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1960-02-26 第34回国会 衆議院 文教委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年二月二十六日(金曜日)     午前十一時二分開議  出席委員    委員長 大平 正芳君    理事 臼井 莊一君 理事 簡牛 凡夫君    理事 高見 三郎君 理事 西村 力弥君    理事 長谷川 保君       坂田 道太君    竹下  登君       田村  元君    松永  東君       八木 徹雄君    勝間田清一君       金丸 徳重君    山崎 始男君       本島百合子君  出席国務大臣         文 部 大 臣 松田竹千代君  出席政府委員         人事院事務官         (給与局長)  瀧本 忠男君         文部政務次官  宮澤 喜一君         文務事務官         (大臣官房会計         課長)     安嶋  彌君         文部事務官         (初等中等教育         局長)     内藤譽三郎君         文部事務官         (文化財保護委         員会事務局長) 岡田 孝平君  委員外出席者         総理府事務官         (自治庁行政局         公務員課長)  今枝 信雄君         専  門  員 石井  勗君     ————————————— 二月二十五日  委員高田富之辞任につき、その補欠として河  野密君が議長指名委員に選任された。 同日  委員河野密辞任につき、その補欠として高田  富之君が議長指名委員に選任された。 同月二十六日  委員鈴木一君解任につき、その補欠として本島  百合子君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 二月二十四日  高等学校定時制教育及び通信教育振興法の一  部を改正する法律案内閣提出第七五号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  高等学校定時制教育及び通信教育振興法の一  部を改正する法律案内閣提出第七五号)  学校教育に関する件  文化財保護に関する件      ————◇—————
  2. 大平正芳

    大平委員長 これより会議を開きます。  まず、高等学校定時制教育及び通信教育振興法の一部を改正する法律案を議題とし、その趣旨説明を聴取いたします。松田文部大臣。     —————————————
  3. 松田竹千代

    ○松田国務大臣 このたび政府から提出いたしました高等学校定時制教育及び通信教育振興法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容の概略について御説明申し上げます。  高等学校定時制教育及び通信教育は、働きながら学ぶ青年に対し、教育機会均等を保障する目的をもって戦後制度化されたものでありまして、勤労青年基礎学力職業技術その他の資質の向上に重大な役割を果たすものとして、都市、農村を問わず、各方面から広く支持されてきたものであります。その後、各般の困難にもかかわらず、関係者の非常な努力によりまして、発足十余年を経過しました今日、ようやくその基礎が固まってきたものであります。政府といたしましても、これら教育振興につきましては特に意を用い、施設設備整備等についてできる限りの努力をいたしてきたのでありますが、この際、一そうの充実強化をはかるためには、施設設備整備を一段と強化するとともに、その教育に面接従事する校長及び教員の待遇につき特別の措置を講じて、優秀な人材を確保することが特に必要であると信ずるのであります。  御承知のように、定時制教育には、夜間授業を行なうものと昼間に授業を行なうものがありますが、夜間授業を行なうものにおきましては、夜間勤務に伴う過労や病気など健康上の障害のほか、家庭生活上の不便も多いのであります。また、昼間に授業を行なうものにおきましても、学校辺地などにおける地域中心的教育施設としての特色と使命を有し、単に校内指導にとどまることなく、家庭実習現場実習などの校外指導にも重点を置かなければならず、勤務量負担かきわめて大きい実情であります。  また、通信教育は、通信手段という新しい方法を用いて教育する特色のある制度でありますか、その教育には、添削指導、日曜日などの休業日における面接指導辺地などの遠隔地における巡回指導もあわせ行なう必要があり、その勤務は容易ならぬものかあるのであります。さらに、定時制教育通信教育を通じて、勤労学習とを同時に遂行する生徒対象とするため、生徒学習生活指導には種々の困難を伴う現状であります。  以上申し述べました実情にかんがみ、これらの教育に携わる校長及び教員に対し、その労に報いて専心その職務に精励できるようにするとともに、優秀な人材をこの方面に誘致し、確保し、もって定時制教育および通信教育振興するため、このたび定時制通信教育手当支給する措置を講じようとするものであります。  次に、この手当支給に要する経費について、当該地方公共団体に対し国庫補助をすることができるものといたしました。一部の都道府県におきましては、従来これに相当する手当支給しているところもありますが、その額並びに範囲につきましては、はなはだ不十分のきらいがあります。この際この手当について国庫補助規定を設けることといたしましたのは、わが国全体としての定時制教育及び通信教育振興を期するために、すべての都道府県において必要な額の定時制通信教育手当支給できるようにするためであります。  以上が、この法律案提案理由及び内容の概要であります。何とぞ十分審議の上、すみやかに御賛成下さるようお願い申し上げます。
  4. 大平正芳

    大平委員長 ただいまの趣旨説明に対し、補足説明を聴取いたします。内藤政府委員
  5. 内藤譽三郎

    内藤(譽)政府委員 高等学校定時制教育及び通信教育振興法の一部を改正する法律案提案理由について、ただいま文部大臣から説明がありましたが、私から補足して御説明申し上げます。最初に高等学校定時制教育及び通信教育現状について申し上げます。昭和三十四年におきまして、定時制課程を置いております高等学校は、分校を含めまして全国で約三千校に及んでおり、約五十四万人の生徒がこの課程で学んでおります。通信教育を行なっております高等学校は七十校で、約六万人の生徒かこれによる教育を受けております。この法律案は、国立及び公立高等学校において、これらの教育に従事する約二万四千人の校長教員に対し、定時制通信教育手当支給しようとするものであります。  まず、第五条は国立高等学校校長及び教員支給します定時制通信教育手当に関する規定でありますが、支給範囲を、定時制課程を置く高等学校または通信教育を行なっている高等学校校長と、これらの学校において本務として定時制教育または通信教育に従事している教員といたしております。この法律案において教員と申しますのは、教諭養護教諭助教諭養護助教諭及び常勤の講師と、政令による一定範囲実習助手とを考えております。  支給率は七%といたしておりますか、現在校長にはいわゆる管理職手当支給しており、また教頭及び主事につきましても、来年度からそれを支給することといたしておりますので、これらの管理職手当を受けます者については、給与均衡をも考慮しつつ、職務の複雑、困難及び責任の度合に応じて併給することとし、その支給率管理職手当とあわせて、一〇%または一二%になるよう文部省令で定める予定にいたしております。  第六条は、この国立高等学校校長および教員定時制通信教育手当基準として、公立高等学校校長及び教員に対し、定時制通信教育手当支給すべき旨の規定でありまして、支給範囲支給率及び支給方法等につき国のそれを基準とする旨を規定するものであります。  第七条は、都道府県及び市等公立高等学校校長及び教員にこの手当支給いたします経費について、三分の一の国庫補助を行なうための規定であります。ただし、補助対象となりますのは、実支出額ではありませんで、国の支給率と同率のものまでを限度といたしております。このための経費といたしまして、昭和三十五年度予算案においては約一億七千万円を計上しております。  次に、附則でありますか、第一項でこの法律施行期日昭和三十五年四月一日からといたしております。  附則第二項は、道府県の一部において、従来からこれらの校長及び教員勤務特殊性困難性に着目し、特殊勤務手当その他の名称により一定率または一定額手当支給しているものかあるのでありますか、名称のいかんを問わず、定時制通信教育手当に相当いたしますような手当を受けております者について、この手当月額か従来の手当月額よりも低額とならないよう、従来の額につき保障するための規定であります。  以上がこの法律案内容の要点であります。何とぞ、十分御審議の上御賛成下さるようお願い申し上げます。     —————————————
  6. 大平正芳

    大平委員長 次に、去る二十四日の文教行政に関する文部大臣の発言に対する補足説明を聴取いたします。安嶋会計課長
  7. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 お手元にお配りしてあります三十五年度文部省所管予算案重要事項について、簡単に御説明を申し上げます。  第一は、義務教育改善充実でございまして、その一は、義務教育費国庫負担金でございます。義務教育費国庫負担金は、前年度に比べまして八十八億二千万円余の増額になっておりますが、その主たる増額給与費の増でございます。給与費につきましては、前年度に比べて八十七億余ふえておるわけでございますか、この前年度予算額には三十三年度精算分が含まれておりますので、これを差し引いた前年度の当初予算と比較いたしますと、百二十五億円余の増となっております。これからその百二十五億円の増の内容について簡単に申し上げたいと存じます。  第一は、児童生徒自然増減による教職員の増でございまして、これが千百一名予定されております。御承知通り小中学校児童生徒数自然増減がかなり大幅にございまして、小学校におきましては児童の数が七十七万二千人減少いたします。中学校におきましては生徒の数が七十一万三千人増加いたします。これに従いまして、小学校では教職員自然減が一万四千人余、中学校におきましては教員自然増が一万五千人余ございまして、差引一千百一名の増となるわけでございます。  次は、公立義務教育学校学級編制及び教職員定数の標準に関する法律実施に伴う増でございまして、これは小学校分についてのみ予定されております。四千八百二十名がその人員でございまして、学級規模適正化に伴う部分が三千七百四十六名、定数充足に伴う部分が千七十四名でございます。  次は昇給による増でございまして、二十六億円を計上いたしておりますが、二十三年度決算単価基礎にいたしまして、必要な昇給財源計上いたしております。  次は、人事院勧告実施に伴う増でございまして、これが三十四億円でございます。中身はいわゆる中だるみ是正夏季手当〇・一カ月分の増額に伴う増でございます。  次は、教頭管理職手当教頭に対して本俸の七%の管理職手当支給することを予定いたしました、その関係国庫負担金でございます。  次は恩給費の増でございまして、これは支給人員増等に伴う増でございます。  その次の僻地手当改善策は、今年度から僻地手当の定率が引き上げになりますとともに、僻地指定基準か昨年の夏改訂されております、それに伴う増。それから、昨年の九月から多学年学級担当手当というものが創設されておりますが、それに伴う増が約二億円ということになっておるわけでございます。  それから、既定予算規模是正と申しますのは、三十四年度予算と実績とのずれでございまして、この事項予算積算の技術的な点からこういう数字を計上したわけでございます。  次は、三十四年度不足見込み額の補てんでございまして、これは、例年でございますと、本年の秋あるいは来春等において補正予算として計上するわけでございますが、本年度は特に当初予算にその見込額計上したということでございます。  次は、教材費でございます。この単価は従前と全く同様でございまして、金額において三千八百万円増加いたしておりますが、これは、単価の安い小学校児童が減りまして、単価の高い中学校生徒がふえたことに伴う増でございます。  二は公立文教施設整備でございまして、前年度に比べまして約十一億円の増となっております。  イは義務制学校施設整備でございますが、これは、公立文教施設整備五カ年計画の第二年次ということで全体の予算積算いたしておりますが、実情に即しますように多少事項によりましては緩急をつけておる次第でございます。単価構造比率等は前年度と全く同じでございます。  まず、校舎につきましては、重点といたしまして、中学校生徒急増対策相当額増額いたしております。前年度に比べまして約二十億円の増額をいたしております。それから、小学校校舎でございますが、これは団地等の人口の部分的な集中、いわゆる社会増対策がその趣旨でございます。  屋内運道場につきましては、特に前年度とその積算の原価において変わる点がございません。  それから僻地集会室も前年とほぼ同様の考え方積算をいたしております。  学校統合でございますが、これは、従来の経続事業のほかに、新規に二万三千坪の統合計画が可能になるように予算計上いたしております。  次は危険校舎でございますが、これは、先ほど申し上げました中学校急増対策関係もございまして、全体の事業量が減少すること、つまり、中学校校舎の増築に伴いまして危険校舎改築事業が多少減少するということも見込まれますので、ここのところは多少ペースをゆるめております。  それから、特殊教育建物でございますが、これは、後ほど申し上げます特殊教育拡充等をも考慮いたしまして、前年度に比べまして金額的に二千五百万円の増といたしております。  次に、ロといたしまして非義務制学校施設整備でございまして、幼稚園、定時制高等学校等につきましては、これは前年と同額でございます。  それから高等学校危険校舎改築でございますが、金額的には二千万円の増額となっております。  次は社会教育施設でございまして、公民館等整備中心でございますが、予算額といたしましては、前年に比べて二・五倍というふうに飛躍的な増額となっております。  次の三は公立文教施設災害復旧費でございまして、十二億円余を計上いたしております。個々の前年度予算額は実は第二次補正までの予算額でございまして、御承知の第三次補正におきましては一億一千五百万円がさらに追加計上になっておる次第でございます。  第二は特殊教育振興でございますが、その一は公立養護学校教育費国庫負担金でございます。これは義務教育国庫負担金積算の仕方と全く同様でございまして、給与費につきましては、明年度そこに書いてございますように新設十一校、これに伴う教職員の増百九十一名を予定いたしまして、この給与費計上いたしております。教材費単価等はこれまた義務教育と同じように前年通り据え置かれております。  その次は養護学校等施設を推進するための講習会等に要する経費でございまして、現職教員のために講習会を開催する。それから学習指導要領につきましては特別なものが必要になるわけでございますが、それを新たに編集する、それに伴いまして必要な教科書を編集する、教師の指導書を作成する、そういう関係経費でございます。精神薄弱児につきましては総合的な教科書を考える、肢体不自由児病弱児につきましては体育にだけ特別なものを考えまして、その他は一般のものを使用するという計画でございます。  次は養護学校及び特殊学級設備整備でございますが、その第一は特殊学級設備費補助でございます。一般特殊学級といたしましては二百五十学級に対する補助予定いたしております。職業関係、これは精薄中学部でございますが、三十一学級分予定いたしております。  次は養護学校設備費でございまして、三ページの一番上でありますが、これは本年度新規計上された金額でありまして、それぞれ必要な設備費補助したいということでございます。  その次は肢体不自児学校のスクール・バスの補助でございますが、これは昨年の三台が四台ということになっております。  次は特殊学校への就学奨励でございますが、小中学校につきましては新たに修学旅行費補助を加えております。このことについては別途法案として御審議いただくことになっておるわけでございますが、これによりまして従来小中学校にございまして特殊学校になかった修学旅行費がこれについたわけでございます。その間の不均衡がなくなったという次第であります。高等学校につきましては寄宿舎の雑費、寝具費等が新たに計上になっております。  次は養護学校教員養成でございまして、北海道学芸大学東京学芸大学等に一年及び半年課程養護教員の特別な養成過程を設けることといたしております。特殊教育建物につきましては最前申し上げた通りでございます。  第三は科学技術教育振興でございまして、その一が理科教育設備整備でございます。中身は二つございまして、一つは理科教育振興法に基づく補助金でございますが、これは前年の約五億円が一割増しの五億五千万円ということになっておるわけでございます。  その次の理科教育センターは、これは新規に入りました事項でございまして、全国五カ所に、教職員理科教員実験観察中心とした再教育施設として理科教育センターを設ける際の設置費補助をしたいということでございます。  次は産業教育施設設備費負担金でございまして、前年度に比べまして一億九千七百万円の増でございます。ほぼ十億に近くなったわけでございます。  まずその設備費について申し上げますと、イの設備更新新規として入っております。これは二十七年の四月現在における現有施設の一部を更新修理するために必要な経費でございます。それからハの新設課程でございますが、これは前年度に引き続きまして機械課程電気課程工業化学課程、三課程新設予定いたしております。  次に施設費でございますが、施設費ロ新設課程、これはただいま申し上げました機械電気工業化学新設課程施設費補助計上しておる次第でございます。  次は四ページでございますが、上から四行目に中学校設備というのがございます。これは新教育課程に基づきます中学校技術課程関係設備を充足するために必要な補助金でございまして、前年度に比べまして一億六千万円の増額となっております。  次は在外研究員派遣でございますが、これは前年同額でございます。  次は南極地域観測事業でございますが、ただいまやっております第五次観測、それから今回越冬いたします第四次越冬隊の収容に要する経費等計上しておるわけでございます。  五は科学研究費交付金等でございまして、前年度に比べまして二億七千万円余の増額となっておりますが、そのうち一番大きい増額科学研究費交付金増額でございまして、これは前年度に比べまして二億四千万円の増額になっております。この増額の約過半は機関研究増額に充てられる予定でございます。  その次は民間学術研究団体振興でございますが、前年度に比べまして千六百万円の増額になっております。第一は民間学術研究機関助成でございますが、これは民間学術研究機関助成に関する法律に基づく補助でございます。次は日本学術振興会補助でございますが、これは前年に比べまして二千二百万円の増額になっております。流動研究員制度拡充奨励研究制度拡充等がその主たる内容でございます。  第四の柱は私学の振興でございまして、その一は私立学校振興会に対する政府出資金三億円でございます。従来の五十億円の現金出資に加えまして、さらに三億円の出資を行なうということでございます。  二は私立大学研究設備助成でございます。前年度に比べまして一億三千九百万円余の増額でございまして、かなり大幅な増になっておりますが、一般設備のほかに特殊設備が入りました。この特殊設備事項としては新規になっておるわけであります。  三は私立大学理科特別助成でございまして、これも伸び方としては前年度に比べましてかなり大きな伸びを示しております。二億六千万円余の増額になっております。ここに一般理工系学部補助というのがございますが、これは主として既設の理工系学部という趣旨でございます。  その次は私立学校共済組合補助でございまして、金額的に九百六十万円余ふえておりますが、これは人員の増、単価の増に伴ういわば自然増でございます。  五ページに参りまして、第五の柱は育英事業になっております。育英会貸付金でございますが、四十五億四千百万円となっておりまして、前年度に比べまして一億三千九百万円余の増額になっております。これは特別奨学生六千人の増に伴う増でございます。これによりまして特別奨学生高等学校の第三学年まで充足されたということに相なるわけでございます。  第六は社会教育関係でございまして、その一は青年学級振興でございます。青年学級補助金は前年とほぼ同様七千七百万円余でございます。その次の青年学級研究協議会等の五百万円は、青年学級指導者等研究協議会を設ける経費でございまして、これは新規となっております。  青年の家の整備費補助、これはほぼ前年同様の趣旨でありまして、特別な変更はございません。  三は婦人教育振興でありまして、これは金額的には飛躍的な増額になっております。その一は婦人学級委嘱費でございますが、従来の三百学級程度を千四百学級程度に引き上げまして、婦人学級委嘱を大幅に広げて参りたいということでございます。金額的にも前年度に比べまして五千二百万円程度増額になっております。  次は婦人教育指導助成でございますが、これもかなり大幅な増額になっておりまして、前年度に比べまして約千七百万円の増額になっております。事項といたしましては、(口)の外国派遣新規として入っておるわけでございます。  次は社会教育関係団体補助でありまして、これも前年度に比べまして四千四百万円程度増額になっております。予定される範囲はお手元資料でごらんをいただきたいと思います。  五は教育テレビ対策でありまして、テレビ番組製作実施に要する経費が三千六百万円、これは、御承知の「わたしたちの道徳」及び「あすへ開く窓」といった番組が出ておるわけでございますが、その関係経費でございます。一つ置きましてテレビ受像機設備補助がございますが、これは新規計上された経費でございまして、僻地小中学校テレビ受像機設置する際の補助を考えたわけでございます。  六の児童文化センター設置、これは前年通り考え方でありまして、特別な変化はございません。  次のページに参りまして、公民館等設備費補助でございますが、中央公民館につきましては映写機、録音機テレビ等補助を考えております。移動公民館につきましては、二台と書いてありますのは自動車のことでございます。図書館につきましては図書の購入費補助する。博物館につきましては、標本等のいわゆる博物館資料整備に必要な経費補助するということでございます。  九は国立中央青年の家の経費でございますが、前年度に比べてかなり大幅な減になっておりますが、これは昨年度初年度でございまして、施設費等が特に初年度として多く計上されておった、その経費が落ちたための減でございます。事業規模等につきましては従来よりさらに拡充されるわけでございます。備考のところに第二キャンプの改修等とございますが、これは青年の家のすぐ近くにございますもと米軍の軍事顧問団の宿舎を改修いたしまして、青年の家の宿泊施設に充てるため等の経費でございます。  次は社会教育の特別助成でございまして、備考に書いてございますような社会教育指導者養成等の経費に充当する予定でございます。  第七は体育でありまして、その一は国民体育施設整備、前年度に比べまして二千三百万円の増になっておりますが、従来の体育館、プール各五カ所の補助を、各十カ所の補助増額したことに伴う増であります。  国民体育大会の補助は、夏季大会熊本県、冬季大会新潟、青森の両県において行なわれるものに対する補助予定いたしております。  国立競技場の経費がその次にございます。これもやや減になっておりますが、これは施設費の減に伴う減でございます。  四は体育振興特別助成でありまして、備考にございますような青少年スポーツ活動の助成に充当する予定でございます。  七ページへ参りまして、オリンピック東京大会の実施でありますが、オリンピック組織委員会の定額補助といたしまして四千万円を新規計上いたしております。それからオリンピックを迎えるに際しまして、競技技術を向上したいということで四千万円を計上いたしております。これもほとんど新規事項に属するわけでございます。  その次の国立競技湯の拡充でございますが、これまた、オリンピックを迎えるに際しまして、現在の国立競技場を拡充する必要がある。その基本設計に必要な経費計上しておるわけでございます。  次は体育協会の補助でございますが、前年に比べまして約五百万円近くの増になっております。これまたオリンピック関係の仕事の増に伴う補助の増でございます。  六はローマオリンピック大会の選手団の派遣に必要な経費補助でございます。定額補助として五千万円を計上いたしております。総経費といたしましては、選手団の派遣に要する経費の全体といたしまして、約一億七千万円必要だということを伺っております。  第八は国際文化の交流でありまして、その一は沖縄の教育に対する協力援助でございます。そのイは沖縄教員の内地派遣研究制度実施でございますが、従来の二十五人に加えましてさらに十名そのワクを広げました。それと同時に従来の月八千円程度の滞在費を、月一万一千五百円というふうにかなり大幅に増額いたしておるわけでございます。  次のロは国費沖縄留学生の招致でございますが、これはほぼ前年程度でございまして、これに対しましては月約六千円程度手当支給されております。  次のハは指導主事の派遣でございまして、これは三十四年度から実施をしておる事業でございますが、その人員をさらに四名ふやしまして、従来一部沖縄負担でございました滞在費を、すべて日本政府負担するということに伴う増か六百三十万円ということになっておるわけでございます。  次は国費外国人留学生の招致等でございまして、学年進行のほか新規増が七十名認められております。この国費外国人留学生については月二万円の給与が行なわれることになっております。その次の海外教育事情調査でございますが、これは東南アジアの教育事情を調査いたしまして、留学生の受け入れ等の調査研究を行ないたいということでございます。これは新規事項になっております。  次は文化財保護委員会の関係でございますが、一の文化財保存事業費等、この中には国立劇場の基本設計、それから懸賞募集に伴う経費か二千五百万円計上されております。  それから文化財の保存修理費の補助が三億一千八百万円余計上されておりますが、このうち二千九百万円余は災害復旧費でございまして、その額を含むわけでございます。  次のページに参りまして、文化財の防災施設補助でございますが、これは防火施設、収蔵庫、標識等を設置する経費補助でございます。  それから準要保護対策でございまして、一の教科書費の補助、二の修学旅行費補助、この立て方は前年通りでございまして、特別な変更はございません。ただし金額に多少の増減はございますが、これは児童生徒数自然増減に伴う増減でございます。  三の保健医療費補助は、金額的にややふえておりますが、これはトラホームの治療費の日数を、従来の二十五日から五十日に引き上げたことに伴う増でございます。  四は学校給食費の補助でございますが、御承知通り小麦のグラントが減少することに伴いまして、学校給食費に若干の値上がりが予定されておるわけでございますが、そういう事情もございまして、学校給食費につきましてのみは、準要保護児童生徒の率を、上の三つとは異なりまして、四%ということにいたしております。  次は、学校教育の充実等でございまして、その一は、ほぼ前年の事業費を引き続いておるわけでございますが、高等学校教育課程の改訂が予定されておりますので、その関係講習会に要する経費新規計上されております。それから九ページでございますが、前年からの事業を継続いたしますほか、校長等の研修に重点を置きたいという考えで、九百万円余を新規計上いたしております。また教科別の研究団体の研究活動等を助成するという観点から、一千万円の教育研究助成に関する経費計上されております。  その次は、定時制通信教育振興でございまして、ただいま提案になりました定時制通信教育手当支給に要する経費の三分の一を補助するということで、一億七千万円が新規計上されております。定時制高等学校設備補助につきましては、これはいろいろ内容があるわけでございますが、その中の理科関係につきましてだけは、理科教育振興法に基づく補助金と平仄を合わせまして、二〇%増ということにいたしております。通信教育運営費の補助は、前年同額でございます。  その次の放送テレビの利用でございますが、これは新規でございまして、高等学校通信教育にテレビを利用するために必要な経費でございます。  次は学校給食でございまして、施設設備補助につきましては、ほぼ従前の考え方を踏襲いたしております。食糧管理特例会計への繰り入れが十七億一千二百万円ございますが、これは従来通り百グラムについて一円の繰り入れでございまして、金額的に一億四千万円程度伸びておりますが、これは数量の増でございます。  次は、国立学校の運営費でございますが、まず第一に教官研究費が二〇%増額になりまして、前年度に比べまして、十一億四千九百万円余の増額になっております。設備充実等につきましても、それぞれ相当額増額しておるわけでございます。  その次は、学部学科の新設改組でございますが、これは主として科学技術教育振興、科学技術者養成という、そういう観点からの施策でございまして、学部といたしましては、京都大学の薬学部、岡山大学の工学部等の新設を見込んでおります。短期大学といたしましては、北見短期大学新設を見込んでおります。学科といたしましては北海道大学の電気工学科等の新設、それから短期大学の学科といたしましては、久留米短期大学の電気科等を予定いたしております。改組拡充といたしましては、十二学科を予定いたして、おります。以上を含めまして理工系の学生の増募は三十学科、短期大学五学科にわたりまして千百二十六名ということになっております。それで科学技術者養成八千人の増員計画が一応達成されるわけであります。  次に十ページでございますが、留学生課程でございます。これは東京外国語大学と、理科大学にそれぞれ設けられる予定でございます。修業年限は三年でございまして、一年か日本語の課程、あとの二年が一般教養の課程というふうに予定されております。  次は付属養護学校新設でございますが、これは東京学芸大学と東京教育大学、これはいずれも精神薄弱児のための養護学校でございますが、それが付設されることになっております。第十三は国立文教施設整備でありまして、科学技術振興施設と書いてございますのは、ただいま国立学校について申し上げました学部、学科等の増設に伴う施設整備中心でございます。  それから次に米国余剰農産物処理法に基づく施設というのがございますが、これは先般日米の交換公文によって決定されました、アメリカの積み立て円を使用いたしまして、広島大学と長崎大学の医学部の研究室、病院を整備するために必要な経費でございます。  次は特定財源による施設でございますが、これは東京学芸大学の小金井地区統合等に伴う経費でございまして、それぞれ現在地の売却等による特別な財源が予定されておるものでございます。  その他といたしましては、同和教育でございますが、学校教育関係につきましては約五十万円の増になっております。社会局関係におきましては、これは事項としては新規に入っておるわけでございまして、同和市町村の社会教育活動の助成等がこの内容になっております。  学校安全会に対する補助がございますが、これは支部の設置費補助新規として計上いたしております。  三のその他はまあ人員増等でございまして、特に申し上げる必要もないかと思います。  以上文部省所管の予算について御説明申し上げたわけでございますか、最後にございますように、前年度予算に比べまして百八十九億の増になっております。これを前年度の当初予算に比較いたしますと、二百三十八億の増でございます。一般会計総予算において占めます比率は一二・四%でございまして、昨年の一二%に対しまして〇・四%程度の増になっておる次第でございます。簡単でありますが概略御説明申し上げました。      ————◇—————
  8. 大平正芳

    大平委員長 次に学校教育等に関し調査を進めます。質疑の通告がありますので、順次これを許します。西村力弥君。
  9. 西村力弥

    ○西村(力)委員 第一番に、この前理事会でも話し合ったのですが、文部省が当初要求した要求の概要について、これはまあ大蔵省と折衝した結果固まったものが今ここに君かれてあるわけですが、その前の、文部省として希望した要求額をわれわれに見せていただきたい、こういう話であったのです。それを一つぜひやっていただきたいと思いますが、いかがなものでありますか。
  10. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 お話でございますが、文部省から大蔵省に対する予算の要求は、これは政府部内の問題でございまして、私どもといたしましては、政府として決定いたしました予算につきまして御審議を願いたいというふうに考えておる次第でございます。
  11. 西村力弥

    ○西村(力)委員 それはもちろんそのものについて審議をするのでありますが、その参考のためにも、やはり文部省が当初理想的なものとしてどういう予算を組んでこれを推進しようとしたかということは、これは参考としてぜひ必要だ、こういうことなんでありますし、また他の役所においては、公式でないにしても、これは示している例かたくさんあるのです。そういうところから、私たちその希望を申し述べるわけなんでございまするが、これはどうしてもそういうことはできないものでございますか。公式にやはり出すということはできないでしょうが、何とかその点は考慮願いたいものだと思います。私たちの方の文教委員全体の意見もそういうことになっておりますので、その点一つ頼みたいと思う。それで、この席ではっきり答弁できないとすれば、また別にやりますが、そんなようなものじゃろうと思いますので、その辺一つ……。  次に、これは自民党さんの方ですし詰め学級の解消というのが選挙の公約になっておるわけですが、この表を見ましても、これは五カ年計画の第二年次分と、こうなっております。それでこの前の国会はいつでしたか、私は要求したのですが、五年過ぎた後の目標というものを明示してもらいたい、それに至る一年、二年、三年、四年、五年、この五カ年の年次計画、それは児童生徒の増減の度合いはどうだとか、それから増築の年次計画はこうだ、それから学級定員数のなにがこういう工合に推移して、最終はこうなんだ、こういう計画を出してもらいたい、こう申したのでしたが、これは一向出ないでしまった。そういう要求を出しておったのを出さないのはけしからぬといって最後に言ったところが、だれかあのときの委員会で、鈴木正吾氏だったか、大へん怒ったようなことがありましたが、今回一つそれをはっきりしてもらいたい。第二年次分とこう出ておりますけれども、先行きが五年間でどうなっていくかということかはっきりしないと僕らはいかぬと思うのです。それを資料としてぜひ提示していただきたいと思う。  次に、きょうは管理職手当についてお尋ねをしたい、こう思うのですが、教頭管理職手当はいろいろジグザグの経過を経て日の目を見たという工合に見ておりますが、あの問題が出たときに、新聞記事は日教組対策費というような見出しをつけておる。そういう評価をした表現をしておる。これはやはり端的にいってみなそう受け取っているだろうと思うのです。大臣は、新聞記者のセンスで日教組対策費教頭管理職手当、こう出ていることに対して、どういう考えを持たれるか、それを一つ聞かせてもらいたい、こう思うのです。
  12. 松田竹千代

    ○松田国務大臣 新聞にどういうふうにこの管理職手当の問題でうたってあったのか、私はよく知りませんけれども、文部省といたしましては、新聞にうたってあるとおっしゃるような目的ではございません。管理職、すなわち学校の管理並びに教職員の監督、そういった立場にある校長並びにこれを助けていく教頭に対しても、ひとしく管理職手当を出したい。これは当然他省のこれらの管理監督の立場にある者にも手当が出ていると同様に、出すべきものであるという考えから出しているものでございます。
  13. 西村力弥

    ○西村(力)委員 一つ聞きたいのは、校長に去年から管理職手当支給したわけですが、ある校長に至っては、それを受け取らない、そういうことは教育の真実を破壊するものだ、こういうような立場をとった校長もあると聞いておりますが、校長さんにそれを一年間支給して実施してみて、一体教育上の効果というものは、どういう工合な現われ方をしておるものか、これに対して、一年間経過したその状況を見まして、どういう工合に観測せられておるか、この点はどうお考えですか。
  14. 松田竹千代

    ○松田国務大臣 管理職手当を出すことによって、校長が一年間やはり落ちついて職務に精励してきておるというふうに私どもは看取いたしておるわけであります。
  15. 西村力弥

    ○西村(力)委員 それは管理職手当が出る出ないにかかわらず、一生懸命に校長さんとして、教育者として努力をしなければならぬことは当然なことです。ですが、それが管理職手当をつけたという、それを校長先生はもらったという、それは個人の経済事情もあるし、心理的な状況あるいは学校内の空気なんかもいろいろな変化を示してきておるわけなんです。その点について、金を出したから、こういう効果があった——今のような観念的な話じゃなく、もっと具体的に、この国費を投入し、地方費を投入してやった結果がこういう工合に教育にプラスしているというように、もっと的確に分析せられておるべきものであると思うのですが、それはどうです。
  16. 内藤譽三郎

    内藤(譽)政府委員 従来の給与体系が、必ずしも職務の性質、責任の度合いによって支給されてなかったということ。大体学歴なり勤務年限を中心生活給的な給与体系であった。そこで校長教頭のような者、いわゆる管理職に対する給与の不十分であったことは私ども認めておるわけです。こういう点で、昨年校長に対する管理職手当支給いたしまして、管理者としての意識を明確にし、かつ学校運営の適正化をはかる、こういう趣旨から校長さんが大へん御努力いただいておりますことは、私ども率直に認めておるのでございます。
  17. 西村力弥

    ○西村(力)委員 文部省のお立場はそうであろうと思うのですが、そういうことだけでは、管理職手当支給後の学校教育の場におけるいろいろな変化というものに対しては、具体的な観測というのは何らなされていないという工合に私は思うのです。この管理職手当支給することによって、管理職的色彩というものは濃厚になったと思うのですが、具体例としては、この支給によって、学校長が教職員の団体である日教組から脱退した数はどのくらいか、そういうことはお調べでしょう。これは直接効果をねらったところでしょうからね。どのくらいなんです。
  18. 内藤譽三郎

    内藤(譽)政府委員 校長さんが従来から脱退しておった県が相当ございまして、東京、それから東海ブロックの静岡、名古屋、岐阜、三重、ここは従来から脱退しておりました。それから勤評の事件以来組合からの相当激しいつるし上げによって、校長みずから脱退しておった者も相当ございます。新しく管理職手当支給してから、具体的にどれだけというようなことは明確になっておりませんが、現在のところ、校長さんで組合を脱退している人が約半数と思っております。
  19. 西村力弥

    ○西村(力)委員 それから管理職手当校長さんに支給したことによって校長教員間の空気というものは変化を示しておるかどうか、この点についてはどうですか。
  20. 内藤譽三郎

    内藤(譽)政府委員 別に管理職手当支給したから校長さんと教員の間が工合か悪いというふうには私ども聞いておりません。
  21. 西村力弥

    ○西村(力)委員 私たちこの前の審議の際にもいろいろ申し上げたのですが、管理職手当は決して純粋に教育効果の伸張をねらって仕組まれたものではない、そしてまたその支給については相当無理がある、こういう立場でみんな受け取っておりますので、この支給によって校長と職員間の空気というものは決して変化がないわけじゃなくて、大きな変化があります。そのことが学校内の空気を、同じ子供を教育するという一体観よりも、上司、下司という官僚主義的な立場によってただ機会的に結ばれている学校職員、そういうものがだんだんと生まれつつあるのです。教育の場というものはそうじゃなくて、やはり校長も先生方も一体となって、ただひたすらに子供たちの面に向かって努力を注いでいくというのがほんとうのあり方だと思うのです。それが管理職手当支給したことによって、校長と職員との間の、何というか一般行政職関係の上司、下司というような関係、そういう結ばれ方になってきておる。それはすばらしい教育の場の大きな変化であると私たちは見ておるのです。こういうことが真の教育というものによい成果をもたらすものであるかどうかということになると、大きな疑問があると思います。これはやはりお互いに日本の将来のことを考える立場に立って見るときに、相当慎重な考慮をする必要があるだろうと思う。この学校職場が行政官庁の事務室的なものになったとするならば、そこから生まれる教育というものは、そんなものは無味乾燥にすぎないものになる。そういう結果を、文部省としてその状況をもう少し深く検討する必要があると思う。今何ら変化がないというようなことを仰せられますが、これは自分たちの立場を申しているだけのことであって、ことさらにそういう実態に触れようとしない、こういう立場だけが現われているのじゃないかと思うのです。  続いてお聞きしますが、教頭管理職手当支給する基礎の条項はどこでございますか。
  22. 内藤譽三郎

    内藤(譽)政府委員 これは学校教育法施行規則の二十二条の二に、こういうことが書いてあるわけです。「小学校においては、教頭を置くものとする。但し、特別の事情のあるときは、これを置かないことができる。」「教頭は、教諭を以って、これにあてる。」「教頭は、校長を助け、校務を整理する。」こういう意味から校長に準じた扱いをしたわけであります。
  23. 西村力弥

    ○西村(力)委員 その施行規則の母法は学校教育法だと思うのですが、その学校教育法の中に、学校におる職員の種類、種類と言ってはおかしいかもしれぬけれども、そういうものが規定されているのですが、その中にそういう教頭という職種が明示されておりますか。
  24. 内藤譽三郎

    内藤(譽)政府委員 学校教育法は校長教諭、こういう建前になっております。
  25. 西村力弥

    ○西村(力)委員 そうすると、施行規則は、その学校教育法に基づいて、その法律範囲内において文部省が制定するのであるから、それは間違いないことだと思うのです。そうしますと、学校長のほかに教諭、そのほか事務職員とか養護教諭、こうなっておるのですが、教頭というのは、本質的には正資格というか、そういうものはやはり教諭だということは間違いないですね。
  26. 内藤譽三郎

    内藤(譽)政府委員 さようでございます。
  27. 西村力弥

    ○西村(力)委員 そうすると、教頭の本来の任務というものは何ですか。
  28. 内藤譽三郎

    内藤(譽)政府委員 教頭の本来の任務は、先ほど学校教育法施行規則二十二条の二で申しましたように、校長を補佐して校務を整理する、これが教頭本来の任務であります。
  29. 西村力弥

    ○西村(力)委員 それは教諭というものの任務にそういうことは入っていないわけですね。児童教育をつかさどるですか、小学校の場合はそういう場合なんです。学校には校長教諭しかいない。しかも、教諭本来の任務は、子供の教育をつかさどる、こうなっておる。そのワク内において教頭というのを便宜的に施行規則できめているのですから、その便宜的にきめた仕事というものは、そういう工合に施行規則によるでしょうけれども、本来なすべき仕事というものは教諭の仕事である。こういう工合にいかなければどうもそこのところがおかしくなるではないかと思うのです。学校教育法の中に校長教頭教諭、こういうような種類があるならばそれでもよいけれども、施行規則の教頭とか保健主事とかそういうような仕事の区分あるいは格づけをしているところにある。だから、教頭といえども本来は教諭が任務である、こういうように言わざるを得ないわけであるが、どうですか。
  30. 内藤譽三郎

    内藤(譽)政府委員 従来官名と職名とあるわけです。官名の場合は私ども文部事務官である。ところが、局長に補せられる、あるいは課長に任用される、こういうふうになるのであります。教員の場合でも、教諭の身分のままで教頭に補せられる場合もあるし、あるいは図書主任、衛生主任、校務主任その他生活主任とかいろいろ職制があるわけでありますが、その職制は、学校教育法第三条に「編制その他に関する基準に従い」これを設置されるもの、こういう規定がございまして、この編制その他の基準は監督庁が定める、こうなっておりますので、職制のきめ方は施行規則できめたわけでございます。
  31. 西村力弥

    ○西村(力)委員 そういう工合に仰せられますが、第三条の規定を、そういう工合に学校内の事務分掌までこの編制の中に入れていくという場合には、われわれとしてはとうていこれは受け取るわけには参らない。この解釈は無理ではないか。そんなことを言うたら、今まで編制ということを用いた法律もたくさんありますが、この編制の中にそこまでみな入れるということになったら大へんなことになってしまうと思うのです。ここの「編制」は本来はどういうことなんですか。「設備、編制」こういう工合に大きく分けている中の「編制」というのはどういうことなんですか。前言った工合にそこまで入るのですか。そういうのは基本的な学校教育法の解釈としてはあまりにも便宜的過ぎるじゃないかという工合に受け取らざるを得ない、これはどうなるのですか。
  32. 内藤譽三郎

    内藤(譽)政府委員 学校基準の中にどういうものを設けるかということは当然入ってくるのではなかろうか。たとえば司書教諭が必要なら司書教諭、あるいは子供たちの生活指導、あるいは職業指導をしておる職業指導教諭、こういうように学校におけるいろいろな職制が考えられるわけです。その職制の基準をきめることがこの学校教育法三条の目的であろう、もちろんこれのみではございません。学校学級の規模をどうするとか、あるいは教員の定数をどうするかということも入りますし、あるいは建物設備基準も入る、こういうことでございまして、人的配置の基準もその中には当然含まれる、こういうふうに解釈しておるわけであります。
  33. 西村力弥

    ○西村(力)委員 話は先に戻りますか、学校教育法第二十八条に校長教諭養護教諭、事務職員、助教諭、こういう工合になっておる。これが官名だ、こういう工合にあなたの方では仰せられますが、この人々の官名というと教諭とか助教諭、そういう工合にいうのが官名であって、そのほかの教頭とか保健主任とかいうものは職階的な名称である、こういう工合に言われますが、この二十八条に規定されておるのは官名というものであるかどうか、昔ですと官名ですと、何といいますか、地方の待遇官吏とかいっておっただろうと思います。ここで今示されておることはやはり一つのはっきりした職制、職務名称として校長教諭、こういう工合に規定していると私たちは考えておるのです。そしてあとの教頭とか云々というものは職名というよりも一つの業務分掌だという工合に私たちは考えておるが、その間の明確なる解明はどういうものですか。
  34. 内藤譽三郎

    内藤(譽)政府委員 今お話のように、全部の職を上げて、その職ごとに職務範囲をきめることも一つの方法だと思います。しかしながらその場合には無限に職を置かなければならぬ、こういうようなことになりまして、今申しましたように、学校の場合でも教頭もおりますし、あるいは補導主任をするような方もおられると思うし、また生活指導その他職業指導の先生もおられるだろうし、あるいは衛生主任あるいは司書主任、いろいろ種類かたくさんございますので、これを全部網羅して学校教育法に明記しろ、こういう御意見も私一つの御意見だと思います。しかしこの場合に、今度は職務の間における給与の問題、いろんな問題においてまた大へん複雑な問題も起きてくるわけであります。そこで、こういうものは全部教諭というもので充てる、こういう今の法律体系をとっておるので、私どもはなるべく簡素化してそして実情に合う方が法律体系としてはいいんではなかろうか、かように考えておるわけでございます。
  35. 西村力弥

    ○西村(力)委員 そういう点については私たちの十分な、法律的な確たる見解をここで示すということも私たちの方ではなかなかできないから、あなたの答弁というものがやはり押しつけられるような工合になりますが、しからば教頭というものは必置になっているか、全国的に各学校とも教頭という名前で置いているのかどうか、これはどうなっていますか。
  36. 内藤譽三郎

    内藤(譽)政府委員 現在のところいろいろまちまちでございまして、教頭といっておるところもあるし、校務主任といっておるところもありますし、また副校長といっているところもございます。職制としては教頭に統一することが望ましいと思っております。
  37. 西村力弥

    ○西村(力)委員 法で規制づけられた必置制を施行規則で要請しているというようなことをあなたの方で仰せられますけれども、実態を見ますと、決してそういう種類のものじゃなくて、学校運営の都合上それをよりよくするために、あるいは地方の事情によって、やはり校務のいろんな分掌という形であるから、その名称やなんかも種々雑多である。また置いても置かなくても——そういうところもあるかもしれない、こういう工合になるのでありまして、法に規制づけられた職種であるならば、そういう事態はあり行べきことではないはずなんです。今の条項を示した施行規則はいつから発効しておるのです。
  38. 内藤譽三郎

    内藤(譽)政府委員 ちょっとここに明確になっておりませんが、三十三年だろうと私は記憶しております。
  39. 西村力弥

    ○西村(力)委員 当初そういうことはなかったのがいつからか加えられたということを私たちも聞いておるのですが、あまり古いことではないにしても、去年あたりの問題ではないわけだね。よほどずっと前からある。だから、その間においても文部省は何らそこに不自然を感じなかったと私たちは思っておるのです。副校長と呼ぼうが、校務主任と呼ぼうが、置かないようにしようが、そこに不自然を感じなかった。そういう工合になっておる状況を見ますと、決してあなたのようにこの管理職手当をつけなければならぬという工合にはっきり立場の確立されたものではないんだ。今、この管理職手当支給せんがために、いかにも法的に基礎の固まっておる、確立しておる職種であるかごとく主張せられるけれども、そういうものではなくて、文部省としてもそういうことを不自然に思わなかったというところから見て、これははっきりいって校務分掌というような性格のものであると私たちは受け取らざるを得ないわけです。その点はどうなんです。
  40. 内藤譽三郎

    内藤(譽)政府委員 教頭につきましては、戦前から教頭という制度がございました。終戦後におきましても、新学制発足以来、教頭という名称のもの、あるいは校務主任あるいは副校長、こういう実態かあったわけでございますが、各府県非常にまちまちで困るから統一してほしいという教育会議からの御要望もございましたので、私どもは、この点を考慮いたしながら名称教頭で統一し、またその職務内容を明確にいたしたわけであります。ですから、何か突然教頭というものを置いたというのではなくて、実態が置かれておった、それを法制化したにすぎない、かように考えておるのでございます。
  41. 西村力弥

    ○西村(力)委員 実態は置かれておったにしても、校務主任という名称も存在する、副校長というと校長に準ずる者というのが明確でございますが、そういう工合にばらばらにやった。名称をあなたの方で統一しても、それに基づいて統一されない。また統一を強行しよう、強力にこれを実施させようとする意欲も今まで文部省にはなかった。こういうことを示しておるのですから、やはり教頭というものは管理職手当支給するというような立場をはっきり持っておる者ではない。そういう工合に実態から私たちは言わざるを得ないわけなんです。しからば、今度管理職手当七%というのをつけるわけですが、これについては、いわゆる副校長、校務主任、教頭というような名称の者全部にこれを支給する、こういうことになりますか。
  42. 内藤譽三郎

    内藤(譽)政府委員 今お話しの通り、全部に支給する考えでございます。ただ、この施行規則にもございますように、特別の事情あるときは置かないことができると書いてありますが、大体小規模な学校には置かない場合があるわけでありまして、そこで、どの程度の規模から置くかという一つの問題があるわけであります。私どもは、校長だけで管理監督が十分できる、あるいは教頭まで置かなければ不十分だ、こういうことが問題になると思います。そこで、予算の上では、小学校は五学級以下、中学校は二学級以下の小規模のものは校長だけで管理監督が十分できると考えまして、かりに教頭を置いても、これは国庫負担対象にはしない、こういう考えでございます。
  43. 西村力弥

    ○西村(力)委員 そういうのはおかしいじゃないかと思うのです。教頭という職種かはっきりあって、それが管理職手当支給すべき仕事を担当しておるという工合になれば、その責任の度合いに応じてこれを支給するのですから、これは小規模であろうと大規模であろうと何らそこに変わりはない。しかも、実態からいうと、大学校などと同じように、小学校校長さんは会議とか出張とかさまざまあって、教頭の仕事というものは、小であれば小なりに、やはりその混雑というか、煩瑣というか、そういうものがあるわけです。今おっしゃったように、小さいところには置かないのだ、これは全然置かなければそれでもいいのだけれども、置いている限りにおいてはやはり同じじゃないか。だから、それを逆に私たちなりに勘ぐれば、小さい学校教頭なんかはよくよく若いやつがやっているのだ、そういう者に管理職手当をつければよその相当の連中とバランスがとれなくなるから、それはやめておけ、そういう便宜主義以外にないのだ、そういう工合にとれるのですが、その点はどういうふうにお考えになっておりますか。
  44. 内藤譽三郎

    内藤(譽)政府委員 管理監督をするというのは、やはりどこでも一定の規模がなければならぬと思います。そこで、中央官庁では、課以上でなければ管理職に扱っていないわけです。だから、課の構成員としては最低十名以上になっている。その十名について一人の管理職がおるわけです。そこで、学校の場合にどの程度の規模が妥当か。二人置く場合には、小学校では大体六学級以上、中学校では三学級以上というのが妥当ではなかろうか。こういう点で、たとえば二人おって、一人校長さんが管理職で、もう一人が教頭という場合一体何を管理するのか、管理監督すべき職員がいないわけですから、そこはあまり管理職だけになったらおかしなことになると思う。ですから今の程度が妥当ではなかろうかと考えておるのでございます。
  45. 西村力弥

    ○西村(力)委員 校長ともう一人の教員、そういう二人の独立学校がありますか。
  46. 内藤譽三郎

    内藤(譽)政府委員 小規模学校にはそういうのがたくさんございます。
  47. 西村力弥

    ○西村(力)委員 二人の独立学校というものは、私は今まで見たことがないのです。独立学校とすれば、校長がおって、そのほか助教員なども含めて三人くらい、それが最低のように思っておった。全国的に見れば、校長ともう一人の教員という独立学校があるというのですが、それは事実あるのですかね。
  48. 内藤譽三郎

    内藤(譽)政府委員 統計をごらんいただけばおわかりになると思いますが、単級学校というものも相当あります。単級学校というものは一クラスの学校、ワン・ルーム・スクールですから、この場合に二人おればいい方で、一人のところもあります。あるいは複式の場合に三学年複式あるいは四学年複式というような実態がございます。また二学級学校というのも全国で相当ございます。
  49. 西村力弥

    ○西村(力)委員 その話はまたあとでいろいろやることにいたしまして、それでは自治庁関係にちょっとお尋ねいたします。地方公務員関係において管理職手当支給しているという例は、いただいたこの表によって大体わかりますが、この管理職手当というのは、一般の地方公務員の場合は管理職手当という名称支給になっておるかどうか、どういう名称になっておるのですか。
  50. 今枝信雄

    ○今枝説明員 地方公務員の管理職手当は、地方自治法上管理職手当という名称をつけております。国家公務員の場合は、給与制度は俸給の特別調整額、こういうことが正式の名称になっております。
  51. 西村力弥

    ○西村(力)委員 これをずっと見ますと、知事部局においては課長にまで支給しているところはごくまれであって、部長及びその次長までにとどまっておるのがほとんどでありますが、この課長というものはそういう管理職的な色彩が認められないのかどうか。  それから課長補佐というものがあるわけですが、その方の職務内容上から、今論議されている教頭的な職務内容と一致するところはないのか。その点はどういう工合に考えられておりますか、一つお聞かせ願いたいと思います。
  52. 今枝信雄

    ○今枝説明員 ただいま御指摘になりました都道府県の本庁の課長あるいは課長補佐もいわゆる管理職であることは間違いございません。ただどういう範囲の管理職に管理職手当を出すかということになるといろいろ考え方がございます。都道府県の場合にも本庁の課長には管理職手当を出しておらないが、出先の機関の長には管理職手当を出しておるところが相当ございます。あるいは警察本部を見てみますと、本庁の警察本部の課長には管理職手当を出さないか、警察署長にはほとんど管理職手当を出す、そういうふうな仕組みになっておるのでございます。教員の場合には、地方公務員たる教員は、国家公務員たる教育公務員の例によることを教育公務員特例法は要求をいたしておりますが、一般職の場合もその他の職員の場合も、国家公務員の一般行政職の給与に大体準ずる建前をとっております。現在、等級制に基づく給料制度のもとにおきましては、大体都道府県の部長が中央官庁の課長級の同じ給料表を用いておるのでございます。そういうところから主として知事部局におきましては本庁の部長級に管理職手当を出すというのが多くなっておるような実情でございます。
  53. 西村力弥

    ○西村(力)委員 地方公務員の場合、管理職手当を出せば超勤手当はどうなりますか。
  54. 今枝信雄

    ○今枝説明員 管理職手当支給しておる者には超過勤務手当支給いたしておりません。
  55. 西村力弥

    ○西村(力)委員 そうすると、超勤の把握が、そういう役職を持っている人々はむずかしい。それに加えて管理的な仕事を持っておるから、これに管理鞍手当を出すのだ、こうなるわけだろうと思うのです。そうすると管理職手当をもらわない者は全部超勤手当をもらうのだ、こういうことになってくるわけなんでありますが、内藤局長にお尋ねしますが、教職員の場合は超勤手当を出さないわけですが、それに見合う分として俸給上の措置をやっているはずだと思うのですが、それはどういう工合になっていますか。
  56. 内藤譽三郎

    内藤(譽)政府委員 一般の公務員に比べて一号の調整額を出しております。
  57. 西村力弥

    ○西村(力)委員 あのとき、その一号の調整をやった場合には超勤手当支給することは事実上不可能である、こういうような立場からやったわけなのでありまして、他の地方公務員においてはその超勤手当支給しない者に対して、そのかわりとして管理職手当を出しておる、こういう点からいいますると、そこに矛盾はないかどうか。
  58. 内藤譽三郎

    内藤(譽)政府委員 経過的には、先ほど来御指摘になりましたように、超勤の財源を振りかえて管理職手当を創設したといういきさつはございますが、今日の段階におきましては、給与法に明示されておりますように、管理監督の地位にある者に管理職手当支給する、こういうことになっておりまして、現に国立大学の学長には二五%の調整額を出すことになっておるわけであります。ですから一般教員には出さなくても、学長、学部長あるいは病院長その他研究所長等にも、管理監督の地位にある者には管理職手当支給しておる。こういうことでありまして、これは小中学校高等学校の場合における校長と同じ立場でございます。従って一般教員に調整額を出して超勤は支給しない、こういたしましたのは、これは教員勤務実態がなかなか時間で計算しにくいという実情もございますので、こういう措置を講じたわけでございます。
  59. 西村力弥

    ○西村(力)委員 それでは自治庁の公務員課長に聞きますが、今教頭にも管理職手当というものが七%というごく微々たるものでありますが、それが支給されることによって、地方自治団体の中のそういう教職員一般公務員との間に何らか問題が発生するという工合に考えられませんか。
  60. 今枝信雄

    ○今枝説明員 お尋ねの点は、教育公務員とその他の一般行政事務に従事する職員との給与上の均衡の問題であろうかと思います。これはそもそもその基礎になります給与制度においても本来違えた建前がとられております。そういうことから違っております。それから管理職手当につきましても、先ほど申し上げましたように、いろいろと支給をすべき対象を選びます観点も違っておるわけでございますから、ただ教頭管理職手当支給するということが直ちに他の一般行政事務に従事する職員の管理職手当あるいは超過勤務手当、そういうものに直接の影響を持つものだとは考えておりません。
  61. 西村力弥

    ○西村(力)委員 しかし地方団体においては今はことに給与の問題なんかについては知事に対する問題の持ち込みということがおもになって、そのために地方公務員も地方の教育職員も一体となって知事に問題を持ち込むという工合になっておりますので、その際においてはやはりこれは、あなたそう仰せられるけれども、常識的に考えまして相当問題をはらむことになるだろうと思うのです。本庁の課長、そういう人が管理職手当というなようものを受け取ることができないにもかかわらず、学校教頭かこれをもらうということがあるならば、その地方自治団体一体としての運営上相当の問題が発生する。私たちはそう見ておるのです。それから大蔵省折衝の場合、最初はけられた、こういうことになっておるのだが、そのときはどういう理由でけられたのですか。
  62. 内藤譽三郎

    内藤(譽)政府委員 財源の見通しがつかない、こういうことでした。
  63. 西村力弥

    ○西村(力)委員 そうするとこれが復活したのは財源の見通しがついたから、こういうことなのでございますか。
  64. 内藤譽三郎

    内藤(譽)政府委員 大体そういうことでございまして、各省たくさん要求しておりますから、財源の見通しがつけばつけてくれると思います。
  65. 西村力弥

    ○西村(力)委員 それは大蔵省の方でも、こう言えばそんなことを言うだろうと私も思っておった。しかしそれは事実と全く違っておるだろうと思うのです。これはやはり、より大きく政策的な意味における圧力が奏功してここに報いられたのだということ、これははっきりするわけなのでございます。でありますから、これを強行するように復活にあたって努力せられた文部大臣は、この手当支給に対してあらゆる法的な疑義というものは、全部事務当局を通じてあなた自身も解明せられた、それから私が今まで取り上げましたような工合に他の公務員との均衡上の問題、全体の政治的折衝の場において問題が起こらない、不都合な事態が発生しない、こういうような一つの結論をもってこの復活要求に当たられたのだと思うのですが、その文部大臣の一つの信念というか、確たる所信といいますか、そういうことは一体どうなんですか。
  66. 松田竹千代

    ○松田国務大臣 お話でありますけれども、教頭に対する管理職手当をつけるにあたっては、今お話のような考えは私は毛頭持っておりません。校長に出し、また校長事故あるときに校長職務をかわってやる。また校務その他について校長を補佐していく、この教頭管理職手当をつけるということはこれは当然のことである。諸外国においてもその例がありますし、また教育に最もよけい金を使っておるイギリスあたりにおきましては、教育に熱心な国におきましてはやはり校長教頭などに相当多額の管理職手当を出しておる事例から見ましても、当然のこととして、われわれはその要求をいたし、手当をつけるようにいたしたのであるということを申し上げます。
  67. 西村力弥

    ○西村(力)委員 それで、つけるならば、私たちは国家公務員地方公務員なんかの例を考えて、国家公務員は甲乙内とはっきりなって一二%が最低だ、地方公務員の実態を見ますと一〇%というのがありますが、七%なんというけちなことを、どうやってそれをやるのですか。それほどあなた方が重要だとこれをやるならば、教育の効果が大いに上がるという考えに立つならば、なぜそんなけちなことをやるのですか。お里が知れているといわれても仕方がないですよ。少しばかりのはした金で、これは大事だ、これは大事だという。そういうことをいっている基礎には、何かやはり他の一般の役人と学校の先生と同じじゃその点ではかえってうまくないのじゃないだろうかという気持があるのだろうと思うんですよ。
  68. 内藤譽三郎

    内藤(譽)政府委員 そういう気持は毛頭ございませんが、ただ数が多いものでございまして、校長の場合に七%でも、半額でも実は五億以上もかかるわけであります。教頭の場合も半額で約三億以上かかるわけでございます。文部省予算全体の均衡も考えなければならぬし、財政の都合も考えて、実は私どもはできることでありますれば一二%ほしかったのですけれども、七%でがまんせざるを得なかった。今後できるだけ機会がありますれば、これを増額するように努力したいと思っております。
  69. 西村力弥

    ○西村(力)委員 先ほど文部大臣から提案になった定時制通信教育手当の問題にしましても、それは実際管理職手当をやっているから、ほんとうは七%だけれども、それを込みにして一〇%ないし一二%におさめようということが書いてありましたけれども、まずその考え方がおかしいと思うのです。管理職という立場で七%というものが出ておる。定時制通信教育のその職務困難性から出すというならば、その両方併給になる者は少し減額してなんという考え方、そこに今の文部省のやり方に僕らはどうしてもすなおに受け取れないところがあるのです。それはやはり別個の性格、別個の職務の事情に応じたものを出すとするならば、一方の七%の管理職手当を出そうと出すまいと、別の立場を保障するものはそのまま保障されなければならないと思う。それならその一〇ないし一二%、七%いくと最高五%最低三%、これが定通教育教員手当増額、こういうことになってくるわけです。そういう考え方は一体どこに基づいているのですか。
  70. 内藤譽三郎

    内藤(譽)政府委員 お説の通り定通手当が七%、校長教頭の管理職が七%なら、合わせて一四%出すというお考えもごもっともだと思うのです。ただその場合に他の校長さんとの均衡も考えなければならぬと思いますので、その均衡上、校長の場合は一二%、教頭は一〇%で制限をした、こういう趣旨でございます。
  71. 西村力弥

    ○西村(力)委員 そういう均衡論を言うならば、はっきり地方の一般公務員との均衡あるいは国家公務員との均衡、そういう部局々々が大体均衡するようなことを考えるのが、これは俸給の仕組みとしては当然だ。そういう工合に均衡というものは必要だと思うのですよ。それは否定できないと思うのです。そういうことを言うならば、教頭管理職手当支給することは一体どういう均衡ということになるかということです。それは明らかに均衡が破れると私は思う。これは先ほど自治庁の公務員課長は、それは何でもないというようなことでありましたけれども、現実に現われていますよ。教頭なんという人に管理職手当を出して、何だ、本庁の課長も出ない、こういうことなんです。これを出すなら課長補佐にも出せということになって、地方ではそういうことが表面に現われない内部の一つの抗争となって現われつつある。だからそういう工合に出すならば定通の審議のときにも問題になると思うのですが、そっちの方だって、あとで適当なところで区切るというようなことをやらないで考えるべきが当然だと思う。  それから予算の問題云々ということでありますが、三億、地方もそれに見合う二分の一、三億ということになりますれば、こういうものを出さないで、もっと大事なところにこの問題の金がいったらすばらしく利用できるのですよ。きのうなんかもちょっと問題になったのですか、保育所の措置費の問題、おやつ代が三円にぶった切られた、あと二円の要求が結局削られた。あるいは生活保護を受ける人々に対して年末手当千五百円出す、だったら四億円で間に合う、私が計算してみると四億四千万円だ。管理職手当よりもそっちの方に持っていったらどれほどあたたかい政治になるか、どれほど日本の国が心豊かになるかということなんですよ。  時間もなんですしやめようと思うのですが、最後に文部大臣にお聞きします。学校の運営のあり方については、校長はそういう管理監督というような公的な部面もあるでしょうけれども、教育の場においては教師と校長たちみんな一体となって児童のしあわせを願って、それを作り上げていく、こういうあり方でなければならぬ。学校の職場のあり方という問題については、そういう方向を私たちは最も正しいことであると思う。それが管理職手当を出す出さないとか、それを受けておって上司、下司のような行政機構的な職場関係になるなんということは、決して正しいことではない、こう思っておるのですが、その点に関しては文部大臣は一体どういうお考えを持っていらっしゃるか。
  72. 松田竹千代

    ○松田国務大臣 お話しのように、教育の問題に対しましては校長といい教頭といい、教員一同一体となって教育に従事しなければならぬことは当然と思います。さればといって、校長なり教頭なり管理職の立場にある者と、また一般教員の立場は、やはりそこにおのずから違いが出てくると思うのであります。わずかな管理職手当をつけようがつけまいが、それによって校長教頭も、教育の本来の任務について考えの変わるべきものではないと私は考えております。むろん校長教頭教員一体となって教育の任に当らなければならぬものと考えております。
  73. 西村力弥

    ○西村(力)委員 この管理職手当支給されるにあたって、おれは職員と一体的な立場を持つためにこれを受け取らないということが京都あたりの学校長の場合にあったような工合に聞いておりますが、今後そういう事態が発生した場合には、文部省はどういう工合に考えられるのです。
  74. 内藤譽三郎

    内藤(譽)政府委員 校長の場合も若干そういう例がございましたけれども、今日の段階ではほとんど解決しております。教頭の場合にもそういうことがないものと確信しております。
  75. 西村力弥

    ○西村(力)委員 そういう工合に確信しておると言うが、もし発生した場合には、京都の場合ですと本俸の支給も一町ストップしたということ、こういうことが京都に参りましたとき新聞に出ておりましたが、そのような工合に、それを受け取らない者に対する報復手段を講ずる、あるいは何か圧力的なものを加えるというようなことに対しては、文部省はどう考えますか。
  76. 内藤譽三郎

    内藤(譽)政府委員 事実上そういうことは私はなかったと思うのです。ただ管理職手当を組み入れましても、税金の関係で、一体どれだけが管理職手当なのか、明確にならないわけなんです。だから管理職手当だけ受け取らないとおっしゃっても、計算がしにくいわけなんです。そこで、明確に管理職の返上ということが署名でもされますれば、これはまた可能でございますけれども、そういう事実はございません。今後も、私どもはいかなる方面からも圧力をかけることはよくないと思う。これは当局側もそうだし、また他の方面からも圧力をかけていただきたくないと思います。
  77. 西村力弥

    ○西村(力)委員 事のよしあしはそれぞれ意見の対立するところがある、こう思うのですが、私はその事のよしあしよりも、この前文部大臣に私がちょっと極端なことを言って、加藤精三者からヤジられたりいたしましたが、私は教師というものは、やはり自分の人生観、世界観というものをがっちり持って、それをはっきり自分の方向として示していく、こういう教師こそいい教師としての資格があるのだ、こう思っております。それでなければ教育は成り立たない。ただ機械的に押し売りするというようなこと、移す、そういうようなことだけでは教育というのにはならぬと思う。教師というものは自覚をはっきり持ち、人生観、世界観というものをはっきり持って、初めてそこに教育というものが成り立つわけなんであります。この点について文部大臣はどう考えられるか。そういうものを持たない、無色、透明、無臭のような、そういうような教師というものは、これは教育者としての価値はないと私は思うのです。だから今言ったような工合に、これは法的にも不合理だと考える。あるいはこのことによって学校の職場の空気がくずれるからおれはもらわぬというような、こういうようなことをはっきり言い、また自分はそれを実踏するというような教師があれば、むしろこれはわれわれは、古い言葉で言えば、はっきり骨のある教師として賞賛さるべきものだ、こういう工合に私は思う。そういうことでこそ初めて教育というものは成り立つのだ、教育者としての資格があるのだ、私はそう思うのです。この点に関して、一体文部大臣はどういう工合にお考えになるか。最も好ましい教師のあり方、姿というのはどういうことか。
  78. 松田竹千代

    ○松田国務大臣 校長も教師もひとしく人間である、教えられる学童も人間である。教育というのは、人間が人間を作り上げることでありますから、非常にむずかしいことである。だからお話のように、教育の任に当たる者といたしましては、確固たる信念、すなわちりっぱな人間を形成していく上においてのそういう考えを持ってこれに従事しなければならぬということは、お話の通りであります。従ってお話のように教員たる者は、そうわずかの手当やわずかの給与のことを眼中に置かないでやるような教員ももとよりあってほしいと思う。しかしながら精神的にそうした重要な任務に当たる者としては、やはり物的にもできる限りこれをよくしていきたい。その一助としてやはり手当制度も設けてやらなければいかぬことを御了承願います。
  79. 西村力弥

    ○西村(力)委員 そういうお考えでしたら、教員全体の俸給をもう少し上げたらいい。現在三千円のベース・アップの要求がありますし、これは当然の要求だと私たちは思っているのですが、それはそのくらいにいたしまして、それでは給与局長にお尋ねします。  文部省で学校教頭管理職手当を今度支給するということに予算を組まれてきたわけでございまするが、そうしますると、国家公務員である教職員の場合もそれに見合って、これは人事院規則にも九—一七でしたか、ああいうとこに当てていく、こういう作業を今やっていらっしゃるのですか。
  80. 瀧本忠男

    瀧本政府委員 国家公務員の場合におきましては、これは特別調整額という言葉を用いております。これは給与法によりまして、管理監督の任にあります者に支給することができる、このようになっておりまして、現在国家公務員におきましては、部局の長でありますとか、そういう方々に現在特別調整額として支給されております。学校教頭がこれに該当するかどうかということでございますが、これは学校教育法あたりで、やはり文部省として御判断になることであろうというように思っておりますし、そのお考えをわれわれ承った上で、やはり給与法上管理監督の任に当たる者であると人事院が考えまする場合には、これは特別調整額をつけるという措置を人事院規則によってやる、このように考えます。
  81. 西村力弥

    ○西村(力)委員 それは文部省の見解が主になるか、人事院の検討の結果が主であるかということになると、事給与に関しては、私たちはやっぱり人事院の検討というものが主でなければならない、こう思うのですよ。公務員の勤務条件、そういう問題に関してでありますから、その点給与局長どうです。人事院の見解というものが優先する、こういう毅然たる態度をあなた方にとってもらわなければならぬと思うが、どうです。
  82. 瀧本忠男

    瀧本政府委員 ただいま申し上げましたように、学校関係の問題につきましては、これは一般的に国家公務員の中において考えまする問題よりいろいろなことがあるわけでございます。たとえば、産業教育振興法というのがございまするし、また隔遠地関係にいたしましても、学校関係だけでおやりになっておる。文教政策上やはり必要な事柄があるようにわれわれは存じております。やはりこの学校関係の問題につきましては、文部省のお考えをわれわれは十分尊重しなければならぬと思っておりまするけれども、国家公務員たるこういう方々に対しまして、特別調整額をつけるかどうかという点になりますと、これは給与法に基づきまして人事院が判断いたすことであります。
  83. 西村力弥

    ○西村(力)委員 現在の人事院のあり方を見ますると、当初の任務とか性格とかいうことから非常にぼけてきたということは、これはすべて認めるところでありますが、こういう問題については、国家公務員全体の立場を守る人事院として、毅然としてこの問題の検討にあたっていただきたい。それからこういう給与上の予算を組んでも、実際にこれを執行しない、こういうようなこともあり得ると思う。今まではそういう例がございますか。
  84. 瀧本忠男

    瀧本政府委員 そういう例もございます。たとえば昨年、これは執行しなかったというわけではございませんが、国家公務員の隔遠地手当予算をとったのでございます。ところがこれは僻地教育関係でお考えになっております隔遠地の手当に比べまして、その支給率は同じでありまするけれども、そういうところに該当いたす支給格付基準と申しますか、それがよほど違っておった、その間に両者アンバランスがあったので、これをそのまま実施することは適当でない、そのように考えましたので、人来院は実施をずっとおくらしておったのであります。これは三十五年度から、文部省のおやりになっております僻地教育関係の隔遠地手当の額と、大体同程度のものがいただけるような目安が現在ついておるのでございまして、そういうことと関連いたしまして、その増額実施ということはずいぶんおくれて、ことしに入りまして実施した、こういう例がございます。
  85. 西村力弥

    ○西村(力)委員 人事院として、この問題は事前に話されたということはない、予算を組まれたことによって、それをどう理由づけるかというようなことに今苦慮されておるのが実態ではなかろうか、こう私は見るのですが、これについて、今教頭管理職手当を出すのが妥当であるかどうかという結論は示すわけには参らない、こういう工合に思うのですが、今の点、この問題について先に人事院に相談があったかどうか、今どういう検討をされて、いつごろになればその結論を出されるか、そういう点についてはどのような工合に考えていらっしゃいますか。
  86. 瀧本忠男

    瀧本政府委員 この教頭に文部省が管理職手当をつけたいということは、ことしに始まったことではないのでございまして、去年も予算要求を、すなわち三十四年度予算要求もされたように私は記憶いたしておるのであります。人事院は各種の国家公務員の手当等につきましては、各省の要求を聞きまして、これを一応人事院の立場において適当かどうかということを判断いたしまして、大蔵省の予算当局と、そういう意味において、人事院はこういうものにつけることは適当であると思う、従って予算をつけてもらいたい、こういう話を予算の前にいたすのでございます。そういう意味においては、各省からいろいろな要求が人事院に出ておるのでありますが、同様のお話か文部省からあった、それ以上の話はなかったように記憶いたします。
  87. 西村力弥

    ○西村(力)委員 これでやめますが、こういう無理な管理職手当教頭になんか支給することによって起こるいろいろな問題点、たとい文部大臣教員である者は金なんかに左右されずに、こういうことを申されても、たといそれは少額であっても、やはり金というものは一番人間の心を動かすものでございますので、こういうことは、国家の将来を考えたときに、軽々にやるべきことでない。こういうことによって職場に発生するいろいろな事態——決して一体的なものでなくて、むしろ反発、反日、あるいは心の交流というものがその線において断ち切られる、こういうような事態が必ずこれから発生する。教育の形は整うけれども、その  ほんとうの熱情のこもったしんがないということになっておる、こういう工合に私は非常に憂えておるのであります。金をもらうことに反対するわけじゃない。そういうことなら、全体の人にやるべきだ。そんなことで政策的に教育の場にくさびを打ち込んでいくようになることは、私たちとしてはよい結果をもたらすものではない、こうはっきり考えておるのであります。法理的に言いましても、教頭校長を助け、校務を整理する。しかし、助け、なんて言ったら、すべての教員が助けている。その仕事の本来は教諭という仕事であって、しかもあの施行規則によれば、校務を整理する。整理するということが管理職であるなんというのは大へんなことだ。そういう点から、法解釈においてもまことに無理があると私たちは思っております。だから、結局万人が認める通り、これは日教組対策だ。日教組対策で教育政策をそういう面にやっていくということは、これは日本の政府としては、やはり正しいことではないと私は思うのです。  いろいろお尋ねしましたが、そういう点からいって、私たち望むらくは、最後の人事院の特別調整額の指定によりこれが保留されることによってこの問題は押えられていくべきだ、今までもそういう工合に例もあるのだから、予算が組まれてもこれは正しくないということになれば、その調整ができるまでは執行をしないという例もあるのですから、そういうような工合にむしろ期したい、それは本質ではありません。私たちはできるならば文部大臣の良識によってこのことが再検討せられることを望むのであります。私はこういう問題から発生する教育の行き先というものを考えて非常に憂えておるということであります。それだけを申し上げまして私の質問を終ります。
  88. 大平正芳

    大平委員長 長谷川保君。
  89. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 当面緊急の問題を二、三伺いまして、あとまた文教政策の重要問題について伺いたいと思います。  まず第一に伺いたいのは文化財の関係でありますが、新聞によりますと、松島に八十メートルの観光タワーを建てようとするものがあって、これは松島観光開発会社なるものでありますが、昨年の秋に国の文化財保護委員会の許可なしに着工して、途中二回も文化財保護委員会や宮城県から工事停止命令が出されたけれども、工事はどんどん進められて、二十五日までに半分の高さができてしまった、こういうことであります。一体この事情はどうなっておるのか、許可なしにこういうことが、文化財といたしましてのいわゆる名勝記念物といわれておりまする名勝地域に作られて、それが昨年の秋二回も政府の機関でありますところの文化財保護委員会が停止命令を出したにかかわらず、工事はどんどん進められておる。まことに不届きの話だと思うのでありますけれども、どういう事情であるか、その事情を承りたい。
  90. 松田竹千代

    ○松田国務大臣 これは正確を期するために岡田事務局長に答弁いたさせます。
  91. 岡田孝平

    ○岡田政府委員 昨年の八月に松島観光株式会社の社長である坂井という者から、名勝松島に展望のためのタワーを設置いたしたい、従ってその許可を願いたい、こういう申請が参ったわけであります。そのことにつきまして文化財保護委員会におきましては慎重に審議いたしまして、十月二十二日名勝都会——文化財の専門審議会の名勝部会を開きまして、その部会におきまして不許可ということに意見の一致を見たのであります。そうしてそのことは十月二十四日文化財保護委員会におきましてこれを確認いたしまして不許可処分をいたしたということでございますが、県の知事が来られまして、県の立場といたしましては観光の見地からいってむしろこれは県としては賛成しておったんではないか、そういう立場にあるのであるから、さらに再検討して申請書を取り下げるようにいたしたい、こういう知事の申し出がございまして、その申請書は十一月五日に返戻いたしたのであります。その後本年になりましてから県の方から報告がございまして、その坂井という社長から無許可のままで、許可を得ないままに工事を始めておる、こういう報告が本年の一月にございまして、それは実にけしからぬことであるということで、直ちに県の教育委員会に対しましてその工事の中止命令を出しております。その後県におきましては、二回あるいは三回にわたりまして、あるいは文書あるいは口頭でもって会社に対しましてその工事の中止命令を出しております。さらに、これは建築基準法の上から見ましても、知事の許可が要るわけでございますから、そういう点から見ましても、これは知事の方から建築基準法による許可の以前に工事に着手しないように、もししておればそれは直ちに中止するよう、こういう指示をいたしたのでございます。その後に至りまして、県の方ではさらにこの問題につきまして再検討をいたしておったようでございますが、申請者の方からさらに第二回の申請書が県に出されたのであります。第一日の申請は、高さ九十メートルの観光タワーでございましたが、第二回の方は、それを十メートル下げまして、八十メートルという、やや規模を縮小した施設を作りたいということで、第二回目の申請書を県に出しました。県の方ではそれにつきましてさらに検討したのでございますが、県の方では差しつかえない、こういう意見書をつけまして文化財保護委員会の方にその書類が回って参りました。文化財保護委員会におきましては、昨日さらに文化財専門審議会の名勝部会を開きまして、その第二回の申請につきまして審査いたしました結果、昨日、その申請も許可できない、そのように名勝部会におきましては決定いたした次第でございます。大体一応今までの概略を申し上げました。
  92. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 こういうように無許可でやったこと自体がすでに文化財保護法違反である、あわせてこういうように不許可ということになって命令が出されておる、それにもかかわらずこれを続けてやっていく、何かその裏にまずい関係があるように私どもにはうかがわれるのであります。坂井なる者と地方の機関との間に何かまずい関係があり、そしてこの有名な名勝がそこなわれていくということがなされているのではないかというように考えるのです。  私よく汽車へ乗って地方に参りまして、非常に残念に思いますことは、やはり広告であります。あの広告があるためにどんなに美観がそこなわれておるか。かつてアメリカに参りましたときに、ワシントンから郊外に、ワシントンの住んでおりました家のところに参ります間が、自然のまま公園になっております。そこには一つも広告がございません。そこを通りまして、私は今まで海外を三回ほどあちこち旅行いたしましたけれども、その素朴な自然の美しさは世界で最も美しいところの一つと考えました。そこは特別な奇岩怪石があるのでもなければ、山岳重畳としているのでもなければ、渓谷があるのでもない、ただ自然のまま保持しておる美しさ、私が歩いたうちでは世界で最も美しいところの一つと考えましたが、日本の各地を旅行してみまして、あのいかにも欲ばった広告、そしてきたない色彩で、つまり芸術味のない美しさのない色彩でもって、ただただ人に印象づけようとするもので、ここから熱海へ行くまでも、あるいは沼津へ行くまでを見ましても、非常に残念に思うのです。たとえば熱海に行くまでの間を見ましても、あの大磯付近のこちらから行って右側、あの付近には広告がないので非常に美しい。私が東海道を通りますときに、大磯付近のこちらから行って右側のあの景色を見ることは一つの非常な楽しみです。あそこで非常に安らかさを覚えるのでありますけれども、松島のようなところに変なものを建てられたら台なしだと私は思う。そういう意味で文化財保護委員会がそういう措置をとられたことは私は大賛成です。非常によかったと思う。しかし問題は、そういう許可をしないところ、あるいはすでに作っておるものに対しまして中止命令を出しましても、聞かないということで建てらたのではどうにもなりませんし、それは国の機関、公の機関が命令をしておる、あるいは県の教育委員会が多分命令をしておるのでありましょうが、そういうことの権威にも関係する。こういうことが勝手気ままになされるということであれば問題であります。この点、文化財保護法を見ますと、罰則がきわめて軽いのです。私の見たところでは、これは百九条違反ということになるのでありましょうか、一万円以下の過料ですか、あるいはせいぜい三万円くらいの過料というようなところでありまして、そういうところからいわばなめてかかっているのじゃないかというようにも考えられるのであります。しかしこれは、文化財保護法によりましても、「この法律は、文化財を保存し、且つ、その活用を図り、もって国民の文化的向上に資するとともに、世界文化の進歩に貢献することを目的とする。」と書いてありますし、また第三条の政府及び地方公共団体の任務という条文にも、「政府及び地方公共団体は、文化財がわが国の歴史、文化等の正しい理解のため欠くことのできないものであり、且つ、将来の文化の向上発展の基礎をなすものであることを認識し、その保存が適切に行われるように、周到の注意をもってこの法律趣旨の徹底に努めなければならない。」というように任務が書かれております。どうも今のままではその任務は果たせないように思うのでありますが、一体この問題で今文化財保護委員会が正しい判断をして措置をしようとしておりますことを貫くためには、どうしたらいいのか、またどこに欠陥があるのか、その事情を承りたい。
  93. 岡田孝平

    ○岡田政府委員 この問題は、名勝の保護ということと、それから観光ということとの関連の問題でございますが、名勝を保護しますためには、もちろん、これは自然のままに、できるだけこれに人工的な手を加えないでおくことが保護の原則でございます。しかしながら、これを観光という意味合いで、多くの者がそれを賞美するということから、観光に必要ないろいろな施設を名勝地帯に設けるということも当然あることであります。松島の場合には、地元並びに県側といたしましては、観光施設としてこの程度のものは設けても差しつかえないのじゃなかろうかというような考えを持ったのでございますが、文化財保護委員会としましては、観光にもやはり観光施設としての限度があり、特別名勝というような、昔から日本三景と申されているようなりっぱな名勝地にそれと全く質の異なる施設を新たに加えるということは、やはり名勝としての質が下がってくる、異質の新しいものになる、それは本来の名勝の価値を傷つけるものではなかろうか、かような見地から、私ども、それはいけない、かように申しておるのでございます。この地帯は元来埋立地でございまして、そしてこの会社が埋め立てをいたしまして国から払い下げを受け、そしてヘルス・センターにいたしておる地区でございます。従って、ヘルス・センターは私どもは認めたのでございますので、ヘルス・センターに普通必要な施設ならば、たとえば宿舎を作るとかヘルス・センターとしての必要な建物を建てるということならば、これは差しつかえないが、かように飛び離れた、高さの非常に高い新しいものを加えることはいけない。また、かようなものをもし許すならば、次々と観光ということに名をかりまして、いろんな新しい不純な施設が出てくるということになって、結局本来の名勝の質がそこなわれる、かような見地から、これは許すべきではないというような考えを持っております。  地元といたしましては、観光という見地から、お客様がたくさん集まれば、それで結局金が落ちて、にぎやかになって、名勝の価値も多くの人々に賞美されるからよろしかろう、かような見地でありまして、この点は私どもとは全く反対でございます。県でさような考えを持っておりました関係上、県の専門審議会では差しつかえなかろうという結論を出され、また県の方で差しつかえないという意見で文化財の方に参ったのでございまして、その間に意見の相当の開きがございました。その間隔を縫いまして、申請者が工事を始めたという、これは特殊な事情でございまして、普通ならば県の方と私どもの方とさように考え方の開きがあることはないのでございますが、さようなケースの間隙を縫って業者が不法行為をしておる、こういうのが事実でございます。  私どもといたしましては、やはりこれは文化財保護の見地に立ちまして、どこまでも、専門審議会なり文化財保護委員会が反対いたしましたならば、それに従いまして、その趣旨を貫くようにいたしたい、かように考えております。従って業者に対しましては、県を通じ、たびたび中止の勧告をいたしております。また、この問題につきましては、県知事が非常に心配をされまして、何とか一つ早くこの問題を私どもの方で解決いたしたいと非常に苦慮をされまして、何か案でも持って最近来られるというような話もございます。県の知事の考え、あるいはまた業者の出力を見まして、もしこれ以上不法行為が続くというようなことでありますならば、これは直ちに法の命ずるところに従いまして、あるいは罰則、あるいは原状回復命令というような措置もとりたい、かように考えておる次第でございます。
  94. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 私どもの想像するところでは、おそらく松島観光なるものをやっておるのは坂井という有力な人でもあり、そして県内の有力者を利用して、県の教育委員会に圧力をかけていると思うのです。そして、あるいは県の観光課あるいは商工課等々に、おそらく圧力をかけてこれをやるということになっておるようであります。その裏にはいういろいろさいものがあるだろうと思うのでありますけれども、こんなことで押し切られたらだめですから、文部大臣、これは一つしっかりしてもらいたいと思う。こういう日本三景の一つであり、ことに自然の美しさということを非常に大事にするのがこの松島の特質であります。それをむざむざこんな——新聞に載っている写真で見ますと、ずいぶんでたらめな、いいかげんな、松島の景色とはおよそそぐわないような塔のように見えるのでありますけれども、こういうようなものを建てられて、押し切られては困ります。もし、この松島観光なるものが、原状復帰の命令に応じない、命令を出しても応じないというときには、文化財保護委員会というのはどういう手があるのですか。
  95. 岡田孝平

    ○岡田政府委員 ただいま申しましたように、原状回復命令というものが法によって出せることになっております。この様子によりまして、もし必要があるならばさような命令を出す。その場合には、申請者は、みずからその施設を取り払いまして、原状に復さなければならぬ、かような義務があるわけでございます。
  96. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 私が聞きたいのは、それに向こうが服さなかったらそのときはどういう手があるか。一万円以下の過料なんていうことが書いてあるようですが、そんなことではどうにもならぬのですね。命令に服さないときにはどういう手があるのですか。
  97. 岡田孝平

    ○岡田政府委員 罰則の方は、ただいま過料という言葉がありましたが、過料の規定は、無許可で原状の変更をした場合に三万以下の過料でございます。もう一つ別の規定がございまして、史跡名勝天然記念物の原状を変更して、これを滅失した場合、あるいは衰亡に至らしめた、毀損したという場合には体刑もしくは罰金がございます。そのいずれに当たるかは、事案によりまして判定しなければなりませんが、ちょっとむずかしい問題で、ただいまいずれに当たるか申し上げられませんが、さような罰則があります。その判定の権限は裁判所にありまして私どもにはございません。  それから原状回復命令の方は、もしその命令に従わないということになるならば、直接強制執行の方法もございます。
  98. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 多分県の方も有力者に圧迫せられて動かされて、こんな大きなものが半分も建ってしまった。八十メートルのものを四十メートルも建ててしまったというようなことになって、非常にむずかしい段階にきておると思うのです。しかしこういうことはもともとずいぶんいいかげんな、手続をしないでやってきておるわけでありますから、あるいは観光課あたりの了解を得た程度でやってきておるんじゃないかと思うのですけれども、こういうことがくずされますと、次々にくずれていくと思う。先年も奈良の若草山のところの問題がずいぶん問題視されましたけれども、なかなか手間がかかったし、またその間にいいかげんになっちゃったと思うのです。原状回復さしたというようなことを河井文化財保護委員長は報告していらっしゃいましたけれども、ずいぶんいいかげんになってしまったんじゃないかと思うのであります。私も現場を見に行ったことがありますけれども、こういうことがずるずるになりますと、商魂たくましい者どもがいよいよ文化財を破壊しますから、この点は文部大臣におかれても腹をくくってあくまで文化財を守ってもらいたいと思います。なお続いて文化財保護委員会におかれましても、十分厳重な態度で臨んでいただきたいということを希望いたします。  ついでに、この間東大で保存しておりまするはにわが盗み出されたという問題がありました。この問題も、盗み出した伊藤和夫なる者が、そのはにわに足をつけたりなんかしたということでありますけれども、これまた、そういうものが盗まれて長い間知らないでおったということでは相済まないと思うのでありますが、これはどういう事情ですか、簡単でけっこうでありますから御説明願いたい。
  99. 岡田孝平

    ○岡田政府委員 その前にちょっと先ほどの問題でございますが、ヘルス・センターの付近にいかなる形におきましても一切建物を建ててはいかぬという態度はとっておりません。たとえば宿舎、宿舎に必要な程度のたとえば展望台程度のものでありますれば場合によっては建て得るかもしれない、しかしながら現在の申請がありますような第一回、第二回、いずれの申請もほとんど大同小異でありまして、かようなものは認めない、かような立場をとっております。いかなる意味においても施設を利用させないという意味ではございません。従いまして、今後もし文化財保護委員会で許可できそうな案でも出ましたならば、それはあらためて検討いたしたいという態度をとっておるわけであります。  それから、はにわの問題でございます。東大に保管しておりましたはにわの女子像が去年の秋ごろから紛失いたしまして、行方不明になったという事実を、十二月でありましたか、東大で発見いたしました。直ちに警察当局に連絡をいたしまして、警察当局から全国に捜査の手配をいたしたのであります。その結果最近に至りまして、それが出て参りました。その結果千葉市の伊藤和夫という東大に出入りしていた者でございますが、これが盗み出し、そして東京の杉並区の美術商の木村という者に売ったということでございます。かようなことは非常に遺憾なことでございまして、大学当局の管理に非常に欠陥があったことは申すまでもありませんが、このことに対しましては、直ちに各大学、博物館あるいは研究所等さような文化財を保管しておりますものに対しまして厳重なる警告を発して、今後の管理の万全を期したいと考えておる次第であります。すでにさような警告も発しております。なお場合によりましては管理が非常に不十分なところでありますならば、これはむしろ国立博物館に所管がえをして、そこに安全に保管するのがよろしかろうというようなことも考えておる次第でございます。
  100. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 ただいまのは地方の文化財及び大学等の機関で扱っているものでありますけれども、次に伺いますのは、文化財保護委員会直接のものであるのであります。一昨年であったと存じますが——私の記憶が違っておるかもしれませんが、田無でありましたか、民俗博物館を拝見いたしました。私はそれを拝見いたしまして、私も外国へ参りますたびに、また国内に旅行いたしますたびに、あちこちの博物館、美術館をよく拝見いたすのであります。あの田無の近くの保谷の民俗博物館を見まして、あそこに収蔵してありますいろいろな民俗学的に見て非常に貴重なものを見て驚いたのであります。たとえば中共に参りましてああいうたぐいのものを見ました。あるいはシカゴ、ボストンでもああいうたぐいのものを見ましたけれども、そういうものと比べて、価値から申しまして決して劣らない、実に貴重なものが集めてあることに感心をしたのであります。同時に寒心しましたのは、寒い方の寒心でありますけれども、あまりにも収蔵の方法がお粗末である。博物館というのか何というのか、家は全く大工小屋程度の——家を建てますときに大工が建てます大工小屋程度のバラックといって差しつかえない。しかも雨風等の用意はほとんどできておらぬというのに実は驚いたのであります。その際文化財保護委員会の方からも、何とかこれを適当なところにやり直してもらいたいという非常に強い要望があったのであります。私はもっともだと思ったのですが、文部大臣もお忙しいからあるいは見ておられないかと思いますが、これをごらんになったことがございますか。
  101. 松田竹千代

    ○松田国務大臣 見ておりません。
  102. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 ぜひ一度ごらんになっていただきたい。当時も私は文部大臣に——灘尾さんのときだったかと思いますが、申し上げたことがありますが、至急これは手を入れてほしい。ああいうものをああやっておくということは国の恥でもあります。あるいは国民の恥でもあります。ああいうものは散逸したらいけないし、行ってみますと虫など食ってこわれているようなものもだいぶありました。これは実に惜しいです。当時、できるならば九段の前の遊就館に移したならばどうであろうか、民族の歴史を語っておるものでありますから、あそこならば場所柄として非常にいいのではないか、われわれの民族の中で国家のために動員されてなくなられました方のお参りに全国からたくさんの方が行きますし、また外国から見えますお客さんたちも、あそこなら非常に便利でありますし、またいわば外国の無名戦士の墓というものに近いもののあるところでありますから、民俗博物館を移転するには非常にいいところだ。ただ、当時一保険会社が使っておりました。その保険会社は今りっぱなのを立てておりますから、今どうなっておるか存じませんが、これはぜひ一度ごらんになるとともに、すみやかに十分な手を入れていただきたい。あれを十分整理いたしましてりっぱなものにして参りますれば、一つの非常に優秀な、日本の誇りにするような博物館になると私は思う。これはぜひとも文部大臣におかれてもごらんになって、すみやかにそれに対する対策を立てていただきたい。内容は非常にりっぱなものであります。このことを深く要望する次第でありますが、今日あれはどうなっておりますか、現状を伺いたい。
  103. 岡田孝平

    ○岡田政府委員 保谷の民俗博物館は学術団体でありますところの日本民俗学会の付属施設ということで、日本民俗学会付属民俗博物館ということになっております。中にありますものは非常にりっぱなもの、お話の通りでございます。ただ管理が非常に悪い、実に危険であるということで、何とかこの管理を整備いたしたいということで、これはむしろ文部省の大学学術局の学術課の方の御所管になるかと思いますが、いろいろ心配いたしておりますが、文化財保護委員会といたしましては、むしろ国立の民俗博物館を作った方が根本的解決になるのではないかというような考えで、ただいまお話のありましたように、遊就館その他いろいろ施設を物色したこともございます。私どもといたしましては、国立の民俗博物館を作りまして、そこにありますようなりっぱな品物を収蔵する、あるいは全国にありますところのりっぱな民俗資料を展観いたしたい、かような考えを持っておりますが、いまだ遺憾ながら具体的な実現に手のついてないのは非常に残念だと思います。将来は早くそういうふうにいたしたいという考えはただいまも持っておる次第でございます。
  104. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 これはぜひやっていただきたいと思う。民俗学会がやっておった、確かにそうでした。けれども、民俗学会というものはどういう団体か十分に存じませんけれども、ぜひ国がああいう博物館というものを——これは非常に必要です。あそこに集めてあるようなものの大部分国立博物館に行ってもありません。今上野へ行こうとどこへ行こうとありません。ああいうたぐいの博物館というのは私は非常に必要だと思う。これは一つぜひ文部大臣、近いうちにごらんになって、これをお作りなさいませ。これはあなたがお作りになって、後に名をなす仕事の一つだと私は思う。だからぜひお作りなさい。それくらいの見識は大臣お持ちのはずだから、ぜひ至急ごらんになって、やっていただきたい。このことを深くお願いしておきます。いずれにいたしましても、このような問題一般を通じまして、国の文化財に対する考え方というものが非常に不十分であるのではないか、ことに文部省当局が直接の責任でありますけれども、こういうものに対する価値を十分に認めるということについて、きわめて不十分ではないかというように私は考えるのであります。今日こういうようなものを非常に重んじていくことは単に復古主義というようなことではなくて、大よそ民族の文化というようなものを考える者にとりましては、きわめて大事だ。そういう点が非常に足りないと思う。だからずいぶん貴重なものが外国に流れたり、あるいはずいぶん棄損され、破棄されたりしているのではないかというように思うのであります。これらについて一つ大臣の御意見を伺いたいと思います。
  105. 松田竹千代

    ○松田国務大臣 いろいろ文化財のことについて御心配にあずかり、また鉄道の沿線その他至るところにおける広告、国立公園、いろいろコマーシャリズムの前に、日本の景色や天然のものが多くじゅうりんされているようなことに対しては、全く私も長谷川委員と憂いをともにするものでありまして、早くからこのことについては、外国の事例などなにして、運輸省その他の方面とも話したようなことがあったのでありますが、これは何とか特別の措置を講じて、きれいな国土をできるだけ美しく保存していく、それは国民一般の情操の上からも最も必要なことであるということに対しては、全く同感でございます。  ところで文化財の保護、修理、その他さらにこれを大いに国民の前にあるいは海外に、広く展示また宣伝していかなければならぬことも非常に大事であるし、そういう点から申しましても、国民一般の文化財に対する認識を深めていくということも、どうしてもやらなければならぬ。ところがわずかの予算をとるについても非常に難儀をいたすのであります。文化財の保護については、極力今度もその必要性を説いてやったのでありますけれども、依然としてなかなか困難であり、遺憾に思っている次第でありますが、今後は何とか一つ適当な処置を講じて、御趣意のあるところを実践に移していきたい、かように考えておるわけであります。
  106. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 これらの点は今の河井文化財委員長も非常に嘆いておられたことでございますが、実際予算が今度少しふえたと言いながら、災害復旧等がありまして、全部で一億九千万円だそうでありまして、博物館等に重要な美術品を一つ買おうとしても、どうしようもないというようなことを嘆いておられました。どうかこういう点につきましても今後十分認識をせられまして、予算その他について十分措置せられるように望みます。  もう一つ緊急の問題を一つ伺っておきますが、静岡県に非常に風しんがはやっておるということであります。非常にはやりまして、学校の休校あるいは学級閉鎖等が続々として出ているようであります。あるいはまた大阪におきましては、流行性感冒がひどくはやっているようであります。学校の子供たちが非常にかかっておるようで、集団発生しているようでありますが、事情はどんなふうでありましょうか。それに対してどんなふうな手を打っておりましょうか。わかりましたら……。
  107. 内藤譽三郎

    内藤(譽)政府委員 これは体育局所管のことでございますので、体育局長が参っておりませんから、あとで連絡しておきます。
  108. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 それでは緊急の問題は一応この程度にしておきます。そしてまたあとで……。
  109. 西村力弥

    ○西村(力)委員 文化財関係で、去年久留米がすりの問題で、一人の残されたおばあさんが自殺をしたという問題が、この委員会で問題になりましたが、あれに基づいて、ことしは少し予算増額した。七百九十万円くらいですか、微々たるものでありますが、いささか増額したような工合に見ておるのですが、あのとき問題を取り上げた立場から、今後あの予算をどういう工合に執行され、そうして無形文化財保護の道がどんな前進を示しておるか、伺いたい。
  110. 岡田孝平

    ○岡田政府委員 久留米がすりの問題に端を発しまして、無形文化財の保護ということについて非常にやかましくなって参りました。あの問題につきましては、特に製作いたしましてもそれが原価にも合わない、つまり製作原価を割って売らなければそれが売れないというような状態のものが、実は三つございまして、それが文化財に指定いたしました久留米がすりと結城つむぎ、それから越後ちぢみの三つでございます。この三つはいずれも団体指定と申しまして、多くの人が製作をいたしております。いずれも機械生産の同種のものに押されまして、ほとんど利益が伴わないのみか、むしろ損をしておる。従ってかようなものを保護するために何らかの措置をとりたいということで、大蔵省に予算を要求いたしました。要求は七百万円でございましたが、実際は三百万円という大蔵省の査定を受けて、ただいまのような状態になっておるわけであります。これにつきましては、それぞれ保存団体を作ってもらう。たとえば久留米がすりなら久留米がすりの保存団体というものを作ってもらいまして、その地区において優秀なる何人かを指定して製作させる。それに対して製作補助、あるいは厳密には損失補償の意味になりますけれども、製作補助ということで補助金を出し、それに対して、県におきましても市におきましても、やはり相当な補助をする、かような仕組みになっておる次第でございます。それは特に衰亡のおそれのひどいものでありますが、その他の無形文化財につきましては、あるいは記録の作成、つまり製法をそれぞれ分解いたしまして、それを写真にとり、あるいは記録をとる。あるいは製品を国で買い上げるというようなことをいたす。あるいはまた作品の展覧会を開くための補助金を出すというような、いろいろな手段を講じておりますが、遺憾ながら予算が至って少のうございますので、今後予算増額にさらに一段の努力をいたしたい、かように考えております。
  111. 西村力弥

    ○西村(力)委員 要求の半分だとしますと、ああいう人が結局は生活苦から自殺をしたということになりますので、生活保障ということが重点にならなければならないと思うのです。要求の半分だと、半分しか生活保障にならない、こういうことにもなるのでございますが、生活保障でという点と、それから伝承という二つの点が一番大事だと思うのですが、その点に対する見込みはどうですか。
  112. 岡田孝平

    ○岡田政府委員 伝承の問題につきましては、これは全部ではございませんが、無形文化財のうちで必要なものにつきましては講習会形式の後継者養成所というものを作りまして、それに対して国庫補助を与えるということがございます。久留米がすりはまだそこまで参っておりませんが、これは将来さようにいたしたいと考えております。
  113. 西村力弥

    ○西村(力)委員 生活苦から自殺の道を選ぶというようなことにいかないようにする、その点はどうなんですか。それは相当生活は心配ない程度にやっていけるのですか。
  114. 岡田孝平

    ○岡田政府委員 生活苦から自殺したというふうにいろいろ新聞等で報ぜられておりましたが、実際は必ずしもそうでなくて、主人がなくなって、その他いろいろな原因でもって自殺した、一種の神経衰弱というふうに報ぜられておりますが、いずれにいたしましても無形文化財保持者であるために非常な精神的の負担をこうむって、それが自殺の一つの原因になったというふうに考えます。生活補助という意味合いでは無形文化財保存の補助金を出しにくいのでございまして、これはやはりどこまでも無形の文化財の保存に必要なる助成ということになりまして、作品の制作に対する補助という意味合いで予算を出しておるわけであります。しかし、そういたしますならば自然それが生活の保障にまで充てられるという結果になるのでありますから、今後さらにできるだけの努力をいたしたいと思います。
  115. 西村力弥

    ○西村(力)委員 生活の保障とか補助という形では出せないでしょうけれども、重点はやはりこうやっていろいろな形でこれを守っていけば生活上の心配がなくなるという、これをやはり一番大事な問題として考えていかなければ僕はいかぬと思うのです。いろいろ、連れ合いがなくなった苦しさとか、精神的な圧迫とかということもあるでしょうけれども、要は生活苦だろうと僕は見ているんですよ。そういう点十分一つ今後とも努力を願いたいと思います。
  116. 大平正芳

    大平委員長 次会は来たる三月二日午前十時より開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後一時五十三分散会