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1960-03-11 第34回国会 衆議院 文教委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年三月十一日(金曜日)     午前十一時四分開議  出席委員    委員長 大平 正芳君    理事 臼井 莊一君 理事 木村 武雄君    理事 高見 三郎君 理事 西村 力弥君    理事 長谷川 保君 理事 小牧 次生君       坂田 道太君    進藤 一馬君       谷川 和穗君    濱野 清吾君       松永  東君    八木 徹雄君       大原  亨君    金丸 徳重君       栗原 俊夫君    杉山元治郎君       堀  昌雄君    山崎 始男君       鈴木  一君  出席国務大臣         文 部 大 臣 松田竹千代君  出席政府委員         外務事務官         (国際連合局         長)      鶴岡 千仭君         文部政務次官  宮澤 喜一君         文部事務官         (初等中等教育         局長)     内藤譽三郎君         文部事務官         (大学学術局         長)      小林 行雄君         文部事務官         (社会教育局         長)      齋藤  正君         文部事務官         (体育局長)  清水 康平君         文部事務官         (文化財保護委         員会事務局長) 岡田 孝平君  委員外出席者         文部事務官         (社会教育局社         会教育施設主任         官)      吉里 邦夫君         厚生事務官         (医務局医事課         長)      江間 時彦君         専  門  員 石井  勗君     ————————————— 三月十一日  委員勝間田清一君、原彪君、高田富之君及び八  木徹雄辞任につき、その補欠として杉山元治  郎君、堀昌雄君、大原亨君及び山口好一君が議  長の指名委員に選任された。 同日  委員山口好一辞任につき、その補欠として八  木徹雄君が議長の指名委員に選任された。     ————————————— 三月十日  小、中学校学級編成基準適正化に関する請願  (原茂紹介)(第一一二号)  同外一件(松平忠久紹介)(第一一一三号)  義務教育遂行に伴う寄宿舎建設費国庫補助に関  する請願八百板正紹介)(第一一一四号)  女子教育職員の産前産後の休暇中における学校  教育の正常な実施の確保に関する法律の一部改  正に関する請願伊藤よし子紹介)(第一一  一五号)  同(穗積七郎紹介)(第一一一六号)  同(早稻田柳右エ門紹介)(第一一三五号)  高等学校の授業における生徒編成及び教職員  配置の基準法制化に関する請願外一件(保利茂  君紹介)(第一一三六号)  公立文教施設整備に関する請願八百板正君紹  介)(第一一七一号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  公立学校学校医公務災害補償に関する法律  の一部を改正する法律案起草の件  盲学校、聾(ろう学校及び養護学校への就学  奨励に関する法律の一部を改正する法律案(内  閣提出第一六号)  学校教育に関する件  社会教育に関する件  文化財保護に関する件      ————◇—————
  2. 大平正芳

    大平委員長 これより会議を開きます。  公立学校学校医公務災害補償に関する法律の一部を改正する法律案起草の件について議事を進めます。  本件につきましては、去る九日、臼井莊一君より、その案文並びに趣旨説明がありましたが、これに対し質疑通告がございます。これを許します。杉山元治郎君。
  3. 杉山元治郎

    杉山委員 私は、今提案になりました法案に関連いたしまして、学校保健の問題について少しばかりお伺いしたいと思うのであります。  本年の学校保健費予算を見ますと、前年度に比較いたしまして千六百二十五万八千円の増になっておりまして、いろいろと保健に関する仕事がなされるようでありますが、特にその説明文のうちに「保健管理徹底を期する」と、大へんけっこうなことを印されておるのでありますが、はたしてこれでできるかどうかということについて多少の疑問を持っておるのであります。まず第一にお伺いしたい点は、義務教育学校健康診断をやるとなっておりますが、これは大体年何回行なうことになっておるのか。またこの健康診断を行ないますために、学校医学校歯科医というのが一校あたり一体何人か。これはどういうような状況になっておるか、まずその点をはっきりと聞かしていただきたいと思うのであります。
  4. 清水康平

    清水政府委員 学校保健についての御質問でございますが、特に本年学校保健に関して予算上大きく取り上げられた問題は二つあるのでございます。一つ学校保健法実施に伴いまして、児童生徒医務費補助でございます。この点、昨年よりも約千六百万円ばかりふえておるわけでございますが、これは学校病、大体七つくらいございますが、昨年来問題になっておりましたものの一つといたしまして、トラホーム治療費が大体積算が二十五日であったのでございます。はたして二十五日でトラホームがなおるかなおらぬか、もちろんトラホーム病気程度によりましょうが、二十五日ではちょっとひどいのではないかというところで、それを倍にいたしまして、トラホーム治療に要する期間の積算といたしまして、二十五日を五十日間はどうしても治療するに必要であろうというところから、五十日にいたしたのでございます。その点がふえております。それからもう一つは、御承知のことと思いますが、学校保健管理保健教育のほかに大切なのは、それと車の両輪ともなるべき学校安全管理安全教育の問題でございます。これは昨年十二月日本学校安全会法が成立いたしまして、この三月から仮称日本学校安全会が発足いたすのでありますが、それらに要する経費といたしまして二千八百万円というものが、まず学校保健関係の二つの項目でございます。  次に学校保健法制定に伴いまして学校には学校医学校歯科医、それに薬剤師を置くことになっております。大体学校学校医歯科医師は一人ずつ置かれております。薬剤師も置くことになっておりますが、薬剤師昭和三十六年三月までは置かないことができるという規定になっておりますが、現在約三千人ばかり全国に置かれている次第でございます。  それから健康診断でございますが、昔は身体検査とかいうような名前でやっておったのでございますけれども、学校保健法制定以来、もちろんこれは終戦後でございますが、健康診断をやることになっております。それは定期臨時がございますが、定期の場合には、入学いたしまして四月、五月にいたすことになっております。その他必要の場合に臨時検査をいたすことになっております。特にそこで重要なのは、この四月から新しい児童学校に入るわけでございますが、入学前に児童身体を見まして、健康診断をいたしまして、もし就学支障のある場合はそれに対する処置をとる、いわゆる入学前の身体検査もあるわけでございます。大体以上でございます。
  5. 杉山元治郎

    杉山委員 今学校医学校歯科医は一校当たり一人ということになっておりますが、この学校医学校歯科医報酬とでも申しますか、それは大体小学校中学校では年にわずか七千円だということでございます。こういうわずかの金で、あるいは四月、五月入学期にいたすとしましても、多数の子供を診察いたしまするには少なくとも一日、二日で終わらないかと思うのでございます。そういたしますと、こういうごく少額の報酬では、これはまあ奉仕という意味で現在はやっておるのだと思いますが、それではほんとうの診察というようなことは不可能なのではないか。もう少しこの点について考える必要はないか。そしてこの報酬については予算のうちに入っておるのか。これはおそらく地方交付税のうちから出ておるという話を伺っておるのですが、これはどういうような状態になっておりましょうか。
  6. 清水康平

    清水政府委員 ただいまの学校医学校歯科医等の手当の御質問でございますが、全く御指摘通りでございます。この問題につきましては、昨年の当委員会におきまして、堀先生からも強い御意見、御指摘がございました。その際もいろいろと実情を申し上げたのでございますが、学校保健法制定される前は年わずか三千円を地方交付税で措置いたしておったわけでございます。その後学校保健法ができまして、今御指摘の一人七千円になったのでございます。それにいたしましても、学校保健法制定以来、学校保健医歯科医の活動と御協力を願う点は、学校保健法制定以前に比べまして非常に内容が、時間的にも質的にも御苦労願っておるのでございますので、七千円というのはあまりに不適当であるという点につきまして、この前堀先生の御質問の際も、私どもといたしましては少なくも一人について二万円くらいの地方交付税を見てもらうのが適当じゃないかというふうにお答えを申し上げたのでございます。急に二万円までいかなくとも、逐次七千円が一万円になり、一万円が一万四千円、あるいは一万八千円というふうに努力していかなければならぬと思っているわけでございますが、今日までの事情はただいま申し上げたような実情でございます。今後とも私ども努力して参らなければならぬと思っておる次第でございます。
  7. 杉山元治郎

    杉山委員 お話のように、保健管理徹底を期するという言葉からいたしましても、今お話のように学校医学校歯科医にもう少し報酬を増していただくことは適当だと思いますので、ぜひ今後一そうの政府当局の御努力を願いたいと思うのであります。  さきにお話しの学校病患者人たちの中で、いわゆる要保護者子供たち全額国家で補償するということになっておりますが、準要保護者児童については二分の一しか出ないという現状になっております。学校内におきまして要保護者の数と準要保護者の数を比較して考えてみますると、いわゆるボーダー・ラインの人たちがむしろ多いのでないか、こういうように考えますと、もし今申しますように、準要保護者児童は二分の一しか補助してもらえないということになりまして、その二分の一を父兄が負担しなければならないということになって参りますと、これができない人もおりましょうし、また子供自身もそういうことから考えて、いろいろと治療したいと考えても、むしろ家庭の事情からしてこれを中絶する、こういうようなことになるおそれがあると思うのでありますが、私は学校保健法精神にのっとって、こういうような差別をしないで、むしろこういう子供たちに対しては、要保護者児童もあるいは準要保護者児童も一様に国家が全額負担するようにしてはどうか、こう思うのでありますが、政府の御所見はいかがでございましょうか。
  8. 清水康平

    清水政府委員 ただいま御指摘の点は全くおっしゃる通りでございます。準要保護児童の数は要保護児童よりも多うございますし、準要保護児童も要保護児童と同じように全額公費負担といたしましてその半分を国で見る、こういう方向に持っていくべきであると思います。その点、私微力でございまして、まことに残念で、申しわけないのでございますが、来年度はぜひそういうふうにいたしたいと思っております。どうぞ御了承願いたいと思います。
  9. 杉山元治郎

    杉山委員 ぜひどうぞ来年度はお話のようにしていただきたいと思うのであります。  それから教員結核に関する健康診断の一部を援助するかのように書いておりますが、現在学校教員中、結核患者が一体どの程度あるか、何人ほどあるか。これはいわゆる児童に感染するおそれのある人もあるし、あるいはまたない人々もあるかもわかりませんが、全部ひっくるめて一体どの程度にございましょうか。そのパーセンテージでもけっこうですから、一応お知らせいただきたいと思うのであります。
  10. 清水康平

    清水政府委員 教員結核の問題でございますが、これは非常に減少いたしまして、教員ばかりでなく、日本国民全体の結核罹病率は非常に少なくなり——大へん申しわけないのですが、資料を持って参りませんでしたので、後ほど調査いたしまして、正確なことをお答えいたしたいと思います。
  11. 杉山元治郎

    杉山委員 どうか、あとでけっこうですから、教員結核患者数をお示しいただきたいと思います。一部いわゆる補助するというのですが、一部というだけでははっきりしませんが、一体どの程度補助するつもりでございましょうか。その点も一つお示し願いたいと思います。
  12. 清水康平

    清水政府委員 公立義務教育学校校長先生教員結核に関する健康診断は都道府県の教育委員会で統一的に行なうのでございます。国は、その経費といたしまして二分の一補助ということになっております。その計が一千二百三十五万円ということに相なっております。
  13. 杉山元治郎

    杉山委員 それで、はたしてできるかどうか心配でありますが、ぜひ先生たち結核早期に治癒され、あるいは結核の方は十分療養のできるような設備または方法をとっていただきたいと思うのであります。特にお伺いしたい点は、小学校中学校生徒健康保持、増進をはかるために保健管理費の一部を地方公共団体補助する、こういうことになっておりますが、一体その必要な経費というものはどれくらいになっておるのか、その点も聞かしていただきたいと思います。そしてそれによって健康を保持し、増進すること、こういうことですが、一体どういうことをするのか、その点も一応おっしゃっていただけばけっこうだと思うのであります。
  14. 清水康平

    清水政府委員 学校におきます児童生徒保健管理の問題でございますが、要するに学校保健法趣旨といたしますところは、子供伝染病、あるいは修学に支障を来たすような病気を持っておるため勉学に支障を来たさない、楽しく学校に来るというところに目的があるのでございます。従いまして入学前の健康診断はもちろん、入学後の定期健康診断臨時健康診断をやって、そしてもしいわゆる学校病というものを早期に発見し、治療しなければならぬ場合は、それに対して適当な助言と処置をいたすわけでございますが、その場合ただいま御指摘通り経済上の事由で困難な人に対しては、これを要保護と同じように将来は準要保護全額公費負担といたしまして、国がそれに対して補助するというふうにいたしておるわけでございます。その児童生徒医療費補助が九千五百七十余万円ということに相なっておるわけであります。
  15. 杉山元治郎

    杉山委員 次に、今提案になっております公立学校学校医公務災害補助に関する問題についてちょっと伺いたいのですが、今日までに公務災害をこうむったどんな事例がございましょうか。これは事例がございますならば、それについてお知らせいただきたいと思うのであります。
  16. 清水康平

    清水政府委員 現行法公立学校学校医公務災害に関する法律というものが御承知のごとく三十三年ですか、制定されたと思いますが、それが制定せられた直接の動機は、その前に学校医公務によって死傷せられたことがあるのでございます。承るところによりますと、学校医修学旅行について参りまして、ついに死傷されたということを聞いております。普通学校医健康診断の際学校に参りまして診断するのでございますが、そこから発生するような公務災害というようなものはほとんど考えられないのじゃないだろうか。修学旅行などについていかれて、不慮の交通事故等にあうというようなことが三十一年の秋でございましたか、ございました。なお、今の御質問学校医だけでございましたが、学校歯科医薬剤師というようなものについては今調査中でございますけれども、どうもその事例がただいまのところは見当たらないのでございますが、ほとんどそういうことはないのじゃなかろうかと思うのであります。学校医につきましてはただいま申し上げましたような事情でございます。
  17. 杉山元治郎

    杉山委員 ないということならばけっこうでありますが、今申したような災害ならば、これは単に医師だけに限らないと思うのであります。ところが、今お話のように昭和三十二年に制定されました公立学校学校医公務災害補償に関する法律では学校医だけであって、歯科医あるいは薬剤師が除外されておったのであります。幸いにきょう提案法律ではこれを入れるということでございますので、非常にけっこうなことだと思うであります。私は今まで医師だけ入っておって、薬剤師あるいは歯科医師も除外されておったということは片手落ちでなかったかと思っておったのでありますが、これはきょう法律が出ましたから申しません。しかし、これはむしろ議員提出よりも国家が提出すべきはずであったと思いますが、もうそのことは申しません。ぜひこの法案が早く制定されて、いずれも同等の扱いを受けて、十分これらの人たち学校保健のために働くようにさせていただきたいと思うのであります。  いろいろ申し上げたい点は多々ございますけれども、この法案に関する点につきましては以上をもって質疑を終わりたいと思います。
  18. 大平正芳

    大平委員長 他に御質問の御通告がございません。  それでは、本案予算を伴う法律案でございますので、衆議院規則第四十八条の二の規定により内閣の意見を聴取いたしたいと存じます。松田文部大臣
  19. 松田竹千代

    松田国務大臣 文部省といたしましては、公立学校歯科医並びに薬剤師公務災害につきましては、そうした災害がちょっと予想いたしかねますので、ただいまのところは過去の事例等もよく調査いたしまして、その上で検討いたしたいと思っておる次第でございます。今直ちに立法措置を講ずるということに対しては、にわかに賛成いたしかねるということであります。     —————————————
  20. 大平正芳

    大平委員長 お諮りいたします。本案委員会成案と決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  21. 大平正芳

    大平委員長 御異議なしと認め、本案成案とするに決しました。  次に、本案提出方法についてお諮りいたします。国会法第五十条の二の規定により本案委員会より提出するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  22. 大平正芳

    大平委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。      ————◇—————
  23. 大平正芳

    大平委員長 次に、盲学校、聾(ろう学校及び養護学校への就学奨励に関する法律の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  本案に対する質疑を終局し、これより討論に入ります。  別に討論通告がありませんので、直ちに採決いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  24. 大平正芳

    大平委員長 御異議なしと認め、これより採決いたします。本案原案通り可決するに賛成諸君の御起立を願います。     〔賛成者起立
  25. 大平正芳

    大平委員長 起立総員。よって、本案原案通り可決することに決しました。     —————————————
  26. 大平正芳

    大平委員長 この際臼井莊一君より発言を求められております。これを許します。臼井莊一君
  27. 臼井莊一

    臼井委員 ただいま可決されました法案に対しまして附帯決議をつけたいと存じます。  まずその案文を朗読いたします。    附帯決議   盲学校ろう学校及び養護学校への就学奨励に関しては、その適用範囲高等部専攻科を含む)に拡大するとともに、食費、通学用品費見学旅行費等の費用にもできるだけ配慮するよう要望する。 以上でございます。  なお附帯決議につきましては第十九国会におきましても同様の趣旨附帯決議として成立いたしておりますので、委員各位におかれましても御賛同をお願いいたします。
  28. 大平正芳

    大平委員長 ただいまの臼井莊一君提案に対し発言を求められております。これを許します。山崎始男君。
  29. 山崎始男

    山崎(始)委員 ただいま臼井委員の方から附帯決議提案されましたが、私は全面的に賛成をいたしたいと思います。生まれながらにして心身の不自由な、非常に気の毒な人たちに対して、その能力を伸張させ、その人格を育成することはけっこうなことであると同時に、社会全般から考えまして、こういう人たちを救う方途を考えることは非常に重大な意義があると私は思うのであります。といいますのが、わが国のこういう人たちに対する特殊教育現状というものは、諸外国の例に比べまして非常に劣っておる。その設備内容はもとよりでありますが、就学の率を見てみましてもわが国は非常に少ないのであります。そういう意味から、就学奨励のためにも、一刻も早く便宜をはかってあげなければいけないのじゃないかと私は思います。そういう意味からいいまして、ただいまの附帯決議に対しましては全面的な賛意を表するものであります。
  30. 大平正芳

  31. 小牧次生

    小牧委員 私もただいまの附帯決議に対しましては、山崎委員が申されたような理由によりまして全面的に賛成でございます。  ただここで申し上げたいのは、先ほど臼井委員からもお話がありましたが、文部省の方によく聞いておいてもらわなければいかぬと思うのですが、十九国会においてほとんどこれと同じような附帯決議案が通っておる。それ以来相当な年数を経過いたしておるわけでありますが、この法案の審議にあたっての内藤局長の答弁によりますと、一品ずつ年次やっていくというような言葉があったわけでありますが、十九国会でこれと同じような決議案が通っておるのでありますから、できるだけすみやかにこれが実現できるように、特に委員会の意思を尊重していただかなければならない、この点をこの機会に強く要望いたしまして、賛成いたしたいと思います。
  32. 大平正芳

    大平委員長 他に御発言がなければこれよりお諮りいたします。臼井莊一君提案賛成諸君の御起立を願います。     〔賛成者起立
  33. 大平正芳

    大平委員長 起立総員。よって臼井莊一君提案通り決しました。  なお、ただいまの議決に伴う委員会報告書の作成につきましては、先例により委員長に御一任願いたいと存じますが御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  34. 大平正芳

    大平委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。      ————◇—————
  35. 大平正芳

    大平委員長 次に、学校教育社会教育、宗教及び文化財保護等に関し調査を進めます。  質疑通告がありますので順次これを許します。栗原俊夫君。
  36. 栗原俊夫

    栗原委員 私は教育の行政についてはずぶのしろうとでございますが、教育はすべての人たちに与えられるものであると聞いております。本日は特に学校教育、その中でも義務教育を受ける子供たち気持になり、またその親たち気持になり、教える教師の気持になって二、三お伺いをいたしたいと思います。  まず大臣にお伺いいたしたいのでございますが、教育基本法によって行なわれておる、こういう工合に聞いておりますけれども、日本の今日の教育教育基本法を軸として行なわれておるのでございますか。その点を一つ明らかにしていただきたいと存じます。
  37. 松田竹千代

    松田国務大臣 日本教育は、憲法並びに教育基本法の条章に盛られてある教育根本義を堅持していろいろ施策を進めておるわけでございます。
  38. 栗原俊夫

    栗原委員 教育基本法によりますと、ただいま大臣お話にありました通り日本国憲法精神に則り、」云々と書いてあるわけであります。ここで大臣考え方をお聞きしておきたいと思うのでございますが、第一条の教育目的に「人格の完成をめざし、平和的な国家及び社会形成者として、」とこういう文句がうたってあるわけであります。平和的な国家及び社会、これはなかなか重大な問題でありますが、私たちにわかりやすく納得のいくような大臣考え方一つ説明願いたいと思います。
  39. 松田竹千代

    松田国務大臣 私は、教育のことは、工場や何かと違って物を相手にするところではない、人間相手にする、しかもそれを相手にするものは人間である、ここに非常にむずかしい点があると思うのです。しかし、児童に対しては、ただいま御指摘になりました教育基本法精神、特に平和を愛好するの精神、よってもって文化国家福祉国家を建設していく、こういうところに力を入れてやって参らなければならぬと考えておるわけでございます。
  40. 栗原俊夫

    栗原委員 なかなか問題が大きいので、短時間にはお互いに意思を疎通するのは大へんだと思いますので、端的にお尋ねいたしますが、「日本国憲法精神に則り、」こう明確にうたってあるわけであります。ここ数年来日本憲法についてはいろいろと論議が行なわれて、どうも憲法が今のままではうまくないというようなことで、憲法を変えていこうというような議論も特に政府並びに与党の中に強いわけでございますが、文部大臣は、憲法精神にのっとっていくというこの基本法をお守りになる、こういうわけなんですが、その前提となる憲法についてはどんなお考えであるのでございましょう。
  41. 松田竹千代

    松田国務大臣 私は日本憲法教育に関する基本理念というものはまことにけっこうなものであると思っておるのであります。ただこれが原文が英語であったというふうに承知いたしておる。その英語を日本語に訳したことが土台になっておるという点に、やや理解はできまするが、日本の一般の人々に直ちにぴったりくるような点は少ないのじゃないかというふうにも考えられるのでありまして、でき得べくんばその条章の意味が、一般大衆に直ちにぴんと響くような文句で書き表わされておることを私は好むのであります。
  42. 栗原俊夫

    栗原委員 どうもこれまたなかなか大議論になりそうでありますが、原文が英語であったとか何とかいうのではなくて、日本語で書いてある現在の日本国憲法についていかなる考えを持っておるか、こういう私のお尋ねでございます。
  43. 松田竹千代

    松田国務大臣 その点につきましては、まことにけっこうであると考えております。
  44. 栗原俊夫

    栗原委員 そこで、大臣のおっしゃる、まことにけっこうな日本国憲法を前提として、その精神にのっとって教育を行なうわけでありますが、それにはもちろんそのけっこうな憲法を国民に普及徹底させなければならないものだと考えるわけです。憲法制定された直後には、あらゆる方法を用いて平和憲法を国民一人々々に周知徹底させること、真にこれを体得させるというような方法がとられておったと思うのでありますが、どうも昨今は必ずしもそうでない、いやむしろそうした方向にブレーキがかかっておるようなことさえどうも考えられるような気分がするのでありますが、昨今、そのけっこうな憲法教育の上で具体的にどのような方法をとっておられるか。この点について社会教育を初め、義務教育の面について一つお話を願いたいと存じます。
  45. 松田竹千代

    松田国務大臣 お話まことにごもっともでありまして、最も大切な基本法である日本憲法精神を国民一般に周知徹底せしめるの必要は、まさに私はお説の通りもっともであります。あらゆる方法、あらゆる手段、特に教育上につきましても平易にこれが十万に理解されるように社会教育の面と相まってその周知徹底をはかっていきたいと考えておるわけでございます。従いまして教育の課程におきましても、それぞれの場合にそうした趣旨が織り込んであるものと私は承知いたしておりまするし、また社会教育の面においても、主としてその憲法にうたってありまする趣旨をいろいろの場面から徹底させていく方法をとっておる次第でございます。
  46. 栗原俊夫

    栗原委員 大学等の教育において、憲法の解釈等にいろいろな学説がある、解釈の立て方がある、こういうことはわかっておりますが、たとえば義務教育の特に中学段階等において憲法等を理解せしめるのに、一つの解釈の方向を何か統一して持っていこうとする考えなのですか、あるいは先生が自由に憲法精神というものは前文から、あるいは各条章にわたってこういうものなのだということを自由にやっていいものなのですか、この辺はどうですか。
  47. 松田竹千代

    松田国務大臣 それぞれの先生が教壇より子供にこれら重要な憲法の意の存するところを教えるにあたりましては、御承知のように指導要綱というようなものを作って、これを先生の教授にあたっての一つの参考指針としてやっておるようなわけでございます。
  48. 栗原俊夫

    栗原委員 時間があまりありませんから、目的地へ急ぐわけでございますが、憲法の第二十六条で教育の機会均等についてきめてあるわけですが、その第二項の末尾に「義務教育は、これを無償とする。」こう規定してあるわけです。「義務教育は、これを無償とする。」というこの意味は、一体どのように解釈し、国民として受け取ったらいいのですか。これを一つ説明願いたいと思います。
  49. 松田竹千代

    松田国務大臣 義務教育は、私ども最初の考えとして持っておりましたのは、授業料を免除するというようなことが私どもの頭にわれわれが学校にいたころはあったわけです。しかし今日は、国民は等としくことごとく義務教育を受けなければならぬ、また受けさせなければならぬ。そのために国がその費用を弁ずるということになっておりまするので、本来の趣旨から申しますると、義務教育に関する限り国がその費用を支弁していくのが当然である、かように考えております。
  50. 栗原俊夫

    栗原委員 義務教育というと、文部大臣も初めは授業料というような点に焦点がいったようでありまするが、これは施設、人件費その他教科の諸材料一切を含めて、このように理解しているわけなんですか。
  51. 松田竹千代

    松田国務大臣 大体そういう方向に進みたいと考えておるわけです。
  52. 栗原俊夫

    栗原委員 そういう方向へ進みたい、そうすると「これを無償とする。」ということは、でき上がった姿はどういう姿なんですか。無償とするというこの条章を完全に実行した姿は、どういう姿になりますか。
  53. 松田竹千代

    松田国務大臣 まず学校施設、教員の給与その他これに関する手当その他の点、あるいは児童に対する授業料の免除あるいはきょうも論議がありました保健を維持していくというような事柄、あるいはその他ずいぶん雑多なものがたくさんあると思います。これらを主として公費でもってまかなっていきたいという方向に進みたい、こう考えておるわけであります。
  54. 栗原俊夫

    栗原委員 基本法の第四条の、国または公共団体の作っておる学校義務教育の授業料はこれを徴収しないということは、これはもちろんその他の学校法人においても義務教育というものは行なえる場合を想定しているのだと思いますけれども、そういう場面を想定して、義務教育は無償とするという規定とこれはどういう関係になるのですか。
  55. 内藤譽三郎

    ○内藤(譽)政府委員 義務教育は本来保護者が義務を受けておるわけです。そこで公立学校の場合には、当然にその区域におる者は所定の公立学校にいかなきゃならぬ義務がある。従ってこういう場合には、明確に公費で支弁しなきゃならぬ。ただ私立学校にいく場合は、これは義務教育内容は受けておりますけれども、ここにいういわゆる法律上の義務ではないわけで、父兄が任意に私立学校へいかせておる、こういう意味に了解していただきたいと思います。
  56. 栗原俊夫

    栗原委員 先ほど大臣から、できるだけ憲法趣旨に沿って漸次全額公安の負担にしていきたいというお答えがあったのですが、その公費の意味は、国の負担並びに地方公共団体の負担ということでございましょうが、率直にいって、やはり地方の公共団体にも貧富の差もあることであり、そういう中から義務教育の段階においてすらやはり較差というものもできてくると思うのであって、やはり最終的には全額国の負担において、富める公共団体もあるいは貧しい公共団体も、義務教育は較差なく受けられるという方向にいくのが正しいと思うのですが、この点についてのお考えはいかがでございましょうか。
  57. 内藤譽三郎

    ○内藤(譽)政府委員 お話のように国が義務を課しておりますので、一定の水準については国が保障しておるわけでございまして、この保障の仕方が直接国庫負担金あるいは補助金でいく場合と、不足した分につきましては地方につきましては地方交付税の方で、どんな貧弱な府県におきましても建物、あるいは教員の数にしても給与にいたしましても、一定の水準が保てるように国の方で財政的な配慮をいたしておるわけでございます。
  58. 栗原俊夫

    栗原委員 ただいまお話に伺えば、実は一定の水準に全部いけるようにしてあるのだということですが、それならばなぜ全額国庫といけないのか。その理由を一つ納得のいくように説明してもらいたい。
  59. 内藤譽三郎

    ○内藤(譽)政府委員 本来教育地方公共団体の義務でもあるわけでございます。その地域の住民の教育の問題でございますので、その地域の住民が教育に十分な関心を持つことが必要であろうと思います。ただこの場合義務教育でございますから、その地域の財政力によって教育の水準が維持できないというような場合には、これは国が保障する責任があろうと思うのであります。直接国がやるのも一つ方法ではございますけれども、むしろ私どもは地方自治体の発意、熱意と責任のもとに計画が進められ、最終的に国が財政保障することの方が義務教育の振興上かえって有益であると考えておるのでございます。
  60. 栗原俊夫

    栗原委員 議論はあとでさせてもらうといたしまして、質問だけを続けます。昨今新聞紙上でロッキードの問題やいろいろな問題が伝えられて、子供もこういうものに目を配ってなかなかいろいろな議論もするわけであります。ロッキードをああいう高い金でこれから日本が持つ、ところが説明によれば、あれは空軍ではなくて自衛隊のものなんだ、こういうことなんですが、陸軍である、海軍である、空軍であるということではなくて、あれは自衛隊なんだということで、どうも子供も納得をしきっておらぬのです。今ある自衛隊は、あれは陸軍じゃなくて自衛隊なんだ、ロッキードを買い込んでもあれは空軍じゃなくて自衛隊なんだ、潜水艦を持ってもあれは海軍ではなくて自衛隊なんだ、こう言うんだろうと思うのですが、これではほんとうに子供たちを納得さすことはできぬと思うのです。こういう点について、ほんとうに納得せしめる説明というのはどういう説明なんですか。これは大臣でなくて局長でけっこうですが、局長が教壇に立って子供にそういって資問されたらどう説明するのか、説明してもらいたいと思うのです。
  61. 内藤譽三郎

    ○内藤(譽)政府委員 どこの国でも自衛上の措置はする必要があろうと思うのであります。自衛上必要な範囲の軍備は認められておると思うのであります。こういう点から、日本では陸海軍というような、そういう組織にまで成長しておりませんけれども、自衛の範囲において飛行機なりあるいは艦船なりあるいは部隊なりというものがあるわけでございます。ただ昔の陸軍や海軍や空軍と同じものでございませんので、そこに現在の実情から見て昔の陸海軍を予想されると、かえって子供に妙な意識を与えますので、自衛軍といっておるわけでございます。実態は今申しましたように、内容につきましては同じようなものがあろうと思います。
  62. 栗原俊夫

    栗原委員 一つ大臣からも見解を伺っておきたいと思います。
  63. 松田竹千代

    松田国務大臣 日本憲法の条章、九条に戦争を放棄する、しかしながら侵略にあたっては自衛権を持っておるのである、こうしたことを憲法にうたってあるわけであります。だから自衛隊ということになっておると思うのであります。なるほどあなたのおっしゃるように、もう陸軍、海軍、空軍といってもいいじゃないか、あるいはそういうことにしなければ児童がわからぬじゃないか、児童のみならず国民一般にも割り切れない面があるだろうと、私正直に思います。しかしながらそういう建前できておる日本憲法であり、また国の体制であって、自衛隊ということにおいて説明はできると思うのであります。
  64. 栗原俊夫

    栗原委員 自衛権のための自衛隊を置くことができるとおっしゃるのですが、それはこうやって九条を透かしてみるとそういう字が浮んでくるんだろうと思うのですが、明文は憲法のどこにも出ておらぬ。そこでこの問題で、いろいろ政治的にもむずかしくなってきて、戦争はできないのだ、軍隊は持てないのだ、こういうことで憲法のできました直後の国民は教えられたわけなんですが、途中からそういう透かしの方の字にばかに力を入れて、自衛権は否定されてない、だからその実態である自衛力というものは否定されてない、こういう形で今論議がだんだんと伸びて発展してきておると思うのです。そこでいろいろ論議の中では、自衛のためならばこういうことができるんだ、自衛のためならばああいうこともできるんだ、自衛のためならばという頭をつけると、だんだんできることがふえてくる。私はここで教育の立場に立って文部大臣にお伺いしたいのだが、それでは自衛のためでもできないことはどういうことなんだ、こういうことを一つお伺いしたい。自衛のためでもできないことがあるのではないのか、これはどうなんですか。自衛のためでも今までできないはずのものが、自衛のためならばできる、できると、だんだんできてきたのだ。だから自衛のためと頭をつけてもできないことがあるのかどうか。もっとはっきりいえば、自衛のためならば核兵器でもなんでもできるのじゃないかという工合に伸びていくような気がしてならぬのです、私たちは。自衛のためならば自衛隊が持てるのだ、自衛のためならば飛行機も持てるのだと、自衛のためならばというので、だんだんどうも頭へ自衛のためならばという文字でどんどんと先へ伸びていく。一体自衛のためならば何でもできるという方向の中で、なおかつ自衛のためでもできないことがあるのではないのか、こういうことを一つお伺いした、
  65. 松田竹千代

    松田国務大臣 文教の府にある者として、戦争事のことを予想しての話はちょっとふさわしくないと思いまするけれども、しかし今御質問でありまするから……、私の考えでは、主として自衛権に基づく自衛隊である。従って他国を侵略するような武器、そういうものは厳にこれを戒めなければならぬ、かように考えております。たとえば核兵器の弾頭のついたロケット、そういったものは持つべきものではない。厳にこれは禁止していかなければならぬ、かように考えております。
  66. 栗原俊夫

    栗原委員 そこで私がいろいろこういうことをしつこく開いておるのは、最後に大臣に答えを出してもらいたいと思うのですが、憲法第九条には戦争は放棄した、陸海空軍は持たないのだと、こう書いてあるが、自衛のためならば自衛力は持てるのだと、こういうようなものの考え方の上に立って、かつて戦った日本の戦争はどうであったか、こういう問題に一つ評価を立ててもらいたいと思うのです。日露戦争並びに先般の第二次世界大戦、大東亜戦争といいますか、太平洋戦争といいますか、これは今の自衛のためならばということで憲法論議をしておる中で、そういうものの見方の立場に立って、日露戦争は一体どのような理解をしたらいいのか。太平洋戦争は自衛戦争なのか。戦争事は文教に携わる者において云々とはいうけれども、やはり文教に携わる者こそこのことを明確にして、そして今後の日本の国民の行くべき道というか、民族の行くべき道を明確に規定していかなければならぬ、こう思うので、日露戦争はただいまのそうしたものの考え方であれば——私どもはあれはもうりっぱな聖戦だと学校で教わったのです。日本の国威発揚のための聖戦と教わったのですが、そういう自衛のための、国威発揚のための戦争であると今でも理解していいのか。また「豈、朕カ志ナラムヤ。」とうたった太平洋戦争は、自衛のための戦争と理解していいのか。そうでないというのか、この点を一つ文部大臣の立場から明確に評価していただきたい、かように考えます。
  67. 松田竹千代

    松田国務大臣 私どもは日清、日露の役、高い理想は理想としてこれは考えなければならぬ。わが国憲法には最も高い理想がうたわれておると思うのであります。しかしながら日清、日露の役のごときはその当時世界において行なわれておる道徳観——理想は理想である現実に行なわれておる、考えられておる道徳観というものによって、その当時の情勢を判断していくべきものであると思います。これによってこれを見ますると、私は、日清、日露の役のごときは、今日においては侵略戦争であったというような人もありまするけれども、当時の事情においては、これは侵略戦争ではなくして、自衛のための戦争であった、かように考えておるわけであります。すなわち世界の列強においてもすでに早くやったものは是認されて、ややおくれてやったものは、同じ事柄をやっても是認されないというような事柄があるのでありまして、そのときの情勢の、行なわれておる道徳観に基づいて判断すべきものであると考えるわけであります。
  68. 栗原俊夫

    栗原委員 質問に答えておられないのですが、私はただいまの憲法のもとにおける日本の立場から、日露戦争をどう考えるか、特に戦争放棄をしながら、自衛権はある、こういう立場に立っておる立場で、日露戦争をどういうふうに見るか。特に今お答えがなかったのですが、「豈、朕カ志ナラムヤ。」といって始まった太平洋戦争をどう見るか、こういうことをお尋ねしておるので、一つ質問をそらさずに、ざっくばらんにお答えを願いたい、このように考えます。
  69. 松田竹千代

    松田国務大臣 太平洋戦争は侵略戦争であったかどうかというお尋ねでございますか。
  70. 栗原俊夫

    栗原委員 今の立場であの戦争をどう見るか。
  71. 松田竹千代

    松田国務大臣 現在の憲法の条章に従って見るならば、実際に武力をもって始めたのはハワイの真珠湾であったのでありまするから、その点だけをもっていたしますれば、今日の立場から考え、憲法の条章等の上に立って考えまするならば、あるいは侵略だともいえるでしょう。けれども当時の情勢からいうならば、わが日本はせっぱ詰まって自衛を——この場合に自分の国家保護する立場から、あの挙に出なければならなかったと考える考え方もあると私は思うのであります。
  72. 栗原俊夫

    栗原委員 考え方もある、こういうことでありますが、どうもいま少し明快にずばりと割り切ってもらいたいのです。自衛と考えるのもいいのですよ。侵略と考えるのもいいのですよ。ああも考える、こうも考えるというのでなくて、一ついま少しずばりと、大臣、切り下げてくれませんか。
  73. 内藤譽三郎

    ○内藤(譽)政府委員 ただ私は、どういうふうに現在の小中学校教育過程で教えているか、この実情を申し上げたいと思うのです。文部省教育過程の改正をいたしまして、社会科の指導要領の中で、日清、日露の戦争を取り上げております。その取り扱いは、近代日本の発展過程で、これが占める役割を客観的に理解させることを目的といたしております。その一節を読んでみますと、「日清戦争や日露戦争などにおいても、これらの戦争を単に両国の利害関係や国民感情などを指摘するだけにとどまらないで、ヨーロッパの諸国やアメリカ合衆国などがアジアに有する利害関係、勢力を及ぼしている程度など、両国をめぐる国際環境などをできるだけ広くながめることが必要である。」こういうふうに書いておるわけでございまして、歴史は歴史として私どもは教えていきたい。ただ今の戦争放棄の問題ということになりますと、これは一つの歴史というよりは価値観の問題になってくると思いますので、これは社会社会の中で今の憲法を教えておる、そして歴史は別に教えております。従って日清、日露の戦争が侵略戦争である、あるいは自衛戦争である、こう簡単に割り切れるものではないということを申し上げたいと思うのであります。
  74. 栗原俊夫

    栗原委員 憲法社会科で教え、歴史は歴史でまた別の角度から教えていく。やはり教育は総合的に歴史的に歴史の価値判断をして、そうしてああいうことを再びやっていいのか悪いのか、こういうような問題が教えられなければ、基本法に書いてある平和な国家並びに社会形成者としての人格を完成する、これはなかなか大へんだと思うのですよ。ばらばらに教えて、こっちはこっち、こっちはこっち、これは違うのだというような教え方ではやはりうまくない、こう思うのです。私がなぜこうしつこく食い下がるかというのはやはり今のけっこうな憲法というものが生まれた経過、そしてまたその憲法に基づいて教育基本法ができておる。こういう中には、特に太平洋戦争の評価などはしっかりして、やはり教育一つの軸になっていかぬと、ほんとうに基本法でいうておるところの教育というものが完成できないのではないか、このように思うわけです。どうもこの問題もなかなか論議は尾を、引くようでありますけれども、きょうの質疑に対するお答えを中心にして、後ほどまた議論をさせていただきたいと思います。  なお、一、二点、今度はそういう問題とは別個な問題についてお聞かせを願いたいと思います。  国立劇場の問題についてお尋ねしたいと思うのですが、国立劇場の構想と現況は概略どんな工合になっておりましょうか。
  75. 岡田孝平

    ○岡田政府委員 国立劇場は、その設立の目的日本芸能の伝統を正しく保存するとともに、新しい芸能の創造発展をはかる、これが目的でございまして、そのために主として古典芸能の上演に適した劇場と、それから現代芸能の上演に適した劇場、とりあえずこの二つを設立いたし、さらに第二次といたしましては、小劇場、つまり新劇あるいは文楽等、小人数の観客を対象にいたしまして上演する小劇場、それからさらに能劇場、この二つを第二期といたしまして、とりあえず第一期といたしましては、二つの劇場、こういう目的で先年来準備費を国の予算において獲得いたしまして、これが準備に努力をいたしておる次第でございます。  ところが、この敷地がなかなかきまりませんで、そのために非常に準備がおくれたのでありますが、一昨年でありましたか、青山一丁目の大宮御所の一角を敷地にいたすということがほぼ決定いたしましたが、これもいろいろ異論が出まして、さらに取りやめになり、その後当初の候補地でありました三宅坂のかどのパレス・ハイツ、それを敷地とすることに一昨年の暮れにようやくきまったのであります。敷地がきまりましたので、いよいよ具体的な建設に取りかかったわけでございますが、今度はあそこのパレス・ハイツの敷地は住居地域である、従って劇場は原則として建てられないということでありまして、劇場をあそこへ建てますには、東京都知事の認可が要るわけであります。その認可がおりますにつきまして東京都と折衝をいたしたのであります。これは非常に難航をきわめまして、やっと昨年の暮れにパレス・ハイツに劇場を作りますことの認可の見通しを得ましたので、やっと敷地の問題がほぼきまりましたので、これからいよいよ建築に取りかかる。そのためにまず設計書の懸質募集をいたすということで、ただいまその懸質募集に取りかかるところまでいっておるわけでございます。ただしかし、この懸質募集いたしますにつきましては、劇場の予算並びに規模がおよそ見当がついておりませんと、懸賞募集いたしましても意味がないのでございますので、劇場の建築費の予算の基礎になります規模について、ただいま大蔵省としきりに折衝中である、こういう段階でございます。日本の芸能を正しく保存するといいますことは、要するに昔から日本にありますところの歌舞伎、文楽、雅楽、その他種々の日本の音楽あるいは日本舞踊、こういうような古典芸能を全く純粋な形でりっぱなものを多くの人に安く見せる、そうしてこれらの古典芸能がりっぱに保存されていくようにいたしたい。なおあわせて、現在の芸能でありますところの西洋音楽あるいは舞踊あるいはオペラ、その他種々の現代的な音楽あるいは演劇等につきまして、その振興ということを目的にいたしまして、一つ模範的な劇場を作りまして、そこで模範的な公演をいたすということをねらっておるわけでございます。なお、その公演の基礎になりますところの仕事といたしまして、いろいろの芸能の調査を行なう、あるいは資料の収集を行なう、あるいわまたそういう芸能関係の記録を行なう、あるいは将来さらに進みまして、芸能者の養成を行なうというところまで進みたいというようなことで、要するに、国といたしまして芸能関係の保存、伸展を期する一つの中心機関にいたしたい、かような考えで進みたいと思っておる次第でございます。
  76. 栗原俊夫

    栗原委員 概略わかりました。もう皆さん十分知っておるところを、飛び込みがこんなことを聞いて申しわけないのですが、そこで日本の古典芸能を保存することと、またりっぱな古典芸能、その他の芸能を大衆に安く見せる、こういう二つのねらいのようにお聞きしたわけですが、そこで問題は、一体建物はりっぱにできても、中に入れるものの問題と、つまりアクターですか、芸能をやる人たちをどのようにしていくか、国でもってそういう芸能団をかかえるのか、かかえるとすれば、入れものが一つではどうにもならぬので、しかも一方大衆に安く見せるということで、地方においてもこういうものを演じ得る場所というものが必要になってきょうか、こう思うのですが、これに対する構想は何かお持ちでございましょうか。
  77. 岡田孝平

    ○岡田政府委員 りっぱな芸能を上演いたしますためには、りっぱな演出者、それから演者が必要でございます。これにつきましては、いろいろの案を研究しておりますが、ただいまのところでは、劇場直属の劇団あるいは芸能人というものを持ちませんで、民間にありますところのいろいろな演出家あるいは劇団等を、劇場の企画におきまして適当に編成いたしまして公演する。従って、公演自体は劇場みずからの独立自主公演になりますけれども、直属の役者は最後まで持たないという形、すなわち劇場の主催公演ということにいたしたいと考えておる次第でございます。従って、年間を通じて、いつどの劇場にはどの劇団がどういう出しものを演ずるかということは、年間のプランをすっかり立てるわけでございまして、そのプランによりまして、りっぱな劇団に出てもらいまして、そうしてまた適当な題目をとらえて公演していく、かような考えでおります。なおしかし、すべて劇場みずからの経営、主催公演にはならないのでございまして、例外として、劇場があいて、おる場合には、一部適当な劇団にこれを貸すということもあわせて考えたいと思っております。  それから東京だけにこういうものを置いたのでは、ほんとうは目的が達せられませんのはお話通りでありまして、できれば将来地方にも置きたいのは私どもの希望でございますけれども、なかなか急にはそういうことに参らないということならば、移動式に、国立劇場の企画をいたしました芸能を地方に持って回るということもぜひ考えたい、かように考えておる次第でございます。
  78. 栗原俊夫

    栗原委員 それにつきまして、これは私個人の考え方ではないのですが、国立劇場ができて、りっぱな芸能を安く大衆に見せる、こういうのですが、やはりなかなか演者も演出者も大へんであろうし、また東京だけでは、大衆に安く開放するといってもこれは開放できない。そこでやはり地方にも国立劇場的なものを各府県に持つように、また一方国で演者、演出者をまあまるがかえにする、というとこれは持つことになるわけですが、持つことによって、東京の国立劇場がセンターであり、同じ出しものを地方にも順次持ち回る、このことによって、この劇団なら劇団自体も同じ出しものが長く、みがかれた芸能を見せることもできるし、しかも安く見せる。こういう意味でぜひ国で劇団を持ってもらいたいということ。いま一つは、これを受け入れる入れものを地方に持たせる施策、援助というものをぜひやってもらいたい。地方においても、国が五千万なら五千万円程度の呼び水を与えることによって、しかるべき入れものもできていく、こういうことで、そういう運動も各地でぼつぼつ起きているやに聞いておるのですが、これらに対する考え方はいかがでございましょう。
  79. 岡田孝平

    ○岡田政府委員 直属の劇団を国立劇場に持ちますことは、これはいろいろ利害得失がございまして、なかなかむずかしい問題でありますので、引き続いて検討は加えておりますが、ただいまのところ、直属の劇団を持つという考えは持っていないのであります。しかし、これは将来十分研究いたしたいと思っております。  それから地方に公共の劇場を作りますことは、これはきわめて喜ばしいことでございまして、外国におきましても、大きな都市あるいは中都市等におきましても、それぞれ公共団体持ちの劇場が多くございます。日本におきましても、さようなものができますことは非常に望ましいことでございますので、将来さような地方の公共劇場を設置するため、私どももできるだけの努力をしていきたいと思います。
  80. 栗原俊夫

    栗原委員 実はなぜこういうことを申すかといいますと、群馬県では高崎市に、文部省にもいろいろお世話願っておる例の群響という音楽団がございまして、これを中心に音楽センターというようなものが今始まっておるわけです。群馬県では入れものを作って、そして群響を中心に、今まで学校へ出張っていったこの音楽団が、音響のよい建物で生徒に音楽を聞かせようということで、かなりこれの運営については見通しが立つわけでありますけれども、やはりせっかく国のそうした芸能の殿堂ができるのでありますから、これが単にいわゆる興行屋さんの金もうけの場に化する、しかもとかく集中的になっていく東京のみにこういうものが巨額な国費によってできる、こういうようなものをむしろ分散的にものを考えて、センターは東京に置くけれども、地方の大衆にも東京並みのりっぱな芸能を安く開放してもらえる、こういう方向をぜひとってもらいたい、こんな工合に考えるものであります。  なおこれらについては、きょうは少しく準備も足りませんので、いずれいろいろな基本的なものの計画の考え方等も持って、お願いやら御質問をいたしたいと思いますが、本日は以上で私の質問を終わらせていただきます。
  81. 大平正芳

  82. 大原亨

    大原委員 私はこれから国際条約尊重についての問題につきまして、二、三御質問いたしたいと思います。  その第一は、昭和二十九年九月九日にハーグにおいて署名をしておられます武力紛争の際の文化財の保護のための条約、この条約の取り扱いにつきましてまず御質問をいたしたいと思うのですが、この条約を締結されました際の政府の代表、それからこの条約を国際的に扱っている事務局、そういう点をまずお聞きいたしたいと思うのです。
  83. 岡田孝平

    ○岡田政府委員 昭和二十九年にユネスコ主催の各国政府会議がございまして、その政府会議で、武力紛争の際の文化財の保護のための条約というものが採択されました。その際、日本もその会議に参加いたしました。その参加の際の政府代表は、オランダに駐剳いたしておりました大使の岡本さんでございます。それから代表顧問といたしまして、私と京都博物館長の神田さん、二人がその会議に出席したのでございます。
  84. 大原亨

    大原委員 わが国を代表いたしましてこの条約に調印する、あるいは批准行為を行なうというのは外務省だと思うのですが、文部大臣文化財保護委員会との、この条約の批准行為を行なうに至るまでの仕事の分担、任務分担、管轄ですね、それにつきましてちょっとお聞かせいただきたい。
  85. 岡田孝平

    ○岡田政府委員 この条約の会議日本が参加いたしまして、そしてその会議は二十九年の五月十四日に終了いたしました。その際に条約は成立いたし、その日に多くの国が署名をいたしましたけれども、日本はしばらくおきまして、同じ年の九月の六日にユネスコの本部に岡本オランダ駐剳大使が参って署名いたしたのであります。その際の仕事につきましては、主として文化財保護委員会がこれらの仕事に当たりまして、随時文部本省と連絡をとりまして、そしてこの仕事に関係いたしたのでございます。
  86. 大原亨

    大原委員 本年度の予算の中に、この文化財の保護の批准行為やその他に関連いたしまして、予算が載っておりますか。どこに載っておりますか。
  87. 岡田孝平

    ○岡田政府委員 予算の項目にはございませんで、内訳に、ごく若干の準備事務のための費用が載っております。
  88. 大原亨

    大原委員 金額は幾らですか。
  89. 岡田孝平

    ○岡田政府委員 実は内訳は大蔵省と協議いたしてきめるということでございまして、まだ決定いたしておりませんが、ごくわずかでございます。
  90. 大原亨

    大原委員 今日まで、毎年若干の予算が計上されていると思うのですが、その予算を計上いたしました金額と御使用になりました状況をお話しいただきたい。
  91. 岡田孝平

    ○岡田政府委員 これは実は予算というほどの予算もとっておりませんで、いろいろ事務的な準備をやるための事務費と申し上げていいかと思いますが、ただいままで、いろいろこの問題につきまして私どもがやって参りましたことを概略申し上げますと、この条約は昭和二十九年に成立いたしましたが、三十一年の八月の七日に効力が発効したことになっております。これは、この条約に五カ国以上が加盟して、つまり批准でございますが、加盟いたしまして、そして、それから三カ月たってから効力を生ずるということで、昭和三十一年の八月七日にこの条約は効力を発効しております。日本といたしましては、できるだけ早くこの条約を批准いたしたい、かような考えでいろいろ検討を進めて参りましたのでありますが、この条約の趣旨につきましては、各省ともいろいろ折衝いたしましたが、各省とも異存はない。しかしながら、この条約の批准の手続をとりますためには、これを国会に承認を求めるわけでございますが、同時にこれを実施するための国内法を制定しなければならない。国内的の法律をすっかり整備しなければならない。でなければ、単独に条約だけを批准のために国会に提出することはできない、こういう政府の間の意見でございまして、従いまして私どもといたしましては、まず国内法を制定いたしたいということで、いろいろの案を作りまして、そして関係省といろいろ折衝いたしたのでございます。  なおまた、この条約を実際実施するということになりますと、これは一般保護と特別保護とございますが、特別保護の対象になりまする文化財、これはきわめて貴重な、数を限りました少ない文化財でございますが、それを国際登録をすることになるわけでございます。その国際登録を受けましたものにつきましては特別の保護が与えられる、こういう内容でございますので、その国際登録いたしますものは、どこであるか、その文化財の周辺の状況はどうなっているかというような、いろいろの検討を進めて参っておったのでございます。大体ただいままではそういうようなことに力を尽くしておったのでありますが、なお続けて最近の状況を申し上げますと、すでに何カ年もたっておりまして、当時条約に署名いたしました国は次々と批准をいたしております。現在では、その批准いたしました国は三十カ国というふうになっておるのでございます。ところが、この三十カ国の国は、いずれも条約だけをその国の国会に提出いたしまして国会の承認を得て、そして批准の手続をとっておる。これは外務省を通じ、あるいは直接に各国について調べてみたのでございますが、この三十国のいずれの国もすべて国内法をただ作っていないのであります。ただ条約を批准したのみにとどまるのであります。私どもの方も、そういうことで条約だけをとりあえず批准をして、あと国内法の制定はいろいろと検討を進めて、関係省と話がまとまってから出すということならば、これは非常に楽でございますが、日本におきましては条約だけの批准はできない、こういう政府の方針であるということでございますので、私どもは国内法を同時に用意する。それで、この国内法を作りますには、特別文化財の周辺地区を何キロにとるか、その距離をどのくらいにとるかということが一番大きな問題でございますが、これは各国とも共同歩調によってそういうことをきめなければならぬ。日本だけ単独にそういう距離をきめまして国内法を作りましても、それがはたして通るか通らないかということは、非常に国際的に疑問でございます。さようなむずかしい問題もあります。その他技術的な問題もいろいろございますが、ただいま国内法の制定につきましていろいろ準備をいたしておる、こういう段階でございます。
  92. 大原亨

    大原委員 まさか批准すまいと思うて署名されたわけじゃないと思うのです、この条約は。いろいろ準備をしておられることにつきましては私も聞くのですが、その特別文化財は、大体皆さん方が御調査になっておるのは、あるいは考えておられるのは、日本におきましては何カ所くらいで、どういうところですか。一般保護と特別保護の関係で、特別保護は国際的に登録して、国際紛争があった際に攻撃目標としないでお互いにそれを守っていくということでしょう。そういう特別保護の文化財は大体どういうようなところですか。
  93. 岡田孝平

    ○岡田政府委員 特別保護の文化財の対象といたしまして、いろいろ検討いたしております個所は、たとえば日光、それから奈良で申しますならば法隆寺地区、それから奈良市におきましては、東大寺、春日神社等奈良市における文化財の集中地区でございます。京都におきましては、たとえば平等院地区、あるいは広島の厳島地区、あるいは高野山地区というようなものを候補にあげて検討を加えておる次第でございます。大体におきまして非常にこれは数を限ってそういう地区を選定し、それを国際登録をいたす。国際登録をいたします場合には、ユネスコの本部に登録申請を出すわけでございますが、その際に締約国から異議の申し立てがある、その地区は登録の条件を備えていない、周辺に軍事目標になる施設がある、そういうものを登録するのは異議がある、そういう場合には関係国の投票に付すというような規定もございまして、そういう点につきましては、よほどむずかしいことが、あるかと思いますが、そういうことにつきましては、すでに批准をいたしました関係国の実際の状況なり、方針を調べておりますが、まだ各国ともそこまで行っていない、おのおの準備中という段階でございます。
  94. 大原亨

    大原委員 文化財保護法第一条にも、「この法律は、文化財を保存し、且つ、その活用を図り、もって国民の文化的向上に資するとともに、世界文化の進歩に貢献することを目的とする。」ということで、国際的に文化財を保護しようというのでしょうが、今特別保護は、日光、法隆寺、奈良、京都、厳島、高野山、こういう数カ所をあげられましたが、他の関係国が異議を申し立てることがあるというのですが、その周辺に軍事施設を置いちゃいけないとかいう規制の条件はどんなですか。
  95. 岡田孝平

    ○岡田政府委員 特別保護文化財の登録の対象になりまする条件といたしましては、まずその登録をしようとするところの文化財もしくはその地域が大きな工業地区、または攻撃を受けやすい地点たる重要な軍事目標、たとえば飛行場、放送局、国防のために使用される施設あるいは比較的重要な港、停車場あるいは交通幹線、そういう攻撃目標になりやすい地点である軍事目標から、妥当な距離に所在すること、適当な距離が離れておる。第二の要件はそれが軍事上の目的に使用されていないこと。こういう二つの条件があるようであります。
  96. 大原亨

    大原委員 栗原委員の方から九条の話がありまして、文部大臣も、文化的な平和的な民主的な国家を作るんだというのが憲法の理想だと言われますが、わが国のような文化国家、平和国家を標榜する国は、こういう文化財については率先、積極的に一つやるべきじゃないかと思うのです。そういう観点から、あとからまた文部大臣にお尋ねをいたしたいと思うのですが、そういたしますと、具体的に特別保護の文化財を若干あげられましたが、それに抵触すると思われるような、今問題となる個所がありますか。
  97. 岡田孝平

    ○岡田政府委員 重要な軍事目標、攻撃を受けやすい地点たる軍事目標から適当な距離を離れておることが必要である、この適当な距離といいますのは、この条約が採択されるまでには数回にわたりましてユネスコの総会においていろいろ議論され、あるいはまた各国の専門家会議においていろいろこの条約の草案につきまして以前から議論されておったのでございますが、その際に、適当な距離の定め方ということについていろいろ議論が出ました。結局条約を採択されましたときには、適当な距離はどのくらいかということは、何ら結論を見ないままに終わったのでございます。従って、あるいはこれを一キロにとるか、二キロにとるか、四キロにとるか、五百メートルにとるかということによりまして、その距離の間に軍事目標があるかないか、あるいは大きな工場が作られておるかということについては、その距離のとり方が実はぎまってないために、この問題につきまして決定的な結論が出ない、こういう状況であります。その距離の定め方につきまして、ユネスコの本部にも数回照会をいたし、また関係各国にも直接照会しております。さらに、さきに文化財委員会事務局の田中次長がヨーロッパへ参りました際に、ユネスコ本部を訪れまして、この問題についていろいろ尋ね、さらにまたヨーロッパの各国につきまして、この問題についてどういうことをやっておるかということをいろいろ調べたのでございますが、各国ともまだ未定であって、何らきまってないということでございますので、私どもといたしましても、まだ何ら確定的な結論に達しておらない、こういうことでございます。
  98. 大原亨

    大原委員 ちょっとそれますがそういう文化財に対しては、国内措置は文化財保護委員会、文部省がやるのだと思うのです。その担当責任者は文部省だ。そういう際に、文化財を国内法に従って指定しながら国際的に登録する、こういう手続をとるのだと思います。もちろん国内では指定しておるわけですね。宮内庁関係の京都の御所とか桂離宮とか正倉院とか、そういうものがこういう国際的な指定をするのに若干の手続上の問題になっておるのですか。
  99. 岡田孝平

    ○岡田政府委員 この条約で保護を受けます文化財といいますのは、日本文化財保護法に規定されておる文化財と範囲が違いまして、ある面においては広い、ある面においては狭い。たとえば文化財保護法におきましては、文化財保護によって国が指定いたしました文化財につきまして保護いたしておるのでございますが、その中に、天然記念物あるいは名勝等がありますが、この条約におきましては天然記念物、名勝は除外されております。一方また保護法においては直接保護の対象になっておりませんが、この条約におきましては、それ以外のものといたしまして、たとえば博物館、図書館等の建造物そういうようなものも条約上は保護の対象になっておる。こういう面におきましては文化財保護法よりは範囲が広いということを申し上げられると思います。この条約がもし適用になり、施行になるということになりますれば、保護法以外に、たとえば今お話しになりました宮内庁関係のあるいは離宮であるとかあるいは庭園であるとかというようなものは、ただいま文化財保護法からいいますと、実はまだ指定しておりませんが、たとえばそういう宮内庁関係のものとか、その他よその他省の所管にかかる実質上の文化財等、そういうようなものはやはり条約の対象にしなければならぬ。従って、条約を実際施行します場合には、まず一般保護としては何を対象とするか、特別保護といたしましてはどれを対象にするかということをきめる必要があろうかと思います。そういう条約上の保護対象物をまず認定する、こういうことが必要になってくるわけであります。
  100. 大原亨

    大原委員 これはあとでまたまとめて問題点を質問したいと思うのですが、一つだけお聞きしたいと思います。  第七条に、軍事上の措置といたしまして、第一項に、「軍隊の構成員の間にすべての国民の文化及び文化財に対する尊重の精神を育成する」、もちろんこれは文化財保護精神からいいますと、政府機関、各機関ともいろいろな政策を遂行する上において、そういう文化財尊重の原則の上から、国際法上の文化財保護条約につきましてもやはり考えてやれということだと思うのですが、平和的な文化的なこういう問題になりますと、やはり国全体のそういう政策の中になかなか入っていないのじゃないかと思うのです。だから、だんだんと既定事実ができて、批准をいたそうということがむずかしくなるのだと思うのです。たとえば日光の近くにおきましても大きな工場ができて、しかも軍需品を生産するとか、あるいはどこどこの鉄道がどうだとか、こういうことに逐次なってくるので、こんな場合に、軍隊の構成員の間とかあるいは第二項の「平和時に、自国の軍隊中に設置し、又はその設置を計画することを約束する。」専門的な機関をやって常時各機関においてそういう文化財尊重の精神を植え付けて、国際文化財保護条約の精神を尊重して、敵の文化財もみずからの文化財も尊重しろ、こういうことなんですね。そういう精神だと思うのですが、この軍隊というものは日本では自衛隊ですか。
  101. 岡田孝平

    ○岡田政府委員 この条約に軍隊といいますのは、正式の軍隊はもちろんのことでございますが、それ以外に、正式の軍でありませんでも、実質上におきまして武力を行使する部隊、たとえば日本の自衛隊のごときはこれに入るわけでございます。
  102. 大原亨

    大原委員 戦力のない軍隊だがら……。自衛隊も入るかもしれぬけれども、そこに支障があるわけじゃないですね。条約批准上支障があるわけじゃないですね。私が聞きたいのはそこなんです。
  103. 岡田孝平

    ○岡田政府委員 国内法を同時に作りまして、そして、条約の批准と同時に国会承認の手続をとりたい、こういうようなことでいろいろやっておるわけでありますが、国内法制につきまして、一つは、先ほど言いました特別保護の文化財の周辺地区をどのくらいの距離をとるかということが一番の問題であります。これはまだよその国におきましてもきまってない、従って日本としても確定的なものはきまってないということが一番の障害でございます。もう一つは、これは関係省が非常に多うございまして、たとえば今おあげになりました防衛庁は、最も大きなこの条約と関連する省でございますが、つまりこの特別保護になります文化財の周辺に、防衛庁の庁舎あるいは部隊等があります場合には特別保護を受けないわけであります。また現在ありませんでも、これから文化財の周辺にそういう部隊を作るということになりますならば、条約上の保護を受けない、従って特別保護の対象になります文化財の周辺にはそういう軍事施設は設けない、こういうことを法律規定いたすわけであります。従ってそういうことにつきまして、いろいろと防衛庁とも折衝を続けていく、こういうことであります。同様の問題はたとえば通産省においても農林省でもいろいろございまして、他の公共施設とこの条約の保護する文化財との関連の問題がいろいろあるわけであります。
  104. 大原亨

    大原委員 文化財保護条約を批准するつもりで準備しておると思うのですが、先ほど申し上げておるように、政府の各機関、あるいは民間のいろいろな産業活動、いろいろな面においてやはり日本は国際的に見ましても、文化財が非常にたくさんある国だと思うのです。だから文化財尊重の平和国家文化国家精神からいって、そういう方針なり、準備を文化財保護委員会は権威をもってやってもらわなければならぬし、文部大臣が、バック・アップしてもらわなければ、批准をしておいてもだんだんとほったらかすような、非常に国際的にも怠慢な条件を作っていくと思うのですが、そういう面におきまして、ちゃんと方針を作って文化財保護に対しての方針、国際条約尊重、批准への準備、そういうものをやっておられますか。皆さんの方では文化財保護委員会といったらどこかの委員会と思っておられる人がたくさんあるのじゃないか、各省では行政機関ではないと思っておる人がいるんじゃないか、文化財保護委員会は文部省設置法を見てみますと文部省の外局であって、特に外局として委員会組織で文化財保護についてのそういう行政機構を作っておられる。この点はそういう方針で徹底するような方針をとっておられますか。
  105. 岡田孝平

    ○岡田政府委員 この条約を署名いたします際には、これはもちろん閣議で決定いたしまして署名いたしたのであります。その前におきましても、関係省とは十分な打ち合わせを遂げて条約については異存がない、こういう政府の方針がきまったのであります。そのために閣議できまり、それに基づきまして署名いたしたのであります。今度は批准でありますが、いやしくも署名いたしました以上は、この条約につきましては、日本もぜひ参加いたしたい、こういう意思のもとでこれを署名いたしたものであります。その後国内法の制定等につきまして、いろいろ努力しておりますが、各省ともこの条約の趣旨には何ら異存がない、ただ先ほど来申し上げますいろいろな技術的な問題につきまして、なおいろろい各省との折衝の余地がある。また外国の例を参考にしてきめなければならぬ面がある、しかも非常に重要な部面がありますので、外国の様子をもうしばらく見て適当な国内法律を作りましてこれを批准いたしたい、かような考えであります。関係省とはほとんど毎日のようにいろいろと打ち合わせいたしておりまして、条約の趣旨につきましては別に各省とも異存がないのであります。
  106. 大原亨

    大原委員 ちょっと文部大臣にお尋ねいたします。この特別保護とか、そういう文化財の周辺に軍事目標を作ってはいけない、それは国際紛争の渦中に日本が入ります際に攻撃目標になる、こういうことなんですが、それを質問する前に、文化財保護条約については文部大臣としては熱意をもって批准の準備をする御決意がおありなんですか。
  107. 松田竹千代

    松田国務大臣 諸外国においてすでに三十数カ国批准いたしておるということでございますから、日本もその趣旨において何ら異存がないというふうな報告も今ありましたから、当然批准すべきものと思います。しかし、先ほどの報告にありましたように、列国ともに批准しっぱなしでまだ何らそれに必要な国内法の制定をしておらぬということは、いかにそれが実際問題としてむずかしいかということもありますので、その方をまず進めていかなければならぬかと思います。そうでなければ批准のしっぱなし——しっぱなしでもよいから批准せよということなら容易でありますが、また異存もないところでありますけれども、もっとまじめに考えて、批准する以上は国内法もこれに基づいてその地域の設定というようなことも研究してもらわなければならぬ、かように思いますので、やはり他国との調子を合わせることも必要でありますので——ところが他国にはまだ一つもその例はないというようなことで事実上非常に難渋いたしておる、こういうことでありますから、御趣旨賛成でございます。そういう方向に向かって鋭意努力していきたい、かように考えております。
  108. 大原亨

    大原委員 その当時は松田さん文部大臣でなかったからなんでんが、六年間たっておるのですよ。署名調印する際には閣議でも決定したというでしょう。それを六年間もほたらかしておくというのは怠慢じゃないかと思う。大臣がどんどん閣議で推進してもらわないと、文化財保護委員会だけでは進まぬと思うのです。この点は早く批准する御意思がおありですか、文部大臣の御意見を伺いたい。
  109. 松田竹千代

    松田国務大臣 批准することに異議ありません。しかし批准する以上は今申し上げたように事情がありますので、この条約の精神にのっとって国内法も進めて両々相待って批准の運びにしたい、かように考えております。
  110. 大原亨

    大原委員 三十カ国批准しているわけです。国内においてあまり準備がないと言われるけれども、しかしそんなことについては文部省の方では十分御調査になっていない。批准した以上はちゃんと各国はその心がけでやっておるわけです。これはいろいろ情報がありますけれども、きょうは申し上げませんけれども……。私は、極東の紛争の中に巻き込まれる安保条約よりも、むしろこの方が先だと思うのです。いつ批准するかということは別にいたしまして、文化的な、平和的な条約、こういうものをどんどん日本がやっていくことが、やはりほんとうに真剣に日本憲法趣旨を国際的にも貫いていく、こういうことで私は大切な意義があると思いますけれども、この点について文部大臣の御所見を聞かしていただきたい。
  111. 松田竹千代

    松田国務大臣 私は、日本の保有しておる文化財はきわめて貴重なものであり、日本の持っている最も大切なものであると考えておるのでありまして、これが保護のためにはあらゆる手段を用いてその実を上げるようにいたしたいと考えております。
  112. 大原亨

    大原委員 一つこれをおざなりにしないように真剣に考えてやってもらいたいと思います。私は広島ですけれども、宮島、厳島が調査しておりましたら入っておりました。国際的にちゃんと保障して、——広島は原爆を受けたのでありますから、それはやはり文化財として国際的にそういう文化財尊重の精神が侵透すれば——どう誤っていろんな問題が起きるかもしれない今日の情勢において、私はそういうような危険な戦争はないことを望むし、ないだろうと思うけれども、やはり局地の戦争に巻き込まれる可能性は十分国民が心配しているところです。だから、文部省がそういう担当をしており、せっかく署名しているんだから、ちゃんとそういう方針を各方面にわたって整備しながらそういう文化財を保護していくんだ、こういう国際的な精神と一緒に平和的な精神をつちかうていただく、こういうことが、いろいろ文部大臣あるいはその他の各局においてやっておるけれども、それよりもこれは一つのほんとうに重要な問題である、こう私は思いまして御質問申し上げたので、非常に国際的な認識あるいは自由人としての文部大臣の見識においてこのことを進めていただくように特にお願いいたしておきまして、詳細な問題はまたあとで別の機会に御質問いたしたいと思います。  第二の国際条約尊重の問題ですが、これはきわめて簡単にお答え願いたい。これはすでに批准をいたしておるのですが、ILO条約の第九十八号に公務員というのがございます。これは論議の対象になっておりますが、この公務員の中には、たとえて申し上げると、教職員は入るのですか入らないのですか。
  113. 内藤譽三郎

    ○内藤(譽)政府委員 公務員であれば教職員も入りますし、教職員のうちには私立学校の先生もおりますから。
  114. 大原亨

    大原委員 多数の学説は、原文を引用いたしまして、そうではないといっているのです。原文にはアドミニストレーション・オブ・ザ・ステートとなっておる。国の行政に従っている、こういう注釈がついているものを一ぺんに公務員とやっているのです。だから、国際的な文献あるいは国内の学説におきましても、行政手段でない、あるいは行政職でない教育職員はこの公務員から除外をしておる。その一つの理由は、私立学校でも公立学校でも、公務員でなくとも教職員はあるわけです。教育基本法精神からいいましてもそうですけれども、これを否定いたしました学説というのはそうたくさんないのです。ただし、九十八号を日本が批准いたしました際には、簡単に公務員ということで当時の情勢からやっておりますけれども、これは権利を自覚する人が出てきましたら国際的に問題になる。原文に即していいますと、アドミニストレーション・オブ・ザ・ステートとなっておるけれでも、その範疇に教職員が入るというのは、法理論上どういう根拠なんですか。
  115. 内藤譽三郎

    ○内藤(譽)政府委員 私まだ原文を拝見しておりませんが、われわれが受けておるところの日本政府の発行した条文によりますと公務員ということになっておる。公務員、すなわちガヴァメント・オフィシャルあるいはサーヴァントということになると思いますが、団なり地方公共団体が雇っておる者は公務員でございます。
  116. 大原亨

    大原委員 これは私は問題点として指摘をいたしておきますから、研究してもらいたいと思います。あなたが言われたのは原文でない、私が言っているのが原文です。これは間違いない。私は原文をノートしておいたのですけれども、今ちょっとそのノートしてあるところがわからぬ。これはどんな角度からいいましても、教職員というのは行政上の手段ではないのです。たまたま国家が月給を払っておるからということで、行政職とか管理職とかいうことはいわない。これはどんな学者でもそのことを肯定する人はありません。  もう一点お尋ねいたしますが、第八十七号条約を批准いたすことにつきましては、政府は方針を決定しているし、また文部大臣も国際的な常識に基づいて積極的な発言をされておる。その発言内容については、私どもたくさん問題がある。これは議論がある。しかし大臣が言われておることも一つ考え方です。八十七号条約を批准いたしますと、国家公務員、地方公務員にも八十七号条約は適用になる。こういうことは文部大臣も先般はっきり答弁されました。各省の意見も大体一致いしたております。教職員も含んでの公務員の問題につきましては、きょうは時間がありませんから別の機会にいたしますが、これは入りますね。入るということは、文部大臣、よろしいですね。適用になりますね。
  117. 松田竹千代

    松田国務大臣 その通りであります。
  118. 大原亨

    大原委員 それは政府の統一見解ですね。
  119. 松田竹千代

    松田国務大臣 さようでございます。
  120. 大原亨

    大原委員 それで、八十七号条約を適用するというのはよろしい、よろしいというのは当然適用になるのだ、こういうことなんですが、先般も私はここで質問いたしましたが、条約と法律との関係、条例との関係というものは、条約を批准いたしましたら、それは当然条約が優先するわけです。日本の国内におきましては、皆さんの御見解は国内法を整備して国際条約と批准する、こういうことであります。しかし、利害関係者、特に権利を保障されているものが国際的に主張いたしまして問題が起きてくることは、全逓問題をめぐって国際的に論議のあったところであります。これは国際的な問題でありますから、この問題については慎重にやってもらいたいと思いますが、八十七号条約の第五条に、労働者が単一組合を作ったり連合体を作って団結する権利の自由を保障しておる、結社の自由、団結の自由の保障の中でやっておるわけであります。たとえば今までは日教組という団体は、任意団体でもって話し合いの相手にしないということになっておりますが、この五条によりましては、当然団結権の一部といたしまして認めることになるわけであります。そういたしますと、権限のある事項につきましては、文部省と話し合い、交渉をすることは当然であります。憲法の二十八条へ返って、地方公務員、国家公務員もその中へ入るのだということは、内藤局長も答弁された通りであります。それと国際的な水準においては合致いたしておる点がありますが、文部大臣が最近そういうふうに話し合いをしようとされておることは、たまたま今のILO条約の問題に関連して解釈をいたしますと、これはそういう裏づけがあると思う。第五条の問題と関連いたしまして、そういう連合体を作る限界を定めた国家公務員法、地方公務員法、人事院規則等を改正するかどうかという問題については論議をされておると思いますけれども、それがあるなしにかかわらず、第五条の適用ということは、連合体を作ることを団結権の一部として保障しておるわけでありますけれども、その点につきまして、文部省におきましても、そういう法理論上の問題については御検討になっておりますか。私は意見を含めて申し上げましたけれども、非常に自由にものを考えておられる文部大臣一つ御所見を承りたい。
  121. 松田竹千代

    松田国務大臣 ちょっとお話趣旨がよくつかめなかったのですが、少し早口でわかりかねましたので、もう一度……。
  122. 大原亨

    大原委員 端的に申しますと、今度批准を決定いたしております八十七号条約の第五条によりますと、「労働者団体及び使用者団体は、連合及び同盟を設立し及びこれに加入する権利を有し、また、これらの団体、連合又は同盟は、労働者及び使用者の国際的団体に加入する権利を有する。」こういうふうになっておりまして、団結権保障の条約の一部といたしまして連合体を作るという自由を認めておるのです。連合体を作る権利を団結権の一部として認めておるのです。しかし、現在の国家公務員法あるいは人事院規則、地方公務員法によりますと、登録団体の中には、たとえば日教組というものは登録できなかったわけです。そこで例を申し上げるのですが、皆さん文部省と日教組の関係は深いのです。日教組は単位団体の連合体なんです。連合体を作っておる。いろいろな労働条件その他について交渉する建前で団体交渉をするために作っておるから、そうなるとILOの条約を批准いたしましたら——そういう日教組を作り、中央に大きな団体を作る、連合体を作るということは、団結権の一部として国際的に保障されておる。その限界を設けておる。これは公労法四条三項のところからくるわけですが、そういたしますと、やはり権限の事項に関しましては話し合いする、交渉するということは当然起きてくるのです。だからそういう八十七号条約の解釈についての見解を含んで大臣の御見解を聞かしていただきたい。これは別にあげ足をとってどうこうというのではないのですから、研究していただいてもよろしい。
  123. 松田竹千代

    松田国務大臣 現在は批准をしておりませんけれども、教職員の地方団体の連合体、すなわち日教組という連合体、任意組合があるわけです。これが批准の暁にはさらに法的根拠を持った連合体として、文部大臣との法的基礎を持った交渉団体となるかというお話でございますか。——その場合も、国立学校の教職員の場合でなければ、文部大臣との労使関係は出てこない、かように考えます。
  124. 大原亨

    大原委員 それでは大臣の見解は、国立学校においては出てくるけれども、地方の職員については出てこない、こういう御意見ですか。
  125. 松田竹千代

    松田国務大臣 さようでございます。
  126. 大原亨

    大原委員 たとえば法的に言いましたら、国立学校の職員と地方公共団体の職員、こういうものが現在連合体を作っているのです。連合体を作っておるその団結権を否定して団体交渉をしないということはできない。だから形式上からいいましたら、あなたの言われることは問題があるのです。ただしその相手となっておる日教組の組織の実態あるいは内部の規程、こういうものを検討する必要はありますけれども、これの人格は認めなければならない。文部大臣の権限であるところの地方公務員の関係した問題については、やはり求められたら、これは勤労条件に関係深い政府予算の折衝その他やるのですから、日教組その他に対しましてもいろいろ問題となっておる事項につきましてやるわけです。そういたしますと、あなたの言われましたことは私が質問申し上げました一部を言われたのです。ですからこの問題についてもいろいろ政府部内で議論を戦わされる際に十分研究してもらいたい。私はあげ足をとってどうこうということではありません。これを出し抜いてどうこうとか、一方的にやったって、八十七号条約批准の方針はきまっているのですから、そういたしましたらこれは権利を主張する関係当事者が出てさましたら国際問題になるのです。ですからこの点については一つ偏見のないように処置してもらいたい。最近文部大国が話し合いや交渉をすることは、いろいろ問題があるだろうけれども、法的な裏づけは、八十七号条約を批准して後のことですけれども、あると思うのであります。文部大臣は最初にその点について見解を言われたわけですけれども、私は法律上の問題について一つ申し上げておきます。よく研究していただきたいと思います。
  127. 大平正芳

  128. 堀昌雄

    ○堀委員 二点ばかりお伺いいたしたいと思いますが、先に学校身体検査の問題が簡単でございますからお伺いをいたしたい。ちょうど今入学試験の時期に当たっておりまして、全国の中学生諸君高等学校生徒諸君は大へんなことでございますが、この入学試験を受けます際に、学校側があらかじめ身体検査証なるものを貼付して出願させる、こういう取り扱いをしているところが相当ございます。その身体検査証なるものが保健所の診断書、または公的医療機関の診断書を要求していられる向きが実は最近だんだんとふえて参っているというのが全国的な実情でございます。文部省の皆さんは医師の診断書の問題につきましては詳しいことを御存じなかろうかと思いますので、厚生省の方にお伺いをいたしますけれども、医師か診断書を交付いたしますのは医師法の第二十条に基づきまして、「無診察治療等の禁止」の項目の中に、「医師は、自ら診察しないで治療をし、若しくは診断書若しくは処方せんを交付し、」云々というふうになっておりまして、要するに診断書を交付しますものは医師であって、その機関ではない。保健所が出したりあるいは公的医療機関が診断書を出すのではなくて、その公的医療機関、保健所に勤めている医師がその医師としての範囲内において診断書を書く、こういうふうに私は法律的に理解をしておりますが、厚生省の見解はいかがでしょうか。
  129. 江間時彦

    ○江間説明員 お答えいたします。医師法の二十条にそのように規定してありまして、法律的には診断書の発行の責任者は診察を行なった医師個人でございます。
  130. 堀昌雄

    ○堀委員 厚生省の見解も私と同様であると思います。要するに診断書を発行いたします場合の責任とその権限の範囲は、医師そのものに与えられているものでありまして、その医師がたまたま保健所に勤務しているか、公的医療機関に勤務しているかということは別個でありますけれども、その問題と診断書との間には法律的には直接の関係はない、こういうふうに私は理解いたします。そうなりますと、中学なりあるいは高等学校保健所の診断書を持ってこい、公的医療機関の診断書を持ってこいということ自体は、もしそういうことをすれば、公的医療機関や保健所に勤務している医師とそれ以外の医師との間に差別を考えているということが考えられるわけですが、これについて、そういう事実がありますから、御承知になっていると思いますが、大学局長の方か初中局長の方から両方含めて一つ……。
  131. 小林行雄

    ○小林(行)政府委員 入学試験のときの健康診断につきましては、原則として受験校がみずから行なうのが本来の建前になっているわけでございますが、ただ学校事情によっては、その学校が指定する病院、国公立病院あるいは保健所等の医療機関の証明書でかえてもいいというふうに制度としてはなっているわけでございます。その場合にその医療機関の範囲でございますが、これは別段国公立病院あるいは保健所というふうに限定をしておるわけではございませんので、その学校が任意に指定して定めたものであれば、証明してもらってよいという取り扱いをいたしております。従って現在のところ、学校によりましては、大学等におきましても、その大学が学校医等を指定しておる、民間の個人開業医を指定しておるという大学もございます。ただその場合にいかなる個人開業医でもいいかということになりますと、御承知のように、身体検査につきましても健康診断につきましても、これはある程度技術的な、専門的な面もございますので、そういった点の診断がはっきりできるような施設、設備の整っておるところに限定されるということになろうと思います。いかなる個人開業医でもいいというところまでは、ちょっと無理じゃなかろうか。検査が支障なく行なわれるという範囲におきましては、その受験校の方で指定をすれば、証明書を出してもらうことはできるということになっておるわけでございます。文部省の扱いといたしましても、この公的医療機関の場合には、やはり検査したお医者さんの書面をもらっていただくわけでございます。やはり医師が出しておるというものと私どもは考えております。
  132. 堀昌雄

    ○堀委員 今お伺いいたしましたら、制度として、学校の方でどこか任意にきめることができる、こういう話ですが、それは法律ですか、政令ですか。何ですか。
  133. 小林行雄

    ○小林(行)政府委員 これは文部省の方で通達を出しておるわけでございまして、大学について申し上げますと、入学者選抜時の健康診断実施要綱という通達を、実は三十三年に出しております。ただいまお尋ねのありました点につきまして、その当時すでに疑問を持たれた点もございますので、さらに昨年におきましては、必ずしも公的医療機関だけに限られるものではないという趣旨の通達を、各国公私立の大学長あてには出して、念を押しているわけであります。
  134. 堀昌雄

    ○堀委員 実は私、この問題は二つの問題があると思います。というのは、一つは、学校入学試験を受けにこられた人を学校身体検査をする。この場合には、やはり何らかの指定したものにしてもらうということにならなければ、だれかが偶然来てやるわけではございませんから、私は、その入学試験を受けるその学校がみずから行なうものについては、指定をしたもので行なうということで当然だと思いますが、その指定をなさる分については、それは私は学校の側の判断によって、自分の学校に近いところにある施設であるとかあるいは校医を委嘱しておる関係とか、医学部があるものは自分の大学の医学部のものでやるとか、こういうことでいいと思うのですが、私が特にここで問題にいたしておりますのは、身体検査証なるものがすでに印刷をされておりまして、それにいろいろ記入をするようになっている。あらかじめ大学当局としてはまずその身体検査証によって、これはこの学部には入れないとかなんとかというグローブなセレクトをしようという基準になさる診断書に、今申し上げた保健所または公的医療機関のものを持ってこい、こういうことが行なわれておるわけですね。私は、その部分については、ちょっと問題があろうかと思うのです。今のように、そこまで大学その他がそういう指定をするということは、裏返して言うならば、みずから指定をしなかったものは信用しないのだというふうに、逆の面で、一般の医師はとっておるわけです。たとえば、私のところでも、そういうことでよく話があるのですよ。実は、よく見ますと、その持ってきた方は、よく読んでいないものだから、お医者さんに行けばいけるのだと思っているが、よく読んでみると、保健所の診断書でないといかぬと書いてある。一ぺん診察したけれども、あなただめですよ、私が書いたのじゃだめだから、保健所に行きなさい。そうすると、私の方の保健所は、われわれよりも経験は未熟だし、実際において専門的でない人が——御承知のように、現在の保健所というもは、給料が安いために、医師としては必ずしも経験がある人だとか専門的な人がいないという現実の状態があるのにかかわらず、そういう医師の診断書ならよくて、少なくとも大学を出て十年なり十五年なり専門的にやっておる者の診断書は認められないということになれば、これは医師の側としては、これはどうも医師が差別をされておるという感じを非常に受ける。免許証は、御承知のように、医師についてはいずれも一つの免許証であって、免許証の中には、医師としての差別は本来ないわけで、私はいつもいろいろ委員会で申し上げておりますが、どうも日本のいろんな風潮の中に、役所のやることは間違いはないが、民間のやることには間違いがありはせぬかという一つのものの考え方が、これはどうも昔から流れておって、今の民主主義の段階では、私はそういう考え方は、役所の方から率先して取り除いていただかなければならぬことじゃないかと思う。これはあとで触れます図書目録についても、この前も触れたわけですけれども、私はやはり民主的な教育をやり、民主的な制度の中では、たとえばアメリカのことでは、シヴィリアン・シュープリマシーといいますか、要するにシヴィリアンというものがとにかく一番優先するのだという考え方が、私は民主主義の原則じゃないかと思うのです。だからそういうものの考え方からするならば、公的医療機関だとか保健所だとかいうものに規定をしようという考え方は、私は一つこの際改めていただいて、もしそういう身体検査証をあらかじめどこかで受けて出しなさいというものについては、私は医師の診断書ということに一つ通達を改めていただきたい。御自分の方でおやりになるものは、学校へ来てそこで身体検査をするものはそれでよろしゅうございましょう、その学校が指定するものということでけっこうでございますが、あらかじめ事前に求める身体検査証については、そういう取り扱いをしないという方針を、一つ文部省の側として考えていただきたい、こういうふうに思うのですが、いかがでございましょうか。
  135. 小林行雄

    ○小林(行)政府委員 御質問趣旨のごもっともな点はわかるわけでございますが、しかし私ども、決していわゆる官尊民卑的な考えで国公立病院あるいは保健所等と言っておるのではございません。先ほど申しましたように、その身体検査証と申しますか、健康診断をいたします場合に、たとえばエキス線の直接あるいは間接の撮影、あるいはその他のいろいろな検査というようなものも含めておりますので、そういった施設設備のないような個人開業医であっては、証明書を作ることは不可能であろうというようなことも考えておるわけでございます。先ほどお話ししました念を押した通知にも、「国公立以外のものは含まれないとの解釈をとっている大学があるやにきいておりますが、この通達の趣旨は、健康診断の各検査項目について検査能力のある機関であれば、大学が任意に指定してよいということであります。」とはっきり言っておるのでありまして、従って民間の経験のある方、また施設設備が整っておるお医者さんであれば、大学が自由にこれを指定してその証明書を、要求することができるということにいたしておりますので、その点につきましては、もちろん私どもも、今後も、ただいま堀先生お話のございましたような点につきましては、できるだけその趣旨徹底して参りたいと思いますが、全部の個人開業医の証明書でよろしいのだというところまではちょっと踏み切れないと思います。
  136. 堀昌雄

    ○堀委員 ちょっと伺いますが、今技術的な問題をおっしゃいましたが、もしレントゲンを撮影をして、そのレントゲンの撮影による所見をそこに記入しろという欄があったといたしましょう、身体検査証の中に。それを一般開業医のところへ持っていって、開業医が自分のところにレントゲンで診断する施設がなくて、とらないで、勝手に書いて診断書を出せば医師法違反なんです。診察行為のないところに診断をするということは医師法違反なんですから、そういうことは起きないわけです。要するに私が申しておることは、あなたは技術的、専門的にできないような医師もあるから、そういう医師を含めては困るとおっしゃるのですが、身体検査証の形式を見れば、それに基づけば、当然そこでは範囲は限定をされているわけです。その範囲を限定されたもの以外は出せないというのが、医師免許証とこの診断書との関係なのであって、医師は持ってきたら何でも書けるということではないのですよ。そこは一つはっきり確認をしていただきたい。ですから私が申しておることは、要するに医師というものが、皆さんは非常に——最近私も残念に思うのは、世間全般の医師に対するものの考え方が、何か非常に低下をしてきたというか、昔はお医者様というので希少価値があったけれども、このごろたくさん出てきゃがったからまあつまらぬやつはほっておけということになるかもしれないけれども、しかし多数の医師は良心的に、アカデミックにものを考えてやっておるのです。もちろん例外はあります。あなた方が御心配になるように、私的な診療所が勝手な診断書をつけやせぬかという御心配も私はあり得ると思うのです。しかしもしそういう事実があれば、どうせ入学されたときにまた身体検査をしますから、そういうものと比べて著しくおかしい問題がある場合には、そういう人に対しては、今後その診断書は認められないということは私は当然だと思いますが、そういうものがありはせぬかということで、十ぱ一からげに、全部の医者に対して、一般の開業医に対して信頼ができないという評価は困りますし、そこで一番問題になります点は、さっきの指定をするということにそういう意味で問題があると思う。と申しますのは、大学を受験するような場合には、その大学の近くにいるわけではないのですから、いろいろなところから受験にこられるわけです。その場合に、それぞれ公的医療機関という指定の仕方がなされるわけです。そういう今のあり方では、これは医師にとっては非常に差別待遇がされておるという感じを持つと思います。私自身も非常にそういう感じを持っておりますので、ここで、これは要望になりますが、もうあらかじめ提出をされる診断書という格好の問題については、この診断書の要件を満たし得る診療施設ということが必要でございますから、この診断書の要件を満たし得る施設において行なうものについては指定をしない。特に指定をしないということを考えていただくわけにはいかないのか、ここを一つ伺っておきたいと思います。
  137. 小林行雄

    ○小林(行)政府委員 入学時、選抜時の健康診断は、合格者をきめる場合に一つの重要な基準になりますので、大学としてはそれを慎重に検討するものでございます。従って、大学側が比較的信頼のできるお医者さんを、ことに都市のような場合には指定することになろうと思いますが、いなかから都市の大学を受験するという場合に、たとえば保健所等は大体各府県ある程度普及されておりますので、そういったもので証明書を作ってもらうことができるわけでございますが、必ずしも施設、設備の整った個人開業医のないというところもあるわけでございます。そういう方はやはり都市へ出てこられて、受験地の指定されたお医者さんの診断を受けるということになろうと思います。これはやはり大学が、先ほど申しましたように入学者選抜の一つの重要な資料とされるものでありますので、やはり大学の信頼できるお医者さんを指定するという制度が、私は現在のところでは妥当ではなかろうかと思いますが、お尋ねの趣旨もございますので、さらにこれらの点について、文部省として検討いたしたいと思います。
  138. 堀昌雄

    ○堀委員 検討いたしていただくそうですからけっこうなんでございますが、今の問題の中で、実は大学がまた大てい身体検査をしているのです。受験をしたときに身体検査をしないという大学はないのです。ですから、あらかじめそういうものによっての大体の範囲をきめるということになっておるので、私は今おっしゃるように、それは基準として身体検査のあれが大事なことはよくわかります。わかりますが、あらかじめ提出をさせるものについてまでそういうことをする必要はないのじゃないか、あらかじめついているものについては、私どもとして、今の医者の責任においてやるものがそれほど間違っておるとも思わないし、あとでまた御自分のところでは御自分のところでおやりになるのだから、それならば初めのものまでそういうあれをつける必要はないのじゃないか、こういうふうに私は考えておりますので、一つこの点につきましては御検討いただきたいと思います。一つその問題について大臣に、局長の方でああ答えておりますが、ものの考え方としては、私は今申し上げておりますように、もちろん医師の方も良心的にやるべきでありますが、その範囲にあるならば、文部省としては、その公的だとか保健所だとかに勤めておる医師とその他の医師を区別する考えはないのだということにお考えを願いたいと思いますが、一つ大臣の方からいかがでしょうか。
  139. 松田竹千代

    松田国務大臣 文部省としては、公的機関に勤めておる者もそうでない者も区別するというような考えはないのであります。お話はまことにもっともであり、そういうお話のような線に沿って事を運ぶことがむしろ医師の地位を高める結果になると思います。しかし現在の制度、慣行もあることでありますので、今直ちにお話のように持っていくことは困難じゃないかと思いますが、大体そういう方向に進んでいくものであると考えます。よく研究いたします。
  140. 堀昌雄

    ○堀委員 今の問題はこれで終わりまして、次に私としては大へん残念なことが起きておりますのは、昨日朝、新聞を拝見いたしますと、突然として、この前私二回にわたりまして当委員会で取り上げさしていただきました図書目録の第二集が文部省から公表されたということで、各新聞が一斉に取り上げたわけでございます。朝日新聞を読みますと、出版界と決裂のまま半年ぶりに百八十八点が目録にあげられたというふうに出ておりますが、私は、実はこの前の委員会で二回にわたってこの問題を取り上げまして、私の申し上げた趣旨は、もう大臣、次官、局長も——局長はお帰りになりましたが、お聞きをいただいておることだと思いますので、あまり繰り返してその問題について触れる意思はございませんけれども、非常に根本的な問題になりますので、一つ大臣に伺っておきたいのは、委員会における質疑でございます。それに対して政府側がお答えになったいろいろな答弁とその後の行政が食い違うというような場合は、やはり文部省側として少し責任があろうかと思うのでありますが、その責任をどう詰めるとかそういうことではございません。しかしこの委員会質疑とそれに対する政府の答弁というものは、それなりのやはり責任を持ってお答えをいただいておると思うのでありますから、私どもはやはりその線に沿って行政が運営されるものであるというふうに理解をいたしておりますが、こういうふうに突然なことが起きたので、私は遺憾なのですが、今後はこの問題に限りませんが、どういう関係になるのか。しょっちゅうこういうことで委員会政府が答弁されたけれども、やることはまた違うことが出るというようなことでは困りますので、これに対する大臣のお考えを一つお聞かせ願いたいと思います。
  141. 松田竹千代

    松田国務大臣 文部省といたしましては、委員会において答弁いたしました趣旨はもちろん尊重してやって参っておるつもりでございます。ゆめそれをなおざりにしておるというようなことはないのでございます。ただその間に、完全に答弁した趣旨に沿うておるか、見方によればこれは沿うておらぬではないかというような場合もあるかと思いまするけれども、文部省としては努めてその御答弁申し上げた趣旨に沿ってやって参っておるわけであります。
  142. 堀昌雄

    ○堀委員 次に省令と実際の行政の関係は、やはり省令をお出しになった以上は、省令の趣旨に沿って行政が行なわれるべきである、これは当然のことでありますが、この点を一つもう一回大臣に承りたいと思います。
  143. 松田竹千代

    松田国務大臣 もちろんその趣旨に沿ってやらなければならぬと思います。
  144. 堀昌雄

    ○堀委員 その次に、いろいろと行政を行なわれますについては、一般的な社会通念と申しますか、常識という一つの幅のあるものがあると思うのですが、私は国の行政がそういう社会通念、一般的な常識を越えた形で行なわれるというようなことは、大へん遺憾なことだと思います。これももう一回重ねて大臣からお聞きいたします。
  145. 松田竹千代

    松田国務大臣 大体お説の通りであります。
  146. 堀昌雄

    ○堀委員 そういうことを前置きして伺いましたのは、こういうわかり切ったことが実は行なわれておらぬということが突然起きましたので、大へん恐縮ですが伺ったわけです。  一番最初の問題は、今度図書目録が出まして、その図書目録は、百八十八ここに載っておるそうであります。これは拝見いたしました。その中で、申請をされましたのは十四冊で、あとは申請のなかったものが出たということですね。ですから、一割に満たないものが申請で、あとの九割以上は実は未申請のものがここに登録されている、こういう事実が一つあるわけです。この問題について、私は前の委員会におきまして、福田さんが局長のときでございますが、質疑をいたしました。そのところをちょっと読み上げますと、「その次に省令の問題でちょっと伺っておきたいのは、省令の第二条に、「目録の作成は、発行者が当該目録に登載されることを申し出た図書について行うものとする。ただし、申し出のない図書であっても、社会教育審議会が適当と認めるものについては、目録を作成することができる。」こういうふうになっております。このことはさっきもちょっと触れましたけれども、要するに申請をしていなくても、皆さんの方ではいいものを登録するのだということです。それは調査をしていろいろおやりになる前に、そういう出版社に了解を得られるのか。調査をしておいて、これならいいときまったら出版社に了解を得られるのか。そこらは一体どういうふうに考えておられるのでしょうか。」こういうふうに私が伺いましたら、福田政府委員は、前の方はちょっと関係がございませんから略しますが、「やはり建前は申請のあったものを原則として、申請のなかったものでも漏れたものに非常にいいものがあれば、若干これをピック・アップしていくというような方針をとるのが穏当であろう、こういうような考え方でこの原則を立てたのであります。」中略をしまして、「決定する際に、今までのやり方としては了解を求める、こういうような手続にいたしておるわけであります。」こういうふうに実は前の委員会で答えておるわけであります。ここで二つ出ております問題は、省令の関係で見ますと、申請したものを登録するのが原則で、例外として社会教育審議会が適当と認めるものについては、目録を作成することができる、これは例外規定なのでございますね。それですなおにこの省令を拝見しまして、九割が申請で一割が未申請ということであるならば、私は省令が正しく行政上に行なわれておると理解いたしますが、九割が未申請で、申請が一割に満たなかったということになりますと、この省令と、今度の登録日録の取扱いとは、省令の基本的な考え方に違反しておる。原則を原則にしないで、例外が原則になった。これは九割と一割ですから、非常に明白な問題でございます。これが一つ。その次には、ともかく出版社の了解を得てやることにいたします。こういうことを福田さんは前の委員会ではっきりお答えになっている。ところが、伺ってみますと、今度の問題は、その一番多い未申請の分については了解を得ることなく一方的に目録に登載されて、そうして、こういう文書が出ておるわけです。「文社施第三四号、昭和三十五年三月九百、何々殿、文部省社会教育局長齊藤正、青少年向図書目録(第2集)登載について、貴社発行にかかる図書を別添の、青少年向図書目録(第2集)に登載することといたしましたのでお知らせします。ついては、今後ともいっそうの御協力下さるようお願い申し上げます。なお、目録は都道府県教育委員会、公民館、図書館等関係機関に配布しますからお含み置き下さい。」こういう文書が九日付で出ておる。目録は九日に発表されておる。こういうことになっておるわけです。実は私が前の委員会でこの問題を取り上げましたのは、出版社の皆さんと文部省の間に非常に問題があって、できれば一つそういう問題がなく——文部省としての趣旨趣旨として理解できる点もあるのですから、何とかお考えを願いたい、こういう気持で二回にわたって質問したにもかかわらず、ますますその対立を激化させるような取扱いが今回はからずも行なわれた。その行ない方は、最初に私が伺いました委員会における答弁とも省令ともたれが見ても食い違っていることはわかると思います。さらに、社会通念といたしましても、全く無断でこれを登載して、あとからあなたのところは登載しましたからお知らせいたしますということは、率直に言いまして、これはやはりお役所仕事という感じが抜けきれないからです。これにつきまして、今回のことはできたことでいまさらこれをもとへ戻すわけにもいかないことでございますから、今回のことについては別にその責任を追及するとかそういう気持はございません。というのは、責任を追及したら問題がよい方向にいくという性格のものなら徹底的に責任を追及いたしますけれども、問題の所在はそういうところでないと思っておりますからそのことには触れませんが、これらの今申し上げた問題を含めて、もし文部省の方で、いや、そこはこうだったというような何かお話があれば一応承っておきたいと思います。
  147. 宮澤喜一

    ○宮澤政府委員 前回この問題につきまして堀委員の御質問に私一部お答えをいたしました関係がありますので、私から概略申し上げます。  最初に、省令の問題についてお尋ねがあったのでございますが、確かに堀委員の御指摘のように、現在この省令が私ども理想としておるような状態で運用されているかいないかといえば、まことに残念でありますが、理想的な形で運用されているとは思いません。省令に違背している、あるいは違反しているという意味のお言葉をお使いになったかと思いますが、それはお言葉としては強過ぎると思いますが、理想的な状態で運用されているとは思いません。  それから第二に、前回委員会の席上で、当時の社会局長から登載を受ける出版社の承諾を得ていたしたい、かように御答弁を申し上げたこともその通りでありますし、今回それがその通りなされなかったということも御指摘通りであります。そのような、私どもが理想としておるような状態に近からざる形でこの制度が今運用されているのには、実はかなりのいきさつがありますので、これは一ついきさつとしてお聞きをいただきたいと思います。  前回申し上げましたように、この問題につきましては、文部省文部省一つ考え方に従いまして、社会教育審議会の分科会の御意見、これは御専門の方々の御意見でありますから、それに従いつつ、登載に値するという書籍は登載していきたい。それについて文部省あるいは審議会としての形式なり判断が当然働くべきでありますし、また文部省という役所の責任でもあるというふうに私どもは考えております。これは前回申し上げました通りであります。それとまた他面で直接関係者でありますところの出版社あるいはその団体と、円滑な理解と協力のもとにこの制度をやっていきたい、これも前回申し上げました。この二つの命題があるわけでございます。  そこで、このことを円滑に行ないますために、第一集を発行いたします前から、私どもとしては、日本書籍出版協会といろいろに話し合いをして参りました。第一集発行後、第二集発行に至りますまでの間におきましても、あの当時委員会で申し上げましたように、円満な理解に達するように、かなりいろいろな努力をいたしております。私どもの方は当時及び現在の社会局長、担当の課長がそれに当たりましたが、先方のお名前は、非公式の話でございますから、省略させていただきます。そこで、前回第一集の発行せられます以前に、書籍協会とお話し合いをいたしました段階では、私どもは、書籍協会の御意見を、選定というような制度でやってもらっては困る、しかし目録制度にするならば協力をしてもいい、こういうふうに書籍協会は大体お考えになっておるというふうに判断をいたしたのであります。この判断に誤りがあったかどうか。これは私どもは判断に誤りはないと思いますが、しかし私どもはともかくそう判断をいたしております。そこで、それならばということで、申し出以外のものについては発行者の御同意を求めるという措置に出たわけでございます。そして同意をされなかった部分については、時間的に間に合う限り目録から落としたのが事実でございます。そこで、第二集発行にあたりましても、当時これが言論統制の端緒になるという危惧、私どもは杞憂と思いますが、そういうことを出版協会で持たれたものでありますりから、第一集をごらんになり、そうしてまた私どもがその後も御説明を申し上げて、そういう危惧というものは解消をするであろう、またそうさせたいという努力を重ねてきたのでありますが、その努力は不幸にも今日まで成功しておりません。書籍出版協会の側にもかなりいろいろ複雑な事情がおありのようでありまして、そこで私どもは、それならば発行者が申請をするような場合には、一つ個々の発行者の自由な意思というものを協会としても尊重をしていただきたい、協会には協会のお立場がありましょうけれども、中には申請をしたいという発行者もあるのでありますから、どうぞこの点は発行者の自由な意思というものを尊重していただきたいということを、非公式に協会に何度かお話をしたのであります。協会としては、発行者の自由意思を尊重するというような保証を、私どもについに今日までお与えになっておらないのであります。この間にはいろいろな御事情が協会の内部にあるようでありますが、それは省略をいたします。従って、私どもが今度適当と思って登載をいたす書籍の発行者に対してあらかじめ御承諾を求めるということになりますと、現実には、承諾をしたいんだけれども、協会の問題があってというような立場の発行者がかなりおられるようでありまして、そういたしますと、むしろ発行者そのものを非常に苦しい立場に立たせるというようなことが、実際問題としてあるように判断をいたしました。そこで、むしろそれならば私どもだけの責任において行なおう、こういうことで、このたび発行者の同意を求めなかったというのが実情であります。もちろん、こういう判断をいたしますまでには、先ほど申し上げましたように、私どもの担当の局長、課長がかなり非公式に話し合いを続けてきたかばりでなく、この当面の運営の責任を持っておられるところの審議会のメンバーの方々、これはこの方面の専門家も相当おられますので、ずいぶん出版協会といろいろ話をされました。しかしその結果、審議会のメンバーあるいは審議会としても、今度のような措置が最も適当であろう、こういう最終的な判断をされましたし、私どももまた同様に考えた次第でございます。
  148. 堀昌雄

    ○堀委員 実は私、率直に言いまして、今の次官のお答えにはちょっと不満足です。なぜ不満足かと言いますと、まずいろいろな問題は文部省の判断に基づいておやりになる。私もちろん、文部省が何か物事をおやりになるのに、文部省の判断に基づくのは当然だと思います。しかし、その判断が全体として理解されるような判断と、特定な部分についてはその判断は正しかったけれども、全体で見るとその判断はおかしいという場合がある。その場合には、私は慎重にお考えを願わないと、いろいろ多くの誤解を生じ、好んで対立を激化するもとになるだろうと思います。と申しますのは、私は書協の代表者でも何でもないのですから、別に書協の中がどうとかこうとか、そういうことは思っていないのですが、これはいわゆる一般的な社会的な立場の問題を提起しておりますから、そういう立場で見ておりますから、書協の内部にそういう方もあるかもしれませんが、そこだけにポイントを合わせまして、要するに、出したいのだけれども、書協がワクをはめているのだから出せないのだという人に対しては、今の次官の判断はその通り私は通用すると思いますが、そうでない人が相当にあるのです。そうでない人には、今おっしゃる判断は全然通用しないのですよ。初めから、そんなものを持ってきたって自分はお断わりするのだという人もあって、その判断の通用しない人のものが除外されているならよろしいが、この目録にそれが相当入っているのですよ。その人のものがここの中に入っているということになりますと、今おっしゃる判断というものが当を得たものかどうかという点は、私いささか疑義がある。そういう点で疑義があります。  それからもう一つ、ちょっと私重大な問題をおっしゃったと思うのですが、省令第一条によりますと、「文部大臣は、社会教育として行われる青少年の読書指導に資するため、この規程の定めるところにより、おおむね十八歳までの者を対象として発行された図書につき、社会教育審議会の議を経て健全な青少年の育成上有益な図書の目録を作成し、配付するものとする。」とありまして、図書目録の作成及び配付についての責任は、あげて文部大臣にある。ところが、今次官は、審議会の方に聞いてみたら、こういう取り扱いの方がいいんだという意見もあったとおっしゃる。審議会は図書目録がいいとか悪いとかということをおきめになる機関であって、行政上の行為について無断で出してもよろしいのだ、了解を得たらこれが成り立たないから無断で出してもよろしいのだという意見を審議会が言い、その委員が言い、それを文部省当局が、そういう意見もあったからそうしたのだなどということをおっしゃるのは、私ちょっとこうなると省令との関係で問題があろうと思うのですが、次官、その点は御訂正いただいた方がいいんじゃないかと思います。
  149. 宮澤喜一

    ○宮澤政府委員 多少私は故意に意識して申し上げたつもりだったのであります。と申しますのは、普通の場合審議会というものを常識的に考えますと、これは一つの形式的な機関であろうというふうに考えられる場合が多うございます。必ずしもそうでない場合もありましょうが、特にこの読書指導に関しますところの審議会は、かなり自由に、自発的に、活発に、いろいろな議論をされ、またものを考えておられます。私ども先ほど審議会と申さずに審議会のメンバーと申し上げました意味も、多少そこに意味を持たしたつもりでございましたので、そういう方々のおっしゃることに私どもはずいぶん耳を傾け、その御意見というものを行政の上で非常に尊重して参りました。これからもそうするつもりであります。従ってもちろん行政上の責任は文部大臣が持っておる、その点に一点の疑いもございませんけれども、やはり審議会の方々のこういう方面における経験、審議会という一つの組織体でなくとも、そのメンバーの方々の経験なり意見を私ども大いに尊重しなければならない、またそれに非常にウエートをかけて、この問題を考えて参っておりますので、そういう意味で申し上げたのであります。
  150. 堀昌雄

    ○堀委員 現在のこれまでの時点での問題につきましては、私はやはり文部省の判断が必ずしも当を得ていなかったように思います。これは意見の相違ですからかまいませんが、一般の新聞の受け取め方も、文部省無理しているなということが新聞の姿として表われておると思うのです。そこで、私はこの前の委員会で申し上げておりますが、無理をしてまで出さなければならないのかどうかという問題があとへ残ってくると思うのです。ちょっとこまかいことになりますが、これは説明員の方でけっこうですが。二回目録を出して一体予算総計幾らぐらい、要りましたか。
  151. 吉里邦夫

    ○吉里説明員 この読書指導の経費は、審議会の開催費とか、あるいは資料作成費とか、いろいろなものが入っおります。そういうものを全部含めますと三十四年度が約三百万でございます。
  152. 堀昌雄

    ○堀委員 もちろん審議会の方のいろいろな費用が入っておりましょうが、三十四年度二回しか出ていないのですから、二回で三百万、それから次に、本年度皆さんの方で予想をして要求していらっしゃる予算は幾らくらいですか。
  153. 齋藤正

    ○齋藤(正)政府委員 これは社会教育特別助成費の中でございますけれども大体三百八十万でございます。
  154. 堀昌雄

    ○堀委員 そこでこれは今後の問題になりますけれども、大臣、次官に特にお聞きを願っておきたいと思うのですが、予算案はまだ参議院で審議中でございますから結論を得ておりませんが、昨日私は特別助成費の中に御要求になっておるということで、大蔵省に連絡をして調べてみました。そうしますと、大蔵省側の見解としては、なるほど要求として三百八十万ですか、読書指導費に出ておる。しかしこれは何もあの特別助成費としての予算案が通りましても、そこにそのまま固定しなくても、別途にたとえば何らかの補助金というか何というか、目にしてそれが他の方に使われても差しつかえがないというふうに、昨日主計官の方は私の方に返事をしております。そこでこれまでの問題はこれまででよろしゅうございますが、今後の問題についてお伺いをいたしておきたいことは、予算を要求して通ったからやるのだという考えは特にない、おやりになりたいという方向はわかりますが、予算が通ったからこれだけのことはどうしてもやるのだ、五回分の目録を出す予算が通ったからやるのだというようなことに理解しなくても、今の大蔵省との目の設定についてのいろんな問題を含めて考えますと、今後に御検討いただく余地があるというふうに考えますが、その点どうでしょうか。
  155. 宮澤喜一

    ○宮澤政府委員 仰せの通りだと思います。
  156. 堀昌雄

    ○堀委員 今そういうお答えをいただきましたので、私はその点は非常に満足でございますが、それでこの問題を過去二回取り上げ、また本日も取り上げております趣旨は、やはりそういう対立を残したままで文部省が行政を行なわれることは、必ずしも所期の目的を達し得る方法としては望ましい方法ではないと考えますので、何らか検討いただきたいわけですが、ほっておきますと、審議会の方では次の分にかかられるということが起こると思うのですが、昭和三十四年度が切れて三十五年度と年度の切れ目がきますから、今は年度の切れ目だから第二集が出て、もう第三集の準備にかかっておられるとなると、準備にかかればやはり第三集を出さなければならぬという状態になると思いますが、そこの準備の状態というものはどんなふうになっておりましょうか。
  157. 齋藤正

    ○齋藤(正)政府委員 準備は何集ということの切れ日なしに不断に出しておりますから、準備の段階がいろいろございますけれども、年じゅうを通じていたしておるわけであります。
  158. 堀昌雄

    ○堀委員 準備はいろいろの段階があるとおっしゃいますので、それはわかりますが、一つこの問題につきましては、準備があまり進んでいきますと、どうしてもこれは出さなければならなくなる、出さなければならなくなると、今の問題はなかなか解決しないような客観情勢にあるので、ますますそのゆがんだ結果が出てくる可能性があるというふうに私は判断いたしております。そこで準備はけっこうですが、次の第三集をお出しになるまでの間に、この問題について少し御検討を加えていただきたい、これは私の要望でございます。どういうふうな形ということを申し上げるわけではございませんが、何らか本来の皆さんのおっしゃる読書指導をやろうという趣旨と具体的な方法との間の調節を、文部省の方で一つもう一回十分御検討いただくようにお願いすると同時に、これだけちょっと確認させていただきたいと思うのですが、第三集に登載するものについては、社会通念もあり、私がきょう指摘した問題もありますので、まず文書によって出版社の了解を得るということにしていただきたい、そうして文書による出版社の回答を得た後に目録に登載する、私、これはこれまでの経過として当然だと思うのです。そこで、私はそんなことまで申し上げる必要はないと思って、実は前回の委員会では福田さんの、そういうふうに口頭による了解を得ますということで了承しておりましたが、今回こういう事態が起きましたので、この次にもし第三集をお出しになる場合には、ただいま申し上げたような取り扱いを行なうということを一つ確認していただきたい、こういうふうに思います。
  159. 宮澤喜一

    ○宮澤政府委員 お言葉を返すようになりますが、私はそういう社会通念は必ずしもないというふうに思っております。これに登載することによって発行者に何らかの迷惑をかけ、あるいは名誉を棄損するといったような性格のものでは、これはないと思います。従って割り切っていえば、必ず事前に相手方の承諾を得ることが必要であるという原則があるとは、私自身は考えておりません。ただそれよりも、事前に了解を得たかとか、あるいは事後に通知してきたとかいうことが問題にならないような、お互いによく理解し合った状況でこの制度が運営されることが大事でありまして、そのためにはこれからもいろいろ努力を重ねて参りたいと思っております。
  160. 堀昌雄

    ○堀委員 ちょっと今の次官のお答えは私同意しかねます。ということは、前回の第一集の経過を見ましても、皆さんの方は、自分の方は登載してもらっては困るという申し入れがきたものは登載目録から落とされたのです。自分の方はいやだというものは登載目録から落としたという第一集の経緯がありますから、だから当然第二集については出版社の皆さんは何らかの御連絡があるものと考えることは当然です。第一集のときは電話なり口頭なりで——文書はいったかどうか知りませんが、御連絡があって、そうして断わるものは断わり、断われなくて印刷上の手続でやむを得ぬから了承してくれとおっしゃったこともある。そういう第一回の経緯があって、今度第二回は、いろいろ事情があったにしても無断で皆さんがおやりになった。それを今次官は、そういうことは社会通念上無断でする方があたりまえであって、第一回にやった方がおかしいんだ、こういうことにはならない。そういうふうにおっしやると、私もちょっとこじれてくると思うわけです。私はすなおに、あまり皆さんの方の責任を追及するとかいう気持でなくお話をしておるのにかかわらず、そういうふうにおっしゃられると、過去の経緯を比べてみて、私がもし登載を希望しない出版社であるとするならば、これはとんでもないことだ。自分たちがしたくないことをお役所が勝手にして、勝手にすることについては了解を得ないのが当然なんだというようなことは、民主主義の世の中では通らないと思いますが、次官、どうでしょうか。
  161. 宮澤喜一

    ○宮澤政府委員 私の答弁の申し上げ方が下手だったと思います。ただ、考えますと、登載されることが迷惑であるという立場は、どうも私理解ができないのでありまして、社会通念云々というところは、私のお答えの仕方がはなはだ上手でございませんでしたが、省令などでは事前に承諾を得なければならぬということは別段想定しておりませんでしたし、それは登載されることが迷惑だという立場というものはないであろうと考えておったからであります。いずれにいたしましても、相手方に何かの迷惑がかかるということであれば、それは無断でやってはならぬものだと考えております。
  162. 堀昌雄

    ○堀委員 出版者の皆さんの中ではっきり迷惑だと思っている人があるわけです。そうすると、そこだけに承諾書を出すなどというきめ方は困難だと思いますので、皆さんの方が、こうやって登載なさるについて、あなたのところの出版社のものを登載したいと思います。それについてどうですかという文書が行って、それに対してイエスかノーが来る、こういう単なる、そう重大な手続とは思われない、あたりまえの同意を得る手続をしたくないということになると、私はやはり問題が出てくると思うのです。だから、そうでなくて、皆さんの方ですなおに、よろしゅうございます、それは一つ文書で了解を得て、文書による回答を求めてやりましょう、こうおっしゃれば、そういうものの考え方の上でこの問題の処理を進めていただくことが肝心なのであって、今後の問題を含めてそうじゃない立場、つまりともかくこっちが一切勝手にやるのだから、お前さんたちの方はしょうがない、下々の者は黙っておれという態度でこの問題を処理していこうとすれば、これはいい方向に解決する見通しは全然ないと思うのです。私も何とか建設的にいい方向にこの問題を解決していきたいという熱意を持っておるから、その熱意の上に立つならば、社会通念上何かこういうものを出すのについて文書で了解を求めて、それに文書で回答が来たものを出しましょうということは、文部省としてはそんなにお困りになったりする条件じゃないのじゃないかと思うのです。そういうかまえ方、態度の中にやはり不安なものを感じるので、そこは、大臣、ざっくばらんにどうですか。これは率直に言ってそんなにむずかしい問題ではないのです。ですから、今のこのかまえ方というか、態度を含めて一つ大臣のお答えを伺いたいのです。
  163. 松田竹千代

    松田国務大臣 私はこの問題について、あまり詳しい報告を受けておらぬわけであります。しかし、私は大体においてまず話はついておると思いましたし、この程度ならば了承してもらえるのだというような気持を持って、また読者の親たちの方から私に一再ならず選定の推薦書を出してもらいたいという声も聞きましたので採択したようなわけでありまして、お話のように単純な、事務的に出版社側の方に通告して、文部省としては、一々お断わりというような気持でなくとも、それだけの親切みを持ってやるという通知をして、一応向こうの御意向も聞いてみる形をとるというようなことはやらぬでもいいかもしれぬが、やる方が問題解決に資するということでありますならば、それくらいのことはやっていいかと思います。
  164. 堀昌雄

    ○堀委員 大臣がやってもいいとおっしゃいますので、これは一つ文部省の見解として、私そんなに重大なこととして考えておりませんから、やはり普通のあれとして準備をなすったところで、一応出しますから了解をして下さい、それについてお返事がなければ別ですけれども、お断わりになるものはお断わりになる。よろしゅうございますという返事が来なければいいと見てもいいと思いますが、一応そういう取り扱いをして、またこの前のように、その返事が来たけれども、もう印刷が済んでおりましたからだめですよというようなことのないように、これも一回、二回と問題を複雑にしておりますから、どうかこの問題は何らかの方法で——皆さんのお考えになっておること全部が悪いというのではないのです。読書指導すること自体はいいので、ただそれを文部省がするという点にいろいろ危惧もあるようでありますから、効果が実際に上がるようなことで一つ今後の御検討をお願いしたい。これで私の質問を終わります。
  165. 大平正芳

    大平委員長 次会は、来たる十六日午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後二時十六分散会      ————◇—————