮する」ということなんですね、その代理店、いわゆる代埋店に対して、その場合にここで一つの疑問が出て参りまするのは、各府県には医師会、歯科医師会には信用組合等、大蔵大臣の指定認可を得てやっておる機関があるわけなんですが、この機関は会員の信用状況、収入状況、家族のことまで一番よくわかっておるわけなんですが、そういう方面にはこの実績の上からいうと一番利用しておるわけなんですが、そういうことも考えておられるのかどうかという点をお聞きするわけなんです。
  75. 黒木利克

    政府委員(黒木利克君) この第三号に書いてありますように、都市銀行、地方銀行それから内容の堅実な医療信用協同組合というものを厚生省としては予定しておるわけでございますが、お説のように、医療信用協同組合が医療機関に対する貸付が実績が相当ございますので、これを一応貸付の受託金融機関として、厚生省としては考慮したい。ただ、すべての信用組合というわけではなしに、やはり医療内容が堅実で、これは大蔵省の側から見ましても、委託するにふさわしいというところを選びたいという考えでございます。
  76. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 まあこの程度のお考えであられるということは非常にけっこうであると思うのです。  なお、これに具体的にうたってはありませんが、結果的にはそうなろうと思うのですが、社会保険の診療報酬金の取り扱いを委託されておりまする各府県のそういう機関は、一番借る側からいえば私は便利がいいと思う。また、回収なさる側からいいましても、その人の報酬金が月々その窓口を通って入るわけなんですから、非常にいいと思うのですが、そういう点も十二分にはっきりと、社会保険報酬金の取り扱い銀行ということも具体的に入れておくということの方が私はいいんじゃないかと思うのですが、その点はどういうお考えでしょうか、
  77. 黒木利克

    ○政府委奥(黒木利克君) まだ実はそこまで具体的には大蔵省とは話し合いをしていないのでございますが、この基準の三に都市銀行が考慮されておりますから、都市銀行の中で選ぶとするならば、そういう祉会保険の診療報酬の支払いを、取り引きがあるというようなところがやはり考慮されると思います。
  78. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 その場合ですね、むろん担保が成立するのだろうけれども、危険責任はどこが持つか。どういう按分で持つか。それから、中小企業金融公庫がやっておるように、手数料を出して、危険度合い八〇%というようなことになると、六分五厘という旗を立ててみたって二割くらいになっちゃうのだから、そこらあたりをどう考えておるのか。
  79. 黒木利克

    政府委員(黒木利克君) 受託金融機関に対しましては、保証責任は大体二舗、未回収の保証責任は二割でございます。それから手数料が実収利息の二割というものを考えおります。貸付の決定権はあくまでも公庫にございまして、受託金融機関は信用調査を中心にいたしまして、貸付の審査、それから資金の回収ということに任務が置いてあるわけでございます。
  80. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 その危険度の負担は、市中銀行に二割ですか。金庫が八割ですか。
  81. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) ちょっと今の藤田さんの質問に対する答弁は若干違っておるわけですね。手数料等についての、手数料についての答弁が中心であったようですが、藤田さんは若干意味が違うようですから、どうでしょうか、もう一回。
  82. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私のお尋ねしているのは、中小企業金融公庫の例を言っているわけなんです。市中銀行、委託される市中銀行が、その貸借の危険度の八割を負担させられる。だから、その中小企業金融公庫の金は掲げられた九分三厘で回っていく。ところが、実際に需要者が借りられるのは計算すると二割ぐらいになってしまう、そういう実態なんですね。それで、中小企業金融公庫から委託された市中銀行は三分二厘という手数料をもらっている。これほどむちゃな金融というのは私はないと思うのです。だから問題は、この医療金融公庫を置かれるなら、先の方まで費任を持って、医療金融公庫がその危険度合いもみんな責任を持ってやらないと中小企業の二の舞になりやしませんかと、こう聞いている。元本はどうされますかと、こう聞いている。
  83. 黒木利克

    政府委員(黒木利克君) 実は決定権を受託金融機関に与えますとそういうことになると思いますが、一応貸付の決定権を公庫で留保しておきまして、受託金融機関は単に信用調査をいたしましたり、あるいは貸付の審査をいたしましたり、あるいは貸し付けた資金の回収をいたします程度でございますので、未回収の元利金の二割の責任を持たせる、そのかわり手数料は実収利息の二割程度しか出さない、まあこういうことでございます。そこで、この受託金融機関に決定権を与えますと、この保証責任はいわば全額ということになりますから、八割ということになりますということも考えられるのでありますが、その場合には手数料は低くなるというようなことも考えられますが、一応従来の公庫の例等を検討いたしまして、決定権はあくまでも中央の公庫で持ちますので、いわば貸付の手続をするというような責任しか受託金融機関に与えませんから、しかし、それでも保証資任がないという弊害がございますので、未回収元利金の二割だけを保証させる、こういうことにしたのでございます。
  84. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 僕はよくわからぬけれども、中小企業金融公庫でも、公庫は貸出の決定権を持っておるわけでしょう。市中銀行はそのめんどうを見るだけですよ。その市中銀行が決定権を持って、勝手にこれだけきめましたから拙しなさいという性質のものではない。中小企業金融公庫が貸出の決定権を持っておる、金を持っておるから。そうでしょう。それでいてこの委託の危険度合いの八割を委託して、それでそのために手数料を三分二厘出しておる。だから市中銀行が自分のそろばんの勘定で貸出を、元金は、その証書は中小企業金融公庫の金を借りましたけれども、回り回っていろいろな手が使われて需要者は二割くらいの金で利子を払っておる。利子というか、結局は利子になるのだが、そういう格好で金を借りておるということになるのだから、これは二割の二割だと、言いましたけれども、問題は今竹中委員の話を延長しますと六分五厘か、安いところもあるようだが、それとは一切冗費がかからないで医療担当者に金が貸し出せるということを確言できるかどうか。
  85. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  86. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) 速記を起こして。
  87. 黒木利克

    政府委員(黒木利克君) 国民金融公庫の例で申し上げますと、保証責任は未収元利金の半額でございます。それから委託手数料は、実収利息の四割、それから中小企業金融公庫では、お話のように、貸付の決定権がございますので、保証責任は、未収元利金の八割でございます。それから委託手数料は御承知のように、三分四厘、これは三百万円以下の場合です。三百万円の超過分は、大体三分ということになっております。
  88. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 だから私の聞いているのは、そういう状態で金融公庫が動いているから、この医療金融公庫というのは、ここでいわれる六分五厘なら六分五厘で借りる人が、それ以上の実際の負担をしないで借りれますかということを聞いておる。それ以上の利子で金を貸すときに、負担なしにそのままで借りられますかという手続の問題はいいのです。市中金庫を通じても借りられますかということを聞いているのです。それがはっきりしなければ何ぼ六分五厘で保証するといったって……。
  89. 黒木利克

    政府委員(黒木利克君) 一応必要額の八割を貸すということになっておりますから、必要額の八割は借りられることになるわけであります。
  90. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) 速記落として。   〔速記中止〕
  91. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) 速記起こして。
  92. 黒木利克

    政府委員(黒木利克君) 実は従来の金融公庫にもそういう弊害なしとしないというので、そういうことが行なわれないように厳重に指導して参りたいと思っております。
  93. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 六分五厘なら六分五厘と金庫の利子がきまれば、市中銀行を通じてでも今私が言いましたような例もありましょうが、それ以上の利子に相当するような金は出さぬでもいいということを約束できますかと言っているのです。それだけですよ。手続の問題はいいのです。
  94. 黒木利克

    政府委員(黒木利克君) 歩積みとかそういうような金融の機会に考えられる弊害というものがございますので、そういうことを避けるように委託銀行との間の取りきめを行ないたいと思っております。
  95. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 もう二、三点ばかりお聞きしたいのですが、貸付金の限度ですね。今の御説明では所要額の八割と聞いたわけなんですが、前回からの御説明の中で、私の聞き違いかどうか知らぬが、一定の基準を設けて診療所、歯科診療所、薬局等の一定の基準を設けて、それの八割までは貸すというのか、個人々々の必要量の八割なのか、その点が混同されておると困るのですが、私はむしろ積極的に要るだけは貸してやってほしいという意見を持っておるのですが、要るだけ貸すということがなぜ困難なのか.それからもう一つ、今言ましたように、必要額の八割なのか、必要だといったって無制限にりっぱな、いなかにぜいたくな診療所は困るのだから、基準を設けての八割なのか、この三点を御説明願いたい。
  96. 黒木利克

    政府委員(黒木利克君) 貸付の限度額の問題でございますが、これも公庫ができましてからきまるわけでございますけれども、厚生省といたしましては、やはりある基準が各業種別に必要ではなかろうか、そこでそれを金額で表わすか、あるいは何か規格を考えるか、いろいろの案を今考えおりますが、大体各業種別の病院とか、診療所とか、薬局とか、そういう業種別に一定の規格を考えまして、対象にする場合の規格を考えまして、その金額の八割というふうに考えおります。ただ、医療機械等は規格等ができませんので、これを金額で医療機械の限度額は幾ら、その他のものの限度額は幾ら、運転資金の限度額は幾らということを考えて実施するつもりでございます。
  97. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 それからその次は担保の問題なんですがね。物上担保が原則となっておりますね。これは当然公的なお金ですから、そういううたいようはしかるべきだろうと思うのですが、大蔵大臣などにお聞きしたときの話なんですが、新設等は担保はないのですね、新しく開業する人ならば。また、あなた方のお話では、無医村あたりでは、資金のない人でも行ってもらいたいのだが、認められないわけですね、採算が合うか合わぬかわからぬから。いろいろなことを考えあわせますと、原則だからそういう点は運営がしかるべくできるはずだと、大臣もそういうことを言われたわけですが、それで医療担当者に金を貸すのに担保というものは絶対に必要なものであろうか、あるいは保証人制度もあれば、その他の方法があると思うのですが、原則の程度ですね。これは非常に私は運用上むずかしい問題だろうと思うのです。その場合に各団体が持っておる信用組合等を利用すれば、的確にその家の信用状況もわかるわけです。そういうように委託機関関係によっては、その原則の解釈がゆるんでくるものやら、あるいはそうでなしに、今、申しましたように、例証的に無医村のところだけは新設を認めないのだ、たとえそういう団体の信用組合等があっても、そこまでやはり担保を取るのだということを考えておられるのか、今のところ何もそこまで考えておられぬのか、物上担保を原則としての解釈をお聞きしたい。
  98. 黒木利克

    政府委員(黒木利克君) まだ大蔵大臣との話し合いは具体化しておりませんが、厚生省の希望といたしましては、この原則としてということに重きを置きまして、一定の何かの金額をきめまして、その金額以下は人的担保でもよろしい、物的担保の必要はない、金額の何か一つ限度を作らざるを得ないのじゃないかという線で話し合いをしております。
  99. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 もちろんわずかな少額のものなら担保も要らぬでしょうし、また、出す方も少額のものなら担保があると思うのです。新設するというのは、大きい金額を借りられることを払は言うのであって、ですからかなり担保をきめる金額を大幅にしてもらいませんと……、少額といってもその少額にもよるのですが、その点はよく実情に即した医療担当者の人格を尊重したいい方をしてもらいませんと、いわゆる第一条の普通医療機関では借りることができない人に貸すという医療金融公庫法の目的に沿わないことになりますから、そういう点を十二分に私は考えて運用していただきたい。これは政令その他に表わす場合にも特に考えなければならぬと思われますから。なお最後に、全体の資金の面で三十億と限定されたわけなんですが、この内輪での業態別のワクというようなことは考えておられないのでしょうね、どうですか。
  100. 黒木利克

    政府委員(黒木利克君) 実はいろいろ考え方は考究いたしておりますが、ただ業種別にそういうふうにワクを定めるということはいろいろ利害関係がありますので申し上げかねますが、ただ、病院なり診療所なり薬局なり、そういう機関の新設の場合、あるいは体質改善と申しますか、増改築をする場合、それから重要な医療機械器具を購入したり、更新をする場合、それから運転資金というものの大体のウェートと申しますか、そういうものと、それに今度は関連いたしまして、そのそれぞれの金利をどうするかという問題は、大体の見当と申しますか、そういうものは大蔵省に予算要求したときのものがございますからございますが、ただ、その程度でございまして、あとの業種別の問題になりますと、いろいろ問題もあろうかと思いますから、先ほど申しました程度の大体の考え方は現在作業いたしております。
  101. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 業種別——医師、歯科医師、薬剤師、産婆さんですか、そういうような業種別のことは一応考えられない方が私はいいと思うのですが、しいて考えれば、それの実績を参考になさった方がいいと思うのです。  それからもう一つは、業種別でなしに、目的別といいますか、地域別といいますか、辺陬な地域には、この十億の大体三分の一出そうとか、あるいは過剰地区の増改築はこの程度出そう、あるいは機械器具の方はこうだとか、共同施設はこうだとか、あまりに細分のことにまで、わずかな資金でスタートする場合には、そういうことでなしに、必要度に応じて、早く申し込む人は結局必要度が高いわけですから、初めの二、三年はあまり窮屈な考えをせずに自然の姿が出てくることをもっと把握して、将来を立てるということをあまり基準でものを考えてやられると、摩擦が起きたり非常な弊害が私は起きると思いますから、その点は今の御答弁で一応私は満足いたしますから、そういうように運用してもらいたい。さように思います。私の質問はこれで終わります。
  102. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) ちょっと速記を落として下さい。   〔速記中止〕
  103. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) それじゃ速記をつけて下さい。  暫時休憩いたします。    午後零時十九分休憩     ─────・─────    午後一時四十六分開会
  104. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) それでは、午前に引き続いで会議を開きます。  引き続き、医療金融公庫法案の質疑を行ないます。質疑の御希望の方は御発言を願います。  なお、厚生省からは、午前中通り内藤政務次官、川上医務局長、黒木医務局次長が出席をいたしておりますし、大蔵省からは、石野銀行局長がやむを得ない会議のため、ただいま銀行局の磯江特別金融課長が出席をいたしております。
  105. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 午前中質疑をやったんですが、この金融公庫の実際の金の貸し出し、大蔵省としては、どういうことに実際の貸し出しの面でなるとお考えになっておるか、お聞きしたいのです。というのは、六分五厘という利子で貸すというのです。今、中小企業金融公庫なんかの例を見ると、非常に残念なので、ああいうことになったら大へんだと私は思っているわけです。たとえばこれが整理した場合、大蔵省としては、資金の貸し出しの利子とか、その手数料とか、そういう関係は、どういう工合に立てておられますか。
  106. 磯江重泰

    説明員(磯江重泰君) 医療金融公庫が貸し出します資金は、内容といたしましてはいろいろあるわけだと思いますが、貸し出しの金利につきましては、ものによりまして違ってくるというようなこともあるかと思います。ただ、そもそも医療公庫を設置いたしました趣旨が、長期低利の資金を私的医療機関に融通するようにしようという趣旨でございますので、その主体となる貸付、たとえば病院の新設のための建物建設資金というようなものにつきましては、まあ六分五厘程度の低利の金利で貸すというようなことは頭に置いておるわけでございますが、個々の使途に従いまして、どのようなものについて、どのような金利を適用いたしますかにつきましては、まだ厚生省との間に最終的に結論を得ていない状況でございます。で、これらの点の具体的な点につきましては、医療公庫の設立準備過程におきましては、また設立し、業務を開始いたしますまでには、もちろん決定いたすわけでございますが、具体的な内容につきましては、公庫の業務方法書において公庫がきめまして、これについて主務大臣の認可を受けることに相なりますので、その段階において最終的にきめたい。しかし公庫としましては、公庫の設立の趣旨に十分沿ったようにきめたいし、また運僧につぎましても、そのような点につきましても十分大蔵省といたしましても留意せしめたい、かように考えおります。
  107. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 本来、金融は大蔵省の管轄だと思うので、この前銀行局長に来てもらって、水害のときでしたか、中小企業の金融の貸し出しのときそういう実例があった、中小企業金融公庫で千二百億貸し出したうち、千億までが市中銀行の委託貸し出し、それが九分三厘ですけれども、事実は一割八分、二割というような格好で貸しておる、結局政府が零細に積み立てられた投資資金を銀行に入れて、それで金融機関を政府が育てているというような格嬉の金融措置があるかどうか。これはまことに是正しなくてはいけないことで、大蔵省が努力されていると思うのですが、だから、この医療金融公庫も、委託貸し出しということになるわけですね、支店、支所を全部置くわけではないのだから。私が心配するのは、同じような現象が出てきやしないか、六分五厘といってみても、実際にお医者さんが借りるのは、八分も一割も、一割二分も金利を払わなければ、実際の金は、割り当てられたけれども借り入れられない、そういうことになりはせぬかと心配をしておる、だからこれはどうするか。
  108. 磯江重泰

    説明員(磯江重泰君) ただいまお話の点につきしては、これは医療金融公庫のみならず、政府金融機関であるところのその他の公庫につきましても、同種の問題が運営上全然ないではないという点がございまして、私どもといたしましては、公庫設立の趣旨、公庫の対象とするような、資金を必要とする方々に対して、その趣旨に浴った金融を行なうというためには好ましくない傾向である、これは当然のことでございます。ただ、やはり公庫が、それぞれ直接窓口を持ってやっていくということになりますれば、それはそういう弊害は避けられるのでございますけれども、そのためには、相当の陣容なり、窓口を要する、経費もよけいかかるということでございますので、なるべく既存の金融機関というものを活用していくということを考えなければならぬわけでございますが、その運用におきましては、そういった代理店になります金融機関は、公庫の設立の趣旨ないしは貸付の目的というものに十分沿った運用をしていただかなければならないことは当然のことでございまして、私どもかねがね公庫を通じまして、ないしは鋏行局の監督下にございます金融機関でございますとか、あるいは直接等、それらの点につきましては十分指導監督はいたしておるつもりでございまして、特に医療公庫につきましては、一般の中小企業金融公庫等から出ます資金に比べまして、低利という要請が強いわけでございますから、そういった弊害が厳にないように十分監督いたし、また公庫設立の上は、公庫当事者としても、それらの点につきまして十分指導し、そういった弊害の絶対起こらないように留意いたしたいと考えておる次第でございます。
  109. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 だから精神に沿って、低利長期の金融で貸す趣旨を市中銀行がよく体してやってもらいたい。そう指導監督すると言うけれども、六分五厘だったものが、八分で——要するに市中銀行がその趣皆に沿ってやるといえばそれまでのことです。私のお尋ねしたいことは、六分五厘で表示したら……担保条件が成立しなければ貸さぬのだから、そうでしょう。金融機関はどこでもそうですよ。中小企業金融公庫でもどこでも、担保条件が明確にならなければ貸さぬ。貸さんでおってそういうことをやっておる。これも同じように担保をとって金を貸す。それで、まだ市中銀行がそろばん勘定で、回り回れば、これが、六分五厘が一割になり、二割になるほど負担になるようなことでは、話にならぬ。だから六分五厘というものは、担保の条件さえ提供すれば、六分五厘以上一切金利はつかない、負担はかからないということが確約できますか、こう言っておる。
  110. 磯江重泰

    説明員(磯江重泰君) ただいま仰せの点はその通りでございまして、医療公庫は、たとえば医療公庫が六分五厘で貸すものにつきまして、窓口から出る金利がそれ以上になるということはあり得ないのでございまして、担保あるいは保証金をとるとかいう点におきまして、たとえば保証料がつくとか、そういうような面での、金利以外で別に要る面が多少付加するという点は、あるいは場合によりましては、あるということはございますかもしれませんが、医療公庫の徴収いたします金利といたしましては六分五厘であるし、従って代理店である窓口から出る貸し出し金利は当然六分五厘、それが実質的に高くなるということは、主務官庁としても絶対にさせないようにいたしたいと思います。
  111. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そこがあいまいなんですよ。私の言っておるのは、そこがあいまいなんです。中小企業金融公庫の金でも九分三厘で、中小企業金融公庫の金は、そんなものは利子を付加していませんよ。それだって六分五厘の利子で、公庫の貸し出しに対して、これに利子を一分とか三分とか付加するようなことは絶対に法律の建前上できませんよ。中小企業金融公庫と同じだけれども、百万円、中小企業金融公庫の金を借りれば、市中銀行がその中の三分の一なら三分の一は定期にそのまま差っ引いて、保証金に積み立てさせる、とっておいて、あと三年間の三十六分の一で金利をまぜて積み立てさせる、返還させる。それで、担保条件をとっていくということで、中小企業金融公庫の金の貸借関係は九分三厘なら九分三厘で変わらない。これも六分五厘ということでは変わらないけれども、そういうものを市中銀行がとったら、今度借りる方はどうなるか。三十万円——百万円金が要るから、百万円借りるわけでしょう、それを三十万円、三十三万円、三分の一ぽんと置かれたら、その三十万円の金をどこかで都合してこなければどうにもならんわけだ。その積もりする金は、ここは六分五厘だけれども、市中で、やみで金融すれば一割二分、二割五分で金を借りてきて穴埋めしなければならぬ。証書は、百万円借りておって、三十万円穴埋めしなければならぬというようなことが行なわれている。だから、そういうことが行なわれないかどうかということを言っている。だから、百万円とか八十万円借りれば、その付帯的な条件というものは一切生まれてこないという保証ができますか、こう言っておる。そうでなければ、その証書を、医療金融公庫と借りる人との関係は、金利六分五厘、中小企業金融公庫の金を百万円借りたということは、九分三厘なら九分三厘、そういうことは一つも訂正することはできません。法律できまっている。そういうほかのものが市中銀行に委託してやると、そういうことが行なわれてくるということなんですよ。だからこれも、たとえば医師会なら医師会とかどこかが保証をするなら保証をするということなら、市中銀行を通さなくても、手続、事務的な問題は別として、六分五厘なら六分五厘で貸せるわけだけれども、これはなかなかむずかしい問題だけれども、今の保険制度なんかについては、保険協会が保証してやっているわけでしょう。そうすると、そういうものが一切関係なしに金融が動かされている。だから、保証をどうするということです。損失補償といいますか、そういう危険度合いの問題をだれに負担をかけるかという、その危険負担の度合い、その負担が市中銀行にかかる、幾らかでもかかるということになってきたら、市中銀行は、それをちゃんと見越して今のような処置をとるということ、これは目に見えておると私は思うのですよ。そういう危険負担をさせられたら、市中銀行は必ず何かの手を打つと思うのです。そういうことで、私はせっかくこの金を貸したって、結局六分五厘は八分とか一割になりはせぬか、そういう保証を厚生省がとるならとる、政府がとるならとるということを明確にしておかなければ、結局ばらっとばらしてしまって市中銀行を通じたことと同じことになりはせぬか。市中銀行と比率の上では差異があっても同じようなことになりはせぬかということを言っておるのです。精神によってどうこうとか、ただそういうことにならないようにするとか、多少云々のものがつくかもしれませんというような返事では、どこで保証するか明確な接点が一つもない、そうでしょう。
  112. 磯江重泰

    説明員(磯江重泰君) 中小企業金融公庫等のやっております貸し出しにつきまして、何か九分三厘の金利で貸し出すほかに借入者から強制的に預金をとるような形で実質的な金利負担を一般的に重くしているようなことをやっているのじゃないかというような趣旨のお話でございますが、公庫の貸し出しにつきまして、代理機関が全面的にそういうことをやっていくということはこれは事実と反することでございまして、もちろん中にはそういうことをやっているところもあるというような声も耳にしないでもございませんが、一部そういうこともあるかと思いますが、しかしそれにいたしましても、必要のないような金を貸して、それを預金にとるというようなことはないわけでございまして、ただ貸し出しましてから大体実際に相手の事業者が金を必要とするまでに若干の時期があって、その間代理店に預金して滞留しているというような傾向がないでもございません。それから悪質なものにつきましては、あるいは意識的にそういう両建預金的な操作をしておるものも全然ないというふうに断言はできないかとも思いますが、そういった点につきましては、私どもは代理金融機関のあり方として、当然望ましくないものであり、是正すべきものであると考えおります。代理機関を選定いたしますにっきましては、金融検査などを通じまして、そういった点についても心配のないような機関をできるだけ選定いたしておりますし、また公庫の方に置きましても、常時代理機関の監査を行なっておりますし、また銀行局におきましても、たとえば中小企業金融公庫につきましては、現在検査を実施いたしておりますし、代理店の方のそういった実惰を調べておりますので、そういった点はかりに従来なかったではないといたしましても、今後極力是正せしめるということでございまして、まして医療公庫につきましては、代理店の数も、中小企業金融公庫のように窓口を非常にたくさん作るというようなことを、ただいま想定いたしておりませんので、できるだけそういった見地から申しましても、信頼のできる機関を選定いたしたい。そういう御心配の点が絶対にないように、私どもも御趣旨のことは当然のことでございますので、心がけて参りたい、かように考えます。ただその点、具体的にどういう保証をするかということになりますと、これはやはり代理契約によりまして医療公庫というか、その貸し出しをいたします公庫が相手を選定して、それにつきまして、主務大臣の認可を受ける、あと契約に従ってやっていく、それにつきまして公庫としては契約者、委託者の立場からいろいろ委託した通りに行なわれるかどうかということを常時、気をつけていくということでございまして、もちろん主務官庁といたしましてもそういった点が起こらないように、諸般の配意をいたすことは当然でございますが、その点の保証と申しますか、具体的には結局委託する相手の金融機関と公庫との間の関係になって参りますので、たとえば悪いものについて今後どうするとかというような——今後そういう問題が起こりましたら、そういう問題は主務官庁としても考えますが、ただいまは、今後の運営として、そういった点については気をつけて参りたいということを申し上げますより、ただいまのところとしては、申し上げるよりほかはないのじゃないかと思います。
  113. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 だから、これについては、そういうことをやらさないようにする、こういう工合に言い切ってもらえぱ事が終わるのです。しかしそこのところが、委託のところがあるのだから云々と、あいまいに言われるから、それで中小企業金融公庫のような、そんなことがあるかもしれない、ないと思いますが、私も実際にそういう経験をしたから言っておるのです。それで銀行局長、中小企業庁長官を呼んで聞いたら、いやその通りです、是正しなければいけません、考えおります、ということになったけれども、私はそういうあいまいであってはいかない。この中小企業金融公庫の問題は、ここで議論することではないけれども、今度の医療金融公庫は、そういうことのないということを保証さえしてくれれば、この問題はここで済むのです。
  114. 磯江重泰

    説明員(磯江重泰君) ただいまの答弁で多少あいまいな印象をお与えいたしましたとすれば、その点訂正させていただきたいのでありますが、私が申し上げました趣旨は、そういうことは絶対にないように主務官庁としてはいたしますということでございます。
  115. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 大蔵省にお伺いいたしますが、今の委託金徹機関、代理店の問題ですが、医療公庫と代理店との契約をかわすときに、今、藤田委員のお述べになりましたようなことが絶対ないように、契約するときに、初めからあなたの方でよく指導監督されなければいけないと思うが、その点はどうですか。
  116. 磯江重泰

    政府委員(磯江重泰君) 公庫が代理店と受託契約をいたします場合には、主務大臣の認可を受けることになっておりまして、その場合に、どういう内容で契約をするかということは、事前に主務官庁の方に、公庫の方から相談がございますのが、従来の例でございます。もちろん金融機関によって個別的に内容も違うわけでございません。受託金融機関としては、すべて同一内容で契約するわけでございますから、一番最初にこういう契約内容でするということについて相談があるのが従来の例でございます。そういった場合におきましては、もちろんただいまの点につきましても、受託金融機関として公庫の貸付の趣旨に反することのないように、金融面においても十分留意せしめるよう主務官庁としても指導して参りたいと思います。
  117. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 その代理店の選択や決定ですがね。やはり限られたごくわずかな資金量で多数の受託金融機関と契約するということは、なかなか困難だと、効率的な点からいっても困るというような御意見が、前回か前々回ですかにあった。同時に、借りる側の医療機関、担当者の方の便宜をはかってやらなければならぬということも当然だと思う。そこの調節、たとえば、もちろん中央の医療公庫等は考慮してやられるでしょうが、地方に参った場合には、各地方々々の代表的な銀行なり医療機関がある。もう一つは、代表的でなくても社会保障の報酬金を取り扱っておる金融機関がある。それからまた医師会、歯科医師会あたりが信用組合を作っておったり、あるいは協同組合を作ったりして、いろいろなことをやって金融を、自体でやっておるのがありますが、あなたの方の許可、認可をとっている、これなどは、実績の上からいうと、一番多額の金を実際医者に貸しておる。そうして貸す方の資産内容も金融状況もよくわかるわけですが、従ってそういう柑手を作る場合には、過去の実績を重んずるというような方針であられるようですが、以上のことを総合してお尋ねするわけですが、代理店の選択の範囲、基準等を大蔵省としてどう考えておられるのですか。
  118. 磯江重泰

    説明員(磯江重泰君) 代理店の具体的選択等は、やはり公庫の当事者なりあるいは厚生省とよく御相談して参らなければならないのでございますが、医療金融公庫の貸付対象とか、あるいは資金量等から見まして、代理金融機関は現在国民金融公庫であるとか、あるいは中小企業金融公庫とかがやっておりますように、非常に多数の窓口を使っていくというやり方ではなかなか手数もかかってうまくいかぬのじゃないかというように考えおります。従いまして、事務を能率的にやっていきます上には、なるべく少数にしたらいいじゃないかと……。少数と申しましても、これもあまり少数であると、今度は逆に借り手の方の不便になるという点がございまして、御指摘のように、その間の調整をどうするかということはなかなかむずかしい問題でございます。それから地域的にいろいろ事情の達うような点もございましょう。そこでそういった具体的なものにつきましては、なお各地域についてそれぞれ金融機関の状況あるいは医療金融の実情というようなものを調査検討いたしました上、結論を出したいと考えておるわけでございますが、大ざっぱに申しますと、金融機関の数といたしましては、あまりたくさんの数にならない、なるべく少しで能率よくやるようにしたいということと、それから対象としております金融機関はどういう金融機関を認めるかということにつきましては、具体的基準というのはまだできておらないのでございますけれども、まあ金融機関としてもやはり内容はしっかりしたものでなければいかぬ、それから従来の貸し出しその他のやり方等からいたしましても、信頼のできるところでなければならぬのじゃなかろうか。それから貸し出しの相手は、中小企業であるとか、あるいは医機療関であるとか、そういう従来の実績と申しますか、融資の対象としているところ、融資対象といいますか、そういった関係からいって、医療金融公庫の受託機関としてふさわしいものを選ぶということも一つ考え方として取り入れる必要があるというように考えておるわけでございまして、抽象的なことでございますが、ただいまのところはその程度でございます。
  119. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 もう一点だけ、多少あなたへの質問としては筋違いかもわかりませんがね。そういう特殊機関を監督する立場からして、やはりこういう特殊金融機関というものには一定の単位があると思うのですがね、資金面で。この程度のものは一つの単位としてふさわしいかどうか。特に過去における医療担当者への中金、国民金融公庫の貸し出し状況を見ますと、御承知のように、六十七、八億——七十億に近い金が貸付残になっておるわけなんですがね。三十四年度末には相当もっとふえておると思うのですが、そういう面から考えましても、一つの金融機関単位としてもあまりこれは少額だと思うのです。で、あなたの方でも監督上、中金と調整して、一、二年後にはこれ一本で医療担当者は融資するというようなことも考えられておるように、資料の説明の中にありますが、全く、そうなってきますと、そういう懸念を持つわけなんです。大体どの程度の規模でもってやれば私的医療機関の助成ができるかというようなことですね。それはあなたには筋違いかもわからぬけれども、そういう意味からいって、特殊医療機関監督の立場からいって、単位があまり小さくないかということを聞くわけです。どうですか。
  120. 磯江重泰

    説明員(磯江重泰君) ただいま御質問の点は、銀行局として金融機関を見ておる建前から申しますのと、財政的な見地から申しますのとで答えが違ってくるかもしれないのでございますが、金融機関として見ます場合には、やはりある程度まとまった量を一つの金融機関として扱うのは、かえって事務的経費もよけいかかるし、不経済であるということになるわけでございます。その具体的にどの程度の金額ならばそれじゃ一つの政府機関としてふさわしいかと申されますが、これはやはりいろいろ段階的な問題がございまして、発足当初、それからまた逐次規模もふえていくということになりますので、発足当初においては不十分だというような状況は、これはすでに現在設立されております金融機関につきましてもあったことでございます。従来の例からいたしますれば、逐年資金量がふえていくというのが例でございますので、医療金融機関につきましても、これは私的医療機関の方の資金需要、どの程度の資金を必要とするかということと関連をいたしまして、もちろんこれは私どもの立場ではございませんが、財政的にどの程度の資金をこれに充てることができるかという問題がございますが、三十五年度三十億でスタートをいたしまして、今後逐次私的医療機関の資金需要なり、公庫設立の目的を充足するにふさわしいように成長していくことがやはり金融機関としては望ましいと思います。
  121. 坂本昭

    坂本昭君 関速して。どうも今の御答弁でははなはだ不明瞭なので、もちろん医療機関の整備というような点からはお尋ねしませんが、金融機関を扱っている側として、一応ある程度の需要というものを見込んでおられなければ、こういうものの組織化ということは困難だろうと思うのですが、どの程度見込んでおられるか。結局その原則に立って三十五年度の三十億というのも出てきたのじゃないかと思うので、その辺を金融機関の立場から御説明願いたい。
  122. 磯江重泰

    説明員(磯江重泰君) ただいまの御質問に対しまして、実は銀行局の立場からは大へんお答えしにくいことでございますが、私的医療機関の関係の資金需要がどの経度あるか、また今後どのような見込みになるかということは、実は銀行局の立場としてははっきりそれを把握することは困難でございまして、私どもの方といたしましては、主として厚生省からそのような御要望は承わっておるところでございます。それで現に国民金融公庫あるいは中小企業金融公庫等から私的医療機関に対しまして年々貸し出されている金額あるいは既往の分の残高等から見ますと、三十五年度三十億というものだけで私的医療機関を全面的にやっていくというのでは、それは不十分であろうということは言えると思います。その意味におきまして中小企業金融公庫におきましても当分並行的にお手伝いするというような態勢を考えておるわけでございまして、今後それではどの程度にどういうふうにしていくかという点につきましては、資金の量の面とそれからもう一つ質の面、これは医療金融公庫の方は一般の中小企業よりも特に低利でお貸しするということでございます。低利で貸すためにはやはり政府出資という無利子の資金がどうしても必要になります。その点になりますと、これは財政としてどの程度の負組ができるか、出資の面でこういう限界——限界と申しますかそういう問題がございますので、私どもの立場から、それにつきましてどういうような意図で三十五年度の計画を立てているかという点につきましては、ちょっとお答えいたしかねるのでございます。
  123. 坂本昭

    坂本昭君 なるほど需要の詳細については、これはあなの方では御承知にならないのは当然だと思います。しかし、それがわからぬからといって、今度の三十億あるいは今後の医療金融機関としての見通しをお持ちにならんとすると、これは非常におかしいのですよ。一応日本の医療整備の問題は、これは医務局にまた引き続いて質問をしようと思っておりますが、あなたの方としては当然今までのような資金の能力といいますか、そういう点や、あるいは償還の能力やそういうことから現在、たとえぱ中小企業金融公庫やあるいは国民金融公庫の実績などはあなた方としてつかんでおられて、そうしてそのほかにここには医務局から今の中小企業金融公庫と国民金融公庫の両方のあれが出て、六十二億という貸付残高が三十三年度末に残っています。しかし、これは、この調査は医務局が銀行局を通して調べられたのでしょうね、多分、と思いますが、実はまだほかに信用金庫だとか、いろいろなところがこれに関係していると思うのです。だから、むしろそういう医業に対する貸付の面では、大蔵省の方が十分に実態をつかんでおられるはずだと私は思うのです。ですから、そういう面からまた、特にそれに対する償還能力や、いろんな実態、金融機関の面から見て、大体将来皆保険だとか何とかいうこととは別個に、医業に対する金融は、私的医療機関に対してはこの程度いき得るのではないか、そういう金融技術上のお考えというものが当然できておられるのではないかと思う、そういう点の御説明をいただきたい。
  124. 磯江重泰

    説明員(磯江重泰君) 私的医療機関と申しますか、医業に対する金嫐機関からの貸し出しでございますが、現在政府金緻機関等、国民金融公庫と中小公康、この両公庫につきましてはただいまお話がございましたが、残高といたしましては、昨年の十月末で見ますると六十六億円ほどになっております。両公庫におきましては、年々大体、まあ三十二年度で見ますと三十三億、三十三年度が三十七億円、三十四年度は十月末ですが二十三億円という貸し出しを行なっている、こういうような状況になっているわけであります。両公庫でこの程度のことでございますが、医業全体に対しまする金融機関の貸し出しと申しますと、これは一般の中小企業の場合も同様なのでございますが、両公庫からの貸し出しは、中小企業に対する金融機関からの貸し出しのごく一部を占めるにすぎない。これはまあ、大部分それによっているというわけではございません。医業につきましてもやはり同様でございまして、具体的な数字は的確には把握いたしておりませんが、国民公庫、中小公庫合わせまして六十六億円という貸し出しは、やはり医業全体に対する金融機関の貸し出しのうちの貸し出し残高でございますが、このうちの一部にすぎないのが実情でございます。これはそういうものを全部それじゃあ公庫でやっていく必要があるのじゃないか、というようなお話にもなるかと思いますのでございますが、やはり医業に対する貸し出しと申しましても、医療公庫設立の趣旨に沿うような貸付のほかにも、まあ純粋に一般の金融レベルから貸しているようなものが相当ございます。たとえば厚生省のお考えでも、まあ病院等、別に公庫等で財政資金でめんどう見ていくような必要のない向きでも拡充が行なわれていく、そういうような資金は市中金融にたよっているという面もあるかと思いますが、そういう関係から市中金融機関からの貸し出しが相当あるから、公庫としてもそのくらいカバーするくらい措置しなければいけないんだということも申せないと思いますが、それらのうち公庫でどの程度借りるような態勢になることが望ましいのであるかということでございますが、これは実は私の方も、金融にたよっておる面が、一体どの程度の性質の資金が金融にたよっておるのかという実情につきまして的確な把握ができませんので、その点ちょっと具体的な数字は申し上げにくい実情でございます。
  125. 坂本昭

    坂本昭君 今の点どうかです、医務局の方では、厚生省の方では少し大ざっぱな数でもつかんでおられますか。
  126. 黒木利克

    政府委員(黒木利克君) 実は大蔵省に予算要求の際に出しました資料はあるのでございますが、この資料は従来の実績から見て、年間このくらいの需要があるだろうという数字でございます。もう一つやり方は、できるだけ病床、必要病床数と申しますか、そういうものを考えて、これを満たすためにどれくらいの経費がかかるかというやり方もあるわけなんでございます。一応過去の突績から推定した数字でございます。それによりますと、百二十三億、年間百二十三億の需要見込みがございますというような資料は提出してございます。
  127. 坂本昭

    坂本昭君 非常に大ざっぱなあれですが、先ほど大蔵省の方では、今の両金融公庫の残高六十六億が一部であるという表現を使われたけれども、もっと大ざっぱに言うと、一部というより半分くらいだ、こう言い得るわけなんですね、一応のところ。そうしますと、大蔵省に伺いたいのは、この今度の金融公庫法の中でも、将来中小企業金融公庫の貸付を、医業に対してやめていく、そうした場合に当然やめた分だけは医療金融公庫の方に振りかわって、そちらで資金繰りがされなければならないと思うのですね。だから、その程度のことはこの金融機関としては当然おやりになるだろうと思うのですね、そのことはいかがですか。
  128. 磯江重泰

    説明員(磯江重泰君) 中小企業金融公庫が将来医業に対する貸し出しを全く停止するということにかりになりました場合には、医療金翹公庫の資金というものはもう少しふやす必要があるのじゃないかということは当然言えるのじゃないかと思います。ただ、具体的に、それじゃ今まで中小公庫が貸し出しておるそのうち、やはり医療公庫というものができればそれに振りかわる。今まで無理して中小公庫の方から貸しておったけれども、今度は医療公庫から借りるべき性質のものであるということがやはりある程度、相当あるわけでございます。まあ、ことし三十五年度両方並行的にやってみた結果を見ないと、その点はっきりしたことは申せないのでございますが、考え方といたしましては、中小公庫なり国民公庫が医業に対する貸し出しを全く停止するということにかりになりました場合には、その際には医療公庫としては三十近年度三十億ということでない、もう少し資金を必要とするということは言えるかと思います。
  129. 坂本昭

    坂本昭君 そうすると、並行してやる期間ですね、大体どれくらい並行してやって、そうしてどういう点を、何といいますか、目標として中小公庫をやめるか、その並行する期問と、それからどういう場合に、どういう条件のもとに一方をやめて医療金融公庫に全部振りかえるか、その二つのことを説明して下さい。
  130. 磯江重泰

    説明員(磯江重泰君) 中小公庫なり国民公庫の方でやめるということは、将来の方向といたしまして、医療金融公庫の資金量なりあるいは業務体制というものが確立、充実されていくに伴って考えられる方向でございますので、具体的にいつそういう、そっちをやめて全部こっちに振りかえるか、あるいはどういう状況になったらそうするかということにつきましては、ただいまのところはっきりした目標を持っておるわけではございません。三十五年度いずれにいたしましても並行的にやって参りまして、その上で、もはや医療公庫の方に全面的にまかした方が適当である、あるいは三十六年度以降の問題といたしまして、資金量等も医療公庫の方に、その目的を達するにふさわしい資金が確保できるという事態になりますれば、どちらか一本でやるというふうな方向を将来考えていくということでございますので、今のところ具体的な時期等についての目標は持っておりません。
  131. 坂本昭

    坂本昭君 大へんくどいようですけれども、適当なということですね、何をもって適当とするか、どうも私の方は非常に抽象的ではっきりしないのです。もう少しあなたの方では、当然金融そのものとして適、不適を見られると思うのです。厚生省の方は、この資金効果の面で、医療機関の整備の点で見ていかれると思うのです。で、あなたの方の適当と判断する若干の根拠を説明していただかないと、われわれもまとめようがないのです。もう少しその点明確にしていただきたい。
  132. 磯江重泰

    説明員(磯江重泰君) 実は、私どもの方でも具体的に申し上げる根拠と申しますか、それだけの材料を持たないわけでございますが、一つには、資金量を将来どうしていくかということにつぎまして、これは銀行局といたしましては、やはりこれは財政資金にたよるわけでございますので、はっきりどうなるということを申し上げる立場にないということと、それから資金量の問題のほかに、医療公庫の、たとえば人員であるとか、その他の経費予算でございますとか、そういった予算面の問題があるわけでございまして、これは直接医療公庫の採算等に関係してくる問題でございますから、そういった面につきまして、たとえば資金量がふえても人員なり経費予算がふえないということでは、事務を円滑に処理するわけにいかないわけでございますので、そういった点、結局、どちらにいたしましても、予算面についての見通しという問題になりますので、銀行局といたしまして、ただいまそれについてどうするのだということをお尋ねになられましても、ちょっとお答えいたしかねる立場にありますのでございます。
  133. 坂本昭

    坂本昭君 どうもあれですね。何かもっと医療金融公庫というのは、厚生大臣が一生懸命最後までがんばってやったから、何か一つの理想と強い気魄を持ってやっておったかと思っていたところが、いろいろと聞けば聞くほど、何やらたよりないですね。金融閼係の側からいっても何かたよりないし、厚生省の方を聞いてみてもたよりない。まあこれはあとで厚生大臣も呼んでいろいろと議論しますから、あともう一点、こういう点を伺っておきたいと思います。それは、今のように両方の金融機関をやっていきながらいろいろ見られる中で、たとえば厚生省は僻地などについては利子も六分五厘の基準を下げてやっていきたい、そういうようないろいろのことを考えているようであります。これは資金の効率を考えてのことだと思うのですが、そうした場合に、金融機関の監督——あなたの方としては利子のそういう違いですね、それといろいろな医療機関を整備する場合の条件、これは当然業務方法書に出てくると思います。これらのことを含めて業務方法書については、今どの程度まで進捗しておられますか。
  134. 磯江重泰

    説明員(磯江重泰君) 業務方法書に記載されます融資につきましての具体的な条件、あるいは具体的な事業計画、これは業務方法書ではございませんが、具体的事業計画につきましては、具体的には、医療公庫が設立されまして、公庫当事者が作って主務大臣の認可を受ける、こういう段階になるわけでございますが、もちろん、それまでの間におきまして、公庫設立後は、その責任当事者となられる方と両主務官庁との間で、事前に相当の協議を進めていくというような段階になってくると思います。それで、厚生省の方から、ただいままでのところ、私どもといたしまして具体的条件をどうするかというような点につきまして、まだ突き詰めたお話し合いはいたしておりませんし、私どもの方も、それらの点につきましては、最終的には、公庫ができました後において、資金量と、それから結局、事業計画がもとになりまして、どういう資金をどのくらいやっていくのか、それでないと公庫の採算が立たないわけでございますから、そういった点の関連から、事業計画というものをやはり根拠にして金融の方を見ていきたいと思うのであります。かような考えでございますので、まだ具体的なものを申し上げる段階ではございません。
  135. 坂本昭

    坂本昭君 それでは、先ほどお約束しておった時間も来ましたので、これ以上、この問題については質問しませんが、ただ、今、大蔵省の方から明確に発言があったように、やはり事業計画というものを非常に高く見ておられる。そうして、われわれもこの審議会では事業計画をかなり追及してきたのだが、まだその点で十分われわれも理解できていない。従って、これはまた次の機会に、事業計画がどうあるべきか、それについては、当委員会で十分協議をして、それが十分でき上がったときには、われわれも安心して業務方法書を作ることを厚生省、大蔵省におまかせをするという態度で進みたいと思います。とりあえず、きょうは公庫問題については、私はこれで質問を終わります。
  136. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 ちょっと関連で一つだけ。  今の御答弁の中に、将来一本にする上において、中小金融公庫のお話がありましたが、この附則二十六条によると、中小金融公庫だけでして、国民公庫のことは出ていない。国民公庫というものは少額ですし、非常にまたこれは簡便に借りられる方法なので、医療担当者としては別途に利用したいという気持があると思うのですが、附則では、今度、中小企業金融公庫法の一部改正は出ておりますけれども、あなたは、今、国民公庫の方も整理するとおっしゃったが、それはどうなんですか。
  137. 磯江重泰

    説明員(磯江重泰君) 国民金融公庫につきましては、法律上、医療に貸すとか貸さないとかという種類の規定は全然ないわけでございまして、国民大衆の生業資金を貸すということしかないわけであります。従いまして、医療に対する貸付をどうするかというのは、これは法律上の問題ではなくて、実行上、運営上の問題でございます。中小金融公庫につきましては、医療に関する規定が一項目でございますので、それは将来の方向を考えた上で、この際、一応整理していこうということでございますが、爽際上の運営につぎましては、両公庫とも、それをいかなる時期にどうするかという点につきましては、先ほどの答弁で私が申し上げましたように、今のところ、はっきりした具体的な見通しを立てておるわけではございませんで、ただ、将来の方向としてはそういうような方向で考えていきたい。従って、ただいまの御指摘の国民金融公庫につきましても、あるいは国民金融公庫だけはいつまでも並行的にやっていくのか、あるいは一年と限らず二年、三年と並行してやっていうて、その先はこっち一本にするのかというような、いろいろな考え方があるかと思います。それらの点につきましては、まだ当面の問題としては具体的に結論を出しておりませんので、三十六年度以降、医療金公庫をどういうふうに持っていくかという方向と関連してその結論を出したいということでございます。
  138. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) それでは、医療金融公庫法案に対する本日の質疑は、この程度にしたいと思いますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  139. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) 御異議ないものと認めます。   —————————————
  140. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) それでは次に、精神薄弱者福祉法案を議題といたします。  質疑のおありの方は御発言を願います。  厚生省からは、ただいま内藤政務次官、高田社会局長並びに社会局山田更生課長たちが出席をいたしております。
  141. 坂本昭

    坂本昭君 一番最初に、厚生大臣のかわりとして次官にお伺いをしたいのですが、この法律の目的が、私は若干あいまいではないかという印象を受けるのです。それは一番最初の第一のところには、「精神薄弱者に対し、その更生を援助するとともに必要な保護」というふうに書いてあります。つまり「更生を援助するとともに必要な保護」。ところが、こういう法律の中で一番大事なのは、実施機関である末梢の一番の手の先なんですね。法律ができそも一番先で動く人たちが市町村において十分効果的に動かないというと、その法律の目的を達成することができない。この場合に、私は一番大事なのは精神薄弱者福祉司、これが非常な役割りを私はすべき任務を持っていると考えます。ところが、この精神薄弱者福祉司の任務のことについては、精神薄弱者の保護及び更生援助について、つまり福祉司の任務は、むしろその最初に、保護が先になって、更生援護の方があとに実はなっている。それからまた具体的に精神薄弱者の援護施設、この援護施設が、これがまた具体的な器になりますが、この援護施設については保護するとともに、その更生に必要な指導、訓練というふうになっている。これは私、法案を作られた方は相当苦労しておられるだろうと思う。それから同時にわれわれとしては、精神薄弱者を更生援助するのに重点を置くのか、保護に重点を置くのか、やはりこの点は将来いろいろな点で大事になってくる。あとでまた申し上げていきたいと思いますが、この点を明確にしていただかないと、末梢の精神薄弱者福祉司がうろうろして、保護するのだか、更生を援助するのだか、だいぶうろうろしてこざるを得ないと思う。この点、法律の目的が、保護して社会から離しておくのか、あるいは更生させるという点に重点を置くのか、その点一つ内藤次官の明確な御方針を伺っておきたい。
  142. 内藤隆

    政府委員内藤隆君) 御承知のように、精神薄弱者の知能指数と申しますか、それによっていろいろ違って参りまするので、法の目的としてはただいま仰せになりました更生と、またはその知能指数が非常に低い方ですね、低い方の保護をしなければならぬという部面もありますので、その両方を目的としておるのであります。
  143. 坂本昭

    坂本昭君 そうするとあれですか、精神薄弱者の中で知能指数の低い方は保護、高い方は更生というふうに区分してお考えになっておられる、そういうことなんですか。
  144. 内藤隆

    政府委員内藤隆君) これはその保護をしながら職業指導とかあるいはその他のことによって更生をはかるという考え方であるのであります。
  145. 坂本昭

    坂本昭君 保護をしながら更生をはかる。それはもう非常にけっこうですが、やはりこの場合、私は保護に一番の重点を置くか、更生に重点を置くか、これはあとあとのいろいろな取り扱いの中で、またあとで具体的に私申し上げていきたいと思うのですが、実は私はこの法案、とにかく今までなかったことを取り上げたので非常にけっこうだと思って、それで少し熟読翫味したわけです。ところが、ところどころによってどっちに重点を置いているんだろうかと私は疑わざるを得ない。目標が明確でない。たとえば更生ということに目標を置くならば、やはりいろいろな職業の指導だとか、そういう面も出てこなくちゃいけない。そうすると、精神薄弱者福祉司の仕事は、もちろん保護しながらだけれども、保護してただそのままじゃなくて、保護の中を通して更生に持っていく、世の中に出していこう、山下清なら山下清で絵をかかそう、そういう福祉司の熱意の方向が決定づけられてくると思う。とにかく精神薄弱者がおる。それなら施設へ持っていって保護しておけばいい。それだけが福祉司の任務になるか、それともそれだけじゃない、一応その中を通して今度は社会に出していこう、そうして更生さしていくならばいろいろな受け入れるところの職親制度もありますね、そういうことについては積極的にやらなくちゃいかぬ。そうなると、職業安定所との緊密な連絡も必要になってくる。だから、これだけでは私はもし市町村の福祉司になった場合、これはどっちが自分の最高の目標かということでいささかためらわざるを得ないのです。もし今次官の言われる通り知能指数——IQ幾らで、ここから下は保護だ、ここから上は更生だというならば、その明確な線を実は出していただきたい。
  146. 内藤隆

    政府委員内藤隆君) 知能指数等につきしては、多少専門的になるので、私はその専門知識を持っていないので大へん遺憾に思いますが、私の法案提出した当時の考え方から申しますれば、保護をして、その保護されておる者の中に更生のできないような者もおるようであります、そういう者に対してはもう保護を原則として進んでいく。しかし、ある程度まで知能指数その他の科学的な精神病とか心理学とかいろいろな方面から判定をしまして、そうしてこれならこういう方法をとれば更生できるというような場合には、その職業なりを選択いたしまして、更生の道を作って社会に出られるようにしていこう、そういう考え方であるのであります。
  147. 坂本昭

    坂本昭君 この法律は、社会的に非常に及ぼす影響は大きいと思う。従ってそういう点で明確に法の目的を示していただかなければ、将来私はこの法律がこれで完成されるものだとは思わない。これは厚生省当局でも私はそのおつもりだと思うのですね。非常に不完全だ。不完全だが、とりあえずこれから出発していこうという点で、その目標を明らかにしておいていただいて、私自身はこう思っているのですが、なるほどその保護ということが今忘れられている段階であるから、保謹をしていって、さらにその中から更生できる人は更生をさせるという、今の次官のお言葉は現実的にはその通りですが、大体精神薄弱者というものがいつも保護の対象でなければならぬかというと、私は必ずしもそうでないと思う。人間というものは一官欠くれば他官これを補うというので、何か一つ足りぬところがあればほかのところで補う。山下清のように知能指数は低くてもああいう特別な才能がある。つまり精神薄弱者はいつもとにかく保謹しておけばいいと、そういう考えでは私はいかぬと思う。むしろ今次官が何かIQ で踏み切って保護、それからそれ以上のものは更生という考えは実は根本的には私は間違っていると思う。いつも更生させる、そうしてばかはばかなりに、非常な失礼なことを申し上げますが、ばかはばかなりに、あほうはあほうなりにその人の持った天分を伸ばして、社会的な労働の義務を果たさしていく、そういうふうな私は取り扱いをこの法律最初から目がけていく、そうしますといろいろな点で、この中で国の責任でいろいろな問題、雇用の問題などが将来私は解決されてくる、そう信ずるのです。で、その点でもう一ぺんくどいようですが、法律の基本的な内容として保護だけで甘んずるのか。究極の目的は更生ということにあるが、途中の段階において、やむを得ないものは保護の期間が長くなる人もある。場合によれば一生の人もあるかもしれぬ。しかし、目的は精神薄弱者の更生を通して福祉を与える、そういう点を一つ明らかにしていただきたいと思います。
  148. 内藤隆

    政府委員内藤隆君) ただいま坂本さんのおっしゃる通りであります。要するに、現在の精薄者の実態から見ますると、要するに保護をしなければならぬ者もたくさんおるという事実は、これは否定できない。そこで、そういう人々を収容なり指導する施設を作りまして、そうして、そこで今おっしゃったような、最終目的は、やはり更生をして、そうして社会に送り出したい、こういうふうに福祉を与えていきたい。こういうところにあることは間違いありません。おっしゃる通りであります。
  149. 坂本昭

    坂本昭君 その点はっきりしていただくと、これは精神薄弱者福祉司の、何といいますか、熱の入れ方も違ってくると思うんです。また、さらに今の点がはっきりしてきますというと、国の責任の問題も私は明らかになってくると思うんです。実は、この法律の中では、費用についての国の負担の点がいろいろと書いてありますが、少し私この点、二十六条ですかにいろいろ書いてありますが、国がどういうふうに負担をするか。この問題について局長から少し内容を説明していただきたいと思います。国がこの法律の中でいかなる点を負担していくかということについて。
  150. 高田正巳

    政府委員(高田正巳君) この法律の条文に従って御説明をいたすことも可能でございますが、非常に繁雑になっておりますので、事柄として、分けて御説明をした方がいいかと思います。国が負担をいたしますのは、条文の順序によって参りますると、社会福祉法人の設置する掩護施設に援護を委託いたしました場合に、その委託に要する費用、この根拠条文は十六条の二項でございますが、その援護の委託に要する費用につきましては、その委託をいたしました措置権者の属する地方公共団体が十分の二、国が十分の八、こういうことになるわけでございます。それから、精神簿弱者の更生相談所というのを設けますが、この関係の経費の中で、運営賚と申しますか、人件費とかなんとかは別といたしまして、相談、判定あるいは指導というふうなものに要する運営費につきましては、委託の費用と同じように、都道府県が十分の二で、国が十分の八でございます。それから、今度精神薄弱者の援謹施設関係になって参りますが、援護施設設置に要する費用につきましては、いわゆる臨時費でございます。この臨時費につきましては、都道府県が作りました場合には、都道府県が二分の一と、それから国が二分の一でございます。それから市町村が作りました場合には、市町村が四分の一と、都道府県が四分の一と、国が二分の一。それから、今の援護施設設置に要する費用、いわゆる臨時費でございますが、その中の運営に要する費用でございますね、精神薄弱者を入れましていろいろ運営をしていくわけでございますが、その運営に要する費用は、設置者が十分の二、それから国が十分の八、こういうことに相なるわけでごさいます。大体以上が、国が財政的な援助をいたしまする事柄の負担区分でございます。
  151. 坂本昭

    坂本昭君 だいぶ整理していただいたんですが、今の二十六条の二項の、「国は、前条の規定により都道府県が負担した費用の三分の二を負担する。」これはどういうことですか。
  152. 高田正巳

    政府委員(高田正巳君) これは、「国は、前条の規定により」と申しますので、 「前条の親定」は、一枚めくっていただきますと、二十五条に、「都道府県は、第二十二条第三号の規定により市町村が支弁した費用については、政令の定めるところにより、その四分の三を負担する。」これは二十二条の三号の規定というのは、市町村が施設設置した場合に、市町村がまず払います。それに対して都道府県が御指摘の二十五条によりまして四分の三を負担するわけでございます。そういたしますと、地元の市町村の負担は四分の一ということになります。そうしてその四分の三の負担を、都道府県の負担に対して、今御指摘の二十六条の二項によりまして、前条の規定により、都道府県が負担した費用の三分の二を負担するという負担いたしておりますものの三分の二でございますから、結果としては、先ほど私が申し上げましたように、四分の一、四分の一、二分の一という負担区分になるわけでございます。どうも非常にわかりにくいと思いますけれども、どうもすべてこういう書き方をいたしておるようでございます。私どもでもちょっとわかりにくいようでございます。
  153. 坂本昭

    坂本昭君 非常にごたごたしておって、大体今の説明で、国が今回かなりな費用の負担をする具体内容はわかってきました。そこで、この間の提案理由の説明の中でも、精薄者の数、それから、ある程度いろいろ御説明いただきましたが、これらの負担区分によって精薄者を保護し、さらに更生させる。そのためには、私は事業計画を綿密に立てていく必要があろうかと思う。その中で、三十五年度の予算というものは一応策定されてくるということになろうかと思いますが、非常に膨大な精簿の人たちですが、何か具体的な計画を作っておられるか、御説明いただぎたい。
  154. 高田正巳

    政府委員(高田正巳君) 坂本先生の御指摘は、おそらく将来にわたってのいろいろな計画であろうかと思います.その一部として三十五年度はこういうふうにいたしますということを、全貌の一部として関連をつけて説明せよという御質問でございまして、まことにごもっともな御質問だと思います。ただ、提案理由説明のときの補足説明でも御説明をいたしましたように、実は精神薄弱者につきましての基礎的な調査といいますか、そういうふうなものにつきましても、提案理由で説明をいたしましたのは、ある精神衛生実態調査で推計をいたしました数字を申し上げましたので、実は率直に申し上げまして、明確な実態というものをまだ把握いたしておりません。従って、結論的に申しまして、今先生御指摘のようか、将来計画というふうなものを、今直ちにこういうふうでございますというて御説明を申し上げるほどのまとまったものを持っておりません。ただ、これもよくおわかりをいただきまするように、この分野の仕事というのは非常に未発達でございまして、まだ処遇の方法等につきましても的確にこういうふうにしたらいいというふうな専門家の定説というようなものがまだ確立されておるわけでもございませんし、従って、たとえば施設の計画を立てまするにいたしましても、分類収容というようなことがいいのか、あるいはそういうふうなことでなく、やり方がいろいろあるのじゃないか、さような細部の取り扱いの点につきましても、もう率直に申し上げて、私どもまだ定見を持っておらないわけでございます。しかし、そうは申しましても、とにかく施設に例をとってみますれば、こういう施設が今日もう非常に足りないということは、絶対的な客観情勢でございます。しかも、児童福祉施設の方につきましては、御存じのように、すでに多年の努力によりまして百以上もできております。ところが、十八才以上の者につきましては、これは全く今日までできておらない。全然ないとは申しませんけれども、ほとんど見るべきものがない。やっと三十四年度から、手をつけて、三ヵ所できるようになった。こういうふうな状態でございますので、従って、とにかくいろいろ細部の取り扱い等の点については、今度できまする審議会で専門家の御意見を十分に拝聴して、いろいろと検討していくにいたしましても、この際、施設を例にとって申しますれば、とにかく、このままの施設じゃいけないので、どんどんふやしていかなければならない.また、公けの施設を持つにも限度がありますので、民間の施設があれば、これも収容委託というようなことで、お金を差し上げて、この施設の力を拝借していかなければならない。それについてどういうふうな財政援助をしていくかというようなことを、法律として、まず骨格のレールだけでも一つ、早急に法律を御制定を願いまして、これをもとに、さらにいろいろな専門冢の御意見なり、あるいはより正確な実態の把握なりというようなことを並び行ないまして、御指摘になりましたような将来計画というようなものも、だんだんに作って参りたい、かようなつもりでおるわけでございます。直ちにお示しをできませんことは、はなはだ申しわけないのでございますが、大体以上のような状況でございます。
  155. 坂本昭

    坂本昭君 今回初めて取り上げた点については、私はおそかったけれども、これはけっこうなことだと思うのですが、今の局長説明通り、まだまだ非常に具体的な計画性が足りない。従って、今後いろいろな研究をし検討をして、そうしてこの三百万という精薄者の問題を解決していかなけれぱならぬ。私はそうなればいよいよ国としての資任も非常に重大であるので、先ほど説明いただきましたが、国がいろいろな費用の面で負担していますが、この法案の中で国が一つモデル的なケースをみずから示して各都道府県に、こういうふうに扱っていくと保護ができ、さらに更生ができるという、そういうモデル的な国立の援護施設を私は作るべきではなかったかと思う。それがこの法案の中では、どうも最初はたしかあったと聞いておりますが、途中で消えてしまったらしい。この点ははなはだ私は遺憾だと思います。これについては次官に、なぜ国が率先して責任のある国立の施設を作って、そうして各都道府県にこういうふうにやれという態度を示さなかったのか、今回の法律案は、まあ国立を入れたら予算の問題で困るというならば、三十六年度からは予算を取るということで、国がこれをやはりみずからやる、そういう一項も入れるべきではなかったか。なぜ抜いたか、その点の理由を一つ説明いただきたい。
  156. 高田正巳

    政府委員(高田正巳君) 事務的な観点からのお答えを一応さしていただきまして、さらに政務次官から御答弁をいただきたいと思います。  御指摘のように、国立の施設を持つということは望ましいことでございます。従いまして、私どもその意図を十分に持っているわけでございます。ただ、何分にも国立の施設一つ作るということは政府としましては相当大きな問題でございまして、はなはだ遺憾ながら来年度では予算ももちろんございませんし、法律案にもさようなことを入れますると、これは法律で制約を国が受けることになりまするので、私どもといたしましては、将来の問題としてこれは十分検討いたしまして、将来はぜひとも国立の施設を持って参りたい、かように孝えておるわけでございます。ただその際に、これは細部の点になりますが、今日御存じのように、秩父学園という児童福祉保護施設がございます。全然別個に新しいものをもう一つ建てるか、あるいは秩父学園というようなものを拡充強化することによって、これを子供からおとなまで一貫をした国立の施設にいたすか、その辺のところは、これはやはり技術的な問題として十分検討してみたい。しかし、いずれにしろ、いかなる形にしろ、将来は国立の施設を持って参りたい、かような意欲を私どもは持っておるわけでございます。もちろん、児童局のものでございまして、これを拡充することによって、おとなの方の国立の施設としての役割りも演ずることに持っていくか、あるいは別個に建てるかというふうな問題は、これは十分今後検討をして参りたい。私どもはいずれの格好にしろ、とにかく国立の施設を持っていきたいという意欲を待っているわけでございます。
  157. 内藤隆

    政府委員内藤隆君) ただいま局長からお答え申し上げた通り、国立のさような施設を全国的なモデルというふうに持ちたいという意欲は十分にあるのでございます。一つ力を人れて、来年は予算等の措置におきましてできる限りの力を尽くしたい、かように考えおります.
  158. 坂本昭

    坂本昭君 今、局長は秩父学園の実例をあげられたけれども、秩父学園の現状は十八才まで、なるほどあの中では十八才まで保謹してやっているうちに、十九になり、二十になり、場合によれば二十一になった揚合に、なお保護養を要する場合には置いてもよろしいというふうな規則になっているので、特に成人を収容する施設ではない。また現実は、今百人ほど入っており、入園待機者が五百人くらいおる、とうていおとなが、少なくとも十八才以上の人は一人も入ることができない実情なんです。これは局長、児童局の所管なんですけれども、私は非常な関心を持っているものだから、きのうも実情を聞きました。現在たしか九十八名、そうして今人っている人は十八才までです。おとなは入っていません。また、入れないというのが実情なんです。ですから、秩父学園をたよりにして、あれにくっつけるとかいうような考えでは、非常に消極的なんです。私は、この問題は、実は一般にも非常な関心を喚起している問題であって、ぜひ国がモデル的にどう扱うかということを示すこと、そうしてこういう人たちにも保護と更生の道があるということを示す義務があると思う。そういう点で、今のような消極的なことでは、なかなかわれわれとして、不満足であるということを申し上げておきます。
  159. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) ちょっと速記を落として。   〔速記中止〕
  160. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) 速記を起こして下さい。  精神薄弱者福祉法案に対する本日の質疑は、この程度にしたいと思いますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  161. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) 御異議ないものと認めます。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時十二分散会