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1960-05-14 第34回国会 衆議院 内閣委員会 第40号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年五月十四日(土曜日)     午前十時三十九分開議  出席委員    委員長 福田  一君    理事 岡崎 英城君 理事 高橋 禎一君    理事 石橋 政嗣君 理事 石山 權作君    理事 田万 廣文君       青木  正君    小金 義照君       谷川 和穗君    富田 健治君       橋本 正之君    八田 貞義君       濱田 幸雄君    保科善四郎君       山口 好一君    久保田 豊君  出席国務大臣         国 務 大 臣 赤城 宗徳君  出席政府委員         防衛政務次官  小幡 治和君         防衛庁参事官         (長官官房長) 門叶 宗雄君         防衛庁参事官         (防衛局長)  加藤 陽三君         防衛庁参事官         (教育局長)  小幡 久男君         防衛庁参事官         (人事局長)  山本 幸雄君         防衛庁参事官         (経理局長)  山下 武利君         防衛庁参事官         (装備局長)  塚本 敏夫君  委員外出席者         専  門  員 安倍 三郎君     ————————————— 五月十四日  委員生田宏一君及び始関伊平辞任につき、そ  の補欠として濱田幸雄君及び青木正君が議長の  指名委員に選任された。 同日  委員青木正君及び濱田幸雄辞任につき、その  補欠として始関伊平君及び生田宏一君が議長の  指名委員に選任された。     ————————————— 五月十四日  部落問題審議会設置法案八木一男君外二十四  名提出、第三十三回国会衆法第一八号)  は委員会の許可を得て撤回された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  防衛庁設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第三二号)  自衛隊法の一部を改出する法律案内閣提出第  三三号)  部落問題審議会設置法案八木一男君外二十四  名提出、第三十三回国会衆法第一八号)      ————◇—————
  2. 福田一

    福田委員長 これより会議を開きます。  防衛庁設置法の一部を改正する法律案及び自衛隊法の一部を改正する法律案の両案を一括議題とし、前会に引き続き質疑を許します。久保田豊君。
  3. 久保田豊

    久保田(豊)委員 今度の防衛庁設置法の一部を改正する法律案及び自衛隊法の一部を改正する法律案についてでありますが、この具体的な内容については最後に御質問申し上げたいと思いますが、その前提になることについてこの前は何というか、世界的な軍事観点といいますか、そういう点から一、二の点をお聞きしたわけであります。今度は極東の問題、特に新安保の問題につきまして、これと非常に関係が深いと思いますので、その点についてあらかじめ重要な点についてお聞きをいたしたい、こう思うわけであります。  そこで新安保内容という点、これはわかり切ったことのようですが、質問の順序として、私の方で理解したところでは大体次の五つの点が重点になっておりはせぬかということが考えられますので、これは確認をしていただくという意味において質問をしていきたいと思います。  その一つは、私は新安保性格をはっきりつかまえるのに一条から読んでいったのではわからないと思う、ざっくばらんに言って。それで私は私なりに整理をしていってみますと、新安保の一番大事な点は第六条、つまり極東における国際の平和と安全のために米軍日本基地を使用できる権限を与えた、この点が第一点。これは従来の現行安保にもある点であります。しかしその持っている内容はだいぶ変わってきておりますけれども、いずれにしても現行安保にある点が第一点。第二点は第五条、つまり日本施政権下にある地域日米共同防衛をやる、これが第二点。これは新しく条約上加わったことであります。現安保のもとにおいても、条約上の権利としてはなかったけれども、これに近いことが実際上行なわれておったのでありますが、これを新しく条約上のはっきりした権利にした。その内容がだいぶ変わってきておりますが、これも第二点の重要な点だと思う。それから第三の重点は、バンデンバーグ決議趣旨を入れた第三条が新しく入ったということです。これも現行安保におきまして多少それに似たことがありますけれども、明確になってきたという点が第三点。第四点は、条約存続期間が十年になったということ。それから第五点は、条約の運用について第四条、第六条のいわゆる事前協議規定が新しく加わった。この五つが大体今度の新安保条約のおもなる骨格であるというふうに私は理解するのですが、長官はどういうふうに思いますか。
  4. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 骨格といたしましては、私もそういうふうに了解しております。
  5. 久保田豊

    久保田(豊)委員 そこで、この新安保の評価については政府ないしは自民党と、われわれ野党国民とは実際には全く違うわけです。政府与党の、特にこの前の長官の私に対する御答弁の中では、こういうことがはっり述べられておるわけです。新安保条約は、現行条約以上に、つまりアメリカと強く手を結ぶことによっていわゆる戦争抑止力をますます強化したのだ。従ってその結果として、極東の安全ということも保障されるし、特に日本の安全が強く保障されるようになったので、それが第一の軍事的に見た場合の要点だ。従ってその結果としては、日本が非常に安全になってきたのだ。戦争に巻き込まれる危険というものはなくなったのだ、こういう大体の御答弁です。ところがわれわれ野党や、特に国民が心配しているのはそうじゃないのだ。今度の新しい安保条約は、むしろアジアというか、極東における戦争を挑発する危険を多分に含んでいる。その結果として、下手にまごつくと日本が再び戦争に巻き込まれる危険がこの条約によって大きくなったのだ、この点が国民立場から見ると一向に解明されておらないわけであります。この二つの基本的な食い違いがどこから出てくるかということが、私は政府本気になって解明すべきことであり、われわれが本気になって追及すべきことであると思うのでありますが、この点について、この大きな食い違いについて長官はどういうふうに考えられるか。あなたのこの前私に御答弁になったいわゆる軍備というものは、大国軍備小国軍備というふうに分けて、大国の核兵器を中心にする軍備、これは核戦争、つまり全面戦争を抑止する一つの力を持っているのだ。それから小国通常兵力とでもいいますか、こういうものはいわゆる局地戦争を抑止する力をやはり持っているのだ、そういう効果を持っているのだ。この二つが今度の新条約のように結合することによって局地戦争の勃発を防ぎ、さらにその局地戦争が全面的な核戦争に発展することを防止する力が大きくなってきたのだ。そういう意味において、新安保条約を結んだということは、そういう大きな意味において日本の安全を大きく保障すると同時に、アジアに対します平和保障といいますか、安全保障戦争抑止ということに役立ってきたのだ、要約してみればこういうあなたの説明なんです。これはあなたばかりではない。防衛庁諸君のこれらに書いてある防衛年鑑等を見ると、そういう思想が至るところに出ている。アメリカ連中もそういうことを言っている。たとえばきのうあたりの大井さんあたりもそういうことを言っている。今大体世界戦争を肯定しようというふうな連中思想はみなそうだ。これについて私は間違いだということを申し上げたいと思うが、そういう認識の上に立って、新安保条約日本の安全を保障するものだというふうに長官はお考えになっていることと思いますが、これはどうなんですか、もう一度確認する意味においてお聞きをするわけです。
  6. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 今の分析の通りに私ども考えています。私ども考えていますのは、第二次世界大戦前と第二次世界大戦後における世界情勢というものは、よほど変わっている。その変わっているのは、第二次大戦までは何といいますか、仮想敵国を設けて相手方を屈服せしめる、こういうことが主眼であったと思います。しかし再び世界大戦というものを起こしたくない、こういう関係から国際連合が成立いたしまして、侵略戦争の放棄あるいは武力の不行使、こういうことが原則になっていると思うのであります。しかしながら世界現状国際連合に一任するといいますか、全部をまかして世界の平和と安全が守れる、こういう大勢ではない。そういうところから、再々申し上げておりますように、国連憲章でいいますならば、五十一条で個別的自衛権あるいは集団的自衛権によって、地域的に取りきめの例外的な制度を設けております。そういうことから発展いたしまして、現在におきまして、世界各地におきましても安全保障体制をとっていく、これは東西陣営とも共通だと思います。自由国家群におきましても四十数カ国がこれに参加しておるし、あるいはまた共産国家群においても十数カ国がそういう地域的取りきめによって、戦争というものを起こさないようにしようではないか、こういう形になっておるのが現状だと思うわけであります。そういう点から日本といたしましても、日本立場等は非常にデリケートな立場にあります。御承知のように東西陣営の間にはさまって、谷間のような形になっているのが日本であろうかと思います。  そういう立場にありますので、日本といたしまして、とるべき政策として中立政策をとって、どちらの陣営にも加担しないでやっていきたい、こういう希望、世論も私もよくわかっています。しかしこの日本立場から見まして、また世界的に見ましても、中立政策というものをとるというのには、まだまっ裸で中立政策がとれるという道義的な良心的な立場日本中立が守られるというような事態でないと思います。私は中立——きのうもちょっと中立論を福島君か何か言っておったようですが、私も中立をやるというのには、やはり中立を守るだけの自衛力というものを持っておるということが一つの条件だと思います。これはスイスの例に見ましても、そういうようなことで自衛力を相当持って中立を守る。もう一つは、その中立を保障するところの大国が、はっきりとその中立を保障するということに一致しておらなければならないと思うわけであります。そういう点から考えまして、案といたしまして、米、ソ、日本中共、こういう四カ国の不可侵条約を結んだらどうか、こういう案もあることも承知しています。しかし現状において米ソ両国が、あるいは中共日本中立を保障する、こういうようなことには私は理論上、理屈の上では成り立つかもしれませんが、現実の上におきましては非常に困難といいますか、現状においてはでき得ないような状態にあると思うのであります。     〔委員長退席高橋(禎)委員長代理着席〕 そういう点から考えまして、日本の平和と安全を守るというのにつきましては、やはり国連から出ておるところの集団的な、地域的な安全保障取りきめによって、日本の平和と安全を守っていく、こういうのが趣旨かと思います。  しからばその守る方法でありますが、日本といたしまして第二次大戦及びその後の経過等、あるいは世界情勢等から見ましても、ここにどこか侵略をするとか、あるいは攻撃的なことをするというようなことは、これは絶対に避くべきことであり、またそういうことはしてはならない建前になっています。そういうことからいたしまするならば、日本というものも、世界戦争を抑制しようというこの機運の一つとしての集団安全保障体制の中の一半に入って、そうしてその抑制力協力する、こういうことが必要だと思いますが、同時に小国といえども抑制力協力するのにただ、裸で協力するということでは協力の責任が私は果たせないと思います。そういう点におきまして、戦争抑制力としての自衛力でありますけれども自衛国防でありますけれども、しかしそれには小さい問題が起きましたら、それをはねのけるというだけの実力といいますか、そういう力を持って初めてそれが戦争抑制力としての機能を発揮できる、こういうふうに考えております。そういう点から考えまして、日本防衛力といたしましても、できるだけそういう機能が果たせるような形に持っていきたいと思うのでありますが、国力国情等に応じて、国民生活を圧迫してまでそういうようなことは厳に慎まなければなりません。そういう点から考えて、抑制力協力するのにも、まだ私どもは十分でない、こういう立場に立っております。でありますので、問題が起きるようなことがあるといたしまするならば、アメリカ協力を得て、そうして局地的な戦争が起こらないように、あるいは起きたらば、やはりそういうものを小さいうちに消しとめるといいますか、そういう体制を整えておくことが、日本の安全と平和のため、あるいはひいては世界の平和と安全のために、戦争抑制力としての協力一半をになうという立場から、やはり安保条約というものに改定を加えて、安保条約そのものは前からあるのでありますけれども、それに改定を加えていくというのがわれわれの考え方であります。それに対しまして、その考え方が違っておるというような御意見も聞いておりますけれども、私ども立場としては、これが日本現状といたしましてとるべき一番いい方法だ、こういうように考えます。
  7. 久保田豊

    久保田(豊)委員 今のような御意見は、この前もるるお聞きをしたわけです。また安保委員会等においても、政府はこの点を強調しておるわけです。そのうちで特に新安保下における日米関係については、これはあとで触れます。前段の一般論としての意見も、これは理論としても完全な間違いであるし、世界現実に合っておらないということをはっきり申し上げておきたいと思うのです。もっとも、この問題については時間がありませんから、私はあまり深く入ってあなたと論議するつもりはありません。ただ私ども考えておりますところの要点だけ二、三指摘だけしておきたいと思います。  それは今の御議論のいわゆる戦争抑止論前提になっておるのは国連憲章です。国連憲章というものがあたかも万能のごとく、しかも国連憲章例外規定である五十一条による、いわゆる軍事連合といいますか、こういう地域的な安全保障体制というもの、これは要するに仮想敵国もない時代だ、あるいは軍事同盟も成立しない時代だという、一つの仮定の上に立っておる。ところが御承知通り五十一条は例外規定である。本来の地域的安全保障体制は、言うまでもなく五十二条ないし五十三条。五十一条は例外規定である。それをいわゆる拡張解釈をされ、事実を曲げられておるという点に、理論的にも間違いがある。それから現実に今世界各地軍事同盟といいますか、軍事ブロックができております。これは現実にあなたの展開されたような、  いわゆる軍事同盟的な性格をはっきり持っておる。それは何かというと、特に資本主義諸国について見れば、アメリカ中心になって、いずれにしても仮想敵国をはっきり持っております。  つまりソビエトなり共産圏というものをはっきり——これは文章に書いてある書いてないというのでなくて、現実にそれに対処する対策をとっておる。これが第一の間違い。  それから政策上の追及手段としての戦力なり戦争というものをやってないというけれども、これも事実に違っております。それはなぜかというと、反共というはっきりした政策目標を持っております。さらに植民地地帯に対しては、帝国主義植民地支配を新しい形で再建をしようというはっきりした政策目標を持っておる。さらにもう一つは、帝国主義国家間におきますいわゆる勢力範囲の再分割とでもいいますか、こういう利益の奪い合いという政策目標をはっきり持っておる。そのためのいわゆる軍事ブロックであります。こういう点で、これははっきり、つまり仮想敵国も持っておれば、軍事同盟的な性格も持っておる。これが今日の現状です。事実です。これは幾ら文章や口の先でごまかしたってごまかせない。それでなければ、今のように世界軍事情勢なり外交情勢が緊張するはずがないじゃありませんか。現実にああいうふうにむずかしい問題が出ているのは、そこにすべての問題の根源があることは、これは明らかだ。  もう一つ大国、つまり米ソのような大国核兵力というものが、戦争抑止策だという一つの御議論です。これは確かにそういう面もあります。しかしこれもこの前のあなたとのここでの質疑応答の中で私が主張しましたように、これは単に古い力の均衡論の新種です。そうではなくて、現実にはほんとうは何が真実かというと、これもこの前私が主張しましたように、これはやはり何といってもソビエトアメリカに対しまする軍事的優位、これを実力的な基礎にした世界平和勢力の力、そうしてその平和勢力が完全な平和政策というものを堅持しているというところに、今日核戦争の起こらない根本の原因があるのでありまして、何も核兵力そのもの戦争抑止力なんという摩訶不思議な力があるものではない。この点でも現実とも理論的にも違っておるというふうに言えると思う。特に小国通常兵力戦争抑止力だなんというのは、およそ世界現実とかけ離れたものです。今世界各地に小さないろいろな軍事紛争が起こる根本は何かというと、何よりも通常兵力にいわゆる戦争を誘発する危険が非常に大きくなっているということであって、これは何も戦争抑止力とかなんとかいうものじゃないと思う。この二つ大国核兵力小国通常兵力とが結んでこれが全般的なあれになるなんというのは、理論としても、詳しい兵力は別といたしまして、違っておるし、現実とも違っておるというふうに私ども考えるわけです。この点については、またあなたと議論していますと時間を食いますから、私はこれ以上この問題については深入りを避けていきたいと思います。  そこで次の問題は、あなたの方から言われると、つまり戦争抑止理論といいますか、これの適用としての新安保条約は、国民の心配と同じように、これは極東におきまする戦争を挑発する  一つ危険性をこの中に非常に持っておるというふうに大体において私どもは見ておるわけです。どこにそういうふうに見なければならぬ点があるかといいますと、今まで安保特別委員会等における政府説明は、新安保条約というものは、もっぱら日本の安全ということを土台とした、目標にしたところの新しい安保体制である、こういう解釈ですべてを押し切ろうとしておられる。これは確かに日本政府とすれば、私はそういう解釈が成り立つと思う。しかしこれは相手のあることです。アメリカという相手がありますが、アメリカの方の立場からいったら、日本安全保障ということに、この新安保がすべてかかるなんということは考えておりません。そうではなくて、アメリカの方からいえば、第六条でいう——いわゆる極東の平和と安全という言葉を詰めて平安と言いましょう。極東平安維持のために米軍日本軍事基地として使う、これが一番中心です。これがやはり条約の柱です。そうして第五条日米共同防衛という、政府与党諸君が非常に自慢することは、要するに第六条の規定から派生してくる一つの問題であり、同時にその一部であり、これに従属しているという関係に私はあると思う。これは日米軍事関係なり、アメリカ極東戦略全般と、日本というものを考えてみたら、ごまかしでない限り、だれだってこれははっきりする。この条約上でいえば六条と五条との関係ごまかしておる。もっとはっきり言うならば、いわゆるアメリカ極東戦略というものと日本国防というものとの関係を明確に規定づけないところに、すべての間違いがある。国民の心配しているところは、この点をはっきりは自覚しないけれども、いろいろの大勢と経験上からこれを感得している。この点に対する政府説明が、目先の国会内において口の先だけでわれわれをごまかし——どもはごまかされませんけれども、そのごまかしだけに終始しておるところに、ますます疑問が深まるわけであります。私はそう考える。  ここで私は長官に第一点としてお伺いいたしたいのは、五条と六条との関係、もっと具体的にいえば、極東におけるいわゆるアメリカ極東戦略ということと、日本防衛ということと、いずれを現実として日本——あなた方の希望ごまかし議論じゃなくて、これは実際の軍事関係ですから力関係です。力関係の中でどっちが主になって、どっちが従になるかということ、この点についてどういうふうにお考えになっておるのか、明確に御答弁を願いたいと思います。
  8. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 私どもの言うことが非常にごまかしだというふうに言われますけれども、しかし私どもは決してごまかしには考えていません。心から考えておるのであります。立場が違いますのでそういう御議論も出るかと思いますけれども、決してごまかしではありません。  こういうことで論争しないということでありますが、さきにお話のありました五十一条は五十二条、五十三条の例外だ、こういうことでありますけれども、私は国連の全体から見ますならば、国連武力行使侵略の禁止、こういうことの例外が五十一条だ、精神的に見ても制度から見ましてもそういうふうに考えております。  それから仮想敵国を設けている以上軍事同盟ではないか、こういうことでありますが、仮想敵国というものを設けることが軍事同盟であるという一つの論拠もあります。しかしこれは理論的に言いますが、戦争一つ政治の延長であるというような形で、戦争国策遂行一つ手段として見ておる。これは第二次大戦前の見方だと思うのであります。そういう点から見て、この日本立場からいたしましても、国策として戦争を遂行することを政治手段とし、国策手段としておらぬ。これは国連でもそうだと思います。そういう点におきまして軍事同盟という一つの定義に入るものではない、私はこういうふうに考えております。しかしそれは理論だけじゃないか、理論的だけで、現実はそうではないじゃないかという御議論です。たとえば力の均衡によって平和が保てておるということは理想で、現実ソ連平和勢力によるのだ、こういうお話でありますけれども、私ども理論的に力の均衡によって平和を保つという理想とか希望を持っておるわけではありません。現実が原水爆とかミサイル等の力によって均衡が保たれているということで、力を持って均衡を保とうという希望ではなくて、私は現状をそういうふうに申し上げたのであります。そういう点から見まして、立場が違いますが、アメリカがいかにも侵略勢力であるというふうに見て、ソ連は常に平和勢力である、こういうふうな見方でものを判断していくのは間違いではないかと私は思います。何もソ連をどうこう言うことはありませんが、第二次大戦後におきましても、ソ連領土拡張というのはずいぶん大きいものがあります。しかし現実は、そういうことは抜きにいたしまして、やはり共産圏自由国家群との力の均衡というものが——これは希望しているわけではありません、それによって平和を守ろうという希望ではありませんが、こういう力の均衡によって今平和が保たれておるというのが現実である、こういうふうに私は申し上げたいのであります。  それから小国戦争抑制力を持たぬじゃないか、かえって通常兵器を持って戦争をやっているじゃないか、こういうことでありますが、小国だけでは戦争抑制力ということには相ならぬと思います。でありまするから日本といたしましても、日本の力だけで戦争抑制力になるとは私は考えません。集団安全体制というようなものをもってその共同の力によって初めて戦争抑制力というものに役立つ、小さいながらその一半をになう、私はこういうような考え方でおります。従ってアメリカ侵略政策をとるという前提でありまするならば、日本アメリカに従属して、アメリカ極東戦略の中で自由自在に駆使されるものだ、こういう結論が出ると思います。しかし私はこの安全保障体制というものも、小なりといえども日米対等の建前からこれをやっている。力の点においては違います。その力が、侵略的な力でもってやろうというならば、これは非常に問題は違いますけれども、私は戦争抑制力としての問題からいいまするならば、これは大きなものは大きいパートを受け持つし、小さいものは小さいパートを受け持って戦争抑制に協力するということは、これは大きな目から見れば私は対等だと思います。決して極東戦略の中に引き回されている——侵略政略であるという前提であるならば、そういうようなことになるかと思いますが、そう考えなければ、私は引き回されて従属的な立場日本があるというわけには参らぬと思います。  そこで第五条と第六条の問題でありますが、第五条は、御承知のように武力攻撃を受けた場合には共同の措置をとるということでありますが、有事の際にはそういう措置をとる、こういう約束、こういう心がまえ、そしてまたそのときには日本に対してできるだけの協力をして、日本が戦火のちまたになってやられることを防ごう、こういう体制というものは、やはり戦争の前段階において抑制力になって、非常な力になるというふうに私は考えます。その第五条から見ますならば、これは日本の領域下において武力攻撃を受けた場合ということであるから、日本のためになるという考え方もあるだろうという久保田さんの御意見だろうと思います。ところが第六条になると、これは極東の平和と安全のために日本基地を使うということになると、極東の平和と安全というが、アメリカ極東戦略の方が強くて、日本というものはそれで引き回されるのではないか、こういうお考えのようでございます。しかし私どもは、先ほど話がありましたように、バンデンバーグ決議におきましても、安保条約を対等で結ぶというのには、その国がみずからの国を守るという決意を持っておる国でなければならないというような趣旨があります。そういう意味におきまして、やはり日本みずからが、日本の一朝有事の場合には守るという決意が大事だと思います。ところがバンデンバーグ決議そのものを正確に適用するといたしますならば、やはりアメリカが攻撃された場合には、日本アメリカまでも行って協力してアメリカを守らなければならぬというような形が、バンデンバーグ決議そのものを持ってくればそういうふうになると思います。しかし日本の憲法上の建前から、また第二次大戦という非常に苦い経験を経た日本といたしまして、他国まで行って守る海外派兵ということは、これは絶対やらぬというような立場から見ますならば、アメリカまで行って、アメリカが攻撃された場合に守るということではなくて、やはり日本日本の領域のもとにおける武力行使に対しまして、まず日本がこれを守る、それに対してアメリカ共同措置をとるという形が第五条である。ところが第六条では、極東の平和と安全のために日本基地を使おうじゃないか、そうすればこれはアメリカの方が自由勝手にやれるのだ、こういうことでありますが、私ども国際的に見まして、日本だけが日本を、いざという場合にアメリカの血をもって守らせる、おれはアメリカの方へは全然協力しないのだ、こういうのは、やはり同盟といいますか、安全保障条約というような形から見て、私はそれは非常にエゴイズムといいますか、国際的なエゴイズムだと思います。またそういうことでありますならば、アメリカもあえて日本を守るというような気持にはならぬと思います。でありますから、日本武力攻撃を受けた場合にはアメリカ協力するということでありますならば、アメリカも、極東の平和と安全というものが、世界の平和と安全につながるということにもなろうと思います。そういう点から見て、極東の平和と安全を守っていく、こういう建前をアメリカがとるのも、これは当然だと思います。しかしそのことが、日本の平和と安全といいますか、日本戦争に巻き込まれるようなことがあっては、これは両立いたしません。そういうことでありますから、これを避けるために、第六条から出ます交換公文による事前協議というようなことで、アメリカ極東の平和と安全のために働くことには協力するけれども、しかし同時に、そのために日本が巻き込まれることは防がなくてはならぬ。やはり主体は日本にある。こういう点から考えて、事前協議の対象を例示いたしまして、戦争というか、紛乱の中に巻き込まれるのを極力防がなくてはならぬ、こういう立場が六条だと思います。そういう点から考えまして、私は日本だけよければいいのだというエゴイズムの立場に立った条約ではないが、しかし日本中心であり、日本の平和と安全を守るためにこれに協力してアメリカにも便宜を与える、しかし日本が紛争に巻き込まれることは極力防ぐ、こういう調整をとってあるのが、第六条から出てきているところの交換公文、こういうふうに私は了解しているわけであります。
  9. 久保田豊

    久保田(豊)委員 戦争抑制論の蒸し返しがあって、だいぶ反撃がありましたが、これは私も時間があれば大いにやりたいと思うけれども、時間がありませんし、そんなことをやっていると大事な問題に入れませんから、一応ここではこれ以上触れません。ただ五冬と六条の問題については、長官のお考えなり政府、自民党の考えが、私はさか立ちしていると思うのです。それはなるほど日本立場から見れば、アメリカ日米共同防衛をして日本を助けるということが、この条約重点でなければならぬというふうに考えていることは当然です。しかしアメリカは、同じような条約を韓国とも結んでおれば、台湾とも結んでおれば、フィリピンとも結んでいる。しかもなぜ日本と結んだかということになれば、アメリカは当然極東における平和と安全の維持、この内容についてはあとでまた論議をいたしますけれども、そういう大きな目標を実現するための一つの戦略というものを持って、その統一的戦略のもとに、日本も韓国も、あるいは台湾もフィリピンも統一的に、一つの軍事的な関係に結びつけている。もちろんこれらのいわゆるアメリカアジアにおける同盟諸国の間に、この国の方がこの国より大事だとか、あるいはこの国の場合は多少の特異性を認めていくというようなことは当然あります。それはそれぞれの安全保障条約の中に出ております。出ておりますけれども、それは副次的なものです。アメリカから見れば、何と言ってもアジア全体に対するところの統一的な政策、統一的な軍事体制を作ろう、そのうちの一環が日本ということにきまり切っている。その足場というものが六条です。しかも兵理の上から言えば、こういう統一的なものは指導戦力じゃないでしょうか。そういう指導戦力をあなた方は当てにしているのじゃないですか。だからアメリカの力を借りなければ日本防衛はできないのだと、初めからそう言っているのじゃないですか。そういう指導戦力の中を貫く兵理というものが中心になるのが当然の話です。これが第六条の規定であって、その六条から派生をし、その一部分をなし、これに従属しているものが私は五条だと思う。ここに私は一番根本の問題があると思う。今長官からいろいろの御説明がありましたけれども、何を言っておるのだか、私どもが聞いていてよくわからないが、今のあなたのお話こそ、あなた方なり、あるいは与党諸君希望図です。冷厳な、いわゆる軍事上の兵理を中心として、体制中心として考えた場合においては、そういう希望図というものは通らないと私どもは理解をしておる。その理解の上に立って、この条約なりあるいはこの条約の運用というものを考えるというところに、日本としてのほんとうの行く道が私はあると思う。そうでなくて、根本がひっくり返っておってその希望図の上にこうあってほしい、あああってほしい、事前協議というものがあるから大丈夫だ。だれも大丈夫と思っておりません。アメリカの方は、日本にその通り保証すると言った人はまだ一人もいない。こういう実情ですから、私どもはこの点についてはもう一度長官——おそらく長官は、君はそういうふうに見るかもしらぬけれども、これはまた立場の相違だとおっしゃるかもしらぬ。しかしこれは先々いきますと、立場の相違では済まない問題です。立場の相違でごまかしておっては済まない問題ですよ。私は決して社会党の立場だけにとらわれて申し上げるのではなくて、この次に触れますけれども、これは極東全体の軍事情勢の問題の根幹をなしますから、この点についてもう一度長官の御意見をくどいようですがお聞きしておきたい。
  10. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 立場の相違だなどとはすぐには申し上げませんが、今の第五条と第六条の関係で、第六条が原則で第五条例外だ、この考え方は間違っていると思います。これは第五条というものが中心です。今度の安全保障条約におきましては、やはり共同防衛という形で、今までの安全保障条約によりますれば、アメリカが勝手に守ってやるのだ、守ろうが守るまいがアメリカの恣意だ、自由なんだ、こういうような建前だったと思います。今度の改定におきましては、第五条におきまして、日本の領域下に武力攻撃があった場合にはアメリカはこれに対して共同措置をとる、こういう義務をはっきりして、日本を守らなければならぬ、守るということがはっきりしておるのが第五条で、やはり第五条中心だろうと思います。それに対しまして、ほんとうはバンデンバーグの決議のようなことでありますならば、これはアメリカ日本を守るということならば、日本アメリカを守る、こういう形でアメリカまでも出動するというのが、これが対等の立場だと思います。ところが先ほど申し上げましたように、日本はそういうような立場にはありません。それならばといって、勝手に守れ、守る義務だけを押しつけるというようなことでは、これは条約になりません。やはりそれにつきまして、いざという場合に日本を守るときに都合のいいような措置を考えなければならぬ。そういうことで、日本の施設及び区域を日本の安全と極東の平和と安全のために供与することを許す、こういうことになってきておるのが第六条であると思います。そういう点から考えますならば、第五条中心であって、第五条から第六条というものが出てきているといいますか、相互の関係が第五条と第六条に規定されておるという建前で、アメリカ極東戦略があって、アメリカのために日本が奉仕させられるという形できているのが六条あるいは五条だ、こういう考え方とは私は違った見方をいたしております。
  11. 久保田豊

    久保田(豊)委員 それはあなた、無理ですよ。大体現行安保にしても、もしそういう考えがあるのなら、現行安保ですでに第五条的な内容が入ってなければならぬ。アメリカの方が最初日本に押しつけてきたのは、いわゆるあの当時言われたのは、日本に対する占領体制をそのまま維持するということだけであったが、内容はそうではない。そうではなくて、極東の平和と安全の維持のために日本を全土的に基地に使うということが、現行条約根本じゃないですか。それはアメリカは一歩も譲っておりません。あなたに言わせると、要するにその点については事前協議で譲ったと言うでしょうけれども、その事前協議については私はあとで触れます。そうではなくて、この点だけは今度の新安保についても、アメリカは一歩も譲っておりません。その前提というか、それを中心にして今度は第五条を認めた。それはあなたのおっしゃる通り、第五条というのは、これはある意味においてはバンデンバーグ決議趣旨を生かしたものである。しかしアメリカとすれば、バンデンバーグで、日本ができもしないアメリカの本土を守るなんということをやらぬでも、極東戦略のお手伝いをすることで十分おつりがくるのです。ちゃんとこういうめどをつけておるのですから、いわゆるギブ・アンド・テイクで損はない、こう見ておるからこれに応じただけの話なんです。さらに第五条において、あまり害がないから事前協議なんというものに向こうは応じただけですよ。こういう点は、少なくとも政府与党諸君のこの点についての認識というものは、全くさかさ立ちをしている。希望図はわかります。希望図はわかりますけれども、今私は経過的に申しましたけれども、経過的のみならず全体の軍事体制の上から見ても、これはそういう政府希望図のように、第五条が主であって第六条はそれに付随するものである、従であるというふうな考えは逆であって、これはアメリカ日本、この立場を通じて一貫してこの条約を流れているものは第六条が主であって、第五条は従であるというふうに見ることが、客観的に正しい見方だ、こう思うわけです。この点について、もう一歩突っ込んだ議論を私はしたいと思うのですが、問題が相当ありますのでこの程度にしておきます。  そこでこの第六条でいう極東の平安の維持のために米軍日本基地を使おう、これは言葉をかえていえばアメリカ極東戦略だと思うのです。この極東戦略が、今日軍事的にも政治的にもくずれ始めている。ここから、簡単に言うならばアメリカの軍事的なあせりといいますか、一つの軍事的ニヒリズムとでもいいますか、こういうものが出てきておる。ここにやはり極東におきます戦争の危険の一番大きな要素があると私は思うのです。  具体的に少し説明しますと、アメリカ極東戦略といいますか、極東政策が非常に平和的なものなんだということは、これはどっちからいっても私は言えないと思うのです。アメリカ極東政策といいますか、あるいは極東戦略の基本の目標はどこにあるかといえば、これはよく言われるように、また向こうの偉い人がかなり露骨に言っておりますように、何といっても新しい中国の社会主義建設の妨害ということです。これが基本の目標です。もう一つは、この新しい中国の社会主義建設の影響が周辺の低開発地帯といいますか、アジアのおくれた諸国にどんどん入っていくことを防止しよう。そのためには軍事的にいいますと、この周辺で局地的な核戦争とでもいいますか、こういう紛争を始終起こしていこう、こういう体制を作っていこうということが、アメリカ極東戦略の基本の目標であることは明らかです。この極東戦略そのものも相当変革をしてきた。それは御承知通り、最初アメリカの方がソビエトに対する軍事的優位を持っておるときは、いわゆる封じ込め政策から巻き返し、大量報復というふうに、世界戦略も極東戦略も変わってきた。  その中で御承知通り朝鮮事変も起こされたり、あるいはその他のベトナムの戦争も起こった。それが軍事的な優位が地位を変えてくるに従って、いわゆる大量報復戦略ではだめだ、ですから周辺の局地的ないわゆる核戦略というものに変えていこうというのが、アメリカの基本の戦略に変わった。その現われがどこに現われてきたかといえば、これが最近に現われたのは何といっても金門、馬祖の戦いであり、同時にラオス問題であろうと思うのです。こういうふうに戦略が変わるに従って、変わってきた。しかし戦略目標そのものは、やはり依然として変わっておりません。これが極東戦略の一番のねらいだと私は思う。そのためにアメリカ中心になって、日本との同盟も今度は新しくさらに強化したわけですが、米韓あるいは米比、あるいは米台あるいは南ベトナムとの関係、こういうふうにしていわゆる軍事的な拠点を作った。これらの軍事的な政権というものはみなこれは反共一点張り、ほかに何も用はないというか、目的はない。そういう政権を作ってそこにこの軍事増強をし、そしてアメリカがここに駐留して、これを指導しておる。こういうのが今の体制だろうと思います。しかもこれは侵略でないなんということは言えませんよ。台湾の問題一つ考えてみたところが、アメリカにはいろいろ戦略上の理由もあるでしょう。あるでしょうけれども、台湾が中国の領土の一部であることはわかり切っておる。蒋介石と毛沢東が取り合いをするというならこれは話がわかる。何もそれにアメリカがたくさん銭を注ぎ込んで、そして軍隊を派遣して、何かあればアメリカが全部これの援助をして、この台湾の統一問題をこれはどうだこうだと言う必要がどこにあるのですか。これははっきり侵略ですよ。それから朝鮮だって同じです。南北ベトナムの問題だって本質的には変わりありませんよ。こういう点は、これははっきり私は侵略的な性格、攻撃的な性格を持っていると見て差しつかえないと思うのです。最近黒いジェット機問題が非常に問題になっている。ところが中国では、三月二十八日だったと思いますが、米軍が今まで九十四回中国の領土、領空を侵犯したと言っています。おそらくその中には黒いジェット機がたくさん入っている。そうして写した写真がせんだって問題になった航空写真のもとですよ。そんなことは、今さらそんなことはありませんと言ったって、あれだけはっきりしてくればだれも信用しませんよ。こういうふうな性格から見てもはっきりしておると私は思います。この点がアメリカ極東戦略侵略性といいますか、ここにはっきり、そうして敵は中国であり、ソビエトであり、共産圏諸国である。これをはっきり仮想敵国にして、これに対する戦略体制を組んでおる。その戦略体制というのは御承知通りケープタウンからハワイ、ハワイから沖縄、こういう一つの系列をやって、第五空軍とか、第十三空軍という戦術空軍、あるいは第三戦略空軍ですか、第五艦隊あるいは第一艦隊、こういうアメリカの基本戦力を中心にして、それに同盟国の日本その他の軍隊を配置している。こういう体制がはっきり出ておることは、これも明らかです。もちろんこれに対する中国なりソビエト体制もこれができておることはもちろんです。こういうふうな体制になっておるということは、これははっきりした否定のできない現実だと思うのです。  私はこういう体制自体がやはり極東におきまする、形の上では、つまりもともとがたとえば台湾の問題にしましても何にしましても、台湾からアメリカが引っ込んだら、少なくともあそこに戦争の危機はどうしても出てきませんよ。きなくさいにおいというものは出て参りませんよ。南北の朝鮮がどういう形かで平和統一をいたしましたら、あそこにはいわゆる戦争のにおいなんというものは出て参りませんよ。あるいは南北のベトナムが、これはどういう形になるかわかりませんけれども、統一をされて民族統一が完成をしたら、あそこからも戦争の危険なんて出てきません。アジアにおいて一番大きな戦争の危険といったらこの三カ所じゃないですか。しかもこれにはすべてアメリカが一部の軍事占領をしていることは事実上間違いない。こういう現実を、これはアメリカでいえば、そういう体制をそのまま維持することが、極東の平和と安全の維持ということになりましょう。しかし極東全体から見れば、少なくとも極東の全部のいわゆる普通の住民から見れば、そういう体制をなくなすことが、ほんとうの極東の平和と安全の保障の道だと思うのです。これははっきりあなたのおっしゃる通り立場の違いかもわかりません。あなたと議論すれば立場の違いかもしれませんが、ここにはっきりアジアにおきまする地盤戦争の危険がある。そういう体制下にあるアメリカ日本が今度全面的に軍事的な関係を強化して、しかもこれに対して全土基地という形における軍事基地の使用を許しているというところに、今度の条約危険性というものが一番あると私は思う。私どもはこの点をこう理解しておるのですが、あなたはどういうふうに理解しておりますか。
  12. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 戦略の前の段階を申し上げますと、これも御承知でありましょうが、アメリカ日本もあるいは極東におきましても自由民主主義の制度、その経済組織というものをその国がやっていくことがその国のためである、こういうふうな考え方に立っている国があるのは御承知通りだと思います。そういう点から考えまして、アメリカといたしましても極東におきましてやはり共産勢力になるということを防ぐ、こういう考え方は、これは基本になっていると思います。そういう点から考えまして、アメリカがあえて共産国家侵略しよう、そういうような侵略政策を持っているというふうに断定するのは、やはり立場の相違といいますか、これは独断ではないかと私は思います。そういう考え方をもってしますならば、共産国家群侵略国家だということになります。しかし私はそういう言葉を使いたくありません。どちらもやはり世界的に問題を起こしたくないということが、両陣営考えていることだと思います。そこで例をあげられましたが、朝鮮も南北が統一すれば問題がないのです。統一できないという事実がある。片方は共産国家群としてあるし、片方は自由国家群として、三十八度線を画して、そしてこれが相いれないという事実があるのです。それは久保田さんの言うように理想的に統一すれば問題がなくなります。あるいはまた中華民国につきましてのいろいろ御議論もありましたが、あの金門、馬祖の問題が大きくならなかったというのも、これはアメリカ防衛的な平和と安全のためにおったということが、あれが拡大されなかった原因だと思います。ベトナムにつきましても、南北ベトナムが一緒になれば問題がない。一緒になれないという現実がある。そういうところに波乱あるいは動乱を起こしたくない。これはもっぱら平和と安全のためにやっていこう、それが侵略国家であるならば、もうそれより前に侵略をいたします。私はそういう態勢だと思います。しかし侵略しようという気持がないから、やはり平和と安全を守っていこうという努力をしている、これは私はそうだと思います。でありますから、冒頭に申し上げましたように、アメリカ侵略政策侵略国家だとするならば、これは共産国家群侵略国家だといわざるを得ない。私はそういうことでなくて、やはり侵略をしないでその分をお互いに守っていく、そういう制度は自分の制度として守っていく。だからその国の成り行きや制度が違っても、お互いにこれは話し合いを進めていこう、あるいは貿易のあれもやっていこうというのが、アメリカ考え方でもあり、共産国家群考え方でもある。だからして、一方が侵略、特にアメリカ侵略国であるという前提のもとにすべてが動いているのだ、こういう見方はまあ立場の相違というのでありますか、見解の相違でありましょうけれども、これは私のとらざるところでございます。
  13. 久保田豊

    久保田(豊)委員 この問題も時間の関係で深く私は長官議論するつもりはありません。しかし現実の経過がそうじゃないですか。たとえばベトナムにいたしましても、一たんは北ベトナムのホー・チミンの指導下におけるいわゆる民主ベトナムですか、あれで統一をしたのですよ。それから無理に分けたのはアメリカですよ。そして今のゴ・ディエンディエムですか、あの政権を作ったのはアメリカですよ。分割したのはアメリカです。朝鮮だってそれに似た経過をとっております。台湾にしてみたところが、アメリカがあそこに蟠踞しなければ、蒋介石と毛沢東の間で話はついておりますよ。そういう経過というものを無視して、両方ともどうだとかこうだとか言ったって、これは議論にならない、こう思うのです。しかしこの点についてはこれ以上触れてもしようがありませんから、その次にもう少し現実の問題に触れていきます。  私はやはり極東におきまする今度の安保条約は、あなた方からいえば非常に有利な条件で、今までよりはよくて、要するに少しプラスをとったつもりでしょう。そういう条件でなぜアメリカが認めたかということは、これは極東におきまするアメリカの、いわゆる軍事戦略体制というものが政治、経済的に崩壊しかかっている。ここにアメリカのあせりがあるのです。それが一番はっきり出ているのは朝鮮じゃないですか。朝鮮は御承知通りついせんだっての暴動で、とうとうアメリカがトラの子のように大事にしておった李承晩政権というものまで、簡単にぶち倒してしまった。ずいぶんアメリカのやり方も不人情なやり方で、岸さんもあんなことにならなければいいと私は思っていますが、ずいぶんひどい。今までさんざっぱら十二年も十三年も李承晩でなくちゃならぬように言っておって、そうしていよいよ工合が悪くなれば、お前はだめだというわけでしょう。しかしあれは直接には確かに選挙の不正、これに対するいわゆる民主的要求です。しかし今その後における朝鮮の現実はどうですか。そんなことで片づくはずがありませんよ。ですから、今でも政治的な動揺というものは非常に深まっておる。これは現在の程度の政治的動揺でとまりっこありません。この点については、つい最近のエコノミストにはっきり出ていますよ。どういう状態かというと、要点だけちょっと拾ってみますと、こういうことがはっきり出ております。「破局に直面した韓国経済」こういうことです。どういう内容が書いてあるかといいますと、大体拾い読みをしてみますと、韓国の製造工場六千何がしのうち、ほとんど全部がつぶれるか操業停止をしている。韓国の一番大きな輸出産業であります地下鉱業、ホタル石であるとかタングステンであるとか黒鉛、こういうものが三十数%はこれまた操業停止です。そして失業者は約千八百万の人口のうち六百六十万、これが失業者の実態であります。そうして農業の方はどうかというと、大体二百二十万戸の農家のうち、年々七十万ないし七十五万戸の絶糧農家が恒常的に出ておるというふうな荒廃ぶりです。それでこれは期鮮の人たちは四千年来の生活苦だ、八百年来の物価騰貴だ、こういうことで、この前の選挙のときさえすでに生きられないから、かえてみようというのが大統領選挙のスローガンであった。しかもそのスローガンをかけた方の民主党の方が実際に勝っている。格好の上では李承晩が勝ちましたけれども、実際には勝っておる。なぜそういうふうになったかといいますと、これは何よりもはっきりしています。つまりこれに対する経済政策が全くの収奪主義だったからということです。アメリカは、これによりますと、大体五九年まで経済援助としましては二十四億ドル、それから軍事援助としては十二億ドル、こういう多量のものをぶち込んでおりますけれども、これが朝鮮の産業なり何なりをよくするという方向には一つも作用しておらない。朝鮮のいわゆるアメリカのお先棒をかついでおる連中の不正な金もうけの材料になっておる。それが証拠に、日本に現在までおったある大使は私財六十億、日本におる間にかせいだといわれておる。雑誌にちゃんと載っておる。それに似た連中がうんとある。この点はコンロン報告もはっきり指摘しております。こういうふうに、格好においては援助だけれども、実際においては収奪です。こういうことが行なわれた。その上に七十二万といういわゆる軍隊が、アメリカの強要によって反共軍として組織されたわけです。その経費は総予算の七七%、だから朝鮮人は、からだより大きいへそだと言っておるそうですけれども、こういうふうな無理ないわゆる反共軍事体制というものが土台になっております。ですから当面は単なる民主主義の要求というようなことになっておりましょうけれども、これは私はこんなものでとまりっこないと思う。これは大多数の観測をする人がみな一致しております。これがしかもお隣の——あなたは共産主義はどうだこうだと言うけれども、私も共産主義はきらいです。私はずいぶん共産党にいじめられた方ですから私もきらいです。きらいですけども現実をはっきり見なければならぬ。北朝鮮はどうです。北朝鮮は一人前の工業の生産力では日本を追い越しておりますよ。おそらくこの安保条約が生きる今後の十年間を見れば、これはこんなになってしまうことはもう明らかです。そういう関係考えてみれば、私はおそらく南朝鮮——韓国の近い将来というものは、まず今の民主化の要求から始まって、これは政治的な改革に必ずいくと思う。その政治的な改革の方向というものは、少なくともアメリカの軍事支配、経済支配というものを排除する方向、民族独立、平和の方向をとるのは明らかだ。さらにそれと結びついて社会主義的な方向をとることもこれも明らかだ、こういう方向がもうはっきりしています。これは南朝鮮、韓国だけじゃないのです。台湾もこれに似たようなことがあって、蒋介石政権が今ぐらぐらしておるでしょう。南ベトナムもそうじゃないですか。南ベトナムも保守党の政治家が、今すでにゴ・ディエンディエムに対して退陣要求をしている。しかもその裏には韓国ほどではないが、非常な経済的な破局というものが強く浸透しております。しかも北ベトナムは、進歩は非常におそいようですけれども、堅実な建設をしております。おそらく今後五年、十年たったら全く違ってしまうでしょう。同じ民族、隣同士ですから、その影響が及んでくることは明らかです。台湾の場合は、おそらくアメリカがあそこから手を引くか、それでなければ蒋介石が死んだら、大部分が本国復帰という形において、あそこが少なくとも平和と反アメリカの反軍事主義の基点になることは明らかだと思うとこういうふうな形でアメリカアジアにおきまする軍事拠点といいますか、同盟諸国のほとんどが崩壊をせざるを得ないような大勢になっておるというのが今日の、少なくとも今後十年を考えた場合においては、これが現実です。ここから一つアメリカソ連に対する軍事的な優劣関係からくるあせり、一つは少なくともアジアにおいてはこういう大勢の中で、しかもその中心としての中国は経済的に政治的に軍事的に、今後十年間にぐんぐん伸びてくることは、これはだれも否定できない。あなたの方の松村さんなり、あるいは井出君なり、古井君なりの訪中雑感などを読んでみても、はっきりこの点は否定しておりません。  こういう情勢の中でアメリカが、一つ世界的なソビエトとの関係に対する軍事的な劣位というものからくるあせり、もう一つはここだけじゃなくて、世界的に御承知通りあっちこっちで、エジプトでも今問題が起こっておる。その他アメリカの支配体制が全部今ぐるぐる急速に変わりつつある、こういう中にアメリカの非常なあせりがある。こういう極東の軍事、政治情勢の中で、アメリカがたよりになるのは日本だけですよ。日本は少なくとも今までの過程の中で、経済的にも大きく復興してきた。それは西欧に比べれば問題じゃありません。また問題ないところもあるけれども、大きく伸びてきた。そして少なくとも軍事的にも相当高いレベルが今日確保されてきた。そして特に経済的なものとしては非常にはっきりしたものを持っておる。さらにもう一つは、少なくとも共産主義に対しては、——どもを初めとして共産主義国の現実は尊重しています。共産主義に対する反対という点では、日本というのはアジアにおいて一番たよりになる国だ。従ってこういうところからやはり兵器の発達による戦術上の変化に応じまして、日本は今かつてのように、アジアにおきまするアメリカ極東戦略の最前線的な軍事基地としての役割は、非常に少なくなったと思う。しかし少なくとも補給基地としての役割は、非常に大きな重要性を持ってきておる。と同時に反共政治基地としての役割が強くなってきた。もっと言えば韓国や台湾や、そういう崩壊しつつあるものに突っかい棒をやる役割というものを、アメリカ日本に片棒をかつがせようとしている。それには岸さんが一番いい人である。ブラウンにはっきりと日本は韓国の共産化というのはどんなことがあっても防止するのだと言った。日本では言わないけれども、向こうへ行ってはみえを張っている。一生懸命向こうにふれ込みをやっている。そうして台湾へ行けば、大陸反攻をやりなさいと言って、蒋介石に火をつけてみたりする。こういう政権が一番都合がいい。こういうところに、私は今度の安保条約アメリカ側から見て日本の言い分を比較的通して、これを結んだ根本の原因があると思う。そうしてまた日本側はそういう体制を利用して、日本のかつての地位というものを幾分でも復活していこうという一つの岸さんらしい夢を持っているところに、この問題がもり立った根本のあれがあると思う。しかしそれはさっき言いましたように、そういうアメリカアジアにおきます軍事基地というものは、遠からず崩壊します。しかもその反面において、中国なりあるいは北鮮なり、ソビエトなりというものが、今後少なくとも十年間においてはあらゆる面において非常に大きな力を持ってくることは明らかだ。こういう大きなアンバランスの中に立ったアメリカのあせりといいますか、ニヒリズム、これがおそらくこの次の段階におきましては、あなた方の言ういわゆる核兵器の均衡論だとか、あるいは戦争抑止力というものを吹っ飛ばして、あちこちで戦争のきなくさいことをやる根本になると思う。ここに私は一番根本の問題があり、それが日本へちょうど引火するように今度の安保条約ができておるというところに、私は一番問題があろうと思う。この点について私どもはこういうふうに見ております、これはまたあなたに言わせれば、お前さんとは見方の相違だ、立場の相違だとごまかすと思いますが、これは私はごまかしではいけないと思う。この点について、あなたは今後少なくとも新安保下においてのアメリカ極東における軍事、政治支配の体制と、これと結びついた日本体制、それとアジア全体として今後どう変わってくるかという見通しを、どういうふうに結びつけてこの問題を考えておられるか、この点を一つはっきりお伺いしたいと思います。
  14. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 言葉じりをとらえて申し上げるわけではありませんが、立場の相違ということはごまかしではありません。立場の相違において私は主張すべきことは主張する。私の主張と違ったからといって、私がごまかしておるという断定は間違っておるのではないかと思います。  そこでまず立場の相違という点から申し上げたいと思います。たとえば韓国の立場にいたしましても、これはアメリカが韓国を見ておられないというような事態になった根本的な問題は、世界において独裁といいますか、独裁国家、全体主義の行き方というものは、アメリカは賛成しておりません。やはり自由民主主義の立場でいくという点におきまして、独裁的な、全体主義的な立場アメリカはとらぬ。ところが韓国におきましては、左でない、右かもしれませんが、李承晩のやり方というものは、一つの独裁国家的な、全体主義的な動きがあったということにつきましては、アメリカは好ましくないという考えを持つだろうと私は考えております。  それから韓国の例を非常に詳しく御説明がありましたが、これは韓国の政治の問題でありますから、私はその政治についていいとは申し上げませんが、政治のやり方によってはよくもなり悪くもなる、こういうふうに考えておるわけであります。そうしてまたその見解におきまして、ああいうことですぐにこれは社会主義国家になるのだ。——すぐにではないでしょうが、当然なるのだ。これもそういう見方もありましょうが、私はやはり根本的な考え方から見て、自由が必要なのか、それとも奴隷になるか、こういうような考え方もありましょう。あるいは根本的に自由主義の経済制度あるいは共産主義の経済制度というものがいいかどうかという立場からも分かれてくるかと思いますが、私は韓国が社会主義国家としてやっていくのだ、こういうようなことになるという見通しは持っておりません。それを無理にやらせるとするならば、武力的な力によって北鮮の方でもこれを侵略するということになれば、これはあり得るかと思います。私は現在韓国が社会主義制度の国、共産主義国家になるのだ、こういうような見通しは持っておりません。  ベトナムにつきましても、その他いろいろお話がありましたが、これはポツダム宣言の結果、韓国とああいうふうになったのでありまして、アメリカが分断したということではない。そういうことでありますれば、ポツダム宣言に参加したソ連も分断したものの一人だと思います。これは世界的に見ましても、アメリカ侵略国家侵略国家といいますけれども、ヨーロッパ等におきまして、そういう意味において侵略的というならば、共産国家もやはり共産国家というものに世界を持っていきたいという考え方があるということは認められるわけでございます。そういう点から考えまして、韓国の例を引かれましたし、日本の例もお引きになりましたが、日本日本として経済が相当繁栄してきておることも、私は日本の国内の政治の問題だと思いますが、政治のやり方によってはそういうことはよくもなり悪くなることもあると思います。そういう点におきまして日本は非常に復興しておる、こういうふうに私は考えておるわけでございます。  そこで中華人民共和国ですか、中共もこれは相当強くなるといいますか、経済力も発展する、これは私も認めます。しかもそれが発展して、あるいはその他北鮮もよくなってくる。これはお互いに隣近所に事なかれで、よくなることはけっこうだと思います。よくなると、何か日本が圧迫されたり、あるいは極東が不安になるというような考え方も、これは立場上から少し違ってくると思います。よくなる、繁栄する、そうして極東が不安になるということだとするならば、これは極東におけるこういう国々の侵略がなければ、そう不安になるとは思いません。隣の国がよくなる、共産国家群もよくなるということは、俗な言葉でありますが、近所隣に事なかれといいますか、隣がよくなることは希望しております。希望しておりますが、よくなることによって極東に不安をかもし出すということでありますならば、これはよくなった結果侵略するというようなことを予想しなければ、そういうことは考えられないと思います。アメリカといたしましては、あえて共産国家侵略しようというような考え方は、全然ないというふうに私は強く考えております。というのは、東西陣営における日本立場というものは、これは少し私の考えだけになるおそれもあるかもしれませんが、私は東西陣営における立場日本の一番価値のあるものは、やはり日本の発展した工業力であり、日本の人口からくる労働力であり、日本人の頭脳だと思います。これが共産国家あるいは自由国家群においてどちらがほしいか。これは武力攻撃でするか、武力によらざるものによってほしいかということを考えますならば、やはり共産主義国が侵略してくるという前提でなくて、武力行使しないという前提から見ましても、日本を共産主義国家群の一つに入れたいという強い希望は、共産主義国家群の方にもあると思います。武力侵略というようなことは抜きにして、アメリカの方はむしろ消極的に、日本自由国家群としてでなくて、共産国家群に入るということによりまして世界均衡も破れますし、あるいは自由民主主義というものの制度の上にも大きな影響を来たしますので、これはアメリカといたしましては、日本が自由民主主義国家として栄えていくことを期待し、また希望しておると思います。そういう点から考えますると同時に、また日本自体から見ましても、日本が共産主義の国家、あるいはその前提としての人民共和国というようなものになることは、これは私一人でなく、やはり久保田さんも含めてすべての人——そういうことを言ってはどうかと思いますが、私はそういう制度がやはり日本としてはいいことでないというように考えておるのではないかと思います。でありますから、両陣営の間にはさまれておって、積極的に日本共産国家群になった方がいい——武力行使とかなんとかということは別にして、考え方はこれは、共産主義国家群の方が強いと思います。自由民主主義国家としては、むしろ積極的に共産国家群に入ることは困る、世界均衡も破れてくる、こういう考え方ではないか、こういうふうに私は見ておるのであります。これは防衛問題とは別として、私のあるいは個人的な見解になるかもしれませんが、私はそういうふうに考えております。
  15. 久保田豊

    久保田(豊)委員 私の言うことを長官はよくお聞きになっておらぬのか、だいぶ誤解をしている。朝鮮の今の混乱、そしてその混乱の一番底に動いている経済的な破綻というものは、それは表面から見れば李承晩の政治が悪いということですよ。しかし李承晩をしてああいう政治をやらしたのはだれか、何かということです。それはアメリカの、要するにあそこにおける反共軍事体制の強化ということです。そうでしょう。たった二千万足らずのところへとにかく七十二万というふうな軍隊を——それはアメリカが援助しているには違いないが、七十二万というふうな軍隊を持たせている。そして予算の八〇%近くは、警察と軍隊が食っているということ、経済的には何もやらずに、アメリカが余った農産物や何かを持っていって、向こうの一部の連中と結託をして、そしてべらぼうなもうけをする。従って向こうの産業はどんどんぶっ倒れて、物価は上がりほうだいだ、こういうやり方自体——やり方というよりは、そういうことが今韓国の経済体制といいますか、軍事体制といいますか、少なくとも政治体制です。その体制の中では、李承晩はああいうふうないわゆる全体主義的な独裁政治をせざるを得なかったのではないでしょうか。ですから今までもアメリカは独裁政治はきらいだと言っていますけれども、今まで過去十二年間、李承晩の悪口をアメリカは一回でも言ったことがありますか。一番りっぱな大統領だと言ってほめ上げていたじゃないですか。そして台湾だって問題は似たり寄ったりですから、あすこも御承知通り蒋介石は軍事独裁的な政治をやっておるじゃないですか。ゴ・ディンディエムだって同じじゃないですか。そういういわゆるアメリカの軍事、政治支配の体制があれば、その上に立っては民主政治なんというものはできませんよ。それが証拠には、アメリカは今度こそ李承晩に対しては、あれはいけないとかなんとか言ってけちをつけた。しかし蒋介石にけちをつけておりますか。蒋介石の独裁政治が悪いと言ったことは一回もありませんよ。ゴ・ディンディエムもまだちっとは持つと思っておるから、これを支持しておるじゃありませんか。何もアメリカが独裁政治をきらいだということじゃない。アメリカは自分の都合がよければ独裁政治も好きなんです。それがあすこの人民の抵抗の限度にきて、これはやり切れないということで、今度は急に態度をひっくり返したというのが、朝鮮の李承晩に対する態度であると思うのです。ですから単に政治が悪いという薄い認識では、朝鮮の事態なり、アジアにおけるアメリカの同盟諸国の今日の政治的実態、それの発展ということは、あなたの今のような単純な考えでは理解できないと思う。  それからもう一つ、これはあなたもお認めの通りソビエトも今度の七カ年計画でシベリアの開発をやっている。もう二年たちましたから、あと五年たてばうんとりっぱになるでしょう。北鮮もりっぱになるでしょう。そして中国も大発展をするでしょう。大発展をしたらこれが侵略をするというのでは何にもならぬ。その通りですよ。しかし私はそんなことを言ってはいない。こういうふうにあらゆる面での大発展が行なわれれば、侵略、特に軍事侵略なんということはしなくても、その影響というものはアジアの低開発諸国の住民、特に勤労大衆には、いやだっておうだって強く入っていきますよ。(「日本アメリカも発展するよ」と呼ぶ者あり)これは日本も発展するかもしれない。そうしてアメリカが満足したらいい。なるかどうか、それは君らだけの話だ。そういう大きな影響が入ってくれば、片方においてはアメリカの軍事支配体制でもって、住民が四千年来の生活苦というものを経験させられており、三十八度線のすぐ向こう側では、そうではなくて、経済の発展をする、生活もよくなる、あらゆる面がどんどん発展している。この三十八度線を境にして、二つの同じ民族がどうなりますか。こんなことはわかりきった話ですよ。それをいかに政治的にせきをしようと、あるいはアメリカが軍事的な線を引きましょうと、おそらくアメリカは朝鮮で次の段階においては、朝鮮の政治的安定というために軍事力を使いますよ。その時期はそんなに遠くはありません。そのとき日本に手伝えなんて言ってくるかもしれない。そのときはまさかその段階では、赤城さんはお手伝いに出るほどふぬけじゃなかろうと思いますけれども、いずれにしてもそういう態勢になることは明らかだ。そういう意味アメリカが一番おそれている影響力というものは、そういう形で出てくる。これは共産主義諸国が侵略をするというのとは違います。この共産主義がいいか、あるいはアメリカの軍事体制がいいかということを選ぶのは人民です。政治家でも何でもありませんよ。どっちを選ぼうといいじゃないですか。それをアメリカが軍事力によって干渉しようとするところに、一番深い問題があるわけです。今うしろで言われましたが、その時分になればアメリカ日本も発展する、だから日本アメリカのようになって、それでアメリカが満足したらけっこうじゃないですか。何もさっきあなたのおっしゃるように、共産圏諸国が日本をほしがっているなんということは、おそらくあなたのうぬぼれです。私も中国に行き、ソビエトも行って、いろいろ偉い連中とも会い、向こうの人民とも約四カ月いろいろ話してきました。日本が工業力が発展しているから、あすこをほしいなんて言っている国は一つもありませんよ。たとえば中国に一例をとってみますと、私は農機具の問題を出した。中国の水田では非常に水稲作がおくれておるから、日本の進んだ農機具を一つ入れないかという話を、向こうへ行って大ぜいの人にしましたところが、向こうでは、入れてくれればぜひ買いたいのだが、しかし日本で売ってくれなければ私どもは数年の間には日本よりいいものを作ります、こういうことを言っておりますよ。それを帰ってきて宿谷君に話をしていろいろあっせんしたことがありますけれども、そういうので、あなたのおっしゃるように、資本主義諸国はあまり日本をほしくない、共産圏諸国は日本をほしがっているだろうなんということは、およそ現実と違う認識で、これは私は大きな間違いだと思うのです。いずれにしても私が今申しましたように、すぐに共産主義に南鮮がなるかどうかわかりませんが、しかしあれに近づいていくことは間違いない。そうして北鮮に近づくことは、アメリカの反共軍事支配体制から遠ざかるということで反対するということですが、この傾向だけは間違いなく強化されますよ。考えてごらんなさい。これが強化されないなんということは、少なくともあなたも百姓の生活を御存じですが、百姓にしましても、労働者にしましても、一般の勤労大衆というものはそういうところの勘というものははっきりしています。こういう点についてはそういう体制になってくる。そういう中で日本が特別にアメリカのよき忠僕として、アメリカからかわいがられる。そして積極的に、岸さんのようなああいう向こう見ずなといいますか、目先ばかり見て十年先は何もわからない。十年どころか五年先もわからない。もっともそうですよ。あしたかあさって自分の政権がだめになるかどうかわからないという人ですから、先がわからないのは無理もないが、ああいうふうな考え方で、特に今日の重要な段階にきた国防問題をやるということは、あぶないじゃないかというふうに考えるわけです。この点を一つ申し上げておきたいと思います。  時間がありませんから、今度は具体的な問題に少し入ります。新安保第六条と今後の日本防衛との問題ですが、安保委員会等政府が盛んに言っておるのは、第六条によって米軍アジアへ出動する場合は、日本の平和と安全に役立つ範囲にこれを限定するのだ、規制するのだ、こういうことが事前協議でできるのだということを盛んに強調している。これは苦しまぎれだと思いますが、この点についてはちゃんとアメリカと何か約束があるのですか。
  16. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 今の具体的問題に入る前に、ちょっと私も言っておかなければならないのですが、共産国家群がほしがっておる、こういう意味でなくて、共産主義国家からいいますならば、日本が共産主義に入ることに強い希望を持っている、こういう見方を私は述べたのであります。それからまたいろいろ経済的な問題が出ましたが、久保田さんはソ連中共も行ったでしょうけれども、私は中共はまだ行きませんが、おととしソ連に行きました。経済的に自由主義制度がいいか、共産主義国家制度が繁栄するかということには問題があると思います。しかし現実におきましては、北鮮は別といたしましても、ソ連国民生活の状態等は、これはいろいろ統計もありましょうけれども、私が見た目ではそう繁栄している、よくなっているというふうには私は見ておりません。それは一つには、ソ連の経済が軍事費に相当取られているということだと思うのです。それに対してフルシチョフといたしましても、そういう軍事費を少なくしていこう、こういうことで今度の百三十万の陸軍の減になったと思います。これは労働力の問題等もあると思います。それで久保田さんが言っているように、アメリカがいつでも侵略するような前提で、今共産国家アメリカの戦時体制とを比較するのはちょっと間違っている。アメリカとの戦時関係を比較するならば、ソ連の戦時体制、戦時的な面を取り上げて比較しなくてはいかぬと思います。そういう点におきましては、東ドイツにおきましても、あるいはハンガリーにおきましても、あるいは北鮮に対する援助におきましても、そういう意味において、アメリカを見る目において見るならば、ソ連だって軍事国家だ、こういうふうに見られないことはないと思うのであります。これは議論になりますが……。  そこで第六条の問題で、日本が巻き込まれないような形において、事前協議について交換公文がかわされておる。これについてアメリカとの間にはっきりした話し合いがあるのかどうかということでございます。これは申し上げる必要もないと思いますが、交換公文を取りかわすということが、日本国会の審議も経ているし、アメリカも了承している、これが第一の段階であります。第二の段階において交換公文において三つを掲げてあります。日本における重要な配置の変更、それから日本におけるアメリカの軍隊の装備の重大な変更、それから第三に日本の施設及び区域を使って戦闘作戦行動に出動する場合、この三つについて事前協議によってきめていくということであります。その第三の戦闘作戦行動に出る場合には、これは日本の不利益になるような場合はノーと言える。ノーと言った場合にはこれを拒否しない。これは再々総理からも御答弁申し上げておりますように、かたい約束になっております。岸・アイク声明に出ているようにかたい約束になっております。でありますから、向こうとの交渉の過程において、この点について話し合いができておるということは申し上げて差しつかえないと思います。
  17. 久保田豊

    久保田(豊)委員 盛んに事前協議が何か摩訶不思議な力を持っておるように言われますけれども、これはここでこまかく言いませんけれども事前協議そのものは一つ制度としても全く穴抜けの制度だということは、これは安保委員会で完膚なきまでに言われているわけです。これをごまかそうとしたってごまかせませんよ。同時に岸・アイク声明ではっきりしていると言うけれども、岸さんもアイクも近くやめる人でしょう。これは近くどうせだめになる。そうすればあの声明は次の大統領を拘束しないということを、岸さんははっきり言わざるを得なかった。自民党のどなたかが次の総理大臣になるでしょう。ここにおられる人がなるかどうか知りませんけれども、なってもおそらく岸さんのようなああいうことをぬけぬけと言える人もなかろうし、あれを実行できるなんという人は、これはよほどの人でない限り、日本人として根性のすわった人でなければできないと思います。同時に具体的に言ってみれば、たとえばアジアにおります米軍は、決して日本だけとこういう関係を結んでいるわけじゃない。韓国とも台湾とも同じような関係を結んでいるわけです。そういうところから出動の要請があったときに、直ちに、しかもそれは統一的にやらなければならぬのですが、そのときに日本の言い分を一々聞いて、ノーと言ったからそれじゃ韓国の言い分はおじゃんにします、台湾の言い分も日本承知しないからだめです。そんなことをアメリカ承知しておったら、アメリカは韓国や台湾に対しては今以上に評判ががた落ちになって。全然話になりません。ですからそんなことを言ってもこれは問題にならぬと思うのです。この点は明確になったと思うのです。  もう一つは、かりに日本がイエスと言った、ノーと言った場合でも、国際的にはこれは極秘でやるのです。秘密でやるのだから、日本基地があり、日本米軍がおる限り、国際的には、日本基地を使った、そう言われてもどうにもならぬじゃないですか。その場合には事前協議によってノーと言いましたということでは何ら効果はない。逆にイエスと言った場合にはどうかといえば、ただイエスと言うだけじゃない。何らかの形において日本アメリカ極東政策に対して協力の形が必ずこれにくっついてくるのは明らかだ。この協力の形というのは、たとえば国内における補給関係協力という格好になるか、あるいは国内における交通その他の関係における協力という形になるか、あるいは国内においてアメリカ極東に作戦行動する場合において、そのしっぺ返しとして日本が反撃を受けるだろうということは当然考えられる。その反撃に対する共同防衛の発動としての準備をしなければならぬことは明らかだ。少なくともその範囲においてはそういう準備という形においての協力をするか、あるいはもう一歩先へ出て公海あるいは公空の中においての積極的な協力をするか、どっちかじゃないでしょうか。またそうしなければ私は日本というのはやっていけないと思う。もしそういうことがないとすれば、日本の民防衛はどうなりますか。これは五条ともひっかかりますけれども、そういう場合においての民防衛はどうなります。また同時に、日本のように外国から物資を輸入しなければならぬ国、そうしなければ産業も国民経済も立っていかないのですが、この物資の確保ということについてのことはどうなりますか。こういう点を考えてくればイエスと言ってもノーと言っても、少なくともこの六条がこういう形において今後生かされる限り、事前協議なんということは意味がないというふうに考えざるを得ない。これは全く安保を通すためのかくれみのとして、アメリカが岸内閣へ贈りものにした。これをかくれみのに使おうと思ったところが、だんだんボロが出て使えなくなったというのが実情じゃないか。ここで岸内閣はこういうオンボロな、穴だらけのかくれみのは脱いだ方がいい。脱いで、はっきりした方が私はいいと思う。そうでなければなぜこの事前協議内容をもっと明確にして、本条の中に入れなかったかということ、これは何回も繰り返しますけれども、同じように繰り返さざるを得ない、こう思うのですが、この点はどうですか。
  18. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 根本的に、どうも戦争をする場合、アメリカ侵略して、極東に紛乱を起こした場合に根拠を置くようでありますが、私ども戦争をさせない、大きくしない、こういう観点に立っております。でありますので、世界安保条約体制からいいましても、協議外交というのが非常に多いのです。いきなり何かをやらないで、話し合いによって物事を解決していくという協議外交といいますか、協議事項というものが非常に多くなっている。これは世界安保体制をとっておる国々においてとっておる方針でございます。私はそう確信いたしております。でありますので、日本といたしましても第四条において、常に協議をしていって、戦争とか紛乱に巻き込まれないように、戦争を拡大させないように、こういう配慮がなされている。これが安保条約根本を流れておる思想でございます。でありますから第四条においても協議する、しかし第五条のように、特に日本に影響の多いものについては、これは事前協議ということではっきり縛っておく、こういうことが第六条による事前協議のことだと思います。しかも日本に駐留するところのアメリカ軍の目的というものは、日本の平和と安全、それから極東における平和と安全、こういう二つの目的において駐留することになっておりますので、その目的を逸脱するということになれば、これは条約違反でございます。しからばそれを具体的に、どういう場合にということをもっとはっきりさせておかなければ、そういううたい文句みたいな、抽象的なものだけではだめではないか、こういうことだろうと思います。そこにおいてこの交換公文において、日本にとって非常に関心の深い、また日本の平和と安全を守る上において非常に影響の多い問題については、事前協議というものを抜き出したのであります。それくらいのものならば、なぜ本文の中に書かないか、こういうことでありますが、これはどこの安保条約にもそういうものは書いてありません。そういう例もありましょう。しかし同時にこの事態というものは、いろいろたくさんの事態が出てくるかもしれません。それを一々本文の中に列挙しておくということよりは、日本における配置の重要なる変更、あるいはまた装備の重大なる変更、それから日本基地使用を許しておるということは、日本の平和と安全と極東の平和と安全のために基地使用を許しておるのでありますから、日本の平和と安全の場合は当然でありますが、極東につきましてはいろいろ疑いもありますから、どういうことで出動するかわかりませんから、それに対して一つのワクをきめておく。このことにつきましても、いろいろな事態が——私はそういう場合がないことを前提としておるのですが、あるということがない限りでもありませんから、こういう規定があるのでありますが、そういう事態ができたといたしましても、いろいろな場合がありますので、これを条約の本文の中に列挙するということは非常にむずかしい、こういうことから交換公文になっておると私は思います。  岸総理大臣がやめるかもしれないので、アイクとの約束もどうなるかわからぬといいますけれども、これは一国の総理と一国の大統領が約束したことは、たとい総理の席を離れても、私は当然これはだんだんにその約束を履行するということが、国と国との何といいますか、重要なる総理と大統領との話し合いは、たとい人がかわっても履行すべきだと思います。私どももあるいは大臣をかわっても、私どもが約束したことは当然守るべきだし、久保田さんも代議士をかりにやめても、代議士の時代において大いに言ったり約束したりしたことは、これは守られていかなければならぬものである、こう考えます。
  19. 久保田豊

    久保田(豊)委員 時間がないそうですから、この点についてまだ多く聞きたいと思うけれども、聞けないので残念ですけれども、私が特に六条の運用についてお聞きしたのは、これは御承知通り極東の安全と平和のために日本基地を利用するということで、米軍そのものに何らの制約はないのです。あれを見ますと、在日米軍というような制約はありません。それから在日米軍が出ていくというふうにはなっておりません。どこの米軍であろうとどこのやつがきて行こうとこれはかまわない。     〔高橋(禎)委員長代理退席、委員長着席〕 それからまた同時に、米軍がこの出動をした後にどういう軍事行動をとるかということについても、何らの制約はない。こういう点が二点明確であります。しかもこれはこまかいことはすでに安保委員会で明らかになっているから言いませんけれども事前協議そのものが、たとえば艦船の場合でも何らこれに対する入港通知の義務もないということもありますし、たとえば軍事基地なら軍事基地の中に、飛行場の中に米軍の飛行機が入ってきたら、これをやはり通知して、はっきりとらえるあれもあるのかないのか、この点もはっきりわからない。そういうことになってきますと、こういう点からいって——しかもこの事前協議は要するに秘密でやるわけでしょう。そうなってくればノーと言って、あるいはイエスと言おうと、少なくとも国内に対しても国外に対しましても、相手国に対しても意味がないのじゃないか。かりに日本から出なくて、日本基地を利用しないで、ほかから行って極東で適当な軍事行動を米軍がやって、そしてたとえばどこかに原爆を落としたとかあるいは水爆を落としたという場合、それを日本から行ってやったと思われてもしようがない。かりにこれは第五空軍が行ってやったのだ、あるいはほかの基地から第三空軍が行ってやったのだといいましても、これは区別がないし、またそういう場合には相手国は、国際法上その基地を持つ日本に対して特別扱いをするという手はないわけです。そんなことは別にしなくてもいいわけです。しかもまたその場合には、日本相手国なり世界に対して、おれの方はこうなったのだという特別な外交措置をとることはできないのじゃないですか。そういう関係の中で見ると、このものは規定としても、事前協議というものは少くともそういう意味では政府の言うほど摩訶不思議な威力を持っておるものではない。少くともこういう関係から言えば極東全体におけるアメリカ軍の、いわゆる軍事行動というものを規制することにはならない。またかりに事前協議によって日本のあれだけを考えてノーと言ったからといって、その結果が日本戦争に巻き込まないという保証にはならないという点を、私は明確に政府が自覚をすべきだと思う。この点はどうなんですか、この一点だけをお聞きします。
  20. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 二、三点ありましたが、日本基地を使用するものは日本の平和と安全及び極東の平和と安全のために使用するのでありますから、今の交換公文におきましても、日本におるアメリカ軍が戦闘作戦行動のために日本基地を使用するということで、どの軍隊が使ってもいいというわけには参りません。というのは、これは事前協議のものを三つ関連して考えなければいけません。たとえば入ってくるときには、それが配置の重要なる変更で、それが長期間、ある程度の期間、ここに入ってくるというときには、その方面でそれが規制される場合もあります。その点で規制されて、入るのをイエスと言って、そうして出るときには今度はまた戦闘作戦行動に出るというふうに、二重の規制を受ける場合もあります。また受けない場合もあります。でありますから、この三つを関連して考えなければならぬ問題と思います。それからアメリカの太平洋軍とか極東軍が日本とは別個に活動することを規制する方法がここにないじゃないか、これは御無理だと思います。日本アメリカ条約では、アメリカ軍が日本基地ではなくてよそから出るということを日本が規制すると、これは主権の制限みたいになります。これは世界各国同じであります。これはもうそういうことを規制するのは無理だ、そういうことはでき得ないことでございます。  それから日本戦争に巻き込まれる危険がちっとも除去されていない。これは安全保障条約を結ばなくてもそういう議論はあります。ただ安全保障条約を結んだ後においては、極力これを防ぐというような方法、一方においては日本の平和と安全ということで、もし万一の場合がありますならば、日本もただ座して死を待つということでなくて、やはり抵抗するというような体制と同時に、巻き込まれないための配慮というものがあるわけでありまして、これを巻き込まれるか巻き込まれないか、巻き込まれないという保証があるかといっても、これは安保条約があるなしにかかわらず、それはないとも言えませんが、ないような配慮をしてあるのが安全保障条約だ、こういうように思います。
  21. 久保田豊

    久保田(豊)委員 残余の質問は次の機会に保留いたします。      ————◇—————
  22. 福田一

    福田委員長 この際お諮りいたします。本委員会に付託されております八木一男君外二十四名提出部落問題審議会設置法案につきまして、成規の手続をもって撤回の申し出があります。本案の撤回を許可するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  23. 福田一

    福田委員長 御異議なしと認めます。よって、本案は撤回を許可するに決しました。  次会は明後十六日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後零時三十二分散会