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政府委員(
高田正巳君) お手元に御配付申し上げてあります資料の五ページに要綱が載っておりますから、これに従って御
説明を申し上げたいと存じますが、その前に、御審議の御便宜のために若干バック・グラウンド的なことについて御
説明をいたしたいと思います。その資料の六十一ページをお開きを願いますと、それ以下に若干の参考資料といたしまして、いろいろな数字があがっております。
で、六十二ページに「
精神薄弱者の分類」というような項がございまして、若干のことが書いてございますが、この本法案の対象といたしまする
精神薄弱者と申しまするのは、俗にいう知能の程度の低い人々をさしておるのでございます。それで、それの六十二ページに書いてございまするように、知能欠陥の軽い方から普通魯鈍、痴愚、白痴というふうな三種類に分類をいたしておるのでございます。魯鈍と申しまするのは知能検査法によりまする知能指数が大体七〇から五〇程度の者、痴愚といいまするのは五〇から二五程度の者、白痴というのは非常にひどい者でございまして、二五以下を普通さしておるわけでございます。それで、これの魯鈍、痴愚、白痴というふうな程度に該当をする人々の
状態がどうであるかというふうなことにつきましては、それぞれのところに若干の
説明が加えてあるわけでございます。
しからば、かような方々が一体わが国にどのくらいおるかという問題でございますが、その次に、六十四ページに「
精神薄弱者数」という参考資料がございまして、今まで私
どもの入手し得る範囲内におきまする資料をここに大体並べてあるわけでございますが、率直に申しまして、
精神薄弱者の的確な、非常に確信のある数字を今まで
調査をいたしてございません。ただ、そこにございまするように、
昭和二十九年に
精神衛生の実態
調査というのをやったわけでございまするが、これで、この
調査から
全国推計をいたしますると、痴愚、白痴、いわゆる五〇以下程度の者が総数で五十八万くらいあるのではないかという統計資料があるわけでございます。年令で分類をいたしますると、そこに、表に載っておるようなことでございます。さらに、これより少し知能欠陥の程度の軽い魯鈍級ということになりますると、五〇以下ほど的確な資料がないのでございますが、そこにいろいろ書いてございまするようなものから推計をいたしまして、大体二百五十万程度ではあるまいか、従って、魯鈍級をも含めた全体の
精神薄弱者は大よそ三百万人程度ではあるまいか、こういうふうに推計をいたしておるわけでございます。
それで、普通
考えられまするよりは非常に多くの
精神薄弱者がわが国に存在しておるわけでございますが、これが措置と申しまするか、福祉の問題につきまして、先ほど提案理由で大臣から御
説明申しましたように、大した何と申しますか、進んだ措置が今まであまりとられておらない。しかるに、これらの
精神薄弱者の人々は、非常に家庭では重い負担になっておりまするし、さらに進みましては、不良少年でありまするとか、あるいは犯罪者でありまするとか、転落をされた婦人等の中に
精神薄弱の方々が非常にたくさんおられるというふうなことを
考え合わせますると、この問題は相当腰を入れて取り上げなければならないというふうに私
ども考えておるわけでございます。
さような観点からこの
法律案を御提案申し上げたわけでございますが、この
法律案と別に、提案理由の御
説明にもございましたように、精薄の問題といたしましては、まず、こういうふうな精薄が発生しないように、発生の予防をいたし、あるいはなりました者の治療をいたすというふうな分野が、実は非常に大きな分野になってくるかと思うのでございます。この問題につきましては、従来から学問的にもいろいろ若干の
研究はあるようでございますが、さほど進んでもおりませんので、今般、これは公衆衛生局の所管でございまするが、三十五年度の予算案の中に、
精神衛生
研究所に特に精薄部を設けていただきまして、ここで発生の予防なり、あるいは治療面についての
研究並びにそれらの
研究者の連絡というふうな仕事をやっていただきまして、その面の施策をも進めて参るという予定に相なっておるわけでございます。それで、それらのことを除きまして、実際に
精神薄弱である人の福祉を少しでもはかって参るということのために、本
法律案を御提案を申し上げたわけでございます。
大体そういうふうなことでございまするが、資料の五ページに返りまして、この要綱について御
説明を申し上げたいと存じます。
第一の
目的でございますが、これは格別御
説明を申し上げるほどのこともないかと思いますが、その更生を援助するとともに、必要な保護を行ない、そうして福祉の向上をはかるということでございます。
それから、第二の審議会から第六の
精神薄弱者更生相談所まで、これらはいずれもお世話をいたすいろいろな機関でございまするとか、責任者というふうなものをきめて参ったわけでございます。既存の機関にそれらの仕事をやってもらうということもございまするし、必要あって新たに機関を置いて参るという趣旨のものもございます。
第二の審議会でございますが、これは、事柄が非常に専門的な知識、経験等を要しまするので、特にさようなことにつきましての
専門家に御参加を願いまして、審議会を設置いたして参るということでございます。
第三の援護の実施機関でございますが、援護の措置をやる責任者というものを、そこに書いてございまするように、福祉事務所を管理する都道府県知事または市町村長ということにきめたわけでございます。福祉事務所は、御存じのように、大局的に申しますと、市にはみな福祉事務所が設置されておるわけでございますが、郡部は、都道府県が郡部を分割いたしまして、福祉事務所を設置いたしております。従いまして、郡部におきましては都道府県知事、市部におきましては市長というものがその責任者になる
建前でございます。これは身体障害者福祉法と全く同様でございます。
それから、第四の福祉事務所でございますが、福祉事務所は、今日、御案内のように、福祉行政の第一線機関といたしまして、生活保護法、児童福祉法、身体障害者福祉法の運用施行に当たっておるわけでございますが、本法が成立をいたしましたならば、本法も福祉事務所をもってその第一線機関といたしたいと、従って、福祉四法を所管する第一線機関に相なるわけであります。
それから、第五の
精神薄弱者福祉司でございますが、これは新たに
精神薄弱者福祉司という専門の職員を置くということでございます。都道府県は必ず置いてもらわなければならない。しかし、福祉事務所を設置する町村は、これは置くことができるということで、必置の機関ではございません。それで、行ないますることは、直接専門的に
ケース指導を行なうということと、福祉事務所の
一般の
ケース・ワーカーの技術指導を行ないますることを任務といたしまして、必要な知識能力を有する者から任用して参る、こういう
建前に相なるわけでございます。今日、身体障害者の面におきましては、身体障害者福祉司というものが存在をいたしておりましてこれが身体障害者福祉行政の中核として働いていただいておるわけでございます。それに対応したような福祉司を置いて参りたい、こういうことがねらいでございます。
それから第六の相談所でございますが、身体障害者の場合もこれがあるわけでございまするが、医学的、あるいは心理学的、あるいは社会的、職能的と申しますか、いろいろな面から専門的扱いをきめる必要がございまするので、
専門家を置きまして、その手でさような判定を行なう機関を設けたいということが主たるねらいでございます。なお、家庭その他からの直接のいろいろな相談にも応ずる、こういう任務を持っておるわけでございます。
第七の援護の措置でございますが、大きく分けまして、
精神薄弱者福祉司または社会福祉主事の指導に付するということ、目を放さないようにしてめんどうを見ていくということが
一つでございます。それから二番目には、施設に入れてめんどうを見ていくということでございます。それから三番目は、特別な奇特な方があるわけでございますが、そういう方に預けまして、適当な職能訓練等をお願いをしていくということでございます。援護の措置は、簡単に申しますると、その三種類になるわけでございます。
それから、第八の
精神薄弱者援護施設でございまするが、「
精神薄弱者援護施設は、十八才以上の
精神薄弱者を入所させて、これを保護するとともに、更生のための指導訓練を行う施設とすること。」と書いてございまするが、具体的には、収容をいたしましていろいろめんどうを見ていくという施設と、家から通って参りましていろいろ授産等をやることによって指導していくということと、二つの種類を
考えております。
ここで若干御
説明を加えたいと思いますることは、今日まで児童の
精神薄弱につきましては、児童福祉法で相当な仕事をやってきております。資料の六十六ページに
精神薄弱者施設という項の中で
精神薄弱児施設という表が載っておりまするが、それでごらんいただきまするように、児童の
精神薄弱児施設につきましては総数で収容施設が百十三、それから通園の、いわゆる通って行く施設が二十一でございます。これで相当実は仕事をやってきておるわけでございますが、ところが、その次のページをめくっていただきますると、児童でないおとなの方の関係につきましては、そこにございまするように、公立が本年度三施設予算が入っておりまして、やがてでき上がるというところでございます。それから社会福祉法人立がそこにございまするように五つございます。なお、このほかに財団法人立、個人立等も若干はございまするが、大体こういうふうな状況でございます。それでこれをごらんいただきますると、児童の方につきましては相当やっておるが、おとなの方についてはほとんど施設の面からだけでも非常に貧弱であるということがおわかりをいただけるかと思うのでございますが、それで今日おとなの方はどうしておるかと申しますと、生活保護法の救護施設という種類がございまして、これは単に
精神障害だけでなく身体障害の方もあるわけでございますが、非常に
自分で
自分の世話ができないというような人を、しかも施設に収容しなければならないというような人を収容いたす施設がございます。その救護施設に
精神薄弱者の方も入っておるわけでございます。こういうふうな関係になっておるわけでございます。それで今回この
法律によりまして
精神薄弱者援護施設というものをはっきりおきめを願いまして今後これらの面につきまして伸ばして参りたいと、かように
考えておるわけでございます。この援護施設につきましては、その要綱の第八の2以下に書いてございまするように、都道府県が設置いたしました場合には設置費の二分の一、運営費につきましては十分の八を国が負担する、市町村、社会福祉法人、その他のものは都道府県知事の認可を受けまして設置するのでございまするが、市町村が設置いたしました場合には二分の一を国が、四分の一を都道府県が負担をいたします。運営費の十分の八を国が負担する。それから援護の実施機関、先ほど御
説明をいたしました都道府県知事または市町村長でございますが、これが社会福祉法人の設置する
精神薄弱者援護施設に収容の委託をしたときは、それらの公共団体がその委託に要する費用を支払うということにいたしまして、その支払いましたものの十分の八を国が負担する、費用の関係につきましてはさようなことになるわけでございます。
以上御
説明申し上げました。