○
国務大臣(
楢橋渡君)
昭和三十五年度の
運輸省関係予算について御
説明申し上げます。
初めに、今回の
予算の
規模につきまして申し上げたいと存じます。
まず、
一般会計予算について申し上げますと、
歳入予算総額は十六億六千四百八十六万五千円、
歳出予算総額は四百五十二億五千八百八十五万九千円であります。今、三十五年度
歳出予算総額を前年度に比較いたしますと、八十四億三千百三十二万三千円の
増額であり、二三%という顕著な
増加率を示しております。さらに、
政府全体の
歳出予算規模中における当
省関係予算の比重を見ますと、三十五年度は二・九%を占め、前年度に比較して〇・四%の
増加を示しており、
わが国財政中における当
省関係予算の占めます地位が漸次
向上しつつあることを示すものと存じます。
歳出予算増加額の内訳を申しますと、
行政部費系統におきまして二十九億九千八百六十九万六千円の
増額であり、
公共事業費系統におきまして五十四億三千二百六十二万七千円の
増額となっておりますが、このうちには、両
系統を通じ
定員二百八十一人の
純増が含まれております。なお、今申し上げました
歳出予算のうちには、
北海道港湾事業費等、
他省所管の
予算四十九億四千五百九十五万一千円が含まれております。
次に、
特別会計の
予算について申し上げますと、木船再
保険特別会計の
歳入歳出予定額は前年度より若干
増額されて二億八千二百七万三千円となり、
自動車損害賠償責任再
保険特別会計の
歳入歳出予定額は、
付保自動車両数の
増加と
保険料率の改訂に対応し、
定員十二人の
増加分を含め、前年度に対して約十億円が
増額された結果、四十億三千四百五十九万二千円となり、また、三十四年度より
設置された
特定港湾施設工事特別会計の
歳入歳出予定額は、
事業量の
増大に伴い、
定員七十四人の
増加分を含め、前年度に対して約十七億円が
増額された結果、九十五億九百七十万一千円となっております。なお、このほか、三十五年度
財政融資計画中には、
運輸省関係分として約二百二十五億円が
予定されております。
以上をもちまして、
予算の
規模についての御
説明を終わり、次に、三十五年度の
運輸省関係予算の
重点事項についての御
説明に移りたいと存じます。
御
承知の
通り、三十五年度における
経済運営の
基本的態度といたしましては、高水準に達した三十四年度
経済のあとを受け、
世界経済の動向に即しながら、さらに着実な
安定成長の実現をはかりますことを目標とし、
経済の
体質改善に
施策の
重点を指向し、
日本経済の
長期的発展の
基盤の充実に努めることにいたしております。
当省におきましても、この
趣旨に従い、
経済発展については
輸送力がむしろ先駆となるべきものと判断し、
港湾等、
交通基礎施設の
整備を推進することによりまして、
産業基盤を
強化するとともに、
国土保全対策の
一環となし、また、
海運、
航空及び
観光による
貿易外輸出の
振興をはかることによりまして、
国際収支の
改善に資する
所存であります。
以上の
趣旨によりまして、今回の
予算におきましては、
経済発展に先行する
輸送力の
整備増強、
国際収支の
改善に寄与する
貿易外輸出の
振興、
国民福祉向上のための
交通安全の
確保、
災害の
防除及び
海上治安の
確保並びに
運輸関係科学技術の
振興等の諸
施策に
重点を置き、これらを積極的に推進することにいたしております。
以下、
重点施策別に要旨を御
説明したいと存じます。
まず、
輸送力の
増強に必要な
経費についてでありますが、その
歳出予算総額は二百十二億九千七百二十万一千円であり、このほかに
財政融資として六十億円を
予定しております。
このうちおもな
事項といたしましては、第一に、
特定港湾施設工事特別会計による
港湾の
整備に必要な
経費として、
一般会計よりの繰入金を四十二億二千百七十万円計上しておりますが、これを前年度に比較しますと、十二億二千七百九十万円の
増額となっております。本
特別会計の
事業としましては、
歳入歳出予定額九十五億九百七十万一千円の
規模をもちまして、
輸出港湾として
横浜港外五港及び一
航路、
石油港湾として
千葉港外一港、
鉄鋼港湾として
室蘭港外九港、
石炭港湾として
苫小牧港外八港について、
港湾施設の
緊急整備を行ないますとともに、
伊勢湾台風の被害にかんがみ、
名古屋港外一港について
伊勢湾高潮対策事業を行なう
予定であります。
第二に、
一般会計による
港湾の
整備に必要な
経費として百六十三億一千七十七万三千円を計上しておりますが、これを前年度に比較しますと三十八億一千二百六十五万四千円の
増額となっております。これによりまして、三十五年度は、前年度に引き続き
特定重要港湾等、
主要港湾の
整備を強力に推進いたしますが、これとともに、今回は特に
国土保全対策の
一環として
海岸保全対策、
伊勢湾高潮対策、
地盤沈下対策、
災害復旧対策等の諸
事業を飛躍的に
強化するために必要な
経費として六十億四千六十万円を
予定しております。
以上申し上げました
通り、三十五年度における
港湾関係予算は、
一般会計と
特別会計とを通じ
国庫負担として、前年度に比較して五十億四千五十五万四千円の
純増を
予定しておりますので、これによる
事業量の急速な
増加に対処するとともに、
台風防災体制を
整備しますため、本省に
防災課と
臨時港湾調査設計室とを
新設することにいたしております。
第三に、
国内旅客船公団の
強化に必要な
経費として、
大蔵省所管産業投資特別会計中に二億円を計上するとともに、
資金運用部資金よりの
融資五億円を
予定しております。これにより、三十四年度に
新設された
公団の
業務運営の
円滑化をはかり、三十五年度は約五十隻、四千六百総
トン程度の
建改造を進める
予定であります。
第四に、
国内空港の
整備に必要な
経費として五億二千五百万円を計上しておりますが、これを前年度に比較すると八千三百六十七万五千円の
増額となっております。これによりまして、
既定空港としては
広島空港外九
空港の
整備を続行しますとともに、
新規空港としては
名古屋外三
空港の
整備に着手し、また、
新潟外一
空港の
災害復旧を行なう
予定であります。
次に、
貿易外輸出の
振興に必要な
経費についてでありますが、その
歳出予算総額は三十八億三千三百九十七万四千円であり、このほかに
財政融資として約百六十五億円を
予定しております。
このうち、おもな
事項といたしましては、第五に、
外航船舶の
建造及び
主機換装に必要な
資金として、
開発銀行よりの
融資百四十五億円を
予定しております。これによりまして、三十五年度においては特に
海運企業基盤の
強化に留意しつつ、拡大する
わが国の
貿易規模に即応した
外航船腹の
整備をはかる
予定であります。
第六に、
外航船舶建造融資利子補給に必要な
経費として九億五千四百二十七万円を計上しております。本
制度は二十八年に制定された
外航船舶建造融資利子補給及び
損失補償法に基づくものでありますが、三十二年度からは諸般の
事情により
実施を停止して参ったものであります。本
制度は、
外航船舶建造資金を融通する
市中金融機関に対する
利子補給を行なうことによりまして、
海運企業の
金利負担を軽減し、
海運企業の
基盤を
強化しますとともに、これに
国際競争力を賦与しようとするものでありますが、今回は
企業の
合理化を前提としてこれを支給する
予定であります。なお、
契約限度額としては二十七億四千百四十八万五千円を計上しております。
第七に、三
国間輸送の
拡充に必要な
経費として、三
国間輸送助成金に六億九千万円、
船員海外厚生施設整備費補助金に一千万円、計七億円を計上しておりますが、これを前年度に比較しますと、二億円の
増額となっております。これによりまして、前年度に引き続き三
国間輸送を促進し、
国際収支の
改善をはかるとともに、近海における
過当競争の排除にも資したいと存じます。
第八に、
移住船の
運航費補助に必要な
経費として七千七百八十一万六千円を計上しております。前年度においては
外務省所管に計上したのでありますが、今回これを千五百二十五万六千円
増額し、
運輸省所管の
運航補助に切りかえたものであります。
題九に、
国際航空事業に対する
出資として、
大蔵省所管産業投資特別会計中に五億円を計上しております。
日本航空株式会社は三十五年度以降、
新規路線の開拓及び
既設路線の
ジェット機化等の推進により、
国際競争力の
強化を企図しておりますが、このための
ジェット機の
追加購入等に対し三十五年度に必要な
資金の一部に充当させるため、前年度と同額の
政府出資を行なうものであります。なお、これとともに、同社の発行する社債については、二十億円を
限度として
債務保証を行なうことにしております。
第十に、
国際空港の
整備に必要な
経費として十三億一千九百万円を計上しておりますが、これを前年度に比較すると二億九千八百二十万七千円の
増額となっております。このうち
東京国際空港につきましては、十一億一千九百万円を計上しており、三十五年度においては
滑走路の
新設等に着手し、
航空交通量の
増大と
大型ジェット化への
移行の
趨勢に対処する
予定であります。また、大阪
国際空港につきましては二億円を計上しており、三十五年度においては
滑走路の
新設に着手し、
東南アジア方面べの
国際航空路線の
空港として
整備しようとするものであります。
第十一に、
日本観光協会の
補助に必要な
経費として二億一千三百四十万円を計上しておりますが、これを前年度に比較しますと、千三百四十万円の
増額となっております。
これによりまして、三十四年に
特殊法人に切りかえられた
日本観光協会の
海外観光宣伝活動を
整備充実いたし、三十五年度においては、シカゴに
海外事務所を
新設しますとともに、
海外宣伝資料作製費を
増額し、
海外観光客の
積極的誘致を推進する
所存であります。
第十二に、
ユースホステルの
整備に必要な
経費として、
地方公共団体の
ユースホステル整備費補助金に四千七百五十万円、
新規に
国立ユースホステル・
センター建設費に二千万円、計六千七百五十万円を計上しております。これによりまして、
地方公共団体の
設置する
ユースホステルを前年度に引き続き
整備しますとともに、
国内及び
国際ユースホステル大会の開催、
内外青少年の
交歓等の場とするため、
新規に
国立ユースホステル・
センターを大津市に建設する
予定であります。
次に、
交通安全の
確保、
災害防除及び
海上治安の
確保に必要な
経費についてでありますが、その
歳出予算総額は二十六億三千七百六十三万二千円であります。なお、この金額には、さきに申し上げた
国土保全対策の
一環としての
港湾における
災害防除関係の
経費は含まれておりません。このうち、おもな
事項といたしましては、第十三に、
航路標識の
整備に必要な
経費として六億五千万円を計上しておりますが、これを前年度に比較しますと、一億四千万円の
増額となっております。これによりまして、三十五年度は前年度に引き続き、
航路標識の新営を
改良改修との両面において、その
整備を促進する
予定であります。
第十四に、
海上警備救難体制の
整備に必要な
経費として四億九千八百三十七万七千円を計上しておりますが、これを前年度に比較すると一億六千二十四万五千円の
増額となっております。これによりまして、三十五年度は
老朽巡視船艇を三隻
代替建造しますとともに、
警備救難用航空機を一機追加し、また、
老朽通信施設の
改良改修を続行する
予定であります。
第十五に、
自動車輸送秩序の
確立及び
事故防止に必要な
経費として二億三千三百八十六万三千円を計上しておりますが、これを前年度に比較しますと、三千九百二十九万七千円の
増額となっております。これによりまして、激増の一途をたどる
自動車両数に対応し、
検査登録要員の
確保をはかりますとともに、
東京外一カ所に
車両検査場を
新設する等、
車両検査場施設の
増強によりまして
検査登録機能の
強化をはかる
予定であります。また、これとともに、
街頭監査及び
既存事業者の
監査を
強化することによりまして、
違法行為の絶滅を期し、
自動車輸送秩序の
確立に努める
所存であります。
第十六に、
航空交通管制業務及び
航空保安施設の
整備に必要な
経費として、二億八千七百五十一万八千円を計上しておりますが、これを前年度に比較しますと、一億三千四百二万二千円の
増額となっております。これによりまして、三十四年度に
日本側に移管された
航空交通管制業務について
自主的運営体制を
確立しますとともに、
ジェット機時代への
移行の
趨勢に対処して高々
度管制用無線施設を
整備し、また
航空保安施設の
飛行検査を自主的に
実施するため、
検査用航空機を一機購入する
予定であります。
第十七に、
基礎的気象業務の
整備に必要な
経費として、四億五千九百七万円を計上しておりますが、これを前年度に比較しますと一億二千五百四万二千円の
増額となっております。これによりまして、三十五年度は前年度に引き続き
無線模写放送を初めとする
気象通信の
整備拡充を行なうことによって、
予報精度の
向上をはかりますとともに、
名古屋の
気象用レーダーの
新設、
気象庁本庁舎の新
営続行等により
基礎的気象業務体制の
整備を促進する
予定であります。なお、これとともに、
気象業務の
国際性にかんがみまして、
東京、
ホノルル間等の
国際通信施設を
整備し、
気象資料の
国際交換体制をも
整備する
予定であります。
第十八に、
防災気象業務の
整備に必要な
経費として三億五千四十五万一千円を計上しておりますが、これを前年度に比較しますと三千九百六十二万円の
増額となっております。これによりまして、前年度に引き続き水理水害関係の
気象業務を
整備しますとともに、
空港整備の進捗
状況に対応して
航空気象業務を
整備し、また、前年度より着手した農業
気象業務につきましては、前年度に比較して二千九百三十二万九千円を
増額し、福島県の残部及び山形県の一部に対し
新規に
実施する
予定であります。なお、これとともに、
伊勢湾台風の経験にかんがみまして、
新規に防災気象官
制度を
設置し、
防災気象業務の指導を
強化する
予定であります。
最後に、
運輸関係科学技術の
振興に必要な
経費についてでありますが、その
歳出予算総額は三億六千四百四十七万三千円であります。
このうちおもな
事項といたしましては、第十九に、原子力船の開発及び原子力の平和利用に必要な
経費として八千八百九十四万円を計上しておりますが、これを前年度に比較しますと、二千四百二十五万二千円の
増額となっております。本
予算のほとんどは一応総理府所管となっおりますが、これにより三十五年度は、世界の動向に対応して、原子力船の開発に関する研究、原子力の平和利用に関する研究並びに放射能汚染の実態
調査を促進する
予定であります。
第二十に、運輸機関の高速化及び近代化に関する研究に必要な
経費として、科学技術試験研究
補助金が四千五百七十八万九千円、運輸技術研究所、その他直轄研究機関の
経費が二億二千九百七十四万四千円、計、二億七千五百五十三万三千円を計上しておりますが、これを前年度に比較しますと六千三百五十三万五千円の
増額となっております。これによりまして、三十五年度は運輸技術研究所、気象研究所及び海上保安庁水路部の研究業務を
拡充強化しますとともに、研究
補助金を適切に運用することによりまして、
増大する
事故防止をも考慮しつつ、運輸機関の高速化及び近代化の
要請に対処する
所存であります。
なお、これとともに、
台風防災関係の研究
体制を
強化するため、気象研究所に
台風研究部を
新設する
予定であります。
以上をもちまして
昭和三十五年度の
運輸省関係予算についての御
説明を終わりますが、何とぞ十分に御
審議の上、すみやかに御賛成あらんことをお願い申し上げます。
昭和三十五年度
日本国有鉄道予算の概要につきまして御
説明申し上げます。
三十五年度の
予算の編成にあたりまして、三一十五年度は三十四年度の
経済情勢の好況が引き続き持続するものと考えて収入支出
予算を組みました。また、三十四年度に引き続き老朽施設取りかえ、
輸送力増強及び近代化を主目標とする国鉄五カ年計画の第四年度として、この計画の達成に支障を来たさないように配慮したほか、東海道幹線増設工事の促進を考えて策定いたしました。
以下、収入支出
予算につきまして、損益、資本及び工事の各勘定別に御
説明申し上げます。
まず、損益勘定について申し上げます。収入においては、鉄道旅客輸送人員は、対前年度四、二%増で四十九億四千万人、輸送人キロは一千百五十五億人キロとして旅客収入二千三十二億円を見込み、また、鉄道貨物輸送
トン数は、対前年度六%増で一億八千六百万
トン、輸送
トンキロは五百十二億
トンキロとして貨物収入一千六百十九億円を見込んでおります。これらの旅客、貨物輸送に要します列車キロは、四億六千百万キロで、対前年度三、五%増となっております。以上の旅客、貨物収入のほか、雑収入等を含めまして、収收入合計は三千八百一億円となっております。
次に、経営費について見ますと、人件費につきましては三十四年三月の仲裁裁定
実施による
増額のほか、三十五年度の昇給と期末奨励手当、合計二、七五カ月分を見込みまして、給与の総額は一千三百九十四億円といたしております。また、物件費につきましては、節約に特段の努力を払うことにいたしておりますが、おもなものといたしましては、動力費四百十五億円、修繕費五百四十一億円を見込んでおります。これらを合わせまして、経営費の総額は二千八百八十九億円となっております。
以上の経営費のほかに、受託工事費四十億円、資本勘定への繰り入れ五百九十九億円、利子及び債務取り扱い諸費二百二十三億円、予備費五十億円を合わせまして、損益勘定の支出合計は三千八百一億円となっております。
次に、資本勘定について申し上げます。
収入といたしましては、先ほど申し上げました損益勘定から受け入れます五百九十九億円のほか、不用施設等の売却による八億円、鉄道債券五百二十五億円、
資金運用部等からの借入金二百九十七億円、合計一千四百二十九億円を計上いたしております。
他方、支出といたしましては、このうち一千二百五十二億円を工事勘定に繰り入れ、借入金等の償還百七十二億円、帝都高速度
交通営団等への
出資五億円を
予定しております。
最後に、工事勘定について申し上げます。
三十五年度は五カ年計画の第四年度に当たりますので、五カ年計画中で工事のおくれております幹線輸送対策と車両増備に
重点を置きました。また東海道幹線増設工事については、全線にわたっての着工を
予定いたしました。
以下、工事勘定の内容について御
説明申し上げます。
まず、新線建設につきましては、前年度と同じく九十五億円を計上いたしております。
東海道幹線増設費は、前年度より百七十七億円を
増額いたしまして二百七億円を計上し、幹線増設工事の促進をはかり、東海道線の輸送の行き詰まりを早期に解消いたしたい考えであります。
通勤輸送対策といたしましては、前年度に引き続き
東京付近三十四億円、大阪付近二十三億円、電車増備百両二十一億円、計七十八億円を計上いたしております。
幹線輸送対策といたしましては、北海道、東北・常磐線、裏縦貫、北陸線、東海道・山陽線、九州、その他で百七十七億円を計上いたしております。
幹線電化につきましては、現在工事中の東北本線、常磐線、山陽本線、宇野線、北陸本線及び鹿児島本線の電化のための工事費六十八億円のほか、これに伴う電気機関車十二両、電車四十三両、計十五億円を合わせまして、合計八十三億円を計上いたしております。
以上のほか、貨車三千五百両等の車両増備、諸施設の取りかえ工事、総
経費等を含めまして、支出合計は一千二百五十二億円となっておりまして、これらに要します財源といたしましては、資本勘定から受け入れます一千二百五十二億円を充てることにいたしております。
以上御
説明申し上げました
日本国有鉄道の
予算は、今後の
経済界の動向にもよりますが、これに
予定されました収入をあげ、
予定の工事計画を完遂するためには格段の努力が必要であろうと考えられますので、公共
企業体としていま一そうの経営
合理化をはかり、もって
日本経済の発展に資するように指導監督して参りたい考えであります。
以上、
昭和三十五年度
日本国有鉄道の
予算につきまして御
説明申し上げましたが、何とぞ御協力をお願い申し上げます。
ただいま
予算について申し上げましたので、この際に、運輸大臣といたしまして、運輸行政に関する所信の一端を申し上げまして、皆様の御協力をお願い申し上げたいと思うのであります。
まず第一に、本
委員会の皆さんに本年になりましてまだ初めてごあいさつを申し上げますので、本年も一つよろしく御指導、御鞭撻を冒頭にお願い申し上げる次第であります。
本年は黄金の年といわれ、アメリカも非常な好景気の段階にあるのでありますが、
わが国におきましても、今日の
経済的な見通しといたしましては、六・二%ぐらい三十五年度は増を見ておるのであります。しかし
経済の発展の拡大のために一番大事なものは、申し上げるまでもなく、やはり輸送関係でありまして、かつて神武景気時代に輸送が行き詰まったために大きな隘路となって世間の批判を受けたことは、皆さんも御存じの
通りであります。従って、私が運輸大臣になりましてから常に提唱をいたしておりますことは、運輸行政は
経済発展の大動脈であり、かつまた、あらゆる
経済に先駆していかなければならぬという建前をとって今日まで努力して参ったのであります。今回の
予算等におきましても、皆様方の非常な強力な御支持等を得まして、ただいま御報告申し上げましたように、国家の財政上一つの制約がありますのですけれども、三二%増しというような画期的な
予算を運輸行政にとることができましたことは、私らがかねて運輸行政の
重要性を強調している建前からいたしまして、まことに皆様方に対しましても感謝を申し上げ、かつまた責任の重大さを実は感ずるのであります。従いまして、運輸行政のやはり一番大きな問題は、ただいま
予算等において
説明を申し上げましたように、第一にやはり
港湾である、あるいは鉄道あるいは
自動車、また非常な重要なものでは気象、こういうような点につきまして、今回の
予算には一つの特徴を非常に見たのであります。
第一に私が申し上げたいことは
海運の問題でありますが、
海運の問題は、さいぜん
予算のときに御
説明申し上げましたように、
利子補給の問題がここに新しく今回取り上げられたのであります。
利子補給の問題はかねて皆様方からも御指摘を受けておりましたが、
日本の
海運の
国際競争力を
強化して、
国際収支の
改善をはかるということは絶対的、民族的条件であると思うのでありまして、この
利子補給については各国が非常に大きな助成政策をやっておりまして、アメリカのごときもほとんど船の価格の半分は国家がこれを
補助する、また残りの四分の三は国家が一分五厘で二十カ年の金利でやるというような手厚い保護を与えておる。ドイツも千三百億近くの無利子の金を
海運界に投入して同じく
利子補給をするということをやっております。英国も戦時補償等を払っておりまして、手厚い保護をやっているのは皆様の御存じの
通りであります。こういうふうに国際的に強力なる
補助を与えておりまする
海運について、
わが国は戦時補償を払っておらぬ。金利も市中銀行の九分五厘、
開発銀行は六分五厘という金利で、国際競争になかなか勝てといっても勝てるものではない。従って私は強く大蔵当局並びに総理に主張したことは、
日本政府並びに岸
内閣というものは、一体
海運の保護政策というものをとるのかとらないのかという問題でいろいろ折衝いたしまして、最後の段階に、ただいま御報告申し上げましたような
利子補給の道が開けたのであります。もちろんこれは私といたしましては十分とは言えません。私は六十億近くのものを実は要求しておったのでありますが、今回十億ということになりましたけれども、国家財政等、いろいろな関係等もありまして四カ年できなかった
利子補給の問題がここに道が開けたということは、これはやはり
日本の
海運政策というものを、これを起点として国際競争に勝つような
体制に持っていきたい、こういうように思うのでありまして、この点についてもいろいろと、自由民主党はもちろん、社会党の方々あるいは民社党の方々も御助力を賜わりましたことを厚く実はお礼を申し上げる次第であります。
また、
海運の問題について、海員の人たちの厚生施設等につきましても、さいぜん申し上げましたように、今回は欧州方面にも福利施設として厚生施設を設けるようにいたしたのであります。造船等につきましても、造船界が非常な岐路に立っている、と申しますことは、三十二年度は百八十万
トン近くもあったのが、三十五年度以降は七十万
トン以下に受注が減ってしまい、船台の大半が遊んでしまうという状態でありますので、この点はどうしても造船工業というものの及ぼす影響は、関連産業になりますと、雇用問題等を勘案いたしましても、約二百万の人間が大きな影響を受けるといわれておりますので、
運輸省といたしましても、この問題を非常に重要視いたしておりまして、つい数日前も造船工業界の幹部を集めまして、造船に対する造船工業界の対策というものを今研究しております。これに対しましてはやはり国際競争に勝つように輸出船の問題も、これに対しては外国が延べ払い等について
日本よりもはるかに有利な条件をもってやっているのだから、国際水準までの延べ払い等を一つ考えてやらなければならぬ。鋼材にいたしましても、外国の鋼材からいたしますと、
トン当たり一万円から五千円高い。従ってこの鋼材を国家でもってある程度めんどうを見てやるか、しからずんば外国の安い鋼材を、
日本の貿易の自由化によって
日本へ輸入するか、こういう問題を取り上げて解決したいと同時に、船だけでなくて、関連産業といいますか、関連産業の育成
強化等もはかり、また、多角経営等もやらせて、造船工業界のつまり
基盤の足を一つ強くさせたい、こういうことを実は考えておるのであります。
自動車につきましては、ただいま申し上げましたように、今回
定員等も相当画期的な
定員をとることができましたか、いまだ十分といえませんけれども、
自動車行政は皆さんからしばしば指摘されますように、この膨大に太っていく
自動車をいかにしてこれを行政面においてコントロールするかという問題について、今回の
予算等ではこの点について多少これに伴う問題の解消に足がかりができる
体制になったのであります。
また、国鉄については今申し上げましたから省略いたしますが、
伊勢湾台風等をめぐりまして、
気象庁等の問題が出ましたので、今回は
気象庁の
予算については特に力を入れて折衝もし、かつ、さいぜん報告申し上げたような
予算の措置をもちまして、防災関係等も今度新しく設けるということになりましてその点につきましてできるだけ
災害の事前防止をするというような問題を今度取り上げることができたのであります。
また、
航空等においても、
ジェット機の時代にありますので、
ジェット機に対する対策として、国際競争にやはり対抗し得るような
体制を作ろうという考えを持ちましてこの
予算はまあ十分ではありませんけれども、一つの足がかりとしてこの問題にぜひ一つ取り組みたいと思うのであります。
観光も非常な
国際収支の上に大きな影響を与えるものでありますから、本年は万国列国議員会議等もありますし、幾多の国際会議が
日本において開かれます。また、
観光客の誘致等においても格段の努力を払いたいと実は思っておる次第であります。
また、
港湾は、さいぜん報告申し上げましたように、
日本の
経済基盤の上に一番大きなこれは要素となるものでありますから、
港湾につきましても、
予算等において御報告申し上げましたような線に沿うて、今後一段の努力をいたしたいと思うのであります。
まあいろいろとお話し申し上げたいことがありますが、大あらましのことは全部
予算のときに申し上げましたが、海上保安庁あるいは技術研究所等についても今度
強化ができるようになりました。全般的に、はなはだ私が申し上げては恐縮でありますが、
予算面においては、
運輸省としていまだかつてない
予算を大体にとることができましたことは、ひとえに議員諸公の陰になりひなたになって御後援を賜わりましたお陰と存じまして、深く感謝を申し上げますと同時に、
予算の
実施につきまして、皆様の格段の御助力と御指導をお願い申し上げたいと思うのであります。