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1960-05-11 第34回国会 衆議院 日米安全保障条約等特別委員会 第33号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年五月十一日(水曜日)     午前十時三十六分開議  出席委員    委員長 小澤佐重喜君    理事 井出一太郎君 理事 岩本 信行君    理事 大久保武雄君 理事 櫻内 義雄君    理事 椎熊 三郎君 理事 西村 力弥君    理事 松本 七郎君 理事 竹谷源太郎君       安倍晋太郎君    愛知 揆一君       秋田 大助君    天野 光晴君       池田正之輔君    石坂  繁君       鍛冶 良作君    加藤 精三君       鴨田 宗一君    賀屋 興宣君       小林かなえ君    田中 榮一君       田中 龍夫君    田中 正巳君       床次 徳二君    野田 武夫君       服部 安司君    福家 俊一君       古井 喜實君    保科善四郎君       毛利 松平君    山下 春江君       飛鳥田一雄君    石橋 政嗣君       井手 以誠君    岡田 春夫君       黒田 寿男君    戸叶 里子君       中井徳次郎君    穗積 七郎君       森島 守人君    横路 節雄君       横山 利秋君    受田 新吉君       大貫 大八君    大野 幸一君       堤 ツルヨ君    松尾トシ子君  出席国務大臣         内閣総理大臣  岸  信介君         外 務 大 臣 藤山愛一郎君         国 務 大 臣 赤城 宗徳君  出席政府委員         内閣官房長官 松本 俊一君         法制局長官   林  修三君         防衛庁参事官         (長官官房長) 門叶 宗雄君         防衛庁参事官         (防衛局長)  加藤 陽三君         外務政務次官  小林 絹治君         外務事務官         (大臣官房審議         官)      下田 武三君         外務事務官         (アメリカ局         長)      森  治樹君         外務事務官         (条約局長)  高橋 通敏君         労働事務官         (労政局長)  亀井  光君  委員外出席者         専  門  員 佐藤 敏人君     ————————————— 五月十一日  委員森本靖君、受田新吉君及び大貫大八辞任  につき、その補欠として穗積七郎君、松尾トシ  子君及び大野幸一君が議長指名委員に選任  された。 同日  委員大野幸一言及び堤ツルヨ辞任につき、そ  の補欠として大貫大八君及び受田新吉君が議長  の指名委員に選任された。 同日  委員受田新吉辞任につき、その補欠として堤  ツルヨ君が議長指名委員に選任された。 同日  委員松尾トシ子辞任につき、その補欠として  受田新吉君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 五月十日  日米安全保障条約改定に関する請願大野幸一  君紹介)(第三四〇〇号)  日米安全保障条約改定反対に関する請願外七件  (足鹿覺紹介)(第三四〇一号)  同外三十六件(飛鳥田一雄紹介)(第三四〇  二号)  同外百三十八件(井岡大治紹介)(第三四〇  三号)  同外百五十七件(伊藤よし子紹介)(第三四  〇四号)  同外百二十四件(石野久男紹介)(第三四〇  五号)  同外二十五件(太田一夫紹介)(第三四〇六  号)  同外一件(岡田春夫紹介)(第三四〇七号)  同外六十一件(神近市子紹介)(第三四〇八  号)  同外百三十五件(栗原俊夫紹介)(第三四〇  九号)  同外三十七件(兒玉末男紹介)(第三四一〇  号)  同外六件(河野密紹介)(第三四一一号)  同外七十七件(櫻井奎夫君紹介)(第三四一二  号)  同外百十件(田中武夫紹介)(第三四一三  号)  同外百件(辻原弘市君紹介)(第三四一四号)  同外六十九件(中嶋英夫紹介)(第三四一五  号)  同外二十二件(西村関一紹介)(第三四一六  号)  同外八件(野口忠夫紹介)(第三四一七号)  同(原茂紹介)(第三四一八号)  同外二十三件(帆足計紹介)(第三四一九  号)  同外四十件(八木一男紹介)(第三四二〇  号)  同外十件(山口シヅエ紹介)(第三四二一  号)  同外五件(山花秀雄紹介)(第三四二二号)  同外七件(横路節雄紹介)(第三四二三号)  同外九十四件(横山利秋紹介)(第三四二四  号)  同外三十五件(淺沼稻次郎紹介)(第三四五  四号)  同外八百七十四件(赤路友藏紹介)(第三四  五五号)  同外三百四十一件(茜ケ久保重光紹介)(第  三四五六号)  同外二百七十六件(淡谷悠藏紹介)(第三四  五七号)  同外二百三十三件(井岡大治紹介)(第三四  五八号)  同外五百二件(井手以誠君紹介)(第三四五九  号)  同外二百九十一件(伊藤よし子紹介)(第三  四六〇号)  同外五十八件(石野久男紹介)(第三四六一  号)  同外百二十八件(石村英雄紹介)(第三四六  二号)  同外一件(石山權作君紹介)(第三四六三号)  同外二百五十四件(大原亨紹介)(第三四六  四号)  同外三百十三件(太田一夫紹介)(第三四六  五号)  同外五百四十一件(加賀田進紹介)(第三四  六六号)  同外二十七件(加藤勘十君紹介)(第三四六七  号)  同外二百九十五件(柏正男紹介)(第三四六  八号)  同外九百三十四件(金丸徳重紹介)(第三四  六九号)  同外百四十三件(神近市子紹介)(第三四七  〇号)  同外一件(河上丈太郎紹介)(第三四七一  号)  同外十件(上林與市郎紹介)(第三四七二  号)  同外五十二件(黒田寿男紹介)(第三四七三  号)  同外二百九十四件(栗原俊夫紹介)(第三四  七四号)  同外三百五十件(北山愛郎紹介)(第三四七  五号)  同外十六件(久保三郎紹介)(第三四七六  号)  同外百五十八件(久保田鶴松紹介)(第三四  七七号)  同外百五十八件(兒玉末男紹介)(第三四七  八号)  同外五十二件(小林進紹介)(第三四七九  号)  同外二百十四件(小松幹紹介)(第三四八〇  号)  同外四十七件(五島虎雄紹介)(第三四八一  号)  同外二十六件(佐々木更三君紹介)(第三四八  二号)  同外三百六十五件(佐藤觀次郎紹介)(第三  四八三号)  同外三十九件(阪上安太郎紹介)(第三四八  四号)  同外三十五件(島上善五郎紹介)(第三四八  五号)  同外四百七十六件(東海林稔紹介)(第三四  八六号)  同外百八十七件(杉山元治郎紹介)(第三四  八七号)  同外二十件(鈴木茂三郎紹介)(第三四八八  号)  同外七百七十四件(高田富之紹介)(第三四  八九号)  同外二件(田中武夫紹介)(第三四九〇号)  同外六十八件(滝井義高紹介)(第三四九一  号)  同外四十七件(館俊三紹介)(第三四九二  号)  同外十六件(戸叶里子紹介)(第三四九三  号)  同外百十六件(中村英男紹介)(第三四九四  号)  同外六百三十六件(中澤茂一紹介)(第三四  九五号)  同外八十件(西村関一紹介)(第三四九六  号)  同外二件(西村力弥紹介)(第三四九七号)  同外三百四十八件(野口忠夫紹介)(第三四  九八号)  同外四百九十五件(長谷川保紹介)(第三四  九九号)  同外三百六十一件(芳賀貢紹介)(第三五〇  〇号)  同外二件(原茂紹介)(第三五〇一号)  同外三十八件(日野吉夫紹介)(第三五〇二  号)  同外一件(帆足計紹介)(第三五〇三号)  同外七十三件(八木一男紹介)(第三五〇四  号)  同外百二十件(八木昇紹介)(第三五〇五  号)  同外百七十五件(安井吉典紹介)(第三五〇  六号)  同外二百六十六件(山中吾郎紹介)(第三五  〇七号)  同外二百五十件(山中日露史紹介)(第三五  〇八号)  同外百八件(八百板正紹介)(第三五〇九  号)  同外八十六件(山本幸一紹介)(第三五一〇  号)  同外百八十六件(山花秀雄紹介)(第三五一  一号)  同外五百七十四件(横路節雄紹介)(第三五  一二号)  同外六十八件(横山利秋紹介)(第三五一三  号)  同外七件(栗原俊夫紹介)(第三五一四号)  同外七百七十六件(淺沼稻次郎紹介)(第三  五二六号)  同外一件(阿部五郎紹介)(第三五二七号)  同外二件(茜ケ久保重光紹介)(第三五二八  号)  同外百五十四件(赤松勇紹介)(第三五二九  号)  同外三百八十三件(足鹿覺紹介)(第三五三  〇号)  同外三百七十四件(飛鳥田一雄紹介)(第三  五三一号)  同外十三件(淡谷悠藏紹介)(第三五三二  号)  同外二十二件(井岡大治紹介)(第三五三三  号)  同外七十件(伊藤よし子紹介)(第三五三四  号)  同外八十四件(猪俣浩三紹介)(第三五三五  号)  同外二百八十三件(石川次夫紹介)(第三五  三六号)  同外二十八件(石村英雄紹介)(第三五三七  号)  同外二百八十九件(石田宥全君紹介)(第三五  三八号)  同外四百三十五件(石野久男方紹介)(第三  五三九号)  同外九十九件(石山權作君紹介)(第三五四〇  号)  同外三百四十件(板川正吾紹介)(第三五四  一号)  同外四百六十六件(小川豊明紹介)(第三五  四二号)  同外四百七十七件(岡良一紹介)(第三五四  三号)  同外千二十八件(岡本隆一紹介)(第三五四  四号)  同外千三百六十八件(太田一夫紹介)(第三  五四五号)  同外百三十件(加賀田進紹介)(第三五四六  号)  同外五百九十一件(加藤勘十君紹介)(第三五  四七号)  同外二百六十六件(風見章紹介)(第三五四  八号)  同外百三十三件(柏正男紹介)(第三五四九  号)  同外二百六十四件(片島港君紹介)(第三五五  〇号)  同外九件(勝澤芳雄紹介)(第三五五一号)  同外八十四件(勝間田清一紹介)(第三五五  二号)  同外三百七十件(角屋堅次郎紹介)(第三五  五三号)  同外四百四十件(神近市子紹介)(第三五五  四号)  同外百二十六件(金丸徳重紹介)(第三五五  五号)  同外七十一件(河上丈太郎紹介)(第三五五  六号)  同外二百五十九件(川村継義紹介)(第三五  五七号)  同外四百八十七件(上林與市郎紹介)(第三  五五八号)  同外五百六十件(菊地養輔君紹介)(第三五  五九号)  同外三十一件(北山愛郎紹介)(第三五六〇  号)  同外四百七十件(久保三郎紹介)(第三五六  一号)  同外八十四件(久保田鶴松紹介)(第三五六  二号)  同外三十七件(久保田豊紹介)(第三五六三  号)  同外三十六件(栗原俊夫紹介)(第三五六四  号)  同外百九十九件(黒田寿男紹介)(第三五六  五号)  同外三百八十二件(小林進紹介)(第三五六  六号)  同外三百二件(小林正美紹介)(第三五六七  号)  同外三百五十三件(兒玉末男紹介)(第三五  六八号)  同外二十八件(河野密紹介)(第三五六九  号)  同外六件(佐藤觀次郎紹介)(第三五七〇  号)  同外三百三十七件(佐野憲治紹介)(第三五  七一号)  同外七十七件(阪上安太郎紹介)(第三五七  二号)  同外九十三件(坂本泰良紹介)(第三五七三  号)  同外百二件(櫻井奎夫君紹介)(第三五七四  号)  同外二百三十九件(島上善五郎紹介)(第三  五七五号)  同外七十件(島口重次郎紹介)(第三五七六  号)  同外四百七件(下平正一紹介)(第三五七七  号)  同外三百七十六件(東海林稔紹介)(第三五  七八号)  同外五百九十三件(杉山元治郎紹介)(第三  五七九号)  同外四百三十六件(鈴木茂三郎紹介)(第三  五八〇号)  同外五十件(多賀谷真稔紹介)(第三五八一  号)  同外四百三十五件(田中織之進君紹介)(第三  五八二号)  同外百七件(田中稔男紹介)(第三五八三  号)  同外二百九十四件(高田富之紹介)(第三五  八四号)  同外三百八件(滝井義高紹介)(第三五八五  号)  同外六百二十七件(館俊三紹介)(第三五八  六号)  同外九十三件(辻原弘市君紹介)(第三五八七  号)  同外二百四十九件(戸叶里子紹介)(第三五  八八号)  同外九十二件(中澤茂一紹介)(第  三五八九号)  同外二百十件(中嶋英夫紹介)(第三五九〇  号)  同外百六十八件(中村英男紹介)(第三五九  一号)  同外六百二件(永井勝次郎紹介)(第三五九  二号)  同外二百六十三件(成田知巳紹介)(第三五  九三号)  同外七十九件(西村力弥紹介)(第三五九四  号)  同外六十五件(野口忠夫紹介)(第三五九五  号)  同外五百十五件(長谷川保紹介)(第三五九  六号)  同外三十五件(原茂紹介)(第三五九七号)  同外五百十九件(日野吉夫紹介)(第三五九  八号)  同外三百十件(平岡忠次郎紹介)(第三五九  九号)  同外三百六十五件(帆足計紹介)(第三六〇  〇号)  同外二百八十九件(堀昌雄紹介)(第三六〇  一号)  同外四百二十六件(松浦定義紹介)(第三六  〇二号)  同外二百二十四件(松本七郎紹介)(第三六  〇三号)  同外四百七十六件(三鍋義三紹介)(第三六  〇四号)  同外四百六十二件(三宅正一紹介)(第三六  〇五号)  同外三百五十九件(森島守人紹介)(第三六  〇六号)  同外四百六十三件(八百板正紹介)(第三六  〇七号)  同外六百十九件(矢尾喜三郎紹介)(第三六  〇八号)  同外百四十八件(八木昇紹介)(第三六〇九  号)  同外三百十四件(安井吉典紹介)(第三六一  〇号)  同外四百六件(山中吾郎紹介)(第三六一一  号)  同外五百十二件(山中日露史紹介)(第三六  一二号)  同外四百十三件(山花秀雄紹介)(第三六一  三号)  同外百五十七件(横山利秋紹介)(第三六一  四号)  同外千百九十二件(和田博雄紹介)(第三六  一五号)  同外九千二百八十五件(志賀義雄紹介)(第  三六一六号)  同外百五十三件(淺沼稻次郎紹介)(第三六  二三号)  同外六十二件(阿部五郎紹介)(第三六二四  号)  同(赤路友藏紹介)(第三六二五号)  同外二十五件(赤松勇紹介)(第三六二六  号)  同外百二十五件(茜ケ久保重光紹介)(第三  六二七号)  同外四百六十三件(飛鳥田一雄紹介)(第三  六二八号)  同外十六件(足鹿覺紹介)(第三六二九号)  同外四十件(淡谷悠藏紹介)(第三六三〇  号)  同外一件(井伊誠一紹介)(第三六三一号)  同外四十七件(井岡大治紹介)(第三六三二  号)  同外三百四十件(井手以誠君紹介)(第三六三  三号)  同外二十七件(伊藤よし子紹介)(第三六三  四号)  同外十七件(石川次夫紹介)(第三六三五  号)  同外一件(猪俣浩三紹介)(第三六三六号)  同外十一件(石田宥君紹介)(第三六三七号)  同外六件(石野久男紹介)(第三六三八号)  同外五百二十七件(石橋政嗣君紹介)(第三六  三九号)  同外三件(石村英雄紹介)(第三六四〇号)  同(石山權作君紹介)(第三六四一号)  同外九件(板川正吾紹介)(第三六四二号)  同外三十三件(小川豊明紹介)(第三六四三  号)  同外一件(大西正道紹介)(第三六四四号)  同外二件(大原亨紹介)(第三六四五号)  同外五百十六件(岡田春夫紹介)(第三六四  六号)  同外四件(岡本隆一紹介)(第三六四七号)  同外十五件(加賀田進紹介)(第三六四八  号)  同外二十九件(加藤勘十君紹介)(第三六四九  号)  同外八件(風見章紹介)(第三六五〇号)  同外三十二件(柏正男紹介)(第三六五一  号)  同外五件(片島港君紹介)(第三六五二号)  同外二百十六件(勝澤芳雄紹介)(第三六五  三号)  同外二百三十二件(勝間田清一紹介)(第三  六五四号)  同外三件(角屋堅次郎紹介)(第三六五五  号)  同外百七件(神近市子紹介)(第三六五六  号)  同外二件(上林與市郎紹介)(第三六五七  号)  同外十五件(金丸徳重紹介)(第三六五八  号)  同外三百二十一件(河上丈太郎紹介)(第三  六五九号)  同外三百七十四件(木原津與志君紹介)(第三  六六〇号)  同(菊地養輔君紹介)(第三六六一号)  同外八十件(久保三郎紹介)(第三六六二  号)  同外一件(久保田鶴松紹介)(第三六六三  号)  同外十三件(久保田豊紹介)(第三六六四  号)  同外二百十九件(栗原俊夫紹介)(第三六六  五号)  同外四百四十三件(栗林三郎紹介)(第三六  六六号)  同外七件(小林進紹介)(第三六六七号)  同外三件(小林正美紹介)(第三六六八号)  同外九十二件(小松幹紹介)(第三六六九  号)  同外五件(兒玉末男紹介)(第三六七〇号)  同外十二件(五島虎雄紹介)(第三六七一  号)  同外九件(河野正紹介)(第三六七二号)  同外四百十七件(河野密紹介)(第三六七三  号)  同外九件(佐々木更三君紹介)(第三六七四  号)  同外二百十七件(佐藤觀次郎紹介)(第三六  七五号)  同外一件(佐野憲治紹介)(第三六七六号)  同外十五件(阪上安太郎紹介)(第三六七七  号)  同(坂本泰良紹介)(第三六七八号)  同外五件(櫻井奎夫君紹介)(第三六七九号)  同外三百十一件(島上善五郎紹介)(第三六  八〇号)  同外百十八件(下平正一紹介)(第三六八一  号)  同外二十四件(東海林稔紹介)(第三六八二  号)  同外九件(實川清之紹介)(第三六八三号)  同外三十九件(鈴木茂三郎紹介)(第三六八  四号)  同外二件(田中織之進君紹介)(第三六八五  号)  同外四百二十三件(田中武夫紹介)(第三六  八六号)  同外百七十件(田中稔男紹介)(第三六八七  号)  同外三十九件(高田富之紹介)(第三六八八  号)  同外九件(滝井義高紹介)(第三六八九号)  同外二百一件(楯兼次郎紹介)(第三六九〇  号)  同外二十九件(館俊三紹介)(第三六九一  号)  同外三十四件(戸叶里子紹介)(第三六九二  号)  同外二件(堂森芳夫紹介)(第三六九三号)  同外八十二件(中澤茂一紹介)(第  三六九四号)  同外二百四十四件(中島巖紹介)(第三六九  五号)  同外六百三十五件(中嶋英夫紹介)(第三六  九六号)  同外二件(中原健次紹介)(第三六九七号)  同(太田一夫紹介)(第三六九八号)  同外四件(中村英男紹介)(第三六九九号)  同外一件(成田知巳紹介)(第三七〇〇号)  同外五百四十三件(西村関一紹介)(第三七  〇一号)  同外一件(西村力弥紹介)(第三七〇二号)  同外百九件(野口忠夫紹介)(第三七〇三  号)  同外三十五件(長谷川保紹介)(第三七〇四  号)  同外八十七件(芳賀貢紹介)(第三七〇五  号)  同外二十四件(原彪紹介)(第三七〇六号)  同外十五件(原茂紹介)(第三七〇七号)  同外五件(平岡忠次郎紹介)(第三七〇八  号)  同外一件(日野吉夫紹介)(第三七〇九号)  同外十件(帆足計紹介)(第三七一〇号)  同外十九件(堀昌雄紹介)(第三七一一号)  同外三件(穗積七郎紹介)(第三七一二号)  同外二十五件(正木清紹介)(第三七一三  号)  同外二百七十件(松平忠久紹介)(第三七一  四号)  同外四件(松本七郎紹介)(第三七一五号)  同外三件(松前重義紹介)(第三七一六号)  同外二十二件(三宅正一紹介)(第三七一七  号)  同外八十七件(森島守人紹介)(第三七一八  号)  同外千二十六件(森本靖紹介)(第三七一九  号)  同外十九件(八百板正紹介)(第三七二〇  号)  同外二十三件(八木一男紹介)(第三七二一  号)  同外百十件(八木昇紹介)(第三七二二号)  同(矢尾喜三郎紹介)(第三七二三号)  同外二百九十三件(柳田秀一紹介)(第三七  二四号)  同外六件(山口シヅエ紹介)(第三七二五  号)  同外一件(山崎始男紹介)(第三七二六号)  同外九十一件(山田長司紹介)(第三七二七  号)  同外一件(山中吾郎紹介)(第三七二八号)  同(山中日露史紹介)(第三七二九号)  同外八十三件(山花秀雄紹介)(第三七三〇  号)  同外二十四件(山本幸一紹介)(第三七三一  号)  同外十五件(横路節雄紹介)(第三七三二  号)  同外二十四件(横山利秋紹介)(第三七三三  号)  同外十二件(和田博雄紹介)(第三七三四  号)  同(松浦定義紹介)(第三七三五号)  同外四千五百二十八件(志賀義雄紹介)(第  三七三六号)  日中関係打開並びに日米安全保障条約改定に関  する請願外十七件(石村英雄紹介)(第三六  一七号)  同外二十一件(柏正男紹介)(第三六一八  号)  同外八件(神近市子紹介)(第三六一九号)  同外十九件(戸叶里子紹介)(第三六二〇  号)  同外十九件(栗原俊夫紹介)(第三六二一号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び  安全保障条約締結について承認を求めるの件  (条約第一号)  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び  安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並び  に日本国における合衆国軍隊地位に関する協  定の締結について承認を求めるの件(条約第二  号)  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び  安全白保障条約等締結に伴う関係法令整理  に関する法律案内閣提出第六五号)      ————◇—————
  2. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 これより会議を開きます。  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約締結について承認を求めるの件、日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並び日本国における合衆国軍隊地位に関する協定の締結について承認を求めるの件、及び日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約等締結に伴う関係法令整理に関する法律案、右各件を一括して議題といたします。  質疑を続行いたします。  この際、藤山外務大臣より発言を求められております。これを許します。藤山外務大臣
  3. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 先般、U2機に関しましての発表について、アメリカ側に照会をいたすと同時に、それに対する日本の見解を申し述べたのに対しまして、正式にけさ次のように、マッカーサー大使の代理としてレオンハート公使が来まして、公式文書を手渡したのでございます。急でございますから、仮訳であることを御承知の上、一ついずれ正訳をいたしまして発表をいたしたいと思います。   米国政府は、日本にある空軍基  地から飛翔するU2機は、合法的か  つ通常の目的のみに使用されてきて  おるし、今後もそのようにのみ使用  されるべく、情報収集のための飛行  目的のため使用されたことはない  し、今後もされることはない旨、日  本政府に保証を与えた。
  4. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 飛鳥田一雄君。
  5. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 今の御報告に関連をして、私たちもまた一、二伺いたいと思います。  この日本にあるU2はそうした領空侵犯行為等に使われていない、こういうお話でありましたが、事実はこれを裏切ることばかりであります。たとえば、U2の所在いたします厚木の海軍飛行基地では、U2がソビエトで撃ち落とされたと思われる日の翌日から、特別防空演習を開始しておるではありませんか。今までも、この基地では、春と秋と二同防空演習をやっておりました。しかし、この防空演習は一般的なものであって、日本人労務者も参加をして、サイレンを鳴らして防空演習をやったわけです。ところが、今度は、翌日から違ったやり方をしておる。日本人労務者には全然知らさずに、別の警報を出して、その警報が出ますと、米軍の軍人、軍属、その家族は、一、二分たつかたたないうちに姿を消してしまう。すなわち、滑走路の下に掘ってあると思われる退避壕に入ってしまうのであります。そうして入って参りますときには、白い布で作った袋を持って入っていく。全身をおおえるような袋です。すなわち、これは原爆攻撃における放射能を避ける、あるいは熱線を避ける、こういうためのものであるらしい。これは先般私が指摘いたしました防衛庁のCBR教範をお読みいただければ、この意味がわかるはずです。そうしてエリア1、エリア2というふうに分けてどんどん防空演習をやっている。なるほどこれは演習にすぎない。だけれども、通例行なわれる防空演習にあらずして、特別の防空演習をやるという以上は、何らかの危険があることを前提とせずして防空演習をやるはずはありません。しかも、こういう訓練が行なわれている周辺の日本人は、何ら事実を知らされずに日夜暮らしておるのでありまして、もし万が一のことがあったら、基地の中では演習をやっておって幾らかの被害は避け得られるとしても、周辺の日本人は全然これを避けることは不可能であります。こういう事実があることを一体政府はお調べになりましたかどうか。現実にU2の基地がこういう行動をとっているということを見てほしい。さらに、こういう点を政府が調べてみて、もし事実そのような行為があれば、周辺の住民に対しても、同様な訓練を施すなり注意を与えない限り、日本人民の保護という点に欠けるのじゃないだろうか。なぜこんなことをやるのか、こういう点も当然外務省からアメリカに対して十分聞きただした上で、そうして措置をせられるべき必要があるのではないか。現実に防空演習をやっているという事実をあなた方は御存じかどうか。(「ソ連のスパイみたいなことを言うな」と呼ぶ者あり)
  6. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 アメリカ軍が防空演習をやるかやらないかというような問題については、一々われわれとしては存じておりません。(発言する者多し)重ねて申し上げますけれども、アメリカ車がやるかやらないかというようなことは存じておりません。また、それについて一々何か聞きただす必要はないだろうと思います。     〔「スパイとは何だ」と呼び、その   他発言する者多し〕
  7. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 静粛に願います。——静粛に願います。
  8. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 私は、今の御報告に関して申し上げただけでありますから、そう長く申し上げるつもりはありません。しかし、この飛行機が撃墜されて以来、現実に厚木の基地の中で特殊の防空演習が行なわれておるという事実は、日本国民を不安に陥らせずにはおかないはずです。この点について、政府としては十分調査をして善処せられんことを私は望みます。そしてまた、このU2の問題については伺うべき点はたくさんあります。しかし、こうした関連でありますので、私は、ここでその幾つかの点を留保いたしまして、終わります。
  9. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 松尾トシ子君。
  10. 松尾トシ子

    ○松尾委員 私は、今この問題について泥沼のように討論しておるのは、国民の生命と財産に重大なる影響があるからだと思うのです。新安保条約のこまかい内容に触れて質疑を行なう前に、岸総理大臣のこの審議に対する心がまえと態度に対しての真意をお伺いいたさなければなりません。なぜならば、新聞の報道によりますと、去る九日、岸総理大臣は自民党の代議士会に臨みまして、新安保をめぐる与野党の対立は、基本的観念の相違、いわゆるいつまでも平行線で、論議によって解決されるべきものではないから、ここで総理が陣頭指揮に立って、これをやるというふうな決意を披瀝なさったそうです。なるほど、連日政府並びに各委員の間に大へん熱心な質疑、論議が重ねられておりますが、その結果、だんだんとわからなくなって参りました。普通の法律ですと、審議を重ねればわかるはずなのが、これがだんだん複雑化してわからなくなったわけです。ただ、わかってきたのは何かといえば、現在のいわゆる基地提供の条約を相互防衛協定に切りかえる、しかも、その結果、好むと好まざるとを問わず、戦争に巻き込まれるのではないかという不安が増してきたというふうに考えられるわけです。なおまだ審議は最終に入っておりません。御承知のように、行政協定も残っておることを忘れてはならないと思うのです。慎重審議を重ねて、わからないという国民にその内容をよく知らしめるところに、支持もあろうし、また、判断の結論が出るのだろうと思います。従いまして、今度の安保条約に対する岸さんの決意はどういうところから出たか、また、将来これに対するいろいろな採決とか、あるいは経緯とかいう問題をどのような計画を持ってなさるおつもりかを、一つお話を願いたいと思います。
  11. 岸信介

    ○岸国務大臣 私の記憶が間違っておれば訂正しますけれども、松尾委員はおそらく最初からこの委員会にお出になっておるのではなくて、私自身が、この委員会で、終始この審議に対する態度を繰り返し繰り返し申し上げる事柄を、御理解いただけておらないことを非常に遺憾に存じますが、私は、あくまでもこの条約の審議については、慎重審議いたしまして、十分に政府の所信をこの国会を通じて国民の前に明らかにし、そうして国民の理解と支持のもとに、この条約の御承認を得るように、全力を尽くして努力するということを終始申し上げております。その考えが、今日もなお私の考えでございまして、それにつけ加えて申し上げることはないと思います。
  12. 松尾トシ子

    ○松尾委員 ただいまの意思の指摘は、単なる形式にすぎないと私は思います。今まで委員でなかったのですが、新聞もラジオも、あるいは速記録の一部も読んでいるつもりです。そしてあなたのお考え、代議士会で発表なさいました御意思は、まるで外交問題をイデオロギーで解決しようとしているではありませんか。少なくとも外交問題こそは、国が統一の考えができるまで話し合うというのが必要です。そして自分の意思に沿わないものは、これはいつまでも平行線だからといって、多数を頼んで踏み切るということは、これは秘密外交にも通ずるし、また、言いかえれば、社会党その他野党が審議放棄をするというのでなく、逆に自民党の方が、この精神でいけば、審議を放棄するといわれても仕方がないんじゃないかというふうに感ずるわけです。どうかもう少し真意のほどをお話しいただきまして——特に私は泥沼の論争を続けるつもりはありません。しかも、じっくりとお話し合いの上で、これを結んだら日本がどういうふうに得をするか、どういうふうな形の平和が保てるかということを知りたいわけですから、決して論争をしようという考えはないのです。もう少し親切なお言葉を賜わるのが当然ではないかというふうに考えられます。
  13. 岸信介

    ○岸国務大臣 私は、今申し上げた通りの心組みで、今日まで野党の諸君の御質問に対しましても、所信を明らかにして参っております。私どもがこの条約はあくまでも防衛的のものであるということを申しておって、決してこの条約によって戦争に巻き込まれるというような不安、懸念があるものではないということも、繰り返し繰り返し申し上げております。また、私自身が、今日まで野党の御質問に対して誠意を尽くしてお答えをしておることは——私は、不幸にしてわれわれの考え方が野党の皆さんに御満足がいかない点があるかもしれませんが、少なくとも審議に関して、真剣にこの問題に関して私が答弁していることは、これはお認めをいただいておると思うのであります。少なくとも今日までの審議を通じて、私は時間でもってかれこれ申し上げるわけではございませんけれども、いまだかつてない時間をかけ、そうしてその間においての質問は、主として野党の諸君に対して時間が与えられておりまして、決して、今お話しのように、われわれが数を頼んで単独審議するとか——あるいは審議権を云云と言われますけれども、われわれは、今日までのこの委員会における審議そのものは、そういうような経過をとっておりまして、十分論議は尽くされ、疑問とされる点に対する政府の所信は明らかにしてきたつもりであります。従いまして、もちろん、なお疑問とされ、御了解いただかないところに対する御質疑に対しましては、今のような心組みでお答えをするつもりであります。
  14. 松尾トシ子

    ○松尾委員 岸総理大臣は、十分に時間を尽くした、ただ、野党の委員たちが自分の言うことがわからない、こういう点は認めている。ですから、なお一そう親切にやって答弁をするとおっしゃいますが、結局野党の委員としても、ものの理解ができないというものではありません。従って、岸さんの答弁は熱心におやりになったでしょうが、抽象的であって、そしてどうも言いまわしが多過ぎて、通じないというところにあると思うのです。これを見てみますと、条文そのものも穴だらけであって、これでは一朝事あったときに、政府御自身でもお困まりになるのではないかという点が多々あるわけなのです。それで、これからだんだんに聞いていきます。  これから一つ最初にお尋ねしたいのは、何と申しましても、黒いジェット機、U2が撃墜されましてから、ソ連並びにアメリカの大強国の間で国際的問題になっておりますので、これに触れなければならないと思うのです。  最初にお尋ねしたいのは、外務省にですが、U2の黒いジェット機は、ここ四年間も、マークもなしで、日本の上空を気象観測といって飛んで歩いていたわけです。ところが、昨年の九月二十四日に藤沢に落ちてから、それがたちまち政治問題になり、そして政府はアメリカに申し込んで、この標識のない黒いジェット様にNASAという字をつけるようにした。しかし、当委員会の森アメリカ局長の言明によりますと、これは決して標識ではないとおっしゃられておるのですが、一体このNASAというこれは、国際法上どういうような意味を持っているかをお尋ねをいたしたいわけです。
  15. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 政府委員より答弁をいたさせます。
  16. 森治樹

    ○森政府委員 先般お答えいたしました通りに、国有機につきましては、現在いかなる標識をつけるべきかということに関して、国際法上確立した規則がないわけでございます。しかしながら、NASAという記号と申しますか、標識と申しますか、そういうものがなければ、どこの所属機かはっきりしないということもありますので、その標識はつけてもらうようにわれわれの方で要請いたしました結果、昨年の十一月二十七日に米軍側ではNASAという標識は付した。しかしながら、先ほど申し上げましたように、国有機に関しましては、どういう標識をつけるべきかということについてきまっていないのでありまして、アメリカ軍の飛行機は、御承知の通りに一つのマークをつけております。こういうマークはNASAにはないそうでございますから、それはつけていないということでございます。
  17. 松尾トシ子

    ○松尾委員 それでわかりましたが、ただいまのところは、国際法上そういうことがきまっておらないからといって、このNASAという記号は、国際的にこれがアメリカの飛行機であるということがわかるような何か規定があるのですか。
  18. 森治樹

    ○森政府委員 NASAと申しますのは、アメリカの航空宇宙局というものの略でございますから、国際的にわかるはずでございます。
  19. 松尾トシ子

    ○松尾委員 それではちょっとただいまのところ、そうした規定が標識にないとおっしゃられますから、角度を変えまして、陸戦の法規慣例に関する規則という立場から、民間機あるいは軍艦とか商船とかその他の飛行機、いろいろございますが、こういったものに対する標識は、いわゆる陸戦法規——戦時体制のときでしょうけれども、陸戦法規の慣例法に関する点をつまびらかに一つお話を願いたい。と申しますのは、今は平時ですけれども、この条約を結んだ暁に、いつ何どきどんなことが起こってくるかわかりませんので、これを知っておく必要もあろうかと思って、私はお尋ねするわけです。
  20. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 ただいま森アメリカ局長から申し上げました通り、国の航空機、これにつきましての標識については、はっきりとした規定は、これはないわけでございます。ただいま御指摘のように、へーグの陸戦法規に関する規定、これはいわゆる陸戦法規に関する規定におきましては、戦闘員と申しますか、軍隊は、遠くから公然とその正規兵であることを判明するような標識、服装をつけていなければならないという規定がございます。それからもう一つは空戦法規、これには、やはり国の飛行機はそのような標識をつけなければならないという規定もございます。ただ、空戦法規というのは、まだこれは法律家委員会ででき上がったばかりでございまして、批准し発効はしていないわけでございます。従いまして、これらの規定上、はっきりとして明確に、積極的に標識をつけなければならないという規定は、これは発見できないわけでございます。また、御指摘のように、これらの規定、標識をつけろという規定は、いずれも戦争の場合、戦闘行為の場合の規定でございます。
  21. 松尾トシ子

    ○松尾委員 そうしますと、今のはまだ発効されておりませんから、つけなくてはならないという規定はないけれど、戦時態勢に入った場合には、それぞれ標識をつけて、その身分、所属、国籍を明らかにしておかなければならないということは、おっしゃられた通りですが、そういう立場からいいますと、U2はソ連の方へ入って偵察をしておるし、あるいは戦時態勢ではないのですが、予備行動ともいわれるものですから、民間飛行機であったとか、あるいはアメリカの軍の指令を受けずにやったとか、いろいろの話がございましたけれども、U2こそは、やはり外務省の御見解では、国の飛行機であるということを断定できるでしょうか。
  22. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 ただいま御答弁申し上げました通り、NASA、航空宇宙局というのは、米国の政府の機関でありますから、その米国政府所属のもの、米国の航空機であると、このように思います。
  23. 松尾トシ子

    ○松尾委員 それでは、許可なくして他国の上空で偵察をしたり、写真をとったりすることは、国際法上違反でないでしょうか。
  24. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 御指摘の通り、領空侵犯でございますから、違反でございます。
  25. 松尾トシ子

    ○松尾委員 日本にも三機おるというのですから、もし日本の基地から中国やソ連の方に偵察に出かけ、そして第三国から撃墜をされるとか、逃げてきた場合に、ここで撃墜をされるとか、した場合に、基地を持っている日本は、条約の第五条によって、どういう態度をとるかを一つお示しを願いたい。
  26. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 領空侵犯の場合は、それをすぐ国外に退去させるか、着陸を命ずることができるわけでございます。そこで、領空侵犯、それをきかずになお領空上にあるものは、これを撃墜していいということは、国際法上正当な行為だと思います。しかし、それが領空侵犯をやめて、領空外にいった以上、それをさらに追撃し、またはその基地から飛び立つからといって、その基地を攻撃するということは、これは違法でございまして、反対にこれは武力攻撃ということになって、違法な武力攻撃になるわけでございます。
  27. 松尾トシ子

    ○松尾委員 これからこの黒いジェット機の本論に入りたいと思うのですが、今申しましたように、日本の上空にそういったような撃墜事件など起こった場合、あるいは偵察、スパイ行為というようなものがあった場合には、岸首相は米国にも厳重なる抗議をするといって——今日国務省の発表があったわけなんですけれども、私は岸さんにも、また外務大臣にもお伺いしたいのですが、いわゆる根拠は、黒い飛行機が日本に通告なしで置けたり、あるいは飛んだりする危険性は、どこの条約の根拠から始まるかというと、行政協定の第五条によってこれは入ってくるのだと思うのです。ですから、黒い飛行機はおろか、原爆搭載機でも入ることができるようになっているように思われます。この行政協定の第五条をごらんいただければわかるように、公の目的をもってするものは、アメリカ軍はいずれもどんなものでも入れるようになっておるわけです。この協定がありながら、交渉をしたり——あるいはしてもどうにもならないじゃないかということを私は言いたいところなんです。この点について、いかに条文の全体が相互防衛になって、日本の平和と極東の平和を保つためにやるのだといっても、この第五条の協定こそは、新旧ともに同じになっているのですから、この点についてのお考えをお示し願いたい。
  28. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 条約の詳しい説明は条約局長からいたさせますが、今お話しの、原爆を積んできた飛行機が入れる、これは今回の協定においては、事前協議の対象にいたしておりますので、自由には入れないことになるわけでございます。
  29. 松尾トシ子

    ○松尾委員 事前協議となると、またこの次にゆっくりと聞きたいのですけれども、それはさておきまして、もう一つ、黒い飛行機について聞きたいことは、日本にいるものはいわゆる気象観測のみを許しているし、いわゆる合法的な通常目的のためにというのは、気象観測のことだと思うのですけれども、この気象観測は第八条によりまして、日本国政府は、現行の手続で、次の気象観測を合衆国軍隊に提供することを約束していて、アメリカの黒いジェット機が無断でこの気象観測をすることを許していないはずですが、その点……。
  30. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 気象観測等は、当然の仕事としてアメリカがやるわけであります。ただ、日本も、アメリカ軍に対して、日本の集めた気象状況というものをすべて提供するということを約束いたした条文でございます。
  31. 松尾トシ子

    ○松尾委員 日本が気象観測のデータを集めて、日本から提供することを約束をし、そしてアメリカがその気象観測をすることは、してはいけないという規定をしていないからとおっしゃるのですが、これは私に言わせますと、この気象観測そのものが、国際法上、軍機を守るとかいう意味からいって、違反じゃないのでしょうか。
  32. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 そんなことはございません。アメリカとして当然気象観測はやれます。ただ日本が集めた気象観測状況をアメリカ軍に提供するという約束をいたしたのでありまして、アメリカ軍がやることについて排除いたしておりません。
  33. 松尾トシ子

    ○松尾委員 それでは、日本が集めた気象のデータをアメリカに提供するという約束は、どうして約束したのですか。その根拠を知らしてもらいたい。
  34. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 アメリカ軍が日本に駐留して、日本の平和と安全を守る上において、やはり飛行機等をアメリカは使うわけでありますから、気象を通報することは、その非常に重要な目的にかなうわけでございます。
  35. 松尾トシ子

    ○松尾委員 どうも私にはその点了解に苦しむのですが、日本がデータを集めたものを提供する約束をしていながらアメリカが、国籍不明といっても過言でない黒いジェット機で、四年間も日本の気象を把握していたというところと結びつけると、どうもこの条約の意義がわからない。それともう一つは、気象観測というもの自体は、この行為は軍事的目的をもってするものもあるわけです。こういう点からして、国際法上、この気象観測というのは、一朝有事の場合にはなかなか気象のニュースさえも禁じていたくらいですから、そんな約束をしたからといって、簡単にそれでよい、こういうものではないと私は思うのですけれども、もう一度もっと詳しく、そして良心的な説明を願いたい。
  36. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 ただいまの点は、第八条かと思いますが、第八条は、日本国政府は、……次の業務を合衆国軍隊に提供することを約束する。」といたしまして、日本といたしましても、その設備や機関を利用しまして、アメリカにいろいろ気象情報を提供して協力する、このことを約束しているわけでございます。それから、それでは米軍自体は気象情報収集の活動をどうするかということは、この行政協定には何ら規定はいたしておりません。ということは、これは決して禁止しているわけではございません。これは、日本の安全を守る米軍が日本にいる以上、軍隊の当然の機能として、そういうことはなすことができるわけでございます。従いまして、アメリカの軍隊は、また、みずからも気象情報をそのように収集するし、また、第八条で、日本も米国に対してそのような協力をするというのが、この第八条の趣旨でございます。
  37. 松尾トシ子

    ○松尾委員 戻りまして、それでは、この第八条の気象業務ということは、結局、アメリカがやってはいけないと書いてないから、ひっかからないということだと思うのですが、それならば、アメリカと日本と両方で提携してやるというふうに改めて、はっきりしておいたらいいじゃないか、そう思うのですけれども。
  38. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 米軍がみずからやることは、ただいま申し上げました通り、軍隊の当然の機能の一つだと考えておりますので、それを取り立ててここで規定する必要はない、このように考えた次第でございます。
  39. 松尾トシ子

    ○松尾委員 この条約を結ばんとしている政府の立場からいえば、この条約が結ばれた暁には、お互いに共同してものをやるのですから、お互いに対等のというところまでいかなくとも、共同して——そして事前協議もあることですが、共同してやるのですから、アメリカのことはどうやってもいいんだ、こういったのでは事が穏やかでない、そういったような精神が、この条約に全面的に現われているものですから、岸さんも藤山さんも御熱心に御説明になるのですけれども、どうもわからない点が多いということになろうと思うのです。  ところで、第五条に戻りますと、この条文はむずかしく書いてございますけれども、いかに事前協議があったり、あるいは随時協議がありましても、秘密に、黙って、この行政協定の五条によってアメリカがやらんとするものは何でもここへ入ってこれるようになっているのです。そのために、事前協議もあるいは随時協議もヘチマもないということになるんですが、この点をお改めになる御意思があるかどうか。
  40. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 われわれは、改める必要はないと思っております。第五条をよくお読みいただけばおわかりいただけると思うのでありまして、そういうこまかい御説明が必要でありますれば、政府委員から第五条の説明をいたさせます。
  41. 松尾トシ子

    ○松尾委員 そうしますと、これはアメリカが公のものに使うのでしたら自由に入ってこれるような協定になっているのですから、原爆搭載機でも入ってこれることになる。しかも、今度の黒いジェット機みたいに、撃墜されたなんということがない限りはわからないで済んでいるのですが、それで政府は国民の生命と財産を守る責任が負えると思いますか。この点、もっとはっきりと外務大臣はしてもらわないと困ります。ただ、修正をする必要がないなんというふうな簡単なものでなく、条約上のもっと真意を示してもらいたいと思う。
  42. 森治樹

    ○森政府委員 ただいま御指摘のように、行政協定第五条によりますと、アメリカ合衆国の航空機で、合衆国によって、合衆国のために、またはその管理のもとに運航されるものは、日本に入ってこれるわけでございます。これは自由でございます。しかしながら、日本施設区域を作戦行動に使用いたします場合は、別に交換公文がございますし、また、今度のU2のごとくに、アメリカ政府が日本施設区域を使用して特殊の目的のためにこれを使用しないという保証を与えるようなことは、これは第五条の自由なる出入とは別の問題でございます。
  43. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 この際、大貫大八君から関連質疑の申し出があります。これを許します。大貫大八君。
  44. 大貫大八

    大貫委員 外務大臣にお伺いいたします。先ほど、黒いジェット機の問題で御答弁がありましたが、黒いジェット機が軍用機でないということは、もう明確になっておると思うのです。この軍用機でないアメリカの飛行機が、日本の領空の上で自由に気象観測ができるという条約上の根拠は、一体どこにあるのですか。
  45. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 ただいま軍用機ではないというお話でございますが、しかし、軍の管理のもとにある航空機でございます。そうして、その管理は、第五条のこういう管理、すなわち、合衆国のため、または合衆国の管理のもとに運航されるものであることは当然でございまして、その意味において出入することができ、また、軍の管理のもとにある航空機でございますので、当然軍の機能の一つとしての機能を日本の上空で果たすことができる、こういうふうに考えます。
  46. 大貫大八

    大貫委員 軍の管理にあるということはどういうのですか。航空宇宙局というのは、アメリカ政府の何ですか、陸軍、空軍、海軍のどれに所属しておるのですか、どういうのですか。
  47. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 日本においては、アメリカ軍の管理下に置かれるわけでございます。
  48. 大貫大八

    大貫委員 日本においては、そういう軍の管理にあるというのは、どこに根拠があるのですか。アメリカから何かそういう通告があるのですか。
  49. 森治樹

    ○森政府委員 この飛行機は、もともとロッキードで製作されたものでございますが、これをアメリカの航空宇宙局が買ったわけでございます。航空宇宙局は、海外におきましてはその支部を持ちませんから、海外で運航する場合には、海軍なり、あるいは空軍にその運航の管理をさせておるわけでございます。従いまして、日本におきましても、これの運航に関する指揮権と申しますか、これは厚木の米海軍が持っておるわけでございます。また、地上の整備等は、軍でやっているわけでございまして、ただパイロットだけがロッキードから給料をもらって、軍属として軍に勤務しておる、こういう関係になっておる次第でございます。
  50. 大貫大八

    大貫委員 それは、黒いジェット機についてそういう調査をされているのですか。
  51. 森治樹

    ○森政府委員 これはアメリカ側からそういう情報をもらっております。
  52. 大貫大八

    大貫委員 一体、日本の領空において気象観測を行なうというようなことは、日本の基地を使用するというのは、第六条によれば、要するに、アメリカの軍隊だけのはずであります。明白に、第六条には「アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される。」つまり、日本の基地を使用することができるのは陸軍、空軍、海軍と、この条約には明白になっておるのです。一体、航空宇宙局の飛行機というのは、アメリカの声明でも、軍用機ではないということをいっておるじゃありませんか。アメリカの陸軍、空軍、海軍に編入されてない飛行機が、勝手に日本の領空の上で気象観測をするというのは、日本の主権の侵犯になるのじゃないですか、どうですか。
  53. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 ただいま申し上げた通りでございます。すなわち、第六条は、陸軍、空軍、海軍が日本国において施設及び区域を使用することができる。この海軍とか、陸軍とか、空軍、要するにアメリカ軍隊の指揮下、管理下と申しますか、そこに入れられて、それによって運航されるわけでございますから、これは決して違反しておるわけではございません。
  54. 大貫大八

    大貫委員 そうすると、勝手に民間機でも何でも持ってきて、これは軍の管理下にあるといえば、何でもできるという結果になるじゃないですか。しかも、アメリカ政府は、シビリアンといっているじゃありませんか。黒いジェット機は軍用機じゃないといっているじゃありませんか。
  55. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 ただいま申し上げた通りでございます。何でもやれるという点でございますが、これは先方がそのような必要を感じて、その軍のもとに置くということになれば、それはできるわけでございます。
  56. 大貫大八

    大貫委員 これは第六条の精神からいえば、明白に、基地を使用するのを陸軍、空軍、海軍と限定しているはずなんです。それも陸軍であるか、海軍であるか、飛行機にしても、軍用機として明白に登録されておるもの以外は、自由勝手に日本の基地を使えるはずはないのです。あなたの答弁では、管理下にあれば何でもできるようなことになるでしょう管理下にあるというようなあいまいな言葉が、この条約の解釈で許されるとすれば、アメリカは民間機を持ってきて勝手なことをさして、しかも、言いわけには、これは軍の管理下にあるんだといえば、抜け道ができてしまうじゃありませんか。第六条というのは、そういうような抜け穴を作っているのじゃないはずです。これは明白に、陸軍、空軍、海軍とやっておるのは、厳格に解釈しなければならぬと思うのですが、政府はこれについてそんなルーズな解釈を持っておるのですか。
  57. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 その点は、先ほど申し上げました通りでございます。すなわち、この軍隊というのが、具体的な個々の記章をつけたこういう軍隊でなければならないとか、そういう問題ではございません。この軍隊にアメリカは、米国のいろんな事情とか都合とか、向こうの編成の関係がありまして、その軍隊の管理のもとに持ってくるというような場合には、これは当然やはり第六条に違反する問題ではございませんし、そしてその機能が軍の当然の機能とするならば、その機能を行なうことができるわけでございます。その点は、そのような条約の構成になっておりますし、これはただ何でもできるとか勝手ほうだいだとかという意味ではないと私は思います。
  58. 大貫大八

    大貫委員 そうしますと、アメリカ政府の発表では、シビリアンだ、こういっておるのだが、あなたの解釈によれば、この黒いジェット機は軍用機ということになるのですね。そう伺っておいてよろしいのですね。軍用機ですね。
  59. 林修三

    ○林(修)政府委員 これは、先日も私お答えしたつもりでございますが、シビリアンというのは、ノン・ミリタリーということだと思います。これは陸軍、空軍、海軍、いわゆるマークをつけたそのものではないと思います。しかし、今条約局長及びアメリカ局長がお答えいたしました通り、日本においては、軍が管理しておる飛行機、そういうものは、この新条約の六条において、あるいは現行条約の第三条におきましても、軍の範囲に入るもの、かように考えます。これは行政協定をごらんになりましてもわかります通りに、いわゆる軍属も、もちろん日本の軍の中にはおるわけでございます。あるいは特殊契約者というものも軍属扱いをしております。あるいは海軍につきましても、もちろん、軍艦のみではなくて、海軍のチャーターした船もあるわけでございます。そういうふうに、軍の必要上、軍が管理しておるものは、当然にこの条約上、日本において施設区域を利用できる、かような関係になっております。
  60. 大貫大八

    大貫委員 どうも最後のの方語尾が不明瞭だったのですが、要するに、そうすると、この黒いジェット機はアメリカの軍の管理下にあるということで、軍用機というふうな判断をしてよろしいのですね。そう解釈してよろしいのですね。軍用機でしょう
  61. 林修三

    ○林(修)政府委員 いわゆる軍用機という言葉の問題でございますが、いわゆる陸軍機、空軍機、海軍機そのものではないわけであろうと思います。しかし、いわゆる軍が管理している飛行機である、日本において、軍の管理している飛行機であるということは間違いない、かように考えます。
  62. 大貫大八

    大貫委員 あれは陸軍、海軍の飛行機じゃないということは、アメリカの政府が言っておる。航空宇宙局のものだ、こう言っておる。しかし、あなたの説明によると、軍の管理下にあって、この六条の精神からいえば、陸軍、空軍、海軍、これが施設区域を、基地を使う権利があるのだ、その管理下にある飛行機ということになれば、アメリカにおいてはシビリアンかもしらぬけれども、日本に来て在日米軍の管理下に入ると、これは性格変じて軍用機になるのでしょう。
  63. 林修三

    ○林(修)政府委員 これも、軍用機という言葉の使い方の問題であると思います。たとえば海軍の場合でも、軍艦のほかに、海軍は当然いろんな船を使っております。そういうものを、海軍が使っておるから軍艦というかという問題と同じことだと思います。つまり、軍が使っておるからすべて軍用機だとおっしゃれば、軍用機でございます。しかし、その中に、いわゆる戦闘的な軍用機、それと、軍がいろいろの目的で管理しているその他の飛行機、こういうものはあり得るわけであると思います。そういうふうに分ければ、いわゆる軍用機とは少し違う。しかし、軍が管理している飛行機には間違いございません。
  64. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 この際、堤ツルヨ君より関連質疑の申し出がございます。これを許します。堤ツルヨ君。
  65. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 それでは、軍用機かどうかということについて、関連して、私は違う角度からお伺いいたしますが、乗っておるパイロットの身分は何になりますか。
  66. 森治樹

    ○森政府委員 軍属でございます。
  67. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 軍属として正式に軍に所属しておるところのパイロットが操従する飛行機は、何機に入りますか。
  68. 森治樹

    ○森政府委員 パイロットの身分と航空機の性格とは、これは別問題だと私は承知いたしております。
  69. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 そうすると、先ほどからおっしゃった答弁によりますと、乗っておるところの名目は軍属である。けれども、乗っておる人の給料だとか待遇はどこから出ておるのですか。
  70. 森治樹

    ○森政府委員 給料は、私はロッキードから支払われているということを承知いたしております。
  71. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 身分は軍属を与えておるけれども、給料はロッキードから出ておる。そしてアメリカの政府の発表によりますれば、本国では、民間航空機で、軍用機でない、日本に来ると、アメリカの在日司令部の統制下に置かれるから、これが軍用機の使命を果たしておるということになりますと、これは一体ほんとうの民間の飛行機か、軍に所属するものか、あるいは日本の島のきわどいところでこれが変身をするのか、非常にややこしい問題が起こってくると思いままが、こういうことについての取りきめはどうされたのですか。
  72. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 別に取りきめというもはございません。これは、先ほどからたびたび申し上げますように、行政協定の範囲内の問題であります。軍の管理のもとにある航空機でありますし、軍の当然の機能をここで果たすことになりますから、別にこれをどうするという取りきめは、これ以上必要はないと考えます。
  73. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 そういうごまかしをおっしゃるとだめなのです。これは飛行機の問題だけではなしに、あらゆる場合にこういうことがアメリカの自由な意思によってやられるということを、他の場合も考えておかなければならないと思いますが、どうですか。起こり得ましょう。飛行機だけ許して、ほかのものを許さぬということはないでしょう。
  74. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 その点は、たとえば軍属、どういうものを軍属にするか、軍属を何人よこすかというような問題、これは米国側のいろいろな編成上その他の都合がございますから、その都合に従って彼らがいろいろそういう手続をとるわけでございます。その点は、私は別に、協定上これ以上これをどういうふうに規制するという問題は何ら起こらないとい考えております。
  75. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 それではお伺いいたしますが、日本におる、統一された司令部のもとにあるところの国連軍の支配下にあるのか、それとも、現行安保条約によるところの在日米軍の支配下にあるのか、これはどちらに支配されておるのか、はっきりしますか。今までの答弁によりますと、二重性格を常に持っておるのでしょう。そうすると、これは国連軍の支配下にあるのか、行政協定によるところの、現行安保の在日米軍の支配下にあるのか、日本政府の方でそこははっきりしておりますか。
  76. 森治樹

    ○森政府委員 先ほど御答弁申し上げましたように、これは厚木にいる米国海軍が指揮をいたしております。
  77. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 そうすると、国連軍じゃないですね、局長。
  78. 森治樹

    ○森政府委員 国連軍ではございません。
  79. 大貫大八

    大貫委員 この黒いジェット機が軍用機かどうかということについて、非常にあいまいな御答弁をしております。これは、政府のような御答弁だと、私は非常に大へんなことだと思う。そうすると、在日米軍というのはオールマイティなんです。たとえば軍用機でないアメリカの飛行機、民間機、あるいは軍用機ならざる公用機が日本の領空へ来て、勝手に気象観測をするということは、これはできないでしょう。軍用機でない場合、どうですか。
  80. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 純然たる民間機は、そういうことはできません。
  81. 大貫大八

    大貫委員 たとえば純然たる民間機はできませんね。それならば、政府の所有する飛行機、軍用機ならざる、陸軍、空軍、海軍に所属せざる飛行機、それが来て気象観測するのはどうですか。できないでしょう
  82. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 それはそういう手続を踏んで入れるということ——入れるということは、軍の必要上入れるわけでございますし、われわれも、その必要上その入国を認めるわけでございます。といことは、軍の当然の機能を果たすことを認めて入れるわけでございますから、当然そういうことはできます。
  83. 大貫大八

    大貫委員 そうすれば、軍の名前を使えば何でもアメリカはできるといことになりますね。第六条はそういう簡単な規定ではないと思う。基地を使用する権利は、陸軍、空軍、海軍と、ちゃんと限定しておるわけなんです。在日米軍はやろうと思えば、海軍にあらざるもの、陸軍にあらざるもの、空軍にあらざるもの、それを勝手に、たとえば飛行機の場合なら、民間機を引っぱってきて何でもやらせることができるじゃありませんか。そうなるでしょう。非常におそるべきことだと思う
  84. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 それも向こうの管理下に入りまして、そして陸海軍の軍用と申しますか、陸海軍の任務につくために入ってくるわけでございますから、それはもちろんできる、行政協定でもできることを言っておるわけでございます。そこで何でも勝手にできるということではございません。これは行政協定に書いてございますように、また、安保条約にもございますように、軍の必要、軍の任務を果たすため軍の管理のもとに置かれて入ってき、また、その管理のもとに行動するわけでございます。
  85. 大貫大八

    大貫委員 そうしますと、これは最後に確かめておきますが、黒いジェット機というのは、日本に来ては、そういう軍の任務についておるわけですね。そういうわけですね。
  86. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 気象観測という、軍の機能を果たしておるわけでございます。
  87. 松尾トシ子

    ○松尾委員 アメリカは軍のことでしたら何でもできるというのは、結局、規定があるにもかかわらず、それをやる。何でもできるというのは、先ほどから私の言い回しが悪くてお通じがないかもしれませんけれども、この第五条にあると思うのです。この第五条に従って、何でも公用ならば入ってこれるというふうに思われる。しかも、この黒いジェット機に結んで申しますと、今度の場合でも、日本の航空管制本部には何にも連絡をしないで気象観測をやっておる、こういうことさえ言われているのですから、もしこれがレーダーにでもひっかかった場合に、日本はこれをどういうふうな判断をしていくかということもなかなかむずかしいのじゃないかと思うのですけれども、この点はいかがですか。それと同時に、この行政協定第五条の規定によりまして、何が入ってきても、どこもチェックをする役所がないということが一番危険だと思う。もし、藤山総理大臣のように……(笑声)大へん藤山さんをおだてたようですけれども、間違いました。それは藤山外務大臣のように、この第五条を修正する必要がないというからには、この第五条によってアメリカの望むところは、日本に入ってきて、しかも軍の力を借りて——軍という建前から、何でもできることになっておるのですから、しばしば申すように、原爆搭載機まで持ってきても、わからなければ、それで済む、そんな危険な話はないのですから、あなたが言うように修正をする必要がないのなら、どこかでチェックをする役所が必要だと思うのです。そうしておかないことには、この安保条約全体がまことに危険だということが、この点でもよく御認識ができるのじゃないかというふうに考えられるわけです。
  88. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今松尾さんのお話でございますけれども、本来安保条約の目的というものは、日本の平和と安全を守るために、日本施設区域をアメリカに提供して、そうして日本の平和と安全を守ってもらうわけです。従いまして、アメリカが日本の平和と安全を守るために必要な措置をとってもらいますことは、われわれはできるだけ協力していかなければならぬ。でありますから、アメリカの軍の活動に対して必要とする補助的なそうした問題につきましては、十分自由にアメリカで働き得るように、軍の活動が十分できるようにやって参りますことは、これは当然のことでありまして、日本がこの条約を作ります以上、そういう点について制限を設ける必要は、私ども一向ないと思っております。ただ、お話しのように、原爆搭載の飛行機というような問題につきましては、われわれは、条約上、事前協議によってこれを縛るということをいたしておるわけでございます。
  89. 松尾トシ子

    ○松尾委員 そうしますと、日本の平和を守るためならば、アメリカがやってくれることは何でも無条件で言うことを聞いている、こういうことになるのですが、これは相互協定ですから、お話し合いというものがあるはずです。協議もあるはずだと思うのですけれども、そういうときに黙って従っているのですか。たとえば……(「すべて条件はある」と呼ぶ者あり)条件はあるでしょうが、今申しましたように、今度の黒いジェット機でも、日本の航空管制には服していないし、どこの役所にも通告をしていないで行動をしているというのですから、そういう場合に、今後この新条約を結んだ暁にも黙っているのですか、話し合いは全然ないのですか。
  90. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 むろん、今回の条約におきましては、条約の運営にあたりまして常時協議をするということがうたわれております。従いまして、条約運営にあたりまして両国が協議をして、そうして、お互いに意見の交換をし、これは適当、不適当というような問題についても話し合いをいたすことは当然でございます。まして、日本の平和と安全に寄与し得るような状況ならば別でありますけれども、それを逸脱するようなことにつきましては、われわれとして協議の上で話し合いをする道は十分開かれておりますし、また、日本の意思を伝えてアメリカに反省をしてもらう点も十分道が開かれておるのでありまして、決してそういう点について心配はないと思っております。
  91. 松尾トシ子

    ○松尾委員 藤山さんは、他の委員の御質問に対しても、いわゆる協議がある、そして、不都合な場合にはこれを話し合いの上で拒否することができる、こういうふうに言っておられたことも速記録でよく見ました。しかし、それらのことは、この条文の中に書かれておらないわけです。それほどはっきりしているのでしたら、この条文の中に書くのが普通だということは、だれしも言っていることです。藤山さんは、その場合に、速記録の答弁では、アメリカの善意を信頼して、アメリカのするように協力をする、こういうことを言っておりますけれども、私をして言わしめますれば、藤山さんも、またアイクも、その他の人たちも、いつまでも生命があるものではないし、四囲の事情も変わってきたときには、必ず違った解釈を加えてくると思う。現今の経済事情の上に立って考えてみましても、わずか五万円や十万円の金を借りるのにも、今日では公正証書などといううるさいことを言っている時代です。ましてや、個人と個人の間で金を貸し合う仲でもそうでありますにもかかわらず、国民の生命と財産に重大な影響を持つこの条約を国と国とで結ぶのにあたって、善意と信頼によってではやっていかれないと思うのですけれども、こういう点、藤山さんは、アメリカとお話し合いの上でどんなふうにがんばり、どんなふうに向こうが言って、そして負けて、こういうふうになったのかというようなことがあったら話してもらいたい。
  92. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私どもは、この交渉で勝ったとか負けたとかいう観念を持っておりません。御承知の通り、われわれ、日本とアメリカとでこの条約締結いたしますことは、かねて申しておりますように、両国の緊密な協力関係、親善関係に立っておりますと同時に、極東の平和と安全、あるいは日本の安全という一つの目標のもとにこの条約締結いたしておるのでありまして、その目標について、われわれが協力していくという立場において両方の意思がそごすることは、われわれないと考えております。
  93. 松尾トシ子

    ○松尾委員 どうも話があちらこちらへ飛ぶので、私が質問したことに答弁がされておらぬ点がございます。いわゆる第五条の、アメリカの海軍、陸軍、空軍の名目でしたら、だれでも、どんなものでも入ってこれるというので、チェックをする役所が必要だと思うけれども、その点はどうですか。
  94. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 それらの問題につきましては、行政協定等で規定してあります通りに運営して参れば適当でありまして、むろん、それらのことにつきましては委員会等もございますし、そういう委員会等において話し合いをしていく、こういうことの組織になっておるわけでございます。
  95. 松尾トシ子

    ○松尾委員 規定してある通り動いていけばいいとおっしゃっておるのですが、かねて合同委員会の運営の様子を聞いてみると、かなり日本に割が悪いときがあっても、現行行政協定の問題でも、ちっとも日本の政府はがんばったりしなかった、むしろ、アメリカの方で、これでいいのかと思ったことさえある、たった一回あったきりで、あと百何十回開いても、いつでもそれに従っているという調子で、今のような態度でお互いが合同委員会で話し合った場合に、いけないものをチェックしていくとか、こういうことはできる自信がございますか。あると言うでしょうけれども、もっと具体的に話してもらいたいと思います。
  96. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 現行安保条約は、占領直後に、占領下の惰性も加わりまして運営されてきたことは御承知の通りだと思います。従いまして、そういう状況ではいけないという総理の判断のもとに、対等の立場で自由に話をしながら運営していくということを主眼として条約の改正もいたしておりますし、今回の行政協定の改定も、そういう線でいたしております。従って、過去のいろいろな問題が、若干そういう歴史的なニュアンスによって左右されたことをわれわれは認めないわけではございません。しかし、それを改正するのが、今回の目的でございます。
  97. 松尾トシ子

    ○松尾委員 どうも、過去の欠陥は認めるけれども、これからちゃんとやっていくと言われれば、それでもどうするかということも言えませんけれども、先ほど申しましたように、黒いジェット機が、・日本のいわゆる航空管制本部に何らの連絡もなくやっている。こういうときに、もし、わが国の管制本部のレーダーに、いわゆる国籍不明の飛行機の影が映ったなんというときに、もし、間違ってこれが挑発的行為に出た場合——こういうこともあり得るのですけれども、こういう判断をどういうふうになさいますか、重ねて伺います。
  98. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 お答え申します。わが方で持っておりますレーダー・サイトには、日本の周辺を飛びます全部の飛行機がキャッチされます。これは、日本及び米軍の飛行機につきましては、それぞれ通報がございますから、この飛行機は、いわゆるアンノーンでないということが判断がつくわけでございます。日本及び米軍の方の飛行計画にない、連絡を受けてないものにつきましては、領空侵犯かどうかということを対象にいたしまして、必要な場合には領空侵犯を防止する措置に出る、こういうことになっておるわけであります。U2につきましても、レーダー・サイトでは全部キャッチいたしております。
  99. 松尾トシ子

    ○松尾委員 私は、今回の黒いジェット機の撃墜事件にからみまして、社会党とは違った角度から、国際法上あるいは今度の行政協定、条約の上から御質問をしたつもりですが、その質問の下手さかもわかりませんけれども、どうも逃げている、明確なる登弁をしないというふうに思われて仕方がございません。しかしながら、この黒いジェット機が、わが国の上空の気象状況を把握いたしまして、そしてもし日本の基地からソ連や中共の奥地まで行くようなことがあったら、問題になる。従いまして、日本の基地がまことに危険性を持つ、国民の、万が一戦争に巻き込まれるじゃないかという不安が、ここにあるのだと思うのです。
  100. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 この際、大貫大八君より関連質疑の申し出があります。これを許します。大貫大八君。
  101. 大貫大八

    大貫委員 黒いジェット機の問題について、先ほど政府の答弁では、軍用機であるということを大体お認めになったと思うのです。そこでフルシチョフの、この間のモスクワ放送によりますと、黒いジェット機が進発して、ソ連の領空侵犯をした場合には、その進発基地をたたくであろうということが放送された。しかも、けさのモスクワ放送によりますと、それは単なるどうかつではないのだ、おどかしではないのだ、ほんとうにそういう場合にはやるぞということを、重ねて声明をいたしておるようであります。そこで、この黒いジェット機が日本の基地を飛び立って、かりにソ連の領空侵犯をした場合、ソ連から、このようなソ連の決意に基づいて、アメリカの基地が攻撃を受けた、こういう場合には、一体これは条約第五条が発動するのですか、しないのですか。
  102. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 国連憲章から見ましても、ソ連が、単に領空侵犯をしたというだけでもって、日本の基地を攻撃する理由には、われわれはならぬと思います。しかしながら、同時に、今回もし攻撃をしてきて、実際に武力攻撃であれば、それは第五条の適用が起こるわけでございます。
  103. 大貫大八

    大貫委員 ソ連の場合は、そういう場合には自分の領空を侵犯されたのであるから、そういう領空を侵犯するような飛行機が飛び立った其地をたたくということは、むしろソ連から見れば、自衛権の発動だと言うかもしれない。そうすると、その場合、一体日本は、単なる武力攻撃として、アメリカと一緒に立ち上がれるのですか。第五条の武力攻撃というのは、再々政府が御答弁になっているように、急迫不正の侵害が武力攻撃だ、こう言っている。しかし、ソ連から言えば侵害じゃないと言うかもしれぬ、自衛権の発動だと言っておる、そういう場合にはどうなるのですか。
  104. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 条約上御説明申し上げますけれども、単なる領空侵犯につきましては、その領空侵犯を排除する方法があるわけでありまして、その基地までたたくというようなことは、通念としてないわけであります。なお、条約上よく御説明いたさせます。
  105. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 国連憲章五十一条の規定によりますれば、自衛権の発動は、武力攻撃に対して行なわれるわけであります。領空侵犯は武力攻撃ではございません。従いまして、それに対して日本の基地をたたくということは、違法なる武力攻撃でございます。第五条は発動いたします。
  106. 大貫大八

    大貫委員 ちょっとそれはおかしいと思う。そんなことは再々前から答弁が繰り返されておったが、たとえば、集団自衛権になるかどうかという問題で、アメリカの基地がたたかれた場合のことが再々問題になったはずなんです。たとえば、アメリカの基地がたたかれ、アメリカの軍隊がたたかれた、日本の基地内における在日米軍がたたかれた場合に、日本が第五条によって行動する場合には、これは個別的自衛権だとあなた方は説明をしている。ところが、日本はその場合、領空侵犯しか受けていないじゃないですか。アメリカ軍がやられた、日本の被害というのは領空侵犯だけなんです。それでもアメリカ側と一緒にやるということは、あなた方は前から言っておる。その理論を展開されていけば、日本は領空侵犯だけでも、攻撃にアメリカと一緒に行動するのですから、ソ連自身が領空侵犯を受けて、それを自衛権の発動として日本の基地をたたく、アメリカの基地をたたくということも、それは正当な自衛権の行使になるのじゃないですか。
  107. 林修三

    ○林(修)政府委員 前から申し上げております通りに、在日米軍に対する攻撃、これは日本の領空、領海を侵犯すると同時に、日本の領空、領海に対する攻撃なくしては、これは行ない得ないと思います。つまり単に領空侵犯をして、上を飛び回るというだけではないわけでございまして、いわゆる米軍に対する攻撃でございます。同時に、その米軍は日本の領海、領空の上におるわけでございまするから、同時に日本に対する攻撃なくしては行ない得ないわけでございます。今問題になっておりますのは、いわゆる仮定の問題でございますが、かりにアメリカの飛行機がソ連の上空を侵犯した、つまり武力攻撃にあらざる領空侵犯、単に上を飛び回ったというだけで、何らの攻撃もしていないという場合でございます。これはまさに武力攻撃ではないわけでございます。そういう場合に、国連憲章五十一条の、自衛権の発動要件にはならない、かように考えられているわけでございます。
  108. 大貫大八

    大貫委員 しかし、目的は侵略の意図を持っている場合もあるかもしれない。単なる航空写真をとる、気象観測をするというだけではなく、それは戦争の準備行為であると、少なくもソ連は見るかもしれない。単なる領空侵犯とだけはソ連は考えないでしょう。単にソ連の空に飛んできた、民間機が入ってきたというのと違うでしょう。いわゆる軍の任務を帯びて入ってくる飛行機ですから、これは単なる一つの領空侵犯ではなくして、戦争の準備だと少なくもソ連は考える。そういう場合に、それに対する自衛処置として米軍基地をたたくのだということは、少なくも国連憲章五十一条の問題に触れないという主張をソ連はしますよ。あなた方の解釈ではなくて、ソ連はそう考えますよ。それに対してどう考えますか。
  109. 林修三

    ○林(修)政府委員 単に、いわゆる偵察飛行、あるいは今おっしゃるように準備でありましても、これは武力攻撃ではございません。武力攻撃にあらざるものを武力攻撃なりとして、自衛権を発動することは国連憲章違反だと思います。これはソ連がかりに主張をいたしましても、そういうことは国際社会では受け入れられないと思います。
  110. 大貫大八

    大貫委員 あなたはそういう解釈をされる、ところが、ソ連は自衛権の発動だと考えるかもしれない。そこで現実にフルシチョフ声明のように、かりに黒いジェット機がソ連の領空を侵犯したために日本の基地がたたかれた、その場合、武力攻撃であるかどうかという判断は一体どこでなされるのですか。
  111. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 それは、たびたび申し上げております通り、一国が他国に対する組織的、計画的な武力の行使であるという場合においては、これは武力攻撃になるわけであります。
  112. 大貫大八

    大貫委員 そこが究明されていないから、私はよくお聞きしたい。一体武力攻撃であるか——事実問題だというのだ。これは岸総理も再々そういうことを答弁しておる。事実問題だといっても、法律問題がからまってくるでしょう。単なる武力攻撃というのは、急迫不正の侵害に対しての、これは自衛処置を講ずることになる。だから、その武力攻撃が、はたして自衛権を発動できるような、武力攻撃であるかどうか。かえってアメリカが、武力攻撃を誘発する場合もあるでしょう。アメリカが侵略した、それに対して他国が自衛権を発動してきた、この場合は、もはや第五条にいう武力攻撃ではないでしょう。いわゆる攻撃はあったけれども、それは自衛権が発動できる攻撃じゃない。(「そんなことはない」と呼ぶ者あり)それはそうです。アメリカが誘発して侵略をした、逆に自衛権の発動でやってきたというような場合には、これは急迫不正の侵害じゃないのだから、正当防衛、要するに自衛権の発動はできないでしょう。だからその判断をだれがするか、これは重要なことです。事実問題じゃない。単に爆弾を落とされたから出動するというのでは、武力攻撃は変なものになりますよ。
  113. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 先ほどから申し上げておりますように、領空の侵犯でございます。アメリカが誘発したとか、しないとか、そういう問題でないので、五十一条は武力攻撃が発生した場合でございます。従いまして、仮定の問題でございますが、米国が相手方に武力攻撃をなしたというような場合は、その反撃として、相手方に正当な自衛権ができるわけでございます。武力攻撃でない場合は、そういうことはいけません。すなわち、武力攻撃でない場合に、何かあったからといって武力攻撃をしかけてくる方が、今度は違反になるわけでございます。違法な武力攻撃でございます。
  114. 大貫大八

    大貫委員 その判断は、一体だれがするかということなんですよ。アメリカがするんですか、日本がするんですか。
  115. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 私は、領空の侵犯とこの武力攻撃とは、明瞭に区別ができる問題であろうと思います。
  116. 大貫大八

    大貫委員 あなたは、私の問いに答えてないですよ。要するに、アメリカが侵略したためにその反撃で来たのか、あるいはあなたの言うように、むしろ相手国の方が、理由なしに五十一条に違反して反撃に出てきたのか、その判断ですね。あった武力攻撃が、自衛権を発動するところの武力攻撃であるかどうか、その判断をだれがするのかというんですよ。
  117. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 これはたびたび申し上げておりますように、武力攻撃でございます。これは明白な事実でございます。私はそう考えております。
  118. 大貫大八

    大貫委員 明白な事実、それはよろしいんです。攻撃があったという事実は明白なんです。しかし、その攻撃を受けたのは、たとえば在日米軍が行って挑発をした、そのために反撃を受けた場合なのか、あるいは理由なしに攻撃を加えてきたのか、要するに、自衛権を発動する、第五条を発動する前提になるでしょう。単なる攻撃を受けたからといって、すぐ自衛権が発動できるのですか。
  119. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 日本としましては、違法な武力攻撃を受けたならば、当然自衛権が発動できるわけでございます。
  120. 大貫大八

    大貫委員 違法と言うているのじゃないんですよ。違法なる攻撃なら問題はないんですよ。違法であるかどうかは、だれが判断すかというんですよ。そうでしょう。たとえば、さっきから何回も言っている在日米軍がかりに領空侵犯して、なおかつその国を攻撃した、そのために相手国から自衛権の発動としてたたかれた場合は、これは不正な侵害じゃないでしょう。向こうは自衛権の発動ですよ。
  121. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 ただいま御指摘の点は、領空を侵犯したのみならず、攻撃を加えた場合、それは、こちらのアメリカ側が違法な武力攻撃を向こうに加えたわけでございます。そういうことは、この条約では全然前提にいたしておりません。これはそういうふうな違法なことをこちらからやる、アメリカがやる場合はどうだということは、この条約にそういうことを規定することは、われわれの考えの外でございます。
  122. 大貫大八

    大貫委員 それはわからぬでしょう。アメリカ自体の今までのやり方からして、わからぬじゃないですか。かりに黒いジェット機が、今は何も武装していないかもしらぬが、場合によっては、今度は気象観測に名をかりて、武装して領空侵犯するかもしらぬ。つまり、あのようにソ連で撃墜されたから、今度は自衛上武装するかもしらぬ、武装して、あるいは領空侵犯して気象観測なり何なりをやった場合に、かりにアメリカがソ連なり何なりを攻撃したという場合はどうですか。その場合、その自衛権の発動として基地をたたかれた、そういう場合の判断はだれがするのかというんですよ。
  123. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 ただいまの点は、今度は武装して領空侵犯をしたという場合でございますれば、これは武力攻撃ではございません。先ほどの場合は、領空を侵犯し、攻撃を加えたというので、そのようなことは条約の範囲外と私は申し上げたわけでございます。今度は武装して領空を侵犯する。これは領空侵犯でございますから、これに対して、侵犯された方が、国連憲章にいうところの自衛権を発動することはできない。従いまして、日本に対して武力攻撃を加えましたならば、これは違法な武力攻撃であって、この第五条が発動になる、こういうわけでございます。
  124. 大貫大八

    大貫委員 武力攻撃を受けた場合に、単なる領空侵犯であるかどうかは、日本はわからないじゃないですか。一体どっちが正しいかということは、すぐわかるものじゃない。そこで、武力攻撃に対して、日本が第五条によってアメリカとともに戦うかどうか、これは重大な前提要件をなすのです。その判断をアメリカが勝手にしてよろしいかということ、自分で挑発しておいて攻撃を受けた、そうして武力攻撃を受けたからといって、アメリカの判断で反撃をする、日本はくっついて、ともに共同行動をとるのか、この心配を私はするのです。あなた方は、米軍の行動なんかわからないじゃないですか。黒いジェット機が入ってきてもわからないくらいですから、黒いジェット機が、たとえばシベリアへ行って、何をやったってわからないじゃないですか。その結果がわからないのであるから、単に武力攻撃を受けて基地をたたかれた、これは急迫不正の侵害だと言って立ち上がるのですか。どうなんですか。
  125. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 日本に対して武力攻撃がありましたときには、むろん日本として、個別的自衛権によって立ち上がります。しかしながら、同時に、直ちに国連の安保理事会に通報することは、国連の規定から適当である。でありますから、今大貫委員の言うように、何かアメリカ軍が、ソ連に行って攻撃をしたというような事実がわからぬような状態がありますれば、日本が立ち上がりました後に、国連の安保理事会がそういう決定をいたすと思います。そういう場合に、安保理事会の処置に従うことはあたりまえであります。
  126. 大貫大八

    大貫委員 そうすると、日本が受けた武力攻撃が不正なものであるかどうかという判断は、日本がせずに、とにかく攻撃を受けたらアメリカと一緒に立ち上がって、あとの判断は国連にまかす、こういうことなんですか。それを確めておきます。
  127. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 われわれは、先ほど条約局長が言っておりますように、アメリカが、そういう不正な攻撃を他国に与えるとは思っておりません。そういうことを想定する必要もないわけであります。そうして、そういうような不正な、単なる領空の侵犯程度のもの以上の行動をとろうとは、われわれは考えておりません。しかし、領空侵犯であれば、その排除する方法というものは、必ずしも日本の基地をたたく必要はないのでありまして、そのたたきますことは、国連憲章にも違反することなのでございます。しかし、それは、大貫委員が、何らわからないうちにそういうことが起こったということをしきりと言われますが、いかなる理由であろうとも日本の基地がたたかれれば、日本は個別的自衛権を発動する当然の権利を持っております。ですから、それによって立ち上がることは当然だと思います。しかし、同時に国連の安保理事会にも通報して、その後の処置を持つわけであります。もしそういう、大貫委員の言われるような特殊な、何かもうわれわれの想像しないような事態があるということをかりに前提といたしますとすれば、そういう方法があるということは申すまでもありません。
  128. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時十一分休憩      ————◇—————     午後一時四十七分開議
  129. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。松尾トシ子君。
  130. 松尾トシ子

    ○松尾委員 午前中の質疑応答の中で、だいぶいろいろなことがわかりましたけれども、いま少しU2の問題についてお伺いいたしいと存じます。  先ほどの答弁の中で、日本のレーダーはあらゆるものをキャッチしているとおっしゃっておりましたけれども、このU2の活躍について、レーダーがキャッチしたのは一体いつのことですか。また、現在はいわゆるレーダー・サイトを日本に移譲されておりますけれども、その前もキャッチしておったかどうかという点につい、もう一度お伺いいたしておきたいと思います。
  131. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 レーダー・サイトを譲り受けたのは、昭和三十三年の五月ころと記憶しております。その前は、アメリカの方でレーダー・サイトを管理しておりました。ですから、今のU2等についてキャッチすることになったのも、日本に移譲されてからであります。今二十一カ所日本に移譲されております。
  132. 松尾トシ子

    ○松尾委員 日本のレーダーが、U2をキャッチしたのはいつごろかということをお聞きしたのです。それから、もう一つは、三十三年にはレーダー・サイトの全部の権限を移譲されたのですか、その点を一つ。
  133. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 レーダーでキャッチしたのがいついつかという、はっきりした資料はただいま持っておりません。自衛隊のレーダー・サイトでは、このレーダー・サイトに写ったものをとらえた場合通知を受け、米国の飛行機であることが判明しておった、こういうことだけで、いつ幾日という正確な記録といいますか、数字は今持っておりません。
  134. 松尾トシ子

    ○松尾委員 いついつという期日が、はっきりしておらないとおっしゃいますけれども、それは実際は、昨年の九月、藤沢にU2が不時着したときにわかったんじゃないですか。その点、はっきりして下さい。初めてわかったんじゃないですか。
  135. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 前から気象観測で来ておるということは承知していましたが、なるほどはっきり問題になったのは、昨年不時着してからでございます。
  136. 松尾トシ子

    ○松尾委員 どうもその通りじゃないかと私は思っているのですが、また、その問題につきまして、米軍の方からU2機が入ったということを、正式にどういう形で通達を受けたか、この点を一つ明確にしていただきたいと思います。
  137. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 これは正式に、U2を向こうで通知することもありませんし、私の方でも、通知を要求することもありません。先ほどから話がありましたように、気象観測の部隊が厚木にあります。その観測部隊に来ておったということを承知いたしましたのは、三十二年の三月でございます。正確に言えば、三月二十二日に来ておるということを承知しておるわけでございます。
  138. 松尾トシ子

    ○松尾委員 それらのことを、正式に報告されたのがどうかということをお聞きしたいのです。聞くところによりますと、防衛庁に通告があったというふうに聞いております。しかも、その通告は、日本の安全のためでなく、U2を安全に守るために、アメリカのために通告をしてきた、こういうふうに聞いておるのですが、その点を明らかにして下さい。
  139. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 これは一々通告を受けるべき建前になっておりません。でありますので、私どもが承知いたしましたのは、先ほど申し上げましたように三十三年の三月二十二日、こういうことであります。——申し足らなかったのですが、行政協定の第五条であります。
  140. 松尾トシ子

    ○松尾委員 午前中の答弁によりますと、私もここのところをなかなか力説したのですけれども、政府は逃げておりました。この行政協定の五条によれば、アメリカ軍の名をかりれば、アメリカ軍の公用とすれば何でも入ってこれる、こういうふうなところをもって、この条項に基づいて、ただ黙って入ってきていたのですか。そして黙って入ってきていたところを、三十二年の三月二十二日に正式な通告をしてきたとみなしてよろしいか。
  141. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 先ほどから申し上げておりますように、アメリカ側として通告の義務がありませんし、こっちも通告を受ける権利を持っておらぬ。基地を貸しておるというところへ気象観測のが来たということでありますから、特に通告の義務、通告を受ける権利というものが規定されておるわけではありません。
  142. 松尾トシ子

    ○松尾委員 通告を受ける義務もなければ、通告をする義務もない、ただし、この危険なU2が藤沢へおっこちてから初めて知った、こういうふうに理解してよろしいのですか。
  143. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 入っておることは、先ほどから繰り返して申し上げますように、三十二年の三月に来ておるという情報を得ておるわけでございます。
  144. 松尾トシ子

    ○松尾委員 情報というのは、正式な通告とみなしてよろしいのですか、情報と正式な通告とは違うと思うのですけれども……。正式の通告は、受ける権利もなければ、させる権利もない、こういうふうにおっしゃるのですか。そうして、そういうような立場に立ってこんな危険しごくなものをやられておったんでは、われわれの知らないところに何を持ち込んでいるかわからない、こういうふうに国民の不安は高まるだろうと思うのです。
  145. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 通告を受ける権利とか、通告する義務というものがないということは、先ほどから申し上げた通りであります。情報を得たということは、通告によったということではないということであります。  それからもう一つ、こういう危険なものということでありますが、私どもは、気象観測の仕事に従事するということでありますから、一向危険でなくて、日本の気象観測をしたことなどにつきましても、わが方にもその資料を受けております。ことに、昨年のベラ台風等につきましても、その気象の通報を受けております。でありますから、私どもは、危険な飛行機というふうには全然考えておらなかったわけでございます。
  146. 松尾トシ子

    ○松尾委員 情報というのはどの方面からお受けになったか、この点を明らかにして下さい。
  147. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 正式じゃありませんが、私の方の空幕の方が、向こうの空軍の方から話を受け取った、こういうことであります。
  148. 松尾トシ子

    ○松尾委員 情報をキャッチしたのは、三十二年の三月二十二日ではございませんね。それはいつごろのことですか。
  149. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 三十二年の三月から入っておるという情報を、その後に受けたわけです。
  150. 松尾トシ子

    ○松尾委員 その後のいつですか。三十二年の三月二十二日以後にその情報を知った、そういうことは、実際には、昨年の九月に藤沢でおっこったときに、初めてその情報として知ったんじゃないでしょうか。
  151. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 それは違います。その以前でございます。
  152. 松尾トシ子

    ○松尾委員 どういうふうに違うか、それを明らかにして下さい。
  153. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 違うということは、その日より以前ということであります。(笑声)
  154. 松尾トシ子

    ○松尾委員 違うということは以前ですという、子供みたいな答弁じゃなしに、これは実際重大な問題ですから、この情報はいつごろ、どこから、どういうふうに受けて、その情報を受けてから防衛庁はどういうふうに処置をし、決心をしたか、これを……。
  155. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 何回もお答えしなくちゃならないのですが、情報を得たのは、先ほど申し上げましたように、自衛隊の空幕というのがありまして、その空幕が向こうの空軍と常時連絡しておりますので、向こうの空軍から情報を受け取った、こういうことであります。  それから、どういう措置をとったかということでありますが、その措置といっても、これは気象観測のために活動しておりますので、私の方から、それに対して措置をとるべき理由も何もないと思います。
  156. 松尾トシ子

    ○松尾委員 そうしますと、情報を知る前にこのU2が入っておりましたから、その前には全然知らずにおった、何か他の情報を伝えなければならないようなきっかけがあって、初めて知れてきたのですか。
  157. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 別にきっかけがあったわけじゃありません。常時連絡の間に、そういうものがおるということを聞いたわけでございます。
  158. 松尾トシ子

    ○松尾委員 防衛庁という、在日米軍と特別の関係や話し合いの場を持てるその重要な庁が、風のたよりのように情報を聞いたなどというのでは済まされないと思うのです。特に今は大国間の大きな政治問題になっていることですから……。それで、あなたは、現実に日本の領空に飛んでいるU2は、ただ気象観測だけだから、そんなに心配することはないとおっしゃるでしょうけれども、それだけでなく、いつ危険をはらむかわからないというところまでいっているので、まことにしつこいようですけれども、聞いておるのです。ほんとうは今までずっと知らずにおった、何も情報も話し合いもなかった、昨年の九月藤沢に落っこちて、初めてアメリカの方からあなたのところへ直接流してきたんじゃないですか。たとえば、下手に誤解をされてはいけない、このU2が何かの形で撃墜されてもいかぬし、災害をこうむってもいかぬというので、特別の話し合いで情報が流れてきたんじゃないかと思うのですけれども、この点はいかがですか。
  159. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 何回も申し上げるようですが、風のたよりに聞くのが情報じゃないのです。私の方の空幕が向こうと常時連絡していますから、第五空軍の方と連絡している途上において、こういうものが入っているということを聞いたわけで、ただ風のたよりということではございません。それからこういうものがあるということは、これは御承知でしょうが、航空年鑑というようなものがありまして、これにはっきり出ているのです。アメリカ大統領の管轄下にあるものが、NACAというものからNASAというものに機構が変わってきた、こういうことも出ておるのです。ですから、秘密のものでないということも、毎々申し上げておる通り。そういう気象観測のものでありますから、特に私どもは、何もこれが落ちたからというわけではなく、その前に、私の方の空幕と向こうの空軍との連絡の際に、こういうものが来ているということを承知している、こういうことでございます。
  160. 松尾トシ子

    ○松尾委員 現在の行政協定のもとにおきましては、このU2は大して重要なものでないから、日本に配置する前に相談をする必要が——もっとも現在の行政協定ではする必要がないのですけれども、する必要がないというふうにみなしていたので、三十二年の三月二十二日をずっと過ぎてから情報が入ったというふうに解釈してよろしいのですか。それと同時に、これは、今後新しい行政協定並びに安保条約が結ばれた場合には、いわゆる承前協議の対象に入りますか。
  161. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 安保条約が通ってから事前協議の対象になるかというお尋ねでございますが、これは事前協議の対象には入りません。
  162. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 この際、竹谷源太郎君から関連質疑の申し出があります。これを許します。竹谷源太郎君。
  163. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 ただいまの松尾委員の黒いジェット機に関する問題に関連してお尋ねいたしますが、今防衛庁長官はこう言われた。三十二年の三月二十二日から日本に入っておる。そしてはっきり確認したのは、昨年の九月墜落のときである。しかし、その以前に、米軍から自本の自衛隊の空軍に情報としてそういうものが入っておるということを聞いておる。しかし、その時期はまだ言わない。そこで、お尋ねしたいのは、一体、黒いジェット機が初めて日本に入ってきたのはいつなのか。三十二年の三月二十二日に相違ないかどうか、重ねてお尋ねをいたします。
  164. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 三月の二十二日ということに間違いないと思っております。
  165. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 アメリカの国防省当局の発表によると、四年前から日本に入っておると言っておるのです。そうすると、三十二年の三月ですから、三十三、三十四、三十五と三年ちょっとにしかならないのです。四、五年前とも言っておる。これはそれ以前ではないか、これは間違いがないのかどうか。そうして、そのようにかりに約三年前にしても、それから去年の九月まで二年半の間、三機の黒いジェット機が日本の空を、あるいはその周辺を、もしくはもっと広い範囲にわたって、気象その他の業務のために飛び回っておった。それを一体日本の自衛隊は知らないでおったのかどうか、それをお尋ねしたいと思います。
  166. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 これは、午前中防衛局長が御答弁申し上げましたように、それは知っておったわけです。
  167. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 それではいつから知っておったか、それをはっきりお答え願いたい。すなわち、アメリカの空軍から情報として受けた日はいつであったか。また、それ以前からも、今防衛庁長官の御答弁によると、日本の自衛隊はキャッチしておった、こういうことでございますが、その年月日を、日はないとしても、年と月くらいはここではっきり明確にしていただきたい。
  168. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 U2の点につきましては、ただいま大臣のおっしゃった通りでござまいして、昭和三十二年の八月に、日米の安保委員会が岸・アイク共同声明によって設けられまして、それ以後におきましては、重要なる飛行機種の変更と申しますか、そういうことにつきましては連絡をしてきております。それ以前、昭和三十二年の三月ごろのことでありますので、私どもは正式には連絡を受けておりませんでした。ただ、航空幕僚監部の人は、そういう話を聞いておるということを申しておったわけであります。  それからレーダーの点でありますが、午前中にもちょっと申し上げましたが、レーダーのスコープには全部の飛行機が映るわけであります。ただ、われわれの方は米軍との連絡を絶えずやっておりますから、映った飛行機がきめられておる飛行計画による飛行機である、それは米軍の飛行機であるということがわかれば、航跡をトラックすることをやめていくわけであります。どの飛行機をキャッチした、どれがU2であったかどうかということは、ちょっと調べにくいと思います。
  169. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 今防衛局長の答弁でわかりましたことは、三十二年の三月に入ってきたことは事実であるが、その年の八月に岸・アイク共同声明による——これは安全保障委員会のことであろうと思うが、それを発足させてからは、すべて協議する、打ち合わせをするということになっておったが、それまでは何ら知らせもなかった、こういう答弁でありますが、しからば、昭和三十二年の八月の安全保障委員会発足のときに、アメリカから知らせがあったのか、それともその前に知らせがあったのか。今、その前には知らせがないというような答弁でしたが、それをはっきりしてもらいたい。  それから日本の自衛隊が、昭和三十二年三月以降同年の九月までの間にすでにキャッチしておったのかどうか、もう一ぺん防衛局長から御答弁願いたい。
  170. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 お尋ねの後段でありますが、これは今申し上げました通り、レーダーに現われましたものが、われわれの方の知っておる、アンノウンでない飛行機だということになりますと、すぐ航跡をトラックすることをやめてしまうわけであります。ですから、どれがどれであったかということは、今調査しにくいと思います。日米安保委員会が発足しました当時、その前のものを一括して、特に連絡してくるということはなかったように承知しております。それ以後について緊密なる連絡がとられ始めたというふうに御承知願いたい。
  171. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 そうすると、今の防衛局長のお話でわかったことですが、昭和三十二年の九月、岸・アイク共同声明以後においては、すべてこの行政協定第五条によって、日本へ入ってくる船舶、航空機、そのようなものは、日本政府に対して安全保障委員会において連絡する取りきめになっておったのか、それとも、取りきめはないが、随時適当な、アメリカが日本に通告してもよろしいと考えるものだけを通告しておるのか、一括して全部そのつど——日本に入ってくる船舶や航空機や、その他そのような在日米軍の状況については随時全部日本政府へ通達する、知らせてくる、こういうことにその後なっておるのかどうか、その点、明らかにしていただきたい。これは外務大臣の所管になろうかと思いまするから、お願いいたします。
  172. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 日米安保委員会ができまして、たとえば、在日米軍が、岸・アイク共同声明でいわれておりますように撤退の計画を立てる、あるいはその他の変更をするというような場合に、大筋の話はむろんいたしておりますが、しかし、個々の飛行機が一々入ってくるというものについてまでの通報関係は、いたしておりません。むろんそういうことをいたすこと、別に差しつかえはございませんけれども、どういう機種の、どういう飛行機が一機入ってきたとか、二機入ってきたとか、そういうことまではいっておりません。
  173. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 第五条に関する午前中の質疑によれば、「合衆国及び合衆国以外の国の船舶及び航空機で、合衆国によって、合衆国のために又は合衆国の管理の下に公の目的で運航されるもの」は、自由にアメリカの基地に出入りができる。これに対しては、日本政府としてはチェックする方法がない。一々アメリカはこれを通告する義務もなければ、また、日本はそれを要求する権利がない、こういうお話でございましたが、今の外務大臣並びに防衛局長の答弁から判断をすると、これは昭和三十二年の九月、岸・アイク共同声明による安全保障委員会設置後は、これをアメリカの方から日本政府の方へ連絡をしてくる、こういうことに変わったように見える。しからば、これは合同委員会のことではなくて、この安全保障委員会において、第五条——これはあるいは合同委員会かもしれませんが、とにかく第五条によって、今までは、アメリカの軍隊の管理下だという名前がつけば自由自在に日本に入ってこれたものが、今度は、勝手に入れないことになったようにも見える。また、そうしなければならぬと思うのでありまするが、そのような安全保障委員会もしくは合同委員会における合意がなされ、議事録でもできておるかどうか、あるいは話し合いができて、このようなものはこうするという新たな方針がそこに生まれたのであるか、その点を明らかにしてもらいたい。
  174. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 安保委員会ができまして、何か行政協定の五条が修正されたとか、あるいは適用に違いができたということはございません。五条は五条として適用されていること、むろんでございます。安保委員会は、その目的にあります通り、お互いにこの条約の運営を円滑にしていくために情報の交換をし、あるいは意見の交換をするということが目的でございまして、必要がありますればこの機関を通じて、どういう状態に米軍があるんだ、あるいはどういうふうな受け入れ態勢にあるのかということは、お互いに話し合うこと、むろんでございます。ただ、今申し上げましたように、そういう一々こまかい、一つの船が入ってくる、あるいはその船はこんな形のものが入ってくるというような、そういうような一々の協議までこの安全保障協議会でやるべきものでもなし、また、やるような委員会の運営でもございません。
  175. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 そうすると、外務大臣の答弁によると、日米安保委員会ができた後においても、第五条の適用については何ら変わりがない。アメリカ軍の必要、管理下あるいはチャーターしたものは、船舶も航空機も自由に日本に入ってこれる、こういうことで別にチェックはされないということでございますが、それでは日米安全保障委員会ができても、大した効果がないということになる。午前中からの質疑を聞いていましても、この行政協定第五条というものは、アメリカの軍隊が、その必要な限度において、条約第六条によって日本の基地、施設を使う、その範囲内でなければならないではないかという大貫委員の質問がございました。ところが、それを逸脱して、広範に、何もかもアメリカの軍隊という名義さえ使えば自由自在に日本に入ってこれる。第五条は、まことに危険きわまりない野放図な、あけっぱなしの、これは規定である。従って、こういうものに対しては、合同委員会において、あるいは安全保障委員会においてチェックをして、勝手に日本の基地や施設が使われないように、条約の最小限度においてのみ使われるように、日本政府としては努力する義務があると思う。しかるに、外務大臣の意見によると、これはもう第五条の通り野放図で、勝手ほうだいに、アメリカの船舶や航空機や、あるいは軍人、軍属、軍属と称する者、その家族、そういうものが自由勝手に入ってきて、日本の政府は全然これをキャッチする方法もなければ、チェックすることもできない、こういうことになるのであるかどうか。それでは日本の政府としては、国民に対してまこととに相済まぬことではないかと思う。条約に認められた以上の勝手なことに日本の領土を、われわれの愛する国家を使わせるというようなことは、これは日本自体の安全のためにやむを得ない最小限度でなければならない、主権の一部を放棄するものでございます。そのような国家の安全と幸福と利益と、そして、われわれの主権を守るという確固たる信念なくしてこの条約の適用をされたのでは、とんでもないことになる。第五条の規定が野放図なんではとんでもない。当然合同委員会があり、また、安全保障委員会があって厳重な制限が加えられ、第五条は一〇〇%野放図でも、実際は一〇%か五%の適用しか第五条は見ないのだ、このように努力することが政府の当然の責務でなければならないと思う。この点いかがですか。私は政府のために好意に考える。合同委員会もしくは安全保障委員会において、第五条を、この野放図な規定を厳重に制限した合意をし、話し合いがすでにできておるものでなければならない。従って、黒いジェット機のごときは、当然来る場合には日本に十分の相談をし、その了解を得、そうして、その従事する業務についても十分の打ち合わせの上やらせるように、たといこの行政協定はあけっぱなしであっても、合意なり、取りきめなり、内部の話し合いによって、これを厳重に制限するということは当然なければならぬ。だから政府は、発表はしないが、私は、厳重な合意が当然あるものと想像する、また、そうなければならないと思うのだが、この点いかがであるか。
  176. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 御承知のように、日米安全保障条約というものは、日本の平和と安全を守ることが目的でございまして、それは日本の主権が、他国から武力によって侵害されることに対する対抗措置であること、申すまでもございません。その目的のためにアメリカ軍が駐留いたします以上は、われわれは、アメリカ軍に対して適当な便宜を与えることも、これまた適当であります。また、日本の主権を擁護するためにとらるべき措置に対して、万全の援助を与えることも、これは当然でございます。従いまして、私は、行政協定第五条が、そういう意味から言いまして、目的を達成すると思っております。しかしながら、むろん国際法その他に抵触するような行動をアメリカ軍がやるとは思っておりません。しかし、そういうような場合も起こりますれば、また、起こる予想がされれば、当然それに対しては、アメリカ軍に対して適当な機関を通じて反省を求めることは、これは当然でございます。しかし、第五条自身は、そういう意味で、できるだけ便宜の供与をすることは、私は当然なことだと思います。
  177. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 外務大臣、私の聞いておりますことは、そういう抽象論ではない。第五条の、このアメリカの自由な日本への出入りに対してチェックする、あるいは制限をする、この点はこの程度にしておいてくれ、こういうことの取りきめ、それは合意議事録であるか、何らかの合意書であるか、話し合いであるか、そういうものを作っていないのかどうかということを質問している。
  178. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ただいま申し上げたような観点に立っておりますので、私どもは、特別にチェックするというような、何か取りきめをいたしておるわけではございません。
  179. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 そうなりますと、この条約は、抜け穴じゃない、全部あけっぱなしで、日本の領土というものを、アメリカ軍の自由勝手なる使用に全く放任している。これでは沖縄と変わりがない。全国土が租借地であり、軍事基地であるという結果にならざるを得ない。こう申すと、それは相互信頼だと、例によって言うでありましょう。この相互信頼というものは、いずれもが守られるものではないから、われわれは、条約を作るなら、それをきちんと文書によって明らかに明定しておかなければならないということをいろいろな機会に申し上げているのでございますが、第五条が、外務大臣の言うがごとく、何ら合意もなければ、これを制限する取りきめもないといたしまするならば、気象業務の問題で午前中話が出ましたが、行政協定第八条によって日本はアメリカ軍に対してあらゆる気象情報を、航空その他の便宜のために提供するという義務を負っておる。しこうして、政府の答弁によれば、それは、アメリカもまた、空軍を飛ばすために、日本に駐留するために、気象をやる権利もあり、そうするのが当然だという話がありましたが、私はこれは見解が違う。せっかく行政協定の中にこのような規定がある以上、すべての気象業務を日本がやって、アメリカ軍に提供する。アメリカ軍は、その日本の気象通報によって飛行機を飛ばす、こういうことでなければならない。それが自由勝手にできるということになると、空は広くて制限がないから、自由に飛んでも日本人にはわからない。だから、勝手ほうだいに日本の空が使えるということなんです、政府当局の話によると……。領空、これは全部自由勝手にアメリカ軍が、気象業務と称して使える。この議論を推し進めると、軍事基地は、どことどことどこときまっておるが、実際は、その基地の間を出入りすることができるというこの第五条の規定を利用して、空と同じように使うならば、日本国じゅうを自由に使えるという結果にならざるを得ない。ただ地上には、建物があり、畑があり、さくがあり、道路がありして、その通りにはいきません。しかし、空のようにあけっぱなしだったら、勝手ほうだいに、アメリカ軍が日本領土を全部使えるという結果になる、気象業務を勝手にやっていいというならば。当然気象業務というものの範囲にも制限が加えらるべきである。そういう意味から、これは許すことのできない政府の態度、考え方であると私は思わざるを得ないのです。政府のような考え方では、この第五条によって、日本の領土は、全部が軍事基地のように使われても、何とも文句が言えないという結論になる。この点、いかがでございますか。
  180. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 お話しのようなことは、われわれ考えられないと思っておるのでございまして、気象業務をやりますことは、軍の仕事の上における一つの随伴的な活動だと思います。その気象業務をやりまして、たとえば、防衛庁長官が言われましたように、先般の伊勢湾台風のときに、キャッチした気象状況を日本に通報してくれて、そうして日本のためにも協力してくれるというようなことを、本来の任務以外にもやってくれていることは、私は非常に協力の態勢の上にあるものだと考えております。むろん、日本が気象業務を提供するということをうたってありますから、日本がこれを提供いたしますことは、できる限り提供いたしますことは、これは当然のことだと思います。しかし、そうかといって、それは何もアメリカの軍が気象関係を観測してはいかぬという規定はないばかりでなく、また、いかぬという規定があっては、かえって軍としての機能を発揮し得ない場合もあるのでありまして、私は当然のことであろう、こう考えております。また、それによって何か全部の日本国内が基地化するというようなふうに考えることは、必ずしも適当だとは考えておりません。
  181. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 黒いジェット機が、気象業務のために日本の空を飛ぶと称してあらゆる行為ができることは、御案内の通りなんです。偵察でも、写真撮影でも、何でもできる。それがまた日本の領空を越えて、公海あるいは他国の領土まで行かないとも保証はできない。そういうふうに自由にやっても、制限がないから、これは自由勝手にできる。そこで空軍の演習なんぞは、アメリカ軍が行なう場合に一体どうなるのです。これは制限する方々はないのだが、そういう場合には、日本の許可を得ているのかどうか、これは防衛庁長官にお尋ねをいたしたい。
  182. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 一定の地域、たとえば茨城県の那珂湊、こういうところで施設及び区域を使用して演習をするということにつきましては、行政協定に従って区域を許可して、そこで演習をするわけであります。一般的の訓練的な演習につきましては、日本に対して許可を得るというようなことはありません。
  183. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 もう少し、私その点知らないから、防衛庁長官に尋ねたいのだが、ある基地を使用して、その付近で空軍の演習をやるという場合には、当然基地の上空のみならず、基地外の空も使わなければならないと思う。そういう場合に、使うべき領空の区域を指定して、日本と行政協定によって打ち合わしてやるのか、それとも、この基地を使用して演習をやるというだけの話し合いでいっているのか、それをお尋ねしたい。もしそういう話し合いがなければ、基地の上だけで演習をやらなければならぬ。そんなところでは、とても演習はできないだろうと思うのです。それはどうなるのか、お尋ねしたい。
  184. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 一定の区域を指定してそこで演習をする場合には、その区域外で爆撃演習等はしないわけであります。その区域内——上空に対してもその区域内で演習をする、こういう取りきめになっております。
  185. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 そうすると、広く、これは一飛びで何百キロと飛ぶのだから、とてもきめた区域などではできない。結局、そういう演習を日本の上空において認める以上、非常に広い範囲にわたって、あるいは飛行機が墜落をしたり、もし実弾でも撃ち合えば、そのたまが飛んできて地上にいる日本人を傷つけたり、民家を焼いたり、いろいろな問題が起きてくる。そこで、行政協定の十八条等によって民事請求権の問題も起きてきて、非常に困難な問題がある。一体そういうことに関して、行政協定の規定があるのですか、それとも、それに関する合意議事録ができておって、アメリカ空軍の演習の場合には、その演習に基づく諸般の日本人の権利義務を害したり、その他の問題が起きた場合にどのような処理をし、どのように措置していくかというようなことに関して、当然行政協定のようなものか、あるいは合意議事録、そういう定めがなければならないと思うが、それはいかがでございますか。
  186. 丸山佶

    ○丸山政府委員 お答えいたします。空軍の演習の場合には、防衛庁長官がお答えの通り、演習区域というものを指定しております。従いまして、その演習は、その上空においてのみ行なわれることになります。なお、これに関しまする通報は、米軍から調達庁に来、調達庁から地元の県庁に通達し、関係方面に伝える、このような通告措置もなされております。なお、そこへ行く飛行のルートについても取りきめがございまして、それらのことは、すべて合同委員会できめております。区域外に落下物等がありまして国民に被害を与えた場合、これは行政協定十八条によりまして補償措置を講じております。
  187. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 今の答弁によると、合意議事録によって、日本においてアメリカ軍が——これは今空軍の話をいきなり取り出しましたが、あるいは海軍、あるいは陸士軍、それらについて演習をやる場合は取りきめがある、合意があるということであります。これは国民の権利義務に関係することきわめて大きい。その取りきめの内容を至急本委員会に提出ができるかどうか、この点、防衛庁長官から御答弁を願いたい。
  188. 丸山佶

    ○丸山政府委員 演習に関する取りきめ、合同委員会に関する事項がございまして、すでに当委員会にも一部出ておることとは思いますが、なお必要の向きは提出いたします。
  189. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 当委員公に出ております合意議事録なんというものは、ほんとうにごく一部のちゃちなもので、問題にならない。これは非常にたくさん、今のような問題が隠されている。それを全部取りそろえて出すように、委員長のお取り計らいを願いたい。  今関連でありまするからこの程度にとどめまするが、どうもこの五条というものは抜け穴だらけであり、それに対して、日本の平和と安全を守るためのアメリカ軍の行動に対してあけっぱなしである。それはアメリカ軍の基地、施設の使用は認めるといたしましても、日本の主権に加えられる大なる制限であるから、これは最小限度でなければならぬ。それを野放図に日本じゅう勝手に空でも海でも使える、こういうような大きな抜け穴でございまして、この点は、また別の機会に十分に究明をいたしたいと思います。以上、関連はこの程度にいたします。
  190. 松尾トシ子

    ○松尾委員 三十二年の九月に日米合同委員会が設置を見ましたときに、初めて——初めてというより、U2の情報が入った。それに伴って、U2以外のものでそれまでわからなかったようなもの、いわゆる日本国土に持ち込んだいろいろな兵器、こういったようなものの情報をおつかみになりましたかどうか、この点を一つ。
  191. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 U2の問題は、三十二年の九月に初めて知ったということは、申し上げておらないのでございます。日米合同委員会ができまして以後は、米軍と日本との間の連絡が、それより前に比べますと、非常に緊密になってきたということを申し上げたつもりでございます。その発足する際に、新しいことを特に向こうから連絡を受けたということは、私は記憶いたしておりません。ただしかし、飛行場等について申しますると、大多数の飛行場は、米軍の飛行場その他につきましては、日本の自衛隊のものもおるわけでございます。おおよそのことは、これはそこまでわかっておるわけでございます。
  192. 松尾トシ子

    ○松尾委員 先ほどのお話では、日本のレーダー・サイトに今いろいろなものが入ってくるけれども、U2だという判定はできなかった。アンノウンは全部落としていくから気にしなかった、こういうふうにおっしゃいましたようですが、それまで、三十二年九月合同委員会設置までは、ほとんど気にしないで知らなかったということになるので、あなたのおっしゃるように、いや九月以前には知っていたんだけれど、ただ情報をつかんだのは九月なんだ、こういうふうにおっしゃるわけですね。なお、私が先ほどお尋ねしたように、U2の問題ばかりでなく、その他の兵器でこれに類似のもの、こういったようなもので情報を受けたものはございますか。ただ何も問題が起こっておりませんから黙っている、こういうふうにもうかがわれるわけです。何かほかに問題があるようなことはないか、こういうわけです。
  193. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 レーダーの問題は、ノウンのものを落とすわけでございます、わかっているものを落とす、アンノウンのものを追跡をする、こういうことでございます。U2も、これは米軍の飛行機で、米軍の方でノウンでございますから、これはレーダーではそれ以上追跡をしないということでございます。  それから兵器のことでございますが、これは、たとえばF102という飛行機が日本に入って参りました。その入る前に、米軍の方から、こういうふうな飛行機を入れたいということを連絡をして参っております。
  194. 松尾トシ子

    ○松尾委員 ちょっと私は、そういうこまかい技術的なことはわかりませんですが、F102というのは、どういう性能を持って、どういうふうにここで、入ってから使われているのですか。
  195. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 F102といいますのは、これはやはり要撃用の飛行機でございます。今までは、要撃用の飛行機といたしましては、F86という飛行機とF102という飛行機とあったわけでございますが、それを新しい型のF102をもって要撃用の部隊に充てる。敵の——敵と申しては語弊がございますが、飛行機を要撃する性能がよくなっております。
  196. 松尾トシ子

    ○松尾委員 大体そんなもので、ほかに特に、報告を得て話し合いをしたなんというものはないのですか、ほかの兵器で……。
  197. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 三十二年の九月以降は、先ほど来申しておりまする通り、非常に連絡は緊密になったと思います。たびたび連絡を受けておりますが、具体的に、今何と何を連絡を受けたかということは、詳細には記憶いたしておりません。今私の頭にありますので一番顕著だと思われますのは、F102を入れるときに連絡を受けたという事例でございます。
  198. 松尾トシ子

    ○松尾委員 新安保条約の中に、今度新しい取りきめで、いわゆる事前協議などもありますが、今現状の安保並びに行政協定でいかようなことがされているかということが把握できないときに、実態を知らないときに、これから事前協議を始めるとか、通告をするということはできないと思うので、私は、今記憶にないということも知りたいと思っているのです。それは、今後この安全保障条約、行政協定が結ばれたあと、日本のほんとうの平和が保たれる最大の力を出すために必要だと思っておるわけです。  なお、次に進みまして、先ほど来竹谷委員がなかなかがんばっておりましたように、行政協定の第五条です。私も午前中繰り返し繰り返し申しましたように、この行政協定の第五条があったのでは、アメリカの公用と称すれば何でも日本に入ってこれる、午前中の答弁を開いてみると、いやそんなことはない、協議をするとか、合同委員会にかけてするとかいうことを聞いたように思われます。しかしながら、その場合に、安保条約にうたっているように、事前協議の中の、装備の重要な変化があった場合にこの事前協議の対象となるといっておりますけれど、こういった第五条で入ってくるものは、そんなに重要でないものはどんどん入れる、かまわずにほっておくのだというふうに解釈していいのか、それが一つ。それからもう一つ、装備の重大な変更というのとにらみ合わして、重要の基準というものをどこに置いているか、これを教えていただきたい、こう思います。
  199. 林修三

    ○林(修)政府委員 この行政協定第五条は、お読みになればわかります通りに、個々の船あるいは個々の飛行機の日本への出入国、これについての技術的な問題を規定したものでございます。つまり個々の船あるいは個々の飛行機が、一々日本の許可なくして入れるということでございまして、これは個々の船とか飛行機をとらえてみた面のものでございます。それからいわゆる事前協議の方の問題は、日本にある米軍の装備の重大な変更あるいは配置の重大な変更、そういう面からとらえた事前協議条項でございまして、この第五条等がどうなっておりましても、別な面でそれが重要な装備の変更であり、あるいは重要な配置の変更であれば、当然そちらの方も事前協議の問題になるわけでございます。それから装備の重要な変更につきましては、これは毎々ここでお答えしてあるわけでございますが、いわゆる核兵器あるいは長、中拒離ミサイル及びそれの発射基地、こういうものだということを毎々お答えしております。
  200. 松尾トシ子

    ○松尾委員 ちょいと質問の方法が悪かったせいか、横道にそれましたけれども、中心は、行政協定の第五条で何でも入ってこれる、野放しになっておる、そうしたならば、軍の公用だといって、その飛行機の中に、別な、非常に人間の生命を侵すようないろいろなものを積んできても、黙って入れちゃう、こういうふうになるのですか。それから、一機か二機なら、一々チェックしないで、黙って入れる、こういうことでしたけれども、そういう場合、危険な兵器、たとえば細菌というようなものを積んできても、一機や二機だったら黙って入れてしまうのですか。
  201. 林修三

    ○林(修)政府委員 この第五条は、今お答えいたしました通りに、個々の飛行機、あるいは個々の軍艦あるいは公用船、そういうものを、いわゆる日本にいる米軍の必要上それが日本に入ってくる場合、あるいは出ていく場合に、一々の、たとえば日本政府の許可、そういうものがなしにやれるという、そういう技術的な面からとらえた規定でございます。それから、事前協議条項あるいは第四条の随時協議、こういう方面であるいは協議条項となっておりますのは、たとえば装備の変更とか、あるいは配置の変更、こういう面からとらえているわけでございまして、個々の飛行機とか個々の船等をとらえないで、いわゆる米軍の装備、米軍の配置という面からとらえているわけでございます。従いまして、第五条の方で個々の飛行機について一々許可がなくても、そういうものによって日本にもたらされる装備の変更あるいは配置の変更が重大なものであれば、当然に事前協議の方にはかかってくるわけでございます。それから、今おっしゃいました細菌とか毒ガスというものは、当然国際条約で禁止されている兵器でございまして、こういうものを持ってくることは考えられないと思います。
  202. 松尾トシ子

    ○松尾委員 国際法で禁ぜられておるものは、もちろん当然持ってこれないでしょうし、使用もできないでしょうが、今日の科学の発達しているときに、国際法規上あげていないようなものを発明しているという情報も入っているわけですから、こういう点で非常に心配をするわけであります。それで、この第五条によりますと、全然チェックしないで野放しで入れるということになるのですが、まことに危険きわまることであるし、それから、安保条約は、共同防衛をして平和を守るのですから、一方的にそんな勝手なことを——いかに日本のためになるからといっても、だれが一体それが日本のためになるという認定をするのか、こういう点が問題になろうと思うのです。そのだれが認定するかという、どこの役所が認定するかということをきめておかなければ、まことにこれは危険きわまるものじゃないかと思うのですけれども、この点はいかがでしょう。
  203. 林修三

    ○林(修)政府委員 この行政協定第五条は、さっきからお答えいたしております通りに、全く技術的な規定でございます。行政協定全体が、いわゆる地位協定全体が技術的な問題でございまして、米軍が日本において日本施設区域を使う、あるいは日本の、そういうことに関連した面からこれは規定しているものでございます。個々の船が日本に入港するという場合に、普通ならたとえば軍艦であれは、一々のその該当国の許可が要る、あるいは飛行機であれば、民間航空機でなければ、許可が要る、そういう問題について許可が要らない、当然に日本に駐留する米軍のために入ってくるものはそれが要らない、そういう技術的な面からとらえた規定でございます。それから、いわゆる装備とか配置の問題になりますと、重要な問題については、いわゆる事前協議の方でとらえている。それ以外のものにつきましても、これは第四条の随時協議の条項に持っていってもちろん差しつかえないわけであります。どの範囲を持っていくかは、その四条の運用の問題になると思います。それから、米軍としては、日本を守る米軍の配備、これは一応は米軍の判断にまかしてあるわけでありますが、しかし、そこで先ほど来申しますように、事前協議においては、特に日本の利害に関係があると思われる点について、いわゆる重要な配置の変更、あるいは重要な装備の変更、こういうものを事前協議の問題に持っていっているわけであります。これについては、はっきりした事前のチェックをする、それ以外は、必要があれば、もちろん四条の方の協議に持っていけるわけであります。
  204. 松尾トシ子

    ○松尾委員 どうも政府の方は、アメリカに都合のいいことだから、この第五条は新旧合わせて変更しなかったのじゃないか。しかし、それ自体が、基地を持つ日本の国民にとっては非常に不安でならないと思うのです。  そこで、なお突き進んでお尋ねをいたしますと、黒いジェット機によって、ソ連並びにアメリカが、非常に思想的にも、また政治的にも火がついているような格好です。事実上、精神的には戦争に入ったようなほど、両方で非難し合っている格好です。ところで、けさの委員会冒頭に藤山外務大臣が読まれましたように、日本によこしたアメリカの国務省の声明では、情報活動は日本にいる三台のU2にはやらせない、ただ気象調査だけだと言っておりますが、一体これは藤山さん、だれがどのようにして保証ができるのでしょうか、この点を一つ。やらないと言っているのですが、どのようにしてこの保証ができるか。なぜならば、一方に、情報活動はやらせないと言っていながら、昨日のハーター国務長官の声明では、奇襲防止は続ける、こう言っているのですから、ここにわれわれの心配する大きな問題が隠されているのです。この点を一つ御説明願いたい。
  205. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 これはアメリカ政府が正式にそういうことを言ったのでありまして、だれがといえば、アメリカ政府が言ったということを申し上げたいと思います。それから、「日本にある空軍基地から飛翔するU2機」と書いてございます。従いまして、われわれは、日本におりますU2機はそういうことをしないということを信じております。
  206. 松尾トシ子

    ○松尾委員 この条約並びに行政協定は、日本の平和を守るためにやるのだから、そういった仮定的なものに対しては、あまり熱意がない答弁を示していらっしゃるのですが、これは仮定は即、事によっては実物になることもあるわけなんです。従って、私お尋ねするのですが、日本の場合には気象だけをやらせると言っておりますけれども、このU2が、いつ何どき、国際緊張のもとにまた挑発的なきっかけがあって奇襲防止の活動を始めるかもわからないのです。それで言うのですが、仮定でもよろしいです。そういうことを想像して下さい。その場合に、きのう、ほかの社会党の委員もおっしゃっておりましたけれども、U2に対するソビエトの声明は、その基地を貸しているものには、必ず敵対行為とみなしてやっつけると言っているのですから、やはりこの点、日本の国民が非常に心配するのがもっともな話じゃないかと私は思っております。この点をもう少し説明いたしますと、日本の基地から、日本にいる三機の飛行機が、どんなことがあっても——これは午前中にも触れたのですが、ソ連や中共に偵察に出かけられないというのは、保証はできないけれども、アメリカが言ったのだから、信じているのだ、こうおっしゃるのですけれども、万が一、日本の基地からソ連、中共の奥地まで偵察に出かけ、写真をとったりするようなことがあれば、必ず報復手段をもってソ連がやってくる。そこには、日本にアメリカの基地がありますから、やっつけられると、事実上交戦状態に入って、条約の第五条がすぐに効力を発生して、立ち上がるという義務を今度負わされるのですから、こういう場合に、私どもはどうしても藤山さんにしっかりしていただいて、そしてこの第五条という点で、別に、協定とか条約以外に、何かの一つの法的根拠をもっとここを締めくくっておかないと、あなたのおっしゃるように、絶対アメリカを信頼してというわけにはいかないと思うのですが、どうかこの点でもう一つ説明を願いたい。
  207. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ただいま御説明いたしましたように、今後もされることはないということをアメリカ政府が言っておるのでありまして、今後もそういうことに使用されることはないんだと言っております以上、別個に仮定を立ててそれを考える必要は、私どもはないと思っておるのでございます。また、何か領空侵犯に対してソ連なんかが日本の基地をたたくのだ、しかし、ソ連も国連のメンバーでございまして、領空侵犯程度でもって日本の基地をたたくというようなことは、国連憲章の違反であることはソ連も十分知っておりますから、われわれは、ソ連もそういうことまでするとは思っておりませんし、また、しないということを信用いたしております。
  208. 松尾トシ子

    ○松尾委員 藤山さんは大へんお人がよくて、特にアメリカの言うことでしたら、そう言っているのだから、信じておこうじゃないかとおっしゃるのですけれど、これはフルシチョフの声明を見ても、あなたはおどかしだと思っていらっしゃるでしょうけれども、戦争なんというものは、時のひょんな調子から始まってくると思う。そういう場合があり得ると思うのですよ。そうして、あってから騒いでもだめです。いわゆるU2がおっこってから政府がやっとその事情を知った、そうして騒いでいる、こういうことではだめですし、また、午前中の説明を聞きますと、もし領空を侵された場合には、アメリカ基地がやられた場合には、すぐ即時に立ち上がる責任、義務を日本が今度負う、そうしてそれを国連に報告をする。国連が、そういうことをしないでやめろという裁断を下すまでには、このあたりは交戦状態に入って、かなりやっつけられてしまっているかもわからない、こういうことはあります。(「前提が違う」と呼ぶ者あり)前提とおっしゃるけれども——聞いて下さい。法律なんというものは、大体前提を仮定にしてこしらえてあるものです。人を殺したらばというふうなことも、ちゃんと仮定している。殺すか殺さないかわからない、それを仮定にしてやっているのですから、こういう点は、あなたは政府をとっている以上は、まじめに考えてもらわなければ困ると思う。私の言わんとするところは、五条は、一機や二機なら、何をおいてもアメリカの自由になる、アメリカのためになるもの、しかもそれは日本の平和を守れると想像するものだったら、黙っているのだ、便利よくしてやるのだ、こういうものをそのまま置いておこうというのですから、危険きわまるものじゃないか、こういうわけなんです。どうかもう一たびこの点について、日本国民のことを——今の心配を考えますときに、まじめにこれを考えていただけるのじゃないかというふうに思うのです。米国とそれからソ連の声明、両方で出し合っております。日本はこのまん中の谷にあって、両方からはさみ撃ちをされながら、神経戦をねらわれているような格好です。この審議を熱心にしている委員たちでも、皆さん方の説明、答弁にはわからないと言っているのに、院外におる人たちは、なおさら、こういった緊迫の問題が起こってくると想像をたくましゅうするでしょうし、不安も増してくるというものです。この点、もう一たび藤山さんは考えていただかなければならぬと思います。
  209. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 アメリカ政府は、申し上げましたように、今日まででもそういう目的に使用したことはなく、また今後も使用することはないということをはっきり言っておるのでありまして、われわれとしてはその言明を信頼、いたしますことは、これは当然のことでございます。そうして今お話のように、われわれとしては、ソ連が、かりに領空侵犯があったようなときに、その領空侵犯を排除する方法というのは、適法にあるわけでございます。何も日本の基地を攻撃してくるということの必要はないわけでございます。それをあえて侵してくるというほどソ連はひどい行動をするとは、われわれ信じなくてもいいんじゃないかと思っております。
  210. 松尾トシ子

    ○松尾委員 藤山さんはそういうふうにおっしゃいますけれども、フルシチョフ声明というものは、相当責任のあるソビエトの政府が言っていることなんです。(「それがけしからぬ」「どうかつだ」と呼ぶ者あり)どうかつといえども、責任者としてはこれに対する態度を考えなくちゃならぬと私は思うのです。私に言わせれば、このような第五条を残しておき、今の緊迫した米国とソ連の間に立っている日本は、どうしてこの新安保条約や行政協定で平和が守っていかれるということを信じていかれるだろうかということになろうと思うのです。
  211. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私は今申し上げました通り考えておりますので、松尾さんの言われますように、フルシチョフが、そういう場合に必ずやるのだというようなフルシチョフでありますなら、それは明らかに日本に対する武力攻撃をするということであります。武力攻撃をする場合には、われわれは、当然、それに対して、国連憲章五十一条によって個別的な自衛権を発動し得るのであります。そういうことをやったフルシチョフの方が悪いのであります。だから、そういうことは、私はフルシチョフだとてしないだろうということを考えておりますことは、甘過ぎるというわけではないだろうと思います。
  212. 松尾トシ子

    ○松尾委員 日本はその問題に対してみずから手を下すものじゃない。ただ、日本に黒いジェット機が三機ありまして、これが中国やあるいはソ連の奥地の偵察に出かけ、写真をとり、いわゆるスパイ行為をするということがわかってやられるのですから、こういった場合に、今言ったような事態が発生して、そしてアメリカとソ連の間に入って悩んでおるこの日本が、交戦地域に変わってしまうきっかけ、いわゆる挑発となるかもわからないのです。それはどうしてそうなるかといえば、日本に問題のU2があるからだと思うのです。このU2があるということが、そういうきっかけを作らないとだれが断定できるかということを私は言っているのです。いわゆる安保条約なり行政協定は安全保障にならないということが、こんなところに隠されているのじゃないかと思いますから、U2なんというものは、一つどっかにやってもらうようなお考えはないかどうか、この点を一つ。
  213. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 U2が日本にいることが悪い、U2が別段他国を侵害しない、侵略しないで、しかも何らの害を与えないで、日本にいることが悪いという原理からいいますれば、それは日本には米軍がいない方がいいのだ、安保条約も要らないのだ、それに対しては、われわれは全然別な立場をとっておりますから、そうは考えておりません。
  214. 松尾トシ子

    ○松尾委員 藤山さんの言うように、基地のあることが、もう立場を変えて考えが違うとおっしゃるのですけれども、日本全国の国民の中には、基地がない方がいいのだという人もたくさんあるのです。それですから、一般的に政府がそういうことを言うのはけしからぬと私は思っております。  それで、最後にもう一つ言いたいことは、第五条は、いろいろの御説明がございましたけれども、これは抜け穴だらけで、アメリカに有利になるように、現のも新しいのも変えないで、そっと同じように入れた、こういうふうに私は解釈いたしております。藤山さん、いかがですか。
  215. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 行政協定第五条は、一般的な取りきめをいたしておるわけでありまして、抜け穴だらけとおっしゃいますが、私は一つも抜け穴はないというふうに考えております。
  216. 松尾トシ子

    ○松尾委員 そうおっしゃるけれども、藤山さん、売春禁止法は抜け穴だらけだといいますけれども、これの方がもっと抜け穴だらけで。もし抜け穴でないとおっしゃるのでしたら、こまかく規定がどうしてできないのですか。日本の国のために、日本の国の立場になって、アメリカにその立場をどうしてもっと説明できなかったのですか。他の国の協定はもっと詳しいことが載っているのです。あなただって、そのくらいの能力と、それからいろいろ持っていらっしゃるにもかかわらず、なぜ、アメリカにこんなに遠慮していなくちゃならないのですか。
  217. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私はアメリカに遠慮もいたしておりませんし、軽率にこの条約を結んだとも思いません。私はただ、この安保条約を結びますことは、先ほども申し上げましたように、日本の安全と平和を守るためにアメリカの協力を期待しておるわけであります。そうしてアメリカが軍隊をここに駐留して協力してくれます以上は、その軍隊に対して日本ができるだけの便宜を与えますことは、私はこれは当然のことだと思うのであります。従いまして、そういう考え方に立ちますれば、この五条というものは決して抜け穴になってはおらぬと思っております。
  218. 松尾トシ子

    ○松尾委員 国の方を守ってくれるものには、やはり一まつの礼儀を持っているのが普通だというのは、長いものに巻かれるという思想と同じだと思うのです。やはり言うだけのことは、日本の立場に立って言うべきが政府の責任ではありませんか。いいかげんなことで、抽象的、作文的な条約や協定を結ぶということは、断じて私はならないと思うのです。いつまで申しましても、いわゆる基本的方針の理念が違うから、平行線だというお考えで答弁をしていらっしゃるようですけれども、どうも——黒いジェットでまだほかに質問があるそうですから……。
  219. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 この際、受田新吉君から、関連質疑の申し出があります。これを許します。受田新吉君。
  220. 受田新吉

    ○受田委員 藤山さん、松尾さんが非常に女性としての品位を保ちながらまじめな質問をしておるわけで、これに対して親切にお答えをいただくということを十分御認識願っておきたいと思うのです。  私ここで、松尾さんの質問をしましたことに関連して一言お尋ねしておかなければならないのですが、法理論的立場から考えて、U2機が日本におってこれが行動を起こす際に、偵察飛行とか、あるいは領空侵犯とかいう、かかる行為をやる場合に、今度新しく作ろうとしておるこの新安保条約のどの条項かの違反になるのかどうか、これをもう一度確認いたしておきたい。
  221. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 ただいまの御指摘の点は、条約違反どころか、それ以前の問題、すなわち国際法の一般原則、国際法自体に違反する問題であると思います。
  222. 受田新吉

    ○受田委員 国際法以前の問題であって、この新しい条約には直接は違反しない、かように了解していいですか。
  223. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 それはすでに国際法違反でございますから、この条約でそういうことを禁止するという問題は起こらないわけでございます。
  224. 受田新吉

    ○受田委員 先ほど、国際法違反になるところの毒ガス等の持ち込みはしない、かように法制局長官は答えられたわけです。国際法違反を平然とやる国国があるわけなのです。アメリカだって、最後に、毒ガス以上の猛毒を持つところの、猛威をふるう原爆を投下しておるじゃないですか。こういう驚くべき、国際法に禁止されている毒ガスどころの騒ぎでない、驚くべき被害を与える最も凶悪な爆弾を投下しておる。これを国際法違反と断定を要しないかどうか、御答弁願いたい。
  225. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 これは国際法違反かどうかという問題でございますが、国際法上の実定法規といたしまして厳密に考えますとぎに、国際法の実定法規としてそれを禁止したものはないわけであります。これは人道上許すべからざる行為であるということは確かにございますけれども、厳密な国際法の法理論としての問題といたします場合に、そのような、これ禁止した実定法規はないわけであります。
  226. 受田新吉

    ○受田委員 へーグにおける宣言その他によって、毒ガスは国際法違反であるということが明らかにされているが、原子爆弾あるいは水素爆弾は国際法違反という規定がないと、かように政府は答弁するわけですか。
  227. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 これは実走法としてそういう規定がないわけでございます。当時は、毒ガスその他細菌による戦争方法、これはいろいろ条約が何度もできまして禁止になったわけであります。すなわち、国際法の慣習法として、私はそういうものが禁止になっていると考えております。しかし、ただいまの原爆云々の問題がそこまで実定法規の問題として明確に禁止になってはいない、それでありますからこそ、これを禁止しようとか、制限しようとかいうのが、現在の最も重大な問題になっているわけでございますから、私どもは、国際法の基礎は、何といいましても、国家間のそのような法的確信にあるわけでございます。ところが、それがないからこそ、また、そういう国家間の、諸国民間の確信ということが疑いがあるからこそ、今、禁止するとか制限するとかいう問題になっておるのでありますから、厳密な国際法上の実定法規の問題としては、そう言わざるを得ないのではないかと考えております。
  228. 受田新吉

    ○受田委員 あなた方のお考えは、先ほど法制局長官が、毒ガス等の国際法違反の爆弾その他の兵器を持ち込むことはあり得ないとはっきり言っておられながら、毒ガスなど、とうてい比較にならぬ猛威をふるう凶悪爆弾の原爆は、国際法違反でない、こういうような考え方をもってあなた方は現在の近代戦に対処しようとされておる。しかも新条約の解釈において、毒ガス等は国際法違反として考えられることである、そしてまた今度の黒いジェット機についても、これは新条約ではかれこれ議論すべきものではない、国際法以前の問題であるというように軽くお考えになっておられますけれども、根っこの問題では驚くべき国際法違反、実質上の大違反をやっているアメリカであることをあなた方はお忘れになってはならないのです。従って、たとい今回米国政府があなた方の方へ通告をされたとしても、日本におる黒いジェットがソ連の領空侵犯をしない、スパイ行為をしないと、はっきりこれを保証する道はないわけなんです。御信頼申し上げておるだけでは片づかない問題なんです。そういう意味で、はっきりと、こういうものも、日本へ持ち込む際に、これを十分相談の対象にし、あるいは日本にこれを持ち込んだ場合には、そういうような危険なものを持ち込むのでありますから、すみやかにそれを停止させる、そして日本には決してそういうソ連政府が報復攻撃を加えるような危険物は持っていないのだということをはっきりと世界に宣言すべきじゃないか、いかがですか。(「アメリカの国務省が声明したじゃないか」と呼ぶ者あり)アメリカの声明、ソ連の声明、両方の声明合戦はあるけれども、日本自身がその渦巻の中に巻き込まれておる、これを私は心配しておる。絶対にこのような厄介なものは、危険のあるものは、領空侵犯をしてスパイ行為をやるとしてソ連当局からも危険視されているものは、日本に持ち込まないという固い約束をとれないかということを今私は尋ねておる。
  229. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 先ほど申し上げましたように、黒いジェットも、気象観測その他に使いますことにおいては、決して他国に害を与えるわけではございません。そしてそれ以外には使わないということをアメリカは声明をいたしておるわけでございます。それは飛行機のことでありますから、もし疑いをいたしますなら、黒いジェット機以外でもどこへでも行けるということは言えるのであります。そういうことまでなってきますれば、先ほど申し上げたように、日本に飛行機がいること自体がいけないということになるので、それは安保条約をやめろということですが、そこまでいきますと、われわれは意見が違うということを申し上げなければならぬと思います。
  230. 受田新吉

    ○受田委員 いま一つ、日本に基地があって、そこから飛び立つおそれのある黒いジェット機である、こういうところに問題があるのでありますから、日本に基地がないならば、問題にならないことが、日本に現実に心配されておるのでありますから、裏返して言えば、日本の基地がソ連によってやられておる、こういう場合を考えたときに、あなた方はどういうお感じがするか、お考えになったときに、やっかいなこのようなものを持たないで、日本が自主独立のはっきりした中立政策をとるという態度の方が、どんなに世界の平和に貢献するかをお考え願いたいと思う。総理及び外務大臣に御答弁願いたいことは、黒いジェット機が領空侵犯、スパイ行為をやるときは、それは国際法の根本的な問題であって、この新安保条約には、別にこれをとがめだてする規定はない、条約違反だとは言えないのだ、かような考え方は成り立つのかどうか、お答え願いたい。
  231. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 先ほど来条約局長が御答弁申し上げておりますように、黒いジェット機でなくとも、飛行機が他国の領空を侵犯するということは、国際法上違反の行為でございます。でありますから、この安保条約に規定をいたさなくとも、それは国際法の違反であることは申すまでもないのであります。そういう意味におきましてわれわれは考えておるわけでございます。そこでジェットの飛行機がここに来ている、来ているということによって、何か非常に今のような領空侵犯が行なわれれば、それは困ります。しかし、アメリカ政府が今日までもそれを使っていないし、今後も使わせないということでございますから、そうすれば、気象観測のための普通の軍の補助機関としての行動をいたしておるのでありますから、それは、私ども、ここにおりましても危険であろうとは考えておりません。
  232. 受田新吉

    ○受田委員 私は、これで関連でありますからおきますが、日本に基地があるからやっかいな問題が起こるのです。基地がなければ、この問題は起こらないわけなんです。従って、やっかいな基地を持ち、そこにやっかいなものが飛んできたので、国民に非常に不安を与えておるのです。従って、日本の基地から飛び立つやっかいな飛行機、こういうことでソ連が報復手段をとると言明したわけだ。これは日本もその場合含まれておるのです。ソ連が言明した報復手段をとるという場合の中に、米軍の基地としての日本から黒いジェット機が飛び立つ場合が含まれておると思うかどうか、これをまずお答え願いたい。
  233. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 基地が日本にあることがいけないという御議論でございますが、そこになりますと、安保条約の一番基本的な問題に触れてくるわけで、われわれは、日本の平和と安全を守るために基地の使用、施設区域の使用を許して、そうして、ここにアメリカ軍がいてくれることが、日本の平和と安全を守るゆえんだということであります。今の受田氏のは、そうじゃないのだという御意見でありますから、これは全く意見が平行せざるを得ないと思います。
  234. 受田新吉

    ○受田委員 私がお尋ねしている問題は、フルシチョフが言うたところの報復手段をとり得る対象になる米軍の基地というものの中には、日本の基地も米軍の基地も含まれておるかどうか。
  235. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 先ほど申し上げましたように、領空侵犯でもっていきなり基地を攻撃するということは、国連のメンバーの一人としてのフルシチョフは、私は国連憲章違反を犯してまでそれはやらぬだろうと思います。だからお前は甘いといわれるかもしれないが、フルシチョフは領空侵犯までして、すぐに日本の基地に爆撃を加えるというようなことは、これは国連憲章違反でございますし、世界がこれを審判いたしますから、そういうことまではしないだろう。これは甘く見過ぎるかもしれませんけれども、そう考えるのが、ものを順当に考えるゆえんじゃないかと思います。
  236. 受田新吉

    ○受田委員 あなたの御発言であるならば、フルシチョフの発言は全くどうかつ的な声であります。しかも、国連憲章違反の発言であって、国際法上許さるべき発言でない、(「その通り」と呼ぶ者あり)そのようにはっきりと言い切ることができるのですか。
  237. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 領空侵犯の発言に対しては、そのように考えております。
  238. 松尾トシ子

    ○松尾委員 黒いジェット機のことはやめようと思ったんですけれども、また火がつきましたから、もう一点だけ。  それは、五月七日の国務省の発表をこの委員会でお配りになりましたが、その中に、こういうことが書いてあります。「今日の世界情勢下においては、すべての諸国によって情報収集活動が実際に行なわれていることは全く公然のことであり、戦後の歴史は、ソ連が従来この分野において遅れを取っているものでないことを明確に示している。合法的な国防手段としてのこの種の活動は、自由世界に比してソ連が行なっている過度の秘密のためにその必要性が増大している。」云々と書いてあるのです。一体この理由によって、外国の領土に許可なしに入ることは国境侵犯で、明らかに国際法違反であるし、また、不法行為です。この理由では、アメリカの行為は合法的な理由とか説明は下せないはずです。ちょうど、戸を締めている中に何かありはしないかと思って、近所の人が穴をあけたり、戸をけ破って侵入していくのと同じで、海でいえば、海賊と同じようなものです。こういう声明を出しているからこそ、アメリカの善意なんということをそのまま受け取れないのです。あなたはどうお思いになりますか。
  239. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今日、二大陣営が対立しておりまして、アメリカ、ソ連がそういうことをお互いにやっておるとすれば、それはまことに遺憾なことでありまして、そういうことがなくなるように、一日も早く話し合いによる結果がもたらされることを希望してやみません。
  240. 松尾トシ子

    ○松尾委員 藤山さんは大へん自信の高いことをおっしゃっております。外務大臣としてその中に入って、両陣営に大いに説得をする力があるのかどうか。それでしたら、もっとりっぱな安保条約と行政協定が結ばれていたんじゃないかと思います。私は、受田さんじゃないですが、ここに基地があるからこそ、確かにいろいろのむずかしい、いやな問題が起こってくるのです。この点は、あなたとは平行線のような形ですが、決してイデオロギーにこだわって論議をしているものではありません。わが国の安全と平和を心配するからこそ言っているのです。この点は、一つもう一回再検討していただいて、じっくり考えてもらわなければならないと思うわけです。  時間がないから続けてやります。(発言する者あり)大へん委員の中には、やかましくヤジだか、激励を飛ばしてくれていいんですが、しかし、本筋の問題に触れる前に、もう一つだけ、また気がついたことがありますから伺います。  私がこう心配しているのは、イデオロギーの対立でないと私は言っているのです。従って、ここにアメリカの基地でなくて、他の国の基地があっても同じことを考えるのですが、あなたたちは、これに対してどうですか、アメリカだから賛成して、他の国だったら、やはりいけないのですか、この点を一つ。
  241. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 松尾さんも非常に心配しておいでのようでありますが、われわれも、むろん心配しておるのであります。私は、日本の平和と安全を保ちますために、アメリカに施設区域の使用を許すことが適当だと思います。他の国にそれを許すという考え方はないのでございまして、従って、他の国に許した場合に、そういうことがあったらどうかという御質問に対しては、今想像的にお答えいたしかねると思います。
  242. 松尾トシ子

    ○松尾委員 何か誤解しているようですけれども、自主独立の外交をもって、自分の力で平和を守っていくことが一番いいと思う。こんなにアメリカとソ連が緊迫している中にあって、わざわざ火の中に入る虫のようなことをしない方がいい、こう思っているのです。
  243. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 この際、堤ツルヨ君より関連質疑の申し出があります。これを許します。堤ツルヨ君。
  244. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 それでは、ちょっと関連して一つだけお聞きいたしますが、きのう、椎熊三郎委員から赤いジェット機の質問がございました。アメリカの今の基地が、黒いジェット機の基地になっておるから民社党が攻撃するのではないのです。いかなる場合にも、日本国民が関係のない第三者の立場でありながら、他国間の紛争の中に巻き込まれることの危険を案ずるから、私たちは質問を展開しておるわけです。  そこで、今、松尾委員からも、イデオロギーでこれを論じちゃいけないということがございました。今自民党の議員の方は非常に騒いでいらっしゃいますけれども、日本の国内の政治情勢が、ちょうど今の反対であって、コミンフォルムの傘下にあって、ソ連の支配下にあり、赤いジェット機の基地となったと仮定いたしましたときに、一体、自民党の側の方はどういう意見を持たれるかということを、民主々義の前提に立って、静かに考えてみなければならない。おそらく、これは少なくとも黒いジェット機の基地であろうとも、赤いジェット機の基地であろうとも、何ら罪のない日本人全般の意識としては、好ましからざるところの基地提供であるという現実のもとに隠忍自重しておるのに、なおかつ、これがミサイル攻撃を受け、紛争に巻き込まれるということになりますると、松尾さんが言われるところの基地提供即非安保条約ということになることは、国民のみんなが心配しておることなんです。逆に考えて、赤いジェット機の基地になったら、自民党の方は一体どういう攻撃をされるか。今は保守党の政権下にあるところの日本は、自由主義陣営に属しておりますから、このジェット機の基地について論じますと、アメリカを攻撃するように見えますけれども、私たちの言っておる問題は、アメリカの攻撃を単なるイデオロギーから、左に片寄ってしておるのじゃない。これは、いずれにいたしましても、危険な基地提供という問題については、為政者として真剣に考えなければならぬ問題だと思いますが、総理は一体どうお答えになりますか。
  245. 岸信介

    ○岸国務大臣 それは安全保障の基本に関する考え方の問題だと思います。今お話しのように、今の国際情勢で、しからば、一体日本の安全と平和をどうして守るか。これは先ほど松尾委員も、堤委員も、今真剣に御心配になっておることは、日本を不当な戦争に巻き込ましちゃいかぬ、日本の平和と安全を守らなければいかぬ、こういう立場から御議論をなすっておることだと思います。われわれも、その点から考えてみてどうすることが日本の平和と安全を——今の国際情勢を考えてみると、どういう状態が一番平和と安全であるかという問題であります。それの第一の問題は、国内において自衛隊だけでもってやる、あるいは自衛隊なしの無防備で、裸になって、それが一番安全だという説もあります。われわれは、今のところではそうは考えておりません。そうすると、自衛隊でもってある経度祖国を防衛するという体制をとっておるけれども、それだけでわれわれは安全感を持ち得るほど日本の防衛というものは強力ではない、そういう立場に立って、米軍と協力してアメリカと日米安保条約を結んで、安保体制のもとに米軍に基地を貸与して、そうして日本の防衛をすることが日本を最も平和と安全に置くゆえんである、われわれはこういう立場に立っております。今基地提供の問題についていろいろな御議論があります。基地をやるから危険があるのだ、基地がなければいいのだ安保条約がなければいいということでありますけれども、それで一体、ほんとうに今の国際情勢の立場において日本人が安心するような平和の状態、われわれの平和と安全が守れるかというと、私はそうではないと思う。この根本から考えてみまして、もちろん、基地を不当に使用することによって、日本にあるいはこの黒いジェット機の——先ほどからいろいろ御議論を聞いておりましても、あるいは爆薬を、毒薬を持ち込むとか、あるいはばい菌を持ち込むとかいうような問題等々関連いたしまして、われわれはこういう条約を結ぶ場合におきまして、国際法の原則というものは両方が誠実に守るということを条件として条約を結ぶわけでございます。国際法の原則をことごとく条約に盛り込んで条約上の義務とするというような立場を私どもとっておりません。また、どこの条約もそれをとっていない。それは国際法の原則に違反するような行為は、お互いにやらないということを前提としているわけでありますから、その前提のもとに条約上の権利義務というものが規定され、その権利義務を誠実に守る、両国が信頼関係に立って初めて条約というものは成り立つものだ、こういう前提でわれわれは物事を考えているわけでありまして、それを、国際法に違反するということを前提としての議論や、あるいは条約違反をするということを前提としての議論を繰り返しておっても、私は、それは前提が違っておる、こう申し上げるよりほかはないと思います。
  246. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 私は、岸総理の言われるところの安全保障は、岸さんなりの、自民党内閣なりの信念を持っていらっしゃるということを認めます。しかし、国民の中には、岸内閣の考えるような安全保障が最善の策ではない、あるいは左に片寄った考えの人もありますし、どちらにもぶらさがらないところの、自衛隊だけでの自衛ができると考えている人もあるし、国内にはいろいろある。首相の方にも御意見があるかわりに、他の意見も多数あるということをお認めになると思います。ですから、私は、みんなが、国民の全体が今の黒いジェット機で騒いでおるような途上におけるところの安保審議において、なるほど、日本の基地を与えるということは非常に危険だと考え初めているこの世論の中で、一体ほんとうに最大公約数の、できるだけ数多くの人の安全保障に対する信頼できる方法というものはどういうものだろうかということを、私たちは、イデオロギーや政党の立場を越えて、真剣に考えなければならぬ段階にあるのです。ですから、自民党のおっしゃる安全保障体制も、一つの方法としてうなずき得る、社会党の言う方法もうなずき得る、民社の方法もうなずき得る。しかし、その中で、どれが一番いいだろうかという方法を見出していくことが、私は、今の段階におけるところの重大な使命だと思う。今、岸さんは、そういうことをおっしゃいますけれども、あるいは岸さんが考えているような、アメリカにジェット機の基地を貸すような方法でなしに、今のような新安保の改定でなしに、もっといい方法があると思っている人は、やはりいろいろな意見を持ち出すわけです。しかも、もう一つ私は念を押しておきたいのは、たとえば、個人同士が借金をいたします場合にも、道徳を守って、そして、当然借りた金は文句を言わずに返す場合には、借用証書というものは要らないわけです。これが一つ誤って、スムーズに返されない場合の最悪の事態に備えて、個人間でも借用証というものはあるはずです。条約の問題にいたしましても、何ら事のない、何の条項にもひっかからないような場合には、何も条約は要らないのでございまして、最悪の場合を考えたときの用心のために、幾多の条項が要るということもこれはお認めになると思います。そういうことを考えましたときに、現在、アメリカとソ連が非常に微に入り細をうがったところの言論戦をやっている接点にある日本が、最悪の事態は、単に仮定の事実でなしに起こり得るかもしれないというような状態の中にあって、それは仮定であって、攻撃のための材料として御質問になるのだから答えられないというような無責任なことでは、国民は納得をいたしません。私は、松尾さんに質問を返しますけれども、この点については、もう少し真剣に考えていただかなければならない問題でございまして、仮定の問題でなしに、最悪の場合に備えて考えていただかなければならないのが条約である、私はこう思うのですが、仮定の問題、仮定の問題、そうしたことが起こることは、信頼しておったらないのだということで全部逃げておったら、何の条約の必要もないじゃないのですか、どうです。
  247. 岸信介

    ○岸国務大臣 もちろん私どもは、必要な事項は条約に規定をいたします。しかし、先ほど申しましたように、国際法で認められておるところの原則をことごとく条約に取り入れて規定しなければならぬというようなことは考えておらないということは、先ほど申し上げたわけであります。これは、両国が国際法を守るという前提に立って、その信頼感に立ってでき上がる問題であります。もちろん、私は、何もかも野放図にしておけということではございません。また、それぞれの立場なり、それぞれのお考えに対しましては、十分誠意をもって傾聴し、われわれの考えを申し上げておるわけでございまして、その点において、決して答弁を逃げておるというわけではございません。また、黒いジェット機につきましても、問題が起こりましたので、アメリカの方に対して、われわれは国民の強い関心を持っておる問題として、真剣にこの問題に対して問い合わせをいたして、それに対してアメリカ政府が責任を持ってああいう声明をしておる、回答をよこしておる、こういうことでございますから、それをわれわれは信じていく。これに対して、もしもそれに違反するというような事柄がありとするならば、ああいう声明を出しておることに対して、われわれに対して回答しておることに対してそれを履行しないということであるならば、われわれは、もちろん、これに対して強く抗議すると同時に、これが是正をさせることは当然のことだと思います。
  248. 松尾トシ子

    ○松尾委員 ただいま岸総理大臣の御意見を伺いました。どうか、日本の国がこの条約を結んで、思わないあぶないところへ持っていかれないように、慎重な態度をとっていただくと同時に、この条約の審議をもう少し慎重に——時間をかけて話し合えばわかる点も出てくるのじゃないかと思いますから、その点を一つ御確認願いたいと思います。  次に、事務的なというか、安保条約の各条にわたって、少々ずつ質問をしていきたいと存じます。  安保条約の第三条にございますように、これを見ますと、自衛力、いわゆる「武力攻撃に抵抗するそれぞれの能力を、憲法上の規定に従うことを条件として、維持し発展させる。」と、こうございますが、この問題は第四条の随時協議の対象になるかならないのか、この点を一つお示し願いたい。
  249. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 第四条は、条約運営にあたりまして、相互に隔意なき意見の交換をして、そうして運営を全からしめるということでございまして、随時協議するということがございます。これは条約全体にわたりまして適用されることでございます。しかしながら、たとえば第三条にありますような場合において、何も全部のものを一々協議するという意味ではございません。
  250. 松尾トシ子

    ○松尾委員 何かちょっと……。第四条の随時協議は、全体にわたって適用されるけれども——では、第三条は、結局協議の対象にならないでやるのですか。全然日本の独特の計画をもって維持発展を行なってよろしいのですか。
  251. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 第四条の随時協議するという第一項というものは、全体の条約の運営における問題を扱っておりますから、各条にわたって協議をするということは当然でございます。しかしながら、各条になりますれば、必ずしも各条にあります条項そのものを全部協議するという意味ではない。たとえば自衛力の増強計画というようなものにつきましては、日本自身の判断によってやるわけでありまして、協議の必要はございません。
  252. 松尾トシ子

    ○松尾委員 今の御答弁で、自衛力の増強ということは自主的に日本でやる。しかし、この安保条約は共同防衛でいくのですから、何もアメリカの指示とか意見というものがなくてやれる——というより、ないはずがないと思うのですけれど、こういう点はいかがなんですか。
  253. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 自衛力というものは、その国の社会的、経済的その他の事情によって、増強するなり、決定をしていくわけでありますから、別段日本が特にアメリカと協議をしなければならないということはございません。従って日本自身の考え方でやって参ります。こういう考え方で日本でこの程度増強しているというようなことの事実の上に立って、アメリカも日本の防衛について考えるでございましょう。
  254. 松尾トシ子

    ○松尾委員 それでは、この程度でという日本側の計画を報告する程度でいいわけなんですね。私の考えでは、共同作戦をするのですから、必ずアメリカからも日本の自衛力増強に対しての意見や、あるいはそういったようなものがあるんじゃないかというふうに解釈しておりましたけれども、そうでない、これだけは自主的にやる、そのものずばりで、別に、内政干渉だとか、自主性がないというふうに疑われるからそういっているのではない、こういうことに了解してよろしゅうございますか。
  255. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 そういうふうに疑われるからそういうことを言っているのではないのでありまして、そのものずばり、自分のところでやることになるわけでございます。
  256. 松尾トシ子

    ○松尾委員 各条項にわたってそれぞれの委員が相当突っ込んで聞いておりますから、この問題については、できるだけ重なり合わないようなところだけをピック・アップして質問を続けるのがいいんじゃないかと思いますから、さよういたします。  飛びまして、第六条に関係する交換公文の事前協議に進んで参りたいと思います。  事前協議について、交換公文の中には三つの場合がありまして、その一つは、配置とか、それから装備の重要な変更があったときとか、あるいは作戦行動に使用目的が変わったときとか、こういったときに事前協議の対象になるという説明を受けました。それで特に説明を受けたのは、配置に対しては、岸政府の方では、たしかこの前の前の委員会くらいで、一個師団以上のもののみがいわゆる協議の対象になるということを御説明になっていた様子です。しかし、その時期とか、あるいはその国の様子とか事情とかによって、この一個師団というものの内容が変わってくると思うのですけれども、今回政府答弁にあった一個師団の内容、編成というものはどういうものかをお示し願いたいと思います。
  257. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 米国陸軍について申しましても、師団の中には、普通の歩兵を主とした師団とか、空挺の師団とか、いろいろございます。標準となりますものは、いわゆる普通の師団でございますが、約一万三千名余りの人員をもって構成をしておるわけでございます。
  258. 松尾トシ子

    ○松尾委員 普通の場合は、一個師団は一万二、三千名で、歩兵だと申しておるのですが、これをもう少しこまかく突っ込みますと、一個師団以上になると事前協議の対象になるので、もしこれをこま切れ的に、二千人、三千人ずつ入れたらどうか、事前協議の対象にならぬ。一朝有事の様子が感じられたからといって——そんなばかなことはないとおっしゃるでしょうけれども、百万人でも、入れようと思えば、こま切れで事前協議の対象にならないで入れることができるというふうに思うのですけれども、この点はどうですか。
  259. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 一個師団程度のものが日本に入ってくるという場合には、それは二千人ずつ五回に入ってこようとも、一個師団程度のものが日本に来るということ自体に対して、事前協議になるわけでございます。
  260. 松尾トシ子

    ○松尾委員 そうしますと、この条約が結ばれ、この協定が結ばれた暁には、当分の間一個師団以上は入ってこないということと同じですか。そうじゃないのでございましょう。  それと、もう一つ、これは歩兵の場合だと申されましたから、海軍の場合はどういうふうになるか、あるいはもっとこまかく言うと、軍艦とか、こういったようなものにまで及んで、この協定を結んだ暁にはどういう編成になるかをお尋ねしたい。
  261. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 太平洋水域におきまして主として防衛の任務に当たっておりますものは、第七艦隊と申す艦隊でございます。事実問題といたしまして、第七艦隊の編成を見ますと、数個の機動部隊に分かれておるのでございます。たとえば空母の攻撃部隊でありますとか、巡洋艦等を中心とする水上攻撃部隊、騒逐艦の攻撃部隊、あるいは対潜の掃討部隊——潜水艦に対するものでございます。それから潜水艦の部隊、機雷の掃海部隊というふうに大きく分かれております。やはりそのうちの一つを日本に恒久的に配置するということは、事実問題としてはちょっと考えられないと思うのでございます。ただ、その兵力の関係から、陸の一個師団に相当するものはどういうものだろうかとおっしゃれば、やはり第七艦隊の下の、今申し上げましたような単位がそれに相当するというふうに考えております。
  262. 松尾トシ子

    ○松尾委員 空軍の場合はどういうふうになるのか、一つ……。
  263. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 空軍は師団の編成をとっておりますので、やはり空軍の場合におきましても、陸の一個師団に相当いたしますものは空軍一個師団というふうに考えております。
  264. 松尾トシ子

    ○松尾委員 装備の中でお尋ねするのですが、事前協議の対象になるのは、装備の重要な変更ということになっております。これは核兵器だけというような御説明があったやに承っておりますが、核兵器以外にどんなものがあるか、この点を一つお教え願いとうございます。
  265. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 核兵器及び中、長距離ミサイル、つまり運搬用と申しますか、及びその発射基地に対する装置、そういうものが事前協議の対象になります。
  266. 松尾トシ子

    ○松尾委員 先ほどもちょっと触れましたが、中距離とか長距離とか、そういったようなものの装備だけの変更と言っておりましたけれども、たとえば細菌を運ぶとか、あるいは戦車とか、ああいったようなものの場合は——細菌を運ぶということはおかしいですが、戦車とか、その他のいろいろな兵器は対象にならないのでしょうか。もっと具体的に兵器の名前をあげて、こういう兵器に装備を変えた場合には対象になるというようなこまかいお話し合い、約束はないのでしょうか。
  267. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今申し上げたものは事前協議の対象になる種類でありますことは、今日までたびたび御答弁を申し上げた通りでございます。
  268. 松尾トシ子

    ○松尾委員 たびたび答弁したのは核兵器だけだというようなお話ですけれど、そうすると、その他はみんな行政協定の第五条で黙って入れちゃうという格好になるのですか。それとも、随時協議の対象になって、そのつど協議をなさるというのですか。何かちょっと具体的に名前をあげていただかないと、わかりにくいのですけれども……。
  269. 林修三

    ○林(修)政府委員 事前協議の対象としておりますいわゆる重要な装備の変更というのは、今、外務大臣のお答えされた範囲と考えております。いわゆる核兵器、それから長、中路離ミサイル及びその発射基地の建設、こういうものが、ここでいう重要な装備の変更、それ以外のものについては、いわゆる事前協議の対象としてはおらないわけでございます。  それから行政協定第五条をおあげになりましたが、第五条は、お読みになればわかります通りに、これは個々の航空機あるいは船の出入りでございまして、それに積んでくるもののことについてもちろん触れておらないわけでございます。いわゆる軍艦とか軍用船とか、あるいは軍用機、あるいは公用機が日本に入ってくるについて、あるいは出るについて、一々の許可は要らない、そういうことだけを規定しているわけでございます。装備の面からの規定ではもちろんないわけでございます。装備の面につきましては、事前協議の対象になるものは今申し上げた範囲だけでございます。それ以外については、もちろん、必要があれば四条の随時協議の対象にはなりましょうけれども、事前協議は、今申し上げた通りでございます。
  270. 松尾トシ子

    ○松尾委員 もっとほかのものも相当こまかく話し合いがあったのではないかと私は想像しておったし、またそうあるべきだと思っていたのですが、そうしましたら、その次に、第三の戦闘作戦行動の問題について、各委員が相当お尋ねになっておるのですが、私もこれを理解するのに苦しみますから、もう一度お尋ねしてみたいと思うのです。第三の分は、いわゆる作戦行動ですが、作戦行動としては、直接日本の基地から戦争に出発するのだというものでない限りは、事前協議の対象にならない、いわゆる補給的なもの、準備的なものはならないというふうに伝えられておるのですけれども、近代戦において、補給あるいは準備が、いわゆる戦争行為と切り離してやるわけにはいかないのじゃないかというふうに考えるし、また同時に、ここで準備をして出ていくそれ自体が、戦争に向かう目的を持っているものか、ものでないかをだれが判定できるのか。わが党の委員が御質問しましたように、金門、馬祖の一昨年の問題にしてもこの通りだと思うのですけれども、この点もう一度一つ御説明を願って、補給あるいは準備その他でも、事前協議の対象としておかないと、非常に危険をはらむ。危険をはらんでいても、それを国民、政府が知らないというようなことで、非常な損をすることがありはしないか、こう思うのでございます。
  271. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 事前協議の対象としておりますものは、日本を基地として直接戦闘作戦に出ていく場合でございます。たとえて申しますれば、日本から空挺部隊が空挺作戦に出ていくというふうなことをここで考えておるわけでございます。戦闘任務を持って出ていく、それで移動したら、移動先から行くということになるのでありまして、移動したところが戦闘作戦の基地になる、こういうふうに私どもは考えております。
  272. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 この際、大野幸一君から関連質疑の申し出があります。これを許します。大野幸一君。
  273. 大野幸一

    大野(幸)委員 私は、今松尾委員の事前協議についての質問中、ただ、事前協議の意義と効果、この点にしぼって簡単にお問いいたしますから、主として総理大臣から御答弁を願いたい。というのは、今までの質疑応答によってこういうことは明らかになって、政府も確認されていると思いまするから、まず、これを確かめてから質疑に入りたいと思います。  事前協議というけれども、これは双方が合意しなければ効果がない、従って、日本にはノーという返事をすることができる、そうして、ノーと言ったにもかかわらず、米軍がそれに違反して行動をなしたる場合は、重大なる条約違反として、条約破棄の対象にもなり得る、こういうように今まで答弁が集約されていると思うのですが、さらに確認いたしますが、よろしゅうございますか。
  274. 岸信介

    ○岸国務大臣 事前協議の対象とするということは、両国において、そのことを行なう前に協議をしなければならない、そしてその協議は、両方の意見が一致するということを目標としてやられる、そうしてその場合において日本がイエスと言う場合もあるし、ノーと言う場合もあり得る。そうしてノーと言って拒否した場合において、アメリカは日本の意向に反して行動しない、事前協議の主題とするということは、そういう意味であり、そういう解釈について両国の間においては意見が一致しておる、それをさらに、私とアイゼンハワー大統領との共同声明において、大統領もそのことを確認しておる、こういうことでございます。従って、もしも、そういうような条約上のはっきりした両国の意見が一致しておるにかかわらず、日本がノーと言った場合に、それを無視してアメリカが行動するということは重大なる条約違反である、こういうふうに私は申し上げたのであります。
  275. 大野幸一

    大野(幸)委員 その御答弁に対しては、私は満足する。しかし、それとは違った意味に解されるおそれじゃなくて、それは一種のごまかしにすぎないという疑いがありますので、さらに、ここにおいては私はお尋ねしたいと思うのです。意見が一致するということは、合意という意味と同じ。ありますか。これも一つ確かめておきたい。
  276. 岸信介

    ○岸国務大臣 事前協議の対象とするということの趣旨は、両方の意見が一致したときにおいて、その一致したなにに基づいてやるということでございます。協議という言葉、それから同意という言葉、あるいは合意という言葉につきましては、それぞれ法律等の用語としては違って使われておりますことは、言葉が違うのですから、これは違うのであります。しかし、われわれが事前協議の対象とするということは、先ほど私が申し上げました通りの意味でございまして、その意味においては、合意が成立しなければやらないという表現をしたと、結果においては同じになる、こう思います。
  277. 大野幸一

    大野(幸)委員 言葉が違って、文字が違うと、意味もまた違ってくるものなのです。そこで、あなたの御答弁によりますると、日本の同意がなければ行動ができない、こういうことになる。それなら、なぜ日本の同意と書かれなかったのでしょうかという疑いが生ずるのです。合意と書く場合と、協議と書く場合は相当違うのです。意味がまるっきり違うときがある。私も法律家のはしくれですが、協議という場合、協議が整わなかった場合には、日本の国語でいいますると、なかった場合と同じなんです。ですから、大ていの場合は、協議するということは、協議がもし整わなかったならゼロになるというふうに日本語では解釈する。それで、その場合には、第三者の判断を求めるというように大ていなっているのです。ところが、この場合に限って総理がおっしゃるように解釈されるということは、私は普通の常識家として考えられないのです。  そこで、まず、今の第二条には、外国軍隊が日本に駐兵する場合とか、演習を行なう場合とか、第三国の軍隊が通過するような場合、こういうような場合には、どこの国の同意が必要かというと、明らかに米国の同意と書いてあるのです。そうすると、この事前協議の場合にも、どうして「日本国の同意があるときには」と書けなかったかということなんです。それを一つ伺いたい。同意と協議とは受ける印象が違うのです。国民が心配するのです。アメリカが権利を持っておる場合には、アメリカの同意なくしてはと書いてあるのです。それはそうでありましょう。あるいは第三国の軍隊が駐留するようなことをさせたり、通過させたりするようなことをアメリカは好むはずはないのですから、それでアメリカの同意と書いてある。もしも、日本にノートと言える権利があるならば、どうして日本の同意を得るときに限るとか、日本の同意を得てとか書けなかったのか。しかも、御承知の通り、言語が違います。第二条の場合にはコンセントと書いてある。この場合にはコンサルトというのです。コンサルトというのは相談してくれるということなんです。コンサルトになると、ローヤーなんですから、君の弁護士に行って相談してくれということを私たちは言うのです。そうでしょう。それを君の弁護士に同意を得てくれと、そんなばかなことは言わない。本人のことですから……。カウンセル・アット・ローとわれわれは言う。法律上における相談者、私が決定者じゃないし、同意者でもない。そんなことは言葉が必ず違う。それを知りつつ、あなたが同じことだ、心配するなとおっしゃるところに疑問がある。いかがですか。
  278. 岸信介

    ○岸国務大臣 これを特に普通の協議でなしに、事前協議の主題とするという文字を使いましたことは、今お話しの点の日本の同意というもの——日本がイエスと言い、ノーと言う場合があるし、ノーと言った場合に、アメリカがこれに違反してやらない、協議が整ったときにだけやるのだという趣旨において事前協議という言葉を使おうということを、両国の交渉の過程におきまして両国の代表者間におきまして意見が一致しておるのであります。しかしながら、今、大野君の御指摘になっておるような疑問もございますから、これを念のためにアイゼンハワー大統領と私との会談におきまして、さらに問題にして、アイゼンハワー大統領が、両方の代表者の間においてその解釈の一致しておることをさらに確認をした、こういうことでございます。
  279. 大野幸一

    大野(幸)委員 なるほど、やはりあなたとアイゼンハワー大統領との間にも、これは同意という意味、合意という意味と解されないおそれがあるから、そういうように解釈するように、また、解釈が一致したと、こうおっしゃるのですか。
  280. 岸信介

    ○岸国務大臣 言葉の上のことでございますが、私が先ほど申し上げているように、この事前協議の主題とするという交換公文を作るにあたりまして、両国の代表者——両国の正当な権限を持っておる代表者の間でこの交換公文を起草し、論議する場合におきまして、解釈上、今のいろいろな問題についての両方の意見を一致させなければならない。その場合において、事前協議の主題とするということが、それでは、ただ協議さえすればいいので、協議が整わなかったときには勝手にやれるんだという意味かというようなことを念を押して、そうじゃない、アメリカの方においては、一致した場合において、協議が整った場合において、日本の意思を尊重してやるのだということについては、両国の代表者がこの交換公文を作成するにあたって、解釈上、そこの間に何らの意見の相違はなかった。そういう意味においてこれが作成されておる。しかしながら、世間でいろいろ議論がありますように、大野君の言われるように、協議ということは、事前協議といっても協議じゃないか、協議というのはいろいろな場合に使われておって、その点において、必ず同意が必要であるというふうには、必ずしも使われていない場合があるから、疑問があるじゃないかというような御議論もございますので、その点について両国の権限ある代表者の間において解釈上意見が一致していることを、さらにアイゼンハワー大統領に確かめ、この共同声明にその回答が出ておるわけでございます。
  281. 大野幸一

    大野(幸)委員 共同声明にその回答が出ておりましたか。これはちょっと知らないが、どういうのか、もう一度読み上げて下さい。
  282. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 関係の部分だけ読みます。「また、同条約が相互の信頼関係を助長するものであるとの確信を表明した。これに関係し、総理大臣は、大統領と新条約の下における事前協議の問題を討議した。大統領は、総理大臣に対し、同条約の下における事前協議にかかる事項については米国政府日本国政府の意思に反して行動する意図のないことを保証した。」
  283. 大野幸一

    大野(幸)委員 もう一度。「意思に反して」という意味は何ですか。「意思に反して」というのはアゲインスト・ウイルですか。英文の方を読んで下さい。
  284. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 アゲインスト・ウイルではございません。日本政府の意図に反して行動する、ウイッシェズという番葉を使っております。
  285. 大野幸一

    大野(幸)委員 われわれは、「意思に反して」はアゲインスト・ウイルと言うのですが、そのくらいのことは条約局長知っているでしょう。条約局長、おかしいじゃないですか。われわれのようなプアーじゃなくて、あなたのような語学のリッチな人が、なぜ同じようなことを言うのですか。
  286. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 日本政府の意思に反するような方法で行動する意図のないことを明らかにした。私は、このウイッシェズというのは、最もよくこの意図ということで表明されていると考えます。
  287. 大野幸一

    大野(幸)委員 日本人は、もちろん、日本文でそれは解釈すべきものですね。それはもちろんそうですね。それはウイッシェズは欲するというような、希望でないという意味で了解しておきますが、そこで総理大臣、実は、この安保条約のいろいろなことで疑問が起きるのは、やはりあなたの発する体臭から、あなたが戦争があまりきらいでないというような感じを逝けるのです。そうじゃないですか。あなたじゃなくて、あれが石橋さんだとか、鳩山さんだとか、あるいは吉田さんたったら、これほど私は心配しないだろうと思う。そこのところをよくあなたも知ってもらって、そうして国民に、全くあなたは平和主義者だということを証明するためには、無用をしない、そうやらなければいけないということを、私は、ここで、立ったついでに申し上げておきたいのです。
  288. 松尾トシ子

    ○松尾委員 続けてお尋ねしますが、年前協議の対象になるものを一つお示しを願いたいのです。まことに簡単な問い方ですけれども……。と申しますのは、事前協議の中の作戦行動は、いわゆる戦争に入ったときだけが対象になるやに開いておりますが、私は、準備体制が、今日の現代戦においては不可分の問題であるので、この点をまず尋ねているのです。政府の御答弁を開いておりますと、準備体制とか、そういうものは事前協議に入らないと言いますから、事前協議の対象になるものはどういうケースで、どういう場合に起こるかということを一つ御説明願いたいのです。
  289. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 事前協議の対象になりますのは、先ほども申し上げましたが、日本を基地として日本国外への戦闘作戦行動に出る場合でございます。でありますから、これは平時のことではございません。日本を基地とする戦闘作戦行動といいますのは、一つ例をあげますれば、日本から空てい部隊が空てい作戦に出かけていくというふうな場合をいうのでございます。
  290. 松尾トシ子

    ○松尾委員 空てい部隊の例をおとりになりましたけれども、私は戦争が第一きらいですから、あまりたくさんのケースを知りませんが、この際、いろいろなケースを教えておいていただくと、まことに今後の審議に好都合じゃないかと思うので、よろしく。
  291. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 空てい部隊が直接に出ていくという場合のほかに考えられまする事例といたしましては、日本を基地といたしまして、爆撃機が直接爆撃に行くという場合もございましょう。あるいは海軍の艦艇が直接に、日本を基地として上陸作戦なり、あるいは戦闘作戦に出ていくというふうな場合もあるかと思います。
  292. 松尾トシ子

    ○松尾委員 先ほどの御説明を聞いておりますと、平時ではなしに戦争状態に入ったときのみ、こういう御説明を加えられましたから、この言葉を裏返しにしますと、何も起こらないときは事前協議の対象になることは何もないのだ、一朝事あるときに事前協議をやるというのですが、たとえば、例を上げると、軍船は絶えず臨戦体制をもって動いているわけです。それがあちらの方まで走っていったときに、どうもおかしいといって、呼び戻して事前協議の対象にするわけには参りません。一たん戦争状態に入ったら、事前協議どころか、すぐそこのところに火の手が上がるという格好ですから、こういったケースから考えますと、事前協議というのは、大体、条約には書いてあるけれども、やる機会はないだろうというふうに解釈していいのですか。
  293. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 今おあげになりましたように、艦隊が太平洋なら太平洋で行動中に、そこからすぐ戦闘に出ていくというふうな場合は、これは日本を基地として使うという場合ではございませんから、これは事前協議の対象にはならないわけでございます。
  294. 松尾トシ子

    ○松尾委員 しかし、極東の第三国が、極大のどこかに侵犯されたときに、あるいは米国の方の意図によって戦争に入るということもあります。そうして、それ自体は日本を基地にして出かけて行くんじゃなく、他の拠点から出かけて行っても、極東の平和と日本の正平和に甚大な影響を及ぼし、また、それが起点になって戦争に巻き込まれるということはあり得ると思うのです。そういうことを考えたときに、事前協議の対象になるケースというものは、日ごろから、いろいろ準備体制から始まって戦時体制に入るまでのこまかいところをきめておくということが、最もよいのじゃないかと思うそうでないと、この事前協議は空文化するというふうに解釈されるわけです。この点は、一つもっとお話し合いをしてみたいと思います。
  295. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 戦時情勢のときに戦闘作戦行動に出ますけれども、その前に、御承知のように第四条があります。常時協議しまして、そういう非常事態というものは、突発する前に、いろいろ突発するところの条件といいますか、様相があるわけでございます。でありますので、その前においては、第四条でそういう事態について緊密なる協議をしていく、こういうことであります。
  296. 松尾トシ子

    ○松尾委員 それでは、結局あまりはっきりと納得ができないのですけれども、それぞれの委員がこの問題に対しては相当のところまで突っ込んでおりますから、もう少し進んで、今度は第六条の基地の貸与の問題について御質問を、したいと思います。  終戦後から、日本国内にアメリカの基地を貸与しました。これの変遷といいますか、変化といいますか、この間に、だいぶ初めといろいろと内容が変わってきております。初めから今日に至るまでの変わり方、それと現状、こういったようなものに対して、数の点でお示し願いたいと思います。
  297. 丸山佶

    ○丸山政府委員 米軍の使用しておりまするいわゆる基地、条約及び協定では、施設区域という正式の名称でございますが、平和条約発効のとき、すなわち、占領が終わりました二十七年におきましての数は、二千八百余りでございました。そのときの面積を総計いたしますと、約四億坪余りでございます。四億坪と申しますのは、大体全国の都道府県のうちで最も小さいと思われる大阪府の面積の、約八割くらいに当たる広さのものになります。それか平和条約発効以後今日まで、逐次日本側に返還になりまして、米軍の使用の施設及び区域は減少いたしまして、本年の一月一日におきましては、取りきめの件数といたしまして二百五十、総面積にいたしまして一億坪、すなわち、大阪府の面積に比較しますと、その二割弱になっております。なお、そのうち面積的に大きなものは、陸上の演習場でございます。重要な飛行場といたしましては、東北地方にあります三沢の飛行場、関関東では立川、横田、入間川、木更津、及び先ほどから問題になりました厚木の飛行場、それから中国地方の岩国の飛行場、九州の板付飛行場等でございます。海軍の軍港施設といたしましては、横須賀並びに佐世保の二カ所でございます。司令部といたしましては、当米軍の司令部並びに空軍の司令部であります府中、それから海軍の横須賀、それから陸軍の座間の司令部、これらのものが重要なるものでございます。
  298. 松尾トシ子

    ○松尾委員 そうしますと、ただいまのところ二百五十くらいあるというこの中で、アメリカ軍が権利を留保をいたしまして、わが国の自衛隊に貸しているというようなものもございますのでしょうか。それと、もう一つは、軍属並びに将校の住宅、こういったようなものも特別に入っているのでしょうか。
  299. 丸山佶

    ○丸山政府委員 自衛隊が、その中で共同で使っている個所は四十八カ所ございます。また、お尋ねの米軍の軍人、軍属の住宅地区は、御承知の通り、明治神宮のそばにありますワシントン・ハイツ、あるいは練馬の方にありますグランド・ハイツ、陸台等、相当大きな住宅施設もございます。
  300. 松尾トシ子

    ○松尾委員 そうしますと、今度の新安保条約と新しい行政協定がもし締結され、批准された暁には、その基地方式というものはどういうふうに変わっていくか、いわゆる基地の増減、それから性格、範囲というものについて、詳しくお見通しを御指示していただきたいと思います。
  301. 丸山佶

    ○丸山政府委員 新しい協定の第二条に規定がございますように、現在来車が使用しております施設並びに区域は、新しい条約並びに協定が発効いたしますと、その新しいものに基づくところの施設並びに区域となります。その態様等は、特別に変わったものになるということはないと考えております。
  302. 松尾トシ子

    ○松尾委員 御説明によってわからないのですけれども、今後は減っていく方式をとるのか、ふえていく方式をとられるのかということをお尋ねしているのです。
  303. 丸山佶

    ○丸山政府委員 個所数並びに大きさ等の増減もございますが、現在の米軍の配置状況及び今後の見通し等に立脚して、現状から見まして、これはやはり逐次日本側に返還される部分がこれからも進んでいきまして、格別に大きなものが増加するということはないと存じます。ただいまありますところの施設及び区域の整備あるいは変更等によっての変動はございますが、大きな増加ということは、私は見通しておりません。
  304. 松尾トシ子

    ○松尾委員 大きな増加、変動はないと言うけれども、少なくはならないということですか。
  305. 丸山佶

    ○丸山政府委員 申し上げましたように、逐次減少していく傾向にあると考えております。
  306. 松尾トシ子

    ○松尾委員 減少しつつあるという傾向であるけれども、この基地が、従来と同じような性格で使われるものか、あるいは、この安保条約が通りましたら、別の基地の性格をもって働くものか。これは政府をたたくんじゃありませんよ、実態を聞いているのですから。質的に変わるかということです。
  307. 丸山佶

    ○丸山政府委員 御質問の趣旨をよく理解できませんが、私が先ほど申し上げましたように、新しい条約並びに協定になりましても、その施設及び区域は特別に変更がないと考えます。
  308. 松尾トシ子

    ○松尾委員 たとえば、今まではいろいろな補給基地に使われておったけれども、今度の基地は、特に重点的にいわゆる通信を受け持つとか、こういったような変更はないかということです。
  309. 丸山佶

    ○丸山政府委員 平和条約の発効いたしました以後から今日にかけまして、個所数並びに総面積が非常に減少しておりますが、それの用途等を見てみますと、重要なる飛行場、軍港あるいは司令部等が残りまして、また、数カ所の演習場も残っておりますが、通信施設関係は、大体その状態を維持いたしております。この現状の傾向が、今後も続いていくものと私は考えております。
  310. 松尾トシ子

    ○松尾委員 調達庁でおわかりになるでしょうか。実は、今後新安保条約締結されましたならば、直接雇用が間接雇用になるということもうたわれておりますけれども、この間の雇用関係の問題について、おわかりの点をお知らせ願いたい。
  311. 丸山佶

    ○丸山政府委員 今度の新しい協定が発動いたしますと、現在まで米軍の機関、正確に申しますと、第十五条のPX、クラブ等に雇われている日本人、現在はこの機関との直接の雇用でございますが、これが間接と申しますか、日本政府側の雇用に切りかえられて、向こう側が使用する、こういう形態に変わります。
  312. 松尾トシ子

    ○松尾委員 大へんこまかいことのみですが、結局この行政協定というものも、安保条約と同じように、非常に作文的に書いてあるのです。他の国の協定を見ますと、どこの何という名前で何番地のダムとか、何番地の基地とかこういうふのに一々名前をあげて協定を結んでいるのですが、日本の場合にはどうしてこういうふうにしてあるか。このようにしてあると、アメリカが、事情によって好めば、いつ何どきでも、どこでも基地にすることができる。ただいまのお話によりますと、だんだんと減っていく方式をとるらしいとはいうものの、市あるときには、いつ何どきでも、自由に、この協定によって、日本全国どこでも基地として求める権利を持っているように思われるのですが、こういう点はいかがでございますか。
  313. 丸山佶

    ○丸山政府委員 基地を取りきめます場合には、現在の行政協定、また、新しい地位協定の第二条の一項に明示してあります通り、合同委員会を通じまして両国政府が合意をしたときに、—初めて施設及び区域になるのでございますので、その協議決定がありませんとどこでも施設及び区域になるということはございません。
  314. 松尾トシ子

    ○松尾委員 御説明はわかるのですが、たとえば国会図書館が配った日米安全保障条約改定問題資料集の中を見ましても、米比協定に至っても、なかなか詳しく一項目ずつ名前並びに所在目的をあげて協定を結んでおるのですけれども、日本の場合の行政協定は、ただいまの御説明のようにどうしてしなくちゃならないのですか。私は、この点は政府としてもう少し日本の立場をはっきりしておいた方がいいと思う。そうしない限りは、事が起こったとき、いつでも幅があまり広過ぎて、自由にアメリカに利用されてしまう、こういうふうに考えるのです。この点は、見解の相違とか、あるいは交渉の段階ではこういった約束があるとか、こういうふうにしてお逃げになるでしょうが、これはなかなかむずかしいところで、説明にも政府としてもお困りでしょうけれども、よその国はやっているでしょう。それを日本だけがどうしてそういうふうにしていらっしゃるか、この点をもう少し詳しく聞かしていただきたい。
  315. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 ただいま米比協定の例があったわけでございますが、この米比協定は、この前、米国軍が独立前から駐留しておったという関係もありますし、そして独立してこのような条約が結ばれたという経緯もございますし、米化協定の場合は、非常な広大な基地をはっきりと条約上にうたっているわけでございます。しかし、このような場合はむしろまれでございまして、NATOの地位協定、また、そのもとにおけるところの個々の協定もございますが、米比のような、確定した基地を条約上も協定上もはっきり指定しておくというのは、かえってまれな状況ではなかろうかと考えております。それからわが方の施設区域に関しましては、ただいま申し上げましたように、合同委員会を通じて、個々の場合に両政府が締結するわけでございます。
  316. 松尾トシ子

    ○松尾委員 事情は、御説明を聞けばわかるのですけれども、合同委員会において日本の不利になるようなときには、必ずこれをチェックする自信がおありになるかどうか。それからまた、前の例をあげると、政府は非常にいやがられますけれども、旧行政協定のときの合同委員会でも、全然イエスばかりだということを聞いておりますから、この点について危惧するわけなのです。
  317. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 今までの例によりましても、私の方で好まないところは、これは許しておりません。断わっております。そういうものがたくさんあります。  それからもう一つ申し上げるのは、調達庁長官が二百五十件あると言いましたが、これは基地という観念に入るかどうかわかりませんが、小さい家一軒でも向こうへ貸す場合には、合同委員会で合意書を作ってやっておりますので、そういうものまで含んでおる、こういうことでございます。
  318. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 この際、大貫大八君から関連質疑の申し出があります。これを許します。大貫大八君。
  319. 大貫大八

    大貫委員 事前協議の問題に関しまして、一点明らかにいたしておきたいと思うのであります。これは以前に横路委員の質問でありましたか、たとえば、第七艦隊が核武装をして入港してきたというような場合には、アメリカの通告を待って事前協議をする、こういうお答えがあったと思うのです。ところが、この新協定の第五条の第三項によると、通常の状態においてはアメリカ軍は入港を通告をする。ところが、さらに合意議事録によって、通告を免除する場合が定められております。たとえば、合衆国軍隊の安全のためまたは類似の理由のため必要とする場合には、これは通告する必要がないということが、合意議事録で定められております。そうすると、この条項によって、たとえば核武装をしたなんという場合には、これはアメリカの安全に重大な影響があるんだということで、何ら通告せずに入ってこれるのじゃないですか。この点は法規の解釈じゃないですね。一つ防衛庁長官にお尋ねします。
  320. 林修三

    ○林(修)政府委員 これは今の行政協定あるいは新しい地位協定の問題でございますが、先ほど来お答えいたしております通りに、この第五条は、要するに、個々の軍艦とかあるいは公用船、あるいは飛行機が、入ってくる、人ってこない、入ってくる場合に、一一の許可が要るか要らないか、あるいはどういう場合に通告をするかという問題でございまして、これはいわゆる協定上の問題で、個々の船の出入りについての問題でございます。  それからいわゆる核装備の持ち込みという問題は、つまり、第六条に基づきます交換公文によりまして、いわゆる装備の重要な変更は事前協議の主題とするということでございまして、つまり、一時的でも核装備を持ち込むことは、手前協議の主題とするということになっておりますから、核装備の持ち込みという点においては、交換公文による事前協議になるわけでございまして、五条によって入港について通告を要するとか要しないとかいう問題とは別の観点の、この条約の規定によって、そういう事前協議の主題になるわけでございます。この両者は別に——五条による通告がないから事前協議は免除される、そういう問題ではございません。
  321. 大貫大八

    大貫委員 ところが、交換公文よりも、協定ですから、いわゆる新協定は効力の関係からいえば、むしろこの新協定の方が重要なものじゃないですか。交換公文というのは、単なる文書を交換したというだけなんです。ところが、この協定は、今度は国会の承認を求めておる。この方が基本になるはずです。これによると、通告をしなくてよろしいということが、ちゃんと明確にしてあるじゃないですか。つまり、通常の場合においては通告する、通常でない場合は通告しなくてよろしい。その通常でないという場合は、アメリカの安全に関するような場合には、通告しなくてよろしいというのですから、たとえば新型の潜水艦をもってくる、これはアメリカの軍機の秘密に関して、これはアメリカの軍の安全に関することだからというて、通告を拒否するということもあり得るのじゃないですか。
  322. 林修三

    ○林(修)政府委員 この協定と交換公文に、どちらに効力の上下があるという問題はございません。この協定も交換公文も、どちらも国会の御承認をわが政府としてはお願いしてございます。  それから今の第五条は、船の出入りあるいは飛行機の出入りという点についても、入港の許可は要らないとか、あるいは通告をすると、これはどういう港にどういう船が入ってくるかという点において、水先人をどうするとか、あるいはそういう問題から錨地を指定するとかいう問題で、つまり、港の入出港の技術的な見地からこの規定があるわけでございまして、装備についての事前協議、これは全然船の入出港とは別問題の方から規定しているわけであります。それぞれ規定の趣旨が違うわけであります。入出港について通告を要しないから、この装備の重要な変更について協議を要しない、こういうことは全然出て参らないわけでございます。両者は別のことを規定しているわけでございます。
  323. 大貫大八

    大貫委員 そうすると、この五条の三項の適当なる通告というものは、単なる入港するという手続上の問題だけなんですか、そうなんですか、それを確かめておきます。
  324. 林修三

    ○林(修)政府委員 その通りでございます。港湾当局に対しての通告でございます。
  325. 大貫大八

    大貫委員 それならば、この合意議事録で、わざわざ適当な通告を免除される場合として、合衆国の、こう書いてあるじゃないですか。わざわざ合衆国の安全のためというのですよ。合衆国の安全のためまたは類似の理由のため必要とされるその場合だけを除くというのです。何も単なる入港するだけならば、この合衆国の安全に何らの関係がないじゃないですか。これはもうそんな答弁はおかしいですよ。
  326. 林修三

    ○林(修)政府委員 これは地位協定と交換公文をごらんになれば、そういう御疑問は出てくる余地は全然ないと思います。つまり、五条は一項、二項、三項どれをごらんになりましても、要するに、港とか飛行場に対する出入りの問題を規定しているわけでございます。つまり、その飛行場に飛行機が入ってくる、あるいは港に船が入ってくるという問題でございます。どういう装備を持った船が入ってくるというような問題は、そこには全然いっていないわけでございます。つまり、船の出入り、あるいは飛行機の出入りを技術的な面でとらえて、普通ならば一々の許可が要る、そういう条約がなければ一々の許可が要るところが、これについては許可なしに入ってきてもよろしい、ただし、船については、通常の状態においては事前の通告をやるんだ、こういうことが書いてある。その通常の状態という問題の解釈について、この合意議事録があるわけです。しかし、一面において、事前協議の主題とするいわゆる装備の変更、これには何らの例外を加えていないわけでございまして、そちらの方はこの五条の規定によって免除されるという結論がどういうことで出てくるのか、私には了解できません。
  327. 大貫大八

    大貫委員 どうも法制局長官は言いのがればかりしております。合意議事録を沈み上げましょうか。公聞いたしますよ。「「適当な通告」をする義務を免除されるのは、合衆国軍隊の安全のため又は類似の理由のため必要とされる例外的な場合に限られる。」こういうのです。合衆国の軍隊の安全ですよ。港に入るのに、それは一体何が安全なのですか。免除される例外というのは何なのですか。それを明確にしていただきたい。
  328. 林修三

    ○林(修)政府委員 合意議事録は読んで字のごとくでありまして、合衆国軍隊の安全または類似の理由のため必要な場合には五条の三項の事前通告は要らない、そういうことだけでございまして、それがどうしていわゆる装備についての重要な変更、これについて事前協議を免除することになるか、そういう結論がどうして出てくるか、私にはわかりません。
  329. 大貫大八

    大貫委員 どうもわからぬとおっしゃる。どうもしょうがないのです。防衛庁長官にこの見解を聞きたい。防衛庁長官、どうお考えになりますか。一体、非常に重大に考えておりますよ。「合衆国軍隊の安全のため又は類似の理由のため必要とされる例外的な場合に限られる。」きわめて例外的な場合には、通常の通告をしなくてよろしいというこの例外的な場合は、林法制局長官が考えるような、そんな技術的なことなら、何も例外を置く必要がないでしょう。合衆国の安全に関するような問題というのは、きわめて重要視しておるから、こういう例外を置いたはずなんです。これはどういうのですか。防衛庁長官の見解を承りたい。
  330. 林修三

    ○林(修)政府委員 ……。     〔「防衛庁長官に聞くのだ、下がり   たまえ」と呼び、その他発言する   者多く、議場騒然、聴取不能〕
  331. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 条約上あるいは法律上の解釈につきましては、法制局長官のお答えの通りであります。米国艦船の日本国への出入について当局に通告する、当局とは、御承知のように、港湾管理者または港長であります。それがアメリカの安全というような場合に免除されるということでありますが、これは作戦上のというふうなことであろうと思います。そこで、五条は手続的な規定でありまして、事前協議の合意はこれとは別個の問題でありまして、装備等に重要な変更をする、こういう場合には、合意によって当然事前協議の主旭とするために通告をしなければならぬ、こういうふうに書いてございます。
  332. 大貫大八

    大貫委員 私は、これが事前協議の大きな抜け穴になると思う。たとえば、新しい潜水艦に核装備をして入ってきても、この五条の通告をしないで済むのじゃないですか。ここに抜け穴ができるじゃありませんか。政府がお考えになるように、必ずこれは事前協議に持っていけますか。入港したことを通告しない、日本政府は、たとえば核装備をした潜水艦が、海の中にもぐっておるものを、一体何によって捕捉できますか、大体捕捉できないじゃないですか。
  333. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 交換公文は、政府と政府との約束であります。その約束の中に三つの条項を含んでおります、その約束に従って、当然通告いたさなければならぬ責任があるわけでございます。
  334. 大貫大八

    大貫委員 どうも防衛庁長官の御答弁はさっぱりわからぬのですが、結局はこういうことなんですか。いつかもお答えになったように、信義誠実の原則に従って、アメリカを信用する以外にはないと、結局はこういうことになるのですか。
  335. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 信義誠実の原則はもとよりでありますが、交換公文で、日本の政府とアメリカの政府と約束しているのです。その約束に基づくのであります。
  336. 大貫大八

    大貫委員 だから、その約束に従っても、約束を履行しない場合もあるじゃないですか。この第五条によれば、約束は抜け穴になるんじゃないですか。入港しても、われわれは通告を免除されているのだと言われれば、事前協議しなくても済むことになるのじゃないですか。たとえば、アメリカがこの条文に従ってこういうふうな三百的な考え方を持ったとすれば、そうなるじゃないですか。第五条によって、アメリカの安全に関することであるから、アメリカの重要なる安全に関する新兵器なんだから、これは通告しない、従って、事前協議も伏せたら、どうなるのですか。
  337. 林修三

    ○林(修)政府委員 今の第五条の読み方の問題でございますが、第一項は、要するに、米国の船は、米国のいわゆる施設区域には一項によって許可なしに入ってこれるわけであります。三項は、一項の施設区域以外の日本の港——日本の港と言っても、どれも日本の港でございますが、施設区域以外の港に入ってくる手続を書いてあるわけであります。施設区域以外の港に入ってくる場合には事前の通告をしなければいけない。ただし、それについて合意議事録がありまして、安全上の理由がある場合にはその通告も要らないというわけであります。一項は施設区域に関するもの、三項はいわゆる施設区域にあらざる日本の港に対する入港の手続、こういうことでございます。施設区域については、一項によって、何ら日本側に対する通告もなしに、当然にこの協定によって入港できるわけであります。これはまさに船の日本国への出入りについてのこういう技術的な問題を取り扱った規定でございまして、いわゆる装備の変更というふうな問題はここには何ら関係のないことであります。装備の変更については、交換公文で規定しているわけであります。これに当たる限りは、もちろん、そういうことがあれば当然に日本側と協議する、こういうことになっております。
  338. 松尾トシ子

    ○松尾委員 この新しい行政協定で、別に話し合いを結んだ上でそれぞれの項目を、きめていく、フィリピン・アメリカと同じように一々協定の中にこまかくあげないとおっしゃるのですが、こういう点で私が一つお聞きしたいことは、いわゆる一方に基地を持ち、また、アメリカ軍は常駐権を認めるのですから、ほかに法律が出ておりますけれども、この新しくできる協定のもとに駐留するアメリカ軍に、日本の法律がすべて基地の奥まで履行できる、適用されるという自信がおありになるかどうか。いわゆる国際法上の慣例からいうと、事実は治外法権的なものになってしまうのが、大体の慣例になっているらしい。また、別のケースでもって、今までに起こったことを御説明してもいいのですが、そういったようなことを御説明するまでもなく、常駐権を認めると、ともすると、そういったような治外法権的な権利を基地内に与えてしまうということを恐れているのですけれども、今後はこれが全うできるかどうか、その点をお願いいたします。
  339. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 その点につきましては、先般御指摘になったところでございますが、先般来御登弁申し上げているかと考えておりますが、この施設区域は、条約第六条に基づきまして、米国に対しまして施設及び区域を使用することを許したわけでございます。そうしてその区域の使用につきましては、別に地位協定においていろいろ定めておるわけでございます。従いまして、この施設区域というのは、治外法権的な、日本の領土外的な性質を持っているものではなくて、当然日本の統治権、日本の主権のもとにある地域でございます。従いまして、当然日本の法令が原則として適用になるわけでございまして、これが全然適用にならない、除外された地域ではないということでございます。ただ、米国が施設区域を使用している間は、これを使用するにあたりまして必要な指置、どういうふうな措置を米国がとることができるかということは、これは協定に定めまして、その協定に従ったところにおいて、米側は措置をとることができる。しかし、原則といたしまして、当然日本の主権、統治権下にある、日本の法令がこれに適用になるというわけでございます。
  340. 松尾トシ子

    ○松尾委員 協定に従いまして、その協定の対象になるようなものを今お気づきになりましたら、説明していただきたいと思います。
  341. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 失礼でございますが、聞きとれませんでしたので……。
  342. 松尾トシ子

    ○松尾委員 協定によってだんだんきめていくと申しましたね。その協定の対象になることを事こまかく、——たとえば税金とか、いろいろな問題がございますが、こういうものはどういうふうになる予測か。
  343. 林修三

    ○林(修)政府委員 現在の行政協定によっても、いわゆる税金の問題、あるいはアメリカの軍人、軍属が犯罪を犯した場合の刑事裁判権の問題、あるいはそういう軍人、軍属が不法行為をやった場合の損害賠償の問題、そういうものを現在の行政協定で規定してございます。これについて、そういう問題となお普通起こり得る問題につきまして、地位協定で詳しく規定したわけでございます。今おっしゃいました点、つまり、米国の軍人、軍属あるいは家族に対する税金の問題、あるいは官民の入出国の問題、あるいは今申しました、いわゆる犯罪を犯した場合の問題、あるいは損害賠償の問題、あるいは民事上のいろいろの事件等が起こった場合の問題、これは大体普通起こり得べき状態を考えまして、諸外国の、あるいはNATO協定、あるいはドイツのボン協定等も参酌いたしまして、いわゆる地位協定に詳しく規定しておるつもりでございます。  それから、先ほど私お答えいたしました第五条の問題で、ちょっと私言葉が足りませんでしたので、補足させていただきますが、五条の第三項は、通常の日本の開港、つまり、施設区域以外の開港に入る場合の手続でございます。一項は施設区域だけと申しましたけれども、そうではございませんで、施設区域以外の普通の港も含んでおります。
  344. 松尾トシ子

    ○松尾委員 私がちょっと言いたいことは、名前は秘めておきますけれども、たとえばこういうケースがある。犯罪行為なのですけれども、これから後条約によってきめていく、ボン協定その他も参酌しながらとおっしゃるのですが、たとえば横須賀軍港に第七艦隊が入ってくる、そして上陸して、その町に住んでいる娘その他にいろいろ犯罪行為をやる、こういった場合に、日本の官憲が逮捕する前に、アメリカ軍の方で急いで基地内へ連れ込んでしまうという事件が相当あるらしいのです。こういったことは、結局のところ、治外法権にもつながるし、また、その犯罪の裁判並びに犯罪のいわゆる補償、こういったものも、新協定になりますとどういうふうに変わっていくか、この点も詳しく御説明ができたら一つお願いします。
  345. 林修三

    ○林(修)政府委員 今の、犯罪を犯した場合、これは現在の行政協定の第十七条でございますが、第十七条は御承知と存じますが、いわゆる現存のNATO諸国のロンドン協定と実は全く同様の趣旨で規定してあるわけでございます。従いまして、これについて、日本側が第一次裁判権を有する犯罪、それから米国側が第一次裁判権を有する犯罪を分けております。今おっしゃいましたような、たとえば日本人の婦人に対して何かやったというような場合は、当然に日本側が第一次裁判権を持つわけであります。それで、この第十七条には、当然にアメリカ側の官憲も日本側の捜索に協力すべきことが書いてございます。それで、この第十七条は、今度の新しい地位協定におきましても、従来の協定がNATOのロンドン協定等と全く同様でございますから、実はそのままのものを新しい協定に持ってきたわけでございまして、その点は現在の行政協定第十七条と同様な扱いにしてやっていくわけです。当然に、米側の官憲も、日本側が裁判権を持っておる問題の捜査については協力するという建前になっております。
  346. 松尾トシ子

    ○松尾委員 法的には確かにその通りなのですけれども、事実は決して日本の裁判にかからないようになる。特に第七艦隊の場合には、航海していてたまたま横須賀に入ってくると、すぐ在留米軍に変わってしまう。そうしてその在留米軍でもって、いわゆるその資格で町を遊んで歩いて、いろいろな問題を起こす。今度は船に乗ってすぐに行ってしまうのですから、つかみどころがないのです。こういった点も、新条約になりましたら、どんなところでこれを守り、どんなところでチェックしていき、これを防止していかれるか、そういうことをちょっと伺いたいと思います。
  347. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 ただいまの点は、協定上、ただいま法制局長官からお話し申し上げた通りであると思います。そういうときは、当然わが方が裁判権を持つわけでございます。従いまして、裁判に至る必要な行動、措置をとることができ、そのために必要とあれば双方協力するということが、この十七条に詳細に規定されておるわけであります。従いまして、たとい入港中で、また出港するというような事情がございましても、われわれが当然執行できるところの刑事裁判権は、行使できるということになるわけであります。
  348. 松尾トシ子

    ○松尾委員 この問題はなかなか大へんで、そういった法的な根拠に基づいて裁判をしたり、日本の裁判権を主張するということをさせないように、向こうがじゃましているのですよ。ですから、これは法律の通りやれないケースがたくさんあって、基地の人々はなかなか不安を感じていると思うのです。  時に時間も五時近くなりましたし、委員会もだれぎみになっておりますので、まだ行政協定の各章にわたるところの数字的な問題とか事情、これらを明らかにしたいと思うのですが、次の機会に譲るとして、要は、きょう一日やってみまして、どうも藤山さんも岸総理大臣も、誠意のあるところをもって御回答願ったとおっしゃるのですけれども、この新安保条約こそは抽象的で、そうして、はっきりとしたきめ手がなかなかないという感じを非常に受けるのです。そこで、国際事情は、大国の対立はなかなか激しいというときにあたっておりますから、要らぬことだとおっしゃるかもしれませんけれども、この問題について強い神経を国民が使っていることは仕方がない、当然のことではないかというふうに考えるわけです。  どうか、今後も、岸総理の言う通り、慎重な審議を続けさせていただくというのですから、もう少しこの内容についての明らかな点を正直に話していただきまして、外交こそはイデオロギーやあるいは思想対立をしないで、ほんとうに一本に話し合えるところはやっていくことこそが、日本の安全を守って、日本の平和を早めることではないかというふうに考えるわけです。特に婦人の大半は、第二の世界戦争のときに、政府の命令する戦争の陰に隠れて、ただただ泣いておったつらい経験を持っております。そのために、男の政治家が思うよりもはるかに神経を使って、この新安保条約によってほんとうに平和になれるのか、極東の平和が保てるのかということは、だれしも心配していることだというふうに皆さんは御理解を願わなくてはならないと思います。もっともっと質問したい、こまかい事務的なことがございますが、きょうはこれをもって終わります。
  349. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 この際、竹谷源太郎君より関連質疑の申し出があります。これを許します。竹谷源太郎君。
  350. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 簡単にやります。ただいま松尾さんの質問の最後の、行政協定の中の重要な問題がありましたので、これ一点だけただしておきたいと思います。  第七艦隊の水兵が、横須賀に上陸をして悪いことをする、そして軍艦に帰ってしまう、それをどうするかという問題です。これは、法律上は、今法制局長官が答弁したように、日本に裁判権を有するということになる。ところが、これは現行行政協定においても、また新行政協定においても、こういう規定がある。新しい協定では第十七条の第五項の(C)ですね。これは現行協定の第十七条にもある。それを読みますと、「日本国が裁判権を行使すべき合衆国軍隊の構成員又は軍属たる被疑者の拘禁は、その者の身柄が合衆国の手中にあるときは、日本国により公訴が提起されるまでの間、合衆国が引き続き行なうものとする。」という規定がある。従って、日本国は裁判権を有しておるが、公訴するまでは、合衆国の手中にその被疑者があれば、そのまま拘禁を続けるということになるのです。そうなりまするから、第七艦隊がそのまま出港して、どこかへ行ってしまえば手のつけようがない。また、犯罪の内容について、被疑者がいないのであり、アメリカ軍の手中にあって、日本の警察当局、検察当局にはないのであるから、徹底的な捜査ができない。従って、公訴の材料がここに生まれてきません。公訴ができないから、事実上は、これは日本において裁判権を行使することができないということになる。これは松尾さんのおっしゃった通りです。現実は、この行政協定によってそうなるようにできている。これはどうですか。
  351. 林修三

    ○林(修)政府委員 この点は、一応現在の行政協定の第五項の(C)項があるわけでございますが、同時に、この第五項に関しまして合意議事録もできておりまして、日本側の当局が第一次裁判権を持っている者につきまして、それをまず犯人として逮捕したときには、直ちに、正当な理由がある場合には、一応条件付で向こうの方に拘禁させる。その場合には、当然に、日本側が必要がある場合にはいつでも当該犯人を日本側に出頭させる、取り調べさせるという条件で、向こう側に渡すことになっております。それから同時に、合衆国の当局は、日本側の要請があれば、起訴したときにその犯人の身柄を日本側の当局に引き渡す、こういうことになっております。それからもう一つは、そういうふうに、日本側が起訴すれば当然に引き渡す、初め逮捕した者につきましては、日本側として必要な場合には、いつでも日本側に対して引き渡すということについての要件について、向こう側も、日本側が要求すれば、いつでも日本側に引き渡すということになっております。  それから、この五項に関する合意議事録の第二項につきましては、もしも最初に米軍当局がその犯人を逮捕したという場合には、これを日本側に同時に通告することになっております。  それから、この五項でございますが、五項については、その両方の当局は、裁判権を行使する権利が競合するすべての事件について、相互に通告するということにもなっておりますし、両方が誠意を持って、お互いの、そういう起訴する者について捜査に協力するということにもなっております。そういう点で、現在の協定で一応それはできる建前になっておる、あとは運用の問題だと私は思うわけでございます。
  352. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 いういろいろくだくだと合意議事録その他をひっぱり出してきました。今私はここに材料を持っておらない。もしそういう合意議事録があるならば、それを出していただきたい。そして証明をしていただきたい。出さないでもって、こういうものがあるといって勝手なことを言って、われわれにはこのような行政協定に関する合意議事録の——行政協定十七条、現行でも十七条の第五項(C)項に、はっきり、公訴するまでは合衆国が引き続きこれを拘禁する、こう書いてある。そこで、今、その他の合意議事録あるいは話し合いによって、こちらへ引き渡す場合もあり得るというようなことを言っておるが、それでは引き渡しているかどうか、そうじゃないという事例を私は申し上げなければならない。  四月の二十一日、河北新報の記事でありまするが、「踏みにじられる行政協定」、こういう記事があります。これによりますと、四月十八日午前二時ごろ、米空軍三沢基地近くにおいて、ラジオ大隊ウィリアム・L・バウエル、二十二歳は、三沢市幸町一丁目無職A子さんを暴行しようとして、A子さんをなぐり、全治十日間の傷を負わせ、物品を盗んで逃走した。そこで三沢警案署長は、米軍バッカス司令官に犯人の身柄引き渡しを要求せしも、拒否された。これは日米行政協定第十七条一項に反するものである。しかし米側は、行政協定十七条五の(C)項をたてにしてこれに応じない。それに対して米空軍三沢広報課の談話として、特別の事情がない限り、犯人を日本警察に引き渡さなくても不当行為には当たらない、こういうふうに、米空軍三沢広報課員がこれは渡さなくてもいいんだということで、協定第十七条第五項の(C)項によって同こうは拒否しておる。これでは捜査のしょうがない。善意を持って向こうは犯人を取り調べさしたり、あるいは引き渡しもするのだ、引き渡さなくとも、三沢警察署長が捜査をするのに協力するために取り調べをさせる、その他の便宜を与えなければならぬ、今の法制局長官の答弁によるとそうなる。それがだめなんです。これは河北新報だけじゃなくて、その他の新聞にも先月の下旬にみな報道されておる。こういう事実があるのに、アメリカの善意、好意ばかりにたよっておったのではとうていだめだ。だから、仲のいい友だちの間の借金でも、いざという場合の証文として、ぜひとも借用証文は取っておかなければならぬ。ところが、これは返さなくてもいいという借用証文なんだ。それを返してくれるばかは、なかなかいない。だから、今松尾さんのおっしゃった第七艦隊の場合なんかは、はっきりしている。三沢に駐屯しておるラジオ大隊、これはしょっちゅう地元の警察とは関係がある。だから、大ていのことは地元の警察署に協力するはずなんだ。それにさえも協力しないのであるから、まして日本に配備されていないところの第七艦隊が、何らかの補給か通過のために寄った場合に、その水兵が悪いことをしておって、すっとそのまま行ってしまうこれは日本の警察が逮捕すればこっちがつかまえられるが、これが米軍の基地へ逃げ込んだとか、あるいは艦隊へ帰ってしまう、あるいは米軍のMPが逮捕して連れていってしまえばだめなんだ。私、今その記事は持っておりませんが、多分この強姦未遂事件、それから窃盗は既遂事件、この事件はMPが逮捕して基地へ連れていっちゃった。その場合なんかは、MPは日本の警察に渡さなければならぬ。それを逮捕して、今度は犯人を引き渡してくれない。調べをさせない。これで一体いいかどうか、総理大臣の御意見も伺いたい。
  353. 林修三

    ○林(修)政府委員 法律上の問題、先ほどお答え申しました通りに、要するに、日本側がまず逮捕いたしました場合には、かりに向こう側に渡す場合にも一応条件をつけることになっております。日本側の要請があれば、直ちに日本側に取り調べのために連れてくるという条件で、向こう側に渡すことになっております。向こう側が最初に逮捕した場合には、日本側当局が起訴した場合にこっちへ引き渡すことになっておりまして、今言ったような問題が運用上起こるかもわかりませんが、これについても日米間の合意書では、日本側の当局が強く要望した場合には、その逮捕した者を日本側に渡すということになっておるわけでございます。それから同時に、もう一つ合意議事録では、施設にいる者につきましても、日本側の要望があれば、向こう側の当局で当然に捜索等をやってくれるということになっておるわけでございます。これは建前から言えば、そういうふうにお互いが協力してその犯罪を捜査して、第一次裁判権を持っている当局がさばけるようにするわけでございまして、あとは運用の問題になります。そこで、具体的な事件は私存じませんけれども、規定の建前としては、一応そうなっているんじゃないか。問題としては、運用の問題が、向こう側が誠意を持ってやってくれるかどうかということになると思います。
  354. 岸信介

    ○岸国務大臣 具体的な問題につきましては、私は事犯そのものを知りませんから、意見を申し上げる限りじゃないと思います。ただ、行政協定、この地位協定に基づいて刑事裁判権を行使するにつきまして、取りきめをいたしておることが実際上において守られるか守られないかという問題に関しましては、これは従来われわれが、いろいろな事件におきまして、いろいろ問題を起こしたことがあることは承知いたしております。今おあげになりましたことは、私事情を存じませんけれども。そういうことについて、従来、われわれの立場から見て、遺憾と思うような事例も少なくなかったと思います。従いまして、新協定におきましては、この取りきめした事柄に関しまして、法律的の疑義等については十分一つ御質疑願いたいと思います。法律的にはこれはお答えしますが、その規定に従って、十分誠意を持ってこれを実現するように、運営を十分にやっていく必要がある、かように考えております。
  355. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 その合意議事録において、引き渡さなくてもいいと書いてある。これは誠意ではなくて、規定上当然合意議事録を改めて、日本が第一次裁判権を有し、日本人が被害を受け、それがむろん公務でも何でもない、このような場合には、日本の官憲に引き渡すということを、この規定を逆に合意議事録を書き改めなければならぬ。こういう点でたくさんの欠陥がありますが、これは追って行政協定及びそれに付属するものを審議する場合に、なお質疑をし、政府の猛反省を促したいと考えます。
  356. 林修三

    ○林(修)政府委員 合意議事録にも出ている点は、今竹谷委員がおっしゃった通りでございます。なおこれはあるいは資料としても出ておるかと思いますが、日米間の合同委員会の合意書でございますが、合意書におきまして、さっき私が申しました通りに、つまり日本側の当局が強く要望した場合には、向こう側が逮捕した行についても、日本側に引き渡すことになっております。それから取り調べにつきましては、そういう問題については、本人の身柄を引き渡す前に、共同捜査として取り調べを認めることになっておるわけでございまして、合意書としてはそこまで書いてあるわけでございます。これは当然今度も引き継がれる予定になっております。
  357. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 次会は、明十二日午前十時より開会いたします。  本日は、これにて散会いたします。     午後五時八分散会