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1960-04-28 第34回国会 衆議院 日米安全保障条約等特別委員会 第25号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年四月二十八日(木曜日)     午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 小澤佐重喜君    理事 井出一太郎君 理事 岩本 信行君    理事 大久保武雄君 理事 櫻内 義雄君    理事 椎熊 三郎君 理事 西村 力弥君    理事 松本 七郎君 理事 竹谷源太郎君       安倍晋太郎君    愛知 揆一君       秋田 大助君    天野 光晴君       池田正之輔君    石坂  繁君       鍛冶 良作君    加藤 精三君       鴨田 宗一君    賀屋 興宣君       小林かなえ君    田中 榮一君       床次 徳二君    野田 武夫君       服部 安司君    福家 俊一君       古井 喜實君    保科善四郎君       毛利 松平君    山下 春江君       飛鳥田一雄君    石橋 政嗣君       井手 以誠君    岡田 春夫君       黒田 寿男君    滝井 義高君       戸叶 里子君    中井徳次郎君       穗積 七郎君    森島 守人君       横路 節雄君    受田 新吉君       堤 ツルヨ君    門司  亮君  出席国務大臣         内閣総理大臣  岸  信介君         外 務 大 臣 藤山愛一郎君         国 務 大 臣 赤城 宗徳君  出席政府委員         内閣官房長官 松本 俊一君         内閣官房内閣審         議室長     大島 寛一君         法制局長官   林  修三君         防衛政務次官  小幡 治和君         防衛庁参事官         (防衛局長)  加藤 陽三君         調達庁長官   丸山  佶君         外務事務官         (大臣官房審議         官)      下田 武三君         外務事務官         (アメリカ局         長)      森  治樹君         外務事務官         (条約局長)  高橋 通敏君  委員外出席者         専  門  員 佐藤 敏人君     ————————————— 四月二十八日  委員大野幸一君及び中村時雄君辞任につき、そ  の補欠として堤ツルヨ君及び門司亮君が議長の  指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び  安全保障条約締結について承認を求めるの件  (条約第一号)  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び  安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並び  に日本国における合衆国軍隊地位に関する協  定の締結について承認を求めるの件(条約第二  号)  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び  安全保障条約等締結に伴う関係法令整理に  関する法律案内閣提出第六五号)      ————◇—————
  2. 小澤佐重喜

    小澤委員長 これより会議を開きます。  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約締結について承認を求めるの件、日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並び日本国における合衆国軍隊地位に関する協定の締結について承認を求めるの件及び日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約等締結に伴う関係法令整理に関する法律案、右各件を一括して議題といたし、質疑を続行いたします。受田新吉君。
  3. 受田新吉

    受田委員 きょうはゆっくり岸総理並びに藤山外務大臣赤城防衛庁長官に、懸案の安保改定案問題点について、民社党を代表してただしてみたいと思います。  最初に、岸総理、あなたは、この条約案を御調印されてお帰りになられたときに、一体いつごろまでにこの条約国会で仕上げて、承認を得ようとめどをつけられたか。条約案の第八条には、「この条約は、日本国及びアメリカ合衆国により各自の憲法上の手続に従って批准されなければならない。この条約は、両国が東京批准書を交換した日に効力を生ずる。」と書いてあるのでございますが、この効力発生の時期をどこに置いておられたか、お答え願いたいと思います。
  4. 岸信介

    岸国務大臣 今次の開会されております国会において、ぜひ御承認を得て、そして批准を交換したい、かように考えております。
  5. 受田新吉

    受田委員 その承認を得る時期は、今国会でなければならぬということはないわけですか。そういうお約束をしてお帰りになったのですか。
  6. 岸信介

    岸国務大臣 別に約束はございません。私の考えは、先ほど申し上げましたように、今次の国会において御承認を得るという考えのもとに調印をいたしております。
  7. 受田新吉

    受田委員 こういう国の存立の基礎に関係するような高度の政治性を持った国家間の約束というものは、十分慎重に国会討議しなければならない問題だと思います。従って、今国会と一応のめどを立てられたのはやむを得ないといたしましても、実際に世論というものは、この国会安保審議を通じて著しく批判的な方に高まっている。最近の新聞世論調査を拝見しますと、この四月に行なわれた三つの大きな新聞社世論調査を拝見いたしましても、安保改定反対世論が大幅に伸びて、賛成世論が著しく後退しておる。かつ解散要求世論も大いに持ち上がっているというこの事実は、国民総意国民の声というものが安保改定反対であり、また、解散によって民意を新しく得て、しかる後これの処理に当たるべしという声であると私は思うのです。この世論の響きを、総理、いかにお聞きになっておられますか。
  8. 岸信介

    岸国務大臣 もちろん、これは民主政治でございますから、われわれ民主的な政党として世論に対しましては十分な関心を持ち、注意をいたしております。私は、新聞世論調査を全然無視するものではもちろんございません。しかし、これをもって日本の全部の世論とは、私考えておりません。われわれも、それぞれの方法によりまして、国民に直接接触して、国民理解を高め、また、その世論も聞いて参っておりまして、現在のところ、さらに国会の慎重なる審議を通じて政府所信を明らかにすることによって、国民の大多数の理解とその支持のもとに御承認を得たいという、終始一貫した考えを今日もなお持っております。
  9. 受田新吉

    受田委員 最近の世論調査の結論が、ただいま申し上げましたように、安保改定の案を審議する国会討議を通じて、わからないという層がだんだん減って、批判的な層がだんだんふえ、賛成者が減ってきておるというこの現状は、これは総理世論がどういう方向にあるかを十分おつかみいただかなければならないと思うのでございますが、いかがでございますか。
  10. 岸信介

    岸国務大臣 先ほどお答え申し上げました通り、われわれは、われわれとして十分この世論動向には注意をいたしております。また、新聞世論調査も、もちろん無視はいたしておりませんが、さらにわれわれとしては、先ほど申し上げましたように、国民の各層に直接接し、また、われわれのこの接触を通じて、国民世論動向考えております。私は、世論動向は、この国会審議を通じてその理解を深めつつある、かように考えております。
  11. 受田新吉

    受田委員 深めつつあるということと逆な方向世論の動きがあることを、あなたは御存じいただかなければならないと思うのです。一々ここで、私、新聞のパーセンテージを読み上げるということは差し控えますけれども、十分おわかりいただけると思う。しかも、解散要求の声が大きくおどり上がっておるというこの事実も、見のがすわけに参りません。しかも、あなたの所管の内閣審議室には、世論調査機関があるわけであります。そうした世論調査機関を通じて、公的立場からも、政府施策国民における反映がどうであるかをお確かめいただくような、政府の手による世論調査というものもおやりになっていいのではないか、かように思うのでございますが、いかがでしょう。
  12. 岸信介

    岸国務大臣 必要なことにつきましては、内閣調査室における世論調査もいたす考えであります。
  13. 受田新吉

    受田委員 この安保に関する世論調査政府の手でおやりになるという、何らかの形のものをおやりになるという御意思がありますか。
  14. 岸信介

    岸国務大臣 適当な方法において考えていくことは、もちろん政府として考えなければならぬと思います。
  15. 受田新吉

    受田委員 その適当な方法をどういうことにしておられるのか。まだ具体的な案をお持ちでないとなればやむを得ませんけれども、方向はどういうものであるかお示しを願いたいと思います。
  16. 岸信介

    岸国務大臣 今具体的に、どういう内容で、どういうふうにするかということを申し上げる段階ではまだないと思います。
  17. 受田新吉

    受田委員 私は、こうした重大な国策、しかも、高い政治性を持った案件というものが、軽々しく今国会のうちに成立するというような、非常に早急な日時をめどにしてお考えになるというところに問題があると思う。従って、去る二十二日の夜のような事態も起こることでありまするし、わが民主社会党がこのことに関して声明を発して、審議は十分尽くすことに協力する。しかしながら、その声明の第一にうたっておきました通り、「わが党は安保問題については、あくまで慎重審議を尽くし、その上衆議院における採決の前に解散選挙を行なうべしとの基本的態度である。従ってこの段階において、中間報告を求め、一挙に審議を終わるごとき暴挙には断じて反対する。これとともに、議会の正常なる運営を守り、この上の無秩序と混乱を避けるため、安保審議について次の提案を行なう。すなわち、議長に対し、」云々とやって、審議には適当に応ずるけれども、衆議院審議を一応終わって、採決の前に解散、総選挙を行なうべしという基本的態度を堂々と声明したわけでございます。この民主社会党の、審議には堂々と応じ、同時に、最終的段階で、批准の直前に、国会承認の前に解散をやって、新しく選び出された民意代表者による批准、こういう形をおとりになることが、岸総理大臣としては適当であると私は思っております。岸総理大臣解散に関するわが党のこの基本的態度についていかがお考えにはなっておられるか、御答弁願いたいと思います。
  18. 岸信介

    岸国務大臣 解散につきましてはかねていろいろ国会におきましても御意見がございました。また、最近において、今受田君のお読み上げになりましたような民主社会党の御意見もございます。私としては、現在のところ、解放をする考えは持っておりません。従来もそのことを申し上げましたが、私は、現在のところ、その考えを持っておらないということを重ねて申し上げます。
  19. 受田新吉

    受田委員 総理は、去る二十二日夜に川島幹事長に対して、中間報告を求める動議提出によって国会混乱が収拾できなくなった場合は、衆議院解散する決意であるという強い意向を表明されたと有力新聞報道しておるわけです。この報道の根拠は、二十二日夜、東京赤坂の某料亭で行なわれた大野川島氏との会合の席上で、はっきりと岸首相発言はこう伝えてあります。「「新安保条約批准の成否は国家の命運を決するものであるから、中間報告動議はぜひとも可決させたい。そのために広く世論の反撃を受け、批准後直ちに内閣総辞職をせざるを得ないような場合があるかもしれない。しかしそれもやむを得ない。私は岸内閣の運命など問うところではないと考える。もし中間報告を求める動議が本会議に上程できないほど国会混乱すれば、最後の手段として解散を断行する決意である」と言明した。」と書いてあります。私は、非常に勇気を持って解散決意されたという岸総理のこの報道を喜んだでのございますけれども、総理、こうした御発言同志の方に表明されたということは事実でございますか。いかがでございますか。
  20. 岸信介

    岸国務大臣 その新聞記事は全然事実に反しております。私は、その新聞記事のごとく、二十二日の夜、大野川島両君会合した事実がないのであります。従って、この新聞記事は全然事実に反しているということを申し上げます。
  21. 受田新吉

    受田委員 あなたはその会合の事実がないということでございますけれども、解散決意を表明をしたという、いずれかの機関において、あるいは同志の方に決意を表明したということ、このことも全然事実なしということですか。この会合以外の問題としても御否定あそばされますか。
  22. 岸信介

    岸国務大臣 今おあげになりました会合事実がないのでございまして、さらに、そういう内容意見を表明したことも全然ございません。
  23. 受田新吉

    受田委員 岸総理は、現在のところとあなたは今言っておられますが、しかしながら、現在のところ、現時点を過ぎて国会状況その他によって、解散をやって民意に問い直して承認を得る、そういうこともあり得るという、将来の問題としては解散という道を選ばれることがあり得ますか。
  24. 岸信介

    岸国務大臣 御承知のように、政治というものは、いわゆる生きものであるということがいわれております。私は、今の御質問に対しては、現在の状況において、私の現在正しいと考えておることを申し上げる以外にはございません。将来のことをいろいろ予想して申し上げることは、私は適当でない、かように思います。
  25. 受田新吉

    受田委員 解散をやって新しく民意を問い直すということは、この重大な安保承認というような案件の場合には、ぜひ必要な事柄ではないか。解散をやるのにも、ついだまし討ち解散とか、黙れ解散とかいうようなばかげた解散でなくして、非常に意味のある解散である。今回解散をして民意に問い直すということは、これはどの角度から見てもきわめて適切な措置であると思うのでございまするが、総理御在任中において、こういうきわめて適切な措置による解散断行ということを、おやりになってはいかがですか。民主社会党の強い要望に対しても、はっきりとお答えになってはいただけませんか。あなたに対する一番いいチャンスを天が与えようとしておるわけです。
  26. 岸信介

    岸国務大臣 こういう条約を結ぶ場合におきまして、唐突に条約が結ばれるものでは、もちろんございません。安保改定の問題は、すでに一年有半あるいはそれ以上もかかって、いろいろな方面においていろいろ論議され、また、幾たびかその間に行なわれました選挙等におきましても、常に野党とわれわれとの考えが違っておりますので、国民にもその点を訴えて、そうしてきております。また、最近の国会におきましても——この国会におきましてはもちろんのことでありますが、その以前の国会におきましても、国会論議においてこの問題が議論されてきております。もしもそういう、今受田君のお話しのような考え方をとるならば、むしろ調印の前に政府としてはとって、解散して民意を聞いて、そうして調印するかどうかをきめることが、私は理論的には正しいと思います。私自身が、そういう意味において、調印をする場合におきましてはいろいろな点を、もちろん私としては考慮して、これはこの国会において御承認を得るという確信のもとに調印をいたして参っておりまして、今日もその考えは誤りでなかったと、私は現在のところ信じております。従って、今日、今お話がありますし、民社党の御意見もございますけれども、先ほどお答え申し上げました通り、現在の状態においては、私は解散する意思は持っておらないということを重ねて申し上げておきます。
  27. 小澤佐重喜

    小澤委員長 この際、堤ツルヨ君から関連質疑の申し出があります。これを許します。堤ツルヨ君。
  28. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 ただいまの総理並びに受田委員質疑応答関連いたしまして、私は、解散をする必要はないという総理のお考えに対しまして一つ伺っておきたいのは、一昨年の五月に衆議院選挙が行なわれました。この衆議院選挙のときに、一体自民党は全国の有権者の何%の票をとられたか、総理は勘定しておられると思いますが、ちょっとお答えいただきたいと思います。
  29. 岸信介

    岸国務大臣 今突然の御質問でございますから、私数字を記憶いたしておりません。
  30. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 それじゃ、私からお教えいたしますが、総裁として、おととしの衆議院選挙に、国民の何%の票をもらったかという概念が頭の中にないから、こういう問題が起こってくる。それはどうかといえば、有権者の四六・何%しか票をもらっておらないはずなんです。ということは、有権者の半数が自民党を、三百に近いところの議席を持っておられるけれども、支持しておらない。しかも、その四七%の支持を得られたときの選挙スローガンの中に——たちも至るところで立会演説個人演説会をやりまして、自民党候補者と対決をしたのでございますが、そのときの主要選挙スローガンとして、この安保改定が、国民に納得のいくところの公約としてどういう案を持っておるということを訴えられたか、それについては私たちは記憶がございません。今それだけ解散する必要はないとおっしゃるほど自信がおありになるのならば、この大切な委員会において、あの選挙のときにいかなる国民了解を得られたか、一つ御説明をいただきたいと思うわけであります。
  31. 岸信介

    岸国務大臣 衆議院の総選挙のときにおきまして、まだ最後の交渉を始める段階にまではいっておりません状態でありました。しかし、昨年の春行なわれた参議院選挙におきましては、わが党としては、はっきり安保改定に関する重要項目選挙スローガンの大きなものに掲げて選挙をいたしたことも堤委員の御承知通りであります。その後、これはもちろん全国的ではございませんけれども、地方的な選挙におきまして、常にそういうことが論議の対象になったことも、御承知通りでございます。私は国会における論議も十分尽くされておるし、また、国民が多年望んでおったことでもありますし、また、今申しましたようなことを通じまして、今日の段階において直ちに国会解散するという、それが適当な方法だとは政治的に考えておりません。
  32. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 今の総理お答えで、なるほど去年の参議院選挙地方議員選挙の際にはこれを訴えた、こういうようなごまかし的な御答弁がございましたが、一昨年の衆議院選挙の場合には、はっきりと重要な外交施策であるところの安保改定に対しましては、国民がこれを中心に票を入れなければならない訴えでありますけれども、これがなされておりません。今の答弁によりましても、優位を持つところの衆議院選挙において、しかも、一年有半を経過いたしました前の選挙においてこの問題を訴えておらないで、新しくこの問題に取り組むのでございます。しかも、この問題を訴えなくして四七%足らずの支持票しかなかったということは、今回の安保改定と縁なき一票をもらわれたということでございまして、私は、こうした大きな政治問題は、良識あるところの総裁であり、総理大臣であるならば、あらためて選挙民意向を一人々々聞くというところの、安全保障に対する真剣な考えがなければならないと思います。  私は今関連でございますから受田委員に譲りますが、私の質問の際に、あらためてこれをもう一度伺いたいと思いますけれども、おととしの衆議院選挙の際には、自民党公約中心でなかったことは衆目の認めるところであるということを、一つ念を押しておきたい。同時に、総理はこれに対して確固たる返答、できなかったことが今はっきりいたしておりますので、この点を指摘いたしまして、受田委員質問を返します。
  33. 受田新吉

    受田委員 この解散に関する民主社会党要求は、非常に筋を通して国民理解を得る問題であると確信いたしているわけです。総理は、おととしの衆議院選挙の際に、この安保改定の構想を国民に示すことなく選挙に臨まれた。たとい昨年の参議院選挙地方選挙了解を得たとされても、衆議院優先国会の構成をお考えになるときに、衆議院総意というものは安保改定を代表していない。新たに安保改定を代表していない。新たに安保改定に関する民意を問うて、その結果選び出された代表者によるところの承認を得るという手をおとりになるのが、総理、順序としては適当じゃありませんか。
  34. 岸信介

    岸国務大臣 解散ということは、言うまでもなく、政治的に非常な、いろいろな重大な意義を持つことでございまして、私としては各般のことを考えて、先ほど来申し上げておる通り、現在の状況においては、この問題に関して解散を断行するということは政治的に適当なことではない、かように考えております。
  35. 受田新吉

    受田委員 国民の声は、世論調査を通じて安保改定反対解散要求という線に動いている。この率直な世論に耳を傾ける民主主義政治家岸さんであると、私は確信しておったのです、こういう国民の声を聞かずしてあやまちを犯した隣国李承晩大統領は、今日辞職せざるを得なくなった。李承晩ほどの独裁者でない岸さんであることを、私は知っております。しかし、李承晩に近い線が、これをおやりにならぬと出るのですよ。従って、この際、民意を聞くという民主主義原則岸総理が、民主主義国家総理としておとりになるということは、きわめて適切な方法だと思うのです。総理勇気を持って、われわれが審議に応じて、国民の前に安保内容を十分解剖して訴えている、この理解ある協力ぶりにあなたも賛意を表せられて、わが党が審議に御協力している理由は解散、総選挙、ここにあることを十分御理解の上、御答弁を願いたいと思うのです。
  36. 岸信介

    岸国務大臣 先ほど来、私の所信は、私の政治的信念として申し上げておることであります。民社党の御意見並びに受田委員の御意見と、その点について考え方が違っておるということでございまして、私としては、現在の状況において、現在の心境においては解散する必要なしという考え方を、依然として持っておることをさらに申し上げておきます。
  37. 受田新吉

    受田委員 選挙をやることについては、自民党の方々にも反対の空気が相当あろうと思います。選挙をやることはこわいことであるので、そういうお気持であろうと思いますけれども、こういう千載一遇のチャンスをお見のがしになるということは、民主主義政治家のとるべき道ではないと思うのです。金権政治整理して、純粋な、公明な、民意を十分反映するような総選挙をやって、その総選挙の結果、新しくこの安保承認し直すという段階をおとりになるべきだと思うのです。総理、さらに検討を加える余裕をあなたに与えますので、もう一度決意を表明していただきたい。
  38. 岸信介

    岸国務大臣 この点に関しましては、遺憾ながら受田委員と私は見解を異にいたしておることを、さらに申し上げるほかございません。
  39. 受田新吉

    受田委員 この解散、総選挙に関するわが党の要望は、最終段階に至るまで政府に呼びかけ、同時に、世論反映十分耳を傾けてもらうようにあなた方に要求するとともに、先ほどあなたの方から、何らかの形で世論を暢達する、世論を確かめる措置をとりたいという御意見がありましたので、その結果等も勘案して、この解決は後に譲ることといたします。  次に、この条約の案の内容に触れて質問を続けていきたいと思います。  私は、先般来のこの委員会討議を通じて、改定案の第六条に伴うところの交換公文事前協議事項について一つの不安を持っておるのであります。この事前協議において日本側ノーと言ったときに、向こうがなお、ノーと言う日本側意思を無視して、日本意思に反した行動をした場合に、一体どういう措置がとられるのか、これを一つお答え願いたい。
  40. 岸信介

    岸国務大臣 それは、こうした条約について条約違反をしたときに、どういう措置がとられるかという問題でございまして、これは条約全体の問題いわゆるそれは条約違反になるということでございます。
  41. 受田新吉

    受田委員 条約違反向こうがやった、こういう場合に、一般原則から見た国際法の観点から、これに対して日本側はどういう態度に出る道があるのか、お示しを願いたいと思います。
  42. 岸信介

    岸国務大臣 もちろん国際条約は、条約違反につきましては、国内の法規みたような、法律違反の場合のような制裁とか、あるいは措置というものはございませんが、もちろんそういうことに対して強く反省を求め、もしくは国際的に訴えるという手もございましょうし、あるいは最後におきましては条約を廃棄するということが——そういう誠実を持って、守られない、相手方がそれに違反しておるということであれば、廃棄するということもできると思います。
  43. 受田新吉

    受田委員 制裁を加える規定がないのでありますか。条約違反をやった場合に、違反行為を行なったとしてこれに対する適当な措置をとる——事前協議日本意思を無視して、向こう側が勝手な行動をとったという、そうした違法性を何らかの形でとがめる方途があるのではないですか、御答弁願います。
  44. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 一般的に申し上げまして、条約というのは、相互の信頼関係を基盤として結ばれた条約でございますから、違反した場合はどうするとか、そういうことは全然考えられていないわけでございます。また、一般国際法上の問題といたしましても、違反に対してどういうふうな措置考えらるかというような場合は、やはり、ただいま申し上げましたように、相手の反省を求めるとか、そういうことでたびたび相手の反省を求めていくというほか、現在の一般国際法としては考えられないと思います。もちろん重大な場合には、理論的には、これを廃棄するとか、いろいろなことがいわれております。しかし、そういうのが条約上の、一般国際法上の考え方かと思います。
  45. 受田新吉

    受田委員 今条約局長が言われたような重大な違反行為があったという場合は、一方的な条約破棄というようなこともいわれておるということでございましたが、これは理論的にはそういうことが考えられるわけですか。
  46. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 それは国際法上、学説とか、いろいろ理論的なこととして、そういうふうなことがいわれております。すなわち、重大な違反が行なわれたら、これは一方的に廃棄していいんだ、ただ現実問題といたしまして、はたしてそういうことが主たる主体か、プラクティカルな問題として行なわれておるかどうかということになって参りますと、非常に問題になってきます。すなわち、重大な違反を一方は口実にして、そうして、条約を初めから廃棄しようと思って廃棄したというようなことになって参りますし、また、それが重大な違反であるかどうかという客観的な基準も、御承知通りでございません。従いまして、理論的にはそういうことがいわれておりますが、また実際問題は実際問題として、別に考えなければならない問題だろうと思います。
  47. 受田新吉

    受田委員 理論的には重大な違反行為があったという形で、条約の一方的破棄ということもいわれておる、しかし、実際にはそういうことはなかなか困難な問題である、そういうことで了解してよろしゅうございますか。
  48. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 御指摘の通りでございます。すなわち、相互信頼関係で結ばれた条約でございますし、約束は守らるべしというのが国際法の最も重大な基本原則でございますから、約束した以上は、あくまでこれを守らなければならない。守るべきであるし、そうして相手方も守るべきものであるという立場に立って進んでいく、こういうのが基本原則であろうと考えております。
  49. 受田新吉

    受田委員 これは非常に甘い考え方で、事前協議でこちらの要求に対して別の行動をとったというようなときに、誠実、信義の原則を重んじて条約を順守してくれるであろうとか、注意を促すとか、反省を促すとか、そういう軽いことで取り扱われるとすれば、事前協議事項というものは、きわめて意義が薄いことになるのではないですか。全く形式的な事前協議事項ということじゃないですか。
  50. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 決して軽いということではございません。条約を結ぶということ、すなわち、約束をするということが、国際関係では非常に重大な問題として考えられる。すなわち、約束は必ず守らなければならない。これが非常に重大なこととして考えられているわけでございますので、約束に違反するというようなことから、違反した場合にはどういうふうな措置をするとか、違反した場合こうであるというような考え方に立った国際法の組織とか、理論とか、そういうことは、そこまでは考えていないわけでございます。すなわち、それに至る以前の約束は守らるべしというところが、これは最もわれわれ重大視し、お互いに重大視しなければならない、こういうふうに考えられているのが現状ではないかと考えております。
  51. 受田新吉

    受田委員 約束は守らるべしという考え方、それが甘い。国際間の約束であれば、あなたのようなお説であるならば、現行安保だって、日本の防衛はアメリカがやってやろうというておるのだ、別にこういうものをお作りになる必要はない。何らかの形で約束を取りつけたいということで、いろいろと努力されておると伺ってきたのでありますけれども、しかしながら、その約束が守られなかった場合にどうするかという態度がはっきりしなければ、これは一方の約束をした当事国としては、はなはだ不安定な地位に置かれるわけです。特に今回のように、日本が従属的な立場で、たとい双方の協力関係とはいいながらも、日本の立場が従属性を持ったような形で結ばれている条約においては、弱い立場に立つ日本意思は無視されて、強い立場に立つ意思が強行されるというおそれが多分にあるではないですか。そういうときに、弱い方の側の意見をどういう形で強行するかということについて、総理に御答弁を願いたい。
  52. 岸信介

    岸国務大臣 この条約の基礎は、言うまでもなく、日米の信頼関係の上に立った協力をもととしておるわけでございます。特に国際条約というものについて、先ほど来条約局長お答えを申し上げているように、初めからそれを守らないというような、そういう不安があり、そういう不信な国との間に、こうした重大な国際的な約束をするということ自体が間違いだということになると私は思います。だから問題は、アメリカをそれだけ信頼するということが、そうして、こういう国際条約をお互いが結ぶということが適当であるかどうかという問題であって、今お話しのように、国際法約束というものは、これを守るという前提に立っておるのでありまして、従って、それに対して違反したという場合のことは、これはそういう不信な状況の上にいろいろな国際的な約束を取り結ぶことはできないわけでありますから、私どもは、そういう国際的にこうした約束が日米の間に約束されたということは、両国が誠実を持って条約上の義務は履行する、権利義務はこれを行使するという前提に立って考えておるわけでございます。
  53. 受田新吉

    受田委員 それははなはだ不安定な関係に日本が置かれていることになると思うのですが、誠実、信義の原則をもってすれば、双方の信頼があるからというような軽いことで条約をおきめになるということは、一方においてどういう状況の変化が起こるかもしれない。背に腹はかえられないという事態において誤りを犯す、そういう事態に対処するところの用意が、一方においてはされていなければならない。それでこそ、この条約の裏に、特に日本の立場が擁護される線が出てくると思う。あなたは、事前協議日本は事実上の拒否権を持っておると答弁されておるわけでございますが、その拒否権というものの保障も、今のような御答弁では、はなはだ足りないじゃありませんか。
  54. 岸信介

    岸国務大臣 これはそういう議論をするならば、事前協議の議論だけではございません。あるいは五条において、アメリカが、日本に武力攻撃があった場合に防衛するということを言っておったって、これに違反したらどうするかという議論になるわけでございます。私は、国際条約、国際社会の今日における取りきめというものは、国内における法律のごとく、一つの権力において違反を制裁するということは、これはまだできておりません。従って、一国と一国との間の信頼関係、お互いが誠実を持ってこの条約上の権利義務を履行するかどうか、従って、われわれが間際条約を結ぶ場合において、そういう信頼を持ち得る相手方であるかどうかということを、われわれは十分考えなければならぬと思います。ただどういう国との間においても、不信用な国との間においても、われわれは大事な約束をしようということではございません。従って、問題は、アメリカが、われわれがそういう約束をする相手方として適当であるかどうかという判断に立つべきものであると考えます。私どもは、アメリカとの間にこの条約を結ぶ上において、日米の従来の関係から考え、あらゆる点からわれわれが話をして、日米の間においては、これが誠実と信頼との基礎の上に誠実に履行されるという考えのもとに、私どもは条約を結んでおるわけでございます。
  55. 受田新吉

    受田委員 誠実に履行されるという前提でやるのならば、条約というものはなくたって、幾らでもできるじゃないですか。何でも相手方との好意的な話し合いで、こういう国際間の約束というものを、条約にしなくたって、それはできるわけなのです、こういう双方の信頼を重んじてやるならば。条約をきめる以上は、約束を取りつける以上は、約束が守られない場合にどうするかということが考えられて、初めてこういう公式の約束の効果があるのではないですか。あなたにお伺いしておきたいのは、一つここでまた関係するのですが、事前協議の事項の中に核兵器を導入することも入るのだとしばしば言うておられるのでございますけれども、核兵器を導入する場合に、事前協議をする。ところが、核兵器は、日本としては政策として持たないとあなたが言っており、それは持ち込ませないと言っておるのに、事前協議をする必要を認めるということになるのは、どうもおかしいじゃないですか。ノーと言う場合のみであって、イエスと言う場合のない事前協議ということがあるのですか、そこをちょっと……。
  56. 岸信介

    岸国務大臣 これは装備についての重要なる変更として、一括して書いてあります。核兵器だけではございません。従って、核兵器につきましては、私は国会を通じて明瞭に、持ち込みについてはノーと言うということを申し上げております。その他の重要なる変更も一括して書いておりますから、事前協議の対象といたしておるわけでございます。
  57. 受田新吉

    受田委員 問題は、「日本国への配置における重要な変更、」と「装備における重要な変更」ということの中に、核兵器は持ち込ませないのだという政策を持っており、また、実際させないのだと言っておるあなたの御意思があるならば、日本は非核武装地帯であるという宣言をして、ここは事前協議という条項の中に、核武装は一切やらないという一項を入れるという努力をしておかないと——約束する以上は、そこをはっきり宣言しておかないと、条約の効果がはなはだ薄いのじゃないのですか。事前協議の結果、ノーと言われた場合に、誠実を信頼する以外にない、あなたの誠実を御信頼申し上げておるというだけのことで、核武装が拒否できますか。
  58. 岸信介

    岸国務大臣 そういう論理をするならば、宣言をしておったって同じことです。その場合、宣言に違反してやったらどうするかということと変わりはないのでございまして、そのことは同じでございます。
  59. 受田新吉

    受田委員 宣言を条約の中に何らかの形で織り込む、あるいは別に宣言をもってこの非核武装地帯としての日本の立場を宣言する、こういう形をおとりになってもいいとお考えなんですね。
  60. 岸信介

    岸国務大臣 先ほど来お答え申し上げておる御質問は、第一段は事前協議だけでは足らぬ、違反するものが出てくるかもしれぬ、その違反に対する処置がないじゃないかという御質問であります。共同宣言をしたって同じことなんです。共同宣言に違反したらどうするか、信頼しない国との間に共同宣言をしても、これは国際関係というものは、条約上の義務は守る、あるいは共同宣言をしたことは守るという前提が一応成り立たなければ、共同宣言も条約も、これは意味をなさないということになる。従って、その点は、共同宣言をするとしないとにかかわらず、われわれが申しておるこの条約において、条約上の義務としてわれわれがイエス、ノーを言い得る事前協議というものを対象にしておくならば、私はこれに対して、岸政府は、従来申しておる通り、核兵器を持ち込むことは認めないという方針でいくということを明瞭にいたしておるわけでございまして、それでたくさんであると私は考えております。
  61. 受田新吉

    受田委員 これは、今のあなたのお話を突っ込んで考えるならば、日本は核武装をしないとあなたは政策できめ、また、持ち込ませないということならば、事前協議の対象ということでなくて、実は事前協議以前の問題じゃないのですか。もうこういうものははっきり割り切って、その約条の中へ一項を入れて、日本は核武装をしない国家である、日本の核武装をすることによって中共の核武装ということも考えられるというような、いろいろな政治的配慮があるということをあなたも知っておられるはずなんだ、そういう意味から、日本は核武装をしない国であるということを、全世界に宣言する一項をなぜここへ入れておかないのですか。
  62. 岸信介

    岸国務大臣 条約としては、私が先ほど来申し上げておる通りであります。また別に、全世界に宣言する必要があるかどうかという問題は、別の問題として考慮すべき問題で、この条約自身としては、私は、われわれがきめておるところの交換公文で十分であると、かように考えております。
  63. 受田新吉

    受田委員 この交換公文で十分であるというお説ですけれども、核兵器を持ち込む場合は、重要な軍隊の装備における変更ということでありますから、ノーと言う場合だけしかないということになる、この核兵器の導入と、ほかのイエスを言い得るものとを混同して考える筋のものではないと思います。はっきりと核武装の場合にはノーと言うことがきまっているのですから、ノーばかりなんですから、その規定を別に取り上げるという必要があるのではないか、それを今お尋ねしておるわけであります。
  64. 岸信介

    岸国務大臣 今御質問の点は、私ども、この交換公文を作成する場合におきまして、装備及び付置についての重要なる変更、それにはもちろん核兵器も含んでおることは当然でございますが、そういうふうに包括的に書いております。また、そうして核兵器については、すでに国会を通じ、われわれは、内外あらゆる面において日本は核武装をしないし、核兵器の持ち込みを認めないという、この方針を明らかにいたしておりますから、それだけをさらに取り立てて、別に項目を起こした交換公文を作れというお話でありますが、それは私は、技術的の問題として、装備及び配置に関する重要なる変更についての事前協議というものへ含まして、そうしてその場合においては、ノーと言うことを堅持しておることにおいて十分である、かように思っております。
  65. 受田新吉

    受田委員 それで十分であると軽くお取り扱いになるところに、あなたの非核武装宣言に対する非常に消極的な考えがひそんでいると思うのです。この事前協議の中にこれを入れて、ノーと言っても向こう承知しないというような場合のいわゆる約束違反、違法行為——こういうようなものが非常に起こり得る公算があるじゃないですか。米軍の内部に立ち入ることができないというような現状において——米軍の艦船その他を国政調査せよときのう岡田君が要求をされておりますけれども、そういうことが一々できるなら、それははっきりと核装備を摘発することができるでしょうけれども、一々そのつどこれを点検することが困難なる段階においては、はっきりとこれを一項入れて、核武装はしないのだ、事前協議の対象からこの一項をはずして、明文化するということが、核武装に対する否定論の立場に立つあなたの真意を代表することになりませんか。そこを一つ、もう一度お確かめ申し上げます。
  66. 岸信介

    岸国務大臣 受田委員のお話は、われわれが交換公文に、装備及び配置についての重要なる変更のうち、特に核兵器の問題については、項を別にしてこれは絶対に拒否するんだということを、明瞭ならしめておくことの方がいいじゃないかという御意見だと思います。そういう御意見も、もちろん、さっきから私が申しておるように、一切核兵器を持ち込ませない、また、それに対しては拒否するということを申しておるわけでございますから、その方針はちっとも私は反対意見を持っておるわけではございません。しかし、このわれわれの交換公文において、そういうことが完全にできるということを申し上げておいて、私は、それでもって御心配の点は何らない。ただ、その事前協議に違反したらどうするんだ、そういうことを言ったって違反するおそれがあるじゃないか、そういうことを申すならば、かりに核兵器は持ち込むことは相ならぬということを約束しておいても、それに違反したらどうするんだという問題が、依然として——その相手方を疑ってかかったら、相手方がそういう約束をしたってそれを守らないところだということであるならば、それはそういうことになると思います。私はそうでない。アメリカとの間には、それでもって私は十分である。信頼関係が、そういうふうに、十分そういう点を論じ尽くして今日まできているし、われわれはあらゆる面においてそれを明らかにしておって、アメリカが従来それに反したところの行動をとっておらないということから考えましても、信頼するに足るという見地に立っておるわけでございます。
  67. 受田新吉

    受田委員 あなたは非常にアメリカを信頼しておられる。これは人を信頼するということは美しいことではあります。しかしながら、国際間の約束というものが、特にアメリカと日本の関係が、今のような立場でいつまでも続いて、アメリカの命を唯々諾々とお聞きになる政府だけが続くわけじゃない。国民世論というものは、そういうものに対して批判的な空気の方が強くなっているということを考えるときに、やはりはっきりしたものをその条文の中へ明文化して、そしてこの一項は厳守するのだという意思表示を、事前協議の中へ織り込むよりも、もっと大きな、ウエートを高くして織り込むという方が意義が深いと私は思うのです。そこを私はあなたにお尋ねしておるわけですから……。
  68. 岸信介

    岸国務大臣 問題は、先ほど来質疑応答で明らかなように、われわれがこの条約を結ぶ相手方である米国を信頼するかしないかという問題にかかると思います。国際条約、国際上の約束、国際上の宣言その他のことというものは、すべて、どういうことを取りきめましても、信頼関係がなしに、それを誠実をもって履行しないという場合において、これに対する制裁とか、これに対する権力的な措置というものは、国家の内におけるような状況でないことは、今日の国際情勢、この国際関係がそういうものなんです。従って、それだけに、相手方を信頼するかしないかという問題である。私は、日本がこういう安全保障条約であるとか、あるいは他の国と不可侵条約を結ぶというような場合において、その相手方とその条約の上にどういうことを約束するかということは、もちろん条約できまるわけでありますが、その前提として、相手方がそれを誠実をもって履行する国だという信頼関係のない国と、そういう条約は私は結べない。われわれは、これはあるいは受田君意見が違うかもしれませんが、アメリカというものに対して、日本の安全を保障するために、アメリカとこういう条約を結んで、アメリカは、国連の憲章並びにこの条約上の義務は、誠実をもって履行する国であるという信頼の上に立って、私どもはこの条約を結ぼうとするものであります。
  69. 小澤佐重喜

    小澤委員長 この際、竹谷源太郎君より関連質疑の申し出があります。これを許します。竹谷源太郎君。
  70. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 関連してお尋ねしたいのでありまするが、ただいま岸総理は、条約は締約国間の相互信頼の基礎の上に締結せられておる、それはその通りであると私も思います。しかしながら、われわれ個人間にありましても、親友の間でかりに貸借が行なわれる。お互いにむろん兄弟以上に仲のよい間柄であって、借用証書などは要らない、こういうふうに一般には考えられますが、しかし、その後の二人の間の関係、あるいは社会事情の変遷等によって、関係が激変をする。そうして、借りた方は違約をして、そんな借りた覚えはない、こう言う。ところが、証人もいなければ、借用証文もなければ、結局取れなくなる。これは国際間でも同じである。現在、アメリカと岸政府は非常に仲がよろしい。絶対に裏切るようなことはなかろう、そういう信念のもとに、この新安保条約を結ぼうという岸総理考えは、それはその通りであろうと思いますが、しかし、十年もの長いこの条約期間の間に、激変、変転きわまりない今日の世界情勢において、日米両国がいかような関係になるかは予測しがたいのであり、また、日本の政権、アメリカの政権も、どのような変わった政策を持つようになるかわからない、そういう意味合いにおいて、われわれ一億の日本民族の永遠の平和と幸福と利益を守るために、最善の措置方策を講ずるのが、政治家として最も責任ある行動でなければならない。そういう意味合いにおいて、あなたと同一選挙区の受田さんは、岸さんの結ばんとするこの条約が、一そう完全なものになるように、なお念を押して、りっぱな条約にするべく努力している。決して反対せんがための反対ではないと私は考える。もう少し誠意ある御答弁一つお願いしたい。
  71. 岸信介

    岸国務大臣 私は、今竹谷君の御意見でありますが、誠意を持ってお答えをしておるつもりであります。しかし、意見の相違は、誠意を持っておるということと意見の相違があるということとは、これはやむを得ないことだと思います。私は、決して受田君反対せんがために反対していると考えておりませんし、また、各委員もおそらくみな、民族のため、国のためを考えて御質問になっているし、私自身も、そういう意味においてお答え申し上げているものでありまして、決して私は答弁にあたって——誠意を欠くというような御意見でございましたが、そういう気持は毛頭ないことをお答え申し上げておきます。
  72. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 なお、方向を変えて、もう一言お尋ねしたいのでありまするが、先ほど来、受田委員岸総理あるいは条約局長の間に、条約締結の当事国の一方が、重大なる条約に関する義務違反を行なった場合、相手方はこれを廃棄し得るやいなや、こういう問題について議論が戦わされたのでありまするが、私は、これにつきまして、具体的なことをあげてお尋ねをしたい。きょうの毎日新聞によると、「付帯決議でワク、安保承認、松村派が強く主張」という記事がございます。これに「安保審議の大詰めを迎え松村・三木派を中心とする反主流派内には極東の範囲、事前協議などの問題についてつぎのような付帯決議で政府にワクをはめよとの強い意見が出ている。とくに松村謙三氏らの態度は強硬なので、」云々とあり、その付帯決議のワクと称するものの第一番目に「「極東」の解釈について」、それからしばらく省略をいたしまして、「金門、馬祖などは除外し他の国際紛争にまきこまれないようにする。」こういう附帯決議のワクをつけよという意見がある旨報道されております。そこで、この極東において最も爆発しやすい危険のある金門、馬祖、これは当然除外すべきものと思うが、政府の統一解釈では、これはどうも入るようになるようであります。しかしながら、岸総理は私の質問に対しても、金門、馬祖等に紛争が起き、これにアメリカが出動をしたいと言っても、事前協議によって拒否権を行なう、絶対に出てはもらわない、このようにおっしゃっておりますが、もしアメリカが、金門、馬祖に問題が起きて、どうしても出動しなければならないということで、日本に対して協議があった場合に、断固岸さんは、国民に対する誓約に従って拒否するであろうと思う。それにもかかわらず、在日米軍が金門、馬祖の紛争のために出動をした場合、それに対して、これは重大な義務違反であるから、条約は直ちに破棄せらるべきものとわれわれは思うが、このようなことは、条約破棄の原因になるかならないか、具体的にお尋ねをいたしたい。そのような仮定の質問には答えられないということは許されません。今、自民党内においても、このように非常に疑義のある問題でございまして、いつ金門、馬祖、あるいは私が申し上げました高登島というようなところにおいて、事態が起きるかもわからない。現在、極東において最も事態が紛糾する危険のある地点であり、これは当面の問題としても起こりかねない事態でありますので、これに対する政府態度をはっきり打ち出してもらいたい。拒否した場合に、条約を破棄する、破棄すれば、われわれは新安保条約によって拘束をされません。そのような日本の立場に対しては、世界のどんな国も、平和国民として日本を攻撃するようなことはない、在日米軍の基地だけをあるいはたたくようなことはあるかもしれませんが、日本人の一人に対しても危害を加えるようなことは世界の国々はなさない、このように考えるのであるが、その場合、われわれは条約を敢然と破棄し得るやいなや、お尋ねをしておきたいのであります。
  73. 岸信介

    岸国務大臣 条約を破棄し得るやいなやということを、ただ単に条約上の法律的解釈から申しますると、私は、条約違反があったという、それが重要な条約違反であるならば、国際条約としてこれを破棄するということは可能であると思います。ただ、この問題は、日米間の問題におきまして、私はそういうことは絶対にないという前提に立っておりますから、その点におきましては仮定の問題でございます。仮定の問題においてはお答えはできないということは申しませんが、日米関係全体——これにおいて直ちに破棄するという措置によって、全部日米関係を断ち切ってしまうかどうかというような政治的の考慮は、もちろんその場合にしなければならぬ。これはだれが政局に立っておっても当然である。ただ、従来の条約上の解釈として、この事前協議の問題というものは、条約上においてもきわめて重要なる内容を持っておる問題だと私どもは信じております。ちょうど五条における相互防衛の問題、それから基地を使っていろいろな行動をするとか、あるいは基地を貸与せしめる上においての事前協議の問題というものは、条約上におきましても最も重要なる事項の一つであるという見地に立っております。従って、そういうことに対して条約違反があるということであれば、条約破棄の原因にはなる、かように私は思います。
  74. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 私のお尋ねしたいのは今金門、馬租に問題が起きて、これにアメリカ軍が出動する、日本は拒否をした、しかるにもかかわらず、アメリカ軍は出ていった、こういう場合には、政府としては、それを理由に条約を破棄できるかいなかという法理論上の問題は、いろいろ議論もありましょう。それが重要な破棄の原因になるかならないか、それは議論があろうと思いますが、その場合、日本の政策として——理論上は別として、政策として、このようなことは重大なる条約違反であるから、破棄する、このような宣言をする御意思があるかどうか。甘んじて、仕方がない、約束は破ったが、やむを得ない、日本はアメリカに従属しておるのだから、黙って言うことを聞いて傍観するほかはない、こういう態度をとるかどうか。これは仮定は困るとおっしゃるかもしれませんが、一番問題の起こり得る事態ですから、仮定というようなことで片づけるわけには参らぬと思うのです。その点をお尋ねしておきたい。
  75. 岸信介

    岸国務大臣 私が先ほど来申しておるように、その点について、あるいは御意見が違うかもしれませんが、私どもは、日米間の完全なる信頼関係に立ってこの条約を結ぼうとしております。今おあげになりましたことは、アメリカが条約違反をするということを前提としての御議論でございまして、私どもは、この条約というものは、そういう条約違反を前提としての考え方は持たないという信頼関係に立つことこそ必要であると思うのでありまして、条約違反を前提としての議論は、私は、法理論としての解釈については、これはもちろん条約でございますからしなければならぬと思いますが、絶対的な信頼関係に両国が立ってこの条約を結ぼうとする際に、条約違反を前提として、日本がどうするのだということを責任を持って申し上げることは、私は適当でないと考えます。
  76. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 私の質問は、必ずしもアメリカを信頼しないという前提に立ってではござません。金門、馬祖の極東の事態が、在日米軍をも出動させなければならない、こういうアメリカの集団防衛もしくは自衛権の立場から、日本の信頼は裏切りたくないが、やむにやまれぬということで、出る場合もあるので、必ずしもアメリカが日本の信頼を裏切るという意図のもとに出ていくとは限らない。どのような事態が起きるかわからないのが将来であります。ことに国際間の関係である。そういうときに、日本は敢然として——この問題は重大なる条約違反であり、条約を無効に帰せしめるような、そういう破棄宣言ができるかどうかは別として、そのような事態が起きた場合には、日本の平和愛好の立場、また、そのような日本の二平和安全に直接関係のないことには絶対に協力はしない、こういう立場をもって宣言をする、その宣言が条約を無効に帰せしめ得るやいなやは別問題である。日本の重大なる政策、立場を宣言することが、日本の安全を守るために不可欠のことではないかと私は思う。そういう意味合いにおきまして、破棄の宣言をする、これは日本にとって、世界に非常に大きなよい反響を起こすに違いない、そういうことをしなければならないと思うが、それをしないのか、するのか。相変わらず、アメリカは信頼できるからそういうことはない、そう言って国民をごまかす、そのようなことよりは、敢然として、あなたが、金門、馬祖には絶対に米軍の出動は認めないという態度を、この国会においてたびたび声明しておるのでありますから、そういう事態が起きたら、破棄宣言もするのだ、こういう岸内閣の厳然たる態度を示すことが、一つ方法ではないか。そのようなことは、今受田さんがおっしゃったように、進んで、金門、馬祖には出動しない、あるいは核兵器は絶対に持ち込ませないということを明文化すれば一番いいのであるが、明文化しないまでも、今この議場において、はっきりとわが国の態度示しておくことによって、アメリカは絶対にこの条約違反をするようなことのないように防止ができる、そして日本の安全が守れる、こういう意味合いにおいて、何らアメリカの信頼を裏切るあなたの声明ではない。あなたは、アメリカのためよりも、日本国民のためを考えなければならぬ。日本の安全のために、これはやむにやまれぬ、どうしても、これは岸内閣として、この政策でいかなければならぬという断固たる態度を言明されても、何ら日本の不利益にはならない。また、アメリカと日本との相互関係や信頼関係がそれで阻害されるものではないと私は思うのです。もう一度伺いたい。
  77. 岸信介

    岸国務大臣 この条約は、両国が誠実にこれを履行するという信頼関係に立って締結されております。もしも、この信頼関係を裏切るような条約違反があるならば、相手の国は、その信頼を裏切ったところの締約国の態度に対して、これを中外に明らかにし、そして、それに対するその国の見解を明らかにするということは、これは私は、当然されることだと思います。ただ、条約を破棄するかどうかというような問題に関しては、先ほど申したように、条約上の法律論としては重要な問題である、重要な問題の違反があれば破棄もできるという、国際法の従来の解釈をしておるわけでございますが、そういう事前協議の問題に関してだけではなくして、条約上の義務を、締約国の一方が、信義に反して履行しないという場合において、締約国の相手方がその不信行為に対して意見を明らかにし、これを相手国に通告するのはもちろんのこと、世界に明らかにするということは、私は、その事態によって当然そういうことは行なわれる、こう思います。
  78. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 今の岸総理の御答弁によって、私が考えていますように、そのような義務違反行為があったならば、条約破棄宣言もいたしたい、こういうお考えである、私はこう受け取るものでございます。つきましては、条約局長にお尋ねしたいのだが、岸・アイゼンハワー共同コミュニケの中の「大統領は、総理大臣に対し、同条約の下における事前協議にかかる事項については米国政府日本国政府意思に反して行動する意図のないことを保証した。」このように、事前協議は最高度に尊重するという意思を、アイゼンハワー大統領は言明しております。これにつきまして、ただいま例にあげた金門、馬祖に事態が起きて、日本が拒否したにかかわらず在日米軍が出動をした、こういう事態が起こった場合に、これは重大なる条約の義務違反になるかならないか、法理論的にお答えを願いたい。政治的な答弁は差し控えて、法理論的に御答弁を願いたい。
  79. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 これは協議事項でございます。協議事項のわが方の意思に反して行なったということでございますから、これは非常に重大な問題であろうと思います。
  80. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 ただいまの答弁は非常に政治的な答弁で、法理論的でなければ困る。それは条約破棄をもたらすべき重大なる義務違反になるかどうかといこうとを言っている。政治的に重大じゃない、法律的に重大であって、条約破棄の原因ともなるものであるかどうかということをお尋ねしたい。そして、条約義務違反になるかどうか、単なる共同コミュニケ違反であるかどうか、その二つ。
  81. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 重大なる条約義務違反でございます。
  82. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 そうしますと、これは共同コミュニケ並びに交換公文に違反をして、日本の拒否にかかわらず、在日米軍が金門、馬祖に対して出動したということになれば、重大なる条約義務違反になる。それに対して日本は、そういう事態が起こったならば、岸総理は破棄宣言もあえてするとお答えになったと思う。そのように解釈していいかどうか、総理からお答え願いたい。
  83. 岸信介

    岸国務大臣 法理論として、条約上の重要なる事項、——われわれから申して、五条や六条の規定は、本条約の中におきましても重要なる事項でありますから、その義務違反がありとすれば、条約上重要なる義務違反であると私は思います。また、条約局長の答えたこともそうであります。しかして、条約上の重要なる義務違反があった場合においては、従来の法理解釈として、条約の廃棄もでき得るという従来の国際法の解釈をとるべきものである。しかし、そのときにどういう措置をとるかということは、これは政治的に考えなければならないということを申し上げておきます。しかして、いかなる場合におきましても、そういう義務違反があった場合において、われわれは、締約国の相手国がそういう不信行為をしたということに対して、その事実を明らかにし、その反省を求めるということについて適当な措置をとることは当然であるということを申し上げておるのでありまして、その場合において、必ず条約破棄の宣言をするのだという、そういう具体的の措置を前提として私がお答えしておるものでないということを、御承知願いたいと思います。
  84. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 その場合にどう言うか、適切な措置をとる、相手の反省を求める、そんなことでは問題にならない。要するに、適正な措置をとらなければならない。適正な措置で一番いいのは、世界に向かって破棄宣言をすることであります。それをやるのかやらないのか、それを尋ねておるのです。破棄宣言をするのか、それとも、アメリカに、二度とそういう違反行為を繰り返さないでくれという反省を求めるだけなのか、そうではなくて、それではだめだから、これは明らかに、日本安保条約はもう解約するのだ、そうして、今や日米のそういう関係はなくなるのだということでなければ、日本の安全は保てないと思うのです。そうでなければ、日本全国が攻撃を受けるのです。そういう重大なときであるから、日本の安全を守るべき日本政府が、日本国のためにとることについては、世界じゅうが了承するのです。アメリカは文句は言えないのです。だから、ここに勇敢に、そういう重大な条約義務違反があったならば破棄宣言を断固としてやるとおっしゃることが、この条約を両国がなお誠実に守る基礎にもなるのであって、これは決してアメリカに対して感情を害するようなことにはならないと思う。何を御心配になるのか、もう少しはっきり御答弁願いたい。
  85. 岸信介

    岸国務大臣 そういう場合にどういう措置をとるかということは、少なくとも、その事態に応じて考えなければなりません。必ず条約破棄の宣言をするのだという具体的の措置をきめてかかるということは、私は適当でないと考えております。もちろん、私は、ただアメリカに反省を求める、そういうことを将来繰り返しては困るというような、簡単なことで済まそうということではございません。これを中外に明らかにすることは、当然のことであろうと思います。日米の間の条約上の重要なるなにに対して、アメリカがそれの信頼を裏切っておるという事実は、その事態に応じて、適当な方法によって明示するということは当然で、何も、私はその点においてちっともちゅうちょするものではございませんが、ただ、具体的に、その場合においては必ず条約破棄の宣言をするのだという一つ措置に限定してこれの行動を申し上げることは、将来の問題の中において適当でなかろう、今の問題は、全然一つの仮定に立っておりまして、どういう事態であり、どういう状況であるかという各般の事柄を一切取り除いた抽象的な議論でありますから、そういうふうな、具体的な措置一つに限るという御意見は適当でなかろう、こういうことを私は申し上げておるのであります。
  86. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 それでは、条約破棄もしくはそれに準ずるところの強硬なる措置をとる、こういう程度のお考えを持っておるかどうか。
  87. 岸信介

    岸国務大臣 何も金門、馬祖だけに限る問題ではもちろんございませんが、アメリカがそういう重要なる条約上の義務に違反したという場合においては、今お話しのように、私は、もちろん強硬なる措置をとって、そして、日本の立場を明らかにするということは、日本の平和と安全のためにも必要である、かように思っております。ただ、具体的に、この一つ方法でやるんだというようなことは適当でなかろう、こういうことを申し上げておるのであります。
  88. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 私は、この問題をこのようにしつこくお尋ねするのは、もし、今のような問題に対して政府が断固たる態度をとれないようであるならば、事前協議交換公文、ことに岸・アイク共同コミュニケなどというものは、およそナンセンスだ、なくても同然である。だから、金科玉条のように言うこの第六条に関する交換公文、あるいは共同コミュニケにおけるアイクの誓約というようなものが空文に帰する。これは各委員から、事前協議について各方面からその立証が行なわれておりますが、わずかばかりの事前協議にかけられる事項さえもが、今のように何ら意味のないものになる。このようなことでは、この条約は根底から危険きわまるものだという結論にならざるを得ないので、もし、岸さんが確信を持って、この条約日本のためにいいのだというならば、今くらいのことははっきり宣言し得る主体性がなければならないと考える。そういう意味でお尋ねしたのでありますが、関連でありますから、あとは別の機会に譲りまして、私の質問はこの程度にとどめます。
  89. 受田新吉

    受田委員 総理条約の重大な違反行為に関しての決意を表明されたわけでございますが、懸案の、もし金門、馬祖へ攻撃が加えられるというような事態が起こった場合、現段階においては、事前協議総理は必ずこれを拒否するという態度がきまっておるのですか。
  90. 岸信介

    岸国務大臣 その点について従来御質問がありましたときに、私は、こういうお答えをしております。速記録をごらんになればはっきりしておりますが、金門、馬祖において先年起こりました事態においては、日本の基地を使用して米軍の出動した事実はない、それからまた、ああいうような状態の事件が起こった場合において、米軍がもしも出動しようという場合においては、私は拒否いたします、こういうことを申し上げております。その点は、速記録をごらん下すっても、私の申し上げておる通りであります。
  91. 受田新吉

    受田委員 そうしますと、金門、馬祖、極東の範囲から除いてしまったと同じようなことに政治的にはなってしまいますね。
  92. 岸信介

    岸国務大臣 極東の解釈、極東の範囲というもの、それから米軍の出動に対して日本がイエスと言うか、ノーと言うか、そのときの事態というものを勘案しなければ言えないわけでありまして、極東の範囲というものは、私どもは抽象的に考えるべき問題であって、どの島が入るとか、入らないとかいうことを申すのは適当でないというお答えを申し上げております。従って、今そういう具体的な島をあげて、これが入るとか、入らぬとかいうようなお答えをすることは適当でないと私は考えております。問題は、極東の範囲だから、そこには当然出ていくとか、あるいは断わるから、それは極東の範囲から除くんだという性質のものじゃない。極東の範囲内におきましても、われわれは、そこに出動しようという場合の米軍に対して、その事態によってイエスと言う場合もありますし、ノーと言う場合もあるのでありまして、極東の範囲であれば常にイエスと言わなければならない、そんな問題じゃない。従って、今申し上げました論拠から、金門、馬祖が極東から除かれるというような受田君の御意見でございますけれども、私は、それは承認いたしません。
  93. 受田新吉

    受田委員 この問題は、午後あらためて討議をする重大な問題として残しておきますが、私は、一言、条約の履行に関して重大な違反行為があった場合には、一方的な破棄通告もできるという、はっきりした政府の見解が表明されたことを、ここで了解をしてよろしゅうございますか。
  94. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 その通りでございます。ただ、それは国際法の純粋な理論的な問題として申し上げた次第でございまして、これはその通りでございます。
  95. 小澤佐重喜

    小澤委員長 この際、堤ツルヨ君より関連質疑の申し出があります。これを許します。堤ツルヨ君。
  96. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 私は、岸総理に、これからもありますから、簡単にお尋ねをしたいのですが、その前に、私がさいぜん発言しましたことについて、急ぎまして言葉を落としておりますので、念のために直しておきます。  一年何カ月か前の衆議院議員選挙で四六・何%の票をとられた自民党というのは、有効投票数の四六%でございます。従って、たしか二割近くの棄権者がございましたから、選挙民全体からいえば、自民党に与えられた当時の選挙民支持率は、全選挙民の三二、三%にすぎない、こういうことをつけ加えておきたいと思います。  それから、この間から幾人も質問に立ちまして、私非常に不思議に思いますことは、総理から受ける印象は、口約束でお互いに了解がつけてあって、かたい取りかわしがしてあるから、文書は要らないというので、いつもお逃げになるのです。国会審議は、なるほど新安保条約は安心ができる、それならよろしい、国民賛成してくれる一番よいチャンスだと思うのです。従って、この方法よりはあの方法、それよりももっといい方法があるならば、そういうより安心する方法をとられるのが、総理政府のなすべき安保改定に対する態度だと私は思う。ところが、たとえば、国民がだれも見ておらないところで、私は核武装、核兵器の持ち込みについてかたい約束がしてあって、意思表示がしてありますから間違いないのでございます、こうおっしゃいましても、それは国民が前におって聞いておったものでもなし、また、当時の会談が録音されておって、これが法的な有効力を持つというものならばともかくといたしまして、やっぱり文書にしたものを残しておくということがより安心な方法ではないか。たとえば、簡単な男女間の問題にいたしましても、私はあなたと間違いなく結婚をいたします。今の妻を離婚してでもあなたと結婚いたしますという男性がよくあります。その場合でも、ほんとうに間違いのない男女間の取りつけというものは、やはり法的に、婚姻届を役所にすることによって、初めて女性の弱い立場が対等の立場になる。口の先でごまかして、そのうちに結婚する、結婚すると言いながら、第一線を越えてしまって、そうしてずいぶんほんろうされた女性があります。そういうことを考えてみるときに、弱い日本政府の立場というものは、力関係において絶対の格差があるのでございますから、弱い方の日本の立場から、文面にして、はっきりと拒否権をこの中に置いておくとか、統一解釈を合意議事録に残しておくとか、極東の範囲を明文化しておくとか、いろいろな証拠を文書の上に残して、単なる口約束だけでなしに、よりどころを国民にはっきりと示して、この安保改定に対するところの安心感を国民に与えるということが、よりよい方法ではないか。従って、合意議事録や統一解釈、あるいは拒否権を文書になさるべきであるということを再三各委員が言いましても、口約束はいいんだけれども、文書はかなわぬのだというところが多分にある。一体これはどうしたことなんです。口約束ができることならば、なぜ文面にはっきりできないのですか。これが問題であります。そこはどうですか。
  97. 岸信介

    岸国務大臣 これは、われわれが外交交渉をいたしまして、どうせ文書にいたしましても、文字の解釈というものが残るのでございます。やかましく言うならば、さらに、その解釈のまた解釈が要るというような議論も出てこようと思います。念には念を入れろという御議論から言うならば、これはそういうこともできるだろうと思います。しかし、交換公文で、この事前協議というものの解釈は、拒否権があり、それからなにがある。ノーと言った場合において、それに対して行動しないということが事前協議ということの解釈であるという、この解釈問題について、両当事者の間に意見が一致しており、多少の疑義を明らかにするような意味において、アイクとの共同声明においてもそれを確認しておるというような手段が講ぜられておるのであります。それで十分であるか、あるいは非常に不十分であるかということがこの議論の相違であろうと思います。私は、決して口約束だけですべての問題を解決しようということではございません。しかし、同時に、どうせ使うところの条約上の文句につきまして、すべての解釈を合意議事録や交換公文にみな入れるという問題は、これは従来の外交交渉の慣例から申しましても、そういう問題ではございませんから、解釈上に残るところの問題もございます。その解釈上の問題について両方の意見が一致しないというようなことがあってはなりませんから、そういう点について、打ち合わせをしていることは確かにございます。しかし、それをことごとく文書にしなければならぬというような御意見でございますけれども、その点についての、ある程度の、重要な根本的なことは、これは文書にすべき問題であり、また、文書にすべきものは文書にしてあるというのが私どもの所信であり、それに対しての御批判がいろいろ出ている、こういうことであると思います。
  98. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 この安保改定に対するところの国民の疑惑は非常に深い。一人や二人の人を説得し、釈然とせしめるのには、あるいは口先やその場限りで追っつくかもしれませんけれども、一億近い国民に安心を与えるためには、明文化することの方がよりよい方法であるということは常識なんです。現にこの国会審議を聞いておって、なぜ岸さんは明文化することをいやがるのだろうといって、不思議がっておる国民が一ぱいあるのです。あなたのお考えは最上のものでないということを指摘いたしまして、あとに残しまして、時間でございますから私の質問を終わります。
  99. 小澤佐重喜

    小澤委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時四分休憩      ————◇—————     午後一時四分開議
  100. 小澤佐重喜

    小澤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、竹谷君より資料と要求について発言を求められております。これを許します。竹谷源太郎君。
  101. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 ただいま審議されておりまする日米安保条約は、わが国将来の運命を決するところの重大な条約でございます。それがために、われわれは慎重な審議を通じてこの条約の本質を明らかにするとともに、国民にも十分に理解してもらい、国民の公平な判断を求めることを必要と認めるものでございます。こういう意味で、われわれはあらゆる角度から真剣に審議を展開しておるのでありまするから、政府並びに与党は、この審議をわれわれの意識的な引き延ばしなどという、あられもない中傷を慎まれまして、われわれの十分な審議に応ずる義務があることを銘記されたいのであります。従いまして、先日のような中間報告で議決を強行するというのは、断じて許されないものと確信するものでございます。われわれは、この段階におきましてすら、審議を進める上で、なお多くの資料を必要とする状態でございます。将来も審議が進行するにつれまして、さらに多くの資料を必要とするものと思いますので、政府審議を円滑ならしめるため、十分な考慮を払われることを求めるものであります。本日は、さしあたり次の八つの資料を要求いたします。政府は直ちに取りそろえて本委員会提出をされたい。委員長の適当な処置をとられんことを望む次第でございます。  その資料の第一は、安全保障条約改定交渉の経過における会議録をまず要求したい。  第二は、条約第六条の、これに関する交換公文の中に、配置における重要な変更、それから装備における重要なる変更、戦闘作戦行動、この三つの事項に関する日米間に何らかの同意がなければならないと思う。従って、その合意書の提出要求したい。  第三は、一九四二年五月二十六日に調印された英ソ同盟条約。  第四に、一九四四年十二月十二日調印された仏ソ同盟条約。この二つは今失効しておりまするけれども、安保条約審議上非常に参考になると思いますので、この英ソ同盟条約、仏ソ同盟条約、これをお出しを願いたい。  それから第五に、ボン協定でございます。これは未発効のものがあるかもしれません。また、発表されていないものがあるかもしれぬ。しかし、これは政府におかれて入手された限りのものでけっこうであるから、このボン協定を出していただきたい。  第六は、米比基地協定の改定されたもの、新しい米国・フィリピンの基地協定、これを御提出を願いたい。  それから第七に、米国とイラン、米国とパキスタン、米国とトルコ、これら三つの同盟条約、これは一九五九年三月に調印されたものでありまするが、この三つの同盟条約を御提出を願いたい。  第八は、外務省の情報文化局が発表したといわれておるところの新安保条約に関する解説書、これを出していただきたい。これは本委員会で、質疑にあたって一昨日岡田君から引用されたものでございまして、秘密ではないだろうと思う。これを至急に御提出を願いたい。  以上、八つの資料をほしいのでありまするが、条約に関しましては正文と日本語訳と、この両方を取りそろえて、至急本委員会に参考として御提出を願いたい。この点に関して委員長の処置をお願いしたいのでございます。
  102. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 ただいま資料の御要求としてお述べになりました八つにつきまして、条約関係、米比その他の協定は、まだ改定交渉中でございますので、現在のもの以外にはないかと思います。それから米・イラン、あるいは米・パキスタン、トルコ等につきましては、一九五九年三月のもの、そういうものであればむろん出せると思います。それから、外務省情報文化局の新安保解説書というのは、外務省で出しました情報文化局の文書として御提出しますが、どれをさしておるのかわかりませんから、全部出すことにいたします。それから、英・ソ同盟条約、これも出せると思います。ただ、ボン協定はまだ未発効でございまして、提出することは不可能だと思います。なお改定交渉に関する会議録は、提出することはできません。それから、交換公文の、配置、装備その他に関する合意議事録があるだろうということでありますけれども、合意議事録はございませんので、提出いたしかねます。
  103. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 出せるというものは問題ありませんが、ボン協定は未発効ではございましょうが、政府が入手したものがあろうと思います。ボン協定と今度の第六条の協定とどういう違いがあり、また、似寄った点があるか、これは新行政協定審議上非常に重要でありまして、政府で入手しておるものでけっこうでございますから、ぜひ出してもらいたい。  米比基地協定は、改定ができたのじゃございませんか。今交渉中であるとすればやむを得ませんけれども、これまた、出せる資料等の部分があれば、出してもらいたい。  それから、安保交渉の経過における会議録、これは出せないということであるが、出してもいいんじゃないでしょうか。重要な条約を、どのような経過において調印までに至ったのであるか、そういうような点は非常に重要な問題でありまして、そのような秘密主義をとらないで、ぜひ出してもらいたい。  それから、条約第六条の実施に関する交換公文中の配置、装備の変更、戦闘作戦行動、この問題はきわめて重大であり、政府は、一個師団以上とか、撤退はかまわないのだとか、あるいは核兵器持ち込みはこれに該当するとか、そういうようなことをおっしゃっておる。これはこの条約中の非常に大事な点でございまして、これがアメリカとの間に合意がないということになると、また非常に多くの問題がここに発生してくると思いますが、これはなければならない、ないはずはないとだれでも思っておると思う。これらはぜひ出していただきたい、もう一度御答弁願います。
  104. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 ただいま御答弁申し上げましたように、改定交渉中の会議録というものは、外交交渉の慣例から申しまして、出すわけには参りません。また、六条に関係します交換公文の配置、装備その他に関する何か合意議事録があるのではないかという御質問でございますが、そういうものはございませんから、提出はできません。ボン協定につきましては、未発効のものでありまして、その内容等につきましては、参考的に、ドイツ政府の好意によりまして、われわれは伺っておるわけでありまして、それを発表するわけには参りません。     —————————————
  105. 小澤佐重喜

    小澤委員長 質疑を続行いたします。受田新吉君。
  106. 受田新吉

    受田委員 午前中の質疑関連いたしまして、まずお伺いしておきたい点があります。それは、私けさ総理大臣にまっ先にお願いをしました、安保改定に関して国民の声がどうなっているかということを、率直に総理府の世論調査機関で調べてほしいと要求したわけでございますが、内閣審議室は、常に世論動向を確認するために調査をしておるはずなんです。安保のような重大な、国の基本に関する高度の政治性のある政策を取り扱う問題については、いち早くこれに手をつけておられなければならぬはずです。新聞社だけに世論調査を依頼して、政府がやっていないということはないはずです。内閣としては世論調査をどのようにやってこられたか、すでにあなたの都下の内閣審議室の方で世論調査はしておられると思います。それを一つお答え願いたい。
  107. 岸信介

    岸国務大臣 新聞に依頼して調査はいたしておりません。それから、調査室においていろいろな世論動向等について調査はいたしておりますし、また、調査すべきものだと考えておりますが、発表すべきようなこの問題に関しての世論調査については、私まだその報告を聞いておりません。従って、発表すべきものはございません。
  108. 受田新吉

    受田委員 新聞社に依頼するという意味でなくして、新聞社の方で自発的に依頼された結果のようになって、あなたにかわって世論調査しているようなことになっている。だから、内閣審議室が、安保改定についてすでに二、三回にわたって定期的にやっていると私は聞いておるのですが、やっているかいないか、これは一つ審議室の方の関係者から答弁させてほしい。
  109. 岸信介

    岸国務大臣 今責任者が来ておりません。
  110. 受田新吉

    受田委員 それでは責任者が来て、あらためてこの問題は確認することといたします。  そこで、条約の案文に関連してお尋ねを続けます。藤山さん、外務大臣として、かつて予算委員会で、二月二十六日であったと思いますが、わが党の今澄君の質問に答えて、この六条に関係した交換公文による事前協議事項の中で、米軍が減少したり、あるいは撤退したりする場合は協議の対象にならないのだという御答弁をされ、また、この間は堤議員の質問に対しても、そうお答えになっておられる。米軍の移動、すなわち、減少とか、撤退とか、こういう場合は協議の対象にならないということは、再確認してもよろしゅうございますね。
  111. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 日本から移動いたします、すなわち、撤退と申しますか、日本から日本国外に移動する、その場合には協議の対象になりません。
  112. 受田新吉

    受田委員 撤退のときには協議の対象にならないということになると、全面的な撤退、日本におる在日米軍が全面的に撤退するという場合も協議の対象にならないのですか。
  113. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 御承知のように、条約四条によりまして、この運営にあたりましては全面的に協議をいたします。ただ、今のお話の点は、事前協議の対象にはなりません。
  114. 受田新吉

    受田委員 四条による随時協議ということであって、六条による事前協議の対象にならない、そうしますと、拘束力は非常に薄いわけですね、事前協議の対象にならないということになれば。
  115. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 事前協議の場合には、特に重要な問題についてこれを取り上げて、交換公文に規定いたしたわけでございます。従いまして、それは重要な問題だ、特に関心を持つ問題だということは、はっきり申し上げられると思います。条約運営の全般にわたりまして協議をいたしますこと、これまた、重要であることむろんでございます。しかしながら、この場合には常時協議の対象として話し合いをしていく、こういうことでございまして、何かそういう問題が起こる前に必ずしなければならぬというような、持ち込みでありますとか、あるいは戦闘作戦行動に出るとかいうような、特殊のそういう行動に対して事前に協議をしなければならぬというのとは、若干性質が違うことはむろんでございます。
  116. 受田新吉

    受田委員 日本から在日米軍が全面的に撤退をするという問題は、そう重大な協議事項でないので随時協議の方に回して、事前協議の対象にしない、こう了解してよろしゅうございますか。
  117. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 今の御質問の全面的撤退ということは、条約の基本的な一つの問題でございます。単に部隊が移動するとかなんとかいう問題ではないのでありまして、全面的撤退ということが、どういう意味で御質問になっておりますか知りませんが、条約の本質の上からいいまして、全面的撤退ということは非常に重要な問題であること、これは当然のことでございます。
  118. 受田新吉

    受田委員 全面的な撤退といえども事前協歳の対象にならない、これは確認してよろしゅうございますね。
  119. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 全面的な撤退というのは、条約の精神の基本的な問題でございます。従いまして、条約の運営上これは重要な事項であるということは当然でございますけれども、部隊が動く直前に、何か事前に協議をするという問題ではございません。
  120. 受田新吉

    受田委員 そうすると、全面的な撤退ということは、事前協議の対象になるほどの重大な問題でないということに結局なると思うのです。そして、あなたのお立場から、全面的撤退ということは条約の基本の問題に関係するのであるから、何かはかに措置があるということならば、そのことをお答え願いたい。
  121. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 日本の安全と平和を守りますために日本の基地を貸しておるわけでございます。これが条約における根本的な精神でございます。従いまして、米軍が日本に平時駐留しておりますことが、この条約をして有効に働かせるゆえんでございますし、また、かねて総理その他が申しておりますように、いわゆる抑止勢力にもなるわけでございまして、これは条約の精神でございます。従いまして、無断でもってそういう行動をするというようなことは予想されないわけでありまして、条約の基本的な問題としてわれわれは考えていくことが当然だと思っております。
  122. 受田新吉

    受田委員 全面撤退という場合は、日本の安全を守るために米軍が全面撤退をして、たとえばグアム島、ハワイ、ミッドウェー島へ後退して、そこから日本を守るという形の全面撤退ということも考えられますね。そして、一朝有事のときにまた日本へ駐留する、こういう考え方も成り立つと思う。そのことはいかがですか。
  123. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 そういう特殊なケースをお取り上げになりますけれども、われわれが、今日日米安保条約を結びます常識上の立場からいいまして、われわれとしては、常時にここに駐留しておりますことが、当然日本の安全と平和の上に寄与し得るのだという考え方でございます。しかし、今お話しのありましたようなケースが絶無だとは、われわれも考えておりませんけれども、条約の精神からいえば、当然この条約というものは日本の安全と平和を守るために、日本がそのために基地の使用を許し、そして、そこに合衆国軍隊が駐留しているということが、基本的に必要であるという立場をとっておるのでございます。そこに条約の精神があること、むろんでございます。
  124. 受田新吉

    受田委員 あなたは今、日本から在日米軍が全面的に撤退して、私が今指摘したグァム島とか、ハワイとか、ミッドウェーなどの米軍の基地にたむろして、そこから日本の安全を守る、そういう場合が絶無とは言わない、こう言われたわけです。そういうことになりますと、もう一つ問題は、戦闘作戦行動中に米軍が全面撤退をするということも、絶無ではないとお考えですか。
  125. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 御承知のように、この条約の第五条におきまして、日本が攻撃されましたときには直ちに発動することになるわけであります。そういう意見からいきましても、日本の武力侵略に対する抵抗力として、合衆国軍隊がここから、いわゆる受田委員の言われる全面的撤退ということを考えることは、われわれ適当だと思っておりません。ただ、そういう特異な例証をお出しになりますから、そういうものも絶無ではないと申しましたわけでありますけれども、条約の基本的な精神からいえば、そういうことが、われわれのことが一番適当である、こう考ええております。
  126. 受田新吉

    受田委員 米軍が後方に退いて日本の安全を守るという立場、戦闘作戦行動中に、日本に米軍の基地を今まで持っていた分を、後方へ退けて、そこから日本を守るという立場、そういうことは考えられるわけですね。
  127. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 日本を守ると申しましても、日本が実際に、直接に武力攻撃を受けております場合には、やはり日本本土を守らなければならぬわけであります。それでありますから、日本本土に駐留しておりますことが一番適当であることは、当然のことだと思います。後方に出て守るというのは、適当だとは思いません。
  128. 受田新吉

    受田委員 米中が、日本にある基地から退いて、そして後方基地から日本に援護を送ってくる。日本に加えられた外部の武力攻撃に攻撃を加える。基地は後方に退いて、日本の基地からは全面撤退をするということが、作戦行動中においても考えられるじゃないですか。そういうことはあり得るですね。
  129. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 私は、当然あり得るとは考えておりません。日本のこの条約地域、いわゆる施政下というものが武力攻撃を受けるのであります。従いまして、その武力攻撃に抵抗するためには、やはり常時駐留していますことが適当である。そうして、それ以外の土地から日本を守るというようなことは、原則的には考えられません。
  130. 受田新吉

    受田委員 原則的には考えられないが、しかし、そういうこともあり得る、こういうことは言えますね。
  131. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 日本に駐留している軍隊とあわせてそういうことが有効であることは、それはあり得ると思います。しかしながら、第五条のような場合には、とにかく日本が直接武力攻撃を受けておるのであります。そういう場合に、日本以外の土地から援護することがあり得るんだということは、私ども軍事的知識の少ない者には考えられません。
  132. 受田新吉

    受田委員 総理、この外部の武力攻撃に対して、まだ戦闘作戦行動が行なわれておる期間において、米軍が後方に退いて、そこから日本を防衛する。外部からの武力攻撃に対抗するという場合、絶無とは言わないと藤山さんは言っておられるのでありますが、あなたとしても同様と考えてよろしゅうございますね。
  133. 岸信介

    岸国務大臣 この第五条の場合において、日本の施政下にある領土が他から武力攻撃を受けている、これに対して、日本が両方とも共同の危険と認めて武力行動をするという場合に、今お話しのように、日本に駐留しておる米軍が日本の基地を離れて、少し離れたところへ行って、そこから防衛することの方が有効適切だというふうなことには、私は常識的に考えられないのであります。もちろん、日本の基地にいるものが共同して外国からの武力攻撃を排撃する、しかし、日本の基地におるものたけではなくして、後方にあるところの米軍が、さらに援護的な立場においてこれに協力するということは、もちろんあり得ると思いますが、日本にいるところのものがその場合に後退して、有効なことができるんだ、というよりも、後退することの方が有効なはずだというようなことは、私はちょっと常識的に考えられないと思います。
  134. 受田新吉

    受田委員 私はさらに事前協議事項関連してからお尋ねを続けますが、全面的な撤退ということはあり得る。今藤山さんも言われておる。そうして移動と撤退ということにおいて相違点がどこにあるかということに対しても、国民の疑惑がある点でございますが、移動と撤退という言葉の解釈はどう違うのでございますか、ちょっとお答え願いたい。
  135. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 言葉の問題でありますから、あるいは専門家に言っていただいた方がいいかと思いますが、われわれ常識的に考えまして、日本から去る場合には撤退であって、その去る行動は移動であろう、こう考えます。
  136. 受田新吉

    受田委員 移動の場合、日本の基地から台湾とか、沖縄とか、南鮮とか、そういう地域へ移動する、こういう移動は、内容は撤退とは違いますね、日本から退いておるのだけれども。
  137. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 移動であって、日本から見れば撤退でございます。
  138. 受田新吉

    受田委員 これははなはだあいまいなんですが、日本から見れば撤退、そうすると、日本の場合は、撤退と移動とは同義語と解釈してよろしゅうございますか。
  139. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 条約上は同じだと思います。辞書の上からいえば移動と撤退は違うかもしれませんが、たとえば、今実例をお話しになるような場合においては同じであります。
  140. 受田新吉

    受田委員 日本から移動する場合は、その移動の量がいかに多くても協議の対象にならない、かように了解してよろしゅうございますね。
  141. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 移動にいたしましても、撤退にいたしましても、言葉の問題でございましょうが、日本国から日本国外に出ます場合に、事前協議の対象にはなりません。
  142. 受田新吉

    受田委員 その量がいかに多くてもならないのですか。
  143. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 事前協議の対象には、量が多くともなりません。
  144. 受田新吉

    受田委員 その移動が次の作戦基地に移される場合、日本から直接発進をしないけれども、たとえば日本の陸上大部隊にしても、途中で中継されて戦闘作戦基地に行動を移す場合は、これまた、今までの御答弁通り、協議の対象にならないということになりますね。
  145. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 日本から他の場所に移動した軍隊というのは、在日米軍ではございません。従いまして、事前協議の対象にはなりません。
  146. 受田新吉

    受田委員 その移動地域が戦闘地域である、そういうところへ移動する場合も入らないのですね。
  147. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 そういう場合も入りません。
  148. 受田新吉

    受田委員 日本の基地から直接戦闘に参加する、その場合は移動とは言わないわけですか。
  149. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 日本の基地を使いまして戦闘作戦行動をいたします場合には、当然事前協議の対象になります。
  150. 受田新吉

    受田委員 陸上の部隊に例をとります。今陸上はなくなりましたが、在日米軍の陸上部隊がここへまた入ってきて移動する場合、その移動先は戦闘参加の目的地である、こういう場合であっても、基地を直接日本が今使っていなければ、これは協議の対象にならないということになるのですね。
  151. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 その通りでございまして、日本の基地を直接戦闘作戦行動の基地として出撃するというようなときには、事前協議の対象になるわけでございますが、それ以外、移動いたしました軍隊がどうなるかということについては、特に事前協議の対象にはなりません。
  152. 受田新吉

    受田委員 これは非常に不満な点があるのですが、陸上にしても海上にしても——空軍の場合には非常に融通性がありますけれども、日本におる米軍の部隊が、戦闘参加の目的を持って他の地域に移っていく場合、きわめて明瞭に戦闘作戦に参加する目的である場合であっても、日本の基地が直接使われなければ、そこへ進んでいくことは何ら相談にあずからないのだということなんですね。
  153. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 日本の基地から戦闘に参加するために発進する、いわゆる戦闘作戦行動、それはむろん事前協議の対象になります。しかしながら、どういう地域におきましても、とにかく移動をしていくということについては、事前協議の対象にはなりません。
  154. 受田新吉

    受田委員 陸上部隊とか、海上部隊とかいうものが、某地域における戦闘に参加する目的を持って日本の基地から出ていく場合には、そこから直接戦闘地域に攻撃を加えていくという航空軍とは違って、一応基地から離れていくわけなんです。従って、陸上部隊や海上部隊の場合は、戦闘参加の目的で行動を開始しても、そこは基地を直接使用したものではないということになりますね。
  155. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 戦闘作戦行動の基地として使うことが適当でないわけであります。従いまして、単に移動をするということでありますれば、どういう地域に移動いたしましても、それは事前協議の対象にはなりません。
  156. 受田新吉

    受田委員 戦闘に参加する目的で移動が行なわれる場合も差しつかえないわけですね。
  157. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 参加する目的か目的でないかということを問わないわけでありまして、われわれといたしましては、他の基地に移動して参りますときには、事前協議の対象にはなりません。ただ、直接戦闘作戦行動を日本の基地からやります場合には、当然事前協議の対象になります。
  158. 受田新吉

    受田委員 そこは藤山さん、飛行機の場合なら、それはここから向こうへ攻撃を加えるということが、はっきりわかる場合が多いと思うのだけれども、今陸上部隊は撤退しておるが、また来る場合もあるということになると、陸上や海上の場合は、戦闘参加の目的で移動をするということが、あなた方の方でははっきりわからないので、それを協議の対象にしないのだ、こういうことになるのですね。
  159. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 御承知のように、日本の基地から戦闘作戦行動をいたしますときには、今申し上げましたように、事前協議の対象になるのでございます。しかし、日本の基地から離れまして他の基地に参りました後は、在日米軍ではございません。でありますから、その行動というものは、在日米軍として事前協議の対象にいたすわけに参らぬことは当然でございます。
  160. 受田新吉

    受田委員 これは途中で油をつぐ場合もありますね。ちょっとそこで寄港していく場合もある。午前中問題が起こった金門、馬祖を例にとります。金門、馬祖に紛争が起こった。そのときに、航空機の場合もあるし、海上部隊もある。日本の例を海上部隊にとります。横須賀の海上基地から金門、馬祖に直送する場合に、途中沖縄でちょっと油をついで、金門、馬祖に向いていく、そういうふうにはっきり目的地がわかっておる、戦闘に参加するために目的地がわかっておるが、途中で油をつぐ港が一つあれば、その場合は協議の対象にならないのでありますか。
  161. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 問題は、戦闘作戦行動に出るという場合には、戦闘任務を与えられて出るかどうか、こういうことに基本があります。そういうことを勘案して見ていくわけであります。
  162. 受田新吉

    受田委員 その戦闘参加の任務が与えられているかどうかを認定するのは、だれがするわけですか。
  163. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 これは事前協議でそういうところをただしていきます。
  164. 受田新吉

    受田委員 事前協議でたださなくて、日本の横須賀の基地から金門、馬祖に海上の在日米軍が戦闘参加の目的で動いていく、こういう場合は、これは条約違反ですね。
  165. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 交換公文がありますから、戦闘任務を帯びて出るという場合には、これは事前協議の主題となって協議に入るわけであります。それを、協議しないでもぐっていくというか、もぐっていっちゃうようなことであれば、これは条約の、あるいは交換公文の趣旨に反するわけであります。
  166. 受田新吉

    受田委員 そのもぐっていくかどうかということははっきりしない。向こうが言わなければわからないわけですね。こちらからそれを確認することはできないわけですね。向こうで申し出て、初めて事前協議の対象になるわけですね。
  167. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 これは、こういう場合に立ち至る前に、そういう事態がありますならば、第四条において、相当の情勢の判断、情勢の交換、こういうのが前にあるわけであります。そういうことがありますから、日本といたしましても、戦闘作戦行動に出るのかどうかということはわかるはずでありますが、なお一そう、この条約の趣旨からいいますならば、相手国、すなわち、アメリカ側といたしましても、そういうことを協議の場合に申し出るべきことが筋だと思います。
  168. 受田新吉

    受田委員 日本の基地から出かけていく在日米軍の目的地が金門、馬祖である場合を、もう一ぺん例にとります。金門、馬祖の紛争に参加するために在日米軍が移動する、しかし、そのときに沖縄へちょいと油の補給に寄れば、たとい直通して戦闘に参加する目的であっても、途中どこかで中継する位置があれば事前協議の対象にならないと解すべきかどうか。
  169. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 戦闘作戦行動に出る場合に、途中寄り道しても、その目的が戦闘作戦行動に出ていくということであれば、それは寄り通したから事前協議の対象にならぬということではなくて、やはり戦闘任務を帯びていく場合には、かりに寄り適しても、それは事前協議の対象になる。
  170. 受田新吉

    受田委員 それは、途中で寄り道をした場合でも、戦闘に参加する目的で行動が開始されておれば協議の対象になる、こういうことですね。
  171. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 寄り道して、そこでとまってしまえば別でありますが、どうしても最終の目的地へ行く途中の寄り道の場合には、これは事前協議の対象になります。
  172. 受田新吉

    受田委員 海上の部隊あるいは航空機でもけっこうですが、目的地へ行く途中に、沖縄で油を積んで、力をたくわえて出かけるということが普通考えられますね。日本の基地から発進して目的地へ行く途中、油を某所において積むためにおりる、こういうことがはっきりして日本から出かけていく場合は、事前協議の対象になるのですか。
  173. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 途中で油を補給しても、戦闘作戦行動に出ていくという場合には、事前協議の対象になります。
  174. 受田新吉

    受田委員 油を積みに寄るということは、向こう、すなわち、アメリカ側から提示されるわけですね。
  175. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 それは、油を積むか積まないかということの提示よりも、戦闘作戦行動に出ていくかどうかということで判定していくわけであります。
  176. 受田新吉

    受田委員 戦闘作戦行動に参加して発進したか、あるいは沖縄へ一応集結して、そこで勢ぞろいして金門、馬祖へ向いて行ったか、その区別はだれがするわけですか。
  177. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 それは事前協議の対象になっていることでありますから、向こうからの話もあるわけでありますし、その前に、先ほどから申し上げましたように、そういう事態になる前に、条約の施行について、あるいは平和、安全のために協議をしてありますから、そういう事態は、大体といいますか、ほとんど確定的にわかるわけであります。わかりますが、その上に向こうからも、そういう目的で出るのであるが、日本の基地をそのために使うのであるがどうかという話し合いは当然あるわけであります。
  178. 小澤佐重喜

    小澤委員長 この際、堤ツルヨ君より関連質疑の申し出があります。これを許します。堤ツルヨ君。
  179. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 これは私のこの間の質問とも関連いたしまして、まだはっきりしておらないのでございますけれども、もう一度私はお尋ねをいたします。  日本の基地から出る軍隊が戦闘作戦行動に入るか入らないかの認定をいたします場合に、任務を持っておるかおらないかということがその認定の基準になるということをお答えになっておると思うのです。その認定は、事前協議にしたくないというアメリカの司令部の意思があり、それから、日本に騒がれると困るから、できるだけ事前協議の対象にしないでおこうというような意思があったとして、戦闘作戦に出る任務を帯びておらないのだということで、いつもアメリカ側に突っぱられてしまいますると、戦闘作戦行動というものはあり得ない場合も起こってくるわけです。それについては、やはり日本側に、いかにごまかしても、戦闘作戦行動であるものは間違いなくキャッチできるという確認がないわけです。そこに問題点が私はあると思うわけでございまして、一つ、そこのところはアメリカの方から——この間の岡田春夫さんの核武装した第七艦隊の場合も同じだと思います。第七艦隊の方から、きょうは核武装しておりませんと言ったら、ああそうですが、きょうはしておりますと言ったら、ああそうですかといって、事前協議の対象にするんだと言うけれども、十のうち十まで、しておりません、しておりませんで運んじゃったらどうする。それは信用するんだとおっしゃいますけれども、そんなことはありません。ですから、私は、日本の側が対等に、戦闘作戦行動に出るのか出ないのかということを間違いなくキャッチできる方法というのは一体どういうふうに確信していらっしゃるか、そこをはっきりしてもらわないと国民は安心をしないわけなんです。そこを一つはっきりしていただきたい。
  180. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 午前中の議論と同じになりますけれども、今、堤さんの言われるように、アメリカはいいかげんなことをするんだという前提に立っては、この条約でもってこの約束はできないわけでございます。アメリカはやはり誠実にこの条約の趣旨を履行していくのだ。従いまして、アメリカが何かそういうようなときにはごまかしていくのだということでは、どんな条約を結び、どんな約束をいたしましたって、それは同じでございます。でありますから、午前中の議論とも同じように、アメリカは、やはりそういう約束をしました以上は、その任務の履行にあたって、自分たちがはっきりそれを申してくることは当然だと思います。それが前提でなければなりません。ただいま防衛庁長官も言われましたように、四条において常時協議もいたすわけで、また、随時にも協議をいたすわけでございまして、そうした前提のもとにわれわれはこの事前協議の問題を扱っている、こういうふうに、私の考えておるところを申し上げます。
  181. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 私は、誤解のないようにしていただきたいと思うのですが、私たちは、初めから、日米安全保障条約の改定をすると、アメリカが百パーセント日本をごまかそうとしてこれに取り組んでおる、こういう悪意を持って質問しておるのじゃない。竹谷委員もおっしゃいましたように、やむを得ぬ場合に、日本を欺かざるを得ない場合がないとも限らない、そういうときに一体どうなるか。しかも、そうした瞬間に戦争に巻き込まれる危険が日本にあるということが、この条約の不信になっておる中心だと私は思うのです。午前中に岸さんがお答えになったのをうまくまねられまして、そうして、アメリカを信用するのでなければ、この条約は成り立たないというところにお逃げになりますけれども、何だか私たちがこの条約を拝見しておりますと、アメリカの言う通りのケースで、このケースは核武装しておらないのだ、このケースは任務を帯びておらないのだと、向こうの一方的な通告によって、ああ、そうですか、ああ、そうですかといって、向こう様が好きなように基地を使い、戦闘作戦行動の目的を持って日本から働きかけられるような場合が多分にある。しかも、おかしいことには、この間、私がこういう質問をいたしました。もし、沖縄にいざこざが起こったといたしまして、日本からまっすぐに出ていくときにはどうかといえば、これは事前協議の対象になるとおっしゃった。ところが、事前協議の対象になるのがめんどうくさいから、一ぺんお義理で台湾へ寄らせて、台湾から沖縄に向かうときはどうかと言ったら、これは事前協議の対象にならないと、まるで子供だましのような答弁をしていらして、国民にはなかなかこれは釈然としないわけです。こういう点につきましては、いかにアメリカを信頼するから間違いはないのだとおっしゃいましても、私は、国民のほとんどは百%政府を信用することができない、こう思うのでございまして、もう少しはっきりした日本の立場というものが示されなければならないと思います。一体、任務を帯びておるのか帯びておらないのか、核武装をしておるのかおらないのかというような確認を日本がする資格も与えられておらなければ、積極的な方法もお持ちになっておらないで、アメリカの通告による、アメリカの通告によるというようなことでは、国民は納得いたしません。そこのところは何とかしなければならないのじゃないかという問題が起こっておりますから、繰り返し繰り返し質問が行なわれておる、私はこう思うのでございます。もう少し国民にはっきりとするように答えていただいて、もし、それで国民が納得しないものならば、何かはかの方法が要るのではないか、こう私は考えるわけでございます。
  182. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 むろん、常時協議をいたし、あるいは随時協議をいたしますから、こういう場合に、戦闘作戦行動のいわゆる戦闘命令を持っているかどうかというようなことについては、こちら側から聞きただすこともできます。しかし、戦闘命令書を発行するのはアメリカが発行するのでございまして、従って、それはアメリカ側から、信義によって日本に、こういう戦闘命令を持っていっておるのだ、あるいはこういうことを在日米軍に出したのだということがなければならぬわけでございます。それが条約の信義上の問題だと思います。しかし、ある部隊がこういうことを言っているが、そういうものを持っているのかということを聞くことを妨げるわけでは毛頭ございません。しかしながら、これは随時の協議でもできるのでございます。けれども、出しますものは、今、言ったようにアメリカが出します。ですから、アメリカは、そうはっきり言わざるを得ない。もし、そういうことを言わないでもって、秘匿して出しますようなことがありますれば、あとで当然わかることでございます。そういうことは、条約運用上の重要な問題になってくると思います。
  183. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 随時協議し、いろいろと前もって検討するのだからとおっしゃいますけれども、アメリカにとって都合のいい場合には相談を持ちかけてもらえる、そうして、日本には直前に通告すればいいというような判断のもとにアメリカが一方的にやる、こういうようなことになりますと、非常に困った問題が生まれてきはしないか。それから、戦闘作戦の任務を与えるのはアメリカだから、これには干渉できないとおっしゃいますけれども、任務を与えるのはアメリカの御自由だといっても、そのために日本が巻き添えを食う心配がこの条約の中にあるから私たちは論じておるのでありまして、それに対しましては、もっと政府としては積極的なお考えを持ってこれに対処されないと、したいほうだいをされるということになる、こういうふうに私は考えるのでございますが、アメリカがお出しになった任務でアメリカが行動するのだから、日本はそれに対して発言権を持たないとか、知らないとか、通告を受けたときだけ、それを聞いて善処するのだ、こういうような程度では、どうも屈辱的な、隷属的なものであると考えて決して間違いないと思うのであります。そこのところを、もう少し釈然とするように処置していただかなければならないと思いますが、いかがですか。
  184. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、四条の協議におきましても、随時あるいは常時協議ができるわけでございます。従いまして、こういう事態が出てくる場合に、そういう命令を持っているかどうかということを聞くことは、別に何でもございません。また、やり得るのでございます。ただ、しかし、作戦命令を出しますものはアメリカでございます。ですから、確実に出したということをアメリカが言ってくることが当然のことでございまして、事前協議の対象としてそれを約束しております以上は、アメリカがそれを出した以上は当然言ってくるということでなければならぬ。言ってきた場合に、われわれが事前協議によって、それに対してイエスかノーかという意思を表示いたすわけでございます。
  185. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 もっと突っ込んでいえば、戦闘作戦任務を持ったところの部隊が日本中心として動く場合には、間違いなく事前に本日に通告をして、協議の対象にしなければならないというところの確認を日本政府とアメリカ政府の間でやっておく、核武装をしているところの軍艦が日本に入って参ります前には、必ず報告をしてもらわなければ困る。もし、これをしなかったときには、重要な条約上の違反として、日本が確固たる態度がとれるというような確認がもしあるならば、私たちもこういうしつこいことを言わないのでございますけれども、大事な問題に触れておらないというそしりを私は免れないと思うのでございます。いかがでございますか。
  186. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 そのことが条約及び交換公文に書いてあるのでございます。
  187. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 ばく然としたところの、幾らでもごまかせる文章は書いてありますけれども、合意議事録的なはっきりしたものはない。これは、まだあとに質問がありますし、私、時間がありませんから、やめます。
  188. 受田新吉

    受田委員 藤山さん、私たちが心配していることは、国民もまた心配をしていることは、アメリカが何でも日本に率直に相談するというのであれば、正直に相談をするというのであるならば、あなたのお説のような点が貫かれると思います。しかし、先ほど竹谷委員の言われたように、肉親の兄弟でも、はっきりした証文をとっておかないとあとで問題が起こることがある。そういう意味で、事前協議という事項についても、はっきりと日本政府態度を表明しておかないと、アメリカの都合のいい解釈にされるおそれがある。たとえば、沖縄に勢ぞろいをして、出かけていく目的は、金門、馬祖の戦闘に参加する目的であるということがわかっておりながら、勢ぞろいの目的で沖縄に日本から移動する、そのことは、直接戦闘参加でないから事前協議の対象にならぬという今までの御答弁です。金門、馬祖に攻撃を加えるために油を積みに寄るのなら、これは事前協議の対象になるが、一応沖縄に集結する目的で、それから先に行くことはどうなるかわからぬような形で行った場合には、協議の対象に今まではならぬということになっているのですね。そこは非常にあいまいなんです。いかがですか。
  189. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 今まで申し上げた通り日本から移動あるいは撤退というか、沖縄に行くというような場合には、事前協議の対象にはなりません。そうして沖縄でもって集結して、それから何か戦闘作戦命令をもらっていくというような場合には、その場合は在日米軍ではございませんから、従って、事前協議の対象にならぬことは当然でございます。
  190. 受田新吉

    受田委員 その集結する目的が戦闘参加の目的であるということがわかっておってもですか。
  191. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 日本から出て参ります場合に、それがどういう目的であるかということは、普通の移動の場合には問う必要はないのであります。従いまして、沖縄に行こうとハワイに帰ろうと、そういう場合には事前協議の対象にはなりません。帰りましたものが今度どう動くかという問題は、その後の問題でありまして、われわれとしては、それは事前協議の対象にはならぬ。先ほど防衛庁長官答弁されましたが、日本の基地から戦闘作戦行動に出る場合、それは別個の問題であると申し上げたわけでございます。
  192. 受田新吉

    受田委員 沖縄へ油をつぎに寄ることと、そこで集結することとが全く同じような形で行なわれることが、これはあり得ますね。戦闘参加に出発した、しかし、油をつぎに寄ったことと、そこへ集結したこととは、同じような事態が起こりますね、これはどう判断しますか。だれがそれを判断するのですか、もう一度……。その次の行動が監視できない立場にあるのだから、最初に念を入れて相談しておかなければならぬ。
  193. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 戦闘作戦行動に日本の基地を使うか使わないかということから判断することでありますが、その場合において、先ほどから申し上げておりまするように、こういう交換公文がありますから、また、その前のいろいろな協議もありまするから、申し出とか、あるいはただすということによってそれを明らかにします。
  194. 受田新吉

    受田委員 私、今の撤退のところへもう一度返っていきますが、藤山さん、全面撤退は、先ほどあなたのお説の通り事前協議の方の対象にはならぬ、しかし、随時協議の方の対象になる、こういうことでしたね。ところが、地時協議という方には、何らかの拘束力があるのですか。
  195. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 受田委員の言われる全面撤退というのは、まあ、一兵もなくなってしまう、あるいは一つの飛行機も日本からなくなってしまう、このことは、現在の条約上の基本的な問題でございまして、事前協議の対象になっておりますものは、当然それは部隊の移動であること、むろんでございます。従いまして、そういうような、あるいは民社党の御意見からすれば、有事駐留と常時駐留のような形の差になるという問題は、これは条約の根本の問題でございまして、その点から判断すべき問題だと思っております。
  196. 受田新吉

    受田委員 実際の問題として、アメリカが日本以外の他の国と戦闘を開始するような危険を起こした、そこで、日本に米軍の基地があると日本に迷惑をかけることになるからといって、日本の基地を退いて後方に移動する、こういう場合も考えられますね。
  197. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 まあ、個々の事例をおあげになりますれば、日本にかえって迷惑をかけるから撤退するのだというようなケースも、それは想像すればできないことはございませんかもしれません。しかし、われわれは、第五条で、現に日本が武力攻撃を受けているというような場合に、日本に迷惑がかかるから撤退するのだというようなことは考えられないわけなんでありまして、われわれからいたしますれば、そういうようなことで撤退をするということはあり得ない、こう考えております。
  198. 受田新吉

    受田委員 あなたは考え違いしておられる。アメリカが、たとえばアジアのどの国かと戦うというような状態になったときに、日本とは直接戦闘は起っていない、しかし、日本に米軍基地があることによって、そこに報復攻撃を加えられるおそれがあるということになると、日本に迷惑がかかる、そこで、米国の後方の基地に日本にある米軍基地を移動する、こういうことが考えられるじゃないかということをお尋ねしておるのです。
  199. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 とにかく、日本の安全と平和を守るわけでありまして、そういうような状態の場合に、日本からいわゆる全面撤退をした方が適当なものであるかどうかという問題は、そのときの状況によって判断するほか、今から何とも申し上げかねます。しかし、建前としては、われわれ、やはり駐留しておりまして、そうして武力攻撃があることに対処していくことが必要であろうと考えております。
  200. 受田新吉

    受田委員 この条約の全体を通じて、日本に常時米軍が駐留していなければならないという規定はどこですか。
  201. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 御承知のように、第五条のような場合には、当然直ちに行動をとるわけであります。常時駐留しておりますことが適当だと考えております。
  202. 受田新吉

    受田委員 第五条のような状態は、緊迫した状況は予見できるわけです。平時における、——有事でないとき、そういうときに、後方にこれが後退して待機しておるという形の、そういう、いわゆる有事駐留ということがこの条約で認められないかどうかです。
  203. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 条約の精神から申しまして、施設及び区域を提供して、そうしてアメリカ軍が日本に駐留いたしておりますことが日本の平和と安全を守るゆえんでありまして、それが条約の根本趣旨でございます。従いまして、そういうことが適当であるということの上に立って、われわれはこの条約締結いたしておるのでありまして、そういう意味から申しまして、われわれは、全部がいなくなるというようなことを想定いたしてはおらないのでございます。
  204. 受田新吉

    受田委員 第五条の有事ということは予見できるとお考えですか、どうですか。
  205. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 有事ということはいろいろなケースがあると思います。従いまして、予見できる場合もありましょうし、予見できない場合もあることはむろんでありまして、常にそういう場合が予見できるとばかりは申し上げることはできない、こう思っております。
  206. 受田新吉

    受田委員 現在置かれている日本の環境、状況は、五条のそうした有事の予見できるような段階かどうか、お答え願いたい。
  207. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 これは総理も言われておりますように、有事が予見できるかできないかというよりも、やはり、一つの抑制力としてこの条約が効果を持つという立場に立ってわれわれは見ておるのでありまして、予見できるかできないかという問題以上に、そういう点がございます。
  208. 受田新吉

    受田委員 六条の米軍に対する基地提供の条項ですが、これは、いつも基地を提供し、施設を提供しなければならないという意味か、有事の場合だけに提供するという、そういうことも考えられるかどうか。
  209. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 第六条は、アメリカに対して施設区域を使用することを許すということでございます。許すということでございますから、今まで申し上げましたような条約の精神から申しまして、現状において施設区域を提供し、それに駐留してもらっておりますことが適当だと考えております。
  210. 受田新吉

    受田委員 そうしますと、適当だと考えておるけれども、また、一方において、例外として、いつも基地を提供しなくても、有事の場合に提供するという考え方でもいい。それから、あなたは、先ほど全面撤退ということは絶無ではない、ある場合もあるのだという御答弁であったのでございまするが、そうした意味で、日本の安全を守るという目的がはっきりし、そういう立場に立っておるならば、有事の場合に日本へ駐留して、有事でない場合は後方の基地で待機しておるという形も考えられますね。
  211. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 条約上あるいは法律的に申せば、今、受田委員のお話のことをこれは排除しておるわけではございません。しかしながら、この条約日本の平和と安全を守る、また、そうした際における常時の抑制力という見地から見まして、われわれといたしましては、常時に施設区域を提供し、また、アメリカもそれを使用して常時駐留しているということが適当であるということでございます。
  212. 受田新吉

    受田委員 外務大臣の御答弁だと、第五条において、また第六条において、日本の安全を守るために米軍が待機しておるという意味であるならば、米軍のとどまっている位置が日本国内から一時的に他の方面に移されておっても、それが日本の安全を守る体制にあるならば認められるということになりますね。
  213. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 法律的にはそうでございますけれども、われわれとして、今常時駐留してもらっておりますことが、先ほど申し上げましたように、総理が言われた戦争抑制力にも常時なるわけでございます。また、五条の発動するような場合におきましても、直ちに行動に移り得るわけでありますから、一番適当なことだというふうに考えておるわけであります。
  214. 受田新吉

    受田委員 総理大臣、藤山さんのおっしゃったように、この条約の解釈としては、法律的に見ても、有事駐留という形で日本の安全が保たれる形になっておるならば、それは考えられることである、さように了解してよろしゅうございますか。
  215. 岸信介

    岸国務大臣 この条約全体の考え方は、外務大臣が今申し上げておりますように、日本の基地を米軍に提供して、米軍が常時駐留しておることが、日本の安全を守る上から適当であるという考えに基づいて、この条約はできております。しかしながら、条約の解釈としては、今受田君も言われるような、いわゆる有事駐留ということを否定する、そういうことはできないんだという解釈は、私は成り立たぬと思います。
  216. 受田新吉

    受田委員 さらに、私、この機会に防衛庁長官にお尋ねを申し上げたい点があります。この六条の交換公文にあるところの配置、装備に関係して、大量な兵器が日本へ流れてくるという場合がある。その兵器の量というものは、どの程度のところから事前協議の対象になるのか、一つ答弁願いたい。
  217. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 軍隊の装備における重要な変更につきましては、今予想されるものは、核装備だけであります。でありますから、大量の兵器が日本に打ち込まれるということは、この装備の中には予想しておりません。
  218. 受田新吉

    受田委員 その大量の兵器というものの内容は、どういうふうに考えられますか。
  219. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 大量の兵器というものがどういうものか、御指摘がありませんから、よくわかりませんが、たとえばミサイルを打ち出すランチャー、こういうものを持ち込むということは、核装備と同様でありますから、これは拒否することになります。その他大量の兵器ということは、どういうことをおさしでありますか、その点を伺いませんと答弁できません。
  220. 受田新吉

    受田委員 大量の兵器という場合に、通常の艦艇で上陸用舟艇のようなものを大量に日本へ持ってくる場合もあり得る。その量の限界はどういうことになるか。
  221. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 上陸用舟艇を持ってくるというようなことは、装備における重要な変更には相なりません。しかし、それを大量に持ってきて、この第一項といいますか、日本国内における配置として、それに伴って多くの人員が配備される、こういうことになりますと、第一項の方の事前協議の対象になりますけれども、上陸用舟艇がきただけということは、装備における重要な変更ということには該当いたしません。
  222. 受田新吉

    受田委員 そうしたら、いかほど大量の兵器を持ち込んできても、事前協議の対象にならない、かように了解してよろしゅうございますね。
  223. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 それは装備の重要な変更ではありません。しかし、配置において、大量の人員を伴った配置ということになれば、これは事前協議の対象になります。
  224. 受田新吉

    受田委員 人間と武器とが結び合っていなければいけないわけですか。
  225. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 当然結び合わなければならぬと思います。ただ、ものだけ持ってくるというようなことは考えられません。そういう点で、配備という点から検討する必要はあると思いますが、今問題になっております装備における重要な変更ということで、事前協議ということには相なりません。
  226. 受田新吉

    受田委員 この機会に、藤山さん、赤城さんに、一言、事前協議事項問題点整理する意味で、お尋ねしておきたい点があるのです。第六条の基地の提供について、この条文では、日本のどこの基地をアメリカに貸してもいいということになる。どこを要求されても、これに対して反対ができないというような形になる危険があると思う。この基地提供に対しての固定化とか限定化とかいうものは、政府としてはお考えにならなかったのですか。
  227. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 施設区域の供与につきましては、合同委員会等で話し合いをいたしまして、合意に達しなければ提供はいたさないことに相なるわけであります。そういう意味において、地域的には限っておりません。日本のどこに基地をほしいということは、地域的に限ったわけではございません。しかし、そういう施設区域を提供するというような場合には、合同委員会等で話し合いをして、不適当なところは提供いたしません。
  228. 受田新吉

    受田委員 日本の全土が、地域的に限定されてないとすると、全土が基地化するという危険も考えられますね。
  229. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 日本の全土が基地化するということは、全然考えられません。御承知の、日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並び日本国における合衆国軍隊地位に関する協定、すなわち、従来の行政協定、この第二条にこう書いてあります。第二条一項に「合衆国は、相互協力及び」云々、そうして「個個の施設及び区域に関する協定は、第二十五条に定める合同委員会を通じて両政府締結しなければならない。」でありますから、個々に合同委員会できめるわけであります。日本全土が基地化するということはありません。
  230. 受田新吉

    受田委員 私のお尋ねしているのは、日本の全土をどこでも基地にする可能性がある。この地域は基地とすることができないというような条件がつけてない。基地たらざる地域が限定されてない。どこでも基地に指定される危険があるということを私はお尋ねしておる。
  231. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 従来もそうでありますが、今度の条約によりましても、個々的にきめていくわけでありますから、勝手に日本のどこもここも基地に使うということは、これは許されません。日本政府がそれに同意いたしません。
  232. 受田新吉

    受田委員 そのことは、個々の話し合いでできる機関はありましても、日本の国土のどの地域も基地となり得る危険があるわけですね。それだけはあなたはお含みになっておるわけですね。
  233. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 日本のどこも基地になる危険があるのではなくして、どこも基地になる危険がないのでございます。
  234. 受田新吉

    受田委員 あなたは、それは非常に問題のある発言なんですが、日本側ノーといって拒否することができればいい。しかしながら、日本意思を無視して強制的にこれを押しまくられるということが、日本とアメリカの相互関係において、弱い立場に立つ日本の弱さです。従って、基地を現在よりはふやさないとかいうような約束がとれるならば、あなたの今の勇気のある御発言に大いに敬意を表することができると思うのですけれども、今後新しい基地を提供することはないという、その自信はありますか。
  235. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 新しい基地を提供するかしないか、これは合同委員会できめることであります。勝手にやられるのじゃないかと言いますが、条約の第六条によりましても、施設及び区域を供与することが許される、これは日本政府の同意なくしては許されません。でありまするから、そういう御心配はないと確信いたしております。
  236. 受田新吉

    受田委員 許されるということは、どこの基地でも提供を要求された場合には、日本は許さなければならぬという含みもあるわけです。従って、許されるということは、基地をどこへ指定されてきたときでも、双方の意思が一致すれば、そこが基地になるわけですよ。
  237. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 安保条約の六条によって許されるということは、日本からいえば許すことです。しかし、それでは全部を許すのかといえば、そうではなくて、先ほどから申しましたように、行政協定第二条によって、個々の施設及び区域に関する話し合いは、合同委員会において両政府締結しなければならない。日本政府反対がありますならば、それができないわけであります。
  238. 受田新吉

    受田委員 そのことはわかっているのです。そのことはわかっているのだが、しかしながら、日本の全地域において、ここは絶対に基地とすることができないという約束はできないわけなんです。日本のどこでも、話し合いがまとまれば基地化することになる、こういうことなんです。それはおわかりですね。基地の限定化……。
  239. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 話し合いがまとまれば、その場所が基地になりますけれども、日本で不適当と考えますならば、それを拒否しますから、その場合には基地になりません。
  240. 受田新吉

    受田委員 だから、話し合いがまとまれば、日本の全土のどの地域も基地化する危険もあるということになる。だからこの際、現在提供している基地以外には基地を提供しないというような約束がとれておれば、非常に前進だと思うのですが、その双方の合同委員会の結論が一致すれば、日本のどこが基地になるかわからないという危険に立っておるわけですね。
  241. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 現在以上にふやすという方針を持っているわけではございません。御承知のように、事前協議におきましても、重大なる配置の変更がありますならば、事前協議をするわけでありますから、特に基地を拡大するという方針は持っておりません。御心配のように、日本とアメリカ側と合同委員会できめれば、どこでも基地になるのじゃないか、これは一つの思い過ごしでございます。そういう危険があるのじゃないかというのは思い過ごしで、私どもはそういう全基地化ということがないために、こういうふうに六条にも、あるいは行政協定の第二条にもきめておるのですから、そういう危険はないということは、先ほどから申し上げている通りであります。
  242. 受田新吉

    受田委員 六条によって、基地が新しく設定されることが阻止される規定をどこへ見出すことができますか。
  243. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 別に阻止するということを規定する必要はないと思います。行政協定の第二条によって、個々にきめていけばいいのであります。これは日本の実態、実情を考えて、話し合っていけばいいわけであります。
  244. 受田新吉

    受田委員 あなた方の話し合いは、とかく日本側が弱い立場に立っている関係上、アメリカに押しまくられることが多いわけなんです。そこを、今回のような条約をきめ、新しい協定にかわる約束をしようというような際に、はっきりと基地の限定化、固定化ということを約束するような形のものを、何らかの形で取りつける必要がなかったか、私はその点を伺っておきたい。
  245. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 基地を供与するのは日本側であります。日本側がわざわざそれを限定する必要はありません。きめるときに、日本側が適当と思うところをやればいいのでありますから、何も向こうへ初めから証文を出しておく必要はないのであります。日本が幾らでも自主的に供与することができるわけであります。
  246. 受田新吉

    受田委員 現在提供している基地以外は提供しないという、そういう形のものは、あなた方としてはようおとりにならぬわけですね。
  247. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 これは申し出がありました場合に、不適当でありますならば供与いたしません。
  248. 受田新吉

    受田委員 現状において、基地をふやすという考えはない、そういう要求があっても、日本側は拒否するという段階をお考えですか。
  249. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 それは具体的な個々の場合でなければ、今あらかじめ申し上げられませんが、考え方としては基地をそう拡大するという考え方は持っておりません。
  250. 受田新吉

    受田委員 考え方としては、基地はふやさぬという方針と了解してよろしゅうございますね。
  251. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 先ほどから申し上げておりますように、個々的にこれはきめていかなければならぬ問題でありますが、方針とかなんとかいうよりも、考え方としては、当然そう基地を拡大するという考え方は持っていないわけであります。
  252. 受田新吉

    受田委員 赤城さんに関係する問題がその次にころがっているわけでございますが、先ほどから米軍の撤退の問題に触れたわけですけれども、今、日本にいる在日米軍が今後撤退計画をどのように持っているのか、これをまず伺いたいと思います。
  253. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 在日米軍は、岸・アイク会談によりましてほとんど撤退いたしております。ことに陸空等におきましては、もう戦闘部隊はおらぬような状態であります。でありますから、今後撤退するという計画は私どもはあまりないと思いますが、レーダー・サイト等が日本に移されますので、そういう方面の一部部隊の撤退ということはあり得ると思いますが、大量的に撤退するというようなことは、今予想されません。
  254. 受田新吉

    受田委員 レーダー・サイトの撤退が考えられる、これは一つの問題だと思うのですが、そのサイトの撤退後における米軍と日本との指揮関係というものは、どういうことになるのか。
  255. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 レーダー・サイトを日本側が引き継ぎましたあとも、米軍の要撃部隊がおります限り、防空指揮所、すなわち、ADDC及び防空統制所、すなわち、ADCCにアメリカ軍の連絡員が残っておりまして、これは残ることになります。指揮系統でありますが、これは米側の要撃部隊に対しまして要撃管制を行なう、こういうことに相なります。
  256. 受田新吉

    受田委員 要撃管制とはどういうことになるわけです。
  257. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 今の防空警戒組織のことを簡単に御説明いたしたいと思います。  まず、警戒管制所というものがありまして、ここでレーダーを持っておりまして、機影をキャッチするわけでございます。それをただいま大臣のおっしゃいました防空指揮所の方に連絡いたします。防空指揮所の方で敵味方の識別その他の処置をいたしまして、さっきこれも大臣のおっしゃいました防空統制所へ連絡をするわけでございます。防空統制所の方から中央の方へ伝達がありまして、それから命令がそれぞれおりてくる。米軍は米軍の系統で命令がおりてくる、自衛隊は自衛隊の系統で飛行機の発進その他の命令がおりてくる、こういう状況になるわけでございます。
  258. 受田新吉

    受田委員 その命令系統の双方の連絡は、どういう形で行なわれますか。
  259. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 現在日本におります米空軍は第五空軍でありますが、第五空軍の司令部と、わが方の航空自衛隊の総隊の司令部と、これは府中に同じところにおります。それから、その下の機関につきましても、アメリカの第五空軍の管下の機関とわが方の方面航空隊というものとが、大体同じところにいるわけでございます。そこで、情報としては、同じところに上がってきます。それを受けて、指揮としては別々にその系統に従ってやる、こういうことになるわけであります。
  260. 受田新吉

    受田委員 指揮は別々と言われますが、これは双方が指揮系統において上下関係はない、並行関係なんですか。
  261. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 指揮系統はございません。
  262. 受田新吉

    受田委員 双方の連絡はどういう形になりますか。
  263. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 ただいま申しました通り、情報は一つところに——情報の司令部が同じところにおりますから、一つところに上がっていくわけであります。それに基づきまして、それぞれの系統に従いまして指揮の命令を出すわけでございます。連絡してやるわけでございます。
  264. 受田新吉

    受田委員 その指揮関係で、双方のどちらか中心になる人物がいなければ、機関がなければいかぬわけなんですね。双方が並行するということはこれはどうも指揮関係においては適当でない。
  265. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 ただいま申し上げました通り、自衛隊は自衛隊の方で連絡をいたしまして、たとえば、将来、防衛出動をするという場合を想定いたしましても、こういうふうな方面を担当して自衛隊の飛行機の発進をする、米軍は米軍の系統で必要な方面に飛行機の発進をするというわけでございます。それぞれのところに連絡は緊密にするわけでございます。指揮としては別々に出すということでございます。
  266. 受田新吉

    受田委員 将来防衛出動する際の例が今出ましたが、防衛出動する際に、米軍の出動と自衛隊の出動との間における、そこの最高指揮関係というものがなければ、その両方が勝手なことをやるという危険があるわけですね。その問題はどうなっておりますか。
  267. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 前々から大臣からも御説明になっておりまする通り、統一した最高司令部というのは設けない方針でございまして、それぞれの指揮関係のところにおきまして、相互に緊密な連絡をとってやる、こういうことでございます。
  268. 受田新吉

    受田委員 その相互に緊密な連絡をとる態勢が、平素からちゃんとできておるわけですね。
  269. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 新しい条約が発効いたしますると、第四条によりまして、平素から緊密な協議をするということになりますから、そういう問題も取り上げられなければならない問題の一つである、かように考えております。
  270. 受田新吉

    受田委員 その四条の平素から緊密な連絡をとる機関安全保障協議委員会の六条の分と別の機関がありますか。
  271. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 日米の安保委員会のようなものができますることは、前々から御説明がありまする通りでございます。その安保委員会の下におきまして、どういうふうな軍事面での連絡をとるかということにつきましては、今検討しておる次第でございます。
  272. 受田新吉

    受田委員 その六条の事前協議に関係した協議機関安全保障協議委員会というものを作ることになっておる、それとは別個の機関ですね。
  273. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 その委員会の下に、委員会のような形になりますか、どういうふうにした方がいいのか、検討しなければいけませんけれども、別個の機関がその下にできるような形になるのではなかろうかというふうに考えております。
  274. 受田新吉

    受田委員 政府で、条約局長か藤山さんに聞いたら一番よくわかると思うのですが、藤山さん、今度この六条に基づいて作られる安全保障協議委員会というものは、これは四条も含む、四条の随時協議、脅威に対する協議、それから事前協議、全部をここの安全保障協議委員会というものが所管するのですか。
  275. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 本条約の運営にあたりまして、第四条等の随時協議、あるいは常時運営のために協議をしていくという問題がございます。従いまして、日本とアメリカと委員会を作りまして、そうして日米合同した委員会によってそういう話し合いをしていきますことが適当と考えまして、われわれそういう組織を作ったわけでございます。むろん、事前協議というものは、政府政府との間でいたすわけであります。その協議の場所が、その委員会の場であるか、あるいは政府政府との間の話でありますから、必ずしもその場だけでやるということに限ったわけではありません。なお、そういう委員会ができましたときに、お話しのような軍事上の問題だけについて、随時あるいは常時協議をしていく必要があろうかと思いますので、そういう専門的な委員会と申しますか、あるいは協議会と申しますか、そういう種類のものを置いた方が、運営上適当であろうというようには考えておりますけれども、今どういうふうなものを作るかということにつきましては、防衛局長も言われました通り、防衛庁当局にて十分研究を遂げておられるところでございます。
  276. 受田新吉

    受田委員 これはまだ海のものとも山のものともわからないようなお話ですが、しかしながら、安全保障協議委員会に関係した往復書簡というものをあなた方はわれわれの方に出しておられる。その中には、「このような協議は、両政府が適当な諸経路を通じて」という形の言葉まで用いて考えておられるようです。これは一体どうしたことです。「適当な諸経路を通じて」という「適当な諸経路」とは何です。
  277. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 普通の条約運営の場合には、常時協議する場合もありますし、あるいは随時に協議する場合もございますから、従って何か常設的な委員会会合を開く場所を持った方が適当であろうということで、われわれはこの委員会の案を決定いたしたわけでございます。しかし、両国政府間において協議をいたす場合に、政府を代表いたします、ある場合には外務大臣なり、あるいは防衛庁長官なりが、そういうルートによって話し合いをすることもこれはあり得る、こういう適当なルートによって話し合いをするということを、両政府間の話し合いでありますから、妨げるわけではなく、何かそういう協議会という席を作ったら、その席でなければ話し合いもできないという問題でも、これはございません。
  278. 受田新吉

    受田委員 加藤防衛局長のお説は、その安全保障協議委員会の下に専門的な委員会が作られるだろう、こういうことでございましたけれども、これは事前協議、特に軍事的な話し合いをする機関ということですか。双方の軍の——在日米軍と日本の自衛隊との軍事行動に関する連絡委員会というような形のものですか。それへ今のレーダーなどの系統も加えるということですか。これは赤城防衛庁長官にお伺いいたします。
  279. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 安保協議会の下部機構といいますか、その下に防衛の専門委員会というものを作るか作らないかということにつきましては、今検討中でありますが、作るということにあるいはなろうかと思っています。そこにおいてどういう協議をするかということにつきましては、目下検討中でございます。
  280. 受田新吉

    受田委員 その軍事専門委員会ができることになろうと思うという赤城長官の御答弁でありますが、そこでどういうことを協議するか目下検討中——しかし、この条約がかりにあなた方の政府の希望通りに成立したとしたときに、どういうものを作るかということの考え方が一応できておらぬ限りは、条約ができ上がった後に、勝手にあまりにも強力な独特の権限を持つ機関ができても、これはお話にならないことになるのです。たとえば米太平洋司令官あるいは在日米軍司令官と、日本の藤山さんか赤城さんかが責任者になり合っていくとかいうような機関になるのか、そういうようなところぐらいはおよそわかると思うのです。
  281. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 安全保障協議委員会の中あるいは下に作るわけでありますから、無制限のワクでそういうものができるということは、これは予想されません。かりにできるといたしましても、そういうことは予想されません。その機構、構成等につきましては、もしできるということでありますならばという前提のもとに、目下検討中であります。
  282. 受田新吉

    受田委員 その機構等について検討ということでございますが、この機構は、日米両軍の行動を連絡し、調整をとる機関ということに最終目的はなるわけですね。
  283. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 連絡を協議するということに相なろうと思います。しかし、また、これが先ほどから申し上げておりますように、どういう機構にし、どういう権限を持つかということにつきましては、まだきめてないで、検討中でございます。
  284. 受田新吉

    受田委員 たとえば、在日米軍の出動に関してイエスを言うか、ノーを言うかというような相談も、そこで第一次的な決定をする、こういうことになるわけですか。
  285. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 今お話しのようなことは、政治的な大きな問題でありますから、そういう委員会ができるにいたしましても、その委員会で取り扱うことではなかろうと思います。
  286. 受田新吉

    受田委員 イエスかノーかという、日本の運命を決定する返事をする最高の責任者は、今であれば岸さんですね、それから米軍であれば米軍の太平洋司令官、あるいはだれか、そこを一つ具体的に……。
  287. 岸信介

    岸国務大臣 この問題は、日本政府とアメリカ政府との間が話し合う問題でございまして、その最高の責任は、それぞれの国の憲法その他できまっておるわけでありますが、日本内閣総理大臣であり、アメリカでは大統領であると私は思います。
  288. 受田新吉

    受田委員 非常に緊急の場合は第一線の司令官がやる場合があると、藤山さんはこの間言われたと思う。藤山さん、いかがですか。
  289. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 むろん、場合によりましては、委任を受けてやるということはあり得るわけでございます。
  290. 受田新吉

    受田委員 それは委任を受けて——たとえば日本におるアメリカの大使、あるいは在日米軍の司令官というものが、委任を平素から受けておる、こういうことになるわけですか、そのときに委任を受けることになるわけですか。
  291. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 それはアメリカの内部問題でありまして、平素から委任を受けておるか、あるいはそのときどきに権限を与えるかは、アメリカ自身が決定することだと思います。
  292. 受田新吉

    受田委員 非常に緊急な場合、たとえば米軍が戦闘作戦地域に飛び出していくというような緊急な場合に、間髪を入れず、イエスかノーかをやらなければいかぬという場合に、そのつど委任を受けるという連絡の時間がない、こういう場合ですね、そういう場合は、大統領から平素より委任を受けるという形になるわけですね。
  293. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 平素から委任を受けている場合もございましょうから、そういう緊急の場合には、そういうことで開始されることもあろうと思います。また、臨時的に委任をされる場合もあること、むろんでございます。
  294. 受田新吉

    受田委員 通常の場合、事前協議の方式は、時間的余裕があるときは大統領と日本岸総理、余裕がないときは現地の米軍の責任者と、日本の場合は常に総理かどうか。
  295. 岸信介

    岸国務大臣 日本の場合におきましては常に総理であります。アメリカの場合におきましても、その問題についてはアメリカ政府を代表する大統領である。ただ、大統領の委任を受けていかなる問題を大使がやるかというような問題はございましょうけれども、日本側の場合においては総理であり、われわれが相手に考えておるのはアメリカの大統領、こういうわけでございます。
  296. 受田新吉

    受田委員 総理が事故があった場合はどうなるのです。
  297. 岸信介

    岸国務大臣 総理が事故がありました場合は、内閣の官制によって、これにかわるところのものが責任をとるということになります。
  298. 受田新吉

    受田委員 その場合に、日本の場合で、軍事行動に関係したイエスかノーかをやるときには、防衛庁長官総理にかわるということはありませんか。
  299. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 防衛庁長官の上には総理大臣がおるわけであります。また、そういうことは総理大臣が閣議に諮ってやることに相なっておりますから、防衛庁長官が委任を受けるということは、まずないと思って差しつかえないと思います。
  300. 受田新吉

    受田委員 まずないというと、あり得るということになるわけですが、いかなる場合にあり得るか、たとえば総理も副総理も事故があるという、そのときは、防衛庁長官ということになるわけですか、第三順位かどうかということです。
  301. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 これは内閣できめることでありますから、内閣の構成上内閣総理中心になってきめますし、そういう場合でありますれば、副総理という制度がある。でありますから、そういう構成上できめることであります。
  302. 受田新吉

    受田委員 総理に事故あるときには副総理にかわらしめる、副総理が事故あるときは、この所管の大臣は防衛庁長官であるという意味で、第三順位は防衛庁長官というのが常識になりますか、いかがですか。
  303. 林修三

    ○林(修)政府委員 これは当然内閣が決定すべきことでございます。内閣総理大臣が閣議に諮ってきめる。その場合の内閣総理大臣は、内閣の首長たる総理大臣でございます。内閣の首長たる総理大臣に事故がある場合の規定は、内閣法第九条にございます。第九条によって、内閣の首長たる内閣総理大臣の事務を行なっておる大臣が閣議に諮ってきめることだ、さように考えます。
  304. 受田新吉

    受田委員 これから私は一つ実際問題として……。防衛庁長官というものは、日本の自衛隊の指揮系統においては、総理の次に位する人なんです。従って、総理の次は、指揮系統からいえば赤城さんです。現状においては、岸さんの次は赤城さんです。政治系統と、それから自衛隊の指揮系統と、別の考え方が成り立つのです。これはあくまでも文官優位という立場から、防衛庁長官を重視しないような方針をおとりになるかどうか。
  305. 岸信介

    岸国務大臣 自衛隊の指揮の系統から言われれば、今の受田委員の言われる通りであります。しかし、こういう事前の協議を受けて、これに対してイエス、ノーを言う、いずれをとるかということは、一国が国の大きな政治問題として決定する問題でございまして、今申すような自衛隊に対する指揮系統が、防衛庁長官総理大臣の次にあるからといって、それで総理大臣が事故あるときに当然防衛庁長官がかわるという性質のものではないと思います。従って、今法制局長官が説明申し上げましたような内閣法の九条の規定によって、いわゆる総理大臣が事故あるときに、かわってこれを行なうところの、いわゆる副総理といわれるものがこれをやる、こういうことになると思います。
  306. 受田新吉

    受田委員 事前協議において、急速な事態で、米軍が飛び立ちたい、飛び立ちたいと言うておる、日本は待て待てと言うておる、そういう事態が起こりますね。そうしたときに、飛び立ちたい、飛び立ちたいと米軍が要求をしてくるときに、日本で閣議を開いて、ゆっくりと検討をして、総理が事故あるときは、内閣法に基づいて、次の総理大臣にかわるものが会合してやるとかいう余裕がないとき、そういう事態でないとき、緊迫した事態のとき、閣議を開くひまもないという事態のときの責任者がどうなるか。
  307. 岸信介

    岸国務大臣 私は、いかなる場合におきましても、緊急な事態でありましても、内閣が閣議を開くことは当然であり、それできめてやるということを申し上げておるわけでございます。
  308. 受田新吉

    受田委員 閣議を開くほどの余裕がある以外に、イエスとかノーとか言うことはない、事前協議の場合は、必ず閣議を開いて、そしてその結論を出す以外には、イエスともノーとも言わないのだ、これははっきりしていますか。
  309. 岸信介

    岸国務大臣 その通り考えております。
  310. 受田新吉

    受田委員 そこで、これに関連して、次の問題として第五条にちょっと及びますけれども、五条の場合に、日本と米国との同時防衛行動が起こされるときに、ちょっと閣議を開く間がない場合がありますね。
  311. 岸信介

    岸国務大臣 総理大臣が自衛隊に防衛出動を命ずる五条の場合、私は、この場合において、当然内閣総理大臣は閣議に諮ってこれをきめる、こう思います。
  312. 受田新吉

    受田委員 急迫不正の侵害の場合に、間髪を入れざる攻撃が加えられる場合に、閣議を開く余裕がありますか。
  313. 岸信介

    岸国務大臣 閣議というものは、これは常時いかなる場合におきましても、即時開ける態勢でございます。
  314. 受田新吉

    受田委員 技術的に、最短時間が幾らで開けますか。
  315. 岸信介

    岸国務大臣 必要なときにおきましては、時間を何分ということを申し上げるわけにはいきませんけれども、私は即時開けると思います。いわゆるわれわれの観念でいう即時開ける、こういう態勢でございます。
  316. 受田新吉

    受田委員 即時ということは、十分か二十分かかるのかどうか、時間的にそれくらいかかるかどうか。
  317. 岸信介

    岸国務大臣 時間そのものを、何分かかるかということを私が申し上げることは、これは何人といえども適当でない、むずかしいと思います。しかし、いかなる緊急の事態においても、責任を持っておる内閣の閣僚というものは、即時その国家の重要事項については会議をしてきめる、それで全責任を持つ、こういう態勢にあるわけでございます。
  318. 受田新吉

    受田委員 即時という場合は、電話連絡閣議になるということが考えられるかどうか。
  319. 岸信介

    岸国務大臣 電話で個々に話すということは、私ども考えておりません。やはりこういう問題については、集まって会議します。
  320. 受田新吉

    受田委員 集まって会議を開くとおっしゃるので、これは大へんな時間がかかる。それは昨年台風が伊勢湾を襲うたとき、あのときだって、夜。なかなか皆さん集まることができなくて、防衛庁長官も、いかなる手を打っていいか、お困りになった事件もあるわけであります。そういうこともあるから、第五条のように、急迫した武力攻撃を加えられて、そして行動を起こすという場合に、閣僚に閣議で諮る余裕がない場合があるはずなんです。
  321. 岸信介

    岸国務大臣 いかなる国におきましても、いやしくも独裁政治でない政治体制をとっておるところにおきまして、こういう重要な問題をきめることにつきましては、その場合に最短の時間において、緊急の場合に緊急招集してきめることは、これは当然であります。そういう場合は、どこの国におきましても、われわれが人力の考え得る最短の時間において集まって、これをきめるという態勢でございまして、そういう場合におきましても、私は、こういう重要な問題については、閣議でもって諮かるということは絶対に必要である、かように思っております。
  322. 受田新吉

    受田委員 閣議で決定をする以前に、米軍が先へ武力攻撃に対して行動を起こした場合は、これはどういうことになりますか。
  323. 岸信介

    岸国務大臣 これは米国におきましても、そういう作戦行動をするということを決定することは、決して出先の一司令官が最後の決定権を持っておるとは私は思いません。やはりアメリカにおきましても、それぞれの手続があると思います。国としてそういう重大な行動を起こすという場合におきましては、あると思います。従って、今申しましたように、そういう緊急な場合においては、緊急の措置に応ずるように、最も人力の及ぶ限り急速にそういう会議を開いて、そしてきめる、こういう態勢をとっていきたい、こう思います。
  324. 受田新吉

    受田委員 そうすると、第五条の共通の危険に対処する場合の行動ということは、これはアメリカもゆっくり話し合いをし、日本も閣議を開いてやるということになるならば、双方がやはり結論的には話し合いをして行動を開始することになるわけですか。
  325. 岸信介

    岸国務大臣 そういう場合に、今受田委員の言われるように、ゆっくりという言葉がありましたが、われわれは決してゆっくりということは考えておりません。人力の及ぶ限り最短の時間において緊急に処置する、しかし、日米間において連絡すべきことは連絡していくことは、これは条約全体の趣旨からいって当然であると思います。
  326. 受田新吉

    受田委員 第五条は、連絡をして行動を起こすのですか、それとも武力攻撃が加えられた場合には、自動的に双方が出動するということですか、どちらですか。
  327. 岸信介

    岸国務大臣 連絡してということが要件にはなっておりません。お話の通り、武力攻撃があった場合においては、それに対して自衛権の発動として、当然これに対する対抗の措置を講ずるということでございます。ただ、この条約の効果を十分に発揮せしめるためには、常時適当な連絡を日米間においてしていくことが、効果を上げる上において適当であると思いますから、そういうことが連絡をされておることは考えられますけれども、この五条の解釈として、両国の協議が必要であるという必要条件にはなっておりません。
  328. 受田新吉

    受田委員 この問題は、後ほどまた五条を徹底的にお尋ねしますので、その方へ譲って、もとへ返ります。  赤城さん、日本に控えている駐留軍の今後の撤退計画を今伺ったのでありますが、大体第六条の交換公文にもうたってあるように、その在日米軍の配置とか装備とか、こういう問題を知るためには、駐留軍、在日米軍の人数とか装備とかいうものが、ある程度ガラス張りにされていないと、さっき竹谷委言から資料要求されたように、一体何のために日本と話し合いをするのかわからなくなる。日本の自衛隊はガラス張り、在日米軍はヴェールをかぶっている、こういう形で協議するといっても大へんなことだと思う。従って、六条による事前協議事項、配備、装備の問題に関連して、米軍の日本に駐留している人々の数とか、どういう装備がされているかというようなことは、やはり国民にも理解されていなければならぬ。MSAによる刑事特別法などの問題があったとしても、当然日本の自衛隊がガラス張りに置かれている以上は、在日米軍もガラス張りにせしむべきである、かように考えるのでございますが、在日米軍をガラス張りにすることができるかどうか、人員、装備について、あなたが許されている範囲内で御公表を願えるかどうか。
  329. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 アメリカは軍隊をガラス張りにしていません。日本でもアメリカをガラス張りにするということはでき得ないことでありますが、この条約の目的その他からして、常時連絡をとりまして、どれくらいの米軍が駐留しているか、こういうことにつきましては情報を受けております。で、どれくらい現在おるのかということでありますが、これも再々申し上げておるのでありますが、駐留軍の人員は約五万二千人であります。その内訳を申し上げますならば、陸軍が約五千人、海軍が約一万五千人、空軍が約三万二千人であります。陸軍はどういうものであるかといえば、管理とか補給部隊でありまして、戦闘部隊は駐留しておりません。従いまして、その装備等につきましては、自衛隊で保有している程度の小火器のほか——小さい火器です。小火器のほか、通信、輸送、修理、補給等の任務達成に必要な資材類であります。海軍につきましては基地要員、これは横須賀、佐世保でありますが、主として一部航空部隊、これは厚木、岩国でありますが、航空部隊を含んでおります。基地部隊は補助艦艇を持っておるわけであります。航空部隊の装備は、対潜哨戒機、輸送機、ヘリコプター等でありまして、一部海兵航空隊所属の戦闘機を含んでおります。空軍でありますが、空軍の装備につきましては、戦闘機のF86BとかF102、戦闘爆撃機のF100等でございます。
  330. 受田新吉

    受田委員 特に空軍のF86、F102等の爆撃機、戦闘機などの機数はどうですか。
  331. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 機数はちょっとここで申しかねます。
  332. 受田新吉

    受田委員 在日米軍の飛行機の数がどのくらいあるかわからないで、日本の自衛隊と在日米軍とが共同作戦をとるというのは、はなはだあいまいもこたるものになると思う。こういう装備、配置について、日本の自衛隊として、防衛庁長官として、アメリカの実力というものを秘密の形では承知できておるのですか。あなたも、そのアメリカの在日米軍の実体というものを全面的には知り得ないのですか。
  333. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 承知しておりますが、ここでは申しかねますということを申し上げたのであります。
  334. 受田新吉

    受田委員 在日米軍の実力がどの程度あるかということと、日本の自衛隊の実力とを比較検討して、日米両軍の配置ということを考えるわけですね、共同作戦の場合。
  335. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 もちろんそれも考えられますが、しかし、先ほどからのいわゆる有時の場合には、何も在日米軍ばかりではございませんから、そういう点もあるのでありますが、そういうことを私は申し上げることは差し控えたいと思います。
  336. 受田新吉

    受田委員 有時の場合における行動に関していろいろな秘密があるわけですか。
  337. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 どういうのが秘密というのかわかりませんが、アメリカの作戦行動等につきましては、もちろんこれは秘密であります。日本におきましても、そう大っぴらにできるものではございません。
  338. 受田新吉

    受田委員 日本も秘密を持って、アメリカに知らせないものがあるわけですか。
  339. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 別にアメリカから聞かれることもありませんので、いろいろ秘密みたいなことがあっても、何もこちらから特に向こうに申し出ることもありません。
  340. 受田新吉

    受田委員 日本側はまるはだかにされている。アメリカは隠すべきことは隠しておる。そういう両方が一本になって日本の防衛に当たる、共同作戦をやる、こういうような形では、国民自身としてもはなはだ不安な感じがするわけです。日本の自衛隊の実力というものがどの程度あるかは、これは一応見通しがつくとして、在日米軍というのはどのようなものであるかという不安があるわけです。在日米軍の秘密は、例のMSAの刑事特別法のほかに、MSAの秘密保護法というのもあるわけですが、こういうようなもので一々隠さなければならないわけですか。機数などはわかってよいでしょう。飛行機の数くらいは言ってもいいではないですか。
  341. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 飛行機の数は数百機であります。
  342. 受田新吉

    受田委員 数千機ですね。
  343. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 数百機。
  344. 受田新吉

    受田委員 数百機というのは、今現に日本に駐留している飛行機だけですね。そうすると、もう一つ、太平洋地域で米軍がいろいろと組織的な配置をしているわけですが、日本におる在日米軍は、どういうところの指揮を受け、太平洋地域においてはどういう指揮系統を持っているかということ、これはあなたの方では公にされない点がありますか。大体発表できますか。
  345. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 防衛局長から答弁いたします。
  346. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 われわれの方で承知しておりますところによりますと、太平洋軍というものがあるわけであります。これは司令部がハワイにあります。太平洋軍のもとに太平洋陸軍、太平洋海軍、太平洋空軍のそれぞれの司令部が、これまたハワイにあるのでございます。そのもとにおきまして、陸軍について申し上げますと、三個師団——ハワイに一個師団、朝鮮に二個師団ということを発表しております。海軍は、第一艦隊及び第七艦隊が太平洋海軍の指揮下にございます。そのほかに海兵隊が一個師団、主として沖縄、一部ハワイ。それから空軍は、太平洋空軍の下に第五空軍と第十三空車とおります。第五空車は東京に司令部がございまして、日本に二個師団、沖縄に一個師団、朝鮮に一個師団、第十三空軍はフィリピンに司令部がございまして、フィリピン、台湾方面を主管しております。
  347. 受田新吉

    受田委員 ハワイの太平洋司令部が総括をしておるということになり、在日米軍は、直接ハワイの太平洋司令部からの指揮命令を受けて行動するわけですか。
  348. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 さようでございます。
  349. 受田新吉

    受田委員 同時に、在日米軍に限らず、米軍そのものが、極東地域で、いろいろと誘導兵器を、基地を用意して持っておる。西欧の誘導兵器の基地は相当徹底しておるようでございますが、極東においても、最近において、アメリカが相当誘導兵器の基地を配備して、強化をはかっておるとわれわれ伺っておる。極東地域における誘導兵器の配備の状況というものが明らかにされるならば、一つこれも、防衛庁が心得ておらなければならない問題だと思うのですが、御発表願いたい。
  350. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 これは正式、公式に申し上げるという、あるいは調査をしているというわけではありませんので、正確なことは申し上げかねます。しかし、新聞、雑誌その他によって申し上げまするならば、次のようでございます。地対地のミサイル、これにつきましては、マタドールを台湾と韓国に配備しております。レギュラスI型を空母と巡洋艦に搭載しているようであります。それから空対空のミサイル、すなわちサイドワインダーあるいはスパロー等を航空機に装備しておる、こういうふうに見られています。サイドワインダーが国府の空軍に引き渡されていることは知られておりますが、最近韓国空軍にも引き渡されたという報告もあります。それから地対空のミサイル、ナイキ・ハーキュリーズが沖縄と台湾に配備されておる、こういうふうに承知しております。
  351. 受田新吉

    受田委員 今の最後長官答弁されたナイキ・ハーキュリーズ、これらについては、ナイキ・アジャックスやナイキ・ハーキュリーズは日本からも米国に対してこれを要求している、こういうことをわれわれは聞いているわけです。こうした誘導兵器の、防衛庁が所管している面についての御答弁を願いたい。
  352. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 防衛庁から米軍に対して、ナイキ・ハーキュリーズ等を要求していることはございません。ナイキ・アジャックスにつきまして訓練部隊を出していることは、この間の予算でお認めを願っているわけでございます。
  353. 受田新吉

    受田委員 ハーキュリーズは、目下のところ、まだ防衛庁としては要求をいたしておりませんか。今後も要求する用意はないわけですね。
  354. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 今のところ、要求する予定は持っておりません。
  355. 受田新吉

    受田委員 ナイキ・アジャックスは、これは核装備ができない誘導兵器ということになっていますね。
  356. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 ナイキ・アジャックスは、核弾頭をつけられない誘導兵器になっております。
  357. 受田新吉

    受田委員 ハーキュリーズは、これは核弾頭をつけ得る誘導兵器と了解していますね。
  358. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 ナイキ・ハーキュリーズは、核弾頭をつけることもできまするし、つけないでも使用できる、両用でございます。
  359. 受田新吉

    受田委員 日本に現在導入されている誘導兵器の中に、核弾頭をつけ得る兵器がありますか、ないですか。在日米軍が用意している、在日米軍が持っている誘導兵器の中に、核弾頭をつけ得る兵器があるかないか、これも一つあわせて御答弁を願いたい。
  360. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 自衛隊で核弾頭をつける誘導兵器は所持しておりません。持っておりません。在日米軍につきましては、核弾頭をつけるつけないということは別といたしまして、持ち込みはありません。
  361. 受田新吉

    受田委員 核弾頭をつけるつけないは別として、持ち込みはありません、こういうことでございまするが、核弾頭をつけ得る誘導兵器が、在日米軍のどこにも持ち込まれていないと断言できますか。
  362. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 持ち込みはない、こう言って差しつかえないと思います。
  363. 受田新吉

    受田委員 日本とアメリカとの話し合いで、双方の信頼でものが片づけられる、話がつくということで非常に信頼しておられるのでありますが、日本にある米軍部隊の中に、核弾頭をつけ得る兵器を用意しているところが各所にあるということも、われわれは伝え聞いておる。ところが、それが現実に核弾頭をつけてはいなくても、つけ得る兵器が用意されておる、こういうことが考えられるということになると、あなた方は全然御承知ない。こういうことになると、信頼しているアメリカ自身が適当にあなた方をごまかして、核武装をなし得る兵器をどしどしこちらに持ってきて、一朝有事の際に核戦争に導こうという危険というものが、どこの一角かでひそめられておるということが言えると思う。あなたの方としては米国を絶対信頼して、日本におる米軍には核武装の危険は全然ないし、核武装をなし得る兵器すら全然ないんだということを、はっきり断言できますか。もう一ぺん。
  364. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 御承知のように、核兵器をつけられる武器といいましてもいろいろありますが、たとえば飛行機であります。飛行機は、サイドワインダーでないほかのものを、つければつけられないということはありません。でありますが、核兵器を持ち込んでおらぬということは、申し上げて差しつかえありません。
  365. 受田新吉

    受田委員 核武装をなし得る兵器、現在はつけていなくてもっけることもできる兵器、このことについてお尋ねしておるのです。
  366. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 ですから、核兵器をつけることができる兵器というものに飛行機があります。その飛行機は、核兵器をつければつけられます。つけられますが、核兵器はつけておらぬ、こういうことを申し上げておるわけであります。
  367. 受田新吉

    受田委員 在日米軍の飛行機で、爆撃機関係の核武装をなし得る飛行機はありませんか。今あなたが言われたF100などはいかがですか。
  368. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 先ほど大臣がお述べになりましたごとく、F86D、F100、F102というふうな飛行機がきておるのであります。このうちで一番積載量の多いのはF100だと思います。このF100につきましては、核爆弾が積めるかどうかということになるのでございますが、これは、核爆弾そのものが非常に最近は小型になってきております。F100の積載量から申しますと、私は数字的に考えれば、これは搭載可能だろうというふうに思います。
  369. 受田新吉

    受田委員 在日米軍が直接核武装をなし得る兵器は爆撃機であって、しかも、それが日本に相当おるということだけは今御答弁願ったのでございますが、これらについて、防衛庁として今後、事前協議の中にもはっきりうたってある装備の変更という形で、核武装をなし得る兵器は日本へ持ってきてもらいたくない、これは一朝事あるときにどういうことになるかもしれないからという形でこれを拒否する、そういう態度をお示しになることはいかがですか。
  370. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 事前協議の対象として核武装を拒否する、こういう方針、申し上げている通りであります。そこで、それを運ぶものはどうかという問題でありますが、運ぶものの中で、これは飛行機は別だと思いますが、いわゆるミサイルとしてのランチャー等を持ち込むということは、これはやはり核武装と一体的なものでありまするから、そういうものは拒否するということに相なろうかと思います。
  371. 受田新吉

    受田委員 少なくとも核武装を、どの部分かに、小型といえどもなし得るものを現実に日本に用意しておるということ、これが問題なんです。在日米軍に一切の核武装がされないような形で、これを事前協議で拒否する。今後、現在おる分も、また、今後のものについてもそういう態度でお臨みになるということは、非核武装宣言を考えている総理のお立場からも、きわめて適切な措置だと思うのでございまするが、在日米軍にこの要求をすることができますか。
  372. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 核武装をして、それらを持ち込むということであれば、拒否することはもう当然でございます。しかし、武装のできるもので、武装しないできているものについて、それまでも拒否するということを申し入れる考えは持っておりません。
  373. 受田新吉

    受田委員 私はここで五条に進んでいきたいと思います。これは今までお尋ねしたことも含めてやっていきたいと思うのでございますが、第五条で特に問題になることは、この間、岡田君が非常に熱心に尋ねられた自衛権の問題があるわけです。これは外部の武力攻撃に対して日本の自衛隊、在日米軍が行動をする場合に、個別的自衛権と集団的自衛権がどういう形で動くかという論議が長時間された。しかも、その長時間論議された結論は、依然として政府は、日本には個別的自衛権はあるが、集団的自衛権は発動されないんだという御答弁だ。そこで、サンフランシスコにおける平和条約の第五条に、個別的自衛権と集団的自衛権の確認が日本国にされておるわけなんです。この問題と先般来の政府答弁との関連を、まずお答えを願いたいと思います。
  374. 林修三

    ○林(修)政府委員 サンフランシスコ平和条約に、日本は国連憲章に定める個別的自衛権または集団的自衛権を持つということが書いてございます。それから日本は、現在において国連加盟国でございますから、当然に国連憲章五十一条の適用もあるわけです。その他日ソ共同宣言にも、前文にその趣旨のことが書いてございます。そういう意味から申しまして、国際法的に日本が個別的自衛権のみならず、集団的自衛権を持つということは、これは明らかだろうと私考えます。しかし、集団的自衛権を日本の憲法に照らしてみた場合に、憲法九条において国際紛争を解決する手段としての戦争あるいは武力の行使、武力の脅威を防止する、こういう趣旨から申しまして、他国防衛のために他国に出ていってそれを防衛する、そういう意味における集団的自衛権というもの、これはやはり日本の憲法の認めるところではなかろう、かように考えております。  それで、今度の新安保条約の第五条でございますが、これはこの第五条の文面から明らかでありますように、日本の施政下にある領域に対する攻撃でございます。これはまさに日本の個別的自衛権をもって防衛することでございまして、日本の施政下に対する武力攻撃が行なわれた、そういう場合には、当然に日本の個別的自衛権を発動して防衛することで、十分説明のできることでございまして、ここの問題に集団的自衛権を持ち出す必要はない。集団的自衛権をもってしなければ説明できないような事態ではない、こういうように従来御答弁申し上げているわけでございまして、これは政府の一貫した考え方でございます。
  375. 受田新吉

    受田委員 そこで、この集団的自衛権も日本としては持っておることが認められてはおるのであるが、現在の憲法の関係があるので、海外派兵というようなことも考えられないので、これは説明としては、個別的自衛権一本でいくんだということのようです。ところが、今ここで問題が考えられるのは、この間、岡田君がここで非常に熱心に質問されたことで、私かわった立場で一つあなた方にお尋ねしてみたい。  それは、この条約の第五条の前段にある「各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃」、このいずれか一方という言葉を吟味、解剖してみると、日本の施政下にある領域の中で、日本の方か、あるいは米軍の方か、こういう考え方になるわけじゃないですか。
  376. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 その通りでございます。
  377. 受田新吉

    受田委員 そうしますと、いずれか一方の場合、日本の国土——これはいずれか一方、もう一つは米軍——米軍というものは、これは軍人とか装備とかいうものをさしますね、さよう了解してよろしゅうございますか。
  378. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 在日米軍及び在日米軍の艦船や航空機、在日米軍のことをさすということであります。
  379. 受田新吉

    受田委員 そうしますと、たとえば、横須賀ヘアメリカの軍艦が臨時に寄港したという場合は、これは在日米軍ではないけれども、日本の領海の中に入っている場合は、これも米軍ですね。ここでいう「いずれか一方」で、それも入りますか。
  380. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 入ります。それに対する武力攻撃は、いずれか一方に対する武力攻撃。
  381. 受田新吉

    受田委員 そこで、私ここではっきり確かめておきたいのでございますが、この個別的自衛権という一本の解釈でいくならば、米軍に攻撃を加える場合も、日本の個別的自衛権だけが発動するのだ、こういう解釈になるわけですが、米軍の人員とか、あるいは装備、軍艦とか、戦車とか、こういうものに攻撃が加えられる場合、この米軍自体に攻撃が加えられるもの、これは日本の個別的自衛権で解決されるわけですか。
  382. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 その通りだと思います。その武力攻撃は日本の領域のもとにおける武力攻撃でございますし、同時に、日本に対する武力攻撃なくしてはそのような武力攻撃が起こることは考えられない、こういう立場であります。
  383. 受田新吉

    受田委員 米軍とそれから日本の領域、こういう二つの分け方をあなたはして下さらなければならないのですが、外部の武力攻撃が、日本の領空を越えて、在日米軍のおる上空からどんどん爆撃をするという場合ですね。爆撃をする個所は日本の領空であり、爆撃を受ける地域は米軍基地である。これは日本の領域の中に入る基地だ。しかし、爆撃を受けるアメリカの兵隊、アメリカの艦船とか、戦車とかいうものは、これは米軍じゃないですか。これは日本の何ものでもない、完全な米軍です。従って、この米軍に攻撃が加えられてきた場合に、この米軍に加えられた攻撃をはね返していくというために、日本は個別的自衛権を発動するのですか。米軍に攻撃が加えられる——基地ではないですよ。米軍そのものに攻撃が加えられる。人間、艦船に攻撃が加えられる。この艦船とか、人間とかいうものは、完全に米軍ですよ。米軍に攻撃が加えられるというときに、これを排除する立場は、一体個別的自衛権だけで解決しますか。
  384. 林修三

    ○林(修)政府委員 その米軍が日本の領域内にある前提でございますが、そのある以上、日本の領域に入ってそういう攻撃をすることは、まさに日本の主権に対する攻撃でございます。日本の領土、領空に対する攻撃でございます。従って、それを排除すること、それは日本の個別的自衛権をもって説明できることだ、かように考えます。その結果として米軍に対する攻撃も排除されることになりますけれども、日本としては日本の領土、領域に対する侵害を排除する、これはまさに個別的自衛権の発動だ、かように考えます。
  385. 受田新吉

    受田委員 それはあなたのお説のように、基地とかあるいは日本の領域の中とか、こういう立場で説明するなら、それはあなたのお説でけっこうでしょう。しかし、基地におる米軍というものは、これは日本ではないのですよ。いずれか一方の米軍ですよ。米軍に、領空を犯して攻撃を加えてくる場合に、途中で日本の領域を通ってくることには間違いないけれども、加えられる攻撃は、米軍を越えて基地へ到達しておるわけです。途中に米軍というのがある。攻撃を加える地区は日本の領空であり、加えられる地区は日本の領土の基地であるけれども、途中に米軍というものがある。この米軍に攻撃が加えられるときに、これを日本の自衛権の行使の立場から排除するときに、日本の領域に加えられる場合は、基地の場合でも領空の場合でも、それは個別的自衛権で解決できましょうけれども、米軍そのものに加えられる攻撃を排除するときは、これは集団的自衛権とが同時に発せられたと見るべきじゃないですか。
  386. 林修三

    ○林(修)政府委員 これは日本の領域において攻撃を加えておるわけでございます。その中に米軍がおりまして、米軍に対しても攻撃が加えられておるかもわかりません。しかし、日本の領域に対する攻撃であることはまず間違いないわけでございます。日本の立場としては、日本の領域に対する攻撃を排除する。これはまさに個別的自衛権の発動でございまして、日本に攻撃が加えられている状態を排除することは、個別的自衛権——これはちょっと妙なたとえ話になるかもしれませんが、かりに上から落とした爆弾が外国人だけをねらっておりましても、これはまさに日本に対する攻撃でございます。そういう意味におきまして、かりに相手はそういうものばかりねらったと言うかもわかりませんけれども、これは日本は領域を侵犯し、あるいは日本の領海を侵犯し、あるいは日本の領土に対して爆弾を落としている。これはまさに日本の主権に対する攻撃でございまして、これを排除することは、個別的自衛権をもって十分説明できることでございます。あるいは学者によっては、そういうものを集団的自衛権と言う方もございますけれども、これはまさに個別的自衛権で説明できることと私は思っております。
  387. 受田新吉

    受田委員 御用学者というものは、おおむねそういう解釈をしたがるものです。大体米軍に攻撃が加えられておる基地とか領空というのは、それは日本の領域でしょう。しかしながら、攻撃を受けているアメリカ軍——アメリカの人間、アメリカの艦船に攻撃が加えられておるときに、それを排除しようとする日本の自衛権の発動は、もちろん、あなたのおっしゃるように、領土、領域に関する攻撃であるから個別的自衛権で片づけられる面と、もう一つは、米軍に直接加えられる攻撃を排除しょうという側の方は、これは集団的自衛権の発動ではないですか。個別的自衛権が発動しており、同時に、集団的自衛権が裏づけとして同時に行使されておるという解釈しかできないじゃないですか。
  388. 林修三

    ○林(修)政府委員 どうも申される御趣旨がよくわかりませんが、日本の基地あるいは施設区域を目ざしての攻撃かもわかりませんが、同時に、これは日本を攻撃しているわけでございます。この二つは切り離せないものでございます。二つを切り離して起こっておる問題ではございません。日本の領土を侵犯して、攻撃しているわけでございます。日本としては、まさにその日本の領土を侵犯している状況を排除する、これは個別的自衛権でございます。日本の領土を侵犯している状況を排除すれば、結果としては米軍に対する攻撃がなくなります。しかし、日本としては、日本の領土を侵犯しておる状況を排除しなければならぬ、これを個別的自衛権と言うことは、もう当然のことだと私は思います。
  389. 受田新吉

    受田委員 あなたの解釈は、どうも米軍そのものに加えられる攻撃まで含めて、これを個別的自衛権一本で片づけようとしておられる。いいですか。日本におる米軍——人間、艦船、これは完全に米軍ですね。「いずれか一方」と書いてある。その艦船とか、軍人とか、米軍に攻撃が加えられておる。加えられる場所と加えられた土地とは、これは日本の領空である、あるいは米軍の基地である日本の領域である。しかし、途中に、日本国でない別の米軍という一つ機関があるわけですよ。この米軍に加えられる攻撃を排除するということについては、これは集団的自衛権、日本とアメリカというこの二国間における集団自衛権が、同時に行使されておるという解釈ができるじゃないですか。個別的自衛権の発動であり、同時に、米軍に対する攻撃を加える面は、集団的自衛権の発動である、こういう同時行使という解釈ができるじゃありませんか。
  390. 林修三

    ○林(修)政府委員 その場合に、攻撃を加えられております米軍自体、これは自己の個別的自衛権を発動することは当然でございますが、しかし、日本の立場から申せば、実際に攻撃を受けておるものは、あるいは米軍の施設かもわかりません。しかし、その施設は、今おっしゃる通りに、日本の領土の上にございます、あるいは日本の領海の上にございます。そういうものの攻撃は、まさに日本に対する攻撃でございます。従いまして、いわゆる米軍に対する攻撃と日本に対する攻撃を、この場合、切り離して考えることは不可能な問題だと考えます。常に二つが相重なっている問題でございます。そういう状態を排除するということは、これは日本の立場から申せば、まさに日本の個別的自衛権の発動として十分説明できることだ、かように考えておるわけでございます。今おっしゃったような、それを同時に集団的自衛権だと言う学者も、日本にないわけではございません。ないわけではございませんが、私は、それは個別的自衛権で十分説明できることだ、かように考えております。
  391. 受田新吉

    受田委員 この問題は、あなたが大へん勝手に解釈されておるのですが、個別的自衛権の方の説明だけで片づけられようとしておる。ところが、同時行使という場合を考えるならば、集団的自衛権が瞬間に、同時に行使されている。つまり、米軍に対する攻撃に対するわが方の排除ということは、集団的自衛権の発動である。基地に加えられる攻撃、日本の領域に加えられる攻撃に対する排除は、それは個別的自衛権の発動である。同時行使じゃないですか、集団的自衛権と個別的自衛権は……。
  392. 林修三

    ○林(修)政府委員 これは国連憲章五十一条に照らしてみました場合に、いわゆる集団的自衛権というのは、違法性阻却の理由としてあそこに出ているわけでございます。日本の領域に対する攻撃を排除することは、まさに個別的に自衛権を持って阻却されるわけでございます。集団的自衛権を援用しなければ、国連憲章違反になるという問題ではございません。相手の国は、米軍に対する攻撃を行なうと同時に、日本の領土、領空に対する侵害を行なっているわけでございますから、これを排除するということは、個別的自衛権で説明できるわけでございます。この場合に、集団的自衛権を援用しなければ、国連害意章五十一条違反になるというような事態ではございません。
  393. 受田新吉

    受田委員 あなたは、個別的自衛権と集団的自衛権の考え方を、これを個別的自衛権一本で片づけるような巧妙な発言をしておられるわけなんだが、いずれか一方とはっきりここに書いてある。「日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃」と書いてある。もしあなた方の説をもってするならば、いずれか一方に対する武力攻撃ではなくて、日本の施政のもとにある領域に対する攻撃として、一本でやるべきだ、いずれか一方に対する武力攻撃ということになれば、米軍というのを別に考えているのじゃないですか。この条約の条文を忠実に読んでごらんなさい。いずれか一方という場合は、米軍が別にあるじゃないか。(「分けられないじゃないか」と呼ぶ者あり)分けられないから、今私は、同時に集団自衛権という米軍に対する攻撃排除の自衛権が発動している、日本の領域に対する攻撃部分の個別的自衛権というのが発動し、その双方が、同時に行使されておるという解釈ができるじゃないかと言っている。
  394. 林修三

    ○林(修)政府委員 これは日本の領域に米軍の駐留を認めておりますから、そういう日本の領域における米軍に対する攻撃もあり得るわけでございまして、そういうことを想定して、この書き方はしておるわけでございますから、先ほどから申します通りに、自衛権という問題をこれは国際法的に考えれば、特に今の国連憲章のもとにおいては、違法性阻却の問題でございます第五十一条の違法性阻却の理由になるかならないか、この場合に、領域に対する侵害を排除する、たといその攻撃が主として米軍に向けられておりましても、日本の領土に対する、領海に対する侵害であることは間違いないわけでございます。それを排除することは、個別的自衛権で説明できることでございまして、集団的自衛権を持ち出さなければ、この場合国連憲章違反になるという問題ではないわけでございます。従って、これは個別的自衛権で十分説明できることだ、かように先ほどから申し上げておるわけでございます。
  395. 受田新吉

    受田委員 実にあなたの説明というものは、最も要領のいいずるいやり方です。あなたの場合は、米軍そのものに対する攻撃に対して、日本がこれを排除しようという集団的自衛権の性格を持った部分を忘れて、日本の領域に対する攻撃という部分だけを取り上げている。しかもこれは、私は、別々に行使されているというのでなしに、同時に行使されておるということを今言うておるのです。同時に集団的自衛権と個別的自衛権が行使されているという形をあなたに説明しているわけです。あなたは、第五条を忠実に読んだときに、「いずれか一方に対する武力攻撃」ということを率直にすなおに聞いたときに、米軍という一方と、日本国という一方とがあることがわかるじゃないですか。あなたの説をもってすれば、いずれか一方という形で書かれていないのだ。これは日本の領域に対する武力攻撃でいいはずなんです。いずれか一方というときには、米軍という立場が一つある。日本という立場と二つ。いずれか一方ですよ。どちらでもいいわけです。だから、米側に加えられた攻撃に対するその攻撃、米軍そのものに加えられた攻撃を排除する立場の自衛権の発動は、これは集団的自衛権の部分です。基地とか領空とかいうものが侵された部分は、それは日本側の個別的自衛権の発動の解釈で説明ができる。米軍そのものに対して加えられた攻撃というものは、これは集団的自衛権の発動ということで説明しなければ、しかもそれが同時に発動したという形でなければ、説明できないじゃないですか。総理、これはあなた、こういうごまかしの答弁ではいけない。実にいいかげんな答弁です。私は、今までの岡田君の質問とはちょっと形を変えて問うておるのです。
  396. 林修三

    ○林(修)政府委員 先ほどから私お答えしておりますが、この安保条約の第五条の形が、今受田委員の仰せられた、いずれかの一方に対する武力攻撃、こういう形になっておることはお説の通りでございます。しかし、同時に、それは日本の施政下にある領域に限っておるわけでございます。従いまして、日本の領域下にあるいずれかの一方に対する武力攻撃、これはそういう書き方をいたしましたのは、日米の対等的な形で日本に米軍が駐留しておりますから、それに対する配慮を考えてこういう書き方になっております。その内容を分析して参れば、先ほどから申し上げました通り、米軍に対する攻撃といえども、日本の領域を侵しての攻撃である、これは受田委員もお認めになっているわけであります。従いまして、その場合に、日本の米軍が攻撃される、それは同時に日本の領海、領空、あるいは領土に対する侵害である、二つの性格を同時に常に兼ね備えているわけでございます。その場合に、それを排除することが、国連憲章の五十一条に照らして、どういう点から違法性阻却ができるかという問題でございます。これはまさに日本の領土に対する侵害を日本は排除しておるわけでございますから、これは個別的自衛権をもって説明できることだ、そういう意味を言っているわけでございます。集団的自衛権を援用しなければ国連憲章違反になるという問題ではない、こういうことを先ほどから何回も申し上げておるわけでございます。そして、こういうものもいわゆる集団的自衛権であるということを言う学者があることも、私は承知しております。しかし、これは国連憲章五十一条に照らしてみました場合に、集団的自衛権を援用しなければ国連憲章違反になる事態ではございません。まさに個別的自衛権を発動して、これを援用して違法性を阻却できる、こういう問題でございますから、個別的自衛権で説明できる事態だ、かように言っておる次第であります。これはまさに正当な解釈だと私は思います。
  397. 受田新吉

    受田委員 総理大臣、私がお尋ねしているのは、五十一条に関連する問題ではありますけれども、今ここの五条に掲げてあるきわめて明瞭な文句と、個別的、集団的自衛権相互の発動の問題をお尋ねしておるのです。第五条に「各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃」と書いてある。「いずれか一方」がはずしてあれば、これは五十一条との関係において、今の林さんの説明にも、ある程度の肯定すべき論点があるかと思うのでございますが、ここに書いてある文句は、「いずれか一方に対する武力攻撃」となっている。この「いずれか一方」ということは、日本だけでなくして、米軍も入っている。そこで、米軍に対する攻撃は、もちろん、日本の空をこえ、日本の領域を侵して加えられるはずです。そして米軍のいる位置は、基地とか、あるいは領海の中です。その基地は日本の領土である。それから、空も日本の領空である。そうすると、攻撃が、たとえば爆撃が加えられるという場合に、途中に、アメリカ軍という人間と装備がある、軍艦もあれば、戦車もある、そういうものを打ち抜いて基地に爆弾が入ってくるというときに、空と基地は日本の領域ですよ、まん中にある、おだんごをさしたような立場で貫かれる米軍というものは、れっきとした、日本とは別の立場の米軍です。その米軍に対する攻撃が、いずれか一方に対する攻撃になって、その二つが競合している。競合しているときに、日本の領空や領域に加えられる攻撃は、それは日本の個別的自衛権の発動で解釈できる、しかし、別の人格を有する米軍に対して加えられる攻撃をはね返す方法は、集団的自衛権が個別的自衛権と同時に行使されるというふうに解釈ができなければ、説明できぬではないですか。
  398. 岸信介

    岸国務大臣 この問題は、われわれは、繰り返し繰り返しわれわれの所信を申し上げております。第一に、この安保条約第五条の武力行使の問題に関しましては、言うまでもなく、これは今の国連憲章からいうと、いかなる場合においても、原則としてはどこにも武力行使をしてはならないということが前提になっておりますが、第五十一条の場合においては、いわゆる個別的あるいは集団的自衛権でやれる。個別的自衛権というのは、その国が他から攻撃を受けた場合において、これに対して武力を行使して、武力行使によってこれを排撃するということであり、それから集団的の自衛権というのは、最も典型的な場合は、自分の国に直接加えられておらないけれども、特別な関係にある他の国に武力攻撃が加えられた場合に、そこへ出向いていってこれを防衛するために武力行動しても、これは違法になる武力行動ではないという、いわゆる原則としては、武力行動というものは国津憲章は一切禁止しているけれども、特に五十一条の場合において、また、そういう厳格な状況のもとにおいての個別的自衛権及び集団的自衛権の発動の場合は、武力行動を違法なものでない、正当のものであると認めておるわけであります。それを受けてわれわれは安保条約第五条を規定しておるわけであります。しこうしてこの場合において、いわゆる米軍に加えられておる攻撃というものは、常に同時に日本そのものに対して攻撃が加えられている場合であって、日本はそれを排除するためには、いわゆる集団的自衛権という観念を持ってこなくても、個別的の自衛権、本来持っておる個別的自衛権の発動として武力行使をすることによって、この他からの武力攻撃を排除するということで十分に説明のできることであり、そういう意味のことを私どもは繰り返し説明しておるのでございます。
  399. 受田新吉

    受田委員 あなたの御答弁は、これまた三百代言だ。外へ出て集団的自衛権を行使しなくても、よそまで出かけなくても、日本の領域の中にある米国の軍隊というものに対して、集団的自衛権の発動ということは考えられるじゃないですか。だから、今途中で、日本の領域を侵して加えられた攻撃であっても、加えられた以上は、加えられた地域は日本であっても、加えられた軍隊は米軍であるという場合に、空と土地の中間に米軍というものがきちっとおるのだ、このおる米軍に攻撃が加えられた部分、これを個別的自衛権で解決しようという考え方が三百代言だ。少なくとも米軍に対する攻撃排除という部分は、日本と米軍という、いずれか一方という立場からいったならば、当然、集団的自衛権になる。個別的自衛権と集団的自衛権が同時に行使されるという立場にある。何という三百代言だ。もう一回……。
  400. 岸信介

    岸国務大臣 幾たびも説明をしておるわけであります。受田君は、何か、米軍に対する攻撃というものが、日本そのものに対する武力攻撃と離れて観念的にあるような考え方をとっておられると思います。私どもは、それは不可分のものであって、それを別に観念するということは、これは必要のないことのみならず、事実上そういうことはあり得ない。常にそのことは両方が不可分の関係においてでなければ、米軍に対する武力攻撃というものはあり得ない、日本に対する武力攻撃というものなくして、米軍に対する武力攻撃というものはあり得ない。また、あの条文に書いてあるのも、施政下にある領域内において、武力行動というものがいずれか一方へ加えられたという場合でありまして、これは日本の領域に対する武力攻撃というものが常にあるのでございますから、これを排除すれば、当然、米軍に対するそういう場合の攻撃というものもこれを排除することになるのでありまして、これはまさに個別的自衛権の発動によってわれわれはこれをなし得る、こういうふうに考えておるのであります。
  401. 受田新吉

    受田委員 岸さんは非常に都合のいい解釈をしておられるが、米軍に対する攻撃部分と、日本に対する攻撃と一本にして、お相伴的にこれを片づけようという考え方は、法理論としては筋が通らない。少なくとも米軍という別の機関があるわけなんです。これに対する攻撃を排除する部分というものは、これは集団的自衛権だ。よその国へ出かけなくてもこのことはできるわけじゃないか。先ほど来あなたは、よその国へ出かけることを言うておられるが、日本国内において日本と別の米国の軍隊を守るために、この攻撃を排除する部分の説明は、集団的自衛権という部分の説明でなければいけない。その部分のはね返しは、米軍に対する攻撃のはね返しは——日本に対するはね返しは、個別的自衛権でそれは説明できる。それが両方が……(発言する者あり)黙れ。そういうことを、あなた方が憲法の解釈にとらわれて、この大事な問題をいいかげんに解釈しようとするところに問題がある。少なくとも、率直に、いずれか一方に対する武力攻撃ということを、米軍と日本軍とそれぞれの人格を考えてこれを解決するという解釈でなければならぬじゃないですか。同時行使という立場があるじゃないですか。同時行使……。
  402. 岸信介

    岸国務大臣 これは要するに、五条の場合の日本の武力行動を、国連憲章のどの条項に基づいて、この武力行動を合法的なもの、違法性のないものと解釈すべきかという問題から、いわゆる個別的自衛権とか集団的自衛権とか、いろいろなことを申しておりますけれども、それは要するに、何ゆえにそれを問題にしなければならぬかということは、事実問題として、いずれか一方に加えられた——日本の施政下にある領域内に他から武力攻撃がきた場合に、日本の自衛隊も、また米軍も、これを排除するところの武力行動をとるという事実、結果については、だれも異論がないのです。このことについて受田君にも異論がないと思うのです。ただ、それをどういうふうに説明することが、国連憲章の五十一条において——国連憲章は、いかなる場合においても原則として武力行使を禁止しておる。それにもかかわらず、この第五条において、こういう場合に武力行使をするということをきめることは、国際法上許せないのじゃないか。そうでないのだ、五十一条という規定のまさにこれに当たる場合を規定して、これに違法はないのだという説明をするだけの問題である。その説明をどういう言葉で説明するかという意味において、われわれは、個別的自衛権で十分に説明できる問題であり、受田君は、それを個別的自衛権と集団的自衛権という観念と二つを持ってこなければ説明できぬと、こういう意味において、あなたと私の意見が違うわけです。しこうして、いかなる場合においても、この米軍に対する攻撃というものは、この条文にも書いてあるように、日本の施政下にある領域内においてそういう武力攻撃が加えられる場合であって、いかなる場合においても、日本の主権に対する武力攻撃というものを伴わずして、米軍に対する武力攻撃というものはあり得ないのです。これを排除すれば、日本に対する武力攻撃もなくなりますし、米軍に対する武力攻撃もなくなるのである。これを説明するのに、われわれは、まさに個別的自衛権の観念を持ってきて説明することをもって十分であって、それ以上のことを言う必要はないのじゃないか、それでもって日本の行動はまさに国連憲章において違法性が阻却されるのだ、こういう考えであります。
  403. 受田新吉

    受田委員 あなたの説明は、あなたの立場をもってすれば、実に要領のいい説明なんです。この説明で国民がごまかされると思うたら間違いですよ。少なくとも、米軍に対する攻撃部分を日本の個別的自衛権の発動の行使の陰に隠そうという考え方が間違っておる。そこにあなたのごまかそうとするねらいがある。少なくとも、集団的自衛権というものがサンフランシスコ条約でも認められておる。また、この条約の前文にもそれが書いてある。しかも、ここで「いずれか一方に対する武力攻撃」として、はっきりと二つの人格が対立しておることが規定してある。それを、一方の米軍に対する攻撃に対する排除部分を個別的自衛権で片づけようという——陰にそっと隠して、日本の領域の部分だけを大きく出して、あとを片づけようという考え方は、ごまかし的説明ということになる。国民はこれでは納得しませんよ。やはり、米軍に対する攻撃部分に対しての排除は、集団的自衛権の行使ということ、しかも、それが別々に行なわれるのでなくして、同時に行なわれる、同時行使だという説明で、ゆっくり説明できるじゃないですか。二つの自衛権の同時行使じゃないか。学者の説ということでなくして、実際に自衛権が行使される形態は、二つのものが同時に行なわれるという形態ではないか。これは総理、私は了承しませんよ。あなたの今の御説明は、米軍に対する攻撃部分のことを隠そうとしておる。これはどうも私はあなたの今の御説明には納得できない。しかも第五条において、日本は個別的自衛権の発動を強制されるというような形になる。
  404. 岸信介

    岸国務大臣  これは何べん討議いたしましても、同じことを私は申し上げるほかはない。実は受田君は、幾ら私どもが説明をしても、これは承服しないとおっしゃいますけれども、われわれが繰り返し説明をした通りでございまして、私どもは、いかなる場合においても、米軍に対する攻撃というものが、日本に対する攻撃なくして行なわれるというようなことは、事実上あり得ないことである、従って、また、そういう観念上の問題を持ってきて説明しなければ、日本の武力行動の違法性を阻却する説明にならないという問題ではないと思います。問題は、これをどう説明するかということは、要するに、日本の行なう武力行動というものを、国連憲章に照らして違法性のないものだという説明がどうしてつくかということの説明にほかならないのであります。その場合において、いかなる場合においても、日本に対する武力攻撃というものを同時にそのことは不可分に伴っているものであって、これを排除するために日本は武力行動をする、この説明でもって十分であって、また、何かを隠しておるというような御議論がありますけれども、ちっともそういうことはない、こういうことを繰り返し申し上げておきます。
  405. 小澤佐重喜

    小澤委員長 この際、竹谷源太郎君から関連質疑の申し出があります。これを許します。竹谷源太郎君。
  406. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 ただいままでの受田委員の、新条約第五条の日本の自衛権の発動に関する質問関連をして質問をいたします。  私は角度を変えてお尋ねしたいのでありますが、個別自衛権は、武力攻撃があった、外国から侵略があったならば、必ず発動しなければならないのかどうか、発動するかしないかは、その国の考えによって、平和交渉によるなり、あるいは忍従をするなり、そのようにやってよろしいのかどうか、ここで国連憲章第五十一条の解釈上どのようなものであるかをまずお尋ねしたい。
  407. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 ただいまの問題は、当然の権利でございますから、それは発動するといなとの自由を持つわけでございます。しかし、武力攻撃が行なわれたのでありますから、そこで発動しないというようなことは、実際問題としては考えられないわけでございます。ただ、純粋な理論的な問題とすれば、御承知通り、これは権利でございますから、行使といなとの自由を持つ。ただ、ほかの方の余裕があるという場合は、これは行使しないでいいかということになりますと、それは自衛権の——状況にもよりますし、要件自体の否定でございます。すなわち、それは自衛権を発動する状態ではないわけでございますが、もし、自衛権を発動する状態でありますれば、これは武力攻撃を受ければ、当然、発動しないということは考えられませんけれども、理論的にはそれは権利でございますから、発動するということの自由を持つのであります。
  408. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 武力攻撃があったならば、必ず個別自衛権を発動しなければならないというわけではない、発動しない他の方法でやってもよろしいということは、国連憲章上も当然であろうと思う。この点は、昨日、岡田委員質問において、事前協議で、アメリカの個別自衛権発動に関して、在日米軍が出動をするという場合に、日本政府がこれを拒否する、そういうことは国連憲章第五十一条違反ではないか、こういう質問に対して、それは違反ではない、このような答弁をしたのは、要するに、個別自衛権の発動は、その国の自由である。幾ら武力攻撃を受けたからといって、立ちどころに立ち上がってけんかをしなければならぬというわけではない。相手を説き伏せる手段もあり、対外交渉によってそれを救済するいろいろな手段がある。また、それが国連憲章が一番望んでおるところであると私は思う。それで、武力攻撃があったら必ず立たなければならないというような考え方、また立つのが当然だという、そういう考え方は、私はどうかと思うが、そのような政治問題は第二といたしまして、理論上、国連憲章第五十一条における個別自衛権の発動権は、これは強行規定ではなく、任意規定である、こういうふうに考えられる。ところで、そうなりますと、この第五条によって、日本は、在日米軍が第三国から攻撃された場合、無条件に日本は立ち上がらなければならないという義務を負ったものではないかと思う。この点は、藤山外務大臣は、従来と何ら変わりがないので、新たな義務ではないというようなことを申しておりましたが、これはいろいろ私との質疑応答において、法律的には義務であるが、政治的に、実質的には従来通りなんだ、このような答弁があった。これは速記録を読んでみて、そう見えます。この点、外務大臣、私が言いますように、理論上、法理上は義務である、しかし、実際は従来と同じなのであるから、同じだ、こういうふうにあなたは前の私の質問のときに答弁なすったのであるか、それとも、法理上も義務ではない、このようにお考えかどうか、この点もう一度確かめておきたいのであります。
  409. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 日本に対して武力攻撃があった、また、在日米軍に対して武力攻撃があった。憲章五十一条の武力攻撃というものは、急迫している事態で、日本がそれに対して立ち上がるということは、当然のことだと思います。
  410. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 答弁をしない。これですから安保審議は進行しないのです。私は論争はしない。まじめに、端的に結論だけをいつも聞いているのです。非常にふまじめでいけない。法律論として、法理上、日本はどうしても必ず自衛権を出さなければならぬ、そういうことを第五条で規定してあるのか、それとも、やってもやらぬでもいいのか、あるいは、やらなければならぬということは、法律的の義務ではないのか、それを聞いておる。法律上の義務ではない、こういうのかどうか、それを確かめておきたい。
  411. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 必ずやるのでありまして、やるようにお互いに宣言をしておるのでありますから、従って、それは……。
  412. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 だから、それは義務かと聞いておる。
  413. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 それは約束をしておりまして、当然のことを当然するのでありまして、それを義務といえば義務といえるということを申し上げたのであります。当然のことを当然にやることなんです。でありますから、宣言しておるわけなんであります。
  414. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 在日米軍が攻撃された場合、日本が必ず自衛権を発動する、そういう義務を負担したということを、今藤山外務大臣は明言をした。これは今まで言を左右にして明言をしなかったところでありますが、きょうはその点はっきりしたことは、一つの進歩であります。しかし、これは日本にとって非常に困ったことである。約束して、義務だ、その義務はだれに対して日本は負うのであるか、それを聞きたい。アメリカに対し負う義務であるか、それとも、ソ連に対してであるか、台湾に対してであるか、何人に対して日本は自衛権を発動しなければならない義務を負担したのであるか、その義務を負担した向こうの相手方はだれであるかをお尋ねしたい。
  415. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、日本におきます駐留米軍に対して攻撃があった、それは日本の領土、領空、領海、日本の主権を侵してくるわけでありまして、その武力攻撃というものは、当然、日本がそれに対して対処しなければならぬものなのでございます。ですから、その当然の行動を当然にとりますこと自体を義務というならば、それはそういう意味で義務というということを申し上げておるだけでありまして、当然のことを当然にやるわけでございますから、この条約約束をいたしたわけであります。
  416. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 今いよいよはっきりしたのでありますが、日本の領域にある米軍の艦船なり基地なりを攻撃された、そういう場合に、日本は自衛権を発動しなければならぬ、必ず武力攻撃に対して抵抗力を、現実に武力を用いなければならない、アメリカに対してその義務を新たに第五条によって負担した、こういうのでありますが、それを明確に今答弁されましたが、この点、長い間疑問である点が明らかになりました。  そこで、現行行政協定第二十四条には、「日本区域において敵対行為又は敵対行為の急迫した脅威が生じた場合には、日本国政府及び合衆国政府は、日本区域の防衛のため必要な共同措置を執り、且つ、安全保障条約第一条の目的を遂行するため、直ちに協議しなければならない。」とあって、この「しなければならない。」ということは、当然、解釈上、共同措置をとらなければならないし、協議もしなければならない。このときすでに、今日の第五条の趣旨が、この第二十四条という——国会承認も経ないで、政府間で行ないました行政協定の第二十四条において定められておった。それを、この協議の事項は第四条に、それから、共同措置をとる点については、新条約第五条に新たに条約として明記されたものであって、これは当然、今藤山外務大臣答弁されたように、日本は、日本の領域はもちろんのこと、在日米軍もやられたときに、個別自衛権を発動する義務をアメリカに対して新たに負担した、こういうことになりますから、その意味で、アメリカはまた日本の領域を守る義務がある。在日米軍が攻撃されなくとも日本の領域が侵略せられれば、アメリカ軍は立たなければならない。それからまた、在日米軍が攻撃されれば、日本軍は立たなければならない。お互いに、相互に防衛し合う義務が新たにここに生じた。それは集団であるか、個別であるかは別問題として、相互防衛の義務が明らかにここに現われてきたということは、今の藤山外務大臣答弁からして当然である。お互いに守り合うということを第五条において明定した、このようにだれが見てもこれは読める。それを否定することはできないと思うが、この点いかがであるか、御回答願いたい。
  417. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 私の申しておりますことを、曲げて御解釈になっては困ると思うのです。私が先ほど来申しておりますのは、日本におります駐留米軍が攻撃をされましても、領土、領空、領海を侵されるわけであります。日本の主権に対して、日本に対する攻撃でございます。従って、当然日本としてはそれに対抗する処置をとる。対抗する処置をとるということは、日本が国連憲章五十一条によって持っております権利でございます。従って、われわれはそれを行使するわけでございます。その行使をわれわれは約束いたしておる。もしそれを、あなたが、つまり義務と追うのだというならば、それはあなたの御解釈ですが、私は義務だとは言っておらないのでありまして、今申し上げた通りに説明を……。(「自分で言っているじゃないか」と呼ぶ者あり)いいえ、そうは言っておりません。私の申した通りに言っておるのであります。なお、英文等の問題もございますから、他のこまかい点については条約局長から御説明いたさせます。
  418. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 今、外務大臣は、義務と言ったことを否定するような言辞があったが、これは前の藤山外務大臣答弁で、それは義務であり、そういうことを必ず約束したのだ、それは相手はアメリカである、このように言っておる。これは速記録を見ればわかる。そうして、大体個別自衛権の発動は、自分の国だけを守るか守らないかなんです。それを他国によって、必ずそのときに武力抵抗をしろというような、そういう他国との間の約束というものは明らかに義務なんで、それは義務であると言ったか言わないかという外務大臣の言葉の問題ではない。必ず自衛権を発動しなければならないという義務づけは、本来やってもやらぬでもいいものを、やらないことができないということは義務じゃないか。それが義務である。     〔発言する者多し〕
  419. 小澤佐重喜

    小澤委員長 御静粛に願います。
  420. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 そういうわけで、これはきのう岡田君の質問に対して、必ず自衛権を発動しなければならぬという義務がないことは、政府答弁した。最後に岸さんが答弁した。それだから自由であるものを——日曜日には、家におろうか散歩しようか、これは各人の自由なんです。ところが、一緒に散歩しようと約束したら義務なんです。どうでもいいものを、やってもやらなくても本人としてはいいものを、必ずやらなければならないということは義務なんです。相手方と約束すれば、その人に対する義務なんです。権利であるが、同時に、その権利を自分で相手方に提供した……。     〔発言する者多し〕
  421. 小澤佐重喜

    小澤委員長 御静粛に願います。
  422. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 その権利であり、そしてその権利を相手のために放棄したのだ。やらないでもいい権利を、自由を放棄した。自由がなくなったのだ。自由がないということは義務なんです。責任なんです。そういう意味で、相手方、アメリカに対するところの自衛権を、どうしても自由であるべきものが自由ではなくなった。これは義務なんです。明らかに義務なんです。その点は義務だということを藤山さんは答弁した。第五条は義務ではない、とんでもない話だ。それは現行の行政協定にも、共同措置をとらなければならないとある。これが第五条によって強く、明らかに自衛権の発動として現われてきた。その自衛権は、個別であろうと集団であろうと私は問わない、その自衛権の自由である発動を、自由を奪われたということは、これは義務になった。その点、総理大臣はどうお考えになっておりますか。
  423. 岸信介

    岸国務大臣 いろいろ例をおあげになりましたが、例は、私はこの場合には当てはまらないと思う。問題は、日本の領土が武力攻撃を受けた場合の規定であります。武力攻撃というのはただどこかへ爆弾が一つ落ちたとかいうことではなしに、しばしば御説明申し上げているように、計画的に、組織的に他の国が日本に対して侵害を加えて武力攻撃に来た場合に、私は、独立国として自衛権を発動することは、当然のわれわれの権利であって、これは当然発動することだと思います。その発動するということを、そういう場合においてわれわれが宣言した、アメリカとの間にそういう約束をしたということは、何か日本が、それによって新しい義務を負うというふうに竹谷君はお話しになっておりますが、そういう場合ではない。われわれが、散歩に行くかあるいは寝るかという自由を持っておる、それを一緒に散歩しようという約束をしたから義務を生じた、それと同じじゃないかというお話でありますが、事態そのものが、日本の存立を脅かすような組織的な、計画的な武力が加えられておる場合において、われわれがこれに対して武力をもって抵抗を排除するということは、独立国として当然持っておる権利でありまして、これを行使していくということは、私は当然なことである、かように思っております。
  424. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 藤山外務大臣が、新安保条約第五条によって、日本は自衛権発動の義務を負うということを答弁したのに、今総理からは、それを否定するかのごとき、詭弁的な説明がありました。承服できません。これは留保をいたしまして、またやります。
  425. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 私は、あるいは言葉が足りなかった点があろうかと思いますが、私は先ほど竹谷委員の御質問に詳細に答弁を申し上げた通りでございまして、日本が当然攻撃された、日本に駐留しておる米軍が攻撃されましたら……。
  426. 小澤佐重喜

    小澤委員長 この際、堤ツルヨ君から関連質疑の申し出があります……。     〔発言する者多し〕
  427. 小澤佐重喜

    小澤委員長 外務大臣、発言がまだ残っておれば、発言なさって下さい。     〔発言する者あり〕
  428. 小澤佐重喜

    小澤委員長 岡田君、静粛に願います。
  429. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 私は、持っております発言権で、委員長の許可を得て発言をいたしておりますので、お聞きいただきたいと思います。私は答弁の際に、あるいは時によって言葉が足りなかったことがあろうかと思います。従いまして、先ほどはっきり竹谷委員に御答弁申し上げたと思いますが、あらためて私の申しておりますことをはっきり申し上げたいと存じます。  日本の基地におります在日米軍が攻撃された場合に、それは日本の領土、領空、領海を侵さないで攻撃ができないのでありますから、これは当然、日本に対する武力攻撃であることは申すまでもございません。従って、その武力攻撃に対しまして、日本が、日本の持っております個別的自衛権を使用し得ること、これまた当然でございまして、それが国連憲章五十一条に規定しております個別的自衛権に違反はいたしておらないというのでございます。従いまして、われわれは、その持っております五十一条の権利によって個別的自衛権を発動するのでありますから、そういうことを宣言をいたしましたといたしましても、それは私は、新たな義務を負ったということではないということを申し上げておるのでございます。それに対して竹谷委員は、それは義務じゃないかという御意見を持っております。しかし、私は今申し上げたような立場において申しておるのでありまして、竹谷委員がそれを義務と御解釈になるのは、それは竹谷委員の自由なことであるということを申し上げておるのであります。
  430. 林修三

    ○林(修)政府委員 先ほど竹谷委員の仰せられました現行の行政協定の第二十四条の解釈でございますが、ちょっとこの点、竹谷委員の御解釈が違っておりますので、訂正しておきたいと思います。  第二十四条は、「日本区域において敵対行為又は敵対行為の急迫した脅威が生じた場合には、日本国政府及び合衆国政府は、日本区域の防衛のため必要な共同措置を執り、且つ、安全保障条約第一条の目的を遂行するため、直ちに協議しなければならない。」この場合の「協議しなければならない。」という言葉は、「共同措置を執り」、「遂行するため」と、両方ここではかかっておるわけでございまして、共同措置をとらなければならない、それから協議しなければならないと、二つ並んでおるのではないのでございます。この点は、英文の方をごらんいただけばはっきりしております。日本文も、その意味で、「直ちに」という前に点が打ってございます。そういう点で、先ほど竹谷委員の二十四条の御解釈は違うわけでございます。その点は、行政協定を作りましたとき以来はっきりしておるわけであります。二十四条の規定は、いわゆる協議の規定でございます。共同措置をとるまでの義務を規定したものではございません。
  431. 小澤佐重喜

    小澤委員長 この際、堤ツルヨ君より関連質問の申し出があります。これを許します。堤ツルヨ君。
  432. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 これは岡田委員質問のときに、相当な時間を費やしまして、マイクロホンをなにしながら言われた問題で、それからきょうもまた問題になっておりますけれども、一つきょうは、私は具体的に例をとってお尋ねいたします。  仮装敵国と申しますか、脅威を与える共産主義陣営ということを言われますから、個々の国を言うことは少しタブーらしいですから、私も岸さんと同じように、百歩譲りまして、ソ連または中共というような一国をささないで、共産主義陣営のいずれかの国とアメリカが交戦状態に入った場合、日本の領土の中に在日米軍の基地があるがゆえに、不幸にしてこの基地を中心として、アメリカの配置しておりますところの、アメリカの支配下にあるところの在日米軍の根拠地と、そしてこれを包みますところの日本の領海、領土が侵されたときには、立ち上がって日本が個別自衛権を使わなければならぬということは、当然起こってきますから、これは決して否定いたしません。ところが、立ち上がって個別自衛権を発動してこれを排除するついでに、アメリカに対するところの、このアメリカの支配下にあところの軍隊に対する攻撃をも同時に排除できる、こういうことをおっしゃいますが、そうすると、日本の個別自衛権がアメリカの受けた攻撃を、アメリカも同時に立ち上がるでありましょうから、共同で一緒に立ち上がるのでありますから、これは同時に、片手に個別自衛権的な性格を持っておると同時に、左手の中には共同して集団自衛的な目的を持ってこれを排除するというものでなければ、これは徹底的に理屈が通らない、私はこう思うのです。それはどうですか。
  433. 岸信介

    岸国務大臣 そういう場合に、武力行使を共同してやるかやらないかということと、いわゆる集団的自衛権という観念とは、これは言うまでもなく違うのでございます。集団的自衛権という観念と、われわれがそういう攻撃を受けたときに、日本も立ち上がるし、アメリカも立ち上がって、他からの武力攻撃を排除するために武力的行動をとる。その場合に、武力行動を有効ならしめるために、いろいろ連合して共同するということ、これは当然あり得ると思いますから、それと集団的自衛権というものとは、私は違うと思います。その場合に、両方がおのおの個別的自衛権を発動した場合においても、その軍事的な行動について共同するということは、いろんな関係においてあると思います。共同したから集団的自衛権でなければならぬという観念ではない、かように考えます。     〔委員長退席、椎熊委員長代理着   席〕
  434. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 そうすると、そういう解釈でいきますと、日本は、アメリカがどこかと交戦状態に入って、そうして日本の国内の、日本の領土内の在日米軍の基地などが攻撃を受けたときには、常に個別自衛権でもってアメリカに対するところの攻撃をも同時に排除しなければならぬという義務を負うことになれば、これは軍事同盟じゃありませんか。どうですか。
  435. 岸信介

    岸国務大臣 問題、いわゆる場合におきましても、日本の施政下にある領土の武力攻撃を受けた場合、それは米軍の基地であろうとも、あるいは基地でなかろうとも、日本のいやしくも施政下にある領土が武力攻撃を受けた場合に、日本が国連憲章五十一条において認められておる個別的自衛権を発動して、そうしてその武力攻撃をなくする、排除するということは当然できることであります。その結果として、米軍に対する攻撃がなくなるということが起これば大へんけっこうなことでありまして、私はそれは、別にそれだから軍事同盟だという性格のものではないと思います。
  436. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 それじゃ私はお尋ねいたしますが、そうすると、あらゆる場合におのおのの国が個別自衛権で立ち上がって、それが共同で作戦を持って、集団でお互いに自衛権と絶対に言わないとおっしゃるのですか、どうですか。共同作戦をとっても、これは集団自衛だとおっしゃらないのですか。
  437. 岸信介

    岸国務大臣 私は、作戦が共同であるから、それが集団自衛権だとは考えておりません。ただ問題は、それではアメリカが日本の領土を守るということのために武力を行使するということは、アメリカ側の立場から言えば、集団自衛権でなければ説明できぬと思います。しかしながら、その場合に、いかなる場合におきましても、作戦上共同の作戦をとったから、直ちにその関係はすべて両国とも集団自衛権の状態だ、こういうふうには考えておりません。
  438. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 日本の立場の場合は、いかにしても個別自衛権ということで通さないことには問題になるから、あなたはそこのところをこの間からうまく逃げて、それで絶対に集団自衛に持っていっちゃならないと、自分の胸の中で言い聞かせながら答弁をしていらっしゃるから、従って、人が聞くとわけがわからなくなってくる。お互いにここで個別の自衛権を持って立ち上がって、これが一つの集団を作って、共同作戦をやって自衛をやったら、これは集団自衛権じゃありませんか、その構成するところのものは。個々に個別であるから——一つ一つを分析すれば個別であるから、従って、これは集団ではない、共同作戦のもとに集まって自衛をするのは集団自衛じゃない、こういう説明のように思いますが、そうすると、総理にお聞きしたいのは、共同作戦によるところの集まっての自衛と、集団自衛との違いをどういうふうに考えていらっしゃるか。
  439. 岸信介

    岸国務大臣 私から申し上げるまでもなく、個別的自衛権ないし集団的自衛権ということは、国連憲章の五十一条に基づいて考えられておる観念でございます。この場合におきまして、先ほど来申し上げておるように、憲章は、大体原則として、武力行使は相ならぬということを前提としております。ただ、この五十一条の場合において、他から不当に侵略をされ、武力攻撃を加えられた場合に、独立国たる加盟国は、個別的または集団的自衛権を持っておるということが書いてあります。それで集団的自衛権の場合におきまして、今のお話のように、共同するとか、共同作戦するとかしないとかいうことは、何ら問題になってもおりませんし、その要件になっておらないのであります。自分自身の国が武力攻撃を加えられた場合に、これを武力で排除するのが個別的自衛権であります。自分自身の国ではなくして、他の国が武力攻撃を受けた場合において、他の国を向いて、武力行使によって、その他の国に対する武力攻撃を排除するというのが集団的自衛権であるということがこの五十一条によって明らかになっておりまして、今お話しのように、その場合に、共同作戦をするかどうかということが集団的自衛権の要件ではございません。
  440. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 個別自衛の目的を持って立ち上がったら、立ちどころにアメリカとの関係に——アメリカも攻撃を受けたという立場があるがゆえに、そこに何も外へ出かけていかなくても、立ちどころに、同時に集団自衛権が生まれてくるという解釈が当然じゃありませんか。
  441. 岸信介

    岸国務大臣 このことは、繰り返し繰り返し申し上げておりますが、この安保条約五条の場合におけるいわゆる米軍に対する攻撃というものは、日本に対する攻撃なくしてはできないのであります。日本に対する攻撃というものとの関係は不可分であります。従って、われわれは、この日本に対する攻撃に対して自衛権を発動する、これは、まさに五十一条に言っている個別的自衛権という観念にぴったりと当てはまる、かように説明をいたしておるのでございます。
  442. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 そうすると、日本の場合、立ちどころにアメリカと共同して集団で自衛を行使しても、それは集団自衛には入らない、海の外へ出かけていったときには、距離的に距離があったときには集団自衛に入る、こうおっしゃるのですね。
  443. 岸信介

    岸国務大臣 何か堤委員は、いわゆる集団自衛権の観念を、集団といって、たくさんのものが集まったら集団自衛権だというふうに考えられておるようでありますけれども、国連憲章の五十一条をお読み下さるとこの集団自衛権と個別自衛権というものの観念がはっきりすると思います。その場合に、作戦行動として、いわゆる共同するとか、たくさんの国が一緒になってやるかどうかということは、これは個別的自衛権か集団的自衛権かということの観念とは関係ないことでありますから、この点を申し上げておきます。
  444. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 それでは、総理にお尋ねいたしますが、日本の個別自衛権でアメリカの受けた攻撃を排除してやることも日本の個別自衛権になるのですか。
  445. 岸信介

    岸国務大臣 それは、先ほど来お話がありましたように、アメリカに対する攻撃が日本に対する攻撃というものと不可分であり、それを観念的にそういうものが別にあって、それを防衛するという、そういう事態は事実上ないのでありまして、常に日本そのものに対する攻撃というものであるのであります。それを排除するという意味において、私どもは、個別的自衛権という説明をしておるわけであります。
  446. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 先ほどから受田さんに非常によく説明があったのですが、日本の領空を通って、そしてその中間にあるアメリカ施設を爆撃して、そうして日本の領土にたまが落ちたという場合に、私たち日本の自己防衛の立場から個別自衛権を発動してこれを排除する過程において、アメリカの受けたその攻撃も排除することができる、こういうふうにあなたはおっしゃったのですね。そうすると、日本の個別自衛権というものは、アメリカが受けた攻撃をも同時に排除するところの義務を持っておるという解釈になってくる。そこを竹谷さんが言っておられる。(「不可分なんだ」と呼ぶ者あり)不可分一体ということではあるけれども、同時に義務であるということもはっきりしている。
  447. 岸信介

    岸国務大臣 これは先ほど来繰り返しお答え申し上げておるように、事実問題として、在日米軍に対する攻撃というものは、日本の領土、領空、領海に対する武力攻撃なくしてこれが行なわれることはできないのでありますから、このことは不可分の関係にあるわけであります。従って、われわれとしては、あくまでも日本の主権が他から武力攻撃を受けた、これに対してわれわれが武力を行使して排除するという五十一条の個別的自衛権の場合にそのまま当てはまる事態である、かように解釈しており、また、そういうふうに繰り返し御説明申し上げておるのであります。
  448. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 この個別自衛権と集団自衛権との問題が釈然とするかしないかが、この安保を通すか通さぬかの分かれ道になると思う。ですから、私の方は、まだ竹谷さんを初め受田さん、私、あと大貫さんも関連して立ちますけれども、釈然といたしておりませんから、この問題を私の質問時間に残して、これで終わります。
  449. 受田新吉

    受田委員 この問題は非常に重大な問題でありまするので、次会に重ねてこれを質問することといたしますが、この自衛権に関する問題について、いま一言お尋ねしてみたいと思います。  それは、政府の立場から、最近、憲法第九条の解釈がひんぱんに変わってきておるのです。私は、ここで一つ例を指摘しますが、総理は、自衛のために持てる自衛隊の立場を、今まで政府はどう解釈を変遷してきたか御存じですか。近代的な装備を有する戦力、そういう形の軍隊は戦力としてこの憲法で保持し得ないと言っておいて、自衛のために最小限の近代的自衛力を持つことは憲法で認められる戦力だというふうに、だんだんと解釈が変わってきた、自衛権の行使に関する解釈が変遷してきておることを総理は御存じですか。古田さん、鳩山さん、岸さんと、歴代の総理、及び歴代の防衛庁長官によってそれが変わってきていることを御存じですか。
  450. 岸信介

    岸国務大臣 表現の仕方において多少の相違があることは私も承知いたしております。しかし、考えそのものの基本をなしておる考え方について、私は、基本的な相違があるとは考えておりません。
  451. 受田新吉

    受田委員 憲法解釈で、ここで、も一つ新しい問題を指摘します。第五条に関係して、今の問題の次に出てきておる「自国の憲法上の規定及び手続に従って共通の危険に対処するように行動する」という憲法上の規定です。この憲法上の規定の中に、あなた方は国内法を入れ、自衛隊法を入れておる。これは間違いないですか。
  452. 林修三

    ○林(修)政府委員 この点は、実は、もうお答えしたことがあると存じておりますが、憲法上の規定、これは主として日本の場合を考えて、ほかの同種の条約にない文言を入れたわけでございます。この憲法上の規定というのは、やはり日本においては憲法第九条の規定、かように考えております。そこで、先般来、自衛隊法の第七十六条の規定が、ここにいうものに入るかどうかという御質問が再三あったわけでございます。形式的な意味においては、入らないということを申し上げております。ただ、この第五条は、どこから押しましても、自衛隊法第七十六条の規定を排除しておるものではございません。従いまして、当然、日本の自衛隊が防衛出動するにあたりましては、自衛隊法の規定による、そういうことを申し上げておるわけでございます。
  453. 受田新吉

    受田委員 憲法上の規定というものの中に、今のあなたの御説をもってしても自衛隊法を排除するものではない、こういうことになると、実質的には、これは憲法と同格だということになりますね。
  454. 林修三

    ○林(修)政府委員 多少おっしゃるところのニュアンスが違うわけでありますが、自衛隊法は国内法でございまして、法律でございます。そこで、形式的な意味においては、憲法上の手続にも、規定にも入らないということを申しておるわけであります。同時に、この第五条の規定は、自衛隊法、つまり、わが国において、自衛隊が防衛出動する手続について何ら特別なことを置いておりませんから、当然自衛隊法が適用される。しかし、同時に、かりに自衛隊法の改正がありまして、自衛隊は、たとえば、間接侵略にしか出ないというようなことになった場合、これはやはり条約とも抵触問題が起こる、かように考えます。
  455. 受田新吉

    受田委員 憲法九十八条に、条約に忠実に従わなければならない規定があるわけです。従って、この自国の憲法上の規定、手続に従って行動をする、こういうことになると、憲法九十八条の条約に忠実であるために、国内法である自衛隊法で、防御出動を国会承認しないというときに、憲法九十八条に基づく条約順奉の義務が失われるということになる。こういう問題がありますね。
  456. 林修三

    ○林(修)政府委員 この条約第五条の規定は、いわゆる自衛隊の出動について、現行の七十六条の規定をとることを排除した趣旨はどこにもございません。従いまして、わが国の自衛隊が防衛出動するについては、当然自衛隊法第七十六条の規定に従うわけでございます。第七十六条の規定に従えば、事前または事後において国会承認を得ることになります。当然この手続をとるわけでございます。その場合に、これは、この前も申し上げましたが、条約というものは、国会承認を得て効力を発生いたしますれば、もちろん政府のみを拘束するものではございません。国家全体を拘束しております。従いまして、政府のみならず、立法機関も裁判所もこの条約の趣旨に従って——もちろん条約に反するようなことはおのおのの御判断でございますけれども、条約の趣旨というものを考えていろいろの行動は行なわれるわけでございます。しかし、それが第七十六条の手続を排除しているというところはどこにもない。つまり、国会承認を得て防衛出動するということはどこにも排除しておらない、かようなことでございます。
  457. 受田新吉

    受田委員 ここで、まず、自衛隊の性格を一つただしておきたいのでございますが、岸さん、連日お疲れで、私あなたに御同情しておるのです。毎日々々あなたが苦労しておられることは、私よく存じておる。しかし、あなたも一国の総理として大事な条約案を通そうとされておる以上は、これはあなたの生涯の運命をかけたということになっておるのですから、一つがまんをしていただきたい。  鳩山さんは、自衛隊の解釈について、こういう答弁をしておる。三十年の衆議院内閣委員会でこういうことを言っている。「近代的の兵力、戦力というものでなければ持ってもいい、近代的の戦力を持つことは、やはり九条の禁止するところでありますというように、吉田君は唱えておったのであります。」吉田君というのは元の総理です。「私はそういうようには解釈いたしません。自衛のためならば、近代的な軍隊を持ってもいいものだと、いささか吉田君とは考えが違うのであります。」私は、自衛のためならば、その自衛のため必要な最小限度においては戦力を持ってもいい、そういう解釈をしておる。同時に、鳩山さんは、その前に、自衛隊の性格をはっきりするためには憲法の改正というものが必要なのだという答弁をしている。従って、自衛隊というものの性格は時の流れで非常に変わってきたわけです。そうして、最近は、軍隊でもいいというような答弁に完全になっておる。そこで問題になるのは、日本の現在の自衛隊は近代的装備を有し、近代的戦争ができるほどの装備ができているという形からいって、国際的に見たときに、国連その他の機関から見たときに、日本の自衛隊は、諸外国の憲法で認められている軍隊と同じそういう戦力と見られておるかどうか、お答えを願いたい。
  458. 林修三

    ○林(修)政府委員 自衛隊につきましては、自衛隊法に基づきまして、その任務あるいは権能等は詳しく規定されておるわけでございます。同時に、憲法第九条の制約がかぶっておるわけであります。そういう意味におきまして、いわゆる普通の諸外国のそういう制約のない軍隊とは、私はやはり違うと思います。ただ、吉田内閣の当時において、吉田元総理が、軍隊という言葉を使うなら、あるいは軍隊といってもいいかもしれない、そういうことを言われたことはございます。しかし、やはり私たちとしては、普通の諸外国のものとは違う、交戦権がないとか、あるいは自衛隊法によってその任務が制限されている、あるいは制約されておる、そういう点において、やはり違うと思います。国際的な関係においては、国際法のいろいろの規定によって、ある場合には、私は、国際法上軍隊あるいは軍艦に適用される法規が自衛隊法に適用される場合もあると思います。しかし、それだからといって、直ちに諸外国の軍隊と同じになるということはやはりないので、国内法的に任務が違い、あるいは権能が違い、あるいは憲法上の制約がある。そういう意味においては、そういうものがないものとは、やはり違う、かように考えます。
  459. 受田新吉

    受田委員 岸さん、あなたは、憲法改正論をお唱えになっておるのですが、この第九条をすっきりと——自衛隊がりっぱな戦力を持たれ、軍隊として切りかえられる、この方が好ましいというお考えをお持ちでしょうか。そういうことによってこの条約の問題などがきわめてスムーズに解決するのだが、惜しいことに、現行憲法は、いかにぎりぎりに解釈しても困難であるという意味で、非常に苦労されておるのじゃないですか、一つお答えを願いたい。
  460. 岸信介

    岸国務大臣 憲法改正の問題につきましては、いろいろな御議論もございますし、私は、個人として、私自身の考えを持っております。しかし、政府としては、この問題に関しましては、御承知のように、憲法調査会を設けて各方面の有識者を集めて調査研究してもらっておるわけでありまして、その結論を待って政府としてはこれを処置していくべきものであるということは、従来申し上げておる通りでございます。私の個人の考えは、ここで申し上げることは適当でないと考えます。
  461. 受田新吉

    受田委員 現行憲法で海外派兵ができないという解釈は、これは解釈であって、あなた方の中には、海外派兵ということも、考え方によってはできるのではないかという見方もありはしませんか。
  462. 林修三

    ○林(修)政府委員 これは、いわゆる海外派兵という言葉の意味にもなると思いますが、つまり、憲法第九条第一項、これは御承知通りに、国際紛争を解決する手段としては、戦争、武力行使あるいは武力の威嚇を永久に放棄する、こういう規定でございます。この規定は、反面において、いわゆる自衛権を放棄したものではない、独立国として自衛権があるということでございます。同時に、第二項において、それを保証する意味において、交戦権を認めない規定もあるわけであります。そういうところから総合して考えれば、これは自衛権を放棄するものではないわけでございますから、他国から不正なる武力攻撃を受けた場合、これを排除する、排除するために必要な、いわゆる自衛の措置をとることは、憲法の禁止するところではない。しかし、いわゆる普通に考えられる自衛措置を越えて他国に対して出て行くということは、やはり、私は憲法九条の容認するところではない、かように考えるのが適当だ、かように考えております。
  463. 受田新吉

    受田委員 もう間もなくやめますが、ここを一つ確かめてやめたい。この文章でいうと、自国の憲法上の規定及び手続云々で行動するということになると、どこへでも行けるような危険がある。事実、憲法上の解釈からいって、必要最小限度の防衛を発揮するために、やむを得ないときに敵の基地までも攻撃ができるという解釈などからいくと、これは当時、鳩山さんも船田さんも、敵の基地まで行く、つまり、敵の基地をたたかなければ自滅するという場合に、基地まで行けるという方法として、飛行機で行けるということを言っておる。飛行機で攻撃することが考えられる。飛行機で敵の基地を攻撃しても自衛の範囲であって、それは海外派兵にはならないと答弁をされておる。     〔椎熊委員長代理退席、委員長着   席〕 飛行機で敵の基地へ行っても海外派兵ではない、こういう解釈は、実質的には海外派兵ですよ、海外に飛行機に乗って行くのですから。ただ、計画的に武力行使の目的で上陸しなければ、海外派兵でないという海外派兵の解釈をされておるのですが、この点、岸総理も、飛行機で敵の基地をたたく場合、これは人間が乗って行っても海外派兵でないという考えは、船田さんや鳩山さんと同様ですか。
  464. 岸信介

    岸国務大臣 私は鳩山前首相や船田君が答弁したことに——私の記憶が間違っているかもしれませんが、飛行機で行ってもいいというように答弁したとは考えておりませんが、かりにそういう答弁をしておったとしますと、これに対する私の見解を率直に申し述べますと、それは陸上部隊が行く場合も、艦艇が行く場合も、飛行機が行く場合も、他の領土、領空に出かけていって何か武力行動をするということになれば、やはり海外派兵という観念に入る。従って、そういうことは、日本の憲法上はすべきものではない、かように考えております。
  465. 受田新吉

    受田委員 第五条の発動で関係があることなんですから、憲法の解釈でどうでもなるおそれがある。これは赤城防衛庁長官加藤防衛局長、船田さんが飛行機で海外へ攻撃を加える、やむなく基地をたたきにいく場合は、これは海外派兵ではないんだと答弁されたことを御記憶しておられると思うのです。ここで一つ御説明願いたい。
  466. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 船出前の防衛庁長官答弁したことを記憶しています。
  467. 受田新吉

    受田委員 岸さん、船田元長官はそういうふうに答弁しておられるのです。飛行機でやむなく敵の基地をたたく場合、そうしなければ自滅する場合、海外の基地をたたきにいく場合は、これは海外派兵ではないのだ、しかし、人間が前に行くのは海外派兵だと今岸さんは言っておられる。これは飛行機に乗って行こうと船で行こうと、海外へ出る場合は海外派兵と私は考えてそういう御質問をしたところ、船田さんは、そういう場合は海外派兵でないのだ、計画的に海外に上陸をして、武力行使をする場合は海外派兵だという解釈をされておる。きょうあなたと私は全く意見が一致したのです。すなわち、防禦のために、自滅を防ぐために、やむなく敵の基地へ飛行機で乗り込む場合は海外派兵だと、私とあなたの意見が完全に一致したのです。そういうことで、事実船田元防衛庁長官も、海外を飛行機でたたく考え方を海外派兵ではないと言って、事実上はあなたと同じように、海外派兵になることを——本質的には全く海外派兵であることを、そのように考えておられる。こういうことは、第五条の発動において大へん大事なことであって、先般総理は、こちらから今行く能力がないから、その場合は、米軍にかわって行ってもらうんだという御答弁をされた。憲法の解釈によって、今後日本の立場がいろいろに変えられていくということになると非常に危険で、将来憲法の解釈で海外派兵も可能であるということになったならば、いかようなる行動もできることになるではありませんか。憲法の解釈によってこの条約がどのようにでも動かせるという危険があると思いますが、ここをはっきりと一つ答弁をいただいて、安心をさせなければならぬ。
  468. 岸信介

    岸国務大臣 海外派兵の問題につきましては、政府が、これは憲法上できないということを明瞭に繰り返し申しております。さらに、あれは自衛隊法の制定のときか何かに、国会の決議もございまして、政府がそれを尊重することは当然であり、また、日本の憲法上、海外派兵というものはできない。これはたといこの五条の規定がこういうふうに規定されましても、将来そういう事態は絶対に起こらないということを申し上げておきます。
  469. 受田新吉

    受田委員 これできょうは終わりたいと思いますが、林さん、あなたは海外派兵について総理と同じ考えですか。つまり敵の基地をたたく場合に、飛行機に乗って行く場合も海外派兵であるという解釈をとりますか。
  470. 林修三

    ○林(修)政府委員 海外派兵という言葉の問題になるわけでございますが、日本の憲法の解釈として、自衛権の範囲の問題、いわゆる自衛行動として許される範囲であるか、範囲でないかという問題だと思います。いわゆる自衛権の理論的な範囲としては、自滅して単に死を待つ以外に方法がないという場合に、敵基地をたたく場合も自衛権の範囲に入るということも、鳩山総理大臣以後、現在の岸総理も言っておられます。ただ、その方法としてはいろいろな方法があるであろう。しかし、いかなる方法をとっても、それはいわゆる敵国の領土、領海まで行ってやるのではない、こういう意味だと思う。その点は、自衛権の範囲としては、多少私はやはり行き過ぎの問題があるのではないか、そのような点からくるのではないか、かように考えております。  このいわゆる海外派兵の問題、これは蛇足でございますが、かつて石橋委員にも私お答えしたことがございますが、いわゆる国連の決議あるいは国連軍あるいは国連警察軍という問題と海外派兵という問題は、これはおのずから私は別問題だ、これは私は可能だとは必ずしも申しませんけれども、いわゆる海外派兵の問題とは別問題として考えるべき問題である、かように考えております。
  471. 受田新吉

    受田委員 国連に要請されて、日本の自衛隊が出かける場合は海外派兵ではない——レバノン事件などのときに一時問題になったことがありますね。そういう場合は海外派兵ではない、国連の要請で、国軍加盟国として日本の自衛隊が海外に出る場合は海外派兵ではない、こういうことですか。
  472. 林修三

    ○林(修)政府委員 これは、その当時石橋委員の御質問に対しても私いろいろお答えしておりますが、これは場合によって考えなければならない問題でございます。その場合の国連の行動の性質あるいは国連の警察軍の組織の性質、そういうものをそれぞれ勘案しなければ、一がいには申せないということを申し上げました。いわゆる海外派兵ということは、自衛行動に名をかりて他国の領土に出ていく、こういうことがいけない、こういうことだと私は思っております。
  473. 受田新吉

    受田委員 では、これで総理、お尋ねを終わりますが、あなたは、船田前防衛庁長官赤城長官考えられた通り、敵基地をやむなくたたく場合に、飛行機などで、乗っていって攻撃を加える場合は、これは海外派兵になると今仰せられたが、そこを取り消しますか。はっきりしておかれないとあとから問題を残しますから、取り消すなら取り消す、海外派兵とはいわない……。
  474. 岸信介

    岸国務大臣 私は、日本の自衛隊の行動としては、日本の領域、及びしばしば申し上げておるように、公空、公海の範囲で行動すべきものであって、他国の領海、領土に行って行動することは、これは自衛隊の本質から見て、行き過ぎであるという考え方を終始持っております。ただ、問題になります、ある基地から日本が攻撃されて、この基地をたたかなければこれは絶対に日本として自滅しなければならないという場合に、その基地をたたく、それが外国の領土内にあっても、これをたたくということは自衛権の範囲に属するものだということは、これは私も承認いたしますが、その場合に、どういう方法でこれをたたくかということについては、これはいろいろな方法があるだろうと思います。従って、今言ったような、日本の飛行機が外国の領空、領土内に行って攻撃するということは、これは私はとらないということを申し上げておるわけであります。
  475. 受田新吉

    受田委員 残された諸問題を次会に譲って、質疑を終了します。
  476. 小澤佐重喜

    小澤委員長 次会は、来たる五月二日午前十時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時五十九分散会