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1960-02-11 第34回国会 衆議院 本会議 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年二月十一日(木曜日)     —————————————  議事日程 第六号   昭和三十五年二月十一日     午後一時開議   一 炭鉱災害頻発に関する緊急質問勝澤芳雄提出)   二 北海道夕張炭鉱ガス爆発事故問題に関する緊急質問武藤武雄提出)     ————————————— ○本日の会議に付した案件  外務委員長辞任の件  外務委員長選挙  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約締結について承認を求めるの件、日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並び日本国における合衆国軍隊地位に関する協定締結について承認を求めるの件及び右両件に関連する諸議案を審査するため委員四十五人よりなる特別委員会を設置するの件(議長発議)  一 炭鉱災害頻発に関する緊急質問勝澤芳雄提出)  二 北海道夕張炭鉱ガス爆発事故問題に関する緊急質問武藤武雄提出)     午後二時二十二分開議
  2. 清瀬一郎

    議長清瀬一郎君) これより会議を開きます。      ————◇—————  外務委員長辞任の件
  3. 清瀬一郎

    議長清瀬一郎君) お諮りいたします。  外務委員長小澤佐重喜君から、委員長を辞任いたしたいとの申し出がございます。これを許可するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 清瀬一郎

    議長清瀬一郎君) 御異議なしと認めます。よって許可するに決しました。      ————◇—————  外務委員長選挙
  5. 清瀬一郎

    議長清瀬一郎君) つきましては、これより外務委員長選挙を行ないます。
  6. 天野公義

    天野公義君 外務委員長選挙は、その手続を省略して、議長において指名せられんことを望みます。
  7. 清瀬一郎

    議長清瀬一郎君) 天野君の動議に御異議はございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 清瀬一郎

    議長清瀬一郎君) 御異議なしと認めます。よって、議長は、小泉純也君外務委員長に指名いたします。(拍手)      ————◇—————  日本国アメリカ合衆国との間の   相互協力及び安全保障条約の締   結について承認を求めるの件、   日本国アメリカ合衆国との間   の相互協力及び安全保障条約第   六条に基づく施設及び区域並び   に日本国における合衆国軍隊の   地位に関する協定締結につい   て承認を求めるの件及び右両件   に関連する諸議案を審査するた   め委員四十五人よりなる特別委   員会を設置するの件(議長発議
  9. 清瀬一郎

    議長清瀬一郎君) 特別委員会設置の件につきお諮りいたします。  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約締結について承認を求めるの件、日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並び日本国における合衆国軍隊地位に関する協定締結について承認を求めるの件及び右両件に関連する諸議案を審査するため、委員四十五人よりなる特別委員会を設置いたしたいと存じます。これに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 清瀬一郎

    議長清瀬一郎君) 御異議なしと認めます。よって、その通り決しました。  ただいま議決された特別委員会委員は追って指名いたします。      ————◇—————   一 炭鉱災害頻発に関する緊急   質問勝澤芳雄提出
  11. 清瀬一郎

    議長清瀬一郎君) これより、本日の日程に掲げました緊急質問一及び二を順次許可するに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  12. 清瀬一郎

    議長清瀬一郎君) 御異議なしと認めます。  炭鉱災害頻発に関する緊急質問をまず許可いたします。勝澤芳雄君。     〔勝澤芳雄登壇
  13. 勝澤芳雄

    勝澤芳雄君 私は、日本社会党を代表して、最近続発している炭鉱災害犠牲者方々に深い哀悼の意を表するとともに、炭鉱災害に対する政府所信をたださんとするものであります。(拍手)  昨年暮れ、三井山野坑で七名、続いて三菱新入坑で二十三名と、相次いでガス爆発による多数の死者を出したやさき、今度は、一日に北炭夕張において四十名、六日には野見山筑紫坑出水事故で四名もの痛ましい犠牲者を出したことは、まことに痛恨のきわみであります。(拍手)  鉱山保安法施行以来すでに十年を経過しているにもかかわらず、炭鉱災害による犠牲者の絶えないのは、これが保安管理に対する政府の怠慢といわざるを得ません。(拍手)今、坑内労働者の、昭和二十五年から三十三年までの災害統計を見ましても、平均、一年間に、坑内労働者千人に対し死者一・八四人、重傷者七十六人の多きを数えているのであります。年々、五人に一人は何らかの傷害を受けていると、統計は語っているのであります。戦後の累計では、驚くなかれ、死者一万人、負傷者百二十万人をこえているのでありまして、労働者はおちおち働いておれないのが現状であります。(拍手)このように災害の多いのは、政府石炭資本家生産のみに重点を置き、目先の利潤のみにきゅうきゅうとして、人命のとうとさを忘れている岸内閣の性格の現われであるといわざるを得ません。(拍手)こうした炭鉱災害の続発している原因はいかなる理由によるものか、岸総理大臣の御所見を承りたいと思います。  次に、保安についてお尋ねいたします。  もともと、わが国保安重点は、労働者注意力喚起第一主義がとられております。保安設備改善充実よりも、労働者緊張を強要しているのであります。御承知のように、炭坑は、数百メートルの地下で、高温と多湿、しかも、騒音と炭塵の中で労働しているのでありますが、かかる劣悪条件のもとで強度の緊張を要求することは、本来・至難のわざであります。もちろん、注意力喚起は、いかなる職場においても必要であります。特に、石炭鉱業は、採炭区域が漸次深部に移行し、自然条件は悪化の一途をたどっております。さらに、コスト引き下げのための合理化機械化は相当進められていますが、保安設備保安技術の面はおろそかにされております。こうした保安安全面軽視が、実は、今日依然として炭鉱災害が跡を断たない原因であり、金のかからない注意力喚起のみで保安なれりとする態度は、この際すみやかに再検討されなければなりません。(拍手)特に、今日、石炭鉱業斜陽産業なりとして、その危機打開のために十万名もの大量首切りによる合理化を強行しながら、保安管理をないがしろにして、労働者生命を無視して増産が行なわれていることこそが、最近の相次ぐ重大災害原因であります。(拍手政府は、この際、保安設備改善保安技術の向上に全力を注ぐべきであると思いますが、どうお考えでありますか。また、石炭資本のための首切りによる暴力的な合理化計画でなく、労働者人命尊重のための保安安全計画をどのように考えておられるか、池田通産大臣にお尋ねいたします。(拍手)  第三に、政府保安監督行政についてお尋ねいたします。  政府は、災害たびごとに、保安監督行政強化を口にしておりますが、その場限りに終わっています。むしろ、最近の動向を見ていると、著しく弛緩しているとさえ思えるのであります。しかも、保安監督官は少なく、一年に一回程度しか巡回できない現状では、刻々に移り変わる坑内条件を知悉することは不可能であり、十分な監督ができないのは当然であります。三菱新入爆発原因についても、ガス爆発した個所は、すでに危険個所として早急に処置されることが叫ばれていたのにかかわらず、爆発するまで放置されていたということは、政府責任であるといっても過言ではありません。一事が万事、北炭夕張災害も、実は、こうした鉱山保安監督行政軽視と弛緩が遠因していると思われます。この際、鉱山保安監督行政強化の第一は、業界擁護通産省から労働者保護労働省所管を移行すべきであると思いますが、岸総理並びに池田通産大臣松野労働大臣に、その御所見を承りたいと思います。(拍手)  なお、最近における火薬爆発事故といい、あるいは都市ガスガス中毒事件、相次ぐ炭鉱災害等岸内閣の不信と自由民主党動揺とともに、災害は激増しつつあります。(拍手)しかも、その震源地は、火元は、火薬取り締まりといい、炭鉱保安といい、ガス取り締まりといい、その責任者は、政局の動揺とともに、自由民主党次期実力者といわれる池田通産大臣であります。これらの災害通産行政欠陥だと思いますが、その御所見を承りたいと思います。(拍手)  第四に、北炭夕張坑災害についてお尋ねいたします。  この炭坑は、大正年間に二百八十名もの死者を出す大災害を起こしております。また、昭和十三年には百六十一名、十五年には五十一名の死者を出しているのであります。大体、この炭坑は、ガスの多い炭坑として甲種炭坑に指定されているのでありますが、ただ指定のしっぱなしで、保安措置に対する監督が不十分ではなかったか。爆発現場については、二、三日前より乾燥による自然発火を起こす危険があったといわれているが、爆発原因は何か。ことに、人道上看過できない問題は、さきの三菱新入坑において、また、今次北炭夕張坑において、罹災者生死が不明のまま坑内に水を注入したことであります。はたして、この措置は必要やむを得ざるものであったかどうか。さらに、今次事故にかんがみ、ガス爆発炭塵爆発に対する徹底的な研究と抜本的な対策が必要であると思いますが、政府はいかなる対策考えておられるか、あわせて池田通産大臣にお伺いいたします。(拍手)  第五に、野見山筑紫坑出水事故についてお尋ねいたします。  先年起こった九州東中鶴坑及び天草志岐坑等坑内出水事故は、旧坑の水が突出して、一瞬、十数名の生命を奪ったのでありますが、これらの事故原因は、旧坑の採掘跡の図面が明確でなかったことによるものであります。筑豊炭田は明治二十年来掘り尽くされ、その地下はクモの巣のように張りめぐらされており、この採掘図が把握されていなければ、いつ事故が起こるかわかりません、いわば噴火口を掘っているようなものであります。しかるに、採掘図は、昭和二十年、福岡鉱山局が戦災にあい焼失されたまま、いまだに整備されていないといわれておりますが、これがいつ整備されるのであるか、なお、今次筑紫坑出水事故はいかなる事情であるのか、池田通産大臣にお尋ねいたします。  最後に、私は、人命尊重についてお尋ねいたします。  こうした人命軽視の現われは、ただに炭鉱災害ばかりではありません。他産業においても、災害は依然として減少しておりません。相次ぐ火薬爆発、あるいはガス事故による中毒死、例年の台風による災害等岸内閣宣伝文句である所得倍増計画は、災害倍増計画となっております。(拍手技術革新がいわれ、オートメーションが進んで第三次産業革命といわれているが、これは生産増強の面のみであって、本来、こうした技術革新は人類の幸福をもたらすものであるにかかわらず、人命尊重については何らの措置も講ぜられておりません。岸総理は、災害を天災視することなく、不可抗力だ、やむを得ないものだという責任のがれをやめて、災害から人命を守るための積極的な施策を講ずべきであると思いますが、その御所見を承りたいと思います。  なお、松野労働大臣に、最近の一般産業災害状況と、これに対する行政監督はどのように強化されておるか、お尋ねいたします。  また、中曽根科学技術庁長官には、災害保安、安全に関する技術革新現状と、これが積極的施策についてどのように考えておられるかをお尋ねいたしまして、私の質問を終わります。(拍手)     〔国務大臣岸信介登壇
  14. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 昨年末以来、炭鉱災害が相次いで起こりまして、多数の犠牲者が出ましたことに対しましては、私も衷心から御同情申し上げ、遺憾の意を表するものでございます。  その原因がどこにあるかということでありますが、御承知のように、鉱山保安法が施行されましてから十有年になりますが、災害によって人命が失われる数は、統計的に漸次減って参っております。ことに、昨年度は、上半期におきましては今までにない大へん好成績であったのでありますが、年末一に、こうした二つの大きな山におきまして、先ほどおあげになりましたような事故が生じまして、このためにとうとい人命が失われたのでございますが、その原因につきましては、関係方面におきまして、各方面からこれを十分検討いたしております。また、最近に起こりました夕張炭坑につきましても同様でございます。これらの理由を十分に突きとめて、そうして、将来再びかかることのないように措置をしていかなければならぬと思います。お話しのように、ただ、その災害を防ぐために、そこで勤務している人々の注意喚起するというだけでは足りないことは、申すに及ばないことでありまして、保安設備であるとか、保安上の各種技術等につきましても、十分万全を尽くして参らなければならぬと考えております。決して、こうした災害を、単なる不可抗力であるとか、天災と見るべきものではございませんで、最近の科学技術の発達の上から申しますと、われわれが、設備の上において、技術の面において十分考究して参るならば、その災害最小限度にとどめることは、これは可能なものでございまして、従って、それに対して全力を用いなければならぬと考えております。  私ども人命を尊重する念が薄いんじゃないかという御質問でございますが、炭鉱はもちろんのこと、各種産業におきましても、こうした事故を除いて、そうして人命を保護していかなければならぬことは当然でございます。内閣産業災害防止対策審議会を設けて、これに関係をしておる産業界や、その他有識者、経験者等意見も聞いて、あらゆる産業につきましても、災害防止については万全を期して参りたい。  なお、具体的の御質問につきましては、通産大臣より御答弁申し上げます。(拍手)     〔国務大臣池田勇人登壇
  15. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) ただいま総理よりお話がございましたごとく、最近、炭鉱災害は毎年少なくなってきておるのであります。しかし、昨年におきましても五百七十四名の犠牲者を出しましたということは、これはまことに遺憾でございます。ことに、暮れからことしの初めにかけまして、大手の山が爆発いたしましたことは、まことに遺憾に存じます。この三つの山につきましては、その原因調査しようといたしておりまするが、何分にも、水を入れたり、あるいは密閉いたしておりますので、今その原因が那辺にあるかということの結論は出ていないことを遺憾に思っておるのであります。全体といたしまして、保安状況は、もちろんいいことはございませんが、従来に比べて特に悪いことはないと考えております。なお、お話しの、増産をしておるから災害が起こるのではないか。もちろん、一般炭の方は減産をさしております。原料炭の方は業者にまかしておるのでございます。別に、特に増産しろというふうな指導はいたしていないのであります。  なお、炭鉱合理化をやって、そうして、保安計画をゆるがせにしておるのじゃないか、こういうことでございますが、炭鉱合理化は、即保安ということと一体をなすものでございます。保安考えずに合理化ということは、炭鉱にはできない。従いまして、保安行政労働省に移すという考え方につきましては、生産保安が不可分であり、生産計画には保安計画がつきものでございますから、これは不可分の関係で、労働省へ移すことは適当でないと考えておるのであります。  なお、最近、家庭用ガスの問題、いろいろ火薬問題等が起こっておりまするが、燃料用ガスにつきましては、一酸化炭素を極力少なくするような施設を講ずるよう計画いたしておるのであります。火薬につきましても、業者に特に注意をさしておるのであります。  なお、夕張炭坑でございますが、最近、切羽の方に相当ガスが多いということがわかっておりましたので、通産省といたしましては、特に北海道炭礦に対しまして、切羽ガスが多いから注意をしてくれという通牒を出しております。しかし、今回の爆発は、切羽ガスでなしに、もっと上の方ではないかと考えておるのでありますが、いずれにいたしましても、各面におきまして、できるだけの注意通産省としてもいたしておるのであります。今後とも、極力各業者と密接な連絡をとりまして、災害防止に万全を尽くしたいと考えております。  なお、夕張炭坑に水を入れた、死骸もとれないのに水を入れたのはどうか、こういうことでございますが、これは保安監督官考えでいくのでございます。夕張炭坑の火の勢い、あるいはガス発生状況等によりまして、保安監督官責任を持ってきめることであるのであります。われわれは、一日も早く注水をとってそうして復旧に入りたいと考えております。  なお、筑紫炭坑の水の問題でございまするが、これは隣の廃坑にある水の調査が不十分でございましたために起こりましたので、お話しのごとく、溜水古洞調査は、一昨昨年来開始いたしまして、三十六年度中には福岡県の調査が完了するものと考えております。(拍手)     〔国務大臣松野頼三君登壇
  16. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 最近の労働災害を一応申し上げますと、昭和三十年、これは度数率でありますが、二四・四九、三十一年二二・九九、三十二年二二・三六、三十三年二〇・二九、三十四年は、大体毎月一九から一八、比較度数率は減ってきております。ただ、最近の災害の傾向として、度数率は減りましたが、非常に甚大な人命に影響する災害というのが最近目立っております。これは、特に、やはり労働省といたしまして、労働者の安全を守る役所としては非常に注意をしなければならないことだと私も痛切に感じております。今回の鉱山問題は、もちろん、労働省は基本的に労働者の安全及び福祉を守る役所でございますが、鉱山に関しましては、通産省鉱山保安局にこの所管を移しておるわけであります。しかし、労働省は全然無関心であるわけじゃございません。鉱山保安法によりまして、労働大臣及び基準局長は、通産大臣及び保安局長に対する勧告権というものが与えられております。従って、調査をいたしまして、関係各省十分連絡の上、必要な措置をとりたいと、こう考えております。(拍手)     〔国務大臣中曽根康弘登壇
  17. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 科学技術庁といたしましては、第一に、ガス自動警報装置を完全にするということ、第二に、自然発火の徴候を早期に発見する計測機を完全にするということ、第三番目に、落盤防止のために水圧鉄柱等研究を促進する、その他、鉱山通気保安技術研究を特に重視いたしまして、重点的に取り上げていくつもりでございます。(拍手)      ————◇—————  二 北海道夕張炭鉱ガス爆発事故問題に関する緊急質問武藤武雄提出
  18. 清瀬一郎

    議長清瀬一郎君) 次に、北海道夕張炭鉱ガス爆発事故問題に関する緊急質問を許可いたします。武藤武雄君。     〔武藤武雄登壇
  19. 武藤武雄

    武藤武雄君 私は、民主社会党を代表いたしまして、去る二月一日北海道夕張炭鉱発生いたしました痛ましいガス爆発事故について、並びに、鉱山保安全般に及んで質問をいたすものであります。  冒頭に、私は、党を代表いたしまして、犠牲となられました三十五名の御遺族に対し、心からお悔やみを申し上げるとともに、いまだに生死不明のまま地底深く放置されている四名の方々の御家族の御心痛はいかほどかと、深く御同情を申し上げる次第であります。(拍手)なお、自己の生死を度外視いたしまして、同僚の救出に坑内深く突入して、ついに犠牲となられました一名の救援隊員に対し、国民代表の一人として、その御行為に深い敬意と御同情をささげるものであります。(拍手)  この事故原因については、なお慎重なる調査の上に結論が出されることと思いますが、現在までの発表によりますると、二月一日一時五十分ごろ、北海道炭礦汽船株式会社夕張鉱業所第二坑本坑坑内において突然ガス爆発が起こり、入坑者六十二名中、死亡三十五名、重傷二名、軽傷六名、行方不明四名、この四名は、再爆発のおそれありとして、生死不明のまま、むざんにも、消火給水のためやむなく放置されておるのでありまするから、生存可能性は全くないと思うのであります。従いまして、今回の事故は、重軽傷合わせまして四十八名という、戦後において、昭和三十年の北海道茂尻炭鉱における爆発による死亡六十名に次ぐ大事故であるのであります。  なお、参考までに、過去数年間における炭鉱ガス爆発による死亡十名以上の災害統計を見ますると、昭和二十九年には、北海道太平洋炭礦において死亡三十九名、三十年には、九州田川炭鉱において十名、同じく三十年には、北海道茂尻炭鉱において六十名、三十一年には、九州香焼炭鉱において十二名、三十二年には、北海道堤炭鉱において十名、三十三年、北海道砂川炭鉱において十名、九州大昇炭鉱において十四名、三十四年には、九州三菱入坑において二十三名、同じく三十四年、北海道住友歌志内炭鉱において十四名というように、相次いで爆発による事故が続発をいたしておるのであります。もちろん、このほかに、小規模ガス爆発落盤炭車事故ハッパ事故等による災害は、三十三年度において死亡者六百三十二名、重傷者二万五千七百三十八名、軽傷者三万六千九百三十七名、合計、実に一年間に六万三千三百七名という膨大な災害者を出しておるのであります。災害件数は六万二千百九十二件に達しておるのでありまして、従いまして、現在の実稼働労働者を二十七万人と推定いたしますると、実に四・五人に一人は年間必ず災害にあっておることになっておるのであります。これを国際的に比較をしてみましても、昭和三十二年度の統計によりますると、百万トン当たり死亡率は、アメリカにおいては〇・九三人、イギリスにおいては一・八九人、フランスにおいては二・六三人、西ドイツにおいては三・六九人に対しまして、日本においては実に一二・六二人となっておりまして、災害による死亡率は、諸外国に比較いたしまして、比較にならぬほどわが国は高いということに注目しなければなりません。しかし、能率の最も悪い日本といたしまして、出炭トン当たりのみで比較することは妥当でないという御意見があるかもしれません。それでは、従業員千人当たりの比率を見てみましょう。昭和三十一年度の統計によりますると、イギリスは千人当たりに対しまして〇・五六人、フランス〇・七八人、西ドイツ〇・九八人に対し、わが国は、実にこの面でも一・七一人と、この災害率は他国に比較をいたしましてずば抜けて高いということに注目しなければならぬと思うのであります。(拍手)  ただいまの政府側の答弁によりますると、事故が減少しておると発表いたしております。しからば、私は反問をいたします。終戦後、わが国炭鉱労働者の数は、実稼働において四十五万人を数えておったのであります。今日、わが国炭鉱稼働労働者は二十七万人と推定をされておるのであります。人員は半分に減ってきておるのであります。はたして災害率が半分に減っておるかどうかということを担当大臣はお考えを願わなければならぬと思うのであります。(拍手)これは現在の鉱山保安行政のいずれかに重大な欠陥がひそんでおるものと判断されるものでありまするが、これらの災害発生原因並びにこれが具体的な予防対策につき、政府はいかなる考えを持っておるか。この問題は、単に業者のみに負担を課するとか、業者のみに責任を課するとかの問題ではもちろんなくて、国家的施策として災害防止に万全を期すべきであると思うのでありますが、政はどのようにお考えになっておるのでありましょうか。特に人命に直接関係する問題でありまするから、政府責任者として、総理大臣所信冒頭にお伺いをいたしたいのであります。  特に、今回の夕張炭鉱事故原因については、生存者も幾らかあることでありまするから、責任問題とは別に、その原因を徹底的に究明をして、今後に備える必要があると思うのでありますが、私は、この際、次の点を特に強調しておきたいのであります。  現在までの爆発の中間的調査報告によりますると、第三区の縦坑に近い部分に一部炭塵爆発の徴候がありまするが、他はほとんどワク等も焦げていないというのであります。死体も火傷はほとんど見られず、顔面等に炭塵爆発特有の炭塵の吹きつけが見られない様 子であります。従って、炭塵爆発予防の措置は相当進んでいたものと判断されるのであります。とすれば、相当多量の突出ガスあるいはガス抜きを行なっておるために、落盤等によってガス管の破損等が生じ、大量のガスが相当広範囲に流れ出まして、メタンガスのみの爆発が広範囲に行なわれたとも判断されるのであります。このことは、将来のガス抜きと排気ガス抜き管等の設備に重大なる考慮が払われなければならないのであって、この点については、特に関係当局、山の労使ともに慎重な調査が必要と思いますが、これに対して、一体、監督官庁としてどのようにお考えになっておるのでありましょうか、お尋ねをいたしたいのであります。特に、行方不明者の処置等につきましては、鉱区の保護等にとらわれることなく、人道的に最善を尽くすべきであると思うのでありますが、政府のとりつつある具体的な措置について、担当大臣より御説明をいただきたいと思うのであります。  さらに、次の点について通産大臣にお伺いをいたしたいのであります。  まず第一に、最近の石炭界は、エネルギー革命の波の中で、政府・業界を通じて強い石炭の合理化が要求をされておるのであります。特に、輸入重油との競争から、経営上のコスト引き下げが大幅に要求をされ、少なくとも三カ年間にトン当たり千二百円から千三百円という大合理化が必然のこととして要求をされておるが、特に、政府重点は、大手炭鉱を中心とする合理化に将来の構想があり、現実も、また業界も、主として大手が計画遂行に熱心のように見受けられるのでありまするが、コスト引き下げを中心とする急激なる合理化のため、保安上の教育、施設、人員等に対する制約が逐次強化をされつつあるのではないか。このことは、昭和三十三年と三十四年の事故発生統計を見ましても、死亡者が、中小炭鉱は三百八十八名から二百八十八名に、一年間に激減をいたしておるのであります。ところが、大手炭鉱は、逆に二百四十四名から二百八十六名と、急激に死亡が増加をいたしておるのであります。これを見ましても明らかであろうと思いまするけれども、この点について、政府は、ごまかしではなく、ほんとうの炭鉱災害の実態をここで御説明願いたいと思うのであります。(拍手)  次に、ガスは空気に対しましては全く無力であるといわれておるのであります。従いまして、設備と細心の注意が伴うならば、不可抗力という文字は、ガスに関する限りは絶対になくせると思うのであります。爆発に関する限り、宇宙時代といわれまするほど科学が進歩しておりまする今日、なお依然としてガス爆発が跡を断たないことは、炭鉱労働者にとっても、国民にとっても、まことに不可解なことであって、われわれは了解ができないのであります。  私も、半生を坑内で暮らしまして実際のガス爆発にも際会をいたしている一人であります。坑内で働いておる人たちは、坑口の光を見るまでは、きょうも生き延びたという真の安心感がわいてこないのであります。この不安の最大の原因は、自分一人の注意のみをもってしてはどうにもならないガス爆発の恐怖が常に頭を支配しているからであるということを、保安担当に関係する行政者はよく考えなければならぬと思うのであります。(拍手)これは、決して私一人の経験のみでなく、坑内労働者全員の持つ不安なのであります。  しかるに、わが国現状は、公共の爆発試験場といたしましては、福岡県の通産省の資源技術研究所において、ごく小規模の実験を行なっておるにすぎないのであります。しかも、その予算は、年間わずかに七十四万円という少額なものであり、ただ、そうした実験を行なっておるという名目にすぎないのであります。保安に対する無責任きわまる政府施策の一端をよく私は現わしておると思うのであります。(拍手)  私は、機会があって、米国ピッツバーグ市の国立爆発試験場を見学したのでありますが、ここにおいては、実際の国営炭鉱において、あらゆる種類の爆発実験が絶え間なく行なわれておるのであります。その結果、米国においては、ほかの災害率においては相当高いのでありますけれども、ガス爆発に関する限り、極度に減少をしてきておるのであります。今日の段階においては、爆発に関する限り、ほとんど克服できたとすら彼らは誇っておったのであります。この際、政府行政指導の責任者として、このような施設に対して真剣に考慮をする考えはないか。特に、不況に際会をして、多くの買い上げ炭鉱を保有しておる整備事業団を持っておるのでありまするから、熱意さえあれば、全国四炭田地帯に開設をすることも可能なのであります。  今回の災害による損害は、完全回復までには、炭代を合わせますと実に三十億に達するともいわれておるのであります。また、年間四十九億円の炭鉱向け労災補償金を政府は支払っておるのであります。これらを考え合わせますると、すべてこれらは鉱員の血の代償であることを、まず第一に政府考えねばならないのであります。(拍手)この際、政府は、思い切って、このような施設に対して踏み切る考えがあるかどうか、その所信を承りたいのであります。  次は、保安管理の面でお伺いをいたしたいのであります。現在、全国の現地側の保安上の要望として、さらにガス爆発の完全予防を期するために、各炭鉱ごとに、ガス完全探知測定器を、いわゆる義務として設備をしてもらいたいという声があるのであります。しかし、これはただ非常に高価でありまして、この際、政府は、人命尊重の意味から、これらのガス完全探知器の設備をいわゆる義務づける代償として、これらに対して補助を与える考えはないかどうか、お聞きをいたしたいのであります。  また、鉱務監督官の数が非常に少ないという声は、全国の要望となって現われておるのであります。現状においては二カ月に一度くらいしか回れないともいわれておるのでありまするが、この実態はどのようになっておるか。さらにまた、現在の各山の保安管理の面にいろいろ問題があると思われるのであります。すなわち、経営管理者と保安監督員との関係は、生産保安の二面行政を同一人の指揮下に置いておる場合がしばしば見受けられるのでありまするが、こうした実情をいかに政府はお考えになっておられるか、所見を承りたい。また、現場係員が即保安係員の状態になっておるのであります。もちろん、現場係員が保安責任を持つことは当然でありまするけれども、単に、これらが名目的な保安確保の責任者になっておるきらいがないとも言えないのであります。これらに対する所見をお伺いいたしたいのであります。  次に、中央の保安行政を、通産省労働省か、すなわち、生産関係省と監督関係省とに分離せよとの主張は、鉱山保安局開設以来、久しく行なわれてきた議論であるのであります。今日、かくのごとく続発する鉱山災害のことを考えるとき、なお、近代交通網の発達と近代工業の複雑化等による事故発生は、工場に、道路に、海上に、あるいは航空事故等、莫大なる人命を毎日失いつつあるのであります。この事実に思いをいたして、政府は、この際、全産業を包含する産業安全のため、独立の保安機構を設けまして、とうとい人命の保護に万全を期す考えはないかどうか、総理大臣並びに通産、労働各大臣の所信をお伺いしたいのであります。  本年度予算において、政府は、新たに民間の保安指導員制度を設けて、民間大会社出身の保安責任者で定年退職となった者の中から、指導的な人物を、あらかじめ保安指導員として登録をしておきまして、炭鉱側の要請によって、あるいは特に事故頻発する中小炭鉱等を対象として、指導あるいは助言をせしめるために、旅費、手当等について予算を計上いたしておるのでありまするが、その額は、中央・地方を合わせましてわずかに二百十八万円程度にすぎないのであります。これによって大なる効果を上げることはきわめて困難な状態にあるのであります。真剣に政府がこの制度の活用を考えるならば、炭鉱側の要請ではなく、みずから積極的に、大手を含めて、この際指導する態勢を整えるとともに、予算的にも十分なる措置を講ずべきであると思うのでありまするが、通産大臣のお考えを承りたいのであります。(拍手)  私は、最後に、最近の保安行政上、受ける側の考え方として、法律にさえ違反をしなければ、あるいは監督をする側も、法律に照らしてどうかというように、法万能の保安に双方が落ち込んでおるのではないかということを憂うるのであります。実際に山の災害等考えるとき、法律や規定のみで判断することのできない事故発生をするものであります。山に働く者の長い間の経験から、あるいは熟練者の感覚から判断をする技術上の処置など、無視することのできない面が幾多あるのでありまして、保安の万全を期するためには、この点は、民間の保安指導員の構想にも当てはまるし、保安教育の面にも特に重視をすべきであると思うのであります。政府は、この際、保安教育の面でも、もっと積極的な施策を施す必要があると思うのであります。炭鉱生産性向上の面で国家が保護助長の政策をとることは、もちろん必要でありましょう。しかし、私は、鉱員の生命の安全のために、それ以上に重視をする政府のかまえがあってこそ、初めて政治と言えるのではないかと思うのであります。  以上の諸点について政府の明確なる答弁をお願いいたしまして、私の質問を終わりたいと思うのであります。(拍手)     〔国務大臣岸信介登壇
  20. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 産業の発達とともに、各種産業にいろいろな災害が起こっております。これに対して、この災害をいかにして防止するかということは、ただ単に産業の発展という上から考究しなければならぬ問題であるばかりでなく、その災害が、常にとうとい人命犠牲をもたらすということから考えてみましても、この災害防止対策というものは、産業の発達とともに、文化国家におきましては特に力を入れなければならぬ問題であると思います。先ほど申し上げましたように、政府災害防止対策審議会というものを設けて、そうして、各方面の経験者や、また、そういう方面関係される有識者を集めまして審議を行ない、また、その審議の結果の方策を各種産業に適用していく、さらに、それを法制化しなければならぬようなものについては法制化していくという処置を講じております。そのうちでも、炭鉱状況は、先ほど御指摘にありましたように、ガス爆発の問題、炭塵爆発の問題、落盤の問題、その他出水等、いろいろな災害が従来におきましても具体的に起こっているわけでございまして、これに従事されておる労務者の労働の条件から見ますと、特に災害が悲惨なものがあるのでございます。従って、これに対しては、鉱山保安法を設けて、特別の監督官も置き、法制上もいろいろな処置を講じてきております。ただ、最近における科学技術の発達の上から見まして、こういうふうな事故発生をいたします実情を考えてみると、保安技術の上に、あるいは保安設備の上に、いろいろ改善を加えるべき点が少なくないと思います。また、単に法制の施行だけではなくして、御指摘になりましたような、多年それに関係をしておる山の経験者の現場における保安についてのいろいろな考えというようなものを取り入れていって、実際に即した保安設備を、保安の処置を講ずることは非常に必要である、かように思いますので、今後におきましても、鉱山保安法の運用に関して、そういう点についても特に留意をして参りたい、かように考えております。(拍手)     〔国務大臣池田勇人登壇
  21. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 夕張炭鉱爆発原因につきましては、武藤さんの言われるように、死体の状況その他から見まして、炭塵爆発でなしに、落盤による多量ガス爆発がおもな原因ではないかといわれておりまするが、何分にも、注水いたしておりますので、そのしかとした原因はわかりません。私は、早急にこれを調べまして、今後の対策の指針にいたしたいと考えておるのであります。  次に、爆発災害防止の方法といたしまして、これは人的方面と、設備、いわゆる物的方面とがあると思います。人的方面につきましては、お話しのごとく、鉱山監督官の増員、また、旅費の増額等も試みております。また、ただいまお話し保安指導員につきましても、目下、通産省考えておる次第でございます。いずれにいたしましても、労働者、あるいは経営者、並びに役所、各人がおのおのこの防止全力を尽くすことが大切でございます。また、設備の面におきましても、資源技術試験所を拡充いたしまして、早期に爆発の危険性を発見するとか、あるいは可燃性ガス自動警報装置をつけるとか、いろいろな物的施設も必要と存じます。また、古洞水の調査も必要でございますので、この点につきましても、今後一そう力を入れていきたいと考えております。  また、鉱山におきまする生産管理機構と保安管理機構とが一人で二役をしておる、これの利害につきましては、従来ともいろいろ議論があったのでございまするが、今後、外国方面等の実情を調査いたしまして善処いたしたいと考えております。(拍手)     〔国務大臣松野頼三君登壇
  22. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 労働省行政機構の問題にお触れになって、産業安全と生産と二つに分けてはどうかという御意見は、もちろん、私も傾聴すべき御意見だと思います。ただ、直ちに今労働省通産省の機構をいじるかというと、これはもう少し待っていただかないと、諸般の問題がございます。もちろん、基本的に、ただいまの労働省の設置法では、労働者の福祉、特に人命に関しましては労働省が力を入れるということは当然のことであります。また、最近、特に人命における災害がふえたことは、非常に労働大臣としても注意しなければならないことだと真に考えております。ただ、直ちに行政をいじればいいかというと、これは、もう少し行政の内容について私たちも検討いたしたい。今日でも、保安法におきましては、労働大臣が勧告をする、あるいは基準局長から保安局長へ勧告をするという、密接な連絡をとる機構になっておりますので、私は、この機構で今後成果を上げていけるものだと信じております。  なお、せっかく、最近度数率が減ってはおりますけれども、人命に対する影響がはなはだ甚大でございますので、特に、安全管理指導員とか、あるいは安全推進員というものを、より以上選定をいたしまして、各事業場々々々においての安全の万全を期して参りたい、こう考えております。(拍手)      ————◇—————
  23. 清瀬一郎

    議長清瀬一郎君) 本日は、これにて散会いたします。     午後三時十八分散会      ————◇—————  出席国務大臣         内閣総理大臣  岸  信介君         通商産業大臣  池田 勇人君         労 働 大 臣 松野 頼三君         国 務 大 臣 中曽根康弘君  出席政府委員         内閣官房長官  椎名悦三郎君         法制局第一部長 山内 一夫君