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1960-02-25 第34回国会 参議院 議院運営、地方行政、法務委員会連合審査会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年二月二十五日(木曜日)    午前十一時十三分開会   —————————————  出席者は左の通り。   議院運営委員    委員長     高橋進太郎君    理事            塩見 俊二君            田中 茂穂君            阿部 竹松君            光村 甚助君            向井 長年君    委員            天埜 良吉君            石谷 憲男君            鹿島 俊雄君            川上 為治君            北畠 教真君            鈴木 恭一君            松野 孝一君            村上 春藏君            占部 秀男君            椿  繁夫君            豊瀬 禎一君            安田 敏雄君            米田  勲君            永末 英一君            北條 雋八君            加賀山之雄君   法務委員    委員長     大川 光三君    理事            井川 伊平君            高田なほ子君            石黒 忠篤君    委員            林田 正治君            大矢  正君            久保  等君            千葉  信君            田畑 金光君   地方行政委員    委員長     新谷寅三郎君    理事            西郷吉之助君            鍋島 直紹君            鈴木  壽君            基  政七君    委員            郡  祐一君            館  哲二君            西田 信一君            湯澤三千男君            加瀬  完君            木下 友敬君            藤田  進君            松澤 兼人君            松永 忠二君            中尾 辰義君   衆議院議員            佐々木盛雄君            長谷川 峻君   国務大臣    法 務 大 臣 井野 碩哉君    国 務 大 臣 石原幹市郎君   政府委員    警察庁長官   柏村 信雄君    警察庁長官官房    長       原田  章君    公安調査庁次長 関   之君   事務局側    事 務 総 長 河野 義克君    事 務 次 長 宮坂 完孝君    議 事 部 長 海保 勇三君    委 員 部 長 岸田  実君    委員部副部長  若江 幾造君    記 録 部 長 佐藤 忠雄君    警 務 部 長 渡辺  猛君    庶 務 部 長 小沢 俊郎君    管 理 部 長 佐藤 吉弘君   法制局側    法 制 局 長 斎藤 朔郎君   衆議院事務局側    事 務 次 長 山崎  高君   衆議院法制局側    法 制 次 長 三浦 義男君   説明員    警 視 総 監 小倉  謙君   参考人    東京公安委員    会委員長    堀切善次郎君   —————————————   本日の会議に付した案件国会審議権確保のための秩序保  持に関する法律案(第三十三回国会  衆議院提出)(継続案件)   —————————————
  2. 高橋進太郎

    委員長高橋進太郎君) これより議院運営地方行政法務委員会連合審査会を開会いたします。  国会審議権確保のための秩序保持に関する法律案を議題といたします。  前回に引き続き質疑を行ないます。御質疑のある方は順次ご発言を願います。
  3. 田畑金光

    田畑金光君 提案者に主としてお尋ねいたしますが、この法律案を読みまして、なかなか理解しにくいので、簡潔に、この法律目的は何を意図されておるか、お答え願いたいと思います。
  4. 佐々木盛雄

    衆議院議員佐々木盛雄君) 表題に書いてありまするように、国会審議権確保のための国会周辺秩序保持か主たる目的でございます。具体的にはどういうことかと申しますと、それによって国会議員登院と、国会審議権の公正な行使、こういうことであります。
  5. 田畑金光

    田畑金光君 審議権の公正な行使ということですが、議員の持つ固有の権限であると素朴的に理解はできますが、審議権というのは一体どういう内合を含んでいるのか、明確にしていきたいと思います。
  6. 佐々木盛雄

    衆議院議員佐々木盛雄君) 国民代表でありまする国会議員審議が、他からの圧力威力等によって影響されることなく、議員自主性確保することによって自由に審議をし得る、そういう状態にあることをわれわれは願っておるようなわけであります。
  7. 田畑金光

    田畑金光君 私の質問しているのは、他から妨害されたり云々ということではなくして、審議権というものの内容あるいは範囲はどんなことを指しておられるのか、これを承っておるんです。
  8. 佐々木盛雄

    衆議院議員佐々木盛雄君) 本法で申し上げまする審議権というのは、たとえば国会で本会議が開かれるとか、委員会が開かれるとか、あるいはこれに関連をして打合会が開かれるとか等、国政審議について公に、何と申しますか予定をしたり、あるいは場合によりましたときには予定をしない緊急の場合におきましても、国会国政の合議に直接関係のあることを確保いたしたいというのでありまするから、従って、たとえば党務を帯びて登院をするというような点につきましては、同じ登院でありましても、国政審議権にはつながっていないと考えております。
  9. 田畑金光

    田畑金光君 ばく然としておりますが、審議権をたとえば放棄するとか、のるいは審議権を守るとか等々いろいろな言葉が使われているわけでございますが、この法律ができれば、議員の持つ審議権というものは、いつの場合でも保障されるものだ、またこの法律が成立すれば、議員は常に審議権は忠実に守って、与えられた職責を果していけるのだと、こういうように考えて、この法律を出されたわけですか。
  10. 佐々木盛雄

    衆議院議員佐々木盛雄君) 大体御指摘のようなことをわれわれの理想としているわけであります。つまり外部からの圧力によりあるいは外部からの影響力によって、登院ができなくなつたり、審議ができなくなったり、そういう事態を防止しようというのがねらいであります。
  11. 田畑金光

    田畑金光君 外部からの圧力によってできないような場合等を守ろうといのですが、議員審議権確保するは、外部からの圧力だけを排除すれば守れるでしょうか。
  12. 佐々木盛雄

    衆議院議員佐々木盛雄君) 本法を離れての審議権確保ということは、もとより国会議員の本来の使命であるところの審議権というものがあるわけでありまするから、各人がその審議権行使するということは当然のことでありまするが、本法におきまして、われわれが確保いたしたい審議権というものは、要するに外部からの影響力圧力によって、影響を受けることがないということをねらっているわけであります。
  13. 田畑金光

    田畑金光君 審議権を守るという立場から言うならば、外部からの圧力によって審議権が脅かされるのを守るだけでなくして、もっと広範な意味において審議権を守るということが必要であろうと、こう私は考えるのであります。たとえば、つい最近起きた問題等において、安保条約の改正について、国会修正権があるかどうかというような問題、与党河野一郎氏は修正権ありと、こう言われている。これに対して岸総理は、河野君はいつ憲法学者になっただろうか、議会のあるときは、議会の中にいないで外を歩いて、実力者がかれこれ放言するのは、審議権放棄である、こう明確に言っておるのですね。こういう審議権放棄ということは、この法律とはどういうことに関係がなってくるのか。あるいはこういうこともあり得ると思うのです。議会運営については、多数派である与党責任を主として負わねばならない、こういうことが言われているのです。そこで、議員審議権というものを、国会の重要な責任にある与党が常に審議権を守っているかというと、必ずしもそうでない。各種委員会等を見るならば、法案がいよいよ採決になるときは、ぞろっと、こう頭を並べるけれども、普通の審議の過程においては与党議員というのはほとんど閑散として席にいない。この審議権は一体守っておると言うべきなのか、守られておると言うべきものかどうか、こういうこと等については、提案者は、審議権確保するというのがこの法律のねらいであるとするならば、そういうまた別の意味における審議権確保というものも当然これは必要だと、こう思うのですが、この点はどう提案者はお考えになっておられるか。
  14. 佐々木盛雄

    衆議院議員佐々木盛雄君) 院内におきまする国会審議権の公正な行使ができ得るような状態に努力しなければならぬことは当然のことであります。しかし、そのためには、国会法であるとかあるいは衆議院とか参議院のそれぞれの規則等もあるわけであります。本法で申しまするところの国会審議権の公正な行使ということは、この第一条にも書いてありますように、議事堂周辺の静穏を保つことによって国会審議権確保しようというわけであります。国会周辺が静穏でないために公正な審議ができない、そういうことを防止しようというのがねらいでありまするから、院内におきまする各議員審議権の問題とはおのずから立場を異にいたしているわけであります。
  15. 田畑金光

    田畑金光君 でありますから、私は、この法律というものは真に議員審議権を守るという責任から出発した法律ではなくして、あなたのお話のように、ただ外部から国会を守るんだと、こう言っておられるのです。外部とは何か、こういうことになってくれば、これまた不明確になるわけですが、外部とは何ですか。外部から国会審議権を守るという、その外部とはどういうことですか、それを承りたいのです。
  16. 佐々木盛雄

    衆議院議員佐々木盛雄君) 最近のいろいろな事件等に徴してもおわかりのように、国会議員国会登院することが現実に不可能のような状態に置かれたり、従って国会構成員であるところの国会議員登院が不可能になっては、審議を行なうことができません、また外部からの非常な圧力威力によって、国会内における正常な公正な審議権を行なうことができないというような事態も今日まであったのであります。さような外部からの圧力のことをさしたわけであります。
  17. 田畑金光

    田畑金光君 憲法の前文によると、「そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであって、」云々と、こうあるわけです。また私たちはしばしば、人民の、人民による、人民のための政治、このことも民主主義政治の基本的な精神だと言われて、人口に膾炙しておる言葉であるわけです。国民立場から見るならば、議員審議権確保するということは、これは民主主義政治の健全な発達からいって、国民全体のこれは希望だと思うのです。また国民の側から見るならば、審議権放棄されておるということは、あなたが考えているような場合もこれはあるかもしれぬ。しかし、また私の申し上げたような審議権放棄するということも、政治主人公であり、しかも政治信託を行なっておる国民の側から言うならば、これは許すべからざる審議権放棄だと、こう言われると思うのです。やはり現行憲法建前から見るならば、政治主人公である国民立場から、国会運営は健全に行なわれておるだろうか、われわれの選挙によって選ばれた国会議員は公正に審議権行使しておるのだろうか、こういうことになろうと思うのです。ところがこの法律は、国民の側から見ておる審議権を守るということではなくして、しかも私は一番これが大切なことだと思うのです。ではなくして、議会の中からというよりも、時の権力的な立場にある者の側から、自分たちの一方的な審議権を守るんだ、これがこの法律内容だと、こう思うのです。でありまするから、これは政治主人公である国民意思に反して、むしろ政治主人公である国民そのもの権利義務を抑圧しよう、押えつけようというのが本法のねらいであると、こう私は考えるわけです。この点はどのようにあなたはお考えでしょうか。
  18. 佐々木盛雄

    衆議院議員佐々木盛雄君) われわれは、繰り返し申しまするように、国民基本的権利本法によって何ら侵害しようという考え方を持っているのではございません。ただ先刻来御指摘のような、国会議員審議を行なおうとしても、これを公正に行なうことのできないというような事態を防止することに必要であると考えます。
  19. 田畑金光

    田畑金光君 あなたの答弁は苦しいわけで、もっと国民立場に立って法律考え議会運営考えることが必要だと、こう思うのです。この法律によると、目的国会議員登院確保するんだ、こういうようなことになっておりますが、登院確保するという、この「登院」ということはどういうことを指しておられるわけですか。
  20. 佐々木盛雄

    衆議院議員佐々木盛雄君) 国会議員国政審議目的をもって議事堂に行くことでございます。
  21. 田畑金光

    田畑金光君 今まで国会議員議事堂に行くことが守られなかったということがあったでしょうか。あったとすれば、その具体的な事例を示して下さい。
  22. 佐々木盛雄

    衆議院議員佐々木盛雄君) たとえて申しまするならば、昨年十一月二十七日のあの大騒ぎのあった国会乱入事件当日の状態のごときは、議員登院を妨げた事態であると考えます。
  23. 田畑金光

    田畑金光君 それはあなたのお言葉抽象論だと思うのです。やはりこれだけの国民権利影響する法律をお作りになるというならば、当然これだけの法律が必要だという国民の法的な確信が前提としてなければならぬと思うのです。やはりそのような事態がしばしば繰り返された、あるいは十一月二十七日の事件においては、現に登院しようという議員がたくさんあったが、それが登院ができなかったのだ、そういうような事実があってあなたは今のような御答弁になっているのか。われわれは寡聞にしてそれを聞いておりません。あなたの議論は非常に飛躍した、単にあったであろうという想定のもとにおける御議論です。そんな事実がありましたか。
  24. 佐々木盛雄

    衆議院議員佐々木盛雄君) 当日、国会議員が、たとえば議員会館から議事堂へ行こうといたしましても行けなかった事実はたくさんございます。早い話が、前回の当委員会におきましても、そこにおられます石黒先生のごときも、登院が不可能であったということも、質問の途中においておっしゃった通りであります。現実にさようなことがあった事実もございます。しかし、私たちは、この法案を出すにあたって、十一月二十七自事件契機となったことは事実でありますが、あの事件のみを対象として立法いたしたのではございません。
  25. 田畑金光

    田畑金光君 あの事件だけが、この法律を出した理由になっていない、よくわかりました。今事例の中に、石黒先生登院しようと思って、登院されることができなかった事例があった、こういうお話です。その一つの事実だけで、これだけの法律を作るという大義名分が立つでしょうか。私の言うのは、この法律の結果は、国民を大きく拘束するものである。国民の自由と権利に大きな制約を加えるものである。そうなるならば、国民の側から言うならば、われわれの権利や、われわれの自由を拘束するだけの理由を明確にしてほしい、納得のできるような事実をあげてほしい、こういうようなことになると思うのですが、それだけの理屈になるでしょうか、あなたの今の答弁で。その国民の気持に答えることができるでしょうか。
  26. 佐々木盛雄

    衆議院議員佐々木盛雄君) 今たまたま一つの具体的な石黒先生の例を引用したにすぎないのでありまして、そういうのはたくさんわれわれの同僚議員の中にもございます。また、同時に、先刻申し上げておりますように、私たちは何も十一月二十七日のあの事態だけから、今回のことを考えたのではないということを申したのであります。早い話が、これは一昨年に、あなたの方の当時の政党をも含めて、あなたの方の社会党をも含めて、そうしてわが与党との間に、国会正常化申し合わせを行なった。その第四項目をごらんいただけれ、ばわかりますが、国会周辺秩序を保つための何らかの法律的な規制をしようではないか、そういう申し合わせもできているわけです。それが不幸にして順調に進まなかった。また、私たちも、その当時のわが方の委員長をいたしておりました、今の衆議院議長清瀬一郎さんにも聞いたわけでありまするが、少くとも、清瀬議長の記憶によれば、五回以上の会合を開いたけれども、ついに野党側の反対によって意見がまとまらなかった、こういう事情もありまするし、かてて加えて、十一月二十七日の事件契機といたしまして、前の加藤衆議院議長からの要請もございまして、私たち国会議員立場から考えまして、ぜひとも国会議員登院審議権の公正な行使確保するための法的な措置が必要である、かように痛感をいたした次第であります。
  27. 田畑金光

    田畑金光君 多数決制代表制をとっている議会政治民主主義政治のもとにおいては、やはり、国会というものは特権的な地位があるわけでもないので、やはり、国権の最高機関であるというが、しかし、最高機関としての権威は、やはり背後に国民があるからであり、あるいは国民から信託されておるから国会権威というものはあるのだと、われわれは考えているわけです。従って、そういう建前からするならば、もっと国会というものが国民に開放される、あるいは、平たい言葉で言うと、国会国民一つになる、こういうのが議会政治建前でなければならぬと思うが、この法律はいよいよ国民議会とを障壁を設けて隔てる結果になっておる、これでは政治を託した国民の側か言うならばまことにけしからん法律である、こういうことになろうと思うのです。あなたの答弁は、いつも、速記録を読んでみますと、一昨年の四者会談を持ち出されておりますが、あるいは与党野党の話し合いがついたとか、つかなかったとかおっしゃいますが、与党野党の問題じゃないと思うのです。私は、この法律の根本的な問題は、国民の側から見た場合、あるいは憲法に保障された国民の自由と権利の問題がどうなのか、どういう影響を受けるか、というところに問題があろうと思うのです。そういう点から見るならば、これはいよいよ国会国民とを分け隔てる法律になって、そうして時の政治権力が、うまい工合に自分たちの言うことを聞かんのは、すべて大衆行動でも抑えていこう、こういう危険な法律であると考えておる。あなたにそれを認めろと言ってもそんなことは認められぬと言うかもしれないが、そういうような一面もあるというくらいはあなたは考えたことがおありでしょうか。
  28. 佐々木盛雄

    衆議院議員佐々木盛雄君) 田畑委員のせっかくの御名論でありまするが、あなたのおっしゃることには非常な論理の矛盾がありはせぬかと思う。今日はなるほど主権在民の、国民主権立場をとっております。しかしながら、そのためには民意をまず国会に正しく反映することが必要でございます。大多数の議員が、一部の、少数の人々の圧力妨害等によって大多数の国民意思を正しく国会に反映させることのできないというような事態は、いわゆる国民主権立場から申しましてもぜひともこれは防止しなければならぬ、かように考えるわけであります。
  29. 田畑金光

    田畑金光君 時間の制限もあるので、あまり問題に拘泥することもできませんが、次に一つ質問したいわけです。この法律が特に今必要であるという理由を承りたいのです。言葉をかえて言いますと、今いろいろな法律がございますが、現行法の運用によって、十分この法律目的とする、あなた方の心配しておられるようなことは確保できると、こう思うのですが、現行法のどういうところに不備があって、あらためてこの法律をお出しにならなければならなかったのか承りたいわけです。
  30. 佐々木盛雄

    衆議院議員佐々木盛雄君) 本法のねらいは、先ほども申しておりまするように、国会議員登院国会審議権の公正な行使でありまするが、これが妨害されることを防ぐための現行の法規といたしましては、あるいは道路交通取締法でいいではないか、あるいは暴行罪でいいではないか、あるいは公務執行妨害その他等でいいではないかと、いろいろな御意見もあるわけでありまするが、たとえば道路交通取締法のごときは、これは交通の安全ということが主たるねらいであるわけであります。また暴行等につきましても、直接腕力をふるって国会議員暴行を加えないまでも、たとえば、スクラム等を組んで現実登院を不可能に陥らしめるということも発生をいたしているわけであります。従いまして、その点から考えましても、現行法のみによっては不十分であると考えまして、この際こういう措置が必要であったと思うわけであります。
  31. 田畑金光

    田畑金光君 現行法では不備であるから、この法律を必要としたと、こうお話になりますが、登院妨害を排除する場合でも、道路交通取締法を発動ずれば当然できることだと、こう思うのです。あるいは国会の構内に入ってきた者がけしからんというならば、刑法上の家宅侵入罪で処理できると思うのです。私はこの法律をあらためて出さなければならない意義というものを見出すことができない。しいて見出そうとするならば、大衆的な行動制限あるいは禁止することだけがねらいのように考えられるが、少なくとも、あなたの先ほど来言っておられる国会議員登院を守るためとか、あるいは国会審議権を守るとかいうようなことは、現行法で十分可能であると、こう思うのだが、現実に今日まで何ら問題なくきているじゃございませんか。あらためてこの法律を出そうという客観的な必要性はどこにあるのでしょうか。
  32. 佐々木盛雄

    衆議院議員佐々木盛雄君) たとえば道路交通取締法は、申すまでもなく道路における危険の防止と交通の安全ということが目的でございます。第一にそういう点におきまして法律目的を異にいたしております。また道路交通取締法集団示威運動等対象としてこれをその場で制止することを面接の目的とはいたしておりません。それを今回においては可能にするためには本法の制定がぜひとも必要と考えたわけであります。また一般刑法でも目的が達せられるではないかというお話でありますが、集団示威運動が行なわれます場合を考えてみましたときに、個々の事件については刑法の適用によって処理することもできる場合もあろうかと考えます。しかしこの法案は、必要最少限度行政的措置によって国会審議権の公正な行使確保しようというのでありまするから、処罰を目的とする一般刑法のみでは不十分である。かように考えるわけであります。
  33. 田畑金光

    田畑金光君 違憲であるか、合憲であるかという問題は、きょうは触れません。われわれは、明らかにこれは違憲であり、この条例はなくすべきであるという建前に立っておりますが、その議論は別に触れませんが、この法律東京都の公安条例に基づいて、その公安条例との関係において目的を達成することは、法の内容を見れば明らかであるわけです。今、あなたのお話のようなことは、東京都の公安条例というものが現にその内容において触れているわけで、公安条例のほかにも、さらにこの法律を積み重ねるということは、どういうことに、その関係はなるのでしょうか。
  34. 佐々木盛雄

    衆議院議員佐々木盛雄君) 今お話公安条例に関します限りにおきましては、本法公安条例を越えるものではございません。公安条例に従って、適当な措置をとられたいことを議長から要請をするわけであります。
  35. 田畑金光

    田畑金光君 あなたの御答弁は、これも速記録で読みましたが、単にこの法律議長要請権だけだ、こういうような答弁です。単なる議長要請権だけであって、あとは東京都の公安委員会委員長であるとか、あるいは警視総監の自由裁量、判断に待って、行政措置がとられるのだ。こういうような御答弁です。その限りにおいては、あらためてこの法律を今設けなければならぬという理由はどこにもないと思うのです。その辺はどういうことになるでしょうか。
  36. 佐々木盛雄

    衆議院議員佐々木盛雄君) 院内の模様というものは議長が一番よくわかっております。国会内部のことは国会が一番よくわかっております。また国会議員登院というその問題につきましても、これは一番よくわかっております。従いまして、議長から、ぜひともこの国会議員登院が可能なような状態にしてほしい、あるいは国会の公正な審議権行使を阻害しないような事態に導いてほしいということを、衆参の議長から、公安委員会とか、あるいは警視総監に対して要請をするわけでございまするから、今までのような、要請のなかった、要請権というものが認められていなかった場合よりも、国権の最高機関であるところの議長から、その議長立場から要請されるということの方が、より私は適切な措置ではなかろうかと思います。
  37. 田畑金光

    田畑金光君 あなたの答弁は何ら私の質問に答えていないし、また答弁自体がこの法律がいかに根拠が薄弱であるかということを示すものだと、こう思うのです。この法律の第四条を見れば、議長要請として、第四条の第一項の最後の方を見ますと、「両議院の議長は、都公安委員会に対して、その集団示威運動等につきその許可の取消又は条件の変更を要請することができる。」これを要請権と言っておられるかと思うのですが、都の公安条例の第三条を見ますと、その第三項に、「公安委員会は、前二項の規定にかかわらず、公共の安寧を保持するため緊急の必要があると明らかに認められるに至ったときは、その許可を取り消し又は条件を変更することができる。」東京都の公安委員会においても、あなた方がこの法律で心配されているようなことはちゃんと明示しているじゃございませんか。これでも今まで都の公安委員会ができなかった、あるいはまた同じことが警視総監についても言えるのですが、警視総監がこれでやらなかったとするなら職務怠慢。あなた方の心配されていることは、本法の第四条は都の公安条例の第三条に明確にうたわれているのです。なぜこんなものをあらためて今つけ加えなければならないのですか。議会のことを議長がわかっているということは、それだけはよくわかる。それだけの、要請権しかない、議長がそういうような権限しかもたないとあなたは答弁でお答えになっている。なぜその程度のものを、あらためて同じような内容法律をここで出さねばならないのか、その辺の事情を承りたい。
  38. 佐々木盛雄

    衆議院議員佐々木盛雄君) 御指摘の第四条第一項に関する限りにおきましては、今お話のように議長から要請するだけのことであります。要請を受けた公安委員会が、いかなる措置議長要請にこたえ得る最も具体的な措置であるかということを判断して、自主的に決定をされるわけであります。これはまあ事前の措置として公安委員会に与えられた権限の範囲内におきまして議長要請にこたえられるわけであります。議長はただ単にこれに対して要請をするにとどまるわけでございます。しかし議長が、国権の最高機関であるところの議長があらためて要請するということは、よほど異常の事態でなければならぬと思います。そういうような場合におきましては、公安委員会におきましても議長の意を受けて善処すると思います。
  39. 田畑金光

    田畑金光君 都の公安委員会委員長に私はお尋ねいたしたいのでございます。公安条例については、すでにしばしば関係委員会において論議をされた通り、下級審においては東京都の公安条例については違憲の判決が出ている、こういういわくつきの条例であり、私もけさ初めてこの東京都の公安条例というものを読んで見ましたが、これは大へんな条例だということを初めて気づいたわけです。そこでお尋ねしたいわけですが、この法律をあらためて必要としなければ、この条例だけでは国会周辺の治安等の維持を確保することが今日までできなかったのかどうか、この法律は皆さんのお立場においてはぜひともこれは必要であるというお考えに立っておられるのかどうか、公安委員長にお尋ねいたします。同時にまた警視総監にも同様にお尋ねいたします。
  40. 堀切善次郎

    参考人堀切善次郎君) 議会周辺の静ひつを保ち、国会の皆さん方の審議を平穏にできますようにやることにつきましては、公安条例の運用の上において非常に苦心をして注意をしておる次第であります。できるだけの力を尽くして今日までもそのことを努めておりましたわけでありますが、去年の十一月二十七日の事件のような非常に多数の運動等に対しましては、警察力が必ずしも十分とは申されません場合も起こります。それで、この法案があるなしにかかわらず、公安委員会といたしましては議会周辺の静ひつを保持する上に全力を尽くすつもりではおりますが、この法案ができますれば、なおその点について一歩工合がよくなる点があると考えておるわけであります。
  41. 小倉謙

    説明員(小倉謙君) 国会周辺において行なわれますいわゆる集団示威運動等につきましては、その必要な取り締り等について非常に苦心をいたしておりますことは、ただいま公安委員長のお話になった通りでございます。もちろん、公共の安寧を保持するために特に必要のある場合には、こういうような集団示威運動等について必要な警告あるいは制止をして、非常な事態のありませんように努めるわけでございますが、前回委員会でも申し上げましたように、たとえば昨年の十一月二十七日の事態のような場合、ああいうような多数の集団によるいわゆる請願行動、ことに旗を持ち、あるいは歌を歌い、デモ的な行動をされる、こういうような行動につきましては、私どもといたしましては、これはやはり公安条例によって取り締りを行なうべき対象である、こういうふうに考えて、事前における警告あるいは当日における警告、制止等を行なったのでございます。しかしながら、これを行なわれる側の方たち、またこれを指導される立場におられる方々の考え方は、こういうような多数の者による先ほど申し上げましたような状態を伴った行動も、憲法に認められた請願の範囲である、国会に対する請願であり、陳情であるから、当然行なってよろしいのだということで、残念ながら私どもの見解とは異なるのでございます。従いまして、当日現場においてこれを行なわれる方たちにおいては、既定の方針通り実行されるということで強硬に進んでいかれた。ところが私の方はこれに対して取り締りを加える、こういうことで、あのような混乱というものが出てくるのであります。従いまして、私どもとしてまことに苦心をするのでありますが、(田畑金光君「この法律が必要であるかどうかを簡潔に一つ答えて下さい」と述ぶ。)特にお願いしたいのは、要するにああいうような行動というものが、国会として請願の範囲に認めるかどうかというような点をぜひはっきりしていただきたい、こういうような気持を持っておるのであります。それに関連しまして、今回のこの法案においては、国会周辺において、国会周辺では特に静穏でなければならない、また必要な場合には議長から私の方に要請がある、こういうようなことがうたわれておりまするので、そういうようなことが明確にされますならば、私どもが今後取り締りをしていく場合におきましても、あるいは相手方と話し合いをしていく場合におきましても、非常に私は何といいますか、やりよくなっていく、こういうような考えがいたすのであります。そういうような意味におきまして、この法案がもし成立いたしますならば、一そう今後の取り締りが適切に行なわれていく、こういうふうに考えておるのであります。
  42. 椿繁夫

    ○椿繁夫君 議事進行。ちょっと今の点、議事進行についてですが、これまで議院運営委員会におきまして、提案者は、この法律国民権利に何ら制限を加えるものでもないし新たな規制をするものでもないということを明らかにしておられます。同時に、東京公安委員会及び警視総監に対して新たな義務を課するものでもないということを、しばしば繰り返しておられるのであります。ところが、ただいまの警視総監のお話を聞きますと、この法律ができることによって多数の人の請願、陳情というものについて、これまで公安条例や警察官職務執行法によって明らかにならなかったものを明確にするのであるから、多数の陳情、請願について取り締まりがしやすくなるということを明言しておられるのであります。(「重大な問題だ」と呼ぶ者あり)提案者のこれまで繰り返しておられますところの御発言と、提案の趣旨と、これを受けるところの警視総監のただいまのお答えは、明らかに新たな国民権利に対して制約を加える内容を持っておるものと警視総監は受け取っております。この違いを明らかにしない限り、この審議は私はもう堂々めぐりをしておるようなものでありますから、まずこの点について明らかにされることを望みます。
  43. 高橋進太郎

    委員長高橋進太郎君) 椿君に申し上げますが、議事進行といいますか、関連質問としてその点がございますが、今、田畑君が御発言中でございますから、一応いかがでしょうか。質問者の質問が済んで、そのあとでこの問題を一つ問題にしたいと思いますが。
  44. 椿繁夫

    ○椿繁夫君 私は、この法律が出ると、これを受けて執行する側の責任者が、提案者の趣旨と全然違う受け取り方をしておられるのであります。この点を明らかにしなければ、何回委員会を重ねましても、私は審議内容そのものが実質的に前進しないと思うのです。だから、この点をまず明らかにして田畑君の質疑を続行されることが、議事進行上効率的である、こういう判断で申し上げておるわけであります。
  45. 高橋進太郎

    委員長高橋進太郎君) 田畑君にお尋ねいたしますが、今議事進行でお聞きの通り椿君からの発言があったのですが、今の質問者としてはこのまま質問を続行しますか。今の問題をまず解明して、そのあとにするということになりますか。その点は質問者としてはいかがですか。
  46. 田畑金光

    田畑金光君 実は椿委員から、従来の提案者答弁等をもとにされて、先ほど来の私の質問に対する公安委員長並びに警視総監の答弁について矛盾された点を指摘されましたが、今、椿委員指摘された点は、実は私、同じような印象を受けたので、これから私が実は質問しようと思った点が、たまたま椿氏から出されたわけで、この際この点は明確にしていただきたいと思います。
  47. 高橋進太郎

    委員長高橋進太郎君) それではお諮りします。椿君の質問につきましては、これから田畑君が同様の質問で解明する御意思のようでございますので、このまま田畑君に発言を認めまして、そうしてこのまま一つ進めていって、田畑君がその論旨上必要ならばそれを田畑君によって解明さしていただきたいと思います。(「そういうことではないのだ」「関連質問はあらゆる委員会でありますよ」「休憩々々」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)
  48. 田畑金光

    田畑金光君 先ほどの私の質問に対して、公安委員長並びに警視総監の答弁は、提案者の今日まで答えていたことと相当の開きがあるわけです。これをあらためてお尋ねしたいわけですが、公安委員長は、警察力が足りるとか足りないとか、あるいは、この間の十一月二十七日事件に際しては警察力が十分でなかったとか、こういうお話をやっておられるわけです。この法律は、警察力が十分であるとか、あるいは適当であるとか、そういう法律内容ではないわけです。この法律案というものは、よくお読みの通り、あなたもお読みになっておられましょうから、よく御理解になっておられるものと私は考えてお尋ねしたわけですが、すべては公安委員長が裁量する、あるいはまた、議長要請に基づいて警視総監が判断をして、適当な措置をやる、こういうことになっておるわけです。議長は、単に要請をするという程度にすぎないわけです。ところが、公安条例を見ますと、私が第三条において指摘いたしましたように、この法律の第四条によって規定されている事項等は、すべて公安条例第三条で規定されておるわけです。あなたとしては、この法律がなければ、今まで国会周辺秩序確保、あるいは道路上の秩序の維持等はできなかったのかどうか、私はそれをお尋ねしたわけです。警察力をふやすわけじゃございません、この法律は。これは別の問題です。もし今までの条例で十分でなかった、こういうことになれば、この法律ができたといっても、内容は同じことなのだから、あなたとしては、今まで職務怠慢であった、自分の職責を十分果たしてなかった、こういうことになろうかと思うのです。警視総監に至っては、この法律は明らかにデモ行為を制限する、禁止するのだ、あるいは取り締るのだ、大衆行動を取り締るのだ、こういうふうなことを答えておりますが、この法律は、提案者の説明によると、そういう大衆行動制限あるいは取り締り目的内容ではないのだ、議長の単に秩序保持要請をやる手続規定だ、こういう答弁で来ておるわけです。あなたの先ほど答弁というものは、私のこの法律を読んで解釈することと本質的に違っておりますが、公安委員長並びに警視総監にあらためて御答弁願うとともに、私は提案者にお尋ねいたしますが、提案者は、今まで答弁されたことを確信をもってあらためてここで確認していただきたいと思うのです。一つ公安委員長並びに警視総監から御答弁願います。
  49. 堀切善次郎

    参考人堀切善次郎君) 現在の公安条例の運用によりまして、できるだけのことをするつもりでおります。ただ、この法律が成立いたしますれば、議長要請ということはありますから、あるいは許可、不許可、あるいは条件の変更ということを公安委員会として判断いたしまする上に、非常に重要な材料がそこに一つ加わるという点につきましてないよりはある方が便利だというふうに考えております。
  50. 小倉謙

    説明員(小倉謙君) もちろんこの法律がどういうことになりましても、現実に私の方で措置をするのは公安条例等によって行なうわけでございますが、その公安条例等によって措置をするにつきまして、この法案が成立しました場合には、一そう適切にこれを行ない得るであろう、こういうふうに申し上げたわけであります。(「何が適切か」「ごまかすな」と呼ぶ者あり、その他発議する者多し)
  51. 高橋進太郎

    委員長高橋進太郎君) 御静粛に願います。
  52. 佐々木盛雄

    衆議院議員佐々木盛雄君) 私は、先ほど椿委員の申されました通り、従来、本法によって公安委員会ないし警視総監に対して新たな義務を課するものでないと言ったことに関しまして、その限りにおきましては、それを取り消す意思はございません。
  53. 田畑金光

    田畑金光君 公安委員長にお尋ねいたしますが、あなたの御答弁を聞いておりますと、便利だから、あった方がましだろうというわけです。こういう重要な法律案が、単に便利だから、あった方がいいというようなことで済まされましょうか。この法律は、言うなれば、東京公安条例に発している法律になるわけですが、その東京公安条例自体が下級審の違憲判決をしばしば受けているという、都民の、あるいは国民の基本的な自由や大衆行動について非常な制約を加えているこの公安条例、こういう公安条例に基づいてしかもこの法律を作るということは、最高裁の公安条例に対する最終確定判決も出ない今日、これは待った方がいいのじゃないかというのが常識ある国民の声だと思います。にもかかわらず、あなたのように重要な地位にあられる方が、しかも練達の士が、こういう法律を、単に便利だとか、あった方がいいというようなことで済まされるということは、不見識なことだと考えまするが、今までの条例で、具体的に、どういう場合にあなたの職責を果たす上に支障があったのかどうか、これを承りたいと思います。  警視総監には、さらに、あなたの御答弁はなっていないですね。何を答えているのか私にはちっとも納得できぬのです。先ほどあなたは、この法律大衆行動を取り締るとか、デモを規制するのだ、こういうふうに明確に言われたわけだが、そのようにこの法律を判断して解釈しておられるのか。ところが、この法律は、あった方が適切だと言われるが、どういう工合に適切なのか。具体的にあなたが今日まで職権を行使された上において、今までの現行法律あるいは条例ではかくかくの場合はかくかくできなかったのだ、この法律は今までの欠陥をこのような面においてかくのごとく補うから、警察行政権の行使の上においてはりっぱにやっていけるのだというようなことを、もっと明確に一つ答えていただきたい。
  54. 堀切善次郎

    参考人堀切善次郎君) 便利だと申し上げましたのは、はなはだ不注意な用語でありまして、これは取り消します。それは、議長要請という重要な要素が加わりますれば、公安委員会として、公安条例を適正に運用していきます上に、よりいい判断ができるだろうかと考えるような次第であります。
  55. 小倉謙

    説明員(小倉謙君) 私は、この法案集団示威運動等を取り締る法律であるというふうに申し上げたことはございません。そういうことでなくて、今日私どもが公安条例を適用しまして国会周辺における集団示威運動等に対して措置をしておりますその際の苦心といいますか、困っている点を、先ほどいろいろ申し上げたのでございましてもし、この法案によりまして国会周辺が静穏を保つように、あるいは、ある場合には議長から御要請があるということになりますならば、一そう今後の措置をとるにつきまして適切になして行き得る、こういうふうに申し上げた次第でございます。
  56. 田畑金光

    田畑金光君 これらの点は、またさらに先ほど来の速記録を読んで、提案者の今日までの答弁とただいまのお二人の答弁との食い違い、矛盾等については、あらためて質問する機会を与えていただきたいと考えておりますが、時間の関係もございますので、私さらに一つお尋ねしておきたいことは、十一月二十七日事件契機にされていろいろ検察、警察当局においては、当時のデモ責任者あるいは指揮者等々について取り調べを進めておられるように、新聞を通じわれわれは拝見しております。その間、特に全学連等について、これは過般新聞で私は承知いたしたわけでございますが、破防法による容疑団体として指定し、目下調査中であるかのごとく聞いておりますが、この点は一つ担当大臣から、どうなっておるのか、その間の経緯、見通し等について明らかにしていただきたいと思います。
  57. 井野碩哉

    ○国務大臣(井野碩哉君) 国会乱入事件に関しまして、公安調査庁といたしまして、これを破防法が適用される団体として、指定団体として指定したということはございません。これは何も法律に指定団体ということはございません。ただ全学連の雑誌なりあるいは機関紙なり、あるいはその他の行動等につきまして、破防法に抵触する疑いがございますので、調査をいたすことにしたのでございます。それを新聞等で指定団体だと、こういっておる次第でございます。現在の状態におきましてはまだ破防法に抵触するような容疑はございません。
  58. 田畑金光

    田畑金光君 大臣にお尋ねいたしますが、どういうような全学連の行動理由にされて破防法に基づいて調査を進められたのか、その具体的な根拠等について明確に御説明願いたいと思います。
  59. 井野碩哉

    ○国務大臣(井野碩哉君) あの当時の機関紙なりあるいは配布文書を見ますると、相当に不穏当の言葉がずいぶん使われています。たとえば市街戦も辞さないとか、これはまあ一応は消したようでございますけれども、そういう言葉を使ったこともございます。それからまた、あるいは岸総理を引張り出してこれをさらしものにするとかというような文書も出たことがございました。そういったような行動がいろいろございますし、ことに全学連の中央機関である相当極端な学生連中の行動というものは、まあトロツキストの行動に近いというようなことも考えられますので、そういう調査を始めておるわけでございます。
  60. 田畑金光

    田畑金光君 今の御答弁では私よくのみ込めないのですが、この破防法に基づき調査を進めるとか、あるいはその結果によっては指定するというようなことは、これは重要な問題だと、こう思うわけで、今お話によりますと、あの当時というと、いつの話なのか、三年前の話なのか一年前の話なのか、あの当時というと、いつの当時のことなのか。それからあの当時文書に岸総理がどうとかこうとか文書に書いただけで調査を進められておるのか。何かもっと具体的な資料に基づいてやったのか。少くともあの法律は一番国民の自由や権利影響する法律であるから、かりそめにも軽率に運用してはならぬというのが、あの法律の制定当時の建前だと思う。具体的な根拠を聞きたい。最近におけるどういう事例でこの法律に基づき調査を進めなければならなくなったか。これを一つ御説明願いたいと思うのです。
  61. 井野碩哉

    ○国務大臣(井野碩哉君) あの当時と申しましたのは国会乱入事件の当時であります。それから、ただいまいろいろ例として申し上げましたのは一つの例でございまして、その他そういった行動が全学連の学生の中には最近ひんぱんに起こっておりますので、われわれとしては調査をただ始めたというだけであります。別にこれを破防法を適用するとか何とかということでやっているのじゃなくて、調査をしてあらかじめそういうことのないように予防をしているだけであります。
  62. 高橋進太郎

    委員長高橋進太郎君) 田畑君にちょっと委員長から申し上げるのですが、あなたの申し出の四十分をとうに過ぎておりますので、従ってそこらの点を御勘案の上御質問をしていただきたいと思います。
  63. 田畑金光

    田畑金光君 なるべく委員長の御趣旨に沿うように私も努力いたします。提案者にお尋ねいたしますが……。(高田なほ子君「田畑さん、ちょっと大臣の答弁法務委員会の答弁と食い違っているので」と述ぶ)
  64. 高橋進太郎

    委員長高橋進太郎君) 高田さんに御注意申し上げますが、発言の必要がございましたら委員長まで申し出ていただきたいと思います。
  65. 高田なほ子

    高田なほ子君 関連質問……。法務大臣は今、別に何も破防法に指定するためにやっているのではない、その疑いはないというような御答弁だったと思う。しかし過般法務委員会で、私はこの問題について、公安調査庁並びに大臣、その方々の前でちゃんと質問したときに、破防法容疑団体として今調査をしているのだ、しかしその調査の範囲は二千名の者に限られて調査をしているのだ。その調査の結果、それじゃどういうふうになるのだということを私尋ねた。そうしましたら、その後の学生の行動等を見まして、そしてこれは容疑団体として指定すべきものであるかどうかということを決定するのだと、こう答えている。だから、あなたの今の発言では、全然これはもう容疑団体としてやがて申請をする根拠がないもののごとく答えられているようですが、明らかにやはり今後学生の行動を見てこれを指定するのだと、こう言って、学生運動に対する大きな抑圧を現に加えていることがあの当時立証されたと思う。私は今の御答弁と食い違うと思う。この点、明らかにしていただきたい。
  66. 井野碩哉

    ○国務大臣(井野碩哉君) 別段食い違っていないつもりであります。あの当時お答えした通りのことをきょうお答えしたのであります。
  67. 田畑金光

    田畑金光君 私は提案者にお尋ねいたしますが、破防法の第五条はどういう解釈をすればよろしいか。一つお尋ねしたいと思うのです。
  68. 佐々木盛雄

    衆議院議員佐々木盛雄君) 本法とはだいぶかけ離れた問題だと考えまするから、もし御質問がございますれば、正確を期する上からも法務当局に御質問願いたいと思います。
  69. 大川光三

    ○大川光三君 議事進行。ただいまの連合審査会は国会審議権確保のための秩序保持に関する法律案が中心でなければならぬ。先ほど田畑氏の御質問は全く議題とかけ離れたことです。この破防法の関係につきましては、法務委員会で、社会党の要求によって特に破防法の運用状況に関する委員会を開きました。そこで十分検討しておって、社会党の委員の方も出ておられるのでありますから、詳しいことは法務委員会の記録をよくごらん下さればよくわかると思いますから、今日の議事について御進行願いたいと思います。
  70. 田畑金光

    田畑金光君 まあここで議論してもしようがございませんが、私の質問していることは、決して本法とかけ離れたことを質問しているわけじゃございません。私はたまたま破防法第五条を読んでみますと、こういうことが書かれておるわけです。「公安審査委員会は、団体の活動として暴力主義的破壊活動を行った団体に対して、当該団体が継続又は反覆して将来さらに団体の活動として暴力主義的破壊活動を行う明らかなおそれがあると認めるに足りる十分な理由があるときは、左に掲げる処分を行うことができる。」その処分の一つは、「当該暴力主義的破壊活動が集団示威運動、集団行進又は公開の集会において行われたものである場合においては、六月をこえない期間及び地域を定めて、それぞれ、集団示威運動、集団行進又は公開の集会を行うことを禁止すること。」こういうふうに破防法の第五条に書いてあるわけです。私は、今審議されておる国会周辺秩序保持に関する法律案というものと、この破防法の条文というものは、どうも似通ったところがあるように見ておるのですが、これは関係がないのかどうか。また、現在法律には、こういうものは現行法の中には現実に存在しておる。そういうことを考えたとき、私は先ほど提案者にしばしば申し上げておるのだが、現実法律にはいろいろな規定があるわけです。あなた方が心配するような問題等に対しては、必要以上に、あるいは違憲法律と言われるようなものが多々あるわけです。こういうような点については提案者はどう考えておられるかということを、先ほどから私はお尋ねしておるのです。この点を一つ答弁願いたいと思う。
  71. 佐々木盛雄

    衆議院議員佐々木盛雄君) 本法とは大分かけ離れた、本法周辺の問題のようでありますが、しかしながら、本法は申すまでもなく、集会とか集団行進を直接禁止するとかいう問題ではないのであります。国会周辺秩序を保持する、それによって国会議員登院審議権の公正な行使をはかろうというのであります。申すまでもなく、私は別個な問題であると考えます。
  72. 田畑金光

    田畑金光君 それはあなた、逃げ口されて、周辺の問題なんてうまい言葉を発見されたようだが、そういうように読める内容じゃない。私はもっと一つこの法律についても、私この間から傍聴をしたりして聞いておりますと、あなた、いやしくもこれだけ重要な法律案提案者としてこういう、あなたの言葉を借りて言うならば、この法律周辺の現存法律等については、やはり詳しく研究されて、それぞれの法律の持つ立法の趣旨や目的を理解されて、この法律関係はどうなっているぐらいは明確にここで答弁するくらいにしなければ、提案者としてあなたは資格が疑わしいのです。資格を疑う。これはこの辺でやめまして、本論に入りますが、第六条を読みました場合に、「この法律に規定する集団示威運動等には、請願、陳情その他の名義をもってする集団示威運動等も含むものとする」、集団示威運動を含むものとする、こういうふうに明確になっているのです。本法に規定する集団示威運動は、請願、陳情等から出発している集団示威運動も取り締まりの対象になっているのだ、第六条には明確にうたっておりますが、これをどう解釈すればよろしいのですか。
  73. 佐々木盛雄

    衆議院議員佐々木盛雄君) 第六条の規定は、これは念のための規定とでも申しますか、たとえ請願、陳情等の名目をもってするものでありましても、それが集団示威運動に該当する行為であれば本法対象となることは当然と考えますが、そういう疑義を避けますために、注意的に規定をした次第であります。
  74. 田畑金光

    田畑金光君 時間の関係もあるようでございますので、私、あらためてまた質問する機会を持ちたいと思いますが、そこで一、二点だけ、参考までに承っておきたいのですが、憲法十六条の請願権です、「平穏に請願する」、こうなっておりますが、この平穏というのはどういうことでしょうか。
  75. 佐々木盛雄

    衆議院議員佐々木盛雄君) 「平穏に」というのは、憲法の中にも、すべて国民は請願する権利がありますが、それは「平穏に請願する権利を有し」と書いてあります。また、参議院の規則を見ましても、請願書の提出は平穏になされなければならぬという規定がございます。しからば、平穏とはどういうことかということでありますが、平穏とは静かにおとなしくということでありますけれども、少なくとも私たちがここで申します平穏というのは、国会議員登院国会審議権の公正な行使を妨げるような集団示威運動等のような事態をもってする請願というものは、憲法に保障された請願権の公正を行使とは私たちは解釈し得ないという見解を持っております。
  76. 田畑金光

    田畑金光君 あなたのお答えでは、まことに周辺言葉をやられるだけで、理解できないです。平穏というのは、一体どういうことなんですか。言葉をかえて言うと、威力を示すとか、こういう言葉がございますが、威力というのは、これは平穏に当たるのか当たらぬのか、この辺はどのように解釈しておられますか。
  77. 佐々木盛雄

    衆議院議員佐々木盛雄君) 平穏の意味は、請願を行なうに際しましても、暴力を用いたりあるいは暴力的威喝を用いたりすることなくという意味であります。提出に際し平穏が保たれなかった場合は、その請願を提出された機関は、これを受理する義務がないということも、これは宮沢憲法の中にもはっきり解釈されているわけであります。平穏にこれをなすべしとしておりますが、面会の強要とかあるいは示威運動その他多数の集合による脅迫行為、そういうふうな意味のことでございます。これは美濃部先生の日本国憲法原論の中にも、そういうふうに解釈しております。
  78. 田畑金光

    田畑金光君 私は、宮沢憲法や美濃部憲法を聞いているのではないのです。あなたにお尋ねしているのは、平穏というのは、威力を示すとかいう言葉がございますが、大衆行動一つ威力を示す行動だと思うのです。そういう意味においての——ちょっと、あなた聞いて下さい——あなたのお考えでは、平穏という言葉の中には、大衆行動における威力を示す場合の威力は、入るのか、入らないのか、どういうふうにあなたの解釈はとっておられるか。暴力云々というものは、明らかにこれは暴力は禁止されています。否定されています。憲法上も暴力は認められておりません。暴力あるいは暴力に準ずる行為は認められておりません。私の言うのは、大衆行動は常に威力を示すことなんだが、その威力というのは平穏の中に入るのか、入らないのか、これを明確にしていただきたい。
  79. 佐々木盛雄

    衆議院議員佐々木盛雄君) 今、御指摘のような威力を示すのは、平穏な請願の中には入らぬと考えております。
  80. 田畑金光

    田畑金光君 これは重要な問題だと思うのですが、あなたはそうすると、憲法二十八条というものはどういうものかお読みになっておりますか。憲法二十八条を開いていただきたいと思うのです。「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。」この団体行動権等々は大衆行動一つの現われです。これは、あなたの言うような威力というものは認められない、こういうことになってくるならば、憲法第二十八条等はこれは存在しません。また憲法第二十一条は表現の自由を規定しております。表現の自由。第十六条の請願の権利というものは、第二十一条の表現の自由で初めて請願の権利というものが発揮されるものです。請願権、表現の自由というものは基本的な権利であり、その表現の自由あるいは請願の行動の中には、必然的に大衆行動というものは伴ってくるのです。しかも大衆行動の中には威力を示すということは、これは当然あり得るでしょう。宮沢憲法の中にも、美濃部憲法の中にも、威力を示すことまで、あなたのお話のように暴力の範疇に入れておるというような学者は、どこにもないと思うのですが、この点はどうですか。
  81. 佐々木盛雄

    衆議院議員佐々木盛雄君) 私は集団示威運動等憲法によって許された範囲であることは申すまでもございません。そのことと威力を示すという、その威力という点でありますが、私が先刻から申し上げておりますところの威力というものは、他人の力で圧力威力を加えて、他人の意思を拘束する、妨害をする、そういうようなものは平穏な請願とは認め得ないということを言っておるわけであります。平穏な請願ということとは違うのであります。
  82. 田畑金光

    田畑金光君 この点は提案者の方でも、もっと一つ詳しく研究なさって、この次にお答え願いたいと思いますが、あなたの御答弁を聞いておりますと、威力というといかにも暴力的に云々というようなにおいを感じておられるようですが、威力というのはそういう性質のものではないのです。どうか一つもっと研究なされて、次の機会に、いや、この間の答弁は誤っていたと、一つお断わり願いたいと思いますが、相当時間も経過いたしましたので、まだ相当質問は残っておりますが、別の機会に質問する機会を与えていただきますようにお願いして、きょうはこの辺で私の質問を終わります。
  83. 高橋進太郎

    委員長高橋進太郎君) 先ほどの椿君の発言にお答えいたします。先ほどの椿君の御発言につきましては、速記録その他を取り寄せて調べまして、さらにこれを議題とすることにしたいと思います。中尾辰義君。   —————————————
  84. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 国権の最高機関である国会におきまして、昨年のああいったような不祥事件が起こりましたことは、私も非常に遺憾に思っておるのであります。しかしながら、それかといって直ちに立法措置を講ずるようなことはいささか穏当を欠くのじゃないか、不穏当ではないか、このような考えのもとに先般来の論議を伺っておるのでありますが、その中心点は、国会周辺の静穏を保つ上において現行法規がある、現行法規が道交法なり都の公安条例なりあるにもかかわらず、こういったような新しい法案を出した、そこに不満があるように思うのであります。そこで、この都の公安条例につきましても、田畑委員からずいぶん質問も出ておりますので、実は私もお伺いしたいと思っておったのでありますが、公安条例について一点だけ公安委員長、警視総監にお伺いしたいと思うのであります。  それは、ただいまも憲法の第十六条に、平穏に請願する権利がある、国会に対する請願はどこまでも平穏でなければならないという条文がある。そうしますと、この平穏という条件のもとに、都の条例におきましては必要な条件を作ることができるはずであろうと私は思うのであります。その条項の中に、集会、集団行進または集団示威運動秩序保持に関しては、当然これは条件をつけられると私は思うのであります。そこで、これに違反した場合は処罰があると、こういうことになっておりますが、これだけではどこが取り締まれないのか。先ほども回答があったのでございますが、もう一ぺんお答えを願いたいと思います。
  85. 堀切善次郎

    参考人堀切善次郎君) ただいまの公安条例の規定によりましては、いろいろ運用のむずかしい点がありまして、現にこの間のような事件も起こるような次第でありまして、もしこの規定が一そうはっきりしていればなおいいと考えているような次第であります。
  86. 小倉謙

    説明員(小倉謙君) 先ほどもお答え申し上げました通り国会周辺におけるいろいろな行動に対しましては、公安条例の適用等につきましていろいろ苦心をするところがあるのでございます。そういう面からいたしまして、本法案ができましたならば一そう適切を期していけると、こういうふうに考えている次第であります。
  87. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 時間の関係で要点だけお伺いをいたしますが、そこで、この法案の第四条におきまして「国会議員登院国会審議権の公正な行使が著しく阻害され、又は阻害されるおそれがあると認められる場合においては、両議院の議長は、警視総監に対して、その集団示威運動等につきその制止のため必要な措置要請することができる。」このようにあるのでございますが、これは阻害されるおそれがあると、まだ事件を起こすか起こさないかそれもわからない、ですから、これは明らかに事前措置である。そうした場合におきまして、これは適切なる引用にならないかもしれませんが、憲法第三十二条におきましては、何人も現行犯として逮捕される場合のほかは逮捕されない、このようなことがあるのであります。この言葉の底には、明らかに、人権を尊重せよ、このことが言外に含まれておるように私は思うのであります。にもかかわらず、まだ事件が発生しないその前に一方的な判断によってこれを措置するというようなことは、どうもこういったような憲法の立法精神にいささか抵触するのじゃないかと、私はかように思うのでありますが、提案者にお伺いしたいと思います。
  88. 佐々木盛雄

    衆議院議員佐々木盛雄君) 「阻害され、又は阻害されるおそれがあると認められる場合においては、」という点でありまするが、四条一項の方は、これは確かに事前でございます。事前に許可の取消しをするとか条件の変更、——かなりこれは一日とか二日という事前のことであります。第二項の方は、ここに書いてございますように、「集団示威運動等が行われ、又はまさに行われようとする場合」でありますから、そういう事件の起こる直前の事態のことでございます。従って、ずっと前からあらかじめそういうものをおそれがあるといって禁止をするという意味ではない。おそらくこれは寸前の事態のことでございます。さようなときにおきまして、すべて不祥事態というようなことは、起こってしまつてから罰則規定を適用するよりは、起こらない先に予防することが必要である。かような見地に立ちまして提案をしておるわけであります。
  89. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 その点はこれはお互いに検討する余地がございますので、一そう検討を願いたいと思います。  第三点は、両院議長は連名によって公安委員会に対して要請することができると、このようにあるのでありますが、これは院内の場合は、国会法におきましては、内閣を通じて両議院議長が別々に公安委員会要請することができる、このようにあるわけです。院内と院外におきまして多少矛盾したような点もあるように思うのでありますが、これはどういうふうになりますか。
  90. 佐々木盛雄

    衆議院議員佐々木盛雄君) 御質問の趣旨が少し私には明確に把握できなかったわけでありますが、もとより院内の警察権につきましては、これは議長の権限に属するところでございます。しかし本法は院外の事態に対して適当な措置をとられたいことを要請するわけでございます。そこで、この両院の議長の連名でなければならぬということにいたしたのは、一つには、国会権威のためにも、両院の議長の一致の見解をとることも必要であろうと考えまするし、また二つには、こういう権利が乱用されるということがないようにする意味から申しましても、衆議院と参議院が両者一体の原則に立って、そこで意見の合致をみた上で要請するということの方がより妥当ではなかろうかと考えるわけであります。
  91. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 そこで、最後に私は提案者にお伺いいたしたいのは、先般のデモ事件におきましては、社会党諸君や総評、全学連等にもいささか行き過ぎがあったように思うのでありますが、しかしながら、それが全部かと言いますと、全部ではない。このように考える以外はない。そこで、もう一歩これを立ち入って考えてみた場合におきまして、政府与党におきましてもこれは反省する必要はあるのじゃないか。公正なる審議を欠いている。たとえば昨年のベトナム賠償の審議におきまして問題がある。そういったようなところに国民の不信感が爆発してこの前の事件が起こった。こういう場合におきまして、この原因というものは五分五分じゃないか。両方に問題がある。そういうものを、片方だけの意思によって、こういう法案を作ったから、一つこれでどうだ、これを通してもらいたい、このようなところに、どうも提案者政治的感覚のズレがあるように私は思うのでありますが、この点を提案者にお伺いいたしたいと思います。
  92. 佐々木盛雄

    衆議院議員佐々木盛雄君) 私はあなたとは見解を異にいたしているわけであります。特に、今例証されましたベトナム賠償の審議打ち切りの件でありますが、これは私が親しくその責任の衝に当たりまして担当したので、よく知っております。しかし、今のあなたのおっしゃいますことは全く事実と相違いたしまして、私たちは長時間、しかも今まであらゆる予算案の審議に使いました時間よりもはるかに多くの時間をかけて審議に当たったわけであります。ところが、それではいつまで審議すればこの審議を打ち切って採決できるかというと、一向にその時間というものについては確約をしない、そういうふうな状態でございまするし、いつまでたちましてもこのベトナム賠償の本質論に入らないで、あたかもベトナム賠償の周辺の問題のトラン・バン・フートの問題等に低迷いたしまして、こういう状態を長く続けておって、しかも、私たち委員会を開きまして、ぜひとも出席してくれということを再三にわたって要求いたしましても一向に出席もしない。やむを得ずわれわれは審議を打ち切って採決をするのやむなきに至ったのでありまするから、全く事実の認識の根底を異にいたしておりますから、従ってその見解もまたおのずから別であります。
  93. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 最後に私は、憲法の第十三条には「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」ですから、立法措置を講ずる場合は国民の人権を最大に尊重せよというようなことがあるのであります。そこで提案者に要望いたしたいのは、原因が那辺にあるか、そこらをよくよく検討されまして、ただその法だけをもって解決するというような考えはどうもおかしいのじゃないか。それだけでは国民に精神的に圧力をかけるだけであって、あまり効果がないんじゃないか。私はかように思うのでございますから、できるだけ現行法規でできるならこの点でもってやっていただきたい。かように要望いたしまして終わりたいと思います。
  94. 高橋進太郎

    委員長高橋進太郎君) これにて暫時休憩いたします。    午後零時五十七分休憩    —————・—————    午後二時四十二分開会
  95. 高橋進太郎

    委員長高橋進太郎君) 連合審査会を再開いたします。  休憩前に引き続き、国会審議権確保のための秩序保持に関する法律案を議題として質疑を行ないます。御質疑のある方は順次御発言を願います。
  96. 椿繁夫

    ○椿繁夫君 午前中の会議で、前回提案者は、この法案公安委員会並びに警視総監に対して新たな義務を課するものではない、ただ議長要請権を与えるだけであって、この要請を受理した都公安委員会及び警視総監は、警察官職務執行法あるいは都公安条例などによって要請を判断されて独自の見解で処置されることであるから、新しい義務を課するものではない、という説明を再三しておられるのであります。ところが、午前中の警視総監の田畑君に対するお答えを伺っておりますと、そうでない個所が方々にうかがわれるのであります。この点を明らかにしておきませんと、私は何回この審査をやりましてもまた結局ここへ戻ってくる、そういう気がいたしますので、議事進行上この点を明らかに解明しておく必要があると、こう思っておるのであります。提案者のお考えは、今日もなお前回まで繰り返されたような御趣旨で変わりはございませんか。
  97. 佐々木盛雄

    衆議院議員佐々木盛雄君) 午前中にも申し上げましたように、決して義務づけるものではないということを申しました。その意味においては決して相手方に義務づけを与えるものではないと考えております。
  98. 椿繁夫

    ○椿繁夫君 新たな任務を課する内容を持つものではないという点についても変わりはございませんか。
  99. 佐々木盛雄

    衆議院議員佐々木盛雄君) とかくこういうものについてお話をいたしまするときに、法理論の立場からもう少し具体的な、第何条のどこがというようなことを指摘していただいてお答えをした方がいいと思います。抽象的なことでお話をすると、かえって前にはこう言ったじゃないか、それとは食い違いがあるじゃないかということでありまするから、もう少し具体的な、この点はどうかというような御指摘を願いたいと思うわけであります。  私が申し上げましたことは、決して新しい義務づけを与えるものでない、この法案のどこを見ましても、義務という言葉もどこからも発見されません。そういう意味で申した次第であります。
  100. 椿繁夫

    ○椿繁夫君 法案内容につきましては、議院運営委員会におきましてこれから逐条に審議する際に譲りたいと思っております。  重ねて伺いますが、議長要請を受けた都公安委員会、警視総監は、独自の判断で議長要請を拒否される場合もあると思うのです。新たな任務、新たな義務をこの法案は課する内容を持っていないのでありますから、そうだろうと思うのです。あなたはしばしば法理論上そういうふうになるというふうに答えておられますが、この点についても変わりはありませんか。
  101. 佐々木盛雄

    衆議院議員佐々木盛雄君) 今あなたの御指摘になった通りのように考えております。
  102. 椿繁夫

    ○椿繁夫君 警視総監は午前中このように述べておられます。「特にお願いしたいのは、要するに、ああいうような行動というものが国会として請願の範囲に認めるかどうかというような点をぜひはっきりしていただきたい」と言っております。このことは、請願行動の範囲をこの法律によって明らかにして、公安条例や警察官職務執行法において不明確であったデモ規制の限界を拡大していただくことが望まれる意味のことを発言しておられるのです。この法案は、警察当局が望んでおりますように、請願の行動の範囲というものを明らかにして、そうして不明確であったデモ規制の限界というものを警察が広げてほしいという要請を持っておるとすれば、それに回答を与える内容を持っておるかどうか。
  103. 佐々木盛雄

    衆議院議員佐々木盛雄君) 提案者の私の立場から申しまするならば、請願の範囲の問題を本法において規制するようなところはどこにもございません。
  104. 椿繁夫

    ○椿繁夫君 警視総監と公安委員長にお尋ねいたしますが、ただいまお聞きのように、本法提案者は、単に議長要請権を付与するだけの内容を持つものであって、公安委員会や警察の独自な判断で要請を処理される、この中には拒否される場合もあろうということを予想しておられるのであります。しかるに、午前中の御答弁を承りますと、この法案があった方が運用に適正を期することができるとか、ないよりはあった方がいいとかいうふうなお話がいろいろあったのでありますが、提案者は、新たな任務をあなたの方にこの法律をもって課したり、新らしい義務を付与しようとしておるのではない、ということを繰り返し言っておられるのであります。そうなりますと、午前中の警視総監のお話と、ちょっと速記録を見ましても明らかにちょっと違うのでありますが、この点について所見を求めます。
  105. 小倉謙

    説明員(小倉謙君) 私が午前中申し上げましたことを多少敷宿して申し上げますが、一般の場合の集団示威運動等の際には、警察側と、また実行される方たちとの間に、その実態についてはそれほどの差異はないのでございます。考え方において。ただ、国会周辺において行なわれますいろいろな行動の場合には、私どもといたしましては、その状況によりまして、公安条例の違反になるおそれが濃厚であるというふうに考えます場合におきましても、これを実行される方の側からのお考えを聞きますと、これは国会に対する請願あるいは陳情であるから差しつかえないのであると、こういうようなお考えを持たれておるのであります。いろいろ考え方はあると思いまするけれども、そのように考え方が違いますのも一つ理由となりまして、その実行される場合に、双方の意見の相違等から、ある程度の混乱といいますか、そういうことが出がちなのであります。そこで、そういう場合に、非常に私どもとしましては、両方の考え方が違うものですから、苦慮をいたすのでございますが、今回の法案内容を拝見いたしますと、たとえば、第二条に、「何人も、前条の目的を達成するため、国会議事堂周辺の静穏が保たれるように努め、」これこれを「妨げないようにしなければならない。」、こういうふうにございます。そういうような点からしまして、やはり国会周辺では、集団示威運動的な行動というものは、その程度によって、これは避けなくちゃならないものではないだろうか、避けるべきではないか、こういうようなことになろうと思うのであります。そういうような意味合いから言いまして、私の方と、事柄を行なわれようとする相手方との間の話し合いの際にも、この法案というものは一つの基準になって、いろいろ話し合いが現在よりも円滑に進む、こういうふうに思っておるのでございます。そういうような意味合いで申し上げた次第であります。
  106. 堀切善次郎

    参考人堀切善次郎君) 公安委員会に関します点につきましては、議長要請のありました場合に、これは提案者の御説明のように、義務づけられるものでないと解釈すべきように思います。
  107. 椿繁夫

    ○椿繁夫君 提案者に伺いますが、ただいまの警視総監のこの法文を通しての御解釈では、特に第二条のごときは、これまで集団示威並びに集団示威運動を主催する団体あるいは主催者との間にいろいろ意見の一致しない場合がよくあったのだが、これができると、非常に話をするのにも都合がいいというようにお考えになっておるようであります。第二条をここであらためて読んでみますと、「議事党周辺の静穏が保たれるように努め、」ということは、これまでの公安条例道路交通取締法や警察官職務執行法などでは明らかでなかったものが、この法律によって明らかにされる、だから主催団体、主催者との間に今後話をする場合に都合がいいと、こういうふうに、これまでなかったものが、この法律によって明定をせられ、非常に警察の仕事をしていく上に都合がいいと、こう言っておられるのであります。こう理解しておられるのでありますが、あなたはこれまでしばしば、新たな義務を課するものではない、これまでの法律によって十分やれることではあるけれども、ただこの法律議長要請権を与えるにすぎないのだということを言っておられるが、これを執行される警視総監の受け取り方というのは全然違いますよ。どうなんですか。
  108. 佐々木盛雄

    衆議院議員佐々木盛雄君) 重ね重ね申し上げまするように、義務条項に関しまする限りにおきましては、何らそのような規定は本法にはございません。それが一点と、第二条の、何人も議事党周辺の静穏が保たれるようにしなければならない、こういう倫理規定があった場合とない場合とでは、法律において、たとえ罰則はなくても、倫理的な規定であっても、これは明定をいたした方が、より国民にも徹底するであろうし、従って、そういう意味から、デモ行為などをやられる方々にも、特にこういう点については御注意願いたいというようなことになると思いまするから、ないよりはある方がはるかに私は効果があると思います。
  109. 椿繁夫

    ○椿繁夫君 これは、ここが大へんな問題なんでしてこれまでの都の公安条例でさえ、大法廷が合憲判決を出しましてから、四つの違憲判決が行なわれておりますことは、これまでもしばしば繰り返しました。さらにこれにつけ加えて、これまでの公安条例でさえ取り締ることのできなかった新たな制約をこの第二条によって与えられるものと警視総監は受け取っておる。あなたは、そういうものではない、ないよりはある方がいいという程度に言っておりますけれども、これが法となりますれば、今の警視総監のお答えのようなことではとどまりません。もっとこれが拡大解釈をされて、著しくそれこそ国民基本的権利というものを制限する危険を持ってくると、私は案ずるのであります。心配するのであります。ですから、もう少し明確にして下さい。ないよりはある方がいい、そういうように警視総監は受け取っておりません。これがあるからぜひこの法案を成立させることを望みたい旨のことを繰り返しておるのであります。明らかにして下さい。
  110. 佐々木盛雄

    衆議院議員佐々木盛雄君) 提案者といたしましては、第二条の規定につきましては、先刻申し上げましたように、いわば一種の倫理規定でございまするから、このことによって直接にデモ行為の取り締りの範囲を拡大するとかどうとかいうような、そういうことにまで援用される条項ではないと思っております。
  111. 椿繁夫

    ○椿繁夫君 提案者は、第二条は倫理規定だと明らかにせられました。警視総監、これで、あなたがこれまで、デモ、集団示威運動について主催者と話し合いをしてこられましたならば、なかなか話の非常にむずかしいようなことが、その倫理規定で円滑に運用されますか。
  112. 小倉謙

    説明員(小倉謙君) お話通り第二条は倫理規定と申して差しつかえないと思いますが、この法案がもし成立になりました際には、何人もこの条文の趣旨に沿ってお考えになることと思いますので、従来相当に、私の方の考え方と、過日のたとえば十一月二十七日のようなああいうような行動をされた方の考えとの開きといいますか、それが相当狭まってくる、こういうようなふうに思います。私の方の取り締まりの範囲とか何とかいうことは、もちろん従来と何ら変るところはないのでありますが、そういうような考え方の差について、話し合いがスムーズにいくのではないか、こういうふうに考えております。
  113. 椿繁夫

    ○椿繁夫君 公安委員長にお尋ねいたしますが、議長要請があれば大へん仕事がしやすくなるという意味のことを何回も述べられましたが、これまでは議長要請がなかったので、十分に取り締まりができなかったということの反語でありますか。
  114. 堀切善次郎

    参考人堀切善次郎君) 議長要請がなかったからやりにくかったという意味ではありませんで、議長要請がありましてもありませんでも、公安条例の規定するところに従って、これを冷静公平に判断をして処置をするというつもりでおります。
  115. 椿繁夫

    ○椿繁夫君 いよいよこの法案がおかしくなってきた。提案者は、この法律国民権利を新たに制限する内容は持っていない、それから警察や公安委員会に対して新たな義務を課するものでもない、ただ議長要請権を与える規定である、こう説明しておられるのであります。ところが公安委員長は、議長要請があろうとなかろうと、公安委員会の運用については何ら制約を受けるものじゃない、こう言っておられるのであります。そうすると、この法律は何が残りますか。提案者の説明と、これを受け取って執行をされる公安委員長はああ言われる。警視総監も同様なことを言われる。そうすると、これ何が残るのですか。残るところを明らかにしてもらいたい。そこを中心にこれから審議していきたい。提案者一つ聞く。
  116. 佐々木盛雄

    衆議院議員佐々木盛雄君) そういうどうも抽象的なことでは、かえって誤解を招く。どこが残るか残らぬか、そういうことでは非常な誤解を招くところでありますが、早い話が、要請権ということでも、これはなかったものが生まれてきたわけでありますから、これだけでも大へんな大きなことであります。なくてもいいじゃないかというのは、これは見解の相違でございまして、法律によって明定されるわけでありまするから、ある方がはるかに私どもはいいという考え方を持つわけなのであります。従って、そういう問題につきましては、一つ具体的な条項について御指摘を願って、それに対して答弁をさせていただきたいと思います。
  117. 椿繁夫

    ○椿繁夫君 もう二言だけ。もうここでやめようと思いますけれども、佐々木さんは見解の相違と言うが、あなたと私の見解が相違するならば、これは提案者と反対する立場質疑しておる方ですから、そういうこともありましょう。ところが、これが法律となれば、これを受け取って執行する方の公安委員長が、議長要請があろうとなかろうと、これは差しつかえないと言っておられる。あなたは、それは要請はしても独自の見解で処理されるのであるから、拒否されることも法理論上ございます、ということを、しばしば言っておられる。そうすると、いよいよこの法律は何が一体残るのか。提案者と、これが法になれば、これを執行される側との間の見解の相違でございますということでは、まじめに法律審議ができません。私は再考を促して、この程度で終わります。   —————————————
  118. 高橋進太郎

    委員長高橋進太郎君) 鈴木壽君。
  119. 鈴木壽

    鈴木壽君 提案者は、この法律国民の自由を決して否定するものではないということを、しばしばおっしゃられております。この前の本会議のあなたの説明のときにも、一昨日ここでやりました御説明の中にも、また質疑応答を通じましても、それは、はっきりあなたは述べられております。しかし、今までの質疑応答等からいたしまして、あるいはまたこの法案の立て方からいたしまして、私どもはどうしても、あなたが言葉では自由を否定したりあるいは権利を制約するようなことはしないと言いながら、それと反したことになっていくであろうということを、十分指摘し得るわけでありますが、そういう問題に入っていく前に、この法案を出されましたあなた方提案者の、特に提案者として説明をなさっておりますあなたのものの考え方、あるいは心のかまえ方、流れる思想といいますか、そういうことにつきまして、私どうしても一つ指摘をして、あなたに一応聞いてみなければならないことがございますので、少しくその点について申し上げまして、あなたの見解を聞いてみたいと思います。  この趣旨説明を、私、何べんも実は繰り返して読んでみまして、この中に書かれておりますことは、この法律を出されますところのあなた方の根本的な考え方、先ほど申しましたように、一つの心のかまえ方というものを、これを端的に示しておるかと思います。単にその場限りの口頭でのそれでなしに、はっきり私どももプリントをいただいておりますから、これは責任を持ったあなた方のこの法律提案に至るまでの考え方についてお示しいただいたものとして私どもは受け取るわけでございますが、その中に、一枚目の一番おしまいの方に、「この法律目的は、国権の最高機関である国会がその機能を完全に行なうため、国会議事堂周辺の静穏を保つことにより、国会議員登院と、国会審議権確保せんとするものであります。従って何人も、この目的達成のために、」云々ということがある。さらに、「私たち国会審議権の公正なる行使確保する立法措置を講ずることこそが、最も合憲的にして、議会政治の擁護の根本要件であると信ずるのであります。」おしまいの方に、「けだし、議事堂こそは、国民代表者が国政を議する神聖な殿堂でありまして」云々と、こう書かれてあります。回りくどいようなお聞きの仕方になるかもしれませんが、どうもこういうものを見て参りますと、はなはだ言葉は悪いですが、非常に思い上がったものの考え方、おれたちはもう最高唯一のものだぞ、神聖にして侵すべからざるものである、そういう殿堂の中に住んでおるものである、おれたちが自由を確保されれば、それは最も合憲的で、基本的な問題であるという、非常に独善的な、特権意識にとりつかれたような考え方が、まずこの法案を出すあなた方の根底の中に流れておるんじゃないかということを、私は指摘せざるを得ない。これは権力を持つ者の一つのエゴイズムであろうと思いますが、こういう考え方で、一番初めに申しましたように、主権者であるところの国民権利義務を規制するようなこういう立法をなすということは、私は断じて許されないものであろうと思います。あなたは、あるいは、いや、そうじゃない、あくまでもわれわれの持っている権利を、そういうものをやるために、われわれの持っているそういう基本的なものを打ち立てるために規制してもらわなければならない、そういう意味の立法だとあるいはおっしゃるかもしれませんが、もしこれが議員立法でなしに、あなた方の立法でなしに、国民の側から、あなた方はこういう大きな権能を持ち、高いりっぱな責務を持っておるものであるから、われわれは守ってやらなければならないというような考え方から出していただけるものであるならば、われわれはあるいは恐縮しながらも感謝するかもしれませんが、何かあなたの中の考え方というものは、まことに私はどうも少し思い上がった考え方であろうと思いますが、私から今そういうふうに指摘されまして、あなたはそういうことについて何か御反省なり、何か一つ考えのあるところがもしありましたら、お答えをまずいただきたいと思います。
  120. 佐々木盛雄

    衆議院議員佐々木盛雄君) せっかくのお説でありまするが、反省の余地は少しもございません。あなたと私と、これは主観の相違です。私が申すまでもなく、今日国民主権立場に立っております。国民意思を正しく反映するのはこの国会議事堂以外にはないわけであります。その国会議事堂周辺圧力や不法な一部の人々によってこれが圧迫を受ける、あるいは威力によって圧力を受けるというようなことになりましたのでは、われわれは国民代表としての職責を果たすことはできません。私は、旧憲法時代のような、そういう意味における神がかり的な神聖な殿堂であるとは考えておりませんが、この殿堂こそは、何人からも圧力を加えられないで、あくまでもわれわれが自主的見解に立って、国民代表として自由に国政審議する場でなければならないということを考えております。そのためには、われわれ国会議員は重大な責務があると考えておるわけであります。従って、あなたと私との考え方は、根本的の認識の相違でありますから、私に反省を求められても、私は少しも反省する必要があるとは考えておりません。
  121. 鈴木壽

    鈴木壽君 最後に、認識の根本的な食い違いであるから反省しないということでありますが、まあこれはそういうふうになるとやむを得ないでしょう。しかし、そういういばり方が私は問題だと思うのです。これは明らかにあなたは尊大なかまえでおるからそんなことになる。まず私は、圧力とか何とかということを言っているんじゃありませんよ。これは圧力問題とあなた方は受け取るか受け取らないか、あとでお伺いします。集団行動がどういうものであるか、これは午前中の問題からもまだ未解決になっておりますから、それはあとであなたと一つ問答しましょう。  そこで、それならば端的にお聞きしましょう。はたしてこの国会というものが、いわゆる神聖なる殿堂として、いわゆる神聖という言葉を使ってあなたは差しつかえないものと思うのか。一体、神聖とはどういうことなのか、まずお答えいただきましょう。
  122. 佐々木盛雄

    衆議院議員佐々木盛雄君) 読んで字の通りでございます。で、あまりそういう、何と申しますか、いわゆるあげ足取り的な、小児病的な(「小児病とは何だ」と呼ぶ者あり)論議について、私たちお互いに国会議員立場におきまして、あまり議院の品位を傷つけるようなことの発言に対しましては、私たちも、ときにはあなた方に対して御答弁ができない場合もございます。私はそういう意味におきまして、神聖とは、あなた方が常識的に、また私たちが常識的に判断する意味における神聖だとお考えをいただきたいと思います。
  123. 鈴木壽

    鈴木壽君 私は、これはものの考え方で、大事なものであるからお聞きするので、あげ足取りではございませんよ。それからあなたは、さっきも私申し上げましたように、これを単なる思いつきとか何かで書かれたものじゃないと思う。こういうところに使う用語、文章、これはあなた方の意図を端的に表わすものであろうというふうに、先ほど冒頭にも申しておるのですが、そういうれっきとしたプリントされたものとして私どもこれを読んで、そういうものから、あなた方は一体どういうものの考え方をしておるのかということを私やはり考えてみたいと言っているのです。そこで、私、何も初めから神聖を何のかの言い、聞くつもりはございませんでしたが、あなたが何か逆襲されるような形でやってきますから、一体、神聖とは何か、こういうふうにお聞きしたわけなんです。一体、国権の最高機関である国会ということについては、私は、これはもうだれが何と言おうともはっきりしておることだと思う。しかし、それが直ちにこの殿堂がふだん使われておるような意味で神聖である、不可侵である、こういうふうにやっておる考え方というものは、私おかしいと思う。——黙っていなさいよ、あなた方も変な、同じような考え方を持っているからだ。——私はおかしいと思うのですよ。われわれお互い神様であるわけでもなし、院内におる人がそうであるわけでもない。参観人はたくさん出入りをし、見学者が群れて来ておる所。あまりにそれをあなた方神聖だとか何とか言ってやるところに、そうして外部に少し何かたくさんの人数が集まったり何かしますと、神聖を汚すものであるというふうな考え方をするから、こういう法案を出さなきゃいけなくなる、そういうことじゃないかと私は聞いておる。あなたは、何かあげ足を取るとか何とか言いますけれども、私はあげ足を取るつもりでなしに、お互いに静かなものの考え方というものを考えてみて、一つお互いの中でも反省なり内省なりというものは必要ではないかというような考え方から、実はお聞きしたわけなんです。どうなんです、それは。(「小児病という言葉を取り消せ」と呼ぶ者あり)
  124. 佐々木盛雄

    衆議院議員佐々木盛雄君) 国会議員としての職責を静かに振り返ってみればみるほど、私は、国会というものはいたずらに外部圧力妨害等によって侵されるべきものではない、ここだけは、そういうことによって汚されたり、自由な審議のできないような場所とすべきではない、かような意味におきまして、神聖という言葉を使ったわけであります。
  125. 鈴木壽

    鈴木壽君 だから神聖というのは軽々に使うべき言葉じゃございません。辞書を引いてごらんなさい、常識とか何とか言いますけれども、神聖とは一体どういう意味を持っておるものか。これはしかし、それこそあなた方がまた見解の相違だとやられるかもしれませんけれども……。まあそのくらいにしておきましょう。そこで、外部圧力、いろいろな集団の圧力によって屈するような、そういう国会であってはもちろん私は困ると思うのです。暴力をかけたり何かすることも、もちろんいけません。ただ、たとえばあなたがしばしば提案の動機となったと言って説明しておられますところの、去年の十一月二十七日の構内に侵入してきたこういう事件、これを取り上げる場合に、私は、どうもさっき言ったように、われわれの住んでおる殿堂が神聖なものであるから、お前たちすべてけしからんぞというような考え方だけが先になって、ことに午前にもお話がありましたが、一応ああいうふうになってきた一つの原因というものは、私ども静かに反省をしてみなければならぬことが、国会の内部の問題としてもあるんじゃないか。そういうことを、これは一応別なんだということだけで片づけてしまわないで、ああいう事態が引き起こされないようなことをするために、私ども国会議員として、国会のあり方について常に反省をしていかなければならないということを、私は実は指摘をし、あなたはそれについてどう考えておられるのかをお聞きしたがったわけなんです。話が多少くどくなりましたが、今の最後に申し上げました、われわれ自身の問題としてほんとうに国会議員としての務めを果たしていく上に、私ども国会のあり方というものを考えていく場合に、一体われわれは今後どのような反省の上に立って行動しなければならないかということを考えておられるのか、その点をまずお聞きいたしたいと思います。
  126. 佐々木盛雄

    衆議院議員佐々木盛雄君) 国会の公正な審議権確保する立場におきまして、われわれは与党野党たるとを問わず、政党政派を超越して、国会議員として、国民代表としての見地に立ちまして、いろいろ考えたり反省しなければならぬことはたくさんあると存じます。しかし、その問題と、本法におきまして国会周辺秩序を守ろうというものとは、おのずから別の問題でございます。現に早い話が、ただいまも私たちがこの院内登院しようとしても登院することのできない状態で、遠回りして来なければならぬという、かような状態が現に存在をいたしておりますが、私は、議員登院と公正な審議権確保のために、こういう法律措置もまた必要であろうと考えるわけであります。
  127. 鈴木壽

    鈴木壽君 あなたは反省をする、しかし反省というものと、この法案とは別のものであるというふうに、はっきりおっしゃっております。そうして、本日の院外でも行なわれておるそういうことにも触れられておるわけでありますが、私は、あなたのように内省あるいは反省の上に立って、今後われわれのあるべき姿をどう持っていくかということについての考え方と、この法案というものは、私は別だとは言い切れないものがあると思う。一体、国民大衆の諸君が、なぜああいう形で国会周辺において集会をし、あるいは請願したい、陳情したいということを言っておるのか、国会自体でどのようなことが行なわれておるかということを、私は静かに反省してみた場合に、おれたちはおれたちなんだ、中で勝手に反省をするのだ、しかしお前たち来ちゃいかん、来ることがけしからん、こういうような考え方では、私は少なくとも国会議員として不十分だと思う。どうなんです、これは。やはり、それはそれ、法案は別だと、こういうふうにおっしゃるのですか。もしそういうふうな反省に立つならば、この法案を作り、こうして提案をする前に、もっと私は、国会審議なりあるいは広く日本の政治の現在のこういう流れというものが、国民からの不満や不平やあるいは変な要求を出し、突きつけられないような形においてしなければならぬ、こういうふうになってこなければならぬと思うのです。国民からいろいろ不平を買い、不満を買い、国の将来についていろいろ心配をされるような政治のこういう流れにおいて、国民は、当然の権利として、国会あるいは政府機関に対して、やはり自分たちの願いを、自分たちの要求というものを、突きつけるなり、あるいは批判したりそういうことが当然起こるのです。多数の人が集まって、そういう集会の際に、いろいろと騒音の出ることもあるでございましょう。演説を始める者もあるでしょう。旗を立てる者もあると思うのです。しかし、そういうものをけしからんと言う前に、今私が申し上げましたようなことを静かに私ども考えていかなければならないということが、基本的な問題としてあるのじゃないか。そういう基本的な考え方に立つならば、私はこの法案を——非常にさっきから何べんも問題となっておりますように、あとで私も一、二指摘したいと思いますが、とんでもない法案を出してくる必要なんか、ごうもないと思う。この点、どうです。
  128. 佐々木盛雄

    衆議院議員佐々木盛雄君) あなたは、去る十一月二十七日のいわゆる国会乱入事件なるもの並びに本日の全学連によるところのデモ等の事態を引き起こしたのは、政府の責任であるのではないかと言うてむしろ、こういう事態の起こったことを正当化しようという御議論でありまするが、そういう御議論の方も、あなた方の方の陣営には確かにあるでありましょう。しかし、そのあなた方のお考えだけが唯一の正しいものでないことは、今日、全国津々浦々におきまして、十一月二十七日の事件のごときことや、また本日起こっておりますような事態をぜひとも防止しなければならぬということで、これに対する非常な憤激の空気が巻き起こっておりますことも事実でございます。従いまして、私たちはそういう立場におきまして、見解の相違はあるかもわかりませんが、ぜひともこういう立法措置が必要であるという見解に立って提案いたした次第であります。
  129. 鈴木壽

    鈴木壽君 私は、きょうの事態は見ておりませんからわかりませんが、十一月二十七日のああいう事態に対して、私は、政府がすべてけしからんからあの行為が正当であるということは、ごうも言っておりませんよ。これは、私は、構内に侵入したこと、あの事実に対しては、むしろあなた方より私は残念に思っている一人なんです。しかし、けしからんことをやったということは確かでありますが、ただそれだけを責めないで、若いああいう人をそこまでかり立てた、そこをわれわれの側からも反省する必要があるのではないだろうか。政治のあり方について、国会議員としての務めにおいて、そういう反省が必要ではないかということを言っているのです。何も私は、あれが正しかったとか、すべて政府がいけないのだとか、こういう正当化し、合理化しようという気持は持っておりません。これは誤解しないでいただきます。従って、見解の相違だなんて突っぱねたようなことでなしに、もっと静かに、お互いが今の私どもの置かれているこういう日本の国の情勢から、政治というものは国会議員としてどうあらねばならないか、日本の政治の方向というものを一体どうしなければならぬかということについての真剣な反省があってしかるべきだ。そういうものがあるならば、何もお前たちここへ来るのはけしからんじゃないかと言って、一々それを押えつけるような法案を出す必要はないのじゃないか。こういうことを私は言っているのです。  まずあなた方は、集団行動とかデモがあると、まるで、とんでもないものがまたやってきた——元の大臣ですか、首相が、ストをやる不遇のやからとか何とかいう言葉を使ったが、あなた方も先だっての本会議でやれ——とか何とかいう言葉を使っておりますが、これはあとで議長の命令で取り消しておりますので、これは取り上げるつもりはありません。何か、ああいう多数の集会とか集団行進、集団示威運動というもの、特に示威運動というようなものに対して、まことに罪悪視した、けしからんやつらだと、こういう考え方があるのではないか。頭からそういうふうに、生理的にそういうものを毛嫌いしているのです。そうして脅威を感じたり、いたずらに危険視したり、大きな恐怖感を持ったりしているというのが、どうもあなた方の心情であるようでありますが、私がそうじゃないかと言うと、いや、そんなことは決してないと言うかもしらんが、どうも私そう思えてならない。はっきりしたことを一つ申し上げましょう。去る十一月二十七日のあの事件に対しまして、自民党が出したいわゆる公式声明、あの中にこういうことが書いてある。「社会党と共産党の共同謀議による計画的暴力革命である、」こう言っている。一体、あれが計画的にやられた暴力革命であるのかどうか。まことに私は、ものの考え方というものは、それこそあなたがしばしば言うように、見解の相違ということもありますけれども、あれを計画的な暴力革命なりという判断をせざるを得ないで、それを天下に声明せざるを得ないという、こういうものの考え方について、私は非常に腑に落ちないものがある。やはり、あなた方自民党の一人として、先だってのは、社会党、共産党の共同謀議による計画的暴力革命であるということを、まだ信じておられますか、どうですか。
  130. 佐々木盛雄

    衆議院議員佐々木盛雄君) 私は、自民党の党の声明については詳しいことは知りません。しかしながら、暴力革命であるとも私は今のところ……。しからば現実に暴力革命であったかといえば、革命ではないわけですが、あの姿を言ておりますと、まるで革命を思わせるような様相を呈したように私は目撃いたしておりました。しかしながら、私たちは、集団示威運動そのものがおそろしいわけでも、こわいわけでも、ちっともございません。また、集団示威運動を不当に弾圧しようとは少しも考えているわけではないのであります。この集会、結社、表現の自由は、憲法の保障するところでありまするから、これを不当に弾圧するというような考え方は毛頭いたしておりません。
  131. 鈴木壽

    鈴木壽君 はっきり私が指摘したように、あなたの所属する自民党の声明文の中にあるので、あなたもそれを認めていらっしゃるのではなかろうかと思って聞きましたところが、私はそうまでも思わない、しかし、どうも革命らしくもあるというようなお言葉ですが、どうもああいうことがあると、すぐ革命だ、労働組合の諸君が示威行動するというような場合に、赤旗を立てて何かやっているのを見ると、すぐこれは革命の前夜だとか、革命の予行演習だとか、暴力革命に通ずるのだということを言っているが、あなたは幸いにして、何もおそろしくない、こわがっていないのだと、こういうふうにおっしゃっておりますから、自民党の中の非常に良識のある方だと私は思うのですが、とかく、こういう思想が、私が今指摘したような思想が、こういった法案を生み出す根底になっているのです。何と言ったってこれは否定できないだろうと思う。たまたまああいう不幸な事態が起こりましたが、今申しますように、私は不幸な事態とやはり申し上げます。不幸な事態が起こりましたが、今度また集まると、ああいうことが起こるのじゃないだろうか、あるいはもっとひどいことが起こるのではないだろうかという、そういう心配のために、集団というものは、常にああいうことに走るのだというふうなおそれを持って、そういうことの起こらないように、こういう法案を提案をなされたのではないだろうかと思う。そうでないでしょうか。    〔委員長退席、議院運営委員理事田中茂穂君着席〕
  132. 佐々木盛雄

    衆議院議員佐々木盛雄君) 今御指摘のような意味は毛頭含んではおりません。ただ、現実国会議員登院国政審議ができないというふうな、そういう事態に置かれ、また、まさに置かれようとする場合に、議長から、何とかこういう事態を解消するような方法を講じてもらえないかということを要請するにすぎないわけでございます。
  133. 鈴木壽

    鈴木壽君 まあそういう点を一々申し上げておっても、あなたからよく答弁していただけませんから……。それでは、いわゆる国会審議権の公正な行使に著しく影響を与えるおそれがある、こういうことをなくするためにこの法律を作ったと、こう言っておるのです。これは前からいろいろ質問も出ておりますが、なお明らかになっておらないので、あまり時間をとらないでお聞きしたいと思います。これはあなたの提案説明の中にも書いてありますが、従来いろいろ摩擦を避けるような手段をとってきた、措置をとってきたとか、あるいは著しく審議に支障があるというような、そういう事態をもう少し私どもはっきりつかまないとピンとこない、たとえば今申しましたように、「従来、国会周辺集団示威運動等が行なわれた場合において、国会としてはなるべく摩擦を避けるために審議を中止するなどの措置をとって参りました」、一体摩擦を避けるために審議を中止したことがどのくらいあるのか、事例一つお示し願いたいと思うのです。さらに、過去に著しく支障があったというような事例、いま一つは、今回のことでの、いわゆる審議に支障を生じたという、今回というのは、私、言葉が足りませんが、昨年の十一月二十七日のあのことでございますが、いわゆる審議を進める上に支障を来たしたという、そういう具体的な事例をお示し願いたい。
  134. 佐々木盛雄

    衆議院議員佐々木盛雄君) 本委員会においてしばしば類似の御質問がございまして、そのつど御答弁をいたしましたが、これを記録によって妨害された事実を明示しろということは、事実そういう事態がございましても、記録として残っておるというものは非常に少ないわけでございまして、実際問題として、そういうデータを今提示することはなかなかむずかしい問題かと思います。しかしながら、一つ例示的に申し上げましても、たとえば第七回国会におきまして、昭和二十五年の三月九日のことでありまするが、ベース・アップ要求デモ事件で、デモ隊が午後五時過ぎから集合して衆議院の構内に侵入いたしました。当日そのデモ隊のために喧騒をきわめておったということは、予算委員会委員の発言の中にもそれが記録に残っております。また当日は、これが決してそのためであったかどうかわかりませんが、本会議も開くに至らなかったという記録になっております。しかし、これは今申し上げますように、決してこのデモ隊のために開けなかったかどうかということは、この本会議に関する限りは、関係がないかどうか判明いたしません。  また、昭和二十六年十一月一日のことでありまするが、それは官公労の行政整理反対デモ隊が衆議院の構内に侵入いたしましたという事態もございました。  また、第十三国会におきましては、昭和二十七年四月十八日のことでありまするが、これは破防法反対のことに呼応する都学連学生のデモ事件でございまするが、これも旧議員面会所に集合して、デモ行為を行ない、これは構内に入っておりませんが、非常な喧騒をきわめたことは記録に残っております。本会議も当日は開いておりませんし、委員会もわずか四委員会だけを開いた。しかし、これも多分破防法反対のデモ隊を考慮しての措置ではないかと思われるのであります。  最近のことにおきましては、しばしばここで問題になりました昭和三十四年十一月二十七日のいわゆる安保改定反対デモ事件でございまして、いわゆる国会乱入という名前によって呼ばれているものであります。このときは、申すまでもないことでありまするが、一万数千名が国会の構内に乱入いたしました。ちょうど、農林、社労、商工の連合審査を衆議院においても開いておりましたが、そのときの田口委員長代理の発言の中にも、外部が騒然として議事の進行ができないから、これで休憩いたしますということが載っておるようなわけであります。  そのほかにもあるかと思いまするが、記録として残ったものにつきましては、私の承知いたしておりまする限りではそのようでございます。なお、詳細をもし御要求でございましたら、事務当局からでもお答え申し上げます。
  135. 鈴木壽

    鈴木壽君 事務当局では、それでは、その詳細な何か持っておられるのですか。今、佐々木さんが事務当局からでも答弁させると、こうおっしゃっておりましたが……。
  136. 三浦義男

    衆議院法制局参事(三浦義男君) その方面のことは、衆議院におきましては、衆議院の事務当局の方がいろいろ所管いたしておりますので、私から申し上げるのはどうかと思いまするが、大体今提案者がお述べになりましたような事柄だと考えております。大体今お話になりましたような範囲に尽きるのじゃないかと考えます。
  137. 鈴木壽

    鈴木壽君 これは、あなたは法制局の方でございましょうから、はっきりしたことを答弁なさるということは無理だろうと思いますから、すぐ事務当局から状況についてお聞きしたいから、ここに出席さしていただきたいと思います。というのは、こういう、だれもが心配します国民の基本的な人権に対する制約ではないかという、そういうおそれの十分にある法案でございますから、やはり、現在までどのように具体的に、われわれの登院なり、あるいは国会審議そのものが阻害されたかというような、そういうことがない限り、単なる、あるだろうというような、そういうことだけでは、私はこういう法案というのは不必要だと思うのです。ですから、やはり事実は事実として、過去においてこういうことがあったと、こういうことが明らかになることが、私はどうしても必要だろうと思うのです。これを、私、佐々木さんから今お話を聞いたのでございますが、前にプリントしたのもちょうだいしておりますが、これを見ても、いわゆる審議に著しい支障があったというような、的確な判断資料としては私は不十分だと思うのです。  それから特にもう一つ。従来、何か示威運動なんか行なわれた場合に国会審議を中止したと、こう言うのですが、摩擦を避けるためにそういう中止をした措置というのは、一体とられたことが、どのようなときにとられたのか、これは提案者の方からお聞きしたいと思うのです。
  138. 佐々木盛雄

    衆議院議員佐々木盛雄君) 私も衆議院の方の議院運営の方の委員をいたしておるわけでありまするが、従って、そういう記録をできるだけ収集をいたしたいと考えたのでございます。しかしながら、先ほども申しますように、記録として、どういう影響をこうむったかということが残っておるのは非常に少ない、発見することが非常に困難です。事実そういう場合があったといたしましても、それが記録として残っておるというようなことが非常に少ないわけでございます。しかしながら、衆議院の事務総長等が多年議院運営のことを担当いたしておるわけでありまするが、そういう人々から聞きましても、まあ当日はあまりお互いが刺激をしないように、また当日委員会などを開いておると、かえってそれが相手方を激高せしめることにもなったりするから、あしたはやめようではないかというような申し合わせが往々にして行なわれておった。メーデーのごときも、必ずしもメーデーだから、外部からデモが出てきて、そうして喧騒をきわめるからという理由ではなくて、中には、社会党の方などにおきましては、そのデモに参加される必要もあったではありましょうが、そういうことをも考慮の中に入れまして、当日の審議を中止するというような措置をとってきたというふうに承っております。
  139. 鈴木壽

    鈴木壽君 事務総長のことにつきましては、先ほど事務当局から出てもらうことをお願いしてありますが、一つよろしくお取り計らいを願いたいと思います。
  140. 田中茂穂

    委員長代理(田中茂穂君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  141. 田中茂穂

    委員長代理(田中茂穂君) 速記をつけて。
  142. 鈴木壽

    鈴木壽君 どうも提案者からお聞きしますと、その辺がはっきりしないのです。にもかかわらずこのプリントには、はっきり「審議を中止するなどの措置をとって参りましたが」と書いてある。書き改めなさいよ、これは。「とってきたやに聞いておりますが」くらいに書き改めないとうまくないですよ、これは。まあ、あるいは事務総長か事務当局が参りまして、何かはっきりした事実問題として示されるかもしれませんが、どうもあなたの御答弁からしますと、これは、はっきりしない。メーデー等は、示威運動で国会との摩擦を避けるために審議を中止したというふうなことは、私ども昔から——昔から私おるわけじゃございませんが、新米でございますけれども、そういうことではなしに、国会の社会党とかその他の人たちが多数参加されるので、委員会としてもそういう人のおらないところでやってはうまくないという話し合いのもとに、まことに円満裏にこれは休んでおるというふうに聞いております。あるいは自民党の大会がある。場合によっては社会党の大会がある。何かそういう際にも、これはまことに円滑なる話し合いの上に、双方合意の上に、それこそ審議を中止したという事例は、これはたくさんあると思うのです。示威運動等が行なわれた場合においてこのようなことがあったというようなことは、あなたの説明からはどうしてもつかみかねるわけなんです。どうですか。重ねてその点を一つ
  143. 佐々木盛雄

    衆議院議員佐々木盛雄君) 議院運営委員会等におきまして、あしたはデモが押しかけて来るからやめようではないかというような合意が成立をしてやめたというような記録がなかったところで、私たち立場から言うと、多分にそういった心理的な考え方を持っておったかもわかりません。まあ、あまりあしたはやると、また非常な摩擦を起こすことはよくないから、まあ、あしたはやめようではないかというような気持をもってそれを速記にとどめないまでも、そういう気持をもって議院運営委員会等へ臨むことも、現に私もそういう問題に類したような場合があるわけであります。従いまして、その私の書いたことが、今あなたの言われるような厳格な意味においてはそういうことであるかもわかりませんけれども、まあ、さほどその問題が重大な問題であるとは私たち考えておりません。また、かりに今までそういう記録がなかったところで、先刻申し上げました二、三のことの中で、ただ一つの問題を取り上げましても、構内へ入って来て、そうして喧騒をきわめて、喧騒でございまするから委員会を中止しましょうというようなことがたとえ一回あったとしても、われわれはこの事態をきわめて重大に考えます。このようなことは絶対に繰り返してはならないというかたいわれわれは決意をもって、こういうことを繰り返さないような措置を講じたい、こう考えるわけでありまするから、何もこういう事件か何月何日に起こったから、従ってこの法律が必要であるというわけのものではございません。
  144. 鈴木壽

    鈴木壽君 あなたは、こういう法案が必要だと理由の中に堂々とおっしゃったり書いたりしているじゃないですか。それを今さら、そんな者のことは記録にもないし、そんなものは大した重要な意味を持っていないのだ、ただ一つのことがあれば足りるのだというふうなことをおっしゃっておる。それでは、これは責任のある本会議なりこの委員会のあなたの趣旨説明としては不適当じゃないかということを私は言いたいのです。どうもあなたは、都合が悪くなると、これはどうもそれだけが理由じゃないとか何とかと言うが、ちゃんと絶対に必要であると考えたと、要件としてあなたはこれを言っているのです。あまり隅っこをつつくような感じをなさるかもしれませんが……。そこで、事実が必要であるとあなたは考えておらないと言いますが、そういう事実があったかなかったかということが、この法案を出すもう基礎になる問題ですから、私はやはりどうしても明らかにしなければならぬと思うのです。それからもう一つは、ただの一回でもあったことが、もうすでにこれは許されないことであるから、今後絶対そういうことがあってはならぬというふうな、あなたのおっしゃり方なんです。と同時に、あの日、委員会をちゃんとやって、滞りなく終わった委員会もあるんですよ。いいですか、場合によっては多少外でスピーカーの声がするとか、多数が集まりますから、それこそ先ほど申し上げましたように、騒音が出るでございましょう。非常にやかましい。これでじゃまされては困るから委員会はやめようじゃないかというふうな、一つの口実が私は作られる場合があると思うんですが、ちゃんとあの日に、現にああいう事態が外で行なわれておったにもかかわらず、何らそれに災いされることなく委員会をやったのがあるんですよ。これはちゃんとはっきりしていることなんですよ。だから、やはりこういう問題を明らかにすることがどうしても私は必要だと思うんです。ですから、委員長にさらにお願いしますが、佐々木さんは御弁答できないようでございますが、事務当局からこの点についての出席方について……。その点どういうふうになっていますか。
  145. 田中茂穂

    委員長代理(田中茂穂君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止〕
  146. 田中茂穂

    委員長代理(田中茂穂君) 速記をつけて。
  147. 鈴木壽

    鈴木壽君 それでは、今の委員長のお取り計らいのように、次回にそれをやらしていただくように、明らかにしていただくように……。単に口頭だけでなしに、記録等もありますれば、プリントなんかの必要もあると思いますから、そういう意味で、次回に一つ取り上げていただきたいと思います。  それでは、それを一応留保いたしまして、別の問題に移りたいと思います。  一昨日も、この法案が都の公安条例というものを前提にしてできているんだと、こういうことを質問もされ、また提案者もそれを認めておられます。そこで、一昨日の質疑の中には、主として同僚の亀田委員から、都の公安条例違憲性の問題についていろいろ指摘されまして、論議が進められておったわけでございますが、私は、その違憲性の問題については重ねてここで取り上げないことにいたしたいと思いますが、一体、法律というものについて考えてみます場合に、都の公安条例というような、ああいう条例、地方の公共団体でありますところの都道府県やあるいは市町村の条例をもとにして、それを前提にして法律を作ると、こういうことが従来しばしばあったものかどうか、端的に提案者の方にお聞きしたいと思います。
  148. 佐々木盛雄

    衆議院議員佐々木盛雄君) 私はあまりそういうことをよく承知しておりませんが、あまりないようでございます。
  149. 鈴木壽

    鈴木壽君 あまりないという程度ですか。それとも過去において見ないというのでしょうか。若干あるんだがという、こういう意味でしょうか、どうでしょうか。
  150. 佐々木盛雄

    衆議院議員佐々木盛雄君) 私は提案者でありまして、このことを提案するだけでありまするから、そういうことの専門家ではございませんから、そういう点については、むしろ法務当局や関係当局について御調査を願いたいと思います。
  151. 田中茂穂

    委員長代理(田中茂穂君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止〕
  152. 田中茂穂

    委員長代理(田中茂穂君) 速記をつけて。  鈴木君に申し上げますが、今、事務次長を呼んでおりまするので、事務次長が参りましたならば、先ほどのお尋ねをお続け願いたいと思います。    〔委員長代理田中茂穂君退席、委員長着席〕
  153. 鈴木壽

    鈴木壽君 これは佐々木さん、あなたは専門家でないとおっしゃっておりますが、私も、もちろんあなた以上に法律については知らない者でございますが、ただ、提案者といたしまして、こういう大事な法律を作られる際でございますから、その前提条件となるものがいかなるものであるか、こういうものについての十分な御研究と、しかも形の上で、今私が申し上げましたように、はたして条例というものが前提となっての法律が可能であるものかどうか。こういうことくらいは、やはり一応御検討なさって、しかる後にこれは作業が進めらるべきじゃないでしょうか。そういう意味で、あなた御検討の過程においてこういう——ちょっと、私ども何べんも申し上げますが、あなた以上に私はしろうとでございますけれども、そうしてそういうことには暗いのでございまするけれども、どうもこれは、私ども考えてみます場合に、こういう形というものは例がないように思うのです。そこで私、念のためにあなたにお聞きしておるわけです。
  154. 佐々木盛雄

    衆議院議員佐々木盛雄君) 先刻申し上げましたように、今あまり例はないように思われますが、しからばこの条例を基礎としてこういう法律を作るということが著しくこれが不当であり、あるいは違法であるというような問題につきましては、私は法務当局の意見も徴しました。ところが法務当局の意見やその他の意見を徴しましても、条例といったところがもとは憲法というものを基準にして作った法形式の一つであるのだから、それを対象にして、それを基礎にして別の法律を作るということは決して違法でもなく、またそれが、この法が、いけないというふうなものでもないということ、私たちはそういうことも調査の結果、明らかになりますし、また私たちもさように確信をいたしておるのであります。
  155. 鈴木壽

    鈴木壽君 きわめて法律に暗い私の常識的な考え方、あるいは私の可能な限りにおいての調べ、あるいは専門家の方々の御意見も聞いたところによりますと、どうもこういう立法形式というものは、まことにこれは変なものだ、こういうことが一体あり得るかどうか、おそらく日本の法律の中に条例を前提としたような法律はないであろう、こういうことを専門家の方もおっしゃっておるのです。これは何十人にも聞いたわけじゃございませんけれども、そういうことをおっしゃっております。一体に条例というものは、これは今さら私が申し上げるまでもなく、地方公共団体が、その行政区域内における住民の権利義務の問題なり、あるいはその他いろいろの問題等につきまして、法律の範囲内でその区域における効力を有するものとして制定されるもので、これは憲法においても地方自治法においても、法律の範囲内において作れということがきまっているのです。それから法律というものは、かりに、効力のある、生きた法律がそこで成り立っておるものとして、そういう特定の地域なり、特定の範囲なりというものがかりにありましても、それはやはり日本国民——日本の国全体の一つの一環としてそこに生きているのだ、もし他にそういう同一の条件なり、そういうものがある場合には、もちろんそっちの方にも効力を生じていくと、こういう性質のものが法律というものじゃないだろうか。としますと、狭いこういう条例の上に、法律全体の持っている性格等からしまして、どうもぴたっと来ないような感じがする。しかし、これは何べんも申しますように、私のいわばしろうと考えでございますから、委員長からその点についてあらためて一つと、それから法制局の三浦さんが来ておられるようでございますから、法制局の考え方を、純法律的に、立法の建前の上からいって一つはっきり御解明いただきたいと思うのです。
  156. 三浦義男

    衆議院法制局参事(三浦義男君) 法律条例との関係につきましては、御承知の通り憲法で規定しておりまして、条例は地方公共団体が制定することができまして、いわば法律の範囲内において効力を持っておるということは当然のことでございます。なおまた、それらの点につきましては、地方自治法に条例制定権を設けておりまして、その条例の効力につきまして、法律との関係についての規定を置いておることもまたその通りでございます。今度の法案におきましては、現在そういうような法律条例との関係において矛盾がなく効力を持っておるところの東京公安条例をもとといたしまして、この法案が立案されておりますけれども、それは私どもの見解によりますると、現在条例が有効であり、効力を持っている以上、それを否認する前提に立ってものを考える必要はないと思っております。従いまして、現在それぞれの法規におきましても、法律の範囲内において条例が効力を持っておるということは、その他の法律においても、地方自治法自体においても認めておりまするところの現在におきまして、その条例を前提として、それにある程度の関連を持った法律を作っていくということは、ちっとも差しつかえないと思っております。なおまた御承知の通り、たとえば従来条例でいろいろ制定いたしておりまするところの事柄につきまして、たとえば売春法等もその一つでございますし、また行政書士法とか、いろいろございまするが、そういうものは地方でそれぞれ条例で制定いたしておりましたが、それが法律で統一法としてなりました場合におきまして、条例法律との関係におきまして、附則で適当な経過措置を講ずるというようなこともいたしております。それは条例法律とのそういうような経過措置を講じたこともございます。で、私が先ほど来申しましたような意味におきまして、条例が効力を持っている以上は差しつかえない、こういう見解を持っております。
  157. 鈴木壽

    鈴木壽君 何も三浦さん、私がお聞きしたのは、東京都の条例が効力を持っているとかいないとか、そういうことじゃございません。一体、法律のでき方そのものからして、条例というものは、今言ったような効力があるとかないとか、あるいは違憲だとか合憲だとかいうそんな問題は抜きにして、一般論としてそういうことがざらに行なわれていいものかどうか、私はこういうようにお聞きしたのです。そこで、地方の条例、たとえば行政書士法なんか地方で条例を今まで作っておりましたね、それはあなたのおっしゃる通り。そして国の法律として今度統一されたものになった。しかし、その限りにおいては、条例の中の不適当なものは法律の上で統一された形において改廃されるようなことが出てきて、あらためて今度はそちらの方で条例として本法に基づいたそういうものとして作られなければならぬ、こういうことが私は前提だと思うのです。そういう意味だったら私はあると思う。私はそれとこの場合の条例をもとにして法律を作るというようなことは、ちょっと違うのじゃないだろうか、私はこう思うのです。しかし悲しいかな、まことに法律について暗い私でございますから、ほんとうに私はわからないので、あなたにお聞きしておるのです。もう少しはっきりお答えいただきたいのですが……。
  158. 三浦義男

    衆議院法制局参事(三浦義男君) 鈴木委員はその方面において大へん権威を持っておられる方と聞いておりますので、その辺のことはよく御存じのことと思いますが、私が申しましたのは、要するに、条例がどういう形においても、少なくとも有効に存在している以上は、有効に存在している条例をもとにして、それと何らかの関連において法律を作るということは差しつかえない。もし新しい法律条例との関連において規定されまして、それに矛盾する場合においては、その限度においてはそれは効力がなくなると、こういうわけでございまして、どういう形において新しい法律条例考えようが、それは全くその立法形式の問題、あるいは立法の包括するところの内容の問題でありまして、それが形式的あるいは実質的に効力がある、ないという問題とは全然別問題だと考えております。  それからなお御指摘のような、従来条例で制定されておりました事柄を法律に移しました場合におきまして、経過措置条例との関係をやるということは御承知の通りでございますが、それとこれとは多少趣を異にしていることはまた事実でございます。そういう点において、私は条例との関連において法律案を制定するということは差しつかえないと考えます。
  159. 鈴木壽

    鈴木壽君 これは一つ法制局の方でも、やはり責任を持って御検討いただきたいと思うのです。今直ちには、率直に言って私のお聞きしたようなことは出てこないようでありますが、これはいろいろ検討を要すべき問題であると思いますので、これは私は何か大げさなことを言うようでございますが、一つの立法の形の上において新しい例を作るのじゃないかという心配が出てくるのです。しかし、これは単なるしろうとの心配であって、それで終わるのであればそれでよろしゅうございますが、どうも私はこういうことが今まであり得なかったというようなことからしますと、従来と非常に違った形において出てくる、そういうことに対しては慎重でなければならぬだろうと、私はそういうふうに思うわけなんです。ですから、これは特に要望いたしておきますが、いずれあらためて後の機会に、この法案審議の過程においていま少し御解明いただけるように望んでおきたいと思います。その点は一応将来に残しておきます。  そこで、かりに条例を前提とした法律でまあ差しつかえないのだ、条例も生きているのだし、従って法律も有効である、こういう建前に一応立つといたします。そうしましても、この東京都の条例、すなわち本法案の前提として重大な役目を持つところの条例というものは、まことに私は不安定な形の条例であると思うのです。すでに一昨日、先ほど申しましたように、亀田委員からいろいろ指摘されましたように、将来どうなるかわからぬような条例なんです。こういう条例を実際問題として今度やっていきますと、こういう不安定な条例を前提とする法律——時限立法なり臨時の特別立法であるならばいざ知らず、そうでない性格の法律であるとするならば、まことに私はこれまた法律そのものが不安定なものになるのではないかと、こういうことを私はおそれるわけですが、佐々木さん、その点はどうでございましょうか。
  160. 佐々木盛雄

    衆議院議員佐々木盛雄君) 公安条例が非常に不安定な状態に置かれておる、こういう判断に立って、従ってそういうものを対象としたところの立法をすることも非常に不安定ではないかという御趣旨でございましたならば、何回となく繰り返して申しますように、また先刻も三浦次長の申しましたように、現に都の公安条例というものもりっぱに生きておるわけでありますし、またこの違憲、合憲の裁判の問題につきましても、まだ最終的に違憲の判決が確定しておるわけでもございません。なるほど合憲、違憲のそれぞれ判決が出ておることは事実でありますが、その最終的確定を見るまでの間におきまして、現に生きた条例等を対象として法律を作るということは、決して不都合なことではなかろうと思います。
  161. 鈴木壽

    鈴木壽君 私、安定を欠いたというような表現をいたしましたが、これはもし適当でないとすれば、他の言葉で言い表わしてもいいと思います。ともかく私、端的に言って、あなたも指摘しておられますように、合憲、違憲という問題で将来これはどうなるか。一方においては合憲、一方においては違憲と、こういう判決が出て、さらに近い機会にそういうことに対する最終的な判決を出さなければならないという、そういう段階にある条例なわけなんですね。従って私はやはりそういうものについては、どうも生きているのだ、効力を持っているのだというようなことは一応言えても、いわゆるこれが将来ずっと長きにわたって安定性の保たれておる条例とは言いがたいと思うのです。そういうものを特に前提として法律を作るということは、将来かりに違憲という判決が出た場合に、この法律というものもがらりと変ってこなければならないと思うのですが、そういうような不安定な状態にあるようなものを作ることについてやはり差しつかえないと、こういうふうにお考えになるわけですか。
  162. 佐々木盛雄

    衆議院議員佐々木盛雄君) 仮定の話でありますが、かりに東京条例違憲であるという確定を見ました場合におきましては、本法のたとえば四条一項でありまするか、そういうところにつきましては影響してくるわけでありますから、従ってそこから、そういう点につきましては本法も効力を失うというようなところもあろうかと思います。
  163. 鈴木壽

    鈴木壽君 まあ、これはお互い仮定というようなことになりますと、どうも話があまり……しかし、あなたはやはり認めておられますように、かりに将来違憲の判決が出た際には、四条の一項、五条の一項は当然これは効力がなくなると思うのですが、この点については明らかでございましょうね。
  164. 佐々木盛雄

    衆議院議員佐々木盛雄君) さように考えております。
  165. 鈴木壽

    鈴木壽君 その点については、あとでもう少し聞いて参りたいと思いますが、私は、こういう違憲あるいは合憲ということで、いろいろ論議——単なる論議でなしに、裁判所においての重大な食い違いのある判決が出て、それが上級あるいは下級の違いはあるにしても、そういうやさきでございますから、こういうものを前提とした法律というものは、こういう段階において慎しむべきであるというふうな見解を持つわけなんでございますが、一応合憲あるいは違憲という問題をおくとしましても、裁判所における判決をどうこうということでなくて、国会がこの条例に対して合憲なりという認定を新たに下したような印象を持たせるのじゃないだろうか、こういう実は心配もあるわけなんでございます。どうも少し言い方がぴんと来ないというふうにおっしゃるかもしれませんが、私はこういう問題のある際に、何を好んで国会がこういう条例を前提とした法律を作って、従ってこの条例というものはりっぱなものなんだというようなことで、今論議されております合憲、違憲の問題についての一つの方向を、国会みずからが作るというようなことについては、私はこの際慎しむべきであろうというふうに思うわけなんでございますが、その点いかがでございましょう。
  166. 佐々木盛雄

    衆議院議員佐々木盛雄君) 本法によりまして、議長公安委員長に対して要請をするのでありまするから、従って私たちは、その公安条例というものがきわめて不安定であって、いっ消えてなくなるかわからぬというふうにわれわれは考えておりません。しかしながら、国会は裁判所でないわけでありますから、法の最終的確定は、もとより裁判所にゆだねる以外に道はないというふうに考えておりますが、提案者はどんな見通しをしているかというならば、私は合憲のものであろうというふうに考えているわけであります。
  167. 鈴木壽

    鈴木壽君 ですから、そういうふうな将来にわたることをここであまりやっても、あるいは平行線になるかと思います。特にあなたは都の条例が合憲性を持ったものであり、そういう判決が下るであろうということを確信しておられるようでございます。ですから、そういう限りにおいては、私の考えと違うのでありまして、平行線になるようでございますから、その問題は一応そのくらいにして、一体あなたも仮定として認めておられます都の条例違憲であるというふうになった場合に、効力を条例が失う。その場合に、この法律の第四条の一項、それから五条の一項、最も大事なところが今度役に立たなくなりますね。これは先ほどあなたもお認めになった通りでございます。残るのは四条の二項、五条の二項、警視総監に対する制止のための必要な措置要請する、あるいはそれを受けて警視総監が必要な措置をとる。こういう五条のそれが残ると思うのですが、そういうふうに考えていいわけですか。
  168. 佐々木盛雄

    衆議院議員佐々木盛雄君) 私もお説のように考えております。
  169. 鈴木壽

    鈴木壽君 そうしますと、これは私まことに重大な問題になってくるのではないかと思うわけなんです。と申しますのは、根本的にいって、議長要請というようなことで、周辺におけるいろいろな起こるであろうという予想のもとに立てられたそういう事態に対する、かりに規制措置ということが必要である、こういうふうにいたしましても、そういうものに対する何らかの措置をとることの要請というものは、私は公安委員長だけでいいのじゃないか、今の公安委員会と警察のあり方からして、それだけで十分私は足りるのではないかというふうに考えているわけで、まあ、これはあとからもう一度詳しくあなたにお聞きしたいと思いますが、それにもかかわらず、四条の一、二、五条の一、二を分けて、公安委員会に対する要請、それから警視総監に対する要請とをはっきり分けてある。もちろん事前あるいは直前というふうにあなたはおっしゃるかもわかりませんが、ともかく不要なまでと思われるそういう警視総監に対する要請権議長に与え、警視総監は、先ほど問題になりました、要請を受けた場合には、新たなる一つの何といいますか、義務づけを与えられたように感じて何か行動するというふうになってくるのです。私はまことにこれは重大な問題だと思うのです。何かこれは、悪く考えると、将来、都の公安条例違憲という判決が出て効力を失うようなことがありましても、しかし、この法律は警視総監に対する要請権があり、警視総監はそれに対して対応する措置をとり得るということをきめておくことによって、あなた方のねらうところの集会や集団示威運動に対する規制がちゃんとできるんだということを、ここに私は根を入れて、こう仕組んでおるように私は受け取らざるを得ない。この私の見方は誤っていますか。どうです、佐々木さん。
  170. 佐々木盛雄

    衆議院議員佐々木盛雄君) あなたの御主観のような考え方ではございませんけれども、しかしながら、公安条例が無効になったら、全部これは法律がなくなってしまうかというと、そうではないわけでありまするから、従ってこの四条の二項や五条の二項等は残ることになります。残りまするならば、それにわれわれが法律的効果を期待することは当然のことであります。
  171. 鈴木壽

    鈴木壽君 まあ私は少し、たち悪く解釈しているかもしれませんが、そこで私、事実の問題としてそれじゃお聞きして参りたいと思います。かりに議長が、非常にわれわれの登院国会審議権の公正な行使に著しく影響を与えるおそれがあると認めて、そういう必要からいわゆる要請をする、こうした場合に、この法律では議長にいわば要請権が与えられることになるわけでございますから、私が先ほどもちょっと触れましたように、公安委員会に対して要請をすることで足りるのではないか、こういうこと。  いま一つは、議長国会の必要から警官に対して出動を求め、措置を求める際には、警視総監にはいかないはずなんであります。現在の法規からいえば、国会法によれば、内閣に対して警官の派遣方について要求を出すことになっておりますね。特に私は警視総監にそういうことの要請をする必要はないというふうに今の法規等からしますと考えざるを得ないわけでございます。もし公安委員会に対して議長要請をする、それは許可の取り消しであるとか、あるいは条件の変更についての要請がなされたとした場合に、公安委員会は、まあこれも先ほど論議がありましたが、それぞれの御判断によって措置されるでございましょう。そして、その公安委員会のとられた措置なり判断に基づくいろいろな措置なりというものについては、これは当然その条例の範囲内、あるいはとられた措置の範囲内において、警官が他の要請のあるなしにかかわらず警察法の第二条あるいは警職法の第五条等の規定に従って、その範囲内においておのおのの職権を行使しなければならないことになっている。二重にこういうふうにする必要は私はないと思うのでありますが、その点は提案者としてどのようにお考えになってこのようになされたのか、一つ詳しくお聞かせ願いたいと思います。
  172. 佐々木盛雄

    衆議院議員佐々木盛雄君) あなたのお話を承っておりまして、私どうも腑に落ちないことがございます。公安条例は大体無効になるという見通しにお立ちになっている。
  173. 鈴木壽

    鈴木壽君 そんなことは私は今の質問では言っておりませんよ。
  174. 佐々木盛雄

    衆議院議員佐々木盛雄君) そうすると、無効になって今に消えてなくなってしまうという考えに立って、公安委員会に頼ったらいいじゃないか、こういうことになると思います。従って、もしあなたのお説のように、公安条例が無効になってしまうということになれば、なおさらのこと、私たちは警視総監にはお願いするだけの要請権を残しておく必要がある、こう考えるのでございます。
  175. 鈴木壽

    鈴木壽君 どうも少し、のぼせないでしっかり聞いてもらいますよ。あとでもしなんだったら記録を調べて下さい。こう言っている。かりにこの法案が通って、——公安条例違憲であるとか違憲でないとか、そんなことを私は言っているのじゃないのですよ。議長要請権を持たせられて、議長が必要があって、ある措置をとってもらいたいということを要請する場合のことを私は言っている。これは記録を見て下さい。一応先の話で、もし違憲になった場合に何が残るかということがわかった。そこで私は一応お尋ねの方向を変えまして、かりにデモ規制の必要があるとしました場合にということで聞いているのです。そこを混乱して、とんでもないお叱りを受けたように感じますけれども、よく聞いてお答えいただきたいと思います。私は一応、だから、かりにこの法案をこのまま認めまして、法案が生きていった場合のことを想定してお尋ねをしておるわけであります。そこで、それではもう一度申し上げますと、公安委員長に対する要請だけで私は足りるのじゃないか。これは非常に大事なところですよ。公安委員会と、警視総監との、あるいは警視庁との関係からいたしまして、私は今の警察法なり警職法たり等の規定からしますと、何もことさら警視総監に対して、天下の議長たる者が、しかも連名をもって要請なんて、何も義務づけるようなことをする必要があるかということなんです。これは要請あるなしにかかわらず、公安委員会の、特に公安委員長の管理下にある警察というものは、私は何か知ったかぶりをするようでございますが、これは今の警察法第二条なり、その他の警職法なり、その他のこういう与えられた規定内の権限によって当然動くのです。これは当然動いておるのですよ。今までだって、デモがあるとすれば、議長から何ら要請がなくても大挙して出動しているわけなんです。この前の問題の十一月二十七日のあのときだって数千人の警官が出ている。これはしかし、何も議長からの要請でもないのです。当然の任務でというふうに心得て警官が出動しておるわけなんですね。私は今の法の建前からして、公安委員長に対してある要請をする。それはどういうふうに取り扱われるかはともかくとして、あとは公安委員会と、現在の都の場合でいいますと警視庁との関係、警視総監との関係において物事が処理され、いろいろな措置がとられるべきである。もし許可の条件に合わないようないわば違反行為をする、あるいはいろいろな示された条件に逸脱するような行動がありとすれば、これは公安条例建前から、あるいは先ほど私何べんも申し上げますように、警察法あるいは警職法第五条、あるいはその他の、まあ例として私は五条と申しましたが、その他の規定によって警官は必要な措置がとられなければならないことになっていると思うのです。そういうことで、私は公安委員長だけでいいんじゃないか、これは大事な問題ですよ。
  176. 佐々木盛雄

    衆議院議員佐々木盛雄君) 今のお説の要点は、東京都の公安委員会要請をすればそれで事足りるのではないかと、こういう御趣旨のように承りました。きょうも午前中もこの第四条に関連をして御説明申し上げました際に、第四条第一項の規定は、許可の取り消し、条件の変更でありまするから、これは事前の措置だということを申し、また第二項の方は、まさに行なわれようとする場合、あるいは現に行なわれるという場合、少なくもこれは直前差し迫った場合だということを申し上げ、あなたも先刻このことに言及されておったように承りました。そうでありますから、まさに行なわれようとする非常に差し迫ったときに、これは先ほどお話がありましたが、内閣を通じて当方を経由して要請をするということで、国会が直接警視総監に向かってこの事態を何とか措置してほしいということを申し出ることは、決して不都合なことでもないと思いまするし、また非常に差し迫った際におきましては、むしろそういうことの措置をとることの方が事態を処するのに役立つことじゃないか、こういうことによりまして第二項も必要だと考えておるわけであります。
  177. 鈴木壽

    鈴木壽君 あなたは差し迫ったことについての措置をとらせるために、四条二項に、こういうふうに警視総監に対して要請することができるようにしておくことが、よりいいのだというお話のように聞きました。これでは公安委員会の管理下にある警察が、さっきも言ったように、現在の法規によってそれぞれの任務を達成されるように努めておる、それに対して、また新たに何か議長から要請が出る、こういう形で、何か義務をやはり——義務ということをあなたは否定されるでしょうからやめますが、新たな任務をここに付加されるということを当然前提として言っておられるわけですね、そうでしょう。警察本来の持つ権限というものにさらにプラスするようなことで、ここで一つ警視総監に対して要請をする、こういうことにならない限り、あなたのおっしゃることは了解できないと思う。
  178. 佐々木盛雄

    衆議院議員佐々木盛雄君) 先刻来繰り返しておりますように、非常に差し迫った場合に、直接警視総監に対して善処してもらうように要請する必要があると考えて第二項を設けたわけでございます。従いまして、第三項にも書いてありますように、そういう要請をしたときに、議長は直ちに公安委員会にも通知をしなければならないと、こういうふうにしておるわけでありますが、この第二項の要請は、具体的に何をしてくれということを要請するのじゃなくして、警視総監に対して制止のための必要な措置をとってほしいということを要請するにすぎないのであります。
  179. 鈴木壽

    鈴木壽君 まあ制止のための必要な措置を無体的に、こういうことをやってくれとか何とかじゃなしに、一般的な適当な措置として要請すると、こういうふうにおっしゃっているわけですね。それは間違いございませんね。ところが、それだけでは私はどうもおかしいと思うのです。それならば、適当な措置とか何とかということで、もし警官がそういう現場におってやらないならば、これは警官の怠慢ですよ。これは議長要請あるなしにかかわらず、警視総監が部下の警官を出して、さっきも申しましたような数千名の警官を出して、それこそ警戒といいますか、われわれから見ると、どうも、ものものしいと思うくらい先般は出ていた。しかもああいうことをやるのです。これは公安委員会と警視総監、あるいは警視庁との間の問題でございますから、一つどういう関係にあるのか。私は、公安委員長にこういう場合の要請があって、かむにそういうことが必要だというふうに認めて議長から要請があった、こうした場合に、公安委員長は許可の取り消しだとかあるいは条件変更についていろいろ措置をとると思います。そうして、かりに集団行動が行なわれた、こうこうこういう条件のもとに、お前たちはこういうことをしてはいけないぞということで、条件を与えられた、その範囲内で行動をやらなければならぬのですね。その場合に、もしその集団示威運動行動なり集会なんかが、その許された条件から、はみ出すような、あるいは暴力をふるうとか、あるいは違法行為をする、さくを乗り越えようとするとか何かそういうようなことをするということについては、条例で許可された条件と、それから警官が警察法あるいは現在の警職法等において規定されたそういう趣旨から見て、当然、警官がこれは取り締まらなければならぬ対象になると思うのです。それはだれから指図するとかしないとかということじゃなしに、現在の公安委員会、警視庁、この関係において、警察はそういうことを議長からの要請があるなしにかかわらずやらなければならぬ、こういうふうに私は思うのですが、その点どういうことになっているか。一つ公安委員長と警視総監からお聞かせ願いたい。
  180. 堀切善次郎

    参考人堀切善次郎君) 公安委員会は警視庁を、警察を管理いたします。その管理するうちに指揮命令が入るかどうかということが学問上議論になっているようでありますが、実際上管理しているわけであります。そうして、いろいろな警察のやり方につきましての方針は公安委員会が決定いたしまして、その方針のもとに警視総監がその実行に当たるということになります。警察官を指揮したり何かするのは警視総監がいたします。なお、ただいまのことに関連いたしまして御参考までに申し上げますと、たしか、この間の愛知県の水害のときのように、向こうから警察官の応援がほしい、これは非常に緊急を要する場合でありますが、そういう場合のときは、警視総監に向こうから要請があって、警視総監から私らの方は報告を受けるような立場にあった、こういう例外のあることを御参考に申し上げます。
  181. 小倉謙

    説明員(小倉謙君) ただいま公安委員長からお答えがございました通り、警察の運営につきましては、常に公安委員会運営管理のもとに行なわれているわけでございます。公安委員会の基本的な御方針に沿うて警察が行なわれるわけでございます。従いまして、御指摘の第四条の第三項の場合、先ほど提案者の方から御説明がございましたように、現に集団示威運動等が行なわれておる、あるいはまさに行なわれようとしているというような差し迫った場合でございますので、直接警視総監に必要な措置要請があると、こういうふうに考えておるのであろうと思うのでありますが、そういうような場合におきましてのその要請を受けました警視総監といたしましては、公安委員会の基本的な御方針に沿うて活動をいたすことになろうと思います。
  182. 鈴木壽

    鈴木壽君 そこで私がお聞きしておることは、公安委員長がお述べになりましたように、直接警視総監なり警察官なりを指揮することができるかどうかということでなしに、あなた方の委員会の管理のもとにあって、その委員会の指示なり、そういうものを受けて、警視総監は、部下のといろいろな動かし方なり権限の行使についていろいろ指導され指揮されると思うのです。そういう関係についてはその通りであるというふうに考えていいわけですね。ですから、そこで警視総監にお聞きいたしますが、かりに先般のような事件で警官が出動しております。そこでもし、ああいうさくを破って入ってくるようなことがあると、今のいろいろ法律関係からいって、警官は黙って見ておられないですね。その点はどうですか。
  183. 小倉謙

    説明員(小倉謙君) その通りです。
  184. 鈴木壽

    鈴木壽君 その通りだとしますと、さっきも申し上げましたように、条件に合わないような違法なことをしたり、暴力にわたるようなことをしたり、あるいは条件を逸脱するようなことについては、条例違反であると同時に、本来の警察官から見てうまくないことをやっているのですから、当然警察官はそれに対処する方策がとられるべきだと思うのです。まさにとか何とかいうことでなしに、まさにそういうことが行なわれようとすれば、だれの要請があるなしにかかわらず、これは当然やらなければならない本来の仕事としてあると思うのです。この点はどうですか、警視総監。
  185. 小倉謙

    説明員(小倉謙君) お答えいたします。もちろん現在の法令に従って警察といたしましても自主的に活動いたすのでありますが、この第四条第二項に掲げてございます「国会議員登院国会審議権の公正な行使が著しく阻害され、又は阻害されるおそれがあると認められる場合」、こういう場合に議長さんから要請があるわけであります。そういう点の要請につきまして、さらに警察といたしましては十分その趣旨を尊重し、また現実事態に対しまして、さらに考えてみまして、そして最も適当な処置をとる。こういうことになると思います。
  186. 鈴木壽

    鈴木壽君 これは、提案者にお聞きしますが、あなたはしばしば、第四条なりあるいは第五条によって、公安委員会なりあるいは警視総監に対して議長要請があったと言っても、それは新たな義務を課することにはならないということを答弁されております。まあ先ほど椿委員から、警視総監のお答えの中にそれと食い違うような話が出て、いろいろと論議が進められておったのでございますが、この法案自体からしますと、私は新たなものを当然つけ加えることにならざるを得ないというふうに読めると思うのです。もっとも最後に逃げている、「行為を制止することができる。」と言って、これは義務規定じゃないと言って逃げておりますが、というのは、第五条の一項あるいは一項において「公安委員会は、自らその職権を行使するほか、」、自らの権限を行使するほかですよ、それから「警察官は、自らその職権を行使するほか、」、そのほかに「必要な限度において、」、こうこういうふうに「することができる。」とか、「しなければならない。」というふうにある。私は何べんも言うように、本来警官なりあるいは公安委員会なりが果たさなければならない任務というものは一応規定されているのですが、その範囲内で最善を今尽くしているのだろうと思います。いろいろな困難があるであろうけれども、とにかく最善を尽くすために努力をせられていると思うのですが、それはあくまで現在の警察法なりあるいは警職法なりに従っての権限内における、その規定内における権限の行使であるべきだと思うのです。そうして常にそれをあなた方は念頭に置いてやっておられるのだと思う。それは、たとえば警察官にすれば、みずからその職権を行使することなんです。そのほかに必要な限度において警告を発したり制止することができる。これはプラス・アルフアがないと、こういうことにはならないと思うのです。言葉では義務づけることではないんだ、こう言って、単なる要請に終わって、判断のいかんによってこれは拒否されることもあるだろうし、実行されないこともあるだろう、こう言っておられる。文章においても「制止することができる。」と書いておられますが、これは、私は一つの逃げるときの道をあけておくにすぎないと思う。プラス・アルフアがこれにつかないという解釈がどうして出てくるのですか。私はだから、こういう特に四条の二項、五条の二項にこういうものを残しておくということに——先ほど来、公安委員会だけで足りるのじゃないか、公安委員会と現在の警察官との関係において、何も警視総監に新しくものものしく両院の議長が協議した上で要請しなければならないということは、必要としないだろうということを私は言っているのですが、にもかかわらず、こういうものがぜひともなければならぬということは、私から言わせれば、先の条例の問題にもからんできますけれども、ともかく最後には警察官の現在の持っている力ではできないものを、要請という形においてつけ加えてやって、それによって集会や集団示威運動というものを抑圧しようという、そういう意図が私は明らかにここべ出ていると思うのです。それ以外にこれは解釈のしょうがないのです。ちょうど警職法の改正のときに問題になったように、あの五条をもっと改正をしまして、公共の安全とか、あるいは秩序とかいう名のもとに、そういうものに対して規制を加えることができるようにしようといったあの意図、これは形を変えたものでありますけれども、通じるものがあると思う。警職法改正の二の舞いです。これは形を変えたそういうものです。どうしても警察と公安委員会との関係、そういうものからして、これはまことに私どもからすると奇異に感じられる立法の方法であり、要らざる要請をさせて、そうして新たに警察官に、自分の持っている、現在の法に許されている、規定されている権限以上のことをやらせようとする意図が明らかであると私は思うのです。どうですか、この点……。
  187. 佐々木盛雄

    衆議院議員佐々木盛雄君) 私は今日まで、何らか新しい義務を課するのではないかという御質問でございまするから、従って、今日まで終始一貫して、この法律案はどこを見ましても義務条項はない。従って何ら新しい義務を課するものでないということを終始一貫御説明申し上げてきたわけでございます。しからば、今具体的に第五条二項においてのお話がございましたが、もとより、議長要請を受けました場合におきまして、警察官のとるべき警察作用としての措置は、警察官の自主的な判断に基づいて行なわれるべきことは当然のことでありまするから、これは全く警察官の独自の判断にゆだねられたところでございます。そういう意味におきまして、決して警察官に新しい権能を付与するものではないということを、今日まで終始御説明を申し上げて参ったわけでございます。しかし、この集団示威運動等に対する警察官の警告、それから制止の権限の発動というものは、御承知のように公安条例の違法なデモとでも申しまするか、第四条の違反、あるいは警職法第五条の根拠に基づいて行なわれるものでありまするが、同時に、この第五条二項の中におきまして、この警告を発し、または制止することができることになっておるわけであります。しかし、それは決して新しい義務を課するものでもなく、また従って、警察官の従来の警告、制止の権能の内容を越えるものではないという趣旨のことを説明して参ったわけでございます。
  188. 鈴木壽

    鈴木壽君 まあ私は条文の一々についてここでやっているつもりはありませんけれども、大事なところですから、もうちょっとお聞きしますが、五条の一項なり二項なりにある「ほか」ということですね、これは私は見のがせない言葉だと思うんです。「ほか」ですから、それに対し、さらに必要な限度においてとか、必要な措置というようなことになる。そこで、もしあなたの言うように、新たな義務を課するものではないと——なるほど「制止することができる」だから、やろうがやるまいが、あれは自主的な判断にまかせてあるんだと、こういうふうにあなたはいつもおっしゃっている。しかし、いやしくも天下の衆議院議長、参議院議長の連名で——まあ書面で出すか、何で出すか知らぬけれども、要請があった場合に、当然これは新たな一つの何かしなければならないというような措置というものが私これは出てくると思うんです。それは現に、先ほど取り消したようでありますけれども、警視総監が、何かあることがけっこうだとか、あった場合に都合がいいとかいうことを明らかに一度は言っておりますから、あれは本音だろうと思う。もしあなたが言うように、ほんとうに何か新しいものを付加するものではないというならば、警察官はみずからその職権を行使する場合に、いいですか、やることをやらないで怠慢にしておったということになるんですよ。そうでしょう。制止も警告も警察官の現在の法規に許す範囲内で行なうんだと、こうあなたはおっしゃる。なぜそれを行なわないでおって、議長から要請されたり、何かそういうことをなさるんですか。これは言葉は悪い、怠慢だという意味じゃありませんけれども、この文章からすれば、言われたあなたの御説明からすれば、警察官は怠慢であり、公安委員会もみずからの権能を十分に果たしていないために議長からときどき要請が来るんだと、こういうことにこれはなりかねないんだ。当然これは行使する「ほか」でありますし、その行使することは、今何べんも申し上げましたように、現在の法規によって十分警察官が働いておるということを前提にしなければならぬ言葉だと思う。なお、そのほかに「必要な限度において」要請があった場合にやることができるというんだから、これは当然プラス・アルフアだ。だから公安委員長も、そういうものがあった方が都合がよろしいと、こう言っている。受け取る方では、天下の両議長から出されたことですから、公安委員長といえどもこれは聞かざるを得ない。警視総監といえども、そういうことがあった方がいろいろな話し合いをするときに都合がいいと、こう言っている。ですから、これは当然プラス・アルフアになってきておるわけだ。これは否定できませんよ。お二人とも本音を吐いておられる。これは大事なことなんです。もし議長からの要請を拒否してごらんなさい。万が一にも拒否したときに何か事件が起こったとします。これはお二人はおそらく首問題でしょう。それをおそれれば、まあ多少人権の抑圧にわたることがあっても、事前にそういうことをさせないように、何とでもとにかくした方がいい、いわゆる必要な措置なり、必要な限度においてこれはやらざるを得なくなるのです。あなたはそれを否定できますか。法律では確かに「制止することができる。」と、してもしなくてもいいように書いてある。「講ずるようにしなければならない。」というのは、「講じなければならない」とは区別がついておるのだと、あなたはおっしゃっているのですが、事実、この点そうでないということは、受け取る方の側がそうおっしゃっているし、また私どももそういうことになるということは当然予想されるのです。言葉の上ではプラス・アルフアを否定しておりますけれども、条文その他からして、私はプラス・アルフアがない場合に、一体何の必要があってこういうことをするのだ。もしそうだとすれば、さっきも言ったように、少し言葉が過ぎるようでありますが、警職法改正の二の舞いのような形でもってこういうところに出してきた、私はそういうふうに言わざるを得ないと思うのです。その点大事なところですよ。警察と公安委員会関係、あるいは警察官の権限の行使、こういう点からして私はそれが一番大事な問題だと思う。これがあることによって、あるいはないことによって、デモ行進に対する規制の問題、規制の有無ということが一つ解決されることになる。答弁を願います。
  189. 佐々木盛雄

    衆議院議員佐々木盛雄君) 私の今まで答弁したことを速記録を調べていただきますれば、決して矛盾したことは申し上げておりません。厳格に言葉の用語を使い分けまして皆さんにお話を申し上げております。皆さん方の方から、本法によって新しい義務を課するものではないかという御質問でありまするから、この法律のどこにも義務規定はない、従って何ら義務を課するものではないということを申したのであります。しかし、先刻もあなたに御答弁申し上げましたように、議長から要請があったときにおいては、警察官のとるべき警察作用といたしましては、それは警察官が独自の判断においてやることであるから、そのことについては別に義務づけの規定はないわけでございますが、この集団示威運動に対する警察官の警告、制止の権限の発動は、申すまでもなく公安条例第四条に基づくところの警告ないし制止、また警職法第五条によるところの警告ないし制止の権限に基づいておりますこともありまするし、またこの五条の規定によって警告、制止の必要な措置をとるということもあるわけでございます。
  190. 占部秀男

    ○占部秀男君 関連質問。さっきから鈴木委員の質問に対して、新しい義務を課するものではない、これは私も質問した、その質問に対して、あなたは新しい義務を課するものではないと言っている。そのときには、義務規定をこの条文の中にうたってないから新しい義務を課するものではない、こういうふうに言われたのではないのですよ。その点は速記録で明らかになっている。これは重大な点ですよ。公安委員会なり警視総監なりに、それでは新しい義務を課することになりはせんか、こういうことを言ったときに、いや、公安委員会並びに警視総監は、それをとろうと、とるまいと、どの程度やろうとやるまいと、全部勝手だから、新しい義務をこれっぼっちも課しておりません、こういうことをあなたは言ったのです。その点は、はっきりしてもらわないといけない。そのあとの答弁を中心にされると困るので、その点一つ確認をしておいていただきたい。
  191. 佐々木盛雄

    衆議院議員佐々木盛雄君) 私は先刻申し上げました通りでありまして、この法律は決して新しい義務を何ら課するものではない、このことを申し上げます。ここにあなたに申し上げたところの速記録を持っておりますが、ちょっと今出ませんが、これは警察官の持つ職権の内容は、決して新しい義務が課せられるものではないということを、つまり、警告、制止の権限をこえるものではないということを申しただけであります。
  192. 鈴木壽

    鈴木壽君 提案者にお聞きしますが、確かにあなたのおっしゃる新しい義務を課するものではないということは、この文章からも、最後に私は何べんも申し上げましたよ。「制止することができる。」とか、「講ずるようにしなければならない。」とかということで、これは「しなければならない」という義務じゃないわけですね。これは、あなたがしばしば言われるように、立法用語からもそういうふうに解釈されるということは、しばしばあなたの言っている通り。けれども、そうならばなぜ明確に、あるいは明白かつ現在という、こういう場合に必ず強いしぼりをつけなければならない性質の法文に、あいまいなる表現で要請をさせ、その要請を受けて、「しなければならない」。とか、あるいは「することができる」。というような、「必要な限度において、」というような、しかも、これもあいまいだ。「必要な限度」とは「いかなる限度か、必要な限度だから、もし、やらないとすれば、警察官は怠慢ですよ。初めからその限度においてやっているのです。これは警視総監といえども認めるでしょう。自分の部下の警察官が必要な限度において自分の職権をやっているというふうに当然認めていると思うし、警官の諸君もそれをやっていると思うのです。そうすると、何かその上に、その限度においてそれを新たな要請をさせるのです。そうすると、言葉では、文章ではそうでないけれども、実際問題としては、意図するところは新たなものを付加するし、受け取る方でもそういうふうに付加されたように受けとっている。受けとらざるを得ないのです、事実問題として。これは私は重大問題だと思うんです。私ばかり時間をとってもいけませんが、この点が明らかになることが今回のこの法案の骨です。中心になるところだと私は思う。あとの、ああだこうだといろいろありますけれども、第四条、それに対応する第五条、これにおいていろいろな意図というものが、文章の表現以上のもの、あなたの説明以上のものが当然の結果として出てくるということを私どもは心配するのです。そういう心配のある法律を今作る必要は私はないという、そういう観点から来ておるわけなんです。あなたがどうおっしゃっても、やはり集団のそういうものに対して、従来とっておったそれよりも新たな規制、あるいはそれに対する制約の措置がとられることは、これは必至でございます。それなしには、またこの法律は死んでしまうでしょう、あなたのねらいは。これは非常に大事な問題です。最後にその点についてあなたにはっきり御答弁を願って、いずれ別の機会にもう少しこの点をお聞きしなければならぬと思います。きょうの最後に一つこの点をお答えいただきたいと思います。
  193. 佐々木盛雄

    衆議院議員佐々木盛雄君) 何回も申しておりまするように、新しい義務を課するものかとなれば、義務の規定は本法のどこにもないと、こういうことになります。しかし、警職法の第五条あるいは公安条例の第四条に基づいて警告、制止することができることになっております。しからば、新しい権能を与えるかという御質問でありまするから、警告、制止の範囲を一歩も出るものでないということを申しておるわけでありまして、しからば、どういう根拠によって議長要請を受けたところの警察官が警察作用をするのかと申しまするならば、それは、先ほど申しました公安条例第四条、あるいは警職法第五条の場合と、それから本法の第五条二項に基づいて必要な措置をとり得ることができるようになっておるわけでございます。
  194. 高橋進太郎

    委員長高橋進太郎君) 鈴木君、先ほどの質問について山崎衆議院事務次長が来ていますから。
  195. 鈴木壽

    鈴木壽君 その点についてお聞きしたいと思います。従来国会において、いわゆる集団行動等のために要らざるトラブルがあっても困るというような思惑から審議を中止するような措置をしばしば講じてきたということを、趣旨説明にもおっしゃっておりますし、提案者もおっしゃっておるわけです。そういう事実が一体どういうふうにあったのか。それからそのほか従来審議に支障を来たしたような、外部からの影響によっての事件があったのか。こういう点について事実問題として私ども聞いておきたいと、こういうことで先ほどお尋ねしましたけれども、事務当局からというお話でございましたから、一つ詳細にお聞きしたいと思います。
  196. 山崎高

    衆議院参事(山崎高君) ただいまの御質問でございますが、ただいまのところでは、お手元に配付いたしましたものだけでございます。
  197. 鈴木壽

    鈴木壽君 手元に出してある調べ、それだけだと、こう言うんですか。それ以外にないということなんでございますね。
  198. 山崎高

    衆議院参事(山崎高君) ただいまの調べでは、はっきりいたしたものはないと……。
  199. 鈴木壽

    鈴木壽君 調べたことは調べたんですね。しかし、今まで調べたところでは発見ができなかったということは、こんなに調べてもなかったということになりそうですが、どうです、その点。
  200. 山崎高

    衆議院参事(山崎高君) 今まで記録に残ってないものもございますので、今まで大体われわれが資料で出す場合には、やはりはっきりしたものでなければならないので、ここにありますものがお見せできるものである、今のところはこれだけである、こういうことであります。
  201. 鈴木壽

    鈴木壽君 どうもこれがはっきりしないと、こういう事実関係に基づいての将来のことを心配しての立法だということですから、一体どういう事実があったかということ、これはきわめて大事な問題だと思いますので、いずれあとで提案者なりあるいは事務当局なりから、さらに詳細な具体的な事例についての報告を求めることとして私はきょうの質問を一応終わりにいたしたいと思います。   —————————————
  202. 高橋進太郎

  203. 高田なほ子

    高田なほ子君 時間も大へんおくれましたので、きょうは、私の考えております分だけの質問が十分できないだろうと思いますが、大体私が予定しております質問の内容は、第一に本法案の性格について、第二番目に議長の権限の拡大と憲法との関係、並びに本法に規定された内容と地方自治法との関係、次に、警察法の施行についての諸問題点、さらに最終の罰則規定の中にある法体系の問題、並びにこの法の効果そのものについての問題、以上の概括した問題を私は質問内容として実は持っているわけであります。従いまして、これらの問題を中心といたしまして、全個条にわたりまして大体調べますと、法律的な字句解釈としてきわめて不明確な部分が二十三カ所にわたっているわけであります。で、私はお断わり申し上げますが、決して法の専門家ではありませんが、私のような未熟な者が拝見いたしましても、なおかつ二十三点にわたる拡大解釈をし得るおそれのある法律でありますがゆえに、とうていこの与えられました時間では、この全部を尽くすことができないわけであります。従って、委員各位のお許しをいただきまして、次回にその発言のお許しをいただけるという意味において、以下、概括的な諸問題を申し述べて御見解を伺わしていただきたいと思います。  まず私は第一番にお尋ねをいたさなければならないことは、新たな問題として出してきたのでなくて、今まで論議された中できわめて不明確であったような部分、そんなような部分をまずまっ先に取り上げてみたいと考えるわけであります。一体、法律は当然目的が掲げられるわけでありますが、従来いかなる悪法といえども、その目的とするところに悪法のゆえんを書いたという法律は、近代社会においては見られないのが常識であります。従って、この法律目的に沿っていかなる手段と方法が法目的達成のために必要であるかという、いわゆる法目的達成のための手段方法というものが言及されなければならぬと思うわけであります。同時に、こうした今までの御論議の中でも十分お汲み取りいただけたと思うわけでありますが、きわめて治安立法としての性格の濃い法案内容であります。新たに義務を課すとか課さないとかという論議があったわけでありますが、その手段方法において、きわめて治安立法の性格を強く持っている法律でありますがゆえに、こうした立法の任に当たられる方もさだめし御苦心の多かったことだと思いますが、この法案の性格から考えて、この立法の根拠になる事実というものは、明確にこれを論理づけるその基礎的なものがなければならないと思う。これは前発言者においてもしばしば繰り返された問題でありますが、幸いにして委員会の要求に基づくのではないかと思われる資料がちょうだいされております。この資料は、議院の審議外部圧力によって中止され、また議員登院が阻害されたという事例として配付されたものだと私は承知するわけでありますが、まずこの資料そのものについて、いかなるお考えのものにこの資料がいただけましたものか、私、議運に出ておりませんものですから、そのことがわかりませんから、この点についてお答えいただきたいと思います。
  204. 佐々木盛雄

    衆議院議員佐々木盛雄君) これは私に要求されたものではなくして、委員長を通して要求されたものでありまするから、むしろ委員長からお答えを願うことが適当かと思いまするけれども、このデモ行為等によってかって国会審議に何らかの影響を与えたことがあったかどうか。もしあったとするならば、そういった文献等で具体的に示してほしい。こういうふうな御要望に基づいて集め得る限りの資料を集めて提出されたものと存じております。
  205. 高田なほ子

    高田なほ子君 委員長、発議者の御発言の通りに受け取りましてよろしゅうございましょうか。そういう資料でございますか。
  206. 高橋進太郎

    委員長高橋進太郎君) いいです。
  207. 高田なほ子

    高田なほ子君 そういたしますと、この資料は、少なくとも今問題になっている立法の根拠となる事例でなければならないわけです。根拠であると私は考える。で、この事例一つ一つ私は詳細に駁論する時間を不幸にして持ちませんが、概括して、ここでこの資料を拝見させていただきますと、次のようなことがうかがえるわけであります。  第一例は、第七国会 二十五年三月九日の問題でありますが、「デモ隊は、午後五時過ぎから集合し、本院構内に侵入し、午後八時過ぎ退去した。」、これは事例ですね。最後の行で、「予算委員会委員の発言にもそれがうかがわれる。」、こういうふうに書いてあるわけです。そこで、いただきましたのでこれを拝見いたして参りますと、裏の表を見ますと、開会時刻、散会時刻、いずれもこの時刻が明記されておりますが、いわゆる午後五時という時間は、すでにこれは委員会をほとんど終了している。そして予算委員会は九時まで続行されておったわけでありますが、その委員会委員の発言にもそれがうかがえるというような資料でありますが、この資料は資料としてきわめてあいまいである。やはり資料として出すからには、何々委員からこれこれの発言があったということが明示されなければ、審議がこのことで中止されたかされないかという判定の証拠にはなり得ない。従いまして私は委員長に、この発言の内容等については、準備をせられまして再度提出をされることを要求するわけであります。次に、「本院構内に侵入し、」とある。これは幸か不幸か、私はこのデモに参加をしておった。これは国会議員ではありません。民衆として参加した。この当時は、先生方も御存じだと思いますけれども、警務課と組合の主催者側とが話し合いまして、そして陳情を受け取って、面会所は今のような面会所じゃないのです。構内とつながったところが面会所になっておった。たくさんの人間がおりますと、やはりそこに人があふれてくるわけです。ですから、今の現状でこれを察するということは私はあまり妥当ではないのじゃないかと思う。だから、はたしてこれが侵入したものか侵入したものでないのか、了解のもとにここに参加したものかどうか。——これはお答えは要りませんよ、あとで資料をみなまとめていただきますから。——この点を一つ明確にしていただきたい。従って、この第一例によりますと、大体私どもが資料として要求した、審議を中止した事態の中には私は含まれないのじゃないかという考え方を持つわけです。第二番目に、議員登院が阻害されたというこの事例というものについては、これは発見することができない。ただ、この第一例から見られることは、いわゆる集団的にこちらに陳情に参りましたその現象だけをここにピック・アップしておる傾向があるというような気がする。  これから第二例の問題です。第二例の十二国会の場合でありますが、この「官公労の行政整理反対デモ事件との関係」でありますが、私はこれを見ましても、午後五時からデモが行なわれたというのでありますが、遺憾ながら委員会はすべて散会後の時間であります。そうだとすると、これは審議がこのために中止されたという事例ではないのじゃないか。あるいは議員登院が阻止されたという事例ではないのじゃないか。しいて言うならば、静穏の空気が乱されたのじゃないかというような資料にはなるかもしれませんが、しかし、国会権威を保つゆえんのものは、あくまでも国会審議権を尊重するという建前の上において地域の制限行動制限が設けられるわけでありますから、この法案の目標とすることに対する的確な資料であるとは考えられない。これは私の主観でありますが、ここにもまた「侵入」という言葉があります。了解を得て入ったものかどうか。デモの参加者が全部侵入したかのような印象を受ける表現である。これは少し誇大に過ぎる表現ではないか。  第三番目の十三回国会の問題でありますが、これは御承知のように破防法反対のデモ隊でございます。御承知のように、こういう問題が起きた社会的な背景というものを抜きにしてこういう問題を論ずるということは、私はやっぱり片手落ちだと思うのです。このことは前発言者によって指摘された部分でありますから、私はこれを繰り返そうとは考えません。ただこれは資料として、「当日の委員会は、その前後に比して、その開会が著しく少い状況がうかがわれ、それは破防法反対のスト、デモ隊等を考慮しての措置ではないかと考えられる。」、「ではないかと考えられる。」というのはだれの主観か。正確な判断を導くための資料が「デモ隊等を考慮しての措置ではないかと考えられる。」、私はこういう主観の入った資料というものは資料としての意義のないものだと思う。またこのような資料を提出されて、これを委員会に配るということも、きわめて私は不見識な問題じゃないか。この点は資料としての価値ないものというふうに考えられる。同時に、このデモ隊は午後一時十分ころからうかがわれたということでありますが、さて、午後一時十分には大体の委員会はすでに解散している。そうだとすると、これによって一体その審議権が侵されたかどうかということは、この資料を見れば侵されないという結論を出さざるを得ない。それをあえて印象づけるために、「デモ隊等を考慮しての措置ではないかと考えられる。」というような資料は、これは的確な資料であると私は考えない。  第四は安保改定阻止デモとの関係であります。私は前提としてここで申し上げなければならないことは、あの国会のデモ隊の行動は、確かにこれは行き過ぎがあったということは私どもみんな認めている。あなたも認めているだろうが、われわれも認めている。しかし、これはここでその理由をくどくど述べたくはありませんけれども、大体、労働組合の統一行動というのは、今日までの慣行でもおわかりであるように、いずれも前に何回かの会合を持ってその統一行動が乱されないということを固く規定して行なわれてきたのが原則であります。警視総監もここにお見えになっておりますが、東京都のいわゆる都労連傘下における統一行動は常にこの規定が守られてきている。しかし、時と場合で、その中の一部の方が統制に服し得なかったということからいろいろな事態を起こし得るということもあり得る。私は、その一部あり得たことは、これは決して正しい行動ではなかったということを私どもは考えている。さればこそ、現在の私どもの党においても、あるいは統一行動をしたそれぞれの団体においても、本問題については非常に深い検討が行なわれつつある。そういうことを一体立案者はお認めになっているかどうか、これはわかりませんが、ただこの中で私が指摘したいことは、「午後四時五十分ころ、委員長代理田口長治郎君は、「外部が騒然としておりますから、ちょっと相談する意味において暫時休憩いたします。」と宣言し、休憩後は会議を開くに至らなかった。」と、こういうふうに記してあります。私は当日の速記録を拝見したわけでありますが、なるほど田口委員長代理の「外部が騒然としておりますから、ちょっと相談する意味において暫時休憩いたします。」、こういうような速記が残っているわけであります。しかし、これは相談をする意味において暫時休憩する、こういうふうに書かれております。騒然として審議ができないからというふうには書いてない。そこで当日は、これはわが党の多賀谷委員がこの委員会に出席をされ、当日の模様について私は詳細に多賀谷委員にただしたわけであります。多賀谷委員の申し分によりますと、ちょうど水俣病について審議中であったように言われておりますが、デモ隊が来て、その現場に大坪議員——お名前は私は存じません、自民党の先生だそうでありますが、行って来られて、何回も委員会をやめるように委員長に言っておった。つまりデモ隊が来たかどうかということはわれわれ知らないうちに、一番端の部屋で連合委員会を開かれておったそうだが、大坪さんというのが何回も委員会をやめるようにという委員長に対する要請をされたが、しかし、私どもはそのときはデモ隊の声は何も聞きとれなかった、そういう程度だった。委員会は継続されておった。しかし、その後大蔵省の政府委員の出席がないために閉会をしたものであって、デモのために閉会をしたものではないというような御発言があるわけです。いずれ公聴会も開かれるわけでありますから、この資料はきわめて重要な資料であり、そしてまた、こういう内容のものであるとするならば、再検討の必要があるのじゃないかと思います。とりわけ、この大坪議員行動については、次の日の国会対策委員会でも大へんに問題にされた、こういうようなことが私の調査によって明らかであります。  言うならば、ある意味において、その立法の根拠が政治的に過ぎやしないかという私は批判を持つ。つまり、この資料は、審議を中止した例、あるいは本法に規定する議員の正常な登院が阻害された事例として要求されて提出された資料である。その資料が主観をまじえ、そうしてまたそういう事例がこの中から発見することができ得ないということになるならば、これは本法に対して提出された資料としては妥当なものではないのじゃないかという実は気がするわけです。そこで、これは立案者にお願いするのもいかがかと思いますけれども、委員長には、以上私が要求いたしましたことについて、あらためて整備をされてお出しをいただきますとともに、今私が数々指摘しましたことの中で、はたして審議を中止した事例として妥当な資料であるかどうかということについて一つ御見解を伺いたい。
  208. 佐々木盛雄

    衆議院議員佐々木盛雄君) 私は、衆議院の事務当局で集めまして、ただいま皆さまの御手元に配付いたしております資料が、かつて国会審議を中止をしなければならなかった材料として的確であるかどうかという問題につきましては、今私は何ら自信を持っておりません。(「無責任じゃないか」と呼ぶ者あり)いな、これだけの資料では、あなた方の立場から言うならば、このゆえに中止したということにはならないほどの程度の資料かと思います。私は繰り返しこの場において申しておりますように、現実に当日の審議を中止しようじゃないかというときに、明日はデモが行なわれるからやめようじゃないかということを、しばしばわれわれは議院運営の面においては申すこともあります。つまり、われわれとしても心理的にそういうことを考えておってまあ、あしたはやめようじゃないかということを言うこともありますが、それを記録の上において文献的にあさってみてそうしてかくのごとき阻害された事実がある、かくのごとき理由によって中止したという事実を発見することは非常に困難であったから、資料を出せとおっしゃられても、皆さんの御満足になるような資料を出すということは困難だということを繰り返して申しているわけであります。しかし、先ほど承ったところで、やや私と見解を異にするところは、たとえば構内に入っても、その辺のガラスを破っても、危険がなければいいじゃないかとか、あるいは現実に速記がとれておったからそれでいいじゃないかという、そういう物理的に審議が可能であったかどうかという問題ではないと思う。私たちは、国会のこの構内に、いわゆる院内に、たくさんの者が、正式に法規によって定められたところの許可を得ることなく、いわんや衛視の制止を無視したり、あるいはさくを乗り越えたり、あるいは門を突破して入ってくるというそのこと自体が、すでに公正な審議権行使を阻害している事態であると、こういう考え方に立っているわけでございますから、あなたと私とは、だいぶそういう点においては、見解の根底を異にしていると思います。
  209. 高田なほ子

    高田なほ子君 本問題については、見解を異にすると言われておりますけれども、私と違うことを、違うように答えたって、それは見解を異にしたということにならない。私があなたに質問していることは、この資料は、この事態によって審議が中止した事例、あるいはまた議員の正常な登院が阻害されたという事例として妥当であるかないかということを聞いている。だから、あなたは妥当ではないと考えるという御答弁があったのだから、それでよろしい。あと、そのほかの問題については、以下項をあらためて、これは大問題として、ここで一つ論議しなければならない。だからこれは伏せておきましょう。あなたの御答弁は、あなたの御答弁として私は聞いてだけおきます。しかし、これに対する反論は、私は時をあらためてまたしたいと思う。  時間もないようですが、もう一つだけ伺っておかなければなりませんが、これは前提になる問題だけ一つ聞いておきましょう。私は、この法律は、しばしば立案者からも言われているようでありますから、ここで繰り返しません。しかし、この法律国会議員対象にしたものではない、国民大衆を対象にしたものである。しかして、国民大衆に対して、国会権威を保持するために、ある種の規制を実行させようとする法律である。そのある種の規制は、しばしばあなたが言われたように、公安条例に基づく規制を加えんとする法律である。従って、これはしばしば論議されましたが、基本的人権に関連のある問題に対する規制であって、国民の自由な行動を規制し、そうして警察という力をもって、実力をもって国民行動を規制するというものである以上は、これは明らかに治安立法であります。あなたは、この法律の性格を単なる訓示規定だとか、議長の手続だとかいうことを言っておられるわけでありますが、形式は確かに手続とか要請などが書いてありますけれども、この法案の性格そのものが、直接国民に触れる部面が警察の権力という形で触れるのでありますから、取り締まりという形で触れるのでありますから、これは明らかに治安立法の性格を持っているものだと、こういうふうに私は法の性格の解釈をしているわけです。立案者は、この点についていかような見解を持っておられるか。
  210. 佐々木盛雄

    衆議院議員佐々木盛雄君) 私は、本法は決して治安立法であるとは考えておりません。なぜならば、まず第一に、国会議員登院についてのことであります。また、二つには、その地域は国会に隣接した、国会とつながった周辺地帯であります。しかも、それを発動いたしまする——要請をいたしまするのは、衆参両院の議長がおやりになることであります。しかも目的といたしますところは、国会議員登院と、そうして公正な審議権行使、これを目的とするわけでありまするから、あくまでもこれは国会関係法規と考えた方がよかろうかと考える。そういう意味におきまして、参議院の方は別でありまするが、われわれ衆議院の方におきましても、地方行政委員会に付託するか法務委員会に付託するかというような御意見もあったわけでありまするが、これはやはり国会関係の法規を専門につかさどっておるところの議院運営委員会に付託するのが妥当であると考えて、そのようにいたしたいきさつから考えましても、私たち国会関係法規であると考えておるわけであります。
  211. 高田なほ子

    高田なほ子君 私はそのような形式論は承らなくともよく承知している。しかし法律は、これは専門家のあなたに失礼な申し分でありますが、法律目的を持っている。その目的によって手段方法が規定されてくる。その手段方法において、その中には院内における議長のいわゆる要請権というものがここに出てきておるが、要請権に基づいて発動されるものは何か、それは申すまでもなく公安条例だと、こう言う。これがもとになっているのだと言う。公安条例とは一体何か、公安条例に規定されるものは何か、これは警察の実力行使。書いてあるでしょう、警告または制止と書いてある。ちゃんと書いてある。これは実力行使です。先ほど御論議がありましたが、警告とかあるいは制止ということを非常に単純に考えておられる。柏村警察庁長官に伺いますが、一体「警察官は、自らその職権」云々とありますが、一体この職権の内容というものは何法に基づいた職権なんですか。条例はどうなんですか。簡単に答えて下さい、法の根拠だけ。
  212. 柏村信雄

    政府委員(柏村信雄君) 第五条に申します「自らその職権を行使する」という職権とは、各種の法規に、警察官の、あるいは国家公安委員会の職権として規定されておりまするものでございます。
  213. 高田なほ子

    高田なほ子君 柏村長官にさらにお尋ねします。警察の職務権限については、警察組織法といわれる警察法、あるいはいうところの職務執行法、こういうようなものがあると思われますが、特にこれは立案者に伺った方がいいかもしれませんが、この五条にいう警察官の警告あるいは制止というのは、いわゆる職権の行使は、いかなる法律に基づいて行使されるものと考えてここに立案をされたのか、明文化されたのか、この法の根拠、これを伺いたい。
  214. 佐々木盛雄

    衆議院議員佐々木盛雄君) 第五条の第二項かと思いまするが、これは先刻来……。
  215. 高田なほ子

    高田なほ子君 何のです。
  216. 佐々木盛雄

    衆議院議員佐々木盛雄君) 何の第五条……、この本法のではないのですか。
  217. 高田なほ子

    高田なほ子君 それは違います。あなたの答弁は間違っています。私が尋ねているのは、あなたが治安立法じゃないと言われるから、確かに目的は治案立法じゃないが、しかしこの法を達成するための方法、手段は、明らかに公安条例に基づいた警察官の職務として執行される、そうしてこの中には警告あるいは制止という、いわゆる警察官の職務行為は、ここに規定されておる職務行為は、いかなる法律に基づいた職務行為であるかという質問をしておるわけです。
  218. 佐々木盛雄

    衆議院議員佐々木盛雄君) その点につきましては、「必要な限度において、集団示威運動等の主催者、統括者その他の責任者又は参加者に対して、警告を発し、又はその行為を制止することができる。」というのは、いわゆるこのことだけについて申しまするならば、この項目にございます。
  219. 高田なほ子

    高田なほ子君 それは立案者として私は認識不足じゃないかと思いますが、一体この警察官の職権というものは、何らかの法律に基づいて発動されなきゃならないものです。なぜなれば、警察官の職権は、人の生命あるいはまた財産というものに対して力をもって拘束を加えなければならない強制を伴うものなんです。だから警察官の職権の行使については、これに基づいていますなんという、そんなばかな話はない、警察官の職務はここに書いてある、職権を行使すると書いてある。ここにいう職権の行使は、いかなる法律に基づく職権の行使であるのかという質問をしている。立案者、お答えになれなければ柏村さん答えて下さい。
  220. 佐々木盛雄

    衆議院議員佐々木盛雄君) その法律の根拠は、公安条例、それから警職法並びに第五条の二項かと考えます。
  221. 高田なほ子

    高田なほ子君 公安条例というのは、ちょっとそれは御研究になった方がいいと思う。警察官の職権発動の根拠なんです、柏村長官一つ答えて下さい。
  222. 柏村信雄

    政府委員(柏村信雄君) 立法の趣旨は立案者からお聞き願いたいと思いますが、私この法案を拝見いたしまして「自らその職権を行使するほか」とあります。その職権を行使するというのは、先ほど申し上げましたように、現行法に基づく各種の職権でございます。その例としましては、警職法とか公安条例とか道路交通取締法とか、いろいろあると思いますが、それに基づく職権でございます。最後の、警視総監が必要な限度において警告または制止することができるという規定をしておりますのは、この法案に基づいているものと解釈します。
  223. 高田なほ子

    高田なほ子君 柏村長官の御答弁でやや明確になって参りました。私は警察官の職務行為について、その法的な根拠をただした。これについて柏村長官は、いわゆる警察官等職務執行法あるいは公安条例、こういうふうに述べておられましたが、本法の警告または制止というのは、本法に基づく警告、制止であるというようなことを答弁されておる。そうだとするならば、一体、この警官の職務というものは、警察組織法によって警察法が制定され、この中に、警察官の職務、任務、そうしてその権限の範囲、国家公安委員会の任務、責務、その範囲、そうしていろいろその内容が、警察の組織として書かれている。あるいはまた、警察官等職務執行法の中には、職務執行の内容について、言うところの制止とか警告というのが、第五条にも出てきている。そうですね。ところが、柏村長官の御答弁を聞くと、これは、この本法に出てくる警告と制止というのは、本法に基づく警告と制止であるというふうに言われているが、ずいぶんこれはおかしなもので、一体警察官という強権を発動する——これは特徴です。警察力というのは、強制力を持つものです。その強権の発動に対して、何もほかに明文化されたものがなくて、ここに警告とか制止ということが出ていることは、これは私は法の体裁の上から言っても、あなたの説明では納得しかねる。また、立案者も、そうだと言うが、これは納得しかねる。一体、警察力なんていうのは、そんなものなんですか。何のために警察法があり、何のために警察官等職務執行法があるか。私はその一例から見ても、はなはだこれは危険きわまりないものであり、治安維持のための法の拡大解釈を、実力の拡大をここに目途としているという性格が明瞭にうかがわれるのじゃないか。としたならば、これは明らかに、この法律は治安立法としての性格を持つものであるということを、遺憾ながら結論づけざるを得ない。再度立案者に、私の見解について、もしあなたのお考えがあれば説明をわずらわしたい。
  224. 佐々木盛雄

    衆議院議員佐々木盛雄君) 私は、よく速記録を読んでいただけばわかりますが、決して言ったことと矛盾しておりません。終始一貫して、私は、本法は何ら新しい義務を課するものではないと申している。義務があるかどうかというお話でございますから、本法はどこを探しましてもどこにも義務の規定を発見することはできません、従って、新しい義務はありませんということを申したのであります。また、午前中のお話にもお答えいたしたのでありまするが、しからば、議長から要請を受けた警察官がその警察作用を行なうのは、それは自分の独自の判断に基づいてやるのだ。どれほどの職権を発動するかというお話でありまするから、それは、この公安条例第四条の場合や警職法第五条の場合における「警告」、「制止」のそれと同じことをやるのである、こういうことを申したのであります。しかしながら、しからばその警官が警察作用をするときの根拠法は何かというただいまの御質問でありまするから、先刻申したように、それには公安条例第四条の場合や、あるいは警職法第五条の場合、ないし本法第五条の二項の場合ということを申し上げたのであります。(「その一番最後に言ったのは、きょう初めて言ったのではないか」と呼ぶ者あり)それは先刻来しばしば申し上げている通りでありまして、どうかその点は速記録をお調べになればわかることでありますから、決して私の申しておりますことは、論理の矛盾はなかろうと思います。
  225. 高田なほ子

    高田なほ子君 ただいまの御答弁はきわめて重大な御答弁です。ただいまの立案者の御答弁並びに柏村長官の御答弁は、新たなる解釈を持つものと私は解釈する。なぜならば、警察官の職務というものは、明らかに警察官の職務執行法に基づく、あるいは警察法に基づくものだと思う。しかし本法のこれは本法に基づくものだと、こういうふうなことを言われますから、本法に基づくというのは一体何に基づくものだということになる。そうしてまた立案者も、公安条例の第四条、それから警察官等職務執行法並びにこの法案の中に云々答弁をされておる。そうすると、私は深く追いませんけれども、お疲れでしょうから、あなたに伺いませんが、柏村長官に伺いますが、警察官等職務執行法にいう「警告」と「制止」というものと、ここにいう「警告」と「制止」というものは、どういう関連を持つものであるか。
  226. 柏村信雄

    政府委員(柏村信雄君) 警職法で申します「警告」、「制止」と、本法案に申します「警告」、「制止」とは、その内容は同じものと考えております。
  227. 高田なほ子

    高田なほ子君 ちょっと長官、ここへお立ち下さいませんか。ちょっと疑問になる点だけ伺わしておいていただきたいと思います。また、立案者にもこのことについてあとでお尋ねをいたしますから、お聞きになるだけでけっこうですが、一体警告というのはどういうことなんですか。
  228. 柏村信雄

    政府委員(柏村信雄君) 警告と申しますのは、いろいろ言論または態度によって注意を与える。
  229. 高田なほ子

    高田なほ子君 言論や態度で注意を与えることにとどまりますか。実力行使も伴う場合もありませんか。
  230. 柏村信雄

    政府委員(柏村信雄君) 実力行使……、警棒をかまえる程度のものを警告と認めておりますが、実力行使によってある行為をとめさせ、あるいはその行為をやっている者を分散させるというようなものは、制止の中に入ると思います。
  231. 高田なほ子

    高田なほ子君 警告の場合に、この警棒をかまえるということは、実力行使の中に私は入ると断定するし、また、警棒をかまえて大衆を警察官の目標とする所に実力をもって押しやる行為もまた警告の中に入っていると考えますが、その点どうですか。
  232. 柏村信雄

    政府委員(柏村信雄君) ただいま警棒をかまえると申しましたのは、かまえてこちらに入らないようにというような態度を示すという意味において警告と申したわけであります。これを押して、相手を押してある所に導くということになれば、制止の一態様と考えます。
  233. 高田なほ子

    高田なほ子君 昭和二十七年三月二十二日大阪高裁の判決によると、警告相当と認められる判例として、警棒をかまえ、大衆を押しやる行為、すなわち警官の実力行為の一部も警告の中に警告相当として含まれるという判例もある。従って、皆さん、私どもも、警告というものは非常に軽い意味考えておったのですが、相当これは警官の実力行使が伴うものであるという認定に立たざるを得ない。これは大阪高裁の判例というものは、単に大阪高裁の判例だけにとどまるものではない。この判例は、警察の職務、職権の行使の上に、生きた一つの資料となって、これと同様の行為が、合法的な職務行為として認められる危険性を持つがゆえに、あえて私は警告の内容について長官に質問をしているわけです。いかがですか。
  234. 柏村信雄

    政府委員(柏村信雄君) 私どもの見解では、あくまでも積極的な行動に出るというものまで警告として考えておりません。そういう積極的な実力を行使するものは制止の一態様と考えております。
  235. 高田なほ子

    高田なほ子君 これは限りがないのですが、そうすると、制止というのは実力行使を伴うものでしょう。
  236. 柏村信雄

    政府委員(柏村信雄君) その通りであります。
  237. 高田なほ子

    高田なほ子君 実力行使というものは一体どういうことなんですか。具体的に何を使うのですか。
  238. 柏村信雄

    政府委員(柏村信雄君) 単に何も使わずに実力行使をする場合もございますし、あるいは警棒等を使用して実力を行使する場合もある。物理的な積極的な行動に及ぶ場合、これを制止の態様と考えておるのであります。
  239. 高田なほ子

    高田なほ子君 制止というのは、この条文からすなおに見ると、そうおそろしいものに感ぜられませんが、今おっしゃるように、警棒が使われる、放水ポンプも使われるはずです。これは制止の中に入る分野だと思います。この点どうですか。
  240. 柏村信雄

    政府委員(柏村信雄君) 元来、制止というのは、なすべからざる行為に対しまして、これをやめさせる、あるいは継続して行なうような場合に、その団体について分散をさせる、実力をもって分散させるというようなことを制止と申しているわけでございます。その態様は、態様と申しますか、やり方につきましては、種々雑多でございます。それはそのときの情勢に応じて警察が必要最小限度の行動をするということになると思います。
  241. 高田なほ子

    高田なほ子君 必要最小限度の行動をすることは、警職法にも規定されている通りでありますから、これは御説明の要はないと思いますが、しかし、制止の範疇の中に武器使用も含まれているということについては、お互い認識しなければならない。治安立法ではない、治安立法ではないと言われるから、私は今こうして制止の内容についてお尋ねしておるわけです。明らかに、この制止の内容には、この武器使用の条項が含まれる。これは何も警職法の第七条に該当するものでなくても、言うところの危険を伴わないような制止、これに武器が使用されることは、あなたは長官としてよく御承知のはずだと思う。身体に危害を加えるものではないのですよ、なくとも、武器の使用が許されるということは、あなたも御案内の通りだろうと思う。現象に対して私は質問しているのじゃない。制止ということの職務行為の範囲内をここに明らかにしたいというその根拠から伺っているわけです。それについてお答えいただきたい。
  242. 柏村信雄

    政府委員(柏村信雄君) 警棒は、その本来の用法は武器として考えておりません。
  243. 高田なほ子

    高田なほ子君 ちょっと今の私の質問と違うのです。警棒は武器ではない、なるほどそうでしょう。しかし武器の使用が許されるということは、この制止の範疇の中に入るか入らないかという質問を今している。
  244. 柏村信雄

    政府委員(柏村信雄君) 原則として武器使用は入りません。
  245. 高田なほ子

    高田なほ子君 危険を伴わない場合の武器使用というのは、これは法的に認められている条項ではありませんか。
  246. 柏村信雄

    政府委員(柏村信雄君) 武器の使用は、警職法第七条に規定した場合に限られるわけであります。
  247. 高田なほ子

    高田なほ子君 それでは、その第七条の中に武器の使用が規定されているわけでありますけれども、いわゆる殺人犯の逃走とかいうような場合には、武器を使用して相手に危害を与えなければならない。しかしここに入ってはいけないのに入って来たなと警官が判定した場合には、武器の使用は、第七条で、使用されることが法解釈の範疇に入ってくる。この点どうですか。
  248. 柏村信雄

    政府委員(柏村信雄君) その入るべからざるところの罪状によると思います。
  249. 高田なほ子

    高田なほ子君 そこで問題になる。ここで集団デモがどうだこうだ、指揮者がどうであることも、参加者が、これを挑発して、この区域から入ったものも、これは明らかに不法侵入になるわけです。これで終わりますが、立案者、この地図をごらんなさい、この地図を。あなたが区域とさされた地図を。この道路は明らかに天下の公道です。この公道に対して、この法律案は予算措置を伴っていないようですから、まさかここから先を黄色に染めるものとは私は思っていない。天下の公道です。しかし一たん法律としてこの地図が、この立法の基礎としてこれが公布された暁において、この境界線を一歩でも突破した場合は、これは明らかに不法集会であり、不法侵入になる。構内なんだから、なる。この場合に、今言うように制止の実力行動が伴った場合に、ここにいろいろな問題が惹起されるということは明らかであるとともに、この法律によっての自由権の侵害というものが大幅に認められるのであるから、いかに目的はどうあろうとも、この法の手段、方法において、明らかにこれは法安立法としての性格を持つものであるという断定を下さざるを得ないのです。あなたの見解を承りたい。
  250. 佐々木盛雄

    衆議院議員佐々木盛雄君) 今高田さんのお指摘道路のごときは、なるほどそういうときに議長要請対象になるだけでありまして、この中に入ったからすぐひっくくるとか、すぐ制止をするとか、すぐ警告を発するというわけではございません。
  251. 高田なほ子

    高田なほ子君 お疲れだろうから、ああいう答弁をされると思いますが、私だってこの法律を読んできている。議長要請があったときにこれを発動するものなんです。しかし同時に、何人に対してもこの法律は発動するものである。そうだとするならば、今言うような制止行為というものは、不法侵入と認めた場合に制止行為が行なわれることは、これは必至なんです。どうしても必至なんです。という意味から、これは明らかに治安立法であるという断定を下さざるを得ない。  だいぶ時間もおそくなったし、立案者もお疲れのようでありますから、次回に条項にわたって質問いたします。
  252. 高橋進太郎

    委員長高橋進太郎君) 本連合委員会の今後の運営につきましては、議院運営委員会の理事会において協議の上これは措置することといたします。  それでは、本日はこれにて散会いたします。    午後五時五十八分散会