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1960-05-02 第34回国会 衆議院 日米安全保障条約等特別委員会 第26号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年五月二日(月曜日)     午前十時二十三分開議  出席委員    委員長 小澤佐重喜君    理事 井出一太郎君 理事 岩本 信行君    理事 大久保武雄君 理事 櫻内 義雄君    理事 椎熊 三郎君 理事 西村 力弥君    理事 松本 七郎君 理事 竹谷源太郎君       安倍晋太郎君    秋田 大助君       天野 光晴君    池田正之輔君       石坂  繁君    鍛冶 良作君       加藤 精三君    鴨田 宗一君       賀屋 興宣君    小林かなえ君       田中 榮一君    床次 徳二君       野田 武夫君    服部 安司君       福家 俊一君    保科善四郎君       毛利 松平君    山下 春江君       飛鳥田一雄君    石橋 政嗣君       岡田 春夫君    黒田 寿男君       戸叶 里子君    中井徳次郎君       穗積 七郎君    森島 守人君       受田 新吉君    大貫 大八君       堤 ツルヨ君    門  司亮君  出席国務大臣         内閣総理大臣  岸  信介君         外 務 大 臣 藤山愛一郎君         郵 政 大 臣 植竹 春彦君         国 務 大 臣 赤城 宗徳君  出席政府委員         内閣官房内閣審         議室長     大島 寛一君         法制局長官   林  修三君         防衛庁参事官         (防衛局長)  加藤 陽三君         調達庁長官   丸山  佶君         外務政務次官  小林 絹治君         外務事務官         (大臣官房審議         官)      下田 武三君         外務事務官         (アメリカ局         長)      森  治樹君         外務事務官         (条約局長)  高橋 通敏君         郵 政 技 官         (電気通信監理         官)      岩元  巖君         郵政事務官         (電波監理局         長)      甘利 省吾君  委員外出席者         日本電信電話公         社総裁     大橋 八郎君         日本電信電話公         社技師長    石川 武二君         日本電信電話公         社技師長室調査         役       大槻由之助君         日本電信電話公         社営業局長   大泉 周蔵君         日本電信電話公         社保全局長   黒川 広二君         専  門  員 佐藤 敏人君     ――――――――――――― 五月二日  委員門司亮辞任につき、その補欠として大貫  大八君が議長指名委員に選任された。 同日  委員大貫大八辞任につき、その補欠として門  司亮君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約締結について承認を求めるの件(条約第一号)  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊地位に関する協定締結について承認を求めるの件(条約第二号)  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約等締結に伴う関係法令整理に関する法律案内閣提出第六五号)      ――――◇―――――
  2. 小澤佐重喜

    小澤委員長 これより会議を開きます。  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約締結について承認を求めるの件、日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊地位に関する協定締結について承認を求めるの件、及び日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約等締結に伴う関係法令整理に関する法律案、右各件を一括して議題といたし、質疑を続行いたします。受田新吉君。
  3. 受田新吉

    受田委員 総理も、連休で十分疲労を回復されておると思いますから、きょうは一つ元気のたくわえられているところで、大いに論争をしていただきたいと思います。  二十八日にお尋ね申し上げました新安保条約案の第五条に関連して、今から具体的に質問を続けたいと思います。  第五条に規定されておりますところの、いわゆる外部武力攻撃という、この武力攻撃形態といいますか、様相といいますか、そういうものは、どういうものであるという想定を立てておられるのか、政府の御答弁を願いたいと思います。
  4. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 ただいまの点はこの第五条の「いずれか一方に対する武力攻撃」という言葉の問題だと考えます。この武力攻撃と申しますのは、御承知通り国連憲章第五十一条からとった概念でございまして、すなわち、個別的または集団的自衛権がそれに対して行使できるというような攻撃でございます。すなわち、ここでいっております武力攻撃と申しますのは、一国が他国に対しまして行なうところの計画的な、あるいは組織的な、武力によるところの攻撃、組織的、計画的な侵略である、このように考えます。
  5. 受田新吉

    受田委員 その計画的、組織的な侵略の方式は、近代戦様相から見て、全面戦争核戦争限定核戦争局地戦争、こういうような形態でそれぞれ御説明を願いたいと思います。
  6. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 その場合の武力攻撃と申しますのは、その形態が直ちに全面戦争になるのだとか、局地戦争になるとか、そういうふうな問題ではございません。要するに、一国がある国を侵略しようというような意図を持ちまして、計画的、組織的な武力による侵略、そういうことであれば、これは武力攻撃ということになる。それが限定戦争とか全面戦争というようなことは問うところではない、こういうふうに考えております。
  7. 受田新吉

    受田委員 現実の問題として、日本武力攻撃が加えられる場合は、全面戦争核戦争ということは考えられないと、先般来御答弁されたと記憶しておるのでございますが、さように了解してよろしゅうございますか。
  8. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 これは予想でありますから、はっきりしたことは申し上げられませんが、日本にたとえば中距離弾道弾等を撃ち込む、こういう核の威力のあるものを撃ち込むというようなことになりますならば、これは全面戦争発展することは免れまい、こういうふうに考えております。そうしてまた一方、世界的な情勢からいいましても、全面戦争ということはまず起こらない、こういうことが世界的な見方といいますか、定説的になっておるのは、御承知通りであります。でありますので、日本に対してそういうような威力のある核攻撃を加えてくる、それが全面戦争発展していく、その全面戦争は、世界的に見ましても起き得ないということであります。従って、日本に対してそういう威力ある兵器を持って攻撃を加え、侵略をするということはまず考えられない、そういうふうに思っております。
  9. 受田新吉

    受田委員 岸総理は、三十二年六月のアイクさんとの共同声明で、全面戦争はやや遠のいたという意味を含めた声明をされておるのでございますが、あなたも全面戦争が全然ないとは考えておられないわけですね。
  10. 岸信介

    岸国務大臣 戦争がどういうふうな形態で起こるかということは、理論的にはいろいろな場合があるかと思いますが、国際情勢の動向、また、軍事科学の進歩により、核兵器の発達によりまして、全面戦争の危険ということは非常に少なくなっておる。絶無だということをここで断言することは不可能かもしれませんが、非常にその危険はなくなっておるという見方を私はいたしております。
  11. 受田新吉

    受田委員 総理も絶無でないと言われております。そうしてまた、赤城さんもそのような意味のことを言われておる。そうすると、この五条外部武力攻撃形態の中には、全面戦争という場合もあり得ることが考えられておると思うのです。さように了解してよろしゅうございますか。
  12. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 全面戦争というようなことは考えられないと思っています。先ほどから条約局長答弁申し上げましたように、これは全面戦争に対抗するのか、あるいは核制限戦争に対抗するのか、あるいは局地戦争に対抗するのか、こういう予想を持っておるのでありませんで、武力攻撃に対して共同の措置をとる、こういうことであります。どういう形態になるかというのは、結果から見たことでありまして、初めからどういうことに対して対抗するんたということをきめておるということではございません。
  13. 受田新吉

    受田委員 そのときになってみなければわからない、全面戦争という場合も、実際の問題としては起こり得る可能性がある、そうなりますと、総理の言われる通りの、そういう場合になりますと、日本自衛隊防衛能力というものは、全面戦争核戦争にはたえ得ない、お手あげだ、こういう結論が得られておるわけですね。
  14. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 全面戦争とか核戦争にたえ得るとか、たえ得ないとかいう問題は別といたしまして、全面戦争をするための自衛とかあるいは核戦争に対抗するための自衛、こういうことは考えません。侵略に対して、日本民族及び国土自衛的に守っていく、これをはねのける、こういう態勢自衛隊というものがあるのでありますから、先ほど申し上げましたように、全面戦争に対抗するとか核戦争に対抗する、こういう目途は持っておりません。
  15. 受田新吉

    受田委員 全面戦争核攻撃を加えられるような戦争形態において、日本自衛隊防御能力なし、かように長官はお考えですね。
  16. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 防衛能力があるとかないとかいう問題は別として、そういう目途を持って自衛隊というものはあるものじゃない、こういうことを申しております。
  17. 受田新吉

    受田委員 具体的な場合が想定されないで、日本自衛隊をどうして増強されるのですか。日本自衛隊増強計画長期防衛整備計画というものは、どのような場合の戦争にも即時即応態勢をもって当たるという意味で、整備増強されておるのじゃないですか。増強の必要はどこにあるわけですか。増強する必要がなければ、「維持発展」は「維持」だけでいいはずです。三条で「発展」の部分を削除してもいいはずなんです。
  18. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 御承知のように、全面戦争ということになれば、世界大戦であります。世界大戦に対抗するということになりますならば、自衛隊もそこまで出ていって、そしていわゆる海外派兵までするということでなければなりませんが、そういうことは考えておりません。でありますから、全面戦争に対抗するような目的のために自衛隊というものがあるのではない。核に対しましても、核の被害に対してはわれわれは防御することを考えざるを得ませんが、核攻撃に対して、こちらも核をもって防衛し、核をもって攻撃するというような考えは、全然持っておりません。  それから自衛隊維持増強でありますが、これは自衛隊としてその能力をよくしていくことは、国民に対する義務でございます。国民負担において自衛隊が存在しております以上、自衛隊の責任を果たすために、その自衛隊能力維持し、また、国力国情に応じてこれを発展するということは、これは国民に対する自衛隊義務であります。でありますから、何もそのままでとどまっておるわけじゃなく、能力をよくしていくということは、当然考えられることだと思います。
  19. 受田新吉

    受田委員 国民に対する義務と仰せられておりまするが、あなた方の国民に対するお約束では、長期防衛計画は、国防基本方針として、民生の安定を前提にして、国民生活を犠牲にしてまで増強しないという一線を、ちゃんと用意しておられるわけですね。これはどういう関係になるのですか。
  20. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 これは私から申し上げるまでもなく、日本民生がよくなっていくことは――守るべき日本国土であり、日本民族である、こういうことから考えまして、国民生活がよくなることは、これは自衛のための前提でございます。でありまするから、私どもといたしましては、民生の安定ということは、第一義に考えております。でありますから、民生の安定を阻害しない範囲において、すなわち、国力国情に応じて自衛隊維持発展させる、これは当然考えられることであります。しかも、現在の防衛費範囲限度というものはどういうものかということにつきましては、これは非常にむずかしい問題でありまして、大体国民所得に対して何%ぐらいが現実の問題として適当であるか、あるいは防衛費として負担しておるか、こういうのが世界的に見ましての実情でございます。そういう点から考えまするならば、日本防衛負担というものは、世界最低でございます。世界最低だからそれを大きくしょうという考えじゃございません。何も無理して大きくしようという考えじゃございません。日本国力国情に応じて、民生の安定と均衡のとれた範囲において、防衛力維持し、あるいはよくしていく、こういう考えであります。
  21. 受田新吉

    受田委員 あなたの御説をもってすれば、国力国情が許し、民生の安定が高度に達しておれば、思い切った増強計画もできるような印象を受けるのでございますが、一体、国力国情が許し、民生が安定している段階で、国防力というものは、どの辺まで持っていっていいわけなんですか。その限界はどこまでいけばいいわけなんですか。
  22. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 例をとりまするならば、スイスのような中立国におきましても、その防衛負担国民生産に対して三%になっております。しかし、私どもは、民生が安定した、国力が充実したから、無限にどれくらいまででも持っていくべきだということは考えません。これは国際情勢日本国方国情によってきめていくわけであります。そういう民主的なきめ方をするということは、これは予算に現われてきますから、国会においてそういう点も十分御審議をいただいて、適当なところに持っていくわけであります。現在の一・七%というのは、非常に少ないという例を申し上げただけでありまして、だからといって、国力国情に応じ、民生が安定すれば、幾らでも持っていくか、どの限度まで持っていくかというふうに言われましても、これはどこの国でもその限度というものははっきり申し上げるわけにも参りませんが、私どもは、漸増的に国力国情に応じて持っていくということでありまするから、無理なことはともかくもしないという方針で進めております。
  23. 受田新吉

    受田委員 はなはだばく然とした考え方で、防衛力増強整備計画がなされておるようです。これは私をして言わしむるならば、外部武力攻撃がどのような形でなされるかを想定をし、それに対して防衛力整備計画がなされておる、こういう形だと思っておったのでございますけれども、そういう考え方ではない、国力国情に応じて適当に増強していくのだというような、はなはだ不安定な増強整備計画です。次期防衛力整備計画を策定するのにあたって、これからの近代戦様相が、どうなるかということを考え、それに対応するためにどういうものをやるのだという理想のない整備計画をお立てになることは、自民党をもってしても大へんまずいことだと思うのです。近代戦様相と、これに対応する次期防衛力整備計画を策定する関係とをどう思っておられるのか、一つ掘り下げて御答弁願えませんか。
  24. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 私の答弁に対しまして非常に違った御意見ですが、私は、先ほどから申し上げておりますように、世界情勢日本国方国情と、二つの要素をにらみ合わせて防衛計画は立てていくのだ、こう言ったのでありまするから、あなたの今御指摘になった、その考えでやるんじゃないかという、その考えと同じであります。  そこで、しからば、どういうふうな装備等を持っていくかということでございますならば、第一次、第二次計画等において、おおよその考え方を申し上げておりますように、装備につきましては近代化をはかる、あるいは効率化をはかる。だから、別々に申し上げますならば、陸の自衛隊といたしまするならば、これは機動的に、効率的に運営できるような方向へ持っていく、海にいたしますならば、掃海とか、あるいは港湾の封鎖に対応し、あるいはまた潜水艦に対する対潜の能力を増していく、それからまた航空に対しましては、今の防衛のための戦闘ばかりでなく、地対空ミサイル等防衛も進めていく、あるいは今年の予算に、海の方でもターターというようなものを御審議願って可決されておりますように、こういうような地対空ミサイル方向へ持っていく、こういうふうに国際的の装備近代化に対応していく。ただ、日本といたしまして、核装備をするというようなことは、これは日本国情も許しません。そういうことまでは考えませんが、そういうことでなくて、そういう近代化効率化をはかるというような装備方向へ持っていくということが、これは防衛近代化効率化方向であります。一方、それでは国力国情に応じてどの程度まで防衛費というものを持っていくかということでありますが、先ほど申し上げましたように、スイスのような中立国でも、国民所得に対して三%程度防衛費というものは支出しています。しかし、私どもは、第二次計画におきましても、そういうところまで防衛費を持っていこうということは、これは国力国情に応じたものとは考えられません。第二次計画最終年度の四十年度の計画といたしましても、二千九百億ということを、一応昨年の八月ごろに予定いたして施策をきめてきております。これは総生産が今のままの生産ではございません。四十年度には国民の総生産も上がってきます。それに対してどの程度の――パーセンテージからいえば、二%か、あるいは大きくなって二・三%程度でありますが、その二千九百億円も、今考えておるのには、相当またこれは検討する余地があるのではないかということで、目下検討を続けておるわけであります。でありますので、国際的といいますか、世界的ないろいろな装備近代化に対応するにいたしましても、無理な対応はできません。日本国力国情に応じてこれをやっていく、こういうふうに考えておるわけでございます。
  25. 受田新吉

    受田委員 そうしますと、外部武力攻撃の態様が、近代戦に即応するようなことも想定して、日本自衛隊増強をはかっていく、日本に加えられる攻撃は、ただ単に局地戦争程度のもので、自衛隊防衛能力は、陸上も海上も空軍も軽い攻撃にこたえ得るという程度のものであると、私はあなたの先般の答弁で了解しておったのでございまするが、今のような増強計画であると、近代戦に対応するほどの整備考えていこうというお考えのようですが、さように了解し直してよろしゅうございますか。
  26. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 近代戦に対応するというお言葉がはっきりいたしませんが、日本といたしましては、御承知のように、海外派兵をしたり、あるいは侵略攻撃をしていくというようなことは、これは憲法の上からも、あるいは自衛隊のあり方からいいましても、許されることではありません。また、世界情勢から見て、先ほどからお話がありまするように、全面戦争というものの起こる可能性というものは、ごくごくまれだと思います。しかしながら、局地的な紛争というものは、まだ絶無になったとは申し上げられません。何となれば、局地的な紛争を起こすもとがまだ除かれておりません。世界の各地において、局地的な紛争局地戦争の現われというものはあります。でありまするから、日本自衛隊といたしましても、武力攻撃を受けた場合に、局地的な紛争を拡大しないように、局地的な紛争が起きれば、それを早目に除くということが主でありまして、先般来申し上げておりますように、全面戦争とか大きな戦争に対応するというようなことにはなっておりませんことは、先ほど申し上げましたような第二次計画近代化効率化といっても、その近代化効率化というものが、局地紛争を除去し、これに対応する程度のものでありますことは、御了解願えると思います。
  27. 受田新吉

    受田委員 そうしますと、局地戦夢局部的紛争、こういうことは、しばしば起こるという公算がある。それから核戦争でも、局地的なものであるならば、小型のものを用いてされる限定核戦争というようなものも考えられるということになりますね。そういうものには日本自衛隊は耐え得る、これは排除し得るというふうに了解してよろしゅうございますね。
  28. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 極地的な紛争でも、どういうふうな様相で現われるかは、これはいろいろ現われ方があると思います。しかし、そういうものに対抗するだけの力を養っておりますし、その力に対応できるだけのものを持っていると私ども考えます。
  29. 受田新吉

    受田委員 全面戦争核戦争にはなかなか耐えることは困難であるが、限定された核戦争とか局地戦争には耐え得る自衛隊である、こういうことになりますと、全面戦争核戦争等が行なわれる場合に、これに対応する米軍協力ということが問題になってくる。米軍というものは、外部武力攻撃に対しては、敵国根拠地をどこまででも襲うことができるような立場に立っているのかどうか。たとえば、某国沿岸の一角から組織的、計画的な武力攻撃が加えられた、第五条発動によって、米軍がこれに対応するための報復攻撃を加えるという場合に、某国首府までも米軍の方は五条発動では乗り込んでいける、かように了解してよろしゅうございますか。
  30. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 それは五条発動と別とは申しませんが、そこへすぐ持っていくのは、少し話が早過ぎると思います。御承知のように、米軍行動といえども、これは国際連合の一員として国際連合ワクの中に入っている、こういう大前提があります。国際連合におきましては、武力行使侵略というものを禁止しております。ただ、五十一条によって、個別的、集団的自衛権を例外として認めておるわけであります。でありますから、国際連合として、そういう場合には解決をはかるということが第一であります。第二には、米軍協力してやるといたしましても、それは五十一条の自衛権範囲内において行動をするということに相なるわけであります。
  31. 受田新吉

    受田委員 今私が申し上げておりますのは、集団的自衛権発動として、米軍敵国武力攻撃根拠地攻撃を加える、その根拠地に関連して、さらにその根拠地をつかなければその攻撃が阻止できないとなれば、さらにその根拠地まで行って攻撃を加えるという、自衛権発動として米軍行動することは、無制限に許されるのか。自衛権発動である、自衛のためということであるならば、米軍の場合は許されるのかどうか。
  32. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 そういう事態が生ずるということは、これは大体において全面戦争でございます。でありますから、そういう場合には、アメリカとしましても、国際連合ワクの中での行動であることが第一の前提である。第二の前提としては、国連憲章五十一条の個別的あるいは集団的自衛権行使として行動する。でありますから、無限とか有限とか、そういうことではありませんで、その範囲内において適当と認める行動は、これはとることと思います。
  33. 受田新吉

    受田委員 実際問題としても考えられる場合がありますね。外部武力攻撃――全面戦争にならないでも、外部某国から、ある基地より日本国攻撃が加えられる、その場合に、報復手段として、自衛のために米軍が乗り出していく、その際は、某国沿岸基地だけでなくして、さらにその根源の基地をたたかなければ攻撃を阻止できないという観点から言うならば、その某国の本国の首府まででもたたきに行ける。そういうことは理論的にも、また現実問題としても、あなた方の五条発動のこの約束を見ておると、考えられるじゃないですか。
  34. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 理論的といいますか、机上では考えられましょうが、実際的には考えられません。日本に向こうの基地から攻撃を加えるということは、これは全面戦争を賞悟しなければできないことであります。私はそう思います。でありまするから、日本にどこかの基地から中距離弾道弾のようなものをぶち込むということは、これは全面戦争です。でありまするから、全面戦争を覚悟するか――全面戦争の中においての問題は別でありますが、ただ日本だけにそういうものをぶち込む理由はありません。こういうことから考えまするならば、そういう事態は、これは全面戦争的な様相の場合であると思います。そういう場合には、先ほど言いましたように、国連憲章ワク内での行動である、こういうふうに申し上げる以外に申し上げようがないと思います。
  35. 受田新吉

    受田委員 外部からの武力攻撃核攻撃であったという場合に、先般委員会の討議を通じて、その核攻撃に対する報復攻撃アメリカがなし得るということを長官が言われているのを、もう一度確認さしていただきましょう。
  36. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 東西両陣営とも、核というものが報復力としての機能を有しているということは、もう定説といいますか、そういう事態になっております。でありますから、全面戦争的な様相をもって日本核攻撃されるというような場合には、これは全面戦争的な様相でありまするから、東西両陣営でも、その報復力をもってこれに対抗するということは、全面戦争的な場合にはあり得ると思いますが、その前提としての全面戦争的なものはあり得ない、こういう観点に立っておることは、再々私が申し上げている通りであります。
  37. 受田新吉

    受田委員 全面戦争でない核戦争、局地核戦争という場合にはいかがですか。
  38. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 局地核戦争全面戦命に拡大する可能性が十二分にありまするから、それも全面戦争的な様相の中に入れて考えて差しつかえないと思います。
  39. 受田新吉

    受田委員 おかしなことをおっしゃるですね。局地的に核攻撃を加えられるということはあり得るじゃないですか。その場合に、核報復を米軍がやり得るということを私はあなたに伺っておるわけです。局地核戦争、すなわち、全面戦争というような見方をあなたはされているが、これは防衛の最高司令官としてはなはだ認識不足だと思う。御答弁願いたい。
  40. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 局地的にも、核攻撃をするということは、全面戦争に移行するおそれが十二分にあると私は思います。もちろん、限定核戦争とか全面戦争とかというものの区別はあります。区別はありますが、ここで、局地的におきましても、限定核戦争という形になれば、私は、全面戦争に移行するおそれが十二分にあるということを申し上げておるわけであります。
  41. 受田新吉

    受田委員 おそれがある場合を含めて、こうした局地戦争に核兵器が用いられる場合、米国が報復手段として核攻撃をこれに加えていく、こういうことは考えられますね。こういうことが許されるかどうか。
  42. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 米国がやり得るかどうかという問題の前に、核攻撃をどこからするかという問題があります。そういうことは、私どもは今考えられない、全面戦争に移行するおそれのあるような核攻撃限定核戦争というものは、これまた日本に対しては考えられない、こう思います。
  43. 受田新吉

    受田委員 自衛隊は一切の核攻撃想定する演習もしなければ、核攻撃に対して、これに一切の防御武器も用いないとはっきり言えますか。核戦争は全然想定していないから、核に関係した装備も、核に関係した演習も一切考えておらぬと、あなたの御答弁ならば言えるはずなんです。
  44. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 核攻撃に対してこれを排撃するというようなことは、これは考えておりません。ただ、核攻撃がもしあった場合に、放射能等に対する被害をどういうふうにして最小限度にこれを除くかということに対しましては、これは検討をいたしております。
  45. 受田新吉

    受田委員 全然考えられない攻撃に対して、放射能の被害を防ぐことを考えるというのはどういう考え方なんですか、その考え方を聞きたい。
  46. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 先ほどから申し上げましたように、全然核攻撃を受けないということは申し上げておりません。しかし、限定核戦争というような場合には、これは全面戦争になるおそれがあるから、私は、そういうことはなかなかあり得ないことだ、しかし、全然ないということを申し上げているわけではございません。
  47. 受田新吉

    受田委員 全然ないということを言われたわけなんですが、しかし、アメリカ日本に対して終戦の直前、核攻撃を加えてきたのです。お忘れになっていないと思うのです。人類の滅亡を目ざすような核攻撃戦争終結の手段として使っているじゃないですか、これはどうお考えですか。
  48. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 ああいうことがあったから、世界的にも核を使うことはやめようじゃないかということが問題になっているのであります。その後においての世界情勢というものは、あなたは御承知のはずであります。アメリカが独占しておった核兵器、これが独占ではなくして、東西両陣営において核というものを相当発達させた。そういうことで、核というものが、これは攻撃用であったものが、今はどちらかといえば、攻撃用ではあるが、同時に、世界戦争の抑制力としての機能をしている。これが原水爆とか大型ミサイルの機能に現在変わっております。こういうふうに、質的に変わっているという現状と、核を独占しておった第二次大戦当時とを一緒にしてお考えになるのは、これは間違いであります。
  49. 受田新吉

    受田委員 一緒に私はしませんよ。これはきわめてはっきり区別して考えております。つまり、全面戦争発展させることを防ぐために核兵器を使い得るというような、そういうことも考えられるのじゃないですか。全面戦争への発展を阻止するために、局部的に紛争を解決するために核兵器を使う、こういうことも考えられるのじゃないですか。
  50. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 核兵器としては、全面戦争を起こさないための機能をしています。それを使って全面戦争を防止するという機能はいたしておらぬ、こう考えております。
  51. 受田新吉

    受田委員 そうしますと、核兵器を用いるということは局部的な戦争にはない、全面戦争の場合以外にはないのだ、かような観点で日本防衛長官日本防衛力増強しておられ、また、日米との防衛共同作戦をされようとしておられるわけですね。
  52. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 局地的に核兵器を使う核限定戦争というものが絶無とは申し上げられませんが、しかし、そういう可能性はごくまれだ、ことに、日本に対してそういうものを使うということは、これは全面的な戦争に移行するおそれがありまするから、なおさら、そういうものを使うことはごくまれである、絶無とは申し上げませんが、ごくまれである、こういうふうな考えを持っております。
  53. 受田新吉

    受田委員 まれであるということが、きわめてまたしばしば起こり得るのですから、この問題は、こういう次の問題で一つ解決させていただきましょう。  赤城さん、いかなる場合にも、第五条発動で、外部から武力攻撃を加えられたことに対する日米共同作戦の場合に、日本自衛隊はもちろんでありますが、在日米軍核戦争、核報復の手段はとらぬ、かように了解してよろしゅうございますね、あなたの結論で申し上げるならば……。在日米軍日本共同作戦をとる限りにおいては、外部からの武力攻撃に対して、報復手段として核攻撃を加え、核防御をし得る場合はない、第五条発動の場合でも、米軍日本に核を持ち込むことはないのた、この約束はできますか。
  54. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 事前協議によって核の持ち込みというものは日本で拒否いたしますから、在日米軍が核によって報復力を行使するということはないというふうに考えております。
  55. 受田新吉

    受田委員 在日米軍が、第五条武力攻撃に対してこれをはね返す、そのときは事前協議という条項がありますから、核装備はしてない、けれども、数時間を出でずしてこちらへ核の運搬ができる態勢になっているのだから、日本に対して加えられている攻撃を排除するために、すぐ数時間を出でずして核は持ち込むことができるじゃありませんか。第五条による攻撃に対して核を持ち込むときは、戦闘作戦行動であっても事前協議をやるのですね。
  56. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 第六条の実施に関する交換公文で、今のお話しのように、事前協議というものは、そういう事態になったときでも行なわれるわけでございまするから、お話しの通りであります。
  57. 受田新吉

    受田委員 第六条に基づく交換公文の中に「合衆国軍隊日本国への配置における重要な変更」云々というところに、「(前記の条約五条の規定に基づいて行なわれるものを除く。)」という規定もありますし、それから、実際に戦争が開始されて事前協議をする、それから、第五条武力攻撃に対して戦闘共同作戦が演ぜられた後に、核武装のときには事前協議をやる、こういうような二様の手続が要るわけなんですか。これをもっとはっきり……。
  58. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 ただいまの点は、協議が行なわれるのは「日本国から行なわれる戦闘作戦行動」、その下に「(前記の条約五条の規定に基づいて行なわれるものを除く。)」こういうふうに書いてございます。すなわち、合衆国軍隊日本国への配置における重要な変更、同軍隊の装備における重要な変更というのは、いかなる場合においても協議の対象、協議の主題となるわけでございます。
  59. 受田新吉

    受田委員 そうしますと、在日米軍外部武力攻撃に対して戦闘を開始した後において、外部から軍艦がきたり、飛行機が応援にきたりする場合は、米台、米比、米韓で約束された太平洋地区の基地から日本に応援にくる際は、いつも事前協議ということになるわけですか。
  60. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 常にそうでございます。対象とならないのは五条の場合で、戦闘作戦行動の場合でございます。
  61. 受田新吉

    受田委員 これは、五条の規定で行なわれる場合の戦闘作戦行動だけが除かれる、あとは全部事前協議、そうすると、実際に戦闘が開始されて後の行動、たとえば、アメリカの太平洋司令官の指図で、日本に加えられる攻撃を排除するために、韓国から、台湾から、フィリピンからこちらに来援されるという場合は、全部日本がこれに対してイエスかノーかを言わなければならないようにしてありますか。これはっきりしておるのですか。
  62. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 常にそれは日本への配置における重要な変更であり、同軍隊の装備における重要な変更でありますれば、協議の対象になるわけであります。
  63. 受田新吉

    受田委員 日本の危険を排除するためにアメリカの太平洋司令官が指図をする際に、日本によって一々制約を受けるということは、現実の問題として考えられますか。
  64. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 制約を受けるとか受けないかという問題ではございませんので、そういう場合も常に協議の対象として協議して、配置における重要な変更や装備の重要な変更が行なわれるわけであります。
  65. 受田新吉

    受田委員 日本の近海、すぐ近くで待機しておって、そのとき作戦行動が開始されておる。そういう領海の近くまできて待たせてある場合、これも事前協議の対象になりますか、なりませんか。
  66. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 現実の事実問題でございますけれども、この交換公文であげておりますのは、日本国への配置における重要な変更、軍隊の装備における重要な変更でありまして、それはどういう場合におきましても、少なくとも、事前協議の対象になるわけでございます。そこで、その協議が行なわれるということになるわけでございます。
  67. 受田新吉

    受田委員 どうもはっきりしないところがあるんだが、もう一度六条の関係の交換公文のところをちょっと聞かなければいかぬ。  日本から行なわれる戦闘作戦行動、これは在日米軍の兵力の範囲内の行動たけですか。
  68. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 これはしばしば申し上げておると思いますが、日本国から行なわれる戦闘作戦行動、その戦闘作戦行動基地として日本国内の施設及び区域が使用される場合は、常に事前協議の主題となるわけであります。
  69. 受田新吉

    受田委員 これははなはだデリケートな問題だと思いますが、台湾あるいは韓国から日本へ来援する部隊がある、こういう場合に、日本の領域内にそれがちょっとでも入れば事前協議の対象で、これを食いとめることができる、しかし、韓国の基地や台湾の基地から向こうに攻撃を加えるなら何ら問題にならないということになるはずでありますが、実際問題として、この間からの議論でも、日本基地から他に移動した場合、そしてまた中継として日本基地を用いる場合、こういう議論がいろいろされておるわけです。こういう際に、日本基地に入る、日本基地に寄港をし、中継をする、補給に寄るというような場合も全部事前協議の対象になる、かように了解してよろしゅうございますね。そういう名目でどんどん入ってきて、こから作戦行動を起こすという場合もあり得るのです。
  70. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 ただいまの御指摘の場合は、二つの場合があると思います。第五条の場合、すなわち、日本の領域において武力攻撃が行なわれておる場合と、全然そうでなくて、日本以外の他の場所において武力攻撃が行なわれておる場合、二つあるかと思います。そこで、日本国から行なわれる戦闘作戦行動と申しますのは、五条の場合を除く、すなわち、日本に対して武力攻撃が行なわれていないという場合で、しかも、日本以外のところの戦闘作戦行動基地として使用して日本からおもむくという場合に、いわゆる事前協議の対象になる、こういうことでございます。
  71. 受田新吉

    受田委員 そうしますと、台湾から日本基地へ油つぎに寄る、そして日本基地から戦闘作戦行動に参加していく、こういう場合、油をつぐとか、補給ととかいう名目で日本へ来た場合には、これはちょっと問題があると思いますが、そして日本へ立ち寄って、そこからすぐ作戦行動を起こす、こういう場合はどういうことになりますか。
  72. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 もちろん、日本から行なわれる戦闘作戦行動基地としての使用でございますから、事前協議の対象になるわけでございます。
  73. 小澤佐重喜

    小澤委員長 この際、堤ツルヨ君より関連質疑の申し出があります。これを許します。堤ツルヨ君。
  74. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 ただいまの質問に関連いたしまして条約局長にお尋ねいたしますが、核武装をいたしました第七艦隊が、事前協議すれすれの外のところにいて、そしてこれが行動を起こす場合に、もうどこかへ戦闘作戦行動をもって出かけなければならぬという場合――始まったときには、事前協議すれすれの線に核武装しておった、しかも、これが日本の領海を通ってそこへ行かなければならぬというような問題が起こったときに、これは一体どうなりますか。
  75. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 これは戦闘作戦行動のための基地としての施設区域を使用していないならば、それは事前協議の対象にならないわけでございます。そういう場合は、それはあるかいなか、そういう問題の評価の問題でございますが、現実にそういう場合があるかどうかということは、ほとんど想像できないかと考えますか、とにかくどっかで一線区別をしなければならないわけでございます。そうしますと、この六条の交換公文におきましては、戦闘作戦行動基地としての施設及び区域は使用してない、そうしますと、その場合は、事前協議の対象にならないわけでございます。
  76. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 そうすると、事前協議の対象になることを避けて、いつもその手を使えばいいということになってきますが、どうですか。
  77. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 その作戦行動基地として使用していなければ、たびたび申し上げるようでございますが、事前協議の対象にならないわけでございます。しかし、そうであるからといって、そのような脱法行為をするという――それは私は脱法行為だと考えますが、そのような行動をするというようなことは、全然前提といたしておりません。
  78. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 基地を使ったのは問題になるけれども、そのすれすれの領海を使ったのは問題にならない、こういう抜け穴があるのですから、事前協議というものは、あなた方のにしきのみ旗であって、実際は何もひっかかってこないということになるじゃありませんか。私は関連ですから、受田さんに譲りますが、私のときにまた……。
  79. 受田新吉

    受田委員 高橋さん、そこで、今の堤議員の提起された問題に関連して、私はもう一つ心配がある。日本の領海の手前まで来て、核武装して待機しておる、そして外国の武力攻撃に対して、その手前のところから、たとえば原子潜水艦のようなものが待機しておるとかいうような方法で、別に日本基地の中へ入らなくても、領海のすぐ外で待機して、この外国の武力攻撃をたたくという場合は、領海の中へ入らなければ、これはアメリカの御自由であるということになるわけですね。
  80. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 これは事前協議の対象にはならないということでございます。
  81. 受田新吉

    受田委員 だから、領海の外に待機しておって、外部武力攻撃のときにこれを発進させていけば、そういう場合は、もう別に領海の中に入らなくても済むわけですから、ごく簡単に、日本の領海の外でそういう芸当をやることもできるわけです。そうしてその場合は、核武装してもいいわけですから、自由なんだから、領海の外だから、領海に入りさえしなければ、核武装もできる、領海に入りさえしなければ、どのような外部武力攻撃に対応する行動もできる、こういうことになるわけですね。
  82. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 これはたびたび申し上げますように、基地としての国内の施設及び区域の使用ではございませんから、事前協議の対象にならないわけでございます。ただ、実質上そういう問題があるか、それとも、本来事前協議の対象となるべきときに、それを避けるために、わざとそのような脱法行為をするかどうかということは、これは別問題でございまして、そのような解釈はわれわれは考えないわけでございます。
  83. 受田新吉

    受田委員 もう一つ、条約局長でも赤城さんでもいいのですが、在日米軍の第五条攻撃に対する発動の場合に、法律論として考えられる場合は、中共の奥までもソ連の奥地までもと藤山さんが言った。そういう行動区域は、どこまで行っても、これは五条武力攻撃に対する対抗策として、自衛のためであるならば、米軍行動は限界がないということは言えるわけですね。これは藤山さんからお答え願ってもいいわけです。
  84. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 アメリカ自身が自衛権発動する場合に、国連憲章の五十一条のワクの中における自衛権というものは発動できるわけであります。そのときに地域的な限定がないことは申すまでもないことでございます。しかし、今回の場合におきまして、かねがね申し上げておりますように、そういうことが起こり得るというふうにはわれわれ考えておらぬのでございます。
  85. 受田新吉

    受田委員 藤山さんは、以前、極東の範囲を拡大解釈されておられたのでありますが、それは米軍行動に対しての、つまり、事前協議の関係であったわけです。第五条外部武力攻撃に対して、米軍自衛権発動として行動する自由は許されているであろうとお尋ねしているわけです。第五条の場合です。
  86. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 でありますから、第五条の場合でも、自衛権行使するということ以上にはできないことは当然でございます。従って、自衛権行使するということは、そう遠方まで行くということではないわけであります。自衛権行使すれば、直ちに国連の安保理事会に報告をいたして、その後の処置を待つわけでございますから、そんなに連続して遠方まで行くという必要はないことは、むろんでございます。
  87. 受田新吉

    受田委員 第五条攻撃は、極東の範囲外から攻撃をされる場合、従って、極東の範囲外から攻撃される外部武力攻撃を押えるために、自衛権発動として出動する場合は、これは限界がないわけでしょう。
  88. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 たびたび御説明申しておりますように、米軍といえども国連憲章五十一条の自衛権範囲内で行動いたすわけで、従いまして、第五条の場合におきましても、国連憲章による自衛の措置として戦闘をいたすわけでありまして、自衛でありますから、その限度というものはおのずからきまっていることは当然でございます。しかも、そのとりました措置は、直ちに国連安保理事会等に報告をいたしまして、どういうふうにそれを処理していくかということは国連の決定に待つわけでありますから、御心配のようなことは起こらないと思っております。
  89. 受田新吉

    受田委員 米軍行動が、極東の地区から外部武力攻撃が加えられたことに対して、これをたたくために行なわれるということは、これは第五条の場合の常識ですね。極東の内部からたたかれる場合がありますか。あなた方が説明される極東の内部から攻撃されることがありますか。
  90. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 第五条武力攻撃が、極東の内部からあるいは外部から起こるか、そういう点については、そのときの事情できまるわけだと思いますが、申すまでもなく、武力攻撃がありましたときに、それを排除する自衛の手段をとるわけでありますから、その範囲というものは、国連憲章自衛ということを主題といたして参りますれば、今言いましたように、そんなに遠くに飛んでいくべきものでないということは、おわかりいただけると思うのであります。同時に、それは直ちに安保理事会に報告をしてその処置を待つことに相なるわけでありまして、繰り返し繰り返し、何か遠方まで行かなければならぬというような事情にはないと思っております。
  91. 受田新吉

    受田委員 極東の範囲の中にある国国といえば、韓国、台湾、フィリピン、こういう国々であるが、こういう米国と相互防衛条約を結んでいる国々から、日本攻撃が加えられることが考えられますか。
  92. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 われわれは、今どこの国から武力攻撃があるかということを予想いたしておりません。従って、極東の範囲内であろうと、範囲外であろうと、特定の国から武力攻撃がくるということは考えておりません。
  93. 受田新吉

    受田委員 極東の国々の中で、米国と相互防衛条約を結んでいる国々が、米軍のおる日本攻撃を加えるということが考えられるかということを問うているのです。
  94. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 考えられないと思っております。しかしながら、われわれは、そういう一々の国々のどこから攻撃を受けるということを極東の内であろうと外であろうと、言うことは差し控えたいと思います。
  95. 受田新吉

    受田委員 あなたは、ソ連が中国と相互友好同盟条約を結んでいることを御存じのはずなんです。中ソ友好同盟条約というものの目的は一体何でありますか。
  96. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 中ソ友好同盟条約のあることは、よく承知をいたしております。その目的は、中ソがお互いに武力攻撃を受けた場合に、助け合うといいますか、共同的に作戦をしようということも、承知いたしております。同時に、その条約の中に明らかに日本の名前をさし示していることも、承知いたしております。
  97. 受田新吉

    受田委員 今回の安保条約の改定は、中ソ不可侵条約、いわゆる友好同盟条約と何ら関係はないかどうか。
  98. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 今回の条約は、御承知通り、現行の安保条約を、日本の自主性を持った対等の立場で改定をいたしているわけであります。そうして日本は、みずから日本国民を守るというために自衛をいたすわけでありまして、武力攻撃に対する自衛ということのために、われわれはこの条約を結んでおるわけでございます。
  99. 受田新吉

    受田委員 そうしますと、ここでちょっとお尋ねしておきたいのですが、中ソ不可侵条約、友好同盟条約なるものは、国連憲章に違反する条約かどうか、お答え願います。
  100. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 中ソ友好同盟条約が持っております性格というものは、今申し上げたような性格を持っておると思います。しかしながら、おそらく、中ソ友好同盟条約であろうと、今日の世界におきまして、国連憲章ワク内でこれを運用しているということは当然ではないか、こう考えております。
  101. 受田新吉

    受田委員 中ソ不可侵条約は、国連憲章の規定に基づいた厳とした条約であるということをあなたは今言われたですね。それでいいですか。それは条約局長でもいいです。
  102. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 ただいま大臣から申し上げましたように、中ソ同盟条約は、国連憲章の五十三条の規定に一応基づいたものだと考えます。すなわち、五十三条の後段に「もっとも、本条2に定める敵国のいずれかに対する措置で、」この「2に定める敵国」というのは、第二次世界大戦における敵国、すなわち、日本とかドイツという国でございますが、「措置で、第百七条に従って規定されるもの又はこの敵国における侵略政策の再現に備える地域的取極において規定されるものは、関係政府の要請に基いてこの機構がこの敵国による新たな侵略を防止する責任を負うときまで例外とする。」すなわち、国連憲章が、これらの国々の侵略の再現に備える措置をとるということができ上がるまでは、これらの敵国に対しては、どのような規定――侵略再現を防止するための同盟条約と申しますか、協定を結んでもいいという規定でございます。従いまして、一応この規定に準拠したものではなかろうか、こう考えます。ただ、完全にこの規定に準拠しているかどうかと申しますと、これは少し広がっております。すなわち、日本国または直接、間接に日本侵略行為について連合する他の国の侵略を繰り返すということになっておりますから、日本のみならず、これと間接または直接に結びついているという国までこれが広がっているという点でございます。いずれにしましても、この規定がございますために、一応形式的にはこの規定によったものと考えるわけでございます。しかし、日本といたしましても国連加盟国になっております。すなわち、平和愛好国として国連の一員となっておるという現在におきまして、はたしてこの条文が有効であろうかどうかということは非常に問題であり、実質的にこの条文は、現在においては、すなわち、日本が国連加盟国となった現在においては、日本に対してはこれはもう効力を有しないものである、このように考えておる次第であります。何となれば、国連加盟国である以上、国連憲章の第二条に、加盟国は主権の平等ということをうたっておるわけでございます。従って、お互いに加盟国となり、主権平等の責任を持っているにかかわらず、そのうちの特定の国にこのような措置を合法化するということは、国連憲章としてはどうしても考えられない。ただ、国連憲章も、御承知通り、第二次世界大戦のいわゆる日本枢軸に対する同盟ということから発展してこれはでき上がった。従いまして、そういうふうな時代の残滓と申しますか、残りかすをまだこれが持っているということは、否定できない事実でございます。しかし、国連の加盟国となった日本といたしましては、これは当然無効であり、国連憲章の改正の問題のときも、これが非常に問題にされている。そしてみなこれを実質的に効力を有しないものである、このように考えられているわけであります。
  103. 受田新吉

    受田委員 第二条の一項、今の主権平等の原則に基礎を置くという規定ですね、それをもとにして考えられておりますが、これが一つの原則なんです。二条は国連憲章の大原則なんです。ところが、五十三条の「もっとも、本条」云々以下は例外規定なんです。一般法と特別法とどちらが優先するか。これは法律解釈からいって、例外規定というものは――この原則はあるけれども、第二次世界大戦敵国であった国々に対して、五十三条の一項後段の規定を生かすという例外規定があるということになると、この五十三条一項後段の規定というものは、厳として生きているではありませんか。
  104. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 ただいまの御指摘の点でございますが、平和条約を結びまして、しかもその後、日本が国連の加盟国となりまして、すなわち、他の加盟国と平等な主権を持っているわけでございます。すなわち、全部の加盟国の同意を得まして、そして平和愛好国として国連の中に取り入れられたわけでございます。そしてわれわれは国連協力をやっておるわけでございますから、その日本に対して、ただいま申し上げましたような差別待遇が有効であるということは、私ども考えられない。また、国連憲章を改正するという動きが非常にありますが、それらの提案も、この条項は初めから効力は実体的になくなっておるものだというふうな考え方に立っておるわけでございます。従いまして、私どもは、この条項が今日本に対して生きているというふうなことはとうてい考えられない、こういうふうに考えております。
  105. 受田新吉

    受田委員 そうしますと、中ソ不可侵条約は、国連憲章の規定に基づいてとはっきりうたってある。この中ソ不可侵条約は無効であるとあなたは判断されるわけですか。
  106. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 これは中ソの条約でございますから、これが有効であろうとか無効であろうとかいうことは、私から批判する限りではないと考えます。しかし、少なくとも、国連憲章の五十三条の後段の規定に基づくという直接の準拠はなくなったわけでございます。従いまして、これが有効か無効か、そういう問題は別といたしまして、もしもこの条約が有効であるとすれば、少なくともこの五十三条二項以外の規定、すなわち、国連二憲章の一般のワク内で考えられなければならない、このように考えております。
  107. 受田新吉

    受田委員 一般法と特別法の関係で、一般法よりも特別法が優先するという原則をお考えではないですか。
  108. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 一般的にいいまして、一般法と特別法の関係はございますけれども、これは私もよく了解いたします。しかし、この問題は、これは特別とか一般とかいう問題ではございません。すなわち、主権の平等というのは加盟国の根本原則でございます。従って、いかなる場合においても、このような根本原則に違反するところの問題、これは、例外と申しますよりも、今となってはむしろ違反するようになった条項がここで生きているということでございますので――生きていると申しますのは、形式的にあるということでございますので、実態的には無効になっている、このように思います。
  109. 受田新吉

    受田委員 あなた方が唯一のよりどころとされ、われわれもこれを唯一のよりどころとしたい国連憲章の中に、五十三条の後段に日本敵国視する規定がちゃんと書いてある。日本と結ぶ締約国の国に対してまでも敵視政策をとってもいいという、ちゃんとした規定が、厳として今国連憲章に残っているじゃないですか。そして中ソ不可侵条約は、この国連憲章の規定で締結をすると、堂々と前文でうたっておるじゃないですか。こういうことを考えたときに、あなた方日本政府は、だらしない政府だと思う。国連憲章のこの規定の削除になぜ努力されぬのですか。こういう屈辱的な条項を平然と今日まで残して、効力があるとかないとか、いろいろなことを言っているが、三十一年の十二月十八日に国連に加盟した日本が、非常任理事国になるというようなときには一生縣命になって騒いでいるけれども日本敵国としても差しつかえないような規定がちゃんと国連憲章に生きている。この削除になぜ努力せぬのですか。御答弁願いたい。
  110. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 日本としては、当然国連憲章の改正において、この条項を削除したいと思っております。私は、昨年、国連の総会におきまして、国連憲章の改正問題を冒頭演説にも取り上げて申しておるのでございまして、むろん冒頭演説でございますから、一々の内容について申してはおりません。しかし、国連憲章を改正する時期、検討しなければならぬ時期はすでにきているということをはっきり申し上げて、演説をいたしておるのでございます。
  111. 受田新吉

    受田委員 もう一ぺんはっきり言って下さい。
  112. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 昨年の国連総会の冒頭におきましても、私どもは、国連憲章に再検討を加える時期がきているのだ、これは日本の主張であるということをはっきり申しております。
  113. 受田新吉

    受田委員 昨年そういうあいさつをしたという程度では、努力されたとは言えません。こういう五十三条一項後段の規定というものは、中ソ不可侵条約を肯定する規定じゃないですか。日本を敵視する、仮装敵国と堂々とうたってある条約が、今中国とソ連との間に結ばれておる。その根拠は国連憲章に基づきと、はっきりと不可侵条約にうたってある。中国もソ連も、国連憲章の規定で、われわれは不可侵条約を結んで、日本を敵視しているのだとはっきりうたっているじゃないですか。この屈辱的規定を、国連加盟満四年たった今日、依然として取り残すというだらしない日本政府を私は悲しむものです。この憲章の改正をやる、総会の三分の二以上の多数を得るための努力をしてもよろしいし、それができなければ、事前にもう一つ何かやる手もある。この憲章改正の前に、日本の意思を何らか形の上に残す手がある。どういう手がありますか。
  114. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 むろん私ども受田委員のお説と全く同様でありまして、ふだんそういうふうに考えております。従って、これを実行する方法として、われわれは国連憲章の改正ということを考えているわけでございます。むろん国連憲章の改正ということは、拒否権の問題その他安保理事会の構成等、幾多の問題がございます。従いまして、国連憲章全般に対する改正を直ちに行なうことは、困難な事情にもございましょうけれども、われわれとしては、決して受田委員と違った考え方は持っておりません。従いまして、国連憲章を改正するという声を上げ、また、その内容について今後われわれとしては、発言していくことは当然のことだと思っております。
  115. 受田新吉

    受田委員 岸さんも藤山さんも、また自民党の、ここにおられる有力なる議員各位も――中ソ不可侵条約日本と敵視する規定がちゃんとうたってある。それはただ単に、敵視政策々々々々と中ソを非難しても始まらない。根拠が国連憲章に基づくと書いてある。こうなる以上上は、国連憲章の根っこの規定をはずす努力をしなければならぬ。それをはずすことが先決であって、それをはずすことによって、中ソ不可侵条約の根拠が失われることになる。その努力をまずやらなければならない。外交上の努力をしていない。そうして四年間たった今日、新たに米国と、中ソ不可侵条約に一そう強化させるような動きを与える安保締結を、されようとしているわけであります。これはゆゆしい問題だと思う。中国もソ連も、日本が再び侵略国として伸びることをとどめるという条約を結んでいる以上、その対日敵視政策の条項、仮想敵国の部分を削除させるための努力は、国連憲章を直すという努力と、国連に日本ば平和を愛する国であるという強い熱情を示すことによって、総会の決議などはとれるのではないですか。日本が提案して、国連総会で五十三条第一項後段の規定を削除すべきであるとか、あるいはこれは無効であるとか、こういう意味の総会決議くらいを、日本政府としてはとらせる努力をすべきではありませんか。
  116. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 先ほど条約局長から御説明申し上げました通り、国連に加盟をいたすということは、平和愛好国として日本が認められたことであり、主権平等の立場に立って、日本は国連のメンバー・ステートになったわけでございます。従いまして、この条項からいいましても、直接の敵国というものから、今日国連加盟に至った日本が除かれていることは、先ほど条約局長が申し上げた通りであります。ただ、こういう条項が、国連加盟を許さない旧敵国に対してもあるということは、私どもは適当であると思っておりません。従いまして、そういう意味において憲章改正等の場合に、こういう問題を除去するということはわれわれの念願でございます。
  117. 受田新吉

    受田委員 念願を実際に表わさなければならぬ。具体的にこれからどういうふうに努力されますか。(「機会あるごとに主張する」と呼ぶ者あり)機会あるごとに主張するだけではだめなんです。四年間たっても、機会あるごとに実績は上がっておらぬ。日本が平和を愛する国であるという認識が、国連の国々に対してできておらぬ。しかも、ソ連や中共をむしろ刺激するような条約を結び、中ソ不可侵条約を一そう強化するような立場に、日本の外交は今追い詰められている。そういうことに対しての国連に対する日本政府の働きかけ、対日条項を削除する、根底をなくすような努力、それは日本の外交に、平和を強く唱えるという一線を常に守ることと、あなた方が国連において外交上の努力をされることと、この二つが実を結ぶはずなんです。総理、四年前に鳩山さんが老躯をひっさげて行かれて、国連憲章に基づく加盟国になり、しかも、そのときは、選挙法関係、政治規正、法関係の違反者までもこれを国連加盟恩赦といって許したほど、大きな意義のある加盟をされている。にもかかわらず、依然として今日、五十三条一項後段の規定が生きているということについて責任を一感じませんか。どういうように、これからこうした日本に対する敵視政策の条項の根拠になっている規定を、削除するというための努力をされますか。
  118. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 先ほど来外務大臣が申しておる通り国連憲章全体につきまして、当時の事情とその後の情勢とにおきまして、われわれは、国際情勢に基づいて根本的に再検討すべき時期がきておると思います。今おあげになりました条正項のごときも、当然、日本の立場だけではなしに、新しい国連の意義から申しますと、削除されなければならぬ規定であると思います。その点につきましては、受田君と私、全然同感でございます。われわれとしては、今後この国連憲章の再検討並びにそういう条項を削除して、より公正な、また、国際の情勢世界の平和をもたらすためにふさわしいような憲章にするように、加盟国の一員として努力をすべきことは当然であると思います。今日まで十分その努力が実を結んでおらない、また、十分な努力をしておらないという批判も、これはごもっともだと思います。今後われわれとしては、そういう点については真剣に一つ取り組んでいきたい、かように思っております。
  119. 受田新吉

    受田委員 具体的にどういうように努力しようとするか、憲章の改正という方面の努力か、あるいはそれの一歩前に、具体的な努力目標というものがあるはずです。これを一つお示し願いたい。
  120. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 日本は憲章改正には熱心な国であることは申すまでもないのでありまして、現に横田先生なり、なくなりました尾高教授等が中心になりまして、国連憲章改正の一つの案もすでにできております。そうした案を示して、そしてわれわれも努力はしてきておるわけでありまして、決して国連憲章改正というものに対して日本が不熱心なわけではございません。しかし、御説のように、われわれが、今後とも国連を育てていく、国連をして平和の機構の紐帯とするためには、できる、だけの努力をして参らなければならぬことは、これは当然でありまして、受田委員の言われるように、われわれも熱心に努力をしていきたいと思います。
  121. 受田新吉

    受田委員 そういう程度ですか。これははなはだ問題があると思うのでございますが、中ソ不可侵条約の対立条項を削除してもいいという周恩来などの説明によると、日本が安保をやめればということを言うておるわけですね。これはあなた方の立場でも、なかなかすぐということには――おいそれとはいかないでございましょうが、しかしながら、安保を前進させる、強化させるという方向にいけば、この中ソ不可侵条約は示そう強化されるという方向にあるわけです。これはおわかりですね。
  122. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 われわれは、現在の改正というものを、何か非常に強化したというふうには考えておらぬのでありまして、総理がたびたび言われておりますような、日本の立場をアメリカに対してはっきりさして、そうしてお互いに話し合いをしながら対等の立場でやろうという立場で改正をいたしておるのでありまして、そういう意味におきまして、われわれは現在改正を行なっておるわけでございます。
  123. 受田新吉

    受田委員 この問題は、おしまいに結論のところでもう一度持ち出すことにしまして、五条に返ります。赤城さん、日本自衛隊は、米軍その他と合同演習をしばしばやっておられるようでございますが、この合同演習では仮想敵国というものがありますか、ありませんか。
  124. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 合同演習という言葉が一般に使われていますが、合同演習ということよりも、自衛隊の練度向上、訓練の向上のために、日本で備えておらぬものなどを、向こうに参加してもらって、そうして練度の向上に努めているわけでございます。仮想敵国というようなことは練度の向上でありますから、そういうものは考えていません。
  125. 受田新吉

    受田委員 米国自体の演習目的は、仮想敵国考えてないですか。
  126. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 私は、仮想敵国というのは第二次大戦前の考え方で、一つの敵を設けて、それに攻撃を加えてその国まで占領するとか、征服するとか、こういう考え方が仮想敵国という考え方と思います。世界が今両陣営に分かれておりますが、その両陣営において今強く考えていますことは、戦争を起こしたくないということでありますから、戦前のような相手方を攻撃し、占領し、それを征服するというふうなことで仮想敵国ということを考えておるとは、それは思いません。
  127. 受田新吉

    受田委員 そうしたら、日米の合同演習の計画というものはどういうところにあるわけですか。ただ、さっき申されたような意味だけですか。
  128. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 日米の合同演習といいますが、演習ということは的確に当てはまらぬと思います。先ほどから申し上げておりますように、日本自衛隊の練度を向上するために演習を行なっている。こういうことでありまするから、アメリカのために日本が参加しておるというようなことではありません。日本自衛隊の練皮向上のための演習でございます。
  129. 受田新吉

    受田委員 演習計画、作戦の根源はだれが立てますか。双方で協議ですか。アメリカが1太平洋司令官が指示してやるわけですか。
  130. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 双方の協議でありますが、日本自衛隊の練度の向上というのが主眼でありまするから、その線に沿うて協議をしてやることになります。
  131. 受田新吉

    受田委員 もう一つ、これは演習でなくて、今度は第五条の実際の場合ですが、五条外部武力攻撃に対して、日本自衛隊合衆国軍隊とのその構成において、そこのまとまりをつける機関がなければいけない。これは通常考えられる最高司令部というものが、必要であると長官もお考えだろうと思うのです。双方がばらばらに、それぞれ、あなたはあちら、私はこちらというような、そういう作戦計画、こういう指揮系統というものはあり得ぬのだから。外部武力攻撃を排除する同一の目的をもって共通の危険に対処すると五条に書いてある。その対処の仕方は、日本米軍との間にまとまりがなければいかぬと思う。どういうふうな形でこれがまとまっていくのか、お答えを願いたい。
  132. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 日本アメリカとの間にまとまりがなければならないことは、御指摘の通りであります。ただ、指揮命令はどういうことになるかといえば、日本日本の指揮系統、アメリカアメリカの指揮系統に沿うてやっていくはずでございます。ただ、その間の連絡協調がなければなりませんから、最高指揮系統におきまして緊密な連絡協調をする、こういう態様で進んでいくことに相なると思います。
  133. 受田新吉

    受田委員 米国太平洋司令官の指揮下にある在日米軍と、あなたの部隊との関係においては、どうしても米軍の命令に即応するような自衛隊計画でなければなりませんね、実際問題は。
  134. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 日本自衛隊は、日本民族、本土を、侵略に対して守るためにできています。でありますから、太平洋司令官の指揮下にあるものではございません。日本国土を守るためにあるのでありますから、今の御質問は違っております。
  135. 受田新吉

    受田委員 日本自衛隊の実力、装備、兵力、これから考えて、米国の太平洋軍の動きと比較して単なる補助的の役割しか果たし得ない立場にしか立ちませんね。これは第五条武力攻撃に対する場合における日本自衛隊行動の限界というのもあるのです。装備の貧弱さということもあるので、そこで第五条発動の場合における日本自衛隊行動は、米軍の補助的役割を果たす、そういう地位しか保たれない、かようにあなた自身も考えておりませんか。
  136. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 第五条によって共同措置をとるのでありますが、これは日本国民日本の本土を守るためでありますから、日本が主体性を持っております。アメリカの方が補助的であります。
  137. 受田新吉

    受田委員 アメリカが補助的、それは言本自体を守る場合、陸上はもちろん、あなたのおっしゃる通り日本が主体でしょう。ところが、海上と空軍はアメリカが主体である、かようにお考えになりませんか。
  138. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 戦力といいますか、力の上においては、これはアメリカの方が力があると思います。しかし、考え方及び行動等に起きましても、やはり日本を守る、これがアメリカとしての協力する趣旨であります。何といたしましても、日本が中心、主体性を持って、力はアメリカ側にありましても、アメリカ日本協力する、こういう立場にあります。
  139. 受田新吉

    受田委員 そこでもう一つ触れておかなければなりませんが、日本自衛隊で陸上部隊、これで私問題としてみたい点は、アメリカが陸上だけに日本に譲って、そして在日米軍の陸上部隊はみんな撤退してしまった、空と海は行動が敏速でありますからいつでも撤退できる、陸上を守る陸上自衛隊だけを日本に置いておく、これはアメリカの作戦とし、はなはだ巧妙な考え方だと思うのです。第五条武力攻撃に対して日本の陸上自衛隊日本を守らして、海と空は、米軍が自由な考え行動させるのです。それに日本の空軍を補助的に使っていく、こういう作戦計画が米国側で打ち立てられると思う。そうして、これは次にちょっと関連するから外務大臣お答え願いたいのですが、そこで問題は、実際の武力攻撃五条において加えられた場合に――この前のお尋ねに関連しますよ。米軍が撤退するという場合に、あなたは、四条の協議の対象にはなっても、六条の事前協議の対象にはならないとおっしゃった。そうすると、米軍の空と海が退いていく場合に、四条の協議で話をする、これは作戦行動の場合も、また平時の場合もこにでは関連するのでございますけれども、四条の協議ということになると、協議で撤退をする場合に拘束力があるかないか。四条の協議というものは、随時協議も、もう一つ脅威に対する協議も、拘束力が事前協議ほどあるのかないのか、ちょっとお答えを願っておきます。
  140. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 お話の通り、撤退の場合には事前協議の対象にはなりません。しかしながら、今お話しのような例示の場合というものは条約の本質の問題でございます。従って、お互いに協力しようというときに、日本を守らないで行くということでは、この条約は成り立たぬ。条約の本質から言いまして、当然そうでございます。従って、日本アメリカが守る。もうアメリカが、日本を、そういうときには守らないんだという受田委員のお話のようでありますけれども、守るということは条約の本質でございます。従って、守るために日本以外の土地から守った方がいいかどうかということ、それはございましょう。しかしながら、日本を守るという趣旨においては、この条約の本質でございますから、それに違反するようなことはないと信じております。
  141. 受田新吉

    受田委員 そこで、今の撤退に関係することですから、四条と六条の関連を続けていきます。今の四条の随時協議、そして脅威に対する協議、それからさらに進んで六条の事前協議に至る、戦闘作戦行動に移る前までの協議というものが考えられるわけですね。段階がこうあるわけですね。その段階で、ここで確認をしておかなければならないのは四条の協議というものは随時協議も脅威に対する協議も――戦闘作戦行動に入るまでの段階における協議はどういう拘束力があるか。
  142. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 われわれがかねて申し上げておりますように、協議でありますから、意見がととのわなければ実行されないわけであります。六条の方の事前協議というのは、事前にそういうことを特にしなければならぬということを強調いたしておるわけでございます。
  143. 受田新吉

    受田委員 そうすると、四条の協議というのは拘束力がないわけですね。
  144. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 今申し上げましたように、協議でございますから、協議がととのわなければできないということは当然意見が一致しないと……。
  145. 受田新吉

    受田委員 そのことは、四条の場合も、拒否権と同じように解釈してもいいのですか。事実上の拒否権を、六条の事前協議でうたわれているような形で、四条も解釈していいのですか。
  146. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 必ずしも六条のいわゆる拒否権と同一だとは言えないと思いますけれども、しかし、協議でありますから、話し合いはお互いに意見を出し合いまして、そうしてこういう点はこう思う、ああいう点はお前の方はどう思うとお互いにやりまして、そうして意見がととのうことなければそういうことを実行していけない、有効に実行できないわけでありますから、その意味において、協議というものは、やはり話し合いがつくということが前提であることは申すまでもありません。
  147. 受田新吉

    受田委員 協議がととのわなかった場合に、日本がいやだと言い、向こうはやると言う、そのときは、四条の場合、やはり六条の事前協議と同じような効力を有すると解釈してよいのか。
  148. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 つまり内容において、ぜひともこれはこうきめなければならぬという問題は、六条になってくると思います。従いまして、六条の事前協議と四条の協議とが全く同性質のものだということは、これは当然言えないことだと思います。しかしながら、お互いに協議をして、協議がととのうようにやって参る。それには日本の意思も十分入っていく、こういうことであろうということは申すまでもありません。
  149. 受田新吉

    受田委員 ちょっと突っ込んでお尋ねしなければなりませんが、四条の脅威に対する協議と、それから六条の交換公文の協議との区切りは、一体どこにあるわけです。
  150. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 六条の交換公文は、はっきり協議の対象をきめておりまして、再々御説明申している通りでございます。たとえば、今の脅威が片方はあると見る、片方はないと見るというようなことがお話の通りあると思います。しかしながら、脅威があると見たからといって、四条の協議で、すぐに行動に出るわけではございません。従って、そういう意味において、いわゆる拒否権と申しますか、そういうものがすぐにふるわれるわけではございません。むろんすぐに行動に移るわけではない。六条の方は、すぐにそれが行動に出てくるのでありますから、拒否権という言葉は使いたくないのでありますが、当然拒否権があるという意味で申し上げているわけでございます。
  151. 受田新吉

    受田委員 四条の協議と六条の協議との相違点を今示していただいたわけです。ただ、私が不安に思うのは、四条の随時に協議する、そして脅威に対する協議をするという、これはほんに儀礼的な形になって、日本がいやだと言って向こうを思いとどまらせることの根拠が、はなはだ薄弱じゃないかという不安が今まであったわけです。実際問題としては、日本がいやだと言えば、米軍はこれをなし得ない。もしこれをなし遂げるということであるならば、日本の意思を無視してやることならば、四条の協議でもやはり重大な条約違反、真実正義の原則に反する違反ということも考えてよい、事前協議と同様に考えられるほど強い協議事項というふうに了解しているわけですね。
  152. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 今申し上げたようなことで御理解いただけると思いますが、たとえば、日本に脅威がある、すでに脅威が起こった、その脅威というものに対して現実日本がこれを脅威と認めない、アメリカは脅威と認める。しかし、その脅威自体は、それから行動に移らない。しかし、もしアメリカが脅威と見て、そうして自分の軍隊を日本基地から出そうというときには、事前協議にかかってはっきりするわけです。脅威があるかないか、危険、だという協議においては、今申し上げたようなお互いの考え方の交換、そさうして脅威がないと見る、日本としてはこうだというようになるわけでありまして、行動が伴わない協議であります。でありますから、同じということには申し上げかねると思います。
  153. 小澤佐重喜

    小澤委員長 この際、竹谷源太郎君から関連質疑の申し出があります。これを許します。竹谷源太郎君。
  154. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 事前協議の問題に関連をしてお尋ねしたいのであります。これは先ほどからも問題になっておりますが、条約第六条の実施に関する交換公文、この中に「合衆国軍隊日本国への配置における重要な変更、」これが事前協議の対象になっております。この中の「合衆国軍隊日本国への配置、」これは英文では「デプロイメント」とか何かと書いてありますが、軍隊の展開をする、配置をする、配備をする、こういう事柄でございます。これには第七艦隊は入らないんた、横須賀にちょっと補給やその他でやってきた場合、そういう答弁でありましたが、それに相違ないかどうか。
  155. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 単に寄港して出ていくというような場合、これは入りません。
  156. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 しかるに、この第七艦隊が、核装備をして横須賀に入港してくる、こういう場合には、これは事前協議の対象となる、こういうふうに、先日岡委員の質問に対してお答えになったのでありまするが、これもその通り相違ないかどうか。
  157. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 お説の通りでございます。対象になります。
  158. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 そうしますると、非常にここに疑問が起こって参ります。先ほど、第五条に基づく戦闘作戦行動、これは事前協議の対象から除かれておる。ところで、第七艦隊が日本に配置された軍隊ではないということになりますと、「合衆国軍隊日本国への配置における重要な変更、」その次は「同軍隊の装備における重要な変更」、このようにあるのであるから、同車隊というのは、日本へ意識的に配置された軍隊の装備における重要な変更である。従って、第七艦隊が寄港してくるというような場合には、日本に配置された軍隊ではない。従って、この条約第六条の実施に関する交換公文中、「同軍隊の装備における重要な変更」という問題には含まれない、こういうことになるのであるが、この点はいかがであるか。
  159. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 御指摘の点でございますが、第一点は、「合衆国軍隊日本国への配置における重要な変更、」すなわち、合衆国軍隊がございまして、これが日本に配置されてくる場合でございます。その場合に、その配置された軍隊、その配置における重要な変更ということになるわけでございます。それから「同軍隊の」――ここの同軍隊は、初めの合衆国軍隊と同じく、装備に主眼点を置きまして、この合衆国軍隊装備において重要な変更を行なった場合、従いまして、この日本国に配置された場合に、その配置された軍隊のその装備という意味ではございません。すなわち、合衆国軍隊がございまして、これが第一に、日本国への配置における重要な変更、それから合衆国軍隊装備における重要な変更、ただその合衆国軍隊装備における変更というのは、日本外における装備の問題ではない。これは当自然文脈から明らかなことでございまして、日本の領域内にあった場合の装備における重要な変更でございます。
  160. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 同軍隊をアメリカ合衆国の軍隊、こういうふうに解釈することは、これは牽強付会会だと私は思う。これはやっぱりこの前の事項、合衆国軍隊日本における配置、配置された合衆国軍隊装備における重要な変更を意味するのであって、この点は、これは言葉の上ではどちらにもとれます。英文を見ましても、「ゼア・エクイプメント」とあって、ゼアは配置された軍隊であるか、配置されなくても、どこの軍隊でもよろしいかということに、非常に、言葉の上でも、どちらにも疑義がありますが、政府が、この交換公文の解釈について従来説明した諸般の解釈から見まして、この同軍隊とは配置された軍隊である、こういうふうにほとんどすべての解釈、答弁においてもとっておる。今私の質問に対して、第七艦隊の核装備を、持ち出されたものであるから、突然そこに、今度は、この同軍隊という意味アメリカの、どこの軍隊でもいいのだ、こういうようなことになりますと、これは非常におかしな解釈が出て参りますよ。そうすると、日本に配置されない軍隊の装備における重要な変更が、全部入ってくるという解釈にならざるを得ない。これはどうも正しい理論的な解釈とは申せないんじゃないですか。同軍隊は、これはアメリカ軍隊という意味だ、今条約局長答弁では、アメリカ軍隊の装備における重要な変更は、すべてこれ日本政府との事前協議が必要だ、こういうふうになりますよ、いかがですか。
  161. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 その点は、この交換公文は、第六条の実施に関する交換公文でございます。すなわちつ、この基本ば第六条にございますし、第六条は、アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍、海軍が日本において施設及び区域を使用することを許される、こういういわゆる合衆国軍隊でございます。それから、ただいまの御指摘の点でございますが、英文におきましても、なおさら、ただいまの点がはっきりいたすわけでございます。すなわちち、「イン・ザ・デプロイメント・インツー・ジヤパン・オブ・US・アームド・フォーセズ」とございまして、「メージャー・チェンジズ・イン・ゼア・エクイプメント」すなわち、US・アームド・フォーセズのエクィプメント、すなわちつ、装備におけるメージャー・チェンンということになりますので、もっと一段と明瞭になってくるわけであります。
  162. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 この問題は、非常に微妙でございまして、どちらとも解釈される。しかし、これははっきりとわが国に有利なように解釈されなければならない。ただ私の質問をその場のがれに解釈して、答弁ができればいいというような簡単な問題ではありません。このように、この交換公文の事前協議というものは、その実質においても、範囲においても、非常に狭められて、これでは、これは単なる羊頭狗肉ではないかという疑問が、国民の間に非常に多いのであります。だから、今のようなことは、あなたの言うようにも解釈できるし、私の言うようにも思われる疑問がある。しかし、すらっと読んだところでは、これは日本に配置された軍隊の装備なんである。だから、配置されていない第七艦隊は入らない、こういうように考えられる危険性が非常に多いのであって、この点何らかアメリカと話し合い、あるいは他のっ文書等によってそれを明確にする資料があれ、ば、出していただきたい。これは話し合いでもよろしい。  それからもう一つ、戦闘作戦行動に、カッコをして、「(前記の条約五条の規定に基づいて行なわれるものを除く。)」このようにありますが、この除くというのは、これは全文に、すなわち戦闘作戦行動のみならず、重要な変更にもかかるのではないかという疑念がある。これはしかし、英文の方を読みますと、「アザー・ザン・ソーズ・コンダクテッド・アンター・アーチクル・ファイブ」とあって、まあこれは戦闘作戦行動だけのように読めるのでありますが、これらの点についても明確な答弁をされたいし、また、ことに第七艦隊の日本に配置――特に配置されない第七艦隊の日本基地使用という問題に関して、核装備、これは現実の非常に危険な問題でございまして、この点明確にしておく必要がぜひともある問題ではないか、こう思うのでありまして、これは一つ、総理なり外務大臣からこの二つの問題について、もっと明確な答弁をいただいておきたい。
  163. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 今、その点は、条約局長が御説明申し上げました通り、条文上でもはっきりいたしております。核兵器の持ち込みにつきましては、交渉の過程におきっましても、いかなる短時日においても、核兵器の持ち込みにつきましては事前協議をいたすことに話し合いをいたしておりますので、疑義はございません。
  164. 受田新吉

    受田委員 私は総理にぜひ確かめておきたいことがあるのですが、今、事前協議と単なる協議の場合と分けてお尋ねをいたしましたけれども、この事前協議をする機関、この間私が安全保障協議委員会の例を引きましたけれども、その機関は一体いつごろお作りになるのか。条約ができてすぐお作りになる用意があるのか。防衛を、担当する委員会というものが、できる公算があるということをお答えになっておるが、それはどういうふうな形で作ろうとされておるのか、最高責任者であるあなたから、一応御答弁願っておきたい。
  165. 岸信介

    岸国務大臣 委員会につきましては、この条約が批准される、その際には、当然提案してあります一連の交換公文が効力を発生するわけでございまして、今の委員会はすぐそれで発足する。ただ、その委員会のもとにさらにどういう下部の機構を作るかとか、あるいはその委員会がどういうふうにしていろいろな事態を処理するかというようなことについての細則的ことは、これは委員会ができて、そうして委員会会において相談されてきまる、かように考えております。
  166. 受田新吉

    受田委員 実際の共同作戦行動をどうするかというような問題、米軍自衛隊関係をつないでいく、そういう機関というものがその協議会の中に入るべきものか、これは別の件格として抜き出されるものか。
  167. 岸信介

    岸国務大臣 五条によって日本武力攻撃が加えられたときに、日本米軍とがそれぞれ自衛権発動して、これに対して行動をとるという場合における連絡は先ほど赤城防衛長官がお答え申し上げましたように、実際上最高の化指揮命令権を一持っておるものの間において、どういうふうに緊密な連絡をとるかということが問題であろうと思う。従って、今できましたところの委員会に全体の運営について相談をしたり、その他両国の間の意見の交換をする、委員会に付属するところのものとは別の、非常事態に処すべき指揮命令権の場合における特別のっ緊急のっ連絡をどうするかというものは、この委員会の下部には私は入らない、別の系統である、かように思います。
  168. 受田新吉

    受田委員 そうしますと、たとえば第五条武力攻撃に対する共同作戦行動、こういう場合の日米の軍事行動をどうするかというような話し合いは、別の機関を設けた方がいい、こういう意味ですか。
  169. 岸信介

    岸国務大臣 そういうふうに指揮命令を緊密に連絡する問題でありますから、これは別に考えた方がよい、かように思います。
  170. 受田新吉

    受田委員 そうしますと、その別の、共同作戦を話し合う機関ができるとしますと、たとえば、この間総理が御答弁になられたように、閣議で決定をする、つまり第五条武力攻撃に対して自衛隊を出動せしむべきかいなかを閣議できめる、「きまったことをそのっ委員会に諮る、こういうことも入るわけですね。
  171. 岸信介

    岸国務大臣 先ほどの私がお答え申し上げましたことは、実際に武力攻撃があった場合に、これに対処して、日米が行動をとるという行動の間にちぐはぐがあってはいけないわけでありまして、これば指揮命令系統が違っておる、日本自衛隊日本の指揮命令系統であり、アメリカ軍はアメリカの指揮命令系統である、これが別々な行動ではいかぬから、これの緊密な連絡をとるようなことを考えていかなければならぬ、こういう問題でありまして、それは、そういうような実際上の武力行動についの連絡とる、現実そういう必要が出た場合にとるというこ一とでございます。今の御質問自衛隊の出動命令を出すか出さないかということは、これほ日本の国内法において、内閣総理大臣が閣議に諮ってきめることでありまして、それはその委員会相談する必要はない。その命令が出て、現実に今度行動することになって、その行動をどういうふうに緊密な連絡をとるかということについて連絡する、こういうことになると思います。
  172. 受田新吉

    受田委員 そこです。つまり自衛隊の出動命令を出すことが閣議できまった。そこで、米軍共同行動に出るということが五条できまった。そのきまったときに、両方が、どう出るかの出方を相談する機関が、手続上からはやっぱりそれになるわけですね。一応そこで両軍の作戦行動をどうするかがきまるわけですね。そこで、自衛隊の出動がきまって、米軍の出動もきまって、そして行動を開始するときは、双方が連絡をするからそういう機関が要るわけですね。
  173. 岸信介

    岸国務大臣 何か機関とか組織を作るかどうかは別として、今の出動命令が出た、日本は今の国内の自衛隊法によって命令が出た、一方、アメリカアメリカの指揮系統から命令が出た、そうしてこの両方が行動するについて連絡をすることについては、そういう命令が出た後において緊密に連絡をとっていく、こういうことであります。
  174. 受田新吉

    受田委員 私、午前中はもうこれで一応打ち切って、午後三十分ほどいただくことにお話がついたようですから、もうおきますが、総理、あなたは、先日の御答弁で、どのような場合でも閣議に諮らなければ、自衛隊の出動は命じないと断言されたわけです。従って、あなたの御発言をもってするならば、外部武力攻撃の場合には、絶対に全画戦争核戦争というものがないと考えるか、あるいはこれらがあった場合にはもうお手あげだ、時間的余裕はないから日本は壊滅される、そういう考え方で閣議できめる以外には道がないということもおわかりいただけますね。
  175. 岸信介

    岸国務大臣 とにかく武力攻撃がありましたならば、自衛隊法によって出動させるという権限は総理大臣が持っておるわけでありまして、総理大臣がその重大な権限を行使するときには、直ちに閣議を開いて、閣議の決定によってその事態に対処していく、出動命令を出す、かように考えております。
  176. 受田新吉

    受田委員 閣議の決定以前にたたかれるというのが、全面戦争核戦争の場合ですね。それから通常長距離爆撃機で来た場合でも、閣議を開く余裕がないというような事態で攻撃が加えられる、そういう場合には、日本は閣議を開いて出動をきめるのだからつ、絶対に事前に出さぬということになればお手あげだ、そういう現実の問題として考えられる。全面戦争核戦争の場合は、日本はお手あげだという前提で閣議決定をお考えになっておるのだ、かように了解してよろしゅうございますか。
  177. 岸信介

    岸国務大臣 今受田委員のお手あげと言われることが、私は意味がわからないと思います。もちろん、われわれの方から先に手出しすることは絶対にございませんからつ、いかなる場合においても、武力攻撃は他から加えられる、これに対して自衛隊の出動を命ずるわけでございます。しかし、もちろんそのときの攻撃の状態がどういうふうに来たかというようなこと、また、これに対処すべきあらゆる方策をとるべきことは、時の内閣総理大臣は当然考えなければならぬ思います。しかし、いかなる場合においても、武力攻撃があったならっば、私は自衛隊の出動を命じて、とにかく国土の安全と民族の安全を守るということはどの内閣におきましても政府の責任である、かように思います。ただその場合に、実際幾らそうやったってかなわぬじゃないかということのお話があろうと思います。また、自衛隊の出動を命ずれば、ただそれだけで、いかなる事態にも対処できるというものじゃございませんが、自衛隊の出動というものは、いかなる場合においても命ずべきものである。もちろん、さらに外交的な手段も講じましょうし、あらゆる手も打つでしょうけれども、しかし、現実武力攻撃日本の領土に加えられ、民族に加えられたという、この現実に処しては、私は、いかなる内閣といえども、今私が申し上げるような処置をとることは当然である、かようりに思います。
  178. 受田新吉

    受田委員 私、もう一つ、あなたがあちらでお話をされたときに、今の自衛隊の出動を命ずることのできる自衛隊のことを向こうへ参考資料として出し起ておられとるうことですがア、メリカの議会に、日本の国内法で自衛隊法があるということが、はっきり確認されるような書類が出ておるのかどうか。そして今、アメリカではまだ会議をしていないようですが、これはアメリカの議会で討議される結果を待つ間に、日本自衛隊法を改正して、総理の出動権をはずして、原則としての国会の承認によって自衛隊の出動がされる、そういう自衛隊法の改正をしようとした場合に、批准の前であるならばそれが許されるのかどうか、これを一つお答え願いたい。
  179. 岸信介

    岸国務大臣 これは批准とは関係なしに、われわれ、国内法として国会がおきめになるならば、自衛隊法の改正というものは、批准の前であろうが、あとであろうが、国会の多数の意思によって変えられることは当然だと思います。それから、日本自衛隊というものがどういう組織になっており、どういうなにになっておるかということは、アメリカ政府に対しては十分説明をしておりますし、アメリカもなにしております。別にしかし、アメリカの国会にわれわれは何も資料を出す義務もなければ、これはアメリカ政府が、国会において、すでに知っておるところの日本国情について説明するだろうと思います。もしその説明をする上において、質問に十分答えられないという場合に、日本政府に連絡をして、さらに聞き合わせるようなこともあるかもしれませんけれども、いずれにしても、われわれは自衛隊法の事柄については説明をいたしておりますし、アメリカは十分に了解しておる。そうしてそれを改正することは、私がさっき言ったように、批准の前後を問わず、われわれは独立国として、国会の多数の意見によってこれを変えることはできます。
  180. 受田新吉

    受田委員 そうですか。それは非常にいいことをあなたは考えておられます。私は、条約案文に憲法上の規定、手続、こう書いてありますので、この現時点における憲法上の規定と手続という解釈かと思っておったが、今あなたは、批准が済んでから後でも自衛隊法が改正されて、国会の承認がなければ自衛隊の出動はできないという改正をしても差しつかえない、こういうふうに言われた。それでいいですね。
  181. 岸信介

    岸国務大臣 たとえば、全然条約と矛盾して、いかなる場合においても自衛隊を出してはならぬというような規定をかりにするとすれば、これは条約の趣旨と違いますけれども、しかし、今までの手続が、総理がとにかく原則としてできる、あとから承認を受けてもよろしいという規定を、どうしても事前の承認でなければいかぬという規定に変えたからといって、私は、それは日本の独自の考えで、国会の審議において多数によって決定される問題である、かように思います。
  182. 受田新吉

    受田委員 午前中はここで終わります。
  183. 小澤佐重喜

    小澤委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時二十四分休憩      ――――◇―――――     午後一時四十二分開議
  184. 小澤佐重喜

    小澤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、植竹郵政大臣より発言を求められております。これを許します。植竹郵政大臣。
  185. 植竹春彦

    ○植竹国務大臣 前回の当委員会におきまして、岡田委員から、台湾マイクロ調査につきましての御質問がございました際に、これを取り調べてからお答え申し上げる旨を申し上げておきましたので、お答え申し上げます。  御質問の第一点でありました、この契約は、御指摘の通り、在日のアメリカ合衆国軍の調達部と日本電信電話公社、いわゆる電電公社とJPAとの間の契約であります。そして契約の内容は、契約者は、台湾においてマイクロ通信設備のため測量調査を実施し、報告書を提出のため現地調査団を派遣する役務の提供であります。この契約は、昭和三十二年の六月の二十八日に締結されまして、報告書を提出いたしましたのは同年の十二月の四日でありました。それに対する金額は二万六千三百三十六ドル、邦貨換算いたしますと九百四十八万九百六十円ということになります。  次の御質問であります、先日御提出の書類はほんとうの報告書であるかどうかという御質問でありましたが、さっそくその資料を御承諾を得て拝借いたしまして、これを役所に持ち帰り、電電公社の当時の関係の者を招致いたしまして調査いたしましたのでございますが、この契約はベトナムのときの契約と同様でございまして、メモに至るまですべて報告書は一切をあげてアメリカの財産とする、すなわち、アメリカの方に渡してしまわなければならないという厳格な約束がございまして、一切これをあげてアメリカに渡しましたので、御提出の書類と、それからそのもとになります書類とを比較することができませんので、真贋のほどはわからないということでございます。  以上、お答え申し上げます。
  186. 岡田春夫

    ○岡田委員 今郵政大臣から御答弁がございましたが、この資料について一切ないというようなお話でございましたけれども、この間私が質問した限りにおいて全く同じである、今の御報告と、私が質問いたしましたことは同様である、私はこのレポートを基礎にしてお伺いをしたのでありますから、従いまして、あなたの御報告は、全くこのレポートと同一なものであると私は解釈せざるを得ないのでございます。そのように解釈いたしたいと思いますが、いかがでございますか。
  187. 植竹春彦

    ○植竹国務大臣 もとになりますものと比較の材料がないので、真贋のほどを見きわめますことができなかったので、あとは記憶にたよるほかはなかったものですから、記憶を呼び起こさせまして、これはどうであったかと申しましたところが、御提出の書類が何分にも詳細をきわめておりますので、そこまでの記憶はむろんいたしかねたわけでありまして、それで、自分たちが報告したものに似ておるということを申しておりました。
  188. 岡田春夫

    ○岡田委員 このレポートが本物であるか、うそであるかという点は、私はあとでやります。それよりも事実関係を先に進めたいと思います。  先に委員長に伺っておきますが、休憩前に、その当時の黒川マイクロ部長、並びにこの調査に派遣されました大槻調査役、この二人の出席を要求しておりますが、出席されておられましょうか。
  189. 小澤佐重喜

    小澤委員長 出席しております。
  190. 岡田春夫

    ○岡田委員 それでは、御出席のようですから、お伺いいたして参りますが、先ほど答弁のありましたように、電電公社としては、台湾全島にわたってマイクロウエーブの施設の現地調査をやったわけであります。これにつきまして、大槻由之助さんといわれる隊長は、八月の十一日にこちらを出発いたしまして、十一月の二十二日に帰国されるまで、現地において実情の調査、並びに九月二日以降においては現地の調査をやられたはずでございますが、これは間違いないと思いますけれども、大槻さん、おられましたら、御答弁をいただきたいと思います。
  191. 大槻由之助

    ○大槻説明員 大槻であります。日にちは大体間違いございません。一日くらいどうか、私、今メモを持っておりませんけれども、十一日に出発いたしまして、十一月の末帰って参りました。
  192. 岡田春夫

    ○岡田委員 それでは、続いて大槻さんにお伺いをいたしますが、調査にあたって、現地に滞在中におきましては、台北駐在のアメリカ軍顧問団、すなわち、MAAGであります。MAAGの監督のもとにこの調査が行なわれたわけでありますが、具体的な指示はすべて、国民政府軍と申しますか、蒋介石軍の沈大佐といいますか、その具体的な指示に基づいてこの調査が進められたと聞いておりますが、いかがでありますか。
  193. 大槻由之助

    ○大槻説明員 その通りでございます。
  194. 岡田春夫

    ○岡田委員 それでは、続いてお伺いをいたしますが、このマイクロウエーブの施設というのは、すべていわゆる蒋介石軍隊の軍専用のための通信で、ございまして、民間のために作ったものでは全然ない、この点は間違いないと思いますが、蒋介石軍のために使われる、そのためのマイクロウエーブ、そのための調査である、このように、これは再三、大槻さん御出席の議事録にはっきり出ておりますから、大槻さんから御答弁いただきたいと思います。
  195. 大槻由之助

    ○大槻説明員 最初に出発のときは、必ずしも向こうの軍あるいは米軍ということは考えていなかったわけでありますが、その報告書にもございますように、向こうと二、三回打ち合わせをいたしましたときに、今おっしゃった通り、向こうの軍の専用であるということにきまったわけでございます。それまでは、テレビに使うもの、あるいはほかの、TTAと申しますが、台湾逓信省が使うものであるか等の疑問もございまして、それらもディスカスしたわけでありますが、二、三回後に、はっきり軍用であるということに決定をして、われわれも了解をしたわけでございます。
  196. 岡田春夫

    ○岡田委員 それでは、もう一点大槻さんに伺って参りますが、八月の二十四日の会議によりますと、しかも、この軍用の場合には、航空路管制用通信系統、気象関係通信系統、レーダー近接統御用通信系統、補給用通信系統、これらのものは、このマイクロウエーブには全然考慮しておらない、実際にこれが使われるのは、目的は、蒋介石軍の指令及び情報の伝達及び交換用として、すべてが音声で、全部軍用であるということが確認をされております。その期日は八月の二十四日でございますが、これは日にちが、どうであろうとも――その点はまあだいぶ前のことでですから、大槻さんが記憶があるいは薄れておられるかもしれませんが、問題は、私の伺いたい焦点は、軍の指令並びに情報連絡の指令通信用である、この点が確認されておるわけであります。この点は間違いございませんか。ここに書いてございます。
  197. 大槻由之助

    ○大槻説明員 その点は、電話回線ということで設計いたしましたので、内容についてはちょっと記憶がございません。
  198. 岡田春夫

    ○岡田委員 まあ軍用であるという点は確認されましたが、内容の詳しい点は記憶がないという話なら、これもやむを得ません。  続いてお伺いをいたして参りますが、今度はこの調査、この点を伺いたいのです。この調査の場合と――調査に基づいてマイクロウエーブの設備ができるわけでございますね。このマイクロウエーブの設備ができましたあとで、当然これを、運転といいますか、動かしていかなくちゃならない、すべてこれは有人保守局というか、有人局というのですか、そういうことになっておりますが、この有人局の場合の技術者、オペレーターといいましょうか、このオペレーターは、蒋介石の軍隊の高級技術者がこれを運転していく、こういうことになっているわけなんで、この高級技術者の訓練のための計画も、これと同時にお出しになっていると思いますが、この点はいかがでございますか。
  199. 大槻由之助

    ○大槻説明員 今お話しの通り、全部有人局でございまして、高級も低級も入れまして、技術者が約百二十名ほど要るであろうということを提案しております。そして、これらを三カ月か、あるいは六カ月か養成しなければならぬであろうということも勧告をいたしておりますか、これは最初はTTAと称する向こうの逓信省の技術者が保守するかと思っておったのですが、ディスカッションの結果、これは軍が保守するんだということでありまして、これの養成、三カ月、だったか六カ月だったかと思いますが、養成のスケジュール等は、こういうふうに現地で工事中にやるとか、そういうことを勧告したわけでありまして、そのほかの養成、訓練の計画はございません。レポートに出した程度のもので、スケジュールだけでございます。
  200. 岡田春夫

    ○岡田委員 まあスケジュールを出したというお話でございますが、蒋介石軍の高級技術者を日本の国内で訓練する、そういうスケジュールあるいは計画書をお出しになった、これはまあ間違いないようであります。  それから、この全島のマイクロウエーブ設備の中で、金門との連絡につきましては、スルー・トラフィックといいますか、この点、私、技術的にはあまり詳しくわからないのですが、十月二十四日の議事録によりますと、これには大槻さんも御出席になっておりますが、金門からのすべての中継線は台北へ直接接続すること、金門において他の通信本部と通信が必要な場合は、通話は台北で交換できる、このようなことが実は第九項で確認をされております。従いまして、台湾全島におけるマイクロウエーブ設備を建設されるそういう調査を行なわれるにあたりまして、金門からの連絡というものを当然考慮に入れて、それはすべてこの書面の通り台北において直接接続する、このような計画をお作りになる、このことも、今さらお伺いする必要もないと思いますが、大槻さんが現実にこの当日の会議にも御出席になっておりますので、この点を重ねて大槻さんに伺っておきたいと思います。
  201. 大槻由之助

    ○大槻説明員 八月何日であったかは、私記憶しておりません。毎回会合をやりまして、打ち合わせ会をやっておりますので――日にちは、その日にちかもしれないと思います。金門、馬祖の話がございましたが、われわれは、台北から中継をいたしまして、高雄までの約三百キロのマイクロウエーブの設計でございまして、その他のものは、今全島というお話がございましたけれども、東の方の回線あるいは離島等については、そのわれわれの設計の中には何ら入っていないのであります。それで、その太い、縦貫回線といっておりますが、台北から高雄までのメイン・ルートは幾らほどの太さにすべきか、マイクロウエーブの電話チャンネルが何チャンネル必要であるかというのを、われわれ、トラフィックの予想といいますか、そういうもので言っておりますが、その場合に、向こうの専用線といたしまして、台北高雄間の太い線に途中から入りますものを向こうで調査して、それだけ予想を入れる、そういう議事録だと思います。従って、澎湖島も、あるいは金門、馬祖、あるいは屏東とか、あるいは東海岸の都市というものが、それぞれ台中とか台南とか、あるいは高雄より入ってきて、そして台北の中心にまでいくという場合のトラフィックの予想の場合に、そういう話が出ておるわけでございます。
  202. 岡田春夫

    ○岡田委員 ですから、これは正式のレポートの方、大槻さんが隊長として作られたレポートの方にも、今お話のように、基隆、それから宜蘭、花蓮、金門へのトラフィックは台北経由として、澎湖島へのトラフィックは台南経由として、台中へのトラフィックは高雄経由として、都市間のトラフィックについて含めた、このようにお話しですね。従いまして、当然、このマイクロウエーブができましたならば、金門からのトラフィックを通じて、台北に直接――先ほど御質問いたしましたように、台北にすべてが直接連絡接続できるようになっている、こういう設計計画であったと思うわけであります。この点は間違いないと思いますが、もう一度確認をいたしておきたいと思います。
  203. 大槻由之助

    ○大槻説明員 その通り、台北へ集中する予定でございます。
  204. 岡田春夫

    ○岡田委員 その他の点につきましても質問をいたして参りますと、まだまだございますが、あまり長い時間をとりたくないと思いますので、要点だけ以上申し上げましたが、大体、このレポートに書いてあります重要な点は、ただいま隊である大槻さんが確認をされました。郵政大臣のお話では、このレポートは現在ないというお話でございますが、私は、ないということはどうしても納得できない。と申しますのは、やはり電電公社がJPAと契約をいたしました場合において、その控えをとっておかない、契約について控えが全然ないとか、仕様書が全然ないというのは、常識として私考えられないのであります。しかも、あまりここで詳しくは申し上げませんが、未だ同じものが三部か四部電電公社の文書課にあるはずであります。だから、そういう点は私はあまり詳しく申し上げませんが、あなたはないとおっしゃるんなら、ないとおっしゃってもいいですが、これはあるはずですから、もう一度お調べになったらいかがでございますか。
  205. 植竹春彦

    ○植竹国務大臣 電電公社の報告によりますと、ないとはっきり郵政省へ報告がありました。
  206. 岡田春夫

    ○岡田委員 郵政大臣は電電公社からだまされないように、まだ文書課には四部か五部あるはずですから、一つ十分お調べを願います。あるいは郵政省かもしれませんよ。  まあそれはいいとして、そこで条約上の問題について二、三お伺いをいたして参りたいと思いますが、これは国際協力局長でも、アメリカ局長でもけっこうですが、JPAというものが日本に設置されておりますのは、日米関係における条約上どの規定に基づいて設置されておりますか。
  207. 森治樹

    ○森政府委員 日米関係といたしましては、行政協定十二条等の機関でございます。
  208. 岡田春夫

    ○岡田委員 行政協定十二条だけでございますか。MSA協定関係ございませんか。
  209. 森治樹

    ○森政府委員 MSA協定にはございません。
  210. 岡田春夫

    ○岡田委員 関係ないですか。
  211. 森治樹

    ○森政府委員 MSA協定には、JPAのことを書いた規定はございません
  212. 岡田春夫

    ○岡田委員 それではお伺いしますが、森さん、それじゃ、MSA協定にはJPAのことを書いた規定がないならば、JPAが職務を遂行する場合においては、行政協定十二条の適用の職務しか行ない得ないことになりますか、どうですか。
  213. 森治樹

    ○森政府委員 普通の商行為でございますれば、これは必ずしも協定上の根拠は必要でないわけでございます。
  214. 岡田春夫

    ○岡田委員 いや、商行為としても、いわゆる在日米軍調達部ですから、そのようにして行政協定十二条に基づいて設置されているわけですから、そこで、この在日米軍調達部が役務を調達をする、あるいは資材の調達を行なう、このような場合においては当然、条約上の規定に基づいて行なわなければならない。この点については、参議院の予算委員会の分科会であっなたは御答弁になっておられるのですが――これはベトナムの場合です。べトナムの場合においては、MSA協定の第六条、第七条、これの適用に基づいて、このようなマイクロウエーブの施設がベトナムにおいて行なわれたんだとあなたは答弁されているし、藤山さんも同様に答弁されておりますが、これは間違いですか。
  215. 森治樹

    ○森政府委員 JPAが日本で商品を購入いたします場合には、免税という問題が出てくるわけでございます。その免税上の根拠はどこにあるかというのが、MSAの規定に根拠を置くわけでございます。
  216. 岡田春夫

    ○岡田委員 それでは、役務の場合の免税ということはほとんどあり得ないと思うのですが、たとえば、今度のように人間が向こうに行くということですね。――それじゃ具体的に伺いましょう。この台湾のマイクロウエーブ設備において、JPAがこのような契約を行ないましたのは、いかなる契約に基づいて行なったのでありますか。現行行政協定の十二条でありますか、現行行政協定の第七条でありますか、MSA協定の第六条の1のb項でありますか、このいずれかでありますか。それ以外のことでやり得るという、そのような規定はないはずでございますが、もしそれ以外にあるならば、それ以外の条項も具体的にお示しを願いたいと思います。
  217. 森治樹

    ○森政府委員 私は今度の契約の実態を十分承知しておりませんけれども、もし今度の契約が単なる役務契約でございまして、行政協定第十二条に掲げられております四つの税種に関係がなないといたしますれば、これは単純なる商行為でございますから、協定上の根拠は必要じゃないじゃないかという解釈を下しております。
  218. 岡田春夫

    ○岡田委員 これは大へんなことをお話しになるのです。それじゃ、むしろ電電公社の方からお伺いしておいた方がいいと思うのですが、今度の契約が完全な商行為で、協定条約に全然基づかないで行なわれたというような、あたかもそれであるかのごとき答弁が、今、森アメリカ局長からあったのでございますが、そういう事実はありますのですか。それならばこれは大へんなことだと思うのでありますが、電電公社あるいは郵政大臣からこの点を明確に御答弁を願いたいと思うのであります。
  219. 大橋八郎

    ○大橋説明員 お答え申し上げます。公社に関する限りにおきましては、公社法第三条第二項の、委託によってこの行為を行なう、商行為をやる、かようなふうに考えております。
  220. 岡田春夫

    ○岡田委員 それは公社法の適用ですね。私のさっきから伺っているのは、日米関係の規定に基づいて条約上どのようになるかということを伺っているのです。ですから、大橋さんの言われた、公社法の規定に基づく――公社の運営としては当然そういう点は考えられましょう。しかし、JPAとそのような契約をするためには、当然、外国との契約でありますから、何らかの条約上の規定がなければならないはずであります。その条約上の規定が伺いたいと私は言っているわけです。郵政大臣からお伺いいたしたいと思います。
  221. 植竹春彦

    ○植竹国務大臣 コマーシャル・ベースで契約いたします一般の他の外国との関係と全く同じことです。さように考えております。
  222. 岡田春夫

    ○岡田委員 ですから、コマーシャル・ベーシスで契約いたします場合においてはいろいろあるわけですね。何でもいいから契約ができるというわけじゃないでしょう。JPAというものが存在するという限りにおいて、JPAが、先ほど――森さん、お聞き下さいよ。軍事的な目的のためにマイクロウエーブの設備が行なわれたわけですね。そのことのためにJPAがこのような契約をしたわけでしょう。これは当然MSA協定か、あるいは現行条約に基づいているかでなければ、勝手にこのようなことができるわけがないじゃありませんか。その点はどうなんですか。郵政大臣でもけっこうであります。はっきりしているじゃありませんか。そんなことを何も隠すことないですよ。
  223. 植竹春彦

    ○植竹国務大臣 商行為ならば要らない、さように考えております。
  224. 岡田春夫

    ○岡田委員 それでは、森さん並びに藤山外務大臣は、前の参議院の予算委員会で、ベトナムのマイクロウエーブ設備について答弁をされましたが、これは全部お取り消しになるわけですね。
  225. 森治樹

    ○森政府委員 先ほど申し上げましたように、行政協定十二条に掲げております、またMSA協定も同様でございますが、物品税等の租税を免除するような契約であれば、協定十の根拠が必要だと思います。しかしながら、もしそういう租税に関係のないということであれば、単純な商行為ということになりますから、これは協定上の根拠は必要でない。ベトナムの場合は、私は、当然行政協定十二条に掲げられておるような租税が関係しておるという前提でお答えいたした次第でございます。
  226. 岡田春夫

    ○岡田委員 それでは、JPAとの契約、それから、このような台湾のマイクロの調査、これはすべて、今の御答弁によると、現行行政協定十二条に基づいて行なわれた、ベトナムの場合においては少なくともそれであるとお答えになりました。これと同じように、今度は軍事目的で台湾においても行なわれているとするならば、これであると言わざるを得ないわけですが、そうでしょう、そうじゃないとおっしゃるのですか。おかしいじゃないか。ベトナムの場合はそれだが、台湾の場合には違うのだ。同じものを作りながら、違うのだという根拠をそれでは具体的に明らかにしていただきたい。
  227. 森治樹

    ○森政府委員 私は実態をよく存じませんので、あるいはその間に私の方でも誤解があるかもしれませんが、私が申し上げておりますのは、日本からJPAが、日本の物品税、通行税、揮発油税、電気ガス税、こういう免税を必要とするような物品を購入します場合には、これは行政協定か、あるいはMSA協定の根拠が要るわけでございます。しかしながら、こういう租税の免除を伴わない場合でございますれば、これは単純なる商行為でございますから、MSA協定の附属書Aにもありますように、アメリカがこれらの域外調達の物資を日本で買い付けることを考慮するということになっておりますし、この精神からアメリカは買い付ける、しかも、それは単純なる商行為である、ただし、租税を含む場合には、いずれかの根拠を要するということでございます。
  228. 岡田春夫

    ○岡田委員 それでは、続いて別に進みます。  これは郵政大臣あるいは電電公社に伺っておきますが、契約の金額は、明示されたものはドルであります。先ほどお話のように二万六千三百三十六ドル、ところが、支払いは、先ほどお話のように、円で支払いが行なわれたと思います。この点はいかがでございますか。
  229. 植竹春彦

    ○植竹国務大臣 円で支払いを受けました。
  230. 岡田春夫

    ○岡田委員 これは円で支払われているという点から、非常にはっきりして参りますが、MSA協定に基づく見返り円の資金の中からの支払いであったと私は思います。その当時、アメリカがMSA援助で小麦その他を日本に入れてきているわけですが、それによって見返り円の蓄積が行なわれております。この見返り円の蓄積の中で、昭和三十二年は千八百三十五万八千ドルの特需契約が行なわれました。ところが、この三十二年には、狭義の特需だけではなくて、この中には、ICAファンドの特需にも使用されております。特に台湾向けの特需契約は、百十九万九千ドルの、ICAファンドによる特需契約が三十二年には行なわれております。従いまして、この二方六千三百三十六ドル、この金額というのは、ただいま申し上げた見返り円の中の台湾向けの中で、ICAラァンドである百十九万九千ドルの中の一つであると私は考えております。この点は、契約者である電電公社その他は当然御存じでなければならないと思いますが、この点はいかがでございますか。
  231. 大槻由之助

    ○大槻説明員 ドルの裏づけの円であるということは間違いありませんが、契約書、仕様書等に書いてある範囲内で了解しておるので、どういう元の金であるかということは、電電公社もわかっていないようでございます。
  232. 岡田春夫

    ○岡田委員 これは郵政大臣あるいは外務省の皆さんも一つお考え願っておかなければならないのですが、アメリカの軍隊だから何でも日本の円を無制限に使っていいということにはならないはずだ。そういうことならば、日本の為替管理なんというのは意味ないわけであります。何か日本にそれだけの保有された円があって、その円に基づいて、あるいはアメリカの持っているドルを行政協定に基づく何らかのいわゆる交換率に基づいて円に切りかえて、それに基づいてその円を使うというのでなければ、何でもいいから円を使えるという話にはならないはずであります。それ以外の円の使い方はないはずだと思うのでありますが、現行行政協定の解釈上からいきましても、在日米軍が使う円の使用というものは、その二つ以外にないと思います。すなわち、余剰農産物か、あるいは余剰財産か――余剰財産の場合もある。それ以外に、アメリカ軍が持っているドルを円に換金をして――これは行政協定の末尾の方にあります。これは条章を申し上げてもいいのですが、それに基づいて円に直して、その円で使っていくか、その幾つかしかないわけです。従って、今度の場合は、明らかに見返り円の中から使われたと思わざるを得ないわけです。この点はいかがでございますか。おわかりになりませんか。
  233. 森治樹

    ○森政府委員 行政協定の建前としては、おおむねただいま岡田委員の仰せられた通りであると思いますが、今回の場合にいずれから出たか、私どもの方ではわかりません。
  234. 岡田春夫

    ○岡田委員 今回の場合は別として、森さん、おおむねというのは、どういうのですか。おおむねという意味は、それ以外にあめるという意味ですか。
  235. 森治樹

    ○森政府委員 米軍の行政協定上使います円と申しますのは、ドルからかえられた円か、あるいは行政協定二十五条に基づく防衛分担金でございますか、それから、私ちょっと今はっきりいたしませんのは、余剰の農産物等でアメリカが売却して蓄積された円、これがどうなっておるか、私ちょっとただいま記憶いたしておりませんので、おおむねと申し上げた次第でございます。
  236. 岡田春夫

    ○岡田委員 どっちみちお認めになったと同じことなんですが、おおむねという点は、そういうことにしておきましょう。しかし、余剰農産物、MSA協定の見返り円であるとするならば、現行行政協定の十二条ではなくて、MSA協定の第六条、第七条に基づくJPAのいわゆる職務である、このように規定せざるを得ないじゃありませんか。どうです。
  237. 森治樹

    ○森政府委員 本件の場合に、アメリカが財源としましてどの財源を充てましたか、私どもの方でただいまよくわかっておりませんので、その点がわかりませんと、ちょっと御答弁がいたしかねるわけでございます。
  238. 岡田春夫

    ○岡田委員 それでは、もう少し話を進めますが、先ほど大槻さんは、訓練、養成の計画はプランだけであった、実際にはこれはやらなかったようにもお話でございますが、実際には蒋介石所属の軍人、この報告書のナンバー1に出ておりますが、最小限度十六名の軍人の高級技術者が日本に滞在をして、日本で研究をして訓練を受けた、そういうようにわれわれとしては想像できるのでありますが、これは実際には日本のどこに留学をして、何名が何か月ぐらい滞在されたのでございますか、この点はいかがでございますか。
  239. 大槻由之助

    ○大槻説明員 報告書の訓練はスケジュールだけでございまして、訓練はいたしておりません。ただし、報告書の最終打ち合わせに向こうから、日にちは忘れましたが、三、三週間見えたと思います。
  240. 岡田春夫

    ○岡田委員 もうこれで私は終わりますが、ともかく今まで非常にはっきりいたして参りましたことは、日本の電電公社が、軍事的なマイクロウエーブの施設のためにJPAと契約をした、JPAとの契約に基づいて台湾へ行ってマイクロウエーブの調査を行なった。ところが、このJPAというものは、森アメリカ局長の答弁によると、第十二条の規定に基づいて日本の国にJPAが設置されている。ところが、十二条においては、JPAのいわゆる職務の目的というものがはっきりしている。十二条の第一項「この協定の目的のため又はこの協定で認められるところにより」云々、従って、行政協定によって設けられているJPAというのは、行政協定の基礎になっている安保条約並びにこの行政協定、この二つの目的の範囲を越えることはできない、この点は明らかであると思いますが、いかがでございますか。
  241. 森治樹

    ○森政府委員 その通りでございます。
  242. 岡田春夫

    ○岡田委員 だから、現行安保条約に基づいても明らかに、あるいは行政協定においても明らかに、在日米軍日本に駐留をし、そのために在日米軍調達部があるというのは、日本アメリカとの関係、すなわち、日本の安全のためにこのようなJPAが設置されている、ところが、このJPAを経由して、日本アメリカ以外の第三国の軍隊である蒋介石の軍隊に日本の電電公社が軍事協力をやっている、この点はすでに明らかになった。先ほど答弁通りに、金門、馬祖からいわゆる中継として台北に対するこのような計画も作られておる、あるいはまた、台湾の数カ所にわたるところのマイクロウエーブの施設調査が行なわれ、しかもこれは金門、馬祖の戦争が始まる前に、蒋介石の軍隊が大陸反攻作戦を準備している、このような中国の内戦に対して、日本の電電公社が内政の干渉をやっている、このような事実は明らかに出てきたではございませんか。郵政大臣、どうです。
  243. 植竹春彦

    ○植竹国務大臣 お答えいたします。この点は一見さように見えるふしもあるかもしれませんが、ざっくばらんにお答えいたしますと、最初これは、軍事目的とか、民間目的とか、すべて含まれまして、一切の台北―高雄間のマイクロ調査を約束いたしたのであります。ところが、向こうへ行きましたところが、台湾政府においても、交通部あり、逓信院に類する同じような役割の役所があって、そして向こうの軍と、それから向こうの逓信院のような役所との間で論議がありまして、自分の方にもこういったようなりっぱな役所があり、民間のことも、一般の、たとえば気象とか、その他広報の役目をするような施設を調査することは台湾政府の方でもできるんだ、だから、それは自分の方のそういったようなシヴィルの役所でもって調査するから、せっかく来てくれたけれども、調査しないでもいい。ところが、せっかく来たものだから、それじゃ軍の方のことだけでも調査さしたらいいだろうということに変わったというのが、これは真相だということを私は了承しております。だから、最初の目的から軍の方の調査に行ったのじゃない、一般の目的でもって約束をして調査に行ったのた、それが真相でございます。
  244. 岡田春夫

    ○岡田委員 しかし、それは、郵政大臣はそうお答えになりますけれども、軍事目的のためのマイクロウエーブであることは間違いない。それはなぜならば、仕様書並びに契約書の中に、明らかに、台北駐在米軍顧問団長並びにそれに基づくところの受領将校、その他詳細にこれは書いてあります。ですから、台湾の蒋介石軍隊のために使うか、あるいはアメリカのMAAGのために使うか、これはわからなかったと、たとえばあなたの言われる通りにいたしましても、軍のために使うことだけは、これは間違いないのです。これは仕様書と契約書に――ないとおっしゃるから、あなたはごらんになっておらないわけです。ここにはっきり書いてありますから、これは否定できないわけです。民間のためのものであるなどということは、全然初めからありません。これは仕様最にも契約書にも全然出てないので、あなたはそうおっしゃっても、先ほど大槻さんの言われたのは、向こうに行って初めて、台湾の蒋介石の軍隊が使うのだということがわかったのだ、こういう答弁をしたので、それはあなたのお話の通りに、初めから軍のものであったことは間違いない。
  245. 植竹春彦

    ○植竹国務大臣 この間御質問がありましてから、あとで関係者一同集まりましたときに、この次の委員会ではほんとうのことをぶちまけてしまったがいいのだ、真相を遠慮なく言って、正直より強いものはないのだというわけで申しておりますので、私の申し上げていることは、私に関する限り、これはほんとうだと思います。決して最初から軍事目的のために調査に行ったのじゃない、さように私は信じております。
  246. 岡田春夫

    ○岡田委員 それでは、郵政大臣がほんとうのことをお話しになった、ほんとうのことを郵政大臣としては信じてお話しになった、このように私も信じます。ただ、結果においては、それを信ずるためには、向こうに行ってこれは軍事目的であったということは間違いない事実である、この点はもう一度だけ念を押して伺っておきたいと思います。
  247. 植竹春彦

    ○植竹国務大臣 向こうへ参りましたら、一般のものは、こっちで別の役所でやるから、軍の方のだけやれと言われた。もっとも、一般のでも、ベトナムのときにもお答え申し上げましたように、軍というのは、通信についてはきわめて密接な――通信についての特殊の技術も、特殊の知識もございますので、一般の調査のときにも、むろん、軍の指導であっちこっちやってもらった方が、治安維持という点からいってもよろしかったでありましょうし、その点は必ずしも軍そのものの調査で行ったというふうには解釈していないのでございます。
  248. 岡田春夫

    ○岡田委員 結果においてはそうなっていない。
  249. 植竹春彦

    ○植竹国務大臣 結果におきましては、軍の方の通信機関だけを調査して参ったことは事実でございます。
  250. 岡田春夫

    ○岡田委員 私はこれ以上進めませんが、岸総理に伺いますが、今お聞きの通りであります。日本にいる在日米軍の名において、日本国の安全のためにといって置かれた安保条約並びに行政協定に基づいて、このJPAによって、第三国である蒋介石の軍隊が、大陸反攻作戦という内戦、侵略計画を進めるのについて、日本の電電公社が侵略計画協力をした、軍事協力をやった、これは明らかじゃないか。この通り明らかに指摘された。これは明らかな敵視政策じゃありませんか。敵視政策でないとあなたは言えますか。しかも、それはどうです、先ほどから言っているように、政府の方では、わからない、わからないと言っているが、これは見返り円資金を流用した。見返り円資金とは何ですか。アメリカから来ている小麦その他を日本国民に買わして、日本国民のお金で台湾の蒋介石の軍事協力をやったことになるではないか。明らかにそうではないか。このような形で、日本国民の税金、金によってアメリカの軍事協力をやったということは、敵視政策でないとあなたは言われますか、どうなんですか。
  251. 岸信介

    岸国務大臣 さっきから質疑応答を聞いておりますと。私は、前提としての、日本に駐在しておる行政協定の十二条云々のことは、免税等の特典を与えることに関する協定であると思います。従って、その日本にいる調達部の方の連中が、いわゆる商業べースにおいていろいろな約束をすることは、行政協定と直接な関係はないと私は思います。  それから、今、円資金云々ということがありましたけれども、これは、私は、アメリカ日本に売った代金をアメリカが使うことなんでありまして、それを今何か非常に大きな声で違法呼ばわりをしておられますけれども、そうではないと思います。先ほど来の質疑応答を聞きましても、今お話しのように、結果として軍事に専用されるところのマイクロウエーブの調査ということに終わっておりますが、この契約をした当時における考え方は、郵政大臣がお答えをしておる通りだろうと思います。また実際上、台湾においてそういうマイクロウエーブが軍用の見地から必要であるという意味において、自分の方の考える技術力に対して調査を委託するということ、それを電電公社が自分の方の本来の業務を遂行することに差しつかえない程度において、商業べースにおいてそういう契約をして、そういう委託を受けたところの調査をした、こういうことでありまして、これをもってわれわれが敵視政策に協力しているとか、あるいは日本自身が、今おあげになりましたように、中共に対するわれわれの敵視政策の一つの現われであるというふうに解釈することは、私は、本来この契約の成り立ちから実際に行なわれた結果を見ましても、そういうふうに断ずることは適当でない、かように考えております。
  252. 岡田春夫

    ○岡田委員 総理大臣は、何かコマーシャル・ベースというものを、まるでトラの子でも持ったように言っているのだが、コマーシャル・ベースで軍事契約をやるなら何でもいいのですか、そんなことはないでしょう。軍事的なものを作るためにコマーシャル・べースでやるなら何でもいいとおっしゃるなら、軍事計画じゃないですか。明らかに軍事計画日本協力していることになるじゃないですか。敵視政策でないとおっしゃっても、このマイクロウエーブの施設を使って、金門、馬祖の戦闘において――今日ではこのマイクロウエーブはもう完成している。このマイクロウエーブを使って戦闘行為が行なわれているじゃないか。指令、連絡用通信として使われているじゃありませんか。これが敵視政策でないとおっしゃれますか、明らかな敵視政策じゃないか。それ以外ではありません。私は、前会においてもはっきり言っているように、調達庁にしても、地理調査所にしても、運輸省の気象庁、自衛隊、海上保安庁の水路部、これらは、この前の基本労務契約の中で米軍に全部協力をすることを明らかにしている。そして、それによって、たとえば地理調査所の地図の問題にしても、赤城防衛長官は、アメリカの軍隊は中国の大陸に入ったことはありませんなどと言って、白々しいことを言っているが、どうですか、ついこの間、二十八日の北京放送では、九十四回目の領空、領海、領土侵犯をアメリカの軍隊が行なったということを言っているじゃないですか。このようにして、アメリカの軍隊がどんどん中国の大陸の中に入って写真をとっているのですよ。この地図をそういう形で作っている。そういう一つ一つのことを取り上げるならば、あなたは、私は敵視政策をやっておらない、このように一言っているけれども、これらの役所全体を見たら、岸内閣の敵視政策以外にないじゃないですか。はっきりしているじゃないか。これでもないとあなたはおっしゃるのですか、敵視政策じゃありませんか。
  253. 岸信介

    岸国務大臣 地図の作成につきましては、今、岡田君が結論されるような事態でないことを防衛長官からお答えをしております。私どもは、そういうようなすべての問題におきまして、従来言っておる通り、中共に対して敵視政策をとって、侵略的な意図でもっていろいろな仕事をしておるなんということは、これは毛頭ございませんから、その点は明らかに申し上げておきます。
  254. 岡田春夫

    ○岡田委員 口では幾らでも言えます。政策としては敵視政策を行なうことはできます。岸さんの今の政策というものは、口の上では敵視政策をやらないといって、実際においては敵視政策を今言ったような事実においてやっておる。これが岸内閣の本質なんです。国民は、もはや岸内閣を信頼していない。こういうような政策をとっておる岸さんは早くおやめなさい。やめたらいいですよ。安保条約なんかこういう形で出して、こういうことで国民をだまそうとしたってだませません。今や請願の運動を見ても何を見ても、岸内閣のこのようないいかげんな国民に対するごまかし、国内においてはいいかげんなことを言って、外においては対米従属をやる、このような政府の政策に対しては信頼していない。岸さんは早くやめたらいい。私は、これを一言最後に要求いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
  255. 小澤佐重喜

  256. 受田新吉

    受田委員 午前中に引き続いて、質問をまとめていきたいと思いますが、岸総理大臣、私が午前中お尋ねした問題で、まだはっきりしていない一カ所をただしてお答えを願いたいと思います。  新安保条約案の第五条の、外部からの武力攻撃に対応して日本自衛隊アメリカの軍隊とが共同作戦をする場合に、第六条による交換公文で特に断わってある戦闘作戦行動の、第五条の場合はこの限りにあらずという条項から言うならば、米軍の方は、在日米軍はどこまででも行動をしてもよいという原則がはっきりしているのかどうか、これを一つお答え願いたい。
  257. 岸信介

    岸国務大臣 この条約全体、また、五条のいわゆる自衛権というものの本質から考えまして、国連憲章に認められている自衛権行使範囲内であって、それを越えてこれを行使することは、われわれがいかなる約束をしましても、これは日米両国ができないわけであります。この限度は当然あることである、かように考えております。
  258. 受田新吉

    受田委員 事前協議の対象にもならない米軍の戦闘作戦行動、第五条に関する限りは日本が制約することはできません。国連憲章の制約はあっても、日本自身は制約ができないということが言えますね。
  259. 岸信介

    岸国務大臣 問題は、日本がいわゆる他の国から武力攻撃を受けている場合でありまして、その武力政繋があります限りにおいては、日米両国がこれに対処してこれを排除するところの武力行動をすることは、これは自衛権の内容として当然許されているところでございます。そして、この自衛権行動というものは、もちろんその武力攻撃を排除して、さらに進んでいろいろな事態を起こすということが自衛権範囲でないことは言うを待たないわけであります。武力攻撃があったことに対してわれわれが自衛権として発動してやったならば、すぐそれを国連にも通報して、そして国連の理事会が適当な措置をとるまでの一時的措置としてそういう自衛権行使が許されているわけでありまして、国連の理事会において適当な行動がとられたならば、もちろん、両国ともそれに従って武力行動をやめるということになると思います。
  260. 受田新吉

    受田委員 私がお尋ね申し土げている点は、第五条において、日米共同作戦の場合に、米軍の戦闘作戦行動、今お話しの国連が措置するまでの間における米軍の戦闘作戦行動については、日本は何ら制約ができない、こう了解してよろしいかというのです。
  261. 岸信介

    岸国務大臣 この五条の本来の条文の趣旨は、日本が他から武力攻撃を受けた場合に、日本の力だけではとても排除できないから、アメリカ日本防衛する義務を負わして、そして、日本からかくのごとき武力攻撃を排除するということができることにしておくことが、日本武力攻撃から守り、未然にこれを防ぐゆえんであるという趣旨でできておるわけであります。米軍行動を制約するとかなんとかいうことじゃなしに、日本から、むしろ日本防衛してもらう、アメリカにその義務を負わしておる、こういう性質のものでございまして、本来この条文全体は、国連憲章範囲内において、ことに自衛権の問題については、五十一条以下のはっきりっした制限のもとにやれるわけでございます。決してわれわれは制限するとかしないかということじゃなしに、また、不必要な限度米軍も日軍も行動することはないということを十分御了解いただきたいと思います。
  262. 受田新吉

    受田委員 お尋ねしております問題点は、米軍の戦闘作戦行動に対しては事前協議の規定もないので、何ら制約することがこの条文のどこにも見ることができないのでございますから、第五条に関する限り、米軍日本防衛するためである、こういって行動する場合には、いかなる地へでも米軍行動を起こしてもいいという、そういう趣旨が一応認められるということではありませんか。区原則論を私は申し上げている。
  263. 岸信介

    岸国務大臣 それは午前中に外務大臣がはっきりお答えを申し上げたと思いますが、もちろん、自衛権範囲でありますから、観念上、米軍行動する範囲は――日本自衛隊については海外出動ができないということの地域的な制約はありますけれども米軍については、別に地域的なそういうものがないことは事実です。そういう制約はない。だから、地域的な制約はないけれども、問題は、自衛権行使ということの本質から見て、今の受田君の言われるように、どこへでもいけるのだ、さらに、遠くヨーロッパへだってどこまででもいけるのだというようなことは、現実の問題としてはあり得ないということを申し上げておるわけであります。
  264. 受田新吉

    受田委員 現実の問題としてあり得ない。しかし、そういうことは、法理論的にはこの第五条では可能である。私が心配をしておるのは、第五条米軍の戦闘作戦行動日本が何ら制約する規定がないのでございますから、アメリカの一方的解釈でどこへでも飛んでいけるということになるならば、これに基づいて日本がさらに新しい戦争に巻き込まれ、日本攻撃を受けるというおそれもあって、この米軍の戦闘作戦行動の自由性というものに非常に私は危険を感じている。
  265. 岸信介

    岸国務大臣 どうも受田委員の御質問に対して、私、根本が違っておるように思うのです。この五条の場合というのは、日本現実に他から武力攻撃をやられておるときなんです。それをどう排除するかという問題で、新しい他の戦争に巻き込まれるとかなんとかいうことではございませんので、われわれの現実に受けておるところのものを排除する、それに対して、日本自衛隊というものは日本の領域以上に出ることはできない、アメリカ軍についてはそういう制限はない、しかしながら、本来の自衛権発動であるという実質的の制約を受けておることは、もちろん当当然であります。そのことを申し上げておるわけであります。
  266. 受田新吉

    受田委員 日本に対する武力攻撃を排除するために、攻撃をしてくる敵の基地、さらにその後方の基地をたたくというようなことが相次いで考えられる。その際に、米軍行動が自由であるたけに戦争が拡大する危険がある、こう私は心配しておるわけです。今の点は、あなたの御答弁で、一応原則的にはどこへでもいける立場に立つっているが、現実の問題としては、ヨーロッ。パの辺までいくことは普通ないであろうという御答弁で、一応私はそれを了としておきます。  もう一つ心配な点は、核兵器持ち込みは事前協議でノーと言うことをはっきり言われておる、それは間違いないですね。
  267. 岸信介

    岸国務大臣 その通りでございます。
  268. 受田新吉

    受田委員 第五条外部から武力攻撃があった場合に、在日米軍核装備をしより、核兵器を持ち込もう、こういう場合も事前協議に入ると午前中御答弁があった。従って、日本外部から武力攻撃を受けておる最中であっても、米軍核装備をすることを断じて許さない、その場合もちゃんと断わる、かように了解してよろしゅうございますか。
  269. 岸信介

    岸国務大臣 その通りです。
  270. 受田新吉

    受田委員 第五条の場合もやらない、そこまではっきりと核兵器持ち込みを反対するということであるならば、私は、あなたに要求を申し上げておきたいことはそこまで割り切っておるならば、一切核兵器を持ち込まないという――現に攻撃を受けている場合でも、米軍がよそから持ってくることを許さないというほど割り切っているならば、この際、あなたがおかわりになられても、あとを引き受ける人が間違いが起こらぬように、核武装をしないというはっきりした条項を入れておくということが、筋を通す上においては大事なことではないですか、これをもう一度念を押しておきます。
  271. 岸信介

    岸国務大臣 そのことも前にお答えを申し上げましたが、われわれは、かくのごとく明瞭に申し上げておることでございまして、従って、その点については何らの疑点が残っておらないと私は考えております。この事前協議の条項は、そういう重要な点その他の点を含めて、包括的に事前協議というものの対象にいたしておりまして、核兵器につきましては、しばしば質議応答その他において岸内閣の方針というものを明瞭に申し上げておる、その通りのことを割り切って実行する考えでございます。
  272. 受田新吉

    受田委員 あなたの御答弁を通じて、日本はいかなる場合も、脅威を受ける場合も、現に攻撃を受けている場合も核兵器は使わない国であり、しかも、日本におる米軍もこれを使わない国である、従って、日本はいかなる事態が起こっても、核兵器は断じて日本米軍も今生然用いない国であるということをあなたは宣言されたわけです。そこまで割り切った以上は、明瞭に明文化すべきですよ。私は、それをあなたに一つ最後に要求したい。今のあなたの御答弁で、一応それはおくことにいたします。  なお、整理する意味で、今、岡田君が尋ねられたことに関連して、あなたに一つほど質問をしておきます。(「人の演説に関連して」と呼ぶ者あり)関連じゃない、私の方が主体なんです。  今の問題で私がお尋ねしようとした点を、岡田君がはしなくも別の意味から質問してくれた点がある。それは、岸さんは国際共産主義というものを非常にきらっておられます。ところが、現実に、あなたはアイクさんと一九五七年の六月に会談されて共同声明を発せられた際にも、国際共産主義の侵略に対して自由主義諸国家群の防衛の点を述べておられます。そうして、この間も愛知議員の発言に答えて、共産圏は、共通の関心を持って日本を守るための防衛地域としての自由主義国家群とは立場が違うのだという御答弁をしておられる。従って、国際共産主義というものに非常に敵視的な考えを持っておられるわけでございますが、そのことが条約の上にも自然に現われてきているのではないかと思うのです。私、東南アジア集団防衛条約を一つひもときます。その十一条の次に、アメリカ合衆国の了解事項として「アメリカ合衆国ば、この条約を実施するに当り、第四条1における侵略及び武力攻撃の影響の確認並びにそれについての同意が共産主義者の侵略に対してのみ適用されるという了解の下に実施する。」こういう規定があります。これはSEATOの規定の十一条の次に、アメリカの了解事項として出ているわけです。これはもうちゃんと条約の上に、共産主義者に対する侵略ということを、ぴしっと、きわめて明瞭にうたっているのです。これがアメリカ考え方なんですね。この考え方が、今回の日米安保条約の改定案の中にも底流をしているのじゃないかという心配を私しておるのです。これは、あなたが、共産圏は関心の外にあり、自由主義諸国家群のみが共通の関心の対象になるというこのお言葉は、共産主義諸国家群を何か別の世界だと考えておられる根底に、何かひそんでおるものがあるのではないかと思うのですが、総理大臣、別に思想的なそういう考えはありませんか。
  273. 岸信介

    岸国務大臣 御質問の趣旨が私によく了解できないところがありますが、私自身は、自由主義の立場、民主主義の立場を堅持しておりまして、そして国際共産主義が、世界を、いわゆる共産革命によって共産化しようとする一つの国際的な運動、計画というものは、われわれ自由主義の立場を堅持し、民主主義を守る国において、人間の自由とその上に繁栄を作り上げていこうという考えを持っておる者に対しては、この国際共産主義の計画というものは、私は一つの脅威を与えておるものである、あくまでもそれを防遏しなければならぬという信念の上に立っております。これは私の政治的信念でございます。この安保条約そのものが、日本のいわゆる安全と平和を守り、他のいかなるところからも侵略を受けない情勢を作って、そうして真の平和と繁栄をもたらそうということがその願いでございまして、決して個々の国をいわゆる仮想敵国として考えるとかいうような考え方を持っておらぬことも、しばしば申し上げておる通りであります。国際共産主義に対しましては、先ほど私が申し上げた逸りに考えております。
  274. 受田新吉

    受田委員 国際共産主義というのは、これはイデオロギーですね。イデオロギーの侵略、イデオロギーが直接武力攻撃をするわけじゃないのです。何かイデオロギーの基礎になるイデオロギーを持つ人々の集団であるということが当然考えられなければならぬのです。イデオロギーそのものの侵略ということはどうも割り切れぬ、どうですか。あなた、イデオロギーを敵とするのですか、その侵略をおそれているのですか。
  275. 岸信介

    岸国務大臣 私が先ほど申し上げたことは、アイゼンハワー大統領と一九五七年にも、また今年の初めにも話し合ったことは、いわゆる国際共産主義に対する自由主義の立場を堅持するものの上からいいまして一つの脅威がある、これはあなたのおっしゃる通り、私はそれが直ちに武力侵略というものを意味するものじゃないと思います。この安保条約の問題は、われわれが不当に他国から武力侵略を受けた場合に対抗すつるところのっ条約でございまして、今、私が国際共産主義の脅威というものを申し上げたことが、直ちに共産国から現実武力攻撃を受けるということと結び合わされるものでは決してございません。安保条約の問題は、あくまでも日本が不当に他から侵略を受けた場合において、われわれが祖国を防衛するという防衛的な意味でございます。それから、国際共産主義に対して自由主義の立場を略持するところのものが抱いている考え方は、先ほど通りであります。
  276. 受田新吉

    受田委員 国連の精神は、そうしたイデオロギーその他にこだわりなく、広い意味の平和共存を唱えている精神です。これはおわかりになりますね。そういうところから見て、特定の国際共産主義というイデオロギーを敵とするというような考え方そのものは、国連の精神から見て納得できるのかどうか、これもお答え願いたい。
  277. 岸信介

    岸国務大臣 私は、国際共産主義のなにが、たた単純に、共産主義というものとは違うと思う。これは、私よりも、あるいは社会党や民社党の人の方がよくり、深い研究をされておるかと思いますが、私が国際共産主義と申しておるのは、インタナショナルの共産主義を信奉しておる人々が、いわゆる国際的な世界の共産主義革命を目ざして各国に対していろいろな行動をするということを意味しておるのでありまして、そういう考え方であります。これに対しては、やはり人間の自由を守るという自由主義の立場に立っておるところの国々がこれを防遇していかなければ、ほんとうの人間の幸福というものを守れないという考えを自由主義の立場をとっておる人は考えておるわけです。これらの人々が、そういうふうに思想が違っても、イデオロギーが違っても、いかにして平和共存をするか、それは他国を一切侵略しないし、他国の内政に干渉しないし、おのおのつがおのおのの立場というものを尊重して侵し合わないで、平和的に共存していこうというのが国連の思想であって、それに対して、国際共産主義のこの運動の考え方というものはそれと相いれない、私はかように思います。
  278. 受田新吉

    受田委員 この論議は際限がない問題になると思います。私が考えているのは、国際共産主義を信ずる人々が集団となり、それが武力をもって攻撃を加えるという場合に初めて脅威となる、こういう解釈をしておるわけです。そうすれば、一つのある特定の国家とか、そういうある集団というものを考えなければいけない。それをあなたは、国際共産主義、だけを取り上げて脅威と述べておられる点に問題がある。従って、国家が国家として武力攻撃を加えるというときが侵略の対象になるのじゃないですか。それをちょっと……。
  279. 岸信介

    岸国務大臣 それはその通りです。武力攻撃というものは、一国が他国に対して、――この場合には、日本に対して組織的、計画的な武力攻撃を加えるという場合でありますから、国が国に対しての関係でございます。
  280. 受田新吉

    受田委員 従って、総理大臣、はっきりと日本武力攻撃を加え、しかも、共産主義を信奉している国家ということになると、自然にどこかに限定されることになるのじゃないですか。たとえば中ソ不可侵同盟条約を結んでいる中ソを敵とするという考えがあるのじゃないですか。はっきり申し上げます。
  281. 岸信介

    岸国務大臣 私どもは、この条約におきまして、いわゆるどこを敵とするということではありません。私は、日本に対して武力侵略を行なう国は、その国が共産主義の国であろうとも、自由主義の国であろうとも、これに対して祖国を、守つらなければならぬことは同一でございまして、具体的に、ある一、二の国を目ざしてこれを敵国視する考えではございません。
  282. 受田新吉

    受田委員 私は、この国連憲章の精神を十分岸さんが体していただくならば、私たち、共産主義にはっきりと反対の立場をとっているわれわれの立場からいっても、中ソ両国の不可侵同盟条約の中から対日条項を削除させるような方法は幾らでもあると思うのです。そういう点を、削除させる方法について、私、けさ、一例として国連に対する働きかけを申し上げました。その働きかけについて、藤山さんが具体的な方法を述べられたのですが、満足できません。それに対する対策の一つは、国連総会に決議として、日本が五十三条第一項後段の規定は国連に加盟した国家としては当然これを削除すべきであるということを日本政府が率先して提案するという、そういう用意をするということが第一、この点いかがですか。
  283. 岸信介

    岸国務大臣 国連憲章全体のことに対しては、われわれが先ほど来申し上げているように、再検討すべき時期だと思います。その際に、この条項について、これを修正すべきものである、削除すべきものであるという考えについては、私ども全然同感であります。ただ、その条項だけをあげて、そういう決議を日本が提案することが今の時期において適当であるかどうかということについては、なお考慮をいたしたいと思います。
  284. 受田新吉

    受田委員 なお考慮をいたしたいということですが、これは非常に適切な第一の方法であると思います。方法論として第一のものであるという考え方はお持ちではありませんか。国際社会に国連総会を通じて訴えるというこの考え方、戦後十年たって、依然として日本が敵視されるような条項が残っているということを、今申し上土げた国連総会の決議で、まず第一に日本の国家の意思を表明する、こういう考え方は適切であるとお考えになりませんか。
  285. 岸信介

    岸国務大臣 今申し上げておりますように、国連憲章そのものについては、なお、ほかにも重大な修正を要するとわれわれの立場から考えられる点があります。それらのものとあわせて、修正の問題については私は十分考慮をすべきものである。なにの解釈としましては、条約局長がお答えをしているように、中ソの間にそういう条項があるから、それを適用して日本に対して中ソが侵略してくるんだというようなことを、必ずしも私ども考えておりません。また、そういう条項があるから、それをのければ、安保条約というものは不必要であるというようなことは、私どもは今の国際情勢から考えて適当でない、かように考えております。
  286. 受田新吉

    受田委員 えらいはっきりおっしゃいましたけれども、修正をする前に――修正は総会の三分の二の決議などということでなかなか容易でないことだし、安全保障理事会の満場一致の線を得ることもむずかしい段階ですから、修正は一ぺんにはいかぬと思うのです。やはり総会の決議などで日本の意思を国連加盟国に訴えるというこの筋は、当面のわが国民の訴えとして当然やるべきことじゃないですか。
  287. 岸信介

    岸国務大臣 同じことを繰り返しお答えすることになりますが、御趣旨の点については私も全然同感であるということを申し上げております。ただ、扱い方につきましてはなおいろいろな点を考えたいと思っております。
  288. 受田新吉

    受田委員 私は、今の四条、五つ条の問題は、残余はあとからやることとして、一応条約案の第十条の期限に関係したところへ触れていきたいと思うのです。  第十条に、期限を十カ年、しかも、十カ年たって一年の予告期間を、設けて、この条約の一方的な廃棄通告ができるような規定があるわけでございますが、合計十一年間も縛るというような長期にわたる期限を付したということ、これは、われわれどうも納得ができない。国際情勢の変化、国内事情の変化というようなことを考えたときに、十年間も国際的なかたい約束を持ち続けるような条約をお作りになろうとされている理由を、あらためて御答弁願いたいと思います。
  289. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 御承知通り、この十条には、この条約は、日本区域におきまして、国際の平和及び安全の維持のため十分な定めが国連においてできて、その措置が効力を生じたときは、日本国政府及びアメリカ合衆国政府がこれを廃棄することができるように規定してございます。そうして、そういう状況がなかった場合には、十年間この条約は拘東方があるわけです。そうして、十年がきますれば、一年の予告でこれを解消するというのが十条の精神でございます。従いまして、国連がそういう措置をとりますことができますれば、むろん解消されます。しかし、そういう措置も国連がなかなかとれないというような状況でありますれば、私どもは、条約の安定性の上から申しましても、また、総理初め防衛長官がかねがね申しておられますように、戦争阻止力の上から申しましても、ある期間が必要であると考えております。それを何年にするかという問題でございます。むつんワルソー条約その他のように長期のものもございます。また、NATO等の協定も長期でございます。しかしながら、今日の日本の実情から申し上げまして、私どもは、今申し上げました前提のもとに、十年ぐらいが一番適当である、こういうように信じておるのでございます。
  290. 受田新吉

    受田委員 日本と同じ立場でアメリカの極東政策の一環を承っている米韓、米華、米比相互援助条約を拝見しますると、これらには一年の予告期間で廃棄通告ができることになっている。同じ極東の一環としてアメリカの極東政策に関係の深い日本の場合だけが十年というのが根っこにあって、一年の予告期間ということになっておるわけです。米韓、米台、米比との関係において、なぜ日本だけがこれだけ長期にわたっての拘束力を受けるという形をとられたのか、どうもその間のバランスの上からいっても問題がある。
  291. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 何か長期にわたって拘束力を受けるというのですが、逆でございます。われわれは日本の安全を守るためには、やはり十年くらいの期間、安定した条約としてあることが必要であるということを確信しておるのでありまして、日本アメリカとが信頼の上に立ちましてやります以上は、そういう短期なものは考えるべきでない、こう存じております。
  292. 受田新吉

    受田委員 十年間拘束を受けるということになると、安全保障条約の改定案に反対しておる国民の声というものは、その代表者を通じても三分の一以上というものは安保改定反対の勢力だし、また、世論調査をやっても、安保改定反対の方が圧倒的に数が多い。こういう情勢考える場合に、国内の空気、国民の声に忠実な立場をとろうとされるならば、少なくとも、十年間も身動きのとれないような約束をするよりも、一年の予告期間で廃棄できるような規定にして、米韓、米台、あるいは米比とのバランスをとるという方が日本の立場では適切でなかったか。あなた方のお立場として、これはどうして十年間も拘束力をお持ちになろうとしたのか。
  293. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 受田委員と若干考え方が違う、そういうことだろうと思います。私どもとしては、一年というようなことでこの条約が廃棄されるというようなことでは非常に不安定な条約であります。日本アメリカはお互いに相互信頼の上に立っておるのであります。従いまして、こういう条約というものは、ある期間安定的にありますことが必要であるということが、私どもの確信いたしておるところでございます。そうかといって、これは二十年、三十年というようなワルソー条約その他のように長いものにすることはどうかと考えます。従いまして、十年というのが一番適当であるというふうに確信をいたして起ります。
  294. 受田新吉

    受田委員 アメリカに対する信頼と、盛んに言っておられるのでございますが、韓国や台湾やフィリピンは、アメリカを信頼しないで一年の予告ということにしたのでしょうか。
  295. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 アメリカと韓国がどういう関係にあるか存じておりません。しかし、われわれは、日米両国が手を握って日本の安全をある程度の時期確保して参ることが必要であるという確信のもとに立っておるわけでございます。
  296. 受田新吉

    受田委員 十年間というのは、これは十年一昔といって、相当の長期間です。この期間、自民党の内閣がそのまま続いておられれば、それはあなた方としても十年くらいということでお考えでしょうが、そう遠くない機会にわれわれ民主社会党も内閣をとると主張しておるし、社会党だって内閣をとりたいと希望しておる。そうした国民の声というものは、どういう方向へいくかもわからない。民主主義の政治は、国民の自由意思によって表明された投票の結果に表われてくる。そういう意味から、自民党の内閣が十年間も続くとして、十年の拘束力を持たせるような条約を結ばれるというのであるならば、これは民主主義に反する独断的な考え方の期限決定ということになると思う。どうですか、十年間、その前に安保改定に反対する民主社会党や日本社会党が内閣をとった場合には、一体どういう立場になるのですか。
  297. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 私は、日本国民は、少なくも十年間くらいは安定した状態のもとに日本の復興と繁栄のために努力して参りたいと願っておると思います。そういう日本国民の気持であるということを信じ、かつ、同時に、日米間の友好関係の上に基礎を置きますれば、その程度の期間の安定というものは確保していくことが必要である、こう考えております。
  298. 受田新吉

    受田委員 民主社会党や日本本社会党が、国民の信頼にこたえて内閣を作った場合に、十年間という約束を自由に変更することができますか。十年の間にこれを改定しようというときに、どういう方法がありますか。
  299. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 ただいま申し上げましたように、私は、日本国民としては少なくもある期間安定した状態のもとに、日本の平和と繁栄のために努力していく、それには少なくも現在のような状況においては、やはり十年くらいの期限が適当であめるということを考えておるのでございます。それを率直にここに書き現わしておるのでございます。
  300. 受田新吉

    受田委員 十年間日本の国を拘束するということが条約ですね。従って、その間に安保改定に反対をとなえている国民の声が大きくなり、新しく改定されたとして、その改定された条約を改めようとする、あるいは廃止しようとする世論が大きくなったときに、どういう措置を外交上とることができるか、それを一つ……。
  301. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 私どもは、現在日本国民がそういう状況には、考え方にはないと考えております。従いまして、社会党なりあるいは民社党なりがおとりになったときに、この条約の廃棄に対してどういう手段をとられるかは、今から申し上げるわけには参りません。
  302. 受田新吉

    受田委員 はなはだそれは不遜な態度です。十年間も自民党長期政権を、安定政権を夢見て、十年間はわれわれの内閣で大丈夫やれるが、野党が内閣をとるときは、そのときはあなた方がお考えなさい、こういうような不遜な態度というものはおやめなさい。従って、はっきりお答え願いたい。十年間の期限を拘束される立場を途中で中断する国際慣例、国際法上の慣例とか、その他のいろいろな方法が、どういう立場があるか、これは条約局長でもいい、一つ御答弁を願いたい。
  303. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 条約を結びました以上、約束は守らるべしという原則でございますから、その他の方法は、私としては寡聞にして承知いたしておりません。
  304. 受田新吉

    受田委員 十年間はもう絶対にこれを守らなければならない、こういうおそろしい期限を付して約束するわけですね。これは条約局長、国際法上の一般原則として、事情変更の原則とか、その他途中の再交渉とが、こういうようなことが国際慣例で考えられるか、あるいは法理論的に、そういう再交渉あるいはそのほかの方法で、これをやり直すというようなことが考えられるか、そういうことの全然考えられない、全く固まった期間であるか、そこをもう一度お答えを願いたい。
  305. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 先般の御議論でも、条約における重大な条項の違反の場合はどうであるかという御議論がございました。それと同じように、おそらく事情変更の原則とか、そういうものはどうであるかという御指摘ではなかろうかと考えております。しかし、事情変更の原則、国際法上の一つの理論的な問題といたしまては、そういう問題がいわれております。そして事情変更の原則を適用して条約を廃棄できるのだとか、一方的に廃棄できるとか、そういう議論が行なわれ、学説上もそういうことをいわれておる点がございます。それはしかし、純粋な理論的な問題といたしまして、この条約を離れまして、一般条約の問題といたしまして、事情変更の原則ということがあり得る、理論的な問題としてはあり得るということはいわれております。ただ、それはおもに国内の私法上の関係で、そういう原則を国際法上の問題に類推適用した場合であると一般に考えられております。従いまして、私は、多分そういう理論があることは、これは否定できません。確かに理論がございます。ただ、現実の問題といたしまして、そういう原則が適用になり廃棄されたとか、双方とも納得してそれが成就したというようなことは、私は寡聞にしてそういう先例は存じておりません。しかし、そうついう理論があるかどうかということでございますれば、一般条約論として、そういう理論はございます。それは学説にもいわれておるところでございます。
  306. 受田新吉

    受田委員 十年間きわめて固定した条約である、こういうことになればなるほど、この問題は重大なんです。きょうあなた方外務省が配られた外務省条約局の印刷物、さっきもらった青い印刷物の中に、アメリカ合衆国政府と諸外国政府との間の相互協力協定がここに掲げられております。その協定の中の第六条には、「この協定は、署名の日に効力を生ずるものとし、いずれか一方の政府がこの協定を廃棄する旨の書面による他方の政府の通告を受領した後一年の期間が経過するまで、引き続き効力を有するものとする。」とこう書いて、一年の期限がここに定められてある。これは去年の三月にアンカラで作成されたところの約束です。あなた方が今くれたこの外務省の資料でも、アメリカ合衆国と諸外国との政府がやったのに、ちゃんと一年という期間がつけられておる。そういう最近の情勢が、アメリカのあなたが下さった資料にちゃんと書いてある。一年というこの期限は、これは普通の場合における国際的な約束としては、きわめて適切な規定ではないですか。一年間たって後に、この条約の廃棄なりあるいは改定なりがされるということが、一番適切じゃないですか。十年間縛られるということは――日本の国内事情がどうなるかもわからぬ、国際情勢はどうなるかもわからぬというときに、十年間拘束するということは、これは大へんな約束をするものですよ。もう一度、総理でも藤山さんでも……。
  307. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 日米安保条約を今回更改するわけでございます。期限が無期限なのを、今度は話し合いによって、期限をつけるということになった。私どもは、その場合に、一年という不安定な期間で更改をいたしますよりも、十年という安定的な期間で更改いたしますことが、国民の平和と安全ということを守る上からいっても、私は必要だと思っております。しかし、ただいまお話のように、もし民社党の内閣ができまして、アメリカと交渉されて話し合いがつけば、現行安保条約でもこうやって改定をいたしておるのでありますから、両者合意すれば、それは改定ができることは当然でございます。しかし、私どもとしては、信念として、ある期間の安定があることが必要であるということなんでありまして、その点は民社党の方々と意見の違うところだと思っております。
  308. 受田新吉

    受田委員 十年間の期間を縛るということは、自民党が、ここで陰の声があるごとく、民社党や社会党は内閣をとることはできぬのだと、あっさり言うておるごとくに、これは長期政権を夢見て、安定政権を夢見た立場の期間決定であると、こう思うのです。少なくともあなた方のお立場をもってするならば、十年をもう少し短縮して、五年なり三年なりに、これを自民党の立場でさえも、期限をもう少し短縮をすべきではなかったですか。そうした長期にわたる国民を拘束する国際的な約束を、しかも世論も、そうしてあなた方の自民党の内部にすら、期間その他について批判的な声があるときに、これを強引に押し切ろうとされることに、私は無理があると思う。そういう考え方から、この期限というものを十年間置くというやり方は、われわれ国民の中に少なくとも三分の一以上の反対勢力があり、国会代表者の中の数がそれであり、世論調査においてはもっと著しい数がある段階において、とるべき道でない。この期限を短縮する、あるいは一年の予告で処理できるような規定にするというお考えを、全然持たないかどうか。
  309. 岸信介

    岸国務大臣 この安保条約に十年の期間を置いたということは、何も、自民党の長期政権を夢見て云々ということでありますが、そうではないので、私どもは、日本アメリカとの国と国との関係を、これだけの期間、こういう条約において、安定した状態に置くことが、日本の平和と安全をはかり、日本の繁栄を期する上からいっていいのだ、こういう立場に立っておるのであります。意見の違う人があることははなはだ遺憾でございますけれども、しかし、野党の諸書と私たちとの考えの基本において、違っておるということでございます。  日米安保条約という現在のなには、御承知通り、期限のない条約でございます。これに対して、明確な期限を置いたらいいじゃないかという議論があることは、御承知通りであります。それを置くのに、それでは非常に短い、いつでもこれが一方的に廃棄できるというような不安定な形にしておくことが、一体日本の立場からいって、日本国民が安全感を持って、そして繁栄の道をたどるゆえんであるか、あるいは、これはずいぶん議論があるようでありますが、私どもは、アメリカというものは信頼でき、アメリカとの間にこうした安定した関係を持つことが、過去の実績から見ても、日本の一繁栄のために、国民の平和のために必要であり、いいことだ、こういう見地に立って――こういう条約につきましては、各国のいろいろな例がございます。アメリカが結んだ例のうちにおきましても、今のお話のように、いつでも一年の予告をもってできるという条約機構もございます。それは非常に不安定な条約であることは、言うを待たない。それから、非常に長期にわたっておるところのものもあることも、御承知通りであります。この間にあって、私どもは、十年というものが相当である、かように結論したわけでございます。
  310. 受田新吉

    受田委員 極東における二ヵ国、韓国、フィリピン、台湾、この国と日本の立場とは、条件を同じにする立場が、アメリカの側から見たときにはされておる。従って、これらの国々が米国と一年の予告期間で廃棄できるような規定を設けておるときに、日本だけ十年。全米相互援助条約だって、一年の予告で片づけられているじゃないですか。そういうときに、日本だけが何を好んでこの長い約束をするか。  もう一つ、それをあわせてあなたにお尋ねしたいのは、一年の予告期間でさらに延長しようと思えば、また適当に幾らでも改定できるじゃないですか。三年なり五年なりにしておいて、また改めてもいいじゃないか。長いものを縮めることはできない。しかし、短いものを延ばすのは、また改定すればいいじゃないですか。そういう道がある。なぜことさらに十年間の拘束力を持たせるか。
  311. 岸信介

    岸国務大臣 いわゆる安定期間というのは、日本だけが縛られるというふうに受田君はごらんになっておりますが、これは締約国の両方の意見が合意して、両方がその条約に縛られるわけでございます。そして、私は、韓国や台湾、フィリピンと米国が条約を結んでおる事実は知っております。しかし、お互いの関係をかれこれここでもって分析して、いろいろ批判することは避けたいと思いますが、少なくとも日本アメリカとの関係においては、締約国の両方が信頼し合って、そして、ある期間その状態を安定しておくことが、日本の立場からいえば、日本の平和と安全の上からも望ましいことであり、それが国民の繁栄の上からいって適当なことである、また、アメリカ自身も、そうしたことによって日本の平和と安全を守り、日本の繁栄をせしめることが、極東における平和と安全に資するゆえんであり、また、世界の平和と安全に資するゆえんである、―こういう見解が一致して、そういう状態を作っておるわけであります。私はこの種の条約、また、この内容から見て、この十年の安定期間というものは適当であるという信念に立っております。
  312. 受田新吉

    受田委員 今高橋条約局長は、こういうことを言われました。事情変更の原則は、法理論の立場からは認められるが、実際にこれを適用するのには問題がある、それから藤山外務大臣は、途中で条約を改めるために、あるいはやめるためには、話し合いが自由にできるのだ、双方の話し合いで、条約を適当に処理する方法があるのだ、こういうニつの方法を示されたわけです。これは、実際にこれをやろうとすればそういう方法もある、こう了解していいのですね。
  313. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 私どもは、十年の安定期間のあることを必要だと考えておりますので、今回の期限の条項が一番適当だと考えております。ただ、何か方法論があるかというお話ですから、現在の安保条約でも、無期限であるけれども、両国の話し合いによって、今回のように改定できるのだという事実を申し上げたのでございます。
  314. 受田新吉

    受田委員 高橋さんの方も了解しますね。
  315. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 先ほど申し上げた通り、事情変更の原則とついうのは、これは理論上、学説上、決して否定されているところのものじゃないということは、確かでございます。
  316. 受田新吉

    受田委員 私たちは、この安保条約の三条から四条、五条、六条と、これをずっと読んでいくと、はなはだ不安に感ずる個所が相ついで出て、それについて何ら政府の根本的に解決される発言を聞いておらない。自衛隊増強計画維持発展させるという三条の規定は維持だけでもけっこうなはずのところが、発展ということになると、この発展の限界がどこにとどまるかがわからないという、そりうした問題点。また、四条の協議についても、先ほど来の御答弁でも、拘束力がはなはだあいまいだ。五条米軍行動については、全く野放しであるというような危険がある。六条の基地提供その他についての問題も、まった、それに基づく交換公文の事前協議についても、われわれとしてはなはだ不安定な答弁をいただいている。こういうことを感ずると、この安保改定案については、よほど問題点がひそまれておると思うのです。従って、これをこのままの形で強引に通されるということになると、国民がまだ了解し、理解していない立場で、政府が独走されるという危険があると思うのです。  そこで、私総理大臣にお尋ね申し上、げておきたいことは、国民の声を忠実に聞く、民主主義の政治家としての岸さん、あなたは、国民がこの安保改定にどういう考えを、持っているかをつまびらかに確かめるために、あなたの部下の人々が、内閣審議室という機構を持って、必要な際に常に世論調査をやることになっておるが、その世論調査機関を十分生かして、国民がこうして論議されている安保に対してどういう考えを持っているか、率直にこれを聞くという努力をされなければならぬと思う。岸さんは、この間、何らかの形で国民の声を忠実に聞く方法をとりたいと仰せられましたけれども、その構想、及び内閣審議室は、この重大な安保改定ということに対して、世論調査をやったかやらぬか、審議室長もここへ来ておられるのでありますから、この点につきましてもお答えを願いたいと思います。総理大臣から先に……。
  317. 岸信介

    岸国務大臣 私どもは、いろいろな方法によりまして、国民の多数の意見が、どういうふうにあるかということも、もちろん政治をしていく上におきましては、考えなければならぬ問題であります。しかしながら、私どもは、広い見地から国民の世論を考えて見ておりますが、国民の非常に多くの者が反対ではなしに、非常に多くの者が、この条約を早く批准するということに協力してもらっている、かように私は考えております。なお、内閣の審議室におきましても、今お話しのような意味において、重要な問題については調査をいたしており、また、将来もいたして参る考えでございます。今までの調査につきましては、審議室長からお答え申し上げます。
  318. 大島寛一

    ○大島政府委員 お答えいたします。総理府の審議室におきまして、安保条約改定に関連しまして世論調査をいたした次第でございますが、その結果を申し上げますと、総計前後三回にわたって実施いたしております。第一回は三十四年七月でございまして、安保の改定に賛成する者が一五%、反対する者が一〇%でございました。第二回は同じく三十四年の十一月に実施いたしましたが、その結果によりますと、改定に賛成は一九%、これに対しまして反対は一五%と相なっております。さらに本年に入りまして、最近実施いたしました結果によりますと、改定に賛成の者は三二%、これに対しまして反対は一二%、以上のような結果に相なっております。
  319. 受田新吉

    受田委員 この世論調査の方式がどういうことになったか、そうしてどういう形で世論調査をやったか、調査方式、そして調査結果、これを、一つこの委員会に提出を願いたい。そして、この世論調査の中身にどういうものが書かれてあったのか、どういうものを対象にしたかを、詳細に検討してみなければならないと思います。  そして、もう一つ問題は先月有力なる新聞社がそれぞれ世論調査をやっている。この世論調査の結果はまた大事なことだと思うのですが、審議室長、先月において行なわれた有力新聞の世論一調査の結果をここで御発表願いたい。
  320. 大島寛一

    ○大島政府委員 お答えいたします。まず、私ども総理府の審議室におきまして実施いたしました方法等でございますが、これは無作為抽出法によりまして、科学的、技術的に、現在におきまして最も進歩しておると考えられる方法によっていたしております。なお、個々の調査につきましては調査機関を使っていたしておるわけでございますが、個々の面接によりまして調査いたしております。従いまして、その方法等におきまして、最も科学的な、技術的な方法であると信じておる次第でございます。  次に、本年に入りまして、新聞社が世論調査をいたしておりますが、それについての結果を報告するようにという御質問でございますが、私ども新聞によりまして承知をしております範囲におきまして、全国的に行なわれました世論調査が三つあると承知しております。一つは、本年一月、某新聞の行ないましたものでございますが、改定を可とする者二九%、改定はよくないとする者二五%ということに相なっております。あと二つは、本年三月に実施されたと報告されたものでございますが、その一つにおきましては、批准を可とする者三五%、批准をよくないとする者二八%、他の一つにおきましては、批准を可とする者二一%、批准はよくないとする者二八%というように、結果につきましては若干の相違が見られております。私どもとしまして、それらの新聞社の行ないましたり世論調査につきましては、これはいろいろ技術的な方法等の点があろうかと思いますので、これにつきまして説明なり批評を加えることは、技術的な立場におきまして差し控えたいと思います。しかしながら、いずれにいたしましても、新聞社が本年以来行ないましたものにおきましても、三つあるわけでございますが、批准あるいは改定を可とする者の方が多いという結果が出ておるものか二つある次第でございまして、新聞社のそれぞれの調査におきましても、必ずしも御指摘のように批准はよくないという者がふえておるということにはなっていない、このように承知しておる次第でございます。
  321. 受田新吉

    受田委員 政府がやられた世論調査というものは、もう少し具体的に方法論をお聞きしなければ納得のできない個所があります。これは後刻、それがどういう形でやられたか、実物を見せていただきたい。どういうもので調査されたかを御提示を願いたい。アンケートを求めた方法を見せてもらいたい。見せられますか。
  322. 大島寛一

    ○大島政府委員 承りました。
  323. 受田新吉

    受田委員 政府のこの世論調査の結果は、はなはだおもしろいものが出ているのでございますが、しかし、これを見ても、安保改定賛成というものは、依然として三分の一以下なんです。そうした意味で三分の一以下が賛成、三分の一以上は反対もしくはわからないという層なんです。従って、あなた方の企画されていることに対して、国民から三分の一以下の御支持しかいたたいておらぬのです。これは大へんさびしいことですね。こういう段階で勇気をもって改定をされようということは、相当な問題があると私は思う。従って、序さん、私この前の会で申し上げた通り、十分国民審議の実態をつかんでもらって、安保改定の実相はどこにあるかを十分国民に知ってもらって、そして国会の審議を十分やつて国民に十分批判の余裕を与えた後に、やはり承認前解散の道をおとりにならなければいけません。これはぜひそういう方向へ、あなたが、この重大な国家間の約束国民の声によって決定するのだという方式を、勇気をもっておとりになるべきだと思います。岸さん、もう度、われわれの今願っておる――三分の一以下の賛成者しかないような段階で、これをもう少し、あなた方としても過半数にまで賛成させる御努力をする方法があるでしょう。そういう必要があるのですから、解放という道を選ぶ以外には、現段階においては、この安保を承認するということは許されないという立場をおとりになるべきと思うのです。御決意を承りたい。
  324. 岸信介

    岸国務大臣 これはしばしば申し上げた通り、私自身は、現在の状況において、この問題において解散をするという考えは持っておりません。
  325. 受田新吉

    受田委員 三分の二の国民が反対をし、あるいはそっぽを向いておる。そうしてこの間からは多数の安保反対の請願も出ておる。司法官、裁判官、検事あるいは弁護士、こういう人々の司法修習生の世論調査をやったところが、八割が反対をしておるという数字も出ておりますね。これは御確認になっておる。これは世論調査の方でも、司法修習生の世論調査を何らかの形で数字をおつかみじゃないかと思うのです。お持ちじゃないですか。
  326. 大島寛一

    ○大島政府委員 お答えします。私ども何ら承知いたしておりません。
  327. 受田新吉

    受田委員 世論は、賢明な検事や判事や弁護士すらも、若い人々が八割以上反対しておる。こういう情勢でありますから、安保改定に対する空気はきわめて少数しかできていない。三分の二は正反対もしくは批判的であるということをお考えの上、ゆつくり審議をして、解散という措置をとられることを要望をいたしまして、私の質問を一応終わらしていただきます。堤委員から関連して一言質問があります。
  328. 小澤佐重喜

    小澤委員長 この際、関連質問を堤ツルヨ君から申し出ております。申し合わせの時間等も経過をいたしておりますので、ごく簡車に一つお願いします。堤ツルヨ君。
  329. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 私は、午前中の受田委員防衛長官の質疑応答について、いずれ速記録ができると思いますけれども、あまり時間を経過いたしませんうちに、非常に問題になる答弁でございますので、伺っておきたいと思います。赤城防衛長官は、午前中にこういうことをおっしゃいました。つまり、防衛力増強国民義務である、こういうふうな意味のことを総じて答えられたと思いますが、ちょっと確認していただきたい。
  330. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 防衛力増強国民義務だ、こう申し上げたわけではありません。自衛隊を持っている以上、自衛隊をしっかりしたものにしなくちゃならぬということは、これは国民に対して私は義務と感じておる、こういうことを申し上げたわけであります。
  331. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 自衛能力を分なものにするということについては、国民に対して義務がある、こういうことですね。そこで、私はお尋ねをいたして、総理大臣と防衛長官の御見解を承りたいと思いますが、国家が当然の権利として持っておるところの個別自衛権行使について裏づけになる力、自衛力というものは、憲法上軍隊の持てる国の自衛力と、日本のように憲法の建前上軍隊の持てない国の自衛力とには、非常に違いがあると思うのです。憲法上軍隊の持てる国の自衛力と、憲法上軍隊の持てない国の自衛力というものは、非常に違うから、午前中にお答えになりましたように、日本自衛隊というものは最低のものだというようなことを長官自身が言われましたけれども、そういう問題が生まれてくると思います。私は、そこでお尋ねいたしたいのです。自衛能力をできる、だけ充実しなければならぬということは、国民への義務だとおっしゃいますけれども、それじゃその自衛能力の限界点というのは、この前からの問答で、近代兵器を中心として考えたときに、非常にむずかしい。従って、核兵器を持って敵基地をたたきに行くことさえもできるのが自衛力、こういう解釈に発展しておる現在において、憲法上認められないところの、日本のような国での自衛隊自衛力というものは、一体どうなるか。私は、憲法違反の軍隊にまでいかなければ、自衛力を持ったといえないような立場に日本があると思います。これにつきまして、防衛長官総理の御見解を承っておきたいと思います。
  332. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 自分の国を自分の力で守ろう、こういう自衛ということは、憲法以前の問題であります。これは日本の憲法において禁止してない、こういうふうに私、ども考えておるわけであります。  そこで、日本自衛権がある以上、その自衛権をどういう形で行使するかということでありますが、その形に現われておりますものが自衛隊であります。しからば、自衛隊はどこまで発展していくのか、こういうことでありますが、日本自衛隊は、侵略とかそういうようなことは、全然考えておりませんし、これは憲法の禁じておるところであります。そういうことでありますから、海外派兵とか侵略ということでなくて、もっぱら自衛の目的に行使する、こういうことでありますから、限りなく発展するとか、そういうことは杞憂といいますか、御心配が少し過ぎると思います。
  333. 岸信介

    岸国務大臣 憲法全体をごらん下さいますと、たとえば十三条において、国民の生命、財産であるとか、その自由を守るということは、国の務めでありっ、それを代表して政府が、国民に対して、そういうものを守らっなければいけない義務があると思います。そういう意味からいって、いわゆる他の国から日本が不当な侵略を受けて、国民が生命、財産を失い、その自由を奪われるという場合に、これを保護するための自衛力を持つということは、これは防衛長官が申しておるように、国民に対して政府が持っておる責任を果たす上からいって、当然のことであると思います。そういう意味において、この憲法の規定全体から見屈して、そういうことが言えると思います。しからば、無限にそういう力が持てるかといえば、憲法九条、特に憲法九条二項における制限考えてみますと、こういう憲法の規定を持たない国と同じような武力と申しますか、実力を持つということは、これは日本においては考えられないのでありまして、国民が他から不当な侵略を受けないように、また、受けた場合において、これを保護するための、いわゆる自衛権発動する裏づけとしての実力、それは必要最小限度のものを持つ、こういうことが建前であります。ももろん、それで十分であるかといえば、私は十分でないと思います。十分でないために、この日米安保条約を結んで、足らないところをアメリカの力によって、日本国民の平和と安全を守っていく、こういう建前に考えていくのが適当である、かように思います。
  334. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 自衛能力を拡充強化、維持発展していくということは、国民への義務でございますということを名目として――もちろん、侵略ということを私言っておりませんよ。そして、ここまできましたが、これも自衛能力を充実するのでございます、ここまで参りましたが、これも自衛能力充実でございます、これも自衛能力のためでございますといって、どんどん近代兵器を追っていったら、これは日本の憲法との矛盾が出てきまして、りっぱな軍隊になってしまう危険がありませんか、長官
  335. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 御承知のように、日本は独裁国家ではございません。議会というものを持って、民主的に予算その他の制約もあるわけでございます。でありますので、民主的な国会を通じ、あるいは予算等を通じて、無限に防衛力増強していくというようなことは考えられないのでございます。
  336. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 今そういうことをおっしゃいますけれども、盗人たけだけしいというのはその通り。独裁国家でないかもしれないけれども、議会は過去十数年、吉田内閣時代から幾たびか注意してきましたけれども、だんだん憲法解釈を広げて、今日では一人前の軍隊をお持ちになっておるじゃありませんか。これを自衛能力の充実、国民のために義務として充実するんだという名目で、どんどん追っていかれましたら、これは軍隊の持てる憲法を持った国の軍隊と同じような自衛隊まで日本はいかなければ、本物でないということを意味するのでございまして、私が申し上げたいのは、そういうごまかしをおやりにならないで、それならば、はっきりと憲法を改正なさっておやりになるならば、またこれは話がわかる。しかし、憲法の改正はしないで、軍隊は他国と違って禁じておきながら、憲法で許された軍隊と同じ形のものを、自衛能力充実の名をかりてこれを追っかけていくというところに、山岸内閣の矛盾がある、こういうことを私は申し上げておるのでございます。いかがでございますか。
  337. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 何か堤さんは、日本の国を守ることが悪いようにおとりになっておるようでありますが、私どもは、やはり日本を守り、か弱い女の人あるいは子供等も、侵略等ありとすれば、これを防衛する、また、そういうことがないように努めておることはこれはやはり国民に対する崇高な義務だと思います。そういう点で、無限にと言いますが、あるいは憲法を改正することも、これは適当であるかもしれません。しかし、憲法が現在ありまする以上は憲法の範囲内において、この崇高な目的のために私どもが精進するといいますか、力をいたすことは、私が再々申し上げておりますように、国民に対する義務である、こういうように考えております。
  338. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 防衛長官は非常に窮地に追い込まれて、変な御答弁をなさいますけれども、私は申し上げておきますが、自衛能力のための裏づけとしての自衛隊というものが、憲法違反の軍隊であることと紙一重すれすれであって、その線をどこに持っていくかというところに大きな問題があります。従って、今の岸内閣の行き方では、自衛隊というものは核兵器まで追っていくものでありながら、憲法をこのままにしておいて安保条約を結んで、そして、いろいろな問題が付随してきておるところに割り切れないものがある、こういうことでございます。これにつきましては自民党の方々に時間をせかれておりますので、私の質問の時間に、もう一度速記録と照らし合わせて、この問題は総理防衛長官に聞かしていただきたいと思いますから、きょうは、憲法をごまかしての自衛能力充実という名のもとに、自衛権の裏づけとしての自衛隊をお持ちになっておるけれども、これは国民の目から見れば憲法に違反した軍隊であって、もし、これをあえてやろうとお思いになるならば、憲法を改っ正しなければ筋が通らないではないか、こういうことを速記録に残しておきまして、私の時間に譲りたいと思います。
  339. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 再々お話でありまするが、日本自衛隊が他国まで侵略していくというようなことであるとか、あるいは今度の安保条約におきまして、アメリカ攻撃されたならば、日本自衛隊アメリカまで行ってこれを共同防衛するというようなことででもありまするならば、これは憲法に違反すると思います。しかし、そういうことは全然考えておりませんで、憲法の範囲内において日本自衛隊というものを維持していく、あるいは増強する場合もあります、そういうようなことでありまするから、決して憲法に違反するとは私ども全然考えておりません。
  340. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 ちょっと今の答弁は黙っていられない。それは防衛長官おかしいのでございまして、私は、日本自衛隊侵略のために備えておるということは一言も言っておらない。ただ、何だか私か質問しておる腹の中は、自衛をなおざりにして、どうでもよいんだということを建前にして、むしろ、侵略考えておるんだというようなところへ逆に私を持ってきて答弁をなさろうとしておるところに、あなたの卑怯さがあるということを指摘しておきます。
  341. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 私も、卑怯だなんて言われると、御答弁申し上げないと思ったのですが、なお、答弁いたします。私は、もしも侵略するとか、アメリカまで行って防衛するということであれば、これは憲法を逸脱するし、違反でございますが、そういうことではありませんから、憲法の範囲内でございます、こういうことを申し上げているのです。
  342. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 きょうはここまでにしておきます。
  343. 小澤佐重喜

    小澤委員長 次に、床次徳二君。
  344. 床次徳二

    ○床次委員 私は、前会、いわゆる行政協定と新協定に関しまして質疑をいたしたのでありますが、なおその際、政府委員の出席がなかったために留保しておりました関係で、郵政省関係の問題について質疑をいたしたいと思うのであります。  まず第一に、現在米軍におきましてはNHKの施設を利用いたしまして海外放送を行なっておるのでありまするが、この事実に関しまして御説明をいただきたいと思うのであります。この問題は、行政協定の第三条二項に関係しておるのでありますが、この改正に関しまして、さらに伺いたいと思うのです。まず、現在の放送の事実そのものについて御説明をいただきたいと思います。
  345. 植竹春彦

    ○植竹国務大臣 昭和二十五年の六月二十九日以来、米軍の調達命令によりまして、米軍がNHKの施設を利用いたしまして放送いたしておるのでございます。その後、現行の行政協定が発効いたされました昭和二十七年に至りまして、自後、制限をつけまして、制限範囲内で、なお米軍がその施設を利用いたしておるのでございます。それまで夜の十一時以前に放送しておりました中波の電波の施設につきましては、昭和二十七年の現行協定の発効以後は、全面的に日本の方に返してもらいました。十一時以後の分につきましては、相変わらず米軍の方で放送を続行しておるのでございます。そうして今日に及んでおります。
  346. 床次徳二

    ○床次委員 海外放送をやっておられる事実について御説明がありましたが、ただいまの放送はどういう手続によってこれが認められておるのか、御説明をいただきたいのであります。両政府間におきましては、どういう手続によってただいまお話しのような相談をしておるのか。
  347. 植竹春彦

    ○植竹国務大臣 ただいま答弁申し上げましたように、現行の行政協定に基づきまして、日米の合同委員会で取りきめをいたしたのでございます。その取りきめの範囲内におきまして、およそ三項目にわたりまして日米の合意が成立いたしまして、今までのような、ほとんど無制限的な放送から制約を受けまして、ある一定の範囲内で二十七年以来放送を始めて、今日に及んでおります。
  348. 床次徳二

    ○床次委員 ただいま御引用になりました行政協定の第三条二項の中にある「一時的の措置としてで、合衆国軍隊は、この協定が効力を生ずる時に留保している電力、設計、放射の型式及び周波数の電子装置を日本側からの放射による妨害を受けないで使用する権利を有する。」この事項が根拠になっておるかと思うのでありますが、新しい協定におきましては、この「一時的の措置として、」区云々という字が欠けておるのであります。従って、この際におきましては、一応の解釈から申しますると、従来米軍がやっておりましたところの放送の権限というものが、新協定におきましてはなくなってしまっておる。結局、放送法におきましては米軍の放送を認められておりませんために、引き続きNHKからできなくなるのじゃないかというふうに考えられるのでありっます。新協定におきましては、関係法令範囲内で必要な措置をとる云々というふうになっておりますが、この関係は、政府はいかに処置せられるっおつもりでありますか、政府の御方針を承りたいのであります。
  349. 植竹春彦

    ○植竹国務大臣 ただいまの私の答弁に大切な点が漏れておりました。ただいま御指摘の通り、この放送は、現行の行政協定第、二条第二項の末段の「一時的の措置」云々の、項[によりまして、それに根拠を置きまして、日米合同委員会で詳しく、取りきめまして放送し区ている次第でございますが、御指摘の通りっ、ただいま御審議願っておりますものにつきましては、第一二条二項の末段に一時的云々という項目がございませんから、ただいまNHKでやつております放送は、新協定が発効いたしますと、また国内法的に見ましても、NHKで放送することはきわめて困難であると思います。
  350. 床次徳二

    ○床次委員 ただいまの御答弁によりますると、新協定以後におきましては、他の措置にかわられることになる、かように考えておるのであります。また、御交渉中のようでありまするが、それに関連しまして、一、二伺ってみたいと思うのであります。  国際間におきまして日本に割り当てられておりまする電波の一部を来車に使用させるということは、これは可能だと思うのでありまするが、見解を承りたいと思います。
  351. 植竹春彦

    ○植竹国務大臣 その通りであります。可能であります。
  352. 床次徳二

    ○床次委員 なお、参考に伺いたいのでありますが、米軍日本のいわゆる民間放送というものを使用するということも、これは理論といたしましては可能だと思うのでありまするが、見解はいかがでしょうか。
  353. 植竹春彦

    ○植竹国務大臣 御指摘の通り、民放によりますことも可能であります。
  354. 床次徳二

    ○床次委員 なお、考えられますことは、米軍自体が当然この行政協定によりまして基地の中に施設を持って放送するということも、一応考えられることだと思いますが、この点に対する見解はいかがでしょうか。
  355. 植竹春彦

    ○植竹国務大臣 米軍にもしその意思がありますれば、可能であります。
  356. 床次徳二

    ○床次委員 ただいままでの答弁によりまして、従来のごとき海外放送というものは、政府はやめる方針のように考えておるのであります。ぜひ一つすみやかにこの交渉を成立妥結していただきたいと思うのであります。  次に伺いたいのは、郵政関係の、いわゆる米軍の使用しておりまするところの電話の問題についてお尋ねいたしたいと思うのです。行政協定の第七条によりますると、米軍は、政府のいわゆる公益事業または公共の役務につきまして、日本の役所が使用しておりますると同じ条件、不利でない条件で利用できる、または、その利用につきまして優先権を保有するというふうに書いてあるのであります。電話についてもこれは同じことだと思うのでありますが、まず、優先権を有するという従来の考え方、これに対して御説明をいただきたいと思います。
  357. 植竹春彦

    ○植竹国務大臣 一般の電話の使用と違いまして、わが国国内におきましても、各省各庁で使っております電話につきましては、一般に対しまして優先的に使用される場合がございます。これと同じ程度において、その優先措置を下らざる範囲において、アメリカの軍の専用になっております電話も優先権があるという範囲で優先権を認めるということに、一応日米両方の合意が成立いたしております。
  358. 床次徳二

    ○床次委員 過去の日米間の様子を見ておりますと、米軍の使用しておりまするところの電話料金というものが約四十億ばかり、日米間の紛争の対象となって、未解決になっておるというのでありまするが、その経緯、理由につきまして承りたいと思うのであります。
  359. 植竹春彦

    ○植竹国務大臣 御質問は、終戦処理費による米軍の使う専用電話回線、通信回線、また、安保諸費によりまして建設された同じく米軍の専用通信回線のことであろうと存じます。この問題につきましては、私たちの政府の解釈といたしましては本日の御質問の冒頭にございました行政協定第七条の規定によりまして、これは公益的なものであり、また公共の役務提供であるから、これは当然米軍が電話料金を支払うべきものであるという強い主張でございますが、これに反しましてアメリカの方では、いや、これは行政協定の第二条に基づくもので、いわゆる米軍における施設区域内の定着物であり、設備であり、備品であるのだから、当然これは無償でよろしいのだという、こういう日米の意見が全く相対立しておりますので、数十回にわたる交渉にもかかりわりませず、まだこの点は了解を得て決着をいたしておりませんので、今日まだ未収として計上することすらできない段階にございますが、これを、日本政府の解釈のように、第七条で各省各庁の使っております電話料金並みに計算いたしますと、御指摘のように、約四十億という数字に上る次第であります。
  360. 床次徳二

    ○床次委員 郵政省におきましては、過去数十回にわたって交渉しておるというのでありますが、今回の行政協定の改定の際におきまして、やはりかかる懸案は十分に解決せられたいと思うのですが、この解決に対する政府の見解と申しまするか、決意を、伺いたいと思います。
  361. 植竹春彦

    ○植竹国務大臣 これは私たちとしては今までもずいふん熱心にやって参りましたが、今後も十分に向こうに納得してもらうように熱心に努力を続ける決意でございますが、アメリカの方も、これにつきまして話し合いをする用意をはっきりと私にも直接披瀝いたしておりますので、できるだけすみやかにこの問題の解決に向かって努力を続ける所存でございます。
  362. 床次徳二

    ○床次委員 終わります。
  363. 小澤佐重喜

    小澤委員長 次に、保科善四郎君。
  364. 保科善四郎

    ○保科委員 私は、本安保委員会の審議が始まってから、社会党、民社党委員諸君の質問に終始熱心に耳を傾けて参りました。ところが、その国際情勢に対する見方があまりにも事実と違っておるものがある、しかも一方に偏しておる、特に、条約に対する不安、不信感を醸成せんがために、わざとそういうようなことを言っておるように見える節もあるのであります。私は、これらの点に対して非常に遺憾に考えておるものであります。よって、私は、今から、史実に立脚いたしまして、詳細にこの世界情勢に関する安全保障機構が、どうできたかというような経緯をここに述べまして、これらの点に対して、あらためて総理並びに防衛長官、外務大臣の所見をお伺いいたしたいと思います。  ただいま世界に現存しておる安全保障機構は、御承知通り、西欧にはNATOがあり、中近東にはCENTOがあり、東南アジアにはSEATOがあり、南太平洋にはANZUS安全保障条約がある。その他、日本、韓国、台湾あるいはフィリピンはそれぞれアメリカとの間に防衛あるいは安全保障条約があるのであります。なお、米国全体にわたって米州安全保障機構があることは、御承知通りであります。これらの機構は、一九四五年の六月に国際連合憲章が発効いたしまして、国際連盟にかわって第二次世界大戦後の平和護持機構を作るということでできましたことは、御承知通りでありますが、その後、この国際連合憲章を守らずにいろんなことが行なわれたために、こういうような安全保障機構を作って、われわれ自由世界のものが民主自由主義を守らなくてはならぬということになったのが、その実態であります。ただこれだけを申し上げたのでは抽象論になりますから、若干これを敷衍いたしまして、私は申し述べてみたいと思います。  一九四五年の八月に、終戦とともに日独両国の軍隊の解体、経済機構の解体、教育革命等が行なわれたことは、御承知通りであります。当時、アメリカは一千三百万の軍隊を持っておりました。ソ連邦は一千万の軍隊を持っておったのであります。そうして、この国際連合憲章に従って、お互いに縮小するということにいたしまして、アメリカが先頭を切って急遽解員をいたしました。ところが、ソ連は東欧、中近東等に兵を出しておりましたが、その撤兵を求めましたけれども、これに応じません。かえってプロシャ、チェコの一部を併合いたしました。また、千島、南樺太を併合し、さらに東ドイツ、北朝鮮を赤化して、衛星国の建設に取りかかったわけであります。さらに一九四六年に入りまして、ソ連はアフガニスタンの一部を併合いたしまして、モンゴル、アルバニア、ブルガリアを、赤化して、これを、衛星国にいたしました。ソ連邦は、中近東における戦時駐兵を、約束通り実行いたしません。そこで一九四六年の三月に、アメリカは、従来の伝統を捨てて、トルーマン・ドクトリンというものを宣言いたしまして、これらの国の共産化を、防止して、自由民主主義擁護のために厳重抗議をいたしまして、ソ連は、兵を中近東からついに撤兵することになったのであります。こういう情勢のもとに、一九四七年の九月に、全米州を赤化より守るためにできたのが、全米相互援助条約であります。それから一九四八年の二月に、チェコが赤化されまして、ソ連の衛星国となりました。一九四八年の四月に、ソ連の強引なるベルリン封鎖が始まりまして、ここで、米国並びに西欧諸国は一致結束して、航空輸送力を動員して、ついに一九四九年の五月には一日に一万二千トンに及ぶ物資の輸送に成功いたしまして、ついに西ベルリンの市民の生活を保障いたしましたことは、御承知通りであります。こういう情勢にかんがみまして、一九四九年の四月にNATOができたのでございます。そうして一致結束して民主主義、自由、法の支配の諸原則を擁護することを誓ったのが、すなわちNATOの結成でございます。それから一九四九年の九月に、蒋介石政府が中国より追われまして、中共政権が成立いたしました。いわゆる中共、ソ連の衛星国がここにできました。それから一九四九年の十月に東独共産政府ができまして、またソ連の衛星国ができました。一九五〇年の二月に、先ほど来しばしば出ております、中ソ両国が、日本及び日本と連合する国を目標とする中ソ友好同盟条約というものができました。さらに六月になってアメリカの地上軍が韓国から撤退するや、北鮮軍が、中共軍の支援のもとに国境を越えて韓国に侵入して、ここに朝鮮戦争になったのであります。そこで一九五一年八月には、米比相互防衛条約ができました。さらに、一九五一年の九月になって、先ほど申し上げましたANZUS安全保障条約ができ、さらに、五一年の九月に、日本と連合国との講和が成立して、同時に、当時の状況にかんがみて、現在あります日米安全保障条約ができたことは、これまた御承知通りであります。それから五二年の十一月になって、アメリカが水爆の実験に成功いたしました。五三年の一月にはアイゼンハワー大統領が就任をする。五三年の三月にはスターリンが逝去をいたしました。こういう目まぐるしい国際情勢の急変に応じまして、五三年の七月に朝鮮休戦ができたのでございます。そうして、さらに五三年の八月には、ソ連の水爆実験が成功いたしました。こういう情勢のもとに、五三年の十月に米韓相互防衛条約ができたのであります。さらに五四年の四月には、北ベトナムのディエンビエンフーが陥落いたしまして、北ベトナムが赤化されまして、そこで同年の九月にSEATOができたわけであります。五四年の十二月米台相互防衛条約ができました。それから五五年の二月にはCENTOができました。こういう各般の、この共産圏に対応する安全保障条約ができましたために、一九五五年の五月に、ソビエトは衛星国八カ国を糾合してワルソー条約を調印いたしまして、陣容を整備しながら五五年の七月にジュネーブの頂上会談に臨んだことは皆さん御承知通りであります。ところが、五六年の二月になって、またソビエトにおいてスターリンの批判が始まり、さらに六月にポーランドに暴動が起こり、十月にハンガリーの動乱が起こり、スエズの戦争が起こる。五七年の三月には、以上の情勢にかんがみまして、アイゼンハワー・ドクトリンというものが宣言をされまして、中近東における赤化活動について警告をするという事態になりました。正五七年の八月にソ連がICBMの実験に成功し、十月にはスプートニクの打ち上げがあり、五八年の三月にはフルシチョフが独裁者の地位につきました。こういう情勢があって、五八年の七月に、イラクの革命が起こるという事態になったのであります。そこで米政府は、レバノン政府の要請によって、かねての条約に基づいて、赤化防止のためにレバノンに出兵するのやむなきに至りました。それから五八年の八月に、金門、馬祖島に対する全面猛砲撃が開始された。それから五八年の十一月に、フルシチョフ首相は西ベルリンの期限付自由化を提案いたしまして、世界の緊張を来たしたことは、これも御承知通りであります。それから引き続いて中共がチベットを弾圧して、それからさらに、五九年の五月にはベルリン問題について東西外相会議が開かれたけれども、成果が上がりません。さらに、五九年の八月に中印国境の紛争が始まる、それから五九年の九月には、ラオスの赤色勢力の脅威を受けて、ラオスから国連に提訴するという事態が起こる、こういう一連の世界緊張が続いたあとに、五九年の九月に、御承知通り、フルシチョフとアイゼンハワーがキャンプ・デービットにおいて会談をして、これらの問題は、お互いに力によらずして、話し合いによってやろうということが話をされた。こういうのが、この国際安全保障機構ができた歴史的経過であります。  社会党の諸君が言われるように、これは決してこちらから進んできたものではなくて、向こうからそういう状態を作られたために、われわれは自由陣営の立場において、こういうものを作らざるを得なくなったということは、この歴史的事実によって、私は明瞭になったと思います。私は、こういうような点から考えまして、社会党の諸君が、この明白な史実を歪曲して、はなはだしきは、米国は世界侵略政策をとりつつある、あるいは日本はそのお先棒をかついでおるというような議論をされることについては、はなはだ遺憾に考えておるものであります。元来私は、侵略というものは、国民がその欲せざるところを強行するものを侵略というと思います。それは政治的な問題であっても、軍事的でも、あるいは心理的であっても、いずれにしても、これは侵略には変わりがありません。そういう点から見て、私は、アメリカの弁護をするわけではございませんが、アメリカ国連憲章やポツダム宣言を完全に守らてきていると私は思います。第二次大戦後において、寸土も併合しておりません。沖縄、小笠原には、施政権を行使しているが、わが潜在主権を認めておる。極東の事態と日本の決意次第によっては、いつでも返還の用意があるということを申しております。また、フィリピンにおいてはあれだけの犠牲を払っても、完全にフィリピンに自由を許しておるのである。ところが、ソ連邦はどうか。ポーランド、フィンランド、ルーマニアを併合し、プロシア及びチェコの一部を併合しておる。また、エストニア、ラトヴィア、リトワニアの全部を供合しておる。また、日ソ不可侵条約を一方的に破棄して、わが千島、南樺太を占領、併合して、今なお返還をいたしておりません。いな、むしろ永久領有を言明して、明らかに国際憲章違反をやっておるではございませんか。私は、こういう状況を歴史的に申し上げたわけでありますが、この事実に立脚をして、現安保条約の改定に進んでおられる総理大臣並びに外務大臣の所信をあらためて伺いたいと思います。
  365. 岸信介

    岸国務大臣 歴史的に安全保障条約ができ、また、その安全保障条約の持っておる意義につきましては、ただいま保科委員が詳細に御説明になったことは、これは歴史的の事実でございます。私どもは、しばしばこの国会において申し上げているように、安保条約のこの安保体制というものは、現在、平和条約が結ばれると同時に、日本の安全を守るために日米の間に結ばれた条約でございますが、当時の状況と今日、その後における日本の国際的地位やあるいは日本国力というものが非常に変わってきておる。そういうような点から見まして、これをできるだけ対等な立場において、合理的なものに直そういう多年の国民的要望を、この改定において実現しょうということ、でございます。言うまでもなく、今歴史的におあげになりましたように、こうした条約機構というものはあくまでも防衛的なものでありまして、そして、それが結ばれてから後において実際に働いている効果も、防衛的な平和の維持機構でございます。安保条約は、一部の人が言っているように、これができると戦争の危険があるというふうに思われる人がありますけれども、言うまでもなく、この条約は、あくまでも、現行条約と同じように防衛的なものである、われわれが他国から不当に侵略をされない、そのためにわれわれが作って、これによって日本の平和と安全を守り、その繁栄を期すると同時に、それが極東の平和、世界の平和に貢献するゆえんであるという信念に基づいて改定を行なわんとするものであります。
  366. 保科善四郎

    ○保科委員 次に、日米安保条約が軍事同盟であり、戦争に巻き込まれるということで、事前協議や極東の範囲の問題が取り上げられておりましたが、この点について、私は、私の所見を申し上げまして、総理並びに防衛長官の所見を伺いたいと思います。私は、現代のような究極兵器が出現した現代において、こういうものの考え方というのは、これは大へんに間違っておると思うのであります。ただいま新戦略思想というものがここに生まれまして、新しい科学兵器時代において戦争に巻き込まれるということを考える以前に、いかにして戦争を起こさないようにするかということを考えるべきであるということが、新戦略の骨子に変わって参りました。私は、昨年の秋、世界十三カ国を歴訪いたしまして、各国のプラン・メーカとひざを交えていろいろ話をして参ったのでありますが、彼らの一致せる結論は、これからの目標は、戦争を絶対に起こしてはいかぬということに変わったということであります。第二次世界大戦までは、勝利を得るということが目標であった。しかし、現代のような科学兵器の進歩した時代においては、戦争を絶対に起こさないということがこの戦略の究極の目標になったと、一致して彼らはこういう結論を出しております。そこで、これらプラン・メーカーが、それならばどういうようにしてこの戦争を起こさないようにするかということについて、彼らが全知全霊をささげておる実情を、私はこの目と耳で見、かつ聞いて参ったのであります。ところが、当日本ではその当時の日本は雪解け説が盛んであったのでありますが、これは日本だけであって、現情勢は、晴天には向かっているが、何らの備えなければ、いつ曇天になるか、あるいは暴風雨になるかわからぬという見方を、これらプラン・メーカーはいたしておりました。そうして、キャンプ・デービッドの精神を具現するためには、ただ放置しているだけではできない、どういうようにすべきかということに全精力を傾倒しておる姿に私は接しまして、あまりにも日本におけるいろいろな考え方とその差異がはなはだしいのに、私は驚かざるを得なかった次第であります。彼らプラン・メーカーたちは、国際共産主義者たちは世界革命の目標を今なお捨てていないという判断をいたしております。彼らは、依然として世界革命の最終目的を達成するためにあらゆる手段をとる、こういうように見ております。そこで、キャンプ・デービッドの声明後の彼らは、世界赤化の戦略目標を、堅持して、ただ戦術転換をしただけである、こういうように結論をいたしているのであります。そうして、しかも、彼らは力の信奉者であって、力なきものには一顧の価値も与えていない。よって、彼らをして共存同栄に踏み切らない限り真の平和はあり得ない、これには両陣営の力のバランスをベースとして、自由陣営の結束を強化する以外、現状にこれ以上土最良の策がないというのが、彼らの一致した結論でございます。すなわち、私は、日米新安保条約は、日米相互信頼の上に立って、絶対に戦争を起こさないようにしようという、この世界の通念の上に立った現段階においては最良の考え方であり、これを具現する最良のものである、方策であると信ずるものであります。われわれは、ますます自由世界との結束を固めることに努力をして、絶対に日本は、みずからの地域に真空を作ってはならない、そうして、戦いの火元にならないようにすることこそ戦争に巻き込まれない、いわゆる戦争巻き込まれ論に優先すべき考え方でないかと、私はそう信ずるのでございます。私は、昨年の秋、同様にNATOの最高司令官のノースダット大将に会いました。そのときに彼は実に興味深いことを申しておりますから、これを御紹介いたしたいと思います。ノースダット大将は、私の信条はツー・ディフェンド、ツー・ディテレントである、ということをまず申しました。防衛であり戦争予防である、もし不幸にしてインシデントが起こったならば、偶発的であめろうが、あるいは故意であろうが、わからないけれども、まずこれを消しとめることに全力を注ぐ、次に相手をして、これを拡大するかあるいはやめるかを良心的に決定さす時間の余裕を与える、さらに相手に、あらゆる戦いのコストを考え合わせ、最後の決定をさせる、そうして戦争抑制に持っていくということであっります。この場合、われわれとして最も大事なことは、最終的にはウイル・ユース・フォースという態度を示すことが大事である、そうして、ほんとうのディテラント・パワーは、ミリタリー・ストレングスをベースとする加盟国の真の協力一致と相互信頼とである、これが備われば、十分にディテラントに持っていける。今やこの科学兵器の時代では、ノーワン・ウイン・ザウォー・イン・ザ・フューチュア・ウォーという言葉を使っております。こう申しております。これがすなわち、先ほど申し上げました現段階における新しい戦略理論でございます。これを見ても、自由世界は、侵略などということは考えておりません、ということは、はっきりおわかりになると思います。また、私は、米国の作戦当局がこういうことを言っておるのを聞いたのであります。日米両国が緊密なる防衛体制にあり、日本人が、外国の侵略に対して敢然として自国を守るという断固たる決意のある限り、日本は外国の侵略を受けることは絶対にない、こう申しておりますが、これは私の長い経験から思うて、きわめて正当なる論であると考えるのであります。こういう観点に立って私は日米新安保条約を見ますと、きわめて明瞭に、社会党の諸君が言われるような侵略性を持っているんでないということが、はっきりおわかりになると思います。この説に対して総理並びに防衛長官の所見をお伺いいたしたいと思います。
  367. 岸信介

    岸国務大臣 われわれがしばしばこの質疑応答の上におきまして、世界におけるところのいわゆる全面戦争という危険は非常に遠のいた、ほとんど考えられないようになってきておるということは現実に科学兵器の非常な発達によるところの、いわゆる究極兵器の出現によってそういう情勢が生まれてきておる、そうして問題は、そういう状況であるから戦争をなくすること、いかなる意味においても、戦争を絶対に抑止するというこのことに向かってあらゆる努力をすべきものである、しこうして、そのためには、やはり今日の国際情勢から見て、同じ考えに立っておるところの自由主義の国々は、しっかりとその相互の信頼の上に立ったところの協力関係を強めていくことが、戦争を抑止し、平和をもたらすところのゆえんであるということを申しております。今日、安保体制やあるいは自衛力そのものを国家が持つということ自体も、われわれは、その意義は戦争防止に役立つ、戦争を抑制する力であるということを、しはしば繰り返して申しておるのもその音意味でございます。あくまでもこの日米安保条約は、現行条約も改定の新条約も、ともに防衛的なものであり、戦争を抑制して、そうして日本の平和と安全及び極東の平和、さらに世界の平和に貢献しよう、このために、日米の相互の信頼の上に立った協力関係を一そう有効な、適切なものにするという考えに立っておるわけでございます。
  368. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 総理大臣の御答弁で尽きておると思いますけれども、私も、保科さんの御意見の通り戦争をしようとか、あるいは侵略しようという意図は全然持っておらっぬ、また、安全保障条約そのものが侵略の意図でなくて、あるいは防衛的だといいますが、防衛的よりももっと以前に、戦争を抑制する機能として安全保障条約を改定するんだ、こういうように考えています。防衛のことでさえも、そういうことが発動されないことが、これは私どもの期待であります。それ以前に、なお戦争を抑制していくというか、戦争を拡大していかない、こういうことのために、安全保障条約の必要を現情勢においては感じて、こういう方針に出ておる、こう考えております。
  369. 保科善四郎

    ○保科委員 次は、条約自体について、二、三の点をお伺いいたしたいと思います。  第一点は、この新条約の最も重要な点は、私は私なりに考えておるのでありますが、この前文の劈頭に民主主義、個人の自由、法の支配の諸原則の擁護ということを希望するということをうたっておりますが、この点が、私は新条約の非常に重要な点であると思います。すなわち、自由諸国の望まざる国際共産主義をしいる者に対しては、はっきりと対決をしていくんたということを、これは決意思を示しておるものと私は考えておるのでありますが、この点に対して、これはいろいろな外交的な関係もありまして、政府の御答弁の中にもはっきりしないような点があるのであります。この点が非常に重要な点であって、これをはっきりしないと、新条約のいわゆる安全保障に対する考え方がはっきり出てこないというように思うのでありますが、この点に対して総理大臣の御所信を伺いたいと思います。
  370. 岸信介

    岸国務大臣 お話しの点は、この条約の一つの基本的の考え方を示しておると思います。かねて質疑応答の上におきましても、いわゆる国際共産主義の脅威というものを、アイゼンハワー大統領と私との会談におきましても常に問題にいたしております。私どもに、あくまでもこの世界自身の平和をもたらすためにば、個人の自由、また民主主義、またそれによるところの法秩序というものを守る、これが前提になり、この点が、自由主義の立場をとっておる人々から見まするというと、そういう意味において従来国際共産主義の脅威が存しておる。共産主義をもって世界革命を行なおうというような考え方を、われわれは根本においてとらない。また、日本の真の平和、日本の繁栄をはかるための基本的な考え方の一つを、私はこの安保条約に明らかにしておると思います。
  371. 保科善四郎

    ○保科委員 次に、私は、第一の重点は戦争の抑制であると思います。これは戦争に巻き込まれるとか、あるいは軍事同盟とかいうような説がありましたことに対して、私はそうでないということを一応説明をいたし、そういう私の所見を申し述べましたが、この第五条の米国が日本防衛義務を負うということと、第二条の経済協力の促進、この二つが戦争抑制の原動力であると私は考える。こういう観点からしまして、私は、第五条によって安全保障が確保され、第二条によって、わが国を含む後進国の経済協力に対する一そうの明るさがここに出て参る。これが将来にわたって、満足と生活の安定とを保障して、国際共産主義者の世界赤化革命の企図に対する基本的対策にこの二つがなるのだと私は確信するのでありますが、かような点から見まして、この新条約は、自由世界各国が精魂を傾けて努力をしておる線に全く私は乗っておると、こういう工合に考えるのであります。結局において自由陣営を大きく強化して、極東における安全保障の確保を保障いたしまして、過去十年間、わが国がこの安全保障条約を軸としまして異常なる経済伸展を遂げたと同様に、将来十カ年にわたって日本の繁栄と幸福を、この新安保条約を基礎として確実に進め得るものと私は確信するのでありますが、この点に対する外務大臣の所見をお伺いしたいと思います。
  372. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 ただいま御指摘のございましたように、本条約における第五条は、全く防衛的のものでございまして、国連憲章五十一条によりまして認められております個別的もしくは集団的自衛権も、武力攻撃の発生した場合にのみ対処し得ることを規定したものでございます。しかも、それは直ちに国連に報告いたしましてその措置を待つということでございまして、全くこの点においては、この条約防衛的なものであるということは、はっきりいたしておるのでございます。また、御指摘のように、第二条は、これまた防衛的な関係を明確にいたしておるのでございまして、御承知のように、日本アメリカとが経済的に緊密な連絡をとって参りますことは、友好国の立場において当然のことでございます。しかもそれは、自由な諸制度を強化していくということの共通の目的を持って、そうしてわれわれは協力をいたして参るわけであります。自由な諸制度を強化していくということは、国際的に見ましても、他国から内政干渉を受ける、あるいは他国の侵略を受けるということに対する自国の体質を強化していくということでございます。従いまして、今日のような状況におきまして、新しい新興国がたくさんできておりますときに、その社会不安というもの、経済的な成長等が十分でない場合、国民生活は安定して参りません。そういう場合には、ともすれば他国からの内政に対する干渉なり、あるいは他国からのいろいろな宣伝等に対する反応を示すような結果になるわけであります。従いまして、そういうことの起こらないように、生活安定ということを各国がそれぞれ確立して参りますことによって、他国から蔑視され、あるいは他国から思想的にも脅威されることを防護、防衛し得るのでありまして、そういう意味におきまして、日米が相ともに両国の経済的関係を十分確立して参りますと同時に、その基礎の上に立ちまして、後進諸国の経済諸般の制度というものに対しても協力いたしていくということは、全く防衛的な、しかも、将来平和を樹立し得る大りきな道だと思うのでございます。
  373. 保科善四郎

    ○保科委員 私は、昨年の秋に、やはり、バンコックで、東南アジアの代表者の意見を、この経済協力について伺ったのでありますが、彼らは、日本の経済協力というものを非常に期待しております。ところが、本委員会で、東南アジアの各国は日本に疑惑を持っているというような言葉がありましたが、私は、そんなことはないと思います。彼らは、ジャ。バン・シュッド・ヵムという言葉を使っております。そうして、積極的な日本の対外経済協力を期待しておるというのが実情でございます。そこで、これは先ほど申し上げましたように、一方では自由と民主主義を、守る重要なる方策であるばかりではなくて、日本に対しても、目下検討中の経済再建に対して、非常に重要なる寄与をなすことになるのでありますが、これにはどうしてもタイムリーな、具体的な施策を勇敢に進めていくことが必要じゃないかと思うのでありますが、こういう点について何か具体的なお考えがありましたら、外務大臣からお伺いいたしたいと思います。
  374. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 私も、保科委員と同じように東南アジアの各国の人たちが、日本の経済協力に対して何か非常な反感を持っておるというようなことは、考えておりません。現に、インド等との経済協力等につきましても、相当いろいろな面において進展をいたしております。また、インドネシアなり、あるいはフィリピン等の事情から申しましても、現にフィリピンは通商航海条約締結のためにミッションをよこして、ただいま話し合いをいたしておる過程でございます。インドネシア等におきましても、日本の経済協力というものをできるだけ促進していくという立場をとっておりますので、東南アジア各国が、日本に何か――経済協力によって日本が経済侵略をする、好ましいものではないというような考え方を持っておるとは、最近において私はそう考えておらないのでございます。従いまして、これらの諸国に対しましてわれわれが経済協力の道を進めて参りますことは、それぞれの国の希望でもあり、またわれわれがやらなければならぬことたと思っております。そこで、日本といたしましても、戦後十年を経過いたしまして、今日経済的にやや確立をして参っておるのでありまして、外貨事情等も改善をいたしてきております。従いまして、これらの状況の上に立ちつまして、日本としては、各国に対する個別的な経済協力の道を、さらに推進して参らなければなりません。同時にまた、日本の力にも限度がございますから、国際的な協力のもとに、これらの方面に対する経済援助ということも考えて参らなければならぬのでございます。先般、三月にワシントンで開かれました会議においても後進国に対します、低開発国に対します援助の問題について話し合いが出ております。また、ヨーロッパ共同体その他ができて強化されて参ります場合には、東南アジア、特に低開発国であります東南アジアとあるいはヨーロッパ共同体等の間に、摩擦等も起こるような状況が、第一次産品を主として生業といたしております東南アジアには起こり得るのでありまして、これらのものに対する調節ということも、やはり考えて参らなければならぬのでございます。OEECの改組等の問題をめぐって、われわれは、やはり世界的なそういう経済安定のために、ヨーロッパのみの考え方でなしにいくことにつきましても、日本は努力をして参らなければならぬと同時に、第二世銀等のいわゆる実際的なそういう問題についても協力をして、そうして、その活動が円滑に、また強力に進むように期待して参らなければならぬと思います。日本といたしましては、ただいま申し上げましたように、経済的な余裕ができてくるにつれて、次第に努力して参るのであります。今回、経済開発基金のわずか五十億ではございますけれども、これをそういうふうにいたしたのもその一つの現われでございます。今後、技術的な協力その他の面についても、十分な方策をめぐらし、またその線に沿って努力をして参る所存でございます。
  375. 保科善四郎

    ○保科委員 ただいまの私の質疑応答を通じまして、この新条約は、世界の通論に従って戦争抑制、すなわち、自由民主主義を守る最良の方法であるということの一応の結論を得たと私は思います。そしてこの条約は、その本質的にはきわめて防衛的でありますけれども、他方からこれを見ますれば、非常に積極的な性格を私は持っておると思います。これは世界の平和を確保するという大きい使命をこの条約によって果たそう、この条約を通じて日本がやろうという決意を示したところに、非常に意義があると思うのであります。そういう意味合いからして、私はこの条約に対する質疑応答を見まして、何か政府の御答弁にどうも弁解がましいことが非常に多いのでありますけれども、もっと正々堂々と、世界の最もいいことをやっているという自信を持ってお答えになり、残り少ないこの質問応答に対して、もって勇気を持って、一つよく国民に、自信を持ってこれがわかるように、不安と不信とを与えるようなことがないように特に要望いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
  376. 小澤佐重喜

    小澤委員長 次会は、明三日午前十時より開会会することにいたします。  本日は、これにて散会いたします。     午後四時四十九分散会