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1960-04-27 第34回国会 衆議院 日米安全保障条約等特別委員会 第24号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年四月二十七日(水曜日)     午前十時二十七分開議  出席委員    委員長 小澤佐重喜君    理事 井出一太郎君 理事 岩本 信行君    理事 大久保武雄君 理事 櫻内 義雄君    理事 椎熊 三郎君 理事 西村 力弥君    理事 松本 七郎君 理事 竹谷源太郎君       安倍晋太郎君    愛知 揆一君       秋田 大助君    池田正之輔君       石坂  繁君    鍛冶 良作君       加藤 精三君    鴨田 宗一君       小林かなえ君    田中 榮一君       田中 龍夫君    床次 徳二君       野田 武夫君    服部 安司君       福家 俊一君    古井 喜實君       保科善四郎君    毛利 松平君       山下 春江君    飛鳥田一雄君       石橋 政嗣君    井手 以誠君       岡田 春夫君    黒田 寿男君       滝井 義高君    戸叶 里子君       中井徳次郎君    穗積 七郎君       森島 守人君    横路 節雄君       受田 新吉君    大貫 大八君       大野 幸一君    中村 時雄君  出席国務大臣         内閣総理大臣  岸  信介君         外 務 大 臣 藤山愛一郎君         郵 政 大 臣 植竹 春彦君         建 設 大 臣 村上  勇君         国 務 大 臣 赤城 宗徳君  出席政府委員         内閣官房長官 松本 俊一君         法制局長官林  林  修三君         防衛政務次官  小幡 治和君         防衛庁参事官         (防衛局長)  加藤 陽三君         調達庁長官   丸山  佶君         外務政務次官  小林 絹治君         外務事務官         (大臣官房審議         官)      下田 武三君         外務事務官         (アメリカ局         長)      森  治樹君         外務事務官         (条約局長)  高橋 通敏君         郵政事務官         (大臣官房長) 荒巻伊勢雄君         建設事務官         (大臣官房長) 鬼丸 勝之君  委員外出席者         建設省地理調査         所長      武藤 勝彦君         日本電信電話公         社総裁     大橋 八郎君         専  門  員 佐藤 敏人君     ――――――――――――― 四月二十七日  委員大貫大八君及び堤ツルヨ君辞任につき、そ  の補欠として中村時雄君及び大野幸一君が議長  の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 四月二十六日  日米安全保障条約改定反対に関する請願外一件  (河野密紹介)(第二八六二号)  同外四件(松本七郎紹介)(第二八六三号)  同外一件(足鹿覺紹介)(第二九五五号)  同(淺沼稻次郎紹介)(第二九五六号)  同(伊藤よし子紹介)(第二九五七号)  同(猪俣浩三紹介)(第二九五八号)  同(石川次夫紹介)(第二九五九号)  同外二件(石橋政嗣君紹介)(第二九六〇号)  同外一件(大原亨紹介)(第二九六一号)  同外五件(片島港君紹介)(第二九六二号)  同(菊地養輔君紹介)(第二九六三号)  同(久保三郎紹介)(第二九六四号)  同(栗林三郎紹介)(第二九六五号)  同外七件(栗原俊夫紹介)(第二九六六号)  同(黒田寿男紹介)(第二九六七号)  同外一件(兒玉末男紹介)(第二九六八号)  同(小松幹紹介)(第二九六九号)  同外二十一件(佐藤觀次郎紹介)(第二九七  〇号)  同(志賀義雄紹介)(第二九七一号)  同外八件(志賀義雄紹介)(第二九七二号)  同外一件(杉山元治郎紹介)(第二九七三  号)  同外一件(多賀谷真稔紹介)(第二九七四  号)  同(永井勝次郎紹介)(第二九七五号)  同外一件(長谷川保紹介)(第二九七六号)  同(日野吉夫紹介)(第二九七七号)  同外一件(穗積七郎紹介)(第二九七八号)  同外四件(松本七郎紹介)(第二九七九号)  同(三宅正一紹介)(第二九八〇号)  同外二件(八百板正紹介)(第二九八一号)  同外一件(横路節雄紹介)(第二九八二号)  同外百八十六件(横山利秋紹介)(第二九八  三号)  同外十三件(淺沼稻次郎紹介)(第二九九五  号)  同(淡谷悠藏紹介)(第二九九六号)  同外一件(茜ケ久保重光紹介)(第二九九七  号)  同外百十一件(石村英雄紹介)(第二九九八  号)  同外六件(上林與市郎紹介)(第二九九九  号)  同外五件(兒玉末男紹介)(第三〇〇〇号)  同(坂本泰良紹介)(第三〇〇一号)  同外八件(鈴木茂三郎紹介)(第三〇〇二  号)  同(西村力弥紹介)(第三〇〇三号)  同外七件(松本七郎紹介)(第三〇〇四号)  同(石村英雄紹介)(第三〇〇五号)  同(猪俣浩三紹介)(第三〇〇六号)  同外二件(西村力弥紹介)(第三〇〇七号)  同外一件(茜ケ久保重光紹介)(第三〇〇八  号)  同(石村英雄紹介)(第三〇〇九号)  同外十件(河野密紹介)(第三〇一〇号)  同(大原亨紹介)(第三〇一一号)  同外三件(兒玉末男紹介)(第三〇一二号)  同外一件(上林與市郎紹介)(第三〇一三  号)  同外一件(島上善五郎紹介)(第三〇一四  号)  同外二件(神近市子紹介)(第三〇一五号)  同外一件(西村力弥紹介)(第三〇一六号)  同(矢尾喜三郎紹介)(第三〇一七号)  同(八木昇紹介)(第三〇一八号)  同外十四件(茜ケ久保重光紹介)(第三〇一  九号)  同外十六件(石村英雄紹介)(第三〇二〇  号)  同(栗原俊夫紹介)(第三〇二一号)  同外十九件(兒玉末男紹介)(第三〇二二  号)  同外九件(東海林稔紹介)(第三〇二三号)  同外六件(松本七郎紹介)(第三〇二四号)  同外十一件(西村力弥紹介)(第三〇二五  号)  同外五件(八木昇紹介)(第三〇二六号)  同外十三件(大原亨紹介)(第三〇二七号)  同(兒玉末男紹介)(第三〇二八号)  同(東海林稔紹介)(第三〇二九号)  同(阿部五郎紹介)(第三〇五一号)  同外一件(足鹿覺紹介)(第三〇五二号)  同(井伊誠一紹介)(第三〇五三号)  同(石橋政嗣君紹介)(第三〇五四号)  同(石村英雄紹介)(第三〇五五号)  同外一件(岡田春夫紹介)(第三〇五六号)  同外一件(河上丈太郎紹介)(第三〇五七  号)  同(木原津與志君紹介)(第三〇五八号)  同外一件(菊地養輔君紹介)(第三〇五九  号)  同外一件(黒田寿男紹介)(第三〇六〇号)  同(河野密紹介)(第三〇六一号)  同外一件(櫻井奎夫君紹介)(第三〇六二号)  同外一件(鈴木茂三郎紹介)(第三〇六三  号)  同外二件(田中稔男紹介)(第三〇六四号)  同(多賀谷真稔紹介)(第三〇六五号)  同外一件(松本七郎紹介)(第三〇六六号)  同外一件(三宅正一紹介)(第三〇六七号)  同外二件(森島守人紹介)(第三〇六八号)  同外一件(八百板正紹介)(第三〇六九号)  同外一件(八木昇紹介)(第三〇七〇号)  同外二十七件(井岡大治紹介)(第三〇七一  号)  同(高田富之紹介)(第三〇七二号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び  安全保障条約締結について承認を求めるの件  (条約第一号)  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び  安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並び  に日本国における合衆国軍隊地位に関する協  定の締結について承認を求めるの件(条約第二  号)  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び  安全保障条約等締結に伴う関係法令整理に  関する法律案内閣提出第六五号)      ――――◇―――――
  2. 小澤佐重喜

    小澤委員長 これより会議を開きます。  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約締結について承認を求めるの件、日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並び日本国における合衆国軍隊地位に関する協定締結について承認を求めるの件、及び日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約等締結に伴う関係法令整理に関する法律案、右各件を一括して議題といたし、質疑を続行いたします。岡田春夫君。
  3. 岡田春夫

    岡田委員 昨日に引き続いて質問を続行さしていただきます。  昨日、第六条関係で、極東条項について政府の御意見を承って参ったのでありますが、六条におきましては、極東条項だけではなく、もう一つ重要な点があります。それは、申すまでもなく、事前協議条項であります。この事前協議条項につきましては、政府は今まで、事前協議において日本諾否を言える、イエスノーを言えるということは、条約上この諾否相手国を法的に拘束し得るという解釈をとっているようにも思われるのでありますが、これは実は、ただ日本の国がノーと言えるとか、イエスと言えるとかいうことと、そのノーと言ったことと、イエスと言ったことが、相手国を法的に拘束するものである。この点、ただ言えるということと、拘束するかということとは、非常に違う意味を持っております。そういう意味で、今までの御答弁整理した意味で、重ねて事前協議の中にある日本政府諾否という問題について、これが法的な拘束力相手方に持つものかどうか、この点をまず伺っておきたいと思います。この点は藤山外務大臣から伺いたいと思います。
  4. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 事前協議協議は成立する、あるいは成立しないということが起こるわけでありますが、それは当然、法的な拘束力を持つと存じております。
  5. 岡田春夫

    岡田委員 今の御答弁は、相手方を法的に拘束する、このように御答弁になったのだと解釈してよろしゅうございますか。その通りでございますか。
  6. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 その通りでございます。
  7. 岡田春夫

    岡田委員 しかし、ここで問題になりますことは、ノーとも言えるし、イエスとも言えるということについては、これは非常に問題があるわけです。たとえば、国民が今非常に強く要望いたしておりますのは、核武装にはあくまでも反対である、あるいは在日米軍核装備をする、核兵器日本の国に持ち込んでくるということにはあくまでも反対である、これが国民態度です。ですから、周民の声を守る限りにおいて、あくまでもイエスと言う場合はないはずである。核武装に関する限り、あくまでもノーと言う以外にはないはずであります。従って、事前協議において、イエスとも言え、ノーとも言えるということは、核武装の問題を例にあげて申し上げまするならば、今日のところ、国民反対をしているからノーとは言うけれども、いずれ機会がきたならば、核武装をするということに対して、イエスとも言い得るという法的な余地を与えているものではないか、このように考えられますが、この点はどうですか。
  8. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 御承知の通り事前協議でございますから、イエスと言う場合もノーと一言う場合もございます。御指摘のような核武装の問題については、岸内閣としてノーと言うことは、はっきり総理大臣がかねてから申し上げておる通りでございます。
  9. 岡田春夫

    岡田委員 これは大蔵大臣佐藤さんの会の周山会機関誌であります。この周山会機関誌には、藤山外務大臣安保条約問題点をいろいろ御説明になりました速記録が、全文載っております。この速記録の中で、田口長治郎さんが質問されたのに対し、また瀬戸山三男氏が質問したのに対して、藤山外務大臣は相当大胆な答弁をされております。ここで一例をあげて読んでみますが、ページ数から申し上げますと、その第八号の三十八ページ、ここで藤山さんは、「おそらく防衛の面の担当者の方では、このくらいの大きな戦争になってくれば、そのときには、こういうものは」――核兵器は、「場合によっては使わなければならぬだろうという計画はふだんおありだろうと思う。しかしそれはそういう事態が来なければ、イエスノーかはそのときにきめるべきものであります。」また三十五ページには、田口さんの質問に答えて、「ですけれども私は、核兵器を入れた方がいいという方、あるいは入れない方がいいという方の御質問に対して答えているのは協議であるから、イエスノーも言えるわけです。ですから、ノーという場合には入ってこないし、イエスという場合には人ってくるわけです。」云々と言っておられます。この点を見ると、あなたは、今御答弁の中で、岸内閣の間においてはノーと言うのだと言うけれども、このような大きな戦争云々のときには、すでに防衛庁が、核兵器を持ち込むという計画がふだんからおありであろうと思う、このように言っておられる。このときには、赤城さんの前の防衛庁長官である伊能防衛庁長官が、この席に列席をいたしております。しかも、これに対して伊能防衛庁長官は、これは違うとは言っておりません。明らかにあなたの在任当時――岸内閣もそんなに長く続かないと思うが、自民党内閣というものが、たとえばこのあとに続いたとしても、その場合において、核兵器を持ち込み得るという前提が腹の中にあって、この事前協議をお作りになったのでしょう。どうです。
  10. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 そういうことはございません。事前協議でございますから、事前協議でもって今度対象になっておりますのは、核兵器ばかりではなくて、いろいろございます。従って、それらのものを一括して事前協議にすることは当然のことだと思います。協議でありますから、原則としてイエスと言う場合も、ノーと言う場合もあるということは、これは当然だと思います。従って、そういう状況前提として言われました場合に、われわれは、そう答えるのは当然でございます。ただ、総理がたびたび言われておりますように、われわれとしてこれを拒否するという態度をとっておりますことは、また当然でございます。
  11. 岡田春夫

    岡田委員 それでは伺いますが、藤山さんのこの速記に載っているように、防衛庁では、ふだんからそういう計画核兵器持ち込み計画があるわけですか。藤山さんがお話しになったことですから、あなたがお答えになって下さい。どうですか。
  12. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ふだんからそういう計画があるということは、私は考えておりません。
  13. 岡田春夫

    岡田委員 それでは、「おありだろうと思う。」というのは、想像でございますか。これは間違いなんでございますか。
  14. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 そのときの状況において、どういう表現を使いましたか、わかっておりませんけれども、私は今申し上げました通り防衛庁はふだんからそういう計画をしておるなんてことは、考えておったわけではございません。
  15. 岡田春夫

    岡田委員 しかしあなたは、このように、ふだんからおありであろうと言っておられます。大臣一つ言行を慎むことを期待いたします。  事前協議の場合に、これの配置、装備変更で特に重要なものだけが、事前協議対象になっている。ところが、特に重要なものという前提としては、今日すでに変更が行なわれておって、今日の現状に立って、その上で重要な変更ということを意味している。そうすると、たとえば核装備の問題とか、ミサイルの問題などについて、今日までにすでに装備が完了しておった場合においては、あとで重要な変更を行なう必要はなくなる。それならば、何も重要な変更などという限定をする必要はないじゃありませんか。こういう考え方の上に立っていると思いますが、藤山さん、どうですか。
  16. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 この事前協議が適用されますれば、当然その適用されます時限において協議をいたすわけでございます。
  17. 岡田春夫

    岡田委員 とおっしゃるのは、事前の問題にさかのぼってですね。それでは、すでに核武装などが行なわれている、そういう場合にさかのぼって、事前協議をするというお話でございますか。
  18. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 核兵器持ち込み等は、現在行なわれておりません。従って、われわれの事前協議対象となっておりますものも持ち込まれておらぬのでありまして、そういう御心配はないと思います。
  19. 岡田春夫

    岡田委員 それでは、一つ別な点から伺って参つりますが、アメリカの在韓大使マコノギーという人は、二月の四日に、韓国李承晩政府担当当局の正式の公式説明要求に対して、次のように答えております。どのように答えているかというのは、「その条項」――というのは事前協議ですが、「その条項を挿入したのは、アメリカ軍作戦活動について日本発言権を容認するのが目的だったのではない。むしろ、日本政治情勢を考慮した「政治的目的」に着目していたものである。」この場合に、アメリカ軍作戦行動というのは、明らかに交換公文にある戦闘作戦行動を含むとするならば、戦闘作戦行動についても日本発言権を容認する、すなわち、ノーと言える、これを目的としたものではない、日本政治情勢を考慮した政治的な意味において事前協議条項を入れたのだ、このようにはっきり公式の答弁をいたしております。これについて、鶴山さん、いかがお考えですか。
  20. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私は米国政府交渉をいたしまして、米国政府とこの条約締結いたしたのであります。従いまして、今お話しのような方々が公式の声明をしたということは、私は考えられません。またそれが公式の声明と認める必要もございません。われわれは、国民考え方も聞き、そうしてわれわれが信ずるところによって、この条項を置いたということでございます。
  21. 岡田春夫

    岡田委員 あなたは、考えられないとおっしゃるでしょうが、マコノギー大使は、韓国に対しては、あなたの立場から言うならうそを言った、こういうことになるわけだと思うのですが、そういう意味でございますね。
  22. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 外国の大使がどう言ったかということを、私がここであげつらうことは、適当でないと思います。
  23. 岡田春夫

    岡田委員 だんだん明らかになってきますから、お待ち下さい。  事前協議については、これは当初は本文に入れるべきだということであった。ところが、本文に入れるということをやめて、交換公文に移した。交換公文では、当初日本の案では、重要なものだけに限定するというような案ではなかった。配備、装備変更すべてを含むというように、事前協議対象になるように言われておった。ところが、これも最後の一月十九日の調印直前において、重要なものという言葉をことさら入れた。しかも、この解釈については、アイゼンハワー・岸共同コミュニケによって解釈だけを別につけた。そして、協議と同意ということを入れるというわれわれ社会党の要求に対しては、共同コミュニケにこの解釈があるからいいんだ、このように逃げてきた。事実上、このようにして、事前協議条項というのはだんだんしりつぼみで、見えなくなってきた。その証拠に、岸さんに伺いますが、共同コミュニケを作るときに――外務省の当初の案の共同コミュニケには、事前協議の「事前」という言葉を除いてある。協議全体を入れて、第四条も含むということになっておった。ところが、あなたが直して、「事前」という言葉を入れたのでしょう。そして、事前協議という第六条の条項だけにしたのでしょう。こういういきさつは、あなたがおやりになったのですか、どうですか。
  24. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今お話しのありましたように、事前協議条項が、最終的に確定したのは調印直前であるということは、全然事実と違っております。私どもは、この条約のほぼ大筋の完成というものは、昨年の十一月にすでに決定いたしておるのであります。それだけは事実と全く違っておりますから、申し上げておきます。
  25. 岡田春夫

    岡田委員 その答弁は、事前協議の経過をお話しになったのでしょうが、私は特に共同コミュニケについて岸さんに伺う。共同コミュニケの原案は、「協議」という言葉で、「事前」を除いてある。これによって第四条も拘束しょうとしたのである。ところが、岸さんがことさら、共同コミュニケに調印する直前になってから、「事前」という言葉を入れた。そして第六条だけに限定するようにして、協議条項をますます骨抜きにしていっている、こういう事実があるじゃありませんか。
  26. 岸信介

    岸国務大臣 事実は、全く岡田君の言われるのと違っております。先ほど来、事前協議の問題に関しては、外務大臣が申し上げたような経緯でいっております。  それから事前協議というこの共同声明の案につきましても、私ども、いわゆるこの事前協議事項というものについてイエスが言えるか、ノーが言えるか、また、イエスノーについて日本の意思を尊重する、それに反した行動はしない。先ほど外務大臣がお答え申し上げましたように、この事前協議というものの解釈を、従来日米交渉の途上において、責任ある日本国代表アメリカ政府代表との間において、解釈上の意見が一致しておる。その点を、共同声明の上において明らかにするということを私は考えたわけでありまして、今お話しのような事態とは、事実が違っておるということだけを明瞭に申し上げておきます。
  27. 岡田春夫

    岡田委員 それでは、その点、またあとからずっと回って参ります。  そこで、この前からの御答弁を伺っておると、アメリカの第七艦隊在日米軍ではないということを盛んに言われておりますが、それはほんとうでございますか。
  28. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 在日米軍ということではありません。
  29. 岡田春夫

    岡田委員 いつからでございますか。
  30. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 初めからでございます。
  31. 岡田春夫

    岡田委員 初めからというのは、現行安保条約のできたときからですか。
  32. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 安保条約ができてからと思います。在日米軍というような観念は、安保条約ができてからですから、そのときからでございます。
  33. 岡田春夫

    岡田委員 それでは伺いますが、これは外務省の発表した――外務省情報局昭和三十年八月、この九十五ページに、「在日米軍兵力の変遷」、この中に、(2)朝鮮動乱発生時、一九五〇年六月二十五日、このときにおける在日米軍兵力の中に、(ロ)として「米第七艦隊」、(3)朝鮮休戦協定調印時、この中に、(ロ)として「米第七艦隊」、(4)現状昭和三十年当時、(ロ)として「第七艦隊」、(5)今後の予想、(ロ)として「米第七艦隊」、全部在日米軍に書いてある。外務省は間違いですか。これはどうなんですか。はっきりして下さい。
  34. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今防衛庁長官答弁された通りであると思います。
  35. 岡田春夫

    岡田委員 それじゃ藤山さんは、これは間違いだということをお認めになるのですね。間違いですね。はっきりおっしゃいよ。間違いだというなら間違いだとおっしゃい。間違いだと言ったらいいじゃないですか。書いてあるじゃないですか。
  36. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 おそらく在日米軍というものの観念の問題だと思います。従いまして、そういうような表現を用いた場合があろうかと思いますが、そのこと自身が、防衛庁長官の言われたものと、全然同じ見地に立っておるということではないと思います。
  37. 岡田春夫

    岡田委員 不謹慎なことを言わないで下さい。あなたの方の文書で、「在日米軍」と書いてあるじゃないですか。同じようなものであろうと思うとは、何ですか。これは取り消すなら取り消しなさいよ。一般に公開されておるのじゃありませんか。特別資料として一般に出しておるじゃないですか。これはどういうのですか。外務省情報局と、はっきり出しておるじゃありませんか。在日米軍ではないのですか。どうなんですか。今後の予想としてまで在日米軍であるというふうに、はっきり言っておるじゃありませんか。
  38. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 在日米軍という考え方につきまして、条約局長から答弁をいたさせます。
  39. 岡田春夫

    岡田委員 だめです。私の言っておるのは、解釈の問題ではない。この本に書いてあるじゃないですか。この本はどうなんですか。「在日米軍兵力の変遷」と書いてあるじゃないですか。しかもあなたは――私は時間がないから説明を略したのだが、この中には、地上車がだんだん減っておる数字まではっきり出ておる。アメリカ在日米軍は、陸軍の方でどんどん減らされておることが書いてある。減らされておることが書いてあるのに、アメリカの第七艦隊だけは、そのまま書いてあれば、在日米軍に違いはないじゃないですか。はっきりしておるじゃないですか。
  40. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 日本におりますアメリカ兵力というような、総括的の意味において私は書いたと思います。また、そういう実情のもとに解釈をしていくのが適当だと思います。  なお、それらについては条約局長から御説明をいたさせます。
  41. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 ただいま御指摘の点は、在日米軍という観念と申しますか、概念の問題だと考えます。すなわち、この条約全体を通じまして、在日米軍がどういうものであるという概念規定はないのでございます。その情報部の三十年云々も、これはどういうものを在日米軍と見るかによって考えられるべきものであり、また、在日米軍はこうでなければならないという厳格なる概念規定のもとに、そのような兵力の編成をそこでうたった、そういうものではないと考えております。すなわち、その場合は、やはり日本の基地、日本施設区域を使用する軍隊というような意味合いではなかろうかと考えております。いずれにしましても、この条約におきまして、今、在日米軍とございますが、これは条約第六条の実施に関する交換公文、すなわち、事前協議交換公文で、日本国に配置された車隊、これが在日米庫という一つの観念でございます。それからもう一つ、第六条の本文にございます日本施設区域を使用する、すなわち、日本の領海、領域の中に入ってこれを使用する軍隊、こういう意味合いの在日米軍もあるわけでございます。
  42. 岡田春夫

    岡田委員 だから、なおさらはっきりするじゃないですか、高橋さん。藤山さん、聞いておきなさいよ。なおさらはっきりする。日本の基地を使用する軍隊というなら、横須賀の基地を使用している第七艦隊は、当然在日米軍じゃないですか。はっきりしているじゃないですか、あなた。違うのですか。そうでしょう。
  43. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 ですから、そういう意味合いにおける在日米軍というのもあるわけでございます。そういう意味合いの、そういう概念、まずそういうのを一つ在日米軍ということにして呼ぶ場合に、それが一つ在日米軍といわれる。それから、第六条の「合衆国軍隊日本国への配置」、そこで日本に配置されたという軍隊があるわけでございます。そういう場合の在日米軍もあるわけでございます。
  44. 岡田春夫

    岡田委員 それじゃ、藤山外務大臣に伺いますが、そういう意味在日米軍があるわけですとおっしゃるのだから、横須賀という基地を使っている第七艦隊というのは、在日米軍ということになりましょう。そうでしょう。第七艦隊は横須賀の基地を使わないのですか。――具体的に伺いましょう。それではもう一度伺いますが、藤山さん、横須賀という基地を使っている限りにおいて、第七艦隊は、第六条に基づく米軍である、そういうことは言えるじゃないですか。そうじゃないですか。そうでしょう。
  45. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 ですから、一時寄港という意味において――一時寄港し、使用しているという米国軍隊が日本にある、これは否定できないことでございます。しかし、本来的に考えますれば、第六条の「合衆国軍隊日本国への配置」、この配置された軍隊というのが在日米軍である。そうすると、以外に何もないのかと言えば、そういう以外に、使用するということは第六条に認められておりますから、そういう可能性もある、こういうことでございます。
  46. 岡田春夫

    岡田委員 ですから、第七艦隊は、横須賀に寄港したときには、明らかに、いわゆる第六条の適用を受けるでしょう。そうじゃないですか。そうでしょう。
  47. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 もちろん、そういう意味合いで地位協定の適用も受けるわけですね。しかし、ですからそれを在日米軍と、通常われわれは……。
  48. 岡田春夫

    岡田委員 そう言わなくても、第六条の適用を受けるでしょう。
  49. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 適用を受けますし、受ける軍隊でございます。
  50. 岡田春夫

    岡田委員 それでは、横須賀に入った場合に、適用を受けるということは今明らかにされました。しかも、横須賀というのは第七艦隊の母港であります。しかもこれは、防衛庁関係に聞いてもはっきりしておりますが、外務省でもわかるはずだが、在日米軍の海軍の乗組員、米海軍の家族は、非常に多くの数が湘南地帯に生活している。湘南地帯にいるでしょう。どうです。外務省はわかるでしょう。アメリカ局の人、わかるでしょう。
  51. 森治樹

    ○森政府委員 日本に居住しております米国軍隊構成員の家族は、日本に配置された軍の構成員の家族でございまして、日本に配置された軍隊でない軍の構成員の家族は、日本には住んでおりません。
  52. 岡田春夫

    岡田委員 はっきり伺います。森さん、もう一度伺います。今の言い回しは非常に抽象的なんだが、私の伺ったのは、第七艦隊の乗組員の家族は、湘南地帯に生活しているのがたくさんいるでしょう。いないですか。
  53. 森治樹

    ○森政府委員 ただいま条約局長からお答えいたしましたように、第七艦隊というのは、日本に配置された部隊じゃございませんので、その家族は日本には住んでおりません。
  54. 岡田春夫

    岡田委員 それでは具体的に伺いましょう。第七艦隊の中の軍艦のヘレナ、トレド、ロスアンゼルス、バンコック、レキシントン、シャングリラ、これの家族は湘南地帯に住んでいるでしょう。どうです。
  55. 森治樹

    ○森政府委員 ただいま申し上げましたように、家族が住んでおるのは、日本に配置された部隊の家族でございまして、日本に配置されていない軍隊の構成員の家族は住んでおりません。
  56. 岡田春夫

    岡田委員 私の伺っているのは、そんな答弁じゃ困る。具体的に、シャングリラ、レキシントン、ヘレナその他、先ほど申し上げた乗組員の家族が生活しているでしょうと、私は伺っているのです。あなたは、第七艦隊だけを考えているからそう言う。これの家族は生活しているでしょうと伺っているのです。生活しているでしょう。どうです。
  57. 森治樹

    ○森政府委員 私どもの承知している限りでは、生活いたしておりません。
  58. 岡田春夫

    岡田委員 外務省は、そういうことまで調査もしていないし、そういうこともわからないのですね。それじゃ、この点は調査して、あとで御報告を願います。  それではあとで伺いますが、第七艦隊の中の艦船ですね、米艦船が横須賀に寄港した場合には在日米軍になる、この点ははっきり先ほど答弁をされた。ところが、これらの戦艦、たとえばヘレナ……(発言する者あり)そう言っているじゃないですか。高橋条約局長は言っているじゃないか。     〔発言する者多し〕
  59. 小澤佐重喜

    小澤委員長 静粛に願います。
  60. 岡田春夫

    岡田委員 ヤジる間、やらないよ。言ってるじゃないか。そうでございますと条約局長が言ったじゃないか。     〔「自分で勝手な前提を作ることは   いかぬ」「そういう答弁はしていな   い」と呼び、その他発言する者多   し〕
  61. 小澤佐重喜

    小澤委員長 静粛に願います。
  62. 岡田春夫

    岡田委員 先ほど高橋条約局長は、はっきり、日本に寄港する限りは在日米軍であると答えている。それははっきり答えている。答えたのに対して……。     〔「そういう前提を裡造することは   よくない」と呼び、その他発言す   る者多し〕
  63. 小澤佐重喜

    小澤委員長 静粛に願います。
  64. 岡田春夫

    岡田委員 こういうふうにヤジっているときはやりません。
  65. 小澤佐重喜

  66. 岡田春夫

    岡田委員 私はまだ質問していないですよ、赤城さんに。これから質問するのに、あなたは何も…。
  67. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 私の申し上げたことがはっきりしないようでありますから……。
  68. 岡田春夫

    岡田委員 あなたに今伺いましたか。
  69. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 在日米軍のことで、先ほどの御質問に対してお答えいたしましたことが、はっきりしないようですから、再度申し上げます。  在日米軍というのは、編成上日本におる在日米軍の指揮下にあるものを、私どもは在日米軍と、こう言っておるのであります。第七艦隊は、日本に駐留しておるアメリカ軍の指揮下にありませんから、在日米軍には入りません。しかしながら、基地を使用する、横須賀港を使用することがありますから、ここに入港したような場合には、この基地を使用することにおきまして第六条の適用を受けます、そういうことで御了解願いたいと思います。
  70. 岡田春夫

    岡田委員 よくわかりました。一応そういう答弁にしておきましょう。私は、第七艦隊が事実上在日米軍、これは外務省の本に書いてある通りだと解釈しているのだが、まあ一応あなたのおっしゃるように、第七艦隊の中で、たとえば、旗艦ヘレナですか、ヘレナが横須賀に寄港した――これは再三寄港しておりますね。寄港しておるような場合には第六条の適用を受ける、こういうことになりますね。それはいいのですね。
  71. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 その通りでございます。
  72. 岡田春夫

    岡田委員 それでは伺いますが、ヘレナが核武装しておった場合には、当然、入港する以前に事前協議対象になりましょう。
  73. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 この条約が批准されまするならば、当然、今お話しのように、入港する前に、核装備してくるということでありますならば、事前協議によって可否をきめなくちゃなりません。
  74. 岡田春夫

    岡田委員 それでは、……(発言する者あり)新条約を審議しているんだよ。だから、ヘレナの問題について、ヘレナには核武装が行なわれているということは、これは常識ですね。当然そうでしょう。そればかりじゃなく、これはやはり外務省の、昭和三十三年八月一日、「米国海軍艦艇のミサイル装備状況一覧表」、アメリカ局安全保障課の発表したものです。この中にヘレナが書いてある。ヘレナはレギュラスⅠ号、これを使うことになっている。レギュラスⅠ号は核武装専用である、核弾頭を使うことが専用である。この点については、資料もはっきり書いてある。ミサイル・アンド・ロケット誌の七月十四日号、アメリカ国防省の発表の誘導弾に関するファクト・シート、ジェーン海軍年鑑、これらによって明らかにこのように書いてある。そうしたら、この前、加藤防衛局長は、運搬兵器を含むと言っている。とするならば、ヘレナは明らかに核武装であるということは、外務省が立証している。外務省が立証しているヘレナが、母港である植須賀港に入港した場合には、当然、その前に事前協議を行なわなければならないと思うが、これはどうですか。
  75. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 お話のレギュラスは、核武装もできるし、核武装をしないでもいい、両用というように私どもは聞いております。それから核武装は、第七艦隊はできることになっていますが、現実に、核武装をしているかしていないかということは、それとは別でございます。でありますから、この事前協議といたしまして、核武装をして入港する場合には、これは当然事前協議の主題となる、こういうことでございます。
  76. 岡田春夫

    岡田委員 今の御答弁では、加藤防衛局長答弁とは違うんじゃないですか。この前の答弁によると、核兵器の運搬兵器も含むと答弁した。レギュラスⅠ号をあなたは両用であると言うのですが、レギュラスの何号を言っているのですか。レギュラスのΙ号というのは、核兵器以外に使いませんよ。両用であるなどという、いいかげんなことをおっしゃるな。はっきりおっしゃいよ。しかも、核兵器を積まないで、運搬兵器のレギュラスというものだけ持ち込んだ場合にも、明らかに加藤防衛局長は、これも事前協議対象になると、飛鳥田君にこの間答弁したばかりじゃないですか。どうなんです。はっきりしているじゃないですか。
  77. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 岡田委員は、レギュラスⅠ号は核兵器専用だとおっしゃいますが、レギュラスはΙ型とⅠⅠ型とございます。ⅠⅠ型の方は、私どもは核兵器専用だと承知しております。Ⅰ型は核、非核両用だというふうに承知しております。
  78. 岡田春夫

    岡田委員 加藤防衛局長答弁は足りないですよ。運搬兵器はどうなんですか。事前協議対象になると答弁したじゃないですか。
  79. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 この前、飛鳥田委員に御答弁いたしました通り核兵器専用のものは、運搬用具といえども事前協議対象になる、こう申し上げております。
  80. 岡田春夫

    岡田委員 ミサイル兵器、運搬兵器というものも、あなたはこの前、事前協議対象になると言っているじゃないですか。私は、この点ばかりを言っていると時間がなくなってしまうので進みますが、私は委員長に希望いたします。私たちはこういう実例を見ても、第七艦隊の母港である横須賀の基地、それから先ほど問題になりました、第七艦隊の中に組み入れられている軍艦、あるいは湘南地方にいる第七艦隊の乗組員、これらの人々について、核兵器を持ち込んでいるかどうかについて国政調査をする必要があると思う。私は、委員会で正式に議決をしていただいて、核装備をしておるかどうかについての国政調査に派遣されることを、動議としてあらためて希望いたします。
  81. 小澤佐重喜

    小澤委員長 岡田君に申し上げますが、この問題は、後日理事会を開いて相談することにいたします。
  82. 岡田春夫

    岡田委員 それでは、理事会を開いておきめになるというのですから、あとで、それに基づいてまた質問を続行いたします。  事前協議の問題で、もう少し進めて参りますが、事前協議を行なう場合に、戦闘作戦行動の基地として、第六条に基づいて使用する。この場合には事前協議を行なう、こういうことは交換公文に明確になっておりますが、これは当然だろうと思います。そこで私の伺いたいのは、この事前協議のうち、戦闘作戦行動を行なう場合には、第六条における米軍の行動というものは、昨日の質問で、情文局の解説という書類で明らかにいたしましたように、国連として行動をとる場合、それからアメリカの自衛権の行使としてとる場合、この二つの場合があると思う。この二つとも事前協議対象になる、戦闘作戦行動の場合には、こう解釈してよろしゅうございますか。
  83. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 その通りでございます。
  84. 岡田春夫

    岡田委員 それでは、国連の行動として戦闘作戦行動のために基地を使う、この場合に、事前協議で、ノーと言うことはできないじゃありませんか。なぜノーと言うことが言えないかというと、国連に協力をする、国連憲章の決定に従うということを言われておる限りにおいて、日本政府の方針としてはノーと言えないわけです。(「きのうやったじゃないか」と呼ぶ者あり)これは、きのうの場合と同じだ、このように言うが、私は今度は、極東条項があっての話をしておる。極東条項があって戦闘作戦行動をやる場合、事前協議でこれはノーと言えないでしょう。
  85. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 国連に対して協力することは、これは当然のことでございます。しかし、国連に対して協力するからといって、それでは、戦闘作戦行動の事筋協議に全然ノーと言えないか、そういうことはございません。
  86. 岡田春夫

    岡田委員 ノーと言えるのだというと、それじゃ具体的にどうなりますか。国連に協力しないということですか。(「抽象的だ」と呼ぶ者あり)抽象的じゃないかと言うから言いますよ。国連の決議があって、それに基づいて戦闘作戦行動をとる。その場合に、事前協議日本ノーと言う場合がありますか。きのうは、私のノーと言う場合云々について岸総理の答えたのは、極東条項を入れるか入れないかについて、私は質問した。     〔発言する者多し〕
  87. 小澤佐重喜

    小澤委員長 静粛に願います。
  88. 岡田春夫

    岡田委員 私は、岸さんの言われるように、きょうの質問は、極東条項を入れて戦闘作戦行動をとる場合、日本事前協議ノーと言えないでしょう。言ったらどうなりますか。
  89. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 国連の決議、あるいは国連の趣旨に日本でも従うことは当然であります。ただ、事前協議は、そういう国連の趣旨には従うが、日本の基地を使う場合、これはイエスともノーとも言える場合であります。そういう国連の全体の趣旨に従うと同時に、その中で、日本の基地を使って戦闘作戦行動に出る場合には、これは事前協議対象になりますから、ノーと言える場合もあります。
  90. 岡田春夫

    岡田委員 それじゃ、赤城長官に伺いますが、ノーと言った場合には、基地の提供に基づく国連の協力をしない、こういう意味ですね。     〔発言する者多し〕
  91. 小澤佐重喜

    小澤委員長 静粛に願います。
  92. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 お話でありますが、国連の趣旨は戦争をしないという趣旨が第一、侵略をしないという趣旨が第二、でありますから、五十一条の自衛権として出る場合には、侵略があった場合に自衛権の行使を妨げないということが、五十一条の趣旨であります。でありますから、侵略がなければ、五十一条の自衛権の発動ということはないわけであります。それによって発動した場合においても、日本の基地を使って戦闘作戦行動に出るという場合には、これは事前協議対象になりますから、決して国連の決議あるいは趣旨と相反しないわけであります。
  93. 岡田春夫

    岡田委員 赤城さんの答弁は全然勘違いです。私は、アメリカの自衛権の行使について聞いていないのです。私の言っているのは、国連の決議に基づく行動を聞いている。だから、あなたは出ない方がいいのです、今外務大臣に聞いているのだから。国連の決議に基づいて行動する場合と、自衛権の行使による場合と……     〔発言する者多し〕
  94. 小澤佐重喜

    小澤委員長 静粛に願います。
  95. 岡田春夫

    岡田委員 二つの場合があるということを、外務省の本では区別している。私の今聞いているのは、あなたの言った自衛権の行使ではなくて、国連の行動の場合にはどうですかと聞いている。だから、自衛権の説明では、これは説明ができない。国連の決議に基づいた場合においては、ノーと言えないでしょうと言っている。はっきりしている。     〔発言する者多し〕
  96. 小澤佐重喜

    小澤委員長 静粛に願います。
  97. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 国連の安保理事会もしくは総会等において決議ができます。そうして警察軍なり、あるいはいわゆる国連軍なり、そういうものが編成される。そのときに、メンバー・ステーツというものは、その決議の趣旨に賛成して協力しなければならぬことは、むろんでございます。ただしかし、その国の事情によっては、軍隊を直接出さないところもございます。軍隊を出さないからといって、必ずしもそれが、国連の協力にならないということではございません。その国のそのときのいろいろな事情であります。従いまして、日本の基地を使うのが適当であるかどうかということは、それによって、日本ノーと言いました場合でも、国連協力という大きな線に反しているわけではございません。
  98. 岡田春夫

    岡田委員 それでは、赤城さんもさっき答えているが、自衛権行使の場合で戦闘作戦行動をやる、その場合には、事前協議においてイエスノーも言えるわけですね。これは当然言えるんですね。藤山さん、そうでしょう、(「日本の基地を使う場合に限るのだ」と呼び、その他発言する者あり)わかりきっているじゃないか。その問題をやっているのだよ。それ以外に質問なんかやっていない。
  99. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 日本の基地を使います場合には、事前協議対象になります。従って、事前協議でありますから、イエスノーも言えるわけでございます。
  100. 岡田春夫

    岡田委員 自衛権の行使の場合には、戦闘作戦行動の場合ですね。この場合には、日本の基地を使う場合に事前協議を行なう。その場合に、自衛権の行使でイエスでもノーでも言える。これは岸さん、間違いないですか。
  101. 岸信介

    岸国務大臣 先ほど来、また昨日もお答え申し上げた通り、すべて日本の基地を使って米軍が戦闘作戦行動に出る場合におきましては、その理由が、国連の議決に基づく場合であろうが、自衛権の発動の場合であろうが、すべて事前協議対象となるわけであります。
  102. 岡田春夫

    岡田委員 その場合のアメリカの自衛権というのは、きのう御答弁通り、明らかに憲章五十一条の自衛権ですね。これは一つはっきりお答え願います。
  103. 岸信介

    岸国務大臣 自衛権の発動というのは、憲章五十一条以外には私はないと思います。
  104. 岡田春夫

    岡田委員 それでは、アメリカの自衛権は憲章五十一条の適用に基づいて、事前協議においてノーと言える。そこで総理大臣、伺いますが、これでもう、はっきりこれが誤りであるということは明らかだ。第七条をごらんなさい。第七条に、「この条約は、国際連合憲章に基づく締約国の権利及び義務又は国際の平和及び安全を維持する国際連合の責任に対しては、どのような影響も及ぼすものではなく、また、及ぼすものと解釈してはならない。」すなわち、今総理答弁されたように、アメリカの自衛権の行使というものは国連憲章五十一条に基づく締約国の権利である。このアメリカの自衛権にこの条約はどのような影響を及ぼすものでもない、及ぼすものと解釈してもならない。従って、事前協議ではノーと言えないということじゃないですか。もしノーと言ったら、第七条違反じゃないですか。どうなんです。第七条違反になるんじゃないですか。     〔発言する者多し〕
  105. 小澤佐重喜

    小澤委員長 静粛に願います。
  106. 岡田春夫

    岡田委員 明らかに第七条違反だ。もしノーと言った場合には、第七条違反じゃないとなぜ言えますか。総理、はっきりしているじゃないか。
  107. 岸信介

    岸国務大臣 自衛権を行使してはならないとか、あるいは自衛権を否定するというようなことをきめておるわけではございませんで、自衛権の行使について、今両国の間における事前協議条項というものを、両国の合意においてきめておるということは、ちっとも差しつかえないことであります。
  108. 岡田春夫

    岡田委員 そんな、答弁にはなりません。事前協議というものは、先ほど藤山さんが答えたように、事前協議ノーと言うことは、相手国を拘束するということです。そうしたら、アメリカの自衛権の行使というものを、ノーと言うことによって妨げるわけでしょう。そういうことになるでしょう。妨げることについては、解釈を、第七条は、どのような影響を及ぼしてもならないということを言っているではないですか。明らかに第七条に違反しているではありませんか。どうですか。はっきりしているではありませんか。     〔発言する者多し〕
  109. 小澤佐重喜

    小澤委員長 静粛に願います。
  110. 岡田春夫

    岡田委員 両国が承認しているだけに、これを日本の国も認めていることになるではないですか。はっきりしているではないですか。事前協議ではノーと言えないではないですか。言えますか。もしノーと言ったら第七条違反です。もっと詳しく解釈しなさい。
  111. 岸信介

    岸国務大臣 先ほど来申し上げておる通り、私どもは、そうは解釈しておりません。今私が申し上げたように、すべて、この安保条約の新しい条約は、国連憲章の精神なり条章を、われわれは順守するということを前提としております。しこうして、両国のこの合意によって、これを運営する上において――いろいろ両方が最も適当な方法においてこれを運用するという合意が成立しておるわけでありまして、少しもこれによってそういう、今岡田君の心配されるようなことはないのでありまして、われわれは、あくまでもこの作戦行動の全体においては、事前協議対象になるということを両国が合意しておるわけでございますから、ちっとも差しつかえないと考えております。
  112. 岡田春夫

    岡田委員 それでは、具体的に伺いましょう。第七条に書いてある国連憲章に基づく締約国の権利、これはアメリカの自衛権、五十一条の自衛権の権利を含みますでしょう。この解釈ではそうでしょう。総理大臣、そうでしょう。そうではないのですか。
  113. 岸信介

    岸国務大臣 含むことは当然であります。
  114. 岡田春夫

    岡田委員 そうしたら、第六条の交換公文で、日本が、アメリカの自衛権の発動をすることに対してノーと言った。ノーと言ったということは、これは藤山さん言いましたね、ノーと言うことは相手国を拘束すると答弁しましたね、そうでしょう。
  115. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ノーと言いますことは、アメリカの自衛権を否定するものではございません。ただ、自衛権の発動の方法を、どこどこの基地を使うとか、どういうことがどうだということは、条約にはあれしているわけです。そういうことでございます。
  116. 岡田春夫

    岡田委員 それでは、あなたの答弁によると、自衛権を否定したものではないから、アメリカがそれによって出動してもいいということですね。
  117. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 全くそれは論理の飛躍でございまして、私はそういうことを言っておりません。今お話しのように、国連憲章によるアメリカの自衛権を否定する、それは国連憲章違反ではないかということでございますから、国連憲章によるアメリカの自衛権を、ノーと言ったからといって、否定したわけではございません。ただ、日本の基地を使うかどうかという、その自衛権発動の方法論に対してわれわれが意見を言うわけでありまして、決してアメリカの、国連憲章における自衛権そのものを、事前協議ノーと言ったからといって、否定するものではございません。
  118. 岡田春夫

    岡田委員 藤山外務大臣に伺いますが、事前協議によってノーと言った場合に相手方を拘束する、アメリカの自衛権の行使を妨げるということになるのでしょう。そうではないのですか。
  119. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 日本の基地を使うことが適当でないということを言うわけでありまして、アメリカの自衛権の行使について、特に妨げておるわけではございません。
  120. 岡田春夫

    岡田委員 私の伺っておるのは、第六条の事前協議を伺っておる。基地を使わない場合なんかについては聞いておりません。私の言っているのは、第六条の交換公文事前協議をやる場合には、日本の基地を使って戦闘作戦行動をやる、これに対してイエスノーかということを事前協議できめる、この事前協議の場合に、戦闘作戦行動についてはノーと言う場合には、アメリカの自衛権の行使を妨げるわけでしょう、違うのですか。
  121. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 両国が合意の上でそういう約束をしておりますから、別段差しつかえはございません。
  122. 岡田春夫

    岡田委員 それは差しつかえあるなしの問題ではない。行使ができないことになるでしょうということを伺っておる。そうでしょう。
  123. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 行使のできないことには、アメリカの自衛権を行使しないことにはならないわけでございます。どこからでも行使はできると思うのです。
  124. 岡田春夫

    岡田委員 第六条で聞いているんですよ。こういういいかげんな答弁をしたってだめですよ。第六条の交換公文を言っている。第六条の交換公文では、日本以外の基地を使うなどということについて書いてない。書いてありますか、書いてないでしょう。     〔発言する者あり〕
  125. 小澤佐重喜

    小澤委員長 静粛に願います。
  126. 岡田春夫

    岡田委員 私は、第六条の交換公文で、日本の基地を使う場合に、事前協議イエスノーと言える、ノーと言った場合には、アメリカの自衛権行使に対してノーと言ったのでしょうと聞いているんです。そうでしょう。
  127. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 自衛権の行使に対してノーと言ったのではございません。自衛権の行使の方法について、あらかじめ、そういう場合には、こういうことが起こり得るということを合意しておるのでありまして、従って、決してそれはアメリカのそのときにおける自衛権行使を妨げておりません。もし、私の説明でおわかりにくかったらば、条約局長から精細に御説明をいたさせます。
  128. 岡田春夫

    岡田委員 第六条の交換公文は、基地として使う場合、それの場合に、基地として使うということについてノーと言うのでしょう。ノーと言えるのでしょう。ノーと言えるなら、自衛権の行使はできないじゃないですか、はっきりしているじゃありませんか。日本の基地から自衛権を行使することはできないじゃないですか、そうでしょう。
  129. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 アメリカが自衛権を行使する方法の一つとして、日本の基地を使うということは、これはノーと言うことができないのはあたりまえでございます。しかし、そのこと自体が、先ほどからお話しのような国連憲章によるアメリカの自衛権を否定しておるものではございません。
  130. 岡田春夫

    岡田委員 いいですか。今答弁されたように、第六条においては、日本の基地を使ってアメリカの自衛権を行使することは、ノーと言った場合に行使できない。これははっきりしている。そうしたら、第七条に書いてある、アメリカ日本の基地から自衛権の行使をしようという場合に、この行使を妨げることになる。第七条の規定に反することになる。「及ぼすものと解釈してはならない。」と、はっきりしているじゃないですか。これは明らかに第七条違反じゃないですか。明らかにそうじゃないですか、そうじゃないという解釈ができますか。いいですか、この安保条約というのは、ほかの基地を使うことの規定なんかしているんじゃないですよ。日本の国内の問題に限定してこれは条約になっている。その条約の中で、日本の領域の中でアメリカが自衛権を行使する権利は、第七条で明らかに影響を及ぼさないと書いてある。事前協議においては、ノーと言ったならば第七条の違反になる。これははっきりしているじゃないか。(「ならないよ」と呼ぶ者あり)なぜ、違反にならない。はっきりしているじゃないか。
  131. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私どもは、残念ながら、岡田委員解釈は適当だと思いません。その詳細につきましては、条約局長から御説明をいたさせます。
  132. 小澤佐重喜

    小澤委員長 この際、松本七郎君から関連質疑の申し出があります。これを許します。松本七郎君。
  133. 松本七郎

    松本(七)委員 外務大臣に、アメリカとの交渉過程、特に事前協議についての交渉過程、それから、アメリカと中国と結んでおる米華条約あるいは米比条約、そういうものと対比してみると、今の外務大臣の言われるような形式論理では、われわれはとうてい納得しないわけなんです。そこで、今、岡田君がこの問題を法理的に問題を展開したわけなんです。実際問題として、基地を六条によってアメリカ軍が使いたい、こういう場合に協議する。日本側がこれをノーと言った場合に、アメリカは国連憲章に基づくところの自分の自衛権を完全に行使するためには、ぜひ日本の基地を使わなければならぬ、こういう情勢に迫られておるといたします。それであるにかかわらず、日本政府は、米軍が日本の基地を使うことについていい返事をしない、こうなった場合に、アメリカが、いや、もしもこれを日本が拒否するならば、自分は国連憲章五十一条によるところの自衛権の行使が完全にできない、従って、第七条には、ちゃんと、この条約は国連憲章に基づく締約国の権利には何ら影響を及ぼすものではない、こう明記してあるのであるから、おれの方としては、第七条の規定に基づいて国連憲章による自衛権の完全な行使を要求する権利があるのだ、こう出てきた場合に、はたして、日本政府としてそれを突っぱねて、あくまでも拒否できるだけの根拠がここから出てくるかという点が問題の中心になると思う。なぜ、こういう無理なことになってくるかと申しますと、この第七条の規定と事前協議というものにそもそも無理ががある。というのは、この七条の規定は、この米比条約を見ましても、米比条約では、第六条にそっくりそのまま同じ文句がある。それから、米華相互防衛条約を見ますと、第八条に、そっくり同じ文句が出ておるのでございます。こういうふうに、他の国とアメリカとの防衛条約では、御承知のように事前協議条項というのがないのです。そこで、このような国連憲章の権利云々をはっきりうたっても、何ら矛盾するところがないわけですけれども、たまたま日本政府では、この事前協議で拒否できるという点をはっきりさせる意図を持ってでしょう、この事前協議というものを交換公文で加え、そのことが、はからずも、事前協議がなければ何ら問題にならない第七条と完全に矛盾する面がここに明らかになっておるわけなのです。その点をもう少しはっきりしておかなければ、私がさっき指摘したような立場をとって、アメリカ日本の基地の使用を要求してきた場合に非常な不安が生ずる。この点を明らかにして下さい。
  134. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 先ほど来、私もはっきり御説明を申し上げておりますけれども、おわかりにならぬようでありますから、条約局長から答弁をいたさせます。
  135. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 先ほどの点は、るる申し上げた通りでございますので、私から蛇足ですが、補足をさせていただきます。と申しますのは、第七条に基づく国際連合憲章に基づく締約国の権利義務、この権利には、なるほど御指摘のように五十一条の権利が含まれていると考えます。しかし、この五十一条の権利は、そういう自衛権であるからといって、これは無制限に、絶対的に、いつどういう場合でも完全にこれを行使してよいというものではなくて、やはり国際法上の自衛権でございます。従いまして、この自衛権を、他国の主権や管轄権や、それを無視してこれを行使してよいというものではない。すなわち、日本の主権下にある施設区域からこれが行使されるという場合でございますから、その場合は、当然日本の主権管轄下にあって、われわれはその権能としまして、この協議条項ノーと言うことができる。しかし、それは、そういうことを言ったところで、この第七条の権利義務に影響を及ぼしたということは絶対にないと考えます。たとえば、ある国が自衛権を行使して、武力をもって攻撃を排除するためにある第三国の領域を通過させてくれ、こう言ってきた場合に、この第三国がノーと言った場合――これは当然言えると思うのです。そのノーと言うのが、この国連憲章に基づく権利義務に影響を及ぼしたのだ、だからノーと言えないのだ、常に自分のところは五十一条の集団的または個別的自衛権だから、お前の国を通過させてくれと言った場合に、これは通過させなければならないという義務があるというふうには考えられません。
  136. 岡田春夫

    岡田委員 それは高橋さん、第三国がという場合には、これは、この条約の適用を受けないわけです。これは全然別な話であります。第三国の例をもってこの条約解釈をしようとするのは、これは全然間違いです。少なくとも、五十一条の集団自衛権というものが、第七条にある締約国の権利の中に含まれている、このことは事実である。しかも、私が申し上げているように日本の側としては、日本の基地を使う場合に、事前協議ノーと言った場合には、ノーと言うことが相手国を法的に拘束するわけですね。そうでしょう。さっきからそういう答弁をされましたね。そこのところ何だかあいまいですが、そうでしょう。
  137. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 自衛権でございますから、この自衛権というものは、アメリカの国が享有している。アメリカが権利主体でございます。そして、ただいま申し上げております通り、その自衛権の行使の一態様として、すなわち、自衛権によって根拠づけられる行動の一つとして、日本の基地を使用して出撃するということでございます。しかし、それができないからといって、それによってアメリカの自衛権を全然完全に否定したものではない。アメリカが自衛権を持ち、アメリカが自衛権の主体であり、その行使はできるわけでございます。ただ、日本の基地からやる場合には、そもそも基地を貸与するということは、日本の主権的な行為でございます。その基地を貸与するわけでございますから、その貸与した場合に、その使用の態様はこうであるということを双方が合意するということは、これは当然できることでございますし、これによって五十一条のこれに違反して制限をしたというふうには、とうてい考えられないと考えております。
  138. 岡田春夫

    岡田委員 ですから、あなたの御答弁は、先ほどの藤山さんと同じような説明で、アメリカの自衛権の行使というものが、事前協議においてノーと言えば行使ができなくなる。できなくなるといっても、アメリカの自衛権は行使できなくなったということを必ずしも意味しない。というのは、この安保条約以外の、たとえば具体的にいえば、台湾なら台湾の基地を使って自衛権の行使をするということもあるんだからいいんだ、こういうお話です。ところが、第七条に明文上明らかにしている限りにおいては、第七条は、明らかに安保条約それ自体を拘束する規定なんですね。それ以外の台湾のことや、韓国のことを書いているものではないのですね、そうでしょう。この条約の第七条にある限りは、当然アメリカの自衛権が日本においても行使できることについて書いているわけです。そうでしょう、そうじゃないのですか。日本においてのことを書いてないと言うのですか。     〔発言する者多し〕
  139. 小澤佐重喜

    小澤委員長 静粛に願います。
  140. 岡田春夫

    岡田委員 台湾、韓国のことについて書いてあるわけじゃないでしょう、そうでしょう。安保条約の第七条に書いてあることは、日本において、日本の基地でアメリカが自衛権を行使することについて書いてあるわけでしょう、そうじゃないのですか。
  141. 林修三

    ○林(修)政府委員 どうしてそういう御解釈が出てくるのか、ちょっと私了解に苦しむのでございますが、第七条で書いておりますのは、決して日本における場合についてのみ書いてあるわけじゃございません。一般に、国連憲章にこの条約は矛盾するものと解釈してはならない、こういうことでございます。つまり、日本にある米軍が、日本の基地を使用して自衛権を行使することを必ず認めなければ国連憲章五十一条に違反するとか、あるいはこの第七条に違反するということは、どこからも私は出てこないことだと思います。先ほど条約局長がお答えいたしました通りに、主権国として、日本に米軍の駐留を認める、あるいは日本施設区域を使うことを認める、そういう場合も、条件としていろいろ合意をするということは、これは主権国同士のことで当然でございます。その結果、日本施設区域を使用して米軍が自衛行動に出ることには制約があるわけでございますが、これは主権国同士として、あらかじめ日本施設区域を使わせる場合に当然そういう約束をしているわけでございまして、それは何ら五十一条の権利を制限したものということは、どこからも出てこないと思います。
  142. 岡田春夫

    岡田委員 林さんにもう一度伺いますが、あなたは、どうしてそういう解釈をされるか。第七条は日本におけるアメリカの自衛権について書いてあるのじゃないのだ、こういう御答弁になりましたね。そうなんですか。それじゃ、これは、日本においてアメリカの自衛権の行使をすることを第七条で書いているのではないのですね。あなたはそう言ったでしょう。速記録を見てごらんなさい。はっきり言っているじゃないか。ですから、この第七条における締約国の権利というのは、アメリカ日本において自衛権を行使する場合のことも含んでいるでしょう。含んでないのですか、どうなんですか。含んでいるじゃないですか。
  143. 林修三

    ○林(修)政府委員 私が先ほどお答えいたしましたのは、岡田委員が、この第七条はアメリカ日本において自衛権を行使する場合のことだけを意味しているのだろうとおっしゃいますから、そういう意味ではないということを申し上げたわけであります。どこからもそういうことは出てこない。国連憲章との関連を書いてあるわけでございまして、米国が自衛権を持つということを、どこにも否定しておらない。しかし、日本にある米軍が日本施設区域を使用することは、これは先ほど条約局長が申し上げました通りに、他国の主権のもとにある地域についていろいろ言うことは、当然その主権国の同意がなければできないことでございます。その施設区域を使用することを許すこと自身が、日本の同意に基づいております。その同意に基づいた場合に、日本がいろいろの条件をつける、これもアメリカが受諾してこの条約ができているわけでございます。そういう条件をつけたことは、何ら国連憲章の五十一条に違反するものではない、そういうことを先ほどから申し上げているわけでございます。
  144. 岡田春夫

    岡田委員 じゃ、あらためて伺いますが、あなたの言いたいのは、第七条は訓示規定だ、だから、一般的な抽象的な規定をしただけなんだ、こういう意味なんでしょう。じゃ、具体的に伺いますが、第七条にある締約国の権利の中には、日本においてアメリカが自衛権を行使するという権利も、この第七条には含んでいるわけでしょう、含んでないのですか。それ以外の権利も、あなたのおっしゃる通りにもちろん含んでいますよ。そういうアメリカの自衛権の行使というものは、日本における自衛権の行使を言っている場合だけではないという、あなたの解釈はその通りだと思う。しかし、日本においての自衛権だけではないが、日本においての自衛権の行使も、当然この第七条には含んでいるわけでしょう、この権利というものは。そうでしょう、違いますか。
  145. 林修三

    ○林(修)政府委員 自衛権の行使というものは一国の持つものでございまして、どこにおいて行使することがどうだという問題ではございません。つまり、日本において米車が自衛権を行使する、台湾において行使するというものを、それぞれ別々に考えるべき問題じゃ私はないと思います。米国が、自国が攻撃を受けた場合、あるいは米国と関連のある国が攻撃を受けた場合に、個別的または集団的自衛権を行使するという問題でございまして、特に国連憲章等のあれで日本における自衛権を制限してはいけないということはどこにもないわけでございまして、第七条は、そういう趣旨でございますから、たとえば、米軍が日本にある施設区域を使う場合に、その使い方について制約することは、第五十一条に照らして、どこからも違反するものではないということを先ほどから申し上げております。
  146. 岡田春夫

    岡田委員 あなたの言うのは、第六条の説明をしている。私は、第七条の権利の中には、日本においてアメリカが自衛権の行使をするということもこの中に含んでいる。さっきからあなたは答弁している。含んでいるでしょう。
  147. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 ただいまの権利の問題、含むか含まぬかの問題でございますが、含むか含まぬかという問題よりも、むしろ、国連の責任に対しては、権利及び義務に対してはどのような影響も及ぼすものではないと書いてあるわけでございます。すなわち、われわれがアメリカへ基地を貸しまして、そして約束をしまして、両方が合意をして、こういうようなやり方でいこうということは、これは決してここに考えられている影響を及ぼすということには入らない。     〔「松本さんによく聞いてこいよ」   と呼び、その他発言する者多し〕
  148. 小澤佐重喜

    小澤委員長 静粛に願います。
  149. 岡田春夫

    岡田委員 情文局の解説という本の二十八ページによると、外務省としては、この場合においてアメリカ行動についてはっきり規定しております。これをお読み下さい。「いっさいの国連加盟国は、国連の行動に参加する場合か、第五十一条による自衛権の行使として行なう場合でなければ、軍事行動を執ってはならないのであって、米国といえども、もとよりその例外ではない。」このように書いてある。とすれば、当然この第七条において、アメリカが自衛権の行使を日本で行なう場合――そうですね、自衛権の行使をアメリカ日本において行なう場合も、この権利がどのような影響を及ぼすものでもない、また、及ぼすものと解釈してはならない、こう書いてある。しかし、一方、先ほどから御答弁のように、第六条において、交換公文で、アメリカが自衛権の行使をするという場合において、事前協議ノーと言ったら、少なくとも日本の国内においては、国内の基地を使って自衛権の行使ができないわけですね。そうでしょう。自衛権の行使ができるわけになりますか。ないわけでしょう。そうすれば、アメリカは、少なくとも自衛権の行使は、事前協議ノーということによってここでは行ない得ないことになります。そうでしょう。それは当然そうでしょう。その点から伺っていきましょう。
  150. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 そういうことになるわけでございますが、しかし、それが、ここに書いてある「影響も及ぼすものではなく、また、及ぼすものと解釈してはならない。」ということにはならないわけでございます。それは双方が約束して、そういうふうな態様で行なおうではないかという約束をやったわけでございますから、そういうことにはならないと思います。
  151. 岡田春夫

    岡田委員 それはそういうことにならないということは、交換公文に書いてあるのですよ。ここは第七条ではっきり書いてあるのですね。自衛権の行使をしてはならないということは、アメリカの自衛権の権利にどのような影響を及ぼすものでもないし、そういうように特に解釈してはいけない、こういっているじゃないですか。解釈してはいけないということは、日本の国内において自衛権の行使というものを妨げるように解釈してはいけないと、第七条でいっているじゃないですか。日本以外において自衛権の行使ということは当然あり得るでしょう。しかし、これは条約の範囲以外のことです。しかし、この安保条約である限り、この安保条約の中の問題として私は今質問しているのです。条約の中において、アメリカの自衛権の行使はできないという解釈以外にとりようがないでしょう。どういうように解釈できますか。そうでしょう。
  152. 林修三

    ○林(修)政府委員 その点は、実は先ほどから申し上げておるわけでございますが、第七条は国連憲章一般のことをいっているわけでございます。一般論をいっておりまして、この安保条約が国連憲章に違反するように解釈し、影響を及ぼすものと解釈してはならない、そういうことが書いてあるわけでございます。それはつまり、国連憲章もいろいろ規定がございますが、たとえば第五十一条の自衛権の問題、この自衛権を否定するような趣旨と解釈してはならない、五十一条に適用していえば、そういうことになると思います。しかし、この点、今岡田委員員がおっしゃったように、その五十一条の内容が、たとえば日本においてアメリカが自衛権を使うもの、あるいは台湾において自衛権を使うもの、あるいは米国本土において使う、そういうものを総合して、それぞれが別々の権利であるというふうには私は考えるべきではないと思います。これは米国が自衛権を持って、その自衛権を五十一条に基づいて行使できる、しかし、それは、他の主権国の区域内においていかなる自衛権を行使するか、こういうことは、他の主権国の影響下にあるわけでございますから、二国間の条約によってその行使の方法をいかようにきめようとも、これは何ら国連憲章に違反するものでもない、この点は、先ほど条約局長が申しましたことと同じことであります。たとえば、第三国の区域を通過して自衛権を行使したいということに、第三国が同意するか、しないかは全く自由であると同じように、日本にそもそも施設区域を置いてそれを使わせるということは、安保条約によってきめているわけであります。その安保条約をきめるに際して、そういう場合にどういうやり方をするか、そういうことをきめることは、何ら国連憲章に違反するものではないわけでございます。
  153. 岡田春夫

    岡田委員 それでは林さんに伺います。第六条の事前協議というものを第七条では拘束するものではないのだということは、明文上どこにあるのですか。そんな解釈はできないでしょう。あなたの言うのは、訓示規定だと言いたいのでしょう。訓示規定であって、一般的な規定なんだ。国連過重で認められておるいわゆる自衛権の行使の権利というものは、みんなあるのだということを書いておるのだということをあなたは言いたいのでしょう。そのことはその通りなんです。その通りなんだが、日本においてもアメリカが自衛権の行使ができるということを書いておるのでしょう。そうじゃないのですか。それを、自衛権の行使というものを交換公文ノーと言って、自衛権の行使を妨げるという限りにおいては、日本においては自衛権の行使ができないのでしょう。どうなんです。
  154. 林修三

    ○林(修)政府委員 第七条の趣旨は決して訓示規定ではございませんで、この安保条約の規定全体が国連憲章に違反するような趣旨ではできておらない、また、そういうふうに解釈してはならない、こういう趣旨で書いてあるのでございます。もしも国連憲章に違反する点があれば、もちろん国連憲章が優先する、こういう考え方でできておるわけでございます。しかし、先ほどから申し上げております通りに、第七条が、特に日本においてアメリカが自衛権を無制限に行使できるということを積極的に書いたということがどこから出てくるか、私には理解できないわけで、第七条にはそういう趣旨はどこにも書いてないわけでございます。従って、日本が米軍に駐留を認め、日本施設区域を使うことをこの安保条約によって約束する以上、その約束の場合のいろいろな要件として、日本施設区域戦闘作戦行動の基地として使う場合には、事前協議でいこう、事前協議については日本の積極的な合意がなければやらないということを約束することは、これは何ら国連憲章にも違反いたしませんし、第七条の規定の趣旨にも違反しないわけでございます。
  155. 小澤佐重喜

    小澤委員長 議事進行に関して松本七郎君から発言を求められております。この際、これを許します。松本七郎君。
  156. 松本七郎

    松本(七)委員 本条約の非常に重大な穴であるといわれる重要事項の一つである事前協議について、われわれはあらゆる角度から、はたしてわれわれが心配しており、また国民の多数が心配しておるような危険なものであるかどうか、政府が言うようにこれで安心できるのかどうか、この点、あらゆる角度から真剣に質疑をかわしておるのであります。こういう重要な問題を質問しておる最中に、発言者のすぐ横で、あのように大きな声で、一々政府答弁までじゃまするようなことをやられたのでは、これは審議は進みませんよ。声が非常に大きくて、よく聞こえる。だから、一つ岸総理にお願いして、外務大臣にでも任命していただいて、向こうから答弁していただくなら、われわれもわかる。横から大きな声でやられるのでは、これは審議が順調に進まない責任は与党が負わなければなりませんよ。委員長、もっとはっきり整理をしてもらいたい。本人は小さい声で言っておるつもりかもしれないけれども、すぐそばで大きい声でやられるのでは、全然質問もできなければ、答弁も聞こえない。だから、もっと整理して下さい。
  157. 小澤佐重喜

    小澤委員長 ただいまの松本君の発言に関しましては、委員長は十分注意いたしまして、委員会の運営に努力をいたしたいと思います。
  158. 岡田春夫

    岡田委員 林さんは、先ほどから、自衛権の行使の制限が野放しであるかのごとく私が言っておるように言うが、そうじゃないのです。これは憲章五十一条に基づいてはっきりとした制限があるわけです。その制限以外には、憲章では自衛権の行使に対しては何らの制限はないわけです。そうでしょう。そうすれば、憲章において、自衛権の行使をする場合には、武力攻撃があった場合、それから、自衛権というものの本来持つ性質として、急迫不正のものであって、しかもそれに対応するために最小限度の行使をするという、こういう制限が、自衛権の行使についてはあるわけです。この自衛権の行使が、第七条で権利としてはっきり認められているわけです。そうでしょう。自衛権の権利というものに、どのような影響を及ぼすものでもない、また、及ぼすものと解釈してもならない、こういうふうに書いてあるわけです。ですから、このアメリカの自衛権の行使が、どのような影響も及ぼすものでもないし、及ぼすものと解釈してはならないと書いてある。これはその通りですね。そうすれば、日本においても、これ以前のいろいろな条項において自衛権の行使をするという場合に、事前協議でこれを日本ノーと言ったら、アメリカは自衛権の行使ができないわけでしょう。日本における自衛権の行使ができますか。(「それは両国の合意なんだよ」と呼ぶ者あり)たとえば、今ここで言っておりますが、合意によっても行使ができないとしても、第七条においては、権利が、どのように解釈してもならないと書いてある。それならば、日本における自衛権の行使は妨げられるということは、解釈することにならないわけです。そうでしょう。(「そうでない」と呼び、その他発言する者あり)第七条というものは、解釈したり、影響を及ぼすものと考えてはならないといっておるのだから。もちろん、これは、あなたは今まで答弁された場合において、日本でやらなければ、台湾でやりますとか、ほかの回でやりますとか……。     〔発言する者多し〕
  159. 小澤佐重喜

    小澤委員長 静粛に願います。
  160. 岡田春夫

    岡田委員 整理して下さい。委員長、こういう発言がある限り、発言しません。理事の席を変えて下さい。
  161. 小澤佐重喜

    小澤委員長 静粛に願います。――岡田春夫君。
  162. 岡田春夫

    岡田委員 それでは、一つ委員長として十分注意していただきたいと思います。私も静かな声で聞いているのですから。  林さんにさっき私が伺っておりましたように、締約国の権利というのは自衛権です。自衛権の行使というものは、もちろん、アメリカの自衛権を日本においても行使する場合が当然あるわけです。これは条約ができているのだから。これに対して、事前協議に基づいて、ノーとも言えるんだ、こういうようになっている。その点が一つと、それから国連の行動としてやる場合、「国際連合の責任に対しては、」と云々と、こうはっきりなっております。これは国連の行動なんです。この二つの場合においては、どのようにもこの条約がこの権利を制約するものではないという解釈が、第七条です。そうでしょう。制約するものではないという意味だから、「どのような影響も及ぼすものではなく、」と、それから「また、及ぼすものと解釈してはならない。」と、ここまでこまかく規定しているわけです。これは、なぜ私がこのように問題にするかというと、先ほど松本七郎委員から質問のありましたように、ほかの条約にもこの条項はあるのです。しかしながら、事前協議という条項はないわけです。だから、ほかの条約においてはこれはすっと生きるわけです。しかも、相互防衛条約という、いわゆるほかの条約、米台、米韓の場合には相互防衛条約という性格を持っているから、この条項を設けても、これは何ら矛盾を生じないわけです。ところが、安保条約においては、相互防衛条約ではないということは、今さら言うまでもない。しかも、そうでない、日本の自主性を認めさせるんだということで、事前協議条項というものを、ことさら交換公文で加えたわけです。これは、岸さんが先ほど答弁された通りです。そこで、この事前協議条項というものが、今度新たに第七条との関係において抵触を生ずる、この関係が生まれてくるわけなんです。それはもうはっきりしている。それは、さっきから再々くどく申し上げているように、先ほどの御答弁等伺っておりますと、アメリカの自衛権の行使というのは、何も日本だけでやるのじゃない。台湾でもやるかもしれないし、朝鮮でもやるかもしれないし、ほかでもやるかもしれない、だから、自衛権の行使は妨げられないのだ、第一段階の答弁は、このように御答弁になっている。ところが、その場合においても、日本において自衛権を行使することも当然あるわけです。その日本において行使する自衛権というものが、どのように及ぼすと解釈してもならないと、第七条ではっきり規定しておるならば、事前協議の場合において、日本イエスと言えば、アメリカの自衛権の行使はできるわけです。これはもうあなたのおっしゃる通りなんです。日本イエスと言った場合には、もちろんアメリカは自衛権は当然行使できるわけでしょう。ところが、ノーと言った場合には、自衛権の行使ができなくなるわけでしょう。だから、この場合において、事前協議条項と第七条との関係においては、イエスと言った場合においては、第七条の精神とこれは一致し得る、これははっきりしていますね。ノーと言った場合には、第七条の行使とは一致し得ない、こう解釈せざるを得ない。そうでしょう。総理、そういうことになりましょう。――総理がお答えになる予定ですから、林さんお持ち下さい。それでは小刻みに伺いましょう。第七条のこの権利が、事前協議イエスと言った場合には、当然これはアメリカの自衛権の行使ができる、そうでしょう。
  163. 岸信介

    岸国務大臣 先ほど来岡田委員の御質問を聞いていますと、日本における自衛権、日本において米国が自衛権を行使するという言葉でありますが、それはちょっと言葉が正確でないのじゃないか。いわゆるそういう意味におきますと、第五条の場合に、日本における米軍が攻撃されたときに米軍が自衛権を発動するのは、これは当然できる。ただ問題は、六条の場合は、日本において日本の基地を使用するということが、無制限にそれじゃ使用しなければ七条で違反するかどうかという問題でありまして、アメリカが五十一条によって自衛権を持っておることは、極東全体、世界全体、どこでも持っておるだろうと思うのです。それをどういうふうに自衛権を制限するかということは、この安保条約は考えてないわけです。ちっとも制限しているわけじゃない。ただ、日本の基地を使って、日本の領土内におけるところの米軍がやられた場合において、自衛権を行使することは、これははっきり条約でも、五条ですかで、できることになっています。従って、交換公文でもその場合には除いております。だから、その場合に日本において自衛権を行使するという意味は、ちょっと岡田委員の御質問は、私は正確でないと思います。問題は、日本の基地を使って、日本の領域外において自衛権を行使するということについて、その基地を貸与するということに関連して、基地を使う意味における条件をつけております。これは日米の間で合意しているということは、何ら七条にいっているところの規定とは反しているものではない。何か日本において自衛権を行使できないじゃないかというような御質問でありますが、それは正確でないと思うのです。
  164. 岡田春夫

    岡田委員 私は、さっきからのいきさつからいって、第六条の場合の基地の使用ということを理由に――、そうでなければ事前協議なんかやれないのですから――。第五条で事前協議は除くと書いてある。それはあなたのお説の通りなんです。先ほどからの話のいきさつで、日本において云々と言ったのは、第六条のことを言っているのです。厳密に言えば、あなたのおっしゃる通りの言い方をした方がいいと思うのです。しかし、私の伺っているのは、それじゃもっと正確に言いますと、第六条に基づいて、日本の基地を使って自衛権の行使をする場合、これはあなたは違うとは言えない。外務省の解説の中に、第六条において基地を使用する場合には、国連の行動か、アメリカの自衛権の行使の場合、このいずれかの場合に限る、こうなっているのだから、第二の場合であるアメリカの自衛権の行使の場合について、私今伺っているわけです。アメリカの自衛権の行使の場合においては、戦闘作戦行動に関する限りは事前協議条項の該当を受ける、こういうことが第六条の解釈でしょう。この事前協議条項イエスノーと二つある、こういうわけでしょう。ノーと言った場合には、アメリカ戦闘作戦行動日本の基地を使って行動することができない、こういうことですね。そういうことでしょう。ところが、第七条においては、憲章に基づいておる締約国の権利、いわゆる急迫不正の事態があって武力攻撃があった場合、アメリカが自衛権の行使をする場合に、日本の国から日本の基地を使って行使をするということは、当然アメリカの権利の一つとしてあるわけです。これは当然第六条、第七条においてはっきりと認められておる。それは日本の基地を使って権利を行使するということを妨げることにはならないわけでしょう。日本の方と事前協議をして、日本イエスと言えば当然行なえる。ところが、ノーと言った場合でも、アメリカは権利を行使する権限があるということを第七条で書いてある。及ぼすように解釈してはならないと書いてあるのだから、アメリカが権限を行使することができるように書いてある。そうしてまた、日本の国としても、アメリカの権利に影響を及ぼすように解釈してはならないと書いてある。だから、事前協議においては、ノーと言えばアメリカの権利に影響を及ぼす結果になる。ノーと言えば及ぼすように解釈するようなことになる。だから、ここでは、事前協議イエスとしか言えない。イエスとしか言えないということが、第七条に書いてあるのだというのです。しかも、あなたは、交換公文に書いてある――はっきりしておる点は、共同コミュニケというのは法的拘束力はないのだから、共同コミュニケと第七条とを比べれば、第七条が生きるのは当然でしょう。第七条が生きて、しかも、第七条は、この交換公文における解釈をこのように規定しておる。はっきりしておるではありませんか。
  165. 岸信介

    岸国務大臣 岡田委員は、アメリカが自衛権を行使する場合には、アメリカが自衛権を持っておることは、五十一条ではっきりしておりますが、行使する場合において、他国の領土内におるところの米軍を、無制限に、自由に、その駐在しておる国の主権を無視しても、思うがままにこれが使えるという前提をとっておられるけれども、それが間違っておるのです。日本に駐留しておる米軍は、日本の主権下にあるところに駐留しておるものでありますから、日本の主権との間に、アメリカがこの日本の主権を無視して自由にできるという――自衛権である以上は、アメリカが自衛権を持っておることは事実なんですから、その自衛権をどうこうするということはなんだから……。しかし、他国の、他の主権国の中におるところの米軍を使う場合において、これが無制限に使えるのだということを、五十一条が前提としておるように御解釈になっておるところに、間違いがある。日本に駐在しておる以上は日本の基地を使ってやる場合について、日本が主権国として、アメリカがこれを無制限によその国におるところのものが勝手なことができる、それが自衛権だという解釈が間違っておるのであります。その間において、日本との間にちゃんとした条約を作って、そうして合意に基づいて、その行使についての条件が付せられておるということは、ちっとも五十一条並びに七条に何ら違反するものでないと思います。
  166. 岡田春夫

    岡田委員 委員長、今の総理答弁は、私の言っておることと違うことを言っております。私はまだ質問をやりますけれども、黒田さんから関連質問がございますから、続いて関連でお願いいたします。
  167. 小澤佐重喜

    小澤委員長 この際、黒田寿男君から関連質問の申し出があります。これを許します。黒田寿男者。
  168. 黒田寿男

    黒田委員 いろいろと質疑が継り返されて、堂々めぐりをしておるようですから、このあたりで結論を出さなければならないと思うのですが、今まで岡田君が言われたこと、それから松本君が質問されたことに私も多少補足をいたしまして、この問題をどう扱うか、一応結論を出してみたいと思う。第七条がなければ、ただいまのような問題は起こらないで済んだわけです。そうしてまた、第七条も、「この条約は、国際連合の責任に対しては、どのような影響も及ばすものではなく、また、及ぼすものと解釈してはならない。」ということだけであれば、問題が起こらなかったと思います。ところがこの第七条の中に、「この条約は、国際連合憲章に基づく締約国の権利……に対しては、どのような影響も及ぼすものではなく、また、及ぼすものと解釈してはならない。」という、この言葉が入っておるから、これを社会党として重大な問題にしておるのであります。単に一岡田委員の疑問としておるのではないのでありますから、もう少し補足して、私からも党としての質問といたし、この点を明らかにしていただきたいと思います。  ただいま問題になっておりますことを多少具体的に申してみれば、こうなると思います。「この条約は、」すなわち、新日米安全保障条約は、「国際連合憲章に基づく締約国」すなわち、アメリカ合衆国「の権利」すなわち、憲章第五十一条に基づく個別的自衛権及び集団的自衛権に「どのような影響も及ぼすものではなく、また、及ぼすものと解釈してはならない。」こういうように具体的には読めるのであります。そういたしますと、国連憲章第五十一条に基づくアメリカ合衆国の権利にはどのような影響も及ぼすものではない、また、及ぼすものと解釈してはならないというのでありますから、アメリカの自衛権または集団自衛権の行使にあたって制限を与えるものでもなく、また、制限を与えるように解釈してもならない、こういうようにこの第七条は理解しなければなりません。ところが、交換公文によると、事前協議という問題が出てくるわけです。それによって、日本ノーと言った場合には、アメリカ日本を基地として利用して、たとえば台湾あるいは韓国等に対して、一面、米台条約あるいは米韓条約によるアメリカの義務として、なお一面は、アメリカの集団的自衛権の行使として、その権利を行使しようとする場合に、日本ノーと言われれば、それだけ制限を受けるわけであります。アメリカとしての自衛権の行使に制限を受ける。すなわち、この第七条によれば、影響を及ぼされることになる。イーと言えば、自衛権の行使ができないということになれば、影響を及ぼすものと解釈することになるので、第七条に「及ぼすものと解釈してはならない。」こう書いてあることと矛盾しはしないかというのが、われわれの持っておる疑問でありまして、こういう疑問が起こることは、この第七条がある以上は当然だと思う。だから政府は、いたずらに言いのがれをしたり、強弁するということでなくて、懇切にこの疑問に対して答えなければならぬ義務があると思う。  一言、与党の諸君にも、これは私は余分なことだとも思いますけれども申し上げます。ただいま椎熊君は退席されましたけれども、ああいう態度で、この条文の解釈問題に対して、臨まれては困ると思う。これは、おそらく日本国民全部が、この条文があるために、事前協議というものに対する非常に大きな疑問と不安を持っておる問題でありまして、私どもはそういう見方で質問しておるのでありますから、政府もそういう意味で、ただ一時の言いのがれということでなく、真剣に、なぜ第七条に、国際連合憲章に基づく締約国の権利にどのような影響も及ぼすものではなく、また、及ぼすものと解釈してはならないというような文句を入れたのであるか、これを入れれば、事前協議という問題を帳消しにしてしまうじゃないか、こういう疑問が当然に出てくるのであります。  そこで、私は、なお、その点について、私どもが疑問とする根拠を申し上げておきましょう。交換公文に書いてあります事前協議の問題が、この条約の正文の中に書いてあれば、またこれは別に解釈することもできるかもわかりません。政府ノーと言える事前協議という問題は、条約本文には書いてなくて、交換公文の中に書いてあるわけです。その交換公文は、アメリカ上院の承認を経る必要がないのです。条約本文事前協議のことが書いてあれば、この条約アメリカ上院の承認を経なければならぬということが、第八条に書いてある。交換公文アメリカ上院の承認を求める必要がないのだ。事前協議に関する交換公文は、アメリカ上院の承認を経る必要はないものだということは、これは外務大臣が、ただたびこの委員会の席上で、あるいは予算委員会の席上で説明しておられるわけです。そうしますと、同じ日本アメリカとの国際的約束であっても、上院の承認を経る約束と、政府だけがとりきめる約束との間に、効果の優劣があるというように、われわれとしては考える。これは決して神経過敏じゃない。アメリカ日本の基地を利用するのですから、権利を得るだけのことでございまして、そこには何ら義務を負担するものがないから、上院の承認を経ないでもいいとしておるのでありますが、日本は基地を使わせるという義務を負担するのでありますから、これは重要な問題である。だから、もし政府説明せられるような制限が、アメリカの集団自衛権の行使にあたってなされるものであるという解釈をされるのなら、なぜそのことを条約の中に書いておかないか。それを交換公文なんかに入れておくから、問題が起こるのです。アメリカの集団自衛権もこれは権利でありますから、権利は、これを行使する主体、すなわち、アメリカが制限しても、それは自由でありましょう。制限どころではありません、権利でありますから、放棄してもいい、そうも言えるわけです。集団自衛権という権利をアメリカは持っておるから、百パーセントいかなる場合にもアメリカが権利を行使するものとは限りません。だから、制限すると約束してもいいわけですね。けれども、制限してもいい約束をするのならば、なぜ条約でしないかということです。それからいま一つは、その条約でそういう制限をアメリカがしないで、交換公文というようなものに回わしておいて、しかも、条約の中に、「国際連合憲章に基づく締約国の権利に影響を及ぼすものではなく、また、及ぼすものと解釈してはならない。」という文章が、逆に入っておる。だから、交換公文事前協議事項を設けて、日本ノーと言えるようにしておけば、何かアメリカの極東出動に関して国民に安心を与えることができると政府が百万べん言われても、条約形式の上からいっても、私どもは安心することができぬのです。それを今岡田君を通じて、社会党がここで問題にしておる。私は、今まで政府が答えられた答弁では、私どもの疑問に対する答えにはならぬと思います。私はこれだけのことを言うておきます。もう昼の時間になっておりますから、大体私はこれだけのことを申し上げておきます。これで岡田君及び松本君の御質問に対して、私も多少補足もし、また、説明も加えたと思いますから、社会党の見方は、よりよく政府としても御理解下さったことと思います。なお機会をあらためて御答弁を願いたいと思います。この問題に対して質疑が済んだものとは私どもも思いませんよ。まだ別の機会にやらなければなりません。(「答弁々々」と呼ぶ者あり)一応それでは答弁を聞いてもよろしい。そうしましょう。
  169. 岸信介

    岸国務大臣 アメリカの国内の手続におきまして、上院の承認を経べき形式のものと、そうでないものとがございます。しかしながら、それが国際法上、国際間の権利義務を拘束するという上におきましては、私どもは何ら差異があるとは思いません。従って、今これが条約の規定されておる場合と、交換公文で書かれておる場合とにおきまして、その効力が違うような前提黒田委員お話しになりましたが、私どもはそう考えておりませんし、また、それは国際法上そう解釈すべきものではない。従って、両国を拘束するところの関係におきましては、条約文に書いてあると同様な効力があるということを、われわれは前提として考えております。  それから次に、先ほど岡田委員にもお答えを申し上げましたように、もちろん、アメリカが個別的自衛権やあるいは集団的自衛権を持っていることは、国連憲章五十一条において定められている通りでありまして、これをわれわれは制限したり否定したりするところのことを、安保条約できめておるわけではございません。しかしながら、日本に駐留して、日本の基地を使用して、その自衛権を行使するかどうかということについて、主権国である日本との間に、一つの、この基地を使うということに関連して条件が付せられておりましても、それが国連憲章におけるところのアメリカの持っておる権利を制限したとかいうことには、私は、解釈すべきものでない、これで影響を及ぼすものというような解釈ではございません。アメリカはあくまでもアメリカの自衛権を行使することは、これは国連憲章の条件に従ってできます。しかしながら、その場合、日本の基地を使用するという場合に、基地を提供しておる日本が、これに制限を付する――その制限も一方的に付するわけではございません。アメリカとの間に合意した条件に従ってこれを行使するということは、何ら七条と矛盾するものではない、こう私どもは解釈しております。
  170. 小澤佐重喜

    小澤委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時二十三分休憩      ――――◇―――――     午後一時四十二分開議
  171. 小澤佐重喜

    小澤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。岡田春夫君。
  172. 岡田春夫

    岡田委員 午前に引き続いて質問を続行いたしますが、休憩直前に岸総理から、事前協議と第七条との関係について御答弁がございました。しかし、われわれ社会党といたしましては、岸総理のあの御答弁では了承ができません。従いまして、われわれは、この問題については、今後いろんな点からこの点についてもっと質問を続けていくつもりであります。しかし、きょうは、この点はきょうの打ち合わせによりまして留保をいたしておきます。今後やることだけははっきり申し上げておきます。  それで、続いて次の問題に入りますが、だいぶ時間をとりましたので、私の質問の順序の中でいろんな点をはしょっている点もございます。私は、これから触れて参ろうと思っております点は、むしろ、条約それ自体の解釈の問題というよりも、具体的な事実に基づいて質問を続けて参りたいと思います。  われわれ社会党の考え方といたしましては、岸内閣は中国に対し敵視政策をとっている、これは明らかであると私たちは考えております。その現われとしても、新安保条約というものは敵視政策の典型的な現われである、こういうようにわれわれは解釈をしているわけであります。岸内閣としては、総理としては、今まで、主として今後においても、中国に対して敵視政策はとらないんだ、とっておらないんだ、こういうことを答弁になっておりますが、われわれは、現在の岸内閣の政治が明らかに敵視政策であると考えますが、この点はいかがでございますか。
  173. 岸信介

    岸国務大臣 しばしばお答え申し上げておる通り、私どもは敵視政策をとって参ってはおりませんし、また、将来とる考えは持っておりません。
  174. 岡田春夫

    岡田委員 敵視政策をとっておらないというお話でございますが、われわれは、岸内閣の政治が敵視政策であると考える。そのために、一つここで例をあげて申し上げたいと思うのですが、朝日新聞の四月十八日の夕刊に、このような投書が出ております。この投書は自衛隊員の投書であるだけに、これは非常に重要であります。名前も出ておりますので、はっきり申し上げますが、東京、山本一三、二十六才、自衛隊の隊員、こういうことで投書が行なわれております。この投書の中にはこのように書いています。見出しとしては「間違った戦争に銃はとらぬ」その中で岸総理に対して呼びかけております。訴えております。どのように訴えているか。「岸さん。あなたは、あなたの経歴がソ連や中共を刺激し、日本国民からさえ、白い目で見られていることに、お気づきになりませんか。あなたが純粋に自衛のみを考え、その意図の潔白さを示したいなら、まず中共に対して、日本の犯した戦争について謝罪しなさい。それ以外にあなたに対する不信を消す方法はありません。われわれは、日常、肩身のせまい思いをしているのに、あなたのために、さらにみじめな場所へ突き落とされるような気がしてならない。」このようにはっきり言っている。これは、自衛隊員があなたに対して訴えている。岸さん、あなたが過去の戦争を起こしたことについて、中国に対して、中華人民共和国に対して謝罪しなさいと、自衛隊の隊員が言っている。あなたは謝罪するおつもりがありますか、どうですか。
  175. 岸信介

    岸国務大臣 謝罪するとかしないとかいうことは、私自身が謝罪するとかしないとかいう問題ではなかろうと思います。過去における戦争そのものに対して、日本全体として、戦後において、われわれは、従来の国の行き方を改めて民主的な立場をとり、平和主義をとるという、こういう立場をとっておるのでありまして、私も、日本国民の一員として、ことにこういう政局に立っております以上は、その気持ですべての政治また行動に当たっているわけでございます。そういう意味において、私は、日本国内においてのみならず、国際的にもそういう態度を一貫してとっているわけでございます。
  176. 岡田春夫

    岡田委員 ただいまの答弁を伺っていると、日本国民全体がざんげしなければならない、その一人としてあなたもざんげをされるというようなふうに受け取れる御答弁でありましたが、私は、そういうことは許されないと思う。少なくともあなたは、満州国の最高幹部の一人として籍を置いて、直接にあなたは中国に対していろいろな迷惑をかけているというこの事実を考えても、あなた自身は、一億の一人として謝罪をするだけではなくて、あなた個人としては、一億総ざんげの一人の謝罪ではなく、あなた自身がはっきり謝罪をしなければならぬと思う。そういう点は、今まで謝罪をしておらないだけに、はっきりされる必要があると私は思うのですが、いかがですか。
  177. 岸信介

    岸国務大臣 今申し上げました私の気持を率直に先ほど来申し上げている通りでございまして、それにつけ加えるべきものはございません。
  178. 岡田春夫

    岡田委員 なかなかこれについてははっきり御答弁がないのですが、これはこの前も質問があって、はっきりしないままになっておりますけれども、第二次世界戦争、いわゆる太平洋戦争、この戦争において日本は侵略戦争をやったわけでありますが、太平洋戦争というものに対して岸総理はどのようにお考えになっておりますか。現在、太平洋戦争は侵略戦争であったとお考えになっておりますか、いかがですか。
  179. 岸信介

    岸国務大臣 それは、この前どなたかから、同じような御質問がございましたが、われわれは、二度とそういう戦争はしてはならない、かように考えております。
  180. 岡田春夫

    岡田委員 これは日本が降伏文書に基づいて受諾したのですが、ポツダム宣言並びにカイロ宣言――カイロ宣言の中には、日本国の侵略を制止するために、今次の戦争を行なっている、すなわち、これが日本国の侵略戦争であるとはっきり言っておる。侵略戦争であるということについては、その他の点についてはっきり出ておりますが、侵略戦争であるという事実はお認めにならないのでございますか。
  181. 岸信介

    岸国務大臣 日本が降伏したところの条件というものは、われわれは当然これを認めて、降伏の条件というものはこれを承認しているわけでございます。
  182. 岡田春夫

    岡田委員 当然承認されるとするならば、これは侵略戦争であると断定して間違いございませんですね。――(「答弁答弁」と呼び、その他発言する者あり)それじゃ、御答弁がないようでございますから、重ねて申し上げましょう。アメリカと蒋介石との間に結ばれた米台相互防衛条約、これの前文におきましても「ともに帝国主義者の侵略に対抗して戦うため結束するに至った関係を相互に誇をもって想起し、」云々と、このように書いてあります。この点から見ても、明らかに、この間の第二次世界戦争において日本の行なった戦争というものは、侵略戦争であり、帝国主義の戦争であった。この点は、あなたの信頼するアメリカ、そして蒋介石でさえ、前文にうたっているではありませんか。侵略戦争であるという事実はお認めにならなければならないと思います。
  183. 岸信介

    岸国務大臣 この第二次戦争の勃発した当時のことを想起して、私は、当時の日本人が、これを侵略戦争だと考えた者はなかったと思います。しかしながら、われわれは、戦いに敗れて、あらゆる降伏の条件に、今おあげになりましたような各種の条約を無条件で承認をいたしておりますから、これは無条件に承認をすべきものである、かように思います。
  184. 岡田春夫

    岡田委員 無条件に承認をするとおっしゃったから、これは侵略戦争ということを無条件に承認した、このように認めざるを得ない。  そこでもう一つ、こういうことばかり伺うのはいやですけれども、公人としての岸さんには伺っておかなければならない。満州国というもの、これについては、岸さんは直接御関係になったわけですが、満州国というものは、少なくとも正統政府ではない。これは、中国流の言葉をもってするなら、偽政権である。われわれの流儀をもって言うならば、かいらい政権であったと、このように考えますが、この点はいかがでございますか。
  185. 岸信介

    岸国務大臣 これも同様なと質問が従来私に対してあったわけでありますが、当時私どもはさようには考えておらなかったという事実を、そのまま私は申し上げたのであります。しかしながら、今日になって、日本がこの戦いに敗れた結果、あらゆる国際的のきめられた条約、宣言その他のものを無条件に承認いたしておりますから、それらの宣言やその他の条約でもって規定されておるところのものは、これは自分のなにとしては、残念であるという気持はあろうとも、認めなければならぬという事態であることは、これはやむを得ない、かように思っております。
  186. 岡田春夫

    岡田委員 ちょっと受け取りがたいお言葉があったのですが、何か自分としては残念であるけれどもというようなことは、満州国というものが偽政権であるということを言われるのが残念である、侵略戦争であると言われるのが残念である、岸さんの腹の中では、そういうきわめて押しつけられた、そのようなあれに対しては憤懣を覚えている、このような考えで今お話しになっているのですか。
  187. 岸信介

    岸国務大臣 先ほど私お答え申し上げました通り、当時これに携わった者、また、日本人自体が、侵略戦争であるとか、かいらい政権を作るというような意図ではなかったということは、当時関係しておる人々ばかりではなしに、私は考えておると思います。関係しておる者は、なおさらそう考えております。しかしながら、戦いに敗れて、あらゆる国際的の、今申し上げましたようないろいろな条約や宣言その他のものを、われわれは無条件に承認せざるを得ないのであります。私は、いずれの意味においても、いろいろな考え方があるかもしれませんが、戦いに敗れるということがけっこうなことだと、民族として考える者はなかろうと考えております。そのことを、私は国民の一人、民族の一人として残念に思うというのは、当然の感情を申し上げたことでございまして、それがゆえに、その承認をするとか、それを認めないとかいうことではございません。
  188. 岡田春夫

    岡田委員 戦いに敗れたことが残念であるという意味で、残念であると言われたというのだが、その戦いを始めたのは日本である、侵略戦争を起こしたのである、この点をあなた自身ははっきりお認めになる。しかも、満州国というものは偽政権である。偽政権であるということは、日本政府がはっきり認めている。そうでしょう。高橋さんに伺ってもよろしい。条約上、満州国というものは偽政権であるということを認めておりましょう。どうです。
  189. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 ただいまの御指摘の点は、日華平和条約にそれに類する表現方法があったと考えますが、ちょっと……。
  190. 岡田春夫

    岡田委員 いや、それでいいです。たくさんの条約ですから、一々条約局長も記憶しておるかわからないので、私の方から申し上げましょう。日華条約の同意された議事録の中で、明らかに、日本文としては、「「満州国」及び「汪精術政権」のような協力政権の」云々、中国語においては、この協力政権を「偽政権」、このようにはっきり同意された議事録に出ております。このことは、明らかに正統政府ではないということを、条約上も日本の国は認めた、このことを意味していると思いますが、総理大臣、いかがですか。
  191. 岸信介

    岸国務大臣 先ほど私お答え申し上げた通りでありまして、それらの条約において認められていることは、私は、その通りに今日も認めなければならぬ、かように申したわけであります。
  192. 岡田春夫

    岡田委員 それでは、先ほど総理から満州国の問題についてお話があったのですが、満州国には日本の軍隊がずいぶん駐留した。満州国といわれるところにですね。それによって中国人にはいろいろと迷惑をかけている、この点については、あらためて私が例をあげる必要はない。もうそのことのためにりっぱな小説までできて、「人間の条件」などというような本ができるとか、幾つかの点で、日本の軍隊が満州国に駐留することによって中国人にいろいろと迷惑をかけたという事実は、あなたはお認めになりましょう。いかがでございましょう。
  193. 岸信介

    岸国務大臣 当時駐留したことにつきましては、日満の間の条約その他の――当時としては、そういう条約等に基づいて駐留したことでございますけれども、それが結果的に、今お話しのような、中国人に対して迷惑を与えたような事実はいろいろあった、かように思います。
  194. 岡田春夫

    岡田委員 今総理大臣は、いろいろな迷惑をかけたという事実はあったと思う、こういう御答弁でございます。この迷惑を与えた基礎になっているのは、今総理大臣のお答えの通りに、日満議定書でございます。日満議定書というものが、昭和七年に結ばれている。これによって、日本の軍隊が満州国に対して無制限に駐留する権利が与えられている。それが日満議定書の第二条に書いてある。この条約の規定に基づいて、日本の軍隊が中国人にいろいろ迷惑をかけたんだと思います。この点はそのように解釈すべきだと思いますが、条約局長、いかがですか。
  195. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 駐兵の事実を私は存じておりますが、それが日満議定書に基づくものであるかどうか、ちょっと私わかりません。
  196. 岡田春夫

    岡田委員 明確じゃございませんですか。明確でなければ、私お読みしましょう。日満議定書で、初めて日本の軍隊が満州国に駐留することになったわけであります。第二条「之カ為所要ノ日本国軍ハ満州国内ニ駐屯スルモノトス」、これに該当するわけでございましょう。
  197. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 ここに議定書がございますが、御指摘の通り、第二項に基づくものだと思います。
  198. 岡田春夫

    岡田委員 そこで、今高橋さんもお読みになった通りに、「日本國及満州國ハ締約國ノ一方ノ領土及治安ニ對スル一切ノ脅威ハ同時ニ締約國ノ他方ノ安寧及存立ニ對スル脅威タルノ事實ヲ確認シ兩國共同シテ國家ノ防衛ニ當ルヘキコトヲ約ス之カ為所要ノ日本國軍ハ満州國内ニ駐屯スルモノトス」と、第二条にうたってある。(「まるでそっくりじゃないか」と呼ぶ者あり)これは明らかに、今飛鳥田君の言われた通りに、日米安保条約の第四条、第五条、第六条の三つを、今度の条文よりももっと手ぎわよくまとめてある。これはその通りではありませんか。これは同じような趣旨だと解すべきだと思いますが、高橋さん、どうですか。
  199. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 これは確かに御指摘の通り、今お読み上げになりました第二条に、「一方ノ領土及治安ニ對スルー切ノ脅威」云々という、類似の条項があるわけでございます。ただ、これは国連憲章、そのワク内、その制限、そういうことの全然なかった時代の条約でございますから、実体的内容はおのずから変わるものだと思います。
  200. 岡田春夫

    岡田委員 憲章がなくとも、条文の上に現われたものは、この通り同じであります。今岸さんがお認めになったように、この第二条に基づいて、日本の軍隊が満州国にいろいろと迷惑をかけた。それと同じことが日米安保条約によって行なわれる。かつての日本軍は現在のアメリカ軍である、かつての満州国は現在の日本である、このような形で、日本の国が、満州国と同じように、アメリカに従属をさせられて、いろんな被害を受けつつあるのがこの実態であります。被害を受けているということについては、あなたは御否定はできないでしょう。特別調達庁をお調べなさい。ロングプリー事件、ジラード事件、あるいは自動車事故その他一切によって、あれほど日本国民アメリカの軍隊から被害を受けているではないか。あなたの方はこの被害を受けているのを認めながら、今度の新安保条約を、これでも適さなければならないとお考えになるのですか。
  201. 岸信介

    岸国務大臣 御承知の通り安保条約の改定は、新しい条約によって初めて安保体制というものができるわけではございません。現在すでに、日本の平和と安全を守るために現行の安保条約というものがあるのであります。また、それに基づいて行政協定が作られておって、先ほど条約局長が申し上げた通り、国連憲章の範囲内において行動はされることでございますけれども、そういうても、現行の安保条約締結された当時の事情と、今日の事情とが非常に違うし、また、締結される当時からいろいろなことについて論議があり、国民が満足しておらなかった不平等な点、日本の意思が条約の上に、また運用の上に現われておらない、また、行政協定の、日本に駐留しておる軍隊が持っておる権利等につきましても、日本国民の立場から見て、正当な状態、公正な状戦に置いてないということを改めようというのでありまして、現行のものこそ、公正なる扱いでなしに、日本国民の迷惑している程度が大きいので、それを改善しようというのが今度の安保条約の問題でございまして、これは当時の日満の状況と、今日の国際間における日米関係とは全然違っておりまして、これをもって直ちに、当時の日本軍と米軍が同じであり、また、満州国と日本が同じ立場であるというふうに結論されることは、私は、全然客観的事情というものを無視した御議論であろう、かように思います。
  202. 岡田春夫

    岡田委員 しかし、総理大臣、四条、五条、六条とは、条文の上で全く同じじゃありませんか。あなたは新条約で直すのだと言うけれども、新条約の四条、五条、六条と同じなんですよ。まして、現行の条約なんかどんなにひどいかということは、あなたはおわかりになったでしょう。現行条約は悪いということはお認めになったわけでしょう。もっともっとひどいのですよ。日満議定書よりもまだひどいという事実はお認めになるのですね。
  203. 岸信介

    岸国務大臣 これは日本が現行の安保条約締結したときに、日本としては、日本の安全と自衛を全うするために、全然力を持たないから、一にアメリカに対して全部依頼して日本の平和と安全を守らなければならぬ、防衛しなければならぬという立場から、こういう条約ができたのであります。今日においてわれわれは、国際的にも国際連合のメンバーの一員として、また、われわれが国際情勢の現実を分析して、日本の平和と安全を確保するのにどうした方法が一番よいのかという見地から、日米の間におけるところの、できるだけ平等な立場における協力関係というものを明確にした安保体制に改めることが最も適当である、こういう信念の上に立って私どもは改正しようとするものであります。
  204. 岡田春夫

    岡田委員 あなたはそうおっしゃるけれども、日満議定書にも、満州国の独立と自由を承認すると書いてあります。あのときも、満州国は、日本との議定書によっては自由な独立国だといわれた。ところが、あなたもお認めになったように、満州国は日本の明らかな協力政権であり、偽政権であり、正統政府ではなかった。新安保条約はそれと同じですよ。言葉の上では独立といい、言葉の上では自主的であり、言葉の上では対等であるといいながら、実際、新安保条約の運用の中においてアメリカに完全に従属させられる、これははっきり申し上げておきます。そうじゃないですか。
  205. 岸信介

    岸国務大臣 そうでないことを、いろいろな具体的の事例をおあげになった質問に対しまして、私ども最初からこれをお答え申し上げておるわけであります。私は、岡田君の御質問に対しても、そういう意味において岡田君とは意見を異にするかもしれませんけれども、そうじゃないということを、繰り返しあらゆる問題について具体的に答弁をいたしておるつもりでございます。
  206. 岡田春夫

    岡田委員 岸さん、そうおっしゃるけれども、私は、何も対等であるという前提質問なんかしていませんよ。明らかに従属性を持ち、侵略性を持っているという意味質問をしているのですよ。新安保条約は従属的であり、しかも、侵略性を持っていると言っている。日満議定書の第二条と安保条約四条、五条、六条と対比したら、条文ではぴたりと同じである。しかも、あなたは認めた。関東軍が満州へ行っていろいろと損害を与えたという事実を認めた。その基本の条約である二条と安保条約の四条、五条、六条が同じだ。それじゃ明らかに従属じゃないですか。
  207. 岸信介

    岸国務大臣 岡田君が、この改定する条約が従属性を持っており、侵略性を持っておるものだというお考えのもとに質問されておることは、よくわかっております。私は、そうでないという見地に立って今までずっと答弁をしてきておるわけでありまして、この点は、岡田君の前提としておる考え方と私の前提としておる考え方が違っておるということを、明瞭に御理解いただきたいと思います。  それから満州国と日本との関係日本アメリカとの関係、また、その当時の国際情勢、いろいろな客観的情勢というものは、私は全然違うと思います。言葉の上においてどういう条約ができておろうとも、それが実際どういうふうに運用されたかという問題において、いろいろ迷惑をかけた事実もあるということを私は申し上げた。また、日本アメリカとの関係においては、日本がこの条約を承諾し、批准するならば、いわゆる行政協定においても――今度のは地域協定でありますが、これによってアメリカ地位というものはきまるのでありまして、これの範囲内において持っておる権利を公正に行なう限りにおいては、われわれがこれを受認しておる。この満州国と日本との当時の関係におきましては、そういうようなことが条約上はっきり規制されたものがなかったことも、御承知の通りであります。そういう意味において、今お話のような点は、これは門田君の御意見でありますけれども、私は、間違っておる、こういうことを申し上げるのであります。
  208. 岡田春夫

    岡田委員 あなたは間違っておるとお考えになるかもしれないが、事実条約の上でははっきりしておる。条約の上でははっきりしておるのを、あなたは否定できない。  そこで、話を進めましょう。関東軍が満州国においていろいろ迷惑をかけておりますね。これはお認めになりましたね。お認めになったならば、当然この損害の賠償を払うのはあたりまえでしょう。あなたは、今までにベトナムの賠償の問題についても、国民の疑惑があるのに、ベトナムの賠償をあえて払われた。あのようなむちゃなことで払われた。インドネシアの賠償も払われた。国民反対しておるのに、このような賠償を払っておきながら、しかも、あなたは損害を与えたという事実を認めて――これは中国全体で一千万人の死傷者を出しておる。五百億ドルの損害を与えておる。この損害に対しては、当然戦争損害を払うのがあたりまえだ。これをあなたは、そう言えば、おそらく、台湾政府との関係がございますから、条約上、法律上どうでございます、こうでございますと言って逃げるでしょう。これは林さんが今教えている。ところが、実際にあなたが戦争責任の道義を感ずるならば、なぜこれを忠実に履行しますと言いませんか。これを履行すると言ったときに、初めて友好政策が現われて、向こうの場合には戦争損害は放棄するという態度が出てくる……。     〔発言する者あり〕
  209. 小澤佐重喜

    小澤委員長 静粛に願います。
  210. 岡田春夫

    岡田委員 中華人民共和国の方では、立場としては、日本国民としては戦争の損害を忠実に履行いたしますという態度があったときに、初めて、そのような戦争損害に対しては、これは一切放棄いたしますということが出てくる。その前段のことを言わないで、ただ放棄しろと言ったってできない。なぜあなたは謙虚な態度で、戦争損害についての態度を明らかにしないのでありますか。
  211. 岸信介

    岸国務大臣 これは岡田君も今認められておる通り、中華民国との間におきまして平和条約を結んでおります。この関係、それから戦後におきまして、ずっと中華民国と日本は、過去の戦争についての話もいたして、この平和条約を結んでおります。従って、今日の状況において、私は、岡田君の言われるように日本国として考えるということは、考えておりません。
  212. 岡田春夫

    岡田委員 私の申し上げておるのは、向こうの国が賠償請求権を放棄し……。     〔発言する者多く、議場騒然〕
  213. 小澤佐重喜

    小澤委員長 御静粛に願います。     〔発言する者多し〕
  214. 小澤佐重喜

    小澤委員長 ただいまの不規則発言は、速記録には載りませんので、委員長として、今後議事運営について、十分注意いたします。
  215. 岡田春夫

    岡田委員 私は、これは条約論争をやっているのです。条約論争をやっているときに、あなたの方はおそらく、日台条約で賠償を払う必要はないという答弁をするだろう。しかし、あなたは戦争損害を認めたのであるから、払うということを忠実に言うというのが、認めた限りは当然ではないか。これは条約上の当然の帰結ではないか。そして、その払うということに対して、中華人民共和国政府が、そのような払うということに対しては、請求権は放棄する、このように答えている。はっきりしているじゃないか。払うという賠償の義務、賠償支払いの義務を持っているとあなたはお考えになりませんかと、私は聞いている。あなたは損害を与えたというのを認めたのなら、賠償の義務があると言うのは当然でしょう。平和条約にある。はっきりしているじゃないか。どうでしょう。
  216. 岸信介

    岸国務大臣 条約上の議論としてこれは論議されるということでございますから、あくまでも条約土の問題としてお答えを申し上げます。日本と中華民国との議定君の中に、これは私があげなくとも岡田委員御承知でありましょうが、「中華民国は、日本国民に対する寛厚と善意の表徴として、サン・フランシスコ条約第十四条(a)1に基き日本国が提供すべき役務の利益を自発的に放棄する。」こういうことが明らかにされております。従って、条約上の問題としては、一応日本としては、この条約上の問題を主として考えておるということを、先ほどから申し上げておるのであります。
  217. 岡田春夫

    岡田委員 何をおっしゃる。総理大臣、何をおっしゃいます。満州国は、それじゃ条約上中華民国の領土ですか。どうなんです。はっきり言ってごらんなさい。満州国が中華民国の領土であるなんて、聞いたことがない。どうなんです。
  218. 岸信介

    岸国務大臣 領土という問題につきましては、しばしば論議されておる通り、これは主張はしております。中華民国も、それから中華人民共和国も、台湾についての主権を主張しておる、こういうなにでありまして、これをわれわれがどういうふうにその領土をなにするのだということに考えておるわけではございません。ただ、あの日華条約を結んだときにおきましては、一応中国を代表する政府として、日本との間にあの条約を結んだ。それから、言うまでもなく、現実に支配しておる台湾や澎湖島等におきまして、日本が現実にサンフフンシスコ条約に言っているような――あそこで戦争したわけではございませんから、戦争上の被害を与えているという地域ではないことも、御承知の通りだと思います。従って、蒋介石総統の終戦のときの声明から見ても、今申しました日華条約条項は、今度の戦争に関連して、日本が中国に与えておる迷惑についての賠償請求権を放棄しておるものだ、こういうふうに、条約上は一応解釈しておるということを御了承願いたいと思います。
  219. 岡田春夫

    岡田委員 岸総理に伺いますが、条約上そういう解釈もできる。しかし、あなたは、道義としては、損害を与えたということを言っている。あなたの道義の反省としては、どういう御感想ですか。これだけを伺っておきましょう。
  220. 岸信介

    岸国務大臣 先ほどからいろいろ激した事情もございましたけれども、問題は、条約上の問題として、これをお互いに論議して明らかにしていこうということでございましたから、私は、政府としての条約上の解釈を一応明らかにしておるわけであります。ただ、私の個人としての道議的な気持からどうだという問題は、これはおのずから別の問題でありまして、これはここでお答えをするのには、私は適当ではない、かように考えております。
  221. 岡田春夫

    岡田委員 個人の問題は、あなたは同時に、満州国にいたときは公人じゃないですか。公人として迷惑を与えたことをあなたは認めたじゃないですか。公人としての迷惑を与えたことを、損害を与えたでしょうと言って、認めたじゃないか。それにあなたは道義を感じないのですか。なぜあなたは道義を感じないのか。道義を感じないから、自衛隊員がこのように反省をあなたに求めているじゃないですか。
  222. 岸信介

    岸国務大臣 賠償の問題は、言うまでもなく、日本国政府として、日本国として、これは考えるときの問題でございまして、私は特に私自身が総理大臣であるという立場を持っておりますから、個人としての私の見解を申し述べることは適当でない、こういうことを申し上げたわけでございます。
  223. 岡田春夫

    岡田委員 私は、その道義についての反省の不十分さにあきれました。  私は次に進めますが、この間の極東地域の統一解釈の中で、金門、馬祖の問題がいろいろ問題になっている。これは横路委員が再度確認を求めたように、岸総理は、金門、馬祖は極東の地域の中に入ると言われた。これははっきり言いましたね。ところが、高橋さんに伺いますが、米台相互防衛条約には、金門、馬祖は明らかに除外されていると思いますが、どうですか。
  224. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 米台の本文では、台湾、澎湖島になっております。御承知の通りでございます。ところが、合意する地域ということになって、合意すれば入るということになるわけでございます。合意はしておりません。しかし、合意すれば入り得る可能性のある地域は、これはもちろんそういう地域も含んでおると思いますが……。
  225. 岡田春夫

    岡田委員 私は現在を聞いておる。
  226. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 現在は台湾と澎湖島です。
  227. 岡田春夫

    岡田委員 だけですか。――それでは金門、馬祖は米台条約には入ってない。それなのに、極東の地域の中に入れている。私はもう一度あれしておきますが、岸総理は、金門、馬祖を極東の地域から除外される御意思はないのですね。この点を伺っておきます。
  228. 岸信介

    岸国務大臣 統一解釈で申し上げている通り、具体的の島が入るか入らないかということを、極東の範囲をきめるなにでもってこの上申し上げることは適当でない。本来抽象的な観念であるから、抽象的に言うべきものだということをお答えを申し上げております。しかしながら、それでは従来具体的に答えたことを変更するかという横路君の御質問に対しまして、変更する意思は持っておりません、こういうことで御了承を願いたいと思います。
  229. 岡田春夫

    岡田委員 それではもう今はっきり答弁されたように、金門、馬祖は含んでいる。それは横路委員に対する答弁通りである、このように答えられて、除外する意思はない。これはおそらく除外する意思がないのでしょう。すでにこれは金門、馬祖に対する蒋介石の軍隊の軍事行動に、日本政府機関が協力をしている事実があるから……。具体的に申し上げましょう。植竹郵政大臣、こちらをお向き下さい。日本の電電公社は、金門、馬祖戦の勃発直前に、蒋介石の大陸反攻作戦に協力する結果になるのだが、金門、馬祖を含む台湾全島のマイクロ設備の調査を行なった。契約は昭和三十二年六月の末、確か二十八日です。契約は在日米軍調達部、これは行政っ協定によってきめられているJPAです。これと日本の電電公社の門に契約が、行なわれた。契約者は、アメリカ側はアメリカの通信少佐ジョゼフ・E・ドネリー、あなたの方は技師長の中尾徹夫氏、これが証人になっている。そして契約の金額は二万六千三百三十六ドルである。この事実はお認めになりますね。
  230. 植竹春彦

    ○植竹国務大臣 そういう詳しいことまでは、実はまだ聴取しておりませんが、引き継ぎを受けておりませんが、さっそく調査をいたします。すぐ今ここでわかりますから……。
  231. 岡田春夫

    岡田委員 すぐわかりますか。
  232. 植竹春彦

    ○植竹国務大臣 今すぐ調査してみます。じきわかります。
  233. 岡田春夫

    岡田委員 じゃお待ちしましょう。
  234. 大橋八郎

    ○大橋説明員 お答え申し上げます。私の承知している範囲内においては、その契約は台北と高雄間の無線施設を調査してくる、こういう契約のように承知しております。
  235. 岡田春夫

    岡田委員 総裁に伺いますが、その他の私の伺いました契約の期日、契約金額、その他は私の言う通りでございましまう。
  236. 大橋八郎

    ○大橋説明員 お答え申し上げます。台湾の関係は二万六千三百三十六ドル。しかしながら、調査区間は台北―高雄門でありまして、金門、馬祖は含んでいないと承知いたしております。
  237. 岡田春夫

    岡田委員 それでは、調査の期日は昭和三十二年八月十一日から十一月二十二日まで、調査団は電電公社マイクロ・ウエーブ調査役大槻由之助氏外約十名、調査にあたっては台北の駐留米軍軍事顧問団団長の監督のもとに、蒋介石の軍隊がそれに協力をした。そしてこのマイクロ・ウェーブ施設目的は、蒋介石の軍隊の専用通信であって、民間には使わせない。金門からのマイクロ中継はすべて台北経由の調査設計が公社の手によって行なわれた。どうです。そうでしょう。
  238. 大橋八郎

    ○大橋説明員 ただいま御指摘の調査期間は、八月十一自より十一月二十二日までの調査、これはその通りに承知いたしております。しかしながら、そのほかの詳しいことは、私手元に調査がありませんから、お答えいたしかねます。
  239. 岡田春夫

    岡田委員 それではあなたにごらんに入れましょう。これは電電公社の正式レポートであります。この中にはっきり書いてあります。電電公社のこのレポートは、大橋さん、これはあなたのところのレポートではありませんか。そうでしょう。ごらんなさい。これはあなたの方のものでしょう。
  240. 大橋八郎

    ○大橋説明員 その当時は私、職にありませんので、当時のことはよく存じておりません。
  241. 岡田春夫

    岡田委員 郵政大臣、これは電電公社とはっきり書いてありますが、電電公社のものじゃありませんか。
  242. 植竹春彦

    ○植竹国務大臣 私、就任以後のことは、書類は詳しく存じておるつもりでありますが、その書類は初めて今見ますので、何ともこの場所ではまだお答えできません。
  243. 岡田春夫

    岡田委員 電電公社のだれでもいいです。総裁は今あれしたばかりだそうですから、部長その他来ているでしょう。これは報告書ではありませんか。違うのですか。この報告書は電電公社のものじゃないのですか。はっきり言いなさい。はっきりしていますよ。はっきりしなさい。(「だれか答弁しろ」と呼び、その他発言する者あり)答弁しない限りはこっちもしませんよ。はっきりしているじゃないか。
  244. 大橋八郎

    ○大橋説明員 当時の計画によりますと、調査資料その他一切の報告書は、契約の相手方たる調達庁の方へ引き渡すことになっておりまして、私どもの手元には報告書その他の材料はないはずであります。
  245. 岡田春夫

    岡田委員 では、私の伺っているのは違うのですかと聞いているのです。ですから、ここで見てごらんなさい。日本電電公社一九五二年十二月とはっきり書いてあります。はっきり書いてあります。台湾におけるマイクロ・ウエーブ施設の現地報告書、契約番号DA―九二―五五七―FEC―二六七〇一、はっきり書いてある。はっきりしている。     〔「委員長に提出しろ」と呼ぶ者あ   り〕
  246. 小澤佐重喜

    小澤委員長 岡田君、この問題については、委員長が適当な手段で政府の認否を問うことにいたします。
  247. 岡田春夫

    岡田委員 見せておくから、確認さして下さい。(発言する者あり)大槻マイクロ・ウェーブ調査役来ているでしょう。
  248. 植竹春彦

    ○植竹国務大臣 ただいま政府委員員からその事情を聴取いたしましたところ、契約のあったことはあったけれども、その書類はあげて向こう側、調達庁へ全部渡してしまったので、あるはずはないのだ、こういうわけでありますので、従って、私が就任以来一ぺんも見せてもらわなかったのも、そういう理由であったわけであります。
  249. 小澤佐重喜

    小澤委員長 植竹君、それではこの問題について委員長質問いたしますが、この帳簿は、今岡田君から委員長の手元に提出炭してあります。後刻適当な機会に現物をお見せいたしますから、わかるものはわかる、ないものはないと、はっきりとお答えを願います。
  250. 植竹春彦

    ○植竹国務大臣 承知いたしました。
  251. 小澤佐重喜

    小澤委員長 岡田君、そのほかの質問を願います。
  252. 岡田春夫

    岡田委員 私の伺っているのは、そういうことではないのです。あなたが、電電公社から全部渡してJPAに行っているかもしれません。そのJPAのものがこの一部であるかもしれかい。問題は、これがあなたの方で作られた電電公社の品物であるかどうかということを聞いている。それはどうですかということを聞いている。だから、それははっきりしてもらいたい。
  253. 小澤佐重喜

    小澤委員長 私の方で責任を持ってやらせますから……。
  254. 岡田春夫

    岡田委員 それじゃ委員長行動を信頼いたしまして――実はこれに基づいて私が質問をするのですから、それの点の御回答がない限りは、私は質問ができないわけです。しかし、まあ、委員長に協力する意味で、間もなく御返事があるまで、この点は留保いたします。至急調べて下さいよ。しかも、申し上げておきますが、これは三冊の中に、一冊は議事録が全部入っております。台湾において、何月何日、何をやった、そして、その議事録の署名者の名前も出ています。全部出ています。ですから、これがうそだとはお考えになれないと思います。それから報告書全部、この中には金門、馬祖――金門のことが書いてあります。はっきり申し上げておきます。岸さん、これは敵視政策の一つですよ。わかりましたか。金門、馬祖戦争に軍事協力をしたんでしょう。そうではありませんか。違いますか。違うなら違うと言って下さい。そうじゃないですか。はっきりしている。金門、馬祖の戦争に協力したのです。あなたはきっとこう答えるでしょう。政府ではありません、政府関係機関です、そう言うでしょう。監督権はあなたが持っているんですよ。電電公社というものは軍事協力をしたんだ。明らかになっているじゃありませんか。それ以外にまだある。  では、次の質問に入ります。防衛庁長官おられますね。防衛庁長官にお伺いをしたいと思いますが、この間、飛鳥出委員から非常に重大な問題の提起があった。自衛隊の航空図の問題がございましたですね。これに対して、四月の十四、十五日に、非常に重要な質疑応答が繰り返されました。この質疑応答において、あなたはいろいろ答弁をされまして、非常に明快な答弁もありますが、この答弁全体を私拝見をいたしまして、ずいぶん赤城さんもいいかげんなことを言うものだというように感じました。この答弁は今改めるというお考えはありませんですか。もし改められるなら、今改めておいた方がいいんじゃありませんか。
  255. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 改める必要を感じませんが、もし足らないことがあったら、補足説明をいたします。
  256. 岡田春夫

    岡田委員 あなたは補足をされるというのですが、補足ということは、あなたの答弁を全然違うように言うことを、補足ということは含まないでしょうね。そうでしょうね。
  257. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 補足ですから、前の答弁が間違っているということではありません。前の答弁は前の答弁通り、しかし、御質問を受けて足らぬことがありましたら、補足してまた申し上げます。
  258. 岡田春夫

    岡田委員 それでは伺いますが、飛鳥田君が四月十五日号に、――実は航空図の問題が起こった次の日です。次の日に、あなたの方では、午後にあとお話しすると、官房長その他と御相談の上で答弁についての意思統一を行なう、そういういろいろな事情があったのですが、その結果に基づいて、十五日の飛鳥田質問は、このように質問しています。「けさの朝日新聞を拝見いたしますと、「原図は米軍当局が好意的に提供してくれたものを中心とし、これに日本側の資料などを加えて作成した。米軍の原図も当方で作成した航空図も厳しい秘密扱いはしていないが、」」ここまで朝日新聞の記事を引用して、「こういうふうに言っておられます。ちゃんと記者会見では、そういう国の名前を明確におあげになった。ここではおあげにならない。どこまでも逃げ通そうとなさる。これははなはだしい違いと言えないでしょうか。少なくとも私たちの常識をもってすれば、はなはだしい違いといわざるを得ないわけです。これは防衛庁長官、どうお考えになりますか。」こういう質問があった。これに対してあなたはこう言っている。「きのう申し上げましたように、入手したものを基礎として地図を作っておる、こういうことを申し上げておるわけであります。その入手は、けさ申し上げますように、ICAOの地図等を入手して、それを基礎として作っておる、こういうことでございます。」こういうように答えておる。これはいいですか。
  259. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 その遡りでございまして、ICAOの地図を基礎として、その他いろいろな資料を参考にして作っている、こういうことであります。
  260. 岡田春夫

    岡田委員 その次は、「でありまするから、アメリカからということは、そのICAOの地図でも、アメリカ側からなら別でありますが、」とちょっとつけ言葉をして、「私の言っていることが正しいので、その新聞発表はいささか違っておるところがありますが、どっちが正しいかといえば、私の方が正しいのであります。」こう言っておりますね。そうすると、先ほどの新聞発表、朝日新聞の記事の、米軍当局が好意的に提供したというのは間違いで、あなたの言われたICAOの地図の方が正しいのだ、こういうことになりますね。
  261. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 その通りでございまして、ICAO等の地図を基礎として作った、こういうふうに申し上げているわけであります。
  262. 岡田春夫

    岡田委員 等ということをことさら言われましたが、その等の中には、米軍当局から提供された原図は入っておりますか。
  263. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 前に手に入れたものもあると思います。そういうものも参考になっていると思います。
  264. 岡田春夫

    岡田委員 前にとおっしゃるが、それでは、少なくともその原図はお使いになったわけでございますね。――そこで伺いますが、前に手に入れたものの中に、日本の国内だけですか、中国、ソビエトの沿岸序あるいは陸地に関するものですか、その点をはっきり伺います。
  265. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 日本のものは当然そういうものが参考になっております。中国等につきましては、参考になったものもありましょうし、ないものもありますし、いろいろあります。
  266. 岡田春夫

    岡田委員 いろいろありますと言いますが、私の伺っているのは、米軍当局から提供を受けたアメリカの軍用地図を、原図としてお使いになったことはないのですね、中ソの場合において。あるのもあります、ないのもあります――ないのですか、あるのですか、これをはっきりして下さい。
  267. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 中心とし、基礎としたのは、先ほど申し上げましたように、ICAOの地図であります。
  268. 岡田春夫

    岡田委員 防衛庁長官、私の今伺ったのは、米軍の軍用地図ですね、これを、中国、ソビエトの沿岸並びに陸地、こういうものの原図にお使いになったことはないのかということを伺ったわけです。この点について、防衛庁としてそういうものは全然今までないのか、あるというのなら、いつごろのものがあるのか、そういう点を具体的に一つお答えをいただきたいのであります。
  269. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 中共等につきましては、国連の地図があります。その国連の地図を基礎として作成中であります。
  270. 岡田春夫

    岡田委員 そうしますと、国連の地図をお使いになって、アメリカの軍用地図は全然お使いにならない、そういうことなんですね。
  271. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 アメリカの地図は正式にもらっておりませんから――一部分は前に手に入れたものもあると思います。そういうものは参考にしてあるはずです。だけれども、何もアメリカの地図を基礎としたわけではございません。
  272. 岡田春夫

    岡田委員 いや、あなたに伺っているのは、それは持ってはいる、アメリカの軍用地図は持ってはいる、しかし、地図の作成にあたっては、これは使っていない、こういうことでございますか。
  273. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 アメリカの地図を持っているものもあるし、持ってないのもあります。そういうことで、参考になるものはそれを参考にして作っております。ないものは参考になりませんので、それは使いません。(笑声)
  274. 岡田春夫

    岡田委員 あなたの御答弁は非常にあいまいなんだけれども、あなたの御性格だから、私はあまり追及しませんが、それじゃ、いわゆるアメリカの地図をだいぶ持っているということはお認めになったわけですね。アメリカの地図を持っていることをお認めになったのだが、自衛隊の地図を作るのにあたって――私はここで話を限定します。中国、ソビエトの沿岸並びに陸地、これに関する地図については、アメリカの原図は全然お使いになりませんか、これを伺います。
  275. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 御承知のように、あの航空図というのは、普通の地図とそう違いないのです。でありまするから、何を基礎として作るかといえば、ICAOの地図を基礎として作ることが、これは全世界的に全都そうであります。それを基礎として作っております。それから、それだけではなくて、国連の地図もありますから、国連の地図も参考にした。それからアメリカからの手に入っているものもありますから、それを使ったけれども、これは全部じゃありません。一部分入っているのもあれば、入っていないのもある。だから、参考になるものは参考にするし、なくてできないものは参考にしなかった、こういうことでございます。
  276. 岡田春夫

    岡田委員 どうもコンニャク問答みたいな答弁をされる。それでは伺いますが、朝日新聞でいっている「原図は米軍当局が好意的に提供してくれたものを中心とし、これに日本側の資料などを加えて作成した。」これは間違いなんですか。あなたのおっしゃったのは……。
  277. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 全部が間違いじゃありませんけれども、基礎として中心となったものは、ICAOの地図、それから国連の地図、それから世界地図、いろいろありますから、それも使います。それからまた、一部米軍の地図も参考にした。だから、それが中心じゃないのです。それを基礎としたということじゃない。
  278. 岡田春夫

    岡田委員 そういうふうに幕僚監部は言っているじゃないですか。原図というのはアメリカの好意だ、こう言っているじゃないですか。米軍の地図というものは、参考程度でなくて、米軍の地図を原図にして作っているのでしょう。それは何も秘密でも何でもないんですよ。あなたは何で隠すのですか。これはもうはっきりしているのですよ。あなたがおかしいと思うなら、隣りに建設大臣がいるでしょう。きょう組合との団体交渉その他で、そういうのははっきりしているのですよ。なぜはっきりあなた認めないのですか。はっきりしているんですよ。
  279. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 私の方もはっきりしておるのです。(笑声)ICAOの地図を基礎にして、国連の地図をそれにつけ加えて、それからアメリカから手に入れたものもあるから、それを参考にして作る。非常にはっきりしておる。
  280. 岡田春夫

    岡田委員 それじゃもっと具体的に伺いましょう。金門、馬祖を含む地域の地図を、中国の沿岸並びに陸地の地図を、自衛隊としては作るために、地理調査所に発注された事実はありませんか。
  281. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 発注されていると思います。この間飛鳥田委員が出したようなものを作成中ですから、発注しているはずです。
  282. 岡田春夫

    岡田委員 じゃお認めになったのですね。その地図の場合に、アメリカ軍の地図というものは使っておられませんか。どうなんです。
  283. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 地図を作るのに、いろいろ材料を集めますから、ですから、ICAOの地図も使い、あるいは国連の地図も使い、その他正確を期するために、いろいろ資料を集めて作っている。何もそうアメリカの地図、アメリカの地図とばかり言わないで下さい。(笑声)
  284. 岡田春夫

    岡田委員 あなたはそう言うけれども、今にだんだんにわかる。それじゃ建設大臣に伺いましょう。地理調査所の所長も来てますね。この中国の関係で、今の金門、馬祖の地図、その他の地図、自衛隊から発注のあった地理調査所の地図は、何も秘密じゃありませんね。
  285. 村上勇

    ○村上国務大臣 別に秘密ではありません。
  286. 岡田春夫

    岡田委員 じゃ、秘密でありませんので、アメリカの地図というものも使っておる、現実として使っておるということも、秘密じゃないはずでしょう。このことはきょうの交渉によっていっているはずですが、どうです。そうでしょう。
  287. 村上勇

    ○村上国務大臣 失礼ですが、もう一度……。
  288. 岡田春夫

    岡田委員 防衛庁から渡された地図の作成にあたっては、アメリカの軍用地図を原図にして――ICAOの地図その他もあるでしょう。あるでしょうが、その軍用地図というものも一緒にして、地理調査所でこれは作っている。これは別に秘密じゃないのですよ。この点は間違いございませんでしょう、こう言うのです。
  289. 村上勇

    ○村上国務大臣 その通りでありまして、先ほど防衛庁長官がお答えしたようなところ、あるいはまたアメリカの航空会社等で使っておるような地図、それらを参考にして原版を作っております。
  290. 岡田春夫

    岡田委員 それ見なさい。軍用地図を使っているじゃないですか。参考じゃない、使っているじゃないか。これはあなたが自分の方が正しいと言うのは、間違っておるじゃないですか。あなた、取り消しなさい。そうじゃないか、はっきりしているじゃないか。  それじゃ具体的に伺いましょう。ことしの二月の中旬に、極東米陸軍地図局の司令官のストリックランド中佐の提案に基づいて、ついこの間です、四月二十二日、極東米陸軍地図局と地理調査所と防衛庁も加わって、地図の作成会議を開いているはずです。そうでしょう。防衛庁からだれが出ていますか。
  291. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 地図を作ることを地理調査所ですかに頼んだのですから、防衛庁からも人が出ておると思います。その人がだれかは、今突然言われても名前は覚えておりませんが、それは防衛庁からも出ているはずです。
  292. 岡田春夫

    岡田委員 それじゃ、赤城さんは、この会議のあったことをお認めになるのでしょう。
  293. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 いつ幾日にということは、私は記憶していませんが、要するに、防衛庁から地図を注文しているのですから、防衛庁の人が始終集まって、その地図を完全なものにしていくために、あるいは印刷上のことや何かで相談するのはあたりまえだと思いますから、そういう事実はあると私は思います。
  294. 岡田春夫

    岡田委員 あると思いますとお話しですが、それじゃ、いわゆる極東米陸軍地図局、簡単に言うとAMSFE、これもその会議に参加しているでしょう。
  295. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 それは私も参加していないのじゃないかと思いますが、今建設大臣に隣で聞きましたら、防衛庁からそのときには出てないそうです。(笑声)
  296. 岡田春夫

    岡田委員 自分の所管のことも、隣の大臣に聞かなければわからないのですか。(笑声)だらしがないじゃないですか。  それじゃ、隣の大臣の方がおわかりのようだから……。四月二十二日の会議にはAMSFEは出席しておりますね。AMSのFE、いわゆる極東米陸軍地図局、ここは米軍の地図作成の担当局ですが、これは四月二十二日の会議には出席しておりますでしょう。
  297. 村上勇

    ○村上国務大臣 地理調査所としては会議をいたしておりますが、防衛庁はその際に加わっておらないと思います。
  298. 岡田春夫

    岡田委員 いや、AMSFEが出ているかどうか。
  299. 村上勇

    ○村上国務大臣 アメリカは出ております。
  300. 岡田春夫

    岡田委員 ほれ見なさい。赤城さん何にも知らない。赤城さんは、出てないと思います。あなたの聞いた隣の人の方は、ちゃんと出ていると言っている。あなたの答弁がいかに間違っているかというのがわかりましたね。  それから……。
  301. 小澤佐重喜

    小澤委員長 今、村上建設大臣に発言を許しました。
  302. 村上勇

    ○村上国務大臣 防衛庁がその席には出ていないということを私は申し上げております。
  303. 岡田春夫

    岡田委員 それじゃ、地理調査所からだれが出ました、
  304. 村上勇

    ○村上国務大臣 出た本人が来ておりますから、本人に一つお答えさせます。
  305. 武藤勝彦

    ○武藤説明員 お答え申し上げます。日にちは正確に覚えておりませんが、五万分の一の修正をするのにつきましては、数回AMSと会議しております。
  306. 岡田春夫

    岡田委員 今の方はどういう方ですか、所長ですか。
  307. 小澤佐重喜

    小澤委員長 地理調査所長です。
  308. 岡田春夫

    岡田委員 所長さんに伺いますが、四月二十二日の会議というのは非常に重要な会議ですが、この会議にはあなたが御出席になったのですか、それとも、それ以外に桑原さんも出ているのでしょう。
  309. 武藤勝彦

    ○武藤説明員 多くの場合、向こうと会議をやる場合には、私のほかに測地部長、測図部長、格関係部長はほとんど出席いたすのが慣例になっております。これはときどき、技術的な交換とか、いろいろなことで会議をやっております。桑原さんも出ておりました。
  310. 岡田春夫

    岡田委員 桑原さんが出ているということなんです。そのほかの人ももちろん出ている。桑原さんという人は元陸軍中将なんです。そして地理調査所の渉外広報室付の嘱託なんですね。そうですね。
  311. 武藤勝彦

    ○武藤説明員 その通りでございます。
  312. 岡田春夫

    岡田委員 地理調査所とAMSFEとの関係は、現行行政協定の第七条に基づいた関係としてやっているんだと思いますが、どうですか。
  313. 武藤勝彦

    ○武藤説明員 お答え申し上げます。実は私は、行政協定の何条とかいうようなことは知りませんが、地図を作る、何といいますか、同業者として、これは単にAMSばかりじゃありません、ほかの国とも技術協議ができる場合には、できるだけやるようにしております。
  314. 岡田春夫

    岡田委員 いや、行政協定でしょう。
  315. 武藤勝彦

    ○武藤説明員 私は、よく行政協定条項を存じておりません。
  316. 岡田春夫

    岡田委員 じゃ、条約局長でもけっこうですし、その他の方でもけっこうですが、これは明らかじゃありませんか。米軍が地理調査所に頼んだり何かする場合には、当然行政協定の規定に基づいてやらなければならないのでしょう。第七条の、最低の値段で、そして優先的にやるという規定になるのでしょう。違うのですか。
  317. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 第七条とはちょと関係ないと思います。第七条は、日本国政府の各省その他の機関、日本政府が管理し、規制をする公益事業及び公共の役務を利用することができるという問題でありまして、現実の問題とこれとは関係ないと思います。
  318. 岡田春夫

    岡田委員 いや、それに基づいて地理調査所を利用しているのですよ。そうですよ。  それでは建設大臣に伺いますが、そんな規定もなしに、ただやっているのですか。そうじゃないとどうして言えるのですか。はっきりしているのでしょう、それは。
  319. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今の建設大臣の話によりましても、先般締結しました余剰農産物協定の積立円によって、日本の地図を作成することに費用を出しております。従いまして、地理調査所自身が、そういう日本の地図を作成するという会議を開いて、関係の知識を得るためにそういう方々を招請した、こういうことであります。
  320. 岡田春夫

    岡田委員 それは藤山さん、ついこの間の合意議事録です。その前からやっているのですよ。あなたは、それは余剰農産物の適用の問題だと言われる。あなたの言うように、それに関する限りはその通りなんです。それ以外のことを聞いているのですよ。だから、はっきりしなさいと言っている。
  321. 村上勇

    ○村上国務大臣 お答えいたします。これは日本の五万分の一の地図が相当修正していかなければならない、これをもう少し明確にしていこう、正確なものを作ろうという意味でありまして、行政協定とかなんとか、そういうような意味では絶対にないのであります。
  322. 岡田春夫

    岡田委員 しかし、あなたは先ほど、AMSFEと再三会議をやっていると言いましたね。会議をやる限りは前の協定がある。今のあなたのお話しの余剰農産物の関係はそうでしょう。しかし、それ以前に会議があると言っているときについては、何か協定がなければ会議はやれないですよ、あなた、そんなことを言ったって。
  323. 村上勇

    ○村上国務大臣 再三会議をやっているということではないのでありまして、会議はしましたが、それは要するに、アメリカの新しい技術、あるいは航空写真等のそういう技術についての研究をいたしておるのでありまして、技術的な問題を聞いているわけであります。
  324. 岡田春夫

    岡田委員 それじゃ防衛局長に伺いますが、自衛隊の百一測量大隊というのが立川にありますね。
  325. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 百一であったかどうか、はっきり覚えませんが、測量部隊はございます。
  326. 岡田春夫

    岡田委員 加藤さんに続いて伺います。あの測量大隊が立川にあるのですが、その分遣隊を王子に分遣している。それはAMSの中に分遣している。AMSというのは、極東米陸軍地図局の中に分遣している。人数は十名である。制服は五名、職員が五名である。これはうそでないという証拠に、アメリカの米軍用電話番号表にはっきり出ている。そうでしょう。
  327. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 分遣隊がおります。
  328. 岡田春夫

    岡田委員 分遣隊が米軍の地図局の中にいるのです。赤城さんはおそらく知っているのでしょうが、名前もはっきりわかっているのです。大久保一尉、内藤二尉、松本善雄氏、それらの人々がいるでしょう。そして、この分遣隊の職務というものは、アメリカの地図局の協力のもとに、日本の自衛隊の地図についていろいろ協力をやっている。そうでしょう。
  329. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 あなたが相当詳しく調べているようですから、その通りだと思います。
  330. 岡田春夫

    岡田委員 あなたはついに泥を吐きましたね。あなたは相当詳しく調べているようですからその通りです、私が調べてなかったら、知りませんと言うつもりだったのですか。私は続いて伺いましょう。防衛庁は今、昔の兵用地誌に該当するような国外地誌規則、中国、ソビエト関係の地図を持っているでしょう。どうです。
  331. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 持っているとは思うのですけれども、よく知りません。
  332. 岡田春夫

    岡田委員 加藤防衛局長、持っていますね。兵用地誌に該当する国外地誌規則、中ソ関係を少なくとも十五種類持っているはずだ。これは米軍の提供で、自衛隊の王子の分遣隊の中で調べたものですよ。そうでしょう。
  333. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 国内におきまして、自衛隊の運用上必要な地図の作成につきまして、米軍の協力を受けてやっているということはございます。国外については今存じません。
  334. 岡田春夫

    岡田委員 持っていないことはないですよ。持っていますよ。地理調査所では発注を受けていませんか。どうですか。
  335. 武藤勝彦

    ○武藤説明員 お答え申し上げます。いわゆる普通の地誌は発注を受けております。
  336. 岡田春夫

    岡田委員 発注を受けているのですよ。だから作っているのです。しかもこれは、地図の三分の一に縮刷したものです。これは飛鳥田君のと違う、金門、馬祖を含んだものです。ですから、飛鳥田君の地図の四九八に該当するものですよ。これが四九八に該当する地図で、これはすでに製作されて、防衛庁に渡っているはずです。そうでしょう。赤城さんどうですか、はっきりお答え下さい。
  337. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 一々の地図に私は目を通していませんから、渡っているか渡ってないか、わかりません。
  338. 岡田春夫

    岡田委員 加藤さんに伺います。これは昭和三十四年の分も三十三年の分も、きょうは全建労の関係の組合の決議として、すでに配付済みであるという印刷物まできているのですよ。ですから、この地図はもうすでに自衛隊に配付済みのものです。きのうは所長その他は、秘密の事項ではないと言う。これははっきり秘密の事項じゃない。従って、これは当然完成をして、防衛庁その他に配付されておる。だから、その一部であるということは間違いない。それは地理調査所の方としても、三十三年も三十四年も、すでに防衛庁その他に対して、完成をして渡したんだ、これは間違いありませんでしょう。
  339. 村上勇

    ○村上国務大臣 建設省の地理調査所といたしましては、世界各国の地理調査庁から発行されておるものを参考にして、それを拾い出して作っておるものでありまして、何ら秘密でも何でもありません。
  340. 岡田春夫

    岡田委員 秘密ではない。これはあなたのおっしゃる通り、秘密でも何でもないのです。それで防衛庁から発注したものが、三十四年度分、三十三年度分は完成して、防衛庁の方へ引き渡されたでしょう、私の言うのは、こう聞いているんですよ。
  341. 村上勇

    ○村上国務大臣 前のずっと古いものは渡されたと思いますが、最近のものはまだ渡していないようであります。
  342. 岡田春夫

    岡田委員 すでに渡されておる。秘密ではないのだからいいんです。これは私、はっきり言っておきます。地理調査所の関係で調べた資料ではないのですから、はっきり申し上げておきます。これは大臣にも所長にもはっきり言っておきます。全部わかっておるんですよ。秘密じゃないから、わかるのはあたりまえです。それを赤城長官は隠している。これはここに、自衛隊航空図一九五八年八月調製、このようにはっきり書いてある。ナンバーは四九八、これは明らかに自衛隊の航空図である。間違いありませんね。加藤最長、どうですか。それを縮刷したんですよ。これは飛鳥田君のと同じものです。
  343. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 この前、赤城長官からお答えになりました通り、飛鳥田委員のお示しになりましたようなものは作成しております。その一部といたしますれば、その前提に立って考えればそうだと思います。
  344. 岡田春夫

    岡田委員 そういうようにお認めになったので、はっきり伺いますが、この中にははっきり金門、馬祖が出ておるし、中国大陸が全部出ておる。申し上げてみますが、この中には軍用飛行場が三カ所――二重まるになっておりますが、施設された飛行場が十七カ所、軍民両用の――これは南京であるが、一カ所、全部これは航空写真に基づくものであります。これは極東米軍、AMSFEが作った原図に基づいて自衛隊が作った、その通りでしょう。それでいいじゃないですか。それをお認めになるなら、それでけっこうですよ。
  345. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 いろいろ参考にして作りまするが、そういうものも入っていると思います。
  346. 岡田春夫

    岡田委員 はっきりあなたはお認めになったわけですが、この下には、米軍より供与された航空図の地名を漢字にした、こう書いてある。明らかにこれは米軍の原図です。加藤さん、原図とお比べなさい。こういうふうに赤い点々をした、この中は原図で言えば黄色です。黄色のところは、不確実地域として、今後これは直されていくところです。赤城さんがこの前から完成されないと言っておるのは、これなのです。いかにしてこれを完成するか。この上にアメリカの飛行機を飛ばして、そして航空写真をとって、これを完成するのです。これは明らかにアメリカの侵略行為です。そうじゃありませんか。
  347. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 御承知のように、これは国際的の軍事関係から言いましても、人の領空を通って、その領空侵犯をすれば問題が起きます。でありますから、私はそういう事実はないと思います。航写写真でとったという事実はないと思います。それが侵略だということには、少し論理のギャップがあると思います。先ほどから聞いていましたように、何か地図をとればそれが侵略だというような論理には、非常にギャップがあると思います。たとえば、これは中共でもソ連でも、私は日本の地図をとっておるだろうと思います。日本の地図をとっておるがゆえに、中共は侵略国である、ソ連は侵略国である、こういうことには私の結論は出ないと思います。
  348. 小澤佐重喜

    小澤委員長 この際、飛鳥田一雄君から関連質疑の申し出があります。これを許します。飛鳥田一雄君。
  349. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 今防衛庁長官は、他国の上を飛ぶようなことがあれば領空侵犯である、だから飛ばないはずだ、こうおっしゃった。ところが、今岡田君か示された自衛隊航空図の四九八、この四九八の下の備考欄を見ますと、こう書いてあります。「本図の訂正及び追加に気づいた自衛隊員は、本図にその旨記入して航空幕僚監部に送付されたい」、こう書いてあるわけです。これは中国の真上です。中国です。中国の訂正及び追加に気づいた自衛隊員は、本図にそのままその旨を記入して、幕僚監部に送付されたい、こう書いてあるわけです。飛んでいないはずの自衛隊員までこういう指示をうけているというのは、今ここで答弁をせられることと、現実に行なっていることと、あまりにも違い過ぎやしませんか。
  350. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 あまりに違った御質問だと思うのです。日本の自衛隊として、日本国内の地図を作ります。その場合に、自衛隊員として、間違っておるという場合には、これは申し出れば、国内の地図で間違っておることがあれば訂正する、それをそのまま知らずに、そっくりそこに印刷してしまったと思うのです。だから、この間申し上げましたように、まだ完成はしていないのだ、そういう間違いがあるのです。日本の地図の中に書くべきものを、ほかの地図の下の方へ書いたというようなことは、まだ十分その地図ができ上がっておらないということでありますから、まだ未完成でいろいろ検討しておる。こういうことをこの間申し上げたのであります。決して外国の上を飛んで、間違っておったならばそれで訂正しろというようなものではなしに、国内の地図に対する注意が、そのままそういうところに転載された、そういう事実でございます。
  351. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 牽強付会という言葉がありますが、まさに御説は、それが当たるものだと私は思わざるを得ません。かりにあなたが未完成だとおっしゃってみたところで、現実にこういうふうに印刷をされ、そうしてそれは自衛隊に納付され、自衛隊員に配付をされ、そうしてその一つ一つの地図は、すべて金門、馬祖を含むというような中国の奥地までの地図である以上、未完成だなどとおっしゃることは、ここの答弁としては、私たちはこれ以上あなたの首根っこを押えて、ぎゅうぎゅういわせるわけにはいかないのですから、それで通るかもしれません。しかし、通らないものがあることを、あなたはやがてお悟りになる必要があります。少なくとも国民は、あなたのこの答弁をそのままに受け取るはずはない、やがて歴史がこれをさばくだろう、こう私は考えざるを得ないのであります。今までの答弁を伺っておりますと、あれやこれや、問題の基礎をはずしたり、とぼけたり、こういうことが、一体どれだけ国民の疑惑を深めておるかを、あなた方もお悟りになってき始めたはずであります。  もう一度、私はあえて繰り返して伺います。このようなものを現実に他国の地図の上にちゃんと印刷をせられて、これを現実に各隊に配付していらっしゃる、こういう事実を、あえてそれでもあなたは未完成とおっしゃって、最後までお通しになれるのですか。もしそうだとおっしゃるのなら、もう一度ここでおっしゃっていただきたい。私は、あなたにやがて国民の審判が下るであろうことを、ここにつけ加えておきます。
  352. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 牽強付会であるというお言葉は、私の方からお返ししたいと思います。私の方では決して牽強付会ではありません。中国の上空を日本の飛行機が飛んでいる事実は絶対にありません。沿海州を飛んでいる事実もありません。でありますから、それによって写真をとっている事実もありません。その地図の上に、間違っておったならば直せということは、国内の地図の上へ書いた文句そのままを向こうへ移記した、写しておったということでありまして、これは間違いであるから、そういうものは直さなければならぬと思っております。
  353. 岡田春夫

    岡田委員 あなたの答弁の中で幾つかの点がはっきりしてきたのですが、四月の十五日のあなたの答弁の中で、幕僚監部が米軍当局から提供された原図を使って印刷をしている、この場合の米軍当局からの原図というものは、さっきから認められたわけです。これは米軍から供与された航空図という、その限りにおいてはっきりとお認めになったわけです。この点が第一点。それから第二の点は、これは航空写真に基づくものです。航空写真に基づくから、未確認地域を確認するためには、日本の自衛隊が飛ばなくとも、アメリカの飛行機が飛んで、そしてこれを航空写真に写すわけです。これは明らかになってきています。これはそういうことで確認をされて、そしてこれが作られているわけであります。こういう点は非常にはっきりしている。しかも、防衛庁は、測量大隊の一分遣隊をアメリカの地図局、厳密に言うと、極東米陸軍地図局に分遣隊を置いて、この形でアメリカの地図を日本の自衛隊が供給を受けて、このような地図を作っているわけです。これはもうはっきりしている事実です。これはお認めになるわけでしょう。
  354. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 今御指摘の点、私の申し上げることと違っております。第一は、地図を作るにつきまして、ICAO、国連あるいはアメリカから入ったものを参考にしておる、こう申し上げておるので、基礎としてはICAOの地図を中心としております。第二に、中共等について日本の航空隊は航空写真をとらないかもしれないが、アメリカの飛行機が航空写真をとったろうということを認めたろうということでありますが、私は認めません。先ほど申し上げましたように、どこの国でも他国の領空を侵犯すれば問題が起きますから、アメリカといたしましても中共の空の上を飛んで航空写真をとっているということは、これはないと私は思うと先ほど申し上げたので、岡田さんの言われていることと違っています。
  355. 岡田春夫

    岡田委員 あなたはそういう強弁をしたって、国民は許しませんよ。はっきり米軍の地図である、航空図であるということを言っているじゃありませんか。しかも、この航空写真をとったということを、あとでもっと明らかにしますが、ともかくも、これはアメリカのいわゆるAMSFE、この機関がこれを作った。それに対して、日本の自衛隊は、その地図の原図を基礎にして、幕僚監部の言う通りに、アメリカの軍用地図を使ってこのように作っている、これは間違いないですよ。これは国民は、明らかにそういうように見ざるを得ないですよ。はっきりしているじゃないですか。
  356. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 岡田さんは非常に間違っていると思います。航空地図というものは、航空写真とは違うのです。普通の地図で、その普通の地図の上へ、航空路とか危険地帯とかいうものを書き入れたものが航空図で、航空写真とは違う。どうも航空写真のような御質問でありますが、航空写真ではなく、航空図というものは、普通の図とそう違ったものではありません。
  357. 小澤佐重喜

    小澤委員長 この際、戸叶里子君より関連質疑の申し出があります。これを許します。戸叶里子君。
  358. 戸叶里子

    戸叶委員 今の地図のことで、関連して伺いたいと思います。  先ほどの藤山外務大臣の御答弁の中にもちょっと触れられましたけれども、二月十八日に、外務省で、藤山外務大臣とマッカーサー・アメリカ大使との間で書簡が交換された。その書簡は、米国政府日本銀行に持っている円預金の一部約二十三億七千万円を、日米両国によって使うということを合意されているはずでございますが、お認めになりますね。
  359. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 余剰農産物の円資金を新しく活用する交換公文を交換いたしましたことは、事実でございます。
  360. 戸叶里子

    戸叶委員 その中で、その使用について、六つの計画について合意されたということを聞いております。その一つが、日米共同地図作成計画で、そのためには、二億五千二百万円使うということが約束されたと思います。ことしの地図作成計画の予算は、たしか三千六百九十万円じゃないかと思いますけれども、それに、さらにこれだけのお金を使って地図を作成する。それは、アメリカの陸軍極東方面地図作成都が、わが国の地図の作成または入手を望んだけれども、そういうものが今手に入らない。そこで、アメリカの方で必要な資金を提供して、地理調査所の地図作成に乗り出すことになって、両方の希望がいれられることになったということを私は聞いておりますけれども、このことをお認めになりますか。
  361. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 内容の詳しい点については建設省からお答えすることが適当だと思いますけれども、日本の地図が不備で、日本国民として、日本の四つの島の地図をできるだけ正確にしていきたいという希望は持っておるわけでございます。そういう意味において、われわれ、できるだけそういうことの技術的援助なり、あるいは余剰農産物等の資金が使えますれば、それは適当なことだと思っております。なお他の点については……。
  362. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、飛鳥田委員の示されました地図は、この計画による地図であるかどうか、それを伺いたいと思います。
  363. 村上勇

    ○村上国務大臣 この計画は、航空地図とかいうようなものではなくて、日本の五万分の地図が非常に古くなって、不正確な点がありますので、五万分の地図を新しく修正していこうということであります。
  364. 戸叶里子

    戸叶委員 ところが、アメリカの陸軍極東方面の関係者が望んでいるのは、極東地域を示した地図を日本と一緒になって作りたいということを希望して、そして、ここで合意をしているわけでございます。そうなってくれば、今度は一体どういうふうな地図を作られ、この資金によってどういう内容の地図を作られようとしているか、その地図がどの程度まで今7できているか、これを示していただきたいと思います。
  365. 村上勇

    ○村上国務大臣 ただいまのところでは、五万分の一の地図を修正するだけであります。それで、二億程度の金では日本の国内の約五分の一程度しか修正できません。少なくも十億ぐらいの費用がなければ、五万分の一の地図の修正は全国的にでき上がらないのでありまして、よそどころの騒ぎではありません。
  366. 戸叶里子

    戸叶委員 私は、関連ですから、もう一点でやめますけれども、先ほどから岡田委員が、アメリカの地図を基にしてこういうものを作ったのではないかということを言われているのに対して、そうではない、そうではないと盛んに否定されております。けれども、こういうふうな事実を見ましても、アメリカの示されたもので協力をして作りつつあるということが言えるのではないかということを私は伺いたいのでございますが、この点をもう一度伺いまして、関連ですから、私はこれでやめます。
  367. 村上勇

    ○村上国務大臣 どうも地図作成上の技術的な観点から、日本よりも、遺憾ながらアメリカの方が電子工業等が非常に発達いたしておりますから、測量技術あるいは正確度というようなものが、われわれ非常に教えを受ける点がたくさんありますので、年に一回くらい、そういうような技術的な交換をいたしておる次第であります。
  368. 岡田春夫

    岡田委員 それでは少し進めますが、先ほど加藤防衛局長は、王子分遣隊をお認めになった。王子分遣隊というのは、極東米国陸軍地図局の中にある。これは英語で言うと、US・アーミイ・マップ・サービス・ファー・イースト、AMSFE、これは北区下十条千八百九十四番地、現在の司令官はストリックランドという人だと思いますが、この点はそうでございましょう。
  369. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 正確な名前は存じません。私存じておりますことは、先ほど申し上げたようなことであります。
  370. 岡田春夫

    岡田委員 番地は。
  371. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 番地も今記憶しておりません。
  372. 岡田春夫

    岡田委員 建設大臣、この間、会議をやられたのですが、ストリックランド中佐であって――まあ、王子にあることは事実だと思いますが、そう思いませんか、そうでしょう。隠す必要はないのです。これは、もうはっきり出ているのです。全部ここにあるのです。
  373. 村上勇

    ○村上国務大臣 御指摘の通りのようであります。
  374. 岡田春夫

    岡田委員 AMSFEはその通りであるということで、そこで出版した資料によります――これは全部そこで出版をいたしました資料であります。その資料の中で、――赤城さんは違うとかなんとか言われておりますが、これは日本語で書かれている。「地図はどうして作られる」、この中には、航空写真でアメリカは地図を作っていると、はっきり書いている。これは、もうはっきり書いてある。しかも、これについては、それ以外にここで――あなたにも資料をあとで差し上げますが、AMSFEというものはどういうものか、これは全部書いてあります。これは今資料を配付してもらっていいわけですが……(「もうしたよ」と呼ぶ者あり)これの中に、はっきり書いています。地図作成の順序を説明すると、目標地図が決定したら、その地域について徹底的な調査を行なう。まず、その地域が載っているか載っているあらゆる地図を取り出して検討する。一方、空中撮影でその地域の写真をとる。空中撮影写真は、前には飛行機の傾斜でできるゆがみが最大の難点であったが、今では、投影機を使えば傾斜角度がわかるので、ゆがみも訂正できるようになっている。どうです、航空写真だと言っているじゃないですか。米軍の調べているのは航空写真ですよ。航空写真ならば、さっきから言っているように、中国のこの写真を作ったのは、航空写真でとっている。明らかに、あなたが反対しているように、中華人民共和国の領域を侵害して、アメリカがやったということがはっきりしているじゃないか、どうなんです。
  375. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 御説明を受けないでも、地図を作るのには空中写真で作るのが一番適当だと思います。しかし、だからといって、人の国の了解を得ないで領空侵犯して、そこの国の航空写真をとるということは、これは許されないことでありまするから、それは私は信じません。
  376. 岡田春夫

    岡田委員 そのように信じられないことが行なわれる。たとえば、滑走路の距離、キロメートルまで書いてある。標高も書いてある。これは航空写真か、現地で見る以外にはないじゃないですか。明らかじゃないですか。現地に入っていないならば、これは写真でとったのは明らかじゃないですか。しかも、AMSFEの資料の中では、航空写真でとるという。あなたは信じられないといっても、国民は明らかに知っていますよ。明らかですよ。あなたは、そのように言わなければ、アメリカにしかられるから、言わないのでしょう。はっきりしているじゃないか。     〔発言する者あり〕
  377. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 アメリカにしかられるからでも何でもありません。これは常識じゃありませんか。人の国に行って領空侵犯までして写真をとるということは許されないことです。自分の国の地図を、自分の空の上から写真をとってやって作るということ、これはあります。中には、世界のおのおのの国から提供されたものをまとめたものもありますけれども、人の国へ行って、領空侵犯までして写真をとるということは、私は何度も言いますが、信じられません。
  378. 岡田春夫

    岡田委員 あなたは信じないかもしれないが、それが黒いジェット機なんです。わかりましたか。アメリカの黒いジェット機なんです。しかし、私は、こればかりにこだわってはおられませんので、続いて言いますが、AMSFEの中には、現在日本人で雇用されている者が、調達庁長官、どのくらいおりますか。私の調べている限りでは、昭和二十九年当時は九百五十名、現在は八百五十名いるはずです。
  379. 丸山佶

    ○丸山政府委員 地理関係に従事している労務者数は、現在正確のところを存じておりません。必要ならば、調べてお答え申し上げます。
  380. 岡田春夫

    岡田委員 それじゃ、必要ですから……。  具体的に言いましょう。いいですか。全部で八百五十名、米軍極東地図局に勤務する日本人の勤務者、配属所行まで全部出ています。総本部十七名、第二十五技術小隊三十四名、作業本部八名、地理調査部部長付二名、人文地理課五名、自然地理課三名、図書及びサービス課七名、地理課調査課課長付五名、それから測地部というように――これは全部申し上げる時間がかかりますから、これで省略いたしまして、資料を差し上げますが、八百五十名の日本人がおります。あなたが、この前参議院の予算委員会では、何か、いるのだか、いないのだか、わからないようなことを言ったけれども、もしわからなければ、名前も全部教えてあげます。名前は全部ここに書いてある。人の顔も全部出ています。あなたに伺いますが、こういう人たちは、行政協定の基本労務契約によって行っている者が大半だと思いますが、どうですか。
  381. 丸山佶

    ○丸山政府委員 その通りだと思います。
  382. 岡田春夫

    岡田委員 ところが、あなたの方で提出されましたこの基本労務契約に関する事項には、そういう詳細のことが全然出ていない。あなたの提出資料では、これは全然わかりませんよ。たとえば、具体的に言いましょう。基本労務契約に基づく、軍事情報顧問、軍事情報分析員「A」軍事情報分析員「B」、特殊語学顧問、軍用人種学研究分析員、軍用人種学分析員「B」、軍事情報研究分析職、軍事情報分析職というようなのが全部ありましょう、どうですか。
  383. 丸山佶

    ○丸山政府委員 ございます。
  384. 岡田春夫

    岡田委員 軍事情報分析職には、島義という元陸軍大佐もAMSFEに配置になっておりますね。
  385. 丸山佶

    ○丸山政府委員 名前は、私は今存じておりません。
  386. 岡田春夫

    岡田委員 それから、「番号一一三職種軍用人種学分析員「B」」によれば、「第六〇〇四、空軍情報隊特別計画課研究C班長の一般的監督の下に、特定範囲ならびに広範囲にわたる満州に関する調査研究作成のため、上記班にあって、研究員および分析員として勤務する。その研究は、極東空軍および合衆国空軍の各司令部が使用するものである。」「任務と責任、二、満州の全地域および特定地域に関する軍事、経済および政治的要素の客観的評価を提出する目的のため研究を行う。その研究には、関係情報の組合せ、分析、評価および解釈を含む。」「資格要件、人種学または満州に関する関係分野において最低十年の経験を有していること。」私は、時間がないから読んだのですが、この通りでしょう。
  387. 丸山佶

    ○丸山政府委員 その通りであります。
  388. 岡田春夫

    岡田委員 「軍用人種学研究分析員、アジア大陸から帰還した日本人および日本人以外の人々に面接して、社会、政治、産業および軍事的発展についての報告を検証し、もって上級司令部に対して総合的な最近の情報を提供する。」このようなスパイ活動をやっている。(発言する者あり)どうです。そうでしょう。
  389. 丸山佶

    ○丸山政府委員 調達庁が軍側に提供している労務者の職種の分類の中を今お読み下さったのだと思いますが、その通りだと思います。
  390. 岡田春夫

    岡田委員 「軍事情報分析員「A」」の場合には、資格要件としては「情報またはその関係分野において少くとも十五年の経験を有すること。」従って、これは旧日本軍部の幹部の人々がなっているはずです。この中には小川という元陸軍中将も入っているはずだ。そうでしょう。
  391. 丸山佶

    ○丸山政府委員 名前は、私はただいま存じておりませんが、旧軍人の佐官級あるいはそれ以上の方も入っていると思います。
  392. 岡田春夫

    岡田委員 丸山さん、軍事情報顧問、この中には、地理調査所を含めて外務省、気象台、水路事務所のような日本政府の適当な機関と連絡をする、このようになっておる。AMSFEが地理調査所、外務省防衛庁その他と連絡できるようになっておる。はっきりしておるじゃないか。これがアメリカの軍用地図が防衛庁にきているルートの一つになっている。わかりましたか。     〔発言する者多し〕
  393. 小澤佐重喜

    小澤委員長 静粛に願います。
  394. 丸山佶

    ○丸山政府委員 調達庁が提供しておる労務者の中に、そのような職種のものがございます。その方々は、お読みになってもわかる通り、向こうの担任者の下働き、アシスタントとして働いておるのでございます。しかしながら、その方々が、何も外務省なり防衛庁なりに地図を提供する役目をしておるというようなことはないと私は思っております。
  395. 岡田春夫

    岡田委員 これでAMSFEというものの全貌が明らかになってきました。これが、日本の自衛隊に与えておるアメリカのいわゆる軍用地図の作成元であります。その作成元は、ごらんのように、中国、シベリア、旧満州、これの陸地並びに沿岸を航空写真によってとっている。しかも、これに対して、今、丸山さんが答えた通りに、日本人が協力をしている。八百五十人の日本人が協力をして、この地図を作っている。しかも、同時に、自衛隊の駐屯分遣隊が行っている。このような形で、防衛庁アメリカの地図作成作業に一切協力している。地図の面においても、日本の自衛隊はアメリカの軍隊に従属していることが明らかに、これで立証できるわけです。そうじゃないですか。そうじゃないとあなたが言えるのなら、何とでもお話し下さい。だれが見たって、これは明らかじゃありませんか。しかも、これは秘密にはなっておらない。この本も全部秘密じゃありません。全部出ている。明らかに、これはアメリカの極東における侵略計画の中に、日本の自衛隊がそれに協力し、従属をして、その手先になって使われるのが新安保条約なんだ。
  396. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 日本日本として、独自の地図を作るためにやっておるわけであります。でありますので、アメリカに協力して、アメリカの従属として地図を作っておるという事実はございません。そういうことによって侵略性ということであるならば、先ほど申し上げましたが、かりに中共が日本の地図を作り、あるいはソ連が日本の地図を作っている場合に、中共は日本に対する侵略国であり、ソ連は日本に対する侵略国であるというようなことと同じように考えられますが、そういうことは、私どもは考えられませんから、決してアメリカが侵略性をもって行動しているというふうには考えません。
  397. 岡田春夫

    岡田委員 赤城さん、それより前にお考えなさいよ。アメリカ日本の国内の地図全部を作らせておるのは、アメリカに裸になっていることを意味しているじゃないか、どうなんです。アメリカ日本の地図は全部裸になっているでしょう、どうなんです。あなたはこれを認めたじゃないか。日本の自主性なんかはどこにある。アメリカに従属している以外に何もないですよ。     ━━━━━━━━━━━━━
  398. 岡田春夫

    岡田委員 赤城さん、それより前にお考えなさいよ。アメリカ日本の国内の地図全部を作らせておるのは、アメリカに裸になっていることを意味しているじゃないか、どうなんです。アメリカ日本の地図は全部裸になっているでしょう、どうなんです。あなたはこれを認めたじゃないか。日本の自主性なんかはどこにある。アメリカに従属している以外に何もないですよ。
  399. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 それは違うと思います。そういう論理でいきますと、アメリカで世界地図を作っていますならば、世界が全部アメリカに従属しておることになる。それと同じように、決して、日本日本の地図を作っているからアメリカに従属しているということには相なりません。
  400. 岡田春夫

    岡田委員 赤城さん、きのうの私の質問をまだ聞いていなかったのですか。自衛権の名のもとにおけるアメリカの侵略性を言ったでしょう。世界侵略計画なんだよ。あなたは、日本の国内がアメリカに裸になっているのですよ、わかりましたか。アメリカの世界的侵略計画の一環として新安保条約があり、それの現われがこの地図なんだ。明らかに、いわゆる世界全体の自由諸国といわれるものの地図を全部アメリカが独占して、それでも足りなくて、中国やソビエトを黒いジェット機で飛び歩いて航空写真で写して、日本の自衛隊に渡しているじゃないか、はっきりしておるじゃないか、何で隠そうとするのか。
  401. 村上勇

    ○村上国務大臣 岡田委員の先ほどの質問の中に、地理調査所から労務者か何か行っているようなことを申されておりましたが、地理調査所からは、職員も労務者も一人も行っておりません。
  402. 岡田春夫

    岡田委員 いや、私は、あなたに何も聞いていないのですよ。防衛庁長官です。あなたいつの質問答弁しているのですか。私は防衛庁長官に言っているのですよ。地理調査所から行っているなんて私は言っておりませんよ。明らかに、アメリカの極東米軍が日本の地理を全部調べているということを言ったんです。
  403. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 先ほどお話がありましたが、黒いジェット機は、これは御承知のはずですが、気象観測用の飛行機であります。地図を作成するための飛行機ではございません。  それから、日本の国内の地図がよくアメリカにわかっておる、わかっておるからアメリカに従属をしておるのだ、これは論理の飛躍であります。私はそういうように考えます。
  404. 岡田春夫

    岡田委員 幾らでもやりますけれども、郵政大臣どうしましたか。
  405. 小澤佐重喜

    小澤委員長 間もなく参ります。
  406. 岡田春夫

    岡田委員 それじゃ、蓄膿らしい丸山さんに、もう一度聞きますが、軍事情報顧問の中には、元陸軍少将小川三郎中村勝平元海軍少将、それから軍事情報分析職の中には島義元陸軍大佐、元陸軍大佐加藤守俊、これらの人人が全部入っており、しかも、これはAMSFEに所属しておると思いますが、もし今おわかりにならなければ、あとで御報告願いたいと思います。
  407. 丸山佶

    ○丸山政府委員 ただいま名簿を持っておりませんので、あとで調べて御報告します。
  408. 岡田春夫

    岡田委員 郵政大臣が見えましたので、調査を約束されましてまだ御回答がないわけでありますが、それについての御答弁を願いたいと思います。
  409. 植竹春彦

    ○植竹国務大臣 ただいま逓信委員会が終わりましたので、すぐ役所に帰りまして、先ほどの調査につきまして、電電公社においてその当時の係員等まだおりますので、その者について具体的にさっそくに調べるということで、ただいま調査いたしておる最中であります。
  410. 岡田春夫

    岡田委員 お調べになるのは、いつまでにお調べになるのですか。それに基づいて私は質問しなければならないのですが……。
  411. 植竹春彦

    ○植竹国務大臣 多分あしたはわかるだろうと思いますが、だろうでありまして、はなはだ不明確で……。
  412. 岡田春夫

    岡田委員 その資料はきょう私はぜひ必要なんです。一応ごらんになればわかるはずでありますから、直ちにお返しいただきますようにお願いいたします。いかがですか。
  413. 植竹春彦

    ○植竹国務大臣 お返しいたします。
  414. 岡田春夫

    岡田委員 直ちに、すぐ。
  415. 植竹春彦

    ○植竹国務大臣 きょうですか。
  416. 岡田春夫

    岡田委員 きょう返してもらわなければ、私は調べられないのですよ。それはちょっと困る。あなた方、見たのですから、見たら、それは直ちに夕方まで、六時までに返して下さい。
  417. 小澤佐重喜

    小澤委員長 岡田君に申し上げますが、この問題は委員長において預かりましたから、発言者の希望をしんしゃくいたしまして適当に処置をいたします。
  418. 岡田春夫

    岡田委員 それでは、私は委員長に希望しますが、その資料をあしたまでに返されなかったら、私は困る、六時までに返していただくように私は希望いたします。いいですか。
  419. 小澤佐重喜

    小澤委員長 できるだけ希望に沿うように努力いたします。
  420. 岡田春夫

    岡田委員 それから、先ほどいろいろ御質問をいたして参りましたが、やはり要約をして申し上げておく必要があろうと思いますので、私は読み上げておきます。  極東米国陸軍地図局の沿革。USアーミイ・マップ・サービス・ファー・イースト、略称してAMSFEといいます。所在地は、北区下十条千八百九十四番地、旧CIC本部の跡にあります。これは、昭和二十一年、第六十四地形技術大隊が新宿伊勢丹デパートの前に移駐して、そこで日本政府と基本労務契約に基づいて日本人技術者及び労務者を採用し、かつ訓練いたしました。その後、昭和二十八年の三月に現在の略称王子キャンプへ第六十四大隊が移駐をして、昭和三十九年の七月には第二十九大隊がフィリピンより移駐し、同時に第六十四大隊は閉鎖をいたしました。当時採用いたしておりました日本人勤務者の総計は約九百五十名でありました。昭和三十年、第二十九大隊の写真図、改訂及び新編さんの地図シートの生産量は、月産平均百七十六シート。昭和三十一年三月、この部隊は米重極東地図局を新設することになり、第二十九大隊と分離をいたしました。その後現在に至るまで、昭和三十二年の一月に名前を変えて、極東米陸軍地図局と改称して、今日では、地図の生産量は年間五百万枚をこえております。司令官はアーサー・T・ストリックランド陸軍中佐であります。現在、日本人の勤務員は約八百五十名であります。それからAMSFEと地理調査所との関係は――この点については省略をいたします。  それから、AMSFEに勤務する日本人勤務者、総本部十七名。以下、たくさん地図がございます。これは委員長の方で資料として両方お取り計らいを願いたいと思います。速記録に載せるようにお願いいたします。
  421. 小澤佐重喜

    小澤委員長 ただいま岡田君より要求がありました米軍極東地図局に勤務する日本人勤務者に関する資料につきましては、会議録に参照として掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  422. 小澤佐重喜

    小澤委員長 御異議がなければさよう決定いたします。
  423. 岡田春夫

    岡田委員 私は、それでは、郵政大臣の御答弁のあるまでこの点についてだけ留保いたしまして、きょうの質問はこれで終わらしていだたきます。
  424. 小澤佐重喜

    小澤委員長 この際、議事進行に関して鍛冶良作君より発言を求められております。これを許します。鍛冶良作君。
  425. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 先ほど岡田君の発言を聞いておりますと、日本アメリカに従属している以外に何もない、━━━━━━━━━━であると断言せられました。今や、世界は日本の独立国たることを認めておることは、言を待ちません。ソ連ですら通商条約を結んでおる今日、わが日本国の国会議員が、日本の国会において、━━━━━━━だと断定するに至っては、容赦のならぬことだと思います。(拍手)かような国会議員がおっては大へんです。私はこの意味において、まず委員長から、この言葉の取り消しを命ぜられんことを要求いたします。
  426. 小澤佐重喜

    小澤委員長 先ほどの岡田君の発言中、もし不穏当な個所がありましたならば、速記録を調べた上に適当な処置を講じます。
  427. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 私は、委員長として適当な処置とは、どういうことであるか知りませんが、私としましては、取り消しを要求いたします。取り消しを要求して、取り消しせざれば、われわれには新たなる考えがありますから、委員長だけの処置では満足いたさぬことをここに付言いたしておきます。
  428. 小澤佐重喜

    小澤委員長 委員長は、国会法、議事規則に基づいて適当に処置をいたします。  次会は、明二十八日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会をいたします。    午後四時二十一会散会      ――――◇―――――