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1960-04-05 第34回国会 衆議院 法務委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年四月五日(火曜日)     午前十時五十五分開議  出席委員    委員長 瀬戸山三男君    理事 鍛冶 良作君 理事 小島 徹三君    理事 小林かなえ君 理事 田中伊三次君    理事 福井 盛太君 理事 大野 幸一君       綾部健太郎君    一萬田尚登君       薄田 美朝君    世耕 弘一君       竹山祐太郎君    馬場 元治君       猪俣 浩三君    田中幾三郎君  出席国務大臣         法 務 大 臣 井野 碩哉君  出席政府委員         警  視  監         (刑事局長)  中川 薫治君         警  視  監         (警備局長)  江口 俊男君         検     事         (刑事局長)  竹内 壽平君         公安調査庁次長 關   之君  委員外出席者         議     員 北條 秀一君         検     事         (刑事局刑事課         長)      河井信太郎君         検     事         (刑事局公安課         長)      川井 英良君         判     事         (最高裁判所事         務総局総務局総         務課長)    長井  澄君         警 視 総 監 小倉  謙君         専  門  員 小木 貞一君     ————————————— 四月五日  理事田中幾三郎君同日理事辞任につき、その補  欠として大野幸一君が理事に当選した。     ————————————— 四月二日  会社更生法の一部を改正する法律案大貫大八  君外九名提出衆法第二六号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事の互選  裁判官災害補償に関する法律案内閣提出第  一一四号)  会社更生法の一部を改正する法律案大貫大八  君外九名提出衆法第二六号)  法務行政及び検察行政に関する件      ————◇—————
  2. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 これより会議を開きます。  この際お諮りいたします。理事田中幾三郎君から理事辞任の申し出がありますので、これを許可することとし、これよりその補欠選挙を行ないたいと存じます。これは先例によりまして、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  それでは理事大野幸一君を指名いたします。      ————◇—————
  4. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 次に、裁判官災害補償に関する法律案議題といたします。     —————————————
  5. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 まず、国務大臣から提案理由説明を聴取することといたします。井野法務大臣
  6. 井野碩哉

    井野国務大臣 裁判官災害補償に関する法律案について、その趣旨説明いたします。  政府は、労働者災害補償保険法の一部改正と対応して、一般政府職員災害補償制度の改善及び整備を行なうこととし、今国会に国家公務員災害補償法等の一部を改正する法律案提出し、御審議を仰いでおりますことは、御承知通りであります。この裁判官災害補償に関する法律案は、裁判官についても、他の特別職職員と同様、一般職職員の例にならって、その災害補償制度を整備しようとするものであります。  御承知通り、現在、裁判官公務上の災害に対する補償につきましては、他の特別職職員と同様に、労働基準法等施行に伴う政府職員にかかる給与応急措置に関する法律規定によっているのでありますが、このたび、一般職職員公務上の災害に対する補償について、国家公務員災害補償法の一部改正により、身体障害の程度の重い者及び長期療養者に対する補償を改善し、さらに特別職職員給与に関する法律に掲げる特別職職員公務上の災害に対する補償等についても、同法の一部改正により、一般職職員の例によるものとすることになりましたので、この際、裁判官公務上の災害に対する補償等につきましても、一般職職員の例によるものとして、その災害補償制度を整備しようとするものであります。  以上が裁判官災害補償に関する法律案趣旨であります。  何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決下さいますようお願いいたします。      ————◇—————
  7. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 次に、会社更生法の一部を改正する法律案議題といたします。     —————————————
  8. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 提出者より提案理由説明を聴取することといたします。北條秀一君。
  9. 北條秀一

    北條議員 提案者を代表して、会社更生法の一部改正案提案につきまして、その理由説明いたします。  会社更生法は、窮境にあるが再建の見込みのある株式会社について、債権者、株主その他の利害関係人利害を調整しつつ、その事業維持更生をはかることを目的としております。  本法におきましては、第百二条によって、会社に対して更生手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権は、更生債権規定しております。この更生債権のうちには、本法第百十九条によって、特に共益債権として、更生手続開始前六カ月間の、会社使用人給料、並びに更生手続前の原因に基づいて生じた会社使用人の預かり金及び身元保証金返済請求権を含むことに規定しております。  今回、本法について改正提案する点は、第一に、この共益債権範囲内に一定範囲下請代金を含め、第二に、会社使用人退職手当として従来から共益債権に入るものと認められていた範囲を拡大する点にあります。  第一の改正点は、下請事業者従業員生活擁護に資するため、下請代金支払遅延等防止法規定する下請事業者親会社から支払いを受けるべき同法規定下請代金であって、その支払い時期が更生手続開始前三月内であるものを、共益債権として認める点であります。現在、下請代金支払遅延等防止法によりまして、親事業者下請事業者に対する取引の公正化と、下請事業者の利益の保護がはかられているのでありますから、国の法律として、会社更生法におきましても、下請代金保護に当たるのは当然なのであります。この改正によりまして、下請事業者である中小企業者、並びに、そこで働いている従業員賃金が正当に保護されるのでありまして、この改正はぜひとも必要なのであります。  第二の改正点は、本法によって共益債権として請求することができる親会社使用人退職手当範囲を、左の二項通りに拡大せんとするものであります。  一、会社使用人更生手続開始前に退職したときは、その退職手当の額。ただし、その額が退職当時の給料月額の六倍に相当する額をこえるときは、そのこえる額を除く。  二、会社使用人更生手続開始後引き続き会社使用人であった者が退職した場合において、第二百八条第二号の規定によって共益債権とされる退職手当の額が退職当時の給料月額の六倍に相当する額に満たないときは、その更生手続開始前の会社における在職期間に係る退職手当の額。ただし、その額が退職当時の給料月額の六倍に相当する額と同号規定によって共益債権とされる退職手当の額との差額に相当する額をこえるときは、そのこえる額を除く。  右の改正は、いずれも退職当時より六カ月の生活を保障するに足る退職手当共益債権として確保せんとするものでありまして、これも本法第百十九条後段に規定している使用人の権利の確保の精神と一貫する当然の措置であります。  なお、この二つ改正案は、いずれも公布の日より、周知期間として一カ月間を置いて施行するものとし、経過規定としては、この改正案施行前にすでに更生手続を開始している会社には適用しません。  このように、本法改正点は、何れも中小企業対策並びに労働者保護対策として緊急必要な措置でありますから、どうか本案を慎重審議の上、賛成あらんことを希望いたします。     —————————————
  10. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 これにて両案についての提案理由説明は終わりました。  両案に関する質疑次会に譲ります。      ————◇—————
  11. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 次に、法務行政及び検察行政に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。世耕弘一君。
  12. 世耕弘一

    世耕委員 私は、検察行政並びに法務行政に関して、数点お尋ねしたいと思うのであります。  まず第一に、最近至るところで暴力行為が行なわれて、その結果、社会に大きな波紋と生命財産の不安すら発生している今日の現状でございます。つきましては、法治国の文化国家である日本暴力取り締まりに関する諸般の法律が厳として存在しているにもかかわらず、かくのごとき現状は何かそこに根深い何ものかがなくちゃならぬはずだと思うのであります。つきましては、この点に関しまして、いかにすれば国民の要望する法の秩序が維持できるかということについて、幸い法務大臣が御出席でございますから、まず御所見を伺っておきたいと思うのであります。
  13. 井野碩哉

    井野国務大臣 お説のように、最近暴力行為が各所に起こっておりますことは、まことに遺憾に存じております。この暴力というものは、その動機がいかんであるにかかわらず、絶対に排除しなければならぬものと考えております。従って、法務当局といたしましては、この暴力団暴力行為に対しましては厳正なる態度をもって検挙もいたし、また起訴もいたしております。最近の例を見ましても、昭和三十三年、三十四年の例をとりましても、その起訴率は五〇%以上をこえておりまして、他の犯罪の四〇%に比較して検察当局としては厳重なる態度をもってこれに臨んでおります。しかし、これが予防等の問題につきましては、これは検察当局と協力いたしまして、できるだけ事前にすべての事態を察知して、そして事前暴力行為の起こらぬように善処いたさなければならぬと考えております。
  14. 世耕弘一

    世耕委員 一応御趣旨はわかりました。ですが、最近における暴力行為は、むしろ激増一途をたどっていると私たち思うのであります。その激増一途をたどっているという原因には、法秩序を無視してやる行動が増大しているのか、あるいは一方的に取り締まり当局である政府自体にずさんなところがあるのではないかというのが疑問の点なのです。この点をまず明らかにされる必要があろうと思うのであります。  さらにもう一点、お尋ねしておきたいと思いますことは、今法務大臣からお話がございましたが、各方面において発生している事態に対しては、予防措置が必要であるということはもっともなことだと思います。ところが予防措置すら不十分ではないか、予防措置どころではない、むしろ発生した大きな事件に対してすら徹底したところの糾弾が行なわれていないのではないかということが、国民非難の的になっております。この点ははなはだ遺憾に思うのであります。  この点は、一々具体的に例を私は申し上げることは時間の関係上避けますが、最近起こった大きな事件として二つばかりあげてみますなれば、毎日新聞社でございましたか、輪転機に砂をまいたという事件があります。この予防措置ができなかったのか、私はこの点特に指摘したいと思うことは、昭和二十一年の終戦直後でございましたが、私が内務省政務次官をいたしておりました当時、ゼネラル・ストライキが起ころうという非常な空気が漂っていたときでございました。そのときは毎日新聞ではなくて、読売新聞と朝日新聞をねらっておったようであります。輪転機に砂をまくということが実は内務省にも伝わって参りまして、省議にかけて、どうしたらいいか、それはまくというだけでは取り締まりができない、しかしながら、重大な問題だが、検察権をあまり乱用するという非難があるから差し控えたらよかろうという議論が圧倒的であった。そこで私はその議論に反対しまして、おそらく新聞社輪転機に砂をまかれたら、営業停止よりももっとひどい被害をこうむるのではないか、むしろそういう問題があるとすれば予防措置を講ずべし、大勢がどうあろうと、むしろそういう原因を追及して、さような言動をする者をば逮捕するなり、警戒をする必要がある、かように私は強硬説をとりまして、新聞社と直接の連絡をとって予防措置をいたしました。そのためにあとでその事件は起こらずに済んだのです。当時読売新聞馬場さんが社長をなさっておられたと思いますが、私は馬場さんに直接会って、役所と新聞社と協力して、輪転機に砂をまくことを防止した一つ経験がございます。今度もおそらくそういうことをなさっただろうと思うが、砂をまかれたところを見ると、何かそこに手違いがあったのではないか、予防措置が完全とは、私は言えないのではないかと思う。  もう一つ申し上げたいことは、今大きく問題になっている三池炭鉱の問題であります。三池炭鉱の問題は、暴動が起こる、事件が起こるということは、新聞ラジオ等に盛んに報道されておった。ところが悲しい結果を生み出している。人死にがあり、傷害罪が成立しているような大きな問題が起きている。はたして予防措置を十分講じておったかといえば、世間は、あれは政府十分予防措置を講じたが、やむを得ずああいう事態が起こったのだとはちょっと承知しにくいのではないか、今法務大臣がおっしゃった予防措置ということがもし十分であったなれば、これは何とかできそうなものではなかったか、あるいは予防措置以上の陰謀計画があった結果こういうことになったんだ、こういうふうに断ぜざるを得ない。あなたのお人柄からいえば、私はそう理解したい。この点どうか。  これは、私は決して意地の悪い質問を申し上げるのではない。非常に重大な問題ですから、政府のお立場もございましょうから、この際私は隔意ない御意見を拝聴することが、国民の不安を一掃する意味において必要であろうと思いますから、お尋ねするわけであります。どうぞそのつもりでお答えを願いたいと思います。
  15. 井野碩哉

    井野国務大臣 暴力行為に対しまして検挙が手ぬるいとか、あるいは起訴が不十分であるとかいうようなことは現在ないということを先ほど統計的にも申し上げたわけで、いやしくも犯罪があれば、警察当局としては厳然たる態度でその処置をいたしておることはお認めいただけると思います。ただ、予防問題につきましては、その予防の実体は警察庁の方にございまして、法務省は、これに対して検察陣としては応援的立場に立ってその予防に努めておるということでございますので、詳細は警察当局から御説明申し上げますが、私ども承知しておりますところでは、東京都をとってみましても、警視庁は相当にこの暴力団に対しましては今までいろいろ苦心をしております。そしてその予防措置をとってきた事例はたくさんございます。今回の毎日新聞襲撃事件及び三池炭鉱の問題につきましても、警察庁としては相当の予防措置をとったように私どもには見受けられます。ただ松葉会の方は、情報もあったようでございますが、その情報が不確かであったために、ああいった事件を起こしたというふうにも承知しておりまするし、また三池炭鉱につきましてもいろいろ予防措置をとりましたが、時間の食い違いからああいう事態を引き起こしたというふうにも聞いております。それらの点につきましては、警察当局の方から詳しく御説明を申し上げておきたいと思います。
  16. 中川薫治

    中川政府委員 ただいま世耕委員の御指摘の予防措置を的確にやっていく、こういう点につきましては、全く同様に私どもは考えておるのであります。具体的に申し上げますと、まず東京に起こりました毎日新聞本社襲撃事件につきましても、この種の事件が起こらないようにということにつきまして、暴力団という組織が遺憾ながら日本社会に存在いたしますので、その暴力団組織実態警察としましては把握していく、その実態を把握いたして、これが予防できる段階のときには予防措置を的確にやっていく、検挙をいたしますときに背後関係を究明するということが一つ犯罪捜査の常道でございますが、背後関係を究明するということにも役立たせよう、こういう角度でやっている次第でございます。  今回の毎日新聞事件の起こりました前後の状況について、やや詳しく申し上げてみたいと思います。松葉会という団体があるということは、警視庁では承知しておったのでございますが、この団体関係者で、かねていろいろ犯罪——恐喝罪あるいは傷害罪、こういう犯罪をやっておる、こういうことも十分把握しておったのであります。ところが毎日を襲うという点につきましては、これが政治的主義主張のために毎日新聞を襲うという計画でありますと、政治活動との関連においてわかる機会が早かったのでありますけれども、そういう状況ではなかったような状況でございまして、ただいま世耕委員内務政務次官のときに御経験のような状況情報はなかったのでございます。この事件は、四月の二日の未明に起こった事件でございます。四月一日の深夜に警視庁管下にある北多摩郡の方で十八才の少年がおりまして——その少年が砂をかけて輪転機をとめるというようなことは全然言わないのでございまして、そういうことは承知していなかった子供なんですが、しかし、自分はしばらくうちへ帰れないかもしれない、こういうことを母親に漏らした言動があったのであります。そこでそういった言動をいろいろ母親の方の御協力によりまして警察で把握いたしまして、どうも毎日新聞——毎日という言葉を使ってておったのでありますが、毎日とい言葉が出ましたので、毎日新聞に対して何がしかのことがあるのじゃなかろうか、輪転機云々の問題でなしに、毎日新聞にいやがらせをやるとか、毎日新聞に抗議するとか、こういう意味に理解したのでございます。そこで警察で把握いたしましたものですから、これは敏速に四月一日の深夜の十時過ぎのことでございますけれども、管轄の丸の内警察署連絡をいたしまして、それで毎日新聞社の方にも連絡をする必要を認めまして、毎日新聞社の方にも、深夜でお休み中で大へんだったのでございますが、午前二時過ぎにお休みの中のところを連絡した。毎日新聞におかれましても、かねがねこの問題は、毎日新聞社が三月十四日付の夕刊で記載した記事について若干従来にも抗議があった事件でありますが、あの事件だったらすでに解決しておるという感覚もあったものですから、念のためにいろいろ警戒しておったのでありますが、その様子もないので、一応これは、よく少年その他が自分の勢力を誇示するためにでかいことを言うという風習もありますので、そういう感覚もありまして、これはでかいこともなくて済んだと思って、警戒を解いた。こういう直後に十人内外の者が入り込んで、御案内のような事件を起こしたというような状況でございます。これはただいま考えましても、もっとそういう少年言動といえどもさらに注意して、もう少し長く警戒しておったら、こんなことはなかったろうと私も思うのでございますけれども、いろいろ皆さん案内と思いますけれども少年の方はでかいことをやるということをやや誇張して、また警察その他が動くことによって快感を感じて、かえって少年の将来を傷つけ、暴力団に深入りしようという空気を作る原因にもなりますので、そういうこと等も考えまして、一応警戒を解いた直後に起こったのでございますが、事件が勃発いたしましたので、これは迅速な摘発が必要と思いまして、警察は直ちに出かけていきまして、現行犯で三名を逮捕、その余の者につきましては、現在背後関係を究明いたしまして、これは警察権を直ちに発動して、そういう意味事前防止措置を考えたい、こういうように考えておるわけであります。これが毎日新聞状況でございます。  それから三井関係につきましては、いろいろああいった事件が先月二十八日、二十九日に起こりましたが、これを事前に防止する方法等につきましても、九州の警備力を相当動員いたしまして、いろいろ工夫して配備その他にも努めておったのでございます。われわれも、犯罪防止という点におきまして、的確な措置をとるべきであったということは十分考えるのでございますが、労働争議というものは、御案内のように、まず話し合いによって事が解決するという原則もございますので、そういう点も考慮しつつ、いろいろな警備措置の的確を期しておったのでございますが、ああいう事態が結果においては起こったのでございます。そういう点におきましてはいろいろと御意見もあろうと思いますが、私どもといたしましては、労働争議というものの性格をも考え、しかもまた国民生命財産保護という意味で、関係法律を的確に施行する、こういうことをできるだけ忠実にやっていく、こういう努力をして参っておるという苦心は、中央、地方とも十分いたしておるつもりであります。いろいろわれわれの活動に対する御批判は皆さんから十分いただきながら、警察活動が的確にいくように、今後ともやって参りたい、こう思っておる次第であります。
  17. 世耕弘一

    世耕委員 残念ながら、私の期待したお答えが得られなかったように思います。皮肉な言葉に当たるかもしれませんが、少々苦しい御答弁のように私はお聞きしたのであります。いたし方ありません。ただ、この際お聞きしておきたいのは、毎日新聞だけを襲うた理由は、何かそこにおもしろ半分にやったのか、あるいは何か因縁関係がなくちゃならぬはずだと思います。その点のもっと具体的な説明をしていただく必要があるんじゃないかと思います。  それからもう一つは、スト取り締まりは、警察側が出動する場合に、非常に困難な立場に追い込まれる立場にあることは、よく承知いたしております。それはあなた方のお立場が苦しいということはよくわかる。けれども法務大臣おいでになるから注文を申し上げるわけでありますが、もう少し政府が積極的な指示を警察に与えたらどうか。少し不得要領じゃないかと思う。むしろおよび腰のような感じが世間に伝えられておる。これは少しお考えになったらどうか。国民はある意味においてこの暴力処置に対して失望しておる。この点が一つ。  もう一つは、今度のスト、いわゆる三池炭鉱ストというものは、これは特質があると私は見ておる。それはなぜかというと、燃料革命から起こった。もうすでに石炭が時代おくれで、石油に移行する時代になってきている。過去の石炭業というものが、今後いかに経営が窮地に追い込まれていくかというそのさなかに起こったスト事件燃料革命の起こっている時期に起こったストであるだけに、両方に深刻な争いがあることは、これは当然なことです。しからば、この結果は、やがて行き詰まった問題が、流血の惨を起こすだろうというぐらいのことは、警察に携わっていること、また労働行政に携わっていること、その他について、ぴんとこなくちゃならぬはずだと私は思うのです。これを単純な賃金闘争であるというふうに断定して対策を立てたとしたならば、それは私は大きな誤りではなかったか、かように申し上げたい。しかも三池炭鉱は、民謡にもよくうたわれた、月が出た出たというあの歌の文句のあるところです。あんまり煙突が高いので、さぞやお月様けむたかろ、というて、あれは炭坑節の名所になっている日本代表的炭鉱です。私の調べているところによりますと、明治十七年かなんか、あれは官営であったのが、三井が入札で所有権を獲得して以来、これは世界的にもむしろ優秀な炭鉱なんです。その優秀な炭鉱が、今日経営難に陥っているというわけです。石油エネルギーの出現の結果とも言えるでしょう。だから、この炭鉱事件をただ単純なストと見たということであるなれば、それは少し見解が誤りでないか。この点について、政府労働行政ということについても、少しは考えなければならないのじゃないか、こう私は指摘してみたいと思います。報道するところによりますと、中労委のあっせんすら拒否している。中労委が健在なれば、かくのごとき事態にならない前に、資本家と労働者を呼んで、この善後処置を当然講じなくちゃならない。問題が起こるまでそのままほっておくという行き方は、政治じゃないじゃないか、私はこう思います。これは率直に申します。  なお、先ほど法務大臣予防措置ということをお話しになりました。犯罪にも予防措置があると同時に、こういうような産業革命の時代にも、そろそろ予防的な措置が当然講ぜられるべきである、私はかように思う。ただ争議が起こったときだけ乗り出していくというような行き方は、これは少し時代おくれな感覚ではないかと思うのです。  それともう一つ警察の方に私は注文をつけたいと思うことは——これは警察ばかり責めることは不都合だと思いますが、当事者だから一応私は注文をつけておきます。従来の警察のあり方は、事件が起こらなければ出動しないという行き方なんです。予防措置に欠けている場合が多い。たとえば、ふろ場の煙突から火の粉がたくさん飛んでいる。おそらく気のきいた消防署が見つけたら、あなたのところは、火の粉が飛んでるから、あぶないから、気をつけなさいと言って気をつけさせる。ところが、その火の粉が飛んできて隣の家の屋根にきて、火がついて燃え出さなければ、出動しないというような消防署があるとしたら、それは常識のある消防署と言えるでしょうか。私は言えないと思う。政治のあり方は、そういうところに微妙な頭の働きが必要じゃないかと私は思うのであります。犯罪予防、経済的処置、騒動を未然に防ぐ、そうして国民の生命、財産保護するということが、私は政治の要諦でなくちゃならぬ、かように思う。この点についてはなはだ遺憾ながら、今度の事件毎日新聞社事件並びに三池炭鉱事件に対しては、私は国民は、政府措置を満足な措置だというふうにはおそらく思うていないのじゃなかろうかと思う。もしその点について、万全な策を講じてあったのだ、しかるにもかかわらずこういう事態が起こったのだというならば、私はこの機会に、国民にこたえる意味においてお答えいただくことが、政府のためにもいいし、国民も安心するんじゃないかと思う。この点はいかがでございましょうか。各般にわたってお尋ねいたしましたが、御説明願いたいと思います。
  18. 井野碩哉

    井野国務大臣 三池炭鉱の今回の労働争議は、単なる労働争議でないことはお説の通りであります。石炭危機から発生した、わが国の経済問題に根本を発した争議でありますから、まあ私の主管外のお尋ねが多いのでお答えしにくいのでありますが、内閣に対する御質問でございましたら、政府の一員としてお答え申し上げますれば、政府といたしましては、石炭対策につきまして基本的な措置を講じていかなければならぬ。これは単なる三池の問題でなく、石炭業全般の問題でございますので、臨時国会におきましても、今回の国会におきましても、石炭対策に対する根本方針を立てて、そうして通産省としては、種々の予算措置もいたしましたことは御承知通りであります。また三池につきましても、先般来、あるいは中労委の中山会長時代にもあっせん案を出しましたし、今度は藤林会長になりましてもいろいろ苦労はしておりますが、単なる労働争議という見方ではなしに、根は深い。そうしてこれは単なる資本家と労働者との争いということでなくして、背景に総評もあり、また一方においては産業資本家の立場もございますので、そういった深い争議の点を考慮いたしまして、十分に注意もして参り、またいろいろ処置もとって参ったのでございますが、たまたま今回の事件は、第一組合と第二組合の分裂に発しまして、そうしてその間の感情問題等もからみ、また、第一組合の攻勢に対しましてそういう争議も起こり得るということを予測しまして、警察方面では十分な手配もしておったのであります。たまたま、先ほど来申し上げましたように、遇発的な事件に対する事前予防に対しまして、多少情報のキャッチといいますか、その点において不十分なところがあったので、ああいったようなことが起きたというふうに私は聞いております。しかし、今後かかる問題に対してどうしていくかという政府態度につきましては、本日も関係閣僚の懇談会を開きまして、政府としてはすでに仮処分も出た問題でありますので、第二組合の就労に対しては、厳然たる態度をもってそれを妨害する者は排除していくという方針をきめたような次第でございます。  なお、ほかの問題につきましては、警察当局からお答えをいたします。
  19. 江口俊男

    ○江口政府委員 毎日新聞事件刑事局長からお答えいたしますが、三井三池の二十八日及び二十九日の事件について、事前警察が十分の予防措置をしとっておったならばああいう事件は起こらなかったんじゃないかという御質問に対しまして、お答えをいたします。  結果においてああいう残念な事件が起こりましたので、だんだんその事情を申し述べることは言いわけになるわけでありまするが、ただいま例としておあげになったように、煙突から火の粉が出ておるので、消防だったらそれを注意する、そして火が出る前にこれを予防するのは当然じゃないかというようなお話でございまして、警察もおっしゃる通り立場にあるわけであります。従いまして、二十八日の事件について申し上げますと、いろいろな情報警察としては収集しまして、その情報の分析の結果、とにかく公の推論からすると、第一及び第二組合とも二十八日の就労の問題についてはああした流血の惨を見るようなところまではいかないだろう、いかないという方針は両方ともきめておったようであります。しかし、警察としましては、当然そうはきめておっても、両者の衝突するところ、どういう事態になるかわからぬというので、人員だけは——人員だけと申しますか、そういう不測の事態に備える措置としては、御承知のように、福岡県において千五百名、熊本県において五百名の動員をかけまして現地に派遣いたしておったのであります。それから、煙突から火の粉が出ておるぞというような注意に当たる事柄としては、二十七日に双方衝突した場合に事故を起こす可能性のある立場団体、すなわち第一組合、新労働組合、大牟田市の再建連盟、灯をともす会及び会社側、この五つの代表者を個別に招きまして、厳重注意をいたしております。ただ、二十八日の午前七時ごろの乱闘事件に第一隊が間に合ってないという事柄につきましては、これは情報といいますか、あらかじめわかっていた両者の行動の時間が一時間ほどずれておるというようなことや、あるいは先ほども申し上げたように、両方接触しても、二十八日においてはあの流血の惨を見る前の段階において両方が分かれるというような判断等からして、そういうものが心の中にあったということも原因いたしまして、とにかくこれは大へんだということで、第一隊がかけつけましたときには乱闘がすでに終わりに近かったというようなことで、ああいうことになりましたことは残念なことだと考えております。  二十九日の四山の事件にしましても、ああいう乱闘が起こるという事柄については必至だというふうにはもちろん見ていなかったのでありますけれども、そういう虞犯性がきわめて強いという意味合いのことは、その朝からわかっておりまして、福岡県におきましても、熊本県におきましても、それぞれ山代組一派の者に対しましては厳重な注意もやっておりますとともに、現実に南門の検問所を突破されて、正門の前で両者の乱闘になりました際も、できるだけの措置はやっておるわけです。具体的に申し上げますと、近くの、六十メートルくらい離れたところに四山駐在所がございますが、そこに情報員が六名おりまして、そのうちの四名が、乱闘の起こりました直後といいますか、口論から乱闘に移る時限において現場にかけつけて中に入っております。これは全部けがをいたした。要するに、制止をしたけれども、これを聞かずにたたき合うという場合においては、こちらが四名でございましたために、それが十分な効果を奏さなかったということに相なっておるわけであります。それからまた、あとを追尾いたしました福岡の部隊がやはり乱闘に分けて入っておりますが、それによって今度は制止をしたわけでありますけれども、その制止をし終わるまでの間において、多数の負傷者を出し、かつ、そのうちの一人は不幸にして死亡されるというような事柄に相なったのでありまして、これは、ああいう警告をし、しかもある程度の警察の実力の行使に対しましても、それを聞かずに行動をするという者に対する措置としては今後も十分気をつけなければいけない、こういうふうにわれわれも考えておるわけであります。
  20. 中川薫治

    中川政府委員 毎日新聞につきましては、事件の一番の発端は、本年の三月十四日付毎日新聞夕刊に登載された記事につつきまして、松葉会関係者から毎日新聞社の方に、この記事に対して記事が違う旨の抗議があったのであります。私ども警察といたしましては、そういうことに関連していろいろ犯罪のごときことも起こり得るという考えのもとに、その交渉の状況等も常に毎日新聞社連絡を密にいたしまして、毎日新聞社から情報を入手することを正確にいたしておったのであります。二回にわたりまして抗議等があったのでありますが、毎日新聞社説明によって、今度事件を起こしました市橋という人物が現在逮捕されておるのでございますが、その人物等も、毎日新聞説明を了承して、笑いながら帰った、こういう状況等もつぶさに承知しておりましたので、この事件は、毎日新聞社説明によって、この記事に対する抗議は大体了解された、こういうふうに理解いたしておったのであります。ところが、四月一日の深夜に、先ほど申しました少年言動等がございまして、さらに警戒をいたしまして、深夜であったのですが、毎日新聞社にも連絡して警戒しておったのであります。しかし、少年が少し自分の行動力を誇張する目的をもって言っておるのであるというふうに認められる節がございましたので、一応警戒的な措置をやめたその直後に、残念ながら事件が起こった、こういう状況でございますが、私ども警察といたしましては、こういう犯罪を未然に防止するために、この場合について申せば、毎日新聞社とも数次にわたりまして連絡を密にし、また、毎日新聞社の御協力を得まして努力しておった次第でございますので、その点を御了承いただきたいと思います。
  21. 世耕弘一

    世耕委員 暴力行為が行なわれるときは、必ず原因があり結果が現われてくるのでありますが、新聞社警察がよくその間の連絡を保って、暴力行為をなす人たちに納得させる方法を講じたという段階は一応了解できるが、まだ徹底していなかったということに原因があるのではないかということが一点。もう一つは、少年がただ英雄気取りで単独にやったものであるか、あるいは背後関係があやつっておったのかどうかということは、これは当然あなた方は専門的に感じられることだろうと思うが、その手配がはたしてついておったかどうかという点にまだ疑問が残っておると私は思う。しかし私はこれは説明を求めません。まだこれで簡単に片づくと思いませんから、さらに留意していただきたいということであります。  もう一つ、私は法務大臣は所管外だから国務大臣として注文をつけておきたいと思いますが、三池炭鉱事件を総体的にながめてみますと、多くはどうも予防措置が十分ではなかったということと、今の警察説明を伺ってみましても、いざという場合に対する手が足りない。私が予防措置についての感覚が鈍かったということを指摘してみたいと思うことは、数千人が動員されて、数百人が精鋭分子として活動しておる。しかもその間において警察側では凶器を持っておったということの確認すらしておる者があった。そうすれば事態は相当悪化していると見なければならない。それに対して予防措置が少しも講じられなかったということは、何か手ぬかりがあったということを言わなければならぬと思います。私はこの点について責任云々と言って追及するわけではございません。この間横浜で歌謡曲か何かの発表会に大きな事件がごさいました。あのときの警察の動き方としても、非常に事件を簡単に考えた。また私は最近において警察予防措置を通しての成功談を実は聞いたことがない。もし予防措置を講じて治安を確保し、人命を救助して、生命財産保護できたという特記すべきお手柄があったら、この機会に、国民が安心するから、一つお聞かせ願いたい。  こういう点から申しますと、この間も私は、よけいなことだが治安問題について、国民生命財産を守るという意味において、特に集団的な集まりに対しては特別に警察が留意を払っていただきたい、治安に特別の確保をする方針をとっていただきたいと、この委員会でもお願いをした。それは二重橋前の事件、京都の事件、横浜の事件並びに新潟の事件なんか非常に多くの人が死んでいるのです。生命を奪われているのです。またここで三池炭鉱にこういう事件が起こった。しかもこれはきわめて深刻です。これは一回で片づくとは私は想像しません。私はむしろ重大問題のように考えられる。これは一つ政府が本腰を入れて対策を立てていただきたい。労働対策も同様であります。本日は、実は労働大臣、自治庁の長官、その他関係の各閣僚にも来ていただきたいことを私は注文したかったのだけれども、ほかの委員会関係で時間をとることはどうかと思いましたから、法務大臣だけに所管外のことを御注文を申し上げるけれども、どうか閣議でこの点を力説していただきたい。どうも治安対策については、声は大でありますけれども、実績はきわめて少ないということを申し上げざるを得ないのであります。私は先ほど消防隊のことを申し上げましたように、火の粉が上がったらもうそのときに消防態勢に入れ。——全然煙の出ないところまで走り回れとは申し上げません。しかし火の粉が上がれば、これは大体あぶないぞというくらいのことは、専門的に経験のある方々にはおわかりだろうと思うのです。ちょうど小さいよちよちしている子供を母親が見守るような気持で治安対策を立て、国民生命財産保護するという愛情がなければ、日本の治安は確保できぬのではないかと私は思うのです。日本の治安が確保できないということは、やがて世界的に日本の民族の品位を低下する結果になる。政治のもとはここにあると私は思う。産業界の秩序も同様であります。ただ労働者と資本家がお互いにけんかして、どっちか強いやつが勝ったらいいじゃないか、血を流し出したら、そのときはまあまあといって警察が乗り出す。これでは警察の威信も保てなければ、法の秩序も維持できないのではないか。特に私がこの貴重な時間に委員長にお願いして発言をお許し願ったのは、あまりにも最近において法の秩序が乱れ、国内における治安の紊乱が次第に増大の傾向がございますので、特に政府側の御答弁をいただきたいと思ったからであります。  なお、ほかにお聞きしたいことがたくさんございますが、同僚議員の御質問もございますので私はこの程度にとどめますが、どうぞ治安対策法秩序の維持という点に関しまして、全般にわたってあらためて政府態度を明らかにして、国民の安心のできるような御方針を立てていただくことを特に国務大臣としてのあなたにお願いして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
  22. 井野碩哉

    井野国務大臣 所管外の問題が多いから十分な御答弁も申し上げられないので御不満足と思いますが、政府といたしまして、治安対策に対しましては、政府の重要施策の一つとして今までもいろいろの点について考慮して参りました。警察方面に対する問題として、予防措置等によって暴力団に対して何かいいことをした例を示せというお話でございますが、今まで、こういった特殊の事情から偶発した事態以外は、警察当局暴力団に対するいろいろの事前調査あるいは事前措置によりまして、事態が発生しないという面に警察方面では相当力を入れているということを御了承いただきたいと思います。東京都における暴力団のごときも、警察方面でずいぶん苦心をいたしまして、今まで未然に防いだ例はたくさんございます。これは枚挙にいとまがない。事が起こらないということで世間には出ませんが、苦心をいたしておるようなわけでございまして、政府としては、治安問題につきましては重大な関心を持ち、ことに三池炭鉱の問題等につきましては、単なる労働争議でないという先ほどの御主張の通り政府も考えておりますので、本日も閣議でこれを論じ、また閣議後に治安関係の閣僚懇談会も開きまして、そうしてその態度をきめておるというような状態で、真剣に取り組んでおりますので、その点は御了承いただきたいと考えます。
  23. 世耕弘一

    世耕委員 私は警察側に最後に一点注意しておきたいと思いますことは、暴力団狩りとか右翼団体狩りとかいうような言葉は、かえって右翼団体なり暴力団と称されている連中を刺激する結果になる。できたら、あなたのような立場の方は、間違えていることがあれば、呼んでこんこんと時代の動き方をよく了解させて、それでもいけない場合は断固たる処置をとるという行き方が望ましいのではないか。新聞等に書かれている、いかにもちり、あくたのごとく追い詰めていって撲滅するような形の考えは、かえって窮鼠ネコをかむで、妙な感じを起こさせることになるから、私は警察行政として適当な処置じゃないのじゃないかと考えますので、その点は特にお心得おきを願いたいと思います。
  24. 中川薫治

    中川政府委員 ただいま世耕委員のお話を拝聴して、そのようにいたしたいと思いますが、われわれ警察といたしましては、確かにいろいろ犯罪検挙もいたしておるのでありますが、こういう暴力団関係者犯罪予防する角度で、いろいろ御趣旨のことにも即応すると思うのでありますが、取り締まりもやりますけれども、だんだんそういった人たちとも正しい意味におきまして連絡もとりまして、従来は暴力行為等によって正業につかないでおったような団体等も逐次正業に立ち返りまして、たとえば洗たく業にかわるとか、あるいはそういう暴力関係ないような事業に転向するというような人たちの事例も少なくないのであります。私たちは、そういうようないろいろの努力を今後も続けて参りたいと思っております。ところが、残念なことには、日本社会には、そういうようにいたしましてもなおかつ暴力によって事を処理しようという人たちもおりますので、こういった人たちに対しましては、やむを得ず刑罰権を厳正に発動して参るという立場をとっておりますので、ただいまの世耕先生のお説に従いながら、しかも厳正な取り締まり施行して、両々相待ってこういった問題を解決して参りたいと思います。
  25. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 この際委員長から政府側の所見を一点だけ承っておきたいのですが、暴力を否定するということは当然なことであります。ところがその暴力が、特に集団的な、あるいは言葉が当たらないかもしれませんけれども、職業的な暴力が行なわれておることが実際の実情であります。そこで、刑罰が必ずしも万能ではありませんが、今集団暴力についての御承知暴力行為等の取り締まりに関する法律も数カ条ありますが、その処罰が最高三年以下になっておる。これは累犯加重等の点もありましょうが、実際に取り締まりあるいはその処罰に当たっておる政府側の方で、その程度で一体いいかどうかということをお考えなさっておられるかどうか。刑罰が万能でありませんけれども、刑罰を予定して集団的暴力をする人があるのではないかという気が一般国民の中にもあると思います。そういう意味において、暴力は絶対排撃しなければならないわけでありますから、そういうふうに意識的に集団暴力をやる人々に対しては、今の世耕委員のように説得ということはきわめて重要なことでありますけれども、そういうことは全然歯牙にかけない種類の人もおるように見受けられる。それに対して、今申し上げましたような、御存じの三年以下程度の刑罰規定、あるいはそれらの措置によって、実際扱ってみられて、それでいいかどうかということについて検討されておるか、あるいはそれについての所見を一つ承っておきたいと思います。
  26. 竹内壽平

    ○竹内政府委員 仰せのように、暴力行為等処罰ニ関スル法律の法定刑は三年以下でございますが、この種の事件には多く傷害を伴い、あるいはその他の建造物侵入罪、あるいは中には傷害から殺人にまで及ぶ事例もあるわけでございまして、悪質的な行為につきましては、それらの各法条に照らして処断できる次第でございまして、暴力一般的傾向について刑を重くするという考え方は、私どもも検討いたしておりまするけれども、今暴力行為等処罰ニ関スル法律をさらに刑を加重するというような問題につきましては、裁判の実例等にもかんがみまして、今直ちにそうしなければならぬというふうには考えておりません。
  27. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 御意向はわかりましたが、御承知のように、暴力はいけないということは当然なことで、これは国民の声であります。しかるにもかかわらず、常々この委員会でも問題になるように、そういうことが跡を断たないで繰り返されておる。今刑事局長のお話しのように、その他の犯罪もこれは併合する、こういうこともありますが、なかなか知脳的になってきまして、そこまでいかないでいわゆる善良な市民に迫害を及ぼすという事件が目に見えないところにもあるのじゃないかと思います。今のような御見解でありますけれども、それにもかかわらず常に起こっておるということは、そういうことでよろしいかどうかということにつきまして、もう一度承っておきたいと思います。
  28. 井野碩哉

    井野国務大臣 いろいろの事犯に対する刑の量定につきましては、今刑法全体の改正を法務省でも研究いたしております。従って、そういったような点は十分考慮に入れまして、研究していきたいと思います。
  29. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 猪俣浩二君。
  30. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 先般行なわれました毎日新聞暴力事件、これは今から二十数年前に二・二六事件のとき、反乱軍が朝日新聞にやった行動であります。自来、かような言論機関に対する、ことに輪転機をとめてしまうというようなことはかつてなかった。それがまた岸政治三年目から現われてきた。ここに大きな問題があると私は思う。そこで、日本社会党といたしましては、暴力追放特別委員会というものを作りまして、抜本的な対策を真剣に考えておるわけであります。これは単に警察関係あるいは検察関係を追及したっておさまる問題じゃないと思うのです。その根は実に深いと思う。  そこで、これは警視総監にお尋ねいたしますが、先般の毎日新聞社襲撃事件の市橋何がしらの動機です。何が動機で毎日新聞を襲撃したのであるか。その動機について非常に問題がある。それを詳細に承りたい。もうお調べは済んでおることだと思う。何らの動機がなしにああいう暴力はやらぬと思う。何が不満で彼らはああいう行動に出たかということを承りたいと思います。
  31. 小倉謙

    ○小倉説明員 現在、この事件は鋭意捜査中でございますので、ここで確定的に申し上げるわけには参りませんが、要するに、先ほどもお話が出ておったようでございますが、毎日新聞に書かれました記事、松葉会の藤田某氏の細君の葬儀に関して書かれました記事が、この松葉会の者の気持では、自分の親分の奥さんの葬儀に対してけちをつけられた、こういうような気持、これが根になっておるように思うのであります。そこで、市橋らが毎日新聞社関係の方たちと二、三回にわたりまして折衝しました結果、一応了承をしたように私どもも聞いておったのでございますが、その後今回のような事件が起こったわけであります。これにつきましては、そういうような、彼らとしては最も中心としておる自分の親分の細君の葬儀に対してけちをつけられた、こういうような気持でやったように申しておるのであります。本人の現在の自供では、自分たちが松葉会を出てこういう事件をやった、こういうふうに申しておるのでありますが、警察といたしましては、そういう点につきましてはさらにもちろん検討を要するものがあるということで、真相がどうであるかということを今日捜査中でございます。
  32. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 結局、毎日新聞の三月十四日の記事が問題になって、その後たびたび松葉会としても交渉をしたというのであります。しからばその記事とは何であるか。まず大きな——何号活字というのですか、非常に大きな活字で、「政治家の花輪ずらり松葉会親分夫人の葬式〃くされ縁〃に批判」こういうのがタイトルになっておる。私はここに問題があると思う。あなた方としてはあからさまに申しにくい点があるかもしれませんが、今日日本暴力団そのものを徹底的に追及する大きな一つの問題は、全部じゃありませんけれども、政治家とのつながりであります。これは私だけが申すのじゃありません。きょうの毎日新聞に「暴力を憎む国民の声」という投書のまとめが出ておる。これをごらんになれば、思い半ばに過ぐるであろう。投書のほとんど大部分は暴力団そのものを憎む、けれどもその暴力団とくされ縁をもってつながるところの政治家そのものに対する攻撃がほとんど全部の投書の中心課題になっておる。われわれも政治家の端くれといたしまして、そのような世論のある際におきましてどう対処すべきか、実に煩悶せざるを得ない。そこで私はもっと具体的に政府当局も腹をきめて答弁してもらいたいと思う。  岸さんは暴力や貧乏を追放すると言った。しかし二年や三年総理大臣をやっただけで貧乏と暴力が一掃されるものとは私ども思いません。だから今日暴力が絶滅されないといいましても、直ちに岸が公約違反じゃないかというて責めることは、これは少し公式論理だと思う。ただ私が遺憾に思いますことは、この暴力追放を組閣に当たりまして天下に声明せられました岸さん自身が、一体どれだけ暴力追放について肝胆を砕いていられるかという問題であります。少なくとも自民党の議員諸公、その他の閣僚諸公たちに対して、一体岸さんが総裁として、その点について十二分に引き締めてきておられるかどうか。自民党の党紀委員会暴力団と議員とのくされ縁についてどれだけ監視の目を一体放っておるのであろうか。私は総裁とし、総理としての岸さんが、暴力追放という甘口のことを放送したけれども、真剣に、それについて徹底した覚悟を持っておらぬのじゃなかろうか、まず持っておるならば、自分の率いる自民党の代議士諸公にいま少しく自粛自戒を厳重に言い渡すべきじゃないかと思う。この毎日新聞に出ております「花輪ずらり」の代議士諸公は、ほとんど全部自民党の議員であります。これをそのままにしておいて、ただ法律改正、刑罰の加重というようなことでは、社会現象としての暴力団体はなくならぬと思う。今日安保条約、あるいは勤評反対、警職法反対その他労働組合が中心の演説会その他につきまして、必ずや暴力団というか、右翼というか、これらの連中が妨害に出てきておる。私は保守政党と一脈のつながりが必ずあると思う。資金関係その他において必ずある。それを剔抉せずして、ただ警察だけに暴力を根絶せよなどといったってできっこない。ただ検察庁だけを追及しておってもできっこありません。今日のガンは、さすがに聡明なる国民がその直観によって知っておるごとく、政治家と暴力団のつながりであります。これをどう処置するか。そこで、これは検察庁や警察庁関係の人たちに質問しても、そういう対策につきましては、閣議なり自民党の最高首脳部なりがきめなければならぬことであると思いまするが、私が警察に要望することは、この投書欄にもありまするけれども、かような暴力団に花輪を贈ったり何らかの因縁をつけている政治家はことごとく天下に公表すべきだと思う。  そこで警視総監にお聞きします。この三月十四日の毎日新聞の「政治家の花輪ずらり」、一体何人がこの花輪を出したのであるか。なおまた聞くところによれば、いわゆる松葉会親分の夫人の葬式に対して、彼ら仲間の一流のやり方で、この葬儀に参列してもらいたいという回状というものを一般に回して、これがある人に言わせれば八尺何寸、またある人に言わせれば八メートルもあったという。ところが回状の中にずらりと政治家の名前が書いてあった。それを警視庁がお調べにならぬはずはないと思う。それをここに明らかにしていただきたい。そうしないと、いつまでたってもこの暴力団なるものの粛清をやるなんということはできない。口先だけのことなんです。私はそれを天下に公表して、かようなことを二度としないようにしてもらいたい。この松葉会の親分夫人の葬式の長い長い回状とやらに名前を連ねられた方は一体だれとだれですか、花輪を出した人はだれとだれですか、それをここで発表していただきたい。
  33. 小倉謙

    ○小倉説明員 松葉会のみならず、暴力的な行為に出るおそれの非常にある団体につきましては、逐一その情報を得ることに努めておるのであります。ただいま御指摘のような面につきましても、私どもといたしましては、総合的な見地からその実態をつかむという観点に立ちまして集めておるのでございますが、しかしながら、今回の事件あるいはその他の事件関係することでございまするならばともかく、しからざる場合の事柄につきましては、警察としてこれを公表するというようなことは必ずしも適当でないと思いまするので、その点は控えさせていただきたいと思います。
  34. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 今回の毎日新聞襲撃事件は、この三月十四日の記事がもとである。これには「政治家の花輪ずらり」と書いてある。こういうことを書いたことがけしからぬといってねじ込まれた。われわれも一体どういう関係があるのか知りませんけれども松葉会なんという有名な団体は、警視庁のリストに載っているはずなんです。こういう団体の親分の細君が死んだというところに堂々とずらりと花輪を出すということが社会的に一体どういう反響を持つことになるか、無責任きわまれりと私は思うのであります。これは毎日新聞が「暴力新地図」という特集記事を連日連載され、これがまとまって本になっておりますが、こういうところにもよく書いてあることなんです。政治家は知らぬ道理はない。暴力問題について研究している都立大学の助教授の岩井氏がこういうことを言っている。「彼らが政治家とつながるのは、一つには自己保身である。自分たちの手に負えぬ大きな事件があった時、政治家の手を借りる。他方、政治家を呼んだり、政治家の花輪をかざったりすれば自分の権威が高められる。その代償が、政治献金になり、選挙の票になる。ともにギブアンドテークだ。」これが真相だと思う。これを抜本的にやらずして、ただ検察や警察だけにやれ暴力団取り締まれ、右翼を取り締まれといっても無理だ。警察がせっかく苦労して検挙すれば、堂々たる政治家がみんなもらい下げに行く。この関係について警視庁は一体どれだけ調査されておるか。政治家と暴力団関係について、あなたの知っていることをおっしゃっていただきたい。またここに公安調査庁の関さんも来ていますが、公安調査庁はただ左翼だけじゃないだろう、右翼の調査もしていると思う。最も根本的なガンは、これだと私は思うのです。それについて一体どういう御感想を持っておるか承りたい。
  35. 小倉謙

    ○小倉説明員 私は、先ほども申し上げましたように、事件関係で直接の事柄でありますならば、この際申し上げるべきであると思いますが、その他の事柄につきましては、私からこの際申し上げることは適当でないと存じます。ただそういうような暴力的な抵抗のある団体について、いろいろの面から、たとえば若干でも資金的な援助があるというようなことがありますならば、これは私ははなはだ遺憾なことである、かように存じております。
  36. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 閣僚の一員としての井野法務大臣にお尋ねいたします。あなたはこの問題についてどういうふうな御感想を持っておりますか。いわゆる有名な書物にも出ていれば、新聞にも出ていれば、万人も認めておるやくざの集団、暴力団と思われるそういう集団に対して堂々たる政治家が花輪を贈る。これはどういう意味になるか。それが社会的にどういう反響を及ぼすか、彼らはそれをかさに着てどういう行動を起こすか、一体これでいいのか、あなたの感想を承りたい。
  37. 井野碩哉

    井野国務大臣 政治家が暴力団に対しまして花輪を贈るという問題は、今回だけでなしに従前にもそういう問題がございまして、政府としてはそういうことはできるだけ自粛しなければならぬということで進んでおりますし、私どももそういうことが行なわれますことは、まことに遺憾だと存じております。
  38. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 これは暴力追放を叫んだ岸さんの決意を聞かぬと意味がない。岸さんはここに出席されておらぬのですが、ただ警視総監としても、今この席上個人的な名前をあげられることが困難なことはわかります。しかし、私の方ではわかっておるのですよ。回状の写真をここに持っておる。あなたがわからぬ道理はないのです。そこであなたの方はわかっておるはずであるから、この一人々々に、それは香典でなくて、ひそかにどういう関係で花輪を贈ったか調べておいていただきたい。私は当法務委員会で国政調査権に基づいてこういう人たちから釈明してもらいたいと思うのです。中には全く知らざるままに名前を使われた人もあるでありましょう。また全く事後承諾で押しつけられた人もあるでございましょう。ですから、私もここで名前をあげませんが、私の方にはその回状の写しが入っておるのです。衆議院議員、参議院議員、都知事などの名前をずらっと並べて、そうして埼玉、茨城、どこかの親分衆とみんな一緒に名前を連ねて、そうしてそれが回状になっておる。私はこういうことをやることは遺憾千万だと思うのです。私もここに名前をあげませんが、政府として調べて下さい。お調べにならないとするならば、私の方で名前をあげます。ただどういう関係で名前が出ておるか、やはり個人の名誉も考えなければなりませんから、これは警察から調べていただいた後に私どもは発表したいと思う。お調べいただけるかどうか。これは警視庁がわからぬとするならば、そんな警視庁意味がない。わかっておるはずです。どういう人間が回状に名前を連ねたか。どういう人間が花輪を出したか。そこでとにかく背後関係を突くということが暴力取り締まりの根本対策である。それがいやしくも代議士であろうと都知事であろうと、そういう暴力団背後関係をなしておるとするならば、これを徹底的に警察は究明しなければ、暴力団対策など成り立ちません。これは暴力追放を唱えておる岸さんが率先してやらなければならぬはずです。  そこで井野法務大臣は、閣議において山さんに対して、こういう自民党の衆参両院議員が、あるいは自民党系の都知事が、こういう暴力団の葬式のあいさつ状にいろいろな親分衆と一緒に名前を連ねるということがいいことであるか悪いことであるか、どういう関係で名前が連ねてあるのか、閣議の問題として岸さんに進言していただきたい。そのあなたの決意を承りたい。
  39. 井野碩哉

    井野国務大臣 今調査過程にございますので、どういう事態であるかわかりませんし、また今の問題では犯罪には関係がありませんが、ただ政治問題として重大な問題だと思いますので、十分総理にもお伝えいたしたいと思います。
  40. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 ですから、私は閣議の問題として一国の行政の首脳者である岸さんの決意をあなたから促していただきたいと思うのです。これは警視庁がある程度犯罪関係でないから調べられないと言うかもしれない。それならば、学校務委員会が国政調査権に基づいて調べなければならぬ。こういう関係を明らかにしないことには、百年河清を待つようなものです。  そこで私は、この問題につきましてはたくさんの資料を持っておりますが、きょうは申し上げません。もう少し法務大臣なりあるいは警察庁なりで御研究願いたい。皆さんがぐずぐずして御研究なさらなければ、わが党の暴力追放特別委員会において天下に発表します。  そこでこれは警察庁に聞きますが、暴力団現状、大体どの種類の暴力団というか右翼団体というか、そういうものがあって、いわゆる危険なる暴力団体と思われる団体がどのくらいあって、人員がどのくらいであるか、もし調査がありましたら御発表願いたい。
  41. 中川薫治

    中川政府委員 警察は職務上暴力団というものを取り締まりの対象にしております。ところで、暴力団というものは、御案内のように、法令上に暴力団と書いてあります暴力団というものは、次のように理解しております。名称のいかんにかかわらず、構成員等が暴力行為を行なうおそれのある団体というふうに理解してやっておるわけであります。私どもはそういう団体を、いろいろ警察組織によりましていわゆる内偵を行なっておりますが、その内偵を行ないまして、われわれが全国的に暴力団として把握した数を以下申し上げます。  団体数で参りますと四千八百七十四団体、人数で申しますと十万五千六十五人、こういうようなものを全国で把握しております。
  42. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 そこで、この暴力団取り締まりに対しまして、私は警察や検察庁が決してほっておくとは思っておりません。十二分にやっておられると思います。ただ全国における刑事の数が二万人しかなくて、予算が非常に乏しい。そこで現在暴力関係取り締まりに対する予算というものはどのくらいあるのか、その係の刑事の数はどのくらいになっていますか。
  43. 中川薫治

    中川政府委員 犯罪捜査につきましては全警察官の十二万が一応やるわけでございますが、そのうちもっぱら犯罪捜査に専従する職員というものがおるわけです。それをわれわれは刑事と呼んでおるのですが、これが今猪俣委員の御指摘のように二万ばかりおります。その二万ばかりの人間は暴力関係犯罪捜査を一生懸命やるわけでございますが、暴力犯罪の摘発を重要な使命と考えなければなりませんので、そのうちで一万八千人あまりをもっぱら暴力団犯罪の捜査に専従させておるわけであります。以上が人数でございます。  予算の点になりますと、ちょっとここに記録がないのでありますが、都道府県の県費の予算等もございますので、もう少し時間をかしていただきまして、正確に調べた後、お答えしたいと思います。
  44. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 それからその暴力団対策として根本的なことはいろいろありましょうが、現実的な問題として、警察の機構の問題があります。特に暴力団に対する監視といいますか、それを扱うところの機構はどうなっておりますか。警察庁及び警視庁それから検察庁もありましょうが、その機構を御説明願いたい。
  45. 中川薫治

    中川政府委員 中央の機構は、昨年度までは私のところに捜査課という課がありまして、その捜査課の一つの係でやっておったわけでございますが、暴力犯罪の重要性にかんがみまして、本年の当院で議決いただきました予算が執行になるわけでございますが、本月の一日から私の方の刑事局に捜査二課という課を新設いたしまして、その捜査二課という課が暴力犯罪その他知能的犯罪をやるというふうにいたしまして、結論といたしましては、中央機関といたしましては警察庁刑事局捜査第二課が当たる、こういうふうになっております。  都道府県警察につきましては、それぞれ部局があるのでございますが、ここに警視総監もおられますが、警視総監のお考えで、暴力団対策の重要性にかんがみられまして、一昨年の初めに警視庁刑事部捜査第四課という課を新設されまして、捜査第四課が暴力団犯罪に専従する機構でございます。警視庁以外の各府県におきましては、大体この精神に準ずるわけでございますが、捜査第二課または捜査策三課を設けまして、暴力団犯罪の専門の部局というふうにいたしておるわけであります。  警察署におきましては、おおむね各都道府県の警察におきましては刑事課という課がございまして、刑事課の中に暴力団専従の職員がただいま私が申し上げたような数でおるわけであります。
  46. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 それから立法措置でありますが、今委員長からもこれに対して刑罰は軽くないか、そういう質問がありました。ある種の犯罪は私もやはり同感でありまして、軽過ぎると思うのです。特に現在の裁判所は、実際の実刑が非常に軽過ぎるような気もするのです。暴力によって人を殺傷するような問題については、民主主義なり民主政治を擁護する。特に言論機関に対してこれを圧迫するがごとき行動に対しては、厳にこれを処罰しなければ、日本の民主政治なんか守ることはできない。その意味において私は相当考慮の余地があるのじゃないかと思われます。  なお具体的の問題として保釈についてでありますが、どうも警視庁あたりの第一線の警察官の嘆きを聞きますと、せっかく苦労してつかまえましても、すぐに保釈になって出てしまって、自分たちの悪口雑言を言って歩くというのが多い、くやしくて仕方がないということを言うのであります。この保釈は暴力団についてはある制限があるのでありますけれども、どうもどんどん出してしまう傾向があるらしい。たとえば今回毎日新聞を襲ったというのはみな前科者なんですが、こういう札つきの人間が計画的にやった行為、彼らは器物の毀棄くらいで人命に支障はないから大した刑にならない、しかし名前を売るにはまことにけっこうだというようなことから、新聞社なんかをちょいちょいいやがらせをするようなことがあるのではないか。そういうやつでも、器物を毀棄し営業を妨害しただけで人命に支障がなかったという点で、簡単に釈放してしまう。そうすると、いたずらに彼らの名前をあげたにすぎないという結果を起こす。悪者にされたら立つ瀬がないというような一般の市民ならいざ知らず、悪名が高くなればなるほど自分の地位が上がるという不法社会、この社会の制裁といたしまして、今委員長が言われるように刑が軽過ぎると思われます。しかし今直ちにこれをどうせいということはすぐ答弁できないだろうし、私どももまた具体策を持っておらないが、どうもこういう暴力団計画的な行動に対しては刑が軽過ぎるような気がするし、また現実の問題としてやたらに保釈をする傾向がある。これに対して法務省はどういうふうにお考えになっておりますか。
  47. 竹内壽平

    ○竹内政府委員 暴力犯罪に対しまする刑罰の問題に対しましては、私ども一般的に御質疑のような感じを持っております。特に常習暴力といったような考え方も実は検討いたしておりますが、さしあたって、先ほど申しましたように暴力行為等処罰二関スル法律についての法定刑を上げるということは、現段階では考えておらないことを申し上げたわけでございます。さらに権利保釈という制度がございます。これが乱用されておるのではないかという点でございますが、仰せのように暴力団をつかまえても幾ばくもなくて保釈されてしまうというような実例を実はわれわれも苦いほど経験をいたしておりまして、昭和三十三年の暴力立法に際しましても、十分御審議をいただきました結果、権利保釈についての若干の制限を設けましたことは御承知通りであります。と同時に、これらの者のお礼参り等のいわゆる証人威迫罪を新たに設けまして、なおこれらの行動についても規制するという措置をとったわけであります。この立法の運用の経過を見ますると、最近におきましてはやや裁判所の権利保釈に対する考え方も変わってきておるように見受けられるのでございますが、検察官といたしましては、この立法の趣旨並びに実情等につきましては、権利保釈に対する意見におきまして十分その意思を明らかにして、裁判所にその保釈をすべからざるゆえんを説いて、運用に遺憾なきを期するようにいたしておりますが、なお顕著な改善の跡を見ることが困難でありますことは私も深く遺憾に存じておるわけであります。
  48. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 暴力行為といいましてもいろいろのニュアンスがあって、たとえば労働組合運動から派生したようなもの、あるいは偶発的なことで発生したもの、これが決していいとは言えませんけれども、そこにやはり情状考え得るところがある。しかし、とにかく暴力団として人を恐喝したりばくちをやったり、そういう暴力を常習としてやることによって飯を食っておるというような集団、こういう者の摘発というものは、立法的にも峻厳であるべきであるし、保釈なんぞはすべきじゃないと考える。こういうことについて法務当局としても十二分なる御検討を願いたい。ただ、何かというと警職法を改正しないからこうなったのだというような、警察が自己の怠慢あるいはミスを警職法の不備に帰する傾きがある。何か問題が起こると、警職法を改正しなかったからこうなるんだという。僕はそんなはずはないと思うのです。現行法で十二分にできる。今回の三池の事件だって、昭和三十三年に改正いたしました刑法の二百八条の二項の精神を持っていくならば十分阻止できる。何も警職法の改正をやらぬでも、現行法でも、道路交通法もあれば、決して警察官の事前予防なり、あるいは取り締まりなりに事欠くことがないと思う。  そこで法務大臣にお聞きしますが、法務大臣は近ごろの暴力行為ということを材料として警職法の改正なんというようなことをお考えになっておるかどうか、それを承りたい。
  49. 井野碩哉

    井野国務大臣 警職法は所管が公安委員長でございますので、主管でございませんからはっきりしたお答えはできませんが、事態の推移を見て政府としては考えていかなければならぬものと考えております。決してすぐ改正するというような考えを今ここで申し上げる段階ではないと思います。
  50. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 閣議におきましてさような話が出たことがありますか、ありませんか。
  51. 井野碩哉

    井野国務大臣 まだございません。
  52. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 それから、これは私自身が経験したことで、これは警察の実務の人にお伺いするのですが、一般市民の協力がありませんと恐喝その他の暴力犯罪というものはなかなか検挙できないことは御存じの通りであります。ところが、実はいつだったか、私が国会で護国青年団が新潮社その他の出版業者に対して恐喝した、あるいは岸総理大臣から五十万円喝取したというようなことで質問をいたしました。そうすると、ある日の日曜日の朝、この連中が七、八人私の自宅へ押しかけて参りまして、私の女中なり家内を恐喝して、ぶっ殺してしまうというような脅迫をいたしました。私は高輪の警察署に連絡をとりました。警察署は市ケ谷の彼らの本拠を急襲いたしまして、家宅捜索をいたしました。そうするといろいろなことが出てきた。私は敢然として彼らを告発したのであります。これは裁判になって、その首謀者というのは四年か何かの懲役を求刑されておりました。それはいいのでありますが、ところが事が起こってから、まず高輪の警察の諸君が来て、女中から家内から私から詳細に聞き取りました。それは力を入れてやる。ところがどういうわけだか、また別な係が来て同じことを聞くのです。もう数時間の間ですよ。そういうことが三日も四日も続きました。それから今度は、家内から女中から私から全部検察庁に呼び出されて、また同じことを聞かれた。それから裁判になりますと、裁判所に証人として呼び出されて、また同じことを家族の者が全部聞かれた。大へんな時間のロスです。そこで考えるのに、どうもただ彼らの仕返しをおそれて口をつぐむのみならず、一たんこれを警察に届けると、かような繁雑なことになる。それをいやがって泣き寝入りをする人もあるのではないか。私は暴力追放に率先している方だから、決して警察のやり方をおっくうがったわけではないし、進んで検察庁にも出ていったのでありますが、一般の商人や何かは、こういうふうにやられたら商売も何も上がってしまうので、まあまあ警察には届けないということになるのではないかと思う。そこで実際問題として何かもう少し、被害者の取り調べも必要でありましょうが、——私のところで起きたのは、実に簡単明瞭な事件なんです。朝七、八人来ておどかしたというだけの事件なんです。それについてこれだけたくさんの手数をかけているわけなんですから、何かもう少し簡便な、たとえば検察庁だけで調べを進めるとか、警察だけで何とかあれする、あるいは一人の人が聞いたらそれで済ませるとかなんとか、もっと簡便な方法はないものだろうか、そうして広く市民の協力を要請すべきものじゃなかろうかというふうに考えられますが、実務家としてその辺の改善問題について何か御考慮なさっておることがありましょうか。これはどなたでもよろしゅうございます。
  53. 中川薫治

    中川政府委員 お話の点まことにごもっともでございまして、私どもはそういう点について次のように考えておるわけです。  第一点は、被害者の方が後難をおそれて口をつぐむ、こういう点に対する対策は、被害者との連絡を密にして、その警戒、警護の措置を十分にやる、こういうことを警視庁初め各県とも系統的にやらせる組織を設けさせて、この解決に努めていく、こういう対策もとっております。  その次は、何といいましても犯罪事件ですから、被害者の供述がなくては取り調べが進行いたしませんことは御了承いただいたのでありますが、そのやり方を、なるべく被害者の方にめんどうのかけ方を少なくしよう、こういう配慮を警察部内で——過去におきましては若干御迷惑をかけた点もあろうかと思いますが、それをなるべく簡明化する、こういう点について事務的に検討いたしまして、ダブって聞かない、こういうふうなことについてはこまかく教養をして改善しておる次第でございます。  検察庁との関係等も、よく検察官とも相談いたしまして、被害者の方々等になるべくめんどうのかけ方が少なくなるように、検察庁もいろいろ独自の捜査の観点もございますので、一概に申し上げられませんけれども、できるだけそういう精神で打ち合わして努力しております。
  54. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 それから、これも暴力対策一つでございますが、この毎日新聞に対する投書にも出ておりますが、暴力撲滅のためにはまず政府自身がPR活動を盛んに行なう必要がある。町や村に暴力追放のポスターを張る、映画を作る、パンフレットを出す、そうして暴力追放月間を新設するというようなことで、政府の、あるいは総理大臣の名前入りのこういうPRをやる、あるいは自民党なり社会党の名前入りのPRをやるというふうに、暴力というものがいかに民主政治を虫ばむものであるか、これが不都合なものであるかということに対する宣伝活動をもっとやらなければならぬのじゃないか、ただ検察や警察官だけにそれをまかしておくということは、僕は無理じゃないかと思う。この投書の精神にも賛成するのですが、これもどうも、その当の法務大臣警察関係だけしか出ていないので、皆さんほめたような格好になっちゃって、責任ある答弁がとれないのですが、まあ大臣は、閣僚の一員として、こういうことも閣議に一つ諮っていただきたいと思うのですが、いかがなものでしょうか。
  55. 井野碩哉

    井野国務大臣 暴力追放につきましては、総理も非常な熱意を持っておられますので、御趣旨の点はよく伝えておきます。
  56. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 それから、これは今の警察官のことを言うのじゃありませんが、私は名前はあげませんけれども、先ほど申しました、私が持っておりますこの松葉会の葬式の回状の中に名前を連ねていられる衆参両院議員には、警察官出身が実に多い。これがどういうわけだか不思議です。警察のそれぞれしかるべくやっておった人、その人が今民間に下がって、代議士となって出ておられる、そういう方々が非常に多いのです。そこで、どうも世人は、警察暴力団のなれ合いがあるという疑いを持っておる。投書にも出ています。私は、そういうことは現在ないと思うのです。ないと思うのだが、どうもこの花輪をやったり、こういう回状に名前を連ねたりする人は、相当有名な、まあ衆議院議員に出るような人ですから、警察関係の相当の地位にあった人、そういう人があるのですが、そこに私たちは一脈の疑惑を持つ。これを皆さんにお聞きしても返答のしようがないと思いますが、どうも警察としては何か思い当たることはありませんか。どういう人間が名前を出しているか、皆さんおわかりだろうと思うのだが、一体どういうわけだろうか。警察出身の数人が——たとえば参議院議員が四名、衆議院議員が十四、五名のうち、多数の警察官出身の人がある。警察官は、こういうテキ屋の親分だの暴力団の親分と何か特別の因縁を結ばなければならぬ宿命でもあるのでしょうか。政治家の結びつきが根本ですが、そのまた政治家のうちには警察官出身の人が多い。これはどういう社会現象であるか、ちょっと解きほぐしていただきたい。私どもちょっと不可解なんです。どういうわけでこうなるのか。そこで、私が先ほど言ったように、警察の威信にもかかわることでありますがゆえに、犯罪として調べるという意味じゃなしに、これは現在も警察に非常に親しい人が多い。私は知っておる。しょっちゅう警察に出入りしているこれは代議士です。そこで率直に、一体どういうわけで花輪を出したか、どういうわけで回状にこんな名前を連ねることを承知したかと、昔の同僚としてお聞き取り願って、その真相を私どもにお伝え願いたい。というのは、自分がその気がないのに無理に名前を出された。たとえば東京都知事の束さんの名前がありますけれども、東さん、非常に迷惑をこうむった、全然知らざることを事後に押しつけてきたという事情もあることもわかっております。そういった方もあるだろうと思う。それで、皆さんと親交のある人も相当あると思うので、実情を聞いておいていただきたい。そうしませんと、私どもの方で発表することになる。そうすると、その人がほんとうに自分たちの知らざる間にそういう花輪が贈呈されておったとするならば、迷惑しごくもはなはだしい話になると思うのです。そこできょう私は発表できないのです。これはどうも私どもが直接聞くということもできませんが、警察関係上がりの人が多いのですから、そうして現在やはり警察の現役の諸君と連絡のある方々が相当あるので、忌憚なく一つお聞き取り願っておきたい。私どもは不思議でならぬ。松葉会というものにこんな有名なお歴々が十数名も名前を連ねて、そして八メートルとか八尺とかといったそういう回状に、みんな各地の親分と一緒に名前を出すということは、実に想像ができぬのです。知っててやったか知らずしてやったか、この辺に非常な重大な暴力団対策が含んでいるんじゃなかろうか。政治家と関係があり、しかもその政治家の中で警察官出身の政治家と関係が深いということになると、いよいよもってこれは重大問題、その真相を皆さんがお確かめにならぬと、ただ小手先のことを言うておったのでは、暴力団取り締まりはできない。その点について十分警察ではお考えおき願いたいと思います。まあ検事と暴力団関係も考えられるけれども、あまり今まで、さすがに検事が暴力団と非常に親交があってやったというようなことは、ちょっと私ども材料が入っておらぬのですが、警察官についてはしょっちゅうそういうことを耳にする。犯罪捜査の便宜として、あるいは彼らを使う場合があってそうなるのかもしれませんけれども、これはよほど考えていただきませんといけないと思います。昔よく暴力団の親分が、ある犯罪者を自分の方から進んで出すから、これで捜索は打ち切ってもらいたい。だれがやったかわからぬ場合において、親分が引き受けて甲なら甲を出す、そのかわりほかの捜査をやめてくれというような取引を、どうも警察がやったというようなことを聞いておりますが、現状は一体どうなんですか。
  57. 小倉謙

    ○小倉説明員 御指摘の、その花輪の中に警察経歴を持った方々が非常に多いという話ですが、そのようなことは私は非常に多いとは思いません。ただ、それぞれの個人的な関係、あるいは本人が全然知らないで利用された、こういうような方々たちもあろうかと存じます。これらの点につきましては、私どもとしましてももちろん関心を持っておりますが、ただ、先般も申し上げましたように、事件関係のあることならばともかく、そうでない限りにおきましては、これを公に発表するというようなことは私は適当でないと存じますので、さよう御了承願います。  なお、それに関連しまして、今日の警察といわゆる暴力的な分子との間に結託といいますか、悪い意味関係があるというようなことの御質問に対しましては、そういう点は、私は絶対にないということをはっきり断言申し上げたいと思うのであります。もしそのような誤解を生むような面が多少でもありまするならば、さらに私どもといたしまして注意をいたしまして、そのような誤解の生じませんように指導して参りたいと存ずるのであります。  なお、過去においては、特異な事例につきまして、捜査上必要な依頼をしたというような場合もあったように聞いておりますが、今日は、そういうことをしないで、常々と捜査を進めていくという方針で進んでおりますので、その点も御了承願いたいと思います。
  58. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 最後にお尋ねいたしたいのは、この松葉会もそうだし、あるいは義人党とか、いろいろなのがみんな今政治結社の届出をしてやっておる。そこで、今の毎日新聞襲撃事件ですが、市橋何がしというのは、松葉会を脱会して、そうしてやっておる。これらの暴力団のやり方は、チンピラなりその他の者をまず行動させて、親分は知らぬ存ぜぬということで逃げてしまう。身がわりを立てる。それですから、チンピラはつかまるが、親分の方はいつまでも親分としてでんと控えておって、その根を絶やすことができない。これは刑法あるいは人権問題として非常に困難でございましょうけれども、これは治安維持法時代にやったことだ。共産主義者に寄付をしたり、あるいは一宿一飯の世話をやるものまで全部ひっかかったことがある。これも極端でありましょうけれども、見え透いたからくりをやって、自分関係はないと言って逃げる場合が多いのでありますが、私はこれらの集団的な暴力団体の幹部に対しては、子分のやったことに対してある程度の責任を負うという立法措置にしないと、暴力団は根絶できないと思う。刑罰を重くすることも一つの方法でありましょうが、重くしてもチンピラばかりがそれにひっかかってしまって、根元はいつまでも枯れないのです、それでは絶滅することができない。明らかにそのうちに寄宿して、その人間によって衣食を供せられ、その人間の用をして歩いているやつがある行動をやった場合に、それを寄宿さして親分子分の関係をつないでおるその親分が責任を負わぬという道理はないと思うのです。近ごろは殺し屋まで日本に現われてきた。頼まれて人を殺すという殺し屋まで現われてきた今日において、そういう行動を陰においてあやつっておる人間に対する責任追及ということが、刑事政策として、立法措置として、私は重大なことだと思う。治安維持法において共産主義のシンパが、あるいはシンパにあらずして、その人間をとめた、その人間に寄付金をやったというだけで処罰されたことがあるわけです。その通りではないけれども、そういう法の建前、精神をくんで、この暴力団の幹部というものをもう少し取り締まるところの立法措置というものが必要なのじゃないか。これに対して法務大臣あるいは竹内局長の御所見を承りたい。
  59. 井野碩哉

    井野国務大臣 暴力団体の犯罪の事実に対しましては、警察庁としてもその背後関係を十分に調査いたし、教唆その他のいろいろの犯罪がございますれば、その親分にも及ぶことは当然であります。ただお話のように、新立法措置で、ただ子分が罪を犯した、すぐ親分にそれが同じように及ぶということは刑事政策上、民事と違いますので、その責任関係におきましてはむずかしい問題があると思います。ですから、すぐそういう立法ができるとは私ども考えませんが、なお詳細のことは刑事局長からお答えさせます。
  60. 竹内壽平

    ○竹内政府委員 今大臣からお答え申し上げましたように、刑事立法として考えまする場合に、刑罰というものは個人々々の刑事責任を追及するものでありまして、ある団体なり、あるいは選挙法等にありますように、他の者の行為について当然に責任を負うという連座規定といったようなものは、一つの新しい犯罪の現象に対しまして考える余地が全然ないわけではありませんけれども、立法技術としてはなかなかむずかしい問題であるというふうに考えております。ただ技術的に申しまして、教唆なり、あるいは幇助なりという刑法の共犯論でその責任範囲を広めていくことのできない場合に、その教唆なり幇助なりという行為そのものを特別の構成要件として考えるということは、もちろん考えられるところでありまして、現行法におきましても、暴力行為等処罰ニ関スル法律の第三条を見ますと、暴力行為を行なわせる目的で金品その他の財産上の利益もしくは職務を供与し、またはその申し込み、またはその約束をなしたる者、または情を知って供与を受け、またはその要求をし、約束をした者は罰するという規定があるわけでありまして、今の捜査の段階におきまして、できるだけ饗応関係あるいは背後関係というものを明らかいたしましても、なおこのような第三条の活用等によりまして、相当程度は処罰の目的を果たすのじゃないかというふうに考えております。
  61. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 刑事の責任論からしますと、他人の犯した行為について責任を負わせることについては多少問題がある。しかしこれは、実は数年前社会党が立案したことがあるのでありますが、私は刑事責任論からこれは反対したのであります。けれども、これは立法措置はしなくても、現行法の法の運用というか、あるいはまた立証責任の転換くらいの法規を作ることによって、その人間が親分十分のさかずきをとりかわしており、その人間の家に寄宿しているというような関係がある際に、全くその行為に関係がないということならば、関係がないと主張する方の立証責任があるくらいまでやらなければ、常々と世間周知のこういう暴力団体というものはなかなか取り締まれない。そうして政治家がこんな名前まで出しているということになるならば、これはもう際限もありません。ですから少なくとも立証責任の転換くらいの法規の改正をやって、そういう親分子分の関係が認められた場合においては、子分のやった行為について責任を負う。責任を免れるには責任のないことを立証しなければならぬというふうにするならば、今の責任論とも調和するのじゃないか。私の立法措置というのはそういう意味でありますが、そういうお考えはありませんか。
  62. 竹内壽平

    ○竹内政府委員 確かに一つの考え方でございまして、現行法のもとにおきましても行政罰等にはいわゆる両罰規定というのがございます。法人の使用者が罪を犯した場合に法人を処罰する規定であります。この場合も、最高裁の判例によりますと、無過失責任ではなくて、やはり一種の監督責任を罰するのであるという趣旨になっております。しかしそれは裏を返して申しますならば、会社側が監督責任を尽くしたということを立証しなければ法人は罰せられるという趣旨に理解されるわけでありまして、今猪俣委員の仰せの通り、その立証責任の転換になった運用に実際はなる。この種の規定一般刑法の分野にも持ち込み得るかどうかというようなことも、いろいろ刑法準備会等におきましても検討いたしておるのでありますが、なお今後検討を続けてみたいと考えます。
  63. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 これで私の最後の質問といたしますが、何しろ昨今の治安情勢というものは、右左にかかわらずはなはだ感心せざる情勢にあります。これは単に検察庁あるいは警察だけではこれに対処することはできない。売春処罰と同じことであります。大きな一つ社会問題だと思います。この原因はいろいろありましょう。ただわれわれ法に関係する者から見ますならば、検察及び警察の人たちが断固として、何としても暴力を許さぬという熱烈なる気魄を示す、政府としてはこれがPRを完全にする、そうしていやしくも怪しい団体に対して花輪を贈ったり、あるいは回状に署名したりしない。何か個人的な特別な関係があるならばみずから弔問に行けばいい。そんな一般世人に見せびらかすような行動をいわくつきの団体について政治家がやるというようなことは、とにかく厳に戒める。われわれ政治家として、まずみずから率先してやれることはこのことだ。これに対しましては、警察当局はなんでありますが、井野法務大臣は閣僚の一員として、ことに岸総理の親友の一員として——しかも岸総理大臣は暴力追放を看板にされた。あなたは徹底的に岸さんに勧めて、そうしてまず岸さんが総裁である自民党の代議士諸公に十分なる戒飭をするように、治安行政をつかさどる法務大臣立場として、それは閣議に主張できることだ。総理は一面総裁の立場であるのでありまするから、総裁として党の党紀委員会なんかを活動せしめて、こういう行動をしないように——今、警視総監は、個人的な何かの関係があってやったのかもしれぬということを言っておりますが、個人的な関係があったとしても、衆議院議員なり参議院議員であるということは明らかなことであるがゆえに、自分がこれと特別な関係のあることを世人に公示する必要はないと思うのです。静かに焼香してくればいいわけです。それだけの慎みを、公職にある者はしなければならぬのです。  そこで小倉さんにお聞きしますが、一体議員というような者が、こういう札つきの、警視庁のリストに載っておるような団体に花輪をやったり、回状に署名したりするようなことは、あなたはどういうようにお考えになりますか。これは個人のつながりがあるなら自由だとお考えになりますか。さようなことは政治家として慎んでもらいたいと思いますか。あなたのさっきの答弁でははっきりしない。それを一つあなたの所見でもいい、お聞かせ願いたい。
  64. 小倉謙

    ○小倉説明員 先ほども一言申し上げましたが、私は決して好ましいことではない、かように考えます。
  65. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 それならば、警視総監にもお願いいたしますし、その他の人にもお願いいたしますが、皆さんの親しい人もこの中にいるはずである。かようなことは慎むようにどうか一つ努力をしてもらいたい。古いことを言ってはなんですが、やはり法務大臣がある暴力団に花輪をやった。井野さんのことじゃありませんよ。もっと前の法務大臣です。それが当委員会で問題になった。そうすると、あれは自分は知らなかったんだ、秘書がやったのだ、そういう答弁をやっておられるのですが、それでは済まぬと思うのですよ。それならなぜ——自分の家のすぐ近くにあったことなんだ、自分の心ならずもそんなものが出たら、法務大臣としてなぜそれの抗議を申し込んで撤回しなかったのか、問題になったら、あれは秘書がやって自分は知らぬ、法務大臣がそういうことを言うててんとしておるというようなことでは、暴力追放なんということはできはしません。それをまた総理大臣が何の戒飭もしないでおる。そういうことでは、いかに声を大にしたって、暴力団体などはこれを追放することはできるはずがないのでありますから、これは井野さんにも、あるいは小倉さんにも、どうぞ公式、非公式にかかわらず、かような団体と連関を持たぬように、あるいは個人的に連絡がある、個人的に親交のあるものまでも私どもは阻害するわけじゃありませんが、公にそういうふうに彼らに利用されるような態度をとらぬように強く要望していただきたいことを希望として申し上げまして、私の質問を終わります。
  66. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 本日は、この程度で散会いたします。     午後一時五分散会