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1960-05-18 第34回国会 衆議院 日米安全保障条約等特別委員会 第36号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年五月十八日(水曜日)     午前十時二十七分開議  出席委員    委員長 小澤佐重喜君    理事 井出一太郎君 理事 岩本 信行君    理事 大久保武雄君 理事 櫻内 義雄君    理事 椎熊 三郎君 理事 西村 力弥君    理事 松本 七郎君 理事 竹谷源太郎君       安倍晋太郎君    愛知 揆一君       秋田 大助君    天野 光晴君       池田正之輔君    鍛冶 良作君       加藤 精三君    鴨田 宗一君       賀屋 興宣君    小林かなえ君       田中 榮一君    田中 龍夫君       田中 正巳君    野田 武夫君       服部 安司君    福家 俊一君       古井 喜實君    保科善四郎君       毛利 松平君    山下 春江君       飛鳥田一雄君    石橋 政嗣君       岡田 春夫君    黒田 寿男君       田中織之進君    戸叶 里子君       成田 知巳君    穗積 七郎君       森島 守人君    八木 一男君       横路 節雄君    大貫 大八君       堤 ツルヨ君    門司  亮君  出席国務大臣         内閣総理大臣  岸  信介君         外 務 大 臣 藤山愛一郎君         運 輸 大 臣 楢橋  渡君         国 務 大 臣 赤城 宗徳君  出席政府委員         内閣官房長官  椎名悦三郎君         内閣官房長官 松本 俊一君         法制局長官   林  修三君         防衛政務次官  小幡 治和君         防衛庁参事官         (長官官房長) 門叶 宗雄君         防衛庁参事官         (防衛局長)  加藤 陽三君         調達庁長官  丸山  佶君         外務政務次官  小林 絹治君         外務事務官         (大臣官房審議         官)      下田 武三君         外務事務官         (アメリカ局         長)      森  治樹君         外務事務官         (条約局長)  高橋 通敏君         運輸事務官         (港湾局長)  中道 峰夫君         運輸事務官         (航空局長)  辻  章男君  委員外出席者         専  門  員 佐藤 敏人君     ————————————— 五月十八日  委員中井徳次郎君辞任につき、その補欠として  八木一男君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び  安全保障条約締結について承認を求めるの件  (条約第一号)  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び  安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並び  に日本国における合衆国軍隊地位に関する協  定の締結について承認を求めるの件(条約第二  号)  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び  安全保障条約等締結に伴う関係法令整理に  関する法律案内閣提出第六五号)      ————◇—————
  2. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 これより会議を開きます。  日本国一とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約締結について承認を求めるの件、日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並び日本国における合衆国軍隊地位に関する協定締結について承認を求の間の相互協力及び安全保障条約等のめるの件、日本国アメリカ合衆国締結に伴う関係法令整理に関する法律案、右各件を一括して議題といたします。  質疑を続行いたします。門司亮君。
  3. 門司亮

    門司委員 大して時間もないようですから、質問はかなり率直に申し上げますので、答弁も率直にしていただきたいと思います。  最初にお聞きをしておきたいと思いますことは、現実に起こっておる問題の一つとして、例の黒いジェット機の問正題についての岸さんの答弁もお聞きいたしましたが、十分でないようであります。従って、私は率直に聞いておきますが、この条約の中にもありますように、また政府答弁でも、米軍作戦行動については一応事前協議をする、そうしてそれは日本拒否ができるのだというようなことを承っております。まだこの条約は成立はいたしておりませんが、少なく今までのあの黒いジェット機行動範囲を見ますと、結局極東の範囲を越えておるとも考えられますし、それからアメリカの本国では何か情報関係飛行機だというが、こちらに来ると軍の統括の中に入るのだというような答弁もされておるようであります。そうだといたしますと、やはりあれは軍の作戦行動とわれわれは見ないわけには参りません。従って、新条約そうい問題事前協議する、また拒否することもてきるという御答弁があったようでありますから、あれに対して私は率直に申し上げておきますが、政府はあんなものをこっちに持ってきてもらっては迷惑だ、やめてもらいたいというはっきりした抗議なり何かアメリカにされる御意思がございますか。
  4. 岸信介

    岸国務大臣 今門司委員お話の中に、黒いジェット機があるいは情報活動をしておるのではないかという疑念がある。しかし、それはいかなる音意味においても、かりにその疑念があめりとしましても、われわれが問題にしておるいわゆる作戦行動というものと情報活動というものを一緒にするわけにはいかぬと思います。これははっきりしておかなければならぬ問題だと思います。  第二に、御質問本体である、とにかくいろいろな疑惑があり懸念もあるのだから、そういう飛行機日本に置いてもらいたくない。日本から撤去してもらいたいという抗議をしたらいいじゃないかというお話でございます。この点に関しては、私しばしばお答え申し上げているように、私どももこれに対して、過般のソ連領内においての問題から強い関心を持っておりまして、米国に対して、はっきりと責任のある回答を求める意味において照会したことに対して、過般ハーター国務長官責任ある回答がされておるわけであります。従来もそういう活動をしていない。将来もそういう本来の気象観測以外の行動はしないということを明言をいたしております。一応これをわれわれとしては信頼するにとが適当ではないか。しかしながら、さらに、U2の本体についてはわれわれはあらゆる面からこの実体を明らかにするような努力をする。その上において、もしも懸念が去らないというような場合においては、さらに適当な措置考える、こういうことを従来答弁いたしております。その通り考えております。
  5. 門司亮

    門司委員 どうもせっかくの御答弁ですが、さっきも申し上げましたように、軍の管轄下に入って、たとえ名目気象観測でございましょうとも、気象が軍の作戦行動に全然関係がないとはいえませんし、これは私は大いにあると思う。そのことのためにやっているのだ。ただ名前が気象観測だから、軍の作戦行動ではないのだというような言いのがれはこの際総理としては慎んでもらいたいと思う。日本国民はかなりこれに不安を抱いております。現に御承知のように、厚木の飛行場を中心とする地元では町をあげて、こういう物騒なもので万一間違ったことがあっては大へんだというので、これをすみやかに撤去するようにという住民の切なる願いと、それからこれに対していろいろな催しをされているようであります。私は、この国民気持というものを、やはり総理としてはくんでもらいたいと思う。そうして国民にそういう不安を与えないようにされること自体が、私は、この条約をあなた方が締結されるについても、そう不利じゃないと考えるのですが、どうでしょうか。
  6. 岸信介

    岸国務大臣 われわれが今度の条約において、いわゆる戦闘作戦行動事前協議の対象にするということは——軍行動一切のものが作戦関係がある。広くいえばみなあるでしょう。補給の問題もそういう意味において関係あるわけでありますが、われわれは限定的に作戦行動というものを考えておるわけでございます。情報活動、あるいは気象観測というようなものをもって、これを作戦行動と見るわけにはいかぬと思います。しかしそれとは別に、今門司委員の言われるように、いろいろ国民が強い関心を持っており、疑惑を持っており、不安を持っておる。これを一掃するに必要な措置として一番徹底したことは、日本からこれを撤去してもらうことであるということも、私よく承知いたしております。従って先ほど申し上げましたように、われわれとしては一応とにかくアメリカ責任ある回答というものを得ておるのでありますから、これに基づいてさらに実体調査し、実体を把握して、なお不安があると考えるならば、撤去を求めるとか、その他適当な処置を講ずることがいい、こういうふうに考えております。
  7. 門司亮

    門司委員 そういうふうに言いのがれをされるのなら、もう少し聞かなければならぬが、一体どういう角度であなた方は調査をされるつもりなんです。日本にU2の飛行機行動範囲、それから行動自体というものを調査するような機関をあなた方はお持ちですか。それをお持ちならば、どういう機関調査するということをはっきり言っておいてもらいたい。
  8. 岸信介

    岸国務大臣 もちろん、お答え申し上げているように、われわれが今検査権であるとか、米軍のことに対して権限を持ってどうするということは、これはできないものであります。その意味からいうと、政府責任を持って政府に対して問い合わせたことに対して、責任を持って回答しておること、これは国際間においては一応信頼していく。しかしながら今どういう機関でどういうふうに調べるということでございませんで、いろいろな点において国民が疑問を持っており不安を持っておるとするならば、政府としていろいろな方法でもってその実体を確かめていくということは、これは私は可能であり、権限を持っておるとか持たないという問題ではないと思うのであります。
  9. 門司亮

    門司委員 どうもその点がはっきりしないのですがね。御承知のようにこの問題は単なる国内だけの問題じゃございませんで、この問題が大体発火点になって頂上会談もできないというような状態に追い込まれております。従ってこのことは国内だけの問題として取り上げるものじゃないと私は考える。国際的の平和を維持するという日本の、あなた方のお考えだとするならば、これはやはり国際的にもこういうものの内容を明らかにすることが非常に必要なんだ。それを相手国アメリカがそう言ったからこれを信頼する以外にないのだ、そうしてこちら側は、さきには調査すると言われておりますが、調査する権限を持っていないのだということになれば、国民はますます不安になると思うのです。国民の不安を除くには、こういう世界的にも実にやっかいな問題を引き起こした事態でありますから、日本から撤去するということを率直にアメリカ抗議することはどうしてもできませんか。それからそういう要求はできませんか。
  10. 岸信介

    岸国務大臣 これはできるとかできないとかという問題じゃございません。われわれが是と考えて一応こういう方法をとると先ほどから申し上げておるように、両国政府の間において責任のある照会、回答というものがなされておる以上は、一応それを信頼してやるけれども、しかしながら国民の不安なり懸念というものがそれでなお払拭されない、いろいろな議論もございますから、われわれとしてもさらに実体をはっきりさして——ただソ連にこういう事態が起こった、それと同じ機種であるから直ちにどうだということは適当ではない。実体をもう少し把握する必要がある。それに対しては責任あるアメリカ政府回答というものを一応国民としては信頼するということは、これは私は友好国の間において、信頼関係からいってそうしなければならぬ、こう考えております。
  11. 門司亮

    門司委員 何度聞いても同じことしか繰り返されませんし、同時に機関を持たないものが、ただ相手国である、ことに当事国であるアメリカ言い分だけを信頼されて、そうして国民の不安が除去されないということは、一体国政をあずかる人の態度であるか、どうかということについて疑問がある。私は、少なくとも一国の総理である限りにおいては、むろん国際間の信頼も必要でしょうけれども国民の不安を除去して、国の安泰をはかるということが先決だと思う。国際信義をいかに重んじても、国民の不安と日本の国の安全を保つことができなければ何にもならないと思う。私は国際信義よりもほんとう国民の実生活、国の安定ということの方が大事だと考えるのですが、総理はそうお考えになりませんか。
  12. 岸信介

    岸国務大臣 もちろん政治をしていく上において、門司君の言われるように国民の生活であるとか、あるいは精神的な安定であるとか、あるいは平和と安全を守れるか守れないかということか基礎であることは言うを待ちません。そういう見地に立ってわれわれは日本の平和と安全を守っていくにはどうしたらいいか、国民の不安を除くにはどうしたらいいかということが、安保条約基礎的の精神になっておるわけであります。今おあげになりましたことについては私は、政治の衝に当たる者としては当然考えなければならぬことを考えております。
  13. 門司亮

    門司委員 そうすると私の申し上げたことを一応肯定されたようでありますが、そうだとすれば、とにかく調べる機関を十分に持っていない政府は、ただ単にアメリカの言うことだけを聞いてこれを全幅的に認めて、そうしてその後調査するというあいまいなことではいけないと思う。少なくともこの際政府のとるべき態度は、調査あと回しにして、国民のこの不安と世界的のこういう状態を勘案されるなら、一応退去を要求する。その上であの問題は大して軍事的に影響のないような問題であるならば、これは再度あるいはああいうことが行なわれることも国民承知するかもしれない。しかしこの際国民の不安を除きますことのためには、まず最初手段としてはあれを退去することを要求されるということの方が、私は総理のとるべき態度だと考える。そうして一応国民の不安を除いて、そのあと調査をされるものは調査をされるのがよかろうと考える。そうして何も不安がなかったら、またあれが続行されるかもしれない。あなた方は十分の調査をする権限をお持ちになっておる。われわれはこういう手段でこういうふうにしてこういう調査をするから、それまで待てということならば、まだ国民もわかるかもしれない。しかし国民としては何も調査権限を持たない。私は、ああいう物騒なものをそのままにしておくような日本政府にたよっておるわけにいかぬと思う。だから、もし私がさっき申しましたように、国際信義よりも日本の国の安全の方が大事だと総理がお考えになるならば、まあ最初に一応撤去を要求して、そのあとで十分の調査をされて、さらにアメリカのやることについても承認を与えられということは、私は差しつかえないと考える。まず私はさっき申し上げましたことを肯定される限りにおいては、手段として先に撤去を要求していただきたいと考えますが、この点は、どうですか。
  14. 岸信介

    岸国務大臣 何度お答えを申し上げましても、同じお答えをするほかは、ございません。私は先ほども申し上げましたように、日本政府として、責任を持ってのアメリカ政府回答を求めておるわけで、それに対する回答を得ておるわけです。一応それに信を置く。しかしながらいろんな疑惑の点、疑問の点等については、私ども政府のあらゆる方法を講じて明らかにするという考えでございます。
  15. 門司亮

    門司委員 全く私ども考え考え方が違うというか、あまりにもアメリカ一辺倒過ぎはしませんか。もう少し日本人的の感覚——こう言うとまた総理はお怒りになるかもしれないが、私は持っていただきたいと思う。日本人の不安をまず除去して、その上で国際信義に対しても——そういうものの調査をされても私はおそくはないと思う。決してそれは国際信義を裏切るものではないと私は考える。もしアメリカ回答がうっそであったとすれば、だれが一体責任を負います。そうしてその損害はだれが受けます。総理責任を負われたところで、総理がおやめになったところで、日本国民の受けた大きな被害というものをぬぐうわけには参りません。ことに問題は軍事関係の問題でありまして、御承知のように今度の条約締結されれば、政府言い分を聞くと、アメリカの基地が爆撃されれば日本が爆撃されたと同じように考えるとまでいわれておる。戦争に巻き込まれる危険は多分にある。憲法前文には明らかに、日本政府が再び戦争をするような処置をとってはならないということが書いてあるでしょう。この憲法前文は、ばく然とはいたしておりますが、政府責任ある立場に立つ人が、戦争というものに対して、どんなに敏感でなければならないかということを規定した一つの大きな問題だと考える。この憲法前文を見て参りましても、少なくともさっきから申し上げておりますような処置をまずとるということ、そうして日本の安全を、まずはかるということ、それからアメリカとの交渉をされましても、決して国際信義にもとるものではない。ただアメリカ言い分を何でもかんでもうのみにのむということが国際信義でないと私は考える。もう少し日本外交は筋のある、国民意思が十分に反映した外交方針をとってもらいたい。これに対する御答弁がもしできるなら、答弁をしていただきたい。
  16. 岸信介

    岸国務大臣 われわれが安保条約を作るという問題は、日本戦争に巻き込まない、日本に対して他から不当な侵略が行なわれたい。——日本戦争に巻き込まれるということは、日本の領土が他国から不当に攻撃を受けるということがない限りは、われわれは戦争に巻き込まれるということは絶対にないのであります。しかしながら、不幸にしてそういう場合があるならば、日本としてはこの安保条約によってこれを阻止する、こういう条約を作っておくことが、そういう外国からの不当な侵略または武力攻撃というものをなからしめるゆえんである。そういう意味において、ほんとう戦争に巻き込まさないように、日本の平和と安全を守り、再び戦争の惨禍を受けないということにするためには、私どもはこういう条約を作る必要がある、こういう考えでございます。
  17. 門司亮

    門司委員 どうも私の質問から離れた答弁をされて、こういう条約を作る必要があるというようなことの結論で、私は承認ができないのであります。こういう条約を作る必要があるから、条約締結をされておるのでございましょうから……。しかし問題は、総理がそれ以上答弁ができなければ、私はこれ以上追及はいたしませんが、日本のほとんど全部といっていい国民は、今のこのU2の問題については関心を持っておると思う。そしてそのことがやがて戦争導火線になりはしないかという危惧も私は持っておると思う。そういうものを払拭することのためには、やはり日本総理大臣としては、日本国民の総体の意思というものを体して、毅然たる態度をとって、そうしてなにをアメリカに交渉する必要がこの際ありはしないか。そうしてそういうものを一応なくしておいて、そのあと調査されてもおそくはないのであります。これは何もアメリカだってそういうことを聞かないわけではないと思います。ああいう問題が起こって、何んでもかんでも一日、一刻を争うような問題ではなかろうと私は考えておる。もしアメリカ言い分があのまま——アイゼンハワーもいろいろなことを言っておるようですが、それが正しいといたしましても、何もそれが一刻を争うような問題ではないと私は思う。従って、今私が申し上げましたような強い外交方針というものが、ぜひ打ち立てられなければならない。もし総理大臣が今のようなお考えでこの条約を結ぶということになりますと、非常に大きな不安が出て参ります。あなた方は、協議については拒否をすることができるということをたびたび言われておる。しかもそれは本文に書いてない、交換公文の中にしか表われておらない。そういう条約上の問題についてはきわめて後退した、ごまかしという言葉を使えば怒られるかもしれませんが、国民から見れば、なぜこういう重要な問題を本文に入れなかったか、日本外交の弱さじゃないかということが明らかになっておる。この態度を見て、そうして今の総理答弁を聞いてみますると、全くあなたのおとりになっておりまする日本外交方針というものは、アメリカの言いなりほうだいになるのだという印象をわれわれに与え、国民に与える以外の何ものでもないと思います。U2の問題について、きょうは時間がありませんからこれ以上私は追及いたしませんが、とくと一つこの問題は考えてもらいたい。そうして日本外交の指針というものがどこにあるかということ。さっき申し上げましたように、国際信義を重んずるのか——むろんこれも重んじなければなりますまいが、その前に日本国民の安全、日本国民の安定、国土の安全性、こういうことを十分に考えての外交方針をぜひ私はとってもらいたい。この条約をこれから御質問申し上げますが、今の総理のような答弁でこの条約を見て参りますと、私は非常に大きな危険と危惧を持たざるを得ないのであります。だから私はこれからそういう気持で一応この条約に対する御質問を申し上げてみたいと思います。  第一に聞いておきたいと思いますことは、この条約表題でありますが、これには「日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約」というようなことを書いてありますが、今までアメリカがとって参りました米比米韓あるいは米華条約を見てみますると、いずれも相互防衛条約というようなことを書いてある。同時に米国と東南アジアとの集団防衛条約というようなことになっておって、いずれも防衛条約ということを書いておりますが、これは事実上防衛条約でありながら、どうして協力という文字に直したかということを、もう一応はっきり一つ聞かしておいていただきたい。
  18. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今回の条約はその基礎の上におきまして、日本アメリカとの緊密な協力関係を打ち立てて、そうしてそういう基礎に乗りまして初めて防衛というような問題も考えられるわけであります。従いまして、そういう広範な基礎の上にこの条約が立っているということを端的に表わすためには、相互協力という言葉が一番適当であろうかとわれわれは考えております。
  19. 門司亮

    門司委員 そうだとしますると、日本アメリカとの協定の中にもう一つありますね。「日本国アメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定」というもの、MSAがありますね。これには明らかに防衛という文字を使っておりますが、これはどういうわけです。
  20. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 MSAの方は、御承知通り防衛に関する援助の問題を、扱った協定でございますから、そういう表題が適当であろうかと思います。
  21. 門司亮

    門司委員 バンデンバーグ決議からくる、要するに防衛に対する経済援助だ、経済援助をするかわりに防衛の問題も一緒考えろ、アメリカのためになるならという、こういう字句が使ってありますが、従ってこちらでは経済問題の援助を受けるからということで防衛を入れた。しかし今度の条約の方が本体ではありませんか。このMSA援助というのは、これはただ経済協力あるいは経済援助をするという一つ名目であって、これの方が従でしょう。むしろ今度の安全保障条約の方が主たるものであることに間違いはないでしょう。そうすれば主たるものである方を協力という字句でごまかしておいて、そうして従たる方に防衛という文字を入れているということは、どう考えても私どもは解釈に苦しむのですが、どっちが一体重要性緊急性を持っているのですか。
  22. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 どちらが重要あるいは基本的だというようなことは、別個の問題を扱っておりますので言えないと思うのでありますけれども、この条約は今も申し上げましたように日本アメリカとが防衛上の協力をする、そういう基礎というものは一般的な相互信頼協力の上に立って行なわれるわけでありまして、そういう意思味に表現をいたしておるわけでございます。MSA関係は、防衛を打ち立てるための経済的な援助ということでございますので、そういう表題を使いますことがよりMSA関係においては適切であろう、こういうふうに考えております。
  23. 門司亮

    門司委員 MSAバンデンバーグ決議から来たものであるから防衛という文字を使わなければ工合が悪かった、大体私は政府のお考えはそうじゃないかと考えております。そうだとすれば今度の条約も全然関係がないわけではないのです。同時に交換公文の中にもそれらのことはずっと書いてあります。合衆国軍隊云々ということを読みかえるということが書いてありますね。だからどう考えても、私はこの条約を審議するにあたりまして、まず条約の基本的のものの考え方について政府に非常に大きなごまかしがあるのだ、いかにも防衛という文字を抜いて協力というような文字に直して、そして軍事同盟ではないのだというふうな印象を国民に与えようとする意図がここに含まれておるとしかどうしても考えられないのです。もう少し詳しく話はできませんか。どういうわけで協力という文字に直したか、私ども考え方ではどうしても同じものであり、ことにこれの方が重要性を持っているということには間違いはない。この重要性のある方が防衛という文字が抜かれているということに対してはどうしても解釈ができないのです。
  24. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 この表題相互協力というと同時につまり安全保障という問題が唱えられておるわけでありまして、協力関係を打ち立てていく、そうしてそれは安全保障の上においてもお互いに協力をしていく、むろん協力関係というものは国連に対する協力もございます。そうした広範な意味の、相互にいろいろな点で協力をしていこうということをうたいますこと、そのことはこの条約の本質である、そうした安全保障の体制をとります基底にたっておるという意味において、われわれはこういう表題が適当であろう、こういうふうに考えておるのでございます。
  25. 門司亮

    門司委員 どうも規定とが協定とか言っていますけれども、こういう条約締結については規定もなければ何もない、やはり条約自身というものはその表題に実質を明らかにするということが、国民にも最もわかりがいいし、それからわれわれが審議いたしまする場合にももちろんわかりがいいのであります。内容と表題とが違っておるというものは、これは国民には非常にわかりにくいことである。ことに外国との間のこういう条約については私はやはり表題をもう少しはっきりしていただきたいと思うのであります。私が以上のようなことを申し上げますことは、どう考えてもMSA協定、いわゆる防衛という文字を使ったあの協定とこの条約との違いが一体、どこにあるかということについては、どうしても私どもには判定がつかぬのであります。  そこで第三条関係になりましょうが、一応聞いておきたいと思いますことは、三条とバンデンバーグの決議との関係は一体どういうふうにお考えになっているか。私どもバンデンバーグの決議との関係はかなりあると考えておりますが、政府考え方はどういう考え方です。
  26. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 三条は、アメリカで御承知通りバンデンバーグ決議が国会で採用されましたのは、バンデンバーグ自身が孤立主義者でありましたのが、戦後の大勢その他から見まして孤立徳義を堅持するのではいけないのであって、アメリカも他国と協力してそうして世界の平和維持に当たる、それは経済的にもあるいは防衛上の問題についても協力する、こういう立場で宣言された決議、上院を通過した決議であることは、門司さんの御承知通りだと思います。そういう意味において、それじゃアメリカ協力するその相手の国というのは、やはり自分自身で防衛力を増強するという意欲を持ち、自分自身は自分で守るのだという立場をとっている国だからこそ初めてこれが援助できる、こういうのがバンデンバーグ決議の趣旨でございます。そういう意味からいいまして、われわれもお互いに自分の国は自分で守るのだという決意を持っておる。それでありますから、そういう意味でありまして、バンデンバーグ決議の趣旨を取り入れて、この安全保障の上においてもお互いの立場をはっきりしていくということは、われわれは適当であると考えたわけでございます。
  27. 門司亮

    門司委員 そうするとこの条約アメリカバンデンバーグ決議に基づいて大体こしらえたものだというふうに解釈して差しつかえございませんね。
  28. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 三条はバンデンバーグの趣旨あるいは精神というものを体して書いたわけでございます。むろんこの条約全体がバンデンバーグ決議にのみ依存しているというわけではございませんけれども相互協力、そして防衛をしていくという立場におきまして、安全保障の問題においてはアメリカ援助するという立場からいいましても、その趣旨が貫かれておりますことは申すまでもございません。
  29. 門司亮

    門司委員 言い回しが非常にくどいようでありますが、私は最初に申し上げましたように率直に聞いているのです。三条がどうのこうのというのではなくて、三条自体を見て参りましても、今のお話のようにバンデンバーグ決議から出たものに間違いはないと思う。条約の全体はこのバンデンバーグの決議に基づいたものだということにはっきりあっさり私は答弁をしてもらいたい。今外務大臣だいぶいろいろ言われましたけれども、回りくどい答弁を聞いているとだんだんわからなくなってくる。あなたの方でわかっているかどうかということが疑わしくなってくる。どうなんです。もう一度聞いておきますが、バンデンバーグ決議から出てきたものだということに、私はそういうふうに解釈することが一番正しいと思うのだが、今の答弁を聞いてみましてもどうもそうらしいのです。そういうふうに解釈しておいてよろしゅうございますか。
  30. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 バンデンバーグ決議だけがこの条約基礎というわけではございません。しかし日本自身が自分自身の国は自分で防衛するという考え方を持っておる国でございます。そういう国、またアメリカも自分自身を防衛をする、そういう二つの国が世界の平和にも貢献していくという立場においては、その限りにおいてバンデンバーグの決議の趣旨が入っていることはむろんでございます。
  31. 門司亮

    門司委員 元来このバンデンバーグ決議というのは、御承知のように一九四八年ごろだと思いますが、当時アメリカソ連との間は一応の友好関係を持っておったのでございます。それがだんだんくずれていって、そしてソ連、とアメリカとの間にだんだんみぞができてきて、この状態アメリカがどうするかということについて、ソ連を中心として向こうに置いて、そうしてアメリカ防衛体制というものを世界じゅう網の目のようにずっとめぐらしていこうというものの考え方の上に立ったものであるということは間違いないでしょう。バンデンバーグの精神というものはそういうものだということに、私はそう解釈しているんだが、政府はどういうように解釈されるか。
  32. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 バンデンバーグ決議の由来から申し上げますれば、先ほども申し上げましたように、第一次世界大戦、第二次世界大戦を通じて、アメリカには孤立主義者というものがあって、世界の問題についてはあまり口出しをしない、手出しをしないというような立場、いわゆるモンロー主義をとっておった立場の人があるわけです。バンデンバーグもその一人ございますが、こういうような二回の世界の混乱をながめて、その孤立主義者の一人であるバンデンバーグが、やはりこれではいかぬ、アメリカは世界の政治に大きな責任を持っているんだから、各国と協力していくことであって、単にアメリカ大陸だけの孤立主義的な立場では、世界の平和に対するアメリカの貢献はできないだろうという意味においてできたわけでありまして、単にソ連とだけのいさかいというような問題からではない。むろんソ連といろいろな問題もあることは念頭に置いておったかもしれませんけれども、立場からいえば、今申し上げたような思想的な経緯を経ていると存じております。
  33. 門司亮

    門司委員 この点が一向わからぬのですが、アメリカの今のモンロー主義の問題もございましたが、バンデンバーグがどういう思想を持っておったかということは別にして、少なくともこういう決議をされたということは、私は、今私が申し上げましたようなことの方が国際的に客観的には間違いがないと思う。ソ連アメリカとが、第二次戦争を終わるまでは手をつないでおったが、終わったらもう利害が相反してきて、だんだんおもしろくなくなってきた。これは大へんだということで、これに対するアメリカの防御対策の最も大きなものとして上院でこれが決議されておる。従って今の外務大臣の答弁は私の考え方とは非常に違うのですが、そういう答弁でなくて、だから、これも私は率直に聞いておりますが、そういう国際情勢が反映してできたものであるということに私は問違いがないと思う。それでなければ、私はもう一つの問題として率直にお聞きをしていきたいと思いますことは、アメリカが従来こういう条約を結びます場合におけるアメリカの立場というもの、それから手続その他の関係等をあなたの方がよく御存じだと思いますが、バンデンバーグの決議は上院の決議であります。それから条約の批准その他については上院が権限を持っております。従ってアメリカの国会でこの種の条約を決定いたしますには、少なくとも上院は上院の持っておる立場でこれをやっていく。そうすると、このバンデンバーグの決議というのが上院の決議であって、上院とアメリカ政府を、私は縛るという言葉の方が正しいと思いますが、完全に拘束するものだということを申し上げても差しつかえないと考えている。従って、どうしてもこの種の条約を結ぼうとすれば、いやがおうでもバンデンバーグ決議に基づくものでなければ、私はアメリカ承認しないと考えている。だから、最初質問に戻りますが、この条約全体というものがバンデンバーグ決議に基づくものであるということにどうしても私は考えざるを得ない。経緯から申し上げましても、あるいはアメリカ自体の立場から申し上げましても、最終的にはさようなものでなければ私はアメリカ承認するはずはないと考えているが、この点はどうですか。
  34. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 お話のように、戦後国際紛争その他が起こって、これは単にソ連というだけでなしに世界的な平和維持という立場から考えまして、アメリカが今のように自分だけのところで考えているのはいかぬ、やはり世界の平和愛好国と手を握っていかなければならぬ、こういう立場であることむろんでございます。そうして今お話のように、上院でこういう決議ができましたから、この種の条約を結びます場合には、バンデンバーグの趣旨がそこに現われてこなければならぬということは、これまた当然でありまして、その主たるものが御説明いたしておりますように、防衛力を自分でやるだけの意欲を持ってない、全然防衛意思がない、自分で自分の国を守る意思がない、ただアメリカだけに守ってもらうというような立場の国とはこういう条約は結べないというのが、この趣旨でございまして、そういう意味においてその趣旨がこの種条約を結びますときに当然基底になっておりますことは、これは門司君の言われる通り、もちろんでございます。
  35. 門司亮

    門司委員 防衛長官がおいでになりませんからあとに譲ってもいいのでありますが、もしバンデンバーグの決議の趣旨だということにはっきりいたして参りますと、日本防衛力の増強というのが直ちに問題になってくるはずであります。これはまた条約にはそう書いてある。「発展」という文字を使っている。大体防衛力の増強についてはどういうものの考え方でなされるのか、これはあまりくどく私は申し上げません。日本が独自でどの程度まで軍備を拡張していくか、同時にこの条約に基づく作戦あるいは軍事行動に必要な範囲というのは、アメリカ日本とを合わせて一体どのくらいのところまで日本協力すればよろしいのか、その限度がもし今おわかりならば、この際明らかにしておいていただきたいと思います。
  36. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 自衛力を自分で持って、他国からの侵略を少なくとも自分は守るという意思を持っていることが第一必要だと思います。その範囲内においてそれぞれの国の経済的なあるいは社会的なそのときの事情によって決定されていくわけなんであります。  従いまして日本の自衛力をどの程度に維持していくかという問題につきましては、日本の経済力あるいは社会的な事情等によってこれを決定していくわけでございまして、そういうことが主でありまして、アメリカ日本との防衛力をプラスしてどうという意味ではなしに、日本自身の考え方できめていかざるを得ないのでございます。その実際問題になりますと、防衛長官お答え願うのが適当だと思います。
  37. 門司亮

    門司委員 この前私がお聞きしたときと同じ答弁なんです。経済的あるいは社会情勢ということですが、日本は御承知のように自衛権があるとかないとかということは別の問題といたしまして、憲法には一切の軍備を持たないと書いております。従ってかりに自衛権があるといたしましても、軍備その他というようなものが今の社会通念的にお考えになって、日本の経済力あるいは国際情勢に比例してというようなことは日本には通用しないはずなんで、日本の持っております自衛権にはおのずから限度があるはずなんだ。私はその限度を越えて何でもかでも経済力その他というような言葉でこれをごまかそうとするところに問題があると思う。自衛権があるということ、これは私は議論はしない。しかしどこまで一体やればよろしいか、これは大内さんの公述の中にも自衛権は否定しないということを言われておりますが、しかしこれには憲法戦争をしない、国際紛争に武力を使わないということでありますので、おのずから限度があるはずであります。ただ普通の観念のように、そういう憲法にない観念のように、ただ国の国力と経済力あるいは情勢によってというようなことで、無制限に伸ばすというようなことは、日本憲法は許してないと思う。これは一体どうなるのかだから私は聞いている。どの辺まで一体伸ばすのかということを聞いている。日本憲法の限度を越えるということは非常にむずかしい問題だと思います。しかし実際的にはこういう問題がここで討議をされなければ、日本防衛の義務があるのだからといって無制限にやってごらんなさい。一体日本の産業構造はどうなりますか。日本の経済がどういう形で国民を圧迫してくるかということが非常に大きな問題なのです。一体どの辺までが限度だとお考えになっているのか、はっきりお答え願いたいと思います。
  38. 岸信介

    岸国務大臣 防衛に関する基本的な考え方につきましては、国防会議においてきめるということになっております。すでに基本方針というものはきめております。これは国力、国情に応じて防衛力を漸増するということを申しております。そしてそれに基づいて第一次の防衛増強計画が立てられて、本年三十五年度で終わっていくことは御承知通りであります。これに引き続いて第二次の防衛計画を防衛庁において策定し検討をしております。いずれ国防会議においてさらに最後の検討をすることになっております。観念的に言えば今門司委員の言われるように、憲法九条の関係から見まして、こういう条文のない国と同じように、幾らそれをふやしてもいいというような考え方はもちろん持っておりません。従って、憲法九条におけるところの自衛権を裏づけるには必要な最小限度の実力を持つという考えのもとに、国力、国情に応じてこれを漸増していくということを申しておる。今お話しのように、それが日本国民生活に非常な圧迫を加えるとか、あるいは産業構造に非常な変化を来たして、産業上、経済上の混乱を生ずるとか、あるいは負担を加重するとかいうような考え方ではございません。従って、これをただそういう抽象的だけでなしに、数字的にどこまでだということは、今申すような具体的の計画ができて、そして、年々の予算にこれを計上することになっております。これを門司委員も、諸外国の、こういう規定のない国の防衛費というものが予算の全体に持っておる比率あるいは国民所得との比率というものと日本防衛負担というものをお比べ下さいますと、いかに日本の自衛力、国力、国情に応じての漸増ということが、予算あるいは税額あるいは国民所得の上からいって、比率が軽くなっているかということはきわめて明瞭であります。そういうわれわれとしては無制限にやっていくというような考え方でない。今申したような方法によって、具体的には年々の予算でこれを計上する、こういうことであります。
  39. 門司亮

    門司委員 どうもそういう抽象的な答弁では——私の聞いておるのはそういうことでなく、今の総理の御答弁のようなことは私どもには大体わかっているのです。ただ、私の心配になりますのは、こういう条約を結んで、そしてどうしても日本防衛費というものがふくらんでいく。同時に日本の産業自体も、産業構造も変わっていかなければならない。いわゆる兵器産業というものがかなり強く出てくるであろうということは当然であります。そういう問題をずっと考えていきますと、大体どのぐらいのところまでいくのか。私は具体的にそれでは申し上げておきますが、具体的にいって、今アメリカの軍隊はどのくらい日本にいるかわかりません。それから、日本の自衛隊の数は大体わかっておりますが、現在の日本国内にいる在日米軍の組織、あるいは持っておりまする機能というものと日本の自衛隊の将来の自的というものとの関連性が、私は、どうしてもなければならないと思う。大体どのくらいまで進めていけばよろしいかということ、これはどうしても考えなければならないと思う。それがなくて、年々の予算の問題だとか年々の関係でこれをきめていくんだというようなことでは、国民はかなり大きな不安を持つと思う。岸さんは今の国防会会議の議長でありますから、大体の御答弁はできると私は思うのです。何も国防会議でこれをきめるのだというような言いのがれをされなくても、あなた自身が主宰者ですから……。同時に、予算その他がいろいろ言われておりますが、予算その他をきめる権限もあなたがお持ちになっているのです。だから、あなたの考え方で、大体どの程度までこの条約に基づく日本の発展義務があるのだというようなことは、私は、この際明らかにしてもらった方がこの条約を審議するには非常に好都合だと思います。
  40. 岸信介

    岸国務大臣 門司委員の前提とされている、今度の条約が改正されれば、従来よりも、日本における防衛費の負担というものが非常にふえはしないかという御懸念でありますが、これはしばしば国会においてわれわれがお答え申し上げておる通り、この条約改定によって将来において防衛費というものがかさむ、この条約の結果かさむということは絶対にないということを申しております。われわれは、先ほど申しましたように、国防会議で第一次の計画を作り、今第二次の計画を策定中でございます。これは日本の国力と国情を見て、さっきから申したような心組みでこの計画を立てるつもりでございまして、従って、この条約が改正されるから、それによって従来の防衛費というものの負担を加重しなければならぬ、非常に大きなものをしなければならないという義務が生ずるのだ、というふうにお話しになっているようでありますが、そういうことは絶対にないのであります。
  41. 門司亮

    門司委員 どうも、私の質問を前段の方だけ聞いて、ほんとうの真意がおわかりになっておられないようだから、率直に申し上げます。具体的にはっきり申し上げますが、今のあなた方のお考えでは日本防衛を第一次、第二次というふうにお考えになっておるようでありますけれども、それなら日本の航空機の整備は大体どのくらいでよろしいとお考えになっておるのか。あるいは軍艦その他の関係はどのくらいでよろしいとお考えになっておるのか。陸軍の関係はどのくらいで、装備はどの程度までがよろしいのではないかということをお考えになっておるのか。これは大体わかるでしょう。これを一つはっきりしてもらいたい。
  42. 岸信介

    岸国務大臣 第二次防衛計画で今日まで確定しておるものはございません。しかし、防衛庁におきしまて防衛計画として国防会議に提出する原案を策定中でございまして、それの大体の目標とするものについては防衛長官からお答えしておったものがございますので、防衛庁の事務当局から、その大体の目標をお答えいたさせます。
  43. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 先ほどお答えがありました通り、現在の第一次防衛計画については三十五年度で終わるわけであります。そこで、それに引き続きまする計画を現在防衛庁において検討中でございます。考え方といたしましては、国防の基本方針がすでに一昨年きまっておりますが、この国防の基本方針に従いまして、自衛のため最小限度に必要な自衛力を整備していこうという考え方でございます。大きな構想といたしましては、陸上につきましては現在の第一次整備計画できまっております十八万という人数を上回らない、ただ質的にこれを整備、増強していきたいという考え方でございます。海上につきましては現在約十二万四千トンというものを目標にしてやっておりますけれども、これをできるならば十五、六万トンぐらいまで艦艇をふやしまして、対潜能力あるいは護衛とか掃海でありますとか、あるいは海峡、港湾の防備でありますとか、こういうふうな能力を上げていきたい。航空については現在目標が千三百機、これは昭和三十七年度末において千三百機という目標でございますが、これを若干機数を減らしまして、レーダーを中心とする対空警戒組織の能力を向上したい。またF104という戦闘機ができることに予算で御協賛をいただいておりますので、これを整備いたしまして、これを中心といたしまして、これの能力とそれから地対空ミサイルの能力をももまして、だんだんと進歩いたしまする兵器の国際的な水準を考えながら、それにマッチいたしますように防衛の方向なり能力の向上をしていきたいということであります。一時考えました案では、これは防衛長官もおっしゃいましたが、昭和四十年度におきまして二千九百数十億円というものを、試算として持っておるものがございますけれども、これはまだ決定をいたしたものではございません。そういうような段階でございます。
  44. 門司亮

    門司委員 それで、今のお話ですが、私は、陸上の整備その他について具体的にどの程度まで装備を充実されるのかということを聞いておるのです。これは現在の段階でよろしいと思います。今の加藤君のお話のように、これからどう兵器が発達するかわからぬからというようなことでは一向わからぬので、どのような装備をして、そして費用が一体どのくらいかかるかということを、この条約を審議するには、国防の軍備の発展が約束されておりますから、その約束された軍備の発展というものがどの程度であるがということを、国民の前にやはり明らかにすべきだと私は思う。そうしなければ仕事にならないので、それをただ抽象的な言葉だけで今まで言いのがれをされておりますから、きょうは一つその性能その他を明確にして、今、回答ができなければ、書類ではっきり書いてもらいたい。陸軍の装備はこういうことにするのだ、兵器はこういう兵器を使うのだ、費用はどのくらいかかる、それから軍艦の種類あるいはその他のものを明確に書いてもらいたい。それを一つ、この委員会が終わりますまでの間に、明日でもきょうの午後でもよろしゅうございますから、わかっているはずでございますから、あなたの方で書類で一つ出していただきでたいということをこの機会に要求をいたしておきます。
  45. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 これはただいまも申し上げました通り、まだ決定をしたものでは、ございませんから、書類で提出をするということは困難であると思います。大きな考え方は、今申し上げました通り、陸上の員数は、これは増員はいたさない、そうして質的な改善を考えていきたい。その質的な改善と申しますのは、たとえて申しますると、たとえば特車でありまするとかあるいは火砲類でありまするとか、いろいろあるわけでございます。特車、火砲類等につきましても、米国より供与を受けておりましたものが、だんだんと耐用命数と申しまするか、相当長い期間使っておりまするから、これを更新をいたさなければなりません。更新をいたしまする際には、それぞれにつきまして、もう少し性能のいいものにしたい。しかし、これもどのくらい更新をし整備をするかということが、経費の問題にかかってくるわけでございます。大体の目標といたしましては、先ほど申し上げましたようなことを考えておりまするけれども、具体的に、じゃ、どの火砲をどういうふうに更新をするか、あるいは特車をどういうふうに更新をするかというところは、ただいま申し上げる段階に至っていないということを申し上げるわけでございます。
  46. 門司亮

    門司委員 私は加藤君に話しておきますけれども答弁を要求しているわけじゃないのです。そういう見積もりがあるなら、お考えがあるならそでを出してもらいたいと言っているのです。(「出しにくいと言っている」と呼ぶ者あり)今出しにくいと向こうで言っておりますけれども、出しにくいというようなことで、こういう大事な問題の審議ができますか。この条約締結されれば、国際信義の上では、日本国民全体がこれに縛られるのですよ。国際信義の上から、当然日本国民全体がこれに縛られるのですよ。縛られるとすれば、国民全体が義務の上でこれを履行しなければならない。その場合に、国民全体が計画の全体もわからないで、ただ、その文章だけで、発展すると書いてあるから、この発展のために政府が自由にどれだけでもやれるんだというような無責任なことで、こういうものの審議ができますか。もう少しはっきりしたものを出してもらいたい。
  47. 岸信介

    岸国務大臣 先ほど私がお答え申し上げましたように、門司委員の前提となっておる——この条約ができたから、何か防衛計区画について具体的にわれわれが拡大する責任を持ち、そういう予算の増高を来たすというふうな前提に立って御質問でありますが、今の防衛計画を立てるということは、日本が自主的に従来からも考えておりますし、何らこの条約関係ないのであります。それでありますから、今お話のように、この条約を審議する上において、この条約によって将来、予算上国民の負担上、これが一つの制約を受けるんだ、こういうふうなお考えは、これは間違っておりまして、防衛の計画というものは、全然、自主的に、この条約関係なしに、今第一次、第二次というものを検討し、これを立てるというのであります。
  48. 門司亮

    門司委員 そうだとすれば、さっき外務大臣は、この条約はバンデンバーグの決議の影響を受けているんだ。バンデンバーグの決議の中には、外務大臣が申されておりましょう、自国の防衛力をやはり増進していく国でなければこういう条約は結べないのだ。そうすると、明らかに、この条約は、自国の防衛力を増強するということが約束されておる。約束されている以上は、国民全体が責任を負わなければならぬことは当然であります。だから、問題になっております、その約束されておる発展する限度というものは、一体どのくらいに考えておるか、どういうものを予定しているか、あるいはどういうことを考えているかというようなことが数字的に明らかにならなければ、こういうものの審議は簡単にできますか。無条件で政府に、こういうものの審議ができますか。
  49. 岸信介

    岸国務大臣 しばしばお答え申し上げました通り、われわれの自衛力を増強していくということは、日本が自主的に考えることであって、この条約上の義務としてわれわれが考えるのじゃないということを申し上げております。バンデンバーグ決議との関係におきまして、先ほど外務大臣もお答え申し上げておるように、バンデンバーグ、このアメリカ援助して協力して、そうして防衛責任をとっていく国という国は、相手国とそういう協力をする国は、その国自身、みずからの国を守るという意欲を持ち、その努力をしておる国とだけしかやらないというのが私どもの趣旨であり、またその意味において、三条においてそういうことを取り入れております。しこうして、どういうふうにしてこれを増強していくか、維持していくかということは、その国が自主的にきめればいいことでありまして、この条約によって、実質的に何かこれの拡大についての責任を負うということではないと思います。
  50. 門司亮

    門司委員 責任を負うということは条文にちゃんと書いてありますよ。ちゃんと条文に書いてあることを責任を負わないのですか。「憲法上の規定に従うことを条件として、維持し発展させる。」と書いてある。しかもその前には「武力攻撃に抵抗するそれぞれの能力」と書いてある。明らかに武力攻撃に抵抗する能力ということが書いてある。従って、能力をどの程度まで発展させるのかということの答弁ができなければおかしいのですよ、同時に、任務があるのですよ。条約ですよ。政府だけの約束じゃないのですよ。これは日本の国とアメリカの国との約束なんですよ。
  51. 岸信介

    岸国務大臣 その点につきましてもしばしばお答え申し上げているように、この防衛力の維持発展ということの限度なりその内容というものは、日本国が自主的にきめるものであって、この条約によってわれわれは、従来の防衛計画を立てていくところの態度について変更を来たすものじゃないということは、しばしば申し上げている通りでございます。従って、第一次計画も第二次計画も、安保条約というものと関係なくて、それの結果から出るものじゃなくて、日本が自主的に、日本の国力と国情において祖国を守る自衛力というものを考えていく。それにはどうしたらいいかということの計画を立てるわけでございます。
  52. 門司亮

    門司委員 私はもう一点だけ聞いておきますが、そういう御答弁をされると、これはいろいろな問題が私は出てくると思うのですよ。この条約と同じような結果を持っております、御承知のように一九四九年に結ばれております北大西洋条約、それからさらにその後に結ばれております米韓米比米華の各相互防衛条約というものを見てみますと、いずれも自助及び相互援助によるということの決議の言葉を引用しておりまして、たとえばこの北大西洋条約の第三条を見てみますと、「締約国は、この条約の目的を一層有効に達成するために、単独に及び共同して、継続的かつ効果的な自動及び相互援助により、武力攻撃に抵抗する個別的の及び集団的の能力を維持し、かつ、発展させる。」とこういうふうに書いておるのですよ。この条約の条文と今度の三条との違いがどこにあるかと言いますと、この「単独に及び共同」というこのことについて、「共同」が「協力」に変わっておるということ、それから「個別的の及び集団的の能力」が単に「能力」というだけになっているのでありまして、ほかはほとんど同じようなことがずっと書いてあるのです。私は、この条約の問題は、憲法その他の関係もありまして——おそらくこの今申し上げましたような他国との間の条約と同じような決議を条文の中に書きたかったということが明らかに出てきている。「共同」と「協力」と一体どれだけ違いますか。それからさらに、「個別的の及び集団的の能力」ということが単に「能力」と変わっておるが、これはどれだけ違いますか。条約の精神からいえば私は、全く同じだと思いますよ。この辺の違いは、どういうふうに違っているのです。
  53. 林修三

    ○林(修)政府委員 この点はもう何回かお答えしているはずでございますが、これは非常に違う考え方でございます。つまり、今までの北大西洋条約あるいはほかのそういう相互援助条約、こういうものに同じようないわゆるバンデンバーグ条項というものがありますが、それと今度のこの新安保条約第三条とは、相当書き方が違っているわけです。今門司委員がおっしゃいました通りに、いわゆる「単独に及び共同して、」という言葉を削っております。その点は、いわゆるそれぞれがみずからの能力を維持発展させるという趣旨をはっきりさせておるわけでありまして、共同して一つの力を作り上げるというような趣旨はないわけでございます。それから、「個別的の及び集団的の能力」という点も非常に違っておるわけでございまして、集団的能力という問題は、たとえば北大西洋条約でいえば、北大西洋条約のもとにある一つの軍隊がございます。ああいうふうな、各国が打って一丸となった一つの軍隊を作って、全体の国を防衛する、ああいう考え方から出ていると思います。この安保条約にはそういう考え方は全然ないわけでございまして、それぞれの能力、ゼア・キャパシティズとなっております。日本及びアメリカのそれぞれの能力を、方法として自助及び相互援助方法によってやっていくんだ、そういうことでございます。もちろんいわゆる武器の援助を受けるとか経済的援助を受けるとかいうことは、お互いに自分でやれる範囲でございますし、お互いに援助もし合おう。しかしその対抗するための能力、これはそれぞれの国がそれぞれの国の防衛をするに必要な能力、そういう考え方でございます。いわゆる個別的な能力、そういうものをそれぞれ作っていこう、そういうことでございます。この維持発展させるということにつきましても、これはしばしばお答えいたしております通りに、いろいろ周囲の情勢によって考えられるわけでございまして、必ずしもふやさなければいけないというものではないわけでございまして、そういうものを作っていくんだ、そういう趣旨にすぎません。これはもう北大西洋条約以来はっきりしたあれがあるわけでございますが、北大西洋条約等との違いは、今門司委員の申されましたところの文字の違い、これは非常に大きな違いだとわれわれは思っております。
  54. 門司亮

    門司委員 一向わからぬのです。大きな違いだと言っておりますが、「共同」と「協力」という字句は違っておりますが、行動の一体性については私は変わりはないと思いますよ。行動の一体性ですよ。軍事協力というものがお互いに共同して行なうのか、協力して行なうのかといったって、そういう行動についての一体性は変わりはないですよ。字句が違っておるだけでしょう。行動の一体性というものの考え方は、ほとんど考えられていないですね。ただ字句上の——今の林法制局長官答弁などでは、こういう問題についてはちっとも触れていない。行動の一体性は一体どうなんですか。共同と協力の場合は、行動についてどれだけ違うのですか。共同の場合には、どういう行動をとらなければならぬ、協力の場合には、これでよろしいのだという限界がありますか。
  55. 林修三

    ○林(修)政府委員 第三条には行動の問題は全然規定してございません。それは条文の読み方のあれじゃないかと思いますが、第三条は、要するに、武力攻撃に抵抗する、いわゆるキャパシティ、能力を維持し発展させる、こういうことでございます。しかもこの方法は単独に「個別的に」あるいは「協力して」ということでございまして、つまり日本あるいはアメリカがそれぞれ自国の力によって、あるいはお互いに力をかし合ってということでございます。たとえば武器を援助するとか、いろいろ技術を援助するとか、そういう問題があるわけでございます。その方法を言っておるわけでございます。それから北大西洋条約にありますような、いわゆる集団的能力を作るというようなことは、これには全然ないわけでございまして、つまりそれぞれの能力でございます。つまり日本武力攻撃に抵抗するための能力を維持し発展させる。アメリカ武力攻撃に抵抗するための能力を維持し発展させる。それぞれの能力を維持し発展させるということでございまして、共同的な力を作るという考え方は全然ないわけでございます。その点はほかの条約と違う点でございます。(「明快」と呼ぶ者あり)
  56. 門司亮

    門司委員 どうもその辺の違いがはっきり明快にわからないのです。私の聞いておりますのは、行動の一体性といいましても、こういうことです。行動は規定しないといっておりますが、発展し、維持し、あるいはこれに抵抗する能力を持つということは一つ行動でしょう、動きでしょう。そうしますと、どうしてもここに出てくるものは、共同と協力とがどれたけ違うかということなのです。私は、これの字句が変わっておりますから、字句の変わった点を明快にしておきたいということです。アメリカが他の国との条約については、明らかに「共同」という文字を、使っておる。日本の場合には「協力」という文字を使っている。しかしその度合いがどれだけ違うかということです。同じように発展させるということを約束しておりますが、共同と協力とどれだけ違うか。同じようなものでしょう、共同も、協力も。
  57. 林修三

    ○林(修)政府委員 先ほどから申し上げております通りに、ここで言っておりますのは、主として防衛能力を維持し発展させる方法を言っておるわけでございます。単独に、または相互に協力して、それから自助及び相互援助方法により、これはどちらも実は方法をいっておるわけでございます。北大西洋条約等におきましては、一つの総合的な軍隊、総合的な能力を作り上げるという考え方が非常に強く出ておるわけでございます。この考え方は、この条約には全然ないわけでございまして、それはそれぞれの個別的な能力を作るんだ、持っていくのだ。しかもその方法は、単独ではできない場合もございますから、お互いに協力していこう、その方法を書いてあるわけでございます。その点は、北大西洋条約とは非常な違いだとわれわれは考えております。
  58. 門司亮

    門司委員 時間もございませんので、次に移りたいと思いますが、今のような答弁では私どもは一向わからないのです。もう少し国民にもはっきりわかるようにしていただくことがよろしいと思います。  次に私が聞いておきたいと思いますことは、この四条に「この条約の実施に関して随時協議し」と書いてありますが、この条約の実施に関して随時協議するという、その協議の内容と機関はどういうものを設置されるのか、その点を明らかにしておいていただきたい。
  59. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 四条におきまして、随時協議をする。今回の条約は、日米両国が同じような立場に立ちまして、そうして条約運営全体を絶えず話し合っていこうというのが趣旨でございます。従いまして、条約運用にあたりましての諸般の問題について随時協議をすることにいたして、これに規定してあるわけでございます。  そうして、そうした随時協議をする機関というものについては、日米安保委員会というものを作りまして、そうしてその委員会におきまして話し合いをしていく。しかし、むろんその委員会だけが話し合いをするというわけではなしに、あるいは外交ルートを通じ、あるいはその他においても、両政府間において話し合うことは当然行われるわけであります。一応そういう委員会を作ることにいたしておるわけでございます。
  60. 門司亮

    門司委員 委員会は一応できるということになっておりますが、この条文に書いてありますように、地域というような問題についての考え方からくる問題がここにははっきりしておらない。ここに書いてありますように、「日本国の安全又は極東における国際の平和及び安全に対する脅威が生じたときはいつでも、いずれか一方の締約国の要請により」そうして今の協議をされるのですね。そういたしますと、「いずれか一方の締約国の要請により協議する。」といっておりますが、この安全と平和に対する脅威が生じたときという、これの認定は、日本機関としてはどういうところがこれを認定することになっておりますか。そうして協議に持ち込むということになるのですか。
  61. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 第一項の方は、随時協議をするということで、第二段の方は、今の、極東に何かそういうような状態が起こったというふうに判断されるときには、一方からこういうことが起こっておるがどうだろうかというような意味で話し合いをするわけであります。そういうような問題について話し合いをしたいと申しますのは、むろん政府であること申すまでもないわけであります。これはどういうような状況だろうかという話し合いをすることに決定をするのは内閣でございます。
  62. 門司亮

    門司委員 むろん日本政府であることに間違いありませんが、日本政府はどういう機構で——極東の範囲日本の国を脅かしておるものがあるとか、あるいは極東の安全を阻害しておるものがあるとかいうようなことの判断をされる機関は、どういう機関をおこしらえになるかということです。むろん政府であることに間違いないと私は思う。ただばく然としてこういうふうに書いてあっても、日本のどの機関がこれを認定するのか、アメリカのどの機関がこれを認定するのか、そうして随時協議に持ち込むのか、この前提になる、平たくいいますと、見つけ出すといいますか、認定する機関は、どの機関が一体認定するのかということを聞いているのです。
  63. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 最終的には政府がきめるわけでございますが、政府がきめるまでの段階におきまして、それらの情勢等の判断については、あるいは政治的な問題については外務省等が判断いたします。あるいは防衛上の関係のような問題については、防衛庁がそれぞれ判断をいたしますし、その他何か他省に関係するものはそれぞれおのずから分担をして、そうして最終的にはそういう材料によって政府が決定する、こういうことになろうかと思っております。
  64. 門司亮

    門司委員 そうすると、これについては国防会議とは何も関係はないのですね。ただ、そういうばく然とした、どこからかそういう情報が入ってくれば、その情報によって内閣がきめるというようなことになるのですか。私はやはりこういうものについては、何らかのはっきりしたものがないと工合が悪いのじゃないかと思うのだが、そういう機関とかなんとか言うものは設けられないのですか。
  65. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今申し上げましたように、極東における脅威というようなものの判断については、政府がいたすのが当然でございまして、その政府がいたすまでに、各省それぞれ持っております情報なり、それは政治的の問題等につきましては外務省であること当然でございましょうし、あるいは防衛上の問題につきましては防衛庁、その他もし各省に関係しておるものがあり得るとすれば、そういうような問題、そうしたものを材料にして政府が決定をする、こういうのが当然のことだと思っております。
  66. 門司亮

    門司委員 そうすると国防会議とは何も関係がないということに解釈しておいてよろしゅうございますね。
  67. 岸信介

    岸国務大臣 国防会議は、言うまでもなく政府が諮問する機関でありまして、これがすぐ直ちに決定するという機関じゃないと思います。問題によって、政府が必要と認めれば、国防会合議に諮ってその意見を聞くということも、もちろんあり得ると思います。今外務大臣が答えたように、そういうことの認定はやはり行政府がやる。そして、そのためには、外交機関であるとか、あるいは防衛機関がいろんな方面から情報を集めていますから、そういう事実を認定するに必要な資料は提出する、こういうことに考えております。
  68. 門司亮

    門司委員 もう一つ聞いておきます。その資料を集めると言われておりますが、各省の資料を集める終局のものは、やはり内閣の情報局ですか。
  69. 岸信介

    岸国務大臣 そういうことはなかろうと思います。内閣の情報局もいろんな情報を集めていることは事実でありますが、先ほど申しているように、事外交もしくは政治関係していることについては、外務省が主としてやっていることは、御承知通りであります。また、防衛上の具体的の問題になりますと、防衛庁が、常に責任を持って各種の情報を集めて日本の安全を維持していく、こういう立場から情勢を判断し、資料を集めている、こういうことであります。
  70. 門司亮

    門司委員 その問題についてはもう一つ聞いておきますが、そういう判断をされる一つの資料として考えられることは、ここの場合は、日本の安全がかりに脅かされると思われるときの内容については、大体外部からの武力攻撃、いわゆる直接侵略というようなことに限られるのでありますか、それとも間接侵略あるいは大規模の内乱というようなものが考えられるのか、この点はどうでございます。
  71. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 この条文における極東の平和と安全が脅威されるという意味は、必ずしも直ちに、日本侵略を受けるというような状態だけの場合ではなく、もう少し広範に情勢判断を両国においてするというような意味でも、協議をすることは当然でございまして、必ずしも、直接侵略を受けそうな危険がすぐあるというようなときだけではございません。
  72. 門司亮

    門司委員 そうすると、こういうことになりますか。この条文をそのまま満足に、まっすぐに読んでみますと、極東の「脅威が生じたときは」と書いてあります。脅威の生じたときですよ。従って、われわれから考えて参りますると、いろいろな情報というようなことでなくて、脅威とは一体何ぞやということになろうかと思いますが、日本の立場から考えまするならば、やはり武力攻撃というようなものが、大体直接の問題になりはしないかと私は考える。同時に、国内におけるいろいろな問題も、いわゆる日本の安全のためによくないというようなことが考えられるかもしれない。しかし、これらの問題について、どういうことが、これでいわれております脅威に当たるのかということでありまして、ただばく然として、今のお答えのようなことでは私は困ると思う。ここに書いてありますのは、「安全に対する脅威が生じたとき」と書いてある。そうして前段に、ずっと見てみますると、三条には、武力的攻撃に対抗する能力を持つということであって、いずれの対象も、ほとんど全部と言っていいほど、こういう武力その他の攻撃ということに、大体条文を全部読んでみますと、書いてあります。従って、私どもとしましては、直接侵略というようなものが大体考えられはしないか。さらに問題になりますのは今申し上げましたような間接侵略あるいは内乱というようなものが、考えられるのではないかと思われるのであります。こういう問題が起こったときだというように考えてよろしゅうございますか。
  73. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 日本が直接侵略を受けそうな懸念ということは当然そういう状況が起こりそうなら、協議の対象になることはむろんであります。協議しなければならぬと思います。しかし、そればかりでなく、極東に何か紛乱が起こる、それが拡大するか拡大しないか、そしてそういうことが拡大することによって日本に影響を与えやしないか、あるいは幸いにして縮小するならけっこうだというようなふうに、そういうような武力的な問題が起こった場合にも、協議をするというようなことは当然でございます。しかし、今お話しのように、武力攻撃がもう起こりそうだというようなとき、あるいはそういう状況ならば、当然協議はされると思います。
  74. 門司亮

    門司委員 もう一つこの機会に聞いておきたいと思います。この四条の規定ですが、現行の行政協定の二十四条に、急迫事態における共同措置協議に関する規定か書いてあります。ところが、今度のこれがかりに締約されますと、現行の行政協定にも多少変わってくるところがございます。従って、この四条の規定は、現行の第二十四条をこの中に吸収しておるというように解釈しておいてよろしゅうございますか。
  75. 林修三

    ○林(修)政府委員 現行の行政協定の二十四条は、これは今ちょっとおっしゃいましたけれども、この条文は、全体として協議措置の規定でございます。急迫した場合の共同措置そのものの規定ではございません。いわゆる「共同措置を執り、」というのは「協議」までかかっておるわけでございまして、どちらも「協議」にかかっておる。つまり協議条項でございますそれは別といたしまして、大体二十四条を含んで、多少今度の四条の協議は、条約実施のための協議も入っておりますから、広くなっておるのであります。大体今の三十四条の協議は、新しい四条の協議で全部カバーされている、かように考えます。
  76. 門司亮

    門司委員 現行の行政協定の二十四条というのは、この四条の規定の中に吸収されたものだと解釈をしておいてよろしゅうございますね。間違いありませんね。
  77. 林修三

    ○林(修)政府委員 今申しましたように、三十四条はいわゆる協議の条項でございます。「共同措置を執り、」というのは、これは日本文ではその点ははっきりしておりますが、英文をお読みになればますますはっきりいたします。要するに、「共同措置を執り、」あるいはこれこれするために協議をするということで、協議をしなければならないというのは、今日体のセンテンスにかかっておるわけでございます。従いまして、二十四条は協議条項、その協議条項が今度の新しい四条に吸収されている。従って、新しい地位協定にはこういう条項はない、かように考えております。
  78. 門司亮

    門司委員 最後に聞いておきたいと思いますことはここに書いてあります例の臨時の協議の問題ですか、この協議の問題の中には、現在行なわれておりますアメリカ日本の軍隊——という言葉を使った方が早いと思いますが、自衛隊とが、共同の演習その他等を行なうことは、この協議の中に含まれますか。
  79. 林修三

    ○林(修)政府委員 意味は新しい四条でございましょうか、二十四条の方の趣旨でございましょうか。
  80. 門司亮

    門司委員 私がさっき聞いておりますように、この二十四条は、大体これに吸収したものだと私ども考えておる。また、そうなっておると私は思うのであります。そうすると、結局演習その他というようなものもここで協議さるべきだと、こう解釈せざるを得なくなってくるのですが、これはどうでしょう。将来日本アメリカとの共同の作戦による演習等が行なわれることも、この協議の中に入るかどうか。
  81. 林修三

    ○林(修)政府委員 現在の行政協定の二十四条は、いわゆる演習という問題については、もちろんこれは前提としていないわけで、もっと緊迫した問題を二十四条は前提としてできておるわけでございます。従いまして、現在かりに同じ場所で一緒に演習しておるとすれば、これは事実上のお互いの相談でやっておるものと私は考えます。そういう意味におきまして、今後も事実上の相談だと思いますが、第四条でその条約の実施について協議して悪いということは、もちろんどこにもございません。四条の協議の中に、そういう意味では入ると言えば入れられると思うわけでございます。しかし、現在別に、特定の協定の条文に基づいて、共同して演習しているという問題ではなくて、私は、これは随時お互いに相談してやっている、かように考えるわけでございます。
  82. 門司亮

    門司委員 そうすると、問題がはっきりしないのですが、この点はかなり重要なことでありまして、かりに日本防衛することのために、日本の自衛隊があるということを一応肯定いたしましても、外国の軍隊との間に共同の作戦に基づく演習をするということはもう日本の自衛の権利からいくと、自衛隊が日本だけを守るということから一歩外へ出たようなことで、明らかに、集団防衛の形を現実に現わすということに私はなろうかと思います。従って、この日米の共同の演習ということは非常に重大な意義を持つ。単なる演習ではないと考える。いわゆる集団防衛の域に一歩踏み入れたものだという解釈ができるようになろうかと私は思いますが、その辺の考え方はどうですか。
  83. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 お答え申し上げます。自衛隊で、米軍との合同と申しますか、米軍援助を受けてやっております演習がございます。どんなものかと申しますと、たとえば、わが方の航空自衛隊にはまだ一マツハをこえるような飛行機はございません。米軍は持っておりますので、そういうような優速の飛行機をもちまして、それによってレーダーの操作の訓練をする、あるいはそういうものに対する防衛方法を研究する。潜水艦も一隻しかございませんので、米軍の潜水艦の援助を受けまして、対潜攻撃方法を訓練するというふうなことをやっておるのでございます。これはもちろん日米相互に、別々に援助の形で潜水艦なり飛行機なりを出してもらって、われわれがそれを目標にして訓練をするという格好が多いのでございます。そのほかにやっておりますることは、掃海等につきましても、米軍の方の進んだ掃海技術というものを教えてもらうという意味で、援助を受けてやっておる演習がございます。
  84. 門司亮

    門司委員 そうすると、将来も日米の合同演習は実施されないというように解釈しておいてよろしゅうございますか。
  85. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 これはただいま法制局長出月もお答えになりましたように、新しい条約の第四条によりますると、そういうことを相談し得る根拠はできると思うのでございます。
  86. 門司亮

    門司委員 どうもその辺がかなりめんどうですね。根拠があればおやりになるだろうと思いますが、おやりになるとすれば、どう考えても、結果としては、集団防衛に一歩足を踏み入れるということにならざるを得ないと思う。形の上ではそういうことが言えると思う。その問題については、あとでまた機会があれば聞くといたしまして時間がございませんから、次の質問に入りたいと思います。  この条約第五条にこう書いております。これは読まなくてもおわかりだと思いますが、「各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従って共通の危険に対処するように行動することを宣言する。」と書いてあります。この条約の中心は、私はこの五条の前文だと思います。これが一番大きな問題だと思いますが、ここで問題になりますのは、「自国の憲法上の規定及び手続」と書いてある。ところが、従来、アメリカがいろいろな国との間に条約を行なっておりますものの中には、憲法の「規定」という言葉はないはずであります。いずれも「手続」という言葉を使っております。日本のこの条約だけにどうして「規定」という文字を入れられたのか、その辺を一つ伺っておきたいと思います。
  87. 林修三

    ○林(修)政府委員 この点も、実は何回もお答えしたはずでございますが、他の条約と違いまして、「憲法上の規定」という言葉を入れましたのは、やはり日本憲法第九条というものがございまして、わが国の自衛隊につきまして、その行動範囲等につきまして憲法上の制約——他国の軍隊とは違いました制約があるわけであります。そういう制約があることを前提といたしまして、入れたわけであります。
  88. 門司亮

    門司委員 制約があるからといっても、外国の憲法にもちゃんと、それは手続の問題でございましょうが、規定はあります。それから同時に——私は質問を少し端折って申し上げますが、この場合に、もしこの条約に書いてありますように、いずれか一方の国が攻撃される、ことに今までの答弁を聞いておりますと、アメリカ軍に日本が貸与しておる基地が爆撃されても、日本の領土が爆撃されたものとして、攻撃に対処するということを言われております。さらに、従来の国会の答弁をずっと聞いてみますと、あれは吉田さんでしたか、鳩山さんでしたか、かつて参議院で、もし万一の場合があれば、座して自滅を待つよりも、あるいは敵の基地をたたくことが日本の安全のためと考えられるなら、外国の基地をたたくことができるということを答弁されております。岸さんも似たような御答弁をされておることは、御記憶だと思います。そうしますと、これに「自国の憲法上の規定及び手続」ということが書いてありますが、日本には戦争に対する憲法の規定は何もないはずです。日本は、かりにいかなる事情がございましょうとも、国際紛争を解決することのために武力を使ってはならないという憲法がある。ただ、日本の軍隊の動員できるのは、自衛隊法の七十四条によるだけなんですね。そういたしますと、ここに出てくる問題は、外国との条約の中には——外国は、憲法の手続によって軍隊を動かすことができる。日本の場合は、憲法の何らの手続がありませんから、従って、自衛隊法の第七十四条でしたかによって動かすことを、岸さんは答弁されております。そうすると、日本の自衛隊法の七十四条というのは、外国の憲法を上回る規定だ、こういうふうに解釈しておいてよろしゅうございますか。
  89. 林修三

    ○林(修)政府委員 ちょっと御質問の趣旨が、よくのみ込めない点があるわけでございますが、従来のよそのこういう集団安全保障条約に、それぞれの自国の憲法の手続云々と書いてございますのは、いわゆる戦争宣言等について、それぞれの国会の承認が要る問題を相想定しての手続規定だろうと思っておりますが、それに当たりますものは、わが国の場合はないわけでございます。憲法の規定の上にはないわけでございます。しかし、それとまた違いまして、むしろ今おっしゃいましたように、日本憲法には第九条第一項もございます。また、第二項にいわゆる交戦権の問題もございます。こういう問題がございますから、日本の場合には手続きという言葉のみではやはり足りないというふうに考えまして、「憲法上の規定」と、多少、広く読める言葉を入れたわけでございます。  それから日本が他国から武力攻撃を受けた場合に、自衛隊がいかに行動するかという問題は、今おっしゃいました通りに、自衛隊法の七十六条でございます。七十四条ではございませんで、七十六条でございますが、七十六条で、国会の事前または事後の承認が要る。同時に、自衛隊の行動にあたっての武力行使の限界につきましては、八十八条の規定がございます。こういうものによって行なわれるわけであります。この新条約の第五条は、憲法の手続及び規定ということしかいっておりません。自衛隊法は、そういう意味において、形式的な意味憲法の規定ではもちろんございません。しかし、この五条の規定は、国内法の今の自衛隊の出動について、国会の事前または事後の承認が要るということを、どこにも排除している趣旨はないわけであります。従いまして、当然に日本の自衛隊の出動については自衛隊法の規定による、そういう趣旨であろうことは、前々からお答えしているつもりでございます。よその国の憲法を上回る規定だという趣旨は、どういう御趣旨かちょっと私にわかりませんが、そういう趣旨は別にございません。少なくとも第五条が、自衛隊法の規定を排除する趣旨は、どこにもないわけであります。従って、日本の自衛隊の行動は自衛隊法による、こういうことでございます。
  90. 門司亮

    門司委員 私が聞いておりますのは、外国でかりに軍隊を動かす場合は、憲法の規定あるいは手続等によって動かさなければならぬようになっております。日本の場合は、憲法にそういうものが何もないのですね。従って、日本の場合は、軍隊を動かすというのに、ただよりどころのあるのは七十六条だけなんですね。従って、日本の自衛隊法七十六条というのは、通念的に考えて、外国の憲法と同じような資格を持っておるのかということを聞いているのです。こういうことに解釈してよろしいですか。
  91. 林修三

    ○林(修)政府委員 形式的には、私は多少、やはり違ってくると思います。これは御承知通りに、現在の自衛隊法の規定は、新条約の第五条とどこも矛盾する点はないわけでございます。従いまして、現在の自衛隊法七十六条が、この条約の第五条に違反することはどこにもない。従いまして、第七十六条によって、自衛隊の行動は行なわれるわけでございます。しかし、たとえば、自衛隊法の規定が将来改正されまして、たとえば自衛隊は一切外部からの武力攻撃には出動しない、いわゆる間接侵略のみであるというような規定ができたとすれば、その自衛隊法の規定は、この条約の趣旨とは——やはり問題になって参ります。そういう意味におきましては違ってくる。よその国の場合におきましても、たとえば憲法にそういうような規定が入れば、これはやはり、そういう相互安全あるいは集団安全保障の基礎が失われるわけでございますから、当自然その国としては、従来の条約を維持していくことができなくなるわけだと思いますけれども、そういうことは別といたしまして、形式的に言えば、自衛隊法は、現、在の五条とどこも抵触することがない。従いまして、自衛隊については、当然第五条の趣旨によるということであります。しかし、形式的な意味において憲法の規定と同じかと言えば、その点は形式的な憲法ではありませんから多少意味が違う、そういうことは従来から申し上げておるのであります。
  92. 門司亮

    門司委員 私は、条約の問題を聞いているのじゃない。日本の自衛隊法七十六条というのは、何度も申し上げましたように——外国では、軍隊を動かそうとすれば、国の憲法によらなければならない。憲法は、法律よりはもっと高度なものであることは、あなたも御承知でしょう。日本には、その軍隊に関する憲法はどこにもない。戦争をしてはいけない、軍隊を持ってはいけないという憲法なんです。そういう憲法を持っているときに、日本の軍隊が動き得るのは、七十六条によるということになりましょう。それであなたは、動かすことを憲法違反でないとおっしゃるでしょう、それは憲法違反でないかもしれない。しかし、日本の立場から言えば、外国では憲法でなければ軍隊を動かせないが、日本憲法は、軍隊を持ってはならないと書いてある。しかし、自衛隊法七十六条で軍隊を動かしてもいいんだということは、国内憲法とこの自衛隊法七十六条との開きは、大きなものがあるでしょう。七十六条があるから、軍隊を動かしてもいいんだということが、簡単に言えるか、どうかということなんです。特に自衛隊法から考えて参りますと、憲法の趣旨から考えて参りましても、自衛権の発動その他についてはいろいろ議論がありましょう。ありましょうが、この条約締結いたして参りますと、少なくともこういうことが想定されるでしょう。かりにアメリカが、極東の範囲以外のところで戦争をしておる場合がないとは限らない。そうした場合に、相手国は、もし日本におけるアメリカの基地をたたくことが戦略上有利だと考えれば、日本アメリカとどんな契約があろうと、そういうことに一切おかまいなしに、日本の基地がたたかれる危険性があるということです。このことは、明らかにアメリカ戦争日本が背負うということになるでしょう。(「不法の侵略に対抗するだけだ」と呼ぶ者あり)あなた方は、これを不法の侵略だと言っているのでしょう。アメリカの、現在日本にある基地が攻撃されれば、それは日本攻撃されたと同じように考えて、これに対抗すると言っておられるのです。そうすると、結局、この条約にきめられない、日本の領土の中でもない、極東の範囲でもない以外でかりにアメリカ戦争をしている場合に、相手国がそういう処置をとった場合には、いやおうなしに日本が立ち上がらざるを得ないでしょう。この問題は、明らかにアメリカ戦争日本が背負うということにならざるを得ないでしょう。これがこの条約の骨子なんでしょう。日本だけに区域が限られておれば、あるいはそういうことはないかもしれない。しかし、条約自身を締結いたして参りますと、しばしば政府答弁いたしておりますように、アメリカの基地が攻撃されたら、日本攻撃されたと考えることになっているでしょう。そうすると、アメリカ行動は、極東の範囲行動する場合以外の行動があり得るのであって、その場合には、お話しのありましたように、いやおうなしに日本侵略に対抗して戦うということになる。そうすると、アメリカ戦争日本が加担するということになるので、この条約以外のものでそうした事件ができてくることは、だれが何と言っても事実なんです。そのときに自衛隊法の七十六条で出かける、行動することができるといたしましても、日本憲法は、外国との間に戦争してはならないという規定を持っておるのであって、これからこの七十六条自身が大きな憲法違反だと私は考える。この点についてはどうなんです。
  93. 林修三

    ○林(修)政府委員 第一段は、今の条約の問題と離れて、自衛隊法の規定が憲法違反じゃないかという御趣旨だと思います。これは従来から、自衛隊法が成立するとき以来、憲法九条違反ではないということをお答えしておるわけでございますし、また、そうであることが私は正しいと考えております。つまり憲法では、国の自衛権というものを否定しておらないわけでございますから、わが国が、外部から不当な侵略を受けた場合に、これに対抗する処置をとることは私は憲法に違反するものでないと考えます。そういう場合において、自衛隊というものがあって、その自衛隊が、外部からの武力攻撃に対して対抗するということをきめました自衛隊法全体につきまして、これは七十六条に限りませんが、自衛隊法全体の規定は、私は憲法に違反するものじゃない、かように考えておるわけであります。  それから第五条との関係でございます。これは法律的に申し上げますが、第五条で二つ今門司委員のおっしゃいましたことは、かりに日本にある米軍施設区域攻撃された場合に、日本に対する武力攻撃でないものを武力攻撃とみなしてやるようなお説でございましたが、私はそうは考えないわけでございます。これはまさに、米軍施設区域日本の領域内にある、そういう領域内に対して攻撃がしかけられた場合、かりに米軍施設区域をねらったものでありましょうとも、同時にこれは日本に対する攻撃であります。日本の領土、領域、領空に対する攻撃であります。従いまして、これに対して自衛隊が行動することは、国連憲章違反でもございませんし、憲法違反の問題でもないと私は考えております。  それからもう一つ、今おっしゃいました、たとえばアメリカがほかの方で戦争しておるという場合に、相手方が、日本米軍の基地かあるから、それをたたいた方が戦略上便利だということで、日本をたたくことが予想される、そういうことから、日本戦争に巻き込まれるのではないかということでありますが、まず第一に考えますことは、ほかの国で何らかそういう戦争が起きておるという場合におきまして、まず、国連憲章上戦争が正当引祝されるためには、要するに、相手方からの武力攻撃に対して、自衛権の発動のみが許されるわけであります。米国ももちろん国連加盟国でありますから、米国に対して武力攻撃があった場合にのみ、米国は、個別的または集団的自衛権を発動して行動するわけであります。そういう意味におきまして、米国は常に国連憲章に従って行動しておる、そういう前提でなければこれは考えられないわけであります。そういうことを前提として、かりに日本区域外で何らかの武力行動が行なわれておるという場合に、不正な戦争をしかけた方の国が、日本米軍がおるからこれをたたくことが便利だとして、日本の基地を攻撃することは、まさに戦争の上塗りでありまして、これは国連憲章上許されない。それと同時に、日本はそのときに、何らほかの国との間に武力戦争は何もない、それに対して、そこに米軍がおることを理由として日本攻撃してくることは、まさに国連憲章上違反の行為であり、不当な武力攻撃だ、かように考えますから、国連憲章上それに対して自衛行動をとることはもちろん認められますし、憲法上から見ましても、自衛権の範囲として許されることだ、かように考えます。
  94. 門司亮

    門司委員 今長い答弁をいただきましたが、一向わからないんですよ。私が聞いておりますのは、今のお話のように、たとえば国連憲章がありましょう、いろいろありましょうが、戦争というものは、世界の国際信義が守られ、国際条約が守られておれば起こらない。戦争というものは、それ以外の場合に起こる。従って、そういう万一の場合があって、日本がかりに爆撃を受ければ、当然日本侵略されたものとしてこれと戦う。そういうことになれば、アメリカとも共同の仕事をするということであって、これは明らかに軍事同盟だということになろうと思います。どう考えても、軍事同盟としか考えられない。この条約を軍事同盟と考えてよろしゅうございますか。
  95. 林修三

    ○林(修)政府委員 第一次大戦あるいは第二次大戦以前に、戦争というものが、国際間の紛争解決の手段として正当視されておった時代、国際連盟あるいは国際連合、特に国際連合になりまして、戦争というものは一切いけないんだという建前になりました時代とは、私は、おのずから戦争に対する観念は違ってきていると思います。特に国連憲章におきましては、武力行使を一切禁止いたしまして、特に例外的な場合として、五十一条によって、いわゆる個別的または集団的自衛権の行使という場合、国際連合の安保理事会あるいは総会の決議に従って加盟国が行動する場合、それ以外には武力の行使は認めていないわけでございます。そういう国際法社会になって参りました場合は、いわゆる戦争は、正当な戦争か不正な戦争しかないわけでございます。この二つに分かれるわけであります。従いまして、国連憲章に違反する武力行使が行なわれれば、まさにこれは不正な戦争でございます。そういう意味において、それに対して防衛することは、これはまさに正当な武力行使だということになるわけでございます。それは第一段といたしまして、何か日本区域外でそういうものが行なわれております場合に、そういう不正な武力行使をしている国が、日本米軍がいるから、それをたたいた方が自分の便宜である、そういう理由で、日本に対して攻撃をしかけてくるということは、国際法上許されない、国連憲章上許されないことであると思います。従いまして、日本に対してそういう武力攻撃がありました場合に、日本が国連憲章五十一条に従って自衛権を行使することは、当然正当視される、かように考えます。相手の国としては、かりに日本米軍施設区域がありましても、それを理由として日本攻撃することは、これは許されないことでございます。米軍施設区域日本の領域内にあるわけであります。日本の領域内にあるものを攻撃してそれをやることは、国連憲章上も許されない、かように考えます。従いまして、それはまさに不正な攻撃でございますから、これに対して日本が自衛権を行使することは当然許される、かように考えます。
  96. 門司亮

    門司委員 ちょっとどう考えてもわからぬのは、今の御答弁では、アメリカの基地と日本の領土というものと、二つに分けてお考えになっているのですね。アメリカの基地は攻撃ができるのだ、日本の基地は不法に攻撃できない、これはわかっておるのですよ。アメリカの基地を攻撃されれば、日本の領土として、これは日本攻撃されたとみなされる。そうすると、アメリカに現在貸与いたしておりまするすべての基地は、一面アメリカの軍事基地であると同時に、一面は日本の領土だというふうに政府は解釈しておりますね。その通りなんですね。そうすると、ここに問題が起こりますのは、さっきから申し上げておりますように、当然、日本あるいは極東の範囲に何らの関係のない事態が起こって、アメリカ攻撃される場合は、いやがおうでも、政府のような解釈からいけば、日本がその戦争に巻き込まれざるを得ないじゃないですか。ものは一つですよ。ものは一つのものを二つに解釈するということができますか。日本に対する侵略だとお考えになっている。そうなんでしょう。ものは一つですよ。基地は一つなんですよ。基地は一つであって、アメリカが使っておるからアメリカの基地だ、しかし、それは日本の領土だ、そういうことでしょう。攻撃する方はアメリカ攻撃してくるのですよ。これが自分の国を守るゆえんであれば、やはりアメリカ攻撃してくるのです。そういう場合に、当然日本が領土を攻撃されたからといって、受けて立つということになれば、そういう戦争に巻き込まれるということでしょう。だから、基地がなければ、そういう戦争日本が毛頭巻き込まれないということですよ。基地があるから、そういう戦争に巻き込まれるということですよ。これは一体どうなんです。だから、基地の提供をやめたらあっさりしているのです。基地があることのために、日本戦争に巻き込まれる危険性がある。こういう条約を結ぶと、そういう危険性があるということですよ。
  97. 岸信介

    岸国務大臣 外国軍隊に基地を与えるということは、日本が不正に侵略をされないために、日本の自衛力だけでは、外国から日本を不正侵略してくるのに対抗する力がないから、外国と共同して日本の国土を守る、民族を守るという体制——安保体制そのものは、今お話しのように、基地がなければ基地をたたかれることはないだろう、これは確かにそうでしょう。基地がなければたたかれることはない、そういうことは言えるでしょうけれども、しかし、基地を与えずして日本の安全保障の道があるかといえば、私どもは、日本の置かれている立場からいって、現行の安保条約もそうでありますが、今度の条約におきましても、やはり米軍に基地を与えて、そうして米軍日本の国土を守るという、不法に侵略されるという場合に対処して、これを排撃する方を作っておく必要があると思います。しこうして、今おあげになりました、全然日本関係のないことから、かりにアメリカが何かのところにおいて問題を起こしている場合、そうしてその相手国が、戦略的な意味から、あるいは自分たちの便宜の上から、これを攻撃するということは、あくまでも日本の領土に対するところの攻撃でありまして、五条にいう不当なる武力攻撃であることは、これはいなむことができないと思います。従って、それに対して、日本日本の自衛権を発動して国土を守るということは、当然やらなければならぬと私は考えております。
  98. 門司亮

    門司委員 そうすると、こういうふうに解釈してよろしゅうございますね。総理言葉をそのままとって参りますと、かりに日本関係のないことでどこかで戦争をして、そうして戦略的に、日本アメリカの基地を相手方がたたいてくるということは、そこまではアメリカとその国との戦争だ、しかし、日本の基地がたたかれれば、日本攻撃されたものとして立ち上がる、こういうふうに解釈をする。私は総理答弁はその通りだと思います。そうだとすれば、戦争が起こってきた原因というものが、日本に何らの関係がない、アメリカと他国の戦争を、いやおうなしに日本が背負わなければならないという結論に大体なろうかと私は思いますが、そういうふうに解釈してよろしゅうございますね。
  99. 岸信介

    岸国務大臣 今門司君の設例は、国際法的に、今日の国際社会においては許さるべきことでないことが行なわれるということを、前提としての議論であります。それは他国が日本におけるところの米軍の基地を攻撃することが正当であるという見地に立っての御議論のようでありますけれども、いかなる理由があろうとも、日本におけるところの米軍の基地を、そういうふうな武力攻撃をするということが、今の国際社会においては許されておらないということを前提にしてお考えになるならば、私のお答えをきわめて明瞭に御理解願えると思います。
  100. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 この際、竹谷源太郎君から関連質疑の申し出があります。これを許します。竹谷源太郎君。
  101. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 ただいま門司委員から質問している事項については、政府はいつも同じことを繰り返し、そして、これはどの委員も満足できません。関連して皆さんやりたいことでございます。これはもう少し誠意ある答弁をしてもらいたい。アメリカはいつでも正しくて、アメリカの相手方となっている国はいつでも侵略者である、こういう前提に立っておりますが、その前提は正しくありません。アメリカのみが正しくて、その他の国がみんな悪いのだという前提はいけない。でありまするから、これは誠意を持って一つ答弁をしてもらいたいのですが、それは門司委員あとでまた御質問を継続されると思います。  私は、その前に、門司委員から疑問のありました、第五条の憲法上の規定及び手続という問題でございますが、これについて林法制局長官は、自衛隊は当然憲法上の規定に含まれるという答弁を幾たびかやっております。その憲法上の規定というものに含まれる法律は何々であるか、具体的に一つ示してもらいたい。要点だけ言えばいいのであって、いろいろ長々と時間を、浪費しないようにお願いをしたい。
  102. 林修三

    ○林(修)政府委員 その点は、私のお答えいたしました速記録をお読みいただければはっきりしていると思いますが、憲法上の規定に含まれるとは私は言っておりません。つまり、自衛隊法第七十六条は、形式的な意味において憲法上の規定ではない。しかしながら、条約の第五条は、わが国の場合において、自衛隊が自衛隊法の規定に従って行動することを何ら排除しておらない。従いまして、わが国の自衛隊は当然自衛隊法の規定によって行動するのだ、こういう趣旨をお答えしているつもりでございます。
  103. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 時間がありませんから、議論を省略して、要点だけ言いますが、そうすると、法制局長官の見解は、自衛隊法は、第五条の日本国憲法の規定には含まれないか、その精神が含まれるのだ、自衛隊法第七十六条の精神が含まれるのだという意味だろうと思う。それならば、その自衛隊法第七十六条の規定の精神は憲法のどこにあるのか、それをお尋ねしたい。
  104. 林修三

    ○林(修)政府委員 この新条約第五条はこれはごらんになればわかります通りに、それぞれの国が攻撃を受けた、日本の領域内に対して武力攻撃が行なわれた場合には、日本が自衛権を行使する、あるいはアメリカも自衛権を行使する、こういう趣旨を規定したものであります。つまり、共通な危険に対処するため必要な行動をするということを規定しておるわけであります。その規定自身、自衛隊法七十六条の規定によって自衛隊が行動するについて国会の承認が要るという規定をどこにも排除してない、私はその精神は当然これに含まれている、かように考えております。
  105. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 排除しないでは、憲法のどの規定に基づくかという根拠にはならない。  そこで、私は総理大臣にお伺いしたいのであるが、この日本国憲法の規定という中に、憲法第九条の入っていることは、すでにこれは政府が認めているところであります。ところで、国会の承認を得なければならないという、こういう自衛隊法の第七十六条は、条約によって排除はされておらないという今の林法制局長官答弁であるが、排除どころか、これもまた、当然憲法の規定に基づかなければならない。その憲法の規定は、日本国憲法第四十一条の、国権の最高機関であり、国の意思の最高決定機関である国会が——国として自分の生存をかける、存亡のために不可欠の、戦争という、自衛隊出動という行動をなすこの重大事件は、憲法の第四十一条の精神からいって、当然国会の承認を得なければならぬ、行政権だけできめてはならぬ、この精神は、憲法の第四十一条の規定を——特に根拠を求めれは、この精神からきている、このように解されるのではないか。単に、第五条によって自衛隊法の第七十六条を排除はされていないというようなことでは、これは世界に通用しない。この憲法上、われわれは、自衛隊の出動は当然国会の承認を得るという明文を置くべきであるということを今でも強く主張しておりまするが、その根拠としての憲法第四十一条がここに厳として存在するという上にでもなければ、とうてい、この自衛隊法の第七十六条の精神が当然あるのだということは言えないのであるが、これはどうお考えであるか、総理大臣の御見解を承りたい。
  106. 岸信介

    岸国務大臣 これは憲法上の解釈の問題でありますが、私は、憲法四十一条を直接に今援用しての御議論でありますけれども、やはり自衛隊を動かすことについての国会の承認を得るということは、自衛隊法の規定によって、七十六条でありますか、その規定から直接に出てくる、こう従来政府お答えを申し上げておりますが、やはりそういう解釈が適当である、こういうふうに思っております。
  107. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 そうすると、政府は、やはり憲法の規定ではないところの、自衛隊法第七十六条によって国会の承認を得なければならない、このようにお考えだというのですか、今最後の総理大臣答弁は明確でなかったのだが、そういう意味でございますか。
  108. 岸信介

    岸国務大臣 そういう意味でございます。
  109. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 それならば、なおさら、これは交換公文というものによって明らかにしなければならないことである、このようにわれわれは断言せざるを得ないのでございます。  なお、私は門司委員質問に関連して防衛長官にお尋ねしたいのであるか従来も、日米両国の自衛隊並びに軍隊が、日本の領土内もしくは極東において日米合同演習をやっておったのではないかと思う。その合同演習があったとすれば、その実施の回数は何回であったか、その場所や目的はどのようなものであったか、承りたい。
  110. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 先ほど防衛局長からも御答弁申し上げましたが、通常日米合同演習といわれるものに二種類あったわけであります。その一つは、両方、すなわち、日本及びアメリカが並立した指揮権のもとで同時に訓練を行なって、その効果を高めたということ、もう一つは、日本にいろいろ訓練をするのに不足しているものがあります。そこで、潜水艦艇を動かすのに、それの貸与を受けるということがありましたが、今の並立した指揮権と違って、日本の方と同時に演習訓練を行なった、すなわち、アメリカ軍が自己の訓練を自衛隊の訓練とあわせて行なった、こういう二種類があったのであります、実態からいいますと、合同演習といいましても、日本の自衛隊の練度の向上ということが実態でございます。どういう回数でやったかということも、ここに私は持っておりますけれども、事務当局から御答弁いたさせます。
  111. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 海上自衛隊といたしましては、昭和三十二年五月上旬、相模湾において行なっております。九月中旬に、横須賀から紀州沖方面、昭和三十三年に至りまして、四月から五月の上旬にかけまして、相模湾から九州沖方面、七月上旬に、本州南方海面、十一月下旬に、同じく本州南方海面、三十四年の三月中旬に、横須賀から九州南方海面にかけまして、同じく五月下旬に、横須賀から九州南方海面、二十四年の八月上旬に、対馬海峡及び日本海方面において、十一月下旬におきまして、横須賀南方方面、三十五年の三月上旬に、横須賀から四国沖方面において対潜特別訓練を実施いたしております。掃海につきましては、三十年の四月下旬に佐世保港外、五月下旬に佐世保港外、三十一年の六月中旬と上月下旬に広島湾、九月中旬に愛媛県沖、三十二年の一月下旬に長崎港外、八月下旬に広島湾、十月上旬に愛媛県沖、三十三年の四月下旬に長崎沖、八月下旬及び十二月上旬に広島湾、三十四年の六月下旬に伊勢湾、七月下旬に唐津湾、十一月下旬に広島湾ということでございます。  航空自衛隊におきましては、大体月一回程度、先ほど申し上げましたような米軍の戦闘機及び軽爆撃機等の協力を得まして、レーダーによる捕捉追撃及び要撃というような訓練を行なっております。
  112. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 そこで、もう一言お伺いしたいのですが、昭和三十四年、昨年の三月二日に、バンコックでエア・プログレスという演習が行なわれた。これは日本は参加したのですか。もう一つ、同じ昨年六月一日に、フィリピン海域でやはり行なわれた。これは日本の自衛隊が参加いたしましたかどうか。それから、時間がありませんから、もう一つ、今、過去における合同演習の状況を承りましたが、この新安保でもできたら、共同防衛という見地から、一そう合同演習をやらなければならぬと思うのです。一体、今後の演習の計画はどんなものであるか、それもわかっていれば、お知らせ願いたい。
  113. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 今おあげになりました三回の演習でございますが、自衛隊は参加いたしておりません。今後の演習の計画はまだ私承知しておらないのでありまして、必要に応じてやることになろうと思います。
  114. 門司亮

    門司委員 それでは、私、時間が実はございませんので、直ちにその次の質問に入りたいと思いますが、六条に規定しておりますのは、はっきり言えば、基地の提供だということになろうかと思います。そこで、問題になりますのは、現在までも基地をアメリカ車に貸与いたしております。それから同時に、アメリカ軍が駐留していることも事実であります。私はこの際はっきり聞いておきたいと思いますことは、講和条約前の問題、それから講和条約後の問題と、二つに分けてけっこうでございますが、このアメリカ軍が日本に駐留しておることによって日本国民の受けた物的、人的の損害は一体どのくらいあったかということを一つ示していただきたいと思います。
  115. 丸山佶

    ○丸山政府委員 講和条約発効以後は、米軍関係の事故あるいは不法行為によります損害に対しましては、御承知通り、十八条で処理しております。その調達庁が取り扱いました総体は、平和条約発効以後昨年の十二月までの統計で見ますと、事故の数にして約一万件、これに関する被害額が七億八千万円でございます。この内訳は、約一割弱は、米軍の公務上、すなわち、米国軍隊自身が責任を負うべきものではなくて、公務外の軍人軍属の個人の関係するもの、すなわち、十八条で申しますと、五項によるものが約一割弱で、この金額が七千万円でございます。その他のものは、第三項によります公務上のもの、合衆国軍隊が法律上責任を負うべきもの、これでございます。それから、事故の種別を見ますと、約九割が、自動車の衝突あるいは接触という交通事故でございます。そのほかに、飛行機の墜落あるいは落下物による被害のもの、また、海上において船舶が日本の漁船に触れる、あるいはノリその他の浅海養殖業に被害を与える、こういうものがその他のおもなるものでございます。なお、占領時代の関係は、御承知通り政府では見舞金処置によりましてこの関係を処理しておりまして、その状況が、二十八年までの統計で見ますと、人事被害関係が六千六百四人でございまして、約三億円の見舞金を出しております。しかしながら、この問題に関しましては、平和条約発効後におきましても、なお支給漏れがある、その見舞金を受け取っておらないものがある、こういうことで、昨年調達庁調査をいたしまして、それらの申し出をわれわれまとめましたところ、現在までに判明しているもの二千五十人ほどがその見舞金を受け取っておらない、こういう事情が判明しております。
  116. 門司亮

    門司委員 私はそういうことを聞いているのではないのです。物的、人的の被害だけを聞きたいのである。何人殺されて、何人けがをして、何がどうだということを聞けばよいのであって、まだ始末があるとかないとかいうことを聞いているのではありません。ごく簡単に、人的被害がどのくらいあったか、それから物的の被害がどれだけあったか、それを言っていただけば、それでけっこうです。
  117. 丸山佶

    ○丸山政府委員 人的被害の総件数でございますが、そのうち、平和条約発効後、遺族、つまり、死亡に至ったもの、その件数が四百一件でございます。
  118. 門司亮

    門司委員 そこで、今発表がございましたが、そのほかに、基地があることのために日本国内にはどういう事情があるかということ等については、これは防衛庁もよく御存じだと思いますが、私の手元にあります資料を一つ、これは防衛庁にあるはずだと思いますし、総理一つ見ておいていただきたいと思います。これは一つの写真ですが、日本に、御承知のようにアメリカジェット機の演習場が三カ所ばかりあるわけであります。その中の一カ所に、例の福岡県の遠賀郡の岡垣村に一つジェット機の演習場があります。これは岩国と、それから例の福岡の飛行場から演習に来る連中が爆弾投下の演習をしておるところでありますが、この実情を見てみますると、ここに写真がございますが、二百五十ポンドの模擬弾が写真になっておりますが、これが昨年一年のうちに、大体一カ月四トン半くらいの平均で誤爆が行なわれて、そして標的から、はなはだしいのは四キロ以上離れたところに爆弾が投下されているのですが、投下したとは言わない。米軍はこれを誤爆だと言っておりますが、そうすると、一つの村の中に——いまだに日本国内にこういう場所が三カ所ある。これらの問題については、損失を一体どう補償しているかというと、この誤爆されて、一発たまを落されたところには百円しか出していないのです、ところが、村全体の精神的な被害というものは非常に大きいものである。一カ月にすれば十日に一回以上のものが、いつどこから出てくるかわからぬところから、上から降ってくるという状態、ちょうど戦争と同じような状態が、いまだに日本の地域の中に三カ所繰り返されている。ここにあります書類は——何月何日にだれそれのところに落ちたという、大体はっきりした資料は防衛長官お持ちになっているはずです。こういうものについて何らの処置がとられておらない。この基地の提供によるこういう現在までの被害というものは非常に大きいのであって、従って、私は、今度の問題につきましても、こういうものが先ほど申し上げました協議の中に入って、こういうものをやめさせることができるかどうかということであります、アメリカ軍の演習をすることのために、こういう条約があることのために、日本国内にいまだに戦争中と同じような状態に置かれておる地域が三カ所あるということである。こういうものについての政府処置を一体どうお考えになりますか。
  119. 丸山佶

    ○丸山政府委員 お話通り、遠賀には芦屋の対地爆撃訓練場がございます。同様の種類のものが水戸及び三沢の付近にあるわけでございます。お話のように、確かに、過去においては相当この区域内にたまが落ちるというような、いわゆる誤投下事件というものがございましたので、数年前より米軍と十分に折衝し、その対策を協議いたしまして、一昨年の末にこれに対する措置を合同委員会で特別にきめまして、それ以後の同様な事故というものは、私は非常に少なくなっておると承知しております。なお、そのような誤投下事件がありましたならば、先ほど申しましたように、十八条の三項の規定によりまして、調達庁では現実の被害を調べ、すみやかにその適正なる補償措置をとっておるつもりでございます。
  120. 門司亮

    門司委員 私は今申し上げましたように、今調達庁長官が、あまりそういうことはないと言いますが、そんなら日にちをはっきり申し上げましょう、昨年一年に——私の持っている地図は、昨年一年に落ちた地図です、二年前の地図じゃないですよ。三十何カ所がここにちゃんと書いてある。これではどうにもならぬ。これは誤爆であります。このほかに、薬莢その他が、この演習場外に落ちる数は、これは勘定し切れないほど落ちておる。言いかえるなら、薬莢等は、ほとんど雨が降っている——という言葉は少し大き過ぎるかもしれませんが、事実上は、この村全体——日本の三カ所のこういう村というものは、こういう爆弾の始終誤爆される雨の中に生活をしていると申し上げてもちっとも差しつかえがない。このことは、私は単なる今の調達庁長官答弁のように、受けた被害だけは補償しているからよろしいというわけには参らぬと思う。こういうものについては何ら処置がされておらない。ことしになっても爆弾が落ちている。聞き合わしてごらんなさい。調達庁では、そのくらいのことは知っておるはずです。もし必要であるならば、ことしになってい落ちたのを調べてもよろしゅうございます。こういう問題を一体どう処置されるつもりなのか。これが今後、この条約によって完全に軍事同盟の形ができてきて、そうしてより以上基地の強化が行なわれる、あるいは数がふえてくるということになりますると、ますますこういう事件はふえてくると思うのです。こういう物騒な地域があるということは、政府は御存じだと思う。こういう問題については、なぜ一体政府は、もう少しはっきりした態度で臨まれないのか。日本のこういう地域かある。何らの関係のない住民が住んでおるところに、こういう危険なものが落ちてくるというようなことは、除去できるはずなんです。政府が、日本国民に対するきわめて冷淡な態度アメリカに追随するだけの態度をとっているから、こういうものの排撃ができないのである。もう少し日本国民状態というものを知ってもらいたい。総理は、こういう問題に対してどう処置されるか。即刻アメリカとの会議を開いて、そうしてこういうものを除去されるかどうか。黒いジェット機の問題もありますが、この問題は、現実の問題として毎年起こりつつある問題なんです。どう対処されるか、このことを一つ聞いておきたいと思います。
  121. 岸信介

    岸国務大臣 現実には、この日米の間の合同委員会において、そういう問題についての打ち合わせをいたしておると思います。また、それにおいて、日本側の要望を実現するように従来も努力しておりますか、さらに私は、今門司委員のおあげになりましたような実情につきまして、実ははっきりした事実もまだ把握いたしておりません。従って、十分その事実を把握いたしまして、この日米の間の合同委員会においてこれが処理を——起こさないような措置に関して、日本側の考えを十分実現するように努力いたします。
  122. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 この際、堤ツルヨ君から関連質疑の申し出があります。これを許します。堤ツルヨ君。
  123. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 ただいま門司委員からお触れになりました在日米軍基地の問題については、再三再四条約局長、林法制局長官と、速記録に残っておりますところでございますけれども、私は、これはぜひもう一度おさらいをいたしまして、はっきりと速記録に残したいと思いますので、関連して質問をいたしたいと思いますが、林法制局長官条約局長も、こういう答弁をしておられる。たとえば、四月十三日の私の質問に対してもこうでございます。たとえば日本にありますところの在日米軍基地が、アメリカがどこかの国から行っていざこざを起こした、その報復として日本が基地の空襲を受ける、こういうことになりますと、これはどうかというと、アメリカ以外の相手の国の侵略の連続であって、拡大されたものであって、違法であるからそれば許されないことである、こう答えてこられたわけなんです。私は、これは違法であるか適法であるかということは、戦争事実が発生してしまいますると、お互いに、片方は、うちの方こそ適当である、いやこちらこそ違法でないと言い合っておりましても、これを即座に、審判で違法か適法であるかということを決定するまでに至りませんから、両方ながら適法だといって立ち上がるわけです。両方ながら適当だといって立ち上がって戦争事実が発生してしまいましたならば、戦時国際法は、その二つの交戦国に対して公平に適用されるわけでございます。たとえば、先方は違法戦争であるから戦時国際法を適用しない、片方は適法であるから戦時国際法を適用する、こういうものでなくして、違法適法にかかわらず、両方ながら五分々々で、ともに戦時国際法の適用を受けるわけだと私は解釈いたしております。そこで、そういうことになっておりますると、今までの国際法の慣例から申しますると、戦時における軍事基地の国際法上の地位というものは、私は、当然に戦争区域に入るものであって、争う余地のないところのものである、こう考えるのでございまするが、この点どうお考えになりますか。まず、これにちょっと答えていただきたい。
  124. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 ただいまの点でございますが、たびたび御答弁申し上げた通り考えております。すなわち、ただいまアメリカがどこかでいざこざを起こした、そうしてその結果として日本の方にさらに爆撃が行なわれた、こういうことをおっしゃいましたが、このどこかでいざこざを起こすということは、そこで武力攻撃が起こったこと、しかも、そこで米国に対する違法なる武力攻撃が行なわれた、こういうことだと考えます。従いまして、それにつきまして、その後日本に対して爆撃がさらに行なわれるとすれば、その違法な武力攻撃の拡大、かつ続行でございます。それはアメリカに対しても、日本におけるアメリカに対しても、日本自身に対しても、そのように考える次第であります。  それから、先ほど戦時国際法云々の問題を御提起になりましたが、この交戦区域云々ということ、これは概念の問題であろうと考えますが、戦時国際法、昔の国際法で交戦区域というと、交戦している双方以外の場所が、その場所において適法に武力攻撃、武力を行使しているというふうな意味合いに考えますれば、また、そういうふうに考えられておるものだと思いますが、そうなりますと、これは日本に対する侵略の拡大、続行でございますから、決して御指摘のような交戦区域ではないわけでございます。  それから、さらにその基本として考えますのは、そのような武力攻撃が起こった、いざこざが起こったといいますが、その場合には、どちらが違法な武力の攻撃であるか、どちらが適法であるかということをはっきりさせる、そうして、これに対して措置をとるというのが、国際連盟以来作られました国際の平和機構の根本原則であると私は考えております。従いまして、国連憲章でも、その根本原則のもとに、すなわち、武力攻撃という違法なことに対して措置をするんだ、侵略という違法に対して措置をするんだという基本原則の上に立っておりますから、その基本原則のもとに考えるべきであると思います。
  125. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 ここは大事なところでございますけれども、どうも高橋条約局長は岸内閣の立場に立ってお考えになっておるから、従って、常にアメリカが正しくして立ち上がったという頭でもってお答えになる。従って、その報復として在日米軍基地が攻撃を受けるということは、常に侵略されることだ、不法であるという頭でもってお答えになっておる。それは違法適法という問題は別にして、私があなたにお聞きしたいのは、あなたがいかにのがれられましても、米国が極東におけるところのある国と交戦状態になって、わが国の米軍基地が戦闘作戦行動のために利用されますならば、その相手国は、国際法上在日米軍基地を当然に戦闘区域とすることは、国際法上当然適法行為であります。私は、この適法行為、従って、在日米軍基地の破壊及び在日米軍の撃滅を目的として攻撃してくることも、国際法上当然、向こう方から言わせれば許される行為でございまして、私は、この行為が国際法上違法であるとするならば、もし政府がそういうことをお考えになっておるのでございましたならば、法的根拠を明らかにしてもらいたいと思います。
  126. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 私、ただいま申し上げたことで尽きているのではないかと考えますが、日本区域以外でアメリカと交戦関係に入ったというところにおいて、すでにわれわれといたしましては、また世界の国といたしましては、また国連憲章といたしましては、それがそこを不問に付するわけにはいかないわけでございます。従いまして、そこから、われわれは、直接関係あるといなとを問わず、世界の国々は、ともに平和の機構という立場に立ちましては、そこをはっきりしなければならない。  それから、アメリカが違法云々という問題、絶えず適法行為ばかりやって、悪いことはしないというような問題でございますが、それはその前に、この憲章の加盟国でございますし、この第一条にも、違法な武力行使はしないということをお互いにはっきり確約しておりますし、この立場で違法というわけでございます。
  127. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 国際連合憲章の中にうたわれておる通り、今日対立いたしますところの大国が、これを順守いたしておりますならば問題ではない。しかし、国連の機構が一人前でなく、大きな力のかけ引きがあって、不法行為が両方から行なわれておるという現実のもとに立って、公平にものを考えなければならない。従って、私は、高橋さんや、法制局長官の林さんがいかにお逃げになりましても、国際法上の慣例は、日本の軍事基地というものは、戦闘作戦行動に戦時中使われる以上、日本は交戦区域に入るものであるということは世界の常識であるということを、もう一度あなた方に反省を求めまして、質問をお返しいたします。
  128. 門司亮

    門司委員 お約束の時間も大体きておりますので、簡単にいたしますが、もう一つ、二つ聞いておきたいと思いますことは、基地の提供によってくる日本国内におけるいろいろな問題、いわゆる六条の規定に基づく行政協定の問題がございます。これらの問題については、ここできょうこれから質問を申し上げまする時間がございませんので、私はこの点については後日に譲りたいと思いますが、たとえば基地を提供するということによって、いろいろな問題の中に、一つ日本の役務の提供というものが書いてあります。これは当然出てきます。この役務の提供につきましては、実はかなりいろいろな問題があるわけでありまして、日本の数万の労働者が関係をいたしておりまする労務基本契約の中にも、実は軍事に関係したいろいろな条項があるわけであります。これらについて、政府は一体どういうふうにお考えになっておるか。その点は、調達庁は大体御存じだと思いますが、労務基本契約の職種の中の九十一から九十九までの間に書かれておる。それからそのほかまだいろいろなものがあります。この中で、私どもは、この軍に関係したものとして、単なる役務の提供というだけでなくして、実際軍の行動協力していく、いわゆる労務者としての作業というような範囲を越えたものがあるように感ずるが、この点についてちょっとだけ私は聞いておきたいと思いますが、政府の意向をこの際はっきりしてもらいたい。そのことは、調達庁ではすでに十分御存じだと思いますが、九十一には、御承知のように、職種の中で軍事情報顧問というのがあります。軍事情報顧問というのは、アメリカの極東軍の司令下にあって、そうして軍事情報をいろいろ集める役目、言いかえますならば、スパイのような役目をすることが、大体これに書かれております。もし必要であるとすれば、私の手元にもありますし、政府の方にもあるはずでありますから、ごらんになればわかります。その次には、軍事情報分析員というのが、A、Bという二つの任務をおのおの持っております。これも軍事情報をどう分析するかということに、日本の諸君が参加をするということ。その次の九十四には、地理学者という一つの職種があります。この地理学者というのは、日本国内におけるいろいろな地理的条件その他が、作戦その他にどう関係するかということを調査する機関であるということになっております。その次の九十五には、情報調査員に関する問題があります。九十六には、兵器材料検査員というのが、これが九十七と両方にA、Bに分かれておる。さらに九十八には、上級作戦分析員というのが規定してあります。それから九十九というのは作戦分析員。これらの諸君は、いずれも旧軍人に関係のある人か、あるいはいろいろなこれらに該当する職種に、十年ないし十五年経験がある人というようなことで限られております。従って、これには相当の報酬が払われておりますが、こういうことは、なるほど日本の役務の提供であって、そうして軍がいたしておりますいろいろな仕事を手伝っておること自体というものについては、多少の問題がございましょうが、これはまあ一般の労務者としての取り扱いとして、私はよろしいかと思いますが、直接これらの軍の作戦行動関係のある部面にまでも、日本が役務提供というものをしなければならないかどうかということ、これは言いかえまするならば、悪い言葉で言えば、ある程度のスパイ行為というようなものを規定づけた一つの行為ではないかというふうに、われわれには考えられてならないのであります。こういう点についての政府の見解を、この際はっきりしておいていただきたいと思います。
  129. 丸山佶

    ○丸山政府委員 御指摘のように、労務基本契約に基づきまして、ただいまのような職種に関する労務者を軍側に提供いたしております。これに関しましては、駐留米軍というものは、安保条約に掲げる自的遂行のために日本に駐留する軍隊であります。軍隊の必要な活動の一部として、いろいろインテリジェンス・アクティビティというものが付随するのは、当然であると考えております。これに必要な手助けをするために、日本人を必要とする。これを労務契約に基づきまして調達庁が提供することは、私は差しつかえないことである、さように考えます。
  130. 門司亮

    門司委員 これと同じ資料は、政府の方でも持っておるはずであります。任務その他が全部書いてあります。きょうこれを一々ここで議論する時間がありませんから、私は議論をいたしませんが——よろしければこれからやることを考えますが、とにかくこういう問題を一応私どもは討議することで、まだ六条には非常に大きな問題を実は含んでおります。しかし、きょうは約束の時間がきておりますから、これ以上きょうは聞きませんが、最後に私は聞いておきたいと思いますことは、今までの質問の中ではっきりしない点が一カ所ありますので、この点をはっきりしておいていただきたいと思います。  そのことは、事前協議につきましての問題でありますか、政府答弁を聞いて参りますると、日本の領域外に、いわゆる極東の範囲米軍作戦行動をいたします場合に、日本はこれと協議をして、そうしてやる、こういうことになっておるのであります。こういうふうに解釈して差しつかえない、今までの答弁はそうなっておると思います。また、条約も実際そうなっておると思います。日本の基地を使って飛び立つ場合でありますから、日本の領域以外の極東の範囲を、大体作戦行動範囲ということに私どもは解釈をしておるのであります。また、政府もそういうふうに答弁しておられるのでありますが、その極東の範囲はどれだけだかわからぬ、明確にはなっておらぬが、とにかく極東の範囲米軍日本の基地から飛び立って、あるいは軍艦も行動するということになっております。これは事前協議に当てはまるということになっております。そうなって参りますと、明らかに他国の軍隊の行動に対して日本が参画するということを申し上げても、私はちっとも差しつかえがないと思う。これは承認を与えるのでありますから、明らかに参加するということになろうかと思います。そういたしますと、日本憲法は、少なくとも国際紛争その他のため、あるいは海外のそういうものについては、一切の国際紛争解決のために武力を使わないということを条項にはっきり書いております。米軍作戦行動というものは、広義に解釈をいたして参りますと、国際紛争解決のための行動だと考えても、私はちっとも差しつかえないと考えております。そうすると、この日本憲法、いわゆる国際紛争に日本関係をしない、武力を使わないということを明確に書いておるときに、この米軍作戦行動に参加するということは、明らかに憲法のこの条項に、まっこうから違反するものだと私は考えておるが、この点はどうなんです。
  131. 岸信介

    岸国務大臣 作戦行動協力するというようにおとりになっておりますが、今、現行の安保条約において、基地を持っておって、そうしてその基地の自的は、日本の平和と安全を守り、同時に、極東の平和と安全、国際的平和と安全を守るという意味でございまして、現在のところは、米軍は何ら日本意思いかんにかかわらず、勝手に行動できる、こういうことでございます。しかし、今後は、そういう作戦行動をする場合には事前協議の主題として日本協議して、日本意思に反して勝手な行動はしないということを、今度の交換公文できめたわけであります。従来の自由な行動範囲を、この意味においては制限するということになると思います。私どもは、この範囲において、この協議にあたって、日本の平和と安全ということに直接深い関係のない事態で出ていくというような場合においては、これを拒否するということを申しております。従って、この米軍行動というものは、日本の平和と安全というものに深い、密接な関係を持っておるという場合に限って、日本の基地を使用して戦闘作戦行動ができるということになるのでありまして、現在の、無制限にこれを使用して、米軍の思うままに活動するということは、いろいろな意味において日本が不安に思い、日本意思というものが認められないということを、今回の改正において、事前協議の対象とするということにおいて、今申したような意味の制限をしよう、こういうことでございます。
  132. 門司亮

    門司委員 どうもその辺の解釈がいまだはっきりしないのですが、作戦行動なんですよ。いわゆる戦闘作戦行動なんですよ。戦闘に出かけのですね。それなら、日本の安全と平和のためにどういうふうに役立つかということの判定を一応されて、そうして岸総理言い分では、そのときに許可するかしないかをきめるんだ、こうおっしゃるんです。それで危険はない、憲法にも違反しないということをおっしゃるんでしょう。その場合に、問題になりますのは、日本国際紛争解決のためには武力を使わぬということになっておる。はっきりこう書いてあるのですね。そういたしますと、日本国際紛争解決のために使わないが、日本の安全を脅かす場合には、アメリカ軍は、日本と合議の上で戦闘行為をすることができるということになるのですね。そうなりますと、日本アメリカ軍に頼んで——という言葉は語弊がありますが、日本も侵されそうな、いわゆる国際紛争が起こりそうだ、その国際紛争の解決をまずアメリカ軍にやってもらおう、日本憲法があるから出られないから、アメリカさんの方で出てもらいたいというようなことに、大体具体的に言うとなろうかと思います。こういうことは、事実上の問題としては、日本の自衛隊がそこまで出かけていけないから、アメリカさんに頼んだということになるかもしれない。しかし、実際上の問題としては、その底にひそむものは、国際紛争に日本がやはり参加をするということと、もう一つの問題は、単に日本の安全、日本の領土の安全とその他ではございません。極東における、やはりアメリカの安全も、この条約の中には守らなければならないことになっておるはずであります。そういたしますと、日本の安全と別に、アメリカ行動というものは一つ考えられる。その場合に、私は最も重要な問題となって、ポイントになろうかと思いますのは、あなた方が事前協議をされると言っておりますが、その事前協議に対しますものの考え方において、アメリカは、日本よりもはるかに高度なデータを集める機関を持っております。はるかに高度な、優秀ないろいろの情報を集める機関を持っております。日本は、それらの情報というものをつかむだけの——実際の問題は、先ほどから私は少しばかり聞いたのでありますが、ほとんど持っていないのであります。そうすると、事前協議をするにいたしましても、格段の相違の中、認識の中で議論をしなければならない。これはどうしても強い方に、そのデータその他の資料を持たない方が負けるにきまっておるのであります。私どもはその点を非常に憂えるのであります。あなた方は、事前協議をするからいいんだということを言いのがれをされても、事前協議については、対等な資格と、対等の資料と、同じような立場にあるものならこれは別であります。日本アメリカとのそういう軍事上の情報その他については、格段の相違があると私は思う。日本政府では、これを反駁するたけの資料はお持ちにならないと思う。そうすると、結局アメリカ側の言いなりにならなければならないことは事実上なると私は思う。それに対する反駁は、あなた方にはできないと思う。そういたしますならば、この条項はきわめて危険なものであります。従って、この日本憲法に規定いたしております国際紛争に、どうしても日本が巻き込まれるということは、この作戦行動に対する事前協議をするから、これに巻き込まれるのであります。憲法に反対するのであります。今の状態ならば、アメリカさんが勝手に行くのですから、あるいは日本憲法には抵触しないかもしれない。日本責任はないかもしれない。その場合は、アメリカに対しても十分な抗議をすることができるかもしれない。しかし、今度は、協議にあずかって出ていった以上は、戦闘作戦行為に日本が参加するのですから、明らかに軍事同盟であり、憲法に違反するものであるということは、はっきり言えるでしょう。この最後の結論について、総理はどうお考えになりますか。
  133. 岸信介

    岸国務大臣 非常に、この事前協議の場合に承諾を与えてイエスと言った場合において、作戦行動にわれわれが参加するというふうにお話しになっておりますが、そういうことじゃございません。私どもは、国際紛争のために、日本が自衛力をいかなる意味においても使うということは考えておりませんし、また、条約のどこをおあげになりましても、そういう事実はございません。また、この条約自体が、国連の憲章を守るという、国連の憲章によってやるということを、再三規定の上に明確にしております。これは国際紛争の解決のために武力を使うということは、現在の国連憲章のもとにおいては、これは許されておることじゃございません。先ほど来しばしば言っておるように、武力を用いる、戦闘作戦行動をやるということは武力を用いることでありますから、武力を用いるということは憲章の五十一条と、それから国連軍を作ってやる場合とに限られております。従って、米軍が、これは従来ここで御説明を分けて申し上げているのでありますが、米軍が国連軍としてやる場合とか、あるいは他の条約との関係において作戦行動に出るという場合だとか、あるいは自衛権としてやる場合だとかいう場合におきまして、いずれの場合におきましても、憲章のこの五十一条その他許されておる場合だけしか、武力行動をするということはないわけでございますから、私どもは、先ほどお答え申し上げているように、決してこのイエス、ノーを言うことが、憲法違反になるという性格のものじゃない。われわれはそれに参画するという意味ではございません。今門司君の御意見でございますが、現在の安保条約のもとにおいて、米軍が無制限に、先ほどからの議論のような立て方をしますと、米軍というものはどういうことをするかわからぬというような、非常な、行動をそういうふうに考えますというと、現在の条文においてはそれが全然制限する道がない、それは非常に危険じゃないか、知っておるとか知らないとか、日本は意見を言うとか言わないとかいうことじゃなしに、現実に起こってくることは同じ——先ほどからの議論を基礎に置いてみるというと、結果は同じになる。それを無制限に現在しているところの条約というものは、非常に危険であって、これを日本意思において制約するという改正が、私どもは、これは改善したものである、こういうふうに考えております。
  134. 門司亮

    門司委員 その点が少しわからないのですがね。今の国連憲章五十一条等について非常に拘泥しているようですけれども、これから時間があれば、国際連合憲章の五十一条というものについての私ども考え方、それから、これの条約のできた経緯、そういうものが、大体事務当局では私は御存じたと思う。この憲章五十一条のできたときの国際連合における議論その他をわれわれが考えてみますと、五十一条というのはほとんど異例のものであって、国連憲章の精神とは違うのですよ、これは実際は……。国連憲章は、戦争はしない、ただ、個別的に自衛権というようなことは一応認めておるのです。ここで共同作戦ができたり、あるいは軍事同盟ができたりするようなことは、この五十一条で許されておる。これは国連憲章の精神とは全然反するものである。しかし、当時のできた事情から、やむを得ずこういうものができたのであって、政府ほんとう日本憲法を守られて、そうして、戦争を一切しないという憲法を持っておる日本を守られるならば、この国連憲章の五十一条にたよられること自身が、私はおかしいと思う。もう少しはっきりした態度で、日本の安全というものを守っていくということができはしないかということ、同時に、今総理は申されておりまするが、政府は御答弁を申されておりまするが、今までのは野放しだから危険だ、今度は制約するのだとおっしゃいますが、野放しであるならば、今の米軍の駐留を、われわれが主張いたしておりますように、有事駐留にされるならば、そういう問題は実際解消するのであります。それがどうしてできないかということです。
  135. 岸信介

    岸国務大臣 基地に対して有事駐留と常時駐留ということがございます。また、常時駐留することによって、先ほど門司委員の言われたように、いろいろな望ましくない事態も起こっておることは事実であります。しかしながら、この条約の真の目的は、日本が他から武力攻撃を受けるような事態を未然に防ごうということであります。そのためには、われわれはある程度の米軍の常時駐留を認めることが、日本の安全のために、今の国際情勢から言うと適当である、こういう信念に立っておるわけであります。
  136. 門司亮

    門司委員 今度この第六条の問題について、例の行政協定との関連性が実はかなり重要な問題でございます。この条約の全文というよりも、むしろ国民に直接関係のあるのは、この六条からくる行政協定であります。従って、この問題についての意見がかなりあると思いますが、これを一応保留しておきます。  最後に、もう一つ聞いておきたいと思いますことは、この条約の審議の経過——今提案されておりますのは、御承知のように、安全保障条約と、これから変わってくるところの行政協定交換公文と、それからこれに関連する国内関係法規がずっと出ております。これだけでございます。しかし、私どもは、単なる、今提案されておりますこれだけでこの問題を片づけるわけには参らぬのであります。それと関連しておりますものの中に、御承知のように、国際連合軍の日本国内における地位協定というのか、二十九年の六月に行なわれております。この問題と今度の行政協定との間には、実はかなり密接なものがございます。それからもう一つは、先ほど申し上げましたように、MSA協定というのが一つあります。これらの問題は全部一まとめにして、そしてこれの中からいろいろの問題を解明していきませんと、この条約ほんとうの解明はできないのであります。だから私は、政府に対しまして、この際……(「速記録に出ている」「速記録を読んで下さい」と呼び、その他発言する者あり)読んでもはっきりしていないから聞いている。それなら私はここで聞きますが、国際連合軍の日本国内における地位に関する協定、これと新しい条約との間にどういう議論がされたかということであります。(「吉田・アチソン交換公文だ」と呼び、その他発言する者あり)それは提案されておる。提案されていないそういうものがあるということです。
  137. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 門司君に申し上げますが、約束の時間が過ぎましたから、どうぞ結論に入って下さい。
  138. 門司亮

    門司委員 今いろいろ与党の方で注文があるなら、私は注文に応じて、これからこの新条約日本国における国際連合軍の地位に関する協定について質問を始めます。一つ聞いておいて下さい。
  139. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 門司君。門司君。——先ほど申し上げた通り、あなたの方の党と約束した時間が参りましたから……。     〔発言する者多し〕
  140. 門司亮

    門司委員 約束の時間がきておりますから、これで一応午前中の質問を打ち切りますが、以上申し上げましたように、行政協定その他にまだたくさんの疑義がありますから、質問を保留して、この程度で本日の質問は……。
  141. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後一時十六分休憩      ————◇—————    午後二時、一十八分開議
  142. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。横路節雄君。
  143. 横路節雄

    ○横路委員 きょうは、私は、総理大臣、外務大臣、防衛長官あとでまた運輸大臣に、主として、新安保条約の基本でございます国防をいかにするかという問題についてお尋ねをしたいと思いますが、まず最初に岸総理にお尋ねをしたいと思いますのは、きょうの報道によりますと、全世界の人々が期待しておりましたパリの巨頭会談がついに休会になったということに対して、岸総理はどういうようにこの事態をお考えになっておいででございますか。その点について最初にお伺いをいたしたいと思います。
  144. 岸信介

    岸国務大臣 私は、まだ、休会になったということの報告は——実は新聞も、さっきから面会するなにがあって、読んでないのであります。しかし、今朝までの報道によりましても、そういう危険性があるのではないかと予想されておったわけであります。これをどう思うかということでありますが、私どもしばしばこの席でも申し上げておるように、世界の両陣営の緊張を緩和する方向に向ってあらゆる努力をしなければならない、しかし、一回や二回の首脳会談で直ちに雪解けの緩和した状態が出るとは予期しておりませんでしたけれども、しかし、緩和の方向へこの会議が前進することを望み、また期待もし、それからさらに将来もそういうものが引き続いて行なわれるということに期待をかけておったわけでありまして、今日といえども、休会はされましたけれども、さらに緊張緩和ということの方向に向かって努力すべきであるということは、私は、各国の首脳者においては意見がみなその方向に向かっておると思います。ことに今回のパリの会議が、ソ連における米国のU2機の問題をきっかけにして休会になったということは、はなはだ遺憾であり、しかし、遺憾であるからといって、われわれの努力を今後打ち切るべきものじゃなしに、引き続いてその方向に向かって努力をすべきものである、かように思っております。
  145. 横路節雄

    ○横路委員 今、総理からお話もございましたように、休会の大きな原因は、ソ連領へのアメリカのU2機の、言いかえたら、スパイ行為であると思うのです。アメリカ国際法を無視した行為、しかも一部、冷戦政策をやりたいというような人々もあることは、現に疑うことのできない事実だと思うのです。しかも、このU2機は日本にも配置されており、これがソ連や中国を刺激していることも周知の事実ですし、本委員会においても論議をしたところであります。しかも、このU2機の配置は、安保条約並びに行政協定に基づいていることも明らかでありまして、すなわち、日本は、パリ会談を休会に陥れたアメリカの、言いかえたならば、冷戦政策に安保体制で協力しているのである、こう言っても私は過言でないと思うのであります。総理が、真に世界の平和、日本の安全を考えるならば、安保体制について、こういう事態の中で深刻な反省をすべきでないかと私は思うのでございますが、この点について総理はどういうようにお考えでございますか、一つお聞かせいただきたいと思います。
  146. 岸信介

    岸国務大臣 パリ会議が休会になったということのきっかけがU2機にあったということは、フルシチョフ首相の演説にも、そのことを激しい言葉攻撃しておるということでも明らかでありますが、さらに、外電の伝えるところ、その他、情報のなにによりますと、そういう事柄を取り上げてそこまでの強い態度に出たということについては、またいろいろな見方もあり、背景をなしているところの国内国際的の事情が、こういう問題でありますから、私は、当然あると思います。従って、今後われわれが平和の方向に話し合いの機会を作り上げていくという上におきましても、なかなか困難があることも予想しなければならないと思うのです。しかし、それにもかかわらず、努力していきたいということは、先ほど申し上げた通りであります。さらに、U2機の問題に関しましては、この委員会におきましてしばしば質疑応答が繰り返されておるところでありまして、日本に三機配置されておる、これがどういう使命を持ち、どういう行動をしておるか、また将来する考えであるかという点に関して、非常な不安と疑問が持たれたのでありまして、私どもも、そういう国民的な関心の強い問題であり、この実態を明らかにするために、アメリカに対して責任ある回答を求めたのでありますが、それに対してハーター国務長官回答があったことは、すでに報告しておる通りであります。われわれとしては、一応米国当局の責任ある言明を信頼していくけれども、しかしながら、なおそれだけでは国民の不安定なり疑問というものが一掃されるというわけにもいかぬ点がありますから、なお実態をよく調査して、これについては善処する、こういうことを申し上げております。
  147. 横路節雄

    ○横路委員 今、総理お答えになりましたU2機に対するアメリカ側の態度について、私は総理の御見解をただしたいと思うのです。ここに、政府の方から私たちの手元に渡されました「U2機に関する五月七日国務省発表」というのがございます。ここでは、御承知のように、今日の世界情勢下においては、すべての諸国によって情報収集活動が実際に行なわれていることは全く公然のことであり、そうして合法的な国防手段としてのこの種の活動は、自由世界に比し、ソ連が行なっている過度の秘密のためにその必要性が増大している、だから、アメリカの国防上からは当然なんだ、こういうことをいっているわけであります。この点は、さらにアメリカ大使館の文化交換局から私たちのところに、五月十日付で、査察旅行は自由世界に対する義務というので、ハーター国務長官の声明についても、アメリカ政府は、査察旅行をすることは自由世界の義務とみなしておるのである、こういうことをいわれておりまして、これがソ連を著しく刺激したと私は思うのであります。一体、こういうようなU2機に対するアメリカ政府の発表、声明というものは、なるほど、今総理からお話がございましたように、去る十日にアメリカ政府日本に対して、在日基地からのアメリカのU2機については、これはスパイ目的ではなくて、合法的かつ正常な目的にのみ利用されてきたし、今後もそうするのであろうとの保証を与えているが、全世界に向かっての声明は、国防手段上当然なんだ、自由世界を守る義務からいって、この空中査察の行動は当然なんだ、こういうようにいっていることは、今回のパリ会談が休会にたったという点とあわせて、こういうアメリカ側の態度は、少なくとも総理としては遺憾であると、こういうことについての総理の見解をお述べいただくことが——やはりアメリカに対して岸内閣としてもただすべきことはただして国民の不安を一掃する、そうでなければ、ただアメリカ側から日本政府に対してそういうお話があっても、現に全世界に向かっては、この査察旅行というものは国防上の正当な手段としてやるのだ、こういっていることについては、総理から、はなはだ遺憾である、こういうような見解を正式に表明されることが私は望ましいと思うのですが、いかかでございますか。
  148. 岸信介

    岸国務大臣 私は、昨日もこの問題に関する森島委員質問に対しましてお答えいたしたように、今日の世界の国際法の慣行、原則からいって、いかなる首的をもっても他国の領空を侵犯するということは許せないことだと思います。今日いろいろの国が、自己の安全を守るために、また他から不当な奇襲を受けないために、いろいろな情報を集めている。広い意味におけるスパイ活動というものが行なわれておるということは事実であります。私は、これは両陣営ともそういうことについてあらゆるいわゆるインテリジェンスな活動をやっておるということは事実だと思います。ただ、そういう場合におきましても、不法な手段によって、今言う領空を侵犯するというような方法によってこれがやられるべきものでないことも、私は、国際法の慣行、原則として認められておるところだと思います。従って、そういう意味において、アメリカのU2機が中東方面の基地から出てソ連の領空を侵犯したということは、私は、目的がそういう情報収集にあったとしても、これは望ましいことでない、遺憾なことだということを申したのでございます。
  149. 横路節雄

    ○横路委員 先般、飛鳥田委員その他から、このU2機についての撤去方をアメリカ側に申し入れするようにというお話もございましたのですが、この問題については、さらに、総理から先ほどお話もありましたように、総理御自身、まだ休会になったということについての正確な情報も得ておられないというお話もございますので、また私の質問中に時間を得てこの問題についてはお尋ねしたいと思います。  私は、まず第一番目に、赤城防衛長官にお尋ねをしたいのであります。去る二月六日に、衆議院の予算委員会で、赤城長官は今澄委員質問に答えてこう言われておるのであります。「世界大戦、全面戦争というものが起こる可能性というものはまずない、こう見て差しつかえないと思います。しかし、局地的な紛争、局地的な戦争、これは起きないという保証はありません。いろいろ局地的には対立している基本の問題が解決しておりませんから、こういう問題の解決がない限り、局地戦争あるいは局地の紛争というものが起こらないという保証はないわけであります。そこで、日本の自衛隊としての戦争抑制力といたしましても、世界大戦に対してその抑制力をになうという力は持っておりません。」こういうようにお述べになっているわけです。私が長官にここでお答えをいただきたいと思いますことは、世界大戦、全面戦争というものが起きる可能性はまずない、しかし、局地的な紛争や局地的な戦争、これは起きないという保証はない、なぜならば、局地的に対立している基本問題が解決していないから、こういう問題の解決がない限り、局地戦争あるいは局地の紛争というものが起こらないという保証はないわけであります、こう言われている。この点は、今でもお考えは変わりはございませんでしょうか。
  150. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 変わりありません。
  151. 横路節雄

    ○横路委員 そこで、次に長官にお尋ねをしたいのは、この局地戦争については起こらないという保証はない、なぜならば、いろいろ局地的に対立している基本問題が解決しておらないから、こういう問題の解決がない限り、局地戦争あるいは局地の紛争というものが起こらないという保証はないわけであります、こういうように言っているわけです。そこで、私はお尋ねをしたいのですが、日本を取り巻く周辺の国々と日本との間にいまだに解決していない基本的な問題とは一体何があるのでしょうか。長官は、この局地にはお互いに解決をしていない基本的な問題がある、だから、局地戦争や局地の紛争が起こり得るのだと言っておられる。それであれば、まず、私たちは、この日本の国防をどうするか、そこで、新安保条約について議論をしておるのですから、そうすれば、日本を取り巻く周辺の国々と日本との間にいまだに解決していない基本的な問題とは、一体何なのであるかということです。その点について一つお答えをいただきたい。
  152. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 日本と極東の国との間に解決をしていない問題があるから、こういう意味で局地的の紛争とか局地的の戦争がないという保証はないということを申し上げたのではありません。世界におきましても、あるいは東洋、極東におきましても、解決されていない問題がある、これは日本との関係ということで申し上げたわけではありません。解決されていない問題がある。御承知のように、朝鮮にいたしましても、朝鮮が統一するとか、あるいは北と南との間に平和的な解決ができるとか、こういう問題も私は解決していないと思います。それからまた、台湾の問題等につきましても、中共から見れば、台湾は中共の支配下だと言うし、また、台湾の中華民国から見れば、これは国際連合にも入っておるりっぱな独立国だ、こういうような見方をしています。あるいはまた、少し離れましても、中共とインドあるいはチベットの問題等もあります。その他、ヨーロッパ等の方にもあります。そういうことで、私は、日本との関係において解決していない問題だということではなくして、世界の各地において基本的に解決されない問題がまだ残っておる、こういう状態であるから、全般的に見て、局地紛争、局地戦争がないという見方もありましょう、しかし、私は、あるということを言っているのではありませんが、ないという保証は、これは得られないのが現状であると申し上げておるわけであります。
  153. 横路節雄

    ○横路委員 それでは、長官に重ねてお尋ねをしたいのですが、今、長官は、南北朝鮮が統一をされていない、あるいは、中国において台湾問題等の関係もある、だから、局地的な戦争も全然起こらないという保証はないというお話ですが、現に私たちが日本の国防という問題について議論をしている場合には、私たち日本日本の周辺の国々との間にまだ局地的に解決していない問題があるのかどうかということが、私は、まず第一の問題ではないかと思うわけです。そこで、長官にお尋ねしたいのですが、前に長官は、竹谷委員に、三月十六日、日本周辺の国とは何かということについて、具体的に国の名前をおあげになって答弁しておりますから、おあげになった国について私はお尋ねをしていきたいのです。日本とフィリピンとの間、台湾の中華民国との間には、何かまだ基本的に解決していない問題がございましょうか。何でしたら、これは藤山外務大臣から御答弁いただいてもけっこうです。長官から御答弁いただいてもいいのです。
  154. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 解決をしていない問題ということは、具体的にお尋ねがないから申し上げかねますが、私は別に解決をしていない問題はないと思います。
  155. 横路節雄

    ○横路委員 それでけっこうなんです。そうすると、日本とフィリピン並びに台湾の中華民国との間には、外交上、解決していない基本的な問題はない、だから、少なくとも日本との間には紛争が起こり得るという原因はないわけです。そこで、韓国は一体どうなんでしょう。これは竹島問題がまだ解決しておりませんが、しかし、これは武力によって解決すべきものではないということは、予算委員会、さらにこの特別委員会でたびたび言明になったところなのです。従って、韓国との間には、基本的に局地的な紛争、武力に訴えて解決をしなければならないような問題はないと思うのですが、この点は、長官、どうですか。外務大臣でもけっこうです。
  156. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 お尋ねがどうもひっかけるようなお尋ねで、武力によって解決していないとか、いるとかいうことに持ってくるようでありますが、私は、そういうような武力によって解決しなければならぬという問題はないと思います。ただ、私は、戦争抑制力とか何とかありますが、いずれにいたしましても、そういう紛争がよそで起きた場合等において、日本が巻き込まれたり日本がその中に入ることを防ぐ、こういうのが、私は、安全保障条約の趣旨である、こういう考え方から再々申し上げておるのでありまして、日本と近隣の国との間に武力で解決しなければならない問題があるから、そのために私どもは、この安保条約あるいは自衛力の問題でそれを武力で解決しよう、こういうような意図で考えておるものではないということを申し上げます。
  157. 横路節雄

    ○横路委員 いや、長官は、何か私の質問があなたの答弁をひっかけると言われるが、私は何もそういう意図で話をしているのではない。日本の自衛隊はあとで聞きますよ。ただ、長官は、局地戦争に対する戦争抑制力だと言っているじゃありませんか。何をおいても、私たちが自衛隊の存在あるいは安保条約というものを考えていく場合に、日本日本を取り巻く周辺の国々との間に基本的に解決してない問題があるかどうか。なければ、まず戦争になる大きな原因はないのですから……。そうじゃありませんか。そこで聞いているんですよ。私は何も竹島問題を武力で解決しなさいなどとは言ってないんですよ。ただ聞いているんです。長官が前に竹谷議員に国を答えたから、私は聞いているんですよ。  その次に私がお尋ねをしたいのは、日本と朝鮮民主主義人民共和国との間はどうか。私は他国のことを聞いているのではない。また、中華人民共和国との間はどうなのか。日本政府とこの二つの国の間には、基本的に解決してない問題があるのかどうか。この点について一つお尋ねをしたいのです。何でしたら外務大臣でもけっこうなんです。
  158. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 朝鮮人民共和国と大陸の中共政府との間に何か起こるべき紛争があるのか。われわれは特別な紛争を今持っているわけではありません。ただ、国交が回復しておらない、また回復する状態でないということは、これは事実であります。
  159. 横路節雄

    ○横路委員 今の御答弁で、国交回復はされていないが、しかし、今日紛争という事態ではないわけです。  その次に、これは長官にお尋ねをしますが、ソ連との間に、歯舞、色丹は問題が残っていますが、これは平和条約締結日本に引き渡されるということになっているわけです。国後、択捉は、これが解決は残っていますが、これも、だれが考えても、武力行使というのではなしに、政治的に解決する以外にないと思うのです。そうすると、赤城長官にお尋ねしたいのですが、日本を取り巻く周辺の国々との間には、武力に訴えて解決しなければならないような、局地的紛争や局地的戦争が起こり得るような、そういう原因はないと私は思うのですが、この点、長官、どうですか。
  160. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 日本が何も武力を行使して近隣とどうこうするという立場にないことは、申し上げるまでもありません。しからば、日本の近隣からどういうことがあるかどうかということでありますが、私は、別に今のところ、そういう侵略をされるというようなことはないと思いますけれども、しかし、これから先はまた必ずしもそれの全面的な保証があるという状態でもないと思います。でありますから、今は別に侵略を受けるというような関係はないと思います。
  161. 横路節雄

    ○横路委員 次に、長官にまたお尋ねをしたいのですが、二月六日の予算委員会で、今澄委員質問に答えて長官は、「日本の自衛隊も小さい力ではありますが、力なりに戦争を抑制するといいますか、戦争を抑止する力を備えて日本の安全と平和を守っていかなければならぬ、」しかし、「世界大戦に対してその抑制力をになうという力は持っておりません。……ただ局地的な紛争、局地的な戦争に対しましては、日本の自衛力の最大の力を発揮しまして、その局地戦が起こらないように、局地紛争が起こらないように、起きた場合、それを直ちに消しとめるといいますか、これを解消するような方向に持っていかなければならない。これが日本の自衛隊の役割だと思います。」と答弁されております。自衛隊は戦争抑制力である、しかし、世界大戦に対しての抑制力ではない、局地的な戦争に対する抑制力である、こういうふうにお答えになっておられますが、今でもこの考え方についてはお変わりはございませんか、お伺いをしたいと思うのです。
  162. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 世界大戦が起こるような公算は、ほとんどないと言ってよかろうと思います。その世界大戦が起こらない公算は、東西両陣営の大きな国々が、あるいは原水爆とか、あるいは近代科学兵器の大陸間弾道弾とか中距離弾道弾とか、こういうものを持っているということ、それによって平和を維持する目的ということではないけれども、それを持っている現状が戦争の抑制力になっている、こういうふうに考えておりますから、日本といたしまして、そういうような二大国が戦争の抑制力として働いておるような機能を日本が発揮するというようなことは、これは望むべくもない、こう考えておるわけでございます。しからば、局地的な紛争に対してはどうか、こういうことであります。これは自衛隊の存立といたしましては、自衛隊法にありますように、まず、他国からの侵略に対して、これと抵抗して日本の平和と安全を守るということが大きな任務でございます。同時に、国際間から見ますならば、日本がそういう侵略を受けたり何かするのが拡大して地域的に大きな戦争に入っていくというようなことは、これは国際といいますか、世界の平和から考えても避くべきことでありますから、第一は日本の平和と安全でありますが、同時に、国際的に見まして、やはり国際の平和と安全に寄与しようということでありますならば、これは戦争の抑制力としての機能をになう、これが国際の連帯性だと思います。そういう意味におきまして、日本の自衛力というものの存在価値というものを私は認めております。
  163. 横路節雄

    ○横路委員 長官から今いろいろお話がありましたが、世界大戦に対する抑制力ではない、しかし、局地的な戦争に対する抑制力である、こういう意味ですね。今いろいろお話がございましたが、その点、確かめたいのです。
  164. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 ですから、自衛隊といたしましては、日本の平和と安全を、他国からの侵略に抵抗して守っていく、これが使命であります。同時に、自衛力を持っているということが、局地的な紛争、局地的な戦争の抑制力になる、こういうことにも相なっておると考えております。
  165. 横路節雄

    ○横路委員 今の長官お答えでだいぶはっきりして参りましたが、さらに私はお尋ねをしたい思うのは、同じく竹谷委員が、三月十六日に——三月十六日の長官答弁にさらに質問をしまして、今長官お答えになったような答弁があったわけです。それに竹谷委員が尋ねて、長官は、局地的な日本に対する侵略がある場合、初期においては十二分の防衛力があるとおっしゃった。そして質問が続いて参りまして、竹谷委員はこう結んでいるのです。言葉はあれですが、竹谷委員のおっしゃった通りここで読み上げますと、「その敵は、一応仮想敵国ではないが、日本に脅威を与える力はどんなものであるか、それはだれが持っておるか、これを考えておく必要があり、また現に考えておるに違いない。その点をもっと明瞭にしていただきたいのであります。」こう尋ねておりまして、長官はそれにお答えになられて、「日本の周辺等においての国々を考えておりますが、」——それは先ほどから言ったフィリピン、台湾の中華民国、大韓民国、それから朝鮮民主主義人民共和国です。「日本の周辺等においての国々を考えておりますが、具体的にどこの国、どこの国というふうには考えておりません。」こういうようにお答えになっておる。そこで、長官に私がお尋ねをしたいのは、日本の自衛隊というのは、日本の周辺の国々の武力に見合った戦争抑制力としての自衛力を持っていると、この点は解釈していいのかどうか、もう一度私お尋ねをします。今長官お答えから言うと——私が長官にお尋ねするのは、日本の自衛隊というのは、日本の周辺の国々の武力に見合った戦争抑制力としての自衛力を持っている、これが自衛隊である、こういうようにわれわれは考えてよろしいのでございますか、この点をお尋ねしたいと思います。
  166. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 それは、周辺の戦力といいますか、軍備等には見合うことは見合います。しかし、現実に見合ったものができておるというわけじゃございません。これは日本の国力、国情に応じて自衛力を維持、発展する、こういうことになっておりまして、無理なことはできませんから、一応は見合いまするが、現実が見合ったものにできておる、こういうわけには参りません。そういうことです。
  167. 横路節雄

    ○横路委員 次に、私は岸首相にお尋ねをしたいのですが、現在の新安保条約の前に結ばれましたMSA協定が、国会で議論されました昭和二十九年の三月、外務委員会で、与党の北委員質問に答えて、現行安保条約についての根本の精神は何かということについて、当時の岡崎外務大臣がこう言っているのです。ちょっと読んでみます。岡崎外務大臣は、「日米安全保障条約の一番根本の精神は、現在でもそうでありますが、要するに比較的少数の米国軍隊を日本国内に駐屯させて、これでもってただいまのソ連の強大なるシベリヤ方面にある武力と対抗して日本を守れるかどうかというと、軍事的にはあるいは疑問があるかもしれません。しかしながらこの少数の日本におる部隊は、その背後に強大なるアメリカの軍事力を持っておって、それも原子力等の武器まで含んだ強いものを持っておるわけであります。日本を何らかの形で侵略しようとすれば、すなわちアメリカに対して挑戦するのであって、国内にある少数のアメリカ軍隊と戦うという意味ではなくて、強大なるアメリカの武力に対して戦争をしかけることになる。この点に日米安全保障条約の一番大きな根源がある。従ってうかつに日本攻撃することはできない。アメリカ戦争をする決意をするにあらずんば日本攻撃することはできない。」これが安保条約の基本精神なんだ、こう言っているわけです。この考え方は、これは局地戦争どころではないわけです。この新安保条約というものは、日本に対する攻撃は、同時にそれは全面戦争、世界戦争になる、それなればこそ、この安保条約によって日本の安全は維持されているのだ、こういうようにおっしゃっておるわけですね。これが現行安保条約の基本精神だ、こう言っている。この点は、やはり今度の新安保条約を調印されました総理としても同じようにお考えになっているのかどうか、この点一つお尋ねしたいと思います。
  168. 岸信介

    岸国務大臣 戦争抑制力としてこの安保条約というものを考えておるという基本は同じでございます。戦争が生ずる場合がいろいろあるということについて、先ほど防衛長官との間にお話があったわけでございますが、一つは、全面世界戦争というものの危険が遠ざかっておるということは、米ソの軍事的な力の均衡、また両国が持っておる非常な高度の核兵器その他の軍事科学の発達ということから、高い形において両方の武力が均衡をとっておるということが、現在の世界の平和を作り上げておる一つの原動力になっておる、これはいなむことのできないことであります。すなわち、そういう両国の武力というものが戦争防止力になっておる。安全保障体制というものは、私は、ことごとくそういう意味において戦争を抑制する、戦争を未然に防ぐという意味において、こういうふうに自分の国と特別の関係のある国と結んでおるのが安全保障条約の本質である、そういう意味において、現行安保条約もそういう使命を持っており、また、われわれが改定して今度結ぼうとする安保条約も同様な意義を持っている、かように思います。
  169. 横路節雄

    ○横路委員 それでは、総理は、岡崎外務大臣が、二十九年三月、外務委員会でMSA協定審議の際に答弁されました、日本に対する攻撃、それはアメリカ攻撃である、だから、それは当然相手の国としては全面戦争を決意するにあらずんば日本攻撃できないのた、こういう趣旨が現行の安保条約である。それで、今総理からのお答えは、新安保条約も同じだ、こういう意味でございますね。その点ちょっと、簡単でけっこうですが……。
  170. 岸信介

    岸国務大臣 安保条約の基本の考え方については、現行の安保条約と今度の条約と変わりはございません。
  171. 横路節雄

    ○横路委員 次に、加藤防衛局長にお尋ねしたい。あなたは、三十四年の三月の十三日、これは衆議院の内閣委員会だと思いますが、受田委員質問に答えてこうおっしゃっている。わが国の防衛につきまして自衛隊の考えておりますことは、局地戦を主としてやる。しかし、全面戦争は起こり得ない。しかし、局地戦争につきましても、あるいは制限的な核兵器が使われるかもわからない。こちらは使いません。使いませんが、使われるかもしれないという設定は、一応考えておかなければならない。万一核攻撃があった場合、自衛隊としてはどうするか、国民をどうして守るかは、技術研究本部、化学学校等において、とるべき動作、いかにして被害を防ぐかということを研究している、こういうふうにお答えになっているわけであります。そこで、私は、あなたは専門家ですから、お尋ねしたいのは、局地戦において戦術用の核兵器が使われる場合があると局長はお答えになっているのですが、それは今でも——今でもというよりは、私がお尋ねしたいのは、去年から比べるとまる一年たっているわけですから、戦術用の核兵器についてはもっと研究、開発が進んでいるわけであります。ですから、まる一年たったわけですが、防衛局長から、局地戦においては戦術用の核兵器が使われる、この点について、一年たった今日、さらに戦術用核兵器についての研究、開発が進んでいるでしょうから、局地戦においてはどういうように核兵器が使われているかどうか、その点については、日本の自衛隊はどういうようにこれに対処しようとするのか、この点について、専門家ですから、お答えいただきたい。
  172. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 戦術用の核兵器でございますが、これはおっしゃる通り、最近非常に私は進歩改良されておると思います。先般のアメリカの予算教書等を見ましても、デービー・クロケットというような、一人でもって運べるような兵器、そういう一人でもって使用するというふうなものも考えられておるということを承知しておるのでございます。ただ、これを使うか使わないかということは、これはその国におきましても政治上の相当重大な判断にかかっておる問題だろうと思います。ただ、これはアメリカを例にとって考えてみましても、装備そのものとしては、普通の部隊の装備の中にだんだんと戦術用の核兵器は使い得るような装備及び編成に変えていきつつあるということは、これは言えると思います。これは私は、アメリカのみならず、世界の大勢であろうと思います。ただ、それを使うかどうかということは、やはり政治的に重大な決心を要する問題である。そういう兵器の発達の現状から見ますと、われわれは使わないことを希望しますけれども、向こうの方で日本侵略する場合、使わないという保証はないかもわからない。ある程度これに対して国民なり自衛隊等で守るということは、研究しておかなければいけない、私はかように考えております。
  173. 横路節雄

    ○横路委員 防衛局長に重ねてお尋ねしますが、今のお答えで、戦術用の核兵器については、非常に研究、開発が進んで、その装備等が逐次完了しつつあるということは、否定できない事実であります。そこで、私はあなたにお尋ねしたいのですが、世界各国の軍隊はというお話でございましたが、日本に駐屯している、あるいは、いざという場合には日本に来る、駐兵するアメリカの軍隊というものは、現在局地限定戦略の立場に立って、戦術用の核兵器については一切の研究、開発が終わり、また、装備もほとんど完了しつつある段階だというように、われわれは聞いているわけです。この点は事実なのかどうか、お答えをいただきたいと思います。
  174. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 当委員会でもたびたび御質問がございましたけれども、たとえば第七艦隊について申してみましても、これは核爆弾を運搬し得る能力は持っておる。空軍について申しましても、戦略空軍は、もとより、その任務、目的から申しまして、核爆弾を使うことを主たる任務とするものではなかろうかと私は思います。それから戦術空軍、防空空軍につきましては、これは問題があろうと思います。陸軍について申して見ましても、いろいろなミサイル、核が使用できるミサイルが開発されている。レッド・ストーンであるとか、パーシングであるとか、コーポラル、サージャント、あるいはそれがだんだん小さくなって、一番小さなものは、今申しましたデービー・クロケットというふうなものもございますが、その中間にもいろいろな装備がございます。詳しく申し上げることはいかがかと思いますが、ただ、これを繰り返して申し上げますのは、これを使うかどうかということは、政治的な非常に重大な判断だろうと思います。
  175. 横路節雄

    ○横路委員 防衛長官に重ねてお尋ねをしたいのですが、防衛年鑑、これはけさ防衛庁の方から親切に私の手元に送っていただいたわけですが、この中に「共存する通常兵器と核兵器」というので、防衛研修所の一等陸佐高杉恭自という方が、今のいわゆる局地限定戦略について述べられて、「戦術核兵器の使用に関する各国の動向」という中で、まず第一番に米国をあげているわけです。この米国に対しましては、今お話がございましたが、「米国は一九五三、五四年頃から積極的に戦術核兵器の開発とそのための戦法の研究に乗り出すことになり、限定戦争理論の発展と呼応し、急速に陸、海、空三軍の戦術核兵器体系が進展した。一九五七年には、いわゆるペントミック師団が発足した。これは核装備として八インチ原子砲とオネストジョン、ロケットをもち、機動性と火力を増強して原子戦に即応しうることを目標にして編成されたものである。この他コーポラル、レッドストーン等のミサイル群ならびに空軍の核支援と相まち、米陸軍の戦術核戦争準備は今や確定的段階に立ったといってよい。」これは前の国防長官でごさいましょうが、「最近マケルロイ国防長官は、「われわれにとって利益であれはどんな小戦争にも米国は核兵器を使うであろう」と述べている。」これはこの国会で、あるいは予算委員会であるとか本安保特別委員会の、与野党それぞれから呼んだ軍事評論家のものの言い方ではないわけです。防衛研修所の一等陸佐の方が、やはり一般の国民に広く読まれるこの中で、今申し上げました「共存する通常兵器と核兵器」という中で、米国の戦術用の核兵器についてお述べになっているわけですが、この点は肯定なさいますか。高杉さんという一等陸佐の方が書いていることは、防衛局長肯定なさいますか。
  176. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 これは、私が先ほどから御答弁申し上げておるので御了解いただいたと思うのでございますが、装備及び編成といたしましては、そういうふうなものを使えるようにだんだんとやってきておるということは、私は事実だろうと思います。ただ、それを使うかどうかということは、政治的な問題であって、今お述べになりました、アメリカ政府責任者がそういうことを言ったということについては、私は存じません。
  177. 横路節雄

    ○横路委員 赤城長官にお尋ねをしたいのです。今、専門家の防衛局長から、アメリカの戦術用の核兵器については、非常に研究、開発が進んでおる、従って、もちろんアメリカの海軍、空軍は申すまでもありませんが、陸軍としても、非常に小型の戦術用の核兵器についての開発が進んで、装備を終えておる段階である、使うかどうかということは政治的の問題である、私もそうだと思う。そこで、長官にお尋ねしたいのは、アメリカ軍は、局地限定戦争遂行のためには、戦術用の核兵器を使うことが効果的であり、また、それが一面戦争抑制力でもある、こういうように考えた場合においては、アメリカの今日進めておる、小型の戦術用の核兵器を装備しておるという段階からいけば、戦争抑制力としても必要だ、あるいは局地戦争を遂行して早く戦争を遂行するというためからいっても、小型の戦術用の核兵器を持ち、ある場合においてはこれを使用するということは、アメリカ軍としては当然なことではないかと私は思う。この点いかがでしょうか。先ほどから、軍備というのは戦争抑制力だと言っておる。そういう点からいけば、これまで研究、開発を進めた小型の戦術用の核兵器については、これを持ち、使用するということは、一応われわれは考えておかなければならないと思うが、この点はいかがですか。
  178. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 戦争抑制力として、局地限定戦争におきまして、小型の核兵器を使った方が戦争抑制力になるか、あるいはむしろ大きく拡大するか、こういう問題もあろうかと思います。でありますので、局地的な戦争等が起きました場合におきましても、それを使うか使わないかは、政治的な大きな問題で、核の小さい装備をしておるから、局地戦華があった場合には、核装備のもので戦争抑制力として使う、こういう断定は直ちにできないと思います。  また、話は飛ぶかもしれませんが、イギリス等においては、通常兵器によって戦争の抑制力の機能を果たそうという傾向か非常に強くなっておりますことは、先ごろイギリスで発表しました国防自書等にも強くうたっております。
  179. 横路節雄

    ○横路委員 それでは長官、使用することは、それが局地戦争で終わるか、全面戦争を誘発するかわからない、しかし、戦術用の核兵器を持っておることは、局地戦争の抑制力にはなる、こういうふうにはなりませんか。
  180. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 戦争の抑制力というものは、核兵器の小さいものを持っておるとか、持っていないとかいうことではなくて、全体的の国防といいますか、そういうものの考え方から戦争の抑制力というものに役立っておる、こういうことでありますので、小さい核の装備等を持っておるということだけで、それが戦争の抑制力だ、こういうようには直ちには見られません。全面的な国防全体からして戦争の抑制力に寄与しよう、こういう形であることは、これはまぎれもない事実だと思います。
  181. 横路節雄

    ○横路委員 そうすると、今の長官お答えで、核兵器を持つことは戦争の抑制力であるということは、まぎれもない事実である、こういうように今お答えになったわけです。  そこで、私は岸総理にお尋ねしたいのです。これは参議院の予算委員会では、矢嶋委員であるとか鈴木強委員であるとか、あるいは衆参の内閣委員会で多くの方々に御答弁になっておりますか、私は、一つの例として、昨年の三月十二日、参議院予算委員会において、鈴木強委員質問に答えて、総理がこう答弁をしているのを重ねてお読みして、総理の見解をただしたいと思います。「憲法上の解釈として、核兵器と名がつけばいかなる兵器もこれは憲法違反として、核兵器は用いることができないんだという解釈は、憲法の解釈としては適当でない。もちろん、今日あるところの原水爆のごときものが憲法上持てないことについては、これは何人も異論を差しはさまないけれども、現在の核兵器は発達の途上にあり、また、今後どういう発達をするかもわからないが、いかなるものであっても核兵器と名がつけば憲法上持てないんだ、憲法違反だということは、憲法の解釈としては私どもはとらない。」そうすると、総理のお考えは、原水爆というものについては、持つことは憲法上違反だ、これはおそらく総理のお考えは、戦略用の核兵器については、相手の国を攻撃するものだからだめなんだ、しかし、先ほどから防衛長官がここで二、三の例をあげてお話しになりましたが、防御用の戦術の核兵器は、これを持っても使っても憲法違反ではない、しかし、たびたび言っているように、総理は、岸内閣の政策としては、持たないし使わない。私はここで総理に確認をしておきたいことは、戦略用の核兵器は、これを持つことは憲法違反だ、ただ、戦術用の核兵器については、これを持っても、これを使用しても憲法違反ではない、しかし、岸内閣の政策としては、これを持たないのだ、われわれは、総理の御答弁からそういうようにこれを判断せざるを得ないのですが、それで差しつかえございませんか。
  182. 岸信介

    岸国務大臣 私は、核兵器を戦略用及び戦術用に分けて憲法解釈をいたしたわけではございません。今お読みになりましたように、私の考えでは、この憲法で自衛力、自衛権を持ち、その裏づけとしての必要最小限度の実力という問題は、これは科学技術の発達とともに、内容は変わってくるものだと思います。あるいは古い武器だけでなければ持てない、進んだ科学技術のなににおいてはこれは持てないのだというような性質のものではないと思う。しかし、原水爆のごとき、他を攻撃破壊するということをもっぱら目的としているようなものが、憲法上自衛力の裏づけとして持てないことは、当然なことだ、ただ問題は、核兵器と名前がつけば、どういうものでも核兵器という名前がついただけで、これは憲法では禁止しているのだ、こういうふうには憲法を読むべきものではないだろう、こういうことを申し上げておるわけでございまして、決して、戦術用と戦略用を分けて、戦略用は持てないが、戦術用のものは持ってもよろしいのだ、憲法上差しつかえないのだというふうな解釈をいたしたわけではございません。
  183. 横路節雄

    ○横路委員 いや、総理、その点は、それならば、一体自衛のための核兵器というのは、どういうのをいうのですか。自衛のための核兵器だって核弾頭がつくのですよ。初めから憲法上持てないというのなら問題ではないのですよ。総理は、憲法上、持っても使用しても憲法違反ではない、しかし、岸内閣の政策上、これは持たない、核兵器と名がつけば持てないというものではない——核兵器というのは、核弾頭がつくのですよ。だから、私が聞いているのは、総理が言っているのは、原爆や水爆のようなものは持たないのだ、しかし、さっきも防衛長官から、一人で持つようなそういう小型の兵器の中にも……。ですから、私は、そういう意味でお聞きをしているのであって、その点、総理が、ここで憲法上においても、いわゆる小型の核兵器を持つことは、あるいは使用することは、憲法違反であるとおっしゃれは、それは別ですよ。その点聞いているのです。
  184. 岸信介

    岸国務大臣 憲法の解釈の問題だとすれば、核兵器と名前がつけば、いかなる核兵器についても、これは憲法違反になるということは、憲法の解釈としては適当でない、政策の問題としては、いかなるものであろうとも、これは私どもは持たない、たとい防御用専門のものであろうとも、いかなるものであろうとも、持たない、また、これを持ち込むことは認めないというのが、私ども考えておるところであります。憲法の解釈としては、核兵器と名前がつけば、今後どういうものが発達してくるかもしれないけれども、いかなるものも持てないのだ、こういうようなものは憲法違反なんだという解釈はとらないのだ、こういうことを申し上げておるのです。
  185. 横路節雄

    ○横路委員 この点非常に重大なので、私はぜひ明らかにしておきたいと思いますのは、総理憲法解釈は、いわゆるいかなる核兵器も持つことは憲法違反だというのは、憲法上の解釈としてはとらない、今後核兵器について、これが研究、開発が進められて、小型の核兵器というものができてくれは、それは持っても使用しても、憲法違反ではない、しかし、岸内閣の政策としては、それは持たないというわけですね。そこで、問題があるのです。岸内閣は、総理、お互いになま身のからだなんですから、あるいは総理が、今後三年なり四年なり政権を担当されようという決意を有するかもしれないが、必ずしも岸内閣は永遠のものでない。憲法解釈としては、小型の核兵器を持っても憲法違反ではない、これを使用しても憲法違反ではない、しかし、現在の岸内閣としては、この核兵器を持ったり使用することは、政策上はしないということになれば——憲法上は持ってもいいということ、憲法上は使用してもいいということになれば、内閣がかわれば、次の内閣は、憲法上持っても使用してもいいのだから、今度の内閣においては、これは世界のあらゆる国が、小型の核兵器の開発が終わって持っておるのであるから、戦争抑制力としては当然持たなければならないという、そういう段階にくるではありませんか。そこを私は総理にお尋ねをしておるのです。岸内閣の政策としては、今は持たない、しかし、憲法上は持てる、使用することができるということは、私は重大な問題だと思うのです。この点いかがですか。
  186. 岸信介

    岸国務大臣 これは繰り返して申し上げておるところであり、一貫して私が申し上げておる通りでありまして、私は、憲法の解釈として、いやしくも核兵器という名前がつくならば、これが憲法違反であるという解釈はとりません。それから政策として、これが核武装しない、また、核兵器の持ち込みは認めないということは、私が声明しておる通りであります。
  187. 横路節雄

    ○横路委員 ちょっと総理、大へん恐縮ですが、今は自衛のため、防御のためには、憲法上の解釈としては、持ってもよろしい——持つということは、使用してもいいということだと思う。しかし、政策上は、持ったり使用したりしないということになると思うのですが、それと違いますか。
  188. 岸信介

    岸国務大臣 その通りで、私は、これを憲法上の純粋の解釈として申し上げておるのであって、憲法上の解釈として、いやしくも核兵器という名前がつけば、どういうものが今後開発されるか知らないが、核兵器たということでそれが直ちに憲法違反だ、こういう憲法の解釈は成り立たないものであるという考えに立っておるのであります。政策の問題としては、今お話通り、また、私が従来お答えしておる通りに、私は考えております。
  189. 横路節雄

    ○横路委員 実は総理にお尋ねをしたいのですが、これは重大な問題です。これは三月九日の参議院の予算委員会で、矢嶋委員から、まず、当時の伊能防衛長官に、「伊能長官、自衛のためには、核兵器も持てる。しかし、政策上は持てない、持つ必要を認めないというが、憲法上、現在持てる核兵器と、持てない核兵器とを例示されたい。」という質問をした。これに対して伊能長官はこう言っているのですよ。総理、いいですか。「オネスト・ジョンのごときは核弾頭をつけますと、これは自衛のために、攻撃的なものではなくして、防御的なものとして使用し得ると思います。」わざわざここにごていねいに、「核弾頭をつけますと、これは自衛のために、攻撃的なものではなくして、防御的なものとして使用し得ると思います。」そこで、この問題が発展をして、三月十二日に、鈴木強委員から、総理と御一緒の席で、参議院の予算委員会で質問をした。そうしましたら、伊能長官はこう言っているのですよ。「原子爆弾、水素爆弾というようなものは攻撃用のものであるから、当然自衛の立場からは持ち得ない、しかし、憲法上の解釈としては、自衛上必要最小限度のものについては私どもは持ち得る」その具体的な例としては、「オネスト・ジョンのごときは弾着距離もきわめて短い、通常三十キロ程度、最大四十キロ程度のものであれは、日本の現在の自衛隊の立場、並びに、つとに政府としては自衛隊は海外派兵はしないという見地から、防衛上のものとしては憲法の解釈上持ち得ないということはない、かように、私はそういう趣旨をもってお答えいたした次第でございます。」しかも、その点について、具体的に持てるということを言っておるわけですね。さらに、この点について、三月十九日、参議院の予算委員会で、千葉信委員質問に答えて、総理あとで、長官はまた答えておる。「杉原長官その他の防衛長官お答えしました当時のオネスト・ジョンは、一万五千トンないし二万トン程度の威力を持つものである、かように説明をいたしたのである。しかし、最近において、伝えられるところによれば、アメリカの普通師団等がこれを装備して、千トン程度の力を持つ小型のものが生産されておる。そういう意味において防御的なものだ、かように私は昨日説明をいたしております。」現に、伊能長官は、総理一緒に並んだ予算委員会で、オネスト・ジョンは核弾頭をつけているのだ、しかし、これをぶっ放しても、その距離は三十キロメートル、最大限四十キロメートルだ、しかも、普通火薬に直せば、当初は一万五千トンあるいは二万トンの火薬であったが、このごろは開発されて、普通火薬の一千トン程度になったのだから、核弾頭をつけてやってもこれを使えるのだと言っているじゃありませんか。いいですか、それで、私は総理お答えを願いたいと思うのです。
  190. 岸信介

    岸国務大臣 私は、実は軍事専門家でございませんから、決して、具体的に、どういう兵器がどういう性能を持っているか、これが当たるか当たらぬかというようなことは、申しておりません。私は、純粋に憲法上の解釈として、先ほどから繰り返し申し上げる通り日本憲法が、自衛力を裏づけるところの最小限度の実力は持ち得るという解釈を、私どもは堅持いたしておる。これは私は通説であると思います。その実力の内容というものは、いかなる技術が発達しても、旧式の無力なものしか持てないのかといえば、そうじゃないと思います。従って、そういう意味において、核兵器と名がつけは、いかなるものも、自衛隊の自衛力としては持ち得ないのだ、憲法上核兵器は一切禁止されているのだと解釈すべき根拠はないと思います。そういう意味において申し上げたのであって、具体的にオネスト・ジョンがどうであるか、こうであるかというようなことについては、申し上げておりません。それからまた、実際問題として、岸内閣におきましては、核兵器と名がつくところのものはいかなる核兵器についても、これでもって自衛隊を武装したり、あるいはそれの持ち込みを認めるということは、絶対にございません。それだけ申し上げておきます。
  191. 横路節雄

    ○横路委員 総理は、オネスト・ジョンについては言うたことないと言うても、私が現に今ここで——総理は言うたことないでしょうが、防衛長官が言っているじゃないですか。しかも、あなたと同席されているところで、長官が言われて、そして総理が言われているから、私はお尋ねをしているのですよ。私はたんねんに記録を全部調べたのです。そこで、まず、岸総理にお尋ねをしますが、総理考えは、将来研究、開発が進んで、小型の核兵器が持てる、それは今お話しのように、持てるということは今の憲法でも認められている、持てるということは、使用することも憲法上認められている、しかし、政策上は持ったり、もちろん使用したりはしない、そういうことになれば、現在の時点において、岸内閣の政策としては、小型の核兵器については、防御用のものであっても、持ったり使用はしないが、将来はどうなのです。
  192. 岸信介

    岸国務大臣 将来におきましても、岸内閣の続く限りは、私は、この問題は申し上げておる通り考えております。
  193. 横路節雄

    ○横路委員 それでは次に、防衛局長にお尋ねします。あなたは、局地戦争においても核攻撃はあり得ると答弁しましたね。もう一ぺん答弁して下さい。あなたは専門家だから、あなたに聞きます。
  194. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 これは御承知と思いますが、アメリカで、キッシンジャーあたりが制限戦争論というふうなものを唱えているわけです。理論としては、私はこれはあると思います。ただ、政府当局がどういうふうに考えるかということは、これは別だと思います。
  195. 横路節雄

    ○横路委員 私は赤城長官にお尋ねをしたいのですが、在日米軍の基地に核攻撃が加えられたときに、あなたは、本委員会においても、その場合には大国の核報復力、言いかえたら、在日米軍の基地に核攻撃が加えられたら、アメリカの核報復力に期待しているというように答弁されている。在日米軍の基地に核攻撃がされた場合に、岸内閣の政策としては、日本憲法上は小型の核兵器は持てるが、しかし、政策上は絶対に持ってもらっては困るからというので、在日米軍の基地に相手の国から核攻撃が加えられても、なお一体日本政府としては在日米軍に対して、絶対に核によるところの報復は困る、やらないでくれ、絶対だめだ、こういうことは言えるのでありますか。
  196. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 まず、在日米軍に核兵器の攻撃があるということは、これは中距離弾道弾か何かでやられるということだと思います。そういうことになれば、これはアメリカ日本攻撃することはないでしょうから、結局、核報復力を使うということに相なるかと思いますが、しかし、その前に、やはり外交的にいろいろありましょう。また、方法はそればかりとは言えませんが、そういうこともあろうかと思います。お尋ねの、今度の安保条約で、在日米軍がある、その基地へ核攻撃を受けた、それに対して在日米軍が核を使うか使わないかということに対して、どういう考えを持っているか、こういうことでございますが、日本に核兵器を入れないということになっていますから、使うことはないはずです。
  197. 横路節雄

    ○横路委員 長官先ほどのそこのお答えで、アメリカに対して核攻撃がなされれば、アメリカとしては当然核報復をするだろう、こういうお話がございましたね。アメリカに対して核攻撃がなされれば、そのときに、アメリカが核によるところの報復をする。アメリカが核攻撃を食うときは、在日米軍の基地も同時に核攻撃を食うときですよ。そうじゃないですか。そのアメリカ本土に対して核攻撃を受けた、日本以外のアメリカ軍の基地に核攻撃を受けたら、当然核報復をやるだろう。その場合には、日本を除いたアメリカの基地並びにアメリカの本国に対して攻核撃が加えられたときは、同時にアメリカは核報復をやる、そうすれば、在日米軍の基地に対しても核攻撃が行なわれることは当然じゃありまんか。その核攻撃を受けた場合に、日本だけは絶対に核報復はやってはならぬということは言えますか。アメリカに対する核攻撃があれば、当然アメリカは核報復をやるだろう。これはアメリカの本国に対してあれはやるだろう。沖縄の基地に対してあればやるだろう。韓国に対してもあればやるだろう。台湾に対してもあればやるだろうう。その場合に、日本の基地だけが核攻撃を受けないなどということはないのです。そのときは、当然、在日米軍の基地に対しても核攻撃を受けるわけです。その核攻撃を受けたときに、日本だけが、絶対に在日米軍は核報復をしてはならぬということにはならないじゃありませんか。そうでしょう。まず日本に核攻撃があるのかどうか。
  198. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 仮定のことでございますが、仮定的に考えれば、日本も核攻撃を受ける場合がないとは保障いたしません。しかし、それに対抗する報復力というものが、何も日本からやるということを断定する必要はない。日本からやるということにきまってはおりません。ことに日本では核兵器を導入しないということになっていますから、その点から申しましたならば、報復力を行使することがかりにあっても、日本から使うというようなことは、これは私はないという考え方であります。
  199. 横路節雄

    ○横路委員 それでは総理にお尋ねしますが、総理は、この国会でもたびたびこういうように言われています。岸内閣は自衛隊の核武装はしない、アメリカからの核兵器の持ち込みはしないということは、たびたび国会で言明をいたしました、こう言っているが、アメリカに対してはどう言ったのか。アメリカに対しては、核兵器の持ち込みは絶対お断わりだといつおっしゃったのか、それに対して、絶対に持ち込まないということをいつお答えになられたのれか。それが今度の条約の交渉の中で交渉をなされたとするならば、どの合意議事録で、絶対に持ち込まないと一体お話しになったか。まず、総理は、アメリカ政府に、いつ核兵器の持ち込みは絶対にお断わりだ、そうしたら、向こうが、絶対に持ってこないということをいつおっしゃったのか、その点を明らかにしてもらいたい。
  200. 岸信介

    岸国務大臣 核兵器について日本側の意思の表明というものは、国会におきましても私がしばしば申し上げているように、アメリカとしては、これは十分に承知いたしております。さらに、今度の日米の、私と大統領との間の共同声明の中に、私は事前協議に関する問題を論じ、その中には、もちろん、事前協議については、核兵器の問題もございます。そういうことに対して、アメリカ日本意思に反して、日本がノーと言ったことに対しては、これは一切その意見を尊重して、アメリカはそれに反するような行動をしないということを、はっきりとあの声明においても言明しておる通りでございます。
  201. 横路節雄

    ○横路委員 総理、そうすると、核兵器については、持ち込みは絶対に反対です、これに対してアメリカはイエス、こう言ったのですね。核兵器の持ち込みは反対です、そうしたら、絶対に日本に対しては核兵器の持ち込みはしませんと、こういうように言明をされたのですね。その点を明らかにしていただきたい。
  202. 岸信介

    岸国務大臣 絶対に、アメリカとして、日本意思に反した行動はいたしませんということを誓約したのであります。
  203. 横路節雄

    ○横路委員 いや、総理に私が聞いているのは、核兵器の持ち込みについて、総理からアイゼンハワー大統領に、核兵器の持ち込みは絶対お断わりです、そうしたら、アイゼンハワー大統領が、絶対に持ち込みませんと、あの共同声明を出す前の段階で明確におっしゃったのですか。あるいは政府政府機関のどこで、そういうことがはっきりと確認をされているか、その点を一つ
  204. 岸信介

    岸国務大臣 このいわゆる事前協議事項を作りますときに問題になりますのは、今のは装備に関する重大な変更、この問題については、日本は、従来日本政府が声明しておる通り、核兵器の問題については、国民も非常に関心を持っておるし、われわれもこれについては従来しばしば国会で言明しておる通りである、日本は核武装しないし、核兵器の持ち込みは認めないという方針で進んでおる、従って、この事前協議の対象の中にそれを入れておかなければ、自由に持ち込めるということになっては困るという考えから、この装備に関する重大なる事項を事前協議の対象としたわけであります。しこうして、その場合において、アメリカは、日本意思に反してこれを持ち込むようなことはしないということを言明しておるわけでございます。
  205. 横路節雄

    ○横路委員 私は、この点は、この条約上における重要な問題ですし、日本国民の非常な不安ですから、お聞きしておるわけです。私が心配しておるのは、総理が、核兵器の持ち込みは憲法違反です、だから、絶対に持ち込みはできません、こういうようにおっしゃって、この点が明らかになって、アメリカの核兵器持ち込みに、日本憲法上も持つことはできませんし、お断わりです、こう言うならば、まだ国民は安心できるのであります。ところが、総理のお考えは、小型の核兵器については、憲法上持てるんだ、使用しても憲法上は違反でない、しかし、われわれの政策としては持たないんだということになると、憲法上の基本的な解釈としては、憲法上は持てるということになれば、そうすれば、当然、アメリカとしては、この核兵器持ち込みについて、岸総理からお断わりですという一番基本になる憲法上の立場をくずして、核兵器を持つということについてこれを拒否することのできる根拠がずっと薄らいでくると思う。だから、総理が、憲法上も核兵器を持つことはできないんだ、こういって、核兵器持ち込みを拒否できる根拠を明らかにされれば、私は何もそういうことは聞かない。この点、そうじゃありませんか。
  206. 岸信介

    岸国務大臣 憲法上の解釈につきましては、遺憾ながら、横路君と私と見解が違うようでありますが、私は、あくまでも核兵器と名がつくならば、一切のことは憲法上禁止されておる、こういうふうには憲法を解釈いたいておりません。従って、日本憲法が禁止しているから、これの持ち込みは認めないんだという議論をすることは、私の法律解釈の信念からいうと、適当でないと思います。
  207. 横路節雄

    ○横路委員 私は、この問題については、日本国民の非常な不安は消すことはできないと思うのです。この点については、私は私の立場に立って質問しておるわけです。  その次に、私は赤城長官にお尋ねしたいのは、日本の自衛隊というのは、世界戦争の抑制力ではない、局地戦争の抑制力なんだ、こういうようにお答えになりましたけれども、三月十六日の竹谷委員質問に答えて長官は、日本の自衛隊は世界戦争抑制力の一半をになっていくべきだ、万一世界戦争が起きた場合は、日本は抑制力に共同し、同時に、大きな防衛力、国防力を持っている自由国家群のアメリカの力と一緒になって、全面戦争の抑止に努める、あるいは拡大を防止することに協力するというように答弁されておる。前には、全面戦争の抑制方ではない、局地戦争の抑制方だ、それが今度は、いや、世界戦争抑制の一半を担当しているんだ、こういうことになると、私は、自衛隊というものに対する根本の考え方が変わってきているのではないかと思うので、この点、赤城長官は、竹谷委員に三月十六日に答えられた、日本の自衛隊というものは、世界戦争抑制の一半を担当する力なんだ、この点についてお変わりございませんか。
  208. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 日本の自衛隊は、日本の平和と安全を守るんだ、ほかからの侵略に対してこれを排除する、こういう目的である。しかし、国際的に見まするならば、日本が局地紛争に巻き込まれていくということは、日本の平和と安全のためでもないし、また、極東における平和と安全のためでもないから、そういうことがやはり日本の平和と安全に結果する、こういうことで、局地戦等の抑制力になる。その局地戦あるいは局地紛争が、世界戦争に拡大しないとは限りません。私は、世界戦争に拡大する可能性は少ないと思います。ほとんどないと思います。しかし、やはり世界の平和と安全があって、日本もいいと思います。でありますから、局地的な紛争等が世界戦争というようなものに拡大しないようにすることは、日本国際的な立場からいっても、また、平和を望む日本民族としても、当然のことだと思います。そういう意味において申し上げましたので、世界戦争が起きたときには、すぐにそれに協力する、そう飛んでいくわけではない。局地的な問題を解決する抑制力に寄与する、こういうことから、世界戦争に持っていきたくない、こういうことを考えなくちゃならぬということを申し上げておるわけであります。
  209. 横路節雄

    ○横路委員 どうもはっきりしないですね。私がお尋ねしているのは、世界戦争の抑制の一半を担当しているのが日本の自衛隊なんだ、こう答弁をされているから、その考え方に変更はございませんかと聞いているのです。違わなければ違わないでいいのです。
  210. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 今申し上げた通りに、直ちに世界戦争の抑制に協力するということじゃないのです。やはり日本の平和と安全を守る。これが局地紛争に拡大したり、あるいは世界戦争に拡大することは避けるという意味におきまして、世界の戦争の抑制力に——その一半をになったような形になって協力するということを申し上げたのであります。
  211. 横路節雄

    ○横路委員 そうすると、今までの自衛隊は、日本に対して武力攻撃があった場合には、日本の本来持っている個別的自衛権を発動する、いわゆる憲法九条の後段で禁止されている戦力ではないが、侵略があった場合に、それをはねのけるための個別的自衛権の発動、いわゆる自衛のための最小限度の自衛力、これが自衛隊である、こう思ったわけです。ところが、長官は、竹谷委員質問に答えて、世界戦争抑制のための一半を担当しているんだという答弁がありました。世界戦争抑制の一半であるということになれば、日本に対する侵略をはねのける個別的自衛権発動の自衛力以外に、アメリカ協力をして世界戦争を抑制する一半だということになると、今まで政府が言っていた、自衛のための最小限度の自衛力より、はるかに拡大をされてきたものだというように、われわれは考えざるを得ないのでありますが、この点はどうですか。
  212. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 それは違います。日本の平和と安全を守るために、日本の周辺においてこれを守っていく、こういうことが世界戦争の抑制力になっていく。あなたは、戦争をするという考え方で、何かそれに協力するのだろうということでありますが、世界戦争協力するというのは、世界戦争に入って一緒戦争しようということじゃないのです。戦争抑制力として、日本日本の本土を守るということで役割を果たす、こういうことです。
  213. 横路節雄

    ○横路委員 長官に私はお尋ねしますが、われわれも何も戦争を目的ではなしに——なるほど、あなたたちが考えている自衛隊は、局地戦争の抑制のためのものであろうと思っている。あなたたちは、日本に対する侵略があったら、それをはねのけるための個別的自衛権があるんだから、そのための自衛力だと言っているじゃありませんか。それに対して、あなたの方は、世界戦争抑制の一半を担当しているんだ、こう言うから、今ここで言うのは、(「平和のためだ」と呼ぶ者あり)平和のためであるならば、世界戦争抑制の一半を担当してもいいじゃないかと言うから、世界戦争抑制のための一半を担当するということになれば、それは、今までの政府の言う、自衛のための最小限度の自衛方とは、違うと思う。どうですか、もう一ぺん言って下さい。
  214. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 自衛のための必要最小限度の力を持って、日本の平和と安全を守っていくことが、世界の戦争抑制力の一半をになっていく、こういうことであるということを申し上げたわけであります。
  215. 横路節雄

    ○横路委員 総理、それでは私は総理お答えをいただきたいのですが、自衛力と戦力とはどう違いますか。
  216. 岸信介

    岸国務大臣 要するに、憲法九条の解釈において、戦力ということと、政府が言っている自衛力ということとが、どう違うか、こういう問題であろうと思うのです。憲法の九条の第一項においては、われわれは、その国が他国から武力攻撃をされた場合において、祖国を守るという個別的自衛権はこれを持っておるものだ、これを禁止したものではない、持っておるものだ、こう解釈いたしております。そうすると、自衛力というものは、ただ観念的のものではなくして、私どもは、それをやはり裏づけるところの必要最小限度の実力というものがなければ、一方において自衛権は否定していないという理論は、ただ空論になってしまうという考えで、この自衛権を裏づけるに必要最小限度の実力というものは、二項に禁止しておる戦力には入らない、こういうふうに解釈しております。
  217. 横路節雄

    ○横路委員 総理、そこで、私お尋ねしているのは、戦力と自衛力というものには、限界上一体差があるのかないのか、この点はどうなんですか。
  218. 岸信介

    岸国務大臣 要するに、憲法の九条二項で、戦力を持ってはならぬということが規定されております。従って、二項に禁止されておる戦力が持てないことは事実であります。私どもは、一項による自衛権を裏づけるに必要な最小限度の実力というものは、二項で禁止しておる戦力には当たらない、こういうふうに解釈をいたしております。
  219. 横路節雄

    ○横路委員 それでは総理大臣、自衛隊というのは、戦争抑制力である、そうすれば、相手の力に見合っていかなければ抑制できない、そうすれば、当然、相手の国が攻撃用の核兵器を持ってくると、抑制するためには、それにつり合った自衛力を持たなければ抑制ができない。そういうことになれば、総理のおっしゃるその自衛力というものは、相手方の武力との間に、相手方の戦力との間に、見合う力を持つことが自衛力であるということになれば、それは戦力との間には何ら限界はないではありませんか。その点はどうですか。
  220. 岸信介

    岸国務大臣 これは、憲法九条という、日本憲法には特殊な規定がございまして、そういった何らの制約を受けておらない他の国の憲法の場合と同じように、何でも防衛、自衛という名において変えることができるというふうな無制限なものではないと思います。従って、もちろん、国際情勢のいろいろな変遷、軍事科学の発達に関連して、自衛力というものをできるだけ効率的なものにするためには、そういうものにおくれをとらぬように、いろいろな研究もしていかなければならぬことは、言うを待ちませんけれども、ある特定の国や、今申すような、無制限な憲法上の扱いのもとにやっておるところの国々と、数学的に、技術的に、内容的に同等なものを持たなければならぬ、持とうというようなことは、私ども考えておりません。
  221. 横路節雄

    ○横路委員 今、総理から、無制限に持とうとは思わない——そうすると、どこかで限界があるわけですね。その限界はどこにあるのですか。戦力と自衛力との限界はどこなんですか。
  222. 岸信介

    岸国務大臣 抽象的に言えば、われわれはいかなる場合においても攻撃的なものは持たないということであると思います。そして内容的に言えば、これは国防の計画や、あるいはそれを裏づける予算等について国会において審議されてしまう問題であると思います。
  223. 横路節雄

    ○横路委員 総理にお尋ねしますが、そうすると、戦力と自衛力との違いは、戦力というのは、相手の国を攻撃できる攻撃力、攻撃兵器を持つ、それが戦力だ、自衛力は、そういう相手国攻撃する攻撃兵器は持たない、それが戦力と自衛力との違いである、こういうわけですか。
  224. 岸信介

    岸国務大臣 今、私が申し上げておるのは、憲法九条の解釈として、戦力といわゆる自衛力というものの差異はどこに特徴があるかという御質問に対しまして、これは観念的に言えば、戦力というものは、私は無制限だと思います。しかし、われわれの持つところの自衛力というものは、自衛権を裏づけるに必要な最小限度の実力である、こういう意味において、観念的には違う。それじゃ、どういう点が具体的に違うかと言われたのに対して、攻撃用のものは、これは少なくとも戦力には入るだろうけれども、自衛力の範囲内には入らない、こういうことを今申し上げたのでございます。
  225. 横路節雄

    ○横路委員 私は、次の問題に移りますが、これをお尋ねしているのは、先ほど私がお聞きしましたように、三月十六日に、竹谷委員質問——私は速記をたんねんに調べた結果、自衛力は世界戦争の抑制力の一半を担当するのだ、こういうことになると、これは明らかに近代的総合戦力を遂行するものになるから、私は聞いている。  そこで、私は、総理にもう一つお尋ねをしたい。今まで現行条約では、日本に対する攻撃には、もちろん自衛権を発動して、いわゆる自衛隊法によって自衛隊が出る。そのときの個別的自衛権発動のための、いわゆる自衛のための最小限度の自衛力をわれわれは聞いておる。ところが今度の条約では、第五条で、在日米軍に対する攻撃日本に対する攻撃とみなして、そして、日本の自衛隊は共同の武力行動をとる、この共同の武力行動をとるというのが今度の条約の特徴です。そうなると、現行の安保条約における自衛隊の出動以外に、今度の条約では、在日米車の基地に対する攻撃をもって日本に対する攻撃とみなして出動するということは、明らかにアメリカに対する攻撃日本に対する攻撃と見て出動することで、今までの自衛力以上に、この第五条によって自衛権は拡大され、自衛力はより以上近代的戦争遂行のための能力となる、今まで防衛長官が、近代的戦争を遂行する総合的な力はこれは戦力である、こういうように言われておったこととは、私は根本的に違うと思うが、どうですか。
  226. 岸信介

    岸国務大臣 その点は、横路君よくお考え下さればきわめて明瞭であると思いますが、現行安保条約におきましても、これは同じございます。今度の改正におきましても、いわゆる米軍の基地に対する攻撃というもが、日本の施政下にある領土に対する武力攻撃としてわれわれが自衛権を発動するのでございまして、その関係は改正条約と現行法との間に何ら差異はございません。  それから、先ほど来の竹谷委員質問の点については、先ほど防衛長官の説明で御了承を得たことかと思いますが、われわれは、あくまでも自衛隊というものは日本の自衛権の裏づけとして必要最小限度の実力を持つという意味において、この自衛隊というものを増強して参っております。しかし、決してそれ以外の目的のために、あるいは世界戦争協力するためのものを作ろうというようなことは考えておりません。ただ日本の自衛を全うするということが、今の国際情勢においては、ひいて世界戦争を防遏するということに役立つのだという意味において先ほど来申し上げておるわけでございますから、決して、自衛隊の本質なり、あるいは自衛隊の拡大の方針というものが今度の改正条約によって加重される、拡大されるというようなことは絶対にございません。かように私どもは信じております。
  227. 横路節雄

    ○横路委員 これは、あとでまた第五条との関係においてお尋ねしたいと思います。  次に、私は、赤城長官にお尋ねしたいのです。四月六日の午後、アメリカでは、アイゼンハワー大統領はホワイトハウスでゲーツ国防長官、ダグラス国防次官、ウイニング統合参謀本部議長と会談をして、ソ連の脅威が、いわゆる有人爆撃機中心であるとした空軍の従来の考え方を改めて、ソ連のICBMに対する対策に重点を向けるため、アトラス大陸間弾道弾兵器の増加、ポラリス潜水艦建造の促進、ICBM探知網の強化など、国防省の新計画を承認して、そうして、これらの計画は、人間の乗った航空機に対するミサイル、ボマークBを削減してやりくりしようとしており、そうして、アトラスについては、現在計画されている十三個中隊——一個中隊はアトラス十台——そのうち、六個中隊のアトラスを十台から十三台にふやして、合計十八台アトラスを増加する。あるいはポラリス潜水艦については、現在七隻建造中だが、新たに三隻の建造に着手、そしてICBM探知用の人工衛星ミダス、ICBM早期探知組織の促進、こういうふうに、四月六日にアイゼンハワー大統領がこれら国防関係の人々と会談の結果、いわゆる戦略についての変更といいますか、こういうようにしているわけです。  私は、ここで長官にお尋ねをしたいのは、こういうように、アメリカにおいてもすでに計画を変更されている。それであれば、当然私は——ロッキード戦闘機については、すでに内閣委員会で石橋委員、飛鳥田委員から指摘されているように、ソ連の右人爆撃機の最新式のもの、マッハ一・五ないし一・八に対抗するために、ロッキード戦闘機——これはマッハ二のものを採用したのだと言うが、これはアメリカのこういうような全面的な転換と相待って、私は、国防会議において当然ロッキード戦闘機について再検討すべき段階にきていると思うが、その点はどうですか。
  228. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 ロッキード有人機は、防御用の戦闘機といたしましては、御承知のように非常に優秀なものでございます。でありまするから、私どもはこれは日本防衛上必要なものだということできめて、幸いに予算等におきましても御審議を願って可決をされております。でありますから、国防会議においてこの既定の計画を変更しようという考えは持っておりません。
  229. 横路節雄

    ○横路委員 総理大臣どうですか、アメリカにおいては、すでにソ連の有人爆撃機の脅威に対抗するために用意していたミサイル、ボマーク等は削減をして、そうして大陸間弾道弾、あるいはポラリス潜水艦等による中距離弾道弾、こういうものの開発に、全面的に建造その他に着手をしている、そうしてソ連の爆撃機に対抗するそういう措置は、あげて大陸間弾道弾、あるいは中距離弾道弾に変更している。そのときに、これから六年間かかって、そうして昭和四十年の十一月の終わりに生産が終わるような、こういうロッキード戦闘機については、当然これは国防会議において再検討すべきだと思うが、いかがですか。
  230. 岸信介

    岸国務大臣 私ども、このFXの機種をきめる場合におきましても、国際的な国防の傾向がどういうふうになっていっておるかということは、十分頭に置いて検討したわけでございます。一方において、そういうミサイル等の発達、そしてミサイル等の重要性というものが加わってきておるということは、これは事実でございます。と同時に、今日、有人機を全然廃止する、有人爆撃機というようなものを全然なくするというようなことは——そういう有人機の問題につきましても、やはり一方においてミサイルの重要性というものがだんだん加わってきておりますけれども、同時に、この有人機というものが、それなら無益なものであり、不必要なものであるというような状況は当分こないという見解のもとに、この基本方針をきめたわけでございまして、今直ちに国防会議を開いてこの事柄を変更するという考えは持っておりません。
  231. 横路節雄

    ○横路委員 総理大臣にお尋ねしますが、今年の一月十四日、すでにフルシチョフ首相はソ連の最高会議で、陸上兵力の削減と相待って、ソ連の有人爆撃機については一年ないし二年で全面的に生産は中止するのだと言っている。だから、アメリカはそれに伴ってやっているじゃありませんか。それを、これから六年あとの昭和四十年十二月三十一日にそのロッキード戦闘機ができたときは、対抗すべき有人爆撃機はいなくて、全部ミサイルに切りかわったということになりませんか。私は、その点を聞いているのです。
  232. 岸信介

    岸国務大臣 これは国防会議におきまして、防衛庁における専門家が各般のことを調査して、ミサイルというものの重要性がだんだん加わってきておるということにかんがみて、日本においてもミサイル兵器の充実に向かって努力すべきと同時に、有人機というものの生命につきましても、いろいろの方面から検討しまして、われわれはこれがそう短かい期間のうちにその使命がなくなるというようなことは考えておりません。また、ミサイル兵器が発達いたしましても、有人機の持つところの使命というものについては、ミサイルにないところの幾多の特徴を持っておりますので、これは必要であるという見解に基づいて国防会議においてきめたわけでありますから、これを変更する状態ではない、かように思います。
  233. 横路節雄

    ○横路委員 防衛長官もお持ちのようですが、ロッキード戦闘機に関するところの日米両国の交換公文についてて実は私お尋ねをしたいと思って、政府側にも資料の要求をしたわけです。ただ、ここで問題になりますのは、第三項に「日本国政府は、前記航空機生産のため必要な予算上及びその他の必要な措置を執る。」この「予算上必要な措置を執る」はわかりますが、「その他の必要な措置を執る」とは、一体何なのか。それから第六項において「本交換書簡及びこれに基づいて締結されるすべての取極の実施は、それぞれの国の予算に計上された資金があること及びそれぞれの国の憲法上の規定に従うことを条件とする。」私がお尋ねしたいのは、この第三項の「必要な措置を執る」ということと、第六項の「それぞれの国の憲法上の規定に従うことを条件とする」ということは一体どういうことなのか、この点を一つお答えいただきたいと思います。
  234. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 お尋ねの第三項、これは予算ができる前から交渉しておったものですから、必要な予算上の措置、これは今御指摘の通りでございます。「及びその他の必要な措置」、これは生産に入るために新三菱等と契約をしていくというようなことを含んだ必要な措置でございます。それから第六項の「それぞれの国の予算に計上された資金があること」、これも御承知のように、日本の予算上におきましては、国庫債務負担行為等におきまして全部計上されています。また、アメリカにおきましても、アメリカ援助資金等が計上されておるわけであります。それから「それぞれの国の憲法上の規定に従うこと」、これは特に具体的にありません。前の飛行機等の契約にこういう文句がついてありましたので、万全を期するために、憲法上の規定ということを書いたので、特に具体的にどうこうということはございません。
  235. 横路節雄

    ○横路委員 この点は、私は長官は御答弁が非常に正直だと思う。この第六項にある、このジェット戦闘機に関する日本政府アメリカ政府との交換公文の最後の「それぞれの国の憲法上の規定に従うことを条件とする。」というのは、何ら深い意味はないのだ、前にも何かあったように思うから、つけたのだということが——これは私あとでお尋ねしますが、本条約第三条の「憲法上の規定」並びに本条約第五条の「憲法上の規定」も、同様に大した意味はないが、これをつけておけば、憲法上の規定、憲法上の範囲内だというので国民が安心をするであろうというので、これはつけたのと大同小異だと思うのです。これはあとで第三条、第五条のときにお尋ねしたいと思いますが、今の長官の御答弁は、非常に率直で、私はいいと思います。この点、何かありますか。
  236. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 これは安保条約上の「憲法上の規定及び手続」、こういう重大な問題と、この交換公文一緒にして考えるのは、間違いだと思います。
  237. 横路節雄

    ○横路委員 これはあとで私は三条と五条でお尋ねしますが、長官のさきの答えは、私はその通りだと思う。  防衛局長にお尋ねしますが、F86Fが、木更津の飛行場の格納庫に、四十五機、油づけになっておるでしょう。これをお答え願いたい。
  238. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 二月に調べたときには四十数機ございましたから、今もあまり数は変わっていないと思います。
  239. 横路節雄

    ○横路委員 総理大臣、今の点をお聞きでございましょう。木更津の飛行場の格納庫に、多額の金を使って作ったF86Fジェット戦闘機が、四十五機油づけになっておる。これは前にアメリカからF86Fを供与された場合にも、パイロットか不足であるというので、同じく木更津の格納庫にしまってあった四十五機については、何ら使うことなく、返還を命ぜられて、これを返還した。ところが、また、国内生産の四十五機を生産して、使わないまま、木更津の飛行場の格納庫に油づけにしてしまっておる。そうしてこの木更津の飛行場に、四十五機、使わないで油づけにしてあるのに、なお新たに、四月の一日から十二月三十一日まで、四十三機について生産をしておる。私が今このことを指摘しておりますのは、F86Fに伴う航空機生産というものが、日本の現状に即さないで、アメリカ政府日本政府との調印に基づいて、仕方なしに、航空機生産事業を拡大するためのみにしかやっていないじゃありませんか。これは、総理大臣、初めてお聞きでごさいましょう。どうですか。四十五機油づけになっておるんですよ。
  240. 岸信介

    岸国務大臣 私は、その事実については正確に報告を受けておりませんから、承知をいたしておりません。
  241. 横路節雄

    ○横路委員 防衛長官、知っておりましたか。四十五機油づけになっておるでしょう。
  242. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 四十数機待機しております。そのうち十数機を、この間もお話がありましたが、偵察機に改造する、こういう予定であります。
  243. 横路節雄

    ○横路委員 長官、私は今のお言葉は不穏当だと思います。四十五機、木更津の格納庫でさびないように油づけにしておるのに、待機しておるとは一体どういうことですか。待機というのは、飛行場の滑走路に並べて、いわゆる緊急出動命令がきたら、いつでも飛び出せるようにしているのが、待機でありませんか。格納庫に油づけになっているものが、何で待機ですか。長官、今のお言葉は適当でありませんよ。待機しているなんというお言葉は、適当じゃありませんよ。やはり長官、適当でないものは取り消されたらいいでしょう。
  244. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 待機という言葉が適当でなければ取り消しますが、油づけというのもあまり適当でないと思います。(笑声)大切に保存しておって、そしてその一部、十五機でしたか、それを偵察機に改造しようということで待たしておるという意味でございます。
  245. 横路節雄

    ○横路委員 あなたは、待機しているというのは取り消されたのですが、油づけというのは、さびないように万端の用意をしていることなんです。  そこで、私は長官にお尋ねしたいのですが、この四十五機については、さきに私から指摘をしたように、そのうちの十八機については偵察機に切りかえるじゃありませんか。パイロットの養成がうまくいってない、パイロットが不足しているために、四十五機は格納庫に入っているじゃありませんか。それで、あるならば、なぜ一体、この四月の一日から十二月三十一日までの昭和三十五年度の予算の中で、四十三機、F86Fの生産をさらにやるのですか。F86Fの四十三機の生産は、当然ひとまず中止をするのが——先ほど長官が言われたように、中距離弾道弾については、これ以上、アメリカの国防、アメリカの予算上からいって、たえられないというので、せっかく六百五十億の開発費をかけ、その会社に対して三百億の違約金を払ってもなお中距離弾道弾の生産を中止したアメリカの国防論争から見ましても、この木更津の格納庫に四十五機入っているならば、四月一日から十二月三十一日までのこの四十三機の生産は、当然中止なさるべきでありませんか。(「予算委員会でやれよ」と呼ぶ者あり)今は予算委員会ではないが、これは国防に関する大事な問題ですから、聞いているのであります。これは第三条との関係です。
  246. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 お話のように、四十五機のうち、十八機を偵察機に改造するということで、これは予算の御承認を得てその用意をしているわけであります。必要なものでありまするから——それを今そこに置くということは、これが不要になったということではございません。なお、詳しいことは防衛局長からお答えいたします。
  247. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 お答えを申し上げます。これは御承知通り、昭和二十九年に航空自衛隊が発足をいたしまして、それから一年数カ月たちまして、ジェットの訓練を九州の築城で始めたわけであります。それまで、計画を立てるにつきまして、われわれの方ではジェット機の経験を持った者が起りませんでした。そこで、アメリカのいろんなデータを資料として計画を作ったわけでございます。ところが、やってみますると、やはりなかなか思うようにいかない。日本アメリカ気象状況も違いますし、また飛行場の獲得等につきましてもいろいろ問題がございました。そういうことで、パイロットの養成がだんだんおくれて参ったわけでございます。そういうことで、昭和三十四年度におきましては、四十数機、木更津の格納庫に入っておるという状態になっておりまするが、その後、数年前から、パイロットの養成も順調に進んで参りましたので、今のところの計画では、昭和三十五年度におきましては、四十三機を作りましても、余剰は十数機にとどまるという計画でございます。
  248. 横路節雄

    ○横路委員 実際にパイロット養成が間に合うのであるならば、国防上必要だというので、今なお四月一日から十二月三十一日まで四十三機の生産をやるならば、今格納庫にある四十数機については、これを偵察機その他に変えないで、当然パイロット養成に見合ってやるべきものを、何で一体、十八機偵察機に憂えるのです。
  249. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 これは、当初、現行の防衛計画を立てます際に、偵察機は三台、三十七年度末までに予定をしておった。それがだんだんおくれて参っておる状況でございまして、われわれといたしましては、偵察隊は当然必要だと思います。偵察機に改造いたしますのは、パイロットの養成の問題とは関係ございません。
  250. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 飛鳥田一雄君から関連質疑の申し出があります。これを許します。飛鳥田一雄君。
  251. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 内閣委員会で、塔乗員の養成については困らないか、足りなくなるようなことはないかということを、再三、石橋君や私が伺っているはずです。そのたびに、絶対にさようなことはございませんと、あなた方お答えになっているじゃありませんか。それじゃ、前に内閣委員会でお答えになったあなた方の答弁を全部取り消す、こういうことをおっしゃっていただかなければならぬ。内閣委員会における答弁と今のお答えとは全然違いますよ。いつでも、政府というものは、いいかげんなことを言ってその委員会を通ってしまえばそれでいいのだ、こういうことに伺ってよろしいですか。少なくとも、私たちにうそをついたという事実だけはお認めになってよろしいと思う。
  252. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 どういう状況のもとでパイロットの養成に困らないということを申し上げたか、私今記憶にございませんが、数年前まではパイロットの養成が計画より非常におくれておりましたことは、事実でございます。しかし、一昨年あたりから、大体私どもの計画しておりまする線に乗りましてパイロットのプット・アウトが出ておるわけでございます。そのことについて、一昨年くらい前からについて申し上げますれば、パイロットの養成は計画通りできておるということは、間違いございません。
  253. 横路節雄

    ○横路委員 この問題は、防衛庁の生産計画、パイロットの養成計画というものが、率直に言って私はずさんだと思うのです。前に長官も、予算委員会で、アメリカから供与された四十五機は、パイロットの養成が間に合わないで、返したとおっしゃった。事実そうなんです。また生産したところが、またパイロットの養成が間に合わないで、せっかく国民の税金で作った四十五機が、また格納庫は入っている。こういうことは、正直な話、私は国防計画がずさんだと思うのです。この点は、何といっても、パイロットの養成計画と飛行機の生産計画が合わなくて、国民の税金をむだにしている一つの例だと思う。これはターターについても言えると思うのです。(「予算が足りないからだ」と呼ぶ者あり)予算の問題にだんだん触れますから、私は次に移りますが、タータでもそうじゃありませんか。初め二十二億幾らというのが、なるほど、交渉の結果、二十億には終わったでしょう。しかし、三十四年度の予算で七億幾らを計上しているのに、この間の契約では、三十四年度予算から二億幾らしか払っていないじゃありませんか。二億しか払えないものであるならば、七億の予算でなしに、初めから二億計上しておけばいい。国庫債務負担行為を入れて二十二億三千幾らのものが、二十億で済むならば、初めから二十億とやっておけばいい。こういう点は、このF86Fの生産計画とも同じだが、ターター一つ例をとってもおわかりだと思うのですよ。長官総理大臣はこまかな予算のことについてはおわかりでないかもしれませんが、私は契約書を全部とってあるのだ。私はその点についてもっとお尋ねしたいと思いますが、F86Fについては事態が明らかになりましたから、次に移りたいと思います。  次に防衛長官にお尋ねしますが、五月九日から——これは朝日新聞でございますが、沖縄米軍の北富士の演習が行政協定違反であるというので問題になっておりますが、これは、現に、すでに東富士で演習をやっておるわけです。そうして、それから引き続き北富士で演習をするというわけでございますが、ここで長官にお尋ねしたいのは、この沖縄の第三海兵隊所属の沖縄駐留米軍は、第七艦隊に乗ってどこかに来たはずなんだが、一体長官はこれの通知を受けましたか。第七艦隊によって、いつ沖縄第三海兵隊所属の沖縄駐留米軍がどこどこに来ましたよという通知を受けましたか。受けましたならば、いつ通知を受けたか、一つお知らせをいただきたい。
  254. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 調達庁長官から御答弁いたさせます。
  255. 丸山佶

    ○丸山政府委員 ただいま北富士演習場で演習をしております沖縄から来ました第三海兵隊の演習に関しましては、三月の二十五日に米軍の司令部より調達庁に連絡がございました。なお、その後、実際にやる場合には、これは合同委員会の決定に基づく演習場の立ち入りに関する件によりまして、一週間前に各知事あてに米軍の直接の部隊から連絡することになっておりまして、その連絡もいたしております。
  256. 横路節雄

    ○横路委員 それでは長官にお尋ねしますが、これは何の船で来たのですか。そうして、いつどこへ上陸をしたのですか。あなたの今の説明では、三月の二十五日に米軍の司令部から通知があったというのだが、第七艦隊の何によっていつどこに入港したのか、その通知はあったのですかと聞いているのです。
  257. 丸山佶

    ○丸山政府委員 私が今申し上げましたのは、司令部から、演習に関する開始の時期に関する通知でありまして、入港に関するものではございません。
  258. 横路節雄

    ○横路委員 いや、そうじゃないのです。これが大問題なんです。これは三月二十五日に米軍司令部から、これこれの期日に演習をするという通知であって、これは第七艦隊によって横須賀に入ったものだろうと思うのだが、一体、いつ横須賀に入ったものか、そういう入港の通知についてはないのでしょう、この点は防衛長官はどうなんですか。全然知らないのですか、あなたの方には全然入港の通知はないのですか。
  259. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 どの船で、どういうように運んだという通知は受けることにはなっておりません。行政協定第五条によって入港の手続はしてある、こういうことであります。
  260. 横路節雄

    ○横路委員 長官、これはあなたにお尋ねしているのだが、あなたのところには、いつ入ったという通知はあったのかないのか聞いているのです。あなたのところにはあったのですか、ないのですか。あなたは、今、ないようなことを言う、これはどうなんですか。あったのかないのか、ないのでしょう、ないのなら、ないでいいのです。
  261. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 港の長には通知がありますが、私には通知を受けていません。
  262. 横路節雄

    ○横路委員 そうすると、長官、今は全然通知がないわけですね。その点は明らかになった。  防衛局長、これはどうなんですか。前に、私にここで答弁したのとはちょっと違いませんか。前に長官は、初めはなかった、これは通知の義務はないのだ、こういうような答弁をしたのでしょう。通知の義務はないのだと答弁したが、あとで参議院の予算委員会でも訂正されている。そして、私は、その点をただしたところが、あなたはこう言ったじゃありませんか。長官、あなたは私にこう言ったでしょう。横須賀に入港してくる、そうしたら海上自衛隊の横須賀の総監部には知らせがあって、いわゆる海幕にまで連絡がある、私は通知を受ける権利はないし、向こうも通知をする義務はないが、海幕からは必ず知らせてくることになっていると、あなたは答弁したじゃありませんか。それを今第七艦隊で——これから兵力を申し上げますが、それだけの兵力が入ってきたのに、長官は全然知らないということでありますが、(「今の協定では」と呼ぶ者あり)今の協定でも、これからの協定でも同じなんです。長官、そこが大事なんだ。あなたは、初めは通知を受ける法的な根拠はないと言って、あとで訂正された。だから、私どもはその点をただしているのだが、防衛局長、あなたは知っているでしょう。長官は知らなくても、局長は知っているでしょう。
  263. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 今のお話のように、私の申し上げたことに間違いないのです。法律上通知を受ける権利もなければ、向こうで法律上あるいは条約上通告をする義務もないわけです。しかし、事実上は、この間申し上げましたように、入ってくれば、向こうの海軍の司令部から総監都の方に話があって、それから海幕の方へ話があって、それが事実上私の方へ話を受ける。今の具体的な場合には、第七艦隊が入ったということはわかりますが、どういうものがきたかということは、これは合同委員会で、北富士に入ったときに正式に通知を受けておりますことは、調達庁長官先ほど申し上げた通りであります。
  264. 横路節雄

    ○横路委員 防衛局長、いいですか、防衛局長はよく知っていらっしゃると思うからお尋ねしたいのです。長官は、もちろん通知を受ける法律的なそういう権限はない、これはそう思います。しかし、この前、長官は、そうであるけれども、自衛隊の横須賀の地方総監部から海幕に通知があって、海幕から必ず私に通知がある。ところが、今、長官お話では、ないわけだ、しかも、第七艦隊——今、長官は訂正されて、第七艦隊が入ったという通知はある、しかし、何がどう入ったものかわからぬと言われる。この東富士、北富士に入った沖縄第三海兵隊所属の兵力が一体どれだけ入ったかということは、わからないわけですか、あなたはご存じですか。
  265. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 これはこの前長官お答えになりました通りでございまして、行政協定第五条による通告の連絡を受けることにはなっておらない。しかし、横須賀にはわが方の海上自衛隊の総監部の連絡官がおりまして、そこで事実上連絡を受けているということでございます。それから、海上幕僚監部に連絡を受けましたものは、必要に応じて長官に御報告をするという仕組みにしておるわけでございます。ただ、非常に艦艇の出入りも多いわけでございますから、小さい艦艇の場合まで一々長官のお耳に入れるということは、これはやはり必要ではないという場合があります。今度の場合につきましては、私は、兵力につきましては連絡を受けておりませんでした。
  266. 横路節雄

    ○横路委員 そうすると、防衛局長にお尋ねしますよ。行政協定の第五条並びに合意議事録によって、連絡を受けるのはだれかというと、港湾の管理者です。港湾の管理者とはだれかといえば、それはいわゆる都道府県知事、あるいは市においては市長なんです。あるいは海上保安庁の担当の職員であって、これは法律的には、海上自衛隊の地方総監部も別に受けないわけです。そうですね。ましてや、海幕も受けないのです。海上自衛隊の横須賀の総監部も法律的には受けない、海幕も受けない、長官も何ら知らない。だから、第七艦隊が入港したということも、これは好意をもって知らせれば別だが、そうでない限りは、わからない仕組みです。しかも、今度北富士、東富士で演習をしているこの兵力については、自衛隊としては何ら知らない。全然知らないわけです。こういうのが現行の行政協定であり、今度の合衆国軍隊地位に関する協定でも同じなんです。  調達庁長官にお尋ねしますが、あなたも、いつ入ったかわかりませんか。いつ入ったかわからぬのですか。
  267. 丸山佶

    ○丸山政府委員 演習に関する通報は、ただいま申し上げました通り調達庁米軍司令部から受けております。なお、その兵力に関しましても、今回の件は、海兵隊約二千六百名という通告を受けております。なお、入る期日に関しましては、今回の件は、四月二十五日より六月一日に至る期間内の演習のものであるという通知を受けております。
  268. 横路節雄

    ○横路委員 長官、東富士については四月二十五日に設営部隊が三百人、五月九日から五月十六日まで、さらに千百人、千三百人、それから北富士については、五月十六日から五月二十一日まてというのは、いつの日米合同委員会でこれを決定したのですか。
  269. 丸山佶

    ○丸山政府委員 演習場の使用に関しましては、それぞれ一般的に規定がございます。今回入る演習のときに、そのつどきめるという問題ではございません。
  270. 横路節雄

    ○横路委員 調達庁長官、それでは、この北富士、東富士の演習場について、いつからいつまで使用するということについては、日米合同委員会では協議する事項になっていないというわけですね。ただアメリカ軍の司令官から四月の二十五日から六月の一日まで使用するという一片の通知さえあれば、それで沖縄の海兵隊は北富士、東富士の使用ができる、日本じゅうのあらゆる基地が使用できるというわけですね、合同委員会の決定を待たないでも。
  271. 丸山佶

    ○丸山政府委員 東富士並びに北富士の演習場は、御承知通り米軍の使用する演習場として施設及び区域になっておるわけであります。その施設及び区域をきめたときの条件として、その使用の際には、どういうような手続で、どういうことをするかということがきまっておるわけであります。それに基づいて、個々の演習の際には、今申し上げましたような通知があるわけであります。
  272. 横路節雄

    ○横路委員 調達庁長官、北富士、東富士は、当然行政協定の第二条の第三項で「合衆国軍隊が使用する施設及び区域は、この協定の目的のため必要でなくなったときは、いつでも、日本国に返還しなければならない。合衆国は、施設及び区域の必要性を前記の返還を目的としてたえず検討することに同意する。」となっておるではありませんか。  そこで、この東富士、北富士について、私はあなたにお尋ねをしたい。これは三十二年の三月十五日に、北富士から在日米軍たる第三海兵隊所属部隊は全部引き揚げを完了しているのではありませんか。建物、施設も全部撤去して、管理部隊もいないではありませんか。東富士については、三十二年十一月にその司令部も引き揚げ、沖縄に全都引き揚げているではありませんか。そうすれば、三十三年、三十四年、三十五年ですよ。そうして、三十三年六月ないし七月ごろであったと思いますが、富士のキャンプ司令部も、全都管理機関もろとも引き揚げておるではありませんか。そうすれば、行政協定第二条の第三項によって、この北富士、東富士の施設区域は、当然必要でなくなったときにはいっでも日本国に返還しなければならないじゃありませんか。あなたの方は、なぜこれをしないのですか。そうして、一々の演習については合同委員会における協議を必要としない、一片の通告でいいのだということは、調達庁長官としては怠慢ではありませんか。第二条の第三項によって、当然返還を要求すべきだ。あなたは返還を要求したのかどうか、その点をお尋ねします。
  273. 丸山佶

    ○丸山政府委員 あの演習場におりました海兵隊が沖縄に行きましたことは、御指摘の通りであります。従いまして、その後、あの演習場に関する米軍の演習の度合いは非常に少なくなっております。私どもも、こういう状況であるならば、日本側に返還するのが当然であるという考えを持ちまして、返還折衝をいたしております。正式には、昨年の七月二十一日に合同委員会の正式の議題として、自後、今日までその折衝を続けておるわけでございます。ただ、疑問とされる点は、沖縄に行ってしまった海兵隊が、また日本にやってきた従来通り演習ができる、これに対する問題だと存じますが、これに関しましては、行政協定の二条によりまして、安保条約の目的遂行上必要な米軍としてはこの施設及び区域の使用ができる、こういうことでありますので、沖縄に行きました米軍でも、演習に関してこの施設及び区域の使用ができる、このように私は解しておるわけであります。
  274. 横路節雄

    ○横路委員 それではお尋ねしますが、沖縄の第三海兵隊は、今の御答弁で、第二条で日本施設区域を使用することができる。それは沖縄の第三海兵隊であってもできるのか、沖縄の第三海兵隊が日本に来たとたんに在日米軍の指揮下になったから、それでできるのか、その点はどちらなのでございますか。
  275. 丸山佶

    ○丸山政府委員 沖縄におります第三海兵隊は、御承知通り、第七艦隊の所属でございます。従いまして、これが日本に来ます場合でも、その系統的の所属は変更はございませんが、日本に入りますと、これは横須賀の海軍司令部の区処のもとに行動するものと考えております。従いまして、それらの軍隊も、やはり、安保条約の目的の遂行のための軍隊として、日本に、一時的とはいえ、配備されたものと私は考えております。
  276. 横路節雄

    ○横路委員 そうすると、今のお話は、沖縄の第三海兵隊は、日本に入ったとたんに横須賀におる在日米海軍司令部の命令系統に入るから、それが短い期間であっても、在日米海軍としての適用を受けるからこの演習場が使用できる、こういう意味ございますか。その点、一つはっきりしていただきたい。
  277. 丸山佶

    ○丸山政府委員 第三海兵隊と申しますのは、第七艦隊の指揮下にあるものでございます。従いまして、この状態は、日本に入りましても変わりはないと思います。ただし、日本に入った場合は、一時的ながら、別の系統ではありますが、横須賀にある在日海軍司令部の区処を受ける、こういう形になるものと私は考えております。
  278. 横路節雄

    ○横路委員 そうすると、今、長官お答えで、沖縄の第三海兵隊は、明らかに在日米軍ではない、第七艦隊の指揮下に属しておるわけだ。そして第七艦隊は、たびたびここで議論されているように、在日米庫ではない。そうすると、この沖縄の第三海兵隊というものは、あくまでも在日米海軍でない第七艦隊の指揮下にある、そういう答弁なんです。しかし、一たん日本にくれば、横須賀にある在日米海軍司令部の行政上の何か指揮を受けるというのですか。命令系統は在日米軍ではないが、一時的に——何ですか、その区処というのは。よくわからぬ。行政上の管理を受けるというのですか、その言葉は何ですか。この沖縄の第三海兵隊が在日米軍かどうかということについての問題点でありますから、一つ区処という点について明らかにしていただきたい。
  279. 丸山佶

    ○丸山政府委員 在日米軍という言葉の定義に関する問題ですが、これに関してはいろいろの見方からの在日米軍の観念があると存じます。私どもは、通常、常時日本国内に駐留しておる軍隊を在日米軍と申しておりまして、それの統合的な在日米軍司令部というものがある。これを通常的に在日米軍と申しておりますが、しかし、そこに指揮命令系統——身分的にも所属したもの以外でも、やはり条約並びに協定の趣旨に沿うような部隊、別のものが日本に一時的に入る場合には、所属の身分、指揮系統はそのままでありましても、国内における行動等につきましては、在日米軍司令部の横からの指図を受ける、その関係を、普通今まで法令の観念に区処という言葉がございますので、それに該当するであろう、このように考えております。従って、短期間でありましても、その間における地位は、やはり在日米軍、広い意味の在日米軍と解してよろしいものと私は考えております。
  280. 横路節雄

    ○横路委員 長官、今のお話は、区処と解してよろしいであろう、その適用を受けてよいであろうという解釈ですね。  そこで、私は、条約局長にお尋ねしたいのですが、新しい合衆国軍隊地位に関する協定、この第一条の(d)項に「「合衆国軍隊の構成員」とは日本国の領域にある間におけるアメリカ合衆国の陸軍、海軍又は空軍に属する人員で現に服役中のものをいう。」とある。この「日本国の領域にある間における」、これは第五条の「施政の下にある領域」とは違うと思うのです。この「日本国の領域にある間」というのは、沖縄も小笠原も含んでいるのですか、この点はどうなんですか。
  281. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 含みません。
  282. 横路節雄

    ○横路委員 そうすると、これは施政下にある領域にあるというのと同じなでんすね、答弁して下さい。
  283. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 そのつもりでございます。そうでございます。
  284. 横路節雄

    ○横路委員 「そのつもりです」というのでは——ども、なぜ、こう施政下にある領域というふうに明確に使わなかったのかと思いまして——「そのつもりです」というのと、「そうです」というのと、だいぶ違うから聞きたいのです。
  285. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 その通りでございます。同じでございます。
  286. 横路節雄

    ○横路委員 それでは条約局長にお聞きしますが、この新しい合衆国軍隊地位に関する協定がもしも発効になった場合においても、今問題になっておるような、この沖縄第三海兵隊が現に沖縄にいる、それが日本に来て、一時的に在日米軍——この新しい協定では、在日米軍という観念はあまりないのですから、そこで一時的に横須賀の海軍司令部の区処ですか、いわゆる指揮命令系統ではないが、そこに入って、依然として北富士、東富士のそういう演習場を使えるのかどうか、その点を一つ明らかにしてもらいたい。
  287. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 それは使えると思います。新条約の第六条には、米国の軍隊によるところの日本施設区域の使用ということが規定されてあるわけでございます。また、その新地位協定におきましても、旧地位協定と全く同じ第一条の規定もあるわけでございます。
  288. 横路節雄

    ○横路委員 調達庁長官に伺いたい。この行政協定第二条第三項に伴って、あなたの方では、今まで、いわゆるアメリカ軍の司令部に対して、もう演習場は必要ないのだから、ぜひ一つ返してもらいたい、そういうことについて、これは一体要求しておるのかどうか、要求したことがあれば、いつ要求されたか、これからは一体要求するのかどうか、現に、もう三十二年に引き揚げているわけですから、この点はどうなんですか。
  289. 丸山佶

    ○丸山政府委員 その点は、先ほど申し上げたと思いますが、すでに公式に昨年の七月二十五日の合同委員会に返還要求書を出しまして、その後、現在に至るまで早期返還の折衝をいたしておるわけでございます。もちろん、これの実現をこれからも努力するつもりでございます。
  290. 横路節雄

    ○横路委員 そうなれば、長官、去年の七月二十五日に返還を要求しておる。それは三十二年の三月から、現に引き揚げを終えて、使ってないのだから、それを七月の二十五日にあなたの方が要求しておるならば、この間の三月二十五日に、四月の二十五日から六月の一日まで使いますよというときには、それはお断わりですよ、そういうことをあなたの方では明確に言うべきではありませんか。そういうことについて何で意思表示をしないのか。
  291. 丸山佶

    ○丸山政府委員 施設区域は、両国政府間で取りきめております。従いまして、返還要求の折衝が合意を見て返還になりますれば、使ってはいけないということが言えるわけでございますけれども、それができないうちは、使用を拒否するというとはできないわけでございます。なお、お話しの通り、沖縄から来てやる回数が、常時今までおったようなときとは非常に違いまして、頻度が減ってきております。一月あるいは一月置きという程度のものになっておりますので、私たちは、これはすでに常時演習場として必要のないものであるから返還をすべきである、こういうことで要求を出し、折衝をいたしておるわけであります。
  292. 横路節雄

    ○横路委員 今の問題は、これを非常に多くの問題を残しておりますので、また明日の機会にあらためてお尋ねしたいと思いますが、実は、運輸大臣に先ほどから御出席を願ってお聞きをしないのも失礼だと思いますので、これからお尋ねをしたいのであります。  実は、行政協定の第五条、それから合衆国軍隊地位に関する協定の五条から合意議事録の第五条、それからあなたの方で出された航空交通管制の日米合同委員会において合意されたもの、これでお尋ねをしたいと思うのですが、いろいろ理事の諸君の時間の打ち合わせもあるから、二、三の点だけお尋ねをして、明朝さらにお尋ねをしたいと思うのです。  実は、大臣のお手元にあるだろうと思いますが、私たちに配られました「航空交通管制、昭和二十七年六月および同三十四年六月日米合同委員会において次のように合意された。」このうちで私がお尋ねをしたいのは、「昭和三十四年六月の合意」の、ここの第四項、「防空上緊急の必要があるときは、防空担当機関が保安管制を行なうことに同意している。」、一体この保安管制とは何を言うのでしょうか、この点お尋ねしておきたい。
  293. 楢橋渡

    ○楢橋国務大臣 航空局長からお答えをさせます。
  294. 辻章男

    ○辻政府委員 お答えいたします。これは防空上緊急の必要がある際には、防空担当機関が、航空交通の面からは必要でございますが、防空の見地からある施設、たとえば無線標識等のある個所を停止しますとか、あるいは場合によりましては、日本のある空間は民間機を飛ばさぬようにしてもらいたいとか、あるいは軍用機についてはすべて最優先に扱ってくれ、そういうふうな防空上のために必要な措置をとるということでございます。
  295. 横路節雄

    ○横路委員 航空局長、それでわかりましたが、今の保安管制は、防空上緊急の必要がある場合においては、民間機は使わせないで軍用機について最優先的に飛ばせる、ある空間については飛んではならない、こういうことが保安管制だ。なおもう一つ、この保安管制について、実はあなたの方の関係の航空管制課ですか、あるいは総務課、こういう人々にも、私はよくわかりませんから、さらに尋ねてみた。この保安管制の中には、今航空局長お話しをされた点のほかに、どうも敵機が来襲するようだ、だからこの点一つ警戒態勢に入らなぬければならぬ、現に敵機が来た、夜間においてあかりがどんどん見えるので、敵機の攻撃目標になる、だから一つ灯火についてもある程度管制しなければならぬというようなことも、この保安管制の中に当然含まれているのではありまんか、こうお尋ねしましたら、あなたの方の担当官の人々は、それも含まれていますと、こういうお話なんですが、航空局長としていかがですか。
  296. 辻章男

    ○辻政府委員 今御質問がございましたいわゆる灯火管制的なものは、この中には入っていないと解しております。これは御承知通り、航空交通管制に関しまする合意でございまして、運輸大臣が航空交通管制を行政上行なっておるわけでございますが、緊急の場合には、防空上の見地から、航空交通管制が保安管制のためにある程度制約される。そういうことについてあらかじめ同意をしておる次第でございますので、灯火管制のごときものは入っていない、かように考えております。
  297. 横路節雄

    ○横路委員 航空局長に重ねてお尋ねをしたいのですが、防空上緊急の必要のあるときは、この上空は民間機は飛んではだめだ、あるいは軍用機が最優先だということは、保安管制に入るでしょう。そのことは敵機の来襲が近い、警戒態勢に入ったからこの上空は飛んではだめだ、民間機は飛ぶのをやめろ、軍用機は優先的にやれというのは保安管制でしょう。そういうように、敵機の来襲等が近いということなんですから、あらかじめ空についての保安管制を行なうことは、当然それは運輸大臣に対してもいろいろ——運輸大臣が直接持っているかもしれないけれども、この防空担当官が、そういう点について運輸大臣との間に協議をするのでしょう。そうでなければ、保安管制については、防空担当官が、今敵機の来襲か近い、だからその上空は飛んではためだ、軍用機最優先で、民間機はこの上空を飛んではだめだということで保安管制に入るならば、当然それに伴うところの、いわゆる敵機が来襲したあるいは敵機の来襲が近いというようなことについては、この防空担当官が運輸大臣に通報するわけですか。その点、実際上はどうなっているのですか。
  298. 辻章男

    ○辻政府委員 これは先ほど申し上げましたように、そういう防空上の措置に対しまして、運輸大臣といたしまして、ある程度航空交通管制というものが制約されるわけでございますが、その制約を受けるということに同意しているわけでございます。従いまして、御質問がございましたような、いわゆる灯火管制のようなあるいは要望もあるかとも思うのでありますが、これは運輸大臣といたしましては、今権限上、灯下管制をしくというような権限を持っておりません。ここでは航空交通管制に関しまして、そういう緊急事態の際に保安管制が行なわれ、これに対して航空交通管制が制約を受けるということを、運輸大臣として同意している。そういう趣旨でございます。
  299. 横路節雄

    ○横路委員 いや航空局長、あなたの答弁はいろいろデリケートなところかあります。航空交通管制については、防空上緊急の必要があるときは、防空担当官が保安官制をやることに同意している。だから、この防空担当官が保安管制をやるというのは、今お話しのように、民間飛行機は飛んではだめだ、軍用機最優先だ、この上空は飛んではだめだ、それは全部いわゆるレーダー・サイトによって防空担当官がそういう情報をキャッチして、そういう指示を与えるんでしょう。だから、そういう指示を与えれば、軍用機最優先あるいはこの上空は飛んではだめだ、民間機は飛んではならぬというときには、当然いわゆる保安管制をやるということは、日本に対してのいわゆる武力攻撃その他が間近いという判断において行なわれるわけです。そうすれば、日本じゅうあかあかと電灯がついており、そういう重要な軍事基地やあるいは都市の周辺について、攻撃がどんどん加えられる。こういう場合には、当然保安管制としては、こういうことをすべきではないかということについては、この防空担当官は運輸大臣にそういう旨を通知しなければならないではありませんか。その点はどうなっておるのですか。
  300. 辻章男

    ○辻政府委員 お答え申し上げます。これは先ほど申し上げましたように、そういう事態にはいわゆる灯火管制等を行なう必要があるかと想像されるのでございますが、ただいま運輸大臣の権限といたしましては、灯火管制を命ずるような権限がないわけでございまして、これは私も自信ございませんが、警察関係あるいはその他のところから行政指導するなり、そういう措置がとられるのではないか、かように考えております。
  301. 横路節雄

    ○横路委員 ここの第四項の防空担当機関というのは、第五空軍でしょう。
  302. 辻章男

    ○辻政府委員 これは、合衆国につきましては在日第五空軍、それから日本側におきましては防衛庁となっております。
  303. 横路節雄

    ○横路委員 今の航空局長お話は、ちょっとおかしいのじゃありませんか。第五項にはこうなっておりますよ。「国外から飛来する航空機が管制本部に対して位置通報を行なうべき地点の決定に際しては、日本政府は防空担当機関協議する。」日本政府が防空担当機関協議するのですよ。どうして日本政府の中に防空担当機関がありますか。明らかに、第五項にいう防空担当機関も、第四項にいう防空担当機関も、同じじゃありませんか。そうすれば、第四項にいう防空担当機関とは、これは第五空軍ですよ。あなたはそういうふうに二つに分けてお話しなさるけれども、第五項のこれからいって、おかしいじゃないですか。「日本政府は防空担当機関協議する。」となっているじゃありませんか。航空局長、そうじゃありませんか。あなたは、何か次に私に聞かれるのではないかと思って、この防空担当機関には、日本防衛庁の機関と、第五空軍の機関があるというのは、間違いですよ。第五項に明らかになっておるじゃありませんか。だめですよ、そういうことをおっしゃっては。
  304. 辻章男

    ○辻政府委員 お答え申し上げます。お配りしました資料につきまして、今おっしゃったような、日本政府の外に防衛庁があるような書き方になっておりますが、防衛担当機関というのは先ほど申し上げましたように、第五空軍と防衛庁と両方含むんだということは、この合意の際に意見の一致を見ております。
  305. 横路節雄

    ○横路委員 航空局長、それでは明日出してもらいたいのです。「日本政府は防空担当機関協議する。」この防空担当機関は、第五空軍の機関防衛庁の機関と、両方が防空担当機関であるというようになっているのだという点は、どこでそう言うか。この文章からは、合意議事録からは絶対にならない。ですから、私は、実は運輸大臣にここに来ていただいたのは、明日たくさんお尋ねをしますが、この第四項で防空担当機関というのは——これは第五空軍が保安官制を行なうことに同意をしている。第五空軍にも一部移譲している。航空局長の言うことをそのまま聞いても、半分以上第五空軍に移譲している。その第五空軍が保安管制を行なう、その保安管制は、空について一切の航空交通管制を実施できる。そうして民間機の飛行についての中止、軍用機の最優先、そういうことについては、第五空軍が主たる機関としての任務を持つことは明らかなんです。そうなると、私が心配するのは、この点は先ほど航空局長答弁だけでは明らかでないが、実際には、また再び国民の生活に重大な支障を来たすような灯火管制その他というようなものが、現に第五空軍の判断によって行なわれる、こういう事態が、私は、この日米合同委員会における昭和三十年の六月のこの合意議事録からはうかがえるので、お尋ねをしたわけです。この点は、私は、航空局長、あなたの局の担当官から聞いたのですよ。これは第五空軍だけである、こう言っておる。しかし、あなたが今、航空局長として、これは第五空軍並びに防衛庁の担当機関である、こういう点は合意議事録で明確になっておると言うならば、明日これを出していただきたいと思うのです。私はあなたの方の管制課、総務課、全都聞いたのです。第五空軍だけであると言っておる。だから、それはあなたの方で両方であると言うならば、明日出してもらいたい。  委員長、これで……。
  306. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 次会は、明十九日午前十時より開会いたします。  本日は、これにて散会いたします。     午後五時二十三分散会