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1960-04-05 第34回国会 参議院 外務委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年四月五日(火曜日)    午前十時三十四分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     木内 四郎君    理事            青柳 秀夫君            井上 清一君            苫米地英俊君            森 元治郎君    委員            笹森 順造君            堀木 鎌三君            加藤シヅエ君            佐多 忠隆君            羽生 三七君            大和 与一君            佐藤 尚武君   政府委員    法制局第一部長 山内 一夫君    総理府特別地域    連絡局長    石井 通則君    法務省民事局長 平賀 健太君    外務政務次官  小林 絹治君    外務省アジア局    長       伊関佑二郎君    外務省欧亜局長 金山 政英君   事務局側    常任委員会専門    員       渡辺 信雄君   説明員    外務省北米課長 有田 圭輔君    水産庁漁政部長 林田悠紀夫君    海上保安庁警備    救難監     松野 清秀君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○国際情勢等に関する調査  (国際情勢等に関する件)   —————————————
  2. 木内四郎

    委員長木内四郎君) それでは、ただいまより外務委員会を開きます。  まず、国際情勢等に関する調査を議題といたしたいと思います。  ただいま政府委員として出席しておられる方は、小林外務政務次官平賀民事局長三宅外務省審議官林田水産庁漁政部長であります。  御質疑のある方は順次御発言を願いたいと存じます。
  3. 笹森順造

    笹森順造君 参議院の外務委員会は、国際関係に関連のあるわが国北方海域の漁業問題に深い関心を有して、先年来引き続き本委員会から現地視察のために議員を派遣いたしまして、困難なる諸問題の解決に努力してきたのでありますが、国際的に漁業問題が緊迫してきておりまする現在、多年未解決のままに放置されている問題を具体的に取り上げて、まず色丹島民が与えられていた漁業権に対する政府取り扱い方についてお尋ねをしたいと思います。終戦時において、ソ連色丹島に進駐してきたときに、色丹島民が追い払われ、またはソ連側に抑留されて、樺太を経由して、おもに北海道本土に送還された者など百六十七世帯、人員九百二十名ありまして、彼らを中心として、当時出かせぎ労務者約二千人を雇い入れて、島民が組織し活動していた色丹漁業会は、専用漁業権として二十八種類の漁業権が与えられておりました。この漁業権は、色丹島距岸三万メートルに設定されていたのであります。この権利が侵害されて十五年間、政府当局において何らの措置なく、全く放置されているので、すみやかなる処理が要望されると言われております。  そこで質問をしたいのでありますが、この問題は国内法適用によって処理されるべき点もあると島民が思っておりますが、法務省当局見解はどうであるか、まずその点からお尋ねしたいと思います。
  4. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) 色丹島にございました漁業権法律上どうなるかという点につきましては、これは法務省の方から御答弁申し上げるよりも、むしろ農林省その他から御答弁願った方がよいのではないかと思うのでございますが、法務省関係といたしましては、ただいま御質問の中にございました色丹漁業会というのが戦前水産業団体法によって設立されておったのでございます。それが、色丹色丹字斜古丹五十二番地、ここに主たる事務所を持ちます漁業会というのがあったのでございます。それが一体どうなるであろうかという問題が実は法務省関係ではあるのでございます。その色丹漁業会につきましては、根室に、法務省出先機関といたしまして、釧路地方法務局根室支局というのがあるのでありますが、ここに漁業会登記がなされておるわけでございます。その漁業会につきまして、実は最近漁業会理事監事変更登記の問題がございましてそれと、この色丹漁業会根室市内建物を持っております。不動産を持っておりましてその不動産について保存登記をしたいという問題が実はあるわけでございます。それが一体どうなるであろうかという問題がございまして、現地の方から実は法務省の方に照会がなされているのでございますが、私ども考えといたしましては、色丹が現在ソ連によって占拠されておる、その事実によって当然この色丹漁業会というものはなくなるということはないであろう、色丹漁業会という法人人格は、なお存続しているのではないか。従いましてその漁業会につきまして、役員変更があれば、変更登記もすべきものである。ただ、戦前水産業団体法に基づく漁業会は、水産業協同組合法制定に伴いまして、この漁業会解散をするということになっております関係で、現在は解散をしておる、ただ解散をしまして清算に入っていると見るべきではないか。そうしますと、清算法人としてなお人格を持っておるわけでございますので、役員と申しましても、理事理事というものはあり得ないわけで、清算人を選任すべき筋合いのものであります。理事変更登記はできないが、監事変更登記はできるというふうに考えるべきではなかったか。それから、さらにこの漁業会根室市内に持っております不動産につきましては、これはもちろん清算法人として漁業会人格を持っているわけでありますので、その不動産について、登記の申請はもちろんできると解すべきものであろう、そういうふうに私どもとしては考えておりまして、現地の方にその趣旨の回答をいたしたいと考えております。
  5. 笹森順造

    笹森順造君 ただいまのお話で、非常な考え違いがあるように私どもは思います。それはただいまのお話では、色丹島漁業会解散しているということを明白に言っておりまするが、解散の事実がありますか。それは、私ども解散の事実はないと、こうはっきりと認識しているので、出発点からそこに間違いがあるように思うのです。私はこの点について、まずそれではお尋ねしましょう。ほかに関連して法務省に尋ねたい点もあるのですけれども、この点は非常にこの問題を審議するのに重大な問題だと思っております。これは水産庁関係よりも、むしろ法務省関係においてはっきりしていただきたい。ただいまのお話でありますると、水産業協同組合法制定に伴う水産業団体整理等に関する法律、それが昭和二十三年の十二月に法二百四十三号で出ておりますが、その第一条の三に、「前項の水産業団体であってこの法律施行の日から起算して八箇月を経過した時に現に存するもの(清算中のものを除く。)は、その時に解散する。但し、漁業会であってその時に漁業権若しくはこれを使用する権利又は入漁権を有するものについては、この限りでない。」こうあるのです。そうして、色丹漁業会は、まだ法的に現存しているので、これは解散になっておりません。もし解散になっているとするならば、これは行政庁が必要と認めた場合はいつでも当該水産業団体解散を命ずることができる、とあるのです。ところが、事実かかる解散行政命令色丹漁業会には発せられていないのです。全然今のお話は私の了解と違うので、どこにもそれがない。それが解散したというのは、どこを根拠にして申されたのか、もし間違いであるならば、今の言葉を訂正してもらわなければならない。
  6. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) この問題はただいま仰せ通り水産業協同組合法制定に伴う水産業団体整理等に関する法律の第一条の第三項の本文適用になるか、ただし書き適用になるか、ただし書きはただいま仰せ通り、なおこの漁業会漁業権もしくはこれを使用する権利または入漁権を有していればそのときは解散しない、こういうことになっておりますので、この当時この色丹漁業会が持っておりました漁業権がどうなったかということにかかると思うのでございます。この点につきましては、むしろ水産庁の方から御答弁願った方が適当ではないかと思うのでございます。
  7. 笹森順造

    笹森順造君 これは水産庁の問題でなくて法務省関係の問題ですから、水産庁に私は聞くことはほかにあるのです。しかし、今のことで法の解釈はどうなるかというのです。今のことは、ただし書き規定が及ばないというのですか、解散した事実があるというのですか、これははっきりしてもらわなければならないと思う。色丹漁業会の存亡に関する問題ですから、これから引き続いて参ります問題でございますので、その点を明確にしてもらいたい。もし研究が不十分ならば保留しておいてもかまいませんが、今の言葉だけは私はそのままとるわけにはいきません。
  8. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) 解散の事実も解散はたとえばこの法人構成員の決議によって解散する場合もございます。これはそういうことがなければ解散いたしません。解散ということは言えないわけでありますから、解散の事実はあり得ないわけでありますが、こういうふうに法律規定によりまして解散します場合には当然法律の定めておりまする事由がありますれば解散しておるわけでございます。解散の事実の有無ということではなしに、ただいま申しました法律の第一条第三項の本文に、もし該当するとしましたならば、この法律の、問題の法律施行の日でありますところの昭和二十四年二月十五日から八ヵ月経ちますと、当然にこれは解散いたすのでございます。解散しまして清算法人になってしまう。もっとも漁業権があればその漁業権があります間は解散しないわけでございますが、漁業権がなくなりますと、そのときに解散をするということになるわけでございます。でありますから、この漁業権が一体どうなっているかということは、むしろ法律解釈ではございますが、法務省の所管ではございませんで、水産庁の方から御答弁していただくことが適当ではないかと思うのでございます。
  9. 笹森順造

    笹森順造君 水産庁からあとでお聞きしますけれどもただし書き規定をあなたはどう解釈しておりますか。そのただし書きによって解散するかしないか、あるいはまだ色丹漁業会法人存続しているか、存続していないか、あるいはまた清算の段階に入るか入らないかきまるのですが、ただし書きがある以上はまだ生きている、こういうことを私は信ずるのですが、そうはただし書きをお考えにならぬのですか。
  10. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) ただし書きには該当しないというふうに考えております。
  11. 笹森順造

    笹森順造君 ただし書きには該当しないというのはどういうわけですか。それは私ちょっとわからない。つまりただし書き規定によってまだそれは解散していないんだと、こういうことなんですよ、よろしゅうございますか。それがただし書きなんで、あなたのお話だと、ただし書きがなくてもいいことになるんだ。もう少し研究した上でお答え願います。  それでは、なお続いて別な角度からお尋ねいたしましょう。これも法務省お尋ねいたします。昭和二十一年の一月二十九日付の総司令部覚書、すなわち若干の外郭地域を政治上、行政日本から分離することに関する覚書によりまして、北方地域それには歯舞、色丹、国後、択捉などが含まれておりますは、日本から分離されたために、同日以降日本の法令が同地域に及ばなくなったと解されておりますが、ハーグの陸戦法規第四十六条、すなわち主権の尊重の項に照らしまして、平和条約に基づかない領土変更の決定はあり得ないから、この占領地域にある主権としての財産権は消滅したとみなし得ない。財産権は凍結されておるけれども、時期がたったならば発動するものだ、こういう工合色丹漁業会の所有しておりまする漁業権というものもその範疇に属するものだと、こういう工合考え解釈せられておりますが、この点はどういう工合考えておりますか、御答弁願います。
  12. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) ちょっと私今御質問趣旨、よく聞きとれなかったのでございますが、先ほど私がお答えいたしましたように、先ほどの法律の第一条第三項の本文の問題か、ただし書きの問題か、本文のように法律施行のときから八カ月たったときに解散をするのか、あるいはなお漁業権存続しておって、このときには解散していないのかという問題、これは確かに仰せ通りいろいろ問題があると思います。解釈上も疑義が——私も決してない、非常に明白だとは申さないわけでございますが、ただかりになお漁業権存続しておると仮定いたしますと、その漁業権というのは、旧漁業法に基づく漁業権であるわけでございます。これは当然そうなると思うのでございます。ところがその旧漁業法に基づく漁業権は、これは新漁業法が判定されまして、漁業法施行法昭和二十四年法律第二百六十八号という法律があるのでございますが、この第一条の規定によりまして新漁業法施行後二年を経過したときは、旧漁業法に基づく漁業権は消滅するということになっておるわけでございます。それは新漁業法昭和二十五年三月十四日に施行されておりますから、その後二年ですから、昭和二十七年の三月十四日限りその漁業権は消滅しておるわけです。こう見なくてはいけない。従いまして、かりに一条三項のただし書きに該当して、なお漁業権存続しておる、漁業権があるので法人解散に入っていない、漁業会解散していないとかりに仮定いたしましても、漁業権が消滅しました昭和二十七年の三月十四日には解散をしておるとみるべきものではなかろうか、私どもは、こう考える次第でございます。ただしかし、この漁業会が一条三項の本文によって、法律施行のときから八ヵ月経過したときに解散したとみるか、あるいはその後さらに二年間存続しておって二年たったら解散をするのか、その点は疑問なきにしもあらずと思うのでございます。でありますから、漁業権の運命につきましては、これは主管庁であります水産庁の方で御答弁願うことの方が適当ではないか、というのが私の先ほど申し上げた趣旨でございます。
  13. 笹森順造

    笹森順造君 話は前の問題に返って、次の問題についてのお答えがないのですが、前の問題についてなおお尋ねしておきたいのですが、これは水産庁の方でもお答え願うことでしょうが、色丹漁業会漁業権を与えられたのは昭和九年です。そのときの年限は二十年です。この二十年というものは、マッカーサー・ラインがしかれて、そこに漁業権が凍結したときといいましょうか、日本行政権が及ばなくなるまでに約十一年操業しております。従って、まだ九年以上のものは権利があるわけです。新しい法律によってこの旧権利が抹殺されてしまうのかどうか。これは法的に問題を起こすとともに、政治的に大きな問題があるわけです。この政治的な大きな問題はいずれ水産庁の方にお尋ねをしなければならないわけですが、このことについて今また問題を繰り返してお答えになりましたけれども、私ども考えでは、この漁業権の発動していない期間、凍結しておる期間はこの二十年から除くべきものだという原則を私どもは持っているわけです。従ってなお九年以上ありますものが、あなたのお話では、これは新法によって二年でなくなったものだと解釈するのは法務省考え方、これは正しい考え方であるか、あるいはまたそれは今のただし書きというものをさらにじゅうりんした考えでないかということが考えられるのだが、この点はどうなりますか、年限についてお答え願います。
  14. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) 笹森委員の御意見によりますと、昭和九年に漁業権免許になった、その後二十年間、二十九年までは本来それがあるべき筋合いのものであったのだが、色丹ソ連占領されましてから事実上行政権が停止になっている、その期間は進行しない、そういう考えでございますね。そういうお考えもあるいはあり得るかと思うのでございますが、私どもとしまして、法務省の方としましては、水産業協同組合法制定に伴う水産業団体整理等に関する法律の一条三項の本文規定、あるいはただし書き規定によりましてもしただし書き規定がかり適用あるとしましても、旧漁業法に基づく漁業権というものは、新漁業法制定に伴いましてその後二年間しか存続を認められておりません限り、二年間たったら旧漁業法に基づく漁業権は、色丹等につきましても消滅すると解釈するのが正しいのではないかと考えております。
  15. 笹森順造

    笹森順造君 一応法務省のお考えはそれとして聞いておきまして、先ほどの根本の問題になりますが、占領治下において行政権の及ばない地域における私権の所在についての解釈を、もう一ぺん聞きたいと思います。後段にお尋ねしましたやつです。
  16. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) ただいまの御質問は一般的の私権財産権の問題だと思います。この点につきましては、非常にはっきりいたしておりますのは、色丹に、もとそこに住んでおりまして、その後北海道の方に移住して来られた人々の持っておられた動産類など、これはもちろんそれに対する権利が影響されないことはもちろんでございます。それから色丹不動産——土地なり建物を持っておるという所有権がある。これがソ連によって占領された、事実上こちらの行政権が停止されたということによってそういう不動産なんかの所有権は私どもは影響がない、それによって所有権を失うということはないだろうというふうに考えます。ただ漁業権というのはこれは行政官庁免許によって得られる性質のものでありますから、不動産所有権なんかとは別個に考えるべきものじゃないかというふうに考えておる次第でございます。
  17. 笹森順造

    笹森順造君 有体財産無体財産の問題について、今の不動産の問題は、今の漁業権というものはやはりここではっきりと、あるいは譲渡することに関し、あるいは抵当にすることに関しておのおの権利が与えられている、このものは違うというのはどういうことが違うのでございますか。私これはこの違いをはっきりしてもらわなければ、有体財産無体財産について違うというのはどういうことですか。それによってなくなったというのですか。違う権利があるというのですか。
  18. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) 漁業権無体財産権として、私権としての性格を持っております。従って、所有権なんかと同じように保護を受ける。たとえば漁業権が侵害されると不法行為を構成するというような点では確かに所有権なんかと共通の面がございます。ただそれが国の機関、国の免許によって得られた権利免許という、そういう行政行為によって与えられた、創設された権利でございますので、その行政権というものが停止されるということになりますと、なおそれが存続するかどうか、これは疑問であるように考えるのでございます。ただこれは漁業法解釈に関することでございます関係で、水産庁の方から御答弁されるのが適当ではないかと思う次第でございます。
  19. 笹森順造

    笹森順造君 それでは少し方角を変えて、外務関係の方からお聞きしたいと思うのでありますが、昭和二十四年の六月十四日の外務省条約局法規課から発せられておりまする達しの中に、色丹島は少なくとも平和条約において正式にその帰属が決定されるまでは法律上依然日本領土であり、日本法律、秩序が行なわれると解する云々とありまするが、この考え方はやはりこの文書の通りそのまま了解してよろしゅうございますか。外務関係からお尋ねします。
  20. 金山政英

    政府委員金山政英君) そのように考えております。
  21. 笹森順造

    笹森順造君 それではっきりいたしたわけです。  そこでもう少し詳しくお尋ねしたいのですが、色丹漁業会は、旧法によって、先ほど申しましたように、昭和九年の二月十一日から二十カ年の存続期間をもって専用漁業権第四三四四号として与えられておったものであります。そこで先ほど申しましたように、十一カ年八カ月操業が行なわれたのですけれども、マッかーサー・ラインの制定により、昭和二十年の九月以後この権利は実際に行なわれずに凍結していた。それが昭和二十七年の四月二十七日に、平和条約によってマ・ラインの制限が撤廃されましたので、それで今日までなお八カ年二十カ年に対して……、こうなっておるわけです。ところが色丹島は依然としてソ連が占拠しておりますので行政権が及んでいない。従って色丹漁業会漁業権というものが凍結されたままになっている、その周辺においては。ですから二十カ年というならば、その凍結された期間は、この色丹島並びソ連が主張するところの沿海十二海里、日本は三海里と申しますが、この間においては現に行政権が及んでいないということになっている、従ってこの色丹漁業会の持っております漁業権というものはなお八年ある、こういう工合に業界では考えている、こういうことが問題になる。ですからこの問題について、はっきりとしなければならない。そして、もしもこれが喪失するものであるということが明確に法的になっておるならば、そのこともまた明らかにして、それによって、実は政治的な取り扱いが過去においていろいろなことがあったのがその通りやられていない、未解決の問題があったので、これをどっちかをはっきりして、どっちかによってこれをどうするかということをきめなければならないから、まず根本的の問題がどうしているかということを聞いている。ですから、もしそういうことを了解した上で、法務当局お答えすることがあったらお答えしていただいて、それから進んでいきたいと思います。
  22. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) 今まで私御答弁申し上げましたことは、一応の法務省としての見解を述べた次第でございます。これはまあいろいろ問題もございます。法務省としましても、これはもう少し検討いたしたいと思いますので、確定した返答はなおこれ以上申し上げかねる次第でございます。
  23. 笹森順造

    笹森順造君 それじゃなお検討するというのですから、その点を残しておいて、いずれまた問題が起こったときに問題にさしてもらいます。  そこでお尋ね関係省にしたいのですけれども、新漁業法によって、旧漁業権を消滅されたときには、漁業権補償権を交付して補償をしておるわけであります。しかし色丹漁業会等北海道地域におけるところの漁業権は当時行政権が及ばないということで、かかる措置がとられていない、ここが問題になるわけであります。そこでこの補償なしに旧法適用新法によって効力を失ったとして、財産権を侵害することは絶対に許されないという政治的なことが出てくるわけです。従ってこの色丹漁業会というものが何ら政治的な配慮、補償権利の買収が、日本全国の他の地区において行なわれていながら行なわれていなかったということについて、ただこれが消滅したということは絶対に許されない、こういう意味で私どもはなお色丹漁業会というものは現存しているものと、こう考えておりますが、水産庁においてはどういう見解がとられるか御答弁を願います。
  24. 林田悠紀夫

    説明員林田悠紀夫君) 色丹島におきまする漁業権につきましては、先ほどお話がございましたように、専用漁業権特別漁業権があったわけでございます。それでその漁業権につきまして、私たちの方の効力に関する解釈といたしましては、法制局とも見解を一にいたしまして、旧漁業法ソ連軍占領と同時にストップされまして、色丹島にはわが国施政権が及びませんので、新漁業法も、それから新法施行法適用されていないという解釈をいたしております。
  25. 笹森順造

    笹森順造君 私の聞いておりますのは、色丹漁業会というものが法人として存在するものとして水産庁において取り扱われておるかどうかということです。
  26. 林田悠紀夫

    説明員林田悠紀夫君) 色丹漁業会につきましては、先ほど法務省からも答弁がありましたように、水産業協同組合法制定に伴う水産業団体整理等に関する法律の第一条第三項によりまして解散されまして、現在は清算法人としてあるというふうに解釈をいたしておるのであります。それで漁業権がある漁業会につきましては、直ちに解散せずに二年間は存続するというふうなただし書きがあるわけでございまするが、これはやはり漁業権が停止されてしまったということによりまして適用されないのじゃないかというふうな考え方をいたしております。
  27. 笹森順造

    笹森順造君 それでは最後のことについて適用されないじゃないかということは、漁業会というものはまだ生きておるとこういうことでございますか、お尋ねいたします。
  28. 林田悠紀夫

    説明員林田悠紀夫君) 仰せ通り清算法人として生きておるというふうに解釈をいたしております。
  29. 笹森順造

    笹森順造君 清算法人としてあるということは、まだ清算するために、まだ前の漁業権というものを所有しておるところの団体として、清算団体としての清算の段階に入っておる、つまり清算の段階に入っておるが漁業権は持っている、こう解釈でよろしいのですか。
  30. 林田悠紀夫

    説明員林田悠紀夫君) 漁業会のやっておりまする仕事は、もちろん漁業権管理ということが主になっておるわけですが、そのほかにもいろいろ事業をやっておるわけでございまして、それで漁業権はやはり先ほど申しましたように、占領によりまして行政権が及ばなくなってしまってストップされておるというふうに解せられまするので、漁業権はもうここでは持っていないのだというふうな解釈にならざるを得ないということであります。
  31. 笹森順造

    笹森順造君 くどいようですけれども、そこをはっきりしておく必要があるのです。現に漁業権を持っておりました地域行政権が及ばなかった時代があったのですけれども、新しい法によってそれがまた行政権が及ぶという状況になっておるところの海域があるわけです。その海域において、現に水産庁あるいは北海道関係漁業会でその操業が許されておる。従ってその二十年という期間の中に行政権が解除されて許されておるものがあるわけなんです。そうしておいて今の話だと全然操業ができなくなって行政権が及ばないということだけをお話になりましても、実は年限の中においても、いかに譲りましても一年あるいはそれ以上、この範囲内で権利を持っておりまする期間においてすでに操業を許可されておるわけで、その海域は日本行政権が及ぶ海域なんです。もっとはっきり申し上げますと、これはよく、皆様方によくお考え願いたいのですけれども色丹の、一番先に申しましたように、距岸三万メートルに及ぶ海域においてこの最初の漁業権というものは設定されたのです。そこで色丹島ソ連がまだ占領しておる。ソ連は十二海里距岸を自分の行政権の範囲としている。ところが三万メートルでありますから、これはまあまるいところじゃなくて、大体四海里内外の環状線の格好においてそこで現に操業が許されて行なわれているのです。この海域が色丹漁業会の専用の海域、しかもそれは一年限がまだある海域なんです。でありますから、今のあなたのお話でもまだ違うわけなんです。この点について、もしそういう現実の事実があるならば、あなたのお話はお取り消し願わなければならぬということになるのですが、その点いかがでございますか。
  32. 林田悠紀夫

    説明員林田悠紀夫君) 仰せのように、色丹島専用漁業権は距岸三万メーターについて付与されておるわけであります。三万メーターと申しますると、大体十八海里ぐらいになるわけでありまして、ソ連が十二海里ということの領海を考えますれば、あと六海里はこれは残っておるということが言えると存じます。しかしながら、専用漁業権と申しまするのは実は距岸から三万メーターのところを一体として使えるという漁業権でありまして、その残りの六海里の部面だけが独立して存在しておる漁業権というふうにも解せられないのじゃないかと存じます。なおこれは最終的にどうかということは、まだ詰めていない次第でございますが、そういうふうに専用漁業権の性質からいたしまして、それだけが独立に存しておるというものじゃないというふうなように考えられますので、必ずしも十二海里以遠のところだけを別個に取り扱うということはできないのじゃないかというふうに存ずる次第であります。
  33. 笹森順造

    笹森順造君 私はそこで、話がそこまで進んでいくとよいと思うのですが、別個に取り扱うと言っているのじゃない。最終段階において色丹日本の領土なんです。ですから、いずれ日本に返るものとしてわれわれ補賞しておるし、またそれを期待しておる。そうなりますると、全部、全域これが回復するわけなんです。ところが取りあえず今のお話のように、六海里ではない、あるところは六海里にいきますけれども、これはまるくないので、色丹はちょうどまるくないので、こう角度を持っておりますから、多角形になっておりますから、あるところは四海里、あるところは六海里のところもある。でありまするから、その部分だけが独立して存在すると、私は申し上げているのじゃない。その部分がすでに解除されているのじゃないかと、現に行なわれているのじゃないかと、だから今のあなたの最後のお話は、まだ考える余裕があるので、そう決定的な問題でなくて、今後研究すべき余裕が十分あるのじゃないか、こういうことなんです。そうなりまして、初めて今の色丹漁業会漁業権というものの性質というもの、あるいはこれに対する補償という問題もまた考えられると、こういうことなんです。ですから、全部否定するということを考えずに、もっと漁民に対して親切に積極的に日本の水産業というものの保護なり、あるいはまた育成なり振興なりということを頭に置いて一つ答弁してもらいたい。何かこう責められたような感じがして、防御するような話ばかりのことになるのじゃなくて、もっと積極的に一つ考えて親切な御答弁を願いたいと思うのです。
  34. 苫米地英俊

    苫米地英俊君 私、前から関心を持っておった問題で、注意して聞いておったのですが、どうも政府答弁がおかしく聞こえるのです。歯舞、色丹には日本行政権が及ばないからということを一方で言っておるのです。ところが漁業権の新しい法律が発効して、その賠償を日本国内ではやっておるけれども行政権が及ばないというところで、新しい法に従わせるということでは行政権が及んでいるのですよ。そうして賠償しないというなら、行政権の及ばないところだから賠償しない、これは明らかに矛盾だと思うのです。  それからもう一つ、歯舞色丹から本土へ引き揚げた人々は外地の引揚者として取り扱っているのです。あそこは外地じゃなかったはずなんですよ。だから、そうやっていろいろつっついてみるというと、どうも政府の間に統一がなくて、そのときそのときで場当りでやってきたような気がするのですよ。その場当り政策の結果が、もとそこに在住して生活をしておった人に対する何ら考慮が払われておらない、政府の都合で場当りのことをやってきたその一つの現われだと思うのですが、この点について政府のお考えをお聞きしたいと思います。  一つは、政府の都合のいいところでは行政権が及んでいる、都合の悪いところでは行政権が及んでいないからという、こういう二つの解釈がどうして生まれてきたかというのです。
  35. 山内一夫

    政府委員(山内一夫君) この問題、実は検討申し上げると、なかなか複雑な問題でございますが、笹森委員の御質問があるということを四、五日前に伺いましたので、各省集まって相談した結果にわたりますが、私法制局といたしましては、歯舞、色丹に対するところの施政権というのは、先ほど笹森先生おっしゃいました通りに、一九四六年一月二十九日の覚書によりまして、一応日本の本来の施政権から分離されたという実情があるわけであります。そこでこの施政権が分離されたということは、日本政府が属地的管轄権を歯舞、色丹に対しては持たないという事態になったと思うのです。こういう事態は沖縄、小笠原についても、平和条約の発効後の状態を考えますと、今の小笠原、沖縄と同じ事態になるわけでございます。その施政権が分離され、そうしてこの施政権ソ連の行使するところとなりましたその事態と申しまするのは、先ほど笠森先生のおっしゃいました、ハーグの陸戦法規が予想していないところの一つの占領行政の形態がそこにでき上ったというふうに私ども考えるわけであります。これは大体におきまして学者あたりもそういうふうに考えておられるというふうに思っているわけでございます。  そこで、この施政権が及ばなかったのが、ここにソ連施政権が入ってきたという事態におきましては、わが法令の属地的効力が及ばなくなった、こういうふうに私ども解釈いたすわけであります。従いまして、旧漁業法漁業権に関する規定は、歯舞、色丹に及ばないということになった、こういうふうに解釈いたします。漁業権は物権としての取り扱いを受けておりますし、物権としての法規というものはわれわれは属地法と、こういうふうに理解するからであります。そこで歯舞、色丹におられた漁民の方々には非常にお気の毒ではございますが、そこで一応漁業権は消滅したと、かように考えるわけであります。  そこで領海の存在がどうなるかということは、もう一つ別の問題として残りますが、私どもは最終的に歯舞、色丹日本の施政下に復するということになった場合にはどうなるかという問題はあるわけでございますが、これは、御承知のように、日ソ共同宣言で、日本政府ソ連政府との間に平和条約ができたときには引き渡す、トランスフアーするということになる。ですから、引き渡される可能性を持っておるわけであります。しかも、われわれ政府としては領土権を持っていると考える。そのときには、歯舞色丹漁業権がどうなるかということになりまするが、私の考え方としましては、占領から引き渡しの間に、ソ連行政が行なわれている、この時間的な一種の空白のあとに、しからば占領の当初にわれわれがなくなったと解釈しているところの漁業会漁業権というものは、そこでもってなくなった、完全になくなったというふうに取り扱っていいかと申しますと、私はこれは条理の問題でございますが、そうではないというふうに思うわけでございます。引き渡されたときに、日本施政権がずっと入っていく際に、引き渡しについて奄美大島等が復帰したと同じように、経過法がおそらく法として要ると思いますが、その際には、かつて昭和九年にあった漁業権というものの存在が昭和二十一年になくなった、この事態を考えながら、その空白期間は、やはりそこに眠っていたという理解のもとに、そこに復活して考えていくべきものであろうというふうに一応思うわけでございます。ただ、その漁業権のあり方につきましては、旧漁業法と新漁業法考え方が違っております。それと同時に、漁業会というのは、実を申しますと戦時中の組織でございます。その後水産業協同組合法ができまして、新しい組織も生まれております。そして新しい漁業法にのっとった漁業権を、そこに歯舞、色丹等にも付与すべきである。しかし、そこで、もと持っておられた、漁業会を構成していらっしゃるところの方々が、その漁業権の本質的な担い手だと思いますが、そこに一つの補償をして、そうして新らしい漁業権制度を打ち立てていくというふうに考える。つまり、歯舞、色丹等が引き渡されたときに、そのときに新漁業法施行するというような考え方で、文字通りには施行されませんけれども、その時間的空白がございますから、ある種の修正と申しますか、モディフィケーションが必要だと思いますが、そこで、引き渡されたときに、新漁業法施行する、こういうふうな形で進む、そういうふうな形で経過法を作っていくというふうに考えるべきじゃないか。そういう意味において、私どもは、占領の当時あった漁業権というものを、一応今はないと思っておりまするが、それは全然ないわけではなくて、復活の可能性のある漁業権として理解すべきではないか。ただ、今現在においては、漁業権というものはないものである、こういうふうに思うわけでございます。  そこで、漁業会の存在がどうなるかということでございまするが、これは民事局長が御説明になりましたように、私どもとしては、一応先ほど民事局長お述べになった条文に該当して、一応あそこで清算法人になったというふうに考えるのが当然ではないか、かように考えるのであります。それなら片一方においては施政権がないといい、片一方においては、漁業会に関する法令ではあるかのごとく答弁しておるのではないかというふうな御疑念もございましたが、それはたしかにそういう御印象をお受けになるのはもっともと思いますが、私どもは一応漁業会に関する法律というのは、漁業会という法人に関する法律でございますから、そこは属人法として理解しまして色丹に設立された漁業会もそういう意味においては一応は法人格を持ち得る。ただ清算法人として現在のところは存在しているのじゃないか、こういうふうに理解するわけです。お答えになるかどうかしりませんが…。
  36. 苫米地英俊

    苫米地英俊君 もう一つ。先ほどの政府の御答弁からみると、だいぶ進歩した御答弁であるように考えられます。その点は了承いたしますけれども、この施政権は及ばないといっておきながら、新漁業法施政権の及ばないところまでいく、それは属人法だからという、これだけで、そういう理屈だけで、あそこにおった人間が現在あの通り苦しんでおるのを、そういうことをやっていくことが賢明かどうか、これは政治問題になりますけれども、私はむしろ占領されておって施政権が及ばないから新しい漁業法適用はされないのだ、こういうふうに言う方が正しいのじゃないか、私はこう考えるのです。ところが新しい漁業権については属人法だからして及ぶのだ、そして向こうから引き揚げて来るのは外地人だ、外地人待遇をする。だからそれ以上救済の道はないのだ。これははなはだ了解のできない。政治というものは、そういうような自分たちでこしらえた勝手な法律を勝手に解釈してそれで済むものかどうか、私は非常に疑問に思います。しかしこれ以上私の、関連質問としては、立ち入るべきではないと思いますから、この辺でやめます。けれども、決して了承しておらないということだけは御了承願います。
  37. 笹森順造

    笹森順造君 今の苫米地さんのは非常に重要な問題であると思う。一つは水産庁のさっきの答弁ですが、今の見解では、新漁業法並びに新漁業法施行法昭和二十四年のものは適用されないのだ、そうしていながら一方では水産業協同組合法制定に伴う水産業団体整理等に関する法律本文の一部だけ適用される、そうして漁業会解散されたというのは、一つの方だけが適用されて、一つの方は適用されないのだと、これは非常な矛盾がある。そういうことをもう少し研究してもらいたい、こう思います。  それからもう一つ、苫米地さんの御発言に非常に重要な問題があるのですが、それは何であるかというと、この法の取り扱い方に関して一貫性を欠いているという政府の態度について御警告があった。私も非常にそういうことを感ずる。それはどういうことであるかというと、北方の地域国内法上、国内的に取り扱うということは、懸案であるところの領土問題が解決して完全に施政権が回復した後だとしばしば言われてきた。ところがこの前提が事実上修正されつつある、これは御承知の通りです。たとえば地方団体に対して交付すべき地方交付税のうち、普通交付税の額の算定に関する問題でも、基準財政需要額の算定方法のうち、面積に関して、根室市の面積に現在施政権の回復していない歯舞等三つの島、これを含めておる。これは同地域はいまだ施政権が回復していないけれども、いずれ回復するという予定をしておるから、回復に至るまでの一般行政費の一部として国が負担して、地方行政においては、同群島に対して根室市及び北海道にその責任を負わしている。この施政権回復前に普通交付税をもって行政の一般的な費用を国が負担したという事実は、これは領土権を主張する上から当然なことだと思う。むしろ私はこれを歓迎しておる。これは同様に歯舞ばかりでなくて、ほかの地域にも応用さるべきものである。そういうことによって初めて国後、択捉、色丹等も領土権を確保するのだ、こういう政府のはっきりした態度、これができてこなければならないと思うが、この点について、少なくとも歯舞が、あの列島が本村と併行して根室になったためにこういう措置が行なわれておる。こういうことをするのが、つまり積み重ね方式で日本の領土権というものを対外的にもこれは進めていくということが必要ではないかと思う。この点に関して、どういう工合にして、これは自治庁の問題になるかもしれませんけれども答弁する人がおられるか。おられると思うが、少なくとも外務省でもこういう点は十分考えて積み重ね方式でそういうことを考えていくことが必要ではないか。これは、外務政務次官もおられるようですから、一つ政務次官答えてもらいたいと思う。
  38. 金山政英

    政府委員金山政英君) 日ソ共同宣言におきまして、歯舞、色丹島日本に返るということが約束されております。これは共同宣言による約束でありまして、ただソ連側占領しておる、当方が領土権を主張しておるという問題とは、地域とは違った面があると思う。その法律上の見解については、私が申し上げるところではございませんけれども、それが日本の領土であるというところは、それは日ソ共同宣言の条文ともよく関連して、そのような日本の領土権を主張するような措置を国内的にもとっていくことが適当であると考えております。
  39. 笹森順造

    笹森順造君 今の答弁は、私は非常にしかるべく思うので、たまたまソ連の船によって日本の漁夫が抑留されておったときに、いろいろ質問されておるということを聞いておる。そこで日本政府が領土権を主張しておるところの島、あるいはその住民の持っておる権利に対して日本政府はいかなる措置をしたかどうか、しばしば聞かれておる。ところがその点について多くの抑留された者が、日本に有利なる、はっきりした答弁はできないということをしばしば聞いておる。この面においては、今、申し上げた積み重ね方式によってそういうことを措置する必要があると私は思う。  そこで先ほど苫米地さんがちょっと指摘されたことによって答弁がありました、この奄美大島、小笠原島に関する問題と、歯舞、色丹及び北方領域に関する問題とに政府取り扱い方の不統一がある。この点について、もう一ぺん私は警告を発しながら皆さん方のお答えをいただきたいと思う。色丹島日本の領土であるから、たとえ現在わが国施政権が行なわれておらないとしても、従来の島民の戸籍を色丹島に有するものとして取り扱っておる。で、その住所を北海道本島とするということを許すべきではないか。なお根室あたりに戸籍事務所を置いて取り扱うということは、一歩進めたことになると思う。御承知の通り昭和二十三年の九月三十日の法務庁の通達によって小笠原島の住民は東京法務局が取り扱って、内地に居住していて、本籍を小笠原に有することを認めている、同じく沖縄住民は福岡法務局が取り扱い、内地に居住して本籍を沖縄に有することを認めている。そうでありますから、これは当然日本が領土権を主張しておりまするこの少なくとも色丹島に対して、その本籍を持つということを主張する者に対しては許すべきではないか、そういうことがだんだんに積み重ねられていく一つの方法になるのではないか。他に例がある、今の小笠原のごとき、あるいは沖縄のごとき、この点に対して法務省関係の御答弁を願います。
  40. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) ただいまの笹森委員の御意見は、非常に私もごもっともであると感じます。戸籍の関係では、沖縄、小笠原につきましては、ただいま仰せ通りなんでございますが、色丹につきましては、実は北海道の方に現在は集籍をさせるという取り扱いを実はやっておるのでございまして、ああいう小笠原戸籍事務所、あるいは沖縄戸籍事務所といったようなものが色丹については実は設けられていない。その点は必ずしも私も一貫していないと思うのであります。なおよく私どもも検討いたしたいと思います。
  41. 笹森順造

    笹森順造君 今のお話ですが、昭和二十七年の四月十九日に、法務府の民事局長が地方法務局に通達を出しまして、樺太、千島は領土権がなくなるから、その住民は本国に戸籍を移せというようなことを言っております。ところが、そのときの千島というものは、色丹、歯舞、国後、択捉を含んでいなかったのである。その当時どさくさまぎれでありましたから、いろいろ明確でなかったかもしれないけれども、少なくとも、先ほど来外務省ではっきりと言っておりますように、あるいは吉田全権がサンフランシスコ条約で演説をしておりますように、これは明確にそれが含まれておらないものとしているにもかかわらず、今の法務省当局お話は、色丹島の住民も戸籍を北海道本土に集籍するようにさせているという指導は、これは誤まりだと思う。これは一貫性を欠いているということをはっきり申しておりますから、私はそれ以上追及する考えはないのですけれども、少なくとも領土権を持っているところの者が、そこに本籍を持っているという者なら、この千島の中に国後、択捉、歯舞、色丹が含まれておらないというなら、そのことは本籍を集籍させるというのではなく、むしろ、元からあるところに置くべきではないか、そうすることによって、日本の領土権を回復する上にいろいろな強い主張ができるのだ、その点を政府に対していろいろ警告みたいになってくるのですが、今必ずしも一貫性を持っていないということをおっしゃっておりますから、これ以上は私は申しません。そこで、私はここではっきりと、時間ももうあまりとりたくないですから問題を申し上げておきたいと思う。それは何であるかというと、今の漁業補償の問題であります。戦後漁業行政の改革に伴いまして、日本全国漁業権補償買い上げ措置がなされました。このときに全国で幾ら出したか、水産庁の方からお答え願います。総額は幾らであるか。
  42. 林田悠紀夫

    説明員林田悠紀夫君) 今ここに数字は持っておりませんが、大体百六十億程度であったと存じております。
  43. 笹森順造

    笹森順造君 そのうち北海道分は幾らでした。
  44. 林田悠紀夫

    説明員林田悠紀夫君) ちょっと明確に存じておりませんから、あとで申し上げます。
  45. 笹森順造

    笹森順造君 とにかく北海道を含めてこの漁業権補償買い上げ支払いがなされておって、これがなかったならば、おそらく日本全国の零細漁民は全く壊滅し去ったと思われる。ところがこれがありましたおかげで、今日隆々たる日本水産業の復活ができている、これはまずよかったと思う。ところがこの補償北方海域においては全然行なわれていない、そこでこの北方海域においてこれを行なわんとしたならば、つまりそれは行政権が及んでおらぬということでやっていなかったこの北方海域において、もしも払うとしたならば幾ら払うべきであったか、そのときに北海道の要求が幾らであったか、この点をわかっておったらここで明確にしてもらいたい、これは問題の焦点になって参ります。
  46. 林田悠紀夫

    説明員林田悠紀夫君) 北方海域につきましては、実は調査も十分できておりませんので申し上げかねるのでございますが、大体今まで北海道庁とか、あるいは現地の方々から申しておられるような金額を総合的に考えてみますると十八億程度というふうな数字が出ておりまするが、水産庁といたしましてはまだ十分調査ができていないような状況でございます。
  47. 笹森順造

    笹森順造君 今の話で大体現地の方の北方海域、そういうことが約十八億といわれておるという話でありまするが、そのうちで、そこでもしも調査がありまするならば、色丹島該当の要求額は大体どれだけになっておりますか、
  48. 林田悠紀夫

    説明員林田悠紀夫君) 色丹島につきましては三千四百万円程度が出ております。
  49. 笹森順造

    笹森順造君 私は約一億五千万という時価算定のことが出ていると聞いておりますが、その出所は、それはまだ確定したものではないのですけれども、あまり額が違うと思うのですが、それはどういう出所ですか、明らかにしておいてもらいます。
  50. 林田悠紀夫

    説明員林田悠紀夫君) これは大日本水産会におきまして現地の要望とか、調査をまとめたわけでありまするが、大体北方海域は歯舞と色丹、それから国後、択捉なんかを入れまして十三億程度になるわけでありまして、そのほかにその後の利子とかいろいろ入れて十八億というような数字になるわけであります。そのうち色丹は三千四百万程度が計上されております。
  51. 笹森順造

    笹森順造君 この問題はいずれまだ未定の問題ですから、今後いろいろと弾力性があると思うので、これ以上お尋ねいたしません。そこでもう私の質問も結論的な点についてお尋ねしたいと思うのですけれども、今まで私がお尋ねしておりまするのは、この色丹漁業会というものが旧法によってできたものが新法に移り変わって、むろん性格が変わって別のものとして存在すべきものであることは、これを私は議論しておるわけではなく当然だと思う。その経過規定においていろいろな配慮がなさるべきことはただいま申し上げましたような補償ということなしにこれはやってはいかぬ、片手落ちになってしまう。ですから、今申されましたように十八億幾らか知りませんが、それらのものがそこに与えられて初めてこの旧漁業会というものが解散されて民主的な新しい漁業協同組合というものができ上がるべきだと、こういう議論は法務局の考え方のようですが、その点については私もそう思う。その通り進めなければならぬ。ところが片手落ちになって今も全く補償も行なわれずに、しかもこのものが散してしまったというようなことであったのではこれは承服できない。そうして現に色丹漁業会が所有しているところの、有体財産であるところの建物に対しては年々数千円の固定資産税をとっている、それに対する課税の対象は依然としてその色丹漁業会が背負ってこれをやっている、政府が認めて税金だけはとっている、そうしておいてその存在は認めない、補償はしない、権利はとられてしまう、こういうことが日本の政治であってはならないと私は思う。ゆえにこの問題に対しましてはぜひ一つ今後とも十分考えて、この法律の拠点もある以上、色丹漁業会というものの存在を認めて、そうしてこれに対する必要な経過規定を十分に親切にこれは与えるということの配慮がぜひほしいものであると思う。これはここでお答え下さる方があるかどうかはわかりませんが、それもぜひすべきだ、その間はやはり当然この水産団体というものは現存いたしているのだという認識のもとにこれはとり運んでもらわなければならぬということを特に私は申し上げておきたい。それは今までの御答弁で、ここで答弁する方はおらぬかもしれないけれども、そのことを明確に申し上げて責任ある政府の、政務次官答えてもらえるかどうか知らぬけれども、そういうことをはっきりしてもらわなければならぬ。  そこで特に私が考えますのは、ソ連が近来新しい漁業国策を立てて、日本海、オホーツク海、太平洋にまで進出してきて日本の漁業に非常な脅威を与えようとしている、今もいろいろな問題が現に起こってきている、この場合に、日本の国が、日本の重要な産業の、水産業の保護と振興方策に対してよほどしっかりした覚悟を持ってもらわなければならぬ、そうして積極的に対策を講じていかなければならないと思う、そうして不当占拠をしているところのこれらの地域からは、ぜひ日本固有の領土権というものをできるだけすみやかにこれを回復して、そうして日本の国策を立ててもらわなければならぬと思う。これはもちろんこれらの問題は各省にまたがる重要な問題でありますので、一省一局では処理はできないでしょう。むしろこれは内閣に特別審議機構のようなものを設けて、とくと検討して適切な方途を立てるのが適当だと思う。こうして推進しなければならぬと思う。私はこのことを考、えて、日本の国策上ここで、総理大臣も大臣もおらぬですけれども、せめて政務次官からこの国策に対するところの確信なりあるいは将来に対するところの信念なりをお答えを願いたいと思います。
  52. 小林絹治

    政府委員小林絹治君) 漁業の問題は申すまでもなくわが国にとって最も重大な問題の一つであります。昭和十年に、今から二十五年前ですが、私が農林参与官をしておりましたそのころからこの北洋漁業の問題について非常に農林省側といたしまして外務省を鞭撻し、駐ソ日本大使にもどんどん鞭撻をして、この北洋漁業のわが国権利を擁護していく、発達せしめなければならぬという考えでわれわれ参ったのであります。その後、最近外務省におりまして、この歯舞、色丹方面からもいろいろ御陳情を伺っておりまして、当時のことを考えて実に感慨にたえない。これはどうしてもしっかりやらなくちゃならぬ、そこで私は区々たる法律解釈はよく知りません。けれども先刻からの質疑応答を承っておりまして、これはいろいろ法律上において解釈上困難なことがあれば、あるいは解釈のし方を変えていく道も絶無ではあるまいし、また必要なことがあれば立法措置に訴えてもいい。いずれにしてもこの重大な問題、ことにわが国の北洋漁業、さしあたりとしてはただいま問題になっておりますところの歯舞、色丹の漁業に従事しておられる人たちに対して政府といたしましては適当な措置をとらなくちゃいかぬということを考えます。また歯舞、色丹わが国の領土である、これに対して世界中どこも疑義を持っておる者はおらぬ、日ソ共同宣言にもあります通り、最近新安保条約の関係からかと思いますけれどもソ連からああいう覚書が来ておりました。われわれは承服しておりません。紙上御承知の通り強硬な抗議を申し込んでおります。政府もそうでありますけれども、国民も歯舞、色丹わが国の領土である。この信念をここから先もゆるめちゃならぬ。必ずわが国施政権の及ぶ土地になるという信念で進む、さしあたりの問題としましては、今申し上げましたように、政府といたしまして、できるだけ適当な措置を講ずべきであるという考えを申し上げたいと思います。
  53. 苫米地英俊

    苫米地英俊君 笹森先生から色丹のことが、戸籍などについて非常に重要に扱われておったのですが、これに補足して申し上げたいと思います。  御承知の通り、歯舞というのは北海道に歯舞という村がありまして、その村の一部分に歯舞島があるわけであります。従って戸籍は歯舞村に戸籍がある。ただ住んでおるところが歯舞島にある人が多いのであります、ところが帰れないというので戸籍を歯舞村の北海道の方に移す人、それからまた根室に移す人などがありまして、だんだん歯舞島におる住民というものがなくなってきつつあるのであります。ですから、それは先ほどのお話でもわかっておりまする通りわが国の領土だということを主張する上において非常に逆効果をきたしておると思います。ですから、法務省から前に通牒が出ておりますならば至急そうやっていただきたい。それからして国後、択捉の住民の会合がありますが、ここでもいろいろ整理を今いたしておりますが、そのときに現住所へ籍を移す、そして整理をするというような傾向が濃厚に現われておるわけであります。ですから、これらにつきましても至急一つ法務省の方で御考慮願いたいと思います。  それから、ついでですからもう一つ欧亜局長にお伺いしたいのですが、ソ連の第二回目の抗議の中に、日本が日ソ共同宣言を実施しておらないということをうたっておりますが、外務省としてはどういう点をさしているとお考えになりますか。
  54. 金山政英

    政府委員金山政英君) 第二回の覚書に対しましては、さっそく回答を出しております。われわれといたしましても、日本が日ソ共同宣言を履行していないという問題について、それが何をさして言っておるのかまことに了解に苦しむところであります。
  55. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 議事進行。あらかじめ申し出てある質問から順次取り上げていただきたいと思いますが、途中から関連質問その他で……。
  56. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 今、途中から関連があまりに密接にあったものですから…。
  57. 苫米地英俊

    苫米地英俊君 関連ですよ。そこで、この、日本が日ソ共同宣言を忠実に履行しておらないとソ連が言うており、また、日本からして外国軍隊が引き揚げなければ歯舞、色丹を返さないということを言っておるのでありますが、この問題は将来大きな紛糾を起こす種になる、足がかりになるという憂いを持っておる。足がかりにして、まず第一に日本で受けるものは、領土の不返還と漁業の制限ということになってくるだろうと思います。そこで、私はいろいろ申し上げたいのですが、簡単に関連ですから申し上げますならば、漁業問題について日本が一歩ずつ後退するということは、どこまで後退したらいいのかわからなくなってくる。結局、北洋における漁業ばかりではなしに、北海道周辺の漁業も非常に困難になってきはしないか。ソ連の大型の船が、日本北海道で唯一残されておる釧路周辺に漁に出かけてきているのが現状であります。そこで、私は、先ほどから問題になっておる引き揚げ漁民を救済するということを強く政府が推進するということ、これによって日本の領土であるということを日本国民にもソ連にも深く印象づけるように政府は考慮をめぐらしていただきたいと存ずるのであります。これは、御答弁は要りません。私の心からこいねがっておるところを申し上げて、最善の努力をお願いする次第であります。
  58. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 最近、海上保安庁が警報を出して、台湾の東方及び南方海域において大規模なアメリカの海空軍の演習が行なわれておる、そのためにこの海域を航行する船は注意を要するというような警報を出して、そのために南方漁業が壊滅的な打撃を受けつつあるということが言われておりますが、これ、もう少しこの実情を詳しく政府の方から御説明を願いたい。海上保安庁見えておりますか。
  59. 松野清秀

    説明員(松野清秀君) ただいま申されましたように、グリニッチ標準時で申しまして本年の三月十七日の十六時一分から二十七日の午前九時までの間に、台湾の東方及び南方の相当広範囲な海域におきまして、海軍、空軍による相当大規模な演習が行なわれたことは、事実でございます。で、その点に関しましては、私ども三月の十四日に航路標識告示に掲載いたしまして、一般の船舶に対して注意を喚起いたしたのでございますが、この演習に関しまして特に事故があったとかというようなことはなかったように伺っております。
  60. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そうすると、もうこの演習は完了をして、あと航行の危険その他は全部なくなったというふうに、いわば解除されたものとお考えになっているのか、その辺の事情はどうなっているのですか。
  61. 松野清秀

    説明員(松野清秀君) この演習は、もうすでに終了いたしておりまして、もう危険はないことになっております。
  62. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 今指摘された台湾の東方及び南方の海域は、御承知の通り、李ラインから追われ、さらに沖縄周辺の漁場から追われてきている南方漁場としては、唯一と言っていいぐらいに非常に重要な漁場になっているわけですが、それが今みたような演習が行なわれることによってこの漁業が壊滅的な打撃を受けているというふうに言われておりますが、その漁場の意義というか役割というか、さらには今までにどういうふうにその漁場が育成をされてきたか、その辺の事情を水産庁のほうはどういうふうにお考えになっておりますか。
  63. 林田悠紀夫

    説明員林田悠紀夫君) この海域は、カツオ、マグロ類が終年生息する海域でありまして、漁場経営上は沖縄周辺漁場と一体をなす不可分の重要漁場であります。それで、今回の演習は十日間で終了したわけでありまするが、この演習によりまして、この海域に出漁しておりました鹿児島県のカツオ、マグロ漁船数十隻が操業を中止して帰港をいたしましたし、また、出漁準備中の漁船は出漁を中止したわけであります。それで、カツオ、マグロの終年の漁場といたしまして漁業者に与えました損害は相当なものでないだろうかというふうに考えております。
  64. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そういう非常に重要な、もう唯一と言っていいぐらいの南方漁場になって、今後も育成をしていかなければならないのですが、従って、そういう所にそういう大規模な演習が行なわれるということについて、少なくとも漁業を守るという点からいえば、そういう演習が行なわれることに対して抗議をする、少なくとも今後それがひんぱんに使われるというようなことについては厳重に抗議をして漁場を守っていくということが絶対に必要だと思うんですが、水産庁はそれらの点についてどういう措置をとられたか、今後おとりになるか、さらに、外務省は、それらの点についてどういうふうにお考えになるか、その辺を御説明願いたい。
  65. 林田悠紀夫

    説明員林田悠紀夫君) 日本漁業に重大な影響を及ぼすおそれのある海域における演習につきましては、水産庁といたしましては、外務省を通じまして極力避けていただきたいと、それからまた、万一演習実施の際は、事前に漁業に影響を及ぼさないように十分配慮をしてもらいたいとか、あるいは事前に早く通知していただいて影響をできるだけ少なく防げるようにしたいというふうなことで、そのつど外務省を通じましてアメリカ軍のほうと交渉をしてもらっておるわけであります。それで、今回の台湾東方及び南方におきまする海空軍の演習につきましても、水産庁の長官から外務省のアメリカ局長にお願いいたしまして、この海域の重要性にかんがみまして、カツオ、マグロの漁業連合会とか、あるいは鹿児島県の対策協議会のほうからも陳情が参っておりまするし、操業を中止して帰ったものとか、あるいは出漁を見合わせたものにつきましてその損害額が相当なものと考えられますので、これについてアメリカ側と十分折衝をしていただく。それから今後におきまして日本漁船が常時操業しておる海域における演習は極力避けてもらうように、また万一実施の際は十分予告期間をおくとともに、単なる航行警報のみでなく、日本漁船に損害を与えることのないよう十分配慮してもらうように米側に対して折衝をしていただくというふうにお願いをしておるわけであります。
  66. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そういう水産庁長官から外務省に話されたその結果として外務省はどういう交渉をされ、その結果がどういうことになったのか、その点を詳しくお伺いしたい。
  67. 小林絹治

    政府委員小林絹治君) アメリカの軍の演習は今に始まったことでなくてもうかれこれ八、九ヵ月ぐらい前からたびたび苦情がきております。
  68. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 台湾の方もですか。
  69. 小林絹治

    政府委員小林絹治君) これは沖縄の方。
  70. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 台湾の問題です。沖縄の問題はあとから聞きます。
  71. 有田圭輔

    説明員(有田圭輔君) 台湾の演習の問題につきましては先ほど水産庁の方からお話がありましたように、ことしの三月十七日から二十七日まで行なわれたわけでございまして、すでに終了しておりますが、その後ただいま水産庁の方からお話がありましたが、これは四月一日付で、私の方に参りましたのはたしか一昨日ぐらい私の方にいただきましたが、その後、その以前からも、この演習の問題が起きましてからいろいろ陳情がありまして、まだどういうような漁場であって、どういうふうな影響があるか、詳細の資料を水産庁の方に準備していただくようにお願いしております。そこでそのような資料に基づきまして、そのような非常に影響のあるものにつきましては、アメリカ側に対しても十分な考慮をするように申し入れたいと思っておりますが、まだその段階に至っておりません。緊急準備中でございます。
  72. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 水産庁の方はそれを済んでから今のような申し入れを外務省にされたのですか。すでにこれが警報を出したのは十四日なんです。しかもこの漁場がいかに重要であるかということは今水産庁から御説明の通りでありますから、この演習が始まる前に、あるいは演習の行なわれているときにでも、少なくとも水産庁としては外務省の方にそういう申し入れがなければならない。外務省外務省としてまたそういう申し入れがあったら直ちに適当な折衝をされることが必要じゃないかと思うのですが、どうもこれまで話を聞いておりますと、いつも資料がそろわないからそろわないからといって、何らこれを取り上げて積極的に折衝することをやっておられない。特に今度の場合なんか最もひどい例です。その辺の事情はどうなっているのですか。
  73. 林田悠紀夫

    説明員林田悠紀夫君) 今回の演習は仰せのように十七日から二十七日まであったのでございますが、いつも演習のときに、損害がどういうふうにあるであろうか、損害額がどの程度の金額になるかということが問題になりまして、その調査が相当かかるというふうな状況でございまして、先般の沖縄海域の場合もそういうふうなケースがあったわけでございますが、今回におきましても、現在そういう数字を集めておるようなわけでありまして、外務省の方におきましてもやはりそういう数字によってアメリカと折衝するということにならないと十分な折衝ができないということもございまするので、なおマグロ、カツオ連合会あるいは鹿児島県と連絡をとりましてそういう数字を作成しておるような状況であります。それで外務省にお願いした公文は四月一日付でございますが、口頭ではいろいろ御連絡をとったりしてお願いをしておるようなわけですが、やはり公海中の演習でございまするから、どうしてもその損害状況ということにつきまして、しっかりしたデータをもつて折衝をしていくということが必要でありまして、おくれるというふうな事態になっておるような状況であります。
  74. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 問題がその演習がやられたためにこうむつた直接の損害が幾らであるか、その損害をどう補償するかというような具体的な問題になつてくれば、今おっしゃったような資料その他が必要だと思うのですが、しかし水産庁自身が言っておられるように、そういう直接の損害が幾らで、どうそれを補償するかという問題の前に、もっと一般的な重要な問題として、先ほどからおっしゃっておるように、南方漁場の、今いわば残された唯一の漁場になっておるんだし、李ラインから追われて多年にわたって育成してきた漁場なんです。そういう漁場において演習をすること自体がその漁場を潰滅せしめることになるので、そういう見地から非常に重要性を認めておられるんだ、だからこそ水産庁長官はそういう立場から外務省にそういう意味での意見を述べ、抗議をしてほしいというのが、今さっき言われた申し入れじゃないかと思う。それならばそういう見地に立って外務省もほんとうに日本の漁民を保護し、漁民の安全な操業を守っていこうとされるのならば、そういう見地からしかるべき折衝がアメリカ側と行なわれていいはずだと思うのですが、それを何ら取り上げておられないのか、何ら折衝しておられないのかどうか、外務省にお伺いいたします。やる一体誠意があるのですか、ないのですか。いつもあなた方は今まで資料が資料がと言ってちっともやっておられない。
  75. 小林絹治

    政府委員小林絹治君) ただいまの佐多先生の御意見の通り仰せ通りだと思います。これは役所仕事というものは、外務省に限らず、各省とも事後になってから資料が足りないとかいうようなことで、具体的に折衝ができないということも一応ありますけれども、しかし予防的にいろいろ考えておくことも最も大事なこと。ただハイ・シーズにおけるところの各国の漁業にいたしましても、その他演習にいたしましても、これは御承知の通り国際法上とがめることはできない。ただそれによってわが国の漁業が危険になる、非常な不利益を受けるということでありますから、これに対して折衝をしなければならぬ。そのカツオ、マグロ漁場につきまして従来ともそのことが七、八ヵ月も前から私の記憶ではあるのです。それで交渉をしておるのです。交渉をしておりますが、向こうでは、これは見方によれば、好意的の答えをしてきております。それはごもつともであるから、日本の漁業の損害にならないように演習をするについても十分に注意をしてやると、また魚の十分にとれるような時期をなる、へく外すようにもしよう、それから演習をする予告もわかりやすいようになるべく早くするということをまあ答えてきております。それ以上のつまり具体的に損害なら損害の問題についてはやはり現地の漁業に従事しておる人たちからこれだけの損害を受けておる、こうしてもらわにやならんというような事柄がそろうてきませんというと、外務省といたしましてこれはこういう数字になってこうなるからこうしてくれんかという話はしにくいのです。そういう材料が集まりがおそいものですから、しかし精神的の、つまり日本の漁業に損害を与えてもらっちゃ困るということで今申し上げたような交渉はいたしております。
  76. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 それは沖縄周辺の問題についての交渉だと思うのですが、それに加えてさらに一つ逃げて行ったところの台湾にまで追い打ちをかけられているというのが現在の状態なんですよ。だからそういう問題として、もしこの沖縄の問題をそういう形において単に損害の補償というような見地でなしに、ここを永久禁止区域みたいな形で、漁業の操業はもちろんのこと、航行も非常に困難なような、危険なような状態に置かれていることを解除していくことも必要でありますが、それと一体をなすものとしてさらに追い打ちをかけられた台湾周辺の、これも今後は絶対にやらないような交渉をしてもらわなければならない。そういう点に決意を持っておられるかどうか。それからそれを至急にやってもらいたいと思いますが、その辺どういうふうにお考えであるか。
  77. 小林絹治

    政府委員小林絹治君) 仰せ通りそれは当然やらなければならんことでありますから、事務当局を鞭撻いたしましてもっとすみやかに、もっと強く交渉をするようにいたしたいと私は考えます。
  78. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 それから今の御説明によりますと、十日間にわたって行なわれた演習のためにここの操業が不可能になった、たくさんの漁船が入っていたやつがみんな追っ払われて操業が不可能になった、そのためには直接の損害が相当出ていると思いますが、それは直接の損害として今後正確なる資料が出ればそれに基づいて交渉をするというふうにお考えになっておるわけですね。
  79. 小林絹治

    政府委員小林絹治君) もちろん交渉をやることになると思います。
  80. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 それから沖縄周辺の漁場の問題はもうこれは相当昨年から引き続きいろいろ問題になっておるのですが、それにもかかわらず危険区域指定はなお解除されないし、これは半永久的に危険区域として指定さをれているというような状況であるようですが、何か去年の暮れあたりの臨時国会、去年の臨時国会ですか、あたりで御説明になったところによると、いやそれは誤訳であって永久的な禁止区域ではないのだというような御説明がありましたけれども、実際の扱いはやはり現在に至るまで危険区域ということで漁業の安全操業が妨げられているという実情に置かれていると言われておりますが、この辺は折衝の経過、その後の話し合いでどういうことになっておるのですか、詳しく御説明を願いたい。
  81. 伊関佑二郎

    政府委員伊関佑二郎君) 沖縄の問題はもう長い問題でありまして昨年の夏から問題になりましてずっと折衝を続けております。この沖縄海域における演習というものはもうすでに七、八年にわたって行なわれておるのでありまして、昨年の初めあたりの沖縄からの放送でもって、永久とかいうような言葉が使われたりいたしまして、関係の漁民は非常に心配をいたしたわけであります。われわれとしましてその演習の実態が過去においてずっと続けられたものと変わったのであるかどうかという点をまず米軍に確かめたのでありますが、米側といたしましては決して変わっておらん、まあそれは演習のことでありますから、その年によって非常に演習をよけいやる場合、あるいはあまりやらんという季節的な相違はございましょうが、大体において過去七、八年に行なわれている演習と同じ形態で行なっておる、禁止区域その他の考え方制限の仕方も同じだというような返事をもらっておるわけでございまして、なお放送でもって誤解を与えた。それはその後米軍からも訂正をしておるというような実情でございます。  そういたしますと、従来問題にならなかったものがなぜ昨年から問題になったのかというふうな点につきまして、われわれは、水産庁並びに関係の組合にたびたび陳情に見えますので、その辺について具体的な資料をもらいたい。それに基づいて従来と変わっておるとか、あるいは従来と変わらんにしても、日本の漁業の観点から見て、もう少し演習のやり方を変えてもらおうというような問題もあろうと思います。そういう資料を出してほしいということをたびたび申しておるわけでありまして、これも先ほどと同じことになりますが、その資料が出て来ないというのが現状でございます。なぜ出ないかと申しますと、水産庁としましてもこれは調べておられると思います。が、やはりこの現実に現地に行ってこの漁業をやっておる人たちが資料を出さなければ、水産庁としてもそう詳しいことはわからないのではないかと思うのでありますが、出て行っている人たちにしてみますと、これは全廃してもらいたいという議論が強いのでありまして資料を出して何か調整するというのがわれわれの考え方でありますが、調整じゃないのだ、全廃だという議論がまだ強いんじゃないかと思うのでありまして、われわれのところに見えましていろいろお話しますと、それじゃ資料を出して、もう少し事態を改善するようにしてもらおうということにも賛成されるのでありますが、帰られると一向資料が出て来ないというのが今までの実情でございます。
  82. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 その資料々々と言われますが、資料は現実に行なわれた演習の結果として、操業が不可能になってそしてそれに直接に幾ら損害があったから、それをどうしろという問題の資料を出せと言われるから、漁民諸君はそういう直接の損害云々の問題ではなくて、漁場として、多年にわたって育成をした漁場が壊滅的な状態に置かれるのだから、ここを演習場としてこういうふうに頻繁に使い、しかも最近においては、ミサイル発射の演習場として使われておるというようなことで、その頻度も増しておるし、そういう意味では、もう半永久的にあそこが漁場として閉ざされると、こういうことに対してなんとしても漁業家の立場からはそれを了承するわけにいかないから、ぜひこれを解除をしてほしいというような考え方であると思うので、どうか水産庁においてもあるいは外務省においても、そういう南方漁場の重要性という問題から、こういう地域を演習地域に指定をし、半永久的に閉鎖をするということがあってはならないという態度なり立場でアメリカ側と折衝をしてもらいたい。そういうことを私たちは特に漁民の諸君の希望を考えながら希望をし要求をするわけであります。ぜひ一つそういう態度で政治的な見地に立って折衝をしていただきたいと思いますが、次官どうぞ。
  83. 小林絹治

    政府委員小林絹治君) 御趣旨よくわかりまして同感でございます。
  84. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 同感である旨を政治的に御答弁になりましたから、事務当局はそういう意を体して今後早急に折衝をしていただきたいし、それからそのために必要な具体的な資料であるならば、親切に、たとえば演習の状況なり何なり具体的なものを、こういうものを出せということを親切に一つ水産庁その他からも指示をして必要な資料は資料として集めながら、今の高い政治的な見地からの折衝を積極的に進められるように特に要望をして、私の質問を終わります。
  85. 森元治郎

    ○森元治郎君 きょうは農林大臣の御出席をお願いしたのですが来られないので、この次は七日の木曜、そのときにぜひ一つおいでを願って、モスクアに行かれる前に国民に決心、態度のほどを明らかにしてもらいたいと思うので、特に委員長から御出席を要求してもらいたい。
  86. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 承知しました。  他に御質疑がなければ、本日はこの程度で散会いたしたいと思います。    午後零時三十一分散会