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岡本(隆)
分科員 これは、あなたとだけ議論してもそれはなんだと思うのですが、国家
予算の中で
住宅対策費が何%占めるかというふうなことは、これは国の
施策全体との均衡の問題でございますから、今私が申し上げたいと思うのは、ことしの
予算が不足をするとかいうふうな意味ではなしに、
住宅対策というものについてのものの考え方を、今後大いに
政府としても、もう一度考え直していただく必要があるのではないか。従って、
所管大臣であるあなたの頭の切りかえがまず必要であるというふうに私は思いますので、要望申し上げるのでございますけれども、あなたの今の仰せと私とは考え方が違うのです。それはなるほど今後も相当な数において家は建っていくでしょう。家は建っていくでしょうけれども、しかしながらその建っていく家というものが、
民間自力建設というものに相当な比重を置く限りにおいては、
住宅難にほんとうに苦しんでおるところの庶民のための家は建たない、こういうことを私は申し上げたいのです。
昭和三十三年の
総理府の統計局の
住宅統計調査を見ますと、これは名古屋でとった統計のようでございますけれども、各所得別のものが出ております。
住宅難世帯数のものが出ております。その表を見ますと、
住宅難で困っておるのは——あなたの方も
住宅難世帯として、たとえば非
住宅、
住宅でないような小屋がけに住んでおるとか、あるいは狭小、過密
住宅、あるいは大修繕を要する
住宅であるとか、あるいは非常に狭いところに間借りをしておるというふうな人たち、そういうふうな人たちを
住宅難世帯といたしまして、所得別に見ていきますと、
住宅難の率の一番高いのは、所得一万円から一万五千円の世帯において二六%の率が出ております。それから一万五千から二万の間で二〇%、一万以下になりますと三〇%というふうな大きな率において
住宅難を訴えておる。従ってそういうような所得層の中で
住宅難に困っておる、そういうような条件——過密とかいろいろな条件で
住宅難の状態にある世帯というものは、二万以下の所得の人たちにおいて、もう非常な率において高いわけなんです。だから、
住宅難にほんとうに困っておるのは、月収二万円以下の人たち——この人たちの間で非常なはなはだしい
住宅難がありまして、
収入が三万ないし四万というふうな世帯になりますと、
住宅難を訴えるものは一・七%に減ってしまっておる。こういうふうな統計の実態を見ますときに、
収入二万以下の家庭において、少なくとも二〇%ないし三〇%の率において、狭過ぎて困る、間借りでは暮らしにくいというふうな、日々の生活に非常な
住宅問題についての難渋を訴えておるというふうな状況を見ますと、今の
住宅難というものは、家だけが建っても、これらの人たちの
住宅難というものは解消しないという見方を私は持っております。だからそういう意味においては、やはりこれらの人たちの
住宅難——
収入一万円以下の人たちでその三〇%を占めておるようなはなはだしい住居難というものを解消するのには、この際何かやはり
政府の方で
住宅問題というものを非常に大きく国民の福祉問題として取り上げていただきたい、こういうことを私はまず第一段階としてお願いしたいわけです。
その次に私はもう一つ、今あなたが仰せになった
政府も金を出して建てているじゃないか、
政府資金も相当出しているじゃないか、戦前にはこんなことはなかったのだ……。しかし戦前だって、前の欧州戦争のあとの非常に
住宅難がありました当時には、やはり
公営住宅、町営
住宅というふうな制度がございまして、自治体でもって
住宅を建てております。そんなことは何といたしましても、戦後私が非常に残念に思うことは、たとえばエネルギー資源としての電源開発だとか、そういうことには
政府資金が大きく投入されていきます。あるいはまた
計画造船なんかにでもやはり大きな
資金が投入された。そういうふうな姿を見ていくときに、それと比べるならば、私は
住宅にもっと今言われるような形において
政府資金が投入されたとしても、これは何の不思議はないと思うのです。あなたは
住宅にだって金を出すようになって、こうしてやっておるのだからというふうなお考えのようでございますけれども、これは私のとり方が違っておるかしれませんけれども、それは戦争のために家が焼き払われて、そのために起こってきた急激な
住宅難であり、しかもそのために
住宅に住む人たちの間に非常な不均衡が起こっております。
私は今日住生活におけるところの不均衡が、四階層の形で出てきておると思うのです。まず第一には、一番住居に困っておる人たちは、家がなくてやみ家賃を出して間借りしておる人たち、たとえば六畳一間に三千円も五千円も出して間借りしておる。だからべらぼうに高い。一畳千円というような家賃を出して住まなければならない。こういう人たちは低額所得者であります。自分で住居の持てない非常な低額所得者が、べらぼうな高い家賃を出すことを余儀なくされた状態に放置されておる。その次に、戦後に建ったアパートであるとか、あるいは戦後に建った貸家は相当高家賃です。そういうような戦後の高い家賃に住んでおる人が第二段階に入ると思います。第三段階に入る人は、例の戦前から建っておる統制の家賃の家に住んでおる人たち。その次に非常に恵まれておるのは給与
住宅に住んでおる人たちであります。たとえば公務員であるとか、あるいは大きな企業体が厚生年金保険であるとか、あるいは
公団の
政府資金を借りて
住宅を建てております。家賃はほとんど
建設費に見合わない安い家賃でもって、自分の方の従業員を住まわせております。だからそういうふうな四段階の人たちがおって、国民全体の間に、住居費に対して支払う金額でなしに、支払っておる家賃そのものの経済効果に非常な大きなアンバランスがあるわけであります。片方は一畳千円というようなべらぼうに高い家賃を払わなければならぬ。片方は水洗便所であり、非常に環境のいいところに住んで、しかも一畳について百円くらいの家賃を払えば足りるというふうな人たち、しかもその両者の間には給与上、片方は大企業に勤めておって相当恵まれた、恵まれたというと語弊がありますが、相当の給与を受けておる。片方は非常な低額所得でありながら、そのようなべらぼうな住居費を払わなければならない。国民生活の中でもって、そのような住生活における非常に大きなアンバランスがある。このアンバランスというものを
政府が解消していく、なくしていくという努力をしていただかなければならぬと思うのです。それに対する努力というものは、とにかく今家をふやすことに精一ぱいで、何ら手が打たれておらない、このように私は思うのでありますけれども、その問題をどういうふうにお考えになり、またどういうふうな
方針をとってこれからそれを解消していこうとなさるのか、私はそういうふうなことについてあなたのお考えを承りたいと思います。