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1960-02-12 第34回国会 衆議院 予算委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年二月十二日(金曜日)     午前十時三十六分開議  出席委員    委員長 小川 半次君    理事 上林山榮吉君 理事 北澤 直吉君    理事 西村 直己君 理事 野田 卯一君    理事 八木 一郎君 理事 井手 以誠君    理事 田中織之進君 理事 今澄  勇君       青木  正君    井出一太郎君       江崎 真澄君    岡本  茂君       加藤 精三君    川崎 秀二君       久野 忠治君    櫻内 義雄君       田中伊三次君    綱島 正興君       床次 徳二君    橋本 龍伍君       藤本 捨助君    古井 喜實君       保利  茂君    松浦周太郎君       三浦 一雄君    水田三喜男君       山口六郎次君    山崎  巖君     早稻田柳右エ門君    淡谷 悠藏君       岡  良一君    木原津與志君       北山 愛郎君    小松  幹君       河野  密君    島上善五郎君       楯 兼次郎君    辻原 弘市君       堂森 芳夫君    永井勝次郎君       横路 節雄君    受田 新吉君       鈴木  一君    堤 ツルヨ君  出席国務大臣         外 務 大 臣 藤山愛一郎君         大 蔵 大 臣 佐藤 榮作君         文 部 大 臣 松田竹千代君         厚 生 大 臣 渡邊 良夫君         通商産業大臣  池田 勇人君         労 働 大 臣 松野 頼三君         建 設 大 臣 村上  勇君         国 務 大 臣 赤城 宗徳君         国 務 大 臣 石原幹市郎君         国 務 大 臣 菅野和太郎君         国 務 大 臣 中曽根康弘君  出席政府委員         内閣官房長官  椎名悦三郎君         法制局長官   林  修三君         外務事務官         (条約局長)  高橋 通敏君         大蔵事務官         (主計局長)  石原 周夫君  委員外出席者         専  門  員 岡林 清英君     ————————————— 二月十一日  委員久野忠治辞任につき、その補欠として犬  養健君が議長指名委員に選任された。 同日  委員犬養健辞任につき、その補欠として久野  忠治君が議長指名委員に選任された。 同月十二日  委員北村徳太郎君及び廣瀬勝邦辞任につき、  その補欠として加藤精三君及び受田新吉君が議  長の指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十五年度一般会計予算  昭和三十五年度特別会計予算  昭和三十五年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 小川半次

    小川委員長 これより会議を開きます。  昭和三十五年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  質疑を続行いたします。藤本捨助君
  3. 藤本捨助

    藤本委員 本年におけるわが国経済政策の最も重大な課題の一つは、今や世界の大勢である貿易為替自由化問題に対処いたしまして、わが国貿易為替自由化を積極的に推進し、世界経済の新情勢に即応して、わが国経済の基盤をさらに強化いたし、昨年初め以来、予想以上に輝かしい、またたくましいところの発展の過程をたどっておるわが国経済繁栄を、長期にわたり堅実に持続するということにあるのであります。しかしながら貿易為替自由化は、今後わが国における経済動向を左右する最大のかぎとなりますのみならず、戦前、戦後二十年の久しきにわたりまして封鎖されたわが国経済貿易為替管理制度という厚い壁に保護されて参りました、いわば温室育ちわが国経済を、いやおうなしにこれから外の冷たい空気にさらすことになりますので、その目標、時期及び自由化に対処いたしまして、わが国産業適応体制を策定するなどにつきましては、最も慎重にかつ合理的な手順、計画に従いまして行なわねばならぬことは申すまでもございません。そこで私はまず、この自由化に対処いたしましてわが国産業が当面する重大な二、三の問題につきまして、関係閣僚各位にお尋ねいたしたいと思います。  まず内外経済動向についての見通しをお尋ねいたします。と申しますのは、わが国経済は申すまでもなく世界経済に依存する度合いが非常に強いのでありますが、そのために、貿易為替自由化に際しましても、世界経済の動静が非常に重大な影響を与えますのみならず、また内外経済に対する政府見通しは、自由化に対処いたしましてわが国産業適応体制に切りかえるという運営の上にまことに重大な、また信頼すべき手がかりになるからであります。這般の施政方針の御演説におきまして、大蔵大臣は、世界経済情勢を見ると、アメリカ経済は、鉄鋼争議の解決により本年は一段と発展するものと期待される。西欧経済につきましても、引き続き好況を持続するであろうということが予想される。また低開発国に対する経済援助国際協力も次第に積極化いたしておるから、これらの事情からして、総じて世界経済は新たな拡大成長に向かうものと申されておるのでありますが、はたしてそうならば、いかなる根拠に立たれましての見通しであるか、承りたいのであります。
  4. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 経済見通しについて御質問があったようでございますが、大体この問題につきましては、先般からたびたび申し上げておる通り、三十五年度上昇過程をたどるものであるというように見通しをいたしておるのであります。日本経済が三十五年度においても緩慢ではあるが上昇過程をたどるという見通し根拠といたしましては、まず第一に海外経済事情見通しであります。この問題につきましては、先般大蔵大臣からもお話がありました通り、たとえば、アメリカにおきましても、大統領教書を見ましても、また先般国会において商務長官が発表されました経済見通し意見を見ましても、やはり楽観論であります。それから英国でも、去る一日に英国経済社会研究所が発表いたしておりますが、これも大体三十五年度経済見通しについては楽観論であります。まず大体海外経済事情は、三十五年度においては依然として上昇過程をたどるものであるというように見通しをいたしておりますからして、従ってそれが日本へ好影響を及ぼすというように考えておるのであります。  しからば日本国内経済はどうであるかということにつきましては、昨年の秋ごろから少し景気過熱が起こるのではないかというような観測が一部にあったのでありますが、われわれといたしましては、決して過熱はないというような見通しで進んできたのであります。幸い昨年からことしにかけて日本経済は非常に平穏に年を迎えておるのであります。そこで、昨年過熱論を唱えておる人々は、その過熱が三十五年度の上期にずっと過熱景気になって、下期にその反動がくるのではないかというような見通しをしておったのでありますが、幸い本年の初めから経済が非常に平穏に進んでおりますので、過熱は起こらないという一応の見通しをいたしております。従いまして三十五年度は、上期、下期を通じて平穏に上昇過程をたどるというように大体考えておるのであります。  その具体的な説明といたしましては、先般この予算委員会で私ども調整局長から詳細なお話を申し上げたのでありますが、大体三十五年度の需要も引き続き強含みの状態でありますし、一方供給力も増強されますので、全般としては経済均衡を保ちつつ、比較的落ちついた動きを示すものと思われるのであります。従いまして三十五年度経済成長率は大体六・六の成長率ではないかというように見通しをいたしております。また物価については、大体物価も需給がおおむね均衡を維持しておりますので、大体横ばい程度物価動きではないかというように考えております。従いまして、三十五年度経済は、全般を通じて着実な上昇過程のうちに推移するものである、こういうように見通しをいたしておる次第であります。
  5. 藤本捨助

    藤本委員 しかし世界経済の支柱をもって任ずるアメリカにおきましては、景気動向を見通す上につきまして見のがしてはならぬところのいろいろな問題があるのであります。その一つは構造的な問題でありまして、アメリカ生産性を上回るところの賃金のベース・アップによりまして、賃金その他サービス部門価格上昇いたしました。いわゆるクリーピング・インフレーションと申しますか、ハーバード大学スリクター教授が言った、忍び寄るインフレーションといいましょうか、それがあるのであります。さらに基礎産業優位性の問題でありますが、外国に対してその優位性が動揺低下しておるという事実もあります。さらに東西雪解けのきざしと、ソ連の平和挑戦等々によりまして、アメリカにも軍縮問題が台頭いたしております。しかしそれがどういうテンポでどういう幅で行なわれるかということは知る由もございません。けれども、今日の国際情勢見通しとしては一応考えられます。しこうして、その動向いかんによりましては、ひとりアメリカ経済ばかりでなしに、世界経済に重大な影響を与えるということは決して過言でないのであります。  さらに、アメリカ国際収支の問題、御承知の五八年におきましては三十四億ドル、五九年におきましては四十億ドルを突破するであろうというような推定もできておるのであります。加うるに、五七年の末におきましては、アメリカの金の保有量は二百二十八億ドルありました。それが昨年の十月には百九十六億ドルに減っておるのであります。アメリカは百六十五億ドルの債務を負っておるのでありますが、国内法の規定によりますと、通貨発行高に対しまして二五%の金の準備を必要といたしております。そういたしますと、今の通貨発行高は四百七十五億ドルでありますから、その二五%、百二十億ドルという金準備が要りますが、それを、今申した百九十六億ドルから差し引けば、残るのは七十六億ドルであります。アメリカのドルの対外債務の四割にしかすぎない。そこで、一まつの焦慮がアメリカにもあるのであります。さらにまた、昨年一月に発足し、その後非常な成長を遂げております欧州共同市場の圧迫がアメリカにも感じないではない。こういうような事情アメリカにある。さらに西欧西ドイツにおきましても、これは主として労働力不足からでありますが、賃金のべース・アップが非常に大きくなりまして今やコストインフレがあることも御承知通りであります。それから東南アジアにおきましても、先進工業国との間の経済的な格差が非常に大きくなると思います。外貨不足に悩みながらも、国内開発産業の建設に非常に邁進いたしておりますが、今や世界的規模のこの貿易為替自由化は、プラス面もありますけれども、幸いしない面も多々あるのであります。こういうような事実は、世界経済動向に対しまして、今日の繁栄を明日に持続するかどうか、あるいはその支障とならぬとも限らぬと思うのであります。この点につきまして菅野長官はどういうふうに御判断されますか、お伺いいたしたいと思います。
  6. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 アメリカ経済の推移についていろいろ御意見があったのでありますが、まずコストインフレーションの問題でありますが、先般も、商務長官国会における演説の中でも、アメリカ経済は三十五年度ずっと楽観的な見方をしておりますが、それにただし書きがついております。それにはインフレが起らなければというただし書きがついておるのでありまして、そこでアメリカとしてもインフレを起こさないという政策商務長官は臨んでおるということは、これによってうかがわれるのでありますからして、従って今お話のようなインフレということは、アメリカでは極力押える政策をとって進むのじゃないかというように考えております。  それから軍縮の問題でありますが、これは軍縮がどこまで進展するかわかりませんが、お話通り軍縮ということが大規模に実現せられますと、これが経済には非常に影響を及ぼすのでありまして、この点におきましてはわれわれも無関心ではおれないのであります。まだ軍縮見通しがつきませんからして、これについてはどういう影響をするかということについては、はっきりわれわれの意見を申し上げることができないと思います。  それからアメリカ国際収支赤字ということのお話がありましたが、御承知通り大統領教書を見ましても、ことしは黒字にするということで、昭和三十五年度アメリカ経済政策ははっきりうたっておるのでありまして、おそらくアメリカとしては、国際収支は三十五年度はずっと黒字となるのではないかというようなことも考えておるのでありまして、そういうような点を考えてみますると、それほど御心配になるようなことは起こらないのではないかというように考えております。  西独の問題については、お話通りやはり労働力不足というような問題があると思いますが、しかし総じてアメリカにいたしましても、英国あるいはヨーロッパにいたしましても、来年度経済がよくなるというその根本理由といたしましては、やはり生産技術向上ということをあげておるのであります。これは日本経済も、やはり生産技術向上ということが原因して最近日本経済がよくなってきたのでありまして、われわれも三十五年度経済がよくなるというその根本理由は、やはり生産技術向上ということを考えておるのでありまして、外国もやはりそれをうたっておるのであります。でありますからして、少々のコストが上がりましても生産技術さえ向上すれば、従ってそれによって生産力を大いに増し、国民総生産も増しますからして、そういう意味において各国とも経済上昇するというような見通しをしておるものと、こう考えておるのであります。
  7. 藤本捨助

    藤本委員 今もお話がございましたが、商務長官のミューラー氏が、五九年は史上最良の年であった、六〇年も繁栄と平和が増進するので、さらによい年になるであろうということを申されております。また旧臘の二十八日から三十日にかけて、ワシントンで開かれましたアメリカ経済学会及び統計学会におきましても、これに多数出席した専門経済学者あるいは経済家は、本年の景気上昇は六〇年中も続くであろうという見方について意見が一致しております。しかしなおいろいろな事情からいたしまして、アメリカ対外経済政策を転換するのではないかというような節もないではないのであります。またわが国にとりましても、昨年の春以来予想以上に経済成長いたしまして、国際収支関係も堅調であり、昨年の暮れには十三億二千二百万ドルというような外貨の保有されたことも申すまでもないのでありますが、また物価も安定しておるということでありますけれども、これらのことは今までのことであって、明日の保証になるかどうかということは問題であります。わが国のごとく世界経済依存度の非常に多い経済情勢でありますから、外の事情の変更によりましては黒字の幅が狭まる、あるいはまた下期ともなれば赤字基調に転換するかもしれないというような見方相当あるのであります。加うるに、この間佐藤大蔵大臣アメリカ景気上昇理由一つとして、アメリカ鉄鋼争議が解決したということを申されております。しかしそれによるアメリカ景気上昇は、鉄鋼争議のために生産にブランクができた、それを埋め合わすための鉄鋼とかあるいは自動車工業の増産が中心になっております。しかしその反面からいうと、久方ぶりに対米貿易黒字になった中心であるところのわが国鉄鋼あるいは小型の自動車というようなものの輸入をチェックいたしております。さらにまた東南アジア後進国地域におきましても、世界景気上昇につれまして、わが国になくてはならない原材料の価格がつり上げられております。さらに不定期船係船が七十万トン、さらにタンカーの係船も七十万トン減少いたしている。そういうような事情海上運賃に反映いたしまして、昨年の五月から本年にかけて運賃が三割も上昇いたしております。こういうことは、やはり日本の今後の経済見通しをする上において、見のがしてはならぬ事実であろうと思うのでありますが、この点について一つお伺いいたしたいと思います。
  8. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 アメリカ経済動きにつきまして、いろいろ心配される向きが全然ないわけではございません。だからこそ、ことしなど思い切って黒字予算を作った、こういうことが非常にはっきり警戒している証拠だと思います。また最近のアメリカ金利が大体上がる方向に向かっております。おそらくことしの世銀の借款も相当高いところにいくのではないか、相当引き上げられるのではないかというような見通しでありまして、こういうような点は、同時に今の景気を持続していくというアメリカ自身の努力にほかならない、かように私どもは考えております。  ただいま菅野長官から申しますように、インフレにならないならば景気は続いていくであろうという見方、また昨年中わが国からもアメリカに参りました銀行なりその他の人たちの報告を聞きましても、アメリカの今日とっている経済政策あるいは金融政策その他から見ると、まずこの好況は続くであろうもちろん月々には波がございます。波がございますが、総体としては必ず上昇していくであろう。さらにまた軍事費の問題が、軍縮という意味から非常に論議されているようでございますが、私どもが手に入れたもの、これはいわゆる共産圏軍事費は一切公表されておりませんからわかりませんですが、フルシチョフ自身演説等を見ましても、兵隊は減らしているけれども火力そのものには変化はない。科学兵器その他は大幅に取り入れておると思います。  ところでいわゆる自由主義諸国軍事予算はどうなっているかと申しますと、アメリカ国家安全保障費として旧年度は四百五十七億ドルを計上しております。ことし、新年度は四百五十六億ドル、一億ドルの相違であります。しかし相互安全保障費が、旧年度は三十四億ドルをことしは三十五億ドルに増しておりますから、総額では変わりがないということであります。またイギリスの軍事費は旧年度は十五億ポンド、新年度は十六億五千万ポンド、これは大体一ポンド千円に換算しますと、わが国予算以上の軍事費が計上されているようであります。ところでこの英国のものは公表されておりませんが、これはロイターその他の報道等によりましても、この数字には大体間違いがないようであります。また西ドイツ防衛費は旧年度は九十五億マルク、新年度は百七億マルクでございます。大体一マルクが九十円くらいに換算してみれば円に換算できるわけですが、これはふえております。またフランスは旧年度百五十九億新フランが、新年度は百六十五億新フラン、こういうようにこれらの国では金額はふえておる。この軍事費自身が、どういうものを作るかは別といたしまして、いわゆる軍縮経済に大きな影響を与えるだろうということをしばしばいわれますが、今の自由主義諸国、大国が計上しております軍事費は、ただいま申し上げるように昨年並みかあるいは旧年よりもふえておる、こういう実情にあるということであります。  ところで、欧州金利を上げた、またアメリカ自身も、世銀等金利も高くなるだろう、こういうようなことを考えてみますと、インフレに対して非常な抑制策をとって十分の警戒をしておる、その警戒はおそらく相当の効果をおさめて、所期するように経済上昇をやはり安定成長方向へ保ち得るのではないか、かように私ども考えております。  ところで、先ほど来お話しになりますように、自由化という問題が差し控えておりますが、これは最近にない大変革であります。この自由化の問題は、正確に申しますれば、一昨年欧州共同市場が発足し、通貨についての交換性を一部与えた、この辺から問題が起きたわけです。昨年中はわが国外貨保有高等につきましてもやや不安がありましたし、また経済状況なり貿易状況等についても私どももやや心配いたしておりましたので、準備期間を一年過ごした。もう今日になれば、まず経済も、自由化方向へ踏み切っても、基礎的には一応見通しがついた、だからここで世界の潮流である自由化方向へ踏み切ろう。そこで、ことしになりましていろいろ計画を樹立して参っておる。もちろんこの自由化という問題は、お話にもありましたように根本的な大改革でございますから、十分の期間をとって自由化方向計画を立て、その遂行に遺憾なき準備を遂げていく、こういう考え方でございます。
  9. 藤本捨助

    藤本委員 いろいろ御答弁を得ましたが、ここでちょっと菅野長官景気循環について承りたいと思うのであります。  景気循環につきましては、十年とか七年とかいうような周期的なサイクルの問題もいろいろありますが、近ごろは各国ともに非常に経済体質を改善いたし、それから各国とも非常に調整力が強化されております。たとえば失業保険世界的に普及されているということは、かりに失業いたしましても消費力が減らない。あるいはまた労働組合の結成によりまして、非常に景気の後退の突っかい棒になっておるということもあるのであります。さらにまた農産物等支持価格、さらに国際通貨基金等がありまして、一地方または一国に何か危機でもありますれば、すぐに救済いたしまして、一波が万波を呼ぶというようなことがないようにされております。こういう事情によりまして、景気がよくなるにいたしましても非常な高い山はない、あるいは沈滞化いたすといたしましてもそんなに深い谷もないというような情勢に今はなっております。つまり景気の幅が、いずれにしてもそう大きくない。それから周期的なサイクルも、十年とか七年とかというほどでないのでありまして、非常に縮まってきたことは事実であります。  それは今申しましたように、経済体質改善、あるいはまた調整力の強化ということからくるのでありましょうが、これをわが国について見ますと、かつて神武景気が来た、間もなく神武不景気が来た、今は岩戸景気だ、もうそろそろ不景気の時期に入るのではないかというような声もいろいろ巷間にあるのでありますので、一つ管野長官の御見解によりまして啓蒙をしていただきたいのであります。
  10. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 景気お話がありましたが、お話通り戦前のいわゆる景気変動説と申しますか、それは戦後の経済においてはもう適用できぬような世の中になってきたと思うのであります。それは、お話通り政府景気変動を抑制するような政策をいろいろとっております。いわゆる自動安定装置と申しますか、そういうようなことで、景気が大変動しないような政策政府自身がいろいろとっておりますから、従って昔のような大幅な景気変動はないと思います。  そこで私たちは、最近の経済動きは非常に堅調な、いわゆる数量景気であるというように申しておるのであります。これは、いわゆる価格景気と違いまして、物価の大変動を来たさない。また来たさないようにしなければならぬというようにいろいろ政策をとっておるのでありまして、実際たとえば昨年金利を一厘引き上げをいたしましたのも、こういう過熱を起こさないような警戒的な意味において金利引き上げをやる、あるいは銀行準備金引き上げをやる、そういうような政策をとってきておるのであります。そこで、昨年来非常に景気がいいものですから、これは神武景気再来ではないかというような心配を持たれたのでありまして、私たちも多少そういう意味においては一つ危惧心を持ったのでありますが、しかし、神武景気再来は来たさないという見通しを持って実はずっと進んできておるのであります。この点につきましては、先般の本会議でもお話し申し上げました通り、あるいは製造工業稼働率なりあるいは物価変動率なりあるいは輸出輸入の関係など見て、神武景気のときとは上昇がまるきり変わっておるのでありまして、そういう意味で、景気は緩慢な上昇過程をたどっていく、昔言うようないわゆる景気変動は今後は大体——あるいはどこかで戦争があるとかなんとか特別な事情が起これば別ですが、そうでなければ大体緩慢な上昇景気をたどっていく、またそのように政策をとらなければならぬ、こう考えておる次第であります。
  11. 小川半次

    小川委員長 藤本君、通産大臣は十一時三十分ごろから参議院の方へ出席される予定になっておりまするから、もし通産大臣に御質疑がありましたならばその時間までにお願いいたします。
  12. 藤本捨助

    藤本委員 貿易為替自由化促進と申すことは、申すまでもなく、従来のような保護貿易制度では貿易も拡張しない、あるいは経済も発展しないということが今や世界の常識でありますので、一九四四年のブレトンウッズの協定にうたわれておる原則と比較生産費の原則に基づく国際分業の利益にあずかる、そうしてその国の産業基盤を強固にする、あるいは貿易の拡大をはかるということにあるのであります。従いまして、わが国も積極的に貿易為替自由化を推進いたしまして、比較生産費の原則による国際分業の利益を受けて、わが国経済の基盤をさらに強化し、貿易の拡大をはかり経済の発展をはかるということのために、この画期的な貿易為替自由化の際にあたりまして、わが国産業構造について格段なる構想、工夫があってよいのではないか、またあるべきでないか、かように私は思うのであります。つきましては、日本産業全体について、まず国防とか保安とか厚生とかあるいは農工業とかいうようなものについて、なお保護を必要とするものがあるとすればどういう産業であるか。いかにして、またいかなる程度にこれを保護するかということ。さらに、世界的に優位性を持った日本産業はどういう産業であるか。あるいはまた育成途上にある日本産業はどういうものであるか。中小企業について大いに見るべきものがございます。さらに、また、わが国経済の二重構造あるいは賃金体系あるいは労働力の完全雇用あるいはまた動力とか輸送とかさらに関税制席等々につきまして、根本的に慎重に調査検討いたし、また総合調整いたしまして、ここに世界経済の新情勢に即応する抜本的なわが国産業構造の再編成を断行してしかるべきではないか、かように私は考えておるのでありますが、この点につきまして菅野長官はどういうようにお考えなさいますか、お伺いいたしたい。
  13. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 お話通り貿易為替自由化ということが日本経済根本的に私は変質せしめるものだ、こう考えておるのでありまして、今までは過去二、三十年間いわゆる統制経済あるいは割当経済という時代であったのでありますが、それがすべて経済活動が自由になるということになるのでありますから、もう経済の様相が今までとは違うように動かなければならぬし、また動くことが世界の大勢に順応するというように考えておりますから、従って今後の産業政策というものは根本的に一応再検討して、そして新しい経済様相のもとにおいていかなる産業が発展するかということの根本的な調査研究をしなければならぬ、こう思っております。それによって、世界経済における日本経済の行き方ということをはっきりして進めていきたい、国民所得の長期倍増計画の中にも、そういうことを勘案して、長期経済計画を立てていきたい、こう考えておる次第であります。
  14. 藤本捨助

    藤本委員 次に、為替管理制度が撤廃されますと、今まで保護管理制度によりまして国際収支の調整をやっておりましたが、これが撤廃されますと、国際収支均衡が気づかわれるのであります。そこで、私は、菅野長官国際収支の長期の見通しについてこの機会に承りたいと存じます。
  15. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 国際収支の長期の見通しでありますが、御承知通り今までの日本貿易上昇ぶりは、世界貿易に比べまして、非常に成績がよいのであります。たとえば輸出について申し上げますと、世界は大体四ないし五%の輸出の上昇になっておりますが、日本は年率で大体九ないし一〇%の輸出の上昇になっております。でありますからして、この輸出の上昇を続けていくように日本の今後の産業を進めていきたい、こう考えております。もちろん、貿易の将来につきましては、たとえば特需が漸減傾向にありますし、あるいは海外からの新技術の導入によりまして、特許料あるいは利子の支払いなどの増加はもちろん見込む必要があるのであります。しかしながら、今申し上げました通り、輸出の増進ということにつきましては、今後政府が一そう奨励策をとっていきたい。そうすれば、大体ずっと国際収支黒字を続けていくのではないか。三十五年度は大体一億五千万ドルの黒字という見通しをいたしておるのであります。
  16. 藤本捨助

    藤本委員 通産大臣がお時間の都合があるようですから、順序を変えましてちょっとお伺いいたします。まず、貿易為替自由化に対処いたしまして、国内産業のこれに対応する体制についてであります。これにはいろいろな面があるのでありますが、きょうは時間がありませんから一つ二つお尋ねいたしてみたいと思います。  まず、国際的にわが国産業の競争力を強化しなければ、この国際的な自由競争には勝てないのであります。そのためにいろいろな手がありますが、しかし、私は、まず独禁法の問題についてこれを緩和しなければいかぬのではないかというような感じを持っておるのであります。申すまでもなく、西ヨーロッパが今回早く、貿易為替自由化に踏み切りまして、世界経済の新しい情勢に踏み出しましたのも、西欧諸国の産業の国際競争力がアメリカと対等になるまでに成長をしたということが一つ理由であろうと思います。さらに、西欧諸国におきましては、すでに国際分業が行なわれております。たとえばドイツの光学器械とかあるいはオランダの電気器具、あるいはスイスの時計、これは自分の国の市場を支配しておるばかりではございません。ヨーロッパ全体にわたりましても、他の競争を許さぬというまでに成長をいたしております。さらにまた、西欧各国におきましては、国々に十分に国際競争力を持っておる巨大な産業が市場を支配しておる。また、中小企業に至りましてもこの巨大産業の系列に入るか、あるいはまた北欧のガラス器具製造業のごとく、あるいはイギリスの家具工業あるいはフランスの譲造工業というように独自の技術を持ちまして、そして独自の地位を保っておるというようなことでありますが、わが国について見ますると、戦前までは相当国際競争力を持った産業もありましたけれども、今はございません。また、中小企業に至りましては、資本力の脆弱であること、また技術水準が低いというようなことで、いわゆるわずかにマージナル・サプライヤーというような立場に、日本の中小企業はあります。こういうわけで、どうしてもここに国際競争力を強めるためには、独禁法を緩和していかなければならぬのではないか、私はかように考えます。  それから、またわが国のように賦存資源に恵まれないで、結局加工貿易に待たなければならぬというような国におきましては、独禁法はよほど考えなければならぬのではないか。といいますのは、国際競争をやるには相当経済単位が要るのであります。相当経済単位がなければ競争にならない。あるいはまた景気が沈滞するというような場合におきまして、生産設備を縮小するというようなことは愚の骨頂でありまして、次の景気上昇に備えておかなければならぬ。そうなれば、そこに操業の短縮というような問題も起こるのであります。そういう意味から、どうしても日本がこの貿易為替自由化に踏み切る上において、国際競争力をわが国産業につけるために、独禁法の適用についてはよほど検討いたして緩和する要があるのではないか、かように考えますが、いかがでありましようか。
  17. 池田勇人

    ○池田国務大臣 国際競争力の培養につきましては、私は、個々の会社自体の体質改善が第一であると思います。しこうして、国内における独占禁止、カルテルの問題は、やはり大衆の生活ということを考えますると、この伝家の宝刀はなかなか抜くべきではない。ただ問題は、国際的に見まして過当競争等の点はこれは考えなければなりません。私は、ただいまのところ独占禁止法の改正ということを考えずに、国際的に見ていろいろな支障がある点をある程度是正して競争力をつけたい、いわゆる輸出入取引法の改正ぐらいでとどめていいのではないかと考えております。
  18. 藤本捨助

    藤本委員 今もちょっと触れましたが中小企業という問題につきましては、いろいろの構想、工夫がされておりまして、その御意見も拝聴いたしております。しかし今や貿易為替自由化に門出いたすにあたりまして、中小企業の体質改善という手はいろいろありましょうが、親会社とか、大きな企業の系列に入れるというようなことについて政府は指導すべきでないか、こういうようにも思うのでありますが、いかがでありましょう
  19. 池田勇人

    ○池田国務大臣 大企業と中小企業との系列化は徐々に行なわれております。また私はその大企業との系列化もさることでございますが、中小企業自体が、組合化、組織化していくことも一つの方法である。もう大企業との系列化はほっておいてもできる。われわれとしては中小企業間の組織化を考えていきたいと考えております。
  20. 藤本捨助

    藤本委員 いわゆる二重構造の問題でありまして、それが中小企業にもあるということでありましょうが、せっかく御指導を願いたいと思います。それから今度外貨予算制度をやめますることについて、原材料の割当がなくなる、そういたしますと過渡的に過当競争が起こるのではないか。それは一時的にもせよ、日本産業経済の秩序を乱すのではないか、かように思いますので、それに対してどういう手をお打ちになりますか、伺いたいと思います。
  21. 池田勇人

    ○池田国務大臣 先ほど申しましたように、国際面におきまして為替貿易自由化によっての過当競争ということを考えなければならない。輸出の場合のみならず、輸入の場合においても、それを考えなければなりません。従いまして輸出入取引法を改正いたしまして、著しき過当競争ということの防止に万全を期したいと思っております。
  22. 藤本捨助

    藤本委員 今までわが国経済は申すまでもなく、複雑な統制経済のワクの中に入っておりましたが、これからは正常経済世界の自由経済の一環として歩まなければならぬのでありますが、この新しい段階に入りまして、新しい指導者が要るのではないか。技術面はもとよりでありますが、その他経営につきましても、いろいろ新しい構想による指導者が要るのではないか、かように思いますので、指導者の養成とか訓練とかいう点について何とかお考えございますれば承りたいと思います。
  23. 池田勇人

    ○池田国務大臣 そういう点につきまして、財界の方面でもいろいろ想を練っておられるようでございます。生産性向上を主体としてのいわゆるトップ・マネージメントの研究とか、あるいはまた最近新聞紙上では、財界が大同団結して一つの大きい調査機関を設けてはどうかというふうな、いろいろな新しい時代に即応するような方法を大局的にまた個別的にとっておられるようでございます。私はいい傾向だと思っております。
  24. 藤本捨助

    藤本委員 先ほどもちょっと触れましたが、この自由化にあたりまして、国防とか、保安とか、厚生とか、農工業、そういう方面につきまして、なお保護を必要とするというものがあることは申すまでもありません。ここで最近のイギリスの例を引きますと、昨年の暮れまでに、貿易の制限はほとんど解いております。まずドル地域に対しましては、まだ制限を解いておらぬのが二十五品目、緩和地域に対しては十六であります。もうほとんど解いておる。それにもかかわらず、日本に対しては今この措置を適用しておりません。それから食糧、原材料の中におきまして、バター製品とか、あるいは果実とか、あるいは魚類とかいうようなものにつきましては、イギリスの就業人員の中で五%にしかすぎない農漁民の利益を考えまして、輸入制限を置いております。それから英連邦内からの食糧とか原料の輸入を優先さすために、御承知の特恵関税もございます。そういうように非常に慎重にかまえておりますが、わが国におかれましても、一つそういう点について特に御配意を願いたいと思うのでありますが、その点についてお話を承りたいと思います。
  25. 池田勇人

    ○池田国務大臣 イギリスの自由化の進み方は、大いに参考になると思っております。まだイギリスの昨年とりました措置にいくまでには相当の時間を要しますが、ただやはり国内の農業その他の保護、中小企業に対しての風当たりの緩和等につきましては十分考えていきたいと思っております。
  26. 藤本捨助

    藤本委員 まだたくさん伺いたいのでありますが、お時間の都合がありますからまたの機会にいたします。  菅野長官に引き続きお伺いいたしますが、次に、幾ばくの外貨準備をもってこの自由化に耐え得る適正規模外貨準備とするか、こういうことについて承りたいのであります。
  27. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 適正の外貨保有量というものはなかなかこれはむずかしいので、その国々によって事情が違うと思うのでありますが、まあ一国の経済成長率ども考えなければならぬし、あるいは輸入の依存度ども考えていかなければなりませんし、あるいは国際信用の関係、あるいは景気変動に伴う支出の増とか、あるいは季節的収支の変動など、いろいろのことを考えて適正外貨というものをきめなければならない、こう考えておるのでありますが、御承知のように昨年末大体十三億ドル以上の外貨準備があるのでありまして、これで私は貿易為替自由化が実現されても十分であると考えております。しかしより多く外貨を持つことはなおけっこうなのでありますからして、今後国民の努力によってもう少し外貨をふやすようにやはり進めていきたいと思うのであります。  なお、この外貨準備高とその国の輸入の関係などについての割合を見ますと、なるほどスイスや西独やイタリアには日本は及ばないのでありますが、イギリスやフランス、ノルウエー、スエーデンとは今の十三億ドルであれば大体相匹敵するような状態にあると思います。そしてまあ十三億ドルということでありますと、大体今の日本の輸入額の約四カ月分ありますからして、従いまして十三億ドルあれば貿易為替自由化については決して心配要らぬ、こう考えております。
  28. 藤本捨助

    藤本委員 外貨準備高につきまして、今四カ月分というお話でありましたが、大体輸入量の三〇%という説もございます。しかし私はそういう量の問題もさることながら、またここに非常に注意を要しますことは、まずそれは国際収支能力によって起こるのでありまして、それをどう見ておるか、国際収支能力はまた国民経済成長力によってきまるのであります。それをどう見ておるかということがきわめて重大な問題であります。見通しがどうの、あるいは通関で、あるいは信用状でどうのということは末でありまして、収支能力をはかる、たとえば今までわが国自動車を輸入しておりましたが、これはもう輸出いたしております。あるいはまた鋼材をそのまま輸入いたしておりましたが、これを鉱石をとって鋼材にすれば三分の一の経費でいける。つまり輸入が三分の一に減るわけであります。あるいはトランジスターとかあるいは石油化学とかいろいろなわが国の輸出を伸ばす、さらにまた輸入を減らすというような、非常にわが国国際収支能力が強化されておる。それはわが国経済成長力を意味するのでありますが、その点についてどうも政府見通しは、またお考え方は、少し過小評価でないかというようなきらいもあるのでありますが、その点いかがですか。
  29. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 輸出能力については、先ほどから申し上げました通り、今まで以上に輸出は奨励しなければならないということで、通産省におきましても、いろいろ輸出奨励策を講じておるのであります。お話通り、やはりその国の経済成長率、輸出能力ということが国際収支の上に影響を及ぼすのでありますからして、幸い最近における日本経済成長が非常な勢いで成長しておりますし、来年度も大体六・六%の成長率であるというように見通しておりますから、従って来年度も大体一億五千万ドルの国際収支においては黒字であるというような見通しを立てておるのであります。そういうようにあくまで毎年黒字国際収支を続けていくということで、すべて経済政策を立てておる次第であります。
  30. 小川半次

    小川委員長 藤本君、労働大臣に御質問ございませんか。通商産業大臣と同様に労働大臣を参議院の本会議で招集しておりますから、もしありましたら、順序を変えて先にやっていただきたいと思います。
  31. 藤本捨助

    藤本委員 貿易為替自由化にあたりまして、産業のいろいろな転換があると思います。それに従いまして労働という面の配置転換もありましょうが、これによって雇用問題等むずかしい問題が起こりますが、まずこれについてどういう御用意があるかということでございます。
  32. 松野頼三

    ○松野国務大臣 貿易為替自由化についてはいろいろな方策があるかと存じます。今までこの二、三年、数百品目の自由化をいたしました。その結果を見ますると、幸い経済が伸びて雇用が伸びております。この状況がいつまでも労働市場に続くという確信はございませんが、一応経済が拡大した。主として原材料の輸入ということは生産を拡大する。生産を拡大するというと雇用も伸びる、賃金もある程度伸びておるという過去の例を今日まで検討いたしますと、経済的に伸びる、雇用も伸びるという傾向が出ておるので、このまま推移していくならば、これは私は労働大臣としてはけっこうなことだ。しかしいつまでもこれが続くかどうか。それは経済事情の変化によりますから、一がいにこれでいいのだと私は楽観をしておりませんが、そういうことを注意しながらやっていきたいと考えております。
  33. 藤本捨助

    藤本委員 それについていろいろ問題があるのですが、時間がありませんからまたの機会にいたしまして、もう一点、低賃金の問題であります。これはインドの賃金を思わせる程の低賃金の面もありますが、さらにまた企業間におきましても非常に格差がございます。これは働く者にとりまして非常な不幸なことであるのみならず、今や為替貿易自由化にあたりましても非常に支障を来たしておる。たとえば英国は先ほど申しましたように、輸入制限をほとんど撤廃いたしておりますが、日本には適用しない。ドイツにおきましても、たとえば生産力成長からいったら、あるいはまた外貨を持っておることからいいましても欧州随一でありますけれども、やはり日本に対しましてそういう点がございます。つまり日本の低賃金、従って商品のコストが低廉であるというようなことで国内産業を荒らされるということからドイツもそうであります。たとえば陶磁器とか繊維製品とか、あるいは双眼鏡とかミシンとかライター、玩具、こういうものについてはまだ問題が残っておりますが、こういうように低賃金ということは働く者のためのみならず、生産性向上、あるいは経済基盤の確立というような面からも非常に考えなければならぬのでございます。かねて最賃法を規制されましたが、しかし賃金の問題は法の規制が万能ではございません。結局所得形成の問題でございます。私は生産性向上して賃金を上げるとか、あるいはまだドイツと違いまして労働力がずいぶん余っておる、完全失業者が五十万もありましょう、潜在失業者に至っては七、八百万はありましょうが、そういう方面に職場を与えるというようなことをいたしまして、とにかくこの賃金上昇を考える。そして需要を増すというような線に持っていかなければ、わが国のこの画期的な貿易為替自由化に対しましても支障を伴ういろいろの問題がございますので、労働大臣の賃金対策といいますか、ここで一応承っておきます。
  34. 松野頼三

    ○松野国務大臣 賃金の決定は各国ともになかなか決定的な方式はございません。これは産業政策の中で最も苦労しておることで、労使間できめるという常識的なことは、これはございますけれども、いかなる賃金が妥当かということは世界中まだ手探りでございます。ただ新しい傾向としては、生産性向上につれて賃金上昇をきめるという労務契約をしたところもございますし、日本国内においてもある程度安定賃金という意味で、二、三年を見越して賃金協定をした産業も出て参りました。しかし基本的には、労働大臣としては賃金上昇ということを期待する、そのためには、法律的には最賃法、もう一つは最賃法よりももっと零細な労働力があります。御承知の家内労働でございます。これは統計に載るというよりも、賃金に当てはまるかということさえ疑問になるような家内労働というものが日本にございますので、これにまず着手しなければならないというので、家内労働の調査を昨年からいたしまして、この国会中にでも御報告がいただけるならば、家内労働についての加工賃とか保護とか衛生とかいうものを加味して、今後の対策を立てて参りたい。いかんせん一番零細な賃金というものは、ある程度賃金上昇の底にしなければならぬのではなかろうか、こういう考えでございます。なお大企業と中小企業の格差は御承知のごとく相当開いて参りましたが、ただ昭和三十三年、四年を見ますと、ある程度中小企業の格差がまた縮まってきております。これはいい傾向だと考えています。
  35. 藤本捨助

    藤本委員 労働大臣に対しては他の機会に質問をやります。菅野長官にもまだありますが、時間がありませんから別の機会にいたします。  今度は大蔵大臣金融政策について承りたいと思います。貿易為替自由化によりまして、かつては、また現在もそうでありますが、外貨予算によってまず生産の過剰を阻止するとか、過当競争を制止するとか、物価の安定をはかるとかいうようなことをいたしまして、国際収支均衡をはかり、さらにまた国内産業を保護するというようなことができておりましたが、これが自由化いたしますとそれがなくなり、そこで金融政策というものの使命が非常に重くなってくるというように私は考えるのであります。  そこでお伺いいたしたいのでありますが、今までの金融あるいは金融制度は、為替管理等によりましてわが国国内市場を独占いたしておる、いわゆる温室の金融制度でありましたが、これから自由化ともなりますればそうは参らない。そこで私はいろいろお尋ねいたしたいことがありますが、まず金利の問題であります。わが国金利が国際金利の水準に比較いたしまして非常に高いということは、これはもうだれもが言うことでありますけれども、その高い理由がどこにあるかということが問題であり、その高い金利を国際水準にまで持っていくにはどうするかということが問題でございます。私は、国際金利に比較いたしましてわが国金利が非常に高いということは、一口に申してオーバー・ローンに一つはある。つまりわが国経済が非常に成長いたしまして世界一だ、従いまして資金の需要も多い、そこで銀行の預金では間に合わない、にもかかわらず政府の余裕金がありましても国庫に眠らしてこれを銀行に還流しない、あるいは国際収支黒字がありましても、オーバー・ローン解消の名において日銀が引き揚げてしまう、こういうことでありますから、結局不足資金に対しましては日銀借り入れのほかはない。そこで公定歩合の引き上げもありましょうし、あるいは高率の適用も受ける、あいはさらにコールの金を使う、こういうことにもなる。しかも預金利子は下げるわけにいかない、そこで貸付の金利は上らざるを得ない、ここに問題があるのであります。  それからもう一つは、わが国経済成長が伸びたのはいいのであるが、日本の企業が借金政策でいく。大体自己資本は四〇%ぐらいでありまして、六〇%は借金政策でいく。ここに大きい問題があるのであります。これは、端的に言うと、金利も高いが税金が高い。比較検討の結果、借金政策でいくのがいいのではないかというようなことがあるのでないかとも思えるのであります。ともかくも借金政策日本の企業は動いておる。それがオーバー・ローンの大きい理由でございます。そこで、私は、オーバー・ローンの解消に対しましては、こういうような私見を持っております。日本銀行は資金不足に対しまして貸付をやっておるが、その貸付よりも、むしろ市中銀行の手持の公社債を日本銀行が買い上げる、それで信用を与えるというようにしていくならば、日本のオーバー・ローンは一挙にして解決します。また国際収支黒字によって、それはオーバー・ローンの解消に使えというような日銀当局の考え方をもう少し考え直しまして、これは銀行の資金に充てるというようにいたしますならば、銀行はオーバー・ローンに出なくても資金は確保し得るのではないか、こういうようなことも考えられるのであります。さらに、先ほども申しましたように、借金政策で企業がいくということは、結局は課税の限度が来ておるのではないか。二千百億の税の自然増収がある、減税をやれということは、これは一つの考え方と私は思います。と同時に、今、日本の企業が好んで借金政策でいくということは、そこに税制の上においても考えなければならぬところに来ておるのではないか、こういうように考えますが、この点についてのお考えを承りたい。
  36. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 金融制度が今後非常な大事な役割りを持つだろうという点は、御指摘の通りであります。ただ一つ、私どもの感じと藤本さんのお尋ねというか、この間にやや相違があると思いますのは、為替自由化というものが非常にスピーディにでき上るものではない、貿易自由化もこれまた非常にスピーディなものじゃない、この点が基本的に相当相違があるのではないか、かように実は思います。先ほど来通産大臣あるいは企画庁長官から申しております為替貿易自由化からいたしましても、今日自由化の大体の目標を立てまして、計画を樹立しておる段階でありますし、ものによりましては二年先あるいは三年先というようになります。また、ことに先ほど来からお話のあります国内農業等の、特に保護の厚い産業に対して、自由化後の影響等を勘案いたしますと、非常な準備を要するものである、かように実は思っております。その点で、時期的な条件で相当の相違があると思いますが、とにかく、いずれにいたしましても、貿易為替自由化された後に、金融の果す役割の大きいことは、これはもう御指摘の通りであります。そこで金融自体が正常化するということを特に私どもは注意し、そういう意味の指導をいたしておりますが、その観点に立ちまして、いわゆる預貸率の改善等、あるいは準備預金制度を発動する、こういう点はよほど改善されております。また金利そのものも、長い目でごらんになりますと、十二月に公定歩合を一厘引き上げてはおりますが、市中金利そのものも、やや下降の状況をたどっておる、こういう点はまず大体において目的を達しつつあるのじゃないか、かように思います。しかし、なお国際金利との間に相当の差のあることは、先ほど来の御指摘の通りであります。しかしただ最近は欧米等におきましての金利が上がりつつあります傾向でございますので、従来よりも差は比較的近づいてきておる。わが国は労せずしてその金利の差が縮まってきている、こういうことではございます。  ところで、金融上の問題の借金政策、自己資本によらない、この点はずいぶんいろいろ勧めておりますが、なかなか思うように参りません。それには御指摘の税金も一つの問題でございますし、あるいはまた配当等の点もやはり一つの問題ではないか、かように考えますが、この自己資本の増加については、あらゆる面から工夫いたしまして勧奨していかなければならぬ、そういう面から見ますと、社債などに依存するようにも指導して参りたいと思います。ただお話のうちで、公社債等を日銀が買い上げるということについては、私はややどうだろうかという感じがいたしておりますが、とにかくオーバー・ローン解消、あるいは企業の健全化、あるいは金融の正常化、また金利を下げること、これは御指摘のようにコスト高ですから、そのコストを下げるような点にさらに注意していくとか、いろいろ指導の点は、御指摘の方向で私どもも努力しておる状況でございます。
  37. 藤本捨助

    藤本委員 貿易為替自由化に伴いまして、外資の導入、そのうちでも、いろいろありましょうが、非居住者の資本取引ということについてちょっと伺いたいと思います。公的外資導入といいますか、世銀とか、輸出入銀行とか、あるいは余剰農産物協定による借款というような公的外資の導入はしばらくおきまして、私的外資の導入であります。それにつきまして、外資法あるいは外資審議会というような面につきまして、何か手を加える必要があるのではないか、かように考えますが、いかがでしょうか。
  38. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 外資導入につきまして、まず手始めにいたしますのは、経営取引の自由化方向であります。資本導入の方はその次でございます。まず今日の段階で行なえる範囲の外資導入、いわゆる資本導入の点についてのお尋ねになりますと、ただいま外資法並びに為替管理法と両方でやっておりますが、この考え方でまず一応まかなえるのじゃないか、今後さらに積極的に資本導入を期待するという場合におきましては、もっと緩和していく方向にならなければならぬと思いますが、まだ経営取引の方でも非常に制限のある現状からいたしますと、その点についての意見を発表することは、まだやや早いように実は考えております。
  39. 藤本捨助

    藤本委員 アメリカのニューヨークは国際金融のセンターでありましょうが、大体数千億ドルの投資余力があるようであります。すでにヨーロッパのいわゆる共同市場に対しましても、一億二千二百万ドルというものを最近投じておる。さらに日本産業界に対しても、いろいろひもをつけつつあるのではないか、またこちらからも呼びかけておるのではないかという面もなきにしもあらずであります。さような観点からいたしまして、今お話しになりましたように、順を追うということはあたりまえでありますが、この金利を下げる意味からでも、あるいはまた国際競争力をつける上からでも、私的の外資の導入ということに対しまして、それが円滑に行なわれるように、しかも日本産業影響がないように、それでわが国経済基盤が強化されるようにというような意味でいろいろの御措置を願いたいと思うのであります。  次に、最近新聞で見たのでありますが、また聞いてもおりますが、市中銀行あたりは選別融資をするということが盛んにいわれております。選別融資は自衛上やむを得ぬでありましょう。けれども、その選別融資を受けるような日本産業は、私的外資の導入の対象にもなる。ならぬのは中小企業であります。助からぬのは中小企業である。そういう面で、政府といたしましても、財政投融資なんかの面でいろいろの御用意はありますけれども、まだ現在のところ、その手続が非常にめんどうくさい、あるいはまた中小企業のすべてともいいませんが、中には条件を欠いておるというものがたくさんありまして、結局門は開けられておるけれども借りられない、また借りられても非常にタイムリーに行なわれないというような点がありますが、せっかく中小企業の融資面に対しまして政府の御配意にもかかわらず、事実それがうまくいっておりませんので、こういう点につきまして、借りやすいように、また時期を逸しないようにするために、何か特に考慮を願いたいのであります。
  40. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 中小企業金融について御指摘でございますが、中小企業金融は三公庫等の資金をふやしたこと、これが一つであります。また信用保険公庫に対しての出資等、いわゆる信用保険制度といいますか、保証協会等がもっと活用されることが実は望ましいのじゃないかと思います。ところで、銀行自身が金融についていろいろの選別をするということで、これは産業発達に必ずしも望ましいことじゃないのじゃないか、こういうようなことがあろうかと思いますが、これは一面そういう批判が当たると思いますが、一面先ほど来お話がありますように、自由化された暁において、非常に私どもが気をつけなければならないのは、過当競争であります。これは国際的過当競争もさることながら、国内の過当競争もとにかく避けていくことが必要だろうと思う。これをもし金融機関が個々で金融をいたしておる状況から見ますと、なかなか各業種別の設備投資意欲や何か強いときに、これを金融機関自身がみずからの力だけでするということはなかなか困難です。甲の銀行、乙の銀行それぞれの得意がございますから、なかなかそう簡単にはいかない。しかし経済好況、膨張いたします際に、最後に一体どこで締めてかかって、そうして適正な健全性を維持できるかと申しますと、やはり金融機関が十分そういう点に目を通す必要があるのじゃないか。そういう意味から見ますと、やはり個々の銀行もさることですが、日銀を中心にしての金融機関の相互間の情勢というものをよく把握することが必要だろう、かように実は思います。銀行についてはいろいろの定期検査等がございますが、一月に特に十銀行について臨時調査をいたしましたのも、そういうような点から私どもがまず遺漏なきを期する、こういう意味で見たような次第でございます。
  41. 藤本捨助

    藤本委員 貿易為替自由化に当たりまして、わが国貿易を拡大するという上にいろいろな手がありましょうが、商社活動がまた非常に問題であろうと思います。ところが、戦前におきましては、相当商社活動の活発な有力なものがありましたけれども、今はほとんどございません。そこで、こういう方面の商社の活動を敏活にする、強力にするという意味におきまして、いろいろな手がありましょう。今度持ち高集中制、これもその手でありましょうが、これをぜひ一つ早くやられることを望むものであります。しかし、これをやる上において次のような問題が起こるのではないか。たとえば外国為替の収支に関係がありはせぬか。為替銀行との調整をどうするか。さらにまたどういう基準で持ち高の基準を定めるか、あるいはどういう商社を対象にするか、あるいはまた国内法規の改正もありましょうが、こういう面についていろいろすでに御検討中であろうと思いますが、そういう点についてお示しを願いたい。
  42. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 貿易自由化に備える一つの方策といたしまして、商社に対して持ち高集中制を今回実施することにいたしました。適用範囲はもちろん日本法人である貿易商社ということになります。この貿易商社が為替外貨を保有し得る期間を長くしたわけであります。それも一旬、十日ばかり長くしたということでございますので、それだけでも非常に影響があると思います。今まで外貨を持てば必ずそれを円に売るとかあるいはまた必要な外貨を自分の方で調達する、こういうことであったわけでありますが、今回は手持ち外貨に余裕ができれば、それを一旬間は自分で保有し得るということになります。そういたしますと、その期間中は手持ち外貨為替相場によりまして左右することもできるでしょうし、あるいは輸入、輸出の場合に、そういう金が使えるということもございますし、そういう意味で便益、利益を受け得るということになるわけであります。ところで、そういう場合に、特別な金融措置が必要かどうかということでございますが、円の資金は、このために特別に手当をしなければならぬとは私どもは考えておりません。ただ持ち高集中制を実施することによりまして、みずから持っておる為替外貨、その外貨を調達する場合に円資金を必要とする、こういう意味でやや量がふえるということは考えて参りますけれども、そのために特別な措置をしなければならぬとは実は考えておりません。
  43. 藤本捨助

    藤本委員 次に、円価値を安定し、円の信用を高めまして、円の交換性を回復するという問題でありますが、西欧諸国はまず通貨交換性を先にやって、それから貿易為替の管理制度をとる、西欧諸国はそういうような手をとりましたが、わが国はこれに対してどういうようなお考えを持っておりますか。
  44. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 円の交換性を回復するということ、あるいは先ほど来お話のあります外資導入といいますか、資本導入、そういうようなことといろいろ関連があるわけであります。そこでいろいろ工夫を要するというか、研究してかからなければならない問題があるわけであります。そこでまずとりあえず実施いたしましたものが、終戦になって発表いたしましたように、外貨送金あるいは外国貿易で参ります場合のドルの制限、こういうものを緩和したわけであります。ただいま御指摘になります持ち高集中もそういう意味では役立つことでありますし、あるいはまた交互計算の範囲を拡大したとか、こういうような点が順次円の交換性回復の方向への諸準備、その第一段、かように御理解をいただきたいと思います。
  45. 藤本捨助

    藤本委員 貿易為替自由化にあたりまして、関税制度というものが私は非常に国際収支均衡を保つとか、あるいはまた国内産業を保護するという正面から重要になってくると思います。ところが、日本の関税制度は、明治四十三年以来、たとえば体系において、税率におきまして、あるいはまた従価税とか、従量税というような点においていろいろな問題がありますが、この自由化の門出にあたりまして関税制度を再検討し、そして、内外の関係において全面的に総合調整するために、何らかの措置をとらなければなりませんが、そのために、ここに内閣の総理府に関税制度審議会というようなものを創設して、これで慎重にわが国の関税制度を全面的に、この自由化に際会して検討するということが必要であろうと私は思いますが、この点いかがでしょう。
  46. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 貿易自由化に備えまして、関税を再検討する、御指摘の通りこれは必要なことでございます。大蔵省におきましても、すでにその点についての検討を始めております。もちろん国内だけの問題もございますが、さらに国際的観点において関税率の問題は十分検討しなければならぬということであります。  そこで、あらためて、ただいま言われるように、関税制度審議会を設けることがいいか、またその必要があるかということでございますが、私どもは現行あります関税率審議会、これを十分活用することで事足りるのではないか、実はかように考えております。お考えの通り貿易自由化に備えて関税を総合的に全面的に十分に検討し直す、これをやる、それにはただいまある関税率審議会、この活用で事が足りる、実はかように考えております。
  47. 藤本捨助

    藤本委員 次に、この貿易為替自由化にあたりまして、国際市場をどうして確保するかということについて、藤山外務大臣に、経済外交についてお伺いいたしたいのでありますが、時間もそうありません。そこで、いろいろな御構想がありましょうが、特に日本はかつては相当の属領もあったし、勢力範囲もあったが、今はございません。それから、英国におきましては、英連邦という市場があります。欧州におきましても、ドイツやフランス、イタリアにおきましては共同市場がありますが、わが国はそれがない。東南アジアも、これから私は米ソ、——自由、共産といいますか、二大陣営が経済競争をやる非常な激烈な場になると思います。日本の進出も容易でないと思いますので、そういう点を考慮されまして、またその他いろいろな角度から日本の国際市場をどうして確保するかということについての御構想を一つ承りたいと思うのであります。  そこで、時間もありませんが、あえてヨーロッパやその他のまねをするのではありませんが、日本の自活上といいますか、必要上、太平洋共同市場とでもいいますか、アメリカ、カナダ、メキシコ、その他日本の近隣の諸国を入れて、一つ共同市場を作る、そうして日本の物資交流の販路にするというようなことはどうであろうかという私見を持っておりますが、この点につきましてお考えを承りたいと思います。
  48. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 貿易の拡大をはかって参りますことは、自由化にあたりまして、最も必要であることこれは申すまでもないわけでありまして、日本といたしまして、一定の方針をもって進めて参らなければならぬわけであります。今日まで東南アジア方面の諸国に対しましても、通商協定を作る、あるいは通商航海条約を作る、あるいはお互いに経済ミッションを交換して、どういう物資を輸入し、あるいはどういう物資を輸出し得るかということを考えて参らなければならぬところにきたわけでございます。今後ともそれらの機能を活用して参ることは、これは当然のことであります。特に最近のような実情から見ますと、東南アジアはむろんでございますけれども、中近東あるいはアフリカ方面に新興国ができて参りまして繊維製品等相当に過去において輸出されておりますが、独立国になって参りますと、それ自身の国の貿易バランスということも考えられることでありますので、従って今までのような大英連邦の中における割当というわけに参らぬ点もございます。従って、アフリカ等の方面に対しまして、それぞれの国と貿易協定を作って参る、そうして従来の輸出を確保するばかりでなく、伸ばして参るというようなことも考えて参らなければならぬと思っておるのでございます。ただ日本が輸出貿易の新市場を開拓して参りますと同時に、輸出を拡大して参りますためには、やはりそれぞれの国から相当原材料を買って参りませんと片貿易になるわけでありまして、アフリカあたりもそういう傾向がございますし、東南アジア一帯もそういう傾向でございます。従って、それらに対しましては、やはりそれぞれの国の経済開発ができ、消費水準が上がり、購買力がふえてくる、そうして日本の商品を買う力がふえてくるということにもいたして参らなければならぬと思っております。また、そうした経済協力によりましてできました原材料を日本が買っていくということにして参らないと、なかなか貿易の拡大ということは、低開発国に対しましては困難だと思うのであります。そういう点について、できるだけ外交面上、力を注いで参らなければならぬと思っております。  また先進国に対します貿易等の拡大につきましては、ただいま御指摘のありましたように、イギリスとは通商航海条約を締結する基礎になる話し合いをただいまいたしております。そうして、通商航海条約ができまして、ガット三十五条の援用撤回まで持っていかなければならぬと思っております。日本自由化に伴いまして、それらの国に対する交渉も、比較的日本の立場は有利にはなってくる。先ほど御指摘のありましたような低賃金というような問題もございますけれども日本自身の自由化をして参ります立場からいいますと、こちらの主張が強くなって参ります。御指摘のように、ドイツの繊維製品とか陶器等に対する自由化の問題につきましては、昨年七月以来東京で基礎的な交渉をいたしておりますが、ただいまボンで本格的にこれに取り組んでおるのでございまして、そういう面から見ますと、こちらが自由化して参ります場合に、先進国に対しては相当有利にこちらの主張が達せられる、こう思っております。  それから、ただいま御指摘にありましたようなカナダ、アメリカ、メキシコあるいは豪州、ニュージーランドをくるめた何か太平洋経済共同体というようなものが考えられないかというお話でございます。現状におきまして、日本の輸出貿易を伸ばして参りますのは、アメリカを主体とした貿易にさらにプラスして、カナダでありますとかニュージーランドでありますとかあるいは豪州でありますとか、購買力を持っております国と伸ばして参らなければならぬと思うのであります。従って、過去においてミッションも出しておりますし、それぞれの国に対しまして、やっておりますが、今直ちにそうした国と何か一つ経済ブロック的なものを作るのがいいかどうかということについては、相当研究を要する問題だと思っております。ただ、ヨーロッパ共同体ができましたり、あるいはアウター制度の問題もございます。そうした問題が、域外に対するいろいろな関税上の措置をしてくるというような問題については、それぞれ今御指摘のありましたようなカナダでありますとか豪州でありますとかニュージーランドでありますとかとわれわれの経済的な立場はほぼ一致しておるわけでありますから、そういう面から見まして、十分そうした問題を将来とも考慮していく必要はあるのではないか、こう考えております。
  49. 小川半次

    小川委員長 藤本君に申し上げますが、あなたの持ち時間はすでに参りました。まだ科学技術庁長官に御質問があるようでございまするが、もしありますれば、あと一、二問許しますから、その上結論にしていただきたいと思います。
  50. 藤本捨助

    藤本委員 貿易為替自由化の前提といたしまして、わが国産業が国際競争力を持つということが非常に必要でございますが、そのためにはまず重要なことは、科学技術の振興であります。この声は非常に高いのでありますけれどもわが国におきましては、社会的、経済的の非常な制約があります。たとえば、市場が狭い、市場が狭ければ大産業は興らない、発達しない、従いまして技術面につきましても問題にならないということもございますし、それから資本が非常に寡少でございまして、しかも分散をいたしておる。またわが国の試験研究なんかに費やす金というものは、売り上げに対して〇・八%くらいな少額でありまして、とうてい欧米の試験研究なんかの経費に比べまして問題になりません。さらにまた低賃金、これがまた技術の発達といいますか、それを妨げておる面もあります。その最もティピカルなのは石炭鉱業であろうと思います。まず低賃金のメリットを非常に満喫いたしまして、それで機械化しない、それが今日出ておるのではないかとさえ考えられる節がございます。さらに日本生産構造が非常に科学技術の発展を阻害しておる。たとえば、大量生産にあたりましては均質性あるいは互換性とかいう問題が非常に大事でありますけれども、今の日本生産構造では非常にむずかしいというような、いろいろな社会的、経済的な制約があります。この点につきましては、中曽根長官の御所管に限らぬものもずいぶんありましょうが、しかし一つ大いにイニシアチブをとられて、この社会的、経済的の制約を打破する、そうして科学技術の振興に資するというようなことを一つ伺いたいのであります。  それからもう一つ大蔵大臣にお伺いいたしたいのでありますが、このためにやはり税法上の措置においても考えねばならぬのではないか。たとえば、試験研究なんかにはずいぶん金がかかりますが、その財源といたしまして、たとえば大蔵大臣の指定の寄付金であります。これは指定の寄付金ともなりますればいわゆる損金に算入されますけれども、この科学技術の研究なんかに対する寄付金は、指定寄付金になっておりません。そこで、非常に公共性のあるような試験研究に対する寄付は大蔵大臣の指定寄付に入れるとか、あるいはまた租税特別措置法にありますように、工業所有権の譲渡とかあるいは技術の輸出というように、その際に入りました所得というようなものにつきましては、これは収益事業と見ないというようなことも考えたらどうか。これにつきましては特別控除の制度がありますけれども、もう少し百尺竿頭一歩を進めまして、収益事業と見ないというようなことも必要であるのではないか。さらにまた試験研究の設備あるいはまた試験要員を養成、訓練する設備というようなものに対する固定資産税とか、あるいは不動産取得税というようなものについても、大いに税法上考えるべきではないかということが、科学技術の振興のために必要であろうと思いますので、もう時間がございませんから簡単でもけっこうでありますが、これに対して両大臣の御答弁をお願いいたします。
  51. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 科学技術の振興につきましては、外国の態勢と比べますと、日本の態勢というものはまだ非常に劣っておるように思います。外国では御存じのように、軍というものが背景にありまして、スプートニクであろうがあるいは原子力であろうが、相当膨大な予算と強力な執行力を持って推進しておったわけであります。日本戦前はそうであったのでありますが、戦後はそういう態勢が一変いたしまして、日本にはそういう軍的な推進力がなくなったわけであります。そこで、戦後におきましては、平和的な科学技術ということを中心にいたしまして、科学技術庁を作るなり、あるいは科学技術会議を設定するなりして、鋭意外国の大勢におくれないように努力して参ったのでありますが、それでもまだまだ足りないものだとわれわれは考えまして、漸次強力な態勢に進めるように改革して参りたいと思います。しかし、いかにそういう中枢機構を変えても、科学技術者の人数とかあるいはレベルというものと一致して進みませんと、これは国家全体としては強い力になりませんので、そういう全般的なところに目を配りながら、日を追うて日本のそういう科学技術の力を強めるように努力して参りたいと思っております。  輸出の問題につきましては、一番大事なのは機械の値段が非常に高いという点が一つのポイントになっておるように思います。しかし、鉄鋼の値段は、外国と比べますと、そう変わらないのに、なぜそれでできてきている機械が高いかという点については、オートメーションの問題とかいろいろなそういう技術上の問題があるのでありまして、この点を改革するのがわれわれの努力の一つの焦点だろうと思います。それから中小企業の面におきましても、たとえばネジであるとかあるいはボルトであるとか、そういう小さなもの一つおくれておっても全体が進まないということもございますので、この点は通産省の工業試験所その他等とも連絡をとりまして、そういう大事な中小企業のポイントの改革についても努力したいと考えております。  税制の面につきましては、今度の予算折衝で、大蔵省と話し合いが成立いたしまして、法律の改正は行なわないが、行政措置をもって、四つの点について、御趣旨に沿う改革をいたすことになりました。第一は科学技術の賞金の免税でございます。それから第二は共同施設を作った場合の免税であります。第三番目は研究設備等の減価償却について、特別の取り計らいを行なうということであります。それからその次は研究施設等に対する寄付金の損金繰り入れの問題であります。この四つの点について大体了解ができました。具体的には大蔵大臣から御答弁があると思います。
  52. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 科学技術の振興と税の関係、これはまことに大事なことでございます。ところで今日までとって参りましたものは、開発的試験費の全額損金の算入、それから試験研究用機械設備の特別償却、重要物産免税等の措置、さらに最近におきましても試験研究用機械設備の特別償却制度の拡充、新技術企業化用機械設備に対する初年度二分の一償却制度、技術輸出についての輸出所得控除の引き上げ、これらを実施いたしております。  ところで、試験研究機関に対する指定寄付金制度の確立、共同試験研究施設及び共同試験研究費に対する特別償却等の税制上の優遇あるいは科学技術関係の賞金に対する非課税等の措置につきましては、できるだけ御要望に沿うように今後検討して参るつもりでございます。  ところで、ただ個人が有する工業権を譲渡した場合の所得は、譲渡所得として所得の実情に即するよう、課税の軽減がすでに行なわれておるのでありますが、さらにこれを非課税所得とするということは、私どもとしては適当でない、かように考えております。  次に試験研究設備、試験研究要員の指導訓練に要する設備、これは固定資産税あるいは不動産取得税等の問題がございますが、自治庁長官から御説明するのが筋でございますが、便宜私の方から申し上げます。試験研究用機械設備と新技術企業化用機械設備につきましては、新規に取得してから三年間は固定資産税を二分の一に軽減する、こういう措置をとっております。また学術研究を目的とする民法上の法人が、その目的のために取得した不動産については、不動産取得税を課税しないということにいたしております。この特別措置について、さらに拡充強化するかどうかという問題があるのでありますが、これは地方団体の財政とも関連する問題でございますので、自治庁とも十分協議の上で、税制調査会における審議とも並行して検討して参る考えでございます。
  53. 藤本捨助

    藤本委員 残余の問題は他の機会に譲りまして、本日はこれで終了いたします。
  54. 小川半次

    小川委員長 この際午後一時まで休憩いたします。     午後零時十八分休憩      ————◇—————     午後一時四十八分開議
  55. 小川半次

    小川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。辻原弘君。
  56. 辻原弘市

    ○辻原委員 外務大臣にお伺いをいたしますが、時間がありませんので、具体的に端的に聞きますから、一つイエス、ノーをはっきりお答え願いたいと思います。  きのうわが党の淡谷君の質問に答えて統一解釈を下した極東の範囲という中で、金門、馬祖は入ると明言をされております。そこで私は伺いたいのでありますが、米華条約の第六条に次のように書いてあります。「第二条及び弟五条の適用上、『領土』及び『領域』とは、中華民国については、台湾及び膨湖諸島をいい」云々。従って、この米華条約の中で金門、馬祖はその条約の適用区域にないと私は判断するのでありますが、これはどうでありますか。
  57. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 その通りでございます。
  58. 辻原弘市

    ○辻原委員 そういたしますと、金門、馬祖は、一体これはどこの領土でありますか。
  59. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 中国の領土でございます。
  60. 辻原弘市

    ○辻原委員 中国とは中共を言いますか、それはどうなんですか。
  61. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 現在国民政府が支配しておりますので、中華民国でございます。
  62. 辻原弘市

    ○辻原委員 さきに私がお尋ねいたしましたときには、この条約適用区域、すなわち条約には明らかに第二条、すなわち中国の領土とはどうなるかということを規定し、それを受けて第六条に、その適用上、中国の、いわゆる中華民国の領土とは、また領域とは、台湾及び澎湖諸島をいう、こういうふうにいっております。澎湖諸島の中に、そうすれば金門、馬祖が入っておるのでありますか。どうなんです。
  63. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 お話の点は、米華条約で規定した領土でございまして、米華条約の目的の領土だと、こういうことでございます。
  64. 辻原弘市

    ○辻原委員 あなたが金門、馬祖は中華民国の領土であると言われたその証拠を一つお示しを願いたい。
  65. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 現に中華民国が施政をいたしておるのでありまして、その事実からそう申したわけでございます。
  66. 辻原弘市

    ○辻原委員 現に支配をしている、現に占領しているということになれば、それは固有の領土ということに相なりますか。それはどうなんです。そうなれば、他の問題にもいろいろ関連する。これはどうなんですか。竹島はどうなんですか。現にわが国の施政権が及んでいないじゃありませんか。これは一体どうなりますか。
  67. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 今申し上げましたように、米華条約における定義でありまして、竹島は日本の領土であること、むろんでございます。ただ施政権が及んでいないということでございます。
  68. 辻原弘市

    ○辻原委員 あなたの解釈は、これはあなた自身の一方的解釈であって、条約にはそう書いてない。米華条約に明らかに、第二条「締約国の領土保全及び政治的安定に対する」云々という締約国の領土とは何かということを受けて、六条には「台湾及び澎湖諸島をいい」と書いてある。だがあなたは米華条約できめておる中華民国の領土というものと、それから一般的にいわれる中華民国の領土というものを区別したように今答弁された。そういうような領土に対する認識、一つの考え方、規定というものがありますか。どこにそういうのはありますか。
  69. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 現に中国におきましては二つの政権があるわけであります。従ってその事実問題から見ましても、米華条約ではそういうふうに解釈をしておるわけでありまして、米華条約の解釈と、それから領土ということ、そのことは当然そう言えると思うわけであります。
  70. 辻原弘市

    ○辻原委員 おかしいじゃありませんか。もし今そういうふうに、現に支配しているものが中華民国の領土であるということになれば、少なくともこの米華条約の中においては、条約において、新しくその適用区域をきめ、その適用区域の中における領土とは一体何かということを定めておるのですから、当然あなたの解釈ならばこの条約の中に金門、馬祖は入ってこなければならぬという議論になる。おかしいじゃありませんか。
  71. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 これは別だろうと思うのでありまして、御承知のように中華民国はおそらく中国における唯一の主権者だと自分は思っている。従って大陸も自分の領土だと思っておりましょう。人民共和国からすれば、同じような考え方で、台湾も自分のものだと、こう思っておりましょう。従って今日米華条約においては、条約地域としてそういう規定をいたした、こういうことでございます。
  72. 辻原弘市

    ○辻原委員 よく地理学上の学説といわれますが、地理学上の学説においても、澎湖諸島というのは四十八のそれぞれの島を指さすのであって、金門、馬祖については、これは現在中華民国が支配をしておるいわゆる台湾主権にはこれは入っていないといわれておる。あなたは、現に中華民国がこれらについて支配をしているからそれは領土であると、こう断定された。そういうことではまことにおかしいではありませんか。
  73. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 おかしくないと思うのでありまして、現に台湾は中華民国が支配しております。しかし同時に中華人民共和国も台湾の主権を主張しておるわけなんであります。そういう意味においてあそこに二つの政権がありまして問題を起こしておるわけであります。しかし米華条約における条約地域としては除外されているということであります。
  74. 辻原弘市

    ○辻原委員 藤山解釈によれば、金門、馬祖は中華民国の領土である、こう今述べられた。ところが米華条約によれば、あなたが言われる中国の領土であるこの金門、馬祖については適用区域から除外をしている。これも今お答えになった通り、私はその通りだと思う。直接米華条約に関係の深いと一般的に考えられる金門、馬祖は、その当事国である台湾政府アメリカとの間においてこれを除外しておる。ところが日本の今度改定をしようとする安保条約には、米華条約ですら除外した金門、馬祖に、わが国の固有の自衛権を発動する、それに関連をする極東の安全と平和という、このことを確保するための極東の範囲の中にこれを含めると言われておる。まことにわれわれとしては理解に苦しむのである。台湾政府ですら入れていない。なぜそれをわが国の安保条約の中に、これを極東の範囲として加えたか、その理由について承りたい。
  75. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 前提でありますけれども日本の固有の自衛権というようなものがそこまですぐに出ていくわけではございません。極東の平和という意味におきまして現に紛争が起こっております。われわれはやはり日本の平和と安全を守る意味におきまして極東の平和と安全というものは、かねてから申し上げておる通りうらはらな関係と申しますか、極東の平和と安全が脅かされれば、やはり日本の平和と安全にも影響があるという立場から見れば、何かそういうような紛争の起こるようなことのないことをわれわれは希望せざるを得ない。またそういうことがいずれの見解が正しいかは別といたしまして、そういう紛争の起こるような地点があってはならぬと思うのであります。そういう意味においてわれわれは極東の平和ということを現実に今考えてみましても、そういう起こり得るような問題の地点については関心を持つこと当然だと思います。
  76. 辻原弘市

    ○辻原委員 あなたの一般的議論によれば、要するに極東の平和というものを確保するためには、予測できるどういう地域においてでも、これは極東の範囲という概念の中で考えていかなければならぬ、この間から答弁している極東の範囲というあの統一解釈は、従って非常に無意味だということを今あなたは申されたというふうに私は理解せざるを得ない、その点どうなんですか。
  77. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 御承知通り日本の平和と安全ということを考えますれば、今のような交通機関の発達しあるいは武器等の発達したときには、相当世界的に関心があるとも言えるわけであります。しかし少なくも極東というような地域において、そういうことが日本の平和と繁栄に非常に影響があるということは、これは考えざるを得ないのであります。でありますから、その意味において何も非常に広く大きく考える必要も、むろんそれは今申し上げたような立場からいって、世界のいろいろな紛乱が影響がないとは言えません。しかし日本としてはやはり一応平和と安全を守り、あるいはうらはらになりやすいというような地域を一応想定することは、これは必要なことだと考えております。
  78. 辻原弘市

    ○辻原委員 金門、馬祖については、一昨年重大な紛争が起きたことは、これは一般に周知の事実であります。そういう紛争が起き、中華民国にしても中共にしても至大の関心を持っている地域であります。しかも常識的に地理学上から考えてみれば、これは中国大陸の地続きである、これは中国大陸の続きであるという一般的な認識がある。ところが先般来の統一解釈によると、今回の極東の範囲というものは中国の沿岸、それから沿海州は含まない。すなわち中共が現在少なくとも事実上においてこれを統括し、これを支配している地域については触れない、そういう統一解釈を下された。ところが領土の帰属、これについて非常に問題のあるこの金門、馬祖を今回特につけ加えたということについては、これはまことに重大です。一昨年の例を考えてみましても、現に日本にあった米軍がこの金門、馬祖に対して出動しているではありませんか。当然今回の改定安保条約でもって共同行動の責任を負わされた、新しい局面に立つわが国の防衛という観点から考えてみましても、将来もしこの金門、馬祖において紛争が生じたというふうな場合においては、米華条約による台湾政府より以上、最も深い関係を持ってくるのが日本であるということを、私はここで指摘しておきたいと思います。一体その認識については外相はどうなんです。
  79. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 お話のように、われわれは極東の平和を念願をいたしておりますし、また念願するゆえにおいていろいろな紛争の起こらないことを考えておるわけであります。従いまして金門、馬祖等におきまして、何か紛争がそういう地点を中心にして起こりますことは、われわれは極東の平和と安全、ひいては日本に対しても影響があると思います。できるだけそういう意味においては平和的に問題が解決さわることを考えざるを得ないのでありますけれども、事はやはり相当極東の平和に大きな影響を与える問題だと考えております。
  80. 辻原弘市

    ○辻原委員 起こらないことをこいねがっておるというのでありますが、すでに過去において事件が起こっているわけであります。もし今後この地域において、金門、馬祖において紛争が生じた場合、在日米軍が出動いたしますか。どうですか。
  81. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 われわれは事が起こらないことを望んでおりますし、事が起こらないように平和的解決が望ましいことでありますが、何か起こりましたときに在日米軍が出るか出ないかというということは全然別個の問題でありまして、われわれとしては事前協議によってその判断をいたして参るわけでございます。
  82. 辻原弘市

    ○辻原委員 その場合には事前協議の対象になる。しかし事態が予想されるとするならば、そういう在日米軍が出勤するかしないかという問題が事前協議にかかった場合、日本政府としてはノーと言えますか。どうですか。
  83. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 御承知通り、事前協議において日本政府がノーと言えることは、私ははっきりいたしておると思います。従って、そういう場合にノーと言えないことはございませんし、また言うべきときにはノーと言うわけでございます。
  84. 辻原弘市

    ○辻原委員 起こった事態を考えてみた場合に、少なくとも在日米軍がその紛争の渦中に巻き込まれるということは、わが国の安全ということについてはこれは至大な影響がある。少なくとも国民はその場合に政府に対してノーと言ってもらうことを期待しておる。ノーと言えますかどうなんです。
  85. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 私はその事態によってノーと言えることは当然だと思います。
  86. 辻原弘市

    ○辻原委員 その場合においてはノーと言う。こういうふうに今お答えになったことを記憶いたしておきます。  そこでもう一つ問題を聞きたいのでありますが、(「違うぞ」と呼ぶ者あり)ノーと言うと言ったではありませんか。(「ノーと言い得る」「そうじゃない」と呼ぶ者あり)。それではもう一回。
  87. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 むろんノーと言えるということを申し上げたわけであります。
  88. 辻原弘市

    ○辻原委員 そうすると、ノーと言う場合もあるが、イエスと言う場合もある、こういうことなんですか。
  89. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 そういう具体的問題につきましては、そのときの事情によって判断するのが当然だと思います。
  90. 辻原弘市

    ○辻原委員 そこで私は一昨年の金門、馬祖事件のことを想起するのでありますが、あの際にわが国におるいわゆる在日米軍は移動を開始した。そうしてある部隊は沖繩に移動して金門、馬祖に出動しておる。これも周知の事実でありますが、こういう形になりますと、先ほどあなたは、出動する場合においてはこれは事前協議の対象になって、その事態によって判断をし、イエスあるいはノーということを言う。ところが部隊が移動する、これはどうなんです。その移動についても事前協議の対象になりますか。
  91. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 移動についてはむろん事前協議の対象にはなりません。従って移動された部隊というものは在日米軍ではございません。
  92. 辻原弘市

    ○辻原委員 それはしかしとんでもないことではありませんか。幾ら形式的に事前協議をしても、その部隊が編成がえをして、そうして事実上沖繩なら沖繩、あるいは台湾なら台湾に部隊を移動してしまって、そこから出動させるということならば、事前協議の対象にも何にもならないでどんどん出ていくことになる。一体事前協議はどういう役割を果たしますか。何の意味もないではありませんか。どうです。
  93. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 これは日本の基地が戦闘作戦行動に使われることは、われわれとして望まないところであります。従って事前協議をするわけであります。それは日本が戦争に巻き込まれるゆえんである。従ってそういう場合には事前協議をいたします。しかし在日米軍でなくなった米軍がどこで行動しようとそれを制限することができないのは当然であります。
  94. 辻原弘市

    ○辻原委員 それじゃもう少し具体的に聞きますが、在日米軍が事件勃発と同時に沖繩に移動を開始して、移動してしまった。たまたま事件が拡大して沖繩の基地に敵も来襲する、そこで戦闘が始まった。そういう行為についても、そうすると在日米軍の規制という意味における事前協議は、何ら役割を果たさないということなんですか。それはどうなんです。
  95. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 今御指摘の沖繩に行きましたアメリカ軍というのは在日米軍ではないのでありますから、それは事前協議の対象にならぬこと、当然であります。日本の基地から戦闘作戦に乗り出す場合には、日本が戦争に巻き込まれる危険もございますし、そういう意味においてわれわれは事前協議をするわけでございます。一般的な状況につきまして常時協議をいたすことはむろん当然でございまして、日本の平和と安全が脅されないように、できるだけ常時から協議をしていくこと、これまた当然でございます。
  96. 辻原弘市

    ○辻原委員 私は今外相がお答えになったようなことを尋ねているのではないのです、ということは日本から直接戦闘行為に出かける在日米軍については、これは事前協議の対象になる。これはあなたが言われたことを肯定しているのです。そうじゃなしに、日本から沖繩に移動して、移動した地点から戦闘行為に出るという場合についてはどうかと聞いておる。それをあなたは最初、事前協議の対象にはならないと言った。ところが現実問題として、軍の編成がえさえやれば幾らでも在日米軍を転用できるということなんです。現実に戦術上あるいは戦略上、過去の大東亜戦争を見たって、部隊というものは絶えす編成がえが行なわれておる。そうでしょう。わが国のかつての陸軍にしたって、大東亜戦争の末期においては満州から南方に何ぼでも転用した。それは部隊を編成がえした。移動を開始して、そこで編成して、そうして出発する。だから実際の戦力、兵力というものは何ら変わらない。満州から南方に投ぜられた。日本から沖繩を経由して金門、馬祖なら金門、馬祖に出動をする場合の戦力も、日本から直接金門、馬祖に出動する場合の戦力も、戦力において変わりない。そうでしょう。事実において同じことなんです。在日米軍がその戦闘に直接介入あるいは直接参加したということと何ら変わりない。その点を聞いておる。
  97. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 これは在日米軍が移動いたします場合に、むろん事前協議の対象になりません。在日米軍がどこに移動しようとも、これは事前協議の対象にならぬわけであります。でありますから、移動した後の米軍というものは、これはアメリカ自身がどう使うかを決定してくる問題でございます。
  98. 辻原弘市

    ○辻原委員 時間がございませんから、今の点は重要な点だと思いますが、次にもう一つ統一解釈について承っておきたいのでありますが、ベトナムについては今までお答えになっていないが、ベトナムは入りますか、入りませんか。
  99. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 フィリピン以北の海域として、海域の部面においては陸上の接触点くらいまでは考えられるということをわれわれは確定いたしております。
  100. 辻原弘市

    ○辻原委員 陸上の接触点ということではわかりませんが、そうするとベトナム全体は入らないということなんですか。海岸との接触点だけですか。接点だけですか。
  101. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 従来申し上げております通り、いわゆる海域という意味において申しておるわけでございます。
  102. 辻原弘市

    ○辻原委員 そうすると南ベトナムも入らないということなんですね。
  103. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 直接われわれが今まで申し上げている解釈においては、海域と申し上げておるのでありまして、むろんそういう意味において大陸奥深く入っていくというようなことを考えておりません。むろんしかしそれらの地方でいろいろ紛乱が起こりますことは影響がないとは申し上げかねます。しかしながらわれわれといたしましては、今申し上げたような海域という意味において了解をいたしておるわけであります。
  104. 辻原弘市

    ○辻原委員 そうすると南ベトナムは入らない。海域とは、この間からの質問の中にもあなたがお答えになっておりましたが、その海域の接点というのは、公海から領海に移るその接点を意味しますか。これはどうなんですか。
  105. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 今お話通りだと思いますが、これらの問題については厳格に、いわゆる極東という一般的な観念を申しますときに、そう接点を非常に厳格に切ることはできないということは、先般来申し上げているところであります。しかし大体領海までだということを申し上げているわけでございます。
  106. 辻原弘市

    ○辻原委員 藤山さんに申し上げておきますが、われわれが切っているんじゃないですよ。政府が統一解釈として切ってきたんですよ。沿海州、中国沿岸は入らない。北千島は入らない。北朝鮮は、三十八度以北は入らないとあなたの方が切ってきたんですよ。あなた方が切ってきたから私たちは厳密に聞いておる。今のベトナムについては、公海から領海に至るその接点までは入るけれども、それ以北については入らない。従って南ベトナム、ラオスは入らない、こう確認をしておきます。間違いございませんね。
  107. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 今まで申し上げております通りいわゆるフィリピン以北、日本中心にしその中間の海域ということを申し上げておるのでありまして、今申し上げた通り、その海域という言葉から申しまして、今お話通りわれわれはいわゆる領海線をもって大体の極東の観念といたしておるわけであります。
  108. 辻原弘市

    ○辻原委員 そうすると、あれだけもんで相当政府は無理押しをして賠償を払った南ベトナムは入らない、こういうことなんですね。間違いありませんな。南ベトナムは入らない。
  109. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 今まで言った通りでございます。
  110. 辻原弘市

    ○辻原委員 今の質問に答えなさい。
  111. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 今まで申した通りです。南ベトナムの陸上深く入るということを申し上げておりません。今の大体の海域、接点——接点とはどういうことかといえば、領海というお話がありましたから、大体そうだということを申し上げているわけであります。
  112. 辻原弘市

    ○辻原委員 私は政府が厳密な統一解釈をしてきたので厳密にただしておるので、大体、おおむねでは困る。よその地域の問題を論ずるのに、大体このくらい……。地図の上では非常に広範囲ですよ。だから厳密に、先ほどあなたが言った、公海から領海に入るその接点だということならば、当然これは南ベトナムもラオスも、もちろん北ベトナムも全然入らない、こういうふうになってくるので、そうかと私は聞いておる。入るのか、入らないか。
  113. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 従来申し上げておることで尽きておると思うのでありまして、海域の中に、どの島が入るとか、どの島が入らないとか、そういうようなことは一々こういうような解釈のときに申し上げかねるわけであります。そういうむずかしい問題なんでありまして、それですから、今申し上げたようなことでわれわれは言っておるわけでありますし、承知いたしておるわけであります。
  114. 辻原弘市

    ○辻原委員 あなたの言われておることと、総理がここでわが党の横路君に言われた統一解釈でいった一つのはっきりした線と、言っておることのニュアンスが非常に違いますよ。あなたはおおむねという……。金門、馬祖については、あなたは、はっきりこれは入ると言っておる。米華条約に入っていない金門、馬祖ですら、あなたははっきりこれは入ると言う。ところがベトナムについては、おおむねだとか、大体だとか、あるいは陸上奥深く行くとか行かぬとか、非常にあいまいだ。南ベトナムは入るのか入らぬのか、もう一ぺん答えて下さい。
  115. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 今申し上げていることを御了解いただければ、入らない、陸上は入らないということはおわかりいただけておると思うのでありまして、それですから、私ども繰り返して申し上げておるわけです。
  116. 辻原弘市

    ○辻原委員 入りませんね、それじゃ……。はっきりしていない。
  117. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 はっきり申し上げて、今までの通りで、入りません。
  118. 辻原弘市

    ○辻原委員 そこで私はこれを集約して外相の見解をただしておきたいと思うのであります。今まで数次にわたる当委員会で、一体今度の新安保条約でいう極東の範囲というものはどうか、およそそれについて政府の考え方をわれわれはただしてきました。そこで残されておりました問題について、今私は金門、馬祖の問題、それからベトナムについては今はっきりいたしました。この統一解釈について、はたしてアメリカとの間に合意が得られておるのか、また意見の相違がないのか、この点は条約上きわめて重要な問題であります。これについて今までの首相並びにあなたの答弁をずっと拾ってみますると、こう言っておる。首相は参議院の本会議でわが党の佐多議員の質問に対しては、合意は得られていないが、意見の相違はないと言った。それから十日の予算委員会での淡谷君の質問に対しては、あなたは、交渉の経過において意見の一致を見ておると、こう言っておる。間違いありませんか。
  119. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 今まで申し上げた点について、交渉の経過で、極東という問題についていろいろ話し合いをいたしたのであります。その経過から見まして、私は意見に相違はないと思っております。
  120. 辻原弘市

    ○辻原委員 そこで私は伺いたいのですが、昨日、米国の国務省は、ロイター通信の質問に答えて次のようにいっておる。ロイター通信によりますと、米国務省は十日、「極東の定義に関するロイター通信の質問に対し、『極東の正確な地理的定義を下したことはなく、また今定義づける意向もない』と答えた」。そうしてこれは各新聞が全部内容が一致しておるから、おそらく間違いないと思います。「正式回答次の通り。極東の定義は新安保条約交渉の過程で検討されなかった。」根本的に違うでしょうあなたは、交渉の過程で話し合いをして意見の一致を見た、相違はなかったと言う。それからその次、「われわれは正確な定義を下すことに努力したいとは思っていない。極東ということばは前条約にもはいっている。これはこの地域全体について一般的に受け入れた」いわゆるこれは地理学上の観念だと言っておるのです。地理学上の定説においては、少なくとも統一解釈よりもはるかに範囲が広いということは、これは常識なんです。全然アメリカの国務省としては、合意にも達しておらないし、協議したこともなければ、これについて定義を下す意思がないとはっきり否定しているのです。一体これはどうなんですか。
  121. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 ロイターの電報がどういうことを伝えてきておりますかは、私ども電報で見る以上にはわからぬわけでありますけれども、国務省が公式の見解を発表したとは思っておりません。われわれとしては、話し合いの間に極東というような問題についていろいろ話し合いをして、今申し上げたように、意見のそう相違がないということが申し上げられるわけでありまして、相違はないと私は申し上げておるわけであります。
  122. 辻原弘市

    ○辻原委員 日本の新聞のみならず、アメリカの新聞も信用できない、政府がこういうことになりましたら、一体国民は何を信用していいのかさっぱりわからないのでありますが、ともかく、少なくとも正式見解として、新聞社の公式な質問に対して答えた記事についても、あなたは信をおかないと言う。しかし、私どもはこれを信用いたします。少なくとも常識上もあり得ることではないかと思うし、またこれは、ロイターがはっきりその回答を得たとして、同じように各国にその正式回答というものを流しておる。これについてすらあなたが知らないと言うことは無責任である。またそれについて、おそらくそういうことはあるまいと簡単に否定することも、これは新聞を信用しないあなた方のまことに不可解な態度だと私は思うのです。いま一度御答弁願いたい。
  123. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 私の申したのは、ロイターを信用しないとか信用するとかいうことを申し上げたのではなくて、国務省がそういうような公式な見解を発表したとは私は承知いたしておりませんし、信じておりません。われわれとしては、会談の過程におきまして話し合いをしたことからみまして、先ほど申し上げたように相違はございません、こう申し上げておるわけであります。
  124. 辻原弘市

    ○辻原委員 それならば、この正式な回答をしたことがあるかどうかについての事実を、あなたは調べられますか。その点についてどうなんです。
  125. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 むろん正式な、そういう何か意思表示がありますれば、在外公館を通じてわれわれのところにも入って参りますし、あるいは東京におります大使館からも連絡があると思います。
  126. 辻原弘市

    ○辻原委員 ここであなたは、ともかくそういうことは知らない、こう言っているのですから押し問答になりますか、私は、ロイターの正式な質問に対して、公式回答としてかくかくのことを答えたかどうかということについて、事実を調べて、私の質問に関連して当委員会に御報告願いたい。お約束できますか。
  127. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 むろん、そういうような公式の何か意思表示がありますれば、調べるまでもなく、われわれの方にも通報がございましょうし、あるいは大使館等においても、そういう点について連絡をして参ると思います。
  128. 辻原弘市

    ○辻原委員 今わが国の国民は、この極東の範囲の問題について、少なくとも政府が述べていることと、それから外電が伝える、いわゆるアメリカの意向というものとの間に、大きな食い違いがあるということを認識している。そして政府が統一解釈として限定して述べていることが、はたしてどこまで信用できるのか、どこまでほんとうのことを言っているのか、非常に深い疑惑に包まれている。もしこれがロイター通信のごとく、今の統一解釈について、はっきり国務省の了解を得ていないということになると、これは重要問題です。そうでしょう。今度の条約の中で最も重要な部分を占めている、いわゆるわが国の安全に関係をする極東の平和と安全を守るための極東の範囲というものは、一体どこまでなんだ、どの地域に在日米軍が出動し行動するのか、これは重要な問題です。それについて、行動する米国の側と、事前協議をする日本の側との間に食い違いがあるなどということは、およそ条約の交渉としてはありようはずがない。しかし、少なくとも私どもの持っている今までの情報によれば、大きな食い違いがあると認識せざるを得ない。  そこで私は、今あなたに要求いたしましたように、この委員会にその事実について報告を願いたい。その調べた結果が、あなたの言われるように、国務省がそういうことを言った覚えがないということになれば、それは問題はないでありましょうけれども、もし事実とするならば、これは重要な問題なんです。その場合においては、われわれはこれ以上この安保についての審議を進められないことが起こるかもしれない。それほど重要な問題なんです。これは一つぜひ御報告を願いたい。これは委員長にもお願いをいたしておきたいと思うのであります。重ねて藤山さんに、事実を調査してその結果の報告を当委員会において願いたいということを要求いたします。委員長、お取り計らいを願いたいと思います。
  129. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 むろん、そういうような発表があったかないかということは、われわれも関心事でございますし、そういう点については、現在までそういうことがなかったということで通報もございません。従って、そういうことがございましたら、むろんわれわれも承知することになろうと思いますので、直ちにそういう手続をいたすことはむろんであります。そういうことで御了承願います。
  130. 辻原弘市

    ○辻原委員 そこで次に伺います。この条約にいう極東の範囲に、かりに紛争が生じたとする。そこで事前協議が行なわれ、その結果日本はこれにイエス、よろしいと答えた。そこで在日米軍が出動するということになる。その場合の在日米軍の行動範囲というものについて、日本が規制することができるかできないか、お伺いいたします。
  131. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 御承知通り、米軍というものはその自衛権と、それから国連憲章による侵略があった場合の対抗、それによります集団自衛権というものを持っております。しかしわれわれは、在日米軍に関しましては今申し上げたように、事前協議によりましてこれを縛って参るわけでありまして、事前協議によって相談をしていく、おおむねそれは極東の範囲だ、こういうことでございます。
  132. 辻原弘市

    ○辻原委員 重要な点がぼけておりますが、その場合に在日米軍の行動範囲、言いかえてみると、戦略上とるいわゆる軍事行動、その軍事行動まで事前協議という形において日本が相談にあずかる、またある場合においてはそれをチェックすることができるかどうかと私は聞いている。
  133. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 日本の基地から戦闘作戦行動をしていきます場合には、交換公文に書いてございます通り、事前協議をいたすわけであります。事前協議において——われわれは大体極東の範囲を想定しておるわけでありますから、在日米軍の作戦行動に関しては、おのずからそうなろうと思います。
  134. 辻原弘市

    ○辻原委員 どうもはっきりしませんので、もう少し分析してお尋ねいたしたい。紛争が起きて事前協議が開始されたときに、まず問題になることは、出動することが日本として了解できるかどうかという問題、いわゆる出動についてのイエスかノーか、今までのお答えなり常識的にも、この点について重要な事前協議をして諮られることは間違いないだろうと思う。ところがいよいよこれは出動してもいい、する場合に、今度はそれぞれ米軍の指揮系統、統帥に従って軍事行動をやる。そういった軍事行動、出るか出ないかということについてイエスかノーかを言うばかりではなしに、どこまで出るか、どういう行動をとるかということについても協議にあずかれるかどうか、こう私は伺っておる。それはどうですか。
  135. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 日本の基地を使っての戦闘作戦行動につきましては、お話のようにそういう戦闘作戦行動に日本の基地から飛び出すことがいいか悪いかということ、またそのいいか悪いかということは、どこまで行くか行かないかということにも関連を持っていると思います。そういう意味におきまして、今お話のようなことが事前協議において協議されるわけでございます。
  136. 辻原弘市

    ○辻原委員 そうしますと確認をいたしますが、事前協議は、出ることがいいか悪いかという協議だけではなく、それに付帯して起こる米軍の軍事行動範囲、そういったものまで協議の対象になる、こういうふうに理解をしてよろしいのですか。
  137. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 日本の基地から戦闘作戦行動に出るということは、どの方面に出るかということだと思います。紛争がどこかに起こったというような場合に、戦闘作戦行動をやるといえば、大体その方面に戦闘作戦行動をやっていいか悪いか、またそういうことについて日本政府として事前にそれに対してイエスかノーかを言う必要があろうと思います。でありますから、戦闘作戦行動に出るということはそういうことでございます。
  138. 辻原弘市

    ○辻原委員 たとえば飛行機ならば、どっちを向いて飛ぶかということだけじゃなしに、どういう方面に行ってどういう作戦行動にその在日米軍が従事するかということが重要な問題なのです。また事実上戦略ということはそういうことなんです。具体的に言えば、金門、馬祖に問題が起きた、事前協議をやった、日本承知した、そこで在日米軍が出動、その場合に一体どっちの方向に行くか、金門、馬祖の方向に行くのです。しかしこれはどうも在日米軍の統帥による戦略ですから、金門、馬祖まで行ったが、かりにその金門、馬祖の紛争に、ある国がその背後にあると想定した場合に、戦略上その背後にある基地をたたかなければいかぬと米軍が判断した場合といえども、その場合に事前にその作戦行動までも日本が事前協議の対象として相談にあずかっておる、その相談にあずかったときには金門、馬祖までだということで相談にあずかっておったから、その米軍というものは金門、馬祖からは一歩もよそへは飛べない、あるいは出動できないということになりますかどうかということを私は具体的に聞いておる。
  139. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 金門、馬祖に紛争が起こったから金門、馬祖という島だけに大砲のたまと申しますか、爆弾を落とすとかいう、金門、馬祖に何か起こったからそこに何かすぐに戦闘作戦に出るのだという、必ずしもそういう小さい意味とは解すわけには参らぬのでありまして、やはり金門、馬祖に起きましたときには、その周辺その他にもいろいろ作戦上は行動がございましょう。だからそういうこと全体を見てわれわれがイエスを言うかノーを言うかをきめることはむろんでございます。
  140. 辻原弘市

    ○辻原委員 たとえば在日米軍が金門、馬祖の紛争に対して中国大陸の根拠地を爆撃する要ありとかりに判断をした場合に、そういう点についての出動まで事前協議という形において日本が相談にあずかりますかと私は言っておる。それはどうなんですか。
  141. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 作戦行動に出ますのですから、それはわれわれあずかるわけであります。日本としてはむろん日本の平和と安全にそういうことが影響してくるかどうか、またそれが極東の平和と安全の維持に貢献し得るかという大きな立場、それから判断していくことは当然なことでございまして、そういう意味で安保条約があるわけでありますから、今お話のように、何もどこかの一つの地点にあれが落ちたから一つのポイントに落とすというだけの協議でないことはむろんでございます。
  142. 辻原弘市

    ○辻原委員 だから私の言っておるのは、その場合に、かりに戦略上そういう直接の対象以外に在日米軍が行動するというような場合に、その最大限の行動範囲等についてまで日本が相談にあずかる、また日本がそれについてイエス、ノーを言えるという意味において事前協議があるのか、こう言っておるのです。
  143. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 その通りでございまして、金門、馬祖ではなくても、ある地点でかりに何か武力衝突が起こった、そういうときに戦闘作戦行動をもって出る場合には、むろん日本はイエス、ノーを言える。それは金門、馬祖というスポットに行くか、その周囲に行くか、そういう金門、馬祖に起こったことに関連して、とにかく戦闘作戦行動に日本の基地から出ていくときには事前協議の対象になる。そのときには日本としてはイエス、ノーをはっきり言える。それは日本の平和と安全、あるいはうらはらである極東の平和と安全という大局の見地から判断をいたすのであります。
  144. 辻原弘市

    ○辻原委員 そういたしますと、この点について確認をしたいと思うのですが、すべての在日米軍の軍事行動についても事前協議の対象になる、ただしそれは在日米軍という既存の編成のみであって、それが沖縄その他に移動して編成がえとなった場合においては、それは事実上対象にならない。先ほどの私の質問に対してはそうお答えになっておると確認してよろしいのですね。
  145. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 その通りでございます。
  146. 辻原弘市

    ○辻原委員 それじゃ次に伺いますが、五日の予算委員会でわが党の河野委員の質問に対して総理はこういうように答えておる。事前協議は、新安保条約のみならず米韓、米比、米華等によって在日米軍が出動する場合も当然その対象になります、それは外相も同一見解ですか。
  147. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 とにかく日本の基地から戦闘作戦行動に出る場合には、これは事前協議の対象になるわけであります。
  148. 辻原弘市

    ○辻原委員 私は非常に不可思議に思うのですが、在日米軍というのは、これは安保条約によってわが国が基地を提供して、ともかくその名称は極東の安全と平和を守るために日本が承認して置いておる。ところが米華とか米比とかあるいは米韓とか、こういう条約は本来日本とは無関係なものなんです。何ら関係のないよその国の条約によって、しかもその条約が発動される原因を考えてみた場合も、日本と無関係な米比なら米比という条約の締結国相互であるアメリカとフィリピンとの間において起きた問題に関係して、わが国に置かれておる在日米軍が出動するということは、これは一体どういうことなんですか。
  149. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 それは極東の安全と平和を侵されているか侵されていないかという判断のもとに立つわけだと思います。極東の平和と安全が侵されておるというような場合に、在日米軍が戦闘作戦行動に出ていく場合は、それは事前協議の対象にやはりしておるわけであります。
  150. 辻原弘市

    ○辻原委員 そうするとこういうことなんですね。米華、米比、米韓等によって在日米軍が出動する場合は、安保条約にいう極東の安全と平和を守るということと目的が一致した場合についてのみ出動をするんだ、こう理解していいのですね。
  151. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 これは在日米軍をアメリカがどういうふうに使うかということは、それは別だと思います。しかしながらわれわれとしては、米韓米比、米台条約というようなものと、この安保条約とは全然関係がないわけであります。日本の基地から戦闘作戦行動に出ますときには、それがどういう関係にあろうとも事前協議の対象になるわけでありまして、事前協議においてその状況を判断して、われわれはイエスかノーかを言うわけであります。
  152. 辻原弘市

    ○辻原委員 そうしますと、米華、米比、米韓の場合は安保条約と違って、適用区域というものが明示されている。しかもその適用区域というものは、先般来から問題になっている政府の統一解釈による極東の範囲というものよりも、はるかに広範囲なのです。そうすると、その広範囲の、いわば安保条約にいう極東の範囲外に起きた問題によっても、米比条約その他の条約においては出動があり得るわけです。そうしてフィリピンならフィリピン、韓国なら韓国、あるいは台湾なら台湾におる米軍が出動と同時に、在日米軍にも出動が戦略上要請される、そうして事前協議になる、そういう場合がありましょうね。
  153. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 要するに……。
  154. 辻原弘市

    ○辻原委員 要するにではない。ありますか、ありませんか。
  155. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 アメリカアメリカの軍隊に対して、自分の個別的自衛権あるいは集団的自衛権によって、侵略があった場合にむろんこれは動かすことはできます。しかし在日米軍というものは、戦闘作戦行動に出ますときには事前協議によって行くわけでありまして、事前協議によって日本がそれを適当と見るか適当と見ないかという判断をするわけでございます。
  156. 辻原弘市

    ○辻原委員 今私が言ったように、安保条約以外の米比、米韓、米台の適用範囲というものは非常に広い。そうすると、その非常に広い範囲において、今あなたが説明されたように、あるいは場合によればアメリカの個別的自衛権、あるいは集団的自衛権という形においてそれぞれ米軍が出動するでしょう。それについて在日米軍の出動だということで事前協議になった場合、その事前協議の対象になった範囲というものは、これはいわゆる極東の範囲というものの外である、もっと広範囲のものである、そういうこともあり得るわけなのです。そうしたときには、事前協議ということによって、明らかにこれは拒否するか。拒否しなければ、米比、米韓、米台の条約によって在日米軍が出動を要請される場合においては、これは幾ら極東の範囲というものを限定し、さらに事前協議を持とうと、それらを乗り越えてどこへでも在日米軍は出動するということになるから、そこで事前協議においてはっきり安保条約にいう極東の範囲外への行動については拒否するかどうかということを私は尋ねておる。
  157. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 要するに日本としては、極東の平和と安全、つまり日本の平和と安全のうらはらになっております地域が、侵略をされない、平和の維持ができるということが念願なのでありまして、それが今回の安保条約の一つの目的であることは申すまでもないのであります。従って日本の平和と安全に直接関係のないようなところに在日米軍が幾ら出られようとも、そういう場合には、在日米軍というのは、日本の平和と安全を守るために、またあるいは日本の平和と安全のうらはらになっておるところを守るために、平素駐留しておるのでありますから、その場合に日本が当然その判断のもとにイエスかノーかを言うのは当然だと思います。
  158. 辻原弘市

    ○辻原委員 次に伺いますのは、きのう廣瀬君が質問をいたしましたについての総理の答弁に関連をしてお尋ねをするのでありますが、総理の答弁によりますと、事前協議の対象になるのは在日米軍だけである、その他の米軍は全然自由である。私もそう思うのであります。ところが事前協議の対象になる在日米軍と、自由に飛び回れる、どこへでも行けるその他の米軍、米韓、米比、米台、あるいはアメリカ本国等から送られてきた米軍とが共同作戦をとるという場合に、一体その識別をどうするのかということです。たとえばさっき言ったような金門、馬祖、あるいは戦略上必要があるということで大陸にまで米軍が行動する。少なくとも米軍自体にとってはその行動は自由でありましょう。ところが在日米軍に関する限りは事前議協においてこれをチェックしておる。かりにあなたがこれをノーと言った。しかしそれは共同作戦ということで混合して行くわけでありますから、その攻撃を受けた相手方は、一体そういうことが具体的に識別できるか。あれは在日米軍の飛行機だ、こっちは在比米軍の飛行機だというふうな識別ができますか。おそらくこれはできないでしょう。そこに攻撃があれば、それに対する反撃がある。とするならば、事前協議において在日米軍の軍事行動を規制し得たとしても、実際問題としてはこれはほとんど無意味ではありませんか。私はそう思う。どういうことなんですか、識別はできますか。
  159. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 そういう場合に、アメリカの司令官としては、当然条約の趣旨を守りましてそういう用兵作戦をやると私どもは確信いたしておるのでありまして、この条約が日米友好関係の上に立って、そうしてお互いに信頼をしてやっていくということを疑いましたならば、この条約の基礎はゆるむのでありまして、われわれはそういう立場に立ってこの条約の運営というものが円滑にいくということを確信いたしておるわけでございます。
  160. 辻原弘市

    ○辻原委員 問題は、いかにアメリカの指揮官がそういう認識を持っておろうとも、共同作戦があり得るわけなのです。その共同作戦の際に、相手方のそれに対しての識別は、具体的にはだれが考えてもできはしないわけですから、攻撃を加える。そういう事態が予想される。攻撃を加えると、さらにそれを口実にして今度はいわゆる在日米軍が反撃に出る。こういうことから問題が発展する可能性が非常に多いということを私ども心配する。しかも本来、これらの在比、在韓、在台、あるいは在日のそれぞれの米軍というものの一つの目的は、共同作戦をとらしめよう。言いかえてみれば、軍事的にはそれは明らかにNEATOという、いわゆる集団的自衛権の発動という形におけるものが今度の安保条約の目的ではないかと考えた場合に、われわれには当然予想される事態なのです。だから、あなた方が、事前協議でチェックできる、米国の司令官がそれは心得えているだろうというようなことでは安心ができないということを私は言っているのだが、どうですか。
  161. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 要するに、アメリカの司令官としては、共同作戦の場合にわれわれとの約束を守って用兵作戦の上でそれをいたそうと思います。従いましてその点において混同があろうとは思われません。またそういうことの信頼の上にわれわれはこの条約の運営をいたしていかなければ、条約というものの基礎はゆるむことはむろんでございます。従ってわれわれはそういう意味においてアメリカと信頼関係の上に条約を締結していくわけでございます。
  162. 辻原弘市

    ○辻原委員 次に、条約第五条の、共同の危険に対処する、あるいは共同の行動に対処するという、この問題に関連して承りたいのでありますが、具体的に聞きたいと思う。  もし公海内で、あるいはこれは公空でもいいと思うのでありますが、日本の船あるいは日本の飛行機で他から武力の攻撃を受けた場合に、自衛隊は出動いたしますか、どうですか。
  163. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 これは公海におきまして、平素日本が平和のうちに航海をいたしております。それを攻撃されればむろん武力抵抗があったわけでありますから、その場合には助けざるを得ないと思います。
  164. 辻原弘市

    ○辻原委員 公海内でそういう事態に逢着した場合には助けざるを得ない。いわゆるそれはそういう言葉ではなくして、武力行動がとり得るということなんです。そうなんでしょう。施政下でなくても、公海であっても武力行動はとれるということなんですね。それは間違いないですか。
  165. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 その条約の問題ではないと思うのでありまして、日本の軍艦なりあるいは商船がよそから攻撃をされるということがありますれば、自衛の措置がとれることは当然だと思います。
  166. 辻原弘市

    ○辻原委員 そうだとするならば、この第五条はなぜそういうふうに書かなかったのですか。第五条には、日本国の施政のもとにある領域における——あれだけ一体施政下をどこにするのか、どこにしないか大問題になった問題なんですね。この施政下という問題は、あなたの今の解釈によると、施政下でない公海であっても武力攻撃を受ければ出動できる。第五条にはそういうことは書いてないのです。施政下にある場合においてのみだけ共同の行動をとると書いてある。間違いありませんか。
  167. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 なおこまかい点については条約局長から御説明いたします。
  168. 辻原弘市

    ○辻原委員 大臣に聞いているんだ、条約局長に聞いているんじゃない。
  169. 小川半次

    小川委員長 委員長指名いたしました。
  170. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 ただいま御指摘の点は、公海における場合でございますから、この第五条の適用はないわけでございます。しかし、自衛隊法の適用は、もちろんこれは日本の船でございますからあるわけでございます。
  171. 辻原弘市

    ○辻原委員 そうすると自衛隊法に基づけば、条約がどうあろうとも、武力攻撃を受けた場合どこへでも出動できる、そういうことになりますか。
  172. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 第五条の適用、すなわち日米関係のこの条約の適用としては、公海上の日本船舶には適用しない、それから自衛隊法適用としては日本が単独で自衛権の行使でございますか、自衛隊法に従って行動するということは、これは条約とは別問題でございますが、自衛隊法に従って行動ができる、こういうことを申し上げたのです。
  173. 辻原弘市

    ○辻原委員 そうすると藤山さん、今の場合、局長の答弁によると条約ではできない。条約では施政下以外には自衛隊は出動することはできない。しかし自衛隊法によっては出動できる。それはどこへでも出動できますか。公海のどこまで行けますか。
  174. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 自衛に必要な限度であります。
  175. 辻原弘市

    ○辻原委員 具体的に一つ聞いておきたいと思いますが、常識的には領海と接近している公海、ここらあたりまでは自衛隊法で行ける、こういうことです。さらにその向こう、だんだん行きますと、公海もその半ばを過ぎて、相手方の領海に近くなっていく、そういうところまで行けますか、どうなんですか。
  176. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 それは自衛の範囲でありまして、そういうことで詳しいことは、条約局長もしくは法制局長官から説明いたします。
  177. 林修三

    ○林(修)政府委員 ただいまの御質問と関連してお答えしたわけでありまして、御質問は、要するに公海にある自衛艦あるいは自衛隊の航空機に対して攻撃があった場合にどうかというお話であります。公海あるいは公空にある自衛艦が、いわれなく他から攻撃を受けた場合に正当防衛の行動ができることは当然でございます。正当防衛に必要の範囲内においてもちろん行動できるわけであります。それは何にもおらない公空公海における行動とは別であります。そこに自衛艦があり、あるいは自衛隊の航空機が領海外を何らかの必要によって飛んでおる、あるいは航行しておる。その場合における問題を御提起になりましたから、その場合の問題をお答えしたわけでございます。これは自衛権にとってはそれを排除するに必要な限度でございまして、それ以上のことはできません。
  178. 辻原弘市

    ○辻原委員 そうすると、これは個別的自衛権ということで条約とは無関係に自衛隊は出動することができる、こういうことになりますね。そうすると、そのときには米軍はどうなりますか。在日米軍は出動しますかしませんか、これはどうですか。
  179. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 その場合に在日米軍が出動する義務はございません。
  180. 辻原弘市

    ○辻原委員 逆にちょっと聞いてみたいと思うのですが、そうすると、今度は公海でアメリカの船が攻撃を受けた。もちろんこれはアメリカが出動いたしますね、これはどうなんですか、出動しますね。
  181. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 これはそういうようなときに問題にならぬわけでありまして、アメリカの船が攻撃を受ければアメリカ自身の自衛権を発動すると思います。
  182. 辻原弘市

    ○辻原委員 日本の領海近くでアメリカ船が攻撃を受ける、アメリカが出動する。自衛隊はどうしますか、出動しますか、しませんか。
  183. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 領海近くという非常なむずかしいあれかもしれませんが、領海の外でありますれば、むろん自衛隊は出動いたしません。
  184. 辻原弘市

    ○辻原委員 時間がありませんので、安保の問題はまた次の機会に譲るといたしまして、この安保条約の問題に関連して外務大臣に一つ私が特にお尋ねいたしたい問題があります。  それは一月の二十日調印後に、首相とアイク物会談後に、皇太子とアイクの相互交換訪問ということが発表されておりましたね。これは決定したのですか、どうなんですか。
  185. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 一月の二十日に総理とアイゼンハワー大統領とが話をされましたときに、アイゼンハワー大統領は、ソ連からの帰りに日本に寄る、今日、日米修好百年の記念でもあるしするから、そういうときにちょうどソ連、シベリアを通って帰るのだから日本に寄るということで、訪問することを言われました。皇太子につきましては、アメリカ側において、日米修好百年の時期にそういう希望を述べられましたけれども、総理といたしましては、このことは自分が一存で言うべき問題でもなし、帰ってとくと協議の上で御返事をするということであったわけであります。
  186. 辻原弘市

    ○辻原委員 あなたは、新聞の情報によりますと、一月の十八日、これはUPIの通信でありますが、そのことを発表しておりますね。だから調印前にこれは発表しておる。おそらくまたこれは、そういうことは知りません、新聞はわかりませんと言われるかもしれませんけれども、五月の最終の週になるだろうという具体的なことまで発表しておる。とすれば、われわれはその新聞を見た場合に、事前にそういうようなことが計画され、決定されておったのじゃないか、こういうふうに考えられるのですが、渡米前にこのことは計画されておりましたか、どうですか。
  187. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 渡米前には計画されておりません。むろんアメリカが、昨年以来、特に民間団体である日米協会等でもって、皇太子殿下を百年記念祭にお招きしたいというような意向は持っておりました。しかしながら、アメリカ政府としてそういう意思表示をしたこともございませんし、特にそういう計画があったわけではございません。
  188. 辻原弘市

    ○辻原委員 アイクが日本を訪問する、皇太子がアメリカを訪問する、これは外交上の問題に関連する事項ですか、それとも皇太子の訪米というのは、これは国政に関係のないいわゆる国事の事項に属する問題ですか、これはどちらですか。
  189. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 皇太子が訪米されますということは、政治には関係ございません。
  190. 辻原弘市

    ○辻原委員 その政治に関係のないことを、なぜ安保条約の調印に関連をして相互訪問ということをやったか、ここに問題があると思うのです。重要な問題だと私は思う。皇太子が海外に平常の時期において出かけれられることはこれはわれわれも大いに歓迎をいたします。また、外国の元首が日本を訪れられることも大いに歓迎をすることもできるでしょう。しかし、なぜ安保という国際的にも国内的にも重要な政治問題であるその重要な問題に関連をして、この皇太子の訪米ということを計画したか、ここに私は重要な問題があると思う。宮内庁も事前にそれを知らなかった。しかし、現地においては具体的に、今あなたはアメリカ側から要求があったような話がありましたけれども、これは明らかに日本の側から持ち出している。まことに私は遺憾にたえないと思うのです。かつて袞龍のそでに隠れて、そうして国政を重臣が左右したことが日本の運命を誤まったといわれておる。今また岸内閣は、昨年御成婚によって皇太子ブームがにわかに国内にわき起こった。そういうことを利用して、安保調印を国民の感情の上にやわらげようとするような計画ではないか。これは私一人がうがつのじゃない。いろいろな評論家が書いているのを私は集めましたが、すべてそういう批判をしている。これに対して、政府はどういう見解を下しますか。
  191. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 日本側から持ち出したことは断じてございません。
  192. 辻原弘市

    ○辻原委員 まあ先ほどの安保の問題も、そのくらい明確に答えていただきますと、私も時間がだいぶ節約をできたのでありまするが、とにかく皇室を政治に利用することは国民がまっぴらだと言っている。おそらく皇室御自身も迷惑であろうし、絶対さようなことはすべきでないと思う。そのことを申し上げて、この問題は終わりたいと思います。  大蔵大臣おひまなようですから伺いたいと思いますが……。
  193. 小川半次

    小川委員長 辻原君、理事会において時間を厳守することになっておりますから、そのおつもりで御進行願います。
  194. 辻原弘市

    ○辻原委員 二月六日の朝日新聞に、私はこういう記事を見たのです。元参謀本部にあった山県有朋、大山元帥の銅像、これが今上野の美術館の裏に置かれてある。これについて、これらの人に関係をする鹿児島、山口の県民から非常に無償払い下げの希望が出ておる。それで、大体それが実現しそうな空気にあったが、にわかにそれが変わった。こういう話を聞いている。さらに調べてみますと、いろいろなことがありますが、これは大蔵省の所管だったのですね。現在も大蔵省の所管ですか。それとも何か聞くところによると、これは防衛庁に所管がえをしたという話も聞いているのですが、これは事実ですか、どうですか。大蔵大臣と防衛庁長官に伺いたい。
  195. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 大山、山県両元帥の銅像が上野の山にある。これをそのままにしておくことは場所柄どうも不適当じゃないか、こういうお話が民間の一部にございます。そういう意味から、これをいかに処理するかという問題が起こる。一方郷土である山口県あるいは鹿児島県は、自分たちの方へ持って帰りたい、こういうようなことを言っている向きもある。上野の山に置くことはいろいろ不適当だ、こういうことですが、その処置をいかにするかということはまだ検討中でございまして、最終的にまだ決定はいたしておりません。大体一部におきましては、防衛庁を中心にして、これらの両元帥の銅像をそちらの方へ移す方がいいんじゃないか、こういうような議論が出ておることも確かであります。そういう意味でいろいろ話し合っていることもあるのですが、まだ結論をはっきり出しておるわけではございません。
  196. 辻原弘市

    ○辻原委員 所管がえはしていないとお答えになりましたが、わが党議員が大蔵省に確かめたところ、管財局長は、所管がえをしておると言っておる。これは防衛庁長官どうなんですか。
  197. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 まだ所管を受けておりません。この問題につきましては、大蔵大臣から答弁いたしましたように、地元においてほしいという向きもあります。あるいはまた、私の方から言っているんじゃないですけれども、外部の方で、防衛庁でこれは保管すべきだという議論もあります。目下検討中でありますが、所管がえはいたしておりません。
  198. 辻原弘市

    ○辻原委員 そうすると、防衛庁長官についでに伺っておきますが、三十四年度の防衛庁予算の中の施設整備費約五十四億になっておるのでありますが、その中で約五百万円をこの銅像の運搬費に充てておる、あるいは充てる計画があると私は聞いておるのですが、そういう事実がありますか、ありませんか。
  199. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 そういうものを含めての施設費にはなっておりません。
  200. 辻原弘市

    ○辻原委員 そういうことはないとお答えになったのですか。やる意思もないと……。
  201. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 やる意思があるかどうかは勘案の上で決定いたします。
  202. 辻原弘市

    ○辻原委員 そこで所管がえをしていないということですから、大蔵省の所管だと思うので、大蔵大臣の御方針はどうなんですか。率直に言いますと、地元に払い下げるか、それとも防衛庁に所管がえをして、どこやらその防衛庁の一角に、これは過去の歴戦の総帥、元帥なんだから、将来の自衛隊のために一つこの銅像を建てておこうじゃないか、そういう希望が旧軍関係から相当強いようであります。その要求に対して大臣はどうされますか、方針は……。
  203. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 私の気持から申しますと、やはり中央にある方が望ましいんじゃないか、かように考えております。それを上野の山に置きますか、あるいは防衛庁に移管するのがいいか。そういう点で、ただいままだいろいろ話し中である、まだ検討中でございます。従って、これらはまだきまっておりません。(「所管がえしたじゃないか」と呼ぶ者あり)まだ所管がえはいたしておりません。はっきり申し上げます。そういうふうに御承知願います。
  204. 辻原弘市

    ○辻原委員 今の大蔵大臣の答弁によりますと、地元へは払い下げをしない。まあ上野の山にはおそらく置かぬでしょう。これは上野の山へ置いたって骨董品的価値しかないのですから。そこでこれは大よそ防衛庁へ持っていくという考え方なんです。はっきりしました。私はこれについても思うのです。先ほどの皇太子の問題といい、また今防衛庁がどういうようなセンスでいって考えているのかわかりませんけれども、過去における日本の偉人としてもてはやされた人ではありますけれども、しかしながら、過去における軍というものと今日の自衛隊というものとは、そもそもその趣旨においては全く違うのです。それを、過去の軍の中のいわゆる傑人、偉人というものを偶像として、銅像として、これをあがめ祭ろうとする防衛庁の考え方、自衛隊の考え方というものについて、私は深い疑問を感ずるのです。だからそれを言っているのです。防衛庁長官どうですか。
  205. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 かつて日本のために——あとからどうかは知りませんが、その当時におきまして非常に尽くした人だと私は思います。そういうものでもあり、美術品でもありますから、もしも移管を受ける場合には、これは移管を受けても、それが自衛隊の指導精神をそこなうとか、前の軍の気持に返ると、こういうことには私は相ならぬと思います。これはやはり歴史的の存在価値があるもの、こういうふうに考えております。
  206. 辻原弘市

    ○辻原委員 時間がありませんから、私はこの問題について個人的な意見を多く申し述べることができませんけれども、しかし私は、地元の人が郷土の偉人としてこれらの人をあがめ祭りたいという気持は、これは素朴な感情として肯定できると思う。また骨董品的価値、これは調べてみると一千万円くらいの価値があるようです。そういうことになれば、上野博物館に入れるということも一つの取り扱いでありましょう。しかし、自衛隊、防衛庁と結びつけてそれをやろうとするのはいかにも私は了解できがたい、このことだけを申し上げておきます。  次に労働大臣に伺います。きのうも社会労働委員会で質問をいたしておりまするし、また次官会議、閣議等においても問題になったILOの問題であります。あなたはこの前の本会議で、今国会に提出をする、諸般の準備が完了したならば提出をすると明言をされておりますが、間違いありませんね。
  207. 松野頼三

    ○松野国務大臣 速記録をお読みいただけばわかりますが、関係法規を整備の上すみやかに批准の手続をとります。こういうことをお答えいたしております。
  208. 辻原弘市

    ○辻原委員 すみやかに法規を整備して、と同時に今国会にと質問者は尋ねておるのに対して答えている。今国会に提出をするということは間違いありませんね。
  209. 松野頼三

    ○松野国務大臣 質問者はそういう御質問でございましたから、私といたしましては、関係法規を整備の上すみやかにこの国会に批准の手続をいたしますというので、この国会ということを明言をいたしておりません。しかしその意味としては、この国会を目途として整備をして努力するということはこれはその言葉の中に入っておるかもしれませんが、この国会に提出するということは一言半句も言っておりません。
  210. 辻原弘市

    ○辻原委員 まあそういうことの押し問答はやめましょう。そこで、今国会に提出しますかしませんか、どうですか。
  211. 松野頼三

    ○松野国務大臣 関係法規を整備いたしまして、この整備がこの国会に間に合えばもちろん、すみやかでございますから、関係法規の整備の結果すみやかに批准をいたします。こういうことであります。
  212. 辻原弘市

    ○辻原委員 関係法令の整備の状況はどうですか。関係法令整備の状況はどうか、またその関係法令の整備の前提となる全公務員に対して、これは現業のみならず非現業関係も含めた全公務員に対して適用するという基本方針に従って関係法令の整備をやっておるか、おりませんか、その点はどうですか。
  213. 松野頼三

    ○松野国務大臣 昨年の二月の閣議決定の線が政府の基本的な線でございます。これには一般的に公労法の四条三項及び地公労法の五条三項を含めた関係法規となっております。その中に、特に今までの各種の営業法の中で非常に不均衡なものは直せということが明言してございます。国家公務員、地方公務員のことは、その閣議決定の中には、明文はございません。しかし影響するところはございますから、今日作業の中で、連絡調整研究の中ではもちろん入っておりますが、法律として明言したことは——労懇の答申の中にも明言はございません。しかし影響するところがあるということはもちろんでございます。従ってそういうところを勘案いたしますと、これは相当広範囲なものになる。政府は、このためにおくらすとか、無理に作業をサボっておるということは断じてございません。ことに、その閣議決定の中にも全逓の正常化というのがございました。全逓の正常化はやっと昨年の暮れに済んだのでありますから、時間的にいえば、政府相当この問題で熱心に取り組んでいることは諸般の情勢から御考察願えると私は考えております。
  214. 辻原弘市

    ○辻原委員 進捗状況はどうか、この点を伺います。それともう一つ不明確であったのは、全公務員に適用するという方針を確認して作業にかかっておるかどうか、そのことは今後の問題に考えておるのか、この点はどうですか。
  215. 松野頼三

    ○松野国務大臣 労働省所管の公労法に関しましては、ぼつぼつ各省に最終的な案をお示しする時期にきていると私は思います。しかし御承知のごとく、労働法はすべてに影響がございますから、労働関係法だけでいいかどうかということは非常に大きな問題であります。従って法律を改正するかしないかは第二といたしましても、各省に影響するところは多大でございます。各省から、その方向に沿って法律を改正するがいいという意見もあれば、しなくてもよろしいという意見も出て参りましょう。しかし影響するところは多大でございますから、労働省の方針を各省に示しながらただいま連絡調整をしております。しかし、これは非常に広範囲でございますから、各省についても意見がなかなか多いということで、ただいま非常に苦労しながら、その閣議決定の線に沿って最善を尽くしておる段階でございます。また公務員に触れるか触れないかということは、これはまだ今後の問題であります。
  216. 辻原弘市

    ○辻原委員 各省にいろいろ意見があるそうですから、大蔵大臣、大蔵省はどうですか。
  217. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 大蔵省所管の印刷、専売等の公共企業体につきましては、それぞれ準備を進めております。一般公務員につきましては、ただいま労働大臣からお答えいたしましたように、ただいま検討中でございます。
  218. 辻原弘市

    ○辻原委員 文部省、自治庁はどうですか、簡単に……。
  219. 松田竹千代

    ○松田国務大臣 労働行政の所管大臣たる労働大臣のおっしゃったことと同じような考え方で、できる限り早く各省間の統一を見たい、文部省もできる限り早くその調整を見たいと思って、目下鋭意調整をはかっております。
  220. 辻原弘市

    ○辻原委員 文部大臣、あなたはそういう適当な答弁では逃げられない。今まで私も各委員会においてこの点については質問をしてきておる。あなたは、教員についてはこれは適用するという方針を明示された。その方針は変わりませんかという私は根本方針を尋ねておる。変わっておれば変わりました、変わってなければ、適用するという方針であるということをお答え願いたい。
  221. 松田竹千代

    ○松田国務大臣 変わっておりません。
  222. 辻原弘市

    ○辻原委員 自治庁はどうですか。
  223. 石原幹市郎

    石原国務大臣 労働大臣からお答えありましたように、労働省それから人事院、法制局その他ともいろいろ連絡をとりつつ今検討を進めておる最中であります。
  224. 辻原弘市

    ○辻原委員 そこでもう一点、これは文部大臣にお伺いいたしましょう。今岐阜県、それから福井県等で問題になっておる専従者の制限、このことは条約を批准すれば当然条約に抵触をすると私は考えますが、これはどうなんですか。
  225. 松田竹千代

    ○松田国務大臣 専従制限の問題につきましては、今申し上げるように、ILO条約批准の暁におきましては、これは全部撤廃されるものだという考え方もありまするし、そうでないという意見もあります。従って、文部省といたしましては、それらの点について各省と調整を見た上で決定したい、かように考えております。
  226. 辻原弘市

    ○辻原委員 時間がありませんので、今の答弁を土台にいたしまして、その他の委員会において詳細にこの問題について各省の意見をお伺いすることにいたしたいと思います。  次に大蔵大臣に伺いますが、この間の本会議で、わが党の成田議員の質問に対して、ガリオア、イロアの問題についてお答えになっておりました。それによると、政府としては、これは債務であるから返済をするという方針で考えておるということでありましたが、間違いありませんか。
  227. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 債務とはっきり申したことはございませんが、政府は従前からこれを債務と心得ておる、こういう表現で参っております。いわゆる債権債務という関係とは、ややそういう意味では異なった関係でございます。そこでこれが処理につきましては、この問題に対する国民感情等をも十分考えまして、そして処理をつけたい、かように実は思っております。と申しますのは、再三にわたりましてアメリカ側からこの問題の解決方の督促を受けておる。そういう点からこの処理はしなければならないもの、かように考えておるということを申したわけであります。
  228. 辻原弘市

    ○辻原委員 債務と、債務と心得る債務というものとの違いはどこにあるのですか。
  229. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 いわゆる債権債務としての処理とはやや違っておる。私どもは、米国側の政府の好意は十分わかっておりますが、私どもはこれを全部ただでもらうという考え方でなかったという意味のように私は考えておるわけでございます。
  230. 小川半次

    小川委員長 辻原君、あと一、二問で結論に願います。
  231. 辻原弘市

    ○辻原委員 私は、このガリオア、イロアの経緯についてお尋ねをしているのじゃありません。経緯は私もよく調べて存じております。そうじゃなくて、今債務と心得るという政府の見解は、私の常識的法解釈によれば、少なくとも国でいう債務とは憲法八十五条に基づくいわゆる債務ということであって、それ以外に国が心得るという債務でこの金を弁済できるということがあり得るのかどうか。あり得るとすれば、一体その法的見解、根拠というものはどこにあるのか、はなはだ疑問でありますから、その点についての法的解釈をお伺いしておる。どうなんです。
  232. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいま申し上げますように、私どもアメリカ側から支払いの要求を受ける。そういう場合におきまして、外交折衝の結果その金額等を決定していく、そういう筋のものである、かように考えております。
  233. 辻原弘市

    ○辻原委員 そうすると、わが国の憲法においては、憲法八十五条に基づいて、国会の承認を経ないものであってもそれは支出できるということなんですね。一般会計でも支出できますか、どうですか。
  234. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいま御指摘なさるような意味における債務ではない、かように考えておりますが、これは全部無償でいただいたものだとも実は考えておらないと、こういう意味で、そこに折衝の余地のある問題である。もちろん政府が一方的に引き受けたからといって、それで効果が発生するものではございません。ただいま申し上げますように、当然国会の承認を得て、しかる後にこの問題がきまるわけでございます。
  235. 辻原弘市

    ○辻原委員 そうすると、この問題をかりに——今の法律論争は一応おきましょう。要するに、政府が交渉してきまったならば国会の承認を得るというのですね。それは間違いないですね。——そこで次の問題は、一体それじゃガリオア、イロアの返済を要求されている額は総額なんぼですか。それと時間がありませんのでもう一つ尋ねます。具体的な返済方法についてはどうお考えになっておりますか。国内的にどういう処理をいたしますか。
  236. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 問題はただいま御指摘になりましたような外交折衝の結果、金額が幾らになるかということであると思います。アメリカ側からも幾らの金額を支払ってほしいという金額の明示はまだございません。ただ漠とした話としてはガリオア、イロアについての処理をつけてもらいたい、アメリカ側からは幾ら幾らといった——大体二十億ドル前後のものを申しているわけであります。しかしながら、これを事務的に私どもも一体正確に幾らになるかは十分検討したいことでございますし、そういうような折衝を始めて、しかる後に金額が幾ら、またそのうち日本としてはどういうような支払い方法で、債務として幾らを支払っていくか、あるいはまた、その支払う場合の条件はどんなことにするか。過去におきましては、西独に対する援助物資の跡始末の処理の方式がございます。それは一つの形だと思いますが、日本と西独との間には相当相違もございますから、そういう点では十分国民感情を尊重した上で外交折衝を遂げていきたい、かように考えておりますし、また金額が決定された後の支払う場合に、どういう方法でこれを支払っていくか、さらにまた、その支払ったものについての使途等についても、当方の希望等は強く申し述べるというような点があろうかと思いますが、まだ金額そのものがきまらない今日、そこまで突き進んだお話をするのはいかがか、かように考えております。
  237. 辻原弘市

    ○辻原委員 これで終わります。この問題は、大臣も本会議でも言われておりますように、われわれもまた記憶に新たなるものがあるように、二十二年七月の衆議院の本会議においては与野党一致で感謝決議をしている問題であります。およそ国民は、これが今どきになって返済しなければならぬような債務だとはおそらく常識的に考えていなかった、またいない。従ってわれわれはこれを法的根拠なしに債務ということについては重大な疑問がある。今後政府がこれに対してどう処理されるか、国会の承認を求めるということでありますので、その際にわれわれとしては十分なこれについての経過、また政府の方針をただすつもりでありますけれども、われわれは、政府が今簡単に債務と心得るということについては了承しがたいということを申し上げておきたいと思います。終わります。(拍手)     —————————————
  238. 小川半次

  239. 受田新吉

    ○受田委員 私は外交、防衛問題を中心にして、一部内政にわたる質問を試みようとするものであります。  最初に、先般来問題になっております極東の定義について私もまた触れざるを得ないのであります。何となれば政府は先般来の国会で、その答弁において全く前後矛盾をして、統一見解あるいはその後における見解の相違点等を逐次是正していくという立場になっておるのでございますが、あなた方全権団は、アメリカにおいてこの条約を署名される際に、極東の定義について個々具体的な問題で、最終的に、藤山さんが今考えておられ、総理が考えておられるような線で地域の了解が得られておるのかどうか、お答えを願いたいのであります。
  240. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、極東についての考え方につきましては、従来交渉の経緯等におきましても触れて参ったことは事実でございまして、その限りにおきまして、先般来申し上げていることがわれわれの考え方であり、またそれに対してアメリカ側も異議がないところでございます。
  241. 受田新吉

    ○受田委員 地域的に最初は千島を含むと言い、後にこれを含まないと言う。こういうような具体的な問題で、あなた方の御意見が前後まちまちになっているわけです。従ってアメリカの当局と会談をされる際に、一つ一つ具体的に相談をされたその具体的な地域を明確に文書に示さざる限りは、これは国民は納得しないと思う。少なくとも、これほど国会で討議され、しかも政府の見解が前後ばらばらであるというような印象は、国民にきわめて極東に対する見解の不安を与えていることは事実でありまするので、私は地域的な問題は一応省くといたしまして、少なくとも外交文書の上ではっきりと地域を示した交換公文を追加するとかいう、新しくこの極東地域問題についての外交文書交換の方式をとる御用意があるかないか、御答弁を願いたいのであります。
  242. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 申すまでもなく、今回の条約適用地域は、施政下ということにきまっております。極東という問題につきましては、極東の平和と安全ということが非常に重要な関心事であり、両国の関心事であるということ、これまた当然でございます。従って、その極東の中に何か紛乱等が起こりました場合に、日本の平和と安全に影響を持つ。従って、そういう意味においてわれわれは極東というものを重く見ておるわけなんでありまして、そうでありますから、東経何度とか、あるいはどれどれの島嶼がどうとかいうことをこまかく一々規定することは、必ずしも可能でもございませんし、適当でもないと思います。が、しかしながら特別に問題のありますような点については、われわれとしても総理から言われておる通りな解釈をとっておるのでありまして、これに対してはアメリカ側が異議ないということでございます。
  243. 受田新吉

    ○受田委員 そういたしますと、ある特別な地域の問題等については、外交上の交渉で何とか具体的にこれを明示するという用意も一部あると解釈してよろしゅうございますか。
  244. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 現在におきまして、そういうものを文書で取りかわすという考え方はございません。
  245. 受田新吉

    ○受田委員 極東の定義の中には、韓国とかあるいは中国、台湾政府の所管区域が入っておるわけです。これらの国々に何らの声明も発することなくして、独断で今回の条約区域の中へ、極東の解釈の中へ入れるということは、外交上の儀礼としても許されることかどうか、御答弁を願いたい。
  246. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 そういう問題を考慮いたしますからこそ、今のように文書でもって取りかわすことは適当でないと思うのでありまして、われわれとしては、やはり極東の地域に紛乱が起きる、紛争が起きる、何か事件が勃発するというようなことそのことが影響を受けると、またわれわれの関心事でもあるということであろうかと思います。従って、そういう意味で御了承をいただけるものだと思います。
  247. 受田新吉

    ○受田委員 それらの関係諸国に対して、あなたの御意見では、別に日米の共同声明などによって、諸君の国が極東の限界の中に入っているというような意思を伝達する必要はないと、かようにお考えなんですか。
  248. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 われわれとしては、現在文書等によってそういうものを取りかわす意思は持っておりません。
  249. 受田新吉

    ○受田委員 こうした問題は、国民に十分納得させ、国民の疑惑を一掃するという、そうした親切な心が政府に要るのです。アメリカの報道は、明らかにあなた方が考えられておるのとは違って、あなたがいかに弁解をされようとも、極東の定義について話し合ったこともなければ、話し合う必要もないと言うておるわけなんです。少なくともあちらさんがそう言明をしていることは、報道機関で正式に伝えられておる限りは、辻原君の先ほどの御質問のごとく、政府としては親切に、国民が納得するように、米国との間に文書の交換等が十分されて、外交上の意思統一ができていることを明示すべきじゃないですか。それほどの親切を示すということで、あなた方が先般来ちぐはぐな答弁をしておられることに対する罪の償いができると思うのですが、いかがですか。
  250. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 むろん極東の平和と安全ということは、国民の関心事だと思います。従いまして、そういう意味から見て、われわれはこれを慎重に扱っておるのでありまして、文書等によりましてそういうことを取りかわすことは、むしろ適当であろうとは思っておりません。
  251. 受田新吉

    ○受田委員 韓国及び中国——あなた方の中国、この二つの国は、あなた方のこの国会の答弁で、馬祖、金門を含むとかいうようなこういう答弁で、りっぱに納得する、このままでけっこうなんだとお考えでございますか。
  252. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 国民の皆さん方が一番関心があることは、やはり日本の平和と安全が害されるか、また、極東の平和と安全が害されたことによって日本の平和と安全が害されるか、同時に、そうした場合において、何か日本が不安な戦争に巻き込まれやしないかということが一番大きな関心事だと思います。私どもは、そういう意味におきまして国民に十分安心していける処置として、事前協議等もとって参ったわけでありまして、そういうことをわれわれはできるだけ国民の皆様方に理解をしてもらうように努めて参りたい、こう存じております。
  253. 受田新吉

    ○受田委員 私の質問にお答えを願いたいのです。韓国、中国両政府に対して、あなた方の地域は、新安保条約ではっきりと米軍の行動範囲内に入っているのですよと、そういう共同声明なりを発して了解を得る必要はないかということに対する御答弁がありません。
  254. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、そういう共同声明を発するということは、今適当だとは考えておらぬのでございます。
  255. 受田新吉

    ○受田委員 何ゆえに必要がないと言われるか。私は、少なくとも極東の平和と安全を守ろうという日本国であり、アジアの灯台として、平和を、また文化をしっかりアジアの国々にも伝えようという、そういう段階において、勝手に日米で安保条約を作り、その極東の区域をきめておきながら、これらの国々に何らの意思の伝達もないというやり方は、親切な政府のやり方とはいえません。外交儀礼というものは、おおむねこのようにして一方的にきめることで片づくものでございますか、紳士としてのあなたの御答弁を伺いたい。
  256. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 むろんわれわれとしては、極東の地域に平和と安全が保持されることを念願するのでありまして、何か紛乱が起き、そうしてそれが拡大するということは、決して念願をいたしておりません。日本を取り巻くそれぞれの国々におきましても、できるだけ平和に話し合いをして、そうした混乱の起こらないようにしていき、また問題が解決するようにしていくということが、一番大事なことだと思うのであります。むろん外交文書等においてそういう取りきめをするということは、私は適当だとは思っておりません。しかし中ソ友好同盟条約のごとく、明らかに日本を対象にした書き方をしているものもございますが、それでも日本に対して了解を求めたということは私はないように承知いたしておりますので、今日日本がこの防衛条約を結びますことは、平和を庶幾し、安全を庶幾するという目的でございます。戦争を起こそうという目的ではないのでありますから、そういう意味におきまして私どもは今のような取りきめをして、そうして何か発表いたしますことは適当だとは考えておらぬのでございます。
  257. 受田新吉

    ○受田委員 あなたは中ソ同盟条約を例に引かれましたけれども、韓国と台湾政府とは、同じく米国を中心にしては、あなた方の立場をもってすれば、一連の同盟的な性格を有する国と言えるわけなんです。そういう国に対してすら必要がないというわけですね。
  258. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 自分の国をどうして守っていくかということは、それぞれの国がきめることでありまして、それらについて他国の了解を得る必要はないと私は思っております。
  259. 受田新吉

    ○受田委員 自国と他国の区別の問題ですが、韓国と台湾は今度の極東の定義の中に入れておられるのですから、その国に対して、米国と日本が一本になってきめた条約に対して何ら行動範囲の中にある国々に了解を得ることもなく、親切に通告することもないということがどうかということをお尋ねしているのです。
  260. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 今申し上げましたようにわれわれとしては今回の安保条約を締結いたしまして、そうしてそれらの内容につきまして一々他国の了解を求めるというような外交上の手段はとる必要はないと考えております。むろん韓国あるいは台湾等友好国に対しまして、われわれが平和と安全の道を持っておるということは、平素から理解してもらっておるつもりでございます。
  261. 受田新吉

    ○受田委員 しからばまず第一にお尋ねしましょう。韓国、台湾には友好的な感覚で外交をしておるということを了解してもらっておるとあなたは言われましたけれども、本日午前五時三十八分第五八幡丸という長崎県所属の船が、操業中に韓国の警備艇に追跡をせられまして、その逃走中に警備艇に激突されてその船は沈んでしまったという事件が起こった。乗組員はその警備艇に連れられて、十八名であったということでございます。韓国の李ライン外で起こった事件でございますが、李ラインの中にこの警備艇は消えてしまったというのです。本日こういう事件が起こっておるということは、あなたは外務省の首脳部としては御存じでございますか。
  262. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 私どもも本日午前に起こりました事件については、まことに遺憾にたえないと思っておるのでありまして、ただいまお話のございましたような事実がございます。従ってわれわれとしては直ちに不法行為に対して厳重な抗議をし、乗組員の釈放、漁船の損害賠償等を要求するつもりでございます。
  263. 受田新吉

    ○受田委員 藤山さん、あなたは韓国と非常に友好的に関係を結ばれておるとおっしゃった。私はこの問題は後ほど重ねてお尋ねしますとして、目下日韓会談の交渉の経過はどうなっておるのですか。将来の見通しはどうなっておるのですか、お答えを願いたい。
  264. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 日韓会談の交渉は遺憾ながら遅々として進まないのでありまして、私どもとしてはまことに残念に思っておる次第でございます。御承知通り昨年の八月初頭に会談を再開いたしまして、そのときには釜山におります抑留漁船員の釈放ということを向こうも確約をいたしましたし、またわれわれの方でも大村の収容所の人を釈放するということも申したわけであります。その後十月までの間にお互いにそれぞれの調査を進めて参りました。そうして十月にはその調査の結果として釜山の抑留漁船員の方々を釈放してもらえるように話を進めて参ったのでありますが、その点につきまして韓国側が容易に十分な回答をいたして参りません。従って十一月二十八日と記憶しておりますけれども、柳大使を招致いたしまして、韓国側に厳重な抗議をいたしたのでございます。その後韓国側としては、北鮮帰還についての問題を取り上げてきたわけでありますが、しかし漁船員の問題等につきましては、日本におります韓国人の処遇の問題が決定すれば、それに応じて年末には釈放するというある程度の話し合いをつけて進んで参ったわけであります。日本側におきましても在日韓国人の処遇の問題としては——帰国する人については別でありますけれども、残っております人についての処遇の問題については、やはり過去に日本人としておられた経緯にもかんがみまして、できるだけ第三国人として、いわゆる外国人としての待遇に対して考慮を加えていくということで、ある程度の話し合いが進んで参ったわけであります。ところが一方におきまして、側面で、申し上げております北鮮帰還の問題について、韓国側としては国際司法裁判所に提訴するということを言って参ったわけであります。日本は、この問題は純人道的な扱いで北鮮帰還をやっているのだから、そうした問題には応ぜられないということで、その申し出を拒絶いたしたわけであります。その結果と申しますか、進んで参っておりました相互釈放の問題あるいは処遇の問題等についても、話し合いが、年末に至った関係もございましょうけれども、停頓いたしたわけでございます。そこで日本側としてはそういうことでは相ならぬのでありまして、漁船員の方々及びその家族のことを考えますと、われわれも最大の努力をして参らなければなりませんので、一月二十八日でありましたか、日韓会談をさらに再開して、これらの問題について従来の経緯を言い、そうして一日も早く漁船員の釈放、また在日韓国人の処遇の問題を決定して、それに進めていくようにただいま鋭意努力中でございます。
  265. 受田新吉

    ○受田委員 平和条約の第二条で日韓会談が生まれて以来、何年たっておると思われますか。八年間じゃないですか。あなたが言うように鋭意交渉中であるというようなことが八年間続いておるじゃないですか。抑留船員の二百一名の家族の人は、けさもあなた新聞でごらんの通り、その父が危篤に陥っておるので一人だけでも帰してもらいたいという訴えをしている。全国の抑留船員の家族とこれの協力者は、この二十二、三日ごろから真実のこもった抑留漁夫帰還問題に取り組もうとしておる。外務省は話にならぬといって、今新しい運動を起こそうとしておる。八年間あなたは鋭意交渉を続けるという、またこれから何年続けるのですか、見通しを伺いたい。
  266. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 受田委員の言われます通り、実に長い交渉でありまして、私どもとしてはこれは残念にたえない次第でございます。私が就任して以来でもすでに二年有半になっておるのでありまして、日韓交渉を、その限りにおいては私もできるだけ努力して、そうして一応予備折衝も終わって、一昨年でありましたか、ある程度の釈放を見て本会談に入ったわけでありますけれども、御承知のような次第でありまして、なかなか本会談が進んで参りません。そうして漁船員の抑留者の方々あるいはその家族の方々のことを思いますと、私も全く受田委員と同じ気持でこの折衝をやらなければならぬということを考えておるわけでございます。ただ、今申し上げたようなことでなかなか問題がむずかしく解決しにくい、また解決するのに困難であるということが実情であることは御了承を願いたいと思います。
  267. 受田新吉

    ○受田委員 あなた方は先般日米新安保条約を署名されて帰られた。しかも韓国問題については一言もアイクと会談していないということをわれわれは伺っている。これは事実ですか。
  268. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 アイゼンハワー大統領と総理とが、特に韓国問題について話し合いをされたことはございません。しかしわれわれとしては日韓会談というものは、やはり日本と韓国との間でもって話し合いによって解決すべきであって、第三者の仲裁というものはなるべく避けていきたいというのがわれわれの考え方でございます。しかしながら仲裁というようなことでなく、米国も韓国にやはり関係を深く持っておりますから、そういう意味において、日韓会談の実情の進行というようなものについては、アメリカ側に絶えずこういう状況にあるのだということは私も知らせておりまして、何か協力が得ら回るようなことがありますればできるだけ協力をしてもらいたいと思っておりますし、またアメリカもそういう点について労を惜しむのにやぶさかだとは思いません。ただこの問題につきましては、できるだけ日韓両国の間でこれを解決して参るのが私は適当だと思うので、粘り強くやっておる次第でございます。
  269. 受田新吉

    ○受田委員 私はあなたにただしたいのですが、韓国というのは一番善隣のはずです。アメリカというのははるか海のかなたなんです。その一番手近なところの問題をよう解決せぬような外務大臣で一体どうしますか。あなたはあちらへ行って、中共との問題は何とか相談をしてということであったのですけれども、韓国の問題についてはそういうことに触れていない。あなたは韓国の警備艇その他の艦船は、一体どこの国が提供した船、軍艦と思いますか。
  270. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 お説の通り、韓国は隣接国でありますし、われわれと志を同じゅうする国であります。これらの間に調整がとれないということははなはだ遺憾でありますし、あるいはむろんそういうことのできない外務大臣はしようがないじゃないかということもあろうかと思いますけれども、私といたしましては、やはりこの問題についてはできるだけ話し合いの上で、相手方の反省を求めながらやっていく。今お話のように、韓国に対してはアメリカ相当な援助がございます。一々の艦船についてどうということは申さないまでも、全体としてアメリカの強力な援助があることはむろんであります。従いましてアメリカの協力を求めますことも適当かと思いますが、ただアメリカ日本がたよって、そうして何か解決するというよりも、やはり日本自身が主体性を持って解決すべきだと思うのであります。たとえば財産請求権の問題等につきましては、アメリカの解釈をもらって両国はそれによってやっていく基礎を作る、そういう意味におけるアメリカの援助というものは、できるだけわれわれも求めて参る必要がありますし、またその方が事を円満に進め、解決の端緒を開くことでもあろうと思っております。
  271. 受田新吉

    ○受田委員 韓国が用いている艦船は、武器貸与協定によってアメリカから提供されておる。そうしますと、この武器貸与協定の中に、国際の平和と安全のためにこれが用いらるべきことが何らかの形で示されていると思う。日本の出漁した船を拿捕するためにこの艦船を使えとは書いてないと思うのです。少なくともアメリカ中心にしては、韓国と日本はあなた方の政府では非常に大事な立場になっている。それをアメリカが貸与した船が日本の漁夫、漁船を拿捕するために用いられておる。李ラインを乗り越えてまで本日第五八幡丸はやられておる。その根っこのアメリカの介入は今許したくないと言われておったようでありまするが、しかしあなた方が八年たってもよう手をつけぬ、しかも向こうの船は、アメリカが貸した船だということになれば、解決の道は簡単じゃないですか、お答えが願いたい。
  272. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 私どもは先ほど来申し上げておりますように、できるだけやはりこういう問題は二国間で解決されることが望ましいわけであります。日本が第三国の力を借りて二国間の問題の解決をはかるということは、望ましいことではございません。しかしながら二国間で問題が解決しませんければ、他の友好国の力を借りるということも一つの方法だとは思います。しかしながらやはり原則としては両国間でできるだけ話し合い、向こうの理解を求め、考えを訂正してもらって、そうして進むのが本筋であろうか、こう存じております。
  273. 受田新吉

    ○受田委員 あなたの政府は、八年間かかって解決をようしていないのです。国連憲章の三十三条の規定の中には、国連が問題として取り上げる規定がちゃんとある。「いかなる紛争でもその継続が国際の平和及び安全の維持を危くする虞のあるものについては、」云云とはっきり書いてあるのです。これはりっぱな国際の紛争じゃないですか。それを依然として二国間の交渉で解決したいといっても、はたしていつの日に解決の日を迎えることができますか。外務省は驚くべき怠慢です。抑留漁夫の父兄、いや一般国民は、あなた方の政府の怠慢に大へん怒っておる。しかもあなた方の政府は、アメリカ中心にしては、韓国と日本は非常に深い関係になっておるじゃないですか。そのアメリカが貸した船が日本の漁船を撃沈しておるのですよ。本日それが起こっておるのですよ。あなたは長期にわたる、少なくとも八年間の外交交渉の失敗をここで深くわびて、新しい段階に入る決意をしてもらいたい。近くアイゼンハワーは日本を訪問すると言うておる。いいチャンスです。あなたはこの国連提訴の問題、あるいは国連で取り扱われる場合における第三国の介入による調停仲裁の問題——りっぱな親方がおる。アイクさんに御協力をいただいてこの問題を解決するという腹はないか、御答弁を願いたい。
  274. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 むろんわれわれは二国間でもってこの問題を解決していくことが、先ほど来申しておりますように原則だと思います。従ってわれわれとしては最善の努力をして、ある意味からいえば、抑留漁船員の方々の問題にしても、十二月中ごろにはこの程度の釈放の見通しもついてきたのでありますけれども、残念ながらそれがまた韓国側の意向におきまして変更されてきたものでございます。従ってわれわれの努力というものが必ずしも私はむだではないと存じております。しかしこれが非常に長期にわたりまして、やはり仲裁を要請し、あるいは何かの力によって問題を解決する、国連提訴の方法もございましょうし、その他諸般の方法でやるということに至らなければならぬような事態になりますれば、むろんそういうことをいたして参らなければならぬと思います。アイゼンハワー大統領が来られましたら、両国の交渉の実情についてはわれわれは十分説明をする。今日までも説明をしておりますから承知はいたしておると思いますが、そういう説明をするのに決してやぶさかではありません。ただアイゼンハワー大統領が五月に来るまでどの程度こういう問題について両国間で進展を見ておるかということは、われわれも努力してやらなければならぬのでありまして、そういうことをやるからわれわれは努力しないというわけにも参らぬのでありますから、われわれとしては最善を尽くして常時努力をして参りたい、こう思っておるわけであります。
  275. 受田新吉

    ○受田委員 最善を尽くして、日韓会談の再開の見通しがいつつくかわかりますか。そしてそれが妥結する見通しがつきますか。アイクが来るまでに見通しがつきますか、お答え願いたい。     〔委員長退席、西村(直)委員長代理着席〕
  276. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 今日までの経過から見まして、私はアイゼンハワー大統領が来るまでに、この問題が完全に解決できるとまで言い切れるほど自信はございません。しかしわれわれとしては最善の努力を尽くして、そうして一歩でも一つの問題でも解決することによって進めて参るという努力はして参らなければならぬと思うのでありまして、アイゼンハワーが来るからそれに頼む、まあそれまでは待っていようというわけには私は参らぬと思います。従ってわれわれとしては、できるだけ平素から努力を積み上げて参りたい、こう考えております。
  277. 受田新吉

    ○受田委員 当面あなた方がなさるべき努力の具体的な問題に触れましょう。それは韓国代表部の問題です。これは占領下の形態がそのまま暗黙のうちに承認されているわけでありますが、日本国には韓国の代表部があり、韓国には何ら日本の外交機関がない。この対等外交を叫ばれる自民党政府として、この大きな片手落ちをいつまで続けていくのですか。これをまず解決したらどうですか。即座に解決する道があるか。
  278. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 受田委員も御承知のように、この問題につきましては占領が終わりまして、相互に事務所を設置するということを両国でもって約束をいたしております。しかしながら当時日本人の生命、財産というものを保護できないからしばらく待ってくれということで、東京にあります韓国の代表部というものは占領中にありましたのを引き続き認めてきたという結果から、今日片手落ちになっております。その後たびたび日本側といたしましては韓国政府に対して、京城及び釜山に代表部及び代表部の分室を作ってもらいたいという要求をいたしております。韓国側の返答は相変わらず日本人の生命、財産に対して十分な保護ができるかできないかわからぬということを唯一の断わり文句として応酬をしてきておるのでありまして、今日まで日本の在外代表部ができておりませんことはまことに残念でございます。東京にあります代表部等につきましては相互主義でありますから、これを撤去してもらうことも必要がある場合もございましょうけれども、現在日韓会談を進行させるために便宜的にありますことが会談進行にも必要でありますので、われわれはそういう見地からこれを認めておるわけでございます。
  279. 受田新吉

    ○受田委員 生命、財産の保障ができないから韓国へ代表部を置いてない。はなはだ心細い政府ですね。生命を賭して韓国へ乗り込んでこの問題の解決に乗り出すほどのりっぱな外交官はいないのですか。はなはだだらしない外務省だと私は思う。むしろ岸総理そのものか、あなたかが直接乗り込んでいただくことが一番けっこうだと思うのですが、八年間かかって未解決のままで、しかも今のらりくらりとした立場のお話をいただいておるので、われわれとしてはこの一番手近な韓国にすら、正常の外交を持ち得ない自民党政府にはなはだ失望しました。勇気を持って生命、財産の保障がなくても、この交渉の妥結に当たるという外務省の強力な熱意はありませんか。命が惜しいかどうかをお答え願いたい。
  280. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 外務省には命の惜しい人はおらぬと思います。外交のことはどういう危険なところに対しても外務省の官吏としての責任を持って行っておりますし、今日まででもどんな戦乱のちまたにも行っておるのでありまして、その点は御信用をいただきたいと思います。ただ、今申し上げたのは韓国側がそういう理由によって入国を拒絶しておるのでありまして、入国を拒絶しておりますから、こちらからそういう人がありましても行けないのでございます。私自身も必要な機会がありますれば、むろん向こうに行って李承晩大統領とじきじき話すことに決してやぶさかだとは思っておりません。しかしながらどういう機会をつかまえて行って話をするか、また向こう側がわれわれを受け入れるような態勢にならなければ、ただ行くということだけをここで申しても不可能なことでありますので、今申し上げたような御答弁をいたした次第でございます。
  281. 受田新吉

    ○受田委員 あなたは柳大使との会談で終始ごまかされて、不平等な外交をやっておられるわけなんです。はなはだ哀れな外務大臣だと思う。少なくとも堂々と対等の立場で韓国の首脳部と交渉ができない。これは私、独立国家として八年間も成長している日本の外務省としては、まことにだらしないと思う。韓国代表部の撤退を要求するとか、あるいは国連に提訴を直ちにするとか、少なくともアイゼンハワー大統領日本に来るまでに、この問題の解決をはかっておかなければならぬ。時期としては、国連提訴、あるいは強硬外交の第一案としての韓国代表部の撤退要求というような問題、こういう強硬外交に転換する時期が来ておると思うが、その時期をいつごろに置いておられるか。アイゼンハワーが来る前にこの問題を解決したいという熱情を今申し上げたような具体的方法でお示しになってはどうか。アイクが来るまでには見通しがつかぬとあなたは心細い御答弁でございました。アイクが来るまでにどうかあなたはこの問題の解決に精魂を傾けて、りっぱに国連提訴にまで持っていって、そしてアイクに第三国の介入のあっせんをしてもらったらどうか。アイクが向こうに船を貸している、その貸した船が同じかわいい日本の漁船を沈めているのですよ。因果関係はきわめて明瞭です。アイゼンハワーのツルの一声で解決する問題じゃないですか。私が伝え聞くところによると、韓国に大いに虚勢を張らして、日本の自衛隊の増強をはかって、再軍備へ大いに国民の世論をかり立てるべきだという、そういう外務省の野心を勘ぐられておる向きもあるのです。この野心はわれわれといたしましては、ある程度肯定しなければならない段階に来ております。藤山さん、あなたのきわめて短期間のうちにこの問題の処理の熱意をここで示してもらいたいのです。
  282. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 私は日本の外交を扱っております者として、この問題に対する処理に熱意を失ったことは今日まででもないと思っておりますし、また現在でもこれが解決をはかっていかなければならぬという熱意に燃えております。従ってわれわれとしてはたびを重ね、どういうあれがありましても今日まで会談を継続して、いささかでも向こう側の反省を促しながら、できるだけ一歩でも前進をしていくように今日まで努力をして参ったのであります。私は今日、隣国であり、かつてはわれわれの同胞であり、それの国とに正常な国交ができてないということを遺憾に思っております。従ってそれを回復いたしますことは、熱意を持って私がやるべき仕事だと思っておるのでありまして、私としては決して熱意を失っておるわけではございません。従ってできるだけ努力をして、アイクが来るとか来ないとかいう時期をどうということでなしに、努力して参りたい、こう思っております。
  283. 受田新吉

    ○受田委員 いいことを言って下さいましたが、あなたはアイクが来るのを待つまでもなくやりたいといえば、マッカーサーとの会談でも解決するのじゃないですか。マッカーサーと柳大使とあなたと三人でも解決する。またアメリカにいる朝海大使にあっせんさせても簡単に解決できる問題です。具体的な方法は幾らでもある。なぜそれをおやりにならないのですか。もはや八年間のこの問題の未解決ということは、病膏肓に入って、妥結の道がないということになっておる。そういう具体的な方法も考慮の中に入っておるという意味かどうか、御答弁を願いたい。
  284. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 むろん外交折衝でございますから、われわれは外交折衝を進めて参ります場合に、いろいろな考慮をもって方法、手段等は考えて参らなければなりません。たった一つの方法だけで問題の解決をはかろうということだけで進んでおるわけではございません。しかしながらわれわれとしてどういう手を打っていくか、またどういう方向に推し進めていくかというような問題につきましては、おのずから時期もございます。むろん八年の交渉というものは長いので、われわれも実に残念に思っております。私自身がすでに二年半これと取り組んでおるのでありまして、私自身も決して短いとは思っておりません。でありますから、今後数年をかけて解決するなどということでは相ならぬことは、私自身も十分承知いたしております。それは大局の上から見ましても、あるいは日常生活の上から見ましてもそうであろうと思います。従って受田委員と気持の上においては、私はそう変わってはおらぬと思うのでございます。
  285. 受田新吉

    ○受田委員 あなたの気持は、ここ数年もかかる問題ではないというようなことで、また気の長いことをおっしゃっておられる。もう命旦夕に追っておる留守家族もおることだし、八年間も交渉の妥結を見ないということは、外交交渉としては、国際慣例から見てもう行き詰まった段階ですね。転換期が来たのではないですか。外務省の日韓対策について転換期が来ておるのではないですか。あなたはアイクが訪問をする機会を最後の妥結点として、それまでにこの問題の解決に当たりたいと強い熱情をここで国民の前に示してくれませんか。
  286. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 むろん今申し上げたように、私は熱情を持ってこの問題に当たっておるのでありまして、決してなおざりにしたりあるいは何か冷淡と申しますか、不熱心な態度ではございません。受田委員も今言われましたように、私自身のところにも涙なくしては読めないような手紙もいただいております。従ってそういうものをいただきましたときに、私としては何とかしてこの問題を解決しなければならぬという熱意には燃えております。それでありますからむろん長い過去の交渉経緯から見まして困難な交渉でありますけれども、努力をもってこれを妥結に導くように進めてきているので、こういう角度からこういう提案をし、あるいはこういう角度からこういう提案をし、いろいろに韓国側に対して日本の理解を求めておるわけであります。でありますから、われわれとしてもできるだけ早い時期にこの問題を解決しなければならぬということは当然考えております。アイクが来て、アイクにただ頼めばいいというようなことでなしに、自分自身が努力をしてできるだけ解決し、またその解決の方途がつかない場合には、米国その他第三国あるいはその他の方法によって何か新たな角度から道を開いていくということも、同様われわれとしても考えていかなければならぬのは当然でございまして、そういう点について日韓会談の、あるいはもうそろそろ角度を変えた、転換期じゃないかという受田委員お話もわれわれ決してわからないわけではございません。でありますからそういう意味において熱意を持って今後ともやって参るつもりでございます。
  287. 受田新吉

    ○受田委員 この問題はあなたに、アイクが来るまでに解決をしなければならぬということを強く要求しておきます。外務省の今の熱情では、留守家族が近く切実な訴えをしようという国民の世論にもこたえることにはならぬです。一つあなたは意を決してこの日韓問題の解決、安保条約の問題以前に早期解決をはかって、懸案をりっぱに解くという努力をしなければならぬと思います。最終的な努力目標を、アイゼンハワーの訪日を契機にして果たしたい、こういう御所見を持っておるかどうか、そこをもう一度伺って話を次に移します。
  288. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 受田委員は、アイゼンハワーの来るのを目標にしてというのでありますが、われわれは必ずしも——アイゼンハワーの来る以前にでも解決したいようなつもりで努力をいたしております。むろんわれわれとしてはできるだけ早い機会にこれを解決したいと希望いたしておりますから、アイクの訪日の期日いかんということにかかわらず、そういうことをやって参りたいと思います。ただ受田委員の言われるのは、それまでに解決しなければ、アイゼンハワー大統領等にもっとよく話をして、アメリカの何か力を借りるということであろうかと思います。そういう点については、そのときの状況によりましてわれわれが考えて参る問題でありまして、できるだけそれまでの間にも解決をするように進めて参る努力をいたして参ります。
  289. 受田新吉

    ○受田委員 私はお話を次に移したいと思います。この新条約の内容に触れていきたいのでございますが、新条約の第五条にあるところの「日本国の施政の下にある領域における、」云々、そうしてその次に「自国の憲法上の規定及び手続に従って共通の危険に対処するように行動することを宣言する。」というこの規定ですね。この規定について私の疑義をただしていきたいのであります。この規定の、外部による武力攻撃という場合に、日本は憲法で交戦権を持っていないわけでございますが、他の国が宣戦の布告をして、日本に攻撃を加える場合を考えておるかどうか、お答え願いたい。
  290. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 他の国が日本に宣戦を布告してこないということはないとは言えないと思います。
  291. 受田新吉

    ○受田委員 宣戦の布告をしてくる場合は、ヘーグ条約、開戦条約の第一条ではっきりと、明瞭かつ事前に通告がされるということが書いてある。その規定に従えば、通告なくして攻撃を加える場合はないわけですね。さように了解してよろしゅうございますか。
  292. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 日本に武力侵略をやりますときに、必ず宣戦を布告してやるか、あるいは宣戦布告をしないでも事実上武力侵略をやるか、それは両様あろうかと思います。
  293. 受田新吉

    ○受田委員 宣戦布告をしてやる場合は、明瞭かつ事前の開戦宣言あるいは最後通牒のようなものがこちらに通達されるわけです。従って非常に余裕がある場合も考えられるわけですね。さよう了解してよろしゅうございますか。
  294. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 まあそのときの事態によりまして、かりに開戦宣言をやる。開戦宣言をやったけれども、すぐに武力的な攻撃をしないということもないとは言えないかもしれませんが、そういうようないろいろな形で出てくると思います。
  295. 受田新吉

    ○受田委員 日本が真珠湾攻撃をやったように、まず攻撃をしておいて宣戦の布告をやる形式は、最近において日本が模範を示したわけです。そういう場合があることは、開戦条約ではこれは禁止されている問題です。そこで問題になるのは、この外部の武力攻撃というこの言葉が、日本国の政府においてどう解釈されるかということが問題になると思うのです。この間の委員会で一部横路委員でしたか、自衛隊法の問題を持ち出しておりましたけれども、自衛隊法には、自衛隊の防衛出動は二十六条に国会の承認を得なければならない規定がある。国会を召集し、承認を得て内閣総理大臣が命令して防衛出動するという順序が、普通における順序と了解してよろしゅうございますか。     〔西村(直)委員長代理退席、委員長着席〕
  296. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 自衛隊の場合は、そう了解していただいてけっこうでございます。
  297. 受田新吉

    ○受田委員 内閣総理大臣が、緊急やむを得ず出動するという第二項の規定は、例外があると解釈してよろしゅうございますか。
  298. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 むろん事前に国会を召集する手続等の時間的余裕のないときに、そういう総理大臣の権限においてやって、事後に承諾を求めることでありますから、例外であることはむろんであります。
  299. 受田新吉

    ○受田委員 実際問題として最近の近代戦において、国会を召集し、その国会で承認を得て、総理大臣が防衛戦争に乗り出すという余裕があると思われるかどうか、防衛庁長官、あなたから御答弁願いたい。
  300. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 実際にはあり得ることもあるし、あり得ないこともあると思います。しかし日本といたしましては、自衛隊法の手続に従ってやる、こういう方針であります。
  301. 受田新吉

    ○受田委員 そうしますと、日本政府としては国会の承認を得ることを常に前提として外部の武力攻撃に対応する、こう了解していいですね。
  302. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 その通りでございます。
  303. 受田新吉

    ○受田委員 技術的に国会を召集し、その承認を得る時間的な余裕というものが、近代戦において認められるかどうか。
  304. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 先ほど御指摘のように、国会の承認を得て、これに対抗するわけでございますから、緊急やむを得ない場合には、国会の承認が事後になる場合もございます。(「開会中は」と呼ぶ者あり)開会中は直ちに国会の承認を得る、こういう手続をとります。
  305. 受田新吉

    ○受田委員 近代戦の様相は、承認を得た瞬間にはたたきつぶされておるという段階にくる見通しが多分にあるわけです。従って、あなた方がいかに陳弁されようとも、国会の承認を得ずして直ちに防衛体制に移るような事態が起こり得る。そこで問題が一つ起こるのは、総理大臣が自衛隊法の防衛出動で部隊を出動せしめた、米軍と共同作戦任務につかしめた、その後において国会が召集され、国民の世論は防衛出動すべきではないという結論に達したときに、米軍と日本軍の共同作戦体制の中で日本軍だけが撤退することができるかどうか、お答え願いたい。
  306. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 御承知のように、第五条に憲法上の手続、こういうことがありますが、アメリカといたしましても、宣戦布告ということは国会の承認を得るわけなんです。それから今のお話の自衛隊としての出動ということにつきましては、おそれのある場合にも自衛隊の出動はできるわけです。しかしこれは今度の安保条約の第五条とは関係ないわけであります。現実に武力攻撃があったときに、この共同の危険に対処することになっております。そこで、いろいろそういう場合を予想すると問題がありましょうが、安保条約にいたしましても、日本の自衛隊にいたしましても、極力戦争に入ることを避ける目的でできております。事前協議あるいは普通の協議というようなことも、そういうことを考えて、協議ということがこの条約に入っておると思います。そういう関係から見まして、この第四条にあります随時協議もし、またいろいろ前からの協議ということもあります。そういう協議もいたしまして、そごのないような対策をとる、これが方針であります。
  307. 受田新吉

    ○受田委員 戦争をけしかけられて、攻撃を受けて、日米両方が協議の上において防衛出動をした、そのとき敵の攻撃が非常に苛烈であって、日本の力ではとても防衛し得ないというときに、日本政府としては、日本単独で講和をする、停戦を要求するというような事態が起こると思う。進むを知って退くことを知らざる岸総理であるならば、おそらく戦争をやめさせぬでありましょうが、国民は、この戦争をすべきでないという国会の不承認の場合と、同時に、総理大臣が認定して日本の自衛隊だけは共同作戦から退けさせたいというときに、アメリカは依然としてどんどん攻撃を加えて、単独行動でもやり抜くという事態が私は実際問題として考えられると思う。そういうときに、米軍との間において協議がととのわざるときには、日本自体が自衛隊を防衛戦争から退かせる、戦争を休止させるということができるのかどうか、御答弁願いたい。
  308. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 問題は、アメリカといたしましても、アメリカ自身が攻撃をするということを考えておらないことは、国連憲章のワク内で行動するということですから、これでよくおわかりと思います。共同の危険に対処するような武力の行使になった場合におきまして、攻撃が続いておりますならばそれに対処する形をとって進めていかなくちゃなりませんけれども、向こうが攻撃をやめた、日本が引くという場合は、攻撃をやめた、あるいは武力で対処する必要がなくなったということでありますから、そういう場合にはアメリカとしてもあえて攻撃する必要はなかろうと思います。いろいろ御仮定の質問でありますので非常にむずかしいことでありますけれども、向こうの攻撃がないということでありますならば、これは当然アメリカとしてもあえて攻撃をするというような必要は感じない。そういう場合には武力において対処する方法をやめることと思われます。
  309. 受田新吉

    ○受田委員 私の尋ねているのは、仮定の問題でなくて、焦土と化しても抗戦をする、防衛をするというような考えを持っておられるならばそれは別です。しかし、外部の武力攻撃が熾烈をきわめて、これでいけば、このままではもうとても国民の生命、財産の保障はできないという段階にきて、手早くこちらが手を上げる場合がある。その手を上げる場合のことを言っておる。手は絶対に上げないとあなた方はお考えになっておるのか、絶対に降参はしない、降伏はしないという腹を持っておるのかどうか、ここでお答え願いたい。
  310. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 そういう事態になりませんと、それは判断できません。
  311. 受田新吉

    ○受田委員 大東亜戦争の終結を天皇の宣言でされたわけですが、そういう事態が急迫して焦土と化する段階にまで今の岸総理であるならば私はやりかねないと思う。そういう事態に対して、日本が米軍との事前協議、つまり戦闘が開始されて、途中において降参すべしという段階に来て、アメリカ軍と事前協議をして、向こうがこれを承知しないので、日本だけが一方的にこれを退かせることができるかできないか聞いている。
  312. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 この安保条約によりまして、共同の危険に対して武力を行使する、その武力行使につきましては、国連の安保理事会に報告して、その措置を待つというような例も開かれておるわけでございます。でありますから、急に攻撃を受けてどうするかというような今の御設例は、やはりその事態にならなければ判断できないと思います。しかし、これは安保条約の趣旨といたしましても、国連の考え方といたしましても、侵略がなければ発動しないものである、こういうことでありますから、侵略の度合いといいますか、継続性、そういうものは、その事態になって来ませんと判断いたしかねます。ですから、今直ちにそのときにどういうふうにするかというお答えはできかねると思います。
  313. 受田新吉

    ○受田委員 できかねるということは言えないはずです。国会の承認を得ない場合はどうするのですか、できかねるかどうかお答え願いたい。
  314. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 国会の承認を得られないというときには、停止するよりほかないと思います。しかし、国会も、その事態になってみなければ、なかなかこれはどうであるということをあらかじめきめるわけには参らぬと思います。
  315. 受田新吉

    ○受田委員 自衛隊法にはっきり書いてあるのですよ。あなた方の政府が出した法律ですよ。つまり国会の承認を得られない場合には、引き揚げると書いてあるのです。憲法上の規定と手続によって云々と書いてある以上は、国内法を含むと先般総理大臣は言っておる。自衛隊法の規定に従うと言っておる。自衛隊法の規定には、国会がそれを承認せざる場合にはそれを引き揚げなければならない、こう書いてある。あなた方は、憲法上の規定と手続に国内法を含んでいるこの規定を、そういうことはあり得ないのだ、仮定の問題だと言っておられるのですか、法律論としてお答え願いたい。
  316. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 仮定の問題ということを私が申し上げたのは、敵といいますか、相手方の侵略が継続しておる、そうして日本はそのときに手をあげたというときにアメリカはどうするかということでありますから、これは将来の仮定といいますか、そういう予想もあるかもしれませんけれども、ごくまれな仮定に近いようなものであります。国内法で自衛隊の行動を律するものは、これはもちろん自衛隊法であります。自衛隊法の七十六条によれば、自衛隊に出動を命ずるのは内閣総理大臣であり、それは命ずる前に国会の承認を得なくちゃならぬ、緊急やむを得ない場合にはその後において国会の承認を得る、承認が得られないということならば今までの行動をやめる、これは法律に従って当然であります。
  317. 受田新吉

    ○受田委員 あなたは、実際の戦争の場合には、総理大臣の指揮下で、自衛隊の総指揮官として作戦行動の衝に当たらなければならぬ。その人が、自衛隊法の規定で、国会の承認を得られない場合は引き揚げます、しかし普通の場合は引き揚げることは考えられないことだ、しかも国会はおそらくそういう事態だったら承認してくれるだろうと、あくまで戦争遂行の熱意に燃えておる。私は法律論として、国会の承認を得られない場合は、日米共同作戦に参加した日本自衛隊は、防衛出動を取りやめなければならぬという原則があることを、はっきりここで言っておきます。それと同じような事態が起こり得ることも、はっきりここであなた答弁してもらいたい。
  318. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 何も私は防衛庁長官として戦争をやりたいと思っておるわけじゃありません。法律に従って行動するということであります。その法律を言いますならば、出動を命ずる場合には、自衛隊法の第七十六条が根拠法であります。それでありますから、その法律に準拠して行動をとる、また自衛隊の行動に対してもその通りさせる、これではっきりしていると思います。
  319. 受田新吉

    ○受田委員 きわめてはっきりしてない。あなたは先ほど、実際に米軍と日本とが一緒になって防衛体制に入っておるときに、まだ攻撃がやまぬのに日本がお手上げするようなことはあり得ないのだ、実際問題としてそういうことはあり得ないのだ、そういう印象を与える御答弁をしていらっしゃる。ところが、国会の承認を得られない場合には、あなたのそういう仮定のような御答弁であったにもかかわらず、これを取りやめなければならぬという規定がちゃんとあるのです。あなたはその場合のことを全然考慮に入れないで、そういう事態はおそらくないであろうという想定で御答弁しておられる。少なくともアメリカという国は日本を焦土と化しても前線の防衛基地として考えたい国でありますから、日本の基地が徹底的にたたかれても、日本国土が焦土と化しても攻撃をやめない国であるということはわかりますか。そういう際に日本自身は少なくとも平和を願い、その強力な武力攻撃に対して武力停止を要請して、平和的解決を要請するという道よりありません。その道をあなたはお考えになっておらぬ傾向がある。もう一度そういう場合には、内閣としても、武力攻撃に対して日本の防衛力ではとてもかなわぬからというので、日本自身が停止することがあり得る。しかし、そのときにはやはり途中で米軍との話し合いによる、つまり事前協議——途中で停戦をするかどうかの相談をすることは事前協議に入るのかどうか。途中で行なう会談、停止を話すことが事前協議に入るのかどうか。それから、そのときに話がととのわないときには、日本が一方的に講和を結び、あるいは休戦をやって、米軍のそのまことに徹底的な焦土作戦に抵抗するという場合を考えなければならぬ。それは平和を愛する日本としては、実力のない自衛隊を握っておるあなた方としては、考えておかなければいかぬ。条約をお結びになっておるあなた方は、考えておかなければならない。法制局長官もあわせて外務大臣もみな御答弁願いたい。
  320. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 日本が武力攻撃を受けましたときには、当然その自衛の権利を発動することができるわけであります。しかしながら、今回の条約に書いてもございますように、防衛の行動をとったときにも直ちにその処置は国連安保理事会に報告をして、そうしてその処置に待つことになっております。日本国内法においては自衛隊の手続をとることになりましょうけれども、一方では、侵略がありましたときに対して、武力抵抗をしたという行動に対しては、国連に報告して、その国連の決定を待つ、そういうことになっております。従って、何か今御想定のようなことが起こり得るとは考えられません。
  321. 林修三

    ○林(修)政府委員 ただいま自衛隊法の問題についてのお話でございました。自衛隊法で、武力攻撃があった場合に、それに対処して自衛隊が防衛出動をすることは、これは当然の自衛権の行動でございまして、他から侵略されて、そのままそれに対して抵抗しないということは、独立国家としての本質にも反するわけでございます。こういう武力行動をした場合には、ただいまにおいては、国連憲章に従って直ちに安保理事会に報告いたします。安保理事会は、国連憲章においては、直ちに措置をとることになっております。また安保理事会が決議をしないときには、二十四時間以内に、いわゆる平和のための統合決議によって、総会が行動をとることになっております。従いまして、いわゆる国連憲章五十一条の自衛の措置、あるいはそれを受けました自衛隊法の考え方、これはきわめてとっさの場合に武力攻撃を受けた場合、それをはね返す、それをともかく守るというための措置でございまして、昔の戦争のように何年間もそこで戦って、そこで焦土と化すというような事態はただいまでは想定されないことであります。当然に国連が活動するということが前提でございます。  また、国会における承認、不承認の問題でございますが、これは武力攻撃を受けて、しかも相手が不法な武力攻撃を加えておるのに、それを停止せよというようなことはあり得ないことだと思います。もしもおそらく不承認の議決があるとすれば、それは武力攻撃にあらずという御判断があると思うわけでございまして、これは自衛権の本質あるいは独立の国家の本質上当然のことだと思っております。それから先ほど申しましたように、ただいまのすべての自衛行動は、国連憲章をあわせて考えれば、きわめて短期間のものでございまして、直ちに安保理事会なり国連総会に問題が移るわけでございまして、そういうことによって平和的な解決がされる建前になっております。
  322. 受田新吉

    ○受田委員 あなたは今重大な発言をされておる。国会が承認しないというようなことはあり得ない、そういう武力攻撃を受けておるのに、それを承認をしないということはあり得ないというような意味の発言をされておる。国民の代表機関である国会が、この武力攻撃に対して、これは武力攻撃でないと認めて、それを排除するということはりっぱにあり得るじゃないですか。それは国会の国民代表機関であるところの権能ですよ。そういうことは実際あり得ない、それは独立国家としてもあり得ないなどと、国会の存在を無視した発言があり、また内閣が、総理が単独で国会の承認を得ないで、事後承認の形で防衛出動をした場合がそういう形になるのは自然だというような印象を与える発言をしておられる。もう一度そこをはっきりしてもらいたい。
  323. 林修三

    ○林(修)政府委員 私はそういう趣旨を申し上げたつもりはございません。要するに、武力攻撃があって、明らかな武力攻撃である場合に、独立国家としての自衛権というものがあるわけでございますから、そのために政府がやった行動は、おそらく国会においても御承認を得られることであろう、こういう期待のもとに、内閣は当然やるべきことだと思います。もしも不承認の議決があるとすれば、それはおそらく武力攻撃が停止された、あるいは武力攻撃でないという御判断があれば、そういうことになるでありましょうけれども政府としては、当然に明らかな武力攻撃ではない限りそういう行動をとるべきものでもございませんし、また当然に国会の御承認を得られるような事態においてのみ行動をとるべき責任もあると思っております。
  324. 受田新吉

    ○受田委員 この国会審議権を無視したような政府の独裁政治を認めるような形の解釈をされていることについて、私ははなはだ了解に苦しむ。これはいずれ安保の特別委員会でさらに詳細に追求をすることにする。  時間の都合もありますので、私は防衛庁長官に対して、第二次長期防衛計画の構想、これが発表がおくれ、国防会議にかけることがおくれた事情等をごく簡単に御答弁を願っておきたいと思います。
  325. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 御承知のように、第一次防衛計画は三十五年度をもって終わるわけであります。第二次計画につきましては、実は私ども三十五年度を含めて四十年まで六カ年問の計画を検討、策定をしておったのであります。しかし、御承知のように、三十五年度計画は、最終年度として予算にも繰り入れられて御審議を願っているわけであります。でありますので、三十六年度から五カ年間の第二次計画を立てたいということで目下陸海空三自衛隊及び事務当局で検討をいたしております。でありますので、成案を得次第、国防会議にはかりたい、こういうふうに考えております。
  326. 受田新吉

    ○受田委員 あなたは昨年七月に北海道で第二次長期防衛計画の構想を堂々と宣伝せられておる。わざわざ北海道まで行ってやられた。何か北海道が重点であるからやられたのかもしれぬが、防衛庁でやられれば済むことを、わざわざ北海道で、宣伝効果をねらったのかしれませんけれども、放送しておられる。この構想放送は今日も依然として考えておられるか。すなわちミサイル時代、量より質という方針、そういうところ及び四十年に防衛費を二千九百億にして国民所得とのバランスをあまり無理でないようにしておきたいというような考えは、今も依然として持っておられるのかどうか、御答弁願いたい。
  327. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 まだ国防会議に最終決定を得ておりませんから、申し上げる段階ではないと思います。しかしながら、私が構想として考えていますのは、再々申し上げますように、三自衛隊の統合調整をはかるということ、それから装備等におきましては近代化をはかり、また装備の効率化をはかっていく、こういう考え方であります。でありますので、今お話しのように、三自衛隊につきましても、極力装備の近代化、効率化をはかる。そういうことになりますると、もちろん核装備などということは考えておりませんが、ミサイルにいたしましても、大陸間弾道弾のようなミサイルもありますけれども、私どもが考えておるのは、核装備のしないような効率的なミサイルに有人飛行機も移るという世界的な傾向でもありますし、飛行機あるいは地上から空、あるいは船から空ということについては、ミサイルに移行するというような趨勢に応じて、適当にこれを導入していくという構想は持っております。  それから最終年度に二千九百億くらいの予算を要求するというようなことじやなかろうかというようなことでございます。これは、私どもは、防衛費というものは、再々申し上げておりまするように、日本の国防の基本方針でありまするように、国力、国情に応じて民生を害しない程度の最小必要限度の防衛費、こういうふうにきめられている線を守っていきたい。それにつきましては現在防衛費も国民総所得に対しては一・四八%、戦後一番少ないような状態であります。世界的にも一番少ない。しかし、いたずらにこれを膨大化して、民生の安定を害するようなことは、極力避けなくちゃいかぬ。一応三十五年度からの六カ年計画のときには、そういう案も一つありました。二千九百億という案もありました。これは今後検討を加えた上、これがちょうどその当時の四十年の推定国民所得に対して二%くらいの割になりますけれども、しかし、はたしてこれが民生安定関係とどういうふうな関係があるか、こういうことにつきましては、なおさらに検討する必要があると思います。構想等につきましては、第二次計画におきまして、私が新聞会見のときに申し上げたのとそう違ってはおりません。
  328. 受田新吉

    ○受田委員 あなたは、岸さんがアメリカに行かれる前に国防会議にかけたいと言っておられ、またその直前には、帰ったらすぐかけたいと言っておられた。そういうふうにしばしば第二次計画を漏らしておられたのでございますが、岸さんがアメリカでこの新条約を結ばれるにあたって、日本の自衛隊の増強計画の話し合いがされなかったはずはないはずなんです。少なくとも日本が自衛隊の増強に対してどのくらいの熱意を持っておるかというくらいの構想は、岸さんとしては、アイクとの間にはっきりと話が取りかわされておるといわざるを得ないと思う。少なくとも、帰って直後に第二次長期計画は発表したい、国防会議にかけて発表したいと言っておられたあなた方の発表がおくれた事情は、予算という問題だけでありますか、ほかに事情がありましたか。
  329. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 先ほどから申し上げておりまするように、三十五年度からの第二次計画というように考えておったのでありますが、三十五年度予算に編成されまして御審議を願っておる、こういう状況であります。でありますので、この次は三十六年度からであります。私は、やっぱり防衛というものは、一つのある期間計画を持っておりませんと、やりづらいので、第二次計画というものもできるだけ早く、こう考えておりますが、予算編成あるいは予算の、この国会が開けていろいろ国会の審議に追われておる、こういうことでありますので、私の方の事務当局におきましても、第二次計画を六カ年のものを五カ年にするということにおいていろいろ検討中であります。そういう意味におきましてこれはおくれておるのでありますが、私はできるだけ早い機会にという考えは別に変わっておりませんが、事務的な関係もありまして、おくれておるわけであります。
  330. 受田新吉

    ○受田委員 あなたは今できるだけ早い機会と言っておられるが、三十六年度からはもう計画は立つわけなのです。いつごろをめどにしておられるかの御答弁。もう一つあわせて、在日米軍の撤退に応じて日本の自衛隊を増強していくという方針が従来あったわけであるが、この方針は今日依然として続いておるのかどうか。在日米軍の現在における装備、配備等については、あなた方は米軍から十分秘密保持の立場で連絡を受けておるのかどうか。現在日本にある米軍の兵力はどの程度あるのかをごく簡単にお答え願いたい。
  331. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 米軍の撤退に伴って、それと相対的に日本の自衛力を増していくというふうに今までもやってきました。それは、日本が自主的にやはり日本の防衛に当たるという考え方からであります。そういうことからいって陸の方はもうアメリカの戦闘部隊というものはほとんどおりません。陸の方はほとんどないと言ってもいいと思います。海と空の方を合わせまして、人にしましては約五万、これにつきましては一々そう、軍の機密に関することでありますから、装備とかその他詳しい連絡は受けておりませんけれども、配備等につきましては、どこの部隊がどこへ国内で移るとか、こういうことにつきましては未公表のものもありまするし、公表しても差しつかえないというものもありますが、連絡を受けております。
  332. 受田新吉

    ○受田委員 これから日米共同作戦をやり、軍事専門委員会でも作るという段階になりました場合に、米軍の装備、配備等が十分日本自衛隊に知らされてなければならないと思うのです。日本のことは全部ガラス張りでわかる、あちらのことはさっぱりわからないというような片手落ちの日米軍事専門委員会というよう形のものはあり得ないと思うのでございまするが、共同防衛義務を持つに至ったならば、米軍の実態も、自衛隊と同様にはっきりと双方が知り合うことができるようになるのかどうか、そういう場合に、もし新しい秘密保護法というものが、これに関連してできるということが考えられるかどうか、これをお答え願いたい。
  333. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 今度の安保条約の第四条によりまして、お互いに協議をしたり情報の交換ということが行なわれることに相なりまするから、そういう場で意思の疎通をはかっておくことが、これはあるし、また必要だ、こういうふうに思っております。
  334. 受田新吉

    ○受田委員 防衛費はあまり大した増額をしていないのだとあなたが言われており、また佐藤さんも防衛費を思い切って押えたのだと喜んでおられますけれども、実際には国庫債務負担行為ということが行なわれて、これが長期にわたって国民の生活を脅かしているということになっている。私はそういう具体的な予算の内容については分科会で発言することとして、ここでぜひ明らかにしておきたいことは、防衛費の負担部分と一般社会保障費の負担部分の比率です。あなた方はいかにも防衛費が多く計上されていない、社会保障には大いに奮発したと言っておられますけれども、私が手に入れた資料におきましては、これはいろいろ計算方法があると思うのでございますが、日本の自衛隊を中心とする軍事費は、これは総歳出の比率において一三・七%、また社会保障費は、恩給や遺家族の援護の方を入れても一五・二%しかない。ところが英国のごときはこれがずいぶん軍事費を高めたにかかわらず、三三%程度が軍事費で、社会保障費が一八・三%、ニュージーランドは軍事費が一三・六で日本と同じであるが、社会保障費は三七・八%、スイスのような国でさえもこれが三〇%に近い社会保障費を計上しているということが言えるわけなんです。われわれはこういう比率を見たときに、軍事費をいかにも少なくしたように見せかけておられて、実際はあなた方のところではほかの費目でこれをごまかしておる。もう一つは、社会保障がいかにもされているように言っておられるけれども、先進国に比べたらはなはだ幼稚であるということが言えると思うのです。  私は一つ具体的な例を申しましょう厚生大臣はこの間本会議で保育所の保育費、おやつ代を三円奮発したということをさも誇らしげに説明しておられる、にこにこ笑って。ところがその保育所の保育費は合計して二億円をちょっとこえたほどしかないではありませんか。ロッキードを一機作る五億円なら、これらの人々の三円の増額はすばらしい広範囲に及ぶことになるわけなんです。もう一つ、あなた方に、佐藤さんにも一つ御確認を願いたいのだが、あなた方自民党の幹部の方々を中心にして自民党の方々は、この零細な社会保障の対象になる人々を取り残したままで、高額所得者に対する累進課税は依然として今度の予算の中にも増加されておらぬ。そして育英資金のような英才を、貧乏な子弟を教育する、こういう費用はたった一億円をちょっとこえて、四十七億をこえてしかおりません。こういうことを考えてみると、あなた方の財政を組み立てる方針として、高いところで景気のいい日当りのいいところで暮らす人ばかりを特に愛して、暗い谷底で苦労する人々に愛情が及ぼされておらぬじゃないですか、どうですか。防衛費がいかにも少額で済んだように誇り、社会保障費が防衛費よりちょっと上回ったと誇っておられますけれども、実際問題は高層生活の人々が特に富み栄えて、谷間の暗い影で苦労する大衆が置き忘れられているという現実がちっとも救われておらぬということを、あなた方は十分自覚しなければならぬ。大蔵大臣、財政の組み立て方式、及び防衛費の今後の増額部分を押えるということにおいて、御所見を漏らしてもらいたい。
  335. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 数字の問題ですからこれはごまかしも何もございません。そういう意味で正確に申し上げたいと思います。  防衛費の関係は、国民所得に対する対比も順次減って参っておりますし、一般会計におけるその占める割合も小さくなっております。具体的に申しますならば、国民所得対防衛費関係は、ことしは一・四八%、先ほど防衛庁長官が申した通りであります。昨三十四年度一・五八%、当初が一・七二%、三十三年度は一・七三%、それが順次減ってきている。これはただいま申し上げるように数字を押えてきておるということの証左であります。また一般会計と防衛費との関係を見ますと、これまた順次比率は小さくなっている。三十三年度は一〇・九七、三十四年度は当初が一〇・二三、三十四年度は一〇・八二、三十五年度は九・八四、一割以内にとどまっておるのであります。  社会保障費は申すまでもなく、わが国の社会保障制度はまだまだこれから進めていかなければならない点は御指摘の通りであります。しかしこれは逐年増加しております。これは国民所得に対する対比を見ますと、三十三年は一・五四、三十四年は当初が一・六六、三十四年はちょっと下がって一・五九、三十五年は一・七四、それから防衛費は一・四八でありますから、だいぶ開きができたということであります。また一般会計に対する対比は三十三年が九・七五、二十四年が当初は一〇・四二、三十四年が一〇・二八、三十五年が一一・五八、ことしは飛躍的にふえておるのであります。しかしもちろん現状をもって満足するという考え方ではございません。社会保障はさらに伸ばしていかなければならないと思います。三十四年度がやや率が下がっておりますのは、申すまでもなく三十四年度は補正との関係があるからでございます。防衛費も三十四年度は対国民所得関係は補正前は一・七二、今申しました一・五八というのは補正後の数字であります。  ところで外国の例についていろいろお話がございましたが、外国におきましても順次これは変わっております。先ほど日本の国家財政に占むる国防費の費率一三・七と申されましたが、これはおそらく一九五四年の数字じゃないかと思います。ことしは申すまでもなく、一九六〇年でございます。先ほど来申しますように、三十三年以降順次防衛費の占むる割合は小さくなっております。  ところでことしの予算でいわゆる債務負担行為が相当ふえておるというようなことで、ごまかしておるのではないかという御批判でございます。このロッキードその他の債務負担行為が約一千億に近い、この数字はその通りであります。しかし航空機関係のものを除いてみますと、例年の債務負担行為と大して変わりはないのであります。そこでロッード二百機作ります債務負担行為を予算化する計画は一体どうなるのか、問題はその点で、御期待に沿わないようなことがありますれば御批判がそのまま当たるかと思いますが、このロッキードの二百機を予算化いたしますのは三十六年度以降四カ年でするのであります。従いまして、私ども予算編成にあたりましては、ロッキードの予算化も必要でございますが、その他社会保障あるいは国土保全の予算その他必要な経費が幾つもございますから、財政の規模とにらみ合わせまして、国力、国情に十分適応するような予算を組む考え方でございます。御了承いただきたいと思います。
  336. 小川半次

    小川委員長 受田君、あなたの持ち時間がきておりますので、結論にお願いします。
  337. 受田新吉

    ○受田委員 佐藤さん、あなたのごあいさつは一応ごもっともに聞こえるのでございますが、私が防衛費を増額させることをできるだけ押えて一般民生安定に重点を置けという意味は、あなた方が国防の基本方針をおきめになられたときに、民生を安定し、国力、国情に応じて漸次自衛隊を増強すると言っておられる。にもかかわらず、今民生は安定されておらぬ。警察当局にも調べた資料があったらお貸し願いたいのだが、今、日本国は世界一自殺国といわれており、その原因の非常に大きな部位が貧困によるものであるといわれておる。また、零細な大衆が取り残されておるときに、高額所得者の高率累進課税などにちっとも配慮されないで、一部高層の生活をしておる人がまさに繁栄の極に達し、大衆が取り残されているという、こういう形の予算編成を改めて、今申し上げたようなもう少し大衆を潤わせて特権的な人々のぜいたくを押え、防衛費を国力、国情に応じ、民生安定に重点を置くというこのあなた方の申し合わせをりっぱに実践してもらいたいということを根本的問題としてあなた方に要求するわけです。御答弁を願いたい。
  338. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 申すまでもなく、防衛費も民生安定に役立つものであります。私ども防衛費が無用の長物だとは実は考えておりません。必要最小限度の防衛計画は進めていくつもりでございます。あらゆる事業計画均衡をとるということが実は大事でございます。そういう意味で、私ども均衡をとって参る考え方であります。  そこで、税についてのお話がございますが、税については税制調査会等を通じまして、基本的ないろいろな検討をただいま続けておる最中であります。これは、もちろん減税も進めていかなければなりませんし、ただいま申しますように、この国の安全確保の意味における国力、国情に沿う範囲においての防衛力、これまた必要であります。国土保全も、これまた民生安定のために必要であります。社会保障費しかり、あるいは農村関係、あるいは中小企業関係、すべてが必要な経費でございます。さらに、問題はバランスがとれた方法でこの予算を作るという、ここに私どもは特に注意し、留意をいたしておるわけであります。  先ほど来保育費のおやつ代がわずか三円だという話をしておられますが、一円ふやすということは、一億円の支出になるわけであります。三円ふやすということは、大体三億の金を計上するわけであります。今まで支出しなかったものでありますから、その三億を支出するということは、いかにも一面一日三円でそれは小さいとお考えになるかもしれませんが、今までそういうことをやらなかったものを今回そこまでやったという、そういう点に十分の御理解をいただきたいのであります。
  339. 受田新吉

    ○受田委員 私は、大蔵大臣、防衛庁長官が先ほど以来、防衛費の増強に対して十分弁解されているのでございますが、国力、国情という言葉は、これは国民の各階層にわたって公平な財政、税制政策が施され、またその生活で保障される形で初めて言える言葉だと思う。自殺者が何人おったか、その中で貧困な事情で死亡した人が何人おったか、資料を提出していただいて、これで質問を打ち切りますが、そういうことで実際に政府は貧困なる階層を取り残したままで、しかも民生の安定といって防衛費を増強することを言いわけをし、国力、国情に応じて自衛隊の増強をはかるといって大衆をそのまま暗い谷底に残して政治を前進させるというこのやり方を私は批判しておる。  御答弁願いたい理由は、一つ大蔵大臣は高額所得者に対して高率累進課税を強化するという方針をとり、社会保障費を大いに増額して、下層生活をする人々を一そう埋めるという財政の基本方針を今後一そう強化する熱意を持っておるかどうかということを、私は最後にお尋ねして、私の質問を終わりたいと思います。自殺者の数字を一つ示してもらいたいのであります。
  340. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 社会保障関係の諸施設をさらに進めていくということは、政府並びに与党の基本的方針でございます。自民党内閣が続く限りそれはあらゆる努力が払われる、これははっきり申し上げておきます。大蔵大臣がかわりましてもその通りでございます。同時にまた税についてのいわゆる高額所得者について税率を高くしろと言われる。今日も相当高くなっております。今後の問題といたしまして、税制調査会におきましては個人所得の税負担、これがはたして適正なりやいなやということも一つの基本の問題でありますし、同時にまた企業課税のあり方であるとか、あるいは中央と地方との税源の再分配であるとか、あらゆる面から、税制調査会においてただいまその審議を進めておりますから、その結論を待ちまして順次これを実施に移して参る考えであります。
  341. 小川半次

    小川委員長 次会は明十三日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後五時六分散会