運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1960-02-22 第34回国会 衆議院 予算委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年二月二十二日(月曜日)     午前十時三十九分開議  出席委員    委員長 小川 半次君    理事 上林山榮吉君 理事 北澤 直吉君    理事 西村 直己君 理事 野田 卯一君    理事 八木 一郎君 理事 井手 以誠君    理事 田中織之進君       青木  正君    加藤 精三君       川崎 秀二君    久野 忠治君       倉石 忠雄君    小坂善太郎君       櫻内 義雄君    周東 英雄君       田中伊三次君    綱島 正興君       床次 徳二君    橋本 龍伍君       古井 喜實君    保利  茂君       三浦 一雄君    水田三喜男君       山口六郎次君    山崎  巖君       淡谷 悠藏君    岡  良一君       河野  密君    島上善五郎君       滝井 義高君    辻原 弘市君       堂森 芳夫君    永井勝次郎君       横路 節雄君    横山 利秋君       鈴木  一君    廣瀬 勝邦君       門司  亮君  出席国務大臣         内閣総理大臣  岸  信介君         法 務 大 臣 井野 碩哉君         外 務 大 臣 藤山愛一郎君         大 蔵 大 臣 佐藤 榮作君         厚 生 大 臣 渡邊 良夫君         農 林 大 臣 福田 赳夫君         通商産業大臣  池田 勇人君         運 輸 大 臣 楢橋  渡君         労 働 大 臣 松野 頼三君         建 設 大 臣 村上  勇君         国 務 大 臣 赤城 宗徳君         国 務 大 臣 菅野和太郎君  出席政府委員         内閣官房長官  椎名悦三郎君         内閣官房長官 松本 俊一君         法制局長官   林  修三君         国防会議事務局         長       廣岡 謙二君         総理府総務長官 福田 篤泰君         防衛庁参事官         (防衛局長)  加藤 陽三君         防衛庁参事官         (装備局長)  塚本 敏夫君         大蔵事務官         (主計局長)  石原 周夫君         厚生事務官         (保険局長)  太宰 博邦君         厚生事務官         (年金局長)  小山進次郎君         通商産業事務官         (重工業局長) 小出 榮一君         通商産業事務官         (石炭局長)  樋詰 誠明君  委員外出席者         専  門  員 岡林 清英君     ――――――――――――― 二月二十二日  委員河野密辞任につき、その補欠として横山  利秋君が議長指名委員に選任された。 同日  委員横山利秋辞任につき、その補欠として河  野密君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 二月十九日  昭和三十五年度予算に関する陳情書  (第九三号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和三十五年度一般会計予算  昭和三十五年度特別会計予算  昭和三十五年度政府関係機関予算      ――――◇―――――
  2. 小川半次

    小川委員長 これより会議を開きます。  昭和三十五年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  この際、井手以誠君より議事進行に関し発言を求められております。  これを許します。井手以誠君
  3. 井手以誠

    井手委員 今朝の新聞によりますと、岸総理はきのう箱根においてきわめて重大な発言をいたしておるのであります。それは民主憲法の精神をじゅうりんし、財政法を踏みにじって、国会予算増額修正権がないと新聞記者団に発表いたしております。きわめて重大な発言と言わねばならぬのであります。私はここにその新聞報道を若干読み上げておきたいと思いますが、それは、きのうの夕刊から本朝の朝刊にかけての報道の一部であります。それによりますと、岸総理は、こういうことを言っておる。「条約の修正権はないという建前明治以来の慣習となっているので、そこに今度だけ認めるわけにはいかない。」これからが大事な点であります。それは「予算審議の場合でも政府原案を否決または可決するだけで、増額修正は行なえないという建前になっているのと同じような例である。」かように言っておるのであります。今の民主憲法のもとで国会増額修正の権限があることは、これは今の民主憲法並びに財政法あるいは地方自治法においても明らかに明記されておるところであります。これほど明らかな増額修正権国会にあるという問題に対して、一国の総理大臣が、従前の明治憲法のそのままを金科玉条として今日でも増額修正権がないかのごとき放言をいたすことは、断じて許すわけには参らないのであります。私は本日岸総理出席を求めなくてはこの審議に入るわけにはいかないと考えておりますが、この際私は委員長岸総理出席を求めたいと存じます。
  4. 小川半次

    小川委員長 委員長より後刻、淡谷君の質疑が終わると同時に、総理、もしくは総理がどうしても出席できない場合は官房長官を通じて、新聞記事の件につきまして明らかにさせますから、さよう御了承いただきたいと思います。
  5. 井手以誠

    井手委員 私の取り上げておりますことは、予算審議についての基本問題である。国会修正権がないという問題は、これほど国会審議に重大な問題はございませんので、これを解明しなくては、私どもは審議に入るわけには参りません。委員長淡谷君の質問終了後ということでありましたが、これに私は承服するわけには参りません。そこで重ねて私は、直ちに首相が出席できるかどうかについて、委員長の取り扱いを願いたいと存じます。
  6. 小川半次

    小川委員長 それではこのままの状態で理事会を開きますから、理事の諸君は委員長席一つお集まりいただきたいと思います。——井手委員の御要求総理出席の件でございますが、ただいま岸総理外国要人と会見の最中でございますので、後刻本委員会出席いたさせますから、議事進行を進めたいと思います。
  7. 井手以誠

    井手委員 それでは、きわめて重大な問題でありますが、すぐ出席できませんということでありますので、追って出席になるまで私の問題については留保しておきます。     —————————————
  8. 小川半次

    小川委員長 質疑を続行いたします。淡谷悠藏君。
  9. 淡谷悠藏

    淡谷委員 最初に、椎名官房長官に御質問申し上げますが、防衛計画の最終的な責任は、一体国防会議で負われるかどうか。その点について長官の御所見を承りたい。     〔「官房長官どうした」と呼ぶ者あり〕
  10. 小川半次

    小川委員長 淡谷君、官房長官の御要求がなかったようでございますから……。
  11. 淡谷悠藏

    淡谷委員 私は、きょう国防会議議長にぜひ出てほしいと要求してあります。もしも官房長官もいないならば、国防会議審議はできませんから、私は総理が来るまで待ちます。
  12. 小川半次

    小川委員長 淡谷君、今呼びに行っております。——それでは質疑進行いたします。淡谷悠藏君。
  13. 淡谷悠藏

    淡谷委員 官房長官にお尋ねいたしますが、国の防衛計画を立てる最終責任国防会議が負われますか。
  14. 椎名悦三郎

    椎名政府委員 国防会議諮問機関でございまして、最終的に決定するのは閣議であります。
  15. 淡谷悠藏

    淡谷委員 閣議決定させる重要な諮問答申を出す義務があると思っておりますが、この点はどうですか。——直接閣議決定しないで、国防会議を設けたのは、閣議決定のために非常に重大な答申をする義務があると思いますが、この点はどうですか。
  16. 椎名悦三郎

    椎名政府委員 国防会議答申義務がございます。
  17. 淡谷悠藏

    淡谷委員 その答申義務内容にわたって一つどういうことがあるか、官房長官お答え願いたい。どういうことに対する答申義務があるか。
  18. 椎名悦三郎

    椎名政府委員 防衛庁設置法によって諮問すべき重要事項はきめられておるわけでございますが、なお詳細につきましては事務局長からお答えいたします。
  19. 淡谷悠藏

    淡谷委員 事務局長答弁は要りません。少なくとも非常にたくさんの予算を使い、国の重大な防衛任ずる防衛庁のいろいろな事務に、さらに国防会議を設けたというのは重大なことがあるのです。これは事務局長からうしろからささやかれませんでも、簡単なものですからあなたはわかっていなければならぬはずだ。一ぺんも見たことないでしょう。一体見たことありますか。防衛庁設置法の何条にこれがきめられてあるか、何章にあるか、あなた、官房長官として見たことありますか。どうです。聞かなくてもいいじゃないですか。——それでは私の方から言います。簡単なんです。第三章です。第三章の第四十二条「国防に関する重要事項審議する機関として、内閣に、国防会議を置く。」2は「内閣総理大臣は、左の事項については、国防会議にはからなければならない。一 国防基本方針 二 防衛計画大綱三 前号の計画に関連する産業等調整計画大綱 四 防衛出動の可否五 その他内閣総理大臣が必要と認める国防に関する重要事項」ちょっと見ればすぐわかるんです。見てないでしょう、あなた。そこで当然きょう私国防会議議長に御出席願いたいのですが、議長は見えておりませんから、第一次防衛計画実態とその進行状況について、国防会議事務局を担当する最高の責任ある官房長官お答え願いたい。防衛長官の御答弁をいただく前にあなたにお聞きしたい。
  20. 椎名悦三郎

    椎名政府委員 国防基本方針に関連する、すなわち陸海空の三軍の編成をどうするかといったような、その問題が第一次国防会議内容だったと承知しております。
  21. 淡谷悠藏

    淡谷委員 私はその内容を聞いておるのですよ。少なくともこれから立てるならば防衛庁に大体まかしてやらしてもいいでしょう。すでに国防会議答申をされた第一次防衛計画がどういうものであって、現在のところどれまで達成できておるか。この点は国防会議責任者としてはつかまえていなければならない。それを官房長官にお聞きしたい。わからないならわからないとはっきり言って下さい。
  22. 椎名悦三郎

    椎名政府委員 具体的な問題については他の政府委員から……。
  23. 淡谷悠藏

    淡谷委員 官房長官はおわかりにならないのですか。わからないならわからないとはっきり言っていただきたい。わかっていて他の人に答えさせるならば私は承知できません。わからないならばけっこうです。
  24. 椎名悦三郎

    椎名政府委員 今覚えておりません。
  25. 淡谷悠藏

    淡谷委員 それでは一点だけ重要な問題ですから特に官房長官にお聞きしたいのですが、次期戦闘機は第一次計画として生産されるのか、第二次計画として生産されるのか、この点だけは一言お答え願いたい。
  26. 椎名悦三郎

    椎名政府委員 第一次だと思っております。
  27. 淡谷悠藏

    淡谷委員 第一次計画の現在までにおける達成状況について、では赤城防衛庁長官から一つお答え願いたい。あなたは前には官房長官として国防会議にも関係があったはずでありますから、十分責任のある御答弁を願います。
  28. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 第一次計画の概要も御説明申し上げましょうか。達成状況だけですか。
  29. 淡谷悠藏

    淡谷委員 大へん時間が制限されておりますので具体的に申し上げますが、飛行機は何機、その機種、艦船はどう、さらに兵員と申しますか、自衛隊員でございましょうけれども、この数。その当初の計画達成実態お答え願いたい。
  30. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 陸上自衛隊につきましては、編成がえ等も含んでおりましたが、人員にいたしますと、第一次計画におきましては陸上自衛官十八万人をもって六管区隊、四混成団を基幹とする部隊編成する予定でありました。三十五年度の予算が御審議が進みまするならば、自衛官といたしましては十七万一千五百人、こういう達成状況でございます。  海上自衛隊におきましては、艦艇編成艦艇を作っていく目標が十二万四千トンが第一次計画目標であります。三十五年度末における達成状況は十一万六千トンに相なります。  海上自衛隊航空機は、目標は二百二十二機でありますが、達成状況は二百十九機と相なります。  航空自衛隊航空機目標といたしましては、第一次計画においては一千三百機を予定いたしておりました。達成状況から見ますると一千百機であります。  なお、航空部隊にいたしまするならば、目標が三十三隊でありましたが、達成状況は十四隊ということに相なります。戦闘機で言いますならば、目標は二十七でありまするが十二、輸送機にすれば目標が三のものが二、偵察機にいたしますならば目標三がゼロ、こういうふうになります。  航空警戒部隊は、二十四の目標に対して二十四達成いたしております。
  31. 淡谷悠藏

    淡谷委員 航空自衛隊の千三百機、そのうち一千百機が達成されたというのでございまするが、残りの二百機というのは一体どういう飛行機でございますか。達成できなかったのはどういう飛行機でございますか。
  32. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 目標を千三百機というふうにいたしております。その中では前にも御説明申し上げたことがありますが、次期戦闘機三百機を含んでおったわけでございます。しかし、これは中途におきまして一百機、正確に言いまするならば百八十機の練習機二十機ということに変更いたしました。こういうふうに、飛行機の問題につきましても、千三百機に対しまして第二次計画においては幾分変更をしなくちゃならぬじゃないか、こういうことで第一次計画目標に対しまして今のところ千百機という達成状況でありますので、第二次計画を待って幾分変更に相なるか、こういうふうに予想をしております。
  33. 淡谷悠藏

    淡谷委員 どうも簡単に言って数が合いませんね。千三百機の目標だったのが達成されたのが千百機、一体この二百機というものを当初の三百機から変更さしたのは、時期的に言うといつなんですか。いつ決定変更があったのですか。
  34. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 最終的に戦闘機三百機が二百機に変更されたのは、昨年の十一月の国防会議であります。
  35. 淡谷悠藏

    淡谷委員 十一月の何日ですか。
  36. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 資料を今調べればよくわかりますが、十一月の六日でしたか。
  37. 淡谷悠藏

    淡谷委員 官房長官にお尋ねします。戦闘機を三百機から二百機に数を減らしたというのは昨年の十一月六日。一体この二百機に減らしたのを国防会議では基本方針変更と見られたのか、どういう点で二百機にしたのか、官房長官お答え願いたい。
  38. 椎名悦三郎

    椎名政府委員 機数決定は、本来は防衛庁長官がきめられる問題でありますけれども、事柄が特に重要であるというので、国防会議に諮っておるのだと思います。それで三百機を二百機にしたのは、主として財政上の都合、しかもそれだけで、二百機で十分最小限度の目的を達成し得るという見通しのもとにさようになったものと考えております。
  39. 淡谷悠藏

    淡谷委員 重ねて官房長官にお尋ねしますが、この二百機に減らしましたのは源田報告のあった前ですか、あとですか。
  40. 椎名悦三郎

    椎名政府委員 源田報告あとでございます。
  41. 淡谷悠藏

    淡谷委員 どれくらいあとですか。何時間くらいあとですか。
  42. 椎名悦三郎

    椎名政府委員 二十四時間以内だったと思います。
  43. 淡谷悠藏

    淡谷委員 二十四時間ならもう日の段階ですからね、時間の段階お答え願います。何時間ですか。
  44. 椎名悦三郎

    椎名政府委員 その日のうちでありましたから、二十四時間以内と申し上げましたが、もちろんもっと短いです。
  45. 淡谷悠藏

    淡谷委員 千三百機の当初の計画の中には、戦闘機は何機入っておりますか。
  46. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 F86等を除きまして次期戦闘機、すなわちFXといわれておったのは、三百機を予定しておりました。
  47. 淡谷悠藏

    淡谷委員 そうしますと、三百機を二百機に減らしますと、戦闘機の当初計画は変わると思いますが、この点はどうですか。戦闘機のかわりに何を認めるのです。第一次計画が千三百機、そのうち次期戦闘機が三百機、それを二百機に減らすならば、千百機の達成ができると、内容において機種が変わっていると思う。何をもって百機と言いますか。
  48. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 防空の面から見まして、誘導兵器、GMの方に変える分が、世界的にもそういう傾向でありまするし、わが自衛隊におきましてもそういう方向へ持っていきたい、こういうふうに考えております。
  49. 淡谷悠藏

    淡谷委員 どうもそれじゃはっきりわかりませんので、なお詳しくお聞きしたいのですが、この千百機が達成されました内容を、機種に分けて御報告願います。
  50. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 事務当局から報告いたします。
  51. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 三十五年末において保有いたしまする機数合計は、F86におきまして……
  52. 淡谷悠藏

    淡谷委員 三十五年度じゃありません。現在においてです。予定は要りません。
  53. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 現在はF86Fが、三十四年度末でありますが、三百四十九機、F86Dが五十四機、T33Aが二百五十九機、T6が百五十四機、T34が百三十七機、C46が四十七機、Tジェットが四機、ヘリコプターが十機、その他三機、合計千十七機です。
  54. 淡谷悠藏

    淡谷委員 千十七機としますとなお八十三機は未完成ですが、これはどういう機種が入っておりますか。
  55. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 F86Fにおきまして二十八機、86Dにおきまして五十九機増加いたします。そのかわりT33が七機減、T6が四機減、T34が一機減、C46が一機減、Tジェット六機増、ヘリコプターが八機増、こういう計算になっております。
  56. 淡谷悠藏

    淡谷委員 F86の当初の計画は何機だったのですか。
  57. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 F86につきましては、国産が三百機、そのほか米国から供与を受けましたものが百七十九機でございます。
  58. 淡谷悠藏

    淡谷委員 そのうち、事故によって破損して使用にたえなくなったのは何機ありますか。
  59. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 ただいま資料を手元に持っておりませんので、すぐ取り寄せます。
  60. 淡谷悠藏

    淡谷委員 それじゃ資料が来るまで待ちます。
  61. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 消耗いたしましたものは三十三機でございます。
  62. 淡谷悠藏

    淡谷委員 三十三機のうち国産機は何機で、供与を受けたものは何機ですか。
  63. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 国産の方が十七機、供与を受けましたものが十六機でございます。
  64. 淡谷悠藏

    淡谷委員 この供与を受けました十六機を入れて百九機ですか。破損を入れて百九機ですか、現在残っているのが百九機ですか、どっちですか。
  65. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 事故によります消耗が十六機、教材に回しましたものが九機、それから返還をいたしましたものがございますが、これが四十五機でございます。それで残りが、合計して百九機、こうなるわけであります。
  66. 淡谷悠藏

    淡谷委員 この破損したのは千百機のうちに入っておりますか。使えなくなったものの数は入っておりますか。あるいはまた破損分補充いたしましたか。補充しているか補充していないかです。
  67. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 これは入っておりません。F86Fにつきましては、最初もらいました百七十九機のほか、三百機が国産している、これだけでございます。
  68. 淡谷悠藏

    淡谷委員 赤城防衛庁長官にお尋ねいたしますが、第一次計画の中に供与航空機も当然入っておると思うのでありますが、四十五機返還するということは第一次防衛計画の中に含んでおりましたか、含んでおりませんでしたか。
  69. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 計画の中には、返還することは含んでおらなかったのであります。
  70. 淡谷悠藏

    淡谷委員 当初防衛計画を立てるときは、当然供与機数も入っていたと思うのですが、途中から四十五機返還された。これは計画一つの穴があくと思うのです。自動的に埋まったのか、どういう形でこれを埋めたのか、また破損した飛行機補充は、どういう手続で予算上の措置をとったのか、防衛庁長官お答えを願います。
  71. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 供与機数というものは、三カ年の計画の中での正確な数というものは出ません。第一次計画は、御承知のように三カ年計画でございますから、そこでその年次々々で供与がありましたが、その供与の中からパイロットの関係等におきまして返還したものが出てきたわけであります。それに対して補充はどういうふうにしたかということでありますけれども、これは別にその分を生産するとか、そういうことでありません。そのままでやります。
  72. 淡谷悠藏

    淡谷委員 私、きょうは赤城防衛庁長官に誠意のある御答弁を実はお願いしたいのですが、今の御答弁ではどうしても数が合わないのです。破損しても、供与したものを返しても、千三百機から次期戦闘機の二百機を引いた千百機が残るというが、補充しなければ残るはずがない。補充しないでどうしてそういう数字計算ができるのですか。これは簡単な数字ですよ。こわれてもこわれても千百機が変わらなければ、これは不死鳥みたいな航空機ですから落ちる飛行機という意味はとらぬと思うのですが、それはどういうふうにして補充したのですか。
  73. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 千百機というのは現実達成目標であります。千三百機というのは初めから目標にしておったのですが、千百機というのは現実にそれだけ達成したということです。それから破損したものに対しましては、当初から何%の破損というものは計画の中に見込んであるわけであります。でありますから、その見込み以下ですから、この点は見込み違いというわけではございません。ですが、今申し上げた千百機を、補充して、いつでも維持しなければならぬというのではなく、千三百機の目標に対して今の達成状況が千百機だ、こういう現実を申し上げておるわけであります。
  74. 淡谷悠藏

    淡谷委員 破損見込みは初めからあったというお話でありますが、F86Fの破損見込みは何%と見ておりましたか。
  75. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 一二%を見込んでおります。
  76. 淡谷悠藏

    淡谷委員 そうしますと、実際破損しましたのは、現在のところでは見込み数以内、半分ということになりますね。  それからもう一つ伺います。次期戦闘機破損見込みは、何パーセント見ておりますか。
  77. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 F86の破損したものは、見込みの範囲内であります。  次期戦闘機FXロッキード破損見込み等は、まだ私はよく承知しておりませんが、事務当局から答弁いたします。
  78. 淡谷悠藏

    淡谷委員 予算要求をしておって、来年度からもう債務負担行為で盛られておるのです。この債務負担行為の総額の中に破損見込数を入れた価格で一体要求しておるのか。これ以外に、破損した場合は、補充する要求をするのか、これは非常に重大な一点ですから、防衛庁長官に明確なお答えを願いたい。このあと関係があるのです。
  79. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 現在国庫債務負担行為として八百九十六億を要求しています。これは破損の数等を見込んでおりません。二百機の生産に対する国庫債務負担行為であります。
  80. 淡谷悠藏

    淡谷委員 破損した場合はこれを補充するおつもりですか。第一次計画千三百機、それでもしも破損しました場合は、それをあらためてまた要求して補充するつもりでございますか。破損破損として、そのまま数を減らしますか。
  81. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 練習機二十機を含めて二百機の次期戦闘機につきましては、四カ年の計画で逐次生産を進めているわけであります。でありますので、現在その過程において破損した場合にはどうするかということにつきましては、目下検討中でありますが、今のところ別に破損したならばそれだけ補充するという考えは持っておりません。ただし検討中だということを申し添えておきます。
  82. 淡谷悠藏

    淡谷委員 なお第二次防衛計画はいつごろお立てになりますか。もうすでに来年度からの次期戦闘機の製造が始まるという。それに対してまだ第二次の防衛計画が立っていない。これは一体いつごろおやりになるおつもりですか。
  83. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 第一次計画最終年度昭和三十五年度でございます。第二次計画といたしまして、実は昭和三十五年度から昭和四十年度までの六カ年、こういう計画で私どもこれを進めて参ってきたのでありますが、三十五年度の予算を御審議を仰ぐことに相なっておりますので、第二次計画を立てるといたしますならば、今までの六カ年計画を、三十六年度から四十年度までの五カ年計画に変えなければならぬ、こういうことに相なっております。でありますので、こういう点を修正したりあるいはまた財政状況等との見合い等を勘案して、第二次計画をできるだけ早く策定したい、そうして国防会議に諮りたい、こう考えまして、今検討中でございます。
  84. 淡谷悠藏

    淡谷委員 昨年の八月に、防衛庁長官は札幌の談話で、第二次防衛計画の概略なるものを発表されておりますが、あれはまた例によって、新聞の根拠のない記事とお逃げになりますか。あるいはまた、ああいう構想があるならば、もうそろそろ出ていなければならないはずなんですが、どうして変わったのですか、その点を御答弁願いたい。
  85. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 第二次計画がおくれておりますことは、前に答弁した通りでございます。去年の八月、北海道で私がしゃべったことがうそかほんとうか、また変更したのか、変更しないのかということでありますが、別に変更はありません。考え方におきましては、別に変わったことはありません。すなわち、三自衛隊の調整をはかっていく。根本的にいえば、自衛隊の装備の近代化をはかり、また効率化をはかっていかなければならぬというようなこと、それから陸海空三自衛隊につきましてのそれぞれの考え方という点につきましては、変わっておりません。ただ、財政上の都合とか、あるいは年次をどの年次に含めていくかというような点につきまして、さらに検討する余地が十分ありますので、先ほど申し上げましたように、目下検討中でございます。
  86. 淡谷悠藏

    淡谷委員 八月のあの談話が根拠があるとしますと、戦闘機生産に対してもお見込みがあるはずです。さっきは、第一次計画残りとして、二百機は来年度から生産を始める——そのあとの五カ年計画の間にさらにまだ飛行機をお作りになるつもりか、作らないのか、その点はどうなんです。
  87. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 今の二百機の次期戦闘機のできる最終年度が、昭和四十年の三月でございます。その次にどういう戦闘機というようなことにつきましては、これはまだ検討の余裕がありますので、目下検討中で、今きめておりません。
  88. 淡谷悠藏

    淡谷委員 外務大臣にお聞きいたしますが、今問題になっております新安保条約の中に、第三条ですか——日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う土地等の使用等に関する特別措置法というものを作り、その前に、これに伴ういろいろな基地を設け、さらにまた合衆国軍隊との協力がうたわれてありますが、これによって、日本の防衛計画に大きな変化を来たしますか。
  89. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 日本としては日本自身の防衛計画というものは、日本が日本の経済上いろいろな観点からみずからきめることでありまして、その点について変更はございません。
  90. 淡谷悠藏

    淡谷委員 それでは、防衛庁長官は、外務大臣のこの条約に基づく要請は全然なくて、独自の観点から第三次防衛計画が作れるという気持をお持ちですか。私が聞きますのは、第一次防衛計画は、すでに現在において達成できない面がある。しかも航空機の面で非常に大きな破綻を示してきておる。それが向こう五カ年計画達成されるというのであれば、その第二次防衛計画達成が、またその向こう五カ年延びるかもしれない。そうしますと今度結ばれます——結ばれることを予定しておられましょうが、この新安保条約と日本の防衛計画との関連性が少しもないという観点にお立ちになりますか。
  91. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 安全保障条約と日本の防衛とが関連ないということはありません。しかし、安全保障条約と日本の防衛計画とが直接関係あるかといえば、直接関係ありません。日本の防衛力増強の基本方針は、国防会議できまっておりますように、国力、国情に応じて漸増していく、こういう方針であります。安保条約によりまして、おのおのの国の防衛力をそれぞれの能力に従って維持し、発展する、こういうことに相なっておりますが、具体的に防衛力をどの範囲に増強していくか、あるいは維持していくかということにつきましては、これは独自の考え方でやっていく、こういうことに相なっておりますので、具体的に直接関係というものはありません。
  92. 淡谷悠藏

    淡谷委員 直接関係がなければ、外務大臣は、どうしてこの第三条の、「締約国は、個別的に及び相互に協力して、継続的かつ効果的な自助及び相互援助により、武力攻撃に抵抗するそれぞれの能力を、憲法上の規定に従うことを条件として、維持し発展させる。」という条文を特に設けなければならない理由はどこにあったのですか。あなたの今の御答弁では、日本の防衛は別段影響を受けない。日本の防衛方針といえば、あながち新しいこの条文は要らぬと思うのですが、その点はどうなんです。
  93. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 御承知のように、この種条約を結びます立場といたして、それぞれ自分の国は自分で守るというような精神で努力をしていかなければならぬわけであります。従いまして、その意味を表明いたしますことは、当然のことであると思います。ただ、その自国の防衛計画をどうして立てるかといえば、それぞれの国のいろいろな事情によりまして、それぞれの国自身がきめていくわけであります。そういう意味においてこの条項が入っておるわけでございます。
  94. 淡谷悠藏

    淡谷委員 例によって外務大臣の「それぞれ」「いろいろ」がたくさん出ておりますけれども、「それぞれ」「いろいろ」じゃどうしてもわからないのです。あなたのさっきの御答弁では、日本の防衛は日本でやってよろしいんだという。特にこういう条文を設けて維持し発展させるというのであれば、これはどうしても日本の自衛力の増強にこの新安保が非常に大きな迫力となるというように見るのが当然でありますが、必要がない条文をなぜ入れたのですか。たった十条ですよ。十条の中に特に一条さいて防衛力の維持発展をさせるということをうたった以上は、この制約がないとは言わせません。その点はどうですか。
  95. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 今申し上げましたように、独立国として自分自身の国の防衛計画というものをそれぞれ自分が持たなければならぬことは当然だと思います。そうしてまた、そういう努力をして参りますことこそ、独立国として、やはり現在の世界の平和の中における事情だと思います。でありますから、そういう意味において——しかし、自分自身の防衛というものは、やはりその国自身のいろいろな条件がございます。経済上あるいは社会上の条件がございます。それに従って維持発展させるということなんでありまして、特別に何らかの形でもって影響があるものではございません。
  96. 淡谷悠藏

    淡谷委員 確かめておきますが、今後、アメリカ側の要請に基づいては、日本の防衛力は増強しないということを確信できますか。
  97. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 日本自身の諸般の条件の上に立って、日本自身が防衛力をどういうふうに計画していくかということを決定することでございます。
  98. 淡谷悠藏

    淡谷委員 赤城防衛庁長官にお尋ねいたしますが、国庫債務負担行為内容について詳しい御説明を願いたい。飛行機を何機買って、どういう単価で、初年度は幾ら、次年度は幾ら、各年度割りに一つ御説明願いたい。
  99. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 国庫債務負担行為八百九十六億円でありますが、これは、実用機百八十機、練習機二十機、この価格を全体として平均したものが百十二万ドルに当たります。それに対しまして補給部品二〇%を加えてあります。その二百機分の国庫債務負担行為の総額が八百九十六億になります。年度割りにどれくらいになっているかということでありますが、これはまだ最終的に財政当局ときめてありません。三十六年度、初年度におきましては五十六億程度が予算化されるという予想を持っています。その他関連器材を合わせますればもう少しふえます。それだけは予定しておりますけれども、年次計画はまだはっきり最終的には決定を見ておりません。
  100. 淡谷悠藏

    淡谷委員 これは数字が合わないですね。最終的にきめていないと言いますけれども、予算決算及び会計令第十一条の四項によりますと、「財政法第二十条第二項の規定による国庫債務負担行為要求書は、国庫債務負担行為について部局等ごとの区分を設け、更に事項ごとにその必要の理由を明らかにし、且つ行為をなす年度及び債務負担の限度額を明らかにし、又必要に応じて行為に基いて支出をなすべき年度、年限又は年割額を示さなければならない。」と規定してある。この年度割りができないでこの要求ができますか。
  101. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 年数は四カ年であります。それで、三十六年度は約五十六億、その後三カ年の分につきましては、その年度において幾らということにまでまだはっきり話し合いができておりません。
  102. 淡谷悠藏

    淡谷委員 大蔵大臣、これは年度割りの要求がなくても、一括して国庫債務負担行為要求に応ずることはできますか。
  103. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 ただいまお読みになった通り、「必要に応じ」と書いてありますので、それで差しつかえないわけであります。
  104. 淡谷悠藏

    淡谷委員 大蔵大臣は、これは必要がないという観点から、この要求書を出させなかったのでございますか。これだけ大きな債務負担行為をする場合に必要がないというのでありますか。
  105. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 御承知のように、今回ロッキードの生産のための国庫債務負担行為を計上いたしております七百十六億、この金額は三十六年度以降四カ年の間にこの生産をはかるのでございます。ただいま具体的にもまだその生産計画は樹立する段階になっていないと思います。ただいま申し上げますように、二百機というものの生産計画でございますので、ただいまこれを年度割りにすることはまだ準備ができておらないという状況でございます。その意味におきまして、総括して、これを国庫債務負担行為として計上いたしたわけであります。
  106. 淡谷悠藏

    淡谷委員 総額を大体要求されておりますけれども、総額を算定する基礎として、一機の単価はいつ確定されたのでありますか。
  107. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 ことしの一月に予算要求する価格としてきめたものが、百八十機につきましては百十二万八千ドル、二十機の練習機につきましては百四万八千ドル、これを全体として平均すれば百十二万ドル、これによりまして国庫債務負担行為要求をいたしました。最後的に契約するのはあるいはことしの秋ごろかと思いますが、大体この価格で契約ができる、こういう見通しを持っております。
  108. 淡谷悠藏

    淡谷委員 百八十機は百十二万八千ドルというふうに見積もったということでありますが、百八十機の中で二十機は違うケースがあるのではないですか。二十機の練習機はわかります。百八十機の中の二十機はアメリカでできたものを持ち込んで、日本で組み立ててやるものでしょう。この生産費は違うはずなんですが、一緒にして要求されましたか。
  109. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 お話の通り、その二十機は向こうでできたものをノック・ダウンしてやるわけでありますから、価格は違います。価格は違いますが、そういうものを積み上げて出した価格が百十二万八千ドル、こういうことであります。
  110. 淡谷悠藏

    淡谷委員 価格の違うものを積み上げて出したら、これは頭割りになってしまうのです。これではいかぬ。やはり価格が違っておりましたならば、百十二万八千ドルと言わずに、ノック・ダウンするものは幾ら、純生産するものは幾ら、この区別をお出しになるのが当然です。出して下さい。アメリカでやったものはどうです。
  111. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 ノック・ダウン中の価格等それぞれあるわけであります。これは生産するときにおきましても、生産の時期によりましてそう全部が同じというわけではありません。しかし、それぞれ価格を積み上げたものが、最終的に、一機当たりにすれば百十二万八千ドルということでありますから、ただばく然とやったということではありません。一つ一つの根拠ある計算から積み上げておる、こういうわけであります。
  112. 淡谷悠藏

    淡谷委員 その一つ一つの根拠のあるところを御説明願いたいのです。ばく然として積み上げたのでなければ、ロッキード社は幾らに出したか、新三菱は幾らに出しておるか、その採算の基礎を一つ御説明願いたい。
  113. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 このノック・ダウン中の価格とか、そういう点の一応の算出はいたしておりますが、これ以上になることはないと思いますけれども、実際に契約するときに、これはこまかく分けて契約しなくちゃならぬと思います。でありますので、今そのしさいにわたってノック・ダウン中は幾ら、ノック・ダウンが済んでからは幾らだというような、あまりこまかい計算は今申し上げるのは差し控えさせていただきます。
  114. 淡谷悠藏

    淡谷委員 私はこまかい数学は別段今聞かなくてよろしい。あとで分科会もありますから聞きますけれども、ただ百八十機の価格が出ているのですから、平均価を出すにしましても、ノック・ダウンするものは幾ら、国内生産は幾ら、この計数は出ているはずなんです。計数だけでけっこうなんです。これすらないのですか。ないならないと、はっきりおっしゃっていただきたい、時間を取りますから。
  115. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 私の手元に相当こまかいのがあるのですが、それを分けたものがちょっとございませんので、今御答弁できません。
  116. 淡谷悠藏

    淡谷委員 予算を請求しておいて、その大ざっぱなノック・ダウンしたものの価格と国内生産の価格の合計が出てないというはずはないと思う。何でそれは平均したのですか。平均の基礎がわからぬじゃないですか。
  117. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 ノック・ダウン中のものは二十機で千六百万ドル、こういうふうな計算になっております。
  118. 淡谷悠藏

    淡谷委員 ノック・ダウンのが千六百万ドル、国内生産は幾らですか。ちょっと計算が合わなくなりますからね。
  119. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 政府委員から答弁させていただきます。
  120. 塚本敏夫

    ○塚本(敏)政府委員 こまかい内容、特に固定費等につきまして、いろいろロッキード側に値下げを要求いたしました。その場合におきまして、西独、カナダ等の関係から、この値下げについては幾ら値下げしたということを言ってもらっては困るという話がありまして、言えばこれは西独とカナダも同じにしたいということがありますので、こまかい内容につきましては発表を遠慮させていただきたい、かように考えております。
  121. 淡谷悠藏

    淡谷委員 塚本さん、あなたにもう少し聞きますがね、あなた卑怯ですよ、それは。本来防衛庁の何か軍事上の秘密があるというなら私はわかる。けれども、ロッキードという会社は一体どんな会社と認識しておるんですか。グラマン時代に広岡国防会議事務局長が何と言いました。ロッキードという会社は信用ができない。初めの価格を出してから再三変えて、ドイツやカナダで迷惑をしておる会社とあなた言っているんですよ。言わないというなら証拠を出します。その信用の置けない会社の言い分に従って価格を出したのでは、カナダ、西独に済まないから隠してくれなんということは、あなた商売の手先になっているんです。ロッキードという会社は信用の置けない会社なんです。赤城防衛庁長官、伺いますがね、ロッキード会社が出しました初めからのロッキード価格の、一つあなたの知っている限りでかまいませんから、変化を御説明願いたい。七十五万六千ドルから現在あなたのおっしゃる百六十万ドルですか、ここまで値上がりをしましたその経過について納得のいくような御答弁が願いたい。ロッキードという会社自体が絶えずこういう点で国際的に迷惑を及ぼしておる会社なんです。
  122. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 一昨年の八月でしたか、淡谷委員の御出席の決算委員会からの要求がありました。また内閣委員会要求がありまして、各会社の価格見積もりを出しました。そのときに出たのが、三百機として一機当たり七十五万ドル、二百機として七十九万ドル、こういう価格で出ておったのであります。しかし、その価格は、日本の生産工数とかあるいは日本の要求する性能等と全然違ったロッキード会社自体だけの見積もりでありました。これはロッキードばかりではなくて、ほかの会社の見積もりも相当みなあったわけであります。ロッキードだけについて言いますならば、そういうことで七十九万ドル、これを日本の生産に合わせて評価すると言いますか、価格見積もりをするということにしますと、百七万ドル四千でしたか、そういうふうな額になっておるわけであります。その後昨年の十一月でしたか、さっき問題になりました国防会議におきましてどの機種決定するかいうときに、——前に防衛庁といたしましても各方面からの価格の見積もりを徴しておりました。その見積もりによりますと百二十九万ドル、約三十万ドル一機当たりになっておったわけであります。これは別にロッキードからばかりとったわけではありませんで、ほかの飛行機会社からも全部それぞれの機種について価格の見積もりを検討いたしておったのであります。その後ロッキードに変わりまして決定いたしまして、なお国内生産の会社が指定されましたので折衝を続けまして、そうして日本の国内で生産するものとしての価格でありますから、そのもとの見積もりに対しまして下げたものもありますし、上がったものもあります。たとえば、火器管制装置などをナサールに変えた。あるいは電子関係を変えるとか、こういうものは上がる要素であります。それから下がった要素というものは、御承知のように、このロッキードの方は、西ドイツ、カナダあるいはオランダ、ベルギー、——あとになりましたが、そういうふうに生産が続けられましたので、そういう面から下がったものもあります。そうして落ちついたところが今申し上げました百十二万ドルということに相なるわけであります。
  123. 淡谷悠藏

    淡谷委員 防衛庁長官、これは国民が非常な疑惑を持っている中心点でございますから、少し詳しくあなたにも御答弁願いたいのですが、新三菱は幾らの見積もりを出しておりますか。見積もりを取っているはずですよ。
  124. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 新三菱といたしましては、先ほど申し上げましたように、昨年の十一月に出した見積もり百三十万ドル——百二十九万ドルちょっとであります。それを基礎として、それから減らすべきもの、また装備を少し変えますからふえるもの、こういうものをしさいに検討した結果、百十五万ドルを割る価格になってきておりました。それから向こうの交渉するアメリカの人々が来ましてから、両方でさらにロッキード等にも交渉いたしまして、百十三万ドルになった。でありますから、新三菱の見積もりというものは、百二十九万ドルを根拠としたそれであります。
  125. 淡谷悠藏

    淡谷委員 新三菱の社長の吉田義人君が昭和三十四年の十二月二十三日で私の方から出した最後の見積もりは百十万ドルだと証言していますよ。あなたのおっしゃる百二十九万ドルならば、あなたが誤っておるか、新三菱の社長が偽証しておるのが、この二つになるのですが、これは一体どうなんですか。
  126. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 新三菱の社長は、百十三万ドルよりちょっと越したということで見積もりを出しておるというふうに言っております。しかしこれはナサールとかそういう日本型に変えるものを含まないで出したものであります。そういうものをいろいろ入れて、最終的に百十五万ドルになり、それがまた最終的に百十二万ドルになった、こういう経過であります。でありますから、その間ごまかしも何もないのです。私どもはただなるべく性能のいいものを、なるべく価格が安くできるように折衝しただけで、国民の中にお疑いがあるというのは、まことに残念でございますが、そういう事実あるいは疑いのあるようなことではなく、実は非常に明朗に進めてきたわけでございます。
  127. 淡谷悠藏

    淡谷委員 百十二万ドルとは言っておりません。百十万ドルとはっきり言っているのです。しかもそれが最終段階の見積もりで、104Cになってからのものだ、こういうふうに社長は言っているのです。それでは一体あなたは、この国庫債務負担行為の積算の基礎になった国内生産費というものは幾らに見ておりますか。さっきロッキードの方は百六十万ドルと言った。日本は一体幾らになっておるのです。積算の基礎です。まだお答えになっておりませんから……。
  128. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 新三菱の百十万何千ドルというのは、再々申し上げますように、火器管制装置のナサールなどを入れないで、104Cです。日本で使うのはで104Jです。ですから、そういう点の違いがあることを御了承願いたいと思います。それから最終的の積算の見積もりというものは、先ほど申し上げましたように一機当たりにいたしますならば百十二万ドル、これが最終的の見積もりでございます。
  129. 淡谷悠藏

    淡谷委員 大蔵大臣、今お聞きの通りなんですが、この百六十万ドルが二機、それから百十二万ドルが百六十機、さらに練習機の百四万ドルですか、百四万八千ドル、これが二機、これで一体国庫債務負担行為のあの金額が出てきますか。計算してみれば明らかじゃないですか。これはどういう計算になります。
  130. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 今御質問の百六十万ドルというお話、ちょっとこれは私には理解できないのですが、先ほど来防衛庁長官お答えいたしておりますように、最終的に百十二万ドル、さらにアメリカから七千五百万ドルという援助がございますので、それらを差し引いて参りますと、日本の政府の負担する予算、これは先ほど申しました六百九十八億、それに部品等を加えて七百十六億、こういうことになるわけでございます。
  131. 淡谷悠藏

    淡谷委員 その点私は聞きたいと思っておったのですが、今大蔵大臣の答弁とさっきの赤城防衛庁長官答弁と食い違っている。一体どこが違っているのか。数字が違っている。
  132. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 アメリカの負担を、お尋ねになかったものですから、漏らしました。もちろん百十二万ドルで二百機の総額に対しまして、日本とアメリカとのコスト・シェアリングと申しますか、費用分担がございます。そこでその総額から七千五百万ドルを引いたその残りが日本で負担するものでありますし、それを国庫債務負担行為として要求した、こういうことでございます。
  133. 淡谷悠藏

    淡谷委員 これはどういう点からいっても、価格の問題では非常に不明朗です。しかも国庫債務負担行為という名前に隠れまして、詳細な審議もしないで、このまま来年度からの予算に大きな負担をかけるということは、予算委員会としては徹底的に究明する必要があります。
  134. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 百十二万ドルに一・二をかけて、そうしてそれに二百機、二百をかける。そうするとコンマ二と申しますのは、部品等と申しますか、装備費です。それから七千五百万ドルを引きますと六百九十八億円になるわけであります。従いまして、それ以外に関連器材として十七億、合計して七百十六億、こういうことであります。
  135. 淡谷悠藏

    淡谷委員 アメリカの負担分の額を立証するような資料がございますか。何によってこれはさまったのですか。
  136. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 これは目下折衝中で——折衝は大体済みましたが、近く交換公文の調印に相なることと思います。しかし、折衝の過程におきまして、あるいはまた総理大臣や外務大臣が渡米もいたしましたので、向こうとももう少しよけいにアメリカの負担ができないかという折衝も依頼しておったのでありますが、七千五百万ドル、これはそれ以上はアメリカの負担も困難だということで、これははっきりいたしております。
  137. 淡谷悠藏

    淡谷委員 長官だけはっきりしておっても、こっちはさっぱりはっきりしないのですが、折衝中ではっきりしておるというのはどういうことですか。これはおかしいですよ。
  138. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 折衝は済んでおるのです。ただ文書の交換が、今、島大使が留守になっておるものですから、これは外交ルートでやっておりますので、少しおくれておるわけです。折衝は済んではっきりしておる、こう申し上げて差しつかえないと思います。
  139. 淡谷悠藏

    淡谷委員 これは防衛庁が直接に外交折衝をやっておるのですか、外務省がやっておるのですか、どっちなんですか。
  140. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 防衛庁も中に入っておりますが、正式には外交ルートで折衝をしております。外務省でやっております。
  141. 淡谷悠藏

    淡谷委員 外務大臣、どうなんですか、その点を立証できますか。これはどういう手続で確証できますか。
  142. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 この種の交渉は、御承知のように、内容はむろん外務省で決定するものではございませんから、防衛庁の意見に従いましてわれわれは外交折衝をやっているわけでございます。向こうの分担金というものに対しては、できるだけ多額であるべきことを日本側が希望することは当然でございます。従いまして、防衛庁の御希望に従い、また大蔵当局の御希望に従いまして、日本としてはもっと大きい金額を申したのでありますけれども、現在七千五百万ドル向こうは出すということを言っております。従いまして、その七千五百万ドルという金額は確定したものとしてそれらの手続をいたさなければならぬ状況でございます。
  143. 淡谷悠藏

    淡谷委員 何かはっきりした資料がございますか。証拠がございますか。口だけの話ですか。
  144. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 そういう通知を私ども受けております。しかしそういうものは出すべきものじゃないと思います。
  145. 淡谷悠藏

    淡谷委員 七千五百万ドルというのは、アメリカの政府がロッキード支社に払うのですか、あるいは日本の方へよこすのですか、どっちです。
  146. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 その七千五百万ドルは金で日本の方へよこす、こういうことになっております。
  147. 淡谷悠藏

    淡谷委員 これはどうも速記録に書いたことまでしょっちゅう変わりますから、もう変わるのは岸内閣一つの方針らしいのですが、しょっちゅう変わるのです。吉田新三菱の社長の証言は「私はきょうの証言の中にも、104Cとも、また104Jともまだ言ったことはございません。今初めて申し上げると思うのですが、もちろん私の申し上げることは、日本で作ります104Jのことだと解釈していただきたいと思います。」あなたはCだから百十万ドルでできると言った。吉田証人は104Jだとあらためてはっきり言っているのですよ。この食い違いは一体どうなさるつもりですか。しかもあなたはいろいろ開発すると言っておりますけれども、F104CからF104Jまで幾らの開発でもないのです。価格が倍になるような開発じゃない。われわれもしろうとですけれども、たび重なる決算委員会内閣委員会質疑応答によって、質疑応答の内容は十分勉強しております。そんなこの場限りのごまかし答弁では納得がいかないのであります。
  148. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 どうも淡谷委員の言うのはちょっとおかしいと思うのです。確かに日本で作るのですから、104Jですよ。Jでありますが、その三菱のだれかが言ったJというものは内容において少し違うだろうと思うのです。百十万ドルの新三菱の提出価格は、ロッキード社の数字を基礎として、これに新三菱で担当する諸作業について具体的な見積もりを行なったものでありますが、エンジンとか搭載通信機等、いわゆる官給品となるものにつきましては、そのままロッキード社の数字を記載して、これを国産した際の値上がりファクターは織り込んでいない、こういうことでありまするから、百十万ドルということになっておるのであります。でありますから、国産化の費用を織り込めばこれと違ってくるわけでございます。
  149. 淡谷悠藏

    淡谷委員 私はまだ納得がいきませんが、価格の点はいずれ分科会でまた追及いたしますが、一つお聞きしたいのは通産大臣にですが、航空機製造事業法というものがありますが、この航空機製造事業法で航空機製造の指定を受けております会社は、現在何社ございますか。
  150. 池田勇人

    ○池田国務大臣 個々に幾らか存じておりませんが、事務当局から答えさせます。
  151. 小出榮一

    ○小出政府委員 お答えいたします。  航空機製造事業法によりまして製造の指定を受けております会社は五社でございます。
  152. 淡谷悠藏

    淡谷委員 その具体的な社名をあげていただきたい。
  153. 小出榮一

    ○小出政府委員 新三菱重工業、それから川崎航空機工業株式会社、それから富士重工業、それから新明和株式会社、それから昭和飛行機でございます。
  154. 淡谷悠藏

    淡谷委員 新明和と昭和はいつ指定になっておりますか。年月日をお答え願いたい。
  155. 小出榮一

    ○小出政府委員 先ほど五社と申し上げました中で、具体的に多少訂正いたしますが、製造そのものの許可を受けておりまするのは三社でございまして、新三菱重工業と川崎航空機とそれから富士重工業の三社であります。それからあとの二社、昭和飛行機は日本飛行機の間違いでありますが、日本飛行機と新明和は修理でございます。やはり航空機製造事業法に基づきまして修理の許可を受けておる、こういうことでございます。具体的に許可の日付でございますが、ただいま資料を持っておりませんので、今すぐ調べまして、指定をいたしました日付をすぐお答えいたします。
  156. 淡谷悠藏

    淡谷委員 新三菱と富士と川崎、三社に指定しましたのは、航空機を製造する必要に応じて個々に指定したのか、航空機製造事業法に基づいてあらかじめ、航空機産業ですね、航空機製造を全部この会社にやらせるつもりで一括して指定したのか、どっちですか。何か仕事の始まるたびに指定したのか。前から指定したのか。
  157. 小出榮一

    ○小出政府委員 航空機製造事業法の第二条の事業の許可をいたした会社の名前を申し上げたわけでございまするが、事業の許可をいたしまするのは、もちろん正式の事業許可の申請がございまして、機種ごとに、具体的に事業を始める際に正式の許可をいたすわけであります。
  158. 淡谷悠藏

    淡谷委員 新三菱は、どういう飛行機を製造する場合に指定いたしましたか。
  159. 小出榮一

    ○小出政府委員 新三菱重工業はF86Fの製造をいたしまする際に、製造事業法の許可をいたしました。
  160. 淡谷悠藏

    淡谷委員 防衛庁長官、F86Fが三十四年の十二月に完成するはずだったのが、三十五年の末まで延長されておりまするが、これは一体どういう理由で納期を延ばしたのですか。
  161. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 F86の生産計画につきましては、計画変更されたことが二、三回あります。すなわち昭和三十二年の四月に一度変更されました。これは、日米両国政府間におきまする第三次生産決定に伴いまして、全体の計画生産規模に適合させるべく調整した、これで変更したことがあります。それから、三十二年の十二月に、MAP供与のずれに伴いまして生産計画変更がありました。それから、三十四年の二月にも、MAP供与のずれに伴いまして生産計画変更されました。それから、三十四年の三月に、教育訓練計画変更に伴いまして生産計画変更がありました。こういうふうに四回ですか、四回変更になっております。
  162. 淡谷悠藏

    淡谷委員 あなたはそうおっしゃいますけれどもね、これは塚本装備局長のいる前で、新三菱の社長の吉田義人さん、これは岸総理の友人だそうですが、この人が、私の方では次期戦闘機機種決定しないので職工の手があくし、仕事の関係上困るから、防衛庁に頼んでこれを一年間延ばしてもらった、こう言っているのですよ。あなたの方の要求と新三菱の要求とが期せずして一致したのですか。あるいは新三菱の要請にこたえて、あなたの方では一年の延期を認めたのか、この点はどうですか。
  163. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 先ほど申し上げましたように、MAPの供与のずれに対して変更されたものと、教育訓練計画変更に伴って変更した、こういうことで延びたわけでございます。
  164. 淡谷悠藏

    淡谷委員 変更したのは、最後は何年の何月何日ですか。
  165. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 先ほど申し上げたのでありますが、もう一回申し上げます。最後に変更いたしましたのは、第三次生産で、三十四年の六月三十日であります。
  166. 淡谷悠藏

    淡谷委員 通産大臣にお聞きしますが、この航空機製造事業法によって通産省がなし得る発注の限度はどこまでなんですか。会社を指定するだけですか。契約も取り結びますか。
  167. 池田勇人

    ○池田国務大臣 航空機製造事業法に基づきまして会社を指定するだけでございます。契約は防衛庁がいたします。
  168. 淡谷悠藏

    淡谷委員 次期戦闘機生産契約に関して通産省は関与しておりませんか。
  169. 池田勇人

    ○池田国務大臣 防衛庁要求によりまして、技術的の意見は申し述べることがございましょう。通産省としての特別の生産計画に対してのあれはございません。
  170. 淡谷悠藏

    淡谷委員 源田調査団が帰ってきた翌日、通産省に新三菱及び川崎の重役を呼んで、川崎の方を従契約にするから、それであきらめろと言って因果を含めたのが通産省なんですが、これは一体防衛庁の示唆によるものですか。防衛庁がそういうふうにやれと言ったのですか。
  171. 池田勇人

    ○池田国務大臣 そういう事実は通産大臣として存じておりません。
  172. 淡谷悠藏

    淡谷委員 御存じなければ、この衆議院の決算委員会会議録の昭和三十四年十二月二十三日、新三菱の社長と川崎の副社長の証言を一つお読み願いたいと思う。読みましょうか。
  173. 小川半次

    小川委員長 淡谷君、速記録の場合は要点だけ一つどうぞ。
  174. 淡谷悠藏

    淡谷委員 要点だけ読みます。永野証人の証言ですが、「局長さんの場合、それから課長さんの場合、いろいろございますけれども、」というのはこれは通産省に呼ばれた人です。「今回の104のなには、三菱にするので、川崎はこれに協力をしてもらいたいというお話を伺いましたときも、両者ともに私出席をいたしておりませんけれども、やはり重工業局長からお話があったように私、聞いております。」このことがはっきり言われているのです。しかも私申し上げたいのは、新三菱の由比という男がこの会合に出ております。それからあなたの方も、この席でお名前は申し上げませんけれども、かつて森脇メモで疑点をいろいろ抱かれたものが、大臣は知らないと言っておりますが、内部では折衝しておる。うわさに聞きますと、電話でおどかしたという話もあるのです。そうしますと、国防会議責任を負うべき官房長官がさっきみたいに、ろくに防衛庁法も読んでいないという立場、通産大臣のあなたが御存じないと言う。その下の連中が勝手気ままにこの膨大な予算を使う仕事に携わるならば、私はこれは明らかに法の乱用であり、国費の乱費だと思う。一体航空機製造事業法で、ほんとうに航空機の仕事に携われるものは新三菱と富士と川崎しかございません。幾ら予算を組みましても、おもなる契約者はこの法律によって三社に限られておるのであります。しかもたびたびの証言によりまして、この三社が一つの社では仕事ができない。それぞれジェット・エンジンの会社を持つ、あるいはまた軽電機の会社を系列に入れまして、下請として膨大な航空機製造の会社のカルテルが実際できておる。これは一体独占禁止法に触れませんか。これだけ膨大な予算を使って作る航空機を一手に集めて生産するということは、明らかに独占禁止法の趣旨に反しておると思うのでありますが、これは通産大臣どうですか。
  175. 池田勇人

    ○池田国務大臣 防衛庁長官と私と相談の上機種決定をいたします。従って機種決定後において関係局長より業者に話をしたことは知っておるのであります。今のあなたのお話は機種決定前に云々ということがございましたので、それは私は存じませんと申し上げたのであります。機種決定いたしますにつきましては、法に基づきまして防衛庁長官と協議をいたして、そうして決定は私が決定をする。決定後におきましてそれを関係会社には局長より指示させたことは事実でございます。  それから今お話の独占禁止法の問題は、私は独占禁止法に触れることはないと考えております。
  176. 淡谷悠藏

    淡谷委員 塚本装備局長に聞きますが、あなたはこの前の決算委員会で独占禁止法から除外されておるという答弁をしておる。除外されておりますか。
  177. 塚本敏夫

    ○塚本(敏)政府委員 独占禁止法は、法律によって限定されておる場合は、その法律によって独占禁止法を除外できる、こういうふうに解釈いたします。
  178. 淡谷悠藏

    淡谷委員 その根拠を問います。その根拠を聞いております。
  179. 池田勇人

    ○池田国務大臣 ただいまの答弁機種決定は私がすると言ったのは、そうじゃございません。機種決定後におきます事業会社の指定を通産大臣がするのであります。  それから、今の独占禁止法に触れるかどうかということですが、私は今の実情におきまして独占禁止法に触れるとは考えておりません。
  180. 淡谷悠藏

    淡谷委員 通産大臣、これは今の事実が独占禁止法に触れるか触れないかは公取の問題なんです。われわれが決定するのではない。けれども、これはあなたの省でなく、防衛庁装備局長が、これは当然独占禁止法から除外されておるという答弁をしておるのですよ。これはどうも除外されておる法的根拠が怪しいのです。ないのです。一体どういう気持で除外されていると思っているのか。
  181. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 独占禁止法から除外されておるという答弁をしたということでありますが、独占禁止法に触れておらない、こういう趣旨だと思います。
  182. 淡谷悠藏

    淡谷委員 逃げる答弁は許しません。これは同じ日の決算委員会の私の質問で、「防衛庁のやることは独禁法から除外するという法律でもありますか。防衛庁の注文を受けたものは、たとい独占的な仕事をしておっても、独占禁止法から除外するという特例がありますか。」という私の質問に対して、塚本政府委員は、「さっきも申しましたのですが、技術提携がありますと、それ以外のところでは製造できないわけでございまして、そういう関係でその一社を指定して随意契約をする。なおまた航空機製造事業法、武器等製造法等もありますが、そういうところで規定されておりますれば、それ以外のところは契約できない。こういうことになっておるわけでありまして、そういう点で独禁法から除外される、」一体この法律の根拠はどこにある。除外されたものは全部法文に列記してありますよ。航空機製造事業法に除外されたものとして列記してありますか。
  183. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 ですから、先ほど申し上げましたように、独占禁止法から除外されているということでなくて、独占禁止法に抵触しているものではない、こういう趣旨でございます。
  184. 淡谷悠藏

    淡谷委員 局長に聞いている。あなたは除外されるとはっきり言っているのですよ。この答弁くつがえしますか。
  185. 塚本敏夫

    ○塚本(敏)政府委員 ただいま大臣からお答え申しましたように、私が除外という言葉を使っておれば、前の方の意味から当然触れない、こういう意味で使ったのでありまして、その点は、除外ということであれば、法律的な用語としては適当でなかった、かように考えます。
  186. 淡谷悠藏

    淡谷委員 塚本装備局長、あなたはすなおに取り消されますか。これは重大なんです。
  187. 塚本敏夫

    ○塚本(敏)政府委員 ただいま申しましたように、除外という言葉は適当でなかったと思います。
  188. 小川半次

    小川委員長 淡谷君、あなたの持ち時間もすでに数十分過ぎておりまするから、結論をお願いします。
  189. 淡谷悠藏

    淡谷委員 除外されていないとしますると、私はやっぱりこの独占禁止法は、通産大臣がどう思われようと、公取などで一ぺん調べる必要があると思う。これは別の問題です。  ただ今回のロッキードの問題に関しましては、前のグラマンと同様、依然として疑惑は解けません。特にこの際私は国防会議議長に御出席を願って、国防会議内容についてここで御説明願いたいのであります。実にでたらめです。国防会議の構成を見ますと、あたかも国の大事な国防を一手に引き受けてやっているように見えますけれども、諮問機関だ。その諮問機関総理大臣岸信介の諮問を受けて、国防会議議長の岸信介がそれに対して答申を与えて、それをまた総理大臣の岸信介が、その答申に基づいて決定するのが日本の国防方針だ。しかもそのメンバーというのはほとんど同じ閣僚です。加わっているのは廣岡事務局長くらいなものだ。その廣岡事務局長がきょうの冒頭のあのような答弁では、機種決定防衛庁がやるとしましても、財政的な面から、あるいは防衛法上から非常に疑義があるのは国防会議なんです。しかも廣岡事務局長はこの前には非常なグラマンの賛美者であったのであります。天川勇を呼んで、十万円の委託料を出して、岸信介の判こを押した委託書まで出している。その事務を担当しておったのには吉村真一がおった。第一次防衛計画のときには、この吉村が画策をして、天川と接近して、グラマンとロッキードの比較表は天川が作ったのだと当時吉村が証言している。しかも当時のあのメンバーを見てごらんなさい。大蔵省の防衛費担当の主計官と国防会議の参事官がちゃんぽんに行ったり来たりしている。森脇メモに全部名前があがっている連中が国防会議に巣くっている。こんな形ではたして大事な防衛予算を勝手に使わせられるか。ひまがありますと、私三十三年度の会計検査院の指摘事項だけでも追及したかったのでありますが、F86生産に関して莫大な冗費が指摘されております。油に対する冗費が指摘されております。現在の第一次防衛計画だけでもこのくらい大きな検査院の指摘が年ごとにあるのであります。今度次期戦闘機、さらには第二次防衛計画に関連して、防衛庁の内部、国防会議の内部を一体どう粛正されるつもりなのか。最も大きな責任のある岸国防会議議長にぜひとも出席をしてもらって、この点を明瞭にした上でさらに予算審議を進めた方がよろしいと思う。これは委員長、さっきの約束もありますから、この際井手委員の質問にも関連しまして、国防会議議長として岸信介氏の出席を求めたいと思います。
  190. 小川半次

    小川委員長 淡谷委員に申し上げますが、あなたの持ち時間がございませんので、御承知のように過日総括質問にも御質問され、本日は一般質問にも質問されて、すでに時間も超過しておりますので、残余の質問がまだございましたならば、分科会にお願いいたしたいと思います。  それでは直ちに総理出席させますから、このままでお待ち願います。     …………………………………
  191. 小川半次

    小川委員長 この際井手委員より発言を求められておりますので、これを許します。井手以誠君
  192. 井手以誠

    井手委員 岸総理にお伺いいたしたいと思います。それは岸総理が箱根において記者会見をなさっておりますが、その内容についてきわめて重大なものを含んでおりますので、特に出席を願ったわけであります。この質問は、岸総理民主憲法に対する考え方を承るのでありまするから、法制局長官の助言はもちろんかまいませんけれども、かわっての答弁はあらかじめお断わりいたしておきます。  昨晩の夕刊並びに本日の朝刊によりますると、ほとんどの新聞岸総理の記者会見の談話が載っておるのでありますが、それは、条約の修正権に関連して予算審議についての発言が載っております。短いものでありますので読み上げますが、この記者会見において岸総理は「予算審議の場合でも政府原案を否決または可決するだけで、増額修正は行なえないという建前になっているのと同じような例である。」かように言われておるのであります。すなわち岸総理は、国会増額修正権がないと言われておるのであります。これはわれわれとして断じて許すわけには参りませんので、この際特に岸総理の所信を伺いたいのであります。  まず伺いたいのは、あなたは、記者会見において国会増額修正権がないとお話しになりましたか。
  193. 岸信介

    ○岸国務大臣 記者会見におきましては、主として問題になったことは、いわゆる条約の修正権の問題でございます。それで私の申しましたのは、法律、条約あるいは予算というようなものに対して、国会審議、修正というものはやはりその本来の性質からくる相違がある。条約については相手方のあることであるから、これは国会の修正の希望であるとかあるいは修正をしろというような意味の意見が出ることは当然だけれども、法律のような修正はできない。また予算については政府が提案権を持っておるのであるから、予算の修正ということに対してもおのずからある種の限度があるというふうに思う。新しい款、項というようなものをつけ加えるような増額修正というようなことは、政府の提案権から考えてみても、また従来の例から見ても、そういうようなことはできないと解釈するのが適当であろう、こういうようなことを申したわけであります。
  194. 井手以誠

    井手委員 私は端的にお伺いしたいのでありますが、あなたの談話には、予算審議には国会において増額修正は行なえないとおっしゃっております。これは違いますか、その通りですか。
  195. 岸信介

    ○岸国務大臣 増額修正権を一切認めないというような意味で申したのではございません。今私がお答えしたような趣旨でございます。
  196. 井手以誠

    井手委員 条約の修正権については、私は別の機会でまたお聞きしたいと思いますが、本日は予算修正権についてお伺いをいたしておるのであります。私は端的に質問いたしますので、一つ端的にお答えをいただきたい。国会予算増額修正権はありますか、ありませんか。
  197. 岸信介

    ○岸国務大臣 もちろんあります。ただ、私はそれにある種の限界があるだろうと考えております。
  198. 井手以誠

    井手委員 この新聞では朝刊のトップに載っている。もちろん、これは条約の修正権の意見。そのトップ記事の中に予算増額修正権はないとあなたは述べられておる。かように考えて参りますと、世間では、読む人は、国会には予算増額修正権はないと受け取るのであります。この影響はきわめて大きいのである。かねがね岸総理の考え方は、明治憲法そのままこれを金科玉条のごとく守っておられるというみんなの印象がある。そういうときに国会増額修正権がないかのごとく否定するごとき言明、所信を表明されることは、われわれは断じて黙認するわけには参りません。それではこの新聞報道は誤りでありますか。
  199. 岸信介

    ○岸国務大臣 私の申したことは、今申したようないきさつでございまして、一切の増額ができないという意味で申してはおりませんし、そういう意味にとれる記事であるとするならば、それは私の真意をとらえておらないわけであります。
  200. 井手以誠

    井手委員 また別の新聞によりますと、「予算に対する修正権国会にあるから条約に対しても修正権があるというが、予算の場合も増額修正はできない。」とはっきり書いてある。これは憲法の八十三条、これは国の財政処理の権限は国会にあると明記されております。さらに八十六条、財政法第十九条には増額修正を予想して規定が設けられております。また国家公務員法の第十三条にも修正が書かれておる。地方自治法の九十七条の二項においても増額修正ができると明記されております。かように憲法、国会法、財政法、こういったものに明らかに増額修正ができる、あるいは一部の意見はあるにいたしましても、原則的には増額修正ができると書かれているものに対して、国の総理大臣国会の権限に対してこれを否定するようなことは私は不謹慎であると考えます。  私はこの機会に、岸総理はこの誤解を受ける重大な問題に対して、さらにあらためてこの増額修正に対する見解を明らかにしてもらいたい。
  201. 岸信介

    ○岸国務大臣 予算に対しましてはもちろん、国会において増額あるいはその他の修正ができることは当然であります。ただ先ほども申し上げましたように、増額修正ということが限界なしにできるかどうかということについては、私は従来の扱い例を見ましても、やはり新しい款、項というようなものを設定するような増額はできないものである、こういうふうに解釈すべきものであろう、かように思っております。
  202. 井手以誠

    井手委員 あなたはなお記者会見でこういうことを述べているのであります。それは、明治以来増額修正権はありませんと言われておる。そのあなたの解釈はどうですか。
  203. 岸信介

    ○岸国務大臣 それは明治憲法時代の解釈、それからあるいは国会制度の発祥の沿革から見ましてそういう時代もあったろうと思いますけれども、私は現行憲法の解釈として、先ほど来明らかに申し上げている通りであります。
  204. 井手以誠

    井手委員 それでは私は深く追及はいたしません。この際一言総理に警告を発しておきたいと思う。条約の修正については、これはわれわれは修正権があると考えております。もちろん予算増額修正は、国会に権限があると信じております。また総理も今さようにおっしゃいました。それで一応解決はいたしましたけれども、こういう国会の権限に関する重大な問題を、軽々に否定するがごとき、また新聞記者の諸君に、そういう受け取り方をされるような意見を発表されることは、今後厳に慎んでもらいたい。私はこれを警告いたしまして、質問を打ち切ります。
  205. 小川半次

    小川委員長 この際午後一時三十分まで休憩いたします。     午後零時四十分休憩      ————◇—————     午後二時九分開議
  206. 小川半次

    小川委員長 休憩前に引き続き、会議を開きます。  質疑を続行いたします。横山利秋君。
  207. 横山利秋

    横山委員 私の質問は、主として日本とアメリカとの安全保障条約、いわゆる新しい条約の中に新しく挿入をされました経済協力の部面に集中をいたしまして、名大臣に質問をいたしたいと思うのであります。  今日までの相互防衛条約について、米韓、あるいは米華、あるいは米比、東南アジア、オーストラリアとニュージーランドとアメリカ、北大西洋、ワルシャワ、中ソ友好同盟条約、それから現行の安全保障条約、ずっと見てみまして、経済協力の部面が入っているのと、入っていないのとがあります。今回の条約の中で特にこの経済協力の項をうたったゆえんは一体何であるか。今日まで本委員会において政府の態度で明らかにされたことを、私は時間の節約上、岸総理大臣の言をかりて申しますと、一つは日米間の貿易の拡大、一つは外資導入、一つは低開発国における経済協力、一つは貿易・為替の自由化に関連をする政策の不一致の調整、こういうふうに総理大臣は説明をされておるのでありますけれども、そのことについて間違いがないか、閣僚の中に意見の相違はないか、まずそれを伺います。
  208. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 総理大臣が言われたことと意見の相違はございません。総理大臣は要するに、経済条項と申しますか、第二条の点についてのいろいろな具体的な問題について言われたわけであります。この条項は日米両国が経済上緊密な立場に立ち、また同じ自由主義経済のもとに運営していく、そういうことにおいてお互いに間隙がないように、強力に今後とも進めていこうということが趣旨でございます。
  209. 横山利秋

    横山委員 今日までの軍事同盟の中に挿入をされる経済協力の内容というものは、常に実質を伴っておったものであります。本委員会において総理並びに外務大臣が明らかにいたしておりますことは、何ら実質が今伴っていないのであります。私はひやかしやあるいはいやがらせを言うのではありませんが、このような重大な条約の中に、わざわざ積極的に挿入された部面に内容が伴っていないということが、一体ほんとうにあり得ることであろうかどうか、私はそれに対して非常に疑念を抱くのであります。今日この条約と対抗的なと一応客観的に見られます中ソ同盟条約がそうでありますが、締結されましたときにソビエトは中国に対して約三億ドル、一千億円になんなんとする借款を供与したように私は承知をしております。あなたが、アメリカと交渉するに際して、この経済協力の内容をアメリカに要望されたとするならば、必ずやその具体的な問題がなければならぬと思うのでありますが、日本がアメリカに対して経済協力の内容を主張した際における日本側の具体的な主張は何であったか、それをまずお伺いいたします。
  210. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 経済は流動いたしておりますし、問題はいろいろそのときどきの世界の情勢によって変化をして参ります。一番われわれが大事なことと思いますのは、やはり同じような自由主義経済の立場に立って進んでいく——しかも自由主義経済の立場というものは、相当にいろいろなその国々の立場によりまして相剋摩擦が起こり得ないとは言えません。従いまして、そういうものに対してお互いに調節をしていくという基本的な立場を明らかにして参りますことが、私は一番大事なことだと思います。その上に立ちまして、起こってくる諸般の問題について具体的な解決をしていくということでなければならぬ、こう考えております。
  211. 横山利秋

    横山委員 私の聞いているのはそういうことではないのです。作文をお互いに書いているのではなく、作文を審議しているのではないでしょう。少なくとも現行の条約の中になかったものを、新しくアメリカに対して、まあどちらが要求したか私は知りませんが、少なくとも総理大臣が本会議で、軍事同盟ではありません、経済協力が入ったではありませんかと言う以上は、何か日本政府として、アメリカと交渉する際に、経済協力に伴うわれわれの要望事項はこれだといってアメリカに対して原案を示さなかったら、私は不可思議な問題だと思う。アメリカに対して、条約を締結する際に、日米経済協力について具体的な問題をひっさげてあなたは交渉したことは何もないのですか。ないならない、あったらばその具体的な条項をお伺いしたいのです。
  212. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 私はただいま申し上げましたような立場で、この条項を挿入するのが適当と考えて入れたわけでありまして、具体的にただいま御指摘のありましたような中ソ同盟条約ができたときに何億ルーブルかの貸与をした、そういうようなことをアメリカに要請した交渉はいたしておりません。
  213. 横山利秋

    横山委員 あなたは今までのことについて何らも触れてない。これからの問題についても、本委員会で明らかにしたところによれば、経済委員会を作るという気持はない、通常の外交ベースでやりたい——では具体的に何を本委員会審議をする。国民の前に経済協力の実態はこれだといって示唆すべき何物もないといってあなたは一体てん然とされるのでありましょうか。先般フルシチョフがインドへ行きました。そうしてその花道にやはり三億ドルばかりの借款を供与をしておるのであります。六月にアイゼンハワーが日本へ来ることになっています。一体アメリカの大統領は何を花道に持ってこられるのでありますか。アメリカの大統領が日本に来られることについて、この条約に挿入された経済協力の線に沿って政府はアメリカと交渉をなさっておるのですか、それをお伺いします。
  214. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 私はアイゼンハワー大統領が六月に来るときに、何か手みやげ的に金を持ってくるというような交渉はいたしておりません。アイゼンハワー大統領は日米修好百年の機会に、両国の親善関係をより一そう打ち立てる意味において来られるのでありまして、われわれはその機会に今お話のような点について交渉はいたしておりません。
  215. 横山利秋

    横山委員 そういたしますと、ますますこの第二条における経済協力の内容というものが不鮮明きわまるものになってくるではありませんか。今日の条約の中になかったもので、新しく条約の中に入れた積極的な理由は一体何でありましょう。旧来の条約で一体まかない切れなかったものであるか、あなたの言う経済協力、ここにいう抽象的な経済協力という内容が、現行の条約では満たし切れないものであるか。それをせっかく新条約の中に入れるならば、その入れただけのしかるべき理由と具体的な内容がなくてはならぬのですが、その具体的な内容は一体何でありますか。どうぞ一つその辺を遠慮せずに、こういうふうに主張したけれども話し合いがととのわなかったとか、経済協力という条項が入った具体的な日本政府の主張と、そうしてそれがこういう結果になったいきさつというものを、外務大臣としては国民に明らかにされるべき責任を感じませんか。
  216. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 私の考えておりますことは、先ほど来申し上げておりますように、この種条約を結びます両国の立場というものは、経済、社会、文化の上においてお互いに緊密な友好親善関係を立てていかなければならぬ。しかもわれわれとしては、自由主義経済という一つの経済の体制のもとにお互いにしっかり手を握っていこう、しかしながら、自由主義経済でありますから、それぞれの国におきましてやはり政策によっては食い違いが起こらないとは申し上げられません。それはその国の経済の発展の段階によりまして、いろいろの施策が違って参る場合がありますから、そうしたものを将来にわたって調節していくということは、これはそういう基本的立場を確認した上で一番調節がしやすいわけなのでありまして、その意味においてこういう条項が入りますことが私は適当と考えております。具体的に今金をこういうふうに援助してもらいたいとか、あるいはこれこれこういうことというような問題を提議したことは全然ございません。
  217. 横山利秋

    横山委員 全然ございませんと言ってあなたはいばるつもりですか。まことに外務大臣の顔を見て私は見直したくなるのですが、今日まで日米間における経済的な諸懸案がたくさんあります。一、二それにこれから触れていくつもりでありますが、そういう問題について、この条約が締結された機会に、経済協力の条項によって解決されていかなければならぬでしょう。私どもの立場は別ですよ。しかし少なくとも政府の立場としてはそれがなくてはなりません。それが、いや、あなたの言うようなことは何もしておりませんといって、てん然としておっては、私はこれはどういうつもりなのか解釈に苦しむのです。  この間ジェトロの駒村駐在顧問が日本へ帰ってきてこういうことを言っています。「安保改定調印後、わが国で日米経済協力が騒がれているようだが、実際問題として米国の民間には対日経済協力という意識的な盛り上がりもない上、経団連のような組織も作りにくく、また政府の干渉する余地もないのでむずかしいことだ。ただし新安保にある経済協力の項目については今後両国間で経済的なトラブルがあったときなど日本側にとって有利なきめ手となるのではないか」。こう言っておるのであります。それから一緒に行かれた足立さんの在日米商業会議所の演説を見ましても、あまりにも空虚な内容しかないということを私は痛感をせざるを得ないのですが、一体外務大臣として、まあこれは各省の大臣にこれから関係をしていくことでありましょうけれども、交渉の主たる責任者であるあなたが、この第二条の具体的な実施についてどういう構想をこれから持っておられるのか、ただ、それぞれしかるべくやってくれというのであるか、一体経済協力を日米との間に推し進める具体的な対策は何か、組織は一体何を通じてやるのか、新しく組織を作るのか、対象となる問題は何か、その辺をあなたは具体的になさるべき責任を感じませんか。一つこの際率直にあなたの意見を聞かしてほしいのです。
  218. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 別段いばって申し上げているわけでもございませんが、要するに今回の条約によりまして、日米経済協力の線を基本的に打ち出し、そして両国が経済政策をやる上においてお互いに食い違いのないようにできるだけしていかなければならぬということを基本的にいたしまして、そこで、今お話のようにいろいろな問題が日米間にもございます。あるいは世界経済等の運営に関してもわれわれとしても意見を持っております。従ってそれらの問題については今後話し合いをし、打ち合わせをし、あるいは共同に運営して参らなければならぬと思います。  そこで、何か日米間に経済関係機関を作るかどうかというお話が第一にあるわけだと思いますが、現在のところ、私どもとしては特別な委員会等を作ることは必ずしも今必要であろうとは思っておりません。正常外交ルートによりまして話し合いをいたしていくということが適当だと思います。ただいまお読みになりましたように、民間的な何か連絡の機関、調整の機関というものを作ることは望ましいことでございます。現在の日米貿易の上におきまして、相互に実情を理解し合う、また相互に起こっております問題の取り扱いについて、日本側にも欠点もございますが、アメリカ側のバイヤーにも必ずしも欠点がないとは申し上げられません。従いまして、そういう点について業者同士、あるいは業者の団体同士が話し合いますことは有効でありますから、そうした機関ができることはわれわれ政府としても望ましいこととは思っておりますが、ただいまお読みになりましたようなところにもございますように、日本の経済団体と向こうの経済団体とは必ずしも同じような性格と申しますか、組織でございませんから、急にそれらのものがすぐに個々に委員会を作るということもあるいは困難かもしれません。しかしそういうことについて努力はしていく必要があろうと思います。  で、二国間の問題について、御指摘のようにいろいろな経済上の問題がありますことは、われわれも承知いたしておるどころではございません。それを解決しなければならぬということで、外交ルートで今日までも努力をしてきております。そのほかに、やはり今日世界の平和というものを希求して参りますれば、また、日本の立場から申しましても、低開発国の開発援助という問題は大きな問題だと思います。これらについて、やはり先進国としてのアメリカとわれわれはどういうようにして協力していくか、そういう方途を見つけて参りますことも必要でございます。あるいはアメリカばかりではなく、他のヨーロッパ先進国とアメリカとの関係、そして日本の役割というものも考えて参らなければならぬと思うのでございます。  また世界経済全体の動きとして、御指摘のありましたように一昨年ヨーロッパの各国が貿易の自由化、あるいは為替の自由化に踏み切っております。また現在ヨーロッパ共同体あるいはアウター・セブンというようなそれぞれの政治的背景もございますが、同時に経済を非常に重く見ております一つの統合体的組織が進んでおります。それらに対する態度というようなものにつきましても、われわれとしてはそれらの域外の国として共通の利害を持っておりますから、そういうものにどう対処していくかということを考えて参らなければならぬのであります。その経済協力と申しますか、今申し上げたような点から見まして、内容としてはいろいろな点について今後話し合いをして参らなければならぬところが相当多大であろう、こう考えております。
  219. 横山利秋

    横山委員 あなたの話を聞きまして、私はこの安全保障条約の第二条における内客というものがきわめて空虚な感じがします。ちょうどこれはアクセサリーでございましょうか、あるいは絹のハンケチのようなものだというような感じがするわけであります。私は先ほどあなたがおっしゃった、アイゼンハワー大統領が六月に日本に来ることについて何らの交渉もしていないということについて、もう一歩進んでお伺いするのでありますけれども、大統領が六月に来るまでの間に、日米経済協力の部面についてアメリカと話し合うという予定なり、あなたの構想というものはほんとうにないのですか。たとえば、これから一、二の例をあげますけれども、今度韓国から三万トンの米をわざわざ買って、そして韓国との交渉を再開する、まさに哀れなような姿勢で、お米を買いますからというような格好だ。ところがあなたの部下の中にも、そんなばかなことをするよりも——それはまた失敗しそうだというような話があるわけであります。私どもの立場でなくして、あなた方の立場を立ててみても、アメリカの大統領の訪日を機会に、韓国との問題についてアメリカにあっせんしてもらおうという気持があるのではないか、またそういう構想が一部にあるのではないか、またフルシチョフの例をとって、この際外債とか、いろいろな経済的な問題についての今の不調を解決するために、アメリカとの経済協力の線に沿う具体的な内容の交渉が始まっているのではないか、またこの条約の内容からいえば、それが当然ではないか。何もないといってあなたはいばるのだけれども、そうではなくて、ほんとうにあるのだといっていばるのがほんとうなのではないが、この点について御意見を伺いたいのです、
  220. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 別にないといっていばっておるわけではございませんが、今回アイゼンハワー大統領が来られますのは、百年修好にあたっての、ソ連から帰りがけの儀礼的な訪問が主たる目的であることはむろんでございます。しかしそうした機会に、アメリカの大統領について日本の実情なり何なりを話し、また日米間の問題なりその他の経済の問題について触れますことはこれは当然でありまして、総理もおそらくそういう考えを持っておられると私ども推測いたしております。  ただ、今御指摘のように、韓国との問題についてすぐにこれをアイゼンハワー大統領に訴えるかどうかという問題については、私はやはり韓国と日本の間は、できるだけ二国間でもって話し合いをして、そして最終的な努力をしてみるべきだと思います。むろんわれわれいつまでも弱いだけの態度で進んでいこうとは思っておりませんし、また解決の方法がありますれば、他の第三国等に頼みまして、主としてそれは御指摘のようにアメリカになりましょうけれども、あっせんの労をとっていただくことも必要な時期もあろうかと思います。しかしやはりあくまでもわれわれは、韓国との間はできるだけ最大の努力をして、二国間で問題を片づけていきたいということを考えておるわけでります。米の問題も御指摘がありました。われわれもむろんそういうことで、だまされるようなことのないように最大の注意はいたしておりますが、何といたしても、やはり抑留されております零細漁船の乗組員をできるだけ早く帰すということが、一方では非常に大事な問題でございます。従ってそういうことに役立ち得るならば、若干いろいろな点は考えて参らなければならぬと思って、現在も進めておるようなわけでございます。そういう意味におきまして、私どもアイゼンハワー大統領が見えましたときに、あるいは見えるまでの経過によってどういうふうに韓国の問題を扱うか、あるいはどういうふうに対東南アジア方面の低開発国の援助計画に参画して参るかというような問題については今後とも進めて参らなければならぬと思います。  御承知のように、現在低開発国の開発問題につきましては、ヨーロッパ各国とも最近腰を上げて本格的にそういう問題に取り組んでこようとしておりますので、日本もそのメンバーになる資格もあり、またメンバーになること自体が、世界のそういう低開発国計画の推進に非常に大きく役立つということは、われわれとしてはすでに各国に対して申しておるところであるのでございます。
  221. 横山利秋

    横山委員 大統領に特別に相談をする気持はない、韓国との問題についても頼むお気持はあまりない。それでは別にまた角度を変えてお伺いしますけれども、アメリカと日本との今日の経済的な問題の中で、商品のボイコットあるいは関税の問題があります。この問題については、私の承知をしておるところでも、あなたがアメリカに行かれたときにボイコットの問題についていろいろな会合で日本の主張をなさったことを聞いておる。最近河野さんがアメリカに行って、アメリカの新聞記者をみな集めて、アメリカの関税政策についてこういうことを言っておるのであります。これは関連して通産大臣にもお伺いをしたいところでありますが、「米国の関税政策は、日本との労働賃金の差額を対象にして考えられていると仄聞する。つまり日本の商品は国際基準よりも低い労働賃金によって生産されているのだから、その差額に関税をかけぬ限り、米商品が圧迫されるということを米国の業界や労働組合が大きく取り上げているということだが、日本にとっては非常に迷惑なことだ。われわれ日本の政治家はこの安い労働賃金をいかにして国際水準まで引き上げようかということに専念したいのだ。しかし戦争に敗れ、国の資源は乏しいというハンデキャップのために、アメリカと同等の歩みのできないことは非常に残念である。けれど、なるべくそれに近づけようと努力することが日本の政治家の使命である。にもかかわらず上げる段階に至るまでに、その差額をアメリカが関税で取り上げるというようなことでは、日本の労働者は永久にアメリカの関税政策のために奴隷化されることになる。いやしくも日米の間においてそういうことを考えていただくことは迷惑である。従ってアメリカの関税政策は常に日本の労働賃金を対象とするにあらずして、日本の産業を育成する、そうして日本の国民生活の向上に寄与してやらうということを中心に考えてもらわなければならぬ。」こういうことを新聞記者を集めて河野さんが言っておるのであります。野にある人だからということでなく、実体論としてこれは事実であり、しかも外務大臣がアメリカに行って絹のスカーフから、手袋から、ベニヤから、木ネジからタオル、別珍、綿ブラウスそれから紙製の帽子、金属製食器、こうもりがさの骨から体温計等に至るまで、ここ数年間陸続として日本品のボイコットがアメリカの中にはある。もちろん先般通産大臣の言うように、アメリカとの貿易は伸びています。伸びていますけれども、これはほんとうの意味で伸びておるのか、将来においてどういう格好になるのかわからぬ、恒久的な問題としては常に日本品のボイコットの問題があり、常に日本に対する河野さんの言うような高い関税の問題がある。それを藤山さんは、今までアメリカへ行って主張なさっておるけれども、この安全保障条約によって締結をされる経済協力の部面の中で一体解決がされるのか、またされる見込みがあるのか。その辺はどうなんですか。
  222. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 その点は御指摘のように、われわれも今日まで非常に努力して参ってきておるわけでありまして、アメリカの政府としては相当によく日本の立場をわれわれは理解してもらっておると思っております。従って民間各業者方面なり、あるいは上下両院等におきまして、いろいろな貿易輸入制限の問題でありますとか、関税の問題でありますとかが持ち出されましても、多くの場合政府がヴィトーをふるいまして、体温計等の場合を除いてはほとんどまあ成立しておらぬようなわけであります。その点は非常によく理解をしてくれておるとわれわれ思います。しかしなお一そうやらなければなりませんと同時に、日本側におきましても、貿易の伸張にあたって、やはりアメリカの業者と共存していくような立場において、一つの種類のものが急激に増加するというようなことについては、やはり注意をして参らなければならぬのでありまして、漸増していきますことは必要でありますけれども、急激に増加しますと、同種アメリカの業者にも影響があるわけです。これは単にアメリカばかりでなく、ヨーロッパ方面でもそういう同じような現象が起こっておる、あるいは東南アジアなりアフリカあたりにも起こっておるわけであります。そういう点については、日本としても貿易政策上十分な留意をして参らなければならぬと思います。また同時に日本の品物が安いと申しますけれども、アメリカ側の輸入業者等が存外日本の中小企業者をたたいて競争さして、その結果としての安い物を輸入するというようなことで、アメリカの市場を混乱するような、アメリカ側にも欠点がないわけではないと私思っております。従ってそういう面では、両方でお互いに反省しながら問題の解決をはかっていかなければならぬと思うのであります。そういう点につきましては、外務省といたしましても出先において日本の商品の正当な評価を得るような努力を公館を通じてやっておりますし、また業者の方々も最近はそういう点についても努力をしておられます。むろん通産省は貿易行政の上からそうしたことについて深い留意を持ってやっておられますので、われわれとしてはそういうことによって問題が大きくならぬように、また不当な貿易制限なりあるいは関税増徴なりが起こらぬように今後とも話し合いをし、努力をして参らなければならぬ、こう存じております。
  223. 横山利秋

    横山委員 形の上ではあなたの言うように、今あげました諸種の品目の中で実際に上がったのは一つだという言い方もあるでしょう。けれども、実質はそのようにならないように、わが国において自主規制を次から次へと続けておるのじゃありませんか。綿織物が、あるいは綿の二次製品が、毛織物が、あるいは手袋が、セーターが、絹のスカーフが、ハンカチが、ベニヤが、冷凍メカジキが、マグロが、陶磁器が、家庭用ミシンが、あるいは金属製洋食器が、竹すだれが、自主規制をすることによって行なわれておるのでありまして、アメリカの日本品のボイコットのうちの一部しか実際はなっていないのだというあなたの言い方は、実質的なものの見方をしてないのです。  私はこの際通産大臣にお伺いをいたしますが、このようなアメリカとの貿易なりあるいは各国との貿易の根本的な命題というべきものが、先ほど引用いたしました河野さんがアメリカの新聞記者に理由として言った、日本における低賃金ということが問題の本質ではないかという気がいたすのであります。私は、あなたがかつて月給二倍論を唱えたときから、注意深くあなたの論説を承っておりますから、何も今あなたに月給二倍をすぐ約束をしてくれという意味で言うのではありません。しかし、今あなたが通産大臣をしておられて、そうしてあの月給二倍論と、今後日本の貿易が、あるいは日本の産業が健全な発展をするためには、今一番障害になっているのが日本における低賃金ではなかろうか。これは社会党の私が言う、自民党のあなたが言う問題でなくして、客観的に見て、日本の低賃金が解決をされなければ、ほんとうの意味の貿易の改善というものは出ていかないのではないか。もちろん貿易の改善には他の項目がございましょう。しかし、この当面いたします重要な問題として、日本の産業労働者における低賃金というものを解決することが必要なのではないかと私は痛感をされるのでありますが、通産大臣の率直な御意見をお伺いしたいのであります。
  224. 池田勇人

    ○池田国務大臣 昨年のガット総会におきまして、低賃金諸国に対しての問題が起こりました。しかし低賃金所得に対してどうするか、また低賃金所得とはいかなるものかということにつきましては、結論が出ていないのであります。私は政治として国民大衆の所得の増加をはかるということが必要であるというので、年来そういう気持でやってきておるのでございますが、今アメリカとの貿易に一番支障があるということは、低賃金ということよりも、まず日本の品物が一度にどっと出ていって、向こうの業者に迷惑をかけるということが一番大きい問題だと思います。低賃金の問題は、それは各国を通じての問題で、程度問題であります。これは低賃金を論ずるときは、資本の問題、金利の問題、資源の問題、いろいろな点がございますので、今そういう問題が国際的に出つつはありますけれども、アメリカとの貿易の問題につきまして、低賃金ということは全然関係がないとは申しませんが、貿易上の問題は、低賃金ということよりも、一度に特殊の品物が出ていくということが、貿易上のより大きな問題になっておると私は考えておるのであります。
  225. 横山利秋

    横山委員 これは見解が分かれるところであるかもしれません。しかし現にガットにおける、あるいはまた各方面における日本の低賃金というものは、歴史的なものであります。また現に河野さんがアメリカへ行って、関税が高い、その高い原因が日本の低賃金であるということを実力者の一人としてみずから立証されておるのであります。あなたはそれが原因でないというふうに一がいに言われるのはいかがなものかと私は思うのであります。この点について去年でしたか、ドイツの大蔵大臣が日本へ来て、やはり同様に日本の賃金を上げなければならぬ、こう言ったのであります。よその国へ来たからいいかげんなことを言ったという気持が一部にありました。ところがその後実情を調べてみますと、ドイツへ帰った大蔵大臣は、ドイツの労働者からよその国で言ったということをたてにとられて時間短縮をいたしたそうでありまして、ドイツの六七%の労働者は今一週四十時間になったそうであります。私は今日本があなた方のおっしゃるように、ほんとうに産業が近代化し、そして貿易が健全に伸びるためには、この産業労働者に対する低賃金、これが百歩譲って、あなた方の言うように必ずしもそういうものではないと言うにしても、しないにしても、国際的な日本の定説になっております低賃金を解決することが、今日の急務であろうというふうに痛感をいたすのであります。具体的な数字をあげておりますと時間がございませんから多くを申しませんけれども、池田さんも自分が月給二倍論というものの根拠をあらゆるものから立証されておるのでありますが、その根拠の中にも日本における低賃金というものが有力な根拠になっておると私は考えておるのでありますが、重ねてあなたの率直な御意見を伺いたい。
  226. 池田勇人

    ○池田国務大臣 アメリカの貿易との関係で一番支障になっている問題はということを前提にして申したのでございます。もちろん私は一国の産業の発展は輸出も必要でございますが、国内の健全な消費、いわゆる大衆の所得を伸ばして、大衆に生産物を消費してもらう、これが私は非常に重要な問題だと考えておりますので、貿易ももちろんでございますが、大衆所得の増加ということが、経済発展の基本をなしているということはもちろん考えておるのであります。
  227. 横山利秋

    横山委員 大衆の所得の増加、そして消費購買力の増加、これがあなたの持論でもあり、また当面の問題であるといたしますならば、あわせて関連をしてその点について政府の意見をただしたいことは、今の日本における労働問題であります。時間の関係上率直に申しますが、国家公務員の諸君、あるいは民間産業労働者の諸君は、今回の政府の態度、公務員に対する賃金の引き上げ、あるいは社会保障、あるいはILO条約に関連をいたします基本的権利、あるいは教員諸君に対する勤務評定等々の問題を政府に迫っておるのでありますが、政府がそれに対して、給与担当大臣一つごたごたしてきめられない、話し合いには応じないというところに、非常な激怒をいたしまして、二月二十五日、こういう不誠意な態度であるならば、この際一つ全国にわたって、まさに未曽有ともいうべき実力行使をするやに私は聞き及んでおるわけであります。おそらく労働大臣は、その事情を十分把握をせられておると思うのでありますが、東京都ほか主要なところにおいては、聞くところによれば五割、そのほかの地域においては三割の実力行使をするといい、あるいは重要拠点においてはまさに近来まれなる大集会をして政府の反省を促すという話であります。私は今ここでその具体的の内容の点に触れる時間がございません。しかし私が日米経済協力の問題の中で、政府に対して——今国際的に日本に指摘されておる重要な問題が低賃金であるということを御認識をなさるならば、特に外務大臣は各国との交渉の中で常に指摘されておるということであるならば、池田通産大臣が自分の所論として大衆購買力の増加をさせるべきであるという所論であるならば、また労働大臣が平素からしきりに労働省はサービス省であるという所存であるならば、今日官公労労働者に対して政府がとっておりますような、担当大臣一つきめられない、話し合いにすらなかなか応じない、そういう態度で一体労働者諸君の満足が、労働者諸君の納得が得られるのかどうか、私はその点について伺いたいと思うのであります。  第一に、一体このような政府に対して出しております約八項目にわたる問題について、政府はだれがだれと話し合いをなさるのか、官公労労働者に対してだれが一体責任を持って話し合いをなさるおつもりであるか、やるなら勝手にやれという立場で放擲をなさるつもりであるか、あるいはやるなら処分だけで私は知らぬという立場でなさるものであるか、まさにこの点この際政府の所信を明らかにして、そうして真に問題が解決をし得るような態勢と準備を政府が明らかにしてほしいのであります。
  228. 福田篤泰

    福田(篤)政府委員 お答えいたします。ただいまの全官公からのいろいろな御要求がありましたことは事実であります。これに基づきまして、今月の十五日に官房長官代理として小笠副長官が会見をいたしまして、書面に基づく御要求を承りまして、政府として一応同副長官から御答弁をしたことはございます。
  229. 横山利秋

    横山委員 私が聞いておるのは、そういう形式的なことではないのです。この八項目にわたる項目について、常に国家公務員の諸君あるいは地方公務員の諸君、この団体と常に接触を保ち、話し合いの相手となって政府の内部を取りまとめていく責任者はだれで、そうしてどういうふうにそれをやるのかといって聞いているのです。
  230. 福田篤泰

    福田(篤)政府委員 総理府内に御承知の通り公務員制度調査室がございます。これは公務員制度に関するいわば窓口と申しますか、そこが接触の窓口に相なっております。なお管轄としましては官房長官が総括してこれに当たる建前に相なっております。
  231. 横山利秋

    横山委員 それでは官房長官を呼んでおいて下さい。私は外務大臣がお急ぎのようでありますから、ここで少しこの問題をはずしますけれども、私が聞きたいことは、だれが窓口であるか、それは官房長官だと答えました。それでは官房長官はこの八項目に対してどういうふうにこれから対処なさっていくのか、二十五日という日が迫っておるのであるが、それに対してどういうふうな話し合いをつけていくのかということをお聞きしたいのですから、準備をして下さい。  外務大臣に、お急ぎのようでありますから次の質問に移りたいのでありますが、次は、アメリカヘせっかくいらっしゃったのですから、どうしてもアメリカと話し合いをなさってこられなければならぬ問題がもう一つあります。言うまでもなくそれはイロア資金、ガリオア資金の問題であります。私が聞くところによれば、あなたは羽田へ着いたときに側近の人ですか新聞記者か知りませんけれども、アメリカへ今度行ったら向こうからイロア資金、ガリオア資金についての話は出なかった、非常に好意的なことだということをおっしゃったやに聞き及んでおるのであります。私はその話を聞いて全く一驚を喫したのです。アメリカから請求を受けなかったので、非常にけっこうなことだではなくして、イロア資金、ガリオア資金の問題について、アメリカと手を結んで経済協力をやるならば、なぜ一体アメリカに対してイロア資金、ガリオア資金について棒引きにしてくれということの交渉をなさらぬのです。そのくらいのことは当然のことだと思うのでありますが、最近における日米安保条約交渉の経緯において、イロア資金、ガリオア資金の問題について御説明を願いたいのです。
  232. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 昨年九月、私としてはハーター国務長官に会いましたときに、この問題を今直ちに日本として取り上げるという交渉の過程に乗せることは困難であるということをはっきり申しております。そしてその後大蔵大臣等も行かれまして——この問題は内容から申しますと、まず第一次的に大蔵大臣がいろいろ考えられなければならぬ問題でもあります。従いまして大蔵大臣にもその旨を御報告申し上げておるわけであります。大蔵大臣がたびたび国会等においてもそれらの経緯につきましてはお話しになっておりますので、私どもはなお大蔵大臣等のお考えによりまして、できるだけこの問題に対して善処して参りたい、こう存じております。
  233. 横山利秋

    横山委員 外務大臣は、その問題についてはわしの所管ではない、安全保障条約の交渉の中ではその話はしなかった、こういうことでありますか。
  234. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 むろん外交接衝にあたりましては、外務省がこれを扱う問題であることは当然でございます。ただ内容等につきましては外務省が独走をいたすわけには参りません。やはり大蔵大臣の十分な御意見を伺った上でなければ、われわれとして交渉には乗り出せないわけであります。そういう意味におきまして今日大蔵大臣と十分な連絡をとりながら、大蔵大臣のお考えによって進めていきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  235. 横山利秋

    横山委員 それでは大蔵大臣にお伺いいたしますが、あなたとアンダーソン氏との会談では、最後の総額は、従来の交渉で確認されたものを一応御破算とし、あらためて検討する。支払いは西独方式に準ずる。日本は返済ドルを東南アジア開発または日米共同目的に使うよう希望するが、これは債務支払いの条件ではないという三つの出発点がきまり、再開交渉は年内に東京で行なわれることになったと当時の佐藤・アンダーソン会談によってきまったと伝えられておるのでありますが、事実でありますか。
  236. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 ただいま読み上げられたような点が、具体的に、両者意見が一致したという状態ではございません。この機会に少し経過を申し上げておきたいと思いますが、このガリオア、イロアの返済ということについて長い間米国側から要求のありましたこと、これはもうすでに御承知の通りであります。また昨年私参りました際に、アンダーソン長官からもこの話が出ております。出ておりますが、今日直ちに解決をするという段階では、その時期ではないようであります。もう少し事務的に、ガリオア、イロアとしてアメリカが支出いたしました総額をまず確認することが先だということでございまして、その事務的な折衝はまだ始まっておりません。しかし、いつまでもほうっておくわけには参りませんので、そのうちに事務的な折衝は始めるようになるだろうと思いますが、ただいましからばいつからというその時期までまだ到達いたしておりません。その際に当方としての希望その他ももちろん申し述べてありますが、それについてアメリカ政府が当方の申し出を全部承認したというような事柄には、話は進んでおりません。
  237. 横山利秋

    横山委員 本件については、いつの国会でも必ず大なり小なり議論の対象になっておることでありますが、常にその際に問題になりますことは、一体この、イロア資金、ガリオア資金というものが債務であるかいなかということであります。私は今債務と心得るという政府の態度について論及をするよりも、むしろ政府が——問題の多い、問題の本質が国民の中で不鮮明な問題を、何を一体基礎にして、いかなる理由を基礎にして、もう原則的にいえば債務という立場においての交渉だと私は考えなければならないのですが、一体どういう理屈を基礎にして、アメリカに対して交渉をなさっておられるのでありますか。本来ならばこれほど問題の多いことについては、まずもって国民にそのイロア資金、ガリオア資金の経緯を発表して、その内容と性格をはっきりきめてから交渉に移るべきである。少なくとも国会にイロア資金、ガリオア資金の内容と政府の態度について承認を求めてから、アメリカと交渉すべきであるということが当然のことではないか。ところが全く政府部内においても問題があって、はっきりとした理論的根拠も不鮮明なままに、アメリカと交渉しておる態度については、納得ができないという意見がほうはいたるものでありますが、いかなる理由、いかなる法律的根拠をもってアメリカと交渉しておるのですか。
  238. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 ガリオア、イロアの援助につきましては、過去においていろいろの経緯がございます。日本政府自身が、これを債務として処理するということは今まで決定されたとは思いませんが、吉田内閣以来、日本政府一貫いたしまして、ただ援助を受けっぱなしといいますか、そういうような考え方はない、一応債務と心得るということで、政府の考え方は毎回国会の本会議あるいは委員会等を通じて表明して参っております。そうして今日これが折衝をどういうわけで始めたかというお話でございますが、アメリカ政府からこの問題を取り上げるということを要求されておるというのが実情でございまして、いわゆる日本政府自身が積極的に進んでただいまその交渉をしておるわけではございません。米国政府には米国政府の考え方があるだろうと思います。そういう意味で、かねてから日本政府自身も債務と心得る、こういう考え方をしておるその考え方から、相手方の申し出に対して、当方の考え方を今申し出ておるという状況でございます。
  239. 小川半次

    小川委員長 横山君、外務大臣は公務で外出しなければならないのですが、よろしいですか。
  240. 横山利秋

    横山委員 それではもう一点だけ外務大臣に伺っておきましょう。  今回のこの日米交渉の経済協力で、各国との経済政策の食い違いを是正するまた後進地域の経済開発に協力をする、そうして自由化については、その食い違いとして日本側が、この問題について、自由化について努力をするというふうに感ぜられるのでありますが、自由化についてはあとで伺いますけれども、自由化をすることによって世界の各国に、こちらが裸になりますからあなたも裸になって下さいという、またさせるという自信が一体あるのかどうかという問題であります。たとえば一番問題になりますのが、自由化を背景に本年行なわれてきます各国との貿易の交渉、その中でやっぱり一番焦点になるのはガット三十五条の援用撤回の問題であります。ずっと考えてみますと、本年、各国との貿易交渉はまさに十指に余る交渉があるわけでありますが、その中でほんとに政府は三十五条の援用を撤回させる確信と自信があってこの自由化に踏み切っておるのかどうか。ただこちらが無防備になって誠意を表わせば向こうがやってくれるということであるのか、その辺の経緯を外務大臣にお伺いしたい。
  241. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 ガット三十五条の問題は、自由化の問題と離れましても、われわれが今日まで日本産業の実情を申しまして、そうしてこれが撤回の要求を各国に対していたしております。また通商交渉その他の機会には、必ずそれが締結されました後に数年を置いて——即時であればけっこうでありますが、数年を経てガット三十五条の問題を改善するようにも呼びかけております。従いまして、たとえば豪州等に対しまして通商交渉をいたします際にも、将来数年内にガット三十五条の援用撤回をやってもらうというような交渉をいたしておるのでございます。また現にドイツ等に対しまして、昨年七月以来通商関係の問題について話し合いをいたしております。ドイツと繊維製品なりあるいは陶器等に対する関税の問題等につきまして、われわれとしてはいろいろな話し合いをするようにいたして、今ボンでもって進めておるわけであります。そういう意味におきまして、関税の問題なりあるいはガット三十五条の援用撤回なりの問題につきましては、通商協定と並行し、あるいはその通商協定を作ります事前の問題としてもこれはやっておるわけであります。しかし同時に、今日世界の趨勢になってきております自由化の問題は、やはりこれを日本が自由化いたしますことによって、今申し上げたようなガット三十五条の援用撤回等につきましても相当に有利な道が開けていくことは、これはもう申すまでもないことであります。でありますから、われわれとしては各国と通商関係を深めて参りあるいは増大して参る上において、日本が自由化をいたしますということは、国内産業の問題さえ解決して参るならば、当然われわれとしては喜ばしい現象であり、また国内産業としてもある程度温室育ちをだんだんに外に出していくというようなことにして、強健な産業に育て上げていくという上からも必要なことだと思うのであります。そういう意味において、われわれは考えておるのでございます。
  242. 横山利秋

    横山委員 残念でありますが、外務大臣は時間がないようでありますから、それでは一つこれでお帰り願ってけっこうであります。  次は同じく日米経済協力の一つの部面といわれる外資の問題に触れて、大蔵大臣並びに通産大臣の御意見を伺いたいと思うのでありますが、この点については、通産大臣と大蔵大臣との見解の相違が明らかなような気がいたします。昨年から通産大臣は、まさに外資の先達ともいわぬばかりにアメリカの経済資本家と会い、そして一生懸命に言っておるのでありますが、大蔵大臣の方は先般も大蔵委員会で明らかにされましたけれども、きわめて慎重な態度を堅持せられておるようであります。私どもは、またこの外資の問題については全く別の観点をとっておるのでありますが、まず通産大臣にお伺いしたいことは、逆にお伺いいたしますが、あなたは外資をどんどんどんどん入れなければいかぬと言っておるのだが、そのリミットは一体何に考えられておるのかという逆の問い方の方がいいようであります。どういうことにだけは制限をなさろうというのであるか——それでは一体何から始まったのであろうか。今外資法というものが中心になっておるのでありますが、昨年は、外資法と外為法を両方とも取っ払って対外経済法にするという構想がございましたが、これがなくなってしまった。今やあなたは、全力をあげて外資の導入を喧伝せられておるようでありますが、一体無制限な外資であるか、通産大臣の言われる外資導入のリミットは一体何であるか、それをまずお伺いをいたしたいと思うのであります。
  243. 池田勇人

    ○池田国務大臣 リミットは、わが国経済の健全なしかも力強い発展を遂げるために必要な程度であります。これが度を越えまして、健全な発展にじゃまになるようなことはよくないと思います。
  244. 横山利秋

    横山委員 わが国の経済の健全な発展をじゃましない、まあ抽象的にはその通りでありますが、しかしそれは解釈によっていかようにも解釈できることだと思うのであります。健全な発展を遂げるであろうかどうかということについては、人によって見方の相違もありましょう。外人の株式の取得を四九%まで許そうが五五%まで許そうが、それが健全なものであるかないかについては、人によって見方の相違もあるところであろうと思うのであります。あなたの言う具体的な資本の導入のリミットをお伺いしておるのであります。
  245. 池田勇人

    ○池田国務大臣 御質問の点がはっきりわからないのですが、外資とは何ぞやということからきめていかなければならぬと思います。しかもまたその外資がどういう産業のものかということからも考えなければなりません。従いまして、外資導入のリミットという質問に対しまして、正確な、お気持に合うような答えはなかなかできないと思いますが、要は、わが国経済の健全な発達に必要な限度、こういうことでお答えといたします。特殊の産業についてあるいは株式とか技術とか、また他の問題についてのあれならば、それによってまたお答え申し上げます。
  246. 横山利秋

    横山委員 それではこういうことからお伺いをいたしましょう。日米通商航海条約と外資法には、もう明白な矛盾がございます。日米通商航海条約は、国際収支の均衡を破らない限りにおいては、これは外資の導入を認めておる立場にあるのでありますが、今の外資法は、そうでなくして、積極的にまた消極的に、今通産大臣の言われるような意味を含めて外資の制限をいたしておる。この外資法と通商航海条約との矛盾をもうぼつぼつ解決しなければならぬ時期になっておるのでありますが、通産大臣の言われる立場というのは、一体今後この矛盾をどういうふうに解決をしていこうとせられるのか、それをお伺いをいたします。
  247. 池田勇人

    ○池田国務大臣 日米通商航海条約七条でしたか十二条でしたか、ございましたが、今外資並びに為替管理につきましては、外資法並びに為替管理法の規定によってやっていっておるのであります。
  248. 横山利秋

    横山委員 それでは、その外資法、為替管理法を昨年やめて対外経済法という法律に改めようとされた、その原因は何でありましたか、また対外経済法案というものをやめられた理由は何でありましたか。
  249. 池田勇人

    ○池田国務大臣 外資法並びに為替管理法につきましては、非常に複雑であり種々雑多でございます。しこうして日本の国際経済というものが、長い間のあれで非常に統制せられておりますので、今これを法律を改正いたしまして、そうして事実の問題を相当きつく規制することよりも、事実上相当ゆるやかになって、しかる後に外資法並びに為替管理法を改正することが適当である、こう思いまして、今回の国会にはとりやめたのでございます。しかし、御承知の通り、外資法並びに為替管理法につきましては、省令その他で非常にこまかく規定しておりますので、まずこういう点につきまして検討を加え、事実上、法で規制することのないような事実をこしらえていきたい、これが今国会に出すことをやめたおもな理由でございます。
  250. 横山利秋

    横山委員 通産大臣は、日米通商航海条約というものが、国際収支に問題のない限りにおいては資本の導入を許すという立場に立っておることを、これを妥当と認めますか。それとも、三十七年でありますか、航海条約を改変するときは。この通商航海条約を今後どういうふうに直そうとされるのですか。
  251. 池田勇人

    ○池田国務大臣 通商航海条約は多分、昭和二十八年だったかと思います。私はそれに関係しておりませんでしたが、外資法並びに外国為替管理法は二十六年だと記憶いたしております。
  252. 横山利秋

    横山委員 いえ、十年間でありますから、今度は三十七年かそこらに終わるという意味で申し上げたわけであります。
  253. 池田勇人

    ○池田国務大臣 そこで、先ほど申し上げましたごとく、今の外資並びに為替管理につきましては、二十六年の法律でやっていっておるのであります。通商航海条約にはお話のような規定がございますが、私は矛盾しておるということよりも、まずアメリカは、今の外資法並びに為替管理法を一応承認してそれでやっていくことを、認めたとは申しませんが、大して文句を言っていない。だから……。
  254. 横山利秋

    横山委員 言っているのです。
  255. 池田勇人

    ○池田国務大臣 私はあまり聞いておりません。為替管理法並びに外資法によってやっておることは、どうしてもいかぬということは私としては聞いておりません。しかし将来の問題といたしましては、通商航海条約にあるような原則に向かって徐々に変えていきたいと考えております。
  256. 横山利秋

    横山委員 ちょっと今、最後の言葉を聞き落としましたが、通商航海条約をどういうふうに直そうということでありますか。
  257. 池田勇人

    ○池田国務大臣 わが国とアメリカとの通商航海条約は、相当ばく然と申しますか、あまり制限規定が置けないような格好でできておるのであります。従いまして、今後の実情を見まして、外資法並びに為替管理法を改正いたしますとすれば、理想は、通商航海条約のような規定でいきたいと思いますが、各国ともいろいろの事情もございますので、十年後の三十八年におきまして改正のときには、外資法並びに為替管理法等、今まで規制しておることを頭に入れながら、交渉を進めたいと思います。
  258. 横山利秋

    横山委員 次の問題に移りたいのでありますが、今度は大蔵大臣にお伺いをいたしたいと思います。  本年度の予算で、やはりアメリカとの経済関係の中で重要なことは、アメリカにおいて外債を募集することであります。この外債は開銀債が三千万ドルでありますか、電電が二千万ドル、五千万ドルの外債を募集をすることの基礎に立って、予算が出ておるわけであります。それが、ブラック世銀総裁からあなたのところへ手紙が来て、外債は国債として募集をしたらどうかということを言ってきた由を聞き、またあなたがそれに対して答えていわく、このままでいきたいということを、新聞記者との会見をして発表をいたしました。しかしそういうあなた自身が、もし募集ができなかったら電電債を優先にさせると言うておられるのであります。ということは、この開銀債が、募集が実際問題としてはできなくなるだろうという想定に立っておられるのでありますか、その辺の観測を伺いたいのであります。
  259. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 ことしの財政投融資計画で、五千万ドルの政府保証の外債を計画しておる、これはただいま御審議をいただいておることだと思います。ところで、これについていろいろの憶測が行なわれております。その憶測の行なわれておりますゆえんは、最近におけるアメリカの市場の金利その他がはたして有利なりやいなやという点が一つ、また政府保証債というものといわゆる国債というものとどういうようにそれを区別したらいいか、その議論があるわけであります。ところで、ただいまお話しになりますように、世銀のブラック総裁から何か言ってきているのではないかというお話でございますが、ブラック総裁から私が手紙をもらったことは事実であります。しかしこれは公式なものとは私は考えておりません。昨年、私の方の人を向こうへやります際に、実は私の私信を持たしてやったのでございますが、その私信に対する一応の返事だ、かようにとれる節のものでありますから、従いまして、いわゆるブラック総裁の手紙そのものが特に重点を置くものでもございませんが、このブラック総裁の手紙そのものにしても、電電債並びに開発銀行債につきましては、何ら言及いたしておりません。それだけははっきり申し上げ得るのであります。従いまして、ただいまの政府保証債云々の問題は、このブラック総裁から来た手紙、これをめぐっての憶測が主たるものであり、新聞記事を作ったようであります。私もこの手紙を事前によく読んでおれば、ただいま記事になりましたような点について、明確に新聞社の諸君にも答え得たと思いますが、そういういきさつのものでございます。その点誤解のないように願いたいと思います。
  260. 横山利秋

    横山委員 誤解のないようにといったところで、自分のところへ来た手紙がこうであるということを言わずに誤解のないようにと言われたって、誤解せざるを得ないのでありますが、その手紙は、それでは、この開銀債並びに電電債の外債募集に何ら支障のないものであるかどうか。またかりに支障がなくても、今のアメリカの経済事情からいって、五千万ドルの外債が円滑に募集されると大蔵大臣としては思っておられるのかどうか。
  261. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 はっきり申し上げ得ることはブラック総裁からの手紙には、電電債並びに開発銀行債については何ら触れておりません。その点ははっきり申し上げておきます。  それから、今のアメリカ市場の問題でございますが、最近、アメリカは金融業者が盛んに日本に参ります。これらの連中は、非常に好意のある意見をしばしば述べております。またアメリカの金利そのものが、昨年は相当引き上げを見ましたが、きわめて最近出しました財務証券、そういうようなものの金利は、最近はやや下がっております。どうも事情がよくつかめない点がございますが、一々金利に心配をしないで——心配しなければならぬことですが、その一時的な現象でとやかく考えるよりも、やはり年間を通じまして、そうして十分考えていくべきではないかと思います。そういう意味から申しますれば、アメリカの金融市場がわが方に有利な際にそういうものを取り扱うべきではないか、かように実は考えている次第であります。
  262. 横山利秋

    横山委員 アメリカの金融事情がわが方に有利なときに取り扱うべきではないかというのは、今私がお伺いしておることとちょっと違うような気がいたすのですが、現在われわれは、五千万ドルの外債に伴う政府の保証を予算総則という問題で扱っておるのです。われわれの審議の対象になっている。従って、その五千万ドルの外債が、政府が提案をいたしておりますように、円滑にアメリカにおいて募集できる見通しがあるのかないのか、本年度の予算の中においての議論をいたしておるわけでありますから、五千万ドルは絶対間違いない、募集できるならできる、できないならできないということを、はっきりして下さい。  それから、一体あなたは新聞記者会見とまるきり違う話をしていらっしゃるのでありますが、あの新聞記者会見における電電債を優先にさせる云々ということは、それではお取り消しになるのですか。
  263. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 今の電電債並びに開発銀行債はただいまのところ私どもはこの年度内にこれを発行し得る、かように実は考えております。その意味で御審議をいただいておるわけであります。  ところで、この電電債が開銀債よりも優先的だという点は、事業官庁といたしまして、特にその点を強く私どもは必要とする、こういう意味の発言をいたしたのであります。いわゆる外債、公社債の発行を減額するという意味ではなかったのでございまして、いろいろ話が出まして、もし五千万ドルができないときには一体どうするのかというような話が出て、政府としては電電債はぜひとも出したい、こういう気持のことを申したわけであります。これは二つともがただいま契約でございますので、片一方がよろしい、こういうような意味では毛頭ございません。
  264. 横山利秋

    横山委員 新聞記者会見であなたが語られたときと違って、まさに楽観きわまる話でありますけれども、それでその五千万ドルが本年度内において消化ができるという確信というものは、どういうところから生まれておるのですか。アメリカにおける金融市場の状況は、この外債というものが当初計画されたときと違ってきわめて悪い。だからこれは実際問題としては、政府としてはまああきらめざるを得ないのではないか。そして電電公社債を優先にして、あと開銀債についてもしもできなかった場合においては、これは開銀において適宜財政投融資その他によって手配をするというのが、あなたが新聞記者会見において報道せられておった構想ではありませんか。その矛盾を私はお伺いしておる。
  265. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 財政投融資計画に外債発行を予定いたしましたのは、昨年中にそれぞれの関係の筋で下相談をしている向きもございます。そういう観点から私ども外債発行、政府保証の公社債発行を実は決意いたしたのでございます。最近アメリカの金融業者等が日本に参っております言動等を見ますと、十分好意のある協力は得られる、かように実は考えておる次第でございます。
  266. 横山利秋

    横山委員 その点について大いに私はアメリカの経済事情の展望その他については意見のあるところでありますけれども、時間がありませんから、それではもう一つの日米経済協力に関連のある問題について質問をいたします。  それは、冒頭に引用いたしましたように、経済協力の一つの側面として低開発国の援助という問題があります。率直に一つお伺いをいたしたいのは、この低開発国に対する援助ということが、この日米の経済協力という問題とどういう関係があるのか。また安全保障条約とどういう関係があるのかという点であります。これは、総理大臣も外務大臣もいないのでありますけれども、経済企画庁長官おいでになるようでありますから、その点を一つ長官からお伺いをいたします。
  267. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 海外経済協力の問題につきましては、今後ともアメリカと協力してやりたいと考えております。御存じの通り大西洋経済会議も近く開かれることとなっておりますので、おそらく日本もこれには出席できるのではないかと思いますが、その大西洋経済会議一つの目的は、低開発国の経済協力という問題でありますので、従いましてそういう意味においてアメリカの勧説によって日本がもし出席することができますれば、日本がアメリカとまた協力して低開発国の経済協力に協力するということに相なると思うのであります。
  268. 横山利秋

    横山委員 全然御回答が違うのであります。私の聞いているのは、低開発国の援助ということが安全保障条約とどういう関係があるか。安全保障条約というのは、もう軍事的に、外交的に先般来ここで意見が行なわれ、その及ぶ地域その他については議論済みでありますが、それで、低開発国の援助とどういう関係があるかということを聞いている。
  269. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 安全保障条約の締結によりまして、低開発国の経済協力は一そう強化されることだ、こう考えております。
  270. 横山利秋

    横山委員 安全保障条約というのは、日本とアメリカの相互防衛援助条約であります。それが低開発国とどういう関係があるかということを聞いている。
  271. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 低開発国の経済協力につきましては、日本の力で、自力でやることもありますし、またアメリカと協力してやることもあると思うのであります。従いまして、そういう意味においてアメリカと協力してやる低開発国の経済協力というものについては、この条約の締結によって一そう強化される、こう考えているのであります。
  272. 横山利秋

    横山委員 まだあなたわかっていないのですね。私の聞いているのは、安全保障条約というのは日本とアメリカとの相互援助防衛の条約である。その及ぶ地域は極東の範囲または日本の列島内と議論の行なわれているところである。そうすると、極東の中にもない、それから日本とアメリカとの相互援助の問題にもない低開発国に、なぜ一体安全保障条約が関係があるかということを聞いている。
  273. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 日米経済協力という意味は、私は極東とかなんとかいう意味ではなくして、それは広く経済協力という意味だと思っておるのでありまして、今の御質問の点は一つ外務大臣に聞いていただかぬと——私の解釈はそういうように考えている次第であります。
  274. 横山利秋

    横山委員 どうも委員長、これはどうしたらいいのでありましょうか。これは私の主要な議題である、経済協力の重要な問題の根幹をなす問題でありますが、どういうふうにしたらよろしゅうございますか。どなたも御答弁をされる人がないようであります。
  275. 小川半次

    小川委員長 政府側は政府側の見解として答弁しておるのでございまするから、なお疑義があるようでしたら追及されるか、あるいは外務大臣が今公務のために外出しておりますので、分科会においてでもこれを究明していただきたいと思います。
  276. 横山利秋

    横山委員 いや、委員長委員長とお話していては何だかおかしなことでありますが、私はきょう安全保障条約の経済協力という部面にわたっていろいろな面からお伺いしておるのですから、その一番根幹になる経済協力というのが、安保条約の中心の及ぶ地域と全然縁もゆかりもない、その目的と縁もゆかりもない低開発国の援助があるのはどういうわけかについて、全然また別の機会に一つ頼むと言われても私は問題にならぬというような気がするのです。どなたか一つ責任を持って御答弁される方がございましたらお願いしたい。
  277. 池田勇人

    ○池田国務大臣 今回の安保条約につきましては、共同防衛と経済協力と二つございます。アメリカと日本との経済協力を増進していくことが目的でございます。そうして、そうすれば日本の経済もよくなって参ります。しからばその次に第二段として、日本が東南アジアの開発をしようというときに、アメリカと経済的に相談し得る。これは適用範囲とかなんとかいう問題ではございません。ちょうど今菅野君の言われたように、西ヨーロッパの持てる諸国が、低開発国の経済開発をしようというときにわれわれが入っていくということは、これは安保条約からきているかどうかという問題になりますと、これはきているかきていないか、少なくともアメリカは日本が入った方がいいだろうということは、日米経済協力の間接的な影響だと私は見受けられると思います。そういう意味におきまして、安保条約は日米間の共同防衛と経済の協力、それができるならば結果としてこういうことが考えられる、私はこういうように考えております。
  278. 横山利秋

    横山委員 大蔵大臣はどうなんでしょう。菅野さんは私はと言い、池田さんも私はと必ずつけ加えて、責任を持って政府としてはと言う人がないのであります。私はこんな答弁では続けて質問する気にならないのです。政府側としては、一体なぜ安全保障条約と日米間の軍事同盟の中における経済協力に、縁もゆかりもなく低開発国の援助というものが入ってくるかについて、統一ある、責任ある答弁を私は伺いたい。
  279. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 安保条約第二条、これはよくお読みになったんだと思いますが、これにはっきり書いてあります。「締約国は、その自由な諸制度を強化することにより、これらの制度の基礎をなす原則の理解を促進することにより、並びに安定及び福祉の条件を助長することによって、平和的かつ友好的な国際関係の一層の発展に貢献する。締約国は、その国際経済政策におけるくい違いを除くことに努め、また、両国の間の経済的協力を促進する。」と、かように実ははっきり申しておるわけでございます。これで明らかだと思います。
  280. 横山利秋

    横山委員 何がはっきりしておるのですか。あなたのお読みになった「並びに安定及び福祉の条件を助長することによって、平和的、友好的な国際関係の一層の発展を期する」ということが、何が低開発国がここではっきりしておるのですか。そのあとを読んでごらんなさいよ。「締約国はその国際経済政策におけるくい違いを除くことに努め、」と言っておるのだが、この点については総理大臣から自由化の問題ですということをはっきり言っている。その次の「両国の間の経済的協力を促進する。」両国と書いてある。日本とアメリカとが経済的に協力するということであって、縁もゆかりもなく、条約の及ぼす地域で全然ない低開発国に対して協力をするということは書いてない。「両国の」ということが書いてある。その点は一体どういう意味です。
  281. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 大事な点を「国際関係の一層の発展を期する」と実はお読みになりましたが、そうじゃなくて「発展に貢献する。」なんです。貢献するということは、第一段の主体はそこにあるのです。これはあくまでも国際関係の一層の発展に貢献するということは、両国だけの経済云々ではないわけであります。後段の方は御指摘の通り日本とアメリカとの両国の問題であります。
  282. 横山利秋

    横山委員 あなたは前の方を読んでない、第二条の冒頭は「締約国は、その自由な諸制度を強化することにより、」この自由な諸制度を強化するということはなすべきことなんです。そのなすべきことによってあなたが読んだような結果になる。こういうことを言っておるのであって、これは仕事じゃないのです。ここの制度というものは、それぞれの国における自由な諸制度を強化すること、それによってだんだんと「平和的かつ友好的な国際関係の一層の発展に貢献する。」といい……。(佐藤国務大臣「貢献する。」と呼ぶ)だから、あなたの言うのは違うと言う。貢献するという前提があって、その前提は何かというと「自由な諸制度を強化する」、ここに最初の動きがある、こう言っているでしょう。だから、私はこの具体的な問題としては、うしろの方についているではないか。うしろの方の国際経済政策の食い違いというなら、もう総理大臣がこれは自由化の問題ですと言っている。あとの方の経済協力という意味でいうならば「両国の」と言っている。アメリカと日本のと、こう言っている。それに縁もゆかりもない低開発国に対して経済協力をともにするというのは一体どういう意味であるか。しかもこのことによって第二世銀に日本がこれから出資をするというのでありますが、一体日本は借りる方なのか、貸す方なのか。低開発国に対するソビエトとアメリカの経済援助競争というものは、断然何といってもソビエトの勝ちで、二分から二分五厘、片方は六分から七分、もう勝負にならぬ。勝負にならぬから、アメリカが一生懸命になって低開発国の援助をする。第二世銀を作る。それに片棒かついで、アメリカの対ソビエト経済援助競争の片棒をかつぐということが、一体どういう関係になってくるのか。この条約の中における第二条にはそういうことが書いてない。書くなら書くようにもっとはっきりしなければならぬ。これは書いてない。だから勝手に、条約の内容を都合のいいように解釈をして、そしてこの低開発国の経済援助をするということは、私は言語道断だと思う。しかも菅野さんはわしゃ知らぬと逃げ、池田さんは池田さんで私はと言い、あなたはあなたで引用にならぬ条文を引用して、ここに関係があると言ってもだめではないかと思うのであります。まだ御返事がありますか。
  283. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 ただいま申し上げますように、日本、アメリカは、自由なる制度を強化することによって、国際の経済の発展に貢献する。貢献するということは、原因とかあるいは目的とかいうことを区別なさることはいかがかと思いますが、やはり低開発国に対しても積極的意図を示している。やはり国際間の経済向上、そういうことが望ましいことだということを私ははっきりうたっておる、かように確信をいたしております。ただいまお話しになりましたように、低開発国に対して共産圏がいろいろ資金的な援助をしておる。なるほどフルシチョフが出るたびに手みやげを持って歩いているということも聞いております。しかし、いわゆるアイゼンハワーの教書にいたしましても、またハーターの国会における証言等を見ましても、共同防衛の問題もさることながら、やはり経済的な向上発展という、低開発国民族のその要望にこたえるということ、これはどうしても必要なことだということを指摘いたしておるわけでございます。自由主義国の中におきましては、国際機関を通じて低開発国の開発に協力する、こういう考え方でございます。
  284. 小川半次

    小川委員長 横山君、申し合せの時間を厳守して下さい。
  285. 横山利秋

    横山委員 私は、御答弁さえよければ、こんなことに問題があるとは思わぬものですから、委員長に御迷惑かけて、また諸君に御迷惑かけて申しわけないのですけれども、この点は政府の答弁が統一されてないじゃありませんか。あなた聞いておってもおわかりになるでしょう。みな私は、私はという冠詞ばっかりで、大蔵大臣の御答弁にしたところで、いや、私は確信してはばからないというお話でありまして、政府の御見解じゃないような気がいたします。委員長はおわかりでございますか。もう一ぺん私は機会をあらためたいと思うのでありますが、政府側の御答弁が、この第二条に関して低開発国との関係について明確を欠く、この際与野党の理事会におきましても、一つ本問題について後刻明確にされる機会を持っていただきたい。委員長一つその点を保留をしておいていただきたいと思うのであります。この点は委員長に善処方をお願いいたしておきます。  時間がなくなって参りましたから、先ほど保留をいたしました点について御質問いたします。それは先ほど国家公務員諸君及び地方公務員諸君の二十五日の問題についてであります。この問題について総務長官に、だれがその責任者であって、だれがその責任者として労働組合の諸君と話し合いをするか、その方式はどういう方式であるか、誠意を持って話し合いに応ずるのであるかどうかという、まずルールの問題をお伺いしておるのでありますが、政府側の責任ある答弁をお伺いしたい。
  286. 椎名悦三郎

    椎名政府委員 給与の問題についてはただいまのところは総務長官総理を助けて……。それから二十五日の問題につきましては、私もできるだけ出席しまして折衝したいと思います。
  287. 横山利秋

    横山委員 その辺を一つ官房長官はっきりして下さい。一体給与担当大臣として益谷さんがきまるという話があるのでありますが、いつ益谷さんにきまるのか。きまったら、益谷さんが労働組合の代表者との話し合いの相手におなりになるのかどうか。また官房長官は給与のことだけと言っておるのでありますが、八項目にわたって、あなたに要求書が出ておりますのは御存じでありましょうね。
  288. 椎名悦三郎

    椎名政府委員 八項目のことにつきましては、承知しております。しかし、この問題を総括してだれがやるということは、一がいに言えないのでありまして、その中には文部大臣の所管の問題もありますし、それから厚生大臣の所管の問題もあります。総括して云々といいますと、これは総理大臣ということになるわけであります。しかし、その当時私に会いたいというから、私は会いまして、このお話を伺ったわけであります。給与の問題については、今申し上げたように、総務長官が今当たっておる。近く所管大臣をきめろという野党からのお申し入れがございまして、できるだけその趣旨を尊重してただいま研究中でございます。
  289. 横山利秋

    横山委員 官房長官御存じのように、先ほど私がちょっとお話をしたのですけれども、この二十五日に、政府として一体だれが窓口であるのか、だれが誠意を持って政府を代表して、働く諸君に対して説得力のある行動をとってくれるのやらわからぬから、それで、そういう不誠意な態度ではいかぬというわけで、二月二十五日に前古未曽有の統一行動が行なわれるのです。それがいいとか悪いとかいうことよりも、それが現に政府のあなたが今はしなくも言ったような、だれが一体やるのかわからぬという政府の態度に憤激があるわけです。ですから、この際あなたがなさることは、給与はだれそれ、あれはだれそれ、わかりません、私もちょっと出たことは出ましたけれども、ということではいかぬのですよ。だれかが全責任を持って、国家公務員の諸君や、地方公務員の諸君や、このほかの官公署の諸君の話し合いの窓口になって、なぜ誠意を持って話し合わないのですか、そういうことだからこそ問題が解決しないじゃありませんか。いかがです。
  290. 椎名悦三郎

    椎名政府委員 責任を持ってやるということになりますと、今申し落としましたが、安保条約の反対ということもある、これは外務大臣、そういうわけで、それを全部窓口になって私が聞けというなら聞いて、そして所管の大臣に取り次ぎます。
  291. 横山利秋

    横山委員 私はあなたに、この内容がいいか悪いかという話をしているのじゃないんですよ。労働者の要求なんだから、希望なんだから、いい悪いはともかくとして、だれかが誠意を持って政府を代表して話を聞いて、それが、その中で気に食わぬことがあるならば、安保がいかぬならいかぬと言やいいじゃありませんか。とにかく、いい悪いはともかくとして、政府を代表する責任者が出て話し合いをして、そうして、こういうことだからという政府の真摯な交渉をなぜなさらぬのか、その責任者はだれだといって聞いているのです。  もう一つ、先ほど給与担当の責任者をきめるという話ですが、今ではあなたがおやりになるのが当然だと私は思っているのですよ。それでは、給与担当の責任者が話があるのは益谷さんですか、きまったらその人が全部おやりになるということなのか、この際ルールをはっきりさせて、労働者諸君との交渉に臨む政府の態度というものをはっきりしてほしい。そうでなければ、あなた方の怠慢きわまる状態です。
  292. 椎名悦三郎

    椎名政府委員 二十五日に各省大臣がそれぞれ代表者と会うということは、ただいま国会の開会最中でありますからむずかしかろうと思います。それで、私ができるだけ総括的に話を伺い、もちろん誠意を持って伺いたいと思います。
  293. 小川半次

    小川委員長 横山君、時間ですから。
  294. 横山利秋

    横山委員 もうこれで最後ですから。わかりました。それじゃ官房長官が本八項目にわたる問題について、責任を持って官公労の諸君と話をするという点について了承をいたしました。ぜひとも、二十五日を前にして、私は政府がほんとうに責任ある態度を持って話し合いをされるように要望して次へ移りたいのであります。  以上総括をいたしますと、私の本日の主題であります安全保障条約の中身における経済協力の問題、私はそれに対して実に不満の念を禁じ得ないのであります。本来、外務大臣がおられたならば総括的にお願いし、総理大臣がおられたならば総括的に私の結論をつけたいと思うのでありますけれども、しかし、この経済協力の内容というものがきわめて空虚なものである、そうして今後に対する展望が具体的に何もない、絵そらごとにひとしいという感じを禁じ得ません。いわんや、先ほどの低開発国の問題については、条約の成文上きわめて疑義あることだと痛感いたしまして、この点につきましては、別途機会をあらためて、安保条約の低開発国に関する問題に対する質問を私はいたしたいと思うのであります。  以上をもって私の質問を終わることにいたします。(拍手)
  295. 小川半次

  296. 横山利秋

    横山委員 それでは私の質問は終わりませんよ。委員長にちょっとお伺いいたしますが、長官がおっしゃるなら、私の発言はこれで終わりませんから、その点を御承知の上、委員長官房長官の御発言を御了承なさって下さい。
  297. 椎名悦三郎

    椎名政府委員 誤解があるといけませんから、念のために申し添えておきますが、誠意を持って陳情を受けます。
  298. 横山利秋

    横山委員 陳情を受けるということが、急にあなたはそういうことをおっしゃったが、私はいろいろなニュアンスを持ってお話ししておるのです。この際それでははっきり、そう形の上でなく、あなたに最後の所信をただしたいと思うのでありますが、とにもかくにも八項目という問題を、官公労の労働者の諸君は政府に対して解決を求めておる、この解決を求めておるものに対して、責任者官房長官であり、その官房長官が誠意を持って会って、話を聞いて、そうして話し合ってその解決に努力をするとおっしゃるのでありますか。そういうことでありますか。——長官、おわかりにならなければもう一ぺん言います。事実問題として八項目の要求書が出ておるのです。それに対して政府の窓口が不統一であった、それではいかぬからと言ったら、官房長官が、私がなります、ここまではよろしい。従って、あなたが責任を持って官公労の代表者と会い、その八項目の問題の解決について善処をする、こういうことであります。言葉を変えて言っておりますけれども、その気持を十分くんで御答弁を願います。
  299. 椎名悦三郎

    椎名政府委員 いわゆる団体交渉の相手方というふうにとられると、少し違いますから、その点は御了承願います。
  300. 小川半次

    小川委員長 横山君、時間がございませんから……。
  301. 横山利秋

    横山委員 そういうことを言われると、私も別な言葉をもって言わざるを得ないのです。そういうことを抜きにして、現にここにある八項目の問題で、二月二十五日に前古未曽有の統一行動がある。しゃくし定木なことをあなたは言っておってはだめじゃありませんか。この際あなたが全責任者になって、そうして官公労の代表者と話をし合い、八項目の解決について努力をし、善処をするのであるかと聞いておるのでありますから、テニオハにとらわれないで、あなたも誠意を持って答弁して下さい。
  302. 椎名悦三郎

    椎名政府委員 繰り返して申し上げるまでもありませんが、前に申し上げた通りでありますから、どうぞ御了承願います。
  303. 横山利秋

    横山委員 いいや、そういう言い方では話ができません。長官、私が十分に言葉も注意しながら、何といいますか、人間的な立場においてあなたに聞いているのです。すなおに聞いていることについては、すなおにお答えになったらどうですか。現に事実問題として、二月二十五日に全国まれに見る統一行動が行なわれて、大都市においては五割、その他のところにおいては三割、そしてまれに見る大集会が全国各地で行なわれるという。だから、私は政府に対して要望しておることは、今までのようなばらばらのことで、だれが責任者かわからぬようなことではいかぬじゃないか。だから責任者をきめなさい、きめた責任者は誠意を持ってこの問題について官公労諸君と話し合い、解決に努力をするということにすべきではないかといって聞いているのでありますから、この点、あなたもあまりしゃくし定木な話の仕方をして、妙な問題に持っていかないように、誠意を持ってお答えをされることを私は望んでやまないのであります。
  304. 椎名悦三郎

    椎名政府委員 たとえば全国一律に八千円の最低賃金を実施せよという……。
  305. 横山利秋

    横山委員 内容のことを言っているのじゃないですよ。
  306. 椎名悦三郎

    椎名政府委員 そういったような問題を責任を持って解決に当たるというような、いわゆる団体交渉の相手方として私を御了解下さると違いますから、その点を御了承を得ておくのであります。
  307. 横山利秋

    横山委員 もう一点だけ。私はそういう安保の条約について、あなたが善処を——何といいますか、要求に対して反対というあなたの直接の今の返事を聞いておるのではないのです。私の言うておることは、あなたもよくおわかりのことだと私は思うのでありますが、もう一ぺん言いますけれども、今、二十五日を前にして、官公労の諸君が現実にこの八項目の問題を政府に対して善処を要求をしておる。その事実について、責任者があなたであって、あなたが政府を代表して話を聞いて、そうしてその要求について善処をする、こういうことについて私はあなたの御返事を求めておるのでありますから、個々の内容についてあなたの御返事を求めておるのではないのです。どうですか。
  308. 椎名悦三郎

    椎名政府委員 誠意を持って陳情を承ります。     …………………………………
  309. 小川半次

    小川委員長 滝井義高君。
  310. 滝井義高

    ○滝井委員 私は、今回の昭和三十五年度の一兆五千六百九十六億円のこの予算の中で谷間になっておるところ、犠牲になっておるところ、盲点になっておるところ、そういう点を一つ質問さしていただきたいと思います。大蔵省は、ことしの予算はヒゴロクロウナシの予算だといっておるが、そのいつも苦労させられておるところの立場で少し質問をしたいと思います。  総括的に、ことしの予算を見てみますと、ことしの予算はなるほどキャッチ・フレーズとしては、災害復旧、国土保全という旗じるしが立っております。同時に、この予算財政的に見たら中立の予算だ、こうおっしゃっておるわけです。しさいに検討してみますと、ことしの予算は、経費の膨張というものが端的に表われておる。経費の膨張は経費の膨張を呼んで、予算自体が硬直性に陥っているということです。これが私は端的に言えば、ことしの予算の特徴じゃないかと思います。しかも、そればかりではございません。人件費が非常に増加の傾向にあるということ、その人件費の増加というものは、行政機構が大きくなりつつあります。しかも、人件費が異常に増加するということは役人の待遇が悪くなりつつあります。従って、日本の役所には人材が集まらないという傾向が今後三十六年以降著明に出るだろうという、こういう心配がことしの予算にはあります。菅野さんも首を縦に振りつつあるのですが、そういう状態です。いわば硬直をして弾力がない。従ってこの弾力のない予算というものは、いわば景気変動に対して、何と申しますか、調節の機能が薄くなっておるということです。一言にして言えば、こういうものがことしの予算の、あなた方のヒゴロクロウナシという予算の特徴なんです。そこで私は、そのような予算の中からきわめて具体的に質問をしてみたいと思います。  まずことしの予算から来年度に増加する経費を一つ一つ拾ってみますと、まず人件費が端的にいって増加をします。たとえば防衛庁だけで九十億円ことしは増加をしておる。さらに物件費も増加をします。これらのものは、これは年々増加をしておるから、そう大きな問題ではないと思います。義務教育費が増加をします。社会保障費も、これは皆保険政策なり国民年金で飛躍的に増加をしていきます。さらに交付税、これも税の自然増が特に三税を中心にして増加をする限り、増加をしていきます。さらに恩給は大蔵大臣も御存じの通り、昭和三十六年はピークです。今年でも官吏の恩給、それから公務扶助料、軍人恩給をひっくるめると千三百億です。来年はおそらく千四百億くらいになります。それから食管の会計です。食管の会計をごらんになると、現在米作日本一といわれておる農民の方々が一番心配しているのは何かというと、一体将来の日本の米の運命はどうなるでしょうかといって、日本一の米作りの人たちがみな心配しておるということです。それは食管会計に毎年百億ずつの赤字が出て、一般会計から入れなければならぬという情勢があるということです。さらにもう一つは、治山治水の十カ年計画で一兆五百億円の予算が十カ年間に出ていかなければならぬということです。これはもちろん地方の分も含まれるわけです。さらにもう一つは、ロッキードの債務負担行為、それから三十六年度には外債の償還が八千八百万ドルです。集中的に現われてきます。こう見てみますと、来年は、今年暗い谷間に陥れられ、犠牲をしいられた部面にまた犠牲の起こる可能性がすでに今年の予算の中にその萌芽を見ることができるということです。  そこで私はまず第一に大蔵大臣にお尋ねをしたいのは、どうもきょうの質問等を通じてみておりましても、あるいは参議院における補正予算審議の過程を通じてみても、一体防衛庁国庫債務負担行為の総額は幾らなんだ、これがどうもはっきりしない。みな答弁が違います。佐藤さんのきょうの答弁赤城さんのきょうの答弁も食い違っておる。一本国庫債務負担行為防衛庁の総額は幾らですか。
  311. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 防衛庁関係ですね、九百十八億です。
  312. 滝井義高

    ○滝井委員 今大蔵大臣は九百十八億と言われましたが、赤城さんは、八百九十六億円と答弁されたんです。これは一体今のあなたの九百十八億と八百九十六億とはどういう工合で違ったんですか。これはあなた方みなお聞きだ。
  313. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 はっきり申し上げますが、ロッキード関係が六百九十八億、それに部品関係が十八億、それから艦船その他で二百三億という金額です。
  314. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、「財政法第二十八条による昭和三十五年度予算参考書類」の三十二ページを見て下さい。ここに出ております三十六年度以降支出予定額の防衛庁関係債務負担行為が出ております。これを足しますと千十九億円になる。
  315. 石原周夫

    ○石原政府委員 ただいま滝井委員の仰せになられまするのは、三十二ページにございまする三十六年度以降国庫債務負担行為調書というところにありますもののトータルかと思います。それは三十五年度以前におきまして国庫債務負担行為をとりまして、それが三十六年度以降に及ぶ分もございまするから、それを含んでおります。三十五年度に新規にとりまする国庫債務負担行為は、合計いたしますと千六十六億、これは防衛庁及び防衛庁以外を含みます。
  316. 滝井義高

    ○滝井委員 今の千六十六億というのは防衛庁だけですか。
  317. 石原周夫

    ○石原政府委員 防衛庁以外を含んでおります。そのうち防衛庁関係が、先ほど大臣がお答え申し上げました九百十八億。それ以外がございまして、千六十六億というのは、三十五年度に新規にとりまする国庫債務負担行為その他であります。
  318. 滝井義高

    ○滝井委員 石原主計局長が参議院で答えておるのは九百四十億になっておる。これはそうすると間違いですか。
  319. 石原周夫

    ○石原政府委員 九百四十億というのは、総理府全体の数字でありまして、これは防衛庁数字と読み違えて申し上げました。その点は間違いであります。訂正いたします。
  320. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、九百四十億は総理府全体で、間違い。そのときにあなたは、ロッキード分が七百九十八億とお答えになっておる。この数字はどうですか。今の大臣の答弁と違いますよ。
  321. 石原周夫

    ○石原政府委員 私は六百九十八億と申し上げたと思っております。六百九十八億が先ほど大臣からお答えをいただきましたようにロッキード104の金であります。その以外に関連器材が十八億ございまして、それを合わせますると七百十六億という数字になります。
  322. 滝井義高

    ○滝井委員 今お答えのように、あなた方の答弁を私全部調べてみたが、そのときそのときで全部違う。だからこれは、議員が勉強さえしていなければ、そのときそのとき数字だけぺらぺらしゃべっていけばもはや国会は通る、こういう考え方です。こういう大事な国庫債務負担行為のようなものをこういうようにそのときそのときの勝手な答弁をしていくということは、私は許されぬと思うのです。だからもう少し大臣は数字は注意して、きちっとした正確なところで言って下さい。こういうように約千億になんなんとする国庫債務負担行為というのが、これから四カ年間に防衛庁にとられていくことになるわけです。これは算術平均すれば、四年間に出ていくのですから、まあ二百億か二百五十億確実に出ていく。こういう形にことしの予算はなっております。しかも治山治水というものに一兆五百億が出ていく。こうなりますと、一体社会保障の部面はどうなるのかということです。これは私は菅野経済企画庁長官にまずお尋ねしたいのですが、私は予算委員会のたびごとにここで社会保障の問題を質問をいたします。歴代の経済企画庁長官は、当然経済五カ年計画に見合うところの社会保障の長期計画を立てなければならぬのだ、こうおっしゃる。あなたが今度就任せられてから、何かこういう長期の社会保障の計画でも御検討になったことがありますか。
  323. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 本委員会でたびたび申し上げております通り、国民所得の倍増の長期済経計画を目下策定中でありまして、その中におきましても、社会保障をどうするかということは重要な問題なのであります。従いまして、今まだそこまでいっておりませんが、具体的の策につきましては目下作業中であります。
  324. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、社会保障の長期計画というものは、基本的にはどういう構想で目下検討中ですか。
  325. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 どういう構想ということにつきましては、まだ具体的にきめておりませんが、とにかく社会的に非常に不遇な人々に対する保障ということは、これは日本の現在の国情といたしましては重要な問題でありますから、従ってその点においては極力経済の許す範囲内において支出すべきだと、こう考えておるのであります。
  326. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、企画庁長官のいわゆる学者的な良心で見て、国民所得の何%程度を長期計画に持っていったらいいというお考えなんですか。内閣は、私たちが何か質問しますと、ことしの社会保障費は千八百十六億で予算の一一・八%だ、防衛費は千五百四十五億で、これよりかはるかに多く出ておるのだ、こういう説明をすぐ佐藤大蔵大臣などされておる。赤城さんもされておる。一体どの程度の国民所得に対して社会保障の経費というものを支出されようとするのか。
  327. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 ただいまのところは、国民所得の大体一割くらい社会保障に支出しておるようでありますが、これはやはり日本の経済成長に順応して社会保障の経費を計画すべきだ、こう考えておりますので、今後の日本の経済の成長がいかになるかということによって、最後的に決定さるべき問題だと考えております。
  328. 滝井義高

    ○滝井委員 国民所得の一割というと——予算の一割でしょう。
  329. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 予算の一割であります。
  330. 滝井義高

    ○滝井委員 予算の一割くらいではどうにもならぬ。今から私質問していきますが、どうにもならないということなんですよ。そこで内閣の経済企画庁長官の意見を聞いてみても、長期の計画というのは今検討中だという。しかし国民所得のどの程度を出すかということになると、はっきりしないのです。ここで所管の渡邊厚生大臣にお聞きするのですが、岸内閣の重要な政策としては、福祉国家の建設をするということを言われている。もちろん福祉国家を作るということについては、保守党のあなた方の考え方と、社会主義政策を実現していこうとするわれわれの考え方とは開きがあります。しかし、開きがあるが、社会保障を充実強化をするという一点については、保守党もわれわれも大体一致をしているのです。そうしますと、当然福祉国家を作るというスローガンを掲げたからには、福祉国家への一つの重要な道としての社会保障の長期計画というものがなければならぬと思うのです。一体あなたは、社会保障の長期計画というものをどういう工合にして今後岸内閣の、福祉国家の柱として推進していかれようとする考えを持っているのか、具体的な構想があれば、この際明らかにしておいていただきたいと思う。
  331. 渡邊良夫

    ○渡邊国務大臣 福祉国家建設の柱といたしまして、私どもは、三十四年から着手いたし、三十五年度中に完了いたしまする国民皆保険、それから国民年金制度が昨年の十一月から裁定が開始いたされまして、そしてこれが本年の二月に当初四カ月分を支給されるという福祉年金、これら二つの柱のほかに、さらに環境衛生施設の充実あるいは母子対策、あるいは育児対策あるいは青少年対策、こういうような環境施設の十カ年計画、それぞれ年次をきめまして、経済企画庁が考えておりまする経済倍増計画に相応いたしましたところの、おくれをとらないところの一つの福祉国家建設にその予算を充実いたしていきたいと、かように考えておる次第でございます。
  332. 滝井義高

    ○滝井委員 厚生省はそういうお考えらしいのですが、たとえば保育所の子供の一日三円のおやつ代もなかなか、陳情に陳情を重ねて、ようやくロッキード一機の半額二億九千四百七十一万円を出した内閣です。よほど渡邊さんがふんどしを締めぬと、今言ったようなことは実現できないのじゃないかという感じがするのです。  そこで私は具体的に、まず第一に尋ねていきたい。昭和三十六年になりますと、いわゆる国民皆保険とともに、年金制度の拠出制が始まるわけです。一体厚生省は昭和三十六年になったら、どの程度の拠出制の被保険者を持つと考えておるのか。拠出制の対象になる人口というものを、一体どの程度に考えておるか。そしてその人たちが、一体どの程度の保険料を出すと考えておるのか。
  333. 渡邊良夫

    ○渡邊国務大臣 大体百円と百五十円でありまして、そして二千万人を三十五年度において対象といたしておるような次第でございます。
  334. 滝井義高

    ○滝井委員 当初の計画よりかだいぶ狂ってきておりますが、二千万人で間違いありませんか。私は二千万人は違っておると思う。
  335. 渡邊良夫

    ○渡邊国務大臣 これは毎年逐次増加していく傾向にございます。
  336. 滝井義高

    ○滝井委員 厚生省が当初われわれに予算の法案の審議にあたって説明したときには、これは三千三百万人だったはずですが、どうして二千万人と千三百万人も減ったのですか。
  337. 渡邊良夫

    ○渡邊国務大臣 平準年度において二千万人と、かように一応策定したわけであります。
  338. 滝井義高

    ○滝井委員 当初説明したときは三千三百万人であったのだが、どうして二千万人と、千三百万人も対象人員が減少したのかということです。同時にもう一つは、しからばその二千万人というものが、どの程度の保険料を納めるのか。
  339. 渡邊良夫

    ○渡邊国務大臣 保険料の総額につきましては、今ここでちょっと事務当局に算定させております。
  340. 滝井義高

    ○滝井委員 もう一ぺん、事務当局でもかまいませんが、二千万人に間違いありませんか。それとその二千万人が納める保険料の総額は一体幾らになるのか。
  341. 小山進次郎

    ○小山(進)政府委員 年度当初二千万、間違いございません。保険料は、初年度は大体二百三十億程度を見込んでおります。
  342. 滝井義高

    ○滝井委員 三千三百万人が二千万人に減少した理由は述べないようでございますが、これはいずれ機会を別にして尋ねましょう。二百三十億と申しますと、これの半額を政府が持つことになるわけです。保険料総額が二百三十億ですね。——わかりました。大蔵大臣、今の答弁でおわかりの通り、来年度になりますと、二百三十億の拠出制の国民年金の保険料が納まることになるわけです。そこで国はこの二百三十億の半分の百十五億、これは当然保険財政に組み入れなければなりませんが、間違いなくこれは組み入れていただけましょうね。
  343. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 法律の通りいたしていくつもりでございます。
  344. 滝井義高

    ○滝井委員 法律の通りいたすというが、組み入れてくれるかどうか、必ず来年度、三十六年度予算に計上してくれるかどうかということを尋ねておるのです。法律の通りではいかぬ。組み入れてくれるかどうか。法律があってもどうも内閣はときどき無視をするのです。
  345. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 今法律がそういうふうになっておりますので、そういう計画でございます。
  346. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、私はこれから厚生省に一つお尋ねしたい。今のように大蔵大臣は、二百三十億の半額は必ず組み入れるということになりました。そうしますと、国民健康保険と年金との競合の関係です。国民健康保険の対象になるものは独立自営業者、すなわち農民と中小企業者です。国民年金の対象になるものも農民と中小企業者です。特に日本の人口の約四割を占める三千五、六百万人の農民というものが大部分この国民年金に入るわけです。皆さんの内閣が国民所得の十カ年倍増計画をお立てになったときに、農村の所得が倍にならぬということが大きな問題点だったと思うのです。現在国民健康保険では一世帯の保険料が一年に三千三百円です。そうしますと年金を入れますと、まず三十才の夫婦がおれば、これは一人が百円ずつですから二人で二百円、年間二千四百円ですね。これだけ納めることになる。前の国民健康保険も一年一世帯三千三百円、そうすると、約五、六千円の金を納めなければならぬことになるわけです。これが一体順当に取れるかどうかという問題です。この確信をまず厚生省にお伺いしたい。順当に国民年金の拠出制が来年所得倍増計画の中で、その倍増の波に乗れない階層の多い農村を対象にして、それだけのお金が取れる自信があるのかということです。
  347. 渡邊良夫

    ○渡邊国務大臣 お説の通りさような心配もございますけれども、私どもは一応これをやってみた上で、さらに将来の問題として検討してみたい、かように考えております。
  348. 滝井義高

    ○滝井委員 それは大へんなことです。一応やってみて将来の問題として検討するというような、そんなあやふやな年金なら、これは大へんですよ。だからそういう懸念があるので、最近は学界その他においてはこの際特別税を作って——たとえば昔、取引高税というのがありました。これは一%かければ千億お金が取れるわけです。そういうものを作って、この際拠出制の年金というものを、そういう方向に切りかえてみたらという意見さえ最近は台頭し始めたのです。一体これは内閣として自信があるのかどうか。しかも佐藤大蔵大臣、この点はこういうことになっておるわけです。拠出制の年金のために国は百二、三十億の金を出さなければなりませんが、同時に一方においては無拠出の年金が来年度は十二カ月分になる。ことしは十カ月分です。来年は十二カ月分の無拠出年金を出さなければならぬから、これが三百億要る。三百億と百二、三十億ですから、四百二、三十億の金を年金で出さなければならぬ。これは私はいいことだと思う。いいことだが、一体それだけのものを思い切って国が出すだけの腹がまえがあるかどうか。これもあると断言をしてもらえば、自後の問題はまた自後で考えますが、大蔵大臣どうですか。それだけの金を自信を持って出せるかどうか。
  349. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 ちょっと数字が大きいので、私もちょっと立ちかねたのですが、無拠出三百億というのは違いはしませんか。とにかく今やっておりますことは、計画通り実施するつもりでございます。
  350. 滝井義高

    ○滝井委員 実はことし無拠出と、それから事務費その他を合わせて、二百八十九億くらい組んでおります。ところがこれはいわゆる老齢福祉年金を非常に締めておる。十三万円の所得制限をつける。十九万円をつける。五十万円をつける。三段階の所得制限をつけておるからこうなっておる。あるいは母子家庭だってそうです。いわゆるほんとうに死別した母子家庭以外は金をやらぬようになっておる。こういうものをゆるめていきますと、確実に三百億になる。しかも十二カ月になるのですから。これは当初の試算は三百四億だった。それを締めて上げて減らしておるからこういうことになっておるのです。こういうように、どうも年金の問題になると、もう少し佐藤大蔵大臣に厚生省は教育しておかなければだめですよ。しかも、福祉国家を作るというなら、所得保障の一つの柱なんですから、もう少しこの点をやはり注意してもらわぬといかぬと思うのです。とにかく無拠出、拠出、来年は自信を持って予算に組むということだけ言って下さったのですから、私はきょうそれだけ聞いておけばよろしい。これはいわば今後社会保障が進展をしていく上に非常にいいことであるけれども、関連する他の政策というものにこれが大きな制御をする役割をしてくるのです。そこで、これは将来の問題を今質問したのですが、これから具体的にことしの予算の中に現われておるいわゆる本年度予算の中で、社会保障の前進を阻害をしておるというか、そういう点を今度は質問してみたいと思うのです。  まず厚生省の、これは大臣が答弁できれば大臣でいいですが、大臣ができなければ局長でかまいません。結核医療の補助金が二十五億五千九百六十三万円計上しております。この中で医療療養費は十九億七千八万九千円です。この中における健康保険分と生活保護分と国民健康保険分の内訳がわかれば一つ教えてもらいたい。
  351. 渡邊良夫

    ○渡邊国務大臣 これは事務当局でも今数字を詳細に調べておりますから、あとで御報告いたします。
  352. 滝井義高

    ○滝井委員 時間がかかりますから、ではその問題の核心に入りますが、これは非常に大事な点ですし、皆保険政策の上において一つの盲点になっておりますから、国民健康保険と結核予防法が合体をした場合と、健康保険の家族と結核予防法が合体をした場合に、経費の支出は一体どうなっておるかということです。これは大蔵省はどういう支出の仕方をしておりますか。健康保険の家族と結核予防法が合体した場合に医療費の十九億七千八万円の支出の仕方というのは一体どういう工合になっておるかということです。
  353. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 便宜私からお答え申し上げます。結核予防法によります医療費については、公費負担か大体二分の一行なわれるのでありますが、その場合について、国民健康保険法におきましては、結核予防法による公費負担が行なわれました場合においてそれを差し引きまして、残り二分の一が国民健康保険法の療養の給付の対象となるのであります。それについて、もし一部負担を五割ということになりますと、その残りのさらに二分の一、結局公費負担分が二分の一、保険の負担分が四分の一、患者の一部負担金が四分の一と相なります。  それから健康保険の被扶養者につきましては、医療に要する費用の二分の一について給付が行なわれるということになっております。従いましてこの場合におきましては、公費負担分が二分の一、それから療養の給付が二分の一、こういうふうになっております。その間若干の食い違いが出て参っております。これは法律が違うからいたし方ないのであります。
  354. 滝井義高

    ○滝井委員 厚生大臣、今お聞きのことがわかりましたか。これは一番大事な点なんです。もう一ぺん説明しますと、国民健康保険と結核予防法がくっつきますと、結核予防法が優先をするのです。だから、百円医療費がかかったならば、五十円は結核予防法が見てくれるのです。ところが健康保険では残りの五十円のうち二十五円は保険者が見ましょう、二十五円は患者さん、あなたが負担しなさい、こうなるのです。ところが、今度同じ半額負担の健康保険ではどうなるかというと、結核予防法が百円のうち五十円を見てくれる、残りの五十円は保険が見てくれて、健康保険の家族は一文も払わなくてもいい。国民健康保険の家族は二十五円を払わなければならぬ、これが今の制度です。これは一体どういう法律の根拠から今のようなものが出てくるか。
  355. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 これは現在の国民健康保険法とそれから健康保険法の規定の違いからそういうふうになってきます。
  356. 滝井義高

    ○滝井委員 国民健康保険法と健康保険法の違いから出てくるというような、政治的な答弁ではだめなんです。御存じの通り、今後内閣が福祉国家を建設をしていこうというのでしょう。そうして少なくとも三十五年度末には四千八百万人の国民を全部国民健康保険に入れますというのです。その入れる国民健康保険の対象者の一年の医療費は幾らかというと、二千二百十七円ですよ。健康保険の受ける医療費は幾らかというと、健康保険の本人は八千七百六十八円です。だから、国民健康保険の医療の給付よりか健康保険の方が四倍高い医療を受けるのです。そして四倍も高い医療を受ける健康保険の方は、結核予防法でも半額を見、保険も半分を見てくれるが、二千二百十七円の健康保険法の四分の一しか至らない国民健康保険には、結核予防法も半額は見るけれども、保険では半額は見てくれぬという矛盾が起こっている。これは一つの盲点です。これは法律だというけれども、この法律は読んでも読んでもわからない。そうならない。こういう矛盾を今までの歴代の厚生大臣は目をつぶってやってきた。これは結核予防法をやろうとするならば、当然改正しなければいかぬ。ほんとうに皆保険政策を進めようとするなら、こういう点を勇気を持って解消しなければいかぬと思うのです。これは法律でそうなっておるというけれども、法律は読んでみてもあいまいです。そうしますと今のように、国民健康保険と今度は結核予防法とこう重なりますと、四分の一、さいぜん言った二十五円は今度はその患者が負担をすることになるが、その患者が貧しいと生活保護がここに入ってくる。生活保護が入ると、一つの結核という病気をなおすのに、国民健康保険と結核予防法と生活保護の医療扶助と三本の法律が働かなければ、一人の結核をなおせないというのが今の制度です。こういうめんどうくさい方法で今の制度というものが行なわれておる。だから、こういう点はどうです。渡邊厚生大臣、即座にこれは改めなければならぬと思う。私はことしの十九億の予算というものは、今のような盲点があると思うのですが、これをあなたお直しになるお気持がありますか。
  357. 渡邊良夫

    ○渡邊国務大臣 関係法規の調整につきまして、法的検討をいたしたいと考えております。
  358. 滝井義高

    ○滝井委員 今のような点を直さなければ、これは今根本的な問題は、健康保険の家族と国民健康保険の被保険者と全く同じ状態です。従ってこういう点を一つぜひ直してもらわなければいかぬ。  次に、これは大蔵大臣にお尋ねしますが、ことしの健康保険の予算で昨年十億であったものを五億に削った。これはここに生き証人がおります。池田通産大臣が大蔵大臣の当時、あるいは一萬田さんが大蔵大臣の当時に、健康保険の会計が赤字になろうと黒字になろうと、昭和三十一年一般会計からこの厚生保険特別会計に入れた三十億というものは変更しません、毎年必ず三十億入れますというのが、これは池田さんと私との約束であり、当時岸さんも総理大臣でそういう約束をしました。一萬田さんも約束をした。ところが、これが三十三年以来十億に削られた。三十三年の予算委員会で、私は当時これを追及するためにここに出て参った。ところが当時の厚生大臣の堀木さんが、胆石というか、何というか、胃けいれんを起こして、予算委員会の前の日になって休んでしまった。そうして自治庁長官の郡さんがかわって厚生大臣になりまして、私はしろうとでございますからそういう点はわかりませんと言って、結局流してしまったのです。ところがあなたの代になったら、冷酷無情にもそれをまた五億にしたのです。これは一体どういう理由ですか。——ちょっと待って下さい。渡邊さん、あなたの方はあとで聞きますから、削った側の大蔵大臣の理由を聞くのです。約束違反です。
  359. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 健保の財政状態はよほど改善されまして、その結果減らしたのでございます。他面支出も相当かさんだ面が出ておりますので、予算のやりくりでございます。
  360. 滝井義高

    ○滝井委員 健保の財政がよくなったから減らしたというだけでは理由になりません。なぜならば、これは大蔵大臣あるいは御存じないかもしれませんけれども、昭和二十九年以来健康保険の問題というものは、日本の朝野を非常に大きくゆるがした問題です。しかもその健康保険の問題で、患者の一部負担というものもやったし、料率の引き上げもやったのです。患者は今までは初診のとき四十円しか負担しなかったものを百円負担することにし、入院をしたら三十円負担することにしたのです。そして千分の六十の料率を千分の六十五に上げたのです。これによって年間約五十億以上の金を保険会計というものはかせいだのです。ところがそういうものはそのままにしておるのですよ。料率の引き下げもまだやっておりません。今年の二月からやると言っておるが、一部負担もそのままにしておるのですよ。それから標準報酬の引き上げもやったのですよ。さらに継続給付といって、結核なんかになったときの継続給付も資格の制限をしたのですよ。こういうように被保険者大衆にはあらゆる手かせ足かせをかけておって、保険経済が少し黒字になったといって、国だけが財政負担を削るということは全く公約違反ですよ。そこに約束をした大蔵大臣の池田さんがおる。きょうは私はわざと来てもらった。赤字になろうと黒字になろうと、池田勇人が目の黒い間は絶対にこれは削りませんと約束をしておる。ところが大蔵大臣がかわったらもう削るというのなら、これは何のために予算委員会をやりますか。
  361. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 先ほど申し上げますように、今回は料率も下げますし、なおこの会計自体が非常に改善されておるということが大きな理由であります。そうしてその料率自身も、下げてもなお財政状態には悪影響がない。また国庫の支出の点から見ますと、社会保障費関係で他の面においてはやはり必要とするものもございますので、そういう意味で予算のやりくりをしているということでございます。
  362. 滝井義高

    ○滝井委員 言葉というものは都合がいいもので、そのときそのときだけ言いのがれをすればいいということではいかぬと思うのです。これは大臣はしろうとだから平気でそういうことも言えますけれども、一部負担もやらしておりますし、料率も上げておったし、それから今度は、むしろこの際家族給付を七割に引き上げなければいかぬ、財政黒字ならば。そういうこともやろうとしないのです。だからこの点は私は今の答弁では納得ができません。  渡邊厚生大臣、料率の改定を今やろうということを社会保険審議会に諮問をしておるようでございますが、料率を千分の二だけ引き下げますと、大体これは二十五億程度です。そうしますと二十五億あれば、一部負担のふやした分を一つ削ってもらいたいと私は思う。一部負担の軽減をはかる金は十二億七千万円くらいしか要らない。だから保険料を千分の一下げて、そしてもうこの際、事業主は岩戸景気でもうけておるのだから、労働者だけ千分の一下げる方法を講じて、そしてこの一部負担をもとに返してもらいたいと思うのです。入院なんかは要らぬ。こういうことはできませんか。
  363. 渡邊良夫

    ○渡邊国務大臣 千分の六十五を千分の六十三に引き下げるために、社会保障制度審議会に今かけまして、答申を待っておるような次第でございます。それでありまして、これを一部負担に回すかどうかということにつきましては、やはり審議会等の意見も尊重いたしまして、私どもは十分検討をいたしてみたいと、かように考えております。
  364. 滝井義高

    ○滝井委員 あなた方は審議会の意見を尊重すると言うけれども、今まで審議会の意見を尊重してやったことはないのですよ。法律でも、社会保険審議会のやったこととは違った法律をいつでも出してくる。このときだけ言ったのではいかぬのです。だからあなた方の所信を貫いたらいい。一部負担十二億だから、二十五億のうちの半分出したらこれはなくなってしまう。第一、料率を千分の二下げても、被保険者は一カ月に十円そこそこしか恩恵を受けないのですよ。それならば病気になったときに一部負担がなくなった方がいいのです。達者の間は十円はがまんができる。病気のときには三十円とか百円はがまんできないのです。だからそこらの認識というものを、あたたかい政治への心があれば、そういう認識というものはすぐわかってくるわけです。どうですか、大臣、所信を貫くことはできませんか。
  365. 渡邊良夫

    ○渡邊国務大臣 十分検討いたしたい、かように考えております。
  366. 滝井義高

    ○滝井委員 十分検討するとおっしゃるけれども、まあそれはそれでいいでしょう。  次には、これは労働大臣と大蔵大臣です。失業保険です。失業保険の特別会計に対して、国庫は今まで三分の一補助することになっておった。ところがこれを四分の一に削減した理由というのはどういうことなのか。
  367. 松野頼三

    ○松野国務大臣 失業保険の会計は、三十四年度に料率の改定の提案をいたしまして、ただいま議会で御審議をいただいておるわけであります。まだ通過はいたしておりません。
  368. 滝井義高

    ○滝井委員 通過をしておらないが、なぜ三分の一から四分の一に下げたのかという理由を聞いておるのです。
  369. 松野頼三

    ○松野国務大臣 失業保険の料率は、御承知のように料率の引き下げと、負担金の引き下げ、経費の負担の軽減をいたしております。千分の十六を千分の十四、なおそのほかに日雇いの改定をいたしております。会計上におきまして、もちろん国庫が多いに越したことはございませんが、御承知のごとく最近の失業状況及び失業保険会計の内容を見ますると、大体積立金が六百億を越えるかと存じます。会計がそういう非常に異常な健全会計になりましたので、この際料率というものも、国の料率と被保険者の料率というものをあわせて改善して参りたいという意味で、改定を出したのが昨年でございます。
  370. 滝井義高

    ○滝井委員 こういうように、とにかく社会保障関係の経費というものはずんずん削られていっているのです。防衛費はぐんぐんふえていく。役に立たないロッキードのごとき飛行機を作って平気でおる。ところが三円のおやつ代というものは非常に厳重に、陳情に陳情を重ねなければ組まないという、これが今の保守党の政治の姿ですよ。ちょっと会計が赤字になればその赤字の中から——これはいわばピンはねです。ピンをはねてどこかへ持っていくという姿、まさに冷酷無情です。松野さん、あなたは失業保険の特別会計に国から幾らの事務費をもらっておりますか。
  371. 松野頼三

    ○松野国務大臣 失業保険の事務費は、御承知のごとく六百億の積立金の金利、本年は約四十億かになります。四十億を今日事務費とその経営の内容に充てておるわけであります。
  372. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと厚生省にお聞きしますが、厚生省は健康保険事務費を国からもらっておりますか、それともあなたの方の積立金の利子で運用しておりますか、どうです。
  373. 渡邊良夫

    ○渡邊国務大臣 ごくわずか少額を除いては全部国で負担いたしております。
  374. 滝井義高

    ○滝井委員 厚生省は全部事務費をもらっております。松野さん、あなたはそうすると事務費は、今運用原資は七百六十五億五百七十四万二千円ありますね。この七百六十五億の運用の収入が四十一億三千万円です。昨年は三十三億、これは全部事務費です。法律違反です。法律は何と書いてありますか。失業保険法をお読みになると、失業保険法の二十八条は何と書いてありますか。失業保険の事務費というものは、国が持つことになっておる。予算の範囲でも……。そうすると、予算の範囲で持つことになっておるということは、これは一円とか二円でも予算の範囲で持ったのだというわけにはいかぬと思うのです。これはどうですか。この点は歴代の労働大臣がぼやぼやしておったと私は思うのです。こんなばかなことはないのです。そういう運用収入が出たならば、失業保険の施設の改善をやったり、あるいは失業保険の給付の内容の改善に充てるならば、私は何も言いません。ところがそれをのめのめと大蔵省にやられて、事務費に四十一億全部回すなんというばかなことはないです。事務費の総額は二十四億ですから、少なくとも二十億以上の金というものは事務費に回っておるわけです。あとが失業保険の施設の建設その他に回っておる。これは明らかに法律違反です。他のどこの省でも、積立金の中から事務費を出しておるところはないですよ。あなたのところの失業保険だけですよ。
  375. 松野頼三

    ○松野国務大臣 失業保険特別会計法の第三条によりまして、歳入及び歳出の項目が出ております。その項目によってこの措置をとっておるわけでございます。
  376. 滝井義高

    ○滝井委員 出ておりますけれども、法律の二十八条をお読みになれば、予算の範囲内で失業保険事業の事務の執行に要する経費を負担するということになっておるのです。だから、こういう点は明らかにおかしいじゃありませんか。今まで三分の一の国庫補助のあったものを四分の一に削っていく。そうして事務費は全部その保険会計が持てというならば、失業対策に対しては国が責任を持たないのかということです。労働者と同時に事業主の金で失業対策をやって、国というものは責任を持たないのかということです。少なくとも事務費というものは、全部とは言いません。相当部分というものは、厚生年金なり健康保険と同じように、国が出すべきだと私は思うのです。もしそういう状態を作るならば、今後厚生年金も三十億以上の積立金ができますよ。健康保険も、約二百十億の積立金が三十五年末にはできますよ。そうするとその利子を全部今度は事務費へやれ、こういう悪例を、労働省が今まで通りずっとやっていくなら、だんだん厚生省もやられてしまう。そうするとますます社会保障の経費というものは、お金を供出しなければならぬことになって、少しも前進はない。松野さんどうですか。今のような答弁では私は満足しません。
  377. 松野頼三

    ○松野国務大臣 滝井委員、もちろん給付費の三分の一の負担というのを政府がするのであります。しかも法律できめまして、この積立金は、政府の監督のもとにこれを管理するわけであります。そうしてその運営の中の利子というものを、運営費として当然第三条によって使い得るのでありますから、一般会計から出すか、あるいは特別会計から出すかの出し方の議論は出て参りましょうけれども、今日の場合、失業保険に一般会計から出して、そして積立金をふやすよりも、やはり現実問題としては、来年度は七百何十億になりましょう。昨年は六百数十億の積立金があるのでありますから、要するにその趣旨としては、国が責任を持ち、国の会計によってこれをやるという趣旨は少しも差しつかえない、こう私は考えております。
  378. 滝井義高

    ○滝井委員 それはあなたの考えは間違いです。そういうことを言うならば、積立金がたくさんできれば、国はそういうものには責任を持たなくてもいいという精神になってしまう。むしろ私は、そういう経費があったならば、たとえば失業手当を出すとか、訓練手当をどんどん出していくとか、失業保険の給付期間を延ばすとか、こういう政策に転ずべきですよ。それを国の補助を三分の一から四分の一に削ることに役立て、同時に今度は積立金の運用の利子を事務費に回すというのは、だれが考えても邪道ですよ。それでは社会保障の進歩というものがないのです。国が責任を持つという姿はない。福祉国家の姿は出てこない。それではまさに失業保険特別会計の独立採算制です。だからその点は私は納得ができません。今後この点は、もう少しあなたの方は考えなければいかぬと思う。これによって、たとえば三十五年度の保険料は三百七十八億、保険給付は三百四十六億ですから、この三分の一だったら百十五億、これを四分の一の八十六億しか予算を計上してないから、ここで三十億ピンをはねている。健康保険で二十五億ピンをはね、そして失業保険で三十億のピンをはねて、社会保障関係は五十五億もピンをはねられている。こういう状態で、とにかく予算の組み方は、国民健康保険とか、健康保険とか、失業保険、年金もおそらく来年そういうことになりはしないかと思って、実は私は前もって言質をとっておいたのです。こういうように、あつものにこりてなますを吹くわけではないけれども、今の大蔵省のやり方というものは疑わざるを得ない。そういう点で、いわばヒゴロクロウナシという予算の中で、こういうところがみな苦労させられておるということです。こういう点、佐藤大蔵大臣はもっと愛情のある予算の組み方をしてもらわないと、硬直した予算の中で、硬直の下敷きになるものは、こういう貧しい谷間に住む大衆であるということです。こういう点、一つ御注意を願いたいと思います。  時間が来ますから、次は石炭対策に移ります。これもやはり現在の日本の岩戸景気の中における暗い谷間の産業です。時代は平和共存の時代です。しかも平和共存の中に、同時に競争の時代を含んでおります。さらに欧州では共同市場あるいは経済共同体を作ろうというような機運が起こっております。同時に貿易・為替の自由化の波が襲っております。さらに一方には進歩的な宇宙開発の波も、宇宙開発の時代だということで唱えられております。そういう中で、われわれが世界の大きな経済の波にさおさしていくためには、当然貿易自由化の中におけるエネルギーの地位というものは、非常に重要になって参るわけです。一体政府はこのエネルギーの問題を、この貿易の自由化の中でどういう工合に考えておるかという点を私はお聞きしたい。  有澤さんの基本問題部会でも、総合エネルギー対策というものは、すぐれて長期的な視覚を持たなければならぬ、包括的な計画の策定が必要なんだということを言ってくれておるわけです。そこで今から二、三年前に、昭和三十三年には五千三百五十万トン、昭和五十年には七千二百万トンの長期エネルギー計画をお立てになったのですが、あの計画というものは、もうこれは御破算にして、新たな計画を作ることになるのかどうか、これをまずお答え願いたいと思います。
  379. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 エネルギー問題につきましては、お話の通り現在やっております五カ年経済計画と大体違わぬようにエネルギーが消費されておりますが、ただそのうち違っているのは石炭の問題であります。しかしこのエネルギー問題についてはもう少し根本的に——日本においては天然ガスの問題もありますし、また原子力のエネルギーの問題もありますので、この長期経済計画を立てる上におきましては、エネルギー部門がやはり重要なエレメントになっておりますから、経済審議会の一部門といたしまして、エネルギー部会を設けまして、そしてエネルギーの長期対策を目下研究中であります。できれば三月か四月ごろまでに結論を出したい、こう考えて目下いろいろ審議をいたしておる最中であります。
  380. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、衆議院を予算が通過するころには、その概要でも予算委員会に提出できますか。
  381. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 私の希望といたしましては、三月末までには結論を出してもらいたいと思っておりますが、はたしてそれまでに結論が出るかどうかということについては、私としてはまだ見通しがついておりません。委員会のその後の経過によって、大体三月末かあるいは四月ということに相なると思うのであります。
  382. 滝井義高

    ○滝井委員 三月末か四月の初め、すなわち予算国会を通るまでにはぜひ一つ委員会に出してもらいたいと思います。  そうしますと、問題を石炭に限ってみたいと思いますが、先般の臨時国会以来池田通産大臣に、再々にわたって石炭の根本的な問題について御質問申し上げましたが、これは通常国会まで待ってくれ、こういうことでございました。いよいよ通常国会になったわけですが、石炭というものは本質的に需給の安定を要求いたします。そうすると、需給の安定を要求する石炭には、当然長期の需給計画というものがなければならぬと思いますが、これは大臣の方で何かお立てになっておりますか。
  383. 池田勇人

    ○池田国務大臣 長期の計画につきましては、今経済企画庁長官からお答え申し上げたごとく、ただいま検討いたしておるのでございます。ただ大体昭和三十四年度におきましては、四千八百三十万トンというのでいっております。従いまして、一時相当多かった貯炭もだんだん減って参っております。三十五年度につきましては、大体五千二百万トンの生産計画で、消費を五千三百万トンと見ております。従いまして、七百九十万トン程度の昭和三十五年度の繰り越しが六百八、九十万トンとして一手六年度に繰り越す予定にいたしておるのであります。
  384. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、三十五年度の石炭の需給の見通しというものは、大体出炭が五千二百万トンで、消費が五千三百万トンということになりますと、消費の方が百万トン多くなるわけですね。これは国内炭と外炭とに分けるとどういう割合になりますか。
  385. 池田勇人

    ○池田国務大臣 これは国内炭だけでございまして、原料炭並びに無煙炭につきましては別に計算いたしております。
  386. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、外炭も加えた一般炭と原料炭との割合をお示し願いたいと思います。
  387. 池田勇人

    ○池田国務大臣 輸入炭は大体私の記憶では五百七十万トンと考えております。うち無煙炭が五十万トンで、原料炭が五百二十万トン。
  388. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、五千三百万トンの消費があるということになりますと、三十四年度に比べて相当の需要増が見込まれるわけです。一体この需要増というものはどの部門に需要増が出ておるのか。そうしてその需要増の出ておる部門の見通しについて、大体その需要増は安定的にずっと伸びていく見通しなのか、それとも三十五年度だけに需要増があるのか、需要増の部門と、その部門の見通し。
  389. 池田勇人

    ○池田国務大臣 これはボイラー規制法、また重油の値段、あるいはまた石炭の価格等によって違ってくるのでございますが、おもなる需要者であります電力関係につきましては、大体毎年ふやす計画でいっております。そうしてまた鉄鋼の方につきましては、これも今鉄鋼業者と原料炭業者が折衝いたしておりますが、こういうものも鉄鋼がふえればある程度ふえるのじゃないか、またガスの方面につきましても、ある程度の需要増があるのじゃないか、しかしこれは原油なりあるいは重油の規制とも関連をいたす問題でありまして、今一がいには申し上げられませんが、今年よりは大体鉱工業生産もある程度伸びると見込んでおりますので、私は五千三百万トンの消費はあると予想いたしておるのであります。
  390. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、ボイラーの規制法の延長、それから重油関税の引き上げというものは、予算に重油の方は五十七億七千万円ですか、出ておるから、当然これはやることになるわけですが、ボイラー規制法の方もお延ばしになることは確実ですね。どの程度お延ばしになりますか。
  391. 池田勇人

    ○池田国務大臣 ある程度の修正を加えまして、三年を限り延期するということを近日法案の修正で出したいと考えております。
  392. 滝井義高

    ○滝井委員 ある程度の条件をつけて三年に限るというのは、いわば日本の石炭鉱業の合理化というものが三十八年を目途としておる。従ってその前までには何とかなるだろうということで三年に限ったわけですか。
  393. 池田勇人

    ○池田国務大臣 石炭鉱業の合理化とにらみ合わせまして三年間ときめたのであります。ある程度の修正と申しますのは、ごく小さい、たとえば一トン・ボイラー程度のものはこの際ボイラー規制法からはずしてはどうかという気持で検討を加えております。
  394. 滝井義高

    ○滝井委員 次には石炭の需要というのは、一般に上期より下期に集中するわけです。ところがこれは、われわれと内閣の方の見方は少し違いますが、今年の下期にはどうも、やはり景気が下降をすることも予想される。菅野さんはそうじゃない。やはり高原的にずっとなだらかに上っていくだろうという、この前、この委員会における河野密さんかだれかに対する答弁があったと思います。池田通産大臣の見通しとしては、大体下期においても、石炭の需要というものは落ちない。ずっとやはりある程度上昇過程をたどっていくと、こう見て差しつかえありませんか。
  395. 池田勇人

    ○池田国務大臣 下期の景気がどうなるかという問題よりも、私は先ほど申し上げましたごとく、重油あるいは原油に対しましては、相当の規制を続けて参りますし、また鉱工業生産が御承知の通り、一一・八%の上昇を見ておりますし、また最近の状況から見まして、一時千百万トンの貯炭が今九百万トン程度になっておること等から考えまして、大体五千三百万トンの消費と見て適当ではないかと考えております。
  396. 滝井義高

    ○滝井委員 実は私がそういうことを心配するのは、今までは石炭は斜陽産業であった。石炭の寿命は大体一週間で命がなくなるのだ、こう言っておったら、石炭は一週間どころか二十日くらい生きていっておる。そうして今あなたがおっしゃったように、一千百万トンもあった貯炭が九百万トン以下になる、特に全国の業者の貯炭は去年の七月が五百八十二万トン、十二月末は三百八十万トン、一月末は三百二十六万トン、ちょっとみると、本年の年度末になりますと、三百万トンを割る、二百五十万トンぐらいに業者の手持ちはなるのじゃないかとさえ新聞は報じておるわけです。いわば三段飛びに石炭産業に春が来たなんということを書いておる。それほどまでに楽観は許さないと思いますけれども、とにかく、すぐ死ぬと思っておった病人がなかなか持てるぞ、こういう傾向が出てきたことは間違いないと思うのです。そこで私は、この前政府が昭和三十三年には五千三百五十万トンの石炭を掘りなさい、こういうことでみんななけなしの金を借りて、そうして縦坑を作ったりしたところが、もうその年から四千八百万トンくらいしか使えないのだ、こういうことでみなお手あげになったのです。そこで三段飛びに春が来たというような形で、これは石炭大丈夫だといっておって、あなた方の見通しも五千三百万トンの需要があるのだといっておって、下期になったら減った、こういうことでは池田通産大臣の罪は万死に値することになるわけです。そこで私はきょうはここは特に念を入れてあなたの見通しをお聞きしておるわけです。大丈夫ですか。
  397. 池田勇人

    ○池田国務大臣 私は大丈夫と言いたいほど勉強し、自信をもって言っております。
  398. 滝井義高

    ○滝井委員 三十億は目の黒い間は削らぬといって、すぐ前の大臣が削ったこともありますので、きょうは一つ正真正銘あなたのその言葉を私は信頼しておきたいと思います。  次は、昭和三十八年度までに炭価を業界は八百円下げる、こういうことだったわけです。ところがあなたの方にできておる石炭鉱業審議会の有澤先生のところでは、行政的な施策も加えて、そうして政府は千二百円くらいの引き下げがいいのだ、こういうことの結論を出した。すなわち四百円の差額というものは助成措置というもので下げていくのだ、こういうことになったわけです。そこで過去の実績を見てみますと、三十三年度には三十二年に比して多分二百円か二百五十円くらい下がっております。それから三十四年度は三十三年に比して電力で二百五十円で、原料炭で三百円くらい下がっております。そうしますと、一体千二百円というものは、三十四年で二百五十円くらい下がっておりますから、実質的には三十八年までには千円くらい下げればいいかと思いますが、この千円を下げる具体的な年次的な計画というものは、どういう工合にして千円を下げるのか、そういう長期の割合と、できれば短期の、ことし三十五年は幾ら下げるというこの二点について一つ御説明願いたいと思います。
  399. 池田勇人

    ○池田国務大臣 業者が当初申しました八百円引き下げ、また石炭審議会の生産部会が決議しました千二百円、いずれも三十三年を基準としてのあれで、お話の通りであります。そうして三十四年には今言ったように二、三百円下がりました。三十五年につきましてはまだ幾ら下げるということはきまっておりません。大体生産の状況、消費のそれ等を見まして今後これはきめ得る問題だと思います。
  400. 滝井義高

    ○滝井委員 そこらあたりを少し実は私ははっきりしてもらいたいと思うのです、勉強されておるのですから。五千二百万トンの出炭があって五千三百万トンの消費があるんだ、そうしますと、これを大ざっぱにいって、やはりわれわれが炭価を下げる場合には、これはあなたいろいろ施策を出されておるわけですから、流通面においてどの程度、それから生産面において合理化で大体どの程度というこの大ざっぱな数字、それは二十円、三十円違ったって、私は池田さんもうそを言ったとは申しません。しかしどの程度政府は三十五年に下げるという腹がまえがなければならぬ。何となれば、予算がそういうようにきまっておるのですから、その予算から、五千二百万トンの出炭に対して五千三百万トンの消費があれば、政府の組んだ予算がこのくらいだから大体この程度のものは下がるだろうという行政の指導的な引き下げのめどというものがなければならぬと思うのですが。
  401. 池田勇人

    ○池田国務大臣 行政的に幾ら下げろということは私は今考えておりませんが、幾ら下がるかということにつきましての検討は、今お話のように流通面でどれだけ、生産面でどれだけ、これは石炭審議会におきまして目下検討中でございます。答申を得まして意見があれば申し上げたいと思います。まだ答申が来ておりません。
  402. 滝井義高

    ○滝井委員 このくらい下げたいというあなたのお気持でけっこうです。
  403. 池田勇人

    ○池田国務大臣 通産大臣は調査中のものにつきまして、とやこう言うことは慎しみたいと思います。
  404. 滝井義高

    ○滝井委員 池田通産大臣も御存じの通り、現在石炭の流通経費は炭価の一割九分、約二割程度占めておる。特にこれは運賃等の輸送経費というものがその大部分を占めておるわけです。それから産炭地が九州と北海道です。この九州と北海道で出炭の八割五分、それでしかも使うところはどこかというと、関東、東海、近畿というようなこういう三地区、東京も含めますが、こういうところで四割三分くらい石炭を使ってしまっておるわけです。しかも銘柄は三千種に及ぶ銘柄があって、そしてそれが無計画に輸送販売される。こういうことではこれはどうもならぬのですが、そこらあたりのことをあなたは相当予算も計上されておるのですから、もう少しはっきりしてもらいたいと思うのです。こういうところがあまりはっきりしないものですから、大手の業者でもむちゃくちゃに石炭を掘らせる。そうしてガスの爆発なんかをやってとうとい労働者の生命を殺す、こういうことになるのです。昨日、私新聞を読んでおったところが、何か週末静養のために川奈に岸総理が行っておった。そこで天気晴朗でゴルフをやったら、岸さんの成績は悪かったけれども、三井鉱山の栗木社長の成績は非常にいい。君のところは炭鉱が不景気でストライキをやっておるのになかなかすごい勢いじゃないかというようなことを言っておる。こういうように大炭鉱の今ストをやっておるまっ最中の社長さんは、これは総理大臣と一緒にゴルフを楽しんでおる。自分の炭鉱の三池では労働者がみんな資金カンパをやって、何とかストライキをしてもらわなければと言っておる。こういう明暗両極があるということ、そしてしかもその暗い方の労働者の姿を見るとどういうことかというと、十九世紀のあのキングスレーの詩のように、けれども労働者は働かなければならぬ、男は働かなければならぬ、そして女は泣かなければならぬ、こういう形が出ておる。合理化々々々で一生懸命働かしておって、労働者はガス爆発で殺してしまう。その奥さんは死体にすがりついて泣かなければならぬ。社長はゴルフをやっておる。内閣は大体何ぼ下げるかということを予算委員会では示さぬ。これでは石炭産業をどう持っていくかというこの大事な場面で、私は全く情けないことだと思うのです。このキングスレーの詩は十九世紀です。今は原子力の二十世紀の後半です。宇宙開発の時代です。その十九世紀のあの魚をとりに行く漁夫たちが歌ったと同じような詩を、今の日本の炭鉱の労働者が歌わなければならぬというのは悲惨ですよ。こういう点についてやっぱり政府はもう少し積極的にそこらあたりを目標を早く定めて早く推進する必要があると思う。どんどん日にちは進んでおります。私はこれだけ言っても、あなたはどうも科学的なものでなければ、腰だめ的なものは答えられないとおっしゃいますから、これ以上言いませんけれども、これはどうですか池田さん、いつごろまでに出るのですか、その基本部会の答申は。
  405. 池田勇人

    ○池田国務大臣 御承知の通り石炭の値段というものは、年度の当初にきまるものでもないということはおわかりと思います。従いまして、私はそう急いできめるよりも、十分の検討を加えた方がいいと思います。また答申が出ましても、石炭業者と国鉄との関係、電力会社との関係、あるいは製鉄会社との関係、これに通産大臣がこれだけ下げるべきだということを先にどんどん言うということは、これはよくないことだと思います。腹づもりはこしらえますけれども、今早急に急いで答申を求めなければならぬという情勢でもないと考えております。
  406. 滝井義高

    ○滝井委員 松野さんにお尋ねしますが、千二百円のこの炭価の引き下げが三十八年度までに行なわれましたときに、炭鉱労働者の賃金の動向というものは一体どうなるとお考えになっておりますか。
  407. 松野頼三

    ○松野国務大臣 もちろん賃金の動向は、予想することはむずかしいことでございます。今日現状では、炭鉱労働者の平均賃金というのは、大体統計上二万四千数百円というのが、三十三年の統計でございます。三十四年の後半期は、少し上昇に向かったかと存じます。従って賃金の動向というのは、今後いろいろな傾向はございますけれども、炭鉱の賃金がどうかという予想は、これはなかながむずかしいことで、私は軽々には言えるものではないと考えております。
  408. 滝井義高

    ○滝井委員 どうもなかなか慎重に逃げおるのですが、松野さん、過去においてたとえば昭和二十九年ごろから三十四年くらいまでに、これはあなたができなければ事務当局でけっこうですが、実績はどの程度上がっておりますか。
  409. 松野頼三

    ○松野国務大臣 三十年は石炭は一万八千四百円、三十一年が一万九千九百円、三十二年が二万四千百円、三十三年が二万四千五百円、三十四年は多少の上向きだという程度で、まだ正確には出ておりません。
  410. 滝井義高

    ○滝井委員 まあ三割ぐらいは上がっておりますね。従って平均しますと、ここ三、四年の間に一年一割くらいの上昇はあるということです。これは今度池田さんの方になるのですが、千二百円炭価を引き下げた場合に、三十八年度までに労働者の賃金というものは当然上昇しなければならぬと思うのですが、どの程度の上昇を——これはあなたがお考えになっておるか、業者がお考えになっておることだと思うのですが、あなたとしては一体どの程度の上昇をお考えになるのか。
  411. 池田勇人

    ○池田国務大臣 石炭審議会が千二百円下げるべきだというときの計算の根拠には、やっぱり労賃の引き上げを認めておるようです。一年に三・八%ずつ上がっていく計算になっておるようでございます。労働関係の人はそれでは足らぬという議論もあったやに聞いております。一応そういう計算でいっております。
  412. 滝井義高

    ○滝井委員 松野さん、今お聞きの通り一年に三・八%でしょう。これは所得倍増計画というものに乗せていった場合に、他の労働者との比較は明らかに低いです。過去の実績から見て、私の調べた統計では、昭和二十九年から三十三年の四カ年間に、全国炭鉱労務者の平均給与は一万七千八十二円から二万五千三百十円に上がっている。四割八分上かっておるのですね。今のあなたのより私の方が上になっておりますが、そうなっております。ところがこれから三十八年までは一年三・八%しか上げない。三分の一しか上げないということなのですね。そうしますと、これは相当問題だと思うのです。これは民間の産業ですから、政府がどうこうというわけにはいかぬと思います。しかしやはり賃金問題というものは、日本の基礎産業においては重要な問題です。従って労働省なり通産省というものは、この賃金の問題については相当真剣に今後討議をしておいてもらわなければいかぬと思うのです。これは池田さんと松野さんにお願いしておきますから、今後この炭価千二百円引き下げの過程における賃金の動向というものを一体どういう工合に指導していくか、これはぜひ一つお願いいたしておきます。  次には、炭鉱の近代化の助成金として二十一億四千万円のお金を出しているわけです、ことしの予算では。これは利子がついておりません。無利子です。そのほかに開発銀行の融資のワクが電力やら鉄鉱やら石炭とともに多分三百十億ぐらいあったのじゃないかと記憶しております。その三百十億の中で一体幾らの金をお出しになるのかということなのです。
  413. 池田勇人

    ○池田国務大臣 開発銀行から予定しております貸出金額は八十億でございます。政府の予算に組んでおります合理化の二十一億四千万円は別であります。
  414. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、二十一億四千万円の無利子のお金と、開発銀行の八十億のお金と、それから業者の方から出ている新長期計画と申しますか、それを見てみますと、多分千二百億ぐらいの金が要る。その中で三十五年度は三百億ぐらいだ、こういうことが出ておるのですよ、業者の方の出ておるのを見ると。この関係は一体どうなるのですか。
  415. 池田勇人

    ○池田国務大臣 大体お話の通りのように考えております。千二百何ぼだったかと思います。
  416. 滝井義高

    ○滝井委員 その二十一億四千万円の無利子のお金と開発銀行の八十億と業者の計画との関係は、関係があるのか、全然関係がないのかということなのです。
  417. 池田勇人

    ○池田国務大臣 千二百何十億の内訳でございます。関係がございます。
  418. 滝井義高

    ○滝井委員 それと関係があるということになると、これは少し問題が出てくると思うのですが、二十一億四千万円というこの予算に組んでおるお金は、一体どういうような配分方法を行ないますか。
  419. 池田勇人

    ○池田国務大臣 まず一億四千万円は流通関係の方でございます。あとの二十億のうち十八億六千万円は、大手の縦坑並びに機械設備、残り一億四千万円は中小企業の機械化を予定いたしております。
  420. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、十八億六千万円の金を縦坑その他の機械化、近代化のためにお使いになることになるのですが、この二十一億の中の十八億六千万円をもらった炭鉱と、こういうものを全然もらわない炭鉱との間に、非常な格差が出てくるわけですね。というのは、開発銀行からは今まで利子は九分だったですね。それを二分五厘負けてもらって事業団に納めておったのですが、今度二分五厘はよろしい、六分五厘か何かに下げてやろう、こういうことになっておるらしいのですが、十八億六千万円をもらった炭鉱とそうでない炭鉱との格差が拡大をしてくる。そうして、しかも民間会社に全然利子のつかない——これは政策としては非常にいいことですが、利子のつかない金を貸していく。そうしてそれはあるとき払いの催促なしだという形に結果としてはなってくるのじゃないかという感じがするのです。まあ、もうかったときに金を払うということになるだろうと思うのです、今の炭価の状態ですから。そこらの関係というものは一体どうなっておるのか。
  421. 池田勇人

    ○池田国務大臣 この炭鉱経営の会社に貸すのでございますが、大体十八カ所を予定しております。従ってたとえば三菱のどこの山、あるいは三井のどこの山ときまるわけであります。だから三菱にやって三井にやらぬという考え方じゃございません。大体年に二十五万トン採掘ができて、そうして二十年以上続け得るという炭鉱を選んで事業団が決定いたすのでございます。そうして、貸しました金は、あるとき払いというのじゃございません、年賦で返させます。二十五年以内に年賦で返すということに相なると思います。
  422. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、大体大手の十八社に、比較的優秀な山を選んで、そう不公平のないように貸していく、こういうことになるので、各社間のアンバランスというものはそう出ない、こう理解して差しつかえないですか。
  423. 池田勇人

    ○池田国務大臣 私は、各社間のアンバランスということよりも、全体の石炭企業がどうあるべきかということを主題にして考えております。どこの山に幾ら貸すということはまだ存じておりません。事業団がきめられると思います。しかしそのもとにつきまして、通産省といたしましては、予算要求上、ある案は持っておると思います。
  424. 滝井義高

    ○滝井委員 当初多分通産省では、三十八年までに近代化助成費としては百八十五億くらいを予定して、その五十億くらいを多分要求したと思うのです。ところがそれが三分の一の十八億六千万円程度になったのですが、そのためにどこか大きな支障を来たしておるという点がありますか。
  425. 池田勇人

    ○池田国務大臣 貸付の対象を縦坑あるいは主要機械とするか、あるいはまた主要でない方面にも貸すかという問題もございまして、大体縦坑並びに主要機械ということになれば、全体として百億ばかり予定いたしておりますので、大体千二百円の引き下げを期待し得るのではないかと思っております。
  426. 滝井義高

    ○滝井委員 次には、先般業者が新昭和石炭というものを作ったわけです。これは多分百万トン買うということで作ったのじゃないかと思うのですが、これは今どういうことになっておりますか。
  427. 池田勇人

    ○池田国務大臣 昨年の暮れで二十六万トンか二十八万トンだったかと思います。御承知の通り、最近石炭の売れ行きは相当活発になりましたので、ある程度減っておるのじゃないかと思います。
  428. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、新昭和石炭は作ったけれども、現在は炭がどんどん売れるものだから、あまり活用ができないという状態ですか。
  429. 池田勇人

    ○池田国務大臣 初めの百万トンというような予定は、三井が入る予定だったようですが、三井が入りませんし、いろいろな関係がございまして、ただいま申し上げましたように、最高のピークで二十八万トンだったかと思います。
  430. 滝井義高

    ○滝井委員 炭価引き下げの一つの大きな柱としては、やはり流通機構の合理化ということが当面の議題になることは当然でございますが、その場合に、この新昭和石炭でも活用して、ここに政府が流通機構の一元化と申しますか、そういうことをやる御意思はございませんか。
  431. 池田勇人

    ○池田国務大臣 先ほど申し上げましたごとく、石炭の炭価の引き下げにつきましては、流通面におきまして相当改善しなければならぬと思います。これはなかなかやっかいな問題でございまして、新昭和石炭は御承知の通り大手だけでございます。九州から大阪方面に運ぶ石炭は大手だけでないものでありますから、そうして品種はお話の通り、二千、三千ということになっておりますので、この流通関係をどうやっていこうかということはなかなかやっかいなことであります。今検討いたしております。ただ考えられることでは、やはりまず第一に荷役設備、港湾をよくすることがだれが考えても当然なことであります。また別に船を作りまして、ピストン輸送ということもあったのでありますが、これは北海道のような大手炭鉱では割合いいのでございますが、九州なんかの方面につきましては、今すぐというわけにも参りませんので、いろいろ考えていきたいと思います。
  432. 滝井義高

    ○滝井委員 次は、今回整備事業団を改組して、合理化事業団にするということが新聞その他に報じられております。今まで三百三十万トンの買い上げに百万トン追加して、四百三十万トンの買い上げをやるということになっておるのですが、その現在の実績というものはどういうようになっていますか。
  433. 池田勇人

    ○池田国務大臣 四百三十万トンのうち、大体三百六十万トンくらいが一応きまっておるのじゃないかと思います。数字に間違いがございましたら、あとで訂正させていただきます。今まではスクラップなどを整備事業団でやっておったのです。今度はお話の合理化に対しまする貸付もやらせたいというので、スクラップとビルドの両方をやらすことにいたしたい、こう考えておるのであります。なお四百三十万トンでは、将来のことを考えまするとまだ十分でございませんので、合理化法を改正いたしまして、二百万トンふやし、全体として六百三十万トンの予定にいたしたいと思っております。
  434. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、四百三十万トンのうち約三百六十万トン程度買い上げられておるので、二百七、八十万トンは残っておる。さらにそれに二百万トンを追加をしていく、こういうことになるわけです。そうしますとそれに見合う労働対策、それに見合う当然職業紹介に関する長期の計画と、それから暫定的に出てくる労働者に対する緊急就労対策事業、こういうものが当然具体的に計画としてマッチしてこなければならぬと思うのですが、その点はどういうように労働省と通産省はお考えになっているか。
  435. 池田勇人

    ○池田国務大臣 予定の四百三十万トンのうち、三百六十万トンと申しましたが、三百五十万トンでございます。それが本年度内に大体整理の予定でございまして、三百五十万トンのうち相当の分がまだ整理中であるのでございます。そして全体の四百三十万トンというものを、もう二百万トンふやしまして、当初から申しますと六百三十万トンの整理計画でございます。これは派生失業者いわゆる離職者というものは整備事業団だけではございません。大手の方も計画しておるのでありまするが、今その数字につきましては、事務当局の方からお答えいたします。
  436. 樋詰誠明

    ○樋詰政府委員 大体今までの実績から申しますと、百万トンの規模の炭鉱を買い上げに伴いまして、大体八千人程度の人間がそこに働いていて、失業するという格好になっております。
  437. 滝井義高

    ○滝井委員 百万トンに八千人の失業者が出るのですが、労働省は昭和三十八年までに大手、中小それから職員もひっくるめて大体十万人の失業者が出るというのが、この前三菱の前社長が来られたときの意見です。従って当然それに見合う長期の職業紹介に関する計画なり、それから臨時就労対策事業なりを立てなければならぬと思うのです。最近における日本の雇用の状態を見ても、おわかりの通り炭鉱労務者でも若い者の雇用というものは進んで参ります。現在日本においては中学校を卒業したり、高等学校を卒業したフレッシュな労働力というものはむしろ不足をしておる。ところが四十才以上の老齢、老化的な労働力というものは過剰状態です。これは日本の今の労働情勢の一つの特徴です。そうしますと、炭鉱から離職をしてくる労働者というものは多く四十才以上の者が多いわけです。そうしますと、広域職業紹介なり職業訓練のベースに乗らない相当の労働者というものが出てきて、そしてその労働者諸君というものが一般失対なり緊急就労対策事業にたまってくる傾向があるわけです。こういうことは、ニコヨン大学に入学してから十カ年間、なおニコヨン大学を卒業できぬという人がだんだん出てきているわけです。こういう点について、一体労働省はこの炭鉱の近代化、合理化の波の前にいかなる根本的な対策というものをお持ちになっておるのか、これを一つこの機会に明らかにしていただいて、産業政策としての石炭合理化政策とそれを受けて立つ労働政策とが車の両輪として推進をされ、それに予算の裏づけが佐藤さんの方からなされることによって、初めて私は石炭政策というものが、ほんとうに貿易自由化の基礎産業としての役割を果たし得ると思うのです。それを一つあなたの方の池田さんに見合った対策、百万人について八千人ないし九千人の失業者が出るのですが、それを一体どういう工合に受けとめてやる長期の計画をお持ちでありますか。少なくとも三十八年までの計画というものをどういう工合にお考えになっておるのか、それをお聞かせ願いたいと思います。
  438. 松野頼三

    ○松野国務大臣 昨年の臨時国会で御審議をいただきまして対策人員二万一千人、三十五年度三万一千人に予定いたしております。もちろん合理化と必ずしも——三十八年度まで継続的にどういう数字をとるかということは、毎年の事情で変わりますが、本年としてはさしあたり三万一千人という対策を立てることが妥当であるという数字で三万一千人を予定いたしました。もちろん合理化とか、労使間の問題でございますから、三万一千人の数を確約するかどうかそれはわかりません。しかし一応私たちが予想できるすべての統計を調べて三十五年は三万一千人は立てたわけで、三十八年度に何万人ということはこれはまだ今後の石炭対策の基本的な問題とかあるいは労使間の問題もございますから、予想することはなかなかむずかしいと思いますけれど、やはり労務対策でございますから、ある程度の安全率を見て、昨年の補正予算の二万一千、本年の三万一千、合せて五万二千人という数字ならば、私は三十五年度は十分、どちらかと言えば対策を立て得る、その内容につきましては御承知のごとく緊急就労とか移住資金とか職業訓練とかあるいは一時的の鉱害復旧、公共事業の吸収あるいは一時的な、地域的な一般失対というものを含めまして三万一千の予算を立てて、総額二十三億を御審議いただいておるわけでございます。
  439. 小川半次

    小川委員長 滝井君、申し合せの時間が過ぎておりますから、委員長あと五分間だけ許しますから、その範囲内でお願いいたします。
  440. 滝井義高

    ○滝井委員 実は私が心配をするのは、いわゆる緊急就労対策事業、ことし多分七千五百人、一般失対で多分こういう炭鉱労務者は四千人くらいいくと思うのです。そうしますと、この三万一千人の約半数に近い程度の諸君がいわばニコヨン大学ということになるわけです。この人たちは一体将来どういう方向にその職種を転換をして、恒久的な職を与えるかということは、これは今後のあなたの政治の上において一番考えておかなければならぬ点だと思うのです。こういう点を何か具体的に、こういう方向に持っていったらいいというお考えがあれば、この機会にお示ししていただいておきたいと思います。
  441. 松野頼三

    ○松野国務大臣 石炭の問題は、大体労務者の平均年令が三十四才だと思います。従ってある程度高年令層に入るわけでありまして、この対策というのは、昨年から御案内のごとく特別立法いたしまして、初めてこの問題と実は取り組んだわけであります。幸いその後におきまして、広域職業紹介の業種別を申しますと、一番多数入りましたものが建設業であります。一月末で約二千人をこえました。予算としては三千五百人を予定いたしております、今年の三月三十一日まで。一月末で二千人をこえまして、その業種の中で一番大口は建設業、第二番目には機械工業、それから精密工業あるいは運送業というものが順序に入っておりますので、大体その傾向を見ますと、いわゆる鉄鋼工業における機械工場、あるいは建設業あるいは輸送業というものがどうやら石炭産業の転換の方向だと私は考えております。幸い建設業の雇用者も、この数年ふえまして、約百七十万人が今日建設業の労務者であります。そうすると二千万人の雇用者のうち、約一割何分という、一割近い数が建設業でありますから、やはり今後の問題とすれば建設業というものが石炭工業の労務者の向く一番適業じゃなかろうかという感じを抱いている。その方向に今後の転業指導をして参りたい、こう考えております。
  442. 滝井義高

    ○滝井委員 石炭のことはそのくらいにして、次は水の問題を聞きたいのですが、現在日本では経済基盤を強化しなければならぬということがいわれております。港湾とか道路とかいうようなものを強化しなければならぬ。ところが一つ重大な見落としがあります。それはやはり用地と水の問題です。特に水の問題というものが、今いわば盲点になっております。最近は地盤沈下その他でだいぶ水の問題も問題になってきつつありますが、とにかく日本における急激な人口の増加と、それから生活程度の向上と産業の近代化、こういうようなことによって、水の用途というものが非常に複雑になって参りました。かつその使用量というものが急激に増加をしております。同時に水質というものが汚染をされてくる、こういう複雑多岐な問題というものが水の問題にからまって出てきたわけです。そこでこの場合に、地表水も地下水も一貫して一連の水の問題について水の需給の調整、あるいは水の質の保全保護の問題、こういうようなものを、何かそこに対策を樹立するということが急務だと思うのです。菅野経済企画庁長官は、経済計画に空気とともになくてはならぬ水の問題というものを一体どういう工合に考えて、あなたの経済五カ年計画に織り込もうとしておるのか、これをまずお聞かせ願いたいと思います。
  443. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 水の問題は、お話の通り最近非常に重要性を増してきたのでありまして、今までは川の水は主として灌漑用あるいは飲料用ということで利用しておったのでありますが、最近は電源の開発あるいは工業用水あるいは厚生省の関係というようなことで水が各方面に利用されてきたのであります。お話の通りこれは完全に利用されておりません。そこでこの水を一つ完全に利用するように考えなければならぬということで、先般閣議でもこれが問題になったのでありますが、日本は河川法という明治初年にできた法律があるのでありまして、その法律によって、水の利用が非常に規制されておりますので、まずこの水の利用について、何とかしてもっと完全に利用できるようなことを研究しなければならぬということで、目下私の方でいろいろそれについて研究いたしております。  それから水質の問題は、経済企画庁の方で水質を調査する課が昨年できましたので、これはお申し込みによって各河川の水質を調査して、そうしてこれは工業用水として適当であるかどうか、あるいは飲料水として適当であるかどうかということを調査して、その結果によってそれぞれ善処いたしておるのであります。
  444. 滝井義高

    ○滝井委員 今、企画庁長官から御答弁がありましたが、日本における水資源の開発行政というものは、初めは治水の問題、発電の問題、灌漑水の問題、こういうようなところから、いわば目的別にあるいは態様別の発達の過程をたどっております。ところがその過程で、この水の行政は明治二十九年に河川法ができ、三十年に電気事業法ができ、四十二年に耕地整理法ができて、一応水利事業に対する制度というものが形式には整備されております。ところがその間における内務省、農商務省、逓信省、これらのなわ張り争いというものは実に熾烈をきわめておる。その内務省、農商務省、逓信省の争いというものは、三十二年の一月十八日に閣議で、建設省は下水道、厚生省は上水道、通産省は工業用水だ、下水道の終末処理は厚生省だ、こういうことが決定されるまではもめてきております。現在でも、一昨年だったか私が予算委員会関係各省全部を呼んで水の問題を質問したけれども、だれ一人として責任を持って答える人はなかった。きょうは時間がありませんから分科会に譲りますが、水の問題をやったらきょうもおそらくどの大臣も責任を持った答弁はできないのではないか、給与担当と同じではないかと思うのです。ところが現在水の問題は特に池田通産大臣に関係する工業用水の問題を見ても、現在大阪あたりで工業用水をとめてしまったら大阪の工業はとまってしまいます。しかも地下水というものは、自分の土地の下の水は自分のものですからくむことは自由です。ところが地下水をくみ上げることによって地盤の沈下が、はなはだしいところは二メートルも沈下しておる。沈下した地盤を上げるためにかさ上げをやる。現在大阪では一年間に七十万トンの水を使う。そうするとどんどん沈下して二メートル以上沈下する。それにかさ上げの費用が四十八億、四十八億のかさ上げの経費ができたならば、日産二十五万トンの工業用の水道を作ることができるのです。実は私はここを言いたいのです。日本は治山治水のために一兆五百億の金をかけた。ところが工業用水はどんどんくみ上げていく。だから幾ら金をかけて治山治水をやり、護岸をやり、海岸堤防をやっても、地盤沈下のために海岸堤防が下がる。だから日本の行政はさいの川原の石積みです。だから治山と治水と利水というものの一貫した政策か立てられなければならない。特に日本においては日本の四大工業地帯というものは水不足です。貿易自由化の重要な段階においてこの水の問題を解決せずして、日本の工業というものはすぐに行き詰まってくることは火を見るよりも明らかです。そういう意味で北九州はもはや水が行き詰まりまして全部中国地帯に、山陽線の地帯に日本の産業というものは移動しつつあります。従って北九州の四大工業地帯の一つの福岡県の県民の所得は上昇しないという状態が出ておる。これは北九州ばかりでなく京浜、阪神、中京みな同じだと思うのです。そういう点でこの水の問題については一つ内閣責任を持って一貫した行政を作ってもらいたいと思うのです。菅野さん一つ右代表で御答弁願いたい。
  445. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 お話の通り水の問題が重要性を帯びてきたし、また日本の経済を発展せしめる上において工業用水ということがことに重要な問題になってきましたので、ことしの閣議におきまして、この水の問題を根本的に処理することを考えなければならないということで今私の方でいろいろ研究中であります。お話の通りこれに対していろいろ法律がありますので、これを一つ統一して水を完全に利用するよう何か名案を考えていきたい、こう考えておるわけであります。
  446. 滝井義高

    ○滝井委員 これで終わりました。ありがとうございます。
  447. 小川半次

    小川委員長 次会は明二十三日午前十時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時三十八分散会