運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1960-04-28 第34回国会 衆議院 法務委員会 第24号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年四月二十八日(木曜日)     午前十時三十七分開議  出席委員    委員長 瀬戸山三男君    理事 鍛冶 良作君 理事 小島 徹三君    理事 小林かなえ君 理事 福井 盛太君    理事 菊地養之輔君 理事 大野 幸一君       綾部健太郎君    世耕 弘一君       高橋 禎一君    南條 徳男君       馬場 元治君    井伊 誠一君       猪俣 浩三君    小沢 貞孝君       志賀 義雄君   出席国務大臣臣         法 務 大 臣 井野 碩哉君   出席政府委員         警察庁長官   柏村 信雄君         警  視  監         (刑事局長)  中川 董治君         総理府事務官         (調達庁総務部         長)      大石 孝章君         検    事         (刑事局長)  竹内 壽平君         法務事務官         (人権擁護局         長)      鈴木 才藏君  委員外出席者         議     員 門司  亮君         警  視  長         (警備局参事         官)      曽我 力三君         検     事         (刑事局付)  近松 昌三君         専  門  員 小木 貞一君     ――――――――――――― 四月二十七日  委員板川正吾辞任につき、その補欠として三  宅正一君が議長指名委員に選任された。 同月二十八日  委員吉川兼光辞任につき、その補欠として小  沢貞孝君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 四月二十六日  裁判所書記官及び調査官の勤務時間延長反対等  に関する請願田中武夫紹介)(第二八五五  号)  同外六件(飛鳥田一雄紹介)(第二九一四  号)  同外一件(井伊誠一紹介)(第二九一五号)  同(猪俣浩三紹介)(第二九一六号)  同(猪俣浩三紹介)(第二九一七号)  同外二件(石田宥全君紹介)(第二九一八号)  同(風見章紹介)(第二九一九号)  同(木原津與志君紹介)(第二九二〇号)  同(佐々木更三君紹介)(第二九二一号)  同外二件(三宅正一紹介)(第二九二二号)  同(館俊三紹介)(第二九二三号)  同(永井勝次郎紹介)(第二九二四号)  同(松浦定義紹介)(第二九二五号)  悪質泥酔犯罪者に対する保安処分法制定促進に  関する請願足鹿覺紹介)(第二九二六号)  同(岡良一紹介)第三〇三九号)  同(栗原俊夫紹介)(第三〇四〇号)  は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  法務行政及び検察行政に関する件      ――――◇―――――
  2. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 これより会議を開きます。  法務行政及び検察行政に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。猪俣浩三君。
  3. 猪俣浩三

    猪俣委員 調達庁にお尋ねいたしますが、行政協定第十八条関係についての処理状況は、一覧表をいただきましたので数字はわかっておるわけでありますが、この処理状況について、少しその手続、それから実際のやり方等御説明いただきたいと思います。  この表を見ますると、示談請求権を放棄したようなものも出ているわけですが、こういうのは一体どういうふうにして示談が成立したのであるか、そういうことについても具体的なやり方をちょっと御説明いただきたいと思います。
  4. 大石孝章

    大石政府委員 お答え申し上げます。猪俣先生まで御提出しました表によりまして、示談解決事案が非常に多い、こういうことでございますが、大体私どもが取り扱いましたいわゆる十八条事案件数を調べてみますと、これを事故別に取り扱ってみますと、交通事故約八〇%、航空機に関する事故三%、海上関係におきますところの事故が二%、その他一八%程度というふうになっております。このその他の一八%程度というのは、施設及び区域周辺におきますところのいろいろな汚水排水関係事故であるとか、あるいは道路、橋梁等の破損の事故であるとか、その他いわゆる刑法犯等が含まれておるのでございまして、申し上げましたように、大部分事故というものは交通関係事故でございます。従いまして、たとえば米軍自動車日本の通行人が触れ合うとか、あるいは衝突するとか、あるいは自動車同士衝突であるとかいったような事故が起きますが、その場合に、事故ですから、当然日本警察でもわかり、また私どももその場にすぐ調査に出向く場合もありますし、大方は交通事故等は事後で判明するのでございますが、その際に、軽微な事故は、大てい両者の話し合いによりまして、解決を見るといったふうになるのでございます。一方また米軍は、御案内のように、自動車損害保険の方にも全部入っておりまして、そういう保険代位制度もございますから、従って私どもがこの十八条の諸規定に基づきまして取り扱うという関係は、だんだんしぼられてくるわけでございます。そういう関係でこの表にお示ししてあることは、私どもが、知り得ました事故件数から、実際上十八条の規定に基づきまして処理する段階になりますと、非常に件数が少なくなって参るのでございます。  今、概括的なことを申し上げますが、調達庁が取り扱いまして補償対象としてすでに支払い済み件数は、三十五年一月三十一日現在で、講和発効後、件数にしまして二万九十三件でございまして、その補償金額総体は七億八千三百万円でございます。いわゆる事故補償金として払いましたもの、これは御案内通り米側の方から七五%償還を見るわけでございますが、その対象になるのが六億三百万円、それからつ慰謝料としましていわゆる現行行政協定の十八条の第五項にあります公務外事案ケースでございますが、これは調達庁公務事案の場合と同様に調査をし審査をして金額を査定し、それを米側に勧告するわけでございます。そうしますと、米側の方でそれを査定し、直接被害者たる日本人等に支払うわけでございますが、その件数が九百四十四件で七千二百万円、それから一方この事故補償対象にもならずまた慰謝料対象にもならないケースにつきましては、閣議決定に基づく見舞金制度もございますが、その見舞金対象になっておりますケースが二百二十五件、金額にしまして一億七百万円になっておる次第でございます。ですから最終的に調達庁が取り扱いまして支払い済みである件数につきましては、約一万件と御承知おきいただけばけっこうかと思います。その前は、申し上げましたように示談とか権利放棄であるとかあるいは保険代位であるとか、それからいろいろと申請の途中におきまして若干事案解決され得るというようなものを合わせますと、こういう形になるわけでございます。  以上概括的に御報告申し上げました。     〔委員長退席小島委員長代理着席
  5. 猪俣浩三

    猪俣委員 この昭和三十五年一月三十一日現在の行政協定第十八条関係業務処理状況一覧、この中には、日本国に駐留するアメリカ合衆国軍隊等行為による特別損失補償に関する法律から出てくる補償は、この表には載っておらないわけですか。
  6. 大石孝章

    大石政府委員 猪俣先生の御指摘特別損失補償に関する事案は入っておりません。
  7. 猪俣浩三

    猪俣委員 この法律から出てくる補償は、あなたの方では取り扱っておらぬわけですか。
  8. 大石孝章

    大石政府委員 特別損失補償法対象になる事案解決は、やはり調達庁所管業務でございます。
  9. 猪俣浩三

    猪俣委員 その統計もできておるだろうっと思いますが、それは今おわかりになりますか。
  10. 大石孝章

    大石政府委員 今統計手元に持っておりませんので、ちょっと正確にはつかんでおりませんが、大体の事案を申し上げますと、この特別損失補償法に基づきまして、いわゆる米軍施設及び区域内で適法な行為をやるわけでございますが、その結果が、しかしながら周辺日本住民損害を与えるといったような事案解決でございます。これは御案内通り、主としまして原始産業と申しますか、農林業あるいは水産業等に非常に多いのでありますが、対象になりますのはそういった漁業の損失、それから農作物等農業上の損失、それから林業の損失、そういうものでございます。そのほかになお、それの予防的な措置といたしまして、防災工事を実施いたします。従いまして、放水路であるとかあるいはため池の構築であるとか、そういったような問題、それから一番典型的な事例といたしましては、この施設及び区域周辺におきまして騒音がありますために、おもに飛行場周辺事案でありますが、学校の防音工事を実施する、これが非常に多いのであります。それからなお最近は、区医療施設につきましても、病院と診療所と一定の規格を設けて、それに対しましてもやはりそういう騒音対策工事を実施するといったような形でございまして、これらが調達庁補償事案のうち、現在では相当大宗を占める部分であろうというふうに考えております。
  11. 猪俣浩三

    猪俣委員 この統計もおありでしたら、あとでよろしゅうございますから、提出していただきたいと思います。
  12. 大石孝章

    大石政府委員 あとで提出いたします。
  13. 猪俣浩三

    猪俣委員 それから公務による損害であるかどうりかについては、仲裁人という制度を設けてその判定によることになっておるようですが、その実際はどのようになっておりますか。
  14. 大石孝章

    大石政府委員 先生のお話しの仲裁人制度は、目下御審議いただいております新協定と申しますか、地位協定の上で記載されておりまして、現行協定十八条におきましては、公務上外決定双方に第一次的な権利を有するというふうに規定されております。従いまして、実質的には、公務上あるいは公務外決定米側にあると申してもよろしいか存じます。しかしながら、その見解が一致しない場合は合同委員会においてこれを決定する、こういう工合になっております。
  15. 猪俣浩三

    猪俣委員 今度の協定の十八条関係と現在の行政協定の十八条と、何か非常に違った点がございましょうか。
  16. 大石孝章

    大石政府委員 御承知通り、新協定民事請求権関係につきましてはNATOの方式を全面的に採用しておるという形でございます。しかしながら私ども実務処理をいたします観点からいいますと、取り扱いについてばその重大な変化はないというっふうに判断いたしております。しかしながら御案内通り、この政府間の相互請求権放棄に関しましては、現行協定は御承知のように軍隊構成員及び文民たる政府職員行為、または財産に関しましては相互に放棄するわけでございますが、今回の新協定におきましては、防衛隊いわゆる日本の自衛隊と在日米軍との関係だけが相互放棄されるという形になるのが第一点でございまして、第二点は、ただいま先生からもお話がございました公務上外決定にあたりまして、仲裁人制度を設けて最終的な権限を仲裁人にゆだねておるという点が顕著な相違であろうというふうに考えます。
  17. 猪俣浩三

    猪俣委員 これは私沖縄へ視察に行って聞いたので、内地沖縄と違っておるので、内地のことは現在のところ聞いておりませんが、つまり損害が発生した場合に、加害者である米軍自身被害者のところに行って示談を強要するというようなことが内地にあるのかないのか、そういう実例がかつてあったかどうか、そのことはどうです。
  18. 大石孝章

    大石政府委員 御承知のように、この種の事案は、占領期間中におきましては若干先生の御指摘のようなにおいのするようなこともあったように聞いておりますが、講和発効後こおきましては、この行政協定を忠実に双方とも履行するという形をとっております。なお、調達庁におきましては、できる限り正当なる事由の存する案件につきましては、日本人あるいは日本国におる第三国人等の場合でも正当な権利を擁護するという立場から、調達庁地方支部部局職員をあげまして、重大な関心を持ちつまして、一方警察等も非常に本問題には御協力を一願いまして、そういうような理不尽なる示談解決に応じるといったようなことを側面から防止するという態勢をとっております。一方また米軍におきましても、各軍とも専門の法務官あるいはクレイムス・オフィサー――賠償官を置きましてやっておりますので、御指摘のような事案は現在目についておりません。
  19. 猪俣浩三

    猪俣委員 それから日本国有鉄道とか電電公社とかいう公社関係ですね、これにアメリカ軍隊公務中与えた損害というようなものは、これを国の受けた損害というふうに取り扱っておりますかどうか、その点をちょっとお尋ねしておきます。いつだったか国鉄の列車にアメリカ軍のトラックがぶち当たって、非常に損害を与えた事件がある。ああいう公社関係は、どういうことに実際取り扱っておられますか。
  20. 大石孝章

    大石政府委員 お答え申し上げます。国鉄等公社関係につきましては、講和発効後の事案で現在までの総体件数は百六十四件ございます。私どもが査定いたしまして適当であると思われる損害額は九千百三十万円でございます。この関係は現在のところ懸案事項になっておりまして、私ども主張は、行政協定十八条の第一項第二項のあのいわゆる国の機関という概念には入らないということでございまして、やはり正当に米側の方に賠償を請求すべきであるというように判断しておるのでありますが、その主張に対しまして米側主張は、国鉄等公社は十八条第一項第二項の国の機関であるから相互放棄原則に従うの、であるという主張でございます。しかしながら大部分件数電電関係が多いのでございまして、一件当たり百万円以下の事案が大部分でございます。これは飛行機が飛んでおる最中に吹き流し等が電線にひっかかったといような損害が大部分でございます。それから専売公社関係でございますが、これは先ほど御説明申し上げました交通事故で軽微な点でございます。国鉄特急かもめ衝突事案であるとか、何かそういった大きな事案でございます。以上百六十四件は現在懸案事項になっております。しかしながら本件につきましては御案内通り、新協定におきましては相互放棄原則双方防衛隊だけに限るわけでございますから、今後はこういったようなことはスムーズに運ぶものと考えております。
  21. 猪俣浩三

    猪俣委員 現在その公社関係損害はそのまま解決されないでおるわけですか。
  22. 大石孝章

    大石政府委員 さようでございます。懸案になっております。
  23. 猪俣浩三

    猪俣委員 調達庁関係ばこれでけっこうです。今度は刑事関係につきまして、ただいま法務省の一覧表をいただきましたが、アメリカ人犯罪があって、それが起訴されるまでの大体の模様についてちょっと御説明いただきたいと思います。
  24. 竹内壽平

    竹内政府委員 ただいまお手元でごらんをいただいております表に基づきまして、若干分析的に御説明申し上げてみたいと思います。この表はただいまの行政協定十七条がNATO協定並みに改正されました昭和二十八年十月二十九日から三十四年十二月三十一日までの間の、合衆国軍隊構成員軍属及びそれらの家族による犯罪事件検察庁における受理及び処理概況でございますが、受理状況を見ますると総数は三万八千八百七十五名でございまして、これを刑法犯特別法犯に分けてみますと、刑法犯が二万四百九十三名、特別法犯が一万八千三百八十二名でございます。なおこの統計表にはございませんが、この各年度における受理状況を概観いたしますと、昭和三十一年が頂点をなしておりまして、その後次第に減少傾向をたどっております。  罪種別受理状況で、刑法犯について見ますつると、一千名以上の多数の事犯は、業務過失致死傷事件の七千六百七十二名が一番多く、それに続きまして傷害が三千五百三十名、窃盗が二千六百五十九名、暴行が千六百六十四名、器物の損壊が千五百九十六名、詐欺が千百十一二名となっておりまして、それ以下はいずれも千名以下のものでございます。  特別法犯は二百九十名以上のものを一応とってみますると、道交法違反が一万六千九百四十名、銃砲刀剣類等所持取締法違反が四百四十八名、関税法違反が二百九十九名、こうなっておりまして、あとはそれ以下の数でございます。  こういう数字をながめてみますると、犯罪中多数を占めておりますのは業務過失致死傷及び道交法違犯でございますが、放火とか殺人とか強盗強姦傷害致死という重大犯罪の数は比較的僅少でございます。問題は重大犯罪でございますが、ここで重大犯罪というふうに私が申しておりますのは、放火とか今申しました殺人強盗強盗致死傷強姦強制わいせつ強姦致死傷強盗強姦、同致死傷害致死というような罪を一応重大犯罪と見て、この童大犯罪概況を申し上げますと、放火は足かけ七年間を通じまして四十二名、殺人が二十三名、強盗が三百四十九名、強盗致死傷が三百二十名、強姦が二百十五名、強制わいせつが三十七名、強姦致死傷が百三十二名、強盗強姦致死が八名、傷害致死が十八名、以上合計いたしまして千百四十四名となっております。これも昭和二十九年の三百十八名が最高でございまして、その後だんだん減って参りまして、昭和三十三年が九十六名、昭和三十四年は八十七名と著しい減少を示しております。  こういうような受理をいたしておりますが、これを処理した方から見ますると、起訴をいたしましたのは全部で八百三十三名でございまして、その内訳を申しますと、刑法犯が七百五十九名、特別法犯が七十四名、こうなっております。  この年度別を見ますると、これは事件受理とは違いまして、刑法犯につきましては最近は昭和三十一年が百二十五名、三十二年が百二十一名、三十三年が百七名、三十四年が百八名となっております。こういうふうに事件は少なくなっておりますが、起訴の数は横ばい状況を示しております。特別法犯につきましても大体同様の傾向が見られるのでございまして、こういう点から見ますると、起訴率の方は上昇しておるというふうに見て差しつかえないかと存じます。  なお表の、三十三年の一月から十二月、三十四年の一月から十二月という二年間につきまして整理後とか整理前とかいう文字が使ってあるのが(2)表以下にございますが、これはどういうことを意味しておるかと申しますと、最初の表は、全部一応検察庁受理をいたしましたときの罪名別のそのままの状態で集計したものでございます。ところが検察庁受理をいたしましてから取り調べた結果、たとえば殺人として事件受理したのでございますけれども、その後の捜査の結果、過失致死であるということがわかったものや、あるいは強盗として受理した事件が、捜査の結果、強盗罪の成立は認められなくて、単に脅迫暴行傷害あるいは詐欺事件であるというにすぎないと認定された事件等が相当あることがわかるのでございますが、これを全部についてやりますことは困難でございますけれども、少なくとも重大犯罪につきましてそういうふうに処理の結果が違ってきたものについて若干の整理をいたして表を作ったのが整理後という表でございます。三十三年度分について見ますると、たとえば殺人につきましては整理前には四人でございましたが、整理後は三名になっております。この一名につきましては過失傷害というふうに事件罪名が変わっておるわけであります。それから強盗について見ますと、起訴猶予が七名ということになっておりますが、整理後はゼロに変わっております。これは脅迫が一、暴行が三、詐欺が一、傷害が二というふうに変化したことを示しております。  こういうふうに整理をいたしたのでございまして、整理後の統計について申し上げますと、受理数は三十三年度だけで見ますると総数は四千四百十一名でございます。そして刑法犯がその中の二千二百六十四名、特別法犯が二千百四十七名、こうなっております。これを起訴した場合の方から申しますと、刑法犯が百七名、特別法犯が十四名、合計で百二十一名、こういうふうに変わってきておるのでございます。  かようにいたしまして、事案概況を私ども観察いたしますると、全体として見ると事犯起訴率というのはそう高くない、むしろ低いように見えるのでございますけれども、それらの事件の大部分事案そのものが、一般の場合に比較いたしまっして、比較的軽微で偶発的である。本来日本の標準から見ましても当然起訴猶予になるようなものが多いということとによるものと考えるのでございます。日本側起訴を相当と考えたものにつきましては、すべてこれを起訴しておるのでございますが、起訴相当事案件数として比較的僅少でありますために、全体としては起訴率が低くなっておるように見えるのでございます。これらの点は、私どもとして統計だけからわかりませんので、一部の地検につきまして全部の事件を最近も洗ってみておるのでございますが、やはりその結果におきましても、ただいま申しましたような判断が大体間違いないというふうな考え方をいたしております。なおこまかい点につきましては、御質疑によりましてお答えを申し上げることにいたしたいと思います。
  25. 猪俣浩三

    猪俣委員 大体概要はわかりました。一表ですが、放火して受理した件数が四十二件あります。起訴されたものが八件、起訴猶予というのは六件あります。それから殺人も二十三件受理しておる。起訴されたものが八件で、起訴猶予が二件ある。火をつけたり人を殺したりして起訴猶予というのは――起訴猶予というのは犯罪事実はあるが、検事の便宜に基づいての起訴猶予であろうと思いますが、そうすると、放火したり殺人したりして、しかも起訴猶予になるという事案は一体内地人に対してあり得るか。たとえば強盗をやった、強盗が三百四十九件受理され、起訴猶予が百二十三件ある、こういう放火殺人強盗あるいは強盗致死傷、これなんかも三百二十件受理したうち、六十九件は起訴猶予になっておる。こういう凶悪犯罪がどういう事情起訴猶予ということになるのですか。これがちょっと不可解なんです。日本人放火をし、殺人強盗をやって、強盗致死傷というような場合において、一体起訴猶予ということ、があり得ようか。日本人アメリカ軍人とはいろいろ事情が違うでしょうけれども犯罪行為に対する態度としては、  私は平等にやるべきだと思うのです。こういう凶悪な犯罪起訴猶予になるということは、私どもちょっと理解いたしかねる。どういう実情なんでしょうか。
  26. 竹内壽平

    竹内政府委員 先ほど整理後というところでちょっと触れた点でございますが、なおその点を申し上げますと、三十三年分につきまして、強盗として整理前には起訴猶予というところへ入っておりました数字が、実際には内容を検討してみますと、整理前の七名の起訴猶予が実は整理後にはゼロになっておるのでございます。その後は脅迫一、暴行三、詐欺一、傷害二というふうに変わっておるのでございます。それから強盗致死傷につきましても、整理前は二となってただいまのような表に出ておるわけでございますが、整理後で見ますと、これは窃盗一、暴行一に変わっておるわけでございます。それから強盗強姦致死につきましても、起訴猶予整理前は一になっておりますが、整理後は「犯罪の嫌疑なし」の欄に計上すべきものを起訴猶予の欄に誤記しておったということがわかっておるのでございます。それから三十四年分につきましても、強盗につきまして起訴猶予が十二となって起りますか、整理後には二に変っわっております。これは罪名が変更されておるのでございまして、傷害が五、恐喝が三、強要が一、窃盗が一というふうに変わっております。それから強盗致死傷につきましても、整理前は三となっておりますが、整理後はゼロ、これは傷害三に変わっております。  こういうふうに変わっておるのでございますが、数字だけ申し上げたんじゃおわかりにくいと思いますので、若干の事例を申してみますと、三十四年の三月に空軍の二等兵の某が、基地内の兵員クラブ事務室において売上金を計算中の事務員三名に拳銃を突きつけて、その反抗を抑圧した上、クラブ所有米軍票千九十五ドルを強取した、こういう強盗事件がありますが、これは起訴猶予処分にされております。この内容を見ますと、米軍の基地内で発生した事件で、実質的な被害者米軍関係機関であり、被害者である日本人事務員日本側の裁判権行使を望まず、軍側において厳罰にしたい旨の意向を表明しているというようなことでありまして、実質的に裁判権はもちろん日本側にあるのでございますが、そういうような事情から日本側起訴猶予にしたようでございます。これに対しまして米軍側は、当該空軍の兵隊を不名誉除隊、俸給手当等を没収したほか重労働七年というような懲役に処しておるというような実情でございます。そのほか起訴猶予にしました事例といたしましては、これもやはり空軍の二等兵でございますが、これは窃盗事件でございますけれども、夕方松戸のキャバレーでビール十本、ウイスキー五本を盗んだという事実でございます。これも起訴猶予になっておりまして、酔余の犯行で被害弁償済みで、また改俊の情もあるということを起訴猶予の事由にあげております。このような事件に対しまして、軍側から罰金七十ドルというような処分をいたしまして、それぞれ等級を下げておるというような行政処分をあわせていたしておる、こういうような具体的事案を見てみますと、起訴猶予にはそれぞれ理由がもちろん示されておりますが、大体その処理も必ずしも不当とは、私どもの目から見ましても言えないような状況のように私は考えております。
  27. 猪俣浩三

    猪俣委員 その点につきましては、私どもいろいろ異論がありますが、それはおきまして、新聞の報道するところによりますと、よくアメリカ兵が保釈中にアメリカ本国に帰ってしまうというようなことがあるように聞きますが、そのようなことに対してどういうふうな処置を今後おとりになりますか。刑が確定しないうちに保釈を利用して、すぐ帰ってしまう。帰るについてはいろいろやはり出国の手続が要ると思うのですが、それが日本政府の知らざるままに外国へ行ってしまうというのは、一体どういうことになるのですか。法務省としてそれに対するお考えを承りたい。
  28. 竹内壽平

    竹内政府委員 ただいまの点でございますが、軍の構成員、家族、いわゆる協定によって裁判権を行使する対象になります者につきましては、保釈ということもほとんどございませんし、過去におきまして保釈中に逃亡して本国へ帰ってしまった事例は一件もございません。ただいま猪俣委員が仰せになっておりますが、一般の外国人につきまして保釈中に帰ってしまったというような事例は、私ども何件か経験をいたしておりますが、この軍の構成員等に関する事件につきましては、さようなことは今まで一件もございません。
  29. 猪俣浩三

    猪俣委員 この問題につきましては、この程度にいたしまして、ちょっとお伺いをしたいことがあるのであります。法務省では刑法の全般的な改正を企図する、そしてその草案ができたということを聞いたのであるが、それにつきまして二、三お尋ねをしたいと思います。もちろんこれは確定案ではないと思うのであります。この法務省の企図いたしておりまする刑法の改正、私どもまだ詳しくあなた方から説明ももちろん聞いていないし、条文も示されておりませんが、いろいろの情報から大体の草案はわかっているわけです。それを見ますると、非常に保守的にして反動的な刑法の改正、ことに警職法によって達成せんとして達成しなかったような条項を刑法の中に織り込んだのじゃないかと思われるような条文もあって、容易ならざることだと思うのです。ことに安保条約の批准を前にいたしまして、すでにこれが通ることを予期して、その対策として考えられておるのじゃないかと思われる節もある。しかもこれはすでに沖縄で修正刑法が問題になりました時分に法務省の高橋参事官が沖縄へ行って、日本沖縄のようにやはり刑法がなるのであるようなことをしゃべったという情報もあるわけであります。だから沖縄の新しい修正刑法は何も日本内地の刑法とそう違わぬのであるという説明をしようとしたのではないか。小野清二郎博士を中心として全般的に今改正を企図しているということを、沖縄に行って、沖縄の立法院で、高橋さんという人はどういう立場の人だか知りませんが、法務省刑事局の参事官ですね、その人がそういう説明をせられておる。まさかと思っておりましたところが、法務省の原案なるものを見ると、まさにそういうにおいがする。そこで、私どもも全般的に検討しておりませんが、もし刑事局長が発表していいならば――その草案の草案みたいなものだと思いますから、あるいは御発表ないかも存じませんけれども、やはりいろいろの意見を参酌して本案を作るのが適当ではないかと思われるので、その改正の骨子につきまして、御説明ができるならば御説明していただきたいのです。しかしこれは政府の立場もございましょうから、答弁を強要するわけではございません。おもなる、現行刑法と違っているような点、それを御説明いただければいいと思うのです。
  30. 竹内壽平

    竹内政府委員 ただいま御質問のございました法務省で改正刑法の準備の案を発表するということでありましたが、仰せのように、ここ三年半ばかり、法務省刑事局そのものではございませんが、刑事局の中に刑法改正準備会というような特別な機関を設けまして、私が会長ということに役所の組織上なっておりますが、小野清一郎博士が議長になりまして、あと在京の学者、実務家等を委員にお願いいたしまして、改正刑法仮案を基礎といたしまして、ただいまの社会、国情に適合するような趣旨をもちまして、それを土台として改正作業を続けて参つりました。やっと一応の案がまとまりましたので、改正刑法準備草案、こういうふうにそれを名づけまして発表をいたすことにいたしております。内容は仮案を基礎といたしたものでございますが、その後学説、判例等におきましても、戦後顕著な発展もありますので、そういうものも取り入れまして、また特にドイツにおける刑法改正の準備車案がしばしば発表されておりますので、ごく最近の準備草案なども参照いたしまして作成されておるようでございます。この草案は、後日法務委員会の皆様にもごらんに入れて御批判を仰ぎたいと思いますが、これは法務省の案というのではございませんので、法務省の案を作ります準備のための案というふうに御理解を願いたいのでございます。私どもといたしましては、これを発表いたしますときには、今の準備にあたりました委員が、いずれも在京の者にやむを得、ず限らざるを得なかったのでそうなりましたが、東京以外におられます法曹の各位はもちろん、一般国民もこの案につきましては十分御批判を賜わりまして、それらの御批判を得た上で法務省案というようなものを私どもとしては責任を持って作成いたしたいと思います。その上で法制審議会等の審議にも諮りまして政府案をきめる、こういう段取りにいたしておるのでございます。いずれ草案をごらんに入れます際に、もし時間をお許しいただきますならば、改正の特徴と申しますか、そういうような点につきましても御説明申し上げたいと思っております。  なおお言葉の中にございました沖縄刑法の問題につきまして、私の局の高橋参事官が現地においていろいろお話があったというようなことの情報だというお言葉でございましたが、私が高橋参事官から聞いておりますところでは、わが国におきましてもそういう改正作業をやっている。特にスパイの問題などにつきまして、そういう発言があったやに情報があるように私も実は聞いたわけでございますけれども、事実はそうでなくて、沖縄が現在持っております刑法は、日本の改正前の刑法がそのまま施行されておるのでございまして、そういう点についてのお話やあるいは仮案のことについての話があったそうで、それが誤解されてそういうふうな情報になっておるように聞いております。現にこの法務委員会沖縄の立法院の方々が参考人としてここで説明をされました際も、その点の議員かつらの御質問に対しまして、高橋参事官がそのようなことを言った記憶はないということであるし、そういうふうなことを言ったと主張する説明員の方は、伝聞であるというようなことも、この議場で明らかになっておるのでございまして、私はその情報は誤報に基づくものであるというふうに考えておる次第でございます。
  31. 猪俣浩三

    猪俣委員 この問題は、第十四回議会閉会中継続審査として、立法院の法務委員会議事録第十七号に基づいてお尋ねしたのでありますが、これはまた他日はっきり明らかにしていただくことにいたしまして、今、この点質問の通告をしておらなかったのでありますから、直ちに御答弁を求めることも無理がと思いますので、いずれあとで質問したいと思います。この速記録の中には、高橋さんのことが書いてある。  それから今の、法務省の案でもない、試案だと言われるのですが、しかし、法務省のお歴々も参画して協議に当たられておるのだろうと思います。そこで、全体の傾向といたしまして、非常に刑罰が重くなっておる。しかも内乱罪とか騒擾罪に対する刑罰が、非常に重くなっておる。あるいは集会の不解散罪、現行法は三回以上解散を要求し、聞かぬ場合に適用されるというようになっておるにかかわらず、そういう条件を新しいものでは削られておる。そこで、この内乱罪ですが、これはどういうふうに改正草案では改めるようになっておりますか。
  32. 竹内壽平

    竹内政府委員 内乱に関する罪は、草案によりますと、第百二十九条から百三十三条まで、五条文が置かれておりますが、内容的に見ますると、現行法とほとんど何らの変り化もないように私は考えております。ただ、言葉等を若干新しい、わかりのいい言葉、口語体に改めておる程度でございまして、特に変更はないように考えております。
  33. 猪俣浩三

    猪俣委員 それから、先ほど申しました多衆不解散罪はどうです。
  34. 竹内壽平

    竹内政府委員 ただいまの点は、草案の第百九十一条でございまして、内容を申しますと、「暴行又は脅迫をするために多衆が集合し、権限のある公務員から解散の命令を受けたにかかわらず、なお解散しなかった者は、三年以下の懲役もしくは禁固又は五万円以下の罰金に処する。」という規定でございまして、現行法の百七条の規定に若干の修正が加わっておりまして、「三回以上二及フモ」という規定が削除されておりますことは、御指摘通りでございます。
  35. 猪俣浩三

    猪俣委員 それは一体どういうわけですか。現行刑法においても三回というふうな注意規定があるのですが、それにおいてなおがえんぜざる者に対して解散を命ずる。しかるに、今日集会、結社の自由が強く打ち出されておる現行の憲法のもとにおいて、そういう条件までとってしまうということは、一体どういうわけですか。群集の集会というものに対する価値判断が、昔の天皇制時代より、かえって取り締まりを強化するようですが、それはどういう理由でしょうか。
  36. 竹内壽平

    竹内政府委員 この点につきましては、いずれ参画をいたしております委員の方々が分担をいたしまして、この理由書を書くことになっておりますが、その理由書ももちろん公表いたしまして、御批判を仰ぐことになっております。私は、批評するような側の一人でございますが、そういう立場からのお答えで、あるいは立案者の考えと違うということもあり得るかと思います。その点あらかじめ御了承を願っておきたいと思います。  現行法の百七条によりますと、「解散ノ命令ヲ受クルコト三回以上二及フモ」こうありまして、形式的に三回やった、それでもなお解散しないということで犯罪になるということになっておりますが、問題は、解散の命令が三回であるか、五回であるかということではなくて、解散を命じておるのだということが、集まっておる人たちに徹底するということが大事なことじゃないかという意味で、一回とか、二回とか、三回とかいう形式的な数で議論するよりも、それが徹底しているということを、やはり構成要件の中にはっきりした方がいいじゃないか。そういう意味からいたしまして、権限のある公務員から解散の命令を受けたにかかわらずということで、その点を明らかにしようという立法者の意図ではないかと私は推測いたすのでございます。
  37. 猪俣浩三

    猪俣委員 これはあなたと今議論するわけではありませんけれども、そういう立案の企てがあるとすれば、われわれの意見もある程度反映させなければならないと思いますが、今あなたのおっしゃったように、徹底させる意味において、現行法では三回以上ということが置かれたと思う。いきなり解散ということでなしに、まず三回も連続してやるならば徹底するのじゃないか、それでもなおがえんじない者に対して問題にするというのだろうと思うのですが、それに対するあなたの解釈はよろしゅうございます。ただ、三回以上ということをとったことをお聞きすればいいと思います。  それから外患に関する罪の中に、いわゆるスパイという条項を入れている。これは改正案の百三十六条ですか、いわゆるスパイ罪を入れた。これは、安保条約によってアメリカの軍事基地になっている現在において、かような規定が刑法の中に入ることは、われわれは、過去における軍国主義時代におきまして、軍機保護法、その他われわれの情報活動に対する制限、あるいは表現の自由に対する制限などがいろいろあって、重苦しい空気に包まれておったことは御存じの通りであります。今日日本は憲法九条によって、いわゆる戦力を持たない国として誕生したにかかわらず、事実上は戦力ができ上がってしまった。その上にまたせっかく国民がほっとしたところの軍機保護法やその他の、言論その他の活動を抑圧するような法律がまたできている。これは非常に私どもは憂慮にたえないのであります。そこでかようなスパイ罪というものが草案の中にあるかないか、あったとすればそれはどういう理由で草案に入れたであめろうかを、あなたの意見になるかもしれませんが、御説明を聞きたいと思います。
  38. 竹内壽平

    竹内政府委員 第二章外患に関する罪の中の第百三十六条に、右に「(スパイ)」とかたかなで書いてありまして、第一項、第二項に分かれておりますが、「外国に通報する目的をもって、日本国の防衛上又は外交上の重大な機密を不法に探知し、又は収集した者は、二年以上の有期懲役に処する。」という規定、第二項が「外国の利益をはかり、又は日本国の利益を害する目的をもって、防衛上又は外交上の重大な機密を外国に通報した者も、前項と同じである。」という規定が入っておりますことは事実でございます。これがなぜ入ってきたかという点につきましては、議長をしておりました小野清一郎博士のお考え方として私が聞いておりますところによりますと、外患に関する罪という中の規定でございまして、外国と通報して、日本国に対して武力を行使させるというようなことが外患誘致罪でございますが、こういうような外患というワク内でのスパイ行為を罰しようという趣旨であるということと、いやしくも国が独立国としてみずからを防衛する固有の権限を持っておるものであるということを前提といたしますならば、やはりこの諸外国の立法例にもすべてありますように、最小限度の秘密を守っていくということは必要であるんじゃないか。特にこの外交上という点についてはいろいろ問題もあろうけれども、小野博士の考え方によれば、やはり幾らかラス張りの外交だといっても、事はやはり機密に属するものがあるんじゃないか。すべての外交上の秘密、防衛上の秘密を罰するというのではなくて、外患という目的を持つ目的罪、外患の罪のワク内でのそのような罪は、最小限度刑法の中に規定しておくのが必要ではないかというようなお考えをもって、この条文について私にお話があったことを申し上げておきたいと思います。
  39. 猪俣浩三

    猪俣委員 小野清一郎博士という人は非常に学者であるかもしれませんが、あなたが御存じのように、戦時中は軍部に迎合して日本法の理論などという本を盛んに書いておった、非常に頭が保守的に固まっておるへです。そういう人が中心になって立案されるところに私は非常に時代の進展と平和憲法の精神に沿わないようなあれがどうも今起こってくるのじゃないかと思う。今弁護士をされておって、あるいは大学教授時代と違っているかもしれませんが、どうも相当頭のかたい人に見えるのであります。大体日本が平和憲法の国としてほんとうに平和愛好国となり、なおどこの国とも友好関係を保つという中立性を竪持しているのに、スパイ罪などというのは全く必要がないのです。国民が国民を疑う。実にこれほどいやな犯罪はないと思うし、これほどいやな取り締まり規定はないと思うのです。人間が人間を疑う。ことに権力を持っている者がスパイ容疑で自分に反対する者をやっつけるという根拠になる。今までの世界の歴史はみんなそうなのです。戦時中における軍部、官僚がいかに軍機保護法などを乱用したか。そうしてわれわれの自由を抑圧し、言論を抑圧し、それがそもそも日本を戦争に突入せしめた最大の原因なりと考える。民主政治は言論の自由思想の自由というものを堅持しなければ有終の美をなさぬことは当然のことでありますが、かような永久法である刑法にこういうスパイ罪なんというものを新設したということは、容易ならざることだと思います。法務省もよく反省していただきたい。ことに安保条約が国民の重大な観点になっておる際に、そういう規定が刑法に入ってきておる。軍機保護法のような特別法ができるのじゃないかと思っておるうちに、特別法にあらずして一般法である刑法にこういう規定ができてきておる。ですから高橋参事官が沖縄の立法院へ行ってさようなことを話し、沖縄だけじゃないような話をしたということはうなずける。もう出てきておる。沖縄刑法で修正刑法として沖縄の人たちが最も反対しましたのは、この情報収集罪についての修正刑法の厳罰主義です。ところが日本内地にもこれが出てきておる、これは容易ならざることだと私は思う。今あなたと議論するわけじゃないので、ただそういう規定があるかないかをお聞きしただけでありますから、法務省が正規の原案になさる際には、われわれは徹底的なこれに対する攻撃を加えることを予告しておきます。  それから先ほど私は内乱罪と騒擾罪をちょっと間違えておったのですが、騒擾罪が大へん変わってきておる、処罰の刑の点でありますが、これもどういう理由であるか、だんだん民主政治が行なわれ、平和憲法が行なわれておる際に、騒擾罪なんというものを厳罰に処するという傾向、これは私どもははなはだ不可解に存ずる。騒擾罪についての草案の規定を御説明いただきたい。
  40. 竹内壽平

    竹内政府委員 草案の第十一章に騒擾の罪といたしまして、現行法の百六条に相当する規定といたしまして、第百八十九条を置いております。この百八十九条によりますと「多衆が集合して、暴行又は脅迫をしたときは、次のように区別して処断する。」一は「主謀者は、一年以上十年以下の懲役又は禁固に処する。」二は「謀議に参与し、群衆を指揮し、もしくは扇動し、又はみずから手を下して暴行をした者は、五年以下の懲役又は禁固に処する。」第三が「その他騒擾に参加し、又はこれに関与した者は、二年以下の懲役もしくは禁固又は五万円以下の罰金に処する。」こういう規定がございますが、なお予備罪として百九十条の第一項に「前条の罪を犯す目的をもって武器を準備して多衆を集合させた者は、五年以下の懲役又ば禁固に処する。」それから第二項としまして、「前項の罪を犯した者が、騒擾に至らない前に自首したときは、その刑を減軽し、又は免除する。」こういう規定がございまして、第三番目に、百九十一条の不解散罪の規定がありますが、これは先ほど御説明申し上げた通り区であります。この三条文から騒擾の罪は成っておりますが、百九十条の予備罪は新設の規定でございます。それから百八十九条の刑でございますが、「首魁」は「主謀者」となっているのですが、この主謀者の点は現行法と変わりはございません。二号の点は五年以下の懲役になっておりまして、現行法は六月以上七年以下の懲役、この点は刑が少し軽くなっておるように思います。それから第三号の附和随行というのは五十円以下の罰金となっておりますが、これが二年以下の懲役、この点は刑が重くなっております。それでこの規定は条文の上からはひどく違っておらないのでございますけれども、考え方につきまして学者の間でいろいろ議論があります。騒擾の際に殺傷に及ん、だ行為がある場合、騒擾の罪のほかに殺傷罪が成立して騒擾罪と殺傷罪の併合罪であるか、あるいは一個の行為で数個の罪名に触れ得るものであるかということが現に議論になっておるようでございますけれども、それはおかしいのであって、騒擾という行為の範疇の中に入った以上ほそういうものはみんな溶け込んでしまうと理解すべきっそういう罪ではなかろうかというようなことから、それらを一本に――そういうものが二つ成立するという考え方でなく、騒擾と事がなりました場合は、やはり百八十九条の規定によってそれらを含めて処理すべきものではなかろうかというようなことが議論の中心になり、そういう方向に行って、それからできた規定が百八十九条、だというふうに聞いております。こういう意味で、あるいは若干重くなっておる点もあろうかと思いますが、全体の構造としては現行法とあまり違っていないという考え方であります。
  41. 猪俣浩三

    猪俣委員 ところが、現行法にはおもだったる者を重く処罪して、附和随行したような者は軽く見ておる。それを今度はおもだったる者は多少刑を軽くするようなことにして、いわゆる付和雷同したべ間、五十円の罰金で済んだ人間を懲役に処するというふうに改めたこの改め方に反動性がある。大衆の集会を好まない、今までは大衆を対象にせずして、騒擾を計画した者、指図した者を重く処罰するという方に重点を置いたにもかかわらず、そこへ集まった大衆を今度は処罰する、罰金を懲役にする、こういういわゆる多衆の集合を好まない反動性がここに現われていると思って私どもはこれも重視するわけであります。  なお住居侵入その他につきまして加重罪を認める。おそらくこれはストライキで労働組合等が資本家側に圧力をかけることに対して、刑罰をもって臨むという態度の現われだと存じます。元米警職法の改正に待つようなことを刑法の中へ織り込んでいる。立案者はそうでないとおっしゃるかも存じませんが、私どもはさような疑いがあるのであります。全体の改正の方向が反動的になってきている。昔の軍国主義はなやかなりし時分に逆転している。そういうところが至るところに見受けられる。さきのスパイ罪につきましても、ス。ハイ罪を外患罪のつとして規定するとともに、公務員の職務に関する法律の中にも新たに機密漏洩罪なるものをここへ規定した。そしてむやみに人の情報活動あるいは表現の自由を抑圧するような方向をとってきている。戦時中でもないようなことを永久法の刑法の中に織り込んできている。  かような計画があるということに対しまして、私どもは重大なる関心を持たなければなりません。  なお住居侵入の加重罪、面会強要の加重罪、みなこれも規定している。これなども労働組合運動の一つの弾圧をねらったものではないかと思われる。  その他論ずるところ多々ありますけれども、何しろこれは草案の草案のような御答弁でありますので、深く論及はいたしませんが、法務大臣が御出席になっておりますので、法務大臣にお伺いいたします。法務大臣も御存じだろうと思うのですが、刑法の全般的な改正があるということを私はずっと前から聞いておったが、その内容は非常に反動的なものであるということを聞かされておりました。それがどうも現実のようであります。私どもの入手した小野清一郎博士を中心とした人たちの草案、――これは法務省の人たちも参画しておる。これは軍国主義の時代あるいは官僚時代、公務執行妨害罪については非常に峻厳な態度をとっておるが、公務員の職権乱用については規定が非常に薄弱である。これは一つ一つ指摘ができるのです。かような反動的な草案ができておるそうでありますが、一体法務省はこれを、どう扱われるのであるか、法務大臣の御意見を承りたい。
  42. 井野碩哉

    ○井野国務大臣 改正刑法準備草案が昨日発表されたようでありますが、これはまだ法務省としては何ら関与をいたしておりません。準備委員会が準備委員会として作りました案を広く世間の世論に問いまして、いろいろの御意見を伺いなお直すところかあれば直したいという気持で発表したものだと思います。なお猪俣委員の御意見も大いに参考にして、これから草案についての審議が進められていくと思いますが、法務省としましてはいろいろな御意見を伺った後に法制審議会にかけまして慎重に審議して、法務省の案をきめて参りたい、こういうふうに考えておりますので、この尊案に対してのいろついろの御意見は御意見として伺いますけれども、法務省としてこれに責任を持ってお答えするわけには参らぬということを申し上げておきたいと思います。
  43. 猪俣浩三

    猪俣委員 この草案は新聞記者その他に正式に発表されたのですか。
  44. 井野碩哉

    ○井野国務大臣 準備委員会として発表したようであります。
  45. 猪俣浩三

    猪俣委員 準備委員会としては新聞記者その他に発表したならば、いろいろの世論を聞く意味において、直接の責任者であるわれわれにもなぜこれを配付しないのですか。
  46. 井野碩哉

    ○井野国務大臣 配付するつもりでおります。
  47. 猪俣浩三

    猪俣委員 とにかく法務省は、法務委員会に何らの報告をせずに、まず新聞社に先にやる。当然法務委員会に発表して、それが新聞に掲載されるのが順序であるべきものを、新聞記者に先に発表してしまう。われわれが要求しないと、われわれはつんぼさじきになる。こういうやり方があるのですか。この草案のごときは、この当法務委員会に最も重大な関係があるじゃありませんか。それを一部の学者や新聞記者が知っておりながら、われわれは知らない。私どもは三拝九拝してそういうものをひそかに見せてもらう。そうしてきょう質問するというような始末、やり方が違いはしませんか。このやり方に対する意見をお聞きいたします。
  48. 井野碩哉

    ○井野国務大臣 これが法務省の案でございますれば、もちろん法務委員会に先にお配りして、新聞記者にも発表するのでございますけれども、準備委員会として向こうでやりましたので、あとからこちらも知りまして、法務委員会にもぜひこれを出さなければいかぬということで、お配りすることにいたしておるわけであります。
  49. 猪俣浩三

    猪俣委員 これは準備委員会という名前でありましょうが、法務省が関係しておることは明らかです。そうして法務省があっせんして新聞記者に発表したことも明らかにわかっておることなんです。そういう責任のがれな言葉は、どっちでもいいのですよ、そんな大した問題じゃないのですから。あまりうそを言わないようにしてもらいたいのだ。そこで当法務委員会委員にも配付なさる、もちろんそればそういう審議会の原案として私どもは受け取るだけで、法務省案として受け取るわけでも何でもないのです。ただ、今言ったように、アドバルーンを上げて、世論に従って確定しようという態度は僕は悪くないと思う。それにはやはり少なくとも立法の府にある議員には何よりも先に、準備会でこういうものを作った、御意見を、ということで出てくるべきものだと思う。それを今までの官庁の秘密主義や慣習で、われわれには最後まで聞かせない。もうすでに沖縄立法院では高橋参事官がしゃべっているじゃないですか。それを私どもが根拠としてしばしば改正案を質問しても、全然今まで答弁しなかった。何かスパイ取り締まり、機密を保護するような立法をしているじゃないかということを、私もたびたび当法務委員会で質問したけれども、一切さようなことはありませんと答弁しておる。しかるにいきなり新聞記者その他には、こういうスパイ罪あるいは公務員の機密漏洩罪なんというものを規定したものをぱっと発表してしまう。その前には沖縄の立法院でしゃべっておる。それでは僕ははなはだおもしろくないです。だから法務省の原案とは受け取りませんが、新聞記者に発表するくらいなら、まずわれわれに発表なさって、それで法務委員会にこういう準備会の案が出たということが新聞報道されるということが順序だろうと思う。まるで逆で、われわれはそういう発表をした人からひそかに聞かされておるような始末です。そういうことは今後改めてもらいたいと思うのです。大臣の御意見はどうですか。
  50. 井野碩哉

    ○井野国務大臣 決して法務委員会に秘密にする意味でいたしたわけではございませんので、今のお説の通り、手続の上におきましては多少欠けるところもあったと考えますので、今後はそういう点は十分注意したいと考えます。
  51. 猪俣浩三

    猪俣委員 それではその草案をいただきましてからまた議論することにいたしまして、きょうはだいぶあとがつかえておるようですから、この程度で質問を打ち切ります。
  52. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 この際お諮りいたします。委員外議員の門司亮君より本件についての質疑のために出席、発言したいとの申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  53. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 御異議なしと認めます。よって、許可することに決しました。門司亮君。
  54. 門司亮

    ○門司議員 あとで同僚議員から詳しくお聞きになると思いますが、委員外のことでもございますので、できるだけ簡単に質疑だけをさせていただきたいと思います。従って当委員会委員各位に厚くお礼を申し上げる次第でございます。  最初にお聞きをしておきたいと思いますことは、大牟田の三池の炭鉱でストライキの起こっておることはよく御存じだと思います。ここで問題になっておりますのは、当時新組合と旧労との間にいろいろな問題があって、それがいわゆる炭住と称しております住宅の中までその争議の派生的なものが出て参りまして、旧労の諸君の家族の人たちが住宅におられないで、疎開をしておる事実も当局はよく御存じだと思う。われわれも、当初におきましては、あるいは争議のことでございますから、多少の派生的な問題もあろうかと考えておりましたが、それからすでに約一カ月にも及んでおります今日まで、一部は多少秩序が回復したことによってうちに帰っている者もございますけれども、いまだうちに帰ることのできない相当数の疎開者がおるのであります。このことは争議とは全く別個の問題としてこの際考える必要がありはしないか。いつまでも争議の派生的な一つのトラブルとして考えておる段階でなくなってきておるのではないか。いわゆる憲法の保障する居住の自由が、日本の国民の中に、しかも集団的に得られないという事実に対して、警察当局あるいは人権を擁護する建前にある当局者は、どういう処置をとられ、またどういうことを今お考えになっておるか、あるいはまた皆さんの手元にどういう報告がされておるか、その点を一つこの際明らかにしておいていた、だきたいと思います。
  55. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 三井三池の争議に関連いたしまして、あの地域において非常な混乱また不法行為等が起こっておることにつきまして、警察当局といたしましては、ただいま門司委員のお話しのように、生活の安定、民心の不安を除くということに全力を尽くして参りたいというふうに考えておるわけでございます。三月の二十八日に新労、旧労の激突がございまして、あの当時におきましては非常に殺気立った空気で、それぞれがこん棒等を持って非常にいがみ合った形であったわけでございますが、警察といたしましては、特に炭住街におきます治安を確保するという意味におきまして、そうしたもしぶつつかり合う場合において、事態がなるべく大げさにならないようにということで、ただいま申しましたようなこん棒等につきましても、厳重な警告を発して、千数百本のものを取り上げ、現在におきましてはそういういわゆる武装というような形はないわけでございますが、ただいま御指摘になりましたように、相当数の者がまだ疎開先から帰らないでおるという状況であることは私ども承知いたしております。警察の方で極力部隊警ら、機動警ら等を実施いたしまして、一応平穏な情勢を取り戻すようにいたしたわけでございます。従って、疎開者もかなりの数帰って参ったわけでございますけれども、いまだに相当数の者が帰らないでおるという状況でございますし、またきのうも社会労働委員会において武藤委員から御指摘を受けましたように、いまだにいろいろといやがらせの問題とか不法な行為というものが跡を断たない状況であり、私どもも非常に遺憾に思っておるわけでございます。この三池の問題は非常に根の深い、しこりの多いものであろうとは思いますけれども、少なくとも生活権の確保、安定した気持で生活ができるというようなことにつきましては、警察はあらゆる努力を尽くしてこれを確保してやらなければならないというふうに思います。従いまして、今までも部隊警ら等を実施いたしておるわけでございます。さらにそういった方法についてもいろいろと工夫を重ね、もっと緻密な、周到な民心安定、生活保護ということについての施策を推進するように極力努めておるような状況でございまして、これは御指摘までもなく、われわれとして最も大事な問題と考えておる次第でございます。
  56. 鈴木才藏

    ○鈴木(才)政府委員 人権擁護局におきましても、大牟田の社宅街におきまする人権問題については、十分な関心を持っております。今までに人権問題として調査をいたしております件数も、約二十件ほどになっております。その後その件数はふえて参っております。ただ私どもの下部機関であります福岡の人権擁護部におきましてとりました措置でございますが、本年の三月二十一日、二十二日の両日にわたりまして福岡法務局の北田人権部長が現地の実情視察に参っておるのであります。ただ当時はまだ非常に住宅街における感情が興奮しておりまして、各ピケも相当厳重に張られておりまして、北田人権部長も実際にその住宅街の内部に入りまして実情を視察することも相当困難をきわめたようであります。さらに今年の四月一日に法務省の人権擁護委員の福岡の連合会長白川委員その他が現地に参りまして、三井鉱山株式会社三池鉱業所の所長それから三池炭鉱労働組合第一組合の組合長宮川氏それから三池炭鉱の新労働組合の組合長である菊川武光氏に対しまして、法務省人権擁護委員としての要望書を出しました。さらにこの声明書を各新聞に発表いたしました。そしてこの争議の間においてもお互いに秩序を守り、いやしくも人権を侵害しないように、特に労働組合員の家庭の老幼婦女子に対する圧迫、弾圧、いやがらせ等、そういうことは人道上断じて許すことはできないから、何とかこういう現象のないようにお互いに反省してもらいたい、こういうふうな内容の要望書と声明書を出したのであります。先ほど申しましたように、個々の人権侵害事件につきましては、おもにこれは第一組合員の第二組合員に対し、あるいはその家族に対する人権問題が大半を占めておるのでありますが、まだ決定的な調査とその結論を出すに至っておりません。以上であります。
  57. 門司亮

    ○門司議員 大臣にお聞きしておきたいと思います。今あなたの方の当局からお話のございましたような処置がとられたということは一応私ども了承しております。しかし、その後においても、依然としてやはりその事態がよくなっておらないから私はきょうここで皆さんに申し上げるのであります。少なくとも法治国家としての日本の国内に解放地区的な、司法権の及ばない、あるいは警察の行政権の及ばないところがあってよろしいとお考えになっておりますか。この点を一つ大臣からはっきり聞いておきたいと思います。
  58. 井野碩哉

    ○井野国務大臣 第二組合員の家族が非常に脅威を感じておるという事実はよく私ども了知いたしております。また先般その御家族が上京してこられまして私にも陳情された次第でありまして、従って法務省といたしましても、警察当局とよく連絡しまして、何分にも治安をしっかりしますにはやはり警察力が基本でありますから、警察力の完備によりましてそういう不安を取り除き、さらに具体的な事犯が起これば厳正なる態度で、刑事事犯として検挙いたしておりまして、そういうことのないように善処いたしておりますとともに、人権擁護の立場から、先ほど人権擁護局長が申しましたように、福岡の人権擁護委員の人も視察し、その声明書も発表し、万全の策を講ぜしめつつあるのでありますけれども、まだ十分に徹底しないという点もありますから、今後とも警察当局と十分打ち合わせて、そういうことの不安をなからしめるように努力いたしたいと考えております。
  59. 門司亮

    ○門司議員 これは大臣考えてもらわなければなりませんのですが、従来の人権侵害ということが、今度の事態については個人対個人、あるいは村八分というようなものではないのであります。かなり組織的に行なわれておる一つの事態であります。従って私が今申し上げたような解放地区という言葉を使ったのでありまして、組織的に行なわれないものであるならばこれは別の問題であります。そして厳密に言うと、百家族、二百家族をこえておる数字もあります。どう考えても、今のお話のような刑事事犯として取り扱ってもらうことは当然であります。しかし人権の侵害というものは、案外刑事事犯であるかどうかということについての判定が非常に困難であります。人権擁護局というものが法務省の中に一つできて、やはりそれとは別の立場で人権を守っていこうという形がとられておるのが今の制度、だと考える。もちろん切ったり張ったりあるいは傷害というようなことがあれば、これは別であります。片方が持っておる権利がことさらにある目的を持って強く行使されるところに、片方が非常におびえてくるということが考えられるわけであります。炭婦協の諸君がかりに集団的にどんなデモをやろうと、それが合法であるならば何もちっとも差しつかえない。しかしこのことによってくる一つの危険感というものは非常に大きな問題でありまして、これは刑法上に現われてくる問題とはちょっと違うのであります。こういうことが事実上の問題となって、安心しておられないということ、ことに新組合の諸君の主人は、就労いたしております関係から、家庭にはいないのであります。そこで留守はただ女子供と年寄りだけがおる。こういう家庭の中にあって、非常に不安感を感ぜしめるような行動をやる。直接物をこわしたりすれば、これは警察現行犯として取り締まってもらえばけっこうだ。そういうことでなくて、ややともすれば、そこにそういう問題が派生的に起こるかもしれないのである。従って人権擁護の問題としては、そういう罰に至らないまでの間の処置を十分にとられるということでなければ、私は何も効果がないと思う。あとで小澤君から詳しい御質問があろうかと思いますが、一例をあげて言うならば、病人がある、そのまわりをどんどんジグザグ行進等をやって気勢をあげて歩く。病人の不安感は非常に大きなものである。いつどんなことが起こるかわからない。実例をあげれば幾らでも書いたものがありますから、申し上げて差しつかえないと思います。流産をして休んでいる家のまわりをどんどん歩く、あるいは戸をたたくというようなことが直ちに刑法に触れるかというと、直ちには触れないと思う。しかし住民に与える心理的影響はきわめて大きいと思う。この民主主義の社会に、百家族、二百家族というような数が自分の住宅に住めないというようなばかげたことが、日本の国にあってよろしいかどうかということなんです。これについては取り締まりをするという大臣の御答弁でありますが、私の聞いておりますのは、そうじゃない。そういう地区があってよろしいかよろしくないか、その見解を一つはっきりしておいてもらいたい。その上に立っての処置をお考え願えばいいのであって、やっているからどうにもしょうがないということでは、その事実を大臣自身が認められていることになる。私は少なくともそういう事実は認められないという立場に立った処置でなければならないと思う。また大臣はそれだけのお考えがなければならないと思う。従って、そういう解放地区のようなものがあってよろしいかどうか、大臣の所信を聞いているのでありまして、率直に御答弁を願いたい。
  60. 井野碩哉

    ○井野国務大臣 今まで調査いたしました事態については、私もよろしくないと思います。従って警察力を完備し、また人権問題の方向からもいろいろ手段を講じておるようなわけであります。いいことならほっておいてもいいわけでありますけれども、法務省としてもいろいろの手段を講じておるというこは、そういう事態がおもしろくないということからやっておる次第であります。
  61. 門司亮

    ○門司議員 大臣がそういう決意でありますなら、私はさらにお聞きしておきたいと思いますが、日にちが相当たっております。私も冒頭に申し上げましたように、気の立った当時における一つの派生的な問題としては、社会通念としてこういうことは往々にしてありがちなんです。私どもはストライキは始終やっていますから、きょうもストライキの戦線を一応見て回ったのですけれども、お互いが激高しているようなときには、常識からはずれたことはときどきあることです。しかし今日まで相当日がたっている。もうこの辺でこの問題の締まりがつかなければどういうことになるかといいますと、始終やっているのが慢性的になって、このくらいのことはやってもよろしいのだという観念を植えつけるのでありまして、そうすると事態はますます悪化するということであります。もののはずみにできたことはよろしいが、こういうふうに慢性化してしまいまして、この程度はやってもよろしいのだという気持が片方に出て参りますと、こういう問題が恒常化してくる。私はそれを非常におそれております。日にちが一カ月たっておりますが、一体法治国であって、法務省なりあるいは警察がこれを一カ月も放任しておくという事態はおかしいと思う。もう少し思い切ったというか、適切な処置がとれないものですか。これは何といっても一番大きな問題だと思うのですよ。制度がなければ別ですけれども制度があるのですから。あなた方がお考えになってもおわかりだと思いますけれども、主人のいない留守宅が四六時中絶えず脅かされている、夜もおちおち寝られないというような実態が一体考えられるかというのです。私どもにはそんなことは、しかもそれが一カ月以上も続くということは考えられない。こまかい具体的の問題につきましては、当委員会委員であります小澤君から聞かれると思いますが、当局の見通しといいますか、何か計画されたものがございますか。もしそれがあるならば、この際一つお聞かせを願っておきたいと思います。
  62. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 先ほども申し上げましたように、この三池におきまする問題は非常に根深いものがございまして、新労・旧労間、あるいは旧労・会社間についてのしこりも私は非常に強いものがあると思います。従いまして、ただいま見通しというお話でございますが、いつまでたてばどうなるという、確たることは申し上げかねる状況でございます。しかしながら、警察といたしましては、先ほども申し上げましたように、特に炭住街の治安を確保するということについて特別に努力を払い、さらにまた、最近におきましてもなおかつそういう忌まわしい事件が起こるというようなことにつきまして、特に注意を喚起いたしまして、今までも努力はいたしておりましたけれども、さらにそれに対して工夫を加え、やり方も十分に考えて、遺憾のないように治安の確保に努力したいということを申し上げておるわけでございます。そういうことが徹底いたすことによりまして、炭住街における生活権の確保ということを全うし得るのではないか。またこのためには、かりに被害を受けられるということがありますならば、できるだけすみやかに警察にも御連絡願い、刑事事件として取り上げ得る問題はびしびしとこれを取り締まっていく。それからそこに至らないための予防措置としては、警戒、警らを厳重にしていくというようなことを努めて参りたいというふうに考えておる次第であります。
  63. 門司亮

    ○門司議員 私はもう少し人権擁護局の方から話を聞きたいのですが、今警察庁の長官はそういうことを言いましたけれども、そんなことは現地では何も行なわれてはいないのです。新聞にもはっきり書いてあって、この人がなぐってこの人がこういう被害を受けたということがはっきりしておっても、その人に対して何ら処置をとっていない、平然として歩いている。昨日か一昨日の新聞を見て私も幾らか考えたのでありますが私どもが参りました当時までは、警察庁の報告によりましても、すでに逮捕状の出ておる者が、病人を除いたら十七名も確かにその中におることがわかっておるというけれども、それの始末がついておらない。昨日か一昨日か、やっと十六人指名手配をしたという記事を見たのであります。私どもは、新組合あるいは旧組合を問わないで、暴力に対する態度というものは、警察に厳重にしてもらいたいと思います。かりにそういう事態があるならば――今長官は刑事事犯と言っておりますけれども、これははっきりしたものがあるのです。うそだというならば、ここに新聞があるから読んでもよろしゅうございますが、しかもこれは相当社会的身分のある人の夫人なんです。だから、逃げも隠れもできないような人です。新聞にはっきり書いてある。しかし依然として逮捕されていない。それから警らその他をやっていると言いますけれども、私どもの視察に参りましたときでも、押し問答して入れば入れたかもしれないが、私も時間に制約がありましたから、けんかをしているひまもなかったのでありますが、私の車を三百人くらいの諸君が二重、三重に取り巻いて車にみんなつかまってしまって、前に行くことも手前に引くこともできない。そのそばにはちゃんとおまわりさんがおるんですよ。六人なり七人なりで班を作っておるのに、何らこれについての指示もしない。どうしてやらないのかというと、本部から何とも指令がございませんと言う。あろうとなかろうと、人が道を通るのに、そういう妨害をしているという事実が一体よろしいかどうかということなんです。これが直接に犯罪になるかならぬかということは別問題です。現在そういうことをやりつつある。だから私がさっきから申し上げておりますように、警察の考え方としては一つの考え方があって、警察の身になって考えれば、その場で抑えれば混乱が起こる、そうしてより以上の騒動になるから、まず被疑者だけ目星をつけておいて、あとから検挙した方が事態を収拾するには比較的楽であり、混乱を導かない一つの方法であるということは私も知っております。しかし、それかといって、その事態が区長引いてしまって、そういうことをやってもよろしいんだ、警察は手をつけないん、だ、あるいは人権擁護局は何らの処置をしないんだという観念を植えつけてくることによって、事態はますます悪化してくるんですよ。だからその辺の呼吸は十分考えられなければならない。ところがそれが依然としてやられておらない。私は今の人権擁護局のお話を承っておりますと、何か警告をして新聞に出したというが、警告をして新聞に出しておさまるくらいなら、私どもは心配などしやしない、またこういう事態も起こっちゃいない。ほんとうに安心して住める社会にするには、どうすればいいものかということです。人間の居住権が奪われているんですよ。これほど大きな人権問題がありますか。村八分事件があってもどのくらい社会が騒ぐかということですね。それはただ一人の人が何か村の約束事に反したとかなんとかいうようなことで、刑事事件には至らざるも、こういう被害を受けられる。この事件は多くの人たちが一カ月たってもまだ居住の安定を得られないという事態が起こっている。だから私どもはこれは一つの解放地区だと思う。全然無警察状態なんです。もし法秩序を守る国であるならば、なぜここだけ法秩序が守れないのか。ここだけ守れないという理由が私どもにはわからぬ。人権擁護局としては今後さらにどういう処置をおとりになるつもりなのか、その点を一つ聞かしておいていただきたいと思います’。
  64. 井野碩哉

    ○井野国務大臣 御承知のように、人権擁護局といたしましては、事実を調査いたしまして、人権侵害の事実がありますれば、現在の状態においては勧告するよりほか道がないわけであります。今度の三池の炭住街の問題は、単に勧告だけで事がおさまるとは私ども思っておりません。従って、どうしても治安を維持するためには、警察力をもって事前にそういうことの起こらぬようにしていくことよりほか、ほんとうの治安というものは保てない、こう私は考えております。政府といたしましては、警察庁の方と十分によく連絡をして、そういうことの起こらぬように善処していくことが一番適当である、こういうふうに考えております。人権擁護局としましては、先ほど申し上げましたように、あるいは勧告をいたし、新聞発表をし、そういうことをしないようにというよりほか今法律上道がないのでございますから、その道だけはとっておる、こう申し上げておくより仕方がないと思います。
  65. 門司亮

    ○門司議員 先ほどから申し上げておりますように、調査されて、そうして勧告だけしかできないというお話でありますが、勧告も大体法の建前、それからなされる仕事からいって、そうでしょうが、むろん人権擁護局に行ってつかまえてこいという要求もいたしませんし、また私はつかまえられるものでもないと思います。治安、秩序を保持するための一つの行政措置として警察力を使われることは、私は当然だと思います。しかし問題は、ものの考え方だと思うのです。もし人権擁護局が積極的にお考えになっているなら、こう長い間これが放任をされておる理由はないと思うのです。個々の問題は別ですよ。このような問題がありますが、いまだにこれが放置されておるという理屈は、私はどう考えてもわからない。一体人権擁護局といいながら、何をしているかということです。一ぺんの勧告でできなければ、二度でも三度でも、できるだけ勧告をするなり、あるいはあなた方の方では呼び出されることもできるのですから、呼んで訓戒をするなり、間違いのないように、単なる組合員ということでなくして、おそらくこの中にはリーダーのあることはわかっておりますから、そのリーターの諸君にもやはりあなた方が勧告をされるということは当然の処置だと思う。ところが、行って聞いてみますと、ほとんどそういうことがなされておらない。従ってさっきから何回も申し上げておりますように、片一方はやってもいいのだ、何事もないのだという気持になっておる。これは指名解雇を言い渡された人たちの心情も私ども労働者としてわからぬわけではないが、しかし法秩序がここまで乱れると跡の始末がつかない。同じ軒を並べて住んでいる。軒を並べるというよりもむしろ壁一重のところにみんな住んでいるのです。気が立っておるから、敵味方のような形で、お互いに攻撃し合って、大へんなばりざんぼうをし、あるいはいたずらをしておりますけれども、やはり事態が収拾されれれば、一つところに住まなければならぬ人たちなんだ。同じ職場で働かなければならぬ人たちなんだ。そういう人たちに必ずしもいい影響にならない。永久にいい影響にならぬ。これはぜひ短い期間のうちにそういう障害を取り除いてもらいたい。こういうことが私どもの考え方である。従ってそれの手段としてどういう手段をとられるかということを聞いているのですが、今の大臣の答弁のようなことでは私ども満足するわけにいきませんし、安心してもいられない。実ははっきり申し上げますと、きょうもこれらの婦人の代表が上京してきております。いずれ大臣にお目にかかると言うだろうと思います。この前上京してから相当日もたちますけれども、秩序がどうしても回復されない、ここに実は問題があるのだと思います。私はこれ以上のことをここでお聞きはいたしません。あと同僚議員の質問が残っておりますので、詳細な点は聞いていただきたいと思います。少なくとも大臣としては責任を持ってこの問題を解決してもらいたい。これは争議の問題と別個の問題とお考えを願うことが至当だと思います。そういうふうにお考えになって解決をしていただけますね。争議の問題とは別の問題だ、人権擁護の問題として解決していただけるものと了解してよろしゅうございますか。
  66. 井野碩哉

    ○井野国務大臣 公安委員長とも十分連絡をとりまして、治安の維持に努めたいと考えております。
  67. 瀬戸山三男

  68. 小沢貞孝

    ○小沢(貞)委員 一カ月もたって後に、最近また炭住街にこういう集団的な、デモをやったあと戸をこわしたり、入浴中の婦人の着物を持っていって、いじめたりというようなことで、最近の情勢は百数十名の第一次の集団疎開の人が帰るどころではない。私たちが行って真剣に訴えられることは、また集団的に疎開しなければならないというような情勢になってきているわけです。一体どうしてそういう情勢になったかということを現地に行って判断してみると、こういうことです。第二組合のできたときには三千何名でしたが、それが二十日ばかりたつ間にだんだんふえていって、今では五千二百何十名という工合に、第二組合がだんだんふえていっているわけです。第二組合がふえるのを防ぐのは、戦術としては、就業する者の留守家族を不安がらせる、それにいやがらせをするよりほかに手はないということで、急に炭住街の留守家族に対するあるいは家庭の婦人に対するいやがらせ行為が始まってきたわけです。そういうことが一つの理由です。もう一つの理由は、これは私なりの判断ですから間違っているかもしれませんが、この炭労の争議の勝敗というものが、だんだん見通しがついてきた。従って全国から集まってくるオルグが現地に行って、これは警察官の方から聞いたんですから間違いないと思うのですが、自由労務者という腕章で、一部のあまり好ましくないような人々が、大阪から幾人、兵庫から幾人という工合に入ってきて、そういう人たちが十日なり十五日のオルグが終わったならば、帰りがけの駄賃としてやっていくのだというような点もあるのです。争議の形勢からだんだんこういうことになって参りました。従って現地の警察に聞いてみても、新組合の幹部の身辺は特別に擁護しなければいけないとか、会社の重要施設に対しては特別保護しなければいけないとかいうような恐怖の状態が一段と出て参ったわけです。だから、ここで警察が実際はしっかりしてもらわなければならぬにもかかわらず、警察はしっかりしておりません。今警察庁長官は、警察とすみやかに連絡願って直ちに処置すると言われるが、それさえできれば、こういうことは起こっていかないわけです。警察にいかに頼みに行ったって、警察はやってくれないわけなんです。そこにいけないところがあるのです。警察が直ちに現行犯として逮捕してくれるならば、あとは暴力肯定の思想が増長せずして、こういうことはだめだということになる。それをやっていない。私たちは、どうしてこういうことが今長官の耳にそういう格好に入っているかというと、私たちが行くときは、門司さんや何かと一緒ですが、最初九州管区の局長、それから福岡県警の本部長と会ってみたら、だいぶ大丈夫になりましたということなので安心して出かけて行ったら、あくる日は実態が違うわけです。その管区局長とか本部長の報告を受けているものだから、今のような答弁しかしていないわけです。だから私はそこに根本的な誤りがあると思います。その誤りを是正してかからないと、具体的な適切な処置を講ずるといっても具体的にできないと思うのです。どうしてそういう実態になったかと言えば、私はこうだと思うのです。おそらく、大牟田市でも社会党の市長であるし、労働組合出身の社会党の議員がたくさんいる、過去においてたびたび争議があったので、争議には介入してはいけないぞということで、警察は常に争議に介入することは――これはなかなかむずかしい問題だと思います。労働争議に警察がどういうふうに介入することがいいか悪いかということは、なかなかむずかしい。あるいは福岡県の知事が社会党の知事であるということや、労働組合出身の議員が多いということで、警察がだいぶ遠慮しすぎているのだ、この点が必要以上にあるのです。そうして労働争議の範囲を逸脱した暴力に対してもなおかつ拱手傍観をしている、こういう実態じゃないかと思うのです。門司議員が今言われたように、現に私たちが、たしか二十二日の午前八時半、朝早く見て行こうということで新港住宅街の入口へ行ったらば、百人か二百人くらいのピケに阻止されて、国会議員だと言っても入れてくれないわけです。その二メートル、三メートルと離れないところに福岡県警の検問所があるのです。検問所ではこん棒をちゃんと持って、十人くらいの人がただ並んで見ているだけです。それでわれわれはやむなく引き返さざるを得なかった。そこでは何らの措置も考えていない。道路交通法上の道路になっていないわけです。そういうことが平然と行われている。今度は四山炭住街へ行った。そこは熊本県警の領分だが、組合の人に言って何とかそこのピケをあけてくれと言ったら、わかりのいい親方がいて、それじゃ国会議員は入れてやらなければいけないということでようやく入れば、今度は親切にも、パトロール・カーをつけて私たちを案内してくれた。それで私たちはこの間のデモで住宅が破壊された、戸が破壊されたというところを見せてもらいたい、こういうことでパトロール・カーに乗って、こわしたところを見て回ったわけです。そういうふうに現実にこの間のデモで家がこわされている、その犯人というものは全然放置してあって、何にもしてないというところに問題があるわけです。ここを一つ考えていただかなければなりません。  そこで私はどうしてそういうことかと言うと、福岡の地検へ寄ってちょっと名前を忘れましたが、その人に聞くと、こういうことなんです。この三月二十八日のあの大乱闘のときの逮捕状が発せられて未逮捕の者が日労に十七名、新労に二名あって、新労の二名の一人は入院、一人は病気だ、こういうことだが、旧労の十七名はデモの中に入っておるかどうかして、つかむこともなかなか困難だということです。それからあとで行って聞いてみると、なに、給料をもらいに来ているではないか、本部で堂々と電話をかけているじゃないか、そういうことです。それをつかまえないためにこういうことになっている。それで、その十七名か何かの、三月の一月前の逮捕に一生懸命になっておる。それで炭住街に事件が数十件あるけれども、目下のところ、三月二十八日の三川鉱の乱闘事件の検挙に全力をあげております。こういうことです。だから炭住街に起こっておる事件については今のところ手が回らないのか、あるいは無視しているのか、あるいは意識的にやっていないのか、手が回らないと言っている。それは三川鉱の最初の乱闘の検挙の方に一生懸命熱を入れております。こういう格好ですから、てんで頭から、炭住街で起こるいろいろの事件については、手をつける意欲がないのではないか、こういう工合にしか受け取れないのです。だからたとえば私たちが行った二、三日前ですが、全労のオルグが二、三十名、旧労の七、八百人から千人の者に取り囲まれてしまった。そういう中で警察があわてて飛んできた。飛んできたところが、旧労の人に警察は介入してはいかぬぞといわれて警察は引き下がり、みんなそこへすわり込んでながめている、こういうことです。これは確かな場所と具体的なことは忘れましたが、十三名のうち十名かけがをしている、こういうことなんです。まるで旧労に支配されている警察であるかのごとき実態だから、こういうことになってしまうのだ。その辺を一つはっきりしていただかないと、こういうもののめどはつかないと思うのです。だから柏村長官の言われる適切な処置とか連絡をしてもらうとかいうことは、もうさんざんやりほうだいにやっているのです。なおかつみずから自衛しなければならないということと、それからきょうも五十名からの婦人が陳情に来なければならぬという実態なんです。だから中間の報告が悪いのです。もっとはっきり言うならば、そこの本部長を更迭するなり何なり決意をしなければ、そんなことはできないと思うのです。その辺を具体的に、もっと治安確立についての御答弁をいただきたいと思うのです。私は昨日だか一昨日だか、石原国家公安委員長にこういう実態であるという申し入れをいたしました。国家公安委員長は何か忙しいらしいので、それならば警察庁長官なり刑事局長なり担当警備局長なりが直ちに行って、実態を把握していただく、そういうことが必要ではないかと思います。その辺の御見解を一つ……。
  69. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 炭住街におきます治安の問題は、確かにただいまお話のような点がまさに事実であると私も考えております。そういう意味におきまして、現地からの報告は私は誤っていないと思います。ただ私が申し上げましたのは、一月前の事態は非常に険悪であった。そのあと極力努力しまして、だいぶ平静に帰ってきたのでございますが、去る十八日、二十日の就労の問題がございまして、そのあとまた炭住街において悪化の傾向をたどっておるということが事実のように私は聞いておるわけでございます。そこで警察といたしましては、先ほど来申し上げておりますように、単に制服の部隊、パトロールというようなことを時間をきめてやるというようなことでありますと、警察の目の届かないところでもっていやがらせとか不法な行為が起こったというようなことにもなりがちでございます。いろいろとその点のやり方についても工夫をするように現地に指示をいたしておるわけでございます。現地の管区局長、県の本部長また本部長以下の警察官は、懸命にその努力をいたしておりますので、私現在においてこれらを更迭して事態をおさめるというような考えは毛頭持っておりませんが、現地に対しましては、ただいまお話しのような点も十分に私からも注意をいたし、また現地においてもそういう事態について懸命に努力をいたしている状況でございますので、なかなか一挙に治安の確保ということがなりがたいという点はございますけれども、炭住街の方々も、私先ほど申しましたように、警察に協力して、できるだけ事態をはっきりと連絡し、協力していただくというようなことに、失望なさらずに十分にやっていただき、警察としても今後ますます懸命に努力していくということを申し上げたいと存じておるわけでございます。
  70. 小沢貞孝

    ○小沢(貞)委員 刑法に触れる者は直ちに逮捕する、この現行犯逮捕主義というのが確立されれば治安は確立すると私は思うのです。それをさっきだれかが言ったように、まだ二十八日の三川鉱の旧労の者を逮捕するのに全力をあげて、ほかには手が回らないのだ、そんなような答弁なんです。たとえば、私たちはあっちへ行ってもこっへ行っても四人くらいから聞かされたのですが、荒尾市の市会議員の奥さん、この人に私は頭の毛を抜かれました、なぐられました、デモがやってきてうちの戸をこわしました、げたでなぐられましたということを、あっちの住宅街の人からも、こっちの人からも、三回も四回も聞いておる。その人の名前は新聞にも出ておるし、市会議員の奥さんでだれもわかっている。そこの炭婦協の地域の親方をやっているらしい。そういう人に対して、一週間たとうと十日たとうと何もしていない。暴力を肯定すると思われるようなことを言っておる、これくらいはいいだろう、こういうことにだんだんなっていってしまっているわけです。それをきちんきちんと現行犯でみんな押えてしまわぬと、だんだん増長していく。警察が現地でやっているのは、どうもそういうものを肯定しているように大衆は受けてしまうのです。だから、警察は当てにならない、こういうような気持にだんだんなっていくわけです。それをぜひ取り除いていただかなければならないと思うわけです。最近の傾向として、これは擁護局長も一つ真剣にお取り組みいただきたいのです。新聞にも出ておりますように、子供の問題で、これはわれわれも教育委員会等へ申し込んできたわけですが、四月十七日の新聞の百五十人の臨時転校というのです。学校へ子供たちが行っておられないわけです。もう一つは疎開された先で近くへ行きたいという人もありますし、学校へは行っちゃおられない、おふくろさんや何かとデモの中に入って一緒に騒いでいる中学生もある。学校へ行けばいじめられる。こういうようなことから百五十人の臨時転校で、学校までかえけなればならぬというような実態があることを私は申し上げたいわけです。  そこで、擁護局長は、先ほど、適切な措置とか、あるいはまた声明を発表したということですが、人権が侵害されている根本というものは私が申し上げたようなことですから、擁護局の方から適切な手段を講じてもらうように、これは具体的にしなければならないと思うわけです。その辺、どういうようなお考えであるか、お聞きをいたしたい。
  71. 鈴木才藏

    ○鈴木(才)政府委員 人権擁護局といたしましても、大牟田の事件というのは非常に重大視しております。決して放任をしておるわけでございません。むしろ私は、戦後十何年の間に国民の間に非常に浸透いたしました人権意識というものが、こういう事態が放任されることによって一挙にくつがえされることを非常に憂えておるわけでございます。ただ、人権擁護局の組織といたしまして、強制力もございませんし、また機構すべての点がこういう集団的な暴行事件を予想しておりませんので、人権侵害事件を解消するための適切なる能力と申しますか、力がはなはだしく不足いたしておることは私として非常に遺憾に存じております。けれども、私は大牟田における現在の人権問題というものは、このまま放置すると、今小澤委員のおっしゃいましたように、ゆゆしい将来に禍根を残すことになると存じますので、私の方の力、組織の及ぶ限りのエネルギーを集中いたしまして、一つ一つ適切な、また強力な方法によりまして事件解決して参る、そしてその具体的な事件を通して、また具体的な事件の勧告を通しまして、この住宅街における人たちの人権意識の高揚にできる限り努めて参りたい、こういうように考えております。
  72. 小沢貞孝

    ○小沢(貞)委員 具体的な例をあげていろいろ御質問を申し上げればいいのですが、だいぶ時間もおそいようでありますので、最後にお願いだけをしておきたいと思います。  これは現地の情報ですが、旧労の第一組合の山田というのは、間違っているかもしれませんが、山田報道部長という人の話によれば、もう幹部の言うことを聞かない、こういうのです。現に私はそうだと思うのです。新港住宅街の入口へ行ったら、そこはピケでさえぎられて私たちは行けなかった。ところが、四山の住宅街に行ったら、そこの幹部はわかっていて、私たちを入れたということは、どうも無統制であると思うのです。これは新労の方に聞いたのですが、旧労の方では白虎隊戦術だと言うのです。白虎隊戦術でもう自爆するのだ、こういうような気持になりつつある。これは千二百名の指名解雇者の行く先というものを心配しないという問題であります。これは会社にしても政府にしてもいろいろ問題はあろうかと思いますが、現実の問題としては、そういう事態にまでなってきてしまっている。そうして社宅においては今どういうことをやっているかというと、たとえば旧労の方の婦人が入浴をする、そのあと新労の人が入浴することになるのですが、新労の人が入浴するときにはふろをかんかん熱くしてしまって、水はとめてしまって出ない、裸でおろおろしているわけです。そうしてそのうちに脱衣室から着物を持っていってしまう。これではどうしようもない。こういうことですから、まさに生活しておられないという状態なんです。ここにいろいろの宣伝のあれもありますが、陣痛のさなかにデモをかけられていじめられた。そこで雨戸を締めてやったところが、雨戸を取りはずしてきて、犬の子でも産めばいい、サルの子でも産めばいいと、わんわん、ぴーぴー、わっしょわっしょ騒いで、子供も産めないという実態です。そういうような数限りないことがありますが、そういうものを適切にその場において排除する。確かに中をパトロールしてもらっておりますけれども、デモはどの程度が限界であるかということを非常に気にし過ぎておると思う。だから、そこさえぴしっ、ぴしっと、けじめをつければ、こういう問題はなくなると思う。特に最近の傾向は、凶悪の傾向、険悪な傾向を帯びてきておるようですから、こういう点を特に注意して、直ちに指示していただきたい。私たちもまた党の者がこの連休中にも参りますけれども、再びこういう声を聞くことのないように、すみやかに適切な手を打っていただくことを特にお願いしたいと思います。  これ以上はやってもしようがありませんから、以上で質問を終わりたいと思います。
  73. 大野幸一

    ○大野(幸)委員 私も二、三関連して質問いたしたいと思います。  一体あなたは政府の閣僚の一人として、この事件について閣議でも開かれたことがあるかないか、その閣議の結果決定されたようなことがあるかないかをまずお伺いしたい。
  74. 井野碩哉

    ○井野国務大臣 三池事件につきましては、閣議でもいつでも問題にしておりまして、その対策についていろいろ話し合いをしてきております。
  75. 大野幸一

    ○大野(幸)委員 この三井がいまだにおさまらず、各委員が述べられたような険悪なる事態になって、しかも警察力は無能ぶりを遺憾なく発揮している根本原因は、枝葉末節を言ったってしようがない、また組合員の行き過ぎを言ったってしようがない。問題は、千二百人の指名解雇の点を政府としてどう処置するかということを監視される必要があると思う。この点について政治的の処置をしない限りは、これはいつまでも続くものと思うのです。その点についてわれわれは強く要望したいのですが、離職者、解職者に対して安心のいくような話が何か閣議で出たか出ないか。ただ暴力は不都合だ、あるいはまた警察力が足りない、あるいはまた会社は警察と連絡を密にしないからつよくないのだ、こういって、お互いが責任のなすりっこをしておるが、政府としては何としてもこの事態を解決するために、千二百人の身分について安心をさしてやることが必要だと思う。今まで閣議でいろいろ話が出たというだけでは、この重大なる治安は保たれるはずがないと思うのです。こういう点について、閣議で何か対策が立てられておるのか、おらないのか。もしおらないとするならば、治安上の問正題として、国務大臣は閣議でこのくらいの発言をされることが必要だと思う。そうしないところに根本原因があるということなんです。この点についてはどうですか。
  76. 井野碩哉

    ○井野国務大臣 千二百名の解雇の問題につきましては、これは私の所管でございませんで、労働大臣として所管しておる問題でございますが、閣議におきましても、この問題は先ほど申した通り絶えず閣僚みな心配しておりまして、政府の方針としては、今の段階においては労働争議に介入すべきでないという方針で、藤林あっせん案を期待しておったのでございますが、その後の情勢につきましても、閣議でいろいろ相談いたしておりますが、今の状態においては、解雇問題についてはまだ介入すべき段階でないということから、治安の面を主として、私と公安委員長とでいろいろ相談し合って進めておるような次第でございます。
  77. 大野幸一

    ○大野(幸)委員 今度の三池争議に対しては、幸い第一組合と第二組合ができたので、労働者同士戦わしておけばいいのだ、労働争議に対しては、労使間の問題であるから、これは政府としては介入しないのだ、こういう方針をとっているために、むしろ労働者間の紛争が激しくなって、そして実力と実力との解決に待とうとしているように考えられる。ふだんの場合、労使との一対一で争っている場合ならば格別、こういうように労働組合が二つに分かれて、そのために治安が保たれないということは、厳然たる事実なんです。そういう場合には、法務大臣として、労働問題だけじゃないのです。今われわれが言っているのは労働問題だけを言っているのではない。人権問題、あるいは生活問題、人道問題、こういうものに対しての社会不安を解決してもらうことが法務大臣じゃないかと思う。本日法務委員会においてこれが発言されたゆえんのものは、そういう意味なんです。これについては、検察庁の出先をいじめてみたって、政府の方針、政府の根本的な気持がわからないでは、とまどうにきまっているのです。こういう点については無責任じゃないでしょうか。こういう点については、法務大臣は責任の一端は果たしてもらいたいと思うのです。  それからもう一つ、警察庁長官の方にお尋ねしたいのですが、このことについて国家公安委員会に何か具体的の指示を求めたことがあるかないかということを伺いたい。
  78. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 三池の問題については、詳細に公安委員会に御報告し、御論議を願っておりますけれども、具体的にどうせよという指示を受けておりません。
  79. 大野幸一

    ○大野(幸)委員 それでは石原国家公安委員長の名においても、具体的には何ら指示は受けておらない。あなたの方から報告しておるというだけですか。
  80. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 公安委員会としても、十分に警察の責任を果たすようなことにつきまして御意見がございまして、そういうことは私とくと拝承をいたしておるわけでございます。しかしながら、特に取り立ててどこをどうせよというような個別的、具体的な点については、大臣から承るべき筋のものでなく、公安委員会から承るべき筋だと思いますが、そういうことはございません。
  81. 大野幸一

    ○大野(幸)委員 私の聞いておるのは、公安委員長の石原さんから何か聞いたかということを言っているのです。われわれ民社党として石原公安委員長にすでに三回の申し入れをしているのですが、こういうことに対して石原長官は何ら具体的な指示をしていない。ここなんです。なるほどピケ隊の限界は、法律的には最高裁判所の判例を私は個人的には支持しますが、それは裁判というものなんです。実際政治というものに対しては、過去、日本の労働争議がゆがめられて、慣行となったのでしょうが、とにかくあのピケ隊は今まで認めてきたのです。ですから地方本部長は言うのです。ただ三井だけの問題についてピケの問題を解決するわけにいかぬ、これは政府として、日本全体的にどういう処置を警察としてとるかということで、全般的に解決してもらうよりほかにない、こういう苦衷を訴えておったのです。出先の福岡県だけが特別に、最高裁判所の判例がこうだと言ってこれを押し切ることはできませんと言っておる。裁判になったときはこれはどうか知らぬが、そう言っておった。そういうふうになると、これは中央のあなた方の責任であり、ほんとうにこれをどう解決するか、早く指示してやらなければ、とまどいますよ。そうかと思うと、警察力が足りないわけでないと言っておる。警察力は十分にある。今までは労組と労組との紛争であり、労組と労組との傷害事件であるけれども、一たん警察が威力を発揮すれば、このときには警察が暴力に屈するとは考えられません。こう言っておる。それだけの自信を持ちつつも、今日問題は労働運動、労働争議という一点に懸念を持っている気の毒な気持なんです。そうすると労働争議というものに対しての、中央のあなた方の一定したる方針を指図して、どうなろうと地方の出先警察に責任を負わせないだけの責任が中央にあるじゃないかと思うのです。こういう意味において早急に具体的の協議をされて、そしてどちらかの指示を与えられたいと思うのですが、こういう用意がありますかどうかという点が一点。  それから、もうすでに志賀委員が来ておりますから、もう一点。何といっても、これは政府の政策というか、政治の貧困なんです。労働者を相戦わしめ、労働争議には介入しない、こういう原則で違法行為までもややもすると放任しておく。これが労使間においてこの違法行為が行なわれたらどうですか。決して政府は労働争議に伴う違法行為の取り締まりにも関与しないなんて言っていません。たとえば、重役の住宅に乗り込んで傷害を与えるとか、あるいはまた占拠するとか、こういうようなことがあったときは、それは一見明瞭だ、労働争議と違法行為は別である、こう言って必ず警察は威力を発揮したでしょう。どうせ労働者同士のけんかだ、そこでもんでいるやつはかまわないというようなひがみが、これ以上うっちゃらかしておくと出てくる。今までは許したでしょうが……。地方本部長が言っておりました。私は総理大臣の命令を受けなくてもいい立場だ、現在の警察というものは、公安委員会の指示によって動くのだと言っておる。実に公平であると言っておりました。そのとき私は非常に感激して参りましたけれども、ちょっとこれだけでは、はなはだ何ですが、今から考えてみると、本部長はあまりに会社に対して反感を持ち過ぎている。私はそのときは了解したが、これもよくない。また会社の私兵化するということに対する不満、これは非常にいいことですが、しかしこの気持があまり動くと、その反面としてまた不必要に労働組合に同情する、そういうことです。これは人間の心理的変化であり、それはやむを得ないことであるが、そういう点、私が視察して帰ってきてから二週間たった今日ただいま、なおこれを続けておると、どうもあのとき私の善意に解釈した気持も、今では、あまり会社に反感を持ち過ぎているのではないかと考えざるを得ないということもありますから、これはよく出先の人たちと打ち合せをされて、全く公平無私に、違法行為は違法行為として取り締まる、こういうことを警察としてはとってもらいたいと思います。法務大臣としては治安確保のために、もっと千二百人の処置を、これに対して安心を与えられるように――私は個人的に言えば、決して千二百人が全部不当解雇とは考えられない。そのうち若干名は生産阻害者があったであろう、私はそうつかんで参りました。こういうのはやむを得ない。ですけれども、千二百名全部が指名解雇になるならば、これに対してやはり窮鼠かえってネコをかむ人間の気持、労働者の気持を察してやって、政治としては、労労使の問題でなくて治安の問題として、大きな政治の問題としてでも、政府があまり長く放任しておくことは、その治安が保たれない責任は、一に政府にあると思いますから、治安上の立場から、法務大臣においても相当の発言権を行使してもらいたい。  由来法務大臣はどうも閣議において弱い、弱いと言われておるのですが、そんなはずはないわけです。他の大臣なんかより、人格高潔の人がたいてい法務大臣になるので、うしろ暗い人は法務大臣にあまりならないのです。ですから、こういう場合には、法務大臣の権威からも、一つ大いに国務大臣の一人として、政治の貧困を解決するために御努力をしてもらいたい、こう思います。これで終わります。
  82. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 先ほど、私お答えに言葉が足りなかったかと思いますが、国家公安委員長の石原国務大臣に、民社党その他からいろいろ御要望がございました。それは同時に私にもございました。そういう点につきましては、委員長と十分お打ち合せをして、遺憾のないように現地を指導いたしておりますので、公安委員長から何らの指示がなかったということは、ここをこうしろと、われわれの見解と違って、具体的に指示を受けて、それに従ってやったということはないという趣旨で申し上げたのであります。誤解のないように……。
  83. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 次に、志賀委員の御質問に入りますが、法務省刑事局長が、ただいま参議院の法務委員会質疑応答中であります。かわって刑事局の近松説明員が見えておりますから、御質疑を願います。志賀義雄君。
  84. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 時間もたちましたから、きょうは簡単にやります。  最初に、警察庁長官がいらっしゃいますが、昭和三十三年度の決算報告は、最近われわれの手元に届きましたが、警察庁の予算の使途について、何か会計検査院から指摘されたことがございましたか。
  85. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 三十三年度の決算につきまして、特に会計検査院から指摘されたということは、今記憶いたしておりません。
  86. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 では、警察庁で会計検査院に対して、何か二重帳簿をお作りになっておるようなことはございませんか。
  87. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 そういうことはございません。
  88. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 ございませんか。それは確言されますね。というのは、私が伺うのは、会計検査院が来たときに、たとえば捜査費の使途について、いろいろ問題が起こると悪いから、会計検査院用の帳簿と、そしてもう一つほんとうの張簿とを作る、こういうことをどこからか指示されたようなことはございませんか。
  89. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 そういうことはございません。
  90. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 それは確かに伺っておきまして、追って連休明けのときに、いずれその点について、きょう伺ったことを参考にして、いろいろと伺うことにいたしますから、御用意願います。  次に、先ほど猪俣委員が伺われたそうでありますが、今度の刑法改正準備会の案は、新聞社の方々にはもうお渡しになったのじやございませんか。法務委員にはまだ渡っておりませんけれども、いかがでしょうか。
  91. 井野碩哉

    ○井野国務大臣 これは、準備会として新聞社に渡したように聞いております。そこで、先ほど来猪俣委員から御注意がありまして、多少手続の上において前後はいたしましたが、秘密のものではありませんから、法務委員会にも至急配付するということを申し上げたのでございます。
  92. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 では、それが配付されましてから、いずれ正式にいろいろと伺いたいと思いますが、非常に重大な問題があります。  ただ、法務大臣はお急ぎでございますから、準備会の構成についてだけ伺っておきますけれども、その基準はいかがなものでしょうか。検事、判事、こういう方々も入っておられるのでしょうか。
  93. 近松昌三

    ○近松説明員 構成員につきましては在京の学者、大学教授及び在京の検察官及び裁判官の方もそれぞれ参画されております。
  94. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 法務大臣に伺いますが、今度発表されるときには、その準備会の会員の名前も、あわせて御発表願いたいのでございます。
  95. 井野碩哉

    ○井野国務大臣 よろしゅうございます。
  96. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 法務大臣は、いずれまたあらためていろいろ伺いますが、よろしゅうございます。  近松さんにお伺いいたします。今度の改正案を作るについては一般に中間報告を発表して、世論に訴えながらやられたのでしょうか。それとも、ずっと秘密にやられたのでございましょうか。
  97. 近松昌三

    ○近松説明員 私が承知いたしております限度では、一般世論を聴取するというり形で、意見を反映させるという措置はとっていないように記憶しております。ただ、この機会におきまして、一応取りまとめたものを発表いたしまして、あらためて世論その他一般国民の方々の御意見も聞きまして、最終的に最もいいものを作ろうという意図で、今回発表するというふうになったと聞いております。
  98. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 そこで、今度の新安保条約でも、条約の本文そのものはあとから発表されましたが、その前に、大体こういう範囲のものだ、この点についてはこうだということを、藤山外務大臣の方からも説明があったくらいでございます。不動産侵奪罪のときなんかも、ずいぶん前からPR活動をやっておられたようですが、これは、何か世論を刺激するとまずい点があるので、成案を得るまでは発表しなかったというような意図がございましたでしょうか。
  99. 近松昌三

    ○近松説明員 私の承知いたしております限りでは、そういうような事情、あるいはそういう意図があったというふうには聞いておりませんし、私自身もそういうふうには考えておりません。
  100. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 これは前に、たしか委員長は小野さんでございましたか。
  101. 近松昌三

    ○近松説明員 議長か小野博士ということになっております。
  102. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 一昨年でしたか、小野博士にちょっと準備会の模様のことを伺ったことはあるんです。それでいろいろと新しい刑法の学説なんかに基づいて入れられるというようなことがありますけれども、今度は内容について一つ伺いたいのですが、死刑は若干の面では減らされている。しかしながら、内乱、外患、こういうようなものが新たに入るというふうに伺っておりますが、その通りでしょうか。
  103. 近松昌三

    ○近松説明員 現在資料を持ち合わせておりませんので、詳細な点はわかりかねますが、おっしゃいましたような点の手直しが若干あるように伺っております。
  104. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 手直しじゃなくて、今度初めて入れられるのでしょう。それで、全般的な問題として、共謀共同正犯が取り入れられるように思われるのでございますが、そういうふうになっておりましょうか。
  105. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員 発言中恐縮ですが、志賀委員に申し上げます。先ほど猪俣委員の御質疑に対し、法務省、法務大臣あるいは刑事局長からの答弁は、私どもその案というものを見ておりませんが、これは試案の試案程度で、法務省として正式に取り上げておる案ではない。従ってこの問題は先ほど説明員の方からもお話がありましたように、大いに世論を聞いて、今後検討すべき問題である、こういう説明でありましたので、資料が出てから、それぞれ刑事局長等に御質疑なさる方が、かえって明確になりはせぬかと思うのですが、いかがでしょうか。
  106. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 説明員という肩書で来られて、今のところ法務省を代表しておられますから、その準備会案が報道機関に発表されるくらいならば、法務省並びにきょう特に説明員として来られた近松さんは御存じのところもあろうかと思い、われわれも準備いたさなければなりませんので、まっ先に発表して――向こうはいきなりPR活動でばんばんやられる。こちらはそれからやるというのでは、スタートで向こうはバンディキャップをこっちに押しつけてくることになりますから、それでは困るというこのわれわれの気持は委員長もおわかりでございましょう。
  107. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 重ねて申して恐縮ですが、いわゆる発表された案なるものは、法務省としての案ではなくて、法務省としてはこれを取り上げるということになれば、法制審議会に正式にかけて、その後法務省の案になる。法務省としては、正式には、直接の案については現在のところは関係はないという法務省、法務大臣、刑事局長の説明です。従ってもう少し双方の準備かできてから詳細に御質疑になった方が、かえって……。
  108. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 詳細な点はいずれまた――法務委員会に配付されておりませんから、そういうふうになりますけれども、いろいろ憂慮すべき問題があるように伺います。これは小木さんも、一昨年私がやったことは御存じのことで、すでに準備会で審議の過程で問題になったこともあるのです。これは古屋委員からも当時質問がありましたが、私も質問いたしました。いろいろ問題になった点があるのですが、それはいつごろ発表されましょうか。
  109. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 ちょっと志賀委員に答えますが、その資料は、どうせあるのでしょうから、さっそく出させるようにします。私ども全然見ておらぬからわからぬのですが、法務省からはさっそくいわゆる資料と申しますか、今の案を当委員会に出すということでありますから、こちらからも出してもらうように要求いたします。
  110. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 それで委員長から、案を作られた準備会に対して特に御注意願いたいことは、五月三日に報道機関では発表するという申し合わせがあるそうでございます。だからその方にはもう配付されておることは先ほどおっしゃった通り、そうしますと、私がさっきから問題にすることは報道関係の方には先に出す。いずれ審議しなければならないこの委員会に対しては、今もって何らの連絡がない。委員長自身がこらんにならない状態でしょう。そのことを私は申しておるわけです。これでは報道機関を利用して案をぱっと出す。そうしてそれについていろいろと宣伝をやる。そうして法務委員会ばそういうものをまだ全然配付されていない。それを見て初めて準備にとりかからなければならない。御承知通り刑法典ですから、非常に膨大な体系になります。これをわれわれがいろいろと研究して、法務委員として職責を尽くすには相当の時間がかかる。委員会やり方が一体片手落ちじゃないか。この点を私は問題にしておるわけであります。その点について委員長の力から正式に申し入れて、なぜこのような片手落ちのことをやるのか、これが一点。その理由回答を得られた上で今度法務委員会に御報告を願いたいのでございます。それが一点。  それからもう一つ、できるだけすみやかに、今日じゅうにでもこの法務委員には配付するようにしていただきたい。刑法典というからには、当法務委員会において審議しなければ、これは国会にもかけられないものでありますから、まずここに最初に連絡するのが至当だろうと思うのです。それをやっていない。一体どういう意見なのか。これは重大な問題があると思います。ですから委員長、一つここをふんばって少しこわい顔をして言ってもらわなければいかぬ。
  111. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 志賀委員にお答えいたしますが、先ほども申し上げましたように、法務大臣から、いわゆる案なるものは直接法務省の案ではないということでありました。そこで資料はさっそく委員会に提出いたすように取り計らいますということでありましたから、委員長からもすみやかに資料を出すように要求いたします。本日間に合うかどうかは問題ですけれども、すみやかに出すように手配をいたします。
  112. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 すみやかに出されるのはいいですけれども、今のような片手落ちをしたのはどういうことかということを確かめていただきたいという意味です。
  113. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 その点については、先ほどちょうど志賀委員がおられなかったのですが、法務大臣から正式にそのいきさつの答弁があったのでありますから、それで御了承願います。
  114. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 いきさつはともかく、あなたに要望するのです。私は、どうしてそういうことをしたか、委員長が責任を持って当法務委員会を代表して――法務省は今わきにのけておいていいですよ。法務省の責任を今問題にしているんじゃない。それを一つやって下さるかどうかをはっきり答えて下さい。
  115. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 志賀委員の意のあるところは十分善処いたすことにいたします。
  116. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 それではこれでやめましょう。
  117. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 本日はこれにて散会いたします。     午後一時三十分散会