運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1960-02-16 第34回国会 衆議院 予算委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年二月十六日(火曜日)     午前十時三十九分開議  出席委員   委員長 小川 半次君    理事 上林山榮吉君 理事 北澤 直吉君    理事 西村 直己君 理事 野田 卯一君    理事 八木 一郎君 理事 井手 以誠君    理事 今澄  勇君       青木  正君    井出一太郎君       江崎 真澄君    岡本  茂君       加藤 精三君    川崎 秀二君       久野 忠治君    倉石 忠雄君       小坂善太郎君    櫻内 義雄君       重政 誠之君    周東 英雄君       田中伊三次君    綱島 正興君       床次 徳二君    橋本 龍伍君       藤本 捨助君    古井 喜實君       保利  茂君    松浦周太郎君       三浦 一雄君    水田三喜男君       山口六郎次君    山崎  巖君     早稻田柳右エ門君    淡谷 悠藏君       岡  良一君    木原津與志君       北山 愛郎君    河野  密君       島上善五郎君    楯 兼次郎君       堂森 芳夫君    永井勝次郎君       横路 節雄君    小平  忠君       鈴木  一君    堤 ツルヨ君  出席国務大臣         内閣総理大臣  岸  信介君         法 務 大 臣 井野 碩哉君         外 務 大 臣 藤山愛一郎君         大 蔵 大 臣 佐藤 榮作君         文 部 大 臣 松田竹千代君         厚 生 大 臣 渡邊 良夫君         農 林 大 臣 福田 赳夫君         通商産業大臣  池田 勇人君         運 輸 大 臣 楢橋  渡君         郵 政 大 臣 植竹 春彦君         労 働 大 臣 松野 頼三君         建 設 大 臣 村上  勇君         国 務 大 臣 石原幹市郎君         国 務 大 臣 菅野和太郎君         国 務 大 臣 中曽根康弘君         国 務 大 臣 益谷 秀次君  出席政府委員         内閣官房長官  椎名悦三郎君         法制局長官   林  修三君         大蔵事務官         (主計局長)  石原 周夫君  委員外出席者         専  門  員 岡林 清英君     ————————————— 二月十六日  委員阪上安太郎君及び横山利秋君辞任につき、  その補欠として岡良一君及び堂森芳夫君が議長  の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十四年度一般会計予算補正(第3号)  昭和三十四年度特別会計予算補正(特第2  号)      ————◇—————
  2. 小川半次

    小川委員長 これより会議を開きます。  昭和三十四年度一般会計予算補正(第3号)及び同特別会計予算補正(特第2号)を一括して議題といたします。  質疑を続行いたします。小平忠君。
  3. 小平忠

    小平(忠)委員 昭和三十四年度の予算補正に関しまして総理大臣にお伺いいたしたいと思いますが、政府はかねてから、第三次の補正については、災害関係以外は行なわないということをたびたび言明されておったのであります。しかるに今回提出されました第三次補正の中を見ますると、災害関係以外のものが含まれておるのでありますが、この点は今までの公言と根本的に異なってきておりますが、いかなる理由によるものでございましょうか。
  4. 岸信介

    岸国務大臣 今回の補正を出しましたのは、災害関係と、それから法律その他によりまして義務的な支出に関するものであります。財源見通しがつけば三十四年度に補正することが適当なものにつきましてやったわけでございまして、今申すように、政策的な意味でやっているのじゃなしに、法律上の義務としてやるべきものについて補正をいたしておるわけでございます。
  5. 小平忠

    小平(忠)委員 昨年の伊勢湾台風は、御承知のようにわが国未曽有のものであったわけであります。これにつきましては、御承知のように政府災害関係のいわゆるすみやかなる復旧と恒久対策ということも考えて、当時の予算審議過程におきましても、これは若干の追加補正をしなければならぬということは、われわれも了解しておったわけであります。ところがその審議は三カ月前でありまして、三カ月後の今日六十六億という追加補正をしなければならぬということについては、われわれ、その予算編成過程において非常にずさんなことをまず御指摘申し上げなければならぬ。さらに災害関係以外のものを見ましても、失業対策食管会計繰り入れ、漁船再保険会計繰り入れ、これらは赤字補てんでありますが、こういうものは、三十五年度予算編成過程を見ましてわれわれ率直に御指摘申し上げたいことは、佐藤大蔵大臣が当初の一兆五千六百九十六億のワクをくずさない、それが圧力団体にいろいろ刺激されまして、率直に申し上げて党利党略というようなにおいがするわけであります。その三十五年の一般会計しわ寄せを三十四年の第三次補正に持ってきたという感じが非常に深いのであります。その点、総理はどのようにお考えでございますか。
  6. 岸信介

    岸国務大臣 先ほども申し上げましたように、今回追加いたしましたものは、災害以外のものにつきましても、すでにその補正をすべき事実が発生をいたしておりまして、また法律上それを追加すべき必要があるものでございまして、決して今御指摘になったように三十五年度に支出すべきものを三十四年度に繰り上げて補正して、そのしわ寄せを持ってきたというような性質ではございません。これらの補正をいたしましたものの性質を御検討いただけば明瞭だと思いますが、これを補正すべき歳入の見通しが正確についた以上は、三十四年度になすことが適当であるとわれわれ信じておるわけであります。
  7. 小平忠

    小平(忠)委員 私はその中でも特にこの際まことに遺憾に存じますことは、昨年の七月人事院勧告がなされまして、公務員給与中だるみ是正を明確に勧告されているわけでありますが、この期末手当の〇・一につきましても政府は全く誠意がない。今回の第三次補正で、災害はもちろんのこと、一般会計についても補正をするという余裕財源があるならば、なぜこの人事院勧告に対して政府当局誠意を示さないのか。この点はまことに遺憾に存じますが、いかなる理由で今回の第三次補正にもこれをほおかぶりしてしまうというのか、この点をお伺いしたいのであります。
  8. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 御承知のように、人事院勧告は昨年の七月十六日に出ております。ところで、夏季手当を〇・一ふやせという勧告でございますが、当時すでに夏季手当は六月十五日に支給済みでございます。人事院勧告はその夏季手当を支給した後に出されたものでありまして、可及的すみやかにこれを実施せよというのが勧告の要旨でございます。政府におきましては、今年所要の予算を計上いたしまして、三十五年度以降において中だるみ是正並びに今年の夏季手当について〇・一増額する予算措置を講じておる次第であります。大体これは従前の例によっておるわけであります。
  9. 小平忠

    小平(忠)委員 大蔵大臣のただいまの御説明で、それが人事院勧告の線に沿ったとは私は理解できないのであります。少なくともこの勧告誠意を示すというのであるならば、やはり十月にさかのぼって、だれが見ても妥当だと考えられまする必要経費四十五億くらいのものは計上すべきである、補正すべきであるというように考えるわけであります。  私はこの機会に、大きな曲がりかどに参っておりまする日本農業の将来に対して岸総理の率直な御意見を拝聴し、三十五年度予算編成と三十四年度の予算補正を通じて所信を明らかにいたしたいと思うわけであります。——農林大臣は見えておりませんね。これは農林大臣がおいでの上でお話を進めていかないといけないと思いますので、若干前後しますが、総理に、最近の最も緊迫いたしておりまする北洋漁業問題についてお伺いいたします。  御承知のように、日ソ漁業交渉モスクワにおいて行なわれておるわけでありますが、本件は、率直に申し上げて、去る一月岸総理がアメリカに行かれて日米安保条約改定調印をされてきた、このことが御承知のようにソ連当局を非常に刺激している。その内容はともあれ、問題は、先般の公電によって明らかなごとく、漁獲量あるいは安全操業という問題に関しまして、私は今重大なる暗礁に乗り上げつつあると思う。この点に関しまして、この日ソ漁業交渉の現状と見通しについて、私は総理の率直な見解を承りたいと思うわけであります。
  10. 岸信介

    岸国務大臣 北洋漁業について、日ソ間の問題は二つあると思います。一つ北洋におけるサケマス等漁獲高を、日ソ漁業協定に基づいて、年々科学的な基礎できめる交渉の問題と、それから北洋における安全操業の問題と一つあるわけでございます。今モスクワで開かれております漁業委員会の問題は前者の問題でございまして、これは御承知のように、毎年モスクワ東京とで交互にその年のサケマス等漁獲高について、両専門的の委員が集まりまして、各般の科学的基礎に基づいて適当な数量をきめるという問題でございます。本年のこの交渉の問題につきましては、昨年の交渉並びに昨年における日本漁獲高その他から見まして、相当数量について日ソの間に意見が違っておるということが、会議前からも予想されておったのでございます。しかし、今日モスクワ会議を開かれまして、まだその会議の初頭でございますので、前途を正確に見通しすることは困難でございますが、最初から私どもはその数量見解について、われわれの持っておる科学的資料と、ソ連側が持っておると考えられる科学的資料との間にいろいろな意見相違もございますし、見方の相違もございますし、そんなことから本年度の漁獲高をきめる交渉はなかなか困難であるということは予想しておったわけでございます。別にソ連の方におきましても、今日までの交渉の経過を見ますると、日本では安保条約の問題に関連してこの問題が非常に困難があるのではないかというふうな予想も立てられておりますけれども、さすがにソ連漁業協定の本旨に従って、あくまでも科学的な基礎でもって、この問題とそういう政治的な問題はおのずから別であるという態度をとって、漁業委員会としては、前途はまだ十分楽観を許すような状態ではございませんけれども、決して安保条約改定がからまっておるというふうに見るべき何らの徴候はございません。  ただ、北洋における安全操業の問題は、従来から長い交渉をしておりますが、この問題については、ソ連側がこれは領土問題と関連があるということを途中から主張して参っております。従って、今日におきましても、われわれはそれとは離れておる問題であるという主張をしておるのでありますが、ソ連側は領土問題と不可分であるという主張を変えておらないのでありまして、これは外交の普通のチャンネルでソ連側とずっと継続的に交渉をいたしておりますし、また今後も交渉していく考えであります。この方面の問題については、今言っている政治的の要素が領土問題というものにからまってソ連側主張しておりますので、そういう問題と合わせて、われわれは政治的な考慮をしなければならぬと思いますが、この漁業交渉における漁業委員会の問題は、そういう政治問題は一切関係ないし、またソ連側もそれをからませてこれに臨んでおるという形跡はございませんで、あくまでも科学的な基礎で、今後も交渉を続けていく、そうして結論を得る考えであります。
  11. 小平忠

    小平(忠)委員 政治的な動きは別として、では総理に伺いますが、例の河野・イシコフ取りきめ、豊漁の場合に十万トン、凶漁の場合に八万トンというこの取りきめについては、現在どうなっておりますか。
  12. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 いわゆる河野イシコフ会談というようなものは、公式のものであったことはございません。従いまして、八万トン、十万トンという線を特にわれわれが約束しているというような問題ではございません。
  13. 小平忠

    小平(忠)委員 そうしますと、モスクワに派遣されています政府側代表に、岸総理として三十五年度のいわゆる漁獲量、九万五千トンというのは、それは政府としての腹がまえなのか、あるいは公式にそういう内示を与えて、そういう指令を与えて交渉に差し向けたものであるか、その点は、総理いかがですか。
  14. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 御承知のように、交渉に出ます前に、ソ連側は今年は非常な強硬な態度でございます。と申しますのは、サケマス資源保護という意味については、ソ連側は非常に強い立場に立っておりまして、あるいはいろいろな意味でことしは一年休んだらどうだというようなことまで、うわさと申しますか、非公式には言っているようなこともございます。昨年も八万五千トンでございましたけれども、規制区域以外にとっておりますものがだんだんふえております。一昨々年は六万トンぐらいでありましたが、一昨年は八万六千トン、昨年は八万八千トンというようにふえております。そういうものも合わせて、ソ連側としてはいろいろな強硬な意見を申しております。日本側として特にまだはっきりした指令を出しておるわけではございません。
  15. 小平忠

    小平(忠)委員 そうしますと、別に九万五千トンというのは、政府としてきめた態度じゃないのですね。ではこの漁業交渉におきまして、一体、日本側として折衝する場合には、かくかくの根拠からこれだけのものはやはりどうしても要求し、最後の妥結へこれを持っていかなければならぬという腹がまえはあるかと思う。その点はどのような腹がまえなんですか。
  16. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 御承知通り、昨年非常な行き詰まった交渉をやりまして、八万五千トンというような数字であったわけであります。その後の状況は、今申し上げましたように、規制区域以外でも日本はとり過ぎるというようなことをしきりと言っております。従って、われわれとして最終的にどの程度妥結し得るかということは、むろん困難な見通しだと思います。しかしながら少なくもわれわれとして十一万トン程度のものは要求しなければならぬというふうには考えておりますけれども、まだ現在の段階では科学的な調査段階でございまして、数量等の問題にいっておりませんから、まだ確たる最終的な決定はいたしておりません。
  17. 小平忠

    小平(忠)委員 非常に外務大臣は、僕は楽観的な考え方をしているのではなかろうかと思う。当初総理の御答弁は、やはり安保改定ともからんで、相当心配をされておるように、その答弁の中にも見られたのですが、私は、現にこの交渉が始まってから、先般もソ連側の出方としまして、マスについては全面禁止である、それから沿岸漁業についても規制を加える、おそらくサケについてはこれはもう非常な強いことを言って出るのではなかろうか、これは現に情報がひんぴんと入っておるわけです。ですからあなたが考えられるような、そんな安易な状態ではないので、劈頭に総理がおっしゃったように、あくまでも資源調査——もちろんこれはそれが基本でありましょう。しかし、このたびの安保条約改定調印をめぐる日ソ間における大事な北洋漁業問題については、もう非常に重要な問題です。近く北海道あるいは東北、この広範な地域に北洋漁業に出動せんとする関係漁民関係国民の気持になってみた場合に、これはきわめて重要な問題です。どのようにお考えなんですか。
  18. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私はただいま申し上げましたように、決して安易に考えておるわけではございませんし、資源調査見地から申しまして、先ほど申し上げましたように、ソ連側としては相当強硬に言っております。従ってこの折衝というものは、私は政治的な問題は別として、純技術的な問題の上から申しましても、非常に困難だと思います。従って八万五千トンという昨年の数字基礎にしてわれわれは考えていくのでないと、なかなか困難であろうということを考えております。しかしそうかといって、今九万五千トンなり何なりというものに方針決定して、最終的に進むという段階ではございません。また同時に、今お話しのように、一年休んだらどうだというような議論も、先ほど申しましたように、いたしております。従って、これは非常に安易なものだとは思いませんし、昨年よりもさらに一そう困難になってきている交渉であるということは、これは申すまでもございません。
  19. 小平忠

    小平(忠)委員 それに前後いたしまして、高碕達之助氏が近く、首席代表として訪ソを発表せられておりますが、この目的は、総理、どういう目的で行かれるのでございますか。
  20. 岸信介

    岸国務大臣 もちろん、今度の漁業委員会交渉目的は、先ほど来申し上げているように、今年度北洋において漁獲すべき漁獲量決定ということにあるのでありますから、その点が政府として、高碕君を出す場合においては、権限として与える問題であると思います。同時に、新聞でも伝えられているように、高碕君は、この機会に、フルシチョフあるいはミコヤン等会談をしたいということで、向こう都合を聞いているようでございます。そうしてそれが会えるならば、北洋における安全操業問題——高碕氏は御承知のように、日本水産会の会長でもございます。北洋における安全操業の問題は、日本水産会として非常に重要な問題として従来も取り上げておるのでありますから、そうして外交交渉において、従来、ほとんどこの交渉が行き詰まっておるというような点もございますので、そういう点に関してソ連側の意向を確かめ、またそれの解決の糸口をその会談において見出すことができるならば、非常に都合がいいという意味において、会談を申し入れておるのでございまして、その会談ができそうな——大体四月の初旬あたりだとそれが可能なようなソ連側情報もございます。ちょうどサケマス等漁獲量を最終的に決定をしなければならぬのが、大体四月一ぱいだと従来の例からも考えられます。そういう機会に、高碕君が行って、委員としては今の漁獲量の問題を交渉し、それから同時に、今申しましたような安全操業に関して、ソ連首脳部話し合いをしてみたい、こういう考えでございます。
  21. 小平忠

    小平(忠)委員 われわれも高碕さんが行かれるのであるならば、もちろんこの安全操業という問題につきましても、会談されるだろうということは察せられるのでありますが、この安全操業については、これはもう非常にきわめて重要な問題で、政府としてもやはり確たる方針がなければならぬ。高碕さんが行かれるについても、私は、岸内閣としても、この安全操業についてどのような考え方を持っておられるのか、この機会に伺っておきたいと思います。
  22. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 安全操業の問題、北海道零細漁業関係者の非常に重要な問題だと思います。生活上の問題でありますから、これを何とかして解決して参らなければならぬわけであります。その点におきまして、御承知のように、一昨年夏以来、いろいろな交渉をしておりましたけれども、残念ながら、昨年の東京におきます会談において、向こう側としては、平和条約関係を引用して、拒絶して参ったわけでございます。従って、その後われわれといたしましても、これは全く別個の問題であって、しかも北辺の日本零細漁業者の生活問題であるからということで、たびたびソ連側にも注意を促しておるわけであります。向こうとしては、相変わらず同じような態度をとっておりますけれども、われわれとしては忍耐強く、この問題については、ソ連側と話をして参らなければならぬと思って、平生もそういう考えのもとにやっておる次第でございます。
  23. 小平忠

    小平(忠)委員 同時に、重要な関連がありますることは、一九五九年一月一日より、御承知のように、オホーツク海のサケマス漁獲を現に禁止されておるわけであります。これは北海道沿岸漁民という立場から、基地独航という線にも重要な関連のある問題で、これらに対しまする政府としての態度、これに対する見通し、こういう点は一体いかがなものでございましょうか。
  24. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 昨年の会談におきまして、オホーツク海出漁を取りやめることに話し合いをいたしたわけでございますが、この点はわれわれも実は非常に残念には思っております。ただ、このサケマス種族保存立場共同調査の結果を待って、そうしてこれをさらにどう扱うかという問題として将来に残ってきておるわけでございます。従って、共同調査を十分いたしまして、必要なそういう見地から見て、われわれの主張をまた進めて参らなければならぬと思います。現在共同調査に関しましては、ソ連日本と両方で調査事項を調整をいたしまして、そうしてそれぞれ分担と申しますか、一緒には出ておりませんけれども、調査船を出して——しかし、その調査目的はお互いに調整してやっておりますから、共同調査と申して差しつかえないわけで、昨年も二隻日本から出ておりまして、そういう科学的な調査をいたしております。そういうものに基づいて、議論を将来とも進めて参らなければならぬと思うのであります。この点はソ連側も非常に科学的な調査というものを重んじていることは申すまでもないのでありますから、そういう点についてわれわれは十分りっぱな調査の上、日本側の確信ある調査に基づいて進めて参りたい、こう思っております。
  25. 小平忠

    小平(忠)委員 私は、この機会に、岸総理に重大なる警告と希望意見を申し上げておきたいと思うわけでありますが、先般のソ連が歯舞、色丹に対しまする領土に触れた覚書、このことは、事の経緯が那辺にあろうとも、国際信義の上からいきましても、これはまことに遺憾であります。しかしそのような事態が起きたことについては、岸総理も、ただ唐突として起きてきた問題ではない。日米安保条約改定をめぐる、すなわちこの大きな国際問題、従来の岸内閣のいわゆる向米一辺倒外交というものがソ連をして非常なる刺激を与えたということにおいて、そういう挙に出たということも、私は、岸総理あるいは岸内閣が大いに反省をし、この問題に対しまして直ちに影響して参りまするこの北洋漁業日ソ漁業交渉についてどうするかというようなことを、少なくともこの国会を通じて、明確なる答弁を願いたかった。ただいま総理大臣外務大臣答弁によりまして、ほんとうにこの問題を全国民が安心してまかしておけるという態勢で私はないと思う。従って、本件に関しましては、今後安保条約審議が、特別委員会が設けられて、ますます国会審議も活発になるだろう、その間、それをめぐって、この漁業交渉がどう発展するか、これは沿岸漁民の、また北洋漁業のいわゆる死活問題でありますから、私は政府当局一つ腹をきめてかかってもらいたい、こう思うわけであります。  次に岸総理日本農政のあり方と今後の施策について伺いたいと思います。岸総理大臣は今次国会の開会にあたりまして、その施政方針演説の中で、農業生産性を向上せしめるとともに、農林水産物の価格安定、流通機構合理化積極的措置を講ずる、また農漁村子弟対策を強化し、就業機会拡大をはかる、こういうことをあなたは施政方針演説の中で指摘されておりますが、これに間違いございませんか。
  26. 岸信介

    岸国務大臣 私の農政に対する、また日本農村の実情から見て最も緊急に処置すべきことにつきまして、その根本の方針施政演説で申し述べたわけであります。その通り考えております。
  27. 小平忠

    小平(忠)委員 今日農業生産性の向上にいたしましても、あるいは流通機構の、また流通部面の安定にいたしましても、何といっても農民の農業所得拡大するということが大きな目的であります。国民所得の配分の度合を見ますると、都市と農村の非常なアンバランスとなっていることは、私が指摘するまでもありません。このアンバランスは最近ますます拡大の傾向にあると思います。財政投融資にいたしましても、農村は他の産業に比べまして非常に効率が悪い。しかし、ここで真剣に考えなければならぬ問題は、やはり何といっても農業の、この原始産業の発展なくして日本の経済の発展ということは期し得ないという従来のわれわれの考え、また政府当局考え方、そういうことについて、総理施政演説の中でも指摘されたこの農業所得を増大していく。このことについて、予算の上にしからばどのように具現されているか。これは基本的な問題であります。この点をまず伺いたいと思います。
  28. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 農は国の基だというふうに古来いわれておりますが、経済的に見ましてもまことにさような通り考える次第でございます。米の問題一つとらえてみましても、もし数年前までのような作況でありますれば、二、三億ドルの輸入をしなければならぬというような状態であります。今日そういう事態が改善されまして、輸入が非常に減っておるというようなことを考えましても、これは国際収支を支える面から言いまして、農業生産というものがわが国経済の上にきわめて重要な地位を保っておるのだ、かような考えを持っております。また国の経済の面から言いましても、安定的な需要を持つということ、これは農業人口が非常に多いという点から考えまして、国の経済における地位がきわめて重大である、さように考えております。さようなことで、経済的に見ましてもまず農村が安定するということは、農村に介在する地方都市が安定することであります。農村と地方都市が安定するということは、それに物を供給する大産業がまた安定するということであります。さようなことで、国の経済において農業が非常に重要な地位におるというふうに考えまして、いろいろな施策を進めておるわけでございまするが、御指摘のように、農業所得は他の産業の所得に比べましてなかなか伸びにくい事情があります。その最大な原因は、現代経済社会は科学技術という面を非常に取り入れておりまするが、農業にはそれが取り入れにくい事態があるわけであります。さようなことにかんがみまして、特に農村の所得の向上ということについては、政府において意を用いなければならぬ、かように考えておるわけでございます。ただいま政府の方では、十カ年所得倍増計画ということを検討中でございまするが、十カ年に所得が倍増するということは、倍になるかあるいはそれ以上になりまするか、あるいは多少足らぬか、これはやってみなければわかりませんけれども、大体そういう方向に行くだろうと思う。問題はその間において、倍になった日本経済の内容を検討してみて、その間に所得の格差が大きく出てくるということを防がなければならぬということにあるのでありまして、その面からいいますると、農業と非農業との間の格差の問題、これはきわめて重大な問題としてこの長期計画の考え方の中に取り入れておるのであります。その計画はことしの秋ごろになったら成案ができるかと思いまするし、また同時に政府におきましては、農林漁業基本問題調査会におきまして、農業の今後の基本的政策のあり方を検討しています。これも三十五年度一ぱいには成案を得ます。しかし、そういうものの結論を見るまでもなく、農村の所得を向上しなければならぬというふうに考えること、これは言うを待たないところでございます。さような見地から、昭和三十五年度予算におきましては、農村所得を向上するということに全力を集注いたしまして、今回農林予算の規模は三十四年度に比べまして二百六十億円の増加になりまするが、あげてこの農家の所得を向上するというところに集約されておるのだというふうに御了承を願いたいと思うのでございます。
  29. 小平忠

    小平(忠)委員 前年度予算に比べて二百六十億ふえた、それはあげて農業所得を増すということにおいて編成されておると最後に説明されましたけれども、それは後ほど具体的に御指摘申し上げて、私は農林大臣の所見を明らかにしたいと思っておりますが、今あなたに伺ったのではなくて、岸総理施政演説の中で、少なくとも重要な点を指摘されて、本腰を入れてやるのだ、こうぶった限りは、また農業所得を増大するのだとぶった限りは、少なくとも総理大臣から、長時間にわたる演説でなくても、ぴりっとした日本農政に対する基本的な考え方くらいは聞きたいと思って、実は私は伺ったのだけれども、すぐ農林大臣が発言せられたので、私の伺った趣旨とは違ったのですが、一つ総理大臣、従来自由民主党という政党は全国農村から絶対多数の支持を得られておるのです。その政党の首領には、党首には日本農政に対する基本的な構想くらいあると思う。農林大臣にまかせないで、御意見を聞きたいです。
  30. 岸信介

    岸国務大臣 私が施政演説で申し上げたことは、私の農政に対する基本的な考えを要約して申し上げておるわけであります。なおそれを具体的に説明いたしましたのが、今農林大臣が説明をいたした通りでございます。もちろんわれわれは、従来から申しましても、この農村というものの、また農業というものの日本の経済の上、また日本の社会構造の上に持っている重要性というものを十分考え、しかも日本の農業だけではなしに、世界的に見ましても、農業というものが最近の科学技術の発達、いろいろな産業経済の発展の上から見て、御指摘になっているように、農業とその他の産業との間の所得の格差があるとか、農村と都会との間における所得の格差か増大しているというようなことから見まして、いわゆる日本農村、農業というものも、またこれに対する農政も、一つの曲がりかどにきている。一つ根本的な検討をして、これに対する恒久的な策を立てて、今申したような格差をできるだけなくして、そうして農村の所得を増大し、その社会生活というものを向上させるという見地から、基本的な方策を立てなければならぬというので、昨年法律の制定があり、調査会ができておることは御承知通りであります。これらの研究を待ち、またわれわれの所得倍増計画というものの具体的な計画を樹立及び実施するについて、常にわれわれが頭に置かなければならぬのは、日本の社会及び産業上、経済上重要な農業、農村というものの所得を増大し、全体の間のバランスがとれていくというふうに持っていくにはどうしたらいいか、従来のようなやり方だけでは、なかなか現実に格差が出てきておることから見ましてもいかないわけであります。そういう基本的な政策、これもなかなか短期には私は解決の道はないと思っておる。長期にわたって計画的に力強く推し進めていくということでなければならない、かように考えます。
  31. 小平忠

    小平(忠)委員 私はもっと日本農政を取り巻く現状は深刻なものがあると思うのです。現に今一月二十五日からジュネーブで開催されておりますガットの貿易拡大第二委員会におきましても、このいわゆる農業に関する貿易自由化の問題がやはり触れられておる。昨年東京のガット総会のときも、やはりこの先進国の農業に対する保護政策などについても触れられておる。世界の大勢は、非常に取り残されている日本農業というものの考え方と、あなたが最近急に持ち出して参ったこの貿易自由化の問題は、非常に大きく影響して参るわけです。あえて私から申し上げるまでもなく、日本農業の置かれている立場が、すべてがそうだと思う。一体農産物の場合でも国際市場に太刀打ちできるかどうか、言を待たないと思います。これは明治以来、日本の資本主義体制がこのような都市と農村のいわゆるアンバランス——特に最近は拡大の一途をたどっておる。戦後国内農産物の価格というものが国際市場に太刀打ちできないというようなこと、このことはひとり日本が貿易自由化の方向に、もうその下地はできているからといって、野放しで日本農業の問題を考えたならば、私は大へんな問題だろうと思う。一体総理は、この貿易自由化という問題と、これに及ぼす農業の関係はどのようにお考えになっていますか。
  32. 岸信介

    岸国務大臣 貿易自由化ということが、野放しにすべてのものをすべて自由にして、そうして国際競争の荒波の中にさらすということではないのでございます。もちろん産業の種類により、また同じ産業であってもその国の事情によって、それに対して自由化の方向に持っていく以上は、いろいろ各産業に及ぼす影響を考えて、これに対する十分な調整策というものを講じて、しかる後に自由化を行ない、また自由化といいましても、ことに日本農村のごときものにおきまして、たとえばその主要の生産物である米麦というようなものを自由化するというような考えはございませんし、またわれわれが特に日本農村の将来に向かってうんと力を入れなければならない酪農の関係というものを考えてみまして、こういうものを直ちにすべて自由化して、国際競争のまっただ中にそのままで押し出してしまうというようなことは、絶対に考えておらないのであります。また各種の農産物につきましても、その影響度の少ないものについて何らかの影響を調整する方法を考えつつ自由化していく。あるいはやかましい問題になっております一つの大豆の問題を自由化すといいましても、それも相当の期間を置いて、大体十月ごろを目標として、これに対する農村の生産者に及ぼす影響や、あるいは大豆を使うところの製油業者に及ぼす影響、また一般消費者に及ぼす影響等も考えて適当な方策を立てた上において自由化する、こういうことでございますので、特に日本の農業のような零細農業であり、国内においても、今の自由化さない時代におきましても、相当な保護を加えない限りは立っていかない、またバランスがとれていかないというような状況にある農業に対して、われわれは貿易自由化といいましても、野放しでこれを自由化して、農業に非常な影響を与えるというようなことは、毛頭考えておらないのであります。
  33. 小平忠

    小平(忠)委員 大豆のAA制の問題は後ほど詳しくお伺いをいたしたいと思っておりますから、その点はあとにいたしたいと思いますが、ともあれ私はこの大きな転換期に来ております日本農業の将来性を考えるときに、総理自身がもっと農政に対する深い理解と、そうしてやはり場当たり主義でなく、計画的に推進をしないと、常に日の当たらない取り残されておる農山漁民の所得というものは、決してかけ声だけではこれを増大できないものであるということを私は特に肝に銘じていただきたいと思うわけであります。  そこで農林大臣にお伺いをいたしますが、あなたは三十五年度の予算編成にあたりまして、第一番目に農業生産性の向上、第二番目は農山漁村の環境整備をやりたい、第三番目は農村次三男対策を徹底的にやりたいということを取り上げておりますが、その点間違いありませんか。
  34. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 順序はちょっと違うのですが、農業生産性の向上、次三男対策等の農業人口対策、三が環境整備、こういうふうになります。
  35. 小平忠

    小平(忠)委員 あなたはこちらから質問を申し上げないうちに、農林関係予算が昨年度予算よりも二百六十億円もふえたのだということをまず宣伝をされたのですけれども、これは全く当たりません。御承知のように三十四年度の農林関係予算の総額は一千六十三億であります。この一千六十三億の前年度予算に対しまして本年度は一千三百十九億でありますから、正確に言いますと、大蔵省が提出された予算書の数字によりますと、二百六十億ではなくて、二百五十六億の増になります。この増大率は二四%アップされたことになると思います。従って総予算の伸びが、一般会計の総ワクの伸びが一一%に比較すれば、確かに農林関係予算は増大したと言えましょう。しかしながらこの二百五十六億ふえた中身をごらん下さい。それは食管会計の赤字補てんが百十二億含まれております。それに伊勢湾台風を中心とした災害復旧、これが七十三億含まれております。そうしますとわずかに残った七十一億がふえたということになりまして、これでは農林関係予算の伸びというものは、前年よりも、また一般会計全体の伸びの割合から見ても、はるかに下回るパーセンテージになるのでありますが、同時にかりに、その数字は別といたしまして、この二百六十億近くふえたものを、ことごとく農業のいわゆる所得増大、生産力増強、農漁民の生活安定に振り向けたのだとあなたはおっしゃっても、これは筋が通りませんが、いかがなものでございましょうか。
  36. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 お話のように二百六十億ふえましたその中には、食管会計繰り入れもあります。また災害対策費もあります。しかし三十四年度におきましては蚕系対策のために臨時に出した金が三十五億前後あるわけであります。さようなことを考えますと、さような特別なものを除きました実質的な増加が約百億以上になるわけであります。これは例年の農林予算の伸びに比較いたしますと、相当の増加であるというふうに言えるわけでありますが、それはそれといたしまして、あなたはその予算全体が農村所得の増加になっていないではないかということでございまするが、食管の繰り入れもこれは生産農家の立場また消費者の立場考えまして、両々相待つような施策としての繰り入れでありまして、これも大きく農村の所得を維持、確保するという役割をするわけであります。また災害ももちろん農村関係災害対策でございまして、これも間接的ではありますが、さような役割をなすわけであります。その他一般的にふえまする実質百億をこえまするところの予算は、中身を御検討願えば御承知願えると思いますが、今後の農村のあり方というものを考えまして、その所得をいかにして充実、向上させるかというためにもっばら意を配りまして編成されております。さよう御了承願います。
  37. 小平忠

    小平(忠)委員 農林大臣、従来そういう計数につきましても大蔵省時代からエキスパートといわれておられるあなたが、赤字補てんが農家の個々のふところをよくするものであると言われる。それはあまりに飛躍した意見だと思います。食管の赤字補てんは、これは食管特別会計のやりくり、操作の中において、政府当局の不手ぎわから起きる赤字であって、われわれはこの予算委員会でくる年もくる年も鋭く指摘している食管特別会計の中身について、何らメスを入れていない。あの膨大な中間経費なんか一体何と考えておるか。人件費だって、食糧行政を担当するその大半を、九九%を食管会計に仰ぐのはこれは間違いなんです。なぜ一般会計で扱わないのです。それから金利にいたしましても百四十三億という膨大なもんですよ。この金利操作にいたしましても、あるいは倉敷、いわゆる保管料、こういう中間経費の問題についても何らメスを加えないで、消費者価格と生産者価格のいわゆる二重価格制をとっておることによってできるその赤字を補てんするなどということには私は当たらぬと思う。ともあれあなたがいかにそういうことをおっしゃいましても、われわれはここで現実に増加率の中で認めるのは食糧増産関係、すなわち今度は農業基盤整備費というふうに名前を変えてこられましたけれども、この分の増額については確かに認めます。そうすると前年対比の伸びが五ないし六%です。総予算の伸びの一一%から見るならば、農林関係予算は軽視されておる、こう見ても過言でないので、そんな宣伝を農林大臣なさるのは決して得策でなかろうかと思います。それから本年度の予算で、従来食糧増産対策費、食糧増産とうたった費目が、本年は農業基盤整備費、これはどうして名前を変えられたのかお伺いいたします。
  38. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 お話の通り、従来食糧増産費という費目でありましたものを、今度は農業基盤整備費というふうに変更したわけです。これは率直に申し上げまして中身は変わっておりません。変わっておりませんが、しかし昭和三十四年度、すなわち今までの状態におきまして相当食糧増産費の中身というものは変わって参りまして、生産基盤整備費的な性格というものを持ってきておるわけであります。今日食糧問題というものを考えてみますると、その増産、これはもとより私は重要な意味を今日持っておると思いまするが、しかし同時に増産というもののほかに、いかに効率よく限られた農地を利用するか、農地の効率ということを十分に考えたところの施策というものが大事である、そういうことに意を用いなければならぬというふうに考えておる次第でございまして、今後この食糧増産費という名前で盛られておりました経費は、さような意味合いを持たせまして、名前を変更する、そういうことによって、私が先ほど申し上げました所得増大の政策にも即応し得る、かように考えております。
  39. 小平忠

    小平(忠)委員 それではなかなか納得できませんよ。そんな説明だと、岸内閣、自由民主党は、従来本腰を入れてきた土地改良、開拓等々、食糧増産施策、生産力を高める意欲が、この瞬間からもう鈍ってきたなということで、これは大変でございますよ。一体そういう考え方——現にもう日本の食糧は、昨年のあの大豊作、こういうことから見て、増産はしなくてもいいのである。足らない食糧は、これは輸入食糧に依存すればいいのである。終戦直後のように、国内食糧よりも外国食糧が非常に高かった時代はいざ知らず、今日のように外国食糧が非常に安くなってきた現状においては、むしろむだな国費を投じて、非常に経済効率の少ない土地改良や開拓をやることよりも、輸入食糧によってまかなうことがいいのであるという考え方の現われなんですよ、これはいかに説明されましても。中身は変わらないのだといいましても、そういう思想があっては、今後の日本農業の上に大きな問題になってくると私は思う。それはあなた方が特に先進地農業国を見た場合に、日本の農業ほど零細化されており、生活水準が低くてただ黙々と働く、そういうことをよく感じておられておっても、それを切り開いていくという考え方が出てこない。この零細化されておる日本農業の過小農経営を、どうして適正経営規模の農家に持っていくかということについては、私がたびたび指摘申し上げているように、抜本的な農業施策をとらなければならない。一口にして言いますならば、現在の六百万町歩に近い耕地、これに匹敵するいわゆる耕作適地、可耕地がある、これを国の重大な方針として耕地にしていき、それによって農村人口問題、次三男対策、それから過小農経営の農家をだんだんと適正経営規模農家に引き上げていくのだという、この構想、考え方がない限り——最近は何かそういう問題に触れますと、実は農林漁業基本問題調査会において検討中であるから、その意見を待ってなんというけれども、少なくとも権威ある政府が何でもかんでも調査会の意見を待つなら、何もあなた方に国民は別に信頼しない。ですから、この点は単に名前を変えたけれども、中身は変わらないのだというが、これは大きく影響する問題であります。  その次に、あなたは農村における環境整備といって、それを三大お題目の一つにあげたのですが、予算措置は一体何をなされたか。われわれがちょっと見て、ああなるほどこの点はそうだなと思って考えられるのは、社会生活環境調査費、それから電気導入のほかに、無医村の解消、水道設備、きわめて農村にとっては重要な問題でありますけれども、その予算をトータルしてみますと、約一億七千万円余しかない。そんな程度の予算を組んで、農林大臣が三大重点施策の一つにこれをあげるなんということでは、ちょっと農林大臣の構想としてはお粗末ではないか、こう思うのですが、いかがですか。
  40. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 私はしばしば申し上げておりますが、今後どうしても農政の中心課題は農村の所得を向上することになければならない、こういうふうに言っておるわけであります。その所得を向上して、農村が他の階層と相並んで明るい生活が営めるような状態を出現するためには、農村における生産性の向上ということをまず第一にやらなければならぬ。あなたはもうあまり生産はしないのだろうというお話でございますが、私がしばしば言っていることをお聞き下さればわかる通り、これは生産性の向上ということが特に大事である。生産性の向上とは能率よく生産を高めるということにあるのでありまして、このためには農林省の予算というものはほとんど大部分それを中心にしてやっているわけでございます。しかし、いかに農村の所得を向上いたしましても、農家の所得と他の所得との均衡ということは私は困難であると思う。そこで、農家が農業生産による所得以外の所得の道を講じなければならぬとともに、農村でできるところの生産物を、すなわち所得を分け合うところの人口、これが他の方面に進出し、他の方面で活躍するという道が開かれなければならぬ、かように考える次第でございます。でありまするから、究極の目的は農家の所得の向上にある。そのためには農業生産をふやし、その分け合うところの頭数が減っていく、こういうことによってこれが実現できるという意味におきまして、私は次三男対策その他の農業人口問題というものを言っているわけです。しかしそれだけで、一体農家と他の階層とが均衡とれた生活ができるかというと、これは生活条件というものが、都市と農村では非常に違っております。また道路政策一つとってみましても、都市には相当の舗装道路ができてくる。農村はいまだに農道も整備されないというような状態でありますので、そういう生活環境を農村にも整備することに政府が力を入れなくてはならぬということが、私が第三の問題としての環境整備だというふうに言っているゆえんなのです。  この環境整備という問題につきましては、農村考える場合におきまして、農林省の予算や農林省的角度の問題ばかりを考えたのではこれは解決できない。たとえば無医村の問題を考えましても、これは厚生省の問題である、あるいは国民年金というものを昨年の暮れから始めておりますが、広く国民全体に適用されておりますが、これを自由民主党が取り上げたゆえんのものは、農家に老後の保障を与えようということが主たる機縁になっておる、そういうわけなんです。あるいは三十五年度をもちまして国民皆医療制というものが実現されます。これも農家にそういう医療を受ける機会が恵まれないではないかというようなことを考えながら、そういうものをやっているわけです。これも農村の環境整備なのです。そういうものを農林省といたしましては政府各般にわたって推進をする役割を勤むべきであるということを言っているわけであります。従いまして農林省固有の予算におきましても、ただいま御指摘の電気の問題あるいは新農村の問題、いろいろのものが組まれておりますが、しかし農林省ばかりでなく、政府全体の機構の中に解決の道を求めなければ、この困難なる農業問題は解決できないのだということを申し上げておる次第でございます。
  41. 小平忠

    小平(忠)委員 それは大臣、おっしゃるだけで環境整備はできないのです。私は、あなたの今のその熱意がほんとうにあるならば、なぜもっと予算の上に具体化されなかったのかということを聞いているのです。少なくとも農村の環境整備は非常に重大なことであります。先進地の農業国を回ってみればみるほど、そのことは生産力増強の上にも基本となる非常に大きな問題ですから、ぜひ最重点的施策の中に入れてやってほしいのだけれども、それが予算の上に具現されていないことを私は指摘申し上げた。  次に、三大方針の中に第二番目に織り込まれている農村次三男対策、これも予算の上では総額五億程度でお茶を濁しておるのであります。一体その程度の予算で、農村の次三男対策ができるとお思いなら大きな間違いです。  私はこの機会大蔵大臣に伺いますが、環境整備の問題といたしましても、農村次三男対策といたしましても、相当今度は大蔵大臣農林大臣の強い要請を押えて、なかなかこれは伸び悩み、できなかったと聞いているのですが、そんなことがあったのですか。
  42. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 先ほど来、農林大臣から詳しく説明されましたが、新しく事業を取り上げることはなかなか困難なことであります。そういう意味で現在の予算で十分だとは申しませんが、新しく取り上げられ、さらにそれに力が入っていく、かように御了承願いたいと思います。
  43. 小平忠

    小平(忠)委員 大蔵大臣がやはりこの問題についてはもっと私は積極的な協力態勢をとってほしいと思うことは、今農村の次三男対策といえば非常に大きな社会問題です。この次三男対策について、具体的に予算が組まれているのは、その調査に三千三百万、海外移住に一億五千万、こういうような予算のほかに、今度は農村職業訓練所、これを新設されておりますことは確かに認めます。しかし農村職業訓練所を新設したからといって、一回の募集に、わずか三、四十名程度のものを募集してやるというようなことにおいて期待できるということはとても不可能だし、さらにこれはもちろん労働省との協力態勢において進めなければならぬ問題であるけれども、一体農村の次三男対策をうたい文句にはしたけれども、具体的にどうなさろうとするのか、この機会農林大臣の御意見を承っておきたいと思います。
  44. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 私は今後のことを考えてみますると、やはり農業所得、農業生産というものは相当伸びていくと思います。しかし過去数カ年間、たとえば五年続きの豊作といわれますが、その時代に実現しただけの生産、所得ということが永久に期待できるかというと、なかなかそれはむずかしい事態がありはしないか。三十一年度から三十四年度までかりにとってみますと、農業総生産の増加は四・三%になります。この間人口が相当農村から都市に移動しております。そういうようなことを考慮いたしますると、六%内外の農家の所得の増大というものが実現をされておるわけであります。今後まあ農業生産の増が三%くらい毎年期待できるかというような感じがいたしますが、これはなお検討してみます。しかしそれに相呼応いたしまして、やはり農村人口というものの他産業への転換、移動というものが行なわれるであろうし、またこれをやらせなければ、私は農村問題というものは解決しない、かように考えるのです。最近は景気が一般的に非常にいいものですから、新規卒業の中学生の売れ行きはほとんど満配に近いというところまできておるようでございます。ところが問題になりますのは、いわゆる農村に滞留するところの次三男、これは日本経済が今日のような規模になる前において就職の機会を失いました子弟、また一度東京へは出てきましたが、しかしながらどうも工合が悪いというようなことで帰郷をしておる子弟もおるわけであります。そういうような例が、私どももいろいろ調査しておるのでございますが、まだ的確な結論的な数字は出ませんが、四十万以上おるように想像されるわけでございます。そういうような者に訓練を与え、そうしてまた他の産業において活躍してもらうという方途を講ずべきではあるまいか、さようなことから、労働省所管におきまして、本年度は新たに農村地帯を中心にいたしまして十四カ所の職業訓練所を設けるというようなことをいたしております。また職業安定所の機構というものが今までは求人者本位になっておる。この運用を私は労働省にもお願いいたしまして、求職者本位に、しかも農村に重点を置いた求職者本位の運営をやってもらうというふうにいたしたいと考えております。その実効を上げるためには、農村の農業協同組合の組合長さんとかあるいは市町村長さんとか、そういう方々を職業安定所の協力員にお願いいたしまして、親身に一つ一つ具体的のケースにあたってお世話をしていただくというふうにしたらいかがなものであろうかということも考えておるわけであります。また通産省にお願いいたしまして、工場がどんどんできてくる、そういうものの配置につきましても、農村の子弟をなるべく使いいいような場所に配置してもらいたい、また私ども農林省といたしましても、工場を作るという場合におきましては、農地を転用するというケースが、ほとんど大部分これに該当するのでございます。そういう際におきましては、農林省といたしましてなるべく農村の子弟がそういう就職の機会にあずかるようにというような配慮を込めて、その制度の運用に当たりたい、いろいろな角度から農村の子弟が完全就労ができるように、こういうことを考えていきたい、かように考えております。
  45. 小平忠

    小平(忠)委員 私は、限られた時間でありますから、福田農林大臣が三十五年度の予算編成、また大蔵省に要求をする際に立てられた、すなわち第一に生産性の向上、第二に農村次三男対策、第三に農村の環境整備、こういう問題についての内容に若干触れてあなたの御意見をただしたわけであります。私は日本農業の近代化のために、農業の所得を倍増するために、実はもっと画期的な施策を望んでいたのであります。そのことは国家財政も限りあることでありますから、なかなか一挙に望めなくても、少なくともあなたの手によってその第一歩くらい、一つ基礎を固めるのだというくらいの構想がほしかった。ですから、今のあなたの御答弁のように次三男対策や環境整備について意を用いたことは、私は敬意を表します。しかしもっと生産を高め、農業所得を増加していくという具体的な施策の中に、やはり日本の国土の総合開発の一環として、どうして日本農業の将来を安定せしめるために農地を造成していくか、合理的な配分をしていくかというこの問題とあわせて、現在農村の中で当然農家の所得となるべきものが商工資本によって都市へ流れているという面が非常に多いのであります。今あなたが御答弁の中に通産大臣にも話をしてなるべく工場を農村に誘致するという御意見もありましたが、けっこうです。しかしそんな工場を農村に誘致するというだけで、農民みずからがいわゆる農村工業を興すという考え方に出なければ、農家の所得というのは増していかない。かりに言うと、農産加工の場合にいたしましても、今日農業協同組合の組織が全国的に非常に発達しておる、この協同組合の組織を動員して、従来そのすべてを商工資本にまかしておった企業を農民の手によってやらせるというようなことについて、なぜもう少し政府が積極的にこれに対する施策を講ずることができないのか。かりに北海道で問題になっておるビート工場にいたしましても、これは北連がようやくその仲間入りをして、御承知のようなきわめてみごとな成績を上げている。これはこのビート工場のいわゆる利潤というものが、農業協同組合の場合には直ちに農民のふところに還元されてくる。ところが従来のようにこれをことごとく商工資本の手にゆだねたならば、一部独占資本の手にその利潤というものが偏在する。この問題について、もう少し農林省なんかは積極的に、こういう農村工業を興すという場合には、農民みずからの手に、農協の手にやらせるような施策にもっと強力に出てよろしいと思う。そういう点についても私はまことに遺憾であります。ですから三十五年度の予算の中身を見ましても、事新しい問題はないのです。こういう点について農林大臣はさらに決意を新たにいたしまして、ほんとうに日本農業の将来を考えて、いかにすることによって農民の所得が倍加され、近代農業が建設されるかということについて、私は十分なる御配慮をいただきたいと思うわけであります。  次に食管会計につきまして若干お尋ねいたしたいと思いますが、食管予算編成されるにあたりまして、御承知のように予算米価を一万三百三十三円と組まれました。さらに三十五年度の政府買い入れ予定数量は、三千四百万石と推定いたしております。ところが、御承知のように三十五年度の食管会計編成をめぐりまして、政府当局が最後までこの生ずる赤字をどうするか、その結果トータルで百十二億を一応一般会計から繰り入れをいたしておる。三十四年度においては御承知のように十八億の補正——今日議題になっております問題でありますが、いたしておる。そこで、この赤字補てんで三十五年度は大体まかなっていけるのかどうか。この点の見通しはいかがでございますか。
  46. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 まかなっていけると存じております。
  47. 小平忠

    小平(忠)委員 しからば、三十五年度の買い入れ予定数量三千四百万石と推定した、その論拠はどこにありますか。
  48. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 これは過去の大体の平年作というものを想定いたしまして、平年の状況でありますれば政府買い入れはこのくらいになるだろうという数字を求めまして、三千四百万石といたしたのであります。
  49. 小平忠

    小平(忠)委員 これは大臣、一応予定だと言われれば予定でありますけれども、この点は昨年も、豊作といいましても伊勢湾台風や、日本のように台風常襲地帯として相当な被害を受けておって、御承知のように三千七百五十万石の買い入れを実はいたしておるわけです。そうしますると、三千四百万石に予定してもここに三百五十万石の開きがあります。私はこれは特に凶作というような結果にならざる限り平年作でいった場合に、少なくとも三千七百万石から八百万石に近い買い入れを予定いたさないと、もう当初から相当なそごを来たすと思うのです。従ってかりに本年度の予定を見込んだ場合に、現にこの計算で参りますと、そんな過去の実績でなく、卑近な例を私申し上げておるのですが、かりに三十四年度同様な結果になって、そして同様な買い入れもしなければならぬというような結果になった場合においては、これは直ちにその三百五十万石に近い誤差が出て参りまして、少なくとも三十億以上の赤字がそこにまた出てくるという結果になりますが、その点はどうなんです。
  50. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 ことしも豊作であることを希望いたすわけでございまするが、そういうふうにうまくいきますかどうか、これはわかりません。そこで予算といたしましては、過去の趨勢等を見まして、平年作というものをもって編成するのが妥当ではあるまいか、こういうことでございます。もっとも、この平年作を基礎といたしまして積み上げました三千四百万石を上回って政府が買い入れるという場合におきましては、予備費を使用いたしましてこれに充てるつもりであります。
  51. 小平忠

    小平(忠)委員 それは、予備費は五百億計上されておりますから、買い入れには支障ないでしょう。しかし、予備費というものとできる赤字というものとは違うのです。ですから当然ここに問題になるのは本年同様の作況の場合には、本年のような買い入れを予定しなければならぬ。そうしますと、さらに赤字がふえる。それはまたあらためて、その赤字は補てんしましょうというように解釈してよろしゅうございますか。
  52. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 その通りであります。
  53. 小平忠

    小平(忠)委員 予算米価の一万三百三十三円については、これはあなたも昨年の米審においても明確に答弁されているように、また米審におきましても明確に結論が出ておりますように、これはあくまでも生産費・所得補償方式を採用するということが明確になっておる。だから私は三十五年度の予算編成くらいは、もう従来のパリティ方式を改めて、それで生産費・所得補償方式を採用するのかと思っておったところが、その点がきわめて明確になっておらない。この点はどういうのでございますか。
  54. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 三十四年産米につきまして、初めて所得並びに生産費補償方式という新しい算定方式を用いたわけであります。ところが米価審議会におきましてこの提案をいたしましたところ、決議がありまして、はなはだこれは不満である、こういうことであります。さようなことで、先般来再び米価審議会を開催いたしまして、しからば適正なる米価はいかに算定すべきかということを今御審議を願っておるのです。予算は一万三百三十三円、すなわち三十四年産米に適用いたしました単価を用いておりまするが、実行におきましては米価審議会の結論等を見てきめていかなければならぬ、かように考えるわけであります。
  55. 小平忠

    小平(忠)委員 その点が、昨年も論議になったようにきわめて不明確なんです。一部採用する、一部採用しない、パリティ方式によるのかあるいは生産費・所得補償方式によるのか、その中間でいくのか、こういう問題についてもう少し誠意を示さないと、本年もまた本件に関しては相当混乱が生ずると思いますので、この点についても私は今からはっきりした農林省の、また大臣の腹がまえをきめておかなければいかぬと思うのです。  そこで政府は、この食管会計について非常に苦労されていることはわかるのでありますが、この食糧の需給操作につきましても、貿易自由化と関連いたしまして、本年は非常に私は重要な問題が起きてくると思う。そこで政府は、生産者価格、これは予算米価一万三百三十三円、大体前年度を踏襲しておる。消費者米価も据え置く、この線は変わりありませんか。
  56. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 予算上は、生産者米価も消費者米価も三十四年度の実行単価を用いております。
  57. 小平忠

    小平(忠)委員 予算上はそうしたけれども、実際には変えるという方針でありますか。
  58. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 実際はただいまも申し上げましたように、米価審議会の御審議を願わなければならぬ。その御審議の結果等を見てきめるということでありまするから、おそらく予算米価通りにいかない場合が出てくるのではあるまいか、かように考えております。
  59. 小平忠

    小平(忠)委員 消費者米価は、これは大臣、上げますか下げますか。
  60. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 消費者米価につきましては、これは私は抽象的というか、一般的な見解といたしましては、なるべく長い間安定して動かない方がいいのではあるまいかという考え方を持っております。しかしながら消費者米価は生産者米価と関連もございまするし、その他経済事情ともいろいろ関係して考慮しなければならぬ面もございます。政府部内では、消費者米価は三十五年度米穀年度におきましては、引き上げたらいいじゃないかというような議論をする人もあります。また一方におきましては、逆に今配給状況を見ると、やみの値段の方が政府の売り払い値段よりは下回るという地区も相当にあるような事態がありますので、そういうようなところにおきましては、配給制度自体の運営が困難になってきておる。さようなことを考慮いたしまして、逆に引き下げを行なわなければならないんじゃないかというような意見もあるわけであります。いろいろの議論もありまするが、米価審議会におきましてとくと検討いただきまして、その結論を得た上で善処したい、かように考えております。
  61. 小平忠

    小平(忠)委員 そこで、私は確かに最近のやみ米の事情というものは相当下回っておるという現状もよく承知いたしております。それで、そんなことに影響されたか、昨年の十二月一日でしたか、閣議の終わったあとで、あなたは記者会見の席上で、御承知のように、今全国的に甲、乙、丙、特といわゆるクラスが分かれておりますが、そういうクラスも勘案されまして、それで北海道、鹿児島、新潟というような県については配給価格を引き下げたいということをあなたが言及されたのですが、これはどういう論拠によるのですか。
  62. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 北海道や、その他の二、三の地区におきまして、ただいま申し上げましたように、やみ価格の方が配給価格よりも下回っておるというような状態も出ておる地区があるわけでございます。さような関係を考慮いたしますると、そういう特別に考慮を要すべき地区におきましては、この際消費者価格の引き下げを行なった方が配給制度運営上有利ではあるまいかというふうな考え方を持っておるわけであります。しかし、これをいつ実行するかということにつきましては、なおさような制度変更を行なった影響がどういうふうになるだろうか、また、現在その後の状況がどういうふうになっているだろうかというような諸点を見きわめた上でいたしたいというので、その実施すべき時期についてはただいま検討中である、かように御了承願います。
  63. 小平忠

    小平(忠)委員 それで、さらに本年に入って一月十二日の記者会見の際、あなたは三県にあなたの出身県である群馬を追加されて、四県はもうきめたということをおっしゃっておられるのです。その点については何か論拠があるのでございますか。
  64. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 その問題になりまする三県のほかに群馬県を加えるということにつきましては、食糧庁において検討いたしましたところ、そういうことにすることが適当だろう、こういうことのようです。その理由は、群馬県を取り巻く長野県あるいは栃木県は、配給価格が群馬県よりは安い。それから北隣になる新潟県、これまた安くなっておる。それを今度新潟についてはさらに安くしようということでございまするから、これが三万囲まれている群馬県の配給運営に大きな影響がありはしまいか、かようなことで、新潟を含めた三道県につきまして引き下げを行なうならば、一緒に群馬県もこれに加うべきであるというふうに考えたのであるというふうに聞いております。でありまするから、私は、引き下げを行なう農林省の案として今ありますのは、北海道、鹿児島、新潟並びに群馬県である、かように考えておる次第でございます。(「公平にやれ」と呼ぶ者あり)
  65. 小平忠

    小平(忠)委員 私はなぜその点を伺ったかといいますと、御承知のように、やみ米の全都道府県の実情というものは非常にでこぼこがあります。それから配給辞退、それから各都道府県の受配率を見ましても、甲、乙、丙それから特となっておりますこの四階級の面についても、北海道、鹿児島、あるいは新潟についての理由はわかるんですが、群馬については、受配率が六七・六%なんです。それで、周囲の環境、栃木、茨城、埼玉、千葉などを見ても、群馬だけを取り上げて引き下げるというようなことは理解できないのです。ですから、あなたは特に農林大臣として、出身県でありますから、ほかから見られて、自分のところだけ引き下げるなんということの不公平なやり方をなさらない方がよろしいじゃないだろうか。今声もありますように、あくまでもこれは公平におやりになった方がよろしいんじゃないだろうか、こう思うのです。  それから最近外米の輸入をめぐりまして、現在大豆のAA制、その他貿易の自由化に関連して、食糧事情というものはなかなか微妙な段階にあります。そのときに、ビルマ米の輸入は、当初三万トンの計画であったのが、通産大臣からも特に強く言われて、一万五千トンさらに輸入量をふやしたというようなことについては、実際に日本の食糧事情として、ビルマ米を一万五千トン今すぐに入れなければならぬ。当初の三万トンを変更しなければならぬというような事情があるのか、ないのか。その点はどうなんですか。
  66. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 ビルマにつきましては、日本がビルマ米の買付量をビルマの希望額よりもはるかに下回る額を提示しているという点、それから賠償要求に対して政府誠意を示さぬという点、この二つの点を理由にいたしまして、日本品の輸入を阻止するという態度に出ておるということにつきましては、御承知通りと思います。そういうような情勢がありまする間の米の買い取りの交渉でございまするので、当初は三万トン程度というふうに考えたんですが、向こうの方は十万トン買ってくれというわけなんです。それを話し合いの結果、結局四万五千トンというふうに、食糧庁、農林省といたしますると、一万五千トンの増加買付を承諾することにいたしたわけであります。しかしその結果ビルマ政府は、賠償問題なんかもありまするが、そういうものとは切り離して、直ちに日本品の輸入阻止は打ち切る、さらに日本とビルマとの間の経済交流を大いに推進したいというようなことで、相互に経済ミッションを交換しようということまで申し出るような、非常にいい結果をもたらしておるわけであります。一万五千トン必ずしもこれは高くついてはおらぬ、かように考えておるわけであります。  なお、ほかの国々につきましても、外米の輸入の問題がありますが、特に東南アジア諸国につきましては、特別のさような政治的な角度の考慮も必要とされる場合があるわけでございます。東南アジアに日本が経済的な交流を盛んにするという際におきまして、どうしても米を買うということが非常に重要なことだし、バイタルな関係を持つわけでございまして、さようなことを考えますると、食糧庁当局といいますか、農林省の意向ばかり意地を通すというわけにもいかない面もあるわけであります、さような角度から多少の調整をしつつ、こういう種類の問題は解決しておるというふうに御了承願いたいのでございます。
  67. 小平忠

    小平(忠)委員 今、日本の食糧事情として、外米を当初予定計画よりもふやさなければならないという事情にあるのですか、ないのですか。あるとすれば、どういう点なんです。
  68. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 昭和三十四年度は、史上空前の米の大豊作でございました。従いまして、内地米の需給の関係から申し上げますれば、私は外米を輸入する必要はそうないのではあるまいかというふうに考える次第でございます。しかし、これは昭和三十四年だけ日本の食糧事情が安定すればいいというのではなくて、その前後、また今後ずっと続いて食糧事情は安定しなければならぬというふうに考えております。それで、過去数カ年間の食糧の需給の状況を考えてみますると、三十年は非常な大豊作でございましたが、三十一年には一千万石も減りまして、七千二百万石というふうになっております。その後だんだん回復いたして参りまして、昭和三十四年の大豊作がまた出てきたわけでございまするが、平均いたしましても、相当の不足になります。でありまするから、三十四年の事態だけを考えないで、日本の東南アジア政策というものをも考え、かつ、やや長期の考え方をいたしますれば、外米をこの際若干、ことしの需要として必要な額以上に買いましても、これはそう不自然ではない、かように考えます。また同時に、タイやビルマ等から買いまする普通外米につきましては、これは値段が安いわけでございまするから、従いまして、これを政府が売りさばく値段も安くなるわけです。その安い外米に対する需要は、せんべいにいたしますとか、のりにいたしますとか、いろいろ特殊な恒常的な需要がありますので、国の食糧需給、内地米の需給計画と別に考うべき面もあるわけであります。さようなことで、ただいま申し上げたような方針をとっておる次第でございます。
  69. 小平忠

    小平(忠)委員 昨年の、御承知のような豊作のあとで、大臣おっしゃるように、外米を当初予定計画を変更して、一万五千トン増加して輸入しなければならないという事情はないと思います。ただ、今あなたがおっしゃるように、ビルマとのいろいろ貿易上の観点から、通産省としても事情はあったかもしれませんけれども、単にビルマだけでおさまるかというと、ビルマだけでおさまらないという点が出てくる。東南アジアの、従来外米を輸入しておった国々からも、おれのところもふやせ、おれのところもふやせという問題が出てきた場合に、これは収拾がつかないと思うのです。ですから、こういうことについても十分な配慮をしてやりませんと、御承知のように、国内の米の需給の関係を見ても、外米を輸入しなければならぬというような事情にないときに、そういうことによって、支障を来たすようなことがあっては大へんだと思うのです。ですから、この点は今後十分に注意をしていただきたい。  最後に、私は大豆のAA制移行に伴います処置について、政府の所信を明確にただしておきたいと思うわけでありますが、先般一月八日の、いわゆる経済閣僚懇談会の席上でも、農林省から、御承知のような瞬間タッチ方式を初めとして、A案、B案、C案の三案を出された。これは、アメリカ当局と事前に折衝されて出された案でありますか。それとも、農林省独自の案であったのですか。
  70. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 A案、B案、C案というのは、お話の通りでございますが、これは農林省独自の考え方でございまして、アメリカと何らの接触はございません。もっとも、そのうちどれをとるかによりましては、主たる輸入国でありますアメリカとの間に、関税交渉というような問題が起こりますので、交渉をしなければならぬ段階があるわけでございます。今までのところは、何ら接触はありません。
  71. 小平忠

    小平(忠)委員 折衝はないというのですか。折衝はされたのですか。
  72. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 折衝いたしておりません。
  73. 小平忠

    小平(忠)委員 折衝されていないのは、間違いありませんか。それはおかしいと思うのです。あの案についてアメリカ当局の意向を打診したところが、直ちに次の四項目にわたる返電があって、その翌日も自民党内においては、本案を検討された政調会の方々が集まって、大あわてにあわてて、どうしたもんやというわけで苦慮されておるのではありませんか。
  74. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 それは私ども食糧を扱う者、またアメリカのさようなことに関係をいたしておる者が大使館にもおります。そういう人には随時会いまして、いろいろな話をしております。そういう話をしている間に——まあ日本政府の案がどうのこうのというようなことじゃありません。アメリカから輸入される大豆につきまして、瞬間タッチ制だとか、あるいは関税を引き上げるとか、いろいろなことが考えられているというような話が出て、それに対する何か——これは何も責任はない方面と思いますが、どこからかそういう意見が伝えられておるという程度でありまして、私どもが関知していない程度の問題と御了承願って差しつかえありません。
  75. 小平忠

    小平(忠)委員 大臣、これはきわめて重大な問題ですから、私が入手した内容について申し上げますれば、この三案について、正式にアメリカの意向を打診したところが、次のような返電があったわけです。その一つは、関税増徴もしくは目的税たる課徴金のようなものをもって、ガット譲許品目に適用されている大豆にこれを充てるのは承認できない。第二番目は、日本は完全AA制にできる経済体制にある、これは米国のみでなく、各国の認めているところである。第三番目は、関税、課徴金をあくまで大豆に適用するにおいては、米国政府としてもこれに対処する考えである。あくまでも反対である。第四番目に、早急に可能な限り、四月一日からAA制を実施すべきである。こういう返電があったのですが、大臣はお知りでないのですか。
  76. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 ただいま読み上げられましたのですけれども、私もそういう紙きれを見せてもらいました。これは私自身交渉しておるとも考えておりませんし、その書面が交渉に対するアメリカ政府見解とも考えておりません。何かそういう意見も述べる人があったという程度のものと御了承願いたいと思います。
  77. 小平忠

    小平(忠)委員 現在大豆については、ガットの譲許品目であることはあなたも御存じですね。そうしてみれば、御承知のようにガットでは一〇%の関税を引き上げないことをきめているのですよ。そうすると、あの瞬間タッチ方式なるものが一体相手国の意向もたださないでそういうことが可能ですか。
  78. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 大豆のAA制につきましては、ただいま三案があるわけです。申し上げるまでもなく、一つの案は、現行一〇%の関税の上にさらに瞬間タッチ制によってほぼ同額のものを取って、それを財源として価格維持操作に充てようというわけです。それと対照的な考え方は、今の一〇%だけで、もう関税も課徴金もかけるな、そして価格維持操作に必要な財源は、今の国家予算の中からひねり出してやれ、こういうことなのでございます。そこで、今生産者を保護するために、国産大豆を現在の市価をもって買い上げるという考え方につきましては、政府部内におきまして何らの異論はございません。農民には何らの心配はないわけでありますが、その財源を一体どうするかという点につきまして、まだ意見がまとまらないのです。まとまりますれば、そのまとまった案によりましてアメリカ側と折衝する、こういう段階になるのでありまして、正式の折衝は、今のところやっておらぬ、かように御了承願います。
  79. 小川半次

    小川委員長 小平君、あなたの持ち時間はあとわずかしかありませんから、ごく簡潔に願います。
  80. 小平忠

    小平(忠)委員 そのようにきわめて大事な、今後政治的にも、また相手国とも解決を要しなければならぬような問題を軽々に口にし、発表などされたものですから、国内産の大豆が、昨年の十月以来下がる一方です。その結果、先般もこの予算委員会で社会党の永井勝次郎君が指摘したように、また農林水産委員会でも急にこれを取り上げて、それは大へんだというので、目下船で輸送されつつあるこの輸入大豆の発券を中止したという事態が起きているわけなんです。こういうきわめて重要な問題について、政府方針もきまらぬうちに、この三案など発表してやるものですから、今この国内産大豆が大動揺を来たしておる。先般も下期の第二次分の十五万二千トンのうち、その半分の七万六千トン、これを一応発注いたしまして、それから国会で問題になったものですから、結局通産省はこの発券を一時保留したのです。ところが話によると、この中止したやつがまた解除したと聞いているのですが、その点はどうなっているのですか。
  81. 池田勇人

    ○池田国務大臣 御承知通り、大豆の昭和三十四年の下期の買い入れ数量は四十五、六万トンだと記憶いたしております。そこで残っておるのは十五万二千トンでございます。これはもう一月に実は割当をするはずであったのでございます。農林省との話がなかなかつきませんので二月に繰り越したわけです。繰り上げたのではなくて、実態から申しますと、もう少し早く輸入許可すべき筋合いのものであったわけであります。で、おくればせながらも二月の七、八日でありましたか、輸入の割当許可をいたしました。
  82. 小平忠

    小平(忠)委員 それで七万六千トンは解除したのですか。
  83. 池田勇人

    ○池田国務大臣 解除いたしました。
  84. 小平忠

    小平(忠)委員 そうすると残った七万六千トンはいつごろ発券するのですか。
  85. 池田勇人

    ○池田国務大臣 大体十一万トンくらい買いつけておるようであります。これは通産省はまだ割当をいたしておりませんが、いずれにいたしましても三月一ぱいの予算であります。予定通りいきますれば今月末か来月くらいになるかと思います。
  86. 小平忠

    小平(忠)委員 農林大臣、通産大臣のお説のように二月一ぱいで大体十一万二千トンほど港に着く予定になっております。そのうち七万六千トンは一応発券をした。そうするとやはりそこでも保税倉庫に入れなければならないようなものが三、四万トンくらい出てくるわけです。ところが一方国内産大豆は昨日の市況を見ましても下がる一方ですよ。これはどうするのです。国内産大豆の方は値下がりをする。政府はいわゆる製油業者に大体一月に下期の第二次分は発券するぞという予告をしておるから、どんどん荷物は輸送されつつある。そういう状態でこれをどう処理するのですか。
  87. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 最近多少大豆の市価が下がってきておる。これはあなたはAA制の関係だというふうに理解されておるようでございますけれども、この輸入が昨年船繰りの関係からおくれまして今日に集中しておるというような傾向があるわけなんです。これが一つの材料ではないか。それから収穫期直後の国産大豆の状況も影響しておるのではないかというふうに考えます。ただしかし、その理由がいかんにいたしましても、国産大豆がこの時期においてさように値下がりをするということは、私どもといたしましてもまことに寒心にたえないところがあります。そこで今農業団体等ともその対策を相談をいたしておりますが、国産大豆を今までのような値段で製油業界で使ってもらえないかというような話もいたしております。それらのいろんな話が今明日中にはつきまして安定という方向が出てくるのではないかというふうな段階になっておるのです。そう大したことはなかろうとかように考えております。
  88. 小平忠

    小平(忠)委員 そうしますと、国内産大豆の価格について、現在全販連手持ちの大体六十万俵、四万トン近くのものの処置の見通し、そういうものがつかなければ残りの七万六千トンの輸入大豆の発券はしない、そのように解釈していいですか。
  89. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 この点は国産大豆の市価なんかをにらみながら、また今申しました話し合いの進行なんかも考えまして、通産当局と十分慎重に相談しながらやっていきたい、かように考えております。
  90. 小平忠

    小平(忠)委員 時間が参りましたので私の質問を終わりたいと思いますが、この大豆のAA制の問題は、ひとり大豆だけの問題でなくて、日本の国内産農林水産物全般に及ぼす問題だろうと私は思います。たまたま大豆が当面いたしておる一つの問題の渦中になっておりますから、これは今後の推移によって非常に大きな問題になるということもわれわれ予測できるのですが、総理におかれましては、大豆だけでなく乳製品につきましても、そのほか多くの農林水産物が外国の市場と太刀打ちできないような現状にありますときに、もちろん総理は野放しで貿易自由化をやるとは考えていない、こうおっしゃいますけれども、その一言が現に国内産大豆が値下がりをしているように影響を及ぼすのです。ですからこの点については、十分なる配慮をもって善処されんことを私は最後に強く要求をいたしまして、私の質問を終わります。
  91. 小川半次

    小川委員長 これにて質疑は終局いたしました。  この際、午後一時三十分まで休憩をいたします。     午後零時四十一分休憩      ————◇—————     午後一時五十四分開議
  92. 小川半次

    小川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  昭和三十四年度一般会計予算補正(第3号)及び同特別会計予算補正(特第2号)を一括して議題といたします。  これより討論に入ります。岡本茂君。
  93. 岡本茂

    ○岡本(茂)委員 私は自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題となっております昭和三十四年度予算補正第3号及び特第2号の二案につきまして、賛成の意見を表明せんとするものであります。  今回の予算補正は、災害復旧事業費六十六億円余を中心といたしまして、そのほか地方交付税交付金十九億円余、失業対策費三十四億円余、食糧管理特別会計繰り入れ十八億円、及び漁船再保険特別会計繰り入れ六千七百万円余等のおおむね義務的経費の追加であります。  特に災害復旧につきましては、先般の予算補正第2号によって四百八十五億円余の予算措置を講じたのでありまして、その復旧工事は現在着々進捗しておるのであります。しかしその第二次補正後の被害状況調査の進展に伴い判明いたしました被害額が、当初の予想を上回り、従って復旧事業費の増加が必要となって参ったわけであります。復旧工事の進捗率を高め、また一日もすみやかに災害復旧を急がねばならないことは言うまでもないところでありまして、年度内の経費についての予算措置を来年度に持ち越すことなく本年度内に行なうことは、寒空のもとで災害復旧に昼夜努力しておられる被災民のことを思うとき、絶対必要な措置であると信ずるのであります。  この点につきましては、社会党も先般の災害予算補正審議過程において、被害額が増加した場合の復旧事業費の補正化を強く要求しておることでもあり、社会党が異議なく賛成せらるべきことは当然のことであると存ずるのであります。また災害復旧の緊要性と迅速性とを強調せられるところの民主社会党も、これには異論のないところと信ずるのであります。  次に、これらの経費に充てる財源として、租税の自然増収の見込み八十三億円余及び税外収入五十六億円余を計上しておるのでありますが、特に自然増収の見込みは経済の順調な拡大に伴うものであって、健全財政の筋を通しておるのであって、賛意を表するものであります。簡単ではありますが、以上の理由をもちまして政府原案に賛成するものであります。(拍手)
  94. 小川半次

    小川委員長 楯兼次郎君。
  95. 楯兼次郎

    ○楯委員 私は日本社会党を代表いたしまして、昭和三十四年度一般会計予算補正第3号、特第2号に対し賛成の討論を行なうものであります。  本補正予算案の中心は約六十六億の災害復旧関係費であります。去る第三十三臨時国会における第二次補正予算案の審議に際し、わが党はもし災害復旧予算が不足する場合はさらに補正予算編成すべきことを政府に要求し、これに対して善処するとの大蔵大臣の言明を得て、第二次補正予算案に賛成をいたしました。この経過からかんがみまして、本補正予算案はわが党のさきの要求に基づいて編成されたとも言い得るものであり、従って賛成の態度をとるものであります。  このたびの補正の中心は、昭和三十四年度の大災害に対する復旧のための支出及び食糧管理特別会計の農産物勘定への繰り入れなどがおもなものであり、その他は地方交付税交付金、失業保険国庫負担金の追加、漁船再保険特別会計への繰り入れなどの支出であります。これらはいずれも国民生活安定の見地から見て当然の支出であり、わが党は以上の観点から賛意を表する次第であります。  ただし、この際若干指摘しておかなくてはならないことは、政府が第三次補正予算編成した経過には、きわめて不明朗なものがあることであります。それは三十五年度予算案を編成する過程で、与党及び圧力団体から猛烈な予算ぶんどりの交渉が行なわれ、国民のひんしゅくを買ったことは周知の事実であります。そしてこの圧力に屈した政府が、三十五年度予算案の規模を拡大するのを防ぐため、急いで第三次補正を組み、本来三十五年度予算に計上すべきものをもこれに回した。これが政府の本補正予算案を編成した真の経緯であります。  われわれは、このような便宜主義的な予算編成態度に対し厳重なる警告を発するものであります。  思うに、昨年の災害の直後は、罹災者の救援、復旧について強い関心が向けられておりましたが、時がたつにつれて災害は世人の注目を引かなくなっていく傾向があります。申すまでもなく、災害地におきましては一刻も早く復旧の速度を早め、罹災者の生活の基礎を再建をしなければなりませんし、ことに農村地帯では、ことしのまきつけに間に合うよう復旧を急ぐことが急務であります。この際、特に予算執行の面におきまして十分にその効果を発揮するよう一段と政府の努力を要望いたしたいと思います。  また、食管会計の農産物勘定の赤字補てんとして十八億円が計上されておりますが、これも最近の日本農業には米麦以外の各種換金作物の栽培が普及しており、その価格を安定さぜることが農業経営発展のため不可欠の前提条件でありますので、農産物価格安定法等の運用にあたっては、特に農民の所得補償を重視し、日本農業を世界経済の荒波に押し流すことのないよう、政府の一段の努力を要望する次第であります。  以上、この補正予算案の執行について、国民生活安定の見地から若干の要望を申し上げ、賛成の討論を終わる次第であります。(拍手)
  96. 小川半次

    小川委員長 鈴木一君。
  97. 鈴木一

    ○鈴木(一)委員 私は民主社会党を代表いたしまして、政府提出の昭和三十四年度予算補正二案について反対の意向を明らかにいたします。  わが党の反対の理由はきわめて簡明で、一つの問題に要約できるのでございます。それは、昭和三十四年度予算を通じて、政府は、ついに昨年七月の人事院公務員給与改正勧告を無視し続けたという一点なのであります。なるほど、政府は、明年度予算案におきましては、人事院勧告に従って四月一日から公務員給与の各俸給表の中級職員、研究職員並びに医師について平均約四%の引き上げを行なって、いわゆる中だるみを是正しております。また明年度分より夏季手当を〇・一カ月分増額しております。しかしながら、何ゆえに本年度じゅうから勧告に基づく給与改定を行なわないのか。何ゆえに政府人事院が早急に実施すべき旨を勧告したにもかかわらず、本年度じゅうはこの勧告を完全に無視したのか。政府がもし財源がないという理由をつけようとしても、それは理由にはなりません。  何ゆえならば、政府は、経済好転によって租税自然増を大幅に見込んで、昨年十一月及び今回の二回にわたる歳出補正財源としております。わが党の見るところ、本年度の法人税及び関税収入は、政府見込み以上にさらに税の伸びを期待し得ることは明らかであります。公務員一般職給与の中だるみ是正と、夏季手当〇・一カ月分の増額は、昨年十月にさかのぼって実施するとして、一般会計予算としては一般職並びに義務教育費国庫負担分を合計して約五十億円が必要であります。この程度の金額は、楽々と本年度の租税増の範囲内でまかない得るのであります。人事院は戦後の政治民主化の過程において国民が獲得し得た重要な民主的機関であります。これの勧告に基づいて公務員の給与を改正することは、民主政治にとって重要な義務なのであります。私どもは公務員給与に関しては、あくまでも人事院勧告を尊重し、これを一日も早く実現するという立場を堅持することこそが、行政府に課された任務であり、これを鞭撻するのが国会の義務であることを痛感しておるのであります。私どもはこの人事院勧告を無視した政府補正予算案には何としても賛成することができないのであります。  なお、私どもは災害復旧関係費や失業保険費などの赤字補てんについての補正の経緯については、なお釈然としないものがありますが、歳出補正の緊急性にかんがみ政府案を支持いたします。しかしながら人事院勧告を無視した点については、私どもは絶対に政府予算編成を支持することができないのであります。(拍手)
  98. 小川半次

    小川委員長 これにて討論は終局いたしました。     —————————————
  99. 小川半次

    小川委員長 これより採決に入ります。  昭和三十四年度一般会計予算補正(第3号)及び同特別会計予算補正(特第2号)を一括して採決いたします。両案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  100. 小川半次

    小川委員長 起立多数。よって、昭和三十四年度一般会計予算補正(第3号)及び同特別会計予算補正(特第2号)は、いずれも原案の通り可決いたしました。  委員会報告書の作成につきましては、先例によりまして委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  101. 小川半次

    小川委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  明十七日は午前十時より昭和三十五年度総予算につきまして公聴会を開催いたします。  本日は、これにて散会いたします。     午後二時七分散会      ————◇—————