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1960-03-25 第34回国会 衆議院 日米安全保障条約等特別委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年三月二十五日(金曜日)     午後一時二十六分開議  出席委員    委員長 小澤佐重喜君    理事 井出一太郎君 理事 大久保武雄君    理事 櫻内 義雄君 理事 椎熊 三郎君    理事 西村 力弥君 理事 松本 七郎君    理事 竹谷源太郎君       安倍晋太郎君    愛知 揆一君       秋田 大助君    池田正之輔君       鍛冶 良作君    加藤 精三君       賀屋 興宣君    久野 忠治君       小林かなえ君    田中 龍夫君       田中 正巳君    渡海元三郎君       床次 徳二君    長谷川 峻君       服部 安司君    福永 健司君       福家 俊一君    古井 喜實君       保科善四郎君    毛利 松平君       山下 春江君    飛鳥田一雄君       石橋 政嗣君    黒田 寿男君       田中 稔男君    戸叶 里子君       成田 知巳君    穗積 七郎君       森島 守人君    横路 節雄君       受田 新吉君    大貫 大八君       堤 ツルヨ君  出席国務大臣         内閣総理大臣  岸  信介君         外 務 大 臣 藤山愛一郎君         国 務 大 臣 赤城 宗徳君  出席政府委員         内閣官房長官 松本 俊一君         法制局長官   林  修三君         防衛庁参事官         (防衛局長)  加藤 陽三君         調達庁次長   眞子 傳次君         外務事務官         (大臣官房審議         官)      下田 武三君         外務事務官         (条約局長)  高橋 通敏君  委員外出席者         専  門  員 佐藤 敏人君     ————————————— 三月二十五日  委員石坂繁君、鴨田宗一君、塚田十一郎君、野  田武夫君及び帆足計辞任につき、その補欠と  して福永健司君、長谷川峻君、久野忠治君、加  藤精三君及び成田知巳君が議長指名委員に  選任された。 同日  委員福永健司君、長谷川峻君、久野忠治君及び  加藤精三辞任につき、その補欠として石坂繁  君、鴨田宗一君、塚田十一郎君及び野田武夫君  が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び  安全保障条約締結について承認を求めるの件  (条約第一号)  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び  安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並び  に日本国における合衆国軍隊地位に関する協  定の締結について承認を求めるの件(条約第二  号)  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び  安全保障条約等締結に伴う関係法令整理に  関する法律案内閣提出第六五号)      ————◇—————
  2. 小澤佐重喜

    小澤委員長 これより会議を開きます。  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約締結について承認を求めるの件、日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並び日本国における合衆国軍隊地位に関する協定の締結について承認を求めるの件、日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約等締結に伴う関係法令整理に関する法律案、以上の各案件を一括して議題といたします。前会に引き続き質疑を行ないます。黒田寿男君。
  3. 黒田寿男

    黒田委員 私は、これから岸総理及び藤山外務大臣に対しまして質問をいたしますが、実は防衛庁長官にも場合によってはと思いましたけれども、きょう特にその旨を申し上げておりませんでしたので、予定変更してもよろしゅうございます。そこで、総理大臣藤山外務大臣とに主としてお伺いをすることにいたします。私の質問は、前回委員会における質問の続行であります。従って、質問テーマも、先日申し上げました通りに、新安保条約における極東概念という問題だけに限定いたしまして御質問申し上げたいと思います。先日も申しまたように、極東概念に関します政府統一見解統一解釈というものが、三木武夫氏の岸総理に対する進言を契機といたしまして修正されたのではないかという疑いがあるわけであります。単に疑いだけでなくて、私どもはそう考えておるわけであります。このことをまず第一に問題にしてみたいと思います。  それから、ついでに、きょうお尋ねしてみたいと思いますことのテーマを申し上げてみますと、その次には、今までたびたび極東範囲について政府解釈変更いたしまして、そのことが国民を不安に陥れておる。その不安を除くという目的で、先般政府統一見解なるものを発表されたけれども、その見解の中で、政府は、極東範囲について、具体的に個々の島々の名まであげて説明されております。ところが、その後、三木氏の進言によりまして、この解釈がまたまた変更されようとしておるように思われるのでありますので、こう解釈が変わっては国民の不安は増大するばかりだ、これが最終的な、確定的な解釈であると政府が幾ら言われましても、国民はもはやそれを信用することができないという心情、心の状態に、今、追いやられているのではなかろうかと私には思われます。そういう好ましからぬ状況が極東概念というものに関連いたしまして発生しておるのではないか、そうであるといたしますならば、変更せられた解釈内容を検討するということはもちろんでございますけれども解釈がたびたび変更せられるということそれ自身を問題にしなければならぬ、そういうことが私は言えると思います。どうしたならば確定した解釈が得られるのであるか。岸総理説明と申しますよりも、わが国の政府説明、それのみによりましては、その説明が変わってばかりいるから確定した解釈を得ることが望みがたい。それではどうしたらよいか、それが今日の私の質問の第二点であります。  その次に、私どもといたしましては、極東範囲をどのように考えるべきであるか、積極的に私どもの方の解釈の仕方を申し上げてみます。そうして、政府解釈との相違を明らかにいたしまして、私ども考えに対する政府の御所見をも、また伺いたいと思います。  なお、三木氏の御進言の中には、事前協議の問題も取り上げられておりますので、時間がございますならば、この問題も取り上げてみたいと思います。きょうは時間もあまりございませんので、大体そういう範囲質問したいと思います。  そこで、第一の問題に入りますが、先ほど申しましたように、第一の問題は、極東範囲について、政府統一解釈変更を生じたかいなか、こういう問題であります。前回委員会での私の質問は、三木氏の進言に対する岸総理の反応というあたりで中断されておりますけれども、その後、この問題につきまして事態は発展して参りまして、この問題の処理ないし調整のために関与した人々あるいは機関範囲も、岸総理三木武夫氏というような人々範囲から、自民党党機関及び外務省というように拡大してきたように新聞は報じておるのであります。そして私どもが大体新聞によって知るところによりますと、現在では、大体においてこれらの人々及び機関の間におきまして問題の調整ができまして、いわゆるどういう補足説明をするかということの、その内容がすでに熟しておるというように新聞紙上で私どもは見受けるのでございますから、一つその報道を基礎にして御質問を申し上げます。  最初に、藤山外務大臣お尋ねいたします。去る二十一日ころに、極東範囲に関しまして国民疑惑を解くためにという目的で、外務省において、いわゆる補足説明政府案を立案されたというふうに承っておるのでございますが、はたしてそうでありますかどうですか。もし、そうでありますならば、一つお答えを願いたいと思います。
  4. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 先般の愛知質問に対する総理答弁以上に、何らかの補足説明というようなものを外務省で作ったことはございません。
  5. 黒田寿男

    黒田委員 外務大臣、そういうふうにお答えになりますが、各新聞紙を読みますと、政府といたしまして相当確定的な、いわゆる補足説明の案ができておる、こういうように報じられておるのを私どもは見るのであります。去る二十一日の午後三時半に自民党船田政調会長三木武夫氏の事務所を訪問されまして、船田政調会長の方から、極東範囲に関する国民疑惑を解くための説明ということで、外務省の立案した政府案と、それから船田氏と賀屋外交調査会長とが立案されました自民党案との二つを示したというように報じておるのでありますが、一応文書にしたような案を外務省で作られたということは事実でございましょうか、藤山外務大臣
  6. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 そういうことはございません。
  7. 黒田寿男

    黒田委員 御否定になりますので、別にこれ以上はこの問題につきましては繰り返して質問いたしません。ただ新聞紙には、外務省の立案されたものと、それから党で作ったものとが内容上どういうように違うかということまでも発表されておる。  外務大臣にはこの程度質問を打ち切っておきます。この問題の処理がその次の段階にくるわけでありますから、岸総理大臣にお伺いいたしてみます。  ただいま申しましたようなわけで、船田政調会長外務省案と称する文書になっておるものを三木氏にも示した。そうして三木氏といろいろ話し合いをし、了解を得て、それから船田政調会長が同日の午後、院内で岸総理それから川島幹事長椎名官房長官等協議をされまして、安保条約における極東範囲及び事前協議という問題につきまして協議されました結果、政府国会での質問に対する答弁の形をもって行なうという予定補足説明内容を、正式に決定した、こういうように新聞報道しております。この点、多少前会の総理に対する私の質問と重複するかもわかりませんが、前会中途質問が中断されましたので、あらためてこれに対し御答弁をお願い申し上げたいと思います。なお、その補足説明というものが、すでに国会委員会で発表する程度に決定されておりますならば、この間も、いろいろと総理の御意見を承りましたけれども、あらためて、今申しましたような政調会長幹事長及び官房長官、こういう人が協議された結果としてまとまったという案ができておりますならば、その補足説明というものを一つここで御説明を願いたいと思います。きょうは、この補足説明を正式に質問する前に、前もって文書にして本委員会出していただきたかったのでございますけれども、つい私どももいろいろせわしい状態でありまして今日に至りましたので、そこまで要求する機会を失しましたが、一つ正確に補足説明なるものの内容を御説明願いたいと思います。これは総理大臣にお願いしたい。
  8. 岸信介

    岸国務大臣 今おあげになりました外務省案については、外務大臣からお答えした通りであります。  また、補足説明に関する私と幹事長以下が話し合って結論が出た、そういうものをまとめたというような事実はございません。これは何かの新聞の間違った報道だろう、そういう事実はございません。ただ、自民党内において、その問題について将来質問者質問とか、あるいはその場合の答弁内容等につきまして研究をしているということを私承っておりますけれども、そういうふうな、政府と党との間において打ち合わせをし、補足説明としての案のきまったというものはございません。
  9. 黒田寿男

    黒田委員 いろいろな新聞が、今、総理お答えになりましたこととは違って、岸首相川島幹事長船田政調会長椎名官房長官協議された結果、政府補足説明案ができておる、一々新聞名前はあげませんが、いろいろな新聞が同じような記事を出しております。こういうことはないとおっしゃる。そうしますと、重ねてお伺いしますが、これはある、ないは別といたしまして、政府として、三本氏の進言によってとにかく補足説明を行なうという方針はきまっておったと思うのでございますけれども、その補足説明なるものが、まだ政府としては国会において正式に報告するまでに熟したものができていないのでございましょうか。
  10. 岸信介

    岸国務大臣 私は、先日もお答え申し上げましたように、われわれとしては、すでに極東範囲について、政府としてのはっきりした統一見解を発表しておる。これを変更する意思は持たない。ただ、その説明が足りないということであるならば、それを敷衍して説明をすることは、もちろんわれわれとしてやぶさかではない。その方向なり、あるいは問題になる点等については、党においても十分研究してみようじゃないかということを申した次第でございます。それ以上、私自身としてはまだ何らの党からの報告も聞いておりませんし、具体化したものはございません。
  11. 黒田寿男

    黒田委員 現状がそうだと総理お答えになるのでありますが、政府でそういう補足説明国会においてなすべきものだというように一応お考えになりまして、その準備はそれではなさっておりますか。
  12. 岸信介

    岸国務大臣 私は、先ほども申し上げましたように、先日もお答え申し上げましたように、政府として極東に関する考え方は統一見解として述べておるのであって、私はそれで十分であると思うけれども、しかしながら、なおその点において、その趣旨をさらに徹底せしめる意味において補足する点があるならば、その質問に応じて補足することはやぶさかでない。その方法とか、その内容とかは、さらに研究しようというのが三木君との話し合いでございまして、私自身が、何らかそれについて質問があり、補足すべき点があるということであれば、これをしますけれども政府の方から積極的に進んで補足説明するというようなつもりは持っておりません。
  13. 黒田寿男

    黒田委員 必要があれば補足説明もすると、総理はおっしゃっておるようであります。ところが、総理のおっしゃいます補足説明なるものは、文字通り補足説明であるようです。補足説明と申しましても、今申しましたように、文字通り補足説明でありますならば、私ども、それをあえて問題にする必要はないと思います。今までのことがよりよくわかったというだけの効果のあるものだろうと思いますけれども、しかし、新聞の報じておるところを見ますと、その補足説明なるものの内容が、いわゆる補足説明の域を逸脱いたしまして、私どもから見ますと、従来の統一見解と称せられておりましたものの内容を修正し、変更するようなものである、こういうように新聞報道を通じて私どもは知るわけでございます。さように理解しておるわけでございます。そういうことになりますと、名前補足説明ではございますけれども、文字通り補足説明ではなくて、実質的には、従前の統一解釈内容変更、修正である、こういうようになるように私ども新聞で見ております。こういう質問をいたしますのも、そのためにするのであります。総理は否定なさっおりますが、しかし、おそらく、今月以後の委員会において与党の委員質問に対する答えというような形で、何らか補足説明をやられるのじゃなかろうか、こういうように新聞は書いておりますから、私もそういうことが起こるのじゃなかろうかと思います。そういうことでありますれば、今、私の質問に対してお答え願ってもよかろう、こう思いまして、きょう御質問を申し上げておるわけでございます。(「具体的に質問をやれ」と呼ぶ者あり)やります。  それでは、新聞の報じておるところを申し上げてみます。新聞はこういっております。それは、先ほど言いますように、総理を初め船田氏、川島氏などが協議したものの内容だというように伝えられております。それを御紹介申し上げますと、こういうように書いてある。もとより、政府統一見解を修正せぬという前提はつけておる。しかし、そのあとで、補足説明内容を見ますと、第一は、日本の安全と極東の安全とが一致した場合にのみ、事前協議において日本在日米軍軍事行動に同意を与える、それから、これは極東範囲に関するものでございますけれども、第二に、極東範囲に一々島の名前まで明示したことは不適当であった、こういう意味補足説明をせられる、こういうことが新聞で報ぜられております。こういう話し合い政府内部であったことはございませんでしょうか。
  14. 岸信介

    岸国務大臣 事前協議の場合に、しばしば申し上げておるように、米軍がいわゆる戦時出動する、戦時行動するという場合の事前協議を受けて、日本側としてこれを承認する場合もあるし、また、拒否する場合もあるということはしばしば申し上げております。その一つの標準として、一体この安保条約において極東の平和と安全ということを規定しておるということは、要するに、日本の平和と安全を守るのがこの条約の主たる任務であって、それとうらはらをなすような、それと非常に密接な関係を持っておる極東の平和と安全がやはり確保されなければいけない、それでなければ日本の平和と安全が守れないという趣旨であるからして、この事前協議の場合において、われわれの平和と安全に直接密接な関係のある極東の平和と安全の確保のために米軍が出動するという場合はやむを得ないけれども、そうでない場合においては、やはりこれは拒否していくことは適当である、また、政府もそういう考えであるということは最初から私ども考えておることでございます。ただ、今お話のように、三点について政府側で何か打ち合わせしたというような事実はございませんで、個々の問題として、そういうような点が論議されたことは、今言ったように事前協議におきましてもすでにあることでありますから、われわれが打ち合わせをしておることは時々ありますけれども、特に、この問題について、さっきお話の、何か何人かが集まって、政府、党との間に打ち合わせして、こういう補足説明をするんだというふうな打ち合わせをした事実はございません。
  15. 小澤佐重喜

    小澤委員長 この際、横路節雄君より関連質疑の申し出があります。これを許します。横路節雄君。
  16. 横路節雄

    横路委員 総理お尋ねをしますが、去る二月の八日並びに十日予算委員会総理から私に対しまして、極東範囲について政府統一見解をお述べになったわけです。ところが同じく二月の二十六日、安保特別委員会愛知委員質問に答えまして、私たち議員全部に「新安全保障条約にいう『極東』の観念」こういうものをお出しになったわけです。そこで、二月の二十六日に安保特別委員会に出された「新安全保障条約でいう『極東』の観念」というのをわざわざお出しになったのは、二月の八日並びに十日に、予算委員会で私ども極東範囲について統一解釈をお述べになったのとは違うという意味で出されたのかどうか。もしも違うという意味でなければ、別にお出しになる必要はなかったと思う。ですから、私は、実はこの問題についてはぜひ安保特別委員会で適当な機会お尋ねをしたい、こう思っていたわけです。今、黒田委員質問に答えて、委員の方から、この問題についてはどうか、こういうようにお尋ねがあれば、それについては総理お答えをしてもよろしい、こういうことでございますから、まず、私がお尋ねをしたいのは、二月の八日並びに十日、衆議院予算委員会において、私をひっくるめて私どもにお述べになられた極東範囲統一見解というものと、二月の二十六日、本委員会において愛知委員質問に答えて、文書で私たちにお示しになられた「新安全保障条約にいう『極東』の観念」というものは同じなのか異なっているのか、その点についてお尋ねをしたいと思います。
  17. 岸信介

    岸国務大臣 極東範囲の問題につきましては、いろんな機会にいろいろな形において質問をされてきております。そこで政府としては、この極東観念につきまして、いろいろな点をあらゆる点から検討いたしまして、統一見解として二月二十六日に私が愛知委員質問に答えまして明確に申し上げていることが、これが政府極東に関する統一見解である、かように御了承願いたいと思います。
  18. 横路節雄

    横路委員 総理大臣に私がお尋ねをしているのは、二月の八日、この場所における予算委員会で私からお尋ねをして、政府側でもいろいろ答弁の食い違いがあり、お昼の時間にわざわざ休憩をして、総理並びに外務大臣お話によりますと官房長官も入れて——それは内輪のことですから、私たちわかりませんが、あらためて政府統一見解として私にここでお答えになられた。それと同じでございますか。それと違いますかと聞いている。そのことを聞いているのですよ。二月の八日、私に答弁をされた、さらに淡谷委員答弁をされた、統一見解として答弁をされたものと同じですが、違いますかと聞いているのですよ。その点をお尋ねいたします。
  19. 岸信介

    岸国務大臣 今、具体的にどの点がどう違っているかとか、あるいは違っていないかとかいうような御質問でございますが、私ども見解としては、二月二十六日にまとめて発表いたしました統一見解をもって政府見解と御了承願いたいと思います。
  20. 横路節雄

    横路委員 総理大臣お尋ねしますが、私の質問総理お答えになっていらっしゃらないです。二月の八日、午前中からの質問で、政府側答弁統一解釈というものができないので、あらためて政府は相談をなされて、統一見解としてわざわざここでお述べになったのです。そのことと、これとは同じですか、違いますかと聞いている。だから二月二十六日の愛知委員質問に答えたのが統一見解であって、この前のは統一見解でないならないとここでお答えになれば、さらに、私は質問をしたいのです。まず、違うのですか、同じなのですかと聞いている。片一方の衆議院予算委員会統一見解を言った、安保特別委員会統一見解を言った、それがみんな違う統一見解というものは私はないと思うのです。だから、同じですか、違いますかと聞いている。
  21. 岸信介

    岸国務大臣 従来から政府は、フィリピン以北日本周辺ということをもって統一見解として申し述べております。それに対しまして、いろいろ具体的に島や地域をあげられての御質問があったのに対してお答えしたことがあるように思います。しかしながら、極東観念として、まとめて統一見解として申し上げたのは、二月二十六日の愛知委員に対する私の答弁でございまして、これをもって政府統一見解と御了承願いたいと思います。
  22. 横路節雄

    横路委員 今、総理から、述べたような記憶があるというお話でございますが、それは総理、述べたような記憶ではなしに、予算委員会で長時間、一たん休憩になり、議事が中断されて、私に統一見解としてお述べになっておるわけです。ところが二月二十六日、愛知委員総理お答えになられた中で、「新安全保障条約にいう『極東』の観念」というところで「一般的な用語としてつかわれる『極東』は、別に地理学上正確に画定されたものではない。しかし、日米両国が、条約にいうとおり、共通関心をもっているのは、極東における国際の平和及び安全の維持ということである。この意味で実際問題として両国共通関心の的となる極東区域は、この条約に関する限り、在日米軍日本施設及び区域を使用して武力攻撃に対する防衛に寄与しうる区域である。かかる区域は、大体において、フィリピン以北並びに日本及びその周辺地域であって、韓国及び中華民国の支配下にある地域もこれに含まれている。」こう答弁されている。そこで、私は、きょう総理お尋ねしたいのは、ここで私が二月八日並びに十日に、まず、北方の地域について歯舞色丹は入りますか、国後択捉は入りますか、千島全島は入りますか、こういう私のお尋ねに対して、総理は、二月八日、歯舞色丹は入ります、南千島は入ります、千島列島は入ります、こうなった。千島列島とは、何といってもサンフランシスコ条約その他からいっても、また、岸内閣自体のお考えでも、いわゆる北千島のことであります。しかし、二月十日には、総理は、北千島は含まれておりません、歯舞色丹は入っております、国後択捉は変わっておらない、こういうようにお答えになり、さらに金門、馬祖島は含まれておりますかというお尋ねに対して、総理は、金門、馬祖島は含まれております、こういうようにお答えになっておる。これは将来ともこの解釈は絶対に変えませんかと言うたら、絶対に変えませんと、こうお答えになっておる。ところが、二月二十六日に、愛知委員に対して、政府がわざわざ印刷してわれわれにも配付された、今私がここで申し上げた政府の御答弁によると、「フィリピン以北並びに日本及びその周辺地域であって、韓国及び中華民国の支配下にある地域もこれに含まれている。」、そこで、私がお尋ねしたいのは、国後択捉は含まれていますかどうか、金門、馬祖は含まれていますかどうか、含まれている、と二月の十日に答えて、この解釈については将来絶対に変更することはありません、と御答弁になったことが、この二十六日の統一解釈でさらに変わったのか、同じなのか、その点を私はお尋ねしたいと思う。この点について、総理大臣から何か補足的な説明があるならば、この際承っておきたいと思うのです。
  23. 岸信介

    岸国務大臣 二十六日にお答え申し上げましたのが、今申しました通り政府の全体の統一見解でございます。私どもは、本来、極東というものに対して、ばく然たる地域、地図に記入すべきような性質のものじゃないということを申し上げております。従って、一々の島嶼等をあげて、これが入るか入らないかというような論議をすることは、極東観念からいうと、私は、本来そういう抽象的に考えるべきものであるから、適当でないと思いますが、しかし、この統一見解で私が申し上げていることは、従来お答えをしたことと矛盾はしておらない、私はかように考えております。
  24. 横路節雄

    横路委員 それでは外務大臣お尋ねします。総理大臣は、二月の八日並びに二月の十日に、予算委員会で、外務大臣もお聞きのように、われわれに対して、この統一見解は絶対に変えないと言われた。歯舞色丹は含まれている、国後択捉は含まれている、金門、馬祖は含まれている——個々の島については、あげるとかあげないとかいうことを今さら言われても、統一見解としては、その点は含まれている、こういうようにお答えになられて、今総理大臣から間違いない——それは間違いないですね、外務大臣
  25. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今総理大臣答弁されておりましたように、極東という観念は、元来線を引いてきめるべきものではないということは、われわれも絶えず申し上げておったわけであります。従って、そういう意味において、個々の島について一々論議をいたしてみても、われわれとしてはそれを論議の対象にするわけにはいかぬのでありまして、その点につきましては、総理と同じでございますし、総理答弁された通りであります。
  26. 横路節雄

    横路委員 外務大臣、あなたの答弁も違いますよ。個々の島を対象としてそういうことは答えることができないと言うた。総理大臣は、今、国後択捉は入っていると言い、金門、馬祖は入っていると言った。だから、私が外務大臣に聞いているのは、国後択捉は入っているんですか、金門、馬祖は入っているんですかと聞いている。そういう島は、この条約にいう極東範囲で大した意味がないといったようなことを言われるのなら、私はこれからずっと聞きますが、外務大臣、それはどうなんですか。総理大臣、どうなんです。金門、馬祖は入るんですね。国後択捉は入るのでしょう。その点はどうなんでしょう。今御答弁になったのは、外務大臣は、個々の島が入るとか入らないとかいうのは問題でないのだ、それは総理大臣と同じだということを言っていますが、その点を一つここで明確に御答弁願いたい。きょう黒田委員からこのことを聞いているのは、この問題について明確にならなければ、この審議は進めるのに容易でないですよ。しかも総理大臣は、今国後択捉は含まれている、金門、馬祖は含まれているとお答えになったじゃありませんか。それを外務大臣は、個々の島々については、そういうものは関係ないんだということを言っておるが、総理大臣、重ねて明確にお答えをいただきたい。私ははっきりしているのですから……。
  27. 岸信介

    岸国務大臣 先ほどもお答え申し上げましたように、極東という観念は、それ自体がばく然としておるのであって、どの島が入るか入らないかというようなことを、一々地図に記入するというような性格のものではないということを、本来のなにとして申し上げております。前提として申し上げております。しかし、政府が二月二十六日の統一見解出したことと、その前にいろいろのお答えをしていることとの間に、修正があるのか、矛盾があるのかという点に関しましては、私は矛盾がない、こういうことを申し上げております。
  28. 横路節雄

    横路委員 総理大臣、矛盾がないとおっしゃるから、聞いている。これが与党の内部その他において、特に自民党の中に持たれている安保特別小委員会等でも、問題になっていないならばいいですよ。しかし総理大臣、私どもは、与党内部の意見等についても、新聞で承知しているから、ここで聞いているわけです。ですから、今のそれ以前における答弁と矛盾がないというなら、重ねてここで、国後択捉は入りますか、金門、馬祖は入りますか、この二点はっきりお答えをいただきたい。入っているのか入っていないのか、この二点です。
  29. 岸信介

    岸国務大臣 問題は、国民が非常に関心を持っておる極東という問題は、言うまでもなく、日本に基地を持っておる米軍が、日本の基地を利用して海外に出動するということが、どういう範囲に及ぶかということについて、非常な関心を持っており、また、われわれとしても、重大な意義を持っておると思うのです。その点は、これは事前協議の対象になるわけでございますから、先ほどもお答え申し上げましたように、日本の平和と安全に直接密接な関係のある地域以外に出動することは、私どもはこれは拒否する考えでございます。また拒否すべきものである、こう思います。従って、極東範囲というものを、あるいは地図において、あるいは一つ一つの島をあげてこれを論議するということは、この極東観念としてきめる場合においては、そういう性質のものではないと私は思います。そこで、統一見解において、私どもが全体を通じての答弁を取りまとめて申し上げたことがなにである、しかして、その趣旨は、以前申し上げたこととそれでは趣旨が違うと言われるならば、私は、趣旨は違っておらない、こういうふうに申し上げておるのであります。
  30. 横路節雄

    横路委員 総理大臣趣旨は同じだと言っているけれども、私の聞いているのは、具体的に聞いているのです。国後択捉は入りますか。金門、馬祖は入りますか。入らないなら入らないとお答えいただいていいのです。入るなら入ると答えて下さい。総理大臣、それは在日米軍の行動範囲じゃないのです、私の聞いているのは。在日米軍の行動範囲については、これから聞くのです。今私の言うのは、あなたの方で言っている、いわゆる一般的にいう極東範囲極東地域とは何かということを、あなたの方でわざわざ言っているから、聞いている。現に藤山外務大臣は、ここで、朝鮮については北緯三十八度はどうかと聞いたら、三十八度でくっきり分かれないのだ、ちょっと北の方にいくかもしれない、こういうふうに言っているじゃありませんか。それを今度は、ここではっきり御答弁になったのだから、私の聞いているのは、国後択捉は入るか。——だいぶお困りのようですが、国後択捉は入りますか、金門、馬和島は入りますか。入らなければ入らないでいいのです。われわれは金門、馬祖島は入るべきでないと思っているのだから、入らないなら入らないとお答えになって下さい。入るなら入るとお答えになって下さい。総理大臣、どちらですか。
  31. 岸信介

    岸国務大臣 今申し上げましたように、そういうことに対して、一々入るとか入らないとかいうことを申し上げることは、極東観念をきめる上からいうと、適当でない。しかしながら、申し上げたことが、それでは二十六日の統一見解変更されたのかと言われるならば、その趣旨においては違っておらない、こういうことを申し上げておるのであります。
  32. 横路節雄

    横路委員 総理お答えは、あとで文章を読んでみると、なにが、なにがというのが非常に多いです。なにがというのは、一体何をさしているのかわからないですよ。私はたんねんに記録を読んでいます。そこで、総理は非常に御答弁がうまく、抽象的に何とか逃げよう逃げようというようなお考えです。はっきりして下さい。金門、馬祖島は入りますかどうですか。(「しつこいぞ」「入るとか入らないとか言えないんだ」と呼ぶ者あり)私は何べんでも聞きますよ。金門、馬祖島は入りますか。国後択捉は入りますか。入らないなら入らないとおっしゃって下さい。それだけをお答えになっていただきたい。
  33. 岸信介

    岸国務大臣 先ほどお答え申し上げましたように、極東観念にそういうものが入るか入らないかということを、一々ここでお答えすることは、私は適当でないと思います。しかしながら、今までお答え申し上げたことにそれでは前後矛盾がある、こうお話になれば、矛盾はない、かように考えます。
  34. 横路節雄

    横路委員 だめですよ、総理大臣個々の島について、入るか入らないかということは論議外だ、しかしそのことは、今までの私の答弁とは矛盾しない——何が矛盾しないのですか。大いに矛盾しているじゃないですか。総理大臣、重ねて聞きますが、これは総理大臣、あなたの方もここで何時間でもねばろうとすれば、私の方も何時間でも続けていきます。総理大臣、あなたはこう言っておるじゃありませんか。いいですか。同じく二月二十六日、愛知委員質問に答えて、極東という地域は、自由主義の立場をとっている国々の支配している領域というものがその主眼になる、共産主義の国が実力を持ってこれが平和と安全を確保している地域は、極東地域外だと答弁している。そこで、私は、それならあなたにお聞きをするのです。金門、馬祖島は中国の領土ですか、領土でありませんか。その点は政府見解はどうなんですか。これはまさかお答えしないわけにはいかぬでしょう。金門、馬祖島については、中国の領土なんですか、領土でないのですか。(「領土であり、領土でないと言っているじゃないか」と呼び、その他発言する者あり)委員長、こういう与党の理事がわきで言うのは、注意してやって下さい。やりたければ、すみの方に行って、何ぼでも大きい声を出したらいい。
  35. 小澤佐重喜

    小澤委員長 静粛に願います。
  36. 岸信介

    岸国務大臣 これは御承知の通り、中華人民共和国の主張と、それから中華民国の主張とが、おのおの食い違っておるところでありまして、両方が自分の領土のように主張しておるというのが、現実の状況であります。
  37. 横路節雄

    横路委員 藤山外務大臣、あなたは二月十二日、辻原委員質問に答えて、「一体金門、馬祖島はどこの領土ですか。「中国の領土でございます。」「中国とはどこですか。」「中華民国でございます。」とあなたは答弁している。ここに載っておりますよ。それはどうなんですか。今総理大臣は領土でないと言った。領土でないですよ。何を言っていますか。
  38. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 御承知のように、金門、馬祖島につきましては、中共の方からいいますれば、台湾も自分の領土だと言っております。中華民国からいえば、大陸も自分の領土だと言っておる。その接触しておるところが、金門、馬祖のあの沿岸なんだと思います。従いまして、そういう意味において、われわれとしても、極東の平和という問題に対して、問題のある地点だとは思っております。
  39. 横路節雄

    横路委員 外務大臣、あなたはそういうことを言ってはいかぬですね。ここに書いてあるじゃないですか。あなたは答弁しておるじゃありませんか。二月十二日、あなたは辻原委員質問に答えて、金門、馬祖島は中国の領土でございますと答弁しておるじゃないですか。何を言っておるのですか。あなた、それは違います。総理大臣は、その点は、予算委員会で、田中委員質問に答えて、あなたはそう言っていない。領土権はございません、現にしかし中華民国が支配をしておる——支配しておるというのと領土とは違いますよ。そうでしょう。言葉じゃないですよ。外務大臣、あなたはそう言っておりますから、領土でなければ領土でない、もしも言ったとしたら私の間違いだ、そう言ったらどうです。これはごらんになればありますよ。
  40. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 広い意味において中国なんで、間違いないと思います。
  41. 横路節雄

    横路委員 外務大臣、あなたはそういうことをおっしゃってはいけませんよ。あなたはこう言っておるじゃありませんか。中国とはどちらを指しておりますかと聞いたら、「中華民国でございます。」と言っておるじゃありませんか。外務大臣、どうですか。どちらでもいいです。そんなことは通用しませんよ。(「そんなこしらえて言うな」と呼ぶ者あり)委員長、こういう議事妨害はやめさせて下さい。しゃべりたければ政府委員になったらいいでしょう。     〔「自分でこしらえて言うのはいけない」「何を言うか、ちゃんとこの前答弁しておるじゃないか」「答弁していないことを答弁しておると言っておるんだ」と呼び、その他発言する者多く、議場騒然〕
  42. 小澤佐重喜

    小澤委員長 静粛に願います。     〔「委員長、退場させろ」と呼び、その他発言する者多く、議場騒然〕
  43. 小澤佐重喜

    小澤委員長 静粛に願います。
  44. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今お話がございましたけれども、私の辻原委員に対する答弁は、辻原委員が「中国とは中共を言いますか、それはどうなんですか。」私が「現在国民政府が支配しておりますので、中華民国でございます。」そのあと、さらに辻原委員が「あなたが金門、馬祖は中華民国の領土であると言われたその証拠を一つお示しを願いたい。」そして私の答弁は、「現に中華民国が施政をいたしておるのでありまして、その事実からそう申したわけでございます。」こう言っておるのでして、別に違っておらぬわけであります。
  45. 横路節雄

    横路委員 藤山外務大臣のおっしゃる通りですよ。しかし、あなたは二段で話しておるから、私は聞いたのだ。先の質問に対して、あなたは「中国の領土でございます。」と答弁しておるんですよ。そのあとで、あなたは「現在国民政府が支配しておりますので、中華民国でございます。」こう言っておる。だから、あなたの先の「中国の領土でございます。」というのは、——総理大臣は、領土権はないと言っておる。ただ事実支配をしておるということを言っておるから、あなたが言った「中国の領土でございます。」ということは、それはお取り消しになったらいかがですかということを私は聞いておるんですよ。いいですか、その点は……。
  46. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今日、シナという言葉を使うのが適当であるかどうか、私は疑問に思います。やはり大陸、台湾を含めて、全体を中国と言うべきではないかというふうに考えております。
  47. 横路節雄

    横路委員 外務大臣、金門、馬祖島は極東範囲に入っておるわけですね。そうでしょう。このときもそう答弁しておるから……。(「そんなことは言わない、しつこいな」と呼ぶ者あり)いや、しつこくても、何べんでもやりますよ。(笑声)
  48. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 われわれの申し上げておるのは、先ほど来あるいは前から申し上げておりますように、非常に抽象的な観念でありまして、一々の島を申すことは不適当であり、誤解を招く面があります。従って、また、そういうことをきめてもおりません。従って、われわれとしては、金門、馬祖島は、今抽象的なことで説明するのが一番適当だと思います。
  49. 横路節雄

    横路委員 では総理大臣お尋ねしますが、あなたは、二月十日の淡谷委員予算委員会質問で、「金門、馬祖はどうですか。」、総理大臣は「これは周辺地域が海域を含んでいる意味におきまして、入っておると解釈すべきものだと思います。」こう言われておりますね。ですから、これも今外務大臣は、入っておるのか入っておらないのか、私はよくわかりませんよ。外務大臣は入っていないと言おうとしたのか、入っておると言おうとしたのか、はっきりしないのが外務大臣の特徴ですが、そこで私があなたにお尋ねをしたいのは、変更がなければこの答弁でいいんですよ。変更があれば、あなたがこの間よく黒田委員に言われたように、補足説明をしたいというならば、ここでなさったらどうですか。しかし変更する必要がなければ——もう一ぺん言いますよ。淡谷委員が「金門、馬祖はどうですか。」、総理は「これは周辺地域が海域を含んでいる意味におきまして、入っておると解釈すべきものだと思います。」、「これは変わりがありませんか。」と聞いたら、「絶対にこの見解については変えません。」、こう言っておる。その点はどうですか。
  50. 岸信介

    岸国務大臣 先ほど申し上げましたように、政府としては、極東に関するいろいろな今までの質疑に対して、はっきりと統一見解を示すことが適当であるという意味において、二十六日に統一見解を明らかにしたわけであります。私は政府の責任者として、この統一見解でもって、すべての点は明瞭であると考えておるわけであります。しかし、今いろいろな意味において補足質問があり、これを明確にするために御質問があるならば、それに対してお答えをすることはもちろんいたすべきである、かように考えております。  そこで、今島をおあげになりまして、金門、馬祖はどうだという御質問でありますが、極東という観念自身が、抽象的な観念であるから、そういうふうに島を一々あげてどうだというふうなことに対してお答えをすることは、適当でないということを私は考えております。しかしながら、それでは前に言ったことを改めるのかという御質問に対しましては、従来申し上げておることと、趣旨において変わっておらないということで御了承願いたいと思います。
  51. 横路節雄

    横路委員 そのお答えでは、私はきょうは関連質問ですから、またそれは適当な機会に一日一ぱいやらしていただきます。黒田委員がこのあとおやりになりますが、今の総理答弁では、この問題は解決できませんよ。私どもは、何も入っていると言いなさいと言っているのじゃないのです。政府の方で金門、馬祖は含まれていないのだ、こう言うならば——この金門、馬祖は、米華相互防衛条約がアメリカの国会において議論されたときも、この第六条にいういわゆる中華民国の領土、領域に入っていなくて、非常に議論になった点なんです。ですから、ここで政府から、金門、馬祖島は入っていないならば入っていないとお答えをいただけば、私はそれでやめるのです。また、そのことは、私たちは金門、馬祖がこの地域に含まれることは適当でないと考えていますから、その点をあいまいな言葉で将来に残すのではなくて、私たちは野党の立場で、入れるべきでないという考えで聞いているのですから、総理は、入らないなら入らないとここではっきりおっしゃていただけば——それは前の答弁とは違う点はありますが、しかしここで、入らないのだという御答弁をいただけば、私もこれでやめるわけです。その点、入っているのか、入っていないのかわからない関係で——これは総理、やはり私たち質問にも、政府側も率直に誠意ある答弁を願いたいんですよ。入っているか入っていないかを聞いているのだから、入っていないなら入っていない、入れませんと言うなら、これでやめるわけです。その点がはっきりしないから、聞いているのですよ。入っていないなら入っていないでけっこうなんです。
  52. 岸信介

    岸国務大臣 私がしばしばお答え申し上げておるように、これが入っているとか入っていないということを申し上げることは、適当でないというのであります。
  53. 横路節雄

    横路委員 それでは、二月八日並びに十日の衆議院予算委員会における答弁と、二月二十六日のこの点とは、違っていないと御答弁になったじゃないですか。それを今、入っているか、入っていないか答弁するのは適当でないというのは、全く違いますよ。これはいかぬですよ。
  54. 岸信介

    岸国務大臣 それはたびたび申し上げているように、この極東という観念そのものが、ばく然とした抽象的なものであるから、一々の島について、入っているか入っていないかということを論議の対象として、それに具体的にお答えすることは適当でない。そこで、二月二十六日の統一見解で示した通りに御理解願いたいというのが、私の考えでございます。それならば前に言うたことと違うのかというお話でございますが、前に言ったことの趣旨とは矛盾はいたしておらぬつもりでありますので、そのように御了承願いたいと思います。
  55. 横路節雄

    横路委員 それでは総理お尋ねしますが、あなたは二月二十六日の愛知委員質問に対して、政府統一見解では、「中華民国の支配下にある地域もこれに含まれる」、「支配下」とわざわざおっしゃいましたね。そうすると、金門、馬祖は中華民国の支配下にあるのですね。(「金門、馬祖なんて言わない」と呼ぶ者あり)いや、その点を聞いている。金門、馬祖は中国の支配下にある、これも適当でないのですか。金門、馬祖は中華民国の支配下にあるかないかということも適当でないのですか。その点はどうなんです。総理、まじめに、誠意をもって答弁して下さいよ。
  56. 岸信介

    岸国務大臣 今申し上げたように、一々の島をあげて、そして具体的に、これは入るか入らぬかというようなことを詮議立てして、こういう席でお答えすることは適当でないというのが、私の根本の考え方でございます。しかしながら、この統一見解で述べておるところで一つ御了解をいただきたい。また、金門、馬祖が台湾政府支配下にあるかどうかというのは、事実問題で決すべき問題である、かように思います。
  57. 横路節雄

    横路委員 そこで、私は総理お尋ねしているのです。金門、馬祖が中華民国の支配下にあるかどうかは、事実問題として決すべきだ、こうおっしゃるから、岸総理は、金門、馬祖は中華民国の支配下にあると事実上お考えになっているのかどうか、その点はどうなんです。(「目下紛争の地点だから、そんなことを言ってはいけないんだよ、国際的に」と呼ぶ者あり)だから検討中なんです。総理、それはどうなんですか。
  58. 岸信介

    岸国務大臣 事実の問題でございますから、これは私は、あの事実を見てどう考えるかということは、何人にも明瞭である、こう思います。
  59. 横路節雄

    横路委員 それでは総理大臣——だんだん吉田さんに似て横を向くようになりましたね。(「よけいなことを言うな」と呼ぶ者あり、笑声)いやいや、そうですよ。今総理は、何人といえども、金門、馬祖は、事実上中華民国の支配下にあることは疑うことはできない、こういうことですね。(「うそを言うな、そういう言葉は使ってない」と呼ぶ者あり)委員長、横から言うのは注意して下さい。
  60. 小澤佐重喜

    小澤委員長 お静かに願います。
  61. 横路節雄

    横路委員 委員長、だめですよ。——総理、私も今別に速記を見ているわけじゃない、あなたの言うのをそのまま言うのですから。あなただって、なにがなにがと言っているように、何を言っているかわからぬ言葉だってある。私は、そうでなしに、具体的に聞いている。今あなたは、金門、馬祖は、事実上中華民国の支配下にある、こうおっしゃいましたね。(「そうは言わない」と呼ぶ者あり)またこう言う。委員長、だめですよ。     〔「議事妨害だ、退場させろ、退場させるまで質問するな」と呼び、その他発言する者、離席する者多く、議場騒然〕
  62. 小澤佐重喜

  63. 横路節雄

    横路委員 総理、この問題は非常に大事で、金門、馬祖の問題は、総理も御自身おわかりのように、米華相互防衛条約をアメリカの国会で論議したときに、この第六条にいう中華民国の領土、領域の中には、台湾、澎湖諸島だけで、金門、馬祖等は入っていない、それが上院において活発な議論が展開されて、後々までこの問題は尾を引いているわけです。ですから、私はお尋ねをしておるわけです。総理、私は、金門、馬祖は当然入るべきではないし、これは除外することが正しいと思う。だから、総理がそういうようにおっしゃっていただけば、私もそれでいいのです。ただしかし、どちらとも言えませんなどというような答弁になりますと、これは理解ができませんから、もう一ぺんお尋ねをしていきたい。  中華民国の支配下にある地域もこれに含まれています、こう言っておるわけですね。そこで総理大臣お尋ねをしたいのですが、あなたは淡谷委員質問に答えては、入っていると解釈すべきものと思います。こういう答弁ですが、私が今ここでお尋ねしておるのは、金門、馬祖は中華民国の事実上の支配下にあるわけですね。これは総理、違うとおっしゃいますか、そうだとお考えになりますか。金門、馬祖は中華民国の事実上の支配下にあると私は思う。その点はどうですか、こう聞いておる。それは横路のは違うのだ、中華民国の支配下にないならないんだ、こう言っていただければ、それで私は次をお尋ねしたい。
  64. 岸信介

    岸国務大臣 今、問題は、極東範囲として金門、馬祖が入るか入らないかという問題なんだろうと思います。そうして、そのことについては、先ほど来横路君の御満足を得ないようでありますが、私どもは、具体的に個々の島であるとか、地域を地図で示すような意味において具体的に入るとか、入らないとかいうようなことをお答えすることは、そもそも極東ということの本質から見て適当でない。問題は、われわれが先ほど申し上げているように、日本にいる米軍が、日本の基地を使って軍事行動をするという場合において、これに対して日本がイエスと言うか、ノーと言うかという事前協議の場合の、このことについて国民も非常な関心を持っておるし、私は本安保条約においての重大な要点であると思うのです。極東観念個々の島が入るか入らないかということではなくして、現実にそういうふうな出動をする場合においてどう考えるんだという問題をわれわれ論ずべきものであって、その場合においては、日本の平和と安全というものに直接緊密な関係のある事態以外においてこれが出てくるということに対しては、ノーと言うということを、私どもははっきりと申し上げておるのでありまして、そういう意味において金門、馬祖が入るかとか、この島はどうだというふうなことに一々お答えをすることは適当でないというのが私ども考えであります。しからば、従来ここで具体的に答えておるのではないか、それと統一見解とはどういう関係にあるのだということになりますならば、さっきお答え申し上げたように、趣旨は変わっておりません、これで御了承願います。
  65. 横路節雄

    横路委員 総理、こういうように文章で出された統一見解の中に、先ほど私が読みましたように、極東という地域は「大体において、フィリピン以北並びに日本及びその周辺地域であって、韓国及び中華民国の支配下にある地域もこれに含まれている。」そしてその次は、在日米軍の行動の範囲についてお述べになっておる。だから、在日米軍の行動の範囲というものは、事前協議で相談をすることであって、極東地域というものは何もきまっていないのだ、もしも、こういうような総理のお考えであるとするならば、この統一見解の中の、極東地域は「大体において、フィリピン以北並びに日本及びその周辺地域であって、韓国及び中華民国の支配下にある地域もこれに含まれている。」ということは、これはおやめになったらいいのです。おやめになって、米軍の行動範囲事前協議できめるんだ、こうなら、こうおっしゃればいいものを、二段にかまえて御答弁になっているじゃありませんか。特にわざわざ中華民国の支配下にある地域も含まれていますと言うから、金門、馬祖は米華相互防衛条約の第六条でも問題になり、アメリカの国会で批准するときも問題になった。実に国際間における紛争の場になるおそれのある重大な場所だから聞いている。しかも、わざわざ総理は、中華民国の支配下にあるとお答えになっているじゃありませんか。いいですか、外務大臣の御答弁のところを読んでみますよ。二月の十二日に辻原委員から金門、馬祖は、一体これはどこの領土でありますか。
  66. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 中国の領土でございます。
  67. 辻原弘市

    ○辻原委員 中国とは中共を言いますか、それはどうなんですか。
  68. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 現在国民政府が支配しておりますので、中華民国でございます。それから、辻原委員はあなたが金門、馬祖は中華民国の領土であると言われたその証拠を一つお示しを願いたい。
  69. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 現に中華民国が施政をいたしておるのでありまして、その事実からそう申したわけでございます。あなたがそう答弁したのを、今私は読んでいるのですよ。いいですか、施政とは何か、それは支配下にあるのですよ。そうでしょう、あなたがそういうように答弁をはっきりしないから、今あなたの二月十二日の答弁の速記を読んで——あなたは金門、馬祖は中華民国の支配下にあると御答弁になった。ここで愛知委員岸首相お答えになった「かかる区域は」というかかる区域極東地域については、中華民国の支配下の中には当然金門、馬祖は含まれていると、あなたは二月十二日に答弁されている。だからそれは、間違いました、入っておりませんなら、入っておりませんと御答弁をしていただければ、それでいいんですよ。藤山外務大臣、どうなんですか。
  70. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 先ほど申し上げたし、また総理も言われておりますように、二月二十六日の統一解釈趣旨において変わっておりません。
  71. 横路節雄

    横路委員 藤山外務大臣、あなたが趣旨は変わっていないと言うことと、あなたは先ほど、個々の島について言うことは適当でないとおっしゃったじゃありませんか、それとは違うじゃありませんか。それはどうなんですか。はっきりおっしゃって下さい。
  72. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私は、現在、個々の島について一々言うことは、適当だとは思っておりません。先般参議院でも、金門、馬祖の隣の何とかという島は入るか入らぬか、そういうことになりますので、私は、そういう一々の島を言うことは適当でないと思います。
  73. 横路節雄

    横路委員 外務大臣、どうなんですか。私は何も金門、馬祖以外の島を聞いているんじゃないですよ。金門、馬祖は、中華民国の支配下にあるのかどうかということをお尋ねしているのに、あなたは、そういうことを言うのは適当でない、適当でないというのはどういうのですか。入っているというのか、入っていないというのか、そういうことは答えられないということですか。二月十二日にあなたは答えて、二月二十六日に統一解釈をして、しかも、わざわざ言葉を丁寧にして、文章で中華民国の支配下と書いておいて、今それが答えられないというのはどういうことなんですか。どうなんですか、もう一ぺんお尋ねします。
  74. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今お話ししましたように、二月二十六日の統一解釈と、今日までいたしたのと矛盾がない、趣旨は変わってないということを総理が言われた、その通りであります。
  75. 横路節雄

    横路委員 外務大臣、金門、馬祖島は、あなたの言う中華民国の支配下にある地域、これに含まれていますか、含まれていませんか。二月十二日には、あなたは含まれていると答弁した。今ここでは、それはお答えできないというのは、どういう意味なんですか。前の答弁は違っているのですか、違っていないのですか。
  76. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 趣旨においては変わっていないということを申し上げているわけでありまして、ただ、今一々の島をさしてどうということを申すのは適当でないということをお答え申し上げます。
  77. 横路節雄

    横路委員 藤山外務大臣、お聞きになって下さい。金門、馬祖以外の島について私がお尋ねをしておるならば、あなたが一々の島についてお答えをすることは適当でないという、そういうお答えは出るかもしれません。しかし、二月の十二日にあなたは、金門、馬祖は中華民国の支配下にあると答えたのだから、その点は今でも間違いがございませんかどうか。中華民国の支配下に金門、馬祖はありますか。あなたがあると言えば、「極東」の範囲に入るわけですよ。だからその点を聞いておるのですよ。中華民国の支配下に金門、馬祖は含まれていると今でもお思いになっていますか。どうですか、外務大臣、そこだけお答えになったらいい。ほかの島のことを聞いておるのじゃないのですよ。
  78. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 統一見解において前に申したのと、趣旨において変わりないということを申し上げておるわけであります。
  79. 横路節雄

    横路委員 外務大臣、あなたが統一見解というのは、どういうことなんですか。二月の二十六日なのか、二月十二日、辻原委員に対してお答えになっておることについて、その通りだというのか、どちらなんですか。統一見解というのは、何べんもあなたの方にあるのですからね。そのどちらですか。
  80. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 これは二月二十六日の愛知質問に対する総理答弁ということで申し上げておるわけであります。
  81. 横路節雄

    横路委員 それならば、二月十二日の予算委員会における辻原委員に対するお答えはどうなんですか。その点は、どうなんですか、変わったのですか、変わっていないのですか。
  82. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 先ほど来申し上げておるように、趣旨において変わりはないということであります。
  83. 横路節雄

    横路委員 別にここは言葉のやりとりではないのですよ。いいですか、金門、馬祖は非常に国際間における重要な紛争の場になるおそれがあるから、私たちは、この点を明確にしたいと思って聞いておるのです。総理大臣、どうなんですか、金門、馬祖は中華民国の支配下にあるのですね。その点はどうなんですか。まず、その点だけ聞いてみましょう。
  84. 岸信介

    岸国務大臣 私は、どこが支配下にあるかということは、事実問題として決定すべきもので、この問題は、いわゆる「極東」の範囲としての関連性において御質問になっておるわけでございますから、そういうことを一々具体的にお答えすることは、私は適当でない、こういうふうに思います。それでは前のことと変わっておるかというお話であるならば、趣旨において変わっておりません。しかしながら、具体的にここでそれを論議することは適当でない、こういうことを申し上げておるわけであります。
  85. 横路節雄

    横路委員 総理大臣、金門、馬祖が中華民国の支配下にある地域かどうかということについて、なぜそれを議論することが適当でないのですか。(「紛争の渦中にあるからだ」と呼ぶ者あり)紛争の渦中になるおそれがあるから、なお大事なんです。その点は、アメリカの上院においても非常に議論されておることは、総理おわかりでございましょう。これは一九五五年の一月二十八日の上院の決議、その場合に、上院においてもこの地域においてはどうするか、上院のいわゆる助言と同意が、台湾、澎湖島以外の地域に出る点については、必要である。それからさらに、リッジウェイ大将等は、金門、馬祖島は防衛しにくいし、それだけの価値がないという議論を展開しておるのです。この重大な国際紛争の場になるおそれがある金門、馬祖について、どうしてそのことが——中華民国の支配下にある地域に含まれているか、含まれていないか。私たちは、これを当然除外すべきだ、こう思って聞いておるのです。だから、総理は、入らないなら入らないとお答えになっていただけばいいのに——個々の島について具体的に聞いているんです。金門、馬祖、これが入るか入らぬかについて答えるのは適当でないというのは、どういうことですか。その点を、入るなら入るとお答えになれば、それで私は終わりますよ。入らないなら入らないとお答えになれば、終わります。どっちなんですか。
  86. 岸信介

    岸国務大臣 そういうことをここで論議することは、私は適当でないと思うわけであります……。(「だめだ」と呼び、その他発言する者、離席する者多く、議場騒然、聴取不能)だから、先ほど来申し上げておるように、趣旨においては変わりはない、こういうふうに……(「こんな答弁ではだめだ」「そんな重大なことが答弁できないとは何事か、無責任だ」「退場々々」と呼び、その他発言する者、離席する者多く、議場騒然、聴取不能)     〔「休憩々々」と呼び、その他発言する者多く、議場騒然、退場する者あり〕
  87. 小澤佐重喜

    小澤委員長 ただいま発言者黒田寿男君、横路節雄君が発言を打ち切りましたから、次の通告者床次徳二君を許します。ただし、黒田君、横路君の発言は留保いたしておきます。
  88. 床次徳二

    ○床次委員 私は、条約第五条におけるところの「各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、」その「共通の危険に対処するように行動することを宣言する。」、この条約におきまして、特に沖繩が除外せられておるということに対しまして、これは重大な関心を持つべきものと考えておるのであります。特に沖繩に対しましては、われわれは、潜在主権を持っておるのでありまして、その早期復帰を要望いたしておるのでありまするが、他面、沖繩というものは、米韓、米比あるいは米華条約によりまして、その共同防衛区域になっていることも、一つの大きな事実なんであります。かような見地から、特に沖繩を中心といたしまして、以下数点について質疑を行ないたいと思うのであります。  まず、この沖繩が、新条約におきまして、施政下の領域と認められずして、これが除外されておるゆえんにつきまして、承りたいのであります。
  89. 岸信介

    岸国務大臣 沖繩に対して、いわゆる潜在主権を持っておるということは、施政権を持っておりますアメリカ側からも、そういうことがしばしば認められておるわけであります。私どもが終始その施政権の返還を要望しておることも、御承知の通りであります。ただ、現在、遺憾ながら、沖繩に対してわれわれは施政権を持っておりません。従って、われわれ自身があそこにおいていろいろな行動をするということは、もちろん、アメリカ側の承諾なくしてはできないことでございます。そうして、アメリカ自身が沖繩の防衛をするという全責任を持っております限りにおきまして、これを今回の安保条約の五条の、いわゆる条約区域にしなくとも、その地域においては、アメリカが完全な防衛の責任を持ってこれに当っております。また、日本自身は、今申しますように、施政権を持っておらないのでありますから、ここに出かけていってこれを防衛するということは、現在の状態においては適当でない、こういう考えから、この施政下にある領域に限ったわけであります。なお、今御指摘になりました米韓、米台等の条約におきまして、日本安保条約とは違っておって、その締約国のおのおの領域または行政管理下にある地域を含むということになっておりまして、沖繩が、これらの条約においてアメリカの行政管理下にある地域として、締約国双方がこれについて責任を持つという格好になっております。この点と日本のなにが違っておることは、御承知の通りであります。ただ、趣旨から申しますと、先ほどのような実際上の趣旨であり、また、これが米韓、米台等の条約との関係上、日本安保条約に入れることが、いろいろ複雑な国際的な関係を生ずるおそれもありますので、この点に関してはアメリカに全責任を持たせ、また、今後危険にさらされた場合における住民の福祉については、日本政府も十分責任を持ってこれの福祉をはかるということを合意議事録で明らかにしておることによりましても、日本は、あそこにおける住民の安全及び福祉については非常に深い関心を持ち、また、責任を持っておるつもりございます。
  90. 床次徳二

    ○床次委員 従って、わが国とアメリカとの条約におきましては、米韓、米比あるいは米台の条約とその対象が異なっておりますために、非常な特色を持っておる。換言いたしましたならば、新条約におきましては、沖繩は、わが施政下にないために日米の共同防衛地域ではなくなっておる、アメリカがもっぱら責任を担当しておる区域である。従って、かかる処置が講じてありまするがために、わが国といたしましては、沖繩に関する共同の、何と申しますか、危険にさらされる沖繩を通じて、戦争に介入させられるという危険はなくなっておるというふうに考えますが、いかがでございましょうか。
  91. 岸信介

    岸国務大臣 御意見のように、米台あるいは米韓、米比等の相互安全保障条約に関連して、沖繩の危険に日本が、五条の規定で当然巻き込まれるというようなことは、一切私はないと思います。
  92. 床次徳二

    ○床次委員 従って、念を押して申し上げるわけでありますが、もしも現在の沖繩の状態のままでこれをわが国のいわゆる施政下にある領域、内地と同じように取り扱うといたしますると、その結果は、当然米韓、米比、米台の諸条約と同じような取り扱いとなりまして、沖繩から日本に紛争が連鎖反応的に飛び火して、日本が他国の紛争に介入させられるというおそれがあるのではないか。ただいまのは仮定の問題でありまするが、かような編入のいたし方をすると、そういう問題が起こるのじゃないかというふうに感ずるのでありますが、さようにお考えになりますか。
  93. 岸信介

    岸国務大臣 観念的に申しますと、今御指摘になったようなことが一応考えられるかと思います。ただ、実質の問題として、沖繩の住民は、言うまでもなく日本人でありますから、それが危険にさらされておるときに、日本がただ安閑としておられるかどうかという問題は、これはわれわれの非常に強い関心のある問題でございますけれども、形式論的に観念論をいたしますと、もしも沖繩を共同防衛地域にすると、韓国や台湾に起こったところのことが連鎖反応的に日本に及ぶ、こういう結果になることがあると思います。
  94. 床次徳二

    ○床次委員 過般、同僚議員からも質疑があったのでありまするが、沖繩の施政権が返還せられました際におきましては、わが国は、これがために戦争に介入させられるおそれがあるのではないか、かような意味において同僚議員は意見を述べておったのであります。この点に関しまして伺いたいのであります。私の考え方からいたしまするならば、先ほどいろいろ念を押して御質疑したのに対し、御答弁をいただきましたが、あの経過から考えてみましても、沖繩の施政権が返還せられる際におきましては、時に特別の条件がありますれば別といたしまして、沖繩は、その際は当然アメリカの管理する領域から除かれまして、わが国の領域になるわけでありますから、その結果は、当然米韓、米比あるいは米台の諸条約の適用区域からは、沖繩は除外されることになるわけであります。従って、将来、沖繩が日本に復帰いたしましても、そのことによって直ちに他国の紛争に日本が巻き込まれることにはならない、私はかように考えるのであります。従って、施政権の返還ということがいかにすみやかでありましても、これは一向、その点は心配がないということを感ずるのでありますが、この点、御所見を伺いたいと思います。
  95. 岸信介

    岸国務大臣 沖繩の施政権の完全な復帰は、私ども国民のひとしく望んでおるところでありまして、一日も早いことをわれわれは望みます。その場合におきましては、この条約から、日本の施政下にある領土として、共同防衛地域になることは当然であります。また、米韓、米台等の条約にありますアメリカの行政管理下にある地域ではなくなるわけでありますから、その意味において、日本にこれが復帰した場合において、台湾やあるいは韓国における事態が、沖繩を通じて日本の本土に連鎖反応するというようなことは、絶対に起こり得ないと思います。
  96. 床次徳二

    ○床次委員 今回の条約におきましては、特に条約に関する合意議事録におきまして、わが国とアメリカとの間の協議によりまして、住民の福祉を確保し得る道を講じたのでありまするが、かような処置を講ぜられました根拠、理由はどこにあるか、明らかにせられたいのであります。
  97. 岸信介

    岸国務大臣 言うまでもなく、先ほど申し上げましたように、沖繩に対して領土的にわれわれが潜在主権を持っておるということ、さらに、あそこに住んでおる住民はことごとく日本人であり、われわれの同胞である、こういう考えから見まして、沖繩が、もしも不幸にして戦乱のちまたとなり、危険な状態にさらされるという場合におきまして、日本国は、また日本国民もそうでありますが、日本国政府は、これに対して無関心でおるわけにはいかないことは、言うを待ちません。そこで当然その防衛はアメリカが全責任を持ちますけれども、住民の福祉のためには、日本政府はできるだけのことをして、手を伸べて、これにその住民の福祉をはかっていくということは、私は当然のことである、かように思います。
  98. 床次徳二

    ○床次委員 沖繩の住民の福祉に影響のあります際に、われわれが、母国としての立場から、ただいまのような趣旨において、万全の策を講ずべきことは、まことに当然のことであります。これが明らかにせられたことは、まことにけっこうと思うのでありますが、元来、沖繩の復帰、これがわれわれの熱望でありまして、その復帰の実現までにおきましても、われわれは、できるだけすみやかに復帰の実現すべき、また同時に、同島民の平素の生活の向上、発展ということに対して、できるだけの努力をいたさなければならぬ。これは危険が迫ったときばかりではなしに、当然平素においてもかかる措置を講ずべきだと思うのですが、かような処置に対しまして、政府といたしましてはいかようなる所信を持っておられるか、お伺いいたしたいと思います。
  99. 岸信介

    岸国務大臣 御質問のように、私ども、施政権の全面的な日本への返還というものを、あらゆる機会にアメリカ側に要望をいたしております。しかしそれは、現在の状態において実現することが困難である。アメリカ側の意向も強硬にそれに反対しておりまして、なお困難であると思います。しからば、その間においてどうするか。ただこちらから要望だけを向こうへぶっつけて、そうしてアメリカと意見の違うままに推移するかと申しますと、私はそうすべきものではない。アメリカ側におきましても、すでに私が三年前にアイゼンハワー大統領との会談におきまして、施政権の復帰については意見が違ったけれども、沖繩住民の福祉の向上、経済の発展ということに対して、アメリカ政府も十分力をいたすということも誓約をいたしております。声明に明らかにしております。そういう意味において、アメリカ側に対して、いろいろな施設なり施策を要望することは当然でありますが、同時に、日本がこの施設日本政府として参加していくことが、沖繩住民のために適当であり、また、アメリカ側においても、そのことを便宜とするような点が少なくないと思います。そういう点は、これまでになくわれわれはアメリカ側と話をして、これを進めていくようにしたい。たとえば、西表におけるところの開発計画、これは実体は日本側において立案をしたのでありますけれども、もちろん、アメリカの施政下にありますから、アメリカの主体のもとに日本が技術的にあらゆる面から協力して、西表の開発を実現する。あるいはまた、すでにやっておりますが、向こうに、医者であるとか、歯医者であるとかいうものが足りない。これを日本側から向こうへ送って、そういう意味における医療に当たらせるとか、あるいは教育の問題において、向こうの教員を指導するような人を出すとか、あるいは戸籍の統一の問題について、一つ話し合いをして、日本人としての戸籍を明瞭ならしめ、法律関係を明らかにするというような、あらゆる面から——それが施政権の一部の返還であるとか、あるいは施政権そのものがどうであるとかいうような議論をいろいろいたしますと、相当やかましい議論になりますが、実態的に見て、沖繩住民の福祉を増進し、また、日米の利益の上からいって適当であるというようなことは、ずんずん具体的に進めていって、積み重ねていくということが必要であると思うし、また、そういう意味において各種の施策を進めていくわけであります。
  100. 床次徳二

    ○床次委員 以上をもちまして、一応条約に対する質疑を終わりました。  以下、いわゆる米軍地位協定に関しまして、質疑をいたしたいと思うのであります。  地位協定は、条約の実施面における、直接わが国民の日常生活に関連する部分が大部分でありまして、この意味におきまして、きわめて重要なものであります。しかしながら、旧協定は国会の審議を経なかったのでありまして、国民のうちにおきましては、これを理解するものが、なお足らない点が少なくないということを感ずるのであります。この機会におきまして、いささか新協定に関連いたしまして質疑をいたしまして、国民の疑義を明らかにいたしたいと思うのでありまして、外務大臣その他関係政府当局の答弁を得たいと思うのであります。  第一は、新協定の性格に関するものであります。新協定の改正点の重点というものに対して、承りたいのであります。特に従来、日米の条約並びに協定におきましては、いわゆるその片務性と申しますか、不平等性ということが強く叫ばれておった。これを是正することが要点であることは当然でありまするが、少なくともわれわれといたしましては、この不平等性を直すということ、同時に、日本の立場、ヨーロッパ諸国と異なる、やはり日本の特殊事情もある。この特殊事情を考慮しながら改正するという点だと思うのでありまするが、かような点に関連いたしまして、政府は、いかなる点を主としたる改正点として今回の改定に当たったか。特に新協定に関しまして、この点、御説明を得たいのであります。
  101. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 現行の行政協定を見てみますと、御承知の通り、占領下にありまして、それに引き続いた諸般の問題がございましたので、今日の時代になりましてこれを見ますと、条約を自主的な立場で検討していくと、同じような立場でこれを見ますと、相当に改正を要する点があると思うのであります。従いまして、そういう点等につきましては、できるだけ日本の自主性のもとにこれを改善していく、しかも、それが他のNATO諸国、その他同種の協定等に見劣りをしないものにしていく、また、今お話しのように、日本の特殊性というものも考慮に加えて参らなければならぬのであります。  それらの点を頭に置きながらこの改正をいたしたのでありまして、今回の改正の主たる点を申し上げますと、第三条におきまして、御承知の通り、今日の行政協定におきましては、施設及び区域に関して米軍が権利、権力、権能をふるい得るというようなことになっておりますのを、今回は、「管理のため必要なすべての措置を執ることができる。」ということに改めたわけでございます。同時に、施設区域外で、やはりアメリカが権利、権力、権能を行使するようになっておったのでございますけれども、今回は、施設区域外の場合におきましては、日本側は措置をとることにいたすことが原則であることを、明らかにいたしたのでございます。  また、第十一条における税関検査免除範囲等につきましても、他の国のこの種協定等の実情も参照いたしまして、日本の立場を、より自主的な立場からこれを改正することにいたしたのでございます。  また、第十二条におきます雇用関係の問題でございますけれども、今日では直接雇用と間接雇用とが、現行安保条約にはございます。直接雇用につきましては、いろいろ問題も過去にございます。進駐軍労働組合等からもいろいろな意見がございましたので、われわれは、それらのことを参考にいたしまして、間接雇用ということに、原則としてこれを切りかえることにいたしたのであります。  また、保安解雇に関する規定等につきましては、従来の実績から見まして、わが国におきます諸般の事情も、これを考慮して参らなければならぬのでございますから、それらについて適切な措置を今回の協定においてはとることにいたして、そうして改善を加えていったのでございます。  また、いわゆる十四条契約者と申しております特殊契約者の特権等につきまして、あるいはその指定等につきまして、日本側に対して不利にならないように、しかも、アメリカ駐留軍が日本において十分な便宜を得られながら、しかも日本側の不利にならないように、これを改正することにいたしたのでございます。  なお、第十八条の民事請求権に関する規定につきましては、相当改正を要する必要があるわけでありまして、特にこの点については、他の例から後ほどいずれこまかい点については申し上げることになろうかと思いますけれども、これらについても改正を加えたのでございます。  なお、行政協定二十五条のb項であります防衛分担金の削除ということをいたしまして、今日まで防衛分担金を日本が分担いたしておりましたもの等につきまして、それを今後は分担いたさないようにいたしたのであります。  以上のような点がおもな点でございまするけれども、小さな点についても、まだいろいろな改善を加えておるのでございます。こまかい点につきましては、いずれ御質問に応じてお答えをいたしたいと思います。
  102. 床次徳二

    ○床次委員 以下、順次改正点に関しまして検討を加えて参りたいと思いまするが、その前に、一応手続に関しまして伺ってみたいと思うのであります。今回のいわゆる米軍地位協定につきましては、従来と異なりまして、行政協定と称していないのでありますが、特に今回は行政協定といい、今回はいわゆる地位協定と称しておりまするゆえんは何ゆえでありまするか、明らかにされたいのであります。
  103. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 現行安保条約におきましては、条約第三条において、行政的な取りきめをいたす基本的な条件を規定いたしております。それによって行政協定にまかされてきめたわけでございます。今回の場合におきましては、条約上その基礎を持っておりません。従いまして、新しく地位協定といたしまして、そうして国会等の御承認を得ましてこれを条約化していく、こういうふうにいたしたわけでございます。
  104. 床次徳二

    ○床次委員 以下、新協定と申しますが、新協定の内容は、国民の権利義務にも非常に大きなものであるのでありまして、形式的に見ますると、また実質的に見ましても、これは条約とほとんど差のない重要なものと考えておるのであります。今回国会承認を得られますにつきまして、この協定に関しましていわゆる修正権の問題も起こり得るかと思いまするが、この点に関しましては、条約と同じように、政府といたしましては、やはり修正権は国会においてはないものだ、承認があるものというふうに考えておられるか。この点は条約と同じではないかと思うのでありまするが、政府の意見を伺いたいと思います。
  105. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 政府といたしましては、条約と同じものだというふうに、修正権の問題については考えております。
  106. 床次徳二

    ○床次委員 この新協定に関しましては、やはり前回と同様に、かなりないわゆる合意議事録というものがあるのでありまして、合意議事録におきましてこの協定の内容を規律しているものが相当ありますが、そもそもこの合意議事録というものはいかなる性質のものであるか、その拘束力に対しましてどういうふうに考えておられるか、その性格を明らかにせられたいのであります。
  107. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 合意議事録は、行政権の範囲内で協定の規定の解釈や実施細目を定めた国際約束だ、こういうふうにわれわれは解釈いたしております。
  108. 床次徳二

    ○床次委員 そうすると、合意議事録は、協定のいわゆる定義と申しますか、解釈をしたものである、かように解してよろしいですか。
  109. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 こまかい点については政府委員から御答弁いたさせます。
  110. 林修三

    ○林(修)政府委員 お答えいたします。ただいま外務大臣お答えになりました趣旨でございまして、要するに、新協定の字句の解釈あるいは実施細目等につきまして、行政権の範囲でアメリカ側と取りきめました一つの国際約束だと思うわけであります。その意味におきまして、一つの行政的な取りきめでございます。この新しい地位協定は、国会の御承認を得るわけでございまして、その御承認を得ますべき新協定の解釈問題あるいはその他の細目、こういうものについて行政府間でやり得る範囲でのことをきめたもの、かように御了解を願いたいと思います。
  111. 床次徳二

    ○床次委員 新協定に伴いまして、わが国内の関係法令の改正のためには、別に整理法律案というものが国会に提案せられておるわけであります。しかし、その性格上から申しまして、いずれも条約あるいは協定というものの範囲内において限定せられておるのではないかと思うのでありますが、この整理法律案に対しまして、国会におきましてはどの程度において修正できるものであるかという点につきまして、提案者としての政府見解を聞きたいのであります。
  112. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 整理法律案につきましては、法律的に申しますれば、他の国内立法と同じように、国会の修正権はあるということでございます。しかし、御承知のように、この整理法律案というものは、協定の内容を国内的に実施するためのものでございますから、国会地位協定を御承認して下さるならば、その地位協定に対して、同じ内容をいろいろ規定しておりますこれらの法律案に対して、矛盾いたすような修正は、事実上あり得ないのではないかというふうに考えておるのでございます。
  113. 床次徳二

    ○床次委員 今回の条約の改正にあたりまして、協定の改正があり、また整理法律案の改正があるわけでありますが、同時に、さらに細目の点におきましては、いわゆる日米合同委員会の合意書というものによりまして運営せられておる分が少なくないのでありますが、この際、この合同委員会の合意書というものはどういうふうに更新していくかということについて伺いたいのであります。従来の合同委員会の合意書というものがあるわけでありますが、新しい条約、規定、法律に伴うところの新しい合意書というものはどういうふうにして効力を発生させるか、これを聞きたいのであります。
  114. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 従来の合同委員会の合意書というものは一応引き継いで参りますけれども、これは新しい委員会において検討をされていくものであります。
  115. 床次徳二

    ○床次委員 一応、手続的には、ただいま申しましたところによって、わが国といたしましては関連したことを尽くしたと思うのでありますが、アメリカにおきましては、新協定はどういうふうな手続によって処理せられるか、伺いたいのであります。
  116. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 アメリカにおきましては、日本といろいろ憲法あるいは法制上の違いがございまして、日本国会の御承認を得るわけになりますけれども、アメリカにおきましては、参考書として条約につけて議会に参考として送付されることに了承いたしておるわけであります。
  117. 床次徳二

    ○床次委員 次に各条に入りまして、おもな点につき質疑をいたしたいと思うのでありますが、そもそもこの行政協定によりまして日本に入国しておりまするところのいわゆる米軍人、家族等、関係者というものがどれくらいあるかという点であります。なお、その資格等に対しましてもそれぞれの証明を要するものと思うのでありますが、大体どの程度の者が行政協定によって日本に来ておるかという点を説明せられたいのであります。
  118. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 細部につきましては、政府委員より答弁いたしたいと思います。
  119. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 軍隊の構成員は約五万二千であります。軍属が約五千、家族が約五万五千おります。協定にございますように、構成員は、出入国にあたりまして、軍当局の発行いたします身分証明書を携行いたします。軍属、家族は旅券を携行するということになっております。これによって資格が証明されるわけであります。また、日本国内にいます間は、軍人は身分証明書を、軍属、家族は旅券、またはこれにかわる身分証明書を携行するというふうになっておる次第であります。
  120. 床次徳二

    ○床次委員 ただいまの答弁によりまして、人的方面においてその規模がわかったわけでありますが、物的方面、いわゆる基地というものの多さというものに対して、なかなか国民は理解をいたしておらないのであります。ある者につきましては、非常に大きな基地が日本にあるかのように論ずる者もありますが、その実態をよく把握しておりません。今回、新協定によりまして、新しくアメリカに貸与せられると申しますか、米軍の使用に供せられるところの施設及び区域というもの、これはもちろん必要の最小限度であるべきだと思うのでありますが、その現状はどういうふうになっておりますか。その施設区域の種類、目途というものに従って説明をしてもらいたいと思うのであります。特に、いわゆる施設区域におきましても、軍事的目的を持っておりますものが、国民といたしましては非常に関心が大きいのでありまするが、いわゆる軍事目的を持っておりまするたぐいのものがどの程度あるかということを、この機会政府は鮮明せられたいのであります。
  121. 眞子傳次

    ○眞子政府委員 お答えを申し上げます。  昭和三十五年一月一日現在で、施設件数が二百五十件、土地の面積が一億百四十五万坪、建物の面積が百六十四万八千坪でございます。その施設の用途を申し上げますと、兵舎施設が九件、飛行場が十三件、港湾十五件、演習場十三件、通信施設九十件、事務所十件、工場施設十四件、倉庫施設四十件、医療施設二件、住宅十八件、その他二十六件、以上合計二百五十件、こういうことでございます。
  122. 床次徳二

    ○床次委員 ただいま、施設とか飛行場とか、そういう個々の件数を言われたのでありますが、いわゆる軍事基地として概念いたします場合におきましては、こういうものが組み合わさって一つの基地になっているというふうに考えるのが常識的だと思うのでありますが、かように考えました場合におきまして、いわゆる軍事基地というものがどれくらいあるというふうに数えられるのか、その計算はしてありますか。
  123. 眞子傳次

    ○眞子政府委員 二百五十件のうち、おもなる軍事施設を申し上げますと、飛行場、軍港、演習場、兵舎等でございまして、飛行場は、横田、立川、三沢、板付、厚木、君国など、軍港では、横須賀、佐世保でありまして、演習場十三件、兵舎九件、こういうことになっております。
  124. 床次徳二

    ○床次委員 数字的に、二百五十件というと、相当多く思うのでありますが、ただいまのように具体的に聞きますると、だいぶ印象は違うと思いますが、国民に対して、この軍事施設というものに対する正しい理解を得るように、もっともっと政府も努力すべきものと思うのであります。  次に伺いたいのでありまするが、従来までは、いわゆる岡崎・ラスク交換公文によりまして、わが国が合意しておらないところのいわゆる基地・施設というものもやはり米軍が使っておったのでありまするが、今回の新協定におきましては、これをどういうふうに処理されるか。現在までかかるものがなお幾つあるか、今後とも、やはりそういうわが国の合意しないものが引き続いて存続していくのかどうか、この処理に対してお答えを願いたいと思います。
  125. 眞子傳次

    ○眞子政府委員 いわゆる岡崎・ラスク交換公文によりまして、講和発効時において存在しましたFACが五十一カ所でございました。これらはすべて、米軍側の使用の必要度につきまして疑義があったもの、あるいは日本側の強い必要性によりまして合意に至らなかったものでありました。しかし、現在におきましては、八戸の送油施設など、十三件に上っております。これらの処理につきましては、引き続き折衝中でございまして、近くすべて解決する見込みでございます。現在の十三件のものは、今申しますように、いつまでとは申しかねますが、近く円満な解決を見て、正式化するか、あるいは解除するか、きまるはずでございます。
  126. 床次徳二

    ○床次委員 米軍の基地に対しましては、日本政府が臨時に使用することになって、自衛隊が使用し得る道が聞けておるわけでございますが、しかしながら、場所によりましては、米軍が縮小した場合におきまして、当然民間に返されるものと思って期待しておるところも少なくない。自衛隊が引き続き共用しておることに対して、あるいは好まない、反対の運動等をやっておるところもあるかのように聞いておるのでありまするが、今日自衛隊の米軍施設の使用状態、また、これが地方に対する関係はどうなっておるか、説明を願いたいのであります。
  127. 眞子傳次

    ○眞子政府委員 昭和三十五年一月一日現在におきまして、ただいま申し上げましたように、全提供施設区域二百五十カ所のうち四十八カ所でございます。土地におきまして五千二百四十八万坪、建物が約八万坪を米軍と自衛隊と共同使用いたしております。
  128. 床次徳二

    ○床次委員 紛争問題はないですか。
  129. 眞子傳次

    ○眞子政府委員 紛争はございません。
  130. 床次徳二

    ○床次委員 先ほど大臣の説明にありましたが、今回の改正の要点は、米軍の基地におけるところの権利に対する改正が大きなものでありました。従来、文章から見ますると、米軍に非常に大きな特権が与えられておったように見えるのでありまするが、この行き過ぎを是正したということは、非常な進歩と考えるのであります。元来、この施設及び区域——簡単に基地と申しますが、この基地の内部におきまして、わが国の法令というものがいかに適用せられるものであるか、その状態、基地とはそもそもどういう関係にあるのかという点を説明せられたいのであります。
  131. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 いわゆる今度の提供されております施設区域と、基地もしくは租借地という意味とは違っておるのでございまして、その点につきまして条約局長の方から御説明いたさせます。
  132. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 前の協定では、協定の第三条におきまして、施設につきまして「設定、使用、運営、防衛又は管理のため必要な又は適当な権利、権力及び権能を有する。」というような規定がございましたわけでございますが、この規定は、あたかも米国側が非常な特権的な地位を持っているというふうな誤解を与えるような規定でございました。従いまして、このたびの新協定におきましてこれを改めまして、表現上「設定、運営、警護及び管理のため必要なすべての措置を執ることができる。」というふうに改めた次第でございます。すなわち、実態的には、前の「権利、権力及び権能」というふうな表現にかかわらず、そのような実態でなかったわけでございますから、今度は実態に即するような表現方法に改めたという次第でございます。従いまして、改正の結果、施設区域の性格は変更したというわけではございません。ただ、この施設区域が一般の租借地等とどのように違うかという御指摘の点でございますが、御承知のように、租借地または一般に基地といわれているような場合には、協定によりまして、二十五年だとか、あるいは五十年だとか、九十九年だとか、長期間貸し付けられまして、その地域が、あたかも外国の領土のごとく、全然貸した国の法権の外に置かれる次第でございます。しかし、新協定におきます施設区域は、そのような場合とは根本的に性格を異にするというふうに私は考えておる次第でございます。すなわち、施設区域は、もちろん日本の施政のもとにあるわけでございまして、原則として日本の法令が適用になる、ただ、軍の必要な限り、協定に基づいて個々の法令の適用を除外している、こういうふうな性質のものであるというように考えます。
  133. 床次徳二

    ○床次委員 原則として基地にはわが国の法令が適用される、この点はやはり明らかにせらるべきであると思うのでありまするが、現実においてやはり基地においてわが国の法令が適用せられないものもあると思うのであります。しからば、どういうものが排除されておるか。
  134. 林修三

    ○林(修)政府委員 これは、ただいま条約局長が申しました通りに、いわゆる施設区域というものも日本の施政下にあるわけでございますから、日本の法令はもちろん大体原則的にそこにいくわけでございまして、その意味において租借地等とは違うわけでございます。ただ、そこは米軍が使っておりますわけでございます。米国軍隊という一つの外国軍隊がそこを使うことを認められているわけでございますから、その外国軍隊というものの地位からくる特性上、これに対して日本の法令が及び得る範囲についておのずから制限がある、こういうことになると思います。あるいは、そこにおります軍人、軍属あるいは家族に対しては、この新協定で、ある程度日本の法令の適用を排除しておるものがあるわけであります。そういう部面で、軍人、軍属あるいは家族に対して、ある種の日本の法令は適用されないというようなことが、この新協定あるいはこれに基づきますいろいろの日本の国内法で出てくるわけであります。ただ、軍隊に関しましては、軍隊の特性上、当然にある範囲のものにつきましてはやはり日本の法令の及ばないというものがいろいろあるわけであります。たとえば、銃砲刀剣類等所持取締法というようなものは、軍隊である以上、当然に武器を携帯しておるわけでございまして、そういうものは及ばない。一例をあげれば、そういうものがあるわけであります。そのほかにもいろいろのものがございます。
  135. 床次徳二

    ○床次委員 関連しておりますから、もう一つだけ。基地内の警察権というものにつきましては、今度、十七条十項に規定があるのでありますが、この点、わが国の警察権というのはどの程度に及ぶか、これを聞きまして終わりたいと思います。——答弁者が来ていなければ、次会にしましょう。
  136. 小澤佐重喜

    小澤委員長 この際、お諮りいたします。  社会党及び民社党との、本日の審議に関しての打ち合わせ時間は、午後四時ごろとなっております。この際、これを尊重いたしまして、本日はこれにて散会したいと思いますが、賛成の諸君の起立を願います。     〔賛成者起立〕
  137. 小澤佐重喜

    小澤委員長 起立多数。よって、本日は、これにて散会いたします。     午後三時五十五分散会