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1960-05-17 第34回国会 衆議院 日米安全保障条約等特別委員会 第35号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年五月十七日(火曜日)     午前十一時二十五分開議  出席委員    委員長 小澤佐重喜君    理事 井出一太郎君 理事 岩本 信行君    理事 大久保武雄君 理事 櫻内 義雄君    理事 椎熊 三郎君 理事 西村 力弥君    理事 松本 七郎君 理事 竹谷源太郎君       安倍百太郎君    秋田 大助君       天野 光晴君    池田正之輔君       鍛冶 良作岩    加藤 精三君       賀屋 興宣君    小林かなえ君       田中 正巳君    床次 徳二君       野田 武夫君    服部 安司君       福家 俊一君    古井 喜實君       保科善四郎君    毛利 松平君       山下 春江君    飛鳥田一雄君       石橋 政嗣君    岡田 春夫君       黒田 寿男君    田中織之進君       戸叶 里子君    中井徳次郎君       成田 知巳君    帆足  計君       穗積 七郎君    森島 守人君       横路 節雄君    受田 新吉君       大貫 大八君    堤 ツルヨ君       門司  亮君  出席国務大臣         内閣総理大臣  岸  信介君         外 務 大 臣 藤山愛一郎君         国 務 大 臣 赤城 宗徳君  出席政府委員         内閣官房長官 松本 俊一君         法制局長官   林  修三君         防衛庁参事官         (長官官房長) 門叶 宗雄君         防衛庁参事官         (防衛局長)  加藤 陽三君         調達庁長官   丸山  佶君         外務政務次官  小林 絹治君         外務事務官         (大臣官房審議         官)      下田 武三君         外務事務官         (アメリカ局         長)      森  治樹君         外務事務官         (条約局長)  高橋 通敏君         気象庁長官   和達 清夫君  委員外出席者         専  門  員 佐藤 敏人君     ――――――――――――― 五月十七日  委員帆足評君、横山利秋君及び受田新吉君、辞  任につき、その補欠として田中織之進君、成田  知巳君及び門司亮君が議長の指名で委員に選任  された。     ――――――――――――― 五月十六日  日米安全保障条約改定反対に関する請願外八件  (淺沼稻次郎紹介)(第三七四九号)  同外四件(赤松勇紹介)(第三七五〇号)  同外百件(飛鳥田一雄紹介)(第三七五一  号)  同(井手以誠君紹介)(第三七五二号)  同外十六件(伊藤よし子紹介)(第三七五三  号)  同外二十五件(石橋政嗣君紹介)(第三七五四  号)  同外七十六件(石山權作君紹介)(第三七五五  号)  同(受田新吉紹介)(第三七五六号)  同(小沢貞孝紹介)(第三七五七号)  同外六件(小川豊明紹介)(第三七五八号)  同外七件(片山哲紹介)(第三七五九号)  同外二十七件(勝間田清一紹介)(第三七六  〇号)  同外四十二件(加藤勘十君紹介)(第三七六一  号)  同外十七件(柏正男紹介)(第三七六二号)  同外三十四件(神近市子紹介)(第三七六三  号)  同外一件(神田大作紹介)(第三七六四号)  同外五件(菊川君子紹介)(第三七六五号)  同外九件(栗原俊夫紹介)(第三七六六号)  同(栗林三郎紹介)(第三七六七号)  同外二件(小牧次生紹介)(第三七六八号)  同外五十件(五島虎雄紹介)(第三七六九  号)  同外三十件(河野密紹介)(第三七七〇号)  同件一外(佐々木良作紹介)(第三七一号)  同外五十八件(佐藤觀次郎紹介)(第三七七  二号)  同(佐野憲治紹介)(第三七七三号)  同外九十件(下平正一紹介)(第三七七四  号)  同(東海林稔紹介)(第三七七五号)  同外一件(鈴木一紹介)(第三七七六号)  同外五十七件(鈴木茂三郎紹介)(第三七七  七号)  同(田中幾三郎紹介)(第三七七八号)  同外三十二件(田中武夫紹介)(第三七七九  号)  同(竹谷源太郎紹介)(第三七八〇号)  同外六件(土井直作紹介)(第三七八三号)  同(中崎敏紹介)(第三七八二号)  同外二十四件(中澤茂一紹介)(第三七八三  号)  同外七十三件(中嶋英夫紹介)(第三七八四  号)  同(中村町雄君紹介)(第三七八五号)  同(永井勝次郎紹介)(第三七八六号)  同(西村榮一紹介)(第三七八七号)  同外十五件(原彪紹介)(第三七八八号)  同外三十四件(帆足計紹介)(第三七八九  号)  同外一件(北條秀一紹介)(第三七九〇  号)  同外二件(松尾トシ子紹介)(第三七九一  号)  同(三宅正一紹介)(第三七九二号)  同外十七件(門司亮紹介)(第三七九三  号)  同外二件(本島百合子紹介)(第三七九四  号)  同外九件(八木一男紹介)(第三七九五号)  同外三百八件(八木昇紹介)(第三七九六  号)  同外三件(矢尾喜三郎紹介)(第三七九七  号)  同外百二十件(山下榮二紹介)(第三七九八  号)  同外五件(山田長司紹介)(第三七九九号)  同外三十件(山花秀雄紹介)(第一八〇〇  号)  同外三十件(横路節雄紹介)(第一八〇一  号)  同外二十八件(吉川兼光紹介)(第三八〇二  号)  同外千七百八十二件(志賀義雄紹介)(第三  八〇三号)  同外四百十一件(石村英雄紹介)(第三八〇  四号)  同(淺沼稻次郎紹介)(第三八〇五号)  同外七十一件(井手以誠君紹介)(第三八〇六  号)  同外八十三件(伊藤よし子紹介)(第三八〇  七号)  同外七百七十八件(猪俣浩三紹介)(第三八  〇八号)  同(石田宥全君紹介)(第三八〇九号)  同(加藤勘十君紹介)(第三八一〇号)  同外九十五件(北山愛郎紹介)(第三八一一  号)  同(久保三郎紹介)(第三八一二号)  同外一件(久保田豊紹介)(第三八二二号)  同外十八件(下平正一紹介)(第三八一四  号)  同外十件(田中織之進君紹介)(第三八一五  号)  同外二百十七件(西村関一紹介)(第三八一  六号)  同外二十一件(西村力弥紹介)(第三八一七  号)  同外一件(帆足計紹介)(第三八一八号)  同外十四件(八百板正紹介)(第三八一九  号)  同外百八件(八木昇紹介)(第三八二〇号)  同外百五十六件(山中吾郎紹介)(第三八二  一号)  同外五百六十九件(志賀義雄紹介)(第三八  三三号)  同外五件(松尾トシ子紹介)(第三九五三  号)  同外十八件(森本靖紹介)(第三九八三号)  同外九十七件(八百板正紹介)(第三九八四  号)  同外五件(山花秀雄紹介)(第三九八五号)  同外三十三件(横山利秋紹介)(第三九八六  号)  同(柏正男紹介)(第三九八七号)  同外六十六件(井手以誠君紹介)(第三九八八  号)  同外二千八百九十二件(淺沼稻次郎紹介)  (第三九八九号)  同外一件(飛鳥田一雄紹介)(第三九九〇  号)  同外十六件(石野久男紹介)(第三九九一  号)  同外十件(猪俣浩三紹介)(第三九九二号)  同(大原亨紹介)(第三九九三号)  同(加藤勘十君紹介)(第三九九四号)  同外四件(勝澤芳雄紹介)(第三九九五号)  同外三件(勝間田清一紹介)(第三九九六  号)  同(角屋堅次郎紹介)(第三九九七号)  同(神近市子紹介)(第三九九八号)  同(川村継義紹介)(第三九九九号)  同外一件(河上丈太郎紹介)(第四〇〇〇  号)  同外七件(久保田豊紹介)(第四〇〇一  号)  同外一件(五島虎雄紹介)(第四〇〇二  号)  同外十件(鈴木茂三郎紹介)(第四〇〇三  号)  同外二十一件(島上善五郎紹介)(第四〇〇  四号)  同外一件(田中武夫紹介)(第四〇〇五号)  同(高田富之紹介)(第四〇〇六号)  同外四件(館俊三紹介)(第四〇〇七号)  同(堂森芳夫紹介)(第四〇〇八号)  同外二百八十六件(中井徳次郎紹介)(第四  〇〇九号)  同外九百六件(中澤茂一紹介)(第四〇一〇  号)  同外百六十八件(中島巖紹介)(第四〇一一  号)  同外四件(西村関一紹介)(第四〇一一号)  同外十九件(芳賀貢紹介)(第四〇一三号)  同(平岡忠次郎紹介)(第四〇一四号)  同外九件(穗積七郎紹介)(第四〇一五号)  同(松前重義紹介)(第四〇一六号)  同(松平忠久紹介)(第四〇一七号)  日米安全保障条約改定促進に関する請願(塚原  俊郎君外二名紹介)(第三八三二号)  日米安全保障条約改定反対等に関する請願外百  八十四件(井手以誠君紹介)(第四〇一八号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び  安全保障条約締結について承認を求めるの件  (条約第一号)  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び  安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並び  に日本国における合衆国軍隊地位に関する協  定の締結について承認を求めるの件(条約第二  号)  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び  安全保障条約等締結に伴う関係法令整理に  関する法律案内閣提出第六五号)  派遣委員より報告聴取      ――――◇―――――
  2. 小澤佐重喜

    小澤委員長 これより会議を開きます。  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約締結について承認を求めるの件、日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊地位に関する協定締結について承認を求めるの件、及び日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約等締結に伴う関係法令整理に関する法律案、右各件を一括して議題といたします。  この際、右三案審査のため、仙台、大阪、福岡の三市において実施いたしました。委員派遣による意見聴取の状況について、順次その報告を求むることにいたします。  まず、第一班班長櫻内義雄君より報告を願います。
  3. 櫻内義雄

    櫻内委員 今般の日米相互協力及び安全保障条約等条約二件並びに関係法律案に関する仙台市における調査の結果につきまして、御報告申し上げます。  会議は、宮城県議会議場において行なわれ、私のあいさつ、班員及び意見陳述者紹介並びに議事運営説明を行ないました後、振興村立銀行社長古谷敬二君、東北大学教授祖川武夫君、評論家島貨常行君及び東北農山漁村文化協会常任理事兵藤栄作君の四名から意見を聴取し、質疑を行なったわけでありますが、各陳述者陳述及び質疑によって明らかにされた意見を、個人別に、概略御報告申し上げます。  最初に、古谷敬二君は、  まず、新条約憲法第九条の関係について述べると、一体独立国自衛権のあることは自明の理であり、そのため、若干の兵力を保有することも当然の条理である。また、その国が独力で自衛する力のないときは、他国の力をかりて防衛することも自衛権の範囲内である。東京の公聴会において、大内教授も「海外派兵をしない自衛隊の保有は憲法違反ではない。これは学者グループの大多数の意見である」と述べている。しかも、わが国防衛予算は、総予算の約一〇%、国民所得の約一・七%で、英、西独、仏、伊等に比して著しく低く、自衛最小限度以下のもので、とうてい憲法違反とは考えられない。新条約は、この自衛力不足を補うものであるが、それが過剰勢力になるとか、わが国戦争に巻き込むとの論をなす者もあるが、その点は「憲法上の規定云々ということ及び事前協議によって十分制約し得るのであって、新条約憲法第九条に違反するものとは考えられない。  次に、わが国の安全を保持する方法について、中立論集団安全保障倫との二つがあるが、中立では日本の安全を保障することはできないと考える。世界緊張が緩和されたといっても、それは曙光にすぎず、依然として二大陣営の対立下にある現状においては、中立によって日本の安全は保障されない。大体中立論共産側より出たものである。一九四七年ごろまでは、日本共産党中立はあり得ずと説いていた、が、一九四八年の第二回コミンフォルム以降中立論を説いているのである。この謀略的中立論に迷わされて、今日後悔しているのがインドである。ソ連、中共に隣接しているわが国が、中立政策をとるということは、観念的にはあり得ても、現実としてはとうてい成り立ち得ない。中立策をとり得ない以上、集団安全保障機構を作る以外に自衛を全うする道がない。それには相手国として、米国を選ぶかソ連を選ぶかということになると、わが国との相互関係によってきめるべきである。ソ連は、中ソ同盟条約を結んで、わが国を敵国祝している。一方、米国は、日本人を飢えから救い、悪性インフレを防ぎ、また、日本経済復興を援助してくれた。集団安全保障機構相手国として、米国を選ぶのは国民感情として当然である。   八年前に締結された現行条約は、国民防衛負担を軽くすることによって、日本経済復興、民生の安定に非常な貢献をしている。新条約は、第二条によって経済協力に関する規定を新しく設け、一そうその働きを強化しようとしている。今日、貿易・為替の自由化は、経済界における至上命令である。自由化の妨げになるのは、資源、資本の不足、技術、設備の立ちおくれであるが、米国経済協力することによって、その不足を補えることになる。ソ連経済提携したとしても、東欧諸国のように、搾取を免れないのである。  日米経済協力は、日本経済米経済への従属であると言う者もあるが、それは経済界実情を知らぬ者である。経済協力は、相互利益をもたらす国際間の商取引であり、その取引にあたって日本経済自立性を失うことなく、米国と対等の立場に立って経済協力を行なう自信がある。  最後に、安保審議はもう採決の段階に入ったと思う。今日においてなお審議を尽くしていない、政府答弁が納得できないという論は、世界観の相違からきているもので、いつまでたっても一致しない平行線上のものである。採決にあたっては、米国に対する信頼を裏切らぬよう切望する。と述べられました。  次に、祖川武夫君は、新条約に関する世論調査を見ると、調印の前と後では非常な変化がある。調印前は、大多数が関心を持っていなかったが、調印後の三月の調査では、国会審議を通じて大多数が関心を持つに至り、批准を望む者と望まぬ者との比率が逆になっている。その後の国民の動向は、反対請願が続々行なわれていることから十分推定できる。新条約の内容を、国会審議を通じて知るに及んで、国民は大きな関心を持つに至ったのであって、国民理解をおくらせたのは政府責任である。  政府は、新条約現行条約改善したものであると言うが、この二つを比較するだけでは、それが必要だという説明にはならぬし、また、改善だと言うからには、現行条約を知らなくてはならない。  自民党の説明によれば、現行条約は、独立後の自衛力の空白を埋めるため米軍協力を求め、米国がこれを応諾してできたというが、それなら、現行条約日本自衛のための条約であって、米軍は、もっぱら日本自衛のため奉仕すべきものである。しかるに、現行条約では、自衛のためという名のもとに米軍を引き入れ、しかも、その軍隊は、米国極東戦略に奉仕するものにすぎない。しからば、新条約において改善されたかというと、新条約の機軸である第六条は、米国の対中ソ戦略をいささかも変えることなく、そのまま認めており、その上、現行条約の軸である全土基地化がそのまま入っており、政府答弁では、内乱条項も第四条の協議の中に入るというし、第五条では共同防衛を約束している。―――これは現在の行政協定第二十四条にもあるのであるが、新条約は、決して現行条約改善したものとは言えない。控え目なものを前面に押し出したにすぎない。  新条約には制約のようなものがある。一つは、憲法規定云々である。これは海外派兵はしないということのようである。しかし、自衛権海外派兵を否定しているものではないし、海外派兵は行なわないという政府態度は、将来事情次第ではくずれる可能性がある。また、共同防衛区域日本領土内に限定しているが、これも何ら特別の限定ではない。現在の実力相応日米間の分担を確認したにすぎない。そのような共同防衛を約束した上、さらに、第三条で軍備拡張を約束している。このように、新条約は、軍事同盟強化の方向を打ち出しているものである。政府は、万能薬として事前協議をうたっているが、事前協議といっても、日本同意権があるものではない。一体米軍が、その極東戦略によって行刺するに際して、日米力関係から、日本の申し立てをどの程度考慮するかは、はなはだ疑問である。  次に、期限の問題がある。政府は、無期限のものに期限をつけたというが、現行条約は暫定的のものである。この条約米国極東戦略のためのものであるとすれば、暫定的であることは、米国にとっては不安のものである。それが十一年間安定したということは、米国にとっては利益で、日本は十一年間縛られたことになる。  以上によって明らかなことく、新条約は、軍事同盟強化であって、自主性回復したものでもなければ、平和的のものでもない。  新条約は、国連集団安全保障を補うものであるというが、それは間違いである。国連の考える集団安全保障は、敵対者を置かない解放的、平和的のものである。しかるに、新条約は、例外的規定である国連憲章第五十一条に基づき、平時に集団自衛の組織を作り、敵対軍事同盟を結んだもので、これは国連憲章にひびを入れ、これを害するものである。国連平和維持の機能を補ったものとは、とうてい言えないものである。政府は、真空論、力と力の均衡をもって防衛を必要とする理由にしている。しかし、具体的に、どの国がどのような常で侵略する危険があるかを説明すべきであって、他国間の例を言ったり、国際共産主義の危険を叫ぶだけであっては、国民を誤らせるだけにすぎない。  このような軍事同盟強化条約がもし不幸にして成立したとすれば、国際緊張の激化を招き、憲法違反の状態を深め、財政、経済、文教、労働等の諸政策においても悪い発展が予測されることは、専門家の指摘しているところである。もっと審議を尽くすべきであるし、また、いろいろ問題が多く、今日まで政府は無理に無理を車ねてきているのであるから、ただ時間を多くかければいいというのではなく、最後においては、あらためて考え直すべきである。と述べられました。  次に、島貫常行君は、  現行条約は、朝鮮動乱の面後に作られたもので、日本をそういう危険から守るためのものであった。しかし、占領中に作られたものであるから、いろいろ日本にとって不満の点がある。日本飛地を使いながら、日本を守るためだと、はっきりとはいっていない。極東の平和と安全のためといっている。そのことから、条約は、日本戦争に巻き込まれるという心配もあった。しかし、新条約はこの危険を克服した。それは国連憲章の優先をうたい、日本憲法規定に従うことを定め、条約区域日本施政下の領域に限定し、さらには、事前協議事項を設けること等によって、その危険を除去したのである。日本憲法は、国際紛争武力で解決することを永久に放棄し、そのための武力保持を禁止している。しかし、自衛権を否定しているものでなく、純然たる自衛のための武力保持は禁止されていない。しかしながら、その自衛力だけでは不完全で、日本の安全を守り切れない。そのために国連の力にたよりたいが、国連にその力のない現状では、国連憲章の認める集団的自衛権を行使する以外にない。すなわち、日本は、戦争放棄理想憲法を堅持しつつ、しかも、日本の安全を全うするために、国連憲章に基づく日米安保体制に依存することはきわめて妥当なことであって、決して憲法違反とは言えない。  安保条約は、軍事条約でなく、また、特定仮想敵国を想定しているものでもない。国際共産主義の脅威から守るために結ばれたものである。  安保反対論者の中には、中立を選べと言う者が多い。しかし、共産主義中立主義を認めないのである。共産主義国は、その中に中立主義をとるものがあれば、裏切りとして弾圧される。しかるに、自由主義諸国に対しては、中立主義を勧めるのである。これに乗ってはならない。また、中立立場をとつてそれを守るためには、各岡の保障とともに、強大な軍備を必要とするものであって、これは憲法の許すところではないのである。  新条約軍事面のみでなく、経済の提携を約していることも、現行に比べて一段の進歩である。  新条約は、このほかいろいろの利点がある。分担金の削除、労務管理改善等行政協定にも改善が加えられている。新条約批准を遷延する理由はほとんどない。最初から反対という態度では、慎重審議といっても正しいあり方とは言えない。現在分裂している国民理解と団結を固める建設的施策を議会に望みたい。たとえば事前協畿に臨む日本の方針、腹がまえをはっきりと打ち出すべきではないかと思う。と述べられました。  最後に、兵藤榮作君は、  現行条約のできた当時は、サンフランシスコ平和条約によって、日本独立国となることに関心が集まり、安保条約については、行政協定によって各地に基地ができるに及んで、初めてその性格に気づいたというのが、少なくとも地方の、実情である。しかして、一昨年の金門馬祖紛争によって、初めて戦争に巻き込まれることはないかを心配し、その結果、安保条約改定あるいは破棄の論が出てきたのである。政府はこれにこたえるかのように改定交渉に入ったのであるが、政府のいう自主性回復とは、戦争に巻き込まれる心配のないようにするものと理解していた、しかるに、調印された新条約を見ると、自主性回復とは、日本か軍事的に米国共同責任地位に立ち、それとも今後少なくとも十一年間据え置こうというものである。新条約は、はたして日本の安全を保障するかという点についても、幾多の疑点がある。  第一は、単に米軍飛地を貸すという現在の立場から昇格して、いざという場合、米軍と共同して軍事行動をするということは、かねて日本軍国主義の復活をおそれていた近隣諸国に、あらためて警戒心を起こさせていることである。  第二は、第三条で武力増強の義務を負った点である。そこには憲法規定内という制約があるが、それが現在の憲法をさすという保証のない限り、憲法改正の動きのあることを考えると不安である。全く軍備のない国も、このような条約を結んでいるから心配はないという論もあるが、もしそうだとすれば、初めから条文に掲げる必要はないはずである。  第三には、期限の問題である。無期限を十一年にしたのだというが、過去十年間の世界各国の消長、国際関係変化を顧みれば、十一年間も特定国と抜き差しならぬ関係を結ぶことは、何としても長過ぎる。  第四は、事前協議の問題である。米軍の配置及び装備における重要は変更については効果があるかもしれないが、日本基地を使って戦闘作戦行動をしようとする場合、日本の主張が受け入れられるかはきわめて疑問である。  さらに、もし新条約が発効したと仮定した場合に起こるであろう問題について言えば、軍備拡張のために日本経済軍需産業に重点がかかり、それとともに、税負担が重くなるという不安がある。また、第二条による日米経済協力に不安を抱く者もある。貿易の自由化に対しては、MSAによる輸入小麦の例によって、農村は非常におそれているのである。  これらの点を考えると、新条約現行条約より劣る面が多く、新条約には反対である。しかしながら、現条約も好ましいものではないから、外交的になるべく早く解消することを望む。  最後に、世論の動向について言えば、新条約についての国民関心は高まっているが、農村においてはまだまだ不十分であった。しかるに、先般のU2機事件以来、国民の新条約に対する考え方が実際的になってきた。このようなときに、国会が独走的に批准するというようなことはせず、十分に時間をかけるべきである。と述べられました。  以上が陳述の大要でございますが、これを補足するため、質疑応答で明らかにされた祖川陳述人の意見を加えますと、  憲法第九条の解釈として自衛権はある。しかし、第二項に、戦力は持てないとある以上、自衛権行使の手段は持てない。戦力に自衛戦力と侵略戦力の区別はない。従って、大内氏が、自衛隊が合憲であると言うのは言い過ぎだったと思う。また、学者グループの大多数も同じ意見であると言ったのも誤りである。というのであります。  以上、仙台市における現地調査は、県当局のお骨折りにより、静粛のうちに熱心活発に進められた次第であります。  以上、御報告申し上げます。
  4. 小澤佐重喜

    小澤委員長 次に、第二班班長椎熊三郎君より報告を願います。
  5. 椎熊三郎

    椎熊委員 私ども大阪市に派遣せられました委員は、十五日午前九時の飛行便で、ほとんど大部分が現地に到着いたしました。飛行機からおりまして、飛行場におきまして直ちに全体の委員会議を開きまして、傍聴人の制限その他会場の設備等について意見の交換をいたしました。ほとんど意見が合致いたしまして、当初、現地に立つ前には、傍聴人の制限を約五十人と決定しておりましたが、会場の変更等によって余地のあることが知れましたので、各党合意の上、傍聴人を百人に増加することに決定したのでございます。かくて、十六日午前十時五分から会議を開くごとにいたしました。  ただいま、これから御報告を申し上げる私の報告の内容は、報告書作成の後、社会党並びに民社党の派遣せられた委員の方に閲覧を願いまして御同意を得たのでありまして、私の個人的報告ではございません。派遣されたる十名の委員全体の報告であると御了承を願いたい。  第二班の大阪市における意見聴取の結果につきまして、以下、御報告申し上げます。  会議は、午前十時五分より大阪府会議事堂において行なわれ、私より班員及び意見陳述者紹介し、さらに、会議開催の遡行及び議事について説明した後、京都大学名誉教授田岡良一君、大阪大学教授大渕仁右衛門君、立命館大学総長末川博君、京都大学教授田畑茂二郎君、以上、四名の意見を聴取し、質疑を行なったのであります。以下、各陳述の順にその要旨を御報告申し上げます。  まず、田岡教授は、  現行安保条約と比較すれば、新安保条約の方がはるかによい。私は、現行安保条約締結されたとき、この条約が永久的なもので、一方的廃棄は不可能であることに不満であったが、できてしまった現在、少しでもよくなる改善には賛成すべきだ。新安保条約について特に考えなければならぬことは、新しい条約締結ではなくて、現在あるものを改定しようとしておることであります。新旧いずれがよいかを考えるべきで、孤立主義をとった日本としては次善の方法である。対立する一方の陣営と結ぶことは危険であるという議論は、旧安保条約反対としては正しくとも、新安保条約反対としてはおかしい議論である。改定反対論者は、安保条約反対論で、これでは、いつまでたっても解決はつかないのである。新条約でよくなった点は、事前協議期限をつけたことである。条約締結することは、国内法律を作ることは全く事情を異にするのであって、ギブ・アンド・テイクが常道である。条約の一部を見れば気に入らない点があっても、政府が最善を尽くせば、全体としてはこれを結ぶ方がよいのであって、新しく結ぶ場合と改定の場合とではおのずから異なるべきである。  次いで、末川総長は、御自分の意見を開陳せられる前に、この会合についての見解を述べられまして、自分はたびたび公聴会等に出席したことがあるが、政府並びに国会は、われわれ陳述者意見を採用したためしはない。単に、形式を整えるだけでこのようなことをするということは無意味ではないだろうか、そういう御意見であって、そういうのには応じたくないのだという考え方のようであります。私は、班長として、われわれが今回参りましたことは、学識経験のあるりっぱな方々の意見を案件判断の参考として重要視しておるのであって、決して形式的に参ったのではないということを私から申し上げまして、御了解を得ました。  そこで末川総長は、  安保改定は国の運命を決する大問題であるから、慎重に審議を尽くし、場合によっては国会を解散し、または国民投票をして国民の総意を問うべきである。現行安保条約には反対であるが、これを改定するにあたっては、いつ、だれが、どういう方向でやるかということが問題である。いつとは、東西首脳会談が開かれている現在やるべき時期ではない。だれがというのは、国内的、国際的に最も信頼できる人がやるべきである。どの方向とは、不平等でなく、従属的でなく、しかも、日本の平和憲法に合致した方向ということである。新安保条約の三条、五条、六条等は、防衛能力を増進する軍事同盟的であり、米軍基地を認めて十年間も有効である条約を結ぶことは、日本国民の望む方向ではない。日本憲法第九条は最も尊重すべきであるのに、いろいろ解釈が変わり、今日では、抜本的な解釈がなされ、軍隊まで持つに至り、新条約では、さらに軍備を増強しようとしている。日本米軍基地がなければ戦争に巻き込まれない。交換公文で戦闘作戦行動事前協議となっているが、今のボタン戦争の時代に、ノーと言えばよいというような簡単なものではない。政府は善意と信頼によると言っているが、アメリカを疑うわけではないが、U2機の例もあり、安心できない。大東亜戦争における学徒出陣の悲惨は再び繰り返してはならない。これは、当時の為政者が世界情勢の判断を誤ったからである。核兵器ができ、人工衛星が飛ぶ今日においては、もはや戦争はできないというのが世界の常識である。この正しい認識を妨げているのは、軍需産業に金力と権力が結びついて、一もうけしようとしている人達がいるということである。日本は平和産業によって生きていくべきで、日米運命共同体など作るべきでない。さらに、中華人民共和国がこの十年間大きく伸びてきた事実を見のがしてはならない。日中関係改善についてもっと真剣に考え、日本はアジアの一員として隣国中国と手を結んでいくべきである。  次いで、大渕教授は、法律学的見解を述べると前提して、  この条約は、集団的安全保障を前提とする集団的自衛規定している。集団的安全保障は、第一に、その規範的原則と、これに基づく行動とを示すものである。本条約は、各条がこれら二つの要素からなっている。従って、本条約を考えるにあたっては、行動面に関する規定と規範面に関する規定とは一体不可分のものとして理解しなければならない。集団安全保障とは、多数の国家が合意によって安全の保障を共同の任務とする際に名づけられるものである。集団安全保障は、現在の国際社会の趨勢であり、国際連合がこの代表的なものである。本条約は、日米両国がこのワク内において特別なつながりを持つことを規定している。このゆえに、本条約は、従来の同盟条約とは全く異なるものである。わが国憲法自衛権を否定するものではない。もし、自衛権を否定するとすれば、それは自国家を否定することになる。本条約は、この自衛権の行使、しかも、集団自衛権の行使を規定するものである限り、わが国憲法に違反するものではない。さらに、第六条により、米軍わが国に駐留することは戦力の保持になり、憲法に違反するとの説があるが、憲法にいう戦力は、わが国の陸、海、空軍のことであって、駐留策は、わが国の意思で動かすことができないので、わが国の力を表現するものではなく、違憲とは言い得ない。しかし、米軍の行動を無制限に許すならば、不測の影響を及ぼすことがあるので、これを防止するために、交換公文に事前協議が取り上げられたのである。これは本条約の特色であって、現行安全保障条約と比較して大きな利点と認められるのである。もし、本条約が成立しないときは、現行条約はそのまま効力を保持し、この条約が存在する限り、米軍を制御する何らの方法がないのであって、この点深く考うべきことである。また、この条約を、成立せしめないことが、同時に、現行条約を消滅させるものでなく、米国の合意のない限り、現行条約は現存することに深く思いをいたすべきである。  次いで、田畑教授より、  現行安保条約は占領下に締結せられたもので、日本側の自由な意思が表明できなかったため、極東の安全のため、日本の当地から米軍が出動できて日本に不利であり、しかも、米国が承知しなければ永久に解消できないので、これを改定することは賛成であるが、新安保条約は、改定の名のもとに、相互援助条約になっていて、基地の提供以外に、日本における米軍基地防衛の義務が生じ、このため、中ソ両国を刺激すること大であり、中国との国交調整に大きな障害を与えることとなった。かつてダレスは、旧安保条約について、バンデンバーグの決議によって相手方も米国を援助するだけの力が必要で、将来は、日本がサービスする相互安全保障条約を結びたいと言った。現行条約では、日本米国防衛義務を負わしていないが、新条約では、三条で自助と互援助を規定し、さらに、五条で日本領域内の米軍基地防衛の義務を負わせている。また、米軍基地が攻撃された場合に、日本自衛権を発動して軍事行動を起こすが、これを個別的自衛権の範囲で説明できるか、国際法上はなはだ疑わしいところである。さらに、米軍の駐留は、六条により、極東の平和と安全に寄与するという別の目的があることも無視できない。米国は、韓国、中華民国との間に相互防衛条約を結んでいるので、日本米国基地を提供することは、韓国や中華民国の防衛のため、日本から米軍が出動することもあり得るので、この場合、日本国際法上交戦区域とみなされ、日本も、戦争に巻き込まれるおそれが多分にある。また、交換公文にある事前協議でも、軍事行動が緊急を要する場合には、日本はノーと言い得ても、効果的に発動できるか大きに疑わしい。突発的な問題に対してはノーと言えないのではないか。最後に、条約期限であるが、ミサイルの発達の結果、米国内にも前進基地撤廃諭が出ているので、日本基地の撤廃も不可能ではない今日、十年としたことは、はたして妥当であるか疑問である。  との陳述があったのでございます。  以上で午前の会議を閉じ、午後は、一時半から会議再開の予定でございましたが、議場に入らんとする班長たる私に、総評幹部と称する人々並びに学生のデモ隊の一部と称する人々が、多数私の身辺を取り巻いて入場を拒否せられました。その問題を解決するためにかなり時間を要しまして、おくれまして三時四分から再開いたしました。しかし、私の身辺には別段危害を加えられたわけではございませんし、開催が一時間半ほどおくれたというだけでございます。  それより再開後、各班員から陳述者に対し熱心なる質疑を行ないました。自由民主党からは床次君、服部君、社会党からは松本君、飛鳥田君、戸叶君、民社党からは堤ツルヨ君、以上の方々は、ごく簡単でありましたが、要点をとらえて熱心なる質問をせられまして、それぞれ陳述者より答弁がございました。よって、予定の行動は一切終了いたしまして、四時四十分、無事に散会することができた次第でございます。  以上、報告申し上げます。(拍手)
  6. 小澤佐重喜

    小澤委員長 次に、第三班班三岩本信行君より御報告を願います。
  7. 岩本信行

    ○岩本委員 御報告申し上げます。  今回、日米相互協力及び、安全保障条約等条約二件並びに関係法律案に関し、福岡班は、昨五月十六日午前十一時十分より、福岡県庁内県議会議場でその会議を行ないました。  まず、私があいさつを行なった後、班員及び意見陳述者紹介、続いて、陳述者福岡商工会議所議員狩野嚴君、九州大学教授具島兼三郎君、福岡大学教授森三十郎君、弁護士中川宗雄君、以上、四名の意見を聴取し、質疑を行ないました。各陳述者陳述及び質疑において明らかにされました意見を、個人別に御報告いたしたいと存じます。  狩野厳君は、  新安保条約に賛成する。国会はすみやかに条約批准をせよ。今日の国際情勢では、一国で自国の安全を保障することはできない。共同で、安全を保障するのが常識である。国家の将来についての判百断は、基本的現実を認識し、重要なる判断を行なう場合、事態を混乱することのないようにすべきで、この問題を政争の具に供すべきではない。この新安保条約は、国際的に関係することでもあるから、この国会批准を実現すべきである。この新安保条約批准するにあたっては、次の四点を考慮すべきである。  一、共産圏と非共産圏のできごとを、異なったものさしではかってはならない。米国のすることは何でも反対することはよくない。中ソ不可侵条約、北鮮の侵入、チベット侵入等は、平和への破壊である。これを批判しないことはよくない。共産車が北海道、千島に上陸した場合、これを賛成できるのか。事実を事実として判断すべきである。  二、中国に対する親近感についてであるが、現実の中国と過去の中国に対する考え方は異なっていることを知るべきである。  三、支那事変以来、日本の中国に対する謝罪の気持があるため、中国を非難することは悪いように思うらしい。戦争に対する遺産に対し、若い世代の人々は、古い世代の人々と違った考え方を持っている。今日の国際情勢は涙では償えない。  四、中ソ両国の招待外交が盛んであったとき、帰ってきた人々が中ソの批判はしない。これは自主性のない劣等感によるもので、やめるべきである。国際共産主義より、個人の自由を尊重する民主主義を守るべきである。そのために安保条約批准すべきである。  極東緊張を作った中ソ友好同盟条約の敵視政策に原因がある。日本は原爆の被害を受けた国民として、自衛のためにのみ国を守る以外に方法はない。世界革命の思想をやめてもらいたい。  雪解けという口先だけで安保条約の必要性を認めないことはよくない。しかし、いかに安保体制が必要であっても、米国の言いなりであってはならない。日本の品主性が改められるという新安保には賛成である。事前協議協議を、同意にすることはあまり意味がない。要は、新安保条約の運用を行なう政府に対して、国民が督励、監視する積極的考えが必要である。条約期限十年は、主観の相違で、長いと思わない。むしろ、現行安保条約よりよい集団防衛こそ天下のとりでである。  次に、具島兼三郎君は、  国際社会においては、長い間、戦争は政治の手段として重要な役割を演じてきた。今日は、人数が戦争を廃棄するか、戦争が人類を廃棄するか、そのいずれかを選ばなければならない時代になっている。戦争を避ける道は、世界中の国々が国際緊張の緩和のために努力することで、日本近隣諸国を挑発するような行為は厳に慎む必要がある。今日の安保条約は、その逆をいこうとしている。それは相互協力及び安全保障条約と呼んでいるが、その実体は、明らかに軍事同盟条約である。現行条約締結当時は占領中でもあった事情で、日本の力がないときで、無理もないという人もあったが、今度の条約は、独立した日本みずからの発意で、締結するもので、その内が国際緊張を激化させる内容を持っているとしたら、日本責任になるのである。従って、慎重を要する。しかるに、今回の条約では、ハンデンバーグ決議の精神を取り入れて、アメリカに日本防衛の義務を負わせるかわりに、日本防衛力も増強することで相互防衛を約束したことである。日本にあるアメリカ軍半基地が攻撃されたら、日本が侵略されたものと認め、日本も、また自衛権を行使するごとになっているが、政府説明によれば、個別的自衛権であって、集団的自衛権ではない、また、自衛権の行使は、権利であって、義務ではない、従って、それは相互防衛ではないと言うが、これは憲法違反である。アメリカの軍事華地が攻撃されたら、日本は必ず立ち上がることになっている。権利であるなら、立ち上がるか起ち上がらないかは日本の自由であるが、その自由はない。また、個別的自衛権の行使といっても、実際はアメリカ軍と緊密な連絡のもとに行動するから、実質的には集団的自衛であり、相互防衛条約である。日本に駐屯するアメリカ軍隊は、日本を守るだけでなく、極東の平和及び安全の維持のために行動することになっている。そのために事前協議をするのであるが、日本がいやだと言った場合、やめるだけの保障がない。その点をはっきりさせるためには、日本政府の同意を得るようにすべきである。  さらに、飛び石出動の場合、アメリカ軍隊日本から撤退する場合、事前協議の対象とならないから、日本協議反対するおそれがある場合、まず沖縄に撤退し、それから戦争作戦行動に移ればよいので、その後の行動はアメリカの勝手である。そのとばっちりが日本にこないとは言えない。U2機の事件はこれを示している。  心配の点の第一は、アメリカの中には、冷戦を緩和する政策反対する軍事支出を当てにする会社や工場がある。また、国防省や原子力委員会反対している。このような状態のアメリカの善意に信頼して、日本国民の運命はまかせられない。  第二は、条約第四条により、日本の安全に脅威が生じた場合協議することになっている。この脅威は、広く解釈すれば、日本の軍事だけでなく、政治、経済、思想もすべて含まれる。また、一方の日本のみによる物羨の要請である場合だけでなく、アメリカの方からも要請できるので、この協議は、力の強い方の意見に支配されることが多い。そうすれば、日本の安全に対して、日本の国内問題に容喙することができる。  第三は、この条約が効力を発生すると、日本経済の軍半化が促進され、国民の政治的自由、思想の自由が制限されると思われる。これはこの条約第三条による武力攻撃に抵抗する能力を、効果的に発展させるために生ずるおそれがある。  改定条約の危険はまことに大きいので、慎重に審議の上、最後の決は、国会解散により国民の意思に問うべきである。  次に、森三十郎君は、  日本の安全保障の問題はポリシーの問題であって、決断は政策論的立場で考えるべきである。日本の平和への努力は、世界国民の努力に人後に落ちないものである。平和への脅威はまだ存在する。それは北風であると思う。安保条約自体、中ソ友好同阻条約に対するものである。ソ連日本に脅威を与えないとは言えない。第二次大戦以後の問題として、ハンガリー、朝鮮動乱、チベット問題がある。ロカルノ方式を主張する人々は、国家の統一制の基礎を見ていないもので、あまりに階級的にとらわれていると思う。  それでは、いかなる政策、ポリシーをとったらよいかということであるが、第一は、世界のいずれの方にも立たない中立政策で、これには自衛中立、非武装中立がある。これらは中立の点で一致している。  第二は、一方の強国にくみするもので、中ソの側に立つか米側に立つかである。国連にたよるばかりでは、不安がある。中立政策堅持のためには、実力がなければできない。中立保障するものはいない。従って、戦争に巻き込まれないということはできない。中立政策をとれば、強国の間にはさまれて、空中分解してしまうおそれがある。そうであるならば、第二の、中ソ側に立つか米国の側に立つかになるが、両国の戦力を五分々々と見ても、米国にくみし、日米集団安全保障でやるより仕方がない。新安保条約は、現行安保条約に比して自主性強化したものである。  最後に、仏作って魂入れずという点を心配する。日本民族の思想的武装解除をしている現憲法では、改正しない限り、安保条約というかきを作るだけのことである。  次に、中川宗雄君は、  新安保条約はりっぱな規定もあるが、反面悪い規定もある。その改悪規定は、条約第三条、五条、六条の点である。戦争の不安というものがこれらの規定に含んでいる。ある人は、平和への招待券というが、戦争への指定席招待券である。戦後十年間、平和の状態であったその理由は、日本相互防衛の義務がなかったからである。戦後、日本は内外で憎まれる原因がなかった。しかし、新条約では、二大勢力の一つである米国と結ぶことは、その反動がくる。日本自身非難される原因がなくても、その現われとして、ソ連の歯舞、色丹の返還拒否の声明がある。新条約日本戦争参加を義務づけているため、自動的に立ち上がらざるを得ないことになっている。アメリカは韓国、台湾、比国との間の条約により、それらの国々に危険があった場合、在日米軍が攻撃されるおそれがあり、日本戦争に巻き込まれ、その範囲は極東にとどまらない。共同防衛の因子は、米国の側からくるものが圧倒的である。日米対等であるというが、日本の方が歩が悪い。米国は、日本を対ソ攻撃のための基地としているに過ぎない。  一、新条約第三条で、自衛能力を維持発展することがうたわれているが、自衛隊自身憲法違反であるものを強化することはよくない。  二、第五条の戦力の行使は憲法違反ではないか。憲法上の規定及び手続とあるが、日本国憲法は手続規定はない。さらに、憲法前文及び第九条から見て、戦力保持の拡大解釈を行なうものではないか。  三、条約第六条における極東の解釈についてである。金門馬祖の問題は、九州にいる者として一そう心配している。この点、範囲を明確にすべきだ。事前協議には法的な拒否権が含まれると解されない。重要な装備の変更の中に、なぜ核兵器の字句を入れなかったか不安を打っている。  以上の点に関し、新条約は修正をすべきで、修正できない場合は批准すべきでない。結局、新安保条約反対であるが、これがため現行条約を認めるというものではなく、これは国連による集団安全保障体制の成立時に廃止すべきである。この趣旨でありました。  以上、陳述者四名の意見を申し述べましたが、一たん休憩の後、午後二時十二分より会議を再開し、陳述者との間に、条約第二条の経済条項、第三条の武力攻撃に抵抗する能力及び懸法上の規定、第四条の脅威が生じた場合の協議、第五条の共通の危険に対処する行動、第六条の事前協講及び新安保条約憲法との関係国連憲章等に関し、主として陳述者陳述内容に関する点について質疑応答が行なわれ、午後五時十分散会いたしました。  以上、御報告申し上げます。(拍手)
  8. 小澤佐重喜

    小澤委員長 以上で派遣委員よりの報告聴取を終わります。  この際、暫時休憩いたします。     午後零時二十分休憩      ――――◇―――――     午後二時二十四分開議
  9. 小澤佐重喜

    小澤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  三件に対する質疑を続行いたします。森島守人君。
  10. 森島守人

    ○森島委員 先ごろの公聴会におきまして、福島ジャパンタイムス社長は、斎藤博大使の言を引きまして、アメリカは良識の国だ、こう言ったと言っております。それから川村中央大学教授も、プライスの「コモンウェルス」の言葉だと思います。が、これを引いて、アメリカの特徴は三つあるといって、一つは国際法を順守するということを言っておりましたが、私は、大体において、この観点を同じゅうしております。また、岸総理大臣は、民社の受田委員の質問に答えられた中で、アメリカは条約を守る上において信頼するに足る国だと、こうおっしゃっておりますが、私は、この後段の岸首相の御発言に対しましては、必ずしも同感を表することができないのであります。ここ五、六十年間の日米外交史を検討してみますと、幾多ここに考慮すべき問題があるのであります。安保の交渉にあたりましても、この日米間における五、六十年間の外交史を御検討になりますると、私は、いささか異なった結論が出たのじゃないか、結論が出ないにいたしましても、もっと、極東の範囲とか、あるいは事前協議の問題等につきましては、現在山川さん、藤山さんが御答弁しておられるところと異なりました結論が出たのじゃないか、こう思っておるのでございます。  そこで、問題になりますのは、U2機の問題でございますが、これは正義感とかあるいは道徳感とかを標榜しておるアメリカの政府立場といたしましては、いささかふに落ちない、よくいいますれば、千慮の一失とも言えるかとも思いますけれども、私は、アメリカの態度はきわめて不可解である、こう存じておるのでございます。これが国際法の違反であるということは、総理も高橋条約局長もともに認められておるのでございますが、私がお伺いしたいのは、これは同町に、国連憲章の違反であると私は断ぜざるを得ない。このアメリカの今回の発表その他に対する態度に対して、山川総理ほいかなる御感想と御見解とを持っておられるか、これをお伺いしたいのでございます。
  11. 岸信介

    ○岸国務大臣 アメリカ政府日本に対してのハーター国務長官の回答や声明というものは、従来からの、日本に対するU2に関する昨年来の説明と異なっておらない、一貫したものを述べておりますが、ソ連におけるU2機の事件に関しまして、ワシントンにおける声明やその他のものを新聞紙上において見ますると、必ずしもそれが一貫しておらないことも明瞭でございます。それから今日の国際情勢において、お互いに、いろいろな対立した東西両陣営の間における各種の情報を収集し、情報をそれぞれの側において集めておるということも、これは事実であろうと思います。しかし、そうだからといって、これが国際法の原則やその他に違反した方法によって収集されることを合法化するものではなかろうと思います。そういう意味において、ソ連におけるU2機の事件についてのアメリカの声明等を通じてわれわれが感ずることは、この問題に関するアメリカの、ワシントンにおける数度の声明、また、その声明を通じての結論というものは、きわめて、私は、明確を欠いており、そうして自分の行動そのものを合法化するようなために述べておる事柄が、かえって、国際法の原則から見ると、一般の失職ある人をうなずかしめるに足るような声明が出されておらない、むしろ、その人々にとっては、アメリカの数回の声明というものは、理解に苦しむというふうな印象を与えておる、かように思っております。
  12. 森島守人

    ○森島委員 政府として、きわめて明快なる御見解を承りまして、私はそれで満足いたします。同町に、日本に対するやり方も、私はいささか疑問を持たざるを得ない。経過を見ますと、アメリカは五日の日に、ソ連に一機墜落したのであるというふうな声明をいたしました。そのときには、アメリカとしては、気象観測機が一機行方不明になっているというふうな発表をいたしておりました。しかし、七日になって、六日でございますか、フルシチョフが、墜落した操縦士は生きておるんだ、現存しておるんだということを申しますと、アメリカもかぶとを脱いで木音を吐いたというのが、アメリカの七日の発表のいきさつだろうと思います。そういう点から考えていきますと、U2機の日本における問題につきましても、アメリカ政府説明は、必ずしも私はそのまま受け取るわけにはいかないじゃないか、こう思うのでございます。と申しますのは、現に日本の気象学会が大阪において会議を開きまして、その結果を発表しておりますが、これによりますと、日本の上空を飛んでおる黒いジェット機U2型は、政府の言うような気象観測機とは受け取れないという声明を出しております。この点から考えますと、専門的な知識を持っておる人々の間からしますと、必ずしもU2機が気象観測の報告をしておるとも言っておらぬのでございまして、私は、この点に非常に疑うべき節があると思っておるのでございます。そういうふうな状況のもとに、アメリカの公的説明ではございますけれども、政府がこれをこのまま受け取って、そして何らこれに退去を求むるがごとき適当なる措置に出ないことは、政府の怠慢ではないか、私はこう存じておるのでございますが、これに対する御所見を伺いたいと思います。
  13. 岸信介

    ○岸国務大臣 その問題に関しましては、過日もお答えを申し上げたのでございますが、私自身、この問題について非常な国民関心を呼んでおるものとして、日本政府として相当明確に、このU2機の日本における使命並びに実際やっておることに関して、また、将来に対する保証に関しましてアメリカ政府説明を求めたことに対して、アメリカ政府責任を持って、ハーター国務長官の声明の形において回答をしてきたわけでございます。私は、一応これを信頼することは、従来からの日米関係から申しまして、また、この事件が起こってから、日本側のこれに対する説明を求めた態度から見まして、私は、一応これに信頼を置くことが適当であると思います。ただ、それではそれを野放図に、将来にとってもこれでもう問題は済んだ、かように考えるかというと、私は、そう簡単には日本政府としては考えるべき問題じゃないと思う。もちろん、われわれは、何か検査権とか審査権というようなものは持ちませんけれども、この行動に対しては、深い関心を持って将来の行動を見まして、いやしくも、これに対して疑問を与えるような行動がありとするならば、さらに適当な措置をとる、かようにすることが適当である、かように考えております。
  14. 森島守人

    ○森島委員 この点に関連しまして私があげたいのは、河北事件直後に生じました通州事変というえらい事件がございました。これは外務省のお方でどなたか御説明のできる方が来ておられますか。アジア局長がお差しつかえがあるというので、三宅審議官に御出席を求めておいたんですが、どうなりましたでしょうか。――事務当局で悪ければ、藤山外務大臣、御承知でしょうか。
  15. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 残念ながら、よく存じておりませんので、条約局長から答えさせます。
  16. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 私承知しております範囲では、通州の日本人虐殺の事件ではないかと考えておりますが、当時、親日の軍隊でありました殷汝耕の軍隊が加州に駐屯しておりまして、そしていろいろな事情が起こりまして、そこで日本人の虐殺が行なわれたという有名な事件であります。
  17. 森島守人

    ○森島委員 時間を急ぎますので、私から御説明申し上げましょう。  河北事変が起きました当時、岸さんも御承知だと思う。早稲田を出た殷汝耕、日本人を奥さんに持っておった殷汝耕氏が巽東二十三県にわたって巽東反共自治政府というものを作っておりました。これは完全に関東軍の配下にあったと申して差しつかえないと思います。ところが北京で事件が起きました。そういたしますと、天津軍の方では、日本の味方をするのだ、巽東政府はいわゆるかいらい政権だ、何事も日本にたよっておった政府でございますから、日本に応援をするものだというふうに考えておった。ところが事件が起きますと、殷汝耕の麾下、巽東政府の麾下における保安隊が一挙に決起しまして、同地における日本人三百数十名――一人逃げたのがおりますが、それを除きましては、全部みな殺しにあった事件がございます。これはシベリア出兵当時における尼港事件と同様な事件でございまして、日本国民としては、今も忘れてはおらない大きな事件でございます。  この事件がどうして起きたかと申しますと、天津軍飛行機を、巽東政府の領空かどうか、領空と申して差しつかえないかどうか知りませんが、海の方に飛ばした。誤って爆弾を一発落とした。そうしますと、日本が助けてくれる、一緒に戦ってくれると思っておった殷汝耕の巽東政府の保安隊は、自分たちをみな殺しにするのだということで、一挙にして立ち上がつた。そうして通州在住の日本人を三百数十名虐殺したのが通州事変の真相でございました。当時、軍におきましては、誤って爆弾を落としたということは秘密にしておりました。しかし、真相はその通りでございまして、これはわが方がみずから招きました事件と申して差しつかえない。私は、U2機の働きいかん、今後の活動いかんでは、悪意がなくても、誤ってこういうふうな事件をも起こしかねない危険があるのではないか、少なくとも、私は、この可能性があると思うのでございまして、政府としては、ただ一片の、形式上のアメリカの政府回答に信頼することなく、もっと進んで真相も御調査になって、そうして適当なる措置、すなわち、この際、強硬にU2機の日本からの撤退を要求されることが日本国民の安心を招くゆえんであると私は痛感しておる。こういう前例があるのですから、その間の事情をも十分御説明になって、適切なる措置をおとりになることが、私は、政府としてとるべきこの際の措置だと存じておるのでございますが、これに対する御感想を伺いたいと思います。
  18. 岸信介

    ○岸国務大臣 先ほどもお答え申し上げましたように、政府は、一片の通告だけで安心しておるという考えではございません。しかし、一応は、先ほど来申しましたような経緯でもって、アメリカが誠意を尽くして十分育っておることであるから、われわれとしては一応これに信頼を置く、しかしながら、十分われわれが調べ得る限りにおいてこのU2機の実情、使命等もこれを明らかにする方法を講ずる、また、将来の保証につきましても十分に監視をいたしまして、さらに必要があるということであれば、必要なる措置をとる、こういうふうに先ほど来お答え申し上げておるのでありまして、政府としては、こういう心組みでございます。
  19. 森島守人

    ○森島委員 ニューヨーク・タイムスのジョーダンという記者の記事として出ておりますのは、十一日ですか、米国政府は在日U2刑機の引き揚げを考慮しておる、もし日本政府から要求があれば、米国がそうすることはほとんど疑いの余地がない、という記事を出しております。これに対しては、国務省において否定も肯定もしていない。ノー・コメントの態度をとっておるという記事が出ておるのでありまして、私は、この際、政府調査の結果を待つまでもなく、このような誤解の結果から日本に危険を及ぼすこともあり得るという見地に立たれまして、米国政府に対して引き揚げを、要求じゃございません、要請されることが適切な措置であると思うのでございますが、この点につきまして、総理大臣並びに防衛長官の御見解を伺いたいと思います。
  20. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 U2機につきましては、私どもといたしましても、今度の事件にかんがみまして調査をいたしております。NASAに所属している気象観測機であり、そういう目的にのみ日本において使用する、こういう保証がありますので、私どもは、アメリカ政府のその保証で、それ以上につきましては、今後の事態をよく見きわめた上において考えるべきことだ、こう考えます。現在の段階においては、今の保証をもって私はやっていく、こういうつもりでおります。
  21. 森島守人

    ○森島委員 それじゃ、ついでにちょっと伺いますが、西村委員から御要求しておりますU2機の伊勢湾台風のときの気象観測、この結果が必ず日本に通達があるものだという見地で資料を要求しているのでありますが、その資料はすでに御提出になりましたでしょうか、どうですか。
  22. 小澤佐重喜

    小澤委員長 この問題につきまして  お答えしますが、五月十六日付で、そういう記録がないという答弁が参りました。今にこの返事を写しとして皆さん配付する予定であります。
  23. 森島守人

    ○森島委員 私が承知しておりますところによりますと、当時U2機は非常な活動をして、日本の気象観測上において大きな効力があったということを承っておりますが、それでも何らの報告がないのでありましょうか。
  24. 小澤佐重喜

    小澤委員長 お答えしますが、この要求に対する返事がそれでございますから、その返事で今日のところは御了承願いたいと思います。     〔発言する者あり〕
  25. 小澤佐重喜

    小澤委員長 静粛に願います。
  26. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣  実は、けさほど参議院の運輸委員会に私どもと気象庁も呼ばれまして、日本おいて高層の気象観測をしておるその資料を米軍から受けているか、こういう質問がありました。気象庁といたしましては、U2機からだということで、特にU2機を指定しての報告は受けておらぬけれども、気象観測ついて、高層の気象観測の部入っておるので、それは普通飛行機観測でないから、そういうU2機のようなものによって観測される、特にU2機からの観測だというふうには指定しておらぬけれども、高層の観測についても報告を受けている、通報を受けている、こういうように気象庁の方で答弁いたしました。私もその通りだと思います。
  27. 森島守人

    ○森島委員 いずれ、この問題につきましてはそれぞれ担当の委員から御質問があると思いますけれども、私は、当時U2機が活動して貴重なる資料を出したというふうに聞いて、おるのでございますが、その点、非常に怪しいのは、アメリカ政府答弁が、U2機の問題が起きて以来、政府答弁と同じく二転も三転もして、いかにもアメリカのやっていることに不審な点があると思うのでございます。この点からしましても、はたしてU2機がそのような活動をして、日本政府においてもこれを非常にアプリシェートしているというふうなことがあったものであるかどうか。これはもう一度明確にしていただきたいと思っております。
  28. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 U2機は、気象観測機として、高層における気象観測をアメリカ軍のため、あるいはNASAのため、両方やっているわけであります。その気象の観測の結果につきまして通告を受けるべき必要があるものは、連絡いたしまして通告を受けている。気象庁の方で、高層の気象のことについての報告があるから、気象の報告を受けた中にそういうようなものも入っておる、こういうふうに私は了承いたしております。
  29. 森島守人

    ○森島委員 この問題につきましては、いずれ、ただいまいただきました報告を詳しく調べました上で、必要がありますれば、また質問をいたすことにいたしまして、先へ移ります。  第二に私が伺いたいのは、政府は、事前協議の問題等につきまして、事あるごとに、相互信頼だから大丈夫だというふうな説明をやっておる。ノーと害う場合もあるだろうし、イエスと言う場合もあるだろう、しかし、日本がノーと言った場合に、これをアメリカが強行することは、よもや相互信頼の関係にあるのだからやらぬだろうというのが、これまで一貫した御説明でございました。これに対してわが方の委員からは、形式的にも、案質的も抜け穴ばかりであって、事前協議の実質の伴うようなことはないだろうという点をこれまで指摘しておるのでありまして、この点について考えなければならないことは、なるほど、相互信頼といえば、あらゆる条約締結する場合には相互信頼の念がなければならないのであります。しかし、条約というものは、ひとたび成文化しますと、成文に基づいて解釈をするのはあたりまえでございます。成文以外に調印当時のいかなる解釈がありましても、いかなる了解がありましても、成文について解釈をするというのが従来のアメリカのしきたりでございます。この点につきましては、いずれ、あとで過去の事例をあげまして政府に御質問をいたす所存でございますけれども、この点について、政府は万全の準備をとっておらないのではないか。岸さんとアイクと共同声明を出せばそれで十分だというふうなことは、あまりにも甘い考えでございまして、やはり条約は成文によってこれを解釈すべきである。もし、そのときに別個の――別個と申しますか、これに関連する了解がありましたならば、これを議事録なり、あるいは交換公文なりの上において明確にしておかなければ、後日紛糾を来たす素因になることが往々あるのでございます。特に、アメリカにおきましてはこの傾向が強い。この意味において、私は、藤山さんが相互信頼だけでよろしいと言っておられる態度は解せないのです。私は、相互信頼のもとに一種の了解があるならば、なぜ、この了解を明確に文書にしてお残しにならないかということを、再度お伺いしたいのであります。
  30. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 事前協議の範囲等につきましては、必要な限度において交換公文に書いてあると思います。また、それらにつきましての了解等につきまして、特別に私は文書にする必要はないと考えておるのであります。むろん、条約は、両国が信頼関係に立って結ぶことでございますから、その上に立ってやることは、これは当然でございます。しかし、必要な限度においては、ある程度文書にする、従って、事前協議の問題につきましても、これこれのものを対象とする、戦闘作戦行動あるいは装備、配置というものを明らかに交換公文にいたしておるのでありまして、それ以上必要はないと考えております。
  31. 森島守人

    ○森島委員 私の質問しておりますのは、今おあげになったような点じゃないのです。それらの点について幾多の疑問がありますから、その疑問を、将来誤解を起こさぬように、さらに明確にするために、これを文書に残される必要があるのではないか。今交換公文に載っておるような文章だけでは、後日必ず誤解を起こす素因になることは明らかであります。私が藤山外相に求めておるのは、それ以上にいろいろ問題になりましたこまかい点をなぜ文書に残さないのか、あなたは、了解がついておるんだから、はっきりしておるとおっしゃる、はっきりしておる以上は、文書に残すことについても、政府として何ら異存がないはずです。その異存のないことを、なぜ、実行されぬかというのが、私の質問でございます。藤山さんは、今的をはずして答えられておる。こうこうこうした了解のもとということがあれば、戦闘作戦行動にしても、あるいは域外、あるいは核兵器の持ち込みの問題にいたしましても、何ゆえに、藤山さんとマッカーサーとの間ではっきり了解がついておるとおっしゃる以上、これを明文化することができないのか。  もう一つ伺いますが、これも、あとでいずれ具体的な例について私御質問いたすつもりでございますが、何ゆえに、これだけをはずして交換公文にされるのか、交換公文も条約も同じ効力だということを、外務省の人は言っております。これはしろうとだましの議論であります。交換公文は、アメリカでは上院の批准の対象にはなりません。そういたしますと、交換公文は勝手にアメリカ政府限りでいかようにもこれを変えることができる。日本では国会審議に付されておりますので、国会の同意を得なければ、これを変えるわけにはいきません。その点においても、大きな違いがあることは明らかでございます。何ゆえに、これを条約の本文からはずされたかという点につきまして、われわれを納得させるに足る積極的な説明を私は求めたい。この質問に対してお答えをいただきます。
  32. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 第一の点につきましては、むろん、話し合いの過程において、お互いに了解しておりますものを、われわれとしては国会等を通じて、あるいはアメリカ側としても国会等を通じてそういう説明をいたすことになろうと思います。従いまして、そういう点について一々文書にして残すという必要のあるものと、ないものとあろうと思います。われわれは、現状におきまして、われわれが申し上げておるような点については、特に文書にする必要はない、こう考えております。  なお、なぜ交換公文にしたかということでございますが、森島さんも御承知いただけると思いますけれども、交換公文と条約と、そのものに軽重の差があるというわけではないとわれわれは考えております。そうして、特に条約の中からそうした具体的実例を摘出いたしまして、そうして、交換公文によってそれを明らかにしたというのでありまして、別段それ以上荷らか違いがある、条約の本文に入れなければならぬという問題だとは考えておりません。
  33. 森島守人

    ○森島委員 私は、ただいまの説明では満足できない。交換公文と条約が同じだなんということは、外務省の条約局の方にお聞きになれば直ちにわかります。これは、やはり大きな差異がございます。私ただいま指摘しましたように、これを変更する場合のごとき、その一例のはなはだしいものである。私は同等とは決して考えない。この点につきましても、あとで私は具体的な例をあげまして、さらに御質問をいたすつもりでございます。  もう一つ、私ついでに申し上げますと、ヤルタ協定に関連をいたしまして、アメリカから日本政府に公文がきておるはずです。これにつきましては、アメリカは、協定ですから、上院にかける必要はないのです。ルーズヴェルトが勝手にやったといいましても、これは完全に、日本でいういわゆる条約としての効力は生じているわけであります。この点について、アメリカから、日本政府の問い合わせに対して、ヤルタ協定というのは、当時の政府の当局者の目標といいますか、私はあとで原文を見てもいいのですが、当時の政府の意向を知らしただけで、法律的な効力はないのだというふうに、ヤルタ協定を否定するような解釈を日本に通報してきていたことがございます。この点から考えましても、協定という以上、私は、それは条約と同様に解すべきものだと思っておりますが、これが上院の批准を経てないということで、アメリカがこれを手軽に扱っておるという好適例であると思うのでございます。そこで、これは条約局長に伺いますが、はたして、交換公文と条約とどれくらいの差がありますか、専門的な御見地から伺いたいと思います。
  34. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 その点につきましては、森島先生も御承知の通りと考えております。すなわち、両方――条約にしろ交換公文にしろ、国際約束でございます。でございますから、国際約束という面においては拘束力を持ち、両方とも同等の実体的な拘束力を持っている。これは問題ないところだと考えます。それが批准とか云々というようなことは、それを各国が国内法の手続としてどのような手続をとるかどうかという国内的な問題であって、国際公法、国家間の関係におきましては、これは両方とも同等の効力を持つ約束であるということであります。
  35. 森島守人

    ○森島委員 国際公法上における効力が同一だということは、高橋局長の御説明の通りです。ただ、国内問題だということで、これを別個の観点から解釈するということは、私はいかがかと思います。私は、あとで実例を出しますが、これは日本でもえらい例があるのですよ。上院にかかっておらなかったために、アメリカの行政府が一方的にこれを破棄したという適例があるのでございまして、廃棄するというような場合におきましては、顕著な差があるということが言える。これは政治的な観点からいたしますと、非常に重要な問題だと私は思っております。単に法律論として効力がどうだこうだというだけの簡単な問題では済まぬ、私は、こう思っておるのでございます。  時間の関係もございますので、もう一つ、私は、今度の交渉のやり方を見ておりますと、これくらい愚劣な外交のやり方はないと思う。これは自民党の推薦されました田村教授なんかもその通り言っておりますが、非常にやり方が間違っている。このような日本の運命をかけた大きな条約を交渉するのには、与党と政府との意見が完全に一致するということはもちろん必要である。そのためには、与党の決定を経て閣議を開いてやるべきものでございますけれども、岸政府のやったところを見ますと、一昨年藤山さんがアメリカに行って、アイクが相談に乗ってもいい、交渉を始めようと言ったということで、まるで鬼の首でも取ったように喜んで、直ちに、しろうとはしろうとなりで、正式の話し合いに入ったのがこの交渉の発端であります。私は、当時、その点が心配でございましたから、藤山さんに対して、すでに公式な交渉に入っているのかどうかという点を、再三念を押したことがございます。藤山さんは、その当時、マッカーサーと第一回の会見をやって、もうすでに公式な交渉に人っておるだ――私は、そうではなくて、お互いの腹の探り合いなり非公式な意見の交換であると思っておりましたが、藤山さんは、すでに第一回から公式な交渉に入っておるというのが、あなたの御答弁でありました。私は、これくらい下手なやり方はないと思います。それだからこそ、今日に至って統一解釈が二度も三度も出たり、あるいは政府の見解が二転三転したりするようなことがあるので、事前協議の問題につきましても、政府の意図が必ずしもはっきりしていないというのは、その辺の事情に因をなしておるものと私は信じております。  ところで、この実情を考えてみますと、私は、金門馬祖に例をとりますと、金門馬祖が入っておるのだといえば、自民党内の三木武夫氏の一派がこれに反発する、入っていないのだといえば、アメリカの国防省が言うことを聞かぬ、その両極端にはさまれておるのが政府である。その結果、岸さんの答弁のごとく、入っておるのだか、入っていないのだかわからぬ、言葉の上だけの御答弁が出てくるのだと思っておる。日本国民の心配しておりますのも、まさにその点にあると私は信じておるのでございます。新聞紙で見ますと、岸さんが一月渡米される前に、三木武夫さんがあなたをたずねまして、事前協議の問題が非常に大事である、あなたは共同声明においてこの点を明らかにするということをおっしゃったそうです。共同声明の、あのあいまいなと申しては済みませんが、私らから申しますれば多少不十分な声明になったのも、その辺の事盾によるかと思いますが、これで三木さんなんかの抱いておられる事前協議に対する不安というものが除かれたかどうか、この点も党内の御関係だと思いますけれども、承り得るものならば承っておきたいと思っております。
  36. 岸信介

    ○岸国務大臣 自由民主党としては、この安保条約改定の問題につきましては、すでに党議を決定いたしております。なるほど、各条項につきまして、党内において、最後の決定をするまでにおいていろいろな意見があったことは事実でございます。しかしながら、今日、党内において、われわれの党議の決定されたものに対して、何らそれに対して異論を持っているところの人はございません。
  37. 森島守人

    ○森島委員 では、私は、最近五、六十年間に日米外交史の上において現われました諸案件を取り上げまして、政府の御見解を求めるとともに、同時に、アメリカが意識的に条約に違反した例もございます、条約調印当時におきましては、完全に日米両国間に成立しておった了解に反した解釈を後になってとった例もございます。それから、両国とは申しませんが、関係国間に意見が合致しなかったために、調印後でございますけれども、交渉をやり直して、追加協定を作ったり、それから事実上条約に留保をつけたりした例もございますので、これらの点について一一御質問をいたしたいと思うのでございます。  第一に私がお尋ねしたいのは、一八九四年の条約でございます。日米通商航海条約、問題は多少専門的にわたりますのと、相当古い時代のことでもございますが、この点はあらかじめ御了承を願いたいと思います。五、六十間の事例というものは、両国間の関係から見ますと、決して古いとは申し上げることはできない、しかも、私が今申し上げました一八九四年の条約は、明治以来、日本国民の要望でありました不平等条約の一半、すなわち治外法権を撤廃しました、歴史的な条約でございます。この条約についても両国間の意見が合致したと了解をしておったのだが、後に至って、これをくつがえしたという実例でございます。この第一条をどう御解釈になっておるか、条約局長の御説明を求めたいと思います。
  38. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 ただいまの古い通商航海条約――二七年でございますか、第一条でございますか。
  39. 森島守人

    ○森島委員 これから入りましょう。一九一一年のやつからいきましょう。第一条です。
  40. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 ただいまのは二回目の通商航海条約だと考えますが、明治四十四年の通商航海条約の問題点は、おそらく第一条の点、第一条の、日本文では「両締約国ノ一方ノ臣民又ハ人民ハ他ノ版図内二到リ、旅行シ又ハ居住シ卸売又ハ小売商業二従事シ家屋、製造所、倉庫及店舗ヲ所有又ハ賃借シテ之ヲ使用シ」云々、こういうふうなことがあるわけでございますが、そこで、これが英語の問題になりますと……。
  41. 森島守人

    ○森島委員 いや、それでけっこうです、あとで聞きますから……。それでは、今の日本文の御解釈によりますと、日本人は全般といたしまして入国の自由をアメリカは認めたもの、こう解釈していいわけですね。
  42. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 日本文では、そのように解釈されるのではないかと考えております。
  43. 森島守人

    ○森島委員 解釈されるのではないかでは困るのでして、日本政府が二十数年間堅持しておった見解はどうかということを私はお尋ねしておる。
  44. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 日本政府が過去どういう見解を一貫してとっていたかということになりますと、私、はっきりしたことは申し上げられませんが、大体においてこの条文に即してやった、すなわち、入国の自由をこれによって保証されたんだ、こういう立場でいったものだと考えております。ただ、移民とか、そういう問題になりますと、別に、アメリカ合衆国行きの労働者の制限及び取り締まりに関する宣言というのがございますから、そういう問題はまた別個に考えていたんじゃなかろうか、こういうふうに考えます。
  45. 森島守人

    ○森島委員 日本政府が、入国の自由を全般的に認められたものという見解をとっておりましたことは、間違いがないのです。当時の官報にも、その通り載っている。これは一々私ここに文献を持っておりますから、うそをついているんじゃない。官報にその通り出ている。しかるに、アメリカがこれに対して排日移民法というものを作った。一九二四年だと思いますが、そのときに、いかなる解釈をしたかということが非常な大きな問題だ。アメリカはどういう解釈をしたかと申しますと、商売をするためにのみ入国する自由を認められておるという、日本政府の見解と全く異なった見解をとった。その点はいかがお考えになりますか。
  46. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 その点、御指摘の通りだと考えております。と申しますのは、アーティクル一――英文でありますが、英文では、そのようにも解釈される趣旨の英文なものでございますから……。
  47. 森島守人

    ○森島委員 それだから、私があなた方に御注意申し上げておる。その原文は何でありますか、英文ですか、日本文ですか。
  48. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 英文でございます。
  49. 森島守人

    ○森島委員 そこで、条約締結の経過から見ましても、当時、日米両国政府間に完全にお互いに入国の自由を認めるというのが、条約締結当時からの一貫した解釈であります。しかるに、一九二四年、いわゆる排日移民法というアメリカの新移民法が、一九一年在米当該国人の三%入れる、そこで、アメリカに帰化する権利を持っておらない人種の入国を全面的に禁止するという規定ができた。これは御承知だと思いますが、埴原大使がヒューズ長官に書簡を送りました中に、重大なる結果があるという字句があった。これをロッジ上院議員がとらえて、覆面の脅威だということで、ついにその日本の覆面の脅威ということに刺激せられて、上院が一挙にこれを通したという歴史があるのでございます。日本においては、自来、その排日移民法の通過いたしました五月十五日を期しまして、毎年、国恥記念日としてアメリカに対する抗議を続け、いろいろな運動を続けてきたことは、これはおそらく御承知だろうと思います。これは一体、どこにこういうふうな解釈を生ずるに至った原因があるかということをお考えになっておるか、一つ伺いたいのです。
  50. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 この問題は、やはり通商航海条約の解釈というような点の問題になりますが、しかし、その当時にありましても、先ほど申し上げましたように、移民の点については、すでに一九一一年、同じ年でございますが、日本は特別の宣言をやっておりますので、その当時の歴史的事実に徴しましていろいろな問題があったかと考えますけれども、その点、移民というような点は、通商航海条約の問題というより、これはやはり別個の問題として考えるべきであるし、また、そういうふうにやるべきじゃなかろうかとも考えております。
  51. 森島守人

    ○森島委員 移民の点については、私はまた別個にお伺いいたしますが、どうしてアメリカがこういうふうな入国の自由を商人のみに限定するという解釈をとるに至ったのであるか、その点に対するあなたの御見解を伺いたのであります。
  52. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 私、詳しくは存じませんけれども、やはりアメリカの国内におけるいろいろな労働者その他の面からするところの反対その他があった点がおもだと考えております。
  53. 森島守人

    ○森島委員 私は、そういう国内の反対とか、いろいろな騒ぎがあったなんということを尋ねているのではないので、条約局長ですから、条約局長として、法律的にどういう点からこういう解釈が生まれるに至ったかという点をお伺いしているのです。
  54. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 その点、私もつまびらかにいたしませんが、確かにこの条約の英文だけを見てみますと、コンマがついておりませんし、ですから、単なる入国民というよりも、いろいろな商売をするための入国というふうに、英文は読まれるようでございます。そういうような点で問題があったかと思いますが、しかし、実体的には、向こうの政治的ないろいろな問題でなかろうかと思います。
  55. 森島守人

    ○森島委員 法律的にいいますと、あなたが今言われた通り、日本の外務当局で英文を起草する上において、ツー・キャリィ・オン・トレイド、その前にコンマを入れるべきところを入れなかった、ここに私は、アメリカの事務当局と申しますか、日本の事務当局と申しますか、事務当局の間に非常な大きな手落ちがあった、そうして条約違反の解釈をアメリカに許すに至ったという原因があると思う。私は、これだからこそ、事前協議の問題等についても、もっとはっきりした、了解があるのなら了解を文書の上に残さなければ、将来、相互親善だ、相互親善だと言っておられますが、これに異なる結果を来たすという点を私は憂えておるのです。私は、この点においても、もし今度の交渉にあたって、アメリカとの五十数年の関係にわたって、しさいに条約関係等をも事務当局として調べられ、これを大臣に建言し、大臣もまた、事務当局の意見を徴するというふうな慎重なる行動をおとりになったならば、あるいはもっと変わった形の表現が条約の成文において出てきたのじゃないかと思うのでございます。この点におきまして、私は、外務省の事務当局も非常に怠慢であった、それから藤山さんとしても、藤山・岸独走で、十分閣議も開かないで、その点においても大きに欠くるところがあったと思うので、この点についても、藤山さんとしては、すでに調印をされた今日ではございますけれども、り、極東の解釈なり、これをもっと明確にされる必要があると思う。私はもう一段進みまして、ほかの例を引きました上に、いずれまたこの点に触れますが、この点は一つ御警告を申し上げておきたいと思うのでございます。  それから第二の、一八九四年――九五年にアメリカの方は効力が発生したと思っておりますが、これはまあ年の一年や二年はいいといいましても、私はこの条約についても政府の見解を伺いたいのですが、先ほど、私、この条約と一九一一年の条約とを取り違えて申しましたけれども、一八九四年の条約は、治外法権を撤廃した条約であります。当時、日本としましては、不平等条約を一挙に撤廃したいという全国民的な要望がございましたけれども、当時の国力としてはこれをいかんともできないので、当時、治外法権、すなわち領事款判権の撤廃のみをもって満足をいたした。従って、その次の一九二年の条約、この条約の改正の際に、あとの半分であります関税の自主権を完全に日本に掌握して、そしてここに不平等条約を完全に撤廃するという実績を上げたいとしておったのが、一九一一年の条約、これは二つとも日米外交史における大きな条約、この日米外交もに、一つは、アメリカが意識的に条約違反をやっておる。第二の問題につきましては、これも上院の修正の問題をめぐりまして、アメリカが後に充って、当初日米両国間に完全に成立しておった解釈を変えたのです。これらの点も、私は今度の安保条約の、成文について十分に検討すべきだと考えておる。この一八九四年の条約にある第十九条、これはいかにお考えになっておるか、御説明願いたい。
  56. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 ただいま御指摘の点は、明治二十七年十一月二十二日、ワシントンで署名されております。そして、ただいまの御指摘のように、領事裁判を撤廃する期限が起きまして、約五年後、三二年七月十七日より実施されるものである、こういうわけでございます。その後何年か効力を持つというようなことでなかったかと考えますが、当時、締結後通常の条約では、締結後直ちに効力が発生して、そうして何年かたった後には、一年の予告期間をもって廃棄することができるということになっていたわけでございますが、この条約は、ただいまの領事裁判の撤廃というような期間がありましたので、非常に異質なと申しますか、変った条約で、署名はしましたけれども、しばらく発効せずに置かれまして、それから発効するということになった。ところで、「十二箇年間効カヲ有スル」ということになっておりまして、その後、「両締盟国ノ一方ハ本条約実施ノ日ヨリ十一箇年ヲ経過シタル後ハ何時タリトモ本条約ヲ終了セント欲スル旨ヲ他ノ一方へ通知」して、そうして終了することができるということになっておりましたのを、米国側としましては、ただいま御指摘のように、「本条約実施ノ日ヨリ十一箇年間経過シタル後ハ」というのを削除して、その後いったりとも本条約を終了されるということになりましたので、ここで非常に誤解を生じたのではないか、このように考えております。従いまして、その後、いよいよ十二年もたちましてあとでこの条約改定するときに、その十二年がたったかたたぬか、いつからたったかというような問題が起きまして、いろいろ問題が起きたようでございます。そこで結局におきまして、その後改定の、新しい、先ほどの通商航海条約ができ上がって、問題が解決した、こういうことであります。
  57. 森島守人

    ○森島委員 ただいま御説明のように、なかなか廃棄通告をやる時期等に関して問題が起きたのです。今お話しのように、最初は、一八九九年七月十七日に実施される、そうして実施後十二年間有効である、実施後十一年間を経過すれば廃棄の通告ができる、こういうことになっておったのです。ところが、米国の上院においては、今度の安保の問題と逆に、十一年間も縛られるのでは米国が困るということで、その十一年間たってから廃棄通告ができるという、十一年間という期限を除きまして、その後、ゼアアフターという字を入れた。このゼアアフターが一体どっちにひっかかるかということで、日米双方の間に非常な論議が生じた。と申しますのは、日本としては、この条約改定時期というのが、先ほど御説明申しました遡り、関税自主権を回復するという点において大きな効力を有する、関係列国とともに大体時期を同じゅうして交渉しなければ困るというので、それで、十一年間廃棄通告がいつできるかという、普通に考えれば大した大きな問題と思われぬような問題が、非常な大きな意味を持ったのです。これは小村候爵、小村寿太郎氏の時代の条約です。そこで、日本とアメリカとにおきましては、当初は、五年間たって条約が効力を生じたならば、いつでも廃棄通告がやれるんだというのが、日米両国の一致した見解であった。そのときの国務長官はグレシャム、上院のおもに交渉に当たったのがフライという上院議員であります。その国務長官やフライ上院議員等の間におきましては、日本の見解をとることにおいて何ら異議がなかった。完全に意見が合致しております。ところが、いよいよ条約改正の交渉を始めるようになりますと、そこに問題が起きたのが実情でございます。しかし、この条約を通じて私の感じておりますことは、アメリカは、はっきり、日本がいかなる解釈をおとりになっても、成文に基づかなければ解釈ができぬという見解をとりました。また、日本がいかなる解釈をおとりになりましても、それはアメリカの条約局には語録が残っておりませんということで、語録がある、ない、すなわち、私が、今、事前協議の問題や何かに関して記録に残しておけということを、藤山さんに強く野望しておりますが、記録がないからといって、その条約調印当時の日米両国間の了解をすっかり打ち破って、そうして異なった解釈をとったのが、アメリカのやり方なんでございます。これらの例から申しますれば、私が、今あなたに、こういうふうな了解があるのなら、それをはっきり文書の上に残しなさいと言うのも、このような事例がアメリカとの間にあるから言っている。私は、その必要がなければこういうことは申し上げません。私は、藤山外務大臣、あなたの考慮を求めなければならぬ。これは私の意見だけではない。一々ここにたくさんの文献を持ってきております。この文献は、すべて外務省で編さんした、外務省で公表した外交文書の集録である。 この中にはっきり出ております。  私、一、二の例を引いてみますれば、(「ちょんまげ時代じゃないよ」と呼ぶ者あり)明治四十二年四月二十九日に特命全権大使の高平さんから小村寿太郎氏にあてた中には、「日米条約第十九条ノ写ヲ同官二示シ其解釈方二関シ意見ノアル次第ヲ語りタルニ長官ハ之ヲ一読ノ後其解釈二左迄面倒アリトモ思ハレス全ク其文一育ノ通り十二ケ年ノ後始メテ条約廃棄ノ通知ヲ為スヲ得ヘキモノト信スル旨ヲ述ヘラレタ」それから「本件二関シテハ大統領並前国務長官「ルート」氏トモ相談セシカ矢張リ国務省法律家ノ喜取調ヘタル通り」とあります。アメリカでは一応成文化しますと、法律家の解釈というものは非常な力を持っております。「国務省法律家ノ取調ヘタル通り同条約八十二ケ年効カヲ有シ其上ニテ廃棄ノ通知ヲ為スヘキ順序ナレハ」云々とございます。  まだ幾つもございます。それから日本側は、その前の条約を作ったときにはなるほど小国であって、外務省の館員というものは非常に少なかった。そこで、高平大使が、その当時の状況を外務省へ言ってきております。「右条約改正ノ当時ハ独リ之カ事務ノミニ止マラス時恰モ」云々「内外ノ用務頗ル多端ヲ極メタルニ館員僅カニ中山書記生一人アルノミ記録報告等ノ事務平素遺憾少カラサリシ義ニシテ或ハ右様ノ事情記録二存セサルコトトモ存候」ということがあります。ちょんまげということを言っておられますけれども、今度の新安保条約を検討するにつきましても、このような日米間のこれまでの外交史というものを詳細に検討して、完全を期せなければならないと思う。思いつき半分で交渉をやられては困るということを私は実証しようと思っておる。それからアメリカにアメリカの記録がないということも、ここに引用しております。これは非常に長いから、私読みませんが、その期間に関しては、国務省の記録課は何らこれに異なる――日本の見解であります。異なる文書を所存していないということをはっきり言っております。  私は、こういう点から申しまして、ただいまも申しました通り、外務省の事務当局としては、少なくとも岸さんと藤山さんの独走的な交渉だけにまかせないで、事務当局としても十分なる補佐の任を果たすべきものだと思います。それから藤山さんといたしましても、事務当局の意見を聞いてやるべきものだったと私は思う。そういたしますれば、今度の条約におきましても、これらの不明確なる点がなくて、私は相当りっぱなものができたのじゃないかと思いますけれども、そこに、先ほど申しました独走的の交渉、党とも離れ、閣議も開かないで、岸、藤山だけで独走した結果が、この条約の成文に呪われた、そうして、アメリカの陰に陽にの圧迫――と申しましては言葉が過ぎるかもしれませんが、アメリカ側の意向が多分に盛られたという点もあるのじゃないかということを、私懸念するのでございます。  先ほど高橋条約局長が言っておられました移民の問題、この問題は、なるほどアメリカとしては非常な重要な問題、この問題がアメリカの内政の問題に属するというのが、アメリカ政府の当初からとっておる見解であって、そうして国内管轄権ということで大きな問題になっていることは、条約局長の御指摘の通りなんです。そこで、移民の問題につきましては、四十五年の条約のときには、特に移民を日本側で品発的に制限するというふうな趣旨の声明を日本政府が出したのも、その関係にいずるわけです。そこで、日米間にはいわゆるゼントルマンズ・アグリーメント、紳士協約というものがあったのでございますが、これは御承知でしょうか。
  58. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 存じております。
  59. 森島守人

    ○森島委員 この紳士協定というものは、これはアメリカの上院の批准を経ておりません。両国間において幾たびか往復しました文書の集計がこれになっておるということなんですが、これも政府間の約束であることに間違いはございません。その通りお考えになっておられますか。
  60. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 俗にゼントルマンズ・アグリーメントといっております。これは明治四十年末以来、しばしばアメリカとの関係でそういうふうな紳士協定をやったわけでございますけれども、これは約束で、正式の国際法上の合意というものではない、御承知の通りでございます。日本が自発的に自制しようという内容を持っておるわけでございますから、これは通常のわれわれの合意とは性質を異にする、このように考えております。
  61. 森島守人

    ○森島委員 それは非常な誤った解釈なんです。これは少なくとも両国合意している。アメリカがこれに合意しているということは、これはここに持っておりますが、埴原大使からヒューズ国務長官にあてた中に、この紳士協約が何回もアメリカの移民の公報のうちに載っている。この点から考えましても、両国間の約束であることは間違いないのです。これは日本が自発的に一つ制限しましょうと申したことは、その通りなんです。しかし、アメリカにおいても、その約束があるから、日本移民を差別待遇をしたり、あるいは差別待遇をするような法律は作らぬでおこうというのが、移民協定、紳士協定の約束なんです。この点において完全な合意だと私は思うのですが、この合意が、やはり一九二四年の排日移民法によって破られた。これは完全なる国際協定の違反であると私はいわざるを得ない。この点については条約局長はどうお考えになりますか。
  62. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 当時の問題でございますけれども、私から申すまでもないことでございますが、森島先生よく御承知の通り、日米間では、この移民問題というものは、最も重大な利害の衝突する問題であったわけでございます。これは日米間のみならず、一切の国際的な問題におきましても、国内事項だとか、そういう問題につきましても、われわれは、移民問題については非常に神経過敏であった、また、お互いにこの問題が最も利害関係の衝突と申しますか、問題であったというふうに考えております。従いまして、当時も、これを正式に約束するというようなことは相当な問題でなかったか、すなわち、わが方といたしましても、私は当時の外交史的な評価ということはよくできませんけれども、わが方からとにかく自制措置をとるというのが、もうせいぜい日米関係ではわれわれがやろうというところの問題であり、そういう意味合いのことを向こうの方に申し入れてきた。ところが一方、向こうとしましても、やはりそれでは十分でないという向こうの事情がありまして、そのような国内法、これをやったというような状態ではなかろうかと考えております。
  63. 森島守人

    ○森島委員 この問題について、であるとか合意でないとかいう論議を重ねても、これは無益なんですが、これは合意であることは間違いない。アメリカとしては、日本政府が自発的に制限的の措置をとってくれるならば、アメリカとしては差別的な待遇はしない、すなわち、日本移民の入国について列国と平等の立場に立つ、最恵国待遇の関係もありますから、平等の立場において取り扱うようにしようという約束をしておったのは、間違いない。私、必要なら文献を幾らでも出します。私、文献を持ってきておるのは、私の意見を支持する文献だけでなく、先ほど申しましたように、全部外務省から出ている。そこで、私は、これも日本に対する差別的な待遇をしたという点において、条約じゃございませんが、いわゆる協定の違反であったという点については、間違いないところです。それだからこそ、先ほど申しましたように、このいわゆる排日移民法が通過しました五月十五日を期して、毎年日本は国恥記念日というものをやってきたということなのでございます。この点について、アメリカ側の見解を見ると、協約違反だが、条約でないのだから、アメリカの議会を拘束しないのだということを言っていますが、これはこの通りなんです。それだから、いかにむずかしいことがありましても、やはり条約の形において正式に取りきめておかねばいけない。まあ、当時の事情は非常に了とすべきものがありますが、私としましては、そういうふうな関係で、やはり条約なら条約のしっかりした形式をとらなければいけない。  その点におきまして私が考えますのは、先ほども触れましたけれども、事前協議の条項を何ゆえに条約から切り離したかという点について、大きな疑問を持っておる。この点につきましては、藤山さんにいかに御説明を求めましても、これは平行線でしょう。藤山さんから私たちを納得させるような説明は、何べん伺っても取ることはむずかしいと思いますが、条約局長としていかがにお考えになるか、参考のために承っておきたいと思います。
  64. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 ただいまの御指摘の点でございますが、明治以来のいろいろな事例をおあげになりまして、それとの比較検討においての御意見かと考えておりますが、やはり当時の記録その他を見てみますと、たとえば今の移民というような問題は、日本とアメリカとの利害が全く正面衝突をした問題でございます。御承知の通りでございます。また、この移民問題というのが、当時からの経緯でございますが、アメリカ、また、各国の一つの国内問題であるというふうなことも、われわれとしましても、非常に遺憾なことではあったと考えますけれども、当時も大体においてそういうふうなことに考えられてきた。たとえば一九二四年のジュネーブ議定書のときでございましたか、御承知の通り、やはりあの問題のときに、われわれがいろいろ修正案を出しておりますが、あれもアメリカとの関係におきます移民問題、この問題についての関係からして、これが国内事項であるかどうかというような問題、それを考えまして、われわれの訂正案を出したわけでございますが、そのように利害関係が非常に衝突しておった問題じゃなかろうかと考えます。  それから今度の条約におきましては、御承知のように、一般的な問題については、条約第四条の協議が行なわれるわけでございます。しかし、特定の具体的事項を特に取り上げまして、そうしてそれを交換公文におきまして事前協議の対象にしたわけでございます。私どもといたしましても、そのように特にこれを具体的の事項を取り上げる、そして交換公文にするというのが、最も適当な措置であるだろうと考えております。しかも、この交換公文と本条約関係、これは先ほど申し上げましたように、国際関係におきましては同等の拘束力を持っておるということでございます。
  65. 森島守人

    ○森島委員 私は、特定の事項を取り上げたからこそ、なおさら本条約の中に入れるべきものだという点で、あなたと見解を根本的に異にしております。私は、それから交換公文の効力については、これは条約と同一ではないという点も、先ほど指摘しました通り、これはいかにあなたが説明されましても、この点は私は間違いない、こう思っておるのであります。  次に、私が聞きたいのは、石井・ランシング協定というのがあります。これは第一次大戦中に日米両国間でできた。これこそ、岸さんの言ではないが、日米新時代を開いたとして、両国において大いに歓迎された。石井ニフンシング協定をそこにお持ちでしょう。その中に、中国の部分に関して、「合衆国及日本国政府ハ領土相近接スル国家ノ間ニハ特殊ノ関係ヲ生スルコトヲ承認ス従テ合衆国ハ日本国カ支那二於テ特殊ノ利益ヲ有スルコトヲ承認日本ノ所領二接壌セル地方二於テ殊二然リトス」という文句が一つございます。この「支那二於テ特殊ノ利益ヲ有スル」ということは、はたしていかなることを意味しておるか、具体的に申し上げますれば、経済上の利益であるとか、政治上の利益であるとか、こういう点を明らかにしていただきたいと思います。
  66. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 ただいまの御指摘の点は、「合衆国及日本国政府ハ領土」云々、さらに「従テ合衆国政府日本国カ支那二於テ特殊ノ利益ヲ有スルコトヲ承認日本ノ所領二接壌セル地方二於テ殊二然リトス」そこで、御指摘のように、特殊の利益というのは何であるかという問題が起こったわけでございます。そこで当時、われわれは、この特殊の利益というのは、スペシャル・インタレストという英語でございますが、当然優越せる、パラマウント・インタレストであるというふうに考え、それから米国の方は、これを経済上の利益である、こういうふうな考え方によって、意見の相違があったというふうなことを聞いております。
  67. 森島守人

    ○森島委員 これも、この協定締結したときには、両者の間に明確なる了解がなかったようです。この協定のできましたのが大正六年ですが、その翌年の八月十一日になりますと、国務長官、この協定に署名をいたしましたランンンク――署名と申しますか、これは交換公文という形をとっておりますが、ランシングは、石井子爵が抱いておった解釈、すなわち、日本政府の抱いておった解釈と全然異なる解釈をしておる。これはアメリカの上院で承認しております。初めは、石井子爵は、パラマウント・インタレストという字を使いたいということを申し入れたようです。それはあまり字が大きいということで、それにかわる言葉として、スペシャル・インタレスト・アンド・インフルェンスという字を使おうということを提言いたしましたところが、これにランシングにやはり反対があって、スペシャル・インタレストという字だけが残った。しかし、アメリカとしましては、そのいきさつからしまして、決して政治的な権益を特に認めたものでないという解釈をとっております。全く正面衝突をした形であります。しかし、幸いにして、この問題は具体的な発展をしないで、両国間の意見の相違がありつつも、具体的な問題にはなったことがございません。しかし、これも私が考えまするところによれば、協定調印したときに、このような協定の中心課題であるべきスぺシャル・インタレスト、この字については、明確なる了解を両方でつけておくべきだった。それを両方の当局においてないがしろにしておったというところで、この協定の場調印した翌年になりますと、さっそく見解の相違ということが表へ出た。この点から考えましても、やはり私は、今度の日本戦争に巻き込むかいなかという、非常な重大なる安保条約については、この言葉一つでも明確にすることが非常に必要である。もし、両方の内政事情等の関係で、ぼんやりとした言葉を使っておくことが必要なこともありますが、そういうような場合には、ことに条約の文字の解釈については、明確なる見解を明らかにして、これを少なくとも記録等に残しておくことが、絶対に必要だと私は信じておる。しかし、従来からの藤山外務大臣に対する質問に対するお答えから見ますと、それは当然明らかになっておるのだというだけで、そういう了解のもとに交渉しておる、交渉過程においてはっきりしているのだという御答弁で、それ以上明確なる御答弁を得ておりません。私は、この点について藤山さんとしては、これらの過去の事例から見ても、不明確な了解のままにしておくことはいかがかと思う。国民が非常な不安を抱いておりますから、少なくともこの際御奮闘を願って、アメリカとの間に、新たに明確なる了解を記録に残すだけの御努力をなさってしかるべきではないか。この日本国内の様子等もアメリカにしさいにお伝えになって、再び交渉を始められて、これを完璧なものにするという努力をされる御決意があるかどうかということを私は承りたい。私たち議会内の問題だけではございません。国民のほうはいたる不安の念を御考慰になりますれば、為政者として、また外務大臣として、当然おとりになるべき措置であると私は確信しております。この点に対する御決意をも伺いたいと思います。
  68. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 森島委員の言われますように、条約締結交渉にあたっては、十分に慎重にやりますことは当然のことでございまして、私ども、現在外務省の条約局が持っておる有能なそれぞれの人が、検討を加えた上で、条約文の作成等に当たったわけでありまして、われわれとしては慎重にそれに対処し、また、私としては、それらの人の仕事について、誠実であって、しかも、真剣にやったということを了承いたしておるわけでございます。今お話のように、条約交渉過程におきましていろいろ了承したものについて、何らか文章に書き、あるいは今国会の論議等を通じていろいろ問題になっておるような点について、さらに一そうアメリカ側に何か話をして、文章等に残したら、どうだという御意見、御質問であったと思うのでありますけれども、われわれといたしまして、先ほど来申し上げておりますように、条約交渉の過程におきまして、問題になりますような点については、意思の疎通をはかり、意見の統一をはかってきております。それらの問題について、われわれとして、それによって、国会等においてお互いにその了解に達したところをはっきりいたしておるのでありまして、あらためて特に文章に書き、あるいは今後われわれが何かさらに交渉して補足すべきような点があろうとは、現状において私考えておりません。最善を尽くして今日まで条約交渉に従事したというふうに確信をいたしております。
  69. 森島守人

    ○森島委員 私は、その点に対して非常な疑問を持っておる。意思の統一をはかった、解釈の統一をはかったと言っておられますけれども、これはこの議場における質問に対する御答弁が、二転したり三転したり、統一解釈が二度も三度も出たりするような、あやふやな問題です。私は、日米間に完全なる意見の統一ができておらぬということを、最も雄弁に物語っておるのがこのことだと思います。私は、根本的に藤山外相の意見には賛成ができません。交渉の過程においてはっきりしておる、こういう含みで交渉をしておるとおっしゃるならば、何ゆえにその結果を成文の上に明らかにされぬかという点を、私はただしておるのでございます。  ことに、私は、この点についてもう一つ例をあげますが、これについてもお考えを伺いたいと思っております。それは日英米仏の太平洋条約――いわゆる日英同盟がワシントン会議の際に廃棄されました、これにかわるものとしてできましたのが太平洋における四国条約、これは、実際にこの条約が適用されるというような問題は起こりませんでしたけれども、由緒ある日英同盤の後継として、これは歴史的な協定でございます。この点について私は伺いたい。太平洋上における島嶼たる領土という字句がある、インシュラー・ポゼションという字がある。その字についての解釈で問題が起きた。この問題につきましては、私は外務委員会等において再々御質問を申しましたけれども、今日まで藤山外相からは、はっきりしたお答えを得たことがない、高橋さんからも得たことはございません。むしろ外務省では、私がこういうものを質問するというので、何を質問するのだと、いろいろ当惑されておる、困っておられるということも聞いております。私は、このインシュラー・ポゼションという字句について、いかなる解釈が行なわれておったかということをお聞きしたいと思います。
  70. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 ただいま御指摘の点は、「太平洋方面における島嶼たる属地及島嶼たる領地に関する四国条約」でございますが、その中に、第一条に「締約国ハ互二太平洋方面二於ケル其ノ島嶼タル属地及島嶼タル領地二関スル其ノ権利ヲ尊重スヘキコトヲ約ス」、それから第二条におきまして「前記ノ権利カ別国ノ侵略的行為二依リ脅威セラルルニ於ナハ締約国ハ右特殊事態ノ急二応スル為共同二又ハ各別二執ルヘキ最有効ナル措置二関シ了解ヲ遂ケムカ為充分二且隔意ナク互二交渉スヘシ」云々、こういうふうな条約でございます。ここで御指摘のように問題になりましたのは、「島嶼タル属地及島嶼タル領地」とございますが、その島嶼たる属地にわが国の本土は含むのかどうかということが、交渉の過程においても、すでに非常に問題になったというふうに聞いております。そしていろいろ交渉の結果、とにかくわが方としましては、日本の本土がこれに入るということはどうも適当ではないということでございますが、ほかの交渉相手の国々は、これは当然日本の本土を含めてもいいのではないか、含まれるのではないかということで、交渉の当時そのような意見の相違があった。ところが、わが方全権は、わが本国政府の訓令では、とうていこれは、日本の本土を含めることは適当ではないということであったのでありますが、いろいろ先方とも交渉の末、含めるという解釈のもとにこの条約を一応署名したという事実があるようでございます。そこで帰りましてから、そういうことではいかぬということでいろいろ問題が起こりまして、さらに翌年すぐ追加協定が行なわれまして、この本土の島嶼たる属地というものはこれこれである、すなわち、日本に適用する場合は、「前記条約二使用セラレタル「島嶼タル属地及領地」ナル語ハ之ヲ日本国二適用スルニ就テハ単二樺太(即チ薩哈嗹島ノ南部)臺灣及澎湖列島竝日本國ノ委任統治ノ下二在ル諸島ノミヲ包含スヘキモノトス」、このような追加協定があとで行なわれまして、はっきりしたというような経緯だったと考えております。
  71. 森島守人

    ○森島委員 この問題につきましても、米国内においてすら、国務長官と大統領との間で意見の相違があったのです。条約調印せられました日に、アメリカの新聞記者が大統領に会見をいたしました。そうすると、大統領は、その質問を受けましたときに、日本本土は含まれないのだという回答をいたした。そうしたところが、その直後に、また国務長官に会って新聞記者が同じ質問をした。そうしたらヒューズという国務長官でございますが、この国務長官は、島嶼たる太平洋の領地という中には日本本土を含むのだと言う。同じ政府の最高責任者の中で意見二つに分かれた。そこで大統領といたしましては、もし国務長官意見がそういう意見で、そういうことで関係国の間の意見が合致しているならけっこうだろう、自分の声明は取り消してもよろしいというふうなことで、アメリカ内においても、共和党と民主党の関係がございまして、大きな国内問題にならんとした形勢があった。  私の指摘したいのは、同じアメリカ政府の中において、しかも、最高首脳者の間にかくのごとき、一方は含むのだ、一方は含まないのだというふうな意見の疎隔を来たした問題でございました。アメリカ政府内においてすら、かくのごとき意見の相違を来たすような問題でございますから、今度の安保の問題につきましても、藤山さんが言われておるように明確なる了解があるならば、それをはっきりと今日文書の上に残しておかなければ、私はあるいは意見の疎隔を来たすおそれがありはしないかということを懸念しておる。私は、政府当局としては当然お考えになって、文書の上に明らかにすべき必要があるというふうに信じておるのでございます。この点については、岸総理はいかがにお考えになりますか。
  72. 岸信介

    ○岸国務大臣 森島委員も御承知の通り、条約締結について、いろいろな場合を考えて、できるだけ慎重に処置しなければならない問題であることは、これは言うを待ちません。しこうして、外交交渉にあたりまして、いろいろな点において、あるいは交換公文であるとか、あるいは条約上の本文の表現の字句の問題はもちろんのことでありますが、必要があれば交換公文であるとか、あるいは合意議事録を作って、将来のために明確にしておくこともございます。しかしながら、すべての問題について、あるいはいろいろな法律学者やいろいろな批評家が問題にするということ、ことごとくそういう文書に残すという性質のものじゃなかろうと思います。すなわち、重要なものについては、そういう方法をとるべきことは私は当然であるし、結局今森島委員のお話のように、森島委員のお考えでは、こういう点に関してはなお両国の間の意見を一致させるとか、あるいは将来のために、交換公文かあるいは合意議事録にしておけという、その方が安全であり、その方が確かであるのではないかという御見解であろうと思います。政府の見るところは、この程度の事柄はすでに両方で十分に話し合っており、いろいろな事例を考えてみても、この程度のものは、そういう文書に残す必要はないだろうという見解の相違からきておることであろうと思います。私は、決して文書にすることを一切してはならぬということではございませんし、できるだけそれをすることも望ましいことだと思います。しかし、一切すべて、何か問題になったとかあるいは議論があったら、ことごとくこれを何かの文書にしなければならないということじゃございませんで、そういう点については、外交交渉の途上において、政府としても、また外交交渉に当たるものも十分考えて、私どもとしては、今国会に提案しております一応の文書の形においてこれで十分である、こういう見解をとっておるわけであります。
  73. 森島守人

    ○森島委員 私は、批評家や法律家の間で問題になっておることをすべて文書にしろと言っておるのじゃないのでございまして、御承知の通り、極東の範囲にしましても、あなた方の答弁は何回も変わっておる。事前協議にしましても、あやふやなんです。それだから国民心配をしている。少なくとも、それら二つか三つの重要な事項をあらためて文書にされることが、絶対に必要であるということを私が述べている。ことごとくしろなんという非常識なことは、私は申し上げません。しかし、政府がおとりになっておる態度は、決して国民の納得を得るものでないと思う。私は、自民党の中にも、事前協議をはっきりしろとか、極東の範囲に金門馬祖を入れるなとか、いろいろ御意見のあることも承っておる。私は、これらの御意見は、全く公正なる御意見であると思うのでございます。岸総理が、今このような重要なる事項までも、現在の条約の表現のままでいいとおっしゃることは、私は絶対にいいとは思えない。私は、さらに交渉をお重ねになって、調印後ではございますが――政府の面子もごさいましょう。しかし、国家の運命に関する問題でございますから、一政府や一岸内閣の存在というふうなことに関係なく、国家のために一奮発されて、さらに交渉をやって、完全なものにして国会批准を求めるという掛買をおとりになることが絶対に必要である、こう確信している。(「必要なし」と呼ぶ者あり)私は絶対に必要がある、こう思っているのですが、政府の重ねての御意見を伺いたい。
  74. 岸信介

    ○岸国務大臣 結局は、今の森島委員のお考えと政府の見解が、相違しているということであろうと思います。根本の趣旨においてわれわれができるだけ明確にし、重要な問題については文書にしておくべきであり、また、外交交渉について十分慎重な態度で臨むべきだという、この事柄については、森島委員政府の考えは全然同様でございます。ただ、いろいろおあげになりました極東の問題については、なるほど、いろいろな政府答弁の問において、食い違いがあったことは事実でございます。そこで、二月二十六日の統一見解というものを出しまして以来、この通りのことをわれわれとしては変更しておらないのであります。そういうことから申しまして、このために何か、極東についての見解について文書を交換しておかなければならぬとか、あるいは文書にしておかなければならぬというようには考えておらない、先ほど申しましたような見解に立っておるということを、繰り返してお答えするわけでございます。
  75. 森島守人

    ○森島委員 非常に重要な問題でございますけれども、政府の見解が私たちの見解と異なるところは、私ははなはだ遺憾とするのでございます。  私は、半前協議の問題について多少触れてみたいと思います。林法制局長官は、先日、「協議」は相談するということだ、「事前」がついたから、拒否権を含んだり、同意権を前提としたような言葉になるのだというふうな御説明があったように私は思っておりますが、右で間違いございませんか。
  76. 林修三

    ○林(修)政府委員 多少は私の申したことと違うわけでございますが、私は、いわゆる条約とかあるいは法令において、こういう点についてこういうことをする場合にはあらかじめだれだれと協議をしなければならないというふうな苦き方をした場合には、それは当然にその協議成立を前提として書いてあるのだ、文脈上当然にそう読むべきものだ、かように考えるという意味を申し上げたわけでございます。いわゆる事前協議というものは、あらかじめ協議するということでございます。あらかじめ協議した上でなければこれこれのことはしてはならないという趣旨が、あの事前協議の「主題とする。」ということで現われておる、かように考えるわけでございます。つまりこの条約の第四条の協議、これは要するに、何をするについては協議をしなければならないというような趣旨ではございません。つまり第四条の方は、たとえば日本国の安全あるいは極東の平和と安全に脅威が生じた場合には協議する、協議した上でどういう行動をとるかということについては、四条は何も書いてないわけです。そういう場合の協議、これはまさに相談ということだと思います。しかし、交換公文におきましては、あそこに掲げてありますような一定の事項を掲げまして、こういうことは――要するに、これはすべてアメリカがやることですが、そのアメリカがやることについては、日米両国の事前協議の主題とする。という趣旨は、まさに従来私どもが申し上げておる趣旨だ、かようにお答えしたわけでございます。
  77. 森島守人

    ○森島委員 私は納得がいかないのです。協議は相談することだとおっしゃるなら、「事前」という字をつけても、事前に協議するというだけのことであって、「事前」という字がついたために拒否権を含むのだ、事実上拒否できるのだ、同意権を含むのだというような解釈は、私は成り立たぬと思う。  そこで、私が一点伺いたいのは、この前、私が、七月だったか、外務委員会におきまして、「協議」という字については、これは日本文と英文が正文なんですから、それの対象になる言葉はコンサルトという言葉だと思います。そのコンサルトという言葉について、はたして英語に、あなたのおっしゃるような事前協議同意権を含むのだというふうな意味があるかないかということを、条約局長にもアメリカ局長にもお尋ねした。私は、もうすべての辞書――すべてというか、大きな辞書はすべて調べて参りました。その結果も私はお示しして、一体コンサルトという字には同意権があるのだ、同意を前提とした言葉である、あるいは拒否権も含むのだというような御解釈を含んでおるかどうかということをお尋ねしたのです。そのときにはお答えがなかった。今日までもお答えがない。はたして英語に、そういう意味を含んだコンサルトという字があるかどうか。コンサルトにはそういう意味を含んでおるかどうかという点も、英語の言葉としてお伺いしたいと思います。
  78. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 ただいま御指摘の点でございますが、なるほどいろいろの字引や辞典には、協議はやはり協議でありまして、それは同意とは違う。同意は同意であり、協議協議でございます。従いまして、協議の中に、同意やそういうものを含むというようなことを、積極的に書いたのはなかなか見つかりがたいと考えておりますが、これは協議という言葉だけをお取り出しになって、いわゆる字引ということだけでお考えになるという点において、私は、ちょっと観点が、私どもの観点とは違うように考えております。ここでは、この第四条の協議がございますが、それから特定の行動、ある行動を、取り出して、ある行為をなすごとでございます。ある行為をなすことを協議の対象とし、しかも、それに事前協議の対象とするということをはっきりここで書いてあるわけでございます。従いまして、ある行動をなす上におきまして協議がととのわない、単に形式的に協議だけすれば、われわれはノーと言っても必ずやれるというふうなことは、この文脈からは私どもはとうていとることはできない、このように考えております。
  79. 森島守人

    ○森島委員 今、コンサルトという字は、相談をするという意味だということをおっしゃった。これは、林法制局長官の御説明のあったように、私は受け取ることはできない。出前――プライアという字がついただけで、そのように拡張解釈していいものか悪いものか、はたしてアメリカはその通りの解釈をしているかいなかという点について、私は非常な疑問を持っておる。国民の不安を抱いておるのも、疑惑を抱いておるのも、まさしくこの点であって、三木武夫さんなんかが事前協議を重要視しておられるというのも、この点に出ておると私は思うのでございます。私は英語の文字から考えますると、プライア・コンサルテーションでも、事前協議について、あなた方が、日本語だけをおとりになって解釈しておられるところをそのまま受け入れるといたしましても、決してそういう解釈にならぬと思うのであります。これも将来、問題になる可能性が非常にあるというふうに私は信じております。それなら、米台だとか、米韓だとか、SEATOの条約において、コンサルトの上に、コンサルト・アント・アグリーというような字を特につけておる理由がどこにあるか、私は了解ができぬ。もしアグリーということと同じ場合もあるのだというならば、事前協議の場合に、何がゆえにアグリーという字をおつけにならなかったか。その御交渉をなさったことがあるのか、ないのかということを、藤山さんにお尋ねをいたしたいのであります。
  80. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 交渉の過程において、いろいろな角度から議論をいたしておることは当然でございます。事前協議につきましては、われわれとして、事前に協議をする、行動を起こす前に協議をする、それに対して、協議をします以上は、イエス、ノーがはっきり言えるわけであります。また、言えなければならぬと考えております。そうしてはっきり言い切った場合に、ノーと言えることがむろんあり得る。また言える。ノーと言えば、それを実行に移さないということは、われわれの話し合いの過程において、そういうふうに了解されておるのであります。それが岸・アイク共同声明における裏書きにもなったわけでございます。
  81. 森島守人

    ○森島委員 そういうふうな了解ならば、何ゆえにその了解を明白に成文の上にお書きにならないのか。もし成文の上に入れないといたしましても、何ゆえに交換公文なりあるいは議事録、会議等、記録の上にこれをお残しにならぬのかという点は、私はどうしても理解ができぬ。何ゆえに記録に残す必要、がないのであるかという点については、われわれを納得させるだけの御説明はございません。この点について、私はあくまで、少なくとも記録のに明らかにすべきだろうと思うのでございまして、この点について重ねて御意見を伺いたいと思います。
  82. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 交渉の過程におきまして、そういう論議をし、そういう結論に達し、また、そういう了解のもとに条文作成に入ったわけでございまして、そのこと自体明瞭でございますから、何か交換公文等でそういうことを規定する必要は、われわれないと考えております。
  83. 森島守人

    ○森島委員 それだからこそ、古いことでもございましたけれども、日米間の外交史を検討いたしまして、誤解が起きる余地のあった例がたくさんあるのですから、これをなくするために、将来、相互信頼のもとに結ばれた条約が、ほんとうに相互信頼の実をあげるようにという配慮から私は御質問をしておるのです。  私がもう一点伺いたいのは、交渉の過程において、コンサルトをアグリーにかえるということについて、御交渉なさったことがあるかいなかという点についてのお答えを願いたいと思います。
  84. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 交渉の過程におきましては、あらゆる角度からこうした問題を扱つたのでありまして、字句等の用い方についても、いろいろの点で両者の意見の交換をしたことは、これは当然でございます。しかし、われわれとして、今申し上げたような意見、解釈のもとに、両方が合意をいたしてこの条文の作成になったわけでありますから、われわれとしてそれで十分である、こう考えております。
  85. 森島守人

    ○森島委員 私の質問にまともにお答えになっていないのですが、アグリーという字を使うことについて、日本側から積極的に意見を持ち出して、アメリカと御交渉になったことがあるかいなかという点を明確にお答え願いたいと思います。
  86. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 今申し上げましたように、交渉の過程におきましては、条文作成の前提でございますから、いろいろな場合を想定し、いろいろな字句等を用いて検討いたしたこと、これは事実でございます。しかし、われわれは、今申し上げましたような了解のもとに、事前協議で十分であるという結論に達しておるのでございまして、そういう了解のもとに、われわれとしては事前協議という字を用いたわけでございます。
  87. 森島守人

    ○森島委員 ただいまの御説明によりますと、いろいろな字句をあげて交渉したとおっしゃいますが、そのときにアグリーという字をあげて御交渉になったことがあるかないか、それから、もしただいまのような御了解に達したとおっしゃいましても、その了解に達せられました過程において明らかになっておるとかというふうな説明だけでなしに、何ゆえに、こういうふうに解釈するということを積極的に日本側から明らかにして、それに対するオーケーをアメリカからとるというふうな、万全な措置をおとりにならなかったかということを重ねてお伺いします。
  88. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 交渉の過程におきまして、どちら側がどういう主張をしたかということを、われわれは一々ここで申し上げる必要はないと思います。要するに、われわれとしては、あらゆる角度から検討いたしまして、そうして今申し上げたような意味から、事前協議で十分であるということで申しあげたわけでございます。
  89. 森島守人

    ○森島委員 私は、交渉の過程で起きたことを一々明らかにしろとは言ってないのです。今の半前協議の点だけについては、アメリカから出したとか、日本から出したとかいうふうなことは、私は申しておりません。その交渉の過程において明らかになったことを、何ゆえに記録の上にお残しにならぬかという点をお尋ねしておるのです。先ほど私があげました日米通商条約、これは二つともその当時の了解を完全にひっくり返して、アメリカに都合のいい解釈をされておる。片方の一方の条約のごときは、アメリカが自発的に、多少の手落ちがあったことにつけ込みまして、条約調印当時の解釈を根本的にひっくり返すような解釈をとっております。もう一方の条約におきましても、上院の挿入しました、たった一つの字句の解釈について、意見が根本的に違っておるのでございます。これらも、当時その了解をはっきり記録に残さなかった結果でございます。私は、今度の安保条約につきましても、必ずそういうふうなことが起こり得るという懸念を持っておる。政府当局としては、絶対にこれが起こらぬようにするということで、万全の策を講ずることは当然であります。これは国民に対する義務だと思う。これを何ゆえにないがしろにされておったか。私は、さらに交渉を新たにされまして、これらの点を明確にする必要があるということであります。批准前の、調印をせられました今日でありますけれども、私は、政府当局としては、アメリカとさらに交渉をして、これを完璧なものにするというだけの努力をすべきものだと存じておるのでございます。これは私は、国民に対するあなた方の残務だと思っておるのでございます。
  90. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 私どもといたしましては、先ほど来申し上げておりますように、交渉にあたりましては、相当慎重にいろいろな問題につきましては、あらゆる角度から検討した上で話し合いをいたしたわけであります。従って、交換公文等に書いてお互いに署名いたすもの、あるいは合意議事録等、作成すべきものは作成したと思っております。そうしてそれ以上の新たな何か文書を、現状において作成する必要はないのではないか。交渉の過程において、われわれはそういう了解に達しておるので十分であろう、こういうことを申したのであります。むろん、条約調印いたしますまでに慎重にやりますことは当然でございます。今後も、慎重にそういうことは当然でございますけれども、私の方は万全を尽くした、こう確信をいたしております。
  91. 森島守人

    ○森島委員 その点について意見平行線のようですが、私は、これは政府は十分なことをやっていない、確かに大きな手落ちがあったということを申し上げざるを得ないのですが、この際、二月の十九日に私が質問をいたしましたときに、関連質問等の関係で相当時間をとりまして、取り残した問題が一つございます。その当時の委員長と与野党の理事の御了解では、安保約約の審議の過程において、この問題を取り上げるということに御了解がついておったはずでございますので、この点について、私はもう一問御質問をしたいと思います。  外務省におきましては、条約承認を求める憲法規定に関して、条約というのは協定や交換公文等も含む、国民の権利義務に関係のあるものは、これを含むんだという御解釈をとっておられます。私は、これは一大進歩で、この前の行政協定等を国会審議に付さなかった点から見ると、非常な大きな進歩をされたと思っておるのでございますが、同時に、条約という中には、国民の権利義務に関係のないものなら、国会へ提出しないでもいいんだという解釈を従来外務省がとっておったように思います。この点については藤山外務大臣はいかがにお考えになりますか。
  92. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 条約局長から御説明いたさせます。
  93. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 どういう条約、どういう国際約束を国会承認のために提出するかどうかという点につきまして、単に旧民の権利義務に関するものだけを出すというようなことは、私どもは考えておりません。
  94. 森島守人

    ○森島委員 それでは、それをもう一面、逆の方からいいますと、たとい条約という名前がついておっても、国民の権利義務に関係のない、行政府限りでできるものは、これは国会審議のためにお出しになるのであるか、お出しにならぬのであるか、これはどっち解釈をおとりになっておるか。
  95. 林修三

    ○林(修)政府委員 結局、国会条約締結について御承認を求めます場合のいわば条約という言葉の解釈は、憲法七十三条の解釈であります。従いまして、私からお答えいたしたいと思います。  従来、政府で申し上げておりますのは、いわゆる形式的な名前にかかわらず、条約という名前を持とうと持つまりと、要するに、国家間の約束であって、国家間の新しい権利義務関係を設定するものは、国会の御承認を得べきものである。そうでなくて、単に行政府間において、行政権の範囲内において、つまり、行政府にまかされた権限の範囲内において技術的ないろいろの取りきめをする、こういうものは、憲法七十三条でいう、いわゆる条約の範囲には入らない、かように解釈しておるわけでございます。  一つつけ加えますと、現行行政協定でございますが、現行行政協定は、実は、そういう意味の行政府にまかされた問題とは、私たちは思っておりません。これは御承知の通り、あの当時からお答えしておりますが、実質的には、まさに憲法でいう条約だと思います。条約だと思いますが、これは現行安保条約の第三条におきまして、要するに、米軍の配備を規律する条件は行政府間の行政協定によってきめる、あそこで書いてありますあの規定が、国会の事前承認を得まして、その範囲内においての問題だから、いわゆる安保条約の事前承認の効果として、あれが行政府間できめられるものだ、かように申し上げたのでありまして、普通の意味の行政府間の取りきめとは、多少意味が違うと考えております。  それから、いわゆる形式として、条約という名前を持ったものが、かりに行政府間だけの権限事項をきめた場合どうかというお話でございますが、私どもは、実際上はそういうことはあり得ないと思うのでございます。条約という名前をとるのは、いわゆる国家間の重大な事項をきめましたものについて条約という名前がとられるのでございまして、ほんとうに行政府間の行政取りきめ的な問題は、まあ、協定とか協約とか協約という――言葉もあまりございません。協定とか取りきめとか、あるいは交換公文とか、そういうもので行なわれるのが普通でございまして、私は、条約という名前を持つそういうものがあるとは実は考えません。従いまして、条約という名前をとるものは、すべて国会の御承認を得る建前になっておる、かように考えます。
  96. 森島守人

    ○森島委員 それでは条約局長に一つ伺いますが、条約局長は、従来、条約という名のついたものでも、これが行政府限りでやれるものと、国民の権利義務に関係ないというふうなものは、国会審議に付さなくてもいいという解釈をおとりになっておった。それを参議院の外務委員会において、べトナムの賠慣問題に関連いたしまして、小林孝平委員から再三突っ込まれて、条約という名前のついたものは今後一切国会に提出いたしますという御答弁をなさっておりますが、これは今の御答弁と相当矛盾しませんか。最終的な見解を伺いたい。
  97. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 当時の私の発言は非常に不十分だったものですから、あのように百取り消した次第でございます。と申しますのは、条約の問題、名称、国際約束を、形式的に見るか実体的に見るかという問題でございます。そういう問題で、私も不十分な発言であったと考えますが、われわれといたしましては、条約と名のつくものは、この行政府問の取りきめでできるような約定でございます。約束というのは、決して条約という名を付しません。それでございますから、条約と名のついた以上は、その実体的な内容を国会に提出しなければならないという内容を持ったものであれば、必ず条約という名を付しますから、その場合、条約という名前が形式的にも実体的にも同じになると考えております。従いまして、矛盾は起こらない、このように思います。
  98. 森島守人

    ○森島委員 今法制局長官の御答弁があったので、それに便乗したといっては相済みませんけれども、便乗されたような形跡がある。高橋条約局長は、私が今申しましたような解釈を明確に言っておる。言葉が多少不徹底だということも言われましたけれども、私速記録を持ってきておりませんが、あとに、条約は全部国会に提出いたしますということを言っておられる。これが条約と名のつかぬものがあるとか、ないとかいうことは別問題としましても、条約と名のついた以上は、必ず国会に出すの、だという御答弁をしておられる。その内容は多少不徹底なところもあったからということで、全部出すか出さぬかということをさらに問い詰められて、条約はみんな出しますという御答弁をなさった。それで、この経過から見ますと、政府は、憲法実施以来十数年間にわたって、おそらく、条約という名前がついたものでも国会に出さなかったことがあるのじゃないか、今はそういうものはないとおっしゃいますけれども、これは一つお調べになって、そんなものがあるかないか、もし出さなかったものがあるとしますと、当然国会審議権をじゅうりんしたもので、非常に大きな国会関係の問題になる、それのみならず、もし、そういう実例があるといたしましたならば、その善後措置、これを救済する措置をどういうふうにしてとるのかということも、私は政府の大きな問題になってくると思う。それから、高橋条約局長の御答弁は当を得ていない、それだからこそ、取り消したの、だろうと私は思うのですが、はたして、ほんとうに条約という名のついたもので国会へ出さぬものがあったかどうか、もし、御記憶でもありましたら、ここで明らかにしていただきたい。あとで資料として、お調べの上で御提出を願いたいと思います。
  99. 林修三

    ○林(修)政府委員 先ほど私がお答えいたしましたことと、実は条約局長がお答えしたことは趣旨も変わっておらないと思います。昨年のいわゆるベトナム条約の場合の条約局長答弁の趣旨も、現在のと全然変わっておらない、かように考えております。  それから、新憲法になりましてから、今おっしゃいました、形式的な意味で条約という名前のついたもので国会の御承認を受けていないものがあるということは、私の知っておる範囲ではございません。そういうことはないと思います。  それから、これは蛇足でございますが、憲法七十三条の条約が、いわゆる形式的な意味の条約でないことは、森島委員、百も御承知だと思います。いわゆる国連憲章を初めとして、多数国間条約には憲章、チャーターという名前のものもずいぶんございますし、あるいはいろいろ名前があるわけでございまして、これは名前にこだわらないで、やはり実体を考えるの、が、私は、憲法の解釈としては妥当だと思います。しかし、その中で、特に条約というのは、先ほど申しましたように、簡単な行政取りきめに条約という名前をつけることは、これは実際上ございません。ございませんから、私は、理論的にも、実際的にも、そういうことはない、かように言っているわけでございます。
  100. 森島守人

    ○森島委員 そうしますと、従来、高橋条約局長の行なった答弁というものは意味をなさぬと思う。あなたは、条約という名前がついておっても、国民の権利義務に関係のないものは、これは国会に出さぬでいいのだという答弁を終始一貫やってきた。そこで自民党の参議院の方が助け舟を出して、国民の権利義務というだけでなくて、国家の権利義務ということにも解釈できるのじゃないか、会議録を見ると、そういうふうな助け舟を出した方があるのでございます。そこで高橋さんが答弁に詰まって、そこで一時閉会をして、政府のいわゆる統一解釈というものを出したのでございましょう。このいきさつは一体どうなんですか。このいきさつから見ますと、外務省としては、条約という名前がついておっても、国民の権利義務、国家の権利義務に関係のないものは、すなわち行政措置でやれるものは出さぬでいいのだという解釈をおとりになっておったことは、これは間違いないんです。これはどうなんですか。
  101. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 ただいまの御指摘の点でございますが、やはり条約という言葉は、形式的な意味におけるか、実体的な意味におけるかということでいろいろ混乱いたしまして、その結果そういうふうな経過になったわけでございますが、この点につきましては、ただいま申し上げました通り、その実、行政協定でできるところの実体を持っているもの、これをわれわれは条約という名でやることはございませんから、この場合においては、実体的にも形式的にも同じになるということになるわけでございます。
  102. 森島守人

    ○森島委員 それでは、私は、高橋さんの従来の答弁をすっかりお取り消しになったということに了解してよろしゅうございますか。あなたは、条約という名前がついておるものなら、全部提出いたしますと舌っておる。その前にはそういう答弁をやっていないのです。これは私は結論はわかっておりますが、従来の答弁をお取り消しになりますか、どうですか、その点を明らかにしていただきたいと思います。
  103. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 私、今申し上げたような点で、その必要はないかと思っております。実体的には全く同じになりますものですから、そのように発言してもちっとも差しつかえないし、その点で取り消す必要はないと考えております。
  104. 森島守人

    ○森島委員 それでは、先ほど御注文申しました通り、条約という名前のついたもので国会へ提出されぬものがありましたら、御調査の上で、資料として御提出願いたいと思います。  私は最後に一つ申し上げたいのは、田中内閣時代に締結されました不戦条約の問題であります。不戦条約の問題につきましては、原文は私持っておりますけれども、原文を引かぬでもけっこうですが、その中に、人民の名において戦争を放棄するという一項がありましたことは、御承知の通りであります。これが非常な国民の反感をこうむって、天皇の主権を害するものだということで、非常な論争の的になったことは、御承知の通りであります。民政党の方では中村啓次郎氏、それから外務省関係では本多熊太郎氏、枢密院においては石井菊次郎さんなんかが反対の先鋒に立ちまして、これが問題になった。田中内閣も当時崩解の一歩手前まで押し詰められたような状況でございました。そのときに、最後の手段といたしまして、日本の一方的宣言として、人民の名においてということは、日本憲法関係上、日本国には適出しないのだという宣言を一方的に出したわけでございます。その宣言を存置しつつ御諮詢の奏請をしたといういきさつがございますが、この一方的宣言というものは私は、実質上留保であると解釈しております。この点に関する条約局長の御意見を伺いたいと思います。
  105. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 この点、御指摘の通り、非常な重大な問題になりまして、いろいろ紆余曲折があったわけでございますが、これは日本国政府宣言でございます。と申しますのは、正式な意味における留保では私はないというふうに考えますし、当時もそのように考えられたようでございます。と申しますのは、条約の内容そのもの――適用の条件と申しますか、それ自体を変更するものではない。従いまして、この条約をそのように考えて運営しようというような問題と考えますか、とにかく、条約の効力を制限したり変化したものではないものですから……。
  106. 森島守人

    ○森島委員 今の御見解は、留保でないという点を除きますと、私は大体了承いたします。しかし、実際の実情を見ますと、当時外務次官であった吉田茂さんが、原提案国であるアメリカやフランスに対して交渉を続けたことは、事実なんです。この点から考えますと、私は、実質的な留保であったと、こう見ざるを得ないと思うのでございますが、その点に関する御見解ををねてお伺いいたします。
  107. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 当時の交渉の経過の問題でございますし、実質的にいろいろ交渉をしたということも私承知いたしております。また、当時、先方からは、これは当然各国がおのおのその条章に照らして考うべきものであるの憲法というような同等もあったように考えております。従いまして、やはり、実質的留保であるかどうかという点は、私はそういう留保ではないと考えております。
  108. 森島守人

    ○森島委員 私は、これも原提案国であるアメリカやフランスに交渉をして、その了解を得た結果、挿入されたことは間違いない。と申しますのは、加盟国がたくさんございます。アメリカ政府としても責任をとることはできないというふうな状況にあった。いろいろ折衝しました結果、これに同意をしたということで、原提案国であるフランスとアメリカとがこれに賛成をいたしますれば、まあ条約の性質上、特に他の加盟国においては異論がないということは、容易に想像ができる。その結果、あの一方的宣言が出されたわけなんです。私は、これも岸内閣は、当然、不戦条約より以上に重要な意議を持っておる今度の安保条約につきましては、調印前にアメリカとさらに交渉し直すということが絶対に必要であると思いますし、もしその必要がなしとお考えになりますれば、私は、世論の手前、国会を解放して民意に問うということが、政治家としてとるべき最も賢明な道であるということを確信いたしておるのでございます。この点につきましては、岸総理から再三、解散の意思は現在ないのだということでございますが、長い安保条約に関しまする当委員会における審議の結果から見ましても、国民は十分に納得しておりません。しかも、疑問や不安の点はますます増大するばかりでございますので、私は、この実情にかんがみまして、この際解散を断行されることが、序内閣としてとるべき措置であるというふうに信じておるのでございます。あらためて御意見を伺いたいと思います。
  109. 岸信介

    ○岸国務大臣 解放の問題につきましては、しばしば御質疑もございますし、さらに、昨日は三党首の会談におきましても、そのについて私の所信を明らかにしておるのであります。解散論にも私は全然理由はないとは考えません。解散論についての御主張についての理由も、ある程度うなづけるものがあることは事実でございますけれども、私は、現在の状況のもとにおいて、解散して民意を問うという考えは持たないということを、重ねて申し上げておきます。
  110. 森島守人

    ○森島委員 最後に岸総理にちょっとお願いしたいことがあるのでありますが、文化人代表が十数名、総理官邸へ伺っておりまして、約四時間、あなたにお目にかかって先生たちの真意をお伝えしたいということで、お待ちしておるはずでございます。これは日本の良識ある文化人の代表でございます。おそらく安保の問題であることは間違いないと思いますが、一つぜひこの際まげてこれらの代表にお会い願いまして、その意向のあるところを率直にお聞き取りを願いたいと思います。これは最後に私のお願いとしてお伝えしておきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
  111. 小澤佐重喜

    小澤委員長 次会は、明十八日午前十時より開会いたします。  本日は、これにて散会いたします。     午後四時四十分散会