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1960-04-15 第34回国会 衆議院 日米安全保障条約等特別委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年四月十五日(金曜日)     午前十時三十四分開議  出席委員    委員長 小澤佐重喜君    理事 井出一太郎君 理事 岩本 信行君    理事 大久保武雄君 理事 櫻内 義雄君    理事 椎熊 三郎君 理事 西村 力弥君    理事 松本 七郎君 理事 竹谷源太郎君       安倍晋太郎君    愛知 揆一君       秋田 大助君    天野 光晴君       石坂  繁君    鍛冶 良作君       加藤 精三君    鴨田 宗一君       賀屋 興宣君    小林かなえ君       田中 正巳君    床次 徳二君       野田 武夫君    福家 俊一君       古井 喜實君    保科善四郎君       毛利 松平君    山下 春江君       飛鳥田一雄君    石橋 政嗣君       岡田 春夫君    黒田 寿男君       戸叶 里子君    中井徳次郎君       成田 知巳君    穗積 七郎君       森島 守人君    横路 節雄君       受田 新吉君    大貫 大八君       堤 ツルヨ君  出席国務大臣         内閣総理大臣  岸  信介君         外 務 大 臣 藤山愛一郎君         国 務 大 臣 赤城 宗徳君  出席政府委員         内閣官房長官 松本 俊一君         法制局長官   林  修三君         防衛庁参事官         (長官官房長) 門叶 宗雄君         防衛庁参事官         (防衛局長)  加藤 陽三君         調達庁長官   丸山  佶君         外務政務次官  小林 絹治君         外務事務官         (大臣官房審議         官)      下田 武三君         外務事務官         (アメリカ局         長)      森  治樹君         外務事務官         (条約局長)  高橋 通敏君         運輸事務官         (航空局長)  辻  章男君  委員外出席者         専  門  員 佐藤 敏人君     ————————————— 本日の会議に付した案件  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び  安全保障条約締結について承認を求めるの件  (条約第一号)  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び  安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並び  に日本国における合衆国軍隊地位に関する協  定の締結について承認を求めるの件(条約第二  号)  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び  安全保障条約等締結に伴う関係法令整理に  関する法律案内閣提出第六五号)      ————◇—————
  2. 小澤佐重喜

    小澤委員長 これより会議を開きます。  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約締結について承認を求めるの件、日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並び日本国における合衆国軍隊地位に関する協定締結について承認を求めるの件、及び日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約等締結に伴う関係法令整理に関する法律案、右各件を一括して議題といたし、前会に引き続き質疑を行ないます。  この際、大久保武雄君より議事進行に関して発言を求められております。これを許します。大久保武雄君。
  3. 大久保武雄

    大久保(武)委員 昨日の委員会最後における飛鳥田委員発言に対しまして、委員会といたしましても、国会としましても、このまま放置することのできない発言があったのであります。昨日の発言の内容を速記によって申し上げてみたいと思います。飛鳥田委員はかような発言をされました。あしたICAO地図出していただいて、もう一度地図の問題と、さらにもっともっと━━日本自衛隊侵略性を、事実をあげて伺うつもりである、かような発言をしておる。もっともっと━━日本自衛隊侵略性ということはこれは日本自衛隊の性格に対する一つ断定であります。かような日本自衛隊に対する断定を、いやしくも委員会においてやってしまうということは、自衛隊法精神からいたしましても、安全保障条約の、国連憲章基本としておるその精神から申しましても、また、日本の憲法の建前から申しましても、日本自衛隊にことさらに侵略の汚名を着せ、日本の立場を世界的に不利に陥れた発言であるといわなければならぬと私は思うのであります。私は、かような発言委員会において断定的になされたということに対しては、これは容易ならぬことであると思う。これは飛鳥田委員において直ちにこの発言を取り消してもらいたい。私はかように委員長に要望するものであります。
  4. 小澤佐重喜

    小澤委員長 ただいまの大久保武雄君から御指摘になりました点に関しましては速記録を取り調べの上、もし不穏当の個所がありましたならば、委員長において適当の処置をとることにいたします。     —————————————
  5. 小澤佐重喜

    小澤委員長 この際、加藤防衛局長より発言を求められております。これを許します。加藤防衛局長
  6. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 昨日飛鳥田委員の御要求になりましたICAO地図を、本日委員長手元に差し出しました。ICAOは、御承知だと思いますが、国際的に全世界にわたりまして航空図を作成しようという意図のもとに、加盟各国がそれぞれ地域を分担いたしまして航空図を作成し、これを本部に登録いたしまして、各国ともこれが自由に入手できるようになっておるものでございます。私どもの本日委員長手元出しましたものは、日本の担当しておりまする区域のものでございます。
  7. 椎熊三郎

    椎熊委員 今の発言に関連して。
  8. 小澤佐重喜

    小澤委員長 ただいまの防衛局長発言に関連して椎熊三郎君より質疑の申し出があります。これを許します、椎熊三郎君。
  9. 椎熊三郎

    椎熊委員 お伺いしますが、きょう提出されました地図は、きのう飛鳥田君が複写した写真のようなもので防衛庁長官に提示した図面と、内容的に同じものですか。
  10. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 この点は、昨日防衛庁長官がお述べになりました通り、ICAO地図その他いろいろな資料を参考として作ったものでございます。
  11. 椎熊三郎

    椎熊委員 私、今委員長手元に提示された地図の裏面を見ますると、この協定加盟しておる各国調査してでき上がった地図と、番号等は全部符合しておるようです。従って飛鳥田君並びに横路君が言うように、防衛庁が特に外国の領空を侵し七写真をとって、機密のうちに作った地図というものでないということが、この地図によって明らかなんです。要するに、この地図のここにある図面日本に関係する、日本が担当しておる部分だけの一部分を拡大した写真飛鳥田君が提示した。これによりますると、ほとんど全世界的にこれができておりまして、その一部分を、日本に関する部分だけを飛鳥田君が拡大して提示したものであって、何も番号等は実際符合しておりますから、特殊なものではないと私は考える。そのほかに、ただいまあなたの方で説明せられたように、その他の図面等もあって、自衛隊自身が持っておるものとしては全然これと一致しておるとは言い得ないかもしれないが、基本としてはこれであるということは間違いないと思う。それでよろしゅうございますか。
  12. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 昨日飛鳥田委員の御提出になりましたものと、番号等は同じでございます。中共とかソ連というふうな国の地図につきましても、国際連合の方で地図は入手できるようになっておるのでございます。
  13. 小澤佐重喜

  14. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 今、加藤局長から地図の御提出がありましたが、加藤局長にお伺いをいたします。ICAOは、国連専門委員会ではないでしょうか、あるいは、専門委員会に類似する機構だと考えてよろしいのではないでしょうか。
  15. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 ICAOは、国連専門機関だと承知いたしましております。
  16. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 今、加藤さんは、ICAOが、加盟国提出した地図中心にしてこの図を作成していくのだと述べられたと思いますが、あやまちありませんか。
  17. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 ICAO加盟国と申しました点は、正確でございませんでした。
  18. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 このICAOには中国加盟しておりますか。
  19. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 台湾政府加盟しておりますが、本国の方の政権加盟しておらないのでございます。(「本国はよかった」と呼び、その他発言する者、拍手する者あり)——訂正いたします……。
  20. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 加藤局長は、はからずも台湾本国というような明確な言葉を使われましたので、これは伺っておきます。
  21. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 中共政権加盟しておりません。
  22. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 ソ連国連には加盟しておりますが、ICAO加盟していないと私は承知しておりますが、いかがでしょうか。
  23. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 国民政府側によって代表されている中国が、ICAO加盟国でございます。
  24. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 私はソ連のことを伺っているのです。
  25. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 ソ連は入っておりません。
  26. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 ソ連中国ICAOには加盟しておらない。従って、ソ連中国ICAOにその資料を提供したということを私は知らないのです。もし資料を提供したという事実があるのならば、これはその日とその場所と、どういう機関を通じて提出をしたのか、教えていただきとうございます。
  27. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 提供したかどうかという点については私は存じません。ただ、私の知っておりますところでは、中共及びソ連につきましても国連地図があるということでございます。
  28. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 提供したかどうかは知りませんとおっしゃる。現実には提供しておらないのです。国連地図があると申しましても、その地図には、どのような地図であるかの限定が明確でありませんし、この場合に、ICAO地図うしろ一覧表番号が付してあるからといって、これができておるものだとは言えない。すなわち、これは全世界をこういう地図のベルトでおおうという、そういうプランである、従って、ここに番号が付してあるからという椎熊委員の御質問は、少なくとも事実を証明しない。私がきのう提出をいたしました地図にも、ちゃんと注釈に、世界航空図系列によるという数字が載っております。このことは当然きのうお気づきにならなければならぬはずで、今ごろおっしゃるのは当を得ない、こう私たちは思います。少なくとも加藤さんは、ICAO地図基本にしてとおっしゃるが、しかし、現実にはICAO地図基本にしたという事実は一つもないんじゃないですか。ただ、提供もせられていない、ICAO地図があるかどうかも疑問な——現に出てこない。日本国内だけです。従って、中国及びシベリア地図ICAO地図基本にしてできたという証明は一つもないわけです。そういう点ででたらめなことをおっしゃらないように、きのうの加藤さんは、ただ車中にとっさに思いついてICAOということを言われただけでありまして、ICAO地図をお出しになってみたところで、この自衛隊地図は……。     〔発言する者多し〕
  29. 小澤佐重喜

    小澤委員長 静粛に願います。
  30. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 ICAO地図基本にしてできたということにはならないのではないか……。     〔発言する者多し〕
  31. 小澤佐重喜

    小澤委員長 静粛に願います。
  32. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 もしICAO地図基本にしてお作りになったというのならば、私の出しました一覧表中国及びシベリアに相当する部分ICAO地図をここに御提出いただきたい。
  33. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 お尋ねの点でございますが、御指摘地域に対するICAO地図はございません。ただ、地図そのものは、これは、先ほど申し上げましたように、あるのでございます。
  34. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 ほら、ごらんなさい。ICAO地図基本にして、あるいは材料にして作ったということは、まっかなうそだということを自分でお認めになった。こういうことにならざるを得ないのです。なるほど、地図があるかないか、世界中にはたくさんの地図があります。そういう、ある、ないなどということで、これと全然無関係の問題を説明せられようとすることは誤りです。しかし、今お出しをいただいたICAO日本国内地図だけでは、問題は全然解決いたしません。  そこで、私たちは次の問題を伺いたいと思うのですが、現にきのう私が防衛庁長官に何べんしつこく伺いましても、全然お答えにならないものを、防衛庁幕僚監部ではずばずばおっしゃっている。国会でしゃべれないものを、幕僚監部が、新聞記者や何かの方々にずばずばしゃべれるというのは、一体どういうわけですか。国会ではしゃべれません、しかし、外ではしゃべれます、こういうのは一体どういうわけですか。あんまり人をばかにしたようなやり方をなさいますと、限度がありますよ。     〔「限度とは何だ」「懲罰だ」と呼び、その他発言する者、離席する者多し〕
  35. 小澤佐重喜

    小澤委員長 ただいまの飛鳥田君の発言中、不穏当な個所がありましたならば、後刻速記録を取り調べの上、適当に処置をいたします。  飛鳥田君に申し上げますが、政府から答弁がございません。
  36. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 それでは再度お伺いをいたします。現に国会において、横路さんや私が再々お伺いをしているにもかかわらず、そのことについては全然お答えにならない。しかも、同時に並行して、きのうのお昼ごろであろうかと思いますが、防衛庁記者団方々に対して、門叶官房長幕僚副長立ち会いのもとに、幕僚監部方々記者会見を行ない、われわれにお答えにならないことをずばずばおっしゃっている。一体これはどういうことでしょう。少なくとも国会に対してお答えになる、こういうことは、他に行なわれることと並行して、あるいは最低限度同程度にはおっしゃるべきではないだろうか。私たちは、何も国会優先などといううぬぼれ方をいたしません。だがしかし、他の人々に話ができて、私たちに話ができない、こういうことは一体どういうことでしょうか。この点について、私は防衛庁長官にその理由を伺いたいと思います。
  37. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 私が飛鳥田委員質問お答えしないようでございますが、御納得をいただいたか、いただかないかは別といたしまして、全部質問お答えしておるわけでございます。また、防衛庁の方で記者合会見をして、発表した点もあるようでございますが、別に私は、変わったことのように気がついておりません。
  38. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 きのう私と特に横路委員から、この航空図は、その基本をどこの国から入手したのか、すなわち、自分飛行機を飛ばして作ったのではない、こう述べられましたので、それではどこから入手したのか、手に入れたのか、こういういろいろな質問をいたしました。長官は、もらったのではない、入手したのだ、こういう答弁もなすったのを、御記憶だろうと思います。すなわち、どこからということをかなり何べんも伺ったはずです。ところが、それは言えません、こうおっしゃっておきながら、現実には、けさの朝日新聞を拝見いたしますと、「原図米軍当局が好意的に提供してくれたものを中心とし、これに日本側資料などを加えて作成した。米軍原図も当方で作成した航空図も厳しい秘密扱いにはしていないが、」こういうふうに言っておられます。ちゃんと記者会見では、そういう国の名前を明確におあげになった。ここではおあげにならない。どこまでも逃げ通そうとなさる。これははなはだしい違いと言えないでしょうか。少なくとも私たちの常識をもってすれば、はなはだしい違いといわざるを得ないわけです。これは防衛庁長官、どうお考えになりますか。
  39. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 きのう申し上げましたように、入手したものを基礎として地図を作っておる、こういうことを申し上げておるわけであります。その入手は、けさ申し上げますように、ICAO地図等を入手して、それを基礎として作っておる、こういうことでございます。でありまするから、アメリカからということは、そのICAO地図でも、アメリカ側からなら別でありますが、私の言っていることが正しいので、その新聞発表はいささか違っておるところがありますが、どっちが正しいかといえば、私の方が正しいのであります。
  40. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 二つあります。ICAO地図国連に行けばもらえると、さっき加藤局長がたんかを切られたばかりでしょう。ところが、なぜ米軍を経由しなければICAO地図が手に入らないのか、こういう点なんです。  第二には、私の言っている方が正しい、こう言われるのでありますが、しかし、幕僚監部発表は、門叶官房長幕僚副長立ち会いのはずです。官房長幕僚副長がお立ち会いになって、大臣と違った発表をあえてなさる、こういうことは一体どういう結果になるのか、これは官房長伺いたいと思います。
  41. 門叶宗雄

    門叶政府委員 お答えいたします。昨日、本委員会において地図の問題の質疑がありましたあと、本庁で記者会見をいたしました。昨日大臣からお答え申し上げた線で、私は記者発表いたした次第でございます。
  42. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 私の伺ったことに何もお答えにならない。官房長はお立ち会いになって、しかも、そこでははっきりと、原図米軍当局が好意的に提供してくれたものだと述べておられる。あるいは御自分でお述べにならなかったかもしれませんが、他の人がお述べになるのを、そばで黙っていらしたのでしょう。ところが、長官はここで、ICAO地図等基本にした、こう言っておられる。どこの国から入手したかということについては、全然お答えにならない。今も長官は、ICAO地図基本にしたという自分の説明の方が正しい、こう言っておられるわけです。はっきり官房長長官との間に不一致がある。私たちは、どっちをとってよろしいのやら、わからないわけです。もし長官が、最後まで御自分で、自分の言うことが正しいのだとおっしゃるのならば、自分国会責任を持って述べておることと全然違うことを、堂々と部下新聞記者発表において述べておるという事実に対して、一体どうお考えになりますか。長官は、自分部下がどのような行動をとるかについて、統制をなさる責任はないのでしょうか。
  43. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 私の申し上げておることと、防衛庁内で発表したことと、そごしておるということでありますならば、よく取り調べまして、そういうことが以後ないように注意をいたします。
  44. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 このICA0の地図を拝見して、これから検討してみますが、しかし、地図そのものをここで論議しているだけではなしに、もう一歩問題を進めてみたいと思います。  先ほど自衛隊侵略性という点について御議論があった。私も拝聴いたしました。だがしかし、この侵略性を、私はさらに進めて問いただしてみたいと思います。すなわち、防衛庁あるいは内閣等は、地図を作って出かけていく準備をしていらっしゃるだけではなしに、さらに進んで、内閣調査室あるいは内閣調査室付属のいろいろな諸機関を利用して、中国軍事事情をお調べになっているのではないか、こう私は考えるのです。そういう事実があるのかないのか。内閣調査室あるいはその付属機関を利用して、中国軍事事情をお調べになったことはございませんか。これは総理大臣伺いたいと思います。
  45. 岸信介

    岸国務大臣 内閣調査室におきましては、全体的に、国際事情の各種の事情については調査をいたしておりますが、おあげになりましたような点に関して、特別の調査をしておることは、私承知いたしておりません。
  46. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 内閣調査室の中には、今まで押田機関という機関が存在をした。そして、これは陸士を五十三期に出られた方でありまして、この方を中心にして、三、四十人の方が現に働いていらっしゃる。これを世に押田機関と呼んでいるそうです。この問題については、昨年でありましたか、二月上旬に和歌山県でも問題が起こりまして、産経新聞に載ったことがあります。この機関は、どういうことをやっておるかと申しますと、中国、ソビエトから引き揚げてこられた人々を個別に歴訪して、あるいは都内の某料亭などに呼び出しまして、飛行場位置飛行機種類軍隊動向軍需工場状況、こういうものを、地図を提示しながらかなり詳細に聞き集めておられる、そしてそれを報告書にまとめては提出をしておる、こういう事実があると思います。この点について、総理大臣が直接お聞き及びないとすれば、どなたからか、この問題についてお示しをいただきとうございます。  まず、時間の節約の意味で、もう少し具体的に申し上げておきますと、これは昭和二十八年六月から三十年六月までは、中央区人形町の内田興業ビル三階に仮の事務所を置いております。三十年七月から三十一年六月までは、南平台にある。三十一年七月から三十三年九月までは、駿河台の三の十山本方というところに事務所があったはずであります。こういうふうに、軍事事情飛行場位置飛行機種類軍隊動向軍需工場状況などを専門にお調べになっているという事実がありますかどうか、これから伺いたいと思います。
  47. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 防衛庁長官の前に官房長官もやっておりましたが、そういう事実はございません。特にそういう押田機関などというもので、組織的、計画的に軍事情報をとった、こういうことはありません。内閣調査室において、帰った人から聞いた場合はあります。これは人民公社がどうであるとか、そういうことはありますが、そういうように軍事的に、組織的に、押田機関などというものを設けて情報を収集したということは、私の官房長官時代にはありませんから、今でもやっていないと思います。
  48. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 私も調べてみました。担当の押田敏一という事務官は、確かに内閣調査室におられます。さらに、引き揚げて参られた人々を問いただしのために、料亭あるいはその他の場所に呼び出す仕事を担当していらっしゃる鈴木輝夫という方も、総理大臣官房にお勤めになっているということもわかって参りました。いずれにもせよ、そういう方々が集まって仕事をし、すべての人々は偽名で行動をしていらっしゃる。しかし、その一人々々を調べてみますと、みんな元陸軍大佐であったり、陸軍中佐であったり、陸軍少佐であったり、あるいは憲兵少佐であったり、こういう方々ばかりであります。そして、その結果は、中共事情あるいはソ連事情という形でまとめられている。それを拝見しますと——たとえば、昭和三十三年一月二十日の中共事情甲情第百三号、こういうものを拝見いたしますと、チチハル軍事断片長春軍事断片鞍山軍事断片重慶軍情断片というような形で、どういう飛行機が飛んだか、どこに飛行場があったのか、あるいは飛行場はどういうふうに利用されておるかというようなことが書かれております。もちろん、これは完全なものではありませんが、重慶付近要図などというものさえついておるのでございまして、揚子江のまん中に飛行場のあるその位置まで示されている、こういうものが現に出ている。昭和三十三年一月二十日ごろの責任者一つ伺いたいと思いますが、しかし、そのころと、もうかわっておられるでしょう。こういうものを作って、先ほどの地図だけではなしに、その地図の具体的な調査もした、こういう事実について、赤城さん、当時官房長官であられたそうでありますから、もう一度伺いたいと思います。
  49. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 私は、先ほども申し上げましたように、そういうことはやっておりませんということを重ねて申し上げます。内閣調査室といたしましては、国政の基本に関しての調査をするということが規定されておりますので、その範囲内においてのいろいろな調査はいたしておりますと思いますが、御指摘のようなことは、私が官房長官をやっていたときには、そういうことはないというふうに私は確信しております。
  50. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 現にこの事情調べてみますると、引き揚げた人々調査するための予算まで組まれて、業務報告まで内閣調査室に出されている、こういうことであります。知らぬ知らぬと言って通れば世の中は通るとお考えにならずに、こういうことまであなた方は行なって、実際の準備をされている。こういうことを、私は、もう一度あらためてこの安保条約が審議になるに際して、十分お考えをいたたかなければならない、こう考えますが、総理大臣、いかがでしょうか。もしこういうような事実が現実に行なわれているとすれば、あなたはどうお考えになりますか。
  51. 岸信介

    岸国務大臣 今日、われわれがいろんな政策を立て、政策を遂行していく上におきまして、国内、国際情勢をできるだけ正確に把握するということは、これは私は、国政の衝に当たる上からいえば、当然必要なことだと思います。今具体的におあげになりましたような事実につきましては、私は承知いたしておりませんが、一般的に国際の情勢なりあるいは国内外の情勢について、できるだけ詳細に事情を明らかにすることは、国政の運用をしていく上におきましては、当然調査をしていかなければならぬ、かように考えております。
  52. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 地図の問題あるいは今の秘密情報を収集する問題、こういう問題については、いずれまた後刻伺うことにいたします。  そこで、私としては、私の伺いたい一番中心的な点、先ほど冒頭に申し上げましたように、事前協議の問題、さらには自衛隊行動と性格の問題、こういう問題に入らしていただきたい、こう考えます。昨日、事前協議が国民に秘密のうちに行なわれてしまうのではないか、こういうことについて総理大臣伺いました。そこで、きょうは、その問題に続いて、事前協議という観念それ自身がアナクロニズムじゃないだろうか、こういうことを伺ってみたいと思います。  まず、その問題を伺います最初の問題として、前回の安全保障条約とは異なって、今回の安全保障条約を見ますると、在日米軍という観念はなくなったのではないだろうか、こういう感じがいたします。ところが、政府の極東の範囲その他の説明を伺いましても、在日米軍という言葉がしきりと出て参ります。むしろ、この在日米軍という言葉をたくみに使って、いろいろな事態を説明している。しかし、実際は、在日米軍という観念は、条約からは姿を消している、こう私には思われるわけです。在日米軍という観念が、この条約のどこから出てくるのか。そして、特に、日本施設及び基地を利用して戦闘作戦行動を行なうというその事前協議に関して、在日米軍という観念がいまだに適用になるものかどうか、これは外務大臣伺いたいと思います。
  53. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 日本施設区域を利用しております米軍が在日米軍でございます。
  54. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 そういたしますと、日本施設及び基地を使う米軍、その使うというのは、たとい一時間であろうと三十分であろうと、在日米軍という形になるのですか。むしろ、私は今までの安保条約が、日本米軍の配備をはっきりと認め、そして、この日本を利用した米軍という観念を、条文の上で露骨にちゃんと出しておったのに、今度は極東の国際的平和と安全を守るために、施設及び区域を利用する、使って行動する、こういう観念に切りかえられたのであって、ここでは在日米軍という観念を適用すべき余地がないのじゃないでしょうか。たとえば、横須賀という基地をハワイからやってきて使って、そこで戦闘行為を行なうという場合もあるはずです。この場合には在日米軍とは言えないのじゃないか、こういうことを私は伺っているわけです。在日米軍の観念はなくなった、こう思うのですが、いかがでしょうか。
  55. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 日本の基地と施設を使いまして、そして日本に配置されている軍隊、それは在日米軍というわけです。むろん、通過をしていくというようなものは、在日米軍じゃないことは当然でございます。日本に配置されておりますのが、在日米軍であることは当然でございます。
  56. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 そういたしますと、日本に配置されているものが在日米軍、こういうことになります。配置とおっしゃる限りは、相当時間的な経過を含んでいるはずです。そういたしますと、事前協議の対象というのは、この在日米軍だけですか。
  57. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 むろん、配置されておりますものは、当然対象になります。そのほかに、今お話しのように、何か時間的に長短があるというお話でありますけれども、目的によって、短時間でもおるもの、あるいは通過するもの、そういうもので在日米軍は区別されるわけであります。
  58. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 どうも藤山さんのお説は、よくわかったような、わからないような感じがいたします。しかし、問題は、もっと深いところにあるんじゃないだろうか、こう考えます。と申しますのは、前回の安保条約の中で、在日米軍という観念が明確に浮かび上がっておったという事実と、今回の安保条約の中からは、在日米軍という観念が消えていったという事実と、この変化は、ただ単に言葉の上の変化ではなしに、アメリカの極東戦略の転換だという事実を考えていただかなければいけません。アメリカは、日本を武力占領をいたしておりましたころは、少なくとも日本に地上部隊を集結して、そしてアジアに対してみずからの意図を述べようと考えておりました。朝鮮戦争が始まれば、朝鮮へどんどん陸上兵を持っていく、どこかで問題があれば持っていくぞ、こういう形であったろうと思います。ところが、こうした陸上軍を中心考え日本基地、こういう戦略観念は転換をいたしました。御存じのように、飛行機が猛烈にスピードを増したことと、原水爆が運搬軽微になったこと、こういうことから、陸上軍の前線基地としての日本から、戦略空軍の基地としての日本に変わってきたことは、御承知の通りです。ここにも戦略言転換があったわけです。しかし、何といっても、まだまだ戦略空軍のアジアにおける基本がここに置かれるという点で、これは前進戦闘基地であったと思います。ところが、そうした戦略空軍の威力も、ICBM、あるいはIRBM等が発達をいたして参りますと、ほとんど意味をなさなくなって参りました。アメリカの国内でも、いろいろな議論が出て参りまして、日本よりももっと下がったアジアの第二線陣地、マリアナ群島、この辺に中心を置くべきだという議論さえ出てきております。さきのNATO軍の司令官であったレフトナント・ジェネラル・ギャビンですか、この方の論説などを拝聴いたしましても、そうです。こうして、日本は、今や前線の戦闘基地というよりは、前線の戦闘を支える補給基地に変わりつつある。これは基地顧問であるブース氏などの言っておられる点を見ましても、明らかだろうと思います。こうなって参りますと、前線戦闘基地から戦闘を支える補給基地に、日本の戦略価値が変わってきたということを前提にして、初めて、在日米軍の観念が今回の条約の中から消え失せていったという事実を私たちは理解できるわけです。もちろん、補給基地といえども、これは最前線の補給基地でありますから、ある程度の装備をしなければなりません。そして相当大きな危険を覚悟しなければなりません。こうして要らない陸上軍を全部下げてしまって、わずか五千人ぐらいの事務部隊を置いているだけの現状、こういうアメリカの戦略転換か前提となって、在日米軍の観念が消えていったという事実を、やはり考えていただかなければいけないんじゃないか。ただ単に言葉のしたけで問題を解決いたしますと、将来に大きな禍根を残します。私は、そういう意味で、日本が今や最前線の補給基地に変わりつつあるという点から考えてみて、在日米軍という観念をあえて持ち出して事前協議の中に導入することは、こちらだけのひとり合点であって、決してアメリカと歯車がかみ合う議論にはならないだろう、こう私は考えるのです。こうした在日米軍の観念がなくなっていく根拠の戦略転換、こういう問題について、その正面の責任者である赤城長官の御意見は、どうでしょう。
  59. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 アメリカの極東戦略が、どういうふうになっているかということにつきまして、私から申し上げるのは適当でないと思います。しかし、今お話しのような考え方もあると思いますが、その基本は、アメリカが戦争をしようということでなくて、再々申し上げておりますように、東西両陣営の科学兵器の発達によって、戦争抑制力としての原水爆、あるいは大陸間ないし中距離弾道弾等が発達したために、そういうことで、これは基地といいますか、そういうものを遠く離れておるといいますか、あるいは本国だけでもよろしいというような形になってきていることたと思います。そこで、日本だけが補給基地ということではないと思います。今度の条約におきましても、日本アメリカが守るという義務を負うことに相なっております関係からいいますならば、また日本からいたしますならば、そのために、日本の基地、それから日本施設、こういうものの使用を許すということになるといたしますならば、やはり有事のときの駐留というはかりでなく、常時駐留という形でアメリカ軍が日本におるという建前が、この条約において盛られておると思います。そういう建前になっておりますならば、日本がこのことによって戦争に巻き込まれることを防ぐという意味において、日本の基地を使って戦闘作戦行動等のために出動する場合に、事前協議の対象にしていくということは、これまた、お互いに日本の平和と安全、あるいは極東の、平和と安全を考える立場からしたならば、当を得たことだ、こういうふうに考えております。
  60. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 僕は、別に、米軍日本を足場に使ってアジアを侵略しようとしているなどとはまた言っていないのです。今暁に問題になっている六条にからんで、在日米軍という観念はなくなったし、そのなくなった戦略的な根拠というものは、今私の申し上げたような形だろう、だからその点を十分に認識をして、そして、この基地を使った戦闘作戦行動についての事前協議に際しては、在日米軍などという亡霊をかついでおりますと、歯車がかみ合いませんよ、こういうことを私は申し上げて、長官の御意見を伺ったわけです。ところが、長官は先へ先へと勘ぐられて、いろいろな御答弁を予防的におっしゃる。そんなに私意地悪く見えますか。(笑声)  そこで、私は、今まで何人かの委員お答えになりました、たとえば、第七艦隊を事前協議からはずす、対象外にするという根拠を、続いて伺いたいわけです。第六条のどこを見ましても、在日米軍であるかないかが、事前協議の対象になるかならないかの基準にはなっていないだろうと私は思います。「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される。」となっておるたけであります。さらにまた、「日本国から行なわれる戦闘作戦行動のための基地としての日本国内施設及び区域の使用は日本国政府との事前の協議の主題とする。」となっておるだけであります。これは在日していようがいまいが、また、事変の最中にアメリカからやってきて、そうしてこれを使って戦闘作戦行動をやろうが、全然区別はないはずです。それをあえて在日米軍という、古い、戦略的にアナクロニズムな観念をお持ち出しになって、いかにも窮屈な解釈をなさるという点が、私には解せないわけです。一体、第六条及び交換公文における日本基地使用というものが、在日米軍に限らなければならないという理由を一つお聞かせいただきたい。
  61. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 日本の基地に、先ほど防衛庁長官が言われましたように、常時駐留と申しますか、配置されております軍隊、これが在日米軍でありますことは当然のことでございます。従って、この在日米軍日本の基地を使用して、そうして戦闘作戦行動をするときに、事前協議にかかることも、また当然でございます。第七艦隊は、いわゆる日本に配置されました艦隊ではございません。でありますから、在日米軍とは申し得ないのであります。しかしながら、この日本施設区域を使用して、第七艦隊が戦闘作戦行動の基地といたしますときには、これは当然事前協議の対象になります。
  62. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 よくわかりました。そうすると、外務大臣の御説は、在日米軍という観念が適用になるのは、条約第六条の実施に関する交換公文における日本国への配置における重要な変更と、装備における重要な変更と、この二つの事項に関してだけ、在日米軍という観念は適用になり、日本の基地を利用した戦闘作戦行動の場合には、在日米軍の観念はない、こういうはっきりした御説明、たったように思います。そういたしますと、今まで第七艦隊は事前協議の対象外だとおっしゃっておったのと、相当矛盾するのではないだろうか。第七艦隊といえども——全体としては事前協議の対象にはならない。すなわち、それは日本と無関係だから。しかし、日本の基地を利用して戦闘作戦行動をやるような場合の第七艦隊というものは、事前協議の対象になる、こう伺っておいてよろしいでしょうね。
  63. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 その通りでございます。日本の基地、施設及び区域を利用して戦闘作戦行動をやります場合には、当然事前協議の対象になります。
  64. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 そこで、もう一つ、この事前協議がアナクロニズムだと私の申し上げておる理由が、出てきたような気がいたします。と申しますのは、米軍の配置というものは、日本だけに配置されておるものではありません。御存じのように、アラスカもあれば、グアムもあり、フィリピンもあり、そして台湾もあり、朝鮮もあり、沖繩もあり、そして日本もその一つであります。第七艦隊の場合には、日本の横須賀基地が一番大きな主要基地であるという問題があるだけでありましょう。そうなって参りますと、これらのアジア全域に散在しているアメリカ軍のうちの一部たけがぴくぴくと動くというような場合だけを考えていくわけには参りません。アジアに散在している全米軍が、お互いに連絡をとりながら一つ行動をとるのだろう、こう考えられるのですが、その場合のアジアの極東軍に対する作戦指揮命令は、どこからやってくるのでしょう。在日米司令官でしょうか、それとも、ハワイからでしょうか。これは赤城長官お答えをいただきとうございます。
  65. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 私は、日本防衛庁長官ですから一、どうもアメリカのことまで言うのは適当でないと思います。適当でないと思いますが、まあ、ハワイの極東軍から命令が出、あるいはワシントンから出る場合もあると思います。
  66. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 私は日本防衛庁長官でありますから、さようなことはあずかり知らぬところですと言わんばかりの御説明です。たがしかし、問題は、何もアメリカの問題だけを聞いているのではないのです。事前協議という問題にからめて私は聞いているのであって、事前協議に出席をされる方の権限をあなた方は調べもせず、その出席をされる方々が、どの程度の組織的な授権をされて出てきておるのかも調べないで御出席になるというのは、ちょっと当を得ないんじゃないか、少なくとも、相手がどの程度の作戦命令権を持ち、どの程度の行政的な権限を持つか、そういうことを確かめ合ってから話し合いを始めるのか国際的な会議の常道ではないでしょうか。ただ、向こうから来たから、ぶらっと会って、ぶらっと話をしたというやり方をするものですか、これは外務省に一つ伺っておきたいと思います。
  67. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 大へん誤解があるようでございますが、お尋ねが第七艦隊の作戦あるいは行動に対して、どこから命令を発するか、こうお尋ねでありまするから、私は、これはアメリカの方のことであるから、私が申し上げるのは適当でなかろう、しかし、まあ、ハワイの極東軍司令官あるいはワシントンから命令が出るだろう、こう申し上げたので、決して私は飛鳥田委員から何か言われる筋合いのものじゃないと思います。
  68. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 よく耳をほじって聞いていてほしいです。私は、第七艦隊の問題から、続いてアジアの全アメリカ軍に対する作戦の指揮、日本もその中の一つですと、ちゃんと申し上げておったはずです。従って、日本を含めているのですから、その問題について、あなた方だって当然十分な御研究があってしかるべきだろう、こう私は思います。  いずれにせよ、ハワイからくるということを御存じのようですから、けっこうでありますが、そういたしますと、ハワイからくるアジア全体の作戦命令の中で、日本に関する部分だけの修正、あるいは日本に関する部分だけの事前協議というものが一体どの程度に可能でしょうか。もちろん、総理は、イエス、ノーというふうに、象徴的におっしゃっておられますが、イエスかノーかという二者択一ではなしに、事前協議をなさる場合には、その中で、この部分の作戦はちょっとまずうござんす、こうしていただきたいと、きっとおっしゃる勇気をお持ちなのだろうと思います。また、こういうことはちょっと困ります——それが大きな全般の作戦に影響をする場合もあり得るだろうと私は思います。そういう二者択一のイエスかノーかだけではなしに、いろいろな相談をなさる場合に、当然ハワイの指揮命令を変更させる権限を持った人と話し合わなければ、ほとんどナンセンスじゃないだろうか、こう私は思うのです。ところが、事前協議の話し合いに出席をなさる方は、在日米大使、さらには在日米軍司令官、こういうことであります。こちらの側は外務大臣防衛庁長官、こういう、ふうに伺っております。一体、大使は、極東戦略を事前協議の中で修正するたけの力を持っておりますか。あるいは在日米軍司令官は、極東戦略を変更するだけの権限を持っておりますか。こうなって参りますと、ただお互いに机の前と、こっちに向かい合って話し合いをし、報告を受けるだけに終わっちゃうのじゃないでしょうか。これは一つ防衛庁長官から伺いたいと思います。
  69. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 御承知の通り、この委員会には、権限を持って、両国政府の代表として出るわけでありまして、在日米国大使というものは、当然大統領の信任状を持って来ておるわけでありまして、当然のことでございます。なお、そのほかに、顧問として太平洋軍司令官も出席することになっております。在日米軍司令官は、ここに書いてあります通り、太平洋軍司令官の代理となることができる、その書いてあります。
  70. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 その文章は、私も拝見しております。だがしかし、現実に、在日米軍司令官は、この事前協議にあたって、駐留に関する行政的な打ち合わせをする権限だけしか与えられていないのじゃないか、作戦変更に関する権限まで与えられているとは、私たちは知らないわけです。現に、防衛庁の外郭団体から出された防衛年鑑という本がありますが、この防衛年鑑を見ましても、在日米軍司令官は、駐留に関する行政的な折衝権しか持たないと書いてある。作戦的なそういう重大な変化を作り、その場で、よろしゅうござんすと言うだけの権限を持っていますか。
  71. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 これは、むろん当時におきます権限のいかんによっては、本国から委任を受けることもございましょうし、あるいは訓令を仰ぐ場合もございましょう。そうして適法に行使されるわけであります。
  72. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 防衛庁に配置せられておりますMAAG・J、すなわち在日米軍顧問団は、在日米軍司令官の指揮下にありますか。
  73. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 MAAG・Jは、在日米軍司令官の指揮下にはありません。
  74. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 ハワイにおける太平洋地区司令部の指揮下にあるのではないでしょうか。
  75. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 ハワイにおる太平洋軍司令官の指揮下にありません。
  76. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 それでは、一体どこの指揮下にありますか。
  77. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 アメリカ大使のところに付置されておるわけであります。
  78. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 二つの面のうち、一つだけをおっしゃっておる。MSAによる軍事援助の武器その他の物質的な日本への貸与あるいは援助等については、大使の指揮を受けておる。そして、外交官としての身分を持っておりますから、当然大使館に付置をせられるのはあたりまえです。ですが、それだけではないはずです。もし、それだけだと断言をなさるのならば、断言をしていただきたいと思います。当然このMAAG・Jはハワイに直属をしておるはずですが、もう一度お聞かせをいただきましょう。
  79. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 今お話がありましたように、相互防衛援助協定の第七条に、「アメリカ合衆国大使館の一部とみなされて大使館の長の指揮及び監督の下に行動するものとし、」云々、こういうことがありますから、アメリカ大使のもとに付置されておると思います。(「それはもう一つあるのだよ」と呼ぶ者あり)しかし、それは軍籍を持っておりますから、連絡をすることはあると思いますが、MAAG・Jの権限及び仕事というものは、MSA協定に規定されていることでございます。
  80. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 そこで、かなりはっきりして参りましたが、日本アメリカの意思が伝わってくるルートは、二つあるということです。一つは、ペンタゴン、すなわち国防総省からハワイヘ、ハワイから日本におりますMAAG・J、MAAG・Jから日本の統合幕僚会議、こういうルートです。もう一つのルートは、国務省—在日大使—在日米軍司令官、それに対応する外務大臣及び防衛庁長官、こういう二つのルートがあって、二つの形で日本に意思が伝達をせられてくる。この二つのルートを全然関連せしめないで、裏側にある、どちらかといえば、軍事的な問題にからんでは——と申しますのは、事前協議は軍事的な問題ですから、軍事的な面を重要視せざるを得ないわけです。軍事的な面にからんで考えて参りますならば、ペンタゴン—ハワイ—MAAG・J—統合幕僚会議、こういうルートこそ重要なんです。ところが、事前協議というのは、その傍系の、いや、表に浮かんでいるアクセサリーにすぎない、国務省—大使—外相というルートを通ってくる。これでは、事前協議でどんなに総理が力まれても、どうにもならないのじゃないだろうか。しかも、今までの戦争形態と違って、ボタン戦争といわれる時代です。いや、ボタン戦争でないとしても、少なくとも、奇襲先制をもって始まる現代戦、こういうものについて事前協議というものは一体どれだけの役に立つのだろうか、こういうことを私は考えないわけにいかないわけです。おそらく、国民の相当部分もそういうことを考えているでしょう。すなわち、事前協議は、国民の中にある、どちらかといえば、旧軍隊的な観念の上にあぐらをかいてごまかしているのじゃないだろうか。私が事前協議のアナクロニズムというゆえんは、ここにもあるわけです。一体総理は、ペンタゴン—ハワイ—MAAG・J—統幕会議、こういうふうにつながっていく太い軍事的なつながりというものを、どこでどうチェックされるつもりであるか、これを伺いたいと思います。
  81. 岸信介

    岸国務大臣 事前協議の問題は、言うまでもなく、アメリカ政府日本政府との間の事前協議でございます。それをどういう機構で、どういう機関をしてやらせるかということは、これは建前の問題から考えるべき問題であると思います。最後の決定は、日本政府の側においては内閣総理大臣がこれをやるべきものであるということを申し上げております。MAAGの地位についての飛鳥田委員の御質問は、私の了解しておる、さっき防衛庁長官が答えておりますことともちょっと食い違っておるように思いますが、言うまでもなく、MAAGは、それをやっておる人は軍人でありますから、軍人の、個人としてどういうなにがあるかということは別として、MAAGとしての職責及びなにとしては、私はどこから考えても、ハワイの極東軍司令官に隷属して、その命令を受けるものではないと思います。そのルートのお考えは、その点においては飛鳥田委員のお考えは違っておるのじゃないかと思います。  それから、今申しますように、事前協議そのものとしては、アメリカ政府日本政府でやるのでありまして、作戦上の問題、その他なにがありましょうが、アメリカを代表する人と、正式に日本を代表する者との間に話がされる、こういうものでございます。
  82. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 事前協議について、今のように、アクセサリーにすぎないような部分だけを強調していかれる点は、はなはだ危険です。そういう点で、もっと米軍と在日米軍あるいは極東軍との関連性を十分御研究になって、現実に行なわれるルートは何かということを十分御調査の上で事に処していただきたい、こう私は思うわけです。(「案文に書いてある」と呼ぶ者あり)今、不規則発言の中にもありますように、いろいろなルートを通じてという形で、今申し上げたペンタゴン—ハワイ—日本、こういうルートがあるいは合法化されるかもしれません。こういう点を十分にお考えをいただきたいと思います。  さらに続いて、在日米軍という観念がなくなったという問題を考えて参りますと、さらに移動、補給というものを事前協議の対象からはずす、直接戦闘作戦行動に関連のある場合は別だ、戦っている部隊に対して落下傘部隊で補給をしてやる、こういうような場合は別だが、こういうお話であります。しかし、移動、補給というものこそ、この在日米軍という観念がなくなり、日本を利用して戦うという形でありますだけに、重要なのではないでしょうか。そして、それかかえって相手国を刺激する結果にもなるのではないだろうか、こういう点を考えて参りますと、移動、補給という点について、なぜ事前協議からおはずしになるのか、軍事的な面から見て納得のいかないものを感ぜざるを得ません。この点について、外務大臣あるいは防衛庁長官のお説を伺いたいと思います。
  83. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 今回の場合におきまして、日本が直接戦争に巻き込まれることを回避することは当然でございます。しかしながら、同時に、日本といたしましては、アメリカ軍が移動もしくは補給をいたしておるのに対して、それを制限する必要は毛頭ないのでありまして、これらの問題につきましては、当然常時の協議にはなりますけれども、事前協議の対象にならぬことは当然のことだと考えております。
  84. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 私は、別にあげ足をとるつもりではないのですが、総理や外相は、米軍日本を守る義務を負わせた——負わせたというのはお気に召さないかもしれませんが、米軍日本を守る義務を背負ってもらった、これが新安保の非常な特徴だ、こうおっしゃるのです。ところが、そうおっしゃりながら、日本を守るべき勢力として考えていらっしゃる日本に駐留している米軍が、どんどん移動していくことに対して無関心だというのは、しり抜けではないでしょうか。この前の堤さんの御質問の場合に、一個師団以上の移動については、これは事前協議の対象にする、以下はしない、こうおっしゃっておるのですが、一個師団とおっしゃると、大へんなことです。たとえば、板付に駐留いたしておりまする四十一師団、こういう第五空軍の一部があります。この相当な部分が移動してしまって、一部が残っている、一個師団以上の移動にはならない。ところが、板付のこの航空師団は、日本を守る戦力としてはかなり大きなものだとお考えになっているのではないだろうか。そういう日本を守るかなり大きな戦力がどんどん移動していってしまって、日本を守る力が少なくなっている。にもかかわらず、それに対しては事前協議の対象にしない、これでは、アメリカ日本を守ってもらう約束をしてもらった、こういうことが、ほんとうのしり抜けになってしまうのではないでしょうか。別に私は言葉じりをとらえるつもりはありませんが、やはり移動も、日本から向こうへ出ていく場合といえども、在日米軍の戦闘力が低下する、こういう点で、あなた方のお立場からすれば、事前協議の対象たるべきものだろうと僕は思うのですりが、この点いかがでしょうか。
  85. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 条約全体におきまして、安全保障条約は、日本の平和を維持していく、安全を維持していくという建前でございます。従いまして、日本の安全と平和を害するような移動をやるということを前提にして、この条約考えるわけには参りません。両国が締結しております以上、当然そうあるべきことでございます。
  86. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 そういう原則論や観念論をお出しになっても、現実の問題を解決できないのじゃないか。アメリカの戦略というものはどんどん変わります。現に、先ほど申し上げたギャビン中将の書物を読んでみても、日本からもっともっと撤退すべきだ、こういうことが書いてあります。それから、ブース基地顧問の言説を伺いましても、日本はもう放棄すべきだという御議論さえあるようです。そういう点から考えて参りますと、日本にある米軍というものは、米軍の戦略の変更によっては移動もします。しかし、その移動について、あなた方が何にもこれをチェックする気がなく、事前協議の対象にしないのだということでは、日本における米軍戦力はどんどん下がってしまう、こういうことにならざるを得ないので、まあ私たちは、よけいな心配ですが、あなた方のお立場に立っても、お言葉が矛盾するのではないだろうかということを私は伺っているので、原則論を伺っているつもりはさらにございません。いかがでしょうか。
  87. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 原則論を申し上げましたのは、要するに、その移動等の問題につきましても、アメリカ軍が、その原則の上に立って日本を守るという立場におります以上、戦略のいかんにかかわりませず、戦略の変化に応じて、日本を守り得る体制に処置して参ることは、これは当然なことだと思います。そのときどきの戦略の変化によりまして、あるいは地上部隊が多くなったり、少なくなったり、あるいは空軍部隊が多くなったり、少なくなったり、それは戦略の変化によって起こり得ると思います。しかしながら、日本を守るという状態に置きますことは、これは当然でありまして、日本を守らないというようなことは、アメリカ政府考えておりません。アメリカの個々の、個人としての軍人その他で、いろいろ言説がございましょうけれども、アメリカ政府として、この条約締結した以上、そういうことは考えておりません。
  88. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 もうこのお話をしても、理解しようとして下さらないのですから、だめでしょう。そこで、今秋は、全体として事前協議というものが時代錯誤的なものだ、すなわち、在日米軍という観念は、事前協議の戦闘作戦行動に関する限りなくなったし、それはアメリカの戦略転換に基づいているものであって、日本は補給基地に変わりつつある、そして、その立場に立って、在日米軍行動をチェックする事前協議を考えないと、あやまちであるということを申し上げました。同時に、日本アメリカの意思が到達してくる二つのルート、そのうちの一つのルートにしか事前協議は関係しないじゃないかということを申し上げたつもりです。  そこで、戦闘作戦行動に関する事前協議から移りまして、さらに、いわゆる装備における重大なる変更、これに関する事前協議について伺いたいと思います。  装備における変更の事前協議、この問題は、当然核装備の問題に中心点が参ります。そこで、総理に伺いたいと思いますが、一体核兵器というものは、どういうものをさすのでしょうか。非常にばく然としたことを申し上げて恐縮ですが、われわれは、ピストルと言います場合には、銃身と弾丸と、双方を合わせてピストルと言うつもりでありますが、核兵器の定義を一つ伺わせていただきたいと思います。
  89. 岸信介

    岸国務大臣 専門防衛庁からお答えを申し上げます。
  90. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 核兵器と通常兵器の差でございますが、やはり国際的に通説というふうなものは、私どもは見出しがたいのでありますが、一般的には次のように考えております。核兵器と申しますのは、原子核の分裂または核融合反応より生じまするところの放射エネルギーを、破壊力または殺傷力として使用する兵器でございます。
  91. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 破壊または殺傷力として使用する兵器といいます場合には、その兵器という概念の中に、俗な言葉で言えば、爆弾だけを意味するものですか、それとも、この爆弾を発射し、あるいはこの爆弾を運搬するものまで含めているのでしょうか。ピストルのたまだけをピストルとおっしゃるのですか、銃身を含めてピストルとおっしゃるのですか。
  92. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 今回の事前協議の場合におきまして、対象になりますものは、核弾頭、それから運搬兵器としてのミサイルは、長中距離のミサイル、それからミサイル基地の建設という三つでございまして、どんな短い期間のものでも、核弾頭の持ち込み、あるいは長中距離のミサイルの持ち込みにつきましては事前協議の対象になります。
  93. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 そうすると、たまだけではなしに、運搬用具も入ると、こういうことですか。
  94. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 運搬用具も……。(「わからなかったぞ」「わからなくなったのだ」と呼ぶ者あり)
  95. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 今仰せになりましたごとく、たまだけの場合もございましょうし、その核兵器を専用に運ぶ道具もございましょう。そういうものを、一つの核兵器というふうに思います。
  96. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 わかりました。——それでは休憩いたしまょうか。
  97. 小澤佐重喜

    小澤委員長 この際、暫時休憩をいたします。     午前十一時五十七分休憩      ————◇—————     〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕