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1960-04-20 第34回国会 衆議院 文教委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年四月二十日(水曜日)     午前十時五十九分開議  出席委員    委員長代理 理事 臼井 莊一君    理事 稻葉  修君 理事 簡牛 凡夫君    理事 木村 武雄君 理事 高見 三郎君    理事 長谷川 保君       進藤 一馬君    竹下  登君       谷川 和穗君    灘尾 弘吉書       濱野 清吾君    八木 徹雄君       金丸 徳重君    高田 富之君       山崎 始男君    鈴木  一君  出席国務大臣         文 部 大 臣 松田竹千代君  出席政府委員         総理府事務官         (公正取引委員         会事務局長)  坂根 哲夫君         文部事務官         (初等中等教育         局長)     内藤譽三郎君  委員外出席者         専  門  員 石井  勗君     ————————————— 四月十四日  委員受田新吉君辞任につき、その補欠として鈴  木一君が議長の指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  学校教育教科書問題)に関する件      ————◇—————
  2. 臼井莊一

    臼井委員長代理 これより会議を開きます。  本日は委員長が所用のために出席できませんので、その指名により理事の私が委員長職務を代行いたします。  学校教育に関する件について調査を進めます。教科書問題中心質疑を許します。長谷川保君。
  3. 長谷川保

    長谷川(保)委員 まず初めに伺いたいことは、前会にお願いしました資料について三つほど出していただいたようでありますが、私が今後調べて参りますについて一つ重要な資料が出てこないのであります。それは過去五年間の重要な十の会社教科書販売の額を、できれば一目でわかるようにグラフにして出してもらいたいということを申し上げたのでありますが、それが出ておりません。先ほど個人的に、それはちょっと困る事情があるからという岳がありましたから、どうして出ないかをこの際おっしゃっていただきたい。
  4. 内藤譽三郎

    内藤(譽)政府委員 十大会社の過去五カ年間における販売部数教科書売り上げ総額を出せというお話でございましたが、私もあの機会に、従来文部省はそういうものを公表しておりませんので、教科書会社の御了解が得られたならばというふうに条件をつけて申し上げたわけであります。特に昭和三十六年度には小学校の教科書が全部変わりますので、先日来いろいろと御質疑がございましたように、販売合戦が熾烈になることも予想しておるわけでございます。そこでそういう各会社営業成績が出るようなことは、ますます販売合戦に利用されやせぬかということが一つと、もう一つは各教科書会社営業の自由はできるだけ尊重して参りたい、こういう観点で、私どもも実はこの点については長谷川委員資料要求の際にも念を押しておいたわけでございますが、教科書協会とも相談いたしましたところ、教科書協会出していただきたくないという御意見でございましたので、これは一つお許しをいただきたいと思うのでございます。
  5. 長谷川保

    長谷川(保)委員 文部省出しておりまする三十五年度使用教科書採択事務取扱要領というのがございます。三十四年四月にお出しになったのが私の手元にあるのでありますが、その七ページ及び八ページに教科書採択につきまして詳しく出ております。これを見ますと、教科書需要票A票)、教科書需要一覧表C表)、さらにこれを総合いたしまする(D表)というものがございまして、(D表)は都道府県委員会がその県の公立学校で必要な教科書の種類、数を一覧表にいたしまして、そして文部省に送付するということになっております。また発行者にも送付するということになっております。従って文部省には年々のこの需要表というものがはっきり出ているわけです。各会社のものが出ているわけです。ですからそれをお調べになればすぐわかる。これを私ども議員資料として要求いたしますときに、お出しにならないという理由はないと思う。ことにこれは秘密のものではないと私には思われる。というのは、業界誌にも、年々これが決定しますと発表されておりますから、これは当然わかります。それからさらに教科書協会なるものが御承知のようにあるわけです。この教科書協会の方でもはっきり集計ができている。でありますから、これは今お話しのような、販売会社の、教科書会社営業にいろいろ差しつかえるからという筋のものではなくて、もうすでに公表されている、これを集計すればいいわけです。だから少なくとも文部省におきましては、その資料はちゃんと整っているはずです。文部省に整っております資料を私ども要求する、それが出ないという理由がないではありませんか。
  6. 内藤譽三郎

    内藤(譽)政府委員 文部省職務上知り得た事実でございまして、これは私ども手元にございます。ただそれを集計いたしまして、各会社営業成績一覧表でわかることになりますと、やはり会社の信用の問題も私はあろうかと思うし、それからもう一つは、この三十六年度の教科書採択にあたりまして、非常に宣伝合戦が熾烈になることが予想されます。たとえば過去五カ年間この会社は非常に伸びておったという資料が出ますと、らちの会社日本で一番いいんだということを言って宣伝された場合、その他の会社は非常にお気の毒だと思うのです。会社によっては、非常にいいものも私はあろうと思う。その場合、うち会社日本で一番いいんだと宣伝されることは、これは公正な取引、公正な採択を確保する上から申しましていかがかと思いまして、従来文部省はこういうことは秘密扱いにして部外秘にしております。教科書協会一般には公表していないということを申しましたので、私どももそういう措置をとったわけでございます。
  7. 長谷川保

    長谷川(保)委員 この資料をなぜ私が重要だと考えているかと申しますと、検定採択にあたって、この傾向を見ると、大体どういうようなふうに今日の検定というものがなされておるか、教科書採択というものがどういう形でなされているかということがわかって参ります。実は私は、この教科書問題が今年は非常に大きな問題になっておって、数カ月前から一応私の微力な手でありますけれども、できるだけの調査をいたしました。たくさんな困った例が出て参りました。私その例を調べて持っているのであります。その例と、この教科書発行傾向とを調べて参りますと、そこに思い当たる節が当然出てくるのであります。そして今お話によりますと、非常にいいものをたとえば小さい会社で作っているものがある、それは私もそう思います。しかしある非常によけい売っている会社が、うち会社が一番いいんだということでそれを宣伝されて、小さい会社のいいものが取り上げられないと困るという、いかにも公平なように聞こえる。けれども、大よそ各教科書会社で、よその教科書会社が幾ら売っ  知らないということはあり得ないのであります。しかも教科書協会というものは、これらの教科書会社が一緒になってやっている社団法人であります。その社団に加わっておる社員であります教科書会社に、それを発表しないはずはないではありませんか。そこでその集計というものは、ちゃんと発表されているにきまっているじゃありませんか。でありますから、あなたの今の御答弁は、いかにも一般のしろうとが聞いていると、もっともらしく思えるでありましょうけれども、しかし少しく内容を立ち入って調べました者にとりましては、これはいかにも白々しいお答えである。これは私ども今日まで数カ月の間、いろいろな実情から調べて参りますと、今のお話のような意図のもとになされているのではなしに、何らか私ども実情をできるだけ知らさないというような御意図のように考えられるのであります。この数年の間の、私が文教委員会関係いたしましてからの文教当局傾向を見ておりましても、どうもおりおりそういう傾向を私は感じて、非常に不快に感じる。前会にも申し上げましたように、私がこの問題を取り上げまする理由は、今日の日本社会というものはいかにも腐敗してきておりますけれども、しかし、次の世代に私ども希望を持ち得るとするならば、教育であります。この次の世代希望を持ち得る教育がもしよごれてしまうならば、もはやわれわれは日本の将来に希望を持ち得ない。今日私どもの責任と、また大きな義務は、せめて次の時代というものをほんとうにりっぱにするために、教育を汚れなきものとして守り、憲法が示すような、教育基本法が示すような、平和と民主主義、個人の人権をほんとうに守るという、そういうようなものとして今日の教育をりっぱなものにしたいというのが心からの念願なのであります。従いまして、今日私が調べ、また世間で最近急に取り上げられてきておりまする教科書検定及び採択にからみますいろいろな曲がったものを正しくするためには、できるだけの資料当局に提示してもらわなければならない、そうしなければ私ども判断がつきませんし、どうやって今日の文教政策を守っていくか、正しいものにしていくか、次の世代をりっぱなものにするかという方策が立ちません。文部省教科書課に当然あります。そういう資料を出せないという理由は、今お話しのようなことでは納得できません。当然お出しになるべきだ。どうしてお出しにならないんです。これは御承知のように、私ども議員法律によって当然の権利として与えられているものであり、国会審議権の重大な問題に関係するのです。聞くところによりますと、参議院でもそういうようなたぐいの問題について文教当局社会党の議員との間にいろいろな混雑を来たしているようでありますけれども、率直に事務当局にこういうものを出してもらいたい。一体、今中しましたように、教科書協会という社団法人があって、それに各社みな加わっているが、それらのものが知らないという理由がないじゃありませんか。当然みな知っております。だから、今のようなことをお隠しになったって何の役にも立たぬ。当然これを明瞭にすべきだ。これはお出しになりますか、お出しになりませんか。
  8. 内藤譽三郎

    内藤(譽)政府委員 先般来三十六年度の教科書採択が大へん熾烈な競争が行なわれ、激化されることは長谷川委員もお述べになっておるところでありまして、私どもはこれを一般に公表した場合に採択にどういう影響があるかということを考えますと、これは軽々に出せないのではなかろうか。特に問題は、採択に対する影響という点を私どもは非常に重視しておりますので、こういう観点から差し控えたいと思って、こう申し上げたわけでございます。
  9. 長谷川保

    長谷川(保)委員 一般に公表しなくたって、議員出したらいいじゃないですか。なぜ議員に出せないのですか。これは法律で私ども資料要求した場合に出さなければならぬことになっているでしょう。それを一般に公表するのじゃなしに、議員に出せないというのは納得できません。
  10. 内藤譽三郎

    内藤(譽)政府委員 委員会に提出いたしますれば、これは原則として外部に漏れますし、漏れた場合に、どこの会社がどういうような成績であるかということが一目瞭然にわかると思います。この場合に、業者はうすうす他の業者のことを御存じかもしれませんけれども、しかし、自分のところはこれほどいいのだ、あの会社はこんなに悪いのだ、もうこの会社はつぶれそうだ、だからわしの方がいいのだというな宣伝をされるのに非常にいい材料になるのではなかろうか、他の会社中傷、誹謗するのに役に立つような資料はできるだけ差し控えたい、こういう考えであります。
  11. 長谷川保

    長谷川(保)委員 さきに申し上げましたように、教科書協会というものは各教科書会社がみな加わっている社団法人でしょう。ここに私は教科書協会の定款を持っております。だから、社団法人の中でこれがわからないはずはないでしょう。それとも、社団法人教科書協会の会長と申しますか、理事長と申しますか、山田さんや、あるいはまた元教科書課長であった専務理事鈴木さんだけが知っておるので、ほかは知らないということなのですか。みなわかっているでしょう。教科書協会社員はそんなものがわからないはずはない。また、そういう書類は教科書協会へ行くのでありますから、それは当然社団法人教科書協会におきましても社員に提示するでしょう。常識から考えて、一般教科書協会に加わっておる教科書会社が知らぬということはないでしょう。そういうことは私どもには常識として考えられない。当然わかっておると思う。あなたは教科書協会加盟社員である各教科書会社が知らないというようにお考えですか。
  12. 内藤譽三郎

    内藤(譽)政府委員 教科書協会の内部については私もよく存じておりませんが、ともかく、こういう資料、過去五カ年間の営業成績一覧表とも称すべきものを一般に公表するということはいかがかと思うのでございまして、特に採択の時期を控えて、これから展示会が行なわれようとする直前にそういうものを出すことはいかがかと思うのでございます。
  13. 長谷川保

    長谷川(保)委員 くどいようですが、私は国会審議権に関する問題ですから、これはあとへ引くわけに参りません。しかも、こんなものは何の秘密ですか。業界にも発表されているんじゃありませんか。それとも、一般に公表できないものは国会代員にも公表はできないというのですか。私どもがこの委員会で審議していくのに必要な資料として要求した場合に、一般の国民に公表できないことはわれわれ国会議員にも渡せないということになっておるわけですか。その法律根拠を聞きましょう。
  14. 内藤譽三郎

    内藤(譽)政府委員 もちろん文教委員会の御決定がございますれば、できるだけのことは善処いたしたいと思いますけれども、私どもとしては従来そういう扱いをしてきませんでしたし、特に業界でいろいろ中傷、誹傍が行なわれて、不正な取引が行なわれておるこういうやさきに、そういうものを出すことがはたして採択を公正にできるかどうか、こういう点を懸念いたしますので申し上げたわけでございます。
  15. 長谷川保

    長谷川(保)委員 私どもに渡せないという法的な論拠を示してもらいましょう。
  16. 内藤譽三郎

    内藤(譽)政府委員 渡さないとは私も申し上げておりません。文教委員会の御決定がございますれば、善処したいと考えます。
  17. 長谷川保

    長谷川(保)委員 この前の委員会で私が請求して、そうして委員貝長はそれを禁じたわけじゃなかったし、あのときにはっきり決議はしなかったかもしれませんが、しかし、委員長は一応取り上げてきたでしょう。それで出さないというのは変っじゃないですか。あなたが今おっしゃったような理由というものは理由にならぬと私は思う。
  18. 内藤譽三郎

    内藤(譽)政府委員 先般の委員会長谷川委員から資料要求がございましたときに私も申し上げたのですが、これは各会社営巣成績にも影響することだし、今後の採択の問題もありますから、一応教科書協会の承諾を条件にと、こう私申し上げたつもりでございます。それで、協会の方は御遠慮していただきたいという御希望でございましたので、そうお伝えしたわけでございます。
  19. 長谷川保

    長谷川(保)委員 それではあなたと水かけ論をやってもしょうがない。あなたの言うことは全然納得できません。国会審議権に対してあなたは僣越にも誠意を示さないというようにしか私にはとれない。きょうは委員長が不在でありますから、次の委員会理事会において私は請求することにしますから用意をして下さい。国会審議権に対してこれくらいの資料を出せないということは納得できません。承服できませんから、さよう御承知を願いたい。その問題は次の理事会において諮ることにいたします。  それではきょうの質問に入りたいと思います。  文部省の方では教科用図書検定基準というものが出されており、それには絶対条件、あるいはまた必須条件というようなものが書かれておりまして、私どもも一読いたしました。文章だけを読んで参りますと、まことにもっともなことが書いててあるのであります。しかしこの数年来、ことに三十一年の第二十四国会におきまする教科書法案が流れたころからいたしまして、検定の問題が識者の同にだいぶやかましい問題になって参りました。なるほど教科用図書検定基準を読みますと、もっともらしいことが書いてございまして、別にここが悪い、あそこが悪いというようなことを私どもが取り立てて言うようなものはないのでありますが、しかし当時から非常に問題となりました、ことにF項パージといわれましたF項なる人が高山岩男氏であったということが一部の印刷物に出ておって、拝見したのでありますけれども、さらにまた戦時中の皇国史観の平泉さんの三羽ガラスの一人といわれた村尾さんが、今日の社会科の歴史の担当の調査官であるというような事情を伺いますと、私どもなるほど一般識者の間でこの問題が大きな問題になってきているという理由がわかるように思うのであります。そして調査官という存在、一人々々どういう人であるかということを調べる必要がある。これによってまたそれらの人が検定をして参りまするその傾向を調べることにより、日本教育に現われました今日の傾向というものを端的に見ていくことができるであろう、こう私は考えたのであります。そこで先般も調査官の氏名を同僚委員がいただきまして拝見をいたしたのでありますが、今私もこの前歴について十分に見たいと思って調べております。このことは、最近ある一部で言われますような今日の文部省検定検定ではなくて検日だというようなこと、また一部に言われておりますような検定自体にも汚職がつきまとっておるのではないかというようなこと、こういうことが考えられるのでありまして、私はこの問題を調べることが非常に重大だと思うのであります。一体この調査官を選びます方法、その基準、これはどういうふうにしてやっておるのですか、実情を明らかにしていただきたい。
  20. 内藤譽三郎

    内藤(譽)政府委員 調査官を創設した当時における選考基準といたしまして、第一に「旧制大学学部卒業者又はこれと同等以上の学力を有すると認められる者」、第二が「経歴本紙等からみて、調査官として担当すべき事項に関し、大学教授又は助教授となりうる程度の専門の学識があると認められる者」、三に「初等中等教育に関し理解と識見を有する者」、四が「視野が広く、かつ、人格が高潔で円満である者」第五が「思想が穏健中正で、身体健全である者」、六が「昭和二十三年度以降の検定教科書著作編集に従事したことのない者」、七が「教科書発行者に密接な関係のない者」、八は「原則として年令三十五才以上五十五才未満の者」、こういうような選考基準によりまして創設当時は選考いたしたのでございます。
  21. 長谷川保

    長谷川(保)委員 だれが選考したわけですか。
  22. 内藤譽三郎

    内藤(譽)政府委員 これは文部省初等中等局中心官房次官のところで選考したのでございます。
  23. 長谷川保

    長谷川(保)委員 そうしますと、思想の穏健だということはどういうことを標準にしてお考えになったのですか。
  24. 内藤譽三郎

    内藤(譽)政府委員 思想が片寄ってなくて中正な人、こういう意味でございます。
  25. 長谷川保

    長谷川(保)委員 思想が片寄ってなくて中正だという共準はどういうところに置いたわけですか。
  26. 内藤譽三郎

    内藤(譽)政府委員 極端に右でもなければ左でもない、こういう者でございます。
  27. 長谷川保

    長谷川(保)委員 そうすると、今初中局中心になっておやりになったとすると、初中局長中心になってやったということにもなりましょうが、初中局長思想が穏健で中正だと考えたものということでありましょうが、それには当然右とか、左とか申しますけれども、おのずからその人の主観が入るわけでありますが、こういう公的なものでありますから、主観でなしに何らかの基準があったろうと思う。基準はなしで、ただ結局局長その他の諸君の単なる主観的な判断でやったのでしょうか。何か特別な基準があったのでしょうか。
  28. 内藤譽三郎

    内藤(譽)政府委員 私当時初中局長ではございませんでしたが、次官中心におなりになって、初中局局長課長視学官意見を聞かれたと思いますし、またそれぞれ推薦される人柄にもよると思うのです。推薦される人柄がこの人物は大丈夫だ、これはぜひ採用してほしいという、著名な方の御推薦もあったろうと思う。官房において人事課長も参加しまして、関係者が十分審議した結果適当であるという判定をいたしたわけでございます。
  29. 長谷川保

    長谷川(保)委員 たとえば高山さんと実は私は郷里を同じくしていますが、高山さんは御承知のように京大の哲学を担当しておられると記憶しておりますが、それからパージ、それから復活して学習院教授になられようとして活水幾太郎先生その他に不適当だといって締め出しを食わされてしまったというふうに経歴は記憶しております。私の記憶が違っておるかもしれませんが、そう記憶しております。そういう人がこういう検定について大きな発言をなさったということでありますが、思想の温健中正というのは見る人によって全く違うのですね。だからそこに非常に危険性があるとこの前私は申し上げたのでありますけれども、政治的な中立あるいは教育基準というものをどこに求めるかといえば、それは日本国憲法だと思う。それで教育公務員というものは、ことに政治的な中立というものを法律によって強く要求されているというときには、これはやはり先生だけの問題でない、教育全体がそういう立場を貫いていかなければならないということは当然であります。だから最もおもな教材だとされております教科書検定いたしますのに、その基準というものを憲法あるいは教育基本法に求めるということは当然でありまして、それが基準でなければならない。だからそうでないと、いつかも本委員会でいわれましたように、教育の政治的な中立性というものは保てなくなってくる。ときの与党によってどうにでもなってしまうということになる。それであってはならないと思う。教育をするということは次の世代の人を教育するのでありますから、従って今日の基準考え方だけでやってはならない、だから今日のあり方だけでやってはならない。そこに政治的な中立という意味がある。でありますから、文部省文教行政をやるときに、与党意向だけをもってやってはいけない、これは当然なことであります。いつか私ども与党になるかもしれませんが、私どももそういうことをやってはならぬと思う。だからそういう点で、ついこの間は教授として追われ、また日本の一流の学者と考えられる清水幾太郎先生その他に締め出しを食わされたその人が、いつの間にか文部省中心になって検定の側に、パージ中心人物になっているということは、——これは私は、検定というものが非常に危くなってきている。検閲だといわれてきている理由がそこらにあると思う。だから調査官の人選については、ほんとうにやはり文部省自体も、文教行政自体政党から中立でなければならぬ。しかし、この問題については、根本問題でありますから他の機会に論議したいと思います。  次に、この検定について、形式上では大きな発言をするという形になっておりまする調査員、これが全国に五百名くらいあるようにこの間伺ったと思いますが、調査員意向は実際問題として、検定にあたってはどの程度取り上げられているのか、実情を伺いたい。どうか隠さないで言ってもらいたい。もし実情を隠されれば、私どもは正しい判断をすることができない。何も私は文部省をとっちめようというわけじゃない。ただ変に隠されると、私ども勘ぐらざるを得ない。それでは、私の方で持っておりますいろいろな資料をぶちまけざるを得ない。この間も申し上げたように、私は犯罪人を作ろうという気はみじんもない。そうではなくて、何とかして教育をりっぱなものにしたいという一念から言っておるのであります。従って、隠さないでもらいたい。事実を明らかにされなければ、どこに手を入れていいか、どこをどう押したらいいかわからないから、隠さないでもらいたい。
  30. 内藤譽三郎

    内藤(譽)政府委員 教科書検定の一応の決定は、教科用図書検定調査審議会というものがございまして、ここに八十名ほどおるわけであります。この方々がそれぞれ教科別に分属しておりまして、その検定審議会の最終的な判断をされるわけですが、その前に、文部省調査官がそれぞれ教科について合議制をとっておりまして、社会科で申しますと、約十人の調査官が合議制でこれはいいとか、これは悪いとかいう判断を個々にするわけであります。総括的な判断ももちろん必要でありますが、一応各ページごとに検討いたしまして、誤記、誤植、内容の不正確等がございますれば、こういうものを整理いたしまして、不正確のようなものは、A意見としてあげるわけです。どうも適切でないというようなものはB意見として、調査官が一応の意見をまとめます。同時に、調査官だけでは手の届かない分がございます。特に現場の先生が使ってみて、これがこなせるかどうかという点が教科書としては非常に大事だと思う。たとい学問的に間違ってなくても、小学校の一年に向くか向かないかというようなことは、現場の先生方の判断に待たなければならぬ点が多々あろうと思います。あるいは特に専門的な事項については、それぞれの専門家でないとわからない分もございますので、そういう分もあわせて、大学の特殊な専門家合わせて五百名程度を調査員として御委嘱いたしておるわけであります。調査官意見と同様に、その調査員意見書というものが文書で出ておるわけであります。会議では調査官が報告いたします。そのあとで調査員意見を申し上げる。そうしてA調査員はこういう意見だ。大体一冊の本について三人か五人の調査員意見を述べられております。その意見を相当こまかに詳細に審議会に御報告する。審議会の委員先生方は、同じ検定用の本を事前にたんねんに調べておいでになる。審議会委員委員としての御意見をお持ちです。その場合に、調査員意見調査官意見、審議会の委員意見が一致しますれば、これは問題ないわけです。ところが、この論議の過程で審議会の委員がいろいろと検討された結果、調査官意見必ずしも妥当でないということも発見されると思う。そういう点で、十分論議を尽くされて、このくらい熱心な調査審議会の委員会というのは、私、見たことがない。大体昼から始めますと、いつも夜の十時ごろは普通なんでございまして、大へん一冊の本について私がびっくりするほど熱心に御審議をしていただいておりますので、調査員意見も十分審議会には反映する仕組みになっておるのでございます。最終的な決定はこの審議会がする、こういう建前になっておるのでございます。
  31. 長谷川保

    長谷川(保)委員 この調査員というのは、全部名前が隠されておるとのことでありますけれども、どういう理由でそういうことになっておるのですか。
  32. 内藤譽三郎

    内藤(譽)政府委員 調査員は、各府県の教育委員からの御推薦あるいは各大学からの御推薦でお願いいたしておるのでございますが、別にこういうものを一々公表する必要はないと考えておるわけでございます。
  33. 長谷川保

    長谷川(保)委員 そうすると、必ずしもこれは隠しておかなければならぬというわけではないのですね。公表してもいいわけですね。
  34. 内藤譽三郎

    内藤(譽)政府委員 現在のところ、私どもは公表しない方がいいんじゃないかと思いますのは、これがもちろん決定機関でございませんので、決定する機関は、教科用図書検定調査審議会でございますので、これは公表しております。責任ある人でございます。それから調査官についても別に公表しておりません。それから調査員についても一般に公表しているわけではございません。ただ、現状のところを申しますと、五百名の調査員にいろいろと運動されたりすると、調査員の方々が大へん御迷惑になりやせぬかというので、公表を差し控えているようなわけであります。
  35. 長谷川保

    長谷川(保)委員 この点も、町内で知らぬは亭主ばかりなりという言葉がありますけれども業者はみな知っていると思うのです。全部知っていると思うのです。また私の調べたところでも知っておるようです。かえって覆面をしておるというために、一般の人は知らなくて、たとえば私どもは調べるまでは知りません。知らなくて業者だけが知っている。従ってこっそりここに運動するという手が出てくるわけですね。だから、むしろ公表してしまってあれば、はっきりしておれば、周囲で見ています。ああ、あそこに業者が入った。ああ、あそこのところに何が持ってこられた。ああ、あの人がどこそこの宴会に呼ばれた。ですからはっきりしておればこの人たちは悪いことはできません。むしろ覆面にしておくことの方が検定、——これは採択につながるものでありますけれども、それ自体を不明朗にするのではないか。こういうように私には思えるのであります。そういうように、むしろこれははっきり表に出した方がいいんじゃないかと思いますけれども、その点についてどうお考えになりますか。
  36. 内藤譽三郎

    内藤(譽)政府委員 調査員の方は、ほとんど二年交代に全部変わっておりますので、それが一々公表するということもまた一つの方法だろうと思います。ただ、今申しましたように、二年交代にほとんど変わっておりますということは申し上げてあります。それから、全部公表しろということでございますれば、これも一つの方法かと思っております。特に本人がそういうことを了承して下さるならば、私はそれも一つの方法であろうと思いますので、今後検討させていただきます。
  37. 長谷川保

    長谷川(保)委員 そうしてこれがはっきりして参りますと、今日何もかもむしろ表に出して参りますと、また明朗になるのではないか。そうして自由なそれぞれの立場というもの、調査員の方々にいたしましても、その他のわれわれ周囲の者にいたしましても、一般識者教育関係者の諸君にいたしましても、それらの意見というものが純粋な教育の立場に立って正しいか正しくないかということの批判がはっきりできてくるように思われるのでありますが、この点についてはまた後ほど触れたいと思います。  次に、この検定にあたって原稿校正、それからできたものを出し検定を受けるようでありますけれども、この検定にあたっては、かつては出版社は修正意見や不合格理由を文書で知らされたようであります。ところがこの調査官制度ができてから後今日では、不合格理由のみごく簡単な抽象的な理由を書いた文書で知らされる。そうしてたとえば合格する場合の修正意見だとか、あるいはまた不合格になった場合の理由だとかいうものは口頭で知らされておる。どうして文吉でなしに口頭でするようになったのでしょうか。
  38. 内藤譽三郎

    内藤(譽)政府委員 不合格の理由書は現在も文書で出しております。従来も文書で出しておりました。ただ今回は少し簡単にしたということでございまして、これを詳しい文書で出せとおっしゃるならそれも一つの方法かと思っております。ただ、実際問題として本年五百冊、小学校の場合に五百点の検定が出願された。その指示する場合に、これは大へん手数がかかるわけでございまして、しかも短期間にやらないと、これを長期間にやりますと、初めに指示されたところと、後に指示されたところが非常な不公平になるのです。と申しますのは、これから新しく編集を始め直すにいたしましても、印刷にいたしましても、大へんな問題でございまして、一週間を争うような状況でございます。そこで現在のところ短期間に指示するという場合に、文書で一応出しますが、口頭でできるだけ詳しく御説明いたします。こういう手続をとったわけでございます。従来も文書で出しましたが、もちろんこの文書も若干の程度が違いますけれども、簡単な文書で、業者の方にいたしましては、これでは死亡診断書のようなもので何にも役に立たない、こうおっしゃいますので、もっと親切に、文部省は不合格になったら不合格の点を明らかにしてほしい、こうおっしゃったので、そういう措置をとったわけでございます。別に他意はございません。
  39. 長谷川保

    長谷川(保)委員 こういう点が明瞭に文書で出されますと、昨日参議院におきまするようなああいう問題がなくなってくると私は思う。業者の方に四、五当たって聞いてみました。そうするとやはりこの点が非常に困っておる。口頭で言われる。業者文部省の一室でこれをメモしなければならない。おっしゃるのを全部メモしなければならない、非常に困る、こう言っておられます、今お話しのように、ある業者に文書で渡した。そうするとほかの社が非常に得するからというお話でありまするが、検定を数で制限するわけじゃない、何冊でなければならぬというわけじゃないでしょうから、幾らあってもいいんで、なるべく早くたくさんの人に、便宜的に、悪いところがあればどんどん直して出すというふうにすればなおいいんでしょうから、これはやはり文書でお渡しする。そうすると、一部でも、ある雑誌に書いておりますように、文部省が口頭でこれをやっておるのは責任のがれだ、あとでしっぽをつかませないためだ、つまり進歩的な諸君に言わせれば、文部省がいかに反動的な文教行政をやろうとしているか、その証拠をつかまれぬためだ、こうおっしゃっているわけです。私どももこれをよく拝見すれば、一体どの調査官はどういう思想を持っているか、先ほどの中正穏健な思想を持っているのであるか、右寄りの思想であるか左寄りの思想であるかがよくわかると思う。またその裏に何かきたないものがくっついているのじゃないかということも、見る目をもってすればのぞかれないこともなかろうと思います。だから、先ほど申しました検定であるか検閲であるかというような問題につきましても、私どもはこれを見せてもらえばわかると思います。こういうものは晴やみにすべきではなくて、やはり正々堂々となさるべきだ、そうすればいろいろはっきりとわかってくる。  私どもが調べたところによると、そういう検定をする調査官諸君の考え方というものに、この方法と、もう一つはっきりした方法がある。それは、私は採択事務取り扱い要領を沈んで参りました。これは次の委員会委員長のお許しを得て資料要求したいと思うのですが、この数年間、社会科の何と歴史の何と何の書物が改訂されて参ったという、そのあなたの方で出しまする改訂一覧毒、これをずっと並べてみると、一体文部省が偏向しているのかどうか、初中局長が偏向しているかどうかがわかってくると思う。これを次に要求したいと思っておりますけれども、こういう問題を口頭でするところにやはり間違いが起こってくると私は思う。もし文部省が自信を持っていらっしゃるならば、文書でお出しになる、そういうものを私どもが見せてもらう。そうすると、なるほど文部省は中正穏健であるということになるか、このごろはだいぶ右寄りになってきたというように見るか、それがわかってくると思う。なるほど今も不合格の理由を簡単に、抽象的に書いたものはお出しになっている。これは私ども承知している。けれども、そうでなくて、また今口頭で伝えて、メモして帰すような、そういうものでなく、以前にいたしましたような、もっと詳しい文書をお作りになってお渡しになると、教科書会社の方でもそれぞれ間違いのないことができましょうし、文部省も変なことを勘ぐられなくともいいだろう。これは別に文書で出して悪いことはないのでしょう。今後文書で発表なさるかどうか、お伺いいたします。
  40. 内藤譽三郎

    内藤(譽)政府委員 文書で出す場合、どの程度に出すかということですが、前に出したのも簡単な抽象的なものでございます。一々の個所にわたっては、例示をしておく程度にとどめました。ただそこだけ直されたらそれじゃ合格かといいますと、そうも参らぬと思います。と申しますのは、全部にわたってこれをあげますと、おそらく何百カ所と私はあろうと思います。それを全部にわたって指摘することはとうていできませんので、できる範囲でやりますと、結局抽象的な文書にならざるを得ない。その抽象的な文書をできるだけ詳しくしろという御要望なら、私はそれでもけっこうだと思います。ただ、現在のやり方について、一般教科書会社は、私は大都分の会社が喜んでいらっしゃると思う。前のような死亡診断書では困るのだ、具体的にもう少し親切に問題のあるところを指摘していただきたい——この場合、調査官が自分の主観でやっているというふうにおとりになるのは大へんな誤解でございまして、審議会で一々審議した結果に基づいて口頭でお話をしているわけであります。その点は一つ誤解のないようにお願いいたしたいと思います。
  41. 長谷川保

    長谷川(保)委員 日本文教行政について国民が心配しているのは、当然な理由がある。それは申すまでもなく過去の戦争の経験です。あの当時の日本文教行政のあり方が、ついに国民の思想統一をしていって、そして戦争にぶち込んだ。あの苦い経験が今国民の頭に全くしみついている。ああいうように持っていかれたのではたまらないと考えるのは当然であります。だから、文部省教育を道具といたしまして国民の思想統一をするということにつきましては、国民は非常に警戒をしている。これは教育のみならず今日の政治でも言えることでありますけれども、戦争というあの大きなあやまちをいたしました苦い経験から、思想の自由、研究の自由、学問の自由というような基本的な問題を日本国憲法に盛り込むことに、私どもといたしましては憲法議会でも努力して参りましたし、またそういう憲法が今日日本に制定せられまして、日本国民はその憲法の上に立って生活をいたしておるのであります。だから、今のような調査官の不合格理由、あるいは中正を要請した理由をはっきりと文書によって出しまして、必要に応じてはそれを日本の学界あるいは識者の批判にさらすということが、過去において戦争という大きな間違いをいたしました思想統制ということに日本文教行政を持っていかせない非常に有効な手段であると私は思うのです。日本教育というものを、今の、検定が検閲だというような形にならないように、あくまでも自由な立場から、学者諸君が良心に従って、また教科書会社が学者諸君をわずらわして、その良心に従って、思想、研究、学問の自由という立場に立って教科書を編さんしていく。教科書にはいろいろなものがあってよろしい、いろいろなものがなければならないのだという形に当然いくべきものだと思うのであります。従って、これは現実問題といたしまして、日本教育というものを、今の国家的な統制というようなものをはずして、自由国家、民主国家を作っていく重要なファクターになると私は思うのです。事は小さいように見えますけれども、実は非常に大きなファクターになると思う。これは私は当然文書にしてお渡しになる、それを学界あるいは識者の批判にさらすというようなことを勇敢になさるようにされたいと思うのであります。この点、文部大臣お聞きになっておるかどうか知りませんが、いかがでしょうか、眠りながらもよくお聞きになっているでしょうから……。
  42. 松田竹千代

    ○松田国務大臣 日本の国民は、過去における苦い経験に基づいて十分な教訓を受けておると思いますので、今日の日本の国民は、あくまでも平和を愛好する、また憲法の条章に従って、あくまで独立自主、個人の尊厳、そういったような基本的な観念に基づいて教育をやっていかなければならぬと思うのでありまして、そうしたときに、文部省といたしましては、一方に偏向した考えを持って思想の統一をはかろうなんと思っても、そういうことはできるものじゃありません。文部省はまたそういう考えはみじんも持っておりません。あくまでも厳正な立場に立って、これらの教育基本法憲法等にうたわれている趣旨を体して、教科書の編集、検定に当たって参っておるつもりでございます。
  43. 金丸徳重

    ○金丸(徳)委員 大へん大事な段階になりまして、こまかい手続などについてお伺いすることはどうかと思いますが、ただいま長谷川委員の御貸間の中で、ちょっと私が確かめておきたい一、二の点が出て参りました。関連させて質問させていただきます。  先ほど内藤局長の御答弁の中に出て参りました調査員のことで、私、ちょっとこの調査官調査員との関連がのみ込めないのであります。このお配りいただきました「教科書の編集から供給までのあらまし」というものによりますと、出てきたものにつきましては、「教科書調査官調査に付するとともに、調査員に送付してその調査に付し」、こうあります。この場合、調査に付する前に、調査官が今問題になっておるようないろいろな意見を言って、ある程度直したものについて調査員に付することになっておりますか。それともいきなり出てきたものを調査官に回すと同町に調査員の方へお回しになっておるのか、その辺はどうなっておりますか。
  44. 内藤譽三郎

    内藤(譽)政府委員 原稿の提出がございますと、一方において事務の方が調査官に回す、それから調査員に回す、同じような採点表をつけてお回しするわけであります。
  45. 金丸徳重

    ○金丸(徳)委員 そうしますと、この調査員の選考といいますか、先ほど問題になりましたような、調査官につきましては思想穏健、中正云々、学歴云々というようなことがございますが、やはりこの調査員につきましても同様なる選考基準あるいは任命標準とでも申しますか、そういうものをおとりになっておるのですか、どうでしょうか。
  46. 内藤譽三郎

    内藤(譽)政府委員 これは大学教育委員県会にお願いをして委嘱しておるわけでございますが、選考基準はおおむねこういうような方向で調査員を御任命いただきたいと思っております。
  47. 金丸徳重

    ○金丸(徳)委員 調査官調査員との職務権限という言葉が当たるかどうかわかりませんけれども、そういうようなものについては何か差がありましょうか。
  48. 内藤譽三郎

    内藤(譽)政府委員 調査官は、これは常勤の文部省の職員でございます。調査員は非常勤の方でございます。本職は大学教授とか学校の先生とかというところにありまして、文部省がこの教科書検定調査という点において御委嘱をしておるわけでございます。ですから、それの報告書にウェートはないわけでございます。調査官の報告、調査員の報告、これが双方審議会に出まして、調査官から調査員の報告の内容について報告するわけでございます。
  49. 金丸徳重

    ○金丸(徳)委員 そうしますと、調査員は、文書などで意見を具申するということにでもなるように承るのでありますが、先ほど御答弁の中にありましたように、非常に熱心なる討議をされ、特には深夜に及ぶというような、それは調査員会議とかなんとかいうことではなくて、もっぱら調査官会議あるいはその上のといいますか、審議員の会談というのですか、その点、ちょっと聞き間違うといけませんから、お伺いいたします。
  50. 内藤譽三郎

    内藤(譽)政府委員 調査員の方は非常勤でございますので、自宅で教科書をいただいて、その教科書について研究をされて報告書をまとめて御提出になる。深夜に及ぶと申しましたのは、審議会の委員、これが八十人ほどおりまして、それぞれ部門に分かれておりますが、自分みずから教科書をたんねんに勉強してこられる。それで調査官意見と——そこには調査官は出席しますが、調査官意見、それから調査員意見は文書の報告でございますが、その報告書を調査官が代読しておるわけです。双方の意見をお聞きになって、そうして自分の意見がもちろんおありでございますから、その意見等によって最終的な判断をされるわけでございます。従って瞬間が非常にかかります。
  51. 金丸徳重

    ○金丸(徳)委員 そこで調査員につきましても、調査官と同様に慎重に経歴調査をなさる、あるいは思想傾向の審議をなさって委嘱なさるということに承っておるのでありますが、これまた私は当然だと思いますが、先ほどは、これを調査員の方は五百人もあって、それは二年ごとに交代するのだ、こういうお話だが、どういうわけで二年ごとに交代をしなければならぬのか。
  52. 内藤譽三郎

    内藤(譽)政府委員 調査員の方々、これは大へんなお仕事なんで、実に悲鳴を上げられると思う。あまり長いこと御迷惑をお願いするのもいかがか——もちろん本人が進んでやるという場合には、これは私どももけっこうでございますけれども原則として二年という任期を切っておるわけでございます。あまり長い、またあまり長期にわたりますと、また別の弊害も起きてくると思いますので、二年を一応一区切りにしておるわけであります。
  53. 金丸徳重

    ○金丸(徳)委員 調査官についても同様な配虜が行なわれなければなりませんが、一五官については二年交代だとかいうようなことはないようにも受け取れたのですが、この点はどうですか。
  54. 内藤譽三郎

    内藤(譽)政府委員 調査官については、これは文部省の職員でございますから、別に二年交代とかいうことはございません。ただ長年こういうことをやるということもけっこうでございますけれども、一面では弊害が起きるおそれもあります。調査官の場合にはできるだけ部内で人事の交流もやっておるわけでございます。
  55. 金丸徳重

    ○金丸(徳)委員 その部内における人事の交流というものは、あなたが今おっしゃったような、あまり長くなると弊害も起こりかねないというような意味におきまして、どの程度に交代されておるのですか。
  56. 内藤譽三郎

    内藤(譽)政府委員 現在のところ、調査官制度が発足してから数年でございますので、そういう弊害はございません。しかしやはり人事の交流ということは必要なことだと思うのです。文部省には、教科の学習指導要領の方を担当しておる教科の調査官もございますし、視学官制店もございますし、また大学教授等もございますので、あまり人事が停頓いたしますと、これは人事行政全般の上から適切でないというふうにも考えておるのでございます。
  57. 金丸徳重

    ○金丸(徳)委員 その辺は大へんむずかいお扱いだろうと思います。私は、調査員が二年交代の方がいいというような配慮をしなければならない状況があるのであれば、同様に調査官におきましてもやはり同じような配慮が行なわれなければならないのではないか。もし長い方がよろしいということであれば、同様に調査員についても同じことが言われるべきであるというようにも思うわけですから、念を押してお考えのほどを承ったのであります。  そこでこの五百人の調査員はやはり各科目別に分かれておるように承るのでありますが、社会というようなものにつきましては、この五百人のうちどれくらい配員されておるか。
  58. 内藤譽三郎

    内藤(譽)政府委員 調査官調査員と同じとは私考えていないのでございまして、調査官の場合には、文部省局長課長次官文部省全部の目が光っているわけでございます。ただ調査員の場合は、個人が自宅でおやりになるのですから、そう文部省が直接監督権がないわけでございますので、その点は多少違うと思うのでございます。  それから今社会科にはどの程度というお話がございましたが、大体一冊の本について三人くらいの調査員が当たっているわけでございます。具体的にどの程度かと申しますと、今ここに名簿はございませんが、少なくとも五百人のうちの十分の一あるいはもっと多いかもしれません。ですから五十人ないし百人くらいのところかもしれませんが、正確な数字については後刻調べてお答えしたいと思います。
  59. 金丸徳重

    ○金丸(徳)委員 私がそういうことをお伺いするのは、先ほどお答えの中に、調査官調査員も同様に審議会に向かって意見が同じウェートでもって扱われるというお答えだったものですから、それでは調査官調査員の方も、やはり責任を持って意見が出されるべきでありましょうし、同じような扱い文部省がされるべきであろう、こう思ったのです。調査官の方はいつでも役所におってみな聞いておるからいいのだというお答えであっては、調査員の万が、調査員調査結果を審議会に持ち出すのも、同じように持ち出すのだ、同じような重点を置いて持ち出すのだというお答えと少し矛盾して考えられるのでお尋ねをしたのであります。そこで今の調査員についてははっきりなにはないようでありますが、もし同じウェートをもって審議会に向かって意見が取り上げられ、もしくは町かれるというようなことであるとしますれば、調査官における——これはお配りいただいたこの名簿によりますと、たとえば社会科などにつきましては十人が分けられておる。一同じように、やはりこの人は何を重点として意見が求められているかというようなことがあってしかるべきじゃないか。これとの関運上、調査官はこういうふうにはっきり分けておられるものですから、その点を矛盾なく私どもにわからしていただく意味においても、やはり調査員についても、この人は何に重点を置いて調査を依頼しておるのか、どういう意見が求められて、期待されておるかということがはっきりすべきではないか、こう思ったものですからお伺いをいたしたのであります。それは後刻名簿その他によってちょうだいできるそうですから、後日に譲ることといたします。  そこで社会科——そのほかのものにつきましては比較的事実の調査、事実についてのいろいろの意見、たとえば数学にいたしましても、国語にいたしましても、理科にいたしましても、ことに理科、数学などについてはそうだろうと思いますが、問題は国語なり社会の問題について、現にいろいろ起きている問題はそうだろうと思います。特に社会科にしぼってお伺いするのでありますが、社会科調査官はなるほど十人あります。ありますけれども、これは十人が十人ともそれぞれ、ある人は法律が専門のようであります。ある人は歴史、歴史においても日本史が専門のようでありますし、また西洋史が専門の人があるようであります。またある人は経済を専門にやっておられる。日本史を専門にしておる人がこの十人のうち何人おありか。
  60. 内藤譽三郎

    内藤(譽)政府委員 この表の最終学歴をちょっと見ていただきますと、大体これで御判断いただけるかと思います。そのうち渡辺実が東京高師の研究科歴史科卒、村尾次郎が東京大学文学都国史学科卒、それから貫が東京大学の国史学科卒、こういうふうになっておりますので、国史の専門家は大体三人でございますが、小学校や中学校の教科書については、全部の調査官が全部の教科書について合議していろいろと意見をきめておるのであります。特に非常に専門的な問題でございませんので、全部が当たっております。
  61. 金丸徳重

    ○金丸(徳)委員 これは前からの質疑応答の中で、あたかもこの全部の調査官、十人なら十人の調査官が合議でされるから間違いないのだというふうなお答えがありました。私はそのお言葉を信用したいのでありますが、ただ学者の傾向としましては、自分の専門以外のことについてはあまり口出しをしたくない、またあまり口出しされないというのが、学者の持っておるところの習性だと私は思う。そういう意味から考えますと、この十人の中の、たとえば経済を専攻したというような先生が、日本史の、ことに非常にデリケートな問題になっておるようなことについてはあまり口出ししないのではないか、また口出ししても、それは重く取り上げられないのではないかという憂いを持つのでありますが、内藤局長の先般来のお答えのような、いかにも合議制であるから間違いないのだ、そういう偏向したる見方というものはあり得ないのだというように受け取れるような御答弁があった。ただ私どもが今までいろいろ学者の説明あるいは会議などにおいて経験したところによりますと、なかなか専門以外のことについては口出ししないのです、恥をかきますから。そのかわりには、自分の専門のことについては非常な自信を持っておる。これは専門の学者というものはそうあるべきだと思う。そこで実際の問題として、ある特定の非常にデリケートな問題などについて、その十人が十人全く同じウェートで意見出し、世人をして合議であるから大丈夫だという信頼感を持たしめるような会議の状況が現われておりましたか。
  62. 内藤譽三郎

    内藤(譽)政府委員 検定が一応終わりましたが、小学校の教科書でございますので、これはどなたでもおわかりになると思います。金丸先生がごらんになれば、私でも、どなたでもわかると思います。もう一つは、小学校の社会科は、政治、経済、社会、地理、と歴史が渾然一体になっておりますので、これが地理だ、これが歴史だ、こういうふうには分かれていないのでございます。歴史的な平米、地理的な要素、政治、経済、社会的な要素が入り組んでおるわけですから、一冊をみんなが見て、そしてそれぞれ意見出し合って調査官会議で討議を続けるわけでございます。お話のように非常に学問的なデリケートな問題になると、それは一般の者もなかなか理解しがたいと思いますが、事は社会科でございますから、社会科というのは大体領域がきめられております。社会科の人に理科のことをやれといったってこれは私無理だと思うし、数学のことをやれといったって無理だと思いますけれども、大体社会科というものは共通な基盤がございますので、小学校や中学校程度のものならお互いにこれは理解ができると思うのでございます。
  63. 金丸徳重

    ○金丸(徳)委員 一般的のことについてはまさにそうだと思います。問題はそういう一般的なことじゃなくて、今ここで非常にいろいろな論議の対象になっておりますのは、そのある部分、きわめて専門的なる考察を要するようなことについて何が公正なりや、何が妥当なりやということが問題になっておる。これは全般的に見ますると、釘の先ほどのことかもしれません。しかしその針の先ほどのことが非常に重要な問題になっておる。そういう問題について、ある特定の専門家の意見というものが重要なウェートを持つことになって、合議制であるから大丈夫だというそういう一般的な答弁をもってしては納付できない。世人をして了解せしめられないんじゃないか、こう思うのです。その点についてどうですか。
  64. 内藤譽三郎

    内藤(譽)政府委員 お話のように学問的な問題なら私もそう思います。しかしながら小学校の教科書というのはむしろ教育的配慮の方が大きいのでございます。どういう教材を選ぶか、教材の選び方が適当かどうか、あるいは配列がどういうふうになっているか、ここの文章の次にこれがきたらどうも理解しにくいんじゃないか、あるいはこれでは程度が高過ぎるんじゃないか、小学校の三年生には無理じゃないか、そういう配列する分量とか、内容が不正確であるとか、あるいはどうも冗長で困るとか、同じスペースの中にできるだけ多くのことを、基本的なことは網羅したいという考えもございますので、基本的なものが網羅されているかどうか、そしてこれが教育的にうまく配列されているかどうか、こういうような教育観点というものが特に小学校の場合には多く出るのでございますから、今御指摘のような学問的な論争がこの中で行なわれておるというようなことは少ないと思うのでございます。
  65. 金丸徳重

    ○金丸(徳)委員 そういう全般的な、児童にいかにわからせるか、総合的な基礎を作る上において何が大事であるか、どういう方法がいいかということについてはまさにそうだろうと思う。私のお伺いしておりますのは、特殊の、問題になったことについては、十人の意見だけで総合的に研究したんだから大丈夫だ、こういうことは今のこの学者の配列からいって言い切れるのではないかと思うのです。そういう問題につきましては調査官意見ばかりでなしに、もっと別なる角度からも検討をする何かの御配慮があるかどうか、こういうことをお聞きしておるのであります。
  66. 内藤譽三郎

    内藤(譽)政府委員 そういう点も考慮して実は調査員制度があるので、特殊な専門については特別の学識経験者に調査員として御委嘱して、そういう方の御判断をいただいておるわけでございます。それがさらに審議会の機構の中で、審議会の委員の中にもそれぞれ御専門の方がいらっしゃるわけであります。そこで審議会の委員も十分研究され、そうして調査官意見調査員意見、双方を十分参酌されて一つの適切な御判断をされるわけでございます。
  67. 金丸徳重

    ○金丸(徳)委員 押し問答になりますからこれ以上は御遠慮いたしますが、調査員経歴その他をまた承って、この問題はもう少し掘り下げさせていただきます。
  68. 長谷川保

    長谷川(保)委員 検定の問題はまだいろいろあるのでございますけれども、時間もありませんから、採択の問題を検定の問題とからんで御質問をいたしたいと思うのであります。  先ほどお出しいただきました資料によりますと、教科書採択の責任者は形式上、公立のものは学校所管の教育委員会、国立及び私立のものは学校校長ということになっておるのでありますが、実際においてこの採択はどういうように行なわれていると文部省はお考えになっておりましょうか。採択の実際、今日やられております事情を詳細に承りたい。
  69. 内藤譽三郎

    内藤(譽)政府委員 これは実は各県まちまちでございまして、その最も通例に行なわれておる実情は、大体郡市単位に教科書のセンターがございますので、そのセンターを中心に郡市単位に共同採択をしているのが七割くらいでございます。それからそれ以外は府県で何種か選びまして、その中で各委員会採択をする。地方教育委員会決定するというのもありますし、また学校ごとに採択をしているところもあるようでございます。
  70. 長谷川保

    長谷川(保)委員 私が聞きたいのは、もっと具体的に、実際にだれが一体この木を採択するということをきめていくのか、だれとだれが集まって、あるいは私どもの調べたところでは、研究会その他のもの、あるいは各教科の主任とか各教科の担任とかいうような線がいろいろ車なり合っているようでありますが、実際において具体的にどういうような行き方でもって——そのように郡市単位に採択をきめていく、それより前の段階ではどういうような採択の手順が作られておるのか、それを承りたい。
  71. 内藤譽三郎

    内藤(譽)政府委員 今申し上げました郡市単位にありますものは、そこに教科書採択委員会がございまして、その中には各教科別の研究委員会の会長その他それぞれ教科の専門家も入っていらっしゃるし、教育委員会関係者も入り、校長さんも入って、そして採択の研究委員会があるわけであります。そこで採択について意見をきめまして、各教育委員会がその答申に基づいて採択をしているというのが多いようでございます。もちろんこの教科書センターの中には教科書研究委員会というのもございまして、そこで教科書の研究をいたしまして、それを参考として採択委員会が採否を決定する場合の資料にされるところもございます。
  72. 長谷川保

    長谷川(保)委員 最近の傾向として、センターがあまり利用されないという形が出てきているらしい。これは雑誌等にも出ておりますけれども、現実を調べてみますと、それはもうセンターに行ってみたところでつまらない、日もわずかの日数であるということも一つの原因でありましょう、またそのわずかの日数で調べられないということも現実でありましょうけれども、きまるのはそこではない、そこに行く前にきまっているんだ、だからセンターなんかに行ってもつまらない、ほかのところできまっているんだというようなこともあるようであります。つまりその採択をだれが一体やっているか、そこにいろいろな採択に関しまする忌まわしい話が出てくる。そこをどことどこというように文部省はお考えになっているのか。言いかえますと、公正な採択をさせるために、公正取引委員会なりあるいは文部省なりから何回か、今までたくさんの通牒が出ていることを私も拝見しておりますが、文部省あるいは公正取引委員会のやっていることが、さっぱり実効が上がっていないのじゃないかというような気がするのであります。私が調べたところによりますと、昨年の八月ごろから非常にそれらに対するものすごい、すでに当を得ない非常な激しい過当競争と申しますか、汚職ともいうべきものが至るところで行なわれておる。これは今日の時代が資本主義の時代でございますから、販売、営利ということを考えます諸君にとっては、ある意味ではやむを得ないことであるかもしれません。ただ問題は、それがあまりにも法外なことになっては困るのであります。その結果が、当然正しく採択すべきものが捨てられて、不当なるものが取り上げられるということになっては困るのでありまして、これは教育関係者自体もみずからを非常にそこなうものであって、教育者としての姿というものを失うのである。同時にまたそういうことであれば、教育それ自体が横に曲げられていくということになるわけでありまして、そこなわれていくことになるのであります。この点を私はどうも文部省が今までおやりになりました、あるいは公正取引委員会がおやりになりました警告程度では、ものの役に立っておらないというのが今日の実情ではないか。大体去年の八月からことしの三月に分けまして、猛烈な競争がすでになされておるというのが、私があちこちの地方の者から聞きました実情であり、また直接調べたところの結果でもございます。だから私は直接、採択をするという人が形式上はただいま申しました教育委員会、地教委等等でございますけれども、そうではなくて、現実に行なわれておりまするものはそこではないというように思える。従ってあなた方がほんとうにきびしくこれをしていくためにする目標というものをどこに置いているかを伺いたい。
  73. 内藤譽三郎

    内藤(譽)政府委員 教科書会社が自分の教科書宣伝をするのは私は当然なことだと思う。ただ不公平な取引が行なわれてはならぬと思うのでございまして、この不公平な取引に対しましては文部省といたしましても、公正取引委員会といたしましても、厳重な注意なり勧告をし、同時に関係者に対しては厳正な態度で臨むつもりでございます。
  74. 長谷川保

    長谷川(保)委員 大臣はほかに御用があるということでございますがこの点は非常に重大な問題でありますから、ぜひもう少し時間をかして聞いておってもらいたいのです。あとまた次の機会にいたしまして、じきに重要な点を終わりますので、もう少しでありますから聞いていただきたい。  それで、先ほど初中局長資料をお出しになっておりませんが、私は事が各会社やあるいはその他の先生方、あるいは文部省当局というものの名誉に関係する問題が出て参りましたので、私は非常に慎重に事を調べたいと思っているわけであります。この各地区の、教科書各社の採択販売実情を見て参りますと、あるいは全国的にもさようでありますけれども、ある社において非常に集中的に採択されておるという事情がずっと調べていくとわかってくるのであります。地方的に申しますと、ひどいところは、これは理科、算数をたくさん出している某社でありますが、たとえば愛知県で八三%、七十五万冊、九〇%、二十四万冊——算数、理科でありますが、同一教科書であります。こういうようなのが地方的にずっと調べてみますと、ずいぶん集中しております。私、各社をずっと調べてみますと、非常に集中しておるというのがあります。もちろん一、二の会社は全国的に非常に大きなルートを持っておりますけれども、私が調べましたところでは、公正取引委員会や初中局が警告書で禁止しておりますものに違反をしてやっておりますものを合わせて参りますと、そこにやはり因果関係があるように私には思われるのであります。そこで先ほど資料を私は要求してみた。私も一応持っておりますけれども、これは今申しましたいろいろな名誉に関する問題が関係して参ります事教育の問題でございますから、私は非常に慎重に資料を集めたいと思って文部省要求したのであります。私には禁止してあるものを犯しているその関係がここに出てきているというように思えるのでありますけれども、そういうような非常に集中的にある社のある科の教科書をとっているということについて、文部省におかれてはあるいは公正取引委員会におかれましては不審と思ってお調べになったことがありますか。
  75. 内藤譽三郎

    内藤(譽)政府委員 いい本がたくさん出るということは当然のことと思う。悪い本が出たというなら、お話しのようなことがあり得るかもしれませんけれども、私どもとしては、集中的にある県にいくというのも、一つ販売政策としてなかなか全国に手が回らぬから、あるところに十分PRをしていくという方法もあろうと思うのであります。ですから集中的に出たからこれが不公正だというふうに即断するには私は材料が足りないと思います。もしそういう会社で不公正な取引があったら一つお教えいただければ厳重に処置するつもりでございます。
  76. 長谷川保

    長谷川(保)委員 公正取引委員会の方はどうですか。
  77. 坂根哲夫

    ○坂根政府委員 ただいまのお話しの点は私どもの方では調べておりません。
  78. 長谷川保

    長谷川(保)委員 それでは二、三私が持っております資料の中からはなはだしいものをここに申し上げてみましょう。ただしこれは公正取引委員会なりあるいは場合によっては検察当局なりが調べるべきもので、私どもが調ぶべきものではありませんし、私どもは、行政監察特別委員会ならともかく、そうでありませんから立ち入りたくないと思いますから、できるだけ固有名詞は省かしていただきます。あとそれをもって、固有名詞なしで調ぶべきものは調べていただきたい。これは今申しました愛知県に関する一つの例でありますが、どうしてこんなに採択されたかという実情調査してみますと、理科教科書の著者代表は、愛知県の学芸大学に昨年まで十数年在職していた前学長某氏であります。これがその学校の同窓会組織を利用して、三河地区一帯の教科書採択をはかった。一説によれば、その例として、この人は豪壮な邸宅を、この教科書会社から贈られているといわれている。小学算数の教科書が全県下に採択されている理由は、この某氏の夫人が、この理科教科書発行会社の重役として名を連ねている。この算数、理科は同一の会社発行しております。その関係と、さらにその社の編集長が、元文部省の算数担当の国定教科書の図書監修官で、その時代にこの某氏は、文部省の督学官であった関係で親友の間柄であります。そういうような関係から、編集長の某氏が愛知県をくまなく歩いて、算数教科書の全県統一をはかったものだといわれておるのであります。なおいろいろこまかいことを調べていってみますと、どうもこの学芸大学の前学長の某氏は、文部省の担当のある方と関係の深い方であるらしい。それから編集長でありまする某氏は、またその方と親しい友人の関係である。それからもう一人の文部省の担当のある方の奥さんの兄さんが、この会社課長であります。しかもこの採択のために、愛知県の指導主事や校長や教員多数に供応をして、さらに昨年の暮れには、数千円の品物を歳暮として流したというようなことが、私の調査でわかっているわけです。けれども、私の調査が、先ほど申しましたように、どれだけ正確であるかということにつきましては、もちろん私はこの関係の中におった人間でありませんから、十分なことは申し上げられませんが、しかし、こういうことがあちこちであるのであります。だから私は、そういうことになっては困ると心配するのであります。  これは別の会社の事件であります。これもあまり極端な例ですから、参考までに申し上げてみたいと思うのでありますが、富山県にあった事件であります。地方編集会議の開催という名目でなされました。日時は十二月五日というようにいわれております。場所は、富山以下の小川温泉であります。北信越地区の各県の小学校関係のエキスパートを、各県三名くらいずつ集めたようであります。ここにこの会社の編集局長、国語部長、北信越担当の営業部長、各県の駐在員というような者が一緒に集まっております。内容は、白表紙の検討会ということであります。そして食事を出し、芸者を各人にあてがい、謝礼数千円をこのときに出しておるようであります。こういうような例が枚挙にいとまないのであります。  これはまた別の例でありますが、全国的に集めた例であります。これは三月に、二日にわたってあった事件であります。場所は、大阪の飛田の旧赤線地帯の転業料理屋であります。旅費、日当、宿泊つきで招待し、編集会議と称して会議を持ち、全国各府県から二名ずつくらい集まっているようであります。この事件には約百名出ておりますが、一人大体一万円かかっているといわれております。この場所には、某会社の社長以下が出ております。  私はこういうことを言いたくない。言いたくないけれども、この間の小牧委員の質問にも、忌まわしいことはないように思っているというお話があり、さらに、検定の方に追われて、各社はそういうような採択関係等はまだ何もやっておらぬように思われるというようなことが、局長からお話がありました。私は、それが故意に言われたものであるか、真実そう思って言われているものかを、いささか疑問に思っておるのであります。真実そう思っておられるとするならば、これはいかにも間抜けた話で、そんなことでこの重大な時期に一体その局を担当できるかといわなければなりません。故意に言ったとすれば、ふとどききわまる話であり、何らかそこにわれわれはうしろめたいものを考えざるを得ないのであります。もう各社は昨年来このためには非常な努力をしておる。過当競争の度を過ぎたことをいたしておるのであります。私どものような十分な調査の手を持っておらない者の手にも相当数ひっかかってきておるのであります。ましてこれを公取なりあるいは検察当局なり、あるいは文部省ほんとうにやる気なら、こういう問題はたくさんわかっているはずであるが、先日のようなお話があったということになりますれば、これは私どもとしては考えざるを行ないのであります。でありますから、こういう事実が私のところに資料として幾らでもあるけれども、これは私は何人にも出しません。前にも申しましたように、犯罪人を出すことが私どもの目的じゃないのでして、何とかしてこの際こういう間違いのないように教育を清めたいと思うからであります。これらの私が調べました事実について担当局長あるいは公取の方ではこういう事実はあり得ないとお考えでしょうか。それとも私の調べたのはあり得るであろうとお考えになりますか、いかがですか。
  79. 内藤譽三郎

    内藤(譽)政府委員 私今初めてその事実を聞かせていただいたわけでございまして、今まで存じてなかったわけであります。そういうことがあり得るかないか、こういうお尋ねですが、そういうこともあり得る。過去にそういう事例があったから今回はないということは私は断言できないのでございますが、一体それがどういう関係者の方がお集まりになったのか。会社の駐在員がお集まりになってお話しになったのか、どういう人が参加されたのか、そういう点はもう少し詳細に調べてみないとわからないと思うのでございます。
  80. 坂根哲夫

    ○坂根政府委員 私どもの方は、先般来この委員会で答弁申し上げているように、三十一年の十二月に教科書業の不公正取引の特殊指定以来、教科書業の取引部面については十分監視の目をもって臨んでおるつもりでございますが、ただいま先生のおっしゃいましたような事例がもしあるとすれば、これは特殊指定の問題とからみまして、かなり独占禁止法違反の問題が出るおそれがあると思います。しかし独占禁止法違反の問題として成規の手続で審判をし、審決をするということになれば、先生の御憂慮になっておられますように、選択関係者の中にもいろいろ教育界の方も出てこられると思いますが、そういう点はなるべく避けまして、そういう事実がはっきりいたしますれば、われわれとしては厳重な警告を出しまして、その差しとめをしたい、こういう工合に考えております。従ってそういう事実があるかないか、どうであるかということは、過去の事例から見るとあり得る可能性はある、こう考えております。
  81. 長谷川保

    長谷川(保)委員 時間もありませんから、あとは次回に譲りたいと思いますけれども、こういうような事情はお調べになればすぐわかる。問題はこれから七月まで一体どうするかという問題であります。その間になお野放図にこういうことをやらしてたくさんの教育関係者が身をあやまり、教育が曲げられる、また私の聞くところではすでに昨年来今日まで使われましたこの関係の運動の金は十億であろうといわれておる。これから七月、八月、採択ほんとう決定をして参りますまでに、実際におきましては六月までが運動期間のようでありますが、このままほうっておけば五億以上さらに使われるであろうといわれておる。そういうことでこういう重大な問題が汚されてはならないし、曲げられてはならない。これらについて文部省は一体どうなさいますか。具体的にはさらに少々お考えいただいて、明後日の委員会でお答えいただいてよろしいのでありますが、私は重大な決意をしてもらいたいと思う。この点について大臣いかがでありましょうか。
  82. 松田竹千代

    ○松田国務大臣 教科書採択販売等を通じて多くの会社が激しい競争をする、そしてお話のように結局行き過ぎた競争の結果忌まわしい問題が起こり得る可能性も心配せぬではないのでありまして、教科書を通じてそうした事柄の起こらないようにという点につきましては、長谷川委員とわれわれは深く憂いをともにいたすものでございます。これはどんなに激しい競争をしても、どこまでもそれは公正な取引であり、自由であってもあくまでも正しい行き方で行なわなければならぬものであります。これが監視のためには公取委員会もあれば検察庁もある。文部省としてはそうした営利会社の商売上の問題にどこまで立ち入るべきことが至当であるか、そういう事柄に文部省として直接に深入りしていくということははたして妥当であるかどうか、そういうようなことも考えられますので、今のところでは厳重にたびたび公正な態度をもってこれらに臨むようにという示達をいたして参っておるわけであります。文部省としてどこまで深くこうした営利会社のいろいろの行動に立ち入っていくべきか、私どもとしてはむろん十分に監視をし、そうした事柄の起こらぬように努めていかなければならぬと思いますけれども、あまり深く立ち入るべき性質でないようにも考えられますので、これは私の意見でありまけれども、どこまでも文部省として警告をし、十分に監視をしていくということよりほかに道はないのではないかというふうにも考えられます。しかし事はきわめて重大なる事柄でありますので、今後も十分に告なり注意なりを与えて参りたい、かように考える次第であります。
  83. 長谷川保

    長谷川(保)委員 この間の委員会でも局長は各教科書会社の社長ともしょっちゅう会っておるようなお話でありました。私の聞くところでは、この半年くらいの同公的にお会いになっておるというのは聞かない。この重大なときに、私は少なくとも教科書協会に加温しております教科書会社の責任者に対しまして、もっと厳重にこの問題を締めることは当然だと思います。半年くらいの間お会いになっておらぬというように私は承知をいたしておるのであります。今日私は当局及び各地の教育関係者並びに教科書会社の誰々に、ここに国会という国民の代表という立場で警告をいたしておきます。もしなおこういう事情が改まらないとしますならば、場合によっては私の持っております資料を公開するかもしれないということをあわせて申し上げます。どうか各教科書会社当局教育関係者ともに、この問題については、以後さようなことのないように、あくまでも公正な採択が行なわれるように、日本教育を守るために御協力を願いたいことを、強くここに国民の代表として要望いたしまして、きょうの質問は終わります。
  84. 臼井莊一

    臼井委員長代理 本日はこの程度とし、次会は来たる二十二日午前十時より理事会、午前十時三十分より委員会を開会いたします。  これにて散会いたします。    午後一時二分散会