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森本委員 私は
日本社会党を代表いたしまして、ただいま
議題となりました
電信電話設備の
拡充のための
暫定措置に関する
法律案に対し、反対の意を表するものであります。この
法律案の
目的とするところは、
電話加入申込者等に
電電公社の発行する
債券を引き受けさせて、改訂電信
電話拡充第二次五カ年
計画の遂行に要する
資金の一部を調達し
ようとするものであります。ここ両三年来、
電話架設並びに電信
電話サービスの
向上に対する国民の要望が急激に高まり、既定
計画をもってしてはとうていこれを満足させることができなくなり、その結果、
電電公社が
設備拡充計画の修正拡大を余儀なくされたということは、ひっきょう、公社の第二次五カ年
計画の策定に誤算があったということにほかならないのでありますが、この際いたずらに過去の誤りを追及することはやめにいたしまして、わが社会党としては、
電話需給のアンバランスを解消し、今なお決して満足すべき状態にない電信
電話サービスを急速に
改善するためには、既往の
計画を改訂しなければならないとする点においては、本案を支持せられる諸君と軌を一にするものであります。いな、むしろ、
電電公社・
政府並びに与党によって作られたこの
拡充修正の
計画は小規模に過ぎるのではないか、もっと急速に国民の要望にこたえる徹底した
拡充計画が策定せらるべきであり、またその
ような
計画の実行も可能なのではないかという
考え方を持っておるのであります。一例をあげれば、公社の改訂
計画によれば、三十五年度以降三カ年間に百二十九万の加入
電話を増設することになっておりますが、わが党としては、やり方によっては二十万をふやして百五十万の増設も決して不可能ではないという見方をしているのでありまして、こういう
考え方が改訂
計画に対するわが党の批判の根底に横たわっておるということを最初に明らかにしておきたいと思うのであります。しからば、わが社会党が改訂
計画を容認することができず、ひいては本
法律案に対しても反対の態度をとらざるを得ない理由は何であるかと申しますならば、第一は、改訂
計画の所要
資金の調達
方法に重大な過誤を犯しておるという点であります。
電電公社の改訂五カ年
計画の遂行には総額六千二百三十億円を算する膨大な建設
資金を必要とするのでありますが、これを昭和三十五年度以降三カ年間に区切ってみましても、一カ年平均千五百億円、うち自己
資金でまかない得るものが八百十億円、残りの六百九十億円は外部
資金に依存せざるを得ないのであります。問題は、この年間六百九十億円に達する外部
資金の調達源にあるのでありまして、本来電信
電話事業のごとき高度の公共性を有する
事業、ことにわが国のごとく長く国営
事業として
経営され、現に
政府関係機関たる公社によって
経営せられている
事業の
設備拡張の
資金源は、当然国家財政
資金の投資もしくは融資に仰ぐべき性質のものでありまして、財政
資金が欠乏している場合には、やむなく
一般市場に起債することは容認せらるべきだといたしましても、これを
事業の利用者たる最も弱い
電話加入者等の側に求むべきでないことは多言を要しないところであります。しかるに、改訂
計画によれば、前に述べた一カ年平均六百九十億円の外部
資金のうち、財政
資金の融資、公募社債の額は合わせて二百八十億円、割合にいたしまして四割強にすぎず、残余の六割、四百十億円は、これをこの
法律案による加入申込者の
債券引き受け制度に依存し
ようとするものでありまして、昭和三十五年度財政投融資額として僅々二十五億円が計上されておるにすぎないのであります。
政府が財政
資金のワクに籍口して極力国家
資金の投入を回避し、この膨大なる
電話拡張計画の
負担の大部分を
電話利用者に転嫁せんとする証拠は歴々たるものがあるのであります。
政府並びに公社当局は、
電話加入者による
債券引き受け制度が受益者
負担の原理に合致するとか、
負担金制度に比べて実質的
負担はかえって減少するとか、いろいろ都合のいい理屈を並べておりますけれ
ども、たとえば一級地における十五万円の
債券引き受けということは、
一般大衆にとっては容易ならざる
負担であります。この
ような制度が、
電話事業を国民全般の利用から切り離して、一部
金持ち階級の私物化する
傾向を助長することはすこぶる明瞭なことでありまして、わが党がこの
法律案に反対する最大の理由はここにあるのであります。しかも、本
法案審議の過程において、
債券引き受けの六段階の
配分について、常識的に十五万円から二万円までのつかみ分けであるという
ような
総裁の
答弁であります。加入
電話の
債券引き受けについても、公社と国際電電との六十一万一千円とわずか六千円程度の不均衡を暴露せられ、
法案審議の過程においてあわてて公社が幹部
会議を行なって、その積算根拠を
あとからつけ足すという醜態を暴露しておるのであります。次に、
電話加入申込者等による
債券引き受け制度は、決して望ましいものではないが、巨額の建設
資金を調達するためにやむを得ずとったものであるという弁解に対しては、この
ような拙劣にして弊害のある
方法をとらなくても、必要なる
資金を調達する
方法は幾らでもあるということを、私は特に指摘しておきたいと思います。その第一は、膨大なる国家予算あるいは財政投融資
計画を再検討して適正なる
配分方法をとれば、
電話加入者にしわ寄せしなくても、電信
電話の
拡充資金の財源を求めることは決して難事ではないということであります。この点は与野党の主張の根本的に分かれるところでありますが、この際その詳論を避けることにいたします。第二は、特に
電電公社に聞いてもらいたいと思いますことは、
電電公社の資材購入価格の合理化による工事費節減の問題であります。
電電公社の一加入当たりの工事費単金は、第一次五カ年
計画当時二十八万円、第二次五カ年
計画当時三十万円、改訂第二次五カ年
計画では三十四万円と上昇する一方でありまして、これは、自動改式、市外即時化等、基礎的
改善の時期にあるためと
説明しておりますが、公社の資材購入価格においても、契約方式の検討その他合理化の余地が多々存するであろうということは想像にかたくありません。工事費単金の引き下げはそれだけ多数の
加入者を増設し得ることを
意味するものであり、公社としてはこれらの点に最善の努力を傾けてなお足らざるところを外部
資金に求むべきであります。これに関連をして
電電公社の
資金運用の能率化についても一音いたしたいのであります。現在公社の
資金は国庫に預託され、しかも三十億円までは無利子となっておるがごとき不合理きわまる制度を改め、手
持ち資金を効率的に運用したならば、この面よりも公社収支の
改善に寄与するところ大なるものがあると
考えるのであります。第三に、
料金の合理化の問題でありますが、現行の公社の
料金制度が、あるいは
加入区域の面から、あるいは
市外通話の面からすこぶる不合理なものになっておることは、公社自身が本
委員会において
答弁したところであります。にもかかわりませず、なぜか公社はこれが是正に消極的であります。思うに、
料金の合理化は、とかく
料金値上げと混同されやすく、世論の批判を招くことをおそれて容易に手をつけないと想像されますけれ
ども、不合理、不均衡を放置することは、決して
事業に忠実なるゆえんではないのであります。公社当局が英断をもって適当な是正を行なうならば、たといそれが収入の増加を来たさなくても、少なくとも改訂
計画を正当に批判する素地を与えることとなるのでありまして、現在の
ような不合理の基礎の上に立った
計画では、われわれとしては
計画の適否すら正しく判断することができない
ような状態に置かれておるのであります。最後に、公社の改訂
計画は、その実行に当たる公社職員の全面的協力を前提として初めて実現性を持つものであるにもかかわりませず、実際において
従業員の支持を得る見込みがきわめて希薄であることをあげざるを得ないのであります。すなわち、この改訂
計画の実行は、
従業員側における相当の
労働強化を
意味するものであるが、これに対する
従業員の
待遇改善その他の雇用問題に関する
考慮がはなはだしく欠けておるのであります。最初に申し上げた
通り、改訂五カ年
計画のうち、自己
資金は一カ年間平均八百十億円の巨額に上っておるのであります。この
ように公社収入の巨額が
設備拡充の
資金に充当せられて、
従業員の
待遇改善に回されていないことは、公社法の精神にも反するものであります。公社の
生産性の
増大に伴い、この際思い切った
待遇改善を行ない、要員対策についても万全の策をとり、公社の合理化施策が急速に進められておる現状から、勤務時間の
短縮をも行なうべきであります。要するに、この膨大な第二次五カ年
計画の遂行にあたっては、
従業員の大幅な
待遇改善、要員の適切な増員、さらに勤務時間の
短縮などによって、
従業員の心からなる協力によって初めて完成されるものであります。しかるに、この三つの
条件がほとんどゼロにひとしい改訂五カ年
計画では、たとい建設
資金獲得に成功しましても予定の速度をもってこの
計画を進行するかどうか、はなはだ疑問といわざるを得ないのであります。以上主要なる数個の理由をあげて申し上げたごとく、公社の改訂五カ年
計画中には根本的にわれわれの主張と背反するものを包蔵しており、この五カ年
計画遂行の
資金調達を
目的とするこの
法律案もまた五カ年
計画の持つ矛盾を当然に包含しておるのでありまして、わが党の
見解をもってすれば、
政府は真にわが国の電信
電話事業を
改善向上するの熱意に欠け、建設
資金の
負担を最も弱い立場にある
電話利用者に転嫁をして当面を糊塗せんとしたものがすなわち本
法案であります。以上申し述べた理由により、
日本社会党は本
法律案に反対するものであることを重ねて申し上げ、私の討論を終わる次第であります。(拍手)