運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1960-05-10 第34回国会 衆議院 日米安全保障条約等特別委員会 第32号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年五月十日(火曜日)     午前十時三十三分開議  出席委員    委員長 小澤佐重喜君    理事 井出一太郎君 理事 岩本 信行君    理事 大久保武雄君 理事 櫻内 義雄君    理事 椎熊 三郎君 理事 西村 力弥君    理事 松本 七郎君 理事 竹谷源太郎君       安倍晋太郎君    愛知 揆一君       秋田 大助君    石坂  繁君       鍛冶 良作君    鴨田 宗一君       賀屋 興宣君    小林かなえ君       田中 榮一君    田中 龍夫君       田中 正巳君    床次 徳二君       野田 武夫君    服部 安司君       福家 俊一君    古井 喜實君       保科善四郎君    毛利 松平君       山下 春江君    飛鳥田一雄君       石橋 政嗣君    岡田 春夫君       黒田 寿男君    戸叶 里子君       中井徳次郎君    森島 守人君       森本  靖君    横路 節雄君       横山 利秋君    受田 新吉君       大貫 大八君    大野 幸一君       堤 ツルヨ君  出席国務大臣         内閣総理大臣  岸  信介君         外 務 大 臣 藤山愛一郎君         郵 政 大 臣 植竹 春彦君         国 務 大 臣 赤城 宗徳君  出席政府委員         内閣官房長官 松本 俊一君         法制局長官   林  修三君         防衛庁参事官         (長官官房長) 門叶 宗雄君         防衛庁参事官         (防衛局長)  加藤 陽三君         調達庁長官   丸山  佶君         外務政務次官  小林 絹治君         外務事務官         (大臣官房審議         官)      下田 武三君         外務事務官         (アジア局長) 伊關佑二郎君         外務事務官         (アメリカ局         長)      森  治樹君         外務事務官         (経済局長)  牛場 信彦君         外務事務官         (条約局長)  高橋 通敏君         通商産業事務官         (通商局長)  松尾泰一郎君         郵政事務官         (大臣官房長) 荒巻伊勢雄君         郵政事務官         (電波監理局         長)      甘利 省吾君  委員外出席者         日本電信電話公         社総裁     大橋 八郎君         日本電信電話公         社副総裁    横田 信夫君         日本電信電話公         社職員局長   行広 清美君         日本電信電話公         社営業局長   大泉 周蔵君         参  考  人         (日本放送協会         会長)     野村 秀雄君         参  考  人         (日本放送協会         専務理事)   小野 吉郎君         専  門  員 佐藤 敏人君     ————————————— 五月十日  委員滝井義高君、穗積七郎君及び大野幸一君辞  任につき、その補欠として横山利秋君、森本靖  君及び受田新吉君が議長の指名で委員に選任さ  れた。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び  安全保障条約締結について承認を求めるの件  (条約第一号)  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び  安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並び  に日本国における合衆国軍隊地位に関する協  定の締結について承認を求めるの件(条約第二  号)  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び  安全保障条約等締結に伴う関係法令整理に  関する法律案内閣提出第六五号)      ————◇—————
  2. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 これより会議を開きます。  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約締結について承認を求めるの件、日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並び日本国における合衆国軍隊地位に関する協定の締結について承認を求めるの件、日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約等締結に伴う関係法令整理に関する法律案、右各件を一括して議題といたします。質疑を続行いたします。西村力弥君。
  3. 西村力弥

    西村(力)委員 まず第一番目に、今回日米安保条約締結にあたって、アメリカ世論というものがどういう動きを示しておるか、私は、いろいろな資料に基づいて注目しておるのでございますが、ほとんどの報道は、アメリカ世論はまことに平静である、こういう工合になっておるのであります。今この状態を見まして考えられることは、政府がこの委員会において答弁せらるるがごとく、たとえば、事前協議という問題について、アメリカ戦闘作戦行動に出る寸秒を争う瞬間において、日本がノーと言えば、その作戦行動が変更されるというようなことが事実であるとするならば、これは明らかにアメリカ主権の大いなる拘束、制限であり、また、統帥権というものに対するまことにすばらしい制限であると思うのです。でありますので、こういうアメリカ世論の平静から見ますと、政府答弁のごとく、事前協議において日本意思というものが尊重されて、アメリカ既定方針というものが変更されるのだというようなことは、これは全然ないんだ、すなわち、アメリカとしては失うものは一つもない、こういう安心感に立っているんだ、かように私たちは想像せざるを得ないわけなんであります。この件に関しまして、岸総理から所見を承りたい、かように思います。
  4. 岸信介

    岸国務大臣 アメリカ世論は冷静であるということは、私も大体において認めます。問題は、日米間の関係がこの数年間非常に改善されて、また、日本国力及び国際的地位が上がったことに対する——日本のそういう評価並びにこれに基づくところの日本に対する信頼感というものが非常に深まってきております。従って、この条約を、できるだけ日本の国及び日本国民の要望にかなうように改善していこうという根本につきましては、十分に政府並びに国会等関係においても了解されておることであり、一般の世論も、そういう点において、私は、今度の改正に対しての真意というものの理解がよくいっておる、かように考えております。  また、今お話の、今度の改正自身が、日本政府が説明しているようにアメリカの云々という御質問でありますが、言うまでもなく、この条約そのものは、いわゆる平和の確保であり、それ自体戦争抑止の力として、日本の安全及び極東の安全を確保するというのが趣旨でございます。これを、日本の一部において論議されておるように、侵略性を持っておるものであるという前提に立って、アメリカ行動制限するじゃないかという立場から論議されるならば、今、西村委員の御指摘になったような点が問題になると思います。そうではなくして、この条約自体は、われわれがしばしば説明しておるように、決して侵略性を持っておるものではないのであります。従って、そういう点に関する理解は十分に私はいっておる、かように考えておるのでありまして、むしろ、冷静であるということ自体は、本条約改正というものの趣旨を正当に理解されておるからである、かように考えております。
  5. 西村力弥

    西村(力)委員 総理は、アメリカ世論が新安保条約締結にあたってまことに平静であるということをお認めになりましたが、翻って、われわれ独立国というような立場に立って、自国を守るための軍備を持ち、——現在、日本憲法においてはそれは認められてないから、われわれはそれを言うわけではありませんけれども軍備を持って、そうして自国の安全のために軍事行動をやろうとする場合、他国意思表示によってそれが変更されるというようなことに対して、これは主権制限であると、はっきり認めざるを得ないと思うのでありまするが、そういう主権制限までも、信頼によって十分な理解を持っておるというようなことは、これはあまりにも強弁に過ぎるのではないだろうか、私はかように考えるわけなんでございます。私が申し上げる、日本意思がその通りアメリカ軍事前協議の場合いれられて、アメリカ日本意思通り自分たち作戦行動を変っ更するというようなことは、アメリカ自体にとっては、自分たち主権制限であるという工合になるのだ、こういうようなことは総理はお認めになるはずだと思うのですが、いかがですか。
  6. 岸信介

    岸国務大臣 今申し上げている通り、これは日本の安全を保障することにその主眼点があることは言うを待たないのであります。これと密接な関係を持っており、両国がそういう関心を持っておる極東の平和と安全、国際的平和と安全を確保することにも寄与するということを考えておるわけでございます。そして、それを実行するという意味において、どういうことをすることが最も両国国民感情両国利益、また、平和と安全に寄与するかということを、両国が隔意なく話し合った結果として到達したものが、事前協議その他の方法であります。このことにつきましては、すでにアメリカとの間には相当長い間その問題が話し合われております。すでに指摘されているように、私が三年前にアイゼンハワー大統領と会ったときにもその問題が出て、安保条約の運営については、両国国民感情利益に合致するようにこれを運営することが必要であるという原則認められ、それが、さらに今回において、条約及び交換公文において具体化しよう、こういう経緯をとっておるのでありまして、先ほど申しているように、この間における日本に対するアメリカ側信頼関係というものが深まってきておるということが、この条約改定基礎でございます。そういう点から考えて、今度の条約について、今までアメリカの思うままに行動しておる、しかしながら、それが日本国民感情日本国際的地位から見て、日本立場から適当でないということで、日本が要望していることに対してアメリカ承諾を与える、こういう問題でございます。その結果として、今、西村君が御指摘になっているように、主権の行使というものは無制限だ、思うままにできるのだということが制限されることは、これは当然のことでありまして、両方意思の合致によってできていく。条約というものは、大体そういう主権が全部自由であるのを、何らかの形において制約されるということは、条約性質からいえば、当然そういうことがあらゆる問題について起こってくるのだ、これが両方の真の理解と、一方が一方を圧迫してどうするという問題ではなしに、完全に合意されるということが、私は、国際的条約やとりきめの基礎をなすものである、かように考えます。
  7. 西村力弥

    西村(力)委員 もちろん、条約は、相互主催というものはそれぞれの了解でもって制限し合う、こういう立場をとることは、これは私も認めます。認めますが、しかしながら、この第一回目の、今お話のあった岸・アイク共同声明に盛られておる、実行可能なる場合においては事前協議をするのだという程度ですと、われわれは、常識的にその限度認められると思う。ところが、今、いざ戦闘行動に移ろうという場合において、日本意思アメリカ主権行動、しかも、軍事行動、これを左右するところまでアメリカが譲るということは、逆に、日本立場に立って考えた場合においても、そのことは限度を越えておる、こういう工合に私たちははっきりいわざるを得ないと思うわけなんです。それで、私の推測に立てば、かつての岸・アイク共同声明に盛られた、実行可能なる場合は事前協議をするという、こういう内容が、日本国民に対する一つの体裁をつくろうために、条約条文上から実行可能なる場合ということを削って、実質は変わらないが、条文上からそれだけを削ってわれわれの前に出してきたのだ、こう私たちは断定せざるを得ないわけなんです。この件に関しまして、岸総理、あなたは、相互信頼というもので、そういう戦闘作戦行動の重大なる統帥権の発動というようなところまで譲るということは、これは日本総理となった場合に、そしてまた、正式にあなたの志向される憲法改正を実行して、日本の国軍をもって、日本意思によって軍事行動をやろうとした場合に、どこかの国の意思によってそれを変更するということまで、あなたが認めることがあり得るかどうか。私は、そこまでは絶対に——相互了解に立つ主権制限条約上あるにしても、それは限界を越えているものだ、こういう工合に思うのです。総理見解一つ聞きたい。
  8. 岸信介

    岸国務大臣 それは、他国基地を持って、その他国基地を使用していろいろな行動をするという場合でございます。もちろん、基地他国に持つという場合におきまして、基地を与えるところの国の意思というものが尊重されなければならないし、また、その結果として、基地を利用することが、自分国自身の絶対の権利を持っておる領土内を使用してどうするという場合と違って、その基地を提供するところの国の意思によって行動が制約されるということは、これは当然のことであって、別に不思議なことではなし、それによっていわゆる統帥権がどうという問題ではございません。もちろん、アメリカとして、アメリカが外国に基地を持たずに、自分の完全な領土であるとか、完全なる施政権のもとにあるところのものをどう動かすかということについては、これはアメリカの自由でございましょうが、いやしくも、日本領土内に一つ基地を持って、その基地を使用して作戦行動をするとか、その他この基地に大きな軍隊を配備するとかいう場合において、その基地を提供する国の意思によって制約を受ける、こういう性質のものでございます。
  9. 西村力弥

    西村(力)委員 アメリカ世界各国軍事同盟を結び、また、アメリカ軍事基地を持っておるわけでございますが、今、総理答弁であるがごとき、また、日本事前協議条項が盛られているがごとき例というのはどこにありますか。
  10. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 その例は、ほとんどございません。ただ、最近におきまして、フィリピンでは同じように事前協議条項について合意が成立いたしました。
  11. 西村力弥

    西村(力)委員 フィリピン合意が成立したのは、日時はいつで、その合意交換公文ですか、条約ですか、それの正式の名称は何ですか。
  12. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 ごく最近でございます。そして、その内容については、資料としてお配りいたしておる次第でございます。ちょっと今正式の名前を思いつきませんですが……。
  13. 西村力弥

    西村(力)委員 米国が各地に基地を持っておるが、日本よりも自国防衛力を強固に持っておるところにも行っているわけなんでありまして、そういう国においては、今、岸総理が言うように、基地を使用することに対して、やはり事前協議によってその国の国民の願望にこたえるのだというならば、日本にそういう協議条項認めるとするならば、それらのもっと大きな自衛力を持っている、防衛力を持っている国との関係においては、当然にこの事前協議条項というものが付せらるべきだと思う。これについては、いかなるお考えをお持ちですか。
  14. 岸信介

    岸国務大臣 それは、アメリカとそれらの国との関係がどういう関係になっておるか、また、それらの国が、はたして日本が要求したようなことを要求しているのかどうか、それは、その国とアメリカとの関係でありますから違う。しかし、よその国がどうであろうとも、日本立場から、日本国民意思をいれて政府がそういうことをアメリカ側に要望して、アメリカ側がこれに承諾を与えるということについては、私は、少しも差しつかえないことであり、むしろ、日本としては適当なことである、かように信じております。
  15. 西村力弥

    西村(力)委員 この件につきましては、あとでまた触れることにしまして、けさの新聞によりますると、中国の北京において、日米安保条約に反対する百万人の大集会が行なわれたということであります。一方、この条約によって主権の大事な点の制限を受ける米国国民が平静であるにかかわらず、中国においては百万人の大集会で反対の気勢をあげているというようなこと、こういうようなことは、私たちは、この条約内容を示すものとして、まことに対照的に見ざるを得ないわけなんです。このことにつきましては、総理新聞をごらんになられたと思いますので、どういう工合に見ていらっしゃいますか。
  16. 岸信介

    岸国務大臣 最初から私どもがしばしばここで申し上げている通り、この条約は、いわゆる防衛的なものでありまして、決して仮想敵国を設けて、侵略的な考え方を持っているものでないことは、口がすっぱくなるほど申し上げておる通りであります。これを正当に理解されるならば、私どもは、隣国である中共においてこれを問題にする必要はないと思うのであります。ただ、私どもは、繰り返し繰り返し、この問題に関して中共側が誤解し、正当にこの条約趣旨理解しておらないということを申し上げておるのでありまして、そういうことの現われだと考えております。
  17. 西村力弥

    西村(力)委員 自己中心解釈に立てば、そういうことになると思うのですが、それではお尋ねします。アメリカに近接するキューバあるいはグアテマラ、こういうようなところにおいて、アメリカの経済的な、あるいは政治的な支配から脱却して、ほんとう独立の体制を保っていく、しかも、キューバにおいては、過般チェコスロバキアから武器を買った、こういうようなことが出ておりまするが、かりにソビエトキューバが、日本のこの安保条約と同様の条約を結んだ場合において、その条約に対して、アメリカ自体が、あれは純防衛的なものであるといって安心をするかどうか。これは仮定の問題でありますが、しかし、キューバ現状からいって、グアテマラアメリカの圧迫によって屈従されましたが、やはり、ほんとうのきずなを脱して独立しようという意欲はグアテマラに大きくある。だから、そこにソビエトとこういう政府が、言うがごとき防衛的立場における条約を結ばないとも限らない。今この安保条約は純防衛的なものであり、これは誤解しているんだという、そういう所論に立ってキューバソビエト軍事同盟、こういう防衛条約が結ばれたときに、米国自体が、これは純防衛的なものであるから何ら顧慮する要がない、こういう工合に言うかどうか。仮定の問題でありまするけれども総理は、そういう状態に立ち至った場合に、アメリカはがまんすべきだ、防衛的なものであるから、それは何ら脅威ではないんだという工合考えるべきだ、こういう工合に思われるかどうか。
  18. 岸信介

    岸国務大臣 全然仮定的な問題であり、その条約内容、それができるいきさつ、その他についてわかりませんし、アメリカがどう考えるかということはアメリカ考えでございまして、私自身がかれこれお答えをすべき筋ではないと思います。
  19. 西村力弥

    西村(力)委員 それでは二国間の、あるいは多数国家間の条約というものは、相互に譲るべきところは譲り合って、そして合意するのだ、こういうことになるわけでありまするが、そうしますと、この条約審議あるいは解釈にあたっては、相互合意解釈という、これは、やはり表に出なければ、この条約の実態というものは真に理解されないと思うわけなんです。これは当然であると思う。しかも、日米関係現状からいって、残念ながら、日本が軍事的に、経済的に、あるいは政治的に優位に立っておるということは決して認めるわけには参りませんでしょう。彼は強者であり、われは弱者なんです。こういう立場において結んだ条約においては、今ここで言いのがれに努めている政府答弁それ自体、すべてがアメリカとの合意であると見ることは危険きわまりないことであると思う。むしろ、この条約審議にあたっては、アメリカ政府自体解釈というものが絶対性を持つまでに考えるのが至当であるとわれわれは思うのです。こういうことに対してはいかにお考えであるか。
  20. 岸信介

    岸国務大臣 条約解釈について、大事な点において両国の間にあるいは必要なことは合意する必要がありましょうし、また、解釈を十分統一する必要があることは、私も、条約については一般的に原則として認めます。しかし、日米の間において、今、西村君が言われるように、われわれは劣等感に立って考える必要はない、私は三年前に、現実に国力も違う点がある、これは確かに数字が示している通りでありますけれども日本も完全なる独立国として国際的の地位認められて、日米の間において一方が優越であり、一方が劣等立場であるというようなことではいかぬ、両者はあくまでも対等な立場であらゆる問題を討議し、その理解信頼の上にすべての関係を律しようということを申し合わせたのでありまして、私は、この条約解釈する上において、今、西村君が言われるように、劣等感に立って考える必要はない、かように考えます。
  21. 西村力弥

    西村(力)委員 私は、一日本人として、決して劣等感に立って言っているのではない。この条約ほんとうのところを知るには、日米関係現状からいって、米国解釈が優先するのだ、それが表面に出なければ、この条約ほんとうのところはやはり納得はできないのだ、こういうような立場に立って言うているのです。劣等感に立って言っているわけではない、事実に立って言っているのです。そうでありますから、私たちは、この安保審議は、どうしてもアメリカ議会における論議というものがはっきりすべて示されて、しかる後、この条約ほんとうの姿を知って、そして承認する、承認しないという態度は国民立場において決定される、これが一番妥当な道であると思うのであるが、総理はいかに考えられるか。
  22. 岸信介

    岸国務大臣 先ほど申し上げたように、もし、疑問のある重要な問題について日米が意見を異にする、解釈を異にするというような問題が具体的に指摘されるならば、これを統一すべきことは私は当然であると思います。しかしながら、私は、この問題に対して承認を与えるかどうかということは、日本立場から十分審議を尽くして、日本立場でこれを決定すべきだ、それで十分である、かように考えております。
  23. 西村力弥

    西村(力)委員 とにかく、この安保審議を通じて、ことに、きのうの飛鳥田委員の取り上げた黒いジェット機の問題なんかについての政府答弁は、すべてアメリカ中心の、アメリカを援護する、こういう立場に立ってのみ発言しておる。そうして相当ろうばいをしておる。こういうことから見ましても、この条約ほんとうの姿というものは、アメリカ解釈がはっきり出て、それの裏づけとして日本国民が判断する、こういうところまでいかなければ、決して、ほんとう日本自主的立場に立ってやっておるのだというわけにはいかない。私たちが聞くところによりますと、近くアイクが訪日するまでの間にこれを成立せしめて、接待用のおぜん立てをしなければならないと政府自体考えておるという工合に聞いておるのでありますが、そういうようなことは、一つの巷間のうわさであると一蹴してもかまわないのでございまするが、ほんとう独立国対等考えであるとするならば、やはり相互見解というものが、はっきり公的な機関において表明され、そうしてその上に立って、条約の最後の締めくくりをつけられるということが真の独立国の行く道である、こう思うのです。私たちは、そういう意味からも、この審議が、いたずらにアイクの訪日を前提とするがごとく強行策に出るようなことは、絶対に許容ができない、こういう考えを持っておるわけであります。  それでは、次にお尋ねしますが、この条約によって、今後十一年間アメリカ日本の軍事的な提携というものが不動のものになる。こういうことであるとするならば、平たく言えば、アメリカの軍事政策に、日本国民と国土のすべての運命をまかせるのだ、こういうようなことも言えないことはない、こう思うのです。そうであるとするならば、やはり日本政府としましては、アメリカの世界政策、極東政策、そういうものに対する完全なる理解、それが自国に有利であるという確信、こういうものがなければ、一国の総理たる者は、十一年間の国の運命を決定づけるなんということは、許されないことであると思う。であるから、私は、岸総理アメリカの世界政策あるいは極東政策、こういうようなことに対してどのような理解を持っていらっしゃるのか、お尋ねをしなければならぬことになるわけなんです。
  24. 岸信介

    岸国務大臣 アメリカの世界政策であるとか、あるいは極東政策というものについての理解を持たなければならぬということは、これは当然持つのはあたりまえであります。しかしながら、安保条約が結ばれるならば、先ほど西村君の言われるように、アメリカ極東戦略の一環として日本が縛りつけられるのだというような前提は、これは間違っている。そういう意味において私は考えるべきものじゃない。この条約性質は、しばしば申し上げておる通り、あくまでも日本の平和と安全を確保するためにどういう方法をとるか、日本の自衛隊だけでもって祖国が守れるかということを考えてみると、そういう状態でないということから、日本の平和と安全を守るための防衛的の条約として、現行にも安保条約がございますし、また、その不合理を改めようとするのがこの条約の精神であるということの前提だけは、十分に一つ理解をいただきたいと思います。アメリカが、極東において、あるいは世界においてどういう政策をとっているかということは、アメリカの大統領の教書その他にしばしば現われておる通りアメリカはあくまでも自由主義の立場を堅持して、同じ立場を持っておるところの国々と提携をして、そうして世界の平和を確保するという考え方を基本に持っておることは、何ら疑うところはないと私は信じております。
  25. 西村力弥

    西村(力)委員 そういう型通り答弁で、国民全体が納得するかどうかということになりますると、これはおそらく納得はしない、こういう工合に言わざるを得ないわけなのでございます。私たちアメリカの戦後の世界政策をずっと見ますると、トルーマン・ドクトリンですか、ああいう経済的な援助形式をとりながら世界各国に軍事網を張っていって、そうしてアメリカが、前二次大戦において本土は何一つ荒らされなかった、こういう立場を今後とも続けていこうとする。前線基地というものによって周辺を巻いて、そうして社会主義国家の育成を牽制していく。あるときは、せとぎわ作戦というものをやって、軍事輸送をやって、それらの国々の建設を妨害していこう、こういうような政策というものが中心である。こういう工合に見ているわけなのでございます。それは一つの論争でありまするからやめまするが、しからば、今後十一年間そのアメリカの政策が、ほんとうに世界の平和と、日本の安全とか平和とかのために変わりなく続くんだ、こういうことを確かめられましたか。確かめられないにしても、十一年間不動なものとしてそれは続くんだ、それは世界の正義として認めているのであって、十一年間そういう工合に変わりなく続くんだ、こういうようなことを岸総理は確かめられておりますか、確信を持っていらっしゃいますか。
  26. 岸信介

    岸国務大臣 この安保条約は、言うまでもなく、日米両国が締約国として、両方とも、この安保条約によって権利義務を持つわけであります。私は、十年間の安定したこういう状況を作るということが、日本にとっても適当であると思いますし、また、アメリカも、それが適当であるという見解でもって一致して、この条約の改定をしようということであります。この条約が、一方的に日本だけを縛って、アメリカを縛らぬというものではございません。両国が、同様に、この条約に定められているところの権利義務を持つ、こういうことでございます。
  27. 西村力弥

    西村(力)委員 十年間アメリカの、今岸総理が、善であるという工合認める政策が、変わらぬということを確かめられてありますかどうか、私はその点を質問しているのです。いかがですか。
  28. 岸信介

    岸国務大臣 御質問の趣旨が、私ははっきりわからないのですが、先ほどお答え申し上げましたように、安保条約を結び、これでなにしていくという権利義務を持つ、こういうふうな条約によって両国が縛られていくということの必要を、両国とも十分に理解して、結んでおるわけであります。その点に関する限りにおいて、アメリカの政策が変わって、この条約を廃棄するという考えで結ばれておるわけではございません。
  29. 西村力弥

    西村(力)委員 十一年間アメリカの、今施行している世界政策というものは変わらないんだ、こういうような前提に立ってお話しでありまするが、しかしながら、今の現状を見ますると、トルコにおいて、あれだけのメンデレス首相の悪政に対するというか、人民の反撃というものが現われてきておる。トルコは、アメリカにとってはほんとうに大事な同盟国であると思うのであります。それから南ベトナムにおいても、事件が起きて、野党側が、あそこのゴ・ディンジェムですか、あれの政策に対して反撃を試みておる。台湾も、この前滝井君が言うたように、決して内部情勢は平静なものでもない、活気のあるものではない。現実に朝鮮においては、あれだけの人民の蜂起が行なわれておる。また、キューバしかり、あるいは南米においてもそうだ。ヨーロッパにおいても、貿易自由連合とか、欧州共同市場の形態とか、ああいうような動きが出まして、アメリカの世界政策に対する一つの反撃というものは、どんどんと現われてきつつある。こういう事態を見ますると、十年はおろか、現実に、アメリカの世界政策というものが、音を立てて崩壊しているじゃないか。こういう世界各国の、アメリカの盟友国である、アメリカが経済的に、あるいはことに軍事的に重要な拠点であるといっている各地が、すべてそういう非常な騒々しい動きとなってきておるというような現状を、総理は一体どう見られるのか。これは明らかに、アメリカ政策というものが行き詰まりにきた、そうしてほんとうに平和競争を求める方向から来る人民の立ち上がりによって、音を立ててくずれつつあるんだということを示しておる。この現状に対して、総理はもう十分に知悉せられ、また、総理の判断を持っていらっしゃると思うわけでありますが、一体どういう工合に見ていらっしゃいますか。
  30. 岸信介

    岸国務大臣 今日世界の大勢におきまして、すべて各地が安定した状況にあるということは、これは言えないと思います。あるいは自由主義の国の中におきましても、不安定の分子がありますし、共産主義の圏内においても、また不安定な状況があることは、まだ世界の全体が安定しておらない、従って、これに対してどうして平和を維持していくかということで、いろいろ米ソの首脳部が相互に訪問を交換し、話し合うというものもありますし、あるいは東西の首脳者の巨頭会談が行なわれるというふうな、いろいろな動きがあることは無視できない。しかしながら、今西村君の言われるように、アメリカの世界政策が何か音を立てて崩壊しているというような表現をされましたけれども、私はそういうふうな見解はとっておりません。いわんや、ヨーロッパの共同市場やあるいは貿易自由連合というようなものが、何かアメリカ政策に対する云々というようなことは認めておりません。ただ、韓国その他の地域におけるところの事柄は、アメリカの政策というよりも、むしろその国の内部の事情から起こっておる、かように見ております。
  31. 西村力弥

    西村(力)委員 世界各国の状況については、私は、そのようにアメリカ政策が行き詰まりにきて、しかも、それが崩壊の過程に今入りつつあるんだということを言うたが、アメリカの国内自体においても、そういうことは起きておるではないか。それは何であるかというと、アメリカのアイゼンハワーは、去る二月、十一人の国家目標委員会というものを設置した、そうしてその委員を指名したということが報ぜられております。その国家目標委員会というものを作る場合に、アイクは、政府考えあるいは行政官庁の考えいかんに絶対にとらわれずに、自由に、総合的に、今後アメリカのとるべき国策というものを策定してもらいたい、こういうことをその委員会に仕事として付託しておる。これは結局、アメリカが今国家目標というものを見失いつつあるというか、それに対する一つの行き詰まりを感じて、この十一人の委員会を作ることによって、何とか世界各国に新しいイメージを持たせる、こういうようなアメリカの国家目標を作らせよう、これを手探りで探らせよう、こういうような趣旨でやったわけなんであります。こういうことを見ますると、アメリカ自体が、今お先に対する確信というものは完全にぐらついてきておるのだ、こういう工合に言わざるを得ないと思うのです。この国家目標委員会の設置及びその目標、それをされた政治的意味、こういうものについてはどうです。総理は御承知だと思うのですが、いかに見ていらっしゃるか、お尋ねをしたい。
  32. 岸信介

    岸国務大臣 これは、常にその国の政治の衝に当たっておる者が、政策を研究し、各方面の良識を集めて一つの問題を検討するということは、当然あることでありまして、それぞれの国の国情によりまして、そういう委員会を、作る場合もありましょうし、自分の党内に置く場合もありましょうし、あるいは政府みずからが何か特殊の機関を置く場合もございましょうし、いろいろな必要に応じてそういうことをするということは、これをもってアメリカ政策の行き詰まりだとか、あるいは崩壊だというふうに断ずることは、私は適当でないと思います。
  33. 西村力弥

    西村(力)委員 これは私は何も直接に調べたわけじゃございませんで、エコノミストという雑誌に載っておることを見まして、今申し上げておるわけなんでございまして、その限度にお聞き願いたいと思うのですが、それによりますると、外交評論家のジョージ・ケナンは何と言っておるか。「歴史的に見た場合、米国には高度に発達した国家としての目的意識というものがない。このような国が、ソ連社会のような目的性のはっきりした、まじめで、規律のとれた社会と競争できるかと聞かれたら、私はノーといわなければならない。」後段はとにかくとしまして、アメリカの国家目的はないのだということをジョージ・ケナン——これは私が言うんじゃない、ジョージ・ケナンがはっきりそういうことを言うておる。あるいはまた、イギリスの科学者バナールというのが、「戦争のない世界」というところで、古い資本主義の国でわれわれが失ったものは目的である、こういうことを指摘しておる。アメリカの社会の欠陥の指摘としまして、慰安と娯楽の大衆消費、公共の利益に奉仕する公党の諸制度の欠如、無秩序な輸送制度、質が量のために犠牲にされる教育制度、これがすべて、現代米国社会の欠陥である、これは国家目的を失ったところからきた病状である、こういうことをジョージ・ケナンが言っておる。そうして、米国憲法制定当時の統一と平和と正義と福祉と自由を目ざして、健全化した活気ある社会の基礎を、この委員会の国家目標策定によって築かなければならないのだ、こういうようなことを言うておる。これはジョージ・ケナンの意見でありまするが、こういうようなところを見まして、普通に、ある国家の大方針が立って、それに基づいて政策をどう持っていくかという政調会の論議ではない。これはもう国の目標の大原則というものを見失って、十一人の人々に委託して、それを何とか手探りでもいいから探り出してもらいたいという、アメリカの苦悩というものを現わしている、こういう工合にいわざるを得ないと思うわけなんです。こういうところから見ましても、この条約が、十一年間アメリカの世界政策を是として、それがまた不変のものとして結んでおるというようなことは、まことに危険しごくであると思うのです。あるいはまた、コンロン報告を見ますると、コンロン報告においては、今後十年間の極東の情勢の変化については、なかなか予測はできないが、間違いない点は、中国、インドというものが、国際的に指導を行なう、指導する役割を担当する重要な発展をするであろう、こういう工合にコンロン報告は書いておる。こういう点から見まして、アメリカ自体の苦悩というもの、自分たちの政策というものに対する疑義、あるいはそれの欠陥の露呈、そういうものから新しい国家目標を求めるべく、今苦悩しておるのだ、こういう工合にいわざるを得ないわけであります。であるから、こういう際に、十一年間の金縛りをするようなこの条約は当を得ないものである、さように断ぜざるを得ないわけですが、総理はいかにお考えになるか。
  34. 岸信介

    岸国務大臣 さっきからお答え申し上げておる通り、この条約は、日本の平和と安全を守るために、どういう形をとることが一番いいかという見解に基づいておるのでございます。私は、別に、アメリカの世界政策の一環を、日本がこれによって負担するとかいうような問題ではないと考えております。われわれは、あくまでも日本の平和と安全をはかるために、日本の置かれている内外の情勢から見まして、日米安保条約の体制は適当であり、必要であり、また、現条約の不合理性を改めることは日本国民意思にかなうゆえんである、かような見地から考えております。別にアメリカの世界政策と結び合わしてこれを論ずる必要はない、かように思います。
  35. 西村力弥

    西村(力)委員 アメリカの世界政策と結び合わせないでこの条約考えられるなどということは、私たちはとても総理の言葉とは思えないのであります。この条約によってはっきり相互防衛援助条約というものが結ばれれば、アメリカの政策というものが影響なく、日本の意志だけで動くという工合考える、そういう言い方というのは、無責任きわまることだと思う。  私は、その問題はその程度にいたしまして、本日は韓国の問題を中心としていろいろ質疑を行なおうとして参ったのでございますから、その韓国問題に入りたいと思うのでございますが、私がこの問題を取り上げる理由は、韓国は日本に近接する地域である、そしてまた、アメリカ極東戦略からいうて、韓国と台湾というものは、非常に重要な位置にあるのだということ、結局韓国に発生するいろいろな軍事的問題が、直接に日米の新安保条約に影響し、その中身を決定するものだ、そういう観点から、これから韓国問題についてお尋ねを進めて参りたいと思うわけなんです。  韓国の問題については、いろいろ国連軍の問題と関連して、あるいは過般の京城の五十万の人民、市民の蜂起、こういうようなことに関連しまして、岡田委員からの質問があったり、ちょこちょこ取り上げられておりまするが、岡田委員があの問題を提起した場合においては、まだ日本政府としては情報を得ていない、こういうようなことでございましたが、その後相当の時日を経過しておりますので、相当的確な情報を得られておると思うわけなんです。かりに韓国と日本との国交が正常化されないにしても、日本が国連加盟の一員として、現実に韓国には国連軍がおって、いつ何どき国連軍の発動がないとも限らない、こういう立場にある。すなわち、日本が国連加盟の一員であるという立場からも、この情報のキャッチというものは当然なされておると思うわけなんですので、まず第一に、過般の南朝鮮におけるあの人民の立ち上がりというものの原因は、一体どこにあるという工合に分析しておられるか。これは総理でも藤山さんでも、どちらでもよろしゅうございますが、お尋ねをしたいと思います。
  36. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 先般起こりました朝鮮の事態の直接の原因が、第二馬山事件にありましたことは、御承知の通りだと思います。その第二馬山事件までに至ります経過としての、大統領選挙におきます事態、それがまず全体として直接の原因であるということは、これは申して差しつかえないと思います。ただ、その背後と申しますか、長い間の李政権に対する、李承晩大統領に対する不満と申しますか、そのやり方等に対する国民のうっせきしておりました感情というものが、そういうような選挙における李政権の行動その他を契機として出てきたことも、これまた事実でございまして、単純に選挙の問題だけから出てきたということでないこと、申すまでもございません。従いまして、今回の事変というものは、長い間の李承晩大統領の施政に対する不満、そして直接の原因としては、今申し上げましたような、選挙を通じての行動に対する不満であったと思います。今回の暴動にあたりまして、共産国側の何らかの働きがあったというような問題は、現実にはなかったのでありまして、全く韓国国内におきまする政治に対する不安が原因であったこと、申すまでもないわけであります。同時に、李承晩政権というものが相当に警察力を用いたことに対する、警察に対する不信というものも、相当国民の間に広まっておったのでありまして、そうしたことが、今回の事変をさらに拡大し、あるいは凄惨な状態のもとに追いやったということになっておると思います。李承晩大統領が辞任をいたしまして以来、御承知の通り、選挙管理内閣と申しますか、暫定的な許政の内閣ができたわけであります。この内閣の顔ぶれは、まず比較的中正と申しますか、あるいは知識的な分子によって構成されたということで見るのが、適当であろうかと思います。この内閣は、申すまでもなく、韓国の憲法に従って、三カ月以内に大統領の選挙をやる選挙管理内閣でございますから、それを完全に果たしますまでの任務でありますので、直ちに、国内あるいは国際的な問題について、積極的に暫定内閣として行動するというふうには考えられないわけでありますが、その傾向から申しまして、従来の李承晩大統領の政策に対して著しく改善を加える方向に進んでおりますことは、申すまでもないことであります。自由主義のもとに政策を運営し、また、国際関係におきましても、特に日本に対しまして、従来の政策を大幅に変更するような考え方になってきておるのではないかと見られます。また、そのこと自体が、韓国におきます国民的な感情でもあること、申すまでもないのでありまして、従って、現在のところ、静穏に新暫定内閣の政策——政策と申しますか、あるいは大統領選挙に対する経過を、韓国民が期待しながら注視をいたしておるというのが、現状ではないかと存じております。
  37. 西村力弥

    西村(力)委員 馬山に起きた第一回の人民の立ち上がりは、原因じゃなくて、契機であると私は思う。まあ、それはともかくとしまして、基礎となるものは、李承晩の十数年にわたる悪政に対する不満だと、こういうことでありますが、これはまあ肯定できると思うのです。その不満の内容をこまかくというか、項目的に分析してみれば、一体どういう点に不満があったか、こういう点について、もう少し詳しくお考えを示していただかなければならぬのじゃないかと思います。
  38. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 御承知の通り、李承晩大統領は、年令も非常に年をとった人であって、いわゆる老人のがんこさというものを持っておったと思います。しかも、その経歴から申しまして、非常に苦労された人でありますので、その間における性格の鍛練と申しますか、そういうような道もあったろうと思います。従って李承晩大統領自身の政策というものが、相当独善的であり、しかも、強圧的であったということは、申すまでもないことだと思います。従って、必ずしも国民信頼をかち得るような点がなかったのであって、しかも、それを維持して参りますために、かなり強権をもって行動してきたことは、御承知の通りだと思います。そういうことに対する長い間の不満というものが勃発してきたということが考えられるのであります。今申し上げたような事情からきておるとわれわれは推察いたしております。
  39. 西村力弥

    西村(力)委員 私は、この不満の内容とするところは、李承晩のファッショ的な恐怖政治、こういうようなことが第一点、それから朝鮮人民の極度の貧窮、あるいはまた独裁政治とつながるが、選挙における完全なる官憲の弾圧に基づく不正選挙、あるいはまた韓国の政治の内容が腐敗暗黒政治である、こういうところにあると思うのですが、その中で、朝鮮の民衆の極度の貧窮ということ、これは一体実情はどうなっておるのか。これはちよこちょこ新聞にも出ておりますが、私もあちこち調べてはみましたけれどもアジア局長でもけっこうですから、一体どういう貧窮の状況になっておるか。朝鮮民衆は四千年来の生活苦、八百年来の物価高、こういうようなことを言うておるということが、いろいろなものに出ておるわけなんです。これではまるで生き地獄だ、こういう工合にいわざるを得ないわけですが、その貧窮の度合いについての特徴的なところを、アジア局長からでもお示しを願いたいと思います。
  40. 伊關佑二郎

    ○伊關政府委員 私もそう具体的な事例は存じておりませんが、生活が逐次非常に苦しくなっておるということは、事実のようでございます。非常な物価騰貴、インフレということが行なわれておるわけであります。ただ、米あたりはみんなが食べておるとか、こじきなどはあまりおらぬというふうな話も聞いておりますけれども、しかし、逐次生活が苦しくなっておるということは、事実のようでございます。
  41. 西村力弥

    西村(力)委員 その程度の答弁は、まあ一つの印象的なことだけしか言わないわけなのでございますが、私の調べたところによりますると、農業生産は日本統治下における六〇%程度に落ちておる。それから春になれば、絶糧農民、食べ物のなくなる農民が三百三十万人もあるのだ、済州島あたり、ああいう島においては、ノリをとって、それに米粒を入れてすすっておるというようなこと、こういうような非常に苦しい状況にあって、そうして、そういう絶糧になるということがわかりながらも、やはり飯米をさいて売っていく、あるいは前借りする、こんな生活を続けておる。あるいは保健状況を見ますると、これは国連の世界保健機構が調べたところ、ウオルトン博士が行って調べたところによりますると、対象人員七千九十八人のうちに、肝臓ジストマになっている者が三一%、肺ジストマが一〇・六%、こういうようなことが出ておる。こういうようなことは何であるかといいますると、極度の貧乏のために、手当たり次第に何でも食っておる、こういうところからこういうジストマ患者が出てきておるのだということ、あるいは就業状況を見ますると、労働可能人口が八百五十万のうち、完全失業が百十三万人——これは全部朝鮮の新聞に出たものを基礎にして調べておるのである。何も当て推量でやっているわけじゃない。不完全就業が二百六十万、合計して三百七十五万。八百五十万の就労人口のうちに三百七十三万人が完全失業及び不完全失業になっておる、こういうようなこと、これを見ましても、いかに朝鮮民衆の貧窮というものがはなはだしいか、四千年来の生活苦、八百年来の物価高、こういうような言葉が出るのも当然ではないかということを、この一例をもっても私たちは言えるわけなんでございますが、それでは、その朝鮮民衆の貧困がそうであるとするならば、そのよってもたらされた韓国の経済政策、こういうものはどうであるか、これについて、これは外務大臣でなくてもけっこうでございますが、アジア局長から一つ答弁を願いたいと思うのです。
  42. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 御承知の通り、韓国は、地理的に見ましても、戦前からもそうでございますけれども、南の方においては、農作物が主体であること、申すまでもないのでありまして、若干の鉱産資源等はございますけれども、資源等については比較的貧弱でございます。同時に、水産資源等もございますが、これとて、やはり今日までの韓国人の技術からいたしますと、必ずしも十分な生産力を活用してないという、生産方面での若干の弱点があること、申すまでもございません。そういう状態におきまして国が建設計画をやって参るということになりますれば、どうしてもある程度苦しい中から貿易を拡大していくということをまずとって参らなければならぬのであります。貿易拡大にあたりましては、やはり隣国である日本との関係を円滑にして参らなければ、韓国自体の経済生活というものが豊富になって参りませんことも、これまた事実でございます。ところが、政治上のいろいろな理由からいたしまして、日本との貿易の打開をはかろうというような問題についても、必ずしも積極的に努力されてきておらぬ点がございます。あるいは、その他の技術的な改善等についての日本との協力関係というものも、今日まで打ち立てられておらぬような状況でありまして、そういうときにおきまして、新興国家みずからの力をもってやって参るということについては、非常に困難だと思います。従って、アメリカのエイドというようなものをあてにしておることが大きな原因になっておろうと思いますけれども、そういうような結果として、物資が少ない上に、今言ったような政策でありますから、おのずからインフレ状態になってきておるということでございまして、それが国民生活を圧迫し、さらに生産活動を循環的に悪くいたしておりますことも、申すまでもないのでありまして、そうした原因が積み重なって、今日の必ずしも十分でない経済的な生活が次第にうん醸されてきた、こういうふうにわれわれは見ております。
  43. 西村力弥

    西村(力)委員 隣国韓国の状況ですから、これは直接安保条約関係がないかのごとくでございますけれども、もう少ししっかりした調査というものを持っておいでにならなければいかぬじゃないか。そういう調査がなければ、あなた方がこれから日韓協会を作って、そうして日韓会談再開後の貿易的な利益を求めようとするような動きだって、決して、朝鮮民衆の実態に触れた、こういう工合にはならないと思うので、この点を少しお尋ねしておるわけですが、それでは、韓国には米、韓の合同経済委員会というものがあるということについては御承知でございますか。
  44. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 アメリカが、韓国の経済的な援助をし、あるいは指導をいたしておりますので、アメリカと韓国との間にその種の委員会が作られまして、そうして韓国経済の再建というものに力をいたしておるということは承知いたしております。
  45. 西村力弥

    西村(力)委員 力をいたしておるということは、表面的にそういう工合に言えると思うのでございまするが、この合同経済委員会には、アメリカ側代表として経済調整官というものがおり、強い権限を持っておる。その権限は、アメリカ側から供給される施設、物資及びその他の援助の購買、積み込み、輸送措置を講じ、その援助の配分及び利用を監督し、そのような援助を管理する、こういうのが主要任務になっており、その下に顧問官というものがずっといて、韓国の経済というものが、この機関によって、この人々によって相当左右されておるのだということ、これは否定できないことであると思うのです。そうしてアメリカの韓国に対する経済政策は、そういう機構を通じて、そしてアメリカの余剰物資というもののはけ口として韓国を見る、しかも、それを援助したり何かしたときの見返り資金というものを軍事的あるいはその他につぎ込んで、それを通じて支配権を高めていく、こういう方向にきておるのだということ、これは日本政府としてはおいそれと承認できないでしょうけれども、これはもうすべて知っておることであると思うのです。これに対しての反論がございましたらばお聞きしたいと思います。
  46. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 韓国に対してアメリカが相当大きな経済援助をいたしておりますことは、事実でございます。また、経済援助をいたします以上は、アメリカとして、その使い方なり何なりについてむだのないように、韓国政府に対して細心の注意を進言いたすことも、当然のことでございます。ことに、新しく独立国家として進んでいこうというような、万事諸制度の完備しておらない状況下においては、そうした指導が行なわれますことは、私は当然だと思います。ただ、アメリカがそういうことで韓国に対して何か非常な圧迫をして、韓国自身のためにならぬような方向に進めているとは、われわれは考えておらぬのでございまして、かりに対日貿易の問題にいたしましても、アメリカ自身が、李承晩の日本に対する態度というものに対して、必ずしもそれを全幅承認をいたしているわけではございません。
  47. 西村力弥

    西村(力)委員 とにかく、アメリカが二十一億ドル、数千万円を韓国につぎ込んでおるということは、記録にも出ております。しかしながら、それほどの金をつぎ込んで、なおかつ、人民の生活というものは極端に貧窮化しておる。農業生産が六〇%であるばかりじゃなく、工業生産においても、日本の統治下にある時代の六〇%程度だということを見ますると、金をつぎ込んだけれども、韓国の人民の幸福は一つももたらされない、産業は一つも育成されない、こういうことが現状として現われているわけです。そうするならば、やはりアメリカというのは、援助も何も——今私が申し上げましたように、余剰の物資を韓国に与え、それの見返り資金をあらぬ方に使う、すなわち、軍事という方向に使う、こういうことを主とする。すなわち、韓国の国内産業というものに対しては一顧だも与えずに、ただアメリカの余剰物資の消費市場として、韓国に対してそういう政策をとっておるんだ、こういうことは、やはり否定できないと思うわけなんです。それならば、これほどの援助をやりながら、なぜ朝鮮の産業が興らず、韓国の人民の生活というものがだんだんと貧窮化していくのか、そのわけはどこにあると藤山さんはお考えですか。
  48. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 アメリカが韓国を経済的に援助いたします場合に、それが有効適切に援助が使われまして、そして韓国の経済が成長し、安定していくことを、アメリカが所期していることは当然でございます。それでなければ、何年つぎ込んでもつぎ込んだだけになりますから、アメリカとしては、それが効果的に働くように指導をいたしておること、むろんでございます。ただ、今申し上げましたように、やはりこの点は、アメリカ自身が悪いということだけではないのでありまして、韓国人自身が、自分の国の建設というものに対して、もっともっと精進をしていかなければならぬ、また、あるいは政府のとりました経済政策等についても、考慮をする必要があろうと思います。従いまして、アメリカとしては、それだけの金を永久につぎ込んでいくということは考えないで、そのつぎ込んだものが逐次効果を上げて、そうして、だんだんつぎ込んでいかなくてもいいようになっていくことを期して援助していることは当然のことでございますから、そういう意味において、われわれとしては、やはり全体的にこうした問題については考えて参らなければならぬのでありまして、何かアメリカだけが、そういうことで非常に自分の勝手気ままなことをしているというふうには、われわれ考えておりません。
  49. 西村力弥

    西村(力)委員 そう考えられないでしょうけれども、二十億数千万の金をつぎ込んでそうやっておきながら、産業はだんだんと衰微していく。日本治下における水準よりも、六〇%程度以下に低下している。朝鮮の人民の困窮つがますますはなはだしくなるということであるとするならば、アメリカの善意というものは生かされない。生かされないことは、一つは李承晩政権のやり方が悪いということもあるかもしれないが、アメリカ自体考えている経済援助の形というものが、援助じゃなくて、支配だということを前提としている、こういう工合に、私たちはやはり言わざるを得ないと思うわけであります。もちろん、李承晩のやり方が、ただいたずらに反共北進武力統一、こういうことで人民を無理に掌握してやっておるというような点、あるいは恐怖政治、あるいは腐敗政治——今回の五月何日かの週刊新潮には、柳大使が、八十億ですかの貯金をしたというようなことが出ておりますが、あれはそのまますべて事実だなんて私は言うわけじゃないけれども、端的にああいう工合に現われている朝鮮内部の政治の腐敗というものは、極端なものであろうと思う。しかし、韓国に米国がそれだけの金をつぎ込んでいくならば、大目標は、韓国の産業を発展させる、民生を向上させる、そのことによってほんとうに韓国というものの力を高めて、そうしてアメリカの欲する反共軍事拠点として不動のものにする、こういう方向をとるのは当然だろうと思うのです。ところが、事は全く反対だから、これは一がいに、李承晩の腐敗だとだけ断ずるようなことはいけない。やはり私が申しましたように、韓国に対しては、余剰物資のはけ口、その金でひもつきの軍事支出、そういうところにつぎ込んでいくのだというアメリカの基本政策というものは、やはり一応これを指摘しなければならないじゃないか、こう思うのです。  ところで、それはそれにしまして、今度の日米安全保障条約の第二条には日米の経済協力の条項がうたわれておりますが、この経済協力の条項においても、韓国に対するアメリカの経済政策と同じような形は現われないにしても、基礎に流れる考え方というものは、あの条約条項からくる対日経済政策においても、これはやはり同性質の方向をたどるのではなかろうか、私はそれを非常に心配している。いかにも、その富裕なる国アメリカと提携していけば、それよりも国力の弱い日本が、経済的に非常に利するがごとく幻想を与えようとしておるけれども、この韓国に対するアメリカの経済政策を、見る場合において、日本に対しても同じ性質の対日経済政策というものがこれから強行される。現にされつつあるのだということ、そういうことを私たちははっきり見なければならないわけなんです。その理由としましては、この間、昨年の十一月にビジネス・インターナショナルという会社のあっせんで来ました投資団の円卓会議の記録を見ましても、何と言っておるか。日本は、アメリカにとっては最も有望なる市場だと言っておる。しかも、日本の各産業における株の取得というか、投資というか、その制限というものの一切を除去してもらわなければならぬ。また、非居住者円の本国送還というか、そういう利益の本国送還というものの制限の一切を払ってもらわなければならぬ。これからまたアメリカがかりに投資をした場合において、その資金が効率的に運用されるためには、徹底的な合理化をしなければいかぬ。そのためには、太田薫なんというのは一番けしからぬなんということを、名前を出して書いておるじゃないか。労働組合を弾圧して、徹底的な合理化をして、アメリカの投資をした金が、効率的に運用されるようにしなければならぬというようなことを書いてある。あそこに、はっきり現われてきているじゃないですか。こういうことが、私は、あの第二条において最も警戒しなければならぬ点であるということを考えておるのでございますが、この第二条の件に関しましては、私はしろうとでありますので、今後適任者が、政府の所見に対する質疑を行なうことになっておりますから、この程度にとどめます。  ただ、そこで私は、この条約の第十条の期限十年という問題について、経済的観点から一つ問題にせざるを得ないじゃないか、こういう工合考えるのです。そのわけはなぜかといいますと、私がかつて香港に参りましたときに、あそこの某物産の支店長といろいろ話をいたしました。香港は、あのイギリスの手から租借の期限が切れると同時に本国に帰るであろう、こういうことです。そのとき言うには、香港における投資というものは、やはり最低十年ということを見越していかないと、それ以上の投資というものはほとんど意味がない。これから香港が、十年後には必ず帰るであろうから、まずここ二、三年の間は、十年をめどとして香港において事業を始めているのだ。それは最初の五年間において完全なる償却をやり、あとの五年間においてもうける、こういう見込みを立てて投資をするのだ。その投資の最低限はやはり十年だ、こういうようなことを考えておるのだということを聞きました。それから言いますると、この期限十年というものは、やはり今アメリカ日本に対して行なおうとする経済投資や何かに対して、十年間のこの軍事同盟の金縛りのもとにおいて、不安なくそういう経済進出をはかろうとする、こういう意味を第十条は持っておるのだ、こういう解釈をはっきり私たちはやはり一応考えるということが必要である、こういう工合に私は思うのです。この件に関しましては、あなた方は何か笑われておりまするが、十年という期限をアメリカが最後の線として確保した、その理由というのは、軍事的意味以上に、そういう経済的な含みを持っておるのだ、これを考えるのですが、藤山さん、私の申したことに対する御見解はどうですか。
  50. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 この経済条項につきましては、われわれ、両国間の貿易の拡大あるいは両国間の経済政策その他について緊密な連絡をとっていくことは、基本的な日米関係基礎でございますから、当然のことだと思います。何か貿易・為替の問題について、それが自由になることが、安保条約からきているようなお説でございますけれども、おそらく、自由主義を信奉して自由主義経済を立てておりますすべての国というものは、やはり戦争中というような時代を除きますれば、為替もしくは貿易の自由化ということを基本といたしておることは、申すまでもないのでありまして、その基本に立って、自由主義経済を信奉しておる国々はやっております。従って、ヨーロッパにおきましても、一昨年暮れすでに為替の自由化を試み、やっておる。しかし、為替の自由化あるいは経済の自由化、貿易の自由化をやることが、何か他国からの侵略を受けるとか、あるいは他国の支配を受けるとかいうようなことは、全く見当違いの議論ではないかと私は思います。そういうことによって何かあれするというならば、日本人の経済の能力というものをあまりに卑下して考え過ぎるのではないかと思うのでありまして、われわれは、対米貿易にいたしましても、半分しか輸出できないものを、今日ではすでに同じ金額だけあるいはそれ以上に輸出するだけの能力を持ってきました。それらのことは、日本国民の努力と技術的な改善によって今日達成されてきておるのでありまして、われわれは、日本人のそういう経済的能力というものをあまりに卑屈に考えて、何かアメリカ人と一緒に仕事をすれば、すぐにアメリカ人から支配されてしまう、あるいはアメリカの資本が入ってくれば、それにすぐ日本の産業というものが全部コントロールされる、あるいはアメリカの技術というものに全部巻き込まれるというようなことを考えることは、私は、現在の経済人から見て、適当ではないというふうに考えております。従って、貿易の自由化にいたしましても、為替の自由化にいたしましても、社会主義を信奉しておる国は別でございますけれども、自由主義を信奉しておる国としては、戦時中あるいは特殊の経済上の事情のない限りにおいては、そういう方向に向かっていくことは、これは当然のことでありまして、それは必ずしも他国の支配を受けるとか、経済的の支配を受けるとかいうことではございません。
  51. 西村力弥

    西村(力)委員 藤山さん、経済問題になると生き生きして参りますが、私の聞かんとするところは、この日米安保条約によって日本を軍事的に金縛りにした、そういう状況下において、経済的な進出をはかろうとする意味はないのかということなのです。これを私たちは一番懸念する。何といっても、日本の大陸進出でも何でも、軍隊を先頭にしてやったときの商売くらいもうかることはない、楽なことはないということは、これはもうはっきりしておる。これを軍事的金縛りに動けないものにしておいて、そうして安心して経済的な進出を日本にはかってくる、こういう意味で、この十年というものを最低のものとして米国が主張したのだ、こういう私の観測を、あなたは、そんなことはないというのか、いささかはやはりそういうことがあるというのか、その点を御質問しておる。
  52. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 アメリカも、今回の安保条約を作ります上において、日本の平和と安定ということを所期しております。従いまして、安保条約によって日本の平和と安定が守られるということでありますれば、経済交流がその期間安定してくるということも、それは当然のことでありまして、決してそれを否定するものではございません。しかしながら、何か先ほどお話しのように、借款が十年の期限だから、条約の期限を十年にするというようなことを、われわれは考えておるわけではございません。借款が十年といっても、今年全部の借款ができるわけはないのでありまして、五年後にできるか、八年後にできるか、わからぬわけであります。借款そのものの期限が十年が最低だから、それを十年にしたというようなことを、考えておるわけではございません。
  53. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時七分休憩      ————◇—————     午後一時五十三分開議
  54. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、お諮りいたします。今後の質疑に際し、参考人として日本放送協会会長及び同専務理事に出席を求めたいと思いますが、これに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  55. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 御異議がないと認め、さよう取り計らいます。     —————————————
  56. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 質疑を続行いたします。西村力弥君。
  57. 西村力弥

    西村(力)委員 午前中に引き続いて質疑を続行したいと思ったのでありますが、たまたま、昨日来飛鳥田委員によってその重要性を指摘されておりましたU2の問題につきまして、ソビエトの首相であるフルシチョフが、演説したその内容が報道されておりますが、これはまことに重大なる問題であると思いますので、まず、この問題について、政府見解と決意というものを聞きただしておかなければならない、こう考えるのでございます。  新聞報道によりますれば、昨夜モスクワのチェコ大使館に開かれたチェコの解放十五周年記念レセプションで、フルシチョフは次のような演説をしておる。それは「もしいくつかの国々が今後もソ連領を侵す飛行機の発進を許すならば、ソ連はそれらの国の発進基地を攻撃するだろう。」こういう演説をやっております。こういうことは、私たちの絶対に避けなければならないことであるし、この演説が現実化するようなことは、私たちはいかなる努力を払っても避けなければならない、こういう工合考えるのでございます。しかし、U2が二千キロ近くもソ連領内に侵入をして、軍事的な地図の作成の観測をやっておる。しかも、過去三年以上にわたってこの行動を繰り返してきたということに対するソ連の憤激というものは、やはりこういうような形で現われてきたのだということを考えますときに、(発言する者あり)あながち、今不規則発言があったようにおどかしである、こう一蹴するというようなことは当を得ていない、こう思います。それでこのことにつきまして、きのう来の論議を聞きますると、日本にあるU2の三機は、気象観測、台風に備える気象観測、そういうようなことを主にしておるのだということを政府側は最後まで突っぱっておりましたが、けさの新聞によりますと、ボールドウイン氏——この人は有名なる外交評論家だと思うのでありますが、ニューヨーク・タイムスにどう書いてある。ごらんになられた方は多いはずでありますが、「ソ連で撃墜されたと同じスパイ目的の飛行機は、日本からも発進している。」はっきりさように言っておりますし、「U2計画は恐らくワシントンから周到な指示を受けたものだ。NASA(米政府航空宇宙局)とロッキード航空機会社は恐らくこの中央調報局の活動を偽装する隠れミノとして名を貸していたものとみられる」こういうことを言っておりまして、日本から発進しているU2も、はっきりスパイ行為、スパイ目的をもって行動しているのだということを彼は指摘しておるわけなんでございます。それでありますので、私は総理にただしたいことは、こういう昨日来の答弁のままに放置してそれで十全なりと言えるかどうか。しかも、それに引続いてソ連の国防相は何と言っておるか。「われわれは自己の領土と、飛行場を、ソ連に向けて飛ぶ飛行機に提供している犯罪の共犯者である諸国に警告したい。現在の技術はきわめて完全で、われわれは侵入者がどの飛行場から飛び立つかをはっきり知ることができる。」こういうことを言っておりますし、今後日本国内にU2機が存在し、政府答弁すると異なる、彼らが米の当局から指示を与えられておるスパイ行動に出た、こういうことが発生した場合に、日本がその攻撃を受ける危険性というものは、非常に重大な可能性として私たち考えざるを得ないわけなんでございますので、私たちは、きのう来のあの気象観測云々の答弁のごまかしの一切を捨てて、この際、日本国内からU2機を全部撤去してもらわなければならないという強い意思を米当局に申し入れる、こういう工合にいかなければならないと思いますが、総理は、このフルシチョフ演説に関係しまして、U2問題に対する態度、どういう工合にいたそうとするか、はっきりとその点についてお聞かせを願いたいと思う。
  58. 岸信介

    岸国務大臣 その問題につきましては、昨日もはっきりと申し上げてあります。私は、アメリカのこれらの飛行機が、日本基地を使用して外国の領空を侵すというようなことがあるならば、これは断固としてアメリカに対して抗議して、この事態をなくするということを申しております。従って、この点に関しましては、私は昨日もはっきりした私の決意を表明をいたしておりますから、それをなお、あらためて申し上げるだけであります。
  59. 西村力弥

    西村(力)委員 それは総理の決意ではないと私は思う。決意という工合には受け取れない。なぜかといいますると、領空侵犯の事実があると認めた場合は撤退を求めると、こう言うておるが、事実日本から発進しているU2というのは、同じ目的をもって行動するということは、これは世界のだれもが、アメリカのボールドウイン自身認めていることなんだ。そうすれば、このフルシチョフ言明によって、このまま推移して領空侵犯したんだなあと知るときには、この不幸なる事態がそのまま現実のものとなるならば、われわれの上に報復攻撃がきたときに、初めて、ああU2は領空侵犯をしたんだなあと気がつかざるを得ない。そんなことになってから、お帰り下さいなんて言ったって、それはあとの祭りというものだ。そういうようなことで、今現実に、こういう世界の、あるいは米ソの関係が進展をしており、緊張の度を非常に強めてきておるとき、このときに、侵犯したという事実があるならば撤去してもらおうというようなことは、今の答弁としては、絶対にこれは受け取れない。侵犯しておるか否かというようなことは、私たちが攻撃を受けたときに初めて知る、こういうことになるわけなんです。そういう答弁で、日本国民はだれが納得するか。この際本気になって、一つ日本の国土と国民を守るためには、積極的な意思表示行動というものが、日本政府によってとられるべきであると私は思う。どうです。
  60. 岸信介

    岸国務大臣 ソ連も国連の忠実なる一員だと私は考えます。他国のそういうスパイ行為で、領空を侵したということでもって、その基地に対して武力攻撃を加えるということは、国連憲章が禁止しておることであります。私は、ソ連がそういう国連のメンバーとして……(発言する者多く、聴取不能)考えません。従って、そういうフルシチョフの言明をそのままソ連が実行するものとは、私は信じません。しこうして、このU2の使命については、かねて申し上げておる通り米国側においては、責任を持って、気象観測以外のことには用いていないということを明瞭にいたしております。また、将来そういう事実があるとするならば、私は、先ほど来申し上げている通り日本政府としては、これは日本基地を提供しておる趣旨に反しますから、これに対して、その事実をなくするような適当な措置をとるということを申し上げておるのであります。
  61. 西村力弥

    西村(力)委員 それは私たちも、ソ連が軽々に報復攻撃をするであろうと、は思わない。そういうようなことがあることを、私たちは絶対に避けなければならないという、こういう前提に立って言っておるのです。であるから、ソビエトは国連加入国の一員として、そういう不法なことはやらないであるだろうというようなことではなくて、こういう強硬声明に至るその根本を生み出した原因というもの、これを除くという方向にいかなければ、そういう危険性というものは、絶対に排除することはできないわけです。きょう配付になったU2機に関する国務省発表によりますると、「合法的な国防手段としてのこの種の活動は、自由世界に比してソ連が行なっている過度の秘密のためにその必要性が増大している。」と言って、自分たちの、領域深く二千キロもウラル山脈方までも入ることを合法化している。こういうところに、このフルシチョフ首相の強硬言明というものが生まれたのだ、そこから生み出されておるのだ。こういうことを考えまして、それと同じ機種であり、同じ指令を受けているとアメリカ新聞記者さえもはっきり指摘しておるU2機が、日本にあるというようなことは、やっぱりこれはただごとではない。だから私たちは、岸総理が、ソ連はそういうばかなことをやらないだろうというようなことの言いわけではなく、無理な安心感ではなく、はっきりと、こういうことになる危険性を除去するために、日本国意思として、U2機が日本国内から撤去することを望むのだということ、そういう正式な意思表示米国にやって何ら差しつかえないし、また、それは当然日本国民に対する総理の責任であると私は思う。どうです。
  62. 岸信介

    岸国務大臣 問題は、西村君の質問の前提をなしております——米国の一記者が言ったことが事実であるという前提に立っておりますが、このU2機は、過去において気象観測に従事しており、日本における伊勢湾台風等におきましても、貴重なる資料を提供いたしております。従って、私は、今の状態において、気象観測に従事しておるところの飛行機に対して、こういうようなうわさを基礎として撤退を求めるということは適当でない、あくまでも責任のあるアメリカ政府日本政府との間の交渉によってこれを処置すべきものであって、一々そういうことに対する風評であるとか、あるいは批判であるとかいうものに基づいて、これに対して処置すべきものではない、かように考えております。
  63. 西村力弥

    西村(力)委員 あなたの言われることを聞いておりますると、やはりアメリカ軍は、日本におけるU2機というのは、気象観測以外の行動はしないのだ、領空侵犯はしないのだ、スパイ行動はしないのだ、こういうアメリカ側の回答をそのままうのみにしておる。こういうような態度であるから、この安保審議を通じてどういうことがいわれておるか。安保条約は、事前協議といっても何といっても、ハロー・ハローと呼びかけられれば、イエス・イエス、中身は聞かなくてもよろしい、こういうような工合日本政府が出る、こういう条約なんだ、これは巷間のおもしろい話であります。しかも、詳しくは知りませんが、昨日の自民党の代議士会において、某氏がどういうことを言ったか。U機2がつかまったのは、あれは選挙違反と同じようで、たくさんあるのだけれども、見つかればあれは不幸なんだ、こういうようなことを発言したように聞いておるのですが、この発言の裏側には、やはりみんなそうやっているのだけれども、たまたま見つかったのは、あれは不幸なんだ、こういう工合にはっきり考えておるということを示しておる。私は、そういう工合にあの記事を見ながら考えておるのであります。重ねて申しますが、アメリカのU2機が日本から行動を起こして、絶対に気象観測以外のスパイ的行動、領空侵犯というものを今までもやらないし、今後もやらないんだという保証がどこにあるのか。アメリカがそう言うからそうだという以外にはないんでしょう。そういうことであるから、結論づければ、私たちは、アメリカが私たちに言うたことを裏切ってスパイ行動、領空侵犯をやったんだということを知るときには、すでに報復攻撃がくるんだ、きたときに初めて知るんだ、こういわざるを得ないわけです。ですから、私は、今の総理答弁は、とうてい日本国総理答弁としてはすなおに受け取るわけに参らないのであります。こういうフルシチョフの言明を、私は正しいと言うわけでもない、こういう現実を好むわけでも何でもない。しかし、そういう国際的な緊張が、現実の形においてわれわれの目の前にきた場合において、私たちがこれを避けようとする、日本国民すべての者がこれを避けようとする気持、この気持を生かす総理の努力が、領空侵犯の事実があれば帰ってもらおうと言うだけであっては、これは国民だれ一人納得しないであろうと私は思う。今ほんとうに決意して、こういう事態にあたって、U2機というものの存在は、日本国民の安全にとって東大なる危険を予想していかなければならないものであるというようなことから、強固なる意思をもってこの撤去方を申し入れる、こういう方向にいかなければならない、それは日本総理として当然の責務であると私は思う。再度一つ総理の決意というものを聞かしてもらいたい。
  64. 岸信介

    岸国務大臣 何回答弁をいたしましても、先ほど答弁を申し上げた通り私は考えております。
  65. 西村力弥

    西村(力)委員 同じであるということであるとするならば、あなたがこの日本の国の政治を持っておる限り、私たちは、この不幸なる事態が現実になったときに、初めてU2が領空侵犯をやったんだということを知り、アメリカが領空侵犯をしたことが事実になったら、今度は岸総理が帰ってもらうということをアメリカに申し入れをするだろう、こんなような、まるでのんききわまる方法をとらざるを得ないということになってしまうわけなんですが、それ以上の答弁を求めてもしようがありませんから、しからば、帰ってもらわないまでも、アメリカが言う気象観測以外のことはやらないんだということを実証する、われわれの手でそれを実際に検討する、これは事実であるということを確認する、そういう方法について新しい手段をとられることは考えておりませんか。
  66. 岸信介

    岸国務大臣 この問題に関しましては、昨日来お答えを申し上げました通り、われわれが非常に深い関心を持っておることでありまして、従って、この事実を調査するにつきましても、われわれは重大な関心を持っておることとして、真剣な調査をアメリカ側に問い合わせいたして、その責任ある回答に基づいて先ほど来答弁しておる通りでございまして、私たちは、U2が気象観測以外の仕事に従事しておるということは認めておりません。従って、先ほど来お答えを申し上げた通り考えております。
  67. 西村力弥

    西村(力)委員 やはり、それは事実を確認する手段はない、その意思もない、ただ、アメリカ側の言い方そのものを信ずる以外にはない、そういう言い方にすぎない。これでは帰ってもらうということも申し出しない、しかも、U2というものは絶対スパイ活動、領空侵犯やなんかをやらないのだということを、みずからの努力によって、力によってこれを確認するという努力を一切やらないのでは、総理のこの問題に対する態度というものは、何もないということになる。何ものもないということなんである。ただ、日本国民が深甚なる注意を払っているからという意思アメリカ側に伝える、これだけにすぎないということになってしまう。こういうことで日本の安全というものが守られるか、日本国民の生命というものが守られるか、この問題は絶対に了解ができない。できないし、総理の今の答弁は、何らの誠意を持っていないということを非常に遺憾に思わざるを得ないのであります。それでは、やはり巷間に伝わっているハロー・イエス・イエスということ以外にはないではないか。無条件イエス・イエス、これ以上総理は新しい手段、方法をとる考えはないかどうか、これは、くどいようでございますけれども、私は納得できないから、やはり総理考えをもう一度——考えというよりも、この段階において、一国の総理としての決意というものを聞きたい。はっきり示してもらいたい。
  68. 岸信介

    岸国務大臣 私は、ただ単に、アメリカの言うことに対して、それをただうのみにしているということではございません。もちろん、この問題に関しては、先ほど来申し上げている通り、われわれとしても、非常に強い関心を持っている問題でありますから、アメリカ側に対して、彼らの言明しているところの気象通報以外の業務に従事するものでないということについての十分な保証をアメリカ側に要求すべきことは当然だと思っております。そういう意味において、政府として、アメリカ政府に対してわれわれの考えを十分述べていき、そうして、アメリカ側のこれに対する責任のある言明をとることは当然であると思います。これらのことにつきましては、十分日本政府としてなすべきことはやっていくつもりでございます。
  69. 西村力弥

    西村(力)委員 それでは、赤城防衛庁長官に聞きますが、昨年の十二月、U2の問題について、飛鳥田委員が本会議において事実を示してその危険性というものを指摘した。その後、具体的に現場にあった人々に対する調査がなされていない。また、きのうその問題が提起せられましたが、きのうの問題によって、新聞の報ずるところ、われわれの目で見たところによると、政府側はまことにろうばいしごくということを書いております。しかし、ろうばいするかしないかはともかくといたしまして、あれだけの問題がここにはっきりした限り、きのうでも、あるいはきょうにでも、赤城長官意思によって、防衛大学の教官その他列挙したそれらの人々に対して直ちに調査する、こういうような工合に指令が出ていなければならないと思うのです。自民党さんに対して、私たちが、政府アメリカの報告というものを信じて、それ以上に出ないんだ、それじゃ、われわれが証人を呼んでほんとうのところを調べようじゃないかと提案すると、そういうことは絶対まかりならぬといって一蹴してくる。こういうようなことでは、一体、具体的にこのU2の問題に対してスパイ活動その他をやる危険性がないということを実証しよう、また、危険であるならあるで、それを見出そうとする具体的な努力というものは一切なされていないんだということ、こういうことに私たちはなるものだと思うのです。赤城さん、どうですか、あの問題について直ちに実態究明のための行動を起こしておりますか。
  70. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 一般の、防衛庁関係でない人を調べるということは、人権じゅうりんだとかなんとか言われますから、慎重に扱っていますが、防衛庁関係の者だけには、さっそく調査をいたしました。防大助教授山田和英、こういう人を昨日指摘されましたので、呼んで聞いてみました。その結果を申し上げます。  当日、すなわち九月二十四日ですが、午後、日本グライダークラブ、これは山田所属であります、及び新日本グライダー研究会、これは清水所属でありますが、練習をしておったわけでございます。そうして、練習しているところへ、飛んできたものがありましたので、珍しいグライダーが来る、こう言う者があって、上空を見ていると、一千フィートから二千フィートのところから、U2がエンジンを停止して旋回しまして、タクシー・ウエーの端に翼の端を触れて停止した。それから、不時着の際は、現場に女、子供二十人から三十人がおりまして、不時着によって自転車を破壊した。それから、外部から見たところ、特別の装置等は見ることはできなかった。  その次に、不時着後二、三分ぐらいで、ヘリコプターのベルが飛んできまして、不時着機のすぐそばに着陸した。二、三人の私服の米人がおりてきた。これらの米人はピストルを携行してはいなかった。そこで、パイロットは、そのベル到着前に、風防をあけて立ち上がって、手を振って、寄るなという身ぶりをしていた。パイロットがピストルを持っていたかどうかは、これは不明であります。そこで、そのベル機からおりた米人とパイロットは会話をしたあと、その飛行機を警戒して、その際、威嚇するようなことはなかった。見物はほとんど女、子供で、遠巻きに見物していただけであった。  それから、その後五、六分で、これもヘリコプターでありますが、S21が飛んできまして、四、五人の私服がおりてきた。前記人員とともに飛行機を包囲して、身ぶりで写真撮影を禁止した。それから警官が到着して、これは制服で、時刻についてはよく記憶していないと言っております。警官が到着しまして、警官は現場で見ているだけで、先方とは何の交渉もなかった。自転車をこわされた者が、かけ合ってくれと言っていたことは事実である。それから、その後、さらにジープが到着した。制服かどうかは覚えていないが、MPではなかった。  それから、グライダーの練習をやめて事務所に引き揚げた際、先方が通訳を連れてきて、不時着時の状況の証言を求められ、この当の山田、それから伊藤が証言をしたが、その際、おどかし等のことはなかった。それから、暗くなってから自動車で発電機を持ってきまして、事故機を照らして警戒をしておった、こういうことでございます。山田という助教授は、防衛大学で車両工学を担当している助教授でございます。  それからなお、お尋ねがありました、調達庁の者があとからかけつけたんじゃないか。これに対しても調査いたしました。横浜調達局の、調査に当たった職員は、技官の栗原文次郎と事務官の井上秀雄でありますが、横浜調達局の職員は、不時着事故の連絡を受けて現地にかけつけ、当時、現地では機体を分解してトレーラーに積載中であったが、被害の調査については、米軍は協力的であり、職務の遂行には何ら支障はなかった。従いまして、調達局の職員が追い払われたような事実はない、こういう具体的な調査でございます。
  71. 西村力弥

    西村(力)委員 おくればせながら調査されたことに対しては、私たちは好意を持つのでありまするけれども、しかしながら、防衛庁の大学の教官はあなたの部下です。そういうような関係においてのみ調べられたものだけが唯一無二の証言という工合には、私たちには考えられない。そこで、私も本日の問題に入っていきたいので、この問題はここで打ち切りにしたいと思うが、委員長に対して、きのう飛鳥田委員が要求したように、事はもうまことにぎりぎりの、私たちに対する危険が迫っておる問題までに進展をしてきたという状況下において、やはりその他の目撃者をも当委員会に呼んで、証人として陳述を求める、そういうことになれば、昨日来の飛鳥田君の指摘された危険性というもの、こういうことが明確になるものと思うし、また明確にならしめなければならない、こう考えるので、証人喚問のことについて、私も動議として強くこれの実現方を要求しておきます。
  72. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 西村君にお答えいたしますが、この飛鳥田君の要求の証人の問題は、西村自身御承知の通り、現在理事会で懇談中でありますから、この結論を待って適当に善処いたします。
  73. 西村力弥

    西村(力)委員 それでは、本日の問題に入りまするが、午前中は、韓国民衆の経済的な貧窮ということ、こういうことがどこからきているかということ、これは李承晩の圧政、腐敗政治、それとともに、アメリカの対韓経済政策というものが基礎になっているんだということを申し上げた。しかし、事は、経済政策だけでそういうものが生み出される、こういう工合考えるわけには参らないと思う。それはどういうことかというと、やっぱりその次に問題になるのは、韓国における過度の軍事増強ということ、これが韓国の国民の貧困というものをもたらしている大きなものの一つであるということ、こういう工合に言わなきゃならぬと思うのでございまするが、防衛庁としましては、隣国韓国の軍事事情というものについても相当詳しく検討せられておると思うのでございまするが、防衛庁の知っておる韓国の軍事的な情勢というものの概略についてここでお知らせを願いたい。
  74. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 政府委員からお答えさせます。
  75. 加藤陽三

    ○加藤(陽)政府委員 韓国の軍事情勢でございますが、現在韓国が持っておりますと考えられまする軍備は、陸軍十九個師団、約六十万人、海軍が約三万数千トン、空軍が約二百機くらいでございます。主として二十八度線に主力を集中して重点を置いておる配備になっております。
  76. 西村力弥

    西村(力)委員 そのほかに、予備兵力というものがあるはずでございます。
  77. 加藤陽三

    ○加藤(陽)政府委員 今の十九個師団というのは、第一軍と第二軍とに分かれておりまして、第一軍というのが主力の部隊でございまして、これが三十八度線を中心として配備になっております。第二軍というのが予備的な軍隊でございまして、これがその後方に配置になっておるという状態でございます。
  78. 西村力弥

    西村(力)委員 それから韓国の軍隊は、主として三十八度線周辺に集結されておるということでありまするが、それはお見込み違いではないか。韓国全土にわたって軍事基地があります。もちろん、三十八度線には相当重点が置かれておることは間違いないが、全土にわたって配置されておるということ、そういうようなことをお知りでございますか。
  79. 加藤陽三

    ○加藤(陽)政府委員 第一線部隊の重点が三十八度線に向かっておるということを申したのでありまして、第二軍の予備軍的なものは、その後方全土にわたって配置されておるわけでございます。
  80. 西村力弥

    西村(力)委員 合計しますと、予備兵力を合わせますと、大体百万の軍隊を擁しておる。韓国の人口は二千数百万、そういう中に、百万の軍隊を擁するということ、これが経済的にすばらしい影響を与えるということは、これは当然言えると思うのでございまするが、予算面においては、韓国の軍事費というのはどういう比率を占めておるか。
  81. 伊關佑二郎

    ○伊關政府委員 年によって違っておりますが、大体五十八年度は三七%になっております。それから五十七年度は三四%というふうな数字になっております。
  82. 西村力弥

    西村(力)委員 ここで重要なこととして私が指摘したいのは、五十五年には予算の五一%、五十四年は、朝鮮動乱の収拾のためにも必要があったためか、七三%の軍事支出をやっておる。五十七年が三四%、五十八年が三七%というのは、私の調査と同じでありますが、その軍事費の大部分は、軍人の俸給と軍人の給食費に使われておる、こういうことで、他の装備は他にたよっておるんだというようなこと、こういう点は防衛庁お認めになりますか。
  83. 加藤陽三

    ○加藤(陽)政府委員 これは確実には承知いたしておりませんが、韓国のいわゆる軍需産業でありますか、そういう方面の能力からいたしまして、主要なる軍の装備品というものは生産できないだろうと思います。
  84. 西村力弥

    西村(力)委員 ほとんど軍人俸給と軍人給食費にその予算が使われまして、装備は一切アメリカ依存というふうなこと、ほとんどアメリカ依存という方向をとっておるんだということ、こういうことは、はっきり私たちは知っていかなければならない。われわれ日本の自衛隊においても、それはほとんどとは言わないにしても、装備の重点というものはアメリカに依存しておるということ、アメリカの供与が確定しなければ、日本の五カ年計画も何も実際に進行しないということ、こういうようなことは、やはり対比して考えていかなければならない、こう思うのでございます。そのほかに、米軍の駐留は大体五、六万だろう、こう思うのですが、その米軍の装備は原子兵器によって装備されつつある、現実にそうなっておるんだということ、これをお認めになりますか。
  85. 加藤陽三

    ○加藤(陽)政府委員 韓国におりまする米軍は陸軍が主でございまして、これは米国の第八軍、二個師団をもって編成をしておる部隊でございます。そのほかにも、軍直轄の部隊が相当おるようでございます。第八軍の装備につきましては、大体他の師団の装備と同様でございますが、特に私ども、いわゆる核兵器でございますか、そういう点についての発表を注意深く見守っておりますると、マタドールという兵器を配置しておるようでございます。そのほかにも、いわゆる原子砲——二百八十ミリの原子砲というようなものも韓国に持っていっておるように発表しておったと思います。
  86. 西村力弥

    西村(力)委員 マタドール、あるいは何ミリでしたか、二百八十ミリ原子砲、こういうものを入れておるほかに、オネスト・ジョンというものも入れておるということは、これは発表によってはっきりしておるわけなんでございまするが、これはどこに配備されておりますか。
  87. 加藤陽三

    ○加藤(陽)政府委員 その点は承知いたしておりません。
  88. 西村力弥

    西村(力)委員 アメリカ軍の発表にもあるように、三十八度線近くの春川というところに司令部を置いて、三十八度線にこれが配置されておるということ、これは米軍の発表によってはっきりしておるわけなんであります。こういう工合に、二千万の人口に百万の軍隊を擁し、それにアメリカ軍が原子兵器の装備をやって、三十八度線にこれを配備しておる。ことにマタドールなんというのは、御承知のように八百キロも飛ぶ飛翔体なわけでありまして、こういうところからいいまして、この韓国における軍事的な情勢というものは、まことに危険なものであり、しかも、この原子戦に対応する演習が今まで何回も行なわれておるということ、こういうことは、韓国の国内発行の新聞によっても明瞭にわかっておるわけなんでございます。しからばその韓国の軍隊が増強されたのはいつからか、こういうことになりますると、これは防衛庁の局長に聞いてもいいのですが、やはりずっと見ますると、朝鮮戦争が終わったあと、急速にこの増強が行なわれておる。しかも、その増強は、アメリカのヴァンフリート計画というものに基づいて増強されつつある、あるいはまた、米韓の軍事援助協定に基づいてこの増強が行なわれておる、こういうようなことを知るわけなんでございます。アメリカから装備のほとんどを受けている韓国軍は、その増強軍事方針というようなもの、軍事増強計画というようなものも、ヴァンフリート計画あるいは米韓軍事援助協定というものによって方向づけられて、その通りに増強しているという点、これは私たちは、はっきり考えていかなければならぬことであると思うのであります。しかも、この増強は何から発生しているかといいますると、朝鮮戦争においてあれだけアメリカ軍に犠牲が出た。そのあと、私たちの耳に入っているのは、アジア人はアジア人で戦わせるのだという。朝鮮戦争の犠牲にこりたアメリカアイク大統領の言として——トルーマンでしたかアイクでしたか、アジア人はアジア人で戦わせるという、こういう考え方が、朝鮮のこういう過度の軍事増強という形になって、アメリカの計画によって進められてきつつあるのだということ、私は、そういうことをはっきり知っていかなければならないのではないか、こう思うわけなんです。今申した点について、局長、反論がありましたら言っていただきたい。
  89. 加藤陽三

    ○加藤(陽)政府委員 韓国の軍隊の増強が朝鮮事変と関連がありますことは、おっしゃる通りでございます。北鮮の方の軍備は、これは御承知と思いますが、大体保安軍を含めまして陸上五十数万人、十八個師団と数旅団持っております。海軍といたしましては、非常に小さいものでございますが、魚雷艇を中心として一万数千トン、空軍が八百数十機という情勢であります。これらの情勢を勘案しながら、韓国は韓国として必要なる軍備考えておるという状況だろうと思います。
  90. 西村力弥

    西村(力)委員 それじゃ、その点については外務省に一つお聞きいたしましょう。  外務省のアジア局で出した「アジア諸国便覧叢書、朝鮮便覧」、こういうものを見ますと、はっきりと、朝鮮の軍備状況はヴァンフリート計画、また、米韓軍事援助協定によってその後予備兵力を十万ふやした、こういうことを指摘しておるのです。外務省はこのパンフレットに記載してあることに対して、はっきり責任をとるであろうと思いますが、いかがですか。
  91. 伊關佑二郎

    ○伊關政府委員 大体正確なものと思っております。
  92. 西村力弥

    西村(力)委員 防衛庁の私に対する答弁というものは、外務省の公的な、外務省自体認めるこの文書によって否定されておるじゃないですか。あなたは、韓国自体意思によって増強しておるのだ、こういう趣旨答弁があったように聞いておるのでございますが、その点は私の聞き間違いかどうか、その点のところだけ一致させておきたいと思いますから、再度御答弁をわずらわしたいと思います。
  93. 加藤陽三

    ○加藤(陽)政府委員 私が今申し上げましたのは、韓国といたしましては、北鮮との関係をにらみ合わせながら軍備の整備をやっていっておるというふうに私どもは見ておるわけであります。いずれ援助がありましても、最後に決定をしておるのは韓国の意思である、こういうふうに考えております。
  94. 西村力弥

    西村(力)委員 それは、形式的にはそう言えるかと思うのでございます。それは日本の自衛隊の場合においても、そういう工合に言うでしょうが、実質的に、装備のほとんどがアメリカによって供与せられる、こういうような場合に、最後は、形式的には韓国の意思によるけれども、ヴァンフリート計画とか、米韓軍事援助協定による方針に決定づけられているものだ、こういう工合に私たちは見なければ事の真相を誤るものだ、こう思うわけなんです。その点はこれ以上は進めませんが、こういう過度の軍事的増強、これが朝鮮民衆の貧困をもたらす大きな原因であるのだということをはっきり認めていかなければならない、こう思うわけなんです。  そこで、総理一つお聞きしたい。日本も自主的に決定するのだということになりますが、すべてそういう意思決定というものは、国民の前に示さなければならないけれども、ことしの一月でしたか、アメリカ議会の下院の歳出委員会においてフェルト大将が証言しておる。そのことは、日本は真に再軍備をする意図を持つかいなかというある議員の質問に対する答弁でありますが、その点はオフ・レコになっておる、こういうことになっております。これをオフ・レコにした理由はいろいろ想像されますが、アメリカ国民に知らせては工合が悪いというよりは、日本国民にこれが知れるといかぬということ、あるいはまた、アメリカ意思というものが優先し、日本軍備を方向づけているということを言うたか、いろいろ想像されるけれども、このオフ・レコは、決してこれはアメリカ国民の前に示しては悪いんだからというのではなく、対日本国民に対する配慮から、そういうオフ・レコになったんだろうと思うのです。そういう工合に私たち考えるのですが、そうしますと、日本の自衛隊とアメリカ関係におきましては、やはり国民の前に示されない何ものかがあるんだ、こういう勘ぐり方をせざるを得ないわけなんです。こういう一つの勘ぐり、あるいは不安というものに対して、一体総理はどのようにわれわれに納得する答弁をなされるか、これはぜひ一つ聞かしてもらわなければならぬと思うのです。アメリカの議会において太平洋軍司令官のフェルトが証言した、それがオフ・レコになっておる。それは日本国民に知らせまいとする意図だ、あるいは密約がばれることを隠蔽するためだ、こういう工合考えると、相当の危険性というものを感ぜざるを得ないわけなんです。このことはオフ・レコであるから、何ぼ千里眼でもその内容はわかりません、想定、想像だけで私は勘ぐっているわけでございますが、この点に関して、総理はどういうふうに考えているか。日本を再軍備する意思ありやいなや、本気でやる意思ありやいなやという質問に対する答弁が秘密になっているということなんですから、やはり相当注目してみなければならないと思う。
  95. 岸信介

    岸国務大臣 フェルト大将の証言がいかなる意味でオフ・レコになったか私は存じませんが、そういうことと関係なく、日本の防衛計画につきましては、すでに御承知のように、第一次の三年計画、さらに、目下第二次の防衛計画について防衛庁で研究いたしております。これは国防会議にかけてきめ、それから、年々のこれの実施計画につきましては、予算に計上いたしまして国会の御審議にかけておるわけでございまして、その際に、内容等につきましても、十分説明をいたしておる通りであります。日米の間につきまして何か密約があるんじゃないか、そういうものは全然ございません。長期の防衛計画に基づいて、年々の財政全体のバランスを見、そうして具体的に予算に計上して御審議を願っておる、これが日本自衛力増強の実態でございます。それ以上に何らの密約的なものが存在するということは絶対ございません。
  96. 西村力弥

    西村(力)委員 それはその程度にとどめましょう。しかし、私たちの疑念は晴れない。  その次に私が問題にしたいのは、李承晩の独裁恐怖政治というものが民衆の反感を買った、これは認められると思うのです。そういうことを認めて、あれは極端であって、世界の西欧側のつらよごしだというくらいの論評がたくさん出ておりますが、これは認められると思うのでございます。それを他山の石として、岸総理がみずから反省する点が今までなかったかどうか、李承晩のあのやり方に対して、みずからもやはり反省するというようなことはないかどうか、その点はどうです。
  97. 岸信介

    岸国務大臣 私は、私の政治をいたす心がまえとしては、かねて国会で申し上げております通り、民主主義の原則に従ってすべての問題を決定していくという考え方でございまして、この信念に基づいて従来あらゆる面において行動いたしております。別に、李承晩のことを他山の石として反省すべき私自身の何らの行動もないということを申し上げておきます。
  98. 西村力弥

    西村(力)委員 その点の論争は避けますが、国民があなたのやり方に対しましては相当危険を感じている。(発言する者多し)このことは、自民党の反主流派においても相当言われておると私は思う。(「よけいなことを言うな」と呼び、その他発言する者多し)双方ともお静かに——とにかく、国民自身も決して心がゆるやかでない。岸内閣施政下になってから、心が伸び伸びとゆるやかでない。何かしら大きな不安を感じているということ、こういうことは、これは否定できないことであろうと思うのであります。しかし、このごろの動向を見ますと、やはりどうも——そういう岸内閣の一つの本質的なものをぴんと体して行動しているのは何であるか。警職法や安保条約というと、一番先に行動的に体を張って出てくるのは一体だれだ……(「社会党じゃないか」と呼び、その他発言する者多し)そういうことはとにかくとして、きのうのテレビを見ましても、鈴木善幸氏は、うやうやしく、安保通過の請願書を受け取っておるが、ああいう動きが単なる動きかというと、そうではない。言わなくても、今の政府一つの方向というものをびんびんと感じて動いてくるのは……(「君らも受けつけているじゃないか」と呼び、その他発言する者多し)悪いというのではない。いろいろの意見もあるかと思いますけれども、この間の二十六日のあの全学連のチャペル・センター前の集結のとき警察官の行動なんというものは、あのときに、私はがまんがならないので、負傷者の収容されているすべての病院を夜全部回って調べてみましたが、そうしますると、陰嚢打撲、あるいは目をやられている、鼻稜がこわされている、こういうものを中心として、ほとんどは、意識的にやったと思わざるを得ない、こういう負傷をしておるわけなのです。しかもあのときは、新聞記者の諸君も相当の暴行を受けた。伝え聞くところによりますと、あまりひどいじゃないかと言うと、その警察官は、ああ、ブン屋さんか、お前もちょっとかわいがってやろうか、こういうわけで暴行した……(「この委員会新聞記者をなぐったのはだれだ」「社会党、痛いか」と呼び、その他発言する者多し)痛くもないけれども、筆頭理事として敬意を表する人が発言中だ。私の発言は遠慮しよう。
  99. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 静粛に願います。
  100. 西村力弥

    西村(力)委員 その際には、女学生の髪を瞬間的に抜いた、こういうものが私たちに届いて、私はその髪の毛を持っておりますが、いずれにしましても、こういうような一つの現われ方としましては、これはやはり政府の基本的な方向というものをそこに具体的に現わしておるのだ、現われているのだ、私たちはそういう工合にはっきりと見ていかないといけない、こう思う。であるから、他山の石として反省すべきであるということを言うたのでございます。  そこで最後的に━━に……(「茶番劇じゃないぞ」と呼び、その他発言する者多し)今のは思わず出ましたので、心からその取り消しをしておきます。何らの意図を持つものではございません。  そこで最後的にお尋ねしたいのは、今度の安保条約を国会を通過させるために、自民党総裁である総理は、警官を導入してまでもこれを通そうとして考えておるかどうか、これを一つ明確にしてもらわなければならぬ。これは一つ真剣に答弁をしてもらわなければいけないと思う。私たちは、今まで警官導入のもとにおいて国会の審議をやったことが数回ございます。ございますが、暴力云々を言う前に、そういうような無理押しということを反省させなければならないし、また、警官を導入した場合において、たとえばソ連のベリアというような者がかりに警察庁長官であるならば、こっそりとピストルを携えて、国会の中をみんなこうやったならば、完全にクーデターができる。国会に警官を入れるということは、完全にクーデターを行なうことも可能になってくるわけです。でありまするから、この大事な日本の運命を決定する安保条約審議にあたって、絶対に警官を入れない、そういう工合に、この際、総理は、自民党総裁としても、明らかにここに意思を表明していただきたいと思う。
  101. 岸信介

    岸国務大臣 これは私の権限ではございません。御承知の通り、国会におけるところの秩序を維持するためにどういう行動をするかということは、議長の権限でございます。私は、日本の民主政治のために、従来、集団的暴力のために議事が行なわれない、円満に行なうことができないと考えて、かつて、議長が警官を入れてこの議場内の秩序を保たなければならないという、悲しむべき事態があったことは、はなはだ遺憾だと考えております。いずれにいたしましても、このことは、議長が国会における秩序を維持するためにとられる行動でございまして、政府としても、あるいは自民党総裁としても、私は意見を申し上げるべき筋ではないと思います。     〔「そのくらいは常識を持て」と呼ぶ者あり〕
  102. 西村力弥

    西村(力)委員 常識は、議長の単独意見で警官導入が決定されるなどとは、だれも思っていない。これは自民党の方針だ。     〔発言する者多し〕
  103. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 静粛に願います。
  104. 西村力弥

    西村(力)委員 議長がきめるということは形式的なことであって、われわれの常識は……     〔発言する者多し〕
  105. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 静粛に願います。
  106. 西村力弥

    西村(力)委員 われわれの常識は、自民党の意思決定によって議長が押しつけられるのだ、こういうような国会の実態である。こういう点からいって、自民党総裁としての岸総理答弁を私は求めておるわけなんです。まあ、しかしながら、この点についてはそれ以上の答弁がないと思いますので、そこでとどめておきますが、さて……(「ここは寄席ではないよ」と呼び、その他発言する者多し)私の質問は、今の問題は、安保審議をどう民主的に持っていくかということについて、しかも国民全体の納得のいく、誤まりない審議をするために、岸総理のお考えを聞いているのであって、これは寄席でも何でもない。安保から離れているわけでもない。安保に対する、今ぎりぎり迫りつつある問題に対する、ほんとうに直接に関連ある問題についてやっている。  それで、私のその次にお聞きしたいと思うことは、いろいろ朝鮮の民衆の不幸、こういうようなことの原因をあげて参りましたが、しかし、そういう不幸のもたらされたもう一つ基本の問題というものがあるであろうと思う。それは何であるかというと、やはりアメリカ軍が韓国を反共軍事最前線として絶対にこれを確保するのだという政策、それと、李承晩の北鮮武力統一というその思想と、これが一体となってこういう不幸をもたらしているのだということを私ははっきりと申し上げなければならない、こう思います。そういうことは、今までの経過からいっても、相当言えるではないだろうかと思う。第一番目に、カイロ宣言とか、あるいはポツダム宣言とかというもので、朝鮮は全朝鮮人民の手に返されるべきはずのものであった。ところが、日本降伏後、朝鮮の人民は、いち早く人民共和国を作ろうとして、その結成の段取りまでにいっておった、こういう事実は外務省においては認められますか。
  107. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 終戦後、連合軍が三十八度線を境にして進駐をいたした事実に基づいて今日の事態が起こっていることは、むろんでございまして、米軍だけが何かそういうことをしたということではございません。
  108. 西村力弥

    西村(力)委員 私がお聞きしているのは、米軍があの協定に基づいて南朝鮮に進駐をする以前に、日本降伏を契機として、朝鮮人民の手によって朝鮮の人民共和国というものがはっきり形作られつつあったのだということ、そういうことを認めらるべきであると思う。これは外務省発行の文書に書いてあるのだから、間違いがございません。ところが、そのあと入っていったホッジ中将はそれを否定し、朝鮮人民の自由なる意思に基づく共和国を作ろうとするそういう構想がほとんど成功の段階にきているときに乗り込んでいって、南鮮における唯一の合法政庁は軍政庁であるという宣言をやって、それをつぶしてしまった、ここに朝鮮民衆のほんとうの不幸の最初の糸口があるのだということ、こういう工合に申さざるを得ないわけなのでございますが、そのあと私の調べたところによりますと、四五年の十二月に、モスクワで米英ソ三国の外相会議を開いた、そうして五年間、五カ国ばかりが後見人となって朝鮮の統一政府を作るために協力をする、その前提として臨時政府を作る、こういうようなことに話し合いがまとまり、米ソの共同委員会が作られて、その協議が始まった。ところが、その協議が最終的段階に到達する——最終的決裂に至らないうちに、アメリカが国連提訴をしてしまった、こういうような経過をたどっておるわけなのでございますが、この点については外務省はお認めになりますか。
  109. 伊關佑二郎

    ○伊關政府委員 いろいろの経緯はございましたが、何と申しましても、やはり南北の対立が、米ソの対立というもので話がまとまらないうちに、そういうふうに国連に持っていかれたわけでございます。
  110. 西村力弥

    西村(力)委員 それは認められたわけでございますが、米ソ共同委員会が最後的に決裂したのは、四七年の十二月二十日、アメリカが国連に提訴したのは、その以前の九月の十七日、こういうところは、国際的に見てまことに不信行為を行なった、こういう工合に言わざるを得ない。これは第二の朝鮮民族を不幸にする分かれ目である、こういう工合に言わなければならない。そうして、国連の決議をどうやってとったか知りませんが、国連監視下の選挙をやろうとしてやったわけですが、そのときの朝鮮の民衆の怒りというものはどのようであったか。金九とか、金奎植とか、あるいは右翼的な人間であり、中立的な人間までも含めて反対した。そのときに、軍艦、飛行機を飛ばし、軍を配備して、そうして選挙を行ない、むちゃくちゃに李承晩政権というものを生み出した、こういうことになっておるのは事実であると思うのです。この点は認められますか。     〔「そんなことを答える必要はない」「答えろ、答えろ」と呼ぶ者あり〕
  111. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 政府からは答弁がありません。
  112. 西村力弥

    西村(力)委員 答弁がありませんか。(笑声)まあ、この外務省アジア局の編さんされたものにはその通り書いてありまするので、私は、これをもって正式な答弁と同じだ、先ほど、これはほとんど誤りがないということを言われたから、そういう工合に受け取っておきます。  そういう工合にして生まれた李承晩政権が、とにかく米国の李承晩に対する期待、あるいはまた在韓米軍、あるいは在日米軍のバックというものを意識しつつ、あの強硬な恐怖政治をとってきて、それが最終的にはみずから招いた過誤によって壊滅してしまった、こういう工合に言わざるを得ないと思うわけなんです。  だいぶ時間もあれでありますので、その次にお聞きしたい点は、この前私は関連質問で、この南朝鮮の動乱に対して米国のとった措置というものは干渉とみなされないか、こう言ったことに対して、藤山さんは、これは干渉ではないのだ、友好国の好意的忠告ということはあり得ることなんだ、こういいような答弁をされておりまするが、今もやはりそういう工合にお考えになっていらっしゃるかどうか。
  113. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 私は、現在でもそういうふうに考えております。
  114. 西村力弥

    西村(力)委員 しかし、事実をあげてみますと、たとえば、ハーター氏が、日本漁船の船員の抑留ということに対して、これは不当であるという覚書を出した。そうすると、その二日後には、伊關局長と柳大使の間に送還の取りきめができておる。これほどききめのある好意的忠告ということ、これはやはり単なる好意的忠告だという工合には私たち考えられぬ。今回の場合においても、ハーター氏が強硬な覚書を出したあと、わずか四日ばかりのうちに、李承晩が辞意を表明しておる。これほどはっきり直ちに効果が現われておるというような点、あるいは、この間の新聞によりますと、トルコに起きた同じようなケースの人民の立ち上がりに対しまして、アメリカの上院の外交委員長が、これでは韓国と同様の措置を米国はトルコに対してもとらなければならぬであろうということを言うておる。こういうような点からいいまして、これは単なる友好国としての忠告とか、そういうものを越えたものであるのだ、こういうように私は見ざるを得ないと思うのですが、この点については、しからば藤山外務大臣は、このようにアメリカ意思表示が出ると、三日後に抑留漁船員の送還の妥結ができる、あの暴動に対するアメリカの覚書がハーター氏から梁大使に手渡され、あるいは韓国においてはマコノギー大使から李承晩に申し渡される、そうすると、わずか四日にして李承晩が辞意を表明する、こういうように、なぜ直接短時間にアメリカの希望する方向に実現をしていくのか、こういう点については外務大臣はどういう観測を持っていらっしゃるか。
  115. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 アメリカの勧告が非常に適切であったのだと思っております。
  116. 西村力弥

    西村(力)委員 適切であったとお考えになれば、これはまことにけっこうな話に相なると、こう思うのです。こういうことは日本に対しては行なわれないだろうか、この点についてはどうですか、外務大臣。
  117. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 別に、現状何か忠告を受けるようなことを持っておりません。
  118. 西村力弥

    西村(力)委員 まあ今の段階において、あまりそういう極端な、李承晩にアメリカの側が表明したようなことはないにしても、今後あるかもしれない、また、それほどの程度でないにしても、今度為替・貿易の自由化に踏み切った政府の方針決定というものは、通産省の現役の有力なる官吏の言をかりても、あるいはその他の経済雑誌を見ましても、これは明らかにアメリカの干渉でこうなっているのだ、アメリカの申し出が強いためにこうならざるを得なくなったのだというさとを言うておりまするが、程度の差こそあれ、やはりああいう貿易自由化を日本に強く求めるという形で、干渉がましいことが現われつつあるのではないだろうか、こう思うのです。この点は、御答弁を求めましても、あまり適当な答弁が得られないと思いますので、それはそれにしまして、しかし、こういう韓国に対するアメリカ意思表示というものが効果を直ちに現わすというようなことは、何からきているかというと、やはり米国と韓国との関係が軍事的に、経済的にほんとうに結びつき過ぎておるというところからその効果が現われるのだ、これは私たちお互い十分に考えていかなければならない。そういう際において、日米関係においても、程度の差こそあれ、そういうことが予想される。それを警戒するためには、そういうきずなというものを排除する努力、これがやはり政治の方向としてとられなければならないのじゃないだろうか、こういう工合考えておることを申し上げて、その点は打ち切りにしたいと思います。  それでは、その次にちょっと条約に返りまするが、条約の第四条、第六条における、極東における平和及び安全ということは、一体どういうことか。     〔笑声、「読んで字のごとし」「それが一番適切な聞き方だよ」と呼び、その他発言する者多し]
  119. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 申すまでもなく、極東という地帯に、何か波風が起こらない平和な状態が続いていく、そうしてそれがやはり安全であること、申すまでもないのでありまして、われわれはそういうことを考えておるわけでございます。
  120. 西村力弥

    西村(力)委員 まあこれは読んで字のごとくということもありますが、極東において戦争のないこと、あるいは共産圏側からの侵略がないこと、そういう状態、これをさして、極東の平和と安全、こういう工合にいうているのだろうと思うのですが、今だいぶ周辺がやかましかったので聞き取れなかったのですが、その通りでよろしゅうございますか。
  121. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 むろん、極東において戦争が起こったり、紛乱が起こったり、騒擾が起こったり、そういうようなことが極東の内部なりあるいは外部からの刺激によって起こるということは、好ましいことではない、われわれはこう考えておるわけでございます。
  122. 西村力弥

    西村(力)委員 それでは、米韓、米比、米台等の相互防衛条約も、やはり同じような目的をもって結ばれておる条約である、こういう工合認められますか。
  123. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 極東に国をなしております国が、やはり自分たちの位置しておる極東というものに何か戦乱が起こったり、紛乱が起こったりするということのないことは、当然希望いたしておると思っております。
  124. 西村力弥

    西村(力)委員 今の答弁によりますると、極東に所在する国がと、こういう工合に包括的に言われましたが、そうしますると、あなたのおっしゃることの通りであると、中ソ軍事同盟もやはり同じ目標を持つものだ、こういう工合に言ったということになるわけですが、それはどうですか。
  125. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 総理もたびたび言われておりますように、いずれの国においても、戦争が起こったり、あるいは紛乱が起こって、そして近接地域が騒がしくなるということを好んでおる国はないと考えております。
  126. 西村力弥

    西村(力)委員 好んではいないでしょうが、現実にあるこの条約日米安保条約、あるいは米韓条約、米比条約、米台条約、これは米国を中心とした結集である、しかし、その目的とするところは、極東の安全と平和である、こう言う。ところが、中ソ軍事同盟というものは、やはり同じように、極東の安全と平和という、同一目標を持つものであるとあなたは見ていらっしゃるかどうか、それは異質なものであるという工合に見ていらっしゃるか、これはどうなんですか。
  127. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 おそらく中共、ソ連の側においては、そういう見解をとっておると思っております。われわれとしても、むろん、中共、ソ連が紛乱を好むとは思っておりません。しかし、そういう戦争あるいは平和というものに対する考え方が若干違っている点もあるのではないか、こう考えております。
  128. 西村力弥

    西村(力)委員 その違いというものは、たとえば米華相互防衛条約の中には、外部からの共産主義者の破壊活動に対して、個別的及び集団的抵抗能力を維持し、発展させる、こういう文句があるわけなんでございまするが、それがやはり極東の平和を求める一つのあり方を示しております。極東の平和を求めるというけれども、その中身、実体というものはそこにあるのだということを示しておる、こう言わざるを得ない。ところが、今、両方とも平和を求めるが、少しは違うのだと言うが、その今違うのだと言われた点はここにあるのかどうか、これを明確にしてもらわなければいかぬ。
  129. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 自由主義国家は、自由主義の立場からいいまして、その一国内においても言論の自由が認められておるわけであります。一色に塗りつぶすというような考え方はないと思います。従って、それぞれ思想なり立場が違いましても共存するという形が、自由主義においては、ほんとうに希求される平和だと思います。共産主義の場合には、若干それに対してニュアンスがあるのではないか、共産主義に世界が塗りつぶされなければ、何か安定したものがこないのだというように、平和というものを考えているのではないかというふうに、私は見ております。
  130. 西村力弥

    西村(力)委員 そうしますと、共産主義というのは、世界を全部塗りつぶすために、やっぱりそれを目標として侵略性を持つものだ、こういう工合にあなたは今おっしゃったように聞き取りましたが、どうですか。
  131. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 私は、国際共産主義というものは、やはりそういう考え方を持っている、そう思っておるのでございます。
  132. 西村力弥

    西村(力)委員 そうしますると、結局、そのことの正否はともかくとしまして、あなたの考えられていることは、共産主義国家においては、それを世界に広めるという、そういう侵略的なものを持っているのだ、ところが、一方において、自由主義国家は、極東においては極東の平和と安全を守るのだ、そうすると、その中身としては、共産主義者の武力による扇動とか侵略とか、そういうものを——米華条約ではっきりと規定しておる。そういうものを排除するために、個別的あるいは集団的能力を育成するのだということになりますると、どうしてもここであなたに申してもらわなければならぬのは、中ソ軍事同盟と、米国を中心とした極東条約というものは対立するものである。お互いに、相手はやっぱり向こうという工合にしているのだ、こういうことになるわけなんですが、それはいかがでございます。
  133. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 かねてから総理も私も申し上げておりますように、共産国というものを対象にして言っているのではない。国際共産主義というものの考え方をそういうふうにわれわれは言っておるわけであります。共産国でも、ユーゴのような一国社会主義の国もございます。従って、そういう意味において、われわれは、国を対象にしているというよりも、国際共産主義ということがそういう考え方であろう、こういうことを申しておるのでございます。
  134. 西村力弥

    西村(力)委員 重ねて聞きますが、とにかく、中ソ軍事同盟と、極東における米国中心の軍事同盟というものは、言葉では極東の平和ということをいっているが、質的には全く異なるものであるのだという、そういう工合に簡単に——異なるなら異なると、ここではっきりしてもらいたいと思うのです。同じものなら同じだ、そういう工合にしていただかなければならない。
  135. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 先ほど来申し上げますように、平和というものに対して若干の考え方の違いがあるのじゃなかろうかということをはっきり申し上げているわけでございます。
  136. 西村力弥

    西村(力)委員 それでは、やはり異質のものであるという工合認められた、お好みの、大体という言葉で認められた、こういう工合に私は受け取って参ります。  そこで、いよいよ韓国がああいう南朝鮮の人民の大蜂起によって混乱をしましたが、その後も小規模ながら変動というものが継続しておる。あの動きというものが、日本立場から見ましたときに、直接的なものとしてこれは影響するところが非常に重大であると思うのでございまして、これから南朝鮮に対する日本国の態度というものは、相当慎重に、しかも賢明に、基本的な立場に立って進められなければならない、こう思うのでありまするが、その際に、第一番目に考えていかなければならぬ問題は、何と言っても、朝鮮の人民に対しては日本国は四十年の長きにわたって植民地的圧制を続けてきたのだ、この事実を認められることが必要であると思う。それに基づいて、私たち日本の国の朝鮮の人民に対する基本態度は、その四十年間の罪を償うという、そういう謙虚な気持を基礎として、朝鮮人民の幸福を願い、その願望に協力する、こういう方向をとっていかなければならないと思うのですが、総理はこの持つべき基本態度についてどうお考えでございますか。
  137. 岸信介

    岸国務大臣 歴史的に日韓の間の関係はいろいろな変遷を経ております。日本が日韓合併の条約によってこれを統治しておったときがございます。当時において、私は、これが独立の民族として、その時代に対する非常な不満足を示しているという気持も十分に認めていかなければならぬと思っております。私は、今後、日韓が、隣の国としてお互いが繁栄と平和をもたらすような基本的な正常な関係を作り上げるというためには、お話のように謙虚な気持でもって十分に朝鮮民族の繁栄、平和ということを念願して、日本として協力のできる限りこれに協力していくという立場をとって調整したい、かように思っております。
  138. 西村力弥

    西村(力)委員 この際、お尋ねしておきたいことは、李承晩が今までとってきた北進武力統一という方針は、日本政府として正しいと思われるか。今までのような態度に立って考える場合、それを正しいと考えるかどうか。
  139. 岸信介

    岸国務大臣 私は、朝鮮の一つの民族が三つに分かれているということは、民族の不幸であると思います。これが統一されることがおそらく民族の願望でもあろうし、また、そういうことができ上がることが望ましいと思っております。しかし、それはあくまでも平和的な方法によって行なわるべきものであって、いかなる意味においても、武力行使によって——ことにわれわれの近くでそういうことをされるということは、日本自身の平和と安全にも関係を持ちますし、朝鮮民族の幸福のためからいっても、そういうことは望ましいことではない、かように考えます。
  140. 西村力弥

    西村(力)委員 李承晩が引退をしまして、そのあと暫定的に許政が担当しておるわけでございまするが、それは暫定でありまするから、すべてにわたっての方針というものが出されたわけではございませんけれども、あの李承晩の後退によってこの北進武力統一論というものがもう消え去っておるかどうか、こういう観測はどうです。
  141. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 今総理の言われましたように、平和裏に選挙その他を通じて解決することはこれは国連の方針でもございますし、韓国の人たちもそういう考えを持っていることは私は信じて疑いないと思います。
  142. 西村力弥

    西村(力)委員 しかし、私は、今のようないわば飾り言葉で言われるほど、事は安易なものではないと思う。それが証拠には、あの朝鮮動乱の発生した場合に、李承晩は談話を発表して、これは明らかに背後の共産主義者による扇動であるということを漏らしておる。あるいは平壌放送に対しましても、私が聞いたところによりますると、あの暴動の際に、南鮮の軍隊よ、今こそ立ち上がれという放送を平壌がやった、こういう宣伝をしておる。ところが、事実を聞いてみますと、そうじゃなくて、南鮮の兵士諸君よ、今こそ銃を捨てて大衆の側に立て、こういう工合に放送をしておるということ、あるいはまた、この間は北鮮の警備艇と南鮮のフリゲート艦が交戦をしたというようなこと、あるいは、御承知の通りアメリカ軍が、在韓米軍の中に入れておる朝鮮人を入れかえて増強の計画を持っておる、こういうような一連の動き、また、近日見ますと、社会主義者の会合というものを解散さした、あるいは検挙した、こういうような動きが次から次へと今韓国に現われていきつつある。ああいう動きを見ますと、北進武力統一というようなことが消え去ったとは、私たちはたやすく安易に考えるわけには決して参らない、こう思うのです。しかも、今後またも国内の混乱が継続する場合においては、その国民の関心というものを外部に向けるために国境線に向かって軍事的な挑発をかけないとも限らないだろう、あるいはまた、今一応の終息を示しておるけれども、またそういう大衆の大きな動きとなって現われたときに、今度は国連軍が、これは北鮮の側の謀略宣伝であるという工合に断定するというような危険性も感ぜざるを得ない。そうすると、国連軍の発動になって参るわけなんでございまして、日本政府としても、朝鮮の動きに対しては、今飾り言葉的答弁だけで過ごしておるような工合には参らない。お腹の中はそれほど簡単には考えていないだろう、こう思うのですよ。それで、そういう工合に、国連軍あるいは在日米軍が、朝鮮の不幸なそういう事態が発生した場合に、ここに発動するということになって参りますると、前々から問題になっておりまする事前協議、こういうことになって参るわけなんでございますが、その際に、実際は事前協議というようなことがほんとうになされるかどうかということに対して、私は疑問を持っておるわけなんであります。それは近代戦争の時間的なものを争う形から、あるいは先ほどから申しましたように、アメリカ軍の統帥権の問題から、こういうような点から、事前協議というものが、そうこちらの期待する通りに行なわれるだろうということは全然考えていない。  ところで、岸総理にちょっとお尋ねしたいと思うのは、かつての太平洋戦争の場合に、日本の連合艦隊がハワイを襲撃した、奇襲した、あのことをあなたが知ったのはいつでありますか。これをお聞きしたい。
  143. 岸信介

    岸国務大臣 当時、直ちに閣議が開かれまして、詳細に説明を聞きました。
  144. 西村力弥

    西村(力)委員 そのように、あのような今から何年か前の戦争における軍事行動においても、日本国の閣僚であった岸総理でさえも、事前には知らされていなかった、こういうことをはっきり私たちは知るわけなんです。(「その当時の憲法を調べてみろ、統帥権は別だよ」と呼ぶ者あり)そういうようなことになっておるのでありまして、今の進んだ現状において、かつてでさえも、そういう統帥権というものを事前に一国の大臣にも知らすことができないというような、そういうことからいうて、他国日本にそのことが事前協議されるなんということは——戦闘作戦行動に対して協議されるのですよ、そういうことがあり得るか。
  145. 岸信介

    岸国務大臣 これは、西村君の質問でありますが、当時の日本憲法の建前と——アメリカにおいて統帥権というものは大統領が持っておりまして、しこうして大統領が、この条約において、日本に対して、明瞭にアメリカとしてそうするということを言明しておるのでありまして、今の例をもって、新条約のもとにおける事前協議の問題を御論じになることは、私は全然問題が違っておる、かように思います。
  146. 西村力弥

    西村(力)委員 今度はアメリカ大統領が三軍を掌握する権限を持っておるということから、事前協議は必ず行なわれるんだということになりまするが、それでは、五七年でしたか、岸総理アイクと第一回の共同声明を発せられたとき、その結果に基づいて発足した安保委員会、あれは実際に協議というものが、そういうぎりぎりの問題について何回くらい行なわれたか。
  147. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 当時の安保委員会は、そういう何か戦争をするというような、ぎりぎりという意味での協議がないことは当然でございまして、安保委員会の設立の目的にありましたように、お互いに情報を交換し、また、安保条約が両国民の願望に適するように運営することを検討してみる、また、それによって条約に対して改正を加える、こういう点でありまして、事前協議的な、特別な、何かぎりぎりの問題というものはございません。
  148. 西村力弥

    西村(力)委員 せっかく、岸・アイク共同声明によって、新しい日米の時代がきたという工合に宣伝された、あの共同声明に基づく安保委員会が、何一つ相談をされなかったということであったのでは、共同声明の持つ拘束性、力というものはまことに信用の置けないものである、こう言わざるを得ない。ところが、皆さん御承知の通り、あの共同声明を発し、安保委員会が発足して以来、日本の国にある米軍が、軍事行動あるいは軍事行動すれすれの線にまでいったときは、いつ、何回ほどありますか。
  149. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 基地から戦闘作戦行動に出るとか、あるいは核兵器を持ち込むとか、そういうことはございません。
  150. 西村力弥

    西村(力)委員 レバノンの事件が発生したときには、在日米軍はすべて警戒態勢、臨戦態勢に入っている。日本国内の軍事基地、米軍基地には、すべて戦闘旗が揚げられたはずなんです。そのあと、台湾海峡の問題のときには実際に出撃していることは、天下周知の事実だ。そこで、日本基地を使用して戦闘作戦行動に出なかったということはないのだ。これははっきりした事実であると思う。せっかく、三十三年ですかの共同声明によって安保委員会が開かれて、事前協議条項が設けられた。にもかかわらず、ああいう重大な段階に、一言も相談がなかったなどということであるならば、今度の事前協議条項——最後のきめ手は、岸・アイク共同声明によって、日本意思を尊重することを保証する、こういう文句だけによって裏づけされているわけなんであるから、共同声明の効力というものは、現実に、かつての共同声明によってほとんど効力がないんだということが証明されている限り、今回の共同声明においても、そういう立場でやっぱり私たちは見ざるを得ないわけだろうと思う。そこで、かつての共同声明が何らの効果を示さなかったということからくる今度の共同声明に対する不信、こういうことに対しての御見解を示してもらいたい。
  151. 岸信介

    岸国務大臣 何か前提として非常に誤解があるようでありますが、問題は、今回の交換公文においてはっきりと、事前協議をする事項を限定し明定をいたしております。こういう事態は、いわゆる三年前の共同声明に基づいて安保委員会ができましてから、これに該当するような事実はなかったということでございます。一般的のいろいろな協議をいたしましたことは、すでに外務大臣からお答えをしましたように、何回どういうことを協議したということは、詳細に資料として出されておると思います。そういうことでございますから、今の、共同声明が作られたということにおいて、共同声明というものは守られないものだというふうな前提は、これは間違っております。それから、今回のアイゼンハワー大統領と私の共同声明のうち、事前協議に関することは、すでに交換公文の法律的解釈として、日米両国の間において交渉中に意見が一致しておりますことを、さらに政治的にこれを確認したということでございまして、これでもって初めてどうできたという問題ではございません。そして、共同声明というものが従来からいって守られないものだとか、意味ないものだとかいうことは、先ほど申し上げましたように、前提が全然間違っておりまして、そうではなしに、現実に安保委員会が作られ、重要な事項については協議が行なわれている。ただ、先ほども申し上げますように、今回のこの交換公文で、事前協議にかけるという、限定されておるような事態は起こっておらないということを申し上げます。
  152. 西村力弥

    西村(力)委員 それではお尋ねしますが、レバノンの事件のときに、日本にある米軍は、すべて戦闘態勢、警戒態勢に入って、戦闘旗を掲げたという、こういうことは事前協議の対象にこの条約によってもならないのか、それについてはどうです。
  153. 岸信介

    岸国務大臣 私は、戦闘旗を掲げたという事実は存じませんけれども、もちろん、今回のこの改定せられる新しい条約の四条によりまして、実施上すべての問題については日米両国の間で協議するようになっておりますから、また、いろいろな国際情勢等につきましても十分協議をいたしますから、そういう際に、レバノンのような事件であるならば、米軍がどういう態度をとるかということは、もちろん、相談すべき対象になると思います。しかし、そういうことが、交換公文による事前協議の問題ではない。事前協議ということは、現実に日本基地を使用して作戦行動に出るという場合に事前協議になるわけでございます。警戒態勢とかいう問題について、一々事前協議ということではございません。
  154. 西村力弥

    西村(力)委員 むろん、それは軍の行動の迅速性からきまして、常々相当の準警戒態勢というものをしかれておるはずでございまするが、しかし、一つの事件を契機として、日本の国にある米軍が警戒態勢に入ったということであるならば、そのあとはいつ何どき瞬間的な命令によって、時間をかけずに飛び立たなければならぬということになるかもしれない。そういう危険な、ほんとうのぎりぎりのところにきておるということ、これが警戒態勢なわけなんであります。そのことが戦闘作戦行動の中に入らないということになると、危険であるから警戒態勢に入った、こういう場合になってから、行けという瞬間に事前協議が行なわれるのだ、こういう工合に私たちは解せざるを得ないわけなんです。一般的協議じゃなく、戦闘作戦行動のときの事前協議の中に、そういう警戒態勢に入るというそれを当然入れていかなければならぬと思うが、これはどうですか。
  155. 岸信介

    岸国務大臣 今お答え申し上げましたように、戦闘作戦行動に出る前におきましては、必ず事前協議の対象になるわけでございます。それ以外の、今言われる警戒態勢というようなものは、私ども、軍事的にどういう性格を持っておるか、よく承知いたしませんけれども、それをもって作戦行動とは私ども考えません。従って、それは事前協議の対象にはなりません。
  156. 西村力弥

    西村(力)委員 それは事前協議の対象にならないとするならば、事前協議を行なう時間的余裕というのはいつあるのだろうか。私たちは、それをほんとうに疑問とせざるを得ない。危険性が発生する、それにどう対処するかというようなことは、いろいろ相談になるでしょうが、それがもう相当の危険だというときに警戒態勢に入る、警戒態勢に入ったならば、命令一下、ほんとうに寸秒を惜しんで出動するというのが当然のことになる。そうすると、警戒態勢に入っていって、命令がきた。そのときの瞬間に、事前協議をやらなければならぬということになってくるではないか。警戒態勢に入ったら、もう命令に応じて直ちに出動できる態勢をとっているのですから、そのときに事前協議が行なわれるなんということは、これは事前協議の体をなさない。時間的余裕はゼロだという工合にいわざるを得ない。
  157. 岸信介

    岸国務大臣 事前協議というものは、現場のことではございませんで、アメリカ日本に駐留しており、日本基地を使用して作戦行動するというので、作戦命令を出す前に、アメリカ政府が、アメリカの最高の権限を持っておる人が日本に相談するということでありますから、現場の人が、命令がきて、そうして何かちゅうちょするというような問題ではございませんで、アメリカ政府が、そういう命令を現場に下す直前に日本に相談する、こういうことでございます。
  158. 西村力弥

    西村(力)委員 そういう直前というのは、時間的余裕がない、もうある地点にもう一つの脅威が発生して、現実にそういうものが発生して、それがどう変化するかわからないから、在日米軍はすべて警戒態勢に入れ、こういう態勢に入った限り、あとの進発命令というのは、これはもう一秒の時間も惜しんで出撃しなければならぬ、こういう状況下にあるわけです。そういうときに、その瞬間に事前協議を行なうなんということは、事実これは不可能である、こう私はいわざるを得ないわけなんでございます。  それでは、あとちょっと行政協定関係に入るようでございますが、千代田丸事件ということについて、いささか電電公社側及び郵政大臣、政府、そういうところにただしておきたいと思うわけであります。  千代田丸の事件は、御承知の通り、日韓間の海底ケーブルを修理するということに対しまして、その乗組員及びその組合が、あすこは危険な地域である、人命の安全が保障されない、しかも、従来の例によると、そういう就労の場合の契約というものがまだ行なわれていない、こういうことで一日その就労の日が延びた、こういうことによって、公社側は、その就労をストップかけた組合側の三役三人を馘首したという事件であり、これは東京地方裁判所に提訴になり、原告側、すなわち、組合側の勝利となり、目下公社側において東京高裁に上告しておる、こういう事件でありまするが、公社側に一つお聞きしたいのは、この処罰というものは他に比して非常に重罰に処しておるのではないか、重い行政処分をやっておるのではないか、こういうことでありまするが、この点はどうですか。私が聞いたところによりますると、他の場合においては、最高は停職六カ月程度である。ところが、この際は一日出発が延期になった。しかも、現地に行ってみれば、波が激しくて仕事ができないままに、二日間そこに停泊しておって、仕事をしなかった。こういうことになれば、実際は少しもその就労に影響を与えていないわけだ、その作業に影響を与えていないわけである。しかるにかかわらず、この三人に対しては、そのことを命令したということによって馘首という、そういう最も重い処分を行なっておるわけでありますが、なぜこういう処分をやったのか。これは公平なる扱いではないと思うのですが、それはいかがでございますか。
  159. 横田信夫

    ○横田説明員 お答えいたします。当時のケーブル・シップの出港に際しましては、その前、何回か交渉が長く続けられまして、最後に業務命令で出港命令を出し、出港命令に対しても、なおかつ出なくてよろしいという指令がある。そこで、その問題につきまして、われわれとしてもやむを得ず処分をいたしたわけでありまして、その間においては、非常にそれまでにわれわれとしてもあらゆる手を尽くした。どうしてもこの問題について、それだけの決意をして業務命令を出したにもかかわらず、そういう事態になったということで、遺憾ながら馘首いたしたわけであります。  なお、本件につきましては、第一審において、お話のごとく、公社の業務ということと従業員の就業義務との関係、あるいは危険性というようなことで、第一審でいろいろ議論がありました結果、われわれといたしましては、公社の業務であれば当然従業員の義務である、こう考えておりますが、この点において、いささかこの関連について十分われわれの方の意を尽くさなかったために、第一審において敗訴いたしたわけでありますが、ただいまこの点については控訴中であります。
  160. 西村力弥

    西村(力)委員 経過の説明がありましたが、他の場合に比して、この場合、馘首という最も重い処分をした理由は何かということです。その点は、公平の原則に欠けておるではないか、一つお聞きしたい。
  161. 横田信夫

    ○横田説明員 先ほど御説明いたしましたように、この業務命令を出すまでには、われわれとしてあらゆる団体交渉をやってきたわけでありまして、それまでに慎重なる団体交渉をして、しかも最後の段階においてだめになった。先ほど御指摘がありましたが、出港いたした後その現場に着いたら、ちょうど気象状況が悪くて作業ができなかった、こういうお話がありますが、出港のときにはなかなかこれもわからないのでありまして、できるだけ早く出港するということが必要であります。ことにケーブルの障害であります。たまたまその場合に、現場に着きましたら気象状況が悪かったというようなことがありましても、これは必ずしも、なお猶予してもいいのではないかという理由にはならぬと思います。なお、本件につきましては、そういうわけで、決して不当に、他の場合と比べて過当な処分をいたしたというわけではないのであります。
  162. 西村力弥

    西村(力)委員 過当な処分ではないと言うけれども、他の場合ではほとんど停職六カ月を最高とする、こういうことになっておるにかかわらず、この場合だけ免職するということは、われわれはやはり過当であるといわざるを得ない。しかも、現地に行って、二日間風浪が激しくて仕事ができなかったということはあとの祭りだと言うけれども、この処分をやったのは、ずっと二カ月もあとになってから処分をしておるのだから、その一日の問題で作業に支障なかったということは、実際的に証明されているはずなんです。(「議題外だ」と呼ぶ者あり)じゃ、議題外だという声がありますから私は言いますが、この日韓間の海底ケーブルは米軍の専用線であるということ。であるから、このことによって一日就労が延期された。実際に向こうへ行けば、風浪が激しくて、二日間仕事をやれなかったのだから、ほんとうの作業には影響がなかったというにかかわらず、他においては六カ月を最高とするような処分だけをやっておいて、この場合だけに限って、馘首三名を出すということはどういう理由に基づくかということを、やはり私たちは、はっきり聞かざるを得ないわけです。業務命令に違反した、だからあれだということになりますと——このことを私が取り上げておるのは、行政部門においても、刑事部面における刑事特別法と同じ方法、そういうものがとられておるんだ、同じ刑事犯においても、特別法によればこれは罪は重くなるということ、あの刑事特別法と同じように、行政処分においても刑事特別法的な取り扱いが行なわれておるんだということ、そういうことを私ははっきり指摘せざるを得ないわけなんです。公社側はどうです。
  163. 横田信夫

    ○横田説明員 お答えいたします。先ほどからたびたび申し上げますように、この業務命令を出すまでには、再三長い間の交渉をいたしたわけであります。そういうことによって、われわれとしては、十分の意を尽くして最後に業務命令を出した、その業務命令に対してなお執行しなくてもよろしいというようなことでは、われわれの方の電電公社の業務は執行できないのでありまして、こういう業務命令に対してなお従わなくてよろしいというような指令を出したことに対して、この処分をいたしましたことは決して過重ではないのでありまして、ほかの場合と比べましても、われわれは、過重と考えていたしてないのであります。
  164. 西村力弥

    西村(力)委員 業務命令を出したことを唯一のよりどころとしておりますが、それはあのときには、李承晩が、砲撃もしくは拿捕するという強硬声明を発してからわずか三カ月後です。しかも、この海底ケーブルの修理に従事する場合においては、今まで労働慣行として、前もって十分にその合意が成り立ってから出帆する、こういうことになっていたはずなのでありまして、それを押し切って業務命令を出したからといって、その業務命令がすべて正しいという工合には言えないんだ、こういうことなのであります。であるから、その点から言いますと、明らかに業務命令を出すことをあせった、その公社の立場、しかも、これに一日の障害を与えたというために重罰に処したというようなこと、こういうことは、対米軍関係の場合においては、刑事特別法と同じように、行政関係においても特別な処分法が、成文化しないにしても、行なわれておるのだということ、こういうことを私たち指摘せざるを得ないわけなんです。  ところで、その業務命令を出して、その正当性を主張する根拠は、東京地裁に出したこの公社側の準備書面を見ましても、また、今度高裁に上告するにあたって出した準備書面を見ましても、日韓間のケーブルはすべて日本の所有である、こういうことを基礎にして主張しておる。この点は、事実その通り公社側は主張しておる。これは準備書面に明記されておりますから、否定されるはずはないと思いますが、肯定されますか。
  165. 横田信夫

    ○横田説明員 お答えいたします。実はただいまの御指摘になりましたのは、地方裁判所においての主張のものであるか、あるいはただいまわれわれのかかっておりますのは第二審でありますが、控訴趣意書——ただいまわれわれが主張いたしておりますものは、第二審において控訴趣意書を提出いたしておりますが、その控訴趣意書についての御質問でしょうが、われわれといたしましては、ただいまの御指摘の点の——今いろいろ議論になっておるところはたくさんあるわけであります。このケーブルについての所有権という問題と管理権という問題と、いろいろあるわけでありますが、平和条約によりますと、この所有権の帰属というものは、半分につきましては、日本国はこれを放棄するということが平和条約に出ております。しかし、御承知のように、このケーブルの問題につきましては、具体的には、半分ということは、どこから計算していくかというようなことで、なかなかいろいろ問題があるわけでありますが、なおこの半分の問題につきましてアメリカ軍が管理権を持っておるのでありまして、この管理権に基づいて、同時にわれわれがこのケーブルの保守運営というものをいたしておるわけであります。所有権という問題あるいは管理運営という問題、このいろいろの問題がこの問題にかかっておるわけでありまして、今その点を、所有権のみでわれわれが主張しておるわけではなくて、いろいろな問題をあわせ考えておるわけです。
  166. 西村力弥

    西村(力)委員 今の答弁は、この半分といってもどこから半分だかわからない、こういう平和条約に明定されておるあの条項に対して、明確な見解をとっていらっしゃらないようでありまするが、これは条約局長、どうです。半分というのはどこをいうのですか。
  167. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 ただいまの点は、平和条約第四条の(c)項の規定であろうかと考えますが、すなわち、(c)項で、「日本国とこの条約に従って日本国の支配から除かれる領域とを結ぶ日本所有の海底電線は、二等分され、日本国は、日本の終点施設及びこれに連なる電線の半分を保有し、分離される領域は、残りの電線及びその終点施設を保有する。」この規定に従って、原則として、おのおの半分ずつを所有するということになるわけでございます。ただ、御承知の通り、日韓間で所有することに原則はきまっておりますが、この詳細、はっきりそれではどこからどこまで、どういうふうにするかというのは、これは新たなと申しますか、取りきめによってはっきりさせなければならない問題だろうかと考えておりますが、その点はまだでき上がっていないというのが、現在の状況であります。
  168. 西村力弥

    西村(力)委員 これは日本が敗戦から独立国に立ち直るために結んだ平和条約だ、こういわれておるが、ここに規定されたことが、今のごとくあやふやに解釈されるというようなことは、国際信用上重要問題であろうと思う。私はそう思うのですが、二等分といえば、日本と韓国との至近距離、それの中心だということは、これはもうはっきりしておるじゃないですか。それだけは日本はもう放棄したのだ、北半分は放棄したのだ、こういうことになっておると思うのですが、条約局長、どうです。
  169. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 ですから、ただいまの条約条文通り、半分につきましては、われわれの所有権はもちろんないわけであります。他方の半分だけは、われわれの所有権を持っておるわけでございますが、これを現実に実施してどうするかということは、ただこれだけでは十分でなかろうということは、これは確かであろうかと思います。
  170. 西村力弥

    西村(力)委員 とにかく放棄した半分は、今後どういう工合になろうとも、今現実においては、この条約においては日本の所有から離れておるのだ、これは明確であろうと思いますが、その通りでありますか。
  171. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 御指摘通りでございます。
  172. 西村力弥

    西村(力)委員 しからば、行政協定の七条によって、日本の国が所有する、あるいは管理する、あるいは規制する施設というものは、米軍の使用に供し、かつ優先を保証しなければならぬ、こういう規定があるわけですが、これは日本国所有以外の地域には適用にならないものですか。こういう工合に思うのですが、いかがですか。
  173. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 御指摘通り、第七条の場合は、これは日本国政府が有し、管理し、規制する公益事業の問題でございます。ただ、この電線というような場合、これは事実問題としてどういうふうに解決いたしますか、半分はやはり「日本政府が有し、管理し、又は規制する」というふうな適用を受けるということも考えられると思います。
  174. 西村力弥

    西村(力)委員 ところが、南半分の、日本の所有がまだ保存されておる地域におけるケブル線の事故によって行く場合においては、これは電電公社の業務であるとはっきりと言えるし、その業務に携わらないとするならば公労法違反であるということ、これは言えると思うのですが、所有権のない北半分の、朝鮮の近間のところに発生した事故に対して、それに対して作業に従事しなければならぬという根拠はどこにも見当たらないわけなんです。そうすると、あなた方の主張は、この準備書面に明記されている通り、高裁に対してもあなた方はこう言っているでしょう。「すでに述べたごとく、本件海底線は公社の所有に属するものであり、」こう断定しているでしょう。こういうことを基礎にして処分した、こういわざるを得ない。地裁の判決においても、所有権の主張を基礎にしてやっておる。その他のものは、いろいろあるかもしれませんけれども基礎になるものは、平和条約によって放棄した北半分もおれのものだという、こういう主張が基礎になっておる。どうです、電電公社の副総裁、この所有権を主張される前言通りであるかどうか。
  175. 横田信夫

    ○横田説明員 お答えいたします。この国際条約上の学説、解釈の問題については、いろいろありまして、今この意味で……。     〔発言する者あり〕
  176. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 静粛に願います。
  177. 横田信夫

    ○横田説明員 学説上は、今の平和条約の折半という問題につきましても、これはアメリカ日本との平和条約であります。まだ朝鮮がこれに加盟しておるわけじゃないのでありますが、こういう場合に、こういうものをどう解釈するかにつきましては、学説上もいろいろな学説がありまして、必ずしも帰一いたしてないのであります。従いまして、この点について、われわれといたしましては、今のケーブルとして一本でありまして、半分ずつというものは非常に明瞭であるとおっしゃいますけれども、事実博多から考えるか、あるいは対馬から考えるかというようなことにおいても、非常にいろいろの場合が考えられるのでありまして、そういう意味におきまして、この問題について潜在的所有権というものが、まだ最後的にきまるまではあるのだという学説もあるのです。だから、そういうことにつきまして、そういうものもあるし、また、たといそうでないにいたしましても、この問題につきましてはアメリカ軍が管理権を持っておりまして、その管理権に基づいて、われわれはアメリカとの間にサービス協定を結んでおるわけでありますから、これに基づいて、アメリカにサービスを提供する障害が起こった場合に、保守するということは当然公社の業務であるわけであります。
  178. 西村力弥

    西村(力)委員 これは裁判に係争中であるからここで論議するのは不当だと言うけれども、しかしながら、公社というものは一民間機関じゃございませんでしょう。政府機関でしょう。こういうところが行なっておる問題を、ここで論議して悪いということはないはずなんです。しかも、今の副総裁の話によると、博多からのまん中か、対馬からのまん中か、そこのところはわからないと言うが、日本領土から向こうの朝鮮に上陸するまでの中間、こういう工合になるのは当然なんです。条約局長、そうでしょう、どうです。
  179. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 ただいまの問題、決して食い違っていないと考えております。すなわち、平和条約の先ほどの条項でございますが、これは申し上げました通り、半分々々で所有権を分かつのだ、これが原則でございます。しかし、申し上げました通り、実際にこれを適用して、それではどこからどういうふうにして、どこからどこまででどうするというようなことは、あの条文のままではそのまま実施するわけにはいかない。すなわち、はっきりした実質的な協定が必要であろうと考えます。その協定は、韓国とやるべきところの協定ではなかろうかと考えております。
  180. 西村力弥

    西村(力)委員 これは、韓国との場合においては平和条約の中に例外規定として、韓国と台湾の問題は、たとい講和条約に署名しなくとも、その他の取りきめがなくとも、この条項は除外して例外とする、他の国との場合には、日本とその二国間の平和条約ができない限りにおいては、それははっきりしないけれども、しかしながら、韓国との場合においては違うのだということ、それをはっきりと第二十一条ですか、それにこういう工合に規定しておるわけなんでございまして、韓国との間にまだ平和条約が結ばれないから、この間は未確定なんだということは、条約認めていない。はっきりそれを除外しておるじゃないですか、どうです。
  181. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 その点は、御指摘通りでございます。平和条約第二十一条でございます。
  182. 西村力弥

    西村(力)委員 しかも、第四条には、その他の島嶼とか何かでなく、海底電線ということをはっきり明記して、二等分される、こういう工合に書いてあるのでありまして、しかも、日本と朝鮮間のその関係は、平和条約が結ばれなければ発効しないというのではない、もうすでに、どんずばりと、この条約によってきまるのだということを規定しておるはずなんです。ですから、日本の領域から韓国の領域までのケーブル線の中間というもの、それは所有権の境としてこの条約によって確定されておるのだ、こういう工合に申さざるを得ないのです。いかがですか。
  183. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 ただいま申し上げた通りでございます。第四条についてこの受益者規定、第二十一条の規定がございますから、第四条の(c)項、これにつきましては韓国もこの利益を受ける、従いまして、御指摘通りでございますが、先ほど申し上げました通り、この原則をこの一項目だけで、日韓間のあの電線を現実に運用できるかどうかということになりますと、それは私はできないと考えます。そこで、それをどういうふうに現実に適用して取りきめをやっていくかという、取りきめは必要になるかと考えます。しかし、それができないからといって、この条項、その半分々々の所有権の条項がまだ有効でないというようなことは、私申し上げておるつもりはございません。これは原則として有効でありまして、この通り適用になるが、これの実施というものは、あくまでもやはり細目規定が必要であろうというふうに考えております。その規定は、まだできていないわけでございます。そうして第四条の(c)項は、もとの規定として、原則規定として生きている、こういうわけでございます。
  184. 西村力弥

    西村(力)委員 この平和条約に基づく権利を取得するには、朝鮮、中国を除いて、その他の国は二国間の平和条約によってそれを享受する、こういう以外にはないが、そこでは中国と朝鮮というものは、この二十一条によって、他の取りきめを行なわなくても、この条約によって受けるべき権利というものは確立されたのだ、はっきりさように規定しておるわけなんでありまして、今電電公社が言うがごとき解釈をとるとするならば、これは電電公社のあなたに聞きますが、その境界はどこだかわからないということになってしまう。とするならば、あのケーブル線というものは、東京から昔の新京ですから、今の長春、あそこまでが当時の郵政省ですか、その所有になっておるわけなんです。日本の国の所有である。今のあなたの主張をそのまま受け取るとするならば、日韓間のケーブルどころか、長春まで全部おれのものだと主張するのと何ら変わらない、こういう工合に私は思うのです。それで私は、この件につきましては、この主張というものは、北半分も電電公社の所有であるという主張は電電公社の主張であるとともに、政府自体の主張である、こういう工合には言えないのかどうか。その点は郵政大臣、どうお考えですか。
  185. 植竹春彦

    ○植竹国務大臣 この問題につきましては、日本は北半分を放棄したとあります。そして、平和条約には、その放棄した結果帰属するのは向こう側、要するに、韓国であるというふうに書いてありますけれども、それは日米間の平和条約であって、その韓国というのは、平和条約から見れば第三国になっているわけでありますから、そこに、その潜在所有権は確かに韓国にあるでありましょうけれども、このケーブルは、普通の財産と違って、ぶっ切ってしまって、それから向こう側とこっち側と、同じ管理を続けて参りますれば、それはケーブルが完全に使用できるでありましょうけれども、これが別々に、よく打ち合わせをしないで、操作したり管理していくということはできない。それで、管理権は、やはり法理的には米国側が持っている、さように郵政省では考えております。
  186. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 この際、井手以誠君から関連質疑の申し出があります。これを許します。井手以誠君。     〔「こちらの関連が先ですよ」と呼ぶ者あり〕
  187. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 ただいまの関連質疑は撤回せられました。西村力弥君。
  188. 西村力弥

    西村(力)委員 また新しい言葉を聞いたのですが、確かに海底ケーブルは、中間で切っちゃって、それで使用価値のあるものじゃないから、これはわかります。所有権というものは、どこの国とどこの国とやる場合でも、まん中ということははっきりしている。そのまん中から向こうは放棄したのだから、それはやはり朝鮮の国に返したのだから、日本の所有権でないということははっきりしている。それを、北半分も電電公社の所有であると主張することを郵政大臣は認められるか、ということを私は聞いておるのです。
  189. 植竹春彦

    ○植竹国務大臣 私が先ほど申しましたのは、連合国と日本との間の平和条約には、この問題の相手方となっている韓国——相手方と言うと言葉が悪いのですが、ケーブルの向こう側になっております韓国は第三者の立場に立っておりますので、放棄したからといって、すぐ韓国に完全な所有権が移ったとは考えてない、そういう意味で潜在所有権ということを申したのでありますが、ただいま事は係争中になっておりますので、郵政省といたしましては、使用者側にも、また組合側にも公正な立場をとる関係上、係争中の事柄についての郵政省としての意見の開陳は、この際、差し控えたいと思います。
  190. 西村力弥

    西村(力)委員 差し控えたいと言うが、事は平和条約に関する日本の領海の問題です。こういうことなんだから、控えるもへったくれもない。裁判になろうとならなかろうと、この平和条約を正しく解釈するのが日本政府の義務です。だから、私が聞くのは、この平和条約第四条の(c)項によって、北半分は日本のものでなくなったのだというように私たち解釈するが、公社側が、そちらの方も公社の所有であるという工合に主張していることを、郵政大臣は認められるか。講和条約を結んだ日本政府として認められるか。これは一つ岸総理に聞いた方がいい。総理一つ答弁をして下さい。
  191. 林修三

    ○林(修)政府委員 これは条約解釈の問題でございます。従って、政府としての解釈は、先ほど条約局長が申したことで私は尽きていると思います。つまり、この平和条約四条(c)項、これは要するに、日韓間の海底電線については半分で切って、南側は日本、北側は韓国、これは先ほど条約局長が申し上げました通りに、二十一条のいわゆる受益条項と申しますか、あれによって、韓国は、この平和条約の署名国ではございませんけれども、一応の権利は、利益は享受しているわけでございます。ただし、海底電線につきまして、いわゆる半分の地点をどこから計算してどうするかという問題については、これはまさに日韓間の交渉によって、日韓間で取りきめができないと、私ははっきりはできないと思います。しかし、建前は、先ほど四条の(C)項の解釈につきましては、私は、条約局長の申したのが条約解釈であると思います。ただし、これは問題は訴訟問題になっておりまして、訴訟問題で、いわゆる準備書面として、これは原告、被告双方ともだったと思いますが、いろいろな予備的主張をするのは当然のことでございまして、私は、これをもって直ちにすべてが——その幾つかの主張はあるわけであります。それについては、私はやはり公社の弁護士、これがいろいろ考えてやっていることだ、かように考えます。
  192. 西村力弥

    西村(力)委員 半分をどこから引くかということは、今後の協定によってしか確定されないということになりますが、半分というようなことは、常識的に言って少しはズレがあるでありましょうけれども、今度の作業に従事した地点は、朝鮮の領域から九キロの地点である。そこら辺をもって半分とするという工合には言えるかどうか。そういうことはもちろん言えないでしょう。そういうことはとにかくとしても、半分を放棄したのだから。ところが、公社側では、その北半分も全部公社の所有であるというわけなんです。こういうふうなことは、世界の相当の国を相手として、新生国家に踏み出すために結んだ平和条約解釈として、うかつな解釈をすべきじゃない、こういう工合に私は思うわけです。しかも、係争中であろうとなかろうと、国が一つの主張をする場合に、普通の民間事件における普通の弁護士が自分の主張を何でもいいから主張するというような、こういう立場はとられていないはずなんです。国の立場を中心として主張をしていくということ、これは当然であると思います。裁判であるから、国側の代理弁護人も、もうへ理屈でも何でもいい、詭弁でも何でもいいから、一つの理屈をつけて勝訴に持っていこう、こういうような立場をとるということは、国側の代理一人としては、これは適当ではない。これは国側を代訴するのは、はっきり国の立場に立った主張をすべきは当然である、こう思うのですが、いずれにしましても、私は、この北半分も公社側の所有であるという工合に主張することが、この条約上から正しいかどうか、所有権はこっちにあるということが正しいのかどうか、こういうことについて明確に御答弁を求めたいと思います。
  193. 林修三

    ○林(修)政府委員 政府としての解釈は、先ほど条約局長なり私が申し上げたところで、私は正しいと思っております。ただし、先ほど電電公社の副総裁が言われましたように、学説的にはいろいろな考え方もある。従って、いわゆる準備書面においていろいろな学説を引用して主張される、これまた一つの訴訟技術の問題だと思います。
  194. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 この際、森本靖君から関連質疑の申し出があります。これを許します。森本靖君。     〔「関連質問の申し出はこっちが先だ」と呼ぶ者あり〕
  195. 森本靖

    森本委員 簡単にお尋ねいたします。ケーブルの半分と半分が日本と韓国であるということを今言われましたけれども、実際問題として、これが管理権というものがアメリカにあるというように言われておりますが、アメリカが管理権を持っておることについては、法的に、具体的にどこを根拠にして管理権があると、この管理権の問題について、先にちょっと明確に言ってもらわなければ困ると思います。
  196. 横田信夫

    ○横田説明員 お答えいたします。米軍が持っておる管理権という問題の根拠でありますが、これはメモランダム・アグリーメントというものを、アメリカ合衆国政府のための契約官とわれわれの方の契約担当者との間で結んでおる中に、明瞭にアメリカの方は「釜山中継所池浦に所在する首題ケーブルヘッドおよび当地点より日本側へ延長している首題ケーブルの紛争区間(平和条約第四条C項参照)についての管理権を保有しているので、」こういう明文がありまして、それに基づいてわれわれは、この日韓ケーブル、海底ケーブルの使用についてのサービスの契約を結んでおるわけであります。
  197. 森本靖

    森本委員 その契約というのは、法的にどのものに基づいての契約を結んでおるわけですか。
  198. 横田信夫

    ○横田説明員 このサービスにつきましては、御承知のように、サービス基本協定というものに基づきまして、われわれは、例の特例法によるアメリカとの諸種のサービス契約を結んでおるわけであります。
  199. 森本靖

    森本委員 それでは、その場合のサービス料についての協定はどうなっておるわけですか。
  200. 横田信夫

    ○横田説明員 ただいまの料金につきましては、そのサービスごとにいろいろの料金が作られておるわけであります。
  201. 森本靖

    森本委員 そのサービス料については、そのときどきにおいて変わるといいますけれども、こういうものの修理、それから保守そういうものについては、あらかじめ一定の料金があると思うわけです。その一定の料金というものは、どの形において幾らときまっておるわけですか。それから、これが南北両方にそれぞれ分かれておる、こういうことでありますから、その日本側についてはどういうようになっておるか、韓国については具体的に料金がどうなっておるか、こういうことについて伺いたい。
  202. 横田信夫

    ○横田説明員 大体その場合のこういうケーブルの保守については、大体必要とする実費を標準として考える。その場合の計算方法はこういうようにするということが、相当詳しくきめられております。  なお、その点につきましては、詳細について、もし必要であれば担当の局長から……。
  203. 森本靖

    森本委員 この際、ちょっと聞いておきたいと思いますが、電電公社が今までアメリカ軍にいろいろサービスをいたしまして、実際問題として、昭和二十八年以降について、約四十数億の、アメリカ軍からもらわなければならぬ料金の未払いがあるということを聞いておるわけでありまするが、これは事実ですか。これもおそらくこの中に入ると思いますが……。
  204. 横田信夫

    ○横田説明員 これはただいまのお話は、このケーブルの保守の問題でなくて、アメリカ軍の専用線の料金として、日本全体の問題についての計算の問題かと思いますが、この点については、実は、アメリカの方とわれわれの方と解釈を異にいたしておりまして、われわれの計算によると、このくらいになるという計算をいたしておりますが、アメリカの方では、そういう計算にならないということで、まだその計算方法の係争中でございます。従いまして、これは未収金でなくて、これは確定いたしてからわれわれとしては調停するということになっておるわけであります。なお、その点は、そういう解釈にいろいろ疑義の起こる根拠があるのでありまして、われわれとしては、われわれの主張が正しいとは思っておりますが、必ずしもアメリカ側解釈が全然ゼロであるということではないと思います。ここに解釈上のいろいろの問題がある、こういうことであります。
  205. 森本靖

    森本委員 その問題は、また別のときにお聞きをいたしまするが、一応電電公社当局とアメリカ軍との解釈が違っておるというお話でありまするが、電電公社当局が、アメリカからこれくらいもらわなければならぬという金額が、二十八年からたまりたまって、公社としては、大体その金額が幾らぐらいと考えておるわけですか。
  206. 横田信夫

    ○横田説明員 お答えいたします。私たちの計算で約四十数億でありますが、それはこういうことであります。これはお話をすればよくおわかりだと思いますが、われわれのアメリカに提供いたしておるサービスにつきましては、日本政府並みと申しますか、それと同様な待遇の料金ということで提供するということが、大体の了解になっております。その場合に、実は、電電公社から日本政府機関に提供いたしておるサービスにいろいろな種類がありまして、特別に安いのが、警察方面に安くなっておりますが、アメリカの方としては、日本政府並みといえば、最も安いところを標準にすべきだ、こういう話があるわけであります。われわれとしては、必ずしもそうは考えない、一般政府機関並みだ、われわれとしてはこういう解釈であります。そこで、そういうような計算の食い違いが起こって、まだ話が解決いたしてない、こういうことであります。話が解決してから調停いたすことにいたしておりますので、もう調停の——今の御指摘のところも、専用線のうちの一部でありまして、その話のついているものについては、順次料金はいただいておるわけであります。
  207. 森本靖

    森本委員 その問題は、四十数億の、電電公社当局が当然もらわなければならぬ金額が、いまだに二十八年以来のものが積もり積もってもらっておらないということについては、これは非常に大きな問題であろうと思うわけでありまして、これは別途、またこの問題だけで質問をしたいと思います。  もとの海底電線に返りますが、この海底電線の中で、北の方は韓国がこれを所有しておる、こういうことでありまするけれども日本アメリカの管理権に基づいて、また、そのサービス約款において、いわゆるサービスしておる、こういうことでありまするが、そういたしますと、アメリカと韓国との間における何か話し合いがありますか。そうしないと、北半分については、日本がこれを一体どこに請求をするかということになってくるわけであります。
  208. 横田信夫

    ○横田説明員 私どもといたしましては、アメリカの管理権のもとに、アメリカと韓国政府との間にどういう協定が成立いたしておるかということは、われわれにとっては不詳であります。
  209. 森本靖

    森本委員 関連でありまするから、もうこの程度でやめますが、非常にこの点については疑問の多い点がまだ多々あるわけでありまして、相当の時間をかけてやらなければ、これは明確にならぬと思いますけれども、ただ一点だけ、最後に聞いておきたいと思いますることは、この海底電線の内容は、一体何に使われておるか。それで、この海底電線の内容が、具体的に、電話回線がどの程度あって、それからあと、どういうように使用されておるのか。その使用の内容について、ここで明確にしておいてもらいたい、こう思うわけです。
  210. 横田信夫

    ○横田説明員 この回線は、実は、専用線でありまして、この専用線の中身につきましては、電話と電信に使われておりますが、その使い方につきましては、随時ある程度の変動があってもいいわけでございまして、そういうことで、電話と電信と、両方に使われておるわけであります。
  211. 森本靖

    森本委員 いや、その電信と電話に使っておるというのは、具体的に、どの回線をアメリカ軍が使って、どういうように使っておるか、その回線のつながり方はどうなっておるか、そういうことについて、もし明らかにできれば、この際、明らかにしておいてもらいたい、こう思うわけです。
  212. 横田信夫

    ○横田説明員 実は、その御質問の意味がよくわからないのですが、まあ、これは容量としては、四クワッドの線を専用するとして、アメリカの方に専用を貸しておるわけであります。四クワッド——一クワッドが大体電話にいたしますと、七回線程度の容量を持っております。これは、しかし、電話の回線も御承知のように、電信にも使えるわけでありますので、電信の方にも必要によって使われておる、こういうことになっております。
  213. 森本靖

    森本委員 その電信と電話の回線数はわかりますが、それが具体的に全部アメリカの軍用線ですか。
  214. 横田信夫

    ○横田説明員 この内容につきまして、内容の事項が軍事的な内容であるかどうか、その辺はわかりませんが、軍の専用線として使われておるわけであります。
  215. 西村力弥

    西村(力)委員 それでは整理して参りたいと思いますが、地裁に出した準備書面、高裁に出した準備書面、これにおいて主張しておる、平和条約いかんにかかわらず、日韓間のケーブルの北半分も公社側の所有であるという主張、この主張は公社側においては変えられませんか。
  216. 横田信夫

    ○横田説明員 裁判上のいろいろの問題がありまして、この裁判の問題については、今御指摘のような主張一本でいっておるわけではなくて、いろいろな理由を兼ね備えて申しておるわけでありまして、控訴趣意書をごらん願うと、その辺が相当詳細に出ておるわけであります。
  217. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 西村君、裁判所の事件の問題と安保関係とは、別に離して質問していただきます。
  218. 西村力弥

    西村(力)委員 いや、私たちは、裁判の主張の良否、そういうことを聞いているのではなく、この準備書面に出た所有権の主張というものは、これは公社自体の不動の主張であるという工合に私たちは見ておる。その点がかりにいろいろ問題があろうとも、北半分も公社の所有だという主張は変わらないのだ、こういう工合に言われるのかどうかということです。どうです。他のことは一切要らない。
  219. 横田信夫

    ○横田説明員 ただいま申し上げた通りでありまして、ほかの問題と全部これは関係いたしておりますので、控訴趣意書の中にその辺が全部詳しく出ております。
  220. 西村力弥

    西村(力)委員 他のものと関連してというけれども、これは切り離してもちゃんとある。他のものと関連してこういう所有権というものが生み出されるものじゃなくて——所有権があるという前提に立つ理由のつけ方、それはあるでしょう。あるでしょうが、所有権があるのだという主張は、これは一つはっきり基本として独立してあるはずだ、そういう工合にあなた方は主張せられると思うのですが、そういうことが、このサンフランシスコ平和条約解釈認められるかどうか。こういうことを、これは政府側の責任ある岸総理一つ最後的に尋ねたいと思うのです。
  221. 岸信介

    岸国務大臣 先ほど来条約局長及び林法制局長官がお答えを申し上げた通りでございます。
  222. 西村力弥

    西村(力)委員 そうすると、北半分の所有権はないんだ、放棄したのだ、こういうことを条約局長が平和条約解釈として言われたが、その通り岸総理認められますか。
  223. 林修三

    ○林(修)政府委員 その点は、先ほど私二回ほどお答えしたつもりでございますが、条約局長のお答えした趣旨と同様でございまして、平和条約の第四条(C)項、これは要するに、半分々々にするということでございます。その半分半分にするという条項は、二十一条によって、韓国は署名国ではございませんけれども、事実上受益条項はある、従って、韓国に一応権利はいっている、かように考えるべきだと思います。ただしかし、その半分々々の場所がどこかということはこれは両国ではっきり協定しませんと、当然きまらないことでございまして、これについては、両方の協定がなければ、また運用についても運用できないわけでございまして、これはもちろん両国間の協定が要るわけでございます。それからその公社の準備書面につきましては、先ほど副総裁が言われましたように、訴訟の一つのテクニックとしていろいろの主張をされるのは、これは当然でございまして、そういう解釈もあり得るわけでございますから、学説としてあり得ることを述べることは私は当然である、かように考えております。
  224. 西村力弥

    西村(力)委員 半分々々として、半分は放棄しているが、その境目をどこにするかということは、これからの二国間の合意によってきまるのだというが、半分放棄したという立場からいうと、この問題が発生したときは、朝鮮の領域から九キロのところだ、こういうことになっている。そういうところを線を引いて半分だと言えるかどうか。
  225. 林修三

    ○林(修)政府委員 その点は、先ほど公社の方からもお答えがございました通りに、この北側につきましては、アメリカが韓国からの何か管理の委託を受けて、そういうアメリカと公社が契約しているわけでございます。そういう意味におきまして、そこの点は、つまり、この半分についての所有権問題は、準備書面で、一応こういう説があるからこういうふうに主張する、ただし、そうでなくてもこうだというふうに、訴訟の技術はいろいろ——御存じのことだと思いますが、そういう点で、私は、公社は準備書面で、いろいろな点を一括して主張しているのだと思います。その一つを取り上げて、これはどうだこうだと言われるのは、訴訟の準備書面については適当でない、かように考えます。
  226. 西村力弥

    西村(力)委員 公社側の主張は、北半分も全部公社側の所有だ、こういうふうに主張している。あなたの答弁ですと、どこに境を置くかということは交渉だ、そこには全く違った立場があると思うわけなんです。たとい裁判上のテクニックといえども、北半分の全部を公社側の所有だという主張は、この条約解釈上成り立つかどうか、どうです。
  227. 林修三

    ○林(修)政府委員 政府解釈は、先ほど来申し上げているわけでございまして、しかし、先ほど副総裁の言われましたように、これは公社としての立場で、たとえば学説の一部としては、韓国との間の条約はまだできていないのだから、日本側としては言えるという説もある。そういう説を援用してすぐに法廷に臨むということは、私は、別に何ら、公社の自由あるいは弁護人の自由でございまして、それをとやかく申すべきことではないと思います。
  228. 西村力弥

    西村(力)委員 いかにしましても、この日韓間の海底ケーブルの所有権の論争は、サンフランシスコ平和条約解釈の問題であるから、弁護人の自由だ、そういうようなことを政府機関の法制局長官答弁をするなんということは、僕は許されないと思う。民間機関がそれを言うならばとにかく、政府関係機関であるものがそういうことを主張したならば、この平和条約解釈というものは、全く政府自身の手によって一方的な解釈がなされる、この趣旨そのものを没却するということに相なるのではないかとと思うのです。(「それじゃどうしろというのだ」「日本の主張は早く負けろというのか」と呼ぶ者あり)負けろというのではなくて、政府関係機関は、講和条約解釈において、半分は捨てたのだという政府の主張と全く反する。全部おれの物だという主張ができるかどうか。それはよろしくないということなんだ。私はそれを言う。この問題は、行政協定に入るときに、また詳しく問題にしなければならぬことであると思うので、これでやめますが、この千代田丸事件の示すこと、今までおわかりの通り、公社側が、危険が現実に予想される地域に、日本国民を、米軍に対する奉仕であるという立場から、就労を命じて、それを拒否したために、馘首をした。このことは、裁判所においてもはっきり認めておる。そういう危険な場所に行くことを拒否することは、これは労働者の権利である、こういうことをいって、原告の勝訴にしておるわけなんでありまして、こういう実態は何であるか。米軍の場合においては、日本国民の生命の危険をも顧みないというような、こういう立場を示しておるのでないか。それからまた、他の場合においては割合に軽い停職六カ月程度の処分で済むが、この場合においては最も重い三名の馘首を含む処罰をやっておるということ、それは何であるかというと、先ほどから申し上げましたように、行政処分においても刑事特別法的な考え方が実際に行なわれておるのだということ、こういう点をこの際指摘をいたしまして、それでこの点に関する質問を一応留保いたしたい、こう思います。
  229. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 この際、椎熊三郎君から関連質疑の申し出があります。これを許します。椎熊三郎君。
  230. 椎熊三郎

    椎熊委員 西村君の本朝来の発言の中に関連いたしまして、政府に質問したいと思います。もとより関連質問でございますから、ごく簡単に、いずれ私どもの持ち時間がきましょうから、その際は詳細に質問したいと思います。本日は、なまなましいいろいろな新しい事実をとらえて、政府見解を承りたい。  先般来、アメリカの飛行機がソビエトの領空を侵したという問題が、非常な大問題になっております。そうして、ソビエトの領空を侵したと同じような種類の飛行機も、日本アメリカに貸してある基地の中に、三機くらいおるのだということも、明らかにされているようでございます。本日も、西村君の午前中の質問には、そのことについて、いろいろな角度から質問があったのであります。ところが、本朝の毎日新聞を見ますと、ソビエトが先般この事件に対して発表したのと符節を合わせるように、二年ほど前から、樺太、択捉、国後等から定期的に日本の周辺に飛んでくる飛行機がある。それを東京急行便と命名しておるほど通俗的になっておって、一方には太平洋沿岸、また一方には日本海の佐渡島の上空をも飛んでおるということが報ぜられております。そういう事実が、防衛庁の電波探知機と申しましょうか、そういうようなものでキャッチされておるのでありましょうか。そういう事実があるかどうかということをお伺いしたい。
  231. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 具体的のお尋ねでありまするが、レーダー・サイトにキャッチしておるものによりますと、北海道方面から東京湾の湾外に週二回ぐらい、多いときには三、四回、また、少ないときには月に三、四回、定期的に領空すれすれに飛んでくる飛行機はキャッチしております。
  232. 椎熊三郎

    椎熊委員 ただいまの防衛庁長官の御答弁によりますと、領空を侵犯しておらないというように受け取れる答弁がありましたが、毎日新聞の記事によりますると、三十三年の四月二十六日、北海道千歳の第二航空団というものに、当時の津島防衛庁長官から航空幕僚長を通じて、領空侵犯に対し緊急迎撃出動の態勢に入るよう指令をしておる。そういうことが出ておるのです。そういう事実があったとすると、どこの飛行機かわからぬが、北海道の上空、日本の領空を侵犯されたという事実がなければ、こういうことができないのだろうと思うが、その事実があったかどうか。
  233. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 御承知のように、昭和三十三年の五月ごろでしたか、レーダー・サイトが二十一、日本に移管されております。でありますので、自衛隊といたしましては、領空侵犯のおそれがありますときには、領空外に立ちのけ、こういう命令を出します。それからまた、ある基地へそれにおりろという命令を出すわけであります。それできかないときには交戦みたいなことになることがあるかもしれませんが、そういうことでやっていますが、領空侵犯らしいものが、過去一年において約二十回程度あります。常にそういう用意を千歳等においても整えておるわけであります。国籍不明機と申しましたが、それは日本の飛行機ではありません、アメリカの飛行機でもないということであります。
  234. 椎熊三郎

    椎熊委員 要するに、国籍不明の飛行機が、過去二十数回にわたって日本の領空を侵犯したという事実が明らかなようでございますが、この毎日新聞の記事によりますと、その怪飛行機は、二ないし三の編隊をもって日本の周辺にやってくる。しかも、その装備は、写真と電子装置で偵察をしておる。そうして定期便と称せられるものは、樺太あるいは国後、択捉島方面から飛んできては、房総半島の沖合いに来て帰っていく。そういうことを一週間に二回ないし月に二、三回繰り返してやっておる。その飛行機は、一体防衛庁としてはどこの国の飛行機だと考えられるのか。それが明確にされないのかどうか。私はそんなはずはないと思う。明確にできると思う。国際上の何か都合で発表できないなら、私はしいて聞こうとはしないが、できるならば差しつかえない範囲において、これはどこの国の飛行機だと認定できますという程度のことは、お答になってもしかるべきだと思う。いかがでしょう。
  235. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 先ほど御答弁申し上げましたように、レーダー・サイトでキャッチしておるものでありますが、領空侵犯するかしないかというすれすれのところが多いのであります。キャッチした結果、日本の飛行機でないということ、それからアメリカの軍用機でもないということ、それから日本の飛行場から発着する航空機でもないということ、爆撃機であるというようなことは承知しております。
  236. 椎熊三郎

    椎熊委員 だんだん奇々怪々な事件だと思うのですが、私が先ほど来聞いておりますのは、三十三年の四月二十六日に、北海道千歳の第二航空団というものに、時の津島防衛庁長官から、領空侵犯に対して緊急迎撃出動を命じたということがあったのかどうか。
  237. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 緊急命令といいますか、ちょうど三十三年の五月ごろにレーダー・サイトを日本で引き受けましたので、日本の自衛隊におきまして、常に、日本の領空に近づくようなものに対しては、今のように待機していました日本の自衛隊の飛行機が飛んでいきまして、領空から離れるように、あるいはまた離れないときは着陸を命ずる、こういう措置は常時とっております。
  238. 椎熊三郎

    椎熊委員 私は軍事専門家でありませんから、わかりませんけれども、迎撃出動を命ずる、迎え撃つ出動を命ずるということは、われわれしろうとからいうと、戦闘開始状態みたいな命令のように受け取れる。これは領空の侵犯なくしては、断じてそういう命令は出されるはずがないと思うのだが、そういう事実があったのか、その当時の状況はどうであったかということを、きょうもし即刻お答えができなければ、私どもは、この問題について、われわれの持ち時間で詳しく聞きたい点がございますから、御調査おきを願いたい。あなたの時代でなく、前の長官の時代ですから、わからぬ点がありましたら、調査を願いたい。しかし、きょうここで答えられる点がございましたら、なるべく詳細にお答えを願いたい。
  239. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 領空侵犯につきましては、自衛隊法の八十四条がありまして、「長官は、外国の航空機が国際法規又は航空法その他の法令の規定に違反してわが国の領域の上空に侵入したときは、自衛隊の部隊に対し、これを着陸させ、又はわが国の領域の上空から退去させるため必要な措置を講じさせることができる。」こういう規定によって処置していますが、今の具体的な問題については、政府委員から答弁をいたさせます。
  240. 椎熊三郎

    椎熊委員 なお、ついでに御調査おき願いたいのですが、私は去年の五月ごろと記憶いたしますが、北海道に当別というところがございます。空知原野の一端でございます。そこに青山というところがありまして、そこの山の中に、青山レーダー基地とわれわれが通俗に呼んでおる場所がある。そこを私、参観したのでございます。なお、その当時は、米国の軍人らしい人も多少おったようでございます。そこで、いろいろレーダーの説明を聞いた際に、ここのレーダーは実に性能がいいので、いろいろなことがわかるが、北海道は樺太や択捉や国後に近いものですから、しょっちゅうソビエトの飛行機とおぼしきものが北海道の上空に飛んでくるのです。それが全部映るのです。そして、そのたびごとに、それに対する措置をこちらは講じておるということを聞いて、実はびっくりしたのです。きのうモスクワにおけるチェコの何か記念式典におけるフルシチョフの演説などが、新聞に報ぜられておるところを見ますると、実に大胆にして驚くべき発言をして、われわれにとっては一種のどうかつでないかと思われるような発言さえあります。これはアメリカ飛行機のソビエト領空侵害に対しての発言でありました。しかるに、私どもは現地に行って聞いて参りました。下級の人ではございましょうが、ソビエトの飛行機とおぼしきものが、しょっちゅう北海道の上空に舞い込んできておるというような事実が、数十回にわたって繰り返されておるという、この事実を、一体あなた方防衛庁としては、どういうふうに今後処置していくつもりか。また、これがいろいろ紛争の種となって、日本の平和と安全が害されることは、私はいけないと思います。何らかの方法によって、こういう不当の行為に対しては、防衛的な手段を講じなければならぬのではないか、その点を私は心配するのでございますが、御意見いかがでしょうか。
  241. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 領空侵犯につきましては、先ほどの規定がありますように、領空から領空外に退去するように、あるいは着陸を命ずるというのが、国際的の慣例といいますか、とるべき手段であります。フルシチョフの演説のように領空侵犯があったら基地を攻撃する、こういうことを私ども不敏にしていまだ聞いておりません。でありますので、領空侵犯がありますときには、今の措置をとることと、領空侵犯が非常に多いようでありますならば、やはり抗議を申し込むということにいたしたいと思います。
  242. 椎熊三郎

    椎熊委員 私は、本日のところこの程度でやめますが、実はこの質問をしようとする寸前に、本日の夕刊を見せられました。これまた私驚き入ったのでありますが、ソビエトが発表したアメリカの飛行機であると称する残骸のようなものの写真が、新聞に掲載されておる。それに対してアメリカ側で、黒いジェット機と俗に呼んでおる飛行機を製作した会社の人たちが、写真からこれを検査して、写真をよく調査して、これは自分の会社で作った世にいうところの黒いジェット機というものじゃないのだ、それとは全く違うものだ、そうしてまた、領空内に二千キロも侵入していって、ロケット弾か何かでそれを撃破したということになると、こういう残骸は残るはずはなし、乗組員が生存しておるということはあり得ないことだということが発表されておる。そうしてみますると、フルシチョフが得意になって、えらそうなことを世界に向かって発言してみたが、何だか私どもしろうとからは奇々怪々の事件のように思われてならないのです。そこで、政府におかれましては、この種の質問に名をかりて、日本人では口にすることのできないような言辞を弄するような質問に対しては、最も慎重なる態度をもって、未確定なる事実、それから不十分なる材料等において軽々なる答弁をしては相ならぬ、これは国際的に大きな波紋を残す問題だから、十分調査の上に自信のある御答弁をなさることが、日本の平和と安全のために、特に注意しなければならぬ点であると私は考える。そういった点について、特に防衛庁長官は重責にあられるのですから、慎重な態度をとっていただきたい、こういう私の希望を申し添えまして、私の本日の質問はこれで終わります。
  243. 西村力弥

    西村(力)委員 最後に、二、三点についてお尋ねしたいと思います。  先ほど、これからの日本が韓国に対する、あるいは朝鮮全体に対する態度、こういうことにあたって、朝鮮の民族に対しては四十年の植民地的圧政を行なった、このことについては、深く讀罪の気持を持って処していこうということは、岸総理認められましたが、このお気持は、韓国に限らず、北鮮に対しても同様の気持で対処するのだ、こういうことであると思うのですが、その点を明確にしていただきたいと思います。
  244. 岸信介

    岸国務大臣 朝鮮施政の問題につきましては、朝鮮の民族が、南といわず北といわず、不満を持っているという点に関しましては、われわれとしては、将来これらの地域と平和条約を結び、国交を正常化して、永遠に両方の繁栄と友好関係を作る上におきましては、謙虚な気持でこれに対処すべきものである、その間におきまして、南と北を区別すべきものでない、かように思います。
  245. 西村力弥

    西村(力)委員 そうしますと、かつてこの国会でも問題になりました、岸・ブラウン会談によって明らかになった、朝鮮や台湾を共産側から守ることが、日本にとっても絶対に必要である、日本がそのような脅威から守られなければならない、それがまたアメリカの政策でもなければならない、それでなければ、太平洋の全地域は安全でなくなるだろう、こういう工合に話されたことは、取り消さるべきであると思う。これを取り消さないとするならば、現実に北鮮は、社会主義国家によって隆々の発展をしておる、これは「世界」に岩本さんも書いていらっしゃる。そういうことを何らかの武力的な方法でつぶして、北鮮の共産主義の侵略をとめて、そうして韓国的な政治体制に全部を一体とするのだ、こういう主張になる。南北両朝鮮の人民に対して同等に扱うということと、この関係からいきますと、どうしてもそういう方法をとらざるを得ないという工合に私は思うのでございます。この岸・ブラウン会談については御否定もなさっていらっしゃるようでありますが、こういうことは取り消される、こういうことをこの際明言をしていただきたいと思う。
  246. 岸信介

    岸国務大臣 私は、朝鮮の問題につきましても、あるいは台湾の問題につきましても、同じように考えております。いわゆる武力によってこれが統一をはかられる、あるいは武力による解放というようなことは、私どもはあくまでも望むところでない、平和的な方法によってこれが解決されるということは、われわれの心から望んでおるところでございます。そういう意味において、私は従来もそう考えておりますし、現在におきましてもそういう考えを持っております。先ほどお話しになりましたように、韓国から武力でもって北進して武力統一するということが望ましくないと同様に、もしも北の方で南進武力統一ということを考えるならばこれまた望ましくないものである、われわれは、平和的にこれが解決されるということをあくまでも望んでいく、こういう考えでございます。
  247. 西村力弥

    西村(力)委員 大へんけっこうなお話でございますが、そうしますると、これから朝鮮民族が、南北を問わず一体となって、いずれの政体を選ぼうとも、それは朝鮮民族の自由だ——彼ら民族としての願いの最大のものは、民族統一だと思う。これは岸総理認められると思う。そういう場合に、北鮮側の社会体制、経済体制をとろうが、韓国側の体制をとろうが、いずれをとろうとも、朝鮮人民の自由である、こういうふうな基本的立場承認されなければならないと思うが、これを御承認なさいますか。
  248. 岸信介

    岸国務大臣 どの国がどういう政体をとるかということは、そこの民族が自発的にきめるべき問題である。従って、きまった場合におきましても、その政体が違っておっても、われわれはお互いの立場理解し合い、尊重し合って、そうして平和的に共存していくということが、世界の平和のために必要である、こう思います。
  249. 西村力弥

    西村(力)委員 大へんけっこうでございます。そうしますと、日韓会談も中断しておりましたが、幸い再開される機運も開けておりまするが、韓国を全朝鮮を代表する唯一の政権として条約を結ぶなんということは一切行なわない、こういうことをここで言明されるべきであると思うが、いかがですか。
  250. 岸信介

    岸国務大臣 御承知のように、現在、同じ民族が北と南と二つに分かれており、その間においては三十八度線を境界として停戦の状態ができております。私どもは、この状態に基づいて、現在われわれといろいろな関係において最も深い関係にあるところの国との間に、友好親善の関係、国交正常化の問題を話し合っていくというつもりで、日韓の間の会談が再開されることを望んでおります。
  251. 西村力弥

    西村(力)委員 そのことは、その会談が妥結すれば韓国と平和条約を結ぶ、こういうことに結果するわけなんでありまするが、その際に私が言わんとするところは、この韓国が全朝鮮を代表する唯一の合法政権である、こういうような立場に立ってやってもらっては困る、こういう考えでございます。その点を一つ明確にしていただきたいと思うのですが、いかがですか。
  252. 岸信介

    岸国務大臣 この韓国の統一の問題については、御承知のように、国連で決議している問題がございます。これによって私どもは一日も早く平和的に統一されることを望んでおります。今お話しの日韓の会談につきましては、従来からの経緯もございますし、私ども、問題によってこれを処理していく必要があるだろうと思います。全然全体を代表しないものとして考えるわけにもいきますまいし、必ずこれを代表するものとしてすべてを処置するというようなことも、困難な問題があろうと思います。それらは事項により、事態によって十分考えていくべきである、こう思います。
  253. 西村力弥

    西村(力)委員 国連決議によって南朝鮮が合法的な全朝鮮代表機関だというような主張は、この問題に対する国連決議を調べてみますと、「朝鮮人民の大多数が居住している朝鮮の部分に対し、有効な統制と管轄権を有する一つの合法的な政府が設立された」こういう工合に「朝鮮の部分」ということをいって、その次には、「この政府は朝鮮のこの部分における選挙民の自由意思の有効な表現であり、」こういう工合に表現している。そして最後には、「この種の唯一の政府である」この種の唯一の政府、その地域を代表する唯一の政府、こういう工合に、その用語を非常に慎重にやっているわけなのでありまして、国連の決議云々によって、南鮮を唯一の政府として、全朝鮮を代表する政府とするというようなことは、これは根拠としてはならないことであると思うが、幸い今、どちらともつかない岸総理の態度表明がございましたが、これは一つ慎重にお願いしなければならない、こう思うのです。この際、私どもは、そういう立場に立って、韓国との交渉を慎重に、誤りなく進めていただかなければならぬわけですが、民族の平和的な統一を願っている岸総理、先ほどさように明言せられましたが、そのためにまず第一番になされなければならない問題は何であるかということになりますると、これはやはり朝鮮からの外国軍隊の全面撤退、こういうことがまず実現されなければならないと思うが、これに対しては総理はいかにお考えでございますか。
  254. 岸信介

    岸国務大臣 これは御承知の通り、国連の決議において国連軍が組織されて、それが韓国に駐留しておるという状態でございまして、この国連の決議が有効である限りはそういう状態が続く、また、三十八度線の状態も一応停戦の状態になっておるのでございますが、まだその事件が全部解決したという情勢ではございませんから、今お話しのような事態を直ちに作るということは望ましいことである、こう即断するわけにいかないと思います。
  255. 西村力弥

    西村(力)委員 今国連の決議が存在する限り、こういうお話でございますが、すでにして日本は国連加盟国の一員になったのでございますから、国連加盟国の一国としての自主的な、こういう立場をとらるべきが当然であると思います。そして一日も早く、こういう朝鮮から外国軍隊というものを撤退して、戦争の危険というものが存在するという前提に立つ駐留、こういうことをやめさせるということに努力すること、これは私たち最も望まなければならぬし、朝鮮民族の平和的な統一を願う気持は、まずそこに実現されなければならないのじゃないか、こういう工合に私は思うわけなんです。国連における自主的な日本行動でもって、そういう事態を解消する方向に進める、朝鮮民族の願望を十分に満たす努力をする、こういう方向に進むべきであると思うのですが、いかがでございますか。
  256. 岸信介

    岸国務大臣 今の現状から見ますと、まだその状態ではないと思います。
  257. 西村力弥

    西村(力)委員 大体これで終わりにしたいと思いますが、私たちはこれまでの質疑応答の経過を見ましても、また、私がいたしました質問においても、この条約に対する私たちの疑義と、危険性を感ずる気持というものは、一切解消しない。ことに事前協議において、日本の国に存在する在日米軍が戦闘準備態勢に入る、臨戦態勢に入る、こういうことは事前協議に入らないのだ、こういうことであったとするならば、事前協議条項なんということは何ら意味がない、こういうことをはっきり断定しないわけには参らないと思うのであります。私たちは、やはり残念ながら、この条約に反対する態度を、あくまでも堅持していかなければならないということをここに申し上げまして、私の質疑をこれで終了したいと思います。
  258. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 この際、井手以誠君から関連質疑の申し出があります。これを許します。井手以誠君。
  259. 井手以誠

    ○井手委員 ただいま同僚委員から敵視政策の具体的な事例を指摘して参りましたが、私は、ただいまから一つ駐留軍のNHK利用、いわゆる謀略放送といわれるものについてお伺いいたしたいのであります。  先日、郵政大臣は、床次委員に若干この点の答弁を行なっておるのでありますが、最近聞くところによりますると、郵政大臣、あなたは、四月の末でございますか、マッカーサー大使と会見をした際に、マッカーサー大使の、ぜひとも十二月まで存続してもらいたいという要望に対して拒絶されなかった、しぶしぶ承知をなさった。そこで大臣、あなたは、ただ承知しただけでは困るというので、マッカーサー大使から、十二月まで存続したいという覚書をほしいと言われたそうでありますが、これは事実でありますか。
  260. 植竹春彦

    ○植竹国務大臣 しぶしぶ承諾したという事実はございません。アメリカ日本との間で意見の一致いたしましたことは、この放送をやらないという点だけでは意見が一致しておりますが、いつからというふうなことは、まだそこまで意見が一致しておりません。これが事実でございます。
  261. 井手以誠

    ○井手委員 郵政大臣は、先般、この委員会において、あるいは三月二十二日の閣議において、新条約によっては法的根拠がないから、やれませんという報告なり、答弁をなさっておると私は記憶しておるのであります。新条約においては、駐留軍がNHKを利用して海外放送はできないと私は考えておりますが、その点はどうでございますか。
  262. 植竹春彦

    ○植竹国務大臣 NHKによるこの種の放送は、新条約によればきわめて困難であると思います。先ほど謀略放送というお言葉がありましたが、謀略放送はやっておりません。いわゆる神経戦放送なるものを二月十九日以来はやっておりません。一般のインフォメーション・サービスです。広報業務はいたしております。もうそういうふうに両方で意見が一致しておりますから、そう長いこと、ずっとアメリカがこれを持続してやるという考えはない模様であります。
  263. 井手以誠

    ○井手委員 もう長い問題ではないということでは済まされないのであります。新条約では法的根拠がなくなる、できないと、あなたはおっしゃった、その点はどうですか、できないはずでありますが……。
  264. 植竹春彦

    ○植竹国務大臣 きわめて困難と申しましたのは、法律改正をすればできるという意味でありまして、現在の法律のままでは不可能であります。
  265. 井手以誠

    ○井手委員 現在、当委員会に付託されておる新条約、新行政協定ではできないと私は考えておりますが、いかがですか。
  266. 植竹春彦

    ○植竹国務大臣 現在のままではその通りであります。
  267. 井手以誠

    ○井手委員 それでは郵政大臣は、新条約、新協定のもとでは、これが発効するとすれば、その日から取りやめるということを確認なさいますか。
  268. 植竹春彦

    ○植竹国務大臣 これは多少のスリップは、実際の行政でございますから、たとえば自動車でも、ブレーキをかけましても、多少の実際のスリップはあろうかと思います。しかし、これは法規上できないことでありますから、国内法規にもとらないようにするために、あらゆる努力を払って参る所存でございます。
  269. 井手以誠

    ○井手委員 法律の根拠がなくてできるはずはございません。それは知ってのはずだ。大臣が知らないはずはございません。スリップなどということは言えないはずだ。  それでは、重ねてお伺いをいたしますが、新条約、新協定が発効いたしますると、即日から廃止になると承知をしてよろしゅうございますか。
  270. 植竹春彦

    ○植竹国務大臣 そういたしたいと思います。アメリカとよく交渉いたします。
  271. 井手以誠

    ○井手委員 大臣、いたしたいと思いますということでは承知ができません。そんなものではないはずであります。その日からできないはずです。法律違反はできないはずですが、やりますか、どうですか。
  272. 植竹春彦

    ○植竹国務大臣 条約が批准されましたならば、国内法にのっとってやっていくように措置をいたします。つまりNHKがやっていくことは、現在の状態では不可能でありますので、国内法違反の措置は——条約批准の後には違法の措置がないように措置をいたしたいと思います。
  273. 井手以誠

    ○井手委員 それでは、端的にお伺いをいたしますが、新条約が批准を終わりますると、NHKは駐留軍には利用させない、その日から利用させない、かように了解してよろしゅうございますか。
  274. 植竹春彦

    ○植竹国務大臣 NHKといたしましては、新条約のもとにおいては、さように考えております。
  275. 井手以誠

    ○井手委員 総理にこの際念を押しておきたいと思います。それは、私が冒頭に申し上げましたように、新条約、新協定のもとでは、NHKを利用することはできない。法的根拠がないことは、すでに閣議においても、この委員会においても、郵政大臣から申し述べられておるのであります。ところが、その後のアメリカとの交渉によりますると、これは外務省の方に雑論があったと私は聞いておるのでありまするが、十二月まで延ばそうという話が進められておる。これは大へんだと私は考えておりまするから、念のために、ただいまお伺いをいたしておるのであります。ところが、ただいま郵政大臣の答弁によりますると、駐留軍がNHKの第二放送を利用することはできない、やらないとおっしゃいましたが、総理大臣はこれを確認なさいますか。
  276. 岸信介

    岸国務大臣 その問題につきましては、主管大臣たる郵政大臣が申しておる通りであります。
  277. 井手以誠

    ○井手委員 そのNHKの問題については、それで一応私は了解いたしました。発効と同時に……(「それじゃ賛成だ」と呼ぶ者あり)幾ら誘導したってだめです。  次にお伺いをいたしますが、郵政大臣は、先般当委員会において、床次委員の、NHKに使えないけれども、民放その他を利用する道があると、そういう意味の誘導的な質問に対して、可能であるとおっしゃった。そういうようなことをお考えになっておりますか。
  278. 植竹春彦

    ○植竹国務大臣 現在、NHKとアメリカとの間の契約のような形においては、民放との間におきましても十分検討を要する問題であると思います。しかし、やりようによっては、民放では可能の場合があります。さように考えます。
  279. 井手以誠

    ○井手委員 それでは、途中ですけれども、何かアメリカとの間に契約があるとおっしゃいましたが、その契約を一つ見せてもらいましょう。ただいまあなたは、NHKとの契約があるとおっしゃいましたが……。
  280. 植竹春彦

    ○植竹国務大臣 契約という言葉を使いますことはどうかと思います。アメリカとの間の申し合わせはあります。アグリーメントはあります。契約という言葉は、この際、検討してからでないと、その言葉づかいについては一応取り消しておきます。
  281. 井手以誠

    ○井手委員 契約ではないが、話し合いができた文書・合意書ですか、それを一つここにお見せいただきたいと思います。
  282. 植竹春彦

    ○植竹国務大臣 これは要点だけは提出してあるそうでありますが、その事実は、私自身存じません。
  283. 井手以誠

    ○井手委員 その問題については、あとで委員長を通じて資料の提出を要求いたしたいと思います。なお、この問題はいろいろございますので、詳しく別の機会に申し上げたいと思っておりますが、本日は、時間の都合もありますので、簡単にこの問題を終わりたいと思う。  そこで、郵政大臣は民放では可能であるというお話をなさった。しかし、放送法によりますと、一般放送事業者の行なう事業内容、放送の規定によりますれば、国際放送、海外放送はできないはずであります。どうしてできるとおっしゃるのですか。
  284. 植竹春彦

    ○植竹国務大臣 先ほど、現在のままでは、現在と同じような——また契約という言葉は取り消しますが、同じような取りきめではできないと言ったのは、その点をさして言ったのでありまして、国際放送といたしましては、これはよく検討してからでないと申し上げられません。非常に難点があると存じます。
  285. 井手以誠

    ○井手委員 NHKでもできない、民間でも、今の法規のもとではできない。そうなりますと、何とかして法律を改正してでもアメリカにやらせたい、北鮮に対する、中共に対するこの放送をやらせたいという、それはどういう意味ですか。それまでしなくてはならぬ義理なり、理由はどこにございますか。
  286. 植竹春彦

    ○植竹国務大臣 私は、何かやりたいということを申し出られましたときには、なるべくその人の希望を満たしてあげたいといったような気持で、国内問題でも国際問題でも対処いたしております。それで、ただいまの問題につきましても、民放でできるかできないかということは、可能な場合もある、さように考えておりますけれども、今の井手委員の御質問の、現在のような取りきめによる放送につきましては、なお、よく検討いたします。
  287. 井手以誠

    ○井手委員 大臣に重ねてお伺いをいたしますが、あなたは、先刻、謀略放送ではない、二月から広報活動になっておるとおっしゃる。それじゃ、謀略放送と広報放送とはどんなに違いますか。一つ事例をあげて報告してもらいたい。
  288. 植竹春彦

    ○植竹国務大臣 謀略放送ということは、最初からそういうのはないので、サイコロジカルという言葉が使ってあるようであります。謀略という言葉は使ってないようであります。それだものですから、謀略放送ではないと申し上げたのであります。サイコロジカルを謀略というふうに訳しますのは、ちょっと困難ではないか、さように考えております。それで謀略じゃないと申し上げたのであります。
  289. 井手以誠

    ○井手委員 謀略ではなくて、それは神経戦とでも申しましょうか。それでは、従来あった、二月までやって参りました神経戦放送と今日の広報放送とはどんなに違っておりますか。これについては、あなたの方に監督権があるはずですから、十分御承知のことと私は思っております。その点を一つお聞きしたいと思います。
  290. 植竹春彦

    ○植竹国務大臣 内容は、実際のところ知らないのであります。しかし、内容はともかくも、その神経放送という言葉が非常に世間の誤解を招くというので、広報サービスということに変えてもらったのであります。内容は、ことに韓国語でありますので、なかなかどうもわかりませんが、その点は一つ事務当局に御質問願いたいと思います。
  291. 井手以誠

    ○井手委員 内容を知らぬで、広報放送に変わったからいいなどということは、めったに言うべき言葉ではございませんよ。内容を知ってこそ、そういうことが言えるはずです。それでは、あなたのおっしゃるように、謀略放送ではなくして、心理戦と申しましょう。それでは、私は、ここに三月三十日付の朝日新聞の特集号を持って参っております。これは金門、馬祖における台湾とアメリカの広報活動が載っておる。金門、馬祖から毎日数十万の風船を大陸に飛ばしておる。蒋介石万歳のようなことを書いた風船が飛ばされておる。これは向こうでは、いわゆる広報活動といわれておるものです。アメリカではこういうものを広報活動といっておりますが、それでもあなた方は差しつかえないとお考えになっておりますか。
  292. 植竹春彦

    ○植竹国務大臣 私は、放送に関する限りの話でありまして、風船でなしに、ラジオ放送についての問題としてお答えしたまでであります。
  293. 井手以誠

    ○井手委員 風船とラジオが違うことは、子供でも知っております。そういうものがアメリカでは広報活動といわれておると私は申し上げておるわけです。風船とラジオと違っておることはわかっておる。そういう謀略放送、神経戦をアメリカ側では広報活動と申しておりますから、その点の注意が必要だということを私は申し上げておるのであります。
  294. 植竹春彦

    ○植竹国務大臣 その点、批准までは、まだ現在の状態が続いておりますので、今後よく注意いたします。
  295. 井手以誠

    ○井手委員 そこで、私は、この機会に、総理にお伺いをいたしたいのであります。  総理は、国際協調主義を非常に強調されておる。けっこうだと思っております。ところが、この日本からNHKを利用して行なわれておる駐留軍の北鮮、中共に対する海外放送は、中共、北鮮において非常にふんまんの声が高い。先般、私どもの党から代表団が参りましたときにも、そういう怒りの声を私どもの代表団は聞いたのです。向こうでは非常に不快に感じておる。刺激を受けておる。そういう放送を日本から行なわれておることは、私は慎まねばならぬ問題だと思うのであります。私は、過去のことを多くは申し上げませんが、この新条約、新協定を対等の立場で結ぶ、今後は日本の責任においてやらねばならぬとおっしゃっておる岸総理の言明からいたしますならば、今後も日本の国内から、あるいは民放であろうと、基地内から行なおうとしようと、施設のいかんを問わず、日本領土内からそういう神経戦放送といわれるものが放送されることは、私は慎むべきだと思う。もし、アメリカ側がどうしても必要であると思うならば、日本領土以外に放送の施設を持つべきものであると私は考えるのでありますが、この点についての岸総理の所見を伺っておきたいのであります。
  296. 岸信介

    岸国務大臣 新協定ができ、これが効力を発生するならば、現在の状態と違う状態になることは、先ほど来申し上げておる通りであります。そうして、国際の緊張を緩和する方向に努力すべき意味から申しまして、あるいは神経戦放送というような名のもとに、いろいろ緊張を強めるような事柄をすべきものではない、かように考えております。従って、幸いにこの新条約が成立するならば、今申したような事態がなくなりますから、今のわれわれとしては、非常に望ましい状態ができる、こう思っております。
  297. 井手以誠

    ○井手委員 総理答弁については、私も大体了解いたすのでありますが、最後の部分について、承認ができないのであります。先刻、郵政大臣は、NHKではできません。しかし、民放その他の方法においては可能であります。なるべく希望に対しては沿いたいという言葉があった。そうなりますと、世間でいわれておるように、民放の出力を増すか、あるいはアメリカ基地内にそういう放送の設備をしてやるということが、一応予想されるのであります。私は、そういう施設日本領土内にあっては困ると考えておる。繰り返して私は申し上げませんけれども、対等の立場で、日本の責任においてこの防衛の条約を結ぶというならば、防衛の性格を持っておると岸総理が強調されておるが、そういう神経戦放送によって戦争を挑発するようなことがあっては断じてならないのであります。そういう意味から、あるいは民放や基地内の施設を利用されようとするこのアメリカの海外放送に対して、日本領土内においてはそういうことはしてもらいたくないという意思表示を、私は総理からしてもらいたいのであります。その点をお伺いしたい。
  298. 岸信介

    岸国務大臣 私は、民放を利用するとか、あるいは基地内に何か設けるとかいうような話は聞いておりませんが、かりにそういうような場合におきましても、放送内容につきましては、先ほど来お答え申し上げておるような趣旨において、その放送の内容が国際の緊張を強めるような内容を持った放送を、日本領土内においてもし米軍がするということであるならば、これに対して十分な日本側の意見を言って、これを是正せしめるということは当然であると思います。
  299. 井手以誠

    ○井手委員 何も音楽を放送する程度で無理に日本国内からアメリカが放送しようなどとは考えていないと思うのが、私は、常識であると考える。  なお、この機会に大臣にお伺いいたしておきますが、今日行なわれておる条約のもとにおけるNHKの利用の問題はわかりました。これはできないことがはっきりいたしました。しないと、あなたは言明なさった。それでは、今日やられておるNHK第二放送の深夜利用による海外放送、これはどの法的根拠でおやりになっておりますか
  300. 植竹春彦

    ○植竹国務大臣 行政協定第三条二項末端の、ただし、一時的利用云々というあの条項によってやっております。
  301. 井手以誠

    ○井手委員 一時的利用については、これは朝鮮戦争という、ああいう事態に対処する一時的な利用であると私は解釈をいたしております。しかし、この点についても、おそらく見解の相違になるでありましょう問題については、私はこれ以上申し上げませんが、問題は国内法です。放送法の第四十七条には何と書いてありますか。
  302. 植竹春彦

    ○植竹国務大臣 行政協定第三条第二項の末段は、国内法を現在のうちはまだ排除いたしております。
  303. 井手以誠

    ○井手委員 行政協定第三条の後段による一時的利用、これが根拠だとおっしゃる。ところが、根拠になっておるこの行政協定に基づいて、国内法は排除されていない。されていますか。
  304. 植竹春彦

    ○植竹国務大臣 排除されていると考えます。
  305. 井手以誠

    ○井手委員 それはどこにございますか。
  306. 植竹春彦

    ○植竹国務大臣 国内法のうち、電波法を排除いたしております。放送法とは関係がありません。
  307. 井手以誠

    ○井手委員 電波法は確かに排除されております。しかし、放送法は排除されておりません。放送法は、あなたもよく御存じでございましょうが、第一条から、日本放送協会あるいは国際放送と、厳重に規定されておる。この国内法との関係はどうなりますか。
  308. 林修三

    ○林(修)政府委員 放送法の四十七条の問題は、今のNHKでやっている問題とは私は関係がないと思います。ただ、NHKの業務との関係でございますが、これは行政協定のこの規定が放送法の一つの特例をなすものと、このように考えております。
  309. 井手以誠

    ○井手委員 放送法が排除されていない、これは確かですね。
  310. 植竹春彦

    ○植竹国務大臣 先ほど、排除していないという言葉を私がもし使いましたら取り消しまして、排除しておるということを明らかにいたしておきます。行政協定は公布されまして今有効に通用しておりますので、放送法も国内法でありますから、放送法に優先いたしまして、ただいまNHKが長いことやって、まだ世間でも国会でも認めて下さっている通りであります。
  311. 井手以誠

    ○井手委員 大臣は法律は詳しいようですが、本気でお答えになっておりますか。国際条約その他の関係を誠実に実行するためには、国内法と抵触する場合には改正しなくてはならぬ、これはもう常識であります。国内法を改正してこそ、国民に対する権利義務が生じてくると私は思う。そうでなくては、国内法を誠実に実行したものとは言えないのであります。これは常識ですよ。どこに排除してございますか。電波法、郵便法、公衆電気通信法は排除されておるけれども、放送法は排除されておりません。
  312. 林修三

    ○林(修)政府委員 この点は一般的問題でございますから、私からお答えいたしますが、この行政協定は、その行政協定を作りました当時にも政府からお答えしておるはずでございますが、これは直接に国会の御審議を経ておりませんけれども安保条約第三条に基づいていわゆる事前承認を得たもの、従って、これはいわゆる一つの国際条約であるというふうにお答えしております。過般の最高裁の砂川判決においても、その点は認められております。それで私どもは、これは一つの国際条約である。安保条約の第三条がなければ、もちろん国会の承認を経べきものであったわけでございますが、安保条約の第三条によって、いわゆる国会の事前承認を得たものだ、かように当初からお答えしておるわけでございます。従って、この行政協定は、御承知の通りに、二十七年の四月に公布いたします際も、安保条約と一緒に条約として公布いたしております。従いまして、条約としての国内法的効力もこれは持っておるわけでございます。同時に、この行政協定を作りますときにおきましては、あの当時の吉田首相は、一般的な国民の権利を制限し義務を課するような問題につきましては、国内法の立法をやるということを方針としては述べておられます。それに従いまして、いろいろの国内法ができておるわけでございます。今御指摘通りに、郵政関係につきましては、公衆電気通信法あるいは電波法等につきましての特例法があるわけでございます。しかし、これはこの行政協定の性質から申しまして、同時に国内法的な効力を持っておる。また、これは条約対法律の関係から申しましても、法律に優先する効力をその限りにおいては持っております。従いまして、国内法的効力としては、いわゆる普通の条約と同じ効力を持っておるものと私ども考えております。従いまして、放送法に対しても、これは先ほどおあげになりました四十七条の問題ではないと私は思います。従いまして、四十七条と今の行政協定三条二項後段が抵触する関係は起こらないと思っておりますが、かりに問題があるとすれば、業務の関係でございます。業務の関係につきましては、これによってNHKの業務を付加されておる、かように考えます。
  313. 井手以誠

    ○井手委員 そんなでたらめな解釈承認いたしません。行政協定が国会の承認を得ていない問題について、私はここでは多くは申し上げません。意見はたくさん持っておりますが、申し上げません。しかし、そういう安全保障条約その他一般の条約国民の権利義務に関するこういうものを誠実に実行する場合に、国内にこれを徹底するためには、条約と抵触する国内法はこれを改正しなくてはならぬはずであります。包括的に国民の権利義務を規定するわけに参りません。それは一つ一つについて国民の権利義務に関することは国会の承認を経なくてはならぬことは、法制局長もよく御存じだろうと思います。だからこそ、今回の特別委員会にも、二十何件かの特別措置法というものを提案されておる。外国と条約を結んだそのことを誠実に実行するためには、これに抵触する国内法は改正しなくてはならないはずです。そのために特別措置法というものを提案しているではありませんか。公衆電気通信法、電波法あるいは郵便法を提案されておる。特別措置法を提案されておる。しかし、幾ら見たって、電波は、この放送法は改正されていないじゃありませんか。特別措置法はないじゃありませんか。  それでは、郵政大臣にお伺いをいたしますが、放送法の四十七条には、「協会は、郵政大臣の認可を受けなければ、放送設備の全部又は一部を譲渡し、賃貸し、担保に供し、その運用を委託し、その他いかなる方法によるかを問わず、これを他人の支配に属させることができない。」第二項は「郵政大臣は、前項の認可をしようとするときは、岡議院の同意を得なければならない。」と、はっきり書いてある。いつ両議院に同意を求めましたか。NHKの施設を貸す場合に、いつ両議院の同意を求められましたか。
  314. 植竹春彦

    ○植竹国務大臣 これは放送法と関係なく、電波法でもって認められておる関係であるということは、今法制局長官の述べたと同じ意見であります。従って、電波法でもってNHKが放送することができるようになった、さように考えております。いずれにいたしましても、この条約が批准されて発効いたします場合までは続けるといたしましても、それから先はNHKがやらない、さように考えております。
  315. 井手以誠

    ○井手委員 当分の間は、がまんを願いたい、しかし、新条約が発効すれば、いたしませんという趣旨答弁でありました。しかし、今晩でも十二時二分から深夜放送されるであろうその海外放送は、これは国内法には明らかに違反しておる。いつ同意を得られましたか、その点を聞きましょう。放送法にははっきり書いてあるじゃありませんか。法律にはっきり書いてある。それをあなたは両議院に同意を求めておられないじゃありませんか。
  316. 林修三

    ○林(修)政府委員 先ほどからお答えいたしております通りに、放送法四十七条のこの条項には該当しないものであります。NHKのその施設を賃貸したことでもございませんし、譲渡したわけでもない、担保に供したわけでもない、運用を委託し、あるいは他人の支配に属させたわけでもございません。そういうことで、この四十七条の問題ではないと考えております。
  317. 井手以誠

    ○井手委員 それでは、協会会長がお見えになっておりますから、お伺いをいたします。あなたの方の第二放送の設備は、あれは駐留軍に貸してあるのですか、どうなさっておるのですか、賃貸ですか、譲渡ですか。
  318. 小野吉郎

    ○小野参考人 お尋ねの、ただいまの駐留軍放送の関係でございますが、これは施設を賃貸ししたものでもございませんし、ただ役務を提供いたしまして機械の操作なり、あるいはその他の整備をいたすのみでございまして、管理権はどこまでもNHKにあるわけであります。駐留軍の放送当事者の方が、NHKに参りましてその施設を運用しておるわけでもございません。そういう関係で、いろいろ政府見解に従いましても、放送法四十七条にいうところの施設の譲渡はもちろんのこと、賃貸し、あるいは他人の支配に属せしめるものではない、こういうようなことでございます。
  319. 井手以誠

    ○井手委員 今の御答弁と、大臣の先刻の御答弁とは違っておると思います。大臣は、賃貸だとおっしゃった。ただいまは、役務提供だとおっしゃった。それでは、あらためてお伺いをいたしますが、四十七条に規定されておる譲渡でもない、賃貸でもない、担保にも供していない、どれにも該当しないのですか。
  320. 植竹春彦

    ○植竹国務大臣 私は、賃貸と答弁した覚えはないのです。なお速記をお調べ願います。(「それでは何だ」と呼ぶ者あり)
  321. 井手以誠

    ○井手委員 大臣、それでは何に該当します。全然該当しないのですか。
  322. 植竹春彦

    ○植竹国務大臣 ただいま小野専務から申しました通り、役務の提供でございます。
  323. 井手以誠

    ○井手委員 役務の提供といたしますと、役務だけですか。鉄塔は貸しておりませんか。設備は貸しておりませんか。役務だけでは放送はできないはずです。それはあなたの方がよく御承知でしょう。役務だけですか。
  324. 植竹春彦

    ○植竹国務大臣 NHKの設備の使用を——あれを使って放送することを許し、そうしてその放送する仕事は、NHKの者が役務を提供して仕事をしている。
  325. 井手以誠

    ○井手委員 それでは郵政大臣、NHKの鉄塔を貸す、設備を貸し、役務を提供しておるのがこれだとおっしゃるのですか。
  326. 植竹春彦

    ○植竹国務大臣 役務に対する報酬としてお金をもらっています。
  327. 井手以誠

    ○井手委員 それでは郵政大臣、予算総則にあります第十三条に「駐留軍の放送役務に対し、契約金の収入があるときは、その金額は、役務に関係ある経費の支出に充てることができる。」と書いてある。この役務に対し、契約金の収入、これは最近どのくらいですか。
  328. 小野吉郎

    ○小野参考人 前年度の実際受け取りました金額で申し上げますと、約五千百万円でございます。
  329. 井手以誠

    ○井手委員 それでは、重ねてお伺いをいたしますが、役務提供のかわりに五千数百万円をもらっておる、こうでございますか。
  330. 小野吉郎

    ○小野参考人 この放送の実態をお答え申し上げますと明確になろうかと思いますが、NHKといたしましては、番組自体については何ら関係を持っておりません。この編成をいたすわけでもございませんし、また、NHKの職員がたとえばアナウンサーが、先方の米軍で作りました番組を読み上げるわけでもございません。ただ、そういった方面は米軍の基地で行なわれておりまして、米軍の基地からNHKのいわゆる調整室までの間は有線で参っております。この有線で参りましたものが無線中波に変わりまして、NHKの調整室から、東京におきましては、川口の放送施設を通じまして電波で流しているというわけであります。
  331. 井手以誠

    ○井手委員 そうしますと、大臣は、NHKの使用料の問題は、これは五千数百万円は役務提供の分だけだ、あとは、鉄塔も、それからいろいろな放送施設もこれは無料だ、こうおっしゃるのですか。
  332. 植竹春彦

    ○植竹国務大臣 鉄塔の使用から全部こまかく計算いたして入っております。
  333. 井手以誠

    ○井手委員 それでは、使用料まで加わる、役務提供の分も含んでおる、そうなりますると、これは貸与ではございませんか。——委員長々々々、私は大臣に質問をいたしております。大臣がわからぬときには、大臣から、自分にわからぬから政府委員答弁させますと言えばいいのです。
  334. 植竹春彦

    ○植竹国務大臣 こまかいことは局長に答弁させるといたしまして、別に賃貸ししているわけではありませんが、使用によりまするいろんな原価の計算とか実費を計算いたしまして、それが計算に含まれております。
  335. 井手以誠

    ○井手委員 大臣、少し御答弁が狂ったようでございますが、あなたは、先刻、鉄塔、放送施設の使用分も含んでおりますとおっしゃった。そうでありますならば、これは賃貸ですよ。貸したのですよ。そのために五千数百万円をもらっているのは、これは賃貸料ですよ。これは役務提供じゃございません。役務じゃございませんよ。
  336. 植竹春彦

    ○植竹国務大臣 役務の計算のうちに、計算のもとをなす計算といたしましては、そういうものを含めて、役務を幾らと計算したのが五千何がしなのであります。ただ、どこまでも役務の金をもらったのであります。役務の計算の基礎をお答えしたのにすぎないのであります。
  337. 井手以誠

    ○井手委員 大臣、常識的に考えてごらんなさい。電力料金や設備の使用料が役務費と言われますか。そんなことで通りますか。
  338. 植竹春彦

    ○植竹国務大臣 役務の内容としては、その役務のボリュームの大小によりまして、性質によりまして、役務と申しましても高い場合があり、安い場合があり、それが高過ぎるとすれば、それは見解の相違で、私は適当な金額だと思っております。なお、詳しいことは政府委員から答弁いたさせます。
  339. 井手以誠

    ○井手委員 そんなことは見解の相違ではございません。そんなことはわかっているじゃないですか。役務提供であるか、使用料であるか、今言ったじゃございませんか。そこで、あなたに重ねてお伺いいたしますが、あなたは、日本のNHKに管理権があるとおっしゃった。この放送の規定によりますると、国際放送については厳重な放送の編成、番組編成についての審議会の議を経なくてはならぬと考えておりますが、それはどうなっておりますか。
  340. 植竹春彦

    ○植竹国務大臣 先ほどから答弁いたしますように、それを排除したのが行政協定の第三条第二項の後段であります。     〔「明快」だと呼ぶ者あり〕
  341. 井手以誠

    ○井手委員 不明快なものです、こんなものは。それでは五千数百万円というのは、あくまでも役務提供の費用だとおっしゃるのですね、間違いございませんか。
  342. 植竹春彦

    ○植竹国務大臣 その通りであります。
  343. 井手以誠

    ○井手委員 それでは、あなたの方の関係ではいろんな問題がある。先刻森本委員からは、四十数億円に上る未徴収の問題が指摘されました。私は、ほかにもいろいろな問題がありますので、後日あらためて質問いたしますが、この駐留軍のいわゆる深夜放送といわれるもの、それについては、すみやかに一つ廃止してもらいたい。これは、現在の法律によってもできないはずです。できれば、今夜の放送からでもやめてもらいたいと思います。私は、この点を強く要求して、きょうは関連質問でありますから、この程度で終わります。
  344. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 次に、中井徳次郎君。     〔「もうやめようじゃないか」と呼ぶ者あり〕
  345. 中井徳次郎

    ○中井(徳)委員 きょうは、だいぶおそいので、もうやめたらどうかなどという雑音が入っておりますけれども、私、いつでもやめます。ただし、その場合には、あとでまた必ず二十日前後に適当な時間を持ってやるということを認めていただいたら、いつでもやめますから、どうぞそういうことで……。私の質問はそう長い時間はかからないと思いますが、昨日も黒い飛行機の事件、その他いろいろと日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約でございますか、これについての質疑が進められておりまするが、ただこの中で、外務大臣の説明にもありましたが、経済協力の関係のことにつきましては、与党の委員の中でも愛知さんが簡単にこれに触れられたと思います。私ども社会党、民社の方は、実は、これまで政治・経済上の協力関係につきましては、まだ質問をいたしておらないのであります。十三、十四日は公聴会ということでございまするから、私は、政府の皆さんに、そういう意味で、野党の社会党からもこの問題について少しは聞いておくべきだろうという、まことに良心的な立場から、私立っておるのでありますから、時間がおそくなって同僚の皆さんには恐縮ではありますが、少しごしんぼうが願いたい、かように考えるものであります。委員長、そういうことでありまするから、よろしくお願いいたします。  それから、きょう通産大臣の出席を要求いたしましたところが、少しからだの工合が悪くて出てこられない、こういうことで、局長が来ておるようでございますが、見えておりますか。
  346. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 見えております。
  347. 中井徳次郎

    ○中井(徳)委員 そこで、通産大臣に対する質問はあとに譲りまして、質問を始めたいと思います。  まず、外務大臣にお尋ねをいたしますが、経済協力、あなたの説明によりますと、「第四に、従来両国間に存在した安全保障体制を、広範な政治、経済上の協力関係基礎の上に置き、この協力関係をますます促進すべく努力することといたしました。」こうありますが、これに対する条文はどれとどれでございましょうか、お尋ねいたします。
  348. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 第二条をさしておるわけでございます。
  349. 中井徳次郎

    ○中井(徳)委員 第二条でございますが、この二条は、もちろん十条の期限及び四条の協議、そういうものには関連を持つわけでございますな。
  350. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 お尋ねがよく聞こえませんでしたけれども、四条の協議が全般的に二条にも及ぶのか、こういうようなお話だと思います。大体今回の安全保障条約の運営にあたりましては、全部協議をして、その基礎の上に立ってやるわけであります。そういう意味において協議というものが行なわれるわけでございます。
  351. 中井徳次郎

    ○中井(徳)委員 そういたしますと、四条の協議は二条にもかかると、こういうことでございますか。
  352. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 経済上の問題等につきましても、協議をいたす場合が多々あると思っております。
  353. 中井徳次郎

    ○中井(徳)委員 お尋ねいたしておりますのは、かかるか、かからぬかということだけで、簡単に、かかるとおっしゃって下さればいいのですが、かかるのですか。
  354. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 今までも申しておりましたように、また今も申しておりますように、今回の条約の運営というものは、協議の上に立ってやるわけであります。常時いろいろな点について協議いたしております。そういう意味において、かかるわけでございます。
  355. 中井徳次郎

    ○中井(徳)委員 わかりました。  そこで、この二条でございますが、私は実は外交の専門家ではございません。そういう意味では、まことにしろうとのそしりを免れないと思うのでありますが、この二条を読んでみますと、なかなかわかりにくい。少し説明がいただきたいと思うのであります。「締約国は、その自由な諸制度を強化することにより、これらの制度の基礎をなす原則理解を促進することにより、」こういうことがあります。こういうことは、どういうことをさしておられるのですか。これを一つ説明をしていただきたい。「これらの制度の基礎をなす原則理解を促進することにより、」どういうことでございましょうか。この二条についての前半の説明がいただきたい。
  356. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 「締約国は、その自由な諸制度、」これは政治的に言えば、民主主義と申して差しつかえないわけでございます。あるいは経済上から申しますれば、自由な自由貿易主義と申しますか、自由主義の制度、そしてそういう制度をわれわれ両国としてはお互いに信奉しておりますから、そういうような制度を推し進め、強化していく。そして、その基礎になります自由主義の原則というものを、お互いに十分理解し合っていかなければならぬ、こういうことでございます。
  357. 中井徳次郎

    ○中井(徳)委員 どうも少しあとがわかりにくいものですから、「これらの制度の基礎をなす原則理解を促進することにより、」というのはどういうことであるか、もう一度御説明して下さい。
  358. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 政治的にも、あるいは経済的にも、自由主義の政策というものがとり行なわれる、そういう自由主義の政策がとり行なわれるということは、つまり自由主義という一つの原理の上に立っておるわけであります。その原理を、十分に、理解をお互いにしていくということであること、申すまでもないのでございます。
  359. 中井徳次郎

    ○中井(徳)委員 そうなりますと、先ほどこの二条についても日米両国が常時協議をするということなんでございますが、今あなたの御説明のようなことが、多少とも、両国のうちのある一国でその点について疑問が起こったり、疑念が起こった場合には、協議をされるのですか。いかがですか。
  360. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 必要があるような場合には、協議すること、むろんでございます。自由主義の基底になります原則と申しますのは、申すまでもなく、個人の活動の自由であるというような問題、そういう点は何も協議をする必要はない。お互いに、そういう意味でのあれを促進していくということに努力していくということであって、進めて参れる、こう思っております。
  361. 中井徳次郎

    ○中井(徳)委員 しかし、それは協議でありますが、一方の国がそういう問題について協議をしたいと言ってくれば、相手国はそれを拒否する権限はない。それはそうでございましょうと言って、話し合うでしょう。それにこの二条の前半もかかる、こういうことでございますか、もう一度念を押します。
  362. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 先ほどから申しておりますように、条約全体の運営につきまして、必要があれば随時協議をして参るわけであります。こういうような二条の前半につきましても、必要がありますときには、むろん協議をする、必要のないときには、協議をしなくても差しつかえないわけであります。
  363. 中井徳次郎

    ○中井(徳)委員 その必要の認定は、日本にも認定権はあるだろうし、相手のアメリカにもありましょう。ですから、アメリカ日本に、こういう問題——この前半のことについてアメリカが疑問を持ったならば、日本に向かってこの点について協議をしたいと言ってきた場合には、日本はこれを受けて立たねばならぬ、こういうことになりますね、その点はどうです。
  364. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 少し角度が違うと思うのでございます。お互いにそうした理解を促進するということは、何も事あらたまった協議、いわゆるそういう意味での協議でなくて、お互いに情報の交換をして、話し合いをしていくということによって、お互いにそういうことを促進していけるわけでありまして、何も事あらたまった協議というような、むずかしい意味でおとりになる必要はない。
  365. 中井徳次郎

    ○中井(徳)委員 外務大臣の答弁は、一番最初は、二条は四条にもちろんかかるということでありましたが、ただいまの答弁ではどうも少しぼやけておる。問題は、この二条が、こういう抽象的なことを長々とうたっておるところに問題があると私は思う。「自由な諸制度を強化する」、現在日本の国内、これは自由ですよ。こんなことを長々と書かずに、日本日本憲法でいく、アメリカアメリカ憲法でいくと、なぜ書かないのですか。その前に私は聞きたいが、米韓、米台、米比、そういう条約の中に、この二条に相当するようなものはありますか。これをちょっとお尋ねしたい。
  366. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 ただいま御指摘の点は、米比、ANZUS、米韓、米華、SEATOその他にはないと考えております。
  367. 中井徳次郎

    ○中井(徳)委員 どこにある、北大西洋条約にある。NATOにある。それをあなた方は、そのままとっておるじゃないですか。ヨーロッパとアメリカ関係日本アメリカ関係、ことにこれは政治体系です。なぜ一緒にならなければいかぬか。私は、皆さんがアメリカとの間に交渉をなさったその過程において、こういう問題について日本独自の案を出したか出さないか、まず、それから伺ってみたいとさえ思います。私は、先ほど言いましたように、外交は専門ではありませんが、ずっと読んでみますと、まことにこの二条がわかりにくい。たとえば、極端な例だが、何も社会党は天下をとらぬでもよろしい。保守党の中のアメリカに対する批判勢力の人たちが、内閣でも組織するような事態、これは十分あり得ますよ。どうもアメリカの気に入らぬようなことをし始めた、日本の議会制度はどうだ、これをちょっと聞いてみようか。聞いたらこれは返事をせねばならぬ。日本の外務大臣がのこのこ出ていって、話し合いをせねばいかぬ。できますよ、アメリカはやろうと思えば。なぜこんなものを作ったか。北大西洋条約のなにをそのままとっておる。どうなんです。北大西洋条約の二条をそのままです。最後に違っていますのは、ビトウィーン・ゼムというのは日本で、北大西洋条約がビトウィーン・エニ・オア・オール・オブ・ゼム、こうなっている。しかも、このことが非常に重要だと私は思う。北大西洋条約は二国間の条約ではありません。ありませんから、こういう文句になっているのじゃありませんか。二国間の条約で、これをそのままぬけぬけととって、はい、それでけっこうです、どういうことなんです。私は外務省の事務当局の皆さんの見解を聞きたい、どうです。
  368. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 私どもは、自由主義の制度と申し、あるいはその精神というものを体しておりますることは、これは申すまでもないわけで、そうしてそれが基底になって諸般の運営をしているというのが、私ども考え方でございます。また、それでいくべきが一番適当な日本の体制であると思っております。お互いに自由主義を信奉しております国々が、その体制について強化していくということは当然なことでありまして、われわれは、その理想を掲げて一向に差しつかえございません。何かこれが、すぐに内政干渉になるとかいうようなことはとうてい考えられないことでありまして、北大西洋条約にもございますように、われわれは一つの理想を掲げて、そうしてその理想に向かって進むということをお互いに確約しているということは、少しも内政干渉にわたる問題でも何でもございません。
  369. 中井徳次郎

    ○中井(徳)委員 私は今、外務大臣の答弁を要求しているのではない。高橋さん、あなたの答弁を……。
  370. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 先ほどの点、ちょっと訂正させていただきますが、米華とSEATOにはその面に触れた点がございます。第三条でございます。  それから、ただいまの御指摘の点でございますが、この原理なるものは、これは多数国間であろうと二国間であろうと、何ら変わるところはない、私はこういうふうに考えております。
  371. 中井徳次郎

    ○中井(徳)委員 そういう甘いことを言うておられては——安保条約については、国内ではこうやって激しい論争が行なわれておる。きょうもある雑誌に書いてありました。現実に日本アメリカがこの条約を結ぶに際して、ほんとうに激しい論争と、一国を背負って立つまじめな議論が行なわれたであろうかというふうなことを、ひやかして書いてありましたが、私はこの二条でそういうことを思うのです。高橋さんの答弁の中に、ほかの条約にも似たものはあるという、似たものがあるのは私も知っています。それはやはりほかの国では、その国の特徴によって、その国柄に合った条文になっているのです。日本は、北大西洋条約を、へいとそのままもらっている。どうなんです。外務大臣の常識的な答弁、それは自由主義でいきますという。あなたは、きのうこんなことを言っていましたよ。自由主義と社会主義は対立する。対立しやしませんよ。社会主義と資本主義は対立します。自由主義と社会主義なんか、対立しやしません。そういうのんきなこと言って、これは十年以内に社会党がもし天下をとる、社会党、私たちはいわゆる民主的社会主義で、日本社会党はそういう綱領ですから、それでやる、それからアメリカは、これはわれわれの自由と違う、一つ話をしたいと言うてきたら、社会党の新しい外務大臣は、のこのこと出て行って説明せねばならぬ、これが第二条じゃありませんか。そんな簡単なことじゃいけませんよ。どうなんです、これは。これは大へんなことですよ。高橋さん、もう一度この二条について、アメリカと交渉をした場合に、皆さんは日本の案をお出しになったのかどうか、その辺のところを聞かしていただきたい。
  372. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 あらゆる条文につきまして、われわれは相互に話し合いをしながら案を作って参ったのでありまして、どちらが出したとか、こちらが出したとかいう問題ではございません。何か、ただいま、非常に安保条約でもって、これがあればアメリカから呼びつけられて何とかすると言われる。しかし、私どもは、こういう自由な制度を強化するというようなヨーロッパの考え方、そういうものについて、われわれは決して、それをとりますことが、各種の条約のうちで適当な文言をとったと思っておるのでありまして、それではそういう条約がNATOに書いてあるから、イギリスがのこのこアメリカへ出ていって、そして何とかするというようなことを、だれも考えておる人はないのでありまして、そういう意味において、お説は私受け入れかねると思います。
  373. 中井徳次郎

    ○中井(徳)委員 外務大臣がそうおっしゃるだろうと思いました。しかし、北大西洋条約は集団の条約です。入っておりまするのは、イギリスだけじゃありません。イギリスは王国だし、フランスは共和国だし、オランダ、ベルギー、ルクセンブルグなどという小さい国まで、みな入っております。おのおの国柄が違う。デンマークも入っておる。違うから、そういうものを総合的にまとめるために、こういう文章になっているのじゃありませんか。そうでしょう。しかも、林さんがよく言う北大西洋条約では、これはいわゆるうたい文句だ。二条を議題にして協議をするなんてないんです。ありますか高橋さん、北大西洋条約です、どうなんです。
  374. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 北大西洋条約にも協議条項がございます。  それから、ただいまの点でございますが、こういう基本的な原理の問題でございますから、協議とかいうのは、これは決して協議ということを、そういう問題で排除するものではないということであります。ただ、こういうのは基本的原理でございますから、協議云々という問題は現実には起こらないであろう、こういうふうに考えております。たとえば第一条、武力の行使はこれはやらないということを言っております。これも基本的原理の問題であり、当然のことでございます。従いまして、協議という問題は起こりません。しかしこれは、協議を排除するとか、こういうことで協議をしないというわけじゃないと私は考えます。
  375. 中井徳次郎

    ○中井(徳)委員 北大西洋条約にもあると言われましたけれども、北大西洋条約は、ちゃんと第四条に「締約国は、いずれかの締約国の領土保全、政治的独立又は安全が脅かされているといずれかの締約国が認めたときはいつでも、協議する。」と、ちゃんと条件がある。北大西洋条約には条件がある。北大西洋条約の二条にかかっておりませんよ。どうです。
  376. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 第九条に「締約国は、この条約の実施に関する事項を審議するため、各締約国の代表が参加する理事会を設置する。」……。
  377. 中井徳次郎

    ○中井(徳)委員 それは理事会の規定じゃありませんか。何も協議事項じゃないじゃないですか。
  378. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 これは御指摘通り、多数の国、十二ヵ国の条約でございますから、この理事会を設けまして、理事会で協議が行なわれるというものが、最も適当であろうと思います。また、理事会で協議が行なわれるわけであります。
  379. 中井徳次郎

    ○中井(徳)委員 私は、これまでの説明では、どうもこの点は納得できません。どうしてこの北大西洋条約のものをそのまま持ってきたか。アジアの他の諸国と、情勢が日本は違うことは私も認めます。しかし、ヨーロッパの諸国のものをそのままとってきて、それでもって経済協力はできたの、何がどうの、政治体系はどうのと言うことは、どうも私には納得がいかない。特にそれを、この条約では四条で、この条約の実施に関して随時協議する、そしてそのあとは、先ほど読み上げましたような北大西洋条約のものと同じでありまするが、その前に特にこういうものを入れておる。こういうことになりますると、どういたしましても、私は、この二条は、これはいざというときには両国の間でこれを拡張解釈するなり、このままいきましても非常な内政干渉のおそれがある。日本は、アメリカに対してまで、そういう、実力はないでしょう。これはないでしょう。また、この協議会のメンバーを見ましても、こちらは外務大臣と防衛庁長官ですか、向こうは駐日アメリカ大使と、こういうことになっておるのでありまするから、どうも二条の前半は私にはどうしても理解ができない。どうしてこういうものを持ってきたか。日本アメリカとの間のこの事態を、ほんとうに客観的に冷静に把握をして、その上に立ってやるべきではなろうか。私は何も、経済協力を反対だとかなんとか言っておるのではないのです。日本は韓国とも大いにやるべきであるし、中国とも貿易はやるべきでありましょう。アメリカとも貿易を大いに盛んにすべきでありましょう。しかし、条約を作って、十年それを守るのでありまするから、この点は——今自民党席から、大した問題でないとおっしゃる。あるいは見方によりましてはそうかもしれません。しかし、こういう条文を作りまするときには、やはり念には念を入れて、万一の場合などを考えてやるのが当然じゃありませんか。私はそれを申しているのです。それを簡単に、北大西洋からとってきてそのままいこうというのは、あまりに安易に過ぎはしないかと私は思うのです。今この条約につきまして、たとえば十年の期限を少しチェックをしたらどうか、あるいは事前協議その他についても少し修正をしたらどうかというふうな意見が、国内の、いわゆる与党の中にもあるというふうなことを聞いております。私どもは、これにつきましては、社会党の立場はあるわけでありまするが、百歩も二百歩も譲って考えてみましても、こういう二条のきめ方をなさるようなことでは、どうもほんとうに真剣に安保条約の改定に取り組んだのであるかということについて、実は非常な疑念を持たざるを得ない。それでお尋ねをした次第であります。  そこで、その次でありますが、「締約国は、その国際経済政策におけるくい違いを、除くことに努め、」こういうこと、「また、両国の間の経済的協力を促進する。」こういうことがありまするが、こういうことにつきましては、先ほども高橋さんからちょっとお話があったが、安保協議会の中で、特別の委員会でも作りましてこれをおやりになるのでありますかどうですか、この協議につきましては。
  380. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 この条約の運営にあたっては、両国政府が絶えず緊密な連絡をとり、随時協議をして参ることは当然でございまして、条約軍営全体の上におきまして政府間の協議がございます。ただ、安保委員会だけでそういう協議をするのだということでないことは、これは全文をお読みいただけばわかることだと思います。
  381. 中井徳次郎

    ○中井(徳)委員 それは別に条約はなくても、二国間のことでありますから、大使と外務大臣との間でもやっておりましょうし、最近のような交通関係、通信関係でありますから、それはやっておるでありましょう。しかし、わざわざこの条約を作って四条でうたっておるからには、この二条を行なうための特別の委員会か何か、お作りにならないのですか。交換公文にありますものでは、あなたと防衛庁長官ですか、これが委員でしょう。そういうもので経済関係の話し合いを進めるというのはどうなんです。そういうことを私はお尋ねしておるのです。それはできておるのか、できておらぬのか。
  382. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 こうした経済的な問題を、両国政府で今日まででも緊密に話し合いをしております。今後ますます緊密に連絡をし、話し合いをして参ると思います。そういう場合におきまして、何か両国の間に経済関係委員会を作る——むろん交換公文にございますような安保委員会が、われわれ適当な場だとは思いません。従いまして、何か両国政府間において経済委員会を作るということも、通常考えられないことではございません。ただ、現状においてまだそういうことを考えておらぬ。政府間の普通のルートでもって話し合いをしておるので十分だと思っております。なお、こういうような基礎の上に立ちまして、民間的な両者の協議会等を持つことは、われわれ適当ではないかと、こういうふうに考えております。
  383. 中井徳次郎

    ○中井(徳)委員 民間の協議会を持つことは適当であるというのですか、ないというのですか。どういうのです。今ちょっと語尾がわかりにくうございました。
  384. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 民国におきましても、この種の経済上の問題その他につきましては、お互いに意見を交換する協議会というような種類のものができますことは、望ましいことであるとわれわれは考えております。
  385. 中井徳次郎

    ○中井(徳)委員 そんなことは当然のことでございましょう。私が言うておりますのは、今度の安保条約で、この条約は軍事条約ではない、それだけではない、これには政治のことも、経済のことも入っておる。それは二条だとおっしゃるのです。あなたも言うし、総理大臣もしょっちゅう言われるわけです。その内容を、この安保委員会ではきょう初めて伺うのです。それで、協議をするのか、する、その機関はどうだと言うと、まだないという。これではやっぱり二条はつけ足りですな。(笑声)そういうことにならざるを得ない。どうでございますか。
  386. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 われわれは、必ずしもつけ足りだとは思っておりません。やはりこういうような二条があることによって、両国の経済関係、あるいはそういうような経済政策の、いろいろな食い違い等を調整していくということのために一そうのさらに努力が払われて、また、必要があれば、今申し上げたように、政府間においても話し合いの機関を作り、あるいは民間等において、そういう協議会を作ることがありますればさらに一そう有効適切である、そう考えております。
  387. 中井徳次郎

    ○中井(徳)委員 私の質問を、そういうふうにはずしてもらいますと困るのです。私は、二条は四条にかかる、四条には随時協議をする、そういうもののためにわざわざ交換公文があって、メンバーまで、委員会内容などまできめておる形が出ておって、そうして、二条については何もないというようなことでいいのですか。民間でもやります。今だってやっています。これは条約を新しく結んで、新しく前進をするというのがあなた方の宣伝であり、説明でありませんか。これはちっとも前進をしておらぬ。何もしておらぬ。これから大いにやりますと言うだけでは、これはうたい文句ですね、うたい文句にすぎない。どうなんですか。何も内容はないわけですな。どういうことです。一人できめてかかる、そういわざるを得ないじゃないですか。何かありますか、どうなんです。
  388. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 われわれは、単にうたい文句ばかりではないと思っているわけでありまして、こういうような条項によりまして、さらに一そう両国政府が緊密に経済上の問題あるいは経済政策上の問題等に関して話し合いをして参りまして、そしてお互いの食い違いを是正していく、誤解を回避していくというような問題が解決して参りますれば、非常に効果がある条項だ、こう考えております。
  389. 中井徳次郎

    ○中井(徳)委員 こういうふうなことでいけば、こういうふうなことでいけばとおっしゃるが、ちっともないじゃないですか、どういうことでいかれるのですか。調印には商工会議所会頭の足立さんもいらっしゃったそうでございますが、向こうで何か収穫でもありましたですか。それではちょっと見方を変えてお尋ねいたしますが、どうでございましたか。
  390. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 民間的な機関につきましては、現在、日商の足立会頭と全米商工会議所の会頭あるいは商務長官等のあっせんによって、何かアメリカとメキシコでやっているような、民間的な協議会みたいなものを作ってみたらどうだという話が現に進みつつございます。そういうような状況でありまして、われわれといたしましても、今すぐに政府的な連絡機関を作る——御承知の通り、カナダとアメリカとの間には政府レベルのこういう経済問題を話し合います協議会みたいなものがございます。ただ、われわれは、今すぐにこういうものを作る必要があろうとも思っておりませんが、しかし、将来必要がありますれば、そういうものを作っても一向に差しつかえない、また、作ることが適当と思えば、作るように進み得る原則がここに掲げられておるわけでございます。
  391. 中井徳次郎

    ○中井(徳)委員 それじゃ、結局、今は何もない。足立さんが行きましたのは民間で行ったんじゃなくて、私は、やはり政府の代表として行ったんだろうと思うのですが、行かれて話し合いをしても、一向にまだまとまるところまでいっておらぬ、こういうふうに了解をしておきます。  それではその次に、今批准が済まぬという話もあったが、そんなことを言ったって、この条約を批准いたしまするための必要なる機構なんです。これを経済問題についてはただ宣伝しただけ、まだ何も前進がない、こういうことであります。その次、国際経済政策における食い違いということでありまするが、実は、日本中国との貿易につきまして、今、中国は、日本との貿易をシャット・アウトしている。日本は政治と経済は別であるから、向こうが言うてくればいつでもやる、こういう形であります。与党の皆様も、将来は大いに日中貿易をおやりになる、こういうことでありまするが、日本が日中貿易を積極的に打開するということになりますると、現在の国際情勢のもとにおきましては、一応アメリカとの間に食い違いというふうな形になって出てくるのではないかと思うのでありますが、その辺のところの見解はいかがでしょうか。
  392. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 この場合におきます国際経済の食い違いは、単純に二国間の貿易上の問題ばかりでなく、諸般の問題がもちろん含まれておると思います。むろん、日本が共産国と貿易をするというような問題につきましては、日本自体見解によってこれを進めて参るわけであります。そういう点について、いろいろお互いに誤解が生じますれば、それらの問題も十分話し合いながら、お互いに理解を深めていくということは必要なことだと思います。
  393. 中井徳次郎

    ○中井(徳)委員 お尋ねいたしておりますのは、日中貿易などということは、この国際経済政策における日本アメリカとの間の食い違いになりまするかどうですかということをお尋ねいたしておるのであります。
  394. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 ここに書いてあります国際経済政策の食い違いというのは、必ずしも日中貿易というような問題でなくして、もう少し大きな意味におきます経済政策の問題、そうした問題を含めておるのでございまして、必ずしも日中貿易ということをうたっておるわけではございません。
  395. 中井徳次郎

    ○中井(徳)委員 私も子供じゃありませんから、そんなことがわからぬわけではありません。国際経済政策は日中問題だけではない、あたりまえの話であります。これは重点は、日米間のことでございましょう。対米輸出の問題、アメリカからの綿花の輸入の問題、いろいろ具体的にもありましょう。また、政策としてもありましょうし、また、場所におきましても、地域的に、東南アジアとの関係フィリピンとの関係、その他日本が経済援助、技術援助をやって、資金はアメリカに頼むんだなんという皆様のお考えのようなこともないわけではないでありましょう。ただ、その一つとして、われわれは中国大陸と貿易をいよいよ再開しようというような場合に、この国際経済政策における食い違いというふうなことに私は関連を持つと思いますから、その点でお尋ねをいたしておるのであります。
  396. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 この条文の国際経済という意味は、必ずしも、どこの国と貿易をするというような考え方の上に立っておるわけではむろんないのであります。お話しのように、ガット等の問題もございます。諸般のそうした国際経済的な問題があるわけでありまして、どこの国と貿易をするかというようなことを、一々必ずしも相談をするというような問題ではございません。そうした意味におきまして御理解をいただければ、おわかりいただけると思います。
  397. 中井徳次郎

    ○中井(徳)委員 私は了解ができないのであります。それは、日本中国と将来貿易をする、これは一つの例としてお尋ねしておるのですよ。そういう場合には、やはりそれに関連をして、日本アメリカとの間で協議が行なわれるでありましょうということを聞いておる。あなたは、行なわれるとも、行なわれないとも返事をなさらぬ、どうなんですかといってお尋ねをいたしておるのであります。
  398. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 今お話しのような、たとえば、中共と貿易をするというような場合に、何も一々アメリカ協議をする必要は、この条項からは出て参りません。ただ、われわれとして、むろん日本立場において、こういう意味日本は貿易に依存している、あるいは地域的にも隣接区域である、あるいは資源的にも、中国から物を入れたり、あるいは売ったりすることが適当であれば、そういう立場においてわれわれは考えていくわけであります。そういうことが、あるいはアメリカの国際政治の上においていろいろの食い違いがあれば、われわれとしては、政治的に日本立場を強調して、日本みずからが考えている道を、アメリカ理解を深めながら進めていくことは当然でございます。
  399. 中井徳次郎

    ○中井(徳)委員 もちろん、私は議題になるであろうと思うのです。それはあなたが、何か議題になるといえば、次の質問があるかもしれぬというので、そういう答弁をなさっておる。これは安保条約審議の途中において非常にしばしば出くわすことでありますので、くどいようでありまするが、お尋ねをいたしておるのであります。そういう事態が起こって協議をすることは、日本にとって有利の場合ももちろんありましょうけれども、そういうアジアにおける日本国の特殊事情というふうな立場から考えまして、こういう点において、もしアメリカとの間に協議の結果意見が合わないということが起こりました場合には、どうなりますか。意見が合わない、向こうがノーと言うても、これは協議でありますから、かまわないということになるのでありますか。念のために私は伺っておきたいと思います。
  400. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 先ほどから御説明申し上げておりますように、条約の運営にあたりまして随時協議をしていくということは、そういう一々の問題まで全部協議をしなければならぬということを規定しておるわけではないと思います。この条約全体の運営において随時協議をしていくと申し上げておるのであります。日本がやっております経済的な政策、あるいは貿易の政策を一々アメリカ協議しなければならぬというものでないことは御理解いただけると思います。
  401. 中井徳次郎

    ○中井(徳)委員 それでは、ちょっとこれに関連してお尋ねをしたいが、今ココムあるいはチンコムというのはどういう状況になっておりますか、それをちょっと伺いたいと思います。
  402. 牛場信彦

    牛場政府委員 お答え申し上げます。ココムとチンコムにつきましては、当初、御承知の通りチンコムの方、つまり中共に対しまして、より強い統制が行なわれておったのでございますが、一九五七年の七月からそれが撤廃されまして、現在は、対共産圏の統制は一本になっております。それから、ちょうどそのころから、また東西両陣営間の緊張が緩和いたして参りましたし、それからまた、共産圏の中の科学的技術も進歩して参りましたので、従来、比較的戦略度の低いものまで統制しておりましたのが、その必要がなくなりまして、大体一九五八年の初めごろから禁輸リストの再検討が行なわれまして、百八十一ありました品目のうち、七十一品目が解除せられました。また、八十一品目につきましては定義が改定され、現在は、ごく高度の武器、弾薬に類するもの、あるいは原子力関係に属するようなもののみが統制に付せられておる次第であります。また、わが国が具体的に輸出につきまして関心を持っておりますようなものは、全部もう入っておりません。御承知の通り、先般ソビエトとの間にも貿易協定を結びましたが、そういう際にも、ココムの関係はほとんど障害になっておらなかったわけであります。
  403. 中井徳次郎

    ○中井(徳)委員 チンコムはもうなくなって、ないのですか、まだそのままあるのですか、その辺のところを……。
  404. 牛場信彦

    牛場政府委員 名前としては残っておりまするが、しかし、内容は、もうほかのココムと全然同じになっております。
  405. 中井徳次郎

    ○中井(徳)委員 名前としては残っておるが、日本はそこからまだ脱退してないのですか、どうですか。
  406. 牛場信彦

    牛場政府委員 現在、わが国といたしましては、この問題につきまして自由主義国家と協調して参るべきであるという建前から、協力いたしております。
  407. 中井徳次郎

    ○中井(徳)委員 今お尋ねをしたように、実効はないが、まだ残っておる。このチンコムをやめてしまえといってがんばったのは、私はイギリスだと聞いておるわけであります。最も関係の深い、近い日本が、いまだに最後までそれをやめてしまえという側には立たないでほうってある。日本とトルコだけがまだ残っておる。こういうことは、私は、どうも日本の外交は全くだらしがないように思うのですが、その辺のところ、もう少しはっきりとしたらどうでございますか。また、ココム等につきましても、これは最初日本は加盟はいたしておりませんでした。それを途中で、アメリカから慫慂があるとすぐさま入る。チンコムもそのような形です。私は、日本アメリカの従属国であるとか、あるいはまた、独立国ではないとかいうふうな言葉につきましても、私も日本人の一人でありまするから、なるべく使いたくないし、そういうことを考えることさえくやしく思う一人でありまするが、どうもこの経済の二条の条文だけを見て、この締結の過程等を考えましても、いささかも、日本政府として経済協力、政治協力をする主体的なものが入っておらぬ。集団的でありまする北大西洋条約のものをそのままちょうだいをして得々としておる。ヨーロッパと日本は私はずいぶん違うと思う。もっと率直にいいますと、この二条は、そんな経済協力、政治協力ではなくて、実は、むしろ共産圏に対する思想統一の条文であります。共産圏に対する自由主義国のワクであります。何も積極的な政治の協力だ何だというのじゃございません。これは全体主義国に対しての自由なる諸制度を強化するというふうな文句なんです。それを日本に持って帰って、あなた方は第二条として得々と説明をやる。これは、むしろ防共的といいますか、反共的といいますか、そういうことなんです。私は、すなおに読んでそういうふうに感じました。その辺のところいかがでございますか。  最後に、私は簡単な質問があまり長くなってはいけませんが、これだけを、私の見解を申し上げて、皆さんの意見を伺っておきたいと思います。  これは、むしろ防ぐ方ですよ。まとめる、そういう形のものです。そうでしょう。それをあなた方は、積極的な意味をここに加えておられるが、どうでございますか。
  408. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 われわれは、日本を国家として打ち立てていく上において、自由主義の制度の上に立っていく、従って、今お話しのように、全体主義的な国是をとろうとは思っておりません。従いまして、そういう意味においては、あるいは自由主義と全体主義というようなものの分け方をなさる意味もあるかと思います。しかしながら、同時に、これらの自由主義制度の上に立って、相互の間の経済的なあるいは社会的な諸般の問題について隔意なく話し合いをしながら、お互いに経済政策等においても食い違い等を直していく、そうしてほんとうに円滑な経済関係を打ち立てていこうというのが、これがこの条文趣旨でございます。
  409. 中井徳次郎

    ○中井(徳)委員 私は、今の外務大臣の意見はやはり十分じゃないと思います。二条はそういう性格を持っておる。そこで私は、そういうものは日本国民自体がきめることでありまするから、この前半のような、くどくどとしたことを書かないで、日本は、日本憲法にある——なぜ、そういう日本国としての主体性のある条約締結にあなた方は努力しなかったか、私はこの点が非常に残念であります。これは防共といいますか、反共といいますか、そういうことです。そのことに賛成であるか、反対であるかということと別であります。私は事実を申し上げている。そういうことなんです。それを隠して、この第四で説明をいたしておる。なおわかりません。ここに問題があるので、経済協力という、単なるそういうふうなことではなくして、その奥にあるもの、それをどうして隠されるのですか。この点について、私、最後に総理見解を伺いたい。
  410. 岸信介

    岸国務大臣 この条文趣旨につきましては、先ほど来外務大臣がお答えをしておる通りでありまして、私は、それが日本国民の福祉を向上せしめるゆえんであり、また日本憲法の精神であると思います。それで、今お話しのような、われわれは、日本憲法趣旨から申しましても、自由な諸制度を取り入れ、また民主的な国会によって議会政治をとるというような建前をとっておりまして、これが日本国民の福祉の向上をはかるゆえんであり、適当なものであるという信念に立って、日米が今後政治的あるいは経済的な協力を一そう推し進めていくことが適当である、かように考えておる次第であります。
  411. 中井徳次郎

    ○中井(徳)委員 もちろん、日本憲法は、この二条の範囲内でございましょう。しかし、これはばく然とし過ぎまするから、私は先ほど来申し上げておりまするように、これは四条とのひっかかりにおいて、アメリカ日本との関係で将来紛争を巻き起こすおそれがある、それを先ほどから申し上げておるのであります。紛争を巻き起こすおそれがある、それを申し上げておる。この点はおわかりじゃないですか。もう一度、今度は外務大臣に……。
  412. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 四条とのひっかかりにおいて紛争が起こるということは、われわれとうてい考えられないことでございます。四条のとひっかかりにおいて何か紛争が起こるということは、われわれとうてい想像もつかないことでございまして、お互いに隔意なく話し合いをしながら、自由な諸制度を強化し、そうして経済政策の上においても、自由な立場に立ってお互いにやっていく、その食い違いがあれば、それをお互いに調節していくということは、少しも無理なことではない、かように考えております。
  413. 中井徳次郎

    ○中井(徳)委員 私はこれで質問をやめますが、外交関係はそんな甘いものではないと私は思います。この二条は、これは将来に禍根を残す余地が十分にある。アメリカがやろうと思えば、これは日本に対する内政干渉の材料に使いますよ。四条とひっかかる。北大西洋条約ではちゃんとそれは抜いてある。ここが私は非常な手ぬかりだと思います。日本政府アメリカと交渉なさるときに、この二条を深くお考えにならずに、四条との関係で簡単にお引き受けになった。この点は、私は、あとは水かけ論になるかもしれませんから、やめまするけれども、私はそういうふうな心配を十分持っております。この点を申し上げて、きょうの質問を終わります。  あと、通産大臣がお見えになりましたら、ココム、チンコム、その他、日本中国との貿易、英国と中国との貿易その他多少まだお尋ねをいたしたいと思いますが、きょうはその点を保留いたしまして、これで質問を終わります。
  414. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 次会は、明十一日午前十時より開会いたします。  本日は、これにて散会いたします。     午後七時十六分散会