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1960-05-09 第34回国会 衆議院 日米安全保障条約等特別委員会 第31号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年五月九日(月曜日)     午前十時五十三分開議  出席委員    委員長 小澤佐重喜君    理事 井出一太郎君 理事 岩本 信行君    理事 大久保武雄君 理事 櫻内 義雄君    理事 椎熊 三郎君 理事 西村 力弥君    理事 松本 七郎君 理事 竹谷源太郎君       安倍晋太郎君    愛知 揆一君       秋田 大助君    天野 光晴君       石坂  繁君    鍛冶 良作君       鴨田 宗一君    小林かなえ君       田中 榮一君    田中 龍夫君       田中 正巳君    床次 徳二君       野田 武夫君    服部 安司君       福家 俊一君    古井 喜實君       保科善四郎君    毛利 松平君       山下 春江君    飛鳥田一雄君       石橋 政嗣君    井手 以誠君       岡田 春夫君    黒田 寿男君       滝井 義高君    戸叶 里子君       中井徳次郎君    穗積 七郎君       森島 守人君    横路 節雄君       大貫 大八君    大野 幸一君       堤 ツルヨ君  出席国務大臣         内閣総理大臣  岸  信介君         外 務 大 臣 藤山愛一郎君         国 務 大 臣 赤城 宗徳君  出席政府委員         内閣官房長官 松本 俊一君         法制局長官   林  修三君         警  視  監         (警察庁刑事局         長)      中川 董治君         防衛庁参事官         (長官官房長) 門叶 宗雄君         防衛庁参事官         (防衛局長)  加藤 陽三君         調達庁長官   丸山  佶君         外務政務次官  小林 絹治君         外務事務官         (大臣官房審議         官)      下田 武三君         外務事務官         (アメリカ局         長)      森  治樹君         外務事務官         (条約局長)  高橋 通敏君         運輸事務官         (海運局長)  朝田 靜夫君         運輸事務官         (船員局長)  土井 智喜君         運輸事務官         (航空局長)  辻  章男君         海上保安庁長官 林   坦君  委員外出席者         専  門  員 佐藤 敏人君     ————————————— 本日の会議に付した案件  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び  安全保障条約締結について承認を求めるの件  (条約第一号)  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び  安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並び  に日本国における合衆国軍隊地位に関する協  定の締結について承認を求めるの件(条約第二  号)  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び  安全保障条約等締結に伴う関係法令整理に  関する法律案内閣提出第六五号)      ————◇—————
  2. 小澤佐重喜

    小澤委員長 これより会議を開きます。  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約締結について承認を求めるの件、日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並び日本国における合衆国軍隊地位に関する協定締結について承認を求めるの件、及び日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約等締結に伴う関係法令整理に関する法律案、右の各件を一括して議題といたし、質疑を続行いたします。  この際、政府側より発言を求められております。これを許します。藤山外務大臣
  3. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 一昨日、石橋委員の御質問日本の根村という人が私設海軍を作ったというお話がございました。当時私、事情を知りませんでございましたので、その後調べましたところ、外務省といたしましてば、昨年の夏、多分六月ごろであったか、ある方がお見えになりまして、そしてアメリカ局の人に、先般お話しのような事件があった、これをアメリカ大使館に対して調べてもらいたい、こういうお話がありまして、初めて、われわれとしてはそれを知ったのでございます。そこで、外務省から、直にアメリカ大使館に対しましてそういう質問をし、ただしましたところが、アメリカ側からは、当時の事情を調べたけれども、該当する事件を確認し得ないと回答して参ってきたのでございます。その後、さらに調査を求めておりますけれども、同様の回答に接しておるのでございます。同時に、そういう情報を得ましたので、外務省としては、関係各庁に、こういう情報外務省が得たが、それらの国内的な問題その他について調査をしてもらいたいということを依頼をいたしたのでございまして、外務省としては、そういう状況下に今日まで推移して参っておるのでございます。
  4. 小澤佐重喜

  5. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 藤山外務大臣の御報告でございますが、まだ明確な回答にはなっておらないようでございます。そこで、私、その後いろいろ入手いたしております資料をもう少し発表いたしまして、真相を知っていただきたい、このように考えるわけです。  一番ここで問題になりますのは、第一次出動の際に、直接中国側と交戦をいたしておるわけでございます。その際先日も申し上げたように、日本側に一人の死亡者と一人の負傷者を出したわけでございますが、それの戦闘経過報告書が、実は船長から出されております。それを私持っておるわけでございますが、これが、一般に正式に海運局に出されましたものとは非常に違うわけです。九州海運局佐世保港湾管理事務所に出されました内容は、当時の新聞に出されております内容と同じでございますが、こういうふうなものになっております。これも、実は私、海運局から入手したのではございません。当事者から入手したのでございまして、これは海運局で確かめていただけば、私がこういうものを要求したかどうかおわかりになると思います。この正式報告書には、こういうふうになっておるわけです。新聞報道もそうです。   本船は漁船にして、昭和二十七年十二月九日、十五時四十分佐世保発、途中相浦に寄港、十日十六時三十分漁場に向け出港。十三日十九時ごろ北緯三十三度三十六分、東経百二十四度五分付近航行中、突如国籍不明船二隻現われ、至近距離より機銃射撃を受けたり、当時天候曇天、暗夜にして視界至って不良、風向北東、風力二程度なり。本船は、直ちに進路を東に転じ、全速にて退避したり。約十五分間くらい銃撃を受けたる後、幸いにして難を脱したるも、銃撃のため、船員甲板員橋本三好は右足に負傷を受け、船尾に昏倒し、船体に十数発の被弾を受けたり。直ちに応急手当をなしたるも出血多量の為め遂に十四日二時四十分死亡せり本船は其の儘佐世保に向け航行十六日八時三十分相浦港に入港せり。   上記の通り海難のあったことを報告致します。 これが正式に出されております海難船員死亡報告書でありますが、当時の新聞発表も、この報告書に基づいてなされておるようであります。ところが、実際はこういうものじゃないわけでありまして、「第一次航に於ける戦闘経過報告並びに所見」というのが、船長司令官沢山久水海軍少佐によって出されておるわけであります。これは正式に出されたものがなかなか読みづらいので、私がこちらに写したわけでございますが、こういうふうな報告書になっております。  一、北緯三十二度線付近は西進中汽船航路を十二日夕刻通過大型船三隻南進を認む)以後極力索敵せるも「ジャンク小型船を認めず十三日未明四方水平線上に「ジャンク」の帆  を認め之を追及せる処陸岸に極めて接近航行中を確認せり。  右海域は海図上にも判然と記載しあらず浅瀬存在し夜間自近接する事不能止むを得ず壁間接近せり(当時の天候晴天無風視界極めて良好)  一、戦闘開始時の配置及消費脚数は別紙の通り。 この配置図がまたここにあるわけでありますが、指揮官が沢山、機関長田中機関員が百本、電信長佐藤操舵員吉住砲術長鴛渕、一番砲番上、西村淳、二番砲鴛渕、加地。この鴛渕というのが砲術長勤務になっておりますが、これがなくなった橋本さんの配置場所であったと思います。三審砲が富浦、大坪、四番砲が井上、草場、五番砲西村勉盃屋、六番砲松田、七番砲市田。そのほか検察隊長今村、それから写真係荒木弾薬補給指揮青木医務平田、そのほか岸本、百田、こういうふうな人が配置になっておるようであります。  一、敵は後部旗竿に赤地に日模様軍艦旗の如き大形方形旗を掲げたる米軍大型上陸用舟艇(WP?)らしき優速なる敵二隻包囲の隊形を以て左右後方約二千五百碼前後より機銃小銃を我に乱射しつつ突進し来たれり。 一、一番艦は約二千碼付近より停船命令の為めか艦橋より赤旗を振りつつ接近し来たれるも敵を至近距離に引付け有利なる戦闘を行う為め気負へる我方隊員を制しつつ満を持したるも距離約千碼前後より敵弾我船体命中し始めたるに至り面舵一杯を令し両艦を略右正横に見たる時無反動砲各二発宛程度にて敵は仰天し遁走するものと推測の上「射方始め」を令す。一、無反動砲初弾及第二弾は一番艦の前方至近距離に落下せるも予測に反し敵は勇敢に突込み我が回頭に伴い両艦共面舵にて回頭し二番艦は一番艦の影となり射撃不能となる。右は敵指揮官技倆拙劣の為か我至近弾に度を失いたる為か我に有利な隊形となれり。爾後我は面舵にて両艦を右に見る如くに行動し十三粍機銃曳痕弾多数命中せるを確認す(主として一番艦に命中)右の問我方にも機銃弾多数命中し四番砲(十三粍機銃射手橋本三好射撃中有下腿部被弾重傷(後出血多量の為め死亡)二番砲(十三粍機銃射手西村勉左大腿部機銃弾破片命中音質(治療二週間)等の被害を蒙り予期せざる敵の重武装の火力を認め戦斗の延引を危惧し無反動砲の必中を期せり。 一、無反動砲弾第1、六発自は(距離約五百碼)期待に反せず一番艦前部右舷水線上に命中炸裂すると同時に前部機銃座(三基)の砲員全員が瞬時に消え以後機銃のみ水平にぶらぶらと振れ居れり尚、続いて次発日艦橋下部水線上に命中炸裂と同時に操舵員死傷の為か行動全く無軌道となり二番艦に衝突するが如き状態となる。 一、右の如き一番艦の状態に依り二番艦は衝突を避けるが為か回頭せるため一番艦に代り当方射撃目標に完全捕捉せられたる為直ちに発射艦橋下部水線上に命中炸裂と同時に火を発し前後部銃側等兵員直ちに姿を消し(死傷及び消火の為かと推定さる敵機銃全く沈黙す。 一、尚右に続き後部左舷甲板上に兵員一名が現われ炎上せるドラム確約五本を海水に投棄するを望見す他に人員を認めず。 一、右の間一、二番艦共我が方機銃曳痕弾多数命中するを確認す。一、其の後面艦共全く戦闘能力を失し我方の一方的戦闘となる。一、右に対し更に無反動砲射撃を行はんとしたる処準備せる砲弾十六発を打ち尽くし弾庫より補給中にて好機を逸し決定的打撃を与え得ざりしは遺憾なり。 一、此の間敵を右に見つつ略一周し戦闘開始時の位置に至りたる処敵一番艦は漸く艦橋上に人員一名現はれ陸岸に向け遁走開始続いて二番艦も陸岸に向いたる為直ちに拿捕せんと追撃に移りたるも依然として敵優速を保ち距離次第に離れたる為敵飛行機の飛来を警戒し止むを得ず追撃断念せり。 一、右の如く両艦共反動砲命中炸裂し甚大な損傷を受けつつ尚、且、機関に異状なきものの如く我よりも優速にて遁走せるは不審に堪えず(時に我方速力機関不調にして約八節なり)   所見  一、今次の行動よりするに北緯三十二度線至三十四度線附近水路に通じたる浅吃水の小型船竝に「ジャンク」は接岸航行を行い得るも該水域は広範囲に亘り浅瀬散在し我方は吃  水二米三〇〇の為右水路接岸航行は昼間に於ても極めて困難にて夜間は全く接岸航行不能なり。  一、右に依り今後は確実な情報を得て航行中の船舶に非れば接岸航行中の「ジャンク」等の襲撃は困難と思考せらる。  以上であります。これが正式に出されております海難報告書と、それから実際の戦闘経過報告としてこの開洋丸船長が書いたものでございます。本日は、この第一出動当時の問題にしぼって資料を出したいと思うのですが、この死亡者が出たり、負傷者が出ましたときに、実は電報を打っております。この電報は、電報局が配達しましたそのものの電文であります。この内容はこういうふうになっております。発信局は長崎の生月になっております。近接地電報というやつです。(「だれあてだ」と呼ぶ者あり)これは開洋水産あてです。「〇七三〇」これは午前七時三十分のことです。「一三ヒ三三六ノ二」「一三ヒ」は日付であり、「三三六ノ二」これは地点を現わしております。「スイオン九・二ミコミマツタクナシ、オサイテイド一、カタニテイド一、イマリ、トウダツ、タンギヨチウ、二七五ノロ」こういう暗号電報を発信いたしております。このままでは何のことやらさっぱりわかりませんので、暗号の換文豪が実はここにありますので、これで解読いたしてみますと、午前七時三十分、十三日、「三三六ノ二」の地点において「スイオン九」というのは、中共鉄製中型警戒船ということになるわけです。そしてこの二隻以上の場合は「スイオン」の下に隻数を置くというのが「スイオン九」、そして「・二」というのは二隻という状態であります。「ミコミマッタクナシ」というのは、襲撃を受け退避中、こういうふうに解読されます。それから「オサイテイド一」といいますのは、「オサイテイド」というのが、大なる負傷者あり、見込みなしということであります。それが一人、それから「カタニテイド」というのが、軽微なる負傷者あり、これが一人であります。そのあとは伊万里に到達する、「タンギヨチウ」こういう電報が出されておるわけでございます。  大体、第一出撃当時の船長報告書、それから連絡に使いました電文等を参考までに申し上げたわけでございますが、こういうふうな資料もあることでございますし、政府側が今後調査をされます場合に何かと資料にもなるかと思いますので、もう少し慎重な御調査方をお願い申し上げておきたいと思います。  なお、あわせて、本委員会におきましても証人を喚問いたしまして、そして事実を明らかにしていただきたいということを要求しておきたいと思います。
  6. 小澤佐重喜

    小澤委員長 それでは、ただいまの石橋委員の要求に閲しましては、後刻理事会を開きまして、適当な処理を講じます。  この際、暫時休憩いたします。    午前十一時十五分休憩      ————◇—————     午後一時五十五分開議
  7. 小澤佐重喜

    小澤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。飛鳥田一雄君。
  8. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 石橋君が、私設海軍の問題について、政府に事実をあげて、いかに信頼協力関係に立つとおっしゃっても、現実にはそれを裏切る行動が数多くあることを立証いたしました。私も同様な意味で、すでに政府に申し上げてあることでありますが、U2の問題をもう一度ここで申し上げて、いかに信頼協力という言葉をお使いになっても、現実はこれにそむいておるかということを伺ってみたい、こう思うのであります。  昨年十二月一日、私は衆議院の本会議において、U2、すなわち、黒いジェットと呼ばれる問題について、御質問を申し上げました。そのときの要旨は、御記憶であろうかと思いますが、第一には、厚木にあるU2三機は、その機体記号も付さず、いかなる国に所属するやも明白でない、同時にまた、それの飛行計画というような問題は、七月一日日本に戻って参りました航空管制本部にも、何ら届け出をせずに行なわれている、このようななぞの行動を、日本軍事基地を使ってやってよろしいかどうか、こういう点が第一点。第二には、この飛行機性能あるいはその他の点から判断をいたしまして、これは単なる気象観測機ではなく、中国あるいはシベリア等写真撮影あるいは情報収集に使われているものとしか思えない、こういう点について政府はどうお考えになるか。第三点としては、このU2が昨年九月二十四日に藤沢のグライダー飛行場に着陸をした、このときにこのU2を守るために、人権じゅうりんが行なわれた、こういうことを安保条約、さらには行政協定の問題にからめて、お伺いをいたしました。すると、それに対して総理及び外務大臣お答えは、「問題のU—2、いわゆる黒いジェット機の問題は、御指摘にもありましたように、アメリカ航空官高に所属しておりまして、米軍管理下にある一つ公用機であります。……従って、行政協定の適用を受け、国内におきまして日本航空法等の一部の規定の除外を受けておるわけであります。」こう総理お答えになりました。さらに、「狭い意味軍用機ではありませんけれども、しかしながら、米軍管理下にあって、アメリカの国に属しておる飛行機としまして、いわゆる純然たる民間機と見ることは適当でないと考えられます。」こうお答えになり、藤山外務大臣は同様に、「海外におきましては米軍管理下に、その援助のもとに気象観測をいたしておるものでありまして、民間航空機ではございません。」飛ばしまして、「なお、日本国内飛行の問題については、それぞれ行政協定によります特例等によりましてこれが除外をされておりますので、ただいま申し上げましたようなことによって、十分な任務を米国側も果たすことができるようになっております。」こうお答えになっておるのであります。しかし、昨今来の新聞をごらんになっていらっしゃると思いますが、このU2は、あなた方のおっしゃるように高層気象観測ということは、表面の理由であって、現実には、中国及びソビエト情報収集航空写真撮影、こういうことを目標として使われておったものだということが明らかになって参りました。これはあなた方もまさか御否定にはなりますまい。もしそうだとすれば、本会議におけるあなた方の御答弁は完全にくつがえったわけです。この完全にくつがえったことについて、何か補足をせられ、あるいは御訂正になることがありましたら、一つ伺っていきたいと思います。
  9. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私どもが、昨年この問題について、飛鳥田委員の御質問に答えましたのは、われわれとしまして、アメリカ側にも連絡をいたしまして、アメリカ側が、航空宇宙局所属機であって、そしてそれを日本に、指揮下に配属したという事実から申したわけでありまして、同時に、その目的というものは気象観測であって、そうして例の名古屋の台風等におきましても、気象等につきましてわれわれに十分な報道をいたしてくれておりますので、われわれとしては、その見地から今申し上げたような答弁をいたしておるのでございます。今回起こりました事柄につきましては、われわれとして、さらにアメリカ側に対して、その問題について、今までアメリカ説明している通りであるかどうかということを確認いたしたいと思いまして、アメリカ側に現在連絡中でございます。
  10. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 今の外務大臣お話を伺っておりますと、何でもアメリカから聞かされたことはみんな信用をしてしまう、アメリカさん一辺倒だということが、御答弁の中で明確に出ているのじゃないか、こう私は考えるわけです。私は昨年の十二月に御質問を申し上げましたときに、ただ怪しいぞというだけを申し上げたのではないつもりです。速記録をごらんいただきますと、ここではU2の性能を明確に申し上げておる。まず第一に申し上げましたことは、これが航続距離は八時間ないし十時間ぐらいであろう、こう申し上げました。超音速飛行機といわれておりますので、超音速で飛ぶ、これが八時間ないし十時間飛べるということを考えれば、当然その行動の範囲内には、中国シベリアも入ってしまう。今回のフルシチョフ声明によっても明らかになっておりますように、ソビエトを横断することさえできる航続距離を持っているのであります。このことは申し上げたつもりです。しかも、これは単に航続距離が長いというだけではなしに、逆レーダーがついていることをも申し上げたつもりです。逆レーダーと申しますのは、飛んでいる飛行機が、自分に近づいてくる飛行機を探知したり、あるいは地上から自分レーダーによって探索をしているかどうかということを知ることのできる装置であります。なぜこの逆レーダーがついているのか、こういう点も私は申し上げたつもりです。さらに第三には、この飛行機記号が全然付せられていない。もし民間機であるとするならば、ICAOの条約によって当然国籍を表示しなければならぬはずだし、さらにまた、軍用機であるとしても、へーグ条約——なるほどこれは成立するには至りませんでしたが、しかし、このへーグ条約日本は参加しておるはずであります。そして、逆にいえば、国籍を表示しない以上は、その飛行機国籍不明機として処理せられることの不利益を承認しなければなりません。なぜ堂々たる大国のアメリカが、みずからを国籍不明機として処理せられることを承認するような態度をとっているのか。記号もなければ何もない。乗っている飛行士においてさえ、その階級を示すべきものもないし、名前その他一切認識の基準となるべきものはつけていない。こういうことは非常に不思議ではないか、正常な目的のためにこれが使われているものだとは思えない、こういうことを私は申し上げたはずです。これだけ具体的に現実の事実を申し上げて、政府に御注意を申し上げた以上、政府アメリカ問い合わせてみて、ああ、あれはこういうものでございます、はい、さようでございますかと、引き下がるべき理由が、一体どこにありますか。当然、日本政府は、従属的でないのならば、押し返して、こういう点はどうですか、ああいう点はどうですか、おかしいじゃないですか、こうおっしゃるべきです。そうして、その上で、納得をせられ得るような資料を提示せられて、そうして結論に達したのならばまだわかります。ですが、私が具体的なこういう事実をあげて御説明をしておるにもかかわらず、ただ一片の外交辞令的な問い合わせによって、事を処理してしまうという態度自身が問題ではないでしょうか。今まで、少なくとも国会の本会議で警告をせられたるものをほおっておく、こういうところに私は問題があると思います。一体政府は、いかなる理由、いかなる根拠に基づいて、米軍説明を納得せられたのか、外務大臣に伺いたいと思います。
  11. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 性能その他については、私から御答弁申し上げるよりも、防衛庁長官の方が適当かと思います。  飛鳥田委員が御指摘になりましたような点について、われわれとしては、むろんアメリカ側問い合わせもいたし、また、標識記号等の点につきましては、アメリカ側注意を促したわけでありまして、その後の連絡によりますと、アメリカ側記号をつけたということを申してきているのでありまして、決して、われわれとしてはないがしろにいたしておるわけではございません。
  12. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 今の点、赤城さんのお話を伺う前に言っておきますが、記号をつけたとおっしゃるのですけれども、記号もその後つけておりません。これは厚木周辺の方々がみんな見ておりまするし、そして、これはまた一時横田にも移っているようでありますが、横田周辺の人々も記号のないことを確認しておりますよ。記号をつけたなどということはありません。この点も、外務大臣お答えになったことは、一つ事実と違っておりますから、明日にしておきたいと思います。記号というのは、せいぜいアメリカのマーク、そして標識、こういうものが全部ついていなければ記号とは言えないわけです。
  13. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 われわれのところには、十一月二十七日に機体に対してNASAの標識を付したということを申してきております。
  14. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 数日来、ただいまお話しのようなことがありましたので、米空軍に確かめたことを申し上げておきます。私の方から米空軍に対しまして、昨年厚木におけるU2事件のときの米空軍の発表と、今度のU2事件に関するワシントンの発表、これは新聞、ラジオ等によったのでありますが、その間に多少差異があるように感ずるけれども、現段階において、在日米軍の公式発表は、昨日厚木において新聞記者会見において発表した通りであるかということを聞き合わせ、なお、追加することがあったならば知らしてほしいという質問をしました。ところが、米空軍当局の方からは、日本におるU2機の使命その他については、昨日厚木新聞記者会見において発表した通りである、どの点がワシントンの発表と違うのか、こういう反間をしてきましたので、新聞によりますと、四年前からスパイ行為のようなことをしておったというような印象を受けるが、この点はどうかということをこちらから聞きましたところが、向こうの答えでは、同じU2機でも、時、場所等その他の状況で多少使い方は違うが、日本におけるものについては、きのうの発表の通り気象観測ということで使っておるのだ、こういう答えでございます。なお、米空軍のスポークスマンの昨日の発表を確かめましたところ、U2型飛行機三機が、過去三、四年来厚木の海軍航空基地におる。この飛行機は米国のNASAに所属しまして、日本においては米空軍及び海軍施設から補給を受けておる。U2機については秘密取り扱いはしていない。極東におけるこれらの使命は気象観測であり、昨年の伊勢湾台風等のときにもそれははっきりしているわけだ。極東においては気象観測以外の使命は持っておらぬ。それから天候状況等によりまして、これを追及するため、要すれば彼らは中共、北鮮、シベリアの近くまでいくことがある。しかし、彼らはすべての国の領空から最小限二十マイルの外での行動しか承認されておらぬ。こういう問い合わせと返事があったので、申しておきます。
  15. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 今の防衛庁長官の御説明、それをそのままあなたにお受け取りになったのですか。あんまりばかばかしいじゃないでしょうか。私は、むしろもうここで問答をするよりも、あなたの常識あるいは良識に伺いたい、こういう感じさえいたします。日本にあるU2はヨーロッパにあるU2とは多少違った使い方をすると、あなた今おっしゃったですが、そんなことで納得して下がるのは子供だけです。少なくともあなたはそうおっしゃるかたわら、当然もっともっと突っ込んでお問い合わせになるべき責任があったわけです。突っ込む方法というのは幾らでもありますよ。たとえば、私は議会では申し上げませんでしたけれども、航空情報その他を見れば、藤沢に不時着をしたU2機の塗料、この塗料の一部が、不時着のときのショックによってはがれて、こぼれ落ちておった。これを某君が拾いまして、航空情報社の編集員である鈴木さんという方に届けてある。こういうことはかなり公知の事実です。もしなんでしたら、その塗料を、あなたの方で技術研究所などを持っていらっしゃるのですから、分析してごらんになれば、もう問題は一見明白です。この塗料は、アメリカのデュポン会社が作った特殊塗料であって、地上から送ってくるレーダーの電波を最小限度にしか受け付けない。あんな大きなU2という飛行機レーダーがとらえたときには、セスナ程度にしか映らない。セスナ程度のものなら、時には鳥でもそういうふうにレーダーに映ることがありますので、なかなか判別は困難だ。そういう意味の塗料だということは、巷間うたわれているわけです。しかも、現物はあるのです。私たちではなかなかそれの分析は困難でありますが、あなたの方ならば朝飯前の仕事のはずです。そういう当然追及していくべき事実を放擲しておいて、ただアメリカ問い合わせてみると、ヨーロッパのものとは多少異なる使い方をしている、こんなことで、はい、さようでございますか、これで済むのなら非常に楽です。私たちは、そういう態度をあなた方が持して、いつでも信頼協力関係ということだけで問題を処理していこうとせられる、その態度自身を今問題にしているわけなんです。一体、この特殊塗料の破片が現実日本国内にある、こういうことをあなたは御存じだったでしょうか、当然御存じでなければなりません。これだけ問題になったのですから……。それについてどれだけの手をお打ちになったのでしょうか。実態究明、真相究明の手段は、米軍問い合わせろということだけしかありませんか。
  16. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 問い合わせてみて、そういうことである、そのまま捨てておくのかということでありますが、これは問い合わせてみて、いろいろそのほかも問い合わせてみますが、その結果を今報告しただけで、それであなたはそのままでおるのか、こう言いますけれども、そうではなく、あらゆる面から向こうの方に問いただすべきは問いただしておる、その一端を申し上げただけであります。
  17. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 向こうに問い合わせたとおっしゃるのですが、向こうというのはだれですか。
  18. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 在日米空軍の管理下にあるU2でありますから、在日空軍の方へ問い合わせしたり、ただすべきことをただしておる、こういうことでございます。
  19. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 山田和英さんという方に御質問になってみましたか。
  20. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 山田という人がどういう方か承知しておりませんが、問い合わせたことはないと思います。
  21. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 それではお教えいたしましょうか。九月二十四日、このU2が藤沢のグライダー飛行場に着陸をいたしましたときに、その場に居合わせた方であります。山田和英という方は防衛大学教官です。あなたのおひざ元ですよ。
  22. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 まだ私は承知しておりませんが、事務当局によく調べてもらいます。
  23. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 あなた方が本気になってお調べになる気持がないから、そうなんですよ。私は別に皮肉を言うつもりで申し上げたのではありません。少なくとも防衛大学の教官が現実にそこにおられて、見ているのです。この方の意見くらいは聴取して、あなたの御信頼になる防衛大学教官の意見をもとにして、アメリカに問いただしてみる、こういうことでなければ、どんなうそをつかれたってあなたごまかされてしまうじゃないですか。そういう意味で、あなた方がお調べになったとおっしゃるから——現場にいた目撃者——そうしてその目撃者は、すぐ救援に来たアメリカ人——私服で来られましたから、軍人かどうかはわかりませんが、アメリカ人に、繰り返し繰り返しこういうことを尋ねられています。パイロットが日本人と話をしたかどうか、何を話したか、一人で飛行機から出ることができたかどうか、こういうことを繰り返し繰り返し尋ねられているわけです。これは少し専門家ならば、この言葉の重大さがすぐわかるわけです。フルシチョフの声明によってもわかりますように、搭乗飛行士は、不時着をすると同時に自殺をするために、ちゃんと自殺針を持っている、自殺の注射器を持っている、こういうことです。それと照らし合わして考えてみれば、パイロットが日本人と話をしたかどうか、何を話ししたかということの重大性がすぐわかるはずです。これは今になってそう言うのではなく、「航空情報」もそういうことを伝えておりますし、私も御質問のときに申し上げたはずです。それから、一人で飛行機から出られたかどうか、こういうことも聞いています。飛行機から出られるかどうか。この問題も、U2という特殊な飛行機、こういう点から考えてみると、非常に重大な意味を持っている。こういうことはしろうとの私たちにもわかるわけです。ましてや専門家が聞けば、ははあ、この飛行機は何に使われているのかということが、周囲の状況から照らし合わして、すぐわかる重大な質問ですよ。この重大な質問を受けているのが、山田和英防衛大学教官、この防衛大学教官がなぜあなた方にその事実を申告しないのかも不思議ですが、同時に、あなた方もまた、それに対してちゃんと質問をして、事実を確認しておく努力があるべきではないか。にもかかわらず、そういうことを何にもしないで、アメリカさんのおっしゃる通り、どんなうそをつかれてもおっしゃる通り、これではどうにもならぬじゃないですか。現に、フルシチョフは、第一日目の演説で、事実っ一部分を発表いたしました。すると、アメリカは、その程度のことに合わせてうそをつきました。そして二日目に現実を出されて、しらを切りようがなくなって、とうとう真実を認めました。こういう態度がまた日本に対しても行なわれているんじゃないか。あなた方が自信と確信を持った調査の上に立って、アメリカ問い合わせをしない限り、事実は出てきませんよ。そして三年間も日本の基地を使われて、中国ソビエトのスパイ行為を行なわれている。一体こんな屈辱的なことがありますか。どうですか。この防衛大学の教官である山田和英さんについて、お聞きただしがないということは、あなたとしてもお手落ちだとお認めになりませんか。
  24. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 聞かないのは手落ちだと思いませんが、また、聞いてみますが、しかし、今の御質問によりますると、飛鳥田委員は、日本におけるU2は、中共及びソ連のスパイ行為をしているという前提で御質問をなさっております。しかし、アイクの声明にもありますように、軍といたしまして、情報収集をするのは、これはソ連にいたしましてもアメリカにいたしましても、これはそう——当然といいますか、当然のことである。しかし、領空侵犯をするというようなことは、これは落度であるというふうに声明しているように、私は聞いております。そこで、日本といたしましては、日本におけるU2、黒いジェット機が、どういうことをしているかということにつきましては、私どもも、御質問もありまするし、関心は持っていますから、いろいろ調査はいたしましたが、調査の結果は、気象の観測のみで、ほかのことには使命を持っておらぬ、こういうことを再三言っておりますので、それ以上はどうも、飛鳥田さんの調査のような調査をしなければ、なかなかそれをくつがえすようなことはむずかしかろうと思います。私どもは再三向こうに打ち合わせして、あるいは調査した結果がそういうことでありますので、私どもはそれを信用するということが、今の段階としては当然だと私思います。
  25. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 調査をすべき義務があることは、あなたもお認めになりました。だがしかし、その調査は十分に行なわれていないじゃないですか。現実に私の今申し上げただけでも、ちゃんと塗料の破片は日本国内、しかも東京都にあるのです。航空情報社の鈴木さんに今からでもお問い合わせになってけっこうです。これはデュポン会社が作った特殊塗料だというふうにいわれているわけです。いわれているのです。これは調査の結果を私たちが知っているわけではありませんから、いわれていると申し上げるより仕方がない。しかし、あなた方なら、それは容易に御調査のできる部門に属するはずです。朝飯前だ。それらのことさえしていないじゃないか。それから、防衛大学の教官なら、大臣のところへちょっと来てくれぬかとおっしゃれば、来ますよ。それでもいやだとおっしゃるつむじ曲がりの方はいらっしゃらないだろうと思います。聞いてみる、このくらいのことは当然でしょう。なるほど、今私は、初めて山田和英さんという方のお名前を出しました。しかし、その際、すなわち、不時着の際に、だれとだれがいたかぐらいのことは、私でもわかるのですから、ましてや膨大な官庁機構を持っていらっしゃるあなた方が、おわかりにならぬはずはない。当時、藤沢の警察署員もこの現場に来ました。また、そこにいらっしゃる丸山さんの部下である調達庁の方々も、この現場においでになりました。従って、調べようと思えばすぐ調べられる。これも朝飯前のことです。この程度のことをお調べにならないで、その不正確な、ただ感じだけでアメリカにものを聞いて、アメリカがこう言っているからよござんす、それで済みましょうか。そして、現実に、世界に十八機とか何機とかある飛行機が、ヨーロッパと、アジアでは日本に置かれている。こういうことは、アメリカでも認めているわけでしょう。そして、同じ指揮系統のもとで動いているのです。そして、現実にこの機の性能その他をよく調べてみれば、疑問は数々浮かび上がってくる。これは私の予断ではないだろうと思います。だからこそ、私は、十二月一日の本会議において、中国シベリア、こういうところのスパイ用に使われているのではありませんか、どうですかと申し上げているのです。私はそんな予断で申し上げているわけじゃありません。あなた方に私たちの持っている疑問を呈したのです。この疑問を解いていただけるのは、官庁の責任ではないでしょうか。ことに、行政協定安全保障条約などを結んでいらっしゃるあなた方の責任ではないでしょうか。にもかかわらず、その疑問を解こうと努力をせられず——努力をなすったとおっしゃりたいでしょうが、客観的には十分な努力がなされず、今ここで居直って、飛鳥田委員は予断を持っているようだなどとおっしゃってみたところで、問題は解決しない。国民はますます疑惑のうちに包まれざるを得ない。むしろ私は、ここで率直に、残念でした、ほんとうに残念でした、私たちは従って、これからアメリカに厳重抗議を申し込みます、こういうふうに、パキスタンの政府なり何なりのように、きっぱりとしたことをおっしゃることの方がいいんじゃないでしょうか。なるほど、人にはあやまちもありますし、思わざる見落としというものもあります。この問題は重要で、思わざる見落としなどとは言い得ないと思いますが、しかし、あやまられることに別にそうちゅうちょせられる必要はないのじゃないか、こう私は思うのですが、くどいようですが、もう一度伺います。破片を、分析なさいましたか。それとも山田さんという方に質問をして、今後も調べていく自信を持っていらしっゃいますか。そして、その結果、具体的な事実が出てきたら、アメリカに対して抗議を申し込まれる意思がありますか。
  26. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 先ほど御答弁申し上げたわけでありますが、その山田という人はまだ調べていない、しかし、御指摘でありまするから、調べてみましょうということを、さっき申し上げてあります。  それから、その塗料がどういう塗料であるか、その塗料によって、中共及びソ連のスパイをしているということは、これは少し結論を出すのが早いと思います。そこで、私どもは、私の説明を信じないというけれども、私も飛鳥田さんの言うことを信じません。再三再四調べてみましたが、気象観測用にのみ使っておる、こういう信頼というか、責任のある立場の人の話でありまするから、私はそれを信用しています。しかし、その破片等につきましては、御指摘でありまするからなお調べてみます。  それから、先ほどの藤沢へ不時着したときには、御承知のように、補償もしてありまするから、いろいろそこにおりました人や何かについても調査はいたしておるわけであります。
  27. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 塗料を分析してみて、その分析の結果が、すぐスパイ用に使われたということに直接に結びつくなどとは、僕は言っていないはずです。これも疑わしい一つであり、そしてこれもおかしい一つであり、これも不思議なものの一つだ、そういうものを総合して初めて結論が出るのだと私は申し上げておるはずです。そして、その手がかりの一つとしてこれがあるじゃないですか、こう申し上げたので、もう少し頭を冷やして聞いていただきたいと思います。そんな非常識なことを僕は言っていません。そしてあなたは、今、飛鳥田さんのおっしゃったようなことは信じません、こうおっしゃったのですが、それこそ独断ではないでしょうか。現実に調べてみて、その上で結論を出すべきもので、塗料も調べていない、山田さんにも会っていない、だがあなたのおっしゃることは信じませんなんていう理屈が、一体どこから出てくるのでしょう。僕は、今ここで妙な論理学を用いようとは思いませんが、しかし、この点については、もう一度ゆっくり考えていただきたいと思います。  そこでさらに、次の問題として、このU2が日本にやって参りましたとき、すなわち、米空軍中隊長、この人の「航空情報」との話し合いによりますと、一九五七年三月二十二日、今からちょうど三年前にやって参りましたときに、一体あなた方は、そのきたという事実を知っておられましたか、それとも、アメリカの方から通告がありましたか、これを伺いたいと思います。外務大臣、いかがですか。
  28. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 アメリカ飛行機日本に参りますときには、一々通報はございません。従いまして、一九五七年三月二十三日ですか、当日飛行機がきたかどうかということを、確認するわけには参りません。
  29. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 これは、今になってみればかなり重要なものでしょう。今おわかりになたわけですが、今になってみればかなり重要なものです。この重要なものが、日本へきたかこないかを全然御存じない、こうおっしゃるのですから、それでは一体、アメリカ日本の基地にどんなものを持ち込んできているのか、どういうものを装備しているのか、そういうことについても、おわかりにならぬということを自白なすったとしか私には受け取れないわけです。ここでもまたそうお得意の答弁の、アメリカとの協力信頼関係に立つから、とおっしゃるかもしれませんが、そんなばかな方法はありません。日本に何がさているか、どういう武器がきているか、こういうことについて、少なくとも重要なものについては、アメリカ日本に通告をしてこなければならぬ。また、こちらの側も、それについての調査権がなければならぬ。もしそれがないとするならば、事前協議などということをおっしゃらない方がいいです。いかがでしよう。
  30. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 現行におきまして、特に個々の飛行機が入って参るというような場合に、一々その通報のないことは、今日の状況において適当で、その通りだと思います。事前協議をやりますのは、全くわれわれが、そういう場合に、核兵器その他大部隊等の問題がございますから、今回の条約でそういうことをいたすわけでありまして、現行において一つ一つ飛行機が入ってくるというような問題については、特に通報があるわけではございません。
  31. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 そうおっしゃるだろうと思いました。ですが、これはこの間石橋君が、口がすくなるほど申し上げたはずです。なるほど、事前協議という交換公文ができたのは今度です。ですが、あなたも岸さんもお二方とも日米安保委員会を作りますときに、誇らしげに、実行可能な限り御相談を申し上げるとアメリカから約束をとってきた、こうおっしゃっているじゃないですか。なるほど、事前協議というのは、今度初めて文字の上には表われた。だが現実には、もうちゃんとそういう約束はできておる、こういうふうに誇らしげにお話しになったのを、石橋君は、何べんも何べんも速記録を読み上げて、あなた方にお聞かせしたはずじゃないですか。当然、この黒いジェットなどを持ってくるときに、日米安保委員会において問題になるはずですよ。そうして、ちゃんと話をしてもらわなければ意味がない。(「気象観測機だよ」と呼ぶ者あり)気象観測機だなどと、いまだにあなた方がおっしゃってみたところで、それはもう国際的に否定をせられちゃったんですよ。日本国内で、どんなに小さな声であなた方が気象観測機気象観測機とささやいておってみたところで、世界はもうきまっているんです。こういう事実をあなた方は忘れて、ただ何を持ってくるかわからなかった、こういうことで済むはずはない。従って、ここでも、あなた方の信頼協力に基づく日米関係という言葉に対する背反がちゃんと現われている、こう言わなければならないわけです。この点についてもう一度、くどいようですが、伺っておきましょう。日米安保委員会において、きちっと、こういうことについての話はあるべきはずじゃないんですか。
  32. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今まで申し上げましたように、個々の飛行機が入ってくるというような問題につきまして、日米安保委員会で話をするというわけではございません。
  33. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 個々の飛行機ではありません。個々の飛行機ではないのです。新しい一つの編成が加わったということです。一つの第五空軍の中に、F86Dを何機ふやすかという問題とは違うのです。板付に今F100がある、これにあと三機足そうかという問題とは違うはずです。新しく、航空宇宙局所属のU2三機が、こちらに配属がえになってくるのです。新しい部隊といいますか、編隊といいますか、何かそういうものがふえるのです。従って、個々の飛行機ではありません。この点も、もうちょっと、失礼でありますが、御勉強いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  34. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 配属がえと申しますけれども、今お話しのような問題につきましては、むろん個々の一機、二機の飛行機の問題でございまして、それをどういうふうに扱うかというような問題については、かりに安保委員会がありましても、そういう問題まで一々触れることは、安保委員会の性質から見て、ないと思います。むろん重要な変更等でありましたら当然協議をいたすことも必要であり、また、情報の交換をいたすことも必要でありますけれども、そういう問題についてはそうだと思います。ことに、五七年にはまだ安保委員会もできておらぬと思っておりますから、そういう点についても刈れておらなかったと思います。
  35. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 さらに矛盾があります。たとえば、このU2は、空軍機、空軍所属だといわれております。こういう所属などの問題も、当然、防衛庁なり外務省なりに連絡があるはずです。ところが、空軍所属の飛行機が、海軍所属の飛行場、すなわち、厚木飛行場にいるのです。おかしいじゃないか、こう思うことは当然だと思います。私も、初め、最初に写真をとられた方に伺いましたところ、三字の、三つの、三けたの数字が書いてある、こういうことでした。三けたの数字というのは、空軍を意味するはずです。ところが、それが厚木にいるというのはおかしいねという話をしたのを、私は記憶があります。しろうとの私でもすぐそういう疑問が出てくるくらいですから、あなた方としては、当然ここにも疑問を発すべき端緒はあった、こう私は思うのですが、こういう点についても、全然外務省も防衛庁も御存じなかったのでしょうか。
  36. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 お話でありますけれども、この飛行機は、NASAでありますか。全米宇宙局の飛行機で、気象観測を行なっておるのであります。日本におきましては、今までお話でありましたが、空軍の管轄というようなことではありませんで、管理下にありまして、これは米空軍及び海軍施設から補給を受けている、こういう形で管理下にある、こういうことでありまして、これに編入されたとか、編成下に入ったということではございません。
  37. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 それじゃ、一体これは何になるのでしょう。
  38. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 これは全米宇宙局で、もう御承知のはずですが、大統領の直轄下にあります。でありまするから、軍用機ではございません。前に外務大臣等から答弁した通りでございます。それでは私用の飛行機かといいますれば、やはりこれは公用機ということに相なっております。それが日本における米空軍及び海軍施設から補給を受けて、気象観測に当たっておる、そういうことでございます。
  39. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 もう一度、アメリカに照会をなすってごらんになったその答えを伺わしていただきたいと思います。
  40. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 アメリカに照会したことは先ほど申し上げたのでありますが、昨年厚木に不時着しましたときに、米空軍当局が発表したことと、今度のソ連のU2事件関係におきまして、ワシントンの発表との間に差があるけれども、この点はどうか、それについて昨日厚木における新聞記者会見において発表したことが間違いないのかどうかということが、第一に聞いたことであります。そうしますと、昨日厚木における新聞記者会見において米空軍のスポークスマンが発表した通りである、その要旨は、U2型飛行機三機が、過去三、四年来厚木海軍航空基地におる。それから第二には、この飛行機は、アメリカのNASA、すなわち、全米宇宙局の所属でありまして、全米宇宙局では、高々度の気象観測を行なっております。世界的に行なう必要があるので、合衆国ばかりでなく、海外でも米軍の参加を得て行なっておる。日本では在日米軍の管理のもとに高々度の気象観測を行なっておる。この観測に適しておるのがU2でありますので、この飛行機を使っておる。そうして米在日空軍及び海軍施設から補給を受けておる。第三には、U2機については秘密扱いにしておるのかどうかという質問に対しまして、これは絶対に秘密扱いはしておらぬ。それから第四につきましては、極東におきまするこの使命は、気象観測であって、それ以外の使命を持っておるかどうかということでありますが、それ以外の使命は持っておらぬ、もっぱら気象観測に使っておるのだ、こういうことであります。それからなお、ソ連の撃墜事件もありますので、また、御質問のようなこともありますので、これは中共、北鮮、シベリア、こういう方面に入って行って、いわゆるスパイ活動とか空中写真をとるのかどうか、こういう問いただしに対しましては、天候状況等によりまして、気象観測上その目を追及していく場合に、中共とか北鮮とかシベリアの近くまで行くことはある、しかしそれにつきましては、すべての国の領空から最小限二十マイルの外での行動しか承認されておらないから、そしてまた、そこへ入ってはいかない、こういうことであります。そういう趣旨のことで問いただしたわけであります。     〔「三日前の古新聞」と呼ぶ者あり〕
  41. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 今、うしろの方で、三日前の古新聞と言っておりますが、全くあなたのお話は、三日前の古新聞しか当たらないわけです。今のお話を聞いておりましても、もうおかしくなっている。たとえば、厚木でもって新聞記者と会見をした、その通りである、こうおっしゃっているのですが、新聞記者の発表によりますと、シベリアに近づくことはあり得るが、常に他国の領域からは少なくとも三十二キロは離れて飛行している、こう言っているのです。ところが、あなたはそれを二十キロになすった。もう十二キロ近づいたわけです。(「マイルだ」と呼ぶ者あり)そこで、その目的等はあとから申し上げますが、まず第一に、この問題について機密はない、こういうふうにあなたは今おっしゃったわけです。その問題にいささか触れてみたいと思いますが、もし機密がないのならば、藤沢に着陸をしたときに、一体どういう行動をとったか。ここにこう書いてあります。これはその当時現場におられた方が書いておるのですが、「U—2不時着後五分もたたないうちはやくもパイロットからの連絡に応じて、厚木基地から一台のヴァートルHUPヘリコプターが飛来し、不時着機のそばに舞いおりた。それを見ると、パイロットははじめてキャノピーを開いた。キャノピーはF—104と同様な左びらきであった。風防の傍に立っていた某氏は、パイロットがアゴをきずつけているのを見て、〃ケガはないか〃とたずねた。パイロットは笑って、大丈夫だといって、手をかりて地上におりたった。三十歳くらいの男でヘルメットも飛行服もふつうのものだったが、機体と同じように、その服装のどこにも、記号も、文字もなかった。(ふつうは胸に氏名と階級を必らずつけている)地上におりたったかれは、軽いビッコをひいていたが、腰につけたピストルが、異様なものものしい感じをあたえた。」こうしてあとから来た人々——次々にと飛行機がやって参りますが、「L—20からおりてきた人々は、一見して相当の地位らしい将校と、数人のアロハシャツにピストルを持った人たちがあった。このアロハシャツの人々は、一部は機体をとりまいて警戒線をはり、見物人を遠ざけ、写真撮影をきびしく制止した。他の人々は機体にかけつけ、各部分、ことにキャビン後部の胴体下面を、念いりに点検していた。こういうふうに書かれております。そしてあげくのはてに、今申し上げましたように、東洋航空の事務所、すなわち、藤沢のグライダ—飛行場の事務所でありますが、ここにおられました五、六人の人々は、かなり厳重にアメリカ人の尋問を受けた。さらに加えて、藤沢の警察の署員数名が、巡査部長を筆頭にして、ここにやって参りました。ところが、その巡査部長を筆頭にした藤沢の警察署員も、機体のそばに立ち入ることはできない。アメリカ人に制止をされたわけです。さらに加えて、調達庁の方々もやってきました。この方々も近寄ることはできません。こうして、日本人を一切遠ざけた中で機体は分解をせられ、そして厚木飛行場へと持ち運ばれたわけです。一体、秘密がない、秘密がない、その秘密のないはずの飛行機に、こんなにも厳重な行動をなぜとる必要があるか。あげくの果てに、これはそのときではありませんが、厚木飛行場におりますころにこのU2の写真をとった某君は、その後アメリカ人に来訪を受け、家宅捜索に類似するような行動をとられている。一体、秘密がないのならば、なぜこんなに厳重な行動をとらなければならないのでしょう。私たちは、まずそこに疑問を発せざるを得ないわけです。あなた方も、この事実は今初めて御存じになることではなしに、すでに御存じのはずです。そうだとすれば、当然疑問を差しはさむべきではないだろうか。一体、機、密がないのに、なぜこんな行動をとることが必要なんでしょうか。
  42. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 機密扱いをしていないということでございます。飛行機の中にも、たとえば戦闘機等におきましても、秘密保護法等に該当するものがありますから、そういう点においてはあると思います。それから、昨年の藤沢のことでありますが、やはり不時着すれば、人命救助の点もありますから、ヴァートルなんかでおりてくるのは当然だと思います。それからまた、爆発その他の危険がありますので、人を遠ざけるということもあり得ることだと思います。それが必ずしも秘密扱いだということにはならぬと思います。しかし、その扱い方等におきまして少しく行き過ぎた点もあるのじゃないかと私どもも考えましたので、補償その他の点につきましても向こうと交渉したのであります。  それから、先ほど、これはちょっとお間違いだと思いますが、私はすべての国の領空から最小限二十マイルと申し上げたので、三十二キロ、キロとマイルとの差であります。
  43. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 爆発する危険があるとおっしゃるのですが、もう着陸をしてから、ヴァートル幾つとかいう飛行機が飛んで参りますまでには、まず最初のヴァートルHUPヘリコプターが来るまでに五分、それから次の飛行機、さらにL2〇がおりてくるまでには、もう二十分以上たっておるわけです。しかも、その間、飛行士機体の中にすわり切りです。爆発の危険があるかないかなんということは、だれが考えたって明らかじゃないでしょうか。爆発というものは、大体着陸をしたそのショックで爆発する場合が多いわけです。そういうことをおっしゃらない方が私はいいと思います。そこで、あなたの方でも、行き過ぎがあったことはあったらしい、こういうお話ですが、この点について、外務大臣の方はアメリカに対して抗議をなさいましたか、行き過ぎがこれこれあったから、おかしいじゃないか、こういう抗議をなさいましたか。
  44. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私ども、当時の事情から見まして、現場の情勢あるいは警察庁長官その他のあれから見まして、必ずしも行き過ぎがあったとは考えておりません。やはり飛行機がおりてきて、それを解体するというような事情の場合には、できるだけ民衆が近寄らぬようにしてやることは当然のことでありまして、その限りにおいて、特別に行き過ぎがあったというふうには考えておりません。
  45. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 もう何だか僕は話するのがいやになりました。  それでは、高橋さんでけっこうです。昭和三十四年六月十一日第二百十二回基地内航空機事故手続に関する刑事裁判管轄権分科委員会より合同委員会への報告というのを一つ思い出して御説明いただけませんか。
  46. 森治樹

    ○森政府委員 これは一般的に航空機が事故等で不時着をいたしました場合に、米軍の官憲が、見物人による現場の写真撮影の防止等を要請したときには、日本の警察は米軍の要請を伝達するが、刑特法の適用のある場合を除いては強制措置はとらないという趣旨の話し合いをした点だろうと思います。
  47. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 そうでしょう。この合同委員会への分科会からの報告を見ますと、アメリカ人は、不時着をした場合に自分の手で日本の人民に対して強制をしてはならぬ、こうなっているのです。そして、日本の官憲を通じてその協力を要請しなければならぬ。日本の官憲を通じて日本の人民に要請しなければならぬが、その場合でも、刑事特別法に触れるか触れないかという問題でない場合には、強制をしてはなりませんぞ、こうきまっているわけです。合同委員会の議事録ですよ。ところが、そんなものはあるのかないのか忘れてしまって、おっぽっておいて、そして、不時着をすれば人間が寄ってくるのはあたりまえで、そいつを追っ払うのは当然でしょうなんて外務大臣がおっしゃっているのでは、一体日本人民の権利はどうして守れるのですか。もう私がお話するのはいやになったというのは、そういう意味です。この藤沢の問題について、明らかにこの合同委員会の手続規定に反しているじゃありませんか。明らかに反しているものを、のんべんだらりんと、飛行機がおりれば寄ってくるのはあたりまえだろう、追っ払うのもあたりまえだろうなんということで日本人民の権利を守られたのでは、私たちはたまりませんよ。正直いえば、泣きたくなってしまう。もっと真剣に日本人民の権利を守るための御努力をあなたはなさっていただかなければならぬはずです。日本の官憲を通じて協力を要請すべき警察官が追っ払われた、そして、当然調査にやってきた日本の調達庁の官吏まで追っ払われた、こういうことが、一体、抗議も何もせずにおっぽっておいていいのですか。ちょっとU2の問題からはずれますが、私はこの点についてあなた方に、もう一度はっきりとした、性根を据えた御答弁を伺いたい、こう思うわけです。総理大臣、いかがでしょうか。——ちょっと外務大臣、お待ち下さい。もう事態は明らかです。外務大臣が、抗議もなさらなかったということはお認めになったし、飛行機がおりてきて不時着したんだから、寄ってきたやつを追っ払うのはあたりまえじゃないか、こうおっしゃったことも事実でしょう。しかし、片一方においてこういうものがあることは今お認めになりました。こんなことでいいのでしょうか、それをぜひ一つ総理大臣から私はお聞きしたい、こう思うわけです。総理にお伺いしております。——藤山さん、僕は総理にお伺いしています。
  48. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私の……。
  49. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 まず第一に私は総理に伺っているはずです。ですから、総理お答えになりましたあとで、藤山さんが政府のお一人として御発言になることに私は別に異存を申しておるわけではありません。ともかく私の伺っておるのは総理ですから、総理お答えになりましたあとで御発言をいただきたい、こう思います。こう思いますが、委員長の御意見はいかがでしょうか。
  50. 小澤佐重喜

    小澤委員長 外務大臣に発言を許しました。その次に総理大臣を許します。
  51. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今私の申し上げたことを若干誤解しておられるようでございますから、その点について補足しておきます。私ども外務省として、抗議をするとか、その他の問題につきましては、やはり当該関係者が、そういうような事実があるというような問題を見きわめた上で、報告を得て、初めてわれわれとしては抗議をすることは、これは当然なことだと思うのです。当時の事情から申しまして、警察方面その他からそういう事実をわれわれに報告してきておりません。従いまして、われわれとしては、それは今申し上げたように協力を求めて行政協定でやるということも承知しておるのでございます。そういう警察方面の当時の実情から申しまして、そういう処置をとったので、そうしてできるだけ危険のないように、飛行機になるべく近づかないようにということは、これは当然のことだということを申し上げたのでありまして、私の申し上げた点を誤解なく御了解をいただきたいと思います。
  52. 岸信介

    ○岸国務大臣 もちろん、この行政協定やあるいは合同委員会等において取りきめたことに違反する事実があるならば、これに従うように日本としてアメリカ側に要求することは、これは当然だろうと思います。藤沢の実際の問題に関しましては、当時いろいろな御議論もございましたが、そういう場合に、警察権の行使だとか何か権力的ななにということでなしに、事実上、いろいろな危険であるとか、あるいは混雑を防ぐとかいうような意味において、近寄らないようにしてくれといって制止するとかいうようなことをもって、直ちに何か権限の行使だとか、この違反だというように認定することは、これは適当でない。そういう事実があれば、もちろん、抗議すべきことは当然であると思います。
  53. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 僕は何か日本の官庁というものの本質に触れたような気がいたします。人民が言ってこなければおれたちは関知しない、報告がなければおれは知らぬ、こういうようなふうにしか私には聞けませんでした。私は、合同委員会を所管していらっしゃるのは藤山さんの外務省ですから、こういう事実があれば、積極的にお調べになって、その違反行為にははっきりとした態度をお示しになる、これが当然だと思っていたのですが、申告がなければ、言ってこなければ、やらないのだ、こういうことがはしなくも私にはわかりました。残念です。日本の官庁というものの本質に触れたような感じがいたしました。そうして、申告はあったのです。まあ私の口からではありますが、十二月一日、私は本会議においてこの事実を明確に申し上げたつもりです。これを、ただ、ああ反対党の議員が言うことだから、こういうことで聞き流されてしまったというところに、私の残念さを感ずるゆえんがあります。反対党の言うことであろうとも、当然お調べになって、その事実は確認できたはずです。そして抗議を申し込まるべきものだと私は思います。こんなにも軽々しく本会議における質疑というものが扱われておるということを私はここで知って、残念に存じます。  そこで、今総理は、爆発その他の点で危険な点もあるだろう、同時にまた、そばに寄らないようにというようなことを言うのは、これは仕方がないじゃないかというお話がありました。この議事録を読んでみましょう。    註   一、墜落マタハ不時着現場ニオイテ機密事項ノ漏エイヲ防止スルタメ、日米両責任者ノ間ニ密接ナ連絡ヲ維持シ、必要ト思ワレル立入禁止地域ガ確立サレレバ、米側当局ハ当然機密装置、資材ノ外部ニサラサレタ部分ヲカクスヨウ積極的ニ措置スル。   シカシ適当ナ隠蔽ガデキナイヨウナ事項ガアリ、米側責任者ガ写真ヲトラサナイヨウ日本側責任者ニ要請ヲシタ場合、日本側責任者ハ新聞関係ソノ他現場写真ヲトロウトスル人達ニ事情説明写真撮影ヲヤメルヨウトノ米当局ノ要請ヲ伝エル。   二、上記要請ハアクマデ要請デアリ、従ツテ、上記要請ヲ伝エテモ、ソノ要請ニ従ワナイカマタハソノ住所アルイハ身分ニ関スル質問ニ答エヨウトシナイ場合デモ、強制的ナ措置ヲトラナイヨウニスルコト。不必要ナ紛争ヲ避ケルヨウ注意スルコト。   ……上記第一項ニイウトコロノ要請ニ関連シテトラレル措置ハ、刑事特別法違反ノ際ニトラレル措置トハ全ク異ナツタモノデアリ、上記措置ヲトル場合ハ、ソノ状況ヲ正確ニハ握シテオカナケレバナラナイ。  こうなっております。すなわち、アメリカ人は日本人に対して直接いかなる要請をもなしてはならない、こういうことが全体として出てくるわけであります。この場合、一体、腰にピストルを下げたアロハのアメリカの人たちが——軍人かどうか知りません。この人たちが、ピストルを擬しながら、そばに寄っていった人々を追っ払い、警察官の近寄りを禁止し、調達庁の人々をも遠避けてしまう、こういうようなことが、今読み上げたものに当たらないでしょうか。総理、そう簡単におっしゃらないで、今からでも厳重抗議します、そうしてこれははっきりと守らせます、こういうことをおっしゃらないと、今後この委員会でも行政協定に議論が入っていくでしょう、そうした場合、合意議事録とか、あるいは合同委員会の決定とかいうものをいかにお出しになってみたって、ははあ、また例のやつかということになってしまいますよ。やはり私は、行政協定を厳格に実施するというあなた方の側からのお態度があっていいのじゃないか、何でも私たちの質問を申し上げることについては、なるべく認めまい、なるべくそらしていこう、そうして行政協定その他はうまくやっていこうなどという態度自身が、あなた方と私たちの間の共通の基盤を失わせるものじゃないだろうかと思うわけです。事はごく部分的なことを私たちは伺いながら、実は全般の問題につながるあなた方の心がけの問題を伺っているわけです。総理、いかがでしょうか。
  54. 岸信介

    ○岸国務大臣 先ほども申し上げました通り、この行政協定に基づいての合同委員会の議事録や申し合わせ、その他のものに違反している事実がありとするならば、これはしないように厳重に抗議をし、これの反省を求めていくことは、当然であろうと思います。ただ私は、従来聞いておりますこの藤沢の問題につきましては、従来のなには、事実上その場合に近寄ることを抑止するとか、近寄らないでくれというふうに制止するというふうなことまでこの合同委員会の申し合わせが規定しているという。そういうことまでも一切させないのだというような事実問題まで、そういう実際上の問題まで触れておるものだとは実は考えておらぬのでありまして、今お話しのように、何かピストルを擬して、そうして近寄ることを禁止したとか、あるいは一定の区域を限って立ち入り禁止区域とするというようなことであるとするならば、これは違反している。私は従来この問題についてそういう報告を受けておりませんし、おそらく外務省もそういう気持を言っておる、私は、事実問題として、制止したり、あるいは近寄らないような措置をとっておる、こういうふうに見ておるわけであります。いやしくも、合同委員会の申し合わせその他に違反しているような行為があるならば、もちろん、私はアメリカ側にこれを是正せしめる措置をとらせることは当然であると思います。
  55. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 だから、私は、最初に防衛庁の長官にお伺いをしておいたわけです。あなた方として一番信頼のできると思われる防衛大学の教官、その現場にいらした方ぐらいには、せめて事情をお聞き取りになっていらっしゃるだろうと思っていたのです。調べても見ないで、そういうようなこの場限りの答弁をなさってみたって、ナンセンスじゃないでしょうか。私は、そういう点で、昨年の十二月一日に、私が本会議で申し上げたそれ以後において、どれだけの御調査があったかを実は知りたかったわけです。ところが、外務省に関する限り、何らの申告はない、こういうことを藤山さんはお答えになりました。残念です。こういうことが積もり積もって、安保条約行政協定に対する国民の不信の念になっている、こういうことはお考えになるだろう、こう思いますが、いかがでしょうか。これも、現にあなた方の審議室でお調べになったものでも、その数字については、私たちの把握しているところとこの間の御発表と違いますが、非常に数多くの安保条約反対論者、行政協定反対論者のある事実をお認めになるだろうと思う。これだけ数多くの人々が出てくる原因は何か、これを御反省になったことがあるでしょうか。社会党がぎゃあぎゃあ騒ぐからふえたんだとお考えになっていらっしゃるか、あるいは、現実にこういう一つ一つの積み重ねが、日本人民をしてこれに対する反対論者に追いやっていったんだというそういう御反省を持っていらっしゃるかどうか、これを伺いたいと思います。
  56. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 当時の事情から見まして、私どもとしては、何らそういう状況はなかったという報告を受けております。ことに法務省等におきましても、たとえば参議院においても同じ質問があったわけでございますが、そのとき、法務大臣は、そういう人権じゅうりんのような事態は起こってない、もし起こっていたら、むろん、当然それに対しては厳重な処置をとるということを言っておられますが、そういう点についてわれわれのところには何らの通報もございません。従って、そういう基礎の上に立って抗議をするというわけには参りません。行政協定を厳重に実行いたしますことは、これは必要であること申すまでもないわけであります。われわれもその考え方において違いはございません。
  57. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 それではあまり事実が違い過ぎます。従って、私はここでこの委員会としてもお調べいただきたい。と申しますのは、これは行政協定安保条約に対する国民の信頼の度合いをはっきりすることのできる問題だと思いますので、お調べをいただきたいと思います。あえて名前を申し上げましょう。清水六之助さん、新日本グライダー研究会理事長、赤羽正彦さん、日本圧電気会社、さらに日本グライダー・クラブの日向美智子さん、大日本図書編集部勤務、銀行員であられる伊藤智之さん、それから今申し上げた防衛大学の教官の山田和英さん、こういう人々をとりあえず、まだほかにもおられますが、お調べをいただきたい。あなた方政府の方でお調べになるとおっしゃるならば、それはお調べになっていただいてもけっこうですが、でき得べくんば私はここでお調べをいただきたい、こういうふうに思います。  伺いますが、一体今申し上げた方々について現実調査をなすったことがありますか、お一方でもお二方でもお聞きになっていらっしゃったら、その名前をあげていただきとうございます。
  58. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 防衛庁としては、補償の関係で調べたものはありますが、今御指摘のものは調べたものはありません。
  59. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 この方々はそこにいらっしゃった代表的な方々です。従って、これをお調べになっていらっしゃらないということは、何にも聞いておらないということです。そういう、何にも聞いていらっしゃらないという事実の上に立って、完全に日本の人民の権利がじゅうりんされるような行政協定違反をあえてやられておる、こういう事実をもう一度奥歯でかみしめていただきたい。  次に伺いたいと思いますことは、このU2は民間機である、しかし軍が管理しておるものである、こういうことです。民間機で軍が管理しておる、こういう場合にはあなた方は今公用機とおっしゃったんですが、その性格にはやや疑問なしとしない。もしそうだとすれば、昨年の七月一日に入間川の航空管制本部日本の手に戻ってきました。入間川の航空管制本部に、当然これの飛行計画あるいはその他の報告がなければならぬと私は思うのですが、これについていかがでしょうか。航空局の局長さんお見えになっておると思いますが……。
  60. 辻章男

    ○辻政府委員 お答えいたします。入間川の管制本部におきましては、いわゆる計器飛行状態飛行をいたします飛行機は、すべて管制本部の許可を受けて参ります。それから天候のいいような場合におきまする、いわゆる有視界飛行と申しておりますが、その場合には、離陸いたしまする飛行場に飛行計画の通報をいたしまして、それからまた、着陸いたしますれば、到着届を出すことに相なっております。これは管制本部には達しては参らないわけでございます。従いまして、有視界飛行の場合におきましては、飛行場でその飛行計画承認書類はとまるわけでございますが、昨年問題になりまして、さっそく調べたのでございますが、運輸大臣の管理いたしておりまする飛行場の関係につきましては、U2の飛行計画承認は参っておりません。米軍に提供いたしておりまする飛行場を使いまして、有視界飛行で離陸あるいは到着いたしまする際におきまする飛行計画の提出あるいは到着届につきましては、行政協定に伴いまする米軍との協定によりまして、これは米軍の方にまかしておりますので、おそらくそちらの方で出ているのじゃないか、かように考える次第であります。
  61. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 今の局長の御答弁は、十二月一日、本会議において楢橋大臣がお答えになりましたこととほとんど同じであります。すなわち、楢橋大臣は、有視界飛行の場合においては——有視界というのは、目で見えるということでしょう。目で見える飛行の場合においては、有視界飛行の場合においては、航空交通管制本部の承認を必要としないことになっております、こういうお話でした。今のお答えもそうです。そこで私は、その日が有視界飛行が可能であったかどうか、これを一つ局長に教えていただきたいと思います。
  62. 辻章男

    ○辻政府委員 お答え申し上げます。有視界飛行状態と申しますのは、結局、ある飛行機がAからBに飛びます際に、その区間の気象状態、それからその当該飛行場の気象状態等によるのでございまして、従いまして、もちろん、日本の全国、有視界飛行状態のこともございますし、全部がそうでない、いわゆる計器飛行状態のような飛行条件もあるわけでございますが、また、部分的には有視界飛行が許されるような気象条件であり、他の部分においては、計器飛行でなければ飛べないというふうな状態もございますので、一がいに当該の日に気象状態がどうであったかということは、その飛行機飛行計画のルートがきまりませんと、はっきりしたことは言えないのではないか、かように考えます。
  63. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 別に私は、局長さんをいじめるつもりはありませんが、ルートがわからなければ、有視界飛行か計器飛行かはわからないとおっしゃるわけです。ところが、そのルートの報告がない以上、どうして有視界飛行か計器飛行かの区別がつけられるのですか。さらに、私は疑問に思いましたので、九月二十四日、着陸した日、すなわち、厚木から飛び立って藤沢に不時着したのですから、この日に飛んだことは間違いありません。この日に天気がどうであったかを、厚木飛行場を管轄しております横浜気象台観測記録について調べてみました。こう書いてあります。「午前九時、厚さ数百メートルの中層雲が約三千メートル上空の全天をおおい、青空はわずかに見られるといった程度の曇りである。」これは非常に厚い曇りだということです。「午後三時、午前と同様の中層雲が全天をおおい、完全な曇天である。なおその下に高度約千メートルの積雲があった。この積雲は全天の四割をおおう状態であった。こうなっておるわけです。どんな名人だって、こんな日に有視界飛行ができるなんて、ばかなことは言いませんよ。結局、有視界飛行とか有視界飛行でないとかいうことは、もう言えないわけです。当然これは計器飛行をやっておった、こういわざるを得ないわけです。横浜の気象台の発表ですよ。これは記録ですよ。お調べになってけっこうです。当然計器飛行をやっている以上、有視界飛行には入らぬじゃないですか。すなわち、届け出も何もせずに、勝手気ままに、U2は日本の上空、アジアの上空、これらを飛び回っておったということになるのであって、政府は、当然拘束を加えらるべきチャンスも逸してしまっておる、こういわざるを得ないわけです。外務大臣いかがでしょうか、こういうことについて、私は、これも外務省の方から当然抗議を申し込んでいただいていいことだと思いますが、ここにもまた疑問を発すべきチャンスがあったわけです。何もフルシチョフに言われなくたって、日本政府が、事実を明確にすべき手がかりはここにもあったわけです。いかがでしょうか。
  64. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今まで申し上げておりますように、そうした事実については、やはり当該責任者がそれぞれ事実を明らかにして、われわれは、それによりまして抗議をするのでなければならぬのでございます。従って、われわれとしてはただ単に推定だけで抗議を申し込むというわけに参らぬことは、当然だと思います。
  65. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 推定だけで申し上げているのではないのです。いろいろな事実を私は申し上げたつもりです。このくらいのことは、政府だっておわかりになっていらっしゃる。こういう事実に基づいて述べた。それをあなたは、推定によるとおっしゃるのですが、こういう議論をしておりましても水がけ論ですね。しかし、こういう水かけ議の中から、あとからあとから出てくる国民の疑惑というものは、積もり積もっていくのです。少なくとも、こういう点についても有視界飛行ではないのです。届け出がなければならぬ、こういうことです。届け出がなければならぬにもかかわらず、届け出がない、こういうことは明らかなる行政協定違反、こういわざるを得ないわけです。こういう行政協定違反を公然とやられておるU2、しかも、そのU2がソビエトに撃ち落とされて、そうして世界にその事実を明らかにされてしまった。こういうことが、日本政府の世界における信用というものをどのくらい失墜するか、やはり私はお考えをいただかなければならぬ重要な点だろう、こう思います。行政協定の審議にやがては入るでしょう。入ったときに、あなた方は、行政協定の上に規定をされたその権利さえ守っていない、しり抜けである。こういうことで、国民が、一体何べん御答弁に立たれるか知りませんが、あなた方の御答弁を信用するでしょうか。私はノーだと思います。あなた方がここでお述べになる御答弁というものは、事実に立脚し、現実にそれが行なわれていくということによって、初めてその信憑性を得るのです。あなたが外務大臣でおえらいから、あなたが総理大臣でおえらいから、おえらい方のおっしゃったことだからほんとうだろうということではないはずです。事実によって裏づけられてこそ、初めてその威力を発揮するのですが、その事実が、こうもあとからあとから、砂の上のお城のようにくずれていくということでは、どうなるだろう。先が思いやられるという感じさえいたします。  そこで、次の問題を伺いますが、今申し上げたようないろいろな疑惑を持ち、いろいろな疑問を持つU2、そして現実にはソビエトによって撃ち落とされて、その真相が暴露されたU2、このU2を日本軍事基地に置くということ、軍事基地を使わせるということ、そのことについてどうでしょうか。今までのことは別として、今後の問題としていかがでしょうか。これは一つ外務大臣なり総理大臣からお答えをいただきたいと思います。
  66. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今、先ほどのあれに対して事実を申せということでございますが、私どもも、そういう事実が確認されれば、むろん、行政協定を運用していく場合において、アメリカ側に申し入れをいたすことは、これは当然のことでございます。ただ、飛鳥田委員の言われるような事実が、必ずしもあったとは、われわれは考えておりませんので、そういう点について申し上げているわけでございます。  U2の今後の問題につきまして、われわれとしては、先ほど申し上げましたように、日本におけるU2の使用方法その他につきまして、あらためてアメリカ側に問いただしをいたしております。それらの返答によりましては、われわれが適当にアメリカに対して注意を喚起する場合もございましょうし、今後のそうした回答によって、われわれが考えていくべき問題だと思います。
  67. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 これからアメリカに問いただしてなんて、もう三年間使われちゃったんです。しかも、その三年間使われたことについては、もう非常に濃い疑いがある。そうだと断定はできないとおっしゃるのでしょうが、少なくとも非常に濃い疑いがある。スパイ行為を行なったという非常に濃い疑いがある。すなおに事を見る人ならば、やはり日本におけるU2も、そのように使われたと見なければならぬと思います。フルシチョフは、イランとかノルウエーとかいう国々を共犯者だと言っていますが、日本もやはり共犯者だといわなければならぬと私は思います。そういうやり方に対して、日本の軍事墓地を使わせるということがいいか悪いか、こういうことを一つ伺いたいと思います。ともかくあなたは、まだわからないのだからとおっしゃるに違いありません。それならそれでけっこうです。しかし、かりにそういう事実がありとすれば、そういう事実のために日本軍事基地を使わせることができますか。これを伺っているわけです。
  68. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今回の、また、現行の安保条約におきましても、不法に日本の基地から他国の領土、領海、領空を侵しますことは、私は、この条約においてはその趣旨に反していることと思います。従いまして、むろん、そういう事実がございますれば、われわれとしては、アメリカ側に対して注意を促さざるを得ません。
  69. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 そういう事実がございますならばとおっしゃる。それは、すなわち、そういう事実が現実に出てしまってからという意味ですか。そうじゃなく、僕らが望んでいるのは、そういうことのないように、あらかじめできないですか、こういうふうに申し上げているつもりです。当然日本軍事基地に対して、どうそれが使われているかということを、あなた方が監視し、監督できる、調査する、こういう権限が行政協定の中にはっきりと規定をせられなければ、今あなたがおっしゃるように、具体的な事実が出てしまってから、ひよわな抗議をするだけに終わりはしませんか。やはり、そういう意味で、行政協定の中にこういうことを未然に防げるだけの規定をお設けにならなければならぬのじゃないでしょうか。そういう断固たる気魄をここで見せていただきたいということが、私の伺っている中心点のつもりですが、私の申し上げ方が足りなかったのだと思います。どうぞ一つ、今申し上げたようなことについて、きっぱりと御答弁を伺いたい。
  70. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 先ほど申し上げましたように、日本の基地を使って他国の領土、領海、領空を侵しますということは、これは適当ではございません。従いまして、そういうことを行政協定、あるいはその他に書かなくても、当然のことだとわれわれは思います。従って、そういう事実があったからということを申して——むろん、そういう事実が行なわれますれば、当然われわれは注意を喚起せざるを得ませんし、また、将来そういうことの起こらないようにアメリカ側注意を喚起することも、これはまた当然のことだと思います。
  71. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 他国の領空に侵入するということはあやまったことだから、当然そういうことがない、そんなことは書かでものことだとおっしゃるのですが、しかし、重要なのです。もし、そういう御議論ならば、一切の法律というものは要らなくなるのじゃないか。人を殺してはならぬ、盗んではならぬ、犯してはならぬということは、これはもう人間として当然のことです。それならば、もう刑法なんて要らないじゃないですか。それと同じで、やはり、そういうことを未然に防止するものをきちっと条約の中に置いておくことが、今の良識ある政治家としての責任ではないだろうか。日本の基地がどんなふうに使われているかについて、何らの権限がない、これではたまりません。少なくとも、この独立国の日本の中にアメリカ軍が基地を持つのですから、当然主権の行使として、この基地が日本の憲法に反しない行動をとらなければならぬ。もし憲法に反するがごとき行動があらば、これを抑止する規定が必要である、こういわなければならぬわけです。その抑止する第一歩としては、基地の中で何が行なわれているかということを知る権利、せめて、このくらいは確保なすったらどうでしょうか。完全な治外法権だといって、今までずいぶん行政協定は悪口をいわれました。今度は、あなたは誇らしげに、まあ、八十五点くらいはとれるだろうとおっしゃって改正に乗り出された。八十五点、けっこうです。しかし、われわれは、少なくとも、この基地の中で何が行なわれ、何が準備されつつあるかということを知る権利だけはあるはずです。それが全然この行政協定の中に現わしていないという点について、私たちは非常な疑問を抱かないわけにはいかない。これじゃ部分的に改めてみたって何もならぬじゃないですか。私たちが求めているものは、こうした主権の回復、日本の独立国としての存在、こういうことを明確にしたいと願ったことなんです。そういう本筋からはずれて、わずかばかりのものをどうしようと、それは日本国家全体にとってそう大きな問題ではないだろう、こう私は思うわけです。今度の行政協定の中で、軍事基地について、米軍が治外法権ではない、一体何を準備し、何を考え、何を行なわんとしているかについての調査権、知る権利、これをチェックする規定、こういうものがありましたら、一つあげていただきたいと思います。
  72. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 お話しのような領空侵犯というような問題は、国際法規の上においてすでに厳として存する規定でございまして、この際、必ずしも安保条約にそれを書く必要はない、それに違反するというようなことが前提ではございません。従って、そういうことを必ずしも規定する必要はないと思います。今回の条約改正あるいは行政協定の改定にあたりましても、われわれといたしましては、日本アメリカとが万事日本の自主的な立場に立って話し合いをし、協議をし、そうして運営していこうということに改正をいたして参るわけでありまして、われわれとしてできるだけの協議をし、また、あるいは実情をお互いに通報し合っていくということでありまして、そういう意味において、私どもは非常な改善になると思っております。調査権を何か確立するというような問題では私どもはないと思っております。
  73. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 もう全然、国民が考えている、願っていることとずれるばかりです。藤山さんは、国際法できまっているから、それは禁止されているからやらないだろう、やらないということを前提にしてものを考えている。これなら、もう国際政治というものはなくなってしまうわけです。私たちは、そうじゃない。できるだけその人たちの善意は信じながらも、なおかつ、その人がときに違反する場合のあることを考えるからこそ条約があり、国際政治があるのじゃないでしょうか。しかも、ときに違反する行為が何十年に一ぺんずつ戦争というような形になって爆発したり、あるいはある国とある国との間の不和というような形になって現われたりするのです。そして、それは重要なのです。そういう重要な場合を全然お考えにならずに、のっけから信用していくという考え方は、はなはだ無礼でありますが、もう少し国際政治史なり何なりを御研究になることを私は勧めざるを得ません。ともかく、そうした意味で、私たちは、何もアメリカをのっけから疑えなんということはあなた方に要求していませんよ。あなた方のお立場もわかっています。ですが、できるだけそういう重要な、しかし、思わざる例外というものにも備えていくということが政治家の責任である、これが政治です。まあ、お年を召したあなたに、これが政治だと申し上げるのははなはだ無礼ですが、しかし、言わなければならなくなった。そういう意味で、きちっとしたものを作っていただきたい。もし、そうでない限り、こういうノー・ズロースな、底抜けな行政協定安保条約をお持ちになっている限り、そして、それを誇らしげに振り回していらっしゃる限り、やがて日本の国民は耐え得ざる段階に達するはずです。耐え得ざる段階に達したときに、あなた方は、そのときに後悔をせられてももうおそい。そして、そのことは、日本国民にとってまた非常な不幸です。そして、やがてはそういうものが積もり積もって、安全保障条約行政協定も、やはりみじんに飛ぶときがやってきます。同時に、また、岸内閣自身の命運もそこに尽きる時期がやってくることを思わないのははなはだしいじゃないか、こう私たちは考えるわけです。このことをあらかじめ私はあなた方にやはり申し上げておかなければ、立場は異なっても、私どもとして不忠実だと思いますので、一度申し上げておきたいと思ったわけです。いかがでしょうか。総理大臣いかがですか。
  74. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私の申し上げたのは、これは国際法でも確立された原則でありまして、何か条約もしくは行政協定に書かなければ、注意を促し、あるいは抗議ができない問題ではない。従って、特に書かなくても、そういうような事態が起こりますれば、当然そういうことは国際法の確立された原則からいいましてもできるから、大丈夫だということを申し上げておるわけでございます。
  75. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 日本の国民もずいぶんたくさん海外に出ています。あるいはパリにおり、あるいはロンドンにおり、あるいはワシントンにおるかもしれません。こういう人々が海外でどんな感情を持ってこういう事件をながめていくでしょうか。日本に三年も前からあったU2、そして、それはまっ黒に塗られ、特殊塗料によって保護されておる、これは地上からのレーダーを受けつけない、また、地上からのレーダーをキャッチするために逆レーダーがついている、そして八時間も十時間も超音速で飛ぶことができる。その機体の下部を見ると、下に向かって大きな窓がついており、ここには、米軍の中尉が認めておりますように、七十ミリの写真機が据えつけられておる。そして、これは日本政府に対して通報する義務があるにもかかわらず、何らの通報もなさず、ひそかに飛び立ち、ひそかに飛び、そして、やがて静かに帰ってくる、こういう姿を持っている。そうして、その上に、今度はフルシチョフがはっきりと撃墜し、その証拠をたくさんあげた。それに対してアメリカ政府は、大統領は知らないけれども、だれかが指図したのだろう、そして現実ソビエトの領内に二千キロも入ったという事実を認め、過去四年間もそれをやっておること——四年間ですよ。日本にきたのは三年前です、四年間もやっておるということを認めた。こういうことを海外にいるわれわれの同胞が知り、そして、その土地の人々に聞かれた場合に何と答えるでしょう。そして、日本政府アメリカ問い合わせてみたら、気象観測機だという答えでございます、私たちはアメリカさんを疑いません、こういう答弁を議会でしている。もし、そうだとすれば、何と海外にいるわれわれの仲間は肩身の狭い思いをしなければならないでしょう。やはり、もっともっと日本政府がきぜんとして、非は非、是は是として認めていくという態度をおとりになる、そしてアメリカに対しても、きっぱりとした態度をおとりになるということを求めているに違いないと私は思います。そういう点を十分お考えいただいて、今後御処理をいただきたいと思います。  別に、私はU2に関する質問が終わったわけではございませんが、岡田君に一応譲ります。
  76. 小澤佐重喜

    小澤委員長 この際、岡田春夫君より関連質疑の申し出があります。これを許します。岡田春夫君。
  77. 岡田春夫

    ○岡田委員 簡単に御質問いたして参りたいと思いますが、先ほどの飛鳥田君の質問に対する答弁に関連して、まず、最初に、藤山外務大臣に伺いたいのであります。  日本にいるU2機に対して、全然今まで記号標識がなかったので、これに対して、日本としては要請をして、記号標識をつけるように申し出た。この結果、記号標識をつけることになったんだ、このように答弁されたのでありますが、どういう標識をつけることになったのですか。具体的に、もう一点それに関連して伺っておきますが、アメリカ国籍を明らかにする標識というものがその中に入っておりますか、どうですか。
  78. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 先ほど申し上げましたように、こちらからそういうことを申したわけでありまして、十一月二十七日にアメリカから今回NASAという標識をつけたということを回答して参りましたので、その事実を申し上げたわけであります。
  79. 岡田春夫

    ○岡田委員 私の伺っておるのは、およそ軍用機あるいは民間機がそれぞれ標識をつける場合に、その国の所属を明らかにする、その飛行機国籍を明らかにする標識が必要なのでありますが、そのような標識をつけておりますか、どうですか。
  80. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 詳しいことはアメリカ局長から御説明いたします。
  81. 森治樹

    ○森政府委員 先ほど外務大臣が御答弁なさいましたように、昨年の十一月二十七日に、NASAという記号をつけたそうでございます。しかしながら、御承知の通りに、アメリカ軍の飛行機等は星の形のようなインシニアといいますか、標識がありますが、NASAには、ああいう標識はないそうでございます。従って、あれはつけていない、こういうことでございます。
  82. 岡田春夫

    ○岡田委員 それでは森さんに伺いますが、NASAという字を書いてあるということですか。私の伺いたいのは、軍用機あるいは民間機ともに、飛行機である場合に、当然国籍を表示する。たとえば、イギリスの場合には赤十字で青になっておるとか、それから日本の場合にはどうとか、日航の場合には日の丸の旗がついておるとか、こういうふうになっていますね。そういう旗の標識、いわゆる旗でなくても、そういう国籍を明らかにする標識をつけなければならないのです。これは、たとえば、戦闘行為の場合においても、もちろん、へーグ条約における空戦の規定は通っておりませんけれども、これはへーグ条約の陸戦法規その他を考えた場合、戦闘行為の場合において、これは明らかに相手国であることを明示し得るような標識が必要なのであります。航空機においても、そのような法規がないからといってそれをつけなくていいのではなくて、当然そのような形の標識をつけることになっておるのが国際法上の慣例である。それは、全世界の例を見れば、アメリカ軍用機においてはその標識をつけ、イギリスの軍用機もつけておる、あるいは民間機も同様につけておるのだが、U2だけはそれをつけておらないのが、おるのか。その点はどうですか。
  83. 森治樹

    ○森政府委員 国際法上の関係におきましてはただいま御指摘のように、国際民間航空に従事する飛行機であれば、国際民間航空条約に基づきまして標識をつけるわけでございます。また、へーグの陸戦法規案によりますと、軍用機もまた標識をつけなくちゃいかぬことになっておるのでございますが、この飛行機は、国際民間航空に従事するものではないわけであります。また、へーグ陸戦法規というものは現在確立された国際法ではないわけでございます。ただ、標識をつけていないということは、これは適当でないわけでございまして、その点を指摘いたしました結果、アメリカ側としましてはNASAという記号をつけたという連絡を受けております。なお、尾翼にはセリアル・ナンバーといいますか、番号のようなものは、もとからついておったそうであります。
  84. 岡田春夫

    ○岡田委員 その点がいろいろ問題になるのですが、法規があるから、ないからといって、標識をつけない、国籍を明らかにする標識を現在でもつけておらないということは、明らかな事実だと思うのですが、その点どうですか。
  85. 森治樹

    ○森政府委員 運輸省から答弁いたします。
  86. 辻章男

    ○辻政府委員 お答え申し上げます。U2はいわゆるアメリカの公用様でございまして、航空法の特例に関しまする法律によりまして、国籍その他の航空法の適用を除外されておりますので、むろん航空法の関係から申しますと、そういう国籍を明示する標識をつける義務はないわけでございます。ただ、国際法上の問題はどうかという点でございますが、これはむしろ外務省関係からお答えしていただきます。
  87. 岡田春夫

    ○岡田委員 これは外務省に答えていただきますけれども、運輸省の航空局長に伺いますが、私は、法規が適法であるかどうかを聞いているのじゃない。アメリカ国籍を表示する標識がついているかどうかということを聞いているのです。それはついているのかいないのかどっちなんです。ついてないなら、ついてないと言ったらいい。
  88. 辻章男

    ○辻政府委員 U2に現在どういう標識がついているかという点に関しましては、私どもも、外務省を通じまして、ただいま外務省から報告がありましたような通知を受けております。
  89. 岡田春夫

    ○岡田委員 それじゃ、アメリカ局長でも航空局長でもいいが、NASAというのがついていることは、私わかりました。それからもう一つは、番号——私も知っていますが、番号がついています。アメリカ国籍を明らかにする標識があるかどうか。このどちらでもいいから、それだけのことですからお答え願いたい。ついてないなら、ついてないと言ったらいい。
  90. 森治樹

    ○森政府委員 私の承知しております限りでは、その点はないと思います。
  91. 岡田春夫

    ○岡田委員 実はこの点が重要なんです、ないということが……。これはほかの国から見れば、どの国の飛行機であるかわからないということを意味している。明らかにこれは、いわゆる山賊行為をやるような飛行機と同じような意味なんです。どのようなことをやったって、これはどこの国の国籍であるかわからない。これは非常にはっきりしている。それから、それでは続いて森さんに伺いますが、U2機の尾翼についているナンバーは、四〇五、四九二、四六四、藤沢で落ちたのは四四九でしょう。どうです。
  92. 森治樹

    ○森政府委員 四〇五、四三二、四六四のようでございます。それから四四九……。
  93. 岡田春夫

    ○岡田委員 ちょっと森さん、速記の門違いがあるといけませんから、あなたはその二番目を四三二と言ったけれども、四九二でしょう。
  94. 森治樹

    ○森政府委員 私の持っておる書類によると、四三二でございます。
  95. 岡田春夫

    ○岡田委員 それじゃ、それは一応未定にしておきましょう。四四九。四百……。全部四百台になっておるが、四百台という三けたの記号というのは、アメリカの陸軍の記号番号以外にはないはずですが、どうですか。
  96. 門叶宗雄

    ○門叶政府委員 民間の航空機は三けたになっております。
  97. 岡田春夫

    ○岡田委員 それでは、これは民間航空機という意味でございますか。
  98. 門叶宗雄

    ○門叶政府委員 軍用機にあらざるという意味でございます。
  99. 岡田春夫

    ○岡田委員 軍用機にあらざるということは——それじゃ、これは重要な点ですが、軍用機にあらざるということは、国際法上、軍用機にあめらざるものはすべて民間機としての扱いを適用しますか。
  100. 門叶宗雄

    ○門叶政府委員 シビリアンという意味でありまして、政府機関に属するものの民間機という……。
  101. 岡田春夫

    ○岡田委員 同じ答弁を、別な言葉で言ったって同じです。官房長、私の伺っているのは、シビリアンの中に、いわゆる公用といいますか、公用機も入っているとするならば、これは国際法上、民間航空に関する法律上の適用を受ける、国際法上の適用を受けるかどうかということを聞いておる。
  102. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 ただいまの件は、国際民間航空条約に関するものだと考えますが、この条約におきましては、民間航空機のみに適用し、国の航空機には適用しないということになっております。それから次に、軍、税関及び警察の業務に用いる航空機は、国の航空機とみなすということでございます。従って軍用以外に、税関、警察の業務に用いる国の航空機というものが存在するわけでございます。
  103. 岡田春夫

    ○岡田委員 それでは、高橋さんに具体的に伺いましょう。これは列挙事項ですね。列挙事項ですから、軍、税関、警察の業務についての航空機は国の航空機とみなす。それ以外の、国の、列挙されてないものもこの中に適用されるわけでございますか。たとえばU2のごとく、あなた方の答弁は気象用だとおっしゃるのだが、われわれは気象用だとは思っていないのだけれども、そういうものも、これに適用されるのだとおっしゃるわけですか。
  104. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 この項は列挙的でございまして、私は限定的なものではないと考えております。従いまして、一応軍用航空機と民間航空機の間——間と申しますか、軍用でないものとして、たとえば税関や警察用の航空機は民間機ではないが、国の航空機である、こういうふうに考えて起ります。
  105. 岡田春夫

    ○岡田委員 いや、これは列挙事項でしょう。制限しておるでしょう。例示では——たとえばではないのでしょう。それ以外に何かあるのですか。あるのなら、これは日本の国際法解釈は世界的な新しい解釈をされるわけだが、それ以外のものはこの中に入るのですか、国際民間航空条約の中に……。それは性格としては公用的性格を持っても、条約の規定の中においては、この三つのものだけが国の航空機であって、民間航空条約は、それ以外の公用的なものも一切含むのでしょう。違うのですか。
  106. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 しかし、ここでは、税関と警察だけに限ったものだと私どもはこれを解釈するわけにはいかないと考えます。
  107. 岡田春夫

    ○岡田委員 軍もありますよ。
  108. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 軍もございますが、それ三つ以外にはないと、限定的に考えるべきではない。
  109. 岡田春夫

    ○岡田委員 それではあなたが新解釈をされるのですが、それ以外のものというのは、どこに書いてあるのですか。それ以外のものというのは、たとえば気象とか、あるいは運輸省に飛行機があるかもしれぬが、そういう飛行機も、あるいは文部省に飛行機があるかもしれない、そういうものも全部この中に入るのですか。それは警察用の飛行機ですか、あるいは税関用の飛行機でございますか。それはどういう飛行機なんですか、具体的に伺いましょう。
  110. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 しかし、国際民間航空条約でございます。でございますから、これは民間の間の航空関係、それを規定している。定期航空とか不定期航空とか、民間間の航空の規制を、これが目的としている条約であると考えます。従いまして、ここではこれらの三つだけではなくて、国の公用のための問題ならば、これは国の飛行機であるというふうに考えるのが当然の考え方じゃないかと思います。
  111. 岡田春夫

    ○岡田委員 条約局長つらいでしょうが、それが官尊民卑の思想の現われなんですよ。わかりましたか。そればかりじゃない。私、具体的にそれでは伺いましょう。林さんも聞いておいて下さい。国際民間航空条約の三十七条、ここには国際標準その他の勧告方式がある。この中には改正、採択の問題として、気象情報の収集、交換という規定がある。あなたの言うようなほかのものがあったにしても、気象観測機関であるとするならば、これは明らかにICAOの機関の中に入るべきものじゃないか。明らかになっておるじゃないか。だれが見たって、はっきりしておるじゃないか。あなただけが、日本の国だけが違うと言うのですか。ほかのICAOに入っておる国は、そうじゃないと言いますよ。ICAOの総会に出て、日本政府は恥をかかないようにして下さいね。そんなこともわからないなんて…。
  112. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 たびたび申し上げるようでございますが、この「軍、税関及び警察の業務に用いる」、ですから、それに用いられている航空機でございます。軍の航空機といいますと、やはり民間でも、軍の用に供せられているという航空機は、すなわち、国の航空機ということになるわけであります。
  113. 岡田春夫

    ○岡田委員 それでは、あなたの答弁によると、U2機は軍用ということになりますね。
  114. 門叶宗雄

    ○門叶政府委員 私が先ほど申し上げましたのは、軍が使っておる飛行機ではないという意味を申し上げたのであります。
  115. 岡田春夫

    ○岡田委員 それでは答弁にならない。条約局長は、国際法上、軍用機であるということを規定したと言った。国際民間航空条約第三条(b)項、ここにある「軍、税関及び警察の業務に用いる航空機は、国の航空機とみなす。」という中の軍の一部だということは、軍用機だということじゃないか。ますます官房長おかしいじゃないか。あなたは、軍が使っていないでも軍用機があるのだそうですが、そういう飛行機があるのですか。
  116. 門叶宗雄

    ○門叶政府委員 ちょっと補足いたします。軍に所属していない、こういう意味で申し上げたのであります。
  117. 岡田春夫

    ○岡田委員 いや、所属していないというのならば、それでは高橋条約局長軍用機であるということは、これは違うのですか。
  118. 林修三

    ○林(修)政府委員 先ほどから、実は、条約局長から民間航空条約の解釈を申し上げておるわけでございまして、今のいわゆる軍用機なりや、軍の業務に属するという言葉とは、実は別問題だと思います。つまり、ICAO条約のいわゆる軍、警察あるいは税関の業務に従事する航空機は、国の航空機とみなす、民間航空機とはみなさないということであります。従って、かりに、その所属が、あるいは民間のものであっても、そういう業務に属するものは、すべて民間航空機とはみなさないで、その前の、いわゆる軍、税関、警察、こういうものとして扱う、そういう意味でございまして、今の具体的な、いわゆるU2が軍用機なりや、これは軍用機という意味にもなってくるわけでありまして、軍の業務を、いわゆる軍自身が……。(「そんな答弁はおかしい」と呼び、その他発言する者多し)それは、今の御質問は、軍用機でありやいなやということでございますが、ICAOの条約には、軍用機ということはどこにも書いてございません。条約局長お答えは、いわゆる軍の業務に属するものはICAOの適用を受けない、それだけ条約局長お答えしたわけであります。それ以上のことはお答えしていないと思います。
  119. 岡田春夫

    ○岡田委員 林さんは、高橋さんを弁解するために今立ったわけだ。しかし、答弁は別なんだ。あなたは、これを列挙事項ではなくて、例示事項とされるわけですね。それならば、それ以外の国の航空機、いわゆる公用機というものは国の航空機とみなすという条文上の規定はどこにありますか。はっきり出して下さい。
  120. 林修三

    ○林(修)政府委員 国の飛行機は、まさに国の飛行機でございまして、みなす必要はございません。
  121. 岡田春夫

    ○岡田委員 それは答弁ではありません。常識ですよ。条約というものは、条約の上に明文上の規定をするから、国の飛行機になり、それの規定を書いている。これは列挙事項ですから、これ以外の飛行機を並べることを許しません。それ以外に許すならば、はっきりと、具体的になぜ書かないのですか。あなたは、その他ということを条約の中にいつも書いているじゃないか。法制局長官として、日本の法律だってあなたは書いているじゃないか。そういう点からいったって、あなた笑われますよ。これを例示事項であるなどと言って、ICAOの総会に行って説明してごらんなさい、ああ、日本はおもしろい国だねと言いますよ。
  122. 林修三

    ○林(修)政府委員 この点は、第三条(a)項と(b)項をお読みになればはっきりしておると思います。(a)項は、国の航空機には適用しない、つまり、国が持っているものには適用しないということでございます。(b)項におきまして、つまり軍、税関、警察の業務に用いている航空機は、いかなる場合においても、その所属いかんを問わず、国の航空機とみなす、こういうことでございます。これは英文をお読みになってもわかります通り、シャル・ビー・ディーム、みなすということになっております。そういうものを例示しているわけでありまして、つまり、これに限るということは、条約の文言から、どこからも出てきません。
  123. 岡田春夫

    ○岡田委員 そういうことを言ったら、あなたは恥をかきますよ。速記に残りますから……。だから、三百何とかいうような話がよく出るのですよ。  それでは、私伺いましょう。民間機ではないのならば、アメリカの昨日発表したU2が民間機であるというのは、これはアメリカの声明が明らかに間違いですね、そういうことになりますね。
  124. 林修三

    ○林(修)政府委員 私は、あれはいわゆる翻訳の問題だと思います。原文は、いわゆるシビルということだと思います。シビルという意味は、いわゆる軍用にならない、私はそういう意味だと思います。
  125. 岡田春夫

    ○岡田委員 それでは、シビルの中には公用機を含まない、こういう解釈ですね、あなたの解釈は。
  126. 林修三

    ○林(修)政府委員 いわゆる軍にあらずというノン・シビルとシビルとに分ければ、いわゆる軍用機がノン・シビルで、シビルは公用機民間機みな含むと思います。
  127. 岡田春夫

    ○岡田委員 それでは、もう少し伺いましょう。厚木にいる飛行機は、行政協定の規定に基づいてやっているということを先ほど御答弁になったと思いますが、そうでございますね。
  128. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 その通りでございます。第五条の適用を受けるということであります。
  129. 岡田春夫

    ○岡田委員 私の伺おうとしたのも第五条なんです。第五条で「日本国政府は、現行の手続で、次の気象業務を合衆国軍隊に提供することを約束する。但し、その手続は、」ちょっとここを省略します。「日本国が国際民間航空機関若しくは世界気象機関の加盟国となった結果として生ずべき変更を受けるものとする。」行政協定第五条は、ICAOの規定の適用を受けるわけでしょう。ここに書いてある。もう一度言いましょう。気象業務に関する限りは、この規定に基づいてICAOの規定の適用を受けるわけでしょう。
  130. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 ただいま私申し上げた点は第五条ですが、ただいま御指摘の点は、第八条かと思います。第八条の点は、「日本国政府は、現行の手続で、次の気象業務を合衆国軍隊に提供することを約束する。但し、その手続は、随時に両政府間で合意される」ところによってきまりますが、「加盟国となった結果として生ずべき変更を受けるものとする。」すなわち、加盟国になりますれば、やはり加盟国としての手続その他があるかと思いますから、そのために所要の変更が必要となれば、それを変更するということでございます。
  131. 岡田春夫

    ○岡田委員 その変更が生じたのでしょう。加盟国になったのは五八年ですが、加盟国になるとともに、国際民間航空機関、略称してICAO、これの規定の適用を受けるわけでしょう、違うのですか。
  132. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 この第八条は、日本が提供する手続を書いておるわけでございますが、もし、加盟国になって、それによって何か日本側が提供する手続が影響を受けるならば、それはその限度において変更を受けるわけでございます。ただ、この場合、現在まで何らその影響を受けておりません。そこで、これは加盟国とはなりましたけれども、この点については、前と同様であると考えます。
  133. 岡田春夫

    ○岡田委員 おそらく、条約局長はそういうように答弁されるだろうと思って、私は言っているのですよ。あなたの方は、気象庁の業務移管だけを言おうとしたのでしょう。これはそうじゃないのですよ。いわゆるU2というものは気象観測機である。この気象観測のための権限を、日本の手続として、この権限を合衆国軍隊に提供することを約束しているのです。そのことも含んでいるのです。そうでなければ、あなたは何のために国際民間航空機関の加盟国となった変更などということを書きますか。気象庁だけの問題であったならば、世界気象機関の加盟国となった云々だけでいいじゃないですか。これははっきりしているじゃないですか、どうなんです。はっきりしていますよ。
  134. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 ただいまの点は、別に、日本国政府が現行の手続で提供することになるわけでございます。もし、それが……。
  135. 岡田春夫

    ○岡田委員 簡単に言えば、権限を移譲するわけです。
  136. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 いや、日本がどういう手続で、われわれが入手した情報を先方に提供するか、そういうことで、この提供の手続を、現行の手続で次の業務を提供するということで(a)、(b)、(c)、(d)と四つの事項を掲げているわけでございます。すなわち、たとえば(c)で、「航空機の安全且つ正確な運航のため必要な気象情報を報ずる」云云、こういうことになっているわけでございます。
  137. 岡田春夫

    ○岡田委員 あなたは、先ほどU2は第五条の適用だとおっしゃいましたね。出入に関しては第五条の適用はありましょう。しかし、気象観測という業務それ自体に関する規定は第八条でしょう。第八条において、あなたのお話のように、日本政府がこういうものを提供するといっている場合には、単に気象庁の気象業務の報告をするだけの提供を意味するものではないのです。アメリカ自体が在日米軍基地を使って、その基地から気象観測機といわれる——これは私は反対だけれども、あなた方はそう言うのだが、U2機というものを使って気象観測をする、その提供を含むわけですよ。ですから、日本国としては国際民間航空機関に参加した、そのようなことについて生ずる結果についても、それに基づく変更があるということです。たとえば、別に言いましょうか。林さん、盛んに首ひねっているが、この人はいつも首を振るのが得意なのだが、ともかく、日本飛行機気象観測をやっている飛行機もある。日本飛行機気象観測をやっているのは、当然国際民間航空機関の適用を受けます。これはもう当然ですね。それと同時に、そのような権限を、本来日本がやるべきことについて、日本政府が、それについての業務というものを、在日米軍泉地内におけるアメリカの、いわゆる軍用機的なものとしておきましょうね、軍用機的なものに対してそのようなことを提供する約束をする。これは当然第八条の適用じゃありませんか、明らかじゃありませんか。それ以外どういう解釈をするのですか。
  138. 林修三

    ○林(修)政府委員 これはもう第八条をお読みになればわかります通りに、日本国政府は、これこれを提供する、その(a)、(b)、(c)、(d)、すべてみな日本政府のやっていることでございます。これをアメリカ政府にやってもらうという趣旨ではございません。
  139. 岡田春夫

    ○岡田委員 いや、趣旨ではないことはわかっている。趣旨ではなくても、アメリカのU2機というのは、それでは何をやっているのですか、日本の上空の気象観測をやっているのじゃないのですか。
  140. 林修三

    ○林(修)政府委員 それは先般来の政府当局のお答えでやっているものと思います。しかし、これは第八条に基づくものではございません。
  141. 岡田春夫

    ○岡田委員 それじゃ、気象観測というものは、行政協定に基づかずやっているわけですね。
  142. 林修三

    ○林(修)政府委員 いわゆる日本に駐留する米軍あるいは空軍が必要な気象観測資料をとることは、当然私は駐留米軍としてやり得ることだと思います。
  143. 岡田春夫

    ○岡田委員 それでは林さんに伺いますが、行政協定の第八条なんというのは、これは適用しないのだから、こういうものは、U2機に関する限り意味ないということですね。
  144. 林修三

    ○林(修)政府委員 この第八条は、日本米軍がおりまして、米軍の必要な資料日本から提供することを約しておるわけでございます。それだけのことで、それ以上のことは何も入っておりません。
  145. 岡田春夫

    ○岡田委員 あなたは、さっき、ICAOの場合は、列挙事項を例示事項とした。今度は、行政協定になると、列挙していることを、その中で意識的に落とすことにした。こういう解釈が国際法上あるのですか。私は笑わざるを得ないですよ。それじゃ、「国際民間航空機関」云々ということは、一体何ですか。「加盟国となった結果として生ずべき変更を受けるものとする」ということは、これは何ですか。
  146. 林修三

    ○林(修)政府委員 こういう資料を提供するについて、日本がそういうものに加盟した場合に何らかの変更が生ずれば、その変更の生じた、つまり、国際民間航空条約あるいは国際気象機関条約、これの手続に従って変更を受けた手続でやる、そういうだけの意味でございます。それ以上の意味はございません。
  147. 岡田春夫

    ○岡田委員 気象観測とおっしゃいましたね、U2は気象観測だ。気象観測というのは、目的は、いわゆる軍用のための気象観測ですか、どういうことですか。
  148. 林修三

    ○林(修)政府委員 私は、その詳しい内容は存じませんけれども、第八条に関する限り、U2等あるいは米軍飛行機気象観測をいっているのではないのでございまして、日本が、むしろ向こう側に提供すべき資料の手続をいっているわけでございます。
  149. 岡田春夫

    ○岡田委員 私は、行政協定第八条を聞いているのじゃない。だから、防衛庁長官、あるいは運輸省の航空局長に伺ってもけっこうです。アメリカ局長でもけっこうです。U2の気象観測というのは、軍用のための気象観測ですか。
  150. 森治樹

    ○森政府委員 軍用のためだと存じております。
  151. 岡田春夫

    ○岡田委員 それでは軍用のためで、民間のものではない。軍用に準ずる飛行機である。これがU2機であるということは間違いありませんね。防衛庁長官、どうですか。
  152. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 軍のために気象観測もしていますが、NASAの所属の飛行機でございます。
  153. 岡田春夫

    ○岡田委員 赤城さんに伺いますが、NASAの所属と言っていいのですか。ロッキードじゃないですか、どうなんですか。会社の所有は、あれはロッキードじゃないですか、どうなんですか。
  154. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 在日米庫のために気象観測をしておるのでありますが、NASAの飛行機ですから、その方のためにもこれは働いておると思います。
  155. 岡田春夫

    ○岡田委員 それでは伺いましょう。あなたは、このU2機というものは、所有はどこの所有だと思われますか。所属はNASAですが、ロッキードじゃないですか。アメリカ民間機であると言ったのは、所有関係を言っているのですよ。さっきから、林さんやそういう人はいいかげんなことを言っているのですよ。民間機という、シビリアンという意味ですなんといって、言葉のあやでごまかしてはだめ。これは明らかにロッキード所有の機であって、それが編入されてNASAが使っているたけの話なんです。だから、アメリカの声明は、民間機であるという声明をしたのです。どうなんですか。
  156. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 先ほどからシビルと言っているのは、軍用機でないという意味で申し上げておると思います。その中には、民間のやつも公用のものもある。純然たる民間のものも、公用のものもある。シビルの中には、民間のものも公用のものもある、それは軍用でないということから出てくるわけであります。
  157. 岡田春夫

    ○岡田委員 この点については、私はきょうは留保しておきます。これ以上は言いません。あなた調べて下さい。ここのところを明確にしてもらわないと、あなた方が最も信頼しているアメリカの声明でさえ、あなた方は間違いだと言わざるを得なくなるのだし、民間機であるとアメリカは言っているのだから、そこら辺は、あなた方はもっと真剣になって、一生懸命調べた方がいいでしょう。私はきょうは留保しておきます。  それでは伺いますが、先ほどからの御答弁を聞いておると、十八機たしか全世界にあるわけですね。そのうち日本は三機——藤沢に落ちたのを含めて四機ですか。この三機だけは軍用機でない、あるいはまた、気象観測機であるとはっきり言われた。今使われておるのでは残り十五機ですが、十五機は、アメリカの声明によって、いわゆるスパイ活動をやっている。(「そんなことは言えない。」と呼び、その他発言する者あり)声明に書いてある。声明に書いてあるのだから、それはうそだとは言えないでしょう。自民党の諸君並びに政府の諸君は、アメリカの言ったことまで違うというなら、言ったらいいでしょう。昨日のアメリカの声明で、過去四年間にわたって、自由諸国の国境空中において情報収集の活動をやったといわれておるじゃないか。十八機と書いてある。十八機のうち、日本の三機だけは気象観測機で、十五機はスパイ機だ、こういうことじゃありませんか。これはどうなのですか。
  158. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 十八機ということでありますが、ワシントンの発表では八機でございます。厚木に三機、トルコに四機、カリフォルニアに一機、こういうふうに私どもは了承いたしております。
  159. 岡田春夫

    ○岡田委員 それじゃ赤城さん伺いますが、あなたのおっしゃるように、八機でもいいですよ。八機でもいいが、ここに昨日の声明書では、「非武装民間機U2が過去四年間にわたって自由世界の前線を飛行してきたのは奇襲攻撃の危険に対処するためである。」云々、情報収集のことがその前段の声明にあるとするならば、あなたは、日本に関する限りは気象観測だ、残りの五機はそれじゃこの通りだ、これを認めざるを得ないでしょう。
  160. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 残りの五機がどういうことをしているか、私は承知しておりません。ただ、今申し述べられましたように、米国務省の発表では、今日の情勢下で情報収集は必要であり、U2機は、過去四年間、自由世界の防衛のため、その前線を飛行していたことを明らかにしたというふうにUPIで報告しておりますが、日本のは、私ども確かめておるところでは気象観測だ、こういうのであります。
  161. 岡田春夫

    ○岡田委員 これは資料を要求いたします。外務省に昨日の声明並びに前日の国務省の声明等があるはずですが、これは英文と日本文と両方御提出を願いたいと思います。これを要求いたします。
  162. 小澤佐重喜

    小澤委員長 これに対する政府側の意見を承ります。
  163. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 アメリカの声明書はそろえてお出しいたします。
  164. 岡田春夫

    ○岡田委員 その点についてまたいろいろ伺って参りますが、昨日のアメリカの声明では、ソ連の領域内において、二千キロ領空侵犯したという事実を大体において認めた。これはそうですね。私はあなたの好きな言葉で、大体と言っておきましょう。私は完全に領空侵犯をしたと見ているわけです。そこで、この領空侵犯をしたという事実はお認めになるのですかどうですか、岸総理大臣、伺いましょう。
  165. 岸信介

    ○岸国務大臣 これは、もしも新聞の報ずる通りであるならば、領空侵犯をしておると思います。
  166. 岡田春夫

    ○岡田委員 岸さんのように、むしろ率直に言われた方がいいのです。それを今までの三百代言式な答弁で、何だかもやもやと、わけのわからぬことを言っておるから、われわれは承知できない。総理大臣が今言われたように、これは私は、岸さんの今の答弁は非常に率直でいいと思うのです。それで岸総理に具体的に伺いますが、新聞の発表の通り領空侵犯をしておるならば、日本政府としても、そのような領空侵犯に対して非常に遺憾であるという態度をおとりになるのは当然だろうと思いますが、どうですか。
  167. 岸信介

    ○岸国務大臣 先ほど来議論がありますのは、日本におるところのU2が領空侵犯したかどうかという問題じゃございませんで、日本には直接関係のない問題でございます。
  168. 岡田春夫

    ○岡田委員 いや、私は関係ないということについては、これはあとで伺いますが、しかし、これほど国際問題になっておるのに、日本政府としては見解の披瀝ができないのですか。国際問題に対して、今まであなた方どうですか。スエズの問題についても、あるいはレバノンの問題についても、ずいぶん日本から離れた問題について声明を出しておるじゃないか。今度は、スエズの問題よりもっと近いところでこの事故が起こったのに、なぜ談話を発表できないのですか。これは何か、アメリカとの御都合の関係でございますか。
  169. 岸信介

    ○岸国務大臣 国際問題について、すべて日本が、あらゆる場合において、政府として声明を出すという性質のものじゃないと思います。ことにU2の問題に関しましては、現在まだいろいろな国際的な関係を持っておるようでありまして、今日私は、新聞の記事だけで、直ちに日本政府が何か声明を出すという性質のものじゃないと思います。
  170. 岡田春夫

    ○岡田委員 私は、特にこれを伺っておくのは、今、日本の国は安保理事国ではありません。だけれども、ついこの間までは安保理事国ですね。この問題について安保理事会に提訴すると言っておりますね。日本は、理事国ではないにしても、かつて理事国であった。岸さんは、日本がだんだん理事国になるような国になったんだというのに、こういう問題について意見をお持ちにならないとおっしゃるのですか。(「意見は発表すべきじゃない」と呼ぶ者あり)あるいは意見を発表する範囲ではない、意見は持っておるが、発表する範囲でないということはどういうことですか。これは、日本の国民にとって非常に重大な関係がある。なぜならば、同じ飛行機のU2機が日本に三台もあるからなんだ。だから問題なんだ。なぜ態度を明らかにしないか。卑怯な態度をとっちゃいけませんよ。はっきり答えなさい
  171. 岸信介

    ○岸国務大臣 岡田君、そう大きな声をする必要はないと思います。あくまでも事実は事実としてはっきりした上において、領空侵犯だということは、これはどの国がやったにしましても、国際法十も、こういうことがいいことでないことは言うを待ちません。しかしながら、今日の状況のもとにおいて、直ちにあなたがするかどうかと言われたなにに対しましては、私は先ほどから申しておるように、新聞の報ずるところによればこうだ。事実を新聞にとって申しております。さらに事情を調べることもありましょう。それを言わなければならぬかということは、私は、別に政治的に考慮すべきものであって、決して卑法だとかなんとかいう性質のものじゃないと思います。
  172. 岡田春夫

    ○岡田委員 それじゃ伺います。あなたは、世界平和を念願するといつも言っておられるじゃありませんか、世界平和のために、きわめて阻害する事実じゃありませんか。しかも、昨日の夕刊を見ると、この声明書を発表するのにあたって、国務省当局は、問題のU2機が気象観測目的飛行したというさきの国務省声明は、当時入手可能な最善の情報に基づいた誠意あるものだと弁解したとき、顔を赤くしたそうです。これほどアメリカは顔を赤くせざるを得ない状態であります。あなたは、最も友好関係にあるアメリカが顔を赤くしているのだから、友好関係の道義の上に立って、態度を明白にしないのではありませんか。
  173. 岸信介

    ○岸国務大臣 今の御質問には、私、答弁する必要を認めません。
  174. 岡田春夫

    ○岡田委員 答弁をなさらないのならば、答弁しなくてもけっこうです。私はどんどん質問だけはいたします。  もし、ここで厚木の三機のU2機がスパイのために使われているという事実が明らかになった場合には、どうされますか。
  175. 岸信介

    ○岸国務大臣 先ほど外務大臣お答えを申し上げましたように、いやしくも他国の領空を侵犯するような事実ありとするならば、これは安保条約並びに行政協定の趣旨に反しておりますから、アメリカに抗議して、そういうことのないようにいたします。
  176. 岡田春夫

    ○岡田委員 そういう点ならば、非常に明快にしていただきたいのですが、U2機にはその疑念がある、従って、早急に、先ほどのようないいかげんな答弁ではなくて、もっと明快にお調べをいただいて、もしそのような事実があるとするならば、このような飛行機アメリカに帰ってもらう、このようにはっきりしていただきたいのですが、あなたはその勇気をお持ちでございますか。
  177. 岸信介

    ○岸国務大臣 先ほど外務大臣お答えを申し上げましたように、現在いろいろな御質問もあるようでありますから、なおU2機の問題に対しては、アメリカに対して、従来その情報をわれわれは得ておりますけれども、さらに情報を確かめることにつきましては、もちろん、われわれは正確にいたすべきものであると思います。そうして、いやしくも他国の領土、領空を侵犯するような事実ありとするならば、これに対して適当な措置をとるようにいたしたいと思います。
  178. 岡田春夫

    ○岡田委員 私が特にそういう点を強調しておきましたのは、日本の自衛隊の持っている中国大陸関係の地図は、このU2機によって作られているという、そのような懸念が非常に多い。従って、そういう意味においても、この自衛隊の持っている航空図の原図の問題については、この前、われわれは前回のように取り上げてきておるわけです。ですから、この点については、もう一度私はこの次に適当なときに飛鳥田君のあとでまた質問します。それまでにお調べを願うことを特に希望いたしておきます。ともかくも、さきおとといまではアメリカ政府は、トルコにいたU2機というものが、飛んでいる間に故障を起こして、そしてその操縦士が飛行機の上で気を失って、思わずソビエトの領空の中に入ったんだ、こういう声明をいたしました。そしてそれが二千キロ飛んで、そして——その声明のあとで、気を失ったアメリカの操縦士がぴんぴんと生きてモスクワにいたことが明らかになった。先ほど飛鳥田君が言った通りに、アメリカとしては、いつも気象観測と言ってごまかしてきたのです。日本のU2機の場合においても、気象観測と言ってごまかしている可能性が非常に強いのだ、日本の国民ははっきりそのように考えておる。そういう点であるから、あなたの方はしばらく御調査を願いたいということを希望します。しかも、そのあとで、生きているアメリカ人の操縦士がいるというので、あらためてアメリカが昨日声明を出した。その声明は何ですか。あれはまるで居直り強盗のような態度で居直っているじゃないか。この居直っている強盗のような態度に対して弁護のような態度をとるならば、日本政府も共犯者のように言われることになるじゃありませんか。われわれは、そういう意味においても、あなた方はアメリカ一辺倒の政治をおやめなさい。アメリカのことならば、何でもかんでも弁護する。アメリカのことを弁護して、日本の国民には隠す。あなた方は、日本の国民の政府じゃないですか。日本の国民の政府なら、なぜ日本の国民のために明らかにしないか、はっきり明らかにしたらいいじゃないか。アメリカのことばかり考えて——日本の国民の政府ならば、日本の国民に明らかにしなさい。アメリカ一辺倒の政治をやってはいけません。そのようなことは、アメリカのいわゆる買弁的政府と言われることになるわけであります。われわれは、そういうような態度に対してあくまでも反対であります。私は、以上、意見を申し述べまして終わりといたします。
  179. 小澤佐重喜

    小澤委員長 ただいまの岡田君の発言中もし不穏当軒の個所がありますれば、速記録を調べた上に適当な処置を講じます。
  180. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 私に向かって感想を述べたようでありますから……(岡田委員「あなたに向かってではない、政府全体に対してです」と呼ぶ)U2機が何か領空侵犯をしたり、あるいは侵略的なものだという前提で御議論をしているようでありますが、私どもは、まだ、U2機が中共の領空を侵犯したとか、あるいはソ連の領空を侵犯したとか、こういう事実を全然聞いておりません。また、日本におるU2機は気象観測である、こういうことで私どもは承知しておるわけであります。また、御感想でありますが、何かアメリカのために私どもが政治をしているようなことを言われるのですが、私どもは、日本を中心として、日本の平和と安全のために最も適当する方法を考えながら政治を行なっておりますので、御前提において非常に違う点がありますので、その点を申し上げておきます。
  181. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 今、岡田君からいろいろ御質問があり、そうしてこのU2機は、アメリカソビエト中国に対するスパイ用に使っておったということを申し上げたわけです。ところが、政府は、日本以外の土地にあるU2機は、これはどう使われたか、知らない、多分アメリカ政府の言う通りだろう。だのに、日本にあるU2機は気象観測用だとおっしゃったのですが、しかし、現に在日米国大使館文化交換局ですか、ここから一九六〇年五月六日に出している文書、これを見ますと、「米航空宇宙局、行方不明のU2機に関し声明」こういうふうに書かれておりまして、ここにはこう書いてあります。これはアメリカ政府の見解です。「一九五六年の右研究計画開始以来、気象観測用U2機はカリフォルニア州、ニュ—ヨーク州、アラスカ、英国、ドイツ、トルコ、パキスタン、日本、沖繩、フィリピン所在の諸基地から行動した。U2機は現在カリフォルニア州、日本、およびトルコで使用されている。」こう書いてあるわけです。すなわち、これはアメリカ政府自身がちゃんと、日本、トルコ、こういうところで使っているということを明白にしているわけです。もしそうだとすれば、日本だけが例外であるなどとは、どこからも出てこない。すなわち、日本の基地を使って中国及びシベリアを観察した、こういうことはもう明らかじゃないでしょうか。この点については、同じことをあなた方は繰り返してお答えになるだけでは済まないのじゃないか。むしろ、かえって、こういう飛行機は今後この基地に置かぬ、そして今まで三年間そういうことで使われたことは残念である、アメリカに対して厳重に抗議する、こういうことをはっきりおっしゃる必要があるのじゃないでしょうか。
  182. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 先ほどから総理も御答弁申し上げましたように、日本にあるU2が中共の領空を侵犯した事実がある、あるいはソ連の領空を侵犯した事実がある、こういうようなことであるといたしますならば、それは厳重に抗議をいたします。しかし、そういう事実はないし、私どもが確かめた範囲におきましては、気象観測用に使われておるということでありますので、現在、御質問のようなことはございません。
  183. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 すでに私が現にこの委員会で提出をいたしましたその航空図に現われて参ります範囲を見ていただきますと、U2の公表せられておる行動能力の範囲ときちっと一致するわけです。そういう点から考えてみて、やはり自衛隊の持っておる航空図自身の原因は、これによってとられた、こういうふうに考えないわけに参りません。この点についてもう一度詳しく御答弁をいただきたいと思います。
  184. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 航空図につきましては、再々御答弁申し上げておりまするように、ICAOの地図を基礎とし、また国際連合の地図を基礎とし、あるいはアメリカの地図も参考にして作っております。この地図がどういうふうにして作られたかということを私どもは究明する必要は感じませんので、今のお尋ねに対しましては、それだけ御答弁申し上げます。
  185. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 まだ私いろいろなことを伺いたいと思いますが、もう時間も五時ちょっと前でありますから、この次の私の質問のときに続けてお伺いをすることにいたしまして、私は終わります。
  186. 小澤佐重喜

    小澤委員長 次会は、明十日午前十時より開会いたします。  本日は、これにて散会いたします。     午後四時四十三分散会