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1960-03-08 第34回国会 衆議院 法務委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年三月八日(火曜日)     午前十時四十四分開議  出席委員    委員長 瀬戸山三男君    理事 鍛冶 良作君 理事 小島 徹三君    理事 小林かなえ君 理事 田中伊三次君    理事 福井 盛太君 理事 菊地養之輔君    理事 田中幾三郎君       一萬田尚登君    世耕 弘一君       高橋 禎一君    阿部 五郎君       井伊 誠一君    吉川 兼光君       志賀 義雄君  出席政府委員         検     事         (民事局長)  平賀 健太君  委員外出席者         検     事         (民事局第三課         長心得)    香川 保一君         参  考  人         (東京大学助教         授)      渡辺 洋三君         専  門  員 小木 貞一君     ————————————— 三月四日  裁判所書記官及び調査官の勤務時間延長反対等  に関する請願外一件(井岡大治紹介)(第八  六三号)  同(井岡大治紹介)(第八六四号)  同外三件(木原津與志君紹介)(第八六五号)  同(木原津與志君紹介)(第八六六号)  同(木原津與志君紹介)(第八六七号)  同外二件(八木一男紹介)(第八六八号)  同外三件(八木一男紹介)(第八六九号)  同外七件(八木一男紹介)(第八七〇号)  同外一件(飛鳥田一雄紹介)(第九一四号)  同(飛鳥田一雄紹介)(第九一五号)  同(飛鳥田一雄紹介)(第九一六号)  同(飛鳥田一雄紹介)(第九一七号)  同(木原津與志君紹介)(第九一八号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  不動産登記法の一部を改正する等の法律案(内  閣提出第四九号)      ————◇—————
  2. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 これより会議を開きます。  不動産登記法の一部を改正する等の法律案を議題といたします。  本日は、前会の決定によりまして、参考人として東京大学助教授渡辺洋三君の御出席を願っております。  この際、参考人の方に一言ごあいさつを申し上げます。本日は御多忙中のところ、貴重な時間をおさき下さいまして御出席をいただき、まことにありがとうございました。今回参考人より御意見を承ることによりまして、本案の審議に多大の参考になることと期待いたしておる次第でございます。忌憚なく御意見を御開陳下さるようお願い申し上げます。  これより御意見の御開陳をお願いいたしますが、後ほど委員質疑があれば、お答え願えれば幸いと存じます。なお念のため申し上げておきますが、御発言の際はそのつど委員長の許可を得ることとなっておりますから、さよう御了承願います。それでは御意見の御開陳を願います。渡辺洋二君。
  3. 渡辺洋三

    渡辺参考人 今紹介にあずかりました東大の渡辺です。しかし私土地制度の問題につきましてずっと研究しておりましたものですから、この不動産登記の問題もその一部分としまして、従来若干関心を持っていたわけです。それで、実はこの案はだいぶ前から法務当局の方で準備されていたと思うわけですけれども、ちょうど一年くらい前に、大体その案を拝見しまして、かなり私は疑問に思ったものですから、前に法律の雑誌に書いたことがあるわけですけれども、今度また出た案を拝見しますと、前の案とあまり違っていないような感じがするわけです。従って、私が疑問に思っている点は、今度の案でも解明されていないような気がするわけであります。そういうところから私が疑問に思っている点を簡単にお話しておきたいと思います。  実は根本的な問題といたしまして、登記簿台帳、今二本の帳簿になっているのを一本にするということは、それだけ見ると非常に便利なように思われるわけでありますけれども、よく深く突っ込んで考えてみると、その考え方自体がどうも適当ではないのじゃないかということが、結論的に考えられるわけです。と申しますのは、この台帳というものと登記というものとは、全然性格が違うものでありまして、台帳制度というものは、これは沿革的に申しましても、現状におきましても、これはむしろ租税行政のために土地家屋の物権、まあ不動産を把握する。それを目的にしていると思うわけであります。それに対して不動産登記制度というのは、これは皆さん方御専門でありますから当然御承知だと思いますけれども、国民権利保護ということを国家がサービスするということの制度だと思うわけであります。そういうことから申しまして、実はこれも御承知の通り、台帳が昔の税務署所管から今日の登記所所管に移るときに、台帳というものは性格が変わったのだ、従来は課税台帳としての意味であったけれども、現在はむしろ単に地籍、家屋現状を把握するための制度だというふうに普通は説明されているわけであります。これは観念的にはそう言えると思いますけれども、実際問題として考えれば、むしろやはり登記所所管になる前後を問わず、一貫して台帳というものはやはり課税台帳としてのみ意味があったのだというふうに考えるわけです。  そこで、たとえば今度の登記一元化をなぜするかということの理論的な問題としまして、現在では権利関係に関する登記簿とその客体である現況の把握と、そういう台帳とが二本に分かれているというのは非常に不便であるということが言われるわけです。しかし、その点になりますと、実はこういうふうに言えるのではないか、登記というのは、やはり任意申請主義建前をとっているわけであります。現在まで理解されている登記制度というものは、国民の方から権利国家に守ってもらいたいという者が登録税を払いまして、そうして申請する。それによって国家登録税を取りまして、その対価のサービスとして対抗要件その他の権利を守ってやる、こういう形になっているわけです。従って、いわゆる国民の方から、自分登記したくない、あるいは自分権利国家に守ってもらう必要はない、そう考えている人にまで登記を強制するということは、今の登記制度建前としてはやっぱり望ましくないのではないかというふうに思うわけであります。そこで、登記制度ということから申しますれば、国家の責任というものは、国民からそういう希望が出た場合に、その希望に応じて権利関係を明確にし、その秩序に任するという仕事をすればいいわけでありまして、権利関係関係のない、そういう一般の土地家屋国家が把握するという必要は、登記制度からは出てこないだろうと思います。たとえば、かりに私が家を一つ新築します。そして別に私は取引をするつもりはありませんし、さしあたって登記の必要がない、そういう場合には、ほっておいたってかまわないはずでありまして、その新しく建てた家に対して、国家がこれを押えてその現況を把握するというのは一体どういう理由があるのだろうかというと、これは登記制度という観点からは全然出てこないわけであります。もし出てくるとすれば、それはやはり租税行政の問題として、固定資産税がありますから、国は、建物をつかまえて、それに租税を課していくという行政をしなければならない。その必要から、新しく建った家屋に対して国がこれをつかまえる必要があるわけです。そういうわけで、これをもっと根本的に申しますと、結局台帳制度というものを登記所で扱う必然性があるんだろうかということが、私にはどうしても理解できないわけです。つまり、建物土地につきまして国民の方から権利申請があった場合に、国家がそれに対していろいろ保護をするということで十分なんじゃないか。それ以上に、つまり、今申しました新築の家をすぐに国家がつかまえなければならないという道理はないんじゃないか。従いまして、今台帳制度でやっておりますように、申告義務を課しまして、申告しなければ罰則を伴う、あるいは職権で調べていく、そういうことをやるのは、どうも登記制度とは全く関係のないことでありまして、むしろ登記制度建前から許されない問題であるわけです。従って、現在でも台帳制度に対しまして、そういう強制的にこれを登録させるという制度があることは、これは登記制度としてはやはり全然理解できないわけで、租税行政ということだけを考えて理解できる、こういうふうに思うわけですり。  そういうわけで、登記制度台帳制度というものは根本的に性格の違う二つ制度であるということを前提として考えた場合に、これを一本の帳簿形式上載せるということは、かえって複雑になりますし、また国民の方から申しましても、たとえば、今度の案で申しますと、不動産に関する表示をしても、権利対抗要件を発生しないということになるわけですし、同じ登記簿の中に、単なる従来の台帳に関する問題と、従来の登記簿に関する問題と、二つの全く違う問題が一本の登記簿に載せられるということでどうもますます理解しにくくなり、複雑になる、そういうおそれがあるのじゃないかというふうに考えるわけです。こまかいことにつきましては、御質問があればお答にしたいと思いますが、根本的な私の一元化ということへの疑問は、そういう点のわけです。  そこで、なぜこの一元化が出てくるかということで、一つは理論的な問題を離れましても、事務的な問題で、国民の側から申請が便利になるとか、あるいは登記所職員事務が減るとかいうことが一元化理由だと思いますけれども、その場合に、たとえば申請人の側から見れば、はたしてどれだけ便利になるかということはかなり問題があるだろうと思います。今でも、たとい一元化しても、登記したくない場合にはただ表示に関する登記をするだけでありますから、権利登記はまだ行なわれないわけでありますから、どうしても二重の手続になる。たとえば、私が家を建てまして、そしてとりあえず建物表示に関する登記をします。しかし、保存登記はしたくないから黙っています。その後、何年間かたって保存登記をするということになるわけでありますから、いずれにしても、登記したくない人にとっては二重の手続が残るわけです。登記のしたい人には今でも併用申告制度がありますから、別に改正しなくとも同じようなものではないかというふうに思うわけであります。  それから、閲覧その他の問題につきましても、今不動産登記簿台帳二つを同時に閲覧することは、実際にはあまり行なわれていないのじゃないか。と申しますのは、現在不動産登記所台帳制度というものは、ほとんど役割を果たしていないのが実情だろうと思います。むしろ、市町村役場固定資産課税台帳を見て現況を把握するという方が普通じゃないかと思います。この方が便利でありますし、またその方が正確に押えているということになるわけであります。実際から申しますと、やはり、台帳制度というものは、登記所にあるよりは市町村役場に置かれた課税台帳の方が意味を持っているということだろうと思います。  それから、また登記所職員事務が一本化によって非常に軽減されるということは、確かに現在の制度前提とすれば、二本の帳簿でやっていることを一本の帳簿でできる形になりますから、便利になる点があると思うのです。しかし、私のさっきの根本的な考え方からいうと、むしろ、台帳制度登記所の任務の中に入れなくていいのじゃないか。これは市町村役場の方がよく抑えるわけであります。そういうところでやって、登記所というのはただ権利関係を明確に把握する、そして権利関係対象となるその限りで、権利関係対象となる土地家屋を明確に把握するということでいいのじゃないか。現在、たとえば登記所台帳事務をやっておるために、さっき申した権利関係と全く関係のない、新しく建った家などを登記所職員が押えなければならないということは実際できないわけでありますし、またわずかな——東京あたりの区で申しますと、各区にせいぜい一人か二人の台帳事務をやっている職員がいるだけでありまして、その一人か二人の職員で、毎年一つの区に何千軒という新しい家屋が建っていくわけですけれども、そういう家屋を調べて登録させるなどということはできないわけであります。そういうことに仕事を奪われるくらいなら、登記をしたいといって国民申請してきたその土地家屋については、せめてちゃんと実態調査をして、現況を十分に把握するということの方に重点を置いた方がむしろいいのじゃないかというふうに思うわけであります。そういうわけで、私は、もちろん学者の意見でありますからすぐにどうこうということはできないと思うのですけれども、理論的に考えましても、将来の方向としては、台帳制度登記所からはずしていくという方向に行く方が、登記制度のあり方としてはすっきりして、かつ実際にも便利である。そして、今のように登記所仕事台帳事務に追われて、肝心の登記事務が渋滞するということはだんだんなくなるのじゃないかというふうに考えているわけであります。  まあ、そのほかいろいろ問題があると思いますけれども、御質問が出ましたら、またその中でお話ししたいと思います。
  4. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 これにて参考人の陳述は終わりました。     —————————————
  5. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 参考人に対する御質疑がありますれば……。
  6. 田中幾三郎

    田中(幾)委員 そうすると参考人の御意見は、登記簿台帳、いわゆる表題部ですね、古い制度家屋台帳土地台帳、これがいわゆる表題部になって、その次に登記の部分がある、登記簿の方は所有権その他の権利を公示する民法上の法律的な意味を持っておるものであり、台帳の方は単に所有権客体を特定する表示だけである、こういうことであって、別に所有権に何ら関係ないのだ、公信力には何ら関係ないのだということから、所有権登記の方は本人の任意な申請によってやるべきものである、それから台帳の方は、単に客体表示するだけだから、そこまで干渉しなくてもいいのではないか、本人が欲しないのに、国家職権で、個人所有権の問題を取り上げて登記簿記載する必要はないじゃないか、こういう御意見のように伺うのです。そうしますると、この制度個人所有権に関する自由をむしろ制限するものであって、欲しないのに登記させるということは国家干渉であるというふうに参考人はお考えになっております。
  7. 渡辺洋三

    渡辺参考人 そうであります。つまり所有権制度というものは、最も根本的な国民権利に関する制度だと思うのでございますが、それに対して国家が何らかの干渉を加えるためには、それなりの公益目的がなければならないと思うのです。公共の福祉その他の公益目的があれば、私権に対して一定の干渉をし得ると思うのですけれども、私が考えるのは、公益目的はおそらく租税行政以外にないのじゃないか。個々の行政についてはもちろんあるわけです。土地収用の場合であるとか、都市計画の場合であるとか、道路とか、そういう公共目的のために、私的土地所有に対してこれを押えるということはもちろんありますけれども、およそ一般的に、日本のあらゆる土地と、その上に立っているあらゆる家屋国家がつかまえなければいけないという公益目的はどこにあるのだろうかということが、私はどう考えてもわからないわけです。従って、登記制度観点から申しますれば、さっき申しましたように、任意申請主義を原則とする考え方でいいのじゃなかろうかというふうに考えるわけです。  そこで、たとえば今の台帳制度登記制度というものは確かに私は不合理があると思うので、いろいろな形で今の登記法は改正しなければならないと思うのですけれども、登記簿制度台帳制度目的が違いますから、それを一致させなくてもいいのじゃないかと思うのです。たとえば、所有者の場合を考えてみますと、今の制度ですと、まず台帳所有者の氏名を載せます。所有者名義台帳に載せるときに一応所有権を証明しまして、所有者として登録される。そうすると、今度は台帳から登記簿に移るときには、ほとんど証明なくしてなってしまうわけです。つまり台帳に載っている所有者登記申請すれば、保存登記をそのまま大体受け付けるわけであります。これなんかも、どうも考え方が逆になっているのじゃないか。不動産登記所有権こそ非常に重要な問題でありますから、だれが所有者であるかということは、相当権利関係にかかわることで、確定しなければいけない。それに対して台帳記載所有者というものは、別に権利には関係ないわけでありますから、問題になるとすれば、だれが税金を払うかという課税義務者をきめるだけの問題であります。かりに、ほんとうの所有者でなくても、ほかの所有者が、おれが課税を負担してやるというようなことでいえば、それでもいいわけじゃないか。たとえば、私、書きましたけれども、かりに私が私の家を売ります。そして売買代金はまだもらわないわけです。売買代金は三年間に分割払いする。登記はその三年間は動かさないで、代金を全部もらってから買い主移転登記をする。私の方からいえば、ちゃんと売買代金が全部入るまでは、あぶないから登記を移したくない。しかし実際は家屋を引き渡してしまって、新しい買い手が住んでいるわけです。ところが登記はまだ私の名前になっていますから、私が課税義務者として出てくるわけです。これなんかも、私にはどうも理解できないわけで、今の制度では、登記簿を直さないと、台帳所有者が直らないわけです。私は家を売っちゃったけれども税金は私のところにかかってくる。従って、私が税金を免れたいためには、移転登記をしなければならない。ところがさっき申しましたように、あぶないから三年間は登記したくないそういう場合に、自由にはできなくなってしまう。そういうわけで、租税行政に関する台帳制度登記制度を結びつけると、いろいろな矛盾がたくさん生ずることでありまして、そういう点は根本的に考え直さなければいけないのじゃないかと私は少なくとも考えるわけです。
  8. 田中幾三郎

    田中(幾)委員 今の所有権移転をする場合は所有権登記移転をやればいいのですけれども、あなたの今おっしゃるのは、これは台帳の方にだけ残っておって所有権登記していない。つまり所有権登記のない不動産売買した場合に、あなたのおっしゃるように三年先に登記をするということならば、その三年先になって所有権を、本人任意登記ですか、所有権登記をして、そこで初めて移転をするということをやればいいのであって、台帳はそのまま残ったって、あなたの言う不便はないのではないですか。
  9. 渡辺洋三

    渡辺参考人 台帳が残っておりますと、課税義務者として税金を払わなければならないことになるわけです。それは実際には、その場合、私が買い主から税金の金を取って、それを私が私名義で納めるという以外にないわけです。市町村の方では課税台帳名義人課税してくるわけです。だから私は全然その家屋関係がなくなったのですけれども、しかし税金を免れない。もし払わなければ滞納処分でやられてしまうわけですから、結局その場合には形式と実質とが食い違ってくるわけです。たとえば売買所有権移転したのだ、売買契約なら売買契約を証明して、その台帳の方に申告すれば台帳の方はすぐ直してくれる。買い主が、確かに私が買ったんだ、だからことしから私が税金を負担しますとはっきり言えば、税務署の方は買い主にかけてくれればいいわけです。そういう制度ができたっていいじゃないか。その方が便利だし、実態に合うわけです。それが今のままだと、買い主が、私が買ったんだから、私が税金を負担するから台帳を直してくれと言ったってだめです。それなら移転登記してこいと言われて、その点どうしても矛盾が出てくるのではないかというふうに考えます。
  10. 田中幾三郎

    田中(幾)委員 ただ、今の点だけでありますと、その台帳登記簿一緒になっているというだけであって、今まで課税台帳登記簿と別になっているというのを単に合わしたというのと結局これは同じじゃないですか、今あなたのおっしゃるような点からいけば……。
  11. 渡辺洋三

    渡辺参考人 ですから今の点は、今日の法律のもとでも改正されて一元化されたもとでも同じであります。一元化してより困るというのではなくて、私が今言ったのは、現在の登記法台帳法関係自体がおかしいのじゃないかということを言っているわけです。この法案を見ますと、今度一元化してもやはり不動産に関する表示変更の場合に、権利登記移転しないと表示変更ができないことになっているようですから、その点は改正しても改正しなくても同じです。だから私は現行法すらおかしいじゃないかと言っているのです。
  12. 田中幾三郎

    田中(幾)委員 登記簿所有権所在を明らかにする原簿である、所有権登記をして所有者たることを明らかにする登記簿である。一方は家屋客体、物件の客体を特定する表示台帳にすぎない。それを一本の台帳にしてしまうところに私は法理上非常に理解しにくい点がある、こう考えるのです。ただ、今のような課税台帳役割を果たすとかということであれば、ことさらに台帳登記簿とを合体して一つにする必要はない、こう思うのです。そこでどういう弊害が起きてくるかというと、たとえば表題部表示に、甲の所有物を乙のものとして表題部に記入した、従って乙の所有権として登記されていく、こういう間違いが起こった場合に、従来の手続でいけば、所有権抹消の訴えを起こせばいいわけですね。そうして抹消してしまえばいい。ところが、所有権の方が抹消されても、表題部にはなお記載が残るわけです。所有権の方だけが抹消客体になり、訴訟客体になって、所有権は乙のものでないというふうに判決を受けても、当然には表題部は消えないということになると、あらためて判決を持っていって抹消しなければならぬというような手数をかえって生じはしないか。そこに帳簿を、所有権表示である本来の登記簿と、単に客体を特定するところの台帳とを一つにしてしまったということは、登記簿台帳との性質が非常に混同されて不明確になってきはしないかということを私はおそれるわけです。
  13. 渡辺洋三

    渡辺参考人 今のところは表示登記の方は職権でも変えられるわけですから、そう大して心配はないと思うのですけれども、さっき言いましたように、単に権利帳簿権利客体たる帳簿一緒にするということならこれは技術的なことですけれども、そうではなくて、台帳というものも職権をもって同じく強力な国家干渉を伴う制度なんで、それを載せてくることはおかしいのじゃないか。筋が通らないのじゃないかということを言っているわけです。だから、たとえば登記を要求されている土地建物についてそれの容体の表示を明らかにするということならば、それは登記制度としてすっきりしていいと思うのですけれども、さっき申しました権利関係のない土地建物不動産登記簿表題部に載せていこうということはそもそもどういう理由なんだろうかということが、どうしても理解できない。
  14. 鍛冶良作

    鍛冶委員 関連して。——田中君の言われたことは違うと思うのです。参考人に伺いますが、今田中君の言われるのは、甲が所有者として表題部に家の坪数、その他所在を書きますね、ところが乙がこれを見つけて、これはおのれの家だと訴訟を起こした。登記簿も甲になっているし、表題部もそうなっていたが、乙が訴訟を起こして勝った。そして登記の方は甲の所有ということが変わって、職権によって乙の所有変更される。これは当然です。そのときに表題部の甲は変わらぬじゃないか、こういう質問のようですが、これは変わらなかったら困る。当事者もおられます。変わるのでしょう。そこをはっきりしておかぬと困る。
  15. 渡辺洋三

    渡辺参考人 その点は現行法と同じじゃないかと思います。
  16. 鍛冶良作

    鍛冶委員 変わりますよ。変わらなかったら大騒動だ。
  17. 田中幾三郎

    田中(幾)委員 私の言うのは、表題部の方はいわゆる登記法による登記じゃないのですから、訴訟を起こすときに、登記抹消客体訴訟物にしなくてもいいわけです。登記簿の方だけやれでいいわけです。そうすると、登記簿の方だけは、「抹消すべし」という判決を受ける。その場合に登記簿だけが消えるのであって、表題部は、台帳表示ですから消えません。さらに判決を持っていってやりますから、だから二重の手間がかかるのじゃないか。従来ならば登記簿だけが相手ですから、登記所登記簿があるから、訴えを起こして、「抹消すべし」との判決を得て当然登記簿からは抹消してしまう。台帳の方はそんなものが変わろうか変わるまいが、これは家屋台帳ですから、登記対象になっていないのですから、対抗力がないから、そんなものは捨てておけばいい。しかし登記簿台帳一緒にした場合に、登記簿が変わっても台帳がそのままになっているのはおかしいから、改めるのならば二重の手続判決をつけて訂正しなければならぬのじゃないかと私は思うのです。
  18. 渡辺洋三

    渡辺参考人 その点は現在と改正案とでも変わりがない、現在でも台帳はそのままになっているならば。台帳の方は職権によって変わってきますからね。
  19. 田中幾三郎

    田中(幾)委員 ですから、台帳の方は登記所の方でやってこなければ変える必要はないのですから、登記簿抹消するということだけでいい。台帳の方はあらためてやらなければ消えないのではないか。これはまたあとから伺うことにしますが……。
  20. 渡辺洋三

    渡辺参考人 その点は現行法と改正案と全く変わりないのじゃないですか。
  21. 鍛冶良作

    鍛冶委員 変わるのでしょう。
  22. 渡辺洋三

    渡辺参考人 私が見た限りではその点は同じじゃないかと思いますけれども、その点はむしろ大した問題じゃない。問題は逆な場合だと思うのです。たとえば建物を増築したという場合、三十坪の建物を五十坪に増築すると、現在ですと台帳法申告しなければならないし、申告しないでもつかまえられれば五十坪になってしまうわけです。しかし、登記簿の方は、本人が黙っていれば三十坪のままですね。私はそれでいいのじゃないかというわけです。たとえば私がかりに二十坪を建て増しをしたという場合、台帳は五十坪になったわけですけれども、私は家を売るつもりもなければ、そのまま登記の方はほったらかしにしておいたっていいのじゃないか。そしてもし私が家を売るという場合には、台帳の方は五十坪になっていますから、そのときに台帳にあわせて自分登記簿を五十坪に直して、その上で権利の変動の登記をするというふうにすればいいけれども、今度は一本化しますと、その点はすぐに三十坪の建物を五十坪にすると登記簿に載せられてしまうので、その点ではやはり登記強制ということになるのじゃないか。しかもその場合、登録税を払わなければならないとすると非常に問題があるのじゃないか。ですから、たとえば三十坪の家を五十坪にしてほっておくと、一カ月以内に申告しないと罰則に問われる。しかもそれだけでなくて、登録税を払って結局登記強制みたいになってくるということになるのじゃなかろうか、私はこの法案を読んで、いるとちょっとそんな感じがするのです。その点は現行法のままの方がいいのじゃないか。  それから、この案で見ますと、今度は建物の滅失の場合なんかにも、登記申請につきまして罰則が出てくるようであります。これは九十三条の六ですけれども、これも百五十九条の二という罰則の規定に九十三条の六を載せてきているわけです。たとえば、建物が滅失したという場合に滅失の登記をしなければいけない。しないと罰則がかかってくるというのは、どうも私なんかには理解できないわけです。現在の台帳法ですと、建物を増築したような場合には、罰則を伴う申告義務があるわけですけれども、建物がなくなった場合には罰則がないわけです。現在たとえば家屋台帳法では十四条については罰則を設けていますけれども、十四条の場合だけに限っているわけです。従って十五条、十六条の申告につきましては罰則をつけていないわけです。その点はありますけれども、今度は罰則が入っているということでちょっと変わってくる部面があるのじゃないかというふうに思うわけであります。
  23. 小島徹三

    ○小島委員 一つお聞きしたいのですが、台帳の登録と登記簿の登録が食い違っておっても差しつかえないではないかというのが渡辺さんの御意見のようですが、一番好ましいことは、台帳記載登記簿記載が常に一致しているということの方がより好ましいとお考えにならないでしょうか。
  24. 渡辺洋三

    渡辺参考人 表示の一致ですか、権利の一致ですか、どちらですか。
  25. 小島徹三

    ○小島委員 表示
  26. 渡辺洋三

    渡辺参考人 表示の一致の場合には、登記建前から申しまして、今申しましたように登記を必要とするような段階では一致が望ましいだろう。だから三十坪の家を建てて五十坪にしたという場合に、その五十坪の家について権利関係の取引に入る場合には、実態は五十坪の家があるのですから、登記上も五十坪の家があるということが望ましいわけです。その点は今の法律でもある程度認めるわけで、台帳が五十坪になったという場合に、登記簿は三十坪である、その場合台帳と同じようにしなければ権利を動かせないということは意味があり得る。ところが家屋の場合ですと、私のところなんか、うちは未登記ですけれども、そういうことは必要はないわけです。登録税が無税になるというなら話はわかるかもしれませんけれども、登録税を払ってまで申告に行く気はしないですね、ほんとうのところ。ですから五十坪にしたって私はほうっておきますね。税金関係ではもちろん五十坪の税金を払わなければいけませんけれども、そこで私が家を売るとか、抵当権を設定する場合にはこれは一致することが望ましいと考えますから、五十坪として登記してもいいと思います。
  27. 小島徹三

    ○小島委員 私もそれはわかるのですが、常に私的権利でしょう、権利移転ということは私的の権利なんだから、必ずしも国家的に、公益というか、それとは矛盾しないんだから登記しなくてもいいだろう、こういうことも考えられるのですが、そうでなくて、たくさん複雑化してくる不動産の取り扱いというものが常にそういう私的の利益を保護するということよりも、むしろそれ以上に一本化しておるということの方が、大きな目から見たらかえっていいのじゃないかということは言われないのでしょうか。
  28. 渡辺洋三

    渡辺参考人 大きな目というのは具体的にはどういうことですか。やはりこれは行政の問題ですから、私のお伺いしたいのは、むしろどういう行政の必要があるかということなのです。
  29. 鍛冶良作

    鍛冶委員 理論もあるが、実際面から言いますと、今なら、東京なら区役所へ行きまして証明をもらってくる。それから保証人を立てて、そして保存登記をするということになる。それよりもやはり初めから徴税の意味において台帳が区役所にもありましょうが、登記所にもあるということになれば、その点は先ほど徴税者にやらせれば正確だと言われたけれども、やはり初めから登記の上で一本にしていくということが、登記を主体にして考えるときには便利でもありますし、また正確でもないかと思います。
  30. 渡辺洋三

    渡辺参考人 私の考えでは、実際面から申しまして、登記所がやはり台帳を把握するということは非常にむずかしいのじゃなかろうかという気がするわけです。従来登記というのは書類に基づいて調べることを建前としておりまして、実地調査に基づいて現況を把握するというようなことについては必ずしも習熟していなかったと思うわけであります。それで今度一元化されたあとでも、おそらく私の考えでは、実際は市町村の方へおんぶすることになるのではないかと思うのでありますが、かりに一元的な事務で浮いて、従来よりは多少は実態調査ができるということが出てくるかもしれませんけれども、それにしても、あらゆる権利関係関係した——土地は大体きまっていますけれども、家屋というのは非常な勢いで建っていきますから、そういうものを押えることはしません登記所では不可能で、むしろ膨大な機構を持つ各市町村役場の方が実際には押えられると思う。だから現況を把握する国家機構としていうと、私はやはり市町村がやる方が正確に押えられるのではないかと思います。今地方税法では、御承知の通り、毎年一回現況を押えるように命じておりますから、市町村では一年に一回一応建前としては見回る、実際にはあまりやってないところもありますけれども、建前としては一年ごとに見ております。それから税金をとるのは何といっても熱心ですし、国民の方から申しましても税金にぴんと響いてくる場合には直接対応しますし、登記の場合にはもちろん登記希望する人は関心を持ちますけれども、登記希望しない人は関心を持たない。この間の調査でも、東京では家屋の場合に未登記というのは半分以上なのです。ものによって一〇%くらいのところもありますが、せいぜい二、三%程度、あとの七、八〇%は、家屋は建てたけれども、登記は必要ないから登記してないということです。それはそれでいいのじゃないか。  それから台帳制度の方は、閲覧としても割合見やすいのじゃないかという感じがするわけです。さらに今は固定資産税は地方税になっておりますから、地方税を徴収する市町村の方から申しますと、台帳国家機関たる登記所に握られておるということ自体がかなりやりにくいわけです。市町村長が実態調査して現況台帳と間違っておることを発見した場合でも、市町村職権では変えられないわけです。一応登記所に通知しなければならない。しかもその通知を受けた登記所は、修正するかどうかは登記官吏の適当と認めた場合にするのですから、それはよくわからないわけです。そういう点で地方自治の建前からいっても、地方行政の根本にある固定資産税課税台帳国家機関の介入を得なければ動かせないということは、地方自治の建前からもあまり妥当ではないのではないかという考えを持っております。そういうわけで登記所の方がどうも正確に現況を把握できるという証明はむずかしいのではなかろうかと思うのです。だからむしろ市町村に押えさせて、必要とあればそれを登記所が持っていてもいいと思います。その方がもっとはっきりと実態をつかめるのではなかろうかと思っております。
  31. 鍛冶良作

    鍛冶委員 それはこの程度にして、またあとで政府委員に聞きますが、近ごろ新聞でも御承知でしょうが、地面師といいますか、組織的に土地を詐取し、もしくは詐欺をやっておる。これは登記簿上だけのからくりでこういうことが起こると、これに関して、それを防ぐ上において、何か現在の改正とからんでお考えになったことはございませんか。これでいいか、足らぬか、方法はないのか、それらの点についてお伺いいたします。
  32. 渡辺洋三

    渡辺参考人 その点は私具体的には考えていないのですけれども、現在の登記制度で決していいとは思わない。確かにいろいろなからくりで、つまり頭のいいやつが今の登記制度の欠陥を利用してある程度うまいことができる仕組みになっておることがかなりあると思う。まだよく調べておりませんけれども、その点やはり現在の登記制度の欠陥を直すために改正するということは賛成です。ただ、具体的にどうしたらということはまだ考えておりません。そのためにも、一つ登記制度の問題もありますが、登記所職員登記の実務に集中できるという態勢にあるかどうかということも問題になりますし、根本的にいえば、やはり今の登記自体が書類に基づく作業をもとにしてつかまえておりますから、かなり実態とは違ったりなんかして、確かに不十分な点はいろいろあります。そういう点でせめて登記が出てくる土地とか建物については、登記所としても従来よりよほど正確に押えなければならないということは、確かにそうだろうと思います。そうすれば、今のようなインチキも防げる点もあるのではないかと思います。ですから、そういう詐取の問題については、一つ法律の面から検討するということと、もう一つは、登記所職員行政事務のやり方を側面から検討するという二つの面から検討さるべき問題だとは思います。
  33. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 菊地養之輔君。
  34. 菊地養之輔

    ○菊地委員 登記申請義務所有権者に命ずるようでありますが、こういうように国民一つ義務を命ずる場合の法律上の根拠、少なくとも憲法上にその根拠がなくてはならぬと思うのですが、この根拠はどこから発せられたものでしょうか、その点をお聞きしたいのであります。
  35. 渡辺洋三

    渡辺参考人 それはむしろ私どもからお聞きしたい点なんで、その根拠はないのじゃなかろうかと私は言っておるのですけれども、申告義務づけ、しかもそれに対して罰則を課するというふうな強力な義務の課し方、これにはそれなりの公共の福祉というか公益目的がなければならないだろうと思います。だから、租税行政という観点からいえばりっぱに根拠があるのじゃないかと思うが、税金は国のために広く使われるものであるといっても、実はやはり自分の金がなくなるわけですから、あまり納めたがらないという傾向がありますけれども、ほうっておけばその土地を非常に小さく申告し、家を建てても申告しないとかいうようなことが起きる可能性がある。その場合に、国民税金を公平に納めさせていくためには、土地家屋をどのくらい持っておるかということを正確に調べて税金をかけなければならないという点からいって、申告義務を課することは、私はりっぱに理由があるだろうと思うのですけれども、それ以上はちょっと私には根拠はわからないと言っておるわけです。
  36. 菊地養之輔

    ○菊地委員 憲法上の納税義務があるから、いわゆる登記所申告義務が出てくるような感じがしますが、公共の福祉の問題から考えますと、不動産もやはり権利一つで財産権でございますから、登記もできるし、処分は自由なんだから、個人が自由になし得る権利があると思う。それに公共の福祉をくっつけて申請義務を負担するというのは、私は行き過ぎじゃないかと考えているのでございます。従って、これは納税の義務から派生しているものじゃないか。それならこういう形で、調査権だ、刑事上の罰則だとかいうのは非常な行き過ぎを本法案が犯しているのではないかと考えるのですが、その点は先生どうでしょうか。
  37. 渡辺洋三

    渡辺参考人 その点は、課税行政というものと離れて純粋に権利保護としての国家のサービスという点からだけいえば、確かに行き過ぎだというふうに考えざるを得ないのじゃないかと思うわけです。従来理解されている登記制度という観点からいえば、登記制度というのは、やはりあくまで国民の取引の秩序を国家が維持していく、そのためのサービス事務だというふうに理解されていると思うのです。そのサービス事務をやるために、取引と関係ない土地家屋について強制的に申告義務を課するということは、登記制度建前としてはやはり行き過ぎだというふうに私は考えます。たださっきもちょっと問題になりましたけれども、一ぺん登記されたものの表示変更ということにつきましては、私もある程度まだわからない点がありまして、登記したくないものに登記を強制するというのは無理だとしましても、一ぺん登記した以上は、なるたけ正確な方が望ましいということは確かに言えると思うのです。だから現行程度でいいんじゃないか。現行法も、一応登記したものについて表示変更があれば申告義務を課していますけれども、罰則はないわけです。それから台帳変更しなければ登記簿のすべての権利ができないのですけれども、その点で、たとえば建て増しをした場合とか、土地変更があった場合に、一応強力義務をある程度国家国民に課しているということは、現行法くらいならばいいんじゃなかろうかというふうに私は思うわけです。
  38. 菊地養之輔

    ○菊地委員 そう解釈すると、この登記義務の懈怠に対して罰則をもって強制するということは、非常な行き過ぎになるのじゃないかと考えるのであります。納税の義務違反に対しては別に罰則がない。強制執行の方法をもって取り立てますけれども、税金を納めないからといって、民事罰を加えたり刑事罰を加えるということはないのであります。ところが、その本来の納税の義務直接の違反に対してはそういう罰則がないにかかわらず、それから出てくると考えられる申請義務を怠ったからといって、直ちに罰則を課するということは、非常に本末転倒ではないかという感じがするのでありますが、その点はどうですか。
  39. 渡辺洋三

    渡辺参考人 その点は私からさっき言いましたように、私も、そういう課税行政と無関係登記制度の問題として、強制的な申告及び罰則ということは無理じゃなかろうかと思います。それに関連いたしまして、やはり強制的にする場合には、登録税の問題とも関係がありますし、それから今の手続自体がやはり必ずしも簡単ではないと思います。今台帳法のもとで申告義務を課しておりますが、これも実際には申告しない人が多い。それで罰則もありますけれども、実際にはおそらくかなり空文化しておるというのが私の知っておる限りの実情です。もう一つは、申告手続がかなり複雑なんです。だから申告義務を課する以上は、簡単な手続にして、だれにも手続できるようにすべきです。その点今の台帳法でも、台帳申告のやり方が必ずしも簡単なものじゃない。それでしかも強制申告のあれがある。だからこの辺も実務的には検討さるべき問題じゃないかというふうに思っております。それから今度一本化した場合でも、今までですと台帳申告市町村経由で来たわけですが、今度はどういうことになりますか、市町村経由でできることになるのか、ならないのか。もし登記所に直接行かなければならないということになると、その点だけでも不便が出てくると思いますが、その場合に手続もやはりかなりめんどうな手続になるのじゃないか。そういうめんどうな手続のもとで強制申告をさせるということは、事務的にもかなり問題があるのじゃないかというわけで、理論的にも事務的にもかなり検討をしていただいた方がいいのじゃないかというのが私の考えです。
  40. 菊地養之輔

    ○菊地委員 申請事務も非常に重大問題ですが、登記官吏に実地調査権を与えているということは、少なくとも憲法では非常に問題じゃないかと思います。被疑者に対する家宅捜索なんかに対しましても、憲法にも刑訴法にも厳重ないろいろな条件をそろえておる。ところが本法案によりますと、きわめて簡単に登記官吏が実地調査をする。この実地調査は不動産でございますから、土地あるいは家屋に立ち入って構造状態や床の面積まで調査いたしますから、少なくとも家屋に立ち入る権利をこの調査官は持っておるのじゃないか。こうなると、被疑者が家宅捜索を受けるよりももっと簡単にできるようになっておる。被疑者の場合には少なくとも裁判官の令状がなくては捜索ができない。ところがこれは令状なんか要らずに不動産に立ち入ることができる。家屋に立ち入っていろいろ調査することができる。しかも書類を提出させたり尋問をする。それに答えなかった場合にはいわゆる刑事上の罰則を加える。被疑者の場合には拒否権がある、いわゆる黙秘権が存在しておる。ところがこの調査官に対しては黙秘権がないのであります。これは驚くべきことです。いわゆる登記官吏が権利を振り回して書類を提出せよと言って提出しなかった場合にも刑罰をもって臨む。これは被告人でさえも出すべき書類を出さなくともよろしいし、あるいはまた裁判官の尋問にさえもいわゆる黙秘権を行使することができるのであります。ところが、登記官吏に対しては黙秘権の行使はできないし、行使すれば刑事罰をもって臨む。こういうような非常な権力を登記官吏に与えるばかりでなく、尋問に対する非常な義務を課しておるのであります。こういうことは一体許されることであるか。一体どこからこういう権利を与える権限が出てくるのか、憲法上から、国民にこういう義務を負担させる論拠が出てくるのか、登記官吏にこういう権限を与えるところの根拠が憲法上あるのか、非常に私は疑問に思っているので、先生にお伺いしたいと思うのであります。
  41. 渡辺洋三

    渡辺参考人 ですから、やはり登記制度というのはそもそも一体何のための制度なのかという根本的な問題の理解にかかってくるかと思いますけれども、もしこれが国民権利保護するための、取引の秩序を維持するための手段である、従って国民権利保護国家に頼む場合に、国家がそれにサービスするということが登記制度建前であるということならば、今のような登記制度の名において、登記官吏が強制的にそういう権限を持って調査するということは、憲法上やっぱりできないというように思うわけです。ですから、もしそれができるとすれば、おそらく登記制度についての根本的な考え方が変わったと見なければならないと思います。そういう意味で、一元化のこの法案が実現すれば、登記制度というものは根本的に性格が変わったのだというふうに見ざるを得ないと思います。従って、また、登記制度建前からはちょっと出てこない権限でありますから、やはり従来の台帳、今度は表題部登記になりますが、それが税金行政にとって不可欠の手段であるということを一本どうしても入れてこなければ、根拠はないだろうと思います。それを入れてくるとなるとまた混乱すると思うので、その辺が今度の法案の持っている根本的な問題じゃないか。私の言うように租税行政の手段たる台帳制度登記制度をもっと分離する方向にいくか、もっとこれを取り入れて一本化してしまうかということは、根本的に考え方の分かれ目の点になってくると思うのです。その点が、かりにこの法案が通っても通らなくても、決定的に重要な問題であろう、ここ十年間ぐらいは、登記制度の根本をきめていくだろうと思っておりますから、関心は非常に持っているわけです。
  42. 菊地養之輔

    ○菊地委員 私の心配しているのは、国民の人権の点から、憲法三十五条に住居不可侵の規定がございます。「何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利は、第三十三条の場合を除いては、正当な理由に基いて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない。」こういうようにはっきりといわゆる住居の不可侵の規定があるのでございます。こういう規定があるにもかかわらず、登記官吏がいわゆる家屋の坪数であるとか構造とか、そういうものを調べるという理由で、憲法三十五条に規定されたる住居の不可侵性を侵して入ってくることは憲法違反ではないか、こう考えるのであります。現行犯の場合とか、あるいはまた裁判官の令状ある場合にだけ初めて家屋に侵入することができるという規定が存在する。これ以外には許されないのではないか。いかに法律をもってしても、この憲法の住居不可侵の規定をそのままにして、また裁判官の令状なくして家宅侵入することはできないのじゃないか。こういうふうに考えるのですが、その点はどうなんですか。私は非常に疑問としておるのですが……。
  43. 渡辺洋三

    渡辺参考人 ですから、私も、それが憲法違反でないという合理的な根拠があるかどうかということについては、やはり相当議論をしていただきたいと思うわけですけれども、現在でも台帳職権でやりますから、職権で登録を強制することになりますと、ある程度実地調査しなければつかめないということが出てきます。実地調査をする以上は、ある程度権限がなければ実地調査ができないわけであります。行っても、調査をさせねば話にならないので、実地調査をする必要があれば、その限りで権限を与えることは合理的理由があるだろうと思います。ただ、私がさっきから出している問題は、一体登記官吏が実地調査をする必要があるのかどうか。もし私の考えから言わせれば、国民登記希望してきた土地について、その土地家屋が実際上どうなっているのかということを調べるぐらいのことはやってもいいと思うのですけれども、権利関係と全然関係のない、新しいぽこっと家が建った、そういう家に対して登記官吏が実地調査をするのは、登記制度としてはどうしても理由がないのじゃないか。従って、今おっしゃられたような権限を与えることは、憲法上の問題として、むずかしい問題が出てくるのじゃないかというふうに考えるわけであります。ですから、問題はやはり、憲法違反かどうかという問題を考える場合には、結局その前提として、登記官吏がいかなる必要から、いかなる公益目的のために実地調査をするのかという、その辺を検討していただく必要があるのじゃないか。私は、従来の理解では台帳制度というものは決して地籍家屋簿ではない、そうではなくて、むしろ、実態は、登記所に移管されてからあとも、課税台帳としてのみほんとうの意味を持つものだ、だから、その限りにおいて職権主義が許されてきたのだと思われるわけであります。従って、課税台帳としての意味がなくなったら、職権主義というものはなくなってくるだろう。つまり課税台帳制度職権主義とは不可分のもとに結びついてきたものだというふうに理解しておるわけであります。
  44. 小島徹三

    ○小島委員 そこで、今さしあたり問題になっている問題ではないのですが、アメリカあたりは土地売買を地券でやっているようです。将来日本がこの地券制度のようになっていく場合があるとすれば、現在のような一元化をして、登記簿表示台帳表示というものが常に一致している、そして土地というものが常に全部登記されているということでなければ地券制度というものはいけないのだろうと思うのですが、そういうことを考えたときに、一元化することの効果というものは一体どうなんですか。
  45. 渡辺洋三

    渡辺参考人 地券制度を将来とるかどうかということは今すぐに言えないと思いますし、それぞれの国の事情がありますから、日本のような体系のもとで地券制度をとられることが合理的かどうか、かなり問題があるのじゃないか。むしろ、沿革的に申せば、逆に地券制度からこれは分かれてきたわけです。本来、まず近代日本の成り立ちの場合には、地租改正というものをやって地券を与えた。だから地券というものは両方の意味があった。地券を持っている人には税金をかけるという租税行政の問題と、それから地券が対抗要件になっていくという私法上の取引の問題と、この二つ性格を同時に持っていた。昔はそういうことだった。それがもっと分離してきて、私法上の権利の問題は、登記制度がしかれたことによって登記制度の方に移行していって、税金の方は台帳の問題として税務署移管に移っていった。沿革的に申して、こういう二つに分かれていったわけです。私はその二つに分かれていく方が、日本の場合には近代的な登記制度の確立に貢献するのじゃないかと考えているわけなんです。しかし、私もまだ非常に先のことまで考えて深く突っ込んでないのでちょっと自信はありませんけれども、従来の沿革からいって、とにかく一本だった地券が分かれて二本になって、それを今度また一本化しようというわけですが、それだけの合理的理由があるかどうか、日本の登記制度の発展の歴史からいってもかなり画期的なことだろう、よきにつけあしきにつけ、かなり大きな意味を持つだろうと思うのです。むしろ私の考えでは、さっき申しましたように、どうも台帳というものは、あるいは現況の把握というのは、登記官吏ではむずかしいのじゃないか。だから登記官吏はむしろ市町村にまかせてしまって、登記官吏には権利関係の方を専一にやってもらう、そうすれば今の事務の渋滞もずいぶん省かれるし、そうして市町村の方の台帳がはっきりつかまえられれば、それをまた登記書に載せてくるという制度を考えてもいいのじゃないか。何かその方がここ数年のことを考えた場合には、合理的なような気がするのですけれども、まあ検討していただきたいと思います。
  46. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 志賀義雄君。
  47. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 第三十一国会のときに私から民事局長にお伺いしたことがあります。そのときには大蔵省から主計官も出られ、平賀君も出ておられました。これは、きょう渡辺さんが参考人として来ておられますので、政府の言うことがいかに当てにならぬかということをまず申し上げてから若干伺いたいと思うのです。  と申しますのは、この登記一元化について、土地台帳家屋台帳及び登記簿のことでございますが、実はそのときに司法書士会の連合会の方々から手数料の問題でいろいろ陳情がありまして、その結果私が伺いましたところが、平賀政府委員は、「私どもの目下の計画では、一元化によりまして登録税の収入を上げるとかあるいは手数料の収入を上げるというようなことは、法務省の方としては考えておりません。大蔵省の方も、その点はそういうお考えはないと私想像いたしております。」こういうふうに言われたのであります。なお広瀬説明員もそのときに、「ことしの歳入予算に今おっしゃったような関係で余分に見込んでおるのではないか、そういう御質問だと思いますが、そういうことはございません。一元化の問題が実現しますのは昭和四十一年度からになりますから、問題が起りますのはそれから先のことでございます。」もう議事録にちゃんと書いてありますから、これは事実であります。それから間もなく、ことしになりまして——昭和四十一年ではありません。ことしは昭和三十五年でありますからまだ六年ばかり手前でございますが、去年の暮れ、十二月十八日付政令で、そういう手数料の値上げは考えておりません、民事局長が大蔵省でも考えておられないと言ったのに、三十円を四十円に上げて、この増収見込みが一億三千万円ないし二億円となっている。うそをつかれたわけですね。このうそは、いずれ別の機会にここで質問いたしますけれども、渡辺さん、政府はこういううそばかりついておるのです。  そこで経済団体連合会の方から要望意見がありまして、すみやかに政府が意図せられておる今度の一元化をやってもらいたいと言われるのでありますが、この経済団体連合会の要望意見というものはごらんになったでしょうか。
  48. 渡辺洋三

    渡辺参考人 前に見ております。
  49. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 そこでこれからの質問参考のために伺いたいのでございますが、法務省民事局から不動産登記法の一部を改正する等の法律案関係参照条文というものがここに配付されているのでございますが、これは十五の法律からとってあります。この項目を見ますと、私どもが一番問題にしなければならないという土地収用法というのが全然抜けているのです。御承知の通り、砂川事件を初め、土地収用法で非常に大きい問題が起こっております。下筌ダムの問題も起こっておりますが、このように関係のある土地収用法を民事局がわざと抜いておると私ども考えるのであります。この点については、渡辺さんはどういうふうにお考えでございましょうか。経済団体連合会の要望意見と照らし合わせてみまして、土地収用法は今度の問題に非常に関係があると思いますけれども……。
  50. 渡辺洋三

    渡辺参考人 土地収用法との関係は当然出てくるだろうと思うのですけれども、私まだよく詳しく調べておりませんのではっきりわからないのですけれども、今度の案を見ますと、百条に出てくる点が一つございます。私気がついたのはその程度で、収用によっての所有権登記が、従来は台帳を書いてからくるという式にたしかなっていたと思いますが、この点は直接今度は登記簿に載せてくるようになったわけですね。そういう意味で、これは別に土地収用法自体の改正とは直接関係がないと思いますので、私も土地収用法の改正がこれとの関係でどうなるのか、法律的に調べてないのでよくわからないのです。しかし、おそらくこれは法律論とは離れるかもしれませんけれども、やはり現在の土地制度不動産制度登記制度を含めまして、一般的に今いろいろ考えなければならない時期が確かに来ているのではないか。そういう点から、この借地借家法の改正とか、都市計画法の問題とか、いろいろ出てくるのではないかと思いますけれども、その辺はむしろ私から国に対して、どういう政策をお持ちかというようなことを、学者としてはいつも関心を持っているわけです。例の公団住宅が、住宅を建てる場合に、地価が非常に高くて困るとかいうようなこととか、いろいろ地価の規制が必要かどうかという問題も議論が出てくるでしょうし、いろいろな問題があるので、そういう点では、おそらく国の大きな政策としては当然関連はしてくると思うのですけれども、法律面ですぐどうかというと、ちょっと私にははっきりわかりませんし、土地収用法の改正は、直接にはここから出てこないかもしれないという気がいたします。この点はもう少し調べてから……。
  51. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 私が申し上げましたのは、そういう点を渡辺参考人には今後よくお調べいただいて、われわれの今後の審議のためにいろいろとまたはっきりさせていただきたいという希望もあってのことでございます。  もう一つ、今読み上げましたように、昭和四十一年度からやるというのが六年も手前でやられておるのでありますが、そのときに、従来モデル・ケースとして法務省はやってきた、今度は一挙にやるのではない、こう言ったのです。そして三十一臨時国会で私が指摘したときには、一元化のための予算が組んであったのです。それについての法律がない、これはどういうわけかと聞きましたところ、モデル・ケースを見て法案化していくのだ、そしてそれが昭和四十一年度からになるだろうという答弁であったものが、昭和三十五年度からこういうものが出てきておる。しかもモデル・ケースの実績がどういうものであったか、どういう利点があるか、どういう欠点が出てきたかということは、一切法務委員会においても報告なしであります。それでいきなり昭和三十五年度からこういう法律でもってやっていくということですから、この実績の問題点がどういうものであるかということは、私ども今後やっていきたいと思うのであります。  そこでもう一点だけこの際お伺いしておきたいことは、今回の不動産登記法の改正で、登記に関しては職権主義を取り入れております。これは法案の二十五条の二及び第六章の罰則などがそうでありますが、これは従来あった台帳簿の職権主義を繰り込んだというだけのものではなく、登記法性格変更したことになる。つまり申告を伴った職権主義になっておるのでありますが、これに伴って、もし表題部表示五十坪を信用して契約したのに、実態がこれと異なって三十坪しかなかったというような場合があったとします。というのは、こういうことが起こるのは、登記所実態を調べてみますと、登記対象である土地家屋を十分調査する能力を、人数からいっても設備からいっても持っていないのであります。あなたも先ほど、市町村の方が職権を持っており、人数も多いし、そういうことができるということを言われたのでありますが、これはほとんどないのであります。それが今度の改める案では、従来の登記法と異なって表題部職権主義を明確にとっているのです。この場合に、もし今言った五十坪が三十坪しかないということが起こった場合に、国家賠償法に基づく賠償請求をした場合にはどういうことになりましょうか。職権主義でやってくるのでありますが、その点いかがでございましょうか。
  52. 渡辺洋三

    渡辺参考人 その点もまだあまりよく考えていないのですが……。
  53. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 国家賠償法の第一条に関連して申し上げておるわけであります。
  54. 渡辺洋三

    渡辺参考人 しかし、そのことは、たとえば今でも、かりに台帳だけを見て、台帳のあれが間違っていて、それを信用したために損害をこうむったということがあり得るわけですね。それは一元化してもしなくてもその問題はあり得るわけだと思うのです。従って、そういう場合にはたして国家賠償法というものにひっかかってくるかどうかということになると、これはまだ理論的には検討しないと直接的には出てこない問題がたくさんあると思うのです。ですから、今でも台帳登記官吏が職権で登録してそれが間違っているということがあり得るわけですから、これは改正してもしなくても問題としてはあり得るわけです。それを国家賠償制度という制度から言うと、直接的には乗ってくるのはちょっとむずかしい点があると思うのですけれども、しかし将来の問題としてはもちろん考えられると思うのです。
  55. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 もう一点だけ。今度の法律はいろいろ矛盾があるわけで、その一端だけを今まで各委員からお尋ねがありました。増築の場合の問題なんかは、参考人御自身の経験からも言っておられますが、土地の滅失の場合の八十一条の八、それから九十三条の六の方は家屋の場合ですが、これは罰則百五十九の二に該当して、たとえば火事で焼けて家屋を取りこわす場合に、一カ月以内に申告しなければ一万円以下の過料、こういうことになっておりますが、非常に損害を受けて気も転倒しているような場合にそういうことを忘れておると、これはえらいことになるのであります。火事があったら一一九にすぐかけろというときに、今度は登記所にまっさきに電話をかけなければならぬという事態が人の頭を常に支配することになるわけで、これもなかなか大へんなことになる。これも矛盾があるのでありますが、実はこの法務委員会にも、刑法の一部を改正する法律案といって不動産侵奪罪というものが出ておりますが、近ごろ官僚諸君非常に立法技術がずるくなりまして、一見何でもない形で出してさておいて、行政協定なんかとずっと結びついて、今度の批准が問題になっているものと関連してやってくる、こういうことを私ども今ひしひしと感じているわけなのでございます。きょう私がお尋ねしたことはこの上御研究なさるそうで、ここでは十分な御答弁をいただけなかったのでありますが、非常に重大な問題が多々含まれているのでございます。そういう点は十分御研究いただきたいと思うのであります。  最後に、経団連から要望意見として出され、本来ならば経団連の代表もここに来ていただいて私どもの方から聞けばいいのでございますが、何かここに魂胆があるような気がするのでございますけれども、渡辺参考人、その点についてお気づきの点がございましょう
  56. 渡辺洋三

    渡辺参考人 経団連ですか……。
  57. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 経団連のことをあなたに代弁していただこうという趣旨じゃないのです。あなたが資本家の大どころじゃないということは重々承知している。くさいというふうにはお考えになりませんか、こういうわけです。
  58. 渡辺洋三

    渡辺参考人 経団連のことは、さっきちょっと話が出ましたが、滅失の申告義務の罰則ですね。これはどういう立法趣旨なのか、これも私はよくわかりませんので、あとで政府の方に聞いていただけばいいと思うのですけれども、現在では家屋台帳法の十四条で申告しないと二十六条の罰則で一万円かがかかってくるわけです。現在の台帳法の精神から申しますと、どういう場合に罰則をかけるかというのは十四条に出てくるわけでありますが、十四条の申告というのは、いずれもやはり税金関係があることだと見なければならないわけです。つまり家屋台帳に登録することを要しない家屋家屋台帳に登録するようになった場合とか、家屋の価格を記載すべき家屋を建築した場合とか、従来は家屋の価格を記載しなくてよかったのが今度は家屋の価格を記載するようになる場合とか、要するに、課税行政という観点から見てつかまえなければならないという場合、その場合だけに限って十四条は書いてあるわけです。それが二十六条の罰則で一万円かになってくるわけです。それで建物が滅失したとか、床面積が減少したとかいう場合には、税金建前からいえばむしろ減る方ですから、市町村の方からいえばほおっておきたいくらいでしょうけれども、十五条は滅失の場合の申告義務、十六条は床面積減少の場合の申告義務を課しているわけですが、十五条と十六条では罰金は課していないわけです。ですから、これは今の家屋台帳法が租税行政建前から考えられている限り当然なので、家屋が滅失した場合には別に罰則を伴った強力な申請義務は必要ないわけです。むしろこの場合には、普通国民の方からは、税金をかけられるという不利益がある。建物がないのにかかわらず課税台帳に載っかっているということになると税金がかかってくる、それでは困るから国民の方からむしろ自発的に取り消すのがあたりまえでございまして、これを上から行政で罰則をかけるというのは、どうしても意味がよくわからないわけでございます。その点で現在の家屋台帳法二十六条の規定と今度の罰則の規定とは比較検討していただきたいというふうに思うわけです。  それから今法律の内容よりは法律の背後の問題についていろいろ質問が出たわけです。これは大きな問題ですから私もよくわかりませんけれども、これは前に拝見した日経連ですかの要望書というのがあるわけです。これが大体改正法の内容と似ていると思うのですけれども、経済団体の側からいっても、はたしてこういうことが得策なのかどうなのか私には必ずしも理解できません。今登記を利用するのはやはり資本家が相当登記を利用しなければならない状況にあるので、登記事務の停滞について資本家の立場として利害関係を持つのは当然だと思うのですけれども、むしろそれは私の言ったように、台帳でも登記事務から落としてしまった方が、かえって登記事務が推進されていいんじゃないかという気もするので、その辺はやはりいろいろ問題はあるだろうと思います。登記制度というものについての考え方の問題が根本にあると思いますので、そういう点にさかのぼって検討していただければ、私たち国民の立場としては非常にいいのではないかと思います。
  59. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 参考人に対するいろいろの質問はこれで終わりますが、今速記録を読み上げたように、——このときは瀬戸山委員長はまだ委員長になっておられません。ここにおられる小島君が委員長でありましたが、そのときに政府はこういう見えすいたうそを言っているのです。こういう点も究明しなければなりませんし、もう少しよく検討すべき点が多々ありますから、この問題については、委員長、あまり急いでこれを上げるというようなことをしないでいただきたい、それを要望しておきます。
  60. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 これにて参考人の方に対する質疑は終了いたしました。  参考人には、御多忙中のところ、長時間にわたり御意見の御開陳をいただき、まことにありがとうございました。これにてお引き取りを願います。     —————————————
  61. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 引き続いて、本案につきまして質疑を継続いたします。  質疑の通告がありますから、これを許します。田中幾三郎君。
  62. 田中幾三郎

    田中(幾)委員 先ほど参考人に伺いました表題部登記と、それから権利登記とに関連いたしましてもう一度お伺いをいたしたい。  今、渡辺参考人も申しましたが、これは登記の本質の大きな変化であるというふうに私も考えておりましたので、先日来この考えの上に立って質問をしていたわけです。旧登記法の第一条には、不動産に関する登記を規定してありまして、その登記客体である権利については、御承知のように一条にずっと掲げてあるわけであります。これに対して今回の改正は、これに表題の登記というものを加えておるわけであります。旧登記法によりますと、登記すべき権利客体といいますか、権利の種類を個別的にあげまして、登記さるべき権利というものは限定されておったわけです。その登記によって起こるところの法律的効果というものは、民法の第百七十七条によって外部に向かって対抗力を持つという法律的効果があった。しかるに、今度の登記法の改正によりまして、一元化と言いますけれども、表題部登記というものの法律的効果というものは何もない。民法においての登記の効果というものは外部に対する対抗力を持つのですから、これが大きな法律的効果であって、しかもこれは登記の証明である。今回の表題部登記というものは、一体どういう法律的効果を持っておるのであるか。ただ事務的に一元化という、事務の簡素化であって、本質的には表題部登記というものは何ら登記による効果を伴っていないのではなかろうか、こういうふうに私が考えましたので、先ほどの問題も起きたわけであります。ここにいただいた参考資料の中に、表題部と題して土地の分、建物の分、それから不動産の分、付属の分、こうありまして、土地の方につきましては、ページの一番最後に所有者表示がある。それから建物表示につきましては、所有者記載すべき欄がない。こういうふうに二種類になっておるのでございますが、建物の方にも所有者表示する欄があるのでございますか。
  63. 平賀健太

    ○平賀政府委員 建物表題部は、土地と違いまして様式がちょっと違っております。所有者というものを書いておりませんが、この最後の一行に所有者記載するわけでございます。
  64. 田中幾三郎

    田中(幾)委員 そうしますと、土地の方の用紙には特に所有者と書いてあり、建物の方には所有者という表示はないのですけれども同じに書く。そうすると、これは間違いですか。
  65. 平賀健太

    ○平賀政府委員 これは、建物の場合は付属建物がたくさんある場合があるのでございまして、この建物表題部は、第一用紙には付属建物が二個しか書けないことになっております。たとえば三個以上あります場合には、ここに線を延ばしまして付属建物表示し、継続用紙の方に所有者を書けるようにという、実際上土の取り扱いの便宜から、土地とは少し様式を異にしたわけであります。それだけのことであります。
  66. 田中幾三郎

    田中(幾)委員 そうしますと、土地表題部についても建物についても所有者表示する。この登記法ではひとしく表示登記という言葉を使っておりますが、これは先日も私はお伺いしたのですけれども、この表題部登記というものは、単に権利客体すなわち土地とか建物とかいう権利客体を特定するばかりでなしに、所有者も明らかにしておりまするが、これはいわゆる民法の百七十七条によりまする対抗力の効力は別にないわけでございましょう。
  67. 平賀健太

    ○平賀政府委員 その通りでございます。
  68. 田中幾三郎

    田中(幾)委員 そうしますと、旧法によりましては登記すべき権利を限定いたしまして、しかもその登記をした法律的効果というものは、外部に対して大きな対抗力を持っておる。今度の登記法によりまして加えました表題部登記というものは、外部に対する対抗力という法律的効果は何らない、何も対抗力はない。単にこれはつまり権利客体表示したにすぎぬということであります。われわれは従来考えておりましたのは登記しなければその物件の外部に対する対抗力はないのであるという、登記ということに非常に大きな法律的効果、法律的な本質を持たしておったと理解しておるのです。今度の登記法の改正によって何ら法律的効果も持たないで、いわゆる土地台帳家屋台帳をただ一つにしたという、物的に帳簿一元化したというだけであって、何ら法律的の効果を伴っていないのである。そうしますと、従来わわれが考えておったとこれろの登記という法律上の制度に何ら法律的効果のない、ただ事実上権利客体表示するにすぎないというものが加わったのであって、登記制度性格に大きな変化を来たしたのであって、私どもはこの法律の改正ということに対して割り切った考えを持つことができない、非常な疑点がそこにはさまれておるというふうに考えておるのでありますが、これは法案を作る過程におきまして、何らかこの点についても法律上の論議が戦わされておったかどうかということについても御意見をお聞きしたい。
  69. 平賀健太

    ○平賀政府委員 ただいま仰せの点は、この立案の過程におきまして最も考慮いたしたところでございまして、従来の登記制度におきましては、単に権利関係の公示ということが目的であったのでございますが、この新しい登記制度のもとにおきましては、従来の権利関係の公示という役割は今まで通り持ちますと同時に、それに加えて従来台帳が果たしておりましたところの権利客体であります不動産の状況を明確にする、不動産を特定するという機能をも登記簿だけで果たさせようということにしたわけであります。従来の権利関係の公示という以外に、権利客体であります不動産を特定する、不動産の状況を明確にするという新しい機能を加えたことになるわけでございます。
  70. 田中幾三郎

    田中(幾)委員 この登記法ができたというのは、この主たる民法があったからできたのでございましょう。百七十七条には、御承知のように、「不動産二関スル物権ノ得喪及ヒ変更登記法ノ定ムル所二従ヒ其登記ヲ為スニ非サレハ之ヲ以テ第三者二対抗スルコトヲ得ス」、この登記法のできたのは、民法にこういう根本の法則があって、権利の得喪、変更を対外的に効力を持たせるための登記法であって、これによって生まれたのでありますから、それを今度の登記法の改正によって、民法に何ら効果の発生しない表題部登記を認めたというところに、私どもはこの登記という制度を本質的にくずしていったんじゃないかという大きな疑問があるわけです。この民法の百七十七条があってこの登記法ができたのですから、民法の百七十七条に何らの規定のないこの登記制度というものを新しく設けたということは、単にこれは事務一元化であるということだけでは、私はこういう大きな法律の根本原則をくつがえすことができないと思う。この点はいかがでございますか。
  71. 平賀健太

    ○平賀政府委員 従来の登記簿にも、やはり不動産を特定してそこに表示するための表題部というものがあったのでございますが、これは申請主義によっておりまして、必ずしも表題部記載というものは現況に即応してない、現況に即応しているのは台帳という建前であったわけであります。でありますから、登記申請をする際に、従来の不動産登記簿表題部不動産現況に合ってなければ、それをまず台帳に合わせるというよけいな手続をやっておったわけであります。でありますから、現行制度のもとにおきましては、不動産表示としては、台帳における表示と、不動産登記簿表題部における表示という二本建になっておりまして、これが不合理でありますので、一本で十分だということで、台帳をそっくりそのまま持ってきてこの表題部にしたわけでございまして、これがすなわち一般国民にとりましても、また登記所の方にとりましても、事務の簡素化になるということで、この一元化を実施いたすわけであります。
  72. 田中幾三郎

    田中(幾)委員 旧来の帳簿にも表題部はむろんありました。この表題部はその実地に合ってないからということによって、これを実際のものに合わせようというのは、それを望むのはむしろ所有者です。所有者の方が不便を感ずるのであって、政府は別にちっとも不便を感じないはずです。課税台帳というものは、これは正確にしなければならないものですが、登記自由主義の建前からいきますならば、売買をしても、対抗力をみずから持たせずに、登記しないのはそれは自由ですから、その登記をする客体が実際と合っているかいないかということは、取引をする、もしくは所有しておる人の感ずる便、不便であるのでありまして、別に合わないからといって政府の不便でも何でもないと私は思う。今まであったところの表題部を、特に合わないからといって政府の職権でこれをやったりすることは、やはり登記自由の原則、所有権自由の原則というものに反しはしないかということです。別に取り立てて一つ表題部を、特に今の登記法からいえばちぐはぐになるようなこういう帳簿をくっつけて一つ帳簿にする必要がどこかにあるのだろうかという疑問が起こるわけであります。そういうことでありますならば、やはり旧法で十分に間に合ったのじゃないかというふうに考えますが、この点はどうでしょうか。
  73. 平賀健太

    ○平賀政府委員 ただいまちぐはぐになっておるというお言葉がございましたが、むしろ現行制度がちぐはぐになっておるのでありまして、台帳面における不動産表示不動産登記簿表題部における不動産表示、これを申請があるまでほっておいてよろしいということで、同一の不動産について二つの異なった表示がなされてそのままほってあるということは、それこそ私はちぐはぐではないかと思うのであります。  それからなお、政府が職権でもって不動産現況を明らかにするということは、ただ単に徴税のためだけではなくて、土地改良であるとか、区画整理であるとか、要するに国土建設、国土総合開発という見地からも、一体いかなる不動産があるのか、何ぼの不動産があるのか、建物にしましても、たとえば住宅政策というような見地から考えましても、土地建物現況がいかになっておるかということは、国全体の立場、全国民のために、ひとり徴税上のためのみならず、明らかにしておく必要があるのでございます。そういう見地から現在の台帳制度があるのでございます。その台帳の機能を登記簿表題部で果たさせよう、そうすれば先ほど申しましたような台帳登記簿のちぐはぐということもなくなりますし、また登記申請をしようとする人も、もし登記簿表題部表示台帳表示と合っておらなければ、まずその表示を改めなければ権利登記ができないという不便もなくなるわけでありまして、すべてのためにこの一元化ということが登記制度を合理化するゆえんであるということで、この一元化をすることに踏み切った次第でございます。
  74. 田中幾三郎

    田中(幾)委員 登記一元化々々々と申しますけれども、これは登記事務一元化で、登記制度一元化ではないんですよ。それならばお伺いしますが、この表題部登記をそのままにして所有権の設定登記、いわゆる保存登記をしないという場合があると思います。いわゆる表題部台帳だけが残って、所有権保存登記権利の設定をしない、いわゆる本来の登記をしない、こういう場合があり得る。その場合に、同じ表題部登記で、しかも所有者名義を掲げている場合、外部に対する対抗力を持ちますかどうか。
  75. 平賀健太

    ○平賀政府委員 民法に規定している不動産物件の対抗力は、表題部記載にはないわけであります。
  76. 田中幾三郎

    田中(幾)委員 同じ登記という言葉を使って、しかも登記簿記載されておって、表題部だけでの登記では対抗力がない、公信力というか、公示力といいますか、それがないということは、なぜそういう疑問が起こるかというと、いわゆる登記一元化ということをやったから疑問が起こるわけですよ。離しておけば登記じゃないのですから、何ら法律的効果のないところのいわゆる表題部登記という設定をなぜ特に設ける必要があったかということ。何ら法律的効果のない、ただ事務の簡素化ということだけでこの一元化ということをやっておる。しかも登記という制度一つでありますから、登記のうちに対抗力を持つ登記と対抗力を持たないところの登記があるというところに、私は混乱を招きはしないかと思う。いわゆる登記制度の本質的な変化である。大きな登記制度の変化です。そういうふうですから、何ら外部に対抗力を持たないならば、登記一元化ということは事務一元化であって、こんな登記をさせておく必要はないでしょう。今の通りの台帳二つでいいじゃないですか。かように思うのですが、どうですか。
  77. 平賀健太

    ○平賀政府委員 対抗力がないと申しましたのは、民法で規定しておるところの不動産物件の変動を第三者に対抗するところの手段としての対抗力がないという意味でありまして、全然法律的意義がないという趣旨では毛頭ございません。でありますから、表題部表示所有者として表示されておるということは、所有権の証明には使えます。決して何ら法律的効力がないということではないのでございます。なお、所有権登記をします場合に、表題部所有者として表示されておれば、当然にその人は何らの証明を要しないで、所有権保存登記申請をする適格者だということに、不動産登記法自体でもそういう効果を与えておるわけでございます。
  78. 田中幾三郎

    田中(幾)委員 それでは、先ほど伺いました表題部に甲と表示してあったところが、実はそれは乙の所有である。表題部にもそうしてある。それから登記の方にも甲として登記されておる。ところが実はそれは乙のものであったということで、乙は所有権抹消の訴えを起こして、所有権表示の方だけが乙に変わったという場合には、登記はこれは一元化といっても登記の本質の一元化ではない、法律上の効果は別々です。ですから、所有権登記は乙に登記をするという裁判判決が出ても、表題部の方の甲の名義は当然には変わらないわけでしょう。判決を求める一定の申し立てに、何々の所有権抹消すべしという判決が出たら、表題部には及ばぬことは当然だと私は思う。そこで判決の効果として、所有権登記の方の名義は乙に変わったけれども、表題部には依然として甲の名義登記になっておる結果に私はなると思うのですが、その点はいかがでしょうか。
  79. 平賀健太

    ○平賀政府委員 ただいまのお話の例でありますと、表題部所有者は甲と記載してあって、その後甲が所有権登記をした場合だろうと思います。従って、登記の方には所有者は甲として記載されておるわけであります。その場合に、甲区の所有者所有権登記をされますと、表題部所有者表示は消す建前になっております。表示は消されてしまうわけであります。
  80. 田中幾三郎

    田中(幾)委員 それは当然に判決を受けるのですか、やはり抹消申請でもしなければならぬのですか。
  81. 平賀健太

    ○平賀政府委員 所有権登記申請があって、所有者登記した場合に、表題部職権で消す建前になっております。
  82. 鍛冶良作

    鍛冶委員 関連して——登記官吏はやらなければならぬ義務があるのですか。
  83. 平賀健太

    ○平賀政府委員 この案の第百三条でございますが、「所有権登記ヲ為シタルトキハ登記用紙中表題部記載シタル所有者表示ヲ朱抹スルコトヲ要ス」という規定を置いておるわけであります。
  84. 鍛冶良作

    鍛冶委員 ここに参考として私らのところに来ているのを見ますと、表題部には、所有者千代田区神田神保町五十一番地田中一郎となっておる。こっちにくると甲区の方で、最初に、所有者田中一郎、右登記する。その次に所有権移転登記、千代田区神田神保町六十六番地山田正雄、右登記す、こうある。山田正雄になった場合には、登記官吏はこれを山田正雄にしなければならぬ義務があるわけですね。
  85. 平賀健太

    ○平賀政府委員 所有権登記がされてしまいますと、登記所有者として表示されておるものが所有者になりまして、もう表題部の方の所有者表示は消しっぱなしで、その後何にも変更しない、所有権登記があるまでの暫定的な表示でございます。
  86. 鍛冶良作

    鍛冶委員 そうすると、この赤い線を引いてあるのは消したしるしですか。まん中に引けばいいのに、横に引いてあるから……。そういう意味ですね。
  87. 平賀健太

    ○平賀政府委員 そういう意味です。
  88. 田中幾三郎

    田中(幾)委員 表題部登記というものは、何ら効果のないことなんですね。権威のないものなんですね。
  89. 平賀健太

    ○平賀政府委員 第三者対抗力は所有者記載ではないわけであります。しかし所有権の証明に使ったり、あるいは先ほども申し上げましたように、所有権保存登記をする場合には、表題部所有者として表示されておるものは、当然に保存登記申請の適格者である、こういう効果があるわけでございます。
  90. 田中幾三郎

    田中(幾)委員 この登記というものは、先ほど申しましたように、対抗力を持った、非常に権威のある法律的効果を生むべきものなんですから、いわば表題部登記というものは、家屋なり土地なりの一種の戸籍みたいなものですね。だからそれを登記法の中に入れて、これも一つ登記なんだと持っていくところに私は従来の登記制度というものの本質が変わっていくのじゃないか、大きな変化だと思うので、特に表題部登記登記法上のいわゆる登記というようなワクに入れずに、もう少し事務的に何か方法がなかったかということを疑問に思っておるわけです。
  91. 平賀健太

    ○平賀政府委員 従来の登記制度性格を固執いたしまして、これが絶対のものである、これで動かすことはいけないという考え方に立てばそうでございますけれども、決してそういうものじゃないのでございまして、よい制度を作るためには、従来の性格に新たな性格を加えるということもこれはもちろん可能なことで、それがよりよいとなればそうすることが国全体、あるいは一般国民のためにも、すべてのためにいいことであろうと思うのでございます。そういう意味で確かに登記制度の性質が変わったわけでございます。しかし、これは登記制度の合理化のために非常にいいことであるとわれわれは考えておる次第でございます。
  92. 田中幾三郎

    田中(幾)委員 私は、先ほどから申し上げております通り、表題部が今までもあるのですから、だからこれを大げさにして、単に事実と実態とを合わせるということだけで、こういう大きな作業を起こすということは、むしろ事務の繁雑になりはしませんか。
  93. 平賀健太

    ○平賀政府委員 台帳表示と従来の登記簿表題部表示と二本立になっております。それがちぐはぐになっておる。ちぐはぐになっておるものを一本にしてこういうことをなくすということで、事務が繁雑化するどころか簡素化、合理化されるというのが真相であると私どもは考えております。
  94. 鍛冶良作

    鍛冶委員 先ほどの議論は考え方の相違ですからいろいろあるでしょうが、保存登記の場合を一つあげますが、今までは保存登記をしなければならぬ義務は、国民にあったのですか、どうですか。
  95. 平賀健太

    ○平賀政府委員 従来はございません。この改正法のもとでもございません。
  96. 鍛冶良作

    鍛冶委員 それは義務があるでしょう、怠れば罰則まであるのだから。かたい罰則が……。それでは何ですか、今の罰則があるのは登記じゃない表示だけだからと、こういう意味ですか。
  97. 平賀健太

    ○平賀政府委員 そういう意味でございます。その点は台帳と同じことでございます。
  98. 鍛冶良作

    鍛冶委員 それにいたしましても、登記の一部になったのですから、登記の一部の表題部義務を生じたとすれば、登記義務があると言って差しつかえがないと思います。移転のところの表示の何はないかもしれないが、そこで問題が起こるのです。旧来は土地台帳法から義務はあったかしれぬが、先ほど参考人も言われておる通り、私らもそうしておりましたが、家を建てても保存登記をほとんどしておりません。そうかと言って、それでは土地台帳申告もしておりません。それでどうもあの罰則を適用されて罰金を課せられたということもないのです。ないのに、今この法律ができたがために、国民は新しい義務を課せられて、励行されるということになると、どうも先ほどから議論されておるように、こんなに土地台帳登記の方に持ってきたばかりにめんどうになった、これはどうも前の方がよかった、こういう観念が起こりはせぬかと思うが、いかがですか。
  99. 平賀健太

    ○平賀政府委員 罰則の関係は、今の台帳と全く同じことでございまして、台帳法でもやはり申告義務は課されておりまして、それを懈怠すればあやまちを負うということになっておるわけでございます。それをそのままこちらにも移しただけでありまして、実質はちっとも変わっていないのでございます。
  100. 鍛冶良作

    鍛冶委員 それともう一つ、先ほど議論が出ましたが、今までのやり方に対して、家の場合を申しますと、私だってこの間まで神田におったのですが、建ててから三十年たちますが、そのままになって、この間それを売るときに、仕方がないから登記して売った。そこでどうしておるかというと、区役所は税金をとらなければなりませんから、家を建ててでき上る時分にちゃんと区役所でいつも回って歩く者がおるらしい。それが来て調べてみて、それで大体この家はこんなものですね、念を押すときもあるそうですが、わかっておれば新築届けというものが出ておりますから、その新築届けが出ておるのを写して、現場へ来てみて、同じだということになるとそれで登記をしておったのです。これはもう徴税官庁において税金をとらなければならぬから、一生懸命にこれをやっておったので、ほとんど漏れなくそれだけはやっておると思う。今までの惰性からいたしまして、この法律ができましても、国民の大部分は今までのようにそれをやるのではないか。その場合に一々罰金を課したら大混乱が起こるし、そうかと言って捨てておいてはいかぬから、今までの区役所がやっておったような、そういうみずから自発的に調査をして、表示だけをお調べになるつもりですか。それとも当事者がやらなんだら仕方がない、そのままにしておくおつもりですか。
  101. 平賀健太

    ○平賀政府委員 法律建前は、現行法におきましても、今鍛冶さんの仰せられるような、そういう実例のようなことでよろしいということになっていないわけであります。現実の問題としては、登記所の人手の問題その他もございまして、現状から急に変えて、新法施行と同時に罰則もびしびしとやるということに相なるかどうか、それはかなり疑問であると思うのでございます。いずれにしましても、この法律が改正になったからというので、急に方針を変更して、これは一般的な問題としてでございますが、今までのやり方を一挙に改めるということは、これは法律の運用としても必ずしも当を得たものではなかろう。やはりその意味で、前に十分一般国民に政府の趣旨が理解されることは必要と考えるのでございまして、私どもとしましても、改正法が施行になったからといって、今までの態度を急激に変更することがよりいいとは決して考えてないわけでございます。
  102. 鍛冶良作

    鍛冶委員 それは土地台帳法がある以上は、その台帳に載せることが建前だから載せたい。そこで当事者に義務を負わせてやるということも考えられますけれども、私は今までの土地台帳法を見ますと、これは法律をはっきり見ましても、地方税法の中に入っておる、これは全く税法の一部として入っております。そこで何といっても税金建前から見ますと、載っておらなければ脱税ということになりますから、そこで脱税させないということで、載せろ、そして税金を納めろ、こういうことから罰則ができたものだろうと思うのです。ところがどうも登記の方面ではそれほど必要もないのに、それと同じような罰則を課せられるということになると、少しどうも建前が違うような気がするが、この点はあなたどうですか。
  103. 平賀健太

    ○平賀政府委員 以前は地租法あるいは家屋税法の中に台帳の規定がしてあったわけでございます。従って、これは徴税ということが現実の問題としては一番主たる目的であったことは、疑う余地がないのでございます。昭和二十五年にこの台帳登記所に移管になりました際には、徴税にももちろん基礎資料にはなりますけれども、その他やはり国の施策を立てます上において、不動産の状況というものを明確にしておく、それから同時に私法上の権利関係客体であるという関係から、私法関係の安定をはかる安全をはかるという見地からも、やはり権利客体である不動産の状況ということを明確にしておくことが国全体のために必要であるわけでございまして、そのためにはやはり所有者義務を課して協力してもらうということは、当然になってくると思うのでございます。この点あたかも戸籍なんかにおきまして、出生とか死亡届けの義務を課して、その懈怠に対して罰則を課しておる、税金とは直接関係がございませんけれども、人の出生、死亡なんかについても、届けの義務を課して、国民というものを把握しておくということが国家の存立の第一の基礎だということで戸籍法の規定があるのと精神は同じことであろうと考えるのでございます。
  104. 鍛冶良作

    鍛冶委員 これは、これ以上は議論になりますが、義務まではいいのですけれども、罰則を課するというほどの——戸籍とはだいぶ違う。ことに問題は、さっきも触れましたが、百五十九条の二を見ますと、八十一条の八を受けてきておりますね。これは滅失の場合ですが、これも今の議論からいうと、滅失したといって登記するのはいいでしょう、みずからこれをやった方が税金が安くなるのでしょう。しかし、それを怠ったからといって、これは前の台帳法では税金関係だけですが、これまでにこういう罰則を適用されるということは、どうも常識上合わぬような気がするが、どうですか。
  105. 平賀健太

    ○平賀政府委員 やはり不動産現況を明確にするうという見地からいいますと、不動産がなくなったという場合は、新たに不動産ができたという場合と同じことで、当事者に協力義務を課しまして、これを登記簿に反映しておくということが必要でございまして、滅失の場合だけ義務を課してはいけない、あるいは義務は課しても罰則はかけてはいけないということにはならぬだろうと思うのであります。あたかも先ほどの御論法をもってしますと、人が死んだ場合に悲しんでおるのに、届出の義務を課するのは酷じゃないかというのと同じ議論ではなかろうかという気がするのでございます。
  106. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 この程度で一たん休憩いたしまして、午後二時から再開いたすことにいたします。     午後零時五十一分休憩      ————◇—————     午後二時十九分開議
  107. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を継続いたします。質疑の通告がありますから、順次これを許します。井伊誠一君。
  108. 井伊誠一

    ○井伊委員 この不動産登記法の改正を非常に急いでおられるようでありますが、それを特に急がなければならないという理由は何でありますか。
  109. 平賀健太

    ○平賀政府委員 今回の不動産登記法の改正は、実は昭和二十五年に台帳登記所に移管になりました当初から考えておったことでございまして、早晩登記制度を合理化し、改善するためには、台帳登記簿一元化がぜひとも必要であるということで、従来研究をいたしてきたわけでございます。なお、今回特にこの法律案を提出するに至りましたのは、実は計量法の施行法の規定によりまして、昭和四十一年の四月から、登記所所管しております登記簿台帳を、現在の尺貫法をメートル法に書きかえるということになっております関係で、メートル法の土地建物に対する適用が始まります前にぜひとも一元化を完了いたしたいということで、この際改正案を出すことになった次第でございます。
  110. 井伊誠一

    ○井伊委員 この改正をやりますその議案の内容については後ほどお尋ねしたいと思うのですが、これをやろうというには、一番大きい問題は、台帳の書きかえあるいはそれの切りかえの作業だと思います。このことについては、今の四十一年のメートル法実施に合わせるまでの間に、どういうふうにしてこれを完遂するかという見通し、事業のやり方、そういうものについてお伺いしたい。
  111. 平賀健太

    ○平賀政府委員 その一元化の実施につきましては、現在の登記所の能力、予算の関係などを考慮いたしまして、登記所ごとに逐次実施をいたす考えでございます。具体的に実施の仕方を申し上げますと、まず土地台帳及び家屋台帳に基づきまして、不動産表示を、この一元化後の登記簿表題部となるべき新用紙に移しまして、その翌年度においてこの新用紙を登記簿の所要の個所に編綴をしていく、そしてこれを新しい登記簿表題部にする、こういうことを考えておるわけでございます。
  112. 井伊誠一

    ○井伊委員 その実施というものは、これからやろうということでありますか。今の不動産登記法の改正をやったあとでこれに立ちかわるわけですか。
  113. 平賀健太

    ○平賀政府委員 現在も、一部の登記所におきましては、従来の台帳に基づきまして新用紙に移しかえるという作業だけはすでにやっておるわけでございます。ごくわずかでございますが、一部においてやっておるわけでございます。
  114. 井伊誠一

    ○井伊委員 その作業、つまり台帳の移記ができたならば、一年後においてそれを差しかえる、そうしてそれを直ちに使うという意味でありますか。
  115. 平賀健太

    ○平賀政府委員 さようでございます。でありますから、昭和三十四年度中に移しかえをやりましたところは、三十五年度におきまして登記簿の中にその新用紙に移記したものをはさみまして、それで一元化ができるわけであります。その点は今度の不動産登記法で明らかにいたしておるわけであります。
  116. 井伊誠一

    ○井伊委員 そうすると、現に一部においては移記の作業というものは行なわれておる、けれども、現在においてはまだ使っておるというわけじゃないのですね。
  117. 平賀健太

    ○平賀政府委員 現にやっておりますのは、従来の古い台帳に基づきまして新しく台帳を書きかえたという建前でやっておるわけでございまして、台帳としては現在はそれを利用しておるわけでございます。
  118. 井伊誠一

    ○井伊委員 そうすると、この書きかえは省令か何かでもってやっておるわけですね。
  119. 平賀健太

    ○平賀政府委員 その点は、今回の法律案の附則のところに一元化の骨子だけを規定いたしまして、細目は法務省令で定めるということにいたしておるわけでございます。
  120. 井伊誠一

    ○井伊委員 そうすると、今のところ、現在の台帳のつもりで、実際は書きかえをした新形式をそのまま現行台帳簿によっての運営としてこれを使っておる、こういうわけですね。
  121. 平賀健太

    ○平賀政府委員 さようでございます。
  122. 井伊誠一

    ○井伊委員 それを今度はどういうふうにやられるわけですか。今度この不動産登記法の改正法ができ上がれば、それをこの法律に基づいてやっていくということになるのですね。
  123. 平賀健太

    ○平賀政府委員 今まですでに書きかえましたのは、現在のところはまだ台帳でございます。それを三十五年度におきまして登記簿の中にはさみ込むわけであります。その登記所の作業が進みますと、法務大臣がその登記所を指定いたすわけであります。指定したときに一元化が完了するわけでございます。それから以後は、その登記所につきましては新法によって事を処理していくということになるわけでございます。
  124. 井伊誠一

    ○井伊委員 その移記の作業は、大体何年くらいで終わるつもりでおられるのですか。
  125. 平賀健太

    ○平賀政府委員 三十九年度までに終わる予定であります。
  126. 井伊誠一

    ○井伊委員 移記が終わってからその後のほんとうの表題部としての作業は、あとは何もないわけですか。登記簿との関係はどういうふうにしてつなげるわけですか。
  127. 平賀健太

    ○平賀政府委員 移記を完了した、その移記した用紙を登記簿の中にはさみ込んでいく作業を、私の方は便宜上編綴作業といっておりますが、編綴作業をやるわけであります。編綴して初めて表題部として登記簿の一部になってくるわけでございます。
  128. 井伊誠一

    ○井伊委員 編綴作業というのは、そうすると先に早くできてしまったものから一年後にみなやっていくのですか。それとも三十九年のときに全部済んでしまってから編綴をやるわけですか。
  129. 平賀健太

    ○平賀政府委員 これは全国一斉にやるのではございませんで、移記が早く済んだところから逐次やっていくことになるわけでございます。
  130. 井伊誠一

    ○井伊委員 そうしますと、編綴の作業というものは、大体移記作業が三十九年度に終わるときにはほとんど同時に終わるようなものでしょうか。その後なお編綴の仕事として残るのでしょうか。
  131. 平賀健太

    ○平賀政府委員 一番最後の年に移記作業をやったところは、その翌年に編綴をやるという建前になりますので、一部の登記所におきましては、昭和三十九年度におきまして編綴作業をやるというところも出てくるわけでございます。
  132. 井伊誠一

    ○井伊委員 すでにもう移記事業は事実上始まっておるわけですね。これはいずれあとになれば不動産登記法の改正に基づいて有効なものになりましょうが、今のところではとにかく台帳一つ仕事としてやっておるわけですね。そうしますと、三十四年度までの間では全体のどのくらいが済んでおるのでありますか。
  133. 平賀健太

    ○平賀政府委員 けさほど資料をお出しいたしましたが、三十四年度はまだ全部完了いたしておりませんが、土地が約七百十二万筆、建物が百五万戸合わせて八百十七万筆個ということに相なるわけでございます。
  134. 井伊誠一

    ○井伊委員 そうしますと、これは全体の土地建物それぞれのどのくらいになりますか。
  135. 平賀健太

    ○平賀政府委員 三・七二%ということに相なります。
  136. 井伊誠一

    ○井伊委員 これらの成績でこれから後三十五、六、七、八、九の五年ではどうでございますか。この率で行ったのではなかなか終わりそうもないようですが……。
  137. 平賀健太

    ○平賀政府委員 先ほど申し上げましたように、昭和四十一年の四月一日からメートル法が完全施行ということに相なりますので、私どもとしましては、ぜひそれまでに完了いたしたいと考えている次第でございます。
  138. 井伊誠一

    ○井伊委員 三十四年度の成績をお聞きしたわけですが、これはこういう意味でございますか、三十四年度までの総成績がこれでございますか。
  139. 平賀健太

    ○平賀政府委員 これは三十四年度に実施いたします分量でございます。
  140. 井伊誠一

    ○井伊委員 これは三十四年度だけの一年分ですか。
  141. 平賀健太

    ○平賀政府委員 そうでございます。
  142. 井伊誠一

    ○井伊委員 それ以前のものはないのですか。
  143. 平賀健太

    ○平賀政府委員 ございません。
  144. 井伊誠一

    ○井伊委員 これからのあれで、予算にもよりましょうけれども、こんなことでは五年かかってもちょっとできるような成績じゃないですが、その辺はどうでございますか。
  145. 平賀健太

    ○平賀政府委員 三十四年度はわずかに三・七二%でございますが、これは私どももそうでございましたが、特に大蔵省の方におきましては、とにかく総額にしまして膨大な予算を要する大事業であるので、三十四年度は一部についてテストの意味をもって実施したらどうか、その実績を見た上で三十五年度以降本格的に予算も組み、事業を始めることにしてはどうかという意見でございまして、私どもそれももっともだと思いましたので、三十四年度におきましては三・七二%を実施いたすことにした次第でございます。
  146. 井伊誠一

    ○井伊委員 この三十四年度の全体の仕事の三・七二%という実績、これに対しましてはどうでしょうか、その仕事に当たるところの職員登記官、そういう人たちの仕事は、現在の常務のほかにこういうものが加わってくると思われるのですが、これだけのものは、どういうふうに仕事の上ではされたのでありましょうか。楽々と余裕をもってこういうことができたものでありますか。その辺のところはどうでございましょうか。
  147. 平賀健太

    ○平賀政府委員 この資料にもございますように、三・七二%の処理につきましては、執務時間中の処理、超過勤務による処理、事務応援による処理、臨時職員による処理、こういう方法によりまして実施いたして参りまして、順調に作業が進んでおる状況であります。
  148. 井伊誠一

    ○井伊委員 このときの処理にあたっては、現場の職員だけでこの仕事をしたものでありますか、あるいは臨時の職員を入れてのことでありますか。
  149. 平賀健太

    ○平賀政府委員 三十四年度におきましては、ここにもございますように、賃金職員、臨時職員を入れまして約五百万筆個の処理をいたしておるわけでございます。全体の七五%を占めるわけでございます。
  150. 井伊誠一

    ○井伊委員 それでまあテストとしてはそういう成績を上げられたとしても、これは実際この通りいけるかどうか。ことに来年度からもしこの実績に従って予算もふえてくる、大がかりな仕事をやっていくのだ、そういうときになりましたならば、これは当然にこの程度では済まされない。三・七二%をあげるというだけのことじゃないのです。そうしてみると、その実際というものが、ことに三十五年度になると、そのものはもっと見通しのついたものでないとわからぬと思うのでありますが、すべてはこのような実績でいけるというお考えでありましょうか。というのは、まあ仕事の分量、働き、そういうものについて過剰を来たすように想像されるのです。どうも明確に人員を増すとか、あるいは仕事の能率が上がるような設備というものが、現在のところ、私は全部とは言わないが、登記所の庁舎の設備などを見ると、そういうことはどうもできていない。どこよりも一番窮屈な、非常に暗い非衛生的なところで仕事をしておる。大体登記所の内部などを見ると、台帳などは事務室にあふれて廊下に出ておったり、はしご段に積み重ねてあるというようなことで、台帳そのものの保存などに対しても私たちは非常に心配をしておるわけです。また一面からいうと、そういう環境で仕事をしておるところにさらに仕事を持ち込んでやることが、はたして労働過重にならないか。この点になりますと、私はむしろ他の官庁の職員なんかに比べれば非常な高い能率を上げておる、そう思うときに、これ以上ああいう環境に置いて、この仕事をさせること、これは大へんな分量の仕事だと思う。それをやることが労働過重にならないような見通しが計算上つきますか。
  151. 平賀健太

    ○平賀政府委員 昭和三十五年度の予算におきましては、この三十四年度の実績を基礎にいたしまして要求もし、大蔵省の査定もなされておりますので、なるほど事務量はふえるわけでございますが、実施庁の数もふえ、従事職員もふえ、賃金職員、いわゆる臨時職員もたくさん採用することに相なるわけでございまして、仰せのような職員に無理をかけるという結果には決してならないと私どもは確信いたしております。ただ登記所現状というのは、ただいま仰せのように庁舎なんかが非常にひどいところがございまして、まことに遺憾な状態でございますが、そういう庁舎の状況なんかもよく勘案いたしまして、一元化の実施庁の選択には十分意を用いたいと思っておる次第でございます。なお庁舎の現状は仰せのようなずいぶんひどいところもございますので、これはまた一元化とは別途に、それの整備ということにつきまして私どももさらに今後努力し、また御援助をいただきたいと念願いたしておる次第でございます。
  152. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 この際私の方からお尋ねしておきますが、先ほど来の質疑の要点は、今もお話が出ましたように、この作業を実施することになるとした場合に、いわゆる労働過重になるおそれがありはしないかというところが問題だと思います。そこで、できておるか、できておりませんかわかりませんが、大体先ほどからお答えのように、先の時限がきまっておるのにこの仕事をしよう、こういうわけですから、三十五年度から三十九年度まで五カ年、先ほどのパーセンテージから見て大体年々何パーセントくらいの実績を上げるのか、それについてはどういう人員あるいは予算の計画を持っておるのか、あるいは立てるのか、こういう点はどうですか、ありましたら一つこの際まとめてお話を願いたい。
  153. 平賀健太

    ○平賀政府委員 実は、三十五年度におきましては、私どもの希望といたしましては、五年間にずっと割り振りまして、全体の二〇%を実施できるような予算をいただきたいのが、法務省の当初の希望であったのでございます。ところが、それは昨年の災害の跡始末その他で財政支出を要する事項が非常に多いということで、三十五年度は一〇%にしてくれという大蔵省の方針でございまして、三十五年度は一〇%分の予算が入ったわけでございます。従いまして、三十六年度以降におきまして当初の計画通り実施いたすとしますと、約二五%くらいに見合う予算が入ってくれば、三十九年度までに一元化を完了することができることに相なるわけでございます。
  154. 井伊誠一

    ○井伊委員 大体法務局としてはこの実情をおわかりになっておると思うのですが、実際のところ、各登記所全部ということではないですけれども、非常に仕事が集まっておって、実際その職員の手だけでは足りないというようなところがずいぶんあると思う。余っているところなんというのはないんじゃないかと私は大体見ておるわけです。それに土地改良などの耕地整理も行なわれておる。その行なわれたものの登記関係を処理するために、わざわさ土地改良区が登記所のわきに建物を建てて、そうして出てきておる。出てきておるのみならず、その専門にかかっておるところの者が、その庁の職員の数よりも多いというような実情を示しておる。あまりこういうことは好ましくないことですけれども、手が足りない、場所がないという関係からいえば、やはりそれらの人の、他の力を借りて、そうして登記事務をやっとしているというような、そんなところさえある。こういうところに、この大きな制度の変わりにこの仕事をやらせるということのためには、ちょっとやそっとのことではならない。私は、あるところに行ったならば、すぐ限界に達してしまって、混乱が起きてくると思うのです。臨時の人を入れるといったって、臨時の人を入れる場所が一体ありましょうか。そう言うと、臨時の数は多い、しかし方々へ散らかすといえば少なくなるかもしれない。少なくなるというのだったら、能率が上がるということにはならない。ほんとうは多数の人を入れるのだということになれば、場所はどうするのだというふうに、事務をとる場所さえないのです。大体登記所へ行ってみますと、町へ行って一体登記所はどこだというと、細小路の奥の方に隠れているような場所が多いようであります。社会からの認識もそんなところにあるのです。ただしかし、国民権利というものを証明する一つの機関として、国民は非常に関心は持っておりますけれども、実際はそんなふうな関係です。これは借家をしておるのが全体の六、七割あるんじゃないですか。それはもう実にみじめな状況で、そういうところは市や町の方の援助を受けておるから、なかなか思うように手もつけられないというようなところがある。ほんとうにもういて事務をとるというだけが精一ぱいになっておるのです。それを今度本格にやるんだったら、こんなことで金だけふやしても、人員だけふやしても、それでは追いつくまいと思うのです。これはどういうふうにしてやるのか。そうすると、自然事務の廃合というようなことで、またそういうようなふうにやられるのじゃないでしょうか。やはりそうでなく、これはその場その場でもってあまり職を動かすというようなことでなしにやられるおつもりですか、それともやはり都合によっては配置転換のようなことをあわせてやりながらやられるのでしょうか、そのところの見通しはほんとうについておるのでしょうか。
  155. 平賀健太

    ○平賀政府委員 現在登記所で把握しておりますところの土地の総数は、約二億筆でございます。それから建物が約二千万戸でございまして、昭和四十一年からメートル法の完全実施ということになりますと、二億二千万筆個の不動産につきまして、メートル法の書きかえをやらなければならぬわけであります。それが台帳登記簿二つになっておりますと、二へん手続をすることになるので、四億四千万筆個の不動産について書きかえをするという計算になるわけでございます。それを一元化いたしておきますと、その半分で済むわけでございますので、非常に膨大な事務量の開きが出てくるわけでございまして、法務省といたしましては、メートル法の完全実施までにぜひともこの一元化を完了いたしまして、事務を簡素化したい、こういう考えでおるわけであります。  登記所現状はただいまもお話がございましたように、全体の約三分の二が借り上げ庁舎でございます。その庁舎の現状もひどいところが少なくないのでございますが、こういう庁舎、施設、それから人員なんかが完全に整備された暁に一元化をやったらいいではないかということも一応考えられるのでございますが、私どもの理想として考えておりますような登記所に整備しますのは、相当先のことになるのでございます。それまでこの一元化を待つというわけにはいかぬと思うのでございます。この一元化も、要するに理想の登記所を実現するための一つの過程なのでございまして、庁舎、施設の整備と並行して一元化を進めていくべきだと考えておる次第でございます。  なお、昭和三十四年度に実施いたしました実績に徴しましても、現在の計画、予算の規模から見まして、御懸念のような特に負担過重になって動きがとれなくなる、そういう懸念は私どもは絶対ないと確信いたしておる次第でございます。
  156. 井伊誠一

    ○井伊委員 それですから、登記所の統廃合というのは三十五年度はやらないという御方針のようですね。それはどうでしょうかね。
  157. 平賀健太

    ○平賀政府委員 三十五年度予算におきましては、登記所職員の定員が若干増加を見ましたし、それから統廃合いたしますということは、何と申しましてもやはり地元にある程度の不便をかけますので、私どもとしましてこれは必ずしも好ましいことではないと思っておりましたのでございます。そういう関係で、三十五年度におきましては、地元の方で特に希望するというようなところがありますれば別でございますが、そうでなければ統合ということはやらない方針で、実施をいたさない方針でございます。
  158. 井伊誠一

    ○井伊委員 それは一応仕事の分量ということにもやはり関係をしてきますので、お尋ねするわけですが、そうすると三十六年度以後の統廃合というものは、今のところどうなるのかわからないというわけですね。
  159. 平賀健太

    ○平賀政府委員 私どもとしましては、三十五年度で増員を実現されましたし、今後私どもはさらに予算の獲得には努力いたしまして、できる限り統廃合しなくてはならぬというような状態にならないように努力いたしたい、そういうふうに考えております。
  160. 井伊誠一

    ○井伊委員 それはぜひそういうふうにしていただきたいと思います。またその御決心であるということで、前の仕事のことが大体めどがついてくるのじゃないか。こういうものをあれしませんというと、一面においては人員が増加するというけれども、分量とはたして科学的にマッチするようなふうにいくものやら、金がないからそれはしようがない、こういうふうに言って、それが結局仕事の上の過重になってくるというようなことのないことを私は希望するのであります。最近になって、人員と仕事の分量、二十七年度以後三十三年までの仕事の分量というものが、事件数が非常に増加しておるにかかわらず、人員の増加というものが非常に率が低いのじゃないか。二十七年度の人員を一〇〇とすれば、昭和三十二年度の人員は一〇三という指数で、三%の増です、事件数は一〇〇に対して三五一という指数が出ておる。こういうようなことになっておるのでありまして、この点はお認めになりますか。
  161. 平賀健太

    ○平賀政府委員 登記所の事件増と人員の関係は、ただいま井伊委員の仰せのような実情になっております関係で、私どもといたしましても、年々この窮状を打開しなくてはいけないというので、増員を要求し、その他施設の改善なんかにつきましても努力してきた次第でございます。
  162. 井伊誠一

    ○井伊委員 ついでに仕事関係でお尋ねをしておきたい。今度の仕事切りかえの作業をやるのに、一人庁あるいは二人庁といったような、そういうところでもその場でその切りかえ作業をするのでありますか、それは方法によっては別なところに持っていってやろうというお考えなのでありましょうか。
  163. 平賀健太

    ○平賀政府委員 その場でやる計画でございます。
  164. 井伊誠一

    ○井伊委員 一人庁は全国でどのくらいございますか。
  165. 平賀健太

    ○平賀政府委員 ただいま正確な数字を持ち合わせておりませんが、約百カ所前後くらいのように記憶いたしております。なお後ほど実数は調べましてお答え申し上げます
  166. 井伊誠一

    ○井伊委員 一人庁では大体その職員が住居しておるというので、そこに重要な書類の保管もしていなければならぬという関係か、一人庁の人たちは出張にしろ何にしろ出ることができないというような事情があるようでございますね。休日も日曜日も全部日直宿直というようなことをやる義務があるようでありますが、ああいうものにつきまして、さらにこういう仕事をされるのには、どういう工合にさせるおつもりかということです。それをお聞かせ願いたいと思います。
  167. 平賀健太

    ○平賀政府委員 一人庁におきましては、その職員、所長の執務時間中に余力があれば、その間にもやってもらいますし、それから若干の超過勤務、それから他庁からの事務応援、場合によっては賃金応援も入れるというようなことで処理いたしていくわけでございます。
  168. 井伊誠一

    ○井伊委員 ついでですから、そこのところを聞きたいのですが、その保管する場所、今の責任を果たす義務、そういうことを考えますと、これは最も悪い条件のところにおる人だと思うのです。それだからといって、一人庁は他の何人庁か多数の人のおられる割合よりも事務量が少ないのかといえば、そういうふうには考えられないのですね。大体は一人庁だから、扱うところの仕事が少ないというので、こういうふうになっておるとは思いますけれども、むしろそれよりは、できた当時の歴史にも相当よると考えられるのです。だから分量はむしろまちまちではないか。相当の仕事はここでやっておる、こう思うのですが、ここのところには相当義務が多い。これに対しての特別な手当というようなものは出ていませんか。この一人庁のそこに居住する職員に対しては特別なものはないのですか。
  169. 平賀健太

    ○平賀政府委員 一人庁に勤務しておる者に特別の手当というものはないわけでございます。ただ登記所は、一人庁、二人庁、三人庁——二人庁とか三人庁というのがかなり多いわけでございまして、四人庁以下のところには渡し切り費というようなものの支給が実はあるわけであります。その渡し切り費もこれは庁費にかわるものでございまして、特別の手当という筋合いのものではないのでございますけれども、渡し切り費というものは、四人以下の庁には交付される建前でございます。
  170. 井伊誠一

    ○井伊委員 大体三十三年度から職員の方に日直手当、宿直手当というものがつくようになっておるのですが、七人以下の庁の方にはそれがつかない。そういうふうな制度になっておりますか。
  171. 平賀健太

    ○平賀政府委員 そういうことはございません。
  172. 井伊誠一

    ○井伊委員 そうすると、宿直、日直の手当が全部つきますかどうか。
  173. 平賀健太

    ○平賀政府委員 四人以下の庁におきましては、出張所に居住室というのがついておりまして、所長がそこに家族とともに起居いたしておりますので、所長が同時に宿日直もするという建前になっております。ただそれにしましても、先ほどお話しのように、そういう居住室のついておるところにおきましては、所長が年がら年じゅう縛られてよそにも行けないということでは困りますので、若干宿日直の手当は配付いたしておりまして、所長もときには家族とともに旅行もできるというようなふうに実際の運用ではいたしておる次第でございます。
  174. 井伊誠一

    ○井伊委員 一人庁においては実際上は出張もできないし調査もできない。それから今の渡し切り費というあれになって、日直や宿直料というものは別に出ないで、その中に含まれておる。これはそこに泊っておるから、自分の生活と公の生活のちょっと区別ができないというところで渡し切り費であるのかと思いますけれども、しかし実際においては、やはりこういうところでは自分の生活は一人前やらなければならぬが、さればといって公の建物の中に、つまり光熱費に当たるようなものを何も使わないで、同じ建物の中で公私を区別するということはほとんど不可能なことではないでしょうか。それを渡し切り費というもので打ち切りにしてやりますが、大部分においては超過してしまって、それがみな自己の負担になっていくというのが実情じゃないかと思うのです。そういうことを聞くのであります。一人庁なんかで出張するということになったならば、だれか残していかなければならない。そうすると、やはり奥さんなどがそのあとで書類を預かっておくとか、何かの連絡をする程度のことはしておるというようなことですね。こういうものに対しては、警察官の駐在所の奥さんの方に何らかの支給をするような制度がありますね、それと非常に似ておるところがあると思うのですが、そういうような特別な支給方法をやることができないのですか、そういうお考えはありませんか。
  175. 平賀健太

    ○平賀政府委員 今のお話は非常にごもっともな点がございまして、たとえば出張所長の妻君を臨時雇にいたしまして、一元化の賃金職員ということで採用しまして手伝わせるというような方法はあると思います。
  176. 井伊誠一

    ○井伊委員 それでは、さらにこの台帳の切りかえ作業ができていくところから逐次それを表題の方は差し込みをして、これを使っていくというようなことになりますが、ほんとうにこれが完成をいたしまして、その後の台帳、それからあわせて登記簿、こういうものが編綴をされるということになりました後の仕事というものは、これは簡易になりましょうか。他の方の応用の面には利便になるということはわかりますが、これを操作していく事務取り扱いということにしていったならば、これで仕事の分量はよほど少なくなるのでありますか。それとも増すというお考えでありますか。
  177. 平賀健太

    ○平賀政府委員 現在でありますと、登記申請が出ますと、登記所としましては、関係土地建物台帳登記簿を両方倉庫から出して参りまして、両方調査いたしまして、そうして調査が完了しますと、台帳登記簿の両方に記入手続をしなければならぬ場合が多いわけでございます。それが相当の事務量でございまして、登記簿台帳の出し入れだけでもこれは相当の事務量でございます。これが登記簿だけを出して登記簿だけを調べる。そうしてそれに記入をすればいいということになりますので、これはかなり登記所としても事務量が軽減される、負担が軽減されることに相なるわけけでございます。
  178. 井伊誠一

    ○井伊委員 そうすると、台帳の移記が終わりまして、それを差し込みをしていく。逐次その意味においては台帳が廃棄になっていくわけと思います。そうなると思うのですが、しかし、現行の台帳はその後保存するのはいつまででありますか。
  179. 平賀健太

    ○平賀政府委員 これはもう台帳が廃止になりまして、必要がございませんので、自由に廃棄できることに相なるわけであります。
  180. 井伊誠一

    ○井伊委員 そうしますと、この法律によって台帳は効力がなくなって廃棄になる、そういうふうになりましても、移記そのものについての正確さというものを保証するもの、旧台帳というものがすぐ廃棄になってしまったならば、これを証明するものが実際上はなくなると思うのです。誤りがあるかいなかを証明するものはなくなると思うのですが、それはそのまま逐次廃棄しても差しつかえないというお考えでありますか。
  181. 平賀健太

    ○平賀政府委員 これは、移記の過程におきまして十分照合をいたしまして、誤りなきを期しますと同時に、何と申しても不動産という現物があるわけでございますので、もし誤りがあるかどうかということは、現物と対照させて誤りがあれば正していくということに相なるわけであります。  それから旧台帳の保存の問題でございますが、これはもう効用をなくしたわけでございますので、自由に廃棄していい建前でございますが、私どもとしましては、しかしこれは登記所でてんでんばらばらに自由ということではなくて、ある一定期間の保存年限というものを置きまして、統一的に廃棄につきましては処理をいたしたい、そういうふうに考えております。
  182. 井伊誠一

    ○井伊委員 どうもやはり多少の懸念があります。前の方のものを一気に廃棄してしまうということをやりますなら、非常に困ることが私は起きると思います。現物があるのだからというのですけれども、現物の方で変化がきましたときも考えられますし、これが単に廃棄になるというだけでてんでんにするということは考えられない、してはならないというふうに思うのです。今のお考えで大体そういう方針のようですが、そういうふうになりますと、問題は、新らしいのは差しかえて現に使っておりますから、旧台帳をやはり何とか保存しなければならない、こういうふうになるので、場所的には相当大きくなるのではないか。保存するところのものがあり、それから新しく作ったところの表題は現に使う。そうすると、その場所が非常に大きく要るのではないか。それでは、書きかえ、書きかえしておる間に、書きかえでつつ込んでしまえば、あとのものはどうなるのか。やはり保存しなければならぬと私は考えております。また今のところ保存することになっていると思うのです。けれども現実は置き場所がなくて方々にはみ出しておるというような現状でありますから、この上さらに仕事をやったものはまた新しくできていく、そうして前のものは保存しなければならぬといったならば、一体今の登記所をどういうふうに建てるか、そういうことをやはり考えなければならぬと思います。これがみな結局は仕事の過重とか不健康な状態というものを築いてくると思う。その辺の調和はどうでございますか。そういうふうにすれば、やはり自然に予算をもって倉庫を作るとか何かしなければならぬというようなことも出てくるのではないか、そういうお考えはありますか。
  183. 平賀健太

    ○平賀政府委員 ただいまの御懸念はごもっともでございますが、一元化の作業は約二千百ございます登記所を全部一斉にやるわけじゃございませんので、三十四年度は、この資料にもございますように五十八庁でございまして、昭和三十五年度では約百五十庁について実施いたす予定でございます。庁舎、事務室、倉庫の現状なんかともにらみ合わせまして実施計画を立てますと同時に、それとは別途になお庁舎の新営あるいはひどいところの整備についても現に努力いたしておる次第でございます。そのために今の一元化が支障を来たすことのないように、私ども万全の用意をして実施いたしたいと考えておる次第でございます。
  184. 井伊誠一

    ○井伊委員 今度の改正案についての若干のお尋ねをしたいと思います。不動産表示に関する登記の方で申請義務を課すること、このことについては先ほど来参考人からの御意見もありましたし、他の議員からのお尋ねもあったのですが、所有者に対して申請義務を課した、さらにその末にはこれに対して罰則をもって処罰するというまでこれを強化しなければならぬということはどこからくるのか。どういうわけでこういうふうにされるのであるか。大体表示そのものが公信力というか、そういうものがないのに、特に自己に保存登記をするという気もない、そういうときには、この表題部のところはそのままのもので、別に公示力とか、そういうものがあるわけじゃない。こういうところにどうしても申請義務を課するという、その根本的な理由をお聞かせ願いたいと思います。
  185. 平賀健太

    ○平賀政府委員 所有者申請義務を課しておりますのは、現在の台帳制度のもとで所有者台帳申告義務が課せられておるのと同じ趣旨でございまして、国家としても不動産現況というものを正確に把握しておく必要があるということが根本であると思うのでございます。
  186. 井伊誠一

    ○井伊委員 それは国家において不動産現状を正確に把握しておきたいというのが根本の理由、こういうことでありますけれども、登記制度というものの中にどうしてもこれを入れなければならぬということが、登記の観念に対する一つの新しい強制の登記といったらいいか、そういう性質を帯びるもの、この改正法はどうもそういうふうになるようでありますが、観念としては、今度のお考えは、こういう登記制度の上に強制力を持たせる、そういうのが時代の、国家の要求なんだというので、これをこういうふうに作り変える、それでよろしいんだ、こういうお考えなんですか。
  187. 平賀健太

    ○平賀政府委員 不動産物権を登記する制度としての登記は、現行通り申請によってやるという建前でございますが、不動産現状を把握し、不動産を特定するという機能を登記制度自体で営ませるという点におきましては、従来の不動産登記制度に新しい権能が加わったものでございまして、私どもとしましては制度の進歩であると考えておる次第でございます。これでいいんだというよりも、こうする方がよりいいのである、そういう考え方でございます。
  188. 井伊誠一

    ○井伊委員 そういうお考えの結果、いよいよこれを強制する。そのお考えがこの罰則の規定を設けることになっている。罰則の場合は、まず現行法の四十四条に規定するところのものを百五十八条でもって——これは保証書のことでありますが、「確実ナル知識ヲ有セザルニ拘ラズ第四十四条ノ規定二依ル保証ヲ為シタル者ハ一年以下ノ懲役又ハ二十万円以下ノ罰金二処ス」、こういうふうに保証書を作るというのは、登記済証の滅失があった、そうしてそれが急ぐというときのあれですが、この「登記義務者ノ人違ナキコトヲ保証」というそのことのために、これを結局確実にするということのために、こういう重い刑罰を課する。「一年以下の懲役又ハ二十万円以下ノ罰金二処ス」、こういう考え方。そのほか、五十条の二項のところに、「登記官吏ハ前項ノ調査ヲ為ス場合ニ於テ必要アルトキハ」これからこれまでの間「土地若クハ建物ヲ検査シ又ハ」「所有者其他ノ関係人ニ文書ノ呈示ヲ求メ若クハ質問ヲ為スコトヲ得此場合ニ於テハ其身分ヲ証スル書面ヲ携帯シ」、これは立場を証明するのでありますが、これが今度「呈示スルコトヲ要ス」こういうふうな規定になっておる。それに対して、「検査ヲ拒ミ、妨ゲ又ハ忌避シタル者ハ十万円以下ノ罰金二処ス同項ノ規定二依ル文書ノ呈示ヲ為サズ若クハ虚偽ノ文書ヲ呈示シ又ハ質問二対シ陳述ヲ為サズ若クハ虚偽ノ陳述ヲ為シタル者亦同ジ」、こういう罰則規定自体も非常に過酷なものであるというだけではなく、この中に検査を拒む場合あるいは妨げる場合あるいはその他の人に文書の呈示を求めたというときに相手を忌避した場合、それから同項の規定による文書の呈示をしない、もしくはうその文書を出した、こういうことがある。これは普通の調査の場合に、必ずその性質上、それが建物であれば建物の内部、坪数とか床面積、それから形状、そういうものは皆調べなければなりませんでしょう。そういうようなことになったときに、その必要があってそういうふうにするんだ。そうして資格だけの証明書を持っていく。そうすると、あとは自由に中に入っていく。その質問に対してこれを拒むと、直ちにこれが、百五十九条によって十万円以下の罰金に処せられる。刑罰になる。それこそ犯罪被疑者でも、国民は黙否権を持っている。これは認められておる。けれども、ここの場合においては、黙っておったら、それでもって罰せられるということになる。行政的な手続をやる場合に、こういう権利を調査官に与えるということは、非常に大きな国民権利の侵害になると思うのであります。もちろん、刑罰法規というのは、権利の侵害を予想しておるものではありますけれども、かかる場合に、こういう権限を一方に与え、それに対して国民義務づけるということは、ほんとうに憲法違反ではないかと思うのであります。刑罰の場合においては、裁判官の令状を持たなければ捜査をしたりすることはできない。これは登記公信力を確実にするためでありましょうが、国家があまりに国民の中に入ってきて、国民の本来の権利というものを侵害することになると思うのです。こういう規定は、先ほどの強制の登記という精神に相伴うて、最後にそれでもやらないときはこういうふうにするということであろうと思う。ほんとうにこういうものを作られるところの趣意は、そこまでいってもいいのかどうか。先ほどの御趣意は御意見ですからわかりますけれども、やはり国家権力はそこまでいかなければならぬのか。それにしても、また実際かりにそうだとしても、こういうふうな規定でいいのかどうかということは疑問です。というのは、このままだと、これはほんとうに憲法違反になりかねない。それほど表題部公信力を得るためにこういうものを作らなければならぬというのはどういうことでございましょうか。
  189. 平賀健太

    ○平賀政府委員 まず第一点の保証書の点でございますが、これは現在無権利者があたかも権利者のような顔をしまして虚偽の登記をする事例が少なくないのでございます。虚偽の登記をされることによって不利益をこうむる人、損害をこうむる人が少なくないわけでございまして、そういう人々の不利益、損害を未然に防ぐためには、やはりどうしてもこの保証書の制度を厳重にいたしまして、そういう虚偽の登記がされることを防止する必要があるわけでございます。現行法は罰則がございませんけれども、最近では、先ほども御質問にございましたように、地面師などが横行している時代でございますので、やはりこういう罰則を設けまして、いいかげんの保証書を作って、それで登記をするということが行なわれないような防止措置がぜひ必要である、こういうことで百五十八条の罰則を設けたのでございます。  それから登記官吏の実地検査に対してそれを拒み、妨げ、忌避するということに対しまして罰則を設けましたのは、現行の台帳制度にあるのをそのままこちらに移したわけでございますが、これは御承知の通り、こういう国家機関に職権調査の権限を与えました場合、それに対する妨害、不協力の行為に対しまして罰則を設けることは他にもたくさん例があるわけでございます。卑近なところでは、御承知の労働基準法その他の労働法規にこれが多数あるわけでありまして、精神はやはり同じ精神であると考えたのであります。職権調査が認められております以上、こういう抑えの罰則の規定がございませんと、職権調査というものは円満に行なわれるものではないのでございます。
  190. 井伊誠一

    ○井伊委員 改正法の五十条の第一項は、登記官吏にその必要あるときは土地または建物登記に関する事項を調査することを要すという義務を課しておる。一方ではその登記官吏の義務に基づいての調査ということによって、国民が今のような強度の権利の侵害を受けることがあり得る。一方において必要あるときは調査することを要すということは、登記官吏に対して一つ義務を課する。これは権利を保障したよりも義務を課したきらいがある。これは国家に対して登記官吏が官吏としての義務を負うということにつけ加えて、特に必要ありと認めたときは何々することを得る、次のことをすることを得るというだけではなくして、何々することを要すということであるから、どうしても登記官吏というものはしなければならない。それだからこの場合は、必要あるときはという必要を認定するものとそれからこれを行なう調査をするものとは同じ人なのかあるいは他の人がやるのか、この義務づけはみずからがこれが必要ありと認定した場合になすことを要すといったって、みずからそれでは必要ありと認めないということになったならば必要がなくなるのか、それとも客観的に必要がある場合だということが他に認定された場合においてはその義務が生じてくるのか、この関係はどういうふうになるのですか、この登記官吏の方の義務からいって……。
  191. 平賀健太

    ○平賀政府委員 第五十条の条文は、ごらんの通り、必要があるときは職権による調査をすることを得るという条文になっておるわけでありますが、登記官吏が必要と認めれば調査をする職務上の義務を与えると同時に、調査権限を付与しておる規定でございます。
  192. 井伊誠一

    ○井伊委員 これは調査の必要がありと認めたときは、まず国民に対してこれだけのことをするその権限を与える意味において必要あるときは何々することを得る、こうあるのが筋の運びからいえば当然じゃないかと思うのに、ここは珍しく必要あるときは調査することを要すとなっている。それだから、何人がそれをなさるのですか、そうじゃないのですか。
  193. 平賀健太

    ○平賀政府委員 調査することを要すというのは、この場合は「身分ヲ証スル書面ヲ携帯シ関係人ノ請求アルトキハ之ヲ呈示スルコトヲ要ス」という規定になっております。
  194. 井伊誠一

    ○井伊委員 それは対照条文に……。これは本文を見ないのが私の落度であったけれども、それならばやっぱりこれは「調査スルコトヲ得」ですね。とにかくそれでは調査することができる。それから罰則の百五十九条の二のところを見ると、八十条の一項、三項、八十一条の一項、三項、それから八十一条の八、それは土地に対するところの登記申請義務者で、九十三条の一項、三項、九十三条の二の一項それから同条の三項、それから九十三条の六、これは建物の場合だと思う。ここのところでいずれも、これは申請義務者が申請事項を大体一カ月内に申請手続をしない場合、あるいは新所有者が、つまり土地表示登記をするそのことを、変更のあった日から一カ月内、あるいは「地目又ハ地積ノ変更アリタルトキ」とこういうものは「表題部記載シタル所有者又ハ所有権登記名義人ハ一个月内二土地表示変更登記申請スルコトヲ要ス」「所有者変更アリタルトキハ新所有者ハ其者ノ為所有権登記アリタル日ヨリ一个月内ニ」やる。土地滅失の登記を一カ月内にやる。それから建物についても大体それと同じような書き方をしております。こういうときに、これらのことは、一カ月以内に登記手続をしなければならぬというようなことが適当であるかどうかということでありますが、これに対してはあまり長過ぎるというような意見もあるいはあるかもしれないけれども、たとえば建物の滅失したときのごとき、これを滅失した登記をするのに一カ月、こうなっておるのでありますが、この一カ月というようなものはどこから起算して一カ月なのか。別にそういうあれもないし、建物が滅失したるとき一カ月、こういう一カ月はどこにやるのか。大体建物が滅失して所有者が必ずしもそこにおるとは限らないので、建物所有者がその登記をするというときにその事実を知らない場合もありましょうし、これは何を基準としてその一カ月というようなことをきめられますか。
  195. 平賀健太

    ○平賀政府委員 この一カ月の期間は、現行の台帳法がやはりこうなっておるのでございますが、登記申請しますには、やはり場合によりましては土地区画調査士のような専門家に書類を作ってもらわなければならぬというようなこともございますし、一カ月くらいの余裕を置いておくことが適当ではないかというふうに考えるわけでございます。なお「一个月内」とございますけれども、これはもちろん即日申請してもいいわけで、一カ月内に届ければいいというだけのことでございます。これをあるいは長過ぎるという御意見があるかもしれませんけれども、現在一カ月であるのを短縮いたしますと、かなり大きな変更になりまして、そのために処罰を受けるというような人が出てもこれは困りますので、やはり現行制度を踏襲いたしまして、一カ月という申請の期間を置くのが適当ではなかろうかと考える次第でございます。
  196. 井伊誠一

    ○井伊委員 むしろ私はこういう建物滅失のときの登記のごときことを考えれば、一カ月の登記の期間というものはこれは短か過ぎるのではないかという考え方であります。というのは、一体いつからこれを起算するのか。
  197. 平賀健太

    ○平賀政府委員 それは民法の規定によりまして、第一日として起算するのは、たとえば滅失の場合でありますと、滅失した日の翌日を第一日として起算するわけで、現実の問題で申しますと、きょうは三月の八日でございますが、三月の八日に滅失いたしたと仮定いたしますと四月の八日が最終日、八日までに申請をすればいいということになるのでございます。
  198. 井伊誠一

    ○井伊委員 知らないときがあると思うのです。起算は次の日からということは、建物が滅失したとき持主が知らないときがあります。ですから起算点はどういうふうにと書いておかないで、三十日の期間に登記しなかったから処罰される、一万円以下の罰金に処せられるというのは、きわめて不合理な話であると思います。
  199. 平賀健太

    ○平賀政府委員 それは百五十九条の二の規定をごらんになればおわかりになりますように、申請をなすべき義務ある者がその申請を怠ったときということでございまして、全然知らずにおって、たとえば遠くに離れておって、外国におって知らなかったというような場合には正当の事由があるわけでございまして、その場合は怠ったということには相ならぬわけでございます。そういう場合には知ったときから遅滞なく登記申請をすれば、たとい一カ月の期間経過後でありましても、そういう者は処罰されるということはないわけでございます。
  200. 井伊誠一

    ○井伊委員 もちろんそうあるべきだとは思いますけれども、いやしくも処罰をするという規定をきわめてずさんにしておいて、そうして裁判によってそれをきめられるというような、そんな処罰規定を作るということはおかしいことである。いやしくも国民が法の権威に基づいて、これは当然登記しなければならないという日も数えることができない規定になっておって、一応とにかくやられるということになっておる。こういう刑罰規定がここに入っておるという場合に、八十条の三項のごときは、所有者変更ありたるとき、これは変更ありたる日よりとちゃんと書いてある。それからまた「所有者変更アリタルトキハ新所有者ハ其者ノ為所有権登記アリタル日ヨリ一个月」こういうふうに書いてある。建物の滅失あるいは土地滅失の場合においては、ただ「一个月」と書いてある。そういうような処罰規定の中にあれが落ちておるということは不親切なやり方だと思うのです。それは立証して怠りがなかったときというのは常識ですけれども、とにかく一つの処罰をさせるのですから、立て方としてはこんなことでは私は許されないと思います。
  201. 平賀健太

    ○平賀政府委員 こういう起算期間を定めます場合は、こういう規定の仕方をするのでございまして、これはたとえば滅失を考えますと、当然滅失の日からということになるわけでございます。これは民法百四十条で期間の初日は算入しないということで、その翌日を第一日として起算をしている。これは法律の規定で自明のことであるわけでございます。それからなお百五十九条の二におきましては、これこれの規定による申請をなすべき義務ある者その申請をなさざるときはとはいたしていないのであります。なさざるときはといたしますと、これはしているとしていないとにかかわらず、一カ月経過したということで処罰されることになるわけでございますが、そうではございませんで、「申請ヲ怠りタルトキハ。ということにいたしておるわけであります。これは裁判所の任意の解釈によってそういうことになるという筋合いのものではなくて、この規定の解釈として当然さように解釈すべき筋合いのものでございまして、この改正案の規定で、今仰せの懸念はないと考える次第でございます。
  202. 井伊誠一

    ○井伊委員 そうしますと、そのままに裁判所の判定にまかせる。一応立証によって怠らなかったという証明をしなければ免れない。そういう国民に反証をあげさせるということは間違いで、逆ですよ。その滅失の事実を知りたるときより三十日というのであれば別だが、これでは反証をあげなければ免れないじゃないですか。
  203. 平賀健太

    ○平賀政府委員 過料は地方裁判所の管轄に属しているのでございますが、地方裁判所としては、職権調査によってほんとうに怠ったという事実を確かめない限りは、過料の決定はしないわけでございまして、所有者に反証をあげる義務を負わせる手続には非訟事件としてなっていないわけでございますので、そういう御懸念も無用かと存ずるのでございます。
  204. 井伊誠一

    ○井伊委員 これらの処罰の規定、第四十四条に関する百五十八条、それから五十条に関する百五十九条、これは刑罰規定ですが、こちらの方は行政罰です。これはどういうふうに区別をされたわけですか。罪質が違うのでございますか。
  205. 平賀健太

    ○平賀政府委員 百五十八条は虚偽の文書の作成、いわばこれは文書偽造的な行為で、刑法でも医師が公務所に提出すべき文書に虚偽の記載をなしたるときはというこれと同じような規定がございますが、やはり保証書の神聖を確保するという点では、刑事の罰則をもってするのが、他の立法例との均衡の点からいいましても、相当ではないかと考えるのでございます。  それから百五十九条につきましては、他の立法例におきましても、こういう職権調査に関する非協力あるいは妨害というものに対しては刑事罰を設けているのが大多数の立法例でございます。それから百五十九条の二は、これは商法なんかの登記申請人登記なんかも過料なんでありまして、これは事柄の性質上刑罰ではなくてやはり行政罰にするのが適当だろうと思う次第でございます。
  206. 井伊誠一

    ○井伊委員 そうすると、今の百五十八条によるところの登記義務者の保証書の関係ですが、この場合は不実申告とかあるいは不実記載とかそういうようなことに大体該当する、あるいはこれは詐偽と見ておられるのですか。この保証書の関係の方は刑法の文書偽造に似たものと考えておられるのですか。
  207. 平賀健太

    ○平賀政府委員 これは刑法でよく無形偽造と言われているものでございますが、刑法のこれに似た規定と申しますと、百六十条、先ほど申しました、医者が診断書、検案書、死亡証書なんかに虚偽の記載をした場合、それからなおほかの法律、私今思い出せませんが、戸籍法なんかでもやはり届書に虚偽の記載をした場合に刑事罰がつけられているわけでございます。それと同様の趣旨でございます。
  208. 井伊誠一

    ○井伊委員 百五十九条の場合は、そうすると公務執行妨害に当たるというようにお考えですか。五十条の二項に「登記官吏ハ前項ノ調査ヲ為ス場合ニ於テ必要アルトキハ日出ヨリ日没マデノ間ニ限リ土地若クハ建物ヲ検査シ又ハ土地若クハ建物所有者其他ノ関係人ニ文書ノ呈示ヲ求メ若クハ質問ヲ為スコトヲ得此場合ニ於テハ其身分ヲ証スル書面ヲ携帯シ関係人ノ請求アルトキハ之ヲ呈示スルコトヲ要ス」この前段は結局公務執行妨害のような考え方ですか。
  209. 平賀健太

    ○平賀政府委員 根本の精神は公務執行妨害罪なんかと共通するものがあるわけでありますが、ただ刑法の公務執行妨害罪は暴行または脅迫を加えるという要件が加わってくるわけであります。これは暴行脅迫の行為がなくても、妨げるという事実があればこの罰則がかかってくるわけでございます。
  210. 井伊誠一

    ○井伊委員 公務執行妨害というものともまた違ったもので、一つの新しいケースのようですね。税務官吏が酒税法違反ということで調査をする、それからそれに対する今度酒税法違反の事実があれば告発する、こういうような形になっておる、あの辺の権限とこれとはどうでございますか。課刑の上において重さ軽さ、そういうことはどういうふうになっておりますか。私は場合がやや似ていると思うのです。
  211. 平賀健太

    ○平賀政府委員 ただいまおあげになった例、たとえば国税徴収法なんかでも、収税官吏ノ検査ヲ拒ミ、妨ゲ又ハ忌避シタル者ハ之ヲ三万円以下ノ罰金二処ス」という罰則がございます。これは罰金等臨時措置法でありますと五十倍いたすわけでございますから百五十万円以下の罰金ということに現在ではなっております。
  212. 井伊誠一

    ○井伊委員 酒税法違反の場合ですが、調査を拒み、また捜査をせしめない、あるいは偽わりを言う、そういうような場合どうですか。
  213. 平賀健太

    ○平賀政府委員 今の酒税法を見ますと、五十九条の規定がそのようでございますが、これは「十万円以下の罰金又は科料に処する。」ということになっております。
  214. 井伊誠一

    ○井伊委員 やはり公務執行妨害みたいな場合には酒税法違反ですか。
  215. 平賀健太

    ○平賀政府委員 五十九条に相当するものでございます。やはり酒税法違反ということになると思います。不協力妨害ですね。
  216. 井伊誠一

    ○井伊委員 それではさらにこの改正案の十七条によりますと、「登記所二地図及ビ建物所在図ヲ備フ」とあり、それから十八条には、「地図ハ一筆又ハ数筆ノ土地毎ニ之ヲ作製スルモノトシ各筆ノ土地ノ区画及ビ地番ヲ明確ニスルモノナルコトヲ要ス」ということになっておるのでありますが現在の登記所に備えられておるところの地図とか、そういうものの現状はどういうふうになっておりますか。
  217. 平賀健太

    ○平賀政府委員 現在ございます地図は、実際問題といたしましてほとんど全部が税務署から引き継いだものでございまして、よく世間でいわれておりますように、必ずしも現状にあった正確なものではないというのが実情でございます。
  218. 井伊誠一

    ○井伊委員 今度のこの新法によって備えることになるものは、全然新たな測量の結果を備えることになるわけですか。そうすると、これとの入れかえはどういうふうになりますか。というのは、この写しの請求とか、証明書を付与するということになっておるようでありますが、これはすっかり改まった新しいものについてその証明を与えたり、あるいは謄本を出したりするということになるのでございますか。
  219. 平賀健太

    ○平賀政府委員 ただいま申し上げましたように、現在登記所で持っております地図は必ずしも正確なものではございません関係で、新法施行後予算の範囲内におきまして、逐次この地図を整備していきたい、そういうふうに考えている次第でございます。
  220. 井伊誠一

    ○井伊委員 逐次整備されるというのですが、これはなかなか普通の台帳とは非常な違いでありまして、そのまま作るのではなく、実測をもととして、一筆ごとに作られるのか、あるいは数筆を便宜一まとめにして作られるのかわかりませんが、これは大体いつごろまでに作るというお見通しでありますか、御計画でありますか。もしこれを登記官吏がやるなどといったら、技術者がいないのじゃないですか。そういう技術者もいないし、こういうものを備えるのには、また別個な方法を考えなければならぬのではないかと思いますが、どうですか。
  221. 平賀健太

    ○平賀政府委員 現在におきましても、たとえば土地改良だとか、土地区画整理なりが行なわれますと、地図を登記所に送って参ります。これは従来税務署から引き継ぎました地図とは違いまして、非常に正確なものでございます。それからなお現在経済企画庁の所管のもとに、国土調査を各地で実施いたしております。この国土調査が済みますと、この地図も登記所に送られてきておるわけでございます。現在の方法としましては、こういう現行の制度に乗って送られてきます地図というものを登記所に備えまして、これでもって処理していくというほかないのでございますが、ただ何分にも土地区画整理というのは、全国的に普遍的に行なわれるものでもございませんし、それからまた土地改良も、これも現在の状況ではきわめて一部にしか実施されていないという状況でございますので、将来の問題としましては、むしろこの国土調査法に基づく調査などは登記所所管すべきものではないかというふうにも私ども考えておるのでございますが、この地図というのは、登記所にとっては特に不可欠なものでございます。ただ実際土地を測量し、この正確な地図を作るということにつきましては、これは相当予算が要ることでございますから、十分計画を立てまして整備していきたいと考えておる次第でございます。そういう次第でございますので、一体何年くらいということはこれはちょっと申し上げかねる状態でございます。しかし、私どもとしましては、ぜひともこの地図を整備していきたいという考えでおる次第でございます。
  222. 井伊誠一

    ○井伊委員 そうすると、これは登記一元化という問題とはまた別個の構想でいって、ある時期までにこれをやるというお考えのようでありますが、そうしますと、こういうことはどうなりますか。二十一条に地図、建物所在図の写しの閲覧を請求することができるということになっているわけです。こういうものは、できて備えつけられなければ、その証明もまた閲覧も事実上できない、そういうことになると思うのでありますが、現在のものをしばらくの間——そういうものの備えつけられるまでの間でも、やはり閲覧をするとか、あるいは建物の写しとかそういうものをとることができるというようなことになるのでしょうか。この地図ができ上がるまではできないということか、それとも現在のものを新たに——今は地図の写しとかの閲覧はできないのではないでしょうか。今度はそういうもとのもでもすぐこの法律が施行になると、見れる、あるいは写すことができるといったことになるのでありましょうか。新しいものについてのみ行なわれるのでありましょうか。
  223. 平賀健太

    ○平賀政府委員 現実の問題といたしまして、十七条にございます建物所在図というのは、これは曲がりなりにも何にも、現在ないのでございまして、建物所在図などにつきましては、今お話しのように、整備された暁においてその閲覧とか写しの請求ということになってくるわけでございます。ただ土地につきましては、今申し上げましたように、土地改良地区であるとか、土地区画整理地区であるとか、あるいは国土調査の実施をしたところでは正確な地図がございますので、これはそのまま十七条の地図等に充てても差しつかえないわけでございます。それから、その他の土地につきましては、税務署から引き継ぎました地図も、これは精粗いろいろございまして、かなり現況に合ったものもございますし、また非常に現況と違ってしまって、使いものにならないというものもございますし、そういうわけで、これは一がいに言えないのでございますが、間に合うものは現在ある地図で間に合わせていくという実際の運用になろうかと思っておるのでございます。
  224. 井伊誠一

    ○井伊委員 二十五条の二によりますと、「不動産表示ニ関スル登記登記官吏職権ヲ以テ之ヲ為スコトヲ得」という規定が加わったようでありますが、実施の暁には、所有権登記のある物権と所有権登記されていない物権の場合に相違が生ずれば、登記法職権主義をとっていく。そうすると登記所の方の仕事がやはりふえるのではないでしょうか。
  225. 平賀健太

    ○平賀政府委員 物権調査は、これは現在の台帳制度についてとられていることでございまして、その仕事がふえましたのは昭和二十五年に台帳が移管されたときにふえているのでございます。今度の一元化によって特に登記所事務法律上ふえたということはございません。
  226. 井伊誠一

    ○井伊委員 しかし、絶えずそのことについて義務づけられるということになれば、それを正しく登記の上にこれを表示するためには、しょっちゅうそれを調査してもらわなければならぬようになるんじゃないでしょうか。そういうふうになると思いますがね。絶えず義務づけられるのじゃないですか。
  227. 平賀健太

    ○平賀政府委員 不動産現況を把握してこれを調査するというのが表題部登記に関する建前でございますので、現行法でもすでにそうであるのでございます。一元化されたからといって、それがさらに加重されたということには相ならぬわけで、現在でもその通りでございます。
  228. 井伊誠一

    ○井伊委員 ただ、今まで、現行法の方ではそれほど実際上できないので、そのままにしておくというような、規則の上ではそうなっていても、実際上はそう運営しないというだけのことで、今度強くここのところに職権主義というものが打ち出された場合には、そうはしていられない、またそうさせないつもりのこれは規定じゃないでしょうか。正確にするということを、今度は今までのようなことではなしに、それをやっていこうというのじゃないでしょうか。それとも、やはり文面はこういうふうにはなっておるけれども、前々の通りでどうなるかといったような、そんなものならば何も特にこんなことをあれしなくてもいいと思いますが……。
  229. 平賀健太

    ○平賀政府委員 現在でもこの職権調査はやはりやっておるわけでございます。ただ、現在は登記所が非常に多忙でありますために、法律の規定通り全部が全部職権調査を百パーセントやっているとは必ずしも言い切れない状況にあるのでございます。法律が改正になりましたからといって、登記所に余力ができてくるわけでは決してないのでございます。ただ、一元化が完了いたしますと、先ほども申し上げましたように、登記所事務はかなり負担が軽減されますので、その余力を多少なりともこの実地調査の方に回すことができるのではないかというふうに考えておる次第でございます。
  230. 井伊誠一

    ○井伊委員 そうすると、別に前と変わりはないんだ、実情からしてあえてこれを強行するというお考えでもないようで、事実に従ってまあやっていく。しかし法律のあれを変えていかないというために、ここに置いた、そういうお考えなんですか。
  231. 平賀健太

    ○平賀政府委員 実地調査におきましては、私どもとしてはやはり法律の規定通りこれを運用いたしたいと思っておるのでございますが、人員、予算の制約がございますので、その制約の中で可能な限り実施いたしていきたいと考えておる次第でございます。
  232. 井伊誠一

    ○井伊委員 職権で行なう建物の増築についての登記、この場合、増築以前の建物所有権登記のある場合と、そうでない場合がありますが、所有権登記のある場合、登録税の方はどういうふうになりますか。
  233. 平賀健太

    ○平賀政府委員 その場合には、建物の床面積が増加いたしますので、登記申請義務もあるわけでございますが、登録税関係登録税法の改正によって、それは附則の十条でもって規定を設けております。これは床面積の増加部分の価格の千分の六の登録税を納めるということにしておるわけでございます。
  234. 井伊誠一

    ○井伊委員 現行制度ではやはりそうなんですか、変わりませんか。
  235. 平賀健太

    ○平賀政府委員 現行制度でも所有権保存登記をいたしておりまして、増築による表題部表示変更登記をしようと思えば同じことでございます。
  236. 井伊誠一

    ○井伊委員 国家賠償責任の関係ですが、登記官吏が職権でもって調査をいたしまして、その結果違いがあるときには職権登記をする、今度のはそういうふうになっておると思います。そういうときに、現実と調査の結果違っておるというのが登記される、そのことのために国家が何かそれから受ける損害で、賠償の責任を有する、こういうふうに思うのですが、そういう場合になれば国家に賠償責任があるのですか、どうですか。
  237. 平賀健太

    ○平賀政府委員 登記官吏が職権表題部登記をしました場合に、そのことが原因で第三者に損害を与える、登記官吏に故意過失があるということになれば、国家賠償法の問題が起こってくることがあり得ると思うのでございますが、それは現行の台帳制度でも事情は同じでございます。
  238. 井伊誠一

    ○井伊委員 そういうふうに強化すると、これは登記官吏の方の責任加重というか、そういうふうなことにはならないのですか。めったにこういうことはあり得ないと思いますけれども、この改正規定によっては、そういうふうになりませんか。
  239. 平賀健太

    ○平賀政府委員 場合によってはそういうこともあり得るわけでございますが、その責任は、現行の台帳制度のもとでも、登記官吏はやはり負っておるわけでございます。この法律案によって特にそれが加重されるということはないわけであります。
  240. 鍛冶良作

    鍛冶委員 関連して——いろいろ登記の完備に関する質問がありましたが、この間から大切なことを言おうと思っておったが、完備はよろしいが、これを完備させる一番大きな問題は、登記所建物だと思うのです。日本の官庁といわれるもので一番情けないものは、登記所じゃないかと思うのです。完備を言うには、登記所の完備が第一じゃないかと思うが、この点あたりは自信がございますか、いかがですか。
  241. 平賀健太

    ○平賀政府委員 ただいま仰せの通り、登記所の庁舎の現状は、必ずしも良好とは言えない現状でございます。私どもとしては、登記所の施設の整備にさらに全力をあげて努力をいたしたいと考えておる次第でございます。
  242. 鍛冶良作

    鍛冶委員 毎年全力をあげておられることとは思いますが、なかなかその実が上がっておらぬようです。これはこの際これだけに登記の根本的な完備を考えられた以上は、これに伴う建物の完備も考えられなくちゃいかぬと思うがどうですか。一つ年次計画でも立てまして、それでこれだけのことはやらなければならぬということを根本的にやっていただかなくちゃいかぬと思うが、そのお考えがあるかどうか、あるならばさっそくそれに着手していただけるのかどうか、この際承っておきたいと思います。
  243. 平賀健太

    ○平賀政府委員 ただいま仰せの通り、私どもといたしましても、計画的にその庁舎の改善を実現いたしたいということでやって参りまして、今一番ひどいのは法務局の支局でございます。支局は四カ年計画でございますが、実施をいたしまして、もう大部分新営が完了いたしまして、三十六年度には支局だけは全部一応完備するんじゃないかという見通しでございます。それから出張所の方は、これは御承知の通り、まだ非常に貧弱な状態でございますが、支局が一番緊要でございましたので、支局が完成いたしました暁は、出張所の方に全力を注ぎまして、逐次改善を実現していきたいと考えております。
  244. 菊地養之輔

    ○菊地委員 私は本法案の五十条とそれから百五十九条で、井伊さんの質問された以外の部分について関連質問をいたします。  この五十条の規定によると、登記官吏は、必要あるときはいつでも調査権を発動することができるわけです。いわゆる必要あるときはというのは、主観的に登記官吏が認めた場合をさすのですか。
  245. 平賀健太

    ○平賀政府委員 登記官吏の判断によって決するわけであります。
  246. 菊地養之輔

    ○菊地委員 登記官吏の主観できめられるわけですね。
  247. 平賀健太

    ○平賀政府委員 登記官吏の主観ではありますが、いいかげんの主観じゃなくて、必要ある場合とない場合との基準があるわけであります。その基準に従って判断をいたすことに相なるわけであります。
  248. 菊地養之輔

    ○菊地委員 このいわゆる調査権の中には、不動産建物の中に入る権限はございますか。
  249. 平賀健太

    ○平賀政府委員 場合によりましては、中に入る必要も出てくるかと思います。
  250. 菊地養之輔

    ○菊地委員 出てくるかもしれぬというのじゃなくて、構造とかあるいは床面積なんかを調査すために入る必要はあるんじゃないですか。かもしれぬじゃなくて、それはどうですか。
  251. 平賀健太

    ○平賀政府委員 そういう場合、場合によりましては中に入る必要も出てくるかと思います。
  252. 菊地養之輔

    ○菊地委員 それから、文書の呈示を求めることができる、あるいは質問をすることができる——これはひとり所有権者ばかりでなく、第三者にもできると書いてありますね。そうですね。これはいわゆる憲法でいう第三者なりあるいは家宅なりは、憲法の規定以外には家宅に入られたり、あるいは尋問を受けたり、あるいは書類の提出を命ぜられたりしないと憲法で保障しているのでありますが、どうしてこれは例外をなすのか、その点をお聞きしたいのであります。
  253. 平賀健太

    ○平賀政府委員 憲法の規定の例外ではないと考えております。憲法のあの規定とは関係がないことだと考えております。
  254. 菊地養之輔

    ○菊地委員 どうしても私どもは理解に苦しむのでありますが、どういうわけで憲法と関係ないのでありましょうか。一般国民が、いわゆる自分の占有しておる家宅に侵入されたり、あるいは理由のないのに第三者が質問を受けたり書類の提出をさせられたり、それをしなかった場合には刑事罰を受けるというようなことは、どうして憲法の三十五条の規定のらち外であることができますか。
  255. 平賀健太

    ○平賀政府委員 ただいま仰せの憲法の規定は、刑事手続に関する国民権利を保障した規定であると解する次第でございます。従いまして、この法律案のみならず、他の法律に規定しておりますところの立ち入り調査権であるとか、その他に関する規定は、憲法に決して抵触するものではないというふうに理解いたしております。
  256. 菊地養之輔

    ○菊地委員 憲法からは、そういう解釈はどこからも出てこない。憲法第三十五条には、「何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けること」はない、こうはっきり書いてある。いわゆる「何人も」とある。刑事被告人であるとか被疑者であるとかいうことを明記しておらない。国民一般をさしておる。それは何か独自の解釈をなしておるのじゃないのですか。この点どうですか。
  257. 平賀健太

    ○平賀政府委員 三十五条の規定は、ただいま申し上げましたように、やはりこれは刑事手続に関する規定でございまして、もしこの規定のために行政機関が立ち入り調査等の調査権の行使ができないということになりますと、国の行政というものは円満に遂行ができないことに相なるだろうと思うのでございます。御承知の通り、たとえば卑近な例で申しますと、労働保護立法なんかにはかかる立ち入り検査の規定が多々あるわけでありまして、かかる規定なくしては労働者の保護ができないという見地から、かかる規定が設けられておるのでございます。そういうものも憲法違反ということになりましては、国民の福祉、国全体の福祉の向上ということははかられないという結果に相なるだろうと思います。
  258. 菊地養之輔

    ○菊地委員 これは憲法第三十五条の解釈の問題で、どこまでいっても平行線でありますから打ち切りますけれども、しかし、国家の名において、いつも政府なりいわゆる官憲が国民権利をじゅうりんして何とも思っておらない、国家のためならどうでもいいのだ、こういうような考え方があることが、私はこの法律をそういう解釈をするようになるんじゃないかと思うのですが、私はこの法律の規定は、国民権利を守るためのものだ、刑事法に関するだけのものではない、全般の国民に関すものだ、こう私は解釈しておるのであります。特に私は、いわゆる行政機構の中において、国民権利が、この三十五条の規定が刑事法だけのものとなったら守れないのじゃないか、国民の人権としてこの規定が規定されておるので、そうすると、行政法規においていつでも国民権利を制限するような、うちへ入ってもよろしい、書類の没収もよろしい、あるいはまた黙秘権を行使する権利はないのだ、こういったならば、これでは国民権利というものは憲法上規定しても何にもならないじゃないかと思う。刑事法に関してさえもこういう規定を置いて国民の権限を保護しているのだ。しからば行政権を行使する場合にも、この範囲を逸脱してはならぬということが、あなた方の解釈としても当然あり得るのじゃないか。いわんやこの規定は国民権利のところに規定されている。刑事権や裁判権に関する規定ではない。裁判権に関する規定ならば刑事訴訟法で足りるのだ。国民権利のところに規定してあることを考えますならば、私はそういう狭い解釈をすることは誤りだと思うのであります。しかしこれは従来そういう解釈をもってやってきたのでありますから述べません。ただここで私が問題にしたいのは、この五十条において、登記官吏は「所有者其他ノ関係人ニ文書ノ呈示ヲ求メ若クハ質問ヲ為スコトヲ得」とあるのでありますが、これは所有者でないのですよ。所有者でない者に文書の呈示やもしくは質問をすることが許されるといたしましても、もし応じなかったならば罰則を加え、もしくは刑事罰で臨むということは、これは常識から考えても私どもは納得できない。あまりに行き過ぎではないか。行政法規としても行き過ぎではないか。この点はどうですか。
  259. 平賀健太

    ○平賀政府委員 関係人というのもおのずから制限がございますので、たとえば境界などをはっきりするためには隣地の所有者なんかにも聞いてみなければならないという場合が起こり得るわけであります。ただ所有者だけではこれは不十分なのでございます。  それから、なお、ただいまのような規定は、いわゆる社会政策立法が盛んに行なわれるようになりますと、どうしても立ち入り検査権その他政府機関の職権による調査権ということが必要になってくるわけでございます。これは各種の法律にあるわけでございますが、ことに労働保護立法などにおきましては顕著であるわけでございます。
  260. 阿部五郎

    ○阿部委員 議事進行について——今問題になっておる憲法三十五条の問題については、民事局長の言うように、この改正法律案だけにあげられておる問題でないことは、私たちも認めるのであります。しかしながら、事はあまりに重大であって、そして学説においても、憲法三十五条が刑法関係の問題に限られるという意見もあるが、またこれに反して、あらゆる場合においても国民権利として保障されておるという意見もある。後者の方がむしろ多いのじゃないかと思うのでありますが、これは非常に重大な問題であって、学説にもきまったものがない。それから国民の利害関係に絶大なる問題である。こういうような点からいいますと、現政府がこれに対していかなる統一した見解を持っているかということは、この際この法律案の審議に関連して明らかにしておくのが適当でなかろうかと思うのであります。それで、この点については一つ委員長のお骨折りで総理及び法務大臣に御出席を願って、明確にした上で、この法律案を審議したいと思うわけでありますが、さようなお取り計らいを願いたいと思います。
  261. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 今の阿部委員の御発言については、あとで理事会で御協議をすることにいたします。
  262. 菊地養之輔

    ○菊地委員 もし阿部委員が申されたように政府の統一解釈を求めるというのならば、これ以上の答弁は承らなくてもよろしゅうございます。
  263. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 阿部五郎君。
  264. 阿部五郎

    ○阿部委員 まず伺いたいのですが、今度のこの新法が施行されたならば、現行登記法によって存在しておる登記簿というものはそのまま生きて使われるのであって、そしてこれに対して表題部が付加されるにすぎないものかと思うのですが、それはどうなのですか。
  265. 平賀健太

    ○平賀政府委員 新しい表題部ができますと、従来の登記用紙の甲区、乙区はそのまま生きて残っていくわけでありますが、従来の登記用紙の表題部は不要になるわけでございます。
  266. 阿部五郎

    ○阿部委員 それでわかりましたが、それでは過日来問題になっておって、ただいま鍛冶委員なんかから質問がありました、表題部に登録されて、所有者が何がし、こうなっておって、その後に保存登記申請があった場合には、それはもう表題部所有者の名前は消されてしまうのですから、それで問題はないのでありますけれども、世間では未登記不動産売買ということもずいぶん行なわれておるのであります。別にそれを禁ずる意思もないと思うのでありますが、その場合に、表題部だけは申請義務があるから、それで申請をして登録され、登録される。そうして、保存登記をしないままでそれが転々として売買されていくと、この表題部記載されておる所有者とは違った人の所有に属するということに事実上なるわけであります。そうして依然として表題部には旧所有者の名前が載っておる。そうすると世間の者は、これは登記でありますから、登記所有名義人に載っておると、その者を所有者と認めるのは当然でございましょう。それでその者からの買い受けということも起こるだろうと思います。そうなるとむしろ登記関係を混乱させるということになるのではないかという心配が起こるわけなんでありますが、その点についてはどうでありますか。
  267. 平賀健太

    ○平賀政府委員 その問題は現行のもとでもやはり起こることでございまして、表題部所有者として記載された者から不動産を買いまして、そのまま登記せずにおきますと、自分所有権が第三者に対抗することができないという結果を生ずるわけであります。法律的には事は非常に簡単でございまして、別に混乱が起こるということはないわけでございます。現行制度のもとでも全く同じことでございます。
  268. 阿部五郎

    ○阿部委員 しかし、現行制度のもとにおいては、表題部記載する時分には、これは必ず所有者として保存登記がされておる。しかし今度は表題部土地台帳記載したと全く同じような効力をもってやられておる。それが名称の上で登記簿だ、こういうことになると、その登記簿を信用した、こういう者がないとは限らぬと思うのです。その点どうですか。
  269. 平賀健太

    ○平賀政府委員 その点は、現行の台帳記載を信頼して取引をする者があるのと同じでございまして、たとえば、この新しい登記簿表題部所有者から不動産を買い受けて、その者が所有権移転登記権利登記をいたしますと、事実はその以前において表題部記載されておる所有者が他の第三者に所有権を譲渡しておったということがあったにしても、先に所有権登記をした者が勝つわけでございまして、権利関係の混乱ということは法律上は一向起こらぬことになるわけでございます。
  270. 阿部五郎

    ○阿部委員 理屈はおっしゃる通りでありまして、私どももそれはよくわかるわけでありますが、しかし、今のところは土地台帳、こう言っておるのです。世間はこれを取引の公信力といいますか、公信力はもちろんどっちにしろないのですけれども、信用の程度は違いますけれども、今度はそれが表題部と言いながら登記簿、こうなってきますと、世間がこれを信用するのは当然のことと思います。それで、危険の度はむしろ加重されるのではないかと思いますが……。
  271. 平賀健太

    ○平賀政府委員 表題部所有者表示は、先ほど来るる申し上げましたように、所有権表示ではないのであります。現在の台帳所有者表示と全く同じ効力しかないものでございます。仰せのような懸念はないと考えます。
  272. 阿部五郎

    ○阿部委員 しかし、実際上は私は懸念はあると思うのですが、ないと言われるのですからそれで置いておきます。先ほど、午前中公述人から、むしろこういうことならば、権利移転その他権利関係を公示する方面を登記所にまかして、そして不動産現況を示すものとしては実際上それを扱う市町村にまかした方がいいのではないか、こういう意見がありましたが、これは私ら、はたから聞いておりましても、まことに傾聴すべき意見のように感ぜられます。今度の新法を施行しましたところで、手間が省けるのは従来の登記簿表題部がなくなる、それだけの手間並びに紙代が省けるくらいのものだろうと思うのであります。それならば従来の登記の方を登記所にまかして、実際上はこの表示欄ができた、表題部というのが登記簿に付加されたとしても、課税するところの帯町村などはそればかり信用して、もっぱらそれにたよって課税ということはできますまいから、やはり課税するためにはそういう不動産の調査も自分でしなければならぬと思います。そうすれば、全体的に見ましたならば、事務の簡素化にもあまり効果がないのではないか、国のする仕事だけについてはある程度の簡素化がされるかもしれませんが、公の手間ということになって、市町村の手間まで、全体的に見たならば、あまり大した簡素化にならぬのではないかと思われますが、その点はいかがですか。
  273. 平賀健太

    ○平賀政府委員 ただいまの御意見並びに先ほどの参考人意見のような工合に市町村台帳をやったらいいではないかということになりますと、台帳記載登記簿不動産表示記載が不一致でちぐはぐであってもよろしいというわけには一向ならぬわけで、やはり不動産表示台帳と合わせるべきものになるものと思うのであります。そういたしますと、登記申請人はまず市町村役場に行って台帳の謄本をもらってきて、そして登記所に回らなければならぬということになるのでありまして、決して登記申請人にとっては便利でないのであります。以前台帳税務署所管されていました当時は、そういう回りくどい手続を経たわけでありまして、そういう不便を除去するために台帳登記所に移管になったのでございます。それからなお、市町村としましては、固定資産税を徴収する建前から、不動産現況を見て回るということがあるのでございますが、固定資産税の徴収という便利のために、その必要のために不動産を見て回るということの結果、必ずしも不動産の把握が正確にいくかどうかということにつきましては、私どもとしては非常に疑念を持っているわけでございます。たとえば非常に富裕な市町村固定資産税なんかそう厳格に取り立てなくても十分財政がやっていける市町村でありますと、おのずからルーズになりますし、やはり貧乏な市町村でありますと、非常に厳格に、酷にやっていくということになるというのが実情でございまして、市町村台帳を移管することが必ずしもいいとは言いかねると私どもは考えているのでございます。
  274. 阿部五郎

    ○阿部委員 それにしても、この台帳登記簿とを一致させるという点において、この新法によりましても、ほんとうに登記簿としての効力を持つところの、すなわち第三者対抗要件を持っているところの部分は登記が自由になっておりますし、自由ということになれば、全然登記せぬということも当然多くあるのであります。そうすると、表題部には申請義務を負わして記帳させる、ところが一方はどうでもよろしい、こうなれば、一致しないのが当然でありまして、この大きな不一致というものは免れないのではないかと思われますが、いかがでしょう。
  275. 平賀健太

    ○平賀政府委員 不一致はないと考えます。
  276. 阿部五郎

    ○阿部委員 そうすると、一方は登記申請がないのですから全然ない、一方の表題部義務として申請するから記載されている、この不一致はどういうのですか。
  277. 平賀健太

    ○平賀政府委員 それは不一致というのじゃないのでございまして、表題部において不動産表示されているが、権利登記はしてないというだけのことで、一向不一致ということではないのでございます。
  278. 阿部五郎

    ○阿部委員 それはそれとしまして、それでは、今度大へんな手間をかけ、費用もかけてこれだけのことをなさるのでありますが、お話によりますと、近くまたメートル法が実施されると当然また移記といいますか、書き移しをやらなければならぬというふうに承ったのでございます。そうすれば、その時分にまた制度の改革も同時にやればいいわけなんで、その一回でできることをわざわざ二回になさるというのはどういう理由があるのですか。
  279. 平賀健太

    ○平賀政府委員 一時にやりますと、一時に膨大な事務量が登記所にのしかかってくるわけで、職員にとりましても非常な負担加重になるわけであります。それを段階的に分けてやっていこうというのが、この考え方でございます。
  280. 阿部五郎

    ○阿部委員 その事務量がたくさんになるということはよくわかります。しかし、それを二回にやって、用紙から全然かえていかなければならぬ。たとえば表題部の方を見ますと、ちゃんと町反畝歩というような欄がありますから、それは当然かえねばならぬのですが、そういうことをしないでも、いきなりメートルでやる時分に一緒にやったならば、大体紙だって一枚で済む。そしてなるほど事務量が多いのは当然でありますけれども、それはおっしゃる通り、段階的にまずここの登記所からやり、次にはどこをやるというふうな方法は幾らでもあろうと思うのでありまして、わざわざこれを二重手間をかけるのはどういうわけなんですか。
  281. 平賀健太

    ○平賀政府委員 移記の段階で一々換算表をにらみながら移記をいたしますと、非常に時間もかかりますし、間違いも生じやすいわけでございます。やはりこういうふうに段階的に処理していくことの方が、間違いなく事務を処理していけるゆえんだと考える次第でございます。
  282. 阿部五郎

    ○阿部委員 どうもわかりませんが、まあしかし時間もありませんので進みます。それから、職権調査によって登記することになっておりますが、この職権調査による登記というものは、登記官ももちろん職権がありましょうが、ほかの法律によっていろいろな権限を持っておるところがたくさんあるわけであります。たとえば、一例をあげますと、農地の地目とか面積とかいうようなものは、何といっても第一次に私は農業委員会に権限が与えられておるように思うのであります。そして地目の変更などというものは、農業委員会からさらに県知事の許可がなければ変更できないというさようなことになっておるので、登記官が権限を持って実地調査をしてそれらを決定していこうとしましても、一方でそういうようなほかの法律による手続が済まなければいかんともできないのではないかと考えますが、その点この法律とほかの法律との間の実施関係はどうなるのでございましょうか。
  283. 平賀健太

    ○平賀政府委員 たとえば、農地を宅地に変えるというような場合でありますと、農地を宅地に変えるということ自体において、これは農地法で都道府県知事の許可が要る、その間で農業委員会関係してくるわけでありますが、登記所でやりますのは、現実に農地が宅地に変わりましたあとのことでございます。農地法の規定しておりますのは、これは事前のことでございまして、関連がうまくついておるわけでございます。
  284. 阿部五郎

    ○阿部委員 ところが事実はそうではないのでありまして、たとえば、農地を宅地に現実にやっておる、今まで畑になっておるところに樹木を植えて庭園と見るべきものになっておっても、一方でそれを現実にどの程度からどう見るかということについては、これは重大な問題があろうと思いまして、よくこれは課税の上でも問題になっておるようであります。現実に、一方から見ればこれは宅地だと見ますけれども、地目変更、用途変更手続はしてない、こういうふうな場合はよくあると思います。その点そう仰せのように簡単にいくとは思われませんが、いかがでございましょうか。
  285. 平賀健太

    ○平賀政府委員 ただいま仰せの問題は、事実の認定の問題であろうと思います。
  286. 阿部五郎

    ○阿部委員 事実の認定でありますから、登記官が認定しましても、一方でほかの農地法なんかにおいては依然としてそれは畑に認定しておる、こういうような場合に矛盾が生ずると思いますが、いかがでございますか。
  287. 平賀健太

    ○平賀政府委員 登記官吏は、あくまで現況に即しまして、事実を認定するわけでございます。
  288. 阿部五郎

    ○阿部委員 そうすると、登記官吏が宅地と認定して、そうして農地法の施行の関係においてはそれが依然として畑と認定されておる、こういう場合が多々生ずると思いますが、それでも一向差しつかえないのでございますか。
  289. 平賀健太

    ○平賀政府委員 場合によっては認定の相違ということで、そういうことも起こる場合がないこともないと思いますが、そういう場合にはいずれか一方が間違っておるということになるわけでございまして、間違っておる方が改めるということになるだろうと思うのでございます。
  290. 阿部五郎

    ○阿部委員 それから、これは実際は相当長期にわたって実行されるのでございましょうが、実地調査を全国にわたってなさりたいという御計画のようでありますが、ここに問題がありますのは、ことに農地と山林であります。地方によっては今までたとえば一筆が一町と認められておるところが、実際上その地方においては一町五反もある、こういうような地帯がたくさんあるのであります。そして、たとえば私の郷里なんかにもそういう村があるのでありまして、ある村はなわ延びと言うておりますが、田畑の面積が公認されておる面積よりも広い。ところがそれを調査したならば、その広い実情のままに今度は定められるということになるわけで、それが実情に合うのでありますから、もちろんそれはいいことでありましょう。いいことでありますが、ここに因るのは、その村は反当収量が多いと認められておるのであります。実際は多くないのだけれども、反当収量が多いと——面積が多いのでありますから当然な話なんでありますが、それを名目上は面積は多くない、そこで、供出の関係とか課税関係、そんな場合においては反当収量が多いのだ、この認められておって、課税対象になりますところの土地賃貸価格というようなものも高く定められておるのであります。そういうところを一挙にして実情調査して、はっきり面積を把握したから、それを変えた、こうやられましたら、そういうところはたちまち課税の負担なんかは激増するわけであります。これが田畑でありましたならば、そういう地帯は全国的にあまり例は多くないかと思いますが、山林であれば、これはひどいものがあると思います。今までの登記所登記簿において認められておる面積のひどいのは十倍にもなるところがたくさんあるのであります。そういうのを実情に応じて測量して定められるということになって参りますと、国民負担が激変する、こういうことになると思います。そこで、それらの点をいわゆる善処するだけの用意なくして、いきなりこの法律によって実地調査をやる、こういうことになると、これは相当問題が起こるのではないかと思うのでありますが、そういうことに対しての用意はどうお考えになっておりましょうか。
  291. 平賀健太

    ○平賀政府委員 そういう山林などにつきましても、この不動産現況の把握につきましては、徐々に正確を期していきたいと考えておりますが、登記所としましては、課税ということは関係がないのでございまして、現況が正確に把握されました場合、課税をいかにするかということは、地方税法の問題、市町村の問題であろうと思うのでございます。
  292. 阿部五郎

    ○阿部委員 登記所としては、もちろん関係はありますまいけれども、登記所としてそうやって正確な面積をお出しになりましたならば、従来定められておる土地賃貸価格なんというものが、そのまま広がった面積に適用されるのはまたこれは当然であります。そうすると、国民負担に激変を生ずるわけなんでありますが、法務省としてはそんなことは知らぬわ、これでは全体としての政府の責任は免れられないのではないかと思います。当然こういう法律を施行なさる時分には、そういうことも用意してかからなければならぬと思うのでありますが、いかがでございましょう。
  293. 平賀健太

    ○平賀政府委員 国民の税負担の激変と申しますか、不均衡と申しますか、それを是正することはもちろん必要でございますが、そういうことがあるからといって、登記所で把握する不動産現況は不正確なものであってもよろしいということには決して相ならぬであろうと考える次第でございます。
  294. 阿部五郎

    ○阿部委員 おっしゃる通り、もちろんであります。もちろんではありますが、一方でその用意なしに、卒然として政府が一方だけを実行なさった場合においては、国民生活に激変を与えるのでありますから半面の用意は当然してかからなければならぬと思いますが、いかがでしょうか。かまわぬというのですか。
  295. 平賀健太

    ○平賀政府委員 現行制度では、市町村税の固定資産税ということになるわけでありますが、固定資産税の徴収という点につきましては、当然その点は十分考慮されることとなると考えるのでございます。
  296. 阿部五郎

    ○阿部委員 考慮されることになるであろうと思うとおっしゃいましたけれども、現実には考慮されておらぬのは御存じの通りであります。実地調査をどの程度お進めになるお考えか知りませんけれども、現在のところは考慮されておらぬのでありますが、それでもいいのでありましょうか。
  297. 平賀健太

    ○平賀政府委員 現在のところは、これを一斉に全面的に測量をし直すというようなことが行なわれておりません関係で、その必要がないわけでございますが、もしそういう事態になりますれば、これは当然考えなくちゃならぬことであろうと思うのでございます。
  298. 阿部五郎

    ○阿部委員 それから、今度は申告にあたって、図面を添えて申告をしなければならぬという義務を負うておる場合が多いようであります。これは義務として申告するのでありますから、なるたけ義務違反のないようにしなければならぬと思いますが、それに図面を要するというようなことになりますと、なかなかむずかしい手続でありますが、その図面とはどの程度のものを期待しておられるのでありますか。
  299. 平賀健太

    ○平賀政府委員 図面の提出は、現行の登記制度のもとにおける申告でも要求しておるのであります。土地現況というものを把握するに足るものであればいいわけであります。
  300. 阿部五郎

    ○阿部委員 そうすると、これはよほど厳格な、内容の非常に正確なものを期待しておられるそうでありますが、従来通りの程度の手続と思って間違いないのでありますか。
  301. 平賀健太

    ○平賀政府委員 根本的には変わっておりません。
  302. 阿部五郎

    ○阿部委員 もう一点だけついでにお尋ねしておきます。土地の合併を制限するように今度はなるようでありますが、その目的はどこにあるのでありますか。
  303. 平賀健太

    ○平賀政府委員 所有権以外の登記のある土地とその登記のない土地との合併を許しますと、その権利の範囲が非常に不明確になりますので、これを制限したのでございまして、また制限したために特に不便を与えるということはないのでございます。
  304. 阿部五郎

    ○阿部委員 それではその反面でありますが、一筆の土地のうちの一部を賃貸するとか、あるいはその他の権利を設定するとか、こういうことについて登記をすることは一向差しつかえないのでございますか。
  305. 平賀健太

    ○平賀政府委員 その場合は分筆をして、それから権利の設定の手続をするという建前にいたしております。
  306. 阿部五郎

    ○阿部委員 この程度でやめておきます。
  307. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 志賀義雄君。
  308. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 今、井伊委員も述べましたが、大体問題点というのはきまっておりますから、同じようなものになりますけれども、そこのところはもう質問は済みましたというふうには委員長あまり言わないで下さい。  土地についての構図、建物についての所在地のことですね、これはすぐやられないとしても、よしんばかりに若干の年月をかけてやるとしても、現在の構図あるいは所在地というものは実況に合わない面が多々ありますね。実況に合わないものを二つ合わせると悪い面が二乗されるような結果になりますが、それでもしそれを見せろと言われたような場合に、その実態に合わないものを二つ突き合わせればよけい混乱が起こるのですが、それを見せろと言われれば一体どういうふうなことになりますか、整備に年月がかかるとして。
  309. 平賀健太

    ○平賀政府委員 閲覧の請求があれば閲覧させます。
  310. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 見せますといったって、現在の状況は合わないものですよ。合わないものをおよそ何年計画で合うようにされるつもりですか、そこを伺わなければならないです。
  311. 平賀健太

    ○平賀政府委員 先ほどもるる申し上げましたように、これは一挙に正確なものを作ることはできませんので、予算の事情を勘案しながら整備していきたいと考えておる次第でございます。
  312. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 これはこういう部分的なものから始めて、そうしてそれで正確なものができるわけじゃございません。たとえば国土土調査法とか何とかいうものに基づいてこういうことはやられなければならないのです。そういう計画と別個に民事局の今の案でこういうことをやられるとしたら、これは非常に混乱を増すばかりになりますが、そういう点の計画はどういうふうにお考えでございますか。
  313. 平賀健太

    ○平賀政府委員 ただいまの御質問はこの一元化とは関係がないと思うのでございますが、現在の国土調査法による国土調査の問題につきましては、志賀委員のお考えのようにやはり統一的にやるべきもので、あっちこっちてんでんばらばらにやるのは必ずしも策の得たものではないと考えておる次第でございます。
  314. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 それをずっと整備されるとして、予算の裏づけ、それから人員、機械、技術、今までモデル・ケースでやられた結果はどうでしょう。(「さっき済んだよ」と呼ぶ者あり)モデル・ケースのことは出てない。モデル・ケースでやられた結果はどうです。
  315. 平賀健太

    ○平賀政府委員 一元化のケースは先ほど詳しい御説明を申し上げました。国土調査のモデル・ケースはやっておりません。
  316. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 「民事研修」というのに香川課長が書いておられます。今の人員ではどうも大蔵省との関係でできにくい面もあるから、一日置きに一時間超勤、こういうことでやっていく、こういうように書かれております。「民事研修」の三十号で、今のような計画をいって、一日置きに一時間超勤をやるということをいって、「しかし、いずれにしましても、移記作業及び編綴作業をあわせて二年間続く作業でありますので、その作業に従事する職員の苦労は大へんだと思いますが、先程申しましたように、登記簿台帳一元化は、登記所ないし法務行政の充実のための基礎的なものでありますので、折角努力されたいと思うのであります。」こういうようになっております。(「その通り」と呼ぶ者あり)その通りといって何ですか。今の職員にそんな測量とか何とか技術も機械もないのにこれは一体どうなさるつもりなんですか。
  317. 平賀健太

    ○平賀政府委員 ただいまお読み上げの文は一元化の作業のようでございまして、測量までやるということは考えていないのでございます。
  318. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 測量までやらないといったって、一元化するについて、正確なものを作るのに年月をかけてやるには、今言ったようなことができなければ、どうして正確なものができますか。たとえばモデルケースで最初にやった甲府でやったものは、十二時間の超過勤務でやりましたね。事実はそれほどかかったかどうかということは別として、そういうことでどれだけの作業の成績が上がったか、そういう資料も出さないでやられては困るのですがね。そういう点もあわせて……。
  319. 平賀健太

    ○平賀政府委員 モデル庁は五十八庁ありまして、その一々の資料を出しますと膨大な資料になりますので、ごらんになるのもなかなか困難だと思いましたので、こういうふうにまとめてお出ししたわけでございまして、本年の一月三十一日現在で予定量の約九〇%を完了しておるのでございます。
  320. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 私が問題にするのは、これはすでに検察事務官の場合もそうですけれども、こういうことで事実上法務省でもって、職員の憲法に規定された労働日の問題についてこれを破っていくことになりますね、超過勤務なり、そういうことになるから私は問題にしておるのです。(「超過勤務をいやな人はやらぬでいい」と呼ぶ者あり)やらしてはいかぬことになっておる。労働基準法は憲法の精神に基づいてやっておるのだ。君は委員長じゃない、ちょっと黙っておれ。——そこが職員の方でも非常に問題になっているわけです。非常に過重なことをやっているのであります。事実、帳簿一元化のことをやっていると言われるけれども、それをやるについては、目的とするところが、正確なものを作ろうというならば、人員の面からいって、機械、技術の面からいって、これを全部やってごらんなさい。超過勤務の何について、甲府市は最初のモデル・ケースで、これはえらいえさだというように、若干の人を飛びつかせてやっておいて、あとは事実上そういう予算の裏づけもろくにない。しかもそれが憲法に規定された労働日の問題にも関連してくる。そういうことになるので、私ども問題にしているのであります。最近その点で東京でやって、新宿、中野、もう一つは品川ですか、品川が一番新しいですね。それからまだやっていないところもありますが、こういう点について、あなたはこんな書類があるから、それをここに持ってきてはとてもわかるまいから、こういうふうに簡単な一枚の紙にすると言う。そんなことでわかりますか。  だから委員長、この前、委員がそろわなくてやれなかったのですが、一つ実地調査に行ったらどうですか。あれを実行しようじゃありませんか。その点を一つ委員長から言って下さい。
  321. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 登記所、いわゆる法務出張所の状況等の視察は、追って御協議の上、実行したいと思います。
  322. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 実行れるのですね。  そこで、けさ私は渡辺参考人に伺ったのでありますが、申請があった場合と職権をもってやった場合とについて、既登記分に対して増築した場合、申請があった場合は千分の六になっておりますが、職権をもってやった場合はその率はどうなりますか。たとえば二十坪の建物に十坪増築したような場合は……。
  323. 平賀健太

    ○平賀政府委員 すでに所有権登記がなされておれば、事柄自体は同じことであります。やはり千分の六の登録税でいいわけであります。
  324. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 それはどういう方法でとられるのですか。率は同じだと言われるのは……。
  325. 平賀健太

    ○平賀政府委員 納税令書を交付して、税を徴収することになるわけであります。印紙で納めることになる、同じことであります。
  326. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 この提案理由に、最近不動産移転が非常にひんぱんになってきたということは、経団連からの要望にもありましたし、また局長の説明にもありましたが、登記法職権主義を入れてやる場合に、絶えず登記簿現況の一致のために、警察のパトロールみたいなことになってきた場合には非常に困るのでありますが、そういう職権は一体どういうことになりますか。
  327. 平賀健太

    ○平賀政府委員 職権調査の実際の運用の問題についてでありますが、交番のおまわりさんのように、毎日パトロールというわけには実際問題としてこれはいかぬと思います。
  328. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 これも渡辺参考人に私が伺ったのですが、これは民事局に特に聞いておいていただきたいと申しました点です。それを今伺いますけれども、登記官吏が職権登記簿記載した事項が現況と違って、商取引その他に損害を与えた場合は、国家賠償法第一条に基づきまして国家が当然賠償責任を負うと思うのでありますが、その点はどうでしょうか。
  329. 平賀健太

    ○平賀政府委員 現行制度のもとでも同じでありますが、国家賠償法に定めておる不法行為の要件があれば、国が損害賠償責任を負うことになります。
  330. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 それからこれは参考書類が出ておりますが、関連法令、その中で土地収用法だけが出ていないのでございます。これは今法務委員会で審議しております刑法の一部を改正する法律案で、不動産侵奪罪ということが問題になっております。これは今後の労働運動あるいは農民運動その他にも非常に関係してくる問題であります。やはりそこに一脈の関係があるのでありますが、土地収用法だけを関連法規としてあげられなかったのは、これは全然関係がないからというお考えからでありますか。
  331. 平賀健太

    ○平賀政府委員 今度の一元化に関連しましては、土地収用法というものの規定で改正すべきものがないから、土地収用法自体の改正はいたしていないのでございます。
  332. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 土地収用法に三十五項にわたって具体的に関連がある場合がありますね。具体的にこういう場合、こういう場合と、三十五項ほどあげてあります。それでその土地収用法に基づいてやられるような場合、不動産登記事務を簡素化してやる、こういうことでやられた場合に、実際民法上の対抗権がないような場合、あなたはけさほど田中委員質問に対して対抗権がないということを言われました。そして休憩時間のことですが、私が伺った場合には、この法律の改正によって第三者に対する対抗権というものは消滅するのかということを伺いましたね。つまりなくなるのか、これは対抗権を保障するものではない、表示については。じゃそれはどうなるかということを伺った、それについてはどういうお答えをなさいますか。
  333. 平賀健太

    ○平賀政府委員 御質問の趣旨を私よく理解いたしておらないかもしれませんが、表題部所有者表示してあるのは、所有権表示ではない、表題部所有者として表示されているからといって、所有権が第三者に対抗権を持つのではない、所有権登記は国に所有権登記としてした場合に限って、初めてそれが第三者対抗力を持つ、そういうことでございますが、どうも土地収用法の関係は、土地収用法中には今度の一元化と関連いたしまして改正すべき規定がないのでございます。その関係土地収用法は別に一部改正をいたしていないのでございます。
  334. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 今のお答への前半ですね、表題部表示によっては第三者に対する対抗権はできない、そうすると、登記ということはやはりやらなければならないでしょう。そうなってくると、その登記事務はやはり残らなければならぬ。そうするとあなた方の一元化して簡素化するということの趣旨に沿わないのではないのですか、よけいに仕事がそれだけふえるということになりませんか。登記というものは第三者に対して対抗し得る権利を持つためにやる、そういう性質のものを含んでいるのですね。今度表題部表示してもそれができない。すると、今度は登記するだけ、それだけ簡素化ということにならなくて複雑になるじゃないか。その点はどうでしょう。
  335. 平賀健太

    ○平賀政府委員 複雑には決して相なりません。
  336. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 どういうわけですか、説明して下さい。
  337. 平賀健太

    ○平賀政府委員 現行法のもとでも、まずたとえば建物を新築しますと、台帳申告をして、それから所有権保存登記ということになるわけであります。この制度のもとにおきましても、表題部登記申請をして、それから所有権登記、この関係は現在と同じで、手続が複雑になると言いますが、建物の新築とか土地が新たに生じたというときはそうでございますが、そうではなくて、一たん建物を建てており、所有権登記をしておるという場合に、それを増築いたしました場合に、現在でありますと、台帳の方で床面積の増加の登録申告をしまして、それから、さらに今度は不動産登記簿表題部の方で表示変更登記と二重の手続をすることになるわけでございますが、一元化ができますと、不動産表示変更登記一本で済むということになるわけで、簡単になるわけでございます。
  338. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 もう一つ、私がわざわざ議事録を読み上げて、手数料等の値上げは考えておりませんと言われていたのが、昨年の十二月十八日政令でもって三十円を四十円に上げた。これの増収が一億三千万ないし二億円。ただいま手数料の値上げなど考えておりません、こういうふうに、三十一国会で、私の質問に対して言われましたね。それをもう上げておられるでしょう。数字まで私はあげました。その点はどういうわけで急に変更されたのですか。
  339. 平賀健太

    ○平賀政府委員 あの際は、この一元化ということは決して国の財政収入の増収を目的としたのではないという趣旨を申し上げたのでございます。
  340. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 違う、違う。一元化の場合について、司法書士の収入が減少するという心配が起こっておる。この問題はこの問題で別個に取り扱われました。それに関連した質問ですよ、一元化するかしないかということは。私のさっき読み上げた議事録については、そういう質問じゃないのです。ただいま手数料を値上げするようなことは考えておりません、大蔵主計官がそのとき参考人として出ておられて、私ども昭和四十年度に実現するのでございますからそういうことは考えておりませんと、あなたの言ったことを裏づけするようなことを言われているのです。だから、一元化することについての質問じゃないんです。それは司法書士の場合のことについて私が言ったんですよ。
  341. 平賀健太

    ○平賀政府委員 ただいま申し上げましたように、一元化によって国の財政収入を増そうとか、あるいは一元化によって司法書士の報酬の基準を引き上げようというようなことは考えていないという趣旨を申し上げたのであります。
  342. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 それではどういうわけで値上げされたのですか。私に対する答弁と違う。
  343. 平賀健太

    ○平賀政府委員 昨年中に登記の手数料の値上げ並びに司法書士の報酬の基準を引き上げましたけれども、これは物価その他これに類似の手数料その他との権衡を考えまして、相当長い期間にわたって従前の手数料なり報酬の基準を据え置いておりましたので、これを引き上げるのが適当だということで、一元化とは関係なしにそれぞれの処置をとったのでございます。
  344. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 きょう最初に渡辺参考人のときにも申し上げましたが、経団連の方からの要望のことについてちょっと問題を出しておいたのでありますけれども、いろいろ説明を見ますと、これとうらはらになっているのであります。それで、一見登記制度を近代化するように見えますけれども、法務省民事局考え方と法案の内容を見ますと、経団連の要求、つまり工業都市、公共土木、高速度道路その他のための合理化であり、また基地などの不法土地取り上げに対する合理化であるということになっておりますし、また、私どもとしてはこの間三十一国会でこれは増税の基礎になるということを言ったのでありますが、そのときにはあなたも否定されたし、それから大蔵主計官も否定されたのでありますけれども、この増税ということについてはどういうふうにお考えでございますか。
  345. 平賀健太

    ○平賀政府委員 一元化によって何も増税となるわけではございませんので、むしろ、登録税法を改正しまして、不動産表示登記については、建物の増築の場合を除きましては、無税にいたしたのでありまして、むしろその点では減税の措置をしたものと見ております。
  346. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 ぬけぬけとそんなことを言われるけれども、さっき、増築の場合だって、今度職権でやった場合には、千分の六は同じように取ると言ったじゃありませんか。それを今聞くと、そんなことはありません、どっちがほんとうなんです。
  347. 平賀健太

    ○平賀政府委員 増築の関係は現在でも登録税を取るわけでございますが、増築以外を除きましては、不動産現況変更を生じました場合の表題部登記については全然登録税を取らない、従来は取る建前でありましたのを取らないことにしたのでございます。その関係では減税でございます。
  348. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 増築の場合のことを言っているのです。あなたは、増築の場合を除いてと答えたのでは答えにならないじゃありませんか。
  349. 平賀健太

    ○平賀政府委員 増築の場合は現在でも登録税を取るのでございます。
  350. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 冗談じゃないよ。千分の六を取っているじゃないか。(「今までだって取っているから、今までと同じだと言っているのだよ」と呼ぶ者あり)そうじゃないよ。——では委員長、この問題については実情を見る必要があります。いずれ協議の上視察するということ。何だか、さっきから委員長も自民党の諸君もこれを非常に急いでおられるようであります。(「急ぐという約束だから……。」と呼ぶ者あり)約束事項ではないよ。だって、約束したことも実行してないじゃないか。そういう点で、もう少しこれを審議して、視察の結果もあわせてやるようにして下さい。相談してきめるといったって、相談してきめたことをやらないじゃありませんか。
  351. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 ほかに御質疑もないようでありますので、理事会の申し合わせによりまして、本案についての質疑はこれで終局することにいたします。  実情を見るということは、この法案そのものには面接関係ないと思いますので、あとでまたやることにいたします。  本日は、これにて散会いたします。     午後五時四十九分散会