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1960-05-04 第34回国会 衆議院 日米安全保障条約等特別委員会 第28号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年五月四日(水曜日)     午前十時二十二分開議  出席委員    委員長 小澤佐重喜君    理事 井出一太郎君 理事 岩本 信行君    理事 大久保武雄君 理事 櫻内 義雄君    理事 椎熊 三郎君 理事 西村 力弥君    理事 松本 七郎君 理事 竹谷源太郎君       安倍晋太郎君    秋田 大助君       天野 光晴君    池田正之輔君       石坂  繁君    鍛冶 良作君       加藤 精三君    鴨田 宗一君       賀屋 興宣君    小林かなえ君       田中 榮一君    田中 龍夫君       田中 正巳君    床次 徳二君       野田 武夫君    服部 安司君       福家 俊一君    古井 喜實君       毛利 松平君    山下 春江君       飛鳥田一雄君    石橋 政嗣君       井手 以誠君    岡田 春夫君       黒田 寿男君    滝井 義高君       戸叶 里子君    中井徳次郎君       森島 守人君    堤 ツルヨ君       門司  亮君  出席国務大臣        内閣総理大臣   岸  信介君        外 務 大 臣  藤山愛一郎君        農林大臣臨時代        理国務大臣    菅野和太郎君        国 務 大 臣  赤城 宗徳君  出席政府委員         法制局長官   林  修三君         防衛政務次官  小幡 治和君         防衛庁参事官         (長官官房長) 門叶 宗雄君         防衛庁参事官         (防衛局長)  加藤 陽三君         防衛庁参事官         (装備局長)  塚本 敏夫君         調達庁長官   丸山  佶君         外務政務次官  小林 絹治君         外務事務官         (大臣官房審議         官)      下田 武三君         外務事務官         (アメリカ局         長)      森  治樹君         外務事務官         (条約局長)  高橋 通敏君         水産庁長官   西村健次郎君         水産庁次長   高橋 泰彦君  委員外出席者         専  門  員 佐藤 敏人君     ————————————— 五月四日  委員田中稔男君辞任につき、その補欠として滝  井義高君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  公聴会開会承認要求に関する件  委員派遣承認申請に関する件  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び  安全保障条約締結について承認を求めるの件  (条約第一号)  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び  安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並び  に日本国における合衆国軍隊地位に関する協  定の締結について承認を求めるの件(条約第二  号)  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び  安全保障条約等締結に伴う関係法令整理に  関する法律案内閣提出第六五号)      ————◇—————
  2. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 これより会議を開きます。  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約締結について承認を求めるの件、日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並び日本国における合衆国軍隊地位に関する協定締結について承認を求めるの件、及び日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約等締結に伴う関係法令整理に関する法律案、右各件を一括して議題といたし、質疑を続行いたします。滝井義高君。
  3. 滝井義高

    滝井委員 安全保障条約条約本文に関連して、二、三の問題を岸総理以下関係閣僚質問をしたいと思います。  安保改定の問題が起こりましてから、次第に日本国内に非常な不安の情勢が起こりつつあります。特に、国民の中には、政党政治議会政治に対する言い知れぬいら立ち感じつつあります。特に、この法律案、あるいは安全保障条約そのものが二月五日に国会提出をせられて、予算委員会あるいはこの委員会審議が深まれば深まるほど、どうもこの条約というものは非常に侵略性のにおいが強い、あるいは、憲法違反疑いがある、あるいは、ますますアメリカに従属するのではないか、あるいは、中国の敵視政策というものがますます深まるのではないかという疑念と不安が、大きな渦巻のようになって日本の津々浦々に広がりつつあります。それは、明らかに、何人かの委員がここに立って、世論調査の結果を、巻き返し繰り返し述べておることからも現われております。しかも、そういう焦燥感というものは、この条約に対する不安と疑念ばかりではなくして、一つは、やはり岸さん自身の発する体臭からもきていると私は思います。それは、たとえば、岸さんは、私がいつか予算委員会で言ったように、青年の時代上杉慎吉博士について国家主義憲法を学ばれ、長じて商工省の役人になって、商工次官になり、商工大臣になり、あるいは軍需次官になっている、そうして東条さんとともに戦争の道を歩いた、その同じ人が、戦後になってから、よわい六十才になって、いわゆる政治の脚光を浴びて内閣総理大臣に就任せられた。その歩いておる道を見ると、昔から、スズメ百まで踊りを忘れずと申しますが、いつか歩いた道をまた歩いておるという感じ——岸さん自身は歩いていないと思うのです。ところが、そういう感じが、あなたの体臭の中から何かにおわれるような感じがするということが、やはり一つ焦燥感に拍車をかけていると思います。  もう一つは……。(「医者らしいことを言うね」と呼ぶ者あり)医者だからと言うから、医者らしい言葉を使ってみれば、政治的なインフルエンザと申しますか、いわゆる政治的な流行性感冒が今アジアから中近東にかけてはやり始めたということであります。たとえば、アメリカから援助を受けておった自由主義陣営であり、この条約にもあるところの、自由な制度を強化しなければならぬという、その一環であるお隣の李承晩政権のもとにおいて、五十万の学生が立ち上がって、アメリカが柱ともつえともしておった李承晩政権が退場しなければならぬということ、しかも、この人は四選の問題を契機として、さらに、台湾でも、三選された蒋介石に対するいら立ちというもの、あるいは言い知れぬ感情がうつぼつとして起こりつつあるということ、さらに、遠くトルコにおいては、やはり同じようにイスタンブールでメンデレス政権に対し、その反動性と言論の圧迫に対して学生が立ち上がっておるということであります。こういうように、いわゆる政治的な流行性感冒と申しますか、これが広がっておるということ、そうして同じような姿が、日本国内で、あなた自身の三選をめぐって与党の内部にもこの流行性感冒がうつりつつあるということです。こういうように、とにかく内外を通じて非常な不安と焦燥の感というものがあることは、歴史現実です。この歴史現実は一体何なのか。もっとその背景を見詰めてみると、ダレスの亡霊がさまよっておるということであります。いわゆるダレス外交落とし子が、今やハーター外交によって刈り取られなければならないときがきておるということ、これは自由主義陣営一つとして置かれていた日本においても、多かれ少なかれそういう状態があるということであります。そこで、こういう中で、虚心たんかいに、あなたが民主的な政治家であるということを——あなたの体臭をぬぐい去るたった一つ方法がある。それは、やはり国会解散するということ以外にないのではないか。これがやはり民主的な政治家として一番いいことなんです。もう少し審議をして問題が明白になったなら、やはり解散をして信を問うて、その上であなたが三選をされて、もう一回この条約をやるということになれば、一番すっきりすると思うのです。どうでしょう。
  4. 岸信介

    岸国務大臣 解散の問題に関しましては、先日来同じような御質問がございまして、私は、これに対して、現在のところ解散する意思は持っていないということをはっきり申し上げております。
  5. 滝井義高

    滝井委員 一応これは順序でありますから、説得のためにはやはり常道がありますから、まず警告はしておかなければならぬ。実は、先日、まじめな学生の諸君が、プラカードを立てて国会に請願に参りました。そのプラカードを私はじっと見ておりました。やはりプラカードの中には、時代の流れが流れておる。それには一体どう書いておったかと言うと、「岸君、また戦場で会おう」と書いてある。「岸君、また戦場で会あう」多分、藤山外務大臣慶応の出身だったと記憶しておりますが、おとなしい慶応スローガンを見たら、「慶応も怒ったぞ」と書いてある。「慶応も怒ったぞ」と書いてある。さらに、もう一つスローガンはどう書いておったかと言うと、「岸の末路は李の末路」と書いてあった。「岸の末路は李の末路」これはやはり私は端的な国民感情だと思うのです。無理をしちゃいけませんぞ、無理をすればあぶないですよということを端的に言っておるんじゃないかと思うのです。政治家はやはり声なき声を聞き、陰の声を聞いて民の声とするところに、ほんとうの政治の道があると思うのです。これは何も仁徳天皇の昔に返る必要はないと思うのです。  そこで岸さん、解散をおやりにならないというならば、もう一つ私はあなたに聞いてみたいことがある。現在、日本憲法では、国民投票をやる場合が三つあります。一つは、憲法九十六条です。これは憲法改正のときに国民投票をやります。いま一つは、七十九条です。これは裁判官の国民審査です。いま一つは、九十五条です。いわゆる地方団体に関する特別法についての住民投票です。こういう三つの場合がございます。しかし、憲法は、この国民投票をいろいろな場合にやっては悪いという規定はどこにもありません。そこで、今度の条約改正というものは、いわば違憲性がある、憲法に触れる疑いが濃厚だ、三条のごときは、もしあの条文をそのまま正直に読んでいくと、憲法改正にまで問題が発展するかもしれないという要素を含んでおるものなんです。そうしますと、この際積極的に国民投票でもおやりになって、これならばあなたの地位は一応安定をしていきますから——賛成反対とか何とか、与党の中にはあります。しかし、国民投票をおやりになって、そしてその上で、フランクな気持で、この条約だけを、賛成反対か、国民の意向をお聞きになってみる、どうですか、解散がおいやならば、ここらあたりまでは一つ良識を発揮されてみたらどうかと思うのですが、岸さん、どうですか。
  6. 岸信介

    岸国務大臣 私はそういうことを考えておりません。
  7. 滝井義高

    滝井委員 国民投票も考えていない。まあ無理押しに押し通されるおつもりのようでございます。  それならば、お尋ねをいたしますが、六月の十九日には、アメリカアイゼンハワー大統領日本にやって参ります。あなたはこの条約アイク日本に来るまでにお通しになるおつもりなのか、それとも、アイクの来日とは全然無関係で、国会審議というものを十分お尽くしになるつもりなのか、この点を一つはっきりしてもらいたい。
  8. 岸信介

    岸国務大臣 別に、この条約を通すということ、アイク訪日ということは、関係のないことでございまして、私は最初から申しているように、十分一つ審議を尽くして、そしてこれが御承認を求めるという態度を根本的にとります。ただ、国会における審議がどういうふうに尽くされ、どういうふうに十分であるかどうかというようなことは、国会自身がおきめになることだと思います。
  9. 滝井義高

    滝井委員 岸総理としては、アイク訪日とは全然無関係である、従って、アイクが六月十九日に来るから、無理やりに十九日までに上げなければならぬというようなものではない、十分慎重審議をしてもらう、しかし、それは国会自主性というものもある、こういうことでございますから、了承いたしておきます。なかなかここは良心的でございました。  そこで次にお尋ねをいたしたいのは、先日この委員会にも、アメリカの対日援助のいろいろの資料戸叶委員要求によって出て参りました。その資料は、ずっと前に私も予算委員会要求をいたしておった資料でございます。当時政府は、その資料内容については詳細に説明ができませんでした。自来約四ヵ月の歳月が流れましたから、おそらく、政府はその内容について相当検討をし、深めたと思います。従って、私は、ここにもう一回、対日援助の問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  三十五年の二月の二十三日に米国国防省発表の、米国の対日軍事援助計画額が、七億一千百五十五分七千ドルでございました。そしてそれのうちに日本に引き渡された額は、一九五〇年から一九五九米会計年度までに、五億六百五十七万一千ドルでありました。その間に約二億ドルの差がある。一体どうしてこういう二億ドルの差が出たのかという点です。約七百三十八億円の差が出ておるわけです。いただけるものだと思っておったのに、七百三十八億円もいただけないということになっておるわけです。これは一体どういうことでこうなっているのですか。
  10. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 アメリカのこの発表日本のと違っている点につきまして申し上げます。アメリカの方では、今御指摘のように、対日軍事援助引き渡し額として五億六百五十七万一千ドル、邦貨にして一千八百二十四億円を渡したということになっております。防衛庁受領実額は、邦貨にいたしまして四千四百二十三億一千五百万で、相当の差があります。その理由は、第一に、防衛庁供与品受領状況調には、日米艦艇貸与協定及び日米船舶貸借協定に基づく艦艇貸与供与分五百九十二億九千九百万円を含めております。これは当然差し引かなければならない額だと思います。貸与の分を含めております。第二には、アメリカ国防省発表の引渡額には、米極東陸軍特別補給計画に基づく供与、すなわち、防衛庁になる前に、日本警察予備隊あるいは保安庁時代に、補給計画に基づいて供与した分が含まれておりますが、これの差が今のように出ているわけであります。なお、こまかい数字につきましては、事務当局から御答弁申し上げます。
  11. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、今赤城さんが御説明になったように、端数を切り捨てまして四千四百二十三億円、そして米極東陸軍特別補給計画に基づく供与分が千百四十九億、それから日米艦船貸与協定その他によるものが五百九十二億、そうしますと、それを引きますと二十六百八十億になる。それで対日引き渡し済み額は千八百二十四億で、なお八百五十六億円というものがどこにいったかわからぬ、こういうことになる。八百五十六億円というのは、一体どういうことになっておるのか。
  12. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 これは向こうとよく調査をしてみたのでありますが、一々のこまかいことは少し古くなっていますのでわかりませんが、評価におきまして差額が出てきておるのであります。その点につきましては、事務当局から御答弁申し上げます。
  13. 塚本敏夫

    塚本(敏)政府委員 ただいま長官から申し上げましたように、防衛庁供与品受領調べ昭和三十四年九月末まででありまして、その間に三ヵ月間のズレがあります。そのズレの問題と、それから日米間に評価相違があります。これは、アメリカ側といたしましては、アメリカ予算のやりくり上いろいろの評価をいたしておりまして、こちらといたしましては、そのもの日本独自の評価方法によって評価しておる、その評価の差異であります。
  14. 滝井義高

    滝井委員 そういう答弁では納得ができないのです。三十四年九月末で三ヵ月のズレがある、アメリカ日本との間の兵器に対する評価相違日本自衛隊の一年の予算の半分以上のものにも当たる八百五十六億円という金が、単に三ヵ月のズレ評価の違いで、そんな大きな差があるということになると大へんなことでしょう。もしアメリカが、日本と仲たがいをして、この武器を貸しておったのは、あるいは武器をやったのは、ガリオア、エロア資金と同じように、債務だから返してくれといわれたときに、あれは評価違いでございましたといって、アメリカが八百五十六億もよけいにやっておるというのに、いや、もらい方が少のうございましたというわけにいかぬと思う。私は、この前も注意しておったと思う。こういう額というものは、すみやかに突き合わして、統一しておる価格にして出してくれということを要求しておるわけです。日本政府が、そういうのんきなことだから困るのです。こういう状態だから、ますますアメリカに隷属するといわれても仕方がない。アメリカから七億ドルもの援助を受けておって、そしてそれをもらっておって、一体それはどのくらいのものをアメリカからもらったか、アメリカがどういう評価をしておるかということが今までわからない、そういうだらしのないことでどうしますか。赤城長官、これはどういうことですか。
  15. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 差額が、お話しのように八百五十七億あるわけで、その第一は、先ほど申し上げましたように、米極東陸軍特別補給計画、これは警察予備隊あるいは保安庁時代に、この計画に基づいて供与されましたその分が、わが方の調べでは端数をとりまして、約一千百五十億円でありますが、防衛庁受領実額二千六百八十億四千五百万の中に、アメリカ極東陸軍特別補給計画に基づくものが、なお相当あると考えるのであります。この点、向こうといろいろ帳簿の打ち合わせといいますが、照合をしてみたのでありますが、この点、向こうの方でもはっきりいたしません。こちらで受領したものは、台帳にちゃんと評価してありますから、これははっきりしているのであります。それから第二に、一九五九会計年度は、今装備局長が言いましたように、また滝井委員も御承知のように、昭和三十四年六月まででありますが、防衛庁供与品受領調べ昭和三十四年九月末までで、ここに三ヵ月分のズレがある。日米間の評価相違が、ある程度ある。こういうことからそういう数字が出ておりますが、主としての数字は、第一の米極東陸軍特別補給計画に基づく供与分につきまして、私の方で実際に帳簿に載っているものと、当時のものを、顧問団を通じて照合してみたのでありますが、向こうの方で、はっきりした資料がないのであります。そういう関係でここに差が出ている、こういうことであります。
  16. 滝井義高

    滝井委員 新安保条約三条で、締約国は、個別的に及び相互に協力して、継続的かつ効果的な自助及び相互援助により、武力攻撃に抵抗するそれぞれの能力を維持、発展させることになっているわけです。そうしますと、向こう様からもらったものが、一体幾らもらっているか正確にわからぬというようなことは、私は非常におかしいと思う。これが第一おかしいことなんです。しかも、それが一億や二億ならいいのですよ。ところが、八百億というような、日本防衛費の一年分の半分をこえる額なんですからね。こういうばかなことはないですよ。もっと具体的にお尋ねしますが、一九六〇会計年度におけるアメリカ権限法といいますか、計画額が八千五百九十二万八千ドル、この中にロッキード分担金が入っておりますか。
  17. 塚本敏夫

    塚本(敏)政府委員 米一九六〇会計年度の中には、ロッキードに対する二千五百万ドルが入っております。
  18. 滝井義高

    滝井委員 八千五百九十二万八千ドルの中に、ロッキードの七千五百万ドルの分が幾ら入っておりますか。
  19. 塚本敏夫

    塚本(敏)政府委員 二千五百万ドル入っております。
  20. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、この計画額と対日引き渡し額とは、いずれも食い違っております。ところが、最近になりましてから、特に一九五九年、一九六〇年になりましてから、いわゆる権限法に基づく計画額よりか対日引き渡し額が非常に増加しているわけです。これは一体どういう理由によるのですか。
  21. 塚本敏夫

    塚本(敏)政府委員 一九六〇年から計画額に対して引き渡し額が増加している、こういうことでありますが、これは前からのズレの分がだんだん入って参っておりまして、もちろん計画に対しまして、実績は一年、二年、長いものは三年ぐらいずれております。そういうズレのものが後年度に入ってきている、こういうことであります。
  22. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、さいぜんあなた方が、七億一千百五十五万七千ドル、すなわち、日本の円に直すと二千五百六十二億円ですね。これが今度、引き渡し済み額というものは五億六百五十七万一千ドル、日本のお金に直して千八百二十四億円です。この差額の分というものがはっきりしなかったわけです。しなかったですが、今度は、引き渡し額は、一九五九年から六〇年と、ずっと増加をしてきているわけです。これは一体どういうものがずれてきたわけなんですか。今までの答弁では、約八百億の差額というものは何もわかりません、こうおっしゃっておった。その八百億のわからなかったものが、一九五九年から六〇年にかけて、たとえば一九五九年は七千八百三十一万九千ドルのものが、引き渡し額は一億六百六万七千ドル、こうなってきておるわけです。そうすると、約八百億円程度のものがずっとずれてきておるわけです。わからないことはないはずです。それは一体、どういうものが計画額より上回ってきておるのかということです。これはあなた方は要求しているはずです。在日顧問団を通じて、こういうものが必要でございますと要求しているはずです。
  23. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 こまかくは事務当局から答弁いたしますが、八百億の差額の大部分というものは、自衛隊になる前に日本が受け取ったものの評価差額等が主であります。最近において計画額よりもよけいに援助額が入っておるのかというと、アメリカ日本との会計年度ズレでありまして、前年度のやつがおくれて今年度に入ってくる、こういうような格好で、最近におきましては、計画額よりも実際の受け入れ額がふえております。こういうものは、年度にまたがって入ってくるのであります。でありますので、八百億の分は、主として自衛隊になる前のものの差額でございます。
  24. 滝井義高

    滝井委員 どうも納得いたしませんが、しかし、時間の関係がありますから、だんだん本論に入っていきます。  そうしますと、この二億ドルをこえる対日軍事援助額日本に支給されることがおくれたために、あるいはその計画が変更されたために、日本自衛力漸増というものにいかなる影響を及ぼしつつあるかということです。
  25. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 おくれましても、漸増計画に、大へんな計画ズレというものは生じておりません。
  26. 滝井義高

    滝井委員 赤城さん、このくることになっておってこなかったおもなものを、一つあげてみてくれませんか。
  27. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 事務当局から御答弁申し上げます。
  28. 塚本敏夫

    塚本(敏)政府委員 八百億の違い、これはさっきも長官から申しましたように、自衛隊になる前の問題でありまして、ズレと申しますと、これは毎々申しておりますように、アメリカ側計画というのは、こちらには事前に通知はないわけでありまして、こちらは実績受領額を算定いたしておるわけであります。それが年々、こちらといたしましては、来年どのくらいもらえるかということで、予算とにらみ合わして計画をやっておるわけでありまして、そういう面からは、引き渡し上別にわれわれの計画とはずれておりません。それが毎年、どういうものがどれくらいきているかという内訳につきましては、追って資料提出さしていただきます。
  29. 滝井義高

    滝井委員 一九五九米会計年度までに、米国供与が約束されて、まだ日本に入っていない重要なものがあるはずです。そういうものはないのですか。ここでおわかりになるはずです。
  30. 塚本敏夫

    塚本(敏)政府委員 五九会計年度の中で、われわれが要求いたしましてまだきておりませんのは、陸上関係で三十五億円、海上関係で百七億円、それから航空自衛隊関係で七十二億円、この中に86D等も入っております。そういうふうな内訳であります。こまかくは資料提出いたします。
  31. 滝井義高

    滝井委員 こまかく聞きたいところですが……。岸総理、今お聞きの通り、陸上で三十五億、海上で百七億、航空七十二億、二百億をこえるですね。二百億をこえるような大事なものがきていないのです。そうして今の政府委員答弁にもありました通り、計画というものは通知がない。そうして、こちらは引き渡されると思っておるので、くるものだと思っておる。ところが、この三条をごらんになると、いいですか、「締約国は、個別的に及び相互に協力して、継続的かつ効果的な自助及び相互援助により、」となっておる。一体アメリカ日本武器を引き渡すということを、何を引き渡すか教えもしないで、これが継続的、効果的と言えますか。この点は、条約局長、一体どういう工合になっておりますか。
  32. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 めちゃくちゃに、向こうからくれるものをもらってくるというのじゃございません。こちらから、こういうものについて援助要求するということで、その計画に基づいて向こうが、予算とのにらみ合わせにおいて、これとこれについては援助をいたしましょう、こういう話し合いのもとで援助を受けておるのであります。ただ、ばく然と、めくらめっぽうに向こうからきたものを受け取っておる、こういうことではございません。
  33. 滝井義高

    滝井委員 では、あなたの方は防衛六ヵ年計画をお立てになったならば、一体アメリカから何と何をもらいたいということを作るわけでしょう。そうしますと、今度アメリカは、それをやるかやらぬかをきめるわけですよ。ところが、今の政府委員説明では、アメリカが何をくれるかわからない、計画はさっぱり教えてくれないのだ、こういうことなんです。そうすると、教えてくれないものを、一体効果的、継続的に自助なんというものは増強できはせぬでしょう、あるいは相互援助はできはせぬでしょう。向こうがくれるものをもらうというんだから、こんな非計画的なことはない。
  34. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 六ヵ年計画で、六ヵ年の間にどれとどれというような約束はできません。たとえば、日本の防衛力の増強につきましても、六ヵ年先まで毎年議会で約束ができないと同じような状態でございます。しかし、その年度、その翌年度等につきましては、こちらから申し入れまして、向こう予算とにらみ合わせて、これこれのものについてということの話し合いはしておるわけでございます。
  35. 滝井義高

    滝井委員 千五、六百億の日本自衛隊予算の中で、品物が二百億もこないのですよ、くれるという約束をしたものが。
  36. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 約束したものを、向こうは、くれないということで、やめたわけではございません。年度というか、月といいますか、そういうものでずれてきておるわけです。決してそれがやめたということではございませんので、その点は誤解のないようにお願いします。
  37. 滝井義高

    滝井委員 光陰は矢のごとしですよ。兵器はどんどん進歩しておるじゃないか。では、私は一つお尋ねいたします。日本は、ずいぶん前から潜水艦をお作りになったのですが、もう潜水艦は進水しましたか。
  38. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 一隻進水いたしました。
  39. 滝井義高

    滝井委員 いつ進水をして、現在もう使える程度に就労できておりますか。(笑声、「就役というんだよ」と呼ぶ者あり)働くんだから就労でいい。
  40. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 まだ就役いたしておりません。
  41. 滝井義高

    滝井委員 その潜水艦は、当初の計画では一体いつできる予定でございましたか。国会予算要求したときは、いつできる予定でございましたか。
  42. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 就役するのは本年の六月、こういうことに相なっておるのは、初めからその通りでございます。
  43. 滝井義高

    滝井委員 それは今年の六月に間違いありませんか。そんなに潜水艦というのは作るのに長くかかりませんよ。タンカーのごときは六ヵ月でできるのです。それは間違いないですか。
  44. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 これは進水して、でき上がっておるのです。就役がことしの六月、こういうふうになっております。
  45. 滝井義高

    滝井委員 それじゃ、それはいつでき上がったのですか。
  46. 塚本敏夫

    塚本(敏)政府委員 進水が三十四年の五月二十五日であります。今いろいろ艤装等をやっておりまして、竣工の予定が三十五年六月末の予定であります。
  47. 滝井義高

    滝井委員 三十四年度予算説明書をごらんになると、潜水艦の建造費総額二十七億一千八百万円——三十一年度から三十四年度にわたる既定の継続費であるが、日本アメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定に基づく供与品の入手の遅延等によって建造工程の変更を来たしたので、建造費既定年額割三億五千五万円を一億六千五十万三千円とし、残額を三十五年度に繰り延べることとしたもの、というのが三十四年の予算書なんです。そしてあなた方は、三十一年の予算審議をするときにどういうことでわれわれに説明したかというと、——これは「おやしお」という一号艦です。日本で作る一番先のものです。三十一年度計画では、船体とそれから機関が十四億円です。これは川崎重工業株式会社に請け負わしています。そして契約が三十二年三月三十日、契約の納期が三十四年三月三十一日になっている。ところが今度は、三十二年になりますと、川崎重工業との契約は三十二年三月三十日ですが、納期は三十五年二月十五日になっているのです。二月十五日に今度は納期が変わってきた。さらに三十三年度予算になりますと、今度は十四億の予算が、——これは船体だけですよ。船体だけが十五億八千三百万円と、一億八千三百万円上がっちゃったのです。上がって、納期は、今度は三十五年五月末になっている。これで一体進水してしまって、もう就役する前ですか。これは、あなたの方の防衛庁から出ている予算説明に書いているのですよ。こういうように、国民を、国会でもだますということはいかぬと思うのですよ。もう少しはっきり——こういう潜水艦というものは、今後における近代的な、ここにいう「能力」としては一番大事なものになってくるでしょう。これは一体今の答弁と違いますよ。あなたの方の書類、防衛庁の出している予算説明に書いておるのと違うじゃないですか。
  48. 塚本敏夫

    塚本(敏)政府委員 ただいまのお話のように、途中いろいろ計画の変更がありました。これは初めてのものでありまして、いろいろ困難な点がありましたので変更いたしたのでありまして、最終的には、私がさっき申し上げた通りになっております。
  49. 滝井義高

    滝井委員 あなたの方から出ておる書類を見ても、そのおくれた理由としては、アメリカからの供与品の入手の遅延ですよ。この上に積む武器アメリカからこないのですよ。そればかりではない、今度は資材が値上がりしておる。三十一年の予算を組んだときの鉄の厚板、薄板——私は全部調べてきました。その状態を見てごらんなさい。計画がだんだん狂ったために、日本国内における厚板、薄板の鉄板が上がっちゃったのです。そして、アメリカから今度は武器がこない。一体こういうように安保条約アメリカさんはうまいことおっしゃっておる。継続的、効果的に一つやりましょうというけれども、一何にくれるものを二百億以上もくれないじゃないですか。これで黙っておるところに——結局、この条約三条というところが一番大事なところですよ。三条というのは、これは以上明らかに軍事的な従属性を示しておる。アメリカがくれないのを黙っていなければならない。そして、日本の鉄が上がろうと、黙って待って、予算を、血税をどんどん食いつぶしていく、こういう姿です。一体、日本は、アメリカにこういういろいろの申し込んだ武器をもらうために交渉する駐在官を置いておりますか。
  50. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 これは顧問団と折衝してやっております。駐在官は、ほかの一般の駐在官はおります。それも使うことは使いますが、顧問団とのルートを通じて話をしているわけであります。  それから、先ほどこまかしておるのじゃないかという話でありますが、決してごまかしておるのじゃありませんで、滝井委員も御指摘のように、ちゃんと国会にも出しておりますし、それから、二百億は打ち切られたということではございません。これはズレてきておるということはあり得ることで、国内の発注においても、そういうことはあり得るのでありまして、これは通念といいますか、通常あり得ることでございます。なるたけそういうことは避けるようにはしておりますが、おることでありまして、決してごまかしや、あるいは隠しておるということではございません。
  51. 滝井義高

    滝井委員 近代兵器の発達というものは非常に早いのです。従って、もう三年も前に約束しておったものが今ごろきたのでは、潜水艦の型も変わりますよ。御存じの通り、もうポラリスの時代ですよ。(「だから、新しい武器がくるさ」と呼ぶ者あり)新しいものがきても、前に建造した船体と武器が合わなくなってしまうのです。だから、こういう点については、もう少しやらなければいかぬ。  それから、今アメリカに駐在官も置いていないので、どういうことになるかというと、外務省、大使館、領事館、それから今度は米国政府、米軍のデポー、こういうものに関連をしてきて、手続がややこしくて、入手するのに非常な手数がかかる。そのために事務的におくれて、ものがうまくいかない。これは防衛庁に聞いてごらんなさい、防衛庁の者はみな嘆いておる。だから、これは駐在官を置かなくちゃいかぬ、こういうことなんです。私は、何も置くということに賛成ではございませんよ。しかし、アメリカから二百億もこないところに日本の血税がむだになるということは、最小限度、野党が防ぎ得る点ですよ。もう少しその点考えなければいかぬです。
  52. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 滝井委員は二百億こないということを断定しておりますが、こないのじゃないのです、おくれているのです。しかし、駐在官は置いていないというのと違って、駐在官は置いてあるということを先ほどから申し上げているのですが、それより、こっちに顧問団がおりますから、これと話して、幾らでも早く事務的な手続はできるのです。電話一本で、すぐ向こうのワシントンとも連絡していますから、これは非常に事務的に進んでいます。  それから、兵器がポラリスになるから、もうだめじゃないかと言いますけれども、兵器の発達はありますが、どうも新聞やその他でいっているほどにでき上がってはおりません。まだポラリスも就役してないんですから、御心配はそれほどないと思います。
  53. 滝井義高

    滝井委員 なかなか言葉は重宝なもので、四頭立ての馬よりも舌の速さは早いと言いますが、なかなか要点になるとヤジも飛ぶし、政府もぼやけます。しかし、とにかく、三条の継続的かつ効果的なことをやるんだといっておるくせに、アメリカというものは大して協力をしてない。その協力してないものに唯々諾々として従っていかなければならぬという哀れな姿であるということです。それで、実はそれに関連して少し尋ねたいのですが、時間がありませんから、次に入ります。  そこで、まず私は、この条約区域の問題について、少し突っ込んで尋ねてみたいと思うのです。多分、この前の当委員会で竹谷委員からその一部が質問をされました。まず、政府答弁を確認する意味で尋ねていきますが、この五条における日本の施政下にある領域というものを御説明願いたいと思うのです。
  54. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 条約局長から御説明いたさせます。
  55. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 第五条でございますが、日本の施政のもとにある領域でございます。すなわち、法律的に日本の施政のもとにある領域を、この第五条における領域と考えております。従いまして、御承知の通り沖縄、小笠原、これは除かれますし、また、北方の領土も除かれると思います。
  56. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、四条と六条にある「日本国」というのは、これはどういうことですか。
  57. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 「日本国」とございますのは、場所によりまして、地域的にも了解すべきでございますし、また、法人格と申しますか、地域的な意味を考えずに、法人格的にも考える、おのおのその条文の文脈によって考慮されるべきであろうと考えております。第四条の「日本国の安全又は極東における」云々、この「日本国は」、この場合は日本国の安全でございますから、日本の領域とか、日本の広がりというようなことは頭に入れて考えていないわけであります。それから第六条の「日本国の安全」も、やはりこれは法人格的に考えた日本であろうと考えております。それから「日本国において施設及び区域を使用することを許される。」この「日本国において」と申しますのは、施設区域日本国内になければならない、これは領域的に考えた日本国であろうと思います。
  58. 滝井義高

    滝井委員 そうすると、十条における「日本区域における」という、その「日本区域」、これを御説明願いたい。
  59. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 「日本区域」と申します言葉も、もちろん、日本国を含みましたその周辺の地域を日本区域というふうに考えております。
  60. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、これは日本を含みますね。そうして、日本を中心として沖繩も含む、こういうことですね。
  61. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 この「日本区域」と申しますのも、どこを含む、どこは含まないというような、正確に地理的に線を引くような頭で考えているわけではございません。もちろん、日本の安全が第一でございますが、国際連合が安全の措置をするということは、一つの国だけに限って安全の措置をするということはちょっと適当でないと考えますので、日本を含んだその周辺地域、そういう周辺地域について全般的に国際連合が十分な安全の定めをする、そういうような意味合いにおいて「日本区域」ということを考えております。
  62. 滝井義高

    滝井委員 わかりました。そうしますと、六条に関連する交換公文の「日本国内の施設及び区域使用」の「日本国内」と、六条の「日本国」というのは、これは同じでしょうね。
  63. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 同じでございます。
  64. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、私は、十条の「日本区域」と、この条約にある極東の問題について、少し関連をしていきたいと思うのです。前文には、「両国が極東における国際の平和及び安全の維持に共通の関心を有することを考慮し、」ということがあるわけです。いわゆる両国が関心を有する極東の中に日本は入っておりますか、日本区域は入っておりますか。
  65. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 この前文の「極東における国際の平和及び安全」と申します「極東」は、これは日本アメリカが関心を持つということで、ここで前文において約束しているという意味合いにおきまして、この主体が日本アメリカでございますから、ここにおける「極東」は、日本を含んでないと考えるわけでございます。しかし、含んでおっても別に差しつかえはない、そういうふうに考えます。
  66. 滝井義高

    滝井委員 日本を含んでおると考えてもいいし、含んでいないと考えてもいいというような極東は、一体何ですか、そんなばかな解釈はないです。
  67. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 この前文で極東と考えております場合は、国際の平和、安全の維持に共通な関心を有する、そのうちに日本が含まれている。どちらでもいいと申します意味合いは、その極東における国際の平和、安全の維持に関心を有するということは、それは日本を除いた極東だけに関心を有するという意味合いではございませんで、これは日本についても当然の関心があるわけでございます。その意味におきましては、「極東」ということは、これは日本も当然含むと考えております。ただ、ここは日本アメリカが主体的に条約を結ぶわけでございますから、そういう意味合いにおいて、われわれが極東と言います場合、これは当然日本は含まれつつ、やはり極東と、日本以外のことに重点を置いて考えている。と申しますのは、日本の安全というのは、もう当然のことであるというふうにお互いに考えているわけでございます。
  68. 滝井義高

    滝井委員 どうもわかったような、わからぬような答弁です。ある場合には入り、ある場合には入っていない、まあ、一応そういうことでいきましょう。そうしますと、四条の「日本国の安全又は極東における国際の平和及び安全に対する脅威が生じたときはいつでも、」というこの「極東」には、日本は入っておりますか。
  69. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 ここは「日本国の安全又は極東における」と、こう書いてございまして、極東から特に日本を抽出して「日本国の安全」と入っておりますから、ここの場合には、日本は入らないと考えております。
  70. 滝井義高

    滝井委員 そういう工合に、なかなか極東でも違ってくるのです。四条の「極東」には日本は入っていないということがわかりました。前文の方の「極東」には入れても入れなくてもという、あいまいなことになっている。そうすると、六条の「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、」という「極東」には、当然これは今の四条の例から日本は入っておりますね。
  71. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 この第六条「極東」も、第四条と同じ意味合いで入っていないわけでございます。ただ、これは文章の解釈上の問題として入っていないということでございます。
  72. 滝井義高

    滝井委員 わかりました。そうすると、今度は政府は、二月二十六日に「新安全保障条約にいう極東の観念」というのをお出しになったわけです。この極東の観念の中における極東の区域というものは、「この条約に関する限り、在日米軍が日本施設及び区域を使用して武力攻撃に対する防衛に寄与しうる区域である。」こうなっておるわけです。そうして「かかる区域は、大体において、」——これは藤山外務大臣の得意な「フィリピン以北並びに日本及びその周辺の地域であって、韓国及び中華民国の支配下にある地域もこれに含まれている。」こうなっておるわけです。そうしますと、十条の「日本区域」は、この極東の範囲のどの部分に当たりますか。
  73. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 十条の「日本区域」というのは、日本を中心にして、将来国連が平和維持をやるという場合に、何か国連が措置をとるということを意味しておるのでありまして、そのときに国連がどういうふうに日本を中心にしてきめますかは、そのときの決定だと思うのであります。今から、日本を中心にした極東の区域という以上には申し上げかねるわけでございます。
  74. 滝井義高

    滝井委員 概念としては、こういうことになるのです。まず一番まん中に日本があります。そうして今度は、日本区域という概念が十条に出てきておる。だから、そこに日本の周辺がある。これは沖縄を含んでおりますよ。日本があって、日本の周辺、日本区域というのがある。そうして今度は、あなた方の極東というものがその上にかぶさってくる。そうして今度は、極東の外に、この解釈にもある通り「この区域の安全が周辺地域に起こった事態のため脅威される」という極東の周辺が、またあるわけです。こういう形になっておる。(「卵のかわだ」と呼ぶ者あり)今、卵のかわと言うように、そういう形になっておる。まず一番中に日本という核がある。核の外に日本の周辺がある。そうして今度は、外に極東があって、極東の周辺がこうある。この条約の今までのあなた方の説明では、こういう形になっておるでしょう。(「実抜きだ」と呼ぶ者あり)今、実抜きと言うように、二重になっておる。そこで、私は、極東の周辺なんというのを言っておるのではない。あなた方の言う極東の中で、一体日本の周辺というものはどこですかと、こう言っておる。これは大事なんです。条約に重要な関係があるんですよ。藤山さん、どうです。
  75. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 今申し上げましたように、十条の「日本区域」というのは、日本を中心にして——地理的に中心でありますかどうかは別として、日本を中心にして、極東の平和と安全が維持されるような何らかの措置が将来国連でとられる、その地域というものは何も確定したものではないのでありまして、そういうような措置がどの辺までとられるかということは、今後国連が決定すべき問題であり、そうして、それがわれわれの安全に寄与し得るものであって、国連の措置として寄与するならば、当然それはこの安保条約に対して考慮をするんだということを言っておるわけなんでございます。
  76. 滝井義高

    滝井委員 それは国連が決定するなら、何で沖繩が入るなんて言いますか。「日本区域」の中に沖繩は入ると言っているでしょう。それは、日本とそしてその周辺で、沖繩は入りますと、こうおっしゃっている。そうすると、南の方の点はきまったんですよ。日本の周辺で沖繩というものはきまった。沖繩は入る。沖繩が入るのに、一体どうして極東の中で日本の範囲というものはわかりませんか。これは極東の極念よりか、もっとあなた方は心配なく答えていい。極東だと、松村さんやら三木さんが、金門、馬祖、けしからぬじゃないかと、こう足を引っぱる人がおるから困るけれども、日本なら、だれも困る人おらぬでしょう。これを一つはっきりして下さい。こんな条約の一番根本になるところをはっきりしないで、だめじゃないですか。
  77. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 「日本区域」と申しまして、今申し上げましたように、国連が何らかの平和的な措置を将来国連自身において決定するわけであります。でありますから、それが、今たとえば、海上何海里だとか、そういうようなことをこれできめておるわけでもございませんし、今そういうことを申すべきものではないと思います。ただ、そういう事態に対しまして、国連がどういう範囲内で安全の措置をとるか、そして、それは日本に対して、日本の平和と安全または極東の平和と安全に非常な好結果がありますれば、この安保条約の問題を再検討しよう、こういうことなんでございまして、今、何もはっきりした区域があるというわけではございません。
  78. 滝井義高

    滝井委員 それなら藤山外務大臣、沖縄は認めないのですか。沖縄は入るとおっしゃっておる。日本の周辺に沖縄は入ると、この前竹谷君にも答弁しておるし、今も答弁しておる。だから私は、確認して言っておるわけです。私は、割合論理的に一歩々々固めた質問をして言っておるわけです。ですから、沖繩は入りますという答弁があったときに、今度、日本の周辺というものはわかりません、こうなると、じゃ、沖繩は入らないという答弁をして下さい。日本を中心にしていって沖繩が入るというんなら、南の方の点はきまったんですから、もう少し外務大臣として——この十条というものは、この条約の一番大事なところなんでしょう。将来条約をやめるか、やめぬかの一番境になるんですからね。
  79. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 今申し上げております通り、日本の平和と安全が確保される、同時に、極東の平和にも何らかの措置がとられるというような状況を国連が現出いたしますときに、どの辺までのところを国連が考えますかは、国連自身のそのときの決定であるわけでありまして、そのときに沖繩を入れるか入れないかというような決定は、国連自身でなされると思います。それに対して、われわれは、それが適当な措置であるかどうかということを考えるわけであって、今この区域に何が入っているとか、入っていないとかいうことを十条において申し上げることはないわけでございます。
  80. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、政府委員答弁と外務大臣の答弁と食い違った。そこで岸総理お尋ねしますが、「日本区域」の中には沖縄は入っておりまか。
  81. 岸信介

    岸国務大臣 私は、沖繩が入っておるとか入っておらないとかいう問題ではないと思います。十条の規定の趣旨は、先ほど来外務大臣がお答え申し上げておるように、とにかく、日本が中心となって、日本を含んでの地域における平和安全機構ができて、そうして日本の平和、ひいては極東の平和というものが保てるのに有効な措置がとられた場合において、これを言うということでありまして、日本が入ってなければならぬことは言うを待ちませんけれども、その周囲として、ここで区域に沖繩が入るとか入らぬとか、あるいは北方の領域のどこまでが入るとか入らぬとかいうことを「日本区域」ということがきめておると私は考えておりません。すなわち、今、外務大臣がお答えした通りに御了承願いたいと思います。
  82. 滝井義高

    滝井委員 そうすると、「日本区域」というのはわからなくなった。「日本区域」というのは、もう一ぺん総理大臣に答弁を求めますが、第五条の日本国の施政下にある領域ということと同じではないでしょう。これより広いでしょう。前の答弁と全然違ってきた。前の高橋さんの答弁では、われわれは系統的にいったなと思っておった。竹谷さんと同じだ。ところが、今沖繩が入るかどうかわからぬ、こうなって参りますと、ぼやけてくる。だから、もう少しはっきり岸総理答弁一つ要求いたします。
  83. 岸信介

    岸国務大臣 もちろん、施政下にある領域ということと、「日本区域」ということは違っております。従来お答えしておる通り、日本を含めて、日本を中心としてその周辺ということが「日本区域」ということである。しかし、その区域というものは、地理的に、それでは北緯何度から何度までの線であるとか、東経何度から何度までの線であるとかいうふうな観念ではない。従って、具体的にどの島が入るとか入らないとかいうことを意味してはおらない。日本を中心として日本の周辺、こういうのが「日本区域」、だから、その点におきまして、政府委員答弁とわれわれのと少しも違っておりまん。
  84. 滝井義高

    滝井委員 わかりました。そうしますと、政府の定説は、沖繩とかどうとかいうことではない、日本を中心として日本周辺というものが日本区域じゃ、こういうことを一応定説に確認をいたしておきます。  そこで、そうしますと、岸さん、この六条の、日本において施設及び区域を使用する、この区域と、日本区域とは全然違いますね。違います。その通りです。そうしますと、一体、基地とは何です。この条約の基地とは何です。
  85. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 条約によって、日本施設及び区域の使用を許すということになっておりますが、その施設及び区域であります。
  86. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、その基地とは、日本アメリカに許しておる一定の区域、一定の施設を意味するのですか。
  87. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 条約上は、われわれは、ここを施設及び区域と呼んでおります。すなわち、一定の施設または一定の区域でございまして、これは第六条におきまして、それの使用をアメリカに対して許しているわけでございます。
  88. 滝井義高

    滝井委員 六条に関する交換公文をごらんになると、「戦闘作戦行動のための基地としての日本国内の施設及び区域の使用は、」と、こうなっておるわけですね。そうしますと、現実日本アメリカに貸しておる、指定をしておる施設区域のほかに、どこでもアメリカは、たとえば具体的に申しますと、板付がやられちゃったというときには、築城の飛行場に行って——アメリカに今貸しておりませんが、行って使うことはできるでしょう。これは基地として使うことは自由でしょう。
  89. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 勝手に使うわけには参りません。行政協定の二条で、委員会において、個々的にその施設及び区域を許すかどうかはきめるわけでございますから、勝手に使うということには相なりません。
  90. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、一体日本の基地協力のできる限界ですね、これはやはりはっきりしておかなければならぬと思うのです。アメリカの基地というものは、そうたくさんないのですから、いわゆる施設区域というものは、いつどういう形になるかわからない。そうすると、日本アメリカに基地使用について協力をする限界というものは、一体どういうことになるのですか。
  91. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 こういうふうに御理解願うとけっこうだと思うのです。第六条によって米軍に施設及び区域の使用を許します。米軍が作戦行動にその施設及び区域を使う場合には、これを基地と称するわけであります。でありまするから、基地として使用する前に、施設及び区域のきめがなくてはなりません。そのきめは、行政協定第二条によって、合同委員会において個々的にきめるのでございます。でありまするから、勝手にどこでも使える、こういうわけには参りません。
  92. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、そういう場合に、それは四条の協議の対象になるのですか。
  93. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 御審議を願っておりまする行政協定の第二条に書いてあります。それによることであります。
  94. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、それは全く四条には関係なく——私が言うのは、特定のきまっておる施設というものは、これはもう六条ではっきりしてくるわけです。ところが、基地ということで使用するのは、どこでも使うことになるわけです。いざ戦争というときになれば、日本全土基地ですよ。これは簡単にいえば、日本全土基地になる可能性がある。その場合に、一体その協議というものを四条ではやりませんかというのです。
  95. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 条約局長から答弁することになると思いますが、日本全土を基地として使うということじゃございません。先ほど申し上げましたように、第六条によって日本施設及び区域を許すわけです。それを、戦闘作戦行動に出る場合に、出ることを許すか許さないかということの立場から見て、基地と称する。だから、基地というのは、日本の許した施設及び区域が基地になるわけです。それが戦闘作戦行動に出る場合に基地と称しておるわけです。でありますから、行政協定二条によって、個々的に施設及び区域をきめたものでなければ、基地として使うわけには参りません。
  96. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、基地として使うというのは、戦闘作戦行動の場合だけを基地というのですか。私そんなことはないと思う。たとえば基地としては、補給、整備作業、哨戒、護送だって、みんな私は基地として使う場合があると思います。今の解釈間違いですよ。そんな間違いを防衛庁長官はやるのですから——私しろうとですよ。しろうとをごまかしてそんなうそを言ってはいかぬですよ。
  97. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 ただいまの御指摘の点でございますが、基地としての使用云々という問題は、使用ということは、いずれの場合においても施設区域の使用でございます。第六条でも、やはり戦闘作戦行動として施設区域を使用するわけです。その使用の態様は、いわゆる形容詞的と申しますか、戦闘作戦行動でございますから、それは基地的な使用ではなかろうか、こう考えまして、そこに基地としての使用ということをいっておるわけでございますが、あくまでも施設区域の使用でございます。そして第六条に、その施設区域の使用の大きな目的を立てているわけであります。ただ、個個の施設区域につきましては、行政協定第二条によりまして、その個々の施設区域を、合同委員会を通じて、日本アメリカに提供するわけでございます。そして提供した施設区域だけしか、アメリカはいかなる場合においても使用することはできない、こういうことでございます。
  98. 滝井義高

    滝井委員 先へ進みます。そこまでくればいいのです。そうしますと、旧行政協定の二十四条に、日本区域というのがあるわけですね。それから新五条には、施政下の領域とあるわけです。これは一体同じですか、違いますか。
  99. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 この二十四条の「日本区域において敵対行為又は敵対行為の急迫した脅威が生じた場合」とございますが、これは日本の施政のもとにある領域だけに限っておることではないと私は考えます。
  100. 滝井義高

    滝井委員 旧行政協定二十四条というものは、今度新しい五条にある程度生まれかわった条文だ、こうあなた方も説明しておったし、そうわれわれ理解しておったわけです。そうしますと、今までの行政協定では、これは日本区域でいろいろなものが起これば協議をしなければならぬことになっておったわけですね。今度は直ちに共同行動をとるのです。この違いがありますが、では、この日本区域というのは、施政下の領域よりか広いというと、十条の日本区域と同じですか。
  101. 林修三

    ○林(修)政府委員 御承知のように、現在の行政協定の二十四条は、正確な意味ではございませんが、新条約の四条と五条に分かれてきておると思います。今滝井委員御指摘の通りに、旧行政協定の二十四条は、協議をするということが主体になっているわけでございまして、直ちにいかなる行動をとるかということは、二十四条は直接にはいっていないわけでございます。従いまして、そういう意味で、新条約の四条と五条に分かれて入ってきていると考えていいと思います。それで日本区域でございますが、これは今条約局長が申し上げました通りに、必ずしも日本のいわゆる領土、領海、領空ということに制限するまでのかたい意味ではない。多少それに幅を持たしたらいいだろう、かように考えております。
  102. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、十条の日本区域と同じですか。
  103. 林修三

    ○林(修)政府委員 十条の日本区域と同じという意味がちょっとわかりかねますが、十条は、この規定の趣旨からお考え願いますと、先ほどから条約局長あるいは総理大臣からお答えがございました通りに、要するに、日本を中心として日本がその中に入って、による安全保障措置がとられるということでございます。従いまして、その場合の日本区域、要するに日本が入っていればいいわけでございまして、極端に言えば、極東全体の安全保障措置でもいいわけであります。もっと極端に言えば、世界全体の安全保障措置でもいいわけであります。日本が入っていればよろしい、あるいは日本の周辺が入っていればよろしい、そういうことでございまして、多少規定の趣旨が違うのでありますから、正確に同じということはちょっと言いかねるかと思います。
  104. 滝井義高

    滝井委員 安全保障措置で、日本が入っておりさえすればいいということですか。今までの主張は、極東の平和と安全とは、日本の平和と安全とうらはらの関係にあるというのが、藤山さんのすっぱく今まで言ってきたところです。そうしますと、日本が入っておって、日本の安全だけがあれば、あとはどうなってもいいということになって、極東の平和とかなんとかいうことは、何も言う必要はなかったわけです。
  105. 林修三

    ○林(修)政府委員 ちょっと私が申し上げたことをその通りにとっていただけなかったかと思いますが、日本だけが入っていればいいという意味ではございません。日本が安全であるためには、当然その周辺地域の安全が保障されなければいかぬわけです。日本が安全であるということが確立されれば、十条の目的が達せられる、こういう趣旨で申し上げたわけであります。
  106. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、日本が安全のためには、日本の周辺が入るということなんですね。日本の周辺が安全でなければだめなんですと藤山さんは言っておる。その周辺というのが、この条約にもっと端的に現われておるのは、極東の平和と安全とうらはらになります、こう言っておりますから、極東の平和と安全が保たれなければいかぬ、こういうことでしょう。ここが一番大事なんです。私はここが結論なんです。
  107. 林修三

    ○林(修)政府委員 要するに、十条において、わが国として、あるいはアメリカとして、日本安全保障条約を終止させる条件を書いてあるわけでございます。そのやめる条件として何があるかということで、日本区域において国際連合による国際的な平和と安全の措置が十分にとられた、そういうことでございます。その判断は、日本あるいはアメリカがそれぞれやって、両方が合意しなければもちろん問題になりませんが、日本といたしましては、要するに、日本の安全が確保されたということを考え得る状態にあればいいわけであります。それは国連による日本だけの安全保障措置が普通考えられないということは、先ほど条約局長が申し上げた通りであります。当然にそれは極東全体、あるいは極東の一部ということについての安全保障の措置だと思います。その場合に、日本がはたしてそれによって安全なりと言い得るやいなやということも判断をして、そこできめるわけであります。日本が安全であればいいのであって、日本の周辺がどこまで広がっているかということは、十条では必ずしも固定していない、こういう意味を先ほどからお答えしたわけでございます。日本の周辺だけが入っている安全保障措置と見なければならないという意味ではないわけでありまして、外の広がりは、どこまで広くてもいいわけであります。少なくとも日本が安全であると考え得る状態になっているものが必要だ、そういうことでございます。
  108. 滝井義高

    滝井委員 今のような御答弁になりますと、この十条の書き方と、それから、今までずっと各条に、日本の安全とか、あるいはそれと並べて極東の平和と安全と、こう書いてきたわけです。ところが、十条にきますと、この条約が効力がなくなるというのは、日本区域における国際の平和及び安全の維持のために十分な措置がとられたらいいのだ、こうなっておるわけです。そうしますと、藤山外務大臣が今まで言ってきた、いわゆる極東の平和と安全というものは、一体どうなるのだということなんです。極東の平和と安全がなければ、日本区域の安全があってもだめなんだというのが、今までの答弁だったのです。今までうらはらだった。これは速記をごらんになっても、みなそう言っていますよ。日本の平和と安全と極東の平和と安全とはうらはらだ、こう言ってきておる。そうしますと、この条約の十条は、日本区域における安全だけが確保されたならばやめるということになっておる。今の説明でもそうなっておる。(「重箱のすみをほじくるようなことを言うな」と呼ぶ者あり)
  109. 林修三

    ○林(修)政府委員 日本の平和と安全と、極東の平和と安全がうらはらだということは、私は、政治的、実際的にも問題だと思います。政治的あるいは実際的に見た問題で、極東の安全が確保されなければ日本の安全も確保されない、そういうことで外務大臣は言われてきておると思います。必ずしも法律的な意味でそう言われておるわけではないと思います。日米安全保障条約は、あくまで、まず第一に、日本の安全ということが主体でございます。従いまして、十条は、日本の安全が確保される、あるいは日本の周辺地域の安全が確保されるということができて、日本が安全であると思えば、一応この安全保障条約を解消する条件にはなる、こういうことでこれはきめてある、こう考えております。
  110. 滝井義高

    滝井委員 私は、その趣旨はそうだろうと理解をしております。四条には、「日本国の安全又は極東における国際の平和及び安全に対する脅威が生じたとき」と、日本のほかに極東について言っておるわけです。それから六条においても、「日本国の安全に寄与し、並びに極東」と、こう言っておる。そうしますと、今度は十条では、日本区域というものはどこまで広がりを持ってもいいのだと、極東の範囲と同じような答弁に、結論的にはなっておるわけです。そうすると、もし極東というものに日本区域が該当するというならば、さいぜん言ったように、これは明らかに極東に該当いたしますと言ったらいい。あくまで日本の周辺だけですと岸総理答弁しておる。だから、私はさいぜん、くどいけれども——重箱だ、何だと言うけれども、これが一番大事なところだから言っておるのです。この条約は、十条で、日本の安全が確保されたらやめるということになっておる。日本の安全というものは、極東の安全がなければ確保されないというのが今までの答弁だった。ところが、十条をごらんになると、極東のことは何も書いてない。そんなら、いっそ六条も四条も、極東なんということはどけてしまった方がいいんです。どけてしまえば、アメリカの極東地方における出兵からわれわれがやられるということはないのです。これは岸総理、条文を読んでみて下さい。日本区域という以外には、極東の安全、平和というものは何も書いてないでしょう。あとの条文には全部、日本の安全のほかに極東ということが書いてある。しかも、その極東には日本は入りませんというのが答弁なんです。極東には日本が入らないという答弁をしてきておる。これは違うじゃないですか。これは文章がその通りなんです。おかしい。
  111. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 極東の平和と安全ということが、日本の平和と安全にも関係することは、当然でございます。従いまして、われわれとして関心を持っているんです。これは、安保条約があろうとなかろうと、極東の平和というものについてはわれわれ関心を持っています。ただ、十条においては、国際連合が国際の平和と安全維持に対する措置をとるわけであります。その措置の広がりが、世界全域にわたる場合もあるかもしれませんが、何も極東全域にわたらなくても、われわれの目的であります極東の一部なり、あるいは日本自身の平和なりが維持できるというような状態が現出されれば、あるいはこの条約はやめてもいいじゃないかという意味においてこれは書かれておるのでありまして、極東の平和と安全に対して関心を持っておることは当然でございます。
  112. 滝井義高

    滝井委員 頭隠してしり隠さずという言葉があるけれども、頭には、極東について両国は関心を持ちますということで、条約の前文にうたっておる。頭はぴしゃっと極東と書いてしまって、しりにきたところが、日本区域だけになってしまっておる。ここの安全ができたらこの条約は終わりですというのでは、今まで関心を持ち、極東の平和と安全が日本とうらはらで、これが一番大事ですと言っておったことを取り消しなさいよ。これは間違っていない。条文を見たらこの通りです。
  113. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 私の申し上げた通りでおわかりをいただけると思うのでありまして、取り消す必要はないと思います。
  114. 滝井義高

    滝井委員 岸総理、あなたは心を平静にして、この条文を読んでみて下さい。私は条約についてはしろうとです。私、外交問題をここでこうして質問をしたのは初めてです、国会に出てきて……。初めての私が、これを、心を平静にして読んでみた。いわゆる斎戒沐浴して読んでみた。ところが、どうしてもこの十条というものは、前の条文との関連で納得ができない。いわゆるしろうとというものが読んでも、わかるような条約でなくちゃいかぬ、これは国民条約ですから。だから、明らかに、今あなたが、日本というものは日本を中心とするその周辺だ、林法制局長官は、その広がりというものはどこまで広がってもいいのだと言うならば、ここに極東とお書きになった方がはっきりするのですよ。極東の区域における国際の平和と安全が確立されたら日本も安全だ、その極東には日本が入りますと、こう説明をしてくれたらはっきりするのです。
  115. 岸信介

    岸国務大臣 この安保条約は、言うまでもなく、日本の平和と安全を確保するということが主眼でございます。しかして、極東の今の国際情勢から見て、極東における国際的な平和と安全が維持されるということが、日本の平和と安全に緊密な関係のあること、これを認めているわけであります。従って、極東におけるところの国際的平和と安全が確保されるということ、同時に、われわれ、その中心点である日本の平和と安全を確保する上からこれを必要として、これを考えているわけであります。今十条の問題における、日本区域における国際的な平和と安全が確保されるという措置が国連によってとられた場合においては、この条約は失効する、効力をなくする、こういう。その場合の日本区域ということは、日本を中心として、日本を含めて、日本の周辺の平和と安全に対して有効なる措置がとられた場合であります。その措置というものはどういう場合があるか、こう言えば、先ほど来お答え申し上げているように、その措置のために全世界が、かりに一切の武装を撤廃して、そして世界の恒久的平和ができるということができれば、もちろん日本周辺は安全だから、これをなくしてよろしい。また、極東全体について何らかの措置が、かりに、たとえば社会党のなにがいわれるように、国連のなにによってあるいは日中、あるいはソ連や米を入れて四ヵ国の太平洋不可侵条約というものがかりにできたとすれば、これまた、私は、日本周辺の安全が国連によって確保されたということになると思うのです。従って、問題は、何も極東の地域がどうだとか、あるいは日本区域の地域がどうだとか、あるいは日本の領域がどうだということではなくして、条文の趣旨、設けられている趣旨から御了解願わなければ、ただ地図の上において線を引いて、領土はこうだ、周辺はこうだ、日本区域はどうだ、極東はどうだというふうな、地理的ななにをすべき問題ではない、これが私どもの一貫した説明でございます。
  116. 滝井義高

    滝井委員 そういう、条約を弾力的に、政府の中でもまちまちのような解釈では困る。いいですか。六条では、「日本国の安全に寄与し、」と、その寄与する場合に…     〔発言する者あり〕
  117. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 静粛に願います。
  118. 滝井義高

    滝井委員 日本は、アメリカの陸海空軍に基地を提供することができるわけであります。もう一つ大事な点は、「極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、」これを使わせるわけです。この概念が違うのですよ。日本国の安全に寄与する概念と、極東における国際の平和と安全に寄与する概念とは、概念が違う。しかも、日本区域という概念は——日本区域の国際の平和と安全に寄与するということは、これは概念としては、極東の中のまた一部に当たる概念です。だから、私たちは、これは政治的にとかなんとかじゃなくて、条約というものは、法律と同じですから、その条文に従って、やはりものは考えていかなければならぬ。だからこの点は、今のような解釈では、それは日本区域というものはずっと広がります、極東と同じだ、相似形でございますとあなたがおっしゃるなら、それならそれで私は引き下がります。それが政府答弁だというなら、引き下がります。なぜならば、まず第一に、この日本の付近だけが安全であっても、この六条にいう、今度ば極東における国際の平和と安全に脅威があったら、これはどうもならぬのですよ。どうもならない。ところが、今岸総理なりあなたは、日本だけが安全ならばと言う。だからここに、日本区域という言葉の魔術があるわけです。日本区域という言葉の魔術がある。だからこの区域というものを、私はさいぜんから、はっきりしなさいと言う。そうすると、条約局長は、この前の竹谷さんの答弁にも、私の答弁にも同じことを言ったのだが、あなた方二人は、強引にそれを修正してしまった。だから、もう少しこれははっきりしないと、どうも私は納得できません。
  119. 岸信介

    岸国務大臣 この条文に、さっきから御指摘になっているように、日本施設下にある領域という観念と、それから、日本国とかいうような観念、あるいは日本区域という観念、さらに極東という観念、これはいずれも一面において地理的な要素を持っておる観念であります。ただ、それを明確に地図の上に表わし得るのは、今言ったように、日本施設下にある領域というものははっきりできるけれども、その他のものはそういう観念じゃない、抽象的な観念である。地理的な観念ではあるけれども、抽象的である。その場合において、日本区域ということは、それではどういう区域をいっておるのかといえば、日本を中心としてその周辺ということであるということは、先ほどから申し上げておる通りであります。極東というものはさらにもう少し広い観念であることも、これもしばしばお答え申し上げておる通りであります。そこで、一体、日本周辺の——要するに、この安保条約というものは、日本の安全と平和を守るための条約であります。これを守るためには、現在の国際情勢、状態から申しますと、極東における国際の平和と安全というものと、日本の平和と安全というものには、緊密な関係がある。従って、両国が関心を持って、そこの極東における国際的平和と安全に寄与するという考え方をこの中に盛っておるわけであります。しかし、中心は日本の平和と安全ということにあることは、言うを待たない。しこうして、この十条の、日本区域における国際的平和と安全を確保するところの機構が、何らか国連においてそういう措置がとられた場合においては、この条約は効力をなくする、こういうことにしておるわけであります。その場合における、日本区域の国際的平和と安全が保たれるというためには、それでは現実に国連がどういう措置をとるかということは、そのときの国際情勢なり世界的な観点から、また、極東における諸種の事情から、日本及び日本の周辺だけについて特別の規定をするだけでたくさんであるという場合もありましょう、あるいは、極東全体が平和を保たなければ日本の周辺は安全じゃないという場合もありましょう、またさらに、さっき申し上げたように、世界的に何らかの全体の機構ができて、それによって日本及び日本の周辺というものが安全だということになれば、この条約は失効する、こういうことを申しておるわけでありまして、その場合の、日本周辺の、いわゆる日本区域の国際的安全と平和を保つためにどういう取りきめがされ、どういう措置が講ぜられるかというその範囲とは——さっきから申しておるように、そのときの国際情勢その他によって、いろいろな取りきめなり、いろいろな措置がとられるのであって、それは必ず日本だけが安全だというようなことは、今こういうような国際情勢が続く限りにおいては言えないだろう、こういうことを申しておるわけであります。
  120. 滝井義高

    滝井委員 それならば明快なんです。今のように明快なのが、条文ではそうなっていない。だから、それならば、日本区域における国際の平和及び安全並びに極東における国際の平和と安全について、国際連合が措置をとったとき、私はこうお書きになった方がいいと言うのです。そうでなくて、今までの条文では、極東の平和と安全ということをしきりに言ってきて、そして一番大事なときになったら、どうも大事なところは抜けてしまっている。これはそうなるのです。第一、条文の前文に、日本区域における国際の平和と安全に関心を持つとは書いていない。両国が極東における国際の平和と安全に対して関心を持っておるということなんです。だから、これは日本だけで勝手に認めても、アメリカが認めなければ、だめなんです。だから、条文の書き方としては、これは日本だけという利己的な考え方でなしに、もしこういう条文をお書きになるならば、極東の平和と安全、こういう工合に書くと、やはり当然これはアメリカがもっと責任を持たなければならぬ部面がよけいに出てくるわけです。だから、そういう点については、どうも心を平静にして読めば読むほど……(発言する者あり)幾らヤジが飛んでも、何でもないわけです。頭が悪いと言われても、国民がこれを理解しなければ、しようがないのです。われわれはこれを冷静に読めば読むほど、そういうことなんです。だから、岸さんのように領のいい人がごまかしてはいかぬ。どう考えても、これはごまかしです。前文に一宇一句も日本のことを書かずに、極東の平和と安全のことを書いておきながら、一番最後になったら日本だけのことになる、こういうことでは、この条約改正はいつまでたってもできませんよ。
  121. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 十条を率直にお読みになれば、おわかりいただけると思うのでありますが、国際の平和及び安全というふうに書いてございます。国際の平和と安全の中には、当然極東の平和と安全も含まれているのでありまして、先ほど総理が言われましたように、世界的軍縮の場合もございましょうし、それが日本区域に十分な平和と安全をもたらすということもございましょう。あるいは、国際の平和及び安全の維持という国連の定めが、極東の範囲内にとられる場合もございましょう。そういうような意味に解しますれば、この場合におきましては、国際の平和及び安全の維持と書きます方が、極東の平和と安全の維持と書くよりもよりよいことは、申すまでもございません。
  122. 滝井義高

    滝井委員 国際の平和と安全の維持と書いておるから、それは広く読めるなどと言うけれども、前文では、「極東における国際の平和及び安全の維持」こう書いてあります。これは水かけ論になりますし、ちょうどきりがいいから……。これは、いずれまたあとで同僚が引き続き質問されると思いますし、今度は違った条文に入りまして、一時間以上かかりますから、一応これで休憩を……。
  123. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時四分休憩      ————◇—————    午後一時四十六分間議
  124. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、竹谷源太郎君より、資料要求の件について発言を求められております。これを許します。竹谷源太郎君。
  125. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 昨日の東京新聞夕刊によりますると、政府は来たるべき国連総会において、憲章第五十三条でありまするから、当然に百七条も入ると思いますが、この旧敵国条項の削除を含むところの、憲章改定のための全体会議の招集について、決議案を国連に提出をする、このことのための国会決議を考えているという報道がございます。政府のこの動きは、一見きわめて妥当のようには見えますけれども、われわれとしてはいろいろ疑点もございます。つきましては、先日、受田委員質問に対する政府答弁において、国連憲章改正案が政府にはできておる、手元に改正案を作って持っておる、こういう御答弁もありましたので、この改正案を資料として本委員会提出すべきことを要求いたします。安保条約審議上にも、また、将来国連憲章との関係からいいましても、これは資料としてぜひ必要と考えます。委員長におかれましては、この資料提出についてしかるべくお取り計らいをされんことを望みます。
  126. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 ただいま何か新聞紙上に、政府が、来たるべき国連総会に憲章改正の原案を出すようなことがあったということでございますけれども、今まだそこまでの具体的な問題を考えておるわけではございません。政府としても、この問題について、国連憲章改正の全般の問題について関心は持っておりますので、調査をしたり、あるいは材料を収集したり、そういうような形におきまして、今慎重に検討をいたしておるわけであります。先般、横田博士を中心として一つの案ができておるというのは、民間団体でできておるという意味で申し上げたわけであります。
  127. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 わが党の受田委員質問に対して、政府にはそのような改正案ができておるというようなお話があったように私は聞いた。だから、そのような案があれば出していただきたい、こういうのであります。
  128. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 今申し上げた通りでございまして、政府は確定的な案をまだ作っておりません。
  129. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 政府として確定案とはなっておらなくとも、横田案なるものがあるそうです。そういう案でもけっこうです。そういう材料があれば、出していただきたいと思います。
  130. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 先ほど申し上げましたように、横田博士その他が学会等において作りました案があるということを、この間申し上げておるわけであります。そういう種類のものでありますれば、それは学会に連絡してお取りすることができるのではないかと思いますけれども、外務省としての案を持っておるというわけではありません。
  131. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 外務省にはまだ確定案がないということでありますが、民間団体でも、そのような参考になる資料があれば、政府から提出してもらうように、委員長においてお取り計らい下されんことをお願いいたします。
  132. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 承知いたしました。     —————————————
  133. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 質疑を続行いたします。滝井義高君。
  134. 滝井義高

    滝井委員 午前中は、十条に関連をいたしまして、主として日本区域の問題を御答弁願ったのですが、今度は、この委員会でたびたび政府から答弁がありましたが、なお確認する意味において、在日米軍というものの性格、これを一つはっきりしていただきたいと思うのです。そこで、藤山外務大臣に、在日米軍とは一体何か……。
  135. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 条約局長から詳しく御説明をいたさせます。
  136. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 在日米軍というお話でございますが、実は、在日米軍というのはどういうものをいうのであるか、在日米軍という概念を協定上明らかにしているわけではございません。従いまして、この各条文に従って在日米軍ということを——条文に従うと申しますか、在日米軍という概念は、はっきり条文上はきめておらない。ただ、在日米軍というのは、たとえば第六条の交換公文におきましては、合衆国軍隊日本国への配置における重要な変更、日本国に配置された軍隊という意味合いに一つの在日米軍がございます。また、第六条において、日本施設区域を使用する、そういう意味合いの在日米軍があるわけでございます。
  137. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、交換公文や六条の在日米軍、それから五条ですかの在日米軍ですか、私の考え方では、在日米軍というような、何か政府が今まで言っているような概念というものは、五条と六条から出てくるんじゃないかという感じはしますが、政府は今まで在日米軍というのはしょっちゅう言っていらっしゃるんです。藤山さんも言っていらっしゃれば、赤城さんも言っていらっしゃるのですね。そこで、在日米軍というものは、一体どこの条文から在日米軍という言葉が出てくるのか。もし在日米軍というものがなければ、合衆国軍隊と、こう正確に言ってもらったらいいと思うのです。今まで政府が言っている在日米軍というものは、一体条文のどこから出てくるのか。
  138. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 今条約局長が御説明したところで尽きておると思っておりますけれども、日本におります合衆国の軍隊というのを、われわれ通俗的に在日米庫と言っておるわけでございます。
  139. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、日本におる合衆国軍隊、こういうことになりましたが、岸総理、それでよろしゅうございますか。
  140. 岸信介

    岸国務大臣 これは先ほど来条約局長がお答え申し上げておるように、協定条約等に在日米軍という言葉は用いられておりません。これが用いられておりますのは、通俗的な意味において用いられておるわけでありまして、その意味は、日本に配置されておる米国軍隊という意味においてということが、普通の概念だと思います。
  141. 滝井義高

    滝井委員 違って参りました。日本におる在日米軍と日本に配置されておる在日米軍とは違うのです。岸総理と二人食い違ってきた。日本におる在日米軍と日本に配置されておる軍隊とは違うのですよ。
  142. 岸信介

    岸国務大臣 先ほど条約局長が申しておるように、在日米軍ということには、二つあるだろうと思います。今日本に配置されておる米国軍隊ということと、日本におって日本施設区域を使用する軍隊と、こういう意味の在日米軍と二つあるだろうと思います。私の申し上げたのは、通常われわれが在日米軍、在日米軍と言っておる常識的の観念としては、前者をさしております、こういうことを申し上げておるのでありまして、正確に言えば、条約上からいって二つある、こう思うわけです。
  143. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、まず、日本に配置をされておる米国軍隊と、日本施設その他を使用しておる軍隊、こう二つある、そのうち、政府としては、通常日本に配置されておる米国の軍隊を在日米軍と言っておるのだ、こういう明快な答弁が出て参りました。  そこで、もう一つ政府は言っておるのです。それはどういうことを言っておるかというと、これは赤城説です。いわゆる日本にある駐留軍の指揮下にある軍隊、駐留軍というのは、おそらく司令部だと、こう私は善意に解釈をしたいと思うのですが、日本にある在日司令部の指揮下にある軍隊、これが在日米軍だと言っておるのです。これはどうですか、赤城説は間違っておりますか。
  144. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 日本に配置され、あるいは日本施設区域を使用する、しかも、日本にある司令部の指揮下にある、これを在日米軍というと思います。在日米軍というのは、法律上の名称ではありませんが、在日米軍とはいかなるものをさすかということでありますので、私の方でそういうふうにお答えしたわけです。
  145. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、政府岸総理の見解に今度赤城説が加わって、在日米軍というのは、日本に配置されて、日本施設を使用しておって、そうして在日米軍の指揮下にある軍隊、これでいいのですか。岸総理、今指揮下にある軍隊というのが加わってきたのですが、これでかまいませんか。
  146. 岸信介

    岸国務大臣 日本に配置されておる米国軍隊は、今赤城君の申しておる、日本の米軍の指揮下にある軍隊だろうと思います。それは違っておるのではないのです。別の条件ではない。別の方向から言っておるのではないかと思います。
  147. 滝井義高

    滝井委員 そこをもう少し自信を持って政府は言ってもらわなければ困る。今まであなた方は、在日米軍というのを、藤山さんが四月十五日には、日本施設区域を使用しておる米軍、これが在日米軍だということを一ぺん言いました。そうしてその後藤山さんは、同じく四月十五日の飛鳥田君の質問に対して、日本の基地と施設を使って日本に配置されておる軍隊と、こうなった。ところが、今度はその後赤城説が出て参りまして、指揮下にある軍隊と、こうなった。ところが、今政府の方は、今度は岸総理も一緒になって、配置されて、指揮下にあるものも一緒だ、こういうような工合になってくると、一体どれがほんとうか、定説がわからない。だから、それをもう少しはっきりしないと……。これは重要なんですよ。どうですか、はっきりして下さい。
  148. 岸信介

    岸国務大臣 これは今お答え申し上げました通り、条文的に在日米軍という言葉は使ってなかろうと思います。用いておりますことは、要するに、広い意味で言えば、日本におるアメリカ軍隊ということでありましょうが、これをもう少し通俗的ではありますけれども、たとえば、第七艦隊は在日米軍と見るかというような議論がしばしば行なわれました。そういう場合に、第七艦隊は日本に配備されておる軍隊ではないから、われわれは在日米軍とは考えておりません。しかしながら、この第七艦隊が日本施設区域を使用することも、もちろん入港してあるわけです。そういう場合においては、やはり広い意味における在日米軍と申しますか、やはりいろいろ施設区域を使用することに関して生ずる権利義務の点においては、日本に配備されたる米軍と同じような扱いを受けるという意味において、あるいは在日米軍というような言葉で言われるかもしらないけれども、われわれは在日米軍として考える場合においては、日本に配備された軍隊を考える。配備されておる米国軍隊ということになると、日本に配備された米軍の指揮下にある米軍ということで、赤城長官は、配備されたということでなしに、別の方向から指揮下にあるということを言ったものであって、その間違わない、私はこう考えております。(「横田にある戦略空軍はどうしたんだ」と呼ぶ者あり)
  149. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、今、横田にある戦略空軍はどうしたんだというように、日本にありますけれども、指揮下にない軍隊があるのですよ。こういうのは一体どうなるのです。自信を持って答弁してもらわなければいけない。
  150. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 横田に戦略空軍があるというお話でございますが、私どもは戦略空軍があると思っておりません。ただ、おっしゃる意味は、太平洋軍直轄の輸送部隊が一部来ておるということは聞いております。
  151. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、ときどきに来ておる、こういうことなんですね。日本に配置されておるとは言えないという。まあ、一応そこはそこまでにしておきましょう。それならば、今、そこでいろいろ本に書いておるじゃないかという声があります。なるほど、この関係法令整理に関する法律、これの十三条に出ています。会合衆国軍隊とは、日本国にあるアメリカ合衆国の陸海空軍をいう、こうなっておる。配置されておるとか、指揮下ということでなくて、日本国にあるアメリカ合衆国の軍隊、これが合衆国の軍隊と法律に書いてある。配置をされておるとかなんとかいうことは関係ない。あるですよ。日本国にある……。
  152. 林修三

    ○林(修)政府委員 これは、それぞれの法律、あるいは地域協定の趣旨、目的によって、その範囲が違ってくるわけでございまして、要するに、日本におりまして日本施設区域を利用する、あるいは日本を通過する、そういう場合の権利義務関係を規定する必要がある場合には、今おっしゃったように、合衆国の軍隊で日本にあるもの、こういうものをすべて法律なり協定の対象として扱っておる、そういうわけでございます。それで、別に在日米軍という固定の観念をどこにもあげてあるわけではないのでありまして、在日米軍という観念は、あくまで通俗的な観念でございまして、それぞれの条約の規定、あるいは地域協定の規定、あるいは関係法律の規定の趣旨、目的で、そこにいわゆる米軍の軍隊、あるいは構成員、あるいは軍属というものの権利義務関係を規定する必要から、どの範囲のものをつかまえていくか、そういうことでそれぞれの法律はできておるわけであります。
  153. 滝井義高

    滝井委員 岸総理、今お聞きの通り、これは在日米軍というものは何だと言ったら、今までは指揮下にあるとか、区域施設を使用して配置されておるものだとか、いろいろ政府はめいめい勝手な答弁をして、今まで通ってきたのです。きょう、こうして在日米軍というものについて質問してみると、なかなかこれははっきりしてこないわけですね。そこで、もう一つ、今度は行政協定を見ると、合衆国軍隊の構成員というのは、やっぱり一人々々でいうと合衆国の軍人ですね。それは何人か寄れば軍隊になるのです。こういうものになると、日本の領域にある間のものになってしまう。ある間のものなんです。そうすると、第七艦隊だって、日本の港に来ておれば、これは合衆国軍隊の構成員になってしまうわけですね。こういうように非常に千差万別な姿というものが、この条約、そして条約に基づく行政協定なり整理法には出てきているということ。だから、これは非常に混乱をしてくるのです。あなた方自身がもう少し——合衆国の軍隊の概念というものが法律に出ていない。出ていない概念を、合衆国軍隊だと、こういうようにいろいろ言ってきましたけれども、従って、そういうところから、合衆国軍隊というものが日本に駐留をするという概念は、どこからも出てこないのですね。そういうふうに解して差しつかえありませんか。この条文の中からは、合衆国軍隊が駐留するという概念は出てこない。出てきますが。くるならばくる、こないならばこない……。
  154. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 これは第六条から当然そういう場合を前提として、頭の中で考えているわけでございます。すなわち、アメリカ合衆国の陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設区域を使用することを許される。これは使用の面から見て、この規定をいたしたわけでございますが、使用するところの軍隊というのが日本に駐留しているということも、当然考えているわけでございます。
  155. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、いいですか、使用する場合を考えてみます。まず、現に使用しておるということは、長期に使用しておる場合も、短期に使用しておる場合も一つあります。その次には、使用することを予定している軍隊もある。今公海上にあるけれども、もう確実にこれは日本に配置されて使用するものである、これもある。使用することを予定をしておる、約束をしておるという軍隊もある。さらに、使用することもあるし、使用しないこともある軍隊もある。それから一時的にちょっと使用する軍隊もある。これはあなた、六条で使用するということだけで、別に何も書いてない。どれに当たるのですか、全部当たるのですか。いわゆるあなた方の言う在日米軍というのに当たるのですか。
  156. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 先ほど申し上げましたと思いますが、在日米軍という法的な固定した概念はないわけでございます。従いまして、われわれは、おのおのの場合に、これはこの条文の条項のどれが適用になるか、どういうのが適用にならないかということによって、ある場合においてはこれが適用になる在日軍隊、ある場合はこれだけ適用になる軍隊ということになりますので、一口に在日米軍は何であるかという定義は、この条文が全部をカバーする言葉を一言で言うとなると、非常に長いわけでございますが、また、それはそういう必要は認めない、おのおのの場合に、こういう場合にはこういう権利義務があるということが条文上はっきりしていれば、それで十分ではないか、このように考えておるわけでございます。  それからただいま御指摘の第六条でございますが、もちろん、一時的に使用する——とにかく日本国において施設及び区域を使用することを許される、従って、日本国において使用しているということになれば、それは一つのここにいう意味におけるところの在日米軍といいますか、米軍によって使われるということになるわけでございます。しかし、そのうちには、御指摘の通り、一時使用の場合もあるかと思います。また、これは、長期駐留して、そして、長期に継続的に使用するという場合も、もちろん考えられておるわけであります。
  157. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、第七艦隊が一時使用するということは、この六条を受けて在日米軍になりませんか。
  158. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 ですから、在日米軍は、そういうふうな限定と申しますか、定義をつけまして、そういう意味における在日米軍でございます。しかし、配備はされてないわけでございますね。配備はされてない。しかし、この区域を使用します。ですから、そういうふうに使用する軍隊、日本国において使用する軍隊を在日米軍とおっしゃれば、そういう意味における在日米軍である。しかし、それは配置されている軍隊ではない。しかし、配置されている軍隊ということも、当然この中に考えられている。それから特に第六条においては、日本国の配置における重要な変更、配置される場合の軍隊、これは日本の駐留を考えております。
  159. 滝井義高

    滝井委員 一体六条のどこに配置という概念がありますか。配置という概念はありはしない。六条の特別の場合として、交換公文が出てきている。交換公文というのは特殊な場合ですよ、交換公文の六条は。総理大臣、一体六条のどこに配置という言葉がありますか。配置という概念は六条から出てこない。
  160. 岸信介

    岸国務大臣 先ほどからお答え申し上げておる通り、六条は、日本施設区域アメリカの軍隊に使用を許した規定であります。その使用の方法として、さっきからおあげになりましたような、一時的に使用し、あとは使用しない、使用したり使用しなかったりする場合もありましょう。それから常時駐留して、長期にわたって使用するという形態もある。そうして、いやしくもどういう形態であろうとも、日本としては、一定の区域施設を限って米軍に使用を認めておる、こういうことでございます。従って、その場合においては、駐留して使用する場合も、駐留せずに一時的に使用する場合も、両方を前提として、六条というものは設けられておる。そのうち、日本に配備されて継続的に使用しておるところの軍隊が、この基地を使用して配備をしておるその配備の上に重要な変化を来たした場合においては、事前協議の対象になるということを設けたわけでありまして、六条にはそういうすべての場合を含んで使用を許しておる、こういう意味であります。
  161. 滝井義高

    滝井委員 すべての場合を含んでおるならば、配置じゃなく、使用するだけでも、いわゆる在日米軍になるはずなんですよ。
  162. 岸信介

    岸国務大臣 先ほどお答え申し上げましたように、在日米軍という法律概念は、条約上どこにもないわけでありまして、用いられる場合に二つの場合がある。一つは、配置されておるという狭い意味の在日米軍、この意味からいうと、第七艦隊は日本に配置されている軍隊ではないから、在日米軍ではないというふうな表現をいたします。しかし、同時に、広い意味に用いる場合においては、日本施設区域を使用するところのアメリカ軍隊を広くさして在日米軍という場合もある。そういう場合においては、一時的に使用するところのものも、そういう意味においては在日米軍として差しつかえない、こういうふうに申しております。
  163. 滝井義高

    滝井委員 配置という概念は、長期と短期があるのです。だから、従って、アメリカの第七艦隊が日本に来ておるときは、それはやはり形からいえば、一つの配置の形ですよ。それは最近の——あとからだんだん出てきますが、一種の配置の形ですよ。だから、今横田の基地の問題も出ましたが、それならば、第五空軍の府中の司令部というものがありますね。これは配置されておるのですよ。明らかに一つの軍隊ですよ。しかも、配置されておる軍隊と一体の関係にあるものが、飛鳥田君が指摘したように、大邱と沖縄とにある。これは指揮下にある軍隊ですよ。配置されておる在日米軍の指揮下にある軍隊、そうすると、これは在日米軍になりますか。どうです。配置をされている在日米軍の指揮下にあるのですよ。
  164. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 「合衆国軍隊日本国への配置」でございまして、従いまして、私どもはそういうふうに配置という考えをここでは考えておりません。日本国国内に配置されたということが、この交換公文の配置の意味でございます。
  165. 滝井義高

    滝井委員 近代的な戦争というのは——高橋さん、あなたの頭と手とは違いますよ。しかし、あなたの頭だけが高橋さんじゃなくて、頭が命令を出して、今度は手が動くので、手もやはりあなたの頭と一体のものなんですよ。それを頭が高橋で手が高橋でないという議論をしておるのと同じなんです。軍隊というのは、今の段階では一つの有機的なものなんですよ。そういう無理な議論をすることは問題です。そこで、ではお尋ねしますが、第六条の交換公文の同軍隊の装備の変更というものは、これは在日米軍だけを意味しますか。
  166. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 昨日も御指摘があったかと思いますが、これは在日米軍の広い意味と申しますか、第六条の、日本施設区域を使用するその軍隊の装備における重要な変更でございます。
  167. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、アメリカのどこの軍隊でも、とにかく日本に来るやつは全部そういうことになるわけですね。
  168. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 御指摘の通りでございます。日本国における施設区域を使用するその軍隊の装備の変更でございますから、御指摘の通りでございます。
  169. 滝井義高

    滝井委員 同じ条文の中にこういう異質のものが出てきたわけです。日本の内部に配置をされている合衆国の軍隊、日本の中に来るやつでも、今度は、装備だけの問題のやつはどんなものが来てもよいのだ、こういうばかなことが一体ありますか。こんなばかなことはありはしないですよ。同じ条文の「日本国への配置における重要な変更」と、その下の「同軍隊の装備における重要な変更」というのは、日本にあろうとなかろうと関係はない、「日本国への」ではないのですから。「日本国への」というのは、「重要な変更」しかかからない。英文でこれはそうなっている。「同軍隊の装備における重要な変更」というのは、これは合衆国軍隊一般をいうわけです。あるいは在日米軍も入る。そういうことなんでしょう、岸さん。きのうもそういう答弁をしている。
  170. 岸信介

    岸国務大臣 これは冷静にお読み下さればおわかりのように、「合衆国軍隊日本国への配置における重要な変更、」こうなりますれば、日本に配置されている軍隊の配備の変更を意味することは当然のことであります。もちろん、「同軍隊の」といのは、合衆国の軍隊の装備における重要な変更でありますが、何も日本に全然関係のないアメリカ国内において、軍隊がどういう装備をするというようなことは、これはもちろん問題にならないことでありまして、日本施設区域を使用するところのアメリカ軍隊の装備における重要な変更、こういうふうに読むことは当然のことだと思います。
  171. 滝井義高

    滝井委員 従って、在日米軍だけでなくして、日本にちょっと立ち寄るものも、寄港するものも、長短を問わず全部そういうことになってくるわけですね。そういう二つのいわば違ったものがここに書いてある。こういうことを私は指摘したわけです。それは違ったものでしょう。
  172. 岸信介

    岸国務大臣 文句が違っているから当然違うことは、日本への配置の変更ということであれば、配置されないところの軍隊は意味しないことは、文句の上から当然でございます。そういう意味において、文句が違っているのだから、そういうふうに解釈すべきことは当然のことであります。
  173. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、配置された米軍が国外に出ることができるというのは、一体どこから出てきますか。配置されているアメリカの軍隊が、日本国外に出動することができるという条項は、どこから出てきますか。
  174. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 よくわかりませんけれども、日本施設区域から移動していくという場合でございますか。
  175. 滝井義高

    滝井委員 国外に出てよいという条文はどこにもない。
  176. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 いや、アメリカの軍隊でございますから、日本にこれこれ配置しよう、あるいは日本から出すということは、これは自由でございます。ただ、配置する場合には、大部隊の配置される場合には日本と事前協議をする、こういうことでございます。
  177. 滝井義高

    滝井委員 日本国外に——共同の行動をとるということはある。しかし、日本の国外に出ていってよいという条文はない。悪いという条文もないが、出ていってよいという条文もない。ないばかりでなく、施設を使用することについては、これは協議をします。協議をしますけれども、戦闘作戦行動そのものについて何ら規制がないわけです。もっと掘り下げて言えば、戦闘作戦行動そのものについて、日本から出ていくときは協議しますよ。しかし、出ていくのに、どこへ出ていくかということについては日本は関知できな、
  178. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 戦闘作戦行動の場合には事前協議の対象になるということを申し上げているわけであります。
  179. 滝井義高

    滝井委員 それは基地を使用することについてのみです。私が言うのは、使用するのはその通りです。しかし、その作戦行動がどこに行くかということについては何もない。使用することだけはよいのです。これはその通りです。板付を使用するとこうことは、作戦行動でよい。ところが、今度は、その行動についての規制は、この条文のどこからも出ていない。
  180. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 行く先がどこでありましょうとも、戦闘作戦行動をするために出ていく場合には、これは事前協議の対象になる。それはどこでなきゃならぬということはございません。しかし、すべて行く先がどこであろうと、戦闘作戦行動に施設区域を使用する合場には、事前協議の対象になるわけであります。
  181. 滝井義高

    滝井委員 それは具体的に行動がどうして大事だかというと、飛行機が飛び立って、そうして沖繩に寄れば、これはそれから戦闘作戦行動してもいい。そうして、今度帰ってくるときには協議になるんでしょう、裏を返していえば。日本から飛行機が飛び立っていきます。戦闘作戦行動で飛び立っていくんでしょう。ところが、それが沖繩に寄れば、あなた方今まで、ここではそれは事前協議の対象になりませんと言っておる。沖繩に寄ればならないということを言っている。そして帰ってくるときは、これはなる。日本への配置の変更だ……。
  182. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 日本施設区域を利用して、基地として戦闘作戦行動に出ますときには、どこへ出ても事前協議の対象になる。ただ、戦闘作戦行動に出ないで、普通の移動であれば、それは事前協議の対象にはならない。どこへでも出ていく、こういうことでございます。
  183. 滝井義高

    滝井委員 日本を出て、台湾から戦闘作戦行動に出ていく、こういうことなんですよ。私はそれを言っておる。まず沖繩にちょっと瞬間タッチをして、そして出ていく。そして日本に帰ってくるときは、これは対象になる。帰ってくるときは対象になるんでしょう。条文では明らかに、帰ってくるときはなるのですから……。だから、ほんとうは出ていくときにこれはならなきゃうそだ。帰ってくるときに事前協議の対象になるということはおかしいんです。
  184. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 この問防衛庁長官がはっきり申し上げましたように、日本施設区域を基地として戦闘作戦行動に出ていきます場合には、どこかにちょっと寄っても、それは事前協議の対象になります。しかし、戦闘作戦行動でなくて、移動する場合には、それは沖繩へでもどこへでも自由に移動できる。ただ、沖繩へ行ってから、どこかに戦闘作戦行動する、これは日本にあります基地を使用しての作戦行動ではございませんから、当然事前協議の対象にはなりません。
  185. 滝井義高

    滝井委員 それがこの条約の大きな抜け穴なんですよ。あなた方は、答弁としてはそれでいいですよ。いいけれども、日本を立って、そして一応沖繩に瞬間タッチで寄って、それから戦闘作戦行動に出て、今度日本に帰ってくる。戦闘作戦行動をやった飛行機が日本に帰ってくるときは、これは事前協議の対象になるのですよ。いわゆる日本への配備の変更になるのですから……。
  186. 林修三

    ○林(修)政府委員 今滝井委員の例におあげになりました瞬間タッチという問題でございますが、これは前から政府でお答え申し上げておると思いますが、要するに、戦闘作戦行動の任務を与えられて日本から飛び立つ、これはたといその途中で、たとえば沖繩で給油するというようなことでありましても、日本から出るときにすでに戦闘作戦行動に従事するという任務を与えられておれば、これは当然に事前協議の対象になります。しかし、たとえば沖繩なり台湾に配置がえをされる、その空軍が配置がえをされて、そこから、たとえば在沖繩空軍として、あるいは在台湾空軍として出る、これはもう日本としてそこまで言う必要はない。それはまさに沖繩への配置の移動であり、あるいは台湾への移動でありまして、その先どういう任務を与えられるかは、それは、米軍が在台湾米軍あるいは在沖繩米軍にいかなる命令を与えるかという問題でございます。それには適用がございません。そういうことを前から申し上げておるのでありますが、日本から出る際に、すでに戦闘作戦行動の任務を与えられておれば、これは当然に事前協議の対象になるわけでございます。  それからもう一つは、たとえば、在台湾の米軍に配置がえされた、配置がえされて、あるいはそこで戦闘作戦行動に従事して、それが終わったから、今度日本に配置がえをするという場合に、それか重要な配置の変更であれば、もちろん、また別の意味で、それは事前協議の対象になる、こういうことだと思います。
  187. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、米軍が基地をそのままにして日本から全面的に撤退をしてしまう、こういうことは四条の協議の対象になるというのは、受田君の質問に対する答弁だった、これは間違いありませんか。
  188. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 お話しのように全然いなくなるということは、条約の上からいってあり得ない。また、条約の精神に反する。しかし、そういうことが起こり得るような場合に、随時いろいろなことを協議いたしますから、むろん話し合いをいたすわけではございまして、そういう意味においては、四条で話し合いをするということでございます。
  189. 滝井義高

    滝井委員 いなくてもこの条約はいいと私は思うのですよ。それはあなた方もこの前お認めになったでしょう。法律上では有事駐留もあり得るんだということをお認めになったじゃないですか。受田さんの質問に対してお認めになったんでしょう。
  190. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 そういうことを申したわけでございませんで、受田さんの御質問は、この条約でも有事駐留の形がとれるのじゃないかという御質問でありました。で、いなくてもいいなんていうことは、われわれは申していない。そのときには私どもは、やはりこの条約の精神からいって、常時駐留がこの条約の精神であるということをお答えいたしておるわけでございます。
  191. 滝井義高

    滝井委員 この条約の精神とは何ですか。一体、条約にそういう駐留するという概念はないのですからね。使用するというだけしかないのですから、使用するということは、駐留するということにはならないのです。それならば赤城長官お尋ねしますが、現在、在日米軍の動向はどうなっておりますか。
  192. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 再々申し上げておりまするように、陸海空で人員にして五万二千人ほどおりますが、これが撤退する予想があるのかどうかということですが、撤退する予想はあまりありません。レーダー・サイトの引き継ぎによって、幾分日本から去るというような情勢はありますけれども、その他においては大体現状のままであろうか、こういうふうに思います。
  193. 滝井義高

    滝井委員 問題は、陸海空の区分、五万二千の配分ですね。陸軍が何%、海軍が何%、空軍が何%、これを見てみるとわかるのです。
  194. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 駐留軍の人員は、今申し上げましたように、約五万二千人でありまして、そのうち、陸軍が約五千人、海軍が約一万五千人、空軍が約三万二千人でございます。
  195. 滝井義高

    滝井委員 六割は空軍ですね。それから三割が海軍、一割が陸軍、こうなっておるわけです。われわれ日本人は、今までは軍隊というものは、どたぐつをはいて、背のうを背負って、そうして鉄砲を持っておるのが軍隊だ、こういう概念があったわけです。ところが、最近の状態——朝鮮事変の当時においては、たとえば、朝鮮には三十万以上のアメリカ軍がおりましたよ。しかし、日本にもその当時は相当おりました。十万以上おった。ところが、最近はこういうようにぐっと減ってきておるということです。しかも、その大部分は空軍であり、海軍であるということです。そして陸軍というものは、資材の供給維持に当たる補給用の軍隊にしかすぎぬということですね。そうすると、軍隊の概念というものが、非常に違ってきておるわけです。従って、新しい安保条約日本に駐留をするというような概念を持たなくても、軍隊がいわゆる流動性ができてきておる。従って、何も日本にいなくても、基地というものの使用ができればいい。これが軍隊の実体だと思うのです。ここが今度の安全保障条約は、岸さんよりかアメリカのアイゼンハワーの方が頭がよかった。いわゆる基地を使うだけなんです。そうして、日本は基地を提供をしておりますが、これはどういうことになるかというと、米軍はなるほど日本の防衛の義務があるような形になっております。なっておりますけれども、この軍隊というものは、常時駐留しなくてもいい。それは飛行機というものはいつも空を飛んでおるかもしれないし、船もいつも海を泳いでおって、日本にいないかもしれない。しかし、たまに来て基地を使う。きわめて流動的な軍隊です。ただ陸軍は五千くらい日本に補給的におる、こういうことですね。これが今のアメリカの駐留の形態です。従って、これを別な言葉で申しますと、戦略上必要ある場合はいつもおるけれども、いざ鎌倉というときには、有事には撤退をする可能性があるということです。これはそういう可能性が出てくる。常時駐留の形をとっておるけれども、有事、いざ鎌倉というときには、撤退をしていってしまえば、それまでなんです。これはそういう可能性がある。きわめて流動的なものなんです。こういう形態の軍隊です。あなた方は、六条に関する交換公文で、配置について、一個師団以上の軍隊が日本にやってくるときには、これは事前協議になります、装備は核兵器だけが事前協議になりますと言うが、それは一体どこからそういう結論が出てくるのですか。
  196. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 有事のときには撤退するということを独断的にお考えのようでございますが、有事のときには、日本の防衛のために入ってくることもあります。  それからこの交換公文で、配置とか装備の変更とか、こういうのはどこから出るかといいますが、これは交換公文で、そういう場合には事前協議の主題とする、こういうことであります。
  197. 滝井義高

    滝井委員 交換公文で、私が言うのは、一個師団以上なんというのは、どういう基準できめられますかということです。一個師団というのが重要だったら、たとえば二日間つ一日置きに半個師団ずつ入ってくれば、すぐ一個師団になってしまう。一回も一個師団では来ない。そういうときには事前協議しない。それから装備の変更というのに、核兵器だけだ、こういうことならば、ここに核兵器とお書きになったらいい。一個師団以上ということになれば、これは一体どうして一個師団という基準になるのかということが、われわれによくわからない。
  198. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 事前協議の主題として、「日本国への配置における重要な変更、」こういうことでありますから、これは協議において、重要なる配置の変更であるかどうかということはきめるわけでありますが、設例でどれくらいのものを大体考えるかということでありまするから、一個師団程度が入ってくる場合には、これは重要な変更になるという例を申し上げたのでありまして、協議の重要なる変更にはいろいろあると思います。
  199. 滝井義高

    滝井委員 近代的な軍隊の様相というものは、なかなかそう一個師団という設例だけでいくものではないのですね。だから、今までそういう答弁をされておるから、私は一応お聞きしたわけです。  そこで、この行政協定の二条の四ですが、合衆国軍隊というものがこの基地を使わないことが相当あるんじゃないかということの一つの例として、行政協定の二条の四を見ると、合衆国軍隊施設及び区域を一時的に使用しないときは、日本政府がこれを使うことができることになっておるわけです。これは飛鳥田さんが間借りの自衛隊、貧血の自衛隊ということを言いましたが、しかし、実際問題として、こういうことを日本政府がやはり予定しておるということです。基地というものは、アメリカ軍が使わずに基地だけを持っておくことがあるということを、これは予定しておるからこそ、行政協定にこういう条文が入っておるわけですね。
  200. 森治樹

    ○森政府委員 ただいまの行政協定二条四項の規定でございますが、この規定の設けられました趣旨は、たとえば米軍の演習場等がございます。この演習場等に付近の人々がたきぎをとりに入ったりすることを許す趣旨に出た規定でございます。もともとの趣旨はそういう規定でございましたけれども、現在では、米軍の施設の場合に、そういう演習場等でございませんけれども、たとえばドライ・ドック等も、米軍が使用していない場合には、日本関係業界に使わしてくれることがございます。従いまして、今度の改正では、演習揚及び射撃揚のようなという例示規定を削除した次第でございまして、二条四項の立法の趣旨はそういうところにあるわけであります。
  201. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、これはたきぎをとったり、ドライ・ドックを使うというような、それだけのことですか。この条文を見ますと、まあ、たとえば——たとえばがなかなかはやりますが、やはり基地というものは、軍隊の流動性にかんがみて、相当あいてくるという形が出る。特に、最近におけるミサイル兵器の発達で、基地というものは非常に敵の奇襲に弱くなってきているのです。だから、国連では、奇襲の問題というものが、軍縮の一つの大きな議題になっておるわけです。基地というものは奇襲に非常に弱くなっている。たとえば第七艦隊の状態を見ても、一定のところにきちっとおることがない。絶えず流動しております。さらに、日本における飛行機だって同じです。これは動いています。たとえばアメリカの最近の新しいポラリス、いわゆるミサイルを持ったポラリスあたりでも、六十日も海底をもぐっておるのですよ。さらに、グアム島の戦略空軍というものが日本に飛んできたときに、彼らは日本には着陸する必要がない。どうするかというと、三沢の飛行場の基地から今度は石油を補給する空中補給機が飛び立って、そして空中で油を補給してしまうのですよ。ただ、使用するのは、そういういわゆる基地として使用する。こういう形になると、いわゆる奇襲に対する抑制力としての軍隊というようなものは、第七艦隊、あるいはポラリス、あるいはグアム島から飛んでくる戦略空軍に対して、日本の三沢基地から空中の補給をやる、こういう状態を考えてみると、日本の基地というものが、ほんとうの戦闘作戦行動として使われる場合というものは、非常に少なくなる状態というものが出てくるわけです。そして日本は基地というものを貸しておるけれども、実際にそこにアメリカの軍隊というものは少ない。いざ鎌倉というときには、日本が爆撃されてどうにもならぬという状態になってしまう。すなわち、日本は不当な戦争にだけ巻き込まれて、なかなか日本はうまくいかないという事態が出てくるのです。これは最近における軍隊の一つの傾向ですよ。いわば姿なき軍隊という形が出てきておる。そしてしかも、基地でもみんな地下にもぐってしまっておる。ミサイルその他の基地というものは地下にもぐってしまっておる。日本だって、最近は、稚内その他でもずいぶん地下壕を作っておるはずです。やはり地下にもぐって、上にはなくなっておる。従って、こういうように軍隊の性格が変わってきて、駐留軍という常時駐留の姿というものは、だんだん少なくなってきておることは、日本にいる五万二千の軍隊の内訳を見ればわかります。しかも、それは基地として使用していく、こういう形です。たまに使用する、こういう形が出てきておるわけです。これを総理はこの条約を結ぶにあたって一体どうお考えになりますか。こういうように変わってきております。
  202. 岸信介

    岸国務大臣 いろいろ軍隊が流動性を持ってくる傾向があるということは、これは滝井君が言われる通りだと思います。しかし、現在この安保条約のもとにおきまして、日本に常時駐留しておる米軍というものが相当あることは、先ほど現実に現在ある人数について防衛庁長官からお答えをした通りであります。従って、もしも日本の基地が少なくても、日本の防衛と極東の安全を守ることができるというふうになってくれば、なるべく少なくなることが望ましいだろうと思います。しかしながら、現在の実情からいって、相当数の基地を持っておって、また、相当数の米軍が常時駐留しておるということは、現実から見て、今日直ちに、軍隊はみな流動性のものであって、何基地を必要としないような事態とは、私まだ相当隔たりがあると思うのあります。従って、この条約を結ぶ前提といたしまして、先ほど来外務大臣がお答え申し上げておるように、相当数の米軍がやはり基地に常時駐留して、そうして日本の平和と安全、極東の平和と安全に寄与するという体制を前提として作っておるわけでありまして、もちろん六条の規定は、そうした常時駐留して日本の基地を使用するという場合もありましょうし、あるいは駐留せずに、一時的に使用するという米国軍隊もあることは、先ほど来お答えをした通りでありまして、別に、その点につきまして何ら変更を要する点はないと思います。今お話しのように、軍隊がそういう流動性を持つような傾向があるということは私自身も認めますけれども、現在、それが直ちに、すべて流動性があるのだから基地なんかなくていいんじゃないかという議論にはならないと思います。
  203. 滝井義高

    滝井委員 基地を使用しないというのではなくして、基地を使用する時間的な関係が非常に短くなって参りつつあるということを言っておるわけです。それだけ基地というものの概念がだんだん薄くなりつつあるということを意味するわけです。たとえば、飛行機は絶えず空中にある、船は絶えず海の上にある、それから潜水艦は絶えず水中にあるという、こういう形がだんだん出てきておるということです。そこで、それならば、国連軍というものは駐留権がありますか。
  204. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 現在の国連軍は、国連軍協定がございますから、それに基づいて駐留の権利を持っております。
  205. 滝井義高

    滝井委員 その場合に、国連軍は駐留権があることになった。そうしますと、アメリカの軍隊と国連の軍隊とは二重性格を持っておるわけです。この区別は一体どういう工合にしてしますか。
  206. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 国連軍とアメリカ軍でございますが、国連軍でありましても、アメリカ軍は、日本にある限りにおきましては、御承知の交換公文によって地位協定以下の規制を受けるわけでございます。
  207. 滝井義高

    滝井委員 アメリカ軍と国連軍との見分けはどうしますかというわけです。軍隊で色がついているわけじゃないですからね。
  208. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 見分けと申しましても、アメリカ軍であることは、これははっきりわかるわけでありますから、そのアメリカ軍として日本におります場合には地位協定の適用を受ける、こういうわけであります。
  209. 滝井義高

    滝井委員 もう少し先に行ったらだんだんわかってきます。
  210. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 この際、石橋政嗣君より関連質問の申し出があります。これを許します。石橋政嗣君
  211. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 滝井委員質問に関連して、ちょっとお伺いをしておきたいと思います。  まず、藤山外務大臣お尋ねしておきたいのですが、先ほどから、在日米軍という問題が提起されておるわけです。私どもは、新しいこの条約では在日米軍という観念はなくなっているという見解を持っているわけですが、それを立証していきたいと思うのです。まず最初に、第七艦隊は在日米軍でないと藤山大臣は言明しておられますけれども、間違いないですね。
  212. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 さっき申した通りでありまして、第七艦隊は日本に駐留はいたしておりません。そういう観点からいいまして、第七艦隊は——いわゆる在日米軍というものは、日本にいるアメリカ軍隊という意味でございますから……。
  213. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 三月の十五日に、松本委員が本委員会で尋ねておるわけです。第七艦隊というものは在日米軍が、そうしたら、あなたは、そのときに「日本に駐屯しておりません、よそにおりますアメリカ軍隊を在日米軍と呼ぶわけにいかぬことは、小学校の生徒でも明らかでございます。」えらい高姿勢で答弁しておられるのですよ。今さら訂正はなさらないでしょう。それじゃ、その第七艦隊が日本施設及び区域を使って出ていく、こういう場合、すなわち、第六条に基づいて極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するために、在日米軍が日本施設及び区域を使って出ていくという場合に限定されますか、無制限ですか。
  214. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 戦闘作戦行動に出て参ります場合には、当然事前協議の対象になるわけでございます。
  215. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 戦闘、作戦行動だけですか。第六条だけを私読んでおるわけですよ。「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される。」と明文があるわけです。このアメリカ合衆国の海軍の中に、第七艦隊は当然この六条で入ります、そうですね。だから第七艦隊は、アメリカの海軍として極東における国際の平和及び安全の維持のために出ていくということはできるわけでしょう。極東における国際の平和及び安全以外の目的で出ていくこともできるのですか。
  216. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 アメリカ艦艇日本に配置されておる、あるいは日本施設区域に常時おらないというようなものが行動することは、これは自由であります。ただし、その施設区域を戦闘作戦行動に使ったり、あるいはその施設区域に核兵器を持ち込んだり、そういう場合には事前協議の対象になることは当然でございます。
  217. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 それじゃ、もう少し簡潔にお尋ねしましょう。総理でもいいんですよ。しかし、藤山さんがせっかくお答えになっておられますからね。私は、「アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される。」というのは、何も特定の軍隊を考えておらないと思うのです。アメリカの陸軍であり、アメリカの空軍であり、アメリカの海軍であればいいのだという解釈を私とっておるのですが、その点、間違いないでしょうね。
  218. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 その通りでございます。
  219. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 そうすると、あなたが今おっしゃったことと、先ほどの答弁と食い違ってくるわけですよ。第七艦隊はこの海軍に入るわけです。だから、日本施設及び区域を使う場合は、当然目標は限定されるわけでしょう。日本国の安全に寄与する、極東における国際の平和及び安全の維持に寄与する、日本施設及び区域はこれ以外には使えないわけでしょう、いかがですか。
  220. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 日本施設区域を使用するという目的は、今申し上げておる通りのことでございます。すなわち、第七艦隊が入ってくる、そういう場合、日本の安全なり、あるいは極東における安全なり、そういう意味において入ってくる。むろん、常時アメリカの軍隊がごく平和裏に移動いたしておるというようなことは、これはどこの軍隊でも——インドの艦隊が日本の横浜に入ってくる、そういうことはございます。しかし、そういうことを別にして考えれば、今申し上げた通りでございます。
  221. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 そうしますと、第七艦隊は在日米軍じゃない。その第七艦隊が日本国施設及び区域を使用する場合には目標は限定されるわけですよ。いわゆる極東条項というものに縛られてくるわけです。これは間違いないわけでしょう。条約局長でもいいですよ。
  222. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 第六条は、施設区域を使用することを許される使用の目的でございますから、個々の使用の場合に、全体としてその目的に合致すればいいわけでございますし、合致しなければならないわけでございます。
  223. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 そうしますと、在日米軍じゃない第七艦隊でも、この日本国において施設及び区域を使用する場合には、目標は限定されるわけです。この点は、総理大臣御確認になりますね。
  224. 岸信介

    岸国務大臣 それはその通りでございます。
  225. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 そうしますと、ここに新安保条約にいう極東の観念という統一解釈が前に出されました。これは文章で出されております。これと矛盾を来たしてくるわけです。「この条約に関する限り、在日米軍が日本施設及び区域を使用して武力攻撃に対する防衛に寄与しうる区域である。」これが極東だ。そうじゃないじゃないですか。在日米軍だけじゃないじゃないですか。合衆国軍隊が、日本施設及び区域を使用して武力攻撃に対する防衛に寄与し得る区域が、ここでいう極東じゃないですか。統一解釈を訂正しなくちゃなりませんよ。その点はいかがです。
  226. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 在日米軍というのも、やはり日本に入ってきて、日本施設及び区域を使用して行動するところの軍隊なのでございます。ですから、それと全然関係のない軍隊ということではございません。
  227. 岸信介

    岸国務大臣 先ほどから在日米軍という観念につきまして、はっきり私申し上げておるように、広く用いている場合と狭く用いている場合があります。これは常識的に言っているのであって、狭く用いられておる場合は、日本に配置されておるところの米国軍隊という意味で、それを称して在日米軍だ、そういう意味においては第七艦隊は在日米軍というものには入りません、日本に配置された軍隊ではございません、こういうことを申し上げたわけであります。しかしながら、同時に、広い意味において、いわゆる日本施設区域を使用する米軍をさして、在日米軍というような観念にも用いております。そういう場合は、とにかく第七艦隊が入ってきて日本施設区域を使用するという場合におきましては、あるいは地域協定に関するいろんな規定が適用されるとか、その他いわゆる広く、日本に駐留しておる軍隊と同じような扱いを受けるというようなことになるわけであります。従って、在日米軍という観念は、今言ったような広義に用いておる場合と、狭義に用いておる場合と、二つの場合がありますということは、繰り返し繰り返し先ほど来申し上げております。今おあげになりましたなにというものは、要するに、そこの極東の観念についての統一解釈として用いておるものは、日本の基地、いわゆる施設区域を使用して、そうしてそこから武力行動をして、極東の平和と安全に寄与できるような地域だ、こういう意味で申しておるわけでありまして、配置されておる軍隊に極限して申しておるわけではございません。
  228. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 今まで、ことさらに政府側の答弁説明は、この在日米軍という概念を狭く狭く解釈してきているのです。これは一番端的に表われているのですよ。日本施設及び区域を使用して武力攻撃に対する防衛に寄与し得る区域が極東だ。いいですか、その上に「在日米軍が」と、わざわざつけているのです。在日米軍が日本施設及び区域を使用している、こういう説明がなされている。明らかに、今これをあなた、岸総理は、広義の方でございますと言うけれども、在日米軍に広義も狭義もありませんですよ。今度の条約では、アメリカの軍隊が日本施設及び区域を使用する限りにおいては、全部制限を受けるのですよ。(発言する者あり)全部制限を受けるのです。先ほどの答弁と違うじゃありませんか。日本施設及び区域を使用して、そうして出ていく限りにおいては、日本におろうとおるまいと、かまわないのです。アメリカの軍隊である限り制約を受けるのです。それを在日米軍とこじつけるのは無理ですよ。それはアメリカ軍隊ですよ。アメリカ軍隊が、日本施設及び区域を使用して、そうして武力攻撃に対する防衛に寄与し得る区域、それが極東だというなら、それなりに私は理解できますけれども、「在日米軍が日本施設及び区域を使用して武力攻撃に対する防衛に寄与しうる区域」と、こんな解釈を出しましたら、第七艦隊はどこにでも行きますよ、一国の総理がそんな無責任な答弁をされましたら……。  またお尋ねしますけれども、現行安保条約の第一条には、在日米軍という観念があるわけです。これはお認めになりますね。試みに、皆さんにもわかっていただくために読みますけれども、「平和条約及びこの条約の効力発生と同時に、アメリカ合衆国の陸軍、空軍及び海軍を日本国内及びその附近に配備する権利を、日本国は、許与し、アメリカ合衆国は、これを受諾する。」これが前段です。ここで配備の権利を日本アメリカに与え、アメリカは受諾したという格好をとっておるわけです。それによって出てきたのが、次の後段です。「この軍隊は、」この軍隊はというのは、明らかに在日米軍なんですよ。私はそういう意味で、現行条約には在日米軍という観念があると思います。ところが、新しい安保条約には、その観念がどこを探してもないのですよ。アメリカの軍隊でありさえすれば、この行動の目標を、極東という、その極東条項というものの制約は受けるけれども、結局日本施設及び区域は、アメリカの軍隊である限り全部使える、こう変わってきているのですよ。変わってきておるのに、ことさらに、在日米軍というものがまだあるかのごとく言うところに、重大なごまかしがあると私どもは言っているわけです。そこのところは、総理、間違いないわけでしょう。
  229. 岸信介

    岸国務大臣 現行条約及び行政協定の全体をお読みになりますと、いわゆる日本に配置された軍隊、今お読みになりました、日本に対してそれを配置することのできる権利をアメリカに認めております。それによって配置されておる軍隊というものがあり得るわけです。しかしながら、同時に、そういう配置はされておらないけれども、一時的に日本の基地、いわゆる施設区域を使用するアメリカの軍隊に対して、行政協定上のいろいろな規定の適用を受けるものがございます。従って、現在におきましても、いわゆる日本におる米軍が、そのうちには日本に配置された米軍である場合と、配置はされておらないけれども、一時的に日本におって、そうして使用するという場合と、二つ私はあると思います。私どもが、先ほど来いわゆる在日米軍ということを申しておりますが、これはもちろん、今度の条約上はっきりそういう観念を規定はいたしておりません。しかし、六条において使用を認められておる限りにおきまして、常時日本に配置されて使用するという軍隊もありましょうし、配置はされておらないが、一時的にそこに立ち寄って使用するというものと、両方がある。この両方に対して、これは日本からそういう権利をアメリカの方に与えておる。しかし、この基地を使用して作戦行動をするというような場合においては、配置された米軍であろうが、一時的に使用するものであろうが、いやしくも、日本のこの施設区域を使用してそういうことをやる限りにおいては、必ず事前協議の対象となるということをこの交換公文で明らかにいたしております。  それから、今の極東の観念という統一解釈としてわれわれが文章で出しましたのは、もちろん法律的な用語等におきまして、別に先ほど来申しておるように、在日米軍ということが、きまった条約上の観念じゃございませんので、広く用いている場合と、狭く用いている場合と、両方ありますということを滝井委員に先ほど来お答え申し上げているように、その場合においては、要するに日本の基地を利用して、施設区域を使用して、そうして作戦行動して、そうして国際の安全と平和に寄与し得るような地域をいっているわけです。それには駐留しているのはもちろんのこと、駐留していなくてもそのものを含んでいる、こういうふうに私どもは考えております。
  230. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 関連ですからこれでやめますが、非常に重大な、実質的な訂正が行なわれているわけです。この極東の範囲についての統一解釈における在日米軍というものは、やはり狭義の在日米軍ではない。今実質的に総理がこれを訂正されましたから、その意味で私は確認いたします。  それからもう一つは、新しい安保条約には、これまた、在日米軍という観念は、条文上、条約の上からなくなっていることも総理はお認めになりました。それで私は引き下がるわけです。次の私の質問のときに、この続きはゆっくりやらしていただきます。
  231. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 この際、飛鳥田一雄君より関連質疑の申し出があります。これを許します。飛鳥田一雄君。
  232. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 関連ですから、ごく簡単に二つだけ教えていただきたいと思います。  高橋さんに伺いますが、第六条の交換公文の中で「戦闘作戦行動」という言葉が使われておりますが、このミリタリー・コンバット・オペレーションズという言葉は、交渉の過程の中で日本の側から持ち出した用語でしょうか、それともアメリカの側から出てきた用語でしょうか。
  233. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 これはどちらから持ち出したという問題ではございません。やはりこういう問題は協議の対象にしようということで、ここで一致したわけでございます。
  234. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 そこで、私もこの前、質問のあとで、念のために、防衛庁の図書館にありますいろいろな字引を引かせていただいたわけです。すると、どう見ましても、この用語は戦術に関するものとしてしか受け取れないわけです。ところが、ときどき政府の御説明を聞いておりますと、あたかもこの戦闘作戦行動というものが、戦略に関する部分まで含むかのごときお話がございます。この際、これは戦術に関する部門だけだということを明確にしておいていただければ大へんよろしい、こう思いますが、いかがでしょうか。
  235. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 今おっしゃいました戦術に関するものとか、戦略に関するものとかいうものを、どういう見地からお尋ねになっているのか、私どもよくわかりませんが、要するに、ミリタリー・コンバット・オペレーションというのは、ミリタリー・オペレーションという面が一つあるわけです。ミリタリー・オペレーションの中でコンバット・オペレーションとロジスティックオペレーションとある。ロジスティックのオペレーションを除いたものだというふうな観念でございます。
  236. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 よくわかりました。結局ロジスティックなものを除いたということは、すなわち、戦術と普通呼んでいる言葉に相当する、こう理解をいたします。  そこで、この前の答弁を伺っておりますと、戦略的な部門について、ロジスティックな部分についていろいろな協議があるかのごとく伺いました。そうしてそれは、受田君に対する御答弁を伺いますと、第四条の協議の中に含まれる、こういうような御説明だったように伺っておりますが、第四条はそうしたものを含めた協議、こう理解してよろしいかどうか。防衛庁長官いかがですか。
  237. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 四条の協議は広いものでございまして、作戦全般についての協議もあろうと思いますので、そういうふうな場合には、やはりロジスティックな面についても私は協議の対衆になると思います。
  238. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 そういたしますと、六条の協議は戦術的なもの、第四条の協議は戦略的なものをも含む、こういうお話です。ところが、一体この第四条の戦略的なものをも含む協議の中で、拒否権という問題は全然お話しにならず、戦術的な、局部的な部分についてだけ協議ということが問題になってきて、しかも、共同コミュニケによってその意に反して事を行なわないというお話ですが、こういうことは、常識的にその協議ということの実効性を疑わせるものにならないでしょうか。たとえば、これもたしか受田君に対する御答弁だったと思いますが、今までの日米安保委員会実績、そういうものは第四条の中に含まれていく、こういうお話だったと思います。ところが、日米安保委員会実績を見ますと、たとえば第二回にどういうお話があったかといいますと、スタンプ太平洋地区総司令官より、極東軍事情勢を、日本の防衛と関連させながらの説明を聞く、同時に、太平洋、極東地区における米軍戦略体制についての説明あり、こういうことでありますし、第三回は、バーク米海軍作戦部長による日本地域の海上防衛に関する見解披瀝と同時に、日本地域の防空問題を討議し、在日米軍の配備と撤退計画、これに伴う日本航空自衛隊の育成計画についての話し合いをした。さらに第五回を見ますと、同様なことが書いてあります。六回、同様であります。ここでは明らかに、日本航空自衛隊の育成計画などを極東の米戦略にあわせて話し合った、こういうことが歴然と出てくるのでありまして、こういう戦略的な部門を第四条でお話し合いになる、そしてその話はつぐ。そうして、そういう戦略的な基本線、基本ルートが全部できてしまったあとで、いざ鎌倉、それ出かけようというときに、戦術的な部分だけで事前協議をなすって、一体どれだけの効果がありますか。これは軍事専門家の赤城さんに伺っておきたいと思います。
  239. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 今のお尋ねでございますが、第四条の協議というものは、これは全般的なことをやるわけでございます。第六条に基づく交換公文の事前協議は、これは極東の平和と安全のために戦闘作戦行動を——日本施設及び区域を基地として使用する場合も事前協議でございます。やはり相当、その間に違うものがあるのじゃなかろうかと思うのでございます。全般的な作戦等は平素から協議いたしますから、米軍の動向というものも、ある程度は、私どもはわかると思います。しかし、米軍はやはり全般的な、世界的な視野からものを考えますので、第六条の交換公文に基づく事前協議というものは、それはそれとして、私は非常に重要な意義を持っておる、かように考えております。
  240. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 関連ですから、これ以上伺いませんが、いずれにもせよ、基本的な戦略について無理往生をさせられ、それに応じて育成計画のもとに自衛隊ができ上がってしまっており、いざというときに、そのいざという場合についてだけ事前協議をやってみたところで実効性はない、こう国民は思わざるを得ないわけです。  そこで、第二の問題として、これは林さんに伺っておきたいと思いますが、いわゆるこの事前協議という観念は、国際法独特の観念でしょうか、それとも国際法、国内法を通じた、いわゆる協議という言葉と解釈をしてよろしいでしょうか。何か国際法の上で、事前協議というものを特に別に扱わなければならないような根拠がございますか。
  241. 林修三

    ○林(修)政府委員 別に国際法上どうとか、国内法上どうとかいう問題ではなくて、ここの交換公文におきまして、いわゆる事前協議の主題とするという意味が、いかなる意味であるかという解釈になると思います。協議という言葉は、切り離して言えば、協議はまさに協議でありまして、相談することだと思います。しかし、いわゆる事前協議の主題とするという意味において、つまり、ここであることをするについて事前に協議をする、あらかじめ協議をしなければできない、そういう趣旨が表われておる。あらかじめ協議をして、そこで意思が合致した上でやる、これがいわゆる事前協議の主題とするという言葉の意味だと私は思います。  国内法にとってみれば、たとえば、何々大臣は、何々をする場合には、あらかじめ何々大臣に協議をしなければならぬというのは、まさに事前に協議して、協議成立した上でやるという前提でみなできております。そういうものと実は同じような考え方で、私たちは解釈しております。それは国際法と申しますか、アメリカとの間でも、その点ははっきり話がついておると私ども考えております。
  242. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 そういたしますと、首尾一貫しないのじゃないか、こう私は思うわけです。たとえば、同様な、今あなたがおあげになりました協議という言葉は、労働法の中にもちゃんと出てくるのです。たとえば、藤山さんが御関係になっていらっしゃる大日本製糖株式会社の労働協約を拝見しますと、「会社は、組合員が左に掲げる各号の一に該当する場合は予め本人の属する組合と協議の上解職するものとする。上こう書いてあるわけです。こういう点で、解雇について、あるいは人員の配置、配転について、組合と会社は協議の上できめる、こういう条文はたくさん今までもあるわけです。そういたしますと、これは歴然たる事前協議じゃないでしょうか。この事前協議について、どういう最高裁の判例が出ておりますか、林さん、教えて下さい。
  243. 林修三

    ○林(修)政府委員 これは団体協約において、どういう趣旨でそれが作られたかということまで、実は私たちとして、一々責任を持っわけにも参らないのでございまして、団体協約において、民間においてどういう趣旨で行なわれたか、その趣旨がおそらく最高裁においてももちろん究明されて、その解釈をしているものと思います。しかし、少なくとも国内法あるいは国際法的な部面で使われる場合に、わざわざこれを事前協議とした意味、あるいはあらかじめ協議するとした意味は、普通われわれが使っておりますのは、当然に事前に協議をして、協議成立の上でやるというのが、私たちの使い方でございます。そういう趣旨で今度もできていると思います。アメリカとの間にも完全に了解がついているわけでございます。
  244. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 林さんは、不利であるからお答えにならぬわけです。この歴然たる事前協議、これは民間会社においてとおっしゃったのですが、これは労働組合法によって、あるいはその他の法律によって、きちっと認められた言葉です。これに対して最高裁はこう言っています。会社が組合に一度協議をして、そして納得できるように誠意を持って一度話をすれば、必ずしも組合の了承、承諾等を必要とするものにあらずと言っております。これは日本の最高裁ですから、有権的な解釈です。(「労使は対立しておる、日米関係はそうじゃないよ」と呼ぶ者あり)今、日米と労使の問題は違うという御説明がありましたが、労働組合と会社とは、労働法上対等なものとして扱われていることは御存じの通りです。いずれが上、いずれが下でもありません。従って、国際法的にも、アメリカ日本が、いずれが上、いずれが下とも言えないでしょう。従って、ここでは当然同じ論理が適用せられなければならぬはずなわけです。ところが、日本国内においては承諾を必要としない、こういう判例がきちっとあり、国際法的には必ず承諾を必要とするという主張をなさるのは、頭としっぽが互いに矛盾してはいないでしょうか。(「労使関係には信義はないんだよ」と呼ぶ者あり)今のお話で、うしろのお話では、労使の関係は信義の上に立っていない、こういうお話ですが、しかし、あなた方こそ労使協調を唱えている張本人じゃないでしょうか。もしそうだとすれば、お互いに信義の上に立つと言っても差しつかえがない。一体、会社と組合との対立の場合と、日本アメリカとの関係の場合に、どこでこの協議を解釈し、分ける根拠があるのですか。アメリカの側から、いざという場合には、お前のところの最高裁判所はこの協議という言葉についてこういう判例を出しているじゃないか、こう言われたら、あなた方は一体どうなさるのですか。少なくとも、日本における協議というものはそういうものだということは、あなた方は前提にしてお考えにならなければならぬ。林さん、どうでしょう、国内法と国際法と分けて、この協議を二様に解釈する根拠がありますか。
  245. 林修三

    ○林(修)政府委員 今の団体協約の問題は、団体協約で使われておる言葉を、前後の関係からどう解釈するかという問題だと思います。しかし、この日米間の交換公文につきましては、特に第四条の単なる協議のほかに、事前協議の主題とするという言葉を入れまして、この点について日米間ではっきりした了解を実はしておるわけです。そういう了解をして、おまけに、いわゆる日米共同声明も出ておるわけです。そういう点において、私どもは、実は解釈ははっきりしておると思っております。  それから、国内法においても、私ども、協議、あらかじめ協議しなければならないというような言葉を使っております場合には、単に相談だけでいいとは、普通は考えておりません。たとえば、国有財産法等で、主務大臣が、たとえばこれこれの場合には大蔵大臣に協議しなければならないというようなものは、単に相談をしかければそれでいいんだという趣旨には、われわれは解釈しておりません。当然に、両方が協議、成立した上でやるという前提で作っております。法令によりまして、協議と同意とを使い分けておる法令もございます。その場合には、協議と同意のニュアンスの違いは、多少あるかもしれません。しかし、あらかじめ協議する、事前協議の主題とするということは、実は解釈ははっきりしたものと言えると思っております。
  246. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 労働協約を見ますと、ちゃんと、あらかじめ組合と協議する、こう書いてあって、あなたのおっしゃる通りになっておる。一体こういう御都合主義で言葉を解釈していっていいかどうか、こういうことが問題になります。なるほど、共同声明があるということは、総理も今までお答えになりました。しかし、この共同声明は法的な拘束力がないものだ、これも総理はお認めになりました。組合と会社の間においても、同様な事例はたくさんあります。こういう労働協約を作るに際して、専務取締役なり代表取締役なりが、こうしておいて、君らの方に決して迷惑はかけないから、心配をしないようになど」という言葉を組合にしばしば漏らしながら、労働協約を作ってしまうというような場合はあったのです。そういう例をあげろと言えばたくさんあります。だからこの共同コミュニケが法的な拘そ力を持たない限り、やはりアメリカの側から、逆に、お前のところにもこういう判例があるじゃないか、こう言われたら一体どうなさるのか、これをあらかじめ私は警告を申し上げておいて、私の関連質問を終わります。
  247. 滝井義高

    滝井委員 在日米軍の性格、それから日本区域というような点をやったのですが、どうもあまりはっきりした答弁が得られませんでした。そこで、さらにもう少しはっきりさせる意味で、非常に具体的に今度は質問してみたいのです。  まず、現行の日本国アメリカ合衆国との間の安全保障条約の第三条です。第三条に、「アメリカ合衆国の軍隊の日本国内及びその附近における配備を規律する条件は、両政府間の行政協定で決定する。」とあるわけです。この「日本国内」、これはもうわかります。「その附近における配備」、「その附近」というのは、今までの安全保障条約では、一体どういうところを「その附近」といっておりますか。
  248. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 これは現行の安保条約でございますが、「その附近」というのは、一体どの辺まで含むかというような、はっきりした概念はないわけでございます。ただ、なぜここで「その附近」と申したかと申せば、やはり一国に他国の軍隊を配備する場合は、もちろんその領域の内でございますが、領域外、すなわち、公海におきましても、そこに集結していくということはとやかく国際問題も起こることでございますので、やはり日本の領域だけではなく、その付近ということもここで念のために入れたということでございます。
  249. 滝井義高

    滝井委員 四条を見ますと、「日本区域」という言葉がやはりあるわけです。そうすると、新しい条約の「日本区域」と「日本国内及びその附近」というものは、大体同じ概念ですか。
  250. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 これは必ずしも同じとは言えないかと思います。これはもちろん、両方とも日本を中心とした問題であることは確かでございますが、やはり附近は附近であり、区域区域であると思います。
  251. 滝井義高

    滝井委員 そういう答弁は困るのです。日本区域というのは、日本を中心とし、その周辺だ、こうおっしゃった。周辺と附近というのは、われわれ、日本の概念ではそう変わりゃしない。日本国ということは、日本を中心としてその附近でしょう。イン・アンド・アバウトでしょう。
  252. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 日本の附近という意味は、この文字からきます場合も、また、ただいまのような趣旨に解しますと、これ日本の領域に非常な附近である、そう広いところまで考えているわけではないというふうに考えます。
  253. 滝井義高

    滝井委員 とにかくこれは日本の領土、領域、領海で外のいわゆる公海、公空を意味するということは確実ですね。
  254. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 お説の通りでございます。
  255. 滝井義高

    滝井委員 今度の条約には「その附近」という言葉がないのです。これは一体どうしてですか。
  256. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 そこまで規定する必要はないと考えました。そして、日本国において施設及び区域を使用させる、施設及び区域を提供することで十分であろうと考えましたので、そのように限定したわけでございます。
  257. 滝井義高

    滝井委員 岸総理、お聞きの通りです。今までの条約は、アメリカの軍隊を規制するためには、日本国内とその付近というものが必要だったというわけです。ところが、今度の安保条約では、もう付近は要らぬのだということです。どうして要らぬのか、私わからない。これは削っておるわけですから、条約局長でなしに、全権として行かれたあなたに一つお聞きしなければならぬ。どういう認識でこれが要らなくなったのか。
  258. 岸信介

    岸国務大臣 この六条において、日本の基地を使用せしめるという事柄につきまして、その場合に配置する場合もありましょうし、配置せずに使う場合もありましょうが、そういう場合には、日本の領土内だけを規定することが必要であり、それで十分だと私は考えたのであります。
  259. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、今までの条約はその付近というものがあったが、今度は、アメリカの態様が変わったかどうか知りませんが、総理としては、日本国の施政下の領域だけでいいのだ、その付近は要らない、こういうことに考えたのだ。ただ考えただけなんです。理由はわからない。理由は何も述べられない。どうして付近を削ったかという理由を、われわれ国民は知りたいのです。
  260. 岸信介

    岸国務大臣 今までも、実はそういう規定になっておりますけれども、実際上、それでもって何か適用があった事例もございませんし、また、観念からいったって、きわめて不明確な点もございますし、そういうことは必要なし、こう認めたわけでございます。
  261. 滝井義高

    滝井委員 何ら適用した事例もないということですが、そうすると、米軍の日本近海での行動を規律するときには、規律する条件というのは、今までは付近があったからあったわけです。公海においてアメリカの船が何か事を起こしたというときには、日本アメリカに、いろいろ問題の解決を要求することができたわけです。ところが、今度はなくなったのですから、日本の領土、領海、領空だけで、日本の領海を一歩でも二歩でも出ればもういかんともしがたい、こういうことになるわけです。そうすると、日本アメリカに対する規制の何らの措置もなくなった、こういうことになるのですか。
  262. 岸信介

    岸国務大臣 そういうことじゃございませんで、もちろん、いろいろな不法行為があったというような場合における損害賠償その他のことにつきましては、必ずしも領空、領海に限っているわけではございませんので、ちっともその点は差しつかえないと思っております。
  263. 滝井義高

    滝井委員 それは一体、どういう条約上の根拠でそういうことができますか。公海というものは、日本アメリカの軍隊の権限を規制する権限というものが、何もないはずです。ありますか。一体今度の条約のどこから出てきますか。
  264. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 領域外、領海外の公海でございますから、それは一般国際法の原則に従って、その制約と申しますか、権利義務と申しますか、一般国際法の適用を受けるわけでございます。領海外ではですね。それは公海でございます。すなわち、公海は何人の主権のもとにも立たない。ということは、言いかえれば、国際法の原則によって規制される、こういうことになるわけでございます。
  265. 滝井義高

    滝井委員 あなた方は、公海の自由の原則だ、こういうことですね。そうしますと、アメリカがこの公海で演習をやります。これはなるほど、アメリカの行政権で演習をやるのは御勝手です。ところが、その領海外で日本の漁業権者が漁業をやる。これは日本の漁業権として、当然公海で漁業をやるのは自由ですから、やれるわけです。そうすると、その二つが行き合うことになる。そうしますと、これは一体どういう工合にあなた方は御解決になるのですか。今岸さんは、そんなものは適用の例がないとおっしゃった。
  266. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 ただいまの問題は、施設区域としてこれを提供するというような問題ではない。すなわち、やはり公海における漁業が制限されるから、それで補償とか、そういう問題は別個の面で考えるわけでございますが、この施設区域云々という問題ではない。従って、どう解決するかという点は、補償とか、そういう問題としてこれを考える、こういうわけでございます。
  267. 滝井義高

    滝井委員 今岸総理は、そういう適用の事例はないとおっしゃるわけです。付近において、いろいろ事態が起こった例はないとおっしゃるのでしょう。今までは、公海において問題が起こったら、日米合同委員でおやりになっておったのではないですか。
  268. 森治樹

    ○森政府委員 公海で不法行為がありました場合には、先ほど条約局長からお答え申し上げましたように、国際法上の一般原則によりまして、日米間の外交交渉によって決定しておったわけでございます。ただ、これもただいま条約局長が触れましたように、日米間の話し合いによりまして、公海上に一定の海域を作りまして、船舶等に対する立ち入り禁止区域というものを設けたことがあるわけでございます。これも条約局長が申し上げましたように、施設区域として提供をいたしましたものではなく、地域における船舶の航行の安全と、それからこの地域で漁業を行なっております漁業関係者の補償のために、日本政府の特別の立法に基づきまして措置をとっておった次第でございます。
  269. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、それはこの安全保障条約三条に基づいたものではなかったわけですか。
  270. 森治樹

    ○森政府委員 旧安全保障条約三条に基づくものではなくして、日本の特別の立法によっておったものと承知いたしております。
  271. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、その付近における配備を規律するということは、これはやはり私は、広い意味では、演習場を指定するということは、明らかにそこをアメリカの軍隊が使うことを——いわば日本が積極的に水面を提供しておるわけです。提供することによって……(「提供できない」と呼ぶ者あり)うしろで提供ができないと言っておるけれども、条文では提供と書いておる。(「水面は提供できない」と呼ぶ者あり)いや、そうじゃない。いいですか、日本国アメリカ合衆国との間の安全保障条約に基き駐留する合衆国軍隊に水面を使用させるための漁船の操業制限等に関する法律で……(「それは領海だ」と呼ぶ者あり)そうじゃない、公海もある。「日本国内及びその附近に配備されたアメリカ合衆国の陸軍、海軍又は空軍の使用に供する水面を提供するため」と、こうなっている。従って、その付近ということは、さいぜん私が確認しておるわけです。公海、公空を含みますということは、確認をとっておるわけです。すなわち、日本区域というほどではないけれども、公海を含みます、こういうことになっておる。だから、明らかに提供しているわけです。提供をしておるからこそ、今までは、漁船のために、操業禁止で損失があったら日本が補償しておった。農林大臣、そういうことでしょう。農林大臣、そういうことで今までしておったのでしょう。
  272. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 今お尋ねの件は、法律上の問題でありますから、事務当局からお答えさせます。
  273. 高橋泰彦

    高橋(泰)政府委員 従来の公海におきまする演習関係につきましては、やはり日本政府の合意をもって演習するような仕組みにいたしておりまして、そのために漁船の操業の制限に関する法制を準備し、それによって漁業を制限し、その際生ずる損害に対しては国が補償するという考え方で、従来やっておるわけでございます。
  274. 滝井義高

    滝井委員 岸総理、ごらんの通り今までやっておるわけです。しかも、やっておるのは、日本国アメリカ合衆国との間の安全保障条約に基づいてやっておるわけです。林さん、頭をひねったって法律に書いてある。だから、今まであなた方は、国際法でやっておって、この条約には関係ありませんと言っておるが、関係ある。あなた方の出した法律にちゃんと書いてある。しかも、これは積極的に日本が水面を提供しているんですよ。(発言する者あり)岸さんに私は言っている。ないと言っている。提供をするということは、積極的にアメリカに使って下さい、こういうことでしょう。
  275. 林修三

    ○林(修)政府委員 この点は、今水産庁次長がお答えした通りでございまして、現在の法律には、いわゆる「使用に供する水面を提供するため必要があるとき」云々と書いてございます。しかし、この法律の趣旨はこういうふうに日米間で合意した水面についてはアメリカがそこを使う、演習場等に使う、日本としてはそこにおいては漁業を制限する、その漁業制限によって漁業者が損失を受けた場合にこれを補償する、そういう趣旨でこれはできておるわけでございまして、いわゆる公海を日本政府が提供——いわゆる普通の意味の安保条約三条あるいは二条に基づいて施設区域として提供する、そこにいう施設区域として提供するということは不可能なことでございます。公海を提供するということはないわけでございます。現在まで、施設区域というような言葉を使って告示はされております。告示はされておりますけれども、これは二条でいう施設区域とは性質が違います。特に、たとえば刑事特別法等の施設区域の適用は受けておりません。そういう意味において、これは性質が違うものでございます。公海において一定の区域をきめて、そこでは漁業を制限する、アメリカはそこを演習のために使う必要があるから、そこを日本としては漁業を制限する、それに入れないために受けた損失は補償する、そういう性質でできておるわけであります。今度は、もちろん従来の法律の改正を行なっておりまして、実質的には全く同じことをやっていくわけでございます。いわゆる普通の意味の施設区域の提供とは違うわけでございます。
  276. 滝井義高

    滝井委員 それならば、これは一体施設区域と違うというなら、日本国アメリカ合衆国との間の安全保障条約のどこに基づいて提供するのですか。今までのどの条項に基づいて……。
  277. 林修三

    ○林(修)政府委員 基づいて提供しているのではないわけでございまして、「基き」というのは、「日本国内及びその附近に配備されたアメリカ」の軍、そういうところに続いてくるわけでございます。従いまして、要するに、日米安保条約に基づきまして日本に米軍がいる、米海軍がいる、それが演習をする場合に公海を使う。公海を使うことは本来自由であるはずでございますけれども、日本としても公海において漁業をしている。そういうわけで、むやみやたらにそういうところで演習されては困る。そういうわけで両方が協議をして区域をきめて、向こうはそこで演習をする、一方において、日本としては漁業に制限をして補償する、そういう措置をとっておるわけでございます。安保条約に基づきというところは、お読み方がちょっと違うのではないかと思います。
  278. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、これは、安全保障条約に基づかなければ、アメリカの軍隊は日本に駐留しない——これはわざわざ「駐留」と書いてある。さいぜん石橋君が言いますように、駐留する軍隊の性格というのは、現在の安全保障条約の一条から出てくるのです。ところが、今度は駐留という概念が出てこないから、この条文の今度出た法律をごらんになると、「日本国にある」となっておる。だから今度は、日本国にあるのですから、従って、水面の提供はできないです。今度は、水面は提供できないのです。今までは提供ができたのです。駐留の軍隊で、日本は提供ができた。今度の法律はどうなっておるかというと、日本国にあるアメリカ合衆国の軍隊の水面の使用に伴う漁船の操業制限等に関する法律、こうなっておる。今までは、水面を使用させるための漁船の操業制限等に関する法律で、させる、提供をする、こう積極的になっている。今度は、日本にある軍隊。従って、日本にある軍隊ですから、日本にある軍隊が水面を使用する場合には、これは限定がないのです。水面を使用するについては限定がない。今までは、日本とその付近という限定があった。今度は、どこでもいいのです。どこでも使用する。日本にある軍隊は、どこの水面でも使用できるのですよ。公海であろうと、領海であろうと、どこでも使用できるのです。従って、今度は、それに日本が金を払うということになる。(「冗談でしょう」と呼ぶ者あり)冗談じゃない、払うのです。与党がそういうことを知らぬから、だめなんです。払うのです。条文をごらんになるとそうなっている。
  279. 林修三

    ○林(修)政府委員 その点は、現在でも安保条約に基づきます行政協定におきましても、御承知の通り、行政協定における合衆国軍隊というのは、日本にある合衆国軍隊をいうというように定義されております。従いまして、現在においても、必ずしもいわゆる配備された、あるいは駐留する軍隊という観念に行政協定は限定しておらないわけでございます。そういう意味において、従来の行政協定を施行する法律の文言の使い方に、若干問題があったと私ども思っております。従いまして、今度の新しい法律におきましては、その点をはっきりさしております。むしろその点を、全部法律を統一いたしまして、その点について従来の国内法の書き方に、若干ずつ書き方の一致してない点があったわけでございまして、今度はそれを統一したわけでございます。それでいわゆる日本国にある軍隊ということにすべて統一しております。その点において、観念は、私ははっきりしてきていると実は思います。  それから領海の提供でございますが、これはまさに、領海はいわゆる施設区域として提供するわけでございます。これは地位協定の二条等に基づいていくわけであります。公海の提供ということは、これは観念として実はあり得ないわけでございます。公海というものはむしろ各国が自由に使い得る水面でございまして、これについて提供という観念は実はないわけでございまして、その点、今までの文言では多少まぎらわしい点があれば、それを今度はっきりさせておるわけであります。従来、施設区域というのは告示もされておるようでございますが、その内容は、先ほど水産庁次長が申し上げました通りに、つまり公海のそこの区域を米軍の演習等で使う、それを使うについてはもちろん日本と協議して——日本の漁船がそういうところを動きますから、日本と協議をして、どこどこの区域に限って使う。もちろん公海自由の原則はある、その根底の上に立っておるわけでありますが、日本の漁船が損害を受けることをおもんぱかって、あらかじめ協議して、どこどこを何時間使う、そういうふうに使われる場合には、日本の漁船をそこに立ち入らせない、それで補償をする、こういう観念でございまして、むしろ、今度の法律では、そういうところをきわめてはっきりさせていると私は思います。しかし、これは従来も、実質的には同じことでございまして、内容的には、従来と今度とどこも違いはない、かように考えております。
  280. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、今うしろからも出ておったが、公海でアメリカ軍のやったことで、日本がどうして金を払わなければならぬかということが、与党自身から出ているわけです。そうすると、これは水産庁でいいですが、この場合も、明らかに公海における——これは公海とは書いてありませんが、水面を使用する場合と書いているから、領海であろうと公海であろうと、今、林さんの答弁でこれは無差別ですね。これは明らかに損失を補償しますね。
  281. 高橋泰彦

    高橋(泰)政府委員 お答えいたします。漁船の操業を公海におきまして日本国の法律によりまして制限する場合に、これは公海におきましても補償することは当然であろうかと考えております。
  282. 滝井義高

    滝井委員 そうすると、日本は、どういう理論的な、どういう法律上の根拠から公海の制限をして、アメリカに演習場として提供することができるのですか。公海自由の原則というのは、公海が平和な原則で満たされておるときに公海自由の原則があるのです。演習をして、チャンバラの練習をするためには、公海自由の原則なんかありゃしないですよ。
  283. 林修三

    ○林(修)政府委員 その点は、今、滝井委員のお説でございますが、多少違うと思います。公海自由の原則において、いわゆる公海において各国が演習をすることは、当然認められておるわけでございます。ただ、そこにおいて、たとえば核実験等において非常に広い水域を使うことがいいか悪いかという問題があるわけでございますが、普通の観念において、たとえば軍艦とか飛行機が公海において演習することは、これは各国全部認められております。公海自由の原則は日本にもございますが、アメリカにもございます。従いまして、アメリカが公海を使うことは、本来、公海自由の原則に基づいて自由でございます。日本においてももちろん自由であるわけで、そこに漁船が出て行っておる、あるいは場合によっては、公海に漁業権を設定しておるところもございますが、これはまさに日本国内法だけの問題で、いわゆる公海自由の原則からいいますと、外国には対抗できないわけでございます。そういうことは別といたしまして、日本アメリカも、公海自由の原則で公海を使用できるわけでございます。日本が提供するとおっしゃいますが、これは要するに、アメリカとの協議で、日本に駐留する米軍が一定期間そこを使うということをお互いに話し合って、そこには危険でございますから日本の漁船が近寄らないように、日本国内法だけそれを制限するわけでございます。それに対して損失を補償することは当然だろうと思います。従来もそのやり方でやってきておるわけでございますし、今後も同じやり方を続ける手はずになっております。
  284. 滝井義高

    滝井委員 水面を提供するということがおかしいと言うけれども、今までの法律は、現実に提供するということになっているわけですね。だから、私は、今までの法律を基礎にして言っているわけです。ところが今度は、駐留という概念がなくなったわけです。今までは、駐留という概念があったから提供しておった。今度は日本国にある軍隊になったのですから、駐留という概念がなくなってきておる。だから、駐留という言葉を入れなかった、そこで今度は、その軍隊が使用する水面というものを提供はしない、だから自由に使うという形が出てきた。そうして、その場合に、たまたま日本が今度は告示をしておる形になった。ほんとうはこういうことをする必要は、公海のことですから何もないのですよ。ところが内閣は、演習区域を告示しておるでしょう。この告示というのは何に基づいて告示をしておるのですか。
  285. 林修三

    ○林(修)政府委員 まず提供するという言葉が使ってあった問題でございますが、これは普通の施設区域の提供とは違う意味でございます。これは今滝井委員もお認めになりました通りに、公海を提供するという言葉は、それ自身、多少普通の意味の領土、領空、領海を提供するのとは意味が違うことは明らかでございます。いわゆる公海につきましては、要するに、その水面を、たとえばアメリカが使うことについて、日本の方では漁業制限をするということでございます。それで従来告示をしておったわけでございますが、これは、まさに、一般の国内の漁業者に対して、そこは漁業制限の立ち入り禁止区域になっているということを知らせるためにやっておったものと、かように考えます。
  286. 滝井義高

    滝井委員 過去において——まあ、二十八年ごろからでもいいのですが、過去において、アメリカに水面を提供したことによって一体どの程度の損害が出て、どの程度日本が払うことになったのですか。
  287. 丸山佶

    ○丸山政府委員 お答えいたします。これまで米軍の水面の使用に伴いまして漁業の制限をいたしました区域、公海、領海を通じまして二十数ヵ所ございます。平和条約発効後、今日に至るまでのこの漁業の補償金は、たしか三十億円程度と思います。
  288. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、公海の漁業制限によって三十億程度要っておるわけです。今後も、おそらくこういう金が要ることになる。岸さんは、そういうものはないとおっしゃったけれども、あるわけです。そうしますと、ここで一つ問題が出てくるわけです。それは、公海上の在日米軍という考えがここに出てくるわけです。演習場を提供して、そうして、そこで演習をしておる、その在日米軍が攻撃を受けたときには、これは日本に対する攻撃とみなしますか。
  289. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 攻撃が、日本の施政のもとにおける攻撃でなければ入りません。
  290. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、アメリカの軍隊に、日本が、いわば精神的には同じだという——そこを制限したのだから、提供という形と同じですね。今、同じだというような意味を言いましたが、それは提供でなくてもいいのです。使用することを指定した地域です。そこだけは使用してもよろしい、そのかわり漁業はしなさるな、こういうわけですから、結局、それの損害を日本が払うということは、どこからきておるかというと、その軍隊が日本にある軍隊だからなんです。ただアメリカ会合衆国の軍隊ならば、やらないのですよ。ところが、日本にある軍隊だから補償をするのです。そうでしょう。
  291. 林修三

    ○林(修)政府委員 それは、必ずしも論理的必然にそうなるわけでは私はないと思います。かりに、どこかの軍隊が公海上で演習をして、日本の漁船がそれによって損害を受けたといえば、これは、まさに、国際法的にその損害賠償の問題は解決されるわけでございまして、かりに、日本にいわゆる駐留と申しますか、日本におらないアメリカ軍隊が日本の漁船に損害を与えたという場合は、まさに、国際法によって解決する問題でございます。その場合に、漁船の損害は泣き寝入りという問題はございません。ただ、日本におりますアメリカ軍隊の水面使用の問題は、要するに、これはひんぱんに行なわれるわけでございます。日本におる軍隊が演習で、日本の漁船がひんぱんに行く日本の近海を使う、こういうために、それをお互いに協議をして、そこで日本としては、危険でございますから、漁船をそこに入らせないようにする。入らせないような措置をとれば、やはりそれによって受ける国内の漁業者の損失、これは補償するのが政治的に私は当然であろう、かように考えるわけでございます。
  292. 滝井義高

    滝井委員 その場合の概念は、これは日本の指揮下にある軍隊であることは間違いないのです。そうして、日本に配置されておる軍隊であることも間違いない。私がさいぜんから言いたいのはここなんです。岸総理は、日本に配置された軍隊で、日本の指揮下にある軍隊だ、こうおっしゃった。この日本が水面をいわば使用せしめておる軍隊というものは、日本の指揮下にあり、しかも、日本に配置されておる軍隊なんですよ。その軍隊が攻撃を受けたのだったら、これはアメリカ軍に対する攻撃は、すなわち日本に対する攻撃じゃないですか。
  293. 林修三

    ○林(修)政府委員 その軍隊は、そういう意味においては、日本に配置されて、あるいは在日米軍の司令官の指揮を受けておりましょう。しかし、もう一方、第五条をごらんになれば、第五条は、日本の施政下にあるいずれか一方の締約国に対する攻撃と書いてありまして、まさに、施政下外におりますものは第五条の要件に入ってこないわけであります。それが日本に配置された軍隊であろうとなかろうと、それは要するに、日本の施政下にはないわけでございます。第五条の要件には当たらないわけでございます。
  294. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、吉田・アチソン交換公文をごらんなさい。吉田・アチソン交換公文には「当該一又は二以上の加盟国がこのような国際連合の行動に従事する軍隊を日本国内及びその附近において支持することを日本国が許し且つ容易にすること、」と、こう書いてある。「付近」というのがあるわけです。アメリカ軍というものは、国連軍であるかアメリカ軍であるかということは見さかいがつかぬ。アメリカの旗を立てておけば国連軍だというようなことをおっしゃったわけです。そうしますと、日本国及びその付近にあるアメリカの軍隊というものが、しかも、それは配置をされ、指揮下にある軍隊、これが攻撃を受ける。しかも、その軍隊が日本の漁民に被害を与えたら、日本がその補償をするという、これだけの条件がそろっておる。アメリカの軍隊が日本の近海の公海で攻撃を受けたときに、日本は知らぬ顔をしておるというんじゃ、日本の平和と安全のためと言うが、一体何のために条約を結んだんですか。
  295. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 これは、第五条において、そこまで広げずに、日本の施政のもとにある領域に、武力攻撃を限ったわけでございます。
  296. 滝井義高

    滝井委員 いや、限ったのはわかりますが、では、吉田・アチソンの交換公文には「日本国内及びその付近」とあるじゃありませんかと言うんです。
  297. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 それは、その通り書いてございます。しかし、武力攻撃の場合は第五条でございます。そうして第五条は、日本の施政のもとにおける領域というふうに限ったわけであります。
  298. 滝井義高

    滝井委員 まあ、五条々々と言うけれども、吉田・アチソン交換公文、これは明らかに国連軍に対して適用するわけなんですよ。これは理論的にあなた方の負けですよ。  では、同じように、関連をして次に入ります。次は、同じような問題になってくるのですが、相互協力及び安全保障条約についての合意された議事録、いわゆる沖縄に関することです。この条約本文の四条では、いずれか一方の締約国の要請によって協議をすることになっておるわけです。ところが、この合意議事録には、特に、「緊密に協議を行なう。」と、「緊密」ということが入ってきたわけです。「緊密」ということ、これは何か。特にこの合意議事録に「緊密」という言葉を入れたのは何か意議がありますか。
  299. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 これは、なかんずく、問題が沖繩に関連していることでございますので、もちろん、特に緊密にやろうという気持を表わしたわけであります。
  300. 滝井義高

    滝井委員 沖繩は日本の潜在主権があるところだ、従って、これは日本国内よりも大事なのかもしれぬが、特に緊密にやる。まあ、これ以上は意地悪はいたしませんが、緊密にやることはけっこうです。  そこで、「もしこれらの諸島に対し武力攻撃が発生し、又は武力攻撃の脅威がある場合には、」と、こうなっているわけですね。今までわれわれが本文等を読む場合には、武力攻撃という一点張りできたわけです。ところが、ここに「武力攻撃の脅威」があるという事態が出てきたわけです。これは国連憲章の五十一条をも越えておる概念です。いわば脅威がある、それに対して何か行動をとるというときは、先制的な自衛権というか、予防的な自衛権というか、そういうものが、ここにどうもニユアンスが一つ出てくるような感じもするのですがね。しかし、そういうことはとにかくとして、武力攻撃の脅威がある場合には、一体日本は何をするのですか。
  301. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 武力攻撃の脅威が起こったような場合には、将来武力攻撃があった場合に、沖繩に病人があれば、そういう人を内地に連れてくるとか、そういうようなことによって武力攻撃が起こった場合に、そういう人が治療ができないとかなんとかいうことがないようにすることも、一つ方法だと思います。
  302. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、武力攻撃がある場合には、日本は沖繩に出兵ができるということですか。
  303. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 いや、そういうことではございません。沖繩の島民の福祉のためにやることでありますから、病人を内地の病院に移してしまうとか、そういうようなことをわれわれは考えているわけでありまして、出兵するというような、そんなことは考えているわけじゃございません。
  304. 滝井義高

    滝井委員 実は、福祉という言葉は、岸・アイクの共同声明の中にも「これらの諸島の住民の福祉を増進し、」と、「福祉」という言葉があります。それから安保条約の前文にも「福祉の条件」という言葉があります。それから二条にも「福祉の条件を助長する」ということがあります。それから、日本国の全権委員の合意議事録にも「島民の福祉のために執る」云々ということがあるわけです。それから、アメリカ合衆国全権委員の方にも「島民の福祉を確保するため全力を尽くす意図を有する。」という、こういうことがあるのです。この福祉の内容ですね。おそらく、これはそれぞれ同じことではないかと思うのです。岸・アイク声明以来、こういうことがずっと条文に出てきたのではないかと思います。前文なり、二条の方の「福祉の条件上というのは、これは違うのだろうと思う。この「福祉の条件」というものは一体何か。それから、沖繩における福祉のためにとる措置というものは、一体具体的にどういうことなんですか。
  305. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 条約局長から御説明いたします。
  306. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 ただいま御指摘の点でございますが、各条文に「福祉」という言葉が使われております。ただ、この前文あるいは、二条の「福祉の条件」とかいう場合の福祉、これは相当福祉ということを全般的に考えております。やはりこの岸・アイク共同声明における沖縄の福祉ということも島民の全般的な福祉を考えておりますが、この場合最も具体的に問題になるのは、何といっても武力行為が発生したとか、発生の脅威のある場合でございますから、これは一般的な全般的に考える福祉よりも当然狭く考えてくる。狭く考えてきて、ほかのことをしないというわけではございませんで、当面の問題として、われわれが福祉として考える対象は狭いのではないか、こういうふうに考えております。
  307. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、この場合の福祉というものは、本文の福祉よりか範囲が狭い、こういうことですね。そうしますと、武力攻撃なり武力攻撃の脅威があった場合の福祉ということのためにとる措置、これは具体的にどういうことなんですか。
  308. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 たとえば、そういうような脅威が起こったとき、あるいは武力攻撃が起こったときに、老人はできるだけ内地に連れてくるとか、あるいは先ほど申し上げましたように、病人でもって治療関係にあるような人は、できるだけ内地の病院に移す、それが一例だと思います。まあ、そういう場合、それはたくさんございましょうと思います。実際に島民の、今申し上げたような条約の前文なり、その他によります福祉よりも狭く現実の問題があるわけでございます。
  309. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、武力攻撃のおそれがある場合はとにかくとして、現実武力攻撃があった、こういう場合に、いわば日本自衛隊がおそらく行くことになると思うのです。日本自衛隊というものが沖縄に出て行くわけです。いわゆる病人を収容するために、自衛隊の衛生部が出ていくことになる。これは軍隊であることには変わりはないわけです。これは岸総理、この条文で可能ですね。
  310. 岸信介

    岸国務大臣 自衛隊のいわゆる海外派兵ということを、われわれは日本憲法から認めておりませんが、それはいわゆる軍事行動をするという場合でありまして、平和的な目的のために、平和的な行動のために出ていくということは、これは私は禁止しておるものじゃなかろうと思います。今、武力攻撃があった場合において、沖縄に対してどういう具体的な行動をとるか、いわゆる福祉という言葉に含まれておる——ちょうど赤十字社のいろいろな活動がそういう場合に行なわれておりますが、そういうことを日本政府として最も有効にとっていくというようなことを前提に考えておると思います。今お話しのように、自衛隊の問題については、自衛隊が軍事行動のために海外に出ていくということは、これは憲法の規定から考えられないのでありますけれども、その他、平和的な目的で何か海外に出て活動するということまで禁止しておるとは、私は考えません。
  311. 滝井義高

    滝井委員 それは平和的目的のためならば、自衛隊は出ていっていいということでございますが、いいですか、岸さん。論理はこういうことになるのですよ。沖繩に武力攻撃があったという現実がここにあるわけです。武力攻撃があった、そうしますと、極東の平和と安全が侵されておるのですから、六条の交換公文によって、在日米軍は、協議をして、沖繩に出ていきます。事前協議をして出ていきますよ。出ていったときに、今度はどういうことになるかと言うと、そこの御老人方や病人を救済するために、日本自衛隊の衛生部が行くわけです。これはこういう形になる。それを今出ていってよろしい、こういうことになったのですが、それでよろしいのですね。
  312. 岸信介

    岸国務大臣 今、問題は、憲法上そういうことは不可能であるか、禁止されておるかどうかという法律解釈を私申し上げたわけであります。そういう場合に、今滝井委員は、自衛隊の衛生隊が出ていくということを前提に御議論になっておりますけれども、私は赤十字活動という言葉で申し上げましたが、赤十字社の連中が出ていくとか、いろいろな方法はあると思います。必ず自衛隊の衛生隊が出ていかなければならぬということを言っているわけではございません。しかし、自衛隊の衛生隊をそういう目的で派遣することが、いわゆる憲法でいっている海外派兵の禁止ということには触れないという法律解釈を私は申し上げたのであります。今の自衛隊が出ていけるかどうかということは、自衛隊法の規定等を詳細になにしまして——そういうことを今予想して自衛隊法はできておらぬと思いますから、条文等を当たってみないと、すぐ出られるかどうかという法律の問題は、これは別になにして、ただ、私は、憲法の解釈として、海外派兵を禁止しておるものには当たらないということだけを申し上げたわけでございます。
  313. 滝井義高

    滝井委員 どうも岸総理答弁はあいまいもことしておるのです。私は、自衛隊法の七十六条にここを合わせたとにらんでおる。七十六条は、自衛隊の防衛出動が、武力攻撃があったときと、武力攻撃のおそれある場合とを含んでおるわけです。自衛隊法の七十六条は、防衛出動の両方の場合を含んでおる。そうしますと、赤十字が行くという以上は、戦場になっておるのです。戦場——武力攻撃があって、そこに出ていくのに、一体シビリアンが出ていきますか。これは外務大臣、どうですか。
  314. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 赤十字等の活動はできると思います。しかし、同時に、この交換公文は、御承知の通り、できるだけ島民の福祉や利益を守っていくために、お互いに緊密な協議をするということなのでありまして、それがすぐにそういう場合に出ていくとか、出ていかないとか、あるいはどういう方法でやるとか、そういうことは、そのときの状況の判断によりましてきめるわけでありまして、必ず自衛隊の医療班が出ていかなければならぬというようなことを、われわれは考えているわけでも何でもございません。
  315. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、武力攻撃という定義は、あなた方がここで何とおっしゃったかと言うと、計画的、組織的な侵略、こうおっしゃったのですよ。計画的な、組織的な侵略があるというその島に、一体、普通の概念として、日本赤十字というものが行けますか。やはりこれは武装をしたものが行かなければならぬということになるわけです。そうしますと、岸総理は、それは憲法の微妙なあれがあるけれども、大体そういう平和的な場合には自衛隊でも出ていけますということを今言ったわけです。そういうことでいいのですか。そういうことならそういうことで、林法制局長官、こういうときにあなたがはっきりと出なければいかぬでしょう。
  316. 林修三

    ○林(修)政府委員 それは法律的の問題と実際の問題とは別でありまして、実際の問題としてそういう沖繩が戦場になっている場合に、日本の、たとえば赤十字社のものが行けるかどうかという問題がございます。それは、行ければ行けます。事実上行けなければ、これはやむを得ないと思います。今のお話でございますが、そういうところに武装部隊を持っていったら、かえってあぶないのでありまして、むしろ武装をしない方の部隊が行って、ほんとうのいわゆる人道的な見地から活動するのが本来でありまして、人道的見地で活躍するものを、そうむやみにどこも攻撃することはあるまい、かように考えるわけであります。  それから自衛隊の問題でございますが、これは仮定の問題でございまして、たとえば、夏、ハワイあるいはサンフランシスコに、自衛隊の艦隊が平和親善に行く、これは何も海外派兵ではございません。そういう意味において、いわゆる平和的な問題で外国に行くこと一切が自衛隊について禁止されているわけじゃない、かように私は考えます。
  317. 滝井義高

    滝井委員 そんな海外旅行に行くなんというようなことを言っているのじゃない。ここには武力攻撃という前提があるのです。武力攻撃があるときに、一体自衛隊が行かずに、だれが島民の福祉のために必要な措置をとりに行くのか。福祉とは何ぞや、今の説明では、病人を連れてきたり、御老人方を運んだり、食糧を送ったりすることらしいのです。これはやはり戦場の中に入っていくことを意味するわけです。そうすると、その入っていくこと自体によって、海外派兵と疑われて、日本一つの戦禍をこうむるおそれもここから出てくるという懸念が実はあるわけです。その場合に、これはどうですか、日本が緊密な連絡をとっていくのですが、その場合に日本の潜在主権との関係はどうなるのです。日本が沖繩の島民のために行って、島民の救済その他に当たるということは、そこに日本の施政権が、岸さんの得意な議論からいえば、飛び出たことになる。頭をもたげてきました。それだけアメリカの施政権がへこんだことになっちゃった。そういうことになりませんか。
  318. 林修三

    ○林(修)政府委員 この点の緊密な連絡をとって福祉のために活動するというのは、必ずしも沖繩の中に入ってどうするということまで意味しておりません。それはもちろんそういうことをアメリカと協議の上でやることもございましょうけれども、それのみを意味しているわけではないのでございまして、たとえば、向こうから送ってくるものを日本で受け入れて、たとえば病院に入れることもございます。あるいは、日本から病院船を出して運んでくることもございましょうし、あるいは、食糧を送るということもございましょうし、いろいろなことを含んでいる。そういうことが、潜在主権の問題でできないことはないわけです。そういうことはできる範囲は幾らもあるわけです。これは積極的に、いわゆる条約上できない範囲のことまでできる、でかすということまで書いてあるわけではもちろんないわけでありまして、当然日本としてやり得る最善のことをやる、こういうことだと思います。  それから、先ほどのお尋ねでございますが、私は、これは法律論ではございませんが、そういう戦場に、たとい助けに行くのでも、武装部隊が行くのはかえって不適当で、むしろ武装しないものが行くのが適当ではないかと思います。
  319. 滝井義高

    滝井委員 そういう場合に、積極的に、協議の結果、アメリカの方から、一つ日本さん来て下さい、米国承認をした場合に一体どうなります。
  320. 林修三

    ○林(修)政府委員 それはそのときの約束の内容によってきまってくるわけでございまして、それはあるいは施政権の返還等によるか、あるいは一時的に日本——たとえば、今でも施政権向こうは留保したまま、日本において、たとえば日本があそこに恩給を支給する、あるいは遺家族の年金を支給するためにいろいろの調査を委託しております。そういうことは向こうとの協議でやっておるわけです。そういうふうに、いろいろなやり方は私はあるだろうと思います。
  321. 滝井義高

    滝井委員 私は自衛隊のことを言っておるわけです。どうもそれらの答弁がこの合意議事録をよく読んでみると、非常にこれは微妙な書き方になっておるわけです。岸総理自身も、自衛隊が平和的に行くことはお認めになったようです。そういう点について、ここは、私は、へまをすると、米国と韓国、米国と台湾、米国とフィリピンとの間のいわゆるNEATOの形成に巻き込まれる一つの重要な足がかりになるようなにおいがするのです。こういう点についてはもう少しはっきりする必要があると思うのです。今までの政府答弁では、沖繩を米軍が撤退するというような場合には、日本に主権が返るという意味の答弁をここで再々やっておられるわけです。そうしますと、福祉のために日本が行くということになれば、それだけ沖繩における福祉活動というものをアメリカがやれば、日本も沖繩でやるということになる。それだけ日本の行政権というものが沖繩の地域で動く形になる。(「いい傾向だな」と呼ぶ者あり)傾向としては、いい傾向かもしれません。しかし、それは同時に、いい傾向ではあるが、その反面に、いわゆる日本国自体が戦争に巻き込まれるという疑いが出てくるわけです。ここに一つの問題があるのです。
  322. 林修三

    ○林(修)政府委員 これは、福祉のためにいわゆる施政権の一部の返還をするとかしないということは、ここにどこにも書いてないわけでございまして、つまり、現在の条約下において、日米間で両方ができることをお互いにやろうという趣旨でこれはできておるわけです。積極的に、たとえばそういう場合は施政権の一部を返還するというようなことがあれば、これはまた別に日米間で約束してやることだ、かように私は考えます。
  323. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 この際、戸叶里子君より、関連質疑の申し出があります。これを許します。戸叶里子君。
  324. 戸叶里子

    戸叶委員 私は、沖繩の問題につきまして二、三点関連質問をしたいと思います。  この合意された議事録をずっと読んでみますと、日本が、今回の沖繩の問題を話し合うときは、その主権の問題については何も触れなかった。そうして潜在主権を持っているから、これらの諸島民の安全に対して、日本国政府及び国民の有する強い関心を強調したいと思う。そしてまた、この島に武力攻撃が発生し、または脅威があるときには、四条で協議をする、武力攻撃が発生したときには、相談をしてそして福祉のための措置をとる、こういうふうに日本が言っております。それに対しましてアメリカの方では、武力攻撃が起きたときには、合衆国政府日本国政府と協議をして、また「これらの諸島の防衛のため必要な措置を執り、かつ、島民の福祉を確保するため全力を尽くす意図を有する。」こういうふうに答えておりますけれども、ほかの合意された議事録と比べてみますと、何かしら、ぴったりいってない面があるのではないかというようなことを感じます。それは、こういうふうな形態をとっている合意議事録というものは、日本側がこういうふうに言ったときに、こういう点を合意いたしましたというふうに返事しているわけですけれども、これはそういうふうな書き方はされておらない。アメリカは、これらの諸島に対しましてはこういたしますよということを、独断で言っているというふうにしか、この現われた合意議事録は書かれておりません。辛うじて、武力攻撃が生じたときには、この福祉の処置をとるという場合に、日本の方では、アメリカと相談して検討する意図がありますよと言っているのに対して、アメリカの方では、島民の福祉を確保するために、全力を尽くす意図があるというふうに、日本を無視した形で勝手な返答をしている。こういうふうな合意議事録というようなものはないと思いますけれども、この点いかがでございましょうか。
  325. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 合意議事録の問題でございますが、これは、条約の交渉の過程において、おのおのの発言したこと、その他、意見の合致したことを記録したりするものでございますが、御承知の通り、合意議事録にはいろいろな形がございまして、合意議事録がこうでなければならないというような一定の型は、御承知のように、ないわけでございます。この場合は、交渉の過程においておのおのがその決意を表明したところのことをここに記録して、おのおのがその決意を表明し合ったという形式及びその内容をとっているわけでございます。
  326. 戸叶里子

    戸叶委員 その決意の表明というのはよくわかるのです。今までのほかの形の合意議事録もそうなんですけれども、今度の場合には、たとえば、日本がこうこうこういうことをすると言っても、それに対して受けて立っていないのです。アメリカは、おしまいの方を受けて、そうして「島民の福祉を確保するため全力を尽くす意図を有する。」というふうな、自分の方はこうするのだぞというような、独断的な意見を吐いているように思うわけです。しかし、この問題はあとにいたしまして、アメリカの方から言ってきておりますところの、「合衆国政府は、日本国政府と直ちに協議し、」とありますね、この「協議し」というのは、これはどこで協議するわけでしょうか。四条の協議ですか。
  327. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 やはりこれは四条の協議と考えます。
  328. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、協議して、それからこれらの諸島の防衛のため必要な措置をとって、そうしてまた「島民の福祉を確保するため全力を尽くす意図を有する。」こういうふうに読むわけですか。協議してこの二つをするわけですか。それとも、協議をする、そうしてまた、この防衛のため必要な措置をとって、そうして島民の福祉を確保するために全力を尽くすと読むのでしょうか。どういうことでしょうか。
  329. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 合衆国政府は、日本国政府と直ちに協議すること、これが第一点でございます。また、合衆国といたしましては、これらの諸島の防衛のために必要な措置をとる、それからまた、合衆国といたしまして、島民の福祉を確保するため全力を尽くす、この三点を言っているわけでございます。
  330. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、この協議をするということの中には、ほかのいろいろなことも協議する、そうしてまたこれもするという意味でしょうか。ほかのいろいろなことも協議をする、それからまた、これらの諸島の防衛のため必要な措置も協議してとるのだ、それからまた、島民の福祉を確保するため全力を尽くす意図もあるのだ、こういうのでしょうか。
  331. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 別に協議条項、協議の内容を限定しているわけではございません。協議は、直ちにいろいろな協議をするわけでございます。それと並行して、合衆国は、合衆国の決意と申しますのは、これらの諸島の防衛のために必要な措置をとる決意、また、島民の福祉を確保するために全力を尽くす意図、これをここで表明している、こういうわけでございます。
  332. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、「これらの諸島の防衛のため必要な措置を執り、」これはどういうふうなことを具体的にいうわけでしょうか。
  333. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 当然合衆国は、これらの諸島の防衛のための軍事的な措置、これを全力を尽くしてとるわけでございます。
  334. 戸叶里子

    戸叶委員 沖繩にはアメリカの軍隊がいるわけですね。そうしますと、こういうことがなくても、当然、アメリカの兵隊が自衛権でもって防衛のための措置をとれるわけです。わざわざこれを入れたのはどういうわけか。入れないのと、入れた場合との違いはどうかということを伺いたい。
  335. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 もちろん、やることは当然でございますが、日本に対しまして、これらの諸島の防衛のために必要な措置をとるのであるということを、はっきり言明したわけでございます。
  336. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、結局、協議して、その協議の中から、これらの諸島の防衛のための必要な措置をとるということになりますと、日本もそれに対する何らかの相談にあずかるわけだと思うのです。こういうふうなことをする場合にはこうしたいのだというときには、日本もそれにある程度ノーとも言えるかわりに、イエスとも言わなければならないような場合が出てくるんじゃないかと思いますが、この点はいかがでございましょうか。
  337. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 ここでは、アメリカが諸島の防衛のため必要な措置をとる、これに対しては、われわれが協議して、こうしてくれ、ああしてくれ、われわれがそれではいかぬと言った場合に、やってはいけないというところまで考えておるわけではありません。これはいろいろな問題を日本政府と直ちに協議をいたします。しかし、それと同時に、米国といたしましては、それと並んで、この防衛のための必要な措置をアメリカはとるのだ、また、福祉のために全力を尽くすのだという意図をここで表明しておるわけでございます。
  338. 戸叶里子

    戸叶委員 今、高橋条約局長は、こういうものがなくても、アメリカは防衛のため必要な措置をとるのだけれども、あればなおいいのだというのですが、これをわざわざ入れなければならなかったという理由はちょっと私には何かわからないのです。この点はもう一度はっきりさせていただきたい。
  339. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 これは御承知の通り、われわれといたしましても、沖縄に対しては非常な関心を持っておるわけでございますから、特にアメリカがこのような意図をここではっきり日本に対して声明するということを希望するわけでございます。
  340. 戸叶里子

    戸叶委員 そうすると、協議して、こういうことを言ったからには、日本も何かこれに対する相談にあずからなければならないということが出てこなければならないと思うのですが、いかがですか。
  341. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 もちろん、われわれも非常な関心を持っていますから、協議はいたすわけでございます。しかし、諸島の防衛のため必要な措置をとるということは、われわれが協議をして、協議を待って——協議しなければとれないという性質のものでは、御承知の通り、ございません。協議はいたしますけれども、それと並んで、防衛のため必要な措置をとることをアメリカをして言明させたという意味合いがあるわけでございます。
  342. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、これがなくとも、当然アメリカは防衛のため必要な措置をとるのに、ここに協議するということは、どうしても何か日本がそれに参画をさせられるというふうにしか考えられないわけなんです。  それでは伺いますけれども、先ほど滝井委員質問に対しても、ちょっと答えられましたが、その答えがぼけてておりました。たとえば、アメリカ政府の方から、日本自衛隊に対して、沖繩の方に来てくれ、戦闘作戦行動に入らないけれども、来てくれというような要請があった場合には、正統政府からの要請があれば、当然行かなければならないという、これまでの政府答弁からいって、そういう場合もあり得るとお考えになりますか。
  343. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 御指摘の点でございますが、相談を受けた場合に、行かなければならないということはないわけでございます。それはもちろん、行く行かぬは自由でございますし、これは政治的に、また憲法的な問題として御判断なさるところかと思います。
  344. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、そういうような場合に、行かなければならないという義務はないけれども、行くということはあり得るわけでございますね。
  345. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 それは行くとか、行かぬとかは、その場合々々の個個の事態に照らしての政治的な見地から御判断になる問題だろうと考えます。
  346. 戸叶里子

    戸叶委員 御判断になる問題だと思いますて、それはだれにおっしゃっていらっしゃるのですか。
  347. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 時の内閣が判断する問題だと思います。
  348. 戸叶里子

    戸叶委員 それでは今の内閣は岸さんですから、岸さん、いかがお考えになりますか。もしも、アメリカ政府の方から、日本自衛隊を沖繩に置いてくれというような要請を受けた場合に、それに対してどういうふうなお考えをお持ちになりますかということです。
  349. 岸信介

    岸国務大臣 今の自衛隊を置いてくれとか、自衛隊を出してくれというのが、一体どういう目的で、どういう意味で出してくれというのかわかりませんが、先ほど来申し上げているように、先ほど滝井委員の御質問は、衛生隊があそこにおけるところの病人やけが人を収容するために出かけていくという場合はどうかという意味におきまして、そういう行動は、いわゆる自衛隊の海外派兵という観念には入らない、しかし、今お話のように自衛隊を何か海外派兵のような意味に、そこにおけるところの軍事的行動のために出てくれというようなことであれば、もちろんお断わりしなければならぬ問題であることは、言うを待たないと思います。初めの問題につきましても、滝井君のなににつきましても、私は一応法律解釈として申し上げておるのでありますが、そのときの事態を見なければ、直ちに、いつでも自衛隊の衛生隊を出してくれといえば、すぐ二つ返事で出すということを申し上げているわけではございません。
  350. 戸叶里子

    戸叶委員 日本自衛隊が沖繩で戦闘行動をとる、とらないにかかわらず——とらないというような場合でも、もしもアメリカが、日本自衛隊向こうに要請する方が沖繩の防衛のために必要な措置だと考えて、もしそう言われたときには、この合意議事録からはどういうふうになるわけでございましょうか。
  351. 岸信介

    岸国務大臣 合意議事録からは別に日本が出さなければならない義務は一つもございませんし、直ちに戦闘作戦行動のために出すのではないが、何か防衛のために自衛隊を出せということになればこれは、私は明らかに軍事的目的で自衛隊を出すということになるだろうと思います。すぐ戦争作戦命令を受けて、そういう命令のもとに出るわけじゃありませんけれども、そういう防衛のためにあそこに出動するということであれば、明らかに事態いかんによっては戦闘行動をしなければならぬ。そういう場合は、もちろん、これは日本憲法の建前からいうと、断わる。そういうことをこの合意議事録で何ら義務づけられるものではないと思います。
  352. 戸叶里子

    戸叶委員 そうだとするならば、この合意議事録の「協議し、また、これらの諸島の防衛のため必要な措置を執り、」という、この「これらの諸島の防衛のため必要な措置」というものを書かなければ、わかるのです。ところが、協議して、またこれをとるというのですから、何か日本と相談をして防衛のために必要な措置をとるのだろうと私たちは読まざるを得ないわけで、これを伺っているわけでございます。
  353. 岸信介

    岸国務大臣 それは、先ほど来申し上げているように、もちろん、アメリカが施政権を持ち、あそこに軍隊を持っておりまして、あそこにおける武力攻撃があった場合に、自衛権の発動としてこれを防衛すべきことは、これは合意議事録にあろうがなかろうが、当然やることでございます。しかしながら、やるということを——非常にわれわれが関心を持っており、われわれが潜在主権を持っており、そこにいるところの住民は日本人であるという観念から見まして、アメリカ日本に対して、そういう場合には必ずこの防衛についての必要な措置を全力をあげてとるという決意を宣明するということが、私は、沖繩に対するわれわれの関心からいっても、意味があると思います。書かずにおいても当然やれるのだ、これは自衛権というものをやることは当然でございますが、必ずやるということを、そういう特殊の立場にある日本に向かって明らかに声明しておくということは、私ども、非常に意義のあることである、かように思っております。しかしながら、それによって何ら日本が義務を負うものでもなければ、日本が何かそれに協力して自衛隊を出さなければならぬという事態がくるものでは絶対にないと私は信じており、また、ないのであります。
  354. 戸叶里子

    戸叶委員 それならば、「合衆国政府は、これらの諸島の防衛のため必要な措置を執り、かつ、島民の福祉を確保するため全力を尽くす意図を有する。」とすればいい。それを、「日本国政府と協議し」ということがあるものですから、どうしても、協議して、いろいろ話し合うというふうに考えられるわけなんです。  それでは、私はその問題を展開して参りますが、この間この委員会におきまして、私が、もしも沖縄で、アメリカとフィリピンとの間の行政協定にきめられてあるように、義勇軍を募集するというようなことが起きた場合には、それはどうなるかという質問をいたしましたときに、岸総理大臣は、法律的には何らこれをとめることができない、こういうふうな答弁をされました。ところが、それに対しまして、沖縄の方の青年団協議会でこの質問を取り上げまして、第二次大戦で、相互防衛の名のもとに二、三万人余の犠牲を払ったわれわれにとって、戦争のおそろしさは言葉に尽くせない。だから、岸さんの言うような雇い兵は、われわれを再び戦場にかり出そうとするもので、沖繩青年団協議会はこれに絶対に反対するというような声明をされているわけでございます。従って、そういうふうなことは法律上は許されることであっても、そういうふうな場合には、潜在主権があるのだから、決して義勇兵などというものは持ってもらわないようにするんだということをここで確約していただきたいと思います。
  355. 岸信介

    岸国務大臣 義勇兵というのは、もちろん、御承知の通り、本人の自由意思できまる問題でございまして、沖繩の青年の諸君が、その義勇兵の募集に応じないという意思を持っている限り、義勇兵というものはでき得ないのであります。義勇兵を強制的に作ろうとかなんとか言っておるわけではございません。私は、そういう意味において、沖繩の住民の自由意思を何ら拘束する意味でこの前申し上げたわけではございませんで、そういう事例ができた場合には、それはどうなるかということの法律論だけを申し上げたわけでありまして、もちろん、沖繩の青年の諸君の自由意思によって、これはきまる問題でございまして、私は何らそれを強制するとか、あるいは義務づけるとかいうような考えで申し上げたわけではないのであります。
  356. 戸叶里子

    戸叶委員 義務づけるとか、そういうふうなことでなくて、そういうふうな動きがアメリカにあった場合に、これを断固として反対してそういうふうな募集に当たらせないようにするという、その確信のほどを私は伺いたいのです。
  357. 岸信介

    岸国務大臣 私は、アメリカが施政権を持っておるわけでございますから、沖繩におけるところの施政権の作用としてこういうことをするということにつきまして、これを断固としてどうすると言って、御存じの通りこれは法律的にできる問題ではございません。しかしながら、日本政府としてそういうことを希望するかどうかということになれば、希望しないことは事実でございますから、そういう点について、もしもそういう事態が起こった場合において、日本の立場から、沖繩の住民の多数の意思を十分に尊重して、アメリカ側に考慮を求めしめるということは、当然考えなければならぬと思います。
  358. 戸叶里子

    戸叶委員 関連ですからもうやめますけれども、沖繩の中には、これは小さい力かもしれませんけれども、琉球国民党というものがあって、その主張の中に、琉球で自衛隊の創設をしたい、そういうような陳情さえもここに書かれているわけなんです。こういうものを見ましても、非常に反動的な人たちが一方において出てきている。こういうふうな様子を見ましても、はっきり日本政府が、自衛隊などをそこへは創設しない、義勇軍などの要請があっても、アメリカにそういうような動きがあるならば、日本としては、こういうものは断固として、潜在主権があるんだから、これをぶちこわすだけの自信があるんだという、そういう強い信念を持っていただきませんと、沖繩の人たちは非常にこわがるし、また非常に不安を感じると思います。この点をもう一度伺いまして、関連ですから、私は質問を打ち切りたいと思います。
  359. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 この際、西村力弥君から、関連質疑の申し出があります。これを許します。西村力弥君。
  360. 西村力弥

    西村(力)委員 関連の関連になって恐縮ですが、非常にがまんしきれない気持がありますので、関連質問をやるわけなんでございますが、一体、この前の太平洋戦争の場合も、沖繩のあの住民の悲惨な状態というものは、健児の塔、ひめゆりの塔、それからあそこの牛島部隊長も、全部自決をした、こういう工合になっておる。しかも、現在アメリカがあそこに永久基地を作っている。たとえて極言するならば、爆弾の上に沖繩島民が生活しているんだ、こういう工合に言わざるを得ないと思うのです。アメリカは、御承知の通り、原子兵器もあそこに持ち込んでおるでしょうし、極東における攻撃の中心とし、また、極東のすべての国の軍隊をコントロールする基地としての機能も十分に備えておる。こういう工合に、ほんとうに近代的に、完全に、強固に武装された島だ。ここに対する武力攻撃が発生した場合、島民の福祉を確保するその内容は、食糧を送るんだ、病人を運ぶんだ——こんなような戦闘の様相というものが沖繩において現われるなんと考えることは、まことに認識が足りないではないか。このことを見れば、まことに白々しいこの合意議事録である、また、一方言えば、まことに無慈悲な合意議事録である、私はそういう工合に見ておるのです。かつての戦争の際においても、現実に攻撃が加えられない島においても、全部疎開させた、そうして住民の福祉、すなわち最大の生命を守ろうとした。ところが、武力攻撃が発生した場合に、言葉で、沖繩の住民の福祉を守ると言うならば、そういうおそれのある場合に、全島民を疎開させなければ、完全に福祉は守れないわけです。それを、食糧を送るとか、病人を運ぶとか、そんなことで沖繩島民の福祉を守ろうなんと考えることは、まことに無慈悲なことであると私は思う。こういうことでありますが、岸総理の、今私の申し上げましたことに対する見解を一つ聞きたい。真に、われわれの同胞、沖繩八十万を守ろうとするならば、ただ言葉に、福祉を守ると掲げるばかりではなく、そのときにはこうするのだという、日本国の総理としての、沖繩島民に対する安全を守る決意と愛情をここに示してもらわなければならぬと思う。
  361. 岸信介

    岸国務大臣 沖繩における施政権というものを一切あげてアメリカが持っておる、従って、防衛につきましてもアメリカが全責任を持ってやるということであり、島民の福祉についても、本来アメリカがこれを全責任を負うてやるという建前になっていることは、御承知の通りであります。私どもはこれに対して、究極は、どうしても日本に施政権を返してもらって、そうして今西村君も言われるように、あそこにおる住民八十万というものは、われわれと血が相通ずる日本人であります。われわれの固有の領土であるところのこれに対して、日本全国の他の場所と同じように、また他の場所に住んでおる日本人と同じように、政府として責任が持てる状態になることが望ましいことは、言うを待ちません。しかしながら、現在そういう状態に不幸にしてないのでありまして、その状態のもとにおいてもしも不幸にして武力攻撃が発生した場合において、われわれは施政権がない、あるいは事実上何らこれに力を加えるだけの実力を持たないということで、座して指をくわえておるというわけにもいかぬと思います。これが交換公文におけるところの——私どもが、もちろん、福祉のために必要なことをやるということの内容としてまず考えられることは、先ほど来言うておるようなことでありますが、しかしながら、事態いかんによって、どういうふうな措置をとることがその事態に応ずるために一番いいことであるか、また、それが可能であるかどうかというようなことを検討して、政府としては最善を尽くすというのは当然なことである。しかし、同時に、アメリカ政府がそういうふうに施政権を持っておるのでありますから、その防衛についての一切の責任と、それから住民の福祉を確保するために全力をあげるということは、当然のアメリカの権利でありますと同時に、また義務だと思います。それを潜在主権を持っておる日本に対して声明さして、少なくとも、日本政府アメリカ政府も、そういうことに関して全力をあげて島民の安全と福祉を守るという決意を示しているわけでございます。
  362. 西村力弥

    西村(力)委員 決意のほどはそれでけっこうでございますが、それでは、沖繩に武力攻撃が発生したという場合の姿というものは、一体どういう形を呈するか、これについては、やはりはっきりとした総理としての見通しを持っていなければばいかぬ。その見通しに基づいて、それから住民の福祉を守るためには最低これが必要である、こういう工合に考え方が進められなければいけないと思います。私は、沖縄の武力攻撃の発生というものは、これは近代戦の最も苛烈なる様相を呈することは間違いないと思います。沖繩における戦争の形態に対して、総理の見通しというか、考え方はどういう工合に考えられますか。
  363. 岸信介

    岸国務大臣 現在、他から武力攻撃が加えられる場合というのは、沖繩だけでなしに、日本本土に対しましても、どういう様相で武力攻撃が加えられるかということは、あらかじめ、こういう形だけだということを限定的に考えるわけにいかぬと私は思います。やはりいろいろな場合があるのであって、それに応じて処置を考えていくということでなければならぬと思います。
  364. 西村力弥

    西村(力)委員 近代戦争そのままの姿がこの沖繩において発生した場合、そのところから住民の福祉を守り、生命を守る、こういうことであるならば、非戦闘員はすべて疎開させる、これ以外にはないだろうと思うが、この住民の福祉を確保するという、この条項の最大限の、最も効果的な方法は、そういうことも考えられるのだ、それを含んでおるのだ、こういうことをあなたは認められますか。
  365. 岸信介

    岸国務大臣 今申し上げましたように、われわれは、沖繩の住民の福祉を守るためにできるだけのことをするということを申し上げましたが、もちろん、するという決意を今持っておりましても、事実上不可能なことはできませんけれども、われわれはできる限りのあらゆる手段を尽くして沖繩を守っていく、決して病人だけをこちらに連れてくれば、それでもってわれわれの福祉を守る任務は終わるのだ、あるいは、食糧を送るだけでもってそれで終わるのだというような、限った考えを持っておるわけじゃございません。できるだけのあらゆる努力をするつもりでございます。
  366. 西村力弥

    西村(力)委員 関連でありますので、これでとどめますが、しかし、民族が隔離されて、爆弾の上に住んでおる沖繩のわれわれの同胞に対しては、こういうそらぞらしい合意議事録であっては、これは無慈悲きわまるものだ、こういう工合に私は考えるのであります。根本は、やはりアメリカの世界戦略の最前線の拠点として沖繩があるのだ、これに対する日本国民の努力、ことに政府の努力がまだ不十分であって、一日も早くわれわれの手に取り返すということが成功されないということは、お互いにやはり残念に思わなければならぬと思う。沖繩の米軍支配ということを一日も厚く解除しなければ、島民の福祉を守るということの合意にしても、これは何も意味がないものだと私は思う。あそこの軍事基地を撤去させる、こういうことのために最大限の努力をお互いにやるように、ことに政府自体がこれをやるような工合にぜひ努力しなければならぬ。今回の交渉において、その施政権の問題や何かについて一言も触れられなかったということに対しては、これはまことに遺憾しごくである、かように申し上げまして、またいずれ御質問申し上げることといたします。
  367. 滝井義高

    滝井委員 長々同僚が質問を重ねておりましたから、これで私はやめます。  それで、三時間半ばかり質問を申し上げましたけれども、どうも納得のいかないところが多いわけです。静かに顧みてみますと、今から百年前に、新見豊前守が日米修好条約を結んだわけです。この修好条約の百年祭で、近くアイクがやってくるそうでございますが、一つここで私は、岸さんもそうですが、藤山さんにお願いをしたいのです。きょう私いろいろ質問をしてみましたが、あなたには非常に旺盛な、何と申しますか、政治責任を感じた迫力が感じられないのです。明治二十七、八年の日清戦争の当時においては、外務大臣は陸奥宗光でございました。彼は、この不平等条約を解消するために心魂を砕いたのです。一つ藤山さん、お帰りになって、あるいはお読みになったかと思いますが、陸奥宗光のお書きになった蹇々録を、もう一回、深夜静かに熟読翫味していただきたいと思うのです。彼は、骨身を削るような政治的な責任意識と同時に、周到綿密な政治的な配慮をもって条約の改廃に当たっておるのです。今私たちは、この新見豊前守の百年前に結んだ、その同じような道を今日歩くような気がして仕方がないのです。この点は、一つ岸さんも藤山さんも、一夜静かに陸奥宗光の蹇々録をお読みになって、そうしてもう少し大きな、旺盛な政治的な意欲を持って、責任ある御答弁をこの委員会で願いたいと思うのです。まだ私は二、三点ありますが、最後にこれだけお願いしておいて、私の質問を終わります。
  368. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後四時四十七分休憩      ————◇—————     午後六時三分開議
  369. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、公聴会開会承認要求の件についてお諮りいたします。  ただいまの理事会の協議に基づきまして、現在本委員会において審査中の三件につき公聴会を開き、広く意見を聞くことにいたしたいと存じます。つきましては、右の公聴会開会につき議長の承認を求めたいと思いますが、これに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  370. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 御異議なしと認め、委員長においてその手続をとることにいたします。  なお、お諮りいたします。公聴会の日時は、来たる五月十三日及び十四日の両日開会することとし、公述人の選定その他諸般の手続につきましては、理事と協議の上、委員長において決定いたしたいと思いますので、委員長に御一任を願いたいと思いますが、これに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  371. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。      ————◇—————
  372. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 次に、委員派遣承認申請の件についてお諮りいたします。  公聴会に引き続きまして、五月十五日及び十六日、現に審査中の各案件の審査のため、主要の地に委員派遣をいたしたいと存じます。つきましては、派遣委員の選定、派遣地等は、理事と協議の上、委員長において決定し、議長の承認を求めることにいたしたいと思いますが、これに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  373. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 御異議なしと認めまして、さよう決定いたします。  なお、派遣地によっては航空機利用の件を申し入れたいと思いますので、この点も委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  374. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 御異議がないものと認めまして、さよう決定いたします。  本日は、これにて散会いたします。     午後六時五分散会