運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1960-02-25 第34回国会 衆議院 予算委員会第三分科会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年二月二十五日(木曜日)     午前十時二十五分開議  出席分科員    主査 綱島 正興君       井出一太郎君    周東 英雄君       松浦周太郎君    山本 勝市君       足鹿  覺君    北山 愛郎君       堂森 芳夫君    永井勝次郎君       堀  昌雄君    門司  亮君  出席国務大臣         国 務 大 臣 菅野和太郎君  出席政府委員         総理府事務官         (経済企画庁長         官官房長)   村上  一君         総理府事務官         (経済企画庁長         官官房会計課         長)      塚本  茂君         総理府事務官         (経済企画庁調         整局長)    大堀  弘君         総理府事務官         (経済企画庁総         合計画局長)  大來佐武郎君         総理府事務官         (経済企画庁総         合開発局長)  藤巻 吉生君         総理府事務官         (経済企画庁調         査局長)    金子 美雄君  委員外出席者         大蔵事務官         (主計官)   海堀 洋平君     ————————————— 二月二十五日  分科員倉石忠雄君、淡谷悠藏君、北山愛郎君及  び門司亮委員辞任につき、その補欠として山  本勝市君、足鹿覺君、堀昌雄君及び鈴木一君が  委員長指名分科員に選任された。 同日  分科員山本勝市君、足鹿覺君及び堀昌雄委員  辞任につき、その補欠として倉石忠雄君、淡谷  悠藏君及び北山愛郎君が委員長指名分科員  に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十五年度一般会計予算経済企画庁所管      ————◇—————
  2. 綱島正興

    綱島主査 これより予算委員会第三分科会を開催いたします。  本日は、昭和三十五年度一般会計予算中、経済企画庁所管議題といたします。  まず説明を求めます。菅野経済企画庁長官
  3. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 ただいま議題となっております経済企画庁予算案について御説明申し上げます。  歳出予算要求総額は四十六億三千七十三万六千円でありまして、これを前年度予算額三十七億四千二百六十五万九千円に比較いたしますと、八億八千八百七万七千円の増額となっております。  この増額となったおもな理由は、離島事業費が七億一千六百二十万円と国土総合開発事業調整費において一億二千万円増額となったためであります。  次に経費の内訳を申し上げます。  第一に、経済企画庁の項では、要求額は四億一千二百七万三千円でありまして、前年度三億七千二百九十八万円に比較いたしますと、二千九百九万三千円の増額となっております。  この要求経費内容を御説明申し上げますと、人件費二億四千四十万八千円と事務費一億七千一百六十六万五千円であります。  この事務費は、一般庁務の運営経費並びに次に申し上げる内容のものであります。  一、国民所得倍増計画を策定し、長期経済展望の作業を実施する経費は、経済審議会経費とともに前年度に比し若干増額し、合わせて六百五十九万四千円であります。  二、わが国経済に関する年次計画の策定、海外経済協力の推進、基本的経済政策企画立案並びに肥料審議会その他各審議会運営等に要する経費が三百七十四万七千円であります。  三、わが国内外の経済の動きを的確に把握し、また経済白書等報告書及び統計指標を作成する等経済動向調査分析に必要な経費が三千六百二十一万八千円であります。  四、わが国経済の構造と経済の循環その他経済の基本的な事項を調査研究するために要する経費が一千一百四十九万一千円であります。  五、わが国国富調査は戦後初めて昭和三十年に調査を実施しまして、次の本調査昭和四十年を予定しておりますが、新年度は両調査年度中間に当たりますので、簡易な中間調査を実施いたします経費として五百七十六万八千円を要求しております。  六、河川、湖沼、港湾沿岸海域等公共の用に供する水域水質の保全をはかり、あわせて水質の汚濁に関する紛争の解決に資するため、水質審議会運営し、公共用水域調査に関する基本計画の決定及び公表並びに水質基準調査設定及び紛争処理事務を行なうため、これに必要な事務費三千七万五千円を要求しております。  七、国土総合開発調査に必要な経費は二千八百七十二万六千円でありまして、前年度二千三百七万六千円に比較いたしますと、五百六十五万円の増額となっております。  この経費は、国土総合開発法電源開発促進法特殊土壌地帯災害防除及び振興臨時措置法離島振興法東北開発促進法台風襲地帯における災害防除に関する特別措置法等の各法律に基づきまして、それぞれ災害防除生産力の発展を促進する諸施策を樹立するために要する経費と、国土総合開発審議会電源開発調整審議会特殊土壌地帯対策審議会離島振興対策審議会東北開発審議会九州地方開発審議会台風襲地帯対策審議会地盤沈下対策審議会運営に要する経費であります。  なお、九州及び四国地方等総合開発を促進するための調査費として九百三十九万五千円を要求しております。  第二に、土地調査費の項では、要求額は一億九千五万四千円でありまして、前年度一億七千七百二十七万円に比較いたしますと、一千二百七十八万四千円の増額となっております。  その内容を申し上げますと、基準点測量におきましては四等三角点新設点数を九百五十点と予定し、これに要する経費として二千六百三十六万五千円、国土調査法の規定によって、地方公共団体土地改良区等が地籍調査を行ないますときの補助金として一億五千六百四十七万九千円、土地分類調査水調査については五百三十二万九千円となっております。  第三に国土総合開発事業調整費の項では七億七千万円を要求しております。国土総合開発法に基づく開発事業は、各省各庁によってそれぞれ所管を異にして実施されるため、開発事業相互の進度に不均衡を来たし、総合的な効果が発揮せられない場合があります。このような場合に、経済企画庁がこれを調整いたしまして、総合開発効果を上げようとするものであります。特定地域及び調査地域並びに東北地方四国地方九州地方及び首都圏地域における開発事業対象といたすものであります。  第四に離島振興事業費の項と揮発油税財源による離島振興道路事業費の項を合わせて要求額は三十二億五千八百六十万九千円でありまして、前年度二十五億四千二百四十万九千円に比較いたしますと、七億一千六百二十万円の増額となっております。  この経費離島振興法に基づきまして、離島において国が行ないますところの治山治水道路整備港湾漁港食糧増産等公共事業に必要な経費と、地方公共団体等が行ないますところの公共事業農山漁村電気導入事業簡易水道事業に必要な事業費補助するための経費であります。この経費は、経済企画庁に一括計上したもので、その使用に際しましては、実施に当たる各省所管に移しかえるものであります。  以上で経済企画庁予算説明を終わりますが、なお、御質問に応じて詳細御説明を申し上げたいと存じます。  何とぞよろしく御審議の上すみやかに可決せられることをお願いいたします。
  4. 綱島正興

    綱島主査 これにて説明は終わりました。     —————————————
  5. 綱島正興

    綱島主査 これより質疑に入ります。質疑の通告がございます。順次これを許します。北山分科員
  6. 北山愛郎

    北山分科員 私は企画庁関係予算について若干お尋ねをしたいのであります。企画庁全体の予算は四十数億でありますけれども、しかし経済企画庁の本来の役目を果たすべき経済計画であるとかそういうような本来の仕事の分の予算はわずかに四億くらいでありまして、まことに国の経済企画官庁としては心細い感じがするわけであります。離島振興なりあるいは国土総合開発というような関係事業予算、これはいわばくっついたような予算でありまして、骨組みの肝心のところが非常に少ない。非常に遺憾でございますが、その中につきまして具体的にお尋ねをしたいのであります。  第一の問題は、国土調査費であります。これは一億九千数百万円で昨年よりは千二百万円ふえておるということになっておりますが、しかし御承知のように国土面積実測調査がほとんどなされておらない。一部しか実測調査ができておらないわけであります。この問題についてはよほど前に高碕企画庁長官にもいろいろ質疑をいたしました。また岸総理にも要望したことがございますが、何としても国が狭いと言いながら、国土の大部分が実測ができておらないということ、それから現況が把握されておらない。またその土地をどのように使ったらいいかというような調査計画もできておらない。こういうことでは国土総合開発の基盤ができておらないのではないか。その基礎をなす国土調査について、わずかにことしも一億九千万円ということは、まことに遺憾しごくだと思うのです。一体ことしの予算経過がどうなっておるのか、要求経過がどうなっておるのか、なぜそういうような必要な予算が、ほとんど昨年と同じであるというような貧弱な状態にあるのか。それから国土調査について長官はどのようにお考えであるか。また現在のような予算の状況で全国国土調査というものが何年間で一体でき上がるのか、こういうことについて長官お尋ねをいたします。
  7. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 国土調査費が少ないというお尋ねでありますが、まことにごもっともな御意見でありまして、実は私自身も少ないと思っておるのであります。本格的にこの国土調査をすれば、おそらく相当な金を要するのでありまして、また実際国土調査を本格的にやるという根本方針をまずきめなければならない、こう考えておるのでありますが、ことしは伊勢湾の台風や何かの関係で、相当な要求をいたしましたけれども、前年度と同じような費用に削除されたのであります。お話通り、私は、やるのだったら根本的に大規模にやらなければならぬ、できればこれを数年間でやってしまうというような計画を立つべきではないかということを考えておるのでありまして、一つこれは次の年の課題にしてもらいたいと考えておるのであります。お説の通り、今のような費用でありますれば、何年かかるかわからないし、またその国土調査の結果がほんとうに効果を現わすこともできないというようなことで、私自身も非常に遺憾に思っておりますが、根本的にやるかやらぬかということについては、もう一つ自身も検討さしてもらいたい、こう存じておる次第であります。
  8. 北山愛郎

    北山分科員 代々の企画庁長官が同じような答弁をして、そして今まできたのです。この問題は新しい問題ではなくて、よほど前から国土調査が必要に迫られて、しかも関係団体は熱心な陳情運動を続けてきておるわけです。道路を作るとか、橋をかけるとか、学校を作るとかいう直接の事業であれば、これは地方団体も一生懸命にやるのですが、こういうような調査をやろうというようなことを熱心に陳情運動してくるということは、やはりその地域土地利用というものについて、あるいは水の利用について計画的にやらなければならぬということをよくその関係団体が理解をして、よほどの熱心な人が陳情してくるわけなんです。それも年々歳々やってくるわけですが、これに対して一向にこれを取り上げてくれない。ということはその人たちの期待を非常に裏切るものでありますが、そういうことは別としても、計画を作ると言われましたけれども調査計画というのは一体できているのかどうか。今までこの国土調査というのは何%進んで、そしてこの進展でいくと何年かかるのか、これを一つお示しを願いたい。
  9. 藤巻吉生

    藤巻政府委員 国土調査仕事のうち一筆調査をやっております地籍調査事業関係でございますが、二十七年度からこの仕事を始めまして、三十四年度までに五千九百平方キロメートルの仕事をやりつつあるわけでございます。日本の全土が約三十六万平方キロでございますので、これを全部やるといたしますと、大へんな年数がかかるわけでございますが、私どもこれを全部やる必要もないと思っております。農地その他都市周辺等こまかく調べなければならないところを拾い上げますと、大体三万五千平方キロくらいで最も大事なところはつかめるというふうに考えておりますので、一応私どもの方では三万五千平方キロを調査するということを計画に立てまして、これに基づいてただいまのところ仕事を進めているわけでございますが、先ほども申し上げましたように、二十七年度から三十四年度まで約六千平方キロしか進んでおりませんので、かりに三万五千平方キロから六千平方キロを引きまして、あと残りが二万九千平方キロになりますので、現在のような予算つげ方でございますと、毎年約一千平方キロぐらいしかできない。そういたしますと、約三十年もかかる、こういうことになるわけでございます。何とか私どもは、先ほど長官からもお答えがございましたように、今までのようなのろいやり方ではなくて、しっかりした年限をきめて計画的に仕事を進めたいと思って、ただいまその方の具体的な計画を立案するように検討している最中でございます。
  10. 北山愛郎

    北山分科員 三十年も、しかも全体の面積の一割をやるのに三十年もかかるとするならば、そのころになれば、ソビエトではもう火星の地籍調査ぐらいやっているかもしれない。それほどこの問題はおくれているわけです。予算がないないと言われるけれども、公安調査庁のいわゆる思想調査には十三億もかけて、そしてこのような日本国土をいかに利用するかという基礎になる大事な調査には、ほんの少ししか出さないということは、これは企画庁としては要求する立場であって、予算の査定をされるのでありますから、気の毒な立場にあると思うのですが、長官は、大臣としてこの問題の重要性をよく認めておいていただきたいと思うのです。この前、高碕さんのときには、その地籍調査を行なっておらないために、山林原野等については、台帳面積と実際の面積とはまあ五割くらいは平均して違うのだということを申し上げたときに、非常な関心を持たれたわけなんですが、関心を持たれただけでやめてしまうということになりますから、この問題は一つ真剣に考えていただきたいと思う。  それから三万五千平方キロというその重点にする対象面積というものは、どういう基準であるかわかりませんが、私はむしろすでに開発をされた田や畑、耕地ですね、既耕地等については土地改良区画整理等があって、それぞれ実測をしておるわけであります。ですから相当に修正をされて実態に合うようにできておるのですが、むしろ問題は、山林原野にある。これから日本国土を高度に利用するということも、やはり山林原野利用だと思うわけです。しかも日本農業というものが、国土面積の二割くらいしか農業用に使っておらぬ。それを西欧等に比べると、向こうは五割も六割も農業用に使っているということを考えるならば、この土地調査というものの重点はこれから開発をすべき山林とか、原野そういう方向に重点を置いて、その調査の結果が活用できるようにすべきである。この調査の問題はそれ以外に水の調査とか、非常に大事な調査がたくさんありますから、この予算では、私は毎回これを要求しておりますので、残念に思うわけであります。今後十分御努力を願いたいということを要望してこの問題を終わります。  次に、東北開発の問題であります。東北開発昭和三十二年に東北開発の三法ができまして、それが実行されておるわけであります。その中の東北開発促進法は、現在では九州その他の後進地域開発運動としては後進地域ですが、そういう地域の方がまねをして同じような法律を作っております。ところが肝心の東北開発促進法がその制定当時に論議をされました通りに、せっかくの開発事業に対する補助率特例、この適用について赤字団体、いわゆる地方財政再建促進法適用団体でなければ、高率補助適用が受けられないというように、赤字問題と開発促進の問題とをごっちゃにくっつけておるわけです。それは理論上からいっても実際上からいっても矛盾しておるというので、われわれはその修正を迫ったわけであります。ところが、この問題が現実東北の県の中では、地方財政再建促進法による再建計画が終わって、そしていわば自前の、赤字団体でない団体になろうとしている団体もある。そうなりますと、黒字団体になったがために、この開発促進法適用を受けられない、こういうような矛盾した結果になるわけであります。ですから政府としても当然これは改正をしなければならぬ。われわれは前からそういう意味開発促進法第十二条の改正案を提案しておりますけれども政府としてはお出しになるのかどうか。この国会でやるのが当然だと思うのですが、この東北開発促進法の十二条の改正を中心にした改正案をお出しになるかどうか、それを確かめておきたい。
  11. 藤巻吉生

    藤巻政府委員 東北地方に関しましては、現在のところは全県財政再建団体になっておりますのでよろしゅうございますが、岩手県が三十六年度から切れることになっております。そこで今まで補助率引き上げの特典に浴しておったのが、せっかく財政を再建したらそれが切れるということではいかがかと思われますので、私ども東北開発という見地からいたしまして、そういう県につきましては、何とか従来通りのような取り扱いをしてもらうようにしてもらいたいというふうに考えております。なお一方、自治庁におきましては、ただいま未開発県の開発を促進するために、財政再建団体であるといなとにかかわらず、一定の基準をもって補助率引き上げを行なうようなことを考えておられますので、私ども自治庁大蔵省とこの問題についてお互いに検討し合っておる最中でございます。ちょうど同じような問題が九州地方にございまして、九州地方宮崎県が再建団体ではないのでございますが、この宮崎県につきましてやはり再建団体と同じような取り扱いをしなければならないのではないかというような考えがございます。この宮崎県の処理と関連して、東北地方岩手県その他再建団体でなくなる県につきましての処置を考えたいと思っております。東北地方岩手県につきましては、必ずしも今国会でなくとも間に合うわけでございますが、なおその点につきましては自治庁大蔵省と私どもの方と、十分相談をいたしたいと思います。
  12. 北山愛郎

    北山分科員 ただいまのお話の中の、自治庁考えておる未開発府県補助率特例法律、これは自治庁がやろうと思いましても大蔵省反対でだめになったというふうに私ども聞いておりますが、その点はどうなんですか、大臣の方が御存じではないですか。
  13. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 まだ大蔵省反対でだめになったというところまでいっておりません。閣議でも先般自治庁長官から、考慮してほしいという発言があったのでありますが、大蔵省から、それは考慮しないという返事はなかったのでありまして、われわれもぜひ自治庁長官を応援してこれを実現するようにしたい、こう存じておる次第であります。
  14. 北山愛郎

    北山分科員 この未開発府県補助率特例は、この前の予算委員会の際たしか大蔵大臣から消極的な答弁があったのであります。そういう点で私どもはなかなかまとまりにくいと思うのであります。ただ問題は、そういうものも関連をしますけれども、それとは別個に、東北開発促進法にしろ九州開発促進法にしろ、初めから赤字団体の問題と結びつけてやるということ自体が理論的にもおかしかった。ですから、今の未開発地域に関する法律が出た際はまた別ですけれども、それとは別個出してしかるべきものではないか、私はそう思うわけです。ことに開発促進法がそのような矛盾を持ったために、東北についても初めの原案が修正をされて、青森赤字団体でなかったためにわざわざ準用団体にして法律を直して、せっかく自主再建というか、自主的にやろうとしておる青森県を準用団体にして、そして法律適用団体にした、こういう経過があるわけです。九州についても宮崎で同じような問題がある。これはこの法案の当初からそういう矛盾を含んでおる結果であって、それを切り離しても何ら差しつかえないわけです。赤字再建の問題と開発促進の問題とは別個の観念であるし、また別個運用して一向差しつかえないわけです。ですから、これは企画庁がやはり自主的にお考えになって、そしてこの際いろいろな現実の問題も出てきているわけでありますから、補助率法律——自治庁考えておるものは別として、この問題はこの国会処理するというのが当然ではないか、また大した問題ではないのではないか、こう思うのですが、それすらもおできにならないわけですか。
  15. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 北山分科員のお説の通り、私も全く同感でありまして、赤字団体後進地域補助とは別個のものであるべきだと思います。ことに地域的な所得の格差をなくそうという私ども国民所得倍増長期経済計画観点からしても、後進地域一体どうするかということ——産業を持っていくようにすることも必要ですが、一方財政的に不十分な県に対してはできるだけ政府補助して、いろいろ事業を興させる必要があります。そういう意味からも、この公共事業補助率を上げることは当然やるべきことである、こう考えておりますので、目下自治庁大蔵省と三省でいろいろと相談してやっておることでありまして、できれば本国会法律案出したい、こう考えておるのであります。
  16. 北山愛郎

    北山分科員 問題はもう明らかでありますから、これは一つこの国会において処理するように要望いたします。しかし問題は、企画庁立場からするならば、もっと根本的な問題があろうかと思うのです。国土総合開発法ができて、それから北海道開発法ができて、その後において、今度は東北東北開発促進法九州九州、今度は四国中国地方というように、地域開発考え方がそれぞれ伝染していっておるわけです。こういうことを一体企画庁としては黙って放置して傍観しておいていいものかどうか。元来は、国土総合開発法の中の運用でもってこういう地域開発の問題は一応処理し得られると思うのです。東北開発促進法にしてもあるいは九州開発促進法にしても、その内容を見ると、今の十二条の補助率の問題が若干ありますけれども、それが中身であって、あと東北あるいは九州のその地方における開発計画を作るのだ、そのために審議会を作るのだ、これが内容なのです。ところが国土総合開発法の中には、いわゆる地方計画というものがあるわけです。府県計画地方計画、それから特定地域計画全国計画というようにちゃんとあるはずなので、その地方計画というものが東北なり九州なり四国なりというものに当たるわけなんですね。それでもって運用ができるものを、それをいわば眠らせておいて、そうしてそれぞれの地域にわざわざ審議会を作り、九州計画を作り東北計画を作るというようなことは、まことに私は計画の上に計画を重ねるものである、かように思うのですが、一体企画庁国土総合開発の元締めとしてそういうものを放置していいとお考えになっておるかどうか、これをお伺いいたします。
  17. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 放置しておるわけでは決してないのでありまして、全体的な国土総合開発計画というものをもちろん立てなければならぬと思っております。しかし、これは相当大規模計画を立てなければならぬと思っておるのでありますが、特定地域開発とかあるいは東北なら東北九州なら九州のように、各地の開発計画を立てて、その積み上げで全体の総合開発というものにしていくことも一つの行き方だ、こう考えておるのでありまして、特定地域開発あるいは各地方計画を、九州なら九州東北なら東北というようにそれぞれの観点から開発計画を立ててもらって、それによって一つ全体的な総合開発をやっていきたい、こう存じておるのであります。お話通り総合開発計画でやればやれぬことはありませんけれども、今申し上げたように、積み上げてやるか、あるいは全体を先にきめてやるかというやり方の違いではないか、こう存じておる次第であります。
  18. 北山愛郎

    北山分科員 今の方針は従来の企画庁の方針と違うわけなんです。たしか前には国土総合開発法にある全国計画昭和二十九年ごろにいろいろやられたわけなんです。そうして全国計画を作って今度地域にこれをブレーク・ダウンするのだというのが、たしか従来の御方針だったようですが、今の長官の御方針だと、それぞれの地方計画を寄せ集めて、その上に立って企画庁全国計画を作るのだ、これは逆ではないですか。そうすると、関東の開発計画とかいろいろな計画がちょうど九州四国のように出てくる、近畿も出てくる、全国出そろって初めて計画を作るのだ、そんなばかなことはないと私は思うのですが、どうなんですか。今までの方針とは完全に矛盾しているように思うのです。
  19. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 いや、私は、全部積み上げてという意味ではなくして、幸いそういう各観点からの開発計画があれば、その方はその方でやってもらって、そうして全般的な総合開発をやっていきたい、こう考えておるのでありまして、各観点からの開発計画一つそれで積み上げてもらう、一方総合的な方は総合的な観点でやるのでありますが、これはなかなか相当な計画、相当な経費もかかります。従って両方からいきたい。ただし、どちらが早くいくかということは別問題でありますが、とにかく総合的な観点で総合計画も一方では考えるし、また各観点からの特殊な開発計画もそれぞれやってもらうということで、両方相待って一ついきたい、こう考えておるのです。
  20. 北山愛郎

    北山分科員 企画庁ではたしか昭和二十九年、全国計画の試案というものを作業したはずです。その後全国計画を作る作業はどうなっておりますか。
  21. 藤巻吉生

    藤巻政府委員 全国計画国土総合開発法が制定されましてから、ずっと企画庁でも研究をいたしておって、その中間におきまして素案を作ったこともございます。ただその間におきまして新長期経済五カ年計画、あるいはただいまも所得倍増計画等の経済計画が立案され、あるいは立案されつつあるというような状況で、なかなかその経済計画に沿いました全国計画を作るだけの状態に至らなかったわけでございます。私どもそういうような関係で、全国計画の素案あるいは全国計画を作る考え方の中間的なもの、こういうものは持っておりますが、それに基づきまして、ことし所得倍増計画ができますれば、その計画に沿った開発計画を作ろうというふうに考えておる次第でございます。
  22. 北山愛郎

    北山分科員 二十九年の試案というものは出ておりますけれども、あれ以後は作業は進んでおらないというわけですか。
  23. 藤巻吉生

    藤巻政府委員 二十九年の全国計画の素案以後は、案としてお出しするようなものはまだできておらないわけでございまして、その後各東北九州等の地域計画ができて参っておりますので、それらの点をもにらみ合わせて、所得倍増計画に沿った計画を作ろうということでただいま進んでおるわけであります。
  24. 北山愛郎

    北山分科員 私は、今の企画庁のいろいろなお話を聞きますと、もう何らの方針を持っておらないということですね。一体政府経済計画長期経済計画いろいろな計画が出ましたが、それを待っておったならば、全体の国土開発計画というものはおそらくできないのじゃないかと思うのです。そのつど変わっていくのだから、それに合わすようなものを作ろうとすれば、それはいつまでたってもできない。一応全国計画の目標というものを設定して、それを何年で実施するかということは、それは経済計画に合わせればいいと思うのですけれども、それとは別個でやるという腹がまえでなければ、国土総合開発計画なんかは、私は全国計画はできないと思うのです。しかも各地方で行なわれておる地域計画を積み上げていくというような考え方では、これは全然無方針というか、無定見だと思う。たとえばエネルギーならエネルギーの問題にしろ、全国の需給関係計画があるはずです。その狭い地域の問題とは別なんです。そういう大きな全国的な観点に立って考えるのが企画庁ではないかと思うのです。それをただ自動的に地域計画を見合いにしてやるというようなきめ方は全然無方針です。それに全国計画を作るという熱意もない。ですから国土総合開発法に規定されておる諸計画を作ろうとしておらないわけです。年々若干の予算は、二千数百万の国土総合開発予算はついておる。一体その金を何に使っておるかということなんです。一体その調査費はどこに使っておるのですか。
  25. 藤巻吉生

    藤巻政府委員 全国計画がまだできておりませんのはまことに遺憾なことでございますが、二十九年に素案ができまして、それからそのあと三十二年でございましたか、考え方の中間的なものはまとめたことがございます。ところがその年には新長期経済計画を作っておったものでございますから、それに合わせた方がいいだろうということでこれも流れたというような格好になっております。経済計画開発計画とをばらばらに立てますと、やはりおかしなものができますので、できるならば経済計画の策定と並行いたしまして、開発計画の策定を行なうのが一番いいのではないかというふうに考えまして、ただいま計画局の方で所得倍増計画を策定する作業を進めておられますので、開発局といたしましては、これに並行いたしまして、ことしは全国開発計画を何とか目鼻をつけようということで作業を進めておるわけでございます。先ほど調整費のお話がありましたが、調整費は全国計画を策定するための経費ではございませんで、これは特定地域その他の地域における公共事業各省ばらばらに行なわれますと総合的な効果が上がらない。そういう場合に企画庁の持っております調整費を各省に移しかえて、公共事業の総合的な効果を上げるためのものでございますから、これは別のものでございます。
  26. 北山愛郎

    北山分科員 私は調査費のことを申し上げたわけです。そうしますと、今度の長期経済計画に合わせた全国的な総合開発計画が、やはりその中に織り込まれて出てくると考えていいですか。
  27. 藤巻吉生

    藤巻政府委員 私どもの方では所得倍増計画に即応した全国開発計画を作ろうということで、作業をしておるわけでございます。
  28. 北山愛郎

    北山分科員 なお、お話がありましたからお尋ねをしておきますが、今の国土総合開発の調整費七億七千万円ですか、それはどういうふうに配分される予定であるか。
  29. 藤巻吉生

    藤巻政府委員 三十一年度からこの調整費というものを企画庁でいただいておると思いますが、たとえて申しますと、一つの多目的ダムを各省で金を出し合いまして作る。そのダムができまして、たまりました水を、発電用にも、洪水調節用にも、農業用にも使うというような場合でございますが、その場合に、農業用に使うためにはそこから水路を引っぱってこなければならないわけでございます。ダムを作ります場合には、農林省も何億というような分担金を出しまして、せっかくダムができても、そこから耕地まで水路を引っぱる予算を農林省はすぐつけることができない。そこにつけるくらいならばほかにもっと緊急な水路をつけなければならない場所がある、こういうような場合がございます。そういたしますと、せっかく水がたまっても、農業用としては使うことができないということになりますので、ダムの効果が十分には上がらない、大へん惜しいわけでございますので、そういう場合に企画庁の調整費を農林省に移しかえまして水路をつけてもらって、せっかくできましたダムが十分の効力を発揮することができるようにしよう、こういうのが調整費の使い方でございます。従いまして、各年度各省公共事業予算の配分が地域的にきまりまして、その結果を見て、どうもこういうところに各省公共事業のつけ方の穴があると申しますか、継ぎ目がとぎれているところがあるというようなことがわかりました場合には、そこに調整費を出すということになりますので、事前に配分をするということが困難なわけでございます。大体各省地域的な公共事業の配分が済みましてから、私どもの方ではその実情に即して調整費の配分を考える、こういう段階だと思います。
  30. 北山愛郎

    北山分科員 そうしますと、調整費は地域的な、東北に幾らとか九州に幾らというような予定とかはきまってない、こういうふうに了解いたします。それで国土調査なり国土総合開発の問題を若干お伺いしたのですけれども、これを通じてやはり企画庁国土調査並びに総合開発に関する中心の役所として、従来他力本願というか、若干放置しているのではないか。自分が推進力になって総合開発計画を作り、そして問題を提起して他を引きずっていくというだけの熱意がないのではないかと私は思うのです。そういう点は、一つ長官には十分この総合開発に熱意を持っていただきたいということを要望しておきます。  最後にこれは大きな問題ですけれども企画庁は主要な仕事として毎年経済白書を出しておられる。この経済白書が国民に非常に親しまれまして、読む人が多くなってきている。内容的にも向上しているわけですが、しかしその経済見通し等については、毎年の白書の問題が、三十三年の白書の結論といいますか、つかみ方と三十四年度ではずいぶん違っておるわけです。その内容は問題にしませんが、やはりこの国の財政なり金融、経済の政策を作る基礎になる調査であります。また経済の見通し、分析でありますから、これが非常に大事だと思うのでありますが、この際お尋ねをしておきたいと思いますのは、世界経済の動向について長官はどのようにお考えになっておるか。一つの問題は、いわゆる東西の経済競争であります。ソビエトとアメリカの経済競争において、ここ十年くらいでソ連が経済的にもアメリカに追いつくのだということが言われております。これは単に学者、評論家が言うだけでなくて、アメリカとしても議会の経済委員会において情報局の長官が証言をして、アメリカが毎年四・五%の成長率、ソ連が八・六%の成長率をもってすれば、十年後には一〇〇対六〇にまで接近してくるであろう、こういうことを言っておる。ところが実際にはアメリカの成長率というものは、終戦後当初は四%くらいだったのですが、最近は成長率が非常に低下して、ここ数年間は一・六%くらいの成長率しかないというふうに、経済が停滞しておるというような状況であり、しかもソ連の工業力というものは大体一一%以上の成長率を持っておる。今度の七カ年計画でもたしか八・六%の平均率で伸びるという計算になっておるわけです。そういうふうにアメリカの方の経済の成長が鈍化して、あるいは停滞してくる。ソ連の方の成長率がその発展を持続していくということになりますと、これはしろうとが考えましても十年なら十年たちますと、ソ連の経済力がアメリカに追いつくのではないか、こういうふうに思われるのですが、長官はこの点はどのようにお考えですか。
  31. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 アメリカの経済成長率が鈍化しておるとは私たち考えておらないのでありまして、最近の情勢を見ましても、大体三%の経済成長率でずっときているように思います。ことに一九六〇年は商務長官のミューラーがあるクラブで演説した内容を見ましても、歴史上今までにない最良の年にするということを言っておるのでありますからして、それだけアメリカの経済が一九六〇年においてもなお伸びるということを意味しておると思います。なるほどソ連の成長率は、お話通り、われわれも非常に驚いておるのでありますが、ソ連は御承知の通り、七カ年計画でアメリカの産業に追いつくという目標でいろいろ計画を立てておるようであります。ソ連のことは実際われわれも内容ははっきりわからないのでありますが、ソ連が言うような調子ではたして経済が成長しておるかどうか、その点は私たちも内容をつかめないので、実はその点もう少しソ連の経済内容を知りたいという意味で、いろいろ私どもの方でも計画したことがあったのでありましたが、それは予算が実現できなかったのであります。ソ連の言うように、またアメリカの現在のような成長率であれば、あるいはソ連の経済が何年か後にはアメリカの経済に追いつくということは、それは数字の上では考えられると思いますが、しかしアメリカの経済力というものは今日相当な経済力を持っておりますからして、従ってそう簡単にはソ連が言うようには追いつかれるものではないのではないかというように考えております。結局はこの経済が追いつくか追いつかないかということは、やはりその国の生産技術の優劣だと思うのでございまして、アメリカもその点においては、やはり生産技術の向上ということを非常に最近では力を入れておりますからして、従ってやはり今後の情勢を見なければ今からそうなる、こうなるということを、われわれ第三者としてはまだはっきり言えないのではないか、こう存じております。
  32. 北山愛郎

    北山分科員 私は企画庁出しておる「世界経済の現状」という。パンフレットを見たのですが、その中のある表によりますと、一九五三年と一九五七年を比較しましての何年間ですかの工業生産の平均成長率、ソ連の方が平均して一一・六%、アメリカが一・六%、こういうふうな、これは企画庁が資料として出しておられるものの中の統計を見たわけです。それから美濃部亮吉教授が一九五三年と五八年の五カ年間の工業生産の伸びで、世界全体として一七%伸びておる。しかしアメリカはこの五年間にほとんど伸びておらない。西ヨーロッパは三四%、日本が六九%、ソ連が七〇%、ユーゴが八八%、チェコが五三%、ポーランドが四九%、東ドイツが三六%、こういう数字が——これは統計学者の資料でありますから、おそらく権威のある資料によって作ったと思うのでありますが、これを見ましても最近の数年間におけるアメリカの経済成長というものは、あるいは工業生産の伸びというものは、率が鈍化しておるということは言えるのではないか。しかもアレン・ダレス中央情報局長官が議会の演説の中で、ソ連の経済成長というものを、やはり年率を八・六%に見ておる。ですからソ連のことは行って見ないからわからないと言われますけれども、やはり単なる学者、評論家のあれではなくて、それぞれ国連の統計であるとか、いろいろな情報網を持った機関がこういうふうな数字を出しておるわけです。ですから私は長官にお伺いしたわけなんです。おそらく企画庁がおやりになるとしても、直接ソ連の実態を調査するわけではないでしょうから、やはりこういうようないろいろな資料を材料にして、経済見通しを立て、情勢を判断をされると思うのです。ですからこういう数字がいずれもわからぬ、信頼ができぬものだというふうな長官お話は、ちょっとひどいのではないかと思うのですね。  それからもう一つはなるほどアメリカ経済というものは非常にずうたいは大きい。ずうたいは大きいけれども、最近においては内部におけるいろいろな矛盾に悩んでいるということは、やはりこれも企画庁の「世界経済の現状」という中にも指摘をされておるわけです。不景気になっても物価は下がらない。生産は伸びても失業者はふえるというようないろいろな矛盾、そしてまた国際収支が悪化するために金がどんどん流れていく。それが結局アメリカが輸出をふやすために、貿易の自由化の要請となって日本にはね返ってきておる、こういうことはだれでもわかっておることだと思うのです。しかも最近、この一月になってから、一九六〇年代は黄金の時代だといわれますけれども、株が異常な下落をしているわけです。きのう、きょうの新聞を見ても、期待しておったところの鉄鋼なり自動車の生産が近いうち停滞をするという見通しなんです。そういうふうにアメリカのことしの当面の景気もまた非常に暗いものがあるというときに、下手をすると、私は企画庁がまた再び三十三年の経済白書に戻って、今や世界の資本主義は新たなる試練に逢着をしているというような白書を、また三十五年度の白書では出さなければならぬのではないか。私はそう想像しますけれども一体こういうような世界の資本主義の、またアメリカ経済の動向について、政府はどのような判断をしておるのか。こういう資料から見て、当然そこには十分な警戒が必要だと思うし、また日本がとるべき経済政策、経済外交についても、このことは当然考えなければならぬ。いいかげんなごまかしではいけないと思うのです。そういうふうな資料を扱って、そして国の経済政策を決定する大もとにある企画庁長官としては、もう少し実際の資料なり、そういったものに基づいた御答弁をいただきたいと思うのですが、もう一ぺんお伺いをいたします。
  33. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 あとで資料につきましては計画局長からお話し申し上げますが、アメリカの経済の見通しにつきましては、経済企画庁といたしましては、アメリカの経済は依然として上昇過程をたどるという判断をいたしております。それによって日本経済もやはり緩慢でありますが、上昇過程をたどるというように判断をして、三十五年度経済の見通しを立てておるのであります。アメリカの経済が依然として数量景気を続けていくということについての材料につきましては、あと計画局長からお話ししてもらうことにいたします。そういうことで、われわれはアメリカの経済は大体今後において見通しがいいということは、先ほど申し上げましたように、ミューラー商務長官の演説の中にも、インフレがなければ、インフレを押えさえすればアメリカの経済はよくなる。一九六〇年は歴史上の最良の年だということを言っておりまして、そこでアメリカではインフレを押えるために、今度の予算におきましても四十二億ドルの黒字予算を決定いたしたのでありまして、今まで赤字予算であったのが黒字予算出したということは、インフレを押えていくというアメリカの堅実な財政政策であると思います。従って今までの見方は、アメリカはこの上期においてやはり過熱になって、そして下期にその反動が来るのではないかという説ですが、今でもそういう説を述べている人がありますが、このアメリカ政府のとっている黒字財政というこの政策によって、上期の過熱が押えられて、今お話通り、自動車やなんかの鉄鋼の需要も、今までのような過熱の予想されたような需要ではないということは、すなわち過熱を押えていくというやり方で、そしてずっと一年じゅう緩慢な上昇過程をたどるという見通しをしておるのでありまして、そういうことでアメリカの景気は大体いいという見通しのもとに、三十五年度経済の見通しを立てておる次第であります。
  34. 大來佐武郎

    ○大來政府委員 経済成長の御質問がございましたので、私ども日本の長期計画を作る建前で、いろいろ諸外国の経済成長のデータを研究いたしておりますので、ただいま北山先生の御質問に出ました点を二、三申し上げてみたいと存じますが、確かに現在の経済成長率といたしましては、ソ連が大体アメリカの二倍ということを、昨年の暮れのアメリカの議会の経済委員会の報告でも認めておるわけでございます。ただいま御指摘のございました数字は、工業生産指数の伸びだと存じます。四・五%と八・六%、あるいは最近の一一%のソ連の伸びというのは、工業生産指数でございますが、国民総生産で、つまり経済成長率を国の経済規模で測定いたしますと、一つはこの統計の基礎がソ連と西欧諸国とはだいぶ違っておりまして、欧州の経済協力機構で西欧ベースにソ連の統計を組み直して計算したものがございますが、大体一九五〇年から五七年までの平均経済成長率は、ソ連が七%、西欧諸国は大体三・四%が多いのでありますが、ドイツとか日本の場合には八%くらい、アメリカがその期間ですと三・六%くらいになっておりますが、四八年から五八年まで十年をとりますと、成長率が二・九になる。これはアメリカの景気変動が非常にございまして、スタートの年を景気の山をとり、最後の年を景気の谷をとりますと、その間の成長率が非常に低く出ます。美濃部さんの数字は、そういう点が、少し谷と山をつないでおるという意味で低く出過ぎているように私ども考えるのでございますが、アメリカの経済成長率は、先ほど長官からもお話のございました三%あるいは三・五%くらいというのが、戦後の成長率ということに専門家が一応見ておるわけでございます。なお最近日本に参りますコルムというアメリカのナショナル・プランニング・アソシエーションのチーフ・エコノミストが、最近やはり議会の経済委員会で報告しておりますところは、今後の十年間の伸びを年四・二%と見ております。それからソ連の今後の成長率につきましては、やはり今の欧州経済協力機構で、フルシチョフの七カ年計画、一九六五年に至るまでの経済成長率、これも西欧ベースに換算いたしまして、六%弱という推定をいたしております。この数字はやはり昨年のアメリカの経済委員会でも、ソ連経済の研究の専門家が大体似たような結論を出しておるようでございます。もう一つは、ソ連とアメリカの経済内容が非常に違う、たとえばソ連の貨物輸送の九〇%は鉄道によっておる。アメリカの場合には四〇%である。消費の内容が耐久消費財等においては大きな隔たりがある。やはり経済のパターンといいますか、型が相当違いますので、特定の品目について、米ソの生産力がほぼ近づくということはあり得るわけでございますが、消費面等については、十年でも相当ギャップが残るのではないか。私ども経済成長についていろいろデータを集めて見ておりますと、そういう印象を受けておるわけでございます。
  35. 北山愛郎

    北山分科員 問題は、アメリカの経済の大きさということは、もちろん絶対的な大きさなんです。しかし終戦当時のアメリカの世界経済における軍事的、政治的な圧倒的な地位から考えますと、これは相当低下しておると思うのです。軍事的にはもちろんであります。最近においては、経済的に見ても、西ヨーロッパとむしろ対等の立場で競争するというような格好に質的に変わってきておると同時に、アメリカの国内の経済が必ずしも健康ではないということは申し上げるまでもない。いろいろな徴候がこれを示しているわけなんですね。ですからアメリカの経済に依存しているような、一辺倒の方針というものは私は非常に危険だと考えるのですが、まあそのことについてはここで議論するあれではありませんけれども、しかし少なくともアメリカ経済に相当の赤信号が上がっておる。同時に日本経済にも、一月の輸入がふえて、そして国際収支が赤字に転化してきておる。あるいは株もそういうふうな傾向を反映している、あるいはまた鉄鋼や繊維とかそういうものについては、過剰生産のきざしがはっきりしてきておるというようないろいろな徴候が、アメリカと大体並行して、同じような性質のものが現われてきておりはしないか。こういうことを考えた場合に、やはり経済企画庁としてはこの前の見通しの誤り——三十三年の白書における見通しの誤りを、三十四年度の白書で若干訂正をしたような格好ですが、そういうことを繰り返すのではしようがないのではないか。ことに三十五年度は、そういう重大な内外の経済の情勢でありますから、やはり見通しははっきり立てて、ごまかしのないようにしてやっていただきたいということを申し上げて、以上で私の質問を終わります。
  36. 綱島正興

  37. 足鹿覺

    足鹿分科員 長官に伺いたいのですが、この間予算委員会の一般質問の際にもお尋ねした点をさらにもう少し、それから国土開発計画の再検討の問題、この二点について伺いたいのであります。  最初に、国土開発計画の再検討について、私はその問題は焦眉の急ではないかと思うのです。あなた方がお出しになりましたいろいろな白書やその他の資料を見ましても、地域的な所得格差というものはだんだん拡大しておるのであります。いかにしてこの格差を縮め、均衡を得せしめるかというところに、国土開発計画と長期の展望に基づいた経済の平均的な発展成長を期する対策が早急にとられなければならぬ。しかも相当の重さを持ったものでないといかぬと思うのです。昭和二十五年に開発法が制定されまして、今日に至っております。特定地域開発地区にしましても、二十四地区以上に及んでおると思います。私の地区にもその指定地域があるのでありますが、ほとんど特別ワクという予算のワクがない一般行政費を積み重ねたもので、進度率が四十五度とか六十度とかいうふうに一応公表されておりますが、特定地域に指定された意義は、地方民が期待しておったのは、それに値する特別の措置が講じられるものとして期待をしておったと思うのです。ところがこれはしばしば私は申し上げておるのでありますが、一向そのような事態が起きてこない。そこから北海道、東北九州四国、中国、今度は北陸というふうに、重工業地帯を除く各後進地域が、地方開発の促進法のような法律を作って、それぞれ思い思いに政府に迫っているという事態が現実に起きてきていると思うのです。いろいろな観点から見ましても、私は国土開発計画をこの際再検討して、そしてしかもそれがあなた方が指摘されておる地域的な所得格差を縮小し、そして平均した経済の成長発展をはかられていくに必要な対策というものが与えられなければならぬと私は思うのです。たまたま臨海地域開発促進法が先国会来論議されておりますので、同僚の議員と一緒にその点を力説しておるのでありますが、残念ながら昭和三十五年度予算の上においても、見るべき措置がない、これは非常に残念に思うのでありますが、この際国土開発計画を再検討して今後に備えるということについて、長官の御所見を少し詳細にお聞かせを願いたいと思います。
  38. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 今足鹿分科員のおっしゃられたことは私も全く同感でありまして、国民所得の長期計画を今策定中でありますが、御存じの通り、最近日本経済は非常に躍進をしたのでありますけれども、その躍進の大部分は鉱工業生産でありまして、鉱工業生産というのはどうしても都会地に集中するということで、都会地と地方との所得の格差が最近顕著に現われてきたと思うのであります。そこでたびたび各委員会でも申し上げておるのでありますが、農業と非農業との格差、大企業と中小企業との格差と地域的な格差というものは、これはみな関連しておる問題でありますが、今度の国民所得倍増計画にはこの格差をなくするということを盛り込んでやるべきだというように考えておるのでありまして、それについては農業基本法は農林省で策定中でありますので、それなども大いにその点が考慮されるのではないか、こう考えておるのであります。  そこでお話通り、この地域的の格差をなくそうということになりますと、やはり国土総合開発ということを考えていかなければならぬということになりますので、この長期経済計画の策定をやると同時に、国土総合開発計画というものをもう一ぺん再検討しなければならぬということを私自身痛切に感じておるのであります。今日はそこまで私ども頭が余裕がなかったから、この問題については予算もそう獲得することができなかったのでありますが、これは一つこの長期経済計画の振興に関連して国土総合開発問題というものをもう一度再検討して、長期経済計画と相並んで地域的な開発ということとほんとうに取り組まなければならない、それをやらなければせっかくの長期経済計画は役に立たない、ただ計画倒れになるということを私自身が痛感いたしておりますので、この問題は一つ落ちついてゆっくり私自身考えて参りたい、こう思っておるのであります。来年度予算には御期待に沿いかねておるのでありますが、まあ一つ次の機会まで待っていただきたいと思います。これは私の率直な考えであります。
  39. 足鹿覺

    足鹿分科員 私の意見を否定されるとは思っておりません。同感であろうとは思うのですが、昭和二十五年に開発法が制定されて特定地域に指定の進度率が大体六〇%といわれております。実際今申しましたように、これは特定地域に対する予算の特別ワクというものが盛られた結果ではない、若干重点的には一般行政の立場からも考えてはおられると思いますが、私は具体的な計画を樹立して早急にやってもらいたいと思うのですが、まず当面予算の必要な措置としては、既存の特定地域の指定地域に対して、その地域の特徴のある施策に国がもっと積極的に援助をしていくべきだと思うのです。実際農業面から見ますと、積雪寒冷単作地帯振興臨時措置法外六つないし七つの特別立法がありまして、これも進度率は平均して積寒関係が四五%程度で、あとの畑地改良とか、砂地振興とか、湿田単作というようなものは、驚くなかれ一六%とか、二〇%というような進度率なのです。こういうふうになりますと、立法に対する国民の信頼感という面からも、結局名を与えても実がないということになって、それは政治に対する一つの国民の信頼感にも重大な影響を持つと思うのです。これらも農業面から見ますと、低位生産地帯で政府の施策がそれに伴わないから、議会がその低位生産地帯に対するいろいろな特殊立法を起こした、私はそう解釈しておるわけです。問題は、政府の行政がほんとうにかゆいところへ手が届くようにいきますならば、あえてそういう特殊立法をめいめいの立場からやる必要はない。現に私ども中国地方開発促進法を現在促進中でありますが、今度は北陸もやるという話を聞いておりますというふうに、今度は国土総合開発の面からも、東京その他若干の地域を除いては、みんな地方開発法が出そろう、こういうようなことになってしまうのです。これは重大な段階にきておる。そして既存のものについてもその事業計画の進度率をこの際再検討して、一応その残事業に対する進捗度をきめて、それに対する予算措置というようなものも講じて、打ち切るときには打ち切り、そしてそれを総合的なものにこの際再検討してまとめていく、こういうことでなければならぬと私は思うのです。慎重に、落ちついてやると長官はおっしゃるのですが、慎重にやらねばなりませんけれども、事態はもう火がついておると思うのです。この点について予算的な措置はないが、具体的に、何かこういうことをやって再検討に一つの緒をつけたいとか、何かそこに構想の一端でもお聞きできるものだと私は期待しておったのですが、それもないのですか。  それで今の特定地域に対する予算の特別ワクの問題です。これは与党も野党もない、一ぺん国会の意思表示でもすべきものだと私は常々思っておりますが、主管省であるあなた方がそれを取り上げられなければ、各省ばらばらのことになりますので、きょうは特に長官の御答弁をその一点にしぼって伺いたいと思ってきたわけですが、あなたの構想がまだ熟しておらなければ、事務の責任者の方にはこういう案を持っておった、しかしこの案はこういう経過で一応予算からは消されたとか、いろいろなそういう経過があろうかと思うのです。そういった点も、くどいようですが、突っ込んで御答弁願いたいと思います。
  40. 藤巻吉生

    藤巻政府委員 国土総合開発法が二十五年にできましてから、全国計画地方計画、都府県計画特定地域計画、いろいろ開発計画を立てることになっておりながら、なかなか仕事が進んでおらない。ことに当時最も力を入れました特定地域開発計画も、一応毎年計画を作って予算要求しますが、なかなか思うようにつかないというような御批判が多いわけでございます。確かに私ども特定地域の中の事業の進捗度を調べてみますと、全体としてはそうひどく悪くはないと思います。たとえば二十八年度計画が閣議決定になりましたものを調べますと、あれから七年たっておりますので七〇%仕事が済んでおればいいわけでありますが、その地域につきましては七〇%をちょっとこえておるというようなことで、そうひどく悪くはないのでございますが、事業内容によりまして非常に進捗度が違う。特に一般公共事業が非常におくれておりまして、公益事業と申しますか、電力、鉄道等の事業が進んでおる、こういうような状況になっております。やはり予算のつけ方が非常に足りなかったということは反省しなければならぬと考えます。なぜそういうような事態になったかということを私どもも十分検討しておるのでございますが、一つ国土総合開発法に、特定地域内の公共事業については、別に法律の定めるところにより補助率引き上げることができるというような規定がございます。その規定によります法律がまだできておりませんので、特定地域に指定されましてもその地域内の事業について財政上の特典がない、こういうようなことも一つの大きな原因かと思います。  それから予算上は特定地域予算は事項を立ててはおりますけれども各省要求額をただ集めたというような格好にすぎないわけでありまして、特にそのために予算が十分ふえておるということにはなっておりません。  それから私ども一つだけ特定地域の中の事業に関してほかの地域と違った取り扱いをしておりますのは、公共事業の調整費であります。これは特定地域の中の仕事に対して出すことになっておりますが、東北九州は別でございますが、そのほかの特定地域でない地域事業については出せないことになっておりますから、この点は特定地域一つの特典かと言えるのであります。いずれにせよ、そういうような予算上の特典が少なかったことがやはり伸びの悪い原因にもなろうかと考えます。  私ども三十五年度予算要求にあたりましても、先ほど申し上げました補助率引き上げる特別の法律考えたりいろいろいたしたのでございますが、大蔵当局の方といたしましては、もう法律ができてから七年も八年もたっておるのに、それまで全然話がなくて、ことしは十年目でございますが、十年目になってそういうような法律を作って、特定地域補助率を特別に上げてもらいたいということを言われてもちょっと困るというような御意向でございまして、私ども今までそういう方面に対する努力が足りなかったことは反省しておるわけでございますが、しからば今後これをどうしていくかということになりますと、各地域における特別の立法が行なわれておる現状をも考えまして、何とか特定地域の中の仕事につきましては、もう少し項目をしぼりまして、ほんとうの重点的な事業について、何らかそういうような国庫の補助率引き上げるとかいうような特典を考えない限り、なかなか進まないのではないかというふうに考えておるわけでございます。しかしまだ考えがまとまりませんので、いずれまたいろいろ審議会等を通じて先生方の御意見を承って、そういうような点を検討したいということを考えておった次第であります。
  41. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 今足鹿委員のおっしゃる通り特定地域という特別の立法がありながら、恩典、特典がないというお話でありますが、まことにその通りだと思います。その点はわれわれも非常に遺憾に思っておるのでありまして、やはり特別立法をする以上は、何かやはり特別の利点を与えるということをしなければ、特別立法の効果がないわけでありますから、そういう点につきましては、今後一つわれわれ自身も反省し、また一つ検討していきたい、こう思います。
  42. 足鹿覺

    足鹿分科員 これ以上お尋ねしても具体的な御答弁がないようでありますが、とにかく一般が受けている印象は、計画倒れということなんです。それは過去のことですが、先ほどからるる申し上げましたように、開発計画が再検討の段階に達しておるということは、十分御認識になっておるわけでありますから、少なくともこの際準備を進められて、長期計画と見合わせた経済の平均的な発展が期せられ、地域的な所得格差がほんとうに縮小し、均衡を得るように御努力を願いたいと思います。実際は、あなた方がお出しになりましたもので私調べてみたのですが、この間も申し上げましたが、県民一人当たりの平均分配所得を去年の十一月お出しになりました白書から抜粋してみますと、全国平均が八万一千九百九十九円であります。北海道がややこえておりますが、これをオーバーしておりますものは南関東、つまりこの東京近郊、それから名古屋を中心とする東海、それから近畿、それから山陽、こういうことになる。下から見ますと、一番低いのが四万六千九百九十六円南九州、それから東北の六万二千三百四十円、それから私どものところの山陰が六万四千四百九円というふうになって、しかもこの格差がだんだん拡大しつつある傾向にある。そういうあなた方自身がもうすでに資料を完備し、一切の検討を終えられておるにもかかわらず、それに伴う施策が進まぬということは、政府の重大な責任だと私は思うのです。問題を指摘したにとどまっては私は意味をなさぬと思う。これは申し上げるまでもないので、長官はお読みになったかどうか知りませんが、あなた方がお出しになっておるのをわれわれは勉強して、なるほどその通りだと思うのです。ところがそれをおやりにならない、そこに問題があるのでありまして、少なくともこの点については十分反省をしておいでになると思いますから、今後具体的に進めて問題を一歩前進せしめていただきたいと思います。  それから第二点の、これはこの間の一般質問とまた重複するような点もありますが、国土の造成と臨海地域開発について政府一体どう考えておるのか。現に議員立法が去年の四月一日から継続審議になり、またこの国会にも継続審議になっておる。まだ審議はやっておりませんが、政府自体は一体国土の造成と臨海地域開発についてはどういう基本方針で臨もうとしておるのか。特にあの臨海地域開発促進法には、窓口の問題で、私どもはあなた方の経済企画庁が総合する窓口になるべきだという純理論を持っている。また建設省がいいという議論もありますが、純理論の上からいったら、当然あなた方がその窓口になられる資格もあるし、また立場だと思うのです。そういう観点からも議員立法は議員立法としてあなた方自体が検討され、あなた方自体が一つの方針なり、施策の構想というものがあってしかるべきものだと私は思うのです。政府としてお出しになるかと言ったら、出さぬとこの間はっきり言われましたが、それははっきり議員立法というものがありますから、それとは別個にお出しになることは今の時期としては私はまずいと思う。が、少なくともあの法律については重大な問題をはらんでおる。すでに予算に計上されたかのごとく世間に流布されております百七十五億の公団収支予算が公開されておる。ところが来年度予算を見ますと政府出資の二十五億もない、借入金の百五十億中、資金運用部の七十五億も計上されておらぬように思いますが、何かはかに御用意がありますか。私どもの勉強が足りませんので見落としておるのでしょうか。その点を少しはっきりしてもらいたいと思います。
  43. 藤巻吉生

    藤巻政府委員 臨海地域開発促進法案の審議の際に三省公団の話が出まして、その際には予算要求をするようなことを三省では申しておりましたが、三十五年度予算折衝の結果は、ただいまのところゼロになって出ておるわけでございます。政府出資もございませんし、そのほかの費用も計上されておらないわけでございます。
  44. 足鹿覺

    足鹿分科員 この間、大蔵大臣は私の質問に答えて、あなたと一緒に御答弁になった。別にそういうものを新しく考えるよりも、現在の地方公共団体その他でやればいいのだという意味答弁をせられた。そうすると政府与党との間にあの議員立法をめぐって、私は必ずしも意見が一致しておらぬと見るのです。政党政治下にあって、一致しておれば政府みずからの責任でああいう各省にまたがる調整立法は、特にあなた方の責任において私は出さるべき性質のものだと思うのです。ところが実際は全条十六条のきわめて簡単な法案を出して、しかも電源開発会社法や各種の開発立法にも明記されておるところの補償条項なんというものは、全然法律のどこにもない。こういう乱暴な法律でも、私どもは成立を期しておりませんが、かりに成立した場合は、あなた方が今度はその運用の衝に当たられることになる。われわれ国会がかりに議員立法としてそれを認めたとしても、今度あなた方の運用になってきた場合に、とても運用がつかないのです。しかも関係団体は一斉に反対をしておる。どうもそういう点について経済企画庁の重みというか、にらみというか、これは内閣全体の問題で、あなたに申し上げるのは失礼かと思いますが、どうも感心しないですな。先ほども地域的な所得の格差が拡大しつつあるということを申し上げて御所見を伺ったわけでありますが、事実あのような法律が進みますと、今の状態でいきますと、ますます地域格差を拡大することにこそなれ、一つも縮小ということについての効果が期待ができないと思う。かりに、東京湾の埋め立て計画なるものが巷間流布されておりますが、それによりましても十五カ年間に二兆円、国費の二倍に当たる巨費を投じて五百六十万の新しい人口を包容する、東京湾の半分を埋め立てて、そこにいろいろな施設をやり、人口の移動が始まるということになる。埋め立てはただ単なる埋め立てでない。そこに利用目的を持っておる計画であります。ところがこの質疑を通じても明らかになっておらない肝心かなめのことは、あの三省公団は東京湾の埋め立てについては全然ノー・タッチなんです。私ども、これはさっぱりわからぬ。えてしてこういうものは利権を伴いますし、特に三省公団の当初考えられておったもので、借入金の百五十億の半分七十五億は民間資金の借り入れということになっておる。しかもその借り入れ先は、あるいは不動産会社だとか、いろいろなものが暗躍することは火を見るよりも明らかです。資金を出した者が何らかの利益を求めたいということにつながることは、今の経済上やむを得ぬのでありますから、そういうことになりますと、あの法律そのものに対して、政府立場からも、こうあるべきだということは、少なくとも政府の見解としては述べられる筋合いだと思う。そして政府の構想というものについても、やはり考えを発表される責任が私はあると思うのです。現にそういうむちゃな法案がまかり通ろうとしているのです、それは良識が許さぬから、現在継続審議ということになっておると思うのです。しかも不思議なことには、浅海漁業振興と臨海地域開発との調整に関する法律というようなものをだれかがまた考えておる。あなた方の与党の中にこういう構想がすでに生まれておる。そして埋め立てに伴う漁業補償の基準の制定と漁民生活の再建に関する措置、一方において基本法はそのままほったらかしておいて、今度は別に要綱なり措置をもって、その補償や生活権の擁護、あるいは漁場の喪失に伴うところの離職漁民の就職に関する措置とかを考える、こういうことになりますれば、全くあなた方のこういうものが成立した後における運用というものは、大へんなことになってしまうと思うのです。国土の造成とこの臨海地域開発についての政府の所信というものをまずきめられて、そこに気をつけられて検討される必要があると思うが、どうかということです。それから今三党なら三党でいろいろ話し合って、もう一ぺん練り直して、そうして意見が一致するならば、政府の責任で、ああいう調整立法は非常な広範な、地方住民の権利を侵害したり、生活を脅かしたり、生活手段を喪失したりするいろいろなものを含んでおりますから、もっと国土総合開発の一環として考えらるべき性質のものではないかと思うのです。しかも長官が、十分考えてすみやかに検討を開始したいと言われるその内容の重大な一つの柱になるものだと思うのです。これは力関係でいけば、この国会でも力で無理じいに押せば、あるいは通るかもしれません。しかし通った後においてこれは大へんな問題が私は起きると思うのです。いろいろな資料も集めておりますが、きょうは申し上げません。また別な機会に申し上げますが、別に暴露してどうこうということはありません。純真な立場から、一つあなた方がもっと本気でこれと取り組んでもらいたい。この間は時間がないので、政府はそんな考えは持っておりませんと、いやにあっさりあなたは言われたので、きょうは蒸し返しですが、もう少しこれに対して責任のある、そしてもう少し懇切丁寧に、開発計画の一環として検討する用意があるかどうかということを伺いたい。
  45. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 あの法律案は今議員提案として委員会でいろいろ審議されておりますから、政府として今とやかく言う筋合いのものではないと思います。いよいよあの法律案委員会で通ったといたしますと、そのときは初めて政府としても考えなければならぬので、あの法律案が議員立法として出された経緯については私全然存じませんが、私が閣議に列しているときにはあの法律案のことは一度も出たことはありません。そこでそういうような予算が組まれたとか、またお示しのようなパンフレッドなども先般の特別委員会で初めて私は見せてもらったので、一体だれが作ったかということも実は私局長の方に質問したのでありますが、局長も知らないと言う。われわれ経済企画庁として全然あずかり知らない印刷物なので実は驚いたのであります。そこで政府としても、今のところは、あの法律案については、せっかく委員会で議員立法として出されておるのだから、とやかく言う筋合いのものではないと思いますし、もしあのまま法律案通りましても、これは政府としても相当いろいろ問題があると思います。お話通り、窓口をどこにするかという問題、あるいは今の補償の問題、いろいろ問題がありますからして、かりにあのまま委員会を通過いたしましても、政府としてまたもう一ぺん検討すべきものではないか。あのままうのみにはたしてできるかどうかということは考えるべき問題じゃないか、こう私は考えておりますので、今のところは政府提案にするという考えはだれも持っておりません。しかし皆さん方の方でいろいろ御検討なさって、そうして政府提案にせよということであれば、私の方ではあの法律案をそのまま提案するかどうかは別問題といたしまして、検討してまた政府案として出すということで一つ考慮しなければならぬのではないか、こう思っております。
  46. 足鹿覺

    足鹿分科員 大体私のお尋ねしたいと思っておった点はその二点でありますから、最後に締めくくりを申し上げて終わります。  そうしますと、あの議員立法に関連する限りは、昭和三十五年度関係予算措置というものは一つもありませんね。その点ははっきりしておりますか。
  47. 藤巻吉生

    藤巻政府委員 まだ成立していない法案のことでございますので、予算上何も措置していないわけであります。
  48. 足鹿覺

    足鹿分科員 大体三省公団の出資も借入金の点も全然計上がなく、また予算上の措置も何もないということで一応明瞭になりましたので、私はこの程度できょうは終わりまして、また別の機会によく申し上げたり、また御意見を聞きたいと思っておりますが、とにかく最近の傾向を見ておりますと、あなた方の出された権威ある資料がほとんど生かされないで、むしろその資料の指摘した欠陥を拡大するようなことが、公然と行なわれたり行なわれようとすることはきわめて遺憾であります。経済企画庁は、そういう点に立って、広い見地から各省間のなわ張り争いや角突き合いを、どう大所高所に立って調整されるかというところにその意味があるように私ども思っております。何しろ各省からひもつきの役人さんがみんな来て思い思いにやっておられて、あなたもなかなかやりにくいだろうと思いますが、少なくとも私が今指摘しました二点は、特に当面しておる問題でありますので、真剣に取り組まれて、また次の国土開発委員会等の機会には、さらに一歩前進した構想等が用意されて聞けるように一つ御準備を願いたい。これだけのことを申し上げて私は質問を打ち切ります。
  49. 綱島正興

    綱島主査 午前中はこの程度にて休憩いたしまして、午後は午後一時より再開いたすことにいたします。     午後零時十一分休憩      ————◇—————     午後一時五十九分開議
  50. 綱島正興

    綱島主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。山本分科員
  51. 山本勝市

    山本(勝)分科員 菅野長官に御質問をいたしますが、まず第一に、経済企画庁というのは、一体どういう仕事をするのか。と申しますのは、たとえばドイツの経済省に当たるのか。ドイツの経済省というのは、ドイツ経済全般を指導するというような一つの役割をになっておるようですが、日本経済企画庁というのは、そういう日本政府経済政策また日本経済全般の指導の責任を持っておるのか、それともいろいろな統計を作って発表したりするだけの仕事なのか、まずその点を伺いたい。
  52. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 私は、経済企画庁というところは、日本経済の動向を、強くいえば企画する、あるいは動向を指導すべき役目を持っていると思うのです。またその意味山本委員の言われるように、ドイツの経済省みたいな性格を多分に持つべきではないか、こういう考えをわれわれ自身は持っているのです。企画という名前に変えた意味はそういう意味で、企画、政策もあわせて考えるべきではないか。ただ単に今までのように経済調査をするだけではなく、調査すると同時に企画もやるというところに新しい使命がある、こう私自身思っております。
  53. 山本勝市

    山本(勝)分科員 それではその前提に立ってお伺いしますが、大体日本の物価、つまり通貨価値というものが一年にどれくらいずつ下がってきたか。これは大臣でなくてけっこうですが、この数年間日本の通貨価値というものは一年にどれくらいずつ下がってきておるものか。
  54. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 昭和二十六年度以降から見ますと、物価はほとんど動いていない。卸売物価ですが、週間卸売物価指数についていえば大体ほとんど動いていない、横ばいの状況であるということは言えると思います。
  55. 山本勝市

    山本(勝)分科員 物価は横ばいにきておるということですが、先般発表された今後の経済の見通し、経済企画庁から出たのを見ますと、三十三年度に対する三十四年度、これがたしか一・三%上がっておる。それからさらにその次の三十五年度は、二十四年度に対して一・一%上がる見通しであるというふうに出ておりますが、その点はどうですか。
  56. 大堀弘

    ○大堀政府委員 卸売物価についての御質問と思いますが、三十三年度に対しまして三十四年度年度比較では二・三%の上昇であります。三十五年度は三十四年度に対して一・一%の上昇でございます。ちょっと今補足して御説明申し上げますと、神武景気のときの景気変動の場合に、三十二年の一月から四月くらいまでが一番高かったようであります。このときは三十年の低い水準から比べますと、約一割程度上がっております。それが金融引き締めによりまして景気後退期が三十二年の下期から三十三年の十月中ごろまで下がっておりまして、大体上昇しましただけ下がってしまいました。そこで三十三年の秋から昨年の四月まで約二・四%くらい上がっておる。これは大体下げ過ぎを訂正したとわれわれは思っております。三十四年の四月から七月まではほぼ横ばいでございます。昨年の八月以降十一月まで大体二%ほど上がっております。これは主として繊維品と食料品、それに建築材料、主として木材でございます。風水害の関係と繊維のストライキ等によって上がっておりますが、そのほか多少小戻しで現在横ばい、こういうのが大体の動きでございます。それを年度の比較で申し上げますと、三十三年度が非常に低かったものでございますから、それに比べて三十四年度は二・三%、今年の三十五年度と三十四年とを比較いたしますと、現在の時点から申しますとほぼ横ばい、ただ今年の初めが低いものでございますから、年度比較で見ますと一・一%上がっておる、こういうことでございます。
  57. 山本勝市

    山本(勝)分科員 あと野党の質問もあるようですから、簡単に質問しますから簡単に答えていただいてけっこうです。日本の猛烈なインフレが終わったのは大体いつと見たわけですか。
  58. 大堀弘

    ○大堀政府委員 三十二年の四月——六月がピークで、それ以後は下降に向かった、かように思います。
  59. 山本勝市

    山本(勝)分科員 ちょっと私の質問がはっきりしないようですが、終戦後あの猛烈なインフレがありました。そのインフレが終結したのは何年と見ておるかということです。
  60. 大堀弘

    ○大堀政府委員 卸売物価の上昇を見ますと、二十六年度、大体急速な上昇としてはその辺をもって一応終わっております。あとはゆるやかな上昇があります。
  61. 山本勝市

    山本(勝)分科員 小売物価はどうですか。
  62. 大堀弘

    ○大堀政府委員 消費者物価につきましてもほとんど同様でございますが、ただ消費者物価につきましてはその後も年々やはり一%くらいずつは引き続いて上昇しております。
  63. 山本勝市

    山本(勝)分科員 そうしますと、あの急激なインフレが大体おさまったのは二十六年として、二十六年から九年間たっておりますが、かりに二十六年を一〇〇としてどれくらい動いておりますか。
  64. 大堀弘

    ○大堀政府委員 二十六年の卸売物価をなまで申し上げますと、これは戦前基準でございますが、三四二という指数でございます。その後多少景気変動によって三五〇になりました場合もございますが、現在三十四年度時点で三四九でございます。従いましてこれ以後は多少景気変動の波がございますが、先ほど大臣が申し上げましたようにほぼ横ばいと相なっております。
  65. 山本勝市

    山本(勝)分科員 小売は。
  66. 大堀弘

    ○大堀政府委員 消費者物価指数につきましては、二十六年度が全都市で八五でございますが、三十四年が一〇四でございます。これはちょっと言い落としましたが、二十九年度が一〇一になっておりますが、ここからはほとんど一%くらいずつの上昇になっています。先ほどちょっと言い落としましたが、消費者物価の方は二十六年から二十九年までに多少上がっております。
  67. 山本勝市

    山本(勝)分科員 そこで私はここで非常に大きな問題を御提出するわけですが、大臣もそれから局長も横ばい、横ばいということを言われますが、一年に一%とか、一・何%といったような通貨価値の下落は、これは横ばいというふうに見られておるようであります。企画庁の諸君の考え方の中に、それくらい物価水準が上がるということは、やむを得ないというふうな考え方が横たわっておるように思うのです。世界のどの国を見てもそうだ、このように了解していいですか。
  68. 大堀弘

    ○大堀政府委員 先ほど卸売物価と消費者物価と両方申し上げましたが、卸売物価の方は景気変動によってやはり短期的には相当波動がありますが、水準といたしましてはほとんど動いてない、割に落ちついた状況でございますが、先ほどの二十六年に比べても大きなあれはない。消費者物価の方につきましては、この間におきましてもやはり一年に一%くらい上がっておりますが、各国の例を見ましても、現実に三十年以降をとってみましても、アメリカは二・二五%上がっております。イギリスが三・一三%、西独が二・七八%、フランスは非常に上がって六%以上上がっております。これはもちろん上がらないにこしたことはないと思っておりますが、やはり消費者物価につきましてはサービス関係経費が多少全体として上がっておりますので、一年に一%程度の上昇ということは、国際的に見ても日本は比較的安定的な上昇にとどまっておる、かように考えておるわけであります。
  69. 山本勝市

    山本(勝)分科員 一年に一%とか、二%くらいの通貨価値の下落、物価水準の上昇は、世界的に見てもそう高い方ではないのだ。だからこれくらいのことは大して心配は要らない、こういう考え方のようであります。これはほかの機会にも私はそのことを承ったことがあるのです。これは所得倍増論のときであったかと思いますが、通貨価値は絶対に下げないかと言ったときに、絶対という言葉はとってもらいたい、実際問題として下げないというわけにいかない、世界の情勢でも幾らか下がっていくんだ、こういうことでありました。これは、この程度のものをインフレと見るか、見ないかということについては私は議論があると思う。インフレとして扱う必要はない、それをインフレとして扱わないでもいいという考えに必ずしも反対するわけではありません。従って、これも横ばいだといって楽観せられることも、何もそう無理とも思わないのです。ただ問題は非常な長期にわたり年々一%ずつかりに上がっていくのがあたりまえなんだ、世界的にもそうであって、日本だって仕方ないんだという考え方でもし出発するとすれば、日本の他の政策との関連で重大な問題を含んでおると思うのです。それは簡易保険が今日二十五万という契約限度を三十万に引き上げたいというので、郵政省関係ではそういう法案を出すということを聞いておるのでありますけれども、私はその郵政省の役人にも申し上げたことですけれども、きわめて零細な金を国家が集めて、三十年、四十年という長期にわたる貯金をさせて、同じ国家が一方で一年に一%や一・五%上がるのはあたりまえだという考え方で扱っていきましたら、これは非常な収奪を国家がやっておることになりはしないか。郵便貯金のような場合には自分で適当におろせますからいいですけれども、これはそうではなく、非常な長期のものです。これは国民年金の場合にもあると思うのです。国民年金が三十年、四十年という——もちろん一ぺんに納めるのではありません。だんだん何百回という間に納めるのですが、とにかく四十年も前から金を集めて、通貨価値が四十年間に一年に一%あまりずつ下がっていくんだ、そういう下がる政策を政府自身が一方であたりまえだとしてとっていきながら、そういう国民年金あるいは簡易保険で零細な金を集めていく、それでいいものだろうかということであります。これは最初に菅野長官企画庁一体日本の政策全般を指導する立場にあるのかどうかということを伺ったら、大体指導する立場にあるということですから、この問題は私は企画庁長官に伺うのが適当だと思って、今日ここへまかり出たわけですが、これはどういうものでしょうか。
  70. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 私どもでも毎年一%上がるということを前提にしてはいないのです。やはり物価はあくまで横ばいでいくべきであるという建前をしておるのでありますが、三十五年度において約言一・一%上がるということは、さしあたり需要が多いということから、そのくらい上がるのではないかという見通しをしているのであって、供給の方さえ需要を超過すれば、またそれが下がることもあり得るのでありますから、毎年一%ずつ上がるということの前提でわれわれは長期経済計画を立てているわけではありません。理想としてはあくまで横ばいで、同じような物価の指数でいきたい、いくべきだ、こういう考え方をしているのです。幸い今も局長からお話がありましたように、卸売物価では過去の例を見ますと大体横ばい、ほとんど上がってないというような状況でありますから、今後も一つそういうような物価の状況を続けていきたい、こう考えております。
  71. 山本勝市

    山本(勝)分科員 卸売物価では上がっていないということでありますが、これは終戦後になめました非常な強度のインフレは特別例外としておきますけれども、しかし三十年、四十年という長期の金を一方で集める場合、それだけの長い期間に通貨価値を維持するということは容易な仕事ではない、よほどの決意を要すると私は思うのであります。ところが従来どうも、大臣はそうでないかもしれぬけれども企画庁の諸君も、少しくらいはこれはやむを得ぬのだという考えは確かにあった。そうして実質所得はどれだけだというふうにテーブル・データを使って、実質所得と名目所得を両方並べて、きわめて手軽にそこに表示しておる。しかし三十四年度は三十三年度に比べて一・三%上がった、今度は一・一%上がったという、その一・一%、一・三%——大衆の通貨価値を問題にする場合には、主として問題は消費物価でありますが、そのくらいのものに対する厳粛な気持に欠けておったのではないか。それを横ばいだ横ばいだと考えることが、一年だけ比べてみればわずかですから横ばいですけれども、三十年、四十年とその調子でいきますと——いろいろな変化のない年ですらそれくらいできているのですが、いろいろなやむを得ざる変化も起こってくる。戦争はかりにないにいたしましても、いろいろな変化が起こってくる。ですからここに、二十六年ですから朝鮮事変というものは含んでおりませんけれども、おそらく朝鮮事変の前あたりから比べまして、さらに相当の通貨価値の下落があるものと私は思います。ですから過去のことを責めるのでも何でもありませんけれども政府が、ことに企画庁が、通貨価値に対してもう少し厳粛な気持を持って指導に当たらないと、国民総生産がふえればいいのだ、国民所得がふえればいいのだ——それもふえるのはけっこうですけれども、しかしただいま申し上げましたような国民年金とか簡易保険というものは国家がとっておる政策である。それは通貨価値には変動がないのだという信頼の上に成立しておるものだ。初めから簡易保険を募集するときに、三十年たてば大体三割くらいは下がってしまうのだ、値打ちがなくなるのだということをもし予想したら、ほとんど入る者はないだろうということで、実はすでに国民年金制度というものが出発しておりますし、またさらに簡易保険の限度引き上げというような問題も起こっておるこの際に、通貨価値はくぎづけにしてずっとやれというようなことは不可能であります。しかし長い期間がたっても、十年たってもあるいは二十年たっても通貨価値というものは大体変わらない、こまかい波動はあっても変わらないのだということでなかったら、私はこの年金制度及び簡易保険の制度というようなものそのものを反省してみる必要がある、こういうふうに思うのですが、長官どうですか。
  72. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 全くお説の通りでありますので、われわれも決して物価が上がることを喜んでないのでありまして、今の長期の年金とか、そういう長期金融については、やはり物価が上がらぬという前提で勧誘しなければだれも応じないのでありますから、そういう意味で物価を上げないという方針で政府としてはやっていきたい、こう考えております。
  73. 山本勝市

    山本(勝)分科員 さらに念を押しますけれども、それで大丈夫ですか。どうもよほど経済企画庁長官が職を賭してでもかかるくらいの決意で当たらないと、日本政府の全般の政策が——結局急激なインフレはだれしも反対であります。しかしそうではない、ごく忍び寄るような、徐々にずっと進んでいくインフレというものは、よほどの決意がなければ防げないのです。これは長官に向かって釈迦に説法ですけれども、世界がもうすでにそういう忍び寄るインフレをたどっておるときに、日本がたどらぬということは、なまなかな決意でできることではありません。これが、企画庁の諸君が、十年間の所得倍増計画においても、通貨価値を絶対に維持するということは事実不可能だから、絶対という言葉に疑義をはさまれたゆえんでもあると思う。それは確かに非常にむずかしいことです。それはもう十分承知しておるだけに、よほどの決意をみんなが持ってもらわなければ、どうも予想よりも少ないのだからこれでいいというふうなことでやったら、それはそれでいいとして、今申しました年金制度や簡易保険の制度をとっていなければいいですけれども、そういうことを一方でやっておる政府自体が、一方でそういう通貨価値の下落政策をとって、それで国の財政投融資の資金をまかなっていくというようなことは重大なる問題だと思うので、一つ決意を促しておきたいと思います。私はそれだけ申し上げて、質問というよりも、お願いを申し上げておきたいと思います。
  74. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 今の山本委員のお説はわれわれ全く同感で、忍び寄るインフレというものはなかなかこれを押えることは困難だと思います。その点において、金融政策、財政政策、あるいは経済政策、この三つの問題についてやはり慎重な考慮をして政策を立てていかなければ、インフレというものは忍び寄る傾向を持っておるのでありますから、この点についてはわれわれも細心の注意を払って今後やっていきたい、こう存じております。
  75. 綱島正興

    綱島主査 次に堂森芳夫君。
  76. 堂森芳夫

    堂森分科員 企画庁長官お尋ねいたしますが、先般の予算委員会の質問で、わが国における戦後のエネルギーの需給の状態を見ておりますと、たとえば石炭対策を見ましても、私はある意味ではその日暮らしで全く一貫した政策がなかった、このように考えていいと思うのであります。先般私の質問に対して企画庁長官は、いろいろな点からエネルギー産業というものはきわめて重要な産業であって、ただいま経済審議会のエネルギー部会に諮問をして結論を急いでおるのだ、こういうふうに答弁をされたのであります。そして私の聞くところでは、昨年の四月でありますか、エネルギー部会が発足いたしまして一年間で結論を出そう、こういうようなことであったというふうに聞いておりますが、いつごろになったならば結論が出るのか、一つ答弁を願いたいと思います。
  77. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 お話通り、このエネルギー部会は昨年の四月に発足しまして、大体一年間で結論を出したいということで、実は数回委員会をやっております。今のところではまだ結論は出ていないのでありますが、大よその結論はもう近く出るのではないかという期待をわれわれは持っておるわけであります。それから石炭対策については無策であったというお話がありますが、これは石炭がこんなに石油やその他のエネルギー資源によって追われるということは、これは日本ばかりではなく、西ドイツ、英国でもここまで予想しなかった問題で、今日英国においても、西ドイツにおいても石炭対策で非常に苦労しておるのでありますが、日本もやはりその点において石炭がこんなに不振をもたらそうとは今までだれも考えなかったことでありまして、全く無策であったわけではないので、大体石炭は昭和三十四年にはどれだけ要るというような見当をつけておったのでありますが、それが予想よりもはるかに石炭の消費が少なかったというところから、石炭が斜陽産業みたいになったのであります。しかしこの前申し上げました通り、これが国産のエネルギーでありますので、やはり石炭というものを全然捨ててしまうわけにはいかないのでありますからして、必要な限度において石炭は採掘するし、また重油も輸入するし、あるいは将来は原子力のエネルギーということも考えていかなければならぬということで、今各方面からこのエネルギー問題を検討中なのであります。
  78. 堂森芳夫

    堂森分科員 従来政府がとってきましたエネルギー産業の大きな筋は、炭主油従であったと思うのであります。そこで審議会のエネルギー部会の答申はともかくとして、政府としてはしからば従来とってきた炭主油従の政策というものを踏襲し、維持していく、こういう方針でございましょうか、まず伺っておきたいと思います。
  79. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 ただいまのところは、やはり炭主油従の方針でいきたい、こう考えております。しかし石炭産業の合理化や何かが実現できずして、どうしてもほかのエネルギー資源に比べて割高であるというようなことになってくると、炭主油従ということが、これで維持できるかどうかということが問題になってくると思います。そこで石炭産業の合理化ということが実現できるかどうか、今通産省の方でいろいろその問題について対策を講じておられるようでありますが、その問題が前提条件で炭主油従という政策が動揺するのではないか、こう考えております。
  80. 堂森芳夫

    堂森分科員 石炭対策の具体的な施策は、もちろんおっしゃる通り通産省がやることであります。政府計画によりますと、昭和三十八年度までに炭価を千二百円くらい引き下げる。そして重油との競合に見合って石炭産業がやっていける、そして出炭量を年産五千五百万トンくらいに保持していこう、こういうことを言っておるわけですが、企画庁といたしましては、そういうことがほんとうに可能というふうに信じておられるのでありますか。経済の参謀本部であります企画庁でありますから、やはりそういう見通しを持たなければできないと思いますが、いかがでございますか。
  81. 大來佐武郎

    ○大來政府委員 ただいまの点、実は非常にむずかしい問題を含んでおりまして、経済審議会のエネルギー部会も過去一年間にわたりまして検討いたしましたが、実は最初に各エネルギー消費産業の実情をいろいろ聴取いたしまして、それから各業種別のエネルギー消費の場合の石炭と石油のメリットと申しますか、そのメリットを技術的に一つ一つ検討して参りまして、そうして石炭と石油との競合需要というものをはじきました。そして石油の価格を、ある仮定した価格に置きますと、石炭と油が、もし価格関係だけにまかせました場合には、どういうことになるだろうかというような検討に入っておりまして、最後の取りまとめのところを今いろいろ苦心しているところでございますが、やはりカロリー当たりの石油の値段とカロリー当たりの石炭の値段、それからかりに石炭と石油のカロリー当たりの値段が同じでありましても、石油にはメリットがございまして、使用上の利益がございますから、そのメリットを差し引きまして自由競争を考えますと、石炭は相当な圧迫を受ける面があるように思います。これを千二百円の値引きをして競争力をつけるという通産省の案が今出ているわけでありまして、もしもその場合にも石油価格が変動いたしますと、これまたいろいろ条件の相違が出て参りますから、これはやはりまだ審議会のエネルギー部会の結論ではございませんけれども、私ども事務当局として感じておりますことは、ある程度の国の政策が必要である、五千ないし五千五百万トンの数量でございますと、必要な突っかいの程度がそう大きくならない程度になるし、石油価格の動き方いかんによってはほとんど採算的に成り立ちます。もしその方の条件が悪ければ、何らかの形の突っかい棒が要るわけでありますが、その突っかい棒の太さがそう大きくならない。ただ従来考えておりました、前の計画にありました六千四百万トンというような目標で参りますと、これはやはりいろいろその後の競争エネルギーの値段の変化等から見まして困難な面が出てくるのではないか、大体そういうふうに考えております。
  82. 堂森芳夫

    堂森分科員 三十八年度までのそうした石炭対策の計画がもし失敗すれば、原油がどんどん下がってくる、そういうことも予想されるわけでありまして、経済の本質からいいまして、あるいは今後自由化ということが現実の問題となって参りまして、原油の輸入がどんどん安くなってくる、こういうことは予想されるわけでありまして、おそらく千二百円という値下げが、はたして可能であるかどうかということも相当問題があるようでありますし、また通産省当局の——これは私名前は言いませんけれども、話を聞きましたら、三十八年度までにやって、どうしてもこれがうまくいかぬ場合にはお手上げでございます、こういうふうに言っているような事務当局の諸君もあるわけであります。この重要な石炭産業、もちろんこれは大きな雇用問題をかかえているわけでありますし、また経済の本質から申しまして、エネルギーに限らず、いかなる原料といえども、やはりより安いということが一つの問題でありますし、また供給というものが絶えず安定しているということも問題であります。もっともまた今度は逆に国際収支の点から輸入にのみたよっていく、こういうことももちろん問題でありましょうし、私は今後のエネルギー産業に対する政府の見通しあるいは施策、こういうものは非常に重要さをますます加えてくるのではないか、こういうふうに考えるわけであります。ただいまの答弁によりますと、どうも確信があるのかないのかはっきりしないのですが、もう一ぺん聞いておきたい。
  83. 大來佐武郎

    ○大來政府委員 実は石炭につきましては、ただいま堂森委員の御指摘のような価格上の問題がございますが、一面から見ますと、エネルギーの需要は経済が成長するに従いましてますます増大いたします。私どもエネルギー部会では、そういう増大する需要に対して、コストの面と雇用の面と国際収支の面と、この三つの面から総合的に検討してみようということで、今いろいろ計算をやっておるわけでございますが、コストの面で確かに御心配の点があることは、私どもも率直にいって感じておるわけでございます。  ただもう一つの別の面から申しますと、今後の石炭需要の一番大口なものは何かというと、結局電力の関係だと思います。鉄道もだんだん使わなくなりますし、技術的に見て、石炭と油でどちらにもいき得るというもので、一番大きなものは電力だと思うのでございますが、その電力用の石炭消費は、今後もし火力発電を大部分石炭によるといたしますと、十数年後に火力発電用だけで約五千万トンの石炭が要る計算になって参ります。従いまして、もしこの石炭の面におきまして、極力コストを引き下げる努力をいたしまして、他面ある程度の政策的考慮を加えて、電力用の石炭その他について石炭消費を奨励するといいますか、そういう政策をとりますれば、この五千ないし五千五百万トン程度の需要は、やはり確保できるのではないだろうか。全く野放しというか、価格関係で自由にいたしますれば、相当不安がございますが、ある程度政策を加えることによって、その程度は可能ではないだろうかというふうに考えておるわけでございます。
  84. 堂森芳夫

    堂森分科員 エネルギー源の新しい一つのものとして、やはり原子力があると思うのでございますが、政府がかつて立てた計画にA案とB案があって、昭和五十年かになりますと、原子力の発電量が、A案の方は七百万キロワット、B案の方は四百万キロワットの電力を出すということですが、こういう計画はそのまま昭和五十年に実現するという見通しでございましょうか。私はどうもおかしいと思うのですがどうですか。
  85. 大來佐武郎

    ○大來政府委員 原子力の計画につきましては、現在の長期計画を作りますときに相当議論がございました。まだその長期の発展の目標を具体的にあげる段階ではないのではないかという議論もだいぶあったわけでありまして、われわれも実はそういうふうな立場で議論しておったのですが、当時原子力委員会の方で、一応の長期計画を検討したから、参考の意味で長期計画の中に盛り込んでおいてくれというような説もございまして、ただいまお話のございましたA案の七百万キロ、B案の四百万キロというような昭和五十年までに発電をやるという案が参考として入っておる。政府の正式決定のエネルギー計画ではまだないわけでございます。
  86. 堂森芳夫

    堂森分科員 そうすると昭和五十年に四百万、七百万とだいぶ数字は違いますが、四百万キロワットの原子力発電をやっていこう、こういうことが、まあ参考としても、政府の正式決定でないとすればこれはどうにもならぬのですが、どういう根拠から四百万とか七百万ということが出ているのですか。腰だめでしょうか。
  87. 大來佐武郎

    ○大來政府委員 これは当時計画を作成いたします場合に、地帯別に昭和五十年までの電力需用を一応はじきまして、その地帯別に水力で供給できる限度を差し引きまして、残りが火力発電によるわけでございますが、その火力発電のうちの本州中央部は大体において産炭地帯から遠い本州中央部で、新たに作る火力発電の半分を原子力発電によったらどうか、あるいは率をもっと下げたらどうか、正確なところをちょっと失念いたしましたけれども、今後こういう火力発電の需用をある程度原子力発電によった場合どうなるかということで計算をしております。
  88. 堂森芳夫

    堂森分科員 私が聞いているのでは、昭和五十年度に今のままの趨勢で進んでいくと、原油の輸入量と見合って、その二割くらいを原子力の発電に回す方が、いろいろ一長一短はあるわけですが、その方が今後のエネルギー計画としてはいいのではないか、こういうことであって、さしたる科学的な根拠がないということを聞いているのですが、いかがですか。
  89. 大來佐武郎

    ○大來政府委員 正確に申し上げますと、実はA案の方が七百万キロでございますが、本州中央部では四十一年度以降の増加火力を全部原子力発電でまかない、西日本では四十六年度以降、つまり石炭に近い西日本では増加火力の半分を原子力発電でまかなうとした場合に七百万、それからB案といたしましては四百万の案でございますが、本州中央部では四十一年以降増加火力の半分、A案は全部でございましたが、こちらは半分、西日本は四十六年以降の増加火力の半分、そういう計算をいたしますと三百九十万、約四百万ということになります。
  90. 堂森芳夫

    堂森分科員 そうすると、こうした七百万なり四百万という計画は公式な決定ではないのだ、こういうことであって、ただいま経済企画庁としてはもちろん総合エネルギーの部会を開いているのですから、結論が出ないということではどうにもならないのですが、世界的な趨勢としても、原子力の発電というものも流行がやんで反省期といいますか、そういうところにきているのではないかと思います。従って今後の原子力発電というものは、従来政府考えておったようなものとはかなり趣を異にしてくるのではないかと思うのですが、そうではないのですか。
  91. 大來佐武郎

    ○大來政府委員 この点につきましては、原子力委員会の方も最近いろいろ検討を始めておられるのでございます。私の方といたしましても倍増計画の作成、その一部としてのエネルギー計画の中であらためて検討いたしたいと考えているわけであります。
  92. 堂森芳夫

    堂森分科員 石炭のことをもう少し聞きたいと思っているのですが、日本で炭価が非常に高いということは、どういうところにおもな原因があると思いますか。
  93. 大來佐武郎

    ○大來政府委員 これは私が答えるのが適当かどうかわかりませんが、いろいろな物価の長期的な変動を主要な商品について見ますと、生産性が賃金の上昇をカバーするといいますか、たとえば賃金が五%上がりましても生産性が一割上がるというような商品では、コストが下がる、値段が下がる可能性がございますが、生産性の伸び率に比べてといいますか、賃金の伸び率に比べて生産性の伸び率が低い場合には、相対的に値段が高くなる。大体サービス産業等がそういう傾向にございますが、日本の石炭業はまだ非常に労働力に依存する度合いが高い。コストの半ばが労賃であるということ、石炭の生産性が一般の国全体の賃金上昇率に比べて追いつかないというような点が、石炭をコスト高にする大きな一つの基本的な原因になっていると思います。他方油の方は、御承知のように非常にオートメーション化——人の労働力を使いませんで、機械化した形で地面の下からひとりでに噴出するものを処理する、しかも運搬のコストが非常に大きなものでございましたけれども、タンカーの大型化等によりまして、非常に輸送コストが逆に下がっていく。そういう面から、最近になりまして世界各国で石炭の割高ということを感ずるようになってきたのではないか、そう思います。
  94. 堂森芳夫

    堂森分科員 日本の石炭産業が諸外国の事情と同じだとは言えない。ということは、やはり世界的にある意味では斜陽産業である、こういうことは事実だと思うのでありますが、しかしフランスあるいはイギリス、ドイツ、まあアメリカは別でありますが、こういう国々と比較いたしましても、日本の石炭産業はそれ自体に多くの内部矛盾、多くの欠点を持っておる産業である、こういうことが言えると思うのであります。そこでこの日本の石炭産業のあるべき姿というようなものについて、経済企画庁でこうあったらいいのではないかというような構想とかそういうものはどうでございましょうか、あるいは無理かもしれませんが。
  95. 大來佐武郎

    ○大來政府委員 根本問題でございますので、やや私見が入るかもしれませんのですが、やはり長い目で見て参りますれば、この生産性とそれからその国の全体の平均的な賃金水準の上昇等が石炭業においてもほぼ一致して上がっていきませんと、割高になる。そういうことでやはり採炭の機械化、近代化ということを進めていくことが根本条件になると思いますし、また現在のところでは、石炭の輸送のコストが相当高いようでございまして、北海道なり九州から本州中央部に持ってくる費用が非常に高いというような点から考えますと、やはり石炭の消費をなるべく山元、産炭地でやる、なるべく人手をかけないで石炭を消費するという形で、場合によれば電力にいたしまして送電線で需用地に送るというようなこと、産業全体といたしましてこれはいろいろな工業なり土木、工場なんかでも機械化しつつあるわけでございますから、石炭としてもそのぺースにおくれない程度の近代化、機械化を進めていくということが、一番の根本対策になるかと思います。
  96. 堂森芳夫

    堂森分科員 今度は石油に移っていくわけでありますが、原油の輸入量というものは戦後異常な速度で増加しつつあることは御承知の通りであります。そこで国際収支ということが非常に重要な問題である。今後ますます原油の輸入、重油の需要というものはふえていくと思うのでありますが、はたしてこのままの姿では日本の国際収支の面において大きな圧迫を加えてくるのではないか、経済企画庁長官はそういう心配はないというお見通しでありましょうか。
  97. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 御承知の通り、油はあらゆる産業のコストに入りますので、従って石炭よりも油が安いということであれば、それだけあらゆる産業製品が今後安くなる。それが将来輸出を盛んにするということになりますので、そこらの点を考えて、重油がどんどん入ってきても、またそれによって日本全体の輸出品が格安になる。輸出が盛んになれば、それだけ重油に外貨を使いましても、一方では輸出で取り返すということも考えられますから、重油がたくさん入ったからそれだけ外貨がたくさん要るというようには一がいに考えられない。そこらの計算を勘案していかなければならないのではないか、こう思っております。
  98. 堂森芳夫

    堂森分科員 そういう抽象的なことではなしに、企画庁ではいろいろと調査もしておられると思うのでありますが、もう少し具体的に、大來さん、御説明願いたいと思います。
  99. 大來佐武郎

    ○大來政府委員 大体石炭一千万トンに相当いたします石油を輸入いたしますと、約一億ドルの外貨がかかります。一億ドルの外貨と申しますと、現在の三十数億ドルの輸出から見て三%くらいの率に達します。それに先般の長期計画によりますと、石炭を七千二百万トン昭和五十年に掘るといたしました場合においても、昭和五十年の日本のエネルギー消費の中で輸入に依存する分が四八%になる。大体石炭を七千二百万トンとしましても、なおまだ輸入エネルギーがほぼエネルギー消費の半分を占めるという形になりまして、石油の輸入量がたしか二十億ドル程度に昭和五十年にはなるという計算だったと存じております。総輸入の二割近くが石油になる。もっともすでにイタリアでは現在輸入の二割近くは油になっているようでございまして、国際的に見て必ずしも非常に高いというわけではございませんが、結局そういった意味で輸入エネルギーに使いますところの外貨負担と国内におきまして国産エネルギーを使う場合のコスト上昇と、この両方をにらみ合わせて、どこが一番経済的なポイントであるか、ことに今後初めの五年、十年の間は雇用問題が非常に重要でございますから、雇用問題に対する影響も合わせて雇用、国際収支、コスト、この三つの点から今検討しておるわけでございます。エネルギー部会の結論が出ますればもう少し具体的に申し上げられるかと思うのであります。
  100. 堂森芳夫

    堂森分科員 経済の本来の性質から申しまして、エネルギーというものがより安いということが、やはり大きな一つの問題であろうと思うのであります。そこで今日の電気産業全般を見ておりますと、かつて昭和二十六年でございますか九分割をやり、その後地域的にいろんなアンバランスが出てくる、あるいは近ごろのいろいろな新聞報道なんか見ておりますと、電気産業がいろいろ募集しておる社債なんか見ましても、電気産業が要求しておる社債の額をうんと下回った申し込みしかないとか、あるいは政府資金もだんだん窮屈になってくるとか、いろいろな資金的な問題がありますし、年々電気に対する需用というものがどんどんふえて参りますから、やはり年々電源開発をしなければいかぬとか、いろいろな問題がありまして、小口需用者には割合高く、大口需用者には非常に安く、傾斜と申しますか、今日までそういう料金の制度をとってやって参りました。あるいはまた税制的ないろいろな保護政策を政府がとるとか、いろいろな施策をしてきたわけでありますが、しかし実際には、電気産業自体が今までの含み資産なんかを食いつぶしておるような傾向もあるのではないかと思うわけであります。実際の施策については、これは通産大臣に聞かねばいかぬわけでありますが、今日電気産業の再々編成というか、あるいは根本的な企業のあり方についての再考を要するような事態にきておるのではないか、こういうふうにはお考えにならぬのか、一つ企画庁の御答弁を願いたい。
  101. 大堀弘

    ○大堀政府委員 電気事業のただいまの御質問につきましては、三年ほど前に特に東京、東北の問題あるいは北陸と関西の関係等につきまして、開発に伴う料金、原価の高騰ということと、電気の販売先によります、つまり需用構成といいますか、大口電力の需用と家庭用電灯との需用構成、地域的な関係、そういった面から見まして、九分割のままではたして合理的な将来の電源の開発なり料金の安定ということをはかっていけるかどうかということが問題になりまして、当時出ました考え方といたしまして、御承知のように広域運営方式ということで、九電力会社ではございますが、各社間の電力の融通なり開発について、合理的な協調体制に持っていって、できるだけ原価の高騰を押えて安い電力が供給できるようにということで政府の方針をきめまして、現在九社間に協定ができまして、その方式によってやっておるわけでございます。今日のところ、やはり御指摘のように問題はあるかと思いますが、現在のところは広域運営をさらに合理的な協調によって問題を解決していきたいということで、目下は進めておるわけでございます。
  102. 堂森芳夫

    堂森分科員 電気産業自体にも内部に多くの矛盾を含んでおる。そしてそういうことは企画庁当局も認めておられるわけでありますが、それ以上ただいま質問してもどうかと思いますから、私は電気産業のいろいろなあり方についての私見などは、きょうは申さずにおくことにいたしたいと思います。  そこで、さっき申しましたエネルギー源を国内から生産したものに重点を置くか、あるいは外国から輸入したものに依存していくか、これは非常に大きな問題でないかと思うわけであります。そこで石油資源でありますが、これは日本には残念ながらきわめて微量しか出ないということは事実であります。企画庁として、今後さらに国内産の石油の開発ということにもっと力を尽くしていくというふうに考えておられるかどうか、一つ答弁を願いたいと思います。
  103. 大堀弘

    ○大堀政府委員 今日まで国内石油資源の開発について、政府として特別の措置を講じておるわけであります。今後、先ほど来ございましたエネルギーの、世界からの供給の問題を含めての全体の見地から、国内の開発をどの程度やっていくべきかということについては、いろいろ考え方があるかと思いますが、現在のところ国内資源につきましては、安定措置ということで、石油に限らず他の地下資源につきましても、ある程度のものは国内の生産を確保していくということが必要ではないかと思っておりますが、具体的には通産省で所管いたしておりますので……。
  104. 綱島正興

    綱島主査 堀君。
  105. 堀昌雄

    ○堀分科員 企画庁長官に少し基本的な問題から先にお伺いいたしますけれども、現在日本は資本主義経済の中にあるわけですが、この資本主義経済と皆さんのいろいろお立てになる計画との関連、これを長官一体どういうふうにお考えになっておるか、伺いたいと思います。
  106. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 資本主義と計画経済とは違うのでありまして、共産主義のやっておる計画経済でありますと、たとえば石油なら石油は一年間何ぼ掘るなら掘るとかいうことは法律でもってきめまして、それ以上は掘らさぬ。まただれが掘るということまで、すべて政府がきめてやることです。経済企画庁の方はそういう計画経済はやっていないのであります。ただ日本の産業としては、石油なら石油は何ぼ要るかという大体の計算を立てて、それによってその石油を買うとか、実際買う人は商人にまかすとかいうようなことをやらすのであって、一応の経済の動きのめどを立てて、それによって国民を指導していくということでありますからして、計画経済とはちょっと違うと思っております。
  107. 堀昌雄

    ○堀分科員 私が伺ったのは、資本主義経済計画性とを伺っておるのです。今お話のように、私は計画経済ということでなくて、経済企画庁で新長期経済計画であるとか、こまかくいえば三十五年度に対する経済政策であるとか、いろいろとお出しになる、それとの関連ですね。今の資本主義経済との関連、もうちょっと具体的にいいますと、そういう計画がある、しかしどこかでこれが結びついていない限り、雲をつかむようなことになるのではないか。多少現実計画との中に、何らかの関連がなければならないと思うんですね。計画を拘束して、計画の方から現状をどうするということではありませんけれども計画が出てくるのは現状の中から計画をお出しになることだと思いますので、そういう関連性をどの程度にお考えになっておるかということをお伺いいたします。
  108. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 計画を立てる材料は、いろいろ各方面の材料によって計画を立てておるわけであって、決してただ無計画計画を立てておるわけではありません。材料によってやっておる。そこで、これが資本主義の経済でありますが、戦前とはちょっと違いまして、戦前の資本主義でありますと、大体そこまで政府がそういう計画を立てることが、はたしていいか悪いかということ自体いろいろ議論があったと思います。がしかし、戦後は戦前の資本主義とは資本主義が違いまして、経済活動は政府自身がやはり経済活動を指導すべき状態になってきた、私はこう思うのです。であるからして、私は計画という言葉は使わないのですが、政府として指導すべき責任がある。そういうことで、指導する以上はやはり一つの目標を立てて、そして指導していくということが必要になってきた、こう思っております。
  109. 堀昌雄

    ○堀分科員 そこでもうちょっと具体的にお話を進めたいのですが、皆さんの方で経済指標でもあるいは国民総生産、国民総支出でも、国民所得でも見通しをお立てになりますね。この見通しというのは、どういう時期に、年間の時期で見ますと、昭和三十五年度経済の見通しというのは大体いつごろお立てになるのでしょうか。これは政府委員でけっこうです。
  110. 大堀弘

    ○大堀政府委員 現在やっておりますことは、九月ないし十月の秋に一応その年の下期の経済と翌年の経済のごく概略の見通しを作りまして、十二月に翌年度の、つまり今年度の十二月に三十五年度経済見通しの具体的な計画を作っているわけであります。実際は一月に入りましてから結論を出します。
  111. 堀昌雄

    ○堀分科員 その次に、実績見込みというのをお出しになっておりますね。この実績見込みというのは、時期的にいつになるのでしょうか。
  112. 大堀弘

    ○大堀政府委員 現在国会の方へ提出いたしてございます三十五年度経済見通しの資料に出ております三十四年度実績見通しは、一月二十四日現在であります。
  113. 堀昌雄

    ○堀分科員 三十五年度はそうでございますが、毎年度大体その程度のところでございましょうか。
  114. 大堀弘

    ○大堀政府委員 さようでございます。
  115. 堀昌雄

    ○堀分科員 大臣にお伺いをいたしたいのは、今大臣もおっしゃったように、大臣計画という言葉はお好きではないそうで、指導だそうですが、その指導にしましても、目標というものがなければ指導はできない。そうすると、その目標というものは日本の今の経済の全般の問題の中で、私は経済企画庁がお出しになっておるものはその目標だと考えておりますが、それについてどの程度の確信をお持ちになっているのかということをちょっとお伺いしたい。絶対的な確信がおありなのか、まあそれほど確信はないがこういうものを出しているのかどうかというそこのところを一つお伺いしたい。
  116. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 これは見通しでありますので、正確にその通りになるということについては、われわれ自信がありません。がしかし、今までの多年の経験によりまして、また集まってきた資料によりまして、大体このくらいならまあ間違いがないだろうという一応の見通しをしておるわけであります。
  117. 堀昌雄

    ○堀分科員 もちろん、見通しの問題につきましては、これはいろいろな資料の推計に基づくものでございましょうから、おっしゃるように、それが全部当たれば、これはもう株屋をやれば一番もうかっちゃうということになるだろうと思いますが、それがそういかないのが資本主義の常でございます。実は私非常にこの問題について疑義がございますのは、この「昭和三十五年度経済見通しと経済運営の基本的態度」という資料の中に、お出しになっておるのをちょっと調べてみましたところが、三十三年度の実績見込みと三十三年度の実績というものの間に相当な大きな食い違いがある。今お話しになったように、三十三年度実績見込みが出たのは三十四年の一月二十日ごろ、こういうことになりますね。ということになると、いろいろな根拠になるのは、もうすでに済んでおるところで出ておるのが私三十三年度の実績見込みであろうと思います。そうしてその次に、三十三年度の実績については、昨年の十二月ごろにお出しになっておると思うのですが、これは国民所得との関連で出てきたと思うのです。そこでこれを調べてみて、実は実績見込みと実績の間に非常な差があるのです。同様に今度は三十四年度の実績見込みと当初の三十四年度との見通しですね。見通しと実績見込みの間に差があるというのは私やむを得ないと思いますが、その差の中で比較的変化がなくてもいいであろうと思われるようなものの中、たとえば政府の財貨サービス購入というようなものの部分についてみても、相当に著しい差が実はこの中にある。昨日も私は大蔵委員会でいろいろな経済問題の見通しについてこの話をちょっと聞いてみた。大蔵省としては経済企画庁の資料をどういうふうに考えておるのかということを実は大蔵委員会で聞いてみたところが、村上財務官はこういうふうに答えているのです。「現在、われわれの考え方では、経済企画庁の見通しというのは、ガイドポストと申しますか、一つ経済の指針といいますか、政府が、こういう程度の経済の伸びであれば、現在の経済の実勢からの動き方として好ましくもあり、かつまた非常に可能性のある形であると考えているようなものを、いろいろ経済計算としてお示しいたしておるわけであります。従って、その場合に、諸外国の要因などが非常に変わりまして、非常に外国の景気もよくなる、それに応じて国内の投資力も非常に増大してくるということになりますと、経済の伸びが当初の予想よりはそれを上回るということもあるわけであります。ただその方向づけがある程度合っていれば、こうしたガイドポストの意義としては一応認めねばならぬのではないかと思うのであります。」要するに、皆さんの方の資料というのは、ガイドポストとして方向さえ合っていれば、それで一応認めねばならぬという程度のものだということを大蔵省は言っておる。これは私昨日ちょっとこまかいことを追及したら、あまり経済企画庁の資料に基づいてやっておりませんと言いたい表現を、まあ露骨に言わないからこういうことになったと思うのですが、それはその前にほかの委員が御質問になったのに対して、経済企画庁の資料に基づいてやっておりますから、法人税収入については間違いがございませんとか、絶対確実ですとか非常に大見得を切ったあとで私がこれを出してきたものだから、ちょっと大蔵省もあわてられたのだと思うのです。  そこで非常に問題になる点をここでちょっと申し上げると、現在日本経済の変動の基調をなしておるものはどこにあるかというと、やはり在庫投資の変動が日本経済の一番波の変化の大きいところへきている。そうすると、日本経済の今後のいろいろな見通しを立てられるのに際して、最も重点的にそこへ問題をしぼっていかなければならぬ。企画庁としての中心は在庫投資をいかに把握するかということ、過去における在庫投資の正確な把握なくしては、今後の在庫投資の変化というものは予測できないのではないか、こういうように私はこの資料をずっと見ながら考えているわけです。ところが実はいろいろと企画庁の資料を拝見してみると、四半期別の所得統計などとそのあとで出たもの、いろいろ見ると、率直に申してどれもこれもばらばらで、在庫投資についてはどれをどう見ていいのかさっぱりわからぬという程度の現状なのです。そうして今度は三十三年度の見通しについて見ますと、三十三年度の当初見通しの資料がないので、実績見込みという、皆さんが年が終わったあとでお出しになっておるものと、それからその次のものとで比べてみると、三十三年度に在庫の増加が千六百五十億ということに実績見込みでなっておった。ところが実績では、今度はそれが三百五十二億円しかないのだということになってきた。そこで、あとの方で実はこの資料で気がついたのですが、三十三年と三十四年の伸び比が一七六一%というのが出ておる。これをぱっと見たとき、ミスプリントかと思った。こんなものはパーセンテージで出せるものではない。十七倍ということなんですから、パーセンテージで出せない。実績見込みでは二三六・四になっておる。このくらいならわれわれとしては考えられると思ったけれども、実数としては十七倍というような伸びが次に出ておる。ここは在庫として私非常に問題があると思います。ところが、今度は三十四年度へきまして、三十四年度の実績見込みと見通しとの差をずっと点検してみますと、最も大きいのはどこへきておるかというと、国内民間総資本形成が、三十四年度の見通しとしては二兆円になっております。ところがこれが実績見込みで二兆六千九百四十億円と、都合六千九百四十億円の民間資本形成の増加になっておる。その増加の内訳は、生産者耐久施設、要するに設備投資が四千四百億増加して、在庫が二千三百億増加したということに実は内訳としてはなっておる。そこで、こういうふうな大きな変化——今の設備投資の広がりはちょっとあとで伺いたいのですが、昭和三十四年度の設備投資というものの占める中で、一体この誤差というのは実質的には何%に当たるのか。これは、さっきちょっと長官がおっしゃったようなガイドポストとしても成り立たぬ。こんな見通しで実際経済運営していこうということになるから、こういうことが起こるのだ。もっと正確なガイドポストなら誤差も少ないだろうが、グローバルなもので出しておったから、誤差がますます大きくなってきておるというのが、現在の実勢ではないかと私は思うのです。実はきょうあまり不審があったから、これは何をもとにして調べておるのかと言うて企画庁の方へ伺ったのです。そうしたら、これは大蔵省の法人企業統計が土台になっておる、こういうことなので、そこまで手が回らないので、法人企業統計を調べておりませんが、これがどうも納得できない。この点について大臣にお伺いをいたしたいことは、景気の見通しを立てるのは、当初には実績見込みというのではなくて、やはり見通しという問題で、相当な問題を考えておられるのではないか。これほど見通しがこんがらがってくると、長期計画などはナンセンスだと思うのです。一年先すら確実に見通せない状態の中で、五年とか十年とかいうようなことを考えるという態度のり方がおかしいのではないか。私は今度いろいろ調べていて痛感をいたしますのは、経済統計の基礎になるべき資料、原材料となるべき資料というものが、大体不正確だと思う。土台が、あるいは大蔵省の統計によったり、あるいは通産省がやっておるものによったり、いろいろあると思うのですが、もうちょっと土台のしっかりした計数の上で問題を発展さしていかない限り、今後もこういうことはしょっちゅう起こってくるのではないか、こういうように私は思うのですが、これについての長官のお考え一つ伺いたい。
  118. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 統計はお話通り私も決して正確とは言いません。たとえば会社に法人統計を作ってくれと言うと、会社は作ってくるのですが、それによって集計しておりますから、会社によっては、実は租税の関係で、多少数字がゆがめられていはしないかというようなこともあるのであります。それから、これは私自身が今まで体験しておることでありますが、日本人は統計ということについて、厳格な頭がないと私は断言したいのであります。つまり日本人は、数字という観念が非常に厳格でないということです。これは昔から日本人の考え方が、すべて物事を観念的、抽象的に考える性格を持っている。その点においては、ヨーロッパ人は物事を具体的に考える性格を持っている。従って、数字でもはっきりした数字をとりますが、日本人は一が十になろうが、十が一になろうが、それほど意にとめないという性格を持っております。従って、各方面から出される数字は、その点においては非常な正確さは欠けております。そこで、何とかして統計の材料を正確にしてほしいということを、われわれの方も念願しておるし、経済企画庁からも、そういうようなことについて各方面へ依頼したこともあるのでありますが、お説の通りまだそこまでいっておりません。しかし、多少数字の違いはあるかと思いますけれども、大勢は大体これによってつかむことができるのではないか、また日本の現状においては、それで甘んじてやるより仕方がないのではないかと私は思います。従って、そういう材料を基礎としていろいろやっておりますから、お話通り誤差が出て参るという危険は決してないとは私は言いません。しかし、大体の大勢だけはこれで見られるのではないか、また今の日本の現状では、遺憾ながらこれに甘んじなければならないという感じをいたしておるものであります。そこで昭和三十三年と三十四年とだいぶ見込み違いがあるというお話ですが、これは、ここまで日本経済がすばらしく伸びようとは、だれも考えなかったことです。たとえば、去年の正月の新聞記事をごらんになったらわかりますが、あのとき学者なり、経済評論家なり、財界人が、二十四年度経済の見通しということでみないろいろ意見を述べておりますけれども、三十四年度において日本経済が、ここまで伸びるということを言った人は一人もありません。これは日本人の万人がみなその見通しを誤っておったのでありまして、ある意味では喜ばしい現象だと思います。でありますから、そういう点において経済企画庁も、見通しとして昨年の経済成長率は五・五%と見ておったのが、実際はこれを一二%というように変更しまして、成長率が約倍違っておるということなのであります。われわれは見通しは作っておりますけれども経済活動は生きものでありますので、——これが計画経済だったら、見通しの通りいくと思いますけれども、今言うた通り見通しですから、そこに違いがあるということは、あらかじめ皆さん方も御了承いただきたいと思います。去年非常に違ったという点については、今私が申し上げました通り、これだけ日本経済が伸びようということはだれも予想しなかった、従ってこういう数字の違いが出てきたということになっておるのでありますから、われわれが決して材料なくしてこういう数字を作ったのではないので、材料に基づいてやったのであるが、そのわれわれの考え以上の事柄が起こってきたために、こういうような結果が出たということについては、一つ御了承願いたいと思います。
  119. 堀昌雄

    ○堀分科員 経済の発展はけっこうです。ただ今大臣がおっしゃったように、やはり見通しというものを基準にしていろいろと準備があると思うのです。そこで、今度はたまたま生産が非常に伸びた割に、実は輸送の面では現実の問題としてあまり問題がなかった。これで、さっき山本さんの話ではないけれども、物価はあまり上がらないで済んだ、と言いながら、実はここ少し上がっております。そこで、さっきの山本さんの話の続きの分をちょっと伺いたいのですが、その卸売物価が、今いただいておる最終の資料で見ると、昨年の十一月は戦前比は三五六・七になっております。さっきのお答えの三四九というのは年間平均のことだろうと思いますが、実際は卸売物価というものは年間平均ではなくて、現実の時点でものを見るのが正しいのではないかと思うのです。この三四九でもいいですが、この中の生産財と消費財の卸売物価指数を戦前比の形でちょっと教えていただきたいのですが、幾らくらいになっておりましょうか。
  120. 大堀弘

    ○大堀政府委員 生産財は三十四年で三五九であります。消費財は三二六・八でございます。
  121. 堀昌雄

    ○堀分科員 統一された資料がないので非常に困るのですが、昭和二十五年六月を一〇〇とした資料で卸売物価を見ておりましても、大体卸売物価の中で生産財の方は少し下がってきておるけれども、消費財の方は最近のところ、どちらかというとあまり変動がない。例の神武景気のとき以来消費財についてはあまり変化がないが、生産財は少し下がってきておる、こういうふうに思います。しかし実際に見ると生産財必ずしも上がっていないというわけではなくて、それは神武景気以来はあまり上がってないですけれども、一九五〇年から見るとこれはずいぶんの上がり方です。二四六が三四九になっております。今度消費者物価の方を見ましてもやはりこれはもうどんどん上がっておる。消費者物価の方について見ますと、これは神武景気のときが大体三〇〇ぐらいでしょうか。それが今三二〇・九ですから消費者物価は相当上がっておる。私はさっきの山本さんの御質問の中心は、卸売物価ではなくて、やはりデフレーターとして使っておられる消費者物価の方に問題があると思う。そうしてみると、例の朝鮮事変後で上がったのは、二十六年基準で見ても、二五五から三二〇に上がっている。これは相当な上がり方だと思うのです。この上がり方の中で相当公共事業の料金値上げというものが大きな要素になっておるのではないか、そういうふうに感じるのですが、その点はどうですか。指数の内部で見ると、これの影響、最近特に公共料金というものは片っ端から皆さんの方で上げるということで、さっき山本さんは、やはり自民党の方だからそこまではお聞きにならなかったと思うのですが、長官にえらい強い調子で物価を値上げしないというあれはあるのかということを聞かれたときに、非常に自信のあるお答えだったのですけれども、そう言いながら政府はどんどん公共料金は上げる方へやっておる。上がっておるのは消費者物価の中では公共料金ではないかと思うのですが、そこはどうでしょうか。
  122. 大堀弘

    ○大堀政府委員 ちょっと今公共料金等の数を持っておりませんが、消費者物価、先ほど私が一%くらいずつ上がっておると申しましたが、内容は主としてやはり上がっておりますのは住居費と雑費が大きいわけであります。住居費というと、やはり戦後新しい家が建ちまして、実際的には住居の内容が悪くなったという恥が、料金の方は逆に上がっております。こういう関係がございます。雑費の中では教育費あたりが非常に上がっておる。それからたとえば散髪屋にいたしましてもふろ屋にいたしましても多少上がっておりますが、その内容はよくなっておる、これは事実だと思います。ガス、電気料金とかは光熱費に入っております。光熱費の指数を申し上げますと、消費者物価については二十六年から二十九年までにさらに全体として相当に上がっております。これはインフレの流れが残っておったと思うのですが、二十九年あたりからの基準で申し上げますと、消費者物価全体としては割合に上がりが小さいわけであります。先ほど申し上げました全体で年々一%、そこで光熱費の方は二十九年が二二二でございますが、三十二年で二三四・五%くらい五年間に上がっておる、こういうわけであります。ガス料金、電気料金は、ガスはこの間上がりましたが、たしかあれは六年前に上がったわけでありまして、二十九年と思います。電気料金は二年くらい前に東北、北陸について上げましたが、それ以来上げておらない。そういうことで特に公益料金が非常に生計指数を上げておるということにはならないのではないかと思います。
  123. 堀昌雄

    ○堀分科員 その次に、昨年非常に経済が伸びたという問題は、長官の話を聞くと何か天佑神助みたいに非常に幸いされたというように申しておるのですが、実は予期されるべき問題の要素が相当あったのではないか。それの一つは、やはりここでわかりますことですが、在庫が三十三年度に非常に減っておった。初めに千六百五十億の在庫があったと思ったのが実は千三百億円に減ったということになれば、当然それを埋めるだけの生産が起こるはずのものであったと思いますし、設備投資の面が、私は今の日本経済の中心的な問題点になると思うのですが、引き締めのときも設備投資はあまり減っていないのです。ずっと見ておりますとあの引き締めをやっても減らない。昨年はそう引き締めてないわけですから、これは当然またどんどん出ていくということで、今の日本経済は設備投資がささえておるというふうに私は見ておるのですけれども、その設備投資をそれだけ許しておるばかりでなく、三十四年度もそうでありますが、最近の日本経済は今も長官がおっしゃいましたけれども、指導の要素がふえたというか、資本主義が変わったとおっしゃる中に政府の財貨サービス購入とかこういうものの比重が戦前に比べてやはり非常に高まっておる。戦前の資料で調べてみると、GNPの中で政府支出が二〇%近くになっておるのは昭和十二年です。それまでは二二・一四%くらいのところを戦前はずっと通っております。ところがようやく昭和十二年にきてこれが二〇%になった。それが二〇%になったという内容は、昭和九年、十年で見ると、政府の財貨サービスの中に占めておったところの軍需の費用が三〇%以上を占めておる。現在調べてみると六%くらいのもの、だから政府の支出というものが非常な大きな乗数効果日本の現状で与えておるということは否定できない。だからこのあり方から見ると、昭和三十四年度予算もなるほど財政上としては収支均衡の予算である。今度三十五年度についても大蔵大臣は恒常的収入においてまかなっておりますから、予算としてはこれは中立予算でございます、こういうお話が出ておるのですが、実態としてみると、三十四年もインフレ予算、三十五年もインフレ予算という傾向であるけれども、幸いにして設備投資がどんどんいったのに生産がふえてきて、その生産がふえた分で何とかこれがまかなわれておる。実はさっきの卸売物価の問題で私は問題があると思うのですが、最近の三年間は、対民間収支だけを見ると、三十三年が二千五百億くらいの散超をやっておる、昨年も二千二百億くらいの散超で、次にまた来年度千八百億くらいの散超ということになって、ともかく政府資金というものはずいぶん出ていっておる。にもかかわらずオーバー・ローンは一向改善されてないということになると、やはり資金というものを相当意図的に政府が散布をしておるというふうに見ざるを得ない、こういうふうに思っておる。だから三十四年度は非常に伸びたと思いますが、ここで非常に問題となるのは、三十五年度の見通しというものが、案外皆さんの方は今度また小さく出しておるわけです。三十五年度の伸びというものはGNPで六・六ですかの伸びというふうにお出しになっておる。しかし今度のこの予算を実施していくと、私はもうちょっと結果として伸びるであろうというふうな、これは議論になりますけれども、そういう感じがするわけです。今度この上これが伸びてきたときに、はたして輸送であるとかその他のいわゆる日本のネックがすなおに通れる状態になるかどうか。この見通しをもしここで誤ると、本年の後半にはどうしてもインフレというものが起こる可能性があるのではないか。国際収支の問題につきましても、大蔵大臣は、皆さんの方で出しておる大体一億五千万ドルの実質黒字というものは確保できるのだというふうにお話しになっておるのですが、私はこれは減るだろうと思うのです。これは意見ですからあれですが、最近のいろいろな情勢から見て、貿易の自由化とかいろいろな問題があるということは、どうしても内部で、非常に競争力の弱い企業としては、競争力を何とかして高めて自由化に対抗したいということになれば、機械類の輸入も当然ふえてきて、企業合理化ということの中で企業が生き残らなければならぬという非常にきびしい現実に当面してくるとすれば、これは三十二年における輸入の問題よりは、あのときは非常に気分的といいますか、設備革新、近代化に伴うところの輸入であって、うしろから押しておるものはなかったけれども、今度は貿易自由化という強い力がうしろから押しておる中での企業としては、私は輸入というものも現実に相当ふえてくるのではないかというふうに見ます。これはやはり全体として相当に問題があるのではないか。これは予測の問題で議論になりますが、これについて長官はどんなふうにお考えになっておるか、ちょっとお尋ねしたいと思います。
  124. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 来年度の下期に過熱が起こりはせぬか、インフレーンヨンが起こりはせぬかということでありますが、私はむしろ逆な考えをいたしておるのでありまして、貿易・為替の自由化がありましても、これが本格的には三十六年の四月から、綿と羊毛、これが輸入量としては大きい問題であります。現在のところで申しますと、まだ輸入の大体四〇%くらいですから、綿、羊毛が入りますと七〇%くらいになりますか、それは来年の四月からの問題ですから、自由化になりまして、ほんとうに自由化で輸入がどんどんふえるということは来年の四月以降のことになりはせぬか、こう思っております。でありますから、そういう点についてのインフレは、私は昭和三十五年年の下期には起こらないという見通しをいたしておるのであります。それから、いろいろお話がありまして、われわれも大いにうなずける点もあるのでありますが、三十五年度の大体の経済の見通しといたしましては、やはり財政金融というものが今後の経済の動きには大きな力を持っておりますから、従ってかりに自由貿易になって、海外からどんどん物を買うといたしましても、戦前の日本の商社でありますと、みな自己資本をたくさん持っておりました。従って自分の金でどんどん買えますが、今の商社では自己資本というものは少ないのでありますから、やはり金融、銀行の御厄介にならなければならない。そうしますと、銀行の方では、そういう点でわれわれは調節してもらいたいということを金融業者にはお願いしておりますから、従ってそう心配するほど過当輸入は起こらないのではないか。これはやはり金融方面でその点の調節をはからなければならぬ。現に西ドイツなども貿易自由化をやっておりますけれども、やはり輸入面においては金融で調節しておるということを聞いております。これも私はっきりしたことはわかりませんけれども、ただいま私どもの方で調査さしておりますが、そういう点から、金融面からの調節ができるのではないか。だから戦前のように、だれでも自由に買えるから、どんどん競争して過当輸入が起こりはせぬかという御心配は、一応現在、戦前と今の日本経済事情とが違うという点において、それほど心配しなくてもいいのではないかというふうに考えております。そういう意味から、それほどの過熱と申しますか、そういうことは起こらないのではないか、こう一応の見通しはしておるのです。
  125. 堀昌雄

    ○堀分科員 私は実は自由化に伴う輸入ということではなくて、自由化が行なわれるという前提に立てば、やはり企業としては合理化をして、その外国製品との競争力を養わなければならぬ。そういうことになると、当然いろいろな設備革新というものを、これは大手だけではなくて中小もかなりやらなければついていけないということに伴うところの一種の見込み輸入と申しますか、そういうものがまた急激にふえてきはせぬか。そういう輸入が今申し上げたような貿易収支を相当逆転するのではないかという危惧を持っておるわけでございます。それとさっきのお話の中で、私は日本の金融の問題について、ドイツのことは詳しくは知りませんが、問題があるのは、日本の銀行というものは、戦後ようやく再編成をされてきて、一種の系列というものの中で金融機関が動いてくる姿が最近顕著に出てきておる。そうしてきますと、その金融自体が、系列のいわゆる産業資本なり、そういう商事関係との関連の中でお互いがやはり競争をするという意味においては、必ずしも政府が希望するように引き締め得るかどうか。これがそういう関連がない状態ならば、私はもっとすなおな形で問題が受け入れられると思うのです。要するに産業あるいは輸入関係の商社にしてもそうでありますけれども、これがようやく戦前の形で系列化というものが非常に強く最近進められておる。これは長官もお認めになると思うのですが、その系列化の中における融資というものは、必ずしもこちらが希望するような形には参らぬ資本主義的な要素というものを含んでおるのではないかという点で、必ずしもそうはいかないのではないか。もう一つは、この中に矛盾が起きてくる。矛盾が起きてくるということは、そういう形で金融を引き締めていくということになれば、当然金利は上がらざるを得ない。金利を上げて金融を引き締めるということになると、今度は逆にその製品コストというものは上がらざるを得ない。今長官もおっしゃったように、現在の日本の産業投資の実情を見ると、戦前は大体株式資本が六五%くらいを占めて、借入金というものはその残りであったのが、現在は自己資本は一五%くらいで、あとは全部借り入れで行なっておる。そうすると、日本の製品のコストの中に占める金利の問題というものは、なかなかゆるがせにできない様相を現在呈しておると思う中で、要するに現状を維持していこうと思えば、金融を引き締めて、金利を上げなければならぬ。金利を上げること自体は競争力を下げることになって、今度は逆に輸出が減るという格好になっていく。要するに今の日本経済というものは、どうしてもやいばの上を綱渡りしておるような格好で、右にも向けない、左にも向けない。どっちかというとインフレの方に向いていく方が間違いないというような格好で、私は非常に不安定な状態の中の綱渡りをやっておるという感じがするのです。そういうことで、私は日本経済の伸びというものをどうも皆さんの方は楽観し過ぎておられるような感じがするし、経済の伸び方自体に——これは伸びないよりはいいのですが、伸び方には私はちょっと問題がありはせぬかというふうに、実はいろいろな状態を見て感じておるわけでございます。その伸び方にいろいろな疑問のあります一つの点は、この経済計算の中で見ておりますと、個人消費が外国に比べると低いですね。やはり依然として日本の個人消費というもののGNPの中に占めておる割合が低いし、同時に輸出も、GNPの中に占める輸出の量はきわめて低い。これは貿易数量指数で見ても、昨年、三十四年は幾らになりますか、年間平均は輸出指数で見ると三十三年は九八・七と出ておりましたが、三十四年は十一月までは出ておるのですが、どのくらいになりますか。
  126. 大堀弘

    ○大堀政府委員 十一月まで出ております。十二月はまだ出ておりません。
  127. 堀昌雄

    ○堀分科員 私がいただいておる数字と同じようでございますが、数量指数で見ると、あまり輸出はふえておりません。こういうことと、実は生産はここで十一月だけで見ますと、三二一ですから、戦前比で見ると生産は非常にふえて、輸出はここでは一一七。それから消費水準で見ますと、これは八月か九月ですか、都市で一一二、農村で一三一、消費水準もあまり変わっていない。ですから現在の生産の伸びを生産財と消費財と比べてみると、簡単な計算で見ると生産財の方が消費財の生産よりは非常に上回っておるというような現実から見て、どうしても無理をして——無理をしてというとちょっと表現が悪いかもしれませんが、実力以上の伸び方があるのではないかという感じを私は設備投資の状態の中で感じておるわけです。ですからもしこの設備投資を続けていかないと、どうせデフレが起こるにきまっておる。輸出が伸びない。個人消費は伸びない。軍需についてはわれわれが反対しているから、皆さんの方でもそうふやせぬということになるならば、生産のふえたのはどこへいくか。これは当然デフレになる。そのデフレにしわ寄せするということは困る、そういうことを続けていこうとすれば、設備投資というものは好むと好まざるとにかかわらず続けていかなければならぬ、基本的な分析ではこういうことになると思うのですが、ここのところは長官どうでしょうか、非常にグローバルな話ですが。
  128. 大堀弘

    ○大堀政府委員 ただいまの御質問の趣旨のお答えになるかどうかわかりませんが、設備投資の見方は、やはり日本は一般的にいってアメリカ、ヨーロッパと比べて終戦後近代化がおくれておる。従って神武景気以降のデフレ期においても、私どもが予想したようには下がらなかったわけです。三十二年から三十三年の初めまでは多少下がっておりますが、それからかなり強い基調で上がって今日さらに伸びております。現在三十四年度が一兆八千億でありますが、来年は三兆円を見込んでおるわけでございます。これは私ども通産省などに当たって各産業別の見当をつけておりますが、たとえば電力投資等についても年々三千億の投資をやっております。鉄鋼の投資が千五百億べースで続いておる。多少ずつふえております。そういった意味で、近代化の面でやはりこれは必要があって伸びておる、ことに基礎部面で必要があって伸びておるものと考えておるわけでございます。それから需要面から見ますと、投資が当然経済の需要にも働いておるわけでございますが、消費の面でことしが七%の伸び、来年が七・三%の伸びと見ております。これはやはり個人の可処分所得の伸びと、三十四年度非常に上がっておりますから、これが来年度にずり込んで消費として回ってくるという見当もございますので、この程度の伸びがあると思いますが、消費の伸びはやはり絶対量としては需要全体の中でかなり大きなウエートを占めておるということでございます。輸出の方は、三十四年度は非常に伸びておりますが、三十五年度はそれほど大幅な伸びは見込んでおりません。今年度は六億ドル伸びておりますが、来年度は四億ドル程度と見ております。この程度は今日の世界経済の状態から見れば可能なことではないかと考えております。需要内容についてこれ以上に非常に大きくなるという見込みはございませんが、また下がってくるとも考えておりません。先ほど先生御指摘になりました在庫の変動はわれわれとしては予測が非常に困難なことでございます。私ども三十四年度の在庫見込みは六千億と見ておりますが、これはまず横ばいに動いております。これは先ほど御指摘のように、統計が不備なものでありますから苦しんでおりますが、やはりその数字から推察して本年度六千億、来年度は大体今の横ばいでいくのではないか。二年間続いての在庫の増、三十四年、三十五年の生産の二年間の伸びに対応して一兆二千億くらいの在庫の伸びはそう不合理なものではないということから、大体経済がこの程度のゆるやかな上昇であれば、六千億の在庫投資は適当なところになるということが推算の基礎になっております。従いましてこの辺は見通しでありますから、絶対のことは申し上げられませんが、まず現在の情勢ではやはりこの程度でバランスができるのではないかと考えております。
  129. 堀昌雄

    ○堀分科員 長官にお伺いしたいのは、来年くらいのところはそういうことだと思うのですが、長期的に見ていくと、世界経済全体の伸びとの中でバランスがとれた形で伸びるということなら私は問題がないと思うのですが、日本の今の状態はやっぱり少し異常に伸びておるわけです。世界経済全体の伸びの中で見ると、ちょっと異常な伸び方だということになると、どっかでやはり周囲の状態とのバランスをとらなければならぬ。この点が当然早晩起こってくると思う。そういうことになると、それが五年先か十年先という、そんな先では困るのですが、当然どっかで問題が解決されるような方向にいかなければならないのではないか、こういうように思うのです。そうすると、その解決される方向はどういう方向なのか、個人消費がふえるという方向にいくのか、あるいは輸出がふえるという方向にいくのか、最終末消費はどうしたって個人消費か輸出か軍需以外にない。生産財が設備投資に回る部分は今申したように問題点があるわけです。しかし最終消費としては落ちつくところはこの三つですから、今後の考え方としては一体どこへ重点を置いていくということになるか。どっかに何とかはけ口をつけなければバランスがくずれると思うが、どうでしょうか。その辺、方向だけでも聞かしていただきたい。
  130. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 方向といたしましては、輸出はやはり増加するという見通しをしております。これは貿易の自由化に関連しまして、世界全般に貿易額は増加するという見通しをしております。従って日本もやはりその世界の大勢に順応して増加する。ことに最近は東南アジアの経済開発にソ連なりあるいはアメリカその他もだいぶ熱を上げておりますから、東南アジアの開発が盛んになれば、また従って日本の貿易も盛んになるということも考えられます。また日本も東南アジアの開発については今後力を入れてやりたいと考えておりますから、従って経済の伸びとしてはやはり輸出が大いに伸びるという見通しをしております。それから消費の面もそうですが、消費も大いにまた伸びるし、また伸ばさなければならないし、消費は御承知の通り耐久消費財が伸びるという見通しをしております。今通産省の方でも月賦販売の法律も出そうとしておりますが、これはどうせ耐久消費財になれば月賦販売がまた勢い盛んにならざるを得ない、従ってこの月賦販売制度が盛んになることが、同時に耐久消費財の消費を盛んにするということになりますので、われわれの今後の消費は耐久消費財の消費が伸びるということで国民一般の消費も伸びるという見通しをしております。そこで行き詰まる点がありはせぬかというお話でありますが、これは経済の動きですから、昭和三十四年度は非常な勢いで伸びました。来年度は六・六%で、その成長率から見ると何だか下がったような気がするのでありますが、しかし経済全体としてはやはり拡大されておるのであります。その拡大の程度がある意味で多く上がるかあるいは少なく上がるかというところに、経済の動きがあると思います。すべて世の中のことは森羅万象リズムを踏んでいくのでありますから、大きく伸びたときにはその次には少し伸びるというようなことはあり得ると思います。経済成長率をかりに七・二%というようにわれわれは計算しておりますけれども、あるときは五%の場合もあるし、あるときには一〇%以上のこともあるということは、最近の例を見ましてもわかります通り、二十三年度は四・五%、三十四年度は一三%、来年度は六・六%ですが、平均して八%ということで、この十年間は大体平均して七・二%でいくというような見通しをいたしておるわけであります。
  131. 堀昌雄

    ○堀分科員 そこで今耐久消費財の問題が出たのでありますが、耐久消費財というものは、アメリカのように非常に可処分所得の多いところならば、次々と古いものを処分して新しいものを買うということはあり得ると思う。ところが日本の今の一人当たりの個人消費の水準から見て、はたして耐久消費財を次々に更新できるほどの可処分所得があるかどうかという点は、これは非常に問題がある。なかなかさようには参るまい。日本の電気製品の生産の伸びは最近異常な伸び方をして、過去五年間に六倍くらいに生産が伸びております。この電気製品の中に耐久消費財が相当あるのですが、この耐久消費財の問題はそう簡単に、今長官がおっしゃるように楽観はできない。楽観できないというのは、皆さんが具体的な問題として出していらっしゃる見通しとして、三十四年から三十五年における農林水産業の個人所得の伸びは二%しか見ていらっしゃらない。これは皆さん方の方で十年計画出したところがとたんに問題になった一番の中心点だと思うのですけれども、農林水産生産については今度は一・七%しか見てないのですから、当然所得としては二%以上は見込めないだろう、実際農民人口というものが日本は四二%もあるわけですから、なるほどしばらく月賦販売で耐久消費財も買うでしょう、相当行き渡ってきたと思うのですが、日本の状態では一回行き渡ったら、これが更新されるようなそういう客観情勢ではないし、ここでやはり個人消費というものは実質的にはそう期待できないのではないか、私はそういうふうに感じておる。その反面、問題はどこにあるかと申しますと、たとえば鉄鋼一つを見ましても、皆さん方の方では設備投資を非常に重点的にここに注ぎ込んでいらっしゃる。生産で約倍くらい最近五カ年ほどの間にふえておる。賃金はあまり鉄鋼自体として見ますと伸びてない。伸びてないばかりでなしに、鉄鋼全体として見ると、生産とそれから今の雇用者の数ということでは、雇用者がまたオートメーション化されて一向に伸びてきていない。皆さんの方の白書で労働者一人当たりの状態として見ると、諸外国に比べて日本の場合は逆に非常に減りつつあるというようなことが出ておるわけですが、そういうことで雇用が最近非常にふえておるけれども、この雇用自体はそういう大きなところへいくよりも、どっちかというと中小のものやサービス部門や何かの方にどうも吸収されておるのではないか。賃金格差が大きいしするから、実質的な人口の伸びと比較してみると、個人消費の伸びというものはそう期待できないのではないか。最近非常に伸びてきておりますが、これは今の電化ブームというものの中での耐久消費財の一環の中でそういうことは理解できるけれども、今後そう期待できないのではないかということが一つと、今長官日本の貿易は伸びるだろうとおっしゃるのですが、実際最近に伸びたものを見ると、必ずしも生産の伸びたものが伸びておるわけではないように思います。もちろん生産の伸びた電気製品については伸びておりますけれども、実際はアメリカなんかの生活様式の変化といいますか、消費的な変化というものが日本には幸いをして、そこでどちらかというと労働集約的なものの方が出て、資本集約的な産物は必ずしも先進諸国の方には売れない。そうすると今日本重点を置いておる重化学工業の製品というものは、どうしてもどちらかというと後進国方面へ出ていかざるを得ない。しかし必ずしも後進国においてそれほど需要が活発になるというような現状としての見通しはそうないのではないか。だからほんとうを言うと、私ども立場からすれば、これは意見になりますが、中国のような今非常に生産財を要求しておる諸国が近くにありながら、ここへそういう生産財を輸出できなくて、非常に困難な東南アジア諸国に対して輸出をして伸びていくのだというようなことは逆であって、そういういろいろな問題を離れて、日本経済独自の立場から見ても、恒常的な状態としてそういう方向にいくのが私は国の当然の姿ではないかと思うが、残念ながら政治的な力で制約されて、経済的な発展という方向がせばめられておるというふうに感じるのです。ですからそういうお話を聞いて私は非常に心配になるのは、どうも政府の、ことに長官なんかもそうですが、そういう非常に楽観的な見通しを持っていらっしゃるという点については、政府、ことに中心になっておられる長官あたりは、まあ悲観をしていただいては困りますが、もう少し慎重な配慮を実際の問題の中でしていただく必要があるのではないか、私はちょっとこういうふうに感じますが、その点についていかがでしょうか。
  132. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 政府考え方が甘過ぎるではないかというお言葉は、実は私は意外に思うのであって、大体は政府考え方が辛過ぎる、ことに経済企画庁考え方が辛過ぎるという批判を受けておるのであります。それは昨年の例を見ても、昨年五・五%の成長率ということでなにした。これも辛過ぎて五・五%ということに発表したのでありまして、当時私は経済企画庁にいなかったのでありますが、当時の人々の中にはもっと成長率があるのではないかというようなことを考えておった人もあるのでありますが、そこを非常にきびしく五・五%にした。大体経済企画庁考え方が辛過ぎるという批判を受けておるのでありまして、私自身は実は甘い考えを持っておりますけれども経済企画庁のいろいろ数字的な根拠によって作られた調査というものは、私としてはこれがほんとうだという考えで、私自身は抽象的にはもっと甘く考えております。でありますから、そう御心配になるようなことはない。むしろ逆になりはせぬか、予想以上のことになりはせぬか、来年また言われるのではないかということを実は私は心配しておるくらいであって、また来年いよいよ予想以上のことになれば、経済企画庁考え方もきびしいのをもう少し緩和する必要があるのではないかということが考えられると思いますが、そういうようなことで、御心配になるように甘過ぎることは決してない。私自身はむしろ辛過ぎると思っておるのですが、そういう点、これはまあお互いの見方の相違ですから、皆さんのお考えのようなことと私の考えておることが違うかもしれません。その点はまあ見方の相違だと一つ考え願いたいと思います。
  133. 堀昌雄

    ○堀分科員 いや、実は私が申し上げた甘い辛いということは、伸びを小さく見たから辛いわけでもなく、伸びを大きく見たから甘いわけでもないと思います。ただ全体の経済発展の方向の見方が、何か自然に——ちょうど最近まで、株は買えば上がるのだというような式に、日本経済はもう時間がたてばふくれるのだという、そういう基調の問題を私は実は今ちょっと申し上げた。戦後のいろいろな経済の中ではそういう見方をする向きもあるし、逆に、景気循環というものは、資本主義の段階としてはなるほど小さくはなったけれども、必然的に起こるのだ、やはり日本の中の今の景気循環で、こまかくいえば、本年の伸びは昨年の在庫投資が非常に小さかったということが本年の伸びを誘発しているのだ。これも私は一つの景気循環だと思っている。そういうふうな意味の景気循環という見方をしていくならば、去年からことしにふえたから、これは非常によい基調の上に乗っておるのだという見方が私は甘いと申し上げておるのであって、数の上の問題を私は論じておるわけではない。そこで長官も最初におっしゃいましたけれども日本のいろいろな今後の問題について経済企画庁というものが設けられて、いろいろやっておられることは、やはり日本経済というものを科学的に分析をして、そういう科学的な分析の上に立って、より正確な見通しを立てるために、経済企画庁というものはあるのだと私は理解しておるわけです。そうすると、さっきもそちらの政府委員も、基礎的統計資料が不十分だということをおっしゃっておる。それならどうしてそういう基礎的統計資料を、もう少し正確なものの中でやれないのか。アメリカの統計をずっと見たりしておりますと、どうも相当に正確なような感じがします。これはお宅の方の経済研究所なんかの教授のお書きになっておるところを見ても、いろいろな面で日本の統計というものがおくれておるということをお書きになっておる。やはり資本主義が今のような段階になればなるほど、その見通しの変化が少ないということが国民にとってはいいのであって、伸びるということ自体よりも伸び方ですね。伸び方がバランスのとれる伸び方で、そういう変動もあらかじめ予測をされるならば、実際にそういう変動によって受ける被害は弱い者ほど大きくて、強い者はあまり受けないという実情から見ると、日本経済上の構造が非常に傾斜が強い中では、政府としてはなるたけ触れを少なくするということが問題であって、ことしは四%、来年は一五%伸びて、平均したら七・二%だからいいのだというような、そういう考えが私は甘いと申し上げておる。だからそういう意味で、やはり堅実な伸び方というものを考えていただくためには、経済企画庁として、より正確な資料をお作りいただくような努力がまず第一になければならぬのではないか。ずっと拝見しておると、私、実はこういう経済的な委員会に出たのは今度初めてで、まだ勉強不足ですが、今後みっちりと統計の基礎材料を全部、経済関係について点検をさしていただいた中で、勉強していくつもりでおりますが、今日まで、わずか二、三カ月でありますが、拝見をしたものの中では、まことにどうも不安な感じがするのです。これについて長官として今後そういう基礎統計資料をどういうふうにしてやっていこうかというようなお考えがあるか。私はそういうことに予算を使うなら、もっとどんどん予算を使うべきではないかと思う。そういうことこそ日本の資本主義を健全に発展させるための費用であって、私はむだ使いはずいぶん多いと思うのですけれども、そういう費用は実はあまりかけてないのではないかという感じがするのですが、そこはどうでしょうか。
  134. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 今お話通り、統計資料を正確にするということ、またすべての見通しを正確にするということは、これはわれわれも念願をしておりますし、また経済企画庁がそういう見通しが正確であるということが、やはり人々の信用性を増すのであります。従ってそれによって国民がまたいろいろと経済活動をしていただくのでありますから、われわれといたしましては、できるだけ調査研究を正確なものにしたい、それには今の統計資料を正確なものにしたいという考えをしておりますから、さしあたり改良すべき点、たとえば労働統計などについて、これはよその省でやっておるのでありますが、われわれの方で気がついたことは訂正してほしいということを申し入れておりますし、それからまた経済研究所というものを経済企画庁が設けましたのも、そういう国民所得や何かで根本的な再検討をもう少しやりたいということであそこで研究して、相当な予算をもらいましてやって、その結果いろいろこういう点について今まで調査が不十分であったということがはっきりしておるのでありますからして、そういう意味でそうにわかに御期待に沿うことはできませんが、とにかく一歩々々皆さんから信用を得る統計資料、あるいは調査研究をしたい、こう念願しております。
  135. 堀昌雄

    ○堀分科員 最後にちょっと。さっきの個人消費の問題のところでもう一つ残っておりましたのですが、実は日本経済の中における農家の個人消費の問題というものは、政策的な面でも経済的な面でも、私は非常に重要な問題だというふうに考えておりますが、残念ながら日本は水田というああいう格好でもありますから、農業の生産性というもの自体は限度にきておるのではないか。もうそうこれからは期待できないのではないか。そうすると、農家の個人消費をふやしていくという方向というものは、今度は経費を減らすとか、要するにその農家経済を改善していくというような農業経営というものの中に入っていかないと、生産性が大体限度にくれば、それから生じてくる所得というものをふやす方向というものは、どうしても経費を減らす以外に手がないのではないかと考えるのでありますが、残念ながら最近は農薬をどんどん使用しなければやらない。あるいは肥料についても戦前に比べると非常に金肥を多量に使うというようなことで、農家の経費というものは必ずしも軽減されておらぬということが現実の姿ではないかと思います。それだけでなくして、農家のその零細な収入の中で、今度は、さっき山本さんもお話しになっておりました国民年金がある。大体農家の個人世帯というのは平均六・三人くらいの世帯員数を持っております。勤労者世帯の四・三四人に比へて大体六・三人くらいのところにあるということは、大体二世帯が一緒になっておるということになる。父親の世帯と若い者の世帯とが一緒にいるということの具体的の現われだと思いますが、そういうふうに見てみると、政府が今立てております昭和三十六年度からの国民年金は、若い人たちが一人百円で中年から百五十円ですから、一カ月五百円くらい国民年金にかけなければならぬ。今の農業生計の問題で純利益といいますか、あとに残ったものは一万七千円くらいだというのがその統計の中に出ておりますが、年間にして一万七千円くらいしか残っておらない中で、今度は六千円くらいが国民年金に吸い上げられることになる。農村地帯は国民健康保険で皆保険に進んでおりますが、これを見てみても、実は今大体一世帯の掛金が年に三千円くらいなんですが、今の健康保険のあの制度の中で非常に問題になっておるのは国民健康保険の問題です。要するに一般の政府管掌の健康保険というものは、勤労者の収入というものはこちらに出ておるように、賃金俸給は本年は一一・五%増、来年度は八・八%増だということですから、入ってくる方の保険料というものはほっておいても賃金収入が上がればどんどんエスカレーター式に上がる。片一方はほとんど上がらない。しかし実際には日本の医療というものは向上してくるという形の中では、どうしてもこれをまた上げざるを得ないというようなことで、実際の生活面ではやはりテレビも買いたいし、そのうちに電気洗濯機も買いたいのだ。あるいは農業として脱穀機も買いたければ自動耕耘機も買いたい。買いたいのはやまやまだけれども、収入の方はどんどんとられるばかりだということでずっと見ておると、日本の四三%の農民の今後の消費の前途というものは非常に暗い感じが私はする。実はいろいろ歩いてみると、神武景気だ、岩戸景気だと非常に新聞が書き立てる。ところが実際にはそういうものの恩恵を受けないものというのが大部分だというこの実態を考えてみると、私はやはり政府の政策というものの中にそういう農民といいますか、農業に従事する人たちの個人消費というものを一体どうしてやっていこうという考えがあるのか。所得倍増計画と言われるけれども、実はそれは国民総生産、GNPを倍にするということだろうと思うのですが、一体その中での農民というものの位置をどうしたらいいかということについて、基本的にどう考えていらっしゃいますか。
  136. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 お話通り農業生産というものは他の鉱工業生産に比べまして非常に格差があります。従って農家の収入はほかの産業の収入から見ると非常な隔たりがある。また最近においてはその格差がだんだんと拡大される傾向にあることが顕著になっております。従って農家の経済をどうするかという問題、これが今度の国民所得倍増長期経済計画でも大きな問題になっておるのでありまして、農業と非農業産業との所得の格差、それから同じ産業でも大企業と中小企業との所得の格差、それから今の農業と関連しますが、地域的な所得の格差、この三つの格差をどうしてなくすようにするかということが、今後の国民所得倍増長期経済計画の大きな課題になっております。われわれはこれを質的な国民所得の倍増、こういっておるのであります。そこでその問題につきましては、まず農業の基本問題について今せっかく農林省でいろいろ調査しておりますから、その調査に基づいて対策を農林省と一緒に考えたい、こう考えておるのであります。今の農業所得自体ではお説の通り、最近は農薬類とかその他の関係で非常に生産性が向上しましたが、今後はたして生産性が向上するかどうかというようなこと、これはあるいはもう少し機械を用いてやるとかいろいろなことが考えられると思います。それから農家に農業収入以外の収入をあげる道を考えてあげなければならぬということ、これは農村工業というものを盛んにしてやるとか、あるいは今のお話のように、農家の人口数が多いですから、それが少数な人口で今まで通り農業所得をあげるというようにできないかどうかというようなこと、そういうようなことが今後の大きな課題になる、こう考えておりますので、そういうことは一つこれから国民所得倍増長期経済計画の中に盛り込んでいきたい、こう思っておる次第であります。
  137. 堀昌雄

    ○堀分科員 最後に、私は、いろいろな日本の統計をずっと拝見をしている中で一番問題になります点は、いろいろな平均値で片づけるという傾向が日本の統計の中には多い。ことに政府の統計というものは、ほとんど平均値で問題が片づけられている。そこで実際は統計の少し階層別のこまかいものがなまのままで出ておれば、私どももその中でいろいろな現実がつかめるのですが、平均値で出したものを土台にしてまた平均値で出す、こうなってくると、実は統計のための統計になって、実態と統計とがつながらないという非常に根本的な問題が、日本政府統計の全般的な傾向の中にあるのです。それを一つ端的に申し上げておくと、勤労者世帯の収入と消費なんですが、それを内閣統計局ですかがお出しになっておる家計調査で見ますと、収入で一十六年の平均が一万五千二百七十七円で、三十二年が二万九千八百二十円、こういうふうに出されている。それを指数で見ると、昭和二十六年を一応一〇〇としてみますと、一九五・二になる。そうすると、所得は一九五・二になっているということで理解されると思うのですが、これを私がちょっと階層別にくくって、八千円までと三万二千円までと三万三千円以上と、こういう形の加重平均を取り直してみますと、最初の八千円までは、二十六年のときは四千四百二十二円というこの中での平均値が出ているのです。ところがその後二十八年に七千九百二十四円までこれが一回上がって、次に七千四百十九円、七千五百二十七円、七千四百二十二円、三十二年に来ると六千九百八十円ということになって、八千円以下だけで見ますと逆に下がってくる。そして次に八千円から三万二千円で見ると、スタートの二十六年が一万二千七百七十円で、これは徐々に上がって、三十二年で二万二千百五十四円、最初の方は指数で見ると八千円までは一五七・五ですが、これが三万二千円までくると一七三・四になる。三万二千円以上はどうなるかというと、最初は二万六千二百八十一円であったものが三十二年には四万九千六十三円になって、これの指数は一八六・七の伸びをしている。実際の問題はこういうふうに分析をして置き直してみるならば、八千円以下の人についてはほとんどふえてないのですよ。これは二十六年から見ればふえているが、二十八年から見ると千円も減っているという実情が出ている。ところが全体の平均だけを見れば指数では一九五・二が出て、所得は伸びているのだという出方が実際にはしている。そこで今の日本経済の状態、いろいろな生活全体を含めて非常に格差の激しい状態の中で各種統計が平均値で出されていることは私は率直に言って統計としての意味をなさぬと思っております。やはりここはある程度の分布が下へくっついた上での平均値が出ているならば理解ができる。分布のない形の中で平均値だけで他の問題が処理されてその平均値から次の平均値を出す、次の平均値から次の平均値が出てきたら、もう二回目か三回目になったら、何を現わしているのか実際了解に苦しむという実情があるわけです。そこで皆さん方にも一つお願いしておきたいことは、経済企画庁として今後いろいろ統計をお出しになるについて、日本の格差の激しい実情が、やはり激しい発展の中でも把握できるような形の分布を土台にした——もちろんその平均的なものも必要でございましょう。これはマクロ的に見るためには必要だと思います。同時に裏側にその実態の姿も把握できるような資料をお作り願えないか。そういうことを見ようと思うと、もとのもとのもとまで探しに行かなければ、実際そういう現実というものは一体どうなっておるかということが把握できないということは、統計をいろいろいじくっている者から見るとまことに手数がかかるし、統計の具体的な効果というものは非常に削減されていくのではないかと思いますが、これについて長官からお答えをお聞かせ願いたいと思います。
  138. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 今お話の件はそういう調査をしているものもあるのであります。あとで局長から説明申し上げますが、所得の階層別によって伸び方を調べたものもあります。全体的な平均値を出して調べたものもあります。できればお話通り、それぞれの階層において統計を出せばそれがまたはっきりするのであって、われわれも知りたい点が多々あるのでありますが、いろいろの関係でそこまでできませんけれども、できるだけそういうような方向でいきたいという念願を私も持っておるのです。
  139. 大來佐武郎

    ○大來政府委員 ただいま大臣から御説明のありましたように、お手元にございます日本経済指標はこのトータルと平均ばかりなのですが、やはり各省出している経済要覧とかその他経済月報とか、そういうものになりますと、たとえば都市別の家計費とかあるいは規模別の賃金とか、そういうものはだいぶ出しておりますし、従来も経済白書等でそういった分析をやっておりますが、確かに私どもも、そういうことは痛切に感じております。ただ非常に短いところで統計を出しますと、トータルだけ出てくる、内訳が出てないということでございますが、なるべくそういったすべての問題がわかるように数字を扱うべきだと思いますし、私どもも、長期計画立場でもそういった考え方を今後強めていきたいと考えておるわけであります。
  140. 綱島正興

    綱島主査 他に御質疑はありませんか。——それでは経済企画庁所管質疑は一応終了いたしました。明日は午前十時より開会をいたし、農林省所管予算について審査に入ることとして、本日は、これにて散会いたします。     午後四時三十一分散会