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1960-05-07 第34回国会 衆議院 日米安全保障条約等特別委員会 第30号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年五月七日(土曜日)     午前十時三十四分開議     ―――――――――――――  出席委員    委員長 小澤佐重喜君    理事 井出一太郎君 理事 岩本 信行君    理事 大久保武雄君 理事 櫻内 義雄君    理事 椎熊 三郎君 理事 西村 力弥君    理事 松本 七郎君 理事 竹谷源太郎君       安倍晋太郎君    愛知 揆一君       秋田 大助君    天野 光晴君       池田正之輔君    石坂  繁君       鍛冶 良作君    加藤 精三君       鴨田 宗一君    賀屋 興宣君       小林かなえ君    田中 榮一君       田中 龍夫君    田中 正巳君       床次 徳二君    野田 武夫君       服部 安司君    福家 俊一君       古井 喜實君    保科善四郎君       毛利 松平君    山下 春江君       飛鳥田一雄君    石橋 政嗣君       井手 以誠君    岡田 春夫君       黒田 寿男君    滝井 義高君       戸叶 里子君    中井徳次郎君       穗積 七郎君    森島 守人君       横路 節雄君    大貫 大八君       大野 幸一君    堤 ツルヨ君  出席国務大臣         内閣総理大臣  岸  信介君         外 務 大 臣 藤山愛一郎君         国 務 大 臣 赤城 宗徳君  出席政府委員         内閣官房長官 松本 俊一君         法制局長官   林  修三君         防衛庁参事官         (長官官房長) 門叶 宗雄君         防衛庁参事官         (防衛局長)  加藤 陽三君         調達庁長官   丸山  佶君         外務事務官         (大臣官房審議         官)      下田 武三君         外務事務官         (アメリカ局         長)      森  治樹君         外務事務官         (条約局長)  高橋 通敏君  委員外出席者         専  門  員 佐藤 敏人君     ――――――――――――― 五月七日  委員鈴木一君及び門司亮君辞任につき、その補  欠として大野幸一君及び大貫大八君が議長の指  名で委員に選任された。     ――――――――――――― 五月六日  日米安全保障条約改定反対に関する請願外十五  件(淺沼稻次郎紹介)(第三〇七三号)  同外二件(茜ケ久保重光紹介)(第三〇七四  号)  同外二十件(飛鳥田一雄紹介)(第三〇七五  号)  同外六十六件(赤松勇紹介)(第三〇七六  号)  同外一件(石野久男紹介)(第三〇七七号)  同外二十二件(井岡大治紹介)(第三〇七八  号)  同外十四件(小川豊明紹介)(第三〇七九  号)  同外二十三件(栗原俊夫君紹介)(第三〇八〇  号)  同外一件(五島虎雄紹介)(第三〇八一号)  同外六件(佐藤觀次郎紹介)(第三〇八二  号)  同外二十八件(下平正一紹介)(第三〇八三  号)  同外六十九件(中嶋英夫紹介)(第三〇八四  号)  同(穗積七郎紹介)(第三〇八五号)  同外五件(山花秀雄紹介)(第三〇八六号)  同外六件(横路節雄紹介)(第三〇八七号)  同外十五件(茜ケ久保重光紹介)(第三〇八  八号)  同外二十八件(井岡大治紹介)(第三〇八九  号)  同外七件(栗原俊夫君紹介)(第三〇九〇号)  同外三件(東海林稔紹介)(第三〇九一号)  同外三件(阿部五郎紹介)(第三〇九二号)  同外二件(足鹿覺紹介)(第三〇九三号)  同(井伊誠一紹介)(第三〇九四号)  同(石村英雄紹介)(第三〇九五号)  同(岡田春夫紹介)(第三〇九六号)  同外一件(河上丈太郎紹介)(第三〇九七  号)  同外三件(木原津與志君紹介)(第三〇九八  号)  同外二件(菊地養輔君紹介)(第三〇九九  号)  同外三件(黒田寿男紹介)(第三一〇〇号)  同外三件(河野密紹介)(第三一〇一号)  同(櫻井奎夫君紹介)(第三一〇二号)  同外三件(鈴木茂三郎紹介)(第三一〇三  号)  同外一件(田中稔男紹介)(第三一〇四号)  同(多賀谷真稔紹介)(第三一〇五号)  同外二件(松本七郎紹介)(第三一〇六号)  同外二件(三宅正一紹介)(第三一〇七号)  同外一件(森島守人紹介)(第三一〇八号)  同外一件(八百板正紹介)(第三一〇九号)  同(八木昇紹介)(第三一一〇号)  同外二百十五件(赤松勇紹介)(第三一三三  号)  同外百二十六件(茜ケ久保重光紹介)(第三  一三四号)  同(井手以誠君紹介)(第三一三五号)  同(伊藤卯四郎紹介)(第三一三六号)  同(石村英雄紹介)(第三一三七号)  同(大矢省三紹介)(第三一三八号)  同(加藤勘十君紹介)(第三一三九号)  同(春日一幸紹介)(第三一四〇号)  同(神近市子紹介)(第三一四一号)  同(神田大作紹介)(第三一四二号)  同外二百二十二件(栗原俊夫君紹介)(第三一  四三号)  同(黒田寿男紹介)(第三一四四号)  同外九十七件(兒玉末男紹介)(第三一四五  号)  同外五件(菊川君子紹介)(第三一四六号)  同(河野密紹介)(第三一四七号)  同外七件(戸叶里子紹介)(第三一四八号)  同外三十六件(中嶋英夫紹介)(第三一四九  号)  同外六件(成田知巳紹介)(第三一五〇号)  同外五件(西村力弥紹介)(第三一五一号)  同(原彪紹介)(第三一五二号)  同(松浦定義紹介)(第三一五三号)  同外一件(水谷長三郎紹介)(第三一五四  号)  同(本島百合子紹介)(第三一五五号)  同外三十二件(森島守人紹介)(第三一五六  号)  同(山下榮二紹介)(第三一五七号)  同外七件(山中吾郎紹介)(第三一五八号)  同(山花秀雄紹介)(第三一五九号)  同外八件(横路節雄紹介)(第三一六〇号)  同(横山利秋紹介)(第三一六一号)  同(穗積七郎紹介)(第三一六二号)  同外二十六件(淡谷悠藏紹介)(第三一九八  号)  同(淺沼稻次郎紹介)(第三一九九号)  同外四百四十一件(赤松勇紹介)(第三二〇  〇号)  同外百九十二件(茜ケ久保重光紹介)(第三  二〇一号)  同外二十一件(石村英雄紹介)(第三二〇二  号)  同外十九件(猪俣浩三紹介)(第三二〇三号)  同外三件(大原亨紹介)(第三二〇四号)  同外十二件(勝間田清一紹介)(第三二〇五  号)  同外十件(風見章紹介)(第三二〇六号)  同外十八件(神近市子紹介)(第三二〇七  号)  同外九件(北山愛郎紹介)(第三二〇八号)  同外十一件(木原津與志君紹介)(第三二〇九  号)  同外二百七十七件(栗原俊夫君紹介)(第三二一  〇号)  同外八十五件(兒玉末男紹介)(第三二一一  号)  同外九件(五島虎雄紹介)(第三二一二号)  同外七件(佐々木更三君紹介)(第三二一三  号)  同外八十一件(佐藤觀次郎紹介)(第三二一  四号)  同(杉山元治郎紹介)(第三二一五号)  同外四件(高田富之紹介)(第三二一六号)  同外七件(滝井義高紹介)(第三二一七号)  同外二十六件(堂森芳夫紹介)(第三二一八  号)  同外二十八件(西村関一紹介)(第三二一九  号)  同外三十七件(西村力弥紹介)(第三二二〇  号)  同外九件(原彪紹介)(第三二二一号)  同外三件(帆足計紹介)(第三二二二号)  同(堀昌雄紹介)(第三二二三号)  同外三十五件(森島守人紹介)(第三二二四  号)  同外十八件(八百板正紹介)(第三二二五  号)  同外九件(八木昇紹介)(第三二二六号)  同(柳秀一紹介)(第三二二七号)  同外十六件(山中吾郎紹介)(第三二二八  号)  同外九件(山花秀雄紹介)(第三二二九号)  同外六件(横山利秋紹介)(第三二三〇号)  同外六件(淺沼稻次郎紹介)(第三二六四  号)  同外一件(茜ケ久保重光紹介)(第三二六五  号)  同(飛鳥田一雄紹介)(第三二六六号)  同外百九十九件(淡谷悠藏紹介)(第三二六  七号)  同外百件(井岡大治紹介)(第三二六八号)  同(井手以誠君紹介)(第三二六九号)  同外四十二件(猪俣浩三紹介)(第三二七〇  号)  同外十三件(石川次夫紹介)(第三二七一  号)  同(石田宥全君紹介)(第三二七二号)  同外一件(石野久男紹介)(第三二七三号)  同外八件(小川豊明紹介)(第三二七四号)  同外六百二十二件(太田一夫紹介)(第三二  七五号)  同(岡田春夫紹介)(第三二七六号)  同(勝間田清一紹介)(第三二七七号)  同外一件(角屋堅次郎紹介)(第三二七八  号)  同外三件(神近市子紹介)(第三二七九号)  同外十二件(久保三郎紹介)(第三二八〇  号)  同外六百十九件(栗原俊夫君紹介)(第三二八  一号)  同外三件(黒田寿男紹介)(第三二八二号)  同外二十八件(小林進紹介)(第三二八三  号)  同外十九件(佐々木更三君紹介)(第三二八四  号)  同外二百三十七件(佐藤觀次郎紹介)(第三  二八五号)  同(坂本泰良紹介)(第三二八六号)  同外五件(島上善五郎紹介)(第三二八七  号)  同外五十四件(下平正一紹介)(第三二八八  号)  同外一件(鈴木茂三郎紹介)(第三二八九  号)  同外百十件(田中武夫紹介)(第三二九〇  号)  同(田中稔男紹介)(第三二九一号)  同外二百十七件(堂森芳夫紹介)(第三二九  二号)  同外十六件(中澤茂一紹介)(第三二九三  号)  同外六件(中嶋英夫紹介)(第三二九四号)  同外二十三件(永井勝次郎紹介)(第三二九  五号)  同外一件(西村関一紹介)(第三二九六号)  同(帆足計紹介)(第三二九七号)  同(松本七郎紹介)(第三二九八号)  同(三宅正一紹介)(第三二九九号)  同外四十六件(八木昇紹介)(第三三〇〇  号)  同外百三十三件(山口シヅエ紹介)(第三三  〇一号)  同外七十件(山崎始男紹介)(第三三〇二  号)  同外一件(山花秀雄紹介)(第三三〇三号)  同外七十九件(赤松勇紹介)(第三三〇八  号)  同外三十二件(茜ケ久保重光紹介)(第三三  〇九号)  同外二百六十三件(井岡大治紹介)(第三三  一〇号)  同外二百五十四件(伊藤よし子紹介)(第三  三一一号)  同(石田宥全君紹介)(第三三一二号)  同外四件(石村英雄紹介)(第三三一三号)  同(岡田春夫紹介)(第三三一四号)  同外一件(神近市子紹介)(第三三一五号)  同外四百三件(栗原俊夫君紹介)(第三三一六  号)  同外六件(五島虎雄紹介)(第三三一七号)  同外五十四件(佐藤觀次郎紹介)(第三三一  八号)  同外二百四十三件(志賀義雄紹介)(第三三  一九号)  同外二件(島上善五郎紹介)(第三三二〇  号)  同外七件(堂森芳夫紹介)(第三三二一号)  同外八件(永井勝次郎紹介)(第三三二二  号)  同外五件(西村力弥紹介)(第三三二三号)  同(帆足計紹介)(第三三二四号)  同外二十四件(穗積七郎紹介)(第三三二五  号)  同外四百十六件(森島守人紹介)(第三三二  六号)  同外二件(山口シヅエ紹介)(第三三二七  号)  同外二件(山本幸一紹介)(第三三二八号)  同外一件(池田禎治紹介)(第三三二九号)  同外六件(大貫大八紹介)(第三三三〇号)  同外一件(菊川君子紹介)(第三三三一号)  同(春日一幸紹介)(第三三三二号)  同(竹谷源太郎紹介)(第三三三三号)  同外三件(塚本三郎紹介)(第三三三四号)  同外三件(本島百合子紹介)(第三三三五  号)  同外十九件(飛鳥田一雄紹介)(第三三四五  号)  同外七件(淺沼稻次郎紹介)(第三三四六  号)  同外百六十六件(茜ケ久保重光紹介)(第三  三四七号)  同外百九件(井岡大治紹介)(第三三四八  号)  同外四件(板川正吾紹介)(第三三四九  号)  同外五百七十五件(伊藤よし子紹介)(第三三  五〇号)  同外十一件(小川豊明紹介)(第三三五一  号)  同外百九十三件(柏正男紹介)(第三三五二  号)  同外三十七件(加賀田進紹介)(第三三五三  号)  同外百三件(神近市子紹介)(第三三五四  号)  同外十七件(金丸徳重紹介)(第三三五五  号)  同外七件(北山愛郎紹介)(第三三五六号)  同外二十九件(久保三郎紹介)(第三三五七  号)  同外三百九十七件(栗原俊夫君紹介)(第三三  五八号)  同外一件(久保田豊紹介)(第三三五九号)  同(河野密紹介)(第三三六〇号)  同外三十八件(五島虎雄紹介)(第三三六一  号)  同外三十件(佐藤觀次郎紹介)(第三三六二  号)  同(東海林稔紹介)(第三三六三号)  同外二十五件(島上善五郎紹介)(第三三六  四号)  同外十件(鈴木茂三郎紹介)(第三三六五  号)  同外一件(田中武夫紹介)(第三三六六号)  同外六十八件(田中稔男紹介)(第三三六七  号)  同(多賀谷真稔紹介)(第三三六八号)  同外九十九件(戸叶里子紹介)(第三六九  号)  同外十四件(成田知巳紹介)(第三三七〇  号)  同外三十一件(永井勝次郎紹介)(第三三七  一号)  同外六件(山口シヅエ紹介)(第三三七二  号)  同外十四件(西村力弥紹介)(第三三七三  号)  同外十一件(八木一男紹介)(第三三七四  号)  同外三十二件(山口シヅエ紹介)(第三三七  五号)  同(山花秀雄紹介)(第三三七六号)  同外百二十四件(山本幸一紹介)(第三三七  七号)  同外二十五件(高田富之紹介)(第三三七八  号)  同外百八十一件(石村英雄紹介)(第三三七  九号)  同(伊藤よし子紹介)(第三三八〇号)  同外九件(石村英雄紹介)(第三三八一号)  同外九件(神近市子紹介)(第三三八二号)  同外十四件(栗原俊夫君紹介)(第三三八三  号)  同外二件(戸叶里子紹介)(第三三八四号)  同外一件(山本幸一紹介)(第三三八五号)  日米安全保障条約改定に関する請願柳田秀一  君紹介)(第三一八四号)  同(高田富之紹介)(第三二五六号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 五月六日  日米安全保障条約改定反対等に関する陳情書  (第七〇八号)  日米安全保障条約改定反対に関する陳情書  (第七  六〇号)  同(第  七六一号)  同  (第七六二号)  同  (第八二八号)  同  (第八二九号)  同(第八五三号)  同  (第八五四号)  同  (第八五五  号)  同  (第  八八一号)  同  (第八八二  号)  同  (第八八三号)  同  (第八八四号)  同  (第八八五号)  同  (第八八六号)  同  (第八八七号)  同  (第八八八  号)  同  (第八八九号)  日米安全保障条約改定促進に関する陳情書  (第八五一号)  同  (第八五二号)  同  (第八八〇号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び  安全保障条約締結について承認を求めるの件  (条約第一号)  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び  安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並び  に日本国における合衆国軍隊地位に関する協  定の締結について承認を求めるの件(条約第二  号)  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び  安全保障条約等締結に伴う関係法令整理に  関する法律案内閣提出第六五号)      ――――◇―――――
  2. 小澤佐重喜

    小澤委員長 これより会議を開きます。  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約締結について承認を求めるの件、日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並び日本国における合衆国軍隊地位に関する協定の締結について承認を求めるの件、日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約等締結に伴う関係法令整理に関する法律案、右各件を一括して議題といたし、質疑を続行いたします。石橋政嗣君
  3. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 私は、昨日藤山外務大臣が本条約案提案理由説明の際に、重要な改正点としておあげになりました三つの問題、すなわち日米間の安全保障体制国際連合との関係を明確にしたということ、それから、アメリカ日本防衛援助義務を明定したということ、それから、いま一つ事前協議制を採用したということ、この三点についていろいろお尋ねをし、その中で、これらの改正点としてあげられている諸点は、何も新しい条約締結によって初めてかちとられるものではないということを指摘いたしたわけでございますが、きょうは、引き続きそのあとの問題について触れて参りたいと思います。  そこで、同様に、この中から改正というものを好意的に考えても、せいぜい実質的には現状維持、逆に改悪になっておる点が多々あるし、特に全然表から伏せておる、政府が黙っている改悪点がたくさんあるということを指摘して参りたいと思うわけであります。  順序といたしまして、外務大臣提案理由の第四、これに触れなくてはならないわけでございますが、第四におっしゃっておられるのは、言うまでもなく、従来日米間に存在した安全保障体制を広範な政治経済上の協力関係の基礎の上に置いた、こういうことでございます。この問題は、昭和三十二年総理アメリカに参りまして、いわゆる岸・アイク共同声明を発表しました際にも、盛んに強調された点であったろうと私思うわけです。事前協議制の採用と相待ちまして、いま一つの柱として取り上げられた問題点ではなかったかと思うわけであります。この二つを柱にして当時日米新時代来たるというような宣伝が盛んになされておったと私は思うわけでありまして、そういう意味からいきますと、当時のあの宣伝と大して違わないのではないかという感じも非常に持ったわけであります。  大体この第二条の評価については二つの説があるようです。一つは本条約が持っております軍事的性格、この軍事的な色彩を薄めるために単なるうたい文句として入れられておるのであって、別に大した意味はなさそうだ、その証拠に、日本側から経済委員会の設置を申し入れてもこれが拒否されておるじゃないか、また、重要な意味を持っておるものならば、本来、こういう安全保障条約とは切り離した別個の取りきめが当然なさるべき性質のものではないか、こういうような理由をもって、単なるうたい文句という評価をしておる向きもあるようであります。それからいま一つ別見方からいけば、決してそうではなさそうだ、現在の日本経済というものが、独占資本がいわゆる過剰投資、設備過剰といったような面から行き詰まりを来たしておる、これを今後アメリカ経済との協力関係の中で大きく軍事的に再編成していくことによって、行き詰まった資本主義経済を立て直そうというような意図を持っておるのであり、貿易、資本自由化等と相待って、深刻な影響を今後日本経済に及ぼしてくるだろう、こういう見方をしておる向きもあるようであります。しかしこれらの点については後日専門的な同僚議員からたっぷりと政府に対して追及を行なう予定になっておりますので、私どもしろうとがここでとやかく言う必要はないと思いますから、この第四番目におあげになった点は、後日同僚議員追及に私はゆだねたいと、このように考えておるわけであります。  そこで、さっそくこの提案理由説明の第五に入りまして、この点についての御質問をいたしてみたいと思います。  第五は、言うまでもなく条約有効期間について明確な定めをしたこと、こういうことであります。はたして十年間の期限をつけたことが改正、改善としてあげられるべき筋合いのものなのか、私どもはそうは思いません。思わない第一の理由は、国際情勢というものをいろいろ分析した場合に、どうも現在の国際情勢にそぐわないという感じを持つのが第一点でございます。私どもとて現在東西の冷戦が終わったというふうには思っておりません。冷戦いまだ終結せず、こういう点では見解は一致するかと思います。しかしながら、冷戦は終わっておらないというけれども、少なくとも激化の方向にはないはずであります。これは明らかに、少なくとも雪解けと表現されておるような状態の方向に進みつつあると思う。もう少し妥協的に百歩譲った見方をするにしても、一番国際情勢見通しの困難な時期に今あると私は思う。どちらの方向にいくにいたしましても、もう少し先に出てみなければ見通しがきわめにくいという、いわば一種の曲がりかどにあると思う。そういう時期にあるときに、世界情勢がどんなに変化しようとも、とにかく十年間というものは中ソを、政府は否定いたしますけれども仮想敵国視してアメリカとしっかと軍事的にも手を結んで、そしてやっていくんだというような考え方が私どもは是なりとはどうしても考えられないわけです。あなた方の立場でものを見きわめ、何らかの条約締結するにいたしましても、もう少し見通しのつく一定の時期まで前進したときにゆっくり考えていただいていいのじゃないか。わざわざ情勢把握の困難な曲がりかどにあって、十年間も一つの考えを固定的に持つということは、これは、私は、決してプラスというふうには考えられない。これが第一であります。  度二は、これもしばしばいわれておるのでございますが、アメリカ極東において、広くアジアといってもようございます、たくさんの相互防衛条約を個別的に、集団的に結んでおります。たとえば米比あるいは米華米韓SEATOANZUSといったようなたくさんの条約締結しておるわけでございますが、これらの条約のいずれを見ましても、十年間というような固定的な期限を設けたものは一つもないわけです。全部一年の予告をもって廃棄することができるという廃棄条項を持っておる無期限条約であります。だから皆さん方立場からいっても、せめてこの程度の、いわゆる他のアジア極東においてアメリカが結んでおります条約並み期限、こういうものでいいのではないか、こういうわれわれの質問に対して、不安定だと盛んにおっしゃいます。しからばこの米比米華米韓SEATOANZUSというものは不安定な条約でございますか。アメリカがその不安定を望んでおるのでございましょうか。それとも他の当事国である、締約国であるフィリピンなり韓国なり台湾なり、そういう国々が不安定に甘んじておるのでございましょうか。私はここのところが、政府の答弁でございますけれども、納得が参りません。何をもって不安定というか、こういった形式がなぜ不安定なのか、このところをまず最初にお伺いいたしてみたいと思います。
  4. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今回の条約改正にあたりまして、われわれといたしましては、現行安保条約に対しまして期限をつけ、廃棄をする条件をつけて参りたいというのは、これは当然われわれが考えることでございます。従いまして、期限の問題については、長期にわたる期限、二十年、三十年というものをつけるか、あるいは短期なものをつけるかということが、期限の上では問題になろうかと思います。われわれとしては十年が適当であるという確信のもとにこれをつけたのでございます。そこで、それでは今石橋委員のお話のように、十年ということについて、政府は安定したことが必要であるということを言っておるが、そういう考えはどこからくるのか、こういうことだと思います。われわれはこの安全保障の体制をとりますときに、今日の国際情勢というものもむろん考えて参らなければならぬことは当然のことでございます。今日の国際情勢について、雪解けを希求する願望を世界の国民が非常に持っておることはむろんでございまして、再び大戦のさなかにほうり込まれるというようなことをだれも考えてはおりません。従って、雪解けというものがあり得ることを望んでおりますけれども、現状においてまだ雪解けがきているということをわれわれは見るわけにいかぬのであります。そして、それは現在行なわれております各種の会議なり、あるいは各国の首脳者の意見等から見ましても、そう判断するのがわれわれは適当だ、しかし、努力をして参ることは当然だと思います。そういう見地に立ちまして、現在われわれはまだ安保体制というものを確立して参っておきますことが、雪解けの促進の上から申しましても、あるいは日本の安全保障の上から申しましても必要だと思います。そこで、それでは十年という期限を置きましたのは——むろん条約というものは長い、短いがございますが、しかしながら、あまり長くても適当でない、と同時に、あまり短くても適当でない。そこで、十年を選んだわけでありますけれども、この種の条約が、やはり両国の上に立って、今のような国際情勢を反映しておりますときには、安定的な形においてある期間取り進められて参りますことが必要でございまして、その上に立って国民が日本の平和と安全を確信しながら、日本自身の建設に邁進し得るのでありまして、また、それによって、過日総理も言われておりますように、戦争抑制力としての働きもいたすわけであります。でありますから、単純に、いつ一方的に一年で破棄されるかというよりも、ある一定の期間の上に立って、これを維持して参りますことが適当なことだというふうにわれわれといたしましてはかたく信じておるのでございます。そういうことからして、われわれはこの十年という期限を定めたのでございます。
  5. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 私がお伺いしたことについて直接お答えがないようでございますが、期限は無期限で、一年の予告をもって廃棄することができるという規定は、アメリカ極東諸国と結んでおる相互防衛援助条約は全部そうなっているわけです。外務大臣がおっしゃるように、そういう規定の仕方は条約そのものを非常に不安定にするのだという考え方ならば、しからば米華条約米比条約米韓条約あるいはSEATOANZUSというようなものは不安定な条約とお考えになるのですか。何をもってそのようにおきめになっているのですか、こう尋ねているわけです。
  6. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今申し上げましたように、われわれとしては日本のみずから守る力も充実して参らなければならぬこと当然でございまして、われわれ自身が独立国家として自分で自分を守るという体制を整備しなければならぬことも当然でございます。また、そういう体制が整備できませんときに、われわれとしては、集団的な安全保障の形において日米両国が緊密に協力していくことも、これはまた必要でございます。そういうような一面の事情がございますし、今申し上げましたような他面国際情勢の変転から見ましても、私どもとしては十年くらいの年月を持ちました条約を作りますことが安定的だと思います。  しからば、他の条約は不安定的であるかどうかということでございますけれども、それにはそれぞれの国の置かれておるいろいろの事情があろうと思います。従って、その条約について一々私どもが批評を申すことは、必ずしも適当だとは思いません。しかし、私自身の考えから申しまして、やはりある一定の期間——少なくも一年の予告でもって、いつでも解消できるというような条約というものは、かなり不安定なものじゃないかと私自身は考えております。
  7. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 この点、先日受田議員かどなたかが、社会党とか民社党とかというのが政権を確保した場合のことをお尋ねしたときに、それはあなた方がそのときに考えればいいじゃないですかというお答えがあったように記憶するわけです。ところが、あなた方がそのときに考えればいいじゃないですかというそのゆとりは、条約上持たしていないじゃないですか。私は、その安定、不安定ということが、そのことを意味しているのじゃないかと思う。たとえば、韓国とか台湾とかフィリピンとかいう国々においては、アメリカに対して一年の予告でこちら側の国々からやめようなどと言うことはおそらくあるまい、こういう安心感があるのじゃないか。ところが日本の場合には、有力な野党があるので、ひょっとしたら政権をとってそして一年の予告で廃棄通告をされる可能性が出てくる。だからこそ不安定とこう言うのじゃないかと思うのですが、そのほかにわれわれの納得するような不安定だという理由がございますか。外務大臣、もう少し親切にわれわれでも国民でもよくわかるように、この不安定という要素を明確に一つ説明していただきたいと思います。
  8. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 有力な野党の方々が政権をとらないなどという断定をすることは失礼かと思いますが、しかし、われわれはそういう意味で今申し上げているわけではございません。今まで申し上げましたような理由から申しましてもおわかりいただけると思いますが、重ねて出し上げますれば、日本の平和と安全というものをわれわれは国民のために守っていかなければならぬ、そうしてこの条約というものが必要であるという観点に立っておるわけでございます。従いまして、必要であるという観点に立ちますならば、やはりその条約というものはある程度安定性を持ったものが必要であり、しかも今の先ほど来申し上げておりますように国際情勢の面から見ましても、ここ一、二年で国際情勢が急激に雪解けになりあるいは世界から戦争の危険が全部なくなるとまで見るのは私どもまた早計ではないかと思います。むろん世界の各国民がそれを希求しておりますことは当然でございます。またわれわれも希求しなければならぬと思います。しかしながら、そういう見方に立つことは早計だと思います。またわれわれ日本といたしましても、戦後のあの廃墟の中から立ち上がりまして、国際社会の中において他国からの攻撃を受けない、安定した安心感のもとに立って経済建設、社会建設その他に精進してきておるのでございます。そうして、その成果が逐次現われてきておるのでありまして、これが充実して参りますれば、日本自身が自分の力において自分の祖国だけは防御するだけの力は養い得る時期があり得ないとは言えません。あり得ると思います。むろん、今日のような科学兵器の非常な発達でありますから、どこの国一国が必ずしも自分自身だけで守れるというわけでございませんから、集団安全保障の体制が、鉄のカーテンの中においてもあるいは自由主義社会国家間においても行なわれておるのであります。しかし少なくもある程度の充実というものを期待していくという限りにおいては適当な年月がかかることも、これまたあたりまえなことだとわれわれは考えております。そういう意味において現状から申しまして私どもは安定した期間が必要である。かりに一方的にこれが一年の予告でいつ廃棄されるかわからないというようなことでは、安定した条約とは私ども申しかねるのではないか、こう思うのでありまして、十年が長いか短いかということは論議がございましょうけれども、私どもとしては、このくらいが今申し上げましたような諸般の理由からいたしまして一番適当であるということを確信いたしているのであります。
  9. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 期限の問題は、条件付賛成という方々が世の中にはおるわけですが、そういう人たちがほとんどあげている問題なのです。その人たちのあげておるのは、この期限をなぜもっと短くしないのか、これが一つです。もう一つは、極東条項を廃棄しろ、これはやめろということなのです。私は、条件付賛成論者のほとんどがこの二つに触れていると思うのです。それほど関心が大きい。賛成してもいいという人でもこだわっている条項なんですから、もう少し明確にしてもらわなくては困ると思います。一体、十年ならなぜいいのか、十年という根拠はどこから出てきているのか、もう少し明確に自信を持って、これを作られた外務大臣としては責任のある答弁を、国民がよくわかるようにもう少し突っ込んで御説明願えませんでしょうか。
  10. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私は、自信を持って、今申し上げたような理由でもって、十年というのが適当だと思うことを申し述べておるのでありまして、かりに、たとえば十五年、二十年という論者でありましても、やはり理由は同じだと思います。また、五年という論者でも私は理由は同じだと思います。ただ、それに対する確信、何といいますか、見方というようなものが若干違うのではないかと思うのでありまして、期限をつけます以上は、ある安定した期限をつけるということが適当なことではないかということでございます。私は、今申し上げたような理由からして、確信を持って十年が適当だ、こう考えております。
  11. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 期限は無期限にしておいて、一年の予告で廃棄できるという条項がついているということは、決して不安定ではないはずです。賛成論者の立場からいけば、これこそ一番実情に合っているのではないですか。情勢にいつでも適応できるのですから、情勢次第でいつでも手が打てるのですから、情勢がどっちへ向こうと、十年間くぎづけというような考え方が正しいという根拠はないと私は思います。いつだったか、NATOが二十年だ、私がさっきから言っているような極東諸国とアメリカとの条約は、無期限だが、一年間の予告で廃棄できるという条項があるから、実質的に一年と見て、その間が十年だということを述べたことがあったように思いますが、これでは、まるで国の運命を決定するのに、足して二で割る式をここへも持ってきたとしか言えないではありませんか。二十年と一年のまん中の十年をとったのでございます、そんなことでは、だれも納得できませんよ。しかし、明確な答弁がないようですから、今度はほかの角度から、またお尋ねしてみたいと思う。  第三番目の、この条約期限の問題について批判をしたいのは、現行条約の持っております本質的な性格、その最たるものは、私は暫定性だと思う。この暫定性が取り除かれたということは、決してプラスの要素にはならぬという考えを持っているわけです。今さら言うまでもなく、現行条約の前文には、防衛のための暫定措置として米軍の駐留を認めるというふうに規定されております。これは三十二年のいわゆる岸・アイク共同声明においても確認をされております。「大統領及び総理大臣は、千九百五十一年の安全保障条約が本質的に暫定的なものとして作成されたものであり、そのままの形で永久に存続することを覚図したものではないという了解を確認した。」こういうふうに確認をされております。この暫定的な性格というものを完全に除去したということも決して私はプラスの要素にはならないという考えを持っておりますが、そういう角度から一つ質問をしてみたいと思います。  そこで、第一にお尋ねしたいのはこれは赤城防衛庁長官にお答え願った方がいいと思いますが、昭和三十三年度から実施されましたいわゆる第一次防衛三カ年計画、陸上自衛隊十八万、海上自衛隊十二万四千トン、航空機二百機、航空自衛隊千三百機という第一次防衛三カ年計画の達成状況を私はお尋ねしてみたいと思います。これは最終年度が本年度でございます。昭和三十五年度でございますから、実際に艦艇、航空機ができ上がるのが三十七年でありましょうとも、実質的な予算措置としては最終年度なんです。だから、予定通りいくかどうか、この目標に対しての達成状況を一つ最初に御答弁願いたいと思います。
  12. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 今御指摘のような計画で三カ年の計画を立てたのでありますが、達成を三十五年度末にいたすというわけには参りません。  その状況を申し上げます。陸上自衛隊につきまして申し上げますと、自衛官は今御指摘のように十八万を目標としておったのでありますが、三十四年度末におきましては十七万でございます。三十五年度末になりますと、本年の予算でもお願いしておりますので、十七万一千五百人、こういうことに相なります。艦艇はこれも今御指摘のように十二万四千トンの目標でありましたが、昭和三十四年度におきましては十万八千九百五十一トン、三十五年度になりますと十一万五千八百四十七トンの見込みでありますから、これも十二万四千トンには達しません。海上自衛隊の航空機につきましては、目標が二百二十二機でありましたが、三十四年度末には二百三機、三十五年度末に二百十七機の予定であります。これも少し目標までいきません。航空自衛隊につきましては、航空機が千三百機の目標でありますが、三十四年度末におきまして千十九機、三十五年度末におきまして千百十五機の予定であります。いずれも三カ年計画が三十五年度末にその通り実現することには参っておりません。
  13. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 第一次防衛三カ年計画の目標にはほとんど達しておらないわけであります。陸上自衛隊でいえば、今長官おっしゃっておるように十八万の目標に対して十七万一千五百人、海上自衛隊でいえば、十二万四千トンの目標に対して約十一万トン、航空機の場合、二百二十二に対して二百十七、航空自衛隊が千三百機の目標に対して約千百機、こういうお話でございます。目標に達しておらないわけでございますけれども、さしあたって日本の防衛に支障を来たさないという確信をお持ちでございますか。
  14. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 それは侵略というものがあるとしても、様相によりますが、さしあたり私どもは日本の防衛に支障を来たしておらぬ、こういうように考えます。
  15. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 さしあたって支障はない、若干目標に達しないけれども、大体予定通りいったと同じ程度の効力はあるという御答弁でございます。そういたしますと、ここでぜひお伺いしておかなくちゃならぬことは、従来政府並びに自民党の皆さんは、この第一次防衛三カ年計画の達成によって米軍撤退の基礎ができるのだということを重ね重ね言明いたしております。国民もこれを信じておったと思う。自由民主党が結党当時幾多の政綱を掲げておりますが、その中の大きな柱の一つに、わが国の国力及び国情に相応する最小限度の自衛体制を整備して、外国駐留軍の撤退に備えていく、こういう大きな目標を政綱として掲げておりました。これは歴代の防衛長官、船田長官、小滝長官、あるいは伊能長官、赤城長官総理大臣の岸総理も御確認になっておりますが、この自民党結党以来の政綱、この政綱には変化はないと考えてようございますか。これは総理からお答え願いたい。
  16. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 今のお話のように、自衛力が漸増していくに従って撤退を期待しておったのであります。でありますので、御承知のように三十二年の岸・アイク会談によりましても、自衛隊の増強情勢とにらみ合わして米軍を撤退させる、こういう共同声明及び約束がありました。その約束に基づいて、たとえば陸上等におきましては、現在補給程度の五千人になっておるということも石橋委員御承知の通りであります。でありますので、私どもはその基礎を作っていくという考え方に変わりはありません。
  17. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 今赤城長官が引用されました昭和三十三年の岸・アイク共同声明に確かに書いてあります。ちょっとここで読んでみます。」合衆国は、日本の防衛力整備計画を歓迎し、」——これが第一次防衛三カ年計画に当たります。「よって、安全保障条約の文言及び精神に従って、明年中に日本国内の合衆国軍隊の兵力を、すべての合衆国陸上戦闘部隊のすみやかな撤退を含み、大幅に削減する。なお、合衆国は、日本の防衛力の増強に伴い、合衆国の兵力を一層削減することを計画している。」こういう共同コミュニケが発表されました。その後この点についていろいろお尋ねをいたしました。代表的な答弁をここで引用させていただきますが、昭和三十三年三月十三日衆議院内閣委員会におきまして、岸総理は次のように申しております。「地上部隊の戦闘部隊はすでに撤退を完了いたしております。補給部隊並びに空軍等につきましては、日本の自衛力の増強とにらみ合せて逐次撤退をされるという何であります。」これはもう今赤城さんも確認されました。さしあたって昭和三十二年度中に陸上戦闘部隊は全部撤退してしまう、そのあとの補給部隊あるいは空軍についても日本の自衛力の増強とにらみ合わせて逐次撤退をする、これが共同コミュニケの精神であり、内閣委員会等においてわれわれが質疑した中で岸総理のお答えになりました基本的な考え方であり、その根源をさかのぼっていけば、自民党結党当時の一大政綱である、こういうふうになるわけでございます。第一次防衛三カ年計画が、すでに予定通り、完全に一〇〇%は達成されなかったけれども、大体支障のない程度には達成され、米軍撤退の基礎ができた。そうしますと、ここで米軍撤退という問題が当然に次の日程として出てこなければならぬと思う。第二次防衛五ヵ年計画もこの点とからみ合って出てきていると思う。この点はいかがなんでございますか。この自民党結党以来の一大基本方針、防衛力を増強して一日も早く米軍には帰ってもらうのだというこの基本方針には変化はないわけでございましょうね。
  18. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 今お読み上げの岸・アイク共同声明の中にもありまするように、一そう削減するという考え方においては変わりありませんが、全部これを撤退までしてしまうかどうかということは、再々外務大臣が御答弁申し上げておりまするように、条約の基本に関係することであります。アメリカが日本の防衛を担当するということ、それに見合って日本の施設及び区域を使用することを許す、こういう見合いの関係もありますので、削減の考え方においては変わりありませんが、全部撤退要求するという考えは今持っておりません。
  19. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 今持っておりませんとおっしゃるけれども、従来、現行安保条約のもとにおいていろいろ防衛問題が論議されたときには、あくまでも現在の米軍駐留というのは暫定措置なんだ、これは条約にも書いてある、「日本国は、本日連合国との平和条約に署名した。日本国は、武装を解除されているので、平和条約の効力発生の時において固有の自衛権を行使する有効な手段をもたない。」あといろいろありますが、だから「日本国は、その防衛のため暫定措置として、日本国に対する武力攻撃を阻止するため日本国内及びその附近にアメリカ合衆国がその軍隊を維持することを希望する。」こう書いてある、だから、われわれは一日も早く自衛力を着々と増強して、米軍には撤退してもらうのだ、こういうことを事あるごとに国会において御答弁になっておるだけでなしに、一般の国民にも、自民党の皆さん方政府皆さん方は強調してきているのですよ。この考え方は変えるというわけですか。変えるなら変えるということで私はまた次の質問をいたしますから、変えるのか変えないのか、この点はやはり総理からお伺いしておいた方がいいと思う。
  20. 岸信介

    ○岸国務大臣 基本方針についてこれを変えるか変えないかという御質問でございますが、われわれは基本方針を変えるつもりはございません。
  21. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 基本方針を変えることはないと言うならば、第一次防衛三カ年計画の達成後、引き続いて第二次防衛計画、その途中になるか達成後になるかはとにかくとして、この第二次防衛計画の途中か達成後において米軍が帰るような状況になるのだ、こういうふうに確認していいわけでございますか。
  22. 岸信介

    ○岸国務大臣 それは、基本方針のわれわれが考えておることはその通りではないと思います。第一次防衛計画ができ上がれば全部引くのだというようなことを私は申し上げておるわけでもなければ、基本方針がそういうわけではございません。われわれの自衛力の増強とにらみ合わせて、なるべく米軍というものをだんだん削減していって、その究極においては撤退してもらうということか基本方針でございます。
  23. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 基本方針は変わらぬと言うけれども、実際に答弁を聞いてみると、変わったような印象を受ける。もう少しはっきりお答え願いたいと思うのですが、従来の政府答弁というものは、第一次防衛三ヵ年計画が達成されたならば、米軍撤退の基礎ができる——第一次防衛計画達成の時期というのは昭和三十五年度、本年度末ですよ。このときには米軍撤退の基礎ができるのだという。基礎ができるのだから、全部撤退とは言わないでしょう。しかし、そのあとに引き続いて今度は防衛五ヵ年計画という第二次計画もあるわけです。第二次計画が達成されてもまだ基礎ができるのですか。一般の国民はそういう受け取り方をしていない。政府与党の皆さん方が言っているのは、防衛力の増強をしていくことによって、一日でも早く米軍が帰る日がくるのだという受け取り方をずっとしている。それは間違いなんだ、われわれが言っていることを国民がよく理解していないのだ、われわれは自衛力を増強して、ある一定の水準に達したならば米軍が帰ると言った覚えはないと今しらをお切りになるつもりでございますか、その点をはっきりしていただきたい。
  24. 岸信介

    ○岸国務大臣 先ほど来防衛庁長官も、私も従来もお答え申し上げておるのでありますが、今お話しのように三ヵ年計画ができれば何か米軍撤退の基礎ができる、基礎ができるということは米軍が全部撤退するのだというように御解釈になっておりますが、私どもそういう意味で申し上げてはおりません。現にわれわれの自衛力の増強の実情から見て、陸上戦闘部隊が撤退をいたしております。また、駐留しておるところの軍隊の数が相当に削減しておることも、先日来お答えを申し上げておる通りであります。それならば、どのところまでいったらこれができるかということは、そのときの情勢がございますから、私ども、この計画がこれだけにできたら、これがこういうふうに減るのだというふうな具体的の数字で御説明申し上げていることは私ないと思います。今私がお答えしていることも同様でございまして、今申し上げるように、われわれが国情と国力に応じて自衛力を増強し、それとにらみ合わして米軍を削減していき、その究極は撤退をしてもらうという、従来の考え方というものの基本を変える意思はございません。
  25. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 先ほどちょっと私引用しました昭和三十三年三月十三日内閣委員会におきます総理の答弁は、もっと明確ですよ。その基礎ができるという問題に私どもこだわっておりましたからお尋ねしたのです。そうしましたら総理は、地上部隊の戦闘部隊はすでに撤退を完了いたしております。」これは過去形です。「補給部隊並びに空軍等につきましては、日本の自衛力の増強とにらみ合せて逐次撤退をされるという何であります。」と、明確にお答えになっておるのです。陸上戦闘部隊というのは昭和三十二年度中にほとんど全部撤退しました。残ったのは補給部隊だけです。海上についてもそうです。実際のアメリカ海軍の戦闘部隊というのは第七艦隊です。日本におりますものは一部海兵隊等がございますけれども、これは補給部隊です。実戦部隊としてあるのは空軍だけです。そういう角度の上に立ってわれわれお尋ねしたら、その補給部隊並びに空軍等につきましても、日本の自衛力の増強とにらみ合わせて逐次撤退をしてもらう、こうおっしゃっているのですよ。そういう自衛力の増強に沿って逐次撤退してもらうのだという従来の政府与党の国民に対するPRと申しますか、お約束といいますか、そういうものに変化があるような、ないようなお答えに、どうしてもとれるわけなんです。
  26. 岸信介

    ○岸国務大臣 今明確に申し上げておるように、その基本について変化はございません。
  27. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 そうしますと、先ほど申しましたように、第一次防衛三カ年計画達成と同時に撤退なんということは不可能かもしれぬが、そのあと第二次防衛五ヵ年計画というものがある。これは昭和四十年度に目標を置いております。この途中か、少なくとも第二次防衛五ヵ年計画達成後くらいに完全撤退ということもあり得るのだ、そういうふうにわれわれとしては努めていくのだ、こういうお考えでございますか。
  28. 岸信介

    ○岸国務大臣 第二次防衛計画は防衛庁において検討中でございまして、まだその内容を具体的にきめてはおりません。そうしてその第二次防衛計画と米軍の一切の撤退ということが、私は今御質問のように結びついているものだとは考えておりません。
  29. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 第二次防衛五ヵ年計画というのはまだ正式に国防会議にかかっておりませんから、正式なものは決定を見ておりませんけれども、すでに案は防衛庁でできております。しかも赤城防衛庁長官は国会において、大体六月ごろこれを確定するつもりだという答弁をなさっております。それはそうでございましょう。来年度の予算の編成との関係があるわけですから、そのころには固めてしまわなくちゃならぬはずです。だから、今さら固まったものがないのだからといって逃げられる筋合いのものじゃございません。なんだったら、赤城さんにここで確認していただいてもいいのですが、第二次防衛五ヵ年計画を六月ごろ、あるいはそれ以降になるかもしらぬが、作ることは間違いない。これはもう再三御答弁になっておるわけですから、長官間違いないわけでしょう。
  30. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 前に作ったものを防衛庁としても少しく変更しなければならぬ問題がありますので、目下検討中でありますが、私は六月ごろにはぜひ国防会議の決定をしてほしい、こういう希望を持っております。
  31. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 その第二次防衛五ヵ年計画というものは、赤城長官が北海道で談話を発表したときに、初めて骨子が国民の前に出てきたわけです。その後国会でいろいろお尋ねしましたらおぼろげながら構想はわかってきた。陸上自衛隊の兵力は、第一次計画と変わらない十八万程度だ。海上自衛隊の艦艇保有量は十五、六万トン、航空自衛隊の飛行機の数は、第一次計画よりもちょっと減って千百機ほどだ。しかし量的にはあまりふえないし、現状維持の面も多いけれども、質的には非常に強化されるのだ、こういうのが骨幹であると思う。その質的に強化される証拠として予算の方で見ると、金は大体本年度の倍近くかかる。三千億近くの予算を昭和四十年度あたりは食うようになるだろうというようなことまで述べておられるわけです。非常に強力な質的に強化された自衛隊を作ろうというのが、大体第二次防衛五ヵ年計画の内容であります。そうしますと第一次計画において、本年度さしあたって千五百億程度の予算でやっております。この第一次防衛三カ年計画の達成と同時に米軍撤退の基礎ができるというものが、今から五、六年先に今の予算の倍も金をかけて自衛隊が強化された暁においても、依然として米軍撤退の基礎ができるのであって、米軍撤退がなされるものではないというのは、私は詭弁に聞こえるわけです。おそらく国民の皆さん方も、どうも今までの政府与党の主張と違ってきたんじゃないかという印象を受けると思う。必ずしも五ヵ年計画が達成されたからといって、米軍が撤退するものじゃないというならば、新条約ができて、そして初めてこれを解消することが可能になる時期の十一年間というものは、絶対に米軍にはおってもらうんだ、こういう考えにいつから変わったのかお尋ねをせざるを得ないのでございますが、いかがでございますか。
  32. 岸信介

    ○岸国務大臣 先ほど来お答え申し上げております通り、われわれは党の方針におきましても、それから具体的な第一次三ヵ年計画を樹立する場合におきましても、その計画ができ上がれば米軍が撤退するのだというふうな考えをもって申し上げておりません。われわれの究極の考え方は、先ほど来申し上げておる通り、われわれは国情、国力に応じて自衛力を漸増し、祖国をみずからの力で守るような体制を漸次強化していく、その強化ができ上がった上においては、米軍には撤退してもらうようにするということが、われわれの方針でございまして、それが三ヵ年計画とどういうふうに関係があるか、あるいは第二次五ヵ年計画とどういうふうに関係があるかという御質問でございますが、そういう計画と直接に関係を持つわけではございません。国際情勢やその他日本の置かれておる各種の情勢から判断して、米軍の駐留を必要とするかどうかということから決定される問題であると思います。
  33. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 自由民主党が結成されましたのは、昭和二十九年と私は思います。その昭和二十九年結党当時に、わが国の国力及び国情に相応する最小限度の自衛体制を整備して外国駐留軍の撤退に備えていく、こういう要綱を採用されたわけであります。それからすでに現在まで六年、依然としてまだ備えていく程度で、米軍が撤退するとは限らぬ。それでは五ヵ年計画が完成する昭和四十年にはどうかといっても、これもまたわからぬ。そうしますと、条約が継続いたします昭和四十五年まで十六年間、国民は撤退に備えていく、備えていくとだまされ続けていくわけですか。少なくとも、わが国の国力及び国情に応じて最小限度の自衛力を整備して、そうして米軍撤退に備えるのだという以上、何年か先には撤退するのだろうと国民が思うのは当然ですよ。十六年間も備えていく、備えていく、だから、もう少し予算を自衛隊にくれ、くれ、これはだますことになるじゃありませんか。十一年間、今後絶対に米軍が撤退することはないのだということは、重大なる公約違反である。そしてまた、国防基本方針の根本的な、質的な変化ですよ。これはそうでないというのなら、お答え願いたい。
  34. 岸信介

    ○岸国務大臣 先ほど来お答え申し上げております通り、私どもの党における目的は、防衛に関する基本的な考え方は、祖国の独立及び安全というものをわれわれの力でもって守っていくという体制を完備するということが、私どもの念願であります。しかしながらそれなら実際日本の国力、国情で短い期間においてそういう自衛力を完備するところのものができるかどうかということについては、他に民生の問題やその他あらゆる国策上の必要なことを防衛の費用のために押えるということはすべきものではないということは言うを待ちません。そこは漸増の方針をとる以外はございません。私どもは、この第一次防衛計画や第二次防衛計画をもって、日本の自力だけで日本の安全が確保できるという確信のあるような案を作ることは、日本の国力、国情がそれを許さないと考えております。しかしながら究極の目標としているところは、われわれの力をもって祖国を守る、そうしてその場合には外国軍隊の駐留を認めない状況を作りたい、これは私どもの基本方針として少しも変わっておるものではございません。
  35. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 条件派の人たちの考え方の中には、有事駐留という思想もあるわけです。日本の力だけで防衛を全うすることができないから、常に外国軍隊を日本に駐留させておかなければならぬという議論は何も成り立たないわけです。今の総理大臣のお答えを聞いておりますと、私は基本的に国防の基本方針に変更があったものと考えます。それはなぜかというと、現行安保条約と新安保条約とその点において重大な差異を持っておるからです。現行安保条約においては、先ほどから申し上げておるように、米軍駐留というのは暫定措置なのだ、とにかく日本が今から一生懸命がんばって自衛力を増強していって、そうして米軍撤退の基礎を作っていく、一日も早く撤退を完成する、そういう目標のもとに現行安保条約ができておりますし、国防の基本方針もできておりますし、自民党の皆さん方が作られたこの要綱の中でも盛られておるのです。ところが新しい安保条約では、最低十一年間に米軍は撤退をすることはない、絶対に駐留をする、こういうふうに大きく変わっておるではありませんか。絶対に駐留をするとあなたはおっしゃっておられるわけでしょう、どうですか。
  36. 岸信介

    ○岸国務大臣 この新しい安保条約において、有事駐留ということの可能性が認められておるかどうかという御質問がありました。これを禁じておるものではないということもお答えを申し上げておるわけであります。しかしながら、現状からいって、相当数の米軍が駐留することは、現在の客観的情勢からいうと、常時駐留を認めておくことの方が必要であるということを申し上げまして、それは無限に私どもが常時駐留を認めなければならぬということを言うておるわけではございません。国防の基本方針というものは、先ほど私が御説明申し上げておる通り、少しも変更されておりません。それから現在の状態において、今度の改正安保条約において、有事駐留ということを禁止しておる規定はございません。しかし、私どもは、現状において有事駐留ではなしに、常時駐留を認めておくことの方が必要である、こういうことを申し上げているだけでございます。
  37. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 有事駐留という思想を否定しているものではないとおっしゃいますが、しからば新安保条約の効力を持っております最低十一年の間に米軍が撤退してしまう、有事駐留体制に切りかえられるという可能性がある、時の政府の政策次第によっては、そういう可能性もあると総理はおっしゃるわけですか。
  38. 岸信介

    ○岸国務大臣 現に、先ほど来御説明申し上げましたように、陸上部隊につきましての戦闘部隊は日本に駐留いたしておりません。しかしながら、有事、かりに何か日本に侵略が起こったというような場合におきまして、この規定によって、また戦闘部隊が入ってくることも考えなければならぬと思います。そういう意味におきまして、私どもは日本の自衛隊の状況、また日本が置かれておる客観的情勢から見まして、有事駐留ということをこの規定が否定している、われわれは基地として米軍に使用を認めるということでありまして、しかし、その考え方は、現在のところにおいては、常時駐留ということを原則に考えておるということはお答え申し上げておる通りであります。しかしながら、日本の置かれておる状況、また、日本の自衛隊力の状況から見まして、この軍隊については常時駐留の必要がないというように認められる場合におきましては、米軍が削減もしましょうし、撤退するということも考えられる、こういうことを私は申し上げておるのであります。
  39. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 総理は何か有事駐留というのを、特にその際に増援される分だけに使っているような感じがいたします。一般的に有事駐留と常時駐留と分けて論議している場合は、武力攻撃も何もないときには、日本の国内に外国軍隊が全然おらない、日本がもし武力攻撃を受けた場合に初めて他国の軍隊が——まあ、日本の場合はアメリカですが、陸海空軍を派遣してきて、日本の施設区域を使って防衛の任に当たる、こういうふうな意味で有事駐留という言葉を使っているわけです。そういう厳格な意味の有事駐留というものが、この条約の中で、政策としてやろうと思えばできますか。そういう思想がありますか。絶対ないと思いますが、どうです。
  40. 岸信介

    ○岸国務大臣 しばしはお答え申し上げておる通り、否定しているところの規定はございません。
  41. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 有事駐留の思想は全然ないということをお認めになるわけですね。私が今厳密な意味で有事駐留という言葉を使いました。そういう政策をこの条約のもとでとろうとしてもとれないということをお認めになるわけですね。
  42. 岸信介

    ○岸国務大臣 それは政策問題であって、条約の上におきましてはそれを禁止するような規定は一つも設けてありません。
  43. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 条約上禁止されているものがないと言ったって、有事駐留の体裁をとって、そういう政策を採用して、この条約が生きるとお思いになっているのですか。やろうたって絶対できないじゃないですか。改定する以外に方法はないじゃありませんか。いかがですか。
  44. 岸信介

    ○岸国務大臣 一体どの条文が、その石橋君の言われる駐留を禁止するという規定になるという御意見でございますか。私どもは、この条約の前提として、しばしばお答えしている通り、私どもは、現状においては常時駐留という考えでございます。しかしながら、それでは有事駐留というような、いわゆる米軍が撤退して、有事の場合にくるというようなことがかりに起こるといえば、条約を改定しなければならぬかという御質問が前にあったと思います。それに対して、それを禁止するような条項はございません。しかしながら、私どもが現在考えているのは、そういう有事駐留ではなくして、常時駐留でいくことが必要である、こういう見解に立っておりますということを申し上げておるのでありまして、どの条項がそういうことに違反しているか、私どもはそうは考えておりません。
  45. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 私が条文を具体的にあげたらまた翻されたら困るから、最初に確かめておるわけですよ。何も私から聞かなければ有事駐留がとれるかとれないかと答えられる問題じゃないじゃないですか。皆さん方も何年間と一生懸命これを研究されておるわけです。私が何もどの条項で——あとであげますよ、あげますけれども、あげなければとれるかとれないか言えないという、そういう内容のものじゃありませんですよ。この新しい安保条約のもとにおいて、先ほどから私が申し上げているような有事駐留という政策を、かりにいずれかの内閣がとらうとしたってとれないじゃないかと言っているのですから、とれるかとれぬか、そのどちらかをお答えになっていただけばいいわけです。それに対して私は反論するだけです。
  46. 岸信介

    ○岸国務大臣 先ほど来申し上げている通り、私はそのために条約改定を必要とするというような条項はない、かように考えております。
  47. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 それではまず第一番目に、第五条の「各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び千続に従って共通の危険に対処するように行動することを宣言する。」と規定しておりますが、日本に駐留軍が全然おらないときに「いずれか一方に対する武力攻撃」といこうのは、一体日本に対する攻撃以外にどこに対する攻撃です小。
  48. 岸信介

    ○岸国務大臣 その場合に、いなければアメリカ軍に対する攻撃というものかあり得ないということでありますし、別に条約に違反しておる問題じやありませんか。
  49. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 それじゃ、五条は何のためにその場合に効力を持つわけですか、要らないじゃないですか。そういう考え方なら、現在においても米軍基地に対する攻撃はこれは日本そのものに対する攻撃、米軍基地に対する攻撃であろうとも、日本の領海、領空を侵すことなくしては行なわれないのだから、だから日本が行使するものは集団自衛権ではなくして個別的自衛権だ、こういう説明をしておられます。しかも、今度駐留軍がおらなくなった場合に、そういう場合もあるというなら、なおさらのことです。何もこの「いずれか一方に対する武力攻撃」なんという規定は要らないじゃないですか。現行安保条約の規定の通り……。(発言する者多し)黙って聞きなさい。
  50. 小澤佐重喜

    小澤委員長 静粛に願います。——静粛に願います。
  51. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 現行安保条約の通り、日本国に対する外部からの攻撃だけで足りるじゃありませんか。わざわざ「いずれか一方に対する武力攻撃」と規定する必要はない。これが一つ。  それから、もう一つは、第六条に関連いたしまして、特に事前協議に関する交換公文等におきましては、在日米軍、在日米軍ということをあなた方はもう口がすっぱくなるほど言っている。在日米軍という観念が全くなくなってしまいます。そうしますと、ここにおいても事前協議なんというものが夢物語りだということをその場合には露呈してくることになる。いかがですか。
  52. 岸信介

    ○岸国務大臣 この規定が有事駐留だけに規定されておるものでないことは——もし、有事駐留だけをねらっておる規定であれば、今御指摘のように不必要な規定をしておるということもありましょう。私が言っているのは、われわれは常時駐留ということを原則に考えておる。しかしながらそれでは有事駐留ということをやるためにはこの条約を変更しなければならぬかといえば変更する必要はない。今五条のおあげになりました場合において、今はわれわれは常時駐留を認めております、またそういう原則に立っておりますから、このいずれか一方に対するなにということはあり得るわけでありますが、しかしながら、米軍がおらなくなった場合において、日本に駐留しておらない場合において、そういう条項がなくなるということはアメリカに対する攻撃というものがあり得なくなるというだけでありまして、ちっとも差しつかえないことでございます。今石橋君の言われるのは、これは有事駐留だけをねらった条約かと言われれば、私どもそういうことはございません。私もそういう意味でお答えしておるわけではありません。有事駐留ということを否定しているという意味ではありません。従って、常時駐留をしているものに対する規定がありましても、有事駐留で、いなければその規定が適用ないというだけでありまして、ちっとも差しつかえないことでございます。     〔発言する者あり〕
  53. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 静かに聞いて下さい。少なくとも、有事駐留もあり得るという思想はこの安保条約の中にはありませんですよ。あるならば、先ほど申し上げているように、現在米軍が日本に駐留しておるときにおいてすら、日本が行使するのはすべて個別的自衛権なんです。しかも、有事駐留という場合があり得るとする、そういう場合においても、このままでいいということじゃなしに、この条文で、米軍基地に対する攻撃を、これすら日本に対する攻撃とみなして日本が個別的自衛権を発動するというならば、有事駐留の場合はなおさら米軍に対する攻撃というものはないわけですから、「いずれか一方に対する武力攻撃」なんという規定は要らないじゃありませんか。日本に対する攻撃と現行の規定通りで用が足りるじゃありませんか。足りませんか。それぢゃ私はこういう聞き方をしましょう。現在の安保条約の通り、「外部からの武力攻撃」があった場合と規定しても何ら実質的には影響ないわけですね。それであなた方はそういう表現をとらなかったけれども、かりに「いずれか一方に対する武力攻撃」というふうなことの規定をしなくたって、日本国に対する外部からの武力攻撃あるいは日本国に対する武力攻撃があったときはというふうに規定しても何ら差しつかえはない、そういうことですね。
  54. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今の有事駐留の場合、有事駐留というのはかりにアメリカの軍隊が日本の基地にいなかったという場合だと思います。そして日本の土地がやられたときにアメリカが助けにくる、こういうことでございましょう。そうしますと、これを読んでいただけばわかりますように、日本国の施政のもとにある領域が武力攻撃を受けますね、アメリカ軍はそこにおりません。おりませんけれども、各締約国というのはアメリカ一つ入っております。そのアメリカは、いずれか一方に対する武力攻撃——自分の国の、アメリカの平和及び安全を危くするものであることを認めて飛んできて助けられるというのがこれなんです。ですから、有事駐留のときの規定も含まれているということです。
  55. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 外務大臣、何か得意になって答えていますが、私が聞いていることに答えておらぬじゃありませんか。日本の施政のもとにある領域において、有事駐留の場合に、アメリカに対する攻撃という観念はどこにありますか。
  56. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 アメリカでなくてもいいのです。いずれか一方ですから、日本に対する攻撃があっても締約国一つアメリカなんですから、そのアメリカは、自国の平和及び安全を脅かすものとして助けにくる。
  57. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 もう少しすなおにお答えなさい。ヤジに助けられて、そういうでたらめを言うものじゃないですよ。私一人に答えているつもりじゃだめですよ。全国民に答えるつもりで、もっと真摯な態度でお答えなさい。     〔発言する者多し〕
  58. 小澤佐重喜

    小澤委員長 静粛に願います。
  59. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 有事駐留という場合には、平時の場合に日本には米軍がおらないのです。わかりますね。そうしますと、日本国の施政のもとにある領域には米軍はおらない。いずれか一方に対する武力攻撃という観念は、日本に対する攻撃ともう一方よその国とに対する攻撃とがなければいかぬじゃないですか。そうしますと、本来有事駐留の場合に、アメリカはおらないんだから、日本に対する攻撃しかないじゃないですか。その場合における米軍に対する攻撃、アメリカに対する攻撃というのは何かと聞いている。
  60. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私の説明でおわかりにならぬようでありますから、条約局長から詳しく説明させます。
  61. 小澤佐重喜

    小澤委員長 総理の答弁ではっきりして下さい。
  62. 岸信介

    ○岸国務大臣 さっきから政府説明申し上げているのは、もちろん、五条の規定は、有事駐留だけを規定しているのではありませんよ。だから、両方規定しておりますから、両方に適用されるような条文がなければならぬわけは当然だろうと思う。ところがわれわれは原則としては常時駐留を認めておりますから、その原則的な場合を規定しておりますが、それならば、有事駐留の場合にはこの規定が動かなくなるおそれがあるのではないか、違反しやせぬかという御議論がございますから、そういうものを排除して、否定しておらない。その場合においては、いずれか一方というのは、アメリカ軍はいないのですから、アメリカ軍に対する攻撃というものはあり得ないので、日本に対する攻撃だけが残るのです。そういうことなんです。しかしながら、常時駐留の場合においては、いずれか一方に対する攻撃というものはあり得るわけですから、そういう場合を含めて両方包括しているわけでありますから、こういう規定をすることは当然である。それが有事駐留の場合に、それじゃ、この規定が動かなくなって、この規定がどうにもならないのじゃないかということはあり得ないということを御説明申し上げているのであります。
  63. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 やっと認めたわけなんです。そうじゃないですか。それじゃ、もう少しすなおに……。     〔発言する者多し〕
  64. 小澤佐重喜

    小澤委員長 静粛に願います——。静粛に願います。
  65. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 日本国の施政のもとにある領域において、「いずれか一方に対する武力攻撃」という規定の仕方ではおかしいのですよ。現在においてすら、米軍が日本におるときにおいてすら、すべての場合が日本に対する攻撃とみなして両国が行動することになっている。有事駐留の場合はもっともっとはっきりと日本に対する攻撃だけが問題にされている。今でも、将来有事駐留というものがかりにとられた場合でも、米軍に対する攻撃という観念は全然ないのに、いずれか一方に対する攻撃という規定の仕方をすることが不自然だ、私はこう言っている。あなた方が説明するように、米軍が日本におるときにおいてすら、米軍に対する攻撃も、これもまた日本に対する攻撃とみなして、日本は個別的自衛権を発動する。将来有事駐留というものがかりにあった場合、こういう場合にはなおさらのこと米軍に対する攻撃というものはない。米軍に対する攻撃、アメリカに対する攻撃というものが一切ないならば、「いずれか一方に対する武力攻撃」なんというごまかしをおやりなさるなというのが私どもの主張なんだ。私の言わんとしていることはそのことなんだ。
  66. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 いずれか一方というのは、石橋委員は基地が攻撃されたときだけをお読みになりますけれども、たとえば日本の基地に米軍がかりにおりましても、そのままのかりに状態としても、信州の山奥で、基地のないところに攻撃があります。それはアメリカ軍に対する影響はございません。日本の領土である、信州の上高地がやられる、松本がやられる、基地がない。そのときにも日本に対する攻撃ですから、アメリカはやはり自国の平和及び安全に対する攻撃として行動することになるわけであります。それがただ日本の基地にいるか、あるいは基地におらないでアメリカの領土の方へ下がっているかだけの違いでございます。
  67. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 今、信州の山の中に攻撃があったという場合、これはあたりまえじゃないか、日本に対する政撃じゃないですか。私がさっきから問題にしているのは、あなた方の説明でいくと、どのような場合にもアメリカに対する攻撃、米軍に対する攻撃というものはあり得ないということなんだ。どんな場合でもアメリカに対する攻撃、米軍に対する攻撃というものは絶対にないのじゃないか。ないのに「いずれか一方に対する武力攻撃」なんという規定をしているのはごまかしであるか、あなたたちの答弁がごまかしであるかということを物語っていると言っている。この点について……。
  68. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私は、ごまかしをいたしておりませんが、法制局長官から、なお詳しく補足的に説明いたさせます。
  69. 林修三

    ○林(修)政府委員 今度の五条の規定の趣旨は、これは石橋委員よく御承知だと思いますが、要するに、日本に対する攻撃、それから日本にある米軍と日本に対する攻撃、この両方が規定してあるわけであります。いずれか一方というわけで、日本のみを攻撃する場合と、日本と米軍を攻撃する場合があるわけでございますが、その米軍に対する攻撃は、日本の領域下にある米軍でございますから、その意味では、同時に日本に対する攻撃になる、従って、国連憲章の五十一条の関係においては、個別的自衛権によってのみ自衛できるのだ、これは前から申し上げているわけであります。そういう個別的自衛権か集団的自衛権かという問題につきましては、従来申し上げている通りでございますが、事実問題としましては、日本の領域下にある米軍が同時に攻撃される事態があり得るわけでございますから、当然にこの第五条はそういうことを予想して規定してあるわけであります。しかし、かりに米軍が日本にいない場合に第五条が働かないかといえば、これは先ほど来外務大臣あるいは総理大臣が言っておられるように、たとえばの話でございますが、大は小を兼ねるわけでございますから、当然にこの規定は働くわけでございます。この規定を変えなければ、有事駐留の場合には第五条は働かないという事態はあり得ない、そういう意味合いにおきまして、先ほど来総理大臣、外務大臣が答弁をしておられる、かように考えております。
  70. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 そうしますと、条約第六条の実施に関する交換公文中の日本国から行なわれる戦闘作戦行動という観念は残りますか。
  71. 林修三

    ○林(修)政府委員 それは、かりに有事駐留になった場合においては、日本におらない現状においてはそういう観念はないわけでございますが、しかし、有事駐留にいたしましても、日本にかりに駐留しているという事態が起これば、当然にこの規定は適用になるわけでございます。
  72. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 私はこの辺でやめますが、少なくとも一般国民は、あなた方のような解釈では納得しないわけです。いずれか一方に対する攻撃というからには、現実に日本に対する攻撃と、もう一つ締約国であるアメリカに対する攻撃というものと、明瞭に二つあるということでなければ、一般国民の頭にはすうっと入ってきませんよ。あなた方は法律の専門家か何か知らぬけれども、そういう言葉の魔術で幾らごまかしたって、国民は納得しないということだけ申し上げて、関連があるそうですから、譲ります。
  73. 小澤佐重喜

    小澤委員長 この際、滝井義高君から関連質疑の申し出があります。これを許します。滝井義高君。
  74. 滝井義高

    滝井委員 条約の期間について関連質疑をしたいと思います。     〔発言する者多し〕
  75. 小澤佐重喜

    小澤委員長 静粛に願います。
  76. 滝井義高

    滝井委員 まず第一に、新条約の十条、この前、私は、そこでは日本区域を問題にしましたが、新条約十条の第一項ですね。「この条約は、日本区域における国際の平和及び安全の維持のため十分な定めをする国際連合の措置が効果を生じたと日本国政府及びアメリカ合衆国政府が認める時まで効力を有する。」こうなっておるわけです。この十条の第一項は、条約の解除条件を定めたものかどうかです。
  77. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 解除条件という意味合いでございますが、この条約は、十分な定めをしている国際連合の措置が効力を生じたと両国政府が認めたということになると、これは効力を喪失するわけでございます。
  78. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、この十条の第一項の条件が満たされますと、期限十年に関係なくこの条約は効力が喪失しますか。
  79. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 そういうことであります。
  80. 滝井義高

    滝井委員 その確認を得たことは、非常に収穫です。それならば、今までの旧安保条約の四条ですね。「この条約は、国際連合又はその他による日本区域における国際の平和と安全の維持のため充分な定をする国際連合の措置又はこれに代る個別的若しくは集団的の安全保障措置が効力を生じたと日本国及びアメリカ合衆国政府が認めた時はいつでも効力を失うものとする。」こうあって、そして新しい条約の十条の一項におけるものとは違ったものがこここにある。これを一体新しい条約ではなぜ除いておるかという点です。
  81. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 その点は、前の第四条でございますが、第四条は、三つの効力を喪失する条件を掲げておるわけでございます。第一点は、国際連合の措置でございます。第二点は、個別的な安全保障措置、第三点は、集団的な安全保障措置としてございますが、第一点の、国際連合の措置というのを第十条にこれを再現させて、国際連合の十分な措置がされたときに効力を失うということを明らかにしたわけでございます。それからその他の、個別的な安全保障措置と申しますのは、自衛力の増強とか、そのほかのことでございますし、これはまた当然のことでございます。それから、その他の安全保障措置ということは特に考える必要はない。私どもは、新安保条約にこの安全保障措置が出ておりますから、この二つを特につけ加える必要はないと考えまして、国際連合の措置が重大でありますから、特に国際連合の措置を掲げたわけであります。
  82. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、新しい条約の三条と五条によって、個別的な自衛権と集団的な自衛権というものが確立された、従って、新条約の十条には、旧条約四条の二つのものを入れなくてもよかった、今の御説明ではこういう解釈ですか。
  83. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 それとは全然無関係でございます。要するに、国際連合以外の措置をもってこれをかえるということは必要を認めません。すなわち、国際連合の措置が十分な定めをしたならば、それにかわってやりたい。それから、現在の日本の安全は、この新条約によってわれわれは確保していかれるし、確保していこうというわけでありますから、ほかの方のことは考える必要はないと考えます。
  84. 滝井義高

    滝井委員 どうも今の説明では納得できません。これはなお石橋委員がやるらしいから、これ以上私はやりませんが、これは非常に重要な点です。  なお、国連の措置ができれば、十年以内でも条約というものはなくなってしまう。ところが、逆に今度は、国連の措置ができなくてそのままいくということになると、半自動的に、十年の期間というものはずるずると延びていく、こういう可能性が十分あるわけですね。なぜならば……(「必要があるからだ」と呼ぶ者あり)必要あればということでなくて、今言ったように、十条は「日本区域における国際の平和及び安全の維持のため」これが大前提になっておるわけですね。従って、日本区域における国際の平和と安全の維持ができない限りにおいては、この条約というものは十年以上に期限がなるという可能性が非常に出てくる、こういうふうに考えて差しつかえありませんか。
  85. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 日本の平和と安全というものを守る上の措置、国連において、何か日本の周辺なり、極東なり、あるいは世界的に軍縮が行なわれる、そういう措置がとられれば、むろん安心してこの条約は解消できるわけであります。しかし、そういう措置がとられなければ、ずるずるというのではございません。十年は必要だということの確信の上に立っておるわけでございます。しかし、十年たちました後には、どちらか一方がもう必要はないんだということになればやめることができる、そういう規定を置いておるわけであります
  86. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、国連の措置ができない限りにおいては、大体今の常識としては、この条約というものは十年以上延びていくという可能性の方が強いとお認めになるわけですね。
  87. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 十年は、国連の措置がとられなければ、当然延びて参るわけです。しかし、十年以上になりますれば、一年の予告期間でこれを廃止することができるわけでありますから、必ずしも国連の措置がとられなくても、そのときの事情によっては廃棄することができるわけでございます。そういうことであります。
  88. 滝井義高

    滝井委員 それは国連の措置ができなければ、日本の安全というものは保障されないのですから、延びるということになることの方が筋ではないですか。
  89. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私は、日本の安全をを守る上におきまして、実際にそういう措置がとられて、ほんとうに日本が平和で安全に生きていけるようにならない限りは、やはり政治家としては考慮すべき問題であろうと考えております。
  90. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、現在の客観的な情勢は、新しい日米安全保障条約締結されたために、国連の措置がますますとりにくくなったという客観的な情勢が出ておるわけです。それは先日の私の質問に対して岸総理は、これは日米中ソの、新しいロカルノ方式ですか、そういうものでもできれば、こういうものは要らぬというようなことを言われました。客観的な情勢は、この条約ができたために、たとえば中国なりソビエトのいろいろな反響から見ても、国連の措置がとられない情勢の方が強くなってきたわけです。この条約は、むしろ国連の措置というものをとらしめることを困難にしておるのに役立って、そして十条第一項の措置をとらしめることを可能にする条件というものを阻害するという役割しか演じていない。こういう点でこの条約は問題がある。この点は、岸総理、一体どうお考えになっておりますか。
  91. 岸信介

    ○岸国務大臣 私どもはそんなことは絶対に考えておりません。むしろ、原則として、この条約全体をごらん下さってもわかるように、われわれは国連憲章を守り、国連の世界平和に対する活動というものを一そう強化していくことに両方が協力する、また、その趣旨を現わして十条一項にそういう規定を置いておるわけでありますから、今の滝井君の御質問というものは、むしろ私どもは逆に考えております。
  92. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 それでは、第五条の「日本国の施政の下にある領域」というものが出て参りましたから、これについて若干お尋ねをしておきたいと思います。  その一つは、しからば、日本の領海の外、いわゆる公海において海上自衛隊等が武力攻撃を受けた場合に、アメリカは防衛義務を負うものであるかどうか。この日本国の施政のもとにないそういう地域で武力攻撃を日本の自衛隊が受ける、そういう場合も想定していいと思いますが、そういう場合にアメリカは防衛の義務があるのか、あるとすれば、その場合は極東条項でいく、こういうことをおっしゃるのか、その辺を一つ……。
  93. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 米国は防衛の義務を負いません。従って、第五条の発動はありません。
  94. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 日本の領域の外において日本の自衛隊が攻撃を受けるというような場合には、アメリカは防衛の義務はないというお答えでございます。  それでは、もう一つ、日本の領海において、従って、施政のもとにはある、この領海において、たとえばアメリカの第七艦隊が武力攻撃を受けた、こういう場合に、日本はアメリカ防衛の義務があるかどうか。領海でございますから、施政のもとではございます。しかし、領海が侵されたということは、これは実害はほとんどないわけです。単なる領海侵犯程度のものです。そういう場合に日本が個別的自衛権を発動するということは、これはまた均衡を失うのではないかという考え方を私は持っているのですが、その点はいかがですか。
  95. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 これは領海の中でありましょうとも、アメリカの第七艦隊に対する武力攻撃がございますれば、これは日本の主権のもとにあるところの艦隊に対する武力攻撃であります。すなわち、同時に日本に対する武力攻撃であって、第五条の発動が行なわれます。
  96. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 その点は私は承服できません。今も申し上げましたように、均衡の原則というものがあるわけです。すなわち、自衛権が発動されるためには、防衛のための必要性、それからその侵害の程度につり合った防衛の手段という均衡性の原則と、私は二つ原則があると思うのです。だから、日本の立場からいえば、確かに施政のもとにある区域が侵されたことにはなるけれども、実害はないのでありまして、単に領海が侵されたということをもって日本が個別的自衛権を発動するということは、これはおかしいと思います。おそらく、個別的自衛権の行使とおっしゃるでしょう。そうしますと、私は、その意味においては均衡はとれない、集団的自衛権ならば、これはわからないこともないと思うのですが、どうも均衡がとれないと思う。  しかし、今さらあなた方はくつがえさないでしょうから、その点はそれで……。  次に、第三番目に、しからば、この沖繩、小笠原、こういう地域が日本国の施政のもとに入ることがあり得るわけです。そうすると、第五条の適用を受けるためには、沖繩、小笠原は、どの程度主権が日本に返ってきたらいいのか、司法、立法、行政の三権とも返っとたきをもって初めて、日本国の施政のもとにある領域とみなすのかどうか、この点の確認をしておきたいと思います。
  97. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 それは、やはり立法、司法、行政の権限が全部包括的に日本に返還されたとき、こういうふうに考えます。
  98. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 そうしますと、その点におきまして、さきに内閣委員会において、林法制局長官と岸総理が、私にいわゆる主権へこみ論というものをやられた、その考え方がどうもおかしくなってくるのじゃないかと思うのです。そこで、端的にお尋ねいたします。沖繩を今度の条約適用地域から除外した理由は一体何かということです。これは総理から明確にお答え願っておいた方がいいと思います。
  99. 岸信介

    ○岸国務大臣 この第五条におけるいわゆる武力攻撃に対して、日本は個別的自衛権を発動してこれを排除するということを考えますと、日本の施設下にある領域ということにはっきりと明定することが、自衛権の本質上適当である、かように考えるわけであります。
  100. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 はっきりしないのですが、総理は覚えておられると思います。第三十回国会、昭和三十三年十月二十三日でございました。私いろいろ沖縄の問題についてお尋ねをしたわけです。というのは、当時、総理法制局長官は、沖繩を共同防衛地域に入れても憲法違反じゃないということをおっしゃっておったのです。その根拠をいろいろ私お尋ねしたときに、いわゆる主権へこみ論というものが出てきたわけです。私はどうも納得できぬといって、出時もがんばっておったわけですが、少なくとも憲法違反ではないんだ、沖繩を条約適用地域に入れてもいいんだ、共同防衛地域に入れてもいいんだとおっしゃっておったのに、今度は第五条から沖繩、小笠原をはずしてしまったというのは、一体どういうわけだろうか、こういうお尋ねをしているわけです。
  101. 林修三

    ○林(修)政府委員 いわゆる施政権へこみ論と申しますか、ちょっとその言葉は、その当時申したかどうか、私もはっきり記憶しておりませんが、要するに、あのとき、いわゆる沖繩についての防衛というものが、日本がみずからの領域を守るという立場になれば、これは憲法違反ではない、こういう趣旨で申し上げたわけでございます。つまり、沖繩を、現在のように平和条約第三条の状況のままで、要するに、米国が施政権を行使している状況のもとにおいて守るということは、憲法上問題がある。しかし、少なくとも、防衛ということが、日本が自国を守るという立場において施政権の一部を返還される、そういう意味ならば、必ずしもこれは憲法違反の問題にはならない、ということは確かに申し上げました。しかし、それとこれとはまた別問題でございまして、要するに、現在においては沖繩の施政権が返還されておらないわけであります。そういう状況のもとにおいて沖繩をいわゆる共同防衛地域とすることは、憲法上から問題がある、あるいは、個別的自衛権の問題からも問題がある、そういうわけで、この沖繩、小笠原を除いた、かような考え方をとられる、かように考えております。
  102. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 それはおかしいですよ。当時の答弁と違っています。何だったら読みましょうか。あなたがお忘れになったというならば……。当時、あなたは、日本は潜在主権を持っているのだ、立法、司法、行政の三権を包括的にアメリカにゆだねている、しかし、日本には潜在主権がある——私は残存主義という言葉をそのとき使ったのです。そういうものは日本にある。そういう日本の施政のもとにない、主権の及ばない、日本国憲法の適用のない、そういう沖繩を日米が共同防衛地域に条約で入れるというのは、明らかに憲法違反じゃないですかというのが、私の質問の要旨だったのです。それに対して、総理とあなたは、憲法違反でないと、そのとき言ったじゃないですか。憲法違反でないものを、なぜ、それじゃ今度は条約用地域から除いたのだろうか、こういう疑問が出てくるのは当然じゃありませんか。少なくとも沖繩に対してわれわれは領有権を今でも主張しております。沖繩の人たちは日本人であることは間違いありません。そういうところが条約適用地域に入っても憲法違反でないというならば、必然入れるべきだという考えに立つのじゃないですか。憲法違反でないのに、なぜ除いたのだろうという疑問を、だれだってひとしく持ちますよ。特に沖繩の人たちは、何だ、おれたちをまま子扱いするのかという気持になりますよ。憲法違反でないというなうば、なぜ入れなかったか。憲法違反のおそれがあるという、今ちらっとお認めになりましたが、それならばわかります。しかし、憲法違反でないという、あのへこみ論が正しいとおっしゃるならば、なぜ除いたかということには、やはり率直に総理から、日本の国民、特に沖繩の人たちに対してお答えになる必要があるのではないでしょうか。
  103. 林修三

    ○林(修)政府委員 今度の条約をどうしてこうしたかという政策問題は、総理からお答えになると思いますが、その前提の、私の、あれは三十三年でございますか、お答えしたことでございますか、一々の言葉は記憶してないと申しましたけれども、趣旨は私ははっきり記憶しております。従いまして、そのとき申し上げましたことと、先ほど申し上げましたこととは、実は違っておらないつもりでございます。つまり、日本は沖繩について潜在主権を持っておる、潜在主権のままで、私は自衛権を直ちに、いわゆる顕在的と申しますか、主張できるとは申しておりません。自衛権もその意味においては潜在的でございます。しかし、その場合に、防衛という問題を施政権の一部としてかりに考える、そういうものが、日本が自国を守るという状況のもとにおいて、つまり、アメリカもそれを承知をして、アメリカの施政下にある沖繩を日本が守るというのではなくて、日本がまさに防衛する任務を持っているところを——その基本は日本の領土でございますが、そういうところを守るという立場になれば、必ずしも憲法違反とは言えない、そういうことを私は申し上げたつもりでございます。つまり、沖繩について米国が施政権を留保しておるままにおいて、そこに日本の自衛権を行使することはやはり問題である、そのときは、そういう根底のもとに私は申し上げておるつもりでございます。一定の条件がついておるはずでございまして、それは速記録全体をお読み下されば、その趣旨は私はあると思います。今申し上げた趣旨と全然変わっておらないつもりでございます。なぜ、しかし、今度の条約で沖繩、小笠原を除いたかという政策問題、これは私のお答えすべき限りではないわけでございますが、やはり施政権が返っておらないという状況が第一の前提になっておるものと考えております。
  104. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 あなたは、主権へこみ論を実質的には引っ込めようとしているのです。当時、私が盛んに質問したのは、沖繩を共同防衛地域に入れる、条約適用地域に入れるというのは憲法違反じゃないか、施政権を持っているというけれども、それは潜在主権しか持たないじゃないか、そういうところに日本の自衛隊が行ってアメリカと一緒に守るということは、憲法違反じゃないかという質問をしたのに対して、あなた方のお答えは、日本とアメリカ条約を結んで、そうして沖縄を日本が守ってもよろしい、こういうことになって自衛隊が行く分にはかまわぬのだ、憲法違反ではないのだ、なぜかといったら、アメリカが今包括的に沖縄において持っている主権、そのうちの主権の一部が日本に返ってきたことになるのだ、主権の一部でも返ってきたのだから、日本が出かけていって防衛したって、憲法違反にはならないというのが、主権へこみ論なんです。こういうことなんですよ。あなたが今おっしゃっておることと違いますよ。特に立法、司法、行政の三権が全部返ってこなければ、この五条の、施政のもとにある領域には入らぬのだということになると、なおさらつじつまが合ってきませんよ。  それでは、もう一回はっきりここでお答え願いましょう。それによって、前の言葉を取り消したのか取り消さないのか、はっきりするわけですから…。日本の憲法の及ばない、日本の主権の及ばない沖繩、日本が持っておるというのは観念的な潜在主権だけ、そういう沖繩を、日本とアメリカの何らかの取りきめによって、日本の自衛隊が行って共同防衛することは、憲法違反なのか、違反でないのか。
  105. 林修三

    ○林(修)政府委員 三十三年のときも、当然私は一定の条件を置いてお答えしておるわけでございまして、これは非常に通俗な言葉で言えば、私どもの考えは、つまり、自分の家を自分で守るということは、これはまさに自衛権の範囲であり、個別的自衛権の発動であって、憲法違反でない、しかし、よそのお座敷を守ることはいけない、そういう観点で考えております。従いまして、沖繩、小笠原の問題でございますが、日本は潜在的な主権を持っておる、従って、自衛権も私は潜在的にはあると思います。しかし、あくまでこれは潜在的でございます。これが顕在的にならなければ、やはりいけない、かような条件をそのときも考えております。かりに日米間で条約を結んで、日本の施政権の一部——と申しましても、何の施政権でもいいというわけではございません。つまり、防衛という問題、あるいは、そういう直接に防衛すること、日本の本来の自己の自衛権をもって守るべき地域であるということをアメリカも認めた、そういう条件が成立すれば、必すしも憲法違反とは言えないだろう、そういう意味を申し上げておるわけでございます。そういうことを言っておりまして、現在の平和条約第三条がある限りは、アメリカは全面的な施政権を持っておるわけであります。この状態が変わらない限りは、日本の主権は潜在的であり、従って、自衛権も潜在的である、従って、そういう状態のままで日本の自衛隊が沖繩を守るということは、やはり憲法上認められない、これは三十三年の答弁と全然変わっておりません。
  106. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 その変わっておりませんというのが、ちょっと私の気にさわるのです。変わっておるなら変わっておると、率直に認めればいいのです。それでは、やむを得ませんから、当時の速記録を読みます。これは参議院の外務委員会調査室でも、日米安全保障条約改廃問題に関する資料抜粋として、あげておるのです。そのとき、ます総理大臣の答弁から、「私は沖繩及び小笠原については、かねてお答えをいたしておるように、日本が潜在的主権を持っておる。そうして施政権は条約によってアメリカにまかされておる、こういう状況が今沖繩、小笠原についての法律的の地位であると思う。しこうして問題は、この防衛に関してアメリカと日本との条約によりまして——もちろんその条約の内容にもよりますけれどもアメリカが日本の行動というものを沖繩、小笠原で認めるということになれば、それだけの範囲内において、アメリカがすでに施政権についての——施政権というものは全体の包括だと思うのです。教育権とかなんとかいう問題でなしに、そういう範囲内において日本に施政権を返してくれる、日本の施政権を認める、こういうことに法律的には解釈すべきものであると思います。」日本がアメリカと沖繩で自衛隊を行動さしてよろしいという何らかの取りきめがあれば、自衛隊はのこのこ行ってもいい。行くことによって、包括的な主権の一部がへこんで日本に返ってきたことになる。全部返ってこなくても、その分だけ返ってきたら、もう日本の主権が沖繩に一部及んでおるのだから、憲法違反ではないのだ、こういうことを言っておるのですよ。これは明らかに今の答弁と食い違いますよ。林さんの本読んでいいのですが、これも長いのですけれども、今総理が言ったことをもう少しあなたが回りくどく述べただけの話です。明らかに当時は、憲法違反でない——その証拠に、盛んに国会で論議されたじゃないですか。沖繩を共同防衛地域に入れることが憲法違反かどうか、あなたたちは、憲法違反でないという立場をとったじゃないですか。憲法違反でないというならば、私は、なぜこの第五条の条約適用地域から除いたかという疑問が出る。これは私が出るだけじゃないですよ、全国民、特に沖繩の人たちが、条約適用地域に入れてもらっても憲法違反でないというなら、何でおれたちだけまま子扱いにしたのだ、こういうことになります。もし憲法違反だということになれば、それはあきらめもつくかもしれませんけれども、あなた方、依然として今のような状態で憲法違反でないんだということであれば、問題があると思いますから、それじゃ今あらためて、今のような状態、すなわち、潜在主権しかない、そういう場合において沖繩を条約適用地域に入れることは憲法違反かどうか、それから今後この「施政の下にある領域」として沖繩、小笠原が入るという場合は、一部とかなんとかいうことじゃなしに、もうすべての立法、司行、行政の三権、これが完全に返還された場合のみをさすのか、もう一度この大切な点を確認しておきたいと思います。
  107. 林修三

    ○林(修)政府委員 今総理の答弁されたところの速記録をお読みになりましたが、その趣旨からも、私ども言ったことは同様趣旨だと思っております。つまり、その条約の内容いかんにもよりますけれども、と言っておられます。つまりその条約が、いわゆる沖繩の施政権はアメリカが完全に持っておる、そういう状態のもとにおいて——いわゆる沖繩をアメリカが完全な施政権を持っておる状況のもとにおいて、そういう状況の沖繩を日本に守ってくれというならば、これはやはり集団的自衛権の問題になって参ります。また、あるいは憲法上の問題になって参ります。従って、それを憲法違反でないとは決して言っているはずはございません。それは全体の速記録をお読みになれば、そういう趣旨でできておると思います。つまりその場合において、たとえばその条約の趣旨によって日本が自己の領域、少なくとも自己が施政権を持っておるところを守るんだ、そういう趣旨でできておれば、いわゆるその施政権へこみ論も——施政権へこみ論として私はそのとき申し上げたつもりであり家して、少なくとも防衛問題についてだけでも日本に返ってきていれば、それはよそのお座敷を守るんではなくて、自分の家を守るんだ、そういう趣旨にとれるから、これは必ずしも憲法違反とは言えない、そういうことを申し上げたはずでございます。そういう趣旨で、総理の御答弁も私はそういう趣旨であったと記憶しております。今度の条約においては、この施政下の領域というのは、先ほど条約局長が答えました通りに、包括的な施政権の返還を前提といたしております。一部の返還だけでは私は足りないと思いますが、包括的な施政権という問題は、一〇〇%かということになれば、あるいは九九%、九八%でもこれは施政下の領域と認定し得る場合は、それはもちろんあると思います。しかし、観念としてはいわゆる包括的施政権が返還される、こういうことだと思います。
  108. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 なるべく法制局長官の速記録は読みたくないと思ったのですけれども、まだそうがんばるなら、長いけれども読みますよ。「ただいまの総理の仰せられたことをちょっと補足して申し上げますが、私どもはこう考えております。沖繩、小笠原については、いわゆる日本は潜在主権を持っている。従ってあそこは日本のやはり領土たることを失わない。沖繩の住民は日本の国民たる権利を失わない、そういうふうに考えております。従いまして日本といたしましては、抽象的に申せばあそこに自衛権を持っているということは、これは現在でも私は言えると思う。しかし実際に何らかの行動をあそこにとるということになれば、これは今の平和条約第三条に基きまして、アメリカは全面的な施政権を持っておりますから、日本に入ってもらっては困るということは、向うは当然言い得る権利を持っております。しかしこれは条約で今後どうなるかわかりませんが、かりにアメリカが、日本があそこにおいて何らかの具体的な行動をとり得ることを認めるということになれば、その範囲において、アメリカの施政権はへっこんだ、こうわれわれは考えるのであります。これがいわゆる自衛権の具体的な行動をその範囲においてとり得るということになると思うのでありまして、抽象的な自衛権は、領土あるいは国民である以上、これを認めることは、私は観念的には今でもある。具体的な行動は、平和条約第三条があるために何もとれない。従ってそれを何らか変更するようなことがあれば、日本の実際の行動し得る範囲はそれだけふえてくる、こう考えるべきじゃないかと思います。」という説明がある。いいですか。潜在主権というものがあるのだから、抽象的に、観念的には今でも自衛権がある。しかし、自衛権を発動して自衛隊が行くということは、これはアメリカが困るというからできない。困らぬ、何らか条約の取りきめで困らぬ、日本の自衛隊もどうぞ沖繩に来て、一緒に守って下さいといえば、自衛隊は出かけていってもいいのだ。なぜかといえば、自衛隊が出かけていくということによって、行動することによって、アメリカが包括的に沖繩において持っておる主権の、施政権の一部がへっこんで、日本に返ってくるから、だから日本の自衛隊が出かけていくことも、これは憲法違反じゃないと、こう言うのですよ。そうしますと、現在アメリカと日本が、沖繩に自衛隊が来てもよろしいと言いさえすれば、条約で取りきめさえすれば、憲法違反にならぬのだという一つの解釈(「取りきめになっていないんだから、そんなこと言うなよ」と呼ぶ者あり)いないのはわかっている。なぜそれじゃ、条約適用地域に入れてくれと言ったのか、言わぬのかということを聞かざるを得ない。それからもう一つは、自衛隊が出かけていくということによって、その一部がへっこんで返ってきた。返ってきたから憲法違反でないというなら、何も立法、行政、司法の三権全部返らなければ、憲法違反になるという根拠もないわけですね。一部でも返ってくればいいということになる。だから先ほど来念を押しておるように、立法、司法、行政の三権が全部返還されなければ、この施政のもとに入らぬということは、どうもおかしくないかという疑問も出てくる。しかし、根本は、私が聞こうとしておるのは、今のような状態で沖繩を守ることは、条約で約束することは、これは憲法違反になるのかならぬのか。ならぬとすれば、アメリカに要求をしたのか。条約適用地域の中に沖繩、小笠原を入れてくれと要求したのか。アメリカはそれを断わったのか。断わったとすれば、どういう根拠で断わったのか。それじゃ一つ、そういうふうに漸進的に質問をいたしましょう。
  109. 林修三

    ○林(修)政府委員 私の……。
  110. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 あなたは、交渉過程を知らないじゃないですか。
  111. 林修三

    ○林(修)政府委員 いやいや、それですから、私の力の答弁のことだけ申し上げます。今のお読みになりましたことと、私の先ほど申しましたことは、全然変わっておりません。同じ趣旨でございます。私の申し上げた趣旨は、要するに、現在日本は潜在主権を持っておる。従って、抽象的、観念的に自衛権がある、これは間違いございません。その通りだと思っております。憲法も潜在的には適用されておると思っております。ただしかし、その上に平和条約の第三条というものがかぶっておりまして、アメリカが全面的な施政権を持っておりますから、日本はそこに主権も行使し得ませんし、何も実はできない、こういう状況だというわけでございます。従いまして、その場合に、アメリカが日本との間に何らかの条約を結んで、日本はある範囲において入ってもよろしいということになった場合、その条約をいかに解釈するかという解釈問題はございます。その条約の解釈問題として、アメリカは施政権は完全にまだ留保するのだ、しかし日本を、たとえば外国的な扱いをして入ってきてもよろしいというのでは、それはちょっと問題になりませんけれども、日本は、まさに日本の領土である、日本領土であるという前提のもとに、日本が施政権の一部を行使するという解釈ができ得るような条約ができた場合、そういう場合には、先ほど申しましたように、いわゆる施政権の一部がへこむという観念が成り立つであろう、従って、憲法違反という問題も必ずしも起こらないであろう、そういうことを申し上げたつもりでございまして、それは先ほど来申し上げた趣旨と全然変わっておりません。  それからあと、そういう解釈は解釈でございまして、あと沖繩問題についてどういうふうに扱うか、どういう方針をとるか、これは私のお答えすべき限りじゃないわけでございますから、総理大臣あるいは外務大臣からお答えを願います。
  112. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 沖繩をこの条約の地域に入れるか入れないかという問題については、当時相当に賛否と申しますか、いろいろの議論があったことは御承知の通りだと思います。私ども、その議論をつぶさに拝聴し、世論の動向もうかがったわけでありますが、私といたしましては、今回の条約の改定におきまして、沖繩を入れない方が適当であろうという考え方のもとに、最初から交渉をいたしたわけでございます。
  113. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 アメリカが共同防衛地域に入れてもいい、一緒にやりましょうと言いさえすれば、憲法違反じゃないと言うのですよ。それはいまだに否定しない、アメリカがいいと言いさえすれば。そうしますと、アメリカにいいと言わせるために、沖繩、小笠原を共同防衛地域に入れてくれという要求はなさったかと言うのです。全然もう最初から放棄したわけですか。林法制局長官が言うように、アメリカ条約で認めさえすれば、憲法違反じゃないというのですから、憲法違反じゃないというならば、当然日本の方から要求するんじゃないか、沖繩の人たちのことも考えて要求するんじゃないか、われわれ、国民感情を重点的に考えた場合に、そう思うのですよ。だから、最初から全然要求しなかったわけですか。
  114. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今回の交渉におきまして、ただいま申し上げましたように、交渉の当初にあたって、当然、国民の間にこれに対してはいろいろの議論がございました。私も、国会等においても、それらに対する議論を十分伺いました。私といたしましては、今回の条約締結にあたりまして、沖繩を入れない方が適当であるということで、初めから交渉をいたしたのでございます。
  115. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 議論はございました。私どもは、沖繩を共同防衛地域に入れることは憲法違反だ、また、実質的にNEATOが結成されることになる、だから、おやめなさいという主張を終始いたして参りました。しかし、それに対して林法制局長官、今でも固執しておられるように、憲法違反じゃない、アメリカ条約でよろしいと認めさえすれば、憲法違反じゃないと言っている。そんなに確信があるならば、憲法違反じゃないならば、私は、当然、日本政府として要求すべきが筋じゃないか。憲法違反というなら、これはできませんよ。しかし、いまだにあなた、林法制局長官は、法律的に憲法違反じゃないとがんばっているんです。それなら、何も遠慮することなしに、あなた方の立場からいえば、当然日本の領域だし、日本の国民だし、こういう人たちを守るのはわれわれの義務である、こう言って、アメリカに要求しなくちゃならぬと思うのです。それはのっけから要求もしなかったというのじゃ、これは沖繩の人たち、非常に怒るのじゃないですか。そこのところが、どうもつじつまが合わないと思う。憲法違反だからやりたくてもやれなかったというなら、これで一貫して筋が通る。しかし、アメリカが認めさえすれば憲法違反でないというのに、全然最初から要求もしないというのじゃ、これは一貫しませんですよ。そういうことで、私は、国民は、特に沖繩の人たちは釈然としないだろうと思うのですが、それでようございますか、総理大臣。
  116. 岸信介

    ○岸国務大臣 この沖繩を、いわゆる防衛地域といいますか、条約地域に入れるか入れないかという問題に関しましては、当時政府としては、十分国民の世論の動向も注視して、二つの意見が対立しているがゆえに、これに対して十分な動向を見きわめて決定をしたいということを、国会においてもしばしばお答え申し上げた通りであります。憲法上の問題としては、先ほど来法制局長官がお答えした通りでありますが、いわゆる前提があるのでありまして、そういう日本が防衛をするという意味におきまして、いわゆる日本の、それだけ主権が伸びていくことを、少なくとも防衛に関して認める。法律論として、いわゆるアメリカの施政権がそれだけへこむということをアメリカが認めるだけの状態でなければ、行動できないということを申し上げております。ただ、第三国として、アメリカの施政下にあるところが攻撃された場合において、日本に義務を認めろ、来てやれというような考え方では、これはいけないわけであります。そういう前提条件があるということをまず頭に置いていただきたい。そうして、アメリカ自身が、しばしば私どもアメリカと交渉して、現在の状況において、アメリカは一切の施政権について日本にこれを返還する意図がまだないということは、一私どもアメリカとの施政権の返還の交渉、話し合いにおきまして、アメリカが強く主張しておるところでありまして、今言ったような意味において、防衛に関する、アメリカの持っておる施政権の防衛に関して、日本の主権の発動を認めるというふうな状態にはアメリカがなっておらないということも頭に置いて、交渉したわけであります。世論の動向におきましても二つの見解があります。沖繩の住民から言うならば、もちろん、祖国日本がここに自衛権を発動するということを願望しております。また、私どもは、それを十分認めていかなければならぬことも、十分考えたわけでございます。同時に、今、反対論の根拠も、相当傾聴すべき根拠がございます。私どもは、憲法論として、先ほど来申すような見解をとっておりますけれども、これに対する反対論もあることは、もちろん私どもも認めております。そういうような各種の事情を考慮いたしまして、今回の安保条約の改定におきましては、われわれとしては、これは施政下にある領域に限るということが適当である、こう考えて、アメリカとの交渉において、われわれがこれを条約に入れることを主張するという交渉の過程をとらなかったわけでございます。
  117. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 政府が珍しくわれわれ野党の主張をいれて、そうして憲法違反のおそれもあるし、もうそんな憲法違反のおそれのあるものはやめよう、NEATO結成のおそれがある、だからやめようという謙虚な態度で臨まれたのなら、これはけっこうなんです。ところが、そうじゃないということになりますと、アメリカが認めさえすれば、自衛隊が行って共同防衛したって憲法違反じゃないんだということになりますと、これは伏線があるという感じを受ける。その伏線というのは、この相互協力及び安全保障条約についての合意された議事録、これです。これで、沖繩に、「武力攻撃が発生した場合には、日本国政府は、同政府が島民の福祉のために執ることのできる措置を合衆国とともに検討する意図を有する。」と書いてあります。今までの答弁を聞いておりますと、これは自衛隊が行ったりはしないのだ、補給のお手伝いをしたり、あるいは赤十字活動をやったり、あるいは沖繩の人たちが日本に引き揚げてくるのを援助したりする行動だと言いますけれども、しかし、施政権へっこみ論というものをあなた方が撤回されない限りにおいては、ここで協議をして、アメリカがオーケーと言いさえすれば、自衛隊が出かけていっても憲法違反じゃないということになるわけですね、やるやらぬは別として。いかがですか。
  118. 林修三

    ○林(修)政府委員 この合意議事録の趣旨は、先日来お答えしている通りでございまして、そういういわゆる自衛隊がそこで武力行動をとるなんということは、全然予定もしておりませんし、予想もしていないわけでございます。また、この合意議事録に書いてございます通りに、沖繩については、施政権の返還問題もこれには全然触れておらないわけでありますから、そういういわゆる施政権の返還という問題が別に起こった場合——その理論的な問題はまた別であります。実際は、この合意議事録は、何らそういうことを予定してあるものではないわけであります。
  119. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 法制局長官は法律家ですから、法律的に答えて下さい。もしかりに、この合意議事録によって、アメリカがオーケー、日本の自衛隊どうぞ沖繩に来て一緒にがんばって下さい、戦って下さいというオーケーを出しさえすれば、この協議の結果、自衛隊が出かけていって、沖繩の防衛のために武力行使をやっても、それは法律的には憲法違反にはならぬ、こういうお考えですか。
  120. 林修三

    ○林(修)政府委員 それは結局、アメリカの考え方あるいは日本のそのときのそれに対する反応の仕方によりますが、アメリカとして——つまりいわゆる共同防衛という観点は、これはいけないということを先ほど来申し上げております。石橋委員がしきりに共同防衛がいい、いいと言っておられますが、私はそういう意味で申しておりません。つまり沖繩について、米国は、沖繩を守ることの——これも施政権の一部だと思いますが、そういうことを日本に返すという意思がはっきりした場合、その場合は、結局防衛任務を持つのは、これは主権を持っている日本以外にはないわけであります。理論的には私はそうだと思います。
  121. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 それでは確認して終わりましょう。結局、沖繩において日本が自衛権を行使することをアメリカはこの協議において認める、こう言いさえすれば、やるやらぬは別として、自衛隊が出かけていくことも、自衛権を行使することも、その範囲においては憲法違反にならぬ、こういうことですね。
  122. 林修三

    ○林(修)政府委員 それは、実はこの合意議事録の範囲外だと思います。そういう問題は、やはりアメリカと日本との条約問題だ、かように考えております。
  123. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 範囲外とか範囲内とかいうことは、何もあなたがきめることじゃありません。きのうから申し上げているように、書いてある文章そのものを忠実に私どもは検討しようじゃありませんか。少なくとも沖繩に武力攻撃が発生した場合には、日本国政府は何らかの措置をとるわけです。「同政府が島民の福祉のために執ることのできる措置を合衆国とともに検討する意図を有する。」というわけです。アメリカがこれを承認しているわけです。そうしますと、実際に武力攻撃が沖繩にあった場合を仮定してこれはできているわけです。そういう場合に、いわゆる完全に包括的な施政権は、全部日本に返しはしないけれども、日本の自衛隊が自衛権を行使してもよろしい、どうぞ沖繩に来て自衛権を行使して下さいと、この協議の結果アメリカがかりに認めたら、それを実行に移すことは憲法違反ですか、違反じゃないですかと聞いている。
  124. 林修三

    ○林(修)政府委員 それは、この合意議事録と直接の関係ではないと私は思いますが、つまり別途協定で、たとえばアメリカは施政権のそういう部分を日本に返すと約束をした、そういう場合においては必ずしも憲法違反ではない、そういう事態は起こります。この合意議事録でどうなるという問題ではございませんで、別途そういう協定が行なわれた場合に、その協定の効力としての問題でございます。
  125. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 総理大臣に確認をしておきたいと思います。今の法制局長官の答弁は非常に重大です。私は、ここにごまかしがある、隠された意図がある、第五条から、表面的には沖繩、小笠原を条約適用地域から除外しているけれども、その伏線というものが、この合意議事録の中にあるという考えを持っている。今の法制局長官の答弁は、この合意議事録にはない。これにはない。しかし、武力攻撃が沖繩に発生したときに——これとは別でもいいです、四条の協議でもいい、どこかで、今法制局長官が言うように、アメリカがどうぞ日本の自衛権を行使して下さいと言いさえすれば、自衛隊が出かけていって、それでも憲法違反じゃないと法制局長官は言っているわけですが、御異議ございませんか。
  126. 岸信介

    ○岸国務大臣 これは今の点は、合意議事録の問題ではないと思います。というのは、合意議事録で、日本の方は「島民の福祉のために執ることのできる措置」云々といって、福祉だけあげております。そうしてアメリカの方は、防衛のために必要な措置をとること、かつ島民の福祉ということを申しておりまして、ここの福祉というのには、防衛に関する措置というものは入っていない、これは合意議事録の福祉というものの異議でありまして、従って、これの話し合いでもってそういうことをきめるということはないわけであります。しかしながら、先ほど来申し上げておるように、アメリカとの間に一つの協定かなにを作って、そうしてアメリカが持っておるところの、いわゆる全面的に持っておる施政権の一部について、いわゆる防衛に関するものを、日本の方の主権の発動を認めるというはっきりした取りきめができるならば、その範囲内において憲法違反でない、こういうことを申し上げます。
  127. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 重大な御答弁がありました。少なくとも四条の協議であろうと、そのほかの協議であろうと、協議をして——沖繩に実際に武力攻撃が行なわれた場合に、日米協議をして、アメリカが日本の個別的自衛権の発動を認めた場合には、日本の自衛隊が出かけて行ってやっても憲法違反でない、こういう確認をなさったわけですが、非常に重要な問題だと思います。
  128. 林修三

    ○林(修)政府委員 私から先ほど申し上げておりまするのは、この安保条約の問題ではございません、別途の問題として申し上げておるわけでございます。
  129. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 あなた方は、安保条約の問題じゃないと言うでしょう。私どもは、四条の協議か、あるいはこの合意議事録か、そういうものに伏線として隠されておる、こう思うだけの話。しかし、それはあなた方、否定してもかまいませんよ。とにかく何らかの形で沖繩に武力攻撃が発生した場合に、日米政府間で取りきめさえすれば、アメリカ承認しさえすれば、日本は、個別的自衛権を発動して、沖縄に行って行動ができるというのですから、これは大へんな問題だと思います。  まあ午前中はこれで終わります。
  130. 小澤佐重喜

    小澤委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時四十五分休憩      ————◇—————     午後二時五分開議
  131. 小澤佐重喜

    小澤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。石橋政嗣君
  132. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 それでは午前中に引き続きまして、なお質問をいたします。第五条の関係でいろいろお尋ねしたわけでございますが、もう一つ、五条関係でぜひ確認をしておきたいと思う問題があるわけであります。  それは、この五条でいう武力攻撃でございます。この武力攻撃というものを、政府は今まで、一国が他国に侵略の意図をもって行なう計画的、組織的武力による攻撃をいうのである、その中には、現行安保条約の第一条でいうところの「一又は二以上の外部の国による教唆又は干渉によって引き起された日本国における大規模の内乱及び騒じょう」これは含まないのだ、こういう答弁をなさっておるように思うわけでございますが、その点、間違いないかどうか、最初に確認をいたしたいと思います。
  133. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 ただいまの点でございますが、大体において、そのように解しております。大体においてと申しますのは、この「一又は二以上の外部の国による教唆又は干渉によって引き起された日本国における大規模の内乱及び騒じょう」この場合も、これがどういう——この実体的内容でございますが、先ほどおあげになりました武力攻撃というものは、国が、直接国の機関を使って他の国に対して行なうということは、必ずしもそれのみに限るわけではない、すなわち、国の機関を使わなくても、武装団体その他を潜入させるということによって行なわれる場合があるわけでございます。従って、この「一又は二以上の外部の国による教唆又は干渉」という場合に、もしそういう点があるとすれば、それは武力攻撃になる。しかし、原則的に考えまして、このような問題は武力攻撃とは考えられないと思います。
  134. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 大体においてなんて今ごろおっしゃるわけですが、条約改定を持ち出されました当初から何度も言っておるように、自主性を確保するんだ、その自主性を確保するためには、この内乱条項というものがあるのではどうも工合が悪い、国内の問題に、理由のいかんを問わず、外国軍隊の介入を仰ぐというようなことは著しく自主性を喪失するものだ、だから、これはどうしても削除しなければいかぬ、内乱条項の削除というのが自主性確保の大きなポイントであったと私は思う。だから、私お伺いしておるのですよ。この点において、ほんとうに自主性を確保したのか、だから、内乱条項は削除したんだというならば、ここのところが新しい条約の中では完全に消えなくてはならない。そこで、私は、ほかの言葉を使うと誤解を招きますから、このまま言っておるわけです。「一又は二以上の外部の国による教唆又は干渉によって引き起された日本国における大規模の内乱及び騒じょう」これを通称内乱条項という。この内乱条項があることが、日本の自主性を著しく喪失させておるから、これを削除してしまって、自主性を確保したいというのが、政府のかねてからの願望である。新しい条約締結する一つのよりどころでもあった。そこで、これは完全に第五条の武力攻撃の中から除かれておるのでございますか、こうお尋ねしておるわけです。大体においてとかなんとか言われると、どうもおかしくなるので、もう一度……。
  135. 林修三

    ○林(修)政府委員 現在の第一条のいわゆる内乱条項は、なくなったことは間違いございません。ただ、今、条約局長の御答弁いたしました趣旨を多少敷衍して申し上げますと、現在の第一条は、アメリカ軍が武力を行使し得る形態を三つ書いてございます。そのうちの極東の平和と安全のための云々、これは除外してありまして、あと、いわゆる内乱条項と外部からの武力攻撃と、この二つがあるわけでございます。これは一応言葉の上からいえばせつ然と区別されておるようでございますが、多少、そこに条約局長が申しましたように、オーバーラップする部面がないではない。つまり、武力攻撃という定義は、先ほど申し上げましたように、一国が他国に対して組織的、計画的に行なう武力による攻撃である、こういう定義をいたしております。これは、今、条約局長が申しましたよりに必ずしも正規軍のみによるものとは限らない。不正規的な武装団体等を潜入させて行なうものも武力攻撃と見得る場合があるわけでございます。一国が他国に対して、明瞭にそういうものを使って武力による攻撃をしかけるということがあり得るわけでございます。現在においては、そういうものは、この観念が必ずしも明確に区別されておりませんから、それは現在の第一条でいえば、外部からの武力攻撃であると同時に、あるいは現象的な面をとらえれば、外国の教唆と申しますか、干渉と申しますか、そういうものによる大規模な内乱というように、形態的にも見得る場合がないではない。そういうふうに、多少現在のこの条文からいえばオーバーラップする部面がある。そのオーバーラップする部面が、今度の新しい条約で申せば武力攻撃一本になっておりますから、少なくとも、武力攻撃という形であれば、第五条の適用になるわけであります。今、条約局長が申しましたように、その形が、かりに不正規軍あるいは正規軍ならざる武装団体、そういうものを使って一国が他国に攻撃をしかけた、そういうものも第五条の武力攻撃の範囲に入る場合がある、入り得る、そういうことを申し上げたわけでございます。内乱条項が削除されたことは間違いないことですが、今言いましたような意味において条約局長がそういう言葉を大体使われた、かように考えます。
  136. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 今の法制局長官の答弁でも十分じゃないと思うのです。内乱条項の削除というのは——内乱条項というのは、このことなんでしょう、まさにこのことなんです。だから、現行安保条約の第一条に書いてあるこの通りの内乱条項は、それじゃ、必ずしも新条約において全面的に削除されたものではない、こういうことなんですか。
  137. 林修三

    ○林(修)政府委員 先ほど申しましたように、いわゆる内乱条項は削除されたわけであります。これは間違いがないわけであります。ただ、申しましたのは、いわゆる武力攻撃ということと、その内乱条項というものを現象的に見ました場合に、多少オーバーラップする部面が現在の条約においてもないことはない。それは武力攻撃とも言い得るし、あるいは現象的に見れば、国内に武装部隊が潜入して、そこで内乱を起こしたような形で起こる場合もないことはない。しかし、それは一国の意思を持って他国に攻撃をしかけたというものであれば、武力攻撃になるわけでございます。今度の条約でいえば、そういうふうに、いわゆる武力攻撃と見得るものでなければ問題になりません。しかし、その武力攻撃と見得る条件としては、先ほど来申しましたように、一国が他国に対して計画的、組織的に武力による攻撃をしかける、これが武力攻撃だ、そういう条件に当たるならば、いわゆる正規軍によらない、たとえば不正規軍的な武装団体、こういうものを使うことも武力攻撃という範疇には入る。それは形からいうと、あるいは内乱というふうに見える場合もあるかもわかりません。しかし、それはあくまでも武力攻撃である、武力攻撃であれば入る。そういう趣旨で申し上げておるわけでありまして、いわゆる内乱条項が削除されたことは間違いがない。ただし、現在においても、そういう部分の一部が、いわゆる外部からの武力攻撃というカテゴリーに入り得るものもあったわけでございます。そういう部面は残る、こういうことを申し上げておるわけであります。
  138. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 長官の答弁を聞いていると、この現行安保条約第一条に規定しておりますものを、広い意味の解釈と狭い意味の解釈と、二つに分けておいて、狭い方だけが削除されておるので、広く解釈したやつがそのまま残されている、こういうふうなことにも聞こえるわけです。しかし、これは直接聞いてもはっきりしませんから、ちょっと角度を変えてお尋ねしてみたいと思います。  アメリカは、日本とのみならず、いろいろな国と相互防衛条約締結しております。再三引用いたします米華米韓米比SEATOANZUSはもちろんのこと、NATO等もあるわけですが、これらの条約のいずれも武力攻撃という言葉を使っておりますね。全部武力攻撃。一つNATOの例をとりましょう。NATOにおいて、この武力攻撃という言葉を使っている。NATOが使っている武力攻撃、アームド・アタックですか、これと、今度の新安保条約によって使われておる武力攻撃、これは同じものですか、違うものですか。アメリカは武力攻撃という言葉を、いろんな条約で勝手に解釈を変えて使っておりますか、それとも、統一的な解釈のもとに使っておりますか。
  139. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 このような条約に出てきます武力攻撃というのは、これはいずれも同じであると考えます。すなわち、個別的または集団的自衛権の発動事由となるところのもの、すなわち、憲章第五十一条にいう武力攻撃というふうに考えます。
  140. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 そうしますと、問題が出てくるわけなんです。なぜかと言いますと、アメリカがいろんな相互防衛条約で使っております武力攻撃というものの中には、現行安保条約第一条にいう、いわゆる内乱条項というものが含まれているわけです。そんなことはないというなら、この現行安保条約ができましたときの、これまた西村条約局長の国会における説明を、そのままここで申し上げざるを得ない。西村条約局長の国会答弁によりますと、こういうふうに言っておる。「この武力攻撃の意義に関しまして、」これはNATOの説明です。もう少し先から読みましょうか。芦田さんから質問があったのに答えているわけです。日にちは、昭和二十六年の十月十八日、本院です。衆議院の平和条約及び日米安全保障条約特別委員会。まず、最初に、吉田総理が答えて、「この条約の由来するところは、大西洋パクトにも先例があるので、これは条約局長から御説明をいたさせます。」これはNATOのことです。北大西洋条約のことを、こういうふうに吉田さんが簡略に言っておるわけでしょう。西村条約局長はそれを受けまして、「芦田委員から御指摘になりました第一条の規定、第三国の教唆または干渉に基く大規模の内乱または擾乱の際に駐屯軍の援助を受けることは、従来の外交史上または国際条約上の先例がないように思うという御意見でございました。この条項が入りましたのは、ノース・アトランティック・パクトの第五条でありますが、その第五条によりますと、一締約国に対する武力攻撃を全締約国に対する武力攻撃とみなしまして、兵力行使を含むその他の適当な措置をとって相助けるという規定になっております。この武力攻撃の意義に関しまして、アチソン国務長官が、この条約締結公表されましたあと、ここにいう武力攻撃の中には、第三国の干渉または教唆に基く大規模の内乱または騒擾を含むものであるという、締結国間の有権的解釈を公表されたのであります。それから出ましてこの第一条の条文となりました。決して先例のないことではございません。」こう言っております。すなわち、NATOでいう武力攻撃というのは、現行の安保条約の内乱条項もそのまま入っているのだ、こういう説明がなされておるわけです。その証拠に、現行安保条約の前文において、別に区別して武力攻撃という言葉を使っておりませんですね。「日本国は、その防衛のための暫定措置として、日本国に対する武力攻撃を阻止するため日本国内及びその附近にアメリカ合衆国がその軍隊を維持することを希望する。」この武力攻撃の場合には、二つ入るわけでしょう。外部からの武力攻撃と、第一条で書いている分、いわゆる内乱条項と、二つともこれは入っているわけです。そう解釈せざるを得ないんじゃないですか。そうなってきますと、NATOの条約で使っている武力攻撃も、SEATOで使っている武力攻撃も、米華米韓米比条約で使っている武力攻撃も、それから新安保条約で使っている武力攻撃も、みんな同じでございます。そのNATOで使っておる武力攻撃の中には、締約国間の有権的な解釈として、第三国の干渉または教唆に基づく大規模の内乱または騒擾を含むんだということを、アチソン国務長官がこの条約締結公表されたあとに言明している。こういうことになりますと、別にこの内乱条項を書いても書かぬでも、本来、武力攻撃という中にこういう概念は含まれているのだということにもなるわけですよ。そうしますと、文章に書いてないから内乱条項は削除されたんだということだけでは、ちょっと問題になります。ほかの国の条約並みということになりますと、問題になります。だから、ほんとうに内乱条項を削除されたんだろうかどうかという疑問を私どもが持つのも、むべなるかなとお思いになりませんですか、いかがですか。
  141. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 ただいま御指摘の点でございますが、現在の安保条約でございますが、いろいろそのような条件——先ほど申し上げました通り、原則としまして、これがいわゆる内乱条項である、そういう意味に解しますれば、これは明らかに削除になった、これは断言申し上げることができると思います。しかし、ただいま御指摘のように、武力攻撃という概念及び内乱条項云々の概念でございますが、武力攻撃というのも、一つの国が自己の機関をもって他方の国に対する武力による行使ということでなく、武装団体、ほかのエージェンシーを使って、あたかも自己の機関でないかのごとき様相を呈してくるという武力攻撃があるわけでありますから、そういう画がある場合には、やはり、その面がこれは武力攻撃として存在する。それからただいま御指摘になりましたように、アチソンの言明であります。その他、このNATOに関する武力攻撃の点でございますが、多少正確でないところがあるのではないかと考えております。アチソンの場合の言明も、やはり純粋な内乱というのはアムド・アタック、武力攻撃ではない、ただレボリューショナリ・アクディビディ、革命的な行動でございますが、これが外部から教唆されたり、それから外部からの武装団体的な援助を受けた、そういうような場合、それは異なった問題である、こういうふうに考えております。従いまして、やはりこの武力攻撃というのも、これは武力攻撃の概念でございますが、そういう面における武力攻撃というものは考えられるわけでございますけれども、今御指摘の点は、そういう面を除いた問題として、純粋な内乱条項、これは完全に削除になっておるわけでございます。そして、もう一つは、その武力攻撃は、そのような意味合いをもっとふくらませて考えるかどうかというようなことは、これは国連憲章第五十一条の武力攻撃である。すなわち、これに対して個別的、集団的な自衛権を行使することが正当化されるところの武力攻撃でございますから、その面からも、勝手にその範囲、概念を云々するわけにいかない。これは五十一条できまった概念でありますし、それに対して自衛権を行使することができるという問題でございますから、それは完全に五十一条できまっておる。それで、その二五十一条の自衛権を発動することを前提としまして武力攻撃というのをこれらの条約で使っておるわけでございますから、その点は、どれも相違はないものと考えております。
  142. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 アチソン国務長官の言明がおかしいとおっしゃるけれども、おかしいなら、西村条約局長説明したのがおかしいということになる。なくなった芦田さんが、大体内政問題に外国の干渉を招くような条項が入るのはおかしいじゃないか、こういう意味質問をされたときに、吉田総理、それから西村条約局長説明したのが、私が今引用した答弁なんです。これを要約していけば、結局、普通は、武力攻撃という言葉の中に、いわゆる内乱条項も外部からの武力攻撃も一切含めて、そうして武力攻撃と使っておるのだ、ところが、日本の現行安保条約に関しては、外部からの武力攻撃と内乱条項と二つに分けているのだ、こういう説明をしておるのですよ。だから、別に、何も日本国アメリカ合衆国との間の安全保障条約だけで初めて出てきたような条項じゃございません。よその国でも、その武力攻撃という中に、内乱条項とそれから外部からの武力攻撃と二つ含めてちゃんと入っておるのです。その証拠に、締約国間の有権的解釈として、アチソン国務長官がこう言っておりますと、こういう説明をしておる。だから、私お伺いしておるのです。内乱条項を削除したと言うけれども、一番はっきりするのは、「外部からの武力攻撃」という言葉を、新安保条約の第五条で使っておればはっきりするのです。「外部からの武力攻撃があったとき」とですね。ところが、「外部からの」というのは、今度は除かれておる。単に「武力攻撃」としておる。そうしますと、この「武力攻撃」の中には、外部からの武力攻撃と内乱条項をそのまま含めておるのじゃないですか。従来の吉田内閣当時の説明、あるいはNATO等の武力攻撃、こういうものについてのアチソンの有権的解釈、そういうものを考えあわせていくと、内勤条項は死んだような顔をして、実はそのまま生きていたのじゃないだろうか。こういうふうな疑いを持たれてもやむを得ないわけです。新しい安保条約でいう武力攻撃だけは、絶対にそういうものは含みませんと言ったって、これは通用しないと思う。最初に、ほかの条約と同じ武力攻撃でございます、アームド・アタックに二つはございませんと確認をしておるわけですから、そういう心配をわれわれがするのは私は当然だと思うのですが、そうじゃないですか。
  143. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 ただいま御指摘の点でございますが、われわれの方といたしましては、武力攻撃と内乱条項とをせつ然と分けておるではないか、ところが、同じ武力攻撃を使っておるNATOを初め外国の諸条約では、武力攻撃の中に内乱条項も含ましめて考えておるじゃないか、そこで、武力攻撃というのが同じだというならば、われわれがここで武力攻撃と考えても、それは含んでおるのではないか、こういう御指摘だと思います。それから第二点としては、「外部から」ということは書いてないから、それで、そういうものを含む可能性があるのじゃないかという御指摘の点だと思いますが……。
  144. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 今度はとっておるからね。前はあったのだが……。
  145. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 「外部から」ということを、国際関係におきましてアームド・アタックと申します場合には、これは当然「外部から」ということを問題にしておるわけでございまして、特に「外部から」というのを入れる入れないということで、その概念または性質が変わるものではないと考えております。  それから、前の点でございますが、諸外国の条約も、武力攻撃のうちに内乱を含ませて考えているということは絶対ございません。ただいま御指摘のアチソンの言明にいたしましても、これは確かに教唆され、かつ、アームド、すなわち、武力攻撃が外から加えられた場合ということを言っております。すなわち、武力攻撃の要素がある。それに、かてて加えて内乱的な要素がある場合には、それはやはり武力攻撃ではないか、それは当然だと思います。しかし、そうでない場合は、やはり内乱は内乱であり、武力攻撃は武力攻撃であり、含ましめて考えるわけにいかないし、もし、それを含ましめて考えるということは、それに対する五十一条の自衛権を発動させるわけにはいかないわけでございますから、当然、これはその意味からも除外しなければならない問題ではないか、こういうふうに考えております。
  146. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 しかし、この五条で言う「武力攻撃」の中には、いわゆる間接侵略も入らぬのだという答弁をなさっているわけでしょう。間接侵略は四条の協議の方だ、それから、一番狭く解釈をした内乱というのは、完全に条約から消えたのだ、こういうのが今までの政府説明ですね。そうすると、いよいよおかしいじゃありませんか。この西村条約局長の答弁ですね、これは明らかにこう言っているのですよ。「この武力攻撃の意義に関しまして、アチソン国務長官が、この条約締結公表されましたあと、ここにいう武力攻撃の中には、第三国の干渉または教唆に基づく大規模の内乱または騒擾を含むものであるという、締結国間の有権的解釈を公表されたのであります。」それじゃ、これは、あなた方の西村先輩が、やはり現行安保条約審議の際に、芦田さんの質問に対して、ちょいとごまかしたということですか、いかがですか。
  147. 林修三

    ○林(修)政府委員 第五条の解釈は、先ほど私が申し上げ、あるいは今も条約局長が申し上げた通りだと思います。それから、いわゆるNATOに関して当時のアチソン米国務長官が国会で言っておることも、今、高橋条約局長が申し上げた趣旨で言っておることは、これははっきりしております。そこで、現行安保条約のときに、当時の西村条約局長がお答えしました速記録はここにもございますが、私も今読んでみましたけれども、これは当時の西村さんの意思をそんたくすれば、いわゆるこういう内乱条項を入れた先例がないではないかという芦田先生からの御質問でございます。これに対して、NATOにおいても、何と申しますか、今高橋条約局長が申しましたような範囲のものは、やはり武力攻撃という観念には入り得る、そういうものは入り得るという観念をとっておるのだ、従って、これはそれを多少広げたことになっておりますけれども、こういうような大規模な内乱についての条項を入れた先例がないわけではない、そういうふうに最後の結論はなっております。先例がないわけではない。必ずしも、これは範囲がNATOと同じだということまで言っておられるのじゃない、私はこの速記録を見ますと、そう解釈いたします。
  148. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 現行安保条約の審議の際の西村条約局長の答弁も肯定し、しかも、あなた方の今の説明も肯定するわけにいかぬのですよ。これはどちらかが間違いなんです。それでは、これはいつまでやったって、あなたたちも譲らぬでしょうから、総理大臣に確認しておきましょう。この第五条でいう武力攻撃、これは現行条約でいうところの外部からの武力攻撃の方だけをいうのであって、いわゆる「一又は二以上の外部の国による教唆又は干渉によって引き起された日本国における大規模の内乱及び騒じょう」と書いてある、通称いわゆる内乱条項というものは含みません、削除されております、ということを確認なさいますか。
  149. 岸信介

    ○岸国務大臣 先ほど林法制局長官がお答えした通りでありまして、いわゆる内乱条項というものは、今度は削除いたしております。
  150. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 現行安保条約説明のときにも、このように適当なことを言っておるのですから、信用していいのかどうかわかりませんけれども、一応現段階においては、そうおっしゃるのですからやむを得ません。私は次の質問に移ります。  次は、新しい安保条約は、現行安保条約の改定という形がとられておらないと私どもは考えております。新しい条約締結したものだ、こういうふうに思うのでございますが、この点は間違いございませんか。
  151. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 われわれは、この条約は旧と申しますか、いわゆる現行安保条約の精神その他を延長させて考えておるわけでございます。従いまして、いわゆるそのままの新条約というふうには考えておりません。ただしかし、これを延長して参ります場合に、改定して参りますれば、やはり新条約の形をとるのが適当だという見地から、新条約締結するということになったわけでございます。
  152. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 現行安保条約を改定という手続をとる場合と、現行安保条約はなくなってしまって、そうして新しい条約ができるということと、これは手続で違うんですよ。私が聞いておるのは、私どもは、改定という手続をとったのではなしに、現行条約は、これは第四条に基づいて効力を失う、そうして新安保条約が新しく誕生する、こういう形になると思いますが、どうですかと聞いておるわけです。
  153. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 ただいま御指摘の点は、実体論と形式論の問題かと思いますが、形式的には、私から申すまでもなく、新しい条約、すなわち、旧条約の第何条をどのように改正するというようなことでございませんで、新しい条約締結し、そうしてそれによって旧条約は効力を喪失した、これが形式的な問題でございます。  それから、実体的な問題は、これは旧条約を発展的に解消と申しますか、旧条約の根本的な基礎に立って、それを合理的に訂正をした、こういうことになります。
  154. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 何か形式的とか、実体的とか言ってごまかしておりますが、あなたは、特に法律家として、そういう国別をされるのは、私はおかしいと思う。条約論をやっているわけですからね。改定の手続として、現行安保条約の第四条に基づいて、現行安保条約は効力を失って、そして新しい条約ができたんでしょうと言えば——私は条約論として、そのままお認めになった方がいいんじゃないですか、形式的とか、実質的とか言わずに。
  155. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 やはりただいま申し上げた通りかと思いますが、形式的には新条約という立場をとったわけでございます。そこで新しい条約としてこの条約を初っぱなから結び、そして前の条約が効力を失う。改定と申します場合は、前の条約の第何条をどういうふうに改定するとか、改定条項だけを双方で約束するということによって、その約束が効力を生じますことによって前の条約が、改正された部分だけが改正になって、生き残るという関係になりますけれども、今度のやつは全然前のはなくなり、新しい条約を結ぶという見地に立っているわけであります。
  156. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 現行安保条約の第四条、これはもう言うまでもなく、「この条約は、国際連合又はその他による日本区域における国際の平和と安全の維持のため充分な定をする国際連合の措置又はこれに代る個別的若しくは集団的の安全保障措置が効力を生じたと日本国及びアメリカ合衆国政府が認めた時はいつでも効力を失うものとする。」とある。そうしますと、現行安保条約が効力を失うためには、二つのことが満たされておらなくちゃならない。一つは、日本区域における平和と安全の維持のために十分な定めを国際連合みずからとったとき、もう一つは、それにかわる個別的もしくは集団的な安全保障の措置が効力を生じたと両国政府が認めたとき、この二つしかないわけですね。だから、どちらかの場合を、今度は新しい条約で実現しなければ、四条による効力を失うという形は出てこないのではないかと私は思うのですよ。現行安保条約の効力を失う場合というのは、この二つしかないわけでしょう。四条を形式的にあなたはとったんだ、四条によって効力を失ったんだとおっしゃるが、形式的にでもいいです、形式的に二つの場合しかない。国連がみずから日本区域における安全と平和の維持のために何か十分な定めをした場合、それにかわる個別的、集団的安全保障措置の効力が発生した場合、この二つの場合しか現行安保条約が効力を失うことはないわけです。それじゃ、一体どちらによって効力を失ったのかと言えば、これはわかり切っているわけです、国連の措置というものはとられていないわけですから。これにかわる個別的もしくは集団的の安全保障措置が効力を生じたと日米両国政府が確認したからこそ、現行安保条約はなくなる、こういうことにならなくてはならないと私どもは理解しているのですが、いかがですか。
  157. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今お話しのように、現行安保条約の解消というものは、国連の措置がとられたとき、あるいは個別的もしくは集団的安全保障がとられたときという以外にも、やはり条約でございますから、両者が合意すればやはり効力を失うことは——やめようじゃないか、全然何もなくてもやめようじゃないかと言えば、それは両者が合意すれば解消できると思います。新安保条約ができまして、新安保条約の第九条の「サン・フランシスコ市で署名された日本国アメリカ合衆国との間の安全保障条約は、この条約の効力発生の時に効力を失う。」ということを、新条約に書いてありますから、それによりましても効力が失われるわけでございます。
  158. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 それは引き継ぎの規定じゃないですか。現行安保条約と新安保条約との間にブランクを設けないために、引き継ぎのために、この九条はあると私どもは理解しております。これが現行安保条約の効力を失った根拠になるとは私どもは思っておりません。途中にブランクを設けないために、九条を置いている、こういうふうに私どもは理解しております。  それから、今藤山さんは非常に微妙なことをおっしゃったわけですが、条約の根拠に何も基づかすに、四条に基づかすに、条約の解消ができるようなことをおっしゃったようにとれたのですが、おそらくそうじゃないでしょう。やはりこの現行安保条約が効力を失うためには、この四条で効力を失うのだといっているわけですから、このどちらかの条件が満たされなければならぬわけでしょう。どうなんですか。
  159. 林修三

    ○林(修)政府委員 現行の安保条約は一応そういうことを規定しております。いわゆるこの条約を解消する要件として、二つのものを書いておるわけでございます。しかし、これは一般の条約論といたしまして、両国が合意すればその合意に基づいて——条約というものはすべて合意に基づくものでございますから、あらかじめ規定してなくとも、合意に基づいて、それを解消し、改定することは、これは当然条約論として別にあるわけでございます。
  160. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 それでは、形式的に四条によるということはどういう意味なんですか。四条によって現行安保条約が効力を失うということはどういう意味ですか。
  161. 林修三

    ○林(修)政府委員 これはもちろん、こういう場合にはこの条約の効力を失わせるということを、あらかじめ両国が合意しておるわけでございます。それは一つの合意でございます。しかし、すべての法律論がそうでございますが、いわゆる後法優先と申しますか、あとでまた別の合意をすれば、その合意が前の合意を変えることはもちろんこれはできるわけでございます。ですから、一般論といたしまして、現行安保条約は、一応この条約を解消する前提としては、こういう要件をお互いにあらかじめ約束しておるわけでございまして、こういう要件がきたときにお互いにやめることにしようやということになっているわけでございますが、今度の条約も、その四条の、いわゆる新しい集団的安全保障措置と見てもちろん差しつかえないわけでございますけれども、そういうことは別といたしまして、一般の条約論として、前の合意をあとの合意で置きかえるということは、これは当然できることでございます。
  162. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 それじゃ結局、第四条の効力を失う場合の二つの条件は、両方とも新安保条約において生きてきておらぬ、こういうことなんですか。新しい安保条約の第十条によれば、現行安保条約の四条の条件のうち、一つが消えてなくなっている。現行安保条約では、条約の効力を失う場合が二つ規定されている。国連がみずから何らかの措置をとる場合と、これにかわる個別的もしくは集団的の安全保障措置が効力を生じた場合と、二つ規定しているのですね。この条件がいずれか満たされれば効力がなくなると現行条約では書いているが、新しい安保条約の十条では、国連が措置をとった場合だけが書いてある。そうしますと、一般的にすなおに考えて、当然現行安保条約第四条の、国連の措置にかわる個別的もしくは集団的安全保障措置が効力を発した、そう考えたればこそ、第十条からのけているのではないか、すなおに読めば、そう考えるのがあたりまえじゃないですが、そうじゃないんですか。
  163. 林修三

    ○林(修)政府委員 今度の新しい日米安全保障条約を、現行条約の四条において予定しているような集団安全保障措置と見て、もちろん差しつかえございません。そう見て悪いということは、どこにもございません。しかし、それだという断定をする必要もまたないわけでございまして、新しい条約を両方が合意すれば、そうして前の条約を変えるということは、両国の合意でできるわけであります。  それから、現在の第四条にございます二つの問題、個別的安全保障措置、集団的安全保障措置云々の言葉を除いた理由でございますが、これは集団的安全保障措置の方は、今度の日米安保条約というものが、ある程度の安定期間を設けた一つの集団的安全保障措置でございますから、これができたので、わざわざ前の条約にあることを入れる必要はなかろうということであります。また、個別的の方は、日本が独力で日本の自衛力を全うできる状態になればということが書いてありますが、これを除きました趣旨は、現行の条約はあくまで暫定的でありましたけれども、今度はある程度安定的であると同時に、一方に期限も置いておりますから、そういう意味で、そういう期間内に個別的安全保障措置ができるとは、日本の国情からいっても普通はなかなか予想できない、そういうことから除かれた、かように考えます。
  164. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 少しすつわかってきましたが、新しい安保条約によって、国際連合の措置にかわる集団的安全保障措置がとられたということは、認めてもいい、それから個別的安全保障措置がとられたというのはちょっと認められぬ、これはいつまでたってもそういう認められる時期はないから、ほとんど不可能だから、そういう意味で最初から除いておいた、こういう意味ですか。
  165. 林修三

    ○林(修)政府委員 あとの方は、私の申しましたのは、違うわけでございまして、要するに、この新しい条約におきましては、一応第二項で十年という期間を置いております。十年以後は一年間の予告ということで、一方的に廃棄できることになっております。従って、期限を一応十年と考えてもいいわけであります。そういう期限内には、日本の国力、国情に応じて有効な自衛力の整備ということは、おそらく不可能ではないかという前提からできておる、かように考えております。
  166. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 この条約が効力を有する十一年間に、日本が独力で安全保障措置を講することはほとんど不可能だ、だから、いっそそういう不可能なものは書くまいというので、新しい条約からは除いたんだ、こういうお話ですね。そうすると、先ほどの、いわゆる自衛力増強と駐留軍の撤退という問題にもちょっと関連してくると思うのですが、やはり十一年間独力で絶対にどうにもならないという考え方が、基本的にあるわけですか。これは防衛庁長官に伺います。いわゆる専門的な立場で、絶対に駐留軍が国内におってもらわなくては、日本だけではどうにもならぬからという気持であなたもおられますか。十一年間米軍が日本におってもらわないことには、われわれにはどうにもならない、こういう気持でおられるわけですか。
  167. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 共同防衛の関係からいって、米軍の協力を求めるということは、前提の一つであります。しからば、日本国内にいてもらわなければならないのか、こういうことでありますが、いてもらった方がよりいいと思います。
  168. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 どちらかというよりも、あなたの決意を聞いたのです。防衛庁長官として、しかも、第二次防衛五ヵ年計画を立案する当直の防衛庁の責任者として、防衛をあずかる一応の元締めとして、今、十一年間は絶対に日本だけではどうにもならない、だから、どちらかといえば米軍にいてもらった方がいいと言わんばかりの答弁があったから、法律家があんなことを言っておりますが、担当責任者としてのあなたの気持はどうですか、こう聞いたのです。
  169. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 日本の防衛力の増強からいいますならば、協力を求めなくてはならぬ、こういうことは前から申し上げた通りであります。しからば、いてもらった方がいいのか、あるいはいなくてもいいのか、こういうことでありますが、米軍の協力の仕方によりますけれども、私は、現在程度の駐留は、日本の防衛力の関係からいいましても適当だ、こう思います。
  170. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 じゃ、もう少し端的にお尋ねします。向こう十一年間、今から防衛力の増強をあなた方はやられようとしているわけです。しかし、幾らやっても、向こう十一年間はアメリカの援助がなくちゃいかぬという。しかも、その援助も、日本の国内に必ずおってもらわなければ、十一年間努力してみてもだめか、それとも十一年間のうちには、いざというときだけ来てもらえばいい、そこまでいく自信があるか、そういう角度から一つお答え願いたいと思います。
  171. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 これは、防衛力の増強問題と、こちらにおるかおらないかという問題と、一緒にして考えるのは適当でないと思います。私は、先ほどから申し上げておりますように、日本の防衛力も増強する、しかし、アメリカの協力も待たなければならないというのが、これは十一年の経過においても考えられることだと思います。そこで、日本内地にいてもらった方がいいのかどうか、これは一つ見方であります。認定であります。考え方であります。考え方とすれば、現在程度のものは駐留してもらった方がよろしい、こういう見方をしているわけであります。
  172. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 防衛庁長官、えらい弱気でございますから、それ以上お尋ねしません。ことさらに、この個別的安全保障措置の方にこだわっているのは、私は、新安保条約の三条と結びつけられる、これをおそれて、そういう意味でこれはなくしたのだ、こう説明しているのではないかととっているわけです。しかし、それじゃそれは一応おいて、国連の措置にかわる集団的安全保障措置が効力を生じたと認めたわけでございますが、新安保条約の何条がそれを意味しているわけですか。何条が入ることによって、国連の措置にかわる集団安全保障措置がここでとられたと、日米両国政府が確認されたわけですか。
  173. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 これは第五条でございます。
  174. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 そうすると、第五条が入ったことによって、集団的安全保障指置がとられた、こういうことをおっしゃっているわけでございますが、完全なる集団安全保障措置、あなた方は国連憲章五十一条からこれを説明されているのではないかと思うのですが、現行安保条約の第四条でいう、国連の措置にかわる集団安全保障措置というものは、一体どういうものなんですか。
  175. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 集団的安全保障措置にはいろいろあろうと思います。日本とアメリカとの集団安全保障をとるのも、その一つでございますし、あるいは社会党の方が言われるような新ロカルノ式のもの、おそらくそれもありましょう。それはいろいろあると思います。
  176. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 それじゃ、新しい安保条約の第五条でとられている集団安全保障措置というのは、どういう形のものなんですか。私どもには、正直にいってちょっとわからないのです。その説明を求めているわけです。
  177. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今私は、旧条約の方の問題でお話したわけでございますけれども、新条約の第五条の集団安全保障の点につきましては、条約局長から御説明いたします。
  178. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 第五条に書いてございますように、各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が起きました場合に、この共通の危険に対処して行動することを宣言する、すなわち、日本に対する武力攻撃で、アメリカが日本を援助するということはまさしくこの第五条は、現行の第四条の「集団的の安全保障措置」これに該当すると考えます。この第四条の「集団的の安全保障措置」と申しますのは、コレクティブ・セキュリティ・ディスポジションズでございます。非常に広い概念だと考えております。
  179. 小澤佐重喜

    小澤委員長 この際、戸叶里子君より関連質問の申し出があります。これを許します。戸叶重子君。
  180. 戸叶里子

    戸叶委員 今の石橋委員質問に関連して伺いたいのですけれども、この集団的安全保障というのは、たとえばSEATO、それからNATO、米韓米比、そういうふうな条約に見られるような集団的自衛権を行使した場合に、集団的安全保障ということが言えるわけでございますね。
  181. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 もちろん、そういう場合もこの集団的安全保障措置でございますが、必ずしもそれだけではございません。先ほど申し上げましたように、コレクティブ・セキュリティ・ディスポジションズでございます。すなわち、二国は三国、多数国間でともに安全の措置をとるというものでありますれば、常に集団自衛権の行使のみを前提としたことに限られるわけではないと考えております。
  182. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、地域的取りきめでアラブ連盟というものがありますね。あれは集団安全保障とは言えないわけですね。
  183. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 ちょっと今正確な条文の持ち合わせがございませんが、それも一つの集団的な安全保障措置であろうと考えております。
  184. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、今の政府の答弁を伺っておりますと、国連憲章の五十一条を援用しなくても、集団的安全保障ということが言えるわけですか。
  185. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 それは言えると考えます。すなわち、集団的安全保障措置というのは、非常なはっきりした固定概念ではございませんから、やはり集団的に相寄って何とか安全保障の措置をとるというのであれば、これは集団的安全保障措置でございます。
  186. 戸叶里子

    戸叶委員 それでは伺いますけれども、平和条約の五条のC項にありますところの「日本国が集団的安全保障取極を自発的に締結することができることを承認する」ということと、現行安全保障条約の前文にあるところの「集団的安全保障取極を締結する権利を有することを承認し、」というふうな言葉の中に出てくる「集団的安全保障取極」というのはどういうことを想定して、この安全保障条約なり平和条約をお結びになったのでしょうか。
  187. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 やはりこれも、現在の安保条約なんかは、その意味合いの一つの集団的な安全五保障措置でございます。従いまして、もちろん、ここには憲章の五十一条を援用しておりますけれども、必ずしもそれのみに限定されるものではないと私は考えております。
  188. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、現在の安保条約は集団的安全保障措置である、こう解釈してよろしいわけですか。
  189. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 御説の通りでございます。一つの集団的な安全保障措置でございます。ただ、集団的な自衛権を直ちに発動することを双方で約束したという意味条約ではございません。
  190. 戸叶里子

    戸叶委員 そういう解釈というのは、少しおかしいと思うのです。だれが考えても、集団的安全保障というのは、集団的自衛権を行使した場合にいうのであって、そうでない場合に、集団的安全保障があるなんという解釈は、今の政府にしかない解釈だと私は思うのです。そこが少しおかしいと思うのです。  そこで、先ほどの問題にちょっと関連したいと思うのですけれども、先ほど石橋委員の言われました質問、すなわち、現行の安保条約において、そのままで有事駐留もあり得るというような答弁でございましたけれども、これは政府が、五条の今のような解釈にとらわれているから、無理な答弁をするのだ、こういうふうに私は考えるわけでございます。なぜならば、この安保条約で有事駐留ということのできる条は、どこからできるかと言えば、六条からは私は出てくると思う。なぜならば、現行の安保条約は、日本にアメリカの軍隊が駐留することを同意する、しかし、今度の安保条約では、六条において日本の基地を使用するということを許しているわけで、これは有事とも、それからまた、常時ともきめていない。だからこれは有事駐留ということもあり得るかもしれない。けれども、五条の場合には、先ほども議論されましたように、遠くの方から、たとえばこの間受田さんが例を引かれましたけれども、グアム島あたりから日本本に武力攻撃があったときに来る、そういうふうな場合であるならば、一方のいずれかの国に対する武力攻撃としないで、日本に対する武力攻撃とすればいいと思うのです。ところが、そういうふうな使い方をして、そしてなお、それがこの条約と反するものではないというような解釈は、門違いではないかと思うのですが、そういう解釈をそのまま速記に残されておくことは、私ども心外の至りでございますから、はっきりさせておいていただきたいと思います。
  191. 林修三

    ○林(修)政府委員 前段のいわゆる集団的安全保障措置と集団的自衛権、いわゆるコレクティブ・セキュリティとコレクティブ・セルフディフェンス、これは全然違う観念でございます。集団的安全保障措置というのは、先ほど条約局長が申しましたように、広い、ばく然とした観念で、いろいろなものが入る、現在の安保条約もその体系である、これは私、そう言えると思います。  それからもう一つ、新しい条約が、いわゆる有事駐留のもとにおいても何ら差しつかえない、これは私はその通りだと思います。すなわち、先ほど総理大臣がお答えになりましたことは、要するに、新安保条約において、いわゆる米軍の有事駐留を排除する規定はどこにもない、そういう趣旨を言っておられるわけであります。この条約が、常時駐留ということを一つの大きな、何と申しますか、常時駐留ということを考えてできていることは、これは間違いございません。常時駐留ということを考えてできておることは間違いございませんけれども、従って、第五条もああいう形をとっておるわけでございますが、しかし、第五条の形で、ああいう形であるからこれは有事駐留はできないのだということは、これは出てこないわけでございまして、先ほど私が申しましたように、いわゆる大は小を兼ねると申しますか、要するに、日本に米軍がいなくても日本が攻撃を受けた場合に、アメリカは当然に日本を援助する義務は、第五条においてかぶっておるわけでございます。従いまして、これは常時駐留を一応の前提と申しますか、建前としていることは間違いございませんが、かりに米軍がいなくても第五条は働くわけでございまして、そのまま日本にとっては働くわけでございまして、何らこれは、第五条を変えなければ、有事駐留には変えられないというものではない、つまり第五条の規定は有事駐留を排除するものではない、そういう趣旨は、これは間違いないところでございます。
  192. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、五条の根本的な考え方というものは、私は変わってくると思うのです。なぜならば、きのう石橋委員が岸首相に対しまして、今度の条約で日本を守る義務が生じたということをおっしゃるけれども、どこにも書いてないじゃないかということを御質問になりました。そうしましたところが、それに対して、日本を守る義務ということはないけれども、一方の締約国に対する武力攻撃が起きたときには、その他の国に対する平和と安全を脅かすものとみなして、共同の措置をとるということによって日本を守るという義務が出てくるのだ、こうなってきますと、今のを裏返しますと、日本を守るという義務が出てこないということになると思うのです。いかがでございましょうか。
  193. 林修三

    ○林(修)政府委員 これは第五条をお読みになれば、そういう御解釈は出てこないわけでございまして、第五条は、要するに、これをかりに日本の場合に当てはめて見れば、日本が武力攻撃を受けた場合には、アメリカは、これを自国に対する共通の危険と認めて行動をとることを宣言するといっております。これがいわゆる防衛義務をかけたという趣旨でございますが、つまり、日本が攻撃を受ければアメリカは当然に日本を守るということは、この第五条から出てくるわけであります。その場合に、米軍が日本にいるかいないかということは、第五条は必ずしも問うところではないわけであります。米軍がいなくても、当然米国が日本を防衛する義務はこの第五条によってかぶっている。従いまして、かりに有事駐留になりましても第五条は当然に働く、いた場合と同じように、日本にとっては働く、そういうことでございます。
  194. 戸叶里子

    戸叶委員 今のようなこじつけの議論をしておりますと、あとになってから、私は必ず問題が起きてくると思うのです。しかし、これはそれ以上追及しません。  それでは、もう一つ高橋条約局長にお伺いしたいのですが、現行の安保条約締結されますときに、日本の平和と安全を守るということは、すなわち、太平洋地域及びアメリカの平和と安全を守ることであるから、日本が武力攻撃を受けたときにはアメリカがこれを防衛して、日本はこれに対して可能な協力をする、すなわち、これは集団自衛の関係に立つんだということを言って交渉されたはずでございます。ところが、まあそれがいれられなかったので、現行安保条約の前文の中に書かれましたことは、すなわち、日本国はその防衛のために、暫定措置としてアメリカに駐留を許すんだというようなことを書いているわけでございますが、この暫定措置というようなことを書いたのは、すなわち、こういうふうな欠陥があるから、日本防衛の義務を取りつけようとしたけれども取りつけられないから、暫定措置としてこの条約を結ぶんだというようないきさつがあると思うのです。そういうことを考えますと、これを裏を返して考えますと、最初日本が主張していたように、日本を防衛してもらうときに日本が可能な措置をするという、その可能な措置ということが今回はっきり五条に言われたから、五条というものが出てきたのであって、その当時においては、集団的自衛の観念において結んでおきながら、今日これを集団的自衛でないというようなことをおっしゃるのは、私は少し筋が通らないと思うのです。当時、たしか高橋条約局長条約の課長をしていらして、そういうふうな交渉をされたと思うのですけれども、いかがでございましょうか。
  195. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 当時の問題でございますけれども、当時は、やはり何といいましても、日本国に自衛力と申しますか、そういう力がないということを考えまして、このような条約になったということでございます。ただ、ただいまの御指摘の点は、私は正確にはそのようなことではなかった、すなわち、むしろ自衛力がないということが最も基本の問題になったのではなかろうか、こういうふうに考えます。
  196. 戸叶里子

    戸叶委員 条約局長、当時、日本に対する武力攻撃というものは太平洋の安全及び平和を脅かすものである、すなわち、アメリカの平和及び安全を脅かすものである、こういう考えの上に立って交渉なさいましたでしょうね。
  197. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 当時の交渉の経過で私が承知します範囲では、実は、私といたしましては、その点はっきり記憶はございません。ただしかし、そういうことは確かに考えられることであろうかと思います。
  198. 戸叶里子

    戸叶委員 条約局長がそれをごまかされるのは、少しずるいと思うのです。確かに、そういうふうな集団的自衛権がありという考えで交渉したけれども、日本の自衛力の体制はまだそこまでいっていないのだということで、けられているはずなんです。ところが、今日ここにはっきり、この五条で言えるようになったのは、ある程度日本の自衛力というものが増してきたから、だからそう言われるのであって、当時においては、集団的自衛権があるのだということで押していながら、今日ここに集団的自衛権がないのだというような言い方をされるのは、私はまことにおかしいのじゃないかと思うのです。ですから、高橋条約局長が、ときどきこの委員会において答弁される場合に、この日米安全保障条約は形の変わった条約でございます、こういうふうに言っていられる。この形の変わったというのは、すなわち、日本には、ほかの米韓米比、米台のように、個別的自衛権、集団的自衛権、この平和条約の五条の(C)項、あるいは安保条約の前文、あるいは日ソ共同宣言などで認められているように、集団的、個別的な自衛権を持っているというその権利はあるのだけれども、私ども、憲法の九条でもって制約されているのだから、日本の施政下しか使えないのだ、こういうふうに答弁されるのならまだわかるのですけれども、全然日本には集団的自衛権を使わないのだというような解釈をされるので、私はわからなくなってくるわけなんです。そこで、私は今そういうことを聞いたわけなんですけれども、日本では、制限をされているけれども、集団自衛権の義務があるというふうにお認めになりませんか。
  199. 林修三

    ○林(修)政府委員 集団的自衛権の義務とおっしゃる趣旨がちょっと私にわかりませんが、この第五条は、前々から申し上げております通りに、日本の個別的自衛権をもって説明できることであるということを申し上げておるわけでございます。国際法的な集団的自衛権というものが日本にないということは、これはないわけでございまして、これは平和条約、あるいは日ソ共同宣言、あるいは今度の条約でも書いております通りに、これを否定してはおりません。つまり集団的自衛権の行使の方法として、いわゆる他国を、海外派兵などの形で防衛する、そういうことは日本の憲法の許すところでない、かように言っているわけでございます。同時に、この新しい条約の第五条は、まさに個別的自衛権をもって国連憲章五十一条との関係説明できることでございますと、かように言っているわけでございます。
  200. 戸叶里子

    戸叶委員 私は関連ですからもうやめますけれども、この条約の五条は、個別的自衛権というのは、日本の立場でこれは自衛権を使うべきだと言えば、個別的自衛権を行使できるわけです。けれども、この集団的自衛権というのは、日本にいるアメリカの軍隊が攻撃されたときには、これは日本に攻撃されたのでなくても、日本にアメリカの軍隊がいるのだから、これをアメリカに協力をして防ぐ、これが集団的自衛権で、こういうふうな——これは同じことですから言いませんけれども、集団的自衛権であって、日本の場合には、個別的自衛権と集団的自衛権と、両方を行使し得る二重の性格があるというふうに解釈するならばわかるのですけれども、そうじゃないところに私は問題があると思うのです。あとから石橋委員追及されると思いますけれども、私どもはこの条約を審議するにあたって、政府が個別的自衛権だけだというようなことで答弁をされておりますのは、あとになりましてから、この速記を読んだ人に、おそらく私は笑われると思うのです。そういうことをおそれまして、一応私は発言をした次第でございます。
  201. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 先ほどの質疑応答の中で、現行安保条約でも国連の措置にかわる集団安全保障措置がとられているという答弁があったように思うのですが、間違いございませんか。
  202. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 ただいま申し上げましたように、一つ一つのやはり集団的な安全保障措置でございます。
  203. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 そうしますと、何のためにこれを四条に入れたわけですか。集団安全保障措置がとられた場合には効力を失うということは、現行安保条約そのものが、集団安全保障措置がとられているなら要らぬじゃないか、こんなものは。
  204. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 ここに四条に、もっとよりよい集団的な安全保障措置があればそれに変えよう、現在の集団安全保障措置よりも、もっとよりよいことを考えているわけでございます。
  205. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 いろいろうまいことをおっしゃるけれども、通用しませんよ。それは法律家の言葉じゃないですよ。よりよいとどこに書いてありますか。明らかに、集団安全保障措置がとられたときには、現行安保条約は効力を失うと書いているんですよ。それじゃ、とっくに効力を失っていなければならぬ。もともと、始まりから、ないということになるじゃないですか。そんなばかなことは、私はあり得ないと思う。大体この五条の解釈に非常に無理をされるところに、そういうつじつまの合わないところが次々に出てくると思うのです。第一、この新安保条約の第三条と第五条は、いわゆるヴァンデンバーグの決議の精神に沿ったものであることは、お認めになるわけでしょう。その点はいかがですか。
  206. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 たびたび申し上げておりますように、ヴァンデンバーグ決議の精神に沿っております。
  207. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 そうしますと、ここに憲法調査会第三十回総会議事録というのがございます。これは当時の外務大臣の岡崎さんが、参考人として出られたときの会議録でございますが、ここでこういうことを言っているのです。現行安保条約が結ばれる当時のいきさつを述べておられるわけですね。「それから先ほど申しましたように初めには日本の外に米軍をおいて、いざというときに出てくる。これに対して、日本は米軍に必要な基地を整備して維持しておく、こういうことで安全保障を考えておりましたのが、どうして国内の駐留に変ったかという点につきましては、」ここからです。「第一には、ヴァンデンバーグの決議があって、相互防衛規定が入らないときは、米国の日本防衛の義務をはっきりさせる、いわゆる義務づけることが困難である。」ここからこの不十分な現行安保条約ができたという説明を岡崎外相はされておる。ヴァンデンバーグの決議があって、相互防衛規定が入らないときは米国の日本防衛の義務をはっきりさせることができぬ。いわゆる義務づけが困難である。そこでやむを得ず、現行安保条約のような、使用することができるなんという不十分なものができたと、こう言っている。この岡崎さんの発言でいけば、新しい安保条約アメリカが日本を防衛する義務を負ったというならば、このヴァンデンバーグ決議の精神に基づいて、日本もアメリカを防衛する義務を負わなければできなかったことになるじゃありませんか。ヴァンデンバーグ決議というものはそういうものだという説明を、憲法調査会で岡崎さんがしておられますよ。これはどうなんですか。
  208. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 第五条にありますように、条約地域を施政下に限りまして、そうして、むろん憲法上の規定及び手続に従って事を行なうわけでございます。でありますから、それを承知の上で、アメリカ条約締結いたしておるのでございます。
  209. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 まっとうに私の質問に答えて下さい。岡崎外務大臣は、ヴァンデンバーグ決議というのは、アメリカに日本の防衛の義務を負わせれば、日本もまた、アメリカ防衛の義務を負わなければいかぬということだと説明しているのです。今の日本では、アメリカを守る義務を負うことはどうも工合が悪い、だからアメリカもまた、日本を守る義務を持つことができない、それでこんなに不十分な、使用することができるとかなんとかいう抽象的な、あいまいな条文を書かざるを得なかった、こういうふうに現行安保条約の制定当時のいきさつを説明しておられる。これを引き直していけば、今度アメリカは、日本防衛の義務を条約上はっきり負いましたと、あなた方はきのうも断言しておられます。そうしますと、この岡崎さんの説明を裏からいけば、日本もまた、アメリカ防衛の義務を完全に負いましたということがなければ、アメリカ防衛の義務が出てこないじゃありませんか。
  210. 林修三

    ○林(修)政府委員 その点は、私は、アメリカ側の考え方に柔軟性が出てきたものと考えております。これは、当時の交渉においては、あるいはそういうことがあったかもわかりません。しかし、その後におけるアメリカ側の考え方には、そういうところにこだわらない点があるわけでございます。これはヴァンデンバーグ条項をごらんになりますとおわかりになります通りに、ヴァデンバーグ決議そのものは、重点は、要するに十分な自助によって、自分を守る意思のない国にはいわゆる援助をしない、これが中心でございます。つまり相互防衛ということを、それほどはっきりは、ヴァンデンバーグ決議自身はいっておりません。従いまして、アメリカ側の考え方は、そこいらに柔軟性があったものと私は考えております。少なくとも今後の条約におきましては、はっきりとアメリカ側は、防衛の区域を日本の領域に限ることを認めております。そういう点は、現行安保条約の交渉当時とは、アメリカ側の考え方は変わっておるわけであります。
  211. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 ヴァンデンバーグ決議というのは、私はこういうように理解しているのです。米国が、他の自由諸国との間の安全保障の取りきめを結んで、その国を守ってやるという約束をする場合には、必ず相手側でも、二つの条件が満たされておらなくちゃならぬ。その一つは、自国の経済力の立て直し、特に防衛力の増強について米国からの援助にばかりたよるのではなく、その国自身まじめな努力をすること、これが一つの条件。もう一つは、米国がその国を守ってやる代償として、その国もまた、米国の領土の、少なくとも一部または全部を守ることを約束すること。この二つの条件が満たされておらなければ、相互防衛条約を結ぶわけにはいかぬ、これがヴァンデンバーグ決議なるものの本質だと思う。岡崎外務大臣は、まさにその通りを言っているわけなんです。現行安保条約アメリカに日本防衛義務を負わせることができなかったのは、日本がアメリカ防衛の義務を負えなかったからだ。昭和三十年鳩山内閣当時、重光外務大臣が渡米いたしました。そのときに、やはり現行安保条約の改定問題を切り出しております。そのときのダレスの言葉をわれわれは忘れておらないのです。相互防衛、双務性、平等な条約に直してくれと、重光さん、あなたおっしゃるけれども、しからば、日本の自衛隊がアメリカ本土まで来てくれとは言わぬが、せめてグアム島くらいまで来て一緒に守ってくれるのですか、こういうせりふを残したことは、有名な話じゃありませんか。ヴァンデンバーグ決議というものが現行安保条約成立当時から変化を来たして、今ではずっと緩和されて、相手の国がアメリカ防衛の義務を負わなくたって、アメリカはその国を守ってもよろしいというふうに変わったというふうには、私は聞いていないのです。あなた方の第五条の説明でいくと、日本がアメリカを防衛するという義務がどこにも出てこない。そういうときに、アメリカに日本防衛の義務を負わせるということ  は、このヴァンデンバーグ決議の線からいって不可能じゃありませんか。
  212. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ヴァンデンバーグ決議は、石橋さんの言われました前段の問題が、ヴァンデンバーグ決議の趣旨ではございます。そして、決してアメリカが他国を援助する場合に、自国を守ってくれなければいけないというようなことは、ヴァンデンバーグ決起の趣旨ではございません。むろん、お互いに防衛していこうという気持があることは当然でございますけれども、ヴァンデンバーグの決議の趣旨というものは、前段のものでございます。今回岡崎さんの場合には、あるいは重光さんの場合には、そういう状態があったかもしれませんけれども、今度は、とにかく条約地域を施政下に限る、またアメリカに日本が出ていって、アメリカの領土を守るというようなふうに、海外派兵もいたしません。しかし、その条件のもとに、アメリカは、日本を守ってもよろしいといってきたわけでございますから、当然アメリカの意思として、はっきりいたしておるわけでございます。
  213. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 非常に都合よく解釈されております。岡崎外務大臣が当時現行安保条約を結んで、重光外務大臣が渡米して交渉を持ち込んだそのときのヴァンデンバーグ決議と、今岸内閣のもとで、藤山外務大臣が交渉したときのヴァンデンバーグ決議とは、中身が違ってきたのです。こういうでたらめな解釈では、私どもは了解できません。(発言する者あり)時間がたちますから、協力しますから黙って下さい。
  214. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 ただいま申し上げましたヴァンデンバーグ決議の内容でございますが、これは外務大臣からもるる申し上げている通りでございます。このような精神的な決意の表明の規定でございまして、必ずしも常にアメリカがある国を守るから、その国も自分を、自国のアメリカの領土、グアム島、どこどこを守らなければならないというふうな具体的な規定、これがヴァンデンバーグ決議ではございません。ここにございますように、継続的な、効果的な自助及び相互援助、すなわち、好意のために自国の領土を防衛してくれるとか、してくれないとか、そういうふうな具体的なことを念頭に置いておるわけではございません。このように、自助及び相互援助によって結合しようということでございます。
  215. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 それでは、また別の角度からお尋ねいたしましょう。  この間の岡田議員の質問のとき、私も関連してやったわけでございますが、集団的自衛権というものには、狭義の解釈と広義の解釈があるというお話でした。結局、狭く考えていけば、他国に対する攻撃を自国に対する攻撃とみなして、そうして海外派兵等をやって、それで相手の国を一緒に守ってやる、これが狭義の解釈をした場合の集団的自衛権だ、そういうものは日本の憲法は容認しておらない、こういうお話でございました。そこで、狭く集団的自衛権を解釈した場合には、もちろん、新しい安保条約の中に、どこにも、そういう集団的自衛権の行使を日本側からいって規定するようなものは入ってない、この点まず確認したいと思います。
  216. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 その通りでございます。
  217. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 そうしますと、集団的自衛権を持っておるのだということを、新条約の前文においても堂々と宣明しておる。そのほか、いろいろほかのものにおいても宣言しておる。しておる以上、何かどっかに実体がなくちゃならぬとわれわれは思う。しかし、狭く解釈したらどこにもない。そこで、ここで広く解釈せざるを得ない。広く解釈した場合には、他国に対する攻撃を自国に対する攻撃とみなして、海外派兵などということはやらぬが、その他、でき得る限り経済援助とか、あるいは基地提供とか、こういうものを通じて援助する、こういう広義の解釈をとった場合をどこかに入れなくちゃならぬ、それはしいて言えば、六条の基地提供の義務がその条項だ、こういうお話でございましたが、その点は確認されますか。
  218. 林修三

    ○林(修)政府委員 ちょっと、その点、私どもが申し上げておることと違います。私の考えで申せば、要するにこの前文において集団的自衛権という言葉が書いてあるから、この条約の中のどこかに、集団的自衛権によらなければ説明できないような条項が入らなければならないということは、これはございません。それは必然的な関係はないわけでございまして、要するに、前文では、日ソ共同宣言でも同じでございますが、一つうたい文句として、個別的または集団的自衛権を持つということが書いてあるだけであります。従って、集団的自衛権があると書いたから、条文の内容に必ずそれを具体化したものがなければならないというような、必然的関係にあるものではないわけであります。先刻来、あるいは先日来申し上げておりますことは、いわゆる国連憲章五十一条による集団的自衛、これをもって説明しなければならないような条項は、この条約のどこにもございません。この前のお話は、しいて集団的自衛権を広く解釈したら、どういうものがあると考えられるかというお話でございましたから、かりに広く解釈すれば、こういうものがあり得るであろうということを申し上げただけでありまして、そういう条項を必ず入れるというような趣旨、あるいは、集団的自衛権を前文に書いたから、そういうものを入れるのだということとの関連は、全然ないわけであります。
  219. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 そうしますと、一つ一つ整理します。日本は集団的自衛権を持っておるというけれども、それを行使する手段を持たない、日本国憲法はそれを容認していない、だから、完全なる観念的なものである、こういうお話ですね。
  220. 林修三

    ○林(修)政府委員 要するに、国連憲章五十一条において、いわゆる武力行使の違法性阻却の理由は、集団的自衛権を持ち出さなければできないようなことは、日本の憲法としてはできない、かように言っております。従って、そういうものをこの条約の中にはどこにも書いてございません。
  221. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 あなた方は今まで、この防衛論争をやるとき、常に自衛権を認めて、その裏づけとなる、自衛権を行使する手段としての自衛力がないなんというばかなことがあるかとおっしゃってきている。今度の集団的自衛権については、頭の中で描いた観念的な集団自衛権というものは、もちろん、国家としてあるが、それを行使する一切の手段は、日本は残念ながら持たぬと、今度は全く逆な答弁をされておる。そうじゃないですか。行使する手段はないのでしょう。あるのですか。何にも実体の裏づけのないものを、権利と言えるのですか。あなた方は、今まで言ったことと逆のことを言っているのですが、いかがですか。
  222. 林修三

    ○林(修)政府委員 手段を持たないとおっしゃる意味はよくわかりませんけれども、要するに、国際法的な集団的自衛権という言葉でいわれておりますもの、特にそれが中心となるものは、国連憲章五十一条の場合だと思います。五十一条のような意味において、集団的自衛権をもって説明しなければならないような問題につきましては、これはやはり憲法の容認するところではないだろう、かように考えるわけでございます。要するに、国際法的な集団的自衛権、これはいわゆる国家として、国際法上、国連加盟の国はどこでも持っておるという建前になっております。日本だけ国際法的に否定する理由はないわけであります。しかし、日本の憲法の解釈といたしまして、やはり自衛権に対する日本の憲法の精神、これは要するに、よそから攻撃を受けて、自分がそれを守れないということは、独立国としてはあり得ない、そういう意味のことまで日本の憲法が否定しておるものではない、最小限度これを排除する措置ができる、排除する措置ができるならば、それを実現する力も持ち得るのだ、こういうことでございまして、集団的自衛権という観念は、これはもともと国際法的な観念、しかも国連憲章によって、この前もお話いたしましたが、大体新しく認められた観念、それを日本の憲法に照らしてみた場合に、国連憲章五十一条の、それをもって説明しなければ違法性阻却の理由にならない、こういう場合まで憲法が容認しているということにはならない、これはいわゆる国際法的な観念でございます。日本の憲法において、日本が独立国として自衛の手段を持つ、これは独立国本来の権能だと私は思います。こういうものからくるものとはおのずから違う、かように私は考えております。
  223. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 新安保条約の前文に書いてあるのは、国際連合憲章に定める集団的自衛の固有の権利、こう書いてあるのですよ。これは、すなわち、憲章の五十一条に基づくところの集団的自衛権のことでしょう。それを有していることを確認しているわけです。確認しているけれども、これを行使する有効な手段は日本は全然持たぬ、こういうことになるじゃありませんか。新安保条約の前文、ここに、権利を持っていることを宣言しているけれども、しかし、これを行使することは、日本は憲法上できぬ、こういうことじゃないですか。
  224. 林修三

    ○林(修)政府委員 要するに、いわゆる国連加盟国が、個別的自衛権あるいは集団的自衛権を持っているということは、この五十一条ではっきりしております。それを日本だけについて、国連加盟国としてそれを持っていることを否定する理由は何もないわけで、それは当然あるわけです。ただ、日本の憲法、国内法の解釈上、それをもって説明しなければならないことまではできないということは、これは国内問題であります。国際問題ではございません。国内問題でございまして、それは、いわゆる国連憲章に書いてあることを否定する理由にはならないのであります。
  225. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 藤山外務大臣、今の応答はわかったと思いますから、それではあなたからはっきり言ってもらいましょう。前文に、国際連合憲章に定める集団的自衛の固有の権利を日本も持っていると書いているけれども、しかし、これを有効に行使する手段は一切日本にはない、こういうことを確認なさいますね。
  226. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 前文に書いてありますのは、先ほど来申し上げておりますように、国際法として、あるいは国際間の認める方法として、日本にも、独立国として、国連のメンバー・ステートとして、個別的自衛権及び集団的自衛権を持っているということをうたっている。この点は、たとえば日ソ共同宣言にもうたっておるわけでありまして、あらゆる国が、日本がそういうものを持っておるということを確認いたしておるわけであります。ただ、それを持っておるからといって、日本は集団的自衛権によって他国から守ってもらうことはできますけれども、日本自身が集団的自衛権を行使するということについては、先ほど法制局長官が言われましたように、憲法上で、そういう点についてそこまで解釈するのは広過ぎるじゃないか、だから、使用しないということでございます。
  227. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 すなおにお答えになりました。結局、国際連合憲章に定める集団的自衛の固有の権利を持っていると前文に書いているけれども、実際はこの権利を行使する有効な手段を日本は持たない、これを行使することは憲法で禁じられている、こういうことなのです。そうしますと、第五条では、アメリカは日本防衛の義務を持っているが、日本はアメリカ防衛の義務というものを別に持っていない。この辺では均衡がとれない。一体どこで均衡をとっているかと言うと、これが六条の極東条項になる。いわゆる基地提供の義務を日本が負うことによって、ここでいわゆる相互援助、どうにかバランスがとれるという形が新安保条約ではとられているというような説明が、外務省の情報文化局から出ている「日米相互協力及び安全保障条約の解説」の中でもいわれているようでありますが、この点は、外務大臣、確認されますね。
  228. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 必ずしもそれだけではないと思いますけれども施設及び区域を提供するということは、その一つでございます。
  229. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 そうしますと、第五条においてアメリカが日本防衛の義務を負った。これとかね合いになるのが——こういう言葉を使っております。かね合いになるのが、本条による施設区域の供与である。だから、私はバランスという言葉も大体妥当だと思うのですが、ここでバランスをとっているわけです。日本の安全のため、極東の平和と安全のために米軍が使用することができるようにこの施設及び区域を提供しているというのが、日本の義務になっておる。そうしますと、先ほど林法制局長官は、国連憲章五十一条でいうところの集団的自衛権には該当しないけれども、一般国際法の概念からいって、この基地提供の義務といいますか、権利といいますか、この基地提供が、やはり広い意味で集団的自衛権と言えぬこともない、こういうこととも大体一致すると思うのですが、そうじゃありませんか。
  230. 林修三

    ○林(修)政府委員 いわゆる基地提供というものは、国連憲章五十一条の集団的自衛権をもってしなければ説明できないことではないわけでございます。第一の前提としてそれを申し上げておきます。つまり、国連憲章第五十一条は、いわゆる武力の行使をすることは、一般に国連憲章では禁止する、しかし、いわゆる個別的自衛権あるいは集団的自衛権の行使として行なわれる場合は、それは例外的に認めるというのが、五十一条の趣旨でございます。いわゆる基地を提供するとか、あるいは基地を使ってたとえば米軍が行動するということは、何ら国連憲章五十一条との関係のある問題ではございません。従いまして、それを集団的自衛権という広い意味で使う人もあるであろうということは申しましたけれども、それは、五十一条にいう集団的自衛権をもって説明しなければ、国際法的に、あるいは国連憲章上違法になるという問題ではない。それ以外の問題でございます。
  231. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 しかし、集団的自衛権を広く解釈すれば、第六条の基地提供がそれに該当すると言えないこともないということは確認するわけでしょう。
  232. 林修三

    ○林(修)政府委員 しかし、これはこの前も申し上げましたが、要するに、集団的自衛権という言葉を、いわゆる違法性阻却の事由としてでなく、もう少し広い意味で使う人もある。使う人がある、というのは、どういうのを例として言っておるかというお話でございましたから、その例としてあげたわけでございます。その例として、この前の速記録をお読みになれば、これは石橋委員も速記録をお読みになっておると思いますけれども、要するに、第六条の施設区域を、いわゆる事前協議条項の適用によってアメリカがそれを使って、たとえば日本の区域外に武力行動する、そういう場合に日本が施設区域を提供した、その場合にアメリカはまさに一つの集団的自衛権あるいは個別的自衛権を使って武力行動をしているわけであります。そういう場合に日本が基地を提供しているということを、広い意味で集団的自衛権と言う者もあるであろう、そういうことを集団的自衛権と言う人があれば、集団的自衛権と言えないこともなかろう、こういう趣旨で、いわば仮定の問題として言っているわけであります。
  233. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 結局、まあそれでいいですよ。先ほど言ったように、五条においてアメリカが日本防衛の義務を負っている、それとかね合いになっているということもお認めになっているわけです。そうしますと、アメリカ軍が日本の施設及び区域を使う場合は、日本の安全のためということは別にして、いわゆる極東条項という中では三つあるわけですね。国連軍として動く場合、それからアメリカの個別的自衛権の行使として動く場合、それからアメリカの集団的自衛権の行使として動く場合、こういった場合にこの施設及び区域を使うわけですね。
  234. 林修三

    ○林(修)政府委員 大体そういうことであろうと思います。
  235. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 非常に慎重なんでございますが、その三つ以外にはあるのですか。あるわけですか。
  236. 林修三

    ○林(修)政府委員 施設区域を使うとおっしゃいますが、それは作戦行動のみならず、いわゆる一種の補給的な行動もございましょうし、必ずしもいわゆる武力行使に限ったことではないわけでございます。そういう意味において私は大体と申したわけであります。
  237. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 それじゃ、アメリカが個別的自衛権を行使する場合に、日本が基地提供をして協力する、これは日本とアメリカ関係で済みますね。アメリカが集団的自衛権を行使する場合、日本が基地提供をして協力するということは、アメリカと日本だけの関係では済まないじゃありませんか。なぜならば、米華条約米比条約あるいは米韓条約——ほかにもありますけれども、こういうものによって、たとえば韓国が武力攻撃を受ける、韓国は個別的自衛権を行使する、アメリカは集団的自衛権を行使する、その集団的自衛権を行使するときに日本の基地を使う、そうしますと、これは韓国の個別的自衛権とも関係を持ちますね。持つじゃありませんか。韓国は個別的自衛権を行使する、米韓条約によってアメリカは集団的自衛権を行使する、その集団的自衛権を行使するときに日本の基地を使用するということになると、これは関係あるじゃありませんか。
  238. 林修三

    ○林(修)政府委員 その関係という意味でございますが、要するに、日本はあくまでこれは米国との関係でございます。これは日米安全保障条約でございますし、ここに書いてあることは、日本とアメリカとの間の関係しか書いてないわけです。アメリカが、日本にある施設区域をかりにアメリカの集団的自衛権の発動の場合に使うとしても、その先に行きまして、あるいはそれはアメリカが韓国を援助し、あるいは台湾を援助し、あるいはフィリピンを援助する場合であるかもわかりません。しかし、日本は、米国以外の国に日本の施設区域を提供する義務は、事実上の関係で、何ら持っていないわけです。これは、韓国が個別的自衛権を行使している場合に、アメリカが出ていくという意味で関連があるかとおっしゃれば、そういう意味の関連はございます。しかし、日米間の関係に韓国とか台湾というものが入ってくるということは全然ないわけであります。
  239. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 関係あればあるとお認めになりましたけれども、大ありなんですよ。アメリカ米韓条約に基づいて集団的自衛権を行使する場合に、日本の施設及び区域を使用すれば、当然本元を武力攻撃されたのは韓国なのだから、韓国はやりますよ。広い意味での集団自衛権と基地提供をいうならば、その広い意味で日本が集団的自衛権として基地提供をするということは、単にアメリカに対しての援助、アメリカとの関係での集団自衛権の行使ということだけにとどまりませんよ。結果的には韓国との関係においても広い意味での集団自衛権を行使した、これはそういうことになりますよ。これは米華条約でも米比条約でも同様のことが言える。SEATOでも言える。そういう条約関係で、アメリカが集団自衛権を行使して日本の施設区域をそういう場合に使うということになると、これはやはり韓国の個別的自衛権、フィリピンの個別的自衛権、あるいは台湾政府の個別的自衛権と結びついてきます。これはどう言おうと結びついてきます。
  240. 林修三

    ○林(修)政府委員 法律的に何ら結びつきはございません。これはどうして結びつくか私にはわかりません。法律的に何ら結びつきはないわけでございます。日本はあくまで米国に対しても施設区域の提供にすぎません。その施設区域の提供を集団的自衛権という言葉で呼んだからそうなるとおっしゃる御趣旨がわからないわけでございますが、そういう集団的自衛権と言おうと言うまいと、これは別に関係ないわけでございまして、日本は要するに、日本の施設及び区域をこの条約によって提供しておるわけでございます。その提供した区域を、米国か自国の個別的自衛権あるいは集団的自衛権によって使う、それは使うのは、米国としては個別的自衛権あるいは集団的自衛権の発動でございましょう。集団的自衛権の場合には、あるいは米国は同時に韓国を援助し、あるいは台湾を援助しておる場合があるかもわかりません。しかし、それだからといって、韓国の行動と日本の施設区域の提供は、何らこれは結びつくものではないのであります。法律的には何の結びつきもございません。
  241. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 あなた、結びつきないと言うけれども、この極東条項というものに事前協議制を採用した理由を、もう一回私はお伺いしたいですよ。日本に直接何の関係もない問題、たとえば韓国で、あるいは台湾で紛争が起きた、あるいはこの地域に武力攻撃が行なわれた、そういうときに、日本の基地を使用して米軍が出かけていくことは、日本に本来関係のない問題で日本が戦争に巻き込まれるおそれがあるから、だから、これをチェックしなくてはならぬ、そういう意味事前協議制というものもできておるわけじゃないですか。そうしますと、もう大体関係のあることは知っておるわけです。それを権利義務の概念で整理してみれば、私が言ったように、基地提供というものが、広い意味での集団的自衛権の行使だというならば、それは単にアメリカとの関係のみならず、フィリピンや台湾あるいは韓国というようなものについても、その集団自衛権ということが言えないこともない、私どもはそういう解釈をする。それは当然じゃないですか。
  242. 林修三

    ○林(修)政府委員 事前協議条項の入った御趣旨は、まさに今石橋委員のおっしゃった通りでございます。そういう意味のいわゆる政治的な関連性があればこそ、これは事前協議条項が入っておるわけであります。しかし、それをいわゆる法律的な関係に結びつけておっしゃいますから、法律的に日本と韓国との間に何も関係はないということを申し上げておるわけでございます。日本と関係ありますのは、米国の行動だけでございます。それをまた集団的自衛権というならばとおっしゃいますが、これは集団的自衛権と言おうと言うまいと、関係は同じことでございます。何らそこに違ったことは出て参りません。
  243. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 それじゃ、時間のことも申しておりますから、私、最後に一つお尋ねして終わりたいと思います。  いろいろ申し上げたいことはたくさんありますけれども、今申し上げたように、審議に協力する意味で結論から先に申し上げます。というのは、今度の新安保条約、これは日米相互信頼の上に立って結ばれておる、こうおっしゃっております。いろいろと、ここが改正されたんだ、ここが改正されたんだ、よくなったんだとおっしゃるが、私どもの目から見れば、少しもよくなってないじゃないかということを昨日来私は言って参りました。しかし、とにかくあなた方の立場で、よくなっていると申しております一番大きな柱として、私は事前協議制の採用ということをあげざるを得ないと思う。これは、アメリカが日本防衛の義務を、負ったんだというようなことも、あなた方の立場としては入るかもしれませんが、一般国民的な関心の目から判断しましても、この事前協議制というものについて、非常に大きなウエートが私はあると思う。しかし、過去のいろいろな質疑を通じて明らかになっているのは、この事前協議制というのがにしきの御旗で、これですべて日本に都合のいいようにチェックできるというようなお話でございますが、その前提には、アメリカというものは絶対に信頼できるんだという、こういう確信がなければ通用しないような御答弁、説明が非常に多かったと思います。アメリカの方から、先に事前協議の対象として議題を持ち込んでこなければ、どうにもならぬような問題がたくさんございます。これは御記憶に新ただと思う。そうしますと、アメリカは絶対に間違ったことをしない、国連憲章に反することもないし、条約に違反することもない、した約束は必ず守る、それこそ、正義のかたまりみたいなものだという前提がなければ通用しない部面が占めていると思う。それこそ、正義の味方といいますか、何か子供の歌にもあるようですか、そういうものがアメリカである。アメリカは絶対に信頼してもいいんだという前提がくずれたら、私はこの新安保条約も成り立たない、こう思うわけです。ところが、アメリカが、しからば、そんなに条約に忠実であり、日本の政府、日本の国民の信頼を裏切ってないか。私は一つの例をあげてみたいと思う。  これは朝鮮動乱の際に、現行安保条約のもとにおいて、アメリカが国内においてやった行為であります。どういうことかといいますと、日本人の手をかりて、日本人だけで私設日本海軍を編成して、そしてこの戦乱に巻き込ませておるということです。時期は、朝鮮動乱の後期であります。当時、この計画に携わったのはCIAでございます。どういう目標をこの私設海軍に与えたかと申しますと、支那大陸沿岸で、中共から北鮮に対する物資補給を目的とする中共側船舶の航行の阻止、諜報並びにその取り締まり及び米国情報局員を支那大陸に揚陸、潜入せしめるため武装船の準備、これに要する日本人隊員を乗船せしめて出動すること、こういう目標を授けております。当時のCIAのこの計画に携わりました担当者は、ロバート氏であります。  具体的にどのような、計画が行なわれ、どのように遂行されたかと申しますと、最初に、おもな幹部を人選いたしまして、これに約一週間、神奈川県茅ケ崎で、秘密裏に武器操作の訓練を施しております。  なお、これが編成されまして、貸与されました武器は、五十七ミリ無反動砲三門、弾丸三百発、五十口径M二型重銃身ブローニング機関銃三門、弾丸三千発、三十口径M一型ブローニング機関銃三門、弾丸三千発、携帯用機関銃八門、弾丸三千発、カービン自動小銃十五丁、弾丸三千発、拳銃十五丁、弾丸二千発、そのほか信号用拳銃三、C四爆薬二十ポンド、手留弾四十八、雷管及び導火線各種、乗組員は、旧日本帝国海軍の将校、下士官がほとんどであります。指揮官は沢出久水という男、編成も全部わかっております。  具体的に、第一次に出動いたしましたのは、昭和二十七年十二月十日、佐世保市の相浦港から出港いたしております。そうして最初の交戦をやりましたのが十二月の十三日、上海沖沿岸において、中共警備艇二隻と交戦をやっております。当時の記録フィルムはCIAに引き渡し済み。この際私設日本海軍の損害、死亡者一名——重傷後死亡でありますが、橋本三好という男、佐世保市の早岐町に住んでおりました。それから一人、全治二週間の傷を負っております。私はこの人にも会いましたが、西村勉といいます。当時の海難報告書は、昭和二十七年十二月十七日付、魚をとりに行ったら中共艦からやられたというような、うその報告書が、九州海運局佐世保港湾管理事務所あてに出されております。私はこれを、そのものを持っております。その当時の新聞記事にも、この届出に基づく報道がなされております。これが当時の届出書、海難船員死亡報告書であります。それから、これが当時の新聞の記事であります。  以後、第二次から第六次出動までやっております。いずれも日本から出ておる。佐世保の港から出ておる。昭和二十八年の三月まで、第六次まで行動いたしております。そのときに、なぜやめたかといいますと、当時中共からの引き揚げ問題が出て参りまして、これ以上中共を刺激するのはどうもよろしくないというので、解散命令が出たという報告が出ております。そうして、昭和二十八年三月下旬、武器の返還が行なわれました。この返還を行ないましたのも、国内の板付であります。CIAの飛行機と本人たちは言っておりますが、どんな飛行機たったかというと、この間から問題になっております、まっ黒なジェット機だと言っております。これに積み込みをいたしまして、返納したということが報告されております。  ほかにも資料がたくさんございますが、こういう事件が、新安保条約締結下、行政協定のもとにおいて、堂々と国内において行なわれておる。訓練も国内で行なわれておる。日本人だけで編成しておる。しかも、その編成にあたっては、当時の海運局の関係者、これが人選に携わっておる。武器を貸与したのも、返却したのも国内、出動しておるのも佐世保の港から。一体こういうことが、日本政府の了解なしに、堂々と国内においてできるものだろうか。もし協力も暗黙の了解もしておらないというならば、アメリカは、それこそ条約、協定を無視して、このようなことになったということにもなる。私は、この日本政府日本国民の信頼を裏切る米軍の行動が事実であるかどうかということを、早急に日本政府が責任を持って調査していただきたいと思います。そうすることによって、私は、岸内閣が中国敵視政策をとるものではないという、この立証をしてもらいたい。調査をして、事実であるならば、率直に中国にあやまってもらいたいし、また、アメリカ一辺倒でない、アメリカの言うことなら、何でもうんうんと言うのじゃないとおっしゃるならば、これまた、その証拠として事実を調べて、厳重なる抗議を、アメリカ政府に申し入れをしてもらいたいと私は思う。中国敵視政策をとるものでない。アメリカ隷属、アメリカ一辺倒じゃないという、この二つを証明するいい機会だと思います。一種の踏み絵と私は思いたい。この踏み絵を踏むかどうか、私はこれによって立証してもらいたいと思います。私も、この問題は非常に影響が大きいので、だいぶん苦慮いたしました。しかし、ここにおいて決意をいたしました。やはり、もしあやまちがあるとするならば、堂々とこれは事実を突き詰める必要がある。当人たちにも私は納得してもらっております。中国に対しても、もしこれが事実であるならば、この人たちも、やったことが間違いであるということを今認めておるわけですから、心から私もともにあやまりたいと思っております。どうか善意をもって、真剣にこの事件の調査をやっていただきたいということを申し上げます。いかがでございますか。
  244. 森治樹

    ○森政府委員 ……(「局長なんかの答弁ではわからない」「大臣々々」と呼び、その他発言する者、離席する者多く、議場騒然、聴取不能)両三回にわたって事実の確認を求めたことがございます。その結果、私どもの入手した……(聴取不能)よりますと……(聴取不能)のことであるから……(聴取不能)記録が残っておらないということでございます。以上が、私どもの今日まで知り得た事実でございます。
  245. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私その間の事情を存じておりませんが、今アメリカ局長の報告によりますれば、アメリカ側においてはそういう事実はないし、また、日本においてもそういう……。(発言する者多く、議場騒然、聴取不能)
  246. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 それじゃ、もっと詳しく申し上げます。調査もしないうちにそんなことをおっしゃるなら、もっと詳しくやります。省略いたしましたけれども、実は第二次出動以後において、実際に中共の者と交戦をして、殺害もしているのです。みな殺しをやっております。そのときの写真はここにとってあります。本人たちは、機銃掃射をして皆殺ししたつもりだったのですが、三人でしたか生き残った者が台湾に漂流して到着したそうです。それで、国民政府が日本政府に照会した事実もございます。私はこういうことまでは実際はきょう言いたくなかった。しかし、あえて申し上げます。それから、こういう暗号表を打ち合わせ済みで作っております。そうしてこの戦死者、死傷者が出ましたときに、この暗号に基づいて実際に電報を打っている。この電報の本物がある。私はこれをこの暗号表で照会してみましたら、まさに交戦の結果、一人死んで、一人負傷している、こういう電文になっております。それから、直接戦闘経過報告を船長がこのようにして出したのを私は持っております。決して、このような重要な問題は、私は何らの証拠なしに申し上げておるわけではございません。なおしらを切るならば、いろいろ折衝の過程も申し上げてようございます。どうか誠意を示すためにも、調査をしていただきたい。いかがですか。
  247. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私はしらを切っておるわけじゃありません。私自身存じませんでした。それで今アメリカ局長が言ったことをただ申しただけでありまして、調査をすることには別段やぶさかではございません。     〔発言する者多し〕
  248. 小澤佐重喜

    小澤委員長 静粛に願います。
  249. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 私は、このようにやはり国交上からも非常に重要な問題なんですから、先ほど申し上げたように、誠意を持って、日本政府としては確かめるという態度が必要だと思います。このほかにもまだあるのです。たとえば、私が長崎県の県会議員をしておりますときに問題になったのですが、第六豊洋丸事件というのもございます。長崎大学で、水産学部の練習船として船を買って金を払った。ところが、いつまでたってもこの船がこないで、県会で問題になったことがございます。その後それも消息不明です。これも米軍の指示で、航跡断つというような新聞記事が出たこともございます。いろいろあります。私は、この際、総理からも、ぜひ誠意を持って調査するというお言葉をいただきたいと思う。
  250. 岸信介

    ○岸国務大臣 私は全然事実を承知いたしておりません。しかし、先ほどアメリカ局長も、ある程度のことは従来調べて、その事実はないというようなことをここで答弁申し上げました。しかし、今いろいろと石橋委員からの御質問がありましたので、事実は誠意を持って調べた上において、政府として善処すべきものだと思います。
  251. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 それでは、政府の方でも誠意を持って調べていただきたいと思う。  それから委員長にも、本委員会においても、こういう人たちを証人として呼んで調べるということが必要だと思いますので、その点を要求して、私はきょうの質疑を終りたいと思います。
  252. 小澤佐重喜

    小澤委員長 次会は、明後九日午前十時より開会することにいたします。  本日は、これにて散会いたします。     午後四時十分散会      ————◇—————