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国務大臣(
楢橋渡君) ただいま議題となりました
航空法の一部を改正する
法律案の提案理由につきまして御
説明申し上げます。
御承知の
通り、最近におけるわが国の
民間航空の発展は、まことに目ざましいものがありまして、特にこの一、二年の間においては、
ジェット機等の大型高速機の就航を見るに至り質的にも量的にも、今や
航空界は画期的な発展段階に入ろうとしております。
このような
航空の発展に即応して、
航空の安全を確保し、
航空輸送の秩序を確保するためには、
飛行場周辺の安全表面の確保、
航空交通管制の整備、
航空機検査制度の合理化、
航空運送事業に関する規制の再検討等が必要であります。このため現行の
航空法に所要の改正を加えたいというのがこの
法律案を提案する理由であります。
次に、この
法律案によります主要な改正点につきまして御
説明申し上げます。
まず第一は、最近における
航空機及び装備品の整備能力及び改造能力の著しい向上に対応し、あわせて海外における検査制度の合理的運用をはかるため、
航空機及び装備品の検査制度に関する規定を改正したことであります。すなわち、
運輸大臣におきまして、
航空機または装備品の整備または改造を行なう事業者についてその能力の認定を行なうこととし、認定を受けた者がした
航空機または装備品の修理または改造につきましては、
航空機の修理改造検査または装備品の予備品証明のための検査を省略することができることとする等の改正をいたしまして、
航空機及び装備品の整備または改造に関する検査制度の合理化をはかったことであります。
第二は、最近における
ジェット機等の高速大型機の就航、計器
着陸誘導装置の発達等の
事情に対処し、
航空機の航行の安全を確保するため、
飛行場周辺における高層建築物等の設置の制限等に関する規定を改正したことであります。
その一は、
公共の用に供する
飛行場について、水平表面の上に出る物件の設置を制限することといたしまして、
航空機の
離陸及び
着陸の安全の確保をはかったことであります。
その二は、第一種
空港及び政令で定める第二種
空港について新たに延長進入表面、円錐表面または外側水平表面という安全表面を設定することとし、これらの表面の上に出る物件の設置を制限することといたしまして、計器
着陸誘導装置による
航空機の精密進入の安全の確保及び高速大型機の
離陸または
着陸のために必要な飛行の経路の確保をはかったことであります。
その三は、地表または水面から六十メートル以上の高さの物件につきましては、当該物件の設置者が
航空障害燈を設置しなければならないこととするなど、
航空障害燈に関する規定の適正化をはかったことであります。
その四は、昼間においても
航空機からの識別が困難である煙突、鉄塔その他の
運輸省令で定める物件につきましては、昼間障害標識を設置しなければならないことといたしまして、これらの物件と
航空機との
衝突の防止をはかったことであります。
第三は、最近における
航空交通量の増大、ことに
ジェット機等の高速機の運航が著しく増加して参りました
事情に対処し、
航空交通管制に関する制度を整備するため、これに関する規定を改正したことであります。
その一は、
ジェット機等の高速大型機が常時航行する空域における
航空交通の安全を確保するため、
運輸大臣が指定する一定の空域を飛行する
航空機は、必ず計器飛行方式に従って飛行しなければならないこととするなど
航空交通管制に関する規定を整備したことであります。
その二は、
航空交通管制制度の合理的運用をはかるため、
自衛隊の
使用する
飛行場のうち政令で定めるものにつきましては、これに関する
航空交通管制業務を
防衛庁長官に委任して行なわせることとしたことでありますが、もちろん、この場合におきましても
航空交通管制の一元的運用をはかる必要がありますので、
運輸大臣において、
防衛庁長官の行なう当該
業務を統制することにいたしております。
第四に、
航空運送事業の健全な発達を促進するため、利用
航空運送事業に関する規定を創設したことであります。すなわち、近時
航空機による貨物輸送の著しい発展に伴ない、鉄道における通運業のように、
航空運送事業者以外の者で、みずから荷主と運送契約を行ない、
航空運送事業者を下請として利用して貨物の運送をする業態が出現して参りましたが、これを利用
航空運送事業として免許の対象とすることにより、
航空運送事業の秩序の確保をはかったのであります。
最後に、
航空機に関する爆発物
事故の防止のために、爆発物と疑うに足りる物件について
航空運送事業者にその
航空機からの取りおろしの権限を付与するなど、
航空機の運航の安全に関する規定を整備いたしますとともに、
航空従事者の
業務範囲について、その適正化をはかり、検査手数料等の手数料に関する規定を整備する等、所要の改正を加えた次第であります。
以上がこの
法律案を提案する理由であります。
何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。