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1960-06-09 第34回国会 衆議院 農林水産委員会 第31号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年六月九日(木曜日)     午前十一時二十六分開議  出席委員    委員長 吉川 久衛君    理事 秋山 利恭君 理事 田口長治郎君    理事 永田 亮一君 理事 丹羽 兵助君    理事 本名  武君       天野 光晴君    金丸  信君       倉成  正君    小平 久雄君       坂田 英一君    笹山茂太郎君       高石幸三郎君    中馬 辰猪君       津島 文治君    綱島 正興君       野原 正勝君    松浦周太郎君       松田 鐵藏君    三和 精一君       八木 徹雄君    山口 好一君  出席政府委員         農林政務次官  小枝 一雄君  委員外出席者         農林事務官         (大臣官房総務         課長)     東辻 正夫君         農林事務官         (農地局総務課         長)      吉岡  茂君         農林事務官         (水産庁漁政部         長)      林田悠紀夫君         専  門  員 岩隈  博君     ――――――――――――― 六月七日  委員安倍晋太郎辞任につき、その補欠として  大久保武雄君が議長指名委員に選任された。 同日  委員大久保武雄辞任につき、その補欠として  安倍晋太郎君が議長指名委員に選任された。 同月九日  委員安倍晋太郎君、金子岩三君、田邉國男君及  び松岡嘉兵衛辞任につき、その補欠として津  島文治君、小平久雄君、松浦周太郎君及び山口  好一君が議長指名委員に選任された。 同日  委員小平久雄君、津島文治君、松浦周太郎君及  び山口好一辞任につき、その補欠として金子  岩三君、安倍晋太郎君、田邉國男君及び松岡嘉  兵衛君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 五月二十七日  寺院の旧所有農地に関する請願亀山孝一君紹  介)(第五一一二号)  農業災害補償制度改正に関する請願外四十九  件(小林かなえ紹介)(第五一一三号) 同月三十日  枕崎漁港を特定第三種漁港指定請願(上林  山榮吉君外一名紹介)(第五五〇八号)  同(床次徳二紹介)(第五五〇九号)  農業災害補償制度改正に関する請願加藤高  藏君紹介)(第五五一〇号)  農業災害補償制度改正に関する請願木村俊夫  君外二名紹介)(第五五一一号)  同外五件(小林かなえ紹介)(第五五一二号)  同(保利茂紹介)(第五五一三号)  同外四十一件(早稻田柳右エ門紹介)(第五  五一四号)  同外二十五件(小林かなえ紹介)(第五六三九  号)  政府買米包装容器麻袋採用に関する請願(  小沢貞孝紹介)(第五六三八号) 六月七日  農業災害補償制度改正に関する請願吉川久衛  君紹介)(第五七六八号)  同(田邉國男紹介)(第五七六九号)  同外十二件(小林かなえ紹介)(第五八九七  号)  国有林用苗木買上げに関する請願池田正之輔  君紹介)(第五八八八号)  同(江崎真澄紹介)(第五八八九号)  同(南條徳男紹介)(第五八九〇号)  同(本名武紹介)(第五八九一号)  林業種苗法の一部改正に関する請願池田正之  輔君紹介)(第五八九二号)  同(江崎真澄紹介)(第五八九三号)  同(南條徳男紹介)(第五八九四号)  同(本名武紹介)(第五八九五号)  大豆AA制実施に伴う大豆の取扱いに関する請  願(本名武紹介)(第五八九六号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 六月八日  農地法の一部を改正する法律案等制定促進に  関する陳情書  (第九八九号)  貿易自由化に伴う農業等対策確立に関する陳  情書(第八  九九号)  新農山漁村建設事業における地域指定の総合的  施策実施に関する陳情書  (第九三三号)  現行米価体系加算金減廃反対に関する陳情書  (第九三四  号)  以南サケマス流網漁業規制反対等に関する陳情  書  (第九三五号)  貿易自由化に伴う農業対策確立等に関する陳  情書  (第九七三号)  畜産振興対策確立に関する陳情書  (第九七四号)  果樹農業振興特別措置法案制定促進に関する  陳情書  (第九八六号)  同(第九八七号)  米の生産対策確立に関する陳情書  (第九八八号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  委員派遣承認申請に関する件  農林漁業災害に関する件(チリ地震津波による  農林漁業災害問題)  昭和三十五年五月のチリ地震津波による農林水  産業の被害対策に関する件  派遣委員より報告聴取      ――――◇―――――
  2. 吉川久衛

    吉川委員長 定足数に達しましたので、これより会議を開きます。  農林漁業災害に関する件について調査を進めます。  チリ地震津波による農林漁業災害について政府報告を求めます。東辻官房総務課長
  3. 東辻正夫

    東辻説明員 現在までの今回の津波被害状況概略を申し上げますと、農林水産業関係総額百七十六億四千六百万円程度になっておりますが、そのうち、農地関係が一億九千二百万円、農業用施設が一億五千七百万円、農地保全海岸施設が六億五千百万円、合計いたしまして農地関係被害が約十億でございます。それから、林野関係は、治山施設被害が五億六千七百万円、林産施設関係が一億七千百万円、林産物関係が八億四千八百万円で、林野合計といたしまして十五億八千六百万円、残余はすべて水産関係でございまして、水産業施設が六十四億三千九百万円、漁港関係が約十一億五千九百万円、それから水産物被害が七十四億六千百万円と相なりまして水産関係合計約百五十億五千九百万円、総合計といたしまして約百七十六億五千万円程度に見込まれておるわけでございます。なおその後の現地調査その他等によりまして若干の変動があろうかと思いますので、その点を御了承願いたいと思います。  引き続きまして、この災害に対しまする対策につきましては、目下鋭意検討を進めておりまして、万全を期すべく準備をいたしておりますが、そのうち、特別に立法措置をいたすものといたしまして検討いたしておりますものに、被害激甚地におきまする漁業協同組合共同利用小型漁船建造につきまして、伊勢湾台風の場合の例に準じまして補助を行なうための立法措置検討いたしておるわけであります。それから、次に、中小漁業者真珠等養殖施設復旧、また共同利用施設復旧に関しまして、これも、伊勢湾台風の場合の例に準じまして、農林水産業施設災害復旧暫定措置法特例を設けまして補助を行なうという趣旨特例法立法につきまして目下検討いたしておるわけでございます。それから、第三点といたしまして、天災融資法改正でございますが、天災融資法をすみやかに発動するために六月の八日付で必要な政令を公布いたしたわけでございますが、なお、真珠等につき貸付限度を五十万円に引き上げる、また、その他の農業経営に必要な資金といたしまして二十万円に引き上げるために法律改正が必要でございます。ので、これも関係方面目下折衝をいたしておるわけでございます。  それから、農地農業用施設につきましては、先ほど申しました農林水産業施設災害復旧暫定措置法によりまして、できるだけ早く査定を行ない、これが補助を行ないたいと考えておるわけでございます。なおまた、漁港それから農地保全のための海岸施設及び治山関係海岸施設につきましては、公共土木施設復旧事業費国庫負担法に基づきまして、先ほどの農地農業用施設の場合と同様にこれが補助を行ないたい、こう考えておるわけでございます。  それから、災害復旧資金でございますが、これにつきましては、先ほど申し上げましたように、政令の公布を行ないまして、これによりまして資金融通を行なうことといたしておりますが、なお、天災融資法改正が行なわれた場合におきましては、これに伴いましてさらに所要の政令を出したい、かように考えておるわけでございます。それから、復旧資金につきまして、農林漁業金融公庫より災害復旧のための資金融通を行ない、主務大臣指定復旧資金につきましては、伊勢湾台風の場合の例に準じまして、対象施設種目の追加、金利等につきまして特例措置検討いたしておるわけでございます。なおまた、企業の貸出金につきましては、個々実情に応じましてこれが貸付条件緩和等を行なうことといたしておるわけでございます。さらにまた、水産物加工施設等関連企業融資につきましては、中小企業金融公庫等資金の活用をはかって参りたい、かように考えておるわけでございます。  それから、その他の助成措置といたしましては、稲苗等確保あるいは家畜伝染病予防のための防疫事業に対する助成、それから、漁場内の障害物排除事業に対しまする助成というようなことも目下検討いたしまして、財政当局ともこれが折衝を行なっておるわけでございます。  それからまた、一般的な対策といたしましては、被害激甚地域におきまする漁船保険加入漁船現地査定を行ないまして、早期保険金の支払いを行なうように努力をいたして参りたい。それからまた、被災地におきまして飼料流失その他によりまして事情が窮屈になった場合におきましては、飼料供給確保をはかり、また、種豚鶏等の補充につきましても、これが支障のないようにいたして参りたい。さらにまた、応急住宅用木材あるいは公共施設復旧用木材、それからまた養殖施設用木材等につきまして、国有林材の売り渡しを行ないまして、供給確保をはかるようにいたしておるわけでございます。  また、他省関係になるわけでございますが、先ほど申し上げました公共土木国庫負担法改正等につきましても、建設省方面でこれが検討をいたしておりますので、これら他省関係にまたがります法律改正等につきましては、農林省もその関係部分におきまして目下検討いたしておるような次第でございます。  非常に概略でございますが、被害概況対策を申し上げた次第でございます。
  4. 吉川久衛

    吉川委員長 以上をもちまして政府説明は終わりました。     —————————————
  5. 吉川久衛

    吉川委員長 次に、チリ地震津波に   よる農林漁業災害実情調査のため過日本委員会より現地委員を派遣いたしましたが、この際派遣委員より報告を聴取いたしたいと存じます。  第一班、秋山利恭君にお願いいたします。
  6. 秋山利恭

    秋山委員 チリ地震津波による農林漁業災害実情調査結果について御報告申し上げます。   私どもが参りましたのは第一班でありまして、田邊委員と私、それに現地において本名委員の参加をも得て、去る五月三十日から六月五日まで七日間にわたって、北海道における被害調査に当たった次第であります。   まず、私どもの班は第一班であります関係から、津波概況について簡単に申し上げます。今回の津波は、去る五月二十三日四時十一分、南米チリ沖に起こった大地震によるものであって、長野県の松代地震観測所で推定した地震規模は八・七ということであって、世界最大級のものであり、近年わが国付近に起こった最大地震である昭和八年三月三日の三陸沖地震と同程度あるいはそれ以上のものということであります。   かかる大規模地震が海底で起こったため、津波を伴い、それが太平洋を横切って約一万七千キロメートル隔たったわが国襲来し、北海道から九州南部に至る本邦太平洋岸の一道十六県にわたって、死者百十九名、行方不明二十名を含む大きな被害をもたらしたことは御承知の通りであります。  また、この津波は、気象庁検潮所観則結果によると、その第一波は一般に弱いものであったが、北海道から房総半島に至る太平洋岸には五月二十四日午前二時三十分前後から到達しており、これが最大波の到達時間は、地形及び海深の影響を受けるので一様ではないが、大体北東日本では同日午前四時から六時の間に現われ、南西日本においては五時以降と若干おくれており、また、その最大振幅は、石巻観測所においては六米を記録して、三陸沿岸が最も大きく、次いで北海道太平洋岸南西日本となっており、いずれの地方においても三メートル以上を観測しておる次第であります。   さて、私どもは、まず札幌市において北海道庁当局から全般的な被害状況について聴取したのであります。それによると、被害は津軽海峡から根室海峡に至る太平洋一帯にわたる四市二十二カ町村に及び、死者及び行方不明十五名を初め、家屋被害四千四百戸に上り、これらの被害総額約三十一億円という広範かつ激甚なものであったのであります。このうち、農林水産関係被害は約五億一千七百万円であって、農業被害約一千四百万円、林業被害木材流失等約七千百万円、水産被害が最も多く約四億三千二百万円で、これが内訳は、漁船四百三十七隻約五千七百万円、漁具約六千八百万円、水産施設約二千九百万円、漁港約二億円、その他約八千三百万円となっている次第であります。しかも今回の被災地域は去る昭和二十七年十勝沖地震被害をこうむった地域でありまして、その再建途上にある零細なる沿岸漁業者中心であって、財政力の最も脆弱な階層であるだけに、その対策については尋常の方法をもってしてはまことに至難な現状であるとのことでありました。  引き続き、私ども現地調査に向かい、北海道東端である根室市付近調査を初めとして、厚岸町においては厚岸湾の奥に位する厚岸湖で行なわれ、この地の特産であるカキアサリ等養殖被害について調査するとともに、浜中村に参ったのであります。  この地においては、特に浜中湾琵琶瀬湾を表裏に控えた半島の首部に位する霧多布市街地は、浜中湾から襲来する津波六回、琵琶瀬湾から同じく六回と、前後十二回にわたって津波襲来をこうむり、壊滅的な打撃を受けておるのでありまして、死者及び行方不明十一名を出し、住宅はもちろんのこと、漁期に入っている現在、漁船海産場等、明日からの生産手段のほとんど大部分流失し去ったという最も悲惨な状態におかれている次第でありまして、これが復旧は焦眉の急を要することを痛感して参った次第であります。  次いで、釧路市、白糖町を調査するとともに、その後十勝川の下流に当たる浦幌町に参ったのであります。  この地においては、十勝川河口にある六十戸程度の純漁村部落である十勝太において、部落保全施設的役割を果たしていた部落前面の約千メートルに及ぶ砂丘地が、これを乗り越えて襲来した津波のため侵食されるとともに、漁業者住宅及び漁船漁具を押し流す等、甚大な被害をこうむっていた次第であります。特に、その後においては、この砂丘地の侵食のため少しばかりの高潮時においても冠潮する状態になったため、部落住民は恐怖と不安に脅かされた日常を過ごすに至っておる現状をつぶさに見て参った次第であります。  また、この地と隣接する豊頃村大津部落においても同様の被害をこうむっていた次第であります。  引き続き、帯広市を経て広尾町に参ったのであります。この地の港は地方港湾でありますが、たまたまサケマス流網漁業等漁期関係から集結していた漁船等被害をこうむっていた次第であります。しかし、この反面、この地においては、さきの十勝沖地震による津波の苦い経験から、国庫補助を受け、苦しい町財政の中において、ようやく前年海岸線に沿って約五百メートルに及ぶ防潮堤を完成したため、今回の津波による被害を阻止し得た事実をもまのあたり見ることができたのであります。  また、襟裳岬に位する幌泉町においては、庶野漁港中心として集中的な被害をこうむっておるのでありまして、特にこの漁港は目下拡張工事中でありますが、今回の津波のため掘さくを行なっている新漁港区と旧漁港区との隔壁である防波堤が五十メートルにわたって決壊したため、係留中の漁船二十隻が一瞬の間に工事中の新漁港区の岩盤上に落下したため漁船被害がことに増大したということでありました。  なおまた、様似町等近接せる町村においても、漁船被害中心とする水産被害が同様見られたのであります。最後に私どもは函館市に参ったのであります。この地の被害は、臨港地帯浸水被害最大のものであって、倉庫保管物の冠水による被害が甚大でこの中には、政府貨物である玄米、バ澱、大麦、小麦等三千四百万円に上る被害が含まれるほか、スルメ、コンブ等水産加工品被害が多く、しかも津波被害保険事故から免責されておるためこれが解決策に腐心いたしている現地実情を視察いたして参った次第であります。  現地調査概要は以上の通りでありますが、これら各地における農林水産関係被害についての要望等について以下項目別に申し上げます。  第一に、今回の津波被害は、海岸に近接した、しかも低地に住居を持たなければならない零細漁業者被害が必然的な結果として多く、その上、去る昭和二十七年の十勝沖地震による被害地域と同様であって、その際における災害復旧のための債務あるいはその後の漁業経営不振のための債務等多額の負債を有しておる漁業者被害であるため、既融資農林漁業金融公庫資金償還条件を緩和するとともに、十勝沖地震等既災害資金損失補償後の債権については減免等特別措置を講ぜられたいこと。  第二に、伊勢湾台風の際とられた一連の特別措置同様趣旨措置を今回もとられたいこと。  第三に、小型漁船建造に対する補助については、北海道における漁業形態実情から共同利用することは困難である関係から、一対一の建造に対して国庫補助の道を講ずるよう改善されたいこと。  また、この種漁船建造のためには相当の時日を要する関係、及びこの地方における漁業の大宗ともいうべきコンブ採取はすでに漁期を目前に控えておることを考慮して、これが漁期を逸することなく漁船の手当ができ得るよう、近接の市町村あるいは漁業者団体の協力により万全の措置を講ずること。  なお、海産干場復旧についても、現状はその所有形態か複雑であって、漁協所有のもの、漁業者個人有のもの、あるいは不在地主的所有形態のものがあって、これが復旧には相当の困難が予想される反面、この干場復旧なくしては漁業が円滑に行なわれない実情であるから、この点に関しては、海産干場所有形態近代化を推進するとともに、特別の考慮を払い、国庫助成の道を開き、これが早期復旧されるよう措置すること。  第四に、共同利用施設として、新たに海産干場船巻き揚げ施設及び共同漁舎指定対象に加え、高率補助によりこれが早期復旧をはかること。  第五に、天災融資法の適用については、木道太平洋沿岸地域被害市町村のうち、被害激甚地特別被害地域指定されたいこと。また、同法に新たに傭船資金漁船大中破修理漁舎修理資金をも対象とするほか、利子補給率損失補償率をそれぞれ引き上げられたいこと。  第六に、十勝沖地震以来北海道太平洋岸一帯は逐年侵食されつつある事実及び今回の経験等にかんがみて、防潮堤建設等未然災害を防止する措置を講ずべきであること等であります。  以上御報告を終わります。(拍手)
  7. 吉川久衛

    吉川委員長 次に、第二班、金丸信者
  8. 金丸信

    金丸(信)委員 私は第二班を代表いたしまして調査概要を御報告いたします。  本調査班に参加されました委員吉川委員長木名理事と私の三人でありまして、五月二十九日から六月四日までの七日間にわたり、宮城県、岩手県及び青森県下における農林水産業関係被害をつぶさに調査して参ったのであります。  本災害をもたらしました原因につきましては、第一研の報告において詳細に述べられております通り、地球の裏側チリから秒速二百メートル以上の速さで日本列島に押し寄せた大津波によるものでありまして、その経路は帯状をなし、中心部と両端に当たる地帯が特に被害が激甚であったのであります。ことに、津波中心部襲来を受けた三陸地方は、全海岸線がリアス式海岸であって、天然の良港を形づくっており、波による被害はちょっと考えられない地形になっているのであります。しかし、このたびの津波は、これらの天然防災条件を上回る激しいもので、古くは二百十年前の天宝年間の大津波、近世においては明治二十九年のチリ沖地震による津波及び昭和八年の大津波に次ぐ歴史上四度目の大津波といわれ、うねりの高さは、雄勝町において七メートル、その他の地区でも三メートル以上を記録しているのであります。この三陸地方は、小地震による小津波は珍しくなく、前述のように過去数度の大津波を受けている関係上、津波に対する退避訓練は実に行き届いており、今度の津波においても人的被害が比較的少ないのは、このたまものであったといわれております。  われわれが調査した十数市町村は、ことごとく海辺の主要地点に大小さまざまの石碑が建てられ、その文字は津波のおそろしさを子々孫々に伝えるもので、苦い経験を次代への教訓として深く住民の胸に刻み、万が一の大津波に備えているのが特に目立っていたのであります。このように常に警戒を怠らずにいたこの地方がこのような大被害を受けたのは、事前に津波予報がなかったこともありますが、津波につきものの地震を伴わなかったことと、過去の大津波にては被害のあり得べからざる地域に特に激しい津波の来襲を見たという特典的な性質の津波であったようであります。  すなわち、このたびの津波の特徴は、外洋に面した地帯は比較的被害は軽く、住宅その他の建物は高潮のためほとんど全部浸水はしておりましたが流失を免れているのに反し、湾の奥深くの市町村及び外洋裏側になっている、一見津波には何らの影響もない、また過去においてもなかった地帯が激甚なる被害をこうむっていたのであります。これは、猛スピードの高潮外洋に面した海岸にぶつかり、その折返しがさか巻く怒濤となり、破壊力を倍加して、湾内にあった漁船、船舶、養殖施設その他の諸施設を粉砕し、この無数浮遊物を伴って湾内市町村心臓部を押し流し、その後方の田畑、山林を洗い、また、その引き潮はさらに激しく、わずかに持ちこたえた諸施設を一挙に外洋へ持ち去ってしまったのであります。  このように著しい被害を受けた三陸地方も、その被害地域は、海岸線に面した、普通の災害から見れば小地域市町村に限られておりますが、それだけに、たとい被害総額が小さくとも、個々市町村被害は、その深度が予想外に深く、被害市町村のほとんどが年間予算額をはるかにこえており、中には数倍に達するものもあったのであります。これらの被害の最も大きいのは、住宅関係に続いて農林水産関係であり、その中でも水産業関係被害が大部分を占めていたのであります。水産被害のうち、カキ養殖施設漁船定置漁業が著しい被害を受け、中でもカキ養殖は全地域にわたり壊滅の状態にあり、ちょうど種つけを寸前に控えた養殖中の母貝をことごとく流失したため、種つけはできず、たとい他県から種苗を移殖したとしても、十分な育成はできず、明年度まではそれらの養殖は完全にお手上げとなったわけであります。また、水田被害も軽視できない大被害を受け、塩水が一週間を経た今日いまだにたまっており、そればかりか、水田には無数漁船家屋等流失物が一面に残骸を重ねており、水田復旧のための除塩作業すらいつ着手できるか全く見通しの立たぬままに放置されていたのであります。このように、被害を受けた漁民は漁業の、農民は農業復旧に着手されないままにいるのは、自己の住宅、家具、衣類その他の被害のため、生活の基礎を失い、生命の維持に手一ぱいで、ほかに手の回らないのが実態であったのであります。  これらの被害を各県別に見ますと、宮城県では、被総額八十六億七千万円となっており、このうち農林水産業関係被害は二十四億三千万円、その内訳は、漁船七億五千万円、カキ養殖四億三千万円、定置漁業三億円等水産業関係被害十五億円、漁港四億七千万円、林業二億円、農業二億三千万円となっており、岩手県では、総被害額九十八億円、うち農林水産業は三十億円、その内訳は、漁船漁具六億三千万円、水産業施設六億七千万円、養殖施設二億円、漁港二億円等水産業関係被害が二十一億円となっており、農地農業用施設農業関係は六億八千万円、林業関係は二億四千万円となっており、青森県では、総被害額四十九億五千万円のうち、農林水産業関係被害は三十四億五千万円、その内訳は、養殖施設漁具等で十億二千万円、漁船八億六千万円、水産業施設等八億九千万円等水産業関係被害は二十九億四千万円、農林関係は一億四千万円、林業関係は十八億三千万円等となっているのであります。     〔委員長退席、秋山委員長代理着席〕  次にわれわれが調査した現地状況について詳細に御報告すべきでありますが、委員外位は新聞、雑誌、ラジオ、テレビ等を初め被害地からの写真、陳情等で被害市町村の惨状等については十分御承知でございますので、重複を避け、われわれの調査した被害市町村を日程順に申し上げる程度でお許しを得たいと存じます。すなわち、五月二十九日は宮城県庁において県下の被害状況を聞き、三十日は、仙台市から塩釜市に至り、市内及び松島町、七ケ浜村等松島湾周辺の状況調査し、次いで牡鹿半島の石巻湾に面した市町村を、牡鹿町鮎川から大原を経て石巻市の萩浜、月ノ浦、桃浦、石巻市内を調査、三十一日は、津波のうねりが七メートルと本津波最高を記録した女川町及び雄勝町を調査する予定でありましたが、雄勝町は道路の復旧ができないため女川町のみ調査し、次の地点、県下最大被害地志津川町に参ったのであります。この町は、死者四十人を出し、被害五十一億円といわれるだけあって、町全体が大損害を受け、災害当日から自衛隊七千人の後援を得て町ぐるみ跡片づけに懸命の努力を尽くしておりましたが、想像を越えた被害のため、いまだに災害当時そのままの状態にあり、町のすべての機能は麻痺し、残骸が軒を埋め、異様な臭気の中にあったのであります。次に歌津町を経て気仙沼市に参り、気仙沼湾周辺を調査、六月一日は岩手県に入り、高田市を経て県下最大被害地大船渡市を調査したのであります。本市の損害は、死者五十三名と尊い命を失い、七十三億円の財を無に帰したのであって、市の中心部を徹底的に破壊され、町全体が一面の広場と化していたのであります。次に釜石市を調査、六月二日は、大槌町、山田町、宮古市と被害激甚地を経て盛岡市に参ったのであります。六月三日は青森市を調査したのであります。県下の被害は、下北半島に若干見られましたが、大被害は八戸市に集中されていたのであります。八戸市の日本一を誇る中央卸売市場は、その岸壁を破損、そのため船の接岸、荷揚げができず、業務を停止しておったのであります。また、漁船の損害も著しく、いまだに市街地には無数漁船が打ち上げられており、津波のおそろしさを物語っていたのであります。  以上をもちまして本班の調査報告を終わりますが、最後に、調査各地において陳情を受けた復旧対策の要望について申し上げます。  立法事項としては  一、漁港等公共事業については伊勢湾台風対策と同様の措置を講ぜられたい。  二、農林水産業施設復旧事業の対象事業を三万円以上とし、カキ、ノリ、ワカメ等の個人の養殖施設についても高率補助ができるようにされたい。  三、被害漁船建造については、対象漁船を十トン以下とし、共同利用の率を一対一まで緩和し、伊勢湾台風対策と同様の助成をされたい。また、漁業用資材、漁網、漁具にも助成されたい。  四、天災資金融資法による貸付限度を五十万円まで引き上げるとともに、償還期限の大幅緩和をされたい。  五、農地の除塩事業については伊勢湾台風対策と同様の助成をされたい。  六、被害農林漁業者住宅及び養殖用資材として国有林の半額以下の払い下げを行なうようにされたい。  七、海岸砂地造林事業については全額国庫負担で復旧されたい。 等であります。  また、助成及び金融の措置としては  一、再生産に必要な苗、肥料、薬剤、農機具、蚕種、家畜等の購入費及び樹勢回復、土壌改良等に要する経費について高率の助成をされたい。  二、農林漁業金融公庫資金、特に自作農資金のワクを拡大融通する措置を講ぜられたい。また、既貸付金の償還期限の延長、利子減免の措置を講ぜられたい。  三、浅海増殖の災害復旧事業について高率の補助をされたい。  四、被害農林水産物加工業者に対しても、低利、長期の資金融通されたい。  五、被害家畜伝染病予防事業に対し     全額国庫補助をされたい。  以上であります。  右報告を終わります。(拍手)
  9. 秋山利恭

    秋山委員長代理 第三班、永田亮一君。
  10. 永田亮一

    ○永田委員 第三班の調査状況を簡単に御報告申し上げます。  派遣委員は、永田、高石、丹羽の三委員でありまして、三府県、和歌山県、徳島県及び高知県の四県につき、五月二十九日から六月五日に至る八日間、農林水産業の受けた被害中心として調査を行なったのであります。  最初に調査の日程に従って各県の被害状況を御報告申し上げ、次に対策に関する要望等を一括して申し上げることにいたします。  まず、三重県であります。  本県においては、伊勢湾南部、志摩半島及び熊野灘に面する地域、すなわち、的矢湾、英虞湾、五ケ所湾及び贄湾の湾内及び沿岸地域並びに海山町、尾鷲市一帯が被災したのでありますが、われわれは主として県漁業取締船伊勢丸を利用してこれらの地域をくまなく調査いたしました。  チリ地震津波は、二十四日午前四時ごろから十数回にわたり、潮位三メートルないし四メートルをもってリアス式海岸に集中的に来襲しておりますが、津の気象台が警報を発したのは午前七時ごろであったようでありまして、県は直ちに一市四町に対して災害救助法を発動し、救助活動に入っております。  しかして、本県における床上浸水家屋は三千戸以上に上りましたにもかかわらず、人畜の死傷は皆無に近く、交通路、公共施設等には大きな被害を見なかったことは不幸中の幸いでありましたが、総被害額の六二%は水産関係において、しかもその九〇%以上が真珠養殖等において発生し、容易ならぬ打撃を与えているというのか今次災害の大きな特徴であるのであります。  三重県下における被害総額は、五月二十七日現在での推算によりますると百八億円といわれておりますが、そのうち、農林関係において四億五千万円、水産関係において実に六十三億円に達し、そのうち、真珠関係被害額は、三重県水産課、全国真珠養殖漁業協同組合及び三重県真珠貝養殖漁業協同組合の共同調査によると、総計五十七億円に上っております。  真珠養殖業は、これを大きく分けて真珠の養殖関係と真珠貝の養殖関係になるわけでありますが、前者において、いわゆるくろ貝と称する作業済みの貝の被害が四十二億六千万円、作業前の手持母貝被害が五億六千万円、いかだ施設被害が四億五千万円、後者において、真珠具の被害が三億円、いかだ施設被害が一億円と推計せられておるのであります。また、いかだの台数から申しますならば、三重県下のそれは、真珠の養殖において六万台、真珠貝の養殖において二万台でありまするが、前者の被害率は五八・九%、後者の被害率は四一・二%と推定せられておりますので、いかだ施設のおよそ五〇%前後が壊滅に帰したわけであります。また、地区別に見まするならば、真珠の養殖におきましては、鳥羽地区が二四%、的矢湾地区が四九%、英虞湾地区が六五・七%、五カ所湾地区が六七%、南島地区が三八%、紀州地区が四一%、真珠貝の養殖におきましては、鳥羽地区が六〇%、英虞湾地区が四六・五%、五カ所湾地区が六四%、南島地区が二六%、紀州地区が二五%の被害と相なっておるのであります。  昨年の伊勢湾台風による県下の被害額は五十二億円と推計せられておりますが、今次の津波被害はさらにこれを大きく上回っており、打ち続く大災害は特に漁協を初め中小の真珠養殖業者に対して致命的な打撃を与えていることは全く明らかであります。伊勢湾台風におきましては、多くの施設及び母貝海岸に打ち上げられ、回収できた部分も少なくなかったようでありますが、今回は、海底から巻き上げ、施設の多くが沖合いに流失するかまたは重なり合いもつれ合って各湾内の数カ所にかたまり、ワイヤが切れてかごは海底に落下し、貝の多くは泥中に没して窒息し腐敗するという、見るかげもない惨状を呈しているのであります。その混乱状態は、お手元に回覧しております現場写真により御承知を願いたいと存じます。     〔秋山委員長代理退席、委員長着席〕  次に、三重県内の農林被害について御報告いたします。農林関係においても、農地農業用施設及び農作物等が鳥羽から尾鷲に至る海岸地域において点々と被害を受け、その被害額は約四億五千万円程度と推定せられておりますが、そのおもなるものは、早期栽培の水田、苗しろの流失・埋没、土砂流入、海水による冠浸水並びに海岸堤防の破壊であります。特に、海岸堤防については、伊勢湾台風による災害復旧または高潮対策事業がいまだに完了していないために再度被災した個所が少なくないようであります。  次に和歌山県の状況について御報告申し上げます。  われわれは、本県に関しては、新宮市、勝浦町浦神及び田辺湾周辺地域の各市町村について調査をいたしましたが、被害総額十四億円のうち、水産関係が七億円余、農林関係が二億円弱でありまして、ここでも、水産関係、なかんずく真珠関係被害が圧倒的であります。特に、田辺湾周辺は、本県内の真珠生産のおおむね三分の二を占め、真珠いかだでは県のワク三千五百中二千五百、母貝いかだでは県のワク三千二百中千六百七十がここに集まり、十三組合七千人が真珠生産に従事しているのでありますが、いかだ、作業貝、母貝等を含め全体の九〇%が大なり小なりの被官を受け、その損害額は約六億円に達するものと推定せられております。本県に特有の事情としては、区画漁業権が個人に免許せられている場合においても、その権利は多くの場合組合に転貸せられており、真珠、母貝とも養殖事業のほとんどが組合自営の形をとっていることと、真珠の生産がほとんど大玉に向けられていたために、三年目を迎えた高価品がやられたということであります。従いまして、地元漁協の受けました損害は他県に比してより直接的かつ深刻であるというべきでありましょう。田辺湾周辺地域においても、特に白浜町の堅田漁協及び田辺市の日本真珠株式会社の受けた損害は特に深刻きわまるものであって、前者で一億六千万円、後者で一億四千万円といわれ、それぞれの代表者の陳情は悲痛なものでありました。  農林被害は幸いにして軽少に済んだようでありますが、それでも、海岸堤塘の破壊は二千メートルに及び、水稲早植地域農地が三十六町歩にわたって土砂流入、埋没または冠浸水を受けており、耕地面積の狭い本県としては一日も早い復旧が望まれております。また、田辺市を初め数カ所の製材所の貯木が流失し、その損害は五千万円と推定せられております。  われわれは次いで徳島県に向かいました。  本県の総被害額は十億円余と算出されておりますが、ここにおきましても、その八〇%余は農林水産関係であり、なかんずくカキ真珠等養殖施設に六億五千万円の大きな被害を与えているのであります。  しこうして、被害中心は、いち早く災害救助法が発動された阿南市を中心とする橘湾一帯でありまして、われわれは、県の漁業取締船阿波丸に便乗して、つぶさに湾内調査に当たりました。橘湾のカキ及び真珠のいかだ数は二千四百台程度といわれ、これらは全部が竹いかだでありましたが、県内業者六、県外業者十七により養殖業が営まれており、しこうして、本県の場合には、区画漁業権は組合に与えられているが、経営はほとんどが業者によって行なわれているのが実態のようでありまして、従って、組合または組合員の受けた損害は五千万円程度にすぎず、他の大部分の損害は、業者、なかんずく三重県側の業者が受けたことになるのであります。その金額は五億ないし六億円に上るものと推定されるのであります。  また、阿南市においては、農地、農作物の被害も少なくなく、堤防の破壊に伴う農地流失・埋没もしくは海水の冠浸水した面積は二百二十町歩に達し、総被害額は一億三千万円に達しております。その概況は回覧に付しました写真によりごらん願います。われわれの視察個所においては自衛隊一個大隊が黙々と復旧作業にいそしんでおりましたが、われわれはその本部を訪れて、現地側とともに深甚の謝意と激励の辞を述べて参ったのであります。  次いで、われわれは、室戸岬を経由して徳島、高知両県の太平洋岸地域災害調査しつつ高知市に至ったのであります。  高知県の津波による総被害額は約九億円と推計されておりますが、そのうち、農林関係は二億四千万円、水産関係は二億二千万円といわれ、水産関係被害では本県においても真珠関係が一億八千万円を占めているのであります。  被害地点としましては、須崎市及び宿毛市とその周辺でありますが、特に激甚な災害を受けましたのは須崎市でありまして、災害救助法の発動を見ております。われわれは市当局の撮影した記録映画を見つつ説明を受けましたが、元来この地域は南海地震によって地盤が沈下していたので、高さ三メートル八十の堤防に四メートル十の津波が来襲したため、一たまりもなく堤防は破壊され、住居、商店、工場、農地等に冠浸水するとともに、須崎湾内の真珠養殖施設はことごとく流失または沈没したものと思われるのであります。須崎港は高知市の外港として将来の発展を約束されているところでありますが、ここでは個人施設災害と同町に公共施設の被災も軽視できない程度に達しており、すみやかな復旧が望まれるのであります。また、須崎市においては農業共済組合が本年度以降事業を休止しているのでありますが、一億数千万円に達する農作物の被害に対しては特殊の考慮を必要とすると考えられるのであります。  県内における真珠いかだの台数は約一万台と推定され、その大部分は浦ノ内湾にありましたが、その七〇%が被災し、真珠養殖物において一億五千万円、施設において三千七百万円の損害を生じたものと推定されております。高知県における区画漁業権の免許数は九つでありますが、経営形態としては、会社経営、個人経営または組合経営に分かれ、その実態は容易に把握しがたいように観察いたしました。  木県内では高島真珠及び北村真珠株式会社の経営するものが最大でありますが、従って、これらの二つの会社が受けた損害が全体の三分の一といわれるのであります。また、須崎市は木材の集産地でありますが、約一万二千石が流失したといわれておるのであります。  以上、四県の災害の実況についてその概要をお伝えいたしましたが、以下現地側より寄せられました災害対策に関する要望について一括御報告いたします。  まず、被災地側の官民一致の要望は、今回の津波災害に対しては、国会、政府一体となって、過般の伊勢湾台風対策と同様の、あるいはそれ以上の対策を講じてもらいたいということであります。伊勢湾台風対策、特に高潮対策の未完成または遅延により惹起された被災も相当の分量に上っているので、本年度の台風季節を迎え、伊勢湾台風対策との一体的な、もしくはそれに上乗せした緊急対策が特に望まれているのであります。  第二に、農林水産業施設災害復旧事業費等に対する国庫補助については、伊勢湾台風に対すると同様に、特別措置法を制定し、農地農業用施設漁港施設共同利用施設、なかんずく直珠養殖施設災害復旧事業費に対する国庫補助率を十分の九とせられたいということであります。この場合、農地災害復旧事業は、伊勢湾台風対策においては、補助対象事業費を十万円以上のものに限定し、三万円以上十万円以下のいわゆる小災害については市町村の起債特例措置を講じたのでありますが、今回の場合は三万円以上を補助対象事業に取り上げてほしいという要望があったのであります。また、真珠養殖施設等に対する国庫補助について、暫定措置法に準じた措置を講ずる場合には漁協の所有する施設に限定を受けるわけでありますが、今回の災害においては中小企業の所有する施設あるいは任意組合の所有するいわゆる村張りの定置網等の施設であって全く烏有に帰したものも少なくないので、これらに対しても漁協に対すると同様の補助を行なわれたいということ、及び、伊勢湾台風に際しては補助限度を十台までに限定したが、これを、対象経営体五百台以下、補助限度を五十台に引き上げられたいとの要望が各地において熱心に述べられたのであります。  第三に、地方公共団体が維持管理する漁港施設災害復旧事業費についても、伊勢湾台風対策と同様の高率補助を行なわれたいということであります。  第四に、農地の除塩事業についても、漑排施設の設置費、揚排水機の必要経費、客土、石灰等の施用費に対して十分の九の補助を行なわれたいということでありますが、この場合において、伊勢湾台風対策においては二十町歩以上の団地に限定しているので、この限度を十町歩以下に引き下げることが望まれております。  第五に、農地農業用施設、漁場、漁港内に堆積する土砂の排除もしくは枕木、かご、いかり、母貝等の除去または引き揚げに必要な経費につき、特別措置法を制定して、全額補助を行なうようにせられたいということであります、  第六に、苗しろの再仕立て費用及び代作、裏作の種子代等について補助せられたいということであります。  第七に、破壊した漁船の代船建造費について、伊勢湾台風の場合のような共同利用漁船の制限を設けず、補助特例を実施せられたいということであります。  第八に、融資対策についてでありますが、まず、天災融資に関しては、天災融資法に基づく天災指定をすみやかに実施するとともに、貸付限度を五十万円に、被害真珠養殖業者の経営資金については特に百万円に引き上げ、償還期限を八年、据置期間を三年に延長するように特例措置を講ずることとし、また、農林漁業公庫融資に関しては、被害真珠養殖業者等のいかだ、母貝、稚貝、その他養殖に必要な器具等の購入資金について、共同利用施設または主務大臣指定施設資金ワクを拡大して貸し付け、手続の簡素化、既貸付金の償還延期、金利の引き下げ、貸付限度額の拡大をはかるようにせられたいということであります。  この際融資対策について特に一言しておきたいことは、伊勢湾台風対策としてとられた融資対策のあり方に対して強い非難の声が上がっているということであります。中金融資にしろ公庫融資にしろ、融資手続がきわめて複雑難解であって、次々に各種の書類の提出を要求されるのみならず、真珠の貸付審査は特別に本店扱いとされ、審査基準が厳格に過ぎること、いかだ、母貝等の購入資金がセット的に貸し付けられ、一部についての貸付が認められないこと、担保物件が家屋等に限定され、事業用資産を認めないこと等の条件が設けられていて、一体、農林漁業関係の金融機関は、真珠養殖事業に対して資金を貸し付けるために査定するのか、貸し付けないために無理難題を言うのかわからないというのであります。これに反して、市中銀行、商工中央金庫はすこぶるものわかりがよいというのであります。われわれの調査によれば、真珠養殖事業にあっては、漁業権と経営主体の関係、経営内容、原価計算等について現地側の説明には往々不明確な点が多く、漁業統計も未整備であるし、融資対象としては多くの欠陥を持っておるとの印象を受けましたが、政府としては、沿岸振興対策、輸出産業としての重要地位にかんがみ、真珠養殖事業の産業体制の確立をはかり、真珠共済を実施する等、金融べースに乗せるための一段の努力と工夫をこらし、円滑な金融を実施するのでなければ、農林中金、農林漁業金融公庫はやがて農漁民の怨嗟の的となるであろうと判断した次第であります。  最後に、カキ真珠等のための共済保険制度の確立に関する要望であります。現に民間の保険会社で実施したものもあるようでありますが、掛金が高いために発展を見ていないのが現状であります。養殖物の損害の評価については特別の困難が伴うことは明らかでありますが、少なくとも、養殖施設に対する共済保険は、国で特別の施策を講じ、料率を低減する等の努力を払うことにより、急速に全国的に拡大する可能性があると痛感した次第であります。  以上をもって報告を終わることといたしますが、最後に、被災地の農漁民は地球の裏側から突然襲いかかった不測の大災害に対し、伊勢湾台風の場合と同様に挙国一致の援護を念願しており、国会の現状について深甚なる憂慮の念を抱いておるのでありますが、政府といたされましては、各般の行政措置の実施に当たっては、迅速果敢、万遺漏なきを期され、もって国民の負託にこたえられんことを心よりお願いいたすものであります。(拍手)
  11. 吉川久衛

    吉川委員長 以上をもちまして派遣委員報告は終わりました。     —————————————
  12. 吉川久衛

    吉川委員長 チリ地震津波による農林水産業の被害対策に関して野原正勝君より発言を求められております。これを許します。
  13. 野原正勝

    ○野原委員 私は、昭和三十五年五月のチリ地震津波による農林水産業の被害対策に関する件について、本委員会におきまして決議をされるよう、次の内容の動議を提出いたします。被害状況とその趣旨は、すでに現地調査報告あるいは政府説明によりわかっておりますので、この際は省略いたしまして、決議案文を直ちに朗読いたします。    昭和三十五年五月のチリ地震津波による農林水産業の被害対策に関する件   去る五月二十四日太平洋岸襲来した津波被害は、農林水産業に対し二百億円に達する損害をもたらし、就中かき、真珠等養殖事業に対し伊勢湾台風を上廻る打撃を与えている現状にかんがみ、その速急な復興を援助するため、左記事項の実現につきいかんなく措置すべきである。      記  (一) チリ地震津波により被害を受けた農林水産業施設災害復旧事業の特例として左の内容を含む立法措置を講ずるものとすること。   イ、農地農業用施設又は林道の災害復旧事業に対する補助率は十分の九とすること。   口、真珠又は真珠貝の養殖施設災害復旧事業に対しては、五百台以下の経営体につき五十台を限度として九割の補助を行なうこと。   ハ、かきの養殖施設災害復旧事業に対しては一経営体当り十台を限度として九割の補助を行なうこと。   二、のり養殖施設又は定置網の災害復旧事業に対しては五割の補助を行なうこと。   ホ、共同利用施設にかかる工事費三万円以上の災害復旧事業に対しては九割の補助を行なうこと。  (二) 北海道における個人所有にかかる海産干場災害復旧事業については、今後所有形態又は利用方法の近代化をはかることを条件として事業費の一部の補助を考慮すること。  (三) 地方公共団体が維持管理する海岸施設漁港施設等公共土木施設災害復旧事業又は漁港施設防潮堤、防潮林等の新設改良事業に対する国の負担又は補助については伊勢湾台風と同様の特例措置を講ずるものとすること。  (四) 被害漁船(五屯以下の動力船及び無動力船)の代船建造資金につき一隻対一隻の割合で国及び道県が各々三分の一の補助を行なうため所要の措置を講ずるものとすること。但し、共同利用漁船建造する場合には、伊勢湾台風対策の例により措置すること。  (五) 農地の塩害を除去するために行なうかんがい排水施設の設置及び管理若しくは客土等の事業並びに漁場、漁港等に流出した木材等を除去する事業に対し補助を行なうものとすること。  (六) 再生産に必要な種子、種苗、稚貝等の購入に要する経費の一部を補助するものとすること。  (七) 天災融資法に基く経営資金の貸付については、真珠及びかきの養殖事業に対する貸付限度を五十万円に引上げ、償還期限は五年とするように特例措置を講ずること。  (八) 農林漁業金融公庫から貸付ける被害真珠、かき養殖業者の筏、母貝、稚貝その他養殖に必要な器具等の購入資金については、共同利用施設又は主務大臣指定施設資金枠を拡大して貸付けるものとし、その際、手続の簡素化、金利の引下げ、既貸付金の借替又は償還延期等の措置を講ずること。  (九) かき、真珠等に対する共済保険制度の実施につき検討すること。  右決議する。   昭和三十五年六月九日       衆議院農林水委員会  以上であります。
  14. 吉川久衛

    吉川委員長 お諮りいたします。ただいま野原正勝君より提案されました昭和三十五年五月のチリ地震津波による農林水産業の被害対策に関する件を本委員会の決議とするに御異議ありませんか。     〔「院異議なし」と呼ぶ者あり〕
  15. 吉川久衛

    吉川委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。  なお、ただいま決定いたしました決議の関係当局への参考送付等の手続につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  16. 吉川久衛

    吉川委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。  次に、ただいまの決議に対する政府の所見を求めます。小枝農林政務次官
  17. 小枝一雄

    ○小枝政府委員 今回のチリ地震津波対策につきましては、委員各位には、現地にそれぞれ調査におもむかれまして、いろいろ御心配をいただき、いろいろ対策等についても御苦心をいただいたことは、われわれ当局といたしましても深く感謝いたすところでございます。ただいま御決議になりました条項につきましては、政府当局といたしましても、財政関係当局とも話し合いをいたしまして、極力御趣旨に沿うよう努力、善処をいたす所存でございます。(拍手)      ————◇—————
  18. 吉川久衛

    吉川委員長 この際、委員派遣承認申請に関する件につきましてお諮りいたします。  先般の北関東等の降ひょう等は、各地の農作物に多大の被害を生ぜしめておるようでありますので、これらの被害調査のため現地委員を派遣いたしたいと存じます。つきましては、派遣委員、派遣地及び期間等の決定については委員長に御一任を願い、議長に対し会員派遣の承認申請を行ないたいと存じますが、これに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  19. 吉川久衛

    吉川委員長 御異議なしと認め、そのように決定いたします。  次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。     午後零時三十二分散会