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1960-05-12 第34回国会 衆議院 日米安全保障条約等特別委員会 第34号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年五月十二日(木曜日)     午前十時三十四分開議  出席委員    委員長 小澤佐重喜君    理事 井出一太郎君 理事 岩本 信行君    理事 大久保武雄君 理事 櫻内 義雄君    理事 椎熊 三郎君 理事 西村 力弥君    理事 松本 七郎君 理事 竹谷源太郎君       安倍晋太郎君    愛知 揆一君       秋田 大助君    池田正之輔君       石坂  繁君    鍛冶 良作君       加藤 精三君    鴨田 宗一君       賀屋 興宣君    小林かなえ君       田中 榮一君    田中 龍夫君       田中 正巳君    床次 徳二君       野田 武夫君    服部 安司君       福家 俊一君    古井 喜實君       保科善四郎君    毛利 松平君       山下 春江君    飛鳥田一雄君       石橋 政嗣君    岡田 春夫君       黒田 寿男君    戸叶 里子君       中井徳次郎君    帆足  計君       穗積 七郎君    森島 守人君       横路 節雄君    横山 利秋君       大貫 大八君    堤 ツルヨ君  出席国務大臣         内閣総理大臣  岸  信介君         外 務 大 臣 藤山愛一郎君         大 蔵 大 臣 佐藤 榮作君         農林大臣臨時         代理国務大臣  菅野和太郎君         通商産業大臣  池田 勇人君         国 務 大 臣 赤城 宗徳君  出席政府委員         内閣官房長官 松本 俊一君         法制局長官   林  修三君         防衛庁参事官  門叶 宗雄君         (長官官房長)         防衛庁参事官  加藤 陽三君         (防衛局長)         調達庁長官   丸山  倍君         外務事務官         (大臣官房審議 下田 武三君         官)         外務事務官         (アメリカ局長 森  治樹君         外務事務官         (条約局長)  高橋 通敏君         大蔵事務官         (利財局長)  西原 直廉君         大蔵事務官         (銀行局長)  石野 信一君         大蔵事務官         (為替局長)  賀屋 正雄君         水産庁次長   高橋 泰彦君         通商産業事務官         (通商局長)  松尾泰一郎君  委員外出席者         専  門  員 佐藤 敏人君     ————————————— 五月十二日  委員井手以誠君辞任につき、その補欠として帆  足計君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び  安全保障条約締結について承認を求めるの件  (条約第一号)  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び  安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並び  に日本国における合衆国軍隊地位に関する協  定の締結について承認を求めるの件(条約第二  号)  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び  安全保障条約等締結に伴う関係法令整理に  関する法律案内閣提出第六五号)      ————◇—————
  2. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 これより会議を開きます。  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約締結について承認を求めるの件、日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並び日本国における合衆国軍隊地位に関する協定の締結について承認を求めるの件、日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約等締結に伴う関係法令整理に関する法律案、右各件を一括して議題といたします。  質疑を続行いたします。古井吾賢君
  3. 古井喜實

    古井委員 今日までのいろいろな質疑応答の間に、政府見解もおおむね明らかにされたように思います。それでは国民は、十分理解して、安保条約に対して納得をしたかということであります。率直に言いまして、多数の国民は、安保条約の必要は感ずる、しかし、どことなく不安がぬぐい去れないというところだと私は思います。事実、重要な問題で、いささかすっきりしない、はっきりしないところがあるものもあるように思います。また、政府見解もとにしながら、もう一歩突っ込んで、将来災いを残さないようにすべてを固めておく必要のあるものも、中途半端になっておるところもあるような気がするのであります。何よりも国民の十分な理解納得を得ることが必要であると考えますので、私は、次の諸問題について質問をいたしたいと思います。  第一は、条約基本的性格の問題であります。第二は、条約内容に入りまして、最重要点と思います半前協議極東の観念の問題であります。第三は、特に私どもといたしまして、一応触れておかなければならない金門馬祖の問題であります。  そこで、質問に入ります前に、与党であります関係上、一言お断わり申したいと思います。安保体制が、きょうの日本にとって必要でありますことは、ただ自民党員だからというだけでなく、一個としても強く考えておるものであります。また、今回の改定には、確かにいいところがあると思います。改善が加えられておると思います。ことに、事前協議のごときは、これだと思います。しかし、安保条約が必要だから、事前協議がいいからといって、それだけでもはや論議は要らないというふうに考えますことは、私は、飛躍であり、粗雑であるし、国民に対して不忠実だと考えておる一人であります。  事前協議がいいといたしましても、これが生きるか死ぬるかは、仕上げのいかんであります。安保条約そのものも、役に立つ薬でありますだけ、下手に使いますれば、命取りの毒にもなるのであります。この条約が成り立ちますれば、十年間いわば日本の運命がゆだねられることを考えますれば、下はきわめて重大だと思うのであります。過去に条約があったからといって、あるいはまた、今日まで大きなことがなかったからといって、新しい条約重大性が減るものと私は思いません。過去の十年間に、世界に起こった変化は実に大きいと思います。今後の十年間にどんな変化が起こるか、私は人知の予測し得るところでないと思います。ことに、今後の十年間は、大戦後十五年から二十五年にわたる十年間であります。ないと思うことも絶対に起こらぬと、だれも断定できないと思います。平和だと思っておりました韓国にも、一瞬にしてあのような大きな事態が起こるのであります。横須賀では、火薬庫に火をつける気違いも出るのであります。目の前の世界は、冷戦が解消されるか、それとも逆転して険悪な情勢になるか、まだ確たる見通しはつかぬと思います。この十年間という期限、まことに頭が痛い話であります。一歩誤りますれば、事は戦争関係するのでありますから、あとで取り返しがつかぬことになるのであります。ほかのどこの国のためでもなく、われわれの日本のために、読み落としや考え残しがないように与野党を問わずいたしますことが、われわれ審議に加わるものの責任だと思うのであります。かような意味におきまして質問をいたしますので、しばらく寛大に時間を与えられたいと思います。  まず最初、第一に、条約基本的性格について御質問申し上げます。  安保条約が、もともと平和目的のものである、防衛的性格のものであるということは、私どももかたく信じておりますし、政府も、提案以来繰り返しこのことを強調しておられるのであります。それにもかかわらず、この基本的な重要な点について、いまだに疑惑が払拭し切れないでおるのではないかと思うのであります。これは、初めからわかろうとしない人だけではないと思います。わかろうとする人でも、やはり十分この点に得心がいかぬ人も、まだ相当おるのだと私は思います。これは一体どういうわけだろうかということであります。言葉が足らないのだとは、私は思いますが、やはりこの疑惑が起こるもとがあるからだと思うのであります。そのもとに対してこたえなければ、得心がいかぬのではないかと思うのであります。そのもと原因、これにつきまして、私は二つのことをこの際申し上げたいのであります。  一つは、過去の世界歴史におきまして、何べんか平和や自衛の名のもと誤りが犯されたという、このことであります。このことを国民は知っておるのであります。いま一つは、今日の世界情勢であります。話し合い理解による平和のきざしは現われてはおりますけれども、まだ現実には、力の均衡、力のバランスによっておのずから生まれてくる平和というものが根底でありますために、バランスを得るための、あるいは相手より優位を得るための軍備競争、特に新兵器の激しい競争が目の前に行なわれておる。また、お互いに疑いを——諜報活動どもしきりに行なわれておる、こういう情勢、これとからめて考えるところに、やはり疑問が起こってくるのだと私は思うのであります。そこで、こういう点に対してやはりこたえなければ、この条約の平和的な性格というものを、十分得心してもらうことができないのではなかろうかと私は思うのであります。そこで、ただごの条約平和目的のものだ、防衛的性格のものだと言うだけではやはり足りませんので、一歩突っ込んで考える必要があると思うのであります。  この意味におきまして、私は、二つのことがどうしても必要だと思うのであります。これについて御所見を伺いたいと思うのでありますが、一つは、外交基本的態度といたしまして、平和外交に対する熱意が示されることが、第一だと思うのであります。自衛は、求めますけれども世界冷戦軍備競争には巻き込まれないという、きぜんたる態度が示される必要があると思うのであります。過去の日本の苦い経験、それから生まれた憲法の精神、限られた国力、置かれておる地位環境、こういうことから考えまして、やはり話し合い理解と信頼の上に立つ平和を求めるこの外交が、私は日本外交基本であろうと思っておる一人であります。でありますから、この基本路線をやはりいつでも忘れないで、見失わぬようにしていく。最近東西首脳会談が行なわれるのでありますけれども、これとても、とてもものにならぬのだなどというような、そういう態度をとつちゃいかぬ、何とかものにしたいという気持が、日本外交のうちからわき起こって、生まれてこなければいかぬと私は思うのであります。つまり平和外交への熱意、真剣な態度政府が示すことが、この世界環境の中において、安保条約平和性理解させる根本だと私は思うのであります。これが一つの点であります。  いま一つの点は、安保条約そのものについてでありますが、いやしくもこの条約が、その目的や本来の性格を逸脱する誤りを犯さないように、解釈、運用についてすっきりと割り切った態度をとる、そうして、周到万全な用意を尽くしておくことが必要だと思うのであります。また、そういう誤りを犯さないかたい決意、これをまず政府が示される、そうしてまた、われわれ国会も、国民全体も、この決意をはっきりと持つことが必要だと私は思うのであります。そういう意味合いにおきまして、この安保審議にいたしましても、ただ急いで通しさえすればよいというふうな態度では、国民疑惑と不安を与えるのではないかと思うのであります。こういう、今申しましたことが、安保条約性格について正しい認識と理解を得る道だと思うのでありますけれども、この辺につきまして総理はどうお考えになりますか、御所信のほどを伺いたいと思うのであります。
  4. 岸信介

    岸国務大臣 この安保条約——現在ある安保条約も、また改定をいたします安保条約も、平和目的のものであり、防衛的のものであるということは、あらゆる機会におきまして、また質疑応答を通じて、国民の前に政府考えをはっきりと申し上げております。特に、今度の改正の条約国連憲章との関係を明らかにするとか、あるいは事前協議制を設けて、従来米軍の行動というものが野放図であったのに対して、国民の意思によりまして、政府が代表してこれに抑制を加える道を講じたというようなこと、あるいは条約区域というものを、施政下にある領域内に限るというような限定をした等、その趣旨を明らかにいたしておりますが、しかし、さらにこれを国民に周知徹底せしめる方法を講じなければならぬことは、言うを待たないのであります。しこうして、これが十分な解明をいたしますとともに、今、古井委員お話のように、日本平和外交基本としておる。これはわが自由民主党におきましても、外交基本方針として明らかに明示し、天下にこれを公約しておるところでありますが、それに対して熱意を示し、あらゆる機会において、この平和外交推進のことに関して、その熱意が表われるような努力をすべきであるという車井委員のお考えは、私はごもっともだと思います。十分そういうふうに努めていかなければならない。と同時に、この条約内容について、それがことごとく、防衛的な見地から、もしくは平和を確保するための道からこれらの改定が行なわれるのだという点について、十分な国会審議を通じて国民に明らかにすると同時に、さらに国民理解を徹底せしめるような処置を講じていかなければならぬということに関しましても、私も同感でありまして、今後十分努力をいたして審議を尽くし、また、そういうふうに国民理解を深めるように努めていきたい、かように考えております。
  5. 古井喜實

    古井委員 平和外交の問題にいたしましても、あるいはまた、この条約に対する周到な、逸脱しないための用意につきましても、その実の伴いますように、どうか御考慮をお願いしたいと思うのであります。  次に、今の質問に関連いたしてでありますが、いわゆる仮想敵国の誤解についてであります。安保条約は、国を営みます以上は、許されなければならぬ最小限度自衛措置だと私は考えるのであります。どこか特定の国を仮想敵国として、攻撃的性格を持った軍事同盟、あるいはソ連の覚書に申します軍事条約、これはそういうものではむろんないのだ、このことはもうたびたび政府もおっしゃっておるのでありますし、もしこれがそういう軍事同盟だというようなことでありますれば、ソ連中共が言います前に、国民の方が承知しないと私は思います。ところが、そうでありますにかかわらず、この条約が中ソ両国をひどく刺激いたしております。その理解を得ることができないでおるのは、まことに遺徳だと思います。かようになりました原因の多くは、先方にあるかと私は思います。アメリカ帝国主養だ、」だ、侵略勢力だときめて、日本はそのお先棒をかつぐのだ、こういうふうに言われるのでは納得がいかぬわけであります。アメリカに対する考えは、なかなか変わらぬかもしれません。けれども日本に対する考え、これは安保条約に対する私ども考えからいたしますなら、ば、わかってくれてもよかりそうな話に思うのであります。(「内閣がかわらなければだめだよ」と呼ぶ者あり)一体、そこで政府は、安保条約の正しい理解をこれらの国に与えますために、今日までどれだけ努力をしてこられたのか。どういうことを一体やってこられたのか。とても見込みがないというのでほうっておかれたのか、何かやってこられたのかということであります。私は、ただ売り言葉、興い言葉で非難し合っているだけでは解決にならない、事態は悪化するだけだと思うのであります。(「ヒヤヒヤ」と呼ぶ者あり)そこで、今日でも、ずいぶんこれらの国との関係はまずくなってしまっておりますが、この程度でとまるのか、もっと悪化するのか、私はわからぬとさえ思うのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)  そこで、私はここで伺いたいのは、今一までに、政府は、こういう国々の正しい理解を得るためにどれだけの努力をしてこられたのか、これを一つここで聞かしていただきたいのであります。何をやられたか。非難をされたことは知っております。理解を得るために何をされたかということを聞きたいのであります。そうしてまた、まだ今日これからの時間もあることでありますから、これからの時間、これも使い得ないものじゃない。これから一体どうされようというのか。そういうことのための努力を一体やってみようとお考えになるのか、ほうっておこうといわれるのか、これも一つ伺いたいのであります。(拍手)これが結果をどれだけおさめるかおさめないかは、それはやってみなければわかりませんけれども、少なくとも努力をするということは、後日のためにも私は非常に重要だと思っておるのであります。そこで、今日まで一体どういうことをされたのか、一つ外務大臣からお聞かせ願いたい。今後のことについて、総理に御所見を伺いたいと思います。
  6. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 安保条約の正しい理解国民にしてもらうということも大事でございますが、同時に、むろんお話のように、この安保条約というものが世界的にも正しく了解されることは、当然われわれの望まなければならぬことだと思います。ただいまのお話は、われわれ外交関係を持っておる者といたしましては、条約調印にあたりましても、われわれが、調印内容等につきましてそれぞれ在外公館を通じて説明をいたし、また、十分な理解を深めるように努力いたしましたことは事実でございまして、そういうことによって、何か意見でもありますれば聞くようなことをいたしたことも、すでに行なっております。特にソ連あるいは中共等に対しての御指摘がございましたけれどもソ連は、数回にわたって、御承知通り、この条約最初の段階からいろいろな覚書き等をよこしておりますので、それらに対して、われわれがそのつど丁寧な、しかも、十分な説明をいたした回答をいたしておることは、そして、そのこと自体はすでに明瞭に発表いたしておることも、御承知いただけると思っております。むろん、中共等に対しましてわれわれは直接の在外公館活動を持っておりません。従って、そういうふうな方法において、これらのことを説明するというわけに参らぬことは、これは当然でございます。でありますから、われわれとして、国内活動等を通じて、これらのものを理解してもらうほか方法がない、これまた御承知いただけると思います。むろん、われわれは、安保条約そのものは、日本の自主的な立場において、その決意において、これを締結することは当然のことでございまして、一々必ずしも各国に通報する必要のないことも、これまた明らかでございます。ただ、今お話しのような理解を求めておくことが必要であるということは、われわれも痛感をいたしております。
  7. 岸信介

    岸国務大臣 この条約が、古井委員の言われるように、仮想敵国を持つた軍事同盟ではない、あくまでも国連憲章に従っての自衛的なものであって、その目的というもの、内容というものについては、われわれは、国会を通じ内外にその性格を明らかにいたしておりますが、今おあげになりましたソ連中共等におきまして、十分にこの条約の本質について、今日までこれらの国が正当に理解しておらないということについては、私ども自体としては、はなはだ遺憾にたえないと思います。しからば、これをどうして理解をせしめるかという問題に関しては、先ほど古井委員の御質問に対して私がお答えを申し上げましたように、一番の基本は、日本が平和を望み、平和外交に対して熱意を示した実績を積、み電ねていくということが、これが一番正しい理解を進める方法である。さらに、これらの国々の正しい理解を深めるためには、経済交流をするとか、あるいは人事交流をして、そうして、お互いお互いを正しく理解していくというふうに進めていかなければならぬと思います。  ソ連に対しましては、御承知通り共同宣言によりまして国交が正常化されており、いろいろな貿易、漁業その他の交渉を通じて経済関係というものが深まっていきつつありますし、また、人事交流も比較的ひんぱんに行なわれるというふうな状況でありますので、それらの機会を通じて、日本の国の基礎的な考え方、さらに、安保条約性格等につきましても、正しい理解を得るような方法を講ずることは、比較的その手段が与えられておりますが、中共との間におきましては、今日の状況におきまして、そういうソ連に対するようないろいろな道がまだ開けておりません。従って、われわれの真意を十分に理解してもらうところの方法が講ぜられないということは、はなはだ遺憾でございますが、これらのことに関して、将来、われわれとしては、今申しましたように、できるだけ両国の正しい理解を進めるためには、人事交流であるとか、あるいは経済交流であるとか、こういうものをできるだけ積み重ねていくという方法を進めていくことが必要である、かように考えております。
  8. 古井喜實

    古井委員 少なくとも、きょうまでの努力は、私は足らないと思います。安保条約理解をさせることは、それはなかなか容易なことではありませんけれども日本立場理解させることは、もう少しできてもよかったと私は思います。これは、きょうまでの外交として成功だと言えないと私は思います。  日ソ日中関係の悪化によって損失、被害を一番こうむりますものは、接触点に立っておる日本であります。遠く離れておるアメリカではないと私は思います。ことに、日中関係は、歴史から、人種から、文化から、利害などから申しまして、この打開、調整をいつまでも延ばすわけにはいかぬと思います。私は、アジアのほんとうの安定というものも、結局、日中関係調整がなくては成り立たないと思っておる一人であります。国民の常識も、早くその日がくるのを待っておるものだと私は見ております。もとより、われわれの日本は、自由主義の国として立っていくのでありますから、われわれの立場立場であります。しかし、さらばといって、共産国は不倶戴天の敵、撲滅すべきバチルスのように考えていってはならぬと思います。さわるのも、口をきくのもいやだ、こういうふうな片寄った考えは、政府にはないと思います。国内のどこかに、ごとに有力者筋においてかかる考えがいまだに残っておるというなら、私は、時勢からズレておると思っておるのであります。今日では、共産国も、世界の三分の一にもなったことでありまして、よくても悪くても、これは事実でありますから、この事実を無視しては、世界政治も、日本外交も成り立たないわけであります。日本が大きく世界の舞台に登場して、日本立場を主張する、築き上げていく、世界に影響を与えていきますためには、狭い量見ではいかぬと思います。また、自信のない態度でもいかぬと私は思います。この条約には、むろん、仮想敵国などという、そういうことをいわれるわけはないと思う。また、そういう言いがかりをつけられるような考えが背後に、あるいは根底にあるものでもないと私は信じます。将来、これらの国々に対して、この悪化した状態を改善するために、ぜひ一つ政府としては考慮をわずらわしていただきたいと思うのであります。  次に、条約内容に入って質問を申し上げます。  条約内容につきましては、いろいろ問題はありましょうが、問題の焦点は、日本関係のない極東の紛争に日本が巻き込まれる心配はないかという点であると思います。そうなりましては、安保条約は、日本自衛のためのものではなくなってくるのであります。十五年ないし二十年前のあの戦争、敗戦、あの経験を味わった日本国民としましては、戦争に対しては至って神経質であります。国内には、安保条約の裏には、日本を、単に日本だけでなく、極東全体の防衛基地ないし軍事基地に使おうとする意図がアメリカにあるのではないかと疑う者もあるのであります。条約を裏返しての議論でありますし、この議場においても大きな論点になっておると思います。またそうまでは考えませんでも、条約のあいまい、あるいはすきのために、日本関係のない、よその紛争に巻き込まれるという誤りが起ごらないかと心配しておる者は、私は決して少なくないと思うのであります。いずれにいたしましても、国の安全はみな願っておりますけれども関係のない、よその紛争のために、再び日本に戦禍を招くようなことは、国民としてはたえられぬのであります。国民の意思をただしてみますれば、おそらく百パーセントが一致した考えを持っておでるだろうと思うのあります。  そこで、この不安にこたえますのは、申すまでもなく事前協議であります。この事前協議は、この条約のまことに目玉であります。ここまで持ってきた政府努力を多としなければならぬと私い思います。この制度をここまで持ってきた点であります。そこで問題は、事前協議の手続や内容が一体十分整っておるか、完備しておるか、穴はあいてないかどうかということであります。どうしたらまたこの手続を十分生かすことができるかということであります。ここにはずいぶんたくさん私は問題があると思います。ただこれを気休めの空文にしてしまっては相ならぬと思うからであります。今までも論議がいろいろございましたが、さらにこの点について私は御質問を申し上げてみたいと思うのであります。  まず、事前協議に際しての日本態度ないし基本方針についてであります。特に、戦闘作戦行動のための基地使用について、日本はどういう態度、方針をもって臨むかということであります。この問題につきまして、総理、外務大臣は、しばしば、日本の安全に関係する場合に限って基地使用を認めるのであって、そうでない場合には、政府米軍の基地使用は認めない、拒否する、こういう趣旨のことを答弁されております。まさにそうあるべきだと思います。この答弁によって国民は大いに安堵しておる、安心したと思います。この政府の答弁こそが、安保条約性格ないし本質を明確にするものだと思っております。そこで、政府見解はこのようにきわめて明快であって、疑問の余地は全くないと思いますが、しかし、事があまりにも重大であるわけであります。この考えに多少でも不透明な影がありましたり、すきがありましたり、動揺がありましては、この安保条約に対する国民の信頼は一挙にくずれると思いますので、くどいようでありますけれども、この点について総理の御所信、御決意のほどを重ねてお伺いいたしておきたいと思います。
  9. 岸信介

    岸国務大臣 現在の安保条約におきまして、御承知のように、基地使用というものについては別に制約を設ける方法はございません。従って、日本国内において他から武力攻撃を受けた場合及び極東における国際的平和と安全が害されるという場合におきまして、米軍が基地を使用して行動ができるということになっておることは、御承知通りであります。しかし、それに対して、今おあげになりましたように、日本日本の平和と安全に直接に深い関係を持たないような極東の事件のために、何か戦争もしくはそれに類似したところの状態に引き込まれはしないかという不安が、従来あった、また、それが国会においても論議されたことはしばしばあったわけであります。これに対して、今回の事前協議の制度を設けて、少なくとも、一応日本の平和と安全ということと極東の平和と安全ということとは、観念的には密接な関係がありますから、基地使用の目的として、日本の平和と安全と極東の平和と安全に寄与するために米軍に使用させるということが規定されておるわけであります。しかしながら、現実に起こった具体的の場合において、極東の地域に起こったことは、ことごとく日本の平和と安全に直接に密接な関係があるか、こう言いますと、必ずしもそうは言えないと思います。従って、今回のこの事前協議の場合において、日本のこれに対する態度というものは、日本の平和と安全ということに直接に、また、きわめて緊密な関係を持っているような事態に対しましては、米軍の基地使用を認めるけれども、そうでない場合においてはこれを拒否するという、従来のお答えをしておるところの趣旨によって政府としては行動すべきものである、かように考えます。
  10. 古井喜實

    古井委員 総理のただいまの御所見は、前々から伺っておることでもありますし、ぜひその考え方を根本にしてこの安保条約の今後に当っていかなければならぬもの、だと思いますので、その点は、ただいまはっきりおっしゃっておる通りにぜひお願いしたいと思います。  そこで、お考えははっきりいたしておりますが、条約の上には、そういう考えから見ますと、多少疑義を起こさせるというか、目ざわりというか、そういう文句があるわけであります。しかし、今の考えでこれは条約の解釈を割り切っていかなければならぬと私は思います。条約の中で、日本の安全ということのほかに、極東における国際の平和及び安全という言葉が三カ所にわたって掲げられております。この極東における平和及び安全というのは何かということを、今までも伺いましたけれども、これがまことに問題の種でありますので、市ねて伺いたいのであります。こういう言葉は掲げてありますけれども日本の安全と全く別に、これと関係のない極東の平和、安全というものが、もう一つの柱として条約目的に入っているだろうか、いないだろうか——いないはずだと思うのでありますが、条約が二重目的のものだろうかどうだろうかという疑義を、この文言が起こさせるわけであります。それがもし別の柱だということでありますれば、先ほどの御見解とも根本的に矛盾をしてくるわけであります。さっきも総理がおっしゃいましたように、あの考えもとにいたしますならば、極東の平和、安全というのは、日本の安全と切り離せない、密接不可分の日本周辺の平和及び安全をいうものと解釈しなければならぬと思います。これはあたりまえだと思います。従いまして、在日米軍の行動について申しますならば、日本施政下にある領域のことでありますが、武力攻撃を受けたときは、条約の第五条に基づいて日本を守るわけでありますが、日本の領域そのものが侵されなくとも、日本周辺の事態が面接日本の安全に関係を持ってくる、響いてくるという場合、日本の安全を守るために、かような場合に周辺の事能に対処することができる、そういう意味だと思うのであります。こういう意味において、日本周辺の百平和、安全ということが問題になってくるので、これを極東の平和、安全という言葉で表わしたものだろうと思うのであります。日本の安全と無関係な別個独立の観念、心、あるいは目的としての、極東の平和、安全というものを考えたものでは全くないと思うわけでございます。政府の御見解もそれに相違ないと思いますが、条約の文言にもそういう点がありますので、またはっきりと御所見を伺っておきたいと思います。
  11. 岸信介

    岸国務大臣 先ほどもお答え申し上げましたように、この条約は、日本の平和と安全を守るために、われわれは、日米安保体制によって、他から侵略を受けないという安心感を持って、平和のうちに繁栄していこう、こういう考え方から出ておるわけであります。そうして、この極東における国際的平和と安全ということと、日本の平和と安全ということは、従来もお答えを申し上げておるように、全体としては、やはり日本周辺の平和と安全が確保されないというと、日本の平和と安全は確保できない、こういう趣旨からこれが入っておるわけでございます。ただ、具体的に、しからば周辺における事態が、直ちにもしくは直接に日本の平和と安全というものに緊密な関係があるかどうかということは、事前協議の場合においてさらに検討する。しかしながら、この条項が入ったゆえんは、今御質問がありましたように、日本の平和と安全を守るためには、周辺における極東の平和と安全が守られなければならない、その間には緊密な関係があるという考え方に立っておるわけでございます。
  12. 古井喜實

    古井委員 この周辺というものが別にあって、そのものの安全ということが、一つ考え方としてある。それが日本関係を持ってくるからということになるのでありましょうか。つまり、周辺というのも、日本の安全とも切り離せない周辺の平和や安全をいうのであって、日本の安全と、また、別の広い地区の安全と二つあって、両方が関係を持ってくる、二つのものだという考えを前提にして、関係を持ってくるということになるのでありましょうか。私は、周辺といっても、日本の安全と切り離せない、そういう限度のことを言つたものだと思うのですけれども日本の安全とまた別に周辺の安全、これは日本にも関係がある、二つのことが前提になっておるのでしょうか。日本の安全を中心にして、これと切り離せない周辺、日本の安全をあくまでも中心にして考えてのことであるのでありましょうか。御迷惑でありますが、もう一度……。
  13. 岸信介

    岸国務大臣 私は、あくまでも日本を中心としての考え方を持っております。あくまでもこの安保条約というものは、日本の平和と安全というものを確保するために、こういう条約を結ぼう、しかし、日本の平和と安全を守るためには、これと不可分の関係にある周辺の平和と安く土が守られなければならない。今古井委員の御質問の御越冒は、私はあるいは正当に理解していないかもしれませんが、私はあくまでも日本を中心としての考え方である。何か日本の平和と安全と別個のものの、周辺の平和と安全というものがあるという観念で設けておるわけではないと思います。
  14. 古井喜實

    古井委員 他の問題もありますし、私の申し上げた趣旨に合致しておるように私は拝聴いたしましたので、次の問題に移りたいと思います。  そこで、今のような事前協議にあたって、日本がどういう場合にイエスと需い、ノーと誉うかという、その基本的な方針につきまして伺ったのでありますが、これを一つ実際の問題に持っていってみまして、お伺いしたいと思うのでありますが、今のような考えから申しますと、米韓条約、米華条約、米比条約あるいは東南アジア集団防衛条約、SEATOの関係にもあるかと思いますが、こういうような条約に基づいて、アメリカが防衛責任を持っておる。これに基づいて軍事行動をアメリカがいたします場合、在日米軍日本におる米軍であります以上は、日本の安全と関係なく日本の基地を使うことは、認めることができないと思うのであります。米韓、米華条約などでアメリカは防衛責任を持っておりますけれども、それを手放しで日本の基地を使うわけにはいかない。在日米軍である以上は、やはり日本の安全という、そういうワクにはめられてしまう、それを越えては日本の基地を使うことはできない、こういうふうになるものだと思います。そうでない場合にはもう拒否すべきものだ、こういうふうに思うのであります。もし日本の、安全を越えて、あるいは韓国、あるいは台湾などの防衛に、日本の基地が使われるということになりましては、これはいろいろ実際問題のみならず、憲法その他の議論でもやっかいなことになると思います。もしそういうことになりましては、自国の軍隊は、それは勅かしませんけれども、基地と米軍に使わせて、韓国や台湾を守るということにもなるのでありますから、そういうことになりましては、一種の集団防衛になってきて、非常に困る。そうして韓国や台湾の運命は、当然日本の運命にもなってくる、こういうことにもなると思うのであります。これはやはりはっきりしておかないといけないと思いますが、御所見を伺いたいと思います。
  15. 岸信介

    岸国務大臣 もちろん、日本アメリカとの現在あります安保条約も、また、今度改定する条約も、ともに、米韓、米比、米台の間にどういう条約がございましょうと、それと関連を持っておるものではございません。従って、米韓、米台等の条約によりまして、米国が、これらの台湾や韓国において事変が起こって、これを防衛する条約上の義務を持って、その義務を果たすということは、これは米国と韓国との間、あるいは米国と台湾との間の条約によって規定されることは、当然でございます。その場合に、日本に基地を持っておる米軍が出勤するかどうかという問題に関しましては、先ほど事前協議に対する基本的の日本政府態度として申し上げたことが、当然適用されるのでありまして、日本の平和と安全に直接関係のないような事態によって、在日米軍日本の基地を使って作戦行動をするということに対しましては、その事前協議に際して、われわれとしては拒否する、こういうことになると思います。
  16. 古井喜實

    古井委員 同じように、在日米軍アメリカ自身の自衛のために行動する場合であります。つまり、極東にありますアメリカの領域とか、極東にある米軍が攻撃をされる、これに対してアメリカ自衛権の発動として行動するという、その場合の問題でありますが、その場合にも、これも事前協議の対象となるということは、過般のこの委員会の御説明ではっきりいたしております。その事前協議の場合に、やはり日本の安全と関係なしに在日米軍が行動するということは認めるわけにいかない、こういうふうに思うのであります。これは基本考えから当然そうなると思うのであります。この点もなかなか重大な問題だと思うのであります。極東にはアメリカの領域もありますが、それ以上に米軍極東の各地におるわけであります。米国の自衛のために日本の基地を使ってもよいとなりましては、在日米中の任務というものは、むしろ主として米国の自衛のためのものとなってしまって、日本の基地は、日本の防備のためか、あるいはアメリカ自衛のためのものか、わからぬようになってしまう。そうして、アメリカの紛争にはことごとく日本が巻き込まれてしまう、こういうことになってしまいますので、これは事がまことに重大であると思うのであります。安保条約はそんなことを考えておるものじゃないと思うのであります。そんなことになったのでは、安保条約は全く本旨からはずれてしまうというふうに思うのでありますし、また、そうなりましては、憲法上もなかなか議論もあるかもしれぬと思います。私は法律論をきょうはあまりいたさぬつもりでありますが、この問題も一つきっぱりとしておいていただきたいと思います。
  17. 岸信介

    岸国務大臣 いやしくも在日米軍が、日本の基地を使用して戦闘作戦行動に出る場合は、その常が自衛権に基づくものであろうとも、あるいは先ほど申しましたような、他の国との間の国際条約に基づいて出動する場合であろうとも、ことごとく事前協議の対象となるわけでありまして、その事前協議に対する政府態度としては、先ほど申し上げた通りでありまして、同様に自衛権の場合におきましても、それが日本の平和と安全に無関係な事項につきましては、これが使用を拒否する、こう私ども考えている次第であります。
  18. 古井喜實

    古井委員 次に、在日米軍が国連軍の一部として行動する場合であります。この場合も事前協議の対象になるという御見解を伺いました。そこで、その場合には一体どうなるのか、あの基本的な考え方その通りを、国連軍として動く場合にも、適用していくのかどうかという問題であります。これは先ほどの問題と少し違いまして、なかなかむずかしい問題だと思います。何しろ、国連の決議に基づいて行動する場合であります。日本も国連には協力しなければならない、そういう立場に立っております。しかも、国連軍としての行動は、必ずしも日本の安全のみに限局されるものではないはずのものであります。一体どうなるのかということであります。私は、この場合には、つまり、国連という特殊な場合だけは、国連協力という大きな立場から考えまして、先ほどの基本的な考えに若干ゆとりをつけまして、一方では国連の立場を尊重する、しかし、一方では、日本の防御のためにおる在日米軍のことでありますから、この在日米軍の使命というものを考える、片方だけでなしに、両方考えて、そこに調和点を見出してくるのがよいのだと私は思うのであります。つまり、一万だけで割り切ってしまうということでは、どうもこの場合ぴったりこないように思うのであります。つまり、先ほどの考えに対しては、若干例外的にゆとりをつけて考えるのがよろしいのではないかというふうに思うのであります。この点はどういうふうにお考えになりますか。先般も、国連軍として有効する場合も事前協議の対象になるというところまでは伺いました。その場合に、イエス、ノーを言う場合に、日本はどういう態度をとるかというところまでは伺わなかったように思いますので、ただいまその点を伺うわけであります。
  19. 岸信介

    岸国務大臣 事前協議の対象となる、いわゆる日本の基地を使用して米軍が出動する場合におきましては、国連軍の場合におきましても、お答え申し上げました通り事前協議の対象となると考えております。ただ、この場合において、一方日本も国連の加盟国の一つとして、国連の決議により、また、国連のそれぞれの機関を通じて国連軍が作られ、米軍がそれに編入されて、国連軍として出動する場合においては、日本としては、国連の決議と国連の趣旨を尊重してこれに協力する義務がございますから、今古井委員お話のように、先ほどお答えを申し上げました二つの場合と同様に割り切って考えることは、むずかしかろうと思います。今お話しのように、日本の基地を使って作戦行動をする場合において、本来原則として、日本の平和と安全に面接関係のないことには使わせないというこの基本方針、これが日本が基地を与えている本来の目的でございます。から、そのことを一方に考えると同時に、国連協力ということに対しましても、われわれとしてできるだけのことをすべきことは当然でございますから、そのことと両方を合わして調和点を考える。従って、先ほどの二つの例よりもある種のゆとりをもって考えるべきものである、かように思います。
  20. 古井喜實

    古井委員 この事前協議にどういう態度で臨むかということについては、国連の場合以外は潔癖にさっきの考えを貴くように、ぜひ一つしていただきたいと思うのであります。  そこで、考え方は、以上伺いましたところで明確になっておると思うのでありますが、次に問題は、実際の場面にあたりましてこの考え方を貫くことができなければ何にもならぬことになるのであります。から念仏になってしまうわけであります。どうして今のような考え方を実際の場合に間違いなしに確保していくか、これが大事な問題になってくると私は思うのであります。実際の場合を考えてみますと、今までもこの議場で、実際の場合にアメリカに押されてしまいはしないかということで、すでにいろいろ議論も出ておりました。私も心配でならぬのであります。話は、もともとアメリカアメリカの軍隊を使うという場合でありまして、日本が自分で自分の——軍隊はありませんとして、自衛隊を使うという場合ではない。そういう場合でありますから、その事柄からいって、日本の発言力が大体弱い、こういう立場であります。それからまた、アメリカの方も、よくよくの、やむを得ぬ場合でなければ、米軍を使おう、こういうことにはならぬ。よくよくの場合であろうと思います。その上に、場合によれば、緊急を要する場合もありましょう。私は、ボタン一つで、文句はかれこれ言う余地はないという議論には、その通りには賛成できません。およそ、そういうことになるには、その前の事態がもうずっと大きく動くので、急にボタン一つ戦争が始まるというものじゃないと思う。ないと思うから、もういとまも何もないなどという式には私は考えませんけれども、しかし、緊急を要する場合もありましょう。その上に、大へん失礼な言い分でありますけれども、軍事能力にしても、軍事情報にいたしましても、アメリカ日本との間には格段の差があると思うのであります。軍事情報などにおいても、日本が劣っておると思うのであります。実際問題を考えてみますと、この事前協議については、さっきのような考えを確保していこう、貫こうといっても、なかなか困難があるんじゃないか、そこにまた不安が起こってくるわけであります。一体どうしたらこの辺に安心が得られるかということは、これはお互いの大事な問題だと思うのでありますし、ことに、イエスと言ってしまいますれば、日本を基地に使って、もう戦闘行動が始まってしまう、つまり戦争が始まってしまう。日本は公式にイエスと言って基地を貸す、そして戦争状態に日本が陥るという重大なことであることを考えますならば、やっぱりこれはあの考え方を間違いないように貫く方法を研究しなければならぬのだと思うのであります。そこで、一つのことは、その場その場でこの交渉をするということでは、いかにも不安な気もする。国会では、政府はこういう考えだ、これでいくん、だということをはっきりおっしゃってはおるけれども、これは国会における応答であります。少なくとも、この安保条約が成立した暁には、日本はこういう態度で臨むんだという確固たる不動の方針を政府が内外に宣明にしておかれる必要があると私は思うのであります。それだけ大きな柱を立てておいて実際の運用に当たることは、少なくとも、しなければならぬと思うのであります。実を申せば、政府がそういうふうになさるだけで足りるかどうか、われわれ国会としてももっと考えておくことがないだろうかとも思いますけれども、それはこの際別といたしまして、少なくとも政府としては、さっきおっしゃったような考え方をはっきり国内にも国外にも、アメリカに対してもわかるように宣明されておく必要があると思うのであります。私は、その形を今どうのこうのとまで言うのではありませんけれども、成立の暁、はっきりと日本の大きな方針がわかるように宣明されておく必要があると思うのでありますが、この点についてお考えを伺いたいと思います。
  21. 岸信介

    岸国務大臣 先ほど来申し上げておりますことは、これはこの条約の運営にあたって当然日本政府として考えることであり、そのことを明瞭に申し上げております。国会を通じて一応明らかにはいたしておりますが、このことは、もちろん、国の内外に明瞭になっておることだと思いますが、さらに、古井委員が言われるように、これは大方針であるから、それを十分国の内外に徹底するような方法を講ずべきであるという御趣旨に対しましては、その御趣旨はごもっともである。どういう方法、どういう形にやるかということにつきましては、さらに考えてみる必要があると思いますが、この方針というものは、先ほど来の質疑応答に徴しましてもはっきりしておることでありまして、そのことをさらに明確に内外に示すという適当な方法については、私は御趣旨と全然同感でございますから、十分考えていきたいと思います。
  22. 古井喜實

    古井委員 ただいまの、実際の場合にあの方針をどうして貫くかということとも関連をいたしますが、政府アメリカの申し出に応諾して、戦闘作戦行動に日本の基地を使うということを認めます場合、どうなるかといえば、アメリカは戦闘作戦行動をも日本の基地から始める、これはアメリカとしては宣戦布告の場合もあるかもしれぬし、宣戦布告でない場合もあるかもしれません。形はどっちもあるかもしれませんが、しかし、アメリカとしては、日本と違うて、憲法の制約などはありませんから、本格的に日本の基地を使って戦争ができるわけであります。この本格的な戦争に対して日本は基地を使わせる、そして協力援助する、つまり、いわば一緒にやる、しかも、事は日本の安全に関係した場合であります。日本のことであります。しかも、また、公式に日本政府事前協議においてイエスと言って、そういう事態が起こる、こういうことでありますと、日本は、ここでアメリカの本格的な戦争に対して、無関係な、中立の立場というわけにはいかぬ。それどころではない、日本の問題であります。アメリカに対してだって、よそのことだなんということを言っておれるべきものじゃないわけであります。つまり、イエスと言うことによって、日本戦争状態に入る、こういうことをはっきり考えておかなければならぬと思うのであります。そうといたしますれば、このイエスと言うことは、事がまことに、重大であると思います。それで、これを政府だけでいかに全責任を負うと言われても、政府だけで処理されて一体よいのだろうか、ここに私は疑問を持つのであります。なるほど、日本自衛隊を動かす場合とは、先ほども申したように事情が違います。アメリカアメリカの軍隊を動かすのに対して、日本は同意するということでありますから、事情は違います。けれども、よって起こりますあとの結果、事態というものは、日本の用隊を動かすのと一つも違わぬと私は思うのであります。それからまた、何しろ、これは日本だけのことじゃない、相手のあることでもありますけれども、しかし、相手があるからといって、たとえば、条約にいたしましても、相手はあっても国会にはかける、国会にはかけます。相手があっても、国内の方はどうでもよいというわけには、これはいかぬと思うのであります。また、密を、要する場合もやまやまあると思います。しかし、かような重大なことは、決定をいたしましたらすみやかに公表いたしまして、国民の覚悟を促さなければならぬと私は思います。そうすれば、隠せることでも、隠すべきことでもないわけであります。緊急を要する場合もありましょうから、必ずしも事前とばかりは申しませんけれども、事後でも、事態によっては仕方がないと思います。けれども国会というものに対して、一体この場合にあいさつなしでやってもよいだろうかという問題であります。私は、どうもそれでは、この国がのるかそるかという大問題が、国会に無関係に処理されるというところに、私は解けないものがあるわけであります。その上に、実際問題からいたしましても、国会にもかけなければならぬ、こういうことであれば、アメリカとの交渉におきましても、日本立場が守れると思う。政府政府だけの話の場合よりも、国会で後日論議されるべき問題だということであるならば、非常にこれは慎重が期せられる、日本立場も守れるだろうと思うのであります。また、国会の半数以上、過半数の賛成も得られぬような場合に、同意してはいかぬと思います。イエスと言ってはいかぬと思います。とんでもないことであります。過半数の賛成を得られるという確信があるような場合でなければ、政府アメリカに対してイエスと言ってはいかぬと私は思います。そう考えますれば、国会関係をどうするのか、私は、今日の日本の政治のもとにおいては、国会承認というものを経るのが至当ではないかというように思うのであります。必ずしも事別とばかり申すのじゃありません。事前とばかり申すのじゃありませんが、事は、それほどまた重大である。それだけまた慎重にしなければならぬ、こういうふうに思いますが、この点はどういうふうに総理はお考えになりますか、まず、御所見を伺いたいと思います。
  23. 岸信介

    岸国務大臣 事前協議に際して、特に日本の基地を使って米軍が戦闘作戦行動に出るという場合に、これを応諾するということはきわめて重大であるということは、古井君の今の御意見のように私は思います。ただ、前提として、多少気持といいますか、建前というものについて、十分御了解を得ておかなければならぬと思いますが、米軍がこれを使用する場合におきましても、常に米軍——外部から極東において武力攻撃があって、先ほど来お話しがありましたように、米軍自衛権の発動——自衛権の発動ということは、国連憲章の五十一条の規定によってやることでございますし、また、米韓条約関係においてやるという場合におきましても、これが条約におきましても、無条件に米軍が行動するということではございませんし、いわんや、国連の場合におきましては、国連の決議というものがあるわけであります。こういう場合において、まず考えなければならぬことは、何かそこに、他から日本に対して、五条でいっている武力攻撃があった場合、また、そうでない六条の場合において米軍が使用される場合においても、他から武力攻撃があった場合ということを前提としておることは、これは言うを待たないのであります。作戦行動を認めたら、日本自身が自衛隊の防衛出動を認めるという事態が直ちに起こるかどうかということは、これはいろいろな場合があろうと思います。しかしながら、事が重大であることは、古井君の言われる通り重大であると思いますので、従って、その決定については、慎重でなければならないということも当然でございます。その場合において、これは以前に質問がありましたのに対してお答えを申し上げておりますが、秘密にすべきかどうかということに関して、私は、秘密にすべきものではない、公表して、今、古井委員お話しのように、国民に十分に徹底せしめる必要もございましょうし、また、これの結果から見て、非常な事態が起こるということもあらかじめ予想しておかなければならないのでございますから、にすべき性質のものではない。従って、国会に対してこれが報告をいたし、その了解を求めるようにしなければならぬというようなことにつきましても、すでに前委員の御質問に対してお答えをしておる通りであります。今お話しのように、いかなる政府がありましても、その政府が、こういうものに対して応諾する場合において、国会の多数の支持を得ないというような、国民の大多数がこれに反対であるというようなことに対して応諾するということは、私は、すべきものでもなければ、そういうことはあり得ないと考えております。従って、これに対して適当な方法によって、国会に報告してその了解を求めるということについて政府努力することは当然である、かように思います。
  24. 古井喜實

    古井委員 今の総理の御答弁は、国会に報告して了解を求めるというのでありますが、国会にすでに報告いたしますれば、むろん、これをめぐって国会に論議が起こることは当然であります。その場合に、国会の多数が反対であるというふうな場合は、まあ、初めから、そんな場合にはイエスと言わないだけのことは必要であります。そういう場合には、なかなか困ったことといえば困ったことも起こるかもしれぬが、やむを得ないのであります。の多数がそういう意見であれば、やむを得ない。いずれにしても、国会の論議が報告に関連して起こることはもう当然でありますから、それならば、いずれ国会の論議が起こるのが当然であるならば、正々堂々と国会にかけてもよいではないか、むしろ、正々堂々としているのではないか。同じことになると私は思うのであります。結果は、政治的には同じことになると思うのであります。それならば、やはり国会というものの立場を重んぜられて、国会にかけるという方が、筋も通って、堂々としているのではないかという気が残るのであります。少し御答弁は弱いと思う。  それから、なお、私は、これはきょう確信を持つまでに至っておりませんから、あまり強くは論破いたしませんが、憲法の建前というものはどんなものだろうか。一国にとって、こういう戦争のごとき事態戦争、これほど大きなことはないと思うのです。一国の運命にも関する重大な問題が、一体国会の権限にないのだろうか、国会は何でも権限を持っているのじゃないか。最も重大なことに一体権限がないのだろうか。憲法の上で、あるいは国会が認めた法律によって、政府だけで処理できるという権限を認めてあれば、政府だけでできるかもしらぬが、認めてなかったら、むしろ、国会がきめるべきものだということにもなるのじゃないか、私は、憲法の建前、国会の建前から、そういうふうな気もするのであります。私は、さっきも申しましたように、憲法論議は、きょうあまりする気でもありませんし、それほど確信をきょうは持っておりませんので、この点で講論をしてしまおうとは思いませんが、しかし、報告、了解を求めるというのは、これは総理、ちょっと弱いじゃありませんか。国会に報告したら、せめて了承を得るべきものだと思う。あたりまえだと思います。これはどんなものでありましょう。それくらい報告、了承くらい、これは報告というからには当然ではないかと思いますが、どんなものでございましょうか。
  25. 岸信介

    岸国務大臣 私は、これは本来行政権に属しておることだと思います。今の憲法の解釈論もございますが、しかしながら、事重大でありますから、国会に報告して了解を求めるということを申したのでございます。了承とか了解とかいう言葉に、私は別にとらわれるわけではございません。これを法律的要件として、何か承認を事後において求めるというようなこともするとすれば、そういう立法がされた場合においては、もちろん、そういうことの手続をとらなければならぬと思いますが、私の申し上げておるのは、報告して、事実上多数の人々の了承を得るという意味において了解を求める、こういうことを申し上げたわけであります。
  26. 古井喜實

    古井委員 ただいまの問題は、議論をしていきますればもっとあるかと思いますが、しかし、私は、ただ一言、報告された以上は、了承を求められようが求められまいが、国会は独自の権限によって認めない、こういう権限があることは否定できないと私は思う。(「その通り」と呼ぶ者あり)国会としてはできる、私は、できないはずはないと思う。これは国会の権限の問題でありますから、別に政府の御所見を伺うことではありません。国会が自分で考えてやればよいことである。そこで、私は、そうならざるを得ぬと思いますので、国会の問題でありますから申し上げませんが、この点は、そのような意味において、総理のおっしゃったことがぴったり合うかどうか知りませんが、私は、そういう意味において、この問題は一応この辺にとどめたいと思います。  次に、事前協議に際して、例の日本がノーと言った場合の問題であります。この場合、どうなるかということであります。アメリカ軍が日本の基地を使って戦闘行動をしておる、相手の国から見れば、日本アメリカと共同して戦平しておる、こういうふうになると思います。日本アメリカとが共同して戦争しておるということになると思います。どう見ても、日本が中立国だ、無関係な中立国だという言いわけや弁明は立たぬと思います。日本の基地を使って、しかも、日本の安全に関係しておるのでありますし、そうして、アメリカ日本の基地を使って戦争しておる、どう考えたって、日本は第三者ではない。アメリカと共同して戦争しておるということになる、ならさるを得ぬと思います。この場合吉に、アメリカ日本との間に出前に話し合いで意見が一致しておったかどうか、これは引手の方から見れば、何の関係もない、日米両国間の内部事情であります。相手の知ったことではありません。合意がないからといって、意見の一致がないのだといって、この基地を提供している日本が、戦争の責任と危険を免れることはできないと私は思います。(「その通り」と呼ぶ者あり)つまり、アメリカとの話し合いの内部事情がどうあろうとも、日本は、その場合、戦争状態に入ってしまっておる。むしろ、事前協議という手続をはっきり設けて、発言権を与えたために、すべて日本は自由意思でもってこういう事態を起こしたのだと相手から言われても、仕方ないのだと私は思います。(拍手)そこで、日本は独立国であります以上は、自分の意思を無視されて、ノーと言っておる意思を無視されて戦争状態に陥れられるという、そういうことは独立国としてはあり得るはずのものではありません。そこで、問題は、日本がノーと、言った場合に、絶対にアメリカ日本の基地を使ってはならぬ。その場合に、何万分の一のすきや幅があっても、事柄が事柄であるだけに、これはいかぬと思うのであります。この点につきましては、岸・アイク共同声明で、アメリカ政府日本国政府の意思に反して行動する意図のないことを保証した、というわけであります。事柄は、まず政治的にはきわめて明白であります。政治的にだけ、まず申しますれば、拒否権があるといってもこれは差しつかえない。アメリカの善意は、むろん、われわれは疑う必要はありません。ことに、一国の最高責任者が、世界を前にして、いわば世界に公約したのでありますから、まず安んじて可なりでありましょう。だから、実際上はこれでよいのであります。残るのは、事柄の性質上、理屈上の問題であります。厳密な法律論であります。この点は一体どんなものであろうか。理屈の上で何万分の一のすきがあってもいかぬ問題だと思うわけであります。ノーと言った場合に、どんな間違いにせよ、日本戦争状態に陥れられるということがあってはならぬ。そこで、すでに法律論もいろいろ出ておることでありますから、一体、これはすきのないことになっておるかどうか、これは法律の専門家から聞いた方がいいと思いますので、条文に即して、一つ法制局長官の御説明を伺っておきたいと思います。
  27. 林修三

    ○林(修)政府委員 この第六条に基づく交換公文におきましては、一定の事項——三つの事項を掲げておりますが、これを両国間の事前協議の主題とするということをうたっております。それで、協議という言葉は、それ自身切り離していえば、いわゆる相談ということでございますけれども、ここにおいて、いわゆる事前協議の主題とする。あらかじめ協議しなければ、こういうことはしないという趣旨が、ここで明らかに私は出ていると思います。これは国内法等におきましても、これこれする場合にはあらかじめだれだれに協議しなければならないという場合には、当然にその協議成立を前提としてそういう条文が書かれておるわけでありまして、ここにおいてこれこれというのは、完全にアメリカが一定の行動をするわけであります。いわゆる両国事前協議の主題とするということは、当然に、事前において協議が成立し、その成立を待って初めてやるんだ、協議が成立しなければやらないという、こういう趣旨は、私は、この文言からはっきり出ておると考えます。この点は、日米間の交渉の過程においても、はっきりアメリカ側もそれを了解しております。日本側と同様な見解に立っております。それで、いわゆる岸・アイク共同声明は、これを政治的に確認したものと考えております。従いまして、もしも協議において、日本側が、かりにノーと言ったものに対して、アメリカ側がそれを押してやれば、これは明らかに条約違反だ、かように考えます。
  28. 古井喜實

    古井委員 この法律論の問題は、世間でもずいぶん議論されておりますし、それにあまり時間を食ってもいかぬと思いますけれども、一体、協議という言葉、この言葉の普通の意味は、むろん、意見を聞くとか話し合いをするとかいうことであります。協議の結果、意見が一致すれば、協議ととのうというのである。意見が一致しなければ、協議ととのわずというのである。ととのう場合も、ととのわざる場合もあり得るのである。これが普通のことであります。つまり、協議をするということは、発言権は認めるということである。発言し、意見を言い合って、一致すれば協議ととのう、一致せざる場合は協議ととのわず、どっちも協議であります。協議というのは、結論を言っておるのじゃないと普通には言うのであります。そこで、林長官、せっかくですから、協議という言葉について、協議の結果意見が一致する場合、そこまで含めて協議といっておる事例を聞かしていただきたい。また、もう一つ、一体、そういう用語であらゆる立法がなされておるかどうか、そういう考え方できておるかどうかということも、一つ聞きたいと思います。  もう一つ、何べんも立たせるのは気の毒ですから伺っておきます。この交換公文では「プライアー・コンサルテーション」、ところが、ほかの米韓条約などを見ましても、「コンサルテーション・アンド・アグリーメント」と、二つ並べたのもある。少なくとも、分解しておる例は、まあ、アグリーメント、しかるざる例を私は知りたいのであります。それから、また、この岸・アイク共同声明の英文を見ますと、アメリカ政府は「ウイッシェズ・オブ・ザ・ジャパニーズ・ガヴアメント」、日本政府のウイッシェズ、普通は希望という字であります。日本の出すのはウイツシェズである。このウイツシュズに反する「イン・ア・マナー」、反するがごとき姿、形態において行動しない意図である、行動する意図を持たない。日本が出すのはウイッシェズである。そして、もとはコンサルテーションであります。つまり、普通の英語からいえば、相談するとか、話し合うとか、意見を聞くとか、諮問をするとかいう言葉です。それから、日本から出せるのはウイッシェズである。そして、これを尊重するというのは、アメリカが一方的に尊重するといっておる。こういうふうに共同声明はなっているようでありますが、一つ、さっきの点と一緒に、まことに法律に暗い方でありますので、明確にお教えを請いたいと思います。
  29. 林修三

    ○林(修)政府委員 英文の問題につきましては、あとで条約局長からお答えいたします。  その前の問題についてお答えいたしますが、協議という言葉は、それ自体切り離して考えれば、相談するという言葉でございます。これは申すまでもないことであります。ただ、法令上使います場合に、一定の事項について、両者が特に権限を持っておられる問題について、あらかじめ協議した上でこれこれをしなければならない、こう普通に法令用語に出てきました場合には、当然、協議が成立した上にやることを前提として書いておるのが通例だと私は思います。たとえば、これは国内法の問題になりますが、国有財産法あるいは会計法に基づきます予算決算会計令でありますが、こういうものにおきまして、所管大臣は一定の財産をたとえば他に移す場合には、大蔵大臣にあらかじめ協議しなければならないと書いてあります。これは当然に協議成立を前提として書いてあります。これは協議不成立の場合に、大蔵大臣がオーケーと言わない場合に、やれるという趣旨では書いてございません。明らかにこれはあらかじめ協議成立を前提として法令用語は書いてあります。ただ、いろいろな法令で、単に、一定の事項について相談しなければならないという趣旨で協議のことを書いておるものもございます。あるいはまた、協議成立しない場合には云々と書いておるような規定もございます。協議成立しない場合には云々ということまで書いてあれば、その前提については一応相談するということで書いてあるのでございますが、ただいま申しましたような、たとえば国有財産法あるいは予算決算会計令とか、その他にもたくさん例はあるわけでございますが、一定の事項について一定の権限を持っているものが、他のものに対してあらかじめ協議しなければならないと書く場合には、私たちは、それは当然そういうことを前提として実は法令上使っておるつもりでございます。大体法令上はそういうつもりで書いておるわけでございます。ここにおいても、事前協議の主題とするということで、たとえば第四条で、これこれについて協議するという場合には、これはばく然として、たとえば第四条の協議は、これは相談だけであることは明らかでございます。しかし、その結果、一定の行為をするについて、協議成立しなければ、しないということまでは含んでおらないことは、これは文脈上明らかでございます。しかし、この交換公文の場合は、明らかに三つの事項を掲げて、これは日米両国政府間の事前協議の主題とすると書いておりますから、アメリカが一定の行動をするについては、当然にその協議成立を前提として、それによってやるのだという趣旨は、この文脈上明らかに出ている、かように私は考えているわけでございます。  なお、この英文の問題、英文のプライァー・コンサルテーションという意味、それから共同声明において、ウィッシェズという言葉を意思と訳した問題、この点については条約局長からお答えいたします。
  30. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 ただいまの御指摘の点でございますが、御指摘のように、英文では「イン・ア・マナー・コントラリー・ツー・ザ・ウィツシェズ・オブ・ザ・ジャパニーズ・ガヴアメント」日本政府のウィッシェズに反するような方法で行動する意図を有しない、こういうことになっているわけでございます。そこで、このウィッシェズというのは、御指摘の通り、この言葉だけを取り上げますと、一般には、希望だとか、願望だとかいうふうに訳されておるわけでございます。しかし、この場合に、作戦行動に出ようとするのはアメリカでございます。そこで、作戦行動に出るという場合は、これはアメリカのウィル、アメリカの意思でございます。ところが、日本側としては、それをノーと言う場合でございますから、この場合は日本の意思でございますが、英文では、行動の主体は自分の意思、ウイルということをいいますが、この場合に、われわれがノーと言う場合は、自己が作戦行動に出るという、行動の主体ではない、従いまして、そういう場合には、行動の主体の意思はウイルでありますが、それをノーと言う場合には、英文ではウィッシェズというふうに一般に使われている。しかし、日本語で考えますと、そのような、ウィッシェズとか、ウイルというような、区別は行なわれていない。そうなりますと、ここにおきましては、意思に反すというのが一番ぴったりくるのではないか、このように考えております。
  31. 古井喜實

    古井委員 林法制局長官は、専門知識を御披露になりましたが、協議という言葉は、通例協議、そしてその結果、意見一致する場合のことをいっておるんだという御説は、法制局長官としてどうですか、これはちょっと強弁が過ぎはしませんか。それが通例だというのは、あんまり議論せぬでも、そんなことはありませんと私は言っておきます。通例だということはありません。そういう含んだ場合もあるかどうかという、例外か何か知らぬが、あるかどうかという点は、弁明されるなら、はっきりしたものをお示しになってもよいのですけれども、これはちょっと度が過ぎますよ。そういうことを議論しておっても仕方がありませんが、少なくとも、この協議という言葉が疑義を起こさせる余地があるということだけは残りましょうね。あなたの言われる通り、もう一議に及ばず、だれも文句なしにその通りだというふうにまでは、少なくとも、ごない。疑問を起こす人は何人かおるという、それだけのことは、少なくとも残っておるのではありませんか。その疑問を起こす人があり得る、疑問の余地だけは残っておる、これはどう言われても、そういうふうに思えるのであります。それだからこそ、共同声明にもなってきておる。一体、法律上、条約上、もう少しも疑義も何にもないことを、共同声明でもう一ぺんするなんてばかなことがありますか。何の疑義もないなら、ナンセンスじゃありませんか。それは何かあるからです。ないのか、疑義があるのか、どっちかです。これはないというのは、共同声明で初めて言ったのか、少なくとも疑義があるから言ったのか、どっちかに相違ない。これはどう言われても私はそう思います。どうもそれだけのことは何としても仕方がないように思いますが、あんまり強弁をされぬように、あんまり強弁が過ぎると、ほんとうの話までみんな疑うようになりますから、ある程度にされた方がいいと思います。私がこのように申しますのは、別にこの条約についてけちをつけようとか、政府を非難しようとか、そんな意味で言っておるのじゃない。むしろ、ここまで持ってきた努力を多とするのです。努力に敬意を表するのであります。政府はまあそこまでしかいかなかった。しかし、やるだけのことはやった。これを百%だと言われるのならば、それはそうは思いません。思いませんが、やるところまでやった、これ以上はできない、やるところまでやったんだから、大いにお骨折りを感謝するわけです。そこで、あとへ残った問題は、もう政府の問題ではないかもしれないと思います。私ども日本は、からだを投げ出してアメリカを信頼しておるわけであります。これを裏切られたらたまらぬ。裏切られないにきまっております。しかし、事柄が事柄でありますから、やはりここにちょっと気になるところがあるのであります。あるいは、これはもう政府にどうといって責めるわけにいかぬということになれば、国会の問題かもしれないと思いますが、どうもちょっとこの点は、長官、局長の御説明でもありますけれども、御説ごもっともで、はあよくわかりましたとは申しかねますので、その程度にしておきたいと思いますが、何か伺うことがありますか。なければ、この問題はこの程度にしておきますが、どうですか。
  32. 林修三

    ○林(修)政府委員 別に古井先生の御意見にどうこう申すわけではありませんが、私どもといたしましては、法令上、条約上、先ほど申し上げましたのは、決して例外ではないと考えております。もちろん、協議という言葉は、切り離していえば、同意とは違うことは、おっしゃる通りでございます。その点は私は否定をいたしません。否定をいたしませんけれども、あらかじめ協議しなければならないという用語例は、大体私の申しましたような言葉で使われておるということだけはお認め願いたい、かように考えております。
  33. 古井喜實

    古井委員 まあそれが普通だとはおっしゃる、きっぱり自信を持っておっしゃるわけでもないようで、そういうふうに育っておりますという話のようですから、これはまあこの辺にしておいた方がよいと思います。  今までは、事前協議の場合における日本側の基本的な態度、方針の問題、それをまた適用してどうなるかという問題、また、その考え方を実際の場面に間違いなしに貫いていくためにはどうしたらよいかなどの問題を御質問申し上げたのでありますが、その次に、事前協議の対象について少し質問をいたしたいと思います。  実のところ、どんなに事前協議の方針だ、手続だとこれを論じましたところで、協議の対象から重要なものが除かれてしまっておっては、何にもならないわけであります。協議に重要なものがかからぬということになっては、何ぼ事前協議の手続を整えていったところで、仕方がないということになるわけであります。そこで、協議の対象の問題につきまして、今までも委員会でいろいろ議論が出た。その中に、私はやっぱりいかにもどうも気になってならぬ問題があるのであります。これは戦闘作戦行動の範囲に関係してのことでありますけれども、お尋ねしようと思います問題の中心は、この戦闘作戦行動というもの、これは事前協議の対象になるのでありますが、戦闘作戦行動というものの範囲がどうもよくわからない。この戦闘作戦行動と切り離せない、密接不可分な関係を持っておる、いわば戦闘作戦行動がそれによって成り立っておるような関係にある物資の補給、これは一体どうなるだろうかという問題、それからまた、第一線の戦闘基地に対して、すぐあとの直結しておる基地に日本が使われておって、そこから物資を運ぶ、あるいはまた、兵員部隊を第一線の基地に運ぶ、そういう主要な基地に日本がなっておる、ここから飛び立ったりなどして戦闘行動をやっているのじゃない、戦闘行動をやっているのは第一線基地である、しかし、第一線基地に直結しておって、そうしてここに物資や兵員などを補給していく主要な基地に日本がなっておる、これは一時の関係じゃない、継続的にそういう関係がある、この日本の補給基地があればこそ、第一線の戦闘が成り立っておる、これがなかったら成り立たない、こういうような場合があり得ると思うのであります。現にこの二月二十三日のロイターですか、レムニッツァー米陸軍参謀総長が、アメリカの議会で、「米国は日本にある重要な補給所を今後も維持し続ける。朝鮮で戦闘が再発した場合、在韓米軍はこれらの基地に依存しなければならないだろう」ということを証言いたしておるという記事が出ておりました。あり得ないことじゃない。そういう場合が大いにあるということをアメリカの参謀総長も言っておるというわけであります。つまり、韓国で戦争が再発する、日本からまっすぐに戦闘行動に出るのじゃない、けれども、韓国の第一線の基地に対して、物資や兵員は日本が引き受けて補給する、こういう立場日本が立つという場合は、一体協議の対象になるのか、ならぬのか。今までの御説明を伺えば、どうもはずれるように思えるのであります。この点は、私が言うだけでなしに、それははずれるのかということを、あっちこっちでずいぶん問題にしております。  そこで、その前に伺っておきたいと思いますのは、戦闘作戦行動そのものといえるかどうかわからないけれども、これと密接不可分の関係にある補給——まず補給のことに一応しておきましょうか。補給、これは事前協議の対象になると説明されたように聞いておりますけれども、そうでしょうか。そうしてまた、密接不可分の関係にある補給というその観念は、そうであるとするならば、その内容というか、幅はどんなものか、こういう場合入るというものの方をまず例をあげて説明をしていただきたいと思うのであります。これをまずお願いいたします。これは防衛庁の長官が最適任でございましょうね。
  34. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 戦闘作戦行動と密接不可分な関係にある補給は、事前協議の対象になると思います。例を申し上げまするならば、日本から空挺降下部隊等が発進いたします。その戦場に対して直接武器弾薬を投下するような、戦闘を直接支援するような行動、これは戦闘作戦行動に入る、戦闘作戦行動と密接不可分な補給になるので、事前協議の対象になる、こういうふうに思います。
  35. 古井喜實

    古井委員 そうすると、今伺ったところでは、観念としては、戦闘作戦行動と密接不可分な関係にある補給、これは対象になる。そこで、その内容としては、今の空挺部隊に対して、食糧や弾薬を日本の基地からまっすぐ届けてやる、送ってやる、こういうようなのが戦闘作戦行動と密接不可分な補給である、こういう意味のようであります。  そこで、今伺った中で、日本から出た空挺部隊というふうに言われたのですけれども、それはどこから出た空挺部隊でも、戦闘に従事している空挺部隊なら、同じことじゃありませんか。こまかいことですけれども、それに日本から持っていってやれば、日本から出たものであろうが、ほかから出たものであろうが、同じことじゃありませんか。ちょっと何か言葉にそこが違った点があるように思ったのですが……。それと、もう一つ、それ以外には、密接不可分な関係にある補給というものは考えられないのかどうか。今の例をはっきりもう一ぺん言っていただくことと、それ以外にはもうないのか、これを一つ伺っておきたいと思います。
  36. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 戦闘作戦行動として日本の基地から発進することが事前協議の主題になっているわけであります。でありますので、今申し上げました例は直接不可分の補給でございますが、しかし、その補給は、戦闘作戦行動と一体不可分でありますからこれに含まれている、こういう意味で、事前協議の対象といたすわけであります。純粋の兵站支援である補給行動は、これは戦闘作戦行動として日本の基地を使用する中には入らない、こういうふうに思います。
  37. 古井喜實

    古井委員 そこで、二点を今の御答弁について伺いたいのですが、空挺部隊が日本の基地から出ますれば、なるほど補給についても協議の対象になりましょうけれども、空挺部隊が出ること自体について、日本から出るのなら協議の対象になるはずだと思うのです。これはほとんど問題にならぬ。日本から空挺部隊が出なくても、ほかから出ておっても、戦場に出ておるその空挺部隊に対して、日本からまっすぐに物資を補給してやるという場合は、これは入らないのですか。今のお話からいうと、入らないように聞こえるのですが、それともう一つ、そのほかにもう例がありませんか、という点です。
  38. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 今のようなお話で、日本から発進した空挺部隊じゃない、しかし、どこかで戦闘が行なわれている、その戦闘の行なわれている前線に武器、弾薬等を直送する場合は、これは入ります。  空挺部隊以外の例を申し上げますならば、これは補給とは別であります。戦闘作戦行動の基地としての使用の典型的なものを申し上げますならば、これも再々申し上げていることでありますが、戦闘任務を与えられた航空部隊あるいは空挺部隊、上陸作戦部隊等の発進基地としての施設区域の使用が典型的なものであります。そのほかの、今申し上げました典型的なもの以外の行動、このことにつきましては、具体的事態に即して、任務の内容、すなわち、戦闘任務を有しているかどうか、あるいは当該行動の戦闘部隊との関連、すなわち、先ほど来申し上げました戦闘に対する直接支援かいなか、その他のことを考慮して判断するということに相なろうと思います。
  39. 古井喜實

    古井委員 そういたしますと、初めのお答えは、まず空挺部隊も、日本から出ておるそれに対して日本から物資を補給する、これは入る、これは初めの場合です。その次には、ほかから出ておって戦場におっても、しかし、日本からその戦闘部隊に物資を直送するというときは入る、今のお話で入るというふうに言われました。しかし、そのほかは——補給に限って今は話しておきたいと思いますけれども、そうすれば、そのほかは側々の具体の場合、実際の場合に即して考える、任務をもとにして考えるというふうなこともおっしゃっておるのですけれども、ちょっとそこがあいまいなんですね。  それでまず、さっき私が例を申し上げましたレムニッツァーの話です。つまり韓国で戦争が始まるとする、これは日本が主たる補給基地になるわけです。そうして日本からは、別に戦場に戦闘作戦行動をやるために出はしない。その第一線の戦闘行動に対して日本から物資の補給をやっておる、これは物資だけじゃない、兵員の補給もやっておるかもしれぬ。これは直接の関係、主たる立場に立つ、継続的な関係を持ってくる、こういうふうなことになると思うのです。その場合には、第一線の戦闘というものは、あとの日本の補給の関係がなくなったら成り立たなくなっちゃう。成り立ちはしませんよ、これは。そういう、つまり、これあるために初めて成り立つというような密接不可分の関係——私はほとんど一体だ、うらはらをなしているように思う。これが対象にならない、これで一体国民が安心して、満足するでしょうか。まず、こういう場合には、相手から見て、相手側から日本が、いよいよになれば攻撃される危険がありはしませんか。そういう危険にさらされはしませんか。これは、それを攻撃することが適法だ不法だ、そんなことではありません。事実問題として、そういう危険にさらされはしないかという気がするのであります。なぜかというと、よくよくになれば、これをたたいてしまわぬときまりがっきはしません。そこで、こんなことを言いますと、日本までたたいたり手を出すと、戦場が拡大されるからなかなかしないだろう、そうでしょう。そうでしょうけれども、よくよくになれば、やるのじゃないでしょうか。やらぬと言えますか。拡大するのを覚悟して、よくよくになれば、やらないというふうには言い切れないと私は思う。また、よく日本をたたいたら大ことになる、それこそ世界戦争になっちゃう、大へんなことだから、日本はたたきはしない、これもごもっとも千万であるけれども、しかし、これとても、やむを得なければどうなるかわかったものではない。ことに、日本を攻撃したら、即、直ちに世界戦争だというのは、私は粗雑だと思う。ないことですけれども、かりに米ソ戦うにしても、本国同士をやり合うかどうかわからぬ。戦場は限られる。お互いに戦場は局限すると思う。今までの戦争の例が、そうだったと私は思う。そこで簡単に、それならもう世界じゅうもろともになるのだからという、それは少し粗雑だと私は思う。また、それがあるにせよないにせよ、国民としては、いつやられるかもしれぬという不安にさらされるということだけは、どうしても免れぬと思うのであります。  そこで私は、事前協議の対象にしたからといって、日本はノーと言うときまったものではないのですよ。もっともならばイエスと言う。だから、断わるにきまったものじゃない。しかし、そういう危険にさらされる場合に、一体日本にあいさつなしにやってもよいだろうか、これは国民承知しないと私は思います。そういう危険にさらされる場合に、発言権——意見を聞いてくれることさえもしない、それは無理だと思います。無理だとどうしても私は思いますな。  そこで、やはり戦闘作戦行動というものの幅はどうかということは、何ぼ文字をせんさくしても、文字から出るものとは私は思わぬ。むしろ、事前協議という制度を設けたその趣旨から考えるべきだ。日本に重大な関係があ百る、日本に発言の機会を与えなければならぬ、与えるのが至当だというような場合には、やはり事前協議の対象にしなければならぬと思う。それがあたりまえだと思う。これは事前協議の制度の趣旨から、そうだと思います。幾ら字をながめたところで、字から出るものではありません。趣旨から考えるべきだと私は思う。思いますが、しかし、これは防衛庁長官、やはり問題になりませんか。どんなものでしょう、今のような場合。
  40. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 お話通り、条文とか文字から出てくるものではありませんで、実態に即してきめていかなければならぬ問題だと思います。そこで、実態については、先ほど申し上げましたように、具体的事態に即しまして、任務の内容、戦闘任務を有しているかどうかということ、それから当該行動の戦闘部隊との関連性、すなわち、戦闘に対する直接支援かいなか、こういうことがその判定の基礎となると思います。でありますから、今例示された問題につきましても、この判定から、それが直接戦闘行動に入る場合もあるし、あるいは入らない場合もありましょう。大体入る可能性の方が多いと思いますけれども、そういう事態に即して判断していくことだ、こう考えております。
  41. 古井喜實

    古井委員 では、まあ事態に即して考えるのだからということで、否定されたわけでもないけれども、肯定もされない、どうなるかわからぬということでここはいこう、こう言われるのでしょうか。この問題はどうなるかわからぬぞというのでは、なかなか各方面で、これは問題だと言うと思います。何だ日本事前協議というものはこんなものか、こんな場合まで一体協議の対象にならぬのかと言うて、条約自体の、事前協議そのものの価値を疑われますよ。これは私は、今の具体の場合にどうこうというようなことでちょっと過ごし切れるものでなかろうと思います。しかし、もしこの戦闘作戦行列の意味、範囲などについて、日本だけで勝手にどうこう言ってしまえぬという事情でもあるならば一ないかもしらぬが、あるならば、一つどうですか。これは他にも同じような、似た問題についてすでに御意見もありましたが、国会でこういう議論をしておるということをよくお考え下さって、一つアメリカと話をしていただいたらどうか。できないですか。密接不可分だというものは入るという観念は、すでにあるのですよ。その具体の内容の問題ですから、条約には関係ない。また、条約の解釈の基本的な考え方にも触ればしない。よくそれを話し合って、こいねがわくは、こういう今申し上げたような場合は、積極的に解決していただきたいと私は思うのです。一つ向こうと、いろいろな形式において交渉される場合もあると思いますから、そういうふうに努力をしていただくわけにいかぬか、総理一つこの辺を伺いたいと思います。
  42. 岸信介

    岸国務大臣 戦闘作戦行動というものと補給行動、これは軍の行動につきまして二つの観念があることは、これは軍事的に一つの観念として存すると思います。しかし、ここに、戦闘作戦行動については事前協議の主題とするということを定めた、この戦闘作戦行動というものの意義、範囲をどうするかということについては、これは日米の間において話し合いをして、具体的にきめなければならぬ問題である。一方的にだけ一つの解釈問題として、そして現在まで私の承知しているところでは、この戦闘作戦行動といううちには、少なくともこの戦闘作戦行動と密接不可分な関係に立つところの補給行動というものは入るということについて、日米の間に意見が一致しておるように承知いたしております。さて、いわゆる不可分一体の補給行動というものは、どういうものであるかという事例につきましては、先ほど来防衛庁長官がお答えをしておるところでございます。今お話しのように、日本が一般的の補給基地として使われるということは、この観念には入らない問題だと思います。ただ、作戦行動と密接不可分の関係にある補給行動というものはどういうものをさすかという点に関しては、先ほど来防衛庁長官も、具体的の事情においてこれを決定しなければならぬというような点を申しておるのであります。従って、さらにアメリカとの間において話し合うということは、運世上考えていかなければならぬと思います。もっともこの事前協議の対象とならない問題に関しましても、第四条において一般的の協議をし、日本の発言の機会というものはもちろんあるわけでございますけれども事前協議の対象とする範囲につきまして、なお条約の運営を円滑ならしめる意味において、両国の間で話し合っていかなければならない点はあると思います。それらについて、十分こういう国会の論議等を参考として、政府が、そういう場合において交渉することは当然である、かように思います。
  43. 古井喜實

    古井委員 さっき申し上げたような場合は、きわめてはっきりした場合だと思いますが、その場合、また、そのほかにももっとあるかもしれませんが、アメリカの方とも十分一つ話し合いを願って、そうして、みんながなるほどと思うような結論を、交渉によってつけていただきたいものと希望いたします。  次に、事前協議の問題の最後でございますが、核兵器の持ち込みの問題であります。これは、今までたびたび政府の御所信を伺った問題であります。政府考え方は、疑う余地のないほどはっきりしておると思います。しかし、たとえば、どういうふうにして第七艦隊が核兵器を持ち込むことを知るのか、また、どうしてこれを防ぐのかなどという手続、取り扱いの方法の点については、いささか不明瞭のままになっておると思うのであります。安心がつくまでのことになっていないように思うのであります。そこで、こういう考え方のもとに、さっきのような持ち込ませないという考え方のもとに、その実効を確保するように、手続、扱いの方法などについて、十分一つアメリカの方と話し合って遺漏のないようにしていただきたい、これは希望することでありますけれども、ぜひ一つ遺漏のないようにしていただきたい。  さらに考えますことは、そうではありましょうけれども、同じことには相違ないと思いますけれども、核兵器というものに対する根本的な考え方ないしは決意という問題です。広島や長崎のああいう悲惨な経験もしたことでありますから、この核兵器に対しては、日本は最も潔癖でなければならない、また、最も厳粛な態度をとらなければならぬと思うのであります。日本の国土と核兵器、この二つのものは、絶対に縁のないものに一つしてもらいたいと思うのであります。そういう決意を持つべきであると思うのであります。そうしてまた、われわれのこのかたい決意、また、ごまかしも隠しもない態度というものを世界一つ明らかにする、各国に訴える。そういたしますれば、いかに何でも、各国、各民族の人間としての良識は、必ずわれわれの決意態度にこたえるものだと私は思うのであります。私は、強い考え態度を持ってこの問題に臨んでもらいたいと思うのであります。よけいなことかもしれませんけれども、国を守る力は、決してひとり兵器ではないと思います。今兵器の競争が行なわれておりますために、これに目を奪われておりますけれども、むしろ桝本は、やはり国民であるし、国民の中に燃え上がっていく祖国愛の精神だと思うのであります。これがやはり防衛の力の基本だと私は思うのであります。私が申し上げることでもありますまいが、第二次大戦のときに、何べんかスイスが侵されようとした。しかし、ついにスイスが侵されないでしまった。根本はいろいろありましょうけれども、兵器などのことではなかったと思う。やはり防衛精神の旺盛、強烈なことが、もう手が出せないぞ、こういうふうなことであったように聞くのであります。私は、やはり狭い考えを持たないで、国を守る力、広い立場に立って考えるべきものだと思うのでありまして、特に核兵器は、これは一つ日本と縁のないものにしていただきたいと思うのであります。(拍手)重ねて総理に御所信を伺っておきたいと思います。
  44. 岸信介

    岸国務大臣 一国の国防といいますか、防衛の基本は、その民族が祖国愛に燃えて、これを防衛するという防衛精神の発揚に基礎がなければならないというお考えは、全く私も同感でありまして、日本のきめております国防の基本方針にも、そのことを明らかに掲げております。従って、ただ単に武器だけでもって国が守れるというような、狭い考えを持つべきものでないことは言うを待ちません。同時に、もちろん、そういう基礎であるところの防衛精神の高揚の上におきまして、やはり世界の大勢に応じて、軍事科学の発達に応じて効率的な武器を備えるということも、またこれを見のがすわけにはいきません。ただ、核兵器については、いかなる意味がありましても、これを日本と切り離した考えを持たなければいかぬというお考えにつきましては、私がしばしば国会を通じて申し上げておる通り、いかなることがあっても、日本自衛隊を核兵器をもって装備することはない、同時に、外国からここに核兵器が持ち込まれることに対しては、日本は厳粛な態度でもってこれを拒否するということを申し続けております。それは、たとい長期にわたって日本にそういう核兵器が持ち込まれて、そうして米軍が装備するという場合だけではなしに、一時的に持ち込まれる場合においても、同様な考えを持っておるということを明瞭に申し上げておきます。
  45. 古井喜實

    古井委員 次に、事前協議の問題は一応その辺にして、極東の観念の問題に入りたいと思いますが、一つお尋ねしようと思いつつ落としたことがあります。それは岸・アイク共同声明の問題であります。この共同声明、普通から申せば、政治的な意思表示のように思いますので、アイクがかわってしまったらどうなるだろうかということを一言う者があるのであります。かわっても、やはり事柄の性質上これは後の政府までずっと拘束していく、これは当然そう見るべきものだろうと思うのですけれども、念のためにもう一ぺん確かめておいて、次の問題に移りたいと思います。
  46. 岸信介

    岸国務大臣 これは、私がアイゼンハワー大統領と当時話し合って、この問題を声明の中に入れるということに一致しました経緯から考えてみましても、アイゼンハワー大統領が、アメリカ政府を代表してこのことを明瞭にする——先ほど来いろいろ法律論として疑義があるような御議論もございましたが、これは交渉の途上において、両国の代表において法律的の解釈が一致している。しかしながら、事、用語として、先ほど来お話しのような点もあるからして、これははっきりとしておこうという意味において声明されましたことでありまして、アイゼンハワー大統領がその任期にあるかどうかというようなことは、私は問わない、こう思います。
  47. 古井喜實

    古井委員 それでは次に、極東の観念について質問をいたしたいと思うのであります。  まず最初に、極東という観念についての基本的な考え方であります。極東という観念について、政府は、もともとこの極東という観念は、ばく然とした、抽象的なものだ、だから、どこからどこまでと線の引けるようなものではない、こういう見解を示されておるのであります。私は、これはあたりまえの見解だし、それでけっこうだと思っておるのであります。ばく然とした、抽象的な観念であって、どこからどこまで、どこがどうなると一言えるわけのものではない、こういう観念を政府が明確にされたことは、私はけっこうだと思います。むしろあたりまえだと思うのであります。今回の条約も、こういうふうな、いわばばく然とはしておるけれども、こういう今のような観念を用いたものだ、まあそう思うのであります。常識的にそうだし、条約もそうだと思うのです。そうでなければ、一体この極東というものの定義あるいは範囲を、条約に書いておくべきはずのものだと思う。もしそうでなければ、書いておくべきだ。もしそういう考えに立っておって番いてなかったら、大きな欠陥だと思う。書いてないところからいっても、これはやはり、今のような観念をとっておるものだといわざるを得ぬと思うのであります。一方、そういたしますと、ばく然としたものだといいますと、それではいかにも不安じゃないか、こういうふうな今度は反面の疑問が起こってくるわけであります。この点はまことにそうであります。そこでこれに対して何で答えているかといえば、結局事前協議ということになってしまう。すべては事前協議にまかしたようなことになる。だから、事前協議は、この条約としては目玉でもあろうし、さっきも、くどくくどく質問を申し上げたりしたわけでありますが、これさえしっかりしておれば、今のような観念でよいのだと思うのであります。今までのこの委員会なり国会会議の経過を見ておりますと、この極東の観念について幾らか紆余曲折があったようでありますが、しかし、結局のところ今申したような観念だ、こういうところにきたわけでありまして、これはくるところにきた、こういうふうに私は思います。そこでこの観念を、もうありはしますまいけれども、動かない最終のものにしていただかなければならぬ。同時にまた、この考えを最高のものにいたしまして、そうして事を説明していただきたいと思うのであります。最終、最高のものという考え方をしていただきたいと思うのです。そうだとは思いますけれども総理一つ所見を伺っておきます。
  48. 岸信介

    岸国務大臣 極東の観念が抽象的なものであるということにつきましては、しばしば政府が言明をいたしております。その通り考えるべきだと思います。そうして、いろいろな場合にいろいろに質問が出ましたし、また、用語等は、必ずしも統一の用語を使っておりませんから、二月二十六日でありましたか、それを総合的に取りまとめて政府の統一見解として示しておりますので、あの通り考えております。
  49. 古井喜實

    古井委員 今のようなばく然とした、抽象的なものだという観念をとりますと、今も総理が御自分でおっしゃいましたが、二月二十六日の統一解釈というものは、いわばもう要らなくなったような気がするのであります。なぜかといえば、ばく然とした、抽象的な観念だと言えばそれでおしまいであって、何だかんだと言う必要がなくなったような気がする。初めは、あの島がどうだ、ここがどうだなんていう議論がある、それから統一解釈になり、それからばく然論になり、だんだん進化してきたわけです。そこで、このばく然論までくる問のワン・クッションにはなったかしらぬけれども、私はもう必要がなくなったようなものじゃないかと思うのです。ばく然としたものなら、何でかれこれ言う必要があるか、こういうことに私はなると思う。率直に言えば、私はこの統一解釈は不必要になった、そう思います。  そこで、それではこの歴史的な意味以外にこれを置いておく何の意味があるか、こういうことを考えてみますと、せいぜい、私はこういうことになりはしないかと思う。極東というものの考え方というか、考え方の方向というか、これを帯百品つたものである。ある区域を言ったものとか、区画を言ったものとか、そんなものではない。抽象的な考え方を言おうとしたというだけのものだと思う。そうでなければ、区域を言うというのだったら、ばく然論と矛盾するわけです。そういう抽象的な考え方を言ったにすぎないと私は思う。そうすると、今もここで出ておりますが、地域があそこに書いてあるじゃないか——多分「韓国及び中華民国の支配下にある地域」とあるじゃないかと言われる意味だと思う。これとても、共産圏を除くのだというだけのことだと思う。そういう考え方だと思う。それとも、区域を示そうという意味ですか。考え方を育っただけのものであって、区域を言ったものじゃない、こういうことに私はなると思うのです。また、あれで区域を言おうというなら、私は議論することはたくさんあります。あの中で取り上げて議論すると、半日ぐらいやることはあります。けれども、そんなものではなくて、抽象的な考え方を言ったもの、だと、私は、今日になればそういう意味に解釈すべきものだと思うのです。そこで、あれとても区域は言っていない、それからまた、その統一解釈の前に、あすこがどうの、ここがどうのと言ったということは、これはどうも不覚の至りであって、実は要らざることであった。ばく然論というものが初めからあったら、あんなことはないはず、だと思う。あすこはどうの、ここがどうのと言うことは、矛盾ですよ。そこで、すでにばく然論をおとりになって、これを一番基本考え方ということに置かれるならば、統一解釈というものは今のような意味になってしまう。その考え方からいけば、前に、ああだこうだと言われたことは、要らざること一になってくる。そうでなければおかしい。こういうふうに、今日の段階ではなってしまった。するのではない、なってしまった。ひとりでにそうなってしまった、こういうふうに思うのでありますけれども総理はどう考えますか。
  50. 岸信介

    岸国務大臣 今申し上げました通り、ばく然とした、抽象的な観念でありまして、二月二十六日の統一解釈というものも、その見地でお読み下されば、これは今お話しのように、この極東というものをなぜここにあげておるかということの趣旨を書いておるものでございます。決して区域をこれによって限定的にしようという考え方ではございません。そういう意味において、過去において具体的のいろいろな島等があげられて、これに対して答弁した事柄は、抽象論というか、抽象的な観念だという意味からいうと、これは適当でなかったこともあろうかと思います。
  51. 古井喜實

    古井委員 最後でありますが、今の総理の御答弁で、統一解釈というものもそういう意味のものだと思うし、また、ばく然論をやったためにそこまで進歩というか、考え方がきたんだから、かれこれ言う必要もなければ、過去に言ったこともよけいなことであった、こういう御趣旨が今のお言葉で出たように思います。  そこで、金門馬祖の問題であります、これについてはいろいろ論ずることがあるのであります。あるのでありますが、だいぶ昼過ぎの時間にもなりましたから、締めくくりだけはっけておきたいと思いますけれども、今のお話で、話ははっきりしてしまった。統一解釈にもひっかかりは上ない考え方だから、区域ではない。それから具体の島をどうのこうのと言うことは不必要なことであった、そういうことで言われるならば、もうあの問題も消えてしまったと私は思うのですけれども、違いましょうか、一言総理の御答弁を願います。
  52. 岸信介

    岸国務大臣 これは、先ほど古井委員お話しがありましたように、極東という観念は、本来ばく然とした、抽象観念である。しかして、それでは非常に不安定ではないかということに対しましては、いわゆる事前協議で具体的に問題となったときにおいて、日本の平和と安全に直接深い関係のある地域でなければ、これを認めないということを先ほどから申し上げておりますから、そういうばく然たる観念である、抽象的な観念であるとしても、決して必配は要らないのでありまして、これで私は解決していくべきものである、こう思っております。
  53. 古井喜實

    古井委員 さっきの極東の観念における御答弁、これが最後のものだと思いますし、従って、また、それとひっからめて今の金門馬祖についての御答弁を伺ったわけでありますので、私は、きょうの質問はこの程度でやめたいと思います。(拍手)
  54. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後一時十九分休憩      ————◇—————     午後二時四十八分開議
  55. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。横路節雄君。
  56. 横路節雄

    ○横路委員 私は総理にお尋ねをしたいと思うのですが、午前中本委員会における古井委員極東についての質問に対する総理の答弁に関連して、お尋ねしたいと思うのです。  実は、私も、先ほど委員会で、総理の御答弁について詳細にお聞きをいたしておりましたが、私のお聞きしていることに間違いがあっては困ると思いましたので、さらに速記で調べてみたわけです。総理はこういうようにおっしゃっています。総理のお答えは、極東の観念については三回にわたってお答えになっていますが、まずその第一回に、総理はこう言っております。「極東の観念が抽象的なものであるということにつきましては、しばしば政府が言明をいたしております。」「用語等は、必ずしも統一の用語を使っておりませんから、二月二十六日でありましたか、それを総合的に取りまとめて政府の統一見解として示しておりますので、あの通り考えております。」こういうことであります。ですから、総理のこの御答弁をお聞きいたしまして、二月の二十六日に本委員会で愛知委員に御答弁になられ、われわれ委員に全部、今ここに持っておりますが、政府の統一見解として出されたものと、何らお変わりがないと、こういうように私はお聞きをしていたわけです。ところが、次に、古井委員からだいぶ長い質問がございまして、これは今私、省略をしたいと思います。その質問に答えて、総理は今度こういうように御答弁になっているのです。「今申し上げました通り、ばく然とした、抽象的な観念でありまして、二月二十六日の統一解釈というものも、その見地でお読み下されば……、極東というものをなぜここにあげておるかということの趣旨を書いておるものでございます。決して区域をこれによって限定的にしようという考え方ではございません。そういう意味において、過去において具体的のいろいろな島等があげられて、これに対して答弁した事柄は、抽象論というか、抽象的な観念だという意味からいうと、これは適当でなかったこともあろうかと思います。」こういうように御答弁になっているわけです。そこで、私が第一番目にお尋ねをしたい点は、一番最初私が読みました総理の御答弁からすれば、二月二十六日の統一解釈、それは本委員会における四月一日の私に対する総理のお答えと同じであると思いますが、次に読みました二回目の総理の御答弁からいけば、二月一二十六日の統一解釈も、この見地で読んで下さればわかる、極東という地域を限定的にしようという考え方ではない、個々の島をあげたことは適当でなかった、こういうようにおっしゃっているわけです。そうすると、これは二月二十六日の政府の、私たちに書面で配付されました「新安全保障条約にいう「極東」の観念」、これをお取り消しになったのかどうか、その点第一番目にお尋ねをしておきたいと思うのです。
  57. 岸信介

    岸国務大臣 今朝お答え申しましたように、私の考え方は、政府考え方は取り消したということではございませんで、二月二十六日に政府の統一見解を示しておることを再確認をいたしておるのであります。
  58. 横路節雄

    ○横路委員 そうしますと、これは総理も、先ほど古井委員のいろいろお話をされたのに対してのお答えでありましたから、あるいは言葉が適当でなかったかもしれませんが、この総理のお答えを速記で読みますと、二月二十六日の統一解釈というものは、これは区域を限定的にしようという考え方ではない、こう言われておるのですけれども、しかし、今ここで総理から——総理のお手元にあるようでございますが、「一般的な用語としてつかわれる「極東」は、別に地理学上正確に画定されたものではない。しかし、日米両国が、条約にいうとおり、共通の関心をもっているのは、極東における国際の平和及び安全の維持ということである。この意味で実際問題として両国共通の関心の的となる極東区域は、この条約に関する限り、在日米軍日本施設及び区域を使用して武力攻撃に対する防衛に寄与しうる区域である。かかる区域は、大体において、フィリピン以北並びに日本及びその周辺の地域であって、韓国及び中華民国の支配下にある地域もこれに含まれている。」こういうように統一見解でお述べになりました。この条約にいう両国共通の関心の的となる極東の地域、この地域は「フィリピン以北並びに日本及び周辺の地域であって、韓国及び中華民国の支配下にある地域もこれに含まれている。」というこのことについては、この通り別に変更はないわけでございますか。この点一つお尋ねしておきたいと思います。
  59. 岸信介

    岸国務大臣 先ほどお答え申し上げました通り別に変更はございません。
  60. 横路節雄

    ○横路委員 そこで、次に、古井委員から、金門馬祖等をひっくるめて個個の島について言うたことがいいとか悪いとかいう、いろいろのお話がございましたが、この点につきましては、総理も御記憶新たなように、三月二十五日、この委員会で私から総理にお尋ねをして、四月一日、総理から重ねてここで御答弁いただいておるわけです。それは二月二十六日の統一見解については変更する意思はないということを御答弁ございましたから、そこで重ねて、個々の島について適当か適当でないかということは、それはいろいろございましょうけれども、しかし、私は重ねて、歯舞、色丹、国後、択捉、金門馬祖について申し上げた。この点については、三月一日の予算委員会における田中委員質問にも総理はお答えになられて、「金門馬祖は御承知通り中華民国の領有しておるところでございます。従ってこの状況もとにおいて、台湾の平和と安全の場合に非常に密接な関係を持っておる地域でございますから、この極東という範囲に入れるという解釈を変えることは、これは私ども考えておりません。」というのが一つ。それから三月二十九日、参議院の予算委員会で、秋山長造委員から、「私は端的にお伺いしますから端的に答えていただきたいんですが、まず第一に総理大臣は従来金門馬祖極東の範囲に入ると答えてきたというこの事実をお認めになるかどうか。」総理大臣は「そういうことをお答えした事実はございます。」、そうして秋山君からのお取り消しになるかどうかという点について、「私は従来にお答えを申し上げておることと趣旨の違った、この趣旨を変更する考えはございません。」これは私が念を押しまして、四月一日、総理から、この点については変更がないとお答えになった。重ねて、先ほど何か総理から、「そういう意味において、過去において具体的のいろいろな島島があげられて、これに対して答弁した事柄は、抽象論というか、抽象的な観念だという意味からいうと、これは適当でなかったこともあろうかと思います。」、このお答えですね、これは、適当でないと思うから、古井委員についてはお取り消しになったのかどうか。歯舞、色丹、国後、択捉、金門馬祖の島々は、これは適当でないと思うから、お取り消しになったというように、ここでは受け取っていいのか。どうももともとは、そういう島々を答えるべきでなかった、しかし、答えたのであるから、今は、一たん答えたものであるから、絶対変更しないという、四月一日の御答弁そのままのお考えであるか、その点についてお尋ねをいたしたいと思います。
  61. 岸信介

    岸国務大臣 私の申し上げたのは、本来極東というものは、抽象的観念であるから、個々の島があげられた場合において、それが入るとか入らないとかいうふうなお答えをすることは、そういう考え方は適当でないということを申したのであります。しかしながら、従来申し上げておる通り、そういう不適当な表現を用いたこともございますけれども、趣旨においては変わっておらない、変更するものではないということを申し上げておるのでありまして、あなたの御質問に対しても、そういうことをお答えしたと思います。従って、今日古井君にお答えしたことは、従来私の答えたことを変更する、取り消すという意味ではなかったのでございます。
  62. 横路節雄

    ○横路委員 それでは、ただいま総理の御答弁で、午前中の古井委員に対する極東の範囲の問題、極東の観念の問題について、私たちお聞きをいたしておりましたところ、また、この速記から私たち判断をいたしまして、何かお取り消しになるのかというように印象を受けましたけれども、ただいまの総理の御答弁で、お取り消しではない、前にお答えになっているそのままだ、こういうことになったわけでございますから、この点ははっきりいたしたわけでございます。  最後に、なお、これは古井委員に対する総理の最後のお答えでございますが、お話がありましたように、極東という観念は、ばく然とした抽象的観念である。それでは非常に不安定でないかということに対して、いわゆる事前協議で具体的に問題となったときに、これで、われわれの日本の平和と安全に直接深い関係のある地域でなければこれを認めない、だから、抽象的な観念であるとしても、決して心配はないのであって、これで解決していくべきものであると考えている、この総理のお答えは、この委員会でたびたび——金門馬祖について紛争が起きた場合、金門馬祖について直接武力攻撃が行なわれた場合、この場合については当然、これは在日米軍といいますか、第五空軍であるとか、あるいは私どもは第七艦隊は事前協議の対象ではないと思いますけれども、しかし、総理の、政府側の答弁からすれば、第七艦隊の戦闘作戦行動もこれは事前協議の対象になるというお話ですが、この金門、喜馬祖について武力攻撃が行なわれた、そうすると、これは第六条に基づいて、事前協議によっていわゆる米軍が出勤することができるわけです。ここで私がお尋ねしたいのは、金門馬祖に武力攻撃が加えられたときに、これに対して第五空軍あるいは第七艦隊が、事前協議でこの基地を利用して戦闘作戦行勅に出るときに、総理は、前に、各委員質問に答えて、金門馬祖に武力攻撃が加えられても、その場合には、第六条にいう事前協議でノーと肯う、こういうようにお答えになったと思うのです。もしも総理が、金門馬祖に武力攻撃が加えられた場合に、第六条にいう事前協議で、第五空軍あるいは第七艦隊等が出ることについてノーと言うのであるならば、初め、から、この新条約でいう極東の観念の中、極東の範囲からあらかじめ金門馬祖を除いておくことが——そういうノーと言うとかイエスと言うとかいうことでなしに、常にノーと言うならば、私は、金門馬祖ははずしておくべきではないかと思う。それを極東の範囲の中に金門馬祖を入れた。そこに武力攻撃が発生した。そうすれば、国連憲章五十一条で当然米軍は出動することができる。それをわざわざ事前協議でチェックしようという。そこだけは、実は私もここで何べんか総理の御答弁を聞いて、そのは釈然としない。なお、きょうの御答弁でもありましたから、その点をお尋ねしておきたいと思います。
  63. 岸信介

    岸国務大臣 従来、この問題に関して、御質問に対して、私が、参議院でございましたか、あるいは衆議院でございましたか、委員会の場所は、私正確に町目等は記憶いたしておりませんが、私の記憶によれば、こういうことは申し上げたと思います。というのは、金門馬祖において先年事態が起こった、あるいは今日もなお何かの事態がある、これに対して、日本から米軍が、日本の基地を使用して出動をいたしておりません、従って、こういうような事態に対して、将来といえども、こういうような状態である限りにおいては、私どもは、これに対して米軍の出動を認めるというようなことは、事前協議の対象になりましてもノーと申します、こういうことは、私申し上げたことを証憶いたしております。極東という地域のいわゆる抽象的な観念の中に入っておりましても、そこのなににおいて一々その極東の地域にあるならば必ずイエスと言うわけでは、もちろんございません。これは、午前中の古井委員質問に対して、今までの質問に対しても、私がお答え申し上げたように、たとい観念的に極東のなにに入っておりましても、日本の平和と安全に直接深い関係のないような事態であるならば、これは私は出動を認めない、こういう意味において、ノーと言うということを一貫して申しております。今までの金門馬祖の問題は、起こっている問題については、こういうような事態である限りにおいては私どもはノーと言うということは、従来お答え申し上げたように私記憶いたしております。そういう考えでおります。
  64. 横路節雄

    ○横路委員 総理にお尋ねをしますが、今の総理のお答えからすれば、金門、喜馬祖で紛争が起こった、しかし、それについて、在日空軍の第五空軍、あるいは在日米軍ではございませんが、第七艦隊等が、日本施設区域を利用して戦闘作戦行動に出ることについてはノーと言う、こういうようにわれわれお聞きしておいてよろしゅうございますか。
  65. 岸信介

    岸国務大臣 私が従来お答え申しあげましたことを今繰り返して申したのでありますが、金門馬祖に先年起こったような事態、また、今日の事態のような状況もとにおいて、そこで撃ち合いがあるとかいうようなことに、直ちに米軍の出動を認めるということは、ああした離れた地域の小さい島嶼におけるそういう事態が、日本の平和と安全に直接深い関係があるとは私認めませんから、そういう限りにおいてはこれはノーと言う、こう申し上げたわけでございます。
  66. 横路節雄

    ○横路委員 恐縮ですが、総理に重ねてお尋ねをしますが、そうしますと、実は私、午前中に古井委員事前協議のいろいろな質疑を聞いておりまして、総理のお答えの中にこういうのがあった。第六条にいう嘱前協議の場合には、極東の平和と安全のために出動する、しかし、その極東の平和と安全、日本の平和と安全で米軍が出動しようとしても、その極東の平和と安全が日本の平和と安全に関係のない場合にはノーと言う、こういうようにお答えがありまして、今総理もそのお答えだと思うのです。そうしますと、ここで、一つ確めておきたいと思いますことは、金門馬祖に武力攻撃が行なわれて、局地的な紛争が起きた。武力の行使に伴う紛争が起きたが、これは日本の平和と安全には関係がない。だから、金門馬祖に武力攻撃が行なわれても、在日米軍、第五空軍及び第七艦隊、問題はあるにしても、これの日本施設区域を利用しての戦闘作戦行動は、そういう意味日本の平和、安全には関係がないから、だからノーと言う、こういう意味でございますか。
  67. 岸信介

    岸国務大臣 今のお話、御意見の通りの大体趣旨だと思いますが、一応私の申し上げることを、もし違っておりますといけませんから、私は大体今横路さんの言われる趣旨で申したつもりでありますが、なお繰り返して申し上げます。  金門馬祖は、日本から地理的にも相当遠いところにあり、小さい島でございまして、そこに局地的な武力行使等が行なわれたというようなことは、日本の平和と安全に私は深い関係があるとは思いません。従って、そういうことに対しては、私どもはこの米軍の出動を認めない、こういうつもりでおります。
  68. 横路節雄

    ○横路委員 そうすると、総理、二月二十六日に政府の統一見解として発表されて、私たちの手元に配付していただきました「新安全保障条約にいう「極東」の観念」、この中における「この意味で実際問題として両国共布の関心の的となる極東区域」、これは極東における国際の平和及び、安全の維持、その両国関心の的である極東の地域の中に、金門馬祖を入れてあるということは、私は不適当だと思う。そうでございませんでしょうか。ですから、私はたびたび総理にお尋ねしているように、私どもは、この金門馬祖極東区域に入るということについて、入るべきだとは言ってない。私たちは、これを除くべきだと、耳うているのです。ですから、今総理がおっしゃったように、金門馬祖でもって武力攻撃が発生した、しかし、それはアメリカ軍からすれば、極東の平和全体に関係するかもしれないが、今総理のお言葉では、金門馬祖に対する武力攻撃の発生、それによるいわゆる紛争等は、これは日本にとっては、日本の平和と安全の維持に関係がないから、在日米軍の出動については、第七艦隊を入れて、これは認めないというならば、初めから私どもが主張しているように、あるいは古井君が指摘もしておりますが、金門馬祖はごごで除く、こういうようにおっしゃることの方が、私はより適切だと思うので、そういう点は、総理、そういうことについて、私たちは、総理が訂正されたことを、やれ、食言だ何だと、別に追及するわけではないのですから、お取り消しになるならば、お取り消しになったら——そういうように一つおっしゃっていただきたい。
  69. 岸信介

    岸国務大臣 いわゆる極東の範囲、われわれが一応常識的に、抽象的観念ではありますけれども考えておる地域内に事が起こりましても、ことごとくこれが日本の、平和と安全に直接深い関係がある、これ自体——地理だけ、距離とかなんとかというだけじゃないと思うのです。その事態そのものから見て、関係のないことがあります。しかし、極東の地域内に起こることは、一応抽象的には、日本の平和と安全に近いものですから、関係があるという意味で、こういうふうな表現をしておるけれども、具体的な場合に、その事態いかんによって、たとい極東の地域に入っておりましても、それが日本の平和と安全には直接関係ない、その土地におけるところのごく局部的な問題であるというような場合において、米軍が出動するということは、私は適当でない、だから、その極東の範囲ということと、この事前協議においてわれわれがイエス、ノーを言うということとは、直接にその観念として関係があるわけじゃない。いわゆるノーと言うところは一切除けとか、あるいは、この中におけるところの極東に入る場合においては、いつもイエスと舌うのだというような問題ではない、そのときの事態——近接した地域に起こりましても、それ[体が局部的の問題であるというような場合においては、もちろん、ノーと言わなければならぬ、こう思います。
  70. 横路節雄

    ○横路委員 そうしますと、金門馬祖について武力攻撃が行なわれた、総理の今までの御答弁で、それについては、極東の平和と安全は、日本の平和と安全と関係がないから、いわゆる第六条にいう事前協議でチェックするんだ、ノーと言うんだと、今までは私はお聞きしておったのですが、今の総理の御答弁からすれば、何か金門、に加えられた武力攻撃の大きさ、それの具体的な事実によって、あるときはイエスとも言うし、あるときはノーとも言うのだ、こういうように私はお聞きをした。初めから、金門馬祖に加えられた武力攻撃については、これは事前協議の対象にはしないというのか、金門馬祖に加えられた武力攻撃の、何といいますか、大きさいかんによっては、そういう具体的な内容いかんによっては、イエスと言う場合もあるというのか。私は付か、今の総理のお答えからすると、その具体的な内容によっては、イエスと言う場合もあり得るというようにお聞きしたわけですが、この点はどうでしょうか。
  71. 岸信介

    岸国務大臣 これはどこの地域にどうだという、具体的なことを私申し上げておるのではございません。極東という、抽象的な観念ではありますが、ばく然たる一つの観念のされるところの地域の間に事が起こりました場合において、一般的に申して、日本の平和と安全に深い関係を打っておる場合もあるだろうし、あるいは関係はあるけれども、それほど深くはないかというような場合もありましょうし、あるいは、われわれから見て、全然これは関係のない問題だ、こういう場合もありましょうから、それは、その攻撃の大きさとかなんとかいう表現で用いることは、私は適当でないと思いますが、そのときの諸般の事情から判断していかなければならぬことである、こういうふうに思っております。
  72. 横路節雄

    ○横路委員 総理にもう一つ、他の委員質問がありますから……。そうすると、金門馬祖については、武力攻撃が行なわれた、しかし、これははるか遠隔の地ですから、しかもこれは、大陸に接岸しておる方の地域ですから、極東の平和と安全には関係があるだろうけれども日本の平和と安全という関係とは別だから、これについては第六条にいう事前協議でノーと、占う、こういうようにお聞きしておいてよろしいわけですか。大へん恐縮ですが……。
  73. 岸信介

    岸国務大臣 先ほどから申し上げておるように、局地的な武力攻撃とか武力行動というような問題のある限りにおいては、当然私はノーと言うべきものだと思います。
  74. 横路節雄

    ○横路委員 総理に申し上げますが、実は午前中古井委員質問に対する総理のお答えを開いて、実は率直なところ、二月二十六日の統一見解、それから四月一日の私たちに対する答弁、これを変更なされた、こう思ってお尋ねをしたのですけれども、今の総理の答弁で、はっきり二月二十六日の統一見解、しかも、極東の地域というのは、フィリピン以北、日本及びその周辺の地域であって、韓国及び中幸民国の支配下にある地域である、しかも、歯舞、色丹、国後、択捉、金門馬祖を含む、こういう点が明らかになりましたので、これで私の質問を終りたいと思います。
  75. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 次に、横山利秋君。
  76. 横山利秋

    ○横山委員 私は、総理大臣以下、各大臣に新安全保障条約の第二条、経済協力事項を中心といたしまして、各般の質問をいたしたいと思うのです。お断わりをいたしておきたいのは、各同僚の委員の皆様にもお断わりをいたしたいのは、この経済協力という文字に含まれておる意味というものが、今日まで予算委員会でもいろいろ質疑が出ましたが、はっきりいたしておりません。ある意味では、非常に空なような回答があり、また一方、ちまたでは、非常に重大にこれが議論をされております。しかも、その問題になります焦点がいろいろにわたっておりますので、そのいろいろな点から御質問をいたしたいと思うのですから、あるいは途中で、問題が、関係はある、しかし遠いという御意見が出るかもしれませんが、しばらく一つ御容赦を願っておきたいと思うのであります。  まず、一番最初に、総理大臣に私はお伺いをいたします。この経済協力事項を新安全保障条約の中へ入れた情勢判断、世界情勢を、特に経済情勢をどういうふうに考えるかという点であります。あまり広範でありますから、私は、特に最近の内外の経済の特徴的なもの、つまり議論のあるもの、この議論のある点を二、三あげて、その点について総理大臣の御意見を伺った方がよろしかろうと思います。  まず第一は、自由化よりもブロックだという意見であります。つまり経済の自由化、貿易・為替の自由化よりも、ブロック経済の方が中心だという意見であります。なるほど、世界を、今経済、貿易・為替の自由化がおおっておるように見えるけれども、実際は、欧州共同市場にしてもそう、自由貿易連合品にしてもそう、あるいはアメリカ州の南北を通ずるブロック化の問題についてもそう、——私が言うのではない。河野さんもそれは言っている。与党の中でも言っている。つまり目で見える限りにおいては、貿易・為替の自由化のようであるけれども、実際は、ブロック経済というものが世界の中心をなしているのではないか、これが一つ。  第二番目の新しい特徴は、東西よりも南北だという説であります。東西経済競争が行なわれてきた、また、行なわれつつある。けれども、今や南と北との新しい結合、東西のぶち当たりよりも南北結合の方が、経済政策の中心をなしているのではないかという判断であります。アメリカは、なるほどアジアやヨーロッパに手を伸ばしておりますけれども、実際足固めをしておるのは、南北アメリカ州の問題が常に中心をなしておる。中国やソビエトについても、いろいろ手を伸ばしておるけれども、アジアに中心を置いておる。また、アフリカ州におきましても、やはり西欧が一番中心を置いておる。新しい世界経済の流れは、東西の対立よりも南北の提携というところに新しい意義がある。イデオロギーの問題でなく、これは地理的な問題である、これが一つ考え方であります。  第三番目は、アメリカ世界に与える経済力の影響力が、後退しつつあるという判断であります。アメリカがくしゃみをすれば、ヨーロッパはかぜを引き、日本は肺炎になるといわれていましたが、今それを言うものはないでしょう。つまりアメリカ経済力は後退して、それぞれ独自にヨーロッパもアジアの国々も、援助はもらっておるけれども、しかし、独力の力を吹き返しておるという判断であります。  第四番目は、軍事経済よりも平和経済という判断であります。私が特にこの問題を取り出しますゆえんのものは、いわゆる日本における軍需生産は、非常に政府の力があるわけであります。この軍事経済よりも平和経済という判断であります。  私は、特にこの四点をあげて、こういう特徴的な世界経済の鋤きというものが、総理大臣の頭の中にあっての話であろうかどうか、あなたはこの四点について、どういうお考えを持っていられるであろうか。どうも安全保障条約の中における経済条項の、ものの考え方というものは、何か私どもにとっては、旧態依然たる感じを免れない。対米一辺倒の、アメリカ経済ときちっとした結びつきという旧態依然たる考え方が、根強くあるような感じがして仕方がないのですが、この四点について、率直に一つあなたの御意見を伺いたい。
  77. 岸信介

    岸国務大臣 われわれ自由主義、自由経済立場をとっておる者の間におきましては、貿易の自由化及び為替の自由化というのは、根本的な一つの原則でございます。それが、戦時であるとか、あるいは特殊の事態においてこれが制限されて、統制的な色彩を持ってくる。しかし、経済が正常化してくるにつれて、やはり各国の間の貿易・為替等を自由化して、そうしてお互いの物的あるいは金融的の関係において、自由な交通をしていくことが繁栄の基礎をなすものである、かように考えております。従って、私は、この自由主義国におけるところの基礎的な経済の観念の考え方は、やはり貿易の自由化、為替の自由化の方向に向かって、われわれが努力するということであると思います。もちろん、今お話しのように、各地において、あるいはヨーロッパ共同市場を初め、いろいろな密接な関係にある国々の間において、いろんな取りきめや機構が設けられております。しかしながら、それがいわゆるブロック化の傾向であるとかいうふうには、私ども基本的には考えておりませんが、一時的に、そういうようなブロック化的な、ブロック経済的な傾向のために、いわゆる自由化の方向に対して大きな制約になるということは、われわれとしては非常に困るということで、ヨーロッパ共同市場やその他のものに対しても、われわれはいろいろな交渉、折衝をしておるのでございます。私自身がヨーロッパをたずねたときにおいても、フランスやあるいはイギリスあるいはドイツ等におきまして、その問題について意見の交換をし、日本考えを述べておるのでありますが、その基本的な考え方について、これらの国が日本を差別待遇しようとか、ブロックを強化して、ブロック外のものとの間に差別を強化していくというような考えのないことを、しきりに、いろいろな形において述べられておるのであります。私は、やはり自由主義立場をとっておる国々の間においては、自由な経済、それには貿易の自由化やら、あるいは為替の自由化ということが行なわれていくことが、お互いの繁栄とお互い経済の発展のために適当な方針である、かように思っております。  また、いわゆる東西よりも爾北ということでありますが、私は、このに関しては、むしろ、地理的に表現されておりますけれども、そうではなくて、先進国が経済の未開発地域に対して協力をし、そしてそれの経済開発を進めて、これらとの間に貿易なり産業上の提携を深めていくことが、お互いの繁栄とお互い経済の拡大のために必要であるという考え方から、いわゆる先進産業国が、後進的な立場をとっておる地域に対して経済的に援助をし、これとの間の経済関係を密にしていくところの傾向が、強まっておると私は見ております。そういう意味において、やはり世界の平和と繁栄を期するためには、そういう方向に進んでいくべきものである、こういうふうに考えております。  また、軍需産業より平和産業へというお考えについては、私も同感でございます。これは、われわれの国内における政策もそういう方針をとっておりますし、また、そういう考え方を今後していかなければならぬと思います。  それから、アメリカ経済世界経済に持っておるところのウエートというものの変更は、ある程度私どももこれを認めております。しかし、日米関係におけるところの日本経済にとっての重要性というものは、今日直ちに減ずるとか、あるいは意義が非常に薄まったというふうには、実は考えておりません。ただ、今お話しのように、アメリカがくしゃみをすれば日本が肺炎になるというような関係とは、私は考えておりません。日米の間の貿易なり、あるいは資本の交流なり、あるいは技術の交流なりというようなことに関しましては、日本経済の拡大と繁栄を考える上から言うと、やはり重大な意義を持っておる、こういうふうに考えております。
  78. 横山利秋

    ○横山委員 総理大臣の受け取り方と、私の受け取り方と、四つの意義は認めるけれども、受け取り方が少し違、りようであります。たとえば、第一の自由化よりも私は、よりもと言っておるのですが、よりもブロック経済という点については、それでは日本は、今東南アジアに何を求めるのかという点について、あとで一回後進国援助の問題で触れようと思いますから、今申しません。この四点の問題を控えながら、見詰めながら、日本経済がこれからどういうふうにいくかという点であります。これも時間の関係で、一つだけあなたに伺っておきたいのでありますが、これまた通産大臣、大蔵大臣にお伺いするのがほんとうでありますけれども、しかし、第二条の関係であなたのお考えを伺いたい。  米国の経済が非常に弱含みであるという点をも含んで、日本経済がこれからどういうふうになるだろうか、順調な、いわゆる政府のいいます安定的発展を遂げるであろうかどうか、安定的発展を遂げるにしても、本年度の下期において、この発展の速度が伸びるであろうかとどまるであろうか、信号を上げるべきであろうか、楽観をした方がいいであろうかという点については、最近非常に意見が相半ばしているところであります。大体通説となりつつあります点は、急激な転換はないにしても、ゆるやかに上昇から下降の方へ向うのではないかという点が、一般的な意見のようであります。今私どもは、そういう判断に対して政府の今から打つ手、また、この安保の第二条の基盤をなす世界経済及び日本経済の見方が、やや楽観的に過ぎるのではないか、また、あしたの見方が、たとえば今私が指摘いたしましたような点についても、十分な判断がなされていないのではないかという点を考えるのです。で、総理大臣としては、本年下期における日本経済をどういうふうに見ておられるか、これが第一の質問です。第二番目の問題としては、今、日本経済にとって必要なことは、社会党の私どもは別にいたしましても、政府立場にとりましても、どうなるであろうかということよりも、どういう状態が好もしいか、好もしい方向にするためには、どうしたらいいかということが大事だと思うのであります。この三点について、総理大臣の御意見を伺いたいのであります。
  79. 岸信介

    岸国務大臣 ことしの日本経済界の全般の状況が、どういうふうになるかという見通しについて言えということでございますが、これは、私よりも、それぞれ大蔵大臣や通産大臣から詳しくお答えした方が適当であろうかと思うのでありますが、私は、全体的にこういうふうに見ております。いろいろな経済の見通しでありますから、これはいろいろな見解があることは当然でありますが、昨年来、日本の産業界の景気といいますか、いろいろな成長の速度や大きさというものは、予想以上に大きく、急速に進展しておるように思います。これは、あまりにそういう過激な生産力の拡充やあるいは成長が行なわれるというと、その反動としての、また沈滞の時期がくるということを相当懸念をいたしまして、むしろ、われわれの望むところのことは安定した成長であるからして、あまり大きな急変の上下があることは、経済界としては避けなければならぬ、こういう意味において、あまり過度の経済の拡大が行なわれるというようなことに対しては、むしろ警戒的な立場からいろいろな施策を考えていかなければならぬ。そういう意味から申しまして、私は、こういう非常な高い率の成長率やあるいは拡大というものが、ずっと続いていくものだとは考えておりません。そういう意味において、昨年来続けてきたところの非常に大きな成長率というものは、幾らか落ちついた形における成長率に変わってくるものである。また、それはむしろ経済界としては、私は望ましい形である、こういうふうに考えておりますし、また、そういうふうに経済を持っていくように、あらゆる施策をしていくべきものだ、こういうふうに考えております。
  80. 横山利秋

    ○横山委員 大蔵大臣にその点についてお伺いしたいのであります。今総理大臣は、注目すべき発言を行ないました。つまり私の指摘した、ゆるやかに上昇から下降の方へいく色彩を強めるのではないかという客観的判断をいたしたところが、総理大臣としては、それは好もしい姿だ、そういうような意見をおっしゃったように思いますが、違いますか。
  81. 岸信介

    岸国務大臣 非常に違いますので、私は下降するということを申してはおりません。非常な急激な上昇率が、緩和した、ゆるやかな上昇率になっていくことが好ましいということを申したのであります。
  82. 横山利秋

    ○横山委員 それは私の受け取り方の間違いでございました。つまり急激な上昇が、ゆるやかな上昇といいますか、そういう方向へ向かう。それでは大臣に伺いますけれども、そのゆるやかな上昇といいますか、それが安定した姿に陥るという確信は、どうしてあなたはお持ちでございますか。
  83. 岸信介

    岸国務大臣 私がゆるやかな上昇率が好もしいということを申したのは、経済の実態としては、安定した成長を続けていくことが望ましいという意味において申しておるのであります。はたして私が期待するように、それでは日本経済の安定的発展というものが必ずくるのかという保証は、どこにあるのだというような御意見でありますが、これはわれわれが経済政策を立て、諸種の産業政策を遂行する上において、そのことを目標としてわれわれがあらゆる施策をすべきである、こういうことでございます。それが行なわれるならば、私は、その安定的な、ゆるやかな成長率でずっと成長を続けていくという、安定成長が期せられるものだ、こう思っております。これは金融の問題、産業政策の問題、貿易の問題あらゆる問題について、適当な施策をしていかなければならぬごとは言うを待ちません。
  84. 横山利秋

    ○横山委員 いささか楽観に過ぎると思うのでありますが、これは抽象的なことではいけませんから、あとで具体的な問題に触れていきたいと思います。  右の二つの問題をまず前提として、安保の第二条の具体的な点で伺いたいと思います。  外務大臣に伺いますが、この安全保障条約の第二条、第二条のこの文章は、一体どういうふうに理解したらよろしいのでありましょうか。精神的な訓示規定的なものとして受け取るべきか、そうでなければ、日米両国は、この第二条によって生ずる何か権利ないしは義務というものが、実際問題としてあるか。もしもこの第二条がなかった場合において、また、あった場合において、どういう違いがここにあるのか、その点を外務大臣から伺いたい。
  85. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 第二条は、御承知通り安全保障条約を結ぶ上におきまして、その結びます両国というものが、経済的にも、あるいは社会的にも同一な方向をとっていく。同一方向というのは——基盤になります同一な方向というのは、自由主義の諸制度というものの上に立って、お互いに国を立てていくということは、これはこうした安全保障体制をお互いにとり合う国の形として、当然のことであります。同じような考え方を持っているべきであります。そうして、それらの基本的な立場に立って、お互いに協力しながら経済交流その他を円滑にやっていく。また、経済政策等について、いろいろ違った考えがかりにあるとすれば、それらのものについて、できるだけ話し合いをして調節していこうというので、この二条から、何か特殊の権利あるいは特別の義務というものが起こってくるのではないのであります。こうした両国関係基本的に結んでおります一つの基盤というものを、宣明したものでございます。
  86. 横山利秋

    ○横山委員 特別な権利、特別な義務というものが、この条文からは生じない。言うならば、精神的なものだという一応の答弁として私は承っておきますが、それでは、その第二条を突施する組織ないしは特別な権利、ないしは、義務はないけれども、それに背反した場合の措置はどういうふうになるのか。たとえば、先般も予算委員会ですでに問題にはなったのでありますけれども、あなたは、政府間の協議機関というものは置かない、民間の協議機間が望ましいと言っているが、実際問題としては、足立さんもいろいろ苦労されたけれども、まだできていないし、できる可雄性も今のところ十分ない。そうすると、この問題は一体どこで相談をするのか。たとえば、第四条の随時協議の中に入るのか、また、安全保障協議委員会における「両政府理解を促進することに役だち、及び安全保障の分野における両国間の協力関係の強化に貢献するような問題で安全保障問題の基盤をなし、かつ、これに関連するもの」の中に入るのか、一体この第二条をどこで、だれが、どういうふうに具体的に相談をしていくのか、その点をお伺いいたします。
  87. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 第二条の実際の運営にあたりましては、われわれは、今日まででも、平常外交ルートによりまして、経済諸般の問題につきましては相互に緊密な連絡をとってきておるわけでございます。それでありますから、第四条に示されております随時協議をするというのが、条約全体の運営にかかっておることはむろんでございますけれども、現在におきまして、第二条の実現にあたって、平常外交ルートを通じての話し合いというものが活発に行なわれておるのでありまして、それに対して、特別な何か機関を現在設けることが必要であるかどうかということについては、なおわれわれ今日必ずしもそれがすぐ必要であろうとは考えておりません。経済の諸般の問題というのは、多く外交ルートをもって各国ともやっておるのでありまして、何か特殊の政府間の機関を持っておるのは、わずかにアメリカとカナダが経済閣僚の懇談会的なものを一年に何回か開いているというような実例はありますけれども、多くの場合、外交ルートを通じて話し合いをいたしております。
  88. 横山利秋

    ○横山委員 提案理由の中にこういう一節がございます。「従来両国間に存在した安全保障体制を広範な政治、経済上の協力関係の基礎の上に置き、この協力関係をますます促進」するという提案理由がございます。「従来両国間に存在した安全保障体制を広範囲な政治、経済上の協力関係の幕礎の上に置き、」この安保関係を改めて政治、経済上の協力関係の基礎の上に置くという意味は、一体どういう意味でありますか。今あなたがお話なすったようなことであるならば、わざわざこの条文の中に入れる必要はないという感じがいたしますが、提案理由のお話と少し違いはしませんか。
  89. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 御承知通り、防衛というもの、他国からその国が侵される、そういうようなことについてお互いに守り合っていこうという、その国というものは、一つの基盤の上に立つ、それは何であるかといえば、相互協力だと思います。そしてそういう基盤の上に立たなければ、ほんとうの信頼と善意とによって問題の進行をはかっていくということはできないと思います。従いまして、今回の条約におきましても、「相互協力及び安全保障条約」ということにいたしましたのも、両国がこういう条約を結び得る基礎的な立場、すなわち相互協力というものをうたっておるわけであります。そして、それから出て参ります第二条というものは、経済上の問題あるいは社会的な問題、そうした問題についてお互いにさらに正そうの協力的立場をとっていこう、こういう意味でございます。
  90. 横山利秋

    ○横山委員 簡単に伺いましょう。重ねて、四条の随時協議の中に、また、安全保障協議委員会の中における「安全保障問題の基盤をなし、かつ、これに関連するもの」の中に、経済条項は入りますか。
  91. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 条約の運営全体にあたって随時協議をいたすわけでありますから、この第二条も何もそれを排除するものではございません。しかし、先ほど申しましたように、現在すでに外交ルートでもって十分に折衝、話し合いをいたしておりますので、特に新たな機関を設ける必要はないと思っております。安全保障協議委員会というものができます。しかし、この委員会において特に経済関係のみを取り上げる、あるいはそういうものに相当な協議の場をさくということをわれわれ必ずしも考えておりません。この構成メンバーの性質から見ましても、やはりこの委員会の使命の主たるものは、第二条というようなものを重く取り扱うべき委員会でないということは、御了解いただけると思います。
  92. 横山利秋

    ○横山委員 先ほど古井委員質問に対しまして、防衛庁長官から補給についても話が出ました。角度は違ってはおるのですけれども、私が今聞きたいのはこういうことであります。つまり、ノーマルな状態における経済問題というものは、今あなたがお話をしておられるようなことで、それは済むかもしれない。けれども、実際事前協議が発動されるような状態のもとにおける日本経済アメリカ経済を想定してみると、おのずから角度はまるきり違ってくるような気がするわけであります。先ほど古井委員質問に対して、防衛庁長官は、戦闘作戦行動と密接不可分な補給の問題は、これは事前協議の対象だと言いました。けれども考えてみますと、日本へ今事前協議アメリカからされる、その雰囲気というものがどういう状況のものであるかと考えますと、極東の範囲どこ一つ——先ほど総理大臣が言う金門馬祖を喜取り上げましても、戦場がきわめて近いということであります。それからもう一つは、近代戦というものは、まさに総力戦という意味であり、支那事変が始まりましたころのように、戦争は中国大陸でやっておる、銃後は一生懸命にお宮参りをしておる、そういう状況はもうてんで考えられないことは、御存じの通りであります。でありますから、この事前協議が行なわれるような雰囲気、瞬間のもとにおける日本経済というものがどういう状況のものであるとあなたはお考えでありますか、外務大臣、その点について、あなたの所見を伺いたいと思います。
  93. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今の御質問は、日本が武力攻撃を受けたときの状態かと思います。日本が武力攻撃を受けたということは、すなわち、国連憲章五十一条に規定されておるようなことなんでありますから、日本自衛権を発効する条件に合ったような状態、すなわち、武力で日本に何らかの攻撃があった状態だと思います。むろん、そういうときに、日本経済の運営というものは、一般的な運営以外に、あるいは原料物資あるいは食糧等の関係の問題がございましょう。そういうものをどういうふうにして輸送するかというような問題については、これは相当関係がございますので、あるいは安全保障協議委員会等においても取り上げられる問題かと思いますけれども、われわれが二条で想定しておるようなことは、必ずしもそういうことを想定いたしておるわけではないのであります。これは通常外交ルートによってやれるということでございます。
  94. 横山利秋

    ○横山委員 かりにアメリカ立場に立って考えてみましょう。ここにありますのが米国の戦時行政、第二次大戦の際において、アメリカが連合国に何を希望し、何の会議が行なわれたかという問題でありますが、まず第一に、軍用品の割当会議というものが行なわれた。これは、受ける立場日本でいうならば、通産行政でありましょう。連合国の海軍の調整会議というものが行なわれた。これはロンドン、ワシントンに機関を設けて、アメリカ及び大英帝国の船舶の配置制限、割当に関する仕出をいたしたわけでありますが、これは日本でいえば、運輸省の管下の問題になりましょう。連合国の原料会議というものが行なわれる、連合国の食糧会議がある、連合国の生産及び資源会畿等々が行なわれておるわけであります。少なくとも、事前協議をするかしないかという雰囲気、あるいは武揚力攻撃を受けるか受けないか、また、受けたその直後における日本経済、このアジアの情勢経済考えますと、これらの問題は、瞬時にして問題になってくるとあなたはお考えになりませんか。これらの問題は、日本アメリカのこの安全保障条約経済協力の会議が、どこで、どういうルートを通じ、この条文をもって行なわれるのでありますか。いかがでございますか。
  95. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 御質問のような点は、第二条が想定いたしておるような状況あるいは問題ではないのであります。そういうような場合には、そのときに応じまして両国が緊密な連絡をとって、そうして日本の食糧の問題、あるいは日本の原料輸入の問題等たにつきましていろいろ話し合いをするということに相なろうと思います。何も今からそういう話し合いの機関を想定して作っておく必要はないのでありまして、そのときに、二条の精神にのっとりまして作ればいいわけでございまして、われわれとしては、安全保障条約というものは、かねて総理が言われておりますように、防衛的であって、そういう事態が来ないようにという意味において作っておるのでありますから、現在育ちに、そういう事態に対してどういう委員会を作っておかなければならぬということまでは考えておりません。
  96. 横山利秋

    ○横山委員 はぐらかしてはいけません。明らかにそれは外務大臣が問題をそらしておる。この第二条の目的というものはどういうところにあるかという問題よりも、そういう状況の中に第二条は適用されるかどうかという問題であります。あなたは、この第二条が、ノーマルな状況もとにある第二条であると言うておられるけれども、実際そういう状況もとで第二条はどういう働きをするかということを私は聞いておるわけであります。もしも、そういう情勢下においては第二条は適用しない、こうおっしゃるなら、それで済みであります。そういう情勢下において第二条はどういう働きをするか、いかがでございますか。
  97. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 第二条というものは、申し上げるまでもなく、経済的にも両国が協力をするという精神の、相一互協力の上の基盤の一つとしてきめたものでございますから、その事態がそういう事態になりましても、州立協力の精神がさらに一そう発揮されるということは当然のことでございます。ただ、それをどういうふうな、委員会を作って運営するかということは、これは別でございます。
  98. 横山利秋

    ○横山委員 それでよくわかりました。つまり、そういう準戦時下、戦時下において第二条はそれ相当の働きをする、こういうことであるならば、初めからおっしゃれば、それで済みであります。  そこで私は伺っておきたいのは今私が、質問の中心をなすものを大よそ三つに分けて、今日までの日本アメリカとの経済協力関係において、経済政策の食い違いのあったこと、それから、今日ある、たとえば総理が言う貿易自由化や、あるいは後進国援助等の今日の問題、そうして最後に、本委員会の最も中心をなしております、想定をしておる、事前協議が発動される情勢下における日本アメリカとの経済協力はいかにあるべきか、この三つに分けて私は質問をしておるのですが、今はその最後の問題であります。今私はアメリカの例を引いて、アメリカから、こういう歴史的な問題もあるから、こういうこともおそらく提案がされてくるであろう、それに対して、あなたはこの精神にのっとって経済協力をするのだ、こういう話でございます。そうだといたしますならば、まさに第二条というものは実に重要な働きをいたします。古井委員が先ほど引き出しましたように、日本がその情勢下において、戦場は全く至近距離といってもいいほどのところで行なわれておる、近代戦は総力戦である、まさに経済的基盤の上に安保体制が乗っかっておるといたしますならば、想像するよりも相当激甚な経済協力が行なわれるというふうに想定をしなければならぬ。つまり、日本がアジアにおける近代工業国としての一大補給基地としての役割を持つ、こういうことに相なるものと思うのでありますが、この点、総理大臣の御意見を少しお伺いをいたしたいと思います。つまり、不幸にしてこの安保事前協議なり、あるいは共同防衛が発動される情勢下における日米の経済協力という点であります。たとえば、先ほどの話のような補給をする、この補給は、事前協議の対象とする戦闘作戦行動と密接不可分なものだ、わからぬときは、戦闘任務を持っておるかどうか、直接的であるかどうかという判断できめるんだ、こういうお話であります。実際問題として、今日本に武力攻撃が行なわれ、そしてアメリカから第二条によって、経済協力のいろいろなことをされる、そういう情勢もとで、これは直接な戦闘任務のものだ、これは間接的なものだ、そういう判断が、経済の問題でどこで一体つくでありましょうか。弾薬を運ぶときだけは直接だ、そうでないものは、弾薬を作ること、あるいは労働力を移動すること、あるいは特需景気か日本にくるかもしれませんが、特需の軍需生産に関する問題等、あらゆる日本国内における産業活動というものが、日米経済協力にしっかり結びつく。先ほど例をもってお話をいたしましたように、軍用品の割当、海軍の船舶の調整、原料の会議、食糧の問題、資源及び生産の問題として、アメリカ日本に対して、第二条並びに第四条——安全保障協議委員会を通じて要望するであろうことは、火を見るよりも明らかなことであって、これは歴史的に事実であります。そういう状況もとにおける日米の経済協力というものは、あなたとしては積極的にこの協力に応じてやるという考えでありましょうか。
  99. 岸信介

    岸国務大臣 先ほどからいろいろ御議論があるようでありますが、この第二条の趣旨は、平時におけるところのわれわれの経済を発展せしめていく上において、また、世界経済の発展に尽くす上において、日米が経済的な協力をするということを規定しているのが、その本旨だと思います。戦時または戦時に類するような時期において、補給等において協力するということは、これはむしろこの帆走から直接出てくるものではなくして、安保条約の精神からいきまして、いろいろな基地を使用する場合において、基地を作戦行刺の基地として使うか、補給基地として使うか、また、その補給をどういうふうにしてこれを内容的に作り上げていくかということは、その事態に応じて日米間において話し合いをいうのでありましてもちろん、それを広い意味における経済協力といえば、二条の経済協力の中に入らないということを申しておるわけではございませんけれども、二条の主眼とするところは、先ほど申しておるような平時の考え方であります。そういうような戦時または準戦時の場合におけるいろいろな補給等に関連しての原料や材料あるいは軍需品等のまかない方について、日米でとういうふうな協力をしていくかということは、その事態に応じて両国の間で話し合いをしてきめていく問題だ、こう思います。
  100. 横山利秋

    ○横山委員 総理、私の聞いていますのは、例が悪かったかもしれませんが、基地をどうするとか、あるいは補給活動をどうするかというよりも、もっと大きな問題です。日本安保の第二条によってアメリカ経済協力をすると、ここで大前提をするわけです。そうだとするならば、あなたは、ノーマルな経済情勢下においてそうだと言っている。アブノーマルなときにおいては別な問題だと言うのですか。もしもそうなら、この安保の第二条は、戦時下及び準戦時下においては適用しないというふうに判断してよろしいのですか。それとも、第二条は、ノーマルな状況、アブノーマルな状況を問わず、日米経済協力の基本方針をうたったものであるか、どっちなんですか。
  101. 岸信介

    岸国務大臣 私の申すことは、この二条を設けた趣旨というものは、平時におけるノーマルな状態において、両国の繁栄のために協力する、経済協力をするということを主眼として規定したものである、こういうことを申しておるわけであります。アブノーマルな、戦時または準戦時態勢において協力しないということではございません。そういう意味において、そういう場合を排除しておる、この精神を適用しないん、だということを申し上げているわけではございませんけれども、本条が主眼として規定しておるところは、そういうことを考えておるんじゃないんだ、こういうことを申し上げておるわけでございまして、そういう場合における協力の仕方なり、協力の内容なりというものは、そのとき両国の間において適当な機関を設けて相談してきめる、そして協力していくということになると思います。そういう意味において、この二条がノーマルな事態だけに適用されて、アブノーマルな場合にはこれが適用されないんだというふうに私が言っているわけではございませんから、このものの主としてねらっているところのものは、こういうところにあるということを申し上げたのでございます。
  102. 横山利秋

    ○横山委員 納得できません。なぜ納得できないかといいますと、かりに、あなたの言うように、第二条はノーマルな経済情勢下をねらって作ったんだと言われても、実際戦時下及び準戦時下における経済というものは熾烈なものです。激烈なものです。中途半端なことは許されない。国家の存亡に関する問題でもありましょう。そうだとすれば、第二条が好むと好まざるとにかかわらず、最大限の効果をおさめるのは、まさに戦時下及び準戦時下だと思いませんか、そうでしょうが。そのときに、あなたが、いや、これはおれがねらったものではないと言うて、消極的な協力をするその場合にはリメットのある協力でいくというなら、は、それでもよろしいのです。何だか中途半端に言葉を濁しておるということは、私は納得できない。明確に答えてほしい。
  103. 岸信介

    岸国務大臣 私は、中途半端に協力するとか、こういうことを申しておるわけじゃございません。もちろん、そういう場合において、日米が、ことに本条約の主眼としておる防衛問題に関連して協力するということにつきましては、御指摘のように、両国とも最善を尽くして協力して、そして防衛の目的を完遂しなければならぬことは言うを待ちませんが、そういう意味において、私は、中途半端な協力をその場合にはするんだというような意味で申し上げておるわけではございません。ただ、本条が設けられた趣旨は、平町においてこうした協力をすることが、両国の繁栄を来たす上において望ましいことである、こういう考えもとに規定が設けられておる、こういうことを申しておるのでございます。従って、決して戦時もしくは準戦時の場合において協力を中途半端にしようとか、あるいはこの協力関係について何かひびの入るようなことがあるというようなことは、私どもは毛頭考えておりません。
  104. 横山利秋

    ○横山委員 納得できません。そうであるとすれば、第二条を安保の中に入れる意味がないのであります。もしもそうであるならば、この安全保障条約の中にノーマルな状況を中心とした経済協力条項をうたう必、要はない。あとの条文はアブノーマルな状況を特に抽象して作ってあるから、アブノーマルな状況安全保障条約の中へ、ノーマルな状況経済条項をうたう必要が——一体異質のものではないか。私は少なくとも、もし総理大臣の言うことを百歩譲って了としたならば、これは別にするべきではないか、経済協力については別な条約、別な規定にゆだねるべきではないか、もしも、そうでないとしたならば、私は、あなたの見識を疑わざるを得ない。アブノーマルな状況の問題に私は中心を置かなかったのだということならば、一体この安全保障条約の中に挿入された第二条が、最後的に最大効力を好むと好まざるとにかかわらず発揮するときは、まさに事前協議下における日本経済ではないか。そういう点について、あなたの言っていることは矛盾もはなはだしいと思いませんか。
  105. 岸信介

    岸国務大臣 これは、たとえば安保条約の一条をごらん下さいますと、こういう原則を明らかにいたしております。また、二条も、そういう意味において、両国がこの五条以下における防衛の目的を十分達するためには、平時から経済の協力をして、両国の国力がそれぞれ充実することを念願してのことでございます。あるいは三条の問題につきましても、おそらく、平時においてこういうことをするということでございまして、すべて有事の場合だけに適用される規定をこの中に書くという性質のものではなくして、従って、条約のこの表題につきましても、日米間における相互協力及び安全保障に関する条約というふうにうたっておるわけでございますから、私が先ほど申し上げたことが、何か非常に事態が違い、また、それを別に設けなければならぬというふうには、私は考えておりません。
  106. 横山利秋

    ○横山委員 この点につきましては、大いに総理大臣と私とは意見が違うところであります。少なくとも、古井委員言葉から発展をいたしまして、防衛庁長官の話から発展をいたしまして、だれが考えてもわかることは、この事前協議が発動される、武力攻撃が行なわれるときは、遠いヨーロッパやアメリカ戦争が行なわれるのではなくして、いわゆる極東の至近距離のところで行なわれるということです。そういう状況考えれば、日本経済というものが、日本の産業というものがどういう役割をそのときに果たしそうであるか、これは子供でも私は想像ができることだと思う。その想像のできる経済日本経済というものが、第二条によってアメリカ経済協力をする。おそらく、その状況もとにおいては、労働者の労働力の問題が問題になってくるであろうし、あるいは貿易については、東南アジアからの日本に対する貿易は途中で制限される。そうだとするならば、貿易構造の問題になってくるであろう。日本の船舶はフルにそちらの方へ活用されなければならなくなってくる要求が出てくるであろう。あるいはまた、日本の食糧は、あるいはそのほかの原料は等、考えますと、実に経済が果たす役割というものは大きなものが想像される。その想像というものが、安保の第二条を締結するにあたって、総理並びに外務大臣の脳裏に去来をしなかったものであるかどうか。ほんとうにノーマルな状況だけを考えて、これは別な問題だというふうにして締結をされたものであろうかどうか、私は、その点を疑わざるを得ないのです。ですから、国際経済政策の食い違いというものを、私は、三つ指摘したい。この第二条にいう——それは今まで日本アメリカにおける経済政策の食い違いである。あとで指摘をいたします。当面、あなたが前の予算委員会で指摘した貿易・為替の自由化あるいは後進国援助等も、今も経済政策の食い違いの調整がある。しかし、好むと好まざるとにかかわらず、一番日本経済にとって重大な影響をもたらすものは、実に、事前協議が発動される瞬間における日本経済が、いかにアメリカ経済協力をするかということが論議の中心でなければならぬ。また、政府は、それに対して明快な回答がなければならぬ。それが、何か認識が足りないものか、想定をしていないのか、逃げようとしておるのかわかりませんけれども、明確を欠くうらみがある。いかがです。
  107. 岸信介

    岸国務大臣 もちろん、極東において事態が起こって、米軍日本の基地を使用して戦闘作戦行動に出る場合、あるいはまた、日本が武力攻撃を受けて、日米ともに自衛権の発動によって日本を防衛するというような事態が発生しました場合に、日米の間において、経済上においても、非常事態として協力をしなければならぬ事態が起こることは、これは当然考えなければならぬことだと思います。われわれが、武力攻撃というような事態がないように、あらかじめ防止するために、こういう条約を結ぶということを申しておるのは、人命が失われる、これも、もちろん大半なことでありますから考えなければならぬことでありますけれども、それだけではなくて武力攻撃が起こる、あるいは極東にそういう事態が起こることによって、日本経済、社会全般にわたって非常に重大な影響を持つことは当然であります。従って、事前協議の場合におきましても、われわれがイエス、ノーを言うことについて今朝米語がありましたように、慎重な態度でもってこれを検討して日本態度をきめなければならぬということを申しておるのも、そういうことでございます。私は、その場合における日米の協力を無視するとか、あるいはそれがそういうような場合において日本経済に何らの影響がない、あるいは影響は軽微なものだというふうに、軽視して考えておるわけでは絶対にございません。
  108. 横山利秋

    ○横山委員 私がそれを受け取る角度と、あなたがそれを話す角度というものは非常に違いがありますけれども、私は、実に重大な大臣の御発言だと思うのであります。言うならば、あなたのその発言というものは、そのときにおいては、日本経済というものは、まさに日米協力について最善を尽くす、逆な言葉で言うならば、日本が、古井さんのお話のように、補給基地として、一大軍事基地として、あるいはまた、重大な作戦基地としての役割を果たす、それに日本経済が、総力をあげて日米経済協力のために貢献するということに、私は、第二条の最も私どものおそれる、また、中心の問題があると思う。先ほどからのお話で、よく御意見としてはわかりました。  今度は、少し角度を変えまして、自由化の問題について話を進めたいと思います。これは、今のいわゆる経済政策の食い違いの問題であります。この間、マッカーサー駐日米国大使が、帝国ホテルで開かれた内外情勢調査会で演説をされました。その演説の一節を読んでみますと、「日本の対米輸出の増大は自由輸入政策の下で起こったごとを銘記すべきであります。日本では非常に多くの思い過ごしの報道が聞かれますが、日本からの輸入を制限するためにこれといった措置が採られたことは未だかつてありません。しかし、もし現在そうできる立場にある日本が、米国商品に対するその輸入制限削減のための措置を急速に採らないとしましたならば、米国が果してこの自由輸入政策を続けてゆくことができるかどうか大きな疑問であります。なぜなら自由貿易政策は一方交通ではありえず、貿易は公正平等の原則に基づいた往復交通でなければならないからであります。」中略しまして、「規制がはずされるにつれて、日米貿易増大への基礎が固まるでしょう。日本の消費者はいままでよりずっと広い範囲から自分の好きなものを選ぶことができるようになり、また日本の生産者は原料、半完成品、進歩した設備を、最も有能な供給者から手に入れることができるようになりましょう。日本の貿易制限政策によって日本の市場から一方的に締め出されていることに対する米国内の不満は、緩和されるか一掃されることでしょう。」こう言っておるわけです。ちょうど、これが二十六日帝国ホテルで演説をされ、原稿としては、もう二十二日ごろに発表されました。それと、期せずしてか、符合してか知りませんが、二十五日、大蔵大臣は、全国財務局長、税関長、国税局長の会合で、「自由化は世界の大勢であると同時に、貿易立国のわが国としては当然行なわなければならない課題であり、断固たる決意で自由化を推進していく考えだ。このための各種の影響については慎重に検討し、対策を立てる必要があるが、これはあくまで自由化に向かって前進する方向で処理されるべきものだ。」という演説をされたわけであります。私どもがいろいろ聞いている分では、一番最初に言い出したのが池田さんで、その池田さんが、近ごろ何というか、非常に慎重になってしまって、手綱をぐっと引き締めているという話を聞きました。今度、逆に、佐藤大蔵大臣が一生懸命に走り出した。  マッカーサー大使のお話があったかどうか知りませんが、非常に元気よく走り出したような感じがするわけであります。今日まで、政府がこの自由化に対して、いわゆる外圧論、外国からの圧迫によってやったのではないといって、外圧論に対して反抗しているかにみえるのだけれども、通産大臣いかがでございます。このマッカーサー駐日大使の率直なお話を、私は、すなおにあなたはもう一ぺん言われるべきときではないか。あなたは、つまり外圧論に対して、絶対そうではないということを盛んに言っていらっしゃったようであります。米国なりあるいはガットの強い要請が、何といっても日本における自由化の導火線になったことは、万人ともに認めるところではございませんか。この自由化は国内では、一、二の識者が言っておったかもしれません。しかし、政府として、日本経済として、間口を開くに至ったゆえんのものは、言葉は悪いかもしれませんが、外圧論が中心ではありませんか。そのあとの判断は別であります。その点について、一ぺん通産大臣の率直な御意見を伺いたいと思うのであります。
  109. 池田勇人

    池田国務大臣 私は、横山君の御存じの通り、自由経済をもってモットーとしているのでございます。従いまして、十年以前から国内経済の自由化をはかって参りました。しこうして、それと同様に、日本に国際経済の自由化がもたらされるように、国内経済を強化し、二、三年前からだんだんその機運が出てきておるのであります。私は、石橋内閣の大蔵大臣として、大豆の自由化を唱えたことがございます。岸内閣の国務大臣として、繊維原料の自由化を経済閣僚懇談会で言っております。また、今回通産大臣になりまして、就任早々、為替・貿易の自由化をはかるべきだと私は新聞記者に言っております。たまたま、それ以前に、内閣におきまして為替・貿易の自由化の閣議決定を見ております。決して外国から押しつけられてやるというのではございません。われわれの盛り上がる気持でこれをやっていこうとするときに、従来、非常に不合理な点がございますので、その不合理な点を外国から指摘したことはございます。また、世界貿易の自由化をモットーとするガットにおきまして、日本経済力の阿復と同時に、自由化をはかったらどうかという説もございます。しかし、お話しのように、不合理なことをやっておるドル地域、ことに米国から言われ、ガット総会においてたたかれたからこれをやったというのではない。われわれの経済政策として当然やるべきこと、しかも、その機運が出てきておる日本経済を、より以上拡大するための手段として自由化を唱えておるのでございます。
  110. 横山利秋

    ○横山委員 かりに、あなた自身がおっしゃるように、数年前からのそういう経済論者であったとしたところで、これは、あなた個人の論説が言われておったのであります。日本の政治の中であなたの意見が取り入れられる条件というものは、どこからきたかということを私は聞いているのです。少なくとも、このガットにおいてアメリカの強い主張があり、また、アメリカ自身から日本に対する自由化の強い要求があったということで、譲って言うならば、あなたの持論が生かされる条件が出てきた。私は、あなたに対して失礼なことを言うようでありますけれども、あなた自身が、日本が全く盛り上がって自由化になったのだというふうにおっしゃるつもりはないと思うのです。もしも、そうであるならば、私は、情勢の判断が違っていると思う。国民みんなが、日本の財界のどこの団体が、国民のだれが、中小企業のどこが、農業団体のだれが、自由化に対して決議し、推進し、池田さんにこれを言ったか、政府に対して言ったかという点については、そうではない。そういう意見の持ち主は、国内においてもないとは言わない。あなた方もその一人である。けれども、その自由化がいよいよ熟した条件となったものは、いわゆる外圧論だというふうに、すなおにおっしゃった方が、情勢としてすなおでいいのではないか、これを率直にお認めになった方が、判断は別にして、すなおではないかということを私は申し上げます。
  111. 池田勇人

    池田国務大臣 率直に申し上げておるのでございます。あなたも、日本経済の発達につきまして過去をごらん下さいましたらおわかりと思います。保有外貨が五億ドルとか七億ドルというところでは、なかなかむずかしゅうございましょう。私は、今の状態から、しかも、伸びつつある日本をこれ以上伸ばすためには、自由化よりほかにないということは、われわればかりじゃなしに、世界の人、全部認めておるのであります。しかも、日本経済がこういうふうによくなってきた。ことに、あなたにはアメリカを出されまするが、アメリカに対しての、いわゆるドル地域の差別待遇というものがクローズ・アップしたのは、おととしの暮れからでございますよ。御承知通り日本はポンド地域に対しましては輸出超過で、ポンドは余っております。ドルは輸入超過で不足でございます。しかも、そのポンドは交換性がなかった。貿易連合あるいは経済共同体の発足を見まして、ポンドのコンバーティビリティが一昨年の暮れから実施されたのでございます。しからば、ポンドのコンバーティビリティができ上がった場合に、ドルを大事にしてポンドを粗末にするような政策を日本としてとれますか。ポンド地域から自由に物を輸入するが、ドル地域からは制限して輸入させないということは何からきたかといったら、ポンドのコンバーティビリティがないからじゃありませんか。でき上がった場合に、スクラップはポンド地域から自由に輸入するけれどもアメリカからは取らない。大豆はよその国から自由に入れるけれどもアメリカからは自由に入れさせないとか、アメリカその他のドル地域に対していろんな制限を置くということは、国際的立場からいっても、信用からいってもできない。これはコンバーティビリティの回復による当然の結果でございまして、それができ上がったから、アメリカその他のドル地域が、ドルに対して差別待遇をすることは不当じゃないかと言うのは当然でございます。われわれは、それを国内経済に沿うように徐々にやってきておるのであります。しこうして、一昨年の暮れ、あるいは昨年の春ごろから、また、八月ころ、いろんな商品について自由化いたしてきております。暮れにも決定いたしましたが、ドル地域に対する自由化につきましては、各業者について十分諮問をいたしております。今までとった措置についての反対は、私はまだ聞いておりません。ことに、最も重要な繊維関係の原料の綿花、羊毛の自由化につきましては、関係業者、学識経験者、労務者、あらゆる階級の人に、二、三カ月にわたって一審議を受けまして、自由化賛成、その時期は通産大臣にまかすという答申によってやっておるのでございます。われわれの処置に対しまして、いろんな評論家はとやこう言うでしょうが、全体的の空気として、私は、民意を無視してやっては一切おりません。ただ、ここで問題になるのは、自由化の声におびえて、われわれが慎重な態度をとっていくというにもかかわらず、取り越し苦労される人がおりますので、通産大臣といたしましては、徐々にこれをやっていこうとしておるのであります。後退も前進もいたしておりません。所信に向かって着々とやっていっておるのであります。
  112. 横山利秋

    ○横山委員 池田さんの自信満々は今に始まったことではないのでございます。あなたのおっしゃる通りであるならば、失礼でありますけれども日本の産業界はかくも鳩首協議をしたり、そうして、いろんな要請を国会、政党、それから政府に持ってはこないのであります。あなたは、まるっきり自由化に日本経済界が手を振って賛成をしておる、そして池田通産大臣に全部自由化の時期については一任しておるとおっしゃいますが、いささかそれは過言ではありませんか。日本の産業界が自由化に対して心配をしておる姿を率直にあなたはおくみ取りになって、そうして、いま少しお考えをなさるべきときじゃないだろうか。私は、一番最初に、総理大臣に四点の問題をお話しいたしました。この四点の中で、自由化よりもブロック経済という点が新しい世界の特徴であるというふうにいわれておると申しました。おそらく、池田通産大臣も、その点については御意見があろうかと思っておるわけであります。日本の貿易構造も、自由化によって増進をする地域ばかりでないことは、通産大臣よく御存じであります。自由化を促進するならば、後進地域と日本との貿易は減退をする覚悟を、ある程度きめなければならぬでありましょう。そういう点から、また、自由化というものが、あなたのおっしゃるように、日本経済に対して、何といいますか、試練を与えるのだ、丈夫になったから、表へ出て少し風に当たれというような意味であるならば、産業界に対していい話ばかりではない、悪い話、少なくとも、試練を受けるという意味においては、その試練という意味が、逆な意味で、逆な立場でいうならば、これは犠牲をしいるということにならざるを得ない。かりに、一歩譲って、あなたの気持を尊重して、一時的なものであったにしろ、日本の産業界はそれによって相当な試練を受けざるを得ないでありましょう。それを、みんな手を振って、池田さんの言う通りで、あなたに時期を一任するという言い方は、いささか、あなたとしては過言ではございませんか。  それでは、私は、あなたに、一つ一つ品目ごとにお伺いをいたします。五月末に自由化のスケジュールを発表するという約束であります。今月末に自由化のスケジュールは発表なさいますか。たとえば鉄鋼は、銅は、繊維は、皮革は、紙、パルプ、ソーダ、自動車、金属、工作機械、石炭等の、これらの品目というものは、政府の予定通りに三年後に九〇%——この数字は一ぺん出た数字であります。そのように行なわれるでありましょうか。(発言する者あり)与党の諸君に私は申し上げたいのでありますが、この自由化ということは、総理大臣の口から、安保の第二条が自由化であるということを承っておるから、また、日本の産業界が、この自由化というものが安保関係ありと言っておるから、あえて私は時間をとっておるのであります。大臣のお言葉に従って私は質問をしておるのでありますから、一つ池田通産大臣のお答えを……。
  113. 岸信介

    岸国務大臣 どういう意味で二条が自由化に関係あるというようにおとりになりましたか、先ほど、アメリカなり世界の国際情勢が、自由化の方向とブロック化の方向と二つあるが、一体総理は、世界経済の大勢をどう見るかというお話のときに、私は、自由化の方向であるということを申しておるのでございます。
  114. 池田勇人

    池田国務大臣 自由化の施行について通産大臣におまかせするということは、繊維の原料である綿花、羊毛についてのみでございます。私は、全部について通産大臣にまかされたと言っておりません。速記録をごらん下さい。  それから、自由化につきまして各業界が鳩首協議をして対策を講じつつあるというこの状況は、自由化というものは、当然やらなければならないときで、これを前提として鳩首協議をして対策をやっておるのであります。これは自由化というものを前提にして協議しておるということをお考え願いたいと思います。  それから、自由化によって、東南アジア等、いわゆる原材料を輸出する国々に対して貿易が減退しやしないかというお考えでございますが、これが対策といたしましては、輸出入取引法の改正によりまして善後策を講じようといたしておるのであります。また、自由化によって試練を受ける、温室から外へ出すのだということはよくいいますけれども、外に出して、かぜを引いて死ぬるようなことは絶対にさせません。外へ出して鍛えた方が、半年、一年先に非常によくなるのだというときには、あえて一時外へ出すこともございましょう。しかし、将来を考えてやらなければならないのであります。しこうして、今お話しの通りに、鉄鋼につきましては、原材料のスクラップは四月から、銑鉄は十月からやる見込みでございます。その他、お話しの紙とか、パルプとか、あるいは機械等につきまして、これをすぐ、いついつやると言うことはなかなか困難でございます。せっかく企画庁におきまして五月末を目途として検討はいたしておりますが、その結論が、各品目につきまして出すということは、非常にむずかしいと思います。大まかなところで、できるだけ詳しく検討の上出しましょうが、私はここであえて申し上げますが、輸入額の九〇%を三年以内にやるということは、私は、この池田としては絶対に言っておりません。自由化というものは、自由化自体目的じゃない、日本経済のより以上の発展が目的であるのであります。手段でございます。手段というものを年限を切ってやるということは、今の日本の状態としてはなかなかむずかしゅうございます。また、九〇%とか七〇%とかいいますが、世界の各国の自由化の。パーセンテージは、ある一定年度、すなわち、一九四八年とか、一九五一年とか、一九五五年のアメリカに対する自由化に何%まで戻ったかという標準でございまして、全体の輸入額に対してどれだけ自由化したかという問題ではない。私は、この池田としては、絶対に三年間で九割ということは言っておりません。どちらかといえば、そうはなかなかむずかしゅうございますというくらいのことを言っているのであります。
  115. 横山利秋

    ○横山委員 経済企画庁長官にお伺いをいたしますが、五月末に発表される予定のこのスケジュールは、一体予定通り五月末に発表されるのかどうか。それは今通産大臣が品目ごとにできないと言っておるわけでありますが、品目ごとのまでを含んだものであるように、政府側から話を伺っておるわけであります。そうでありませんか。それからその発表される計画というものは、諸般の対策を含んで発表されるのであるかどうか。単なるスケジュールであるか、対策も含んで発表されるのであるか。
  116. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 五月末にスケジュールを作るということで、目下せっかく各省においていろいろ具体策を考究中であります。おそらく数日の間に、大体各省の原案ができるのではないかというようにわれわれは期待いたしております。各品目についてもちろん検討するのでありますが、その中で、たとえば自由化のできないものというようなもの、これはこれでやはりスケジュールの中に入るわけであります。でありますから、各品目について、あるいは三年でできるものはやる、あるいは五年かかるものは五年、あるいは五年かかってもできないものはできないというように、それぞれ各品目について、具体化について今研究中なのであります。従いまして、なお、各具体策は、各品目についての自由化のことを今検討中でありますから、それに関連して、いろいろ金融、財政その他の点において研究すべき問題がありますので、それもあわせて、できればこの五月末に発表したいと思っておりますが、目下それぞれの具体策を研究中なのであります。
  117. 横山利秋

    ○横山委員 長官にもう一回お伺いいたしますが、その五月末の内容というものは、今ばく然たるお話でございますけれども、その対策は、それぞれ影響を受ける産業ごとに、金融とか、あるいは税制とか、あるいはそのほか各般にわたった対策が発表されるのでありますか、どうですか。
  118. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 具体的に各品目について租税制度をどうするとかこうするとかいうところまでは、まだ決定はできないと思います。全般的に関税制度は改正しなければならぬとか、あるいはこういう租税制度を改正しなければならぬというようなことは、大体できるのではないだろうか、こう考えております。
  119. 横山利秋

    ○横山委員 通産大臣にもう一ぺん聞きましょう。その前に、総理大臣何をさっき勘違いしたか知りませんけれども、私が申し上げたのは、二月八日の予算委員会において、安保の第二条はどういう具体的なものがあるかという質問をされたときに、あなたは、今問題になっております貿易・為替の自由化は、そういうものにも関連して、両方のとっておる政策が必ずしも一致しない点もあると言うて、この貿易・為替の自由化というものが、日米経済政策の食い違いの一つの問題でもある、こういうふうにあなたは指摘せられておる。だから、安保関係があってあなたはお話をなさったのである、こう言ったのであります。その点あなたは誤解していらっしゃる。  通産大臣に伺いますが、あなたは、先ほど、この自由化によって産業を殺すようなことをしない、こういうふうおに話しになりました。私は、それなら、あなたがそうであるならば非常にけっこうだと思うのでありますが、実際問題として、それではどういう政策をとられるのでありますか。たとえば、一つ、一番問題になりそうな中小企業を例にとってみましょう。今、自動車の自由化という問題があるでありましょう。おそらくは自動車の自由化は、あなたの御意見を伺いたいのでありますが、そう簡単にできまいと思うけれども、あなたの言う通りに、実際問題としては、将来自由化するとするならばという想定のもとに、産業界としては、全力をあげて、コスト・ダウンとかあるいは自由化対策というものをやっておる。そいつが結局どういうところにいくかというと、大企業それ自身ももちろん努力しておるけれども、下請に対して、また、その下請はその再下請に対して、猛烈なコスト・ダウンを押しつけているわけであります。その結果、一番下のその再下請の労働者に対して一番しわ寄せがいっているわけであります。私は、この自由化の一つの欠陥というものが、日本における産業構造、二重構造といわれるその二重構造を、そのままくぎづけしたままで行なわれる危険性を指摘せざるを得ない。本米、農業と工業、大企業と中小企業等の日本経済構造はいびつといわれておりますが、いびつのままに自由化が行なわれるならば、これは産業構造の改警というものはできない。あなたは殺すようなことはしないとおっしゃるけれども、その以前に構造の体質改善をすべきだというのが、私どもの主張です。それから、殺すようなことはしないと言うけれども、実際それでは、今例をあげました下請に対して、あなたはどういう措置をおとりになるでありまし、ようか。私は、業種別振興法案ですか、先般衆議院を通過いたしましたが、そのような形でこれから研究をいたしますだけでは済まないのではないか、あるいはまた、商工会法案で適当な指導をするというだけでもこれは済まないのではないか。今問題になります、たとえば金属工作機械にいたしたところで、そのほかの産業の問題にいたしましたところで、自由化それ自身に見合うような政策は、一体あなたはどういう点をお考えでございますか、その二点をお伺いします。
  120. 池田勇人

    池田国務大臣 ただいままで自由化いたしましたものにつきましては、個々の品目について、中小企業あるいは大企業にいかなる影響をもたらすかということにつきまして、十分検討いたしております。たとえば、この一月から自由化いたしました石こうにつきましても、日本の石こう工業の状況から見まして、品位の高い、日本競争のできないもの、たとえばエジプトから参ります石こうは自由化いたしましたが、品位の低い、メキシコからの石こうの輸入は自由化いたしておりません。そういうふうに個々の品目につきまして検討を加えてやっておるのでございます。  なお、第二段の自由化と二重構造の問題でございます。二重構造の問題は、わが国に限ったことではございません。自由化している国々にいたしましても、非常な二重構造になっている例が多いのであります。しかし、特に日本におきましては二重構造の状態がひどいので、この際、体質の改善を早急にやらなければならぬ。従って、問題の自動車につきましても、私は、アメリカにほとんど全部日本の自動車をどんどん輸入さしているけれどもアメリカの自動車をほとんど制限して入れさせないじゃないか、これで貿易の自由化ができるか、こう言っておりますが、日本の自動車工業は、私の見るところでは、二年はもちろん、三年でどうか、あるいは会社によったならばそれ以上要するのではないか。しかし、これは政府並びに業者の今後の努力によってよほど違って参りまするが、自動車工業につきましても、この自由化の場合において、大メーカーは、そうして下請は、これからどういうような態勢を整えていくべきかということを、政府も民間も研究して、そうして見通しがついてから私はやる考えでおるのでございます。従いまして、体質改善、二重構造の今のような弱い中小企業者でなしに、もっと強いものにして、安心して自由化をやっていきたいという気持でおります。
  121. 横山利秋

    ○横山委員 私の質問をしたもう一つの点、中小企業政策について具体案はいかがであるかという点について、お答えがありませんでしたが、ついでに、もう一つその点について申し上げておきますが、日本の産業、二重構造の一番中心であります下請企業というものについて、特段の措置をするつもりはないか。第二番目に、零細企業政策というものが、声ばかり大きくて、実際問題としてはなされていないのだが、特に零細企業政策というものの推進を各般から取り上げる必要はないか。それから、中小企業金融という問題を、一つ今日問題に取り上げる必要があるのではないかという諸般の問題を含めて、二番目のお答えを願います。
  122. 池田勇人

    池田国務大臣 下請企業は、おおむね中小企業でございます。自動車を例にとりまして私が申し上げた通りでございます。下請企業と親会社との関係につきましては、既存の法律もございます。これを活用していきたいと考えております。零細企業、また、中小企業金融につきましても、今までの制度を拡充強化すると同時に、先ほどお話になりました業種別振興法、商工会法等を施行いたしまして、実態をこの上ともつかんで、そうして強力な施策をやることが、経済全体の発達の上にも、また、自由化のためにもぜひ必要であると私は考えて、今後今までの措置、そして今御審議願っておりまする法案の施行等によりまして、万全を期したいと考えております。
  123. 横山利秋

    ○横山委員 ほかの問題もありますから、自由化に十分な時間がとれないのは非常に残念でありますけれども、私は先ほどちょっと申しましたが、この自由化を進める、かりにあなた方の立場で自由化を進めるとしても、日本の産業の中には、幾つもそれを留保する条件というものがあるはずだ。一つは、今申しましたような二重構造の問題である。あなたはそれに対して明快に答えておらない。二重構造の改善をせずして自由化を進めるならば、いびつな日本経済構造というものがそのまま固定してしまうではないか。体質改善をあなたはすると言っているのだが、その具体策はない。第二番目に、日本の産業基盤というものは、政府のいろいろ言っているにかかわらず、まだこの経済成長率に呼応した産業基盤というものは確立していないではないか。また、過当競争というものが、あるいはかなりの潜在失業というものが、あるいは産業構造の立ちおくれというものが、特に農業部門の立ちおくれというものがあるではないか。こういうような日本の産業の根本的な問題というものをなおざりにして、ただあなたのお話のような自由化を、慎重とは言うけれども、実際問題としては、自由化オンリーで進めていく、その中で支障のあるものは手直しをしていくと言うけれども、その支障のある根本の産業構造のこういう問題についてのお答えがない。そこに私どもとしては一番問題があると痛感しておるわけであります。  次は外資であります。一昨日でありましたか、証券視察団がやって参りました。大蔵大臣と通産大臣はお会いになったそうでありますけれども、ある人の言い方によれば、まさに第二の黒船来たるという話がございます。これによって日本の産業の中へ膨大な外資が入ってくると伝えられておるわけであります。一体、今、これからアメリカの外資が日本へ登場し得る向こう側の立場考えてみますと、私の判断ではありますけれども日本における経済成長率が高いこと、それから金利が高くてもうかること、それから賃金が安くてやりやすいことということが、向こうにとっての魅力だと私は思うのであります。これは逆に申せば、経済成長率の高いことはともあれ、高い金利と安い賃金というものは、全く恥ずかしい話だと思うのであります。しかし、それは別といたしまして、大蔵大臣にこの際ちょっとお伺いしたいのでありますけれども——どちらにお答えを願ったらいいか、大蔵大臣でも通産大臣でもどちらでもけっこうですが、一体どのくらい外資が入ってくると想像されるかという点であります。これはその規模並びに質において、私は問題の点がずいぶんあると思うのですが、先般欧州共同市場へアメリカの資本が大量に投入をいたしました。あれが一つのモデルでもあろうと私は思うのですが、これから日本の産業界へ外資がどのくらい入ってくると想像なさいますか。ただ何となくこちらもおいで下さい、向こうが来るというわけで、多々ますます弁ずということであろうか、その見通しを一つお伺いをいたします。
  124. 池田勇人

    池田国務大臣 御質問がはっきりいたさないのでございまするが、前提となるどのくらいというのは、何年間のことをお考えになっておりますか。日本経済がどれだけの成長度を加えたときにどのくらいの外資と、こういうようにお問いいただかぬと、答えようがございません。
  125. 横山利秋

    ○横山委員 それでは、欧州共同市場の例を見まして、今後五年間くらいに、外資が日本にどのくら入ってくるというふうに想像されますか。
  126. 池田勇人

    池田国務大臣 欧州共同市場の外資導入につきましては、不敏にして存じておりません。
  127. 横山利秋

    ○横山委員 それでは、この外資というものが日本に入ってくる、あなたとしてはそれを推進をされておるのでありますけれども、大体どういう規模をもってお考えでありましょうか。つまり、あなたとしては、何でも多々ますます弁ずで、入ってほしいというお考えでありますか。どういう態度をもって外資導入にあなたは関係をしていらっしゃるのですか。
  128. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 政府は、かねてから優良な外資、これは歓迎、いたしております。優良な外資ということはどういうことか、これは申すまでもなく、わが国経済に役立つ外資、こういうことであります。その範囲では、これは多々ますます弁ずるということが言えると思います。これは当方の希望であります。相手方にもいわゆる相手方のいろいろの考え方があるでございましょう。その点で、まだ為替が完全に自由化されておりませんので、当分、私どもが今考えておりますように、優良なる外資の磁極的歓迎といいますか、導入、こういう点で努力して参るという考え方でございます。
  129. 横山利秋

    ○横山委員 この経済協力によって、政府の言うところによれば、日本アメリカに期待し得る一つの問題として、外資の導入というものがある。しかしながら、外資がかりに無制限に入ってくるということになりますれば、そこにまたいろんな意味の問題が発生をして参ります。今、通産大臣と大蔵大臣の間に意見の相違があると伝えられておるのでありますが、一体、外資というものは、国際収支という点でチェックすべきか、それとも国内産業の保護という点でチェックすべきかという点であります。今日、御存じのように、外資法と外為法と両方によってチェックがされておるのでありますけれども、今、証券視察団の来日に伴って、外資導入方法の緩和、この条件の緩和というものが議論されておりますけれども、きのうでありますか、証券視察団のお二人の大臣がお会いになって、緩和の条件についてお話し合いをなさったということであります。株式の取得制限、元本の送金期日の短縮等々、今外資導入の法律の運用条件を緩和するといわれておるのでありますけれども、どういうふうに緩和をせられるのか、最終的にどういうふうにきまったのか、お伺いしたい。
  130. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいま証券引受協会の諸君が参っておりますが、具体的に話し合ったという段階ではごいません。ただいままで他の委員会等において政府の方針を随時説明して参っておりますが、それを繰り返して証券協会に話をしただけでございます。ただいま、まだ他の委員会でお話したことがさらに発展しているという段階ではございませんので、今までお話したことで御了承いただきたいと思います。
  131. 横山利秋

    ○横山委員 それでは、一つ根本的な問題についてお伺いをいたしますけれども、御存じのように、この問題については、日米通商航海条約というものがあって航海条約では、国際収支に危険をもたらすおそれがない場合においては、無制限に外資を導入するという条約になっておるわけであります。ところが、外資法並びに外為法はそれに上回る制限をいたしておる。そこで、問題になる日米通商航海条約をどういうふうにするか。外資法、外為法を改正するには、日米通商航海条約がじゃまになるといわれておるのでありますが、私ども見解は別といたしましても、通産大臣にお伺いをしたいのは、先般予算委員会においてお伺いいたしたところによれば、あいまいなお話でございましたが、日米通商航海条約の線に外資法、外為法を直していくのか、あるいは日米通商航海条約を改正して外為法、外資法の線へ直すのか、また外為法、外資法というものを一本化して対外経済法を作るのか、この点について将来の根本方針をお伺いいたしたい。
  132. 池田勇人

    池田国務大臣 ただいま御質問の点につきましては、大蔵省初め通産省、関係各省で鋭意検討を加えておるところでございます。
  133. 横山利秋

    ○横山委員 鋭意検討を加えておるのですが、池田通産大臣に私はお伺いをいたしておるのです。あなたは、この間予算委員会において、日米通商航海条約については、外為法、外資法のことをも考えながら改正をするということをおっしゃったけれども、今現に証券視察団が来ておるのであります。それらの人に対して、日米通商航海条約の制限については、先ほど読み上げましたマッカーサー大使も、証券に対する制限については指摘をいたしておる。あなたはそのアメリカの要請に対して通商航海条約の線に沿うた法律改正をするおつもりですか、いかがですか。
  134. 池田勇人

    池田国務大臣 日米通商航海条約の第十二条二項の規定並びに同条約の議定書の附則第五条の規定によりまして、これの通りにやっていった方が日本経済、産業にいいか、あるいはまた、外資法、外国為替管理法をどの程度改正して日米通商航海条約との摩擦を排除していくかは、重大な問題でございますので、ただいまお答えすることはまだ早いと思います。
  135. 横山利秋

    ○横山委員 あなたはそうおっしゃっておられますけれども、まさに重大な点であればこそ、私は、日米経済協力という線に沿って、これが国際経済政策の食い違いの一つであるから、さらに念を押してあなたにお伺いをいたしておるのであります。今日まで外資が日本に参りましたのはそう大きな数字だとは私も思いません。けれども、その質においては注目すべき問題がたくさんございます。たとえば、国会のほとりに最近建ちました日本軽金属の問題も、あなたがかつて御指摘になった通りであります。あるいはまた、おもちゃの問題、コカコーラの問題、石油に対する外資導入の問題、あるいはテレビ、ミシン等、一つ一つの外資導入のことを考えますと、二、三日前に通産省が「外資導入の現状と効果」というものを発表されましたが、量においては大したことはない、この指摘は一応受け取ってもよろしゅうございます。しかし、質においては、日本のそれぞれの産業に相当の問題を常に発生いたしておるのであります。私がお伺いをいたしておるのは、日米通商航海条約の制限、つまり、国際収支に危険がなければ外資はどんどん入れましょうという制限だけで、通産大臣としてよろしいおつもりであるかどうかということを、あなたに何回もお伺いをいたしておるのであります。その意に沿ってあなたもお答えを願わなければなりません。私が言おうとしておることは、今後の外資の導入が非常にたくさんになるということが一応想像される、その想像される外資の導入というものと、産業の保護、産業の条件というものをどうお考えになるか。また、大蔵大臣と通産大臣の間に意見の相違があるし、外資の問題が手続やその他で非常に権限争いというものがあって、みっともない話だと私ども思っておるのでありますが、一本化をなさるおつもりはないかという点をも含めてお伺いをいたしておるわけであります。
  136. 池田勇人

    池田国務大臣 先ほど申し上げましたごとく、通商航海条約第十二条第二項は、お話通り日本の外貨事情が非常に悪くなる場合、また外貨事情が非常に悪くて今後外貨事情をよくする場合の制限はいいけれども、ほかの制限はよくないということになっておるのであります。ドイツやアメリカ等の対外経済法はそういうことだけではございません。そこで産業政策を入れて改正するか、あるいは今でも、横山君御承知と思いまするが、外資の導入を制限はいたしておりません。外資法によりまして制限はしていない。幾ら外資が入ってもよろしゅうございます。ただ、出るときに、元本と利子配当の保証をいたしません、こういうことだけでございます。外資法があるゆえんのものは、外資審議会にかけて審査した分につきましては、元本あるいは利子の送金を政府が保証しよう、こういう建前になっておるのであります。だから、現状は、向こうが元本や利子の引き揚げはいたしませんというのなら、幾ら入ってきてもいい制度になっておるのであります。そこで、幾ら入ってもいいが、出るときは出しませんぞということが、今のような状態で日本経済が外資を要求しているときに、いいかどうかという問題、そしてまた片一方では、外貨事情ばかりでなしに、日本の産業、経済というものを考えて、外資の導入を制限しようとすれば、日米通商航海条約を変えるか、あるいは現行の外資法あるいは為替管理法の改正にとどめるか、非常に外交問題並びに国内産業、経済もとをなすものでございますから、今ここで私はお答えすることもできませんし、また軽々しくお答えするということはよくないと考えておるのであります。
  137. 横山利秋

    ○横山委員 それでは、時間もございませんから、次の問題に移りたいと思います。  日米の経済協力というものがアジアの国々に影響を与えることは、単に経済面ばかりでなくて、軍事面についてもそうであります。一番問題になりましたのは、先般来本委員会で、中国との問題についていろいろと議論がされております。池田さんにもう一つその点で引き続いてお伺いいたしますが、あなたは一番最初にものを言われたのは、本年の一月五日であります。新聞記者会見をして、日中関係の打開をすべきであるという発言をなさいました。これが河野さんの自由化反対論と相待って、政治の重要な問題に発展をいたしたわけであります。あなたは、安保が済んだら今度は日中の問題だ、そうして日中の貿易をというふうに言われておるのでありますが、その意味はどういう意味でありますか。質問関係上、まず、あなたの真意を伺っておきたいと思います。
  138. 池田勇人

    池田国務大臣 私は、日中あるいは日ソ関係につきましての意見の発表は、昭和二十九年の八月、自由党の幹事長のときに言っております。第二回目が本年一月一日の中国新聞でございます。それによりまして、新聞記者会見で、日中の貿易の回復は望ましいことだ、安保条約とこれが直接に関係のあるべきものじゃない、私はこう言っております。
  139. 横山利秋

    ○横山委員 しかし、それにしては、今日安全保障条約の問題が国内の話題の中心となって、そうして安保が、何といっても、あなた方がどう指摘をしようとも、中国、ソビエトを仮想敵としておるという一つの判断があるのです。そういう中で、特に勇敢ともいわれるように、次は日中の問題だとあなたが一月五日に発言をされたということは、今後のあなたの政治的な態度、それから自由民主党の今後の外交政策、貿易・経済政策というものについて、少なからぬ影響を与えておることは、政治的に明瞭なことであります。確かにあなたは、それは前から、幹事長のときから言われたかもしれません。けれども、こういう条件のもとに、安保の次は日中だというふうに言われたことに、私は意味を感ずるわけであります。あなたが、いや、それは何でもない、前から言っていることをそのまま言っただけだというふうにおっしゃるつもりであるかどうか、重ねてお伺いいたします。
  140. 池田勇人

    池田国務大臣 日中の関係は、歴史的に申しましても、文化的に申しましても、また、わが国の経済状況から申しましても、これが貿易再開ということは常に望んでおるところでございます。安保は、日本の安全保障のためにこれはぜひ必要でございまして、審議を願っておるのでありまするが、だといって、日中の貿易関係というものをほうっておくわけではございません。われわれとしては、できるだけ早くこれが打開できることを望んでおるのであります。しこうして、今、ソ連中共を敵視しておるとおっしゃいましたが、私はそういう考えは持っておりません。
  141. 横山利秋

    ○横山委員 先日、横路委員総理質問を日中の問題についていたしました。たしかそのときに総理も、中国が侵略国だと国連でいわれたそのことについては別であるけれども、今私はそうは思っておりませんという答弁をなさいました。ちょうどその直後でありましたかアメリカのマン国務次官補が、上院の州際・外国商業委員会の公聴会で、こういう発言をいたしておるわけであります。米政府は一九五〇年以来中共、北朝鮮には事実上の禁輸措置をとってきた。米国がこの禁輸措置を少しでも緩和したならば、世界じゅうから米国が中共に対する態度基本的に変えたものとみなされ、米国が中共と政治的に妥協する前ぶれが出たと受け取られるであろう。米国の友好国ではこれにならって北京と妥協しようとする圧力が強くなるであろう。米国の対中共禁輸緩和はわれわれの影響力を弱める。北京の影響力を強めるような政治的、経済変化をまねき、中共が低開発地域、特に極東の低開発地域に浸透する道を開くことになろう、こういうことをマン国務次官補がアメリカの議会で言っておるわけであります。このことは、明らかにアメリカの中国に対する外交経済政策と、あなたの言うところの中国観とは、非常な食い違いを見せておるわけであります。どうしても米国は中国に対する禁輸措置を少しでも緩和しない。これをやったらほかがまねるかもしれない、こう言っておることに、総理としては、この間お話しのように、侵略国でないと自分で思っているだけでなくて、米国の中国政策を変えさせるという努力をなさるお気持はありませんか。
  142. 岸信介

    岸国務大臣 これは従来も私申しておることでありますが、中共との間に買易の関係をわれわれは持ちたいと言っておる。アメリカはそういう考え方に立っておりません。また、チンコムの問題に関しましても、日米の間において、これは三年前に私が行った当時にちょうど問題でありましたが、考えが違っておることも明瞭であったのであります。これらのことに対して日本考えをわれわれとしては十分に述べ、われわれがわれわれの政策をとることについて十分な理解をさせたことの経験を持っております。日米の間において中共に対する経済・貿易の政策において食い違いがあることは確かであります。これについては、日本日本としての立場をとって進んでいく考えでありますし、また、その間において米国にわれわれの考えを述べるということは当然である、かように思っております。
  143. 横山利秋

    ○横山委員 そうであるとするならば、あなたが思っておるばかりではなくて、実際にその仕事をしなければならぬと思うのであります。私は、今日米関係において、日本が中国の問題について、アメリカに、私は中国はこう思っていますということを言うてしまっておるわけでありますから、吉田さん以来害うてしまっておるわけでありますから、その渡した一札を、あれはもうあの当時の状況でございますから、この際、私どもの中国観はこうでございますということを申し出ることが必要ではありませんか。今、ここであなたが、わしは中国は侵略国とは思っていないと言ったところで、アメリカでは、現にあなたが指摘しておるように、日本とは中国観が違うのでありますから、禁輸措置を緩和しないと言っておるのでありますから、この点についてあなたはほっておかずに、一つ中国に関する吉田内閣総理大臣当時のダレス書簡をやめる、あるいは撤回するというふうに、はっきりおっしゃることが必要ではありませんか。念のために、御存じだと思うのでありますけれども、この点を一ぺん読んでみますと、   中国の共産政権に関しては、この政権は、国際連合により侵略者なりとして現に非難されており、その結果、国際連合は、この政権に対するある種の措置を勧告しました。日本は、現在これに同調しつつあり、また、多数国平和条約の効力発生後も、その第五条(a)の(III)規定に従ってこれを継続するつもりであります。  この規定により、日本は、「国際連合が憲章に従ってとるいかなる行動についても国際連合にあらゆる援助を与え、且つ、国際連合が防止行勅又は強制行動をとるいかなる国に対しても援助の供与を慎むこと」を約している次第であります。なお、千九百五十年モスコーにおいて締結された中ソ友好同盟及び相互援助条約は、実際上日本に向けられた軍事同盟であります。事実、中国の共産政権は、日本の憲法制度及び現在の政府を、強力をもって顛覆せんとの日本共産党の企図を支援しつつあると信ずべき理由が多分にあります。これらの考慮から、わたくしは、日本政府が中国の共産政権と二国間条約締結する意図を有しないことを確言することができます。   千九百五十一年十二月二十四日          吉 田  茂    ジョン・フォスター・ダレス大使殿 これに対してダレス大使から吉田内閣総理大臣あてに手紙が来て、最後に「私は、貴簡に対して感謝し、貴総理がこの困難で論争の種となっておる問題に対してとられた勇敢で直載な態度に敬意を表します。」こう言っておるわけであります。少なくとも、この公式に内閣総理大臣からダレスに対してあてられた手紙というものは、今日あなたが今国会において中国問題を語っておることと全く異質のものだと私は断定せざるを得ない。あなたも断定をなさると思うのであります。そうだとしたならば、これが日本政府態度として、これ以来中国問題についてアメリカに対してあなたは公式をもって書簡を送られたことはないと信じますから、このまま残っており、ダレスから賞讃を受けるべき中国観というものが、日米国交の中国観の条件になっておる。あなたは、中国が侵略者ではない、侵略国ではない、しかもまた平和愛好国の一つであるというふうにおっしゃるならば、この吉田書簡をこの際撤回をする、取り消す方途をおとりになることが必要だと思うのでありますが、いかがでありますか。
  144. 岸信介

    岸国務大臣 それは私の理解しているところによれば、日本が日華条約を結ぶ前提となった交換公文であり得るように思うのであります。そして、日本と中華民国との間に平和条約が結ばれ、友好関係が樹立されて、今日なおそれが続いておるのであります。そういう意味の、歴史的の意味を持っておる交換公文であろう、取り消すとか、取り消さないとかいうような問題ではないと思います。
  145. 横山利秋

    ○横山委員 歴史的な意味を持っておる交換公文であるから、取り消す必要はないということは、どういう意味でありますか。その当時については効果があるけれども、今は効力を生じないという意味でありますか。
  146. 岸信介

    岸国務大臣 その交換公文として、交換書簡としての意味は、その当時において一つ意味を持ち、それに基づいて日華間の条約が結ばれる前提をなしておる意味において意味があったのでございまして、今日においては、われわれは、それが日本を拘束しているというような性質のものではない、こういう意味で申し上げたのであります。
  147. 横山利秋

    ○横山委員 はっきりいたしません。これが日華条約の基礎をなす交換書簡である、だから、日華条約の基礎をなす交換書簡としての意味があったのであるから、今ではその効力を失っているから取り消す必要はない、こういう意味でございますか。
  148. 岸信介

    岸国務大臣 私が言うのは、その書簡の本来の意義といいますか、使命といいますか、そういうものは、すでにその交換によって、それでもって達しており、それでもって終わっておるものだ、こういうふうに考えます。
  149. 横山利秋

    ○横山委員 けれども、これは約束をいたしておるわけであります。「わたくしは、日本政府が中国の共産政権と二国間条約締結する意図を有しないことを確言することができます。」と約束をしておるのです。その約束に対して、ダレス氏は、勇敢だ、けっこうでございますというてお礼手紙を出しておるわけです。それではあなたは、この吉田内閣総理大臣がダレスにあてて出した手紙については責任を持たない、こうおっしゃるつもりでありますか。
  150. 岸信介

    岸国務大臣 私の申し上げているのは、その書簡の交換は、日華の間の平和条約を結ぶことの前提をなしているものであって、それに基づいて日華の間に平和条約が結ばれましたので、その書簡の目的というもの、使命というものは達せられておるのであって、今日、それが何か両国を縛っておるというような性格のものではない、こういうことを申し上げたのであります。
  151. 横山利秋

    ○横山委員 あなたは少し誤解をしておられるようであります。この書簡の前文には、こういう点が記載されています。「拝啓、過般の国会衆、参両院における日本国との平和条約及び日米安全保障条約審議に際し、日本の将来の対中国政策に関して多くの質問がなされ言明が行われました。その言明のあるものが前後の関係や背景から切り離されて引用され誤解を生じましたので、これを解きたいと思います。」という前文であります。でありますから、日本の将来の対中国政策について約束したことに相なるわけであります。いいですか、吉田内閣総理大臣は、アメリカの大使ダレスに対して、日本の将来の対中国政策に対して約束をしたわけであります。これに対してあなたは、台湾の政府条約を結ぶ前提になったものだ、それだけに固執をせられておるようでありますが、そうではない。私の聞いておるのは、将来の中国政策について約束をしたという書簡であるから、その約束について、あなたは、政府がかわったから責任を負わないと言うのならそれもよし、あるいは台湾政権と条約を結んだからそれで意味はないから、この中国と条約を結ばないということについてはもう意味はない、これに対して拘束をされないと言うならそれもよし、そうでなければ、この書簡については、アメリカに対して、条件が変わっておるということをあなたが申し出る必要がありはしないか。そうでなければ、先般来本委員会で横路委員に言っていることは、何の意味だか私には全然わからない。いかがですか。
  152. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 ただいまの交換書簡の点でございますが、私から補足させていただきます。御指摘の通り、初めの方にそのようなことが言われておりますが、その実体的な部分、つまりオペラティヴ・パートと申しますか、その中には「わが政府は、法律的に可能となり次第、中国国民政府が希望するならば、これとの間に、かの多数国間平和条約に示された諸原則に従って両政府の間に正常な関係を再開する条約締結する用意があります。この二国間条約の条項は、中華民国に関しては、中華民国国民政府の支配下に現にあり」云々、こういうことが言われております。この書簡に基づいて、現実に日華平和条約が結ばれたわけでございます。従いまして、この書簡の使命はもうこれによって果たされたものだ、このように考えております。
  153. 横山利秋

    ○横山委員 あなたのおっしゃったこれは、今総理大臣が言った台湾政権との問題について、法律上の条件を言っておるのであって、先ほど私が読んだところは、中国の共産政権については後段においてずばりと言っておる。中国の共産政権はこういう政権であるから、だから私は、この考慮から、「日本政府が中国の共産政権と二国間条約締結する意図を有しない」と、最後に明確に言ってのけているわけであります。この点については、中段における台湾との条約の問題と切り離して解釈されるのが当然であって、この中国の共産政権に関する後段の規定というものは、きわめて明瞭である。この点を私は指摘しておるのでありますから、総理大臣から、重ねて、先ほど私がお伺いをしておる点、つまりあなたは、自分の意思として、岸内閣として、この吉田書簡に対して拘束をされるかどうかという点を明確にされんことを望みます。
  154. 岸信介

    岸国務大臣 先ほどお等え申し上げました通り、私は、その書簡の使命はその目的を達しているものである、かように思っている。従って、取り消すとか、縛られるとかいう問題ではないと思います。
  155. 横山利秋

    ○横山委員 わかりました。それではあなたはこの書筒によって縛られない、拘束されないという点について、わかりました。  それでは、あなた一人がそう思っておるだけではいけないのであります。あなた一人が、私はこれは拘束されないよと言うだけでは、だめなんであります。あなたは、中国についての認識を、この吉田内閣総理大臣とは違っておるということを明確にされたわけですから、この書簡というものは、日本の公式の書簡としてアメリカへ行っておるのであります。日本の中国政権に対する態度として行っておるのでありますから、その行っておる問題について、あなたは中国に対する認識を変えた、そうして、中国について、今後はこういうふうに進みたいという考え方を明らかにされる必要があると思うのであります。その点はいかがですか。
  156. 岸信介

    岸国務大臣 そういうことは、先ほど私がお答えした通りであり、そしてまた、日本が中国に対してとる、いろいろな適当であると考えるような事柄につきましては、日本は独自の立場でそれを考えていく。また、米国に対して、われわれは、できるだけわれわれの態度理解せしめ、アメリカとの間においての食い違いというものを、できるだけ調整していくように努めることは当然であります。しかし、それだからといって、今の書簡を取り消すとかなんとかいう問題ではない、かように思います。
  157. 横山利秋

    ○横山委員 私はその点について、非常にあなたのお考えを実際にされる誠意がない。あなたが、中国について、この吉田書簡についてもう無意味なものだと思っておりながら、さて米国に対して、自分はこう思っておるということを直截に言われる意思がないということを、私は残念に思います。  今度は、全然別な角度から一つお伺いをいたしておきたいと思います。冒頭にお伺いをいたしたのでありますけれども日本経済が、今後どういうふうに推移するかという点について、お伺いをいたしたいと思うのであります。日本経済が、下半期の動向を考え、かつはまた、将来についてどういうような成長をしていくかという過程で、私は大蔵大臣に一つお伺いをいたしたいことがございます。  それは、先日ソビエト政府がデノミネーションについて発表をいたしました。ソビエトの発表を見ますと、と貨幣流通の拡大の結果、施策を変更し、購買力を高めること、六一年の一月から十分の一にする、十ルーブルを新一ルーブルにする、すべて物価、料金、預金については実質的な変更はしないこと、国民、国家及び外国にも影響を与えないこと、という発表であります。このデノミネーションにつきましては、すでにフランスが実施をして、今実施段階にあることは、御存じの通りであります。かってデノミネーションが国会で論争になりましたときに、こういうような条件であればという話があったのを、私は記憶をしておるのでありますが、それは円の交換性が回復する時期が、一つの条件でもあろう、保有外貨が十五億から二十億ドルくらいの時期になったならば、一つの時期でもあろう、あるいは円の価値を切りかえたときが一つの時期でもあろう、こういうことがいわれたことがあります。私は、このデノミネーションについては、原則的に反対の立場をとるのでありますけれども、今、日本の外貨の保有が、先ほど通産大臣からもお話があったと思うのでありますが、相当の外貨保有もあり、あるいは円の交換性が回復をする時期が近づいたという話もあるときに、またしても出ておりますのが、このデノミネーションであります。大蔵大臣としては、今後の日本経済の展望の中で、デノミネーションをどういうふうにお考えであるか、この点をお伺いいたしたいと思うのであります。
  158. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 デノミネーションの理論は、最近ソビエトでこれをやる、あるいはさきにフランスでもやった、あるいはまた、イタリアでやりそうだというようなうわさも聞いております。外国は外国のことでございますし、わが国では、昨年の六月、政府基本方針をきめております。いろいろデミノネーションをやることについては、ソビエトなどではしごく簡単に考えておられるようですが、わが国の国内事情なり国民感情等から見ますと、いろいろ私ども考慮していかなければならない問題があるのであります。従いまして、昨年六月にきめた政府の方針、これをただいま変えるような考え方はございません。
  159. 横山利秋

    ○横山委員 総理大臣にお伺いをいたしたいのでありますが、このデノミネーションがなぜ国会会であれだけ議論になり、また、出たり隠れたりし、今私が問題にしようとするゆえんのものは、あなたが一番最初に、このデノミについての賛成の意見を旅先で言われたことから始まっています。で、最近保有外貨が増大をし、そうして円為替の採用という段階になって、おそらくあなたも、あの当時そういう気持があったのかと思うのでありますが、政府が否定をしても否定をしても、どこかにデノミの可能性というものが、財界なりあるいは経済界で議論をされるのであります。一番最初に、総理がこの問題について肯定的態度をとられたところに、その原因があると思うのであります。将来とも総理大臣として、デノミネーションを実施する気持がないのであるかどうか、この際明確にされたいと思います。
  160. 岸信介

    岸国務大臣 ただいま大蔵大臣が答弁をいたしました通り政府といたしましては、また私もそう思うのでありますが、昨年政府の方針を言明しているように、デノミネーションをやる意思は持っておりません。
  161. 横山利秋

    ○横山委員 それでは次に、外務大臣にお伺いをいたします。今日まで、私が冒頭に申しましたように、日本アメリカとの過去における経済関係には、幾つも幾つもの食い違いがございました。たとえば、イロア資金、ガリオア資金の問題がそうであります。たとえば、アメリカの高い関税の問題がそうであります。たとえば、アメリカに対する日本の移民の問題がそうであります。たとえば、日本商品のアメリカにおけるボイコットの問題がそうであります。たとえば、戦時中におけるアメリカにある日本人の在外財産の問題も、また問題の一つになっております。これらの過去における日本アメリカとの経済問題について、安全保障条約締結の際に、日本政府としては、アメリカに対して何らかの要求をなさったのでありますか。経済政策の食い違いといわれるゆえんの過去の問題について、何らかの解決の手がかりをあなた持たれたのでありますか、この点についてお伺いをいたします。
  162. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今、横山委員の御指摘のありましたような問題は、常時外交ルートをもって交渉いたしておるのでありまして、安保条約締結の交渉の過程におきましては、そういう問題を交渉いたしたことはございません。しかし、日米両国が今後経済上においても緊密な連絡をとって参りますから、従来よりも一そう、今後外交ルートにおける交渉において、お互いに相互の立場理解し合いながら、話し合いを進めていくことになろうと思います。
  163. 横山利秋

    ○横山委員 言葉で言えば、まあそういうことでありましょう。しかし、私は、この第二条というものが、実際問題として、もしも経済協力を実現をする過程で、日本政府として、この種の懸案なりあるいは将来の経済協力の食い違いについて、実際問題として、あなたがどういうふうにアメリカに要求をされ、どういう解決を得られたかということについて、具体的な成果をお伺いいたしたかったわけであります。それは、何ら今日まではないとおっしゃるわけでありますか。将来については、どういう具体的な問題を、アメリカとの交渉に乗せようとされるのでありますか、その具体的な点をお伺いいたします。
  164. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 たとえば、貿易の問題にいたしましても、今日までアメリカの議会等におきまして、綿製品でありますとか、マグロでありますとか、合板、金属洋食器、トランジスター、絹織物等についての輸入制限の通勤もございます。あるいは関税引き上げの問題も出ております。それらに対しまして、われわれは常時アメリカ政府話し合いをいたしておるのでありまして、御承知通り、そうした問題は、アメリカの議会等においての政府説明を了承した場合もございます。あるいは政府説明を了承しないで通過したものにつきましても、大統領がヴィトーをふるったことは、横山さんよく御承知通りだと思います。わずかに体温計もしくは金属洋食器について若干の措置がとられたというのでありまして、われわれは常時、こういう問題になっておりますものに対して、相当な外交ルートを通じまして話し合いをいたしておるのでありまして、決してないがしろにしておるわけでもございませんし、話し合いが成果を上げておらなかったというわけでもございません。
  165. 横山利秋

    ○横山委員 それに関連いたしまして私は一つ伺いたいと思うことがある。それは、今、福田農林大臣が、ソビエトにおいて漁業条約の大詰めの交渉をいたしておる。毎年々々ソビエトにおいて、大臣が行って、長期間にわたって漁業の交渉をしておるのでありますけれども、その一番最初の問題については、かつて河野さんがソビエトへ行って発言をしたと伝えられている問題に、もしも日米加漁業条約の条件であるならば、と言ったことがあります。日米加漁業条約は、ちょうど講和条約が発効いたします直前に交渉が行なわれ、仮調印が行なわれた。そうして講和条約が発効いたしました二十七年の四月二十八日を過ぎた一カ月後に本調印がされました。この点については、委員各位が御存じの通りに、この日米加漁業条約というものがいかに不当なものであるかということについて、水産委員会においては、当時理事会において反対決議をいたさんばかりでありましたし、本委員会において欠席した与党委員があることは、各位の御存じの通りであります。この日米加漁業条約が一そもそもトルーマン宣言と称する、一九四五年の九月に、アメリカの大統領が、アラスカ周辺のところにおいてはサケ・マスはとってはならぬということを言い、日本政府としては、まさにみずから公海平等の原則を放棄して、そうして日本が百七十五度以東のサケ・マスはとらないこと、アラスカ半島以東のニシン、アメリカの地先沖合のオヒョウ等については、これを放棄したことに根本の問題があるのであります。この原因の中心になりました理屈、つまり、自発的抑止の原則というものが、自後、ソビエトとの交渉におきましても、あるいは国際海洋会議におきましても、常に問題になっておるのであります。私は結論的に申しますが、この日米加漁業条約が、国際的な漁業条約交渉のいつもガンになっておる。そうして海洋会議において、先般アメリカがこれを提案したときに、日本がそれに対して反対に回り、これは国際的に否決された原則でもある。しかも、この自発的抑止の原則それ自身が、ソビエトとの交渉についても支障があるということになっておるわけでありますが、この際、政府としては、国際的経済政策の食い違いの一環として、日米加漁業条約についての改定アメリカに申し入れる必要は認めないか。アメリカヘこの改定を申し入れるべき機会であると思うのでありますが、いかがでありましょうか。
  166. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 日本の水産業者の活躍というものは相当に有力なものでありますることは、御承知通りだと思います。従いまして、その点において日米加三国の間に若干の食い違いがあったことも事実です。従って、こういうような日米加漁業条約によりましてこれを調節するという作用をいたしたのでございます。その後円滑に運用されております。一昨年もしくは昨年に、アメリカ側の国会におきまして、若干これについて問題が提起されたことは、横山委員も御承知だと思いますが、その問題等につきましては、両国政府の間におきまして、民間業者等の会合をやりまして、そうして問題が理解を得たので、今日まで昨年の問題は円滑に推移してきておるわけでございます。そういう意味におきまして、この漁業条約及びそれに基づきます日米加漁業委員会というものが、現状において必ずしも不当な運営をされているというふうには、われわれとっておりません。むろん、こういう条約について改脅すべきものがあれば、時勢に応じて改善すべきことは当然でございますけれども、今日の日ソ漁業交渉等と対比して、日米加三国の委員会の処理というものが、必ずしも日ソ委員会等と比べて不当に激しいものであるというふうにはわれわれ考えておりません。
  167. 横山利秋

    ○横山委員 これは外務大臣、当時のいきさつをあなたは御存じないのでありますかどうか知りませんけれども、非常に楽観した話であると私は思うのであります。農林大臣がいらっしゃいませんが、農林大臣の臨時代理である菅野長官には恐縮なんですけれども、あなたに農林関係立場としてお伺いをいたしたいのでありますが、いうところの自発的抑止の原則、つまり三条件があって、一つには資源が満限であること、つまり、魚をとる者と魚について大きくなっていくリミットが一ぱいであること、漁獲が規制されておること、科学的研究の対象となっていること、その三条件を備えておる魚種の漁獲は自発的に抑制をする、そのこと自身については、これも大いに議論がありましょう。また、この抑止の原則は、一九五八年、ちょうどおととしでありますか、国際海洋会議で、この条約の原則についてアメリカの提案は国際的に否決をされておるのであります。そういうこと以上に、日本がこのときに百七十五度以東のサケ・マスや、アラスカ半島以東のニシンや、アメリカの地先沖合いのオヒョウをとらないと、附則できめたことについては、国会で重大な議論が発生をいたしました。そのことが、その後の漁業交渉に非常な影響を与えておる。この際、この日米加漁業条約を、アメリカに対して交渉をして、廃止をさるべき機会ではないかというふうに私は考えるのでありますが、いかがでありますか。
  168. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 百七十五度以東の水域でサケの漁獲を自発的に抑止したのでありますが、これは暫定的に抑止したのでありまして、科学的調査によっては、この抑止という問題が考慮されるのであります。現にニシンなども昨年から——それまでは抑止しておったのでありますが、昨年からニシンの漁獲も始めたのでありまして、これは科学的の調査の結果、ニシンを漁獲してもいいということで、昨年から始めたのであります。サケにつきましても、毎年この問題については討議いたしておりまして、将来におきましては、科学的な調査がはっきりいたしますれば、それによってあるいは漁獲することができるということに相なるのではないか、こう考えておる次第であります。
  169. 横山利秋

    ○横山委員 それは見解が違います。長官、この日米加漁業条約は、五年たった以降においては、その抑止の条件がどういうふうに行なわれておるかということについて検討することが約束されておるだけで、日米加漁業条約改定しなければ、その原則は動かし得ないのであります。その点はいかがでしょうか。
  170. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 今のお尋ねの件については、事務当局からお答えいたさせます。
  171. 高橋泰彦

    高橋(泰)政府委員 お答えいたします。現在自発的に抑止しておりまする西経百七十五度の問題につきましては、科学的な調査を三国間で持ち寄りまして、毎年この線の妥当性について検討いたしておる次第でございまして、この科学的な立証いかんによりましては変更することがあるというような趣旨だと考えております。
  172. 横山利秋

    ○横山委員 ごの日米加漁業条約は、三十七年五月に期限が切れるわけであります。この日米加漁業条約の原則である自発的抑止の原則、この原則によって漁業条約が成り立っておるわけでありまして、この原則が国際的に否決をされた。なぜ、こういうような不平等な条約締結をされなければならなかったかということは、国会が当時審議をしたところであります。その当時、サンフランシスコ条約調印をされる、つまり、占領下における交渉であったこと、しかも、国会は、占領下において交渉する必要はない、条約が発効してから交渉すべきだという強力な意見にもかかわらず、政府がこれを強行したところに、不平等な原因があると確信しておるのでありますが、この点について、この日米加漁業条約改定するという決意政府の中にあるかどうか、最後にお伺いをいたしたいと思います。
  173. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 この日米加の漁業問題は、結局、資源保存措置としてできた問題でありまして、先ほどから申し上げました通り、科学的調査のいかんでは、この自発的な抑止をやめることも可能なのであります。目下この科学的調査について検討いたしておりますからして、従って、科学的調査の検討結果、あるいは近き将来においてこれが抑止をやめるということもあり得るということは、一つ考えおきいただきたい。現に、先ほど申し上げました通り、ニシンなどは昨年から漁獲することに相なったのでございます。サケの問題につきましては、将来の問題としてわれわれも考えておる次第であります。
  174. 横山利秋

    ○横山委員 冒頭にお断わりをいたしましたように、私の質問は非常に各般にわたりまして、委員諸君から御意見もあったかと思うのでありますが、要するに、この第二条の性格、並びに第二条が発展をいたします点については、きわめて私は各般にわたると思うのであります。次の過程で——総理大臣からおっしゃったのですけれども、言うならば、あなたは、予期していないと私は想像されたのでありますが、この安保の第二条が、過去と現在と、それから事前協議が発動される段階における将来、この三つの時期において、日米の経済協力ないしは経済政策の食い違いから発する問題は、私が今並べ立てただけでも、全く各般にわたると考えておるわけであります。そういう点から、私の質問はまだ十分尽きていませんし、まだ問題の発展がたくさんあるのでありますけれども、時間があまりありませんので、また別の機会にいたしまして、一応私の質問をこれで終わることにいたします。(拍手)
  175. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 次に、帆足計君。
  176. 帆足計

    ○帆足委員 安保条約審議につきまして、私は、委員でありますけれども、きょう初めて発言をお許し願ったわけでありまして、国民すべてが、この問題をまじめに審議してくれることを望んでおるわけですから、十分質問さしていただきたいのでありますが、きょうは、もう時間が移りまして、同僚議員諸君もぼつぼつ空腹を感ずる時間でありますから、その緒論だけを述べさせていただきまして、他の機会に続けて質問さしていただきたいと思うのであります。  その前に一言お尋ねしたいのですが、問題の李承晩政権が倒れまして、韓国が民主化される傾向にありますことは、党派を離れて御同慶の至りでありますが、許政大統領代理が、北朝鮮の例の帰国問題を取り上げまして、これを撤回することが話し合いの前提条件だというようなことを言っております。この問題は、人道の問題として、南北を問わず、公平に赤十字の援助を受けて行なわれておりますことは御承知通りでありまして、しかるがゆえに、超党派的に国民世論の支持も受けておるのでございますから、日本政府としては、最初の人権と人道の立場を淡々として貫くという立場を堅持なさることと存じますけれども、多くの朝鮮の諸君が心配をしておる問題でありますので、総理の御所見を一言だけ先に承っておきたいと思います。
  177. 岸信介

    岸国務大臣 北鮮帰還の問題は、今お話しのように、人道的立場に基づいて、国際赤十字の協力のもとにわれわれはこれを行なっているわけであります。従って、これは国際的にも支持されているところであり、われわれとして、その方針は、これを今お話しのごとく淡々として実施していく考えであります。
  178. 帆足計

    ○帆足委員 安保審議のただ中に、いわゆる黒いジェット機の墜落の問題が起こりまして、昨日いろいろ真剣な、質疑があったのでありますが、きょうの新聞紙上などを見ましても、国民は非常な不安を感じておりまして、まだ十分には不安が解消していない状況のように思います。この問題につきまして、アメリカ国務省は、出初は、これは大統領並びに政府の関知せざるところであると発表し、やがては、開き直りまして、鉄のカーテンのかなたがどうも神秘的に見えるから、ときどきのぞくことは、これはやむを得ない正常行為であるというようなことを申しまして、新聞記者諸君の質問を受けましたときに、発表者は顔を赤くしたと伝えられておるのでありまして、私は、アメリカの国際信用のためにも、まことに遺憾な事件であったと思うのでございます。たまたま、その飛行機が日本に三機もありまして、それに対する日本政府からの問いに対して、気象観測以外のことはしないという答えでありますけれども、それに対しまして、気象観測であるけれども、必要なときは国境を越えて気象観測をするようなことがあるか等の問いを新聞記者諸君が発しましたときに、このスポークスマンのホワイト氏は明答を避けまして、逆に、いかなる方向からの奇襲にもアメリカは目をつぶるわけにいかないという、顧みて他を言うような、開き直ったような言辞を弄されたこと、これまた、私は非常に遺憾なことであったと思うのであります。従いまして、赤城防衛庁喜長官にお尋ねしたいのですけれども、気象観測にとどまるといいましても、それでは、国境を越えるような気象観測は絶対にしないことにアメリカと取りきめができておるのかどうか、その点をお尋ねしたいと思います。
  179. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 気象観測と領空侵犯とは違うと思います。気象観測の目的を持っているからといって、領空を侵犯するということは、これは不当だと思います。このたびの事件につきまして向こう側によくただしましたが、気象観測であり、他国の、ことに中共ソ連等の領空に入ってそういうことはしない、また、今までもしていない、こういうことでございます。
  180. 帆足計

    ○帆足委員 ただいまの御答弁はけっこうでありますけれども、それでは、アメリカが約束を破りましたようなときには、アメリカは、すでに一度国際的にうそをついて、恥をかいたような状況でありますし、消息通の報道を見ますると、大統領府の権威も、ときとしては、極東電司令部に及ばざること、あたかも、近衛内閣のときに関東軍司令部に及ばなかったようなことが、さすがのアメリカにも歴史の過渡期においてあるかのごとく新聞は伝えておりますから、この点、日本国民は憂慮しておりますが、アメリカがそういうような違反行為をいたしますようなときには、ただ抗議を申し込むといいますけれども、一体、それはどういう意味でございましょうか。あるいはまた、これが単に気象観測の飛行機であればよいけれども、核兵器を載せた飛行機が、将来こういうようなあやまちをするようなことがあれば、おそるべきことであるとだれしも心配するわけでありますから、そういうときには調査し、報告を求める権能があるかといいますと、報告を求めることはするけれども、調査する権能はないというような問答が繰り返されまして、調査することができないならば、アメリカが約束を守っておるかどうか、それを確かめる方法がないではないかということで、議論は中途のままになって、心配しておるのでありますけれども、これにつきまして長官の御意見を伺いたいと思います。
  181. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今のアメリカ日本に起こりましたあれは、米国政府が、「日本にある空軍基地から飛翔するU2機は、合法的かつ通常の目的のみに使用されてきておるし、今後もそのようにのみ使用されるべく、」こういうふうに言っておるのでありまして、気象観測も合法的に行なわれるわけでございます。
  182. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 ただいま外務大臣からお答えした通りでございます。現実のU2機につきましては、今お話しの通りに、違反をすれば抗議を申し込むということになっております。その抗議によってどういう方法をとるかということでありますが、アメリカ政府が保証しておることを破るということでありますならば、そうしてまた、目的外に使用するということでありますならば、退去してもらうということもあり得ると思います。  核兵器の問題につきましては、これを査察する権能は持っておりませんけれども、この安全保障条約が批准されるということになりますならば、日本が核兵器の持ち込みは厳にこれを禁ずるといいますか、日本はこれを入れないということが、国会の論議を通じまして、あるいは内閣といたしまして総理大臣の言明もしばしばあることでございますから、そういうものを持ち込んで入るようなときには、通告を受げるような措置を当然とっていくということに相なろうと思います。
  183. 帆足計

    ○帆足委員 この安全保障条約のことで国民が心配しておりますことは、やはり第一には、国内に、原爆と、ミサイルの時代に基地を置くから大へん危険であるということ、それから、アメリカが、アメリカ自身の政策のために事を起こしましたときに、日本が巻き込まれはしないかということ、それから、事前協議と申しましても、十分にわれわれの意思を表明することが、実際問題として困難ではなかろうかということ、それから、十年の期限などということは、今、一年は十年の早さで流れておりますから、五年は五十年、十年は百年の早さで流れておりまして、ちょっとあまり長過ぎはしないか。私は、きょうの古井議員の話を聞きまして、党派は違いますけれども国民の心配しておることはやはり同じである、与党の中にも良識の方がおられるなと思って、実は敬服して承ったのであります。アメリカ国会では、こういう重要なる外交条約の批准は、議席三分の二の承認が必要であると私は聞いておりますが、これは大へんいいことでないかと思います。もし与党の諸君が、そういうような心がけで審議されるならは——きょうの古井さんの質問などに対しては、あのときは与党側にも寂として声がなかったようでありますけれども、今度はもっとお考えになって、もっと慎重審議を必要とする段階でなかろうかと私は思うのであります。とにかく、島国日本は、二つ世界の中にありまして、平和の上にのみ生存し得る国であると思うのです。従いまして、軍事的な条約を他国と結ぶも結ばぬも、あるいは平和の中立の道を進むも、いずれにせよ、日本が平和でなければ、ほんとうに戦争になったのでは立地的にどうにもならぬのではあるまいか、これはだれしも心配することでありますが、安全保障という以上、私は、日本の安全保障と書いてありますけれども日本の国土と国民の生活の安全保障、こういう意味考えるべきことであるまいかと思うのでございます。日本アメリカとが、この安全についてある種の条約を結ぶと、二つの国は立地的に五千キロも離れておりますから、日本の安全保障ということとアメリカの安全保障ということは、立地的にも、宿命的にも大きなズレがあることは、私は当然であろうと思うのでありますが、総理大臣は、この立地上の問題から考えまして、日本の安全保障とアメリカの安全保障とが、立地的、戦術的に矛盾いたしますときは、どちらを優先的にお考えになっておられるか、これは一応まず前提として、お尋ねしておきたいと思います。
  184. 岸信介

    岸国務大臣 それはお答えする必要もなく、日本の平和と安全であると思います。
  185. 帆足計

    ○帆足委員 きょうの質問は六時半までということでありますので、私はその要点だけを先に述べさしていただきまして、意を尽くさないところがあります点は、同僚議員から御了承願いたいのでありますが、安全保障ということになりますと、そうすると、これは戦略にもかかわり、また、立地条件にも関することでございます。防衛庁長官は孫子の兵法を御存じでありましょうけれども、地の利ということはきわめて重要なことでありまして、この安全保障条約考えるにあたりまして、私は、党派を越えて、共通の一つの、客観的な事実があると思うのでございます。それは一つは、日本の置かれておる立地条件、もう一つは、今日の兵器の発達の状況、この二つは、党派を離れて厳密に、まず共同で検討しておく必要が、前提条件としてあるのであるまいかと思うのであります。グラマン、ロッキードなどという従来の御論議を聞きましても、今日のミサイルの時代に、何かちょんまげの大きさを論議しておられるのではあるまいかというような疑いを持つと、うちのむすこなどが申しますから、そういうことも私は正確に分析しておく必要がある。まず、立地条件から申しますと、一体基地というもの、今日の戦略的現代戦における隣地というものは、一体どういうふうに考えられておるか、まず、長官にこれをお尋ねしたいと思います。
  186. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 戦争を起こしたくない、戦争に巻き込まれないということは、お話しの通り、党派を超越して私どもも心からそれを念願し、その方策をとりたい、こう考えておるものであります。ところで、安全保障条約につきましての考え方につきまして、私ども考え方がいささか違っておるのは非常に遺憾でありますが、私どもは、そういう戦争に巻き込まれないで、平和に、今のお話のように、国土と国民とを守りたい、そのためには戦争を起こしたくない、また、全面的な戦争はないと思いますけれども、局地的な紛争等がありましたならば、それが起きないように、また、起きたならば小さいうちにそれを消しとめて、この事態を平和に回復する、こういうことが、安全保障条約の根本を流れておる思想でございます。そこで、今お尋ねの基地というものの性格はどういうことであるかということでありますが、そういう戦争を抑制し、小さい紛争を押えて大きくさせないために、アメリカ日本を守るという義務を持ち、また日本は、そのための目的といたしまして、日本における施設及び地域を、地位協定に従って個々的に協定して、これを貸与するという形になっておることも、私から申し上げる必要もありません。でありますので、基地という言葉はよほど違ってきておると思います。しかし、基地というのは、今度の安全保障条約において出てきておりますのは、事前協議の場合であります。この施設及び地域をアメリカの軍隊が使って、戦闘作戦行動等に出る場合に、この飛地の使用について、事前協議というような制限を加えておるわけでございます。でありますので、条約上の問題からいいまするならば、施設及び地域の貸与ということでありますが、それが作戦行動に使われる場合等においてこれが基地、こういうふうにいわれるものと私は承知しております。
  187. 帆足計

    ○帆足委員 ただいま基地についての長官の答案は、私は、陸軍大学としたならば、これは落第であると思います。と申しますのは、アメリカの防衛辞典を見ましても、基地というものは、守るべき一定の本拠に対して、本拠を主体として、そうしてその前線基地、補給基地、中継基地、ときとしては犠牲基地、こういうふうに書いてあるのでございますが、この方が明確でないでしょうか。
  188. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 でありまするから、この安全保障条約において、アメリカに貸与する施設あるいは区域ということになっておりますけれども、それが作戦等に使われる場合、今お話のような場合に、それは基地と、こういうふうに称せられる、こう私は申し上げたわけであります。
  189. 帆足計

    ○帆足委員 さらに、アメリカの国防辞典によりますと、基地とは、奇襲の際に、アメリカ本土が時をかせぐために、前方に前線基地を持つ、海綿があたかも水を吸収するごとく、原爆その他の攻撃を一手に吸収して、本国が、時をかせぎ、それから攻撃を分散せしむる機能を有する場所である、この定義は、私はきわめて明確にして科学的であると思いますが、防衛庁長官、戦術家としてどうお考えですか。
  190. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 軍事的にそういうような解釈が成り立つと思います。しかし、安全保障条約上における基地というものは、どういうふうに考えるかということでありますから、私は、日本といたしましては、施設及び区域アメリカに貸与する、それが作戦等に使われる場合に基地と称せられる、こういうふうに了解いたします。
  191. 帆足計

    ○帆足委員 各国の国防辞典を調べてみますると、おおむね海綿が水を吸収するがごとくで、相手国の爆撃をそこに吸収し、時としてはこちらから先方を攻撃する場所、すなわち、おおむね前線基地、これが第一、第二は中継ぎ基地、補給基地、そして時としては、犠牲基地、私は、この定義が非常に正確であるとするならば、安全保障条約を結び、外国に基地を貸すにあたっては、立地的考慮というものが必要だ。そこで、安全保障につきまして、日本の安全保障とアメリカの安全保障とこの二つが調和しなければならぬ。アメリカの安全保障のためには、彼は五千海里隔たった先方の日本、ちょうど王の前に置かれた歩のような日本、九千万の人口のあるアッツ島のような四つの島、この島がアメリカの防壁として役立つことは、だれでもわかることです。私は、その善悪を述べておるのではありません。物理的、客観的な事実について、党派を離れて——物理学の問題は党派と関係ありませんから、地理学の問題として論じているわけです。アメリカの生命線は、アリューシャン群島から日本、沖縄、台湾を経て、フィリピン、グアム鳥に連なる一線がアメリカの生命線と、ある意味では言えるでしょうけれども、しからば日本の安全保障のための生命線はどこでしょうか。私はそれを防衛庁長官にお尋ねしたい。アメリカの安全保障のために日本を基地にすれば、アメリカ上院は満場一致喜ぶでしょう、何の犠牲もないのですから。そうしてただで借りて、分担金すら、地主が逆に小作料をアメリカに払うような条約ですから、それは喜ぶでしょう。しかし、日本の安全保障のための戦略的基地はどこに作ればよいでしょうか。それをお尋ねしたいと思います。
  192. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 安全保障条約でもそうでありまするし、日本の憲法のもとにおける日本自衛隊のあり方から見てもわかりまするように、侵略しようとか、戦争をしようということからできておるものではございません。これを抑制するということでありますが、受けてこたえるということでありますから、自衛隊法にもありまするように、直接及び間接の侵略がありましたら、それに対応するということでございます。戦前のように第一線を満州に置いて、そうしてソ連戦争をしようというような態勢で、日本自衛隊あるいは日本の国防があるわけではありません。アメリカといたしましても、第一線とか生命線といいますが、アメリカの生命線というのは、そういう線があるとするならば、これはアメリカ自体だと思います。アメリカ自体といたしましては、根本的には、私から申し上げる必要はないと思いますが、自由主義、民主主義を守っていくという根本のもとに、そうして国連に入っているアメリカといたしましても、侵略とかあるいは武力の行使をしないということの建前のもとに立っておりますが、ただ、国連憲章五十一条に、また、国連だけでこういう平和を守れないという建前のもとにおいて、個別的あるいは集団的自衛権のもと自衛権の発動を例外的に認める、こういう立場に立っておると考えます。
  193. 帆足計

    ○帆足委員 防衛庁長官は、一体戦略の本をお読みになっておるかどうか、孫子の兵法ですらお読みになっておるかどうか、疑問だと思う。というのは、私が今お尋ねしましたのは、日本の国土と日本国民を守るために、一応軍事戦略の立場から考えて、日本の生命線ともいうべき前線基地はどこに求めたらいいか。アメリカアメリカを防衛するために、日本を基地として選んだ。日本日本を防衛するために、どこを基地として選べばよいか、これをお尋ねいたしたわけです。
  194. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 先ほどもお答え申し上げたのでありますが、日本戦争をしてどこまで出ていくか、たとえば、先ほど申し上げましたように、戦前の満州を第一線として戦うというような形で日本の防衛はなっておりません。それでは前線というか、どこを基地として防衛するかといいまするならば、これは日本本土及び日本の周辺でございます。
  195. 帆足計

    ○帆足委員 アメリカのような強大な国ですら、五千海里離れた前線基地なくしてはアメリカは守れないときに、日本のような四つの小さな島、しかも、九千万の国民がいて、前線基地を持たずして武力的に防衛するということは、私は不可能であると思う。満州はかつてわれらの生一命線といわれましたけれども、その生命線はなくなりまして、カニが甲らを取られ、はさみを取られ、自身となり、刺身となって、酢の中につかっておる。戦争は始まろうとしているのではなく、戦争はすでに終わりました。無条件降伏をした。従って、軍事的には一応策なしというのがほんとうの姿です。策のない日本が他国の基地になるということは、私はおかしいと思う。というのは、基地とは、海綿が水を吸収するがごとく、原爆その他の爆撃を一手に引き受ける場所、(「何を言っているのだ」と呼ぶ者あり)これは物理的真理ですから、党派を越えて聞いていただきたい。もし日本がみずからを守るために、カナダかカリフォルニアか、せめてサンサルバドル島を基地として、アメリカの進撃に対してわれわれは備えるというのならば、それは一つ方法でしょう。しかし、日本は太平洋の五千海里のかなたにあって、アメリカ日本を守ろうとしても曲れるものではありません。そうすると、どういう効果があるかというと、私は謙虚な気持で、保守党の立場に立っても、やはり平和はいいです。社会党の立場に立っても、あまり乱暴なことをして平和を撹乱することはよくないですから、両方の立場に立って、そうして平和であるにはどうしたらよいかということを冷静に考えてみますると、入党しなくとも、人間は考える能力がありますから、いろいろ思いをめぐらしてみますると、日本の国土が侵されたときには、アメリカが相手の国を爆撃するというような相談ならば、これは私は、相談として、それに賛成、不賛成は別として、一つの論理がある。しかるに、日本を基地としてしまって、日本を戦場としてしまって何の安全保障ですか。の問題でない、事実です。日本を基地として何の安全保障ですか。従いまして、この問題について今日古井委員が非常に心配をされて、いろいろな角度から論ぜられた。また、新聞も論じておる。これは当然なことだと思う。従いまして、今、日本を基地といたすことは、アッツ島ならば無人島ですからまだ楽ですけれども、九千万国民のある、アッツ品というものは俳句にもならない。従いまして、私は日本国民に広くこの事情を訴えて、そうしてきょうは地図を開いて、太平洋のどういうところに日本が位置しているか、宿命の星はわれわれに何を語っておるか、これを国民がおもむろに考える必要があると思う。長官はどうお考えですか。
  196. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 日本が侵略に対して防衛する、また、そういう事態がないように、抑制力としての安全保障条約でありますが、かりにそういうことがありましたならば、アメリカ日本を前線基地として使うということだけを申されるのは、独断だと思います。基地として、アメリカ本土が基地となる場合もありましょうし、その他各方面が基地となる場合もあります。日本だけが基地となるようなことでない。日本に対しましては、日本を守るためにアメリカが協力するということでありまして、日本を犠牲にして、日本を基地として、日本だけを踏みにじってそういうことをするというふうに即断されるのは、私は行き過ぎかと思います。
  197. 帆足計

    ○帆足委員 安全保障条約の中には、日本の国土と国民の安全を守るために、国土が破壊され、国民の生命が脅かされないように、細心の注意を払わねばならぬという言葉が、遺憾ながら入っていないのです。これが一番重要なことでありまして、それからまた、今の基地の問題でありますけれどもアメリカの国防辞典には、基地とは前線基地、補給基地、中継ぎ基地、時と場合によっては犠牲基地、これが基地の宿命であると書かれてある。私は、今日の近代戦略においては、善悪は問わず、そうだと思います。従いまして、与党の中にも、軍事同盟を結ぶことは仕方がないけれども、基地は常時置かない方がよくはあるまいか、あるいはまた、基地を置いて、そこから飛び立つとするならば、事前協議に対してよほど慎重な、そこにブレーキがなければあぶないのであるまいか、こういう論議が出ておりますことは、私は当然のことであって、これはもっと与党の諸君と私は慎重に……。われわれの子供たちは、おやじは社会党とか自由党とか分かれておりますけれども、子供たちは同じ小学校で肩を並べて勉強しているのですから子供たちのことを思えば、この問題は、もう少し責任感を持って考えてみる必要がある問題であるまいか。きょうの古井君の指摘した点は、非常に穏やかでありましたけれども、やはりこの問題をまじめに考えている者として、寂として声なく、みんなが聞いたじゃありませんか。  私はもう一つお尋ねいたしますけれども、沖縄は犠牲になりまして、日本から離れまして、そしてもうあそこは航空母艦のようになってしまいまして、核兵器まで入っております。しからば、一たび金門馬祖の戦いなどがありましたときに、遺憾ながら——そういうことのないように日本政府も御協力下さるでしょうけれども、また、世界各国も平和のために御努力下さるでしょうけれども、遺憾ながら沖縄が戦場に巻き込まれるようになったときに、先日金門馬祖の戦いがたけなわなときに、急に空襲警報がありまして、アメリカの軍人軍属の奥さんや子供たちは、全部飛行場に集められまして、疎開の準備をしました、そのときに、あわれなるかなや、日本の商人や子供たちや農民たちは、家の中に二十四時間入っておれという命令がきました。一体沖縄の市民たちは、そのとき、どこに疎開したらいいのでしょう。その疎開の準備をされておられるかどうか、伺っておきたいと思う。
  198. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 前提が攻撃を受けるということであります。攻撃を受けるということであれば、攻撃する国がなくちゃなりません。私どもは、そういうことは、国連から見ましてもお互いこれは慎むべきことだということで、これは差し控えておるのが世界情勢だと思います。でありまするから、沖縄がやられるという場合には、沖縄を攻撃するものがなくちゃなりません。そういう事態考えて、安全保障条約というものを結んでおるわけじゃございません。そういうことがないように用意をするということが、この趣旨でございます。
  199. 帆足計

    ○帆足委員 歴史の今日の進化の段階では、世界各国といえど、どの一つの国といえど、百パーセント信頼し得る国はないのです。それが今、人数の歴史の段階です。アメリカは完全であるかというと、アメリカもまた、レバノン、ヨルダンのときは、国際連合において戦争犯罪者として追及されたじゃありませんか。英国もまた、スエズの問題では追及され、アルジェリアの問題その他では、フランスも窮地に立った。ソ連もまた、時として問題があったことは、諸君の御承知通り。人類の進化の段階において、今日われわれは、信ずるに足るものは自分の国だけであって、他国を百パーセント信ずるということは、私は外務大臣に、これはおとめの祈りにすぎない、こういつか言ったことがあります。従いまして、お尋ねいたしますが、沖縄が戦争に巻き込まれるようなときには、相手国が悪いときもあるし、アメリカ側が悪くておちょっかいして、逆に反撃を受ける場合もあり得る。いずれの場合も、人生にあり得ます。日本の基地が使用される場合にもそういうことがあり得るが、万一そういうときに——あとで私は申し上げますが、今日の武器の発達の段階は驚くべきものです。一発の原爆は、十五年前には三千度に沸騰した。今では、一発の水爆は一億五千万度に沸騰する。また、飛行機の性能にいたしましても、ジェット機はニマッハですけれども、ミサイルは二十マッハになっております。東京—香港間の距離は二千五百キロ。BOACで八時間かかりますけれども、今では、ジェット機で飛べば一時間半です。ミサイルで飛べば、わずかに六分ということになります。こういうときでありますから、基地を外国に無条件で貸与することに対しては、だれしも心配する。それを私は、政府といえど、認めていいと思うのです。従って、基地の貸与については条件をつけろ。また、いろいろみんなが心配する、当然のことだと思うのです。しかも、長官は、戦略戦術をあまりお調べになっていないために、この問題を、今楽観的なお答えを出されましたけれども、かりに日本の基地が爆撃を受けるようなときに、どちらが正しかろうが、正しかるまいが、一たび歴史の歯車が回り始めましたら、国境に面している国々は、巻き込まれたらひどいことです。一体、日本国民はどこに疎開したらよいのでしょう。カナダかカリフォルニアに疎開する準備でもできておるのでしょうか。私は、それも伺っておきたい思います。
  200. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 非常に、前提において、私の考え方と違っています。たとえば、沖縄がやられるかもしれない、これは安全保障があるかないかにかかわらず、やられるときはやられると思います。それから、さっきの例にありますように、レバノンとか、あるいは金門馬祖とか、こういう問題も、第二次大戦前と違いまして、第二次大戦後におきましては、国連という機構があって、その拡大を防いでおると思います。これは世界的に見ましても、安全保障条約を結んでおるということが、世界のいろいろな紛争を拡大することをとめておる、こういうふうに私ども考えておりまするし、各国ともそういう気持でおると思います。  日本がやられた場合にどこに疎開するか、こういうお尋ねでありますが、日本がやられないように、また、もしそういうことがありますならば、日米共同してそれを排撃する、これをまず考えなくちゃならないと思います。ただ、日本は、やられれば疎開することばかり考え——やはりやられれば日本を守るということを考えるのが、日本民族、日本国民の当然のことだと思います。それで守り足らないものがあるから、これはアメリカと協力する。その最も根本的なものは、そういう問題を起こさないような態勢を整えておる。戦争の抑制力、あるいは小さい紛争を未然に防ぎ、あるいはそれを、できてきましたならば小さいうちに消しとめる、こういうことが、私は、日本国民、国土を守る正しい道だと思います。捨てておいて、やられたら疎開する方法考えろ、こういうことは無責任だと思います。
  201. 帆足計

    ○帆足委員 戦争中に疎開の専門家であったところの赤城さんから、こういうことを聞くとは意外であって、私は、こういう論議こそがまじめな安全保障についての論議だと思うので、私は、全国民がこれを聞いてもらいたいと思います。そうして、今の赤城さんの答弁では、日本の防衛庁長官の戦略に対する認識、近代科学と立地条件に対する認識、その教養の水準というものが現われて、日本国民は、ほんとうに一人々々がまじめに考えるならば、これは大へんだと、こう思うでしょう。アメリカは、基地に選んだ場所からは疎開する準備をしておる。基地の周辺の人たちを、どこに疎開させるかということを考えずして基地を設定するということは、私は、無責任であるだけでなくて、犯罪的行為だと思います。もし基地というものが、日米共同して守るから安全なものであるとするならば、アメリカ上院議員の奥さんやお嬢さんたちを、基地に参観交代さしたらいいでしょう。もちろん、一番かわいらしい奥さんとお嬢さんに基地周辺に住んでいただけば、アメリカも慎重になるでしょう。私どもは、近代戦略のたくさんの歴史を見まして、基地というものはいかにたやすく見捨てられたか、いかにたやすく破壊されたかという歴史を、たくさん皆さんとともに知っておるわけです。近くは、満州国の国民だってそうでしょう。アメリカが、皆さんのような五十男がかわいいわけでもなし、日本がそれほどかわいいわけでもない。アメリカの安全のために、日本をどう利用しようかということである。しかし、アメリカのその利用しようとする力を、私どもが、保守政党の諸君が正当に評価して、その力も誠実に活用するということについては、それも一つ考え方でしょう。しかし、それならばそれで、やはり日本の運命を考えながら、そこへ限界というものを置いて、一辺倒、べたぼれするのではなくして、こういう点ではアメリカの世話になるけれども、こういう点においてはブレーキを置いておこうという慎重な考慮がなくしては、私は大和民族と言えないと思うのです。きょう、古井さんは、そうなっていないと言っている。与党の中でも最も頭脳明晰なる、最もいい議論をしたのは古井さんだと思うのです。そして、そういう点が十分でない、少なくとも、十分でないから考えてくれないかという意見があったと思うのです。ですから、野党たるわれわれが最も強くこれを強調するということは、当然のことでしょう。私は、時間がありますれば、これから順々に赤城さんと話し合って、どういう点があぶないかということを、客観的事実をとらえて話し合いたいと思います。そして、一民族の永遠の生命というものは、時の内閣一つ二つがつぶれようと、つぶれまいと、そういうことはどうでもいいことです。ほんとうを言えば、自民党も社会党も、党派の争いなんというものはどうでもいいことです。しかも、原爆とミサイル、人工衛星、まるで夢見るような時代にわれわれは生を受けて、そして、この人類の重大な過渡期に、東西会談がまさに始まろうとしている。軍備の全廃すらが、人類の日程に上ろうとしている。十五年前に、日本に朝鮮も台地も満州もなくなつて、連隊旗はこたつぶとんになるなどと言った者がいたならば、おそらく監獄にぶち込まれていたでしょう。それより以上の大きな変化が起こって、その変化は今でもまだ続いている。こういうときには、私は、党派の争いを越えて、それでは、日本の立地条件や、今日の原爆や、ミサイルや、人工衛星の進歩の状況を、まず超党派的に、詳しく公聴会でも開いて聞こう、聞いた上で、その上の主観的判断において多少の相違があってもやむを得ない。きょうの古井さんのようなお話ならば、私どもは、意見の相違はあるけれども、これは傾聴すべき問題である。保守といい、革新といい、人生に二つの行き方があることは当然です。保守でもりっぱにやってもらいたい、平和にやってもらいたいというのが、の願いではないでしょうか。その願いから見ると、私は、今日の内閣の行き方はー 最初は、藤山さんはそういうつもりでなかったと思うのです。藤山さんは、近衛さんのような人で、良識のある方です。しかし、いつの間にかずるずると深みに陥り、国際情勢が急に変わってしまったというところにギャップがあるので、そのギャップは、与党内で相談して埋めるべきギャップであるまいかと私は思います。特に、ジェット機から最近ミサイルに移った移り方というものは、すさまじいものでありまして、最近、南太平洋に投ぜられました弾道弾は、射程距離一万四千キロ、その早さは音速の二十倍といわれております。過去において機械科兵団が動きましたときは、一時間にわずか五キロ、原子船の艦艇の機動力ですら、一時間に五十キロそこそこでしょう。ジェット機でたかだか千キロ、それが今では、一時間に一万八千キロの早さで走る。そしてソ連——私はソ連をひいきせず、別にアメリカをけなすわけでもありません。ただ事実として、ソ連のミサイルは千三百キロですか、それに対して、アメリカのミサイルはわずか十三キロ、月とスッポンといわれています。一体、アメリカのミサイルに原爆が載るのでしょうか。私は、ソ連が千三百キロの人工衛星を持っておるから、そして、それに原爆がしつらえられるからといって、力をもって世論をリードしようとするならば、われわれにとって不愉快なことです。しかし、同時に、アメリカが、またそれに対して、自分の立場をまじめに考えて、これは力と力では人類の破滅である、話し合いでいかねばならぬ。もうそごに今来かかっている。共産主義者は、ワシントンなどうろうろすれば、昔は死刑か無期懲役になった。そのフルシチョフ氏が、その共産主義者が、もう言いたいほうだいのことを、ワシントンやニューヨークに行ってテレビやラジオでしゃべる。逆に、アイゼンハワーが今度モスクワに行く。八年前に、私が初めて、皆さんの妨げを、岡崎さんでしたかのじゃまを排除しまして、合法的にモスクワに参りましたときに、私は、北斗七星を見ながら、一体、なぞの国というものが世の中にあるだろうか、ある国がなぞと見え始めたなら、その民族の理性がすでに曇っている証拠ではないか、なぞというものは現在にあるはずはない。やはりこの目で見、この目で感じ、敵を知り、われを知り、百戦危うからず、そう思って八年前に参りましたけれども、今では、アイゼンハワー大統領その人ですらが、モスクワを訪問する時代になっているじゃありませんか。(「無声映画時代だ」と呼ぶ者あり)無声映画時代と言いますけれども、まさに、そういう時代だ、まさにそういう時代でしょう。映画を見ているような時代です。活弁や浪花節語りよりもっといいでしょう。こういう時代でありますから、私は、ミサイルの性能について、もう少しつまびらかにしなければならぬ。  そこで、赤城長官に伺いたいことは、最近の科学の進歩からいえば、三万フィートー今度のは六万フィートですね。六万フィートのあの黒いジェット機が落とされることは、これはあたりまえのことだと思うのです。御承知のように、人工衛星は月世界に向って一億数千キロの旅をしました。五十万キロ離れているときに、なお宇宙ロケットは地球上のモスクワに通信を送っていたといわれています。そうだとすれば、黒いジェット機のごとき落ちてしまうのは、これはあたりまえのことです。おそらく、しっぽか羽根をやられて、斜めにこうきたときに落下傘で落ちたのでしょう。誘導技術、それから、最近における電波トンネルの技術の進歩など、驚くべきものです。私は、皆さんと一緒に、こういう問題についてのまず専門家の公聴会を、明日の公聴会に引き続いてやってもらいたいと思います。従いまして、長官にお尋ねしますけれども、現在、長官は、ソ連のミサイルとアメリカのミサイルの性能について、どういう認識を持っておられるか、その一端だけでも何っておきたい。
  202. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 大へん御造詣深いお話を承りましたが、ミサイルといいましても、ミサイルというのは、御承知のように飛び道具ということでございます。表現は飛び道具でございますから、ミサイルというものにつきましては、ミサイルを撃ち出す台と、飛び道具として飛んでいくものと、二つあるわけでございます。飛行機も、これはミサイルを撃ち出す台でございまして、それからサイドワインダーみたいなものを撃ち出す、こういうことになっております。ミサイルにもたくさん種類がありまして、私どももなかなか見当がつかないような種類がたくさんあります。お尋ねのは、大陸間弾道弾のICBMあるいは中距離弾道弾のIRBM等についてのことだと思います。これにつきましては、ずいぶん詳しく書物にも書いてあります。正確に私は覚えておりませんが、この、ミサイル・ギャップといいますか、ミサイルの競争で、初めは、アメリカの方が原水爆を運ぶミサイルというものが進んでおりましたことも、帆足さん御承知通りだと思います。最近二、三年は、ソ連の方が進み方が非常に速度が早かった。しかし、アメリカの方でも、六十三年ごろには大陸間弾道弾もできてくるというような状況であります。  話は余談でなく、本質になりますが、こういうような大陸間弾道弾とか、中距離弾道弾とか、あるいは原水爆というようなものができてきまして、これが世界の、何といいますか、残念ながら、今戦争を抑制する力になっておる、私はそう見ておるのです。初めは、相手方を攻撃し、相手方を占領するというようなことから、こういう研究が発達してきましたけれども、しかし、東西両陣営とも、こういうものが相当発達し、進んできた今日におきまして、こういうものを使うということは、これは世界のためにも、人類のためにも慎むべきことである、こういうことをしてはいかぬ、こういうことで、すなわち、ICBMとかIRBMとか原水爆とかいうものが、世界戦争抑制力として作用している。でありますから、今のお話しのように、フルシチョフあるいはアイゼンハワー等につきましても、この原水爆をいかにして制限し、あるいはこれを禁止していくかということが、今俎上に上っておる問題だと私は感じております。そういう点におきまして、安全保障あるいは世界の平和機構というものも戦争抑制力として今働いておるのが現状である、こういうふうに考えております。
  203. 帆足計

    ○帆足委員 時間が参りましたが、私はお尋ねしたいことが多いのです。実は新日本の平和憲法ができましたときの事情は、あれはB29、空の要塞が全盛期でありました。ところが、新日本憲法がだんだんじゃまになって、そしてジェット機の時代に移りまして、マッカーサー元帥がどうして見解を変えたか、こういうことなども長官によく承っておかなければならぬし、日本国民各層に私は知っていただかねばならぬことであると思う。そして、ミサイル時代ですから、もちろん、長官の今言われたように、平和は到来するでしょう。しかし、それまでの中間期間に、部分戦争、基地戦争または原子力限定戦争というような危機が若干残っておるわけです。その危機の中に巻き込まれたならば、人間の作った正義がどちらの側にあろうとあるまいと、その歯車の中にはさまつたものはひどい目にあうことを、私は南朝鮮でも北朝鮮でも見てきました。そういうことにならないように、党派を離れてこれは相談せねばならぬ問題だと思う。従いまして、安保条約の問題は、私は、藤山外相は悪気はなかった、これは確かに平等のものにしようということで御出発なされたけれども、客観的情勢があまりにきびしいために、この問題はやはり慎重な審議を必要とする問題になったので、きょうの新聞の世論なども、商業新聞といわれ、保守の、資本主義の新聞といわれる新聞が、やはりみんな心配して、ああいうふうに論議をしておる状況です。従いまして、これは一内閣の運命の問題ではありませんから、どうぞ十分時間をかけて審議していただきたい。私はこの委員として初めて三十分だけ御質問申し上げたのでありますから、せめて数時間くらい、あと質問の時間を与えていただきたいと思います。  これをもちましてきょうは質問を終わります。
  204. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 明日は、午前十時より公聴会を開催いたします。  本日は、これにて散会いたします。     午後六時三十二分散会