運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1960-02-08 第34回国会 衆議院 予算委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年二月八日(月曜日)     午前十時三十三分開議  出席委員    委員長 小川半次君    理事 上林山榮吉君 理事 北澤 直吉君    理事 西村 直己君 理事 野田 卯一君    理事 八木 一郎君 理事 井手 以誠君    理事 田中織之進君       青木  正君    江崎 真澄君       岡本  茂君    北村徳太郎君       久野 忠治君    倉石 忠雄君       小坂善太郎君    櫻内 義雄君       重政 誠之君    周東 英雄君       綱島 正興君    床次 徳二君       橋本 龍伍君    保利  茂君       松浦周太郎君    三浦 一雄君       山口六郎次君    山崎  巖君       山本 猛夫君  早稻田柳右エ門君       淡谷 悠藏君    岡  良一君       木原津與志君    北山 愛郎君       小松  幹君    河野  密君       島上善五郎君    楯 兼次郎君       辻原 弘市君    堂森 芳夫君       永井勝次郎君    横路 節雄君  出席国務大臣         内閣総理大臣  岸  信介君         法 務 大 臣 井野 碩哉君         外 務 大 臣 藤山愛一郎君         大 蔵 大 臣 佐藤 榮作君         文 部 大 臣 松田竹千代君         厚 生 大 臣 渡邊 良夫君         通商産業大臣  池田 勇人君         運 輸 大 臣 楢橋  渡君         郵 政 大 臣 植竹 春彦君         労 働 大 臣 松野 頼三君         建 設 大 臣 村上  勇君         国 務 大 臣 赤城 宗徳君         国 務 大 臣 石原幹市郎君         国 務 大 臣 菅野和太郎君         国 務 大 臣 中曽根康弘君         国 務 大 臣 益谷 秀次君  出席政府委員         内閣官房長官 松本 俊一君         法制局長官   林  修三君         大蔵事務官         (主計局長)  石原 周夫君         大蔵事務官         (主税局長)  原  純夫君         農林政務次官  小枝 一雄君  委員外出席者         大蔵事務官         (主税局調査課         長)      川村博太郎君         専  門  員 岡林 清英君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十五年度一般会計予算  昭和三十五年度特別会計予算  昭和三十五年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 小川半次

    ○小川委員長 これより会議を開きます。  昭和三十五年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  質疑を続行いたします。横路節雄君。
  3. 横路節雄

    横路委員 私は安全保障条約について、主として岸総理藤山外務大臣佐藤大蔵大臣赤城防衛庁長官お尋ねをいたしますが、まず最初総理に、核戦争が起こったならば、人類破滅するのではないか、こういうような世界の人々の全体がみな心配していることについて、岸総理はどういうようにしたならば核戦争というものが防止できるとお考えになっておられるか。まず第一番目に、この基本的な問題について、総理のお考えをただしたいと思います。
  4. 岸信介

    岸国務大臣 御承知通り、今日核兵器を持って対抗した形にあるものは、米ソ中心として、さらにイギリスその他の国がこれに参加しておる。今核兵器発達の現段階におきまして、これがもしも使用されるということになれば、人類破滅である、これを何とかして防止しなければいかぬ。それには、一つ東西間の問題を解決するのに、力によらず、話し合いで解決するという機運を醸成し、あくまでも国連を中心とし、あるいはその他の方法において話し合い機運を醸成する。並びに核兵器そのものに対して、われわれは従来も強い主張をしてきておるのでありますが、これを含む軍縮を実現せしめるという方向に向かって、われわれは努力していく必要がある、かように考えております。
  5. 横路節雄

    横路委員 総理お尋ねをいたしますが、本予算委員会におきまして、先般赤城防衛庁長官は、局地戦争が起きる危険がある、だから自衛隊についてこれを増強していかなければならぬのだという意味のことをお話しされ、そうして全面戦争が起きた場合には、アメリカ報復的な攻撃力期待しているのだ、こういうように御答弁なされたわけです。この全面戦争が起きた場合における、アメリカ報復的攻撃力とは、これは何かと言えば、それはアメリカ核兵器期待しているということです。私はこの予算委員会における防衛庁長官答弁を聞いて、非常に驚いたのであります。総理もそういうようにお考えになっているのかどうか、やはり全面戦争が起きた場合においては、わが国はアメリカ報復的な攻撃力期待しているのかどうか。報復的な攻撃力とは、それは言うまでもなく核兵器であります。その点について総理はどういうようにお考えになられているのであるか、総理のお考えをただしたいと思います。
  6. 岸信介

    岸国務大臣 われわれの必要なことは、今も申し上げたように、核兵器を用いての戦争をなくするということであります。今日ソ連アメリカ核兵器をいろいろと研究し、持っておるこの状況は、お互いお互いのこの力を用いることを抑止する、いわゆる一方が一方に対してこれを用いた場合においては、相手方報復によってこれは決して一国だけが滅亡するということでないということをお互いが認識して、そうして全面戦争を抑制しておるというのが、私は現在のこの状況であり、また米ソ両国首脳部考えておる核兵器についての考え方はそういう考え方であると思います。こういう意味においてこれを一方が用いるならば、相手方は、どちらが用いたにしても、直ちに報復して、そうしてそれに報いるぞ、従ってこれを用いることはお互いに抑制し合うという形において、今日一番核兵器における主導権を握っておる両国は、私はそういう考えに立っておると思います。こういう意味のことを赤城防衛長官が申したことであると思いますが、私はあくまでも全面戦争というものは、これはいかなることがあっても、いわゆる核兵器を用いての戦争というものは、これは先ほど私が申し上げたように、あらゆる方法によってそれを抑止していくということが今日われわれに課せられた義務であり、また米ソ両国首脳部が最近話し合い機運を醸成しておるゆえんもそこにある、かように考えております。
  7. 横路節雄

    横路委員 今の問題について、衆議院の本会議における総理施政方針演説の中における今の平和への道をどう選ぶかという考え方と、藤山外務大臣が同じく衆議院の本会議で述べられた平和への道をどういうように歩むかという考え方については、基本的に違うと私は思うのであります。どういうように違うかということになりますと、総理はこうおっしゃっておる。今も大体そういう意味のことをおっしゃったが、「今世界の趨勢は、平和共存方向へ向かっている、この機運は、東西集団安全保障背景とする軍事的均衡のもとにかもし出されているのであります。」だから総理は常に自由主義陣営共産主義陣営との力と力との均衡がいわゆる平和的共存方向へ向いているのだという。ところが藤山外務大臣はそうでない、藤山外務大臣は、平和的共存方向へ向かうその話し合いの空気というものは、「人類の存亡にもかかわる科学兵器の異常な発達背景としてかもし出されたのでありまして、これがいわゆる現段階における「雪解け」の実情であります。」こう言っている。藤山外務大臣のこの考え方は、世界全般の人の考え方、いわゆる常識的な考え方に立って、平和を求めるものは全部そういう方向考えておる。ところが岸総理考えはそうでない。東西陣営集団的安全保障、いわゆる軍事ブロックの対立によって力の均衡があるから、これが平和的共存方向へいっているということになれば、ソ連がああいうように核兵器が異常に発達している。大陸間弾道弾発達している。だからこの際われわれもアメリカとの安保条約を結んで、万一全面戦争、いわゆる世界戦争に発展する場合があるならば、防衛庁長官のように、当然アメリカ核兵器についても期待をしているということになるではありませんか。私はこれは言葉ではなしに、ちゃんと総理大臣外務大臣施政方針演説をたんねんに比較した。総理大臣はどうお考えになるのですか。それともその後衆議院の本会議予算委員会において各委員から、そうではなしに、核兵器の異常な発達人類の滅亡にかかわるから、平和的共存方向へいっているのだという、一般的に考えているそういう世界情勢に、だんだん総理考えを改められたのかどうか、その点についてただしたいと思います。
  8. 岸信介

    岸国務大臣 私は外務大臣の申し述べたことと私が申し述べておることとの間には、実は矛盾しておるとはちっとも考えておりません。私も先ほど来申し上げておるように、軍事科学発達によって核兵器というものの非常なおそるべき威力というものが認識をされ、これが用いられることは世界的な人類破滅を来たすので、これはどうしてもそういうものを用いさせてはいけない。従って全面戦争なんというものを引き起こしてはいかぬということの信念は、先ほど来申し上げておる通りであります。この気持は世界人類共通のものであって、その点においてちっとも外務大臣の言っておることと私の言っておることとの矛盾はないと思います。ただ世界現実において、一方においてそういう非常な危険な様相をかもすとともに、それではこの両陣営がそういう武器を一切捨てて、そうして話し合いをしていくという態勢になっているかというと、そういうことではなくして、やはりそういうものの均衡の上に立って、話し合いというものはそういう両方が対立して均衡した状況にあるからこそ、両方がその威力のおそろしい事柄お互いに認識して、そうして世界雪解けといいますか話し合いを進めていこう、こういう情勢がかもし出されておるのでありますから、ちっとも両方の間には矛盾はないと思います。
  9. 横路節雄

    横路委員 総理大臣お尋ねしますが、そうしますと、私が先ほど指摘しました防衛庁長官が本委員会で、全面戦争が起きた場合には、アメリカ報復的な攻撃力期待している、そういうことはない、こういうようにお考えですね。
  10. 岸信介

    岸国務大臣 私は全面戦争というものに対して、米ソ両方考えておることは、一方が用いたらばおれの方でそれに対してはそれにもまさる報復力をもって報いるぞという、この態勢両国が立っておるということが、私は現実状況であると思います。そのことを私は否認することはできぬと思いますが、日本自身防衛としてわれわれが考えておることは、局地的な問題に対して、今日の状況からいえば、なお危険が全然ないというわけでない。また世界の大勢からいって、東西陣営がそれぞれ協力関係を強めていき、安全を守るという態勢にある。そういう見地に立つことは当然であると思いますが、今申すように日本自身が直ちに報復力をどうするという考え方は私は持っておりません。
  11. 横路節雄

    横路委員 総理大臣お尋ねをしたいのですが、率直にお話をしていただきたいと思います。日本報復的な攻撃力を持つというようなことについては今考えていない。もしもそういうことを考えたら大へんです。私がお尋ねをしているのは、防衛庁長官がここで、全面戦争が起きた場合にはアメリカ報復内攻撃力期待をしている、こういうふうに答弁をされたから、アメリカ報復的攻撃力とは何かといえば、それは核兵器持ち込み期待しているということになるから、それは間違いでございましょう、だから総理大臣から、そういうことについては毛頭考えていないなら考えていないと、こういうふうにお話していただけば、私もそれでけっこうなんです。
  12. 岸信介

    岸国務大臣 いかなる意味におきましても、米軍日本核兵器を持ち込むということについては、私はこれを拒否するということを明らかにいたしております。従ってそういう事態は将来においても、決して起こらせないようにいたします。
  13. 横路節雄

    横路委員 総理大臣お尋ねいたしたいのでありますが、この安保条約は、今まで岸総理が組閣されましてから、あらゆる委員会質問をされましたこれは集約だと私は思うのであります。ですから、経過をたどってちょっと質問をしたいのであります。総理は三十二年の八月十六日の参議院の内閣委員会で、安保条約行政協定には、原子兵器持ち込みを断わる明文はない。こういうように答弁をされている。総理も今うなずいておりますから、これは間違いないと思う。明文はない。そうしますと、行政協定にかわる合衆国軍隊地位に関する協定、この中の第二条の(b)項です。「合衆国日本国アメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定終了の時に使用している施設及び区域は、両政府が(a)の規定に従って合意した施設及び区域とみなす。」(a)とはいわゆる日本国内施設及び区域については、「第二十五条に定める合同委員会を通じて両政府が締結しなければならない。」こうなっているが(b)の項では、「行協定終了の時に使用している施設及び区域は、両政府が(a)の規定に従って合意した施設及び区域とみなす。」こうなっている。そうするとたとえば横須賀にあるアメリカ海軍基地アメリカの第七艦隊、これは旗艦が重巡洋艦セントポールというので、一万三千六百トンがその旗艦である。そうして米海軍最大の空母七万トンのレインジャーというほかに、巡洋艦駆逐艦潜水艦等がある。このうちの主たる戦力である艦上攻撃機のA4Dスカイホーク、これは普通爆薬空対地のミサイルのほかに、原爆をもってやる攻撃力も持っている。世界最大最強艦上攻撃機であるA3Dスカイウォリアーは、これは搭載量が二トンないし三トンで、核兵器など大型の爆弾を持っている。このことについては、今総理が御答弁されたように二十二年八月十六日の内閣委員会で、安保条約行政協定には原子兵器核兵器持ち込みを断わることはできない。明文はない。従って横須賀にある第七艦隊では、この核兵器を持っている。このことについて、あとで私は事前協議についてお尋ねしますが、事前協議のときに、合衆国軍隊の重要な装備について変更があった場合には、事前協議になるが、この現在持っているものは事前協議にならないでございましょう。しかも、現在第七艦隊核兵器を持っているかどうかということについては、政府は調査する権限がございますか。その点についてお尋ねしたいのです。
  14. 岸信介

    岸国務大臣 詳しいことは防衛庁長官からお答えしますが、私の承知いたしております限り、今日まで核兵器を装備した艦隊日本に入っているということは、そういう事実はないと私は確信をいたしております。
  15. 横路節雄

    横路委員 総理お尋ねしますが、安保条約行政協定には、核兵器持ち込みを断わる明文はない、調査する能力もない。なるほど、総理大臣は、核兵器を持ち込まれていないであろうと信じている。それは、あなたの信じているという度合いだ。この点についてはどうなんですか。断わる明文はない。第七艦隊について、核兵器を持っているかどうかを調査する能力もない。そうすれば、行政協定の第二条の(b)項によって、この安保条約並びに合衆国地位に関する協定が効力を発生したときには、そのときには、すでに持っていることになるではありませんか、その点はどうなんですか。
  16. 岸信介

    岸国務大臣 私がお答えしておるように、現行条約におきましては、はっきり事前協議という明文がございませんから、しばしば国会質問があったのにお答えするように、条約上の規定としてこれを拒否するという、あるいは相談を受けるということはないけれども、自分はあくまでもこの持ち込みは認めないということを申し、それから日米の間における私とアイゼンハワー大統領とのこの前のなににおきまして、この運用については日米の間に委員会を作って、そうして日本国民の利益と国民の感情に合うようにこれを運営していくという委員会が設けられております。いろいろな兵器の問題につきましても、ここにおいて話し合いが従来行なわれておりますが、その場合におきましても、アメリカ側はそういう核兵器日本に持ち込んだ事実もなければ、実際持ち込んでおらないということが明瞭にされておりますから、私はそういう確信に立っておるわけであります。
  17. 横路節雄

    横路委員 総理大臣お尋ねしますが、確信をしているというのは信じているということですか。この点については、それならばお尋ねしますが、第七艦隊について核兵器を持っておるかどうかということについては、調査する権限行政協定でございますか。あるならばどこの明文であるのです。
  18. 岸信介

    岸国務大臣 いわゆる調査する権限は私はないと思います。私は確信をするということは、アメリカ政府の言明も私が今申しておることと同じでございますから、その根拠に立っておるわけでありまして、調査したわけではございません。
  19. 横路節雄

    横路委員 それでは総理お尋ねをしますが、今は調査したことはない、これは調査できないのですから……。そうすると、そういうことがないという確信をしていると言うのだが、そうすれば何か行政協定以上に、核兵器持ち込みは行なわないということについて、総理アメリカ側との間に正式に協定を結んだものが他にございますか。
  20. 岸信介

    岸国務大臣 今までは正式な協定はございません。
  21. 横路節雄

    横路委員 総理大臣、それならば、正式の協定がなくて、ただ持ち込まないであろうということを確信しているというのは、アメリカ善意期待しているだけです。私は、この予算委員会における論議というものは、全国民核兵器が持ち込まれるのかどうか、今の安保条約行政協定では、核兵器は持ち込まれているのではないかということを常に心配している。だから、今総理の私に対する答弁というのは、あわせて全国民に対する答弁でもある。協定がない。協定がなければ、核兵器持ち込みを拒否することはできない、調査する能力もない、権限もない。それならば、何で一体核兵器持ち込みはないでしょうと答弁できるのですか。
  22. 岸信介

    岸国務大臣 そういう現行の不備を補うために、今回の条約において事前協議としたわけでございます。こうして従来の事柄につきましては、私は国会を通じて日本国民の意思を内外に明らかにいたしておりますし、アメリカ側との話におきましても、アメリカ側がそういうことはしておらないということを言明しておりますから、これを私は信ずる以外には方法はないと思います。またそういうことはない、従ってそういう事実はないと思います。
  23. 横路節雄

    横路委員 今の総理お話を聞いて、協定はない、調査する権限はない、ただ自分アメリカ善意期待して持ち込みがないであろう、こういうことにすぎないのであります。  次に私はお尋ねをしたいのは、いよいよ三月の十五日には、十カ国によるいわゆる軍縮委員会が持たれます。先般、中華人民共和国の陳毅外交部長が、中共の参加しない軍縮協定には拘束されないということを言明されている。それに伴ってアメリカの国務省は、その意向として、軍縮十カ国委員会には中共の参加はできないが、軍縮協定には参加させなければならないであろうという意向を声明された。これに対して総理は、この間のアメリカ大統領との共同声明、その直後におけるワシントン日本大使館における総理藤山外務大臣とが御一緒で記者団会見された。総理からは、中共についての情勢中共に対する日本考え方を述べたが、大統領は別にお話はなかったという。そうしてアメリカが今後中共に対する政策変更があれば、事前に協議することになろう、話をしてくれるであろうということを記者団との会見お話をされている。この問題は、大統領との会見においては、軍縮十カ国委員会には中共は参加させないが、一般的な軍縮協定には中共は参加させないわけにはいかないであろうということは、その共同声明のときにはお話があったのですかどうなんですか、その点をお尋ねしておきます。
  24. 岸信介

    岸国務大臣 私とアイゼンハワー大統領との会談につきましては、その内容は両人の間の会談でございますから、共同声明以上のことを申し上げることはできません。ただこの軍縮会議というものは、御承知のように四カ国の間におきまして、四カ国会談できまりまして、パリティの共産圏が五カ国と自由国が五カ国、それで十カ国という、これは両方首脳部において意見が一致したなんであります。これの間に一つ協定が結ばれるならば、これは言うまでもなく今世界の対立しておる東西陣営がそれに縛られなければ、実は意味をなさないものであります。従って今日の状況において、まだ中共国際社会の一員として全部から認められておらないという事情のもとに、直ちにそういう国際的な会議に入るというようなことは困難な事情があろうと思いますけれども、しかし軍縮の意義から申して、中共というものが、あの大陸がこれから除かれるということでは、われわれが期待しておるいわゆる世界軍縮であり、また安心のできる軍縮が成り立たないことでありますから、アメリカとしてそういう場合において入れる——会議自体両方でおのおの代表者を出して、両方が承認し合って出たのだからこれを変更するわけにはいかないけれども、協定ができた場合においてその効果がこの地域にも及ばなければ意味をなさない。従ってその状況を私はアメリカが言ったものである、かように思っております。また日米の間において、中国の問題さらにアジア全体の問題について両方において常時連絡し、また協議し合うということは、中共の問題を含めて、そういうことは共同声明に盛られておる通りであります。
  25. 横路節雄

    横路委員 私、総理大臣お尋ねしておるのは、この軍縮十カ国委員会には中共は参加させないが、しかし一般的な軍縮協定には中共を参加させなければならないであろうということについては、お話があったのですかないのですかと聞いているのです。具体的に聞いているのですよ。あったのですか、ないのですかと聞いている。その点はどうなんですか。
  26. 岸信介

    岸国務大臣 その点は、私最初に申し上げた通りアイゼンハワー大統領と私の会談については、共同声明以外のことは申し上げることはできません。
  27. 横路節雄

    横路委員 総理は、どうしてそういうようにのがれるのですか。あったのですか、ないのですかと聞いている。それが共同声明以上出ないということになれば、あなたは、十九日共同声明以降においてワシントン大使館で、アイゼンハワー大統領に言うた、中共についてはこうだ、日本はこれからこうしたいと思うが、その点についてはアメリカは何ら話がなかった、そうして大統領意向としては、中共に対する政策変更しないというようにわれわれは考えた、だから、もしも将来政策変更があるならば、事前に話があるだろう、こういうように言われているではありませんか。だから、一体あったのか、ないのかと聞いている。なければない、あったのならあったと答弁していただきたい。一体どうなんですか。
  28. 岸信介

    岸国務大臣 今申し上げた通り、私としては共同声明以上のことを申し上げることはできません。
  29. 横路節雄

    横路委員 総理、だからあなたは、いかに安保条約について対等だ、自主性だと言っても、何ら自主性を回復していないではありませんか。あなたは記者団との会見において言っているじゃありませんか。またあなたは、大使館において日本人記者団に話したことは、日本人記者は、あんなものは相手にならないから、そんな国内報道は全然信用できないとおっしゃるのですか。一体どうなんですか。こういうように、大事なところになると、口を緘して語らない。国民に真相を知らせようとはしない。これが安保条約に対するあなたたちの交渉の経過ではありませんか。どうなんです、一体。もしも言い分があるなら言ってもらいたい。
  30. 岸信介

    岸国務大臣 私は、こういう外交上の首脳部の間の話というものは、いかなる場合におきましても、両国の間において責任を持って言うことはどの範囲だということを打ち合わせるのが慣例でございまして、その場合において、共同声明以上のことはお互いに言うまいということに話し合いがなっておりますから、それ以上のことを申し上げることはできない。これから……。(発言する者あり)安保条約の問題につきましては、いろいろお尋ね下さるならば、何事でもお答え申し上げます。今のなにについては、そういうことで御了承願いたいと思います。
  31. 横路節雄

    横路委員 私は、総理大臣のこの態度は非常に遺憾だと思うのです。しかし、総理大臣にこれ以上この問題について追及しても、あなたはがんとして共同声明以上は言えないというのなら、それじゃ次にお尋ねしますが、総理自身は一般的な軍縮協定中共が参加することは好ましいと考えているのですか、どうですか、その点は。
  32. 岸信介

    岸国務大臣 私は、そういう一般的な軍縮協定ができた場合において、中国大陸がそれから除かれるということは好ましくないと思います。従って、一本としては、特に日本の立場から申しましても、そういう軍縮協定に入るべきことを強く望むものであります。
  33. 横路節雄

    横路委員 先ほど私は、核兵器について、核戦争についての全面的ないわゆる防止について、総理の所信を承ったわけです。今アメリカとイギリスとソ連との間には、核実験停止についての会議を持っている。しかしこの停止の会議が幸い成功しても、総理も御存じのように、ここ一年か二年の間には、中国もおそらく核実験をやるのではないか。そうすれば、アメリカとイギリスとソ連の核実験の停止の会議が成功したとしても、その査察その他は、中共を加えなければ私は意味がないと思う。この点については総理のお考えはどうですか。
  34. 岸信介

    岸国務大臣 私も全然その点においては横路君と同じ考えを持っております。また現在三カ国の間の核実験を中止する話し合いのうちにも、アジアに対して非常に数の多い査察個所を設けるべきだということを提案しているようでございまして、私はやはり全世界がこれに縛られるようにならなければ意味をなさない、かように思います。
  35. 横路節雄

    横路委員 総理お尋ねしますが、このアメリカとイギリスとソ連の三カ国の核実験停止会議というのは、これは国連の中で持っているのですね。そうすれば、今あなたが答弁されたように、中共アメリカ、イギリス、ソ連の核実験停止会議の中に入れて、その協定に参加させなければならぬ、そういう考え方には同意をする。そういうことになれば、当然次の段階は、中共の国連加入ということが起きる。この点については総理のお考えはどうなんですか。今の私の質問に対する総理答弁からいけば、当然中共は国連加入されなければならないということについて、私は総理は承認されたものと同じだと思うのです。その点はどうなんですか。
  36. 岸信介

    岸国務大臣 十カ国軍縮会議におきましても、参加しない国をどういうふうにして拘束するか、また三カ国の核実験中止のこの協定におきまして、参加しない国をどういうふうに拘束するかという問題は、これはおのおのその必要によって考究しなければならぬと思います。私は、この中華人民共和国を正式に承認するとか、あるいは国連に加盟せしむるとかというようなことは、これは広く世界全体の、世界政治の上から考えなければならぬと思います。従って、ただ軍縮だけの意味からこれを論ずることは適当でないと思いますけれども、軍縮の問題で少なくともそういうことが取り上げられるようになってくれば、ますますこの問題に対しての検討をしなければならない、世界各国がそういう必要に迫られる情勢にあるということは、私は認めます。
  37. 横路節雄

    横路委員 総理大臣お尋ねしますが、総理大臣は、この安保条約の提案についてこういうように言われているのですよ。国連憲章の精神に徹底して、しかも国連憲章の原則を厳格に実践して、国連憲章が真の意味において、世界の平和と安全が保障できるようになることを、あなたは期待している。それならば一体なぜ——そのアメリカ、イギリス、ソ連の三国の核実験停止会議中共も参加することは、あなたは希望しこれに同意される。軍縮十カ国委員会が決定された一般的な軍縮協定への中共の参加は、期待し希望している。それであるのになぜあなたは、中共の国連加入については、今ここで期待し希望しているという、あなた自身のお考えを述べることができないのですか。中共については、軍縮、核実験停止会議についても、参加をあなたは希望し期待しているのに、国連を真の意味において世界の平和を達成できるような国連にするために、なぜあなたは中共の参加について期待し希望しないのですか。
  38. 岸信介

    岸国務大臣 誤解があっちゃいけませんが、私は、十カ国会議に参加することを期待し希望するとか、あるいは三カ国会議に参加することを期待し希望するとかと言っているのじゃございませんで、その効果がこれを拘束することを、希望するなら希望すると、こういうことを申しております。また、国連の加盟問題については、従来御承知通り、国連は中華民国を代表として、これを国連の安保理事会の常任理事国の一員にもいたしております。しこうして、いわゆる中国は一つであるという意味において、二つの代表を認めることに対しては、両政府ともこれは強く反対しております。そういう事情のもとにおいて、直ちにこれをそういう情勢を調整せずして、国連の加盟問題というものを決することは、国際上実際上私はできないと思うのです。従って、そういう意味において、今すぐ加盟を期待し、希望するというふうに言うことは、私は先ほど申しているように、世界政治の流れのうちにおいて調整し解決しなければならぬ問題を解決した後に、われわれの態度を明らかにすべきものである、こう思っております。
  39. 横路節雄

    横路委員 私は今の総理の御答弁を聞いて、いかに中国に対して、中国との国交回復について自主性がないかということを、私は明瞭に物語るものだと思うのです。  藤山外務大臣お尋ねします。私はこの衆議院会議における藤山外務大臣の外交方針演説を聞いて、あなたは総理大臣とはだいぶ違うわけです。総理大臣はその施政方針演説の中では中国との国交回復は一つも触れていない。なぜか一つも触れてない。一言半句ないです。しかしあなたはだいぶの時間を費やして、ここで書いている。そこで私はあなたにお尋ねをしたいのですが、あなたのお言葉の中に、「わが国独自の立場から、中共側の誤解を解き、現状の打開をはかることも必要と考えるのであります。」今総理の話は、それは世界の流れの中で解決しなければならぬと言うて、日本自身がどうするかということは一つもない。今あなたお聞きになったでしょう。ところがあなた御自身のこの施政方針演説の中では——間違うと困ると思って私は演説書を持ってきているのですよ。あなたはこの中で「わが国独自の立場から、中共側の誤解を解き、現状の打開をはかることを必要と考える」というのは、一体具体的にはどういうことなのですか。この点についてお尋ねをしたいのです。
  40. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 中共との関係につきましては、大きな意味において二つの面があると思います。今総理が言われましたような国際的な環境の中における一つの問題と、それから日本中共との関係という二つの面があろうと思います。中共日本との関係におきましては、残念ながらはなはだ両国が近いだけにと申しますか、あるいは親しいだけにと申しますか、誤解が相当にあることは事実と思います。今回の安保条約の改正にあたりましても、私は日本の改正の真意というものが、必ずしも正当に中共側には伝えられていないというふうにも思います。従ってわれわれがやはり誤解を解くべきことは、できるだけ両国の間においてやって参らなければならぬと思うのであります。同時に、私は国際社会の一員としての日本としては、先ほど総理が言われましたように、現在いろいろな歴史的な事実もございます。従いましてそれらをほぐして参るということも、またその流れの中において世界各国がこれは努めていくことだと思うのでありますが、日本としてやはりアジアの一員であります以上は、西欧あるいは東欧圏の人々よりも、歴史的に見ましても、アジア人の気持というものをお互いに理解しやすいかと思います。歴史的に見ましても、イギリスの極東に対する考え方、あるいはアメリカ考え方というものが、必ずしも日本人考えているような考え方を、何といいますか心持というものを理解し得ないところもあろうかと思います。そういう点につきましては、やはり自主的な立場に立ちまして、各国に対してアジア人というものはこういうものの考え方をするのだ、従ってそういう点についてはそういう言い方あるいは考え方をしても、それは必ずしも西欧側の考えているような意味の表現ではないのだというような点は、われわれ日本人が比較的理解しておるのではないかと思うのであります。そういう点につきましては、やはり日本が自主的に世界の各国に対して十分な理解を進めていって、そうして終局において中国大陸の問題が円満に解決をするように努力していくのが日本の務めではないか、こう考えておりますので、総理の言われましたことと違っておらぬと私は思っております。
  41. 横路節雄

    横路委員 藤山外務大臣、あなたはこの言葉の使い方を間違っていますよ。あなたはここで、「わが国独自の立場から、中共側の誤解を解き、現状の打開をはかることも必要と考えるのであります。」あなたは今何と言ったのです。アジア人の気持は日本がよくわかっているから、アメリカや西欧側に話をするのだ。そのことと、あなた自身が、わが国独自の立場から中共側の誤解を解くということとは違うではありませんか。一体何をおっしゃるのです。一体そういうことで国会答弁になりますか。ならないではありませんか。だから私はあなたに聞いているのは、日本の立場においてアメリカの誤解を解くとかなんとかを聞いているのではない。あなた自身がわが国独自の立場から中共側の誤解——中共側の誤解だ、アメリカ側の誤解じゃないのだ、これは。だからわが国独自の立場から中共側の誤解を解くとはどういうようになさることですかと聞いておる。その点を具体的に話してもらいたい。
  42. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 決して私の申し上げたことが、今の横路氏の御質問にそれて答えているつもりはないのです。前段の場合は日本と中国との関係を申し上げたので、それにつきましては、やはり二国間で日本に対する誤解もある、それは中共側が故意に誤解した場合もありましょうが、あるいは日本側の表現が中国側の誤解をもたらした点もあろうかと思います。前段にはそれを申し上げたつもりであったわけであります。
  43. 横路節雄

    横路委員 では外務大臣お尋ねしますが、その二国間——その二国間とは日本中共、その相互の誤解を解くというのだが、どういうことで解くのですか。正式に政府の代表でも北京に派遣をしておやりになるというのか、具体的にはどういうのですか。言葉の上ではないですよ、具体的に話してもらいたい。
  44. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 むろん誤解を解くにつきましては、いろいろな方法考えられると思います。従いましてわれわれとしては、そのときに応じ、そうしてそれらの手を打っていくということが必要であることは申すまでもないのでありまして、何か特定の方法だけを取り上げて言うというわけではございません。従って今後ともわれわれはそういう基本的な態度をもって進んでいきたいということを、外交方針の演説では申したわけでございます。
  45. 横路節雄

    横路委員 藤山外務大臣お尋ねしますが、いろいろな案で、いろいろなやり方で——これはあれですか、中国に対してはあるいは藤山外務大臣みずから北京に訪れて誤解を解くというようなことも考えているとも言うのですか。あるいは正式に与党としては代表者を派遣しておやりになるというのですか。それとも社会党のそれぞれの主要なメンバーに御相談されてあるいはやるというのですか。どうしておやりになるというのか。われわれが期待しているのは、ここにせっかくあなたがわが国独自の立場から中共側の誤解を解くというのは、少なくとも政府みずからの責任において中共の誤解を解くということでなければ、何で政権を担当している意味がありますか。何で外務大臣をしている意味がありますか。だから、政府みずからの責任でどういうようにしておやりになるのかと聞いておる。いろいろありましょうが、そのいろいろのうちの大事な点についてあなたにお尋ねするのです。
  46. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 むろんこれらの方法については今お話し申し上げましたように、そのときそのときによっていろいろな方法があると思います。今日自由民主党の方々が中共に行かれましていろいろな実情を見ておられることも事実であります。また一般的に文化交流その他で相当行かれる方を通じて、そういうような素地を作っていくことも必要だと思います。私は、昨年の国会において、時期さえくればいろいろな点について大使級会談等もやってよろしいということを申しておるのでありまして、必ずしも政府の責任を逃げるわけではございません。しかし、それについて外交上の問題についてはおのずから時期、方法、そういうものがございまして、今からこういう方法でやるのだということだけを一つきめて参るというわけには参らぬのでありまして、いろいろなことを考えながら進めていくというのが外交の普通の方法だと考えております。
  47. 横路節雄

    横路委員 藤山外務大臣外務大臣とされて対中国との国交回復についての基本的な方針をお持ちにならないで、ただいろいろな方法でいろいろな方法で、これでは一体どういうことになるのです。  総理大臣に私はお尋ねをしたいのですが、総理大臣アイゼンハワー大統領との間の共同声明、その後の記者団との会見、それが国内に報道されますと、一月の二十二日岡山市で三木武夫氏が記者会見を行なって、こう言っています。「岸首相、藤山外相が中共問題はことしの日程に上っていないというように受け取れる発言をしたのは不見識である。日本の立場からすれば中共問題はすでに日程に上っているものとして日本の意見を持たなければ、世界の政治に対して無責任ということになる。日本が前向きの姿勢で対処しようという心がまえを持たない静観主義というものは全くつまらない。」こう言っているのです。あなたのことを不見識だと言っている。どうですか。しかも与党の重要なメンバーですよ。この点についてはあなたはどう思うのです。あなた御自身も不見識と思うのか、三木武夫氏の発言は不届きだと思うのか、どっちなんです。
  48. 岸信介

    岸国務大臣 私は私の考え方について、態度について、私及び外相の態度につきまして、不見識だとは思っておりません。
  49. 横路節雄

    横路委員 それでは岸総理お尋ねしますが、今藤山外務大臣が言われたように、わが国独自の立場から中共側の誤解を解くということについて、あなたは責任者である総理大臣として、この安保条約がもしも発効された以降においては非常に困難になる、一体この中国との国交回復は、安保条約調印のときに中国との国交回復については考えておられるはずなんだ。もしもそれを何も考えていないということになれば、それは三木武夫氏の言われるように不見識だということになる。考えていれば不見識ではないでしょう。不見識かどうかは、三木武夫氏ばかりではなしに、これからのあなたの答弁によってわれわれが判断することになると思う。そこで、一体どうなさるのですか。調印をしたときは、中国との国交回復は困難になるであろうと、だれでも考えたことだ。それについてあなた自身は、ことしはどうやってわが国独自の立場で中国との国交回復をおやりになるのか、その点について明らかにしていただきたい。
  50. 岸信介

    岸国務大臣 私はこの中国との関係を何も今年の日程に上してこれをどうしなければならぬというふうには考えておりません。私は長い歴史的な関係においそもまた民族的な関係においても、中国の現状の関係はこれは両国にとって不幸である、これを是正していくことは、しばしば申し上げているように、お互いお互いの立場というものを十分理解し信頼し合うという基礎を作らなければならぬと思います。こういう考え方は私の一貫して持っていることであります。また安保条約によって日本があくまでも自由主義の立場を堅持し、日米との協力によって日本の安全と繁栄をはかっていくということは、私はこれは日本の進むべき基本の態度でありまして、これが他国に気に入らないからこれをどうするというような考えこそ不見識な考えであって、日本は自主的に日本の行くべき道、日本の安全と繁栄を求むべき道は、これは確固としてとる、この状態をやはりすべての国の人が理解し、認識し、またそれを尊重するということでなければ、私は真の平和であるとか友好関係というものはできない、こういうふうに考えております。
  51. 横路節雄

    横路委員 今日中共側の多くの誤解というのは岸総理個人の言動にあるのですよ。そのことについては何もお気づきになったことはありませんか。長い間の、先般の昭和六年以降昭和二十年八月十五日までの戦争、そのときにおける閣僚としての重要な責務を果たした岸総理、そうしておそらく、三十二年ですか、岸総理の東南アジアの歴訪のときには中共側もあるいはみずからあの戦争の責任をわびてこられるかと期待していたかもしれない。しかしその以降における台湾の台北における発言その他こういうものを考えたときに、中共の誤解は総理御自身の過去の言動に多くあると私は思うのですが、その点については全然反省なさっていないのですか。総理御自身としては、自分の過去の言動について、中共の誤解を招くことは絶対にない、こういうようにお考えになるのですか、その点についてお尋ねしておきます。
  52. 岸信介

    岸国務大臣 中共側からは今横路君の指摘されるように私の個人に対するいろいろな誤解であるとかあるいは私の言動に対しての批判というものが行なわれていることは、これは事実であります。私は、今日この政局を担当しておりますのは、自由民主党の総裁としてこれを担当しているわけであります。自由民主党の政策を私は忠実に実現しておるのでありまして、この点に関して私自身の個人に対する批判であるとか、個人を非難するというようなことは、私は両国の今後の親善関係なりあるいは友好関係を進めていく上から申しますと、お互いの国の個人を批判し、個人に対して非難を加える云々ということではなしに、やはりその国の政局を担当しておる基礎になっておる考え方自身を私は批判し、あるいはそれが気に入らない場合においてこれに対して批評を加えるということが適当である、かように思っております。
  53. 横路節雄

    横路委員 総理大臣、私はあなたにお尋ねしますが、自分は自民党の総裁として政治の責任をとっている。なるほどあなたが自民党の総裁として多数によって総理に選ばれたことも事実であります。しかしあなたは、総理大臣として、国民全体がどのように一体生活が豊かで、これからの日本が平和で安全であるかということについては、国民全体にあなたは責任を負っているではありませんか。それをあなたは今何です。私は自民党の総裁としてやるのだということは、それこそ不見識ではありませんか。  さらにあなたにお尋ねをしたいのは、なるほどあなた御自身は自分の過去における言動については、中共側の誤解もあるだろう。しかし自分の過去における岸個人のそういう言動に対する中共側の誤解と、今自分総理大臣としての自分に対する態度を同じように考えていることはいかにも不届きだという印象を受けたのであります。しかしあなたはやはり岸総理大臣なんだから、あなたは当然そういう立場においても、過去のそういう誤解を与えていた点があれば、そういう誤解をお解きになるというのが、総理大臣の責務だと私は思いますが、どうですか。
  54. 岸信介

    岸国務大臣 私が先ほど申し上げたことは、私が総理大臣として施政を行なっていくのに、決して国民全体の福祉を考えない、党だけを考えているというような意味で申し上げたのではないのであります。言うまでもなく、今日の政党政治としてある以上は、その政策の基本というものは、岸個人が考えることではなくして、政党の政策を基準として考えて、これを行なっておるということを申し上げたのでございます。言うまでもなく、私は個人としてのなにに対する批判につきましては、私個人として考えて反省すべきこと反省していくということはこれは当然であると思います。しかし今いわゆる岸内閣の政策を批判するというような場合においては、やはり自由民主党が国民に対して公約をし、また国民に明らかにしておる政策や基本方針というものを実行しておるのでありますから、これに対してわれわれは政治上の責任をとっていく、こういう性質のものであろう、こういうふうに思います。
  55. 横路節雄

    横路委員 私は次の問題に移りたいと思います。  総理お尋ねをしますが、総理は憲法では戦力を持つことは禁止されている。このことは総理御自身もこれには同意をされると思う。まさか総理御自身が、憲法では戦力を持つことは禁止されてないのだなどとはおっしやるまいと思う。しかし総理は、今までの国会における憲法解釈としては戦力はない、しかし固有の自衛権はある。従って戦力に至らざる最小限度の自衛力は必要だ、こう述べていらっしゃる。それで私はお尋ねをしたいのは、戦力に至らざる最小限度の自衛力というものは一体どんなものなのか、その点についてお尋ねしたい。これがまずこの条約の根本を流れている精神ですから、私はお尋ねをしたいのです。
  56. 岸信介

    岸国務大臣 これは従来の国会においてもしばしば論議が行なわれた問題でございまして、具体的な標準を示すということは実際上は私はできないと思います。しかし、憲法の解釈として、九条の一項において自衛権が認められてるということはだれも疑いを持たないのであります。また二項において戦力を否定して、持たないという明文があることも事実であります。その問題において、この自衛権というのは、ただ観念上の自衛権があって、何ら実力の裏づけのない観念上の自衛権であるかといえば、そういうことはだれも考えないと私は思います。そこで、自衛権を裏づけるに必要な最小限度の実力は、いわゆる二項にいう戦力には入らない、こういうふうに解釈するのが適当であるというふうに思っております。
  57. 横路節雄

    横路委員 総理大臣、今総理大臣の御答弁国民全般が聞いたときに理解できますか。戦力は憲法では禁止されている、しかし固有の自衛権はある、だから戦力に至らざる最小限度の自衛力を持つ必要がある、言葉では表現できない、これは一体どういうことなんですか。総理大臣、これで国民は納得できますか。もう一度、戦力に至らざる最小限度の自衛力というのは一体何なのか、その点についてお尋ねします。
  58. 岸信介

    岸国務大臣 先ほど申し上げました通り、従来の憲法論議におきましても明らかになっておりますように、この戦力と自衛権の裏づけとして必要最小限度の実力というものとの限界をどういうふうに考えているかという問題については、これを数字的にあるいは具体的に明らかにすることは、何人といえども困難であると私は思います。ただ問題は、そのときの国情から見まして、われわれが自衛権を裏づけるにこの程度は必要やむを得ないものであると考える程度を越すか越さないかということで判断していくほかはないと思います。
  59. 横路節雄

    横路委員 総理大臣お尋ねしますが、今総理お話を聞いていると、戦力と戦力に至らざる最小限度の自衛力というものについては限界はないと言う。限界はなかったらだれが判断するのですか。それならば、国民から、いわゆる今日の最小限度の自衛力は明らかに憲法違反だ、こう言われても、あなたは何ら弁解ができないではありませんか。あなたは限界がないと言った。そんなばかなことはないですよ。限界があるはずですよ。その限界は何なのですか。
  60. 岸信介

    岸国務大臣 私はその限界がないと申しておるわけではありません。限界を数字的にあるいは具体的に、何らかの形においてこれを示せと言われるならば、それは私は実際上できないと思う……。(発言する者多し)観念的に限界のあることは事実であります。
  61. 横路節雄

    横路委員 それでは私はあなたに具体的にお尋ねします。あなたは三十二年五月七日の参議院の内閣委員会で、「核兵器と名のつくものは一切が憲法違反だというのは言い過ぎだと思う、憲法第九条は自衛に必要な最小限度の実力を認めているものであり、将来科学兵器発達とにらみ合わせて、他から侵略されることを阻止するための実力を持つことを考慮しなければならない」と答弁しているではありませんか。あなたは核兵器を持っても自衛隊は憲法違反でないと答弁しているではありませんか。それならば、一体それ以上の戦力というのは何なのですか。
  62. 岸信介

    岸国務大臣 もちろん自衛権の範囲内ですから、他国を侵略するとか他国を積極的に攻撃するというような実力を持つことが許されないことは、言うを待たないところであります。あくまでも自衛の範囲内に限らなければならないことであります。そうして、私の参議院における答弁を引用されましたが、私の申し上げているのは、すべての核兵器が、核兵器という名前がつけば直ちに、これはどんなものもいけないというふうに憲法に規定しているというふうに解釈すべきものではない。もちろん自衛権の範囲内でありますから、原水爆のごときもの、あるいは大量殺戮、攻撃的なものを持つことのできないことは当然であるけれども、ただ核兵器という名がついたからそれは憲法に違反しているのだというふうに言うことは、これは適当ではなかろうということを申したのでございます。
  63. 横路節雄

    横路委員 そうすると、今あなたの御答弁では——核兵器というのは核弾頭のつくものですよ。核弾頭のつくものが核兵器ですよ。あなたは今、大陸を攻撃するようないわゆる長距離弾道弾だとかあるいは中距離弾頭弾だとか、そういう攻撃的なものは憲法違反だ、しかし自衛のためであるならば、核兵器を持っても憲法違反ではないということを、あらためてここで確認をなさったわけです。それでよろしゅうございますか。これは大問題ですよ。
  64. 岸信介

    岸国務大臣 今日行なわれておる、実際にわれわれの承知しておるいわゆる核弾頭を持っておる核兵器というものが、われわれが考えておるいわゆる自衛を裏づけるに必要な最小限度の実力のうちに入るとは、私は思っておりません。しかし、将来核兵器というものの発達が非常に著しいなにであって、そういうことが可能であるかどうかは将来の問題でありますけれども、ただ核兵器と名前がついたから憲法違反だ、あるいはミサイルと名がついたからいかぬというふうな解釈をすべきものではなくて、そのときにおける実際の兵器の性質から論ぜなければならぬということを申したわけでございます。
  65. 横路節雄

    横路委員 今の総理の御答弁ではっきりしたわけです。今は持たない。現状のいわゆる兵器発達段階では持たない。しかし将来核兵器というものが発達をしてくれば、将来は持つ場合もあり得る、こうあなたは答弁された。そうすると、あなたの御答弁の中で戦力に至らざる最小限度の自衛力とは、結局相対的なものだ。絶対的なものではない。相手が核兵器を持てばこちらも自衛のために核兵器を持つ、それが中距離弾道弾程度になるならば、こちらも中距離弾道弾、こういうように、戦力に至らざる最小限度の自衛力とは相対的なものであるという点ははっきりしたわけですか、その点はどうなんですか。——法制局長官、何もあなたが指図しなくたっていいですよ。
  66. 岸信介

    岸国務大臣 はっきりしていることは、言うまでもなくわれわれの持っておるのは自衛でありますから、それを裏づけるところの実力も自衛に必要なものでなければならないことは、言うを待ちません。他を侵略するとか、あるいは中距離弾道弾だとかあるいは大陸間弾道弾というようなものがいかに発達しましても、それを持つというようなことは、これは自衛権の内容としては私はあり得ないと思います。ただ具体的に、ミサイルが発達して、そうして地対空のミサイル、短距離のミサイルというようなものがずっと開発されていく。核弾頭は用いないけれども、普通の弾頭において、そういうものを全然無視して、ミサイルは一切持たないというようなことは、私は言うべきものではない。そういう点においては相対的という——いろいろな科学兵器発達なんかとにらみ合わしていかなければならぬことは言うを待ちません。しかし本質的に、われわれの持つものはあくまでも自衛であって、決して他を侵略するような性格のものを持つものではないということは明瞭にいたしておきます。
  67. 横路節雄

    横路委員 総理お尋ねしますが、私はこの問題はもう一度聞いておきたいのです。核弾頭のついたものであっても、自衛のためであるならば持つことはあえて憲法違反ではない、それはもちろん将来にわたることではあるが……。そうですね。核弾頭がついても、それが自衛のためであるならば憲法違反ではない、今持つか持たないかは別だ、これですね。一つはっきりしておきたいと思う。もう一ぺん御答弁願いたい。
  68. 岸信介

    岸国務大臣 間違ってもらってはいかぬと思いますが、憲法論と政治的の問題とは別であります。持つか持たないかという問題と憲法の解釈論とは別であるということを前提にはっきりしておきます。憲法論としては、自衛のために持つところのいろいろな兵器は、目的が自衛であり、またそういう性格の兵器であるならば、ただそれが核兵器であるというために憲法違反であるという解釈は憲法の解釈として適当でない、かように思っております。
  69. 横路節雄

    横路委員 今まで三十二年以来、内閣委員会予算委員会、本会議等で論議をされました今の問題、あくまでも憲法上の解釈に従えば、自衛のためであるならば核兵器を持つことはあえて憲法違反ではない、この点がきょうの総理答弁ではっきりしたわけです。  次に、私は、今まで基本的な問題について触れましたから、安保条約の内容についてこれからお尋ねをしたいと思うのです。  まず第一番目に第五条の問題ですが、第五条には、御承知のように、「いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従って共通の危険に対処するように行動することを宣言する。」とある。私は言葉ではっきり聞いていきたいのです。「武力攻撃が、」とあるが、この安保条約は、国連憲章五十一条に基づいて、これは総理がたびたび言われているいわゆる個別的集団的自衛権ということで——国連憲章五十一条には「武力攻撃が発生した場合」と規定されている。それで私がお尋ねしたいのは、この条約第五条の「武力攻撃」というのは、国連憲章五十一条にいう「武力攻撃が発生した場合」というように限定してあるのかどうか、それ以上にほかの意味があるのかどうかお尋ねしたいのです。
  70. 岸信介

    岸国務大臣 私は同じ意味だと思います。
  71. 横路節雄

    横路委員 私はその点が疑問なので、今総理お尋ねしたのですが、総理は同じ意味だと言う  次に私がお尋ねしたいのは、「自国の憲法上の規定及び手続に従って」というのは何を意味しているのですか。今の憲法には、いわゆる宣戦布告の件についてとか、あるいは出動命令についての手続とかいうことは規定されていない。それをわざわざここに「自国の憲法上の規定及び手続に従って」とうたっているのは何を意味されていますか、その点をお尋ねします。
  72. 岸信介

    岸国務大臣 もちろん憲法に直接規定のあるもの及び憲法に基づいて作られておるところの法律というものを含めておると私は解釈いたします。
  73. 横路節雄

    横路委員 それでは総理大臣お尋ねしたいのですが、憲法上の規定及び法律上の手続という、その憲法上の規定とは何ですか。それから法律上の手続とは何ですか。その点についてお伺いいたしたいと思います。
  74. 岸信介

    岸国務大臣 憲法上は、先ほど来論議されております憲法九条の解釈の問題だと思います。それから憲法に基づく規定については、自衛隊法、いわゆる自衛隊が防衛出動する場合のなにについての規定がございます、それらを含めて申したわけであります。
  75. 横路節雄

    横路委員 総理大臣お尋ねしますが、そうすると、自衛隊法の手続に従ったわけですね。それは間違いございませんね。それも含まれておるわけですね。
  76. 岸信介

    岸国務大臣 日本の自衛隊の行動に関しては、日本の自衛隊法に従うということであります。
  77. 横路節雄

    横路委員 わかりました。今総理から、条約第五条にいう「武力攻撃」とは、国連憲章五十一条による「武力攻撃が発生した場合」と同じである、こういうようにお話があった。しかも、それは、自国の憲法並びに手続上——手続とは、自衛隊の出動は自衛隊法に従うという。そこで、私は、総理大臣から今そういう御答弁を得たので、自衛隊法第七十六条出動命令について、総理も御存じだと思いますが、お読みしてみたいと思う。「内閣総理大臣は、外部からの武力攻撃(外部からの武力攻撃のおそれのある場合を含む。)」ここが大問題なんですよ。私がお尋ねしたいのはそこなんです。総理大臣は、国連憲章にいう武力攻撃の発生した場合だけこういうふうに限定すると答弁された。しかしあなたが今おっしゃった憲法並びに国内法の手続に従っては、自衛隊法第七十六条出動命令については、「内閣総理大臣は、外部からの武力攻撃(外部からの武力攻撃のおそれのある場合を含む。)に際して、わが国を防衛するため必要があると認める場合には、国会の承認を得て、自衛隊の全部又は一部の出動を命ずることができる。」そうするとおかしいじゃありませんか。この点は、条約の第五条は、武力攻撃の発生した場合と規定し、自衛隊法第七十六条は、外部からの武力攻撃のおそれがある場合を含むと規定しているが、これは矛盾しておりませんか。非常に危険な条文ですからお尋ねしているのですよ。
  78. 岸信介

    岸国務大臣 私は、その点については、条約と自衛隊法とは関係ないと思いますが、条約においては、武力攻撃が現実に起こった場合において、両国が行動する場合のことを規定したのであります。いわゆる自衛隊が自衛隊として行動することに関しては、そういう武力攻撃が現実にあった場合のほかに出動することもできますし、あるいは内乱の場合にも出動することができますし、その他のいろいろな場合にも出動できるのでございまして、それと条約とは関係がございません。
  79. 横路節雄

    横路委員 総理、私は今条約の第五条を聞いているのですよ。第四条を聞いておるのではない。第四条はいずれ聞きますが、第五条は「各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め」、云々となっておる。あなたは今この点については、自衛隊の出動はそれは別なんだ——私は第四条のことはまた別に聞きますよ。第五条について、あなたが内閣総理大臣として、七十六条に基づいて、自衛隊の全部または一部を出動させるときは、外部からの武力攻撃並びに外部から武力攻撃のおそれのある場合を含んで命令を下すというじゃありませんか。それでは今度自衛隊法のカッコの中はこの条約に従って修正するのですか、この点はどうなんです。
  80. 岸信介

    岸国務大臣 この条約の五条によって日米両国が共同の措置をとる場合におきましては、現実に外部から日本に対して侵略が行なわれた場合であります。その行なわれた場合に、自衛隊を出動させるについては、今の自衛隊法の規定に従って、それぞれ国会の承認を求むべきものは求むるとか、その他の方法をとるべきものであると思います。ただ自衛隊がいかなる場合に出動するか、いかなる場合に行動するかということを広く自衛隊法は規定しておるのでありまして、条約と自衛隊法とが全部場合が重なっておるわけではないのでありますから、今のカッコの場合におきましては、いわゆる五条の範囲内には入ってこないと思う。しかしそれだからというて、それでは自衛隊法のそれを削るということは必要ないのであって、日本日本の立場におきまして実際の出動命令を総理大臣として行なわなければならぬ場合があると思います。それは直ちに条約に来るというわけではない。条約に来る場合には、現実に侵略があった場合、そのときに立ち上がって、現実にいろいろな対抗行動をとる、こういうことになると思います。
  81. 横路節雄

    横路委員 わざわざ第五条に「自国の憲法上の規定及び手続に従って共通の危険に対処するように行動することを宣言する。」こういうふうに書いてあるから私は聞いたのです。すなわち、自国の憲法上の規定並びに手続とは、今日はこの自衛隊法による出動命令以外にないのです。だから聞いている。そうするとこういう解釈になるのですか。この第五条に基づく場合は武力攻撃の発生だ、しかし日本の自衛隊の場合には自衛隊法によって武力攻撃のおそれのある場合についても出動命令をする、しかし米軍は武力攻撃が発生した以外は出ないのですね。この点だけはっきりしておいていただきたいと思います。
  82. 岸信介

    岸国務大臣 その通りでございます。
  83. 横路節雄

    横路委員 なお総理お尋ねしますが、一昨日今澄委員質問に答えて、実力で侵略されれば直ちに実力で排除するというのが自衛権の本質だ、だから、直ちに実力攻撃に対しては実力行動をやるのだ、こういうように御答弁されましたが、それが私は自衛権発動の全部ではないと思うのですが、総理は、実力で侵略があれば直ちに実力で排除するのだ、こういうお考えには依然として変わりはございませんか。
  84. 岸信介

    岸国務大臣 ちょっと私の申し上げたことと今の御質問との間に、私の気持にしっくりしないところがあるのですが、私はこういうつもりで申し上げたわけです。実力の行使があった場合において、自衛権の発動としてこれを実力を用いて排除することは、当然自衛権の範囲内に入る。しかし日本の政治として、何か侵略があったら直ちに自衛力を用いて実力を行使するかいなかということは、またおのずから別な問題でありまして、自衛権の本質というものは実力があったら、その実力が大きかったら発動し、小さかったら発動しないというものではないと思う。しかし政治的にどういう措置をとるかということはおのずから別に考えなければならぬという意味に申し上げたのであります。
  85. 横路節雄

    横路委員 それではお尋ねしますが、第五条の中で、共通の危険に対処するように行動する——政治的には自衛権の発動をして直ちに出動命令をするか、あるいは場合によっては平和的な解決による外交交渉に移すか、あるいは後段にはいわゆる国際連合の安保理事会に報告して、その決定があれば直ちに停止しなければならぬということもあるが、しかし平和的な交渉に移すという場合もあるでしょう。あるいは国連に直ちに提訴するという場合もあるでしょう。そういう場合の判断は日本アメリカとのどこでするのですか。そういう場合の判断はどこでなさるのですか、政治的には。
  86. 岸信介

    岸国務大臣 日本に対するところの侵略についての最後の決定は、私は日本がやるべきものだと思います。しかしいろいろな情勢については日米の間に機関を設けて常時協議もいたしますし、そのときの情勢判断等もいろいろ行なわれることだと思いますが、日本がどういう態度をとるかということは、日本政府が決定すべきものだと思います。
  87. 横路節雄

    横路委員 藤山外務大臣お尋ねしますが、今総理から常時の協議機関がある。あなたもこの間土曜日に御答弁されているが、簡単に軍事委員会といいますか、そういう御答弁だけだった。常時の協議機関とは一体どういう構成なのか、どういう権限があるか、その点を明らかにしていただきたい。
  88. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 今回条約の運営にあたりまして日米間に委員会を作りますことは申し合わせができたわけであります。従って日本側におきましては私と防衛庁長官アメリカ側におきましては駐日大使と太平洋軍司令官、日本に駐在しております米軍の司令官というのがこの構成メンバーになっております。そしてこれらの機関というものは話し合いの機関でございますから、むろんその決定というものはその機関自身がするというよりは、それぞれ内閣が決定したものを話し合いに移していく、また決定する場合には内閣の承認を得て決定していくということになるわけでございます。
  89. 横路節雄

    横路委員 外務大臣お尋ねしますが、今言葉が小さくてちょっとはっきりしなかった。それは今まで持っておる機関と同じですか、それとも新たに設けるわけですか。
  90. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 構成は今までと同じでございますけれども、安保条約が今度改定されましたので、新しくそういう機関を設けることにいたしております。
  91. 横路節雄

    横路委員 今の武力攻撃が実際に発生した場合における第五条の発動ということについてわかりましたが、これとの関連で総理にちょっとお尋ねをしておきたいのですが、竹島問題ですね。あれはこの条約が発効されてなお韓国があそこに武力でもっておるということは、いわゆる武力攻撃によってあれは占領されているという規定になりますね、今度は。そうしたらどうなさるんですか。条約が発効したあとは竹島問題はどうなさるのです。
  92. 岸信介

    岸国務大臣 この問題に関しましては、従来日韓の間においての交渉も行なわれております。またわれわれとしては司法裁判所に提訴するようなことを提議もしておりますが、韓国側はこれに応じないというような経過になっております。私はやはりこの問題は、従来日本考えてきているように、両国の交渉と、それから国際機関によるところの方法によって解決することが適当である、かように考えております。
  93. 横路節雄

    横路委員 総理大臣お尋ねしたいのですが、この条約が効力を発生した後において、なお韓国の軍隊があそこから撤退しない場合においては、あの竹島に発生している事実は、これは武力による侵略というように考えてよろしいわけですね。その点を聞いているのですよ。
  94. 岸信介

    岸国務大臣 そういうふうに解釈すべきものだろうと思います。
  95. 横路節雄

    横路委員 次に総理大臣お尋ねをしますが、事前協議の問題ですね。この点は去る五日、六日の河野委員並びに今澄委員によってだいぶ論議されたわけですが、私はこの問題について、拒否権があるとかないとかいう法律的なそういう言葉にはずいぶん問題があると思う。そこで私は総理お尋ねをしたいのは、条約上は、法律的な用語としては事前の同意を要するというようになっているはずです。総理が言うようにノーと言えば絶対に出動しないのだというならば、事前の協議の主題とするというあの問題について、事前の同意を要するというのが条約上における法律的な用語で国際上きちっとしている、それをなぜ総理は使わなかったか、おそらく私の推測ではアメリカからノーと言われたのだろうと思う。それともノーと言われたのではないのだ。条約上にはそういう用語はあまり使っていないのだ。だから事前協議ということにしたのだということか。どういうわけです、これは一体。常識的な論議ではないんですよ。条約上ですから、法律的な言葉としてなぜ事前の同意を要すると書かなかったのか。そういうものはないというのかどうなのか。
  96. 岸信介

    岸国務大臣 これは事前協議という言葉によって問題になっておる。日本がノーと言った場合に、それに反した行動をアメリカ側がとらない、こういう解釈であるということが両国の交渉されておる人々によって承認されて、そうして交渉が進められたわけでありますから、特に別に事前の同意ということを提案して拒否されて協議になったというような沿革ではないと私は承知いたしております。
  97. 横路節雄

    横路委員 総理大臣お尋ねしますが、そうすると初めから事前の同意を要するというような提案の仕方はしなかったわけですか。なぜしなかったのです。これは国際条約における一般的な法律的な用語ではありませんか。この国会においてもどう聞いてもわからない。法律的には拒否権という言葉はない、常識的に拒否権ということが言えるならば言える、こういうようなあいまいなことでなしに、将来武力攻撃が発生した場合に直ちに対処しなければならぬ、あるいは戦争に巻き込まれるかもしれないというこういうような問題について、なぜ明確に事前の同意を要するとしなかったのか。それともそういうことは国際上の言葉としてはないのですか、どうなんです。
  98. 岸信介

    岸国務大臣 私、国際的の用語として同意ということを使っておる場合もございましょうし、そうでない場合もあるように承知いたしております。問題は、この協議の道程に、そのことをなす前に協議をして、そうして両方の意見が一致して初めてそういう行動が起こされるという意味に一体事前協議ということが解釈されない問題であるならば、今お話のように、その点は不十分であるという問題が起こったであろうと思います。しかしながら交渉の全過程を通じて、事前協議の主題とするという意味は、両方がそのことを行なう前に協議をして、意見が一致した場合においてそういう行動をとるのだという解釈のもとに、この事前協議という意味をとるということに両方の間において意見が一致して参ったのでございますから、そういう言葉を使って目的はそれによって達せられるわけでありますから、そういう文句を使った、こう思います。
  99. 横路節雄

    横路委員 総理お尋ねしますが、これは条約の本文にはない。どこの条約も、事前の同意を要するというときには、必ず条約の本文に入れている。だから本来からいえば、条約第六条に事前の同意を要すると明確にすべきだ。それを条約本文にはうたっていない。交換公文については、これまた解釈に疑義が生ずるように問題がある。そこでやむを得ず共同声明の中で、いわゆる日本の意思に反するような行動をしないことを保証したとある。もしも事前協議の中で今総理のおっしゃるようにノーと言えば出動しないのだというならば、あの共同声明は再確認したというようになるべきです。総理が今私に返事しておると同じだ。それが再確認ではなくて保証というのは、その交換公文の段階ではあいまいだから、明確でないから、そこで共同声明で保証した、そうなんでございましょう。どうなんですか。私に今同意したではありませんか。
  100. 岸信介

    岸国務大臣 問題は条約及び交換公文というものを通じての解釈の問題でございます。従って私とアイゼンハワー大統領との間の共同声明というものは、その法律解釈をいわゆる再確認したという意義を持つものであって、これで初めて解釈するとか、これで初めてどうするという性質の——これで政治的にどうなったのだというような意味でない、私は話し合いのあるいはまた共同声明の趣旨から見まして、そういうふうに考えておるものだと思います。
  101. 横路節雄

    横路委員 総理大臣に私は申し上げたいと思うのですが、総理大臣、ここにございます日本アメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定、現在の安保条約には、各条文に、日本の行為に対して、アメリカ側に対して事前の同意を要するとなっておるのですよ。だから日本アメリカ側に対して協議をするときには、常に条約の本文に同意を要すると求められておる。今度は日本アメリカに対する行為を求める場合には、条約の本文には求めないで、交換公文でもあいまいで、共同声明に譲っておる。どこに一体対等で、どこに自主的な条約だと言えますか。防衛援助協定その他には明らかにこの点は、全部日本が行なう行為についてはアメリカに対して事前の同意を要するとなっているではありませんか。明らかに、今回政府が調印をしてきたこの条約は、何といっても不平等条約ですよ。対等ではないです。自主性はないですよ。あるならば、条約の本文についてなぜ日本アメリカとの防衛援助協定やら現行安保条約のように、条約の本文について事前の同意を要すると規定しないのです。なぜあいまいにしたのですか。
  102. 岸信介

    岸国務大臣 私は条約とこの場合の交換公文とは同じ効力を持っておるものであって、いろいろな条約やあるいは外交上の交渉の場合におきまして、そのときのいろいろな慣例やその他によって条約の本文に入れる場合もありますし、交換公文とする場合もあるので、決してそれによって自主性云々が動くものではないと思います。
  103. 横路節雄

    横路委員 総理はそうするとあれですか。私は拒否権があるとかないとかいう言葉は、きょうは使わないつもりです。この点事前の同意を要するということと同じ意義ですか。そのことをはっきりしておきたい。事前の協議の主題とするということは事前の同意を要するという、そういう国際条約の上における法律的な用語と同じ意味ですかと聞いておるのですよ。そうならそうだとおっしゃっていただきたいし、それと違うなら違うと言っていただきたい。あとの説明は要らぬですよ。どちらですか。
  104. 岸信介

    岸国務大臣 言葉は確かに同意と協議という字は違っておりますが、しかしながらその意義として、しばしば論ぜられておるように、両方の意思が一致しなければ協議が成立しない、協議が成立しない場合には日本の意思に反して行動しないということがこの解釈でございまして、それはこの交渉を通じてずっと両国の代表の間において了解されたことであり、またそれを声明において再確認しておるわけであります。ただ、今そういう意味において、言葉が違うのだから、言葉が違うということは違うと言わなければならぬと思います。しかしながらわれわれが問題としている要点については、この場合に事前の同意を要するとしたのとどういうふうに違うかといえば、私は結果的には違わないとこう思う。
  105. 横路節雄

    横路委員 総理大臣、私この間から総理大臣の御答弁を聞いていると、法律的な用語に基づいての論議ではなしに、いわゆる常識的な論議なんですね。常識的な論議というのはあとに問題を起こすのです。私が今ここで総理お尋ねしましたら、総理事前の協議ということと事前の同意を要するということとは法律上の言葉の違いはあるぞ、それは間違いございませんね。それは違いはありますね。総理は半分ずつの話でなかなか大へんだと思いますが、その点はどうですか。よく相談されて答弁されてもいいですよ。どうぞゆっくり答弁して下さい。
  106. 岸信介

    岸国務大臣 同意という言葉と協議という言葉は、私、日本語においても違っておりますし、英語においても違っているように承知しております。従ってそれの法律的な解釈がどういうふうに違いがあるかというようなことについては、あるいは法制局長官からいろいろな実例についてお答えした方がいいかと思いますが、ただ問題は先ほど来申し上げているように、事前協議とした理由、また事前協議という解釈が、両方の意見が一致して初めて協議がととのい、またそれによって初めて行動する。協議がととのわない場合においてそれに反した行動はしないという、この法律解釈が両方の間において一致しておるということであるならば、今問題になっておる、疑問とされておる事柄は解決しておるのであって、同意と協議が法律的にどういうふうに意義を異にしておるか。字が違っているが、それは全然同じかどうかという法律論については、むしろ専門家の法制局長官からお答えを申し上げた方が適当であろうと思います。こういうことです。
  107. 横路節雄

    横路委員 法制局長官に、これはいずれ他の機会に御答弁いただきたいと思いますが、きょうは限られた時間の中で、できるだけ私は総理外務大臣に主としてお尋ねしたいと思う。これは……(「卑怯だよ」と呼ぶ者あり)卑怯ではないですよ。総理大臣、一番頭がいいのだから。総理大臣、実はこの防衛援助協定の第二項に「いずれの一方の政府も、他方の政府事前の同意を得ないでその援助を他の目的のため転用してはならない。」あるいは第一条の第四項にも「これらの援助を供与する政府事前の同意を得ないで、」やることはできない、こういうように安保条約についても同様、これが国際条約における法律的な用語をきちっと定めたものなんです。本来からいうならば、これは調印前にこういう委員会を開いてこのことを論議して、総理にも、なるほど将来これは問題がある、これならば問題がある、これならばアメリカ事前の協議ではなしに、事前の同意を要するというように直さなければならないと私にこう言われたら、よくおわかりになって、調印前なら、調印のときにそう直されたかもしれない。しかしおそらく総理はこういうことを十分に承知の上で、——これは全部アメリカ側の同意ですよ。今度は新安保条約における事前協議は、日本アメリカ側の同意だ、——同意じゃない協議だ、そのときの同意について書いていないことは、何といってもこれは自主性のない不平等条約であり、これは対等な条約だとは断じて言えないと私は思うのです。その点だけ私は明確に申し上げておきたいと思う。これは私の考えですから。  その次に総理お尋ねをしたいのは、極東の地域の問題がさっぱりはっきりしないのです。これは何でしたら藤山外務大臣から一つ明確にしてもらいたい。極東の地域……。
  108. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 極東の地域につきましては、フィリピン以北、日本の周辺というのが極東といわれるところだと思います。現在の条約においてもそうだと思います。
  109. 横路節雄

    横路委員 外務大臣、フィリピン以北、日本の周辺と言うのですが、これはどうなんですか。沿海州その他は含まれているのですか、どうなんですか、その点はっきりしてもらいたい。もっと言葉ですからはっきりしてもらいたいのですよ。
  110. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 むろん日本の周辺でありまして、どこの地区をどうというふうに特定に指示することはいたさないことにいたしております。
  111. 横路節雄

    横路委員 藤山外務大臣、ほかの条約にそういう規定はないですよ。勝手に解釈ができるような、そういう範囲はないですよ。世界のいかなる軍事同盟についても、またいかなる防衛援助条約についても、全部適用範囲というものは明らかになっていますよ。もう一ぺん一つ答弁して下さい。もう一ぺんはっきりと。あなたは大事なところになるとごしゃごしゃと言ってだめですよ。
  112. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 ただいま申し上げましたように、大体フィリピンの以北、日本の周辺でございまして、これが極東の地域でございます。この条約に言う地域でございます。
  113. 横路節雄

    横路委員 外務大臣、もう一ぺんお尋ねしますが、フィリピンの以北、日本の周辺、その日本の周辺の意味がはっきりしないから、沿海州まで含まれているのかどうかと言っておる。含まれていないなら含まれていない、日本の周辺とはどこまでだとはっきり言ったらどうですか。
  114. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 大体今申し上げましたように、極東というものの観念についてはいろいろ過去にございます。(「いろいろとは何だ」と呼ぶ者あり)しかしいろいろ解釈がございます。いろいろ解釈があることは御承知通りだと思います。われわれがこの話をいたしておりますときには、フィリピンの以北、日本を取り巻く周辺でございます。
  115. 横路節雄

    横路委員 藤山外務大臣に私はもう一つ聞きたい。藤山外務大臣お尋ねしますが、あなたのここにおけるきょうの答弁は二つに尽きている。「いろいろな」、「大体」——何です一体。何です一体。私があなたに聞いているのは世界のいずれの、北大西洋条約にしても、あるいはその他米韓、米比その他にしても、その適用の範囲が明確でないなんという条約はないですよ。どこにありますか、そういう条約が。いろいろなんということを条約のどこにうたっていますか。だからあなたはフィリピンの以北、日本の周辺、日本の周辺とはどこをさすのか、ここではっきりしない限り、これは大問題だからあとは審議できませんよ。これははっきりしなさい。
  116. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 御承知のように、今回の条約における条約区域というものは日本の施政下のあるところでありまして、今日この条約に極東とうたっておりますものは、施設の供与に伴いますその目的のためにきめたものでありまして、いわゆる条約の適用地域というものではございません。
  117. 横路節雄

    横路委員 藤山外務大臣お尋ねしたいのですが、私はこの条約にないのならば聞かないのですよ。ところが第四条には「締約国はこの条約の実施に関して随時協議し、また、日本国の安全又は極東における国際の平和及び安全に対する脅威が生じたときはいつでも、いずれか一方の締約国の要請により協議する。」とあるから、だから一体極東とはどの地域なのかと聞いておる。それならば初めから条約で消したらどうですか。あなたの与党だって意見があったじゃないですか。極東ということは消したらどうですか。ある以上は、極東とはいかなる地域かということをここで答弁するのがあなたの責任じゃありませんか。
  118. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 御承知のように、今申し上げた通り……(発言する者多し)少し静かにして下さい。そう声が大きくては聞こえませんから。     〔発言する者多し〕
  119. 小川半次

    ○小川委員長 ちょっと委員諸君に申し上げますが、委員諸君もお静かにしていただきませんと、外務大臣の声は小さいから、お静かに聞いていただきたいと思います。
  120. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 つまりここで極東と申しますのは、先ほど来申し上げておりますように、極東というのにはいろいろ議論がございます。われわれはフィリピン以北、日本の周辺を含むのでありまして、そういう意味においてわれわれは極東ということを申しておるわけでございます。
  121. 横路節雄

    横路委員 私は委員長に申し上げたい。今この条約になければいいですよ。しかもこれは自民党の与党の中でも、この極東の平和というのは非常に地域が問題で、しかもこれは本来からいえば、日本に対する防衛条約ならば、日本国の安全とだけとどめるものを、国際の平和と入れたところは問題だ、こうなっておる。だから私はこの際ぜひ一つ、極東の平和という極東の地域とはいかなるものかということについて、明確にしてもらわなければならない。だから一つ私は、この点はぜひ明らかにしてもらいたいです、委員長。こういうことで一体どうしてできますか、委員長。だから委員長、ここで一たん休憩なら休憩をして——こんなことでできますか。だから、ここで一たん休憩なら休憩して……。
  122. 小川半次

    ○小川委員長 横路君の御質問外務大臣は答えておりますが、なお、あなたが外務大臣答弁が納得がいかないようでしたら、重ねて御質問して下さい。
  123. 横路節雄

    横路委員 委員長、私はあなたに聞いているのです。あなた御自身が聞いておかしく思いませんか。いろいろな、いろいろなでわかりますか。
  124. 小川半次

    ○小川委員長 私は大体了解しております。
  125. 横路節雄

    横路委員 大体ですね。それでは藤山外務大臣、聞いて下さいよ。私の声は大きいからよくわかるでしょう。藤山外務大臣お尋ねしますが、フィリンピン以北、日本の周辺となりましたね。何でフィリピンの以北とフィリピンを限定したのですか。これはなぜ入れたのですか。それならば、日本の周辺だけでいいじゃありませんか。ちょうどものにたとえれば、下の方だけあって、上の方がないのですよ。そうじゃありませんか。ではあなたにお尋ねしますが、フィリピン以北と入れたフィリピンはなぜ入れたのですか。まずその根拠についてお尋ねしたい。
  126. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 従来極東についてはいろいろな解釈があったと思います。これは非常に広範な地理的な名称でありまして、ある場合には政治的にイギリスが使ったり、いろいろしたと思います。南方につきましてはある程度の限定をすることは、この条約の中での気持といたしましても当然だと思います。従ってフィリピンの以北ということをわれわれは考えておるわけであります。しかし従来の極東という観念で、樺太の北だとか、ずっと先まで入っているというようなことは、従来地理的にはございません。やはり日本の周辺、フィリピンの以北というのが適当だと思います。
  127. 横路節雄

    横路委員 それでは外務大臣お尋ねしますが、中国の沿岸は入るのですね。フィリピン以北、日本の周辺の幅だから、中国の沿岸は入るのですね。間違いありませんね。
  128. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 今申し上げた通りフィリピンの北、日本の周辺でありまして、その中間地帯は大体極東の地域だと思います。
  129. 横路節雄

    横路委員 藤山外務大臣に聞いているのですよ。これは何べん言っても同じことだ。だから、私はフィリピンの以北、日本の周辺という間には中国の沿岸もあるが、これは含まれるのですねと聞いているのです。どうなんだ。それは含まれるのですか、含まれないのですか。フィリピンの以北、日本の周辺と言うが、中国の沿岸はどうなんだ。はっきり言ったらいいじゃないか。
  130. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 今はっきり申し上げておりますように、フィリピンの以北、日本の周辺でありまして、その海域が入っておることは当然でございます。
  131. 横路節雄

    横路委員 藤山外務大臣、海域並びに沿岸も入りますね。沿岸はどうなんです。海域並びに沿岸、その点はどうなんですか。
  132. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 今申し上げた通りで尽きておると思っております。
  133. 横路節雄

    横路委員 藤山外務大臣、だめですよ。中国の沿岸は入るのか入らないのかと聞いているのだから、入るなら入る、入らないと言ったらいいじゃないですか。どうなんですか、おどおどして——しっかり言いなさい。
  134. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 別におどおどしているわけではございませんので、私はフィリピンの以北、日本の周辺、それを含む海域であることは、申し上げた通りであります。
  135. 横路節雄

    横路委員 藤山外務大臣は参議院、衆議院で年内の国会でだいぶ皆さんから質問されたので、だいぶ慎重にはなったようですが、しかし中国の沿岸が入っているかどうかということが問題ですから、ここで入っていないなら入っていないと答弁されたらどうですか。そう言うなら、言ってみて下さい。どうなんですか。——外務大臣一つ言って下さいよ。入っていないなら、入っていないと言ったらいいじゃないですか。一体何ですか。
  136. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 今申し上げた通りでありまして、フィリピンの以北、日本のあの周辺を含む海域でありますから、それではっきりいたしておると思っております。
  137. 横路節雄

    横路委員 総理大臣、今の答弁では私ははっきり答えてないと思う。だから、中国の沿岸が入らなければ入らないと答弁していただきたいし、入るならば入ると答弁していただきたい。私はどちらでもいい。それをはっきりと答弁していただきたいのであります。その点はどうなんですか。答えられないというのか。あいまいでなしに、入っておるというのか、入っていないというのか、どちらか。総理大臣お尋ねしますよ。——委員長、何です。私が聞いておるのに、総理大臣と言ったらどうですか。相談するならしてもいいですよ。だめならだめで、あとでもいい。(「答弁できないなら、休憩しよう」と呼び、その他発言する者あり)委員長、暫時休憩して下さい。
  138. 小川半次

    ○小川委員長 外務大臣から答弁があるそうです。
  139. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 今申し上げましたように、極東というこの条約における適用——この条約の目的といたしますのは、極東の平和と安全ということなんでありまして、従ってフィリピンの以北、日本の周辺、そういう方面にいろいろな騒乱が起こりあるいは侵略行為があり、あるいは平和を害するような行為があったということをこれにうたっております。従って地理的概念として必ずしもぴたっと一致したものがあるわけでないことは当然でありまして、従ってそういう意味において中国大陸——常識的にはあるいはそういうふうに考えられるかもしれませんが、解釈的には私が今申し上げた通りでございます。
  140. 横路節雄

    横路委員 外務大臣お尋ねしますが、今あなたの答弁でますます問題になるのです。それはなぜなれば、この条約には極東の平和と安全を守るためにと、こうなっておる。その極東の地域とは概念的にいえばこうなっておる。これは大へんですよ、概念的にとは。あなたはこの間日本の平和は極東の平和とうらはらだと言った。そうすると日本の平和のためには極東の平和が大事なんだ。その極東の平和を守るためにはより一そう拡大された範囲において、戦争の脅威が生じないようにしなければならないということになる。一体今のあなたの答弁でわかりますか。  そこで委員長にお願いしたい。ここに地図がありますから、地図を一つかけて、外務大臣にこうまるでやってもらいたいのです。どうですか委員長、この程度のことはどうですか。今の概念上という言葉で委員長わかりますか。だめですよ、これは。委員長どうですか。
  141. 小川半次

    ○小川委員長 委員長は地図を掲げて一々説明することを必要といたしません。
  142. 横路節雄

    横路委員 外務大臣お尋ねします。外務大臣お尋ねします点は、ただいま御答弁になりました極東の地域に対してはいわゆる通念的に、概念的にそれはきまっているのだ、とこう言っておる。その通念的、概念的というのはそれぞれの人によってやはり違うのであります。そこで先ほどから、第一回目の御答弁はフィリピンの以北、日本の周辺、第二回目の御答弁はその間の海域ということになりましたが、私が明確にお答えをいただきたいと思いますことは、中国の沿岸は含むのかどうかということが第一点、第二点は沿海州は含むのかどうか。この二つの点についてまずお答えをいただきたいと思います。その点どうですか。
  143. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 先ほど申し上げたように、また横路委員が言われておりますように、極東といういわゆる地理的観念にはいろいろな感じ方がございます。従ってわれわれとしては南の方についてはフィリピンの以北——大体これはこの条約日本の平和と安全を守る範囲内、そういうところに紛争が起これば、日本の平和と安全が脅かされるということが主たる目的なのであります。従ってそれから日本の周辺であります。昔から極東という観念はそう北に延びているわけではないのでありまして、そういう意味からいいまして先ほどお話申し上げましたように、北について特にうたわなかったわけでありますけれども、フィリピンの以北、日本の周辺、そうしてそれらのところにおいていろいろ何か日本の平和と安全を脅かされるようなことが起これば困るわけでありますから、そういう意味において、そういうふうに近くつながっているということにこの条約ではなっておるわけであります。
  144. 横路節雄

    横路委員 今のあなたの答弁は前のとまた違ってきた。フィリピンの以北、日本の周辺、その近くにおいて脅かされる場合においてはということになりますと、日本の周辺、それが戦争の脅威に脅かされる場合においては、その近くということになればもう一つ拡大されるわけでありませんか。今あなたはそう答弁したのですよ。だから、言葉でもって答弁するから間違いで、具体的に中国の沿岸は入るとか入らないとか、沿海州は入るとか入らないとか、こういうふうに答弁することが誤解を招かないことになる。あなたは何か心配しているのじゃないですか。今ここであなたが答弁したら何か起きるのでないかと思っているのじゃないですか。答弁したらどうですか、はっきりと。だめですよ、それでは。
  145. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 別に私は何かいろいろ心配して答弁しているわけではございません。今申し上げましたように、今回の条約におきましては日本の安全と平和というものが乱されては困る。また同時に日本の周辺におきましていろいろ事が起こりまして、そうしてそれが日本に影響してくるということであっては困るわけであります。そういう意味において、極東という地理的観念にはいろいろございます。ございますが、しかしわれわれのこの条約に極東と用いました精神というものは、要するに日本の平和と安全につながりやすい地方をきめておるわけでありまして、そういう意味においてわれわれは極東という字を使っておるのであります。従って沿岸が入るとか入らないとかいうような問題は、われわれの今申したこととは全然違うのでありまして、われわれは今申したようなことから見て極東というものを解釈いたしておるわけであります。
  146. 横路節雄

    横路委員 外務大臣、私が聞いているのはそういうごたごたした話ではないのですよ。はっきりしているのです。中国の沿岸は入るか入らないか、入らないなら入らないと答えてもらいたい。沿海州は入るのか入らないのか、入らないならば入らないと答えてもらいたい。一体どちらなんです。私はその二つを聞いているのですよ。なぜ答弁できないのです。はっきり言いなさい。
  147. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 はっきり申し上げておるのでありまして、日本の周辺及びフィリピン以北の海域ということをはっきり申し上げております。     〔「それでは約束が違う」「答弁にな   らない」「休憩心々」と呼び、その   他発言する者多く、離席する者あ   り〕
  148. 小川半次

    ○小川委員長 それでは御着席願います。——御着席願います。  ただいまの横路委員質問に対して、政府答弁との間に食い違いがございますので、理事会におきまして取り扱い方を協議するために、暫時休憩いたします。     午後零時四十四分休憩      ————◇—————     午後二時十六分開議
  149. 小川半次

    ○小川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。  この際内閣総理大臣及び外務大臣より発言を求められております。これを許します。岸内閣総理大臣
  150. 岸信介

    岸国務大臣 極東の範囲についての御質問でありますが、この極東の意義につきましては、かねて外務大臣がお答えを申し上げておるように、フィリピン以北、日本の周辺という解釈でございます。ただ御質問がありまして具体的に問題になりました点についてお答えを申し上げますが、大体この条約は、いわゆる極東の地域において、平和と安全が乱されて、それが日本の平和と安全にも非常に密接な関係があるというようなことから、日米両国の関心の強い地域を示しておるわけでありまして、御質問の中国大陸や沿海州は、この意味において含まれないものりと解釈いたします。
  151. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 今、総理の言われた通りであります。
  152. 横路節雄

    横路委員 それでは藤山外務大臣お尋ねをしますが、十一月十日の本会議におきまして、安保改定に対する中間報告で、あなたは竹谷源太郎議員の質問に答えて、こう言っています。私は速記を持ってきているのです。「第二に、極東の地域でございますが、先ほど御説明申し上げましたように、フィリピン以北、中国の一部あるいは沿海州、そういう、いわゆる日本中心にいたしましたこの地方を、われわれとしては極東ということにいたしておる次第であります。」そうすると今、総理大臣の御答弁は、含まれていないということになっている。それであれば外務大臣が十一月の十日中間報告として本会議で同僚竹谷源太郎議員にお答えになった点は、それは間違いであったというようにここではっきりと訂正の御答弁をいただきたいと思います。
  153. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 この問題につきましては、われわれも重要な関心がありますので、十分検討をして参らなければならないわけであります。先ほど申しましたように極東の定義につきましては、フィリピン以北、日本の周辺を含む海域と申したわけでありまして、従って海域と申しますれば陸に続いておるのですから、そういう意味においては沿岸に接続しておる、こういうことは申し上げられると思います。しかし同時にわれわれが最終的に確定いたしましたのは、総理が言われた通りであります。
  154. 横路節雄

    横路委員 そこで大臣にお尋ねをしますが、あなたは十一月の十八日の参議院の予算委員会において亀田君の質問にこう言っております。「この間、フィリピン以北、大陸の沿岸及び日本の周辺における沿岸ということを大体申し上げたつもりでおりますのですが、そういう意味において、むろん最終的には完全な打ち合わせをしまして明確にいたして参りたいと思っております。」今御答弁になりました総理大臣の御答弁は何かアメリカ側と最終的な打ち合わせをして御答弁ですか。その解釈について、なお大臣にちょっと言いますが、今、大臣の答弁総理大臣とまた違っておるのですよ。海域は陸に続いておるのだ、その限界がはっきりしないのだ、こういうことを言うから問題がなんぼでも出るのですよ。この点はもう一ぺん、あなたはどこで最終的に打ち合わせをされて明確にされたのか。
  155. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 今申し上げましたように、最終的には総理答弁通りでございまして、これはわれわれが話し合いをしている過程で、そういうふうに結論をつけたわけでございます。
  156. 横路節雄

    横路委員 外務大臣お尋ねしますが、今のは条約にうたわれている範囲ですね。しかし、行動の範囲は別ですね。今のは条約規定されている極東の平和、安全という意味の範囲、しかし行動の範囲は別だ、私はそう思いますが、大臣のお考えはどうですか。
  157. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 極東の平和と安全に対する関心という意味における極東は、今申し上げた通りであります。同時に、この条約の行動の範囲につきましても、おおむねこの範囲内であること、申すまでもございません。
  158. 横路節雄

    横路委員 そうすると、よくわからないのですが、今の大臣の行動の範囲というのは、おおむね一緒だという意味ですね。その点、はっきりして下さい。条約規定されている極東の範囲と行動の範囲とはおおむね一致だ——もう一ぺん御答弁いただきたい。
  159. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 ただいま申し上げた通りでございます。
  160. 横路節雄

    横路委員 総理、お聞きのように、外務大臣は、完全な一致とは言わないのです。おおむねなんです。極東の平和のためには、さらにその外側についてのいわゆる行動範囲がとられる。ですから非常に危険なんですが、私は総理お尋ねをしたいのです。この日本周辺の中には、歯舞、色丹は入りますね。南千島の国後、択捉はどうですか。千島列島全体はどうなんですか。その点をお聞きしておきたいと思うのです。
  161. 岸信介

    岸国務大臣 先ほどお答え申し上げましたように、日本の周辺、それは日本の周辺の海域を含むことは当然であると思います。従って、今御指摘になりましたような島嶼等は、日本に近接した海域として、入るものだと思います。
  162. 横路節雄

    横路委員 そうすると、今の総理大臣の御答弁で、千島全体をひっくるめて、極東平和維持のための極東の地域の海域であるということになったわけで、そうすると、大臣も、これは総理大臣から御答弁がありましたように、千島列島全体をひっくるむということになれば、沿海州まで含まれるのですよ。まさか千島列島の周辺だけが含まれて、その周辺がひっくるまれないということはないわけでしょう。地図をちょっとごらんになればわかるので……。だから、今の大臣の御答弁は、その点は沿海州は含まないとついうようにお答えになったけれども、千島列島全体がいわゆる極東の平和の中の海域として含まれるということになれば、沿岸州も含まれることになるのですが、そう解釈してよろしゅうございますね。
  163. 岸信介

    岸国務大臣 先ほどから申し上げているように、沿海州や中国大陸は含まないと、私ははっきり申し上げました。ただ、先ほど来外務大臣との質疑応答でも見まするように、海域ということになりますと、海岸線がどっちに入るかという、一方からいえば大陸の一部であり、一方からいえば大陸にすぐ接する、その接点が問題になるというようなこまかい問題は起こってきます。しかしながら、われわれは、その地域における平和と安全が乱されることが、日本の平和と安全に非常に密接に関係を生じてくる、従って、日米両国が共通の関心を持つという意味で、おのずからそこの限界は考えていくべきものである、かように思います。
  164. 横路節雄

    横路委員 十一月十日の衆議院会議における外務大臣の中間報告の御答弁、それから予算委員会における外務大臣の御答弁と、きょうの総理大臣の御答弁とは、違うわけです。これは、ただいま午前中に問題になりました極東の平和及び安全に関する意味における極東の地域の問題は、これは非常に国際間に問題を起こすわけです。単にアメリカとの間におけるその防衛の地域がはっきりしないというだけではなしに、ソビエト並びに中国との間に、この極東の平和、安全に関する地域の問題は、非常に重大な関係を及ぼすのであります。私は、そういう意味で、総理大臣が、この予算委員会において、慎重な態度をとられて、こういう御答弁になられた、これは国際的な影響を考えてのことだと思うのです。しかし、これがここでの御答弁だけでなしに、はっきりと条約の中にそういうことがうたわれておれば、私はやはりソビエト、中国その他隣接している国に対して、誤解を与えないで済むと思うのであります。この点は北大西洋条約にしても、その他あらゆる防衛条約にしても、全部地域は明確にしているのであります。この点がこの安全保障条約における一つの欠点でありまして、こういう点については、私はいずれ他の適当な委員会においてなお追及しなければならないと思うのでありますが、きょうは残りの時間について制約もございますから、以上だけ申し上げて次に移りたいと思います。——何かありますか。
  165. 岸信介

    岸国務大臣 今回の条約条約区域というものは、きわめて明瞭に日本の領域内に限っております。従って他の条約のいわゆる条約区域という問題は、これは明瞭にされておるのでありまして、ただ極東という、そこにおける安全と平和が乱されて日本の平和と安全に非常な密接な関係を持っておる地域というものの解釈について、先ほど来お話がありましたようなある種の不明確さを持っておることは、極東という言葉自身が、地域的な観念として従来いろいろに用いられておる結果がそういうことになっておるのでありますけれども、問題となる、非常に関心の深い、国際的な意味も深いところの中国大陸や沿海州は含まないということで、私は明瞭に御了解をいただきたい、かように思います。
  166. 横路節雄

    横路委員 今の総理大臣答弁では必ずしも私は了解できないのです。なぜならば外務大臣も先般この委員会で、日本の平和と安全と極東の平和と安全はうらはらだとこう言う。だからもちろん条約の第五条において日本の施政下における領域とはなっているけれども、しかし極東の平和と安全が維持されなければ、日本の平和と安全は維持されないのだ、だから私どもは今極東のいわゆる地域について問題にしているのであります。ですからそういう意味で、私どもはこの問題については今の総理の御答弁には納得できないのであります。藤山外務大臣お尋ねしますが、この間河野委員質問に答えて、総理大臣はこう言われておる。在日米軍が極東の地域に出動する場合においては、米韓相互防衛条約、米華相互防衛条約、米比相互防衛条約のその条約に基づいて在日米軍が出動する場合においても、事前協議の対象になるとこう言っているが、それで差しつかえございませんか。総理大臣がそう言っておるのですよ。
  167. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 日本におります在日米軍が基地から出ますときには、日本の施政権のあります区域以外に出ますときには、事前協議の対象になります。
  168. 横路節雄

    横路委員 そこで今お話は、外務大臣はこれを承認されたわけです。そうしますと在日米軍は、米韓相互防衛条約、米華相互防衛条約、米比相互防衛条約で出動する地域というのは非常に広範です。アメリカに対してもあるいはハワイに対しても、太平洋地域に対しても出動するわけですね。出動するわけです。これも対象になるわけです。それで私があなたにお尋ねをしたいのは、この、今総理大臣外務大臣からの御答弁は、かつてダレスが日本アメリカと韓国と、台湾の国民政府を入れたいわゆる東北アジア条約集団機構といいますか、NEATOというものを考えようとした、実質的に——形式的には違うけれども、実質的にはそういうことに明らかになる、私はそういうように考えるのですが、外務大臣としては絶対そういうことはないとここで言い切るのかどうか、その点についてお答えをいただきたいと思います。
  169. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 今回の条約と米韓、米比なり米台なりの条約とは全然関係がございません。従って日本の基地から出ますときには事前協議の対象になるわけでありまして、いわゆるNEATO構想には何の関係もございません。
  170. 横路節雄

    横路委員 外務大臣お尋ねしますが、あなたは中間報告の中では作戦行動と言っている。今度は戦闘作戦行動と言っている。この間もこの委員会において、あなたは、空軍の基地から飛び出して直接向こうを攻撃するというのが戦闘作戦行動だ、しかし海軍のいわゆる基地等から出て行くのは、これは必ずしも戦闘作戦行動とは言えない、こういうように答弁された。それでよろしゅうございますか。海軍の基地から出て行く、これは戦闘作戦行動ではない、そこから艦上爆撃機が飛び立ったり、艦上攻撃機が飛び立てばこれは戦闘作戦行動だが、航空母艦がずっと出て行って、適当な地域から艦上攻撃機が飛んでいったときは、これは初めの出ていったのは作戦行動、あとのは戦闘作戦行動だから、最初の作戦行動については事前協議の対象にならないと答弁したが、それでよろしゅうございますか。
  171. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 私は今お話しのような答弁をいたしておらぬと思います。日本の基地から直接戦闘作戦行動に出ていきます場合には、事前協議の対象になるわけであります。航空母艦等が作戦行動のために飛行機をどこかから出す、しかしそれは戦闘の目的で出ていきますれば、当然事前協議の対象になります。
  172. 横路節雄

    横路委員 外務大臣、空軍基地の場合は作戦行動と戦闘作戦行動というのは明らかです。しかし海軍の基地の場合ははっきりしないですよ。最初にただ作戦行動だ、補給部隊だといって出ていった、しかし出ていって、その中間においていよいよ戦闘が始まったというので戦闘作戦行動に従事する、その最初の場合が事前協議の対象になりますか。ならないではありませんか。その点一つはっきりしてもらいたい。
  173. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 むろんこれは、今お話しのように戦闘作戦行動に参加して出て参りますものは、事前協議の対象になること当然でございます。従ってそういうことなしに、ただ海域を巡回して歩くというのは、これは対象にはなりません。しかし戦闘の目的を持って出て参ります場合には当然対象になります。
  174. 横路節雄

    横路委員 外務大臣お尋ねしますが、この間いわゆる日本国に対する米軍の移動、これは事前協議の対象になるが、撤退は対象にならないと言いました。そこで撤退について私はお尋ねしたい。撤退は何も本国にばかり撤退するのではない。韓国にも撤退する、台湾にも撤退する、あるいはフィリピンにも撤退する。その撤退は私の言うた場合も含みますね。韓国や台湾やフィリピンに行くのは撤退でないのだ、撤退とは本国だけだ、こういうふうに条約上きちっときまってますか、その点はどうなんですか。
  175. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 もちろん日本から撤退します場合に、普通の移動でありますれば、これは事前協議の対象ではございません。ただ日本から出ていく場合に、それが作戦行動に関係しておりますれば、それはむろん事前協議の対象になります。
  176. 横路節雄

    横路委員 外務大臣、作戦行動はいいですが、補給のときはどうです。補給あるいは部隊の移動のときはどうなんですか。そのときは対象ではないですね。その点はっきりしていただきたい。
  177. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 先般御答弁申し上げましたように、補給の場合には対象ではございません。
  178. 横路節雄

    横路委員 部隊の移動と撤退というものはどういうように解釈するのですか。部隊の移動についても、これは対象でありませんね。撤退についてもこれは何も本国ばかりでないのです。韓国や台湾や、あるいはフィリピンが安全でフィリピンに撤退する場合だってあるのですから。この場合には対象ではないのですね、その点だけお聞きしておきたいのです。
  179. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 むろん配属がえをいたしますことは日本の関係でございませんし、従ってどこに配属がえをするかということは事前協議の対象にはならぬのでありまして、本国ばかりではむろんございません。
  180. 横路節雄

    横路委員 私は総理大臣お尋ねをしたいのですが、実は条約の第三条によって、いわゆるバンデンバーグ決議によって、日本防衛力増強の義務を負った、総理大臣は負ったのではないというように言われるかもしれませんが、私は防衛能力についてこれを増強する義務を負ったというように考えるのですが、総理大臣もそうお思いになりませんか。
  181. 岸信介

    岸国務大臣 防衛能力をどういうふうに増強していくかということは、あくまでも日本が自主的に考えるべき問題でありまして、私はこの条約によって新たな義務を負うたものとは思っておりません。
  182. 横路節雄

    横路委員 それでは私は総理大臣お尋ねをしますが、日本アメリカとの相互防衛援助協定、いわゆるMSA協定の中では、日本防衛についての軍事的義務を負っているのですよ。それならば、今総理大臣がおっしゃるのであるならば、このMSA協定は当然破棄しなければならない。このMSA協定を置いておいて、なぜ一体防衛力について増強の義務を負わないというのですか。当然破棄すべきですよ。これは破棄するのですか、どうなんですか。
  183. 岸信介

    岸国務大臣 MSA協定による義務の内容につきましては、法律的な解釈でございますから、法制局長官から答弁いたさせます。
  184. 横路節雄

    横路委員 私は……(「答弁を聞け」と呼ぶ者あり)あなたはやらしてもいいと言うけれども、長々そういう答弁を私の質問の時間に入れられてはかなわぬです。私は総理大臣お尋ねしている。あとわずかしか時間がないですから……。MSA協定については総理大臣はよく御存じないようです。だから法制局長官答弁させるというのですが、MSA協定は明らかになっている。この協定の第一条に、一九四九年の相互防衛援助法、一九五一年の相互安全保障法に基づいて、そうして当該援助に関する条件及び終了に関する条件に基づいて武器等を貸与している、その中にこの二つの法律がはっきりしている。どういうようになっているかというと、合衆国の安全保障が強化される場合、それから条約に基づいて日本が、自国が受諾した軍事的義務を履行する場合、こういうようになっているのであります。しかもこの中には——総理大臣、時間もないですからよく聞いていただきたいと思う。自国というのは日本ですが、日本防衛能力を発展させるための一切の合理的措置、こういうものが明らかになっているとき、しかも終了規定というのは、援助をやめるときの規定とは何かというと、五十九条にこうなっています。もはや合衆国の国家的義務、利益もしくは安全保障に対して役立たない、こういうように考え得る場合においては、大統領権限で援助を打ち切る。従って日本は、今総理大臣お話しのように、防衛力について増強の義務を負わないというならば、この相互安全保障法に基づいてのMSA協定、相互防衛援助協定は当然私はこれを廃棄すべきだと思う。だから軍事顧問団は、この協定に基づいてアメリカから供与されたところの武器が、はたしてアメリカの国家的な利益、アメリカの安全保障に役立っているかどうかということを査察するために来ているではありませんか。それで明らかに一九五一年の相互安全保障法に基づいて、いわゆる援助の規定、しかも終了規定まで設けてあるではありませんか。だから当然私は、今総理大臣からそういうお答えがあるならば、このMSA協定、いわゆる日米間の相互防衛援助協定は、当然これは廃棄すべきだと思う。これは存続するのでしょう。これは一体どういうことなんですか。
  185. 岸信介

    岸国務大臣 MSA協定に基づいておる日米間の関係と安全保障条約の第三条のいわゆるバンデンバーグ決議というものを取り入れて日本防衛力の全体をどういうようにしていくかという問題とは、私は直接関係のない問題だと思います。なお法律的の構成につきましては、先ほど申し上げたように、一応われわれの方の法制局長官の説明を聞いていただきたいと思います。
  186. 横路節雄

    横路委員 私は聞きたいのですよ。しかしそれで時間を遷延されると困るから——それは与党の理事の諸君がそういうことなら聞きますよ。それではどうぞ一つゆっくり答弁して下さい。しかし時間の制約は受けませんよ。
  187. 林修三

    ○林(修)政府委員 御承知通りの、この日米の相互防衛援助協定第八条をさしておっしゃっていることかと思うわけでありますが、この場合も日本防衛力の増強につきましては、政治的、経済的ないろいろな条件を考慮してやるということになっております。これについてどこまで増強するというような義務を具体的に負ったものでないことは、当時においても明らかでございます。それからこの条約の中で日本が負っておる軍事的義務を確認し云々という言葉がございますが、これも当時の御説明で御承知だと思いますが、これは現行安保条約の第二条でございますか、いわゆる第三国に対する基地不貸与の義務、こういうことを確認したのだということを当時も御説明しているはずでございます。  今度の安全保障条約とこのMSA協定との関係でございますが、これは交換公文にも今度やっております通りに、相互防衛援助条約は今後も存続させるわけでございますが、従来の安保条約の引いております点を今度も読みかえたような交換公文をやったわけで、効力を存続させるわけでございますが、この条約に基づいて日本が負っている問題、それから新しい安保条約の三条に基づいて日本が負っている問題、これはただいま総理が仰せられたように別個の問題でございまして、この第三条に基づいて何らか新しい防衛力増強の義務を実質的に負担したことはないということは、従来の政府の説明の通りでございます。
  188. 横路節雄

    横路委員 総理大臣、実は相互防衛援助協定の最終には、一年前に通告してあれば自動的に廃棄になるのです。今度の安保条約は十年の期限があるじゃありませんか。この矛盾はどうなさるのですか。当然この条約に関して、この関係条約としてもしもお出しになるならば、当然ここに十年間の条約の期限をつけて出さなければならないのです。一年前に予告すれば廃棄できるようなこの相互防衛援助協定について、もしもこのまま存続するというならば、なぜ一体一緒に出さないのですか、これは。
  189. 岸信介

    岸国務大臣 安保条約とMSA協定とは本質的に私は違うものであると思います。期限の点を御指摘になりましたが、従来、御承知通り現行法の安全保障条約は無期限でありました。そのもとにおいてMSA協定というものが結ばれておるのであります。従って今度の新しい安保条約において十年としたからといって、MSA協定がそれと同じでなければならぬという理由は少しもないと思います。
  190. 横路節雄

    横路委員 私はこの点は総理大臣と見解を異にします。現行安保条約は決して無期限ではない。これは暫定的な措置、いわゆる暫定的な期限ですよ。この点が根本的に違うのです。しかし私は他の一、二の問題について大蔵大臣にお尋ねをしたいので次に移りたいと思うのです。  大蔵大臣、私は土曜日の日の今澄委員質問を聞いて、いわゆるターターの購入費について、あれは明らかに財政法違反だと思う。財政法違反でないというあなたたちの説は、いわゆる各項の移流用はできるのだ、だから防衛庁という項の中でやっているからいいのだというが、一体昭和二十八年の一般器材費、三十一年の一般器材費の中に含まれているあるいはレーダーの換装費、主砲の換装費というものは継続費ですか、それともいわゆる何でございますか、その点についてお尋ねしておきたい。
  191. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 二十八年とか三十一年とか申しましたのは、船の呼び方が二十八年の警備艦とか、三十一年の警備艦ということで、すでにでき上がっている警備艦のことでございます。ただでき上がった警備艦の主砲をかえるとかあるいはレーダー装置をかえるとかいう問題だけなんです。二十八年、三十一年というのは警備艦の呼称のために、二十八年度警備艦、三十一年度警備艦、かような表現をしているのです。
  192. 横路節雄

    横路委員 それのうちの一般器材費というのは、本来からいえば繰越明許費の中に含まれているものではないのですか。その点についてお尋ねしたいのです。二十八年の警備艦の中のいわゆる一般器材費、三十一年の中の国庫債務負担行為の分もありますよ。しかし両方含まれているのではないですか。
  193. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 この二十八年並びに三十一年に作りました船、この警備艦の主砲をかえるための予算を三十四年に債務負担行為並びに歳出予算の一部として計上した。これは項目のいわゆる器材費でございますから、そのまま他の項目に使うわけではございません、それを使うのでありますから、財政法上許された行為であると思います。
  194. 横路節雄

    横路委員 大蔵大臣、そうすると、今の二十八年、三十一年は防衛庁予算の中の一般器材費の中であるから、いわゆる項目の移流用ではないから差しつかえない、こういうわけですね、今の答弁は。そこだけを承っておきたい。
  195. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 その通りでございます。そこで三十一年度甲型警備艦であるとか、二十八年甲型警備艦であるとか申し上げますのは、甲型警備艦の呼び名でございます。だから三十一年に作った警備艦の主砲をかえるとか、あるいは二十八年に作った警備艦のレーダー装置をかえるということでございますから、二十八年、三十一年というものはただいまでは関係のないことでございます。
  196. 横路節雄

    横路委員 私が大蔵大臣にお尋ねしておるのは、私がいま一つ前にあなたにお尋ねしたときは、二十八年の国庫債務負担行為の分一それからその他の一般の器材費の分、三十一年についても国庫債務負担行為の分、それからもう一つは一般器材費、こういうふうに現に土曜日の日に答弁しておるじゃありませんか。ですから私はお尋ねしたのだが、それで間違いないでございましょう。その点だけ確かめておきたい。
  197. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいま申し上げますように、三十一年とか二十八年というのは、甲型警備艦の呼称の問題でその年度がついておるだけであります。三十四年度にその予算が計上され、また三十五年度にもその予算が入っておる。一部は継続費あるいは一部は国庫債務負担行為ということになっておるわけであります。それが項目のうちにあるわけであります。
  198. 横路節雄

    横路委員 大蔵大臣、この問題は実はきょう大蔵大臣にゆっくり私は質問したいと思ったのですが、極東の地域の問題で非常に時間がかかりましたので、ただ私は問題をここに提示をしておきたいと思います。私はこれは明らかに財政法上の違反だと思う。なぜならば、財政法第三章予算の第十四条の三に、繰越明許費「歳出予算の経費のうち、その性質上文は予算成立後の事由に基き年度内にその支出を終らない見込のあるものについては、予め国会の議決を経て、翌年度に繰り越して使用することができる。」第二項は「前項の規定により翌年度に繰り越して使用することができる経費はこれを繰越明許費という。」第四十三条の三、繰越明許費の翌年度使用、「各省各庁の長は、繰越明許費の金額について、予算の執行上やむを得ない事由がある場合においては、事項ごとに、その事由及び金額を明らかにし、大蔵大臣の承認を経て、その承認があった金額の範囲内において、翌年度にわたって支出すべき債務を負担することができる。」こうなっている。だからこれは明らかに継続費の中にはないですよ。これは明らかに一つは国庫債務負担行為、一つは今言った繰越明許費の中における防衛庁の一般の器材費ですよ。だからそういう意味からいけば、これは明らかにこの翌年度に限って支出することができる、そういう意味で、この問題については明らかに財政法上の違反だと思うのです。だから債務負担行為については、私はとやかく言わぬ。しかし繰越明許費については、これは二年以上にまたがるわけにはいかないのです。だから私はこの点については、明らかに財政法上の違反だと思う。だからその点は、今澄委員が言った、三十二条の項の移流用ではない。繰越明許費については二年以上にわたってやることはできない、これは明らかだ、私はそういうふうに考えておる。大蔵大臣どうですか。委員長さえよければ、何ぼでも答弁してもらいたい。
  199. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 これは先ほど来申しますように、三十四年の器材費の項目に入っておる予算と、それから債務負担行為と両方でございますが、これは項目でございますので、器材費そのものは、繰越明許の規定があると思いますが、このもの自身は、この繰越明許とは関係なしに、項目でございますから使える、かように考えております。
  200. 横路節雄

    横路委員 大蔵大臣、これはもっと議論をしたいのですが、時間がありませんからいずれまた他の機会に……。  郵政大臣いらっしゃいますね。——郵政大臣に一つだけお聞きしたい。協定の第七条に在日米軍については公益事業その他については日本国の法令その他に許されている使用その他の権限については、最低以上の使用といいますか、いわゆる優先的な利用ということについて、協定の第七条にうたっているわけです。この点について、実は行政協定のときには各省は合意書をとられている。そして在日米軍については、その公益事業その他については優先的に使用させることになっている。ところが今度は当然対等の条約になったのだから、在日米軍についてもそういう優先的な利用ではなしに、少なくとも自衛隊と同じような立場においてやらなければならないと私は思うのに、外務省の方からあなたの方に対して、この行政協定と同じように、第七条でうたわれている公益事業その他についても、優先的な扱いについては、前の行政協定のときにやられたその合意書はそのまま存続するんですよと言って、あなたの方は同意を求められましたね。その点については同意をなさるのですか、それとももう同意をしてしまったのか、その点だけお聞きをしておきたいと思います。
  201. 植竹春彦

    ○植竹国務大臣 このことにつきましては、今回外務省の方に、ただでさえどうも電波が少ないものですから、わが国としては電波が少しでもよけいほしいと思いまして、一つこれをわが国の方で使うようにしたいと思いまして、その折衝方を外務省を通しまして交渉いたしておるのでありますが、まだその交渉の結果、合意書の結果につきましては、外務省の方から通知がございません。さような状態でございます。
  202. 横路節雄

    横路委員 今郵政大臣は、今折衝中だ、こう言いますが、総理大臣、実はこれは大問題なんです。やはり行政協定においては非常に不平等な点がある。日本の主権が侵されるような点もある。こういうことで行政協定は問題になって、今度新たに変えられたはずです。しかし外務省は、今私が指摘しましたように、行政協定の中に含まれている第七条におけるいわゆる優先的な使用というものについて、前には各省から合意書を出してあるわけです。だから鉄道の輸送等についても、自衛隊は出動命令が下らなければ他に優先して使用することができないが、在日米軍はいつでも優先的に使用ができる、こういうことは明らかに不当であるというので、実は協定は変えたはずなんです。ところが外務省は各省に命じて、その前に行政協定のときに結んだ合意書は依然として存続するのであるという通達を出して、今問題になっているんですよ。だから私はそういうような不当な扱いが、少なくともこの新たなる協定を結んだ以上は、そうあるべきだと思う。その点については、総理大臣もしも御答弁できれば答弁していただきたい。私に対する時間がないのですから、これは総理大臣の自由なお考えですが、もしも答弁できるならば答弁していただきたい。
  203. 岸信介

    岸国務大臣 私の聞いている範囲内におきましては、そういうことについては日米の間に今折衝中であると聞いております。     …………………………………
  204. 小川半次

    ○小川委員長 小松幹君。
  205. 小松幹

    ○小松(幹)委員 私は、ことしは黄金の六〇年というわけなんですけれども、財政経済政策について、相当日本も曲がりかどに来ておる段階だと考えますので、おおむね質問は、経済、財政の方について質問をしたいと思います。  そこで、新しい安保条約の第二条に、経済協力ということがはっきりうたわれておるわけでありますが、一体、安保条約の中の経済協力というのはどういう具体的な内容を持っておるものか、お尋ねをいたします。     〔私語する者多し〕
  206. 小川半次

    ○小川委員長 御静粛に願います。——御静粛に願います。
  207. 岸信介

    岸国務大臣 今回の新しい条約におきましては、単に防衛の点のみならず、政治経済の全面にわたって、日米が十分な理解と信頼の上に協力するという相互協力を明らかにしておるのでありまして、その一項目として、いわゆる経済協力の点でありますが、経済協力の上において考えていかなければならぬのは、直接日米間の問題、すなわち、たとえば日米の貿易をどういうふうにして円滑に拡大していくかというような問題、あるいは外資導入についてどういうふうに円滑にやり、これによって日本の経済の発展を進めていくか、あるいはそれに関連しての技術の問題もございましょう。そういうふうな直接の日米間の経済協力の問題と、それから最近、いわゆる低開発国に対して、先進国がいろいろの点において、技術であるとか、あるいは経済開発の面において協力するということになっておりますが、日米の間におきましては、そういう点において、特に両方とも関心を持っておるような地域におけるところの開発について、具体的な協力を進めていく必要があると思います。そういうような大きく分ければ二つの方向、内容を持った日米の間の協力、この協力は政府レベルにおいても時々やらなければなりませんが、同時に、民間においてもそういうことを継続的にやっていくような手法を考えて参りたい、かように思っております。
  208. 小松幹

    ○小松(幹)委員 二条の中にあるのには、二つ項目を掲げてあるわけです。「締約国は、その国際経済政策におけるくい違いを除くことに努め、また、両国の間の経済的協力を促進する。」この二つの項目から分けて、日本アメリカとの経済政策の食い違いを除くことに、とわざわざそこに入れたのはどういう考え方で入れておるのか。
  209. 岸信介

    岸国務大臣 先ほども御説明申し上げましたように、この日本アメリカとの関係において、貿易を増進し、自由な経済的な交流ができることに進めていくことが、両国の経済の繁栄のために望ましきことであるという考え方に立っておるわけでありますが、それに支障を生ずるような問題は、これを取り除くという考えであります。従来におきましても、あるいは今問題になっております貿易為替の自由化、そういうものに関連して、両方のとっております政策が必ずしも一致しておらない点もあるのであります。そういう点を除いていくことが必要である、かように思います。
  210. 小松幹

    ○小松(幹)委員 そこで日本の場合は、いささか軍備拡張というか、自衛能力の漸増という格好で兵器生産などをやるわけなんだと思いますが、こういう兵器生産等について、この協定というものはどういうような格好になっておるのですか。日米安保条約の経済協力という中に、いわゆる兵器の生産というものが含まれておるのか含まれていないのか、その点をお伺いいたします。
  211. 岸信介

    岸国務大臣 内容として、特に兵器生産というようなものをわれわれ重要視して考えておるわけではございませんけれども、先ほど来お答え申し上げておるような、広く産業経済の繁栄のために両方が協力する、こういう考え方でございます。
  212. 小松幹

    ○小松(幹)委員 そこで方向を変えまして、一九六〇年本年の世界は、私は好むと好まざるとにかかわらず軍縮段階に入っていくのじゃないかと思います。そういう意味で、少なくともすでにアメリカの予算の中から軍備費というものは削減の方向に、特に小さな兵器生産についてはどんどん落とされてきております。日本にいわゆるMSA協定によって供与されておったところの兵器というものが、あとが品切れになっておる状態ということは、少なくとも軍備縮小あるいは形の変わった一つ兵器というものの移り変わる段階に来ておると思います。     〔委員長退席、西村(直)委員長代   理着席〕 ことに本年はアメリカソ連との東西首脳会談が行なわれる年になっておりますが、私はこの両首脳会談を契機に、世界一つ雪解け方向に来ると見ております。世界経済にもこの影響というものが確かにはっきり来ると考えられるわけであります。今までは少なくとも冷戦で軍備拡大あるいは軍備というものをもって張り合っておった。ところが一応その軍備の拡大というものが頭打ちになって、平常なる段階になって、漸次私は軍備なき平和な社会を目ざすようになってくると考えますが、そういう段階に来たときのいわゆる経済政策というものは、私は軍備の拡張でなくて、兵器の生産拡張でなくて、ほんとうにこれから先は純粋の経済の拡大、経済の競争になると思うのです。世界は経済の競争の段階に入ると考えられるわけなんですが、この点について日本のいわゆる政治の一番のトップにおられる岸総理は、そういういわゆる一九六〇年、新たなる段階に対してどんな考えを持っておられるか、いわゆる雪解け時代の新しい経済機構あるいは経済政策というものをどういうように御判断なさっておるかお伺いします。
  213. 岸信介

    岸国務大臣 いわゆる国際的の雪解けというものをどう見るかということにつきましては、しばしば国会においてお答えをした通りでありますが、しかしわれわれが軍備を縮小し、軍備なき平和の時代を願っておる、その方向に努力をしていかなければならぬことは言うを待ちません。しかし現実がそこまで直ちに行ってないことは、これは小松委員も御承認になることだと思います。そうして経済の発達の目標が、そういう兵器を作ることではなくして、国民の福祉を増進し、国民生活を豊かにしていく方向に向かって経済の拡大を考えていかなければならぬということは私も全然同感であり、これをやっていかなければならぬことであります。ただ現在のような日本兵器生産というものを一切やめるということは、まだその状態ではない、かように考えております。しかし経済の目標がそこにあるのじゃなしに、国民の福祉の増進にある、そういうように経済政策の主眼を置いて考えなければならぬということは、小松委員のお考えと私全然同感でございます。
  214. 小松幹

    ○小松(幹)委員 日本の資本主義の経済発展を見てもわかるように、おそらく資本主義、帝国主義の発展の段階は、軍備の拡張によって発展、成長してきたと思うのです。戦後十五年の日本の歩みを考えてみても、相当そういう面も考えられる。ところがやはり私は、ここではっきり明確に割り切らなければならぬのは、今総理が幾分の兵器はというように言っていますが、経済政策としてはもう幾分の兵器を言う必要はない、はっきり経済政策で争うのだという、世界はそういう段階になってきたと思うのです。いつまでも過去のものに未練がましく経済政策というものを結びつけておくと立ちおくれる、私はこういう意味で、もはや世界は経済の競争の段階に入った、こういうように考えなければならぬと思うわけであります。特に日本は最近経済が非常に成長して参りました。景気がよくなったというか、あるいは経済の成長のパーセントが上がってきた、こういうように数量景気的にも上がって参りました。しかしここで一つ考えなければならぬのは、いわゆるこの経済の成長というものをほんとうに生かしていくのには、やはり曲がりかどに来たのじゃないか、このままのイージーゴーイングな政策で行くことはできない、国の施策の大本というものを平和競争、平和な一つの経済政策、あくまでも腕で争うのでなくて、武器の力で争うのでなくして、経済の数字で争うのだ。貿易の数字あるいは技術の数字、経済の数字で争う段階がはっきり来た、こういうことを確認して、国の政治の一つのモットーにしなければならぬと考えるのですが、岸総理考えの中に、あるいは大蔵大臣等の考えの中に、はっきりしたそういう夢というか、イメージというか、限界というものを認識しておられるかどうかということを私は心配するわけなのです。貿易自由化の問題にしても、あるいは外資の問題にしても、もたもたしているというのは、少なくとも現段階に来たら、経済で世界を乗り切っていくのだという、いわゆる経済競争の段階をはっきり御確認にならぬ限りは、私はこれからの経済政策というものは常にもたつくと思う。今度の貿易為替の交換性の問題でも、私は去年からのこの予算委員会でも、そのことを早くやるべき段階が来ているのじゃないかということを言っておる。けれども、大蔵大臣はそれに対してうまい答弁はする。答弁はするけれども、一向それを現実的に政治に持っていこうとしなかった。ところが初めて去年のガットの会議から、あるいはアメリカの国務次官補等が来て、積極的に押しつけ押しつけて貿易の自由化の問題等をとる、あるいは西大西洋経済機構の会議等でも日本は入れない。まさに孤立化するというようなのけものにあう。日本の官僚なり日本の政治家は、世界のいわゆるのけものになるようなことはいやなんだ、常にどこかのすみっこでも連れて回わってもらわなければいやなんだ、そういう段階を押しつけられて、初めて経済に対する目を少しく開いてきた、こう思うわけなのですが、こういう意味で私はもら少しはっきりした——世界は平和経済の競争の段階に入ったのだということを確認しなければならぬと思うわけなのですが、その点岸総理並びに大蔵大臣のお考えはどうなのですか、お伺いします。
  215. 岸信介

    岸国務大臣 日本として年々ふえる人口を考えてみましても、また日本国民生活の水準を考えてみましても、われわれは経済の発展を考え、拡大を考えていかなければならない。それに関連して日本のような貿易に依存しておる度合いの多い国は、どういうふうにして日本の貿易を拡大するか、また貿易を拡大するについて、日本の産業の内部に存在しておるところの欠陥を、どういうふうに除いていくかという問題を、常に頭に置いて考えていくことは当然であると思う。今日いわゆる東西間における関係が力と力の対立、いわゆる武力と武力の対立というような考えでなしに、あるいは平和的共存であるとか、競争的共存であるとかいうふうにいわれて、経済の面における両陣営の競争が激しくなっていることは事実であります。しかし私は、やはりわれわれの理想の目的は、あらゆる面において競争していくというこの考え方自体は、経済の面においても競争ということに重きを置くことは、われわれの念願しておる世界平和の上からは、あまり望ましいことじゃない。しかし、経済を充実し、経済を発展せしめ、そうして国民の福祉を増進して、生活を豊かにするということは、政治の目標であり、経済政策の目標としてわれわれは強く考えていかなければならぬことである。国際的に貿易の関係等も非常にいろいろな問題が起こって参りますので、これを解決していく上においても、やはり常に頭としては競争に打ち勝つんだというような頭よりも、むしろ世界人類の経済生活なり、あるいは福祉をどういうふうに増進していくか、それにはこういう方向をとることが望ましいことであるというふうな考え方で進んで参りたい、かように思っております。
  216. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいま総理がお答えいたしましたが、一面経済の競争もございますが、国際的協力という面が非常に大きく出ている。これがやはり世界の平和を維持するといいますか、そして全体の経済を拡大していく、同時にまた民族の生活を向上させていく、こういう努力が払われておる。前回もさようなお話をいたしたわけです。ただ小松さんのお話で、私数字を見ますと、防衛予算が非常に減少したという事実があまり出ておりません。私どもは、共産主義諸国の防衛費というものは発表されておりませんからわかりませんが、自由主義陣営の方のアメリカ、イギリス、西ドイツ、フランスなどを見ますと、前年同様あるいは前年より少し上回っている、こういう程度でございまして、防衛費自身が非常に大削減されて経済に非常な大変動を及ぼしておる、こういうような経済状態ではない、かように考えております。
  217. 小松幹

    ○小松(幹)委員 アメリカ防衛予算は切りかえられて、ミサイルの方に回されております。だからロケット兵器、ロケット科学の方に回っておりますから、トータルにおいては変わっておらないかもしれません。けれどもはっきりした一つの行き方は、過去のいわゆる兵器というものに対しては、もはやロッキードが廃止になるように、小さな小銃弾まで全部廃止になっていく傾向であります。そこで、まだ岸総理がはっきりしないのは、やはり軍備で競争しようという考え、とにかく防衛というもので競争しようというか、防衛ができるとかできないとかということを頭に入れていないで、ただ六カ年防衛計画を出してみたり潜水艦を作ったりして、軍備の方で競争しようとする考えがある。これは私は間違っている、こういうふうに考えておるわけです。そこで考えなければならぬのは今まで日本は少なくともアメリカの援助、あるいはその軍事的な供与によって今日まで成長を維持してきた。ところがその十五年の過程に大きな問題がある。私が失敗だということは、あまりにもアメリカに依存し過ぎたということと、もう一つ大陸との貿易交流というものを遮断された。むしろ終戦後の方がある程度大陸あるいは中共との連携もとれておったが、岸さんになってからはっきり大陸との竹のカーテンが鉄のカーテンになりつつある。貿易の上でほとんどもうゼロにひとしいようになってしまった。こういうことは、私は日本の経済というものが、アメリカの援助あるいは供与というものの竹馬に乗って、しかも目隠しされて片目で、東西というものを考えないで、ただアメリカだけの方へ向いて片目で歩いてきた経済ではなかったかと思う。ここを考えたときに、私は今後も大陸と遮断して、中共ソ連との貿易もなくして、ただ片目でアメリカばっかしに依存していく経済態勢でいくのか。もはや戦後十五年、この東西の遮断というものを解決して、アメリカ依存からもある程度脱却もするし、そうして雪解けの中に東西の経済に大きな発展をしようとするコースが生まれてこなければならぬ。ここを考えるときに、私はもはや竹馬に乗って片目で歩くような経済ではいけないと思うが、この点について、大陸との交流、貿易というものをどういうふうにお考えになっておるのか。依然として遮断されたままで行こうとされておるのかどうか。その点をお伺いします。
  218. 岸信介

    岸国務大臣 日本の最近の貿易の数字を御検討いただけば明らかなように、日本アメリカとの貿易の額は非常に急激にバランスのとれる方向に著しく改善をされております。しかしこれだけで日本経済が立っているわけではございませんで、東南アジアその他のアジア地域に対するなににおいても非常にふえておるし、あるいは中南米等に対してもふえていっております。また大陸との間におきましても、ソ連との関係におきましてはこれはふえていっております。不幸にして中国大陸との間が断絶しておることは非常にわれわれ遺憾でございますが、日本としては終始一貫、この地域と貿易をするという考えであり、またそのためにわれわれは過去において相当な努力もし、実績も持ったわけでありますけれども、現在の状態は非常に遺憾な状態であると思います。しかし私は決してこの大陸との貿易なり経済の交流ということに対して盲目的であるわけではございません。しかし今の情勢においては、中国の方の態度は御承知のように一方的に貿易の関係すら断絶せしめるということになっておるのでございまして、私どもが大陸の方に目をつぶっている、片目で歩いているということは、実際のわれわれのとっておる政策からごらん下さればそういうことじゃない。現にソ連との間におきましては、最近においても従来の貿易協定をさらに両国のためにこれを拡大することができるように改定の交渉も順調に進んでおるという状況でございます。
  219. 小松幹

    ○小松(幹)委員 中共との貿易ができないで遺憾だ、しかしそれは捨てていないと口ではおっしゃるけれども、一向やっていない。今ソ連との貿易のことについて話し合っているというけれども、日ソ漁業交渉すらも行き詰まっておるじゃないですか。北洋漁業の問題も、ソ連との問題で行き詰まっている。いわゆる国だけはうまいことを言っても、一つ現実的に手を打っていない。ことにアメリカとの貿易は、初めて一九五九年に輸出超過になっております。ところがその貿易の内容を見てみると、トランジスター・ラジオあるいは雑貨品が多い。こういうトランジスターあるいは電気器具というものだけで日本アメリカとの貿易がつながれて、そうしてそれが輸出超過になったからといって満足している段階ではないと思う。日本の産業というものはそういう雑貨だけが輸出ができてほくそえんでいるような段階ではない。少なくとも鉄鋼の問題の解決にしても中共との解決、あるいは漁業、重工業にしてもソ連との解決というものが積極的になされなくてはならぬ段階に来ておる。私は一九五九年十二月三日の日本経済新聞に次のようなことが出ているのを見たのです。これなどははなはだうれしいような悲哀です。三菱造船と寿工業ではこのほどアメリカのエンジニアリング・コンサルタントであるボン・コーホン・インターナショナル・コーポレーションを通じて、ソ連向けのいわゆるスフ・プラントの注文を受けた。そしてそのプラントはモスクワ近郊に建てるのだといっておるが、ソ連とのスフ・プラントでもアメリカのバイヤー、アメリカの商売を通じなければソ連とは通じないということは一体どういうことか。はっきり言って、三菱造船も寿工業も下請に甘んじなければならぬ。これがアメリカ日本との経済協力の実態なんです、ソ連中共とをシャット・アウトして——しかも米ソはちゃんと雪解けによってこういう契約をしておる。その下請が日本にくる。いわゆるスフのプラント、いわゆる日本の繊維のプラントは大へんいいのです。そういう関係から考えたら、何もアメリカのバイヤーの下請をせにやならぬことはないわけです。直接ソ連と一対一でちゃんと取引ができるのに、こういう現象がきておるということは、大陸との貿易がいかに遮断されておるか、しかもアメリカによって遮断されておるということを如実に示した例であると思う。これがもって日米の協力である。うまいことを言って、協力するときには何もかもなく協力するけれども、こういういわゆる貿易の点において協力してもらわなければならぬ。最近では中共に西ドイツとイギリスの物品がどんどん入っておる。入っていないのは日本だけだといっておる。せっかく隣に大きないわゆる買手市場があるのにもかかわらず、アメリカはこれをシャット・アウトさせておるじゃないか。このいわゆる大陸とのシャット・アウトを切り返して、新しく大陸との貿易が自由にスムーズにできるようなことをなぜアメリカに持ち込んでいかないのか、これが日米協力の第一、いわゆる先ほど第二条にあるアメリカの経済政策日本の経済政策とが違うという場合においては、それぞれ話し合ってやるということが書いてあるじゃないか。アメリカの経済政策は、日本をシャット・アウトして、いわゆる中共からシャット・アウトしてある政策でしょう。しかし、日本が生くるためには、アメリカに人形やあるいはおもちゃを送って商売をするだけが芸じゃないのだ。はっきり中共との問題も解決せにゃならぬ、鉄鋼問題も解決せにゃならぬという一つの目標がある。この目標に向かってなぜ岸総理は解決しないのか、こういうことを私は反問したいのです。あなたは口じゃ経済協力だ、あるいは経済政策だとうまいことをやると言うけれども、こういうところをやっていないじゃないですか。どうなんですか。こういう問題は解決しないのか。
  220. 岸信介

    岸国務大臣 昨年度、いわゆる一九五九年に、アメリカ日本との貿易関係が戦後初めて日本にとって黒字になった、その内容についてトランジスターやなにをおあげになりましたが、もう少し昨年度ふえた各アメリカとの関係をごらん下されば、決してそういう雑貨品だけがふえたわけではございません。機械、鉄鋼等の輸出も相当に行なわれたことが全体の額を多くしたことであるのでありまして、決して私どもは、ただアメリカをわれわれの雑貨の市場として考えておるわけではございませんし、また貿易の実情もそうはなっておりません。  ソ連との関係におきまして、いろいろプラントの問題やあるいはシベリア開発の問題等について、直接ソ連日本との間の話も行なわれておることも小松君すでに御承知通りであります。     〔西村(直)委員長代理退席、小川   委員長着席〕 国際の商売というものは、私から申し上げるまでもなく、いろいろな形において行なわれるのでありまして、ある場合においては、アメリカの商社が引き受けてわれわれが協力するという場合もありましょうし、日本が引き受けて、そうして日本だけではできないので、他のまた有利なところと協力するというような場合もありますし、そのスフの工場の一例をもって、日本の経済がアメリカに従属しているとかあるいは自主性がないというふうに御論じになることは、私は実際の貿易の実情に決して当たらないと思う。現にシベリア開発に関連して、最近ソ連から参りました通商団の一行との間の話し合いというものは、直接にずいぶんいろいろな話が進んでいることも御承知通りであります。
  221. 小松幹

    ○小松(幹)委員 中共問題の解決は、あなたはやり得ない、あなたのいわゆる任期中にはやらないというお考えなんですか。あなたは中共問題の解決をやるというお考えなんですか、その辺、はっきり……。
  222. 岸信介

    岸国務大臣 しばしば申しております通り、私は中共との貿易の関係、経済交流、文化の交流その他のものは、これは両方の誤解を解いて、そうしてお互いお互いの立場を理解し尊重し合って進めていきたい、またそうすることが両国のために望ましいことである、かように考えて、それについては努力をしていくつもりであります。
  223. 小松幹

    ○小松(幹)委員 中共との政治的な解決、なかんずくその貿易、交流というようなことは、われわれは下からの国民の声だと思うのです。もし岸総理がそれの打開に縁がない人物である——今のところ縁がない人物だというように考えられますが、私はあなたの気持は一応そんたくしても、現実の政治は、現実の具体的なものが生まれてこなければ何にもならぬ、そういう意味からするならば、世界経済のいわゆる政治の曲がりかど、経済の曲がりかどから考えて、もはやこういう問題の解決にはあなたではだめなんだから、しかるべくそういうことのできる、またそういうことにはっきりした抱負を持たれておる方が政治の焦点に立つことが必要だ。自民党の中から、少なくとも岸総理はもはや中共問題の解決はできないと烙印を押されて、私がやるというような意見もあるわけなんですから、あなたは、こういう一九六〇年の曲がりかどに来て政治責任をとって、中共問題の解決ができないから、いさぎよくやめるんだと言って退陣をすべきが私は至当だと思うのです。この点についてあなたはどういうお考えなんですか。
  224. 岸信介

    岸国務大臣 遺憾ながら中共政府はちょうど小松委員と同じことを従来いろんなことで申しておりますが、私はあくまでも日本の繁栄と国民の福祉のために政局を担当していくことが最も私の責務である、かように思っております。
  225. 小松幹

    ○小松(幹)委員 アメリカのネーション誌の十二月十九日号に、ジョン・G・ロバーツという人が書いてある文の紹介をしますと、冷戦の氷の割れ目ができて春を告げているとき、岸氏のやっている軍事同盟のための気違いじみた努力は時代錯誤もはなはだしいと、アメリカのネーション誌は言っておるわけですが、もはや私はあなたの意図がいかにあろうとも退陣すべき時が来た、かように考えるわけであります。  そこで次に、私は問題を経済の問題に変えてお尋ねしますが、企画庁長官おられますか。——ことしの企画庁から出した経済の見通しの全般を見てみますと、少なくとも上昇、景気のいいことが伝えられ、また経済の実体指数を見ても一応うなずける上昇指数だと思いますが、ゆるやかに上昇するということだけで、一体三十五年はゆるやかに上昇するのですか、もうのべつまくなしに上昇するのですか、どこでとめるのか、その辺、一つはっきりしておきたい。ただ高原的に上昇するといっても、先はどっちなのかわからぬのですが、いつまで上昇するのですか。
  226. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 三十五年度の景気の見通しでありますが、ゆるやかな上昇ということで、毎月大体経済は上昇するという見通しをいたしております。
  227. 小松幹

    ○小松(幹)委員 それじゃ来年一年間は斜線で上昇する、途中で——いわゆるこれを上期と下期に分けると、下期はどうなんですか、下期もやはり上がっていくのですか。
  228. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 大体毎月上昇するという見通しを立てておりますが、下期にはあるいはその反動が来るのではないかというような説もありますが、これは昨年来、昨年末からことしの初めにかけて過熱しはせぬかというような予想をしておる人がありまして、それがもし過熱すれば三十五年度の下期にはその反動が現われるというような予想をしておった人もあったと思います。しかし、幸いにして昨年末からことしにかけまして非常に平穏に越年いたしましたので、経済はまことに平穏な上昇過程をしておるのであります。この状況を本年中ずっと続けていくように経済政策をとりたい、こう考えております。
  229. 小松幹

    ○小松(幹)委員 経済政策をとりたいじゃない、あなたの方のいわゆる経済見通しの数字の上から言うて、三十五年度の下期はやはり上がるのか、カーブが来て下がるのか、そこのところをはっきりしなさいと言うのだ。ずっと高原で上りいくのか、それならばいつが下り坂になるのかならないのか、その辺をはっきり見通しを言いなさい。あなたのところは景気を見る上の一番おもなところをはずしてある。一番大事なところをぼかしてある。だから下期のことを尋ねておる。
  230. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 三十五年度は、先ほど申し上げた通り、緩慢な上昇過程を一年中続けるつもりであります。
  231. 小松幹

    ○小松(幹)委員 上がりぱなしだということでありますから、それは上がりぱなしか、上がりぱなしなら——実際を見ればわかります。そこで過去、企画庁から出た経済白書等を見ると、経済循環の法則あるいは循環の波とか、山高ければ谷深しというような説を盛んに出して、経済企画庁は少なくとも経済の循環の法則——その法則にもいろいろあると思いますが、キチンの波的ないわゆる考察がなされてきたと思うのです。そうなれば、三十五年度の九月が大体その波のピークになって、あとは下り坂になるというのが一つのいわゆるサイクル理論にもなると思いますが、そういう企画庁の過去のサイクル理論というか、循環の法則から考えたら、ちょっと経済成長の波がおかしくなってくる。その波が型破りであるというなら型破りでいいのです。どうなんですか。
  232. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 景気変動の波は、最近におきましては戦前と違いまして、景気変動の、いわゆる山高くして、また谷深いというような、昔のような景気変動は最近は大体ないという見通しをしております。従いまして、大体私たちの考え方は、ずっと緩慢な上昇過程を得る、こういう見通しでありまして、今のお話通り、九月には転換期が来るんじゃないかというような説は、先ほど申し上げました通り、上期に過熱があれば、九月ごろには転換期が来るんじゃないかというような見通しをする人もあるのでありますが、私たちはそういう見通しをしておりません。
  233. 小松幹

    ○小松(幹)委員 上期に過熱すればあと下るということはそれはあたりまえのことで、過熱するかしないかというのを経済企画庁が数字ではじき出して、下期は上るんだ、そうなれば過去の常識からするサイクル論になるけれども、その幅が相当広くなったのか。もはや経済のサイクルとか循環の法則が幅が広くなった、あるいは日銀あたりが三年をとっておるのに、三年でなくて五年も続くというのかそれよりももっと大きな周波でずっと成長していくというのか、そこの辺はどうなのか、どういう考え方に立つか。
  234. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 三年に周波が来るとかいうようなことは、これはいろいろその見方によってそういう説があると思いますが、三十五年度は大体その反動が来ない、またそのような反動が来ないように政府もいろいろと政策をとっておるのでありまして、私たちは、経済自体から見れば、緩慢な上昇過程を得る、こう考えておるのであります。しかし設備投資やあるいは貸し出しの状況などからして、これを手放しにしておくと、あるいは過熱の危険が決してないとは言えない。だから、そういうことについては手放しはできないというように一応の警告は発しておるのであります。
  235. 小松幹

    ○小松(幹)委員 そこで最近三月黒字倒産説というのも出ております。いわゆる中小企業関係が黒字倒産をするんじゃないか。それはいわゆる自由化の選別融資というものが強化されてくるだろう、あるいは景気がよくなるので、大企業に設備投資並びに運転資金というものを奪われていくということが、これは過熱論でなくして、経済の成長というものが今日のように広がれば、勢い設備投資というものが、ぐんぐん強含みで押してくれば、中小企業はこれに乗っかることができない。また自由化の選別融資というものに引っかかる。これは黒字倒産ということも考えられる。特に中小企業関係について、いわゆる三月黒字倒産というようなことは、これは世間にもある程度言われておるのですが、この辺の見通しはどうなんですか。
  236. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 ただいまの金融状況から申しますると、黒字倒産ということは大体ないという見通しであります。
  237. 小松幹

    ○小松(幹)委員 それでは黒字倒産がないとするならば、中小企業関係の金融というものは、これはどういうように見ておるか。経済企画庁長官に聞くのもどうかと思うが、一応聞いておきます。
  238. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 中小企業の金融の問題につきましては、この三十五年度の予算におきましても相当前年度に比較して多額の資金を用意しておるのでありまして、通産省の方におきましては、中小企業の金融については特に来年度は力を入れることになっておるはずであります。
  239. 小松幹

    ○小松(幹)委員 次に、大蔵大臣にお尋ねしますが、提出された予算書によりますと、大蔵省の策定した予算歳入の税の自然増収というものが、私は過評価されていると見ます。いわゆる二千百億からの自然増収を見ておりますが、これは関税収入を入れないで二千九十六億円の自然増収を見ておるのでありますが、大蔵省がこの自然増収を見たのは、昨年の十一月ごろの第一次の経済見通しにのっとって、景気上昇のカーブがゆるやかに、ごく内輪に見積って上昇するという判断のもとに、この自然増収というものを二千百億と見たのです。ところが、その後経済指数も変えましたが、第二次の経済見通しも指数が少し変わってもきましたが、その数字の変わったというよりも、むしろ私は三十五年度の経済の見通しから見るいわゆる所得の成長率、これは先ほど菅野企画庁長官も、下期を含めて経済がずっと上るということをみずから言うておるのですから、下期に下り坂になるというなら別ですけれども、下期が上がるというのですから、経済の成長はとてつもなく上がっていく計算になる。そういう計算の上に立てば、私は今日の国民所得の伸び八・一の計算からすれば、自然増収は二千四百億を下らぬ、こういう計算ができる。これをもっとはっきり言えば、三十五年度の予算が高原予算でまだ続くとすれば、まだ相当な自然増収を見なければならぬ。少なくとも二千四百億以上自然増収があると見ておる。これはどうなんです。やはり現状なんですか。
  240. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 税収の見通しを立てることは非常にむずかしいことであります。ただいま言われますように、今回の自然増収二千百は過小じゃないかという者もございますが、また人によりましては過大じゃないか、これだけの自然増収をとっては大へんだというような議論もあるわけです。しかし、私どもはそういう俗説——というと言葉が過ぎるかもわかりませんが、そういうことにたよらないで、今日までの税収の実績なり、経済の伸びなどを十分勘案いたしまして、正確に査定した結果で、自然増収二千百というものに実はなったわけであります。先ほど来企画庁長官も申しておりますように、経済は三十五年も三十四年に引き続いて好況を持続するものだと考えます。緩慢に上昇していくものだ、かように実は考えております。また同時に、それは自然の状況に放任したままでそういうことになると申すのではございませんが、同時に私どもは三十四年の景気を三十五年も引き続いて持続させたいという、一方で政治的意欲並びに政治的な各種の措置と合わせて、経済を拡大成長の方へ持っていくという考え方でございます。税の査定におきましては、ただいま申し上げるような意欲的な分子は除きまして、今日までの、三十四年の十一月、十二月、あるいはまたことしの状況等、申告状況などをも十分勘案いたしまして査定した結果でございます。
  241. 小松幹

    ○小松(幹)委員 説があるとおっしゃいますが、私は説で言っておるのじゃない。これは自然増収がまだある。現在政府の査定した自然増収は過小評価だという、これは説じゃない。私が言うのは、第一自然増収ですから数の計算だと思うのです。あなたは意欲的なものがどうだ、こうだと言うけれども、自然に上がってくるのでしょう。あなたが意欲とかなんとか言うのは政治であって、徴収というものは自然に上ってくるのですから、その意欲というものは、数の上ではっきりつかまなければしょうがない。これは意欲とか政策でつかむなら数字は出てこないはずです。少なくともそろばんを入れて数字をはじいた以上は、そろばんと数字の上でものを考えなければならない。こういうふうに考えるならば、現在の国民所得の増加が少なくともこれほどある。同時に国民所得の増加に対して、租税収入の場合は限界租税函数二五%以上をかけなければならぬと私は思う。少なくとも昭和三十二年のいわゆる限界租税函数は、二五%以上の実績を示している。そうなれば、このいわゆる限界租税函数というものをはっきり二五%以上にとらなければ計算が出ないはずだと思う。それを実績だなんといって安く見ておる。源泉所得税の場合には、三十三年度を基点として本年度の成長率を出しているが、三十四年分に対して成長率は六%しか見ていない。三十三年度を基点としては一四%である。実際の成長は、政府が出した資料からいっても、そんななまやさしい成長はしておらぬ。政府が出した資料のいわゆる勤労所得にしても、昭和三十三年から今日までは二一・三にとらなければならぬ。一・三は抜きにしても、少なくとも二〇にとらなければならぬくらいな数があるにかかわらず、政府の原価計算では一四%しかとっていない。法人税に至っては実際は伸びはもっとひどいです。経済企画庁から出した数字の勤労所得の開きというのは一六八%の増加になっておる。この経済企画庁が出した勤労所得のはね上がりとかいうものは全然無視してしまって、この数字とこの数字は別なんです。しかもここにあるのをお尋ねしますが、法人税のところで、租税及び印紙収入、予算説明の十ページのところで、所得率の向上等による調整率が二%になっている。一〇二になっています。これは一体何ですか。この二%の調整率というのは何をとっているか。大臣、説明してもらいたい。所得率の向上等による補正係数が二になっているのです。
  242. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 なかなか税の計算の基礎的な数字でございますので、私どもわからない点がございます。従いまして、事務当局をして十分納得のいくように説明さしたいと思います。先ほど来函数のお話が出ておりましたが、租税の見積もりを立てます場合には、大まかな二五%というようなものをかけて、そしてはじき出すわけに参りません。ただいま法人税について御指摘がありますように、各税種別でそれぞれ積算をいたしまして、そうして総合計を出すという非常に正確な方法をとっております。ただいまの数字につきましては事務当局をして説明いたさせます。
  243. 川村博太郎

    ○川村説明員 法人の所得率についてお答えいたします。法人税の見積もりに当たりましては最近の実績、これは三十五年度の予算につきましては、一番現在わかっておりますのが、昭和三十四年度の八月決算の法人の申告実績でございます。そこで三十四年八月決算以前一年間分の法人の申告実績に、その後の生産指数、物価指数の伸びを乗じまして通算しております。しかしながら、法人の収益は、生産の伸び、物価の伸びと必ずしも一致いたしません。収益率の向上もございますし、あるいは免税所得の動向、非課税所得の動向、これが関係いたします。そこで従来の生産の伸び、物価の伸びと、それからそういう実際の所得の申告の状況、この傾向を勘案いたしまして、所得調整率を計算しております。大体景気の上昇期に当たりましては、価格差益がかなりございますので、生産あるいは物価の上昇いたしますときには、所得調整率はかなり高く出ます。それから景気が下降いたしましたり、あるいは上昇いたしますにしても、前期の上昇よりも伸びがゆるんで参りますと、所得率は若干下に下がります。この調整率を読むこと自体技術的に非常にむずかしい面がございますが、従来の傾向等を織り込みまして一〇二%と計算した次第でございます。
  244. 小松幹

    ○小松(幹)委員 今の説明員のお答えはお答えになっていない。景気が悪くなるとこうなる、よくなるとこうなるのだ、そんな何か学説みたいなことをここで言っているのではない。景気がよくなるということをはっきり言っている。景気がよくなって指数まではっきり出したところで、ここに補正係数が二ととってある。この二は何か、こういうことを聞いている。その二のとり方の根拠を聞いている。少なくともいわゆる租税収入の函数というものは実績からも考え、あるいは学説からも考えて、二以上から二以上とらなければならぬというのが通説なんです。それを二に押さえておるじゃないですか。しかも今日の税は累進課税です。少なくとも累進課税だ。二年も税金を据え置いたら、累進課税でずいぶん上の方のものは、所得は上がりますからとられる格好になってくる。こういうことを考えたら、補正係数というものは、少なくとも相当なパーセンテージをとらなければならぬのに、ここに二と出しておる。二は一体何かということを私は聞いている。むずかしいから、実績だ、実績だと言うけれども、実績の根拠にはやはり数字を使ってあります。勤労所得でもさっき言ったように一四%とか、一年を六%にとって、してありますが、この一%というのがどえらい数になるのです。たった一%と言うけれども、目ごみにしてもいいような一%でありますけれども、何千億の一%でしょう。それは二百億か三百億自然増収が違いますよ。だからここに二%と書くのを二・五%に補正をするということは、たった〇・五%の補正ですけれども、自然増収の額にしたら莫大な違いになると思うのです。そういう意味でこの二%が説明されないと——もう少しはっきり説明してもらいたい、なぜ二%を使ったのか。
  245. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 政府委員をして説明いたさせます。
  246. 原純夫

    ○原政府委員 所得率というのは非常に見込みのむずかしい計数であります。従いまして、御疑問をお持ちになるのはごもっともだと思うのであります。どうしてこの所得率という数字が要るかということから申し上げます。過去のある時期の税収の実績に、生産の伸び、物価の伸び、これをかけ合わせたものをかけて将来を見込むというのが一応筋合いになるわけでありますが、それだけではいけないので、所得率というものを検討いたします。というのは、お話のように、景気が沸いているときは値上がりマージンといいますか、物価の差による利益が出る。またどんどん売れますから、固定費の割掛が減るということで利益が出るので、生産、物価の伸び以上に利益が出て参る。その以上に出て参る分が一〇〇幾らという——一〇二とか一〇五とかいう一〇〇をこえる部分になります。逆に景気の伸びが悪くなる……。
  247. 小松幹

    ○小松(幹)委員 悪いことは言わぬでもいいんだ。ことしはいいということが出ているんだから。
  248. 原純夫

    ○原政府委員 それで、いいことはいいのでありますが、伸びのよさが減って参りますと、この割合は顕著に減ってくるのです。景気がダウンになればもちろんこれはマイナスになりますが、前の年に二割伸びた、ことしは一割だというときには、今の数字は、前の年の実績をもとにしてやりますから、二割のときに出たそういう一時的な利益というものはすっ飛ぶわけであります。従いまして、ことしも一割伸びるというときでも所得率はマイナスになります。つまり一〇〇を割るということがあり得るわけです。過去における実績から見ましても、私どもの検討では一〇〇を割っていることが多々ございます。そういうわけでこの一〇二の二というのが少ないというお感じをお持ちになったようでありますけれども、それはべースが景気の非常によろしいとき——その年には一時的なそういう値上り利益あるいは固定費の割掛の減が大きく出たという過去の実績をベースにしてやりますから、そういうことは毎年々々あるわけのものでないということになるので、率が急速に減って参り、いいときには所得率は一 ○くらいになるときもありますが、来年度は企画庁の見通しでもお聞きの通り、伸びがしり上りに伸びてくるんじゃなくて、むしろ若干ゆるくなるようなカーブを描くだろうということになっております。そうなりますと、この率は顕著に落ちてくるという性格があるわけであります。  しからば、二という数字はどうかということになりますが、これはそういう非常にむずかしいものでありますから、所得率が幾らになるかということをまず目がけて計算するのじゃないのです。私どもとしては全国で何万の人を使って仕事をいたしております。またいろいろその他の経済を診断する方法もある。そういうような担当官のうち、非常に判断のきく者、あるいは経済界のいろいろな判断というものを見て、大きな会社、あるいは中小の会社が来年どうなっていくであろうかというものずばりを検討いたしていくわけです。それらを積み重ねていった最終のものが析出されて一〇二というものになる。仮空で二というものを作って見込みを立てるのじゃありません。大体一億以上の会社であれば、経済雑誌にでも伸び率のことが出ることは御存じの通りで、ああいうもので大体税収の半分は見当がつくわけです。あとの中小の一億未満の法人につきましては、また過去の実績等でそういう景気の動きとの関係を分析して見ていく。見ていって積み上げてみました結果が幾らと出る。それを、生産と物価の増を差し引きますと所得率幾ら、こういう筋合いであります。所得率の性質は先ほど申し上げた通り。大体そういうことで見積っております。
  249. 小松幹

    ○小松(幹)委員 あなたのべースで私が反論しますと、あなたは今、経済企画庁が言ったように、先は経済の伸びがゆるやかに下がるかもしれぬと言った。しかし経済企画庁は下がると言っていない、上がると言っている。下期までずっと上がっていくという経済成長を見ている。だから、あなたのベースでものを言っても、予算編成の方針は、少なくともしまいには景気が下がるという建前で作っているということをみずから言っているわけです。それは本人が知らないで言ったのなら知らないで言ったっていいのですが、そういう積み上げ方式というものが——さっきあなたはいわゆる法人所得は伸びても税金は下がるのだというような言い方をした。それはおかしいので、ある程度法人所得が伸びれば自然増収があることはあたりまえなんです。そのいわゆる伸びた割になるかどうかということは別問題として、法人所得は伸びていますよ。少なくとも二年間にわたって六八%伸びています。そういう伸びはもうちゃんと出ておるのです、勤労所得としてはじき出して。あなたが工場のベテランを集めてどうだこうだと言ったって、ベテランを集めて調べてあるじゃないですか。ベテラン同士が集まって調べた結果がちゃんと出ている。それと、あなたたちが計算したものとあまりにも食い違っておるということを私は言っている。いわゆる政府から出したものを、どっちがほんとうか知らないけれども、少なくも常識的な数字をとるならば、大蔵省の査定した今年の自然増収額は低いと私は断定する。だから低いからよけい税金を取れ、そういう意味じゃないのです。少なくとも減税ができるじゃないか、こう言っているのです。なぜ減税をしないのか。どうせ、いわゆる税率というものは、去年、おととしからきまっているのです。去年からきまっているのです。取られるのです。実際問題として、ここでどういうような論議をしようが、数字にどう表わそうが、予算がどうきまろうが、ちゃんと取られるものは税法上取られるわけですから、自然増収というものは隠したりする必要はない、徴税のべースに上るのですから。数字も予算のべースにあげて、はっきり計算をし、低く過小評価しない方がいい。そうしてその分は減税に回すべきだ、こういうふうに私は考えて、自然増収をもう少し減税に回せ、少なくとも、もっと安く見ても、私はまだ三百億の減税はできると見ます。また先にいって、今のように、経済企画庁が言うように、のべつまくなしに上がっていけば、これはもう三百億とはいわず上がるでしょう。けれども、一応その論は抜きにして、三百億くらいの減税はできる。ところが、私は、もはやそこまできて、この上に減税をせよということよりも、なぜ政府は、予算編成の場合に、二千百億も自然増収があるのにかかわらず、びた一文減税をしないで、いわゆる累進課税の税率というものを二年間据え置くか。それが五百億か千億の自然増収ならいざ知らず、二千百億からの自然増収がはっきりわかっている。大蔵省が安く見た計算でも二千百億はある。私の計算では二千五百億も六百億もあると見る。一応大蔵省のベースで考えても二千百億の自然増収があるのに、なぜ減税をやらなかったか、こういうように問いただしたい。これは過去にだれかがもうこのことを尋ねたと思いますが、今やはり一番大事なものは、私は、自然増収二千億をまるまる政府がぽんとふところに入れて予算編成をするというような無謀なことはやるべきじゃない、少なくとも、この中から減税に充てるべきものを充てて、しかる後に予算を編成すべきである、こういうような考え方を持つわけなのですが、大蔵大臣はどうなんですか、その辺のところを……。
  250. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 減税についてのお尋ねは、もうすでに私前回もお話をいたしました。なるほど税の自然増収は二千億をこしておりますが、国の歳入財源としては、前年度の剰余金が非常に小さくなっておる、あるいはたな上げ資金が減っておる。こういう意味から、予算規模そのもの、歳入規模そのものから見ますと、どうも今回は、特に支出の面で国土保全の対策費であるとか、あるいは社会保障費等が出ておりますので、今回はそれをなし得ないという状況になったわけでございます。
  251. 小松幹

    ○小松(幹)委員 その言いわけは再々聞きましたが、それはあくまでも大蔵大臣の言いのがれであり、いわゆる言いわけであると思います。三十二年度の繰り越し余裕がない、他に財源がないからというのは今始ったことじゃないのです。少なくとも去年、おととしからの予算委員会の席上で、井手以誠委員が、そういう財政のつかみ方をやれば来年昭和三十五年の予算編成には財源がないで困りますよということをここで言っておるわけです。もう一年も前からわかっておるのです。わかっておることを今になって、さももっともらしく財源がないから——財源がないような政治をだれがしたのだ。おととしそれはあなたがしたのだ。ほかに前の大蔵大臣がしたのなら言いのがれはできましょうが、財源がないようにあなたがしたのだ。それを注意されたじゃないですか。ここで井手委員がちゃんと数字をあげて、来年度、再来年度は困りますよ、財源がないでしょうと言ったら、いや、来年、再来年は困らぬと言いのがれをしておいて、さてことし困ったら、余裕財源がないからというような言いのがれは、これは少なくともあなたが大蔵大臣であり、しかも岸内閣の過去の予算編成上の失敗、財政政策の失敗が今日こういう形で出た。その失敗を国民に減税をしないという形で押しつけて、そうしてさももっともらしい理屈をつけておるところが、私ははなはだ解せぬと思う。これは言いのがれです。財源がないことはわかっておる。そうして財源難だ、財源難だ、公債発行せにゃならぬ、今ごろそんなことを言うというのは一体何ですか。財源難は自分がしたのですよ。あなたがしたのだ。人がやったようなことを言いなさんな。何か自然現象で財源難になったのだ、だから財源難だから、強化資金がないから、公債発行をするのだなんて、もってのほかな論理をもてあそんでおるわけなんです。そうして国民を恐怖させて、公債発行にせぬように、どうか自然増収をそのまま減税に充てないで全部予算にくれてくれというふうに仕向けて、大蔵省はそういうようなことを陽動作戦をして、ついに二千百億をまるまるとったわけです。(笑声)私はそう思う。許せない行為だ。これについて大臣の考えはどうなんですか。
  252. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 今、自然現象というお話が出ましたが、ことしの予算で一番力が入っておりますのが災害復旧費並びに国土保全の費用でございます。災害復旧は、昨年御承知のように伊勢湾台風を初め非常な私どもの予想を上回る自然現象があったことは、これは御指摘の通りでございます。そういう事情がありまして、ことしは私どもいろいろ工夫いたしましたけれども、対策をまず第一にしなければならないということで予算を編成いたしました。やむを得ず減税は後年度に繰り越さざるを得なかったという事情でございます。
  253. 小松幹

    ○小松(幹)委員 そこで大蔵大臣の言いわけがまた一つ出た。伊勢湾台風があったから、自然現象が加わったから、それは歳出の方の問題なんです。私が言っているのは、歳入の方の問題で、さっき言った。それでは歳出の方でよけい要ったならば、あの年末に大蔵省の第一次案、年末三十日ごろ出た一次案の中には少なくとも隠し財源三百億をちゃんとためておったじゃないですか。そうして二次査定に臨んでいる。そうしててんやわんやで各省がぶんどり合うた。なぐり込みをかけた。あなたのところにひざ詰めをかけた。そうしてぶんどった。ぶんどることはいいでしょう。ところが、ぶんどったその予算がちゃんとあったじゃないですか。総額は動かさないで、一体どこから出てきたか、隠し財源があったのでしょう。それはどうですか。
  254. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 今申し上げますように、ことしの予算の特質と申しますか、特に力を入れましたものが災害復旧並びに国土保全の予算、もう一つは社会保障費、この二つを大柱にいたしまして健全財政を貫いた、これが今日の経済の上昇にも役立つという意味で健全財政を貫いたということであります。ただいま予算編成途上においてどこからか金を三百億も出したじゃないかというお話でございますが、最初に発表いたします予算は大綱でございますし、総体の予算といたしましては、私どもも一応の腹づもりを作っております。それを今度はしさいに割り振るわけでございまして、別にいわゆる隠し財源というものがあるわけではございません。そうして歳出に対しては、やはり健全財政を貫くという意味におきまして、通常の歳入でこれをまかなうというのが本質でございます。そういう意味から申しまして、税収並びに税外収入を加えて歳入予算を作ったわけであります。この最初の歳入予算に狂いがきたら、これはおしかりを受けても当然かと思います。しかし、当初お示しいたしましたような歳入予算で歳出をまかなったのでございまして、いわゆる隠し財源云々は当たらないと思います。
  255. 小松幹

    ○小松(幹)委員 隠し財源でなかったら、さっきの伊勢湾台風の国土保全費というものはちゃんと第一次にはとってあったでしょう。とってあって、三百億をどこから一体——伊勢湾台風の災害復旧から回したのですか。回したのじゃないでしょう。それならば第一次に少なくとも国土保全の伊勢湾台風のものはちゃんととってあった。とってあって、それを動かさぬであとのものを動かした。だから三百億というものを一たんあなたの胸の中に入れておったのか、あるいは大蔵省が持っておったのか、とにかく隠し財源になるわけだ。隠さぬでも、とにかく手持ち財源ですよ。それで各省からぶんどられた。だからことし各大臣を見てごらんなさい。各省予算がうまくとれたからみなほくほくでしょう。大臣でことし予算がとれなかったという大臣がありますか。みなうまくいったというので各大臣喜んでおる。持っておった隠し財源を、みんななぐり込みをかけて——なぐり込みをかけられたのがほんとうかもしれない。佐藤大蔵大臣は腹の中で笑っておる、ことしはうまくいくぞと。実際はお接待のようにばらまいておる。だから各大臣でことしは十算が少なかったという大臣があったら手をあげてもらいたい。(笑声)どの大臣もどの大臣もみな予算がだぶついてついた。結局第一次から第二次にわたるところの隠し財源というものを、なぐり込みをかけられたり、圧力団体に屈したりしてうまく操作していく、そこに余裕があった。ほんとうにぎりきり減税をして、国土保全の予算を作り、ぎりぎりの予算だったら、あれだけのぶんなぐりを受けても、ないものはない、さかさに振っても血が出ないというのがほんとうだ。それが余裕しゃくしゃくと財源が出たということは、大蔵大臣のいわゆる年末のほくそえんでおった姿が思われる。だから、かえって各大臣からこんちくしょうというわけでうんととられたのだろうと思う。(笑声)  そこで岸総理にお伺いしますが、昨年度自民党が初年度四百十三億減税、平年度七百億所得税の減税ということを公約した。少なくとも初年度、去年は初年度ですから、四百十三億の減税をやる。しかしこれは平年度にわたったら七百億の減税をやるのだということを自民党ははっきり公約しておる。ところが、その公約は、平年度になったことし一つもやってないじゃないですか。しかも自然増収二千百億もとって、減税の公約を破ったじゃないですか。その辺はどうなんですか。公約はやすいけれども、実行はむずかしい。
  256. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 前国会で御審議をいただきましたように、所要の税法の改正を実施いたしまして、その税法改正によってのことでございますから、はっきり公約減税はいたしております。ただ問題は、ことし残っておりますのは、住民税の減税の部分が残っております。この一部は、すでに住民税も減税になっておりますが、一部は法律改正を必要とするということで、これが本年度に残っておる。これは自治庁の方で計画を御説明になることだと思います。そういう事情でございます。
  257. 小松幹

    ○小松(幹)委員 平年度七百億のいわゆる所得減税はどういう格好になっているか、それをちょっと説明されたい。
  258. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 主税局長をして説明させます。
  259. 原純夫

    ○原政府委員 七百億減税は、初年度は五百三十三億円でありまして、平年度七百十七億円という見込みをいたしました。これは昨年この委員会にも善し上げました三十四年度の租税及び印紙収入の予算の説明の中に入っております。それをごらんになりますと、平年度になって処置を要するものは、今大臣から申されました住民税の分でありまして、これは法律改正その他必要な処置をいたすことにいたしております。そして予定通りやる。自余のものは昨年度が初年度で、たとえば所得税でいえば最初の三カ月は旧税率でやりました。あとの九カ月分が新しい減税後のなにになりましたから、三十五年度においてはまるまる一年減税になるので、三カ月分減税が多くなる。これは別段法律をあらためて改正いたしませんでも、すでに改正された法律でそういうふうになるようになっておる。それを見込みますと、全部で七百債ちょっとこえるということになっておるわけでありまして、措置を要する事項は住民税の関係のことだけ、自余のものは自然に減税分が多くなる。この税収の見積もりにおきましても、それらを含んで見積もりを立てておるわけでございます。
  260. 小松幹

    ○小松(幹)委員 地方税のことをいいますが、今度は三十億の地方へ特別心付をしましたが、一年おくれで住民税の減税がくるわけなのですが、地方ではこれをやらないともいっておるが、自民党の先般の決議ではやるように具体的にきまっておりますが、地方税のいわゆる去年のはね返り分ははっきり減税をやるのかやらぬのか、その辺をお伺いします。
  261. 石原幹市郎

    石原国務大臣 お答え申し上げます。先ほど大蔵大臣の方からもお話のございましたように、地方税法の一部改正案を近く提案いたしまして、所得税の減税のはね返りによりまして、住民税の減税を受けまする分の穴埋めといたしましては、交付税の〇・三に相当いたしまする三十億を予算に今度計上いたしました。計上いたします分にいたしましても、いわゆる富裕団体につきましては、これは私は見る必要はないと思うのであります。それからいわゆる交付税を配る交付団体等につきましても、三十五年度におきましては地方税の自然増収も相当あるのでありまするし、あるいはまた交付税も相当額ふえるのでありまするから、それらと今度の三十億、これを両々相加えまして、地方税法に基づいて条例改正をしてもらいまして減税を実行したい、かように考えておる次第であります。
  262. 小松幹

    ○小松(幹)委員 地方税の住民税のはね返りの減税はやるということでありますから、そのことはよくわかりました。やってもらいたいと思います。  そこで予算でありますが、先ほど申し上げましたが、私は今度はぶんどり予算、放漫な、いわゆる圧力団体に屈した予算だ、こういうように言いましたが、これは私は現在の経済動向から考えて、もう少し、あるいは先ほど言った貿易の自由化等、あるいは農業の政策の曲がりかどに来た、こういう段階における組む予算としては、まことに無性格なあるいは散布超過の予算であったように、実際これは計数的にも散布超過になっておると思う。その点が、健全財政というようなふうに言っております。しかしこれは決して健全財政ではない。ほんとうに健全財政ならば、二千百億の自然増収の中から、まず第一に減税分をのけて、しかる後に予算編成に取り組むのが、ほんとうの財政を扱う者の健全的な予算であろう、こういうように私は考えます。そうして、あるいは今の全部使ったとしても、あんなふうな方法でぶんどられて、各省に御接待のようにばらまかれるような仕方でなくて、少なくとも価格維持のための調整費か、あるいは産業基盤の改善資金か、何かいわゆる特にことしは生産物価格支持の一つのプールということも考え段階だと思う。そういう意味ではっきり底を固める意味で価格維持の調整資金でもはっきり用意して臨むことが大事だ。特に思い切って貿易自由化の政策を進めようという段階でありますから——もう第一に大豆でも困るでしょう。いわゆる米価の設定においても困ると思います。二重価格をはっきり認めるのか、あるいは統制を撤廃するのか、あるいは生産費を償う所得補償方式でいくのかというような場合の、いわゆる食管会計の将来の赤字というものをどうするか、当然起こり得べき、いわゆる農産物物価の価格問題というものが当然出てくる、あるいは貿易自由化に伴う一つの転換の資金というものも必要なれば、こういうものに私は調整費として持つべきがほんとうは正しい予算の組み方ではなかったかと思うのです。それを各省それぞれ——これは罪悪ではございません。各省の長の人が責任を持ってそれぞれ自分の名誉のために、あるいはその省の予算のためにとっていくのですから、別に罪悪ではありませんけれども、ほんとうの道から、財政をはっきりした立場で立て直すのには、そういうぶんどりではいかないと思う。特にことしはそのぶんどりが激しかったと思う。いつか池田さんが大臣のときか、非常にぶんどりが激しかったときがあるそうして総理大臣が手をこまねいて見ておったとか、あるいはとり合わぬだったとかいうようなことで、国会で問題がありましたが、それ以後自粛しております。ところが、再び今日になってああいうぶんどり主義な格好になったということは、今後の予算編成の上に、一体だれが編成しておるのか、大蔵大臣は数字を見るだけか、こういうことになると思う。今後のいわゆる財政方針のそご、あるいは財政の組み立て方の問題から編成する責任者の問題、こういう点について大蔵大臣の一つの所感を承りたい。
  263. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 小松さんにお答えいたしますが、大へん誤解があるようです。ただいま言われるようにぶんどられた、あるいは非常な隠し財源がふえたというならば、国の歳入予算を変えたということがございましたら御指摘の通りでございます。あるいは税をふやしたとか、あるいは税外収入をふやして歳入の予算を変えたといわれればその非難が当たろうかと思います。けれども、御承知のように歳入は一切変えておりません。また、歳出自身について、これは非常に放漫な予算だと言われますが、過日河野委員に対して私がお答えいたしましたように、国民所得に対する対比は、三十四年や三十三年よりも、三十五年度予算の方が小さいのです。ことしの予算の規模は国民所得に対して一五%、また三十四年度のものは一五・八八%であったかと思いますが、あるいは一五・九か、そういうような比率でございます。それを一五%にとどめる。さらにまた財政投融資計画を比べてみましても、国民総所得に対しては二一%、三十四年度の財政投融資と予算との規模は、二一・八八であった、かように思います。そうすると、これも規模が小さい。さらにまた、いわゆる政府の財貨サービース購入の支出総体を見ましても、これまた昨三十四年よりも小さいのであります。このパーセンテージが示しておりますように、絶対に放漫予算ではございません。この点ははっきり申し上げますから、数字について十分御検討いただきたい。ただ予算編成の途上の手ぎわは確かに御指摘のように、あまりいい手ぎわじゃなかったと思います。しかして予算編成権自身が政府にあることは、だれも疑いは持っておりません。ただ、ただいまでは、過日総理からも御説明いたしておりますように、政党内閣の時代でありますし、また政党自身が各種公約をいたしておりますものを、その政府がその政党を代表いたしまして、政策を実施するという観点でもございますので、政策の項目ばかりではなく、支出金額についても、政党自身に各種の注文のあることは、これは当然であります。政府といたしましては与党と十分に連携をとりまして、与党の公約を忠実に実施するのが私どもの責任でもあるわけであります。ところで、ただいま申し上げるような処置をとったときに、予算自身の、歳入予算を変更したり、あるいはまた特別に歳入を増加するというような事態があれば、御指摘のような点が当たることになります。私ども大いに考えなければならないと思いますが、そういう点はございませんから、放漫予算だというような非難は当たらないもの、かように私は考えております。
  264. 小松幹

    ○小松(幹)委員 私は財政が放漫だ、こういう意味は、いわゆる歳出の出し方とそのとられ方の手ぎわにも影響はありますが、やはりもう少しことしの十算の組み立て方は違った角度からやるべきだったという先ほどの意見に従って、いわゆる今度の景気をできるだけ刺激させないような予算だという心組みをもう少し進めていかなければならなかったのではないかと思うのです。しからば、これがために私は今日の金融という問題が相当ひんぱんにならざるを得ない結果になっておる。景気はいわゆる高原景気で上がっていく。財政の方も財政投融資は非常に上がっております。そういうかっこうから考えて見た場合には、私は、どうしても金融が繁忙になることは当然だと思っている。そこで私は前から金融は正常化しなさい、少なくともいわゆる金融メカニズムの変更をやって、世界経済のどこにも通ずるような一つの金融体系を作らなければならぬということは今始まったことじゃない、前から言っておるのにもかかわらず、再び今年もただチェックしていくだけの金融、いわゆる神経質に金融政策を、景気の動向を見たり、物価の指数を見ながら、あるいは公定歩合を上げたり下げたり、そういうことに余念なく常に気を張っていかなければならぬ金融政策をやらなければならぬ結果になると思うのです。ということは、それはそれでいいでしょう。金融の時の政策としては遊んでいるわけにはいかぬから、物価の状況を見ながら公定歩合を上げたり下げたりしていく、あるいは準備預金の額を六百億から千億に上げるということもいいことでしょう。しかし、それだけで能事終れりという結果になったら、私はことしも金融のべースというものは同じべースでいかなければならない。少なくともことしこそは金融正常化をはっきりやるべき段階が来ておったと私は見ておる。それであるのにまた一年見送らなければならぬ。ところが金利であります。金利は、私は前からもう少し下げろということをしょっちゅう言っている。何も低金利政策を実行せよというのではなくて、金利が世界のどこの金利よりも高い。特に貿易自由化をやれば——これも株の取得外資を見たらすぐわかる。今アメリカの株のいわゆる総会屋というか、総会屋何とかというのと違うが、世界の、アメリカの総会屋がもはや日本語の勉強をしておるということは一体どういうことなんですか。(笑声)これは冗談でしょうけれども、しかしアメリカあたりの総会屋、世界の総会屋が日本語を勉強しているということは、日本に貿易の自由化、外資の導入が行なわれたら、どんどんなぐり込みをかけてくるということをひやかして言ったものでしょう。ということはなぜか。一つは貿易自由化をするということはいいでしょうが、金利が違う。ここに非常に重大な問題がある。手放しでこれを見のがすわけにはいかない。どうせわしらはそれでいいでしょうけれども、やはり日本の経済というものはそういういわゆる外資でひっかき回されたんじゃしょうがない、こういうように考えますが、金利というものを一体どういうふうに考えているか、これをお尋ねします。
  265. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 為替の自由化を前提にしていろいろ心配する事態が起こるのじゃないかということでございますが、この点は私どもも同じような心配を持つわけであります。しかし、ただいま為替の自由化につきまして完全自由化を考えてはおりませんし、また資本導入についての自由化というものは相当時期的にはおくれて参ります。従ってただいま言われたようなことは、これは今日の状況においては御心配になることはないと思います。また十分私どもも注意をいたしまして、準備のできたものから進めて参りますから、いわゆる為替の自由化においても外国のホット・マネーが自由に入ってくるというようなことは、私どもは抑止するつもりでおります。  ところで金利の問題でありますが、長い目で見れば金利は国際金利にさや寄せする、この考え方に変わりはございません。しかしながら、金利そのものが経済の調節的効用のあること、これは見のがすことができませんから、今日の経済情勢の推移によりましては、時に公定歩合をいじることもあるわけであります。いろいろ金融について御意見が出ておりましたが、確かに金融がこれから大きな役割を果たさなければならないし、先ほど予算やあるいは財政投融資について御注文がありましたが、幸いにして予算ができ、また財政投融資計画の御承認を得ました暁においては、これが実行にあたりまして、民間金融とあわせて十分弾力的な運用をはかっていくつもりでございます。そういう際に、先ほど来どういう処置をとるかという点で御指摘がございましたが、それらの制度をうまく運用していくということを努力するつもりでございます。
  266. 小松幹

    ○小松(幹)委員 金融のチェック・アンド・バランス、いわゆるバランスをとるためにチェックだけやらねばならぬということですけれども、私は、金融正常化の一つのコースというものははずさぬでやるべき段階が、特に強調さるべき段階が来たのではないか。そこでオーバー・ローンの解消はどういうふうにやるのか。それから昨年の三月だったと思いましたが、私はちょっと質問をいたしました。銀行局長の通達によって全国の銀行に、預貸率の改善、パーセンテージを八〇%を限度にして五%引き下げるという通達を出して、そうしていわゆる銀行経営の、もっと言えばオーバー・ローンの解消ということになるかもしれませんが、預貸率の改善を指示しているわけです。実際どうなっておるのですか。一向やられてないと私は見ているが、実際どうなっているのですか。
  267. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 預貸率の改善については常に指示いたしますし、また調査等を通じまして銀行を指導いたしております。また準備預金制度にいたしましても、すでに発動いたしまして、順次これも所期の目的を達しつつある。ただ、私どもこれからいろいろ注意して参りたいのは、コール・レートが高かったり、また私どもが知らないような状況のもとにおいて、言いかえますならば、市中銀行が日本銀行との関係でない個々の立場において貸し出し等をしているとかいうようなこともあろうかと思いますので、先月末に十大銀行につきまして特別調査をして、特別指導するとか、かような適切な処置はそれぞれの時期において講じて参っております。
  268. 小松幹

    ○小松(幹)委員 講じて参っておるということは聞きましたが、しかし一向に銀行の預貸率の改善はできておりません。八〇%の目標に対してはなはだしいのは三〇〇あるいは一〇〇という数字が出ておって、一向に改善されてないということは、いかに銀行が怠慢かというよりも、現在の金融家というものが今日の情勢について眠っておる。ある銀行のそうそうたる人は、インドの金利が英国並みだからそれで日本に金を借りに来るから、金利なんて問題でないというようなことを平気で言っておる、これは操作する金利、いわゆる公定歩合を上げたり下げたりする操作金利ということを言っているのじゃないので、やはり日本の行くべき一つの今日の金融政策というものは低金利であり、体質改善である。体質改善ということになれば、勢い銀行というものは預金と貸金との差にあぐらをかいて、いつまでも銀行の収入というものをはかっていったのじゃいけない。新しい一つ段階で銀行経営というものをやらなければならぬということをはっきり組み込まなければならぬ。いつまでぼやぼやしておって、とにかくよそのところから火がつかなければ、一向に動じないということだから私が強調しているわけであります。  そこで最後の農業の問題に入って、私の質問を終わりたいと思います。やはり金融の問題でありますが、経済の成長率で十年計画で一番問題になったのは、何といっても私は農業の所得の倍増ができないということが最も大きなところだと思います。農業所得が二%程度しか上昇を見てないということは、少なくとも今日の農業という所得が実際問題としてやれないということ。そこで私は現在の日本の農業は思い切って転換をしなければならぬ。この前ここで上林山委員が農業政策のことにちょっと触れましたが、予算は取れたけれども活気がない。活気が農林省にないのじゃない。実際今の農家経済というものはいわゆる豊作貧乏、米がとれてどんどん生産は上がったけれども、一向に所得がよくならない。豊作貧乏、あるいは豚の話が出ましたけれども、鶏を飼えば鶏の値が下がる、豚を飼えば豚の値が下がるという豊作貧乏の一つの姿というものは、今日の農家の所得の上から考えて曲がりかどに来ている。農業政策全体が曲がりかどにきておるということを、私は率直に認めなければならぬ。そこで、はっきり農家の所得を上げるためにどうすればいいのか。福田農相がきょうは病気だといいますが、どなたがお答えしていただけますか——政務次官。いろいろあると思いますけれども、私は福田農林大臣がおっしゃったような、百姓の次男、三男をどこか工場に持っていく、いわゆる農家の数を減らすという政策、それもいいでしょう。もう一つは、どこか農村に職業補導所か職業安定所を設けて失対人夫に出す、所得を上げる、それもいいでしょう。しかし農民を失対人夫に出したり、あるいはどこか都会へ追い出すということが日本の農政であるならばいざ知らず、もうちょっと考え政策はないのか。近代の資本主義社会の、ほんとうに資本というものが動くこの社会に、そういう政策だけでいけるのかどうか。もちろん生産を上げるところの農業政策というものも必要でありましょうが、生産を上げただけでは解決がつかないということになったならばどうすればいいのかこの点に、ついて、一つ政務次官でもいいですが、お答え願いたい。
  269. 小川半次

    ○小川委員長 小松君、福田農林大臣が高熱のため出席できませんので、政務次官をして答弁に当たらせます。小枝農林政務次官
  270. 小枝一雄

    ○小枝政府委員 ただいま御質問になりましたこの重大な経済的変化のあるときに、特に農業が曲がりかどに来ておると言われておるが、これに対してどういう施策をとるかという御質問だったと思いますが、御承知のように政府といたしましては、ただ次三男対策をもって足れりとするものではないのでありまして、農業全体に対しまして、あるいは政策の面におきまして、農業経営の改善の面におきまして、あるいは流通部門の改善等につきまして、鋭意施策をやろうという考えを持ちまして、今回の三十五年度予算の編成にもとりかかりまして、それぞれ所要の予算をつけておるような次第でございますが、またこういう重大なときでございますので、御承知のように長期の問題につきましては、いわゆる農林漁業基本問題調査会にこれを付しまして、鋭意その検討を続けておるところであります。その調査会は御承知のように、三十五年度末をもって調査を完了するはずでございます。その答申を待って、これらに適合するところのそれぞれの処置を講じたいと考えております。
  271. 小松幹

    ○小松(幹)委員 そこで私は今農林大臣がおりませんからそれほど詳しく聞きませんが、農業といえども資本主義社会においては資本投下ということを計画しなければならぬ、そういう意味で農業金融についてちょっとお尋ねします。現在の農業金融は、農協の系統金融、農林中金に集まる系統金融でございますが、それと農林漁業金融公庫がございますが、農協の系統金融は今だぶついて眠っておる。最近は大蔵省の売りオペを百何十億か買ったくらいで、すなわち常時集まったのが六千億、貸し出しが二千七百億、三千億くらいの金が農協いわゆる中央に集まっておる。そうしてその金を使いこなさない。だから農協の問題でいろいろあるのは、農協金融をだぶつかして政府証券を少し買いあさったり、あるいはどこか利のあるようなところに回したりして、一向それが農民のために役に立っていない。系統金融は三千億も余っておりながら、一向農家に配当にならない。いわゆる投下資金として活用されておらない。こういうことはまことに残念なことであり、一体どこで金融が間違っておるのか、農民が六千億も集めて、そのうち半分も借り出さないで、あとの半分はどこかに流れてしまって眠っておる。こういうようなことがあるかと思うと、一面農林漁業金融公庫は相当手がたく出しぶっております。しかしもはや農林漁業金融のために、いわゆる最近は自作農維持創設資金の貸し出し、あるいは非補助の土地改良費などで逐次出しておりますけれども、もはや農林漁業金融公庫は回転ができない。運転ができなくなってきておる。コスト割れがきておる。片一方は農協の系統金融は三千億も余裕金がある。片一方のほんとうに農民が使っておるところの農林漁業金融公庫は、コスト割れで破産が来ている。こういう二道の農民資本のいわゆる金融がちぐはぐな姿になっておるということは一体どういうことなのか、これは金融の問題でありますから、佐藤大蔵大臣に特に農林漁業金融公庫の運転が行き詰まっておるコスト割れについて承りたい。
  272. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいま御指摘のように農林中金、いわゆる系統金融に相当資金がある。従いまして福田農林大臣はこれを特に活用する方法を工夫しようということで、私どもも相談いたしまして、一部を農林漁業金融公庫の方に融資する方策を立てたわけであります。ところでただいま御指摘になりますように、これを合わせて使うことが農政当然のことのように思います。ただいま特に政府もそういう点を考慮いたしております。御了承をいただきたいと思います。
  273. 小松幹

    ○小松(幹)委員 私は何も合わせて使えといって、農林漁業金融公庫は農林漁業金融公庫で使っていいと思うのです。ただ問題は二つある。一つは系統金融である農林中金の金の使い方を、今のような使い方をしておるのがいいのか、ほんとうに農家資本として投下するような別個の一つの道を考えるべき段階ではないかということが一つ。農林漁業金融公庫はなぜコスト割れが来たのかという原因を確かめなければならぬ。大臣はその原因がどこにあるかということ、コスト割れの原因というものを御存じないと思いますが、どうなんですか。その点について。
  274. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 問題は金利の問題でございますが、金利の問題がいろいろ農業の実態等から見まして、特殊金融、ことに低金利のものを必要といたしております。そういう意味から農林漁業金融公庫といたしまして、なかなかコスト面で苦しい立場にあるようでございます。農林中金の金を使うといたしますと、この方は金利が高い。しかし今回農林漁業金融公庫の資金量をふやすという意味で、農林中金の金を一部その方に融資してもらうという措置をとりました。これは別に金利措置なしにこれを実施するということでございます。問題は、農林漁業金融公庫が経営上非常に困るということは、特殊金融が非常に多くなってきておるという点にあるのでございます。
  275. 小松幹

    ○小松(幹)委員 農林漁業金融公庫は、特殊金融ということでもないでしょうが、いわゆる自作農維持創設資金と非補助の土地改良費というのが最近貸し出しが多くなって参りました。二百二十億からの貸し出しをやるようになりますと、この自作農維持創設資金と土地改良費というのは金利が五分で貸し出されております。ところが、ほかの費用というのは、簡易保険会計から財政投融資で持ち込まれた費用は五分五厘です。郵便年金から持ち込まれた費用も五分五厘です。五分五厘の原資を財政投融資でまかなってもらうのはいいが、それを五分で貸さねばならぬから、〇・五のコスト割になる。それを過去の資金で埋め合わせておりますけれども、やはりコスト割れが来るということは、ここに先ほどあなたが言ったように、制度金融が困っておるから系統金融から回すという、その手もありましょう。あるならば、これは系統金融から制度金融に回してもとてもコストが引き合いませんから、あなたが今無利子で貸す、こういうことならば、それは可能でないかと思います。そこであなたは、今度の予算で造船利子に補給を久しぶりに復活してやった。あなたにとっては、まことにいわくつきの造船利子補給であります。こういう造船利子を補給するならば、政府機関である農林漁業金融公庫のコスト割れが来ておるのに、そのコスト割れの金利の補償をなぜしなかったかということが当然考えられる。造船がかわいいのか、農民がかわいいのかということになってくるわけであります。実際問題として造船の方はみな民間です。しかも船は全部会社じゃない。船の方はみな個人持ちで、借金は会社でしないで全部個人持ち、飯野海運とか何とか海運でみな個人の名前です。そうして新造船心々々、自己資金はないくせに、どんどん船を作る。海運界というものは、ただ借りて借りて借りまくって船を作るだけが芸なんです。そうしてしりぬぐいは政府がやれという。そうしてその利子補給を九億何千万か取っていく。実際政府機関であるところの農林漁業金融公庫には、もう少しコストの安い金を財政投融資で回すことができないのか。というか、あるいは郵便年金から出してもいいですよ。あるいは簡易保険会計からでもどこからでもいい、産投会計からでもいいから、農林漁業金融公庫に原資を二百億なら二百億——ことしどれくらい回しておりますか。相当回しておりますが、その回しておる分のコスト割れの分だけでも利子補給をするか何かをしなければ、農林漁業金融公庫は行き詰まってしまうと思う。このままにしたら、コスト割れで高い金を配当されて、低く貸し付けるなどということはできない。そうかといって、農民に高い金利であげるということもできないとすれば、勢い農林漁業金融公庫のコスト割れに対しては、何らかの措置を講ずるときが来たと思うわけです。この点についてどう思いますか。
  276. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 いわゆるコスト割れというのは言い過ぎかと思います。経営上非常に苦しくなってきたということは、先ほど来言われるように五分五厘のものを五分で貸すのですから、そういう意味ではだんだん苦しくなっているということはございます。政府出資は適時にいたしております。ことしも七十億の政府出資をいたしておりますから、これで農林漁業金融公庫は、いわゆる赤字にはなっておらないはずでございます。この点は誤解のないように願いたいと思います。御指摘のように金利が安くなることが一つと、もう一つは資金の量をふやすことと、二つがあるわけです。ここの金利の方も、先ほど来お話のありますような特殊金融をいたしておりますから、いわゆる資金コストを割った貸付をしている。そういうものが政府出資、いわゆる利子のつかない金等で赤字は解消しておる。同時に資金をふやす意味において農林中金からある程度の資金を回してもらう。しかしこれはもちろん金利を払っておるわけです。けれどもこの金利も、農林中金が普通に貸すような金利ではないというのが実情でございます。  それから今、海運利子補給についてのお話に関連してお尋ねがございましたが、海運会計について今回利子補給をしようと申しますものは、計画造船に関する範囲で、今言われるように自分で勝手に作るような船ではございません。計画造船にかかった範囲で、しかも市中から協調融資を受けるもの、これについて七分五厘との差額についての補給をするというのでございます。もっと詳しく申しますと、十一次、十二次の造船については、当時約束したものがありますからその通り、それからまた十三次造船については、これは五分と市中金融との差額の二分の一ということであります。今後のものにつきましては、七分五厘と市中金利との差額ということになるのでございます。従いまして、補助するとしても七分五厘以下にはならないわけでありますから、その点は誤解のないように願いたいと思います。
  277. 小川半次

    ○小川委員長 小松君、あなたの持ち時間を二十分以上過ぎておりますから、あと一問だけにお願いいたします。
  278. 小松幹

    ○小松(幹)委員 大臣、私はこういうことを言っているのです。今年の農林漁業金融公庫には、あなたがおっしゃる通り、一般会計からも出資されております。産投会計からも出資をされております。しかし一般会計から出資されているのは幾らと思いますか。ほんのわずかなものであります。産投会計からと、一番多いのは、簡易保険会計から来ておるのが一番多い。百二十八億、郵便年金から百三十億、一般会計から七億しか来ていない。一般会計と産投会計は無利子だから、それはいいでしょう。しかし簡易保険と郵便年金は利子があるのです。そこでむしろ利子補給をやらないとするならば、一般会計から七億円でなくて七十億出せばいいのです。産投会計から七十億でなくて百億出せばいい。そして簡易保険会計と郵便年金を縮めればいい。無利子の方の金をたくさん融資して、有利子の方を少なくすればいいのです。それは操作です。ところがあなたの財政投融資のやり方がちぐはぐなんです。財政投融資が悪い。財政投融資のやり方が、無利子の金を少なく配当して、有利子をたくさんやっておるから、こういうコスト割れが来ておる。コスト割れば来ておりますよ。実際の資金コストは三・九で、その間の運営費というものを加えれば五・五になる。資金が五・五、これはほんとうの資金コストが三・九、そのほかの事務費とかあるいは人件費を加えたコストが五・五になる。そうなれば、五・五にコストがなっておれば、はっきり五分のものを貸し出すのには〇・五の資金割れが来ておる。そういう意味と、もう一つ造船の問題もありました。あなたはそう言うけれども、過去のものについては計画造船で払うといっても、今海運局で一番問題になっているのは五十三社ある、今度その造船利子をやるのが。ところがやはり自己資金の造船を行なおうとするものがやんやと申し込んできておる。ここを船舶局の方ではやはりちゅうちょしている。結局自己資金で船舶を作ろうとするものがやはりこの利子補給を受けようとしておる。こういうことから、計画造船にだけにとどめるならいいが、自己資金の造船というものに狂奔しているものが利子の補給を受けようとするから、私は問題にしているわけです。
  279. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 農林漁業金融公庫に対しては、ことしは政府出資が七十億であります。またいわゆる政府からの融資金額は二百五十八億、この方は六分五厘五毛であります。ただいま七億の話が出ておりますが、この七億は国有林野から入れられたものであって、公営事業の方へは通り抜けのものであります。この点は七億は別のものでございますから別途にお考えをいただきたい。それからことしの農林漁業金融公庫といたしましては、政府の融資金額が二百五十八億、出資が七十億、それでその資金コストは五・五、またその貸し出しの平均も五・五ということになりまして、これはゼロということであります。赤字になっておらないという実情でございます。それから先ほど来農中のお話をいたしましたが、今年この借り入れをする計画をしたそうですが、実際には計画をやめたそうです。だからこの点は訂正さしていただきます。ところで造船利子の問題でございますが、これは計画造船に限って、十一次と十二次は計画造船をいたしました際に、政府がすでに約束したことがあるのでございます。しかしこれをその後海運界の事情がよくなったからといって、約束があったものをとめたのです。従いまして今回利子補給を始めるに際しましては、その約束をしたものは約束通りにするということで、その契約を政府も実施するということでございます。しこうして先ほど来申しますような処置をとりますが、もちろん会社の経営状態を十分勘案いたしまして、全部が全部について利子補給をするわけではありません。成績の悪いものについてこれをやるのでございますから、別にいろいろ疑惑なり御不満があるようですけれども、そういうものではない。その点は正確に計算をいたしまして、そうして適用範囲をきめて参る。なおこの点につきましては運輸大臣から詳細にお話ししていただきます。
  280. 楢橋渡

    ○楢橋国務大臣 大蔵大臣の説明を補足して、利子補給の問題について主管大臣として申し上げたいのですが、第一に利子補給の問題は、運輸省におきまして国際競争力の強化という問題、ことに日本の外航船の競争の問題につきまして、どうしても保護政策をとる必要がある。御存じのように外国におきましては、アメリカにおきましてもすでにこの外航船に対しましては、船価の半分はこれを国庫が補助を与えておりまして、なお残った四分の三は三分五厘の利子で二十カ年払いということで補助を与えておるのであります。日本は御存じのように、国家目的のために民間の船を徴用しながら、これを沈めて戦時補償を一切払っておらないのでありまして、その金額は約五千億といわれておるのであります。しこうして国際収支の改善のために外航船が稼動いたしますにつきまして、これは当然に国際競争の段階に入りますけれども、全部それは借金で実はやっておるのでありまして、それが市中銀行から九分五厘、開発銀行から六分五厘、しかるに英国は全部戦時補償を払い、同時に金利は四分でございます。ドイツは千三百億の無利子の資金を出して、なお利子の補給をやっておるというような状態でありまして、どうしても国際競争力に対抗していく上においては、この国際的水準まで保護しなければならぬということが運輸当局としての強い主張であります。しこうして今回の利子補給等につきましても、大蔵当局においては相当難色がありましたが、私は実は強硬にこの国際競争力の問題等を勘案いたしまして主張をいたして、利子補給の実現を見たのであります。従いましてあくまでも業者に対しましては、経営の合理化をさせるという音意味において厳命をしておるのでありまして、今御指摘のありましたような点で、すでに三十三年にこの合理化について相当強い指示を与えまして、運輸当局が指示しました。パーセンテージよりも約八十億近くの要するに合理化をやっておりますけれども、なお償却前の利益等につきましても、大体百六十億くらいの赤字を出しておるような次第でございまして、金利も二百億近くになっているような状態でありますから、そういう点で補給をすることにいたした次第であります。
  281. 小川半次

    ○小川委員長 次会は明九日午前十時より開会いたすこととし、本日はこれにて散会いたします。     午後四時五十七分散会