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1960-04-26 第34回国会 衆議院 日米安全保障条約等特別委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年四月二十六日(火曜日)     午前十時五十四分開議  出席委員    委員長 小澤佐重喜君    理事 井出一太郎君 理事 岩本 信行君    理事 大久保武雄君 理事 櫻内 義雄君    理事 椎熊 三郎君 理事 西村 力弥君    理事 松本 七郎君 理事 竹谷源太郎君       安倍晋太郎君    愛知 揆一君       秋田 大助君    天野 光晴君       池田正之輔君    鍛冶 良作君       加藤 精三君    鴨田 宗一君       賀屋 興宣君    田中 榮一君       田中 龍夫君    床次 徳二君       野田 武夫君    服部 安司君       福家 俊一君    古井 喜實君       保科善四郎君    毛利 松平君       山下 春江君    飛鳥田一雄君       石橋 政嗣君    井手 以誠君       岡田 春夫君    黒田 寿男君       滝井 義高君    戸叶 里子君       中井徳次郎君    穗積 七郎君       森島 守人君    横路 節雄君       受田 新吉君    大貫 大八君       堤 ツルヨ君  出席国務大臣         内閣総理大臣  岸  信介君         外 務 大 臣 藤山愛一郎君         国 務 大 臣 赤城 宗徳君  出席政府委員         内閣官房長官 松本 俊一君         法制局長官   林  修三君         防衛庁参事官         (防衛局長)  加藤 陽三君         調達庁長官   丸山  佶君         外務事務官         (大臣官房審議         官)      下田 武三君         外務事務官         (アメリカ局         長)      森  治樹君         外務事務官         (条約局長)  高橋 通敏君  委員外出席者         専  門  員 佐藤 敏人君     ————————————— 四月二十六日  理事竹谷源太郎君同月二十日委員辞任につき、  その補欠として竹谷源太郎君が理事に当選した。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事の互選  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び  安全保障条約締結について承認を求めるの件  (条約第一号)  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び  安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並び  に日本国における合衆国軍隊地位に関する協  定の締結について承認を求めるの件(条約第二  号)  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び  安全保障条約等締結に伴う関係法令整理に  関する法律案内閣提出第六五号)      ————◇—————
  2. 小澤佐重喜

    小澤委員長 これより会議を開きます。  この際、理事補欠選任についてお諮りいたします。委員の異動に伴い、現在理事一名が欠員になっております。つきましては、この際、その補欠委員長において指名いたしたいと思いますが、これに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 小澤佐重喜

    小澤委員長 御異議がないと認めまして、竹谷源太郎君を理事に指名いたします。      ————◇—————
  4. 小澤佐重喜

    小澤委員長 引き続き、これより、日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約締結について承認を求めるの件、日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並び日本国における合衆国軍隊地位に関する協定の締結について承認を求めるの件、及び日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約等締結に伴う関係法令整理に関する法律案、右各件を一括して議題といたします。  質疑を続行いたします。岡田春夫君。
  5. 岡田春夫

    岡田委員 私の質問を続行させていただきますが、前会の私の質問から今日に至りますまで、しばらく委員会空白がございました。その委員会空白において、自民党の諸君は、中間報告とやら何とやらというようなことまでお出しになったようでありますが、今度の空白の間には、岸総理大臣は、自民党総裁として陣頭指揮をおとりになったようでありますけれども、中間報告とかそのようなことが、きわめて適当な措置であるとお考えになって陣頭指揮をおとりになったのでありますか、どうでありますか。
  6. 岸信介

    岸国務大臣 もちろん、私は、一面政府の首脳であると同時に、自由民主党の総裁でございます。しかし、御承知のように、党の運営につきましては、それぞれ機関が設けてありまして、その議に従ってすべての行動がとられております。国会における運営は、それぞれの機構におきまして党議をきめた上において、党が行動するわけでありまして、私は、その党議に従ってすべて行動するという考えで、党の運営には当たっております。従って、党の最高機関であるところの議員総会その他におきましてきまりました事柄が実現されるように、党員とともに努力するということは、総裁として当然のことである、かように思っております。今御質問のありました点におきましても、そういう意味において今日まで行動して参っております。
  7. 岡田春夫

    岡田委員 この点につきましては私も、もう済んだことでありますから、あまり深く触れることは避けたいと思いますけれども、しかし、今静かにこの数日間の模様を顧みまして、自民党総裁としての岸さんは、自民党が提起されました参考人の問題あるいは中間報告の問題というものは、あのとき、あの時間において最も適当な方法であったと、今、現在において反省をされておりますか、どうですか。
  8. 岸信介

    岸国務大臣 今日におきましては、言うまでもなく、議長あっせん案に従って党としても行動しておるのであります。ただ、あのときの瞬間において、あの時期において、ああいうことがどうであったかということになりますと、今から反省しろ、こう言われますけれども、そのときの状況から申しますと、いろいろ先ほど来申しておるように、党の運営または当委員会運営について、理事会その他においてきまった事柄というものが運営されたということは、私は、当時の状況から見ると、それぞれ理由があったことだと思います。今日の状況において考えろと言われますけれども、今日の状況は、先ほど申しておるように、議長あっせん案に基づいての審議を尽くす、こういう状態になっておりますから、当時の状況としては、当時の状況のもとに判断され、またきめられるということについては、私は、当時の事情としてはもっともなことだったのだ、かように考えております。
  9. 岡田春夫

    岡田委員 私はここであらためて念を押しておきますが、やはりこのような重大な条約については、これは十分慎重審議をしなくちゃいかぬ。慎重審議をしなければならないのに、自民党ではすでに六十時間をやったとかいうようなことで、慎重審議が尽くされたかのごとく話をしておりますけれども、しかし、新聞論調であなたは十分ごらん通りに、今日における安保条約審議については、まだまだ審議が足りないというのが、新聞論調の一般の意見であります。これは国民の世論としても当然そのような考え方をとっております。この機会において、今度は総理大臣としての岸さんにお伺いをいたしたいのでありますが、やはりこのような重大な問題は、十分審議の時間をかける必要がある。そしてこの十分審議をする中においても、今日まで審議がおくれているということは、むしろ政府答弁できわめてあいまいな点がある。明確な答弁をことさら避けるという点で、時間がおくれているというような事情等も相当あるわけでありますので、こういう点は今後政府としても十分御注意を願うとともに、もっともっと慎重審議の時間をかけることを私は希望いたしたいと思いますが、総理としての御意見を伺っておきたいと思います。
  10. 岸信介

    岸国務大臣 慎重審議を尽くすということは、私最初より申し上げておることであります。今日といえども違わない。おそらく当時の状況から見ますると、国会のこの委員会におきましては、御意見はあったのでしょうけれども、多数の意見は、あの段階において、参考人意見を開いて、さらに審議をすることが適当である、こう認められたにかかわらず、それが実現できない。そうして、委員会において審議をすることができないというふうに、当時の状況においては判断されて、私はああいう措置がとられたものだと考えております。しかしながら、政府としての態度としては、先ほど来申し上げておる通り、また、私最初から申し上げておる通り十分審議を尽くして参る考えでございます。
  11. 岡田春夫

    岡田委員 今の御答弁からいうと、中間報告をやって打ち切るということについて、このような自民党の提案をしたことが間違いであったということを、実は総理が暗にお認めになったと解釈せざるを得ない。そういう意味で、私たちは審議を進めていきたい。あなたのおっしゃる通りに、十分慎重な審議を進めたいと思いますが、この点はいかがですか。
  12. 岸信介

    岸国務大臣 先ほど申し上げましたように、今日の段階において、私は、議長あっせん案趣旨に従って慎重審議を尽くすことが、最も適当である、かように思っております。
  13. 岡田春夫

    岡田委員 それでは、私はこの問題はこの程度にやめますが、昨日の夕刊で、私はある漫画を見ました。これは岸さんが、その漫画の中に、鏡に見合って、おれの顔は李承晩の顔かなあという漫画が出ているのであります。国民は、岸さんの顔と李承晩の顔を二重写しに見ている、このような漫画が出ているという事実を、やはり岸さんは考えなければならない。私は、この前の質問のときに、李承晩政権の今日の状態は、もって他山の石とすべしであるということを申し上げたのでありますが、今後の安保問題の審議については、このような国民の不安と疑惑、この点を払いのけるように、十分審議に対して積極的な答弁態度をとっていただくように要望いたしておきます。この点についてもし御意見があれば、その点を伺っておきます。——意見がないようですから、それでは具体的に入って参ります。  私は、前回の質問におきましては、自衛権の問題について、だいぶ論議を進めて参ったのでありますが、自衛権の問題は、この際しばらくたな上げをいたしまして、次の問題から、あらためてまた自衛権に戻りたいと思います。  きょう御質問をいたしますのは、主として条約の第六条に関係する部分について、御質問をいたしたいと思います。第六条に基づいて、日本アメリカに対して基地提供を行なう、基地使用するということについて、第六条に規定してあります。この点について外務省は、実は私ここに持っておりますが、一月の二十日に、外務省情文局の発表として、このような資料が実は出ております。これは安保条約解説という資料であります。この解説という資料を見ますと、第六条の部分に関しては、次のようにこの解説は書いてあります。ページ数は二十六ページであります。「米国が軍事行動を執るのは、国連行動として執る場合か、自衛権行使として執る場合かに限られること、また、米軍日本から戦闘作戦行動を執る場合には日本政府と事前に協議することになっていることは、後述のとおりである。」このように、情文局解説では、第六条に基づく米軍行動は、国連行動としてとる場合か、アメリカ自衛権行使としてとる場合か、この二つに限られるのである、このようにはっきりと書いてございます。この点からまず伺って参りたいと思いますが、この点は藤山さん、間違いないのでございますか。
  14. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 間違いございません。
  15. 岡田春夫

    岡田委員 それでは、今間違いないと御答弁のように、第六条に基づく米軍軍事行動は、国連行動である場合、それから自衛権行使である場合、この二つである。まず第一点は、国連行動としてとる場合、この点について質問を進めて参りたいと思います。  私が藤山外務大臣に伺いたいのは、在日米軍行動国連行動としてとられた場合、もしここで第六条の規定に、極東における国際の平和と安全の維持に寄与するためにという条項が、日本国の安全のためにという言葉と二つ並べてございますけれども、この極東における国際の平和と安全の維持に寄与するためにという、いわゆる簡単には極東条項と申し上げましょう、極東条項がないものとして、国連が適法に軍事行使の決意を行なって、それに基づいてアメリカ行動する場合においては、この極東条項がなくとも、日本が第六条で使用を許した基地から米軍が出撃することができると思うのでありますが、この点はいかがでございますか。
  16. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 御質問趣旨は、この極東条項がなくとも、アメリカ在日米軍国連軍に編入された場合には出動できるのではないかという御質問でありますか——むろん、国連軍として在日米軍が編成される、そうしてその任務を、国連総会決議によりましてできるわけでございます。それによって出ますときには、われわれとして、在日米軍使用されなければならぬと思います。ただ、その場合に、やはり極東事態に対して起こった問題については、今日極東の平和と安全ということが、われわれ関心事でございますから、そういう意味において、この条項があることが適当だと思っておるのでありまして、ない場合に、それではそれでも出られるのじゃないかという場合には、その場合の状況によってあらためて考えられる問題だと存じております。
  17. 岡田春夫

    岡田委員 だいぶ藤山さんの御答弁には問題点を含んでおります。国連行動という場合には、国連軍行動だけというように御規定になっているようでありますが、これは必ずしもその意味意味しておりません。国連軍として行動する場合には、憲章の四十三条の特別決議に基づく場合だけであります。それ以外において、国連行動として、たとえば四十一条、四十二条において行動できることもあるわけであります。ともかくもあなたの御答弁趣旨というものは、国連決議に基づいて行動しなければならない、加盟国行動しなければならないという場合には、そういう意味だと思いますが、しかし、そういう意味においても、先ほど答弁の後段において、そういう場合になってみて十分考えなければならない、こういうような御答弁でありますが、私はそういうような御答弁は間違いだと思う。それでは、今のような、その場合によって考えてみるというお話ならば、そのときには断わるということもあり得るという意味で、その場合においては考えてみる、こういうことをおっしゃっているのだろうと思いますが、国連決議をして、加盟国軍隊出動をするという場合においては、日本基地が、その国連行動に基づく軍隊出動に対して協力をしなければならない義務がある。これははっきりしております。これは国連憲章の第二条の五項にあるように、すべての加盟国は、国際連合がこの憲章に従ってとるいかなる行動についても、国際連合にあらゆる援助を与えなければならない。もしあなたは、国連行動に基づく軍隊出動をする場合に、日本基地提供を拒否するというお考えで、先ほど、そのときになって考えてみなければならないという御答弁であったとするならば、この第二条五項に違反することになると思います。国連行動であるならば、当然これは日本基地提供するということがはっきりしていると思うのであります。この点はいかがですか。
  18. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 先ほど岡田委員の御質問は、いわゆる岡田委員の言われる極東条項、それがなかった場合、国連メンバーとして、国連軍が編成されたときに、われわれが協力することは当然でございます。協力方法というものはいろいろあるわけでありまして、軍隊を出す国もございましょうし、あるいは軍隊以外の方法でこれに協力していく方法もあろうと思うのであります。でありますから、そういう場合のいろいろの条件というものが、そのときにあるわけであります。その際にという意味において申し上げたのでございます。
  19. 岡田春夫

    岡田委員 それではあれでしょう。日本としては、国連決議があって行動する場合には、当然日本基地使用をその軍隊に許すということになるのですか。
  20. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 それは今申し上げたように、岡田委員前提は、極東の平和と安全ということがなかった場合という前提お話しになっていますから、私どもそう申し上げておるのです。
  21. 岡田春夫

    岡田委員 それでは伺いますが、極東条項がなければ提供しない、こうおっしゃるのですか。協力をしないとおっしゃるのですか。
  22. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 提供しないとかなんとか申し上げておるわけではございません。その場合に判断すべき問題だということを申し上げておるわけでございまして、なお、その関連におきましては、条約局長から御説明いたさせます。
  23. 岡田春夫

    岡田委員 ちょっとお待ち願いたい。今の御答弁を伺っておりますと、極東条項がなくても、協力をしなければならない義務があるのです、日本の国は加盟国として。そうではないのですか。
  24. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 国連決議協力するということは、これはメンバーステートとして当然の義務であります。ただ、その協力方法にいろいろある、こう申し上げたのであります。
  25. 岡田春夫

    岡田委員 しかし、これは具体的に言って、在日米軍日本におるということは事実なんです、極東条項があろうとなかろうと。この条約に基づけば、当然在日米軍日本におるわけです。その在日米軍出動するという場合においては、国連決議に基づいて出動するわけでありますから、極東条項があろうとなかろうと、出動ができる。これは日本がどう言おうと、アメリカ国連加盟国として出動することができるわけです。それならば、極東条項はなくたって出動できるではありませんか。
  26. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 それでありますから、先ほど来申し上げておるように、極東条項がない場合だけをとってどうだということをお話しになりましたから、そう申し上げたのでありまして、われわれとして、極東条項がなくても、国連決議をして、そうして国連軍が編成され、在日米軍がそれに編成されたときに、協力方法というものは、先ほど申し上げたようにあるわけであります。それを申し上げておるわけであります。
  27. 岡田春夫

    岡田委員 外務大臣は幾らか勘違いをされておるようですが、私の伺っておるのは、この安保条約並びに現行の安保条約で、日本基地提供しておる。この基地提供しておる場合において、アメリカ軍隊がここにおるわけですね。これが在日米軍ですね。この在日米軍主要目的として、第六条では、日本国の安全、これが一つ、第二点は、極東における国際平和云々という極東条項、この二つあるわけです。ですから、極東条項というものが、たとえば全然なくて、第六条には、日本国の安全のためにという条項だけ書いてあって、それでも在日米軍基地提供を受けて、基地を使えるわけですね。そういう場合においても、もしここで、日本国の安全のためにという主要目的だけある在日米軍が、国連決議に基づいて、加盟国であるアメリカとしては在日米軍出動させるという場合には、当然これは極東条項があろうがなかろうが、この在日米軍というものは出動しなければならない。これが憲章上の義務であるし、しなければならない。出ようと思えば、極東条項があるなしにかかわらず、これは出ることができる。これはそうなんでしょう。そうではないのですか。
  28. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 御承知のように、国連軍が編成されますときには、今までの例によりますと、メンバーステートに対して、あなたのところは軍隊を出すか出さないかといったような形において、呼びかけがございます。従って、軍隊を出すことによって協力する場合もあり、その他の方法によって協力する場合もある。これはそのときの事情によっていろいろ違っておることは、御承知通りだと思います。従って、在日米軍がおります以上は、アメリカ在日米軍国連軍に使う場合に、国連軍として編入していくということは、当然考えられることだと思います。それによってアメリカとして協力していくということは、当然考えられることだと思います。その場合に、国連協力していく立場からいいまして、日本もそういう意味において、国連協力の問題については、自分の判断でもって、どういう援助をしたらいいかということは当然やれるわけで、在日米軍がこの基地使用するとか、その他の方法もいろいろございましょう。軍隊日本は出せないのでありますから、軍隊を出せないという立場でもって協力していく、こういうことを申し上げておるのであります。
  29. 岡田春夫

    岡田委員 それはよくわかるのですが、藤山さんがそう言われるようなことは、今言われたその通りだと思うのですよ。それは何も極東条項がなくたってできるではありませんかというのです。そうでしょう。
  30. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 おそらくこの条約の問題ではないという意味において、今のような国連協力の場合は考えられると思うのであります。かりに極端なことを申し上げれば、安保条約というものはなくとも、日本国連メンバーの一人として、その際、基地提供して使うということは、安保条約のこの問題とは別個の問題としてあるということであります。
  31. 岡田春夫

    岡田委員 それは別個の問題でないので、別個な問題とも言い得るが、それと同時に、在日米軍国連加盟国であるアメリカ行動に対していかに協力するかという、在日米軍行動が、加盟国アメリカ行動としていかにやるかということなんで、それならば、今御答弁通り、この条約にかかわらず、国連が決定した限りにおいて米軍行動するということならば、ここに極東条項をうたわなくても出れるわけですね。それを伺っているのです。なければ出られないのですか。
  32. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 その場合、日本基地提供するかしないかということは、その場合の判断であろうと思うのです。国連協力というものの方法は、今のように軍隊を出すばかりが協力じゃございません。軍隊を出さないでも、協力する方法はあるわけです。国連決議に従って、そういう場合にどういう協力をするかということは、そのときの事態によって判断する、こういうことでありますが、私の答弁でわかりにくければ、条約局長からよく説明いたさせます。
  33. 岡田春夫

    岡田委員 今の御答弁を伺うと、国連加盟国である日本が、国連行動に基づいてアメリカ軍隊行動させるという場合において、この場合においては、これは国連加盟国であるアメリカは当然出動するということであるなら、在日米軍出動するということになるのだけれども、もしここで極東条項がなければ、あなたは、その場合に基地提供するという義務についてはやらないかもしれない、こういう御答弁であったようにも受け取れるわけです。ところが、この基地提供というものは、何も極東条項があるから基地提供をしているだけではない。日本国の安全という条項も加わって、基地提供をしている。在日米軍使用目的というものは、今申し上げたように、日本の安全だけでも日本に駐留しなければならないことになっている。そうすれば、アメリカ軍隊というものは、日本国の安全のために日本の国に駐留しておっても、加盟国であるアメリカ国連決議に基づいて行動をする場合には、在日米軍出動できるじゃありませんか。それならば、極東条項がなくたって出動できるということになるじゃありませんか。どうですか。
  34. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 お話のように、在日米軍というものは、条約にも書いてございますように、日本の平和と安全を守るためにおるということが一つの約束であること、これは申すまでもございません。そのほかに、日本の平和と安全を脅かす極東の騒乱に対しての目的を持っておるということも、これまた前々から申し上げておる通りだと思います。ですから、安保条約というものが、その限りにおいて発動して参ることも、申し上げている通りでありまして、そのこと自体は、自衛権の発動の範囲内において行なわれるわけであります。そこで、何か起こって国連決議をしたという場合には、御承知通り、たとえば安保条約がなくとも、日本メンバーステートとして国連協力する。そのときにどういう協力をするかということは、そのときの問題としてあるわけだろうと思います。たとえば、そのときに基地提供する、しかし、ここで安保条約がありますから、在日米軍がおることであります。従って、これを国連軍に編入することが一番適当な措置だ、国際の平和と安全を維持する上において国連決議に従うということであれば、在日米軍国連軍に編入されると思います。その通りだと思います。そういう場合に、日本基地を使って国連活動をするということは、それは当然起こることであろうと思います。でありますから、今申し上げた説明でわかっていただけますように、つまり、国連決議によって起こす行動そのこと自体だけを抽出すれば、前段に申し上げた通り。それから安保条約がございまして、在日米軍がおる。それが国連軍に編入されたとき、それが基地を使って出るか出ないかという問題になるかと思うのでございます。
  35. 岡田春夫

    岡田委員 だから、同じことを私は聞いているのですよ。それじゃ、在日米軍日本にいるというのは、日本の安全のためにというその使用目的でも、日本基地使用できるのでしょう。そうじゃないですか、違いますか。当然でしょう。
  36. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 むろん、日本を守るためにおるわけでありますから、日本に何か攻撃が起こりましたときに、アメリカ軍が自衛権をふるうということは当然起こる。そこでかりに、今お話しのように、安保条約があって、在日米軍がおるわけですね。安保条約がないときには、在日米軍がいないから、いないときに、基地を貸すか貸さないかというようなことは、そのときに問題が起こってくると思いますけれども、在日米軍がおって、基地を貸しております。その基地を貸しておる目的というものは、日本の平和と安全、同時に、お話しのように、極東の平和と安全ということがうたわれておりますから、国連極東の平和と安全ということを問題にする場合には、基地使用を許すことが相当合理的に考えられるということは、当然のことだと思います。
  37. 岡田春夫

    岡田委員 これは総理に伺っておきましょう。これは非常に自明の理なので、こういうことまであいまいにされる必要はないと私は思う。日本軍隊がいるということの場合に、日本の安全のために、安保条約に基づいて在日米軍がいるわけですね。在日米軍がこのような形でいて、極東条項がたとえばないとしても、国連米軍出動しなければならないという場合に、在日米軍出動しなければならないでしょう、加盟国義務として。違うのですか。極東条項がなければ、在日米軍出動しろといった場合に、アメリカ出動できないのですか。この点は総理、どうなんですか。
  38. 岸信介

    岸国務大臣 もちろん、その軍隊を持っていくことは、私できると思います。ただ、その場合に、日本基地としてそれが行動するかどうかという問題については、何か私は、特別ななにが要るのではないか。アメリカ軍が編入された場合に、アメリカ軍が日本にいるものを持っていってそこでなにすることはいい。日本の領土を作戦行動基地として使うという問題については、私は、日本考え方で……。
  39. 岡田春夫

    岡田委員 それでは、基地について制約する場合もあるという御答弁のようでありますが、そういうことに解釈してもよろしいのですか。基地として提供しないという場合も——国連行動であっても、日本基地在日米軍が使うという場合に、基地として使わせないという場合もあり得るわけですか。国連行動の場合です。
  40. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 ただいまの御指摘の点でございますが、問題を整理する意味で、ちょっと繰り返しになるかもしれませんが、申し上げさせていただきますと、国連行動は、ただいま御指摘の通り、第二条の五項に、「すべての加盟国は、国際連合がこの憲章に従ってとるいかなる行動についても国際連合にあらゆる援助を与え、且つ、国際連合の防止行動又は強制行動の対象となっているいかなる国に対しても援助の供与を慎まなければならない。」とありまして、いわゆる国連行動として行なわれている場合に、加盟国としてはこのような一般的な義務を負うわけでございます。これは一つの、国連行動援助するという一般的な義務でございまして、この義務から、それでは個々の具体的にどうするという云々が、必然的に直ちに出るわけではないわけでございます。ただ、この義務に従って、われわれは大きな目的として、国連行動国連決議に従い、これを援助しようという立場に立たなければならない、これが第一点でございます。従いまして、その次に、国連がただいま御指摘のようなある強制行動——おそらく軍事行動をとる、そしてアメリカをしてとらせるというような場合だと考えます。決議と申しましても、それは現在のところ、国連軍が成立しておりませんから、総会の勧告に従って行なわれると考えます。すなわち、総会の勧告によって行なわれる場合は、まず、その勧告が提案になったときに、勧告の内容によりまして、これに賛成するかいなかのこちらの判断がある。それからその勧告が成立した場合に、同じような法律的な、形式的な問題かもしれませんが、これに従うといなとの自由を持つ。そこでまた、われわれの意思判断があるわけでございます。そうして、そこで一つの広い意味国連行動として出た場合に、今度はその行動で、どういうふうにそれを具体的に行使するか、こういうことで、たとえばアメリカならアメリカを通して、国連側との話し合いによって個々にきまっていく、こういうことになるかと思います。ただ、この話し合いの基盤は、われわれとしましては、常に国連に対する援助という基盤に立ってこれは行なわなければならない。しかし、援助だからといいましても、それでは具体的にどういうことをするかということは、そのときどきの話し合い、また、日本自体の安全という問題、われわれはそういう見地に立って話し合いをしまして、そして、それでは個々のどういう形をどういうふうに認めるのだということになることが、これは国連の問題だと考えます。幸いにして、今アメリカ軍が日本におりますし、アメリカ軍との地位協定もございますし、また、このような協定がございますから、新しくそれをとりきめるまでもなく、このような協定を利用すると申しますか、この協定の上に立って、新しい行動事態、その事態に応じて、この上に立っていろいろ考え国連と協定をしていく、こういうふうな結果になると思います。
  41. 岡田春夫

    岡田委員 高橋さんに伺いますが、それでは極東条項がない場合には、国連行動について拒否する場合もあり得る、こういう御答弁ですか。
  42. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 これがあるなしにかかわらず、国連行動を拒否するかどうかという問題は、われわれは国連に対してそれを援助するという立場、これは原則的に変わらないわけですね。そうすると、われわれがどうしたらこれを一番援助する方法になるかという立場に立って、われわれは判断するわけですね。それによって、その場合その場合によって、いろいろな決定が行なわれるわけであります。ですから、すぐ基地を拒否するとか、いや拒否しないとかいうことを、一がいに前もって言えないと考えます。
  43. 岡田春夫

    岡田委員 これはなくたって同じじゃないか。極東条項がなくたって同じじゃないですか。どっちみち出れるのでしょう。出る場合には同じじゃありませんか。どっちにしても、国連が出ろということをきめた場合に、日本がどうこう言おうと——あなたや藤山さんや岸さんは、日本のことを言っているのだけれども、在日米軍出動することを私は聞いておるのですよ。在日米軍は、日本極東条項があろうがなかろうが、出ますよ。それが国連行動に忠実な態度じゃないか。この極東条項がなければ、日本は出さないといって、そういうことをするのですか。それでは伺いましょう。六条で極東条項がなければ、在日米軍を出しませんということを言えるのですか。それでは総理大臣にもう一度伺いましょう。はっきりしているじゃないか。国連行動の場合には、加盟国である日本が、そういう規定をあれした場合には、当然出ることを——しかも、日本ではなくて、在日米軍出動するのですよ。それじゃ極東条項がなければ、日本基地提供はしませんといって阻止するのですか。どうです。
  44. 岸信介

    岸国務大臣 いや、別に私は拒否すると言っていないのです。ただ、基地として使用せしめるかどうかということについては、日本立場からの判断がある、こういうのです。アメリカがどこの軍隊——そういう国連のなにがあった場合に、台湾に駐留しているものを使うか、あるいは沖縄の方のものを使うか、日本にいるものを使うか、それはアメリカがなにするわけです。それは私は、今極東条項がなくても、アメリカは使い得ると思う。ただ、基地としてそれを使わせるかどうかということについては、私は、日本判断がある、こういうことを申しておるのです。
  45. 岡田春夫

    岡田委員 それじゃもう一度総理に伺いますが、国連憲章の第二条第五項には、国際連合にあらゆるすべての援助を与える、こういっておる。それなら、在日米軍がいる基地を、極東条項がないために拒否するということは、言えないじゃないですか。どうして言えるのですか。(「兵力の出動なんかできないよ」と呼ぶ者あり)日本の兵力の出動なんかじゃないのですよ。米軍の話ですよ。米軍出動するのに対してあらゆる援助を行なう。だから、あらゆる援助の中には、あなたのおっしゃるように、日本の自衛隊は海外の出動は禁止されておる。それは憲法の規定にある。こういう援助はできない。しかし、それ以外のあらゆる援助——なぜこれはできないかというと、これは憲章の第二条第七項に、国連憲章の決定は国内事項に干渉はできないという規定があるわけです。これは特にアメリカが強く主張して、こういうことを規定しておる。それですから、日本の憲法に基づいて、海外派兵はできないということは言えるわけです。ただ、第二条の五項にある、あらゆる援助の場合に、しかも米軍が、日本基地日本の安全のためにといっていても、あらゆる援助であるならば、これは当然極東条項がなくなって出れるじゃないですか。はっきりしておるじゃないですか。どうなんです。明快じゃないですか。こんなことまで違うというのはおかしいじゃないですか。どうしてこんなことが違うというのですか。
  46. 岸信介

    岸国務大臣 それは、今の朝鮮動乱の問題について、日本に駐留しておるところの軍隊を使うことについては、吉田・アチソン交換公文で特別の協定をして、そうして援助の内容なり、援助のなにをきめておるわけですから、そういう意味において日本のなにはあるので、今の国連憲章からあらゆるなにだということで、すべてのことを、われわれが国内の憲法上のこと以外のことは何でもしなければならぬということは、私はないと思う。日本として、いかなる方法によって、それについて協力し、援助するかということは、現在におけるちょうど吉田・アチソン交換公文みたいなように、われわれとしては、その事態に応じて的確なことを判断していく、こういうことを私は申しておるのであります。
  47. 岡田春夫

    岡田委員 しかし、総理大臣、実際問題として、この場合拒否できないでしょう。これは現行条約の場合に、日本米軍の駐留を許したのは、日本の安全のためなんです。極東の安全のためにということは書いてないのです。アメリカが認めておるのは、極東平和云々というのは第一条にあります。日本が認めておるのは、日本の安全のために駐留軍を日本に置く、こういう。それにもかかわらず、この日本の安全のために駐留している米軍が、実際に国連軍協力しておるじゃないですか。極東条項がなくたって出ておるじゃないですか。実際としてはやっておるじゃないですか。極東条項がなくても出せますよ。これはどうなんです。実際問題としてはっきりしておるじゃないですか。
  48. 岸信介

    岸国務大臣 それは私が今言っておるように、吉田・アチソン交換公文があるゆえんであって、ただ、当然にそれができておるということではなしに、吉田・アチソン交換公文によって、日本が、具体的にそのときにおける協力の内容とか、あるいはこれを使わせるということも認めておる。これによってできておる、私はこう思います。
  49. 岡田春夫

    岡田委員 この点ばかり言っておってもしようがないから、次に進みますが、ちょっと伺います。これは極東条項なんかなくたって当然出れる。国連決議の方が優先されておるのでしょう。これは優先されないのですか。国連憲章優先の原則というものは、全部今度はこの場合には捨てられるのですか。どうなんです。
  50. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 どうも私よくわからないのですが、国連決議をいたしましたときに、あらゆる援助をするといっても、たとえば韓国の事変のときに、すべての国が全部軍隊を出したわけではございません。やはり遠いところは、おれのところは、軍隊を出せぬが、ほかの援助をする——だから、あらゆるといっても、必ずしも全部何もかにもしろということではないわけで、その国連憲章の指示に従って、われわれはできる限りの援助をするということとなるのであります。そこで、在日米軍がいて、基地を使っておるから、一番それは国連として使いやすい軍隊だ、あるいはアメリカとしても国連の使いやすい軍隊だということは言えますけれども、どういう形で援助するかということは、今総理答弁された通りだと思います。
  51. 岡田春夫

    岡田委員 それでは伺っておきますが、国連憲章の百三条、この憲章に基づく義務、これで、アメリカ憲章義務として出動しなければならない。では、この条約の中に規定される義務、この義務は、たとえば極東条項がなかったとするのですよ。こういう義務というものは、日本は、これには義務を負っていない。たとえば、極東条項協力しないというようなことが書いてあっても、国連憲章の百三条で、国連決議された行動については米軍出動するし、日本はこの条約に基づいても、憲章を優先しなければならない義務があるじゃないですか。はっきりしているじゃないですか。だから、極東条項がなければ出動ができない場合もあり得る、こうおっしゃるのですか。それならそうだとはっきりおっしゃって下さい。そこを言ってもらいたいのです。極東条項がなければ、在日米軍国連行動として出動する場合に、日本基地を使わせないという場合もあり得るならあり得るとお話し願いたい。いいですか。
  52. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 ただいまの点でございますが、国連によってアメリカ義務として出動するというような場合は、どういう場合でありましょうか、ちょっと私は考えがつかないわけございます。国連は現在は勧告によって行きますから、勧告を自由意思で受諾して行くわけでございます。  それからもう一つ先ほどの二条五項の問題でございますが、これは一般的な援助でございます、一般的な援助というのは、われわれはそういう立場において国連とできるだけ協力しなければならないということで、この援助ということがあるから、一切の国連の要請に従わなければならないということは、これから予定しているものでもなければ、また、国連もむやみに一切の要請を義務的に押しつけるというようなことは絶対しない、すなわち、各加盟国のおのおのの意向をくんで、そうして最善と考えられる措置をとるわけでございます。従いまして、この条項があるから、及び、国連としてこういう決議ができたから、これで特に具体的にこういうことを押しつけられるというようなことは、私は絶対ないと考えております。それはおのおの加盟国の意向を事前に聞いて行なわれる、こういうことでございます。従いまして、今具体的な場合で、国連日本基地を貸さないことがあり得るということでございますが、これは論理的な問題といたしまして、そういう場合があり得るわけでございます。これは論理的な問題でございます。論理的な問題と申しますのは、その場合に貸すか貸さないかというのは、やはりこちらの日本の自主的な意思の判断でここに関与することができ、そうして自主的な判断で、国連憲章という立場日本の安全という立場、その他もろもろの立場を勘案してこれを決定する、それがまた全体として非常な国連に対する援助となるということであろうと考えております。
  53. 岡田春夫

    岡田委員 それじゃ、ほかの角度からもう一度伺いましょう。その場合に出動する米軍というものは、国連決議に基づく米軍である、当然そうですね。それと同時に、何も米軍だけが行動するわけではないのですね。国連決議に基づいて、カナダの軍隊も、あるいはソビエトの軍隊出動し得るわけですね。その場合において、日本基地提供を拒否できますか。
  54. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 先ほど申し上げましたように、拒否できるとか、できないという問題でございますが、これは法律的な、論理的な問題として申し上げます。国連協力とか、そのつどつどの情勢に応じてこれを拒否するとか、しないとかいう問題でなくて、そうしますと、各国軍隊がそれを受諾して、それから出動する、と同時に、出動のためにはあるいは基地を必要とする、それからどこどこの国を通過しなければならない、どこどこで食糧を調達しなければならないということになりますと、すぐその具体的な協定に入るわけでございます。そこで、おのおのがその立場によって判断する、そうして協定ができ、その協定に従って、通過なり駐留なり何かが行なわれるということでございます。ですから、そこに自由意思の判断と申しますか、われわれが向こうと合意をする余地がある、こういう意味におきまして、提供できるとか、できないということが言われる、こういう意味で申し上げたのであります。
  55. 岡田春夫

    岡田委員 それじゃ伺いますが、アメリカの場合には基地提供する、そうして、それ以外の軍隊国連軍として同様に行動しているのに、ほかの軍隊に対しては拒否する、こういうことはあり得るのですか。
  56. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 論理的な、また法律的な問題になりますが、そのときの事情に応じまして、こちらの軍隊には確かにその必要を認めるし、われわれもそれが必要だと判断するから、こちらは大いに使う必要があるから使っていただきたい、しかし、こちらの方は、ほかの方がより能率的ではないか、国連目的を遂行するためにほかの方を使う方が能率的ではないかと考えられる場合、これは今度またほかの方との協定を考えるなり、そういう場合が行なわれる。ですから、いろいろな場合が行なわれますが、論理的には、とにかく二国間の、数カ国間の合意によって行なわれるのじゃないか、このように考えております。
  57. 岡田春夫

    岡田委員 いま一点だけはっきり伺っておきますが、拒否するかしないかは、国連憲章に基づいて日本加盟国としての権利義務ですよ。この条約極東条項があるなしにかかわらずの問題ですね。どうでしょう。
  58. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 その通りでございます。今、国連加盟国……。
  59. 岡田春夫

    岡田委員 それでははっきりしているじゃないか。極東条項がなくとも、加盟国の権利義務として、日本の国から米軍出動できるじゃないですか。藤山さん、どうなんです。極東条項がなくたって、アメリカ国連行動として出動できるじゃないですか。その通りだと言ったじゃないか。そうじゃないのですか。これは国連加盟国義務ですよ。極東条項がなくたって出れますよ。どうなんだ。はっきりしなさいよ。
  60. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今お答えしておりますように、国連軍になりました場合に、先ほどイギリスやカナダのお話がありましたが、そういうものが出たときに、日本基地を使うか使わないかということ——基地日本提供することによって国連協力するのだというのと、基地提供しなくても国連協力というものはできるわけなんでありますから、そういう判断のもとにやるわけであって、そういう意味におきまして、ふだんの場合においては考えていくわけです。
  61. 岡田春夫

    岡田委員 だから、極東条項がなくたってやれるでしょう。あなたの言っておるのは、加盟国義務を言っておるのですよ。はっきりしているじゃないか。
  62. 岸信介

    岸国務大臣 問題は、これがなかった場合に出る——アメリカが使うということは、さっき言っておるように、少なくとも国連決議なり勧告があったら、それによって使う。しかし、日本基地として使う場合においては、日本との間に協定しなければできないと思うのです。協定すればできるのですよ。協定がなければできない。しかし、この条項がありますれば、この目的の範囲内において出る場合は、そういう協定を作らなくても、事前協議だけで出れる、こういう差があると思います。
  63. 岡田春夫

    岡田委員 それはおかしいじゃないですか、岸さん。その場合に出るのは米軍じゃないのですよ。国連軍としてなんですよ。その場合の協定というのは、安保条約なんぞに規定できませんよ。国連軍日本との新たなる覚書が必要なんです。そうでしょう。それならば、何も極東条項がなくたって、その条項の取りきめを別にやればいいじゃないですか。アメリカとの協定をその場合に結ぶ必要はないのですよ。どうでしょう。そうでしょう。国連軍日本との協定ですよ。それはどうなんです。はっきりしているじゃないか。極東条項がなくたって、それを結べばいいんですよ。
  64. 岸信介

    岸国務大臣 私はどうも岡田君の御質疑の趣旨がよくわからないのですけれども、国連軍として出る場合においても、いろいろな形があるだろうと思うのです。しかしながら、在日米軍国連軍として、この極東条項がなかった場合に行動する場合においては、国連軍日本との協定に基づいて、その範囲内において日本にいる米軍行動できるのであって、その協定は国連軍との間にされるけれども、その国連軍在日米軍が編入されて、そうして日本基地を使うという場合においては、それに関する特別の協定ができて、その協定に基づいて行動する、こういうことだろうと思います。
  65. 岡田春夫

    岡田委員 ですから、今総理の言われた通りなんです。いいですか。国連軍として出る場合、この中には米軍もあるし、カナダもあるし、いろいろありますね。さっきから藤山さんは国連軍国連軍と言うのだが、四十三条の場合だけは国連軍になるのだけれども、総会の決議による国連軍と一応解釈しておきましょう、藤山さんの顔を立てておきましょう。ところが、この国連軍の場合には、アメリカだけが出るという場合はあり得ない。これは憲章上あり得ないのです。憲章の精神として、憲章規定によって、加盟国の数カ国が出なければならないのです。その場合には国連軍日本との間の新しい取りきめが必要なので、この極東条項がなくても、これは出動できるのですよ。当然そうでしょう。
  66. 岸信介

    岸国務大臣 おっしゃる通り、取りきめがあればできる。取りきめがなければ、私はできないと思います。
  67. 岡田春夫

    岡田委員 それじゃ、あなたの論理から言うと、六条に極東条項があるから、国連軍としてアメリカ軍全部も出れる、こういうわけですね。あなたの論理からいけば、そういうことになるでしょう。
  68. 岸信介

    岸国務大臣 その目的の範囲内であることであれば、アメリカが、米軍として独立に出る場合もございましょうし、国連軍として出る場合においても——しかし、これは、ともに事前協議の対象になる、こういうことです。
  69. 岡田春夫

    岡田委員 国連軍という中には、アメリカ軍のみじゃないのですよ。ほかの軍隊も入るのですよ。ほかの軍隊を含めた国連軍が、この安保条約極東条項によって出れるのですか。それじゃ、その点を伺いましょう。出れるのですか。
  70. 岸信介

    岸国務大臣 そんなことはあり得ない。それは日本にいるところの、駐日の米軍のことを安保条約においてはいっているのであって、それ以外のことは、安保条約の関係じゃありません。
  71. 岡田春夫

    岡田委員 ですから、国連軍出動する場合においては、国連軍と新たなる協定がなければ出動ができないでしょう。極東条項があるだけでは、米軍出動するのであって、国連軍としての出動なんかないでしょう。はっきりしているじゃないですか。
  72. 岸信介

    岸国務大臣 国連軍としての全体のことを言っているのじゃなしに、国連軍の一部であるところのアメリカ軍が、この目的の範囲内において行動する場合において、アメリカ軍の行動については、この事前協議の対象だけでいい、こういうことです。
  73. 岡田春夫

    岡田委員 じゃ、もう一点伺いましょう。国連軍としての米軍の中で、極東条項がある場合には出動できるが、国連軍の中の米軍は、極東条項がない場合には出動できないということもあるのですか。それを伺いましょう。
  74. 岸信介

    岸国務大臣 この場合においては、さっきからしばしば言っているように、国連軍との間に特別の協定をして、その協定に基づいて米軍国連軍の一部として行動することができる、こういうことです。
  75. 岡田春夫

    岡田委員 そんなことを聞いているのじゃない。私の言うのは、その場合には新たな協定をきめる、こういうのでしょう。新たな協定をきめる場合には、米軍だけと協定するのじゃないのです。国連軍としての協定を結ぶのです。いいですか。国連軍としての米軍出動する場合においては、この極東条項がなくても出動できるのじゃないか、こう言うのです。それは国連と新たなる協定を結べばいいじゃないか。どうなんです。はっきりしているじゃないか。
  76. 岸信介

    岸国務大臣 それはさっきからお答えしている通り、特別の協定をすれば、それでいいのです。
  77. 岡田春夫

    岡田委員 それじゃ、国連行動として出動する場合には、米軍だけが出るという場合はあり得ません、今までの実例からいって。そうするならば、国連行動として出る場合には、この極東条項は必要がない。国連軍に関する限りはそうなりませんか。極東条項は要らぬじゃないですか。はっきりしているじゃないですか。解釈を統一して下さいよ。どうも話があいまいで、話にならぬ。
  78. 岸信介

    岸国務大臣 私が岡田君の御質問にさっきからお答えしているように、極東条項がなかった場合においては、米軍国連軍の一部として出ていく。今、国連軍というのは、数万国で編成されているということは、お話通りだろうと思います。その場合において、国連軍の一部として出る場合におきましても、当然に安保条約から出られるわけでなくして、その場合においては、国連軍との間に、決議があって協定ができて、そうして日本基地を使うというような場合においては、その協定に基づいて基地使用することを許す。ちょうど朝鮮問題のときと同じであります。ところが、この極東の、この目的の範囲内において米軍行動する場合においては、米軍国連軍でなくても、また、国連軍の一部として行動する場合においても……
  79. 岡田春夫

    岡田委員 それはどういうわけです。
  80. 岸信介

    岸国務大臣 それは、今言っているのは、そこが岡田君はどうしても違うと言われるのだが、要するに、米軍国連軍の一部として行動する場合においても、この安保条約に基づいての目的の範囲内でやる場合においては、そういう特別の協定をしなくても、日本との事前協議によって——出すか出さないかについては、日本はもちろん考えますけれども、そういう問題になる。それが極東条項があるとないとの違いである、こういうことを申し上げておるのであります。
  81. 岡田春夫

    岡田委員 それじゃ伺いますが、先ほど答弁通り米軍として出動する場合にはできるわけですね。私の聞いているのは、国連軍の一部としての米軍として、出動できるかどうかということです。ところが、その場合の米軍というのは国連軍の一部ですよ。そうでしょう。そうでないですか。当然国連軍の一部でしょう。その場合には、六条の適用はないじゃないですか。あらためて吉田・アチソン交換公文のような、別の交換公文を作らない限りできませんよ。どうですか。国連軍行動として出る限りにおいては、国連軍行動としては、第六条に極東条項があるから、国連軍行動の一部として米軍が出れるなんというのは間違いですよ。新たな交換公文が必要でしょう。どうなんです。はっきりしているじゃないですか。その前例があるじゃないか。これは朝鮮動乱における吉田・アチソン交換公文と同じことじゃないか。あれは米軍じゃないじゃないですか。どうなんです。はっきりしているじゃないですか。
  82. 岸信介

    岸国務大臣 問題は、今の吉田・アチソン交換公文については、これは米軍だけじゃなしに、国連軍全体の司令部を置くとか、それからほかの、英国その他の国連軍に参加したものに対するなにがいろいろとありますから、そうすると、純粋の米軍だけの問題とは別に考えなければならぬ、こう思います。
  83. 岡田春夫

    岡田委員 しかし、これは再三申し上げて、私もいやになっているのですが、国連軍の一部の米軍というのは、国連軍ですよ。これがどういうわけで第六条の極東条項で出れるのですか。それをはっきりして下さいよ。極東条項がなくたって、国連軍出動できるのですよ。そうじゃないですか。はっきり伺いましょう。もう一回個条的に伺いますが、国連軍決議があれば、国連軍というものは——その中には米軍も入るわけですね、その国連軍というものは、第六条の極東条項がなくても出動できる。そうでしょう。それから国連軍の中の米軍出動する場合においては、これはあくまでも、日米安保条約である限りにおいては米軍出動であって、国連軍出動としては認めるわけにいかない。第六条の極東条項はそのことを書いてある。どうなんです。はっきりして下さい。
  84. 岸信介

    岸国務大臣 問題は、国連軍が作られた場合においても、在日米軍は、国連軍たる性格と在日米軍であるという性格と、両方持っているわけであります。われわれとしては、日本基地を持って、日本に駐留している米軍なんです。それが国連軍に編入されましても、その在日米軍としての権利義務というものは、当然これは残るのであって、その見地からいって、国連軍の一部に編入された米軍と、国連軍でない米軍との関係を別々にお話しになっているような議論については、われわれは違うと思います。そうして、もちろん国連軍全体については、これは違うことは当然ですが、その一部の米軍は、あくまでも一面において米軍であり、あるいは行政協定やその他の権利義務というものは当然持つのであって、別のものになるわけではない、こういうふうに思います。
  85. 岡田春夫

    岡田委員 総理は非常に重要な答弁をされました。簡単に言えば、国連軍であると同時に米軍と、二枚鑑札だ、だからこれが該当するのだ。だから、外務省情文局解説には、国連軍行動と、アメリカ自衛権をとる行動と、この二つがある。あなたの今言っているのは、自衛権行動の場合を言っているのです。私は、国連軍行動としてどうなんだということを聞いているのです。そういう場合には、新たな協定がなければ、この極東条項がなくたって出せるじゃないですか。はっきりしているじゃないですか、どうしてあなたは、そうでないと言えるのですか。極東条項がなくたって国連軍は出せますよ。日本の国に、しかも、日本の安全のためにアメリカ軍隊が駐留している。その場合に、極東にいろいろな問題があって、国連行動決議をする。その場合に、在日米軍極東条項がなくたって出れますよ。この話だけで私はこんなに時間をとりたくない。まだまだ重大な問題があるのだから……。極東条項がなくたって、国連行動の場合出動できるということは、これはもうはっきりしている。それができるのかできないのか、これをはっきり言って下さい。
  86. 岸信介

    岸国務大臣 さっきから言っているように、これは私は、その場合において当然できるとは考えておりません。国連軍との間に協定を結んで、そして合意に達したところによって出れる、こういう問題であると思います。
  87. 岡田春夫

    岡田委員 それで吉田・アチソン交換公文で国連の協定を結んでいるじゃないですか。だから当然出れるじゃないですか。極東条項がなくたって、当然出れるじゃないですか。お説の通りですよ。極東条項がなくたって、吉田・アチソン交換公文で国連軍は当然出れるじゃないですか。
  88. 岸信介

    岸国務大臣 問題は、そういう特殊の協定をしなければ出られない——岡田君のさっきからの質問は、私ども聞いておると、要するに、極東条項がなかった場合において、日本に駐留している米軍というものは、当然国連決議があれば出れるじゃないか、そうして、国連協力義務として、日本はそれを当然受認しなければならないじゃないか、こういうふうに御質問になっておると思う。私どもは、それは違う、その場合において、国連軍として行動して出ていくためには、国連軍との間の新しい協定に基づいて、そうしてその際、日本日本の自由意思で合意に達するのですから、ただ決議を押しつけられるということじゃなしに、日本として判断して適当な協力関係をきめて、そのきめる中に、今言うように、在日米軍が出ていってよろしいということをわれわれが受認すれば、それはその協定に基づいて出れるわけであって、その協定がなければ出れないのである、そういう違いがあるのじゃないか、こう言っている。
  89. 岡田春夫

    岡田委員 それは新たな協定が必要なのでしょう。それならば、第六条にあるのは米軍出動でしょう。国連軍としての米軍は、六条に極東条項があるなしにかかわらず、出られないじゃないですか。自衛権行使のための米軍だけしか出られないじゃないですか。はっきりしているじゃないですか。
  90. 岸信介

    岸国務大臣 さっきから言っているように、日本基地を持っている米軍出動する場合においては、それが自衛権の発動として出る場合と、国連軍の一部として出る場合との両方があって、その場合においてはいずれも事前協議の対象となる、こういうことです。もしも極東条項がなければ、当然協定をしなければならない、その協定に基づいてできる、こう言ってお答えしている。
  91. 小澤佐重喜

    小澤委員長 この際、松本七郎君から関連質問の申し出があります。これを許します。松本七郎君。
  92. 松本七郎

    松本(七)委員 総理にはっきり伺っておきたいのは、今までの政府答弁でもはっきりしているように、米軍自衛権の発動の場合と国連決議国連憲章に基づいて国連軍としての行動をする場合、この二通りがあるという説明をずっとしてきているわけです。今の岡田君の質問も、アメリカ軍の自衛権発動でなしに、国連軍行動する場合は、今総理が言われたように、それは野放図にやるのじゃないのだ、別に協定を結んで、どの程度発動させるかは、日本が自主的にその別の協定できるのだから、野放しではないのだ、こう総理は言われる。その別の協定できめるということは、今この六条にいう極東条項があろうがなかろうが、国連軍の場合にはこの六条の極東条項とは関係なしにできるのだ、ここをはっきりさせなければならない。それを米軍自衛権の発動、米軍としての行動と混乱して答弁されているから、事態がはっきりしなくなる。そこのところをはっきりしてくれというのです。
  93. 岸信介

    岸国務大臣 さっき最初岡田君の御質問があったように、また、今松本君の御質問があるように、日本にいる在日米軍行動する場合には、国連軍の一部として行動する場合と、自衛権の発動としての場合と二つある、こういうことを申し上げておって、それを政府の解釈が正しいかということについて、外務大臣が正しいと言って、それでは国連軍としてやる場合については、この極東条項があろうがなかろうが、別の協定が要るのじゃないかというお話でありますけれども、そうじゃないということをわれわれ言っているのです。それは国連軍全体として、日本がそれに対してどういう協力をするかという——たとえば、カナダの軍隊基地をやるとか、あるいは国連軍について、米軍行動だけ以外に、米軍行動を離れての行動をする場合には協定が要るということは、これは当然のことでありますけれども、日本に駐留している米軍国連軍に編入されましても、国連軍の一部として出ていくという場合において、極東条項がなければ、その場合においても協定がなければ行動できないけれども、しかし、なにの場合においては、極東条項があれば、その目的の範囲内にて米軍国連軍の一部として行動する場合においても、その米軍行動については事前協議の対象となる、こういうことです。
  94. 小澤佐重喜

    小澤委員長 この際、横路節雄君より関連質疑の申し出があります。これを許します。横路節雄君。
  95. 横路節雄

    ○横路委員 総理大臣にお尋ねをしますが、吉田・アチソン交換公文等に関する交換公文のうちの第一項に、「前記の交換公文は、日本国における国際連合軍隊地位に関する協定が効力を有する間、引き続き効力を有する。」こうなっておりますが、日本国における国際連合軍隊地位に関する協定では、先ほど岡田委員から御指摘がありましたように、「吉田・アチソン交換公文において、日本国は、国際連合国際連合憲章に従ってとるいかなる行動についてもあらゆる援助国際連合に与えることを要求する同憲章第二条に掲げる義務を引き受けることになると述べられているので、前記の公文において」云々となっております。「国際連合加盟国軍隊極東における国際連合行動に従事する場合には、当該一又は二以上の加盟国がこのような国際連合行動に従事する軍隊日本国内及びその附近において支持することを日本国が許し且つ容易にすることを確認したので」云々となっておる。それであるならば、一体吉田・アチソン交換公文等に関する交換公文のこの第一項で、いわゆる在日米軍国連軍出動する場合において、これに対してノーと言えるというのはどこで言えるのですか。国連憲章の第二条に掲げる義務を引き受けることを確認した。そうして、この国際連合加盟国軍隊が、極東における国際連合行動に従事する場合においては、この軍隊日本国内及びその付近において支持することを日本国が許し、かつ容易にすることを確認したとある。そうであるならば、総理大臣にお尋ねします。それじゃ、具体的に私はお尋ねしたいのですが、どういう場合にノーと言えるのですか。いつでもイエスと言うなら、何もそれは事前協議の対象にならぬじゃありませんか。どういう場合にノーと言えるのですか。
  96. 岸信介

    岸国務大臣 今問題は、横路君のおあげになっているのは、朝鮮動乱に関しての吉田・アチソン交換公文に基づいての議論であって、私どもさっきから議論しておるのは、一般的の問題として論じておるのでありまして、この朝鮮事変に関しては、吉田・アチソン交換公文によってその趣旨を尊重すべきことは——そういう協定ができておるのです。これはわれわれの自由意思でそういうことをした。準用しているのですから、それは尊重することは当然でありますが、今は一般的の問題として議論をしておるわけであります。問題は、そういう吉田・アチソン交換公文みたいなものを、今後新たに起こってきたところの極東のなににおいて、その通りにやるかやらないかということは、日本の自由意思でもって、事情を見てきめるべきものであって、そういうものをきめたならば、その内容に従って日本が覊束されることは、これは当然のことだ、こう思います。
  97. 横路節雄

    ○横路委員 そうすると総理大臣、ただいまのお話で、朝鮮動乱に関してのいわゆる国連軍については、吉田・アチソン交換公文が、そのまま趣旨を尊重してやるのだ。岡田委員に対する総理答弁は、一般的な国連軍出動に関して言ったのであって、もしも韓国において再び朝鮮動乱が起きた場合においては、その場合における国連軍出動は、これは吉田・アチソン交換公文によって事前協議の対象にはならない。具体的に私は聞いているのですよ。岡田君が総理に今一般的な国連軍出動について尋ねて、総理がお答えしたというのだから、今あなたは、朝鮮動乱、韓国において再びそういう動乱が起きた場合における国連軍出動については、これは吉田・アチソン交換公文の効力が引き続いて生きているのであるから、従って、私の受けた印象では事前協議の対象にならない、こういうように総理から具体的に答弁があったと思うのですが、その点はどうですか。
  98. 岸信介

    岸国務大臣 これは今度の交換公文ではっきり書いてありますように、その場合の米軍行動につきましても事前協議の対象となるのであります。
  99. 横路節雄

    ○横路委員 それでは、この吉田・アチソン交換公文等に関する交換公文の第一項、「前記の交換公文は、日本国における国際連合軍隊地位に関する協定が効力を有する間、引き続き効力を有する。」この問題から先ほど私が具体的に申し上げている。そうしたら、国連憲章第二条に掲げる義務を引き受けることを述べ、そうして、その国連加盟国軍隊がこの行動に従事する、この軍隊日本国及びその付近において支持することを日本が許し、かつ容易にすることを確認しているでしょう。そうしたならば、総理にお尋ねしたいのですが、どういう場合にそれならばノーと言えるのですか。
  100. 岸信介

    岸国務大臣 今度のこの吉田・アチソン交換公文等に関する交換公文の、1、2、3と書いてあります3をお読み下さるならば、そのことがはっきり出ております。「千九百五十年七月七日の安全保障理事会決議に従って設置された国際連合統一司令部の下にある合衆国軍隊による施設及び区域使用並びに同軍隊日本国における地位は、相互協力及び安全保障条約に従って行なわれる取極により規律される。」これではっきり今の問題に対しては回答を与えております。実際の問題として、この吉田・アチソン交換公文の趣旨によって尊重していくべきことは、これは当然でございますけれども、事前協議の対象となることは、この三項に明らかに規定しております。
  101. 横路節雄

    ○横路委員 総理、私も今総理が指摘されましたこの第三項については、「相互協力及び安全保障条約に従って行なわれる取極により規律される。」そのことは、総理が今おっしゃったように、私は、第六条によるところの事前協議、第六条の実施に関する交換公文のことを意味していると思う。しかし、第一項は何を意味しているのです。「前記の交換公文は、日本国における国際連合軍隊地位に関する協定が効力を有する間、引き続き効力を有する。」という、この第一項は何を意味しているのです。第一項は、日本国における国際連合軍隊地位に関する協定が、そのまま生きているではありませんか。この中には明らかに、先ほど私が指摘しましたように、この吉田・アチソン交換公文は、同憲章第二条に掲げる義務を引き受けることを述べている。そしてさらに具体的には、朝鮮動乱における国連軍出動に関しては、日本日本国内及びその付近において支持することを日本国が許し、かつ容易にすることを確認している。この第一項と第三項というのは——第三項は、なるほど形式的には、この吉田・アチソン交換公文等に関する交換公文で、「取極により規律される。」なるほどそうなっているかもしれないが、第一項では、そうなっていないではありませんか。第一項ではそうなっていないですよ、総理岡田君や私たちが言うている事前協議の抜け穴というのは、なるほど第三項のところでは、「行なわれる取極により規律される。」ということの表現があるが、第一項で、現に吉田・アチソン交換公文は、朝鮮動乱に関する限りは厳として生きているじゃありませんか。これはどう違うのです。
  102. 岸信介

    岸国務大臣 さっきから申し上げているように、この吉田・アチソン交換公文は生きております。この生かすという交換公文をやるわけですから。それで三項において、これがやはり、日本に駐留している米軍行動する場合において、施設使用して作戦行動する場合においては、事前協議の対象となるということを明らかにしております。  それから、今横路君がお話しの、一項において、「前記の交換公文は、日本国における国際連合軍隊地位に関する協定が効力を有する間、引き続き効力を有する。」こういうことをきめておりますから、今お話しのような「当該一又は二以上の加盟国がこのような国際連合行動に従事する軍隊日本国内及びその附近において支持することを日本国が許し且つ容易にすること」ということは、これが生きていることは当然でございます。私どもは、朝鮮動乱に関する限りにおきまして、この国際連合決議なり勧告なりというものが生きております限りにおいては、先ほど岡田委員との質疑応答におきましても、日本加盟国一つとしてそれを尊重すべきことは当然のことだ、しかし、尊重するということは、何でもかんでも、その決議が当然そのまま——われわれの自由意思というものを無視して、そのまま効力を決議として当然発生するということではなしに、やはり加盟国のなにとしては、決議は尊重していかなければならないが、日本国のいろいろな事情というものは、やはり自由判断するなにがある。ただ、朝鮮問題に関する限りにおきましては、吉田・アチソン交換公文というものが、日本との間に、その当時から自由意思で締結されたものが生きておるということにおいて、それに縛られることは、他の問題よりも一そう縛られる点があることは私も認めますけれども、しかしながら、今言った趣旨において、今度の交換公文における三項において、やはり事前協議の対象になるということは、これは間違いないのでございます。  それから、この問題と、他の——先ほど来論議しております、こういうもののないその他の事態において国連軍が組織されるような場合におきましては、やはりこれにかわるような協定をしない限りにおいては、当然には何もできない、こういうのが私どもの解釈であります。
  103. 横路節雄

    ○横路委員 今の総理お話で、この第一項において、日本国における国際連合軍隊地位に関する協定、それは生きている。ですから、先ほど岡田委員との質疑応答の中でかわされたものよりは、朝鮮動乱に関するこの国際連合軍隊地位に関する協定は非常に生きて、しかもこの中にありますように、「憲章第二条に掲げる義務を引き受け」、国連軍隊行動については、「日本国が許し且つ容易にすることを確認した」、この「許し且つ容易にすること」というのは、私たちの解釈からすれば、これは全面的に支持するということだと思う。その言葉の表現が、「日本国が許し且つ容易にすること」なんです。  そこで、私は総理にお尋ねしたいのですが、それではノーと言うのはどういう場合なんですか。(発言する者あり)いや待って下さい。このことですね。韓国において、かりに再びいわゆる共産主義勢力の侵略があった場合に、それに対して国連軍は発動するのですから、その国連軍が発動する場合において、先ほど総理から、一般の国連軍出動よりは、朝鮮動乱における国連軍出動は、この交換公文によって非常に問題が現実的になってきている。私は、全面的に支持するというのは——日本国が許し且つ容易にすることを確認した」というのは全面的だと思うが、国際共産主義の勢力が韓国に対して侵入を開始した、国連軍出動した、その場合に、事前協議によって、この国連軍日本基地出動して戦闘作戦行動に出ることを、ノーと言う場合にはどういう場合があるのですか。(発言する者あり)
  104. 岸信介

    岸国務大臣 これは実際問題、事実問題、どういうことが起こるかわかりませんから、われわれはもちろん事前協議の対象としておるわけでございますが、事前協議があった場合に、そのときの事態において日本態度をきめなければならぬと思っております。ノーと言う場合が絶対ないとは考えておりません。しかし、どういう場合だということは、そのときの情勢でなければ、今具体的に、場合々々をあげることはむずかしいと思います。
  105. 横路節雄

    ○横路委員 私は、今こちらの方から、韓国に対して国際共産主義勢力の侵入があった場合に、いわゆる国連軍出動する場合にノーと言うことがないという。そのノーと言うことがなくて、常にイエス、イエスであれば、事前協議の対象には何ら必要はない。韓国におる国連軍在日米軍である国連軍出動する場合においては、それは総理がたびたび言われているように、国際共産主義勢力が韓国に侵入を開始したときに、国連軍出動ということになりましょう。それ以外に、韓国にいるこの国連軍というものは、そのほかに出動することはありますか。ないじゃないですか。(「ない」と呼ぶ者あり)こちらも、しきりにないないと言われる。なければ、ノーと言うことがないではありませんか。ノーと言うことがないということは、国際連合軍隊地位に関する協定のように、常に国連軍行動については、「日本国が許し且つ容易にすることを確認した」、全面的に支持するのだから、支持する以上は、事前協議の対象にならないじゃありませんか。だから第三項で、形式的には他の「取極により規律される。」と書いておいて、第一項で、厳としてこの国連軍地位に関する協定を生かして、事実上は事前協議の対象にはならない。ですから、もしも事前協議の対象になるというならば、こういう場合には事前協議の対象になるのだということを総理からおっしゃっていただかないと、私たちは何にもわからないじゃありませんか。
  106. 岸信介

    岸国務大臣 問題は、朝鮮問題に関して、今休戦の状態になっておりますが、今後事態がかりに悪化して、在日米軍国連軍の一部として、日本基地使用して作戦行動をするという場合においては、すべて事前協議の対象となるわけであります。そうして、いかなる場合においてもイエスと言うかということは、一項のなにの趣旨はそういう意味ではないのでありまして、国連軍に対して全体に支持することを許すとか、今おあげになりました条文というものを、横路君の言われるように、朝鮮問題に関する限り、国連軍行動に関する限りは、日本はもう一切自主的の立場から文句は言えないのだという意味には、私どもは解釈いたしておりません。従って、この事前協議は、作戦行動する場合はすべて事前協議になる。そして、その場合に、われわれがすべてイエスと言うわけではないということを明瞭に申し上げたい。
  107. 横路節雄

    ○横路委員 総理は、先ほどから私がお尋ねしている、それならばノーと言うのはどういう場合かということには、一つもお答えがないのです。もしもノーと言う場合には、こういう場合にノーと言うのだということが、一つ総理からお話があれば、なるほど政府もそれに対してはノーと言う場合があるのだな、こう思うけれども、今のお考えであるならば、イエスと言うことにしかならないではありませんか。私は、この第一項にいう、この協定が効力を有しているのだから、この国連軍行動については、「日本国が許し且つ容易にする」ということは全面的に支持するということであって、これは総理がおっしゃる、ある場合によってはノーとも言う、そのある場合とはどういう場合なんです。もしそれが言えたならば承っておきたいし、そうでなければ、私は関連ですから……。
  108. 岸信介

    岸国務大臣 先ほどから私どもと横路君と意見の違うことは、今一項において全面的の支持であって、一切日本の自由意思というものは言えないのだというような意味で、一項があるとは解釈いたしておりません。従って、三項の事前協議というものは、すべての作戦行動については事前協議をするということを認めております。ただ、どういう場合にノーと言うか、いつでもイエスと言うのではないかということに対しては、われわれはそうじゃない、こういうことを答えております。ただ、どういう場合にノーと言うんだということを事例をあげて言え、こう言われるのでありますが、それは事態によってわれわれは判断すべきものであって、今それをこういう場合だと言えということは、それは無理であろうと思います。
  109. 横路節雄

    ○横路委員 それでは関連ですから、これで終わります。
  110. 岡田春夫

    岡田委員 私は、これは序の口の話なんで、まだ入りたいのですが、一時ごろまでもう少し深めたいと思います。  先ほどの御答弁を伺っておりますと、少なくとも極東条項がなくても、国連軍行動として日本基地を使うことができる。このことまではお認めになった。この点は間違いないと思うのですが、一つ確認しておきたい。
  111. 岸信介

    岸国務大臣 ただ、そのできるということについては私も認めますが、当然できるのではなくして、国連軍との間の協定があって、その協定に基づいてできる、こういうふうに私どもは解釈いたしております。
  112. 岡田春夫

    岡田委員 その点は、今まで政府国連協力の原則を盛んに訴えられておっただけに、これは当然できるという解釈に立つべきであると私は考えておりますが、この点についていろいろ質問をして参りますとほかの方へ進めませんから、続いて次の方へ進んで参ります。あとでまたこの点は質問をすることにいたしまして、留保いたしておきます。  第二の点ですが、これは藤山さんに伺います。先ほど外務省情文局解説について私は御答弁を求めたのでありますが、その通りでありますという御答弁があった。それはここに原文がありますから……。その外務省情文局解説の第二の場合、すなわち、在日米軍自衛権行使としてとる場合にも、第六条の適用によって、いわゆる日本基地から出動できる。ここに書いてありますから、もう一度言いますが、米軍アメリカ自衛権行使のために第六条の極東条項に基づいて日本基地から出撃ができるか、これについては、ここで、できると書いてありますが、それは間違いございませんか。
  113. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 間違いございません。
  114. 岡田春夫

    岡田委員 出撃ができる、こういうことなんですが、それでは、ここで私が非常に重大に考えている点があるのであります。今、自衛権行使のために在日米軍日本基地から出動できる、こういう御答弁があったのですが、それでは、アメリカ自衛権行使のために出動できるという明文上の規定はどこにも書いてない、どこに書いてあるのですか。ないじゃないですか。日本自衛権行使の点はわかるにしても、アメリカ自衛権行使のために極東の地域に対して出動ができるという、あるいは日本の安全でもいいのですが、しかし、安全の場合は混乱しますから除きます。極東の場合だけにしましょう。極東条項について、アメリカ自衛権のために出動できるという規定は全然ないじゃありませんか、どこにあるのですか。
  115. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 一般国際法の観念からいいましても、国連憲章趣旨からいいましても、自衛権というものを持っておることは当然でございまして、アメリカがその自衛権行使をし得るということは、これは当然のことでございます。
  116. 岡田春夫

    岡田委員 第六条で、極東条項に基づいて自衛権行使ができるというのは、六条のどこにその含みがございますか。
  117. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 六条は施設区域の供与に関する条文でございまして、出撃その他の問題について、直接に条文にうたっておるわけではございません。
  118. 岡田春夫

    岡田委員 それじゃ、四条、五条にも明文上の規定はないわけですね。
  119. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 当然アメリカ自身が集団自衛権と個別的な自衛権を持っております。
  120. 岡田春夫

    岡田委員 それじゃ、国連憲章規定に基づいて、この条約によってアメリカ自衛権行使として極東への出動ができる、この点は間違いないのですね。総理大臣、もう一度念を押しておきます。総理大臣極東条項というのが第六条にございますね。この極東条項に基づいて極東の地域に在日米軍出動できる、これはさっきから答弁なすった。これは憲章自衛権行使に基づいてやるのだ、これは間違いないですね。
  121. 岸信介

    岸国務大臣 アメリカ自衛権を発動する場合は、これは私は、憲章の五十一条に基づいて、個別的または集団的のそういう事態があったとするならば、その場合に、日本に駐留しておる米軍出動するという場合があるだろうと思う。その場合には事前協議の対象となる、こういうことであります。
  122. 岡田春夫

    岡田委員 私は、事前協議のことを言っているのじゃないのです。出動です。たとえば、事前協議の場合には、戦闘作戦行動の場合、これもいわゆる米軍軍事行動一つに入りますけれども、それ以外の一般的な軍事行動、簡単にいえば、それも含んでいいです。第六条で極東アメリカ出動できるのだ、これはさっきから再三御答弁になりましたが、間違いありませんね。     〔発言する者あり〕
  123. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 六条でもって出動ができるのではなくて、アメリカは固有の集団的自衛権と個別的自衛権を持っておる。従って、いずこにおりますアメリカ軍も、自分に対する攻撃に対しては個別的自衛権あるいは集団的自衛権を発動し得る、こういうことであります。
  124. 岡田春夫

    岡田委員 さっきからこっちの方でうるさいですが、極東条項があるというのは、国連行動の場合においても、これがあることによって日本基地使用できるのだ、こう言っているわけですね。ですから、これは自衛権行使の場合においても日本基地使用できるのだ、こういう意味で御答弁になっているので、これはいいのですね。ところが、はっきり伺いますが、それでは、その場合のアメリカ自衛権は、当然これは集団自衛権と個別自衛権二つに分けられると思いますが、そうでございましょう。
  125. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 先ほど来申しておりますように、アメリカは集団自衛権と個別的自衛権を持っております。
  126. 岡田春夫

    岡田委員 それでは伺いますが、アメリカ極東に個別自衛権として出動ができるというのはどういう意味ですか。アメリカが個別自衛権出動できるというのは、極東アメリカの領土、領域である以外にはないじゃないですか。個別自衛権行使というのは、自分の主権の及ぶ範囲であって、極東全域がみずからの領土であるという観点に立ってこれが出されているのじゃないですか、はっきりしているではないか。どうなんです。
  127. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 そんなことはございません。
  128. 岡田春夫

    岡田委員 どういうようにございませんか、具体的におっしゃい。
  129. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 たとえば、沖縄の場合でもそうでございますし、あるいは艦船の場合でもそうでございます。
  130. 岡田春夫

    岡田委員 沖縄その他に出動できるというのは、極東における国際の平和という限りにおいては、極東全域を意味しています。極東におけるアメリカの領域または権益を守るためにと書いてあるならば別だが、極東における国際云々ということは、明らかに極東全域をさしている。極東ということは全域であり、従って、極東の一部にあるアメリカの領域という意味ならば、この条章によっては適用できないじゃないですか、どうなんです。
  131. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 領域という、そういう意味ではございません。極東に何か起こりまして、アメリカ軍隊自身に対して、あるいはアメリカの権益に対して侵略的な攻撃があったという場合には、当然アメリカ自衛権を発動できる、こういうことでございます。
  132. 岡田春夫

    岡田委員 いや、私の伺っているのは、条文の上に「極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、」このために個別自衛権行使ができる、こういう場合には、あなたの答弁していることは、極東におけるアメリカの領域、アメリカの権益を守るためにという規定、いわゆる極東の中に地域限定があるならば別だが、この条約を見て、極東の中のどこだということはどこにも出ていない。アジアのほかの国がこの条文を読んで、この条文の極東における国際の平和と安全ということは、極東全域を意味するとアジアの諸国が解釈したらどうする。明文上何らの規定がないじゃないか。はっきりしているじゃないですか。アメリカの権益その他というのは、それじゃここに書き入れるのですか、どうなんですか。
  133. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 国連において認められておる自衛権というものは、はっきりいたしておるわけでありまして、そういう意味において、ただいまお話のような誤解は起こらないと思います。
  134. 岡田春夫

    岡田委員 国連における憲章はわかっていますよ。憲条の五十一条なんか私はよく覚えていますが、それよりも、ここに書いてあるのは——何といっても、この安保条約はアジアの諸国で非常に問題になっている。このアジアの諸国で問題になっているときに、アメリカ日本基地使用して自衛権行使する場合に、集団自衛権行使してこれをやるんだというならばまだわかるけれども、個別自衛権行使して極東の全域に行動ができるという解釈をするとするならば、これは明らかにアメリカの侵略性を現わしているじゃないですか。極東全域はアメリカだということを意味しているではないか。
  135. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 そのようなことは集団自衛権と大へん違うのでありまして、たとえば、ヨーロッパにいるアメリカ軍隊がやられた場合には、アメリカは当然アメリカ自身の個別的自衛権を発動するだろうと思います。どこにおっても、アメリカ軍隊が攻撃されたときには、それは個別的自衛権を発動する。ですから、個別的自衛権の発動は、何も極東に限られておるわけではございません。だから、そういうことによって何か誤解が起こるという意味は、われわれは考えておりません。
  136. 岡田春夫

    岡田委員 どうしてですか。極東という地域全域を指定して、その中において行動がとれる、それは個別自衛権行使できるのだという、どうしてそういう誤解がないようにできますか。集団自衛権ならば、その解釈はできますよ。個別自衛権極東の全域において行使できるなどという解釈ができるとするならば、その前提は、極東が全部アメリカの領土であるという前提に立たない限り、できませんよ、どうなんですか。はっきりしているじゃありませんか。
  137. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 それは、そんなことはないのでありまして、アメリカにおきまして、アメリカ自衛権を発動するということは、それは何か攻撃があった場合、侵略を受けた場合に初めて発動するのでありまして、極東全域を自分の領土のようにしてかけ回るという意味ではありません。そういう実態が起こったときに初めて個別的自衛権が発動される。そういうことが起こらなければ、全域に対して何かするということはないのであります。
  138. 岡田春夫

    岡田委員 私は、なぜこれを言うかというと、米台条約、米韓条約その他をすべて対比してごらんなさい。この場合には、はっきりとアメリカの領土、領域というものを指定してある。極東の地域内における領土、領域というものを指定してある。そしてまた、相手国の韓国あるいは台湾の領土、領域も指定してある。この場合には、その二つの地域のいわゆる個別自衛権をそれぞれの国が持ち得ることが条文上明らかになっている。ところが、この安保条約には、アメリカの個別自衛権行使し得る領域については全然書いてない。極東という全域に対して個別自衛権がとり得るように書いてある。これはもうはっきりしているじゃありませんか。あなたは、国連憲章の五十一条で個別自衛権、集団自衛権行使ができるというようなことを言う。そんなことは常識なんです。それで、そういうようなことだけでは、この条約としての体をなさないのです。なぜならば、これは米台、米韓条約、両方を調べてみても、アメリカが個別自衛権行使し得る場合は、アメリカの領域、管理下にある地域と、はっきり書いてある。極東の場合には何もない。安保条約には何もないじゃないですか。それなら、極東の全域にわたって行動ができるじゃありませんか。これははっきりしている。できるでしょう、総理大臣答弁を伺いましょう。
  139. 岸信介

    岸国務大臣 個別的自衛権というものは、自分の領土、領域であるとか、あるいは管理下にあるところが他から武力攻撃をされた場合に、その国がこれに対して自衛権をとるというのが個別的自衛権でありまして、それは憲章五十一条から当然出てくることであります。従って、今米台、米韓の条約をお引きになりましたが、何もそれで個別的自衛権をきめておるわけでもありませんし、また、先ほど来問題になっておることは、何かこの条文によって——六条のいわゆる極東条項によって、アメリカ極東全体に対して個別的自衛権を発動し得るというふうに御解釈になっておるようでありますが、そういうことは、一切政府側からは答弁をいたしておりません。政府側からの答弁は、個別的自衛権というものは、国連憲章五十一条できまっておるように、その国の領土、領域、あるいは管理下にある地域が他から武力攻撃をされた場合に、これに対して自衛権を発動する場合が個別的自衛権であって、アメリカ極東の範囲内において領土を持ち、自分の領域もしくは管理下にある地域を持っておる限りにおいて、これが他から武力攻撃を受けたという場合においてアメリカ自衛権を発動するのは、これは個別的自衛権である。そうして、それが直ちに極東全体にそういう個別的自衛権を発動するというようなことは、答弁もいたしておりませんし、条約上の何らの根拠はないのであります。
  140. 岡田春夫

    岡田委員 伺いますが、それじゃ、米台、米韓条約の例をあげてもけっこうなんですが、米韓、米台条約の場合においては、アメリカが個別的自衛権行使する対象として、たとえば米韓条約は、「現在それぞれの行政的管理の下にある領域」云々と書いてある。この安保条約に基づくと、第五条には、確かに米軍基地というものがアメリカの個別自衛権行使し得るものとして規定しております。しかし、私がここで問題にしておるのは、第四条、第六条において、特に第六条において、日本基地使用するという場合において、「極東における国際の平和及び安全の維持」ということが書いてあるならば、その場合において自衛権行使する、特に、その自衛権の中で個別自衛権行使するとするならば、極東の中におけるアメリカの領域その他の限定がなければ、この条文では、いかようにしても、これはアメリカの領域だけを個別自衛権によって守るということは解釈できない。この条文を見た限りにおいては、いかようにしても解釈ができない。その点を、条文上明らかにしていただきたい。
  141. 岸信介

    岸国務大臣 先ほど来お答えを申し上げておるように、個別的自衛権というものをこの条文に書く必要はない。それは、国連憲章のなにから本質的にきまっておるもので、また、今、米台、米韓の条約をおあげになりましたが、これは私は、むしろ、いわゆる相互防衛——お互いが、そういう地域を武力攻撃された場合において、集団的な自衛権を発動して相互防衛をする義務の地域をきめておるものだと思います。いずれにしても、個別的な自衛権というものは、国連憲章によって、先ほど来私がお答えを申し上げておるように、領土、領域であるとか、あるいは管理下にあるところであるとか、あるいは軍隊であるとか、軍艦であるとかいうようなものは、これはどこにおっても入るでしょうが、そういうものが他から武力攻撃を受けた場合において、これに対して自衛権を発動する場合だけを個別的自衛権というのであって、これを条約に書いておらないからそういうことがわからないということは、私は、むしろ、どうも岡田君の御質問は、私に趣旨がよくわからないのですが、個別的自衛権というものは、国連憲章から、今、言っておるような自国の領土や自国の特別に持っているところだけしか入らないということは、当然だと思います。
  142. 岡田春夫

    岡田委員 その点も、あと問題がありますが、もう少し進めなければ、どうもいけないので……。  今お話のように、米韓、米台条約においては領域の指定が明らかになっておる。ところが、日本の場合に、極東の中におけるアメリカの領域あるいは艦船その他を含む権益、こういうものの何らの指定がない限りにおいて、そのような解釈を第三国からされてもやむを得ない。これは明らかである。  それでは、続いて集団自衛の問題に入って参りますが、アメリカ極東において相互防衛条約締結しておる国はどれくらいありますか。そうして、国の名前をあげていただきたいと思う。
  143. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 極東でありますが、米比相互防衛条約、それからANZUSと申します米、ニュージーランド、オーストラリア間安全保障条約、それから米韓、それからSEATOと申します東南アジア集団防衛条約、それから米華相互防衛条約、これが全部であります。
  144. 岡田春夫

    岡田委員 この相互防衛条約に基づいて、アメリカはこれらの国々に対して集団自衛権行使するところの義務——いや、国連憲章では権利ですね、共同防衛の義務を負っておることになると思いますが、それでよろしゅうございますか。
  145. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 その通りでございます。
  146. 岡田春夫

    岡田委員 それでは、そういう義務に基づいて出動をしなければならないということも当然だと思いますが、それは、そういう条約規定に基づいて当然そういうことになりますね。
  147. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 それは米軍出動するわけでございますから、米国の義務としてやることだと思います。
  148. 岡田春夫

    岡田委員 それでは、私ここではっきり申し上げたいのは、先ほどから問題にしております、極東条項を入れたという意味がここにある。極東条項を入れたというのは、極東諸国に対してアメリカ軍隊出動し得るために日本基地提供する、そのアメリカ軍隊というのは、先ほどから総理も何度も言われているように、国連軍との二枚鑑札のアメリカ軍隊である。あるいはまた、アメリカ軍隊は、在韓米軍という形で条約上の義務を負っている。あるいは台湾に対しても、アメリカ軍隊義務を負っている。こういう義務を履行するために、極東全域に出動することが可能であるために日本基地使用する、そのことのためにこの極東条項を入れた、そう解釈せざるを得ない。このことが、すなわちNEATOであり、こういう形でNEATOの体制を確立しておるというのが極東条項である。私は極東条項が無意味であるとか、あるいは不要であるとか言うのではなくて、このNEATOの事実上の完成のために極東条項を入れたんだと解釈せざるを得ないが、藤山さん、どうですか。
  149. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 極東条項は、現行安保条約にもあるわけでありまして、われわれは、やはり極東の平和と安全というのは、日本の平和と安全にも、前々から申し上げております通り影響があるわけでございます。従って、そういうことについて両国が関心を持っておるということも事実です。しかしながら、極東の範囲に出撃するとかなんとかいうような、その地域的な問題として、われわれはこれをあげたわけではございません。両国がやはり関心を持っておる、そうして、そういう場合にわれわれは事前協議でもってその行動を規制して参るわけでありますから、別段そういうNEATOになろうというような心配はございません。
  150. 岡田春夫

    岡田委員 藤山さん、そういう通り一ぺんな答弁ならば、私、さっきから申し上げる必要はないのです。米韓、米台条約に基づいて、アメリカ軍隊は両国に対して義務を負っている。この義務に基づいて、極東地域に対して出動しなければならない。この出動のためには、第六条に基づいて日本基地使用することが必要である。そのために、第六条においては、「日本国の安全」という言葉と、もう一つ別に「極東における国際の平和及び安全の維持」、この点を明らかにしている。すなわち、日本の国の安全だけならば、日本国の安全だけでいいのです。さっきから答弁を繰り返しているように、国連行動の場合にも、極東条項がなくても出動できる、基地が使える、そのようなものであるならば何も書く必要はない。極東条項を入れたというのは、アメリカが韓国、台湾に対して義務を履行するために極東条項を入れている。これ以外に解釈のしようがないじゃないですか。どうですか、藤山さん。その点ははっきりしていると思うのです。その点をはっきり答弁なさい。
  151. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 はっきり申し上げますけれども、米韓条約あるいは米台条約等でもってアメリカが負っている義務を履行するために、こういうものを入れたわけではございません。われわれとしては、前から申し上げております通り極東の平和と安全というものは、日本の平和と安全にも影響があることむろんでございます。また、日本の平和と安全を維持するためには、極東の平和と安全が維持されることが必要でございます。そうして、防衛庁長官あるいは総理もたびたび言われておりますように、われわれとしては、この条約というものは平和的な条約でございまして、そうして、抑制力を持っておるというふうにわれわれは考えておるのであります。従って、そういう意味において、極東の平和と安全というものは大事である。決して米韓、米台条約アメリカ義務を共同してやるために入れたものではございません。
  152. 岡田春夫

    岡田委員 あなた、そういう答弁されるなら、どういうようにして、米軍が米韓、米台条約義務に基づいて行動している、あるいは第六条に基づいて、あなたの言うように行動している、それをどうやって区別するのですか。
  153. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 日本におります在日米軍がそういうような行動をする場合には、われわれは事前協議によって協議をいたすのでありまして、それによって日本態度ははっきりいたすのであります。
  154. 岡田春夫

    岡田委員 それじゃ、具体的に伺いましょう。これは先ほどから岸総理も言われておるし、この前、李承晩問題で高橋さんも答弁しておる。この点について具体的に伺いますが、国連軍の中に韓国軍も編入されているという答弁、それから、国連軍というものは在日米軍と二枚鑑札だということ、これは岸総理がはっきり答弁しましたね。それならば、第六条に基づいて、日本基地国連軍は自由に入ってこれるし、国連軍に編入されている韓国軍も自由に入ってこれるじゃないですか、どうなんですか。これは明らかに日本基地を韓国軍が利用し、日本の自衛隊と共同作戦ができるじゃないか、はっきりしているじゃないですか、どうなんですか。
  155. 岸信介

    岸国務大臣 それは違っているようです。
  156. 岡田春夫

    岡田委員 どうして違う、総理、あなたが答弁している。
  157. 岸信介

    岸国務大臣 いや、違っております。その違っていることを、詳しく条約局長から説明いたさせます。
  158. 岡田春夫

    岡田委員 総理に伺いますが、総理は、国連軍在日米軍は二枚鑑札であるということはお認めになりましたね。これはお認めになりましたね。
  159. 岸信介

    岸国務大臣 現在、朝鮮動乱に対する国連軍としては、これはアメリカ軍のうちにおきましても、国連軍に編入されているものと、そうでないものとがありまして、これは全部がそういうふうに二つの資格を持っておるとは、朝鮮動乱に関する限り申すことはできません。しかしながら、この必要があれば、いつでもその両方の資格を持ち得るような状態にあることは、これは認めます。また将来——先ほど一般的な問題として論じたときにおいては、そういう場合における国連軍の一部をなしておる米軍は、やはり米軍であるという二つの資格を持つということは、これは私申し上げた通りであります。朝鮮動乱に関して現在存している国連軍というものは、これはごく少数のものがそれに属して、特別の地位を持っておるようであります。
  160. 岡田春夫

    岡田委員 それはあなたのお答えの通り、吉田・アチソン交換公文に基づく。その交換公文で、その国連軍は、当然日本の国内について安保条約に基づくいろいろな特権、権益、これが活用できることになっておることは、先ほど横路君に対する答弁で明らかなんで、そうでございましょう。国連軍は吉田・アチソン交換公文で全く同じ待遇が与えられているわけですね。そうでしょう。
  161. 岸信介

    岸国務大臣 おそらく、先ほど質問がありまして、私は、そうできないということを申し上げましたが、それの詳しい説明をまだお聞き取りにならないで、いわゆる韓国の軍隊については、私どもは……。
  162. 岡田春夫

    岡田委員 韓国は別として……。
  163. 岸信介

    岸国務大臣 アメリカ軍隊——国連軍は、吉田・アチソン交換公文できまっている権利、義務を持っておる、こういうことであります。しかし、韓国軍は別の地位を持っておるのだということを——だから、日本に来て、日本基地使用することができないのだという結論だけを申し上げまして、この違いについての説明は条約局長から聞いて下さい、こういうことを申し上げました。
  164. 岡田春夫

    岡田委員 それでは、あなたの場合には、韓国軍が国連軍に編入されておるという答弁を訂正されるなら、それでもけっこうです。
  165. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 ただいまの点は、この前の御答弁のとき、現段階において編入するというのは正確ではないというふうに訂正させていただいたと記憶いたしております。すなわち、韓国軍は国連軍の指揮命令のもとにあるということであって、編入された軍隊ではない、また、日本にあります国連軍協定も、韓国は当事国ではございませんし、すなわち、国連軍としての韓国軍ではありません。韓国軍は国連軍の指揮命令下にあって、国連軍ではない扱いでございます。
  166. 岡田春夫

    岡田委員 しかし、そういっても、実際にやっているじゃないですか。この間、北朝鮮に帰国する場合において、李承晩軍隊国連軍の命令で立川に入ってきているじゃないですか。そして、あれが爆破計画をやったことが堂々と新聞に出ておるじゃないですか。あの通りはっきりしておるじゃないですか。あれは国連軍に韓国軍が編入されているか、あるいはアメリカ軍としての国連軍が指令をしたか、どちらかによって日本に入ってきているじゃないですか、立川基地に入ってきているじゃないですか。これはどうなんです。はっきりしているじゃないですか。
  167. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 立川へ韓国軍が国連の資格で入ってきたという事実はございません。
  168. 岡田春夫

    岡田委員 事実はございませんといったって、あのときにはっきり名前まで出ていたじゃないですか。あなたはとぼけているのですか。それじゃ、具体的に伺いましょう。この間、三月十六日から十二日間にわたって、アメリカと台湾との陸海空三軍の演習、ブルー・スターという演習が行なわれたはずですが、これは赤城さん御存じでしょう。
  169. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 それは承知しております。
  170. 岡田春夫

    岡田委員 この三軍の演習の場合に、在日米軍は参加しましたか。
  171. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 調査の上答弁いたします。
  172. 岡田春夫

    岡田委員 こういうことでさえ、日本政府はわからない。アメリカには全部目隠しされているから、何をされているかわからない。原爆が入ったって全然わからない。赤城さん、そんなことわからないのですか。入っているでしょう。加藤防衛局長答弁しなさい。はっきりしているじゃないか。
  173. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 ブルー・スター演習でございますが、三月二十三日から二十七日まで、これは米台両軍でございます。在日米軍といたしましては、第一海兵航空師団が追浜からこれに参加いたしております。
  174. 岡田春夫

    岡田委員 赤城さん、そういうことを覚えておいてもらわないと困りますよ。それじゃ、総理大臣どうです。アメリカと台湾の演習においても、在日米軍が使われている。第六条による日本基地提供によって、アメリカと台湾の演習においても在日米軍が使われる、韓国においても使われる。これがNEATOでなくて何ですか。どうですか。はっきりしているじゃないですか。
  175. 岸信介

    岸国務大臣 それは、もちろん演習のことでございます。そうして、現在の安保条約においては、御承知のように、これは文句の言えないような状態になっております。従って、現在におきましては、あるいは十分事情がこちらの防衛庁にわからないこともあります。それだから、この条約を改正してやろうというのがわれわれの一つの理由になっております。現在の条約においては、そういうことは何も言うことができない、知らないこともあり得る。遺憾ながら、現在の条約のもとにおいては、そういう状態があるのであります。
  176. 岡田春夫

    岡田委員 それでは、岸さんの今の答弁によると、新条約ができたら、アメリカ軍事行動を一切通告する義務を持っているのですか。日本は通告を受ける権利があるのですか。どこにそんなことが書いてあるのですか。書いてないじゃないですか。
  177. 岸信介

    岸国務大臣 これは、この四条において、全体の運用の問題について協議するということが明瞭にされております。従来、連絡や、あるいは協議されなかった事項につきましては、一般的に、全体の条約の施行については協議することになるのであります。
  178. 岡田春夫

    岡田委員 随時協議したからといって、断われないでしょう。断われますか。
  179. 岸信介

    岸国務大臣 断わるとか断われないとかいう問題じゃございません。今の問題は、そういうことも知らないんじゃないかというなにがございましたから、今の条約では事実が明らかにならないこともあるということを申し上げたのでありますが、協議するということは、すべての問題についてわれわれが事前協議を受けるということではございません。事前協議の事項は限定されておることは、御承知通りであります。これについては日本の同意がなければできない、こういうことであります。
  180. 岡田春夫

    岡田委員 演習でさえ在日基地を使う。まして、ほんとうの戦争になったら当然使うのはあたりまえじゃないですか。NEATO体制はこれなんですよ。どうやって拒否できますか。明らかに、演習でさえこうやっている。ここで赤城さんがごまかす……。     〔発言する者多し〕
  181. 小澤佐重喜

    小澤委員長 静粛に願います。
  182. 岡田春夫

    岡田委員 赤城さんや防衛庁がごまかすだろうと思って、台湾の中華民国在日大使館と称するところから出ておる「中華週報」というものをここに持ってきている。この中に、ブルー・スター演習は在日米軍基地を使ってやっていると書いておる。これさえ赤城さんは知らない。あとで局長に聞いてからわかるという程度です。しかも、このようなことが協議にかかるなら、いよいよ極東の危機であるという場合には、当然第六条の適用で在日米軍行動する。それに基づいてNEATO体制ができるじゃありませんか。これがNEATOです。わかりますか。     〔発言する者多し〕
  183. 小澤佐重喜

    小澤委員長 静粛に願います。
  184. 岸信介

    岸国務大臣 岡田君の方は、演習でさえこうだから、ほんとうのときは当然やる、こういうふうな論理ですが、それは逆だと思う。われわれの方は、ほんとうに今のNEATOの実質を持ったような作戦行動をする場合においては、現在はないのですが、事前協議をする。事前協議をして、日本の同意がなければ、そういうことをさせないということによって、今あなたが心配されておるところのNEATO体制ができるじゃないかということは、そういうことはないのであります。ただ、演習の場合に使ってやるということを日本は知らないじゃないかというふうなことにつきましては、今後は条約の全体の運営については協議することになっておりますから、現在の条約のもとにおけるような事態はなくなるだろう、こういうことを申し上げたわけであります。
  185. 岡田春夫

    岡田委員 それじゃ、演習は何条の適用によるのですか、あなたは第六条だと言われましたね。
  186. 岸信介

    岸国務大臣 今申し上げておるように、事前協議の対象じゃありません。これははっきりしておる。しかしながら、四条で、一般的の条約運営の上からいって、いろいろな点について協議する。だから、先ほど来の、防衛庁長官がそういうことを知らないじゃないかというような事態がないように、少なくとも、今後においては、そういうあれはなくなるということを申し上げたのであります。
  187. 岡田春夫

    岡田委員 そじゃ、伺いますが、協議の対象になるのは、演習を含むその他どういうものがあるのか、全部言って下さい。
  188. 岸信介

    岸国務大臣 条約運営に関することについては、全般的に随時協議するということになっておりまして、どういうことがあるかということを一々あげるわけには参りません。条約の運用上、すべて重要なことは協議の対象になる、こういう意味で御理解いただければいいと思います。
  189. 岡田春夫

    岡田委員 しかし、総理はそういうことを言うけれども、安保条約の四条における協議というのは、日本アメリカとの軍の行動の問題ですよ。台湾にいるアメリカ軍と台湾にいる台湾軍との間の演習の問題についてまで協議をされるのですか。それじゃ、フィリピンの問題も、朝鮮の問題も全部やるのですか。
  190. 岸信介

    岸国務大臣 そういうことをやるわけではございません。     〔発言する者多し〕
  191. 小澤佐重喜

    小澤委員長 静粛に願います。
  192. 岸信介

    岸国務大臣 ただ、日本は、この条約については、駐留しておる米軍日本基地使用して演習をやりましても、これは韓国にいる軍隊や、それからフィリピンにいる軍隊や、台湾にいる軍隊がどういうことをしようとも、これはまた米軍であろうとも、それはわれわれの何ら関するところではありませんが、問題は、日本基地を持っておる米軍が、その基地を持つということは、この条約によってできるわけでありますから、それを使用していろいろ重要な影響のあるような行動をするという場合においては、協議の対象になる、こう言っておる。
  193. 岡田春夫

    岡田委員 それでは、あなたはそうおっしゃるけれども、アメリカと台湾の演習は、在台米軍と台湾軍との演習でいいわけですね、何で在日米軍を使うのですか。     〔「アメリカの勝手だ」と呼び、その他発言する者多し〕
  194. 小澤佐重喜

    小澤委員長 御静粛に願います。
  195. 岡田春夫

    岡田委員 アメリカの勝手だといっても、アメリカの意図というのは、明らかに安保条約を通じてNEATOを作ろうということを暴露しているじゃありませんか、はっきりしているじゃありませんか。どうだ、そうじゃないですか。
  196. 岸信介

    岸国務大臣 そういう問題じゃないと思います。アメリカがどこの軍隊を使うかということは、これはアメリカ軍の立場でありますが、アメリカ軍からいえば、各地に駐留させている軍隊のいろいろな事情で駐留地をかえるというようなこともやりますし、従って、今お話のような、これがNEATOになるのだということとは、全然問題は違うと思います。
  197. 岡田春夫

    岡田委員 それでは伺いますが、今のような演習が、この安保条約が通ったとして行なわれた場合、在台米軍と台湾軍の演習だけでいいのに、在日米軍が参加するということについて、これは日本政府として拒否されますか、拒否できないでしょう。拒否できないで、ちゃんとNEATO体制に協力するでしょう、どうですか。拒否もできないよ。はっきりしている。
  198. 岸信介

    岸国務大臣 問題は、どういうふうな範囲で演習するかということが直ちにNEATOになるのだという岡田君の前提というものが、私は非常に飛躍していると思います。ただ、今言ったように、演習する場合において、われわれがそういうものを拒否するかどうかという問題については、いわゆる事前協議として、われわれがはっきり拒否できるところのものについては問題があります。あるいは日本としていろいろな問題があるから、そういうことは一つ差し控えたらどうだというような意見を協議のときに言う場合もありましょう。しかし、それでもアメリカがやるといえば、それを別に拒否するということは、これは四条の協議の性質からいって、そういう性質のものではないと思います。従って、そういうことができないことは、言うを待たないのでありますが、それをもって直ちにNEATOの前提である、こういうふうに論断されるところに論議の飛躍があると思います。
  199. 岡田春夫

    岡田委員 これで終わりますが、今日の段階における演習というものは、これは単なる演習ではない。国際平和に対する脅威を与えるような威嚇演習が多いのであります。こういう意味で、それは実例としてはっきりしている。(発言する者多し)この諸君はわからないから……。
  200. 小澤佐重喜

    小澤委員長 静粛に願います。
  201. 岡田春夫

    岡田委員 はっきりしておきますけれども、台湾の金門、馬祖におけるあの紛争があったときにも、台湾沖においては第七艦隊を中心とする演習が行なわれておる。これは威嚇演習なんです。スエズの場合においても同様なんです。全部が演習という名目でアメリカの侵略主義を明らかにしておる。それに対して、演習だから、今は事前協議はないが、新条約では、第四条の協議でやるのだから、その場合に、演習程度だから協力いたします、そういって、その協力に基づいて戦争が拡大し、日本の方に武力攻撃を受けた場合においては、あなたは第五条の適用に基づいて自衛隊の出動をさして、そうして戦争に巻き込まれる、話の結論はそこなんです。わかりましたか。
  202. 小澤佐重喜

    小澤委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後一時十五分休憩      ————◇—————     午後二時十九分開議
  203. 小澤佐重喜

    小澤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。岡田春夫君。
  204. 岡田春夫

    岡田委員 きょう、運営委員会のきめで四時までということでありますが、私の質問は実はまだだいぶありますから、一時間半くらいしかできないと全部終われないわけであります。従いまして、その時間の許す限り少しやって参りたいと思いますが、事ほどさようにわれわれは慎重審議をやっておるわけであります。  質問を始めて参りますけれども、きょう、いわゆる極東関係における政情として、非常に重大な問題が実は起こっているようであります。その点はもう総理大臣もすでに御存じのように、例の問題の李承晩大統領が辞意を表明したということが伝えられております。これはやはり日本の国にとりましても非常に重大な関係でございますので、李承晩大統領の辞意に対しまして、総理としてはどのようなお考えをお持ちになっているか、こういう点から一つ伺って参りたいと思います。
  205. 岸信介

    岸国務大臣 私、まだ正確には情報に接しておりません。
  206. 岡田春夫

    岡田委員 しかし、あのような情勢のもとにおきましては、総理も御存じのように、たとえば自由党の総裁をやめて、行政関係の最高長官として居すわるというようなごまかし程度では、許されない。李承晩がやめるということが南朝鮮における国民の希望でもあり、そして、そういうことがひいては極東の平和のためでもある、このように私は考えるのでありますが、総理の御見解を伺いたいと思います。
  207. 岸信介

    岸国務大臣 今回の問題につきましても、過半来、正確に事態を把握していくようにいろいろ努力をいたしております。もちろん、日本にとって重大な関心のある、また、影響のあることでありますから、われわれとしても、十分慎重に、正確に事態を把握していくようにいたしたい。今日においていろいろな批評、意見を述べることは適当でないと思います。
  208. 岡田春夫

    岡田委員 この前の私の質問の場合に、総理の御答弁では、前回の大統領の国民投票その他のあの当時の選挙というものが、民主主義のルールから見ても、非常に適当ではないという意味の御見解の披瀝があったように私は記憶しております。これはもちろん当然だろうと思いますが、この点はいかがでございますか。
  209. 岸信介

    岸国務大臣 今回の事件が最後の発火点になった近因は、大統領選挙にある。大統領選挙について今までわれわれが入手しておる情報から申しますと、民主主義国における正常な選挙としては、はなはだ遺憾な点が多い、かように当時も考えておりますし、今日もそう考えております。
  210. 岡田春夫

    岡田委員 それでは、そういう民主主義のルールに反するようなことをやらしました大統領は、当然責任を負うべきだと思いますが、この点はいかがですか。
  211. 岸信介

    岸国務大臣 責任を負うか負わないかは、これは韓国のことでありますから、私の方で申すことは適当でないと思います。
  212. 岡田春夫

    岡田委員 韓国のことは——あなたの場合はどらですか。責任を負いますか。
  213. 岸信介

    岸国務大臣 私は、かくのごとく民主主義に反した選挙をやるようなことは、夢にも考えたことはございません。
  214. 岡田春夫

    岡田委員 主観的には、李承晩も民主主義には反してないだろうと思います。岸さんも主観的に反してないという程度では、問題の解決にはならないと思いますので、続いて次に入りますけれども、きょうは御承知のように、先ほど慎重審議の点でも御要望いたしましたが、数万の国民の請願が実は行なわれているわけであります。この請願というものは、言うまでもなく、憲法で保障された国民の権利でありまして、この請願の趣旨政府並びに国会が正しく尊重するということは、やはり民主国会の原則であろうかと思います。この請願問題、これほど国民の反対が起こっていることについては、現在の政府は反省をして、慎重にその点の考慮をして、その請願の趣旨に沿うようにすべきだと思いますが、この点はいかがですか。
  215. 岸信介

    岸国務大臣 今日行なわれておる請願は、国会に対する請願のように聞いております。国会がどうそれを処理し、お扱いになるかは、国会の議に従うべきものだと思います。
  216. 岡田春夫

    岡田委員 それはお説の通りでありますが、国会の今までの運営等を見ておりますと、ともすれば、自民党の諸君は怒るかもしれませんが、多数の力で押し切っていくというような経過が多い。そうすると、それにもかかわらず、請願者の数は百万をこえるというような膨大な請願で、日本の歴史始まって以来ない、このような請願の動きが起こっているわけであります。この点については、やはり政府としては、国会がきめるときめないとにかかわらず、国民の意思がこのような形で現われているということで、十分この請願の趣旨に留意されることを私は希望いたしたいと思いますが、御見解はいかがでございましょうか。
  217. 岸信介

    岸国務大臣 今申しておるように、この問題は、国会に対する請願で、国会がお考えになることだと思います。もちろん、私は常に申しておるように、国民多数の意見を尊重して国民の世論に耳を傾けていくことが、民主政治の運営上必要なことだということは、私の信念でございます。
  218. 岡田春夫

    岡田委員 それでは、午前中の質疑の中での二、三の問題をもう一度、これは重要な点もありますので、確認をいたしておきたいと思いますが、極東条項に関連をいたしまして、在日米軍日本基地使用する場合、国連行動としてこれをとった場合においては、第六条の極東条項がなくともこれは行動ができる、こういう点の見解を私は披瀝いたしました。ところが、これに対しまして岸総理は、第六条の極東条項がなくとも、国連行動としてはこれは行動することができるのだ、その趣旨の御答弁のあったことは間違いないと思いますが、その点はいかがでありますか。
  219. 岸信介

    岸国務大臣 六条にいわゆる極東条項がなくとも、国連軍が編成されたり、国連決議によって米国が行動するという場合に、日本米軍を使うということはできると思います。ただ、その場合において、当然その決議だけでできるわけではなくて、米軍を含んだ国連軍との間の協定が必要であり、その協定に基づいて行動できる、かようなことであります。
  220. 岡田春夫

    岡田委員 その点でありますが、そういう点から申しまして、新たな何らかの協定を必要とする、それに基づいて、極東条項がなくとも行動ができるのだ、こういう点の御答弁をいただいたわけでございます。  第二の点は、アメリカの個別自衛権行使する場合においても、これは憲章で認められた自衛権行使として認められておるから、だから、この日米安保条約に、アメリカ自衛権について——私の質問しておるのは個別自衛権の問題ですが、個別自衛権についてことさら明文上の規定がなくとも、この安保条約の適用はできるのである、第六条に基づく日本基地使用というのは可能である、このように御答弁になったと思いますが、その点はいかがでありますか。
  221. 岸信介

    岸国務大臣 ちょっと私、御質問趣旨がはっきりしないと思うのですが、私の申し上げておるのは、アメリカが個別的な自衛権を発動する場合は、国連憲章五十一条に基づいて、極東における米国の領土であるとか、あるいは管理下にある地域であるとか、あるいは米国の軍隊や軍艦というようなものが、他から武力攻撃を受けた場合に、これに対してアメリカは個別的自衛権を発動することができ、その個別的自衛権行使日本米軍を使うことができる、そうしてその場合は、もちろん、事前協議とかなんとかいう問題は、別に考えなければならぬことは当然でありますけれども、そういうふうに解釈しております。
  222. 岡田春夫

    岡田委員 それでは、いわゆるアメリカの個別自衛権あるいは集団自衛権、これについては、第六条の規定に基づく極東の平和という主要目的の場合に、このアメリカ自衛権というものは、条約に明文上の規定がなくとも、当然これはとり得る、このように私は解釈いたしておりますが、それでよろしゅうございますね。
  223. 岸信介

    岸国務大臣 米国の持っておる自衛権は、この条約に何ら規定がなくとも、国連憲章によって、個別的並びに集団的自衛権を持つ、かように解釈いたします。
  224. 岡田春夫

    岡田委員 そういたしますと、総理にお伺いいたしますが、国連行動の場合においても、極東条項は必ずしもなくてよろしい、アメリカの個別自衛権行使においても、極東条項がなくとも、憲章の五十一条に基づいて、自衛権行使ができるとするならば、極東条項というものは、この二つの場合には必ずしも必要としない、必要である場合には、アメリカの集団自衛権の場合においてのみ必要である、このように解釈をしてよろしゅうございますか。
  225. 岸信介

    岸国務大臣 それは私は違うと思います。大体安保条約第六条の規定は、言うまでもなく、駐留目的基地使用させる目的を明示してあるものであります。それは反面において、ある意味で、米軍行動についてのある一つの制約的な意味が私はあると思います。しかし、直接には駐留目的規定しておるものであります。従って、今お話しのように、日本に駐留しておるアメリカ軍隊が、この目的があるからそれのいかんによって自衛権が制約を受けるというものじゃなかろうと思います。自衛権を持つ、持たないということは、本質的にきまる問題であって、この六条以下の規定いかんに関係ない、かように考えております。
  226. 岡田春夫

    岡田委員 高橋条約局長に伺いますが、一月二十日付の外務省情文局発表による条約解説によりますと、この条約の第六条においては、いわゆる米軍行動範囲は直接、地域の面から制限をしているものではない、しかし目的の面から限定をされているので、米軍行動はおのずからおおむねこの極東の地域に限られることになるであろうことは当然である、こういっております。といたしますと、先ほどの岸総理答弁によると、明文の上ではアメリカ自衛権についての何らの規定はない、これは岸総理答弁しなくてもわかり切っている。その通りですが、ただ、その場合において、憲章五十一条に基づいて行動をするということであるならば、ここでおのずからおおむねこの極東の地域に限られるであろうことは当然であるということは、法律的にこのようなことは言えないと思いますが、どらですか。すなわち、憲章五十一条の規定に基づいて行なわれる自衛権であるとするならば、これはことさら極東に限定をする必要はないのであります。全世界において自衛権行使が、武力攻撃ということがあった場合において、当然行なわれることになるのであるから、このような目的の面から限定されているという情文局の書き方は、法律上聞違いであると思うが、どうでございますか。
  227. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 ただいまの問題でございますが、その前に自衛権の問題を御指摘になりました。自衛権は、国際法上の理論と申しますか、根拠がございまして、その制限に従うことは当然でございます。これは国際法上の個別的な自衛権の問題であります。また、このことは、この条約に関連しますれば、この条約の第一条におきまして、武力の行使ということ、武力による威嚇、これは完全に禁止されておりますし、従いまして、自衛権行使することは、これはその条約国際法上許された場合において自衛権行使できるということでございます。合法的に自衛権行使できるということ、それと、現実に自衛権行使する場合に、これを事前協議にかけて、これを許可するかどうかという現実問題とは、これは別でございます。すなわち、自衛権行使は合法である。合法であるということが、最小限度のまず限定でありましょうが、合法である以外に、やはりこの第六条の極東の平和安全とか、日本の安全とか、それから交換公文の事前協議という問題が起こるわけであります。確かに自衛権の理論的な問題は、御指摘の通りでございますが、この説明は、そういう問題とは別に、現実問題としてそのようになるということを説明した次第でございます。
  228. 岡田春夫

    岡田委員 今の御答弁についても、いろいろ御質問をしたい点があるのですが、先ほど総理の御答弁からいうと、自衛権行使については何らの明文上の規定はないが、当然なことである、これはいいのです。その通りだと私は思います。それから国連行動においても必ずしも極東条項を必要としないというのであるならば、自衛権行使並びに国連行使に関する限りは、極東条項は全然要らないといってよろしいじゃありませんか。
  229. 岸信介

    岸国務大臣 私の考えによれば、さっきからお答えを申し上げておるように、自衛権というものの本質は、国連憲章によってきまっております。その行動の範囲といいますか、地域的範囲は、これは国連憲章においては何らの制限はございません。程度として武力攻撃に対抗する力のなには、必要最小限度のものでなければならないということはあるけれども、地域的にはない。ところが、日本にわれわれが基地を与えて駐留さしておる米軍目的というものは、あそこに掲げておる二つ目的に限定されておるわけであります。このことは、六条は直接には目的を限定しておるものであるけれども、同時に、そういう目的において日本に駐留しておるわけでございますから、本来その自衛権行動としては、無制限な地域に行動できる米軍も、その駐留目的から、やはり間接的にそういう行動の範囲というものが無制限でなくなってくる、そのことは、同時に、事前協議であるとか、あるいはなぜ極東の平和と安全に寄与するために日本への駐留を米国との間に話をして定めたかということは、やはりその場合における日本に駐留しておる米軍行動範囲というものは、本来無制限なものであるけれども、そんなどこへでも行くというなんじゃなしに、両方が関心を持っておることは、極東の平和と安全、その中核をなすのは日本の安全である、こういう見地から、当然の制約を日米の間のこの協定でする、それをさらに六条に書き、六条の行動する場合における事前協議というものを含めて、そういうふうにアメリカ日本と協定をして制約をしておる、かように考えております。
  230. 岡田春夫

    岡田委員 そうしますと、総理の御答弁は、極東条項というものは、米軍行動の範囲もこれによって限定したものであるという御解釈ですか、どうなんですか。これは解説によれば、行動の範囲は限定しておらない。限定しておらないというのは、米台、米韓その他の防衛条約には限定しておるわけです。そういう関係で、これが違うから、このように断わっているのですか。この極東条項というものは、行動範囲の限定を意味しておりますか、いかがでございますか。
  231. 岸信介

    岸国務大臣 私は、米韓、米台等の条約においては、この条項に当たるところのものについては制約がないと思います。さっきおあげになりました点は、むしろこの条約においては、第五条において、日本の施政下にある領域内における武力攻撃に対して、日米両方が共通の危険と認める云々ということでありまして、今のおあげになりました米台等の条約においては、それをその国の領域だけに限らずして、アメリカの領域やなにを含まして、お互いに明確にしておる。その点は五条のわれわれの問題であって、その行動範囲というものについてのなには、米台等の条約においては制限は全然設けておらないと私は解釈いたしております。
  232. 岡田春夫

    岡田委員 林さん、そういうことを教えたらだめですよ。林さんの教え方が間違っているから、岸さんはそういう答弁をしなければならない。林さんよく聞いておいて下さい。総理もよく聞いておいて下さい。米韓条約を例にあげて申し上げましょう。米韓条約の第四条、「アメリカ合衆国の陸軍、空軍及び海軍を、相互の合意により定めるところに従って、大韓民国の領域内及びその附近に配備する権利を大韓民国は許与し、アメリカ合衆国は、これを受諾する。」「相互の合意により定めるところに従って、」ということには、行動の範囲も含んでいると解釈すべきであります。この点については、日米安保条約の第六条には、何らの規定はない。米台条約にも、相互の合意云々ということは明らかに規定されております。ですから、岸さん、これは林さんからの耳打ちでなくて、実際に条文をごらん願いまして、行動範囲の規定がこのような形でもあり得るということは、一つお認めいただきたいと思います。
  233. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 ただいま御指摘の通り、第四条はそういうふうになっております。「相互の合意により定めるところに従って、」従いまして、この合意がどういうものであるか、この合意の内容によって、おのおのどういう問題であるかが決定してくると思います。ただ、われわれといたしましては、この合意の内容が、今までどういうものであるかは全然わかっておりません。しかし、これに相当するものは、第六条の第二項に書いてございます。すなわち、「前記の施設及び区域使用並びに日本国における合衆国軍隊地位は、……に代わる別個の協定及び合意される他の取極により規律される。」このように書いてございます。
  234. 岡田春夫

    岡田委員 それでは高橋さんに伺いますが、この第二項に書いてあるのは、いわゆる施設協定に関する合意の問題、それ以外の行動範囲にまでこれは規定をされることになるのですか。米台条約のその相互の合意云々という中には、今あなたの答弁された、六条の二項にある、いわゆる行政協定の中における合意の問題も含むが、それ以外のことも当然これに含み得る、これは条約解釈として当然そうなると思うのだが、その点はどうなのですか。
  235. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 この第六条の第二項でございますが、おもに今御指摘になった点は、地位協定のことをお考えになっているかと思います。地位協定におきまして、日本におけるアメリカ軍の軍隊の権利義務云々のことだけをお考えになっているようでございますが、これは必ずしもそれのみに限定しているつもりではございません。そういうような日本における合衆国軍隊地位施設及び区域使用、こういうことは、こういう取りきめによって規律されるということになっておるわけでございます。たとえばこの事前協議の交換公文も、「次のことが同条約第六条の実施に関する日本国政府の了解であることを閣下に通報する光栄を有します。」云々といたしまして、第六条の趣旨としての交換公文が行なわれておるわけであります。
  236. 岡田春夫

    岡田委員 それでは伺いますが、その他の取りきめによって規律されるという中に、米軍行動範囲もきめられるわけですか、その御解釈によると。
  237. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 これは法律的な問題として申し上げますが、ここで書いてあるのは、きめていかぬということじゃないと私は考えております。きめる必要があるかどうかとか、そういう問題、また、きめた先例があるかどうかという問題も別でありますが、それは私はできると考えます。
  238. 岡田春夫

    岡田委員 その解釈はきわめて不十分であると私は思いますが、私はこれはあとで行政協定のときにやります。そういう解釈は出てこないのであります。これは実例であとで伺って参ります。  そこで、今申し上げたように、極東条項がなくとも、自衛権行使においては当然出動ができる、明文上規定がないのだから。それは第六条並びにその他の日米新安保条約には、自衛権行使規定がないわけですから、それならば極東条項は要らないのじゃないですか、岸さん、どうですか。
  239. 岸信介

    岸国務大臣 自衛権の場合は、個別的自衛権と、それから集団的自衛権と、両方あると思います。それに用いることができるということは、先ほど申したように、自衛権の本質からできるわけでございます。しかし、それがわれわれの協定の事前協議の対象になることは、これは当然でございます。
  240. 岡田春夫

    岡田委員 ですから、総理に伺っているのは、個別自衛権行使というものについても別段明文上の規定はない、しかも、この極東ということは、行動の範囲を限定したものではない、目的で使ったものであるということならば、極東条項がなくても、個別的自衛権アメリカ出動できるではありませんかと私は伺っております。
  241. 岸信介

    岸国務大臣 この極東条項といわれておる六条の条約は、先ほど来お答え申し上げておるように、直接には駐留の目的をなにしておる、しかし、同時に、そのことは、反面的に言うて、そういう目的を限定して駐留しておるものでありますから、それが行動する場合において、必然的にその趣旨行動の範囲を規制することになるということを申し上げております。それは直接にこれを限定している、行動範囲をこれで限定しておるというのではございませんけれども、目的をそういうふうになにしておるということから申しますと、日本の駐留しておる米軍行動する場合において、その範囲が本来無制限にあるところの自衛権でございますけれども、米国が無制限に持っておるけれども、日本に駐留している米軍を使う場合においては、その目的をまるで無視した、逸脱したところの使用ということは考えられない、こういう意味において、その行動範囲というものが、おおむね極東の範囲に一致するということをわれわれは申し上げておるわけでございます。
  242. 岡田春夫

    岡田委員 それはこの条約上現われた法律上の拘束ではなくて、政治的なあなたの御見解ではないのですか。何らか合意がございますか。
  243. 岸信介

    岸国務大臣 条約にはっきりとこの駐留目的を限定して書いておるのでありますから、その解釈上からそういう結論になるということを申し上げておるので、ただ私の希望的な、政治的の意見ということではございません。
  244. 岡田春夫

    岡田委員 それでは、ここにある外務省の解釈の行動範囲の制限が地域的な制限を行なっておらないということは、今の総理の御答弁では間違いだと思いますが、藤山外務大臣、どうですか。
  245. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今の総理答弁で間違いではございません。総理の言われましたように、アメリカは個別的な自衛権でどこへでも出られる、しかしながら、との条約目的として日本に駐留しているアメリカ軍というものは、共通の関心のある極東の平和の維持ということでございますから、総理が言われたように、日本に駐留しておる在日米軍というものは、おのずからその行動が制約されるということを言われておるのでありまして、別段発表文と間違っておることはございません。
  246. 岡田春夫

    岡田委員 日米安保条約というのは、日本アメリカとの関係のみならず、この新安保条約に基づいて起こる影響というものは、これは国際的であります。従いまして、日米間の約束のみならず、条文の条項にきわめて不明確な条項がある場合においては、何らかの形でこの解釈を明らかに日米間に合意する必要があると思う。しかも、これを合意した上で海外に明らかにする必要があると私は思います。その意味では、極東条項と書いて、米軍行動範囲は極東である、そして個別自衛権行動においては、極東の中のごく一部のアメリカの領域だけをいう、それからまた、集団自衛権行使においては、極東の範囲を、これは使用目的なのであるが、行動の範囲として大体この程度である、このような解釈をとっているということを、これはどう考えたって私は解釈できないんだが、条文上そういう解釈であるということを、どういう形で藤山外務大臣は明らかにされるんでございますか。
  247. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 従来、愛知委員質問に対してもわれわれは答弁をいたして、政府としての確定の答弁をいたしておるわけでございまして、国会を通じてそれを明らかにいたしておるわけでございます。
  248. 岡田春夫

    岡田委員 国会を通じて答弁をされているあなたの答弁が、きわめてわからないのであります。だから問題になるのでありますし、わからないという理由は、条文に不十分な点があるからであります。条文に不十分な点というのは、あなた方の努力の結果不十分ではなくて、意識的に不十分にし、不明瞭にしたのであります。これは先ほど申し上げた米韓、米台条約の適用と相反しないために、NEATO体制を作るために、不明確な形で条文に現わしたのであります。これが政府のほんとうの意図なんです。これがNEATOであり、アメリカの意図でもある、これははっきりしているじゃありませんか。
  249. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 意識的に不明確にいたしたというようなことは断じてございません。
  250. 岡田春夫

    岡田委員 断じてないならば、この解釈を明確にいかなる方法でやられますか。あなたの国会答弁なんかじゃ明確になりません。
  251. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今までの政府の確定答弁でもって明確でございます。
  252. 岡田春夫

    岡田委員 この点、答弁は私は明確だとは思いません。これは非常に不明確である。極東全域をいって極東と書いて、極東のごく一部のアメリカの権益だけをさす、どこに明確がありますか。あなたの例を考えたってわかるじゃありませんか。藤山といって、藤山姓はすべてが藤山外務大臣である、そんな明確さがありますか。藤山姓のすべての人があなた自身ですか。それなら、どろぼうの中にも藤山という人はいますよ。ともかくもそういう不明確なことで、これでどこで明確であるとあなたは言われますか。極東条項について集団自衛権行使についても、この解説の中で、おおむね極東の範囲を行動し、といっている。おおむねだから、完全にではないんです。あなたの得意のおおむねですよ。外務大臣が得意だけでない、外務省が得意らしいんですね。どこにでもおおむねという言葉を使っている。おおむねというのは、ごまかしという意味です。それではあなたは、個別自衛権の場合には、極東と書いて、極東の一部の、アメリカの領域を意味する、極東と書いて、集団自衛権行動する場合には、アメリカ軍事行動というのは、おおむね極東の範囲である——あるいは出るかもしれませんよ、おおむねだから。これは岸さんも、この前、横路君の質問に答えて、極東の周辺地区に行くかもしれぬと言った。日本の周辺が極東で、極東の周辺にまたその周辺があってということで、範囲が非常に広くなっておる。こういう形で、集団自衛権行使の場合にも、地域の限定は全然ないじゃありませんか。ないということを解説に書いてあるじゃありませんか。これが間違いなのか、この解説が間違いなのか、今のあなた方の言っているのが間違いなのか、どちらかしかないですよ。
  253. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 解説は間違っておりません。アメリカ自衛権行使するときには、先ほど来申し上げておりますように、アメリカの領土なり、あるいは管理しておるところ、あるいはアメリカ自身の軍隊その他が、国連憲章第五十一条によります侵略を受けた場合、不正な攻撃、戦闘行動を受けた場合、それを自衛権を発動して出て参ります区域というのは、自衛権の本質からいいまして、限定がないということを申し上げているわけであります。ただ、この条約におきましては、そういう場合におきましても、極東の平和を維持するという意味からいいまして、おおむねその範囲内であるということは、むろん明瞭であると思います。
  254. 岡田春夫

    岡田委員 この問題ばかりやっていてもしようがないから、これはあとに留保いたします。  続いて、これは条約解釈ですから、高橋さんにも伺って参りたいと思います。先ほどからの御答弁によると、米韓、米台条約によって、アメリカ自衛権行使する義務を負っているわけですね。日米安保条約によっても、自衛権行使義務を負っているわけでございます。どうでございますか、その点は。アメリカの場合です。
  255. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 アメリカの場合、御指摘の通りでございます。必ず自衛権行使するという義務を、第五条で負っているわけでございます。
  256. 岡田春夫

    岡田委員 これは安保条約でございますね。米韓、米台条約も当然その義務を負うのでございましょう。
  257. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 同じ趣旨でございます。
  258. 岡田春夫

    岡田委員 同じでございますね。
  259. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 はあ。
  260. 岡田春夫

    岡田委員 アメリカとフィリピンの防衛条約、SEATOの条約、それからANZASの条約、これらに基づいて、同じくアメリカはこれらの国々に対して自衛権行使義務を負っているのでございますね。その点はどうです。
  261. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 そうでございます。
  262. 岡田春夫

    岡田委員 それでは、NATO、CENTO、それから、全米条約といいましょうか、アメリカ州全体の条約、これに基づいても、アメリカ自衛権行使義務を負っているのでございますね。
  263. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 その通りでございます。
  264. 岡田春夫

    岡田委員 岸さん、お聞き下さい。アメリカはこれらの条約によって自衛権行使義務を負っている。すなわち、アメリカは全世界に自衛権行使し得るということを明らかにしている。これはアメリカの侵略性の現われでなくて何ですか。アメリカが全世界で自衛権をどこでも行使し得るということは、逆に言うならば、アメリカの世界戦略政策の現れなんだ。このような形で自衛権という憲章を悪用して、アメリカは全世界において軍事行動をとろうとしている、この現われなんだ。その一環としての日米安保条約です。その点をはっきり考えなければ、今日の日米安保条約は理解できない。日米安保条約というのは、日本アメリカの関係だけではない。アメリカ立場においては、全世界において、自衛権という名のもとに、憲章五十一条を悪用して全世界に自衛権を持つということを言っている。もしこれが逆に、ソ連がこれと同じ態度をとった場合に、あなた方どう言います。明らかにこれは自衛権の名に隠れたアメリカの侵略政策であります。その一つがこの安保条約であることを忘れちゃいけないのです。この点なんです。
  265. 岸信介

    岸国務大臣 その前提としては、自衛権というものの本質について岡田君はどういうふうに考えられておるか。自衛権というものが侵略性を持っておるということに、私は非常に間違いがあると思う。それからもう一つは、五十一条の名に隠れて乱用するという前提をとっておられますけれども、これまた、私はそういう考えはとっておりません。従って、全世界に対してそういう条約機構を設けて、自衛権、すなわち他から武力攻撃を受けた場合において、それらの地域の平和と安全を守るということが、これをもって侵略性がある、こう論断されることについては、私は全然違った考えを持っております。
  266. 岡田春夫

    岡田委員 明らかじゃありませんか、防衛的な条約にしたって——それならば、全世界においてアメリカの領土が散らばっておって、アメリカの領土を防衛するために自衛権行使する、侵略ではない。どこに世界全体にアメリカの領土がある、全然ないじゃないか。明らかに全世界をアメリカの支配のもとに置こうとしているのが、これが五十一条の乱用である。安保条約のねらいはこれなんだ。その中の一つがNEATOなんだ。NEATOの中に組み入れられているのが、これが日本なんだ。これが新安保条約なんだ。明らかじゃありませんか。あなたは、武力攻撃があった場合——それじゃ、どこから武力攻撃がある。あなたは仮想敵国はないと言った。仮想敵国がないならば、全世界において自衛権の名に基づくアメリカの世界戦略の自衛権組織といわれるこのような軍事同盟体制を作る必要はないじゃないか。仮想敵国がないなら、そんなものを作る必要はないでしょう。どうですか。
  267. 岸信介

    岸国務大臣 その根本の問題につきましては、せんだって来われわれが言っているように、この自衛権というものの本質、先ほど来の議論でもはっきりしたのでありますが、国連憲章五十一条の規定前提とするものである。他から武力攻撃を受けた場合に初めて自衛権という観念はあり得る。いかなる意味においても、こちらから侵略するという意味において自衛権というものは認められておらないことは、岡田君よく御承知通りだと思う。だから、岡田君の議論を裏づけるために、五十一条を乱用して、五十一条の名に隠れて云々という言葉を言われるのでありますが、それ自身は、自衛権というものの本質が侵略性を持っておらないということを私は明らかに是認されておるものだと考えます。われわれは五十一条を乱用するという考えは持っておりません。従って、あくまでも自衛権の本質に基づいての考えでありますから、そういう侵略性の考えは毛頭持っておりません。
  268. 岡田春夫

    岡田委員 五十一条において現実に自衛権の乱用が行なわれているじゃないか。あなた、伺いますが、地中海のまん中あるいは中東付近において何か事態が起こった、アメリカに何の自衛権行使の必要がある、アメリカに何の関係がある。アメリカの権益に関係はないじゃないか。人の国に内政干渉するために、自衛権という名前で干渉するという意図なんだ。これが明らかに出ているじゃないですか。全世界のどこにおいてもアメリカ自衛権行使できるということは、これは国民の常識として明らかだ。全世界においてアメリカ自衛権を使える、これでアメリカが侵略性がないなどとは、国民考えないじゃありませんか。明らかじゃないですか。
  269. 岸信介

    岸国務大臣 これは御承知通り、今世界の——これは根本的のなにですが、世界の大勢というものは、自由主義圏と共産圏との二つのなにに対立をいたしておりまして、全世界という言葉を用いられておりますけれども、それは全世界における自由主義国を防衛するための条約機構をお話しになっていると思います。これに対して共産圏の国々は、共産圏の間におけるやはり自衛的な防衛条約機構を持っておることは、これは私から申し上げるまでもなく、これが対立しておるというのが現在の国際情勢であります。今おあげになりました中近東におけるところの問題については、これはせんだっても、当時の事情を詳しく知っております外務大臣からお答えを申し上げましたように、これは事情が私は違っておると思います。すなわち、その国から要請を受けて、それのなにに基づいて出兵をした、しかし、それが国連ですぐ取り上げられて、国連でどういうふうに処置するかということになったことでありまして、これは今言っているように、当然の自衛権として云々という問題とは、条約機構とは別のものである。国際的にいえば、今全世界は、東西の両勢力が対立しておるということがいわれておる。その間において、両方がおのおの世界の平和を守るために自衛的な安全機構を作っておるというのが、これが国際の現状でありまして、これをもってお互いが侵略性を持っておるという考え方は、私はいずれの方向にとってもそうは考えておりません。
  270. 岡田春夫

    岡田委員 それじゃ、伺いますが、総理大臣、あなたの御答弁の共産圏以外のところは、全世界においてアメリカ自衛権行使できる、それでは、全世界の共産圏以外のところは、もしその五十一条に適用されることがあるならば、アメリカ軍事行動はやり得るのでしょう。そうじゃないですか。そうでしょう。
  271. 岸信介

    岸国務大臣 前提は、武力攻撃がある、いわゆる侵略があるということ、それから全世界のなにが私は二つに分かれておる、こう申し上げましたが、もう少し正確に言えば、どちらのなににも属していない地域もございますから、それらの地域における侵略があった場合に、当然条約機構から自衛権の発動という点は、これは別の点で考えなければならぬと思いますが、いずれにしても、いかなる場合においても、他から侵略を受け、他から武力攻撃を受けた場合にだけ発動するものであることは、これは変わらない、こう思います。
  272. 岡田春夫

    岡田委員 しかし、そう言われるけれども、総理大臣、どうです、五十一条をどこでも行使できるというなら、レバノンの場合だって、五十一条の適用をしたのですか。あれは五十一条の適用をしなかったのですよ。アイゼンハワー大統領は、五十一条を適用したということをあの当時の教書にはっきり書いております。これはここにも資料はあります。ところが、武力攻撃がなかったにもかかわらず、米軍出動した。その場合、藤山さんは、あの国の政府から要請があったから出動したのだ、五十一条ではないのだと必ず言う。ところが、あの国の政府の要請は、そのあとレバノンの国会で否決になっている。しかも、あのときあなたは何と言ったんですか。米軍があそこに出動するのは適当ではないという談話をわざわざ発表したじゃないか。必要があれば、ここにも本が全部ありますよ。五十一条以外にあれはなかった。武力行動というものがなかったにもかかわらず、レバノンにおいて、内戦いわゆる間接侵略の危険があるといって、武力攻撃がないにかかわらず、米軍出動した、これは自衛権行使の名に隠れたアメリカの侵略行動である。どうだ。
  273. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 そういうことはございません。当時の実情は私も知っておりますけれども、御承知通り、レバノンとシリアとの国境に紛争がございまして、国境を越えて武器等が入るという問題がございました。レバノン国自身に内乱の状態があったことは事実でございます。そうして当時の大統領は内閣の同意を得まして、そしてアメリカに出兵を要請いたしたのでございます。ただ、そういう出兵が適当であるかどうかということは、これは別個の問題で、長くおりますことは紛争の種をまくことがあり縛る場合もございますから、そういう意味において、私といたしましては、なるべく早くアメリカが引き揚げることが適当だということを言ったのでございます。
  274. 岡田春夫

    岡田委員 あなたはあのとき国連総会にそのあとで行ったのだけれども、あなた知っているじゃないですか。国連の監視団が行って、外部からの侵略の危険性はないという報告が、国連安保理事会であったじゃないですか。危険があっただけであって、そういう侵略を受けた事実はないという監視団の報告、それさえあなたは否定するのですか。はっきり言っているじゃないですか。
  275. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今申し上げましたように、レバノンは国内に騒擾がございまして、同時に、レバノン国としては、その内戦に用いられている武器等がシリアの国境を越えて入ってきているということで、一方では、アメリカに出兵を、閣議の結果、主権国の主権者として要請した、一方では、国連に対しましてほかの国が心配をいたして、そうして国連の国境監視団を出したことは、御承知通りでございます。その国境監視団の報告というものは、今岡田君の言われますように、必ずしも武器がたくさん通っておる形勢はないということであったわけであります。でありますから、そういう状態のもとに、アメリカが、たとい主権者の要請であろうと、長くあそこに駐在していることは、必ずしも適当でないということをわれわれが申すのは、当然のことでございます。
  276. 岡田春夫

    岡田委員 あなた、それじゃ、監視団の調査の結果、外国からレバノンに対し武器供与その他のことがあったということを事実として認められたのですか。そういう報告があったと言えますか。どうなんです。これにははっきり書いてあるのだから。
  277. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 そういうことを申し上げたわけではございません。国連の監視団が出まして、その監視団の報告によって、そういう事実があまり十分に認められないということでありますから、従って……。(岡田委員「認めなかったのでしょう」と呼ぶ)そうです。あたりまえです。われわれも認めておらない。それですから、レバノン政府の主権者の要請によって出兵しても、長くそこにとまっておることは適当でない。
  278. 岡田春夫

    岡田委員 出兵したことは間違いないじゃないか。
  279. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 間違いじゃございません。レバノン国の主権者の要請によって出たのでありますから、そのこと自体は国際法上で認められていることでございます。
  280. 岡田春夫

    岡田委員 あなたはそのときに声明を出しているが、それは間違いではないという声明なんですか。あなたのこの声明とはだいぶ違うのですが、「外国からの干渉が原則として否定せらるべきであることは言うまでもないが、日本政府としては、レバノンの紛争が果たして外部からの干渉によるものであるか否かに付ては調査を要すると言う見解を今日まで採ってきたのであって、現在までのところ、国連が明らかにした報告も必ずしも外部からの干渉と言うことは確認されないと言っている以上、この問題に付ては各国とも慎重な態度をもって善処しなければならないと考えている。この意味において、アメリカのレバノン派兵は却って事態の平和的解決を困難ならしめるにあらざるや憂慮するものである。」反対しているじゃないか。
  281. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 はっきり同じことを当時言っております。
  282. 岡田春夫

    岡田委員 さっきのようにこれは危険がないじゃないですか。出動するのは間違いじゃなかったのですか。どうなんです。
  283. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 主権国の主権者が要請いたしまして出動いたしますことは、違法ではございません。しかし、それを政治的に見まして、その事態において適当であったかどうかということを判断して、必ずしもそのときに適当でなかったということを申しておるわけでございます。
  284. 岡田春夫

    岡田委員 伺いましょう。それじゃ、レバノンにアメリカ出動したのは、主権国の主権者の要請に基づいてだけ出動したのですか。
  285. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 その通りでございます。
  286. 岡田春夫

    岡田委員 五十一条に基づいて出動したのではないのですか。
  287. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 五十一条の適用としてやったということは言っておりません。主権国の主権者の要請によって出動をいたしておるのでございます。むろん、しかし、出動後にあるいは両国が話し合いをいたしまして、五十一条を適用する段階が、もし激しければ、来たかもしれませんけれども、出動の際における状態は、今申し上げた通りでございます。
  288. 岡田春夫

    岡田委員 あなたはどう言っているか知らないが、出動したアメリカの大統領は、特別教書で、五十一条で出動したと言っていますよ。これはきっとあなたが知らないのでしょう。どうなんです。五十一条じゃないのですか。はっきり言っているじゃないですか。
  289. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 ただいまの教書でございますが、これを読んでみますと、武力攻撃があったので、これに対処するために武力を行使するために、五十一条に基づいて、この適用として行ったのであるということをはっきりは言っておりません。やはりアメリカが最も大きな法律的な理由とするところは、主権国のこういう事態における要請でございます。
  290. 岡田春夫

    岡田委員 あなたはそういういいかげんなことを言われるが、私は特別教書の原文を翻訳してある。ここに書いてある。日付も言いましょう。特別教書は、五十八年の七月十五日にアメリカ国会に送った特別教書、これにははっきり言っているじゃありませんか。「以上のような理由から私は自衛のための集団行動の権利を認めている国連憲章の五十一条に基づいて今回の措置をとったわけである」と言っているじゃありませんか。五十一条の適用じゃない、五十一条の措置をとったと言っているじゃないですか。これは違うのですか。そればかりじゃありません。藤山さん、何か質問がほかの方向へ行ったので、平気な顔をしているけれども、そうじゃない。あなたに関係があるのだ。レバノンの政府の要請によりというのだが、レバノンの憲法を調べましたか。レバノンの憲法では、政府行動を起こしても、国会承認がなければ、その行動は合法と認められない。ところが、どうです、出動要請に対して、レバノンの国会はこれを否認しているじゃないですか。レバノン政府の要請じゃないのですよ。明らかにそうじゃないですか。それならば、何のためにアメリカ出動したか。自衛権という五十一条の看板を掲げて、世界において軍事行動をやろうという意図が、この点でも明らかに出ているじゃないか。どうなんだ。
  291. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 岡田さんの御意見ではございますけれども、私は当時そういうふうには考えておりません。
  292. 岡田春夫

    岡田委員 それじゃ伺いましょう。当時そうでないならば、アイゼンハワー大統領の憲章五十一条に基づいた今回の措置というのは、このようにアイゼンハワーは言っているのですか、言わないのですか、あなたは御存じのはずです。——藤山さんから答えなさい。藤山さん、答えなさい。だめですよ。
  293. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 先ほどの声明とかメッセージのことでございますので——私の持っております資料によりますれば、一九五八年七月十五日のアイゼンハワー大統領の声明がございます。この声明では、「合衆国は、今朝、前述の措置国連安保理事会の緊急会議に報告する。国連憲章が認めているように集団的自衛は固有の権利である。この憲章の精神に従って、合衆国は、安保理事会にその採った措置を報告するとともに、」云々、すなわち、五十一条に基づきその適用として行ったのでもなければ、それに基づく措置として安保理事会に報告したのではないけれども、そのような憲章の精神に従って、念には念を入れという意味で報告したというのが、この声明ではないかと考えております。それから一九五八年七月十五日のメッセージでございますが、もちろん、両方のメッセージ及び声明も、要請のことを非常に強調しております。そのほか、ただいま岡田先生の御引用の点でございますが、これはここにこういうように書いてあります。「合衆国は、国連憲章が固有の権利として認めているもの(すべての国家が独立維持に必要な場合協力を行い、また、援助を求めるという権利)に従って行動するであろう。」こういうことを言っております。従いまして、技術的と申しますか、この五十一条の場合が発生したんだ、だから、これに対して個別または集団的な自衛権行使として武力を行使しに行くのだというようなことではございません。私はそのように考えております。
  294. 岡田春夫

    岡田委員 それではレバノン問題について伺いますが、安保理事会その他で、レバノンに対して外部からの侵略、武力攻撃、そのようなことがあったという結論になりましたか、どうですか。
  295. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 その点は、そういう結論には、私が先ほど来申しておりますように、なっておりません。
  296. 岡田春夫

    岡田委員 なっていないのですね。藤山さんに悪いけれども、藤山さんの言葉のしりが非常に不明確なんです。そこらははっきり、なってないなら、ないと……。
  297. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 あまり語尾を強めますと、ときどきやじが飛びますから、適当に言っております。御承知通り、今お話のように、安保理事会等におきまして国境監視団を出しました。その報告から見て、安保理事会としては、国境紛争として武器が入ってきた、間接侵略が非常にあったというようには認めておりません。
  298. 岡田春夫

    岡田委員 なっていないとおっしゃる。なっていないのに、五十一条を適用して米軍出動した、これは明らかに五十一条違反じゃないか。はっきりしているじゃないですか。総理大臣、どうなんです。アメリカはいつも憲章を守るなどというようなことを考えているのに、そこに安保条約の魔術がある。安保条約ではアメリカは常に憲章を守るなどと言って、われわれ国民をだまそうとしたって、だまされない。この事実をごらんなさい。国連の安保理事会で正式に、外部の干渉はなかったというのに、五十一条でアメリカ出動した、これは憲章違反じゃないか。はっきりしているじゃないですか。岸さん、どうですか。
  299. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今条約局長が申し上げたような大統領教書もしくは国会に対する要請でございまして、われわれは、そういうふうに悪用したというふうには考えておりません。
  300. 岡田春夫

    岡田委員 それでは、どういうことのために出たのですか。明らかに客観的に悪用じゃありませんか。
  301. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今申し上げておりますように、正統政府の要請がありましたから出たのであります。その後の経過として、国連監視団等も参りまして、そういう事実がなかったわけでありますから、できるだけすみやかに退去することが適当であるということを勧告いたしたのは、当然でございます。
  302. 岡田春夫

    岡田委員 自衛権行使の乱用の一例を今申し上げたのです。まだありますよ。たくさんありますけれども、これをやっているとほかの問題に入れないから、やめるのだが、朝鮮戦争に国連軍というものが出動した。これはアメリカが中心になったのだが、出動したというのは合法ですか。憲章に沿っていますか、どうですか。高橋さん、条約上明らかにして、藤山さんを通じて具体的に一つ答弁下さい。国連軍として出動したのは合法であったかどうか、あるいはまた、国連軍として出動するにあたって、安保理事会はどのような決定を行なったか、憲章何条に基づいて行動しているか、これを一つはっきり御説明願いたい。
  303. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 事実等につきましては条約局長から詳細に申し上げますが、御承知通り、安保理事会決議及び総会の決議によりまして、アメリカに対しまして、統一司令部を作ることを委嘱いたしました。その委嘱によりまして、アメリカ国連憲章を編成するように加盟国に話し合いをいたしまして、そしてそれぞれの国から兵隊を出してもらって国連軍をやったわけでありまして、別段違法ではございません。
  304. 岡田春夫

    岡田委員 大衆雑誌に書いてあるような解釈の程度で言われるのは迷惑なんです。はっきり申し上げますが、安保理事会で、五大国一致の原則からいえば、ソ連があのときに欠席をしていた。そのもとにおける安保理事会の決定は、これは無効であります。その点を高橋さんは知っているだろうが、藤山さんはおそらくそういうことはあまり考えないで言っておられるのではないかと思う。これは私は、明らかに五大国一致の原則に反する、安保理事会の決定に反すると思う。それはアメリカは勝手に、安保理事会の決定する以前に——岸さん、これは聞いておいて下さいよ。安保理事会が正式決定をする数時間前に、アメリカ米軍としてすでに朝鮮に出動しているのです。だから、安保理事会の決定において、国連軍として出動しているのではない。米軍国連憲章を無視して、勝手に侵略していっているのです。これは明らかなんです。安保理事会の五大国一致の原則から見ても、これは明らかに間違っている。あの当時、西村条約局長は何と言っておるか。国連憲章の第三十九条前段に基づいて行動しております、このように答弁しております。これは間違いなんです。三十九条の前段では武力行動はできない。条文をごらん下さい。後段でなければ武力行動はできないのです。後段も、三十九条だけでは行動ができない。そのあとに続く四十一条、四十二条の決定がなければ行動はできない。四十一条、二条の決定は、安保理事会でなかったのです。なかったにもかかわらず、アメリカ軍事行動をやって動いた限りにおいては、これは明らかに憲章違反じゃないですか。
  305. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 ただいまの御指摘の点でございますが、一九五〇年六月二十五日の決定で、御承知通り、北鮮は侵略国であるという決定が行なわれておるわけでございます。それから、次の六月二十七日に、「緊急な軍事措置が必要であることに留意して、……国際連合加盟国が、武力攻撃を撃退し、且つ、この地域における国際の平和及び安全を回復するために必要と思われる援助を大韓民国に提供するように勧告」をいたしておるわけでございます。これは全部御承知通りでございますが、それから一九五〇年の七月七日には、「前記の安全保障理事会決議に従って、兵力その他の援助提供するすべての加盟国がこれらの兵力その他の援助を合衆国の下にある統一司令部に提供することを勧告」いたしております。このような三つの決議が、朝鮮に関する国連行動の基本原則となっておるわけでございます。  それから、ただいま御指摘の点の、その前に米国軍が活動いたしたということは、時間的には、そのような時間的なずれがございました。しかし、これはアメリカ軍の自衛権に基づく行使であるということをいわれております。それから、それに対して問題があるといたしましても、その後のこの三つの決議によって、これが完全に合法化されているわけでございます。ただ、もう一つの点は、欠席をしたということでございますが、これは御承知通り、ソ連が安保理事会行動を、ずっと従来まで組織的にボイコットしていたわけでございます。そこで、このように組織的にボイコットして、完全に安保理事会行動を不能に陥らしめるというふうな場合には、これはいわゆる拒否権の行使であるとはわれわれは考えられないというのが、国連における一般の世論になっている、私はこのように考えております。  それからもう一つ、これは勧告であって、決定ではないじゃないかということでございますが、確かに国連の決定はいたしておりません。しかし、このような勧告を行なうことができないのだと、それを禁止している規定は、国連憲章にはないのでございます。従いまして、決定でなく勧告でもこれはできる、このように考えております。
  306. 岡田春夫

    岡田委員 今たくさん問題になることを答弁されましたが、まず一点だけ伺いましょう。安保理事会の決定以前に米軍行動したのは自衛権行使である、このように言われた。しかし、南朝鮮とアメリカとの間に結ばれた条約というものは、朝鮮戦争が始まってから三年たって、五三年にきめられている。アメリカが朝鮮において、個別自衛権、集団自衛権行使し得るというのは、この相互安全保障条約がない限りにおいて行使し得ないはずだ。そうしたら、それ以前において軍事行動をやったアメリカは、アメリカ自衛権行使として、条約を結ばないで、どこへでも行って自衛権行使できるのですか。どんなことでもやれるのですか。安保理事会がきめないうちに、アメリカだけが、平和の十字軍であるかのごとき、そんな行動は許されますか。許されないじゃないですか。これは明らかに憲章五十一条違反じゃないですか。五十一条の自衛権違反だということは、あなた自身がお認めになったじゃないですか。明らかにそうじゃございませんか。それ以外に何があるのですか。どうなんです。     〔発言する多し〕
  307. 小澤佐重喜

    小澤委員長 御静粛に願います。
  308. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 ただいまの法律的な点だけお答え申し上げますが、第一点は、北鮮の侵略がございましたときに、米軍は、そのような行動をすることを韓国から要請されております。それからもう一つは、その場合、軍自体の本質としての自衛権、これも考えられます。それからもう一つは、集団的自衛権云々の問題がございますが、これは一般の通念といたしまして、必ずしも、集団的な自衛権というのは、条約関係がなければこれを行使していけないのだという説はございません。一般通説としては、集団的自衛権を確実に行使するためには条約がございますが、法律的意見としては、必ずしもそういうことは言われておりません。それから、いずれの場合におきましても、その直後に行なわれましたこの五〇年の諸決議によって、自衛権行使が完全に正当化されている、これは言えると考えます。
  309. 岡田春夫

    岡田委員 今の点、藤山外務大臣はお認めになるのですか。高橋さんの答弁は……。
  310. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 その通り考えております。
  311. 岡田春夫

    岡田委員 総理大臣もそう思いますか。
  312. 岸信介

    岸国務大臣 私もその通りだと思います。
  313. 岡田春夫

    岡田委員 それでは、これは日本政府の新学説、全世界において、何らの条約なしに、どこでも一国が自衛権行使し得る。たとえば、例をあげて申しましょう。     〔発言する者多し〕
  314. 小澤佐重喜

    小澤委員長 静粛に願います。
  315. 岡田春夫

    岡田委員 アフリカにおいて何らかの紛争が起こったときに、アメリカは侵略を受けたという名目のもとに、五十一条に基づいて軍事行動できるのだ、これは総理外務大臣条約局長も全部認めた。これを侵略学説と言う。この侵略学説に基づいているのがこの安保条約なんです。
  316. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 当時アメリカ軍が朝鮮におりましたことは事実でございます。従って、アメリカ軍自身が自衛権を発動することもできますし、また、韓国政府条約になくても、自分の一たん緊急の場合におきましては、アメリカと話し合いをして、そうして条約と同じような話し合いをいたすこともできるわけであります。条約がなければ、必ずしもできないということはございません。
  317. 岡田春夫

    岡田委員 話し合いの場合に、五十一条が適用できるわけがないので、憲章五十一条というのは、武力攻撃があった場合に対する自衛権の問題なんで、自衛権行使に話し合いするなんというのは、これはおよそナンセンスなんで、そんな御答弁はおよしいただきたいと思います。そんなことでは話になりません。ともかくも、日本政府——総理大臣を初めあなた方全部が言っているのは、全世界のどこかにおいていわゆる侵略というものをアメリカが認めた場合において、アメリカ軍事行動として自衛権行使ができる、こういう新学説がある。これを侵略学説と言う。安保条約の基礎になっている自衛権行使、これは、今のあなたの思想の上に立った、侵略学説の上に立っておる。そういわざるを得ないじゃないですか。
  318. 岸信介

    岸国務大臣 われわれは、今、岡田君の言われるように、世界のどこかに侵略があったら、自衛権でどこへでもいけるということを言うておりません。
  319. 岡田春夫

    岡田委員 さっき認めたじゃないか。
  320. 岸信介

    岸国務大臣 そんなことは申しません。
  321. 小澤佐重喜

    小澤委員長 岡田君にまだ発言は許しておりません。
  322. 岸信介

    岸国務大臣 条約がなければ集団的自衛権というものはないのか、これに対して、条約関係だけに限らないということは言っておりますけれども、どこにでも、何もなくても、今までの学説からいうと、条約がある場合はもちろんのことでありますが、歴史的に、もしくは民族的に、いろいろな関係において特殊の関係を持っておるところが侵略された場合に、他のこれとそういうような関係を持っておる国が、集団的自衛権というものを認めておる。今お話のように、どこにでも、何らの関係のないところへも行っておるということは全然申しておりません。朝鮮動乱の問題については、先ほど高橋条約局長が申したように、条約関係はない。しかしながら、あの場合において韓国政府からの要請もあり、また、アメリカ極東における種々の関係からいって、韓国におけるああいう事変に対して出動するという場合は、集団的な自衛権と解釈してよろしい、こう言っておるのでありまして、今のわれわれが言っておることを、直ちに、今全然何らの関係のないところまで推し広めるように解釈されるということは、私どもが答えておることとは違っておりますから、その点だけは明らかにしておきます。
  323. 岡田春夫

    岡田委員 今の岸総理の御答弁は、レバノンの例をあげてお話しになったのですか。政府の要請があったから、五十一条でやった、そういう意味で御答弁になったのですか。それなら、もう一度伺いましょう。
  324. 岸信介

    岸国務大臣 今のは朝鮮動乱の問題でございます。
  325. 岡田春夫

    岡田委員 それでは、今問題になっているあの李承晩の要請があったからアメリカは出たわけですね、そうなんですね。レバノンの場合はどうなんです。
  326. 岸信介

    岸国務大臣 レバノンの場合は、さっきから外務大臣がお答えをしておる通りであります。
  327. 岡田春夫

    岡田委員 それじゃ、レバノンの場合は、藤山外務大臣が言った通りならば、国連では侵略がなかったというのだから、アメリカ出動は五十一条によって出動したというアイゼンハワー大統領の教書というものは間違いである、こう言っていいですね。
  328. 岸信介

    岸国務大臣 先ほどから外務大臣がお答えしておることを、もしも正しく冷静に聞いていていただいたならば、私は、そういうことを申し上げておらないと思います。外務大臣のお答えした通りに御解釈を願いたい。
  329. 岡田春夫

    岡田委員 それでは、レバノンに対するアメリカ出動は、五十一条に基づいて出動したのじゃないのですか、どうなんですか。
  330. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 一九五八年七月十五日のアイゼンハワー大統領の声明及び国会におけるメッセージの要点、これを読み上げましたところによって御判断願いたいと思いますが、そこにおきましては、武力攻撃が起こったので、この武力攻撃に対処するために、五十一条の集団的自衛権に基づいてこの武力攻撃を排除するために行くのではない、行くということを決して言っているわけじゃございません。これはあくまでも正統政府たるレバノンの要請、これは声明の一番初めにも、一九五八年七月十四日、私はレバノン共和国大統領より合衆国軍隊をレバノンに派遣してほしいとの緊急な要請を受けた、これに基づいて行なっておるわけでございまして、決して五十一条そのものの適用ではない。ただ、五十一条を適用した場合には国連に報告しろということがございます。だから、そういう精神に基づいて、念には念を入れようというだけで報告をしておる。しかし、大統領は五十一条のようなことは言っていないと思います。
  331. 岡田春夫

    岡田委員 これは何ぼ言ってもわからないが、あとで特別教書のこの部分をお出し下さい。これは、はっきり国連憲章の五十一条に基づいて今回の措置をとったわけであると言っている。しかも、岸さん、今ハガチーが来ている。そのハガチーがこの説明をしたのだし、ハガチーは五十一条だと言ったのだから、よく聞いてごらんなさい。直接聞いたらよくわかるから……。もし、帰ったのなら、ワシントンに電話をかけて聞きなさい。それ以外に、朝鮮の場合において、安保理事会の決定に基づいて合法的に行なわれたというが、欠席の場合は違法ですよ。はっきり申し上げますが、憲章百十一条においては、——これは読んでみましょう。百十一条で、「この憲章は、中国語、フランス語、ロシア語、英語及びスペイン語の本文をひとしく正文とし、」と書いてある。この中には……     〔発言する者多し〕
  332. 小澤佐重喜

    小澤委員長 静粛に願います。
  333. 岡田春夫

    岡田委員 いいですか、五カ国語が正文になっておる。ところが、この五カ国語の中で、英語以外のすべての四カ国語は、——今度は安保理事会における二十七条の非手続事項、この採決において——この場合には、これは英文から直している。「常任理事国の同意投票を含む七理事国の賛成投票によって行われる。」と書いているが、これは英文のテキストに基づいたものである。残りの四カ国語の正文は、すべての常任理事国の同意投票を含むという、「すべて」という言葉が入っている。これは中国語の場合には、全体理事国と書いてある。これは、必要があれば見せてもいいですよ。だから、全常任理事国が、いかなる事情にあれ、出席をするか、いかなる事情にあれ、同意をしない限りにおいては、朝鮮動乱のあの国連の安保理事会決議は違法である。はっきりしている。
  334. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 同じことを繰り返すようで恐縮でございますが、二十七条の三項が、ほかの言葉では、そのような用語を用いていることを私承知いたしております。ただ、この場合は、すべての常任理事国が出席して投票することでございますが、これは、常にこういう問題が起きた場合に出席して投票すること、出席してその議事に参加するということを前提としているものでございまして、初めからこれを意識的にボイコットしている、そういうところまでも考慮に入れてやらなければならないという規定じゃないのじゃないか。やはりそういう場合には、それがなくとも十分に成り立つ。しかも、たとえば御承知通り棄権の場合がございます。棄権というものは、棄権をした場合でも、拒否権に入らないという慣行が出てきたわけでございます。従いまして、そういうことを考えれば、欠席をした場合も、そのように組織的にこの通常を妨げるというような場合には、そこまでを考えて、考慮に入れて、この決議の成立がだめになるというふうにわれれわは解釈すべきではない、こういうふうに考えております。
  335. 岡田春夫

    岡田委員 今の解釈には非常に問題があるんだけれども、時間がないから、もうよしますが、もう一つだけ言いましょう。それは、日本も同じように憲章違反をした実例をあげてお話ししましょう。  ラオスに対して調査団の派遣をした。あれに対しては、安保理事会の決定はどうなんですか。拒否権の行使を認めますか、認めませんか。
  336. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 あれは御承知通り、あのときの経過を振り返ってごらんになればわかります通り、手続事項として決定をいたしたものであります。
  337. 岡田春夫

    岡田委員 手続事項であるかどうかという場合の採決は、どういう場合でありますか。これは藤山さんがせっかく答えたのだから、藤山さん答えて下さい。手続事項じゃないというソ連側の反対があったわけですね。手続事項であるか、手続事項でないかということをきめる場合には、どちらによってきめますか。
  338. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 それは御承知通り、非手続事項でございます。ただ、このラオスの場合は、あの委員会のタームス・オブ・リファレンスですか、あの内容を検討してみますと、非手続事項が適用になるような、調査、インベスティゲーションではない、これは一つの補助機関と申しますか、インクァイアリイという言葉を使っております。従いまして、そのような重大なインベスティゲーションという内容を持つものでないので、ああいう手続をとった、こういうものでございます。
  339. 岡田春夫

    岡田委員 高橋さんは、日本の解釈ですね。日本の解釈はそのようにある。ところが、ソビエトの方は手続事項であると解釈している。安保理事会において、あなたのような解釈と——あなたのような解釈というのは、アメリカの解釈なんです。(発言する者多し)委員長注意しろ。
  340. 小澤佐重喜

    小澤委員長 静粛に願います。
  341. 岡田春夫

    岡田委員 高橋さん、聞いて下さい。あなたというか、日本政府アメリカは非手続事項だという解釈をしたかもしれない。あなたのような解釈をしたでしょう。しかし、それ以上に手続事項であるという別な常任理事国の意見がある、これをどちらにきめるかという場合には、何によってきめますか。
  342. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 ですから、通常のそういう疑いがある場合は、これは非手続事項なんです。しかし、それは疑いもなく、当然そうであるというときは、そういう問題を起こさずに、そこで非手続事項として決定しちゃった、こういうことでございます。そして、そのような国連の慣行に従う、こういうことじゃないかと考えております。
  343. 岡田春夫

    岡田委員 そういう疑いがないといったって、疑いがあったから、安保理事会はあんなにもめたんじゃないですか。だから、これの採決をとらざるを得なかったのじゃないですか。だから、拒否権の行使はあのときは有効なんです。拒否権の行使が有効であるにかかわらず、日本アメリカのいいお手先になって、そうしてラオスの調査とかなんとかいって出ていった。これは明らかに日本アメリカ憲章違反を犯した、これは明らかなんです。憲章上の規定で明らかなんです。もうはっきりしておるじゃないですか、憲章の中にはっきりしておる。なぜ私がそう言うかというと、安保理事会の採決方式にヤルタ方式というのがある。これは諸君、よく聞いて下さいよ。ともかくも、ヤルタ方式を採用するのかどうかということが、国連憲章制度のサンフランシスコ会議のときに提案があった。これに基づいて質問があり、この質問に基づいての常任理事国の回答、いわゆる憲章提案国からの回答があった。この回答の中に、手続事項か手続事項でないかをきめるのには拒否権、ヴィトーの行使を認めると書いてある。そのヴィトーの行使に基づいて安保理事会が拒否された。安保理事会が拒否されたのに、ラオスに対して日本アメリカはいい気になって出ていった。これは国連の名前を僣称した、明らかじゃないですか。
  344. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 ただいまの御指摘の点は、よくわかります。手続事項か手続事項でないかという問題が起きた場合に、そういう投票に問う場合がありますが、その場合に、あくまでも議長の裁定によるわけであります。議長の裁定によって、サンフランシスコ条約のあの五カ国宣言によってやるかどうかという問題が起こるわけであります。たとえば、千九百何年でございましたか、中共を招請するかどうかということが投票に問われたことがあります。そこで、中華民国の方がノーと言った。そこで、それが拒否権であるかどうかということで問題が起きたことがあります。手続事項かどうかという問題が起きたわけであります。非手続事項ならば、その拒否権が有効になるわけでありますから、非手続事項か手続事項かという問題が起きた場合に、今御指摘のヴォートをとらずに、議長の裁定で、これは当然そんな問題を起こすべき問題でないから、非手続事項だといってやってしまったわけであります。ですから、そういうふうにそのあとの問題は発展するわけなんです。
  345. 岡田春夫

    岡田委員 私は、もうこれでやめますが、ラオスの場合にはヴォートしたのです。そのときに日本アメリカのしり馬に乗ってわーわーといってやった。ヴォートしたのに拒否権が認められないといって勝手な行動をしたのです。これは非常に明らかです。  私は、話をもとに戻しますが、自衛権行使の名のもとに五十一条が使えるんだといって、全世界においてアメリカ自衛権の名のもとに軍事行動をとり得るということを盛んに言っている。それが朝鮮戦争の場合あるいはレバノンの場合、ラオスの場合、いろいろの場合が幾つか出て、このような形で全世界にアメリカ自衛権行使できるというアメリカの世界戦略、世界侵略政策の現われの一つが日米安保条約である。そして、それがNEATOになっておるということは明らかです。これは、自民党の諸君はそうでないと言っておるけれども、国民の多くはそう思っておる、これは明らかです。自民党の諸君は、もう少し条約を研究して、頭を洗い直して、顔を洗って、きょうの請願の行動をよく見たらいい。私は、きょうは四時からあれですから、私の質問はこれで留保いたします。
  346. 小澤佐重喜

    小澤委員長 次会は明二十七日午前十時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時四十九分散会