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1960-02-24 第34回国会 衆議院 予算委員会第四分科会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    分科会昭和三十五年二月二十日(土曜日)委 員会において設置することに決した。 二月二十三日  本分科員委員長指名で次の通り選任された。       岡本  茂君    加藤 精三君       久野 忠治君    小坂善太郎君       重政 誠之君    田中伊三次君       水田三喜男君    山口六郎次君       小松  幹君    島上善五郎君       楯 兼次郎君    今澄  勇君 同日  岡本茂君が委員長指名主査に選任された。 ————————————————————— 昭和三十五年二月二十四日(水曜日)     午前十時四十一分開議  出席分科員    主査 岡本  茂君       加藤 精三君    久野 忠治君       小坂善太郎君    田中伊三次君       水田三喜男君    山口六郎次君       岡本 隆一君    小松  幹君       島上善五郎君    楯 兼次郎君       柳田 秀一君    山中 吾郎君    兼務 塚本 三郎君  出席国務大臣         建 設 大 臣 村上  勇君  出席政府委員         建設政務次官  大沢 雄一君         建設事務官         (大臣官房長) 鬼丸 勝之君         建設事務官         (大臣官房会計         課長)     志村 清一君         建設事務官         (計画局長)  關盛 吉雄君         建 設 技 官         (河川局長)  山本 三郎君         建設事務官         (河川局次長) 曽田  忠君         建 設 技 官         (道路局長)  佐藤 寛政君         建 設 技 官         (住宅局長)  稗田  治君         建 設 技 官         (営繕局長)  櫻井 良雄君  分科員外出席者         大蔵事務官         (主計官)   宮崎  仁君     ————————————— 二月二十四日  分科員小松幹君及び島上善五郎辞任につき、  その補欠として山中吾郎君及び岡本隆一君が委  員長指名分科員に選任された。 同日  分科員岡本隆一君及び山中吾郎辞任につき、  その補欠として島上善五郎君及び柳田秀一君が  委員長指名分科員に選任された。 同日  分科員柳田秀一辞任につき、その補欠として  小松幹君が委員長指名分科員に選任された。 同日  第二分科員塚本三郎君が本分科兼務となった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十五年度一般会計予算建設省所管  昭和三十五年度特別会計予算建設省所管      ————◇—————
  2. 岡本茂

    岡本主査 これより予算委員会第四分科会を開会いたします。  私が第四分科会主査の職務を行なうことに相なりましたので、何とぞよろしくお願い申し上げます。(拍手)  本分科会は、運輸省郵政省及び建設省所管審査を行なうことになっておりますが、審査の期間は本日より二十七日までの四日間となっておりますので、審査の都合上本日は建設省所管、明二十五日は運輸省所管、二十六日は郵政省所管審査を行ない、二十七日は会議の進行を見て決定いたしたいと存じますので、さよう御了承をいただきたいと存じます。  それでは昭和三十五年度一般会計予算及び同特別会計予算建設省所管を議題といたします。  まず政府説明を求めます。村上建設大臣
  3. 村上勇

    村上国務大臣 建設省関係昭和三十五年度歳入歳出予算につきまして、その概略を御説明申し上げます。  まず、総額について申し上げますと、建設省所管一般会計予算といたしましては、歳入七億九千三百余万円、歳出一千八百五十一億八千余万円でありますが、このほかに、予算計上所管は異なっておりますが、実質上建設省所管事業として実施される予定経費が、別途総理府に、北海道開発関係として二百二億六千六百余万円、離島振興関係として七億一千一百万円、労働省に、特別失業対策事業関係として三十一億四千八百万円が計上されておりますので、これらを合わせて前年度に比較いたしますと、前年度一千九百五億三千一百余万円に対し、昭和三十五年度二千九十四億五百余万円でありまして、百八十八億七千四百余万円の増加となっており、前年度には、予算の補正を行なっておりますので、前年度の当初予算額一千七百五十四億七千一百万円に比べますと、三百三十九億三千四百余万円の増加となっております。  次に、個々の事業予算について御説明申し上げます。  第一に、治水事業につきましては、昨年の大水害等にかんがみ、国土の保全産業基盤強化見地から政府重点施策として長期計画を樹立し、強力かつ計画的にこれを推進する方針であります。  すなわち、長期計画につきましては、昭和二十八年に策定いたしました治山治水基本対策に基づく残事業のうち、主要な事業昭和三十五年度以降十カ年で達成することを目途とし、このうち昭和三十五年度から三十九年度までの前期五カ年においては、総事業費四千億円の治水投資を行なう方針のもとに治水事業五カ年計画を確立し、また、このための財政措置として、新たなる構想のもとに既設特定多目的ダム建設工事特別会計を統合して、治水特別会計を新設して、治水事業五カ年計画適確実施をはかる所存であります。  昭和三十五年度におきましては、右の方針に基づき特に治水対策推進重点を置き、画期的な事業増大をはかることにいたしております。  すなわち、昭和三十五年度の治水関係予算といたしましては、治水事業費として二百八十五億一千九百余万円、海岸事業費として八億三千一百万円、伊勢湾高潮対策事業費として八十五億八千九百万円、合計四百七十九億三千九百余万円で、前年度三百九十七億三千二百余万円に比較し、八十二億七百余万円の増となりますが、このほか地方公共団体負担金収入等を加えた歳出予算額増加といたしましては、総額百五十六億四千七百余万円の増額で、前年度に比べ治水事業費といたしましては約三〇%、海岸事業費については約六二%、伊勢湾高潮対策事業費については約九七%の増加になっております。なお、治水特別会計内容につきましては、後ほど、あらためて申し上げます。  次に、そのおもなる内容について申し上げます。まず治水事業五カ年計画関係事業について申し上げますと、河川改修事業のうち直轄河川におきましては、継続施行中の利根川等九十四河川のほか、新規に留萌川を加え合計九十五河川及び北海道の開拓事業関連する特殊河川十五河川について実施する予定であります。なお、このほか、直轄河川改修事業については、財政法第十五条の国庫債務負担行為十億円を予定いたしております。補助事業におきましては、中小河川として継続施行中の三百二十四河川のほか、特に緊急に改修を要するもの二十三河川新規に採択するとともに、最近の災害発生現況等にかんがみ、小規模河川改修促進をはかるため、継続施行中の五十二河川のほか新規に七十九河川の着工を予定し、小規模河川改修の増強をはかることといたしております。  また、昨年の伊勢湾台風等経験にかんがみ、重要海岸における高潮対策推進をはかる方針のもとに、特に東京湾、大阪湾地区における高潮対策事業促進をはかることにいたしております。  次に、砂防事業について申し上げます。砂防事業については、直轄事業として施行中の利根川ほか二十五水系継続施行するほか、補助事業につきましては直轄河川等重要水系工事及び最近地すべりによる被害の甚大な地域地すべり防止工事促進をはかる方針であります。また、事業重点といたしましては、特に昨年の大水害により甚大な被害を受けた富士川等促進重点を置くほか、昨年の水害等にかんがみまして、土砂の崩壊による危険度の高い渓流については、谷口に砂防ダムを施設する等いわゆる予防砂防推進をはかることにいたしております。  河川総合開発事業につきましては、特に継続工事早期完成重点を置いて実施することにいたしております。その内容といたしましては、直轄事業として継続施行中の荒川二瀬ダム等十七ダムのほか、新規に北上川四十四田ダム及び淀川高山ダムに着工し、合計十九ダムのうち荒川二瀬等ダム完成予定いたしております。  なお、このほか、多目的ダム建設及びこれに付帯する工事実施するために、財政法第十五条の国庫債務負担行為五十五億円を予定いたしております。  また、補助事業におきましては、継続施行中の小瀬川ダム等二十一ダムのほか、新規犀川ダム等ダムに着工し、うち四ダム完成する予定であります。  以上、治水事業五カ年計画関係事業のおもなる内容でありますが、次に五カ年計画とは別途に実施いたします事業の主な内容について申し上げます。  まず、海岸事業につきましては、昨年の伊勢湾台風等経験にかんがみ、防災上緊要な地域における保全施設整備重点を置き、特にその促進をはかることといたしております。  このため昭和三十五年度におきましては、特に予算増額をはかるほか、緊要度も高く、かつ、技術的にも国が直轄施行することが適当と認められる有明海岸等海岸については、新たに国の直轄事業に採択することとしております。また、補助事業につきましては、海岸堤防修築工事及び海岸浸蝕対策工事として継続四十三海岸のほか、新規に二十二海岸予定し、その重点的な促進をはかる方針であります。  次に、伊勢湾高潮対策事業について申し上げます。伊勢湾高潮対策事業につきましては、その緊要性にかんがみ、昨年特別立法を制定し、所要追加予算を計上してその促進に努めている次第でありますが、昭和三十五年度におきましては、既定の方針にのっとり、本年台風期までに原形規模までに復旧し、引き続き事業推進をはかる方針のもとにその所要経費を計上いたしております。なお、前年度において国が受託施行いたしました重要海岸につきましては、昭和三十年度から国の直轄事業として施行することとし、また、これらの直轄事業につきましては、木曽川等河川改修工事とも密接な関連があり、同一会計において一元的に処理することが適当であると考えられますので、特に直轄事業に限り、治水特別会計実施することといたしております。  なお、以上の治水関係事業のうち、河川事業砂防事業及び海岸事業補助分中には、八億三千五百万円の特別失業対策事業費を含み、失業者吸収をはかることといたしております。  第二に、災害復旧対策関係予算について申し上げます。  災害復旧対策関係昭和三十五年度予算額総額は、四百二十四億八千七百余万円で、その内訳といたしましては、災害復旧事業費三百八十八億九千四百万円、災害関連事業費三十四億八千万円、鉱害復旧事業費一億一千三百余万円であります。  次に、そのおもなる内容について御説明申し上げますと、まず、災害復旧事業費につきましては、直轄事業は、過年災害の大部分を完了する予定であり、補助事業につきましては、昭和三十二年以前の発生災害にかかる事業は、これを全部完了し、昭和三十三年及び昭和三十四年発生災害にかかる事業は、国庫負担法の趣旨にのっとり、緊要工事についてはおおむね三カ年で復旧を完了するよう実施したいと考えております。  また、災害関連事業につきましては、災害復旧工事との均衡をはかって効率的に実施する方針でありますが、特に昨年の水害で甚大な被害を受けた河川等については、新規助成事業に採択して改良的復旧を行ない、復旧対策に万全を期したいと考えております。  なお、災害関連事業のうちには、五千万円の特別失業対策事業費予定しており、失業者吸収をはかることといたしております。  第三に、道路整備事業について御説明申し上げます。  ここ数年間の我が国の経済の発展に伴いまして、道路輸送も飛躍的に増加しつつあることは、御承知の通りであります。政府におきましては、昭和三十三年度以降五カ年間に総投資額一兆円を規模とする道路整備五カ年計画を樹立し、鋭意事業実施して参りましたが、昭和三十五年度はこの計画の第三年度分として必要な事業実施をはかることといたしております。  昭和三十五年度の道路事業関係予算額は、一般会計分九百八十八億七百万円で、前年度実行予算八百九十億二千五百万円に比し九十七億八千二百余万円の増となりますが、これに直轄道路事業地方負担金現金納付金収入八十三億六千三百万円を加えますと千七十一億七千万円となり、前年度九百六十四億六千万円に比し百七億一千余万円の増となっております。  道路整備特別会計内容につきましては、後に御説明申し上げますが、一般会計には道路整備特別会計に対する繰入金といたしまして、建設省に八百億四千三百余万円、総理府に、北海道開発関係として百五十五億千二百余万円、離島振興関係として五億六千八百万円、労働省に、特別失業対策事業関係として十四億九千百万円、合計九百七十六億千四百余万円が計上されております。  このほか、昭和三十五年度におきましては、長大橋等の大規模工事で二カ年以上にわたる契約を必要とするもの及び用地取得の困難な現状にかんがみ次年度以降の改良事業用地取得の手続を進めておく必要があるものについて、財政法第十五条の規定に基づく国庫債務負担行為三十三億円を予定いたしております。  なお、従来に引き続き、一級国道のうち交通量の特に多い区間を、国が直轄維持修繕を行なうこととしておりますが、昭和三十五年度におきましては、さらにこの区間を約七百キロメートル追加いたしまして、合計おおむね三千キロメートルとするとともに、交通量の多い大都市内において舗装補修等工事実施する場合には極力夜間に行なうこととし、交通支障を及ぼさぬよう留意して参りたいと考えております。  次に、日本道路公団有料道路について御説明申し上げますと、昭和三十五年度における日本道路公団資金といたしましては、道路整備特別会計からの出資金五十五億円、資金運用部資金借り入れ六十六億円、民間資金借り入れ百五億円、外資の導入七十八億円を予定いたしておりまして、これに業務収入等十八億円を加えると、日本道路公団昭和三十五年度における予算規模は、合計三百三十二億円となりますが、これにより京葉道路ほか十八カ所の継続事業促進するほか、新規事業にも着手し、特に、高速自動車国道中央自動車道(小牧、吹田間)及び高速自動車国道吹田神戸線吹田、西宮間)につきましては、厄崎、栗東間約七十二キロについて本格的な建設工事促進するほか、その他の区間についても用地買収に主力を注ぐこととしております。  次に、首都高速道路公団事業について御説明申し上げますと、昭和三十五年度における首都高速道路公団資金といたしましては、道路整備特別会計からの出資金五億円、東京出資金五億円、東京交付金十八億九千八百万円、資金運用部資金借り入れ三十億円、民間資金借り入れ五十二億円を予定いたしておりまして、これに利息収入その他四千二百万円を加えると、首都高速道路公団昭和三十五年度における予算規模は、合計百十一億四千万円となりますが、これにより同公団の行なう事業といたしましては、事業実施の第二年度として、昭和三十四年度において一部区間について着工した一号線、及び二号線の建設を引き続き実施するとともに、新たに八号線の建設に着手することとし、また、駐車場については、汐留駐車場完成するほか、新たに江戸橋駐車場建設に着手することといたしております。  第四に、都市計画事業について御説明申し上げます。  昭和三十五年度における都市計画事業予算は、総額百八十三億三千四百万円で、前年度百五十八億四千四百万円に比し二十四億九千万円の増であります。  このうち、道路整備五カ年計画実施に要する経費として道路整備特別会計に計上されております額は、首都高速道路公団に対する出資金を含め百六十一億二千三百万円でありますが、これによりまして、立体交差を含む改良、橋梁及び舗装等街路事業実施して都市内交通円滑化をはかるとともに、特に人家が密集し、街路の幅員が狭隘で交通支障を来たしている等、都市発展整備を要する地域に対し、土地区画整理による都市改造事業推進いたしたいと考えております。  また、一般会計に計上されております都市計画事業関係予算額は、総額二十二億一千一百万円で、下水道公園等整備をはかることといたしております。下水道関係予算額は、十九億九千六百万円で、昭和三十四年度に比し五億七千一百万円の増でありますが、なお地方債増額をもはかることとし、都市施設中最もおくれている下水道整備促進に努める所存であります。また、事業実施にあたっては、公共水汚濁防止見地から工場廃水が多量に排出される地域にこれを一括処理するための特別都市下水路を設けるとともに、道路堀り返しによる手戻り工事を極力防止するよう道路整備事業進捗状況を勘案して参りたいと考えております。  なお、一般会計に計上されております都市計画事業のうちには、七億七千二百万円の特別失業対策事業費予定しており、失業者吸収をはかることといたしております。  第五に、住宅対策について御説明申し上げます。昭和三十五年度の住宅対策といたしましては、昭和三十二年度を基点とした従来よりの長期五カ年計画基本方針に基づき、昭和三十五年度に建設する政府施策による住宅建設戸数として二十二万一千戸を計画いたしております。この戸数は、前年度と比較いたしますと、一万一千戸の増となっておりますが、特に昭和三十五年度からは、老朽危険な住宅の密集した不良住宅地区改良事業一般公営住宅建設予算と分離計上して促進をはかることとし、また災害防止見地よりいたしまして、不燃堅牢な住宅建設促進坪数増大等住宅の質の向上をはかるとともに、宅地取得難現況に対処いたしまして、宅地供給量増大及び大都市内における宅地高度利用をはかることといたしております。  また、民間自力によって建設される住宅につきましては、最近の実績から見まして約三十八万戸程度の建設が見込まれますので、これらを合わせて、昭和三十五年度におきましては、約六十万戸の住宅建設目途といたしております。  なお、政府施策住宅二十二万一千戸の内訳は、公営住宅四万九千戸改良住宅二千戸、住宅金融公庫融資住宅十一万戸、日本住宅公団建設する住宅三万戸及び厚生年金融資住宅等三万戸(災害復旧公営住宅約三千九百戸を含む)でありまして、これに対する予算措置といたしましては、公営住宅建設費として、災害公営住宅分を含めて一般会計予算として百二十一億八千三百余万円を予定し、一般公営住宅として第一種住宅二万八百戸、第二種住宅二万八千二百戸、計四万九千戸及び災害公営住宅として約三千九百戸の建設に対し、補助することといたしております。  不良住宅地区改良事業といたしましては、一般会計予算として、七億九千八百余万円を予定し、劣悪な居住環境を改善し、あわせて市街地合理的利用をはかるため、不良住宅地区の清掃及び改良住宅二千戸の建設に対して、補助することといたしております。住宅金融公庫に対しましては、産業投資特別会計よりの出資金五十億円と、政府低利資金三百十億円、合計三百六十億円を予定いたしておりまして、これに回収金等七十億円を加えると、住宅金融公庫昭和三十五年度の資金総額合計四百三十億円となりますが、これにより十一万戸の住宅建設及び宅地取得造成災害による被災住宅復興等に要する資金の貸付を行なうこととしております。  日本住宅公団に対しましては、産業投資特別会計からの出資金七十億円、政府低利資金八十四億円、民間資金二百億円、合計三百五十四億円を予定しており、賃貸住宅二万戸、分譲住宅一万戸の建設並びに市街地施設及び宅地造成事業を行なうことといたしておりますが、特に、昭和三十五年度におきましては、住宅の一戸当たりの坪数の引き上げを行ない、質の向上をはかることといたしております。  また、都市における火災その他の災害防止、並びに土地合理的利用促進するため、耐火建築物建設に対する助成金といたしまして、一般会計予算において一億円を計上し、防火建築帯造成事業実施することといたしております。  第六に、官庁営繕について御説明申し上げますと、官公庁施設建設等に関する法律の規定により、建設省実施いたします官庁営繕のうち、建設省所管予算として計上されておりますのは二十九億一千余万円でありまして、前年度の二十一億六千九百余万円に比し七億四千余万円の増額となっております。  その他、昭和三十五年度予算中おもなるものにつきまして申し上げますと、治水事業及び道路事業伸びに対処し、また所要機構整備等のため定員を百四十八名増加いたしております。  また、海岸事業伸びに対処して本省に海岸課を設けるとともに、公共用地取得困難な現状にかんがみ、迅速かつ適正な用地取得制度に関する調査審議を行なうために付属機関として公共用地取得制度調査会を設け、その他試験研究機関に必要な研究室等を新設する等所要機構整備を行なうことといたしております。  試験研究機関等予算につきましては、前年度に比べ一億三千四百余万円を増額いたしまして、試験研究及び職員等の研修の充実をはかることといたしております。  産業開発青年隊は、前年度実施直轄キャンプのうち一キャンプを改編して、新たに海外へ移住する隊員の幹部となるべき者を養成する幹部訓練所を設け、隊員海外移住の進展に備えるとともに、既設直轄キャンプ及び府県二十八キャンプについては、教育内容等の一そうの充実強化をはかる所存であり、その費用として五千余万円を計上いたしております。  以上をもちまして建設省関係一般会計予算説明を終わりますが、次に特別会計予算概要を御説明申し上げます。  まず、治水特別会計概要について申し上げます。  治水特別会計につきましては、前に申し上げましたように、既設特定多目的ダム建設工事特別会計はこれを廃止し、本特別会計に統合することにいたしましたが、経理の明確を期するため、本特別会計においてもその勘定を区分し経理することにいたしております。すなわち、従来の特定多目的ダム建設工事特別会計にかかるものは特定多目的ダム建設工事勘定に、その他の治水事業については治水勘定に区分経理することにいたしております。  本特別会計予算総額は、歳入歳出とも六百九億五千七百余万円でありますが、これを勘定別に申し上げますと、まず治水勘定につきましては総額四百六十億三千余万円で、その資金内訳といたしましては、一般会計より受け入れ三百六十一億五千六百余万円、地方公共団体工事費負担金収入六十七億四千五百余万円、受託工事納付金等十九億三千三百余万円、特定多目的ダム勘定より受け入れ五億九千五百余万円、予備収入その他六億円を予定しております。その歳出内訳といたしましては、河川改修事業等に二百六十四億九千二百余万円、河川総合開発事業に十八億二千二百余万円、砂防事業に八十四億八百万円、伊勢湾高潮対策事業に五十八億六千万円、付帯工事受託工事予備費等に三十四億四千七百余万円を計上いたしております。  また、特定多目的ダム建設勘定につきましては、総額百四十九億二千六百余万円で、その資金内訳といたしましては、一般会計より受け入れ七十三億六千三百余万円、地方公共団体工事費負担金収入二十七億八百余万円、電気事業者等工事費負担金収入二十五億九千四百余万円、特定多目的ダム建設工事特別会計整理残余金十億九千三百万円、その他十一億六千六百余万円を予定しております。その歳出内訳といたしましては、特定多目的ダム建設事業に百三十七億七千三百余万円、受託工事及び予備費等に十一億五千三百余万円を計上いたしております。  なお、それぞれの事業内容につきましては、先ほど申し上げた通りであります。  次に、道路整備特別会計でありますが、本特別会計昭和三十五年度予算総額は、歳入歳出とも千八十九億一千三百余万円でありまして、その資金内訳はさきに申し上げました一般会計からの繰入金九百七十六億一千四百余万円のほかに、直轄道路事業地方負担金収入八十三億六千三百万円、付帯工事納付金、受託工事納付金、雑収入及び予備収入二十九億三千五百万円となっております。その歳出内訳といたしましては、一般道路事業に八百四十三億五千四百余万円、街路事業に百五十六億二千三百万円、日本道路公団出資金として五十五億円、首都高速道路公団出資金として五億円、その他付帯工事受託工事予備費等に、二十九億三千五百万円を計上いたしております。  なお、以上のうち一般道路事業及び街路事業の中には、前年度に引き続き臨時就労対策事業として八十三億円、特別失業対策事業として十四億九千百万円を予定いたしまして、失業者吸収をあわせてはかるほか、積雪寒冷特別地域に対する経費として機械費を合わせて十六億三千二百万円が含まれております。  以上をもちまして、昭和三十五年度の建設省関係一般会計予算及び特別会計予算説明を終わりますが、よろしく御審議のほどをお願い申し上げます。
  4. 岡本茂

    岡本主査 これにて説明は終わりました。     —————————————
  5. 岡本茂

    岡本主査 これより質疑に入ります。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。小坂善太郎君。
  6. 小坂善太郎

    ○小坂分科員 ただいま建設大臣から御説明がありました昭和三十五年度建設省関係予算は、方向としては非常にけっこうだと考えるのであります。いろいろな予算上の制約がありますから、金額のそれぞれについては意見のある人もあると思いますけれども、なかなかよく努力されて、新しく日本の建設関係を進めるという方向について、ことに治山治水特別会計を作られたというような方向は、非常に私も賛意を表しておるものであります。そこで、内容について簡単に伺っておきたいと思うのでありますが、ただいまの御説明の中にございました、被害の甚大な地域地すべり防止工事促進ということについて、一言伺っておきたいのであります。これは地すべり防止法も昭和三十三年度でありましたか作られまして、地すべり地帯の困窮する住民の現状については非常に努力を願っておるのでありますが、実は私の関係することで恐縮でありますが、長野県に有名な茶臼山というのがあります。この地すべりが年々非常に激しくなるのであります。建設省におかれましては、特にこの点について従来深い関心を持っておられるのでありますが、今までやっていただいておる工事をもってしては、いかんともこの状況を変えることになっていないのは、はなはだ遺憾であります。現にその地区の住民は非常に不安にかられまして、八百余名の署名をもちまして、一日も現状を黙視することはできない、何とか政府において特別の御配慮を得たいということで、非常に切々たる願いを寄せてきております。その山の下に、昔共和村と申しましたが、今篠ノ井市の岡田という部落があり、それから茶臼山のふもとに有旅という部落がありますが、この地すべりの結果、この住民はあるいは自分の持っております田畑あるいはリンゴ畑等がだんだんすべっていって、使いものにならなくなってしまった。あるいは岡田部落におきましては、この地すべりが人家の真上に落ちてきておる。これはとても長く住んでおられないのではないかということで、非常な恐怖にかられておるのであります。これにつきまして特に建設大臣から、それについては一つ抜本的な対策を講じよう、こういうお話をこの際承っておきたいと思います。
  7. 村上勇

    村上国務大臣 茶臼山の地すべりにつきましては、建設省といたしましても非常にこれを重要視いたしておりまして、抜本的にこれの防止をしなければならないという見地から、いろいろな方法をもって対処をいたしておる次第であります。特にああいうめんどうな地すべり地区につきましては、そういうような試験的なものも特設いたしまして、それらのどの方法でやったならば、完全に防止することができるかという点については、研究いたしておりますが、しかしそれは別といたしまして、地すべり対策については十分考慮し、また措置いたしておりますが、なお詳細な事務的な問題につきましては、河川局長から説明いたさせます。
  8. 山本三郎

    ○山本(三)政府委員 茶臼山地区の地すべり対策につきましては、従来ともいろいろ調査研究並びに施策をやっておったわけでありますが、今先生のおっしゃるように、なかなか大規模なものでございまして、決定的な方法というものは、今まで事業量も足りなかったと思いますが、できなかったのでございます。これはやはり地下水を早く排除いたしまして、すべる面から水を抜いてやる方法が一番的確な方法でございまして、それらの処置もやっておりますけれども、なお足りないような状況だと考えております。長野県、新潟県方面は非常にこういう地帯が多いわけでありまして、現地におきまして試験的にやることも必要だけれども、やはりまとめていろいろな方法を一個所でやってみることも必要だというので、特にあの地帯を中心とする地方に試験地を作りまして、方法も研究すると同時に、対策も積極的にやっていこうということも考えております。予算におきましても、内地の地すべり対策の補助事業は三十四年度が一億九千万円でございましたが、来年度におきましては二億六千四百万円計上をお願いいたしておりまして、パーセントにいたしますと三十数%ふえております。これらの金はやはり今申しますような重要地区に注入いたしまして、できるだけ早く不安を除きたいというふうに考えております。
  9. 小坂善太郎

    ○小坂分科員 いろいろ御配慮いただきまして感謝いたしまするが、実は地すべりをいたしまする地帯の山の上の方に水田があるのであります。大体今お話しのように地下水が問題だと考えるのでありまするが、なお上に水田を設けて耕作をするということは、やはり長い目で見ると地すべりを助けておるのじゃないか。被害者みずからが、そういうことを促進しているというふうにも考えられる。しかし、そうであるからといって、従来耕作しておる農民諸君に、素手でそれをやめろと言うのもいかがかと思われるので、そういう点を御研究の結果、どうも水田耕作はやめた方がいいのだ、こういう結論が出ました場合には、そういう地帯について補償ということをやはり考えてやらなければならぬのじゃないか、こう考えるのでありますが、いかがでございましょう。これは建設大臣が直接補償について答弁するのはおかしいわけでありますが、農林省関係がおられませんから、かわってお答え願います。
  10. 村上勇

    村上国務大臣 ただいま局長から御説明申し上げましたように、一応試験地区を設けて、はたして山上にある水田によって非常な影響があるかないかという点についても、十分研究してみたいと思います。もしもその水田によるところの直接影響があるといたしましたならば、これはまた農林省方面とも相談いたしまして、特別な対策を考えなければならぬ、かように思っております。
  11. 小坂善太郎

    ○小坂分科員 もう一つお伺いしておきたいのでございますが、風水害の場合ですと非常な災害復旧費というものが出るわけであります。地すべりによって田畑が使えなくなった、あるいは民家が押し流されてしまった、こういうようなものについてはどういうふうになっておるのでございますか。
  12. 山本三郎

    ○山本(三)政府委員 これは地すべり防止法の場合に、いろいろ討議されまして、危険地帯を地すべり防止地域として指定いたすわけでございますが、その地域にありまする住家が非常に危険だというような場合に、よそへ移りたいというようなことを考えられる方がありますならば、住宅金融公庫から一つ低利資金を貸してあげましょうということで、そういう処置をいたしておるわけでございます。  それから被害を受けた場合にどうかということでございますが、これについては、災害の場合にはやはり資金の貸付が考えられるわけでございますが、具体的にはどういうふうに進めておるか、住宅局の方の所管でございますので……。
  13. 稗田治

    ○稗田政府委員 住宅金融公庫の一般の個人融資の貸付額のうちに、災害用として若干ワクをよけてあるわけでございます。そうしまして、大災害でなくとも、貸付することが適当であるというような場合には、そういった特別ワクのもので貸付をやっておるわけでございます。なお、災害が非常に大きくなりますと、先ほど申し上げました災害復興住宅の貸付資金災害地に全部貸すようになるわけでございます。
  14. 小坂善太郎

    ○小坂分科員 いろいろ伺いまして私も御配慮の点は感謝いたしますが、ただいま大臣のお話にもありましたように、また河川局長からもお答えがございましたように、茶臼山を重点地区として、非常に大規模地すべり地帯でありますから、どうか一つ徹底的に、しかも至急に御調査を願って結論を出して、一日も早く地区住民を安心させていただきたいということをお願いいたしておく次第であります。  次に道路でございますが、すでに道路につきましては、お話にもありましたように、今年度も引き続いて順調に道路の整備計画に関する予算が組まれておるわけでありますが、かつて道路五カ年計画が策定されました当時から見ますと、非常に重点が変わっておるところもあるのであります。地区々々によりましては非常に変わっておる地区もあるわけであります。たとえば、観光ということがその当時はあまり問題になっておらなくて、主として都市間をつなぐ道路であるとか、あるいは産業道路というようなものが重点的に取り上げられたと思うのでありますが、最近は経済の状況も非常に変わってきまして、第三次産業といいますか、観光というようなことに相当多くの資金が、国民の消費が投ぜられておるわけであります。そこで、こういう観点に立ちますと、当時考えていなかった道路でも非常に重要な道路になっているものがあるのじゃないか、こういう点は一つお考え直しになってみていただくことはできぬかというような点をお伺いしたいと思うのであります。具体的に申しますと、これまた私の知っておることでありますから、勢い郷里のことになるのでありますが、御承知のように、黒部第四水力発電所ができました。これは将来わが国における観光の最も重要なるサイトになるのじゃないかという感じがいたすのであります。幸い御配慮によって、東京から長野まで参ります国道はこの十一月ごろには完全に舗装になるそうでありますから、四時間くらいで東京から長野まで行けるようになる。そうすると、長野から黒部ダムまでの道をよくすれば、東京——黒部峡谷間五時間というキャッチ・フレーズも可能になるわけであります。ところが、この間の道路はわずか三十五・三キロでございますが、これが非常に羊腸の道でございます。これは主要県道にはなっておりますが、昭和三十三年まで国費が一文も入らないというような状態でありました関係もありまして、現在非常に重要な路線になりつつあるのでありますが、いかにも道がひどい。外人なども最近非常に参りまして——道路局長あるいは河川局長御承知の国際ダム会議というようなものがあるわけであります。そこで、どうしても黒部ダムに連れていこうということになると、その道がいかにも悪いというのは、日本の経済構造の二重性であるとかいわれておりますが、ダムは非常にりっぱにできるが、道の方はさっぱりだというようなことを示すことになって、非常にみっともないじゃないか。また逆にそれをやれば非常にいいのではないか。オリンピックの関係もありますし、こういう問題を一つ取り上げていただくことはできぬものだろうかという点を伺いたいのであります。
  15. 村上勇

    村上国務大臣 道路の五カ年計画決定当時の国内の様相と三年目を迎えました今日とは、御説のような非常に情勢が変わっております。いわゆる日本の風光明媚を諸外国に紹介し、これによって外貨獲得というような点につながりますので、そういうような面から考えましても、もう少し観光の面に重点を置いて参りたいと思っております。従いまして、五年後に規模を変えていくというようなことであってはとうてい間に合わない。オリンピックも四年先には東京で開催されることになりますので、この際一つ道路の五カ年計画を相当その規模を拡大する必要があるだろう、かように思っておる次第であります。  ただいま御指摘になりました黒部第四発電所を中心とする地帯は全く人跡未踏のところでありまして、私どもあの地域一帯は全く神秘的な観光地帯だというようにも考えております。これを大都市につなぐということは最も緊要なことであろうと思っております。そういう意味から、私といたしましては、ただいま御質問の趣旨を尊重いたしまして、鋭意努力いたしたいと思っておりますが、なお詳細にわたっては道路局長から御説明申し上げます。
  16. 佐藤寛政

    ○佐藤(寛)政府委員 ただいま御指摘になりましたように、道路整備については相当大規模事業を年々実施しておるのでございますが、それにもかかわりませず、最近の交通情勢から申しますと、整備が間に合わないという状態になっておるわけでございます。ただいま大臣からお話がございましたように、私どもといたしましては、もう少し交通情勢に合うような道路整備計画を考える必要があるのではないかと思いまして、鋭意準備をいたしておる次第でございます。  なおまた御指摘がございました黒部線につきましては、全く御指摘の通りでございます。従来ああした路線はほとんど考慮するいとまがなかったのでございますが、ダムの関係で長野の方から入ります隧道などもできて参りますと、黒部へ参ります交通路といたしまして、長野からの道路を整備いたしますならば、非常にいい観光ルートになる。観光ルートにつきましては従来からも考えないのではないのでございますが、とかくそこまで手が及びかねたのでございます。今後におきましては、観光事業というものも非常に大事でございますし、また言うまでもございませんが、近くオリンピックを控えまして、そういう準備をいたすことも非常に大事なことでありますので、先ほど来御意見がありました点をよく慎重に考えまして準備をいたして参りたい、こう思っております。
  17. 小坂善太郎

    ○小坂分科員 大臣の非常な御熱意を伺って敬意を表しますが、具体的にはどういうふうにするのでございますか。そういう御意思があるということになると、これは局長に伺いますが、具体的にはあなたの方ではどういう手続をとってこれを進めていかれるのですか、伺いたいと思います。
  18. 佐藤寛政

    ○佐藤(寛)政府委員 具体的に申しますと、ただいま閣議決定になって実施いたしております道路整備五カ年計画の総工費八千百億円でございますが、この規模がまず小さい。そこでこの規模を大きくいたしたいということであります。これには五カ年計画を変更、改定いたす必要があるのでございます。そういうふうに所要事業を、現在予定しております以上に実施できますように、一つ事業計画を改定いたしまして、その事業計画内容といたしまして、それではどういう事業を追加していくかということがいろいろまた問題になりますが、それにつきましては、最近におきます交通情勢から、あるいは道路網の再検討ということも必要になって参るかと存じます。一級国道、二級国道あるいは主要県道、こういうものの再検討も必要になって参ろうかと思います。その際に観光関係におきましても、従来やはり観光の重要なことは私どもも考えておるのであります。従いまして、重要な観光地に対しましては二級国道が配置できるように道路法の上では相なっております。しかしながら、そうなってはおりますが、その二級国道の配置で、重要な観光地域への幹線がうまく含まれておるかどうかという問題につきましても再検討する必要があるのではないか。まずそうした道路網の再検討を実施いたしまして、それからそれらの道路に期待されております交通量から整備の量あるいは整備の順序などを考えて参りたい、こう思うわけでございます。ただいまそれらの基礎的ないろいろな調査をいたしましたり、準備をいたしておる次第でございます。
  19. 小坂善太郎

    ○小坂分科員 お考えはわかりますが、それではなかなか進まないのではないですか。やはり大臣もそう言っておられるのだし、あなたの方が五カ年計画を再検討するのだ、こういう意思を明確にされて、そうしてそれに従っていろいろな調査をやっていくということでないと、調査をやってみたら再検討の必要が出てきた、こういう考え方ですと、これはなかなか進まないのじゃないかと思うのであります。一方オリンピックを控えて、この機会にやらなければならぬいろいろな仕事というものが近きに迫っているわけです。これは一つ大臣からそういうお気持をはっきりこの際言っていただけると、私どもは大へんありがたいと思います。
  20. 村上勇

    村上国務大臣 まず計画変更、規模を拡大するということになりますと、一番問題になるのが事業費の問題なのでございます。事業費につきましては、私どもも相当伸びの見込みも立ちますので、どうしてもことしは五カ年計画規模の拡大をやらなくちゃならない。それには今道路局長からちょっとお話し申しましたように、一応それらの路線の選定をする、そうして関係方面とも交渉して、審議会等にかけまして、初めてこれが決定することになると思うのであります。最後は国会で決定することですが、ともかくそういう手続を今考慮いたしまして、どうしてもことしは五カ年計画規模を変えて、そうして二級国道の主要なものは一級にするとか、あるいは重要主要道を二級国道にするとか、あるいはただいま御指摘のありましたような観光に最も重要な路線については、これを国道にするというようなことをして、積極的にオリンピックまでには相当誘致策ができるようにしたい。そのための道路五カ年計画規模の変更につきましては今研究いたしておりますから、その際には一つ国会の皆さん方の御声援をいただきまて、ことしは五カ年計画規模の拡大をはかるということを今建設省として研究いたしておるところであります。
  21. 小坂善太郎

    ○小坂分科員 村上大臣が非常に仕事熱心におやりになって、しかもあまりけばけばしい宣伝をされぬで、実体的に仕事を進めておられることについては、私もかねがね敬意を表している一人なんです。それで、治山治水特別会計もあなたの時代におやりになった。今度は道路整備五カ年計画の再検討をぜひ一つこの際やっていただきたいと思っておりましたところ、ただいま非常に心強い御答弁をいただきまして、私どもそのことを願う一人として感謝をいたします。  そこで今お話のありました事業費関連してでございますが、これは局長からお伺いしたい。だれも言うことでありますが、道路舗装ができたと思うとまたひっくり返す、ガス、電気、水道工事が次々に舗装と、きびすを接して出てきて、舗装したあとからひっくり返しているということは、東京のみならず、大都市に住む者はほとんど例外なくそれを言っているわけです。これを一体どういうふうに調整していかれるつもりなのか、そういう御案がありましたらお願いしたい。これはむしろあなたの御責任においても、ぜひ事業費を節減するという意味においても、考えてもらわなければならぬ問題だと思う。
  22. 佐藤寛政

    ○佐藤(寛)政府委員 せっかく経費をかけまして舗装をいたしました道路をいろいろな事業のために堀り返すということは、経済的に非常に不利であるばかりでなく、利用者の方々にも大へん御迷惑な次第でございまして、私はその点始終おしかりをいただいているわけでございます。それで、何とかしてそういうことのないようにいたしたいと考えまして、数年来いろいろ苦心をいたしている次第でございます。ただいまにおきましては、結局やはり堀り返すと申しましても、水道なり、ガスなり、あるいは電信電話なり、皆重要な事業でございまして、そういうことを絶対にやらないというわけにも参りません。ただ時期をうまく調整いたしまして、舗装をこれから実施いたします道路につきましては、あらかじめその前にそういった埋設を要するものをちゃんと準備ができるようにいたすことが必要かと存じまして、実はそういった関係機関の間で、中央にそういうことを打ち合わせいたします連絡協議会を持っております。なおまたこれは各地の問題でございますので、地方に府県ごとにお互いに連絡する協議会を作らしておりまして、毎年度、新年度の初めにおきまして、舗装実施する計画、それに対していろいろ電縫等の埋設あるいは堀り返し計画も相談いたしまして、そごがないように実はやっているわけでございます。しかしながら、ときどき思わぬ必要がございまして、実はそういうふうな日ならずして堀り返すというようなことがないではないのでございますが、そういう点についてはさらによく連絡を緊密にいたしまして、一つせっかく舗装したものを堀り返すことがないように、それからまたいろいろな機関が別々に間隔を置いて堀るということなどもうまく調整いたしたい、そういうようなことにつきましては、従来とも、先ほど申しましたように、いろいろ打ち合わせいたしておりますが、これのやり方につきましては、来年度におきましてはさらによく打ち合わせをして、そういう御不満のないようにいたしたいと思っております。大都市などでは非常にそれが目立ちまして、従来ともに注意いたしているのでございますが、まだ十分でないことを私どもとしては大へん申しわけない次第と思っております。来年度におきましては、この上とも注意して参りたいと考えております。
  23. 小坂善太郎

    ○小坂分科員 協議会を作ってやっていらっしゃることは私ども承知いたしておりまするが、それが作られてから特によくなったとも思えないので、伺っておるのです。協議会がきめたことについては、何か罰則が要るのじゃないですか。当然あとでガス、電気、水道等の工事があることはわかっておるのでございまするが、それが十分連絡がなかったということについてはやはりある程度の罰則規定のようなものを設けてやっていきませんと、ただ会って話をしているだけでは、事態はよくならぬのじゃないかと思うのでありまして、特にそういう点を御考慮願いたい。  それから、非常に工事が悪くて、ひどいのは舗装されて三カ月くらいするとぼこぼこ穴があいてしまうというような工事が随所に見られます。これはあなたも感じておられることかと思うのでありますが、こういう点は何か監査の制度というものはないのですか、その点を伺っておきます。
  24. 佐藤寛政

    ○佐藤(寛)政府委員 直轄工事は言うまでもございませんが、補助事業等につきましては、工事の途中におきまして中間検査あるいは工事の終了後に竣工検査等をいたしまして、そのほかおりがありますれば随時指導をいたしております。御指摘のようなことは、あるいは直轄とか補助工事ではない工事のことかと存じますが、そうした事業につきましては、これを実施いたします機関の道路の設計者あるいは計画者並びにそれを実施いたします事業を担当する関係等の御注意を待つことが必要でございまして、これらにつきましては、そうした関係の係官並びに業界方面の方に十分道路の研究をやってもらいまして——舗装と申しましても、申すまでもございませんが土質により、交通量により違うわけでございます。土質のいいところには必ずしもそう金をかけたことをやらないでも、延長を延ばすことが大事でございます。またそうでないところに簡単な舗装をいたしますと、これは先生の御指摘のようにすぐこわれてしまうということがございますので、それらにつきましては各方面の技術向上に待つ必要がございますので、そうした技術向上及び最新技術の普及という面も私どもとしては心得なければならぬと存じまして、いろいろな打合会また建設省の外郭団体の講習会等におきましては、たとえば講師を派遣するとか、資料を提供するとか、いろいろな方法をもちまして、技術の向上に努めたい、そうして、先ほど申されましたようなことをできるだけ早くなくしたい、こういうふうに努力いたしております。
  25. 小坂善太郎

    ○小坂分科員 最後に、技術の点に触れられましたので、私もその点を伺いたいと思っておったのであります。あなたを前に置いて失礼ですけれども、数年前には、日本には土木の専門家はいるけれども、道路の専門家というものはいないのだ、土木工学の出身者はほとんどダムその他の建設の権威者であって、道路についてのほんとうのエキスパートはいないのだというふうにいわれておったのです。最近今お話しのように非常に技術方面を開発なすっていらっしゃるように伺っておりますけれども、全体として見ますと、一兆円の金を使うなら一割節約しても一千億で、非常に金が出るわけです。全体の事業費を増すことも、もちろん私どもも御協力いたしますけれども、しかしその事業費の中でできるだけ研究して、これはほんとうに技術で生み出せることなのでございますから、特にそういう能率的な工事をやっていただきますようにあなたの奮起をお願いしておきたいと思います。以上でございます。
  26. 岡本茂

  27. 岡本隆一

    岡本(隆)分科員 私はきょうは住宅問題についてお伺いしたいと思うのです。戦後日本の経済復興は目ざましいものがございますし、国民生活も非常に戦前の姿に近づいて参りましたが、ひとり住宅だけは取り残されておると思うのであります。ところが、政府のそれに対するところの対策というものはきわめて微温的であって、今これだけ国の経済状況が復興し、どんどん鉄筋のビルが東京都内でも建っておる、これだけ建設的な大きなブームが起こっておるのに、どうして庶民の住む家が建たないのだろうかということは、国民全体がひとしく不思議に思っているところだと思う。そこで、政府の方でも住宅建設五カ年計画であるとか、あるいはまた公営住宅建設の三カ年計画であるとかいうふうに、いろいろ計画を立てて進めてはおられますけれども、しかしながら、われわれの目から見ますと、このような微温的な対策をもってしては、この日本の住宅難というものは、百年河清を待つといった感じがするのでございます。私は建設大臣に、この日本の住宅難をこれから何年の間にどういうふうにして解消していくのだというはっきりとした見通しをこの際まずお伺いしたいと思います。
  28. 村上勇

    村上国務大臣 昭和三十二年度の住宅統計調査の結果によりますと、昭和三十三年の十月現在の住宅の不足数は二百十六万戸であったのであります。これに住宅建設五カ年計画におきまして算定されたその後の新たな需要増を加え、その間の住宅建設戸数を差し引きますと、昭和三十五年度当初の住宅不足数は約百六十五万戸となりますが、最近人口の都市集中が著しく、また世帯の細分化等の傾向がありますので、住宅の新たな需要が非常に増大いたして参っております。今後の長期計画につきましては、この細分化というようなことも考慮に入れなければならぬと考えておりますが、住宅不足の実態としましては、この住宅の統計調査の結果、市部における住宅事情の改善が郡部におけるよりもおくれているということで、結局住宅難が低額所得者層に著しいことが判明いたしておりますので、これらの実態に即応した適切な住宅対策推進いたしたいと考えております。現在の住宅不足は、終戦後の住宅事情の極度に逼迫した当時の基準をそのまま踏襲して算出いたしておりますので、今後国民経済の向上とともに漸次私どもはこれを増強いたして参りたいと思っております。大体に年間約六十万戸以上の伸びを考えますと、そのように十年も十五年もかからなくても、何とか解決するものだろうと思っております。
  29. 岡本隆一

    岡本(隆)分科員 昭和三十二年に二百十六万戸であったものが、今では百六十五万戸に減ってきておる。そういう計算でいけば、じきに残りの百六十五万戸は軽くこなせるだろうというような御意見のようでございますけれども、しかしながら、たとえば本年の住宅建設計画を見ましても、六十万戸の建設予定されておる、その六十万戸の建設のうち、政府の方の施策住宅というものは二十二万戸である。その政府施策の二十二万戸のうち、公庫住宅というのは、これはやはり自力建設です。施策住宅といえども、これはやはり金をかけて建てる。だから頭金を持ち、相当の資力のある者でなければ、この政府施策の中へ入ってくる資格を持ちません。そういたしますと、今、政府の方でほんとうに庶民のために建てていただけるというのは、これはまず国庫補助の対象になっている公営住宅合計十五万一千戸、これは一応は庶民のための住宅でございますけれども、しかしながら、その他の四十五万戸というものは一応相当経済的な余裕を持つ者でなければ入れないような形の住宅になっておる。そこで政府は、この民間自力建設、かりに六十万戸と二十二万戸というものを差し引きすれば、三十八万戸というものは民間自力建設を期待されておられますが、この民間自力建設の三十八万戸というようなテンポがいつまでも続き得るかということを私はまず考えていただかなければならぬと思うのです。住宅が今一番払底しておるのは、むしろ経済力のない、非常に貧しい低額所得者の間で住宅が払底しておる。ところが、それらの人に対して、自力建設というようなことがにじんでいく見通しは全然ございません。それらの人が住宅建設し得る資力を持つというようなことは、もうほとんどないわけです。百六十五万戸今不足しておる、百六十五万戸の住宅不足だ、どうしても住宅がほしい、その百六十五万戸の家を求める対象というものは、これは非常に貧しい人です。しかもそれはその中で——戦後家を焼かれたときには、それは非常に大きな住宅不足があったでしょう。しかしながら、それは資力のある者、資力を得た者だけはどんどん建てていきます。それによって、今住宅建設というものが自力建設によって進められておる。ところが、今もう経済も安定して参りましたし、戦後のようなやみ利得というようなものもございませんし、一応貧しい勤労者というものは、それはそのまま固定しておる。それが今百数十万という膨大な人たちが家を求めて得られないというふうな状態に取り残されておるのです。だから、今まではある程度政府資金を借りたりあるいはまたみずからの資金でもって家を建てるというふうな人たちが建てて参りましたけれども、これから後は、そういうふうな人たちは、今残っておるところの住宅不足の戸数の対象の中には入っておらないと思うのです。たまたまそれは今後も家を建てる人はあるでしょう。それは相当な経済的な余裕のある人たちが自分の家を建てかえたり、あるいはよりよい家に住みかえたりというような形の中に住宅は今後も建っていくでございましょうけれども、取り残されておるところの百数十万の家を求めるところの庶民というものの数、この数は私は減らないと思うのです。この百数十万戸というものを戦前の姿に戻すための政府施策として、この際大きく住宅対策というものを立てて、根本的にものの考え方を変えて、戦争によって焼き払われた家はやはり政府がみずからの手によって建てていく、それによって庶民の住宅難を解消するのだ、こういうふうな考え方を持っていただかない限り、いつまでも民間自力建設に待つというふうなことでは住宅難は解消しない、私はこう見るのです。一つ建設大臣のそれについてのお考えを承りたいと思います。
  30. 村上勇

    村上国務大臣 岡本先生のお考え方は、私もうなづけるところがあるのですが、しかし、これまでは三十八万戸を予定すれば三十八万戸、三十五万戸予定すれば三十五万戸、十分伸び政府予定した以上のものがあります。今後は庶民階級——それは持てる者が建てたのじゃないか、これからは一般勤労階級になるから、そういうわけにはいかないのだという御意見もありますが、私はそれぞれの階層の人が、それぞれ自分に適した住宅を建てるので、まあ人間の一番本能と申しますか、それは結局衣食住、せめて住居だけは自分のものにしたいという人が大部分だろうと思います。そうしますと、それらの人たちが非常に切磋琢磨して、そうして建てていくということになりますから、この伸びは、今まで私どもが予定しておる伸びがここ当分は続くだろうと思います。それだからといって、何も政府の財政が許すならば、そういうようなことのみをあてにしないで、一刻も早く今一番強く要望されておる住宅問題を解決するために、政府としての重要施策として、住宅を十分間に合わしたらいいじゃないかということはよくわかりますし、私どもその気持ですが、まあ昔のことを言うとおかしいのですが、昔は政府でどうというようなこともなかったのですけれども、今はこうして、たとい二十万戸でも、二十二万戸でもどんどん建てていきつつあるし、また将来これでわれわれ足れりというものでなく、これを十分大幅に伸ばして——毎年伸ばしてきておりますが、伸ばして参りたいと思っております。大体いわゆる細分化と申しますか、家族制度の上から、今までのような大世帯でなくて、もうすぐどんどん細分化していくものですから、人口のふえる割合だけでない住宅を必要とするわけなんで、三十七年か八年までには、もう住宅不足ということは解消できるつもりであったのですが、そういうような傾向も手伝って、今日御指摘のような状態であることは私ども遺憾に思っております。しかし、必ずこれは順を追うて積極的に予算をつけて、この住宅問題を一刻も早く解決いたしたい、かように今思っております。
  31. 岡本隆一

    岡本(隆)分科員 これは、あなたとだけ議論してもそれはなんだと思うのですが、国家予算の中で住宅対策費が何%占めるかというふうなことは、これは国の施策全体との均衡の問題でございますから、今私が申し上げたいと思うのは、ことしの予算が不足をするとかいうふうな意味ではなしに、住宅対策というものについてのものの考え方を、今後大いに政府としても、もう一度考え直していただく必要があるのではないか。従って、所管大臣であるあなたの頭の切りかえがまず必要であるというふうに私は思いますので、要望申し上げるのでございますけれども、あなたの今の仰せと私とは考え方が違うのです。それはなるほど今後も相当な数において家は建っていくでしょう。家は建っていくでしょうけれども、しかしながらその建っていく家というものが、民間自力建設というものに相当な比重を置く限りにおいては、住宅難にほんとうに苦しんでおるところの庶民のための家は建たない、こういうことを私は申し上げたいのです。  昭和三十三年の総理府の統計局の住宅統計調査を見ますと、これは名古屋でとった統計のようでございますけれども、各所得別のものが出ております。住宅難世帯数のものが出ております。その表を見ますと、住宅難で困っておるのは——あなたの方も住宅難世帯として、たとえば非住宅住宅でないような小屋がけに住んでおるとか、あるいは狭小、過密住宅、あるいは大修繕を要する住宅であるとか、あるいは非常に狭いところに間借りをしておるというふうな人たち、そういうふうな人たちを住宅難世帯といたしまして、所得別に見ていきますと、住宅難の率の一番高いのは、所得一万円から一万五千円の世帯において二六%の率が出ております。それから一万五千から二万の間で二〇%、一万以下になりますと三〇%というふうな大きな率において住宅難を訴えておる。従ってそういうような所得層の中で住宅難に困っておる、そういうような条件——過密とかいろいろな条件で住宅難の状態にある世帯というものは、二万以下の所得の人たちにおいて、もう非常な率において高いわけなんです。だから、住宅難にほんとうに困っておるのは、月収二万円以下の人たち——この人たちの間で非常なはなはだしい住宅難がありまして、収入が三万ないし四万というふうな世帯になりますと、住宅難を訴えるものは一・七%に減ってしまっておる。こういうふうな統計の実態を見ますときに、収入二万以下の家庭において、少なくとも二〇%ないし三〇%の率において、狭過ぎて困る、間借りでは暮らしにくいというふうな、日々の生活に非常な住宅問題についての難渋を訴えておるというふうな状況を見ますと、今の住宅難というものは、家だけが建っても、これらの人たちの住宅難というものは解消しないという見方を私は持っております。だからそういう意味においては、やはりこれらの人たちの住宅難——収入一万円以下の人たちでその三〇%を占めておるようなはなはだしい住居難というものを解消するのには、この際何かやはり政府の方で住宅問題というものを非常に大きく国民の福祉問題として取り上げていただきたい、こういうことを私はまず第一段階としてお願いしたいわけです。  その次に私はもう一つ、今あなたが仰せになった政府も金を出して建てているじゃないか、政府資金も相当出しているじゃないか、戦前にはこんなことはなかったのだ……。しかし戦前だって、前の欧州戦争のあとの非常に住宅難がありました当時には、やはり公営住宅、町営住宅というふうな制度がございまして、自治体でもって住宅を建てております。そんなことは何といたしましても、戦後私が非常に残念に思うことは、たとえばエネルギー資源としての電源開発だとか、そういうことには政府資金が大きく投入されていきます。あるいはまた計画造船なんかにでもやはり大きな資金が投入された。そういうふうな姿を見ていくときに、それと比べるならば、私は住宅にもっと今言われるような形において政府資金が投入されたとしても、これは何の不思議はないと思うのです。あなたは住宅にだって金を出すようになって、こうしてやっておるのだからというふうなお考えのようでございますけれども、これは私のとり方が違っておるかしれませんけれども、それは戦争のために家が焼き払われて、そのために起こってきた急激な住宅難であり、しかもそのために住宅に住む人たちの間に非常な不均衡が起こっております。  私は今日住生活におけるところの不均衡が、四階層の形で出てきておると思うのです。まず第一には、一番住居に困っておる人たちは、家がなくてやみ家賃を出して間借りしておる人たち、たとえば六畳一間に三千円も五千円も出して間借りしておる。だからべらぼうに高い。一畳千円というような家賃を出して住まなければならない。こういう人たちは低額所得者であります。自分で住居の持てない非常な低額所得者が、べらぼうな高い家賃を出すことを余儀なくされた状態に放置されておる。その次に、戦後に建ったアパートであるとか、あるいは戦後に建った貸家は相当高家賃です。そういうような戦後の高い家賃に住んでおる人が第二段階に入ると思います。第三段階に入る人は、例の戦前から建っておる統制の家賃の家に住んでおる人たち。その次に非常に恵まれておるのは給与住宅に住んでおる人たちであります。たとえば公務員であるとか、あるいは大きな企業体が厚生年金保険であるとか、あるいは公団政府資金を借りて住宅を建てております。家賃はほとんど建設費に見合わない安い家賃でもって、自分の方の従業員を住まわせております。だからそういうふうな四段階の人たちがおって、国民全体の間に、住居費に対して支払う金額でなしに、支払っておる家賃そのものの経済効果に非常な大きなアンバランスがあるわけであります。片方は一畳千円というようなべらぼうに高い家賃を払わなければならぬ。片方は水洗便所であり、非常に環境のいいところに住んで、しかも一畳について百円くらいの家賃を払えば足りるというふうな人たち、しかもその両者の間には給与上、片方は大企業に勤めておって相当恵まれた、恵まれたというと語弊がありますが、相当の給与を受けておる。片方は非常な低額所得でありながら、そのようなべらぼうな住居費を払わなければならない。国民生活の中でもって、そのような住生活における非常に大きなアンバランスがある。このアンバランスというものを政府が解消していく、なくしていくという努力をしていただかなければならぬと思うのです。それに対する努力というものは、とにかく今家をふやすことに精一ぱいで、何ら手が打たれておらない、このように私は思うのでありますけれども、その問題をどういうふうにお考えになり、またどういうふうな方針をとってこれからそれを解消していこうとなさるのか、私はそういうふうなことについてあなたのお考えを承りたいと思います。
  32. 村上勇

    村上国務大臣 ただいまも御指摘になりましたように、家賃の上にも非常にアンバランスのある点については、これは何としても政府資金によるいわゆる公営住宅的なものに置きかえていくように努力しなければ、ただ単に幾ら政府が低家賃で云々と申しましても、そういうアンバランスというものはなかなか一朝一夕に解消するものではないと思います。従いまして今後われわれとしては公営住宅、いわゆる一種、二種の公営住宅についてうんと力を入れていくということと、もう一つは公団住宅にいたしましても金利を引き下げるような方法を講じまして、そうして坪当たりのコストを下げていって、低家賃政策をとる以外にないものと思っております。従ってこの面に積極的に力をいたすのでなければ、ただいまのような、私どもの考えておるようなバランスのとれた低家賃で、国民生活が豊かになるというようなことは考えられませんので、その点については十分今後力を入れて参りたいと思っておりますが、なお専門的に住宅局長からお答えいたさせます。
  33. 稗田治

    ○稗田政府委員 ただいまお尋ねのございました住宅難世帯の所得階層分布、それに見合った政府住宅供給が行なわれておるかどうかという点でございますが、大体三十五年度の賃貸住宅計画におきましても、住宅難世帯の所得階層分布に見合ったように計画を立てておるわけでございます。と申しますのは、第二種公営住宅は一万六千円以下ということでございますけれども、普通平均の家族は四人と考えられますので、家族の控除を入れますと一万九千円以下でございますが、それが住宅難世帯の中の約四〇%を占めておるわけでございます。それから一万九千円から三万五千円の、つまり三万五千円と申しますのは第一種公営住宅に対する入居資格に家族控除を加えたものでございますが、それが三四%になるわけでございます。なお三万五千円以上につきましては二〇%、そういうふうな工合になっておるわけでございます。そこで三十五年度の計画におきましては、第二種公営住宅賃貸住宅の中に占める割合は三九・四%、第一種公営住宅が二七・二%、公庫、公団賃貸住宅が三三・四%というふうな工合で、大体におきまして正比例しておるというのではございませんけれども、そういうふうな傾向で賃貸住宅計画を立てておるわけでございます。なおこのほかに会社の給与住宅として使われております公庫の産業労働者住宅が三十五年度は一万二千戸でございます。それから公団分譲住宅、これが一万戸でございますが、これらは先ほどお話の中にもございましたように、会社の給与住宅というようになって供給されておりますので、大部分は公営住宅と同様の使用料で供給されておるということに相なるわけでございます。なお今後におきましても、住宅難世帯の中におきます低額所得者に対する供給に十分力を入れていかなければならないのは当然でございますが、この住宅難世帯のとり方でございますが、客観的な条件によりまして潜在しておるものをとらえておるわけでございます。先ほど二百十六万戸と三十三年の十月現在で申しましたのは、狭小過密であるとか、老朽危険家屋、同居世帯、そういったものを客観的な水準でとらえておるわけでございます。従いましてその御本人自体の主観的な要素は入っていないわけでございます。これが顕在してくる住宅難という形に、そこにそれぞれの意思が入ってくるわけでございます。それとは若干ずれるわけでございます。たとえば低額所得者、極貧階級にいたしますると、なかなか住宅の水準を引き上げようという意欲も持たないわけでございます。しかしそれかといって、そのまま非人道的な住居のままほうっておいていいかどうかというような問題もございますので、三十五年度におきましては従来公営住宅のワク内でやっておりました不良住宅地区改良という、新しく項目を立てまして、そういった非常に劣悪な住環境にある人たちを救済していこうというように考えたわけでございます。
  34. 岡本隆一

    岡本(隆)分科員 問題の所在は、最近の新聞にもエンゲル係数が戦後初めての引き下げになったというふうなことが出ておりましたが、この国民経済白書なんかを見ましても、昭和十年前後の国民生活の家計の状況と三十四年度を比較してみますときに、飲食費は戦前は三五・八%であったものが、昭和三十四年には三七・三%というふうに、大体戦前の姿に戻って参っております。被服費も家計費の中で占める割合は、戦前は一一・五%であったのが一一%に戻っておる。ところが戦前の姿と比べて昭和三十四年度において著しく異なっておるのは公課、税金ですね。税金が〇・二%であったものが、八・四%と非常にふえておる。それに対して住居費が一六・六%であったものが九・三%と非常に減っております。言いかえますと、住居費で安く、住居費でもって非常に劣悪な条件で住んでおる。それによって住居費にペイするところが少ない分を、そのまま税金に持っていっておる。それではその税金が戦前と戦後とどういうふうに使途の面で一番大きく変わっておるかといえば、社会保障のいろいろな拡充が行なわれてきておることだろうと思うのです。だから言いかえますと戦前と戦後の国民生活の姿というものは、極度にひどい、極端な言葉を使いますとぼろぼろの家に住むことをしんぼうして、そのかわりに国民年金ができた、あるいはまた国民皆保険ができたというふうなことになっておるのが、私は今の日本の姿であると思います。政府は今までキャッチ・フレーズになるようなものはぼんぼん打ち出して、結核撲滅をやるのだ、あるいは国民皆保険をやるのだ、あるいはまた年とったら年金を上げます、そういうふうなことをキャッチ・フレーズをやって、国民の社会保障への欲望を満たしながら、片一方住生活というものは非常に切り詰めた状態に据え置いておるというところに、私は政策的な大きな欠陥があると思うのです。やはり何としても日日の生活なのです。日々どういう環境に住んでおるか、これはもう非常に国民全体にとって大きな問題であるにかかわらず、その住居費を切り詰めてそれを社会保障費に回しておる。私はその社会保障が拡充強化されて完備していくということは、非難するものではございません。もちろん完備しなければいけない。しかしながらそれに伴って国民の日常の住生活というものが整ってこそ、初めてそこに社会保障というものが生きてくると思うのです。だからそういう意味においては今社会保障への大きな目が開けると一緒に、国民の住生活というものを整えてやるということが——これは国民の衣食住の中の大きな部分なんです。そういう意味において非常に重大な問題であるということをもう一度政府の方では考え直して、今社会保障にこれだけ重点を置いてきたら、同時にそれと同じ重点を持って国民の住生活というものにもう一度目を開き直して、政策の一つの転換をここにやっていただきたい。そして戦後の経済の復興とともに、もう一度住生活というものを大きな施策として、今後政府方針の中に取り入れていただきたい。これを私は先ほどから申し上げておりましたので、大臣もよく御理解願ったと思いますが、どうか一つ今後ともそういうお気持をもってやっていただきたいと思うのです。また今おっしゃいました住生活の不平等、これを是正していくのには、何としてもやはり公営住宅によらなければならぬということは、今あなたのおっしゃった通りでございます。そういうことになれば、そのことは裏を返せば、政府資金を今よりもずっと大幅に、国民の住生活の改善のために投入していかなければならないというふうな意味において今あなたはおっしゃったと思いますので、一つ今後一そうそういう御努力をお願いいたしたいと思います。  そこでもう一つこの機会にお伺いしておきたいと思いますのは、最近新聞なんかに地代家賃統制令が撤廃されるというふうなことが出ております。そこで国民の中では相当これを心配しておる向きがございますので、この機会に大臣のそれに対する確たる方針を一つ承りたいと思います。
  35. 村上勇

    村上国務大臣 国民生活の均衡を保つ上において、住宅の問題を積極的に推進するようにという御高見に対しましては、私も同感でありますので、今後十分その線に沿って努力いたしたいと思います。  ただいまの地代、家賃等の自由化とでも申しますか、この問題につきましては、非常に影響するところが大きいので、いろいろな観点から今研究いたしておるので、一つ十分な研究をいたした上でお答えいたしたいと思います。
  36. 岡本隆一

    岡本(隆)分科員 新聞紙上に、あたかも政府は本年度もうそれをやるのだと、既成の事実であるかのごとく報道されておりますので、国民の方では、いよいよ政府もそういう方針をとるのだというふうな意味にとっております。従って今研究をしておりますのでというふうな御返事では、それではなぜあれだけ大きく新聞紙が取り上げたのだろうというふうに、国民の方で不審を持つだろうと私は思う。そこで私は、あなたの私見としてでもけっこうでございますが、一体地代家賃統制令というものはどういうふうな意義を持つものであるか、また今後これは廃止するのがいいものであるか、あるいはしない方がいいものか、日本の住宅政策として、これからの方針として、今後ああいうものは廃止する方向へ持っていこうというお考えに立っておられるのか、あるいはやはり廃止すべからざるものという考え方に立っておられるのか、その辺をお伺いしたい。
  37. 村上勇

    村上国務大臣 まだ私の方の結論は出ておりませんが、党の政調会等の一部におきましては、大体廃止の方向に話が進んでおるように承っております。しかし建設当局としては、今のところまだそれをいろいろとあらゆる角度から検討いたしておりますので、ただいまのところ廃止とも何ともお答え申し上げる機会でないと思っております。
  38. 岡本隆一

    岡本(隆)分科員 この機会に、私もしろうとでよく存じませんので、お伺いしたいのですが、地代家賃統制令を改正する法律案というのが、数年前国会に出て論議されておるのを会議録で見たのでございますが、この地代家賃統制令というのはやはり法律であって、改正しようと思えば国会においてその議を経なければならないのか。あるいはこれは政令であるから、その内容政府において自由に変えていけるのか、その辺のところを一つ承りたいのであります。
  39. 稗田治

    ○稗田政府委員 地代家賃統制令は、御承知のように政令でございますけれども、ポツダム宣言の受諾に伴っていろいろ勅令が出ました。その関係の政令でございますので、これを改正または廃止するという場合には、法律と同様に法案を提出しなければならないということになっております。
  40. 岡本隆一

    岡本(隆)分科員 この統制令ができた目的ですね。これは戦時中にできたのだろうと思うのですが、この統制令が今日まで果たしてきた役割というものは、衣食住の中の大きなファクターである住生活の面において安定させるために、住居費が高くなって国民生活を圧迫しないようにという考え方から、これができてきたと思うのであります。しかしこの地代家賃統制令というものは、一部の人たちには大きな犠牲を強要しておるわけです。その一部の人たちというのは家主です。家主というのは、御承知のように企業家としてもほんとうの零細企業家です。それは一部にそうでない人もあるでしょうが、多くの家主というのは、一生の間こつこつ金をためて、それでもってやっと家作の数軒も持って老後の生活の資に供しよう、こう思って家を建てたのに、統制令でぐっと押えられてしまって、家賃というのはもらったのかもらわないのか、修繕費にも見合わない。そういうことで統制令が据え置かれておるために、家主の間に非常に不満のあることも私は承知しております。また零細企業家である家主がそのように圧迫されておって、国民の住生活に大きく寄与しながら何らの恩恵を受けておらない、保護を受けておらないというところに問題がある、大きな小満の原因があると思うのです。ほかの大産業が、いろいろ国に寄与する、国の経済の興隆に寄与するという点において、政府から大きな融資を受けたり、あるいは租税特別措置法でもっていろいろな税制上の優遇を受けたりすることがあるのに、国民の住生活にこれだけ寄与しておるところの零細家主に対して、何らそういう優遇とか特別措置というものがなくて今日まできておるのを見ても、この地代家賃統制令を早く撤廃すべしというふうな考え方が、零細企業家である家主の間に起こってくるのも当然であると思うのです。だから政府としては、今までにそのような国民の住生活に寄与した人のために、当然租税特別措置とか、そういうふうなものが行なわれてしかるべきであったと思うのです。たとえて言えば家賃の収入に対しては所得税の対象にしないとか、あるいはまた統制家賃をきちんと厳重に守って家を貸しておる、やみ家賃を取っておらない、そういう人たちに対しては固定資産税を免除する。もちろんそれに対しては地方財政に対する交付税というものを政府が裏づけしていかなければなりませんが、とにかくそういう形において、国民の住生活を安定させるためには、やはり政府もそれだけの特別措置をとり、それだけの恩恵を与えることによって、私は国民の住生活安定に対する奉仕というものを求むべきであったと思う。ところが何らそういう保護政策をとらないで、いわば零細家主の犠牲における住生活の安定というような政策を国がとってこられたところに、今日地代家賃統制令を撤廃すべしという根強い動きがあり、そこに政府としても統制令の撤廃を考えざるを得ないということになった根拠があると思う。だからこの際政府としては統制令の撤廃を考える前に、まずそういうような保護政策に踏み切って、その上に立ってそれでもなおどうにもならないという面においては、また第二段の考えをお持ちになってもいいと思うのでありますが、まず第一には、統制令の撤廃の前に、零細家主に対する保護政策、少なくとも国民の住生活の安定に対する政府の特別措置というものを考えていただかなければならないのではないかと思うのでありますけれども、大臣のお考えを一つ承りたいと思います。
  41. 村上勇

    村上国務大臣 保護政策によって今の家主を助けていく、合理的な家賃にするというようなことは、なかなか容易ならぬことであろうと思います。今御指摘のように、とにかく戦後のあの土地、家屋の暴騰を一応押える意味において、ああいう措置をとったわけでありますが、今日では先ほど岡本先生からお話があったように、一畳千円以上も取っておるような簡易アパートの家主に比べますと、今の統制されておる家主の立場はまことに同情すべきものがあろうと思います。従いましてこれは十分研究して、われわれとしてはやはり廃止の方向に進まなければならないと思いますが、しかしそれについてどの程度の保護政策をとっていくかということについては、検討してみなければわかりませんが、ともかく他の諸物価がほとんど安定し、他のものがほとんど統制撤廃されておる今日、ひとり家主のみが犠牲になっておるということを考えれば、これを等閑に付すことはできないと思っております。しかしその廃止ということを考えないで、その前に家主の保護政策をとるということについては、私今頭に浮かんで参りません。従ってもしそういう考え方を持っておる事務当局があれば、事務当局から詳細なお答えをいたさせます。
  42. 稗田治

    ○稗田政府委員 地代家賃統制令は早晩廃止すべき段階に達しておるとわれわれは考えておるわけでございますが、これは昭和二十五年に改正になりまして、昭和二十五年七月十日以前の建物、あるいは以前に建てた建物が建っておる土地、そういうものだけに限定されておるわけであります。しかも住宅の延べ坪数は三十坪以下のものであり、二十五年七月十日以後に建てましたものは全部統制がなしに自由でございます。今日は二十五年七月からその後約十年もたってきておるわけでございます。従いまして統制令の対象になっておる戸数は、全体の住宅戸数から申しますと非常に比率が減ってきておるわけでございます。なお地代家賃統制令の実態を調査いたしておるわけでございますが、統制額以下に押えられておるという戸数はこれまた非常に比率が減っておる。つまりほとんど守られていないという事実が最近になりまして判明してきたわけでございます。そういうようなことがございますので、いずれにいたしましても、部分的な二十五年七月十日以前のものだけ統制しておくということは、統制の技術としていかにも不自然なわけでございます。十年もたっておるわけでございますから、廃止ということを検討し始めてもいいのではないか。ただ影響するところがいろいろあると思いますので、今いろいろとあらゆる角度から検討中でございますけれども、今日まで統制令によって統制してきたことについての補償といったような意味のことは、われわれとしては何も考えていないわけでございます。ただ今後住宅を供給していく場合に、政府公営住宅であるとか公団住宅といったようなものだけでなしに、あるいは貸家組合とかそういうものを将来活用するよな方式もあったではないかというような御意見もあろうかと思いますが、そういうふうに住宅供給の面にこういった家主さんの組合といったようなものを活用していくことにつきましては、今後積極的にいろいろ考究いたしたいというふうに考えておるわけでございます。
  43. 岡本隆一

    岡本(隆)分科員 戦災で焼けた都市では、なるほど昔からの古い貸家というものは少ない。焼けたから仕方がない、建てて住まなければならないというので、土地は借りておりましても、家は今までの居住者が自分で復興して住んでおるという傾向が非常に強うございます。東京なんかもそういう傾向が強いと思います。しかしながら非戦災都市になりますと、あるいは戦災を受けなかった地方の郡部に参りますと、貸家というものがずいぶん残っております。だから国全体としてはなるほどあなたがおっしゃるように従来の統制家賃で住んでおる家の比率は少ないかもしれません。しかしながら部分的には密集してそういうところがあるわけです。たとえば京都です。京都はほとんどそのままですから、戦前のままの家がたくさんあって、しかも戦前の家賃で住んでいる。そういう安い家賃で住んでいる人は変わりませんから、戦前のままの状況に密集的におります。そういうところではやはり賃金構造なんかもそうなってくるのです。たとえば左官の手間であるとかその他の日雇いの手間とかいうようなものは、その土地々々の住居状況に応じて、やはりそれが計算のある程度の基礎になってきまって参ります。だからやみ家賃に住んでいる人は、非常に苦しい生活を余儀なくされるのです。一応その土地々々によって住居状況が違いますから、今地代家賃統制令が撤廃されるということになりますと、京都とかあるいは奈良というふうなところ——主査岡本さんも奈良ですが、そういうところへ参りますと、勤労者にとっては非常に重要な問題なんです。だからそういうふうなところでは、この統制令の撤廃というものに重大な関心を勤労者が持っておるということ、パーセンテージが少ないから問題にならないというふうな考え方に立たないで、部分的にはこれは勤労者にとっての切実な問題であるということをとくと考えて、方針をきめていただかなければならない。  そこでもう一つこの場合に考えていただかなければならないのは、日本の経済の二重構造を伴った大きな賃金格差があることでございます。その賃金格差があって、その中でもってまた今大きな住生活の二重構造が出て参っております。というのは、大産業になりますとみんなそれぞれ、先ほどおっしゃいました公庫の勤労者住宅であるとか、あるいは厚生年金の還元融資というふうなものでもって、どんどん鉄筋のアパートを建てておりまして、そこへ安い家賃でもって従業員を住まわせております。片一方零細企業の従業員は、企業自体にそういうことをやる能力もないし、さらにまたかりにやろうという意欲を持ちましても、償還の確実性というようなものがあやぶまれるため、そういう資金はあまり流れて参りません。従って賃金において大きな二重格差ができると一緒に、それに対するところのいろいろな付加給付というか、賃金に対する現物給与の形でもってまた大きな格差ができ、大企業に働く者と零細企業で働く者との間には、非常な大きな実質所得の格差というものが出て参っております。今言うところの還元融資は、全部その格差を増大することに拍車をかける役割を果たしていることが、現実の日本の今の政府の政策の姿である。そういうことにお気づきにならないで、勤労者の生活をよくするためにという考え方に立ってやっておられるのであろうと思いますが、現実には零細企業に働くところの多くの人たちにとっては、大きな不公平があるわけでございまして、従って政府としてはこの際、そういうふうな財政投融資の方から出てくるところの資金によるところの住宅政策は、もう一度その観点を変えていただきまして、もっと公平な、すべての勤労者に平等に行き渡るような住宅政策を打ち立てるために、積極的な意欲と努力を払っていただかなければならないと思うのでございますけれども、建設大臣のそれに対するお考えを承りたいと思います。
  44. 村上勇

    村上国務大臣 岡本さんの御意見は全くごもっともな御意見でありまして、今の住宅政策におきまして、大企業の勤労者住宅等に、大企業は自力でやれるはずであろうと思うのに、そこにやはり政府の低利の資金が行っている。そうして一方そういう職場で働く人よりもよほど低賃金で働いて人には、そういう恩恵がなくて、わずかな政府資金のいわゆる公営住宅等、ほんとうに何十人に一人しか入れないような低家賃の家に、恵まれた人は入れますが、そうでない人は非常に不自由な重荷を負って生活している。こういう不均衡を今の日本の住宅問題を解決する上には是正していくことが、何よりも大事だろうと思います。それを是正して、ほんとうに楽しい明るい生活を一般の勤労者もするということになるためには、どうしても先ほども申しましたように、政府資金によるコストの安い住宅建設を積極的にやる以外に、その方法はなかなかないのではないか、私はかように思っております。従いましてただ単に住宅戸数だけの解決ではなくて、いわゆる低家賃による住宅戸数というようなことについて、再検討する必要があろうと思います。この点は十分御趣旨に沿って積極的に検討を続けて参りたいと、目下かように思っている次第でございます。
  45. 岡本隆一

    岡本(隆)分科員 大臣の新しい観点に立った住宅政策を今後立てていこうというふうなお考えを承って、私非常にうれしいのでございます。もう一度今の地代家賃統制令の話に戻りますが、私はやはりそういうふうな施策政府の方から全面的に打ち出されてきて、さらにまた国民が、かりに統制撤廃になったとしても、新しく値上がりされる家賃にたえるような、高い住居費にたえるような所得、そこまで国民生活、家計の状態が改善されてくるまでは、統制令撤廃は私はある程度時期尚早であると思う。そしてまた同時に、それに対する裏づけとして政府は特別措置を、その犠牲を今後数年間払わせなければならぬ家主に対しては、今の税制その他の面におけるところの特別の措置を講ずることによって、住生活の安定をなお維持するというふうな努力をしていただきたいと私は思うのであります。もう一度くどいようですが、そういう意味において私は時期尚早である、だからそういうふうな政策の面の裏づけによって統制令の撤廃というものをもう少し延期すべきであるという考え方を持っておりますが、住宅局長はどうお考えになりますか。時期尚早であるとはお考えになりませんか。あるいはもうやらなければならない時期であるというふうにお考えになりますか。その辺のことを私は承りたいと思います。
  46. 稗田治

    ○稗田政府委員 ただ方向といたしましては、地代家賃統制令を撤廃すべき方向に向かっておるというふうに考えるわけでございますけれども、いろいろ影響するところもございますので、私といたしましては時期その他につきましては、十分検討いたさなければ判断が出て参らないと思うものでございますから、今その時期かあるいは一年あとかといったような点につきましては、まだ結論を得ていないわけでございます。
  47. 岡本隆一

    岡本(隆)分科員 一年あとか今かということであれば、これは五十歩百歩であると思うのです。そういう点になると私はあなたと相当見解の相違があると思うのです、地代家賃統制令を撤廃して、勤労者に居住費の上での大きな負担をかける前に、国の方がまず第一に今よりももっと大幅な住宅対策を講じて、しかる後でなければ、国民に対して犠牲を要求することはできないと私は思う。その辺について私は今後とも委員会の中で論議していきたいと思います。きょうはほかにも質問者がございますからこの程度で質問を打ち切りますが、十分慎重な態度で臨んでいただくことを特にお願いいたしまして、質問を終わります。
  48. 岡本茂

  49. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 主として大臣にお伺いしていきたいと思いますが、補足的に局長から御説明を願ってもけっこうであります。  来年度の予算は国土保全予算というふうにいわれるほど、非常に膨大な建設省予算であります。従って国家の予算の性格を左右するような予算だと思うのです。そして建設省から提出していただきました資料によりますと、この五カ年で建設省予算は約倍になっております。多い部局は三倍あるいは二倍というふうになっておりまして、そういう観点に立ちますと、この予算を有効に執行するという立場から、いろいろ検討すべきものがあると思う。二倍になった予算に対する執行体制が大体五年前と同じような体制であるということ、それから各部局の予算がアンバランスの点が相当あるということがございますので、こういう予算を大臣の御努力によって実現されようとしておる、これはまだ審議中でありますが、それに対する執行体制を再検討すべき時期であると思います。これは大臣の識見だけでけっこうでございますが、御見解をお聞きいたしたいと思います。
  50. 村上勇

    村上国務大臣 まず建設省予算におきまして、ただいま御指摘になりましたように非常に大幅に増額されたものといたしますれば、それはいわゆる治水関係の事業費だろうと思うのであります。この点に関しましては大体昭和二十八年から、すでにその水系、あるいはその河川、あるいはそのあらゆる地点について十分検討が加えられて、それらの技術的な面におきましても万事遺憾のないように手配ができておりますので、私どもといたしましては、この程度の予算を完全に消化し、またこれを有効適切に活用するということにつきましては、十分自信を持っておる次第であります。なお他の道路あるいは住宅、営繕あるいは計画等につきましては、従来と比べてふえてはおりますが、びっくりするほど大きくなっておりませんので、大して問題にするほどのことはないと思います。治水事業につきましては、これは十分私ども確信を持っておりますし、なお災害復旧費は三十四年度に比べて大幅に増額されておりますが、これはすでに着々と復旧事業推進いたしておりますし、この点に関しましても私どもは必要最小限度の予算である、かように思って、国民の信頼を裏切らないようにこの予算の適切な運用をいたしたい、かように思っております。
  51. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 大臣は少し抽象的にお考えになっておると思います。昨年からことしに予算増になったという観点でなしに、五年間に建設省予算が二倍以上になった、そうして建設省の執行体制は各年度少しずつ無理を重ねてきておるので、この五カ年間の予算の執行体制の中で、あらゆる点を再検討する時期ではないか。昨年からことしという分析からは、おそらく大臣は実感が出ないで大丈夫だとおっしゃるのだと思いますけれども、この五カ年の執行体制の上に立ってみますと、その間建設省は何の機構の是正も改革もないわけです。たとえば今度も建政局の設置を要望されましたけれども、これは通らなかった。しかし、この建政局というものをお出しになったということは、この五カ年間全体の行政の中で、請負業者その他に対する監督、指導、助成というものを含んでの体制を切り変えなければならぬという、大臣の認識から出されたのではないかと思うのでありまして、その点をもう一度お聞きいたしたいと思います。
  52. 村上勇

    村上国務大臣 私はただ事業面だけの観点からお答え申し上げたのですが、そういう面から申しますと私遺憾な点があろうと思います。第一、事業費の大幅な増額に対しまして、従事員と申しますか、定員が必ずしも私どもの満足する程度になっていない。来年度もわずかに百四十余名程度の定員増になっておるようでありますが、これにつきましても逐次定員を増してもらって、事業に何ら支障のないように当てはめていくようなことを考える必要があろうと思います。  それから三十五年度予算編成にあたりまして、建設省として強く要望いたしました建政局、これも御指摘のように、これによって用地の取得とかあるいは請負業者等の監督、整備というような点につきまして十分役立ち得るものを作ろうということでありましたが、来年度はいずれも、これは各省ともに行政機構の改革は待ってくれということになりまして、やむなく私ども断念いたしたのでありますが、特に砂防の予算増額だけでなく、砂防の事業の重要性にかんがみまして、どうしても砂防課を砂防部に引き上げたいというようなことも強い要望をいたしたのでありますが、これもまだはっきりしたことになっておりません。この点に対しましては、われわれ今回たといどうなりましょうとも、この五カ年計画の途上におきまして、これは何としてでもそういうような実態に沿った機構改革も、また定員増もしてもらいたい、かように考えて、この予算の執行にあたって十分遺憾のない方策を講じよう、こう思っております。
  53. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 大臣の執行体制に対する実感は非常に乏しいと思うのですが、こういう予算を本年度執行するについても、今の定員増の姿のようでは現場の監督というのはほとんど行き届かなくて、不正工事がずいぶん出るのではないかということもありますし、そういう関係からいって、この事業執行に関係する各種法案、建設業法にいたしましても、河川法にしても、あるいは都市計画法にしても、これは本年度においてあらゆる点において再検討する段階に達しておると私は思うのですが、各部局全体をにらみ合わせて再検討する御意思があるかどうか。大蔵省としては、軒並みに機構の改革その他は来年に延ばしてくれ、再来年に延ばしてくれと言いますけれども、各省の予算増大率を比較いたしますと、一律に考えてそういたしましょうというふうにいかない建設省予算ではないか、そういうふうに考えるので、重ねて建設省において、建設省機構を含んで執行体制の再検討を、一つ何か審議会を持ってでもやる御意思がおありになるのかどうか、私はそういう段階に達しておると思うので、重ねてお聞きいたします。
  54. 村上勇

    村上国務大臣 今年度、いわゆる三十五年度予算施行にあたりましては、この執行にあたって百四十余りの増で私は大した不安がないものと思っております。ただ御指摘のように、五年計画実施して参りますと、逐年ずっと予算が非常にふえて参りますので、これに相応する定員の増というものは、私ども積極的に今後関係方面とも交渉いたしまして、これは何としてでも確保して参りたいと思っておりますが、絶対に事業遂行の上に支障を来たさないような程度のことは、これは必ず実行して参ります。ただ去年からことしに幾らかの予算増がありましても、それによってそう不都合を来たすようなことはないと思っております。
  55. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 確信のほどを言われましたけれども、執行の途中でずいぶんロスが出るのではないかと私は思うので、なおこれは建設員会で論議をいたしたいと思います。そういう再検討のことを、私は定員だけのことではなしに、各種の関係で考えられるので、その点時間がないので簡潔にお聞きします。あと建設員会予算執行の場面、立場から、いろいろ大臣からお聞きしたいと思います。  こういう予算の執行について、技術者の養成、専門家の養成ということが、やはり執行体制において建設大臣の責任になっておると思うのです。国務大臣として必要なる予算をお取りになったあと、行政庁の長官としてそれだけ重大な責任があると思うので、そういう意味において、私はこういう年次計画を前提とした建設省予算の執行に応じて、教育の計画化というものが必要であり、それに応じた養成のために、建設大学でも持って、こういう年次計画の執行に応じた、それに必要にして、そうして十分なる人を養成するという技術者養成の責任を、大臣がおとりにならないといけないのじゃないか、そういう意味において、私は自治庁に自治大学があるように、建設省においても建設大学を持っていくという構想をお持ちになる責任があると思うのですが、それについて御見解をお聞きしたいと思います。
  56. 村上勇

    村上国務大臣 建設大学というほど大きなことは考えておりませんが、建設研修所等の強化によりまして、十分土木建築技術等につきましては、万事遺憾のないような態勢を整えて参りたいと思っております。
  57. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 ただ今ぽつんと申し上げたので、実感も伴わないし、あまり具体的に言うと、またあと困るというようなお答えのようでありますけれども、今のお答えはお答えになっていないと思うのです。これはこの次の委員会でけっこうでありますから、内部で検討して、こういう事業計画の中に、建設省自体の責任において技術者養成、専門家養成の責任が必要であるという認識にお立ちになれば、そういう構想をお持ちになるべきでありましょう。そうでなければ事業の執行の責任は持てなくなるだろう。しかも年次計画でありますから、それに応じた技術者の養成ということは、当然組織的な教育というものがあとに残された私は宿題だと思うのであります。それもなお次にこの答えを終わり次第、あとさらにお聞きしますから、具体的にお答え願いたいと思うのです。  それからこういう執行予算の中に、たとえばことしの治水事業の中に、直営に適するもの、請負事業として適するものというふうなことが、こういう予算の執行の中に出てくると思うのでありますが、そういう場合に、人員が少ないから直営によるべきものを請負に持っていくというふうな、そういうしわ寄せ方が、やはり執行体制が十分でないために不自然な行き方が行なわれてきておる、こういうことも含んで分析をされて、今で十分でありますという抽象的なお答えでは済まされないものが出てくると思いますから、御検討願いたいと思うのです。  次に、道路関係でありますけれども、五カ年整備計画の再検討が必要だとお答えになられた。おそらくその一つの理由は、ガソリン税の伸びがあり、ガソリン税の伸びがあるということは、自動車の使用量その他がますますふえておる。従って最初の計画と違った事情変更があって、さらに五カ年計画規模を拡大すべきだということの大きな原因であろうと思うのです。ところがそのガソリン税の使途について、公団に出資をするという方向に伸びの部分を多く持っていくというふうな予算の現われ方が出ております。ところがそれは有料道路でありますから、一種の投融資の計画であろうと私は思うのです。ガソリン税の伸びをいろいろ考えて五カ年計画の拡大をはかるという思想からは、そういう投融資計画に相当するような方向にガソリン税を使うということを認めるならば、私は規模の拡大というものは成り立たないと思うのです。その意味において、私はむしろ法律違反の支出であるとさえ考えているのでありまして、不適当であることは明らかである。その点についての大臣の御見解をお聞きいたしたいと思います。
  58. 村上勇

    村上国務大臣 その点に関しましては、私も実は必ずしも満足しておりません。不適当という言葉を使うことはどうかと思いますが、少なくとも一般会計ですべて両公団に対する助成はすべきものであろうと思っておりますが、しかし過去二カ年間ほとんど一般会計でみな出しております。そういうような点から考えて、一般会計の非常に窮屈なときには、こういう措置もやむを得ないのではないか、こう思っております。これは必ずしも凉しい姿ではないので、実は何か言われるだろうと思って私も心配しておったのです、率直に申しますと。しかし来年度予算のように非常な大災害一般会計が苦しい場合には、こういう措置も別に法律違反ではないと思いますから、こういう措置もとらしてもらって、また一般会計の窮屈でないときにはそれ以上にずっと大幅に出してもらうということを——私ども今後もこの方法で続けるということは、大蔵当局とも決して話しておりません。今後はこれでは満足しないぞということははっきりいたしておりますので、この点につきましてはいろいろ御意見もあろうと思いますけれども、一応こういう措置によって来年度の道路費というものを計上さしていただいたのであります。どうか一つ御了承願います。
  59. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 なお、これは建設員会で問答いたしたいと思いますが、もし建設大臣が更迭される場合に、これは前例にしないという申し送りでもしないと、この習慣は必ず前例になると思いますので、今のお答えはそういうことを含んでの御意見だと思いますけれども、この点責任をお持ち願わねばならぬと思うのです。  時間がないので、各論は建設員会に譲りますが、河川の関係でこういう特別会計もできたとき、技術的に河川の総合利用というふうな観点にまで進んでいく必要があるではないかと思うのです。直轄河川の思想から、利根川、信濃川というのは全体の直轄水系の思想に移っていって、支川を含んで——一つの河川の一部を直轄河川にしないで、利根川なら利根川全体を国の責任における対象にした直轄水系という形で、東京都の都市再改造についての基礎を作るというふうなところまで、河川行政が進むべきではないか。これも私が一番最初に申し上げた再検討の内容なんですが、そういう段階に達している。そのためには、河川法を改めて、水利権を知事だけにゆだねるという体制から、やはり国が持つという部面も残さなければならない、こういうことの再検討も必要だと思いますが、これも大臣の識見だけでけっこうです、お聞きしたいと思います。
  60. 村上勇

    村上国務大臣 私はあなたのお説に賛成ですけれども、いろいろと事情がありまして、容易にそこまで私のような者ではやれるかやれないか疑問ですが、少なくとも私は日本の水利の関係から申しましても、どうしてもそういうような方法をとることが最も適当であると思っております。それから一河川あるいはその水系を全部直轄にというような点につきましても、これは非常に強い要望もありますが、これもやはり関係するところが非常に多いものですから、この点についても次の機会までに研究さしていただきたいと思います。
  61. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 次に都市計画の関係の再検討、これまた識見でけっこうですがお聞きしたい。今の都市計画法というのは、無計画にでき上がった都市を跡始末するような計画のように思うのです。これからできる農村、市町村の未来に対して、計画的にそれを立てるような、そういう都市開発法の方向に切りかえていくべきであるのじゃないか。そういうようなことに関連して、土地収用制度の再検討ということも、すでに根本的に検討すべき時期じゃないか。道路、河川都市を含んで、そういうように考えられるので、大臣在職中にそういう再検討すべき体制をお作りになっておやめになる責任があるのじゃないか。やめるというのは、やめていただきたいというのではないのですが、そういう国土省的な構想にだんだん近づくかと思いますけれども、そういう方向に大臣が在職中に、こういう国土保全予算と世論が言うほどの予算になっておるときでありますから、真剣に再検討の体制をお作りになっていただきたい。その点を最後にお聞きいたします。あとそれに関連しての分析その他は、いろいろと各局長その他と論議をいたしたいと思います。そのお答えを願って私の質問を終わります。
  62. 村上勇

    村上国務大臣 たとえば首都圏の整備員会のような非常にまとまった機構で、こういう大都市を中心としたものは相当に整備ができつつありますが、しかし地方の小都市につきましても、ただいま御指摘のような点を十分研究して、将来、たとえば先ほどお笑いになりましたような何べんも道路の掘り返しをしたり、あるいはここからもう立ちのかぬというようなことのないような、抜本的な都市計画というものを作っておく必要があろうと思います。しかし私はいなか者で、なかなか大都市の構想等につきましては不得手でありますから、これはもし具体的なものがお入用であれば、計画局長が見えておりますから、計画局長からお答えいたさせます。
  63. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 いいです。
  64. 岡本茂

    岡本主査 この際、午後二時まで休憩いたします。     午後一時十九分休憩      ————◇—————     午後二時二十分開議
  65. 岡本茂

    岡本主査 休憩前に引き続いて会議を開きます。  質疑を続行いたします。柳田秀一君。
  66. 柳田秀一

    柳田分科員 四年後にオリンピックを控えまして、特に問題になるのは日本の道路だと思うのでありますが、ひとりオリンピックを円滑に遂行するためばかりではなしに、さらにこれに関連して観光の事業もありましょう。これに関連して、今日の計画では、一九六四年にオリンピックをやるとして、大体それに関連したものに対しては完成するような計画を立てておりますか、その点を一つ。
  67. 佐藤寛政

    ○佐藤(寛)政府委員 オリンピック開催に伴いまして道路関係で準備いたすことでございますが、これはオリンピックの詳細についてまだはっきりきまったわけではございませんので、その点につきましていまだ確定いたした次第ではございませんが、従来いろいお話し合いに出ておりますことによりまして、私どもの方で準備いたさなければなるまいと考えておりますものを申し上げてみますと、道路関係といたしましては、全事業でおおむね千四百九十四億の道路整備事業をオリンピック関係のために実施いたさなければならないかと存ぜられます。ただし、道路のことでございますから、オリンピックだけのものがそれだけという意味ではございませんで、やはりいろいろ生産、経済等のために役立つわけでありまして、御承知のように、ただいま実施しております道路整備五カ年計画で当然やることになっておるものが相当ございます。その量を申し上げてみますと、ただいま申しました千四百九十四億ほどのうち、現在の道路整備五カ年計画実施予定しております事業量がおおむね九百十一億くらいでございます。従いまして、約五百八十三億ほどのものが、現在の五カ年計画では予定をしておらないが、オリンピックのためには必要であろう、こう考えられるものでございます。これらは、開催までに私どもといたしましては何とか一つ道路の方でも整備をいたしたい、こう思っておるわけでございます。実はこの五カ年計画予定しておらない分に対しましてもいろいろ心配いたしておるのでございますが、けさほど大臣からもお話がございましたように、道路計画そのものに対しまして、あるいは本年度におきましても、その事業量の拡大等につきまして再検討をしなければならない段階に来ておるわけでございます。従いまして、これらの研究過程におきまして十分注意いたしまして、もしそういう機会が与えられますならば、そういう場合に計画の中へ取り入れて、そうして予定までに一つ完成さしたいものと考えておる次第であります。
  68. 柳田秀一

    柳田分科員 私実はオリンピック関係に携わっておるものですが、オリンピックに対して一部に尚早論もあるわけです。しかし、これは論外として、実際に国際的に日本がオリンピックを主催すると、まず日本の今日の道路の現状では、日本の国威と言うことは少し語弊がありますが、結局恥を諸外国にさらすことにならぬとも限らない。ことに会計年度がちょうど四月から始まるとすると、一九六四年のオリンピックは、今いつ完成するかまだきめておりませんが、少なくとも前年度中には完成してもらわなければならぬ。そうすると、六十三年度にはやはり完成しておかなければならぬ。そうすると、かりに今数字をあげられました事業量で予算がとれたとしても、問題になってくる用地買収だとか補償の問題だとか、そういう問題でこれが延び延びになって、たとえばそこに事業量はあっても工事ができない、結局においては完成しない、こういうことになってくると、いよいよもって完成年度を少し前に繰り上げて計画をしておかなければ、実際にそのときになって急にはこういう用地買収とか補償だとかいうような問題は解決しないと思うのです。そうするとかなり精密に、しかもゆとりを持った計画を立てる必要があると思うのですが、その点の準備はできておるのですか。
  69. 佐藤寛政

    ○佐藤(寛)政府委員 御指摘のように、先ほど申しました事業量から言いましても、相当大きな事業量でございますし、また、特に東京都及び近郊におきましては、用地買収等におきまして非常にむずかしい事情もあろうかと存ぜられます。そこで、私どもといたしましては、できるだけ早くその準備にかかるようにいたしたい、こう思いまして、実は来年度、三十五年度におきまして、さっそく一部準備にかからしていただきたいというわけで、予算を要求いたしまして、ただいまのところ、予算にいたしまして六億六千万円のお金をちょうだいいたしております。これによりまして、最も緊急であり、またなかなかむずかしいと思われるのは東京都内の環状七号線と放射四号線というふうにただいま考えておりますが、そういうふうな最も大事な、またいろいろむずかしい点もあろうと思われるところに対しましては、さっそく来年度から準備にかかるようにいたしておるわけでございます。
  70. 柳田秀一

    柳田分科員 次に治水のことをお伺いしますが、治水特別会計の問題、この特別会計でめんどうを見られる河川は、河川法でいうとどういう河川が該当するのですか。
  71. 村上勇

    村上国務大臣 大体昭和二十八年に策定いたしました治水十カ年計画によって施行いたしましたその残余のものになるのでありますが、これは直轄あるいは補助河川等を含んでおります。
  72. 柳田秀一

    柳田分科員 そうすると、この特別会計では、直轄河川から中小河川とかのそういうような準用河川をみな全部含んでおやりになるわけですか。それをお伺いします。
  73. 村上勇

    村上国務大臣 その通りであります。それから海岸で特に直轄事業関連する海岸も、直轄海岸としてやっておるものは特別会計の中に含んでおる次第であります。
  74. 柳田秀一

    柳田分科員 なお、河川、特に日本では原始河川がまだ直轄河川の中にも多いと思うのですが、河川の問題は、上流の治山から河口まで一貫しておるものですが、たとえば大きな河川でも本流は直轄河川だが、ただ名目上支流になっておる、しかし実質的には本流と変わらぬというのがある。ミズリ川はミシシッピー川の支流ですが、しかしそちらの方が長いのです。ミシシッピー川は直轄河川だが、ミズリ川は中小河川だというようなことが日本でもだいぶあるのです。こういうふうな河川法自体から河川というものはほとんど一本にしで考えなければならぬものが、これは直轄だ、これは中小河川だというようなことでは、そういうような河川の治水計画でも一貫性がなくなってくるのじゃないか、こういうふうに思うのですが、これはどうですか。
  75. 村上勇

    村上国務大臣 従来としては、大体非常に技術的に困難であり、また多額な経費を要するとか、あるいは施行上非常に中小河川ではどうかと思うということの、そういう重要度によって、直轄にしたり、あるいはまた中小河川にそのままで置くとかいうようなことになっておりますが、今後治水事業の五カ年計画あるいは十カ年計画等によって、治水特別会計等も設けられた今日でありますから、十分こういう点について検討しながら、この計画を進めて参りたいと思っております。
  76. 柳田秀一

    柳田分科員 現在直轄河川の中のほとんど原始河川に近いというような河川は、これは大臣でなくてもいいですが、どのくらいありますか。
  77. 山本三郎

    ○山本(三)政府委員 直轄河川と申しましても、現在やっておるのが約九十数本でございますが、その竣工度がまことに低いわけでございまして、できておる部分あるいは工事の相当進んでおる部分もございますけれども、竣工の度合いからいいますと、大体のところ、全体から見て四〇%程度ではないかと思います。従いまして、まだ手をつけていないようなところは、昔のままだというようなところがあるわけでございます。それらの地帯につきましては、早くやりたいのはやまやまでございますけれども、なかなかやっておるところが片づかぬというような状況でございますので、非常に地元には御迷惑をかけておるのが実情であります。
  78. 柳田秀一

    柳田分科員 この災害については、従来ほとんど大きな災害を受けなかったところが、非常な局地的な集中豪雨のようなもので災害を受けたという場合もありますし、夏には例年のごとく常習的に災害を受けておるところもあるわけです。そういう常習的に災害を受けておるところに対しても、何らその間の手が打たれておらぬ。たとえば、確かに決壊したとか、そういう形に見えて変化があったところには、これは災害復旧をする。しかし、溢水したとか冠水したとかいうところが、またもとへ戻ってしまうというようなことにはなるが、同じ地域が、二百ミリくらいの雨量で、必ずいつでも、山から山まで水になるというところがかなりあると思う。一例を由良川にとりますが、これは直轄河川になっておりますけれども、もう完全な原始河川の域なんです。一時これに抜本的に改修をやるということで、かつて数年前に調査費を組まれたことがあると思いますが、幾らぐらい組まれましたか。
  79. 山本三郎

    ○山本(三)政府委員 由良川につきましては、終戦直後だと思いましたけれども、何とか一つ全川の改修計画を立てなければいかぬということで、実は私も担当いたしまして、その当時調査をいたしまして、一応の計画はできたわけでございます。御承知のように、その計画がまだ及ばぬところがあるというお話でございましたが、その通りでございます。現在の計画は、御承知のように、上流に大野ダムを作りまして、福地山の付近の比較的被害の範囲の広いところをやろうということで計画を立てておりまして、ダム河川改修もやっておるわけでございますけれども、その他の部分は、今おっしゃる通り、山から山まで水になるというようなことでございます。この点については、私も、計画立案のときに、堤防をそこへ作ってしまうと、どうも土地がつぶれてしまって、残る、守られる土地が非常に減ってしまうということで、頭を悩ましたわけでございます。最近におきましては、これらの、ダムを今作っておられるところでも、さらにできるようなところがありましたならば、それらも付加して下流の流量を減らしてやろうという考えを持っております。従いまして、下流のそういうふうなお気の毒な地帯もやはり調査をしなければいかぬということの観点に立ちまして、昨年度非常に水害があったものでございますから、昨年度、三十四年度でございますが、三十四年度予算が執行中でございましたけれども、その中からしぼり出しまして、多少の調査をやっております。これは引続いて二十五年度におきましても調査を継続いたしまして、早急に計画を立案して参りたいというふうに考えております。
  80. 柳田秀一

    柳田分科員 私は、何年度にどのくらいの予算、どのくらいの額の調査費で調査をされたか、それを聞いておるのです。
  81. 山本三郎

    ○山本(三)政府委員 昔の初めの計画を立てる当時の予算は、私もはっきり覚えておりませんが、三十四年度はたしか八十万円だと思います。これは年度の途中でございましたので、やりくりをいたしたのでございますが、三十五年度におきましては、目下配分を検討中でございますが、継続いたしまして調査を進めたいというふうに考えております。
  82. 柳田秀一

    柳田分科員 河川によっては、原始河川を近代河川にするのに、今局長のおっしゃったように、周囲の地形から農地を相当数つぶさなければ近代河川にはならないというような場合に、必ず農民の抵抗があると思うのです。また事実ほとんど全部の農地をつぶしてしまうくらいの抜本的なことをやるならばよいが、これは実際問題としてはなかなかできにくい。そういうようなときに考えられるのは、川の中にある中州を取り除くとか、川の中にできている島を取り除く、河口が埋没しておったらこれを広げるということ、あるいは防災堰堤を作るということはだれしも考えられますが、そういうようなために調査をせられると思うのですけれども、大体こういう特別会計をお作りになって、いつごろまでに調査を完了されるおつもりですか。
  83. 山本三郎

    ○山本(三)政府委員 ただいまお話しのように、川の処理をするために土地が非常につぶれるというようなことになりますと、改修はできたが土地がなくなったというようなことでは困るわけでございますので、それらの点に対して最も有効適切な方法を考えなければいかぬわけでございます。一ぺん水がつきましても、できるだけ早く水が引くようにというような方法、あるいは上流で水を調節して、下流の水を減少してやるというようないろいろな方法を考えるわけでございますが、大体の輪郭の調査をいたしますにはやはり二年くらいでございますが、それからダム等の調査になりますと、さらにその後実施計画の調査をいたしまして、事業の量なりあるいは高さ等を具体的にきめる調査が一年ないし二年かかるというのが実情でございます。
  84. 柳田秀一

    柳田分科員 せっかく特別会計を作られまして本腰を入れられるのですから、やはりこういう基礎調査は一つ早急に完了していただかなければならぬ。単に調査費を計上しただけでは相済まぬと思うのです。従来から見ると、調査費は計上したが、実際問題はほとんど何にも調査ができていない、いたずらに原始河川の姿を残しておるということですから、むしろ調査費に大幅な予算を組んで、そうして早く調査して、すぐに着工できるという態勢をとるべきではないかと思うのです。これも予算の問題とかね合いでありますから、そう理想論ばかり唱えてもおられぬわけでありますが……。  そこで問題は、先ほどもお話に出ました大野ダムの問題、あのダム一つ作るのでも、私はこの夏これは大体実験ができると思うのですが、下流の方の流水量は非常にふえておるし、それから流水が最高水位になるまでに非常に時間が早くなっておるということから考えますと、単に上流に一カ所だけああいうような多目的ダムを作っても追っつかない。今おっしゃるように、できるところには、これはほんとうの防災ダムも作る必要があるではないかということになりますと、なおさら調査ということは非常に大事になってくるのではないか。  それからもう一つは、特にある一定の地域だけの改修をやられると、それから下流の者はむしろかえって迷惑する。実際に災害のときに行ってみると、上流の地域がどこかで堤防が切れたというと、下流では手をたたいて喜んでおる。それによって自分のところはもう何時間水が来るのを防げるというので、これはほんとうにおかしな話ですが、上流地域が決壊するのを待っておるというような形です。それを逆に言うと、上流を固めてもらうことは下流は迷惑だという声もあるわけです。従って、河川というものはやはり総合的にやられなければならぬと思うわけです。やはり政治というものは住民の納得による政治、協力による政治だということになってくると、たとい一定の特定地域にその予算をかりに集中し、特に市街地、密集地等に重点を置かれても、全体の計画というものがきちんと立っておるならば、国民も今一足飛びに全部完成できるとは思っていないので、一定の青写真というものがきちんとできて、将来こうなるのだということになれば、その間の経過に対しての多少の不満というものは除去できる。それができておらぬ。そうすると、政治力の強い地域ばかりが改修される、政治力の弱いところはいつまでたっても被害をこうむるばかりだ、こういうふうになってくるということですから、特にこの調査を早急に完了していただきたいということを重ねて要望をいたしておきます。特にこの由良川については、どこに重点を置かれて河川改修をやられるか。
  85. 山本三郎

    ○山本(三)政府委員 お話しの通り、川の処理の問題につきましては、全体計画を作りままして、この地帯はどうなるかということを作った上で、しかし資金の効率的の使い方から言いまして、被害の一番大きいところから手をつけていくということが順当でございます。そういう意味におきまして、全体の問題といたしましては、上流にダムを作りまして、下流の一帯の洪水を助けようということに進んでおるわけでございます。さりとて下流の地帯を全般的に手をつけるというわけにもいきませんので、下流におきましては、やはり災害の頻度の多い、しかも被害の程度の大きいというところをねらって工事を進めておるわけでございます。現在までのところは、福知山の周辺の人口の密集地帯というようなところにどうしても工事を集中せざるを得ぬ状況でございます。そういうのが実情でございます。ただ由良川におきましては、上流にダムができますならば、福知山はもちろんでございますけれども、その他の地区におきましても洪水が軽減できるのじゃないかというふうに考えておるわけでございまして、私どもも、できるだけああいうふうな川につきましては、上流にダムを作ることが全般的に効果が及ぶのじゃないかというふうに考えておる次第でございます。
  86. 柳田秀一

    柳田分科員 おっしゃる通り、上流にダムを作る、それも一カ所ではだめだと思うのです。なるたけ農地なんかつぶさぬで簡単にできるのは中州の除去です。これも河川の根本計画が立っておらぬとやりにくいのですが、中州を除去したり、島を除去するということは、下流地帯においては比較的簡単にできるが、そのほかに耕地をつぶさずしてやっていくという名案はそうなかなか浮かんでくるものじゃない。ともかくじゃまになっているものを取りはずす、これくらいはすぐ完了できると思うのですが、こういう点はどういうふうにお考えになっていますか。まず一番先に重点を置いてやるのは何か。私はいつまでたっても問題になるのは農地との関係だと思う。じゃまになっておるものを先に除く。そのためにはどのくらいの工事量が要る、そのためには今どのくらいの調査費をかけて、これをいつまでに完了するのだというくらいのことは、少なくとも特別会計ができた本年くらいにはやらなければ、下流の者は安心しておられないと思うのですが、どうですか。
  87. 山本三郎

    ○山本(三)政府委員 もちろんおっしゃる通り、川の中に障害物がありまするならば、幾ら堤防を高くいたしましても洪水を流す力がないわけでございますので、まずもって川の状況、縦断なり横断なりを取り上げまして、川の中の障害物の状況をつぶさに調べるわけでございます。一番洪水の疎通を早くする方法は、川の中の障害物を除去する方法であることは、先生と同意見でございます。従いまして、縦断なり横断なりができるならば川の中にどれだけの障害物があるかということがはっきりいたしますので、それをとるならばどの程度の効果になるかということは見当をつけることができるわけでございます。従いまして、全体の計画が立たない前に、そういう方法からやったらいいじゃないかという御意見でございますが、それでもいいわけでございますけれども、できるならばやはり全体の姿をこの際作った上で、しかも効果のある、早急にできるところから着手して参りたいというのがわれわれの考えでございます。
  88. 柳田秀一

    柳田分科員 なお、先ほどお話に出た市街地に今重点を置いているということ、この区間工事遂行に対しては大体いつごろ完了できるとお考えになっていますか。私の言うのは市街地だけです。
  89. 山本三郎

    ○山本(三)政府委員 今のお話は福知山の市街地だけと思いますが、これにつきましては、下流部の方はもう一応堤防ができ上がっておりますけれども、上流の地区の人家の移転も相当ありますし、また鉄道橋がございまして、これが鉄道との合併の施工になりますから、鉄道ともよく打ち合わせて促進しなければいかぬと思いますが、鉄道の付近が低いために毎年やられておるというのが実情でございますので、この話を早く進めるならば、もう大した仕事の量が残っているわけではありませんから、あと一、二年のうちにはできるようにしたいと考えております。これは鉄道とも交渉しなければいけませんので、持ち合いになるわけでございますので、その点について努力したいと考えております。
  90. 柳田秀一

    柳田分科員 あと一、二年でできるというお話でしたが、私たちはそうは思っておらぬのです。あの市街地区だけでも、全部完了するのには、今のような予算のつけ方ですと、今後大体二十年ぐらいかかりはせぬかと思うのですが、どうですか。
  91. 山本三郎

    ○山本(三)政府委員 その点は、市街地と申しましても、川の右岸の方にも人家があるところがございますが、私が今申し上げているのは、左岸の鉄道のところから入るので非常にお困りでございますので、あの付近の工事をさしているわけでございまして、人家のある程度集中しているところを全部守るのには、今申し上げた程度の年限ではなかなかできないと思いますけれども、ああいうふうなやりかけのところで今一歩というところの問題でございますので、私ども力を入れてやりたいと考えておる次第であります。
  92. 柳田秀一

    柳田分科員 最後に、これは建設省の方の熱意もわかっておるわけですから要望にとどめておきますが、予算での仕事ですから、とにかく早く青写真ぐらいはほしい。あれだけの原始河川で同じ災害を毎年々々受けながら、抜本的な計画も全然立っていない、これは私は怠慢だと思う。予算がつくつかぬは二の次としても、一応この河川については上流から河口までこういう計画でという、将来かくあるべき姿を建設省で立てることは責任じゃないか。それすらできておらぬということになってくると、災害が必ずしも全部が全部天災とは言い切れぬ。少なくとも直轄河川についてはそれぐらいの青写真は、村上さん、特別会計を作られただけの意気込みがあるならば、すぐにお引きになる必要があるんじゃないか。青写真なんというのは、予算がありませんからできませんでは通らぬ。そのためにはまず早急に調査をしていただきたい。調査なんというものは五年も六年もかかるものじゃない。本気にやるということになれば、一年ぐらいあったらできると思う。そして早く青写真を引かれることを重ねて強く要望しておきます。大臣、何かあなたの方で特に御発言があったら承っておきます。
  93. 村上勇

    村上国務大臣 そういう毎年いわゆる施設の災害がなくても、毎年のように冠水による農地の被害、農作物の被害のあるようなところについては、国の方でも十分積極的な方法を考えなければなりませんが、また地方庁においても十分本庁と打ち合わせをして、積極的にそういう点を除去する必要があろうと思っております。今後十分注意して進めたいと思います。
  94. 岡本茂

    岡本主査 楯兼次郎君。
  95. 楯兼次郎

    ○楯分科員 私は災害のことで最初にお伺いしたい思いますが、災害が起きますと、大体三・五・二の比率で三カ年で完成をするというのが常識となっておりますが、なかなか三カ年で完了ということは、過去の実績から見ますとないようであります。従って、最近の実績からいきまして、災害復旧は平均どのくらいで完了しておるか、お伺いしたいと思います。
  96. 山本三郎

    ○山本(三)政府委員 おっしゃる通り、二十八年当時の災害は非常に長くかかったわけでございますが、その後公共土木施設の災害の負担法が改正になりまして、緊要工事は三ヵ年ということに定められております。従いまして、その通り実施しておるわけでございまして、緊要工事は三カ年、その他の工事も含めて、最近におきましては四カ年で完成するという処置をとっております。これは負担法が改正になりまして、適用した年からは全部その通りに実施しております。
  97. 楯兼次郎

    ○楯分科員 そういたしますと、先ほど大臣の説明によりますと、三十二年度の発生災害に関するもの——私は補助事業を含めておるわけでございますが、これは大体本年度、三十五年度の予算で完了をする、こういうようなことを言われたわけでありますが、そのように了解をしておいていいわけですか。
  98. 山本三郎

    ○山本(三)政府委員 三十二年災は本年度完成いたしまして、三十三年災がもう一年かかるわけでございます。三十四年災はやはりあと二年かかって、全部では四年間で完成するということにしております。
  99. 楯兼次郎

    ○楯分科員 一つ具体例を聞きますが、三十四年度の発生災害で緊急工事とそうでない工事との比率といいますか、金額はどのくらいですか。
  100. 山本三郎

    ○山本(三)政府委員 これは激甚な地域につきましては非常にパーセンテージが高いわけでございますが、全国で平均いたしますと、七〇%程度が緊要工事ということに考えております。
  101. 楯兼次郎

    ○楯分科員 これは省内で緊急かそうでないかというのに段階を設けておられるようでありまして、大体A、B、C1、C2、Dと五段階に分けておられるようでありますが、間違いございませんか。
  102. 山本三郎

    ○山本(三)政府委員 これは現地に査定に参りまして、査定官が現地で認定して参るわけでございますが、御説の通りA、B、C、Cの中にもC1、C2というようなことを作っております。Cとなりますと、現地の査定に参りましていろいろと個人差が入って参りますので、その点は本省に持ち帰りまして、Cの分につきましては、全国的に見てそのうちから緊要工事を拾って参るという処置をとっております。A、Bにつきましては、もちろん緊要工事ということに扱っております。
  103. 楯兼次郎

    ○楯分科員 そういたしますと、A、Bは緊急工事である、Cはそれが緊急その他に振り分けられる、こういうことですね。
  104. 山本三郎

    ○山本(三)政府委員 そういうことであります。
  105. 楯兼次郎

    ○楯分科員 私がお伺いしたいのは、建設省の方でA、Bの緊急工事と査定をした場合に、なかなか県の方が、緊急であるにもかかわらず、やらないというような面については、建設省として行政指導か何かやっておられますか。
  106. 山本三郎

    ○山本(三)政府委員 これにつきましては、本則といたしましては、県が災害復旧施行の責任者でございますので、その意思に従いましてやるのが通則でございます。ただ、問題がありまして、本省でもこれはやらなければならぬというようなものが特にございますならば、それらの点につきまして県に指示を与えるという方法はとっておりますけれども、原則といたしますと、県が施行の責任者でございますので、国は今申し上げたように予算の配分をついたしますけれども、責任を持って県が施行するというのが建前でございます。
  107. 楯兼次郎

    ○楯分科員 そういたしますと、実情は大体県に一任ということで、何か五段階に分けて補助金の配付をして、実績を見て、これではいかぬじゃないかというような指示を与えられたことがありますか。
  108. 山本三郎

    ○山本(三)政府委員 それにつきましては、重要な工事につきましては、予算を配分するにあたりまして調書をとります。そしてこれは確かに急ぐものだというようなものは、県といたしましても打ち合わせに参りますし、こちらからもそういうような方法をとりますので、そういうようなものが落ちないようにという措置はとっております。ただ県がどうしてもやらないものを、どうしてもやれというふうにやった例はございませんが、大体において本省の言う通り県もやって参るのが通例になっております。
  109. 楯兼次郎

    ○楯分科員 それでは次に大臣にお伺いしたいと思います。私が国会に参りましてから、いつもこれではいけないと思いますのは、交通関係の一元化ということです。これは運輸、建設各委員会で、例年のごとく論じられておるのでありますが、なかなか抜本的といいますか、根本的、一元的な対策というものができないわけです。何かやろうと思えばすぐ金がかかるから、こういうことを言われますが、少なくとも青写真ぐらいは作ってもいいじゃないか、こう思うのでありますが、なかなかできない。特に建設省の関係でいきますと、空や海は別として、今一番困っておるのは陸上交通です。特に建設省としては自動車の道路ということが主眼になるわけですけれども、自動車の激増は、私が申し上げるまでもなく、戦前最高の十一倍、終戦時の十八倍というように激増しておるわけです。東京都を例にとりましても、今道路が倍になってもなお混雑すると私は思うわけです。だからそれによる交通事故というものは、数字をあげるまでもなく、毎年激増をしております。災害もそうでありますが、交通事故一つ考えましても、年間莫大な人命をそこなっておるわけであります。こういうような点を考えますと、実施は将来に延びるか知らないが、自動車にはこういう使命を持たせるんだ、鉄道はこうだというような青写真ぐらいできてもいいと思うのであります。こういうような点について、交通関係閣僚懇談会でありますか、そういうようなものが二、三年前から設けられておるわけでありますが、どんなような対策、主張をされておるのか、お伺いしたいと思います。
  110. 村上勇

    村上国務大臣 率直に申しますが、まだ最近、交通関係の閣僚懇談会というようなものは開催されておりませんが、しかし近くある問題について私は早急に開きたいと思っております。自動車その他の交通網の青写真につきましては、もうすでに建設省においても、また運輸省におきましても、それぞれ関係各省が熱心にこのことを検討いたしておりますし、あらゆるデータ等を集めて、この地域昭和何十年にはすでに自動車の飽和状態になる、この地域はほとんど歩くのと同じような状態になるんじゃないかという点につきましては、すでに検討したものができております。それに対して、その対策をいかにするかということについての検討をいたしておるような次第でございまして、決してこれをなおざりにしておるわけではございません。
  111. 楯兼次郎

    ○楯分科員 なおざりにしておられないということはよくわかるのですが、これだけ年間人命をそこなっておる陸上交通について、すぐには道路の幅員を倍にするということはできぬでしょうけれども、とにかく将来の計画というものが全然出てこないわけです。だから、実現するせぬは、これは資金建設費の関係になりますからかれこれ言えませんけれども、とにかく将来はこうするんだという政府としての共通した考え方が国民の前に提示をされなくてはいけないのではないか、こう思うわけです。今度の国会に道路交通取締法というものが上程されることになっておりますが、自動車も走れない、人もろくろく楽に歩けない。そうしておいて取り締まりの方だけはがんがん取り締まってやろう、こういうのですから、取り締まりの法律もけっこうでありますが、まず楽に歩けるようにするということが私は大事だと思うのです。そういう点で努力がされておるということはわかるわけでありますが、五年たったら、あるいは十年たったら治山治水特別会計のようにこうなるんだという明示が必要である、こういうふうに私は考えておりますので、一つ閣僚懇談会におきましても、政府におきましても、とにかく何か一貫したものを出していただきたいと思います。われわれ社会党としては、建設省運輸省とは、道路交通について非常に交錯をしておりますので、交通省ですね、これらを作ったら一番いいだろうということを言っておりますが、これもなかなか、すぐにはできぬということになりますと、緊密な連絡を持って一元化の方策を立てるということしかないわけでありますが、当面建設大臣としては道路交通についてどのような抱負を持っておられるか、概略でけっこうでありますが、簡単にお示しを願いたいと思います。
  112. 村上勇

    村上国務大臣 いわゆる首都、東京を中心とするものあるいは東京都内の道路等につきましては、すでに具体的にその路線等も決定いたしておりまして、これを積極的に予算の裏づけをして施行する以外にないのでありますが、その点については十分な検討ができております。また各地方におきましても、それぞれその地方庁その他におきまして大体の交通量あるいは道路の修改築あるいは新設等の大体の方針もきまっておりますので、それに予算の裏づけをして参るということになりますれば、今日の飽和状態を緩和していくことができると思います。なお問題になっております、すでに国会において非常に熱心に御審議を願いました国土開発の縦貫自動車道、これにつきましても私どもは着々とその最後の青写真の具体的に備わるように、その方途を今日目下準備いたしておる次第でございます。
  113. 楯兼次郎

    ○楯分科員 私地元のことで簡単な例を一つ申し上げますと、名古屋から多治見というところへ有料道路が道路公団によってできておるわけです。国道十九号が舗装をされないうちは非常に成績がよかったのです。ところが並行はいたしておりませんけれども、同じ発着点で国道十九号が舗装をされました。そうすると、金を出して有料道路を通るのはばかくさいということで、全部そちらへ移ってしまう。こういうような点は、小さい問題でありますが、道路建設の非常に貴重な金でありますから、よく考えて、国道十九号が舗装をされぬうちは道路がないので困るのですけれども、同時に建設をするというようなときにはよく考えてやっていただきたい。これは非常にむだだと私は思うわけです。  そこで次に建設大臣にお伺いしたいと思いますが、今言われました国土開発縦貫自動車道でありますが、いつも私はこういうことを申し上げるのでどうかと思いますけれども、この問題は、きょうは時間もありまするから五、六点お伺いしたいと思いますが、私は以下申し上げるような点から、どうしてもこれは日本に必要ではないか、こういうふうに考えるわけです。それは政府のいろいろお出しになりまする書類を見ますと、今後の日本経済の一番の隘路は、この間の予算委員会でも申し上げましたように、所得の地域格差を是正しなければいかぬ、こういうことを私も主張し、政府の書物もそのことを盛んに言っておられます。せんだって国民生活白書というものを見てみますと、この中にも最後へいって必ずそれが書いてあるわけです。人口の過度の集中に伴い、大都市住宅交通問題が行き詰まり状態にあることから、将来は人口の地方分散ということも国民生活の向上という見地から真剣に取り上げられるべき問題であるというので、国民生活向上という諸問題をこの一点にしぼって政府の考え方を発表しておるわけです。そういう点からいけば、英国あたりは工業配置法でありますか、人口疎開法ではありませんけれども、工場分散法といいますか、配置法というものができておるそうでありますが、そういうことを日本も真剣に考えなければいかぬ。そういう前提に立つならば、東京—名古屋間の中央自動車道というものは、これは文句なしに政府がもろ手を上げて建設をしなければならない道路だと私は思うわけでありますが、こういう経済方面から見た建設大臣の中央道に対する御意見はどうですか。
  114. 村上勇

    村上国務大臣 中央自動車道につきましては、私も楯委員と同じ考えを持っております。人口の非常に過度の集中を排除していく上からいっても、また地下資源あるいは未利用資源の高度な利用というようなことから申しましても、どうしてもこういうものが必要だと思っております。従いまして、われわれといたしましては、十分その方針に向かって、その目的に向かって、目下あらゆる角度から検討し、またこの問題を具体化するように進めつつあります。
  115. 楯兼次郎

    ○楯分科員 それからこの国土開発縦貫自動車道というのは、太平洋岸の便宜のために作る、こういうことではないのです。われわれの考えておるのは、東北、北海道、九州、しかも裏日本、表日本からこれを利用するという、いわゆる将来の陸上交通のバック・ボーンとしてわれわれは考えておるわけです。それがどうも、議員心理ということも言えますが、曲がりくねって一方の地域のみ潤すということでは、ますます人口の過集中をもたらすし、先ほど申しましたような地域の所得格差を是正することにもならないし、またおくれた地域の開発ということにもならない。また、交通体系上からも、これは日本のどまん中に作るのが常識である。こういう点から私どもは主張をしておったわけです。それからもう少し問題を縮めて、もし東海道が、今やかましい問題になっておりますが、自動車道が完成をされた場合は、これは日本人は悔やむと思うのです。と申しますのは、曲がっておりますから、大体五十キロ長いわけです。今の地方における鉄道の完成後においては、よく言われることでありますが、百キロ以上のスピードで長距離輸送ということがこれは目的ですから、五十キロ短いコースになぜ作らぬのか、なぜ曲がるのか、こういうことが、完成の直後から、すぐ私は悔やまれてくると思います。それから、冒頭申し上げましたように、無料の国道と有料の道路が並行をした場合には、無料の道路が幾ら輻湊をしても、なかなか有料の方には転換をしないということです。これは、そんなばかなことがあるかとおっしゃいましても、現実に私はそうなると思います。それから、一時間百キロ以上のスピードで走る必要のために作る自動車道路でありますから、近距離の自動車輸送というものは、そのインターチェンジに入って、戻り、また行き、一定の個所しか入れないというようなところは、これはもうほんとうに利用する自動車というものはないのです。しかも、片方に無料の国道が並行しておるということになれば、われわれの想像以上に利用率というものは私は減ってくると思う。だからといって、私どもは何も東海道に道路を作ってはいかぬ、こういうことを言っておるのじゃないです。だから、輸送の逼迫といいますか、困難になっているところには、バイパスをどんどん作ればいいと私は思うのです。こんなことは、もう数年来国会で論議をされておりまするから、申し上げる必要はないと思いますが、少なくともそういう公平な日本経済の発展、生活の向上、人口の分散という観点から、私どもは言っておるわけです。今建設大臣は鋭意努力をしておるとおっしゃいましたが、あの法律にきまっておるように、なぜ出さないか。私どもは、予定路線の法案が今国会で決定になります、そのあとで、これは莫大な金を使うのでありまするから、いや、中央道にこれだけ金がかかる、経済効果はない、東海道の方がいい、そういうことになってくれば——もちろんこれは将来の日本の姿を考えて論議するわけでありますが、実際東海道の方がいいということになれば、われわれだって譲るにやぶさかではないわけです。だから、予定路線の法案を出して、そうしてほんとうに日本の自動車網の形成という観点から、どちらがいいのか、ほんとうに建設省が出しておるような莫大な建設費がかかるのかどうか、建設が困難か容易か、こういうことをあとで幾らでも論議をして、みすみす不利とわかるようなところに建設する必要はないと私は思う。それを、法律ですみやかに予定路線の法案を提出せよと言っておるにもかかわらず、まだ出してこないところに問題があり、かつ疑心暗鬼が生まれておるのです。一体いつこの法律を出されますか。
  116. 村上勇

    村上国務大臣 太平洋岸に、いわゆる東海道に道路をまた新しく考える、あるいはまた今の道路にバイパスを設けるかというようなことについては、これはもう必要に応じて——交通が非常に輻湊してくる、これ以上はとうてい飽和状態以上になってどうにもならないというようになって、せっぱ詰まってくるとしまして、これは必要に応じてあるいは新しく切るか、あるいはまた今のものにバイパス的なもので間に合わすかということは、それを勘案して決定することであります。従いまして、ただいまの中央道、縦貫自動車道というようなものとこの問題は、何ら私は関係はないと思います。これをやったから縦貫中央道というものを放棄するとかいうようなことでなくて、その目的がおのずから違う。それは先ほど申しましたように、過度の人口の集中を緩和するとか、あるいはまた各資源の開発をやるとか、いろいろ非常に違った目的があるのでありますから、太平洋岸の今の東海道を作ればもう中央道については見向きもしないというような、そういう思想は私はいけないと思います。それではなぜ、あの法律によって予定路線の法案を提案することになっておるのに、いつまでもぐずぐずしているかというような御質問でありますが、決して私どもはぐずぐずしているわけでないので、極力この法案の取りまとめについて事務的な折衝等もいたしております。御承知の交通関係閣僚協議会と申しますか、懇談会ですか、これに出すまでの事務的段階において交渉いたしております。従って、それにもいろいろ意見がありますが、しかし昨日の閣議で大体事務的段階は終わったつもりだ、関係各省においていろいろ議論があるようだが、しかしこの際ぜひともこの中央道の路線決定の法案を提案するまでは、各関係閣僚とも一つ協力してほしいということを要望しましたが、これに対しては何人も異論を申し述べた閣僚はおりませんので、近くそれらを取りまとめて、そして審議会に一応かけた上で、この国会に私は必ず提案したい、かように思っております。
  117. 楯兼次郎

    ○楯分科員 建設大臣の誠意ある答弁で、私これ以上質問はいたしませんが、だから法案を、法律に盛られてあるように通して、それからほんとうに将来の日本の交通、あるいは経済性にどういう付与をするかという点を、われわれも知識が少ないのでありますが、真剣になって検討をする、そういう方向に進んでいけば私はいいと思うのです。それを法律を通し、法律にきめられたことをやらない。まあやらないというわけではありませんが、今日まで延引をしておる。そこに、まあこの委員会で言うようなきれいごとばかりではないと思いますが、疑惑が生まれてくると思うのです。だから通して、ほんとうに日本の将来にとってどれがいいかという問題をやればいい。  それから先ほど私東海道云々を申し上げましたが、東海道はやっぱり国道を、第二国道、第三国道と申しますか、そういうものを作ればいいと思うのです、さしあたっては。自動車道を二本作るということは、これは日本の今の財政能力ではできないと思う、というところに中央道を主張するわれわれの考え方があるわけです。だからそういう点を一つ了解されて、より以上早く法案が提案されるように御尽力をお願いしたいと思います。
  118. 岡本茂

  119. 島上善五郎

    ○島上分科員 私は建設大臣に、最初に地盤沈下対策について、次に住宅問題について、若干伺いたいと思いますが、地盤沈下問題は実は他の、たとえば経済企画庁、科学技術庁、通産省、運輸省等に関連があるので、その方面にも伺いたいのですが、きょうは主として建設省関係の方面をお聞きします。  今度の予算は、土建予算といわれるほど土木事業と申しますか、公共事業、特に治山治水に力を入れ、国土の保全、開発、災害防止災害復旧という方面に力を入れていらっしゃる。私はそのこと自体はもちろんけっこうだと思います。ところが、その中で地盤沈下問題の占める重要性に対して、いささか認識が欠けているのではないか、あるいは軽視しているのではないかと思われる節がある。これは建設大臣も現地を幾度か御視察になったと思うのですが、新潟の問題などは実に深刻な問題です。その他尼崎にも大阪にも東京にもありますが、この地盤沈下対策に対してまず建設大臣はどういうふうにお考えになっておるかということを先に伺いたい。
  120. 村上勇

    村上国務大臣 地盤沈下につきましては、東京、大阪あるいは新潟と、それぞれ必ずしも一定した原因というものは私ははっきりしないと思う点があると思います。地質の関係あるいは地殻の構造等もありますが、また地下水の不当なくみ上げ、こういうようなものが影響して地盤沈下の原因をなしておると思いますが、その原因その他につきましては、科学的に十分検討して、これは御承知のように経済企画庁に地盤沈下対策審議会というものができまして、そこで研究しておりますから、その結論が出てそれぞれ対策を講ずる必要があろうと思います。しかし昨年の伊勢湾台風等のあの災害にかんがみまして、私どもとしてはこれらの地区のいわゆる防潮堤あるいは地盤沈下対策につきましては、決してこれを等閑に付していない、十分これらに対しては対策を樹立する必要があると思いまして、予算の面でも、東京湾に対して昨年は四億五千万程度の対策費でありましたが、三十五年度は十億六、七千万ということになっておりますし、また大阪におきましても三十四年度は一億三千万程度のものが、三十五年度の予算の中では四億五千万くらいの事業費で、これの対策を講ずるというようなことにもいたしておりまして、この地盤沈下の対策につきましては非常にわれわれ頭を痛めておるのであります。従ってこの原因を究明し、はっきり地盤沈下対策審議会において結論が得られましたならば、それらの原因をも除去するということが、施設の対策とあわせて行なわれなければいかないと、私はかように思っています。
  121. 島上善五郎

    ○島上分科員 決して軽視していない、予算も昨年に比べて相当ふえておる。予算がふえているということは私も認めます。しかしこの予算がふえておるということは、それでは根本的な対策が樹立されて、たとえば三カ年計画なら三カ年計画、五カ年計画なら五カ年計画というようなしっかりしたものがあって、それに基づいてその初年度として計上されたものであるかというと、残念ながらそうではない。今の御答弁にもありましたように、基礎的な調査がまだ完了していない。従って対策の根本的なものも確立されていないというのが実情だと思う。これが去年から始まったとかおととしから始まったとかいうなら、またやむを得ないと思う。新潟については気がついたのは最近であった。最近というか、ここ二、三年来であったという事情もありますけれども、その他については前前からわかっておった。おっしゃるように新潟と東京、尼崎、大阪とそれぞれ地盤の関係とか、一方は地下水の関係であり、一方はガスをくみ上げる関係ということで多少違いますけれども、やはり共通的なものが私はあると思います。そこで今までのことは私は若干怠慢があったと思いますが、それを今ここで責めても始まりませんから、私は過去のことをとやかくは申したくないのです。申したくはありませんけれども、たとえば調査につきましても、科学技術庁でも調査する、建設省でも調査する、運輸省でも調査する、通産省でも調査するというふうにして、ばらばらでありますために、違った結論が出るという場合が今までしばしばあった。そういうことではほんとうの対策は私は立たぬと思うのです。私の調査しているところによりますと、たとえば科学技術庁の中に新潟地区地盤沈下調査会というものがある。昨年六月二十四日に中間報告を出して、それからその調査会はピリオドを打って解散してしまった。建設省建設省でまた別に調査する、運輸省運輸省で調査するといったようなやり方をやっておったことが、統一的なしっかりした調査の結論が今なお出てこない一つの原因になっているのではないかと思うのです。そこで今後の問題として総合的なというか、統一的な権威のある調査機関を持ちまして、早急に結論を出して、その科学的な調査の権威のある結果に基づいたしっかりした対策を早く立てませんと、これは大へんなことになると私は思うのです。新潟は大臣ごらんになったと思いますが、私も二度ほど行ってみましたが、御承知のように港としても、あるいはあの辺に大きな工場もありまして、生産の面から見ましても非常に重要な役目を現に果たしている。ところが年々大へんな沈下のために、もう港は荷揚げに際して機能が半ば喪失されている状態、工場はいつ海水が上からあるいは下から浸水してくるかわからぬというような、非常に危険な状態にあります。新潟の人の話を聞きますと、昔相当高い高潮ですかが来たことがあるそうで、もしその昔のような高潮が来るということになりましたら、新津の方まで避難しないとどうにもならぬという現状であるということを訴えられましたが、そういうことは誇張でも何でもない。私は第一に、各省ばらばらの調査機関ではなしに、統一的な権威のある一つの調査機関をもって早急に権威ある調査を進めて、その結論を出す、そうしてそれに基づいたしっかりした計画を立てるということが非常に緊急に迫られておる、こう考えておるものですが、大臣はどのようにお考えですか。
  122. 村上勇

    村上国務大臣 地盤沈下対策につきましては、私は全く島上分科員と同感であります。しかしばらばらに対策を立てておるということでありますが、一応これは企画庁において審議会を設け、まとまった方針のもとにそれぞれ対策を立てることになっております。私どもも先生と同様に、一刻も早くこれの具体的な対策を十分立てて参りませんと、おそるべき事態になるのではないかということを案じておるのであります。新潟におきましては、建設省といたしましては、堤防の一部と下水道等についての施設を一応復旧をする程度でありますが、これは各省それぞれ関係がありますけれども、しかし、総体的には企画庁で最後的な方針を決定して、一刻も早くこの地盤沈下を防止する対策を講ずる必要がある、私もかように思っております。
  123. 島上善五郎

    ○島上分科員 企画庁にもいずれ伺おうと思っておりますが、今の大臣の御答弁をほんとうに具体化するためには、私はいろいろの問題があろうと思います。たとえて言うならば、これは大臣の所管ではありませんけれども、新潟の今度の事業量がたしか二十億の予算で認められた。県と市で立てておる計画を見ますると、一応の計画ですが、二百億ということになっておる。それから見ましても、年間二十億では十年間を要する。その上二十億の中で県と市の負担が十一億余りである。赤字団体、再建団体として財政難できゅうきゅうしておる県と市が十一億余りの負担では、せっかく二十億の事業量を認めてもらっても、とうていこなし切れないと言って悲鳴を上げておるのが現状です。ここではどうしても国の補助率を引き上げないことには、問題の解決にならぬ、こういう事情があるわけです。これは直接にはあなたの所管ではないかもしれぬけれども、私はこういう点については、建設大臣もお認めになるだろうと思う。そうしてこの補助率の引き上げに関連して、法的には、私どもは地盤沈下対策の特別措置法とでもいうものを作って、法的な根拠を与えなければならぬのではないか、そういうふうに考えておりますが、大臣はいかがでしょうか。
  124. 村上勇

    村上国務大臣 地盤沈下対策の法案は、与党において準備をいたしておるように聞き及んでおります。いろいろとその意見も伺ったのでありますが、それはともかくといたしまして、ただいま御指摘のように、やはりああいう地域の補助率等について、検討をする必要があろうと思いまして、建設省所管河川等につきましては、三分の一の従来の補助を二分の一に引き上げるように私どもいたして参っておるような次第であります。
  125. 島上善五郎

    ○島上分科員 それから東京の場合ですが、これも現場を御視察になって御承知だろうと思いますが、もし伊勢湾台風程度の高潮が来ますれば——これは現実に来ておりますから来る危険性もあるわけです。来ると仮定しますと、総武線のガードの上一尺くらい水が上がってしまうということになります。江東地区は全く全滅。そこで今まで立っておりました十カ年計画、十カ年で七十五億という計画を根本から再検討して、伊勢湾台風のような事態が起こっても、これに耐え得る計画の基礎を根本から立て直そうということが東京都の要求であり、本年度の予算もそういう考え方の上に立って要求されているはずです。昨年に比べて予算額が若干ふえておることは、大臣の御努力として私も認めるにやぶさかではありませんけれども、今までの計画を伊勢湾台風という事実にかんがみてやり直す、この要請には必ずしもこたえていないわけです。地盤の基礎工事からやり直しませんと、私は専門家ではないのでそういうことはよくわかりませんけれども、伊勢湾台風というような事態を考えますればやり直さなければならぬ事情にある。これに対して大臣はどういうふうにお考えになりますか。今年のことば私はどうもそういう根本からやり直すという計画をお認めになっていないようです。どういうふうにお考えですか。
  126. 村上勇

    村上国務大臣 東京湾につきましては、これは大阪も同様なんでございますが、一応既定計画促進するということで、既定計画を今ここでゆるめておくというようなことも非常に危険ですから、一応既定計画促進しながら、それと並行して調査を十分にするということで、三十五年度予算には東京湾に一千万円、大阪の方に一千万円、合わせて二千万円の調査費がついておりますので、われわれは既定計画を積極的に推進していくと同時に、並行的に調査をして、その調査に基づいて抜本的な不安のないような対策を立てたい、かように思っております。
  127. 島上善五郎

    ○島上分科員 時間がありませんので、私は他の関係大臣に伺うことにして、最後に一つ希望を申し上げておきますが、伊勢湾台風のような事態が起こってからではどうにもなりませんから、いつ起るかということももちろん予測はできませんけれども、またいつ来るかもしれぬという心配もあるわけですから、ぜひ既定計画をあのような事態にかんがみて、根本から再検討して、予想し得るあらゆる事態に対処して、安心して住み、安心して本業を営んでおるというような対策を——これは何も東京のみならず、新潟でも大阪でも尼崎でも同様に言えることですが、ぜひとも早急に——調査は私は要らぬとは申しません。申しませんけれども、調査々々で、ことしも調査、来年も調査といっているような、そういうのんびりしておれるような事態ではないと思うので、これは大臣も十分御認識だと思いますが、先ほども申しましたように、一つ統一的な権威のある調査機関を設けて、早急に進めていただきたい、こういうことと、直接には大臣の所管でないにしましても、地方団体に対する補助率を法的に引き上げるための立法措置を、これは社会党でも考えておりますが、私どもはできるならば政府与党とも話し合いの上で、社会党の手柄であるとか自民党の手柄であるとか言わずに、一つちゃんとした法律を作りたいと今考えておりますので、大臣もその点について十分お考えおきになっていただきたい、こう思います。  そうして今度はもう一つの問題、住宅問題についてお伺いしたいと思います。住宅政策につきましては、鳩山内閣以来政府の重要政策として推進しておられる。もちろんけっこうで、相当力を入れておられますけれども、住宅の深刻な現状と見合って考えますならば、まだまだはなはだしく立ちおくれておるということを言わざるを得ない。これは建設省御自身もお認めになっているはずです。あなたの方で発表した文書を見ますると、こう言っております。住宅はまだ戦後である。つまり衣食住のうち衣食は戦前のレベルを上回る回復をしたけれども、住だけが取り残されているということをあなたの方の出したものでもって物語っております。そこで数字も持っておりまするが、私はこまごまとした数字をあげることはいたしません。ここ数年来住宅政策を推進いたして参りましたけれども、現在なお百八十万戸ほど不足している。私の調べた数字ですけれども、これをもし今政府が考えている程度の量や速度でやったのでは、ここ五年や十年では解決できない。百年河清を待つといえば少し誇張ですけれども、とにかくまだまだ当分この深刻な住宅難は解決できないというのがほんとうではないかと思うのです。しかも住宅政策の力点の置きどころがややずれているのじゃないか。ほんとうに困っているところへ重点を置いているかどうかという点になると、いささか疑わしいといわざるを得ないわけです。そこで最初一般論的なお考えでけっこうですから、大臣のお考えをお聞かせ願いたい。
  128. 村上勇

    村上国務大臣 住宅が他の国民生活の不可分なものと比べて比較的おくれておることは、私は率直に認めざるを得ないのであります。しかし今島上さんのお話のように、十年もあるいは十五年もこの問題が解決できないのではないかという点については、私はここ五、六年もしましたら相当に住宅問題は緩和できるものと思っております。しかしそれは自力による民間住宅の見方が相当君の方は甘いのではないかというような御批判もあろうかと思いますが、現在までの年間の伸び方から申しますならば、大体に三、四十万戸くらいの住宅のいわゆる年間自力による伸びは認められるのではないか。そうしますと、政府におきましても一年二十二、三万戸でありますが、三十五年度はそれであっても三十六年度にはまた国の財政とにらみ合わせて大幅に伸ばしていくということになりますと、大体六、七十万戸の一年間の伸びに対して、いわゆる焼失とか自然老朽によって滅失するものが幾ら、それを差し引きますと、大体四、五年で何とかできるようにしなければならない、こう私は思っておりますが、これはおのずから見方があると思います。しかしただいま御指摘のように、決して住宅問題は、これをもって私どもは満足して住宅施策をやっておるものでないということだけは、はっきり申し上げて差しつかえないと思います。
  129. 島上善五郎

    ○島上分科員 五、六年ないしは四、五年で何とかしなければならない。しなければならないという点は私は一致しておる。なるであろうということになると、大臣の見通しは非常に甘い。今民間自力建設を非常に大きくウエートを置いておりますが、これは経済事情によって大きく左右される。一体今の岩戸景気というものがどこまで続くか。ことしの秋あたりに景気の変化が起こるであろうというような説もありまするし、これはあまり楽観的な見通しはできない。それと私が指摘したいのは、民間自力建設もそうですが、公団住宅。金融公庫で建てられる人は比較的中くらい、もしくは中くらいから上の人だと思うのです。住宅公団にしましても、最初のスタートの時分には、公団法を見ますとなかなかりっぱな目的が掲げられておる。「住宅不足の著しい地域において、住宅に困窮する勤労者のために耐火性能を有する構造の集団住宅」を建てると言っておる。ところが実際にはこの目的から若干ずつずれてきておる。四千円どまりを目途にしようとしてスタートした公団住宅が、今日では七千円台をこえております。そうしてだんだん上がる趨勢になっておる。これは宅地の問題や、建築費の問題や、資金の関係等が原因となっていると思いますが、今七千円以上の家賃を払うというのは、勤労者でも上の方だと私は思います。住宅金融公庫の金を借りて建てる人は、もちろんさらにまたその上であります。ほんとうに困っておるのはその下ではないかと思う。ですから第一種、第二種の公営住宅に入るような層が一番住宅に困っておるのではないか。そういうところにもっと重点を置きませんと、今の深刻な住宅難の解決は困難である。この第一種、二種の層にもっと住宅政策の重点を置きかえるということが私は必要ではないかと思いますが、大臣はどうですか。
  130. 村上勇

    村上国務大臣 御指摘の通り低家賃というようなことが、こういう住宅につきましては一番大事なことでありまして、それを実現するためにはどうしても公営住宅を大幅に伸ばしていくという以外にないと思います。公団住宅につきましてもいろいろと合理化することとか、あるいは金利の引き下げ等をはかって、そしてできる限り坪当たりのコストを下げていくというようなことをいたしまして、これらの低家賃政策をとらなければならぬと思いますが、その中でも一番われわれが今率直に対策を講ずる上から申しますと、やはり何としても一種、二種の公営住宅を大幅に増築するということ以外ないと思っております。
  131. 島上善五郎

    ○島上分科員 それから住宅政策につきまとって、これと密接不可分の関係にある問題として、宅地問題をどうするかということがあります。これに対しては私の承知しているところでは、政府においても確固たる方針がないように考えます。今日宅地がどんどんウナギ登りに上がっておる。戦後を見ただけでも他の物価と地代との差は、比較にも何にもならぬほど上がっております。おそらく建設省にも統計がおありだと思います。もしそこに統計がおありだったら、一般物価の上昇率と土地の上昇率を一つお答え願いたい。
  132. 村上勇

    村上国務大臣 ただいま即答のできるような資料は持って参っておりませんけれども、後ほどよく検討して参りたいと思います。
  133. 島上善五郎

    ○島上分科員 あとでぜひ調べて資料をお願いしたいと思いますが、とにかくこれは比較にも何にもならぬですよ。私が一つだけ知っている例を申しますと、昭和二十二年に五百五十円であった土地が今十三年後の今日六万円になっておる。百倍以上ですね。土地は三年たてば倍になると普通いわれておるのです。こういうような状態を放置しておいたのでは、私は住宅問題解決の非常に大事なところが放置されているということになると思うのです。今住宅公団が家を建てるありさまを見ますと、郊外へ郊外へと安い地価を求めて、郊外というか、県外へ県外へ、東京でいえば松戸とか馬橋だとか、ずっと遠くへ行く。そのために国電が朝のラッシュには殺人的な混雑をするというような事態も生んでおる。交通機関その他それに関連して非常に混乱を来たしておる、こういう状態です。しかるに都内には今なお遊休の土地がある。利用しないで値上がりを待っておる、こういうような状態にある。これに対して何らかの措置を講じませんと、もう年々どうにもしようがなくなってくる。先般毎日新聞に早稲田大学の教授で松下周太郎という人が、宅地難の解消のための一つの方法として土地増価税の創設を提唱するという意見が発表されておりましたが、私はこれなどは傾聴に値するものではないかと思います。一つの方法として、これは全部ではありません。この宅地難の解消に対して何らかの方針をお持ちでしたらお聞かせを願いたい。
  134. 稗田治

    ○稗田政府委員 宅地の高騰を抑制する策といたしまして、現在政府で行なっておりますのは、安い宅地造成いたしましてこれを供給していくというので、需給を緩和していくという意味で、日本住宅公団の方で宅地造成も三十五年度におきましてもさらに従来よりもワクを広げましてやっておるわけでございます。なお、住宅金融公庫の方でも新しい宅地造成を、昨年に比べましてやはりこれも相当ワクを広げてやっておるわけでございます。なお、どうしても、需要と供給との関係でございますので、ただいま政府が行なっております住宅公団による宅地造成とか、あるいは金融公庫による融資の宅地造成というものも十分ではないと思いますけれども、一方におきまして既成市街地宅地というものを、もっと合理的に高度利用しなければならない。問題はそういった建物の高層化をはかって、郊外に伸びていく宅地の需要というものを、旧市街地吸収していくということが必要ではないかということで、三十五年度の政府施策住宅におきましても、そういう高さの高い建物の比率をふやし、また日本住宅公団の施設付住宅でございますが、商店等の上に住宅を乗せるものでございますが、そういう施設の面積等も約七、八割前年度よりもふやしておるというわけでございます。住宅金融公庫における同じような意味での中高層の耐火建築物等の融資もございまするが、それらにおきましても三十四年度よりもさらに戸数におきまして七百戸程度、金額にいたしまして六億ほどふやしておるわけでございます。そういった宅地高度利用をはかりながら、一方に健康にしてしかも安い住宅宅地を供給していくというやり方でやっていくわけでございます。私もただいまお話に出ましたような税制度やその他からの宅地の高騰を押える施策としまして、新聞に出ておるのを拝見いたしたわけでございますが、土地の増価税とか、そういう点につきましても、従来からたびたび研究は重ねておるわけでございます。ただ現在譲渡所得税というのがございまして、土地を譲渡した場合に税金はかかることになっております。問題はこういったような税制度によって実際に安い宅地を供給することができるかどうか、また需給の円滑化も、むしろ摩擦を生ずるのではないか、そういうようなことも懸念される点があるわけでございます。しかしいずれにいたしましても、宅地の上昇率というものは最近非常に激しくなっておりますので、われわれも十分名案を考えるために研究しなければならないというように考えておるわけでございます。
  135. 島上善五郎

    ○島上分科員 名案を考えるために研究をしなければならぬということでは、ほんとうはもう手おくれなのです。どんどん上がっておる。それが住宅建設の大きな隘路になっておることは、これはもう否定することのできない事実なのです。既成市街地高度利用するということも、私はぜひ必要なことの一つだと思うのです。たとえば東京都について申しますと、東京駅の周辺はビルディングの林といわれるほどビルディングがある。しかし東京都の旧市内でも全体を平均して、一体どのくらいの階数になっているか。私の承知しているところでは、たしか一・八階程度じゃないかと思う。平均してまだ二階になってない。そうして横へ横へと広げていく。これはやはり一定の確固たる住宅政策がないという証拠ではないかと思うのです。あなたの方で調べた東京都の旧市内の階数はどのくらいあるか。一・八階か一・六階か知りませんけれども、もしそういう数字であるとなったら、こういうことからして、あなたの今おっしゃられた高度利用のためのしっかりした施策がない。どうにもならぬということになるのじゃないかと思うのです。
  136. 稗田治

    ○稗田政府委員 私承知いたしておりますのは、旧市内かどうかはちょっとただいま忘れましたけれども、平均階数は一・六階というように記憶いたしております。従いまして今後宅地高度利用ということは十分まだ余地があるのではないか、さような考えから中高層の耐火建築物の融資あるいは住宅公団の施設付住宅というようなものを、今後大いに伸ばしていかなければならないというふうに考えておるわけでございます。
  137. 島上善五郎

    ○島上分科員 私は一・八階と承知しておりましたが、一・八階でも一・六階でも、とにかく旧市内でも平均して二階になっていないということですね。八階、十階のビルディングが林のように並んでいるのに、半面にはまだ一階の家が旧市内にたくさんあるということです。こういう問題を積極的に解決する方途を講じなければ、さっき言ったように交通の関係やいろいろな問題と関連して、ほかの問題を派生して起こしているわけです。ですから私は、あなたが今答弁された既成市街地高度利用ということに対しても、本腰を入れてかからなければならぬと思うのです。ただその必要を認めるとか、そうしなければならぬということではなしに、政府はやはり一定の具体的な政策を立てる必要がある。今は残念ながらない。早急にこれに対する具体的な方策を立てる必要がある。これは一つぜひ大臣にお願いしたい。と同時に、この機会に大臣のお考えも承っておきたい。
  138. 村上勇

    村上国務大臣 何と申しましても都心に近い地域というものが、いわゆる勤労者のためにはすべて好都合でありますから、どうしても旧市街と申しますか、東京都内の宅地の高度の利用ということについては、われわれはなお一そうこれを強力に推進できるようなことを研究して参らなければならないと思っております。従いましてただいま御指摘になりました点につきましては、今後十分検討してその結論を得たい、かように思う次第であります。
  139. 島上善五郎

    ○島上分科員 それから前のお話にもありましたが、宅地の問題です。住宅公団でも、あるいはまた金融公庫でも、安い宅地を提供するために宅地造成をやっておるというお話でしたが、宅地造成をやっておるということは私も承知しております。承知しておりますが、その程度のことではウナギ登りに上る宅地問題を解決する。ほんの百分の一程度の一助にはなるかもしれませんけれども、解決にはならぬと思います。現にその証拠には、昨年、一昨年から宅地造成をやっておるけれども、宅地の上昇する勢いは少しも緩和されていない。そこで私は市街地の中にある遊休宅地をどうするかという問題やら、その他宅地政策に対しては、今お答えになった程度の緩慢なのんびりしたものではなしに、これまたもっとしっかりしたものを立てていただかなければならぬと考えます。これも一つ大臣にぜひ具体的な検討に着手していただきたいということを要望すると同時に、この機念に大臣のお考えを承っておきたい。
  140. 村上勇

    村上国務大臣 市街地にある遊休宅地について、これの取得その他についての取り扱いにつきましては、私は非常に大きな問題になると思います。従いまして関係する各方面と十分交渉し、研究し、検討した上で、また結論が出ましたならば御報告申し上げたいと思います。
  141. 島上善五郎

    ○島上分科員 他の同僚議員も質問する予定がありますので、私はこれをもって最後にいたします。住宅公団の家賃が、さっき申しましたように当初は四千円内でというつもりであったのが、五千円になり、五千円台を突破し、六千円になり、七千円になり、おそらくそのうちには八千円台を突破するということになるのではないかと思います。このように当初、住宅公団法を作った当時の考えから、そしてその法律の第一条の目的とするところから、だんだんずれてきておるという事実を、このままに見のがして放擲するわけにはいかないと思う。原因があることですから、その原因を取り除くということが必要なので、それには今言った宅地の問題、資金の問題、建設費のコストの問題等々があろうと思いますが、特に宅地などは、去年も新聞をにぎわしておりましたが、業者から業者の手を通じて買って、とてつもない高いものを買わされて、その間にやれ詐欺だ、横領だというような事件まで入っておるというようなことです。これでは七千円、八千円、やがて九千円台になるという趨勢をどうすることもできないと思う。私はこの際一つ大臣に、これまたしつかとした、住宅公団については最初の法律の目的に戻るように——家賃は私はもう五千円以上の家賃は勤労者は無理だと思うのです。理想的にいうならば四千円台の家賃でしょう。そういうことを考えて、家賃が七千円、八千円になる原因を取り除くためにどうしたらいいかということを真剣に考えてもらいたい。御所感を承って私の質問を終わります。
  142. 村上勇

    村上国務大臣 公団の家賃につきましては、やはりただいま御指摘のような措置をする以外ないと思います。しかし今日の情勢から見ますと、必ずしも私どもの考え方と同じになっていないのでありますが、その点を十分われわれも検討いたしまして、できる限り低家賃の方向に向かうように努力を続けて参りたいと思っております。
  143. 岡本茂

  144. 塚本三郎

    塚本分科員 大臣に簡単に二、三点お尋ねしたいと思います。  今日の日本の政治は、非常に消極的な、希望のないものだということが一般にいわれておりますが、その中において建設行政だけは国民に希望を与えるところの積極的な施策でなければならないと思うし、おそらく大臣もその点は心がけておいでになるだろと思っております。ところが具体的な一つ一つの施策等を見てみますと、経済の発達に伴って、どうすることもできずに、その活路を他に求めていく、いわゆる経済政策にあとから追っかけてどうにか間に合わせていく、こんな感じがしないわけでもございません。なお治山治水対策のごときは、これまた同じように、すべて大きな計画災害のあとでやっと認めていただく。これは建設省の責任ではないでしょうけれども、そういうふうなことでことしの治水五カ年計画がやっと打出されてくる。すべてがこういう状態です。たとえば東京都のごときは、どうにも仕方がなくなってから首都圏整備法という形が出てくる。しかもその法律たるや、三百人以上の工員を擁する工場は作ってはいけないといういうような制限規定がそのすべてを占めておる。こういう形に終始しておる。これは首都圏整備法ばかりではございません。これからお出しになるものも含めてあらゆる法律に一々目を通してみますと、大部分がそういう積極策ではなくして消極策に終始しておる。これではいつまでたっても同じようなことを繰り返していくのではなかろうかというふうに思うわけです。だから、ここで何らかの施策を打って、国土の総合的な開発と産業の抜本的な配置を大胆に計画していかなければいけまん。しかしここで私たちが当然突き当たるべきものは経済ベースだと思います。いつもそのときに、建設省自身もわれわれに説明なさる場合には、経済ベースに合わない、このことが一番大きな問題になってくると思うわけです。ところが経済ベースに合うようなことをしておったら、いつまでたっても今日までのこの事態は免れ得ないのではなかろうかというふうなことを考えて、この際経済ベースに合わなくとも、先の見通しを立てた計画をお立てになる必要があるのではなかろうか。  私の愛知県におきまして、御承知だと思いますが、愛知用水という農業開発の計画が地元で行なわれております。農業の施策としては、愛知用水を作るということは全くばかなことで、農業の生産ベースには合っておりません。農業の観点から見るならば、よくもあんなばかなことをしたものだ、今でもそう言われると思っております。しかしあの愛知用水が計画せられ、実現の運びになって参りますと、あらゆるものがこれについて発展して参るという形になって、食糧増産と銘打って行なわれた愛知用水が、今では農業の根本的な検討に対して大きな示唆を与えて、蔬菜や園芸に大きな活路を開いておる。さらにそれよりももっと驚くべきことは、大産業の開発ということで、今日愛知における南部地方におきましては、建設アームといわれて一年間に土地が十倍にはね上がっておる、こういう状態になっております。これは悪い面もありましょうけれども、いずれにいたしましても名古屋の市内に大集中しておって、過度の人口で困っておりましたものを、すべてあの地方に誘致した根本的なものは、あの愛知用水であったというふうにいわれております。そして名古屋の都市計画もおそらく全国に類例を見ないようなりっぱな施策が今行なわれようとしておる。名古屋に押しかけなくとも、南部に押しかけていく方がもっとりっぱである、もっと有利であるという形になっていきました。だから、一つ経済のベースに合わなかったけれども、先行した施策を行なったことによって、四つも五つもの状態が全部あそこで解決されようという形になっております。このことはこれからも、道路一本にいたしましても、あるいはまたいろいろな施策、工場用地を一つお作りになるにしましても、現在の産業ベースの中で合わないとか、あるいは採算がとりにくいとかいうお考えであるならば、いつまでたっても脱却することはできませんけれども、この点やはり御承知だと思いますが、あらゆる経済というものは、同じレベルでもって少しでも有利なものがあるならばということで、都会の中ですべての条件と基盤がせり合っております。こういうふうにせり合っておって、農村であっても僻地であっても、ここに道路を一本さっと通すことによって、あるいは安い敷地を、山地だけでなくて整地して、ここへ来なさいとか、何か一つ飛び抜けた施策をやることによって、すべてがそこにぱっと集中する形になって、都市におけるこういう頭打ちの経済体制を緩和する大きな道を開くことができると思うわけです。こんな意味でたとえば、これはかつて雑誌にも出たことがありますけれども、首都自身をどこかへ移したらどうか、あるいはまた学校だけでも大文教地帯ということでもって、どこか静かな山間に持っていったらどうか、一つの経済的な特徴のあるものだけを移動させたらどうかということは、現在の経済ベースの中ではおそらく不可能だと思っております。だからこれを建設行政として根本的にお考えになる意思があるのかどうか。国民はそういう大胆な先行した施策を願っておると思うのです。この点、もはや今日は経済自身がそういうことをすることによってつぶれてしまう状態でもございませんし、戦後十五年たっておりますから、もうこの辺で一つ日本の国土の前途に対して、希望ある施策を何かお打ちになる必要があるのではなかろうか。すべての大臣が御就任のときにこの点をお考えおくという答えをなさる。そうして大てい一年で大臣をおやめになるのが通例でありますが、これではならぬと思っております。そんな意味で何らか積極的な施策をお考えになる意思があるのかどうか、何らかこの点に対して積極的な御計画があるのかどうか、この点をお伺いしておきたいと思います。
  145. 村上勇

    村上国務大臣 塚本委員の御説のように、何を申しましても建設事業というものは、いわゆる土木建築というものが先に出かけるのでなければ、その国の文化などというものはただ言うだけであって何にもならない。何といっても文化の先がけであるということから申しますと、この建設行政の責任を持つ者として、国の文化向上のためにも、十分われわれが考慮して参らなければならない点が多いと思います。特に建設省のやっておる事業は、採算ということのみにこだわって参りますと、とんでもないことになるおそれがありますから、私どもとしては、採算を度外視はいたしてはおりませんけれども、採算というような、経済効果ということのみにとらわれないような施策をいたしておるのであります。その一つの現われが、要するに今回のこの治水の五カ年計画というようなことも、もしも災害が全然なかったら、これは相当採算的には引き合いのとれないものであろうと思いますが、しかし私どもとしては、これは採算というようなことでなくて、どうしても国土の保全のためにこういう大きな予算をもってやっておかなければならぬ、結局それは採算を度外視しているようでありますけれども、そのことが非常に採算がとれておるのでありまして、長い目で見ていただけばそれによって非常に国民生活というものが明るくなり、また非常な国費の乱費とでも申しますか、むだを防止するというようなことにもなるのであります。御質問の御趣旨は私どもも同感であります。たとい山間僻地であろうとも、先ほどの中央道のように、国の財政が許しますならば、できる限りそういう未開発の地域も開発するとか、あるいは水の高度利用というようなことから木曽川の上流の水を知多半島に持ってくる。それによって今御指摘のような大きな、非常な収獲が得られることになるのでありまして、そういう点に関しましては私どもただ単に治山治水という災害防止だけの面からだけで考えるばかりでなくて、やはり一滴の水も粗末にしないようにして、これが国民経済の上にも、また国民生活の上にも大いに役立つような措置をとって参るのがわれわれの役目だろうと思います。このことは水ばかりでなく、道路の面におきましても、あるいは河川改修あるいは港湾施設等につきましても同様なことが言えると思いますが、これは全く私も同感に思っておる次第であります。
  146. 塚本三郎

    塚本分科員 すべておそらく異論がないと思いますが、さてそれをどこからどう手をつけていくかということになりますと、乏しい予算の中ですから、大ていの場合ふんだくられてしまって、あと緊急にはその必要性を叫ぶ場所がございませんので、なかなか実現性がなくなってしまうと思うのです。御承知のようにおそらくそれで一番いいのは、縦貫道の中央道などは最もいいでしょうけれども、これとても各党ともに地域対抗のシーソー・ゲームを続けておるという、悲しい実情の中に今日あるわけでございますけれども、何らか私はこの際そういう意味で、愛知用水のごときは素朴な農民が誘致運動をいたしまして、それが思わない工業資本家の乗るところとなって、ああいうふうな派生的なことの方が重点的に利を得た形になったわけでありますけれども、この点はぜひ私は今度の村上大臣にはモデル地域的に二、三でもいいから、こういうふうにして国土の総合開発をするのだという——総合開発のプランなどを見ますと、これまた残念ながら自分たちの地域のぶんどり合いに終始してしまうというふうな形に陥っているやに、われわれは想像しなければならぬ状態になっているわけです。その点、大胆に一つモデル地区を一、二でもいいから設けていただいて、そうしていわゆる経済に先行する国土の開発のための施策、こういうものを積極的にお進めになっていただきたい。根本的な、抜本的なことはなかなか、私はこれまた事情を幾分知っておりますだけに無謀なことは申し上げられませんけれども、何かそういう一、二モデル的なものでもお作りいただいて、そうしてそこに一つりっぱなものを作っていただくならば、なるほどということでもって、やがて直接的な利益でなくても、間接的にわれわれの方にもそのことが波及してくるのだ、こういう形になってくるのだろうということは、これは的をはずれないと思います。そんな意味からモデル的な地域でも、いわゆる選挙区の地盤ぶんどりには全然動かされない気持で一、二お作りいただきたいと思いますが、その点の御見解どうでしょうか。
  147. 村上勇

    村上国務大臣 そういうことにつきましても十分私も研究して参りたいと思いますが、そういうようなモデル地区というようなことは申し上げられるかどうか知りませんが、今北海道開発につきましては、北海道の全く港もないところに相当な国家投資をいたしまして港を作る。そうするとそのためにその地域の港湾による利益というものが非常に上がってきますが、そういうような点、あるいはまた北海道の道路の非常に高度な道路網というようなものにつきましても着々とその歩を進めておりますが、比較的私はうまくいっていると思います。北海道だけでございません。内地におきましてもそういうような点は十分考えて参りたいと思います。そういう意味におきましてはこれからのいわゆる各種自動車道路というようなものは、そういうような面に当てはまるものではないか。こういう点は必要度の高いところから積極的にこれを推進して参りたい、かように思っております。
  148. 塚本三郎

    塚本分科員 国民にやはり希望の持てるようなものを一つ大胆に打ち出していただくような——もちろん採算ということは大切でございますけれども、特に若い青年諸君は非常に希望を失った生活の中におります。しかしそれかといって外に情熱のはけ口は求められない。そして青少年に対しては、これをやるな、これをやるなというふうな、不良化防止という点から、戦後の青年は不良に行くところの素質があるがごとき考え方で情熱だけは押えて、そうしてまじめな者はスポーツかセックスの中に行くよりほかにしょうがないというふうな形の中に置かれておるのです。この実情、この点を救うものは私は国土のそういうりっぱな開発以外にないと思っております。その点からも希望ある積極的な施策を採算を度外視しても、やがてはそのことが一番大きく採算に合うものだというふうに思いますから、その点もっと——北海道も大へんけっこうでありますが、この本州の中にも一、二その点を見つけていただきたいというふうなことを希望として申し上げておきます。  次に住宅の問題でございますが、先ほど島上委員からいろいろと御質問なさったようでございますが、私は公庫住宅のことについてちょっとお尋ねしてみたいと思うわけでございます。確かに国庫補助によるところの公営住宅に対する低所得者の住宅は、これは特に都会地においては不可欠の要件であろうと思っております。それと並行いたしまして公庫住宅、いわゆる民間の建設意欲というものを盛り上げていくという住宅建設、これは大臣も先ほどの御答弁のように、おそらく四、五年で変えまするような決意をお述べになりましたが、それができるかできないかということは、私はおそらく公庫住宅の今後の運営に決定的な役割を果たすのではないかというふうに思っております。国民の住宅に対する希望、執着、これは年々増加しております。このことは非常にけっこうなことであり、今後とも伸ばしていかなければならないというふうに思いますが、何せこの窓口も決して広くはございません。さればといって放置をするわけにいきませんから、自己建設という気持は非常に高くなって参りまして、このことがすでに先日来建設員会の中でも正式に取り上げられました月賦住宅等の中にも現われてきておると思っております。自分の金で建てなければいけない、こういう気持は国民の中に非常に強く盛り上がってきて、そのことがあのようなわなにかけられた結果になるというふうな事例も出て参ることになると思っております。その点公庫住宅の立場は非常にいい施策でありますが、何といいましてもその資金の過半数を出すということでございますから、その金額がかさんで、それを広く民間資金の中に配分するわけにはいきません。これはこれで私はけっこうだと思いますが、何かもっと月賦住宅で、全部自己資金で、しかもまたその利息まで払ってでも建設したいという市民の希望というものを考えて参りますと、過半数の金を公庫から貸すという形でなくても、もっと少なくても、あるいはもっと言いますなら間口を広げて、そして民間の自己建設というものを、資金でなくても、ほかの便宜だけでも具体的に与えるということをしてやれば、もっともっと自己資金による建設も急速に伸びてくるのではなかろうかというふうな感じもするわけです。従って政府としては当然公庫や公営住宅等に最重点を注いでいただかなければならぬことは住宅の趨勢だろうと思いますが、現在の日本の現状から見ますと、そんなことを言っておりましたら、いつまでたってもここの論議だけに終わってしまいますので、消費の面にその金を使うのを住宅の方へ向けさせるなよう施策、こんなことを根本的にもはや考えていただく時期ではなかろうかというふうに考えるわけです。この点何か具体的な手をお打ちになる構想があるかどうか、お伺いしたい。
  149. 稗田治

    ○稗田政府委員 公庫の個人貸付につきましては、現在は大体三回申し込めば必ず当たるというような状況でございます。従いまして一回か二回かははずれていただくようになるかもしれませんけれども、実際には申し込んでからそう夢のようなことを期待するということでなしに、建設の準備にかかっておっても間に合うというような状況でございます。  なお先ほどお話の中に月賦住宅会社のことが出ましたけれども、私たちの方でいろいろ御要望の点もございましたので調査をいたしたわけでざいますが、月賦住宅会社の方で取り扱っておりますのは、純粋な住宅が占めている比率が非常に少ないわけでございます。そこで飲食店とか商店とか、そういったたぐいのものが圧倒的に大部分を占めておるようでございます。御承知のように住宅金融公庫住宅難を緩和するというので住宅を主にしておりますので、そういった方にはやはりこの資金は使いにくいというようなことで、月賦住宅の方へ申し込まれる方があるのだと思いますけれども、住宅難の緩和ということにつきましては、われわれが調査しました段階におきましては、そう荷はかかっていないように考えておるのでございます。それからもう一つは、いずれにしましても国の施策として行なっておりますのは、一般の住宅困窮者に公平な立場で扱わなければならないわけでございますが、月賦住宅の方はくじに当たるとかなんとかでなしに、申し込めば必ずある期間積み立てをすれば工事にかかるというようなところが、こういった国の施策よりも非常に取りつきやすいというような面があるのだというふうに考えているわけでございます。月賦住宅会社のことにつきましてもいろいろ問題がございますので、住宅局としても研究中でございますけれども、もう少し民間資金をさらに活用した方法で住宅建設戸数をさらに伸ばすというようなことも、ぜひ今後の施策に取り入れていきたいというように考えているわけでございます。
  150. 塚本三郎

    塚本分科員 月賦住宅の功罪を私は申し上げているのではなくて、自己資金によるところの建設意欲を何らかの形で今おっしゃったように伸ばしていくべきである。確かに月賦住宅等の建てられた圧倒的な多数は、今われわれが考えているような建築ではございません。ところがこれは余談になるかもしれませんが、実際に月賦住宅に依存しようとした人の相当数は住宅をねらってやったのです。ところがこういう人たちはずいぶん悲劇を受けてしまって、実際に建設せられた戸数からいいますと、そういう健全な住宅という気持の人は建てられないという形で、途中でキャンセルしてしまって悲劇の主人公になってしまうということになっているような状態を、私たちは多少とも知っているわけでございます。申し上げたかったのは、そういうふうに利息を払ってでも直ちに住宅を自己資金で建てたい、こういう気持が多いということでございます。このことを何らかの形で見捨てずに生かしていかなければいけないのではなかろうか。確かに三回ほど申し込めば当たるということも事実でございますが、これらにつきましても、申し込む人自身がすでに条件その他でもって相当に制限せられて申し込んできている、こういう事実もないことはございません。そんな点を勘案いたしまして、もっともっとこの点、先ほど局長から申されたようなことを具体的に一つことしは考えていただいて、自己資金建設のためにどんな便宜が与えられるか、こんなことを具体的に御検討をいただきまして、先ほどの大臣の御覚悟のような形が実現されるように、これは私たちにとっては本来満足すべき結果ではございませんけれども、しかしやはり今日の予算の配分等から見まして、可能の最大限をとっていくとしますれば、助けられる道はそれだけだと思っております。そんなことから一つぜひこの際はその実現方の方法を御検討いただきたいというふうに思いますが、ことしじゅうに何かそんな具体的な案等を出される御準備があるかどうか、その点どうでしょうか。
  151. 稗田治

    ○稗田政府委員 まだ確信のある具体策というところまでは検討が済んでいないわけでございます。しかしいずれにいたしましても、国の財政資金だけにたよるということでなしに民間の資金あるいは個人の資金といったようなものを活用する方法をぜひ考え出したいと思っております。
  152. 塚本三郎

    塚本分科員 最後にもう一点だけ簡単にお尋ねしておきます。これは大臣にお願いいたします。道路の新設、改良はもちろんのこと、すべてのことについて土地収用の問題が決定的な役割を今果たしていることは申し上げるまでもございません。今日の国民思想の中からは、土地自身が動産と同じような気持で売買されておりますし、所有権として認められております。このことは根本的な問題ですから、ここで論ずるまでもございませんが、あらゆる面にこれが支障を来たしていることは申し上げるまでもないわけでありますので、この点何らか根本的な打開策を設けなかったから、もはや都市及び都市周辺における建設事業はすべてこの面で予算あるいはまた時間的に制約を受けざるを得ない。こんなことは考えておいでになると思いますが、その点も、うわさによりますと、土地収用法の改正とか、そんなことも出ておるようでございますが、やはりこれは根本的に検討すべき段階に至っておることは当然だと思います。何とかしなければならぬと思いますが、これについても具体的な、どの程度土地収用法に対する改正をお考えになっておられるか、この点をお伺いしたいと思います。
  153. 村上勇

    村上国務大臣 土地収用の問題はなかなかこれは、まあいろいろと理屈を立てますと非常に複雑なものでありまして、私どもとしてはそういう土地収用というような伝家の宝刀を抜くようなことは、できる限りこれは避けなければならぬと思いますが、御指摘のように、今日の公共用地取得につきましては、非常な困難がありまして、どうも万やむを得ない場合もあることは遺憾でありますが、しかしできる限りそういうことは避けて、話し合いで、納得ずくでいくというように努力を続けて参りたいと思っております。しかし、ただいま御意見のありました土地収用法の改正につきましては、これをただ建設省がすべて立案してこの改正をやるというようなことにつきましては、これはいろいろと困難もありますし、また、そういうような、われわれが考えただけの方向でやるべき問題でもないと思いますので、公共用地取得に対する審議会のようなものを、それぞれの学識経験者にお集まりいただいて、それらの人たちの構成によってそういう審議会を設ける、その上で、いかにすべきかということをまずきめていただいた上で、それを参考にしてこの問題の解決をいたしたいと思っております。従いまして今回の三十五年度予算に、その審議会の経費等が計上されておりますので、予算が通過いたしますれば、直ちにその審議会を発足いたしまして、その上で十分検討した上で、適当な措置をとって参りたい、かように思っておる次第であります。
  154. 塚本三郎

    塚本分科員 そういたしますと、正式にそれを検討する機関はこれから設けられるということですか。
  155. 村上勇

    村上国務大臣 その通りでございます。
  156. 塚本三郎

    塚本分科員 戦後民主的な方法で農地が解放せられまして、非常に民主化せられたということでございますが、依然として山林やあるいはまた都会の宅地だけは、膨大な個人の所有権と財産というような形で残されております。現在そこに生活しております人にとっては必要でございましょうが、これが財産権として、先ほどの島上先輩の話のような形で、公共の事業等にも非常に支障を来たしておる。のみならずこれが公共事業ばかりでなくして、個人の経済活動等にとっても、町のまん中や大切なところに、とにかく広っぱのまま放置せられておるというふうなこと等は、これまた同じ所有権でありましても、自分の住まっておるところの所有権と、空地として持っておるところの所有権と、これは法的にはどうこうすることはできないといたしましても、善良な国民の感情からいたしましても、これらの問題等については、やはり民主的な方法でなければいけませんけれども、検討する段階に至っておるのではなかろうかというふうに思っておりますから、この点一つ積極的な御検討をお願いしたいという希望だけ申し上げまして、私の質問は終わります。
  157. 岡本茂

  158. 小松幹

    小松(幹)分科員 特定多目的ダム建設工事勘定の中で、築後川松原下筌ダム建設費の三億七千六百万円ですか、あれはどういう内訳か、一つ数字的に説明して下さい。
  159. 山本三郎

    ○山本(三)政府委員 その金額は、三十五年度におきまして、下筌ダム工事をやるための慶排水路、仮締め切りの工事事業費と、それから、ダム建設工事をやるために必要な工事用道路、それから試掘なり試錐をやるための調査の費用、それから用地買収等が入っておるわけであります。
  160. 小松幹

    小松(幹)分科員 今説明されたのは四項目ありましたが、四項目の内容です。数字の内容です。
  161. 山本三郎

    ○山本(三)政府委員 概略の金額といたしましては、仮排水路あるいは仮締め切りを含んでおりますが、それが約六千万円、それから工事用道路が一億二千万円、それから用地の買収費が八千万円、その他測量試験費、機械器具費、それから営繕の事務費等が約一億四千万円見当でございます。
  162. 小松幹

    小松(幹)分科員 用地買収費の八千万円というのはどういう内容になりますか。
  163. 山本三郎

    ○山本(三)政府委員 これは主としてダムを作る場所をまず買収いたしたいということを考えておりまして、全般的の買収費はこれではまだ足りないわけでございます。
  164. 小松幹

    小松(幹)分科員 つけかえ道路の買収費は含まれますか。
  165. 山本三郎

    ○山本(三)政府委員 つけかえ道路の買収費は、工事用道路の中に含まれておるということでございます。
  166. 小松幹

    小松(幹)分科員 そうすると用地買収費というのは、先ほど言った試掘、試錐に伴う調査関係の買収費ということになりますか。松原ダム、下筌ダムダム・サイトのできますところの買収費ということになりますか。
  167. 山本三郎

    ○山本(三)政府委員 主として、ダムサイト、ダムを作るところを買収いたしまして、詳しい調査あるいは掘さく等をいたしますので、そこを先に買収したいというふうに考えておる次第でございます。
  168. 小松幹

    小松(幹)分科員 用地買収費の八千万円は、松原ダムと下筌ダムダムの堰堤の設置場所の買収費ということに限定されるわけですか。
  169. 山本三郎

    ○山本(三)政府委員 工事用道路の中に用地収費が入っておりまが、その他の用地買収は・ダム・サイトあるいはそれに対しましてその付近に施設を作ったりするような買収費も含まれておりますけれども、主としてダムを作る、ダムの位置の買収費であります。
  170. 小松幹

    小松(幹)分科員 三十四年度の繰り越し予算は三千八百万円ですけれども、これ幾ら繰り越しですか。
  171. 山本三郎

    ○山本(三)政府委員 その点につきましては、まだこれからも期間がございますので、はっきりは申し上げられませんが、今数字を持っておりませんけれども、現在のところはまだ相当残っておるわけでございます。
  172. 小松幹

    小松(幹)分科員 河川の試掘、試錐の調査費一億四千万円というのですね。これをもう少し詳しく説明して下さいませんか。一億四千万円の内容を。
  173. 山本三郎

    ○山本(三)政府委員 一億四千万円の内容といたしましては測量試験費が三千万円、機械器具費が四千万円、営繕と事務費含めまして七千万円でございまして、今おっしゃる試掘等の費用に該当されるものは三千万円でございます。
  174. 小松幹

    小松(幹)分科員 そうすると繰越費には試掘、試錐の費用が入っているのですか。
  175. 山本三郎

    ○山本(三)政府委員 本年度の費用は、御承知のように実施計画調査費でございますので、もちろん本年度の予算の中に入っておりますが、来年度見ておりますのは、さらにそれらを詳しく調査する費用がその測量試験費の中に入っているわけでございます。
  176. 小松幹

    小松(幹)分科員 これはやはり河川局長か大臣になりますが、筑後川の流水調節を、今松原、下筌ダムニつにかかっておるのですが、筑後川の流量調節というものは、筑後川の流れを見ると玖珠川と大山川と大きな二つの河川に日田を中心に分かれておるのですが、中津江川へ二本のダム建設するということは、これは筑後川の流量調節について少し大山川だけに荷がかかり過ぎているのじゃないか。ほんとうからいえば玖珠川にダムを一つ持たなければ筑後川の流量調節はできない、こういうふうに見るのですが、どうなんですか。
  177. 山本三郎

    ○山本(三)政府委員 筑後川の洪水調節の問題戸でございますが、これにつきましては過半昭和二十八年に大災害がございましたので、どうしても上流地帯で洪水を調節しなければならぬという必要を認めまして——仰せの通りこの筑後川におきましては大山川と玖珠川の二つが大支川と申しますか、いずれも負けず劣らぬ大きな流域面積を持っておりますので、両方に作るべく当初におきまして十数カ地点の候補地を選びましていろいろと調査をいたしたのでございますが、残念ながら玖珠川の方面におきましては適当な地点が得られなかったのでございます。その後いろいろと調査を進めた結果、大山川筋におきましては、今仰せのような松原、下筌という地点におきましては、地質も良好であるし、また雨量におきましても相当多い地帯でございますので、下流の要請に応ずるだけの洪水調節はこの二カ地点を完成するならば、果たすことができるという結論に到達したわけでございます。もちろん玖珠川筋にそういうふうな地点が得られますならば、これを作るにこしたことはないわけでございますが、そういう結果からやむを得ず大山川にニカ地点を作る、こういうことにいたした次第でございます。
  178. 小松幹

    小松(幹)分科員 地質を調査した結果玖珠川が悪い、こういうようにも一部では説明しますが、玖珠川のダム建設は非常に補償費が高くつくからできなかったのだと私は直接聞いているんです。補償費の問題なのかそれとも地質の問題なんですか。
  179. 山本三郎

    ○山本(三)政府委員 地質がおもなる問題でございまして、補償物件等も鉄道もつけ人家もつぶすということになりますれば、それはある程度金をかけるならば可能という考えもございますけれども、そういうふうな比較検討の対象にもできないような地質的の状況へあそこは非常に砂利の多い川でござまして、そういうふうな状況でございましたので、やむを得ず破棄せざるを得なかったというのが実情でございます。
  180. 小松幹

    小松(幹)分科員 それはただ建設省だけの、地質が悪いのだとかいいのだというような調査だけに終始していると思うのです。これをもう少し世人が納得するような公開的な要素——久世畑ですか、あそこも地質が悪い、筑後川も地質が悪い、自分の計画地点でないところは地質が悪い、こういうように建設省はいっている、しかしそれは建設省の手前みその計画だといっておるとするならば、これは公開的に地質を再調査する意図はございませんか。
  181. 山本三郎

    ○山本(三)政府委員 地質につきましては建設省におきましても地質の専門家がおるわけでございますが、それだけでも間に合わない場合におきましては、ダムの地質の専門家に委嘱をいたしまして、地質を調査いたしていただくような方法をとっております。現在におけるダム地質の権威者というのは非常に数は少ないわけでございますが、これらの方に、必ずといっていいくらい大きなダムのときには調査を依頼いたしまして、それらの意見を参照いたしまして十分調査の上決定をいたすという方法をとっておりますので、建設省がひとりよがりでどうこうということはございません。フランクな立場で純技術的に判断いたしておるのが実情でございます。
  182. 小松幹

    小松(幹)分科員 建設省のおっしゃることはそれでいいと思います。しかし建設省が遂行するうちに、反対の人がおって、ほんとうは地質問題ではないのだ——建設省の方は、私の方はフランクな地質調査に基づいておるのだ、こうおっしゃったとしても、納得させなければ私はフランクがフランクにならないと思う。そういう意味でやはり公開地質調査をして、建設省のひとりよがりではないのだ、こういうことをやらないと納得しないのじゃないか。その点建設省は、過去はそれでよかったと思うけれども、この問題が山に上っておる一つの要素として、ただ松原、下筌ダムの今の地点が建設省の地質調査ではいいのだというだけでは納得せないのじゃないか。その点もっと違った形で、やはり地質調査というものをはっきり公開していく方法をとらないと、建設省はいいとしても、ダムをこしらえられる地点の者は、困った問題だ、建設省のひとりよがりの説明にしかすぎない、こういうことになれば、いや違う、おれの方は正しい地質調査をしたのだといっても、その証拠なりあるいは公開検査というか公開の調査をはっきり示さない限りは、これは水かけ論争になると思うのですが、この点はどうなんですか。
  183. 山本三郎

    ○山本(三)政府委員 地質等の状況につきましても、地元の方々に対しましてはいろいろと御説明はしようという努力はいたしておるわけでございます。一部の方々は十分聞いていただいておるわけでございますが、なかなか内容を聞いていただくような段取りにならないのでございまして、その点いつでも御説明を申し上げたいというふうには考えておるわけでございますが、その点にもし御異論があるならば、またお立ち会いの上現場等を十分ごらんになっていただいても、これはまことにけっこうだと存じております。
  184. 小松幹

    小松(幹)分科員 建設省が地質調査に関していま一度公開的なもので、説明なりあるいはその資料なりあるいは形の変わった調査団を設けるというような格好の段取りをしていただくというように私は聞いたのですが、そうですか。
  185. 山本三郎

    ○山本(三)政府委員 先生がどこからお聞きになったか知りませんが、私どもまだそういうふうな段取りにはいたしておりません。
  186. 小松幹

    小松(幹)分科員 私の知っている限りでは、下筌ダム・サイトの指定されておる土地も、どうもあまり良質な土地ではない、やはり似たか寄ったかの地質関係だと私は見ているのです。そういう関係上玖珠川をのけ、大山川の久世畑をのけ、そして最終的に松原、下筌ダムの用地に持ってきたけれども、久世畑、玖珠川、大山川と今のダム・サイトの地点との地質の工合は、しろうとですからどうかわかりませんけれども、似たか寄ったかで、ここでなくちゃならぬというような論拠が出てこないわけです。建設省のはここでなくてはならぬ、ここ掘れワンワンという式でしょうが、しろうとが見るとここだけが地質がよくてほかのところはみな悪いのだ、こうも考えられないのです。そこでどっちがいいかわからぬ、どっちがいいかわからぬからもう一度やはり地質公開調査というものをやらないとお互いにいやここはいいことはないのだ、建設省が勝手にいいと言ってダムをこしらえようとしている、こういうように言えば、意見は半分々々になる。建設省はいいのだ、地点の住民は悪いのだ、ここでなくちゃならぬことはない、この土地といったって同じことだ、地質は同じだから、似たか寄ったかだから、そんなことは建設省の言い分にしかすぎないという意見が出たら議論は半々だと思う。その半々の議論を一体どうして納得させ、一体どうしてこれを進めていくかというところに一つの問題があると思う。それならば具体的に地質の公開調査をもう一度はっきりやり直すかどうかということにかかってくるわけなんですが、その点のお考えを聞きたい。
  187. 山本三郎

    ○山本(三)政府委員 詳しい御説明はあれでございますが、上流地点は溶岩の岩盤でございますし、下流の玖珠川の地点は噴火の堆積であるというような観点から、下流におきましては非常に断層もありますし、また非常に弱い層をかんでおるというのが実情でございまして、それらの点につきましてもし御不審があるならば、十分調査の結果等もお示しいたしまして御了解をいただきたいというふうに考えておるわけでございまして、われわれもいろいろな人の意見も十分参酌いたしますし、できる限りの調査はいたしておるわけでありますので、十分御納得がいただけるようにできるものと考えておる次第でございます。
  188. 小松幹

    小松(幹)委員 問題は、筑後川の流量調節を大山川一本にしぼってしまったというところに——はたして筑後川の流量調節が大山川あるいは中津江川だけではできないのではないか、玖珠川にも設けなければならぬという意見、それは一応抜きにしても、そこは地質が悪いからということになれば、ほんとうにそれに反対しておる者に地質はこうなんだと納得いくような一つの公開調査か何かをする機会を持たなければ、それは勝手な説明と勝手な意見で押しつぶしていくのではないか。ここが私は非常にむずかしいところではないかと思う。賛成者は別にしまして、反対者の意見としては、どうも建設省の地質調査というものに対して疑心暗鬼で、勝手な地質調査をしてここは悪いのだ、ここはいいのだというような調査では納得できないのです。特に久世畑の問題あたりは、地元の反対のために政治的にも動きがあったから結局そこをぺケにして持ってきた。これはあるいは誤解かもしれませんよ。誤解かもしれませんけれども、とにかくそういう過去のいきさつから玖珠川を予定した、ところがそこには久大線という鉄道が敷かれているために補償費が高くかかる、だから補償費の問題でここはだめだ、久世畑に持ってきたけれども、久世畑は五百戸の人家を沈めるので反対があってだめだ。それで流れ流れて下筌、松原に持ってきたのだ。それで小さな川に二本の、ダムをこしらえるという結果になってしまった。その結果論は、建設省にはそれぞれその立論の根拠があり、言い分は確かに私はあると思うのです。その点は私はあると思うが、しかしその成り立ち、経緯から考えて、やはり反対する者はそこが納得できない。勝手に自分が調査してここが悪い、そこに政治的な反駁があるとそこも捨てて、そして結局流れ流れてきた。おれたちはそういう犠牲をうけないという意見になるとするならば、それを納得させるためには、ここがだめだった、ここもだめだったから、あなたのところはいいからこらえてくれ、これでは納得しないのじゃないか。過去の経緯から考えて、ダム地点に当たった、最終的に貧乏くじを引き当てた者が泣き寝入りをしなければならぬのかということになってしまうわけです。だからその点はもう少し公に、地質調査の結果を納得させるような経緯で持っていかぬのじゃないか。それは特に反対者の意見としても私は聞いております。なぜおれのところだけに最後に持ってきたのか、玖珠川に持っていくべきじゃないか、玖珠川もだめだ、それから久世畑に持っていくのもだめだ、聞けばいろいろな地元の反対があるからおれのところに持ってきた、それではおれのところは反対しなければ泣き寝入りしなければならぬのかということになってくるわけです。そういう経緯があるから問題がこじれるのじゃないか。その点、もう少し地質の調査結果については納得させるような方法をとるべきではないか。それからもう一つは、ダム・サイトを作る場合に試掘、試錐の許可証を熊本県知事からとっていると思いますが、そういう許可証がおりれば、一体その近所あたりの杉の木などは勝手に建設省は所きらわず切り倒してもいいのか。いわゆる私有財産はどういうようになるのか。その試掘、試錐のポイントになる地点ではなくて、そこら近所の何十年という杉の木を切り散らかしてあめる。しかも無断で一言も相談せずに切り散らかしたということはどういうことです。
  189. 山本三郎

    ○山本(三)政府委員 それは当然ちゃくちゃん切ったりするというようなことは許さないわけでございましてまたどうしてもそういうことをしなければならぬ場合には補償を差し上げなければいかぬということでございます。今までの経緯によりまして、些少な稲の穂が落ちたというようなことがありまして、その場合には建設省も申しわけないということであやまりを言いまして、御了解をいただいたというふうに報告されております。
  190. 小松幹

    小松(幹)委員 稲の穂をどうとか言いましたね。それは松原ダムだろうと思うのですけれども、下筌ダムダム・サイトの地点に、現地に行ってみますと、杉の木の四十年から五十年のものが倒されているのです。そしてそれは所有者の許可なく無断で切り倒してある。持っていってはいないが、切り倒したままというか、それを切って積み上げてあります。この点は、建設省は許可さえとれば人の財産は切って切りほうだい、しかも事前に何の話し合いもないで切りほうだいということは、これは法的に許されるかどうかという問題になるわけですが。
  191. 山本三郎

    ○山本(三)政府委員 この点につきましては、立ち入りの許可を得まして本人に通知をいたしまして、そういう処置をいたしておるわけでございますが、その行為は認められておるわけでございますが、当然それに対しましては補償という問題になるわけでございます。
  192. 小松幹

    小松(幹)分科員 それは取り払ったら補償はせんなるまいですが、それじゃ補償の交渉などは一体どういう格好でしたのか。まず補償に行く前に——局長ここのところは重大なところなんです。試掘、試錐の許可は試掘、試錐の地点、直径一メートルの横穴、縦穴を掘る、その地点とその地点に行く間の一つの作業道路、こういうものについて試掘、試錐の許可がおりておる。それであるのに——その地点を切るならば別だ。あるいはその作業道も一応見ている。作業道がどこか、地点がどこか、それも明示しないで、とにかく区画全体を、森林を伐採してしまったということは、少し、建設省としてはこれは無断行為で行き過ぎではないかと思うのです。その点はどうなんです。
  193. 山本三郎

    ○山本(三)政府委員 その点につきましては、区域を明示いたしまして所有者の方に通知をいたしておるわけでございまして、そういうふうな手続を踏んでおります。従いまして、その前にお話し合いができればいいわけでございますが、当然できることをやっておるわけでございますので、建設省といたしましては、許可を受け、本人に通知を申し上げているのでございますので、これは当然できるものと解釈しておるわけでございます。
  194. 小松幹

    小松(幹)分科員 建設省はできるものだ、しかし本人たちは絶対それは、試掘地点ならばできるが、しかしそれ以外のものを勝手に無断で伐採するということは、それはいわゆる権利の侵害であるから、最近は裁判にかけていますが、裁判に対してこれは応訴していきますか。こういう問題は私は、勝手に建設省だけがそれは通知しているのだからいいんだというような解釈は、これはただ押して押しまくっていけばいいんだという考えだと思うのです。この点は少し考え直さなければならぬと思うが、その点はどうなんですか。
  195. 山本三郎

    ○山本(三)政府委員 ただいまのお話は、試掘をやるために必要な障害物ということでございますので、その点は合法的であるというふうに考えております。
  196. 小松幹

    小松(幹)分科員 合法的というのはあなたの考えでありまして、私はどうも試掘、試錐のあの十四条を解釈しても、無断でところきらわず伐採してしまうという行き方は、これは合法的というよりも、建設省のなさることじゃないのじゃないかと思う。しかも試掘、試錐の許可は図面で許可がなっておりますが、はっきりどこの範囲のどこで穴を掘って、どういう作業道をつけて、そうしてどの範囲を伐採するのだという取りきめ、事前協議というものはなさらないで、許可をとったからやみ討ちにぽんと伐採してしまうということは、私はちょっと建設省があまり——今までそういう方法をとっておったかもしれぬが、私有財産というものに対しての軽率な行為じゃないかと思うのです。今まではそれで許されたかしらないが、私はもう少し慎重な方法をとらなければ、この問題の解決はできないと思う。その点、その方法がいい、そして今からもそういうような方法をとってやるのかどうか。実際問題として非常に勝手な解釈で勝手な行為をしていったようにしか、だれの目にも受け取れないのです。その点はどうなんです。
  197. 山本三郎

    ○山本(三)政府委員 その点につきましては、平穏のうちにいろいろ調査をやりたいということで、ずいぶんと努力をいたしまして、御了解を得るための努力はいたしたわけでございますが、努力の足りない結果もありましょうが、お会いすることもできないような状況でございましたので、やむを得ずそういう処置になったわけでございまして、建設省といたしまして、決して本意のわけではございませんので御了解いただきたいと思います。
  198. 小松幹

    小松(幹)分科員 努力したけれども、いろいろ相談ができないでやむを得なかった、こういうことでその行為は世上の話題としてはまことに穏当な話のように聞こえます。しかしながら、他人の権利を侵害するというような、一つの生活権、あるいは私有権、いわゆる私有物権という一つの法的な権利というものを、話し合いがうまくいかなかったから、おれはおれで勝手に切ってしまうのだという考え方は、私は国家権力の乱用としか考えられない。たとえば、最近は警察官を五百人ほど動員してなぐり込みをかけてでも穴を掘ろう、こういうような警察権乱用のこともちらほら聞いておりますが、話し合いができぬから勝手に人の山を切り払っていいんだ、それでもいかないから警察権力を動員して穴を掘るのだというようなことでは、ちょっとおかしくなるのじゃないかと思うのですが、その辺どうすればいいのです。話し合いができなければおれはこづき回すのだ、話し合いができなければ何とかの方法が出ないものか、話し合いができなかったら警察権でぶつちらかしてでもやるのだ、あるいは人の山でも黙ってぶった切るのだ、これはちょっとおかしいのじゃないか。とにかく権利と権利の話し合いといえば、これは金の貸し借りでもあるいは売買でも、話し合いは一応します。あるいは談合もします。しかし談合も、話し合いもできぬじゃったら暴力団を入れて、こづき回してでもやるのだというわけにはいかぬと思うのです。そこには、私はしかるべき一つの秩序というものがありそうに思う。建設省はその秩序というものを踏まないで、話し合いをしたけれどもだめだったから、話し合ってくれないから、そこら近所の木も何も切り散らかす、それで言うことを聞かなければ警察を入れてやるのだ、こういうお考えを今でも持っておられるか、その辺をお伺いいたします。
  199. 山本三郎

    ○山本(三)政府委員 ただいまのお話はまことにごもっともな話で、私どもも、決してそういうような方法を初めからどうしろという方法ではございませんが、しかしながら公共のために行なう事業のためでございますので、法的に許されておる範囲におきましては、できるだけ促進のためにやりたいという考えからやっておるわけでございまして、むちゃくちゃに権力を行使しておるというようなことには考えてない次第であります。
  200. 小松幹

    小松(幹)分科員 そこのところが、やはり建設省も一足飛びに物事を解決しようという考え方が先行しているのじゃないか、やはり権利と権利、国家の行政権利と同時に、個人の所有の権利というものは、これは個人の私有権というものが副で、国家の行政施策の権利が主だということはないと思う。国家の行政権利も、個人の私有権利も、尋ぬれば一対一のものだ、一対一のものを、権利を没収したりあるいは権利を冒涜したりしていく過程には、私はもう少しほんとうに合法的なものが介在しなければ納得しないと思う。その合法的なものの介在を許さずして、ただ単に国家の公共事業という一つの大きなお題目を掲げて、公共事業だからというのでやるのはどうかと思う。一体話し合いをするのに、杉の木一本どれだけの価値で買い上げるということを話したことはないでしょう。そういう補償などというものについて、予算的配意も何も持たない。ただ話し合いさえすれば、補償はあとからだ、立ちのけ、立ちのいたら金をやるのだという考えは、私はイージー・ゴーイングな建設方針だと思う。そういうやり方では、もはや住民は過去の事例からなかなかついていかないと思う。こういう行き方は、私はどうも世人を納得させ得ないのではないかと思う。一般の利害関係の少ない町村長だとか、あるいは議会の人たちとか、あるいは遠巻きの被害を受けないその近所の人は納得すると思うけれども、追い立てられて生活権を棒に振る者は、やはり補償するんだなんて言ったってだめでしょう。ああ、それは高く買いますよ、こういうことを言うたからといって、それなら売ろうか、高う買うと言っても、なんぼで売るかという話がきまらない以上は納得しないと同じように、幾ら公共企業体だからといっても補償するんだといっても、そう勝手に切り倒したり、あるいは警察権力を使ったりするということは、——今の言葉で、警察権力は使いにくいということを言っておりますが、どうなんですか。やはり今後も勝手に伐採したり、あるいは勝手に切り込んで、警察を利用して、権力で押えていくというお考えが今もあるのかどうか。
  201. 村上勇

    村上国務大臣 小松さんか非常に今回の下筌ダムの用地問題につきまして、あなただけでなく、社会党では特に実地の調査団を設けて調査をされたことに対しましては、私衷心から感謝いたす次第であります。この問題につきまして、私も非常に心配いたしておるのでありますが、ただいまの質疑応答等を承っておりますと、今まで私が考えておりましたことのほかに、どうも少し感情問題があるのではないか、こうも考えられます。ともかくも、その所有者がただ単にだれが行っても面会しないのだというようなことでなくて、また今までの建設省の出先とのいろいろな話し合い等について、あるいは話はしなかったでしょうが、その行為について非常に感情を害している点があるのではなかろうか。そのために、だれが行っても会わない。相当な覚悟をしてこれに対抗してやろうというような感情が非常に高ぶってきているのではなかろうかというふうに私には考えられるのであります。私の考えといたしましては、他に適当な地点がありますならば、これはもういつでもその適当な地点に、ダム・サイトを設けることは、何ら建設省の面子も何も考えるものではありません。実際に場所をかえてその目的が達成できるものでありますならば、いかがなことでもいたしますけれども、どうもあらゆる精密な調査の結果、どうしてもあの地点でなければその目的を達成することができないということになりますと、まことに何百年、何千年という長い間先祖の眠っておられる墳墓の地をダムの犠牲にするというようなことについては、ほんとうに私どももわがことと同じように、それ以上に気の毒に思うのであります。しかしながら、御承知のように、筑後川が、二十八年の大災害の際に、あれだけの犠牲者とあれだけの大きな公共施設あるいは農地等に大被害をかけた、あの現況にかんがみまして、何としてもここで抜本的な水利対策をやって、沿川住民の生活の安定をはからなければならぬ、こういう見地に立って、政府としても、苦しい予算の中からあの地点にダム・サイトを設けて洪水調節をやろうというようなことになったのであります。このダムの重要度から考えますと、まことにお気の毒ではありますが、どうしても他に適当な、ダム・サイトがないとしますならば、まげてあの関係者に一つ御了承をいただかなければならぬ。私どもこのことを申しますのは実に苦しいのでお気の毒なんですけれども、どうしてもまげて御了承をいただかなければ、多数の人たちの生命財産というようなことを考えますと、本人たちには気の毒ですが、一つ何とか御了承願いたいというのが私の気持であります。しかし、今までもしただいまお話にありましたように、いろいろな問題について建設省の出先と御本人との間に何か感情、意思の疎通しない点等がありますならば、これは私も努力いたしますか、せっかく御調査に参ってつぶさに御調査願った小松さん初め、一つ社会党の方々のお力も借りて、私は何とかそういう点についての意思の疎通だけは十分はかって参りたい、そうして御本人が建設省の者とほんとうにひざを交えて話をしてもらう、その上で初めて杉の木の補償も土地の補償も、家屋の移転その他の問題が生じてきますれば、それらの点についてはその上で十分御納得のいくようなお話もできるのではないか、こう考えます。今までのことにつきましては、私も何をどうしたということについてはあまり詳しく知らなかったのですが、しかし今の御質問を伺っておりますと、何かここに幾らか感情のもつれもあるのでは、なかろうか、こういうようなことがあっては大へんめんどうにもなりますし、われわれとしても決して公共事業の施設をやるために警察権を使ってやった、あるいはやるというようなことについては決して好ましいことではありませんし、またそういうことをやるべきことでないと私も承知いたしております。ただ、私の聞くところによりますと、非常に先様の感情が高ぶっておるせいかしれませんが、何か相当の用意をしているとかいうようなことも聞いておりますが、しかし非常にりっぱな教育を受けた常識のある、しかも相当な資産家のようでありますし、決して私はそうではないと思いますが、そういう杞憂のために、あるいは警察署方面でそれらの風評を聞いて、そういうようなことも考えているのではなかろうかと思います。従って、この問題はお互いにすべて言うてしまったのでは、何もかも腹にあることを全部言ってしまったのではおもしろい解決になかなか到達できずらいと思います。私も何も申しません。ただいまの山本局長に御質問になりましたようないわゆるその地積がはたしてダム・サイトとして他になかったかというような点、あるいはその地点が最も有効な、適切な場所であるかどうかというような点についての検討につきましては、これは私も十分自分の頭を作っておきたいので、私自身も勉強してみたいと思います。そういうようなことでこれは一つこの程度にとめていただきまして、いずれまたあなた方のお力を借りて、何とか下流七十万とか六十万とかいう多くの人のためにも、犠牲になる方は全く気の毒ですが、国家としても最大限の補償を、どうしてもその場所でなければならないということでありますならば、私は十分なことをして差し上げたいと思っております。どうか一つこの程度でお許し願いたいと思います。
  202. 小松幹

    小松(幹)分科員 建設大臣の意図もよくわかります。そこで私は、この問題は初めて大臣とも話すという格好になりますが、実は最初、二年ほど前に室原氏とも東京で話したことがあるのです。その当時、彼は二月かかって全国のダムを調査して回った。そうして、ダムで沈没されたそこらの住民のその後の生活というのをつぶさに調査してみたわけです。その結果、そのときはよかったけれども、一年、二年たたないうちにその住民にはすべて非常な落差がついて、結局ダムを作った結果、それらの人は、土地も陥没したが、その後の生活も非常に陥没した。だからこの問題は、将来の生活設計というものをよほど考えておかなければ、ただ単にそのとき百万か二百万金をもらったからといって、陥没地帯の人たちの生活は将来救われないという結論を彼としては導き出したのではないか。同時に、そのとき私も、新農村、新しい村作りをやはり考えるべき段階に来たなあということを申し上げたら、そうだ、ただ単に金をやるからどこかに行け、こういう考えで追い立てられるということはとてもできない、新農村を建設すべきではないかということを二人で話したこともあった。そこで私はその後も建設省に行って新農村を建設しよう、——特に中部電力が井川のダムに新農村を建設した。中部電力は、上水道、下水道、田なども、かりに五反の田を持っておった者には七反、八反の水田を与えるような新農村を相当な金をかけてやった。私は中部電力の方々とも話して、実は昨年の七月に、こういう例もある、こういう構想で協力すべきではないかという意見を木下知事と一緒に話した結果持っていった。ところが、そのときの彼の応待振りは、先ほどの私と話したこととでんぐり返っておるのです。私自身も驚いた。どうしてここまででんぐり返ったのか。彼をして絶対いかなる話でもおれはもう承知できぬ、こう踏み切らしたところをたぐってみると、やはり建設省があの許可証を取ったとたん蜂ノ巣のダム・サイト地点の四十年から五十年の大きな杉の木を黙ってぶった切ってしまったということで、ようし、建設省が許可証一つで、一言半句の相談もなければ、どこの木をどうするという相談もなくてやみ討ち的に切ってのけるという態度であるならば、今後補償問題で建設省というものはもはや話す余地がない。そういう決意でやるならば、こちらも最後のとことんまでやろうと踏み切ったということを私は悟ったのです。そこで私も、これは非常に困った段階に来たと思った。それでも私は、まあまあという気持で、今日までそれとなく見守りつつ、建設省には、何とかして新農村建設予算でも——ただ九州地方建設局だけにまかせるわけではない、地方の建設局ではそれは知れているではないか、考えの範囲も設計の範囲も地方建設局のやることはイージーゴーイングな縄張り根性でやる以外に方法はないのだから、何とか建設省本省でもう少し真剣に考える段階まで来ないだろうかと待っておった。ところが、今度は大分県警、熊本県警を三百人、二百人動員して、あそこになぐり込みをかけて治水工事をやるということが、数次にわたって、もはや一刻の猶予もならぬ、二月の十日、二月の二十日になぐり込みをかけるという警察権乱用ということが出たことによって、国家権力を利用しておれたちの生活権、百年の祖先から伝わった財産、この住む土地を国家権力と警察権をもってぶちあげてくるならば、よし、おれも六十一才のよわいをダムと一緒に死んでやるというところまで決意してしまった。それというのも、なぜここまで追い込んできたかということを私は静かに考えると、たった許可証一本、しかもその許可証というのは、山林の所有者は三人であるのに許可証には二人の名前しか書いてない、いわゆる内申書に基づくいいかげんな許可証をもって、一片の通告というか、一片の許可証だけでその土地を没収し、あるいは財産をぶった切る、しかも最後には警察権を乱用するというような雲行きというものは、これは国という前に個人というものを全く無視したやり方ではないかということを静かに反省した。これは建設省のイージーゴーイングなやり方で、過去の佐久間ダムあるいは井川ダム、それぞれのダム地点では、そういうおどかしなり、あるいは権力を利用することで摺伏していったかもしれぬと思う。しかし今度は、そんななまやさしいことではこの問題の解決はできないと私は見ておる。だから警察を利用したら、もし警察が来るなら、一月でも二月でも警察五百人をここに引きつけて、カン詰めにしてやるという。ジープ二百台も行ったら交通が途絶するような山の中です。一体五百人の警官を動員しても、歩いて行くわけではない。この前私が行ったときも、いわゆる新聞の自動車が十四、五台入っただけでもう交通が途絶してしまうような山間に、警察五百人を動員するならば、それはジープだけでも大へんなことであります。それが砂川のようにぽんぽんと測量のくいを打つのならば、ものの一時間でできるかもしれない。しかし、今度は穴を掘るのでしょう。穴を掘れば、一分間に穴は掘れません。少なくとも一週間なり十日なり要する。その一週間なり十日なりの間、一体警察権はどういうような格好で利用できるか。全く子供だましにひとしい。おどしをやるならやってこい。それなら暴には暴をもって報いる。警察が暴力を使うなら、こっちも死んでもいいから暴力を使うのだ。暴には暴をもって報いると、こう言い切っている。おれは監獄にぶちこまれようが、ダムによって死のうが、国が国民の権利を力で冒涜するならば、暴には暴で報いるという態勢まで作り上げてしまっておる。私はこのことを見たときに、容易ならぬことだと思った。われわれもそのことをけしかけてはおらぬ。むしろ内心では何とか話がつかぬかという気持で工作はしてみておるけれども、こっちが行くより先に挑発してしまっておる。たびたび挑発してしまっているということを私は知っておる。こういうやり方をすれば、これは解決はできぬのじゃないか、こういうふうに思っておるわけなんです。警察の方でもこう言っているのです。かりに穴を掘るならば、岩盤ですから、少なくともハッパをかけなければならぬ。いわゆるダイナマイトを引き込まねばならぬ。ダイナマイトを引き込んでバッハをかけていくのに、一体警察がどういう処置をとるか。あそこに家が建っている。家を引き払ってのけるということも出てくると思う。だから私は、暴力や警察権で押しつけてい心たって、解決はできないと見ているのです。それは一時間か二時間、一日は解決しても、あと水がたまるまでダムを作らねばならぬ、そうしたら、一本の木を一月も二月もかかって値段の相談をし、一つの家や一つの石でも相談していくとすれば、粘られたら最後、十年たったって補償問題は解決しない。だからダム・サイトを一つだけ警察権でこしらえても、一回警察権を利用したら、あと一木一石に至るまで全部警察権を利用せねばならぬということになったら、とてつもないあやまちを犯すことになるのじゃないかと思うわけです。だから大臣、あなたの意向を尊重して、私はこれ以上この予算委員会では質問しませんけれども、どうもこの問題は、重大視して、きょうも話し合いをするようにしていますが、また建設員会等でも問題になってくると思います。これは非常に大きく問題にすれば、個人の財産あるいは土地というものと国家の行政目的との食い違いにもなってくると思いますが、その過程はすべて重要な問題だと思うのです。この問題については廣瀬代議士とはよく話しますけれども、大臣とは初めてなんで、大臣の意向をきょうはそんたくをして、一応問題点だけ指摘しておくことにいたします。
  203. 村上勇

    村上国務大臣 大体私もその様子がわかりましたが、とにかく警察権を行使するというようなことは、私どもとしては最も好ましくないことでありまして、そういう点については十分考えていかなければならないと思っております。ともかく御本人と、私どもだれでもよろしゅうございますが、建設省の者が一ぺん会うことができますならば、よくこちらの気持もわかるだろうと思います。従って、もう私ども深くはこの問題については触れたくないのですが、いずれある期間までは十分努力して参りたいと思います。ただしかし、警察がより以上に心配してそういうような手配をするということも、一方的に建設省が強く出ておるからというようなことでなくて、やはり御本人たちもより以上のかまえをしておるというようなことが巷間伝えられておりますために、やはり治安維持の関係から警察としてはより以上に心配しているのだろうと思います。しかし、善良な国民と政府との間にそういうようなことがあっては絶対になりませんので、私どもも十分手を尽くして参りたいと思います。ただしかし、これは小松委員御承知のように、大体いつまででもその状態が続いていいということでないので、どうしてもある時期までにはある程度の解決をしませんと、下流の人たちのことを考えますとじっとしておられない私らの気持でありますから、委員会の席でどうかと思いますけれども、特に小松さん、あるいは社会党の調査に参られた諸先生方には特に一つ御協力願って、そうして円満な解決のできるようにお取り計らいのほどを切にお願い申し上げます。
  204. 岡本茂

    岡本主査 明日は午前十時より開会し、運輸省所管審査を行なうことといたします。  本日は、これにて散会いたします。     午後五時四十五分散会